高齢者以外も要注意! 「ヒートショック」の対策と発生時の対処法を医師が解説

厳しい寒さが続く季節にとくに注意したいのが「ヒートショック」です。ヒートショックとは、寒暖差による急激な血圧の変化によって起こる現象。高齢者に多い現象のイメージがありますが、実は若い世代の人にも起こる可能性があるのをご存知でしょうか。

 

今回は、東京都市大学教授で「お風呂の専門家」としても知られる、医学博士の早坂信哉先生に、ヒートショックのリスクとその予防方法について教えていただきました。

 

急激な温度変化が命取りに……
「ヒートショック」とは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓血管系の疾患を引き起こす現象です。短時間で急激な温度差にさらされると、血圧が急上昇または急降下し発症するリスクが高まります。

 

「ヒートショックは冬場の浴室や脱衣所で発生することが多いと言われています。多くの家屋では、リビングなど生活の場として使われる空間の日当たりが優先されるため、浴室や脱衣所は日当たりが悪く、なかでも冬は冷え込みやすい環境になります。
そのため、浴室や脱衣所で発生しやすくなるのです。実は、入浴時以外にも、ゴミ出しや洗濯物を外に干すなど、短時間の外出時にも寒暖差で発症する可能性はあります」(医学博士・早坂信哉先生、以下同)

↑入浴時の血圧変動のイメージ図。急激な温度変化によって血圧が乱高下しています。 (グラフ提供:早坂信哉)

 

ヒートショックが原因で亡くなる方は、統計上は「浴室内での溺死」などと記録されることが多く、正確な人数は不明です。しかし冬場の溺死者数が圧倒的に多いことから、「そのうち7~8割程度はヒートショックが関与しているのではないかと考えられます」と早坂先生は指摘します。

 

高齢者以外も発症しやすい?
ヒートショック「山型」と「谷型」の違い

早坂先生によると、ヒートショックには、血圧が急激に上昇することで起こる「山型」と、逆に血圧が低下することで起こる「谷型」の2つのタイプがあるそうです。

・山型ヒートショック
一般的に知られているヒートショックは、この山型ヒートショックです。暖かいリビングから寒い脱衣所に移動するときや、寒い浴室から熱い湯船に入るときなどに血圧が急上昇し、脳内出血や脳梗塞、心筋梗塞や狭心症などの健康被害を引き起こします。

 

「高齢者は血圧が変動しやすく、山型ヒートショックの発生リスクが非常に高いです。とくに糖尿病や高血圧といった持病を抱えている方は、動脈硬化によって血管の柔軟性が失われ、血管が破れたり詰まったりしやすいため、ヒートショックのリスクはさらに高まります。過去に脳卒中や心筋梗塞、狭心症などの既往歴がある方も注意が必要です」

・谷型ヒートショック
谷型ヒートショックは、山型ヒートショックとは反対に、血圧の急激な低下によって起こります。山型ヒートショックは高齢者に多く見られますが、谷型ヒートショックの場合は全世代に発症のリスクがあります。

 

「湯船から立ち上がる際に、頭がぼーっとしたりクラクラしたりしたことはありませんか? 谷型ヒートショックは、血圧の低下によって一時的に脳への血流が不足することでめまいや立ちくらみが引き起こされ、そのまま長時間意識を失ってしまうケースもあります」

 

谷型ヒートショックになりやすい入浴習慣には、長風呂や飲酒後の入浴などが挙げられます。

 

「お風呂にスマホを持ち込んで動画を見たり、マッサージやボディケアをしたりして、つい長風呂をしてしまう方も多いかもしれません。しかし、入浴時間が長すぎると、脱水を引き起こすなど体に大きな負担がかかります。また、飲酒直後は血圧が低下していることが多いのですが、入浴によってさらに血圧が下がる可能性もあります」

 

年齢を問わず、誰にでも起こりうる谷型ヒートショック。とくに女性は、もともと血圧が低い人や貧血気味の人が多いため、発症リスクが高まります。意識障害を起こすと、最悪の場合、倒れた際に頭を打ったり、湯船で溺れたりするなど事故につながる危険性もあるため、若い世代でも入浴時は十分に注意が必要です。

 

お風呂に入る前に要チェック!
3つのヒートショック対策

それでは、家庭内でのヒートショックを防ぐにはどうすればよいのでしょうか? 脱衣所と浴室でできることを3つご紹介します。

 

対策1.入浴前に脱衣所と浴室を温める

冷気がこもりやすい脱衣所や浴室は、リビングや寝室などの生活空間に近い温度に保つのが望ましいそうです。

 

「おすすめは、脱衣所への小型の暖房器具の設置です。リビングと脱衣所の間のドアを開けて暖かい空気を通す方法も効果的。浴室に関しては、浴室暖房機能があればぜひ活用してください。もしそのような機能がない場合は、入浴前に1~2分程度、床にシャワーをかけたり、浴槽にお湯を張る際にふたを外していたり、ちょっとしたひと手間で浴室全体を温めることができます」

 

対策2.湯船のお湯の温度を42℃以下に

42℃以上の熱いお風呂は血圧を急上昇させる可能性があり、とても危険です。人によって好みの湯温はあると思いますが、湯温は40℃程度が望ましいでしょう。
長湯しすぎないよう、入浴時間は長くても15分程度に留めるのがベター。また、かけ湯をせずに湯船に入ることも、実はヒートショック発症のリスクを高めます。必ずお湯で体を流してから入るようにしてください」

 

対策3.湯船から出るときは、ゆっくり動く

立ちくらみを防ぐため、湯船から立ち上がる際は、20秒ほどかけてゆっくり動くようにしてください。浴槽のフチや手すりなどを使い、体を支えながらゆっくりと立ち上がりましょう。いったん浴槽のフチに腰をかけて、少し休んでから立ち上がるのもよいでしょう。
また、浴槽から出る前に手を冷水に浸すのも、立ちくらみ防止に効果的です。手先を冷水で冷やすと血圧が少し上がるので、血圧を安定させられます」

 

日本の家は寒すぎる……
室内は全部屋18℃以上を保とう

ヒートショックを防ぐには、脱衣所や浴室だけでなく、家全体を温かく保つことも大切です。WHO(世界保健機関)は、冬の室温を18℃以上に保つことを推奨していますが、断熱性の低い家屋が多い日本では、この基準を満たしていないケースが多いのが実情です。

 

早坂先生は、「室温が低いと、ヒートショックを含むさまざまな健康リスクが高まります。リビングや寝室以外の部屋にも空調を入れておくなど、家全体を最低でも18℃以上に保つ工夫が必要です」と言います。

 

早坂先生によると、理想的な室温はさらにプラス2℃高い20℃だそう。この室温をすべての部屋で維持するために早坂先生が推奨するのは、家全体の温度を均一に近づけられる「高断熱での全館空調システム」の導入です。

 

とはいえ、全館空調はコストがかかるうえ、賃貸物件や築年数の古い家では導入が難しいもの。そこで、手軽にできる断熱方法も教えていただきました。

 

「冷気が部屋に入り込む主な原因は窓なので、断熱性の高い厚手のカーテンを使うといいでしょう。カーテンの丈が短いと冷気が下から入り込んでしまうため、床まで届く長さのものがおすすめです。また、窓ガラスに梱包材として使われる気泡緩衝材を貼るだけでも、断熱効果が大きく向上します

 

適切な対策をしながら
健康的で楽しいお風呂ライフを

どんなに対策をしていても、体調や状況によってはヒートショックが起きる可能性はあります。では、万が一ヒートショックを発症した場合、どのように対処すればよいのでしょうか?

