米の富豪がドッグシッター探し。前代未聞の給料に応募殺到

英国で珍しい求人募集が話題となっています。米国のお金持ちの家族が、ペットの犬2匹の世話をするドッグシッターを探しており、給料は1年間で12万7000ドル(約1800万円※)。勤務地はロンドンの高級住宅街とあり、地元メディアが騒然としています。
※1ドル=約142円で換算(2023年6月21日現在)

↑ロンドンの絶景を眺める余裕はあるだろうか?

 

どんな仕事なのでしょうか? 応募条件には「ずばぬけたペットケアの技術と犬2匹へのきめ細かな気配り」とあるそう。具体的な仕事内容には、他の家の犬と遊ぶ手配を整えたり、エサの管理をしたり、獣医を予約したり、健康管理をしたりすることが含まれています。犬の栄養管理に関しても完ぺきな知識が求められており、それを基にそれぞれの犬に合った運動メニューを作るとのこと。採用されたドッグシッターは、この家族と一緒にロンドンの住宅で暮らし、この家族が旅行するときは、行き先がどこであろうが、ペットと一緒に必ず同行しなければなりません。

 

この仕事はかなりハードでしょう。ロンドンの人材企業でこの求人を担当する人は、今回の給料について「この業界では前代未聞」と述べています。しかし、ワークライフバランスは保証されていない模様。採用されたドッグシッターは全てにおいてこの仕事を優先し、プライベートは諦めなければならないと言われています。

 

それでも、現在の応募数はすでに300~400に上るそう。この人材会社は6月中に最適な人材を見つけたい考えです。

 

【出典】
Daily Mail. The paw-fect job? American billionaire family is hiring a ‘full-time dog nanny’ who’ll be paid $127,000 a year to pamper their two privileged pooches. June 20 2023

一体何なんだ…? キリギリスが米ネバダ州で大量発生

キリギリス科の昆虫であるモルモンクリケットが、米・ネバダ州で大量発生しており、町中に大混乱を引き起こしています。

↑モルモンクリケットの侵略(画像提供/AP通信)

 

モルモンクリケットは米国西部の乾燥地帯に生息しており、穀物の害虫です。5月下旬から6月上旬にかけて、その卵が何万個もかえりました。数週間にわたってネバダ州の北部に押し寄せており、特に人口約2万人の小さな町・エルコは大混乱に陥っている模様。モルモンクリケットは赤いため、州間幹線道路はまるで血で覆われたように見えるそうです。

 

ある住民はAP通信に対して「聖書にある災いのようだ」と冗談交じりに話しています。これは十の災いのうちの一つであるイナゴの災い(蝗害)を指しており、不吉な予感を覚える人も少なくないのかもしれません。万が一これで食料危機が悪化でもしたら、笑えないでしょう。

 

【出典】
AP. Blood-red crickets invade Nevada town, residents fight back with brooms, leaf blowers, snow plows. June 20 2023

 

英国で「生け花」がブーム! イングリッシュガーデンと何が違う?

5月下旬に開催された「マンチェスターフラワーフェスティバル」では、生け花のワークショップが大盛況でした。英国では現在、生け花が日本の代表的な文化としてブームになりつつあります。どうして英国で生け花が好まれるのでしょうか?

↑現代を象徴する日本文化

 

生け花は花を飾るだけではなく、草木の美しさや植物そのもの、ありのままの自然を表現しようとする独特のスタイルとして英国で注目を集めています。

 

西洋のフラワーアレンジメントは花をメインとし、緑を添えることで華やかさを演出するというのが主なスタイル。一方で日本の生け花は花だけではなく、草木の美しさを表現することを大切にしています。曲がった茎でも枯れかけた花でも、“わび・さび”として美を見い出します。

 

ワークショップに参加した英国人のフォトグラファーは、「英国であまり見かけないアレンジメントの色合いに惹かれた」とコメント。他の参加者も「独特で個性的なデザイン」「花や植物そのままの形を生かしていて、自然からのメッセージを感じる」と語っていました。

↑マンチェスターフラワーフェスティバルの様子

 

英国では、人の手を加え過ぎずにありのままの自然を生かす「イングリッシュガーデン」が愛されています。そのような国民性から、生け花が英国の草花愛好家に受け入れられたのも不思議ではありません。

 

生け花はできるだけ少ない花数や草木で、空間も上手に使って美を表現します。さらに、花の数が少なくても構わないうえ、スポンジではなく花を刺して繰り返し使える剣山を用いる点が「エコ」に通じるとことも英国で受け入れられている理由です。

 

人々が大量生産や大量消費に疑問を感じ、サステナブル意識が高まっている現代社会において、華美から離れ、質素な形で心の美しさを表現することができる生け花。そこから学ぶ日本文化の精神的な価値に、若者を含めて英国人は注目しています。

 

いまさら聞けない米国の「ジューンティーンス」とは? その意味や背景を説明

米国で6月19日は「ジューンティーンス」と呼ばれる日。同国では一番新しい祝日ですが、イリノイ州では銃乱射事件が発生したと報じられています。一体この祝日にはどんな背景があるのでしょうか?

↑ジューンティーンスの意味とは?

 

そもそもジューンティーンス(Juneteenth)とは何でしょうか? リーダーズ英和辞典によれば、語源は「June + nineteenth(6月19日)」で、この2語が混成してジューンティーンスという言葉になりました。その意味については、特にテキサス州で1865年に奴隷解放が発表されたことを記念して祝うと説明されていますが、同州では1862〜63年の奴隷解放宣言から2年以上が経ったときに奴隷が解放されたのです。

 

それから長い年月が過ぎた2021年、ジョー・バイデン大統領がこの日を米国の祝日として制定しました。その前年には「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が起きていますが、ジューンティーンスは人種差別問題への意識を高める役割を担っています。

 

しかし、ジューンティーンスにはさまざまな側面がある模様。まずは文化戦争。共和党の一部の政治家はジューンティーンスを米国の白人を悪者にでっち上げるための企みだと見ているそうです。かつての米国社会ではWASP(ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント)が優位でしたが、今日そのヒエラルキーは大きく崩れつつあります。イリノイ州で発生した銃乱射事件の真相は不明ですが、2024年の大統領選挙を前に不穏な雰囲気が漂っていることが伝わってきます。

 

また、この祝日には商業的な側面も。企業の中には、ジューンティーンスを新たなマーケティング機会と捉える会社もあります。他方、一般の人々の中にはこの日の意味や歴史に関心を持つことなく、ただパーティーを開いて楽しむ人も少なくないそう。こうなると、日本のクリスマスと同じように見えてきます。

 

このように、複雑な背景があるジューンティーンス。米国の分断を象徴しているとも見れるでしょう。米・ハワード大学のグレッグ・カー准教授は、いみじくも次のように述べています。「ジューンティンスは米国の将来を占うリトマス試験紙である」

 

【参考記事】
NPR. Juneteenth, the newest federal holiday, is gaining awareness. June 19 2023
The Guardian. Juneteenth: how did the holiday start and how is it celebrated today?. June 19th 2023

 

 

非日常体験は確実! 地中419m「世界一深い場所にあるホテル」が英国に誕生

「世界一標高が高い場所にあるホテル」や「世界一大きなホテル」など、「〇〇なホテル」は数多くあります。先日、英国にオープンしたのが、「世界一深い地中にあるホテル」。客室があるのは、地上から1375フィート(約419メートル)の位置です。

↑他のホテルでは味わえない深さ

 

ホテルは、その名も「ザ・ディープ・スリープ・ホテル」。英国南西部ウェールズにあるスノードニアの山に作られました。ヴィクトリア時代に鉱山だった所です。

 

ホテルがあるのは地中約419mの位置。そのため、ホテルにたどり着くまでが一苦労。トロッコのレールや古い階段が残る暗い地下道をひたすら進んでいかなければなりません。地下水で足元が濡れたり、ときにはロープに捕まったりして、気分はまるで洞窟探検。そんな道のりを進んでたどりついた先に、少し開けた空間があり、そこに小さなログハウスのような客室が5つ作られているのです。

 

客室の中は、こじんまりとしたログハウスといった雰囲気。地中深くのごつごつとした岩場をそのまま活かしたベッドルームの部屋もあります。

 

気になる価格は、プライベートキャビンタイプが1泊2名で350ポンド(約6万1300円※)、洞窟を活かした部屋タイプは1泊2名で550ポンド(約9万6300円)。宿泊できるのは、土曜日と日曜日の週末に限られます。

※1ポンド=約175円で換算(2023年6月9日現在)

 

豪華な客室があるとは言い難いこのホテル。地中深くに泊まるということはもちろん、ホテルに到着するまでの道のりを含めて、非日常を体験できるスポットと言えるかもしれません。

 

このホテルに行くためには、ライト付きのヘルメット、長靴などの万全の装備が必要ですので、ご注意ください。

 

【主な参考記事】

Metro. World’s deepest hotel opens in the UK, with beds 1,375 feet below the earth’s surface. June 7 2023

仕事で教えなきゃいけないの!? ニュージーランドで起きるキャッシュレス化の副作用

日本でも普及が進むキャッシュレス決済ですが、ニュージーランドではとうの昔から当たり前。全く現金を使わない「完全キャッシュレス社会」へと移行することも、そう遠い未来の話ではなさそう。しかし、キャッシュレス化で先を行く同国ではその副作用も現れています。

↑いくらか数えられる?

 

ニュージーランドは、金融機関の口座残高内ならカード1枚で決済できる「EFTPOS(エフトポス)」を1985年に導入。それ以降、デビットカードのようなこの支払い方法が主流となっています。ニュージーランド準備銀行が2022年に発表したデータによると、15歳以上の国民のデビットカード保有率はコロナ以前の2017年でも96.2%と極めて高い比率でした。

 

スーパーなどでは現金の取り扱いがないセルフレジがほとんどで、銀行でさえ現金を扱わない店舗が増えています。飲食店でも現金の支払いは全体のわずか10%ほどで、大多数はEFTPOSやクレジットカード、Apple Payなどのキャッシュレス決済を使用。子どものころからカード決済に慣れ親しんでいて、現金を全く持ち歩かない大人も決して珍しくありません。

 

子どものころから現金知らずのツケ

お財布いらずの便利なキャッシュレス決済ですが、そのおかげでニュージーランドには現金の数え方がわからない人がたくさんいます。現金を数えることができなくても普段の生活ではあまり困らないため、親からも教わらないことが多いようです。

 

筆者自身、現地の飲食店のマネージャー業務に携わっていたことがありますが、スタッフのトレーニングで現金の数え方から教えなければならないのは日常茶飯事でした。世の中にキャッシュレス化が広く浸透し、「お金=現金」という感覚が薄くなった証拠と考えられるでしょう。

 

ニュージーランドで見られるこの副作用は、日本を含めキャッシュレス化が比較的ゆっくり進んでいる国でも起きる可能性があります。人間がこれまで当たり前にできていた計算能力がキャッシュレス化によって衰えるということは、ビジネスだけでなく社会にとっても大事な教訓と言えそうです。

 

執筆者/磯村さやか

奇跡!? エクアドルで葬儀中に棺桶の女性が息を吹き返す

大切な人が亡くなってしまったら、「もう一度目を覚まして」と願うことでしょう。でも、それが現実に起こったら、誰もが驚いてしまいますよね。そんなことが最近、エクアドルで実際に起きたのです。

↑安らかに眠っているはずだったが…

 

この出来事が起きたのは、ある76歳の女性の葬式の最中でした。その女性は医師によって死亡が確認され、家族が葬儀を行っていました。ところが、葬儀が始まってから5時間後くらいに棺桶の中から不思議な音が聞こえてきたそう。中を見てみると、この女性が息をしており、棺桶を叩いていたのです。家族は驚愕し、棺桶を放置して、彼女を連れて病院に直行したというのです。

 

米国の公共ラジオ放送・NPRの記事で、英国のアングリア・ラスキン大学医学部のスティーブン・ヒューズ医学博士は「亡くなったと思われた人が目覚めることは極めて稀なこと」と述べています。

 

ヒューズ博士は、人の死亡を確認する際、患者の反応をうかがい、脈拍、呼吸の有無を確認し、最後に目に光をあてて瞳孔が開くかチェックすると言います。しかし、例えば、冷たい水の中にいた人は脈拍も呼吸も低下し、死亡確認で見落としが起きる可能性もあるそう。また、患者をざっと診察しただけで死亡を判断するような医師や、教育が不十分な医師は、死亡の診断を見誤る可能性もあると言います。

 

実際、1月には米アイオワ州で、ホスピス患者が葬儀場に運ばれたものの、遺体の袋に入った患者が中で息をしていることがわかったそう。2月にはニューヨークで、老人ホームの老人が葬儀場で生きていることが発見されています。しかしヒューズ博士によると、このような例は「世界でも年間に3〜4件程度ではないか」とのこと。

 

エクアドルの76歳の女性は病院に戻ったものの、深刻な状況とされています。一方、今回の出来事を受けて、エクアドル政府はこの病院を調査しています。

 

【主な参考記事】

NPR. A woman in Ecuador was mistakenly declared dead. A doctor says these cases are rare. June 14 2023

AP. Woman declared dead in Ecuador revives during her wake; health authorities investigate. June 13 2023

グローバル企業の58%、AIの脅威は「誇張ではない」と回答。米イエール大の調査

最近、米・イエール大学チーフ・エグゼクティブ・リーダーシップ・インスティテュート(CELI)によるオンラインイベントで、AIに関する調査が行われました。参加したのは、コカ・コーラ、Zoom、ウォルマートなど、米国のみならず世界を牽引する大手グローバル企業のCEO。小売、製造、テック、製薬、メディアなど、さまざまな業界のビジネスリーダーが集まり、調査に答えています。

↑友達になれない?

 

その結果、CEOの34%が「AIが10年後に人類を滅ぼす可能性がある」と回答。8%は「5年後に人類を滅ぼす可能性がある」と答えたのです。また、AIがもたらす可能性のある悪影響について、58%が「誇張されたものではない」と答えたことがわかりました。

 

実は先日、テック関連のCEOが中心となり、AIの危険から社会を守るための措置が必要であると声明を発表したばかり。この声明に署名した人の中には、ChatGPTを開発したOpenAIのサム・アルトマンCEO、Googleの副社長を務めていたジェフリー・ヒントンのほか、Microsoftなどの幹部もいます。

 

しかも、AI開発の第一人者と言われるヒントン氏は最近、自分が開発に携わった技術が、いかに知能化が進んでいるかを懸念し、その技術に警鐘を鳴らすことを決意したそう。ヒントン氏はCNNのインタビューで、「AIが人間よりずっと賢くなったら、人間がかけた制限を回避するなど、操作が非常にうまくなるだろう」と語っています。

 

EU議会は、生体情報を使った監視技術の利用禁止や、AIが生成したコンテンツの開示義務など、AI規制案の策定を進めており、日本でもそれを参考に規制について議論が進んでいます。

 

AIが人間にとって脅威的な存在であることは、AIの開発に最前線で携わる人が最も強く感じており、各種の規制が必要な段階が迫っているようです。

 

【主な参考記事】

CNN. Exclusive: 42% of CEOs say AI could destroy humanity in five to ten years. June 14 2023

奈落の底へ落ちる究極の恐怖!「暗闇バンジージャンプ」がスコットランドで大人気

勇気を出してジャンプすれば、とてつもない爽快感を楽しめるバンジージャンプ。その上を行くスリルを味わいたい人に昨今評判となっているのが、夜間に行う暗闇バンジージャンプです。

↑暗闇に放り出される恐怖(画像提供/Highland Fling Bungee)

 

このバンジージャンプを行っているのは、スコットランドのパースシャーにある「Highland Fling Bungee」(HFB)。高さ40mのガリー橋にジャンプ台が設置され、およそ30m~35mの高さを一瞬で落下します。落下速度は時速80km以上になるそう。

 

通常は明るい日中に行われるバンジージャンプですが、寒過ぎずにちょうど良い気候になるという10月〜3月の限られた日にだけ、周囲が真っ暗になる午後6時から10時までに「ブラックアウト・バンジー」が行われているのです。「ブラックアウト」とは「真っ暗」の意味で、文字通り暗闇の中のバンジージャンプです。

 

このアトラクションを行っているHFBでは、新しいスリリングを提供するために、このブラックアウト・バンジーを始めたそう。地面や周囲が見える昼間のジャンプとは違い、暗闇では何も見えず、自分がどこに向かっているのか、どこまで落ちるのか、わからなくなるのだとか。だからこそ、昼間のジャンプに比べて何倍にも恐怖が増すそうです。

 

奈落の底に突き落とされるような究極の恐怖を味わえる、このブラックアウト・バンジージャンプ。年に数回しか行われないそうですが、ヨーロッパでは唯一暗闇でのバンジージャンプを楽しめる場所ということもあり、チケットはいつも完売しているそうです。

 

ブラックアウト・バンジージャンプの料金は、一人94ポンド(約1万6900円※)。バンジージャンプにハマってしまった人や、たまらない恐怖感を味わいたい人などはチェックしてみてはいかがでしょうか(YouTubeショートはこちら)?

※1ポンド=約179.3円で換算(2023年6月16日現在)

 

【主な参考記事】

Daily Mail. The double-decker airplane seat is back. Here’s what it looks like now. June 14 2023 

「完全なヴィーガンではない」75歳のアーノルド・シュワルツェネッガーが毎日の食事を明かす

筋骨隆々の肉体派俳優の先駆け的存在である、シュワちゃんこと、アーノルド・シュワルツェネッガー。『ターミネーター』『プレデター』などに出演し、鍛え抜かれた身体を披露してきました。75歳になった現在でも、最盛期に比べれば身体がやや小さくなった印象はあるものの、それでも分厚い胸板やたくましい二の腕など、年齢を感じさせないボディは健在。そんなシュワちゃんが、Netflixで公開されたドキュメンタリー『アーノルド』などで日々の食生活について明かしています。

↑ご自慢の身体の秘密は?(画像提供/Men’s Health)

 

筋力アップに欠かせないのが、筋トレと合わせて食事と栄養の管理。特にたんぱく質は筋肉の材料となるものなので、良質のたんぱく質を摂取することが身体づくりには大切です。シュワちゃんがお気に入りのたんぱく源として挙げたのが、卵、サーモン、鶏肉、ベジバーガー、レンズ豆などの豆類。

 

お気付きかもしれませんが、鶏肉以外に肉類が入っていません。シュワちゃんは以前よりも肉を食べる量が8割ほど減ったそう。「完全なヴィーガンではない」と言っているように、菜食主義者とは言わないまでも、野菜中心の食事を取っていることを明かしたのです。

 

「肉を食べず、野菜中心では筋肉がしっかりつかないのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、シュワちゃんはある研究結果を紹介しています。その内容によると、筋トレ後にエンドウ豆由来のプロテインを摂取した人と、牛乳由来のホエイプロテインを摂取した人を8週間比較したところ、体力と筋力の向上に大きな差は見られなかったそう。つまり、植物由来のたんぱく質でも、動物由来のたんぱく質を摂取したときと同様に、筋力や体力アップが期待できるというのです。

 

ヘルシーな野菜中心の生活になったというシュワちゃんが、現在毎日食べているというメニューは以下の通りです。

 

  • 朝食:オートミールかギリシャヨーグルトにグラノーラをプラス。ワークアウトの後に食べているそう
  • 昼食:基本はサラダ。プラントベースのハンバーガーやサーモン、チキン、オムレツなどと一緒に食べることも
  • 夕食:スープ。一日の最後の食事は軽めにしているそう

 

実にシンプルで、特別なものはあまりありません。ちなみにシュワちゃんは、ときには豪快にステーキや肉汁が溢れるようなハンバーガーを食べても良いと語っています。普段から基本の食生活を送っていれば、イレギュラーな食事をしても、その影響をあまり受けることはなく、すぐに元の身体に戻せるのかもしれません。

 

【主な参考記事】

Men’s Health. Arnold Schwarzenegger Has Revealed His Go-To Proteins Now That He’s 80% Vegan. June 14 2023

別の警察官はちゃんと見ていた——。米の警察官がスピード違反で逮捕される

米フロリダ州オーランドで先日、出勤中の警察官がスピード違反で別の警察官に捕まえられるという珍しいニュースが報じられました。「警察官だから警察には捕まらない」という考えは通用しないようです。

↑警察官であってもスピード違反はスピード違反

 

捕まったのは、アレクサンダー・シャウニ巡査。ちょうど出勤するところで、パトカーに乗ってライトもサイレンもつけずに、時速80マイル(約129km)の猛スピードで駆け抜けていったそう。しかし、そこは制限速度が時速45マイル(約72km)の道路でした。

 

たまたま反対車線を走行中だった別の警察官がクルマを折り返して、シャウニ巡査のパトカーを追跡。時速100マイル(約161km)以上を出して、シャウニ巡査のパトカーに追いつくと、彼はパトカーのライトを点灯させ、いったん道路に停止したというのです。

 

「仕事に行くのに、なんで俺を止めようとするんだ?」と聞くシャウニ巡査に対して、「制限速度が時速45マイルのところ、時速80マイルで走っていたからだ」と答え、運転免許証の提示を求めると、シャウニ巡査はそれを拒否。再びパトカーに乗って走り去っていったのです。

 

結局、彼が乗っていたパトカーの番号や制服につけられていたバッジから、シャウニ巡査は特定されました。スピード違反に加えて、ライトとサイレンをつけているパトカーからの逃走、警官への抵抗などの内容で捕まることとなったのです。

 

シャウニ巡査には「警察官だから制限速度以上のスピードで走っても誰にも捕まらない」という考えがあったのかもしれませんが、そんな話はまかり通るわけがありません。警察官だからこそ交通ルールをしっかり守ってほしいもの。おとがめなしで済まずによかったですが、せめてシャウニ巡査には逃げないでほしかったと思うのは私だけでないでしょう。

 

【主な参考記事】

New York Post. The double-decker airplane seat is back. Here’s what it looks like now. June 14 2023

ツアー、婉曲表現、インフレ率…。ビヨンセにスウェーデンが困惑

世界的歌手のビヨンセさんが2023年5月から世界ツアーを行なっています。スウェーデンの首都・ストックホルムから始まったこの『ルネッサンス・ワールド・ツアー』ですが、そのおかげで同国の5月のインフレ率が上昇したのではないかというニュースが世界を駆け巡っています。

↑スウェーデンを惑わすビヨンセ

 

このツアーはストックホルムでは5月10〜11日の2日間行われ、合わせて9万人以上の観客を動員したそうですが、その影響でコンサート会場の近くにあるホテルの価格が高騰したと見られています。ダンスケ銀行のミカエル・ゲロンさんは、ビヨンセさんのコンサートがインフレ率を0.2ポイント上げたと推定。「こんなことは初めてだ」と述べています。

 

スウェーデンのインフレ率は4月が10.5%でした。5月には9.5%ぐらいまで下がるだろうという見方が市場では広がっていたようですが、実際には9.7%までしか下がらず、同国はがっかり。

 

この予想外の結果にビヨンセさんのコンサートが影響していると考えられていますが、スウェーデンの地元メディアを見てみると、ビヨンセさんが同国を落胆させたのは、これだけではないよう模様。

 

ルネッサンスはストックホルムの次に、ベルギーの首都・ブリュッセルでライブを行いました。そこでビヨンセさんはファンに向かって「これまでのところ、あなたたちが最高の観客」と言ったそう。これを聞いた観客の中には、「スウェーデンでのライブがそれほど盛り上がらなかったことを遠回しに批判している」と解釈した人もいたようです。この出来事はスウェーデンでニュースになったそうですが、いま同国はビヨンセさんからダブルパンチを食らった気分かもしれません。

 

【主な参考記事】
The Local. Bills, bills bills: Beyoncé blamed for Sweden’s inflation disappointment. June 14 2023

パリがネズミに敗北宣言! 600万匹と共生できるか?

花の都と呼ばれるパリ。そのイメージとは裏腹に、このフランスの首都は以前からネズミに悩まされてきたことをご存知でしょうか? これまでにパリはネズミを撃退しようと対策を講じてきたものの、あえなく敗れてきました。そして先日、戦略の見直しを発表。戦いを諦めたパリは、ネズミと共存する道を模索することにしたのです。

↑パリを制圧

 

パリとネズミの物語は大昔までさかのぼります。14世紀に中世ヨーロッパで腺ペスト(黒死病)が流行した際、ネズミはその原因とされました。しかし、19世紀後半に普仏戦争でパリがプロイセン王国に包囲された際、ネズミは貴重な食べ物になったそう。

 

近年では、パリにおけるネズミの数は600万匹前後で安定して推移していたとされていますが、それでもパリ市民にとっては不快でした。パリは2017年に170万ユーロ(約2億5700万円※)を投じて、対ネズミ計画を実施。この作戦では、密封されたゴミ箱をパリ中に導入したり忌避剤を広範囲にまいたりしました。しかし、この攻撃もネズミを倒すには不十分だったようです。
※1ユーロ=約151.2円で換算(2023年6月14日現在)

 

逆に、2023年春に発生したごみ収集員のストライキによってパリ中がごみだらけになり、ネズミが反撃に出たのではないかと見られています。

 

そして6月上旬、パリはネズミと平和に共存するための調査委員会を設置せざるを得なくなりました。この動きは賛否を呼んでいます。政治家の中には「パリはこれに甘んじてはならない」と落胆した声がある一方、動物愛護団体は今回の動きを前向きに評価し、「有害生物の駆除ではない方法を支持する」と声明を発表しています。

 

果たしてパリ市民はネズミとの共生社会を実現することができるのでしょうか?

 

【出典】

Politico. Paris needs to learn to live with rats, mayor concedes. June 9 2023

CNN. Can humans and rats live together? Paris is trying to find out. June 10 2023

 

イーロン・マスク「人間はすでにサイボーグだ」と発言。その根拠に注目集まる

実業家のイーロン・マスク氏が6月12日、「私たちはすでにサイボーグだ」とツイッターで発言しました。

↑人間はもうロボットなの? 教えて、AI

 

同日、あるツイッターユーザーが「なぜAIが世界を救うのか」という話題の中で、私たちがどれくらいAI化しているのかを計測している人はいるかと質問。これに対してマスク氏はそう反応し、少しだけ議論を展開しています。

 

私たちの記憶は驚くほどたくさんコンピューターにアウトソース(外部に委託)されており、コンピューターはそれら全てを非常に正確に覚えている、と同氏は言います。しかし、人間にできてAIにできないことが世の中にはまだたくさんあるので、私たちの思考のアウトソースは——いまのところ——はるかに少ないと論じています。

 

この見解に対して、別のツイッターユーザーは「人間が記憶をアウトソースするのは新しいことではない。何千年とカレンダーや紙、計算機、そろばんを使ってきた」と反論。記憶のアウトソースという前提だけでは説得力に欠けるようです。

 

世界各国がAI競争で遅れを取らないようにしつつ、どのように規制するかを議論していますが、市民レベルでは人間のサイボーグ化に反対する人や懐疑的な人は少なくありません。「私たちはすでにサイボーグだ」という発言によってマスク氏の認識は知ることができましたが、そう断言するのは論理の飛躍かもしれません。

 

【出典】

Mirror. Elon Musk claims people are ‘already cyborgs’ because machines maintain memories. June 12 2023

40歳でリタイアできる!? 米国の金融専門家が考えた方法に賛否両論

近年、定年退職の時期は60歳から65歳に、さらには70歳へと、どんどん遅くなっています。もはや60歳までに引退するというのは多くの人にとって夢物語になっていますが、最近、TikTokで「40歳でリタイアすることは可能だ」と主張する人が登場。米国を驚かせています。

↑超早く引退するのは諸刃の剣

 

40歳での引退を可能と主張するのは、金融の専門家であるマイク・テイラーさん。その考え方は、10代からとにかく節約に努め、40歳から楽をしようということ。レーザービームのような集中力が何よりも大切だと言います。

 

10代からの倹約には、さまざまな努力が必要。旅行や飲み会の誘いを断ったり、ワークライフバランスを諦めて仕事に専念したり。教育面で自分に投資をして自分の専門的な技術や知見を高める一方、若いうちから退職年金制度に投資をすることも有効と述べています。不動産でお金を運用するというアイデアも上がっていますが、とにかく若いうちから訓練してお金を貯めなければなりません。

 

「何事もそうですが、何かを犠牲にしなければ実現できません」とテイラーさんは言います。彼の動画はTikTokで1万回以上再生されているようで、賛同する声もあれば、もちろん反論もあるそう。老後のために若さを無駄にするなという意見もあるようです。

 

昨今では、AIが発展すれば、退職時期は早くなり、引退後の生活や余暇の時間がもっと長くなるという楽観的な見方がありますが、AIの力を活用してでも、40歳に引退できる人はそう多くないかもしれません。

 

【参考記事】
Newsweek. Finance Expert Shares Top Tips to Retire at 40—And You Need ‘Laser Focus’. June 9 2023

世界新記録を樹立! 米教授が100日間「海中で暮らす」ことに成功

6月9日、米・サウスフロリダ大学のジョセフ・ディトゥリ教授が100日間、海中で暮らすことに成功し、世界記録を更新。久しぶりに地上に姿を現しました。

↑海中で100日過ごしてわかったこととは?

 

「ドクターディープシー(Dr. Deep Sea)」とも呼ばれる同教授は、水深9.14mにある「ジュールズアンダーシーロッジ(Jule’s Undersea Lodge)」と呼ばれる非常に狭い空間でただ一人、水圧を調整せずに過ごしました。

 

これまでの最長記録は、2014年に米国の教授2人が同じ場所で樹立した73日2時間34分。今回の新記録はギネス世界記録に申請中とされていますが、元米海軍の将校で生体医用工学の博士号を持つディトゥリ教授は記録のためにやったわけではないと言います。「水中や極限状態に対する人間の忍耐力を高めることが目的だった」

 

人間の意識と身体が極限状態でどのような反応を示すかを調べるために行われたこのプロジェクトで、同教授は水中で毎日実験を行い、データを収集していました。2023年11月に英・スコットランドで行われる学会で発表する予定。今回の実験結果は海洋調査員や宇宙飛行士の役にも立つと見られています。

 

3月1日以来、太陽の光を浴びていなかったディトゥリ教授。5月に記録を更新した際、「一番恋しいのは太陽」と述べていましたが、私たちにも日の光のありがたさが伝わってきます。

 

【参考記事】

AP. Florida’s ‘Dr. Deep’ resurfaces after a record 100 days living underwater. June 10 2023
BBC. Florida professor breaks record for time spent living underwater. May 15 2023

どうして現金ではダメなの? キャッシュレス化した英国の12歳が語る新時代のお金感覚

世界各国でキャッシュレス化が進む中、10代の子どもたちがお金に対してどのような感覚を持っているのか気になりますよね。英国メディアが6月8日(現地時間)に掲載した記事の中で、12歳のアリシア・ランバートさんが現金よりカードのほうが良いと述べています。どうしてそう思うのでしょうか?

↑断然こっちでしょ

 

指紋認証決済を導入する学校

ランバートさんは学校で昼食を買うとき、現金を使いません。英国では多くの場所でカード決済しかできなくなっていますが、学校の中にはその先を行く所もあるそう。それが生体認証決済です。

 

ランバートさんが通う学校はその一つ。同校の制度では生徒の指紋と名前が紐づけられ、親がお金を振り込みます。利用制限は1日に5ポンド(約875円※)まで。親は子どもが何に・いくら使ったのかを確認することが可能。学校以外の場所でこのシステムは使用することができません。
※1ポンド=約175円で換算(2023年6月9日現在)

 

それでも、これがすごく便利。「指紋は家に忘れることがないから、学校で困らない」とランバートさんは言います。

 

監視というより管理

ランバートさんは12歳の誕生日を迎えた後に銀行で口座を開き、デビットカードを使い始めました。9か月間使ってみた結果、お金を管理するうえで、デビットカードは現金よりも簡単かつ安全だと考えるようになりました。

 

その理由の一つが、少し高価な物を買うとき、現金を持ち歩くより、銀行口座に預金しておくほうが安全だから。カードが盗まれた場合でも、カードの利用停止、再発行、身に覚えのない引き落としがあった場合には補償の手続きが簡単。現金が盗まれたら、そう簡単にお金を取り戻すことはできません。

 

さらに、ランバートさんは現金の場合、レシートをきちんと管理しない限り、どこで・いつ・何に・いくらお金を使ったのかを把握することは難しいと言います。それに対して、デビットカードはアプリで残金や支出、入金などの記録を簡単にチェックできると述べています。

 

プライバシーを重視する人にとっては、まさにこの点が現金の良さであると同時にデジタル決済の怖さなのですが、ランバードさんの世代の感覚は違うようです。

 

現金拒否

ランバートさんは現金で苦い経験もしたそう。ロンドンのウェンブリー・スタジアムに女子サッカーのFA杯決勝戦を観戦しに行ったとき、たまたまデビットカードを家に忘れてしまったそう。しかし、パパがお小遣いを現金で多めに持たせてくれたので「大丈夫」と思っていたら、あることに気が付きました。

 

ウェンブリースタジアムは完全にキャッシュレス化していた!

 

せっかく現金を使おうと思ったのに、現金で支払うことが全くできない。このときの経験がランバートさんをさらにカード派にしたようです。

 

主にデビットカードと現金を比べながら、前者の長所ばかりを取り上げているのがこの記事の弱点ですが、キャッシュレス化した子どもの感覚がよくわかります。きっと頭を悩ませている親は少なくないでしょう。

 

【出典】
This is MONEY. I’d rather not have cash (and the one time I relied on it I couldn’t spend it): A school student on why her generation prefers cards – and the best kids accounts. June 8 2023

中国の13歳少女、モバイルゲームに900万円近くを乱費! 親の貯金が空っぽに…

ゲームにはまってしまうと、昼夜を問わず夢中になって遊び続け、見境なくお金を注ぎ込んでしまう……。昨今そんな出来事が国内外で度々報じられています。最近、中国で起きた13歳の少女の場合も同じ。親のデビットカードで900万円近くも浪費してしまったというのです。

↑金銭感覚がなくなる…

 

両親がそのことを知ったのは、娘さんが通う全寮制学校の教師から来た1本の電話がきっかけでした。この先生は少女がモバイルゲームにはまっていることを心配し、両親に相談したそうです。それを受けて両親が銀行口座を確認すると、わずか7セント(約10円)しか残っていなかったとのこと。

 

結局わかったのは、少女が1月から5月までの5か月間で、およそ6万4000ドル(約891万円※)を使ったということ。ゲームのアカウント購入のために1万6800ドル(約234万円)、ゲームの課金に3万ドル(約417万円)。さらにクラスメート10人のゲーム購入にもお金を使っていたそうです。どうやらこの少女がゲームにどんどんお金をつぎ込んでいることから、クラスメートが彼女にゲーム購入をせびっていたようです。

※1ドル=約139.25円で換算(2023年6月9日現在)

 

少女のお金の出どころは、母親からもらったデビットカード。以前、買い物をする際にパスワードを教えられていたため、そのカードを使ったそうです。しかも、両親に見つからないように、カードの取引記録などはこっそり削除していたとのこと。

 

日本の平均年収をはるかに超える金額を、ごく短期間で使い果たしてしまった少女。「お金がどこから来るのか、いくら使ったか、わからなかった」と泣きながら話しているそうです。また、銀行口座にあったはずの貯金が空っぽになってしまった両親は唖然としているとのこと。

 

両親は、決済会社に連絡を取り返金を求めていますが、まだ全て回収できていないそうです。

 

【主な参考記事】

Insider. A teenage girl found her mom’s debit card and spent $64,000 on mobile games, wiping out her family’s life savings. June 6 2023

このままではサービスの一時休止も…。米国の郵便配達員の5300人が犬に噛まれていた

米国では、郵便配達員は危険を伴う仕事なのかもしれません。

↑犬が襲ってきたら、集配かばんで防御

 

米国の郵政公社が先日発表した内容によると、2022年に仕事中に犬に噛まれた職員は5300人以上。2021年は5400人以上もいたので、減少したとはいえ、かなりの数の配達員が怖い目に遭っているのです。

 

州別に見ると、最も多かったのがカリフォルニア州(675件)で、次いでテキサス州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州でした。犬に噛まれた職員が多かった都市にはヒューストン、ロサンゼルス、ダラス、クリーブランドの名前が挙がりました。

 

配達員が犬に噛まれる住宅では、飼い犬が鎖につながれたり、柵の中にいたりするのではなく、庭で放し飼いにされている場合が多いと考えられます。

 

しかし、これだけ犬に噛まれる配達員が多いと、郵政公社もなんらかの対策を講じなければならないでしょう。犬を見つけても気軽に撫でるようなことはせず、敷地内に入るときはあえて音を立てることで人がいることを犬に認識させるなど、配達員に指導しているとのこと。また、犬が攻撃してきたら、集配かばんを盾にしたり犬よげグッズを準備したりする指示も出しているそうです。

 

それでも飼い犬によって郵便物の配達が難しい場合には、その地域一体の郵便配達サービスを一時休止し、住民は自分で郵便局まで郵便物を取りに行くなどの措置も考えなければならないとのこと。

 

それぐらいのことをしないと、郵便配達員の安全は守れないのかもしれません。

 

【主な参考記事】

NPR. Dogs attacked more than 5,300 mail carriers last year, the Postal Service says. June 4 2023

革新的でも思わぬ欠点が…。世界で賛否を呼ぶ「ダブルデッカー式エコノミークラス」

エコノミーの座席は、前の座席との間隔が狭く、両足を伸ばすことがなかなか難しいもの。そんな問題を解決しようと提案されているのが、高さが異なる座席を交互に並べたダブルデッカーの座席です。

↑名案?(画像提供/CNN)

 

この座席を提案しているのは、座席を設計する23歳のアレハンドロ・ヌニェス・ビセンテ。先日、ドイツで開催された「エアクラフト・インテリア・エキスポ」でこの座席スタイルを発表し、たちまち世界で話題を呼ぶことになったのです。

 

身長が188㎝と大柄のアレハンドロさんはエコノミー席を利用すると、いつも足元が窮屈で眠れずに過ごしたことが何度もあったそう。そこで、足元に余裕を持たせるために、このような座席を考えたのです。フランス語で「長い椅子」を意味する「Chaise Longue」と名付けられたことからも、その意図が伝わるでしょう。

 

座席は、高さの異なる2層式。数段のステップを上がって席につく上段と、ステップがなくそのまま座る下段が、交互になっているため、従来の形より足もとに余裕があります。すぐ後ろに人が座っているわけではないので、座席を後ろに倒しやすいメリットも。また、下段の座席は折りたためるため、そこを車いすの乗客のスペースとして利用することも可能。

 

従来のシートでは、前の座席の背面にディスプレイがついており、映画などのエンターテイメントを楽しむことができますが、それは乗客が持ち込むスマホなどのデバイスを利用することを想定しているそうです。

 

このニュースを見た海外ユーザーからは、「背が高い自分にはウェルカムだ!」「革新的なデザイン!」と歓迎する声が寄せられています。その一方で、「前の席の人のおならが近い……」と、下段に座った場合に上段に座った乗客のお尻が近くなることを懸念する声が少なくない模様。「もし前に座った人がおならをしたら、その臭いが直撃しそう……」と思うのかもしれません。

 

航空会社から見れば、この座席スタイルには座席数を増やせるメリットがあります。安全性の問題など、実現にはさまざまなハードルがあるようですが、もしこんな座席があったら利用したいと思いますか?

