ニコ・ニコルソン著『わたしのお婆ちゃん』を読む――2025年には730万人が認知症に。向き合う一歩は「知る」ことかも

なんとなく避けてきたこと、なるべくなら一生関わることなく過ごしていきたいと思っていること、それは「認知症」です。

 

岩手に暮らす母親から「私が認知症になったら施設に入れてね」と冗談で言われたことがありました。その時は笑って話をしていましたが、実際、東京で暮らしている私が実家にいる親の介護となると時間的にも物理的にも金銭的にも大変になることは目に見えています。だからこそ考えないようにしていたし、なってから考えようなんて軽く思っていました。

 

でも日本における認知症の割合は、2025年には730万人へ増加し、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると言われているそうです。5人に1人って、自分の両親・祖父母だけでも4人、結婚していればパートナーの両親と祖父母を合わせて8人。身内の1〜2人は認知症になる人が出てくる可能性があるってことか。ふぅ。。。

 

 

認知症についてちゃんと知らなかった

わたしのお婆ちゃん』(ニコ・ニコルソン・著/講談社・刊)は、認知症を避けてきた私にとって、本当に驚くことばかりでした。こんなことを書くのはバカみたいですが、ただただ忘れていくだけが「認知症」の症状だと思っていたのです。

 

・強盗にあった! と嘘を言う

・時間の感覚がなくなって夜中に起きて徘徊する

・家にいるのに「家に帰る!」と言う

・無意識に脱糞してしまう

・ちゃんとお米が炊けない

 

こんな症状が日常的に繰り返されるなんて、想像の遥か上でした。

 

『わたしのお婆ちゃん』の場合、お婆ちゃんの見た目の変化はなく、体の弱りもなく、しっかりご飯も食べられるのに、日常生活が少しずつ崩れていく…初めて認知症の症状が出た時には、「病気なの? ボケちゃったの?」と、家族だけでなく本人も迷うだろうなと思いました。

 

 

老化のぼけと認知症の違いって?

もし私が認知症になったとしても、日頃から塩と砂糖を間違えたり、忘れ物を良くしたり、米だって上手に炊けない時もあるから、ぼけがさらに進行したと思われちゃうのかな? とか考えていましたが、老化によるぼけと認知症ではどんな違いがあるのでしょうか。

 

一緒に生活してみてようやくわかった

これが老化のぼけのはずない

(『わたしのお婆ちゃん』より引用)

 

ヒントがあれば「あ、そうだった!」となるのが老化によるぼけですが、認知症の場合ヒントがあっても「そうだっけ?」と思い出せなくなってしまうような症状なんだそうです。

 

2018年現在で認知症を治す薬はなく、進行を遅らせることくらいしかできません。軽い運動をして体を刺激したり、麻雀したり、ゲームをすることで脳を動かすなど、物忘れを予防したりしている方も多くいますが、認知症の場合は病気なので、予防ではなく治療が必要になります。

 

「もしかして?」と気になった方は主治医の先生に相談してみたり、地域によっては認知症を診察できる医療機関を教えてくれるとのことなので、一度診てもらうのも大事かもしれません。私の祖母は先日、認知症テストを受けて「よかったよ、認知症じゃなかったから」とホッとしていました。認知症じゃないと思えることで、安心した日常を過ごせるようにもなりますし、私たち家族もどこか安心できました。

 

 

家での介護が「最善」というわけではないみたい

実際に認知症と診断された身内がいるという方の中には、「自分の親だから」「自宅で介護する方が本人にとっても良い」とご自宅で介護されている方も多いと思います。

 

『わたしのお婆ちゃん』でも、自分の家にいるのに「家に帰る!」と言われたり、他人のように扱われても、たまーにいつものお婆ちゃんも顔をのぞかせるので、いつか戻るのではないか? グループホームでは生活させるのは可哀想では? と、ニコさんと母親の二人で分担して、デイケアも併用しながら、在宅介護をしていました。

 