 

「浴室の場合は溺水事故を防ぐために、浴槽から離れることが最優先です。立ちくらみや視界が暗くなるような感覚があっても、浴槽の中には戻らず、洗い場や脱衣所に移動してから横になりましょう
谷型ヒートショックの場合、脳の血流量が不足している状態ですので、頭を低くした姿勢で横になるのが効果的です。
一人暮らしの方は、発症時にすぐに助けを呼べるよう、日ごろからスマートフォンを浴室に持ち込んでおくのもいいですね」

 

「もし家族や友人がヒートショックを起こした場合も、同様に溺水事故防止を優先してください。浴槽でぐったりとしている方を発見したら、鼻と口がお湯に浸からないように体を支えながら、速やかにお風呂の栓を抜いてください
その後、可能であれば浴槽から出し、顔を横に向けた状態で寝かせ、吐瀉物でのどを詰まらせないようにしましょう。自己判断は非常に危険ですので、応急手当をした後は必ず救急車を呼んで医師の判断を仰いでください

 

近年は浴室内の異常を検知して家族や関係者に通知する浴室対応の見守り機器など、ヒートショックを防ぐさまざまな技術や製品が開発されています。身近に高齢者や、ヒートショックのリスクが高い持病・既往歴をお持ちの人がいる場合は、こうした機器の導入も検討してみてはいかがでしょうか。

シンセイコーポレーション 「ヒートショック予防 浴室モニター『HCU』
参考価格 20万円(税込)

 

「とはいえ、ヒートショックが心配だからといって、お風呂を避けてしまうのはもったいないことです。お風呂には、リラックスできたり、血行促進効果を得られたりと、体にとってうれしい効果がたくさんあります。ヒートショックに気を付けながら、安全に入浴を楽しんでほしいですね」と早坂先生は話します。

 

無理のない範囲で対策を取りながらお風呂の時間を楽しみ、毎日の健康づくりに役立てていきましょう。

 

Profile

医学博士 / 早坂信哉

東京都市大学人間科学部教授・温泉療法専門医。一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。25年以上にわたり4万人以上の入浴を調査してきた、入浴・温泉に関する医学研究の第一人者。数多くの雑誌やテレビなどで特集が組まれ、メディアにも多数出演。著書に『最高の入浴法』(大和書房)など。
HP

銭湯大使が教える初心者が銭湯を楽しむ奥義と全国のこだわり3銭湯

冷えた体を温めるには、バスタイムにお湯に浸かるのが効果的。現代では自宅での入浴が当たり前になりましたが、かつて一般家庭にお風呂がさほど普及していなかった時代、銭湯は地域の公衆浴場として、なくてはならないものでした。家庭におけるお風呂の普及率が高まったことで、現在銭湯の数は減少しているものの、ここ数年のレトロブームやサウナブームも相まって、これまで銭湯を利用していなかった若い世代からの支持や関心は高まっています。

 

日本銭湯文化協会の銭湯大使として活動する「銭湯OLやすこさん」こと奥野靖子さんに、銭湯の魅力と楽しみ方を教えていただきました。

 

銭湯の大きな浴槽は
緊張をほぐし、リラックスできる場所

家庭に浴槽があることが当たり前となった今、銭湯を利用するメリットはどういったところにあるのでしょうか?

 

「やはりリラックスできることだと思います。私が銭湯に通うようになったきっかけは、仕事がとても忙しかった若手時代のこと。会社と家との往復で自分の時間が取れなかった際に、会社帰りにふと思い立って行ってみたのが銭湯でした。それまでは仕事でミスをすると家に帰って考え続けてしまい、オンオフの切り替えができなかったんです。それが、銭湯に行ったことで『明日も頑張ろう』と気持ちの切り替えができるようになりました」(奥野靖子さん、以下同)

 

銭湯に通うことで心の変化を感じたという奥野さん。またメンタル面だけでなく、肩こりや首のこわばりが楽になるなど、身体面でのリラックス効果も期待できるのだといいます。

 

「大きい浴槽は深さがある分、体に水圧がかかり血行が促進されるそうです。家庭用の浴槽でもある程度は気持ち良いのですが、浴槽が大きく深くなれば、その効果も高まります。また、浮力による効果もあります。例えば水中だと、うさぎ跳びのポーズをしてもしんどいと感じないですよね。浮力のおかげで体が軽くなるから。筋肉の緊張がほぐれることでリラックス効果が期待できるそうです。その浮力と水圧の効果が高まるのは、大きいお風呂ならではの魅力です」

 

若い世代や企業の力が加わり
時代とともに銭湯が変化

かつて利用者の年齢層は比較的高かった銭湯ですが、今は20〜30代の若い世代の利用が増えているといいます。客層が変化した背景には、どんな理由があるのでしょうか?

 

「施設がリニューアルすれば必然的に新しい顧客が増えることはあります。ですが、リニューアルしていない銭湯でも足を運ぶ若い世代は増えています。そうした銭湯は、貼り紙にこだわってみたりイベントを行ったりと、できることから工夫して『若い人も歓迎するよ』という意思表示をされているんです」

 

各銭湯だけでなく、業界全体で利用者が増えるよう組合でもさまざまな取り組みを行なっています。

 

「東京都浴場組合の例で言えば、都内の銭湯を巡るスタンプラリーを期限を設けずに行っています。区によっては期間限定の景品がもらえるなど、1度だけでなく、また次も来てみようと思えるような工夫がされていますね。ほかにも“ゆっポくん”という全国の浴場組合公認キャラクターの効果も。かわいいキャラクターがいることで、小さいお子さんからも注目される機会も増えました」

全国浴場組合のマスコットキャラクター「ゆっポくん」。

 

グッズで企業とのコラボやタイアップも増えたとか。

 

「例えば常連さんからTシャツやステッカーを作ろうという話があるなど、店主だけでなく周りの人たちと一緒にグッズを作る取り組みは多いですね。ほかにも銭湯映画とのコラボや、化粧品会社からのシャンプーのタイアップなど、高頻度で企業とのコラボの話を耳にします。また、店主のお子さんやご家族がSNSを担当されるなど、SNSで情報を発信する銭湯が増えたのも、ここ数年で変化した点だと思っています」

 

銭湯デビューのために
押さえておきたいポイントとマナー

銭湯は常連さんばかりで初めてでは入りにくい……そう感じる人もいるでしょう。そこで、初心者が銭湯ライフを楽しむためのポイントとマナーを奥野さんに伺いました。

 

銭湯を楽しむポイント

・まずは「挨拶」。会釈だけでもOK
「銭湯は間違いなく、挨拶をした方が良い場所です。大きな声での挨拶が緊張する場合は、会釈だけでも大丈夫。挨拶することで、『慣れていない子が来たから何かあったら教えてあげよう』と思ってくれる常連さんも多いんです。そのためにもまずは挨拶することが大切です」