 

【主な参考記事】

CNN. The double-decker airplane seat is back. Here’s what it looks like now. June 6 2023

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

サッカー界でも多極化? メッシのMLS移籍で浮かび上がる「米国VSサウジアラビア」の対決

世界最高のサッカー選手の一人、リオネル・メッシが、米MLSのインテル・マイアミに移籍することになりました。メッシ選手は現在35歳。この年齢はサッカー界では「超ベテラン」になるかもしれませんが、この移籍の裏ではサウジアラビアが米国に挑戦状を叩きつけているようです。

↑サウジではなく米国を選んだメッシ

 

メッシ選手の移籍が決まった一方、フランスのスター選手、カリム・ベンゼマ(同じく35歳)がスペインのレアル・マドリードからサウジアラビアのアル・イテハドに移籍することが発表されました。2022年からサウジアラビアのアル・ナスルに所属するクリスティアーノ・ロナウド選手に続いて、新たなベテランのスター選手がサウジアラビアのクラブに移籍した格好です。

 

大ベテランのスター選手を次々に獲得するサウジアラビアの動きは何を意味するのでしょうか? スポーツ経済学を専門とするステファン・シマンスキー教授(米ミシガン大)は、MLSにとって痛手であると見ています。

 

これまでにも米国や日本、中国などが引退間際の世界的選手を獲得することで、国内リーグのレベルと認知度の向上を図ってきました。例えば、最近までJリーグのヴィッセル神戸には元スペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手が在籍していました(神戸を退団することになった同選手はサウジアラビアへの移籍が取り沙汰されています)。MLSでは2007年にデビッド・ベッカムがロサンゼルス・ギャラクシーに移籍。それ以降、数々の大物選手が欧州から米国に渡り、MLSの人気は拡大したと言われています。

 

しかし、ここに来てMLSにサウジアラビアというライバルが出現。MLSもロナウドやベンゼマを狙っていた一方、サウジアラビもメッシが欲しかったと言われています。サウジアラビアの出現で、これからMLSは引退間際のスター選手を獲得するために、いままで以上に多くのお金を支払わなければならなくなるとシマンスキー教授は論じています。

 

スポーツ経済学から少し視点を変えれば、米国とサウジアラビアの関係は外交面でも転換期を迎えています。サウジアラビアは米国と距離を置き、中国やロシアに接近していると言われています。この世界の「多極化」とサッカー界の動向は重なっている部分があるように見えますが、MLSもサウジアラビアのプロリーグも、サッカー界で覇権を握る欧州に対抗することはすぐにできないとシマンスキー教授は示唆。とはいえ、サウジアラビアはサッカー界の勢力図を塗り替えるかもしれません。

 

【出典】
Stefan Szymanski. Messi is heading to the US as Saudi Arabia kicks off bidding war with MLS for aging soccer stars. The Conversation. June 7 2023

消費者の20%がボイコット。英で「シュリンクフレーション」との戦いがヒートアップ

商品の販売価格はそのままで、内容量が収縮していく「シュリンクフレーション」。日本でもこの経済現象は見られますが、英国では消費者の間で、シュリンクフレーションした商品への静かなボイコット運動が起きているようです。

↑中身だけ減った気がしたら、立ち上がれ!

 

英国ではシュリンクフレーションが続出している模様。例えば、同国を代表するマクビティのダイジェスティブビスケットは内容量が400gから360gに減りましたが、販売価格は変わらないそう(日本では同製品をアマゾンで購入することが可能で、価格は(2枚X6袋)X12個で4291円(税込)となっており、1個あたり358円と記載されています〔2023年6月7日現在〕)。ほかにもプリングルスが200gから185gに減ったと言われています。

 

ロンドンに拠点を置くバークレイズ銀行が調べたところ、ビスケットやポテトチップスなどで起きるこの現象に英国の消費者の3分の2は気付いていると言われています。さらに、消費者の20%はシュリンクフレーションした商品に見切りをつけ、代わりにまとめ買いをしたり、比較的お手ごろ価格で入手できる自社ブランド商品を買ったりしているようです。

 

この行動が「ボイコット」と表現されていますが、実際に消費者は暴力的な運動を起こしておらず、静かに戦っている様子。このようにシュリンクフレーションに抵抗することで、英国の消費者は製造業者に考え直すよう求めています。

 

スーパーに行って、いままでより中身が少なくなった商品を見つけたら、「気のせいかな……私の手が大きくなっただけ?」とは思わず、「中身が少なくなった商品にもっとお金を払うなんてマジでうんざり」と思え、とThe Guardianはユーモアを交えて言っています。世界各国で消費者とシュリンクフレーションの戦いは続きそうです。

 

【参考記事】

The Guardian. Shrinkflation boycotts: have you joined the uprising against downsizing?. 2023 June 6

Yahoo Finance UK. Shrinkflation and stagflation: What are they and how could they affect your finances. 2023 June 6

2年間、毎月27万円がタダでもらえると人間はどうなる? 英がベーシックインカムの実験を計画

これから英国のイングランドで初のベーシックインカム(※1)の実験が行われる可能性があり、賛否を呼んでいます。

※1: ベーシックインカムとは、国民に最低限度の生活を保障するために、無条件かつ定期的に現金を給付する政策(参考:現代カタカナ語辞典)

↑賛否両論のベーシックインカム

 

シンクタンクのAutonomyが計画しているこの実験では、30人の参加者に2年間、毎月1600ポンド(約27万7000円※2)が「タダ」で支払われます。参加者は全く働かなくてよく、仕事を探したり、働く意欲を見せたりする必要もありません。研究者は、このお金が参加者の生活や心身の健康にどのような影響を与えるかを観察する予定。
※2: 1ポンド=約173円で換算(2023年6月7日現在)

 

この実験に賛否両論が巻き起こりました。賛成の人たちはベーシックインカムのさまざまな長所を挙げます。貧困の撲滅につながったり、より多くの子どもたちが教育を受けることができるようになったり、犯罪を減らしたり。Autonomyの関係者は「ベーシックインカムには複雑な福祉制度を簡素化し、英国の貧困問題と戦う武器になり得る」と言います。

 

しかし、反対意見も少なくありません。この仕組みを維持するには莫大な費用がかかるという指摘もあれば、受給者はお酒やたばこなどにお金を無駄遣いするという声もあります。また、ベーシックインカムの金額はみんな同じとされていますが、受給者の住んでいる所は異なります。そのため、高級なエリアに住んでいる人にとってはメリットが少ないとも。

 

Autonomyはそのような短所を認めつつ、定期的な所得があることで、受給者はお金の使い方について長期的に考えるようになり、快楽消費は減ると見ています。

 

同シンクタンクでリサーチディレクターを務めるウィル・ストロング氏は「気候変動や破壊的技術、これから起きる産業革命を考慮すると、私たちはこれから何らかの形でベーシックインカムが必要になる」と述べています。

 

この実験が実施されて成功すれば、英国政府はどんどん大きくなりそうですが、その代償も気になるところです。

 

【主な参考】

This is MONEY. Sit around, do nothing… and get paid £1,600 a month! Universal income benefits trial will see people rake in cash for doing zilch. 2023 June 5

日本も無視できない新技術が登場! イスラエルで「空気から水を作る」競争が激化

人口の増加や気候変動、水紛争を原因とした「水の危機」が世界中で懸念されている中、注目を集めているのが「空気から水を作る技術」。イスラエルでは最近、その開発競争が激しくなっているようです。

↑イスラエルから水の衝撃

 

空気を水に変える奇跡の技術がイスラエルに現れたのは、さかのぼること2012年。「Watergen」というスタートアップが、空気を冷やし、液化して水にする、エアコンみたいな機械を開発しました。

 

それ以降、この技術の開発競争は加速。最近では、「H2oll」という同じくイスラエルのスタートアップが、Watergenの仕組みをもとにしつつ、同社と比べてより安く、より効率的で、より持続可能な技術を生み出しました。

 

H2ollの新しい所は、空気全体を冷やす代わりに、抽出した水分子だけを冷やして水に変えること。詳しい仕組みは不明ですが、濃厚塩溶液や「液体乾燥」と呼ばれる方法が使われているようです。

 

H2ollの「冷やす対象を絞った方法」では、エネルギーの節約が可能と言われています。それでも、空気から水を生み出す中では電気代がかなりの出費になるそう。この費用を抑えるために、同社は太陽光発電の導入を模索していると言います。

 

空気からできた水は、費用がペットボトルの水の半分で済むだけでなく、品質も水道水よりきれいだとH2ollのCEOは述べています。同社は、この技術を政府や潤沢な資金を持つ組織に販売したり、飲んだ分だけ支払う方式で提供したりすることを検討中。スーパーに導入される可能性もあるようです。

 

H2ollは、この新技術によって空気から水を作る分野を「劇的に変える」自信があるとのこと。イスラエル工科大学で政府の支援を受けながら研究されていたこの技術には、アメリカ軍のエンジニアも注目しているようです。

 

翻って日本では、水の危機と聞けば、「途上国の問題か」と無関係に思ってしまう人もいるかもしれませんが、水紛争の要因の一つには「水の所有権の問題」が挙げられています。その視点から見れば、日本でも水道民営化が起きており、水の所有権を真剣に考える時が来ているのですね。空気から水を生み出す技術は日本企業も持っており、最近エジプトに輸出されています。私たちも「どうやって水を守るのか?」と考えてみたら、この技術に対する見方が変わるかもしれません。

 

【主な参考】

NoCamels. New Generation of ‘Miracle’ Water-From-Air Machines. 2023 June 4

国土交通省. 水資源問題の原因. 2023年6月6日閲覧

朝日新聞. 全国初の上水道民営化、宮城で始まる 料金や災害復旧…残る不安. 2022年4月1日

ラグビーW杯まであと約3か月! 注目度が増す「フランス」の勘違いされている食文化

コロナ禍明けの日本で関心が高まりつつある海外旅行。日本旅行が2023年版海外旅行の人気ランキングを3月に発表していましたが、注目は第7位のフランス。2023年9月には日本も参加するラグビーワールドカップを開催し、これから注目度がどんどん上がりそうです。

↑え、道路でバゲットを食べるのはマナー違反?

 

同大会は外国から60万人の観戦者を受け入れる見込みで、試合を楽しむだけでなく、フランスの多様で豊かな文化を体験してほしいと考えているそう。では、世界中の人々はフランスの文化ついてどう見ているのでしょうか?

 

そこで、今回はフランスの食に注目しながら、主に英語圏の情報を調査。いくつか興味深い記事を見つけて、フランス人に確認してみました。すると、結構デタラメなことが判明。英語圏の人たちの思い込みが、ネット空間でフランスの食文化のイメージをある程度形成しているのではないかとさえ思えてきます。英語圏で語られているフランスの食を巡る「おかしな」マナーや文化を3つ取り上げましょう。

 

1: 路上で食べてはいけない

フランス人といえば路上でバゲットを食べるイメージがありますが、英語圏の情報でまず驚いたのが、「フランスでは路上で食べ物を食べてはいけない」という話。フランスを象徴する食べ物・バゲットだけは例外とも言われています。

 

しかし、実際にフランス人の男性やママさんに聞いてみたところ、「そんな話は聞いたことがないし、誰もそんなことは考えてないと思う。なんで路上で食べてダメなの?」とのこと。もしそのような条例やルールがあったとしても、フランス人は誰も守らないだろうと言われています。

 

2: 職場のデスクで食べない

路上での飲食と同じようなバイアスは、ビジネスシーンでも見られます。英語で書かれたこの記事によれば「フランスの職場ではデスクで食事をしてはいけない」とのこと。労働環境を整える観点から、従業員が仕事をする場所(例えば、パソコンデスク)で食事を取ることは法律で禁じられています(新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにこの法律は緩和されたと同記事は述べています)。

 

今回の調査でその法律を詳しく調べることはできませんでしたが、フランス人に確認してみたところ、実際は少し異なるようです。確かにフランス人はデスク(作業をする場所)で基本的に食べませんが、職場にはキッチンや休憩室のような場所があり、そこで食事を取ることが一般的。経営者側は食事を取る空間や休憩室を社内に設置することを国によって義務化されているのです。そのため、フランス人も職場で昼食を食べるのですね。

 

さらに、コロナ禍で変化したことは、フランス人の間で「職場にお弁当を持参する」という文化が根付いたこと。これまでのフランスでは「ランチは外食」が主流でしたが、コロナ禍明けの現在では、かなりの数のフランス人がお弁当持参に切り替わって、職場で食べることが主流になりつつあります。

 

3: お子さまメニューはない

海外のあるツアー会社が英語で書いた記事などによれば、フランスでは、子どもでもこのような自国の食文化を誇りに思っているそう。だから、フランス人は食事において大人と子どもを区別せず、「子どもは親と同じ料理を食べるのが当たり前」という考え方から、レストランなどではお子さまメニューがないと思われています。

 

しかし、フランス人に確認したところ、これは完全な間違い。どこのレストランでもお子さまメニュー(フランス語で「Menu enfant」)があり、ないところのほうが珍しいぐらいだと言います。一般的なお子さまメニューの内容は飲み物(ジュースやシロップ)、メイン(ハンバーグや魚フライ、フライドチキンなど)、副菜(インゲンソテーやサラダ、フライドポテトなど)とデザート。お店によっては、おまけや風船などのプレゼントがあります。

 

少し高級なレストランでメニューにお子さま向けの食事が記載されていない場合でも、予約時などに「子どもがいる」と事前に伝えておくと、特別メニューを考案してくれることが多いそうです。また、メニュー考案までいかなくても、その場でお客さんに頼まれれば、大人用メニューの半分の量で子ども向けプレートを作ってくれたり、その日お店にある子どもが好きそうな食べ物を使ってお子さま料理を作ってくれたり、臨機応変に対応してくれるとのこと。実際には、子どもにやさしい人や料理店がたくさんあるようです。

↑思い込みに振り回されないように

 

英語圏で誤って伝えられているフランスの食文化にまつわる話を3つ取り上げました。英語を使えば、情報量は増えますが、今回調べた限り、その中には英語圏の人々が持つフランスに対する先入観やバイアスが含まれていることがわかります。英語圏の一部の人たちはフランスの食文化に高尚なイメージを持っているように見えますが、フランス人の実際のライフスタイルとは少し違うようです。

ご近所がまるでスーパー…。シンガポールで「共同購入」を巡り悪夢のトラブル発生

シンガポールで、共同購入を巡る近隣トラブルが話題になっています。

↑共同購入の人たちは幸せ、私はイライラ

 

50代の女性のゴーさんは、2019年にフラット(集合住宅)に引っ越しました。その前からすでにご近所の人は共同購入の事業を行なっていたそう。

 

引越し当初はこのことが気にならなかったそうですが、2023年に入ると、この隣人が共同購入で取り扱う量が急増。1日に3〜4回、業者やお客が来るようになり、それが週に4〜5日も起きるようになりました。ある日には、隣人の家に40人近くも作業のために集まっていたそう。知らない人が家の近くで待っているのは、気持ちの良いことではありません。

 

平穏な生活を望んでいたゴーさんですが、現実は悪夢。通路では荷物が山積みにされ、ドタバタした作業の音が朝から晩(ときには夜遅くにお客が荷物を受け取りに来ることも)まで聞こえており、もはや我慢の限界。「『私はスーパーの隣に住んでいるのか』と本当に思っていました」と心境を話しています。

 

商品を集団で一括して注文して受け取る購入形態の共同購入は、日本でも以前から存在していますが(代表例は生協)、シンガポールではコロナ禍でその人気が高まりました。近隣同士の交流を図るだけでなく、小さな業者を助けるために、同国政府も支援するようになったそうです。

 

しかし、ゴーさんはそんな世の中のトレンドにうんざり。役所に相談した彼女は、そこの勧めで防犯カメラを自宅に設置。隣人の活動を映像で記録し、それを証拠にして行政に苦情を訴えたところ、隣人は静かになり、やがて姿が見えなくなったそうです。

 

静かな生活を取り戻したゴーさん。「家は倉庫や配送拠点になるべきではない」と述べています。隣人が少しでも気遣いができていたら、世間を騒がせることはなかったかもしれません。

 

【出典】
CNA. ‘Thought I was staying next to a supermarket’: When group buying becomes a neighbour’s nightmare. June 5 2023

『Mr. ビーン』が怒った! アトキンソン氏が「EV」に騙されたと思う理由は?

『Mr. ビーン』や『ジョニー・イングリッシュ』といったコメディ作品で世界的に知られるイギリス人俳優のローワン・アトキンソン氏が、「電気自動車(EV)に騙されたと思い始めている」と英ガーディアン紙で論じています。

↑EVにしてやられた「Mr. ビーン」

 

学生時代に電子工学を専攻していたアトキンソン氏は、『Mr. ビーン』では小さいクルマの「ミニ」に乗っていますが、私生活では高級車をたくさん所有していると言われており、クルマは大好きな様子。そんな同氏はEVにもいち早く乗り始め、大好きになったそうですが、最近その熱が冷めてきたとのこと。

 

その理由の一つ目は、EVは世間で言われているほど環境に良くないから。アトキンソン氏はVolvoのデータを使いながら、EVを生産する過程で排出される温室効果ガスの量はガソリン車より70%多いと述べています。その原因はリチウムイオン電池にあり、これがかなり重い。この電池を作るためにはたくさんのレアアースやエネルギーが必要なのに、大体10年しか持たないと説明しています。

 

同じように耐久性への視点から、同氏はクルマを巡る社会的な問題を指摘。クルマの販売は「ファストファッション」化し、もはや私たちは新車を購入しても、リース契約を結んでも、3年足らずでクルマを手放すようになった。しかし、現代のクルマは30年も走ることができるのだから、このような天然資源の無駄遣いは許し難いとアトキンソン氏は怒っているようです。

 

このような理由で、アトキンソン氏はEVに少し騙されたと感じるようになったわけですが、EVの開発をやめるべきとは言っていません。自動車業界の環境問題への取り組みについては、ほかにも検討すべき方法があると言いたいわけです。

 

そこで、アトキンソン氏は「合成燃料(石油代替燃料)」の開発を進めるべきだと提案。「環境問題におけるガソリン車の問題点はガソリンであって、エンジンその物ではない」と同氏は考えており、その観点から、まだまだ役に立つ従来のクルマをできるだけ長く生かすためには、水素を含めた合成燃料の開発を進めることが大切だと論じているのです。

 

EVは世間でイメージされているほど環境に良いわけではないのだから、従来のクルマをもっと長く大切に使っていこうよ、というアトキンソン氏の考え方には納得できますよね。しかし、大英帝国勲章を受章しているこの大物俳優は、EVのもう一つの特徴である自動運転については言及していません。最近では、テスラのイーロン・マスクCEOが、同車の自動運転技術には、もうすぐ「ChatGPT」のような時が来ると述べていますが、自動運転でさえ環境にあまり良くないという見方は以前から存在しています。Mr. ビーンだったら古いミニに乗り続けているかもしれません。

 

【主な出典】

Rowan Atkinson. I love electric vehicles – and was an early adopter. But increasingly I feel duped. The Guardian. June 3 2023.

「包む」対「破く」。日本と全然違うフランスの「贈る文化」

日本には独特の贈答文化がありますが、実はフランスにも面白い贈る文化があります。フランス人の贈り物に対する考え方や感情の表現方法について調べてみると、日本人と全く異なることがわかりました。フランスへの旅行や留学などを検討している人なら特に知っておくべき、フランス人のプレゼント習慣やコミュニケーション方法について紹介します。

 

すぐに破く!

↑大げさに開けて「メルシー」

 

近年ではだいぶ変わってきたようですが、日本では贈り物を受け取ってすぐに開封することはマナー違反とされていました。一度自宅に持ち帰り丁重に開封して、後日、いただいた品に見合った額のお返しを贈ります。そのうえ、「包む」ことにも伝統があり、パッケージも細部にわたり美しく、包装までとても丁重です。

 

しかし日本に比べて、フランスのプレゼントの包み方はかなり大雑把。さらに、驚くほど薄い包装紙でラッピングされています。

 

その理由は、「贈り物をもらったら本人の前で開封して感動とお礼を伝える」という贈り物に対するフランス式マナーがあるから。待ちきれないほどのうれしさを表現するように、とにかく勢いよく高速で開けるのが良しとされ、大きな音で包みを破きます。そして、プレゼントを見たらとことん感激し、お礼と感想をその場で相手に伝えます。

 

プレゼントが開けられたら、贈った人は「自分はどうしてそれを選んだのか?」「どんな所がその人にピッタリだと思ったのか?」などをその場で伝えます。贈る側も、相手が自分の選んだ品に感激してくれたことで、喜びを共有するのです。

 

お返しをしない理由

↑プレゼントの原則はあげたいからあげる

 

フランスでは、贈り物をもらった後にお返しをする習慣やマナーがありません。冠婚葬祭や出産祝いの贈り物でもお返しは不要で、日本とは大きく違います。

 

クリスマスや誕生日などのプレゼントを贈り合うのは、あくまでもお互いの「プレゼントを贈りたい」という気持ちが軸になります。そのため、お返しをすると「なぜ理由もないのに贈り物をもらうのだろう?」と不思議がられます。人によっては「この間の贈り物が迷惑だったのだろうか?」と気に病んだり、「借りを作りたくないのか?」と残念な気持ちになったりしてしまいます。

 

このように、フランスでプレゼントを贈るのは「自分が相手に贈りたいから贈る」ことが基本。もらったからという理由だけで義務のようにお返しをするのは、むしろマナー違反なのです。

 

プレゼントを贈られたら、すぐに開いて、その場で最大限の感謝の気持ちを相手に伝えるフランス人。日本人がフランス人からプレゼントをもらうときは、「オーバーリアクションぐらいがちょうど良い」ということを覚えておくと良いかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

気候変動でエベレストの死者が増加? 2023年は史上最悪になる見通し

世界最高峰のエベレスト登頂に挑む登山家たちを阻む壁に、気候変動があるかもしれません。2023年に入って史上最悪となる17人もの死者を出している理由について、専門家が気候変動を指摘しています。

↑天候が読みづらくなっているとされるエベレスト

 

ネパール観光局によると、2023年にエベレスト登頂によって死亡が確認された人は12人。さらに5人が行方不明になっており、すでに17人が死亡したと見られています。エベレストでは毎年、登頂に挑んだ人の5~10人ほどが不運にも亡くなっており、2014年には死者数が過去最高の17人となりました。しかし、2023年は既にそれと同じ数の死者が確認されており、エベレストでの死者数が史上最悪の年となると見られています。

 

その主な原因について、専門家は近年の気候変動を指摘。気候変動によって、天候が非常に変わりやすくなり、今シーズンはその傾向が強いと言います。天候の変化が読めずに、吹雪に巻き込まれたり雪崩に遭遇したりすることも考えられるのでしょう。

 

2022年の夏はヨーロッパが熱波に襲われ、厳しい暑さとなりました。日本を含め、世界各国の人々が異常気象を実感していますが、その影響はエベレストにも及んでいるようです。

 

その一方、ネパール政府が2023年にエベレストの登頂許可証を過去最多となる479件も発行していることにも批判が寄せられています。登頂許可証の発行は1枚1万2000ポンド(約209万円※)にもなり、ネパールのような小さな国では大きな収入源の一つになっているのだとか。登頂許可証が乱発されたことで、多くの登山家がエベレストを訪れ、それが山に圧力をかけていると指摘する声もあります。

※1ポンド=約174円で換算(2023年6月2日現在)

 

さらにエベレストでは、ベースキャンプの下にある氷河が温暖化で不安定になっていることや、登山者がごみを持ち帰らずに捨てていくことで、大量のごみが散乱していることなど、さまざまな問題が持ち上がっています。

 

エベレストの自然環境と登山家の安全を守ること。これらを両立させるためには規制が必要になるかもしれません。

 

【主な参考記事】

Ther Guardian. Climate change to blame for up to 17 deaths on Mount Everest, experts say. May 30 2023

米・イエローストーン国立公園で頻発。バイソンに近づき過ぎた女性が襲われる

野生動物に気軽に近づき過ぎると、動物の本能を刺激して思わぬ危険に遭うかもしれません。そんな一例として紹介するのが、米・イエローストーン国立公園で先日起きた事件。バイソンの身体を撫でようとした女性が襲われそうになる事件が起きたのです。

↑近づき過ぎるとバイソンは怒ります

 

バイソンは、ウシ科に分類される動物。体長は2.7メートル、体重は1000キロにもなる大型動物です。イエローストーン国立公園には、2300~5000頭のバイソンが暮らしていると見られています。

 

しかしバイソンは群れで生活しており、その群れに近づく者がいると、敏感に反応してすぐに興奮する性質があるのだそう。しかも、走る速度は最大で時速56キロにもなり、男性ですら簡単に空中に放り投げられてしまうと言います。

 

そんなバイソンの特徴を知らずに、近づき過ぎたことで、女性が危険な目に遭いました。この女性はバイソンに手を伸ばし、ウシやウマを撫でるように、バイソンの身体を撫でようとしました。すると、バイソンがその手を振り払うように頭を強く振ったのです。女性は悲鳴をあげてすぐに逃げ、幸いにもバイソンはそれ以上、女性と同行者を襲うことはしませんでした。

 

イエローストーン国立公園では、バイソン以外にも数多くの野生動物が生息していますが、バイソンに人間が攻撃される事件が一番多く発生しているとのこと。実際、2022年6月にも、同じイエローストーン国立公園で、バイソンに近づき過ぎた人が攻撃されることが報告されており、数か月間に3回も同じようなことが起きていたそうです。

 

イエローストーン国立公園では、野生動物を守るために、訪問者に厳しいルールを設けており、バイソンとは25ヤード(約23メートル)の距離を取るように規則を定めています。

 

野生動物には近づきすぎないことが鉄則。旅行に行くときは、現地のルールを事前にチェックして、それに従うことが大切です。

 

【主な参考記事】

Newsweek. Woman Almost Gored After Trying To Touch Bison in Yellowstone Park. May 30 2023

【6月3日午前1時から】史上初! 欧州宇宙機関が「火星」をYouTubeでライブ配信

莫大な資金はかかるものの、民間人が宇宙旅行に行けるようになった今日。NASA(アメリカ航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などの宇宙開発機関が次に目指しているのは、火星です。そんな火星のライブ配信が今夜、世界で初めて行われます。

↑史上初YouTubeでライブ配信

 

火星のライブ配信を行うのは、欧州宇宙機関(ESA)。ESAは2003年6月2日に火星探査機「マーズ・エクスプレス」を打ち上げ、火星の研究を行ってきました。そして、ちょうど20年目を迎える本日(6月2日)、マーズ・エクスプレスの誕生日を記念して、YouTubeでライブ配信を行うことになったのです。

 

ライブ配信は、マーズ・エクスプレスに搭載されたビジュアル・モニタリング・カメラ(VMC)が撮影したものを地球に直接送信。それをYouTubeで配信するのです。

 

しかし、火星と地球の距離は、軌道によって異なるものの、平均すると約2億2500万キロメートル。火星の軌道にいるマーズ・エクスプレスが撮影した画像が地球に届くまでは約17分。さらに地球上のサーバーなどを通るのに1分かかり、全部で18分を要するそうです。そのため、厳密に言えば“リアルタイムでの配信”ではないのですが、マーズ・エクスプレスが約50秒ごとに撮影する画像が、YouTubeですぐに見ることができる予定です。

 

ESAのマネージャーは、プレスリリースで「これまでにない試みであり、100%うまく行くかはわからない」と述べています。

 

とはいえ、リアルタイムに限りなく近い火星の姿をYouTubeで誰もが見られるというまたとない機会。YouTubeではすでに「待てない!」「起きて見ないと!」など、世界中のさまざまな国からチャットにコメントが寄せられています。

 

ライブ配信は日本時間で6月3日午前1:00(中央ヨーロッパ夏時間で6月2日午後6:00)から1時間。ぜひ、YouTubeで火星を見てみてはいかがですか?

 

【主な参考記事】

IFLScience. You Can Watch The First-Ever Live Stream From Mars This Week. June 2 2023

ESA. Tune in for first Mars livestream. May31 2023

普通の旅行じゃない。21歳で全世界を巡った米女性の「行ってはいけない10の国」

現在、世界にある国の数は196。その全てを21歳で訪れた女性がアメリカにいます。平和な観光地とは程遠い国でさえも回ってきた彼女が「旅行に行くべきではない」と挙げた10の国はどこでしょうか?

↑楽しそうなアルフォードさんだが…

 

彼女の名前はレクシー・アルフォード、現在25歳。アメリカのカリフォルニア出身の女性です。まだ20代の若さでギネス記録を打ち立てるほど多くの国々をまわってきたのは、親が旅行代理店を営んでいたから。物心がつく前から、両親と共にさまざまな場所を旅してきたのだとか。その結果、21歳までに196か国を全て回り、ギネスに「地球上の全ての国を旅した最年少記録」と認定されたのです。

 

そんな彼女が紹介する「旅行に行くべきではない10の国」はどこでしょうか?

 

旅行に行くべきではない10の国

  • 1位 アフガニスタン
  • 2位 イエメン
  • 3位 マリ
  • 4位 シリア
  • 5位 ソマリア
  • 6位 中央アフリカ
  • 7位 南スーダン
  • 8位 リビア
  • 9位 バングラデシュ
  • 10位 北朝鮮

 

まず、ランキングの10位に挙がったのが北朝鮮。アルフォードさんは政府が主催するツアーで同国を訪れたそう。ただし厳重に監視されたツアーで、「夜ホテルに戻ったら、翌朝出発するまでは、外出などせず、そこに滞在したほうが安全」と彼女は話しています。

 

8位のリビアは、観光ビザを発行していない国であるため、アルフォードさんはビジネスビザを取得して訪れたそう。しかし、誘拐されたり、紛争に巻き込まれたりするリスクがあるそうです。

 

それ以外には、ミサイル攻撃が行われているような紛争地域の国々の名前が挙げられました。例えば、5位のソマリアでは、誘拐やテロに巻き込まれる可能性があり、武装した護衛を雇わないとどこにも行けないと言います。

 

そして、1位に選ばれたのがアフガニスタン。アルフォードさんは武装した護衛を雇い、セキュリティのしっかりしたホテルに宿泊。楽しく滞在できたそうです。しかし、2021年にイスラム過激派組織のタリバンが実権を握ると、状況は一変。「死にたいと思う人でない限り、行くべきではない」と話しています。

 

ちなみに、アルフォードさんは自身のサイトで、旅の資金源としてスポンサーを得たことはなく、親が経営する旅行代理店でコンサルタントとして働き、旅行中はフォトグラファーやブロガーとして仕事を行い、自己資金でまかなっていると話しています。

 

【主な参考記事】

Daily Mail. I’m a record-breaking traveller who’s visited every country and these are the 10 places tourists should NEVER visit – including one they shouldn’t go to ‘unless they have a death wish’. May 31 2023
Forbes. This 21-Year-Old Woman Is The Youngest Person To Travel To Every Country. June 4 2019
Lexie Limitles. Youngest Person To Travel To Every Country

摩天楼は重過ぎる。ニューヨークが毎年1~2mm沈んでいた

気候変動による海面上昇によって水没する可能性がある都市は世界各地にあります。しかし、それとは少し事情が異なるのが米・ニューヨーク。建物や人の重みが一因で沈下すると、最新の研究で発表されたのです。

↓摩天楼の思わぬ影響

 

先日、『Earth’s Future』誌に掲載された研究で指摘されたのが、ニューヨークの地盤沈下。1年で平均1~2mm程度沈んでいるというのです。

 

その一因として考えられるのが、都市全体の重量。ニューヨークには、マンハッタン、ブルックリンなど5つの区があり、そこには100万棟ものビルが建っています。研究チームはコンクリート、金属、ガラスなどを含めて、それらの建物の重量を計算し、およそ1兆7000億トンという数字をはじき出しました。これだけの重みに加え、人間やクルマなどの重さも地盤にかかっていることになります。

 

アメリカ地質調査所の主席研究員であるトム・パーソンズは、「地盤は下がり、海面は上がる。これは避けられない」と、この事実について表現しています。

 

ただ、マンハッタンではほとんどの高層ビルは岩盤の上に建てられているため、沈下の影響は少ない可能性があるそう。一方、ブルックリン、クイーンズなどのエリアでは、土壌が緩いため、同じニューヨーク内でも沈みやすくなると考えられています。

 

パーソンズ氏は今回の研究結果について、「ビルを建てるのをやめたほうが良いという意味ではない。都市の地盤沈下は、ビルの重量だけが原因ではなく、さまざまな要因が重なっている」と述べています。加えて、ニューヨークが、最近地盤沈下が激しいと言われるイタリアのベネチアのようになるには、数百年かかるとのこと。

 

そうは言っても、ニューヨークの都市が少しずつ沈んでいるのは、確かな事実。人間の知恵と技術が生み出した高層ビルがその一因になっているとは、皮肉なものかもしれません。

 

【主な参考記事】

AP News. As rising oceans threaten NYC, study documents another risk: The city is sinking. May 28 2023

モルディブで大人気の「ツナ缶」、日本のために蓋を変えていた

世界屈指のリゾート、モルディブ。コロナ禍が明けたアジアの観光業界の回復を牽引する存在であり、長年、日本とも友好関係を築いていますが、それを象徴しているのが、モルディブで大人気のツナ缶です。

↑モルディブではスーパーの棚にツナ缶がずらりと並ぶ

 

モルディブ料理の基本食材といっても過言ではないツナ缶は、種類がものすごく豊富。チリや玉ネギ入り、ブラックペッパー入り、さらにモルディブ伝統料理マスフニ(ツナにココナッツ、チリ、玉ネギを混ぜたもの)まで缶詰になっています。中身のツナはゴロっと大きく食べ応えがあるため、カレーや煮物などの料理で主役になれます。暑い国なので、常温で保存がきく缶詰はとても重宝されています。

 

以前のツナ缶は缶切りが必要なタイプでしたが、現在は全てプルトップ(缶切りを使わず、缶の蓋についている引き金を引っ張って開けるタイプ)になっています。そうなったきっかけは、2011年に起きた東日本大震災だったことはあまり知られていないかもしれません。

↑モルディブで当たり前となったプルトップのツナ缶

 

JICA(国際協力機構)によれば、東日本大震災で日本が大きな被害に遭ったことを知ると、モルディブはすぐに募金活動やチャリティーイベントを開催。モルディブ政府と国民から、義援金と約69万個のツナ缶が日本に送られました。

 

モルディブには、日本からの支援でつくられた防波堤や学校、さらに支援金で揃えた障害者用のタクシーや救急車などが数多く見られます。だからこそ、モルディブは東日本大震災が発生したとき、「今度は自分たちが日本を助ける番だ」と、素早く立ち上がってくれたと言われています。

 

缶切りを探して開けなければならないのは、被災地ではとても不便。そのため、モルディブは東日本大震災時に救援物資としてツナ缶を日本に送るため、缶をプルトップに変えたのでした。

 

その結果、モルディブ国内でもそのままプルトップのツナ缶が出回るようになったのです。しばらくはプルトップと古いタイプが混在して店頭に並んでいる状態でした。地方の島で売られている物も含め、全てのツナ缶がプルトップに変わるには2年近くかかったようです。

↑首都・マーレにあるラスファンヌビーチ

 

現在、モルディブのツナ缶はヨーロッパ方面への輸出が多く、残念ながら日本には輸出されていないそう。しかし、モルディブに旅行される日本人が現地でツナ缶を見つけたら、感慨深い気持ちになるかもしれません。

 

スマホを貯水池に落とした政府職員、池の水を200万リットル以上抜く! 批判が集まり停職処分に

サムスンのハイエンドスマートフォンGalaxy S 23 Ultraはお安くはなく、誰しも大切に扱うはず。しかし、インドの政府職員がうっかり貯水池に落としてしまい、回収するため210万リットルも放水したことで停職処分を受けました。

↑スマホを落としただけなのに

 

食品検査官のラジェッシュ・ビシュワス氏は、友人と自撮りをしていたところ、Galaxy S23 Ultraをカーカッタ貯水池に落としてしまいました。水深が深いため、上から見て場所を特定できるわけでもなく、深く潜ることも危険だったと思われます。

 

まずビシュワス氏は、灌漑局の職員に電話をかけ、スマホの位置を特定する許可を得ました。その際には3フィート(約90cm)だけ水を抜いて良いと言われたものの、ビシュワス氏はディーゼルポンプを借りて、3日間で200万リットル以上も排水してしまいました。

 

この量は、インドの灼熱の夏に少なくとも600ヘクタールもの土地を灌漑できるほどだそうです。もっとも、この池は約61億リットルもの貯水量があるため、「ぜんぶ抜く」ではありません。

 

その甲斐あってGalaxy S23 Ultraは回収できましたが、水没していた時間が長すぎたためか、起動すらしませんでした。ビシュワス氏はSNSで「排水された水の量は、周辺住民にとって何の役にも立たない」と説明する動画を拡散し、自分のイメージをよく見せようとしていたようです。

 

インドは頻繁に水不足が起こる国であり、水がなんの役にも立たないどころではありません。結局、水資源の浪費に批判が殺到したため、当局はビシュワス氏を停職処分にした次第です。「スマホを落としただけなのに」と嘆きたくなる場合でも、“池の水ぜんぶ抜く大作戦”はしないほうがよさそうです。

 

Source:The Times of India
via:Wccftech

初夏なのに窓は閉めっぱなし!? アメリカ人が「窓を開けない」3つの理由

初夏の季節となり、気温が高い日が増えてきました。一般的に日本人は暑いときや部屋の換気をするときなどに窓を開けますが、実はこの行動はアメリカ人にとって実に驚くべきことだったのです。

↑アメリカ人は窓を開けない

 

アメリカでは、窓を開けないのが一般的です。窓を開けて定期的に換気する人が少なく、年中閉めっぱなしという家も少なくありません。また、子どもたちの通う学校でも窓を開ける習慣がないのです。そんなこの国では「過去20年間、一度も開けたことがない」という強者もいるほどで、そもそも「窓=開けるもの」という認識がないようです。

 

2022年の調査によれば、アメリカにおいて窓を開ける習慣があるのは、エアコンを購入できない低所得層や、アジア人やヒスパニックなど他国にルーツを持つ人が多いとのこと。

 

逆に、窓を開けない傾向が顕著なのは、戸建てやエアコンを有している高所得者です。窓を開ける習慣がない要因には、24時間室内を適温に保つエアコンの存在、治安面、そして空気汚染が挙げられます。

 

アメリカ人が自宅の窓を開けない理由の1つ目が、エアコンの存在。アメリカでは、建物全体の温度を一定に保つ空調システムを組み込んだ住宅が多く、24時間いつでも適温で過ごすことができます。窓を開けなくても快適な生活が送れるので、わざわざ手間をかけて開けようと思わないのです。

 

また、室内より外気のほうが汚れているという考えもあります。空調システムの吸い込み口にはエアフィルターが取り付けられているので、室内の空気の汚れはある程度取り除いてくれます。一方、窓を開けると排気ガス、花粉、ほこりなどが室内に入り込んでしまうという理由で、窓を開けるのを嫌う人も少なくありません。

 

2つ目の理由は治安上の問題。アメリカでは強盗や誘拐といった事件が日々起こります。「自分の身は自分で守るべき」と考える人が多く、特に治安の悪い地域で窓はまず開けません。カーテンすら昼夜問わず閉めっぱなしという家もあります。

 

3つ目の理由は空気汚染で、近年、特に注目されています。これまで、空気汚染は呼吸器系疾患や心疾患といった健康被害をもたらすことが指摘されていましたが、2022年に発表された論文では鬱病や不安障害との関連性も明らかとなりました。

 

“アメリカン・ウェイ”は終わらない?