けれど、お婆ちゃんの症状は改善せず、在宅介護の限界を迎えます。結果として、高齢者施設へ入居することになるのですが、「でも結局何をしたって後悔は残るのよね」という母親の言葉が印象に残りました。お婆ちゃんの気持ちは尊重しつつも、自分たちも無理をしない。何よりも「家族」でいれる形をとることが大切なのだと感じました。

 

 

知ることが大切

認知症と聞くと、関係ないと思ってしまう人も多いかもしれません。

 

でもなってしまってからでは、考える「余裕」がなくなってしまいます。コミックで読める『わたしのお婆ちゃん』では、今まで知らなかったことをたくさん教えてくれる一冊でした。認知症と向き合うことを避けてしまっていた人にこそ、認知症を知るきっかけの一冊として手に取ってもらえたらうれしいです。

 

今週末、「認知症になったら施設に入れて」と言っていた母親が上京してくるので、『わたしのお婆ちゃん』を読んでもらって、ちょっと早いかもしれないけどこれからの家族のこと考える時間を作ってみようと思っています。避けるのではなくちゃんと向かい合うことは、「やっぱり施設に入れて」と言われるかもしれないけど(笑)、大切なんじゃないかなと思いました。

 

【書籍紹介】

 

わたしのお婆ちゃん 認知症の祖母との暮らし

著者:ニコ・ニコルソン
発行:講談社

東京で漫画家をしているニコ。家族は宮城に住む母と婆。実家は震災の時に流されてしまったけれど、婆の希望で、母が頑張って同じ場所に家を建て直した。そんな実家に久しぶりに帰省した際、ニコは婆の奇行を目にする・・・。幼い頃から、外で働く母に変わって、いつもニコの世話を焼き可愛がってくれた婆。しっかり者の婆が、なぜ・・・? 大好きな婆が知らない人みたいになっていく・・・。ニコはまだ、認知症を知らなくてーー。

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思ってもいなかった突然の介護生活! 私はなにをどうしたらいいの?

「おばあちゃんが、足を骨折しちゃったみたいなの」

 

母親から電話があり、祖母の入院を知った私。都心から電車で2時間ほどの距離にひとりで住んでいる祖母の所へ見舞いに行きましたが、その時にはすっかり元気はなくなっており、「あそこで転ばなきゃ…」と落ち込みモード。

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入院によって寝たきりになるケースも聞いたことがあったので、「なんとか元気になってもらわなきゃ!」の一心でできる限りのことをしてみました。無事に退院できましたが、すぐに前と同じような生活には戻れない…もともと一人で暮らしていたのに、おばあちゃんどうなっちゃうの!?

 

今回は、初めての介護で困ったこと、知っておけば良かったことを『高齢者の日常生活サポート』(桑原紀子・著/学研プラス・刊)より抜粋してご紹介させていただきます。

 

 

高齢者は「太ももの付け根」の骨折に要注意

私の祖母は道で転倒してしまい、足首を骨折していました。転んだ後、骨折していることに気がつかぬまま歩いて自宅に戻ってしまい、夜になり腫れと痛みを感じて、翌日病院に行ったそうなのですが、結構な時間放置してしまったため、「退院まで時間がかかるかも」とお医者さんからは言われておりました。

 

祖母は約1ヶ月の入院生活でしたが、骨折してしまった際、本来はどのように対処するのが良かったのでしょうか?

 

立てない、歩けない場合は救急車を呼ぶ!