 

・わからないことは遠慮なく聞く
「例えば、桶が置いてある場所や勝手がわからないことってありますよね。そんなときは『すみません、桶はどこにありますか?』って聞いてみる。聞かれて嫌だと思うよりも、むしろ教えてあげたいという気持ちの常連さんが多いので、わからないことは実は“聞いた者勝ち”です。周りにどんどん聞いてみてください」

 

・基本は手ぶらでOK
「必要なものはレンタルや販売品などで用意されているので、基本は手ぶらで行けるところがほとんどです。また、髪を洗わなくても、大きな湯船に浸かってリラックスするだけでも十分です」

 

・近所の銭湯から行ってみる
「どこの銭湯に行けばいいか迷った場合は、まずは近所の銭湯に行ってみることをおすすめします。馴染みのある地域であれば、常連さんと話すときも、ご近所の話などができて会話が弾みますよね。仲良くなったらおやつを交換したり、お風呂上がりに飲みに行ったり、なんてことも。年齢問わず繋がりができるので、ぜひ近所から行ってみてほしいです。自分の住んでいる地域に居場所ができるうれしさもありますよ」

 

銭湯を利用する際のマナー

・お風呂上がりは体を拭く
「それぞれの銭湯や地域によって、細かいマナーは異なると思いますが、お風呂上がりの濡れた体を脱衣場に入る前に拭くことは共通で抑えておきたいところ。濡れた体で脱衣場を歩いてしまうと、ほかのお客様に迷惑をかけることになるので、浴槽から上がったらその場でざっと体を拭く、ということだけ覚えておいていただけたらと思います」

 

・泡や湯が周りの人にかからないように
「ほかのお客様に、自身のシャワーや石鹸の泡などが飛んでしまわないように気にかけていただけたらと思います。ただ、気を付けすぎていても疲れてしまうと思うので、万が一かかってしまったときは『すみません』と言えることが大事です。ちょっとした周りへの気遣いも銭湯の醍醐味として、楽しむ気持ちでいていただければよいですね」

 

また、浴槽に入る前に洗い場で体を洗うか、掛け湯だけはすると、周囲の利用者も気分よく使えそうです。

 

銭湯がもっと好きになる!
一歩進んだ楽しみ方とは

銭湯に慣れてきたら、もっと踏み込んだ楽しみ方を見つけてみましょう。奥野さん流の銭湯を全力で楽しむためのアドバイスをうかがいました。

 

・交互浴で「ととのう」を体感する

「私は温かいお風呂と冷たいお風呂に交互に入る『交互浴』が好きなんです。体をじんわりと温めた後に冷たい水風呂に入ると、まるで自分の体がレタスのようにシャキッとする感じがします。この温度差によって生まれる心地よさは、家庭のお風呂では味わえないはず。先に述べたように、大きなお風呂に入るだけでももちろんメリットはありますが、温冷交互浴をセットで行うことで、何にも代えがたいリセット感が生まれますね」

 

・銭湯セットを数パターン用意する

「銭湯が好きになるとこだわりの銭湯道具も決まってくると思います。私は持っていく道具を何パターンか用意しているんです。試供品のシャンプーとリンス、薄めのタオルだけの超軽量セットもあれば、ヘアパックやシャンプーのボトルごと持っていくゴージャスなセットも。美顔ローラーを持っていかれる方もいます。時間がないときは軽量セットにし、しっかりとリラックスしたい日はゴージャスなフルセットで行くなど、いくつかのパターンで用意しておくと、銭湯を無理なく日常の一環として取り入れられるのではないでしょうか」

 

・グッズにこだわってみる

「銭湯グッズを軽量化するのであれば、手ぬぐいが軽くておすすめです。とはいえ髪や肌にやさしいのはやはりタオル。最近のお気に入りは三重県津市にある老舗タオルブランド『おぼろタオル』さんの商品。いくつか種類がありますが、中でも私が好きなのは『専身タオル』です。石鹸の泡立ちがよく、肌触りが心地よいのに、軽い! こうしたアイテムを探していくのも楽しみの一つです」

デリケートなお肌をやさしく洗い上げる。おぼろタオル「専身タオル」各1100円(税込)。

 

・銭湯で一気に打ち解けられるモテ台詞を言う

「最近、これは間違いないなと思っているモテ台詞がありまして。お風呂に入ったときに『あっつい!』などの感想を声に出してみると、近くにいる人と一気に打ち解けられるんです。『水で薄めようか』といってくださる方や、『熱いよね』と共感してくださる方、『こっちの方がぬるいよ』と教えてくださる方など反応はさまざまですが、この一言だけで話が広がります。そのあとは、『いつもこんなに熱いんですか?』と聞くと、常連さんは毎日のように入っているので張り切って教えてくれるはず。打ち解けやすい一言です」

 

・銭湯のチャームポイントを見つけてみる

「私は銭湯の内装やちょっとしたあしらいなど、アートな一面を観るのも好きなんです。有名なペンキ絵だけでなく、例えば小さな豆タイルでも、1枚だけ取り替えた部分がアクセントになっていてかわいいとか。『ここの銭湯のチャームポイントはなんだろう』と考えながら入るのが楽しみになっています」

 

銭湯大使がおすすめする
こだわり満載の銭湯 3選

最後に、奥野さんが愛してやまない銭湯の“名所”を、絞りに絞って3カ所、教えていただきました。

 

[東京]帝国湯 〜どこか懐かしい宮造りの銭湯〜

故早川利光絵師による富士山のペンキ絵が見事。そのほかのタイル絵にも注目を。

 

「“レトロ銭湯のドン”ともいえる銭湯神社仏閣のような建物の素晴らしさはもちろん、縁側から見える庭がとても素敵なんです。池では鯉が泳ぎ、四季折々の花が咲き、どの季節に行っても花やモミジが色づいています。熱めの湯でしっかり温まり、縁側でじっくりとクールダウンを。天井も高く広々とした洗い場はそれだけでも開放感がありますが、窓が開いている季節は風が抜けて心地良いですよ」

縁側は古き良き時代にタイムスリップしたような雰囲気。

 

帝国湯
所在地=東京都荒川区東日暮里3-22-3
TEL=03-3891-4637
入浴料=520円

HP

 

[神奈川]いやさか湯 〜露天風呂からの湯上がりメシが最高〜

洗練されたデザインで、神殿を訪仏とさせる女湯の露天風呂。

 

「浴室が広く、開放感があります。露天風呂もあり、男湯は岩風呂で女湯は洋風……私は『ローマ神殿風』と呼んでいます。湯だけじゃなく空にも癒されますし、サウナも人気です。また、おいしいごはんが食べられるのも魅力の一つ。2階の食堂では食事も可能です。おすすめは本格的な『深大寺そば』と、パウダースノーでできたかき氷。サウナ好きに人気の、オロナミンCとポカリスエットを割った『オロポ』のかき氷もあり、ふわふわの食感が楽しめます」

名物の「深大寺そば」は普通盛り600円。つるつるしこしこの喉越しが、風呂上がりに最適。

 