↑アメリカの学校でも窓は開けない

 

このような理由により、アメリカでは窓は開けないものと考えられていますが、はたして「それが正解なのか?」と言ったら、そうとも言い切れません。アメリカでも1日に1回は窓を開けて換気することが推奨されており、エアコンのフィルターが取り除ける空気中のゴミの量にも限界があります。

 

それどころか、建物から放出されるアレルゲンや化学物質、カビなどを考えると、定期的に窓を開けて換気するほうが室内の空気を循環できて良いのは明白でしょう。

 

今後、アメリカに窓を開ける習慣が根付くのかどうか気になるところですが、治安や空気汚染の問題が解決しない限り、窓を開けない家は逆にますます増えていくかもしれません。

 

執筆者/長谷川サツキ

 

UFO解明に光明? 米学者の37%が「未確認航空現象(UAP)研究」を「非常に重要」と回答

一般市民の「UFOを見た」という声は、話半分で捉えられるかもしれませんが、学者の声なら信ぴょう性があると受け止められるかもしれません。

↑多くの学者にとっても大事なテーマ

 

「未確認航空現象(UAP)」は、アメリカ政府がUFOの公式名称として使っている言葉で、正体が確認されていない飛行物体を指します。先日、学術誌『Humanities and Social Science Communications』に、そんなUAPに関する研究結果が発表されました。

 

この研究では、アメリカにある144の大学で、科学、人文科学、生物学、文学、芸術など14の分野において研究を行う1460人の学者に聞き取り調査を実施。「未確認航空現象を見たことがある、または見たことがある知り合いがいる」と答えた人が、18.9%に達しました。その中には自身が体験した目撃情報について詳細に答える人もいたそうです。

 

未確認航空現象やUFOについて「興味がない」と答えた人は17.19%のみ。「かなり興味がある」(15.27%)、「とても興味がある」(16.78%)、「まあまあ興味がある」(25.34%)、「少し興味がある」(25.41%)を合わせると、8割以上が未確認航空現象やUFOに興味を示す結果となりました。

 

さらに、未確認航空現象に関する学術研究について「非常に重要」と答えた人も37%に上りました。

 

もしかしたら、地球や私たち人類の存在を脅かすことになるかもしれない、未確認航空現象やUFOの存在。その研究は今後も欠かせないものなのかもしれません。

 

【主な参考記事】

Interesting Engineering. Nearly 20% of academics surveyed say they’ve seen a UFO, or know someone who has. May 22 2023

Humanities and Social Science Communications. Faculty perceptions of unidentified aerial phenomena. May 23 2023

「60日間ベッドに寝るだけで270万円」欧州宇宙機関が参加者を大募集!

ベッドに寝ているだけで270万円もらえる。そんな“おいしいアルバイト”が欧州で募集されています。一体どんな仕事で、なぜそんなに高額の報酬をもらえるのでしょうか?

↑そんなうまい話、本当にあるの?

 

この仕事に参加してくれる人を募集しているのは、ヨーロッパ各国が宇宙開発のために共同で設立した「欧州宇宙機関(ESA)」。宇宙で人の身体がどんなふうに反応するのかを調べる実験の一環として、12人の協力者を集めているのです。

 

参加者に求められるのは、60日間ベッドに寝ていること。ただし被験者はベッドに寝た状態のまま、エアロバイクをこいだり、遠心分離機のようにぐるぐると回転させられたりします。

 

これらの目的は、宇宙空間で人の身体がどう変化するかを観察をするため。宇宙の無重力空間では頭部の血流が地上にいるときよりも多くなり、身体の筋肉があまり使われません。そこで、宇宙空間にできるだけ近づけるため、頭の位置が水平より6度低くなるようにしたベッドに身体を横たえた状態で、ぐるぐる回転したり運動したりする必要があるのです。

 

その一方、別の被験者はエアロバイクなどの運動を一切行わずに、頭側を6度傾けたベッドに横たわったまま身体の変化を観察され、エアロバイクなどの運動を行った場合と比較されるそうです。

 

エアロバイク以外にも、さまざまな運動や医学的検査も行われる予定ですが、もちろん食事やシャワー・トイレ休憩つき。報酬は1万8000ユーロ(約270万円※)ですから、一日あたり4.5万円にもなります。

※1ユーロ=約150円で換算(2023年5月26日現在)

 

この仕事、あなたは“おいしい”と思いますか? それともお断りしますか?

 

【主な参考記事】

The US Sun. SLEEPING ON THE JOB Space experts are paying 12 people £15,000 to lay in BED for 2 months – but it’s not for the faint-hearted. May 24 2023
ESA. Around the bed in 60 days. May 23 2023

米航空会社のパイロットが「働き方」を巡り抗議。航空券代の値上げの可能性も

アメリカ国内の空港では、プラカードを手にしたパイロットが並び、静かな抗議活動を行っています。プラカードに書かれているのは「スケジュールを修正せよ!」「未来のパイロットたちが見ている」などのメッセージ。高給取りで人気の職種といわれるパイロットの間で、いま何が起きているのでしょうか?

↑働き過ぎてもう限界

 

現在、契約交渉を行っているのは、ユナイテッド航空、アメリカン航空、サウスウエスト航空のパイロット。彼らの要求は勤務スケジュールの改善とワークライフバランスです。

 

パイロットをはじめ、客室乗務員などは、仕事のために家を空ける時間がどうしても長くなります。アメリカでは、国内線でも長距離の場合、宿泊を伴う勤務になることもあるでしょう。あるパイロットは、月の半分は家を空け、クリスマスや家族の誕生日といった大切な日も休みを取れなかったと話しています。

 

もちろん航空会社の職員は、一般の人が休みの期間であっても働かなければならないこともあるでしょう。しかし、コロナ禍で大幅に従業員カットが行われた航空業界では、人手不足が深刻化。せっかく自分の勤務時間が終わっても、不足するパイロットをカバーするために、続けて勤務せざるを得ないような場合も多いそうです。あるパイロットの話では、以前なら1日、2日程度の出張で済んでいたのが、いまでは4日、5日と長期で宿泊を伴う勤務スケジュールが増えているとのこと。

 

また、人手不足だけでなく、近年の異常気象による悪天候も勤務スケジュール問題の一因です。天候が悪化すれば、フライトの遅延や欠航にもつながり、従業員の勤務体系がより混乱しやすくなるのです。

 

航空業界に精通するあるアナリストは、今後航空券代が高くなることを予測しています。それは、パイロットや客室乗務員、整備士などの給料が上がると予測されるから。旅行需要が回復するとともに、航空会社は従業員の労働環境を改善する必要があるようです。

 

【主な参考記事】

NPR. The latest workers calling for a better quality of life: airline pilots. May 22 2023

その歌声に全米が感動! ハワイ出身の高校生が人気オーディション番組で優勝

ハワイ出身の有名人といえば、バラク・オバマ元大統領をはじめ、アーティストのブルーノ・マーズ、元力士の曙、小錦など……。そんなハワイ出身の新しいスターとなりそうなのが、弱冠18歳の高校生、イアム・トンギさんです。

↑スター候補となったハワイ出身のイアム・トンギさん

 

イアムさんが脚光を浴びているのは、アメリカの人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』で先日優勝したから。決勝まで勝ち進んだイアムは、ジョージア出身の出場者と決勝で対戦。亡くなったという父親に捧げる曲を披露し、観客の心をぐっとつかんで見事優勝を果たしたのです。

 

18歳とは思えない貫禄のある身体から発せられる、うっとりするような優しく澄んだ歌声。あっという間に会場中がイアムの歌声に引き込まれていました。彼のパフォーマンスを紹介した動画には、「なんて才能の持ち主なんだ!」「とろけそうで、心を打つ歌声だ」「いままでで最高のアイドル誕生!」などと、絶賛するコメントであふれています。

 

一躍ハワイで時の人となったイアムさん。決勝まで進んだ出場者が故郷に戻る「ホームタウンヒーローズ」の撮影のため、地元オアフ島カフクに戻ると、垂れ幕を持った地元住民が道路の両側に並び、イアムさんは熱烈な歓迎を受けていました。

 

今回の成功をきっかけに、イアムさんはプロのアーティストとして活躍することになるかもしれません。彼の将来に全米が注目しています。

 

【主な参考記事】

Hawaii News Now. After a storybook season, Hawaii’s own Iam Tongi wins ‘American Idol’. May 22 2023
KIT. Hawaii welcomes Iam Tongi back home to celebrate him making into the top 3 . May 21 2023

 

コロナ禍明けで高まる旅気分。今こそ知って得する「旅行ハック」とは?

新型コロナウイルスが5類に移行し、各種の規制が緩和され、コロナ前の生活に戻りつつあるいま。そろそろ「控えていた旅行を楽しみたい」と思う方もいるでしょう。そこで、お得で安心な旅行を実現するのに役立つ「旅行ハック」を紹介しましょう。

↑やっぱり得しないとね

 

ビザの緩和や円安の影響で訪日観光客が急増した2022年10月、旅行サイトのエクスペディアが「2023年の旅行節約術」を発表していました。すでにご存知の方もいるかもしれませんが、発表当時の日本はまだコロナ禍にあっただけに、この情報に気が付かなかった人も少なくないかもしれません。

 

この旅行節約術の要点だけを振り返っておくと……

 

  • 日本における国内線は土曜日、国際線は日曜日に予約するべき。国内線を土曜日に予約すると、金曜日に予約する場合に比べて平均で約41%、国際線なら日曜日に予約すると最大で約35%もお得な価格になるそうです。
  • 国内線の航空券を最安値で購入できるのは出発の39日前から。国際線の場合は出発の約10日前に価格が最高値になるとのことで、なるべく早く予約したほうが良いそうです。
  • 融通がきくなら、旅行のスケジュールは「金曜日発」に合わせて計画を立てるのがおすすめ。国内線も国際線も金曜日に出発すると平均で13~15%お得になるとのこと。
  • 欠航は、21時以降に出発するフライトで発生しやすいそう。21時前に出発の便に比べると、約3倍も欠航の確立が高くなります。

 

遅延・欠航、荷物が紛失したら…

一方、最近、米国で話題になっている旅行ハックは、フライトの遅延と欠航、荷物の紛失に関するもの。

 

アメリカ連邦航空局によると、2022年に報告された荷物の紛失は1万5453件。フライトの遅延は1万1000件以上、欠航は約2600件に上っています。これらは確かによくあるトラブルであり、フライトの遅延や欠航が起きた場合、多くの人は「何もできることがない」と思うかもしれません。

 

しかし、そんなときのハックについて紹介しているのが、エリカ・カルバーグ。TikTokで900万人のフォロワーを持つインフルエンサーで、弁護士です。

 

エリカさんは、運輸省と航空会社の約款を見るべきと主張。「運輸省のウェブサイトには、フライトの遅延・欠航の場合にどうすればいいか記載されている」と話しています。例えば、航空会社の都合でフライトが3時間以上遅れた場合、客は食事のほか、夜間なら宿泊場所を提供される権利があるとのこと。

 

また、預けたスーツケースなどが破損した場合は、航空会社が最高3800ドル(約52万6000円※)までその責任を負う可能性があるとのこと。エリカさんは、荷物を預ける前にスーツケースの写真を撮っておき、追跡タグも付けておくのがおすすめと言います。これにより、万が一スーツケースが破損しても、そのことを証明できるうえ、追跡タグで紛失されていないかも確認できるのです。

※1ドル=約138.4円で換算(2023年5月19日現在)

 

2023年の夏こそは「久しぶりに旅行を楽しみたい!」と考えている方は、これらのハックを参考にしてみてはいかがでしょうか?

知る人ぞ知る「コーヒーの意外な飲み方」に米メディアが仰天!

スターバックスで、コーヒーにスプーン1杯のオリーブオイルを加えた新メニューが登場するなど、コーヒーに何かをプラスする飲み方に少しずつ注目が集まっています。そんなアレンジの一つに塩をプラスする方法をご存知ですか?

↑マジでうまい!!

 

最近、アメリカのメディアでも話題になっている「塩コーヒー」。その飲み方は難しくありません。コーヒーを入れたら、そこにひとつまみの塩を加えるだけです。

 

できあがったコーヒーは、苦味が和らぎ、味が少し引き締まるのだそう。それもそのはず、塩には食べ物の苦味を抑える効果があることが、以前より知られているのです。例えば、料理でナスや芽キャベツに塩を振るのは、素材そのものにある苦味を抑える効果を期待する意味があるそうです。

 

1995年に発表された塩に関する論文では、塩に苦味をマスキングする働きがあることが改めて証明されました。塩には、旨味や風味を引き出す働きもあり、甘いものと苦いをものを混ぜて、そこに塩を加えると、甘味と苦味がそれぞれ強く感じられるようなったと言われています。

 

そんな塩を加えたコーヒーは、新しい飲み物ではありません。第二次世界大戦の時代までさかのぼると、当時は海水を真水に処理する装置がまだ不十分だったため、アメリカ海軍の兵士たちは塩気が残る水でコーヒーを飲んでおり、そのときからコーヒーの苦味が和らいでいることに気づいていたと言われています。

 

アメリカ以外に目を向ければ、ベトナムでは塩コーヒーを飲む習慣があり、スウェーデンなどの北極圏では、塩漬けにした肉やチーズをコーヒーに入れて飲む習慣があるなど、世界で塩コーヒーを楽しむ食文化があるのです。

 

筆者もコーヒーに塩を少量加えてみたところ、確かにコーヒーの苦味がまろやかになっているのを感じました。もちろん、コーヒーを飲むたびに塩を加えていると塩分過多になる心配がありますが、コーヒーの苦味が得意でない場合、ミルクの代わりに塩を加えてみたり、コーヒーのお供にチーズやハムなどの塩気の強い食べ物を試してみたりするのも良いかもしれません。

 

【主な参考記事】

Science Alert. People Are Adding Salt to Their Morning Coffee For a Rather Bizarre Reason. May 3 2023

米「ウェンディーズ」がドライブスルーでAIを試験導入。数十億通りの注文をさばけるか?

最近のテック関連の話題といえば、ChatGPTをはじめとしたAI技術。人材不足にあえぐ飲食業界も当然そこに目を向けているでしょう。最近では、米ファストフード店のウェンディーズが、AI搭載型のチャットボットをドライブスルーに試験導入するというニュースが飛び込んできました。

↑AIを試験導入する米・ウェンディーズ

 

ウェンディーズがタッグを組んだのは、Google Cloud。同社の生成AIと大規模言語モデル(Large Language Model〔LLM〕)の技術を使って、「Wendy’s FreshAI 」と名付けられたAIチャットボットが開発されました。オハイオ州コロンバス地区の店舗で6月より試験導入し、ドライブスルーの客に対応していきます。

 

しかし、ウェンディーズでの顧客対応で課題となるのが、メニューの複雑さ。ウェンディーズでは注文をカスタマイズすることが可能なため、AIチャットボットが受ける注文の組み合わせは数十億通りにもなるそう。そのため、誤って認識したり、誤った注文を受けたりすることも考えられます。

 

さらに、客が正しく商品名を言わずに注文することもあるでしょう。例えば、客が「ミルクセーキ」と言ったとき、それはウェンディーズで販売されているミルクシェイクの「Frosty(フロスティ)」のことであると判断できなければなりません。おまけに、周囲から騒音が聞こえるなか、客の声をはっきりと聞き分けることなども求められます。

 

テック企業のIntouch Insightによると、2022年時点でAIチャットボットによる注文の精度は79%だったそう。ウェンディーズは、これを85%まで引き上げたい考えです。

 

他のファストフード店では、マクドナルドもAIチャットボットの導入を発表したほか、ポパイやソニックも試験導入を行っているところ。近未来のファストフード店では、AIの接客が当たり前になるかもしれません。

 

【主な参考記事】

The Guardian. Wendy’s to test AI chatbot that takes your drive-thru order. May 10 2023
Wendy’s News Release. Wendy’s Taps Google Cloud to Revolutionize the Drive-Thru Experience with Articial Intelligence. May 9 2023

豪の森林地帯で5日間行方不明の女性を救出。絶体絶命の状況を救ったのは…

最近、オーストラリアの人里離れた森林地帯で、ある女性が、運転していたクルマが沼にはまって動けなくなり、5日後に救出されたというニュースが報じられました。彼女は健康上の理由で歩くことができないうえ、携帯電話もつながらなかったそう。絶体絶命の中、彼女はどうやって生き延びたのでしょうか?

↑リリアンさんを救出する際の様子

 

この女性の名前はリリアン(48歳)。母親に会うため、ブライトという町からダートマスダムという町に向かいクルマを走らせていました。すると行き止まりにぶつかり、クルマの向きを変えようとしたところ、泥にはまってしまったのです。

 

そこは、ユーカリの木が生い茂る林の中。しかも不運なことに、携帯電話の電波が届かない場所で、彼女は健康上、歩くことが困難でした。しかも、気温が1℃近くまで下がる寒さが追い打ちをかけるように彼女を襲ったのです。

 

リリアンが持っていたのは、母親にプレゼントするつもりだった小さなスナックとキャンディ、そして1本のワイン。クルマの暖房をつけ、それらで彼女は飢えをしのいでいたのです。

 

救出のきっかけとなったのは、家族が警察に相談したから。毎年、家族の誕生日には「ハッピーバースデー」の電話がかかってきたのに、今年は電話がなかったことから、不審に思った家族が警察に通報。ヘリコプターも出動する捜索を展開し、ついに5日後、ヘリコプターに向かって手を大きく振るリリアンを発見。パトカーがかけつけて救出したのです。地元警察が公開した動画では、警察官が近づくと、リリアンは両手を大きく広げ安堵している様子がよくわかります。

 

後からわかったのは、リリアンはお酒を飲まないということ。しかし持っていた1本のワインを飲み干して、この苦難を乗り越えたそうです。

 

もしあなたが、同じような場面に遭遇したら、どうやってその窮地を脱しますか?

 

【主な参考記事】

NPR. How wine and candy helped an Australian woman survive 5 days in the bushland. May 10 2023
Victoria Police. Missing woman Lillian rescued by Air Wing. May 5 2023

4月に38.8℃を記録! スペインが猛暑日の屋外労働を禁止へ

2022年のスペインは同国史上最も暑い年でした。猛暑のために多くの人が亡くなりましたが、2023年はそれをできるだけ防ぐために、スペイン政府は猛暑の日に屋外で労働することを禁止する方針を発表しました。

↑猛暑日では身の安全を優先

 

2022年の夏、ヨーロッパの国々が熱波に見舞われ、軒並み記録的な暑さの日が続きました。スペインの年間を通した1日の平均気温は、これまで13℃から14℃前後だったのに、2022年の平均は15.5℃となり、初めて15℃を上回ったのです。

 

2023年は、昨年と同様の厳しい暑さに見舞われることが懸念されています。すでに4月は史上最高気温を更新。イベリア半島では同月の平均気温が例年より4.7℃も高くなり、4月27日にはスペイン南部のコルドバ空港で38.8℃を記録。同時に、厳しい干ばつも危惧されています。

 

この暑さが市民生活に危険を及ぼすことに危機を感じたスペイン政府は、猛暑日の屋外での労働を禁止する方針を発表。昨年夏には、道路の清掃員を含め、暑さのために4744人の人が亡くなったと報道されています。

 

同国の気象庁(AEMET)が警告を出したら、屋外の作業が禁止されます。対象となるのは、農業従事者、警察、消防士、庭師、清掃員など。この方針はさらなる議論を経て正規に導入されると見られています。

 

日本でも、2022年夏は最高気温が40℃を超える地点があったほか、2023年4月には複数の地点で真夏日を観測。本格的な夏を迎える前に、真夏並みの暑さに見舞われる日も出てくる可能性があり、スペインの話も他人事とは言えないかもしれません。

 

【主な参考記事】

AP NEWS. Spain plans to ban outdoor work in extreme heat. May 11 2023
TIME. Spain and Portugal Experience Hottest April Ever Recorded. May 8 2023
SPAIN in ENGLISH. Confirmed: 2022 was Spain’s hottest year on record. January 5 2023

アメリカも緊急事態宣言終了! 今日から大勢来るのは…

日本では5月8日に新型コロナウイルスが5類に移行しましたが、5月11日にはアメリカでも国家非常事態宣言が解除されました。これに伴い、本日12日よりアメリカに入国する外国人に義務付けられていたワクチン接種証明の提示が不要になります。しかし、そんなアメリカでいま、日本ではあまり考えられないような事態が起きています。

↑アメリカとメキシコの国境が大変なことに

 

新型コロナに関連する入国規制は国によってさまざまですが、アメリカでは2021年11月8日から、アメリカに入国する外国人に対し、ワクチン接種を完了していることを求めていました。しかしホワイトハウスは、新型コロナウイルスの死者は2021年1月以降で95%、入院患者数は91%にそれぞれ減っていることから、国家非常事態宣言を5月11日で解除することを発表。5月12日からは外国人がアメリカに入国する際、ワクチン接種を証明する必要もなくなったのです。

 

これによって影響が出るとみられているのが、海外からの旅行客の増加ではなく、移民の大量流入。バイデン大統領が5月1日に国家非常事態宣言を解除することを発表していたことに加えて、不法移民を即時送還できる「タイトル42」という措置も同時に失効することが明らかにされていました。そのため、アメリカへの移住を希望する人々がアメリカとメキシコの国境付近に押し寄せています。

 

5月3日の現地報道によると、すでに1日で7500人ほどが国境付近に押し寄せており、その数はさらに増加する見込み。バイデン政権は1500人の軍隊をメキシコとの国境に追加で派遣する計画と発表しています。

 

新型コロナの5類移行で社会・経済活動が活性化すると見られている日本。一方、アメリカでは、1年近く前からマスク無しの生活は当たり前。国家非常事態宣言の解除によって現地の人々の生活に大きな変化があるとは考えられませんが、その代わりに移民の急増という古くて新しい問題に対処しなければなりません。

 

【主な参考記事】

CNN. Plans set in motion as Biden administration eyes end of Covid-era border restriction. May 3 2023

SDGsを先取り! チャールズ英国王が半世紀前から陰口を叩かれても地球環境保護を訴えた理由

2015年9月、ニューヨークの国連本部で行われた国連持続可能な開発サミットで制定された17の目標『SDGs』は、「このままでは地球はもたない」あるいは「地球に人類が生きられなくなる」ことを周知させ、世界中の多くの人が意識や暮らしを見直すきっかけとなりました。ところが、そこからはるか半世紀以上も前から地球環境の危機的状況を憂慮し、環境保全のための活動を続けてきた人物がいます。

 

それが、2023年5月6日に戴冠式が迫る、イギリス国王のチャールズ3世です。日本ではあまり知られていないことに筋金入りの環境活動家であるチャールズ国王のサステナブルな姿勢から、学べることとは?

 

半世紀前……当初は孤独な戦いだった

チャールズ国王が地球環境の保全に関心を持ったのは1960年代後半頃だと話すのは、イギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史を専門とする関東学院大学の君塚直隆教授です。

 

「国王がケンブリッジ大学の学生だった20歳の頃には、地球環境についての考えをお持ちでした。国王は夏になると、2022年9月にエリザベス女王が亡くなったスコットランド北部のバルモラル城で過ごし、クリスマスから年初にかけてのホリデーシーズンにはイギリスのノーフォーク州にあるサンドリンガムで過ごしていました。いずれも大自然に囲まれた環境です。こうした場所で幼少期を送られたことが、のちに地球環境の保全について考えるきっかけになっているのではないでしょうか。また、国王のお父様である亡きエディンバラ公も世界自然保護基金の総裁を長年務めていたこともあり、徐々に関心を深めていかれたのではないかと思います」(関東学院大学教授・君塚直隆先生、以下同)

 

英国の皇太子といえば、いずれは世界15か国の英連邦をはじめとする多数の領土に君臨する存在。その影響力をもって地球環境の保全を声高に叫べば、一大ムーブメントになりそうですが……。

 

「SDGsが広まった今でこそ、世界中に賛同者がいますが、55年も前のことです。当時、チャールズ国王が森林破壊や大西洋の汚染、魚の乱獲について訴えても、多くの人びとにとって、それは身近な話題ではありませんでした。彼の環境保全への情熱を、“変わり者”だと揶揄する人は少なくなかったのです」

 

そして、ようやく時代が追いついてきた

↑2015年12月1日、COP21でスピーチするチャールズ皇太子(当時)

 

チャールズ国王は1976年に海軍将校から退役すると、「皇太子財団(The Prince`s Trust)」を設立。経済的に恵まれない青少年のための職業訓練の場を設けました。

 

「皇太子財団設立以降は、子どもたちの絵画教育や青少年の芸術教育、国際的な実業家の育成、医療健康の推進など、さまざまな支援団体を立ち上げました。それらの団体は統轄され、今では年間150億円以上もの事業運営に貢献する、イギリス最大級の事業団体に成長しています。しばらくは皇太子財団の活動に忙しくしていた国王でしたが、1980年代に入って国連が地球温暖化に警鐘を鳴らすようになり、1992年に国連気候変動枠組条約が採択され、地球温暖化対策に世界全体で取り組んでいくことに合意してからは、再び地球環境の保全にコミットしていきました。近年では、国連気候変動枠組条約に基づき毎年開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)に可能な限り参加し、スピーチを行ってきました」

 

チャールズ国王は、皇太子財団のほかに、どのような活動を続けてきたのでしょうか?

 

「気候変動に対する取り組みをする財団をいくつも立ち上げてきました。なかでも主たるものが、熱帯雨林の保全を行う財団です。多くの企業から賛同を得たり、銀行から資金調達をしたりして、各国の首脳に呼びかけてきました。また、思いを同じくするハリソン・フォードやメリル・ストリープ、ロッド・スチュワートなど世界的スターの力も借りてプロモーションのための映像を作るなど、若い人たちに関心を持ってもらうための活動を続けました。さらに、熱帯雨林の減少を食い止めるには熱帯雨林が分布する中南米やアフリカ、南太平洋など途上国への支援が欠かせないとし、それらの国々の貧困の克服と自立をサポートする重要性についても言及しました」

 

SDGsが誕生し、「サステナブル」という言葉がようやく定着した今、チャールズ国王には先見の明があったことが立証されたわけです。

 

「今では世界中の首脳たちが、チャールズ国王が環境問題のエキスパートであることを認識しています。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんも、チャールズ国王には畏敬の念を抱いています」

 

まるで桃源郷!?
国王の庭「ハイグローヴ・ガーデン」

チャールズ国王による地球環境保全のための活動は、自身の暮らしにも根付いています。チャールズ国王が有機農法による植物の栽培や動物の飼育を行うハイグローヴは、生物多様性が息づき、持続可能性が確保された場所となっています。

 

「ハイグローヴはイギリスの南西部、グロースター州にあり、チャールズ国王が若い頃に友人から買い取ったお屋敷と庭を整備・拡張し、広大な庭園と農場にしました。ハイグローヴでは、化学肥料や殺虫剤、除草剤には頼らず、有機農法に基づく農業を行い、有機農法による安全な餌を食べる鶏や牛、豚などを飼育しています。また、邸内の電気には再生可能エネルギーや太陽光パネルを用いています。邸宅やレストランなどの暖房設備は敷地内で採れる薪を使っていますし、農場やトイレ用の水は、雨水を使っています。そしてゴミになるような木材や金属は一切使いません。環境負荷がなく、できるだけ自然に近い状態であることを大切にしているのです」

 

このハイグローヴには、レストランや売店があるそう。

 

「売店では、農場に放し飼いにされている鶏が産んだ新鮮で安全な卵をはじめ、野菜や果物、肉類、ハーブティーなどが売られています。そして、こうした販売収益もまた、国王の慈善団体に寄付されています」

 

英国王室による十人十色のSDGs

チャールズ国王の精神。家族でもある英国王室に、どのように受け継がれているのでしょうか?

 

「国王の精神を直接的に受け継いでいるのはウィリアム皇太子でしょう。祖父であるエディンバラ公の影響もあると思いますが、動物の保護活動に力を入れています。アフリカ野生動物保護組織タスク・トラストのパトロンを務め、10年以上にわたり、野生動物の違法取引や密猟への対策を訴えてきました。また、地球の危機的状況の解決に向けて、革新的な開発をした団体を称え、その活動を支えるためのアースショット賞の設立も、非常に有意義な活動です。一方、弟のハリー王子は、負傷兵のためのパラリンピックとも言える『インビクタス・ゲーム』を創立し、退役兵士らの支援をしてきました」

 

ウィリアム皇太子の妻、キャサリン妃は、ドレスからアクセサリーにいたるまで、以前着用したことのある服を公式行事で何度も着回していることが環境に配慮していると話題になりました。

 

「モノを大切に使うことは、英国王室では伝統的に行われてきました。エリザベス女王もそうしてきました。でもやはり、一番有名なのはチャールズ国王ですね。ジャケットは継ぎ接ぎしながら、靴も修理しながら、何十年も愛用します。こうした庶民的な感覚が、21世紀の今日においても、君主制がしっかりと続いているゆえんなのではないでしょうか?」

 

チャールズ国王の“ノブレス・オブリージュ”

チャールズ国王の地球環境保全への情熱は、どこから湧き出るものなのでしょうか?

 

「1つ目に、根底に“ノブレス・オブリージュ(Noblesse oblige)”という、高貴な身分の人には果たさなければならない義務と社会的責任があるという、欧米社会における基本的な精神がしっかりと根付いていることがあると思います。チャールズ国王はイギリスを含め15の国家からなる英連邦の国家元首でもあります。チャールズ国王は、国民の幸福のためにも、このままではもたなくなっている地球をなんとしてでも救わねばならない、行動しなければならない……このことを、ひたすらに体現しているのです」

 

SDGsの17の目標の中には、2030年の目標期限までに達成できないものもすでにあると言われています。チャールズ国王はどんな思いでおられるのでしょうか?

 

「何とかしたいと思っているでしょうね。イギリス帝国時代の旧領土である56の加盟国からなるコモンウェルスは、陸地面積でいうと世界の20%、人口でいえば世界の30%を占める共同体です。コモンウェルスの人びとがまず率先して行えば、コモンウェルス以外の国々も賛同してくれるだろうと、一歩ずつやっていけば地球環境問題も大きく変えられるだろうと感じているのではないでしょうか。チャールズ国王は、50年前は孤独だったわけですからね。誰も賛同する人がいない歴史があったからこそ、望みは捨てていないと思います」

「チャールズ国王が地球環境問題について孤独に戦っていた時代と比べて、現代は情報も賛同者も容易に得ることができます。そういった機会を活用しながら、人類のために、地球のために何ができるかを考えていけば、私たちは精神的な王侯貴族になれるはずです」。君塚先生は、最後にこのようなメッセージをくださいました。

 

「自分たちさえよければいい」では、もはや未来の地球は立ち行かない状態だからこそ、「全人類の幸福」という視点を持つことが、いま強く求められています。

 

プロフィール

関東学院大学国際文化学部教授 / 君塚直隆

1967年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。イギリス政治外交史、ヨーロッパ国際政治史が専門。1993年からオックスフォード大学に留学。上智大学文学研究科博士課程を修了。『立憲君主制の現在』(新潮選書)、『悪党たちの大英帝国』(新潮選書)、『エリザベス女王』(中公新書)、『王室外交物語』(光文社新書)、『イギリスの歴史』(河出書房新社)、『貴族とは何か』(新潮選書)ほか著書多数。


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

フードロス問題へ一石を投じるOisixとチョーヤ梅酒とのコラボ商品とは!?

廃棄物や副産物などに新たな付加価値を付け、商品として販売するアップサイクル。これまでアパレル関係などで注目されてきましたが、食品業界でもその動きが活発になっています。食品のサブスクリプションサービスを展開するオイシックス・ラ・大地株式会社は、チョーヤ梅酒株式会社とのコラボで、商品化されなかった梅酒の梅果実をドライフルーツに生まれ変わらせました。

 

食に関する社会課題をビジネスの力で解決

まだ食べられるのに捨てられてしまう食品、いわゆる「フードロス」の量は、令和2年度で年間522トン。うち53%の275トンが事業系フードロスです(農林水産省・環境省推計)。この課題に対して、「“これからの食卓、これからの畑”という企業理念を明示し、食に関する社会課題をビジネスの力で解決することに取り組んできました」と話すのは、オイシックス・ラ・大地の三輪千晴さん。同社は2020年11月に「グリーンシフト施策」を定め、食に関わる社会課題に向き合っています。

 

「そもそも当社のビジネスモデルは、お客様からの注文を受けてから商品をお届けするサブスクリプションのため、一般的な小売業と比較してもフードロスは少なく、食品廃棄率は約0.2%です。主力商品のミールキット『Kit Oisix』も、使用分だけ食材をカットしてお客様にお届けしているので、ご家庭でのフードロス削減にもつながっています。また、コロナ禍で学校が休校になった時、給食の停止にともない余剰となった牛乳が問題視されましたが、その際は、キャンペーンを組むなど生産者支援に積極的に取り組みました。こうした土壌がある中で、社会やお客様のサステナビリティへの意識の高まりを受け、経営戦略に落とし込んだのが『グリーンシフト施策』です」

↑オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 グリーン戦略室 Upcycle by Oisix ブランドマネージャー 三輪千晴さん

 

「本施策は、農業生産でのグリーン化の推進、配送車のグリーンエネルギー実証実験の開始、商品パッケージのさらなるグリーン化、フードロス削減の取り組みの強化、そしてフードロスを価値に変えるという5本柱から成り立っています。その中でとくに力を入れているのがフードロス削減です」

 

フードロス解決型ブランド「Upcycle by Oisix」を展開

同社が注力しているというフードロス削減。その一環として、これまで製造過程で廃棄されてきた原料をアップサイクル商品として販売する、フードロス解決型ブランド「Upcycle by Oisix」を、2021年7月に立ち上げました。例えば、冷凍ブロッコリーのカット工場で出る茎を活用した商品「ここもおいしく ブロッコリーの茎チップス」や、大根の漬物工場で廃棄されていた大根の皮を使用した商品「ここもおいしく だいこんの皮チップス」など、畑や加工工場から出た廃棄食材を活用し、アップサイクル商品を開発、販売しています。

↑アップサイクル商品を展開する「Upcycle by Oisix」。ネット販売のほか、ナチュラルローソンなど一部店舗でも販売している

 

「やむを得ず出てしまう未活用の食材を目の当たりにし、フードロスは自社だけでなく、食品業界全体の社会課題だと強く認識していました。フードロス削減のためには、産地や加工メーカーの方たちと手を取り合いながら新しい商品を生む必要があり、強いてはそれがお客様の意識変容にもつながると考えたのです。そこで、環境負荷が低く、新しい価値を加えたアップサイクル商品事業をスタートしました。立ち上げ時は、当社と取り引きのある方たちと展開していたのですが、食のアップサイクルの世界観を広げられることへの期待感と、お客様へ与えるインパクトを考え、今年の1月、チョーヤ梅酒様と共同開発し、アップサイクル商品『梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ』を開発したのです」

↑チョーヤ梅酒との共同開発による商品「梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ」。香料、酸味料未使用で、梅本来の味を楽しめる

 

「チョーヤ梅酒様は、梅酒に漬けた梅を製品に入れたり、実だけを販売をしていますが、製品化できなかった余剰の梅は、家畜の飼料や農業の肥料として使用していました。その余剰の梅を当社が買い取り、梅の産地で生産者が自らドライフルーツに加工することを提案。今回、他社との協業ははじめてでしたが、事業化することで、産地での新たな雇用の創出と、フードロス削減を同時に叶えることができました」

 

廃棄食材だからこその商品化の難しさも

本来は食品として使用し(でき)ないものも多いため、商品化には苦労も多いそうです。

 

「共同開発する企業様の協力は不可欠です。例えば、これまでは廃棄物なので衛生面を気にする必要はありませんでしたが、食材となると話は別。衛生面をケアした上で輸送していただかなければなりません。また今回の場合、梅の実に染み込んでいるアルコールをどう飛ばすか、種をどうやって取るか、どんな加工を施せば美味しい商品になるのか、乾燥させるための温度や時間をどうするかなど、いろいろ試しながら商品化しています。その間、チョーヤ梅酒様にもサポートいただきました。『梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ』に限らずアップサイクル商品は、廃棄されていた食材を活用するため、味や食感の面など、通常の食材を加工するよりも難しさがあります。食材ごとに課題があり、それを1つずつ解決しながら、どうすれば美味しくなるか、企画開発しているのです」

 

2月には早くも共同開発第2弾として、飲食チェーン「PRONTO」を展開する株式会社プロントコーポレーションとコラボレーション。「PRONTO」の店舗で出る抽出後のコーヒー豆かす(コーヒーグラウンズ)を活用し、「コーヒーから生まれた 黒糖あられ」「コーヒーから生まれた チョコあられ」を販売しました。

↑「コーヒーから生まれた 黒糖あられ」(左)と、「コーヒーから生まれた チョコあられ」。コーヒーグラウンズには食物繊維が含まれていて、健康志向の人にも好評だとか

 

「アップサイクル商品は、未活用食材が原料ということで、お客様に受け入れられるかどうか、正直、不安もありました。しかし、『梅酒から生まれた しっとりドライフルーツ』にしても、『コーヒーから生まれた チョコあられ』にしても、お客様に味を評価され、反響も上々。通常の商品と比べて全ての面で遜色なく、それどころか“地球に優しい”“サステナブル”というプラスアルファの要素があるため、リピーターも増えています。

 

確かに、当社の商品を食べることで削減できるフードロスの量は大したことないかもしれません。ですが、アップサイクル商品の存在を知ったり、食べたりすることで、普段の生活でもなるべくフードロスを出さなくするなど、お客様の意識の変化こそが重要だと考えます。アンケートを見ても、お客様の意識の高まりを実感できますし、それだけでも意義のある取り組みだと思います」

 

80トンのフードロス削減を達成

現在、「Upcycle by Oisix」で誰でもご購入できるようにオンライン販売しているのは12~13商品ですが、2021年7月の立ち上げからこれまでに66商品が開発されました(2023年3月末現在)。それにより、約80トンのフードロス削減を達成したそうです。

 

「次の協業はまだ検討中ですが、多くの企業や自治体から、相談や問い合わせが来ています。今後も、自社だけでなく、製造業や小売業とのコラボにより、新しい食の楽しみや、気付きを与えられる商品を展開していく予定です。その際は、例えばチョーヤ梅酒様なら梅酒、プロント様ならコーヒーというように、協業先企業様の強みと当社の商品開発力・販売発信力を活かしてこそ、協業する意味があると考えています。強みをどう活かすかという難しさはありますが、この輪を広げ、少しでも社会課題解決につなげたい――。そしてお客様についても、アップサイクルという言葉が珍しくない世界を作っていきたいです」

 

見栄えや食感の悪さなどの理由で捨てられていた食材に、新たな価値を加えたアップサイクル商品。同社の取り組みは、フードロスへの意識変容のきっかけになることはもちろん、次にどんな商品が登場するのか、そんな楽しみも感じさせてくれます。

 

永遠の命に一歩近づく! 独の科学者が「老化を遅らせる」ことに大成功

どんなに科学や医学が発展しても、そう簡単にかなわないのが人間の老化を遅らせること。しかし最近、ドイツの科学者が、動物や人間の血液サンプルを使った実験で、老化のスピードを遅らせることに成功したのです。

↑老化をストップ!