1.移動せず、その場で楽な姿勢をとる(ケガした部分は触らない)

2.転倒したときに、頭を打ったり、ほかの箇所をケガしたりしていないかを確認する

3.出血性ショックの症状がないか、しっかり観察する(顔色が真っ青/冷や汗をかく/ぐったりしている/脈が速く、あるいは弱くなる/呼吸が速くなる)

4.出血性ショックの症状がある場合は、頭を下げて、足を少し高くして寝かせる

(『高齢者の日常生活サポート』より引用)

 

救急車を呼ぶかどうか迷ったら、#7119へ。また一人暮らしをしている方で、交通手段がなくて悩んでいる場合は、フリーダイヤル0120-199-958の一般社団法人 全民救患者搬送協会へ連絡してみましょう。民間救急車を案内してくれます。

 

また高齢者の場合、太ももの付け根(大腿滑稽部)の骨折は治るまでに時間がかかってしまうため、骨折がきっかけで持病の悪化や呼吸器・循環器の合併症が起こり寝たきりになるケースもあるそうです。普段から足を鍛える体操をしたり、つまづきやすい所を片付けたり、手すりをつける等、できるところから予防したいですね。

 

 

「デイサービスには行きたくない…」そんな時、どうするのがいいの?

退院してから自宅に戻っても「お風呂は入りたくない」「どこかに行くのも疲れちゃう」「動きたくない」とおばあちゃんのモチベーションが下がったまま。日常のなかで少しでも楽しみに感じてくれればいいな〜と、お風呂も入れるデイサービスへ申し込んでみたのですが、不安になったのか、勝手に電話をしてキャンセルしようとする始末。こんな時、どんな言葉をかけてあげるのが良いのでしょうか? いくつか例をご紹介します。

 

「気の合う人が見つかるかもしれないし」

「みんな同じことをするのではなく、選べるらしいよ」

「お父さんの好きな●●をする仲間がいるんですって」

「つまらなければ、いつでもやめられるから、一度行ってみたら?」

(『高齢者の日常生活サポート』より引用)

 

 

もちろん本人の気持ちが最優先ですし、家族が毎日そばにいてあげられれば一番いいのでしょうが、なかなかそうもできないのが現状。家族とも「おばあちゃんかわいそうかな?」と話もしていましたが、要介護認定の申請をしていくなかで、地域の方と話をしてみると、デイサービスは活用しないともったいないと思うくらい、有難い存在でした。

 

一度はキャンセルしようとした祖母でしたが、行ってみたらすごく楽しかったようで、「競争で2位になった!」「お風呂が気持ちよかった」と今では毎週の楽しみになっている様子でした。分担できるところは、サービスを活用し、家族だけで抱え込まないようにするのも大切なポイントかもしれませんね。

 

 

介護が必要になってから考えるのではなく、元気なうちに

祖母の骨折をきっかけにたくさんのことを知れましたが、現在32歳の私。あと20年もしないうちに自分の両親、旦那のご両親も介護が必要になるかもしれません。元気なうちにできることはないのでしょうか? また、両親とどのようなことを確認しておけば良いのでしょうか? いくつか確認事項をお伝えします。

 

・介護が必要になったら、どこに住みたい?(例)自分の家、介護施設、家族と同居

・介護が必要になった場合にも、やりたいことはある?(お風呂には1日おきに入りたい、趣味のサークルは続けたい、など)

・寝たきりになっても、これだけはしたくないことってある?(介護施設に入りたくない、延命治療はしたくない、など)

・年金や保険など、通帳やお金の管理は、将来的にはどうしようと考えているか? など

(『高齢者の日常生活サポート』より引用)

 

わからない未来を先延ばしにするよりも、備えておくことが本当に大切だなと感じました。地域のサービスを把握したり、国の制度などを知っておくのも大切ですが、まずは本人たちがどうしたいのか、何をされるのが嫌なのか聞いておくことが第一歩だと感じました。今まで遠ざけていたな、親の意見を聞いたことがないなという方は、これをきっかけにフランクに話し合ってみてはいかがでしょうか? 何もしなくても生きている限り、毎日年齢は重ねていきます。備えあれば憂いなしですぞっ!

 

【著書紹介】

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高齢者の日常生活サポート

著者:桑原紀子(監修)
出版社:学研プラス

意外と危険度の高い、高齢者に見られる日常生活面での危険。なぜそうなりがちなのか、どう予防すればいいかがイラストでわかる。また熱中症や脳梗塞など、すぐに救急車を呼ぶかどうかの判別方法など、緊急の場合の対処方法も紹介。

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