いやさか湯
所在地=神奈川県横浜市鶴見区馬場1-7-23
TEL=045-583-5161
入浴料=500円

HP

 

[北海道]まさご湯 〜旅先として行きたくなる銭湯〜

主浴槽のほか、バイブラジェットバス、薬湯の3つの湯が楽しめる。

 

「銭湯だけでなく、ラーメン店、さらにはゲストハウスという『食べて、泊まれる銭湯』です。所在地である浦河町は、太平洋と日高山脈に囲まれた自然豊かな町。サラブレッドの産地でもあります。代表の方は町内の自然ガイドツアーもされているので、長期滞在をしながら自然を楽しむ人も多いようです。
銭湯は多くの人の近所にある日常空間。だからこそ、知らない町の銭湯に行くことで、その町の日常にぐっと近づくことができるんです。札幌からバスで約3時間45分と移動時間はかかりますが、わざわざ目的地にしていきたい銭湯の一つです」

2階はゲストハウスに。地域の廃材をリユースした空間が心地良い。

 

まさご湯
所在地=北海道浦河郡浦河町堺町東1-11-1
TEL=0146-22-2645
入浴料=440円

HP

 

 

レトロな外観の銭湯にごはんが充実している銭湯など、どこも個性豊か。お気に入りの銭湯をぜひ探しに出かけてみませんか。

 

Profile

東京都浴場組合 銭湯大使 / 銭湯OLやすこ(奥野靖子)

東京都浴場組合および札幌浴場組合公認ライター。北海道出身で、東京都在住の会社員。「銭湯はもう一つの我が家」とし、銭湯での人とのかかわりを楽しみながら、日本各地の銭湯を巡っている。女性会社員視点でのブログ「銭湯OL日誌」を2013年に開設。以降、TV・雑誌・ラジオ・Webメディア等で銭湯の魅力を紹介している。
Instagram
X(Twitter)

 

冷えのタイプを知って対策!「温活」を取り入れた一日の行動と10のコツ

普段から冷え性(冷え症)に悩む人はもちろんのこと、寒い季節になると「手足が冷えて夜うまく眠れない」「肩こりがひどくなった」など、不調を感じる人は多いのではないでしょうか? 体が冷えることで、血流や免疫機能、代謝の低下などが起こります。昔から「冷えは万病のもと」と言われるように、身体を理想的な温度に保つことは、健やかに過ごすうえで欠かせません。

 

その解決方法のひとつが「温活(おんかつ)」。温活に関する正しい知識を伝えている「日本温活協会」で温活指導士をつとめる川崎真澄さんに、日常生活でできる温活を教えていただきました。

 

免疫力を維持し、健康な体に導く「温活」

温活とは「 “適正な体温” まで上げてその体温を維持すること」をいいます。

 

10年ほど前から広まり始め、新型コロナ流行の影響を受け、免疫力や健康に対する意識の高まりによって、昨今はさらに注目を集めています。

 

「本来、人が健康を保つ適正体温は36.5℃から37℃といわれています。しかし、現代の日本人は36℃前半や35℃台の人もめずらしくありません。適正体温を保つことで、免疫力を維持し病気になりにくい体が作られます。そのためにも温活はとても効果的です」(日本温活協会本部指導員・川崎真澄先生、以下同)

 

アンチエイジングにも効果的! 女性の体にとって大切な「温活」とは

一般的に、筋肉量が少ないことや、周期的なホルモンバランスの変化を受けやすい女性の方が、男性より “冷え” を感じやすいのだとか。

 

「冷えることにより体の機能が低下していきます。また、血液の流れが悪くなることで、卵巣の働きも悪化。その結果、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、生理不順、不妊など女性の体にさまざまな悪影響を及ぼすのです。

 

血液の巡りがよくなると、免疫機能が高まるだけではなく、リンパの流れも良くなり、余分な水分や老廃物をスムーズに回収できます。また、新鮮な血液が細胞に届きやすくなります。細胞も生まれ変わることでお肌の調子が良くなり、代謝が上がるのでダイエットにも効果的です」

 

まずは「冷え」タイプをチェック

「自身が冷えているかどうかをチェックするには、まずはご自身の体に意識を向け、どう感じるかを指標にしてください。例えば、手足が冷える、お腹が冷えやすいなど。そこに改善策があります。また、朝起きたタイミングで体温を測ることもおすすめします。一般的な体温計でももちろん測れますが、基礎体温計を使用した方がより細かく測れるのでおすすめです」

 

■「冷え」タイプをチェック!

“冷え” にもさまざまなタイプがあるという川崎さん。改善策も、人によって異なります。そこで、自分がどの “冷え” タイプなのかをチェックしてみましょう。チェックが多いところが、あなたのタイプです。

 

タイプA
□ 疲れやすくだるい
□ 風邪をひきやすい
□ 平熱が35℃台
□ 舌の色が淡く、舌が分厚い
□ 汗をかきづらい
□ いつもまわりから「大丈夫?」と聞かれる
□ 厚着をしてもなかなか温まらない

 

タイプB
□ お通じが悪く便秘気味
□ いつもお腹が冷えている
□ 肌荒れすることが多い
□ 舌の色が赤紫色
□ 時々めまいを起こす
□ 生理痛がひどい
□ 肩こり

 

タイプC
□ なんとなくイライラすることが多い
□ 時々動悸が激しくなる
□ 急にお腹が痛くなることがある
□ 舌の色が赤黒い
□ 顔や頭からよく汗をかく
□ のぼせを感じる
□ 生理不順

 

タイプD
□ 頻尿、もしくは下痢気味
□ 手足がむくむ
□ よく頭痛がする
□ 舌の色が白っぽくブヨブヨしている
□ 耳鳴りがすることがある
□ 夏でも靴下が手放せない
□ 下半身太りしやすい

 

どこにチェックが多くついたでしょうか? チェックがもっとも多くついたところが、あなたの「冷え」タイプです。ただし、タイプは1つとは限らないので、他にチェックがついたところもあわせて確認するようにしてください。

 

あなたの「冷え」タイプ診断結果

タイプA ……
とにかく全身が冷えていて、いつも寒いタイプ

前提として疲れている人が多いので、運動するよりもまずは休んで体を温めるためのエネルギーを蓄えることが大切です。睡眠がきちんととれているかがポイントになります。

 

タイプB……
首から上は火照るように暑いのに、下半身が冷えているタイプ

ストレスを溜めがちで、気のめぐりが悪いことが原因で冷えているこのタイプの特徴は、足は冷えているのに、顔だけがなぜか汗をかいているという状態。汗をかいていることにフォーカスしてしまうと、自分が冷えていることに気づかないこともあるので注意が必要です。

 

タイプC……
気付きにくいけれど、実は内臓が冷えているタイプ

このタイプの人は、血液の流れが滞っているため、内臓が冷えているのが特徴です。具体的な対策としては、まずはお腹や腰まわり、そしてお尻を温めて。お腹は意識して腹巻きをしている人が多い反面、脂肪の多いお尻は意外と冷えています。

 

タイプD……
いつも手足が冷えているタイプ

水分のめぐりが悪いので、ぜひ運動を取り入れて汗をかくようにしましょう。有酸素運動や筋トレ、何でも構いません。サウナやホットヨガで汗をかくという方法もありますが、体質改善や自律神経を整えるためには、なるべく自分で動いて発汗したほうが効果的です。

出典:『ズボラさんでもこれなら無理なく続く はじめての温活』(宝島社)

 

体を温める食べ物と冷やす食べ物とは?