 

独・ケルン大学の研究チームは、10年前に始めた老化に関する研究の中で、遺伝子の転写と呼ばれる工程が、年齢とともに速くなっていくことを突き止めました。たんぱく質は、DNAに書かれた情報がメッセンジャーRNA(mRNA)というものに写し取られ、mRNAの情報を基に作られます。このとき、DNAの情報をmRNAに写し取る工程を「転写」と言い、転写のスピードが年齢を重ねると速くなるだけでなく、エラーも起こりやすくなり、これが人間の「老化」につながっていると論じているのです。

 

また、転写の工程に関わっているのが「RNAポリメラーゼII」と呼ばれる酵素で、どうやらこれが転写のスピードやエラーに関連するようなのです。

 

そこで、RNAポリメラーゼIIの速度を遅くさせるように変異させたミバエとミミズを用意したところ、これらの寿命は、変異しないものに比べて10~20%も長くなったとのこと。さらに、ミミズについては変異を元に戻すと、寿命が短くなり、RNAポリメラーゼIIの変異が寿命に関連することが確認されました。

 

これと同じことを、人間の若い人と高齢者の血液サンプルを使って行ったところ、まったく同じ結果となったのです。つまり、遺伝子の転写の工程が老化に関わっていて、それは人間だけでなく他の生き物にも当てはまると考えられるのです。

 

また、低カロリーの食事を与えたミミズ、マウス、ミバエでは、RNAポリメラーゼIIの速度が遅くなり、転写のエラーが少なることも同チームの研究で明らかになっており、健康的な食事やカロリーを抑えた食事によって転写のクオリティを上げることが可能とされています。これは長期的に老化を抑えることにつながるのかもしれません。

 

「大発見」とされる今回の研究。老化を乗り越えたい人間の飽くなき挑戦は続きます。

 

【主な参考記事】

Euronews Next. German scientists make a ‘major discovery’ that could slow down the ageing process. April 24 2023

まだまだだね。「ChatGPT」が人間を超えられない意外な職業とは?

最近、毎日のように話題になっているChatGPT。その高い能力から、「自分の仕事がAIに奪われるのでは……」と不安にかられる人もいるでしょう。しかし、ChatGPTでも敵わない人間の仕事が存在します。アメリカの研究で「ChatGPTより人間のほうが上」とされた仕事は何でしょうか?

↑まだまだだね(いまのところ)

 

ブリガムヤング大学の研究によると、人間がChatGPTより優れているとされた仕事の分野は会計学。14か国186の教育機関から327人が関わり、25,181問の会計学の試験問題を作成し、会計学を学ぶ学生とChatGPTにそれらを出題し、どのくらい解けるかを確認しました。

 

すると、学生の平均の正解率は76.7%だったのに対して、ChatGPTは47.4%という結果になったのです。ChatGPTが学生より高い正解率を出した問題は、全体の11.3%。会計情報システムと監査の問題で良い成績を残したそうです。

 

一方、学生が強かったのは財務や税務、経営などの問題。これらには専門的な数学の処理が必要で、ChatGPTはその部分が苦手だったようです。

 

意外なことに、ChatGPTは引き算の中で数字2つを足したり、割り算を間違えたりといったミスをしており、どうやら自分が計算を行っていることを認識していないケースもあった模様。

 

また、ChatGPTは正誤を問う問題では68.7%、選択式の問題では59.5%と高い正解率を出したものの、記述式の問題では苦戦していたこともわかりました。

 

税金のような法律のことから、多岐にわたる知識を網羅しなければならない会計学。この分野では、まだ人間のほうがChatGPTより一枚上手のようですが、ChatGPTが現在の弱点を克服して、すぐ人間に追いつくことも考えられます。

 

【主な参考記事】

Euronews Next. Study shows this job is safe from AIs like ChatGPT – for now. April 24 2023

米で夫が妻に銃をプレゼント。「自分から身を守ってくれ」という笑えない話

万が一の事態には、銃の引き金を引いてでも自分や家族の身を守らなければならないアメリカ社会。銃を購入する人の多くが、「家族のために」「自分のために」という理由を挙げます。しかし、自分自身が万が一おかしくなって妻を攻撃したときに備えて、夫自らが妻に銃を渡したという人物が現れました。

↑こんなプレゼントはハリウッド映画でも見たことがない

 

「銃があれば、自分の命を救うことになるかもしれない」。銃を使った事件が起きるたびに、「銃を巡る規制をもっと厳しくすべき」という声が大きくなる一方、逆に「もっと銃を」と考えるアメリカ人は少なくありません。2021年のギャラップの調査によれば、同国では成人の31%が銃を所有しており、全世帯の44%がこの武器を持っているとのこと。そして、銃を所有している人の88%が、その理由について「犯罪から守るため」と答えています。

 

しかし、つい先日、妻用に銃を購入したというヴィンセント・グリア(男性)の理由は意外なものでした。それは妻に、夫である自分から身を守ってほしいから。

 

ヴィンセントは、「不安に感じるのはわかるが、世界には私を含めて、あらゆる種類のおかしい人間がいる」と、米メディアに答えています。「もし私が夜遅くまで仕事して、帰宅するときにひどく機嫌が悪く、妻に八つ当たりしたらどうする? 妻を殺すことになって刑務所に入ったら、自分自身を絶対に許すことはできない」

 

彼は妻に、プレゼントした銃を寝室のクローゼットに保管することを約束させ、自分よりも妻が先に銃に手をのばせるようにと思っているそうです。

 

この記事を紹介したTwitterの投稿には、「えーと、彼は間違ってはいないが…」「とても革新的だ」「もちろん妻にはピンク色の銃をあげたんだよね」など、さまざまなコメントが寄せられています。理解に苦しむ人や半分冗談のように受け取っている人など、アメリカ人の中でも今回の出来事に戸惑っている人も少なくないようです。

 

銃にまつわる事件が起きるたびに、日本人からすると「なぜ銃が必要なの?」と思う人もいるでしょう。しかしアメリカでは、日本人の想像を超える世界と考え方があるようです。

 

【主な参考記事】

The Onion. Wife Gun In Case She Ever Needs To Protect Herself From Man Buys Him. April 24 2023
Gallup. Gun Owners Increasingly Cite Crime as Reason for Ownership. November 17 2021

Google、巨大キャンパスの建設を保留。大規模な解雇や在宅勤務により「オフィスが要らなくなっている」ため

米Googleは米カリフォルニア州サンノゼ市に巨大なキャンパス(社屋)を建設する「ダウンタウン・ウェスト」計画を進めてきましたが、景気減速のため、保留になる可能性があると報じられています。

↑Google

 

米CNBCの情報筋によると、Googleは最初の解体段階(都市再開発のため、元の建築物の解体が必要)を終えた段階で、施設の建設を中止したそうです。同社は今年初めに約1万2000人の解雇を発表していましたが、その一環としてキャンパス開発チームも「解体」し、いつ再開するのか請負業者にも知らせないまま、建設を凍結したそうです。

 

Google広報は米Engadgetに声明を出し、オフィスの建設にビジネスやハイブリッドワーカー、地域社会の「将来のニーズ」を反映させたいと述べています。またサンノゼ社屋の建設を「どのように進めるのが最善か」をまだ決めていないものの、長期的な開発に「コミット」しているとも付け加えられています。

 

このサンノゼ市は、巨大IT企業が集まるシリコンバレーの端に位置する都市です。Googleは現地との交渉と設計に数年をかけており、1万5000戸もの住宅や2億ドルのコミュニティ支援(移転した企業への補助金など)、キャンパスの半分以上を公共の用途に充てるなどを約束して、2021年に認可を獲得しました。

 

もともと建設は今年後半から本格的に始まり、10年~30年かかるとの予想でした。有名な企業が移転したり名所がなくなることに反対する声もありましたが、サンノゼ市としては経済効果を重視しており、ギャビン・ニューサム知事は、この認可が新型コロナ禍からの回復に大きな役割を果たすとアピールしていました。

 

2017年以降Googleは従業員を約20%を増やしていましたが、最近は上述のように大規模なリストラを断行しています。それと合わせて、従業員が一部の時間を在宅勤務にできるハイブリッドワーク戦略を採用しているため、以前ほど物理的なオフィスは必要なくなっているわけです。

 

もちろんダウンタウン・ウェスト計画が消滅したわけではありませんが、Googleがやって来ることで雇用や経済活動をもたらすと期待していたサンノゼ市やカリフォルニア州は困った状態に置かれることになりそうです。

 

Source:CNBC
via:Engadget

イーロン・マスクの仕業? オーロラに謎のうず巻き模様が出現!!

緑、赤、紫など、空がさまざまな色にゆらめく神秘的な現象のオーロラ。しかし、その中に薄い水色のうず巻き模様が出現し、世界を驚かせています。このうず巻きの正体は一体何なのでしょうか?

アラスカのオーロラに謎のうず巻きが出現
↑摩訶不思議なこの現象の正体は!?

 

オーロラがゆらめくアラスカの空に4月15日、薄い水色のうず巻き模様が数分間現れたことが確認されました。YouTubeなどでシェアされているタイムラプスの動画によると、うず巻きは徐々に大きくなりながら移動して、やがて消えていったことがわかります。

 

「未確認物体⁉」と驚くような不思議な現象。この正体は、アメリカの宇宙開発企業・スペースXのロケットだったそうです。

 

このうず巻きが現れたおよそ3時間前、イーロン・マスクが率いるスペースXはカリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地でロケットを打ち上げていました。そのロケットから余分な燃料が排出され、それが高い高度で氷に変わり、地上から雲のように見えたとされています。

 

同様のうず巻きは、1月にハワイの上空でも確認されています。日本の国立天文台すばる望遠鏡もあるハワイ島の上空で、同じような水色のうず巻きが出現し、人々を驚かせました。このときも、スペースXのロケットが原因だったと見られています。

 

観察している人の度肝を抜くようなこのうず巻き。思わず目を奪われる不思議な光景ですが、自然の神秘が乱されている気がしないでもありません。今後、ロケットの打ち上げ回数を増やしていくと発表しているスペースX。もしかしたら、このうず巻き模様が空に頻繁に現れるようになるのかもしれません。

 

【主な参考記事】

AP News. Rocket science: Alaska sky spiral caused by SpaceX fuel dump. April 18 2023

英マラソン大会で3位の選手が失格! データ分析で「クルマに乗った」ことが発覚

キツい長距離マラソンをしている中、さっそうと駆け抜けるクルマを見て、「乗せてくれ」と頼みたくなる気持ちは、きっと誰でもわかるはず。フルマラソンより長い長距離の大会ならなおさらかもしれませんが、当然ファウルです。しかし、それを本当にやってしまった選手がイギリスに現れました。

↑レース中にクルマに乗るなんて…

 

4月7日にイギリスで行われた「GBウルトラス」。この大会はマンチェスターからリバプールまで、フルマラソンの2倍弱にあたる50マイル(約80㎞)の長距離のタイムを競い合う過酷なレースですが、そこで3位に入賞したJoasia Zakrzewski(ジョアシア・ザクシェフスキ)選手が失格となったのです。

 

ボルトを超えた!?

その理由は、途中の一部区間でクルマに乗ったから。選手の走りを追跡するシステムのデータや、GPSのデータを集めたGPXデータなどを検証した結果、一部の区間について、1マイル(1.6㎞)を1分40秒で通過したことがわかったのです。これは時速57.6㎞に相当する速さ。人類史上最速とされる陸上男子100mのウサイン・ボルト選手ですら、トップスピードは時速38㎞と言われますから、時速50㎞超えは人間では考えられないスピードです。さらに、別のランナーや本人などの証言から、彼女は2.5マイル(約4㎞)の区間をクルマで移動していたと判断され、失格となったのです。

 

この出来事はテクノロジーのお手柄とも見れるでしょう。今回のマラソン選手の失格も、追跡システムなどのデータが証拠の一つとなりました。近年さまざまなスポーツでトラッキングシステムやビデオ判定といったテクノロジーが導入されており、興醒めするときがなくはないものの、審判が試合を止めてビデオを確認する光景は当たり前になりつつあります。マラソンでも選手たちは常に見られており、不正行為はバレるのです。

 

ザクシェフスキ選手によると、レース中に足を痛め、たまたまコース脇に友人を見つけたので、次のチェックポイントまでクルマに乗せてもらったそう。その後ランを続け、3位でゴールするとトロフィーとメダルが手渡され、それを受け取ったといいます。

 

失格となった彼女の代わりに、繰り上げで3位になったMel Sykes(メル・サイクス)はTwitterで「私にとっては素晴らしいこと。でも、スポーツマンシップにとっては本当に悪いニュース」と投稿しています。

 

【主な参考記事】

The New York Times. A 50-Mile Race, a Quick Car Ride and a Scandal at the Finish Line. April 19 2023

Metro. Ultra-marathon runner disqualified from race for using a car. April 19 2023

賞味期限間近の13万個のチョコバー。在庫処分を覚悟したカナダ人の大どんでん返し

チョコレートに賞味期限を定める法規制がないカナダで、13万個ものチョコバーを処分しなければならない状況に陥り、途方に暮れたあるカナダ人女性が、ひょんなことから甘い結末を迎えた話が話題になっています。

↑チョコバーの在庫を大量に抱えた彼女にどんでん返しが待っていた

 

この人の名前は、Regehr Westergard(レゲール・ウェスターガード)。理学療法士として働く彼女は、昔ながらのお菓子を専門とするスイーツショップ「カナディアン・キャンディ・ノスタルジア」を2018年に立ち上げました。そして2年前、1980年代に流行り現在では販売されていないチョコバー「ラム&バター」を復活させ、100万本近くを売り上げていました。

 

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、製造ラインがスケジュール通りには進まなかったのか、2022年6月に、発注していたチョコバーが一度に33万3000本も製造されて納品されたのです。

 

カナダではチョコレートの賞味期限を定める法規制はないものの、スーパーなどの食料品店では賞味期限が考慮されています。そのため、製造から1年を迎える2023年6月には、倉庫に保管されている13万3000本、約5540箱ものチョコバーをなんとか処分しなければならない事態となったのです。

 

カルガリーのフードバンクでは、お菓子の寄付は禁止されているし、近所の人に配るといっても1000ポンド(約450㎏)ごとにまとめて保管されているため、それも容易ではありません。

 

期限が切れたら処分することも覚悟したという彼女ですが、SNS上で助けを求めたところ、地元紙「Globe and Mail」の記者の目に留まり記事になったのです。すると、その記事を読んだ人から、「ぜひチョコバーを分けてほしい」という声が殺到。

 

その結果、ウクライナの難民を支援する教会や、住居がない人のための施設、消防署などの慈善団体に全てのチョコバーを寄付することができたとのこと。また、普段ならお菓子の寄付は受け付けていないものの、地元のフードバンクは今回のチョコバーを引き取ることを申し出たといいます。

 

いまでも「まだチョコバーはある?」という問い合わせを受けているというウェスターガードさん。インターネットの力で食事に困っている人の手にわたったことから、きっとこの結末に満足して喜んでいるのではないでしょうか?

 

【主な参考記事】

BBC. How one Canadian woman got rid of 133,000 chocolate bars. April 19 2023

洗練された「物を持たないスタイル」。キャッシュレスに使える「スマートリング」が英で大人気

財布を持たない人も増えているキャッシュレス大国の英国で昨今、スマートリングがじわじわとユーザーを増やしています。スタイリッシュな指輪をリーダー端末にかざすだけで、迅速に非接触で決済することができるこのデバイスは、近年日本でも注目されるようになりましたが、英国ではどのように見られているのでしょうか? 現地からレポートします。

↑英国でユーザーを増やすスマートリングのリングペイ

 

手軽、安心、エレガント

英国のマクレア社が開発した非接触型決済スマートリングの「RingPay(リングペイ)」。「物を持たずに豊かな暮らしをするためには、どうすれば良いのか?」をコンセプトに開発されました。

 

その背景には英国のキャッシュレス化があります。同国のキャッシュレス決済比率は2020年時点で約64%と世界4位です。コロナ禍をきっかけに、デビットカードやスマホを使った非接触型決済への移行が加速。現在では支払いのほとんどがキャッシュレスというデータもあり、普及率は日本の3倍近くと言われています。

 

ロンドンなど都市部に暮らす若い世代は財布を持たず、スマホとカード一枚で外出する人も多数存在。ほとんどのレストランやショップ、交通機関はキャッシュレスに対応しているため、手持ちの現金がなくて困るというケースはほぼありません。コンビニやカフェでは「現金NG」の店舗も増えており、完全キャッシュレス化による集計作業自動化や人件費削減を目指しています。街角のストリートミュージシャンや大道芸人さえも現金置き場と一緒にカード決済末端を並べて対応するなど、「投げ銭」でさえデジタルで行われるようになっています。

 

このように、現金や財布を持たないことが当たり前になった国で生まれたRingPayは、当初ドアロックキーや自動車キーとして開発されたものの、次第によりニーズの高いキャッシュレス決済リングへと進化していきました。Bluetoothでスマートフォンと接続し、連動するアプリで支出を確認することが可能なこのデバイスは、クレジットカードやデビットカードと同様に英国のほぼ全ての店舗や交通機関で利用することができます。

 

リングペイは幅広い層に人気ですが、なかでもフィンテックや最新ガジェットへの関心が高い都市部のビジネスパーソンの間で好評。そのメリットとしては、カードやスマホと異なり、リーダー端末に手をかざすだけで決済することができることや、スマートウォッチと比べて軽いことが挙げられます。防水設計なので入浴やシャワー、プールでも使用可能なうえ、医療現場で採用されているジルコニアセラミック製のため金属アレルギーの人も着用できます。

 

リーダー端末からの電波に反応するワイヤレス充電技術を利用しているため、自宅での充電は不要。常に身に着けておけるので、紛失や盗難、個人情報漏洩などの心配もありません。万が一紛失しても、アプリからワンタッチで利用を停止することができます。

 

このような機能性やセキュリティ性能に加え、カジュアルなデザインが多いスマートウォッチより一層洗練された印象を与えられることなどが、都会のビジネスパーソンたちを中心に支持されている理由のようです。スマートリングは2016年のリオ五輪開催中にTeam Visaのアスリートが利用したことで話題となり、その後も世界的有名イベントで展示されるなど、英国をはじめ各国でファンを増やしてきました。2022年には、決済テクノロジー分野で世界的に優れた企業を表彰するイベントのペイテック・アワードで「ベストイノベーション」を受賞しています。

 

物を所有しない生き方の象徴

↑「物を持たない」印?

 

リングペイはキャッシュレスの道具の一つですが、もう少し視野を広げると、スマートリングはヘルスケア分野にも応用されています。例えば、フィンランドのŌURA社の「Oura Ring(オーラリング)」は、睡眠、心拍、歩数などをセンサーで常に計測・分析し、健康管理のサポートに特化しています。継続使用することで分析能力が向上し、よりパーソナライズした健康状態の把握と改善に役立つそうで、スマートウォッチに続く次世代ウェアラブルとして注目が高まっています。

 

携帯電話が時代とともに多機能デバイスとして発展していったように、スマートリングも新たな多機能デバイスとして進化を遂げています。物を持たず、身軽に暮らすライフスタイルが先進国で浸透していく中、リングペイはその象徴になったようにも見えます。その優れたデザインで、リングペイは英国をさらにキャッシュレス化させるかもしれません。

 

執筆/ネモ・ロバーツ

二酸化炭素を魚の餌に変える! 気候変動を抑える「海洋湧昇技術」とは?

気候変動や漁業の乱獲といったグローバルな課題を解決するために、現在「海洋ベースのソリューション」が世界中で研究されています。その一つが、波のエネルギーを使って魚の成長を促進させると同時に大気中の二酸化炭素(CO2)を回収することができる、オーシャンベイスド・クライメートソリューション社(OBCS)の「海洋湧昇技術」。一体どのような物なのでしょうか? この開発を支援するダッソー・システムズのジャン・パウロ・バッシ副社長が、テクノロジー系イベントの3DEXPERIENCE World 2023で説明しました。

↑二酸化炭素と魚を管理する仕組みが海に導入されつつある

 

海洋湧昇技術とは

海洋湧昇(ゆうしょう)とは、200~1000メートルの深海域にある下層の海水が海面近くまで湧き上がってくる現象のこと。「海洋湧昇技術」とは機械を用いて、波のエネルギーを使って深海域の海水を太陽に照らされた海面近くまで運ぶ技術を指します。

 

「海洋湧昇技術の大きな特徴は、ソーラーパネルなどの太陽エネルギーと波の力が原動力だということです。機械を海面に降ろすと、流れに合わせて自由に漂流します。400メートルの長さのチューブを海に入れますが、耐久性の観点から多くの動くパーツを最低限に抑えるなど、故障しやすい要因をできるだけ排除。パーツのデザイン時においても、メンテナンスしやすいように工夫が施されています」とバッシ氏は言います。

 

この技術は大気からのCO2回収もリアルタイムに測定可能で、衛星を介して継続的に海を観察することもできるそう。さらに、カーボンフットプリントも計測できるなど、サステナビリティを強く意識した仕組みになっています。

 

海洋湧昇技術は、より多くの魚の成長を可能にし、気候変動の抑制にも役立つという2つのメリットがあります。

 

「深海域にある冷たくて栄養豊富な海水を波の力を利用してポンプで海面に引き上げ、栄養塩や鉄など海水に含まれる栄養素を、太陽光と空気中のCO2の光合成によって魚の餌となる植物性プランクトンへと変換。実際、この技術によって植物性プランクトンの数を24時間ごとに2倍にすることに成功しました。

 

植物性プランクトンは動物性プランクトンの餌になり、動物性プランクトンは小魚などの餌となります。そして、小魚は大型の魚に捕食されるなど、海洋生物の食物連鎖が働いて、さまざまな魚の成長を促進させます。

 

また、海洋生物の餌を増やすと同時に、植物性プランクトンがCO2の吸収源として機能。光合成の働きによって大気中のCO2を回収してくれるため、地上のCO2量を減らすことができます。これを『生物ポンプ』と表現しますが、海洋湧昇技術は地球温暖化の進行を食い止めてくれるサステナビリティにつながる重要な役割も果たしているのです」とバッシ氏は述べます。

 

「気候変動の鍵は海にある」

↑海洋湧昇技術は海面に降ろすと波の流れで自由に漂流(画像提供/オーシャンベイスド・クライメートソリューション社の公式サイト)

 

この海洋湧昇技術を用いた事業は2005年に開始されており、米国のテキサス州やカリフォルニア州、オレゴン州、ハワイ州、バミューダ諸島、ペルーなどで100日以上にわたる海洋試験を完了済み。その広範における世界的な取り組みを通じて、湧昇ポンプによって毎年成長する新しい魚を推定できるようになりました。

 

OBCSは2023年から2024年にかけてハワイ沖に海洋湧昇ポンプを建設し、北太平洋地域のCO2を海洋魚の餌に変換することを計画しています。

 

バッシ氏は、これから先の海洋湧昇技術のニーズについて、「同社の海洋湧昇技術のニーズは、今後より多くの企業が『持続可能性』をコアビジネスモデルとして採用するにつれて増えていくことが予測されます。乱獲や気候変動などの課題を解決し持続可能な社会を目指したいと考えている企業——例えば、航空会社やエネルギー供給業者、製造会社など——が同社のパートナーになる可能性が高まっていると言えるでしょう」と予測。

 

「気候変動の鍵は海にあるといっても過言ではありません。私たちはこの画期的なソリューションによって、気候変動や魚の乱獲といった問題に大きなインパクトを与えることができると信じています」と、バッシ氏は未来に向けた海洋湧昇技術の重要性と価値に大きな自信を見せました。

 

執筆者/渡辺友絵

米ニューヨーク市警、犬型ロボット「デジドッグ」を再導入。爆弾事件など命に関わる状況だけで使うと約束

米ニューヨーク市警(NYPD)が、数年前に運用を中止した犬型ロボット「デジドッグ(Digidog)」を再導入することが明らかとなりました。

↑デジドッグ(通称Spot)

 

ニューヨーク市長のエリック・アダムス氏は、火曜日の記者会見でこのニュースを発表し、市内でデジドッグを使うことで「命を救える」と述べています。

 

デジドッグ(通称Spot)は米ボストン・ダイナミクス社製のリモート操作ロボットです。人間にとって危険な状況での作業を想定しており、すでに工事現場での見回りにも役立っています。しかし、2020年末にNYPDがレンタルして立てこもり事件などに投入したところ、市民から警察の軍事化が進むなど批判を浴びることに。もともと契約期限は2021年8月でしたが、4月には前倒しで契約が打ち切られていました

 

ニューヨーク市の非営利組織「監視技術監視プロジェクト(Surveillance Technology Oversight Project)」は、「NYPDは悪いSFをひどい監視に変えた」と批判。デジドッグを「模造品のロボコップ」と呼び、公金をムダ遣いして市民のプライバシーを侵害するものだと述べています。

 

かたやニューヨーク市当局は、NYPDが総額75万ドルで2匹のロボット犬を運用し、爆弾事件など命に関わる状況の時のみ使うと声明を出しています。

 

市民団体らがデジドッグに反発しているのは、カメラ付きロボットがプライバシーと公共の安全に悪影響を与えるかもしれないとの懸念からのようです。デジドッグが武装された例はまだなく、仮にそうするとボストン・ダイナミクス社の利用規約に反することになります。

 

そうした懸念を受けて、NYPD本部長はデジドッグを「透明性かつ一貫性をもって、常に我々が奉仕する人々との協力のもとで」運用すると述べました。さらに、顔認識技術を使うこともないと付け加えています。

 

どうやら市民がデジドッグに拒否反応を示した理由の一部は、犬とは似ても似つかないルックスにもあるようです。とはいえ、警官の命を危険に晒さず、事件現場の情報を集める必要もあるはずであり、プライバシー保護とのバランスが守られるよう祈りたいところです。

 

Source:The New York Times

学研とベトナムのDTP社が資本業務提携! 日本のSTEAM教育で「ベトナムの子どもたちを幸せにしたい」

4月11日、学研ホールディングスがベトナムの教育市場への本格的な進出を発表しました。ベトナムの大手教育出版社のDTP Education Solutionsと資本業務提携を結んだ同社は、ベトナムおよび東南アジア諸国を拠点としながら国際戦略を展開していきます。この取り組みは双方に利益があり、優れた理数科教育を特徴の一つとする「日本型教育」を海外展開したい日本にとっては試金石となるでしょう。

↑資本業務提携を発表したDTP社のヴォー・ダイ・フックCEO(左)と学研の宮原博昭CEO

 

学研は、国民の教育意識が高まっているベトナムを事業展開の最重要エリアと定めています。今後、世界的にマーケットの拡大が見込まれているK12市場(大学入学までの13年間の学校教育期間)に参入するためには、各国でローカライズされた商品の開発力と強固な顧客基盤を有するパートナーが不可欠。STEAM教育や科学に強みがある学研が、今回の提携において将来的にDTP社の持分法適用子会社化を視野に入れていることからも、企業として大きな決断をしたことは想像に難くありません。

 

一方、設立約20年のDTP社は、ベトナムといった東南アジア地域の教育産業、特に英語教育におけるリーディングカンパニー。シンガポールやタイ、ラオス、カンボジアにも事務所を持つ同社は、中南米にも販売チャネルを持っています。500名を超えるスタッフが英語の教科書を中心とした出版事業やスクリーニング(課外授業)事業などを展開しており、教育ポータルサイトの運営や教材の販売などを含めた多角化戦略で成功を収めています。ベトナムの英語教科書市場においては国営企業に次いで約30%のシェアを持ち、オックスフォード大学出版の東南アジア総代理店でもあるなど、国内外に強力なネットワークがあることが強みです。

 

今回の提携によって、学研は自社の教育コンテンツの輸出に加えて、DTP社のグローバルコンテンツやデジタルサービスを輸入することが期待されます。対して、DTP社は学研のコンテンツの英語化、ローカライズ、デジタル化を行うことができるので、双方にとってシナジー効果のある座組みと言えます。

↑学研の書籍がベトナムの子どもたちに読まれる

 

国交50周年を迎えたベトナムと日本はお互いに期待しています。学研は2022年にも日本の文部科学省やJETROと連携してベトナムのEdTech企業と業務提携を締結していました。DTP社のヴォー・ダイ・フックCEOは、ベトナムの教育市場は活気があり、ベトナム人の多くは「日本に憧れている」と言います。一方、日本にとっても教育が輸出品目として海外に展開されることは有益。ベトナムをはじめ東南アジア各国は、経済成長と共に教育の質を高めることに強い関心を持っており、学研には各国の政府や企業からのアプローチが増える可能性もありますが、そのための足掛かりをベトナムで作りたいところ。「日本のコンテンツでベトナムの子どもたちを幸せにしたい」と同社の宮原博昭CEOは決意を表しました。

 

日本型教育の代表的存在である学研が、これからベトナムの発展にどのように貢献していくのか、目が離せません。

 

企業が「週休3日制」を導入したら売り上げは下がる? 英の実験で意外な結果が判明

コロナ禍以降、働き方が著しく多様化している中、イギリスでは最近、「週に4日働いて、残りの3日は休み」となる週休3日制に関する大規模な実験が行われました。一般的な週休2日制から3日制に変わることで、企業の生産性や従業員の心身にどのような変化が見られたのでしょうか?

↑そのうち勤務日は週5日から4日になる?

 

今回の実証実験は2022年6月から12月までの6か月間、イギリスにある61の企業で働く約2900人を対象として行われました。これまでの週休2日制に休暇をもう1日どのように追加するかは、業界や企業によって変わり、例えば、金曜日を休みにして、金曜・土曜・日曜は3連休とする企業もあれば、追加の休暇は週の半ばに設定する企業もあります。ただし、どの企業でも従業員に支払われる給料は週休2日制のときと同じ金額でした。

 

6か月後、ストレスレベルや睡眠などの状態を確認したところ、39%の従業員がストレスを感じにくくなり、被験者の71%で燃え尽き症候群のレベルが低下。不安や疲労感も減少したことが判明したのです。仕事に携わる時間が減ることで、仕事で生じるストレスや疲労を感じにくくなるのは当然と言えるかもしれません。さらに、時間的な余裕が生まれたことで、ワークライフバランスが改善することも判明。「仕事と家庭のことを両立しやすくなった」と答えた人は54%にのぼりました。

 

週休3日制は従業員にとって多くのメリットがあることがわかりますが、企業側の視点で見ると、週休3日制に移行することで売り上げが低下することが懸念されるかもしれません。しかし実験期間中、参加企業の売上高は1.4%増とほぼ横ばいのまま。前年同月と比べると、売り上げは平均で35%も増加していることがわかりました。2021年のイギリス経済は、パンデミックの影響で経済活動が停滞した2020年より9.4%回復していることから、今回の結果で平均売り上げが35%増加したことは、週休3日制の影響が大きいと言えるかもしれません。加えて、実験に参加した企業を退職しようと考えている人の数が57%減少したことも明らかになりました。

 

つまり、企業にとってもメリットが大きいと言えるのです。実際、実験終了後も、週休3日制の継続を決めた企業が61社中56社と92%に及び、そのうち18社は恒久的に週休3日制にすることを決めました。

 

現在、当たり前になっている週休2日制ですが、日本における歴史はそこまで古くありません。国家公務員に完全週休2日制が導入されたのは1992年。それまでは週休1日が一般的でした。また、全国の公立学校が完全週5日制になったのは2002年からで、それ以前は生徒も週に6日通学していました。

 

それから数十年のときを経て、現在生まれている週休3日制の試み。今回の実験結果を受け、欧米を中心に週休3日制を導入する動きが広がっていく可能性があります。将来、AIなどの最新テクノロジーなどを駆使して、人の仕事をより効率化できた場合、諸外国から「働き過ぎる」と揶揄される日本でさえも、週休3日制の導入について議論しているかもしれません。

 

【出典】

Autonomy. The UK’s Four-day Week Pilot. February 2023. 

 

人間の力が50倍に! 巨人化ロボットスーツ「プロステーシス」とは?

「SF映画の主人公のように、巨大なロボットを操縦できたら……」と思ったことはありませんか? そんな夢を実現させてしまったのが、EXOSAPIEN社のジョナサン・ティペットCEOで、まるで自分の手足を動かすように操縦できるロボットスーツ「プロステーシス」を開発したのです。ティペット氏はどのような思いでこのロボットを作り、設計しているのでしょうか? 2月に開催されたダッソー・システムズのテック系イベント「3DEXPERIENCE World 2023」でティペット氏が語りました。

↑これがプロステーシスだ!

 

一際目立つ赤いパイロットスーツで舞台に立ったティペット氏。「もし巨人になれたら何をするだろう?」をテーマに会社を立ち上げたと語り始めました。

 

「私が開発した『プロステーシス(PROSTHESIS)』は、アートとテクノロジーを駆使し、6年間のタフなフィールドワークで得たデータをつぎ込んで作り上げたロボットスーツです。ロボットスーツはパワースーツ、またはパワーアシスト装置を意味しますが、プロステーシスのサイズは高さ4m、幅4.5m、奥行5.2mで、総重量は4000kg。パワーは200馬力で、操縦者の力を50倍まで引き上げることができます。2020年にはギネス世界記録に『世界一巨大な四足歩行の装着型パワーアシスト装置』として認定されました」とティペット氏は語ります。

 

人工知能は搭載しない

プロステーシスに操縦かんはありません。自分の手足の動きがマシンと直接連動しているので、人間が本来持つパワーを引き上げたまま、自分の身体のように動かすことが可能。足場の悪い山道も川の中も難なく進めるうえ、クルマを潰したり持ち上げたりすることもできます。

 

AIのような人工知能を搭載せず、あくまでも人間が操縦するように設計した理由は、楽しさを追求したかったから。「個人的にはスポーツのような位置づけで、ビジョンは国際的なスポーツエンターテイメントにすることだ」とティペット氏は話します。プロステーシスの開発には16年を費やし、脚部をスケッチするだけで1年、デザインの完成には5年かかったそう。エンジニアとしての経験と知識をフル活用し、最初の頃はデザイン、設計、組立を全て自分で行ったと言います。

 

進化を続ける「巨人たち」

↑リアルな進撃の巨人(画像提供/ダッソー・システムズ)

 

3DEXPERIENCE World 2023では、ファン待望のプロステーシス新型機「プロステーシス2.0」が発表されました。

 

「次世代機のプロステーシス2.0は、従来モデルに比べてサイズは3分の2に、重量は半分に改良しました。それでいてパワーは2倍。スピードもアップし、時速20~30キロで進むことができます。将来的には、プロのアスリートに装着してもらい、広大なスタジアムで障害物コースにチャレンジするようなスポーツエンターテイメントに発展させたいと思っています。面白そうでしょう?」(ティペット氏)

 

その一方、EXOSAPIEN社では新たなプロジェクトが進行しているとティペット氏は話しました。

 

「プロステーシス・シリーズで得たノウハウにクルマの要素を加え、全く新しい概念のマシンを製作中です。この新マシン『エクソクワッド(EXO-quad)』には、オートバイ、ロボットスーツ、4輪という3つの特徴を詰め込みました。バイクにまたがるように乗るのですが、タイヤを装着した4本の脚はパイロットの手足と連動しており、体勢をリアルタイムで自由に変えることができます。乗っている感覚としては、思うままにコースを変えながら走れるローラーコースターでしょうか。道の上を飛ぶように走れるのです。

 

開発のきっかけは、ラスベガスの企業からの問い合わせでした。レーシングカーの乗車体験を提供している会社で、そこでプロステーシスを扱えるかという内容でした。プロトタイプのプロステーシスは操作が複雑で、自分で操作できるようになるまで3~4日はかかります。そこで、もっと簡単に操作できるマシンを作ろうと思ったのです。エクソクワッドはバイク感覚で乗れますし、曲がるときは身体を傾けるだけ。初号機のデビューは1年後を予定しているので、ぜひ楽しみにしていてください」

 

人類の新たな希望?