「温活フード」「温活レシピ」といった言葉を目にするようになった昨今。温活と食べ物には密接な関係があります。体を温める食材としてイメージしやすいのがしょうが、唐辛子ですが、体を温める食材を摂ればそれでいいということではないようです。

 

「薬膳の考えでは食材を、体を強く温めるモノ(熱性)、緩やかに温めるモノ(温性)、温めも冷やしもしないモノ(平性)、さましやすいモノ(涼性)、冷やすモノ(寒性)と5つに分類しています。この5つの食材をバランス良く食べることが大切です。体に熱がこもりやすい夏場は冷房で外側から冷やすのではなく、トマトなどの夏野菜を食べ内側から体を冷ますといいように、季節によってもどんな食材を摂るとベストであるのかということも変わってきます。

 

気温が下がり、体が冷えやすくなる冬には、根菜を入れた鍋がおすすめです。鍋は野菜を多く食べられることもメリットの一つ。発酵食品も体を温めてくれますので味噌やチーズをトッピングするとより効果的ですね。

 

ただ食事を取る上で注意していただきたいのが、いくら体を温めたいからといって、温める食材だけを摂らないことです。温めることだけに意識を向けると、体に熱がこもりがちに。ご自身の体調を見ながら旬の食材を上手に取り入れて、バランスよい食事を心がけましょう」

↑五性分類一覧(提供=日本温活協会)

 

続いて、すべての「冷え」タイプの人が実践できる、温活習慣の取り入れ方を解説していただきました。

 

日々の生活に取り入れたい、「温活」を意識した1日の過ごし方

温活習慣を取り入れた過ごし方とは、どのような暮らしなのでしょうか? ここでは会社に出勤している女性の1日をモデルケースとして、解説していただきました。

 

【起床】朝日を浴びて、白湯を飲む

「朝起きたらまずはカーテンを開けましょう。太陽の光を浴びることで目覚めやすくなるとともに体内時計もリセットされます。これによって夜の睡眠の質も高まります。続いて、食べ物や飲み物を体内に取り入れる前に、まずは歯磨きを! 夜寝ている間に増えた細菌を体の外に出してから、飲食をすることが大切です。そして、白湯をいただき体を温めて1日をスタートしましょう」

 

【朝シャワー】熱めのシャワーで血流を良くする

「温度は42℃程度の少し熱めの設定で、顔からではなく首の後ろにシャワーをあててください。首の後ろには大椎(だいつい)という体温調節に関わるツボがあります。大椎を刺激することにより体が温められ、血流を良くし交感神経を高められるので、快適に目覚めることができます」

 

【朝食】体を温めるには和食が理想的

最近では朝食にスムージーを飲む方が増えています。野菜をたっぷり摂れるというメリットはありますが、温活の観点からは、避けたいメニューのようです。

 

「スムージーが悪いというわけではありません。これから活動していく朝の時間帯に、冷たい食事を摂ることは避けたいところです。朝食には野菜の入った温かいスープやお味噌汁がおすすめです。また主食は、体を冷やす小麦粉を使ったパンよりもお米が理想的ですね。和食は温活の観点から、とても優秀な朝食と言えます」

 

これから体を動かしていきたいタイミングにいただく朝食に、和食は最適です。

【出勤】3首を冷やさない服装に

「『3首(首、手首、足首)とお腹、腰』を意識し保温してください」

 

1.首もと
「首を冷やすと、風邪を引きやすくなってしまいます。冬はハイネックの洋服や、マフラーを着用しましょう。春さきや夏場でも軽めのストールを身に付けていると良いでしょう」

 

2.手首
「特に指先が冷えるという方には手袋をおすすめします。室内では手首を覆うことができる長袖で手首を温めましょう」

 

3.足首
「底冷えも気になる足元は足首まで覆われる靴下を履くことが効果的です。夏場でも体温が低い人は、靴下を履き、体温を上げることを心がけましょう」

 

4.お腹と腰
「お腹と腰を同時に温められる腹巻を着用しましょう。体の中心を温めることで体全体への血の巡りを改善する働きがあります。脂肪の多いお尻も冷えやすくなりがちな部位です。その場合は毛糸のパンツで下腹部全体を温めると良いでしょう。また、スタイルをよく見せるためにと過度に体を締め付ける服装や下着もおすすめできません。締め付けることにより、血流の巡りが悪くなり結果として体を冷やしてしまうからです」

 

【通勤とデスクワーク】適度な運動を心がける

「通勤中は運動不足を解消する良いタイミングです。エレベーターは使わず階段を上る、1駅分手前で下車して会社まで歩いてみるなど、運動する機会を増やしましょう。体を動かすことで筋肉量が増え、体温上昇に効果的です。デスクワーク中心の人は、足元が冷えるためひざ掛けを活用して下半身を温めてください。夏もしっかりとエアコン対策をしましょう。また、1時間ごとに一度席を立ち、軽いストレッチをするだけでも血流の流れを促進するのに効果的です。

 

最近ではテレワークをする人も増え、運動量が極端に減っている人も多く、不調を訴える人も多くいます。そんな場合には、1日40分から1時間くらいの軽いウォーキングがおすすめです。外気を受けることで気分もリフレッシュし、ストレス軽減にもなります。外出がむずかしい人は、ネットでできる短時間のエクササイズをしてみるのはいかがでしょうか? とくに効果的なのがスクワットです。スクワットは、体の中でももっとも大きな筋肉である太ももの筋肉に効くため、筋肉量を増やすのに最適です。筋肉量が増えることにより熱の生産量を増やし冷えにくい体になります。無理はせず、毎日少しの時間でも続けて習慣にしていけるといいですね」

【ランチタイム】冷えが気になるときは温かい蕎麦がベスト

「パスタにサラダ、お蕎麦など外食で食べるランチは冷える食べ物が多くなります。ただ日中は脳も体もフル稼働しているので、クールダウンすることを考えると、必ずしもNGというわけではありません。体が冷えていると感じる場合は、かけ蕎麦など温かいメニューを選んでください」

 

【午後のオフィスタイム】体を温める飲み物を選ぶ

疲れも出てきて眠くなりがちなお昼すぎ、ついコーヒーを多く摂りすぎていませんか?