「巨人になってみたい」という憧れを、その技術と行動力で実現させたティペット氏。この巨大マシンは、人類が直面しているさまざまな問題を解決できる新たな希望だとも語ります。

 

人間の持つ能力や創造性をパワーアップさせるとともに、エンターテイメントとして遊び心も満たしてくれる巨大ロボットスーツ。今後の活躍に、世界中のファンが期待を寄せています。

 

執筆者 / 長谷川サツキ

装着期間、感染リスク、ストレスが減少! 乳がん患者の悩みに寄り添うドレーン機器「SOMAVAC SVS」に全米が注目

日本を含め世界中で増加している乳がん。近年、米国では手術後の患者さんが身につけるドレーン機器(創傷部に溜まった液などの排出に用いる排液管)に新製品が登場し、注目を集めています。「SOMAVAC SVS」と呼ばれるこの機器は、感染症のリスクを軽減することが特徴の一つですが、魅力はそれだけではありません。SOMAVAC社CTO(最高技術責任者)のジョシュア・ハーウィグ氏が3DEXPERIENCE World 2023で同製品について語りました。

↑衣服の下で目立たずに装着できる「SOMAVAC SVS」

 

乳がん手術の問題点

SOMAVAC SVSは、乳房の切除や再建、ヘルニア修復など複雑な整形外科手術の術後に、体内にたまった血液や体液をスムーズに排出するための新型ドレーンポンプ機器です。連続的な吸引で液体を効率的に除去することにより、感染症の原因となる血清腫や血腫のリスクを軽減することができ、合併症予防にもつながります。

 

形成外科手術および一般外科手術における手術用としては唯一のスマート外科用ドレーンポンプとして、FDA(米国食品医薬品局)が許可し、2021年8月には「連続負圧スマートポンプ」として特許を取得しました。

 

なぜハーウィグ氏はこのような製品を開発しようと思ったのでしょうか?

 

米国形成外科学会 (ASPS)/形成外科財団によると、米国では2018年に約10万1600人の女性が乳房再建を行なったとのこと。しかし、そこにはある問題がありました。

 

「がん患者さんは最先端の除去手術を受けてはいるものの、退院するとこのようなドレーン装置を付ける必要があります。手術後に体内にたまった体液を除去するためですが、これまでの手動JP(ジャクソンプラット)ドレーン装置や、アコーディオン式ドレーン装置は吸引力にばらつきがあり、体液が滞留や蓄積、逆流するなどのトラブルがあったのです」とハーウィグ氏は言います。

 

「例えば、膝や肘などの関節をぶつけたときに、体液が溜まって腫れ上がることがありますが、こういったトラブルを最小限に抑えるためには、連続的な吸引能力と一方向にのみ作用するバルブが必要でした。従来のバルブ型だと体液を効果的に除去できないため、手術ではがれた組織がくっつきにくいのですが、SOMAVAC SVSであれば真空状態にして組織面を合わせることが可能です」(ハーウィグ氏)

↑SOMAVACのジョシュア・ハーウィグCTO

 

また、SOMAVAC SVSは強力な吸引力によって、ドレーンの使用期間を短縮できることが実証されています。通常は2~4週間装着しなくてはなりませんが、同製品はこの期間を5~7日に短縮可能。装置をつけている期間を短くすれば感染率を下げられるため、臨床的な観点からも大きなメリットあります。仮に、一度手術をしたが傷が再度開いてしまったなど、非常に複雑なケースの患者に使うと想定した場合、米国の中規模の病院において、年間約26万ドル(約3430万円※)の医療費削減につながるそうです。

※1ドル=約132円で換算(2023年3月20日現在)

 

乳房切除と組織拡張器による乳房再建を行った場合の感染リスクは約25%で、4人に1人がドレーンの使用後3週間以内に感染症にかかるというデータもあります。痛みと費用を伴う治療が必要なケースも多く、それに関わる米国の医療費は約60億ドル(約7900億円)に上るとされています。SOMAVAC SVSの導入で感染リスクを下げることができれば、患者の負担を和らげるだけでなく、医療費も削減することができます。

 

「精神的な負担や辛さを和らげたかった」

SOMAVAC SVSは感染症リスクの軽減だけでなく、患者が受ける肉体的・精神的な負担を大幅に解消できることも大きなメリットです。

 

これまでの手動タイプのドレーンなどは患者が使うこと自体が難しかったのですが、SOMAVAC SVSはこの課題も解決。体液は殺菌済みの使い捨て可能なバッグの中に自動的に入って計量されるため、患者自身が体液の数値を計らなくて済むようになりました。バッグには体液を収集・保管する優れた機能があり、体液がこぼれたり漏れたりする心配もありません。

 

なかでも、患者の精神的な負担や辛さを和らげたかったとハーウィグ氏は強調します。

 

「こういった器具をつけることで最も悪影響を受けているのは乳がんの患者さんだということがわかりました。器具をつけると回復期でも『自分はがんだ』と改めて感じて、とても辛い気分になるそうです。そこで私は、より良い医療器具を作ることはもちろん、患者さんのメンタル面の回復についても使命感を持って、率先して役に立ちたいと思うようになりました。

 

多くの乳がん患者さんは、回復期に不安やうつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)といったメンタルヘルスとの戦いに苦しんでいます。そのため乳がん手術後の回復期において、手術したことがわからず、尊厳を持つことができるドレーンが必要なのではないかと思ったのです。SOMAVAC SVSの大きさはiPhone程度で、平たい形状であり、衣服の下にベルトで目立たないように装着できるため、患者さんが術後の生活を前向きに捉えるようになりました。患者さんだけでなく、乳がんの遺伝的な要因を持っていて、発症前に予防的に乳房切除を行う人たちにも使ってもらっています」

↑ストレスフリーの体液収集が可能に

 

最後に、ハーウィグ氏は今後の計画について語ってくれました。

 

「2~3年先の研究開発になると思うのですが、乳房の切除手術を受けた患者さんの転移を見つけられるソリューションに着手しています。これは、がんを取り除いた後の体液を集めてラボに送り、その中にがん細胞ができていないかを検査するもの。体液の解析を行うことにより、転移する前にがん細胞を見つけたり、再発率を予測したりできるようにします。分析先の医療系ラボとはすでに話ができていて、そこに送って分析してもらうことになります」

 

2025年頃には新製品をリリースする予定で進めているとのことですが、現状は米国内で既存製品の営業展開に注力しており、力を入れて、より多くの患者さんに届けることに集中しているそうです。

 

執筆者/渡辺友絵

2021年創業のランドセルメーカーが半年でSDGsなランドセルを完成できたワケ

4月になると、ピカピカの大きなランドセルを背負って登校する小学生の姿が見られます。ランドセルといえば、昔は黒か赤の革製が主流でしたが、最近はカラーバリエーションが豊富で素材もさまざま。そんな中で注目されているのが、起業したばかりの合同会社RANAOS(ラナオス)が2021年から展開している布製のランドセル「NuLAND®(ニューランド)」です。実はこのランドセル、子どもへの愛情あふれるママたちの想いから生まれました。

 

小学1年生だった息子の様子を見て奮起

RANAOS代表の岡本直子さんには、現在小学の息子がいます。彼が小学1年生だった時の、ある出来事がNuLAND®誕生のきっかけだったそうです。

 

「2020年は新型コロナの影響で、本格的に登校し始めたのは夏でした。当時小学1年生だった息子は、猛暑の中、重いランドセルを背負って帰宅すると、顔を真っ赤にしてもう汗だく。またある時は、大雨なのに傘を差さずに全身ずぶ濡れになって帰宅。ランドセルに入りきらない荷物で両手がふさがっていて傘が持てなかったのです。腑に落ちないでいたところ、近所に住む帰国子女のお子さんがリュックで登校しているのを見かけて。“なんだ、別にランドセルでなくてもいいんだ”と固定観念が覆る思いでした。

 

そこで“ランドセルの機能を踏襲したリュック”を探したのですが、サイズや形、デザイン、機能性など、すべてにおいてしっくりくるモノが見つかりません。同じ思いをしているママたちもいるはずだから、それなら自分で作ろうと思ったのです」

 

↑「NuLAND®」誕生のきっかけ/NuLAND®のHPより by ぴよよとなつき

 

理想的なランドセルを作るためにわずか半年で起業

岡本さんは新卒で広告代理店に入社後、地方や海外のテレビ局勤務(両社とも勤務地は東京)を経て、『mamatas(ママタス)』という育児を応援するママ向け動画マガジンの事業部代表を務めていました。ランドセル製作を考えた際は、まずは現状を把握するために、延べ8000人以上の保護者や小学生から、ランドセルについてヒアリングをしたそうです。

↑合同会社RANAOS代表の岡本直子さん

「『mamatas』を活用して計3回の緊急アンケートを行ったところ、“小学生のランドセルが重すぎる”と答えた方は8割以上。調査を進めていくと、“軽さ”“大容量”“中身の出しやすさ”“丈夫さ”など、多くのキーワードが見えてきました。理想とするランドセルの姿が見えてきて、それを形にすれば、多くの保護者と子どもが望む新しいランドセルが生まれるのに違いないと実感したのです」

 

2020年8月~10月ぐらいでリサーチとコンセプト固めを行い、素材探しなどを同時進行、秋には試作品製作に着手しました。翌2021年1月に『mamatas』を辞めてRANAOSを設立し、3月には早くもNuLAND®の第1号を完成させたといいます。その間、わずか半年というスピードに驚かされますが、「外資系企業にいたせいか、私にとっては特別ではありません」と岡本さんは笑顔で答えます。

 

「NuLAND®には保護者と子どもたちの多くの意見が反映されています。例えば、大きな特徴であるフルオープン機能。これは、ある保護者からの『今のランドセルの形状だと、中がブラックホールすぎる。奥から何が出てくるかわからない(笑)』というユニークな意見から生まれた機能です。

 

しかし当初の設計では、フルオープンになるものの、従来のランドセルのように上部だけを開けてモノを出し入れすることができませんでした。それに対して子どもたちの意見を聞くと、『チャイムが鳴ったら教科書をすぐにしまって少しでも早く教室を出たい。急いでいる時はチャックを開けなくても、モノが取り出せた方がいい』と。そこで両方の意見を取り入れて作ったのが現在の形です。

 

また、曜日によって荷物の量が違うことから、拡張機能を付けたり、重い荷物が背中側に固定されるようにブックバンドを採用するなど、随所に保護者と子どもたちの意見を取り入れています。何よりも私自身が当事者なので共感できる意見も多くありました」

↑簡単にフルオープンになる
↑荷物の量に合わせてマチを広げられる

 

環境問題について親子で話すきっかけに

固定観念にとらわれない自由な発想で生まれたNuLAND®には、「環境」「軽さ」「機能性とデザイン」の3つのポイントがあるそうです。

 

「子どもたちの未来のために、環境に配慮した素材を採用することは最初から決めていました。生地を探していたところ、伊藤忠商事が展開する『RENU®(レニュー)』という循環型リサイクルポリエステル生地を知り、お話を聞いてコンセプトに共感。一般的なリサイクルポリエステルがペットボトルを原料にしているのに対して、RENU®は古着や工場での残反など、100%繊維廃棄物が材料なのです。このRENU®との出会いが、具体的な製品化に動き出すきっかけにもなりました」

 

NuLAND®では、素材の約36.5%にRENU®を使用しています。残りはファスナーや留め具、かぶせ芯、肩パット芯ほかの部材。環境にどのくらい配慮しているかというと、例えば、NuLAND®を100万個製作した場合、150万枚の廃棄Tシャツを使用します。自動車走行距離に換算すると地球20周分のCO2の削減となり、500ミリリットルのペットボトル72万本の水を削減できるそうです。しかし岡本さんの環境へのこだわりは、それだけではありません。

 

「SDGsを保護者の目線でとらえた時、結局、子どもたちの未来に関わることなので、何ができるかといえば子どもに伝えることだと思います。日本と比べて、欧米の子どもたちはすごく小さい頃から環境課題について両親から話を聞いています。そういうのが大切な教育だと思っていて、“NuLAND®がどんな生地を使用し、それは君たちの未来を思ってのことなんだよ”という部分、未来につながる製品であることを両親から子どもへ伝えてほしいのです。

 

環境や社会にどう影響するかも大事ですが、ある意味、製品作りにおいて環境に配慮するのは当たり前の時代。それよりも、ランドセルを選ぶ時に親子で環境について話をしたり、意識をするきっかけになってくれたらいいなと思います」

 

子どもの視点で軽さと機能性、デザインを追求

環境にこだわったのは子どもたちの未来のため。軽さを追求したのは、子どもたちの身体のため。機能性を追求したのも子どもたちの使い勝手を考えて、すべてが子ども主体です。

 

「ポイント2つ目の“軽さ”ですが、ランドセルが重たすぎると答えた方は8割以上でした。中には、3日で背負うのを嫌がった子どもの事例も。一般的なランドセルの重量は、人工皮革1210g、牛革1500g、コードバン(馬のお尻部分の革)1450g。それに対してNuLAND®は約930g(フラップなしで約700g)です。実際に使った子どもたちに話を聞くと“軽い”“締め付ける感じがない”と喜んでくれました」

↑一般的なランドセルとNuLAND®の重さの比較

 

そして3つ目のポイントが「機能性とデザイン」。機能性については、タブレット専用ポケット、鍵や交通パスケースを付けられる隠しリング、成長に合わせて対応できる調整テープ、体操服や水筒、リコーダーまで入る容量の大きさなど、挙げたらキリがありません。現役小学生ママたちの願いを取り入れた結果なのです。

↑2023年に東京・代官山に完全予約制のショールームもオープン

 

一方、デザインディレクションについては、広告、アート、絵本など様々な分野で活躍中のアートディレクター、えぐちりかさんが担当しています。

 

「最初はキービジュアルのご相談だけのつもりでしたが、えぐちさんも3人のお子さんのママであったこと、お話をしたら子どもの目線で活動している面を感じ取ることができたので、デザインディレクションから世界観の構築、ネーミング、ロゴ制作まで、すべてをお願いしました。話を進める中で、当初は少し攻めたデザインも考えたのですが、ランドセルへの憧れは日本の文化として根付いているので、そこは大事にしたいと。両親やおじいちゃん、おばあちゃん、子どものドキドキ感やワクワク感を大切にするために、伝統的な丸みのあるフォルムにもこだわりました」

↑従来のランドセルのような丸みあるフォルム

 

ユーザーとともに進化し続けたい

2023年の春で3年目を迎えたNuLAND®。新色2色が新たに加わり、全7色12ラインナップを展開しています。攻めの姿勢を感じますが、岡本さんの思いは別のところに。

↑2024年4月入学児童向けの新作は4月8日12:00から予約販売開始(7色、全12ラインナップ。オリーブ・グレープは新色・数量限定販売)https://nuland.jp/

 

「カラーバリエーションを増やしているのは、子どもたちが自分の好きな色を選べるようにするため。そもそも、従来のランドセルを否定する気は一切ありません。革のランドセルにはその良さがありますし、比較対象とするのではなく、あくまで選択肢が増えただけ。保護者の方の価値観や、子どもたちの素直な気持ちで選んでいただければと思っています。そして、子どもたちにとって小学校は、これから進んでいく社会への最初の入り口。NuLAND®を通して、“固定観念に縛られないで”“選択肢は1つではないよ”“多様性を認め合おうね”というメッセージが伝われば嬉しいです」

 

まだ3シーズン目ということもあり、耐久性などのデータ量が少ないのが課題と話す岡本さん。ですが、その間もユーザーの声を反映させ、少しずつ改良を続けているそうです。 “その時のベストな製品”を提供しながら、柔軟かつスピーディーに進化している同社。その取り組みには、子どもと未来へのさまざまな想いが詰まってるのです。

133万円と思いきや…。豪でアマチュア採掘師が2000万円以上の金塊を発見

金融危機やインフレでも値が下がらず最強の現物資産と言われる金。そんなお宝を見事に掘り当てた男性が最近、オーストラリアで現れました。その価格はおよそ2100万円。一体どうやって見つけたのでしょうか?

↑1万ドルぐらいの価値かと思いきや、はるかに上だった!

 

この幸運の人物は、オーストラリアのある男性。1800年代に金鉱が発見された同国には、一攫千金を夢見た人々が世界中から押し寄せてきました。そんなゴールドラッシュの中心地となったビクトリア州の金鉱地帯で、この男性は金採掘を行っており、そこで4.6kgの塊を見つけたのです。その石の塊には約2.6㎏の金が含まれていたそうですが、この男性はプロの採掘師ではなくアマチュアで、1200ドル(約16万円※)の格安金属探知機を使っていたとのこと。

※1ドル=約132.5円で換算(2023年3月30日現在)

 

おまけに、男性はこの石を発見したとき、それほど価値があるものとは気づいていなかったようです。男性は後日、石を半分に割ってその半分だけを持ち、採掘した鉱石などを買い取る店「Lucky Strike Gold」を訪れました。

 

そのときの様子について、店主はこう語っています。

 

「男性は『この石は1万ドル(約133万円)の価値があるか?』と尋ねたんです。でも、私が石を見ると、すぐにそれ以上の価値があるとわかりました」

 

それもそのはず、店主いわく「43年間も探鉱してきたが、これほど多くの金を含む石は見たことがない」そう。

 

結局、家に置いてきた残りの半分も後日、店に持ち込まれて、合計で約16万ドル(約2100万円)で店が石を買い取りました。

 

オーストラリアは金が埋蔵されている世界最大のエリアと言われています。まさに一攫千金を絵に描いたような今回の出来事。すぐに売却するより、もうしばらく金を現物で持っておいたほうが良かったのではないか……とも邪推してしまいますが、この男性にあっぱれです。

 

【主な参考記事】

BBC. Amateur Australian gold digger finds massive nugget. March 28 2023
Insider. An Australian man found $160,000 worth of gold in a 10-pound rock using a low-end metal detector. March 28 2023

わずか6年間で「マイクロプラスチック」の量が100倍以上増加! 英大学の研究

目には見えないけれど、静かに海を汚染している「マイクロプラスチック」。現在、その量が2017年の100倍以上に急増していることがイギリスの調査でわかりました。わずか5mm以下のマイクロプラスチックは、どのくらい私たちの身の回りに存在するのでしょうか?

↑もっと細かいプラスチックがたくさん海を漂っている

 

ペットボトルなどのプラスチックが小さな破片になり、やがて5mm以下の大きさになった「マイクロプラスチック」。海や川に漂い、海の生き物たちに影響を与え、それらを口にした人間にもその影は忍び寄っています。

 

マイクロプラスチックの現状について調査したのはポーツマス大学の研究メンバー。イギリス沿岸の約8000kmをボートで回り、海水を採取して、含まれているマイクロプラスチックの量を調べました。その結果、1立方メートルの海水に0~121個のマイクロプラスチックが存在することがわかったのです。

 

この研究チームは同様の調査を2017年に行っており、そのときは1立方メートルあたり0~1.5個のマイクロプラスチックを確認していたので、今回判明した数値はその100倍以上になります。つまり、わずか6年ほどの間に海を漂うマイクロプラスチックの量が急増しているということです。

 

今回のイギリスの調査の結果は、決して他人事とは言えません。愛媛大学などの研究チームが大分県別府湾の海底について行った調査では、1960年頃からおよそ20年の周期で、マイクロプラスチックの量が増減を繰り返しながらも、着実に増えていることが明らかとなっています。

 

2050年の海には、魚の量よりも多くなるとも言われるプラスチックごみ。海洋汚染は驚くほど速く進んでいるようです。

 

【主な参考記事】

BBC. Microplastics: Research finds almost 100 times more microplastics in UK coastline than six years ago. March 28 2023
愛媛大学. 別府湾海底堆積物が語る過去 75 年間(1940 年〜2015 年)の 海洋マイクロプラスチック汚染状況の変遷. October 11 2022

ゲノムデータでマンモスの「培養肉」を開発! 巨大ミートボールが豪で誕生

マンモスはおよそ5000年前に絶滅したとされていますが、その肉を使った巨大ミートボールをオーストラリアの企業が作り、世界中の関心を集めています。

↑マンモスの肉を使った巨大ミートボール

 

ゲノムデータからマンモス肉を再現

今は存在しないマンモスの肉で、なぜミートボールを作ることができるのか? その疑問を解く鍵は、実験室での培養技術にあります。この巨大ミートボールを生み出したオーストラリアのVow社は、実験室で細胞を培養して肉をつくる「培養肉」を手掛けている企業で、今回の巨大ミートボールも細胞培養技術を活用して作ったそう。

 

マンモスは、これまでに北極圏の永久凍土の中から発見されています。血液も残っているような保存状態が良いものもあり、そこに残された毛皮や組織からDNAが解析されてきました。そのように公開されているゲノムデータベースをもとに、同社は実験室でマンモスの肉を培養して再現したわけです。

 

できあがったマンモスの肉はおよそ400g。そこに、同じように実験室で培養して作られたラム肉を混ぜ、今回の巨大ミートボールを作ったのだそうです。ちなみに、羊のDNAとマンモスのDNAはほぼ同じ配列なのだとか。

 

培養肉をもっと知って!

今回、Vow社がマンモス肉の巨大ミートボールを作ったのは、温室効果ガスの排出量を抑えるために、食習慣を見直して培養肉に注目してほしいという意図があったそうです。

 

同社では、培養肉の認可をすでに取得しているシンガポールで、培養したウズラの肉の許可を近いうちに取得し、販売する予定。今回作られたマンモス肉の巨大ミートボールについては安全性が確認されていないため、実際に食べることはできないそうですが、こんな肉を実際に食べる日が近づいているのかもしれません。

【主な参考記事】

CNN. Meatballs made with mammoth DNA created by Australian food startup. March 28 2023

 

カーディラーからエンジニアに転身して失敗。どん底に落ちたアメリカ人を救った「ものづくり」の魅力とは?

ものづくりに人生を救ってもらった——。そう語る職人がアメリカにいます。それが、Todd White Metal Works社のトッド・ホワイト氏。カーディーラーからエンジニアに転身し、独学で出世するも、会社を解雇されてどん底に落ち、そこから成功を勝ち取った経験の持ち主です。すいも甘いも噛み分けるトッド氏をものづくりへと駆り立てる原動力とは?

 

ものづくりを楽しむ日々

↑娘さんと共に3DEXPERIENCE World 2023に登場したトッド・ホワイト氏(画像提供/ダッソー・システムズ)

 

ホワイト氏の物語は子どものときに始まりました。「私は幼い頃から物の構造や製造方法に興味を持っていました。エアガンで遊ぶより、物を分解して楽しむような子どもだったのです。きっと生まれたときからものづくりへの情熱を持っていたのでしょう」とホワイト氏は言います。

 

大人になると、ホワイト氏はカーディーラーとして生計を立てるようになりました。ものづくりへの興味は健在で、友人に教えてもらいながらクルマやバイクのカスタムを楽しんでいたそう。世界経済を不況に陥れたリーマンショックの翌年(2009年)には、全くの初心者ながら製造エンジニアリングの会社へ転職。そこで、機械設計用ソフトウェアの「ソリッドワークス」に出会いました。これは製品のさまざまな設計業務をこなせる3次元設計ツールですが、「私は大学を出ていませんし、新しいことを習うのは並大抵のことではありませんでした。毎朝1時間早く出社し、夜も1時間残業して勉強を続けました」とホワイト氏は当時を振り返ります。

 

1年ほど勉強を続けると同ソフトを使いこなせるようになり、技術部へと昇進したホワイト氏。プライベートも充実し、妻と子ども2人の4人家族で、安定した生活が送れるようになっていました。順風満帆な生活はこのまま続くかのように見えましたが……。

 

突然の解雇、苦難の日々

しばらく経ったころ、あるベンチャー企業から「ホワイト氏をリーダーエンジニアとして迎えたい」というオファーがありました。それまでの安定したポジションを失うことになりますが、生粋のギャンブラーとして知られるホワイト氏は「大きく成長できるチャンスだ」と考え、オファーを受けました。「このときプログラム制御システムを備えた自動工作機械のCNCマシンを業務用に購入したのですが、それぐらい私はやる気に溢れていました」(ホワイト氏)

 

しかし、転職からわずか6か月後、悲劇が彼を襲います。「まもなく会社の資金繰りに問題が発生して、経営が立ち行かなくなると、突如解雇されました。小さい子どももいるのに……。私たち家族は全てを失ったのです。家も財産も、何もかもなくなりました」とホワイト氏は言います。

 

それから6か月もの間、新しい仕事は得られず、無収入の生活を強いられました。その後、ホワイト一家は妹を頼ってアリゾナ州へ引っ越し、ホワイト氏は生活のために家電の設置を請け負いました。しかし、収入は1日働いて68ドル程度(約9280円※)。「本当に苦しかった」とホワイト氏は当時の心境を述べます。

※1ドル=136.45円で換算(2023年3月17日現在)

 

ものづくりに帰る

↑ホワイト氏が作るパーツ(画像提供/Todd White Metal Works)

 

そんな生活をするようになって数か月経ったころ、ホワイト氏の妻がガレージで埃をかぶっていたCNCマシンを指して、「これを使いましょうよ!」と言いました。そこから、本格的にCNCマシンを使ったものづくりが始まったのです。

 

ホワイト氏はバイクのパーツなど、さまざまな金属部品を自分でデザインして作成。CNCマシンの使い方がよくわからず、試行錯誤の日々だったそう。

 

「『お金が足りないの。食べ物もおむつも必要なのよ』という妻の言葉を背に、毎日必死で取り組みました。やるべきことは何でもやり、ガレージで寝起きしながらパーツを作り続けたのです」(ホワイト氏)

 

初めてのお客さんは、地域の情報サイトに掲載した広告を見て連絡をくれた人だったとのこと。パーツ1個200ドルのオーダーを受けたときは、天にも昇るような気持ちだったとホワイト氏は言います。

 

手探りで始めたものづくりという新しい事業。無我夢中で取り組んでいるうちに、徐々に軌道に乗り始めたようです。

 

「とにかくそのときに自分ができる仕事に没頭し、大変でしたが、少しずつ受注も増えていきました。地元のボーイズスカウトから依頼を受け、巨大な投石機を作成したこともありますよ」とホワイト氏は言います。

 

「プライベートでは子どもがさらに2人増えて、6人家族になりました。妻は子どもの教育を一手に引き受けながら、ビジネスもサポート。目が回るほど忙しい日々でしたが、自分のオフィスを借り、念願のショップもオープンできました。現在ではマシンも4台に増え、広大な敷地で日々ものづくりに精を出しています」

 

ホワイト氏の子どもたちはパパの仕事に興味を持ち、有能なアシスタントとして仕事を支えてくれているとのこと。10歳の娘さんは、マシンに材料を入れてセットアップしスタートするところまで全て一人で行うことができ、これまでに200パーツほど作成したそうです。現在は完成品の品質チェックについて勉強しているそうですが、娘さんはビジネスのアイデアさえも持っており、近い将来、自分でデザインしたパーツを作りたいと言っているそう。「こうやって家族と一緒に取り組めるのも、ものづくりの魅力ですね」とホワイト氏は言います。

↑有能なアシスタントとしてパパを支えるホワイト氏の娘さん(画像提供/ダッソー・システムズ)

 

今度は自分が恩返しをする番

近年は新たな試みとして、地元企業や次世代の技術者たち向けの技術実践クラスを始めたホワイト氏。その背景には、自分を支えてくれた人々へ恩返しをしたいという思いがあります。

 

「いま私がこの舞台(3DEXPERIENCE World 2023)に立っていられるのも、周りの人々の惜しみない助けがあったからこそです。無一文になった私たち家族を居候させてくれた妹、機械購入のための高額な費用を貸してくれた義父。マシンの使い方がわからず途方に暮れていたときは、同業の先輩が惜しげもなく公開してくれた情報に何度も救われました。初めて200ドルの注文をくれた人は、現在でもお得意さんとして長い付き合いをさせてもらっています」とホワイト氏は謙虚に述べます。

 

「今度は自分がお返しをする番です。現在、研磨機や旋盤機械のクラスを実施しており、地元工場の新人研修などに採用されています。成長し続けるこの製造業の世界で勝負できるような、優れた技術者を育てる手助けができればと思っています」

 

もとはカーディーラーで、ものづくりは素人だったホワイト氏。仕事も家も失うという不運に見舞われながらも、独学で学び、努力を重ね、実業家として成功を収めました。

 

「この4年間、本当にいろんなことがありましたが、ものづくりの魅力は、年齢や経歴に関わらず、誰でも成功できるチャンスがあることです。そして、ものづくりは私の人生を救ってくれました。ある可能性に賭けるとき、たとえそれが不可能に見えても、全身全霊で取り組めば必ず結果はついてきます。私はそうやって、ゼロから自分の会社を持つまでになりました。私にできることは、あなたにも必ずできます。どうか、勇気を持って進み続けてください」とホワイト氏はエールを送っていました。

 

執筆者 / 長谷川サツキ

米国で3倍以上も値上がりした「卵」。欧米人は卵ショックにどう対応している?

さまざまなものの価格が上がっているなか、身近な食材で値上がりが特に激しいのが卵。日本と同様にアメリカでも卵の価格が高騰しています。

↑食料危機の象徴

 

先日発表されたアメリカ農務省の報告書によると、カリフォルニア州では卵1パック(12個入り)の小売価格が、7.37ドル(約960円※)。1年前は2.35ドル(約306円)だったので、1年間で3倍以上に値上がりしていることになります。

※1ドル=約130.6円で換算(2023年3月24日現在)

 

ニューヨークのあるデリでは、以前は120個入りの卵の価格が40ドル(約5200円)たったのに、いまでは100ドル(約1万3000円)以上もするそう。ここでも卵の価格が2倍以上になっていることがわかります。

 

そんなアメリカにおける卵の価格上昇の原因は、サプライチェーンの崩壊や労働力不足。さらに2022年に5000万羽以上が死滅した鳥インフルエンザの発生も大きな影響を及ぼしています。これらの要因に加えて、ウクライナ侵攻による穀物のコスト上昇で、卵の飼料の価格が上がっていることもあります。

 

飼料の高騰は、主にロシアによるウクライナへの侵攻が影響を与えているとされており、これはアメリカに限らず、日本を含めて世界中で共通すること。さらに、鳥インフルエンザは2022年から欧州をはじめ世界各地で発生しており、新たに世界的な流行(パンデミック)が起きているとも言われています。

 

卵の代替案

そんな卵価格の高騰のなか、欧米では卵以外の食材で代用するアイデアも生まれています。例えば、イギリスのあるレストランではスクランブルエッグの代わりに豆腐を使って、スクランブルエッグ風に仕立てているそう。同じように、ひよこ豆をすりつぶして、野菜などと一緒にオムレツ風にして提供している店もあるのだとか。

 

また、お菓子づくりにも欠かせない卵ですが、マフィンやパンケーキではバナナをつぶして卵代わりに使うほか、プレーンヨーグルトやコンデンスミルク、牛乳なども卵の代用品になります。

 

ガソリンや電気などのエネルギー価格の世界的な高騰に加え、各国で起きている卵の価格上昇。これまでは冷蔵庫に「当たり前に」ある食材だっただけに、日常生活にとって大きな痛手ですが、さまざまな情報を参考にしながら、できる範囲で対策を始めていくことが大切かもしれません。

 

【主な参考記事】

CNBC. Egg prices increased 70% over the last year—here’s why. March 3 2023
The Gurdian. Egg swaps: a guide to plant-based alternatives amid UK avian flu crisis. November 8 2022
Southern Living. The Best Egg Substitutes For Baking. March 21 2023

目立ち過ぎだよ。外国人観光客がイタリアでフェラーリを乗り回して罰金6万円

アメリカからイタリアを訪れたある観光客が、フィレンツェの広場で真っ赤なフェラーリに乗ったところ、現地の警察に捕まり、470ユーロ(約6万6250円※)の罰金を支払うことになった……。そんなニュースが海外で報道されました。なぜ6万円以上の罰金が科されたのでしょうか?

※1ユーロ=約140.9円で換算(2023年3月24日現在)

↑観光名所と同じくらい(またはそれ以上に)目を引く真っ赤なフェラーリ

 

アメリカ人の43歳の男性はレンタカーでフェラーリを借りて、フィレンツェのシニョーリア広場などの人気観光地を運転した結果、翌日に警察に捕まり、罰金470ユーロを支払うことになりました。

 

その理由は3つあります。1つ目は、歩行者専用と定められているエリアで駐車したから。2つ目は現地の交通規則に従わず、道路標識が示す方向とは反対に向かって運転したから。そして3つ目は、イタリアで運転が認められる免許証を持っていなかったから。

 

このアメリカ人男性は、観光客が多く集まるフィレンツェの広場をフェラーリで走り、美術館なども訪れたそう。その際、駐車禁止のエリアにクルマを止めたり、現地の交通規則に反する運転をしたりしていたことから、目撃者が警察に通報したようです。その際、彼はアメリカで運転できる免許証は持っていたものの、イタリアで運転できる国際運転免許証を持っていなかったことも判明。そのため、罰金が科されることになったようです。

 

もしかしたら、彼は旅行中で気持ちが大きくなってフェラーリに乗ろうと決めたのかもしれませんが、結果として街中で目立って、警察に通報されてしまったのかもしれません。

 

「いい気味だ」と思ってばかりもいられない

海外旅行先でレンタカーを利用するときは、現地で有効な運転免許証を事前に用意することはもちろん、現地の交通ルールをきちんと理解しておくことが大切。外国人観光客が再び増え始めている日本でも、レンタカーで事故を起こすケースが増加しており、日本人が巻き込まれて死亡する交通事故も実際に起きています。対策を講じておく必要があるかもしれません。

 

【主な参考記事】

CNN. US tourist fined $500 for driving Ferrari into Florence’s famous piazza. March 21 2023

2023年版「世界で最も幸せな国」が発表! 日本は何位?

国連が毎年発表している「幸福度ランキング」の最新のランキングが発表されました。これは150か国以上の人々に行われた調査データをもとに、それぞれの国の幸福度をランク付けしたものです。2023年版の「世界で最も幸せな国」の上位国は?また、気になる日本のランキングはどうなのでしょうか?

↑幸せとは?

幸福度ランキング2023トップ20

  • 1位 フィンランド
  • 2位 デンマーク
  • 3位 アイスランド
  • 4位 イスラエル
  • 5位 オランダ
  • 6位 スウェーデン
  • 7位 ノルウェー
  • 8位 スイス
  • 9位 ルクセンブルク
  • 10位 ニュージーランド
  • 11位 オーストリア
  • 12位 オーストラリア
  • 13位 カナダ
  • 14位 アイルランド
  • 15位 アメリカ
  • 16位 ドイツ
  • 17位 ベルギー
  • 18位 チェコ
  • 19位 イギリス
  • 20位 リトアニア

 

1位になったのはフィンランドで、6年連続のトップに輝きました。フィンランドをはじめ、上位に入ったのはデンマーク、アイスランドなど北欧諸国。健康寿命が高く、一人当たりGDPが高く、社会的支援制度が整っていることなどが、この良いスコアにつながったようです。

 

日本は特殊?

一方、日本は47位でした。昨年の54位からランクが上がったものの、主要7か国では最下位の結果でした。ただし「幸せ」の感じ方や捉え方は、人々の考えや文化によって変わるもの。特に日本人にはアンケートのような調査で10点満点中5点といった具合に中間的な評価を好む傾向があるため、幸福度のスコアが上がりにくいという指摘もあります。

 

アフガニスタン、レバノンなど紛争が起きている国はランキングで低くなるのは納得できるし、給料が上がらないのに物の値段が上がっており家計に影響を与えていることも事実でしょう。でも、日本の47位を「そこまで低い」と悲観しすぎる必要はないのかもしれません。

 

【主な参考記事】

John F. Helliwell, et al. World Happiness Report 2023

CNN. The world’s happiest countries for 2023. March 20 2023

超レアなスティーブ・ジョブズの直筆サイン入り表彰プレート、約1240万円で販売中!