 

「コーヒーに含まれるカフェインは体を冷やしてしまいます。代わりにルイボスティーやシナモンティーをおすすめします。会社のデスクにシナモンパウダーを常備しておいて、温かい紅茶にかけていただくといいですよ。白砂糖も冷える食材です。おやつをいただく場合、小麦とお砂糖たっぷりのパンケーキやクッキーなどは控えたいですね。ナッツ類が理想です」

 

【夕食】体を労わりながら食事を楽しむ

仕事上がりにビールを一杯飲んで緩みたい方も多いでしょう。しかし、キンキンに冷えたビールはやはり体を冷やします。

 

「何杯も飲まずに最初の一杯にとどめ、その後は熱燗をたしなむ程度にいただくのがおすすめです。日本酒は体を温める米と米麹で作られているため血流が促進します。おつまみや食事は肉類や鍋がおすすめです。冷たい飲み物だけではなく温かいお食事とセットにするといいですね。アルコールは、体を労わりながらほどほどに楽しみましょう」

 

【入浴】心と体をリラックス

「最近ではシャワーですませる人も多いですが、温活習慣を意識するのであれば、湯船に入っていただきたいですね。湯船に浸かることは、以下の効果があります」

 

・温熱作用
「体温を上げることで毛細血管が広がり、血流が良くなります。体中に酸素が行き渡ります。それにより新陳代謝が高まり老廃物が排出され体のこりなども軽減されます」

 

・静水圧作用
「湯船に首まで使った場合に、体にかかる水圧は1トンとも言われています。水圧がかかることで血流が促進され、血の巡りが良くなり、むくみの解消になります」

 

・浮力作用

「水中での体重は、普段の10分の1程度になります。日中に疲れた筋肉や関節への負担を減らすことによりリラックスするのです」

 

「入浴は寝る60分から90分前に、15分程度入りましょう。温度は38℃から40℃位がちょうど良いです。熱すぎないお湯につかることで副交感神経が優位に働き、よく眠れるようになります。もしもぬるいと感じる場合は炭酸入りの入浴剤を入れてみてください。炭酸は血管を広げて血流を良くしてくれますので、内側から温まりますよ」

 

【就寝】睡眠で一日をリセット

「寝る前には激しい運動は避けて、軽くストレッチしましょう。ストレッチをすることで筋肉を緩め血流をよくするとともに、リラックス効果も得られるので睡眠の質が良くなります。睡眠時の衣服は、ゆったりとして締め付けのないものを選びましょう。また、寝ている間に手足から熱を放熱するので、靴下を履いて寝ることはおすすめしません。どうしても体が冷えてしまう場合は、足首を温めるレッグウォーマーを着用しましょう。

 

入浴で温まった深部体温が下がるタイミングで就寝することが睡眠の質を高めます。このために、就寝60分から90分前に入浴することが大事なのです」

 

「温活」はバランスが大切

温活というと体温を上げることや、体を温める事に着目しがちですが、川崎さんは温めることだけに偏らないようにと、バランスをとても大切にしています。

 

「例えば、真夏の炎天下にもかかわらず体を冷やさないようにと我慢して冷房器具を一切使わないと熱中症を引き起こします。また、身体を温める食材ばかりを摂り続けると、皮膚が乾燥してしまいます。体を冷ます食材は、潤いを与えてくれる食材でもあるのです。就寝時も電気毛布で温め続けるのではなく、入浴により温めた体を冷ましていくことにより、日中働き続けた脳と体を休めてあげる事がとても大切なのです。体を温めること、冷やさないことに目を向けすぎては不調をきたすこともあるため、適正な温度を保つ正しい知識を持つことが大切です。まずは、ご紹介した『温活』を意識した1日の過ごし方より、『これなら取り入れていけるかも』と思えるものから少しずつ初めてみてはいかがでしょうか」

 

「温活」は、無理せず気持ちよく続けていけることがとても大切です。温活指導士直伝の「温活」の知識が、生活習慣を見直すきっかけにしていきましょう。

 

プロフィール

温活指導士 / 川崎真澄

日本温活協会の本部指導員として「温活士」の育成を努めるとともに、メディアへの情報提供を通し温活の啓蒙に取り組む。鍼灸院「グラン横浜スパイアス院」院長、鍼灸師、医薬品登録販売者、認定フェムテックエキスパート。日本鍼灸協会の代表理事を務め、世界初の “浴びるお灸” を開発、鍼灸の新たな活用方法を研究する。また大学、専門学校、企業公演をはじめ国内のみならず海外の技術者にも指導を行う。

 

『冷え知らず先生が教える 温活百科』川崎真澄 共著ワン・パブリッシング

 

『ズボラさんでもこれなら無理なく続く はじめての温活』日本温活協会監修(宝島社)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

冬至(2022年12月22日)の「ゆず湯」の意味と「かぼちゃ」のおいしい調理法

すっかり日が短くなり、まだ早い時間なのに外を見ると真っ暗で驚くことも。もう少しで昼の時間が一年でもっとも短くなる「冬至(とうじ)」がやってきます。

 

冬至といえば「ゆず湯(柚子湯)に浸かって、かぼちゃを食べる日」。でもそもそもなぜゆず湯に浸かり、かぼちゃを食べるのでしょうか? さらにかぼちゃをおいしく調理するコツとは? 和ごはん研究家の麻生怜菜さんに教えていただきました。

 

冬至とはどんな日?

冬至とは、一年のうちで太陽が出ている時間がもっとも短く、夜が長い日のこと。立春や夏至、秋分などと同様に、太陽の動きをもとに1年を24等分してつくられた二十四節気のひとつです。

 

「もともとは古代中国で『太陽が生まれ変わる日』とされてきた文化が遣唐使とともに日本にやってきて根付いたもの。昔は真っ暗な時間は黄泉の世界とつながっているという感覚があったので、一番夜が長いというのは一番悪い日。そしてこの日を境にどんどん良くなっていくということから、別名『一陽来復(いちようらいふく)』とも呼ばれています。その境である日に邪気払いをしたり、良い方向に向かうことをしたりしようというのが、冬至の風習です」(和ごはん研究家 麻生怜菜さん、以下同)

 

ちなみに、冬至とは昼がもっとも短い日であり、日の出がもっとも遅いのは1月上旬(2022年度は東京で1月2日から13日の6時51分、)、日の入りがもっとも早いのは(同 11月29日から12月13日の16時28分)で、地域によって異なります。

 

冬至の日は毎年変わる! 2022年は12月22日

「冬至は必ずしも毎年同じ日ではなく、地球と太陽の位置関係から決定されます。12月20日から23日の間であるとされていますが、2022年の冬至は12月22日。この日から春分(3月21日)までが冬とされています」

 

また、クリスマスと冬至には、意外にも深いつながりがあるのだそう。

 

「北欧ではキリスト教が伝わる前の時代から、『ユール』と呼ばれる冬至のお祭りを行っていました。もっとも夜が長く、太陽が再び力を取り戻す日として、神々へお供えなどをして祝ったそう。北欧の国々にはその頃の風習の名残があって、クリスマスツリーやブッシュドノエルなどはユールの祝祭に由来します」

 

冬至に行うべき風習とは?

1.「ゆず湯」で無病息災を願う

冬至といえばゆず湯。古くから「この日にゆず湯に浸かると一年間風邪をひかない」という言い伝えがあります。この風習はなぜ始まったのでしょうか?

 

「ゆずは寿命が長い木。それにあやかって、ゆず湯で長寿や無病息災を願ったといわれています。また昔の人は、水で自分のけがれを払うという儀式を事あるごとに行っていました。運を呼び込む前に邪気払いをするという意味で湯につかる。その湯にゆずを入れることで、邪気払いと無病息災という二つの願いが込められているのでしょう」

 

丸ごとか、輪切りか。ゆず湯の楽しみ方

ゆず湯といって思い浮かべるのは、丸ごとのゆずが湯船にいくつもプカプカと浮かんでいるさま。色も鮮やかで風情を感じます。自宅でお風呂に入れるときは、どのようにするといいのでしょうか?