アップルの共同創業者にして元CEOの故スティーブ・ジョブズ氏は、めったにサインを書かなかったことで知られています。

↑超レア、超高い(画像提供/Moments in Time)

 

そのためサイン入りのアイテムは高値が付く傾向がありますが、かつてアップル社員に贈られたサイン入りの表彰プレートが9万5000ドル(約1240万円※)もの価格で売りに出されています。

※1ドル=約130.6円で換算(2023年3月23日現在)

 

レアなアップル製品や記念品のほとんどはオークションで競り合いますが、このアイテムは希少品販売サイト「Moments in Time」で希望者が問い合わせて購入する方式です。価格は非公開ですが、ニュースサイトTMZは9万5000ドルだと伝えています。

 

今回の品は2000年に、元マーケティング担当のスザンヌ・リンドバーグ氏に贈られた(勤続)10年表彰するプレート。10年という節目を祝うメッセージが添えられ、下部には本物のスティーブ・ジョブズ氏が黒いフェルトペンで書いたサインも入っています。

 

この表彰は、ちょうどジョブズ氏がアップルに復帰した直後に行われたもの。その後、アップル社内でのサインはファクシミリに移行したため、ジョブズ氏ご本人が手書きでサインした数少ない表彰状の1つとなったわけです。

 

また、リンドバーグ氏はアップルに25年在籍し、1994年から2013年までの19年間、ワールドワイドバズマーケティングディレクターを勤めていました。その仕事内容は、映画やテレビ番組でアップル製品を使ってもらうというもので、ご本人がアップル製品の普及や知名度の向上に果たした貢献も大きかったと言えます。

 

今回の表彰プレートは他人と競り合う必要はなく、ポケットの中に9万5000ドルさえあればすぐに入手可能。もっとも、購入を決心するまでには相当な時間がかかるかもしれません。

 

Source:Moments in Time

via:9to5Mac

「未利用材」が美しいテーブルに。オフィス家具大手「オカムラ」が取り組む森林整備の社会課題

製品などの材料として使えない間伐材や、枝、葉、樹皮などの不要部分を「未利用材」と言います。森林整備の際に発生する未利用材が残されたままだと、木材搬出の妨げになったり、土砂災害で大きな被害をもたらしたりする危険性があり、実は社会課題にもなっています。その解決にひと役買おうとしているのが、オフィス家具メーカーの株式会社オカムラ。未利用材を使用した製品の発売を2022年11月からスタートしました。

 

未利用材を活用してテーブルの天板に

「きっかけは、当社のお客様でもあるエースジャパン株式会社様からのご提案でした」と話すのは、マーケティング本部の白井秀幸さん。

 

「エースジャパン様は京都にある物流の会社で、京都府森林組合連合会および各森林組合と連携し、CSRの一環として未利用材を活用した輸送用パレットを製造していました。商談の際、“学校の机など、未利用材を活用した製品を何か一緒に展開できないでしょうか”とご提案いただいたのです。当社は元々『オカムラグループ 木材利用方針』をかかげ、生物多様性の保全、木材の合法性の確保、森林認証材や国産材、地域材の利用など、森林資源の持続可能な利用を推進していました。すでに流通経路は確立されていましたし、社会的な意義とビジネスの可能性を感じ興味を持ったのです」(白井さん)

 

府域の75%を森林が占める京都府は、府民みんなで京都の森を守り育むための取り組みとして「京都モデルフォレスト運動」を展開しています。モデルフォレストとは、1992年の世界地球サミットでカナダが提唱した持続可能な地球づくりの実践活動のこと。京都発祥の企業や団体、大学、行政が協力し、エースジャパンも参加していました。

↑マーケティング本部 パブリック製品部 部長の北川博一さん(左)と、マーケティング本部 企画部 部長の白井秀幸さん

 

「最初にお話をいただいたのは2021年9月ごろ。翌月には契約に至り、協議の結果、まずはテーブルの天板から始めることに決まりました。強度や重量はもちろん、反ったり割れたりしないためにどう成型するか、喧々諤々しながら進め、製品化したのは2022年11月。クリエイティブファニチュア『SPRINT』シリーズの1つとして、未利用材天板を使用したテーブルをラインアップに追加したのです」(北川さん)

 

↑未利用材天板を使用したクリエイティブファニチュア『SPRINT』のテーブル

 

環境問題と向き合い、資材として有効活用を

先述したように、「未利用材」という言葉は定義付けられていて、森林整備の際に発生した不要な樹木や切り捨て材のうち、未使用の材のことを指します。今回同社では、低質材や根元部、曲がり材、枝や葉なども積極的に活用。回収した材を粉砕機でチップ化し、乾燥させた後に成型することで製品に使用しています。

 

↑未利用材の例と活用の流れ

 

「このお話をいただくまで私どもも知らなかったのですが、放置された未利用材が雨などで川に流れ込み、ダム湖の水面を覆うように溜まることに電力会社は頭を痛めていたそうです。今回、ダム湖を見学したのですが、遠くから見て陸地だと思っていた部分が、実は流木だと知って衝撃を受けました。電力会社は定期的にすくい上げて破棄していたのですが、森林からの未利用材だけでなく、そちらも回収して使用しています。

↑写真の左側はすべてダム湖に流れ着いた流木。まるで陸地のように見える

 

材の回収はエースジャパン様が行っているので、現在回収を行っているのは京都府内だけですが、未利用材の適切な処理はどの自治体も課題として捉えています。昨年11月に開催した当社の製品発表会の際も、多くの自治体や電力会社、企業が、未利用材の活用について関心を寄せていました。未利用材の活用は、森林整備に寄与すると同時に、災害時の被害の防止など、社会課題の解決にもつながります。すでに複数の自治体や企業から具体的な相談も受けていますし、今後は他の都道府県での展開も進めていきたいです」(北川さん)

 

のしかかる責任と多くの課題

現時点では『SPRINT』のテーブルだけですが、回収エリアの拡大と共に、今後は学校の机などいろいろな製品に未利用材を使用していきたいそうです。ただし課題もあります。

 

「未利用材の回収には森林組合や自治体の協力が不可欠ですが、当社の取り組みに興味を持つ自治体が多い反面、一企業が正面から未利用材の回収と活用を提案しても、簡単にはいかないのが現実です。仮に合意したとしても、加工できる工場の確保をどうするか、現在の工場へ輸送するとしても、コストや輸送によるCO2排出の問題があります。

↑朽ち果てた木々がチップ化され天板に成形される

 

また家具メーカーとして最も重要なのは製品の品質。チップ化すると強度を高めるために凝縮する分、重たくなります。例えば天板1枚にしても、大きくすればするほど反る確率が高くなるのでそれをどう対処するか、小学校1年生の机が重たくていいのかなど、クリアしなければならない課題は尽きません。また、どんなに“未利用材を回収します、使用します”と言っても、当社が売らなければ社会貢献が持続できない。そのあたりの責任も強く感じています」(北川さん)

 

目指すは47都道府県での地産地消

まだスタートしたばかりの取り組みですが、今後の展開についてはどう考えているのでしょうか。

 

「最終的には47都道府県での地産地消を実現したいと考えています。それが実現できれば、輸送に関する課題が解決するだけでなく、新しい雇用も生みだせます。そして何よりも、自分たちの住む地域の課題解決につながりますし、学校などで子どもたちにとっては木育の一環にもなります。例えば、道の駅で地元の野菜を販売していたりしますが、商品棚や箱、商品を袋に詰め込むためのカウンターなどに未利用材を使用することも考えています」(北川さん)

 

「自治体をはじめ、一般のお客様の中にも、国産材にこだわる方は一定数いらっしゃいます。未利用材の家具は、正真正銘100%国産材ですし、これまでの国産材の家具よりも安価なので需要は見込めると思います。また、SDGsをはじめ社会貢献が当たり前となった昨今、未利用材を活用した製品ということで、企業にとっても導入しやすいのではないでしょうか。今回の取り組みは、社会貢献活動に寄与できることはもちろん、ビジネスとしての可能性にも期待しています」(白井さん)

 

実は同社では、環境課題の解決に向けた取り組みとして、「サーキュラーデザイン」思考による製品開発をしています。未利用材を使用した製品についてもそれは当てはまるそうです。

↑オカムラの製品開発におけるサーキュラーデザイン思考

 

「限りある資源をより長く有効に使用し、廃棄物の発生を最小化するものづくりを当社は目指しています。未利用材を使用した天板は接着剤を使用しているため、すぐには再利用とはなりませんが、ゆくゆくは廃棄される製品を材に戻し、製品に再生することも考えています」(北川さん)

 

国土の約7割を森林が占める日本だけに、同社の取り組みは、社会的にも大いに注目されそうです。

ばからしいからこそやれ! 防犯の常識を覆した実業家が語る、イノベーションの5つの秘訣

2023年2月、ものづくりに携わるプロたちが一堂に会するイベント「3DEXPERIENCE World 2023」が開催されました。そこで、一際大きな注目を集めたのが世界で活躍するイノベーターたちの講演。その中から今回は、世界初のwifi録画カメラ付きドアベルを開発し、ホームセキュリティのあり方を大きく変えたRing社のCEO、ジェイミー・シミノフ氏の講演を紹介します。現在そして未来のイノベーターたちに伝えたい、5つの成功の秘訣とは?

↑スピーチするRing社のジェイミー・シミノフCEO(画像提供/ダッソー・システムズ)

 

1: 他人に笑われることはイノベーターあるある

シミノフ氏が発明した録画カメラ付きドアベル誕生のきっかけは、自宅のガレージでした。

 

「我が家のガレージは裏手にあるため、来客があっても玄関のチャイムが聞こえません。いつも持ち歩いているスマートフォンで対応できたら便利だな、と思ったのがきっかけでした。そこで、自分で少々金属加工をしてカメラ付きのドアベルを開発したのです。妻にも好評でした」とシミノフ氏は語ります。

 

もともと家族のために作った発明品でしたが、そこから広がって2018年にはホームセキュリティ会社Ringを設立し、同年アマゾン社と提携。新進気鋭の起業家を紹介するテレビ番組Shark Tankでも紹介され、2023年にはスーパーボウルのCM進出も果たしました。しかし当初、周りの人は自分の研究にあきれた様子だったと言います。

 

「何かを真剣に開発している様子というのは、とてもばかげて見えるものです。他人に笑われるのは、イノベーターあるあるでしょう。僕も『君はドアベルなんて作っているのか?』と笑われたものです。当時ドアベルといえば、誰も気に留めない古ぼけた家の付属品でしたからね」(シミノフ氏)

 

2: 「誰もが知っている物を改良する」は成功率が高い

シミノフ氏は自分が成功した要因をどう分析しているのでしょうか?

 

「誰も気に留めないけれど、誰もが知っている物」を対象に選んだことが、成功した一因だとシミノフ氏は言います。「長く存在しているけれど注目されてこなかった物にイノベーションの光を充てるアプローチは、そうじゃないケースに比べて成功しやすいのです」

 

「台湾へ出張に行った際、多くの家で防犯用のスポットライトを設置していることに気づきました。そこで、ライトにカメラを追加したら防犯機能が格段にアップするだろうと思いついたのです。製造業者にデザインイメージがうまく伝わらず台湾に3~4回足を運ぶはめになりましたが、いまでは我が社の売れ筋商品です」と言うシミノフ氏。

 

「成功の秘訣は、『すでに世間に周知されている物・サービス』と『ばかげて見える発明』を掛け合わせること。僕は、誰でも知っているドアベルにテクノロジーをプラスしたことで大きな革命を起こすことができました」

↑「世間に周知されている物」と「ばかげた発明」を掛け合わせ生まれたRing(写真の製品は「Floodlight cam」。画像提供/ダッソー・システムズ)

 

3: ミッションを常に意識する

イノベーションを生み出すためには、発想法だけでは十分ではありません。

 

「イノベーターとして、自分のミッションはいつ何時でも忘れてはいけません。これは自分がRing開発に際して学んだことです。僕は自社製品が素晴らしいという自負がありますが、大事なのは商品じゃないのです。どんな世界を目指しているのか、というビジョンです」とシミノフ氏は熱を込めて話します。

 

「僕のミッションは、自宅近隣の犯罪率を下げることでした。単にカメラ付きドアベルを売りたかったのではなく、人々にとって意味のあるサービスを提供したかったのです。

 

大企業の役員たちを前に、プレゼンテーションを行った時のことです。僕は商品の性能は一切説明せず、この商品でどんな世界が実現するかを訴えました。『近隣の犯罪を減らし、ホームセキュリティの意義を変えられる』と。その結果、プレゼンが終わらないうちに『こんなプレゼンは初めてだ。君たちに投資しよう』と言ってもらえたのです。

 

我々の周りには常にあらゆる雑音があり、誘惑があります。売れるラインナップを増やすのは簡単ですが、それが本当に正しい判断なのか、いつも自身に問うべきです。売れる商品ではなく、消費者の生活クオリティを向上させるサービス・商品を提供する。そのミッションを貫くことで、長く愛されるブランドへと成長できるのだと思います」(シミノフ氏)

 

4: 高い目標と適度なストレス

情熱がほとばしるシミノフ氏ですが、ビジョンの描き方にはコツがあるようです。「僕が思うに、多くのイノベーターは目標が低過ぎます。絶対に達成できる目標なんて、つまらないでしょう。『不可能に見えるけど、必死にがんばれば何とか実現するかもしれない』くらいがちょうど良い。そうやって自分に負荷をかけて駆り立てることで、イノベーションへの道が開けるのです。

 

おいしいワインは、適度なストレスにさらされたブドウからできることをご存じでしょうか。水も肥料もたっぷり与えられ甘やかされると、ブドウは水っぽく味も薄くなります。もちろん枯れてしまうほど過度のストレスはいけませんが、適切なストレスをかけることで素晴らしい逸品ができるのです。

 

イノベーションやビジネスも同じことです。正しい方向に適切なストレスをかけることが、最高のイノベーションに繋がります」とシミノフ氏は力説します。

 

5: 顧客の声に全身全霊で向き合う

「商品開発にあたり、広く意見を聞くアンケートはおすすめしません。問題の核心がどこにあるのかがわかりにくく、方向性がぶれて収拾がつかなくなります。それよりも、実際に商品を使っている顧客の声にとことん向き合うべきだと思います。

 

Ringのパッケージには、僕のEメールアドレスが記載されています。顧客が何を求めているのか、真実の声を直接聞きたいからです。

 

例えば、今週(講演当時)販売開始となる車載カメラは、僕の発明ではなく、顧客の声から生まれた商品です。僕は車載カメラを商品化する予定は全くなかったのですが、『自宅の前で車上荒らしにあった』『近所で車の犯罪が多発している』といった意見に向き合う中で商品化に至りました。顧客の声は、商品開発において何よりも参考になる指標です」

↑情熱的なシミノフ氏の話に会場は盛り上がった(画像提供/ダッソー・システムズ)

 

近年のAIの台頭に、仕事を奪われるかもしれないと危機感を持つ人もいるでしょう。確かにAIはあらゆる業界において大きなインパクトを与え、イノベーションのスピードアップに貢献しています。しかし、シミノフ氏は以下のように力強く断言します。

 

「AIには、未来を形づくっていく力はありません。未来を変えるようなイノベーションを行えるのは、人間の、イノベーターの仕事なのです。僕たちが未来を創るのです。僕たちは、一緒に学び続けている仲間です。今日出会ったイノベーターから、プラットフォームから、たくさんのことを学んでほしい。同時に、あなたが世界の中心であること、あなたはユニークで素晴らしいことを絶対に忘れないでほしい。数年後、今度はあなたがこの舞台に立ち、どんなイノベーションで世界を変えたのかぜひ聞かせてください。それが私の願いです」

 

執筆者 / 長谷川サツキ

【1月23日から】ウクライナ難民の“今を知る”イベント「ウクライナ難民の暮らしの今」二子玉川 蔦屋家電で開催

1月23~29日、二子玉川 蔦屋家電2階 E-room 2にて、アイ・シー・ネット主催「ウクライナ難民の暮らしの今」が開催されます。開催時間は11~19時

 

同イベントは「写真パネル展」と、週末に開催される「ポップアップイベント」の2つのイベントで構成。写真パネル展では、隣国モルドバとルーマニアでの、ウクライナ難民の暮らしの状況や難民の子どもたちの教育環境について知ることができるパネルと、UNHCRの写真を展示。ドキュメンタリー写真家の森 佑一氏がウクライナ国内で撮影した写真もインタビュー内容と合わせて紹介します。無料で、期間中は常時開催。イベントブース来場者にはオリジナルロゴシールをプレゼントします。

 

ウクライナから約10万人が避難しているモルドバ。同国のワイナリーでは、ウクライナ難民が暮らしを続けていくために住居の提供や生活支援を行なっています。1月28日と29日のポップアップイベントは、ワインという身近なものを通じて、難民たちと“関わり”を持つことができます。イベントでは、東京・自由が丘にあるモルドバ産のワインや食品を販売している店舗が2日間限定で出店。売上の10%はウクライナ難民子ども支援プロジェクトに寄付されます。

 

また、5000年の歴史を持つモルドバワインの世界を楽しめるワインテイスティング会も開催。難民支援を行なっているワイナリーのワインを試飲できます。講師(ソムリエ)の遠藤エレナ氏よる、モルドバ国内の様子と、日本では珍しいモルドバ産のワインについての解説もあります。イベント参加は事前申し込みが必要で、参加費は1200円。所要時間は30分で、各日3回開催します。申し込み方法などの詳細はPeatixをご覧ください。

採用試験で学位は評価されなくなる!?「仕事」の近未来予測

現在、コロナ禍による社会の構造変化に伴い、ビジネスの世界は大きな変革期を迎えています。私たちの仕事はどう変わりつつあるのでしょうか? 官民協力の国際機関「世界経済フォーラム」の記事を参考にしながら、仕事の近未来について考えてみましょう。

↑私たちの仕事はこれからどうなる?

加速する大量退職と世界的IT企業のレイオフ

コロナ禍によるパンデミック終了後、労働者が職場に復帰することが難しくなっているといわれています。日々の生活が「通常」に戻った後、多くの人々が自分のキャリアを再評価し、仕事を辞める選択をするとの予測です。すでに米国では、テック業界とヘルスケア業界を中心に30~45歳のミドルキャリア世代で大量退職がトレンド化。企業にとって大きな痛手となっています。

 

その一方で、パンデミックに起因する景気減速により雇用が取り消されるなど、これまで成長分野とされていたテクノロジー企業のレイオフ(整理解雇)現象が加速しています。ここ2か月ほどで、世界的なIT企業であるツイッターやアマゾン、メタ(旧フェイスブック)も相次いで大量解雇を発表しました。業界構造やビジネスモデルの変化により、競争力や効率化を高めるために企業再編やビジネス再構築を目指すようになったのです。

 

新卒ではなく高スキル人材の採用へと舵切り

レイオフを行わない企業においても、従業員の生産性向上を求める動きが急速に高まりました。高度なデジタルスキルを持つ人材は世界的に不足しているため、人材獲得をめぐる競争も激化しています。

 

企業は競争力や効率化のために大規模な人員削減を実施した後、業界に関係なく、自社の収益に直接貢献できるデジタルスキルを持つ人材の採用を優先。短中期的な結果を出す必要性が増しているため、経験に裏打ちされたスキルがある人材の確保に積極的な姿勢を示しています。

 

こういった背景から目立ち始めたのが、新卒者の受け入れ減少。多くの企業が新卒者の未知のスキルや可能性に期待する姿勢をとらず、採用基準から学位を排除する動きが加速。熟練したデジタルスキルを持つ人材の評価を重視する採用へと、大きく舵を切りました。

 

そのため若者は社会に出る前に、現場でデジタルスキルの経験を積むことが必須となったのです。インターンシップや見習いプログラムなど、在学段階で仕事に直結した学習機会を受け入れることが求められています。

 

根底から変わる雇用形態や人材マネジメント手法

パンデミックによって仕事の形態は大きく変化し、リモートワークを活用すれば業界や国境を越えて働けるようになりました。デジタルテクノロジーの恩恵により、労働者が仕事を掛け持ちしたり、一度に複数の仕事に就いたりすることも可能になったのです。

 

米国労働統計局の調査によれば、現在点で最も若い労働者は生涯で12〜15の仕事をすると予測されるとのこと。そのため、企業も個人もより広くグローバルな視点で仕事を評価し、キャリアやスキルの流動性を見据えた働き方にシフトする必要があります。

 

また、ウーバーイーツなどデジタルプラットフォーム企業の台頭は、雇用のルールを根底から変えました。同社は世界中で約500万人のドライバーに仕事の機会を創出しており、同じ様に他社のデジタルプラットフォームを利用して生計を立てるフリーランサーも増加しています。

 

このように、企業と雇用関係を結ばず自らのスキルと知識で生計を立てる労働者は、今後も増える見込み。企業と労働者が共に支えてきたこれまでの雇用形態は、次第に弱体化していくでしょう。

 

企業が採用に取り組む手法についても、見直しが進むことが予想されます。従来のように人事部門が従業員を管理するのではなく、「人材」の戦略チームが人事ニーズを満たすといったマネジメント手法にシフトすると言われています。また、仕事のパフォーマンスを測定する分析ツールを活用し、職場が抱える人材の全体像を把握・評価するようになる可能性もあるそう。

 

もはや多くの企業は従業員がフルタイムでオフィスに戻る必要はないと考えています。パンデミック前の勤務形態が再現されることはなく、柔軟性がありバランスの取れた効率的な働き方が推奨されていきそうです。

 

デジタルスキルは雇用されるための必須能力に

デジタルテクノロジーの浸透は、仕事の世界に大きな変化をもたらしました。農業や製造、金融、さらにメディアまで、あらゆる分野でテクノロジー企業への転換が進んでいます。

 

こういった動きからもわかるように、より高い競争力を必要とする企業にとっては、優れたデジタルスキルを有する人材の確保が急務。国際的な流れとして、デジタルスキルは労働者に必須な「エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)」になりつつあるのです。

 

これからの時代における「エンプロイアビリティ」は、コミュニケーション力など従来の「ソフトスキル」だけでは足りません。AIやロボット工学、デジタルトランスフォーメーションなどが職場に浸透するにつれて、熟練したデジタルスキルがますます求められるようになるでしょう。

 

執筆者/渡辺友絵

子どもと過ごす時間がAIで増える! 2023年以降のテクノロジーと世界予測

2023年以降、テクノロジーはさまざまな分野でどのように発展にするのでしょうか? 世界のエリートたちが出席するダボス会議を運営する世界経済フォーラムがまとめたレポート(※)を抜粋しながら、未来の姿を探ります。

※ Saemoon Yoon. 17 ways technology could change the world by 2027. World Economic Forum. 10 May 2022. https://www.weforum.org/agenda/2022/05/17-ways-technology-could-change-the-world-by-2027/

↑どんな未来が見える?

Web3.0の時代へ

1990年代、インターネットが普及し始めた初期にあたるWeb1.0は、発信する側と受信する側が固定された限られた人でした。それから、高速で通信できるようになり、2000年代半ばころから誰もが自分で発信できるようになっていったのが、Web2.0 と呼ばれる時代です。しかし、現在の主流のかたちであるWeb2.0は、利用するのに個人情報の入力の必要がありましたが、分散型インターネットと呼ばれるWeb3.0ではブロックチェーンなどの技術を活用して情報を分散管理するため、個人情報漏洩のリスクが低くなりセキュリティが向上すると考えられます。オンラインでの各種取引が一般的になってきた現代では、Web3.0がスタンダードになっていくと考えられます。

 

AIによって教育が劇的に変わる

インターネットの普及によって、遠方に暮らす子どもがオンラインで教師とつながることも可能になった現代。ここにAIの技術が加わることで、教育そのものに対する考えが一新されると言われています。例えば、子どもが学習している内容を基に、理解しているコンテンツや興味を持っている分野に合わせて、次の学習内容を提示。子どもたちはより効率的に学習できるようになるかもしれません。

 

また、教師や保護者にとってもAIは良い影響をもたらすと言われています。AIのアドバイスをもとに、子どもへ的確に学習のサポートを行い、煩雑なタスクを機械に任せることで、より子どもと向き合う時間を捻出することが可能になるでしょう。学校や家庭での教育のあり方も、これまでの常識とは変わっていくかもしれません。

 

アパレル製品の製造期間を劇的に短縮

イノベーションはアパレル業界にも大きな変革をもたらすと考えられます。これまでアパレル業界で課題だったのが、過剰な生産による大量の廃棄・返品が生まれていること。製品が余るとセールで値下げして、利益率が低下することになり、メーカーにとってうれしいことではありません。これを解決するためには、オンデマンドで必要な分だけを生産できれば良いのですが、現在の製造モデルでは、注文から実際に製品ができあがって販売するまでに数か月の時間がかかるうえ、近年ではサプライチェーンの混乱も問題に。しかし、これからは実際のサンプルを制作する必要がない3Dモデリングや、パターン(型紙)を作る工程が不要な3Dプリンターの導入など、アパレル製品の製造にデジタルテクノロジーを活用すれば、数か月かかっていた製造の期間を大幅に短縮できると考えられています。必要な分だけを短期間で製造することで、不要な廃棄を減らし、サプライチェーンでの温室効果ガス排出量の削減などにもつながると期待できます。

 

不妊治療にAIを活用

さまざまな分野で活用が始まっているAIは、不妊治療にも活用されていく模様。2030年までに不妊に悩まされいる人は、世界で10億人以上に上っていると予測されています。そして、不妊治療で一般的に行われる体外受精は、コストが高いうえ、何度も試みることになると、治療を受けるカップルにとって大きな負担となります。そんな体外受精へ進むときの意思決定が、医師の判断に依存しているなか、AIの力を借りようというのです。さまざまな条件から、どのような治療法が最適なのかをAIが判断しアドバイスすることで、より成功率が高まり、治療を受けるカップルの負担を減らせる可能性があるのです。

 

先進国はもちろん、途上国の経済発展にも欠かせないこれらのテクノロジー。ひと昔前にはインターネットが存在しなかったのに、今日ではスマートフォンを使って、誰もがいつでもネットにアクセスできるようになり、生活スタイルが一変しました。それと同じように、今後も各種のテクノロジーが私たちの生活を大きく変えていくことになるのは間違いないでしょう。

人の縁は匂いと関係する。2022年に科学でわかったこと

科学の世界では2022年もさまざまな発見がありました。私たちの身近な事柄に焦点を絞りながら、この1年間に取り上げた研究を振り返ります。

↑2022年も新しい知識が生まれた

「男性外科医×女性患者」の組み合わせは危険!?

患者と外科医の性別の組み合わせと手術結果の関係について、カナダのトロント大学の研究チームが調べました。手術後に合併症などの“異変”が起きた確率を調べると、「男性外科医×女性患者」の組み合わせが最も多いことが判明。この組み合わせの場合、手術後30日間に死亡する確率が32%に上がっているのです。もちろん、手術結果には医師と患者のコミュニケーションや前後のケアなど、さまざまな要因が関係するもの。とはいえ、この問題は今後も調査が必要かもしれません。

 

【詳しく読む】

手術後の死亡確率が32%も高い! 実は危険かもしれない「男性外科医×女性患者」の組み合わせ

 

「AIが作った顔」は本物より信頼しやすい

「GAN(敵対的生成ネットワーク、Generative adversarial networks)」と呼ばれる画像生成AIプログラムが、人には判別できないほど巧妙で本物に近い人の画像を作れるようになってきています。カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、400人分の顔写真を見せて、本物かGANが作った偽物の画像か判別できるかテストを行いました。その結果、正解率は48.2%と50%を下回る結果に。しかも顔写真を見て「信頼できる度合い」を7段階で評価したところ、実在する人物のほうが低く評価され、逆に最も信頼できると評価された人はすべてAIが生成した偽物の顔だったのです。AIは平均的な顔を作るため、信頼しやすく感じられるのかもしれません。

 

【詳しく読む】

されど8%。「AIが作った顔」は本物より信頼しやすいことが判明

 

スッキリ起きるために最適な「目覚まし音」

毎朝気持ちよく起きるためには、目覚ましにどんな音を設定すればいいのでしょうか? そんな疑問に答えるために、オーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学の研究チームがさまざまなアラーム音で目覚めて、眠気レベルなどを評価する実験を行いました。その結果、楽曲などのメロディータイプで目覚めると眠気を感じにくく、逆に警告音で目覚めると脳の活動が混乱する可能性が判明。朝が苦手な人は、強い音で目覚ましを設定しがちかもしれませんが、それでは逆に眠気を増しているのかもしれません。

 

【詳しく読む】

1日のスタートが変わる! スッキリ起きるために最適な「目覚まし音」とは?

 

魚は計算できる生き物だった

簡単な計算をできるのは、ごく一部の動物に限られていると考えられていますが、魚にもそんな能力がありました。ドイツのボン大学の研究チームの実験で、対象となった魚は、これまでに物の数を見分けることがわかっていたアカエイと熱帯魚のシクリッド。青色と黄色の絵を見せて、青なら「1を足す」、黄色は「1を引く」というルールを覚えさせていくと、アカエイもシクリッドも、1を足したり引いたりすることができたのです。物のかたちや数を認識しながら計算するのは複雑な思考能力が必要。魚は高度な能力がないと過少評価されてきましたが、実は私たちが思っている以上に賢い生き物なのかもしれません。

 

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賢い生き物だった! 魚は計算できることが判明

 

「起業家」の顔のパターン

世界中の起業家の顔を解析したキプロス大学の研究チームによると、起業家の顔にはある特徴が見られることがわかりました。それは、頬骨が隆起して左右対称であること。これは、先日ツイッターを買収して話題になったイーロン・マスクにも当てはまります。ただし、この共通点とビジネスの成功には関連性がないことも判明。つまり、起業家に近い顔の持ち主だからといって、必ずしも起業して成功するとは限らないようです。

 

【詳しく読む】

イーロン・マスクにも共通点あり!起業家の「顔」にはパターンがあった

 

71%の確率で「同じ匂い」がしたら友達になる

人と初めて出会ったとき「すぐに打ち解けた」「なんだか仲良くなれる予感がした」なんて経験はありませんか。イスラエルにあるワイツマン科学研究所の大学院生は、「動物が相手の匂いを嗅ぐように、人は無意識のうちに他人の匂いを嗅いでいるのではないか」という仮説を立てました。そして、短期間で友人になった同性のペアを対象に、匂いのサンプルを集めて比較。このサンプルを機械と人で判定したところ、友人同士は同じような匂いを持つことがわかったのです。私たちは似たような匂いを持つ人と積極的に交流しており、その正確性は71%にもなるそう。人は動物のようにあからさまに匂いをくんくんと嗅ぎまわることはしませんが、無意識で匂いを嗅いで判断材料にしているのかもしれません。

 

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同じ「匂い」がしたら友達になる。当たる確率は71%!

 

2023年もビックリさせるほど面白い発見が生まれることを期待しましょう。

テクノロジーによる管理が浸透! 2022年のサステナビリティ

コロナ禍で3年目を迎えた2022年も、世界各国ではサステナビリティやSDGsの動きが進みました。この1年間取り上げてきたさまざまな記事の中から、北京冬季オリンピックをはじめ、都市再開発やカーシェアリング、フードマイレージの取り組みについて改めて振り返ります。

↑世界はサステナブルになった?

【中国】冬季“グリーン”オリンピックへの挑戦

近年のオリンピック・パラリンピックは環境への配慮だけでなく、大会を通じて持続可能な社会づくりを推進する場となっています。2022年2月に開催された北京冬季オリンピックも、「低炭素エネルギー・低炭素会場・低炭素交通」という三本柱の「グリーン・オリンピック」の実現に挑戦。会場のあちこちで、二酸化炭素排出を抑えるためのさまざまな工夫が見られました。

 

前年の東京オリンピックではメイン会場の国立競技場を建て替えましたが、北京冬季オリンピックでは2008年夏季大会のメイン会場だった「北京国家体育場(通称「鳥の巣」)」を再利用。改装を施しただけで使い、建物の周りに張り巡らされた発電ガラスはソーラーパネルの役割も果たしました。水泳会場も建て替えず、冬はカーリング、夏はプールとして使えるように工夫した改修を行っただけでした。

 

会場の低炭素化への取り組みで特に注目を集めたのが、排出された二酸化炭素を冷却材として再利用できる製氷技術。会場の氷上温度差を常に0.5℃以内にコントロールすることで、選手たちのパフォーマンス効果を上げるように設計されています。

 

敷地内の移動には電気自動車だけでなく1000台以上の水素自動車を投入。北京オリンピックにおける新エネルギー車の利用率は85%以上になるなど、「低炭素交通」の実現にも踏み出しました。

 

【詳しく読む】

中国の大奮闘! 北京冬季オリンピックに見る「低炭素化」への取り組み

 

【都市再開発】ミラノ市のゼロカーボン・ロジェクト

イタリアのミラノ市はサステナブルなまちづくりを目指し、3つの都市再開発プロジェクトに乗り出しました。同プロジェクトの「リネスト」は、旧鉄道の貨物ターミナルだった約7万平方メートルの敷地に約400戸の住宅と約300戸の学生住宅を建設。再生可能エネルギーで稼働させ、2050年までにゼロカーボン化を目指します。

 

注目を集めているのが「第4世代地域暖房(4GDH)」のシステム開発で、自然エネルギーや廃熱を利用した温水を建物の給湯や暖房に使うのが特徴。雨水を再利用してかんがい用水として使用するほか、CO2吸収に向けて周辺地域面積の60%を緑地化する方針です。

 

旧鉄道エリアに約90戸の集合住宅を建設する「ボスコナヴィリ」プロジェクトは、屋根を太陽光発電パネルで完全に覆い地熱エネルギーを利用するように設計。住民共有の電動自転車とスクーターを設置することでCO2の排出を抑え、 樹木や植物で敷地を囲みCO2を吸収します。雨水を再利用する自動かんがいシステムも導入される予定。

 

さらに、同地区の旧ポルタ・ロマーナ駅エリアには、2026年に開催される冬季オリンピックの選手村を建設し、大会終了後には学生用公営住宅に変える予定です。

 

イタリア最大の都市再開発プロジェクトとされる「ミラノセスト」は、150万平方メートルの広大な旧工業地帯を持続可能な都市へと再生させるもので、タワーオフィスや商業施設、ホテル、病院などが建設されます。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方をもとに建物用の資材や原材料を決めているほか、対象地域全体に1万本の木を植える予定。緑地化により年間48トンのCO2が吸収され、歩道橋の上に設置した太陽光発電パネルによって利用量の半分を再生可能エネルギーで賄います。

 

【詳しく読む】

冬季五輪の選手村は学生向け住宅に。ミラノが挑む3つの「サステナブル住宅プロジェクト」

 

【カーシェアリング】ドイツで進む「乗り捨て型」

ドイツでは都市部を中心にカーシェアリングが急速に広がっています。人気の理由は、出発したステーションに返却する必要がない「乗り捨て型システム」。駐車禁止の標識が置かれた場所以外は、市内路上の駐車エリアでの乗り捨てが可能なのです。

 

カーシェアリングのプロバイダーと各自治体が連携したため、路上でなく有料の駐車場に乗り捨てた場合でも料金は無料。環境や交通量の面から少しでも自家用車の保有を減らしたいと考えた自治体が、カーシェアリングを推奨するようになりました。

 

24時間年中無休で月額料金はなく、利用代金は1分あたり0.09ユーロ(約13円※)から。数分でも数日でも利用可能で、事前にアプリで予約すれば指定の場所まで届けてくれます。

※1ユーロ=約146.24円で換算(2022年12月16日現在)

 

一般的にドイツ人はエコ意識が高いため、プロバイダーはCO2を排出しないゼロエミッションカーの導入に積極的。これらのクルマはカーシェアリング市場の23.3%を占め、中でもバッテリー式電気自動車が多く利用されています。このように、乗り捨て型カーシェリングはユーザーの利便性を実現した環境負荷を低減できるものなのです。

 

【詳しく読む】

ドイツのカーシェアリングは「乗り捨て型」が75%! もはや都会暮らしには不可欠の存在に

 

【フードマイレージ】ロンドン発、未来の食料供給法

ロンドンでは、フードマイレージ(食料が生活者に届くまでの輸送距離)をとことんカットした都会育ちの野菜が注目を集めています。スタートアップ企業がロンドン市内で貨物コンテナを使った未来型の「垂直農園」に着手し、食品輸送で発生する排気ガスの大幅抑制につなげています。

 

「Vertical farming(バーティカル・ファーミング)」と呼ばれる垂直農園は、未来の食料供給法としても注目を浴びています。垂直に積み上げた階層構造の室内で、AIによって光・温度・養分などを細かくコントロールされた環境下で農産物を育てることが特徴。

 

従来の農業とは異なり、天候に左右されず、限られたスペースで、農薬を使わずに1年中効率よく栽培できるのが大きなメリットです。水の使用量も非常に少なく、照明などの電源も太陽光や風力といった自然エネルギーで賄うことができ、栽培にかかる資源を最小限に抑えることができます。レタスやバジルなどの葉野菜やハーブが中心で、収穫後24時間以内にEV車や自転車によって注文先に届けられます。

 

すでに老舗百貨店やミシュラン星レストラン、高級青果店など、多くの高感度ショップへの卸売りを展開。大手スーパーからの問い合わせも相次いでおり、宅配サービスを利用する個人のサブスクリプション契約も人気。新鮮かつサステナブル、そして配達方法もエコな無農薬野菜というアイデアは、ロンドン市民の関心を集めているようです。

 

【詳しく読む】

貨物コンテナの活用で都市を変える! ロンドンで拡大する「垂直農園」

 

各国における最近のサステナビリティ施策を見ると、新たなシステム運用やAIの活用など、デジタル技術が浸透していることがわかります。その一方で、人が重視する利便性やエコ意識を利用した取り組みも進んでおり、この両輪を活用することが持続可能な社会の実現につながるのだということを改めて感じます。

毎週5分で完売する「陶器の街のクッキー」が地域課題解決の理想形であるワケ

わずか1日足らずで100個を完売した、ふるさと納税の返礼品があります。それは、長崎県のほぼ中央に位置する波佐見町の「HASAMI TOBAKO COOKIE」。波佐見産の米粉が原料のクッキーを、名産品である波佐見焼の陶器箱に入れた商品で、実は、波佐見焼の廃石膏型を再利用した地域内循環モデルとしても注目されています。

 

年間約700tもの廃石膏型の処分が町の課題に

有田焼で有名な佐賀県有田町と隣接する長崎県波佐見町は、江戸時代から陶磁器の生産地として知られ、現在も日用食器の生産が非常に盛ん。全国シェア約17%ともいわれ、陶磁器の醤油差しや、「セーフティわん」に代表される強化陶磁器が一世を風靡しました。そんな陶磁器の町で以前から問題になっているのが、波佐見焼を作る際に使用される石膏型の処分です。

↑「くわらんか碗」として江戸時代に普及し、現在も日用陶器として知られる波佐見焼。デザイン性にも優れ、「G型しょうゆ」はグッドデザイン賞を受賞した

 

「日用陶磁器の生産が多い波佐見焼は、大量生産する関係もあり、石膏型が多く使われます。石膏型は100回ぐらい使うと劣化し、廃棄されるのですが、年間推定約700tもの廃石膏型が排出されてきました。これまでは町が設置した産業廃棄物処理施設内の専用廃棄場に埋めていたものの、1999年に廃棄場が満杯に。新たな処理場を作るか、中間処理してリサイクルするか検討され、多額の費用が必要なことと、環境に対する時代背景などもあり、リサイクルを選択しました。ところが、リサイクルを始めて半年後、埋め立てを専門とする業者が進出してきたことでリサイクルの機運はいったんしぼんでしまったのです。しばらくは業者による処理が行われましたが、5~6年前、県内の埋め立て処理場から波佐見の石膏の受け取りが拒否されて利用できなくなり、廃石膏型の処理問題が再浮上。専門家を招き、本格的にリサイクルに取り組むことになったのです」と語るのは波佐見町役場の澤田健一さん。

↑波佐見町役場 商工振興課  課長 澤田健一さん

 

「まずコンプライアンスについて話し合いを行い、その後どういう形でリサイクルするのが賢明か専門家を交えて議論しました。他県ではコンクリートの材料に使われているケースもあり、土木や建築資材への活用も検討しましたが、調査研究を経て、波佐見町は県内有数の米の産地であること、農地活用が全国各地で実証されていて有効性が確認できたこと、そして廃石膏型を砕くだけなので生産コストも抑えられるという理由から、田畑への土壌改良剤としての再利用が決定しました」

 

地域内循環モデルを確立しコラボ商品を開発

しかし、土壌改良剤への再利用だけでは終わらなかったのが波佐見町。

 