 

「後処理がもっとも楽なのは、丸ごと入れる方法。ただし、そのままだとあまり香りが出ないので、爪楊枝で何か所も穴を開けたり、包丁で切り込みを入れるのがおすすめ。ゆずを選ぶときは、ハリがあって押したときに実が締まっているものにすると香りも良いですよ。一人暮らしなどで、いくつもゆずを買うのはちょっと……という方は、ゆず1個を輪切りにして使いましょう。ただ、湯の中で果肉や種が出てきてボロボロになってしまうので、ネットやお茶パックなどに入れるとお掃除が楽です」

 

冷凍でストックすれば簡単。余ったゆずを普段の料理に取り入れるには

せっかく購入したゆずは、風呂に入れるだけでなく料理でも使いたいもの。

 

「我が家ではゆずを買ったらまずは搾って、お醤油や少しの出汁を入れて自家製ポン酢をつくります。皮は全部むいてわたの部分をそいだら、それを小分けにして、ラップに包んで冷凍庫へ。ゆず皮の冷凍ストックがあると、使う時に刻んでサラダの上にかけたり、炊き込みご飯の上に散らしたりと重宝します」

 

2.「かぼちゃ」を食べる

冬至が近づくとスーパーの目立つ位置にかぼちゃが置かれます。かぼちゃを食べる日というイメージは定着していますが、ではなぜかぼちゃを食べるのでしょうか?

 

「昔の人の知恵でしょうね。夏に収穫して冬まで備蓄できる食べ物は少なかった。その中でかぼちゃは長期保存できて栄養価も高い。冬を乗り切るための食べ物として重宝されていたんだと思います」

 

βカロテンが多く含まれていて、カリウムも豊富なかぼちゃ。鉄分や食物繊維も多いので、とくに女性にとっては今の時期に食べるのにもぴったりの野菜だそう。

 

かぼちゃのほかにも「ん」がつく食べ物で運気アップ!

「名前に『ん』がつくものを食べて運気を盛る『運盛り』という考え方があります。かぼちゃはもともと南京(なんきん)と呼ばれていたので、『ん』がつきます。『ん』が二つついてたくさんの運気を呼び込むことができるとされているのが、南京、れんこん、にんじん、銀杏(ぎんなん)、金柑(きんかん)、寒天(かんてん)、うどん。これらは『冬至の七種(とうじのななくさ)』と呼ばれています。このあたりの食材をかぼちゃに追加で食べるのもおすすめですよ」

 

冬至に作りたい、かぼちゃの「いとこ煮」

冬至にかぼちゃを食べるなら、邪気払いによく使われる小豆と一緒に煮る「いとこ煮」がおすすめ。小豆で邪気を払い、かぼちゃで運を上げる、冬至に作りたい料理の筆頭です。かぼちゃと小豆でなぜ「いとこ煮」というのかというと、これには諸説あるそう。

 

「小豆は煮るのに1時間ほどかかります。小豆が煮えたところに追ってかぼちゃを入れるとおいしくなるため、 “追々” 煮るからそれを “甥と甥” にかけたという説。それから、小豆とかぼちゃを同時ではなく、めいめいに煮るから “姪々” とかけたという節もあります」

 

かぼちゃの煮物をおいしく仕上げるひと手間とは?

「かぼちゃは一口大に切りますが、このとき包丁で角を浅く削る『面取り(めんとり)』をするのがおすすめ。これをすることで角がなくなり、まんべんなく火が通ります。また、かぼちゃ同士がぶつかった際に煮崩れするのを防ぐので、きれいに仕上がるという効果も」

 

いとこ煮は、かぼちゃが煮えたら別でゆでておいた小豆と醤油を加えて煮るというシンプルな料理。美味しく仕上げるには煮あがったあとが重要だそう。

 

「煮汁がほとんどなくなったときに火を止めてすぐに食べるのではなく、少し時間を置くことを『鍋止め(なべどめ)』といいます。これをすると味がしみて、ぐっと深まりますよ。それから、火をとめる直前にみりんとお醤油を入れると照りが出て、香りも残ります。下味とは別に、最後に追加でパッと入れて火を止めるのがポイントです」

 

慌ただしい時期だからこそ、ちょっと立ち止まって

年の瀬も押し迫り、何かとせわしない時期。だからこそ、冬至の日くらいはちょっと立ち止まり、ゆず湯にゆっくり浸かったり、かぼちゃを食べたりして季節に目を向けたいですね。

 

「今はスーパーがあるので、年中いろいろな食材が手に入ります。でも、その時期ならではの旬のものを食べて四季の移り変わりを感じるというのは、大切なこと。季節の行事とそれに関連した旬の食材は何かという知識は、身につけておいて損はありません」

 

あまり難しく考えず、できる範囲で気軽に取り入れてほしい、と麻生さん。

 

「今日は冬至だからゆずの香りの入浴剤を入れてみよう、かぼちゃのサラダを買ってみよう、くらいでもいいんです。ふと思い出して、そのとき自分のできることをちょっとやってみるだけで、暮らしが豊かになります。慌ただしく過ぎていく毎日だからこそ、少し立ち止まって季節のめぐりを感じてみてください」

 

プロフィール

和ごはん研究家 / 麻生怜菜

全国を転々とした幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響もあり47都道府県すべての地域食材、郷土料理を食べて成長する。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけに、お寺の行事食に関わり、伝統的な和食(特に精進料理)に興味を持つ。日本食文化史に精通し、日本の伝統食、特に精進料理の考え方や調理法、食材を若い世代や子どもたちに継承していくことを決意。伝統的な調理法や食材を現代のトレンドと融合した食文化の発信する場として、2011年より「あそれい精進料理教室」主宰。生徒数はのべ2600人。今まで考案したレシピ数は5000を超える。食品のランキングや比較も得意とする。著書に『寺嫁ごはん 心と体がホッとする“ゆる精進料理”』(幻冬舎)、『おからパウダーでスッキリ腸活レシピ』(主婦の友社)などがある。
HP
Instagram
Manegement

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

バスタイムが充実! 東急ハンズで今売れているお風呂グッズ5選

ホームセンターのような充実した品揃えで、私たちの暮らしに根づいた雑貨ストア、東急ハンズ。今回は、同店で今人気のお風呂グッズを、株式会社東急ハンズ・広報の洞内貴さんに選んでいただきました。これらを取り入れれば、「寝付きと睡眠の質を良くする正しい入浴方法」でも紹介した、15分間のバスタイムを退屈せずに過ごせそうです。

 

1. かかとのガサガサ対策と足裏マッサージに

サンパック「フットグルーマー グラン ムーンライト」
8300円+税

 

突起したブラシで足全体をマッサージできるマット。くすぐったく感じるなら踵から始め、慣れたら足全体をブラシに沈めて動かすのがコツだとか。

 

「足元もしっかり温まり、ブラシの先端にコーティングされた超微粒子スクラブが足をやさしく洗いながら、ニオイのもととなる角質をキレイに取り除きます」(東急ハンズ 広報・洞内貴さん、以下同)