「波佐見町は農業もかなり盛んで、半農半陶の町とも言われています。観光イベントの時も、農業と陶器を併せた企画を行うほどで、この2つの結びつきが重要だという強い想いが町にはありました。そこで、廃石膏型から作られた土壌改良剤を使用し、米粉専用米のミズホチカラという品種を生産。その米粉を材料とした食品と波佐見焼とのコラボ商品を開発すれば、“波佐見の食の地域内循環モデル”ができるのではないかと考えたのです」

↑波佐見町の食の地域内循環のモデル。地域の中で資源を循環させることで新たな特産品が生まれた

 

2019年から30アールの田んぼを使って実証実験を開始。専門家による長年にわたる石膏型の再利用研究から、石膏に含まれる硫酸カリウムに、根の張りをよくしたり、初期生育をサポートする効果があることがわかっていました。こうして育った米を米粉にして、町内にある鬼木加工センターで、地元のお母さんたちの手によるクッキーを製作。波佐見焼の陶箱に入れて「HASAMI TOBAKO COOKIE」として販売しました。

↑「HASAMI TOBAKO COOKIE」。クッキーを食べた後、容器は食器やアクセサリー入れとして使用可能

 

「観光協会のオンラインサイト『STORES』で毎週土曜日に48個限定で販売しました。すると今年度はじめには、開始5分で完売するほどの大人気商品に。その後、ふるさと納税の返礼品にしたところ、こちらも100個が1日で完売。すぐに完売するので生産量を増やしたかったのですが、陶器の生産が追いつかず……。結婚式の引き出物に使いたいと依頼があっても、残念ながら対応できませんでした。そこで、生産力がある窯元とタイアップしてクッキーの新シリーズを追加。来年度のふるさと納税分も含め、少しずつ販売数を増やしていく予定です」

 

環境への意識や作る責任を根付かせる

かくして、波佐見町のチャレンジは、予想以上の好結果となりましたが、当初は、廃石膏型の排出元である窯元は「面倒くさい」と非協力的。農家からも「焼き物のゴミを田んぼにまくなんてどういうつもりだ」と反発も多かったそうです。

 

「今でこそ廃石膏型や商品として売れないB級品、陶器の欠片などの廃棄処分を問題視し、個人でリサイクル活動をする方もいますが、当時は窯元や農家の方たちの理解を得られず、2~3歩進んでも5歩後退するような感じでした。でも地道に環境に対する意識やコンプライアンス、そして作る責任について説き、納得していただいたのです。最も強く反発していた農家の方も、実証実験に協力的となり、今では多くの田んぼを使わせていただいています。その方の分も含め、2022年は、ミズホチカラの栽培に1ヘクタール、食用米用に1ヘクタールと、合計2ヘクタールの田んぼで実証実験を行っています。

↑米粉に加工するのに適したミズホチカラ

 

↑廃石膏型から作った土壌改良剤

 

↑土壌改良剤の散布風景

 

実は石膏型に含まれる硫酸カルシウムは、稲よりもジャガイモの育成に効果的だそうで、2021年から、長崎県の農業技術開発センターとジャガイモでの実証実験もスタートするなど、いろいろな可能性を探っているところです」

 

地域内循環モデルの第2弾も登場

土壌改良剤を使った実証実験は順調で、陶箱入りクッキーの生産体制も整ってきた今、次のステップをどう考えているのでしょうか。

 

「現在、肥料登録の申請を行っています。2021年12月に肥料取締法が改正され、産業廃棄物をベースとした肥料を登録できるようになりました。農作物の生産者は、育成の段階で、使用した肥料を細かく記録しなければなりません。販売ルートの確保という課題はありますが、波佐見町の土壌改良剤が正式に登録されれば、肥料として全国に販売できます。価格についても、元々、お金を払って廃棄していたものですので、安価で提供できるのではないかと思います。また併行して、建築素材への再利用も進めています。こちらはJIS規格が取れるように準備をしている段階です」

 

さらに町では、クッキーに続く地域内循環モデル第2弾の販売を11月から開始。土壌改良剤でオリジナルブランド米『八三三(はさみ)米』を育て収穫した米と、波佐見焼のご飯茶碗をセットにした『八三三米くらわんかセット』です。茶碗は、プロジェクトに賛同した14の窯元がデザイン。“どろんこ”“内外十草”“波佐見ドット”など、個性溢れるデザインになっていると言います。

↑14の窯元が賛同。八三三米2合、ご飯茶碗、箸置き、波佐見町の郷土料理のレシピがセットになっている

 

「今でこそSDGsという言葉をよく耳にしますが、これまで町の人たちに“廃石膏型”“SDGs”と言っても、あまりピンときていませんでした。しかし今回、窯元や農家、そして町を挙げて取り組んだことで、多くの人たちに “作る責任をしっかり果たすクリーンな産地”という意識づけができたと実感しています。以前から、波佐見町には“もったいない”という精神が根付いていました。これはSDGsに通じる部分が多々あります。これからも、そうした意識を持って取り組みたいと思います」

 

課題解決に地元の特性を活かし、地域内循環を成功させた波佐見町のモデルケースは、多くの自治体にとっても参考になるのではないでしょうか。

 

弁当こそ日本の芸術文化! 世界105か国に「ベントー」を届ける京都のフランス人

観光立国として日本が世界に誇れる物は何があるのか? 普段の日常生活に溶け込んでいる独自の文化や慣習の中に埋もれている物はまだまだ存在しているはずであり、日本各地で受け継がれている伝統文化の中から世界に羽ばたく商品が出現してくる可能性も秘められていることでしょう。日本人にはありふれた物であっても、外国人には新たな驚きや感動を与えることがあるからです。

↑取材に応じてくれたBento&coのフランス人スタッフの方

 

その一例が京都市にありました。2008年から弁当箱専門店「Bento&co」が、日本在住のフランス人らにより運営されています。現在までに世界105か国から注文を受けており、伝統的な曲げわっぱや、華やかな和柄が散りばめられた弁当箱など、日本独自の魅力に加えて、外国人の視点でどのようなデザインや形状が海外で喜ばれるかを思案した商品ラインナップが展開されています。日本人の視点からは当然のものと思われてきた弁当文化にビジネスチャンスを見出した外国人ならではの発想とも言えるでしょう。

 

数年前に筆者は、日本の観光業および文化に造詣が深い安田彰氏(※)と日本の弁当文化に関して議論したことがあります。欧米に在住経験もある安田氏は、日本が海外に誇れるユニークな物の中で弁当の右に出るものはないと大絶賛。筆者自身も過去に外資系企業に長年勤務し、外国人が日本の弁当に驚嘆する場面に幾度となく遭遇しました。多彩なレシピや盛り付けはもちろん、箱に詰められた日本人独自の感性や美意識、さらに器においても実用性や芸術性が追求されてきた弁当は、日本の盆栽や生け花にも通じる小空間におけるこだわりが散りばめられているのです。

※安田 彰(やすだ・あきら)氏:株式会社JTB取締役、アメリカ法人JTB Americas副社長、JNTO(現・日本政府観光局)理事、亜細亜大学経営学部教授を歴任

 

海外にもランチボックス文化は存在しており、会議の合間や旅の移動時間などの特別な状況でしばしば見られます。しかし、日本の弁当文化は日常生活の中により深く根ざしており、私たちは特別なイベントや旅行に加えて、日常生活でコンビニや弁当専門店などを利用するとき、創意工夫が凝らされた多彩なレシピや容器を選ぶことができます。日本に住んでいれば、さまざまな場面で遭遇する弁当や弁当箱に着目し、母国を含めて海外に紹介したいと考えるのは、日本のライフスタイルに感動した外国人の発想としては当然のことなのかもしれません。

↑外国人観光客の間で人気が高い弁当箱の一つ

 

日本の弁当には、現代に至るまで非常に長い歴史があり、平安時代前期に紀貫之が書いた『土佐日記』の中にも「破籠(わりご)」と呼ばれる、現在の弁当箱に相当する容器が登場しています。また、著名な十字仕切りのある松花堂弁当は、江戸初期の文人、寛永の三筆の一人である松花堂昭乗に由来しているとされており、日本の名料理店「吉兆」の創始者・湯木貞一によって現在の形に昇華されました。普段の生活の中で何気なく使っている弁当箱は、長い歴史を経て多種多様な形に発展してきましたが、その過程で実用性に加えて器に彩りを添える文化が育まれてきたのです。

 

はるか昔から日本の食文化の中で重要な位置を占め続けてきた弁当。観光立国を目指すこの国にとって、弁当は私たちの代表的かつ外国人にとって魅力的なライフスタイルであることを、京都の弁当箱専門店は示唆しているのです。

 

プレゼントは「包み」にも心配りを。世界が驚く日本の「風呂敷」文化

年末年始は贈り物の季節。大切な人へのプレゼントは丁寧に包んで渡したいと思う人は少なくないでしょう。そこで考えてみたいのが風呂敷。日本国内の歴史的資料や芸術作品にも頻繁に登場してきたこの布は、実用品や贈答品として、さまざまな用途で使われてきました。この伝統文化は時代に合わせて変化しており、今日ではその価値が国内外で見直されているのです。

↑京都の舞妓をモチーフにしたポップな風呂敷「をどりをどり」

 

そもそも日本人は古くから包み物を大切にしてきました。勅撰の歴史書『続日本紀』には「天下百姓右襟」とあり、養老3年(719年)に衣服の袷の方向が法令で定められたのです。着物の着方が法律で定まり、それを基にしながら、包みの方向が慶事は右包み、弔事は左包みと定着していきました。縁起を重視した日本人の伝統や風習は、無言の志として相手を思いやる気持ちが表現されていますが、慶弔や贈答における包み方の作法は現代でも受け継がれています。

 

「風呂敷」の名称は、戦国から江戸時代にかけて、特に銭湯における湯具としての風呂敷包みから広まったと言われています。江戸時代の文学人、井原西鶴の作品にも度々登場していますが、当時の木綿風呂敷は、徳川家康の遺産目録にも(包み物ではなく風呂の敷物として)含まれていた高級品でした。大名をはじめとする限られた人々に愛用された風呂敷は、この時代に大衆の間でも爆発的に普及していきます。その後、明治時代に平民が苗字や家紋を持つことを許されてからは、各家の紋章デザイン文化が隆盛し、さらに長寿や子孫繁栄の象徴とされる唐草文様の風呂敷が大衆に人気を博しました。

↑盗人ではなく、実は繁栄の象徴だった唐草模様の風呂敷「STRIPE / KARAKUSA」

 

現在でも風呂敷を見かける頻度が高い場所は京都でしょう。京都には歴史のある風呂敷メーカーや加工業者が多数存在しており、風呂敷文化の復活と普及を目的とした日本風呂敷協会が本部を構えています。包み方教室やデザインコンペを定期的に実施するなど、同協会はさまざまな取り組みを行なってきました(なお、この協会の会長は宮井株式会社の宮井宏明社長が務めています)。

 

確かに生活習慣の欧米化により、風呂敷を日常生活で使う日本人は多くないでしょう。しかし、近年では環境保護や大量廃棄といったグローバルな問題を背景に、サステナビリティの観点から風呂敷が国内外で脚光を集めるようになりました。実際、海外では風呂敷の活用方法を知るためのワークショップが開催されています。風呂敷が持つ運搬具としての柔軟性やスペースを取らない簡易性など、機能性の高さに驚いた人もいると思われますが、その一方で、外国人の中には風呂敷をスカーフとして身に纏う人もいるそう。外国人だからこその発想と言えますが、風呂敷には普遍性があるのです。

↑ロングセラーの風呂敷「荒磯」

 

このように、風呂敷には長い歴史があり、その価値は世界的に再発見されつつあります。風呂敷の中には、時代に合わせて新しいデザインを取り入れるものもあれば(例:1枚目の画像の「をどりをどり」)、ずっと変わらないロングセラーもあります(例:3枚目の画像の「荒磯」)。不易流行を体現した風呂敷は、日本文化の金字塔なのです。今度のプレゼントは風呂敷で包んでみてはいかがでしょうか?

 

取材協力/宮井株式会社(https://www.miyai-net.co.jp/

プレゼントは「包み」にも心配りを。世界が驚く日本の「風呂敷」文化

年末年始は贈り物の季節。大切な人へのプレゼントは丁寧に包んで渡したいと思う人は少なくないでしょう。そこで考えてみたいのが風呂敷。日本国内の歴史的資料や芸術作品にも頻繁に登場してきたこの布は、実用品や贈答品として、さまざまな用途で使われてきました。この伝統文化は時代に合わせて変化しており、今日ではその価値が国内外で見直されているのです。

↑京都の舞妓をモチーフにしたポップな風呂敷「をどりをどり」

 

そもそも日本人は古くから包み物を大切にしてきました。勅撰の歴史書『続日本紀』には「天下百姓右襟」とあり、養老3年(719年)に衣服の袷の方向が法令で定められたのです。着物の着方が法律で定まり、それを基にしながら、包みの方向が慶事は右包み、弔事は左包みと定着していきました。縁起を重視した日本人の伝統や風習は、無言の志として相手を思いやる気持ちが表現されていますが、慶弔や贈答における包み方の作法は現代でも受け継がれています。

 

「風呂敷」の名称は、戦国から江戸時代にかけて、特に銭湯における湯具としての風呂敷包みから広まったと言われています。江戸時代の文学人、井原西鶴の作品にも度々登場していますが、当時の木綿風呂敷は、徳川家康の遺産目録にも(包み物ではなく風呂の敷物として)含まれていた高級品でした。大名をはじめとする限られた人々に愛用された風呂敷は、この時代に大衆の間でも爆発的に普及していきます。その後、明治時代に平民が苗字や家紋を持つことを許されてからは、各家の紋章デザイン文化が隆盛し、さらに長寿や子孫繁栄の象徴とされる唐草文様の風呂敷が大衆に人気を博しました。

↑盗人ではなく、実は繁栄の象徴だった唐草模様の風呂敷「STRIPE / KARAKUSA」

 

現在でも風呂敷を見かける頻度が高い場所は京都でしょう。京都には歴史のある風呂敷メーカーや加工業者が多数存在しており、風呂敷文化の復活と普及を目的とした日本風呂敷協会が本部を構えています。包み方教室やデザインコンペを定期的に実施するなど、同協会はさまざまな取り組みを行なってきました(なお、この協会の会長は宮井株式会社の宮井宏明社長が務めています)。

 

確かに生活習慣の欧米化により、風呂敷を日常生活で使う日本人は多くないでしょう。しかし、近年では環境保護や大量廃棄といったグローバルな問題を背景に、サステナビリティの観点から風呂敷が国内外で脚光を集めるようになりました。実際、海外では風呂敷の活用方法を知るためのワークショップが開催されています。風呂敷が持つ運搬具としての柔軟性やスペースを取らない簡易性など、機能性の高さに驚いた人もいると思われますが、その一方で、外国人の中には風呂敷をスカーフとして身に纏う人もいるそう。外国人だからこその発想と言えますが、風呂敷には普遍性があるのです。

↑ロングセラーの風呂敷「荒磯」

 

このように、風呂敷には長い歴史があり、その価値は世界的に再発見されつつあります。風呂敷の中には、時代に合わせて新しいデザインを取り入れるものもあれば(例:1枚目の画像の「をどりをどり」)、ずっと変わらないロングセラーもあります(例:3枚目の画像の「荒磯」)。不易流行を体現した風呂敷は、日本文化の金字塔なのです。今度のプレゼントは風呂敷で包んでみてはいかがでしょうか?

 

取材協力/宮井株式会社(https://www.miyai-net.co.jp/

【12/11は国際山岳デー】世界で4000万人以上のユーザーを誇る「オールトレイルズ」とは?

12月11日は、「International Mountain Day(国際山岳デー)」です。山や森林でのトレッキングやハイキングは世界中で親しまれているアウトドアですが、知らない場所へ行くときの下調べが面倒という人もいるかもしれません。しかし、最近は便利なアプリが増え、簡単にさまざまな登山・散策ルートを検索できるようになりました。なかでも登山・ハイキング検索アプリ「AllTrails(オールトレイルズ)」は優れていると評判で、アメリカで大人気を博しています。一体どのようなアプリなのでしょうか?

↑登山やハイキングの相棒

 

アメリカ生まれのオールトレイルズは、アウトドアの初心者から上級者までが使えるオールラウンドなアプリです。まず驚かされるのが、網羅されているトレイル(登山やハイキングのルート)の数の多さ。2022年11月時点で240か国にもわたる35万か所以上のトレイルが検索可能で、近所の遊歩道から誰もが知っている国立公園まで幅広く掲載されています。だからこそ、世界中に4000万人を超えるユーザーがいるのですね。

 

アプリを開くと、トレイルの簡単な説明や写真、地図、距離や高低、難易度などの基本情報が表示され、その中から自分に合ったトレイルを探すことができます。現地の天気や気温、紫外線強度、日の出や日没の時間もチェックできるため、暑さ・寒さ対策やルートの時間配分などに役立ちます。

 

歩いているときはGPSをオンにすれば、トレイルの外に出てしまうこともありません。トレイルの入り口へ向かうためのクルマの運転ルートも表示されるので、不案内な場所でも迷わないでしょう。

 

特定条件を満たすデータを絞り込んで抽出するフィルター機能も充実しています。ハイキングやジョギング、サイクリングなどのアクティビティー別に加えて、ルートの距離や難易度でも検索できるので、自分がやってみたい内容や体力に合ったトレイル探しが可能。子ども向きか、犬を連れて行けるか、車椅子でも利用できるか、などの条件を絞り込んで検索することもできます。

 

現場の情報が充実

↑近くにあるトレイルや地図が表示される

 

アプリが示すトレイルを実際に試してみた人のレビューや写真が数多く掲載されていることも、オールトレイルズの魅力。例えば、休日は人が多いとか、雨上がりには道がぬかるんでいるなど、基本的なデータからではわからない現場の情報が入手できるのです。

 

お気に入りのトレイルの保存や、自分が歩いた距離・時間の記録も可能。フェイスブックやインスタグラムなどのSNSに写真を投稿したり、本アプリを利用している他のユーザーをフォローしたりして、登山やハイキングの体験を共有するのも楽しそうですね。

 

有料版はさらに心強い

オールトレイルズは無料でこれらの機能を使うことができるので、普通のハイキングを楽しむには十分です。ただ、いざというときなどのために有料のサブスクリプション版(月2.5ドル〔約340円※〕)の「オールトレイルズ・プロ」もあり、次のような機能がついています。

※1ドル=約135.9円で換算(2022年12月9日現在)

 

  • 地図をダウンロードしてインターネット接続がない地域で使える
  • 道を間違えるとオフルート通知が携帯の画面に現れる
  • 天気や空気の質、花粉の状況などトレイルのリアルタイムの情報が表示される
  • トレイルに出掛ける前にバックアップ用の地図を印刷できる
  • 「ライフライン」という機能を通じ、事前登録した連絡先に予定ルートの詳細地図や状況更新などの情報を提供できる

 

特にライフラインは、一人で出かけるときや山岳地帯などを歩くときに役立つ機能です。登録先の家族や友人と計画や場所を共有できるうえ、予定より到着が遅れた場合には知らせが届く設定になっています。万が一のためにダウンロードしておくと、単独で難易度の高い山などに挑戦する人は心強いでしょう。なお、サブスクリプション料金の1パーセントは環境保護のために使われます。

 

無料で手軽に使えるオールトレイルズは、このように便利な機能が満載。アウトドアを楽しみたいという人は試しにダウンロードして、近隣の公園や遊歩道などから試してみてはいかがでしょうか?

フェンシングの剣を包丁やメダルにリサイクル! 現役オリンピアンが主導する「折れ剣再生プロジェクト」

穴が開いたサッカーボールや折れた野球のバットなど、壊れたスポーツ用具がどう処分されるのか、考えたことはありませんか? 東京2020オリンピック・フェンシング男子エペ団体で金メダルを獲得した見延和靖選手は、フェンシングを始めた高校時代から「折れたフェンシングの剣を捨てるのは心が痛む」と考えていたそうです。そんな想いが募り、今年1月、「折れ剣再生プロジェクト」を発足させました。

 

スポーツが持つ力でSDGsを目指す

「折れ剣再生プロジェクト」とは、試合や練習で折れたフェンシングの剣を回収し、包丁やメダルなど別のモノに再生するアップサイクルな活動です。

 

「フェンシングの剣は使えば使うほど、体や動きにフィットしていくので、試合用と区別することなく毎日の練習でも使います。選手は4~5本の剣を所持していますが、練習で酷使するため、早くて1カ月、もって半年ぐらいで折れたり亀裂が入ったりします。使えなくなった剣は、そのまま産業廃棄物として処理されてきました。しかし、フェンシングの剣は1本3~5万円と高価なうえ、剣への愛着も湧くため、廃棄するのは忍びない。そんな想いをずっと心の片隅に抱きながら競技を続けてきました。

 

東京2020オリンピックで金メダルを取った1週間後、マネジメント事務所に結果報告にうかがったところ、日本スポーツSDGs協会の鈴木朋彦さんと折れた剣についてお話をする機会を得、長年抱いていた想いを伝えたのです」(見延選手)

↑一般社団法人日本スポーツSDGs協会の代表理事を務める鈴木朋彦さん(左)と見延和靖選手

 

一般社団法人日本スポーツSDGs協会とは、スポーツを通してSDGs活動を推進することを目的とし、2021年6月に発足された機関。代表理事である鈴木さんは、設立の意義についてこう語ります。

 

「新型コロナウイルス感染症により、さまざまなスポーツイベントが無観客で開催されました。本来スポーツは、多くの観客が会場に集い、選手の一挙手一投足に一喜一憂し、興奮や感動を共有するものです。しかしその価値が揺らいでしまったのです。そこで、スポーツの新しい価値を考えた時、国境も人種も宗教も関係なく、平等に楽しめるスポーツは、SDGs活動のツールのひとつになり得るのではないかと感じました。

 

憧れの選手たちが率先してSDGsの活動に関われば、“自分たちもやってみよう”“自分たちもできるかもしれない”と行動心理を切り替えられるかもしれません。その連鎖が起こることで、世の中を変えていく力がスポーツにはある。それを実践していくためにスポーツSDGs協会が設立されました。

 

また選手たちの多くは、『自分の競技を次の世代につなげたい』、『子どもの時から自分を育ててくれた故郷に恩返しをしたい』という想いを持っています。そんな選手の想いを成就させる1つの手段として、SDGsを活用できるのでないかと。今回、競技や故郷に恩返ししたいという見延選手の想いと、協会の目指すべきところが合致し、プロジェクトが始動したのです」(鈴木さん)

 

あえて鋳造せずに「剣」の名残りを残す

その後、日本フェンシング協会の協力のもと、選手の練習拠点である味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)のフェンシング場に、折れた剣の回収BOXを設置。発足から9ヵ月で約100本の折れた剣が集まったそうです。奇しくも、見延選手は“越前打刃物”で有名な福井県越前市の出身。折れた剣の再生には、地元企業の武生特殊鋼材と高村刃物製作所全面協力してくれました。

 

「フェンシングの剣は、マルエージング鋼という素材でできています。これは、ゴルフのドライバーヘッドでも使用されている特殊な鋼材です。今回は、包丁やメダルなどへリサイクルするにあたり、厚みがある剣の根本部分を熱してから、ハンマーで叩いて薄くしながら整形する製法(熱間鍛造)を採用しました。フェンシングは剣に電流を流し、剣先が相手に当たったかどうかを判定します。そのため剣には電線を通す溝があります。メダルも包丁も、その溝をそのまま残すことで付加価値を付けたかったのです。

↑折れた剣。先の細い部分が比較的折れやすい
↑折れた剣の電線を焼き、根元の太い部分を再利用品に合わせて切断する。それ以外の部分は溶解利用へ(武生特殊鋼材)
↑熱間鍛造により刃物の形にしていく
↑よく見ると刃の表面に導線を通す溝の跡があり、フェンシングの名残を感じ取れる

 

刃物については、著名な一流料理人たちが愛用している包丁やナイフの製造元である、高村刃物製作所の高村さんにお願いをして試作品を作ってもらったのですが、完成度のすばらしさに衝撃を受けました。高村さんは、切れ味に満足をしていませんでしたが、これまで記念にとっておいた折れた剣も包丁にしてほしいと思ったぐらいです(笑)」(見延選手)

 

地元フェンシング大会でのメダルにも活用

試作品した刃物は、硬度や切れ味も使用可能な水準に仕上がったと話す見延選手。今後、ナイフや包丁は市場での流通の可能性を探っていく予定で、同時にメダルやタグプレートへの加工も進めていくそうです。

 

「8月に越前市で小中学生のフェンシング大会がありました。大会では3位までの選手に再生されたメダルを、それ以外の選手には参加賞として折れた剣で作られたタグプレートを贈呈。メダルを渡した瞬間、子どもたちの目が輝いたのがわかりましたし、本当に嬉しそうな表情が印象的でした。試合前にメダルのことを話したのですが、子どもたちはいつも以上に試合に集中していたようですし、オリンピックや世界を少しでも意識できるいい機会になったと思います」(見延選手)

↑折れた剣から作られたメダルにも溝の跡が残っている
↑「オリンピック選手の剣がメダルになった」と子どもたちも興奮気味だったとか

 

再生した刃物をふるさと納税の返礼品に

同プロジェクトへの関心は高く、再生された包丁やナイフが欲しいという問い合わせも多いそう。しかし現時点では多くの課題があると言います。

 

「現在は、味の素ナショナルトレーニングセンターでの回収だけですが、フェンシングクラブは全国にあります。回収方法をどうするか、全国から集めたとして、折れた剣を再生する生産体制をどうするか、賛同を得るためにこの活動をどう周知していけばいいのかなど、考えていかなければなりません。

↑武生特殊鋼材を訪問した際に河野社長と
↑高村刃物製作所を見学する見延選手。練習の合間を縫って、プロジェクトのために率先して動いている

 

こうした課題はあるものの、見延選手本人がプロジェクトのために率先して動いてくれているのは大きいです。例えば、武生特殊鋼材さんや高村さんも、見延選手でなかったら、ここまでスムーズに話が進んでいたかどうか。彼は、実際に工場に行って試作品を手に取り、意見を言ったりもしてくれています」(鈴木さん)

 

今後は流通を視野に入れつつも、まずは越前市のふるさと納税の返礼品にできないかと、市と話し合った結果、市と協定を結び、ガバメントクラウドファンディングとして1118日よりスタートすることになりました。(https://www.furusato-tax.jp/gcf/2158)

 

フェンシングの剣への再生が目標

競技と故郷への恩返しを胸に、プロジェクトに取り組む見延選手。プロジェクトの最終的な目標は、折れた剣をフェンシングの剣へ再生することだと言います。

 

「実はフェンシングの剣の生産は、フランスとウクライナが主で、日本では生産されていません。そのため、質の高い剣は海外の選手が手に入れてしまい、売れ残った剣が日本に送られてくるのが現状。日本も刀鍛冶など技術を持った職人は多いはずなので、折れた剣を使った日本製の剣ができれば素晴らしいですね。

↑試合中の見延選手

 

また、ヨーロッパでは、フェンシングは生涯スポーツの1つです。試合での駆け引きが面白いため、60代以上のシニア層も真剣に試合をしています。この活動を機にフェンシングのことをもっと知ってもらい、ヨーロッパのような文化を日本でも根付かせたいです」(見延選手)

 

国際大会で使用できる剣の認証取得のハードルの高さや、フェンシグ自体が競技人口約6000人とまだまだマイナーなことなどから、ビジネスとして成立させるのが難しいといった課題もありますが、折れた剣から新たな剣を製造できれば、価格も抑えられ、子どもたちはもちろん、多くの人たちが手に取りやすくなります。ひいてはそれが競技人口の増加にもつながる……。見延選手の夢はまだ始まったばかりです。

 

見延和靖さん●東京2020オリンピック フェンシング男子エペ団体金メダリスト。父親の勧めで高校時代からフェンシングを始め、大学時代からエペ(フェンシングの競技の1種)の選手として多くの大会で優勝。NEXUSホールディングス入社後、日本男子エペ個人では初のワールドカップ優勝をはじめ、さまざまな大会で活躍。2019年には日本人選手として初めて年間ランキング世界1位を獲得した。

 

©日本スポーツSDGs協会 ©日本スポーツSDGs協会/山本拓未 Ⓒ日本フェンシング協会:Augusto Bizzi/FIE

 

 

 

スマホみたいに一人一台所有する時代に!? 日本とアメリカのテレビ事情

若い世代を中心にテレビ離れが起きている今日、11月21日の「世界テレビ・デー」を知る人は少なかったかもしれません。この日は、現代におけるコミュニケーションとグローバリゼーションの象徴としてテレビを祝う日でしたが、現代ではNetflixやYouTubeなどの動画配信サービスのほうが、それらを象徴しているようにも思われます。

↑テレビはつけるけど、見るのはネトフリ

 

しかし、だからといって、テレビが消えるわけではありません。アメリカと日本を調べてみると、むしろテレビは、動画配信サービスと融合しながら今まで以上に大きくなり、一人一台所有する時代になりつつあるかもしれないのです。日米のテレビ事情を比較しながら見てみましょう。

 

動画配信サービスを視聴するためのテレビ

ある2021年度の調査によれば、アメリカ人のテレビ視聴時間は1日当たり2時間51分、日本人は2時間26分でした。これだけ見ると、日米間であまり差はないようにも思われます。

 

しかし、リサーチ会社・DataReportalによれば、パソコンやスマートフォンといったデバイスでの視聴時間を含めると、アメリカ人の視聴時間は7時間4分まで増えるとのこと。日本は4時間26分で、アメリカ人のほうが毎日約2.5時間も多くメディアを視聴していることになります。

 

一方、テレビ番組を毎日視聴しているアメリカ人の割合は約80%なのに対して、日本人は76%。どちらの国でも8割近くが毎日テレビを見ているものの、若い世代のテレビ離れの影響で、その数は徐々に減りつつあります。

 

アメリカにおけるテレビ視聴率の最盛期は1990年代で、2000年代に入るとデジタル社会化が進み、動画配信サービスやオンラインストリーミングが台頭。今日ではテレビ番組を毎日見ている人の半分以上が、55~64歳という比較的高齢の世代です。若い世代はNetflixやAmazon Primeなどの動画配信サービスを視聴するために、テレビをつけるようになりました。

 

より大きく

↑大画面に没入

 

「大きいことが正義」という価値観を持つ人が多いアメリカでは、テレビのサイズも例外ではありません。2018年時点では日本のテレビの平均サイズが37インチだったのに比べ、アメリカの平均サイズは47インチでした。その後、世界を襲ったコロナの影響で人々は自宅で過ごす時間が増加し、どちらの国でもより大きいサイズに買い替える動きが顕著になりました。

 

2022年の現在、アメリカ人が購入するテレビサイズの平均は53.6インチにアップ。売れ筋は65インチで、今後さらに大きなサイズへと移行していくことが予想されています。

 

日本でも2022年の買い替えで最も多く売れているのが55インチと、4年前に比べて18インチも拡大。特に動画配信サービスの視聴を目的に購入する人の60%が、50インチ以上のテレビを選んでいます。

 

内閣府が行った2022年度の消費動向調査によれば、日本の単身世帯では約1.5台、2人以上の世帯では2.16台のテレビが自宅にあるそう。一方、アメリカの1世帯当たりの平均は2.3台で、リビングルームに置かれているケースが最も多く、次いで親の寝室となります。

 

両国の1世帯あたりのテレビの保有台数は近いかもしれませんが、さらに見てみると、アメリカ人の31%が自宅に4つ以上のテレビがあります。しかし、日本では1世帯あたり4台所有している割合が4%、5台以上所有では2%と、アメリカとの違いが見られました。スマホやクルマと同様に、アメリカではテレビも一人一台の時代になりつつあるのかもしれません。

 

スポーツ vs ニュース

↑スポーツ観戦が好きなアメリカ人

 

映画やドラマには、ビール片手にテレビでスポーツ観戦するアメリカ人がよく登場しますが、実際、アメリカで最も多く視聴されているテレビ番組はアメリカンフットボールです。

 

なかでも、アメリカ最大のスポーツイベントであるNFLのチャンピオンを決める「スーパーボウル」の視聴率は、2012年以降10年にわたって年間1位を記録し続けています。マーケティングリサーチ会社Nielsen Holdingsによると、2022年2月の試合では平均視聴世帯数が4,500万世帯で、テレビのある家庭の72%がスーパーボウル番組にチャンネルを合わせていました。

 

一方、CCCマーケティング総合研究所のアンケート調査によれば、日本で最もよく視聴されているジャンルはニュースや報道番組、次いでバラエティ、情報番組とのこと。スポーツは9番目で、アメリカと日本で好まれるジャンルに違いがあることが見て取れます。

 

1993年に国連総会で世界テレビ・デーが決議されてから、もうすぐ30年が経ちます。その間にインターネットが目覚ましく台頭し、テレビを取り巻く環境が大きく変わりました。近年ではテレビの視聴スタイルも多様化していますが、今後もデジタル社会化や生活様式の変化に伴い、アメリカや日本だけでなく、世界各国でテレビとの付き合い方は変わっていくものと思われます。

 

執筆者/長谷川サツキ

米サンフランシスコ市警、ロボットに容疑者を殺害する権限を与えることを検討中

米サンフランシスコ市警察(以下「SFPD」)が、ロボットに容疑者を殺害する権限を与える案を検討していることが明らかとなりました。

↑SFPDのロボットに新たなプランが浮上

 

もちろん無条件に殺しのライセンスを与えるわけではなく、「一般市民や警官の命が失われる危険が差し迫り、ほかのあらゆる力の選択肢を上回る場合」殺傷力あるロボットを配備できるとされています。

 

このプランはSFPDにどのような装備を配備できるかを、サンフランシスコ市の監督委員会内の規則委員会が数週間にわたって検討した中で浮上してきたものです。もともと原案には、ロボットの殺傷力行使をめぐる文言は含まれておらず、委員会のアーロン・ペスキン議長は「ロボットはいかなる人物に対する武力行使としても利用してはならない」と追記したとのこと。

 

ところがSFPDは、この追加部分を赤線で消し「ロボットに容疑者を殺害する権限を与える」という行に置き換えて草案を返却したそうです。結局ペスキン氏は「致死的な力の使用が唯一の選択肢となるシナリオもありうる」と書き直して、方針の変更を受け入れることにしたといいます。この草案を規則委員会が全会一致で承認し、11月29日の監督委員会で審議される予定と伝えられています。

 

SFPDは現在17台のリモート操縦ロボットを保有しており、うち使用可能なものが12台。上記の草案では、これらロボットに殺傷能力の付与に加えて「訓練とシミュレーション、犯罪者の逮捕、重大事件、緊急事態、令状の執行、不審物査定時」での使用も許可することが提案されています。

 

テックメディアThe Vergeに対して、SFPDは「ロボットを使って殺傷力を発揮する必要があるような異常に危険な、または突発的な作戦は、まれで例外的な状況でしかなく、何らかの特定の計画はありません」との声明を発表。少なくともマシンガンを装着したロボットが日常的に街をパトロールし、問答無用で射撃する事態はなさそうです。

 

とはいえ、ほかの州では実際にロボットが容疑者を殺害したこともあります。たとえばテキサス州のダラス警察は2016年、SFPDが保有する1台と同じ「Remotec F5A」を使用。このモデルは本来爆弾処理用ですが、逆に爆弾を積み込み、5人の警察官を射殺して数人を負傷させて立てこもった容疑者を爆殺しています

 

またカリフォルニア州のオークランド警察も、 Remotec F5Aロボにショットガンを装備することを検討していたと明らかにされています。いったんは断念されましたが、その後も引き続き検討していくと述べられています。

 

戦場で無人ドローン兵器が大量に投入されているなか、警官だけが生身で凶悪犯と対峙して命を危険にさらすのはおかしい、との声も上がるのかもしれません。今後の議論の展開を見守りたいところです。

 

Source:Mission Local
via:The Verge

10万人に対して8個だけ!? アメリカのお粗末な「公衆トイレ」事情

11月19日は「世界トイレの日」でしたが、トイレや公衆衛生に関して深刻な問題を抱えているのは途上国だけではありません。意外な先進国が長らく公衆トイレの問題に悩まされているのです。それは世界一の経済大国・アメリカ。あぜんとするような同国の公衆トイレ事情について現地からレポートします。

 

3K:「汚い」「危険」「故障」

↑アメリカの公衆トイレは“3K”

 

アメリカ人の多くが、「公衆トイレはできれば使いたくない」と言います。実際に入ってみると分かるのですが、アメリカの公衆トイレはとにかく汚いことが多いのです。

 

使用後に流していないのは序の口。便器の中にプラスチックなどのゴミが突っ込んであったり、床が水浸しだったり。悪臭も強く、掃除が行き届いていないと感じるトイレがほとんどです。

 

また、誰でも簡単に使えるので、薬物取引など犯罪シーンの温床になりやすいというリスクもあります。犯罪行為防止のためにトイレのドアは下の隙間が大きく開いていますが、どの程度抑制力があるかは明確ではありません。

 

さらに、水が流せないなどの故障トラブルが起きても、なかなか修理されずに放置されているケースが多々あります。故障しているがために、公衆トイレ全体を閉鎖してしまっていることも珍しくありません。

 

超”レア”な公衆トイレ

このように衛生上の問題を抱えるアメリカの公衆トイレですが、近年特に問題とされているのがその数の少なさです。アメリカでは、なんと10万人に対して公衆トイレが8個しかありません。ニューヨーカーの中には、公衆トイレが見つからず、最後には茂みで用を足すしかなかったと語る人もいます。

 

観光客やタクシードライバー、ホームレスたちにとってもトイレ問題は深刻です。都市部では公衆トイレを検索できるオンラインサービスがあり、公衆トイレの現状改善を訴えるデモも行われています。

↑公衆トイレ改善を訴えるデモ(画像提供/The Hustle*)

*Michael Waters, “The fight to build more bathrooms in America“, The Hustle, 2022 November 4th

 

頼みのカフェも「客以外の利用お断り」

アメリカの公衆トイレ不足解消を長期にわたって支えてきたのが、スターバックスをはじめとした飲食店の存在です。これら店舗はトイレを一般開放しており、地方自治体も公衆トイレとしての役割を担ってくれる存在として依存してきました。店舗側もトイレ利用者が顧客拡大に繋がるなど、お互いにメリットがあったのです。

 

ところが、2018年にフィラデルフィアのスターバックスで、商品を購入せずにトイレを利用しようとした黒人男性2人に対し、店員が不法侵入として通報する騒ぎがありました。スターバックスは謝罪し、改めて「トイレは誰でも使用可能」との店舗ポリシーを明確にしたのです。

 

しかし、スターバックスCEOのハワード・シュルツ氏は2022年6月、「今後、地域の公衆トイレとしての役割を制限する可能性がある」と発言。その理由としてトイレ利用をめぐって精神衛生上のトラブルが増えていることを挙げ、スタッフと顧客の安全のために一部トイレの閉鎖を検討しているとのことでした。

↑「公衆トイレはありません」と伝える飲食店

 

公衆トイレが少ない3つの理由

毎年大勢の観光客が訪れる先進国でありながら、なぜこんなにも公衆トイレが少ないのでしょうか。これには、いくつかの理由があるようです。

 

1: 安全性の問題

すでに述べた通り、公衆トイレは簡単にプライベートになれる半面、犯罪シーンの温床ともなっています。そのため、安易に増やしにくいということが挙げられます。

 

2: 公衆トイレの役割を担う飲食店の存在

これまではスターバックスなどの飲食店が、公衆トイレとしての役割を果たしてくれていました。そのため、地方自治体もわざわざ予算を割いてまで新たな公衆トイレを設置しようとはしなかったのです。

 

3: 維持管理費の問題

端的にいえば、市や町に公衆トイレの修理や管理にかけるお金がないのです。事実、故障しても修理まで手が回らず放置されているトイレが少なくありません。

 

4坪の公衆トイレの予算が約238億円!? 

2022年10月、カリフォルニア州サンフランシスコでは信じがたいニュースが話題となりました。公園に4坪の公衆トイレを設置するにあたり、予算が1.7億ドル(約238億円※)かかると市が発表したのです。しかも建設期間は3年にもわたるとのことでした。

※1ドル=約140円で換算(2022年11月21日現在)

 

当然ながら市民はコストがかかりすぎると反対し、「世界で最も高級な公衆トイレの誕生か?」と国内で大きな注目を集めました。幸い、ギャビン・ニューサムカリフォルニア州知事が「高過ぎる」としてトイレ建設にストップをかけ、公費をもっと有効に活用できるような計画にすべきだと市に差し戻したのです。

 

日本に住んでいると、あまり意識することのない公衆トイレの問題。アメリカと比べれば、日本は「トイレ天国」とも言えますが、アメリカへ旅行する予定がある人は、事前に公衆トイレの設置場所を調べておくと良いかもしれません。

 

執筆者/ 長谷川サツキ

Meta、Facebookなどのアカウントを不正使用した従業員を20人以上解雇

Metaが社内調査した結果、過去1年間でFacebookやInstagramのアカウントを不正使用した従業員を20人以上も解雇あるいは懲戒処分にしたと米国で報じられています。

↑ユーザーアカウントの不正使用が明るみになったMeta

 

米Wall Street Journal紙によると、その中には社外のハッカーから数千ドルものワイロを受け取っていた者や、Metaから委託されたアライド・ユニバーサル(警備会社)所属の警備員も含まれていたそうです。

 

この犯行は、社内で「Oops」(Online Operations)と呼ばれるツールにより行われたもの。アクセス不能になったアカウントを回復できるツールですが、本来は友人や家族、ビジネスパートナーなど特殊なケースだけで使われることを想定していました。しかし、社員が増えるにつれて利用される頻度が増え、2017年の2万2000件から2020年には5万270件にまで跳ね上がっていたそうです。

 

なぜ不正利用が増えたかといえば、おそらく30億人を超えるユーザーに対してカスタマーサービスが十分に行き届いていないことが原因。アカウントが凍結された場合、電話やメールでMetaの担当者と連絡を取ろうとしても、たいていは空振りに終わることが常となっています。

 

そのため、最後の手段として、Oopsが使える従業員(ないしコネのある仲介役)に賄賂を払ってなんとかしてもらう、ということに。WSJは、よくわからない理由でInstagramにアクセスできなくなった人気モデルが、アカウントを回復するために約7000ドル(約98万円※)支払ったとの証言を伝えています。

※1ドル=約140円で換算(2022年11月18日現在)

 

Metaの広報担当者は、この種の不正行為で賄賂を取る者に対して「適切な措置」を講じると述べていますが、同社の評判はさらに傷ついたかもしれません。

 

Source: The Wall Street Journal

「足跡が残っています」スティーブ・ジョブズの中古サンダル、約3000万円で落札

アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏が履いていたボロボロのサンダルが、なんと21万8750ドル(約3000万円※)で落札されました。一応、360度回転できるNFT(非代替性トークン)が付いてきます。

※1ドル=約139.4円で換算(2022年11月17日現在)

↑約3000万円で落札された故ジョブス氏のサンダル(画像提供/Julien’s Auctions)

 

このサンダルは、ビルケンシュトック(ドイツの靴ブランド)の中でも人気の高い「アリゾナ」モデル。アップルを創業した1970年代~80年代にかけて、ジョブズ氏が履いていたそうです。ジョブズ氏の元財産管理人であるマーク・シェフ氏がゴミ箱から回収したものが、米ジュリアンズ・オークションに出品されていました。

 

かつてシェフ氏はサンダルを入手した経緯について、ジョブズ氏がほとんど物を取っておかない」ため、一度捨てようとしたところを回収したと説明していました。いくつかは残し、いくつかは造園業者や友人におすそ分けし、いくつかはGoodwill(リサイクルショップ)に持ち込んだそうです。

 

このサンダルは2016年に、わずか2000ドル(現在のレートで約28万円)で落札されたとのこと。物価の上昇を考えずに単純に計算すると、それから100倍以上も値上がりしたことになります。今回も初めは6~8万ドルの値が付くと見積もられていましたが、そちらも余裕で上回りました。

 

オークションの説明では「サンダルはよく使われているが、まだ無傷のようです」とのこと。 ただの使い古されたサンダルにしか見えませんが、「長年使ったことで形づくられたスティーブ・ジョブズの足跡が残っています」とアピールされています。

 

2012年にはジョブズ氏のメモと稼働するApple I(アップル初のコンピュータ製品)基板が40万ドル(約5600万円)で落札され、2022年もジョブズ氏が使っていたMacintosh SEが最大30万ドル(約4200万円)だと見積もられたこともありました 。何かジョブズ氏に縁のあるグッズを持っている方は、オークションに出品すれば予想を超える価格が付くかもしれません。

 

Source:Julien’s Auctions
via:The Verge

世界の京都ファン、今夏に復活した「祇園祭」山鉾巡行への憧れが止まらない!

日本三大祭りの一つで、1100年を超える歴史を持つ祇園祭は、日本国内はもちろん海外でも広く知られている祭礼です。海外でもユネスコ無形文化遺産に「山・鉾・屋台行事」の一つとして2009年に登録されており、諸外国にも広く知られています。

↑待ってました! 祇園祭(後祭)の山鉾巡行の様子(写真は「役行者山」)

 

平安時代の「祇園御霊会(ごりょうえ)」が起源。全国に流行した疫病の病魔退散を祈願したことが始まりで、初夏の京都で1か月にわたり祭事が繰り広げられます。長い歴史の中で騒乱や戦争、大火などで中断した時期もありますが、1000年を超えて受け継がれてきた壮大な祭礼では、古今東西の芸術の粋を極め、人々の祈りが込められた神輿や山鉾などが都大路を彩ります。

 

祇園祭の名称は京都の八坂神社が過去に祇園社の呼称であったことに由来。日本全国に2000社以上の八坂神社が存在していると言われています。日本全国津々浦々まで広がる主祭神「スサノオノミコト」を祀る祇園信仰は、各地の神事として日本人の精神に深く根付いてきました。

 

京都市では2023年3月以降に文化庁が本格稼働を開始する予定。明治時代以降初の省庁移転であり、文化の力による地方創生・地域文化の掘り起こしによる文化芸術の振興などに大きな期待が寄せられています。京都は海外の旅行誌や観光専門家からも非常に高い評価を得ていますが、アジア圏内はもちろんのこと世界各地の著名観光地と比較しても群を抜いた存在。その中で祇園祭は世界中の京都ファンが一度は目にしたいと憧れるものです。

 

コロナ禍の祇園祭は、日本各地の他のお祭りや行事と同様に、感染防止のため縮小催行を余儀なくされました(2年連続で山鉾巡行が中止)。また、度重なる国内旅行者の移動制限や海外旅行者の入国制限により、関連する観光産業にも大きなダメージが。

 

しかし2022年、山鉾巡行が約3年ぶりに執り行われました。これは、復活に向け祇園祭に携わる人々の不断の尽力があればこそ。多くの市民や観光客らが待ち望んでいたことが、当日の人出や有料観覧席がほぼ満席であったことからも伺えます。

↑京都に賑わいが戻りつつある(写真は「浄妙山」)

 

祇園祭の完全復活を心待ちにしていたのは日本人だけではありません。山鉾巡行を観覧していたフランス人観光客は、外国人入国制限下において、この記念すべき日に足を運べた幸運をかみしめていました。日本の観光業は長期間コロナ禍で苦しみましたが、日本政府は2022年10月に外国人観光客の個人旅行を解禁し、空港の水際対策を大幅に緩和。今後もさまざまな感染症の発生やコロナ禍の再燃可能性も当然残されていますが、1000年を超えて疫病退散を祈ってきた祇園祭の復活は、日本の文化を形づくる全国のさまざまな祭りにもプラスの影響があったのではないでしょうか?

従業員を引きとどめろ! 世界最大のiPhone組立工場、ボーナスを最大10倍に

中国・鄭州市にある世界最大のiPhone組立工場では、従業員らがコロナ禍により外部から隔離されるなどの過酷な条件に置かれています。その中でも働き続けるよう説得するため、運営する台湾のFoxconnは従業員のボーナスを3倍以上に増やしたと報じられました。

↑ボーナスなんていらないから、ロックダウンから解放して(写真は2022年4月に上海がロックダウンしたときの様子)

 

中国は「ゼロコロナ」政策を続けており、わずかな陽性反応者が出ただけでも都市全体を封鎖し、国内からウィルスを根絶しようと努めています。

 

それを続けながら経済を回すため、閉鎖された都市でも工場では「バブル方式」による生産が認められており、従業員は敷地内で働き、食事をし、寝るという生活を送っています。そんな厳しい環境のもと、Foxconnの工場では感染者が出たことで、さらに不自由が強いられている模様。

 

従業員らは工場内の感染者が増え続けており、Foxconnが十分な食料と薬を提供することにも苦労しているとSNSに投稿。その苦境が本当だと裏付けるように、工場を囲むフェンスをよじ登って逃げ出す動画も広まっていました。

 

こうした事態に対して、当初Foxconnは10月26日から11月11日まで、全てのシフトをやり遂げた従業員には、無料の食事と約1500元(約3万円※)のボーナスを出すと述べていました。これは月給の20%に当たる額です。

※1元=約20円で換算(2022年11月2日現在)

 

Reutersの報道によると、Foxconnは事態が深刻なことから、このボーナスを3倍に増やすことを決定したとのこと。「徐々に秩序ある生産を再開する」努力の一環として、また「仲間の粘り強さに感謝する」ため、とされています。

 

そのうえ、11月中に休暇も返上して「全力」で働いた従業員には、合計1万5000元(約30万円)以上のボーナスが支給されるとのこと。つまり、初め提示された額の10倍以上がもらえるわけです。

 

これだけの金額を出されても、従業員の反応はまちまちで、残ろうと思う人もいれば、リスクが大きすぎると考える人もいるそう。儲かったとしても、心身の健康あってこそ……と悩んでいるのかもしれません。

 

Source:Reuters
via:9to5Mac

九死に一生の女性、夫に生き埋めにされる前に「Apple Watch」で緊急SOS

AppleのスマートウォッチApple Watchが、心臓の異常を早期に発見したり、あるいは自動車事故に遭ったときに自動で救助を呼んだりと、人の命を救うことは珍しくありません。しかし最近、なんと生き埋めにされた女性がApple Watchのおかげで助かったとのニュースが米国から飛び込んできました。

↑護身用ウォッチ

 

米NBC Newsによると、その女性は別居中の夫と進行中の離婚やお金につき相談したあと、自宅で襲われたとのこと。そしてダクトテープで手や足も縛り上げられ、口にも猿ぐつわされたものの、夫が離れたスキにApple Watchで911(緊急通報用の番号)に電話をかけることができたと語っています。

 

【NBC Newsの動画(英語)】

 

その後に女性はガレージに引きずり込まれ、Apple Watchもハンマーにより破壊されてしまいました。まさにギリギリのタイミングだったようです。

 

それにより警察が家に駆けつけましたが、夫は彼女をクルマで運び去り、離れた場所で埋めてしまいました。そして女性は何時間も経ってから自力で脱出し、約30分ほど走って人家を見つけたそうです。最終的には、その家にいた人が警察に通報してくれたとのことで、「直接Apple Watchに救われた」わけではありません。

 

もっとも、先にApple Watchで通報していたために警察も出動し、夫も下手な動きが取りにくかった可能性があるはず。発見された当時、女性は首や顔の下、足首にダクトテープを巻いたままで、足や腕、頭には大きなあざがあったそう。もし夫に素早く追われていたら、危うかったかもしれません。

 

Apple Watchで緊急SOSを使うには、Apple Watch または近くにあるiPhone のモバイルデータ通信接続や、インターネット接続を経由したWi-Fi 通話機能が必要です。

 

緊急電話のかけかたは、サイドボタン(デジタルクラウンの下)を長押しし、「緊急電話」スライダが表示されたらドラッグします。または、サイドボタンをそのまま押し続けるとカウントダウンが始まり、自動的に緊急通報サービスに電話がかかります。

 

Source:NBC News
via:iMore

イタリア版「祇園祭」が再開! 約400年続く「聖ロザリーアのフェスティーノ」は奇跡的だった

2022年7月、イタリア・シチリア島の都市パレルモで、疫病退散を願う「聖ロザリーアのフェスティーノ」祝祭が3年ぶりに開催されました。世界中から20万人もの人々が集まり、伝統の行列に連なりました。ペストの流行からパレルモを救った守護聖人・サンタロザリーアを崇拝するこのお祭りは、京都の祇園祭に通じるものがあります。コロナ禍の中断を経て再開したシチリアの伝統文化を紹介しましょう。

↑聖ロザリーアのフェスティーノに登場するシチリアの象徴「カッロ」

 

パレルモと聖ロザリーア万歳!

聖ロザリーアのフェスティーノは 、2022年で398回目を迎えたシチリアの伝統的祭礼。400年前のペスト大流行を一瞬で消滅させた奇跡を祝うもので、開催期間は7月1日から15日までおよそ半月に及びます。18世紀の貴族の館が立ち並ぶパレルモ旧市街では、宗教行事やパレード、演奏会、演劇などのさまざまな催し物が行われますが、祭りの熱気が最高潮に高まるクライマックスは14日の前夜祭。疫病終息の奇跡の行列を再現したパレードが、イルミネーションに彩られた市街を練り歩き、世界遺産のパレルモ大聖堂ではミサが行われます。

 

また、「カッロ」と呼ばれる豪華な山車の行進もこのお祭りの大切なイベント。シチリア文化を象徴するカッロは、ノルマンニ宮殿から海までの旧市街を一直線に結ぶヴィットーリオ・エマヌエーレ通り(Vittorio Emanuele)を進みます。2022年のお祭りでは、生演奏で盛り上がる雰囲気の中、カッロやパレードは次のように進みました。

 

第1停留所:ヌオーヴァ門より20時半カッロが出発

第2停留所:カトリック教会神学校にて、パレルモ教区最高位聖職者のコッラード・ロレフィチェ大司教がカッロに搭乗して聖ロザリーアの像を祝福

第3停留所:世界遺産のパレルモ大聖堂にて、名門マッシモ劇場の児童聖歌隊とユースオーケストラによるコンサート

第4停留所:旧市街にある代表的な交差点クアットロ・カンティにて、ロベルト・ラガッラ市長がカッロに登り「Viva Palermo e Santa Rosalia!(パレルモと聖ロザリーア万歳!)」と叫びました。

第5停留所のローマ通り、第6停留所のカッティーベの城壁、第7停留所のフェリーチェ門、第8停留所の音楽堂記念碑、第9停留所のギリシャ門と、名高い観光名所を次々に通過した行列は海に到着。深夜0時にフィナーレの花火があげられました。

 

聖ロザリーアの奇跡

↑聖ロザリーアのフェスティーノのポスター(右側に描かれているのが聖ロザリーア)

 

お祭りの“主人公”である聖ロザリーアは12世紀を生きた地元出身の聖女で、カトリック教会によりパレルモ守護聖人として認められています。ローマ皇帝だったカール大帝の末裔であるノルマン貴族の家系に生まれますが、神を愛し、祈りの生活を送るためペッレグリーノ山の洞窟で隠者として暮らし、若くして洞窟内で亡くなったと言い伝えられています。

 

しかし、それから約450年後、1624年にパレルモに疫病ペストが流行していたころ、ロザリーアはある病気の女性の夢枕に、続いて猟師の夢枕に現れ、自分の遺骸の在り処を啓示しました。そして、ペッレグリーノ山の洞窟からパレルモ市街までの間で行列を作り、遺骨を運ぶように言います。その猟師が洞窟でロザリーアの遺骨を見つけ、言われた通りにしたところ、たちまち病人は癒され、疫病の流行は終息したそうです。

 

ロザリーアはパレルモの守護聖人として地元で深く愛されるようになり、遺骸が発見された7月15日を記念して、行列を再現するようになりました。これが聖ロザリーアのフェスティーノの起源です。宗教的にも重要な行事として後世に受け継がれてきた一方、ペッレグリーノ山の洞窟には教会が建てられ、パレルモの街と海を見渡せる風光明媚な名所かつ癒しの祈りの場所として、世界中から多くの巡礼客が集って来ます。

 

祇園祭と類似

↑市民や観光客で賑わうヴィットーリオ・エマヌエーレ通り

 

新型コロナウイルスの蔓延によって2年間、開催中止を余儀なくされた聖ロザリーアのフェスティーノですが、再開にあたり、コッラード・ロレフィチェパレルモ大司教は次のように述べました。「パンデミックが引き起こした心理的、人間的、経済的、社会的な要因が、フェスティーノの衰退と人間疎外の原因になってはなりません。そうならないようにすることにこそ祝祭の真の目的があるのです。ロザリーアに愛された私たちの街の解放と再生をともに賛美しましょう」

 

ほぼ同時期に、遠く離れた日本の京都でも、コロナ禍で2年間中止されていた祇園祭の再開を巡り、門川大作市長から似たような言葉が発せられていました。疫病がまん延した平安時代初期に、疫神や怨霊を鎮める祈りを捧げる行事として生まれたのが祇園祭です。京都警察によると、2022年の祇園祭山鉾巡行の沿道にはおよそ14万人が見物に訪れたとのこと。「動く美術館」と称される祇園祭の山鉾は、日本各地の祭りに見られる山車の原型になったとされていますが、「動く劇場」とも言えるパレルモのカッロを連想せずにはいられません。

 

洋の東西を問わず、見えない疫病を鎮めるためのお祭りは、長い歴史の中で人類が魂を込めて営んできた一大伝統行事。太陽の恵み溢れるパレルモの聖ロザリーアのフェスティーノには、人々が抱える不安を鎮め、元気づけてくれる力があります。筆者も当時の景観が保全された旧市街を練り歩く群衆に加わってみましたが、実際に疫病退散の奇跡を目の当たりにしたかのような気持ちになりました。

 

コロナ禍は社会に深い影響を与えていますが、だからこそ、伝統的なお祭りが持つ「人々を精神的に癒しながら、結びつける」という目に見えない価値は、今後も継承されるだろうと思います。

オス犬は「匂いを嗅ぐ」とガンの危険が!? ケンブリッジ大学の研究

犬は家の中にいても、散歩中であっても、あらゆるものの匂いを嗅ぎまわる習性があります。これは、人間よりもずっと優れた嗅覚を持つ犬が、匂いからさまざまな情報を得るためとされています。でもそんな習性によって、オスの犬はある珍しいガンに罹患する確率が高いことがわかりました。

↑それでもやめられない

 

「CTVT」と呼ばれる犬のガン。正式名称を「可移植性性器腫瘍」といい、犬の外部性殖器に発生するガンで、珍しいタイプのガンです。感染性があり、犬同士が接触すると、生きているガン細胞が移りそれによってガンが感染ることがあるそう。そんなCTVTについて、イギリス・ケンブリッジ大学の博士が調べた、ある研究論文が発表されました。

 

その内容によると、世界中で報告されたCTVTのデータベースを詳しく解析したところ、通常は生殖器に発生するこのガンが、鼻や口に発生する例が見つかったそう。その数は、全部で約2000件報告されたCTVTのうち、わずか32件のみですが、うち27件はオス犬で発症していることがわかりました。オス犬は、メス犬に比べて、鼻や口にこのガンが発生する可能性が4~5倍も高いことになります。

 

オス犬とメス犬で鼻・口にCTVTを発症しやすい理由について、この調査を行った博士は、オス犬とメス犬の行動の違いを指摘しています。オス犬はメス犬より、他の犬の生殖器の匂いを嗅いだり舐めたりすることが多いそう。CTVTはガン細胞が感染するため、それによって鼻や口にガン細胞が移って感染する可能性があると見られています。

 

このCTVTは、そもそも数千年前に1匹の犬の細胞から発生したと考えられています。感染性のガンであるため、その犬が死んだ後も、ガン細胞は他の犬に感染を広げて、今日でも世界中の犬にそれが広がっています。国単位でみればまだ症例数は少なく、珍しいガンの一つではありますが、自然界で生まれた最も古い感染性ガンの一つとも言えます。

 

犬が他の犬の匂いを嗅いだり、周囲の物の匂いを確認したりする行為は、犬にとって必要不可欠。匂いを嗅ぎまわることを禁止すると、犬に大きなストレスを与えてしまうそうです。とはいえ、そんな行動によってガンのような病気にかかる可能性があるなら、飼い主は心配するもの。普段から飼い犬の様子をよく観察し、わずかな異変を感じたらできるだけ早く獣医に相談することが大切かもしれません。

 

【出典】Strakova, A, Baez-Ortega, A, Wang, J, Murchison, EP. Sex disparity in oronasal presentations of canine transmissible venereal tumour. Vet Rec. 2022;e1794. https://doi.org/10.1002/vetr.1794

お腹が空くとイライラするのはなぜ? 空腹と感情の関係が少しずつ明らかに

「お腹が空いているときは、イライラしたり怒りっぽくなったりしやすい」と、感じたことはありませんか? 実際に科学者による実験で、空腹感はイラ立ちや怒りを増幅させ、逆に喜びのようなポジティブな感情を減退させることがわかったのです。

↑腹が減った! イライラ……

 

英語には「Hangry(ハングリー)」という造語があります。これは、空腹を表す「Hungry(ハングリー)」と、怒るという意味の「Angry(アングリー)」を組み合わせた言葉。私たちは、お腹がすいた状態にあると怒りやすくなることを、経験で知っているわけです。ただし、空腹と感情の関係については、科学的にあまり研究されてきませんでした。

 

そこでイギリスのアングリア・ラスキン大学と、オーストリアのカール・ラントシュタイナー健康科学大学の研究者は、共同で研究を行うことにしたのです。研究チームは、ヨーロッパ中央部から64名を集め、21日間にわたる実験を行いました。実験期間中、参加者には普段と同じ生活を送りながら1日に5回、そのときの自分の感情と空腹レベルについてアプリで報告を行うよう指示。日常生活において、私たちの感情と空腹の関連について調べました。

 

その結果、分散(統計学ではデータのバラつき具合を表す指標)の値はイライラが37%、怒りが34%、喜びの喪失が38%でした。同研究チームによれば、これらの値は、空腹がネガティブな感情と強い関係があることを示しているとのこと。本研究は方法論などにおいて課題が残されていますが、年齢、性別、肥満度、食事、個人の性格などを考慮しても、空腹が感情に与える影響は顕著に見られるようです。

 

怒りの感情を分類してみよう

では、空腹になってイライラする気持ちを抑える方法はないでしょうか?

 

この研究を行ったアングリア・ラスキン大学の社会心理学教授は、自分のそのときの感情を分類することを提案しています。例えば、自分が怒りっぽくなっていて、しかもお腹が空いていると気づいたら、「空腹だから怒りを感じているのだ」と自分で認識して、その怒りの原因を「空腹」として他のイライラした気持ちと区別することができるわけです。そのように、自分で空腹であることを強く意識すると、怒りのようなネガティブな感情を抑えられる可能性があるそうです。

 

食欲は、人が生きていく上で重要な三大欲求のひとつ。生命の維持に関わる自然現象ですから、私たちは空腹を感じると身体が危機を感じて、そんな負の感情を抱くようにできているのかもしれません。次に「イライラしている!」と気づいたら、自分が空腹かどうかまずは考えてみては?

 

【出典】Swami V, Hochstöger S, Kargl E, Stieger S (2022) Hangry in the field: An experience sampling study on the impact of hunger on anger, irritability, and affect. PLoS ONE 17(7): e0269629. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0269629 

新入社員は78歳! 社員の約30%が70歳以上の「横引シャッター」は未来の企業のあり方の一つだ

↑駅のキオスクなどで見かける横開きのシャッター

 

2年半前に入社した“新入社員”はなんと御年80歳。キオスクで見かけるシャッターなど、特殊シャッター技術で定評のある株式会社横引シャッターには、実質的に定年がありません。社員の年齢、性別、国籍は一切不問。まさにSDGsと合致した経営を地で行っています。

 

過去3年間で中途入社した社員6名が60歳以上

パソコンの画面を見ながらCADソフトでシャッターの設置場所に応じた設計を行う一級建築士の金井伸治さんは、44年間勤務していた大手電力会社を2017年に退職後、奥様ががんを患ったことを機に再就職を決め、2020年6月に78歳で同社に入社しました。

↑一級建築士の金井伸治さん。自動車好きで、ポルシェ・カレラ911に乗るのが夢だった

 

「また働きたいと思ってハローワークに行きましたが、年齢制限に引っかかってどこもダメ。高齢者の就業を支援する区役所の部署でも厳しい現実を突きつけられました。そんな折に、90歳を超えても現役で働く社員を紹介するテレビ番組をたまたま観て、この会社を知ったのです。さっそく面接を受けたら、人柄を買われたのか、驚いたことにその場で採用が決定。社長からは『職場での和を大切にしてほしい』とだけ言われました」(金井さん)

 

入社のきっかけとなったテレビ番組で紹介された方は、正社員としてシャッターの金具を作る仕事をしていました。残念ながら、在職中の今年2月に94歳で亡くなったそうで、今は80歳の金井さんが最高齢。33人の社員のうち、10名が70歳以上で、この3年間で60歳以上の方が6名も中途入社していると言います。社員の平均年齢は58.7歳と高い一方で、最近26歳の若者も入社しました。これだけ幅広い年代の社員が働く職場において、世代間ギャップなどが業務に支障をきたすことはないのでしょうか。

 

仕事仲間なので年齢は関係ないと思います。20代、30代の人たちに対して孫のような感覚になることも、ジェネレーションギャップも感じません。以前は親睦を深めるために飲み会や芸人を呼んだイベントなど、会社での集まりもよくあったそうですが、今はコロナの影響で交流する機会が減っていて……。それでも社内の雰囲気は悪くなく、私にとってすごく居心地がいい職場です」(金井さん)

 

社長からの「信頼」が仕事のモチベーションに

前職では原子力施設の設計を行っていましたが、今はシャッターの設置環境や顧客の要望に応じて設計するのが金井さんの仕事。「規模は違っても同じ設計なので何も問題はない」と笑います。1つの案件にかける日数は2~3日だそうです。

↑営業担当者からの説明を受けて図面をおこすことが多いため、営業や職人たちとの関係性も重要となる

 

「当社ではJWCADという無料のCADソフトを使っていたのですが、大手ゼネコンなどはAutoCADという有料ソフトを使うことが多いんです。そこで社長に『大手を相手に仕事をするならAutoCADを導入した方がいい』と提案したところ、その案をすぐに採用していただけました。社長は私を信頼して任せてくれているんだと考えると、仕事へのモチベーションも高くなります。現在は、JWCADとAutoCADを併用しつつ、仕事の合間にAutoCADへの移行作業を行っているところで、それにもやりがいを感じています。

 

一般的な会社は採用に年齢制限を設けていますが、年齢に関係なく、才能のある人はたくさんいます。社長の考え方は意義のあることだと思いますし、私にとっては本当にありがたく、感謝しています。今後は健康が許す限りこの会社で働き続けたいし、AutoCADでの設計は非常に奥が深いので、日々勉強して少しでも極めたいと考えています」(金井さん)

 

能力があれば年齢なんて関係ない

80歳になっても生き生きと働く金井さんですが、「あえて高齢者を採用しているわけではなく、面接をして、わが社に来てほしいと思った人にたまたま高齢者が多かっただけです」と話すのは市川慎次郎社長。創業者である父親の急逝にともない、2012年12月に同社の社長に就任しました。

↑代表取締役 市川慎次郎さん

 

「子どもの頃、『お前たちが生活できるのも社員のおかげ』と父からよく言われていました。ゼロからこの会社を築いた父は、苦労も多く、社員のありがたみが身に染みていたんです。そんな父の背中を見て育った私ですから、社員を大切にする気持ちは自然と身についたんだと思います。年齢や国籍などの条件にとらわれず採用や昇給をしますし、定年もなし。福利厚生はもちろん、パソコン教室や資格取得推進など、社員にさまざまな学習の機会も設けています。雇用に関してよく取材を受けますが、私としては特別なことをしている意識はありません。

 

そもそも、年齢や性別、障害の有無、国籍で差をつける理由がわかりません。逆にもったいない。59歳から60歳になっても急に能力が落ちるわけではないのに、60歳になったからと定年退職したり、会社に残っても給料を減額されるのはおかしな話です。高齢者でも能力が高い人は少なくないし、現役でバリバリ働ける人も多い。もちろん会社なので、来るものは拒まずではありません。採用の際は、経歴よりも、和を重んじる当社の社風に合うかどうかを重視しています。金井さんの場合は、建築士としての経歴は申し分ありませんでしたし、面接で話した印象が当社に合うと感じたので採用を決めました。

 

また、制限を設けない雇用によるメリットは多々あります。例えば、腕のいい職人の場合、同じ作業工程であっても仕事のクオリティに差が出ます。一般的な職人は、自分が習得した技術をなかなか教えたがらないのですが、定年がないと生涯働き続けられるので、会社のことを自分事としてとらえ、後継者の育成にも協力的になります。彼らの経験から得た技術や知識を若い人たちに教えてもらえることは何よりの財産。さらに、若い人たちは、目上の人を大切にする機会が増え、人間性を育むことができると考えています」(市川さん)

 

過去の苦い経験がきっかけに

何よりも、社員同士の“和”を重んじる市川社長ですが、それには大きな理由がありました。

 

「実は会社が経営難に陥ったことがこれまで2度あり、とくに父が亡くなる前後はどん底でした。いくら“社員が大切”と掲げていても、社員の会社に対する不信感が強まり、離職する人も多かったです。また、事業継承の際も、会社を倒産させる考えの兄と、社員のために続けたいと主張した私との間に確執が生じ、社内の雰囲気が最悪に。社員のモチベーションが低下し、生産性にも影響しました。だから私は、社員から信頼される会社にしたいと強く思いました」(市川さん)

↑工場での作業風景

 

倒産の危機、そして社員の会社に対する不信感……。社長に就任した市川さんは、立て直しのために手腕を発揮しますが、同時に、社員の信頼を得ることにも力を入れました。経営上開示できない資料以外の情報をすべてオープンにし、社員にとってプラスになることはすぐに取り入れました。社員の声に耳を傾け、いつも真剣に向き合うことも意識したそうです。

 

「今でこそ笑顔で話せますが、会社立て直し当時は社員からの風当たりも強く、悲惨そのもの。でも、社長になって10年になりますが、今は本当に会社の雰囲気がいいと感じています。社員同士も仲が良く、不安がないから仕事に集中できています。雇用に関してもそうですが、有言実行してきた1つずつの小さな積み重ねの結果だと思います。こちらから襟を開かないと相手は殻に閉じこもったままなので、話しかけたり、困っていたら手を差しのべたりするなどの意識も持ち続けました。

↑社員の皆さん。年齢も国籍もバラバラだが、仕事中でもお互いに尊重し合っている様子が伝わってくる

 

また、社員には“お互いさま精神”を持つようにと常々言っています。表面的な付き合いや、会社のために手伝うのではなく、和を重んじ、誰かが困っていたら仲間として積極的に助け合えと。会社で起きている全てのことは、自分たちに影響するのだからと。そのため、頻繁に部署の配置転換を行い、他部署が忙しかったり、困ったりしていたら、“応援”ではなく“戦力”になるよう多能工化も進めています。例えば新型コロナに複数の社員が感染した時も、ほかの社員がフォローしてくれたおかげで、業務が停滞したり、お客さまにご迷惑をかけたりすることはありませんでした」(市川さん)

 

会社は社員あってのものだから、社員を信頼し大切にする――。こういう考えを持つに至ったからこそ、社員の年齢や性別、国籍などは問わない雇用を行うことができているのでしょう。

 

撮影/神田正人

冬季五輪の選手村は学生向け住宅に。ミラノが挑む3つの「サステナブル住宅プロジェクト」

イタリアのミラノ市はサステナブルな町づくりを目指し、長く放置されていた旧鉄道エリアや旧工業地帯エリアの再開発を始めました。2026年2月に開催される「ミラノ・コルティナ冬季オリンピック大会」に向けて選手村も建てられており、大会終了後には住宅になる予定。ミラノ市が取り組む、3つのサステナブル住宅プロジェクトを紹介します。

サステナブルな巨大プロジェクトが進行中のミラノ

 

1: ゼロカーボン住宅に取り組む「リネスト」

 現在、イタリア初のゼロカーボン住宅を建設中の「リネスト」は、都市再開発に関する国際コンペティションで数年前に優勝したことがあるプロジェクトの1つです。旧鉄道の貨物ターミナルとして使われていたミラノ北東のスカログレコ ブレダ地区にある約7万平方メートルの敷地に、約400戸の住宅と約300戸の学生住宅を建設。これらは再生可能エネルギーにより稼働し、2050年までにゼロカーボン化を目指しています。

 

特に注目を集めているのは「第4世代地域暖房(4GDH)」のシステム開発で、自然エネルギーや廃熱を利用した温水を建物の給湯や暖房に使うのが特徴。雨水を再利用してかんがい用水として使用するほか、周辺地域はCO2を吸収するために、面積の60%を緑地化する方針です。リネストは専用アプリを開発し、住民は自宅のエネルギーと水の消費量をリアルタイムで確認することができます。

 

ミラノ市内の道路は平坦で自転車での移動が便利なことから、リネストは1200平方メートルの駐輪場を設置することで、自転車の利用を促進する予定。住戸ごとの駐車場は用意せず、自家用車の大幅削減を目指します。市内にはCO2を排出しない電気自動車のカーシェアリングサービスがあるため、10台分の充電エリアを用意する計画も。

 

このような取り組みを通して、リネストは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」を30年以内に実現する予定です。

 

2: 選手村を建設予定の「ボスコナヴィリ 」

↑週末に賑わいをみせる、サン・クリストフォロ地区の運河沿いの飲食店舗

 

旧鉄道エリアのサン・クリストフォロ地区では、約90戸の集合住宅「ボスコナヴィリ」が建設中です。外壁に多くの植物が植えられ「垂直の森」と呼ばれる、ミラノで有名な高層建物「ボスコ・ヴェルティカーレ」を手がけた建築家ステファノ・ボエリ氏が設計。このエリアは運河沿いにレストランやバーが並ぶ観光地としても人気のエリアで、2024年までに運河に近い9000 平方メートル以上の敷地に「ボスコナヴィリ」をはじめ、3階建てヴィラなどを建設予定です。

 

ボスコナヴィリは住宅の屋根を太陽光発電パネルで完全に覆い、地熱エネルギーを使用することで、夏は涼しく、冬は暖かくなるように設計されているとのこと。スマートモビリティにも対応しており、住民共有の電動自転車とスクーターを設置することで、CO2の排出を抑えます。

 

敷地を囲む樹木や植物は、騒音や微粒子状物質(PM2.5)に対するバリアの役割を果たすと同時に、CO2を吸収することが期待されています。雨水を収集して再利用する自動かんがいシステムも導入されます。

 

さらに、旧ポルタ・ロマーナ駅エリアには、冬季オリンピックの選手村を建設予定です。この地域では都市化や公共緑地化の計画が進められており、大会終了後には選手村を学生たちが使える公営住宅にする計画です。

 

3: イタリア最大の都市再開発プロジェクト「ミラノセスト」

イタリア最大の都市再開発プロジェクトといわれている「ミラノセスト 」は、150万平方メートルの広大なセスト・サン・ジョバンニ旧工業地帯を持続可能な都市へと再生させる計画です。タワーオフィス、商業施設、ホテル、病院、大学、住宅など7つの建物が建設され、住民や在勤者、訪問者などの利用者数は1日約5万人を想定。第1フェーズとして、2025年までに住宅や商業施設がオープンします。

 

ミラノセストは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の考え方に基づきながら、建物に使う資材や原材料を決めているほか、かつて工場があった場所を含めて、本計画の対象地域全体に1万本の木を植える予定。これにより、年間48トンのCO2が吸収されるそうです。さらに、周辺での車両使用を削減するために、10kmの歩行者専用道路と自転車専用道路が建設されるとのこと。

 

本プロジェクトでは、歩道橋の上には太陽光発電パネルを設置し、使用するエネルギーの50%を再生可能エネルギーから生み出します。緑地化とクリーンエネルギーの活用により、CO2の排出量を5500トン抑制することを目指しており、これは2万1000台のクルマが1年間に排出する量に当たるそうです。

↑歴史あるミラノのシンボル「ドゥオーモ」と「ガレリア」

 

町の中心には歴史を感じさせる古く美しい建物や景観をそのまま残し、その一方で持続可能な都市へと生まれ変わる再開発にも力を入れているミラノ。国や州、市の総力を結集した今回のサステナブルプロジェクトは、未来を見据えた挑戦としてイタリアの歴史に刻まれていきそうです。

 

執筆者/Shiho Yamaguchi