 

2. 体が冷える前に水分をしっかりとオフ

エアーかおる「プリンセス バスタオル(ミルキーピンク)」
3600円+税

 

体が冷えてしまう前に素早く水気を拭き去れるのがポイント。世界初の特許技術によって、一般的なタオルよりも吸水力が約60%アップしています。通気性が高く洗濯してもスピードで乾き、ふんわり感が持続。

 

「マシュマロタッチな肌触りで、触れるだけで吸水するので、摩擦でお肌を傷つけることがありません。わずらわしいヘアドライの時間も短縮されます」

 

3. ハンズフリーでスマホ視聴

TOWA「磁着SQ バススマートフォンホルダー」
500円+税

 

浴室の壁に磁石でくっつくスマートフォンホルダー。

 

「磁石は吸盤と異なり、時間が経っても落ちにくく、位置調整も自由自在にできます。サビないラバーマグネットで壁を傷つけにくいのも、オススメするポイントです。動画を観たり音楽を聴いたりと、湯船に浸かりながらくつろげるはず」

 

4. ドイツの自然炭酸泉を再現した話題の入浴剤

BARTH 「薬用BARTH中性重炭酸入浴剤」
900円+税(15g×9錠)

 

自然療養でも使われるドイツの希少なお湯“中性重炭酸泉”を、家庭のお風呂で体験できる入浴剤です。

 

「医薬部外品の入浴剤で、疲労回復を促してくれます。ぬるめのお湯(約37℃~40℃)約160Lに3錠を目安に溶かし、15分以上入浴するのがおすすめです」

 

5. お風呂の中でコリをほぐせる


リラクシングワーク「リセットローラーTWINS」
3000円+税

 

ステンレス製のボールでカラダをコロコロすると、コリがほぐれていくマッサージアイテム。

 

「お風呂で使うと鉄球にボールに熱が伝わり、じんわりリラックスすることができるのが大きなポイント。普段、スマートフォンやパソコンの使用で首が固まっている方は、お風呂の中でほぐしてリセットしてみてください。大小の異なるボールをひとつにしているので、足の甲や手のひら、指にもコロコロできます。冷蔵庫で約60分冷やして使うこともできるので、夏には冷たくて気持ちがいいですよ」

 

 

どれも売れているのが納得できる便利なアイテム。ぜひ活用して、充実したバスタイムを過ごしてください。

 

【関連記事】
夜15分の入浴とストレッチが快眠へ導く!
寝付きと睡眠の質を良くする正しい入浴方法

 

【店舗情報】

東急ハンズ ネットストア

https://hands.net/

 

夜15分の入浴とストレッチで快眠! 寝付きと睡眠の質を良くする正しい入浴6ステップ

忙しいときや疲れているとき、ゆっくりお風呂に入る時間がとれずに、シャワーだけで済ませていませんか? 入浴には、汚れを落とすだけではなく、さまざまな効果が! とくに寝付きが悪かったり冷え性に悩んでいたりするなら、入浴のメリットを取り入れない手はありません。

 

眠りとお風呂の専門家であり睡眠改善インストラクターの小林麻利子さんに、お風呂への効果的な入り方や、入浴前後に行いたいエクササイズ・ストレッチの仕方を教えていただきました。

 

入浴の効果とは?

まず、入浴=浴槽のお湯に浸かることの効果について知っておきましょう。大きく分けて5つの効果があります。

 

1. 身体が温まることで疲れがとれる

温かいお湯に浸かると、身体が芯から温まります。すると、身体中の血管や毛細血管が広がり、血流が促進されることで、体内に溜まった老廃物や疲労物質が取り除かれ、コリがほぐれることで疲れがとれるのです。また、関節がやわらかくなることで関節痛も和らぎます。

 

2. お湯に浸かることで血行が良くなる

お湯に浸かると、身体は水圧を受けます。この圧力によって、脚などに溜まっていた血液が押し流され、血液の循環が促進されて心臓の働きが活発化します。マッサージを受けるのと同じ原理で、むくみが解消するのです。

 

3. 浮力によってリラックスできる

水中では、体重が9〜10分の1になるとされています。普段身体を支えている筋肉や関節が、その重みから解放され緊張状態が軽減することで、リラックス効果が生まれます。

 

4. 毛穴に溜まった汚れを洗い流す

お湯に浸かると身体の中から温まるので、全身の毛穴が開きます。これによって毛穴の中に溜まった汚れや皮脂が洗い流されやすくなります。短時間のシャワーだけでは、この効果は得られません。ただし、長時間お湯に使っていると、必要量の皮脂まで流してしまうことになるので、適度な入浴時間を守ることが大切です。

 

5. 深部体温を上げることで快眠に導く

最後が睡眠への影響。お風呂に入ると身体が芯から温まる=深部体温が上がるため、お風呂を出るとその体温は下がっていくことになります。人体は体温が下がった際に眠くなるという仕組みをもっていますから、お湯に浸かることはスムーズな入眠にも効果を発揮するのです。詳しくは、このあと説明します。

 

ではこの深部体温の仕組みから、眠りとお風呂の専門家である小林麻利子さんに解説していただきます。

 

眠りとお風呂の関係は「深部体温」にあった

「深部体温」とは、体の中心部の体温のこと。内臓や脳などの温度を気にしている方は少ないと思いますが、実はこの深部体温が睡眠に深く関係しています。

 

「深部体温は、一般的には朝4時ごろがもっとも低く、朝起きて活動していくうちに少しずつ上がっていき、夜7時ごろがもっとも高くなります。就寝2~3時間前から徐々に低下していきますが、就寝直前に体温を急降下させることで眠気を感じられるようになり、スムーズに入眠し質のよい眠りを継続することができます。

 

ちなみにそのリズムは、何時に寝てもほとんど変わりません。常に寝る時間が遅い場合は、それが基本のリズムになっているので、深部体温の上下も後ろにずれることになります。でも、たとえば毎日0時に眠るのに今日だけ深夜2時になってしまった、という場合は、深部体温の上下する時間は変わらないのです。

 

大切なのは、眠る前と就寝後に、しっかり深部体温を下げること。たとえばテレワークが続いていたり生理前だったりすると、一日を通して深部体温が高いままになってしまうことがあります。そうなると、そのまま眠ろうとしても体温が下がっていかないので、うまく寝付けません。

 

そこで効果があるのが、入浴です。シャワーで済ませてしまいがちな人も多いと思いますが、入浴を取り入れることで、効果的に深部体温を下げ、眠りやすい体を作れるのです」(睡眠改善インストラクター・小林麻利子さん、以下同)

 

準備から入浴後のストレッチまで。正しいお風呂の入り方

それでは具体的にどのような入浴の仕方が効果的なのか、順を追って教えていただきましょう。

 

1.【入浴前】軽いエクササイズで血流を促しておく

入浴前に軽くエクササイズをして体を温める準備を整えます。「エクササイズのメニューは、お好みでかまいません。息が切れるほどではないけれど、筋トレのような、ちょっと汗をかくエクササイズを行ってあらかじめ血流を良くしておくことで、深部温度を上げやすくします」

 

(1)

膝と足首を90度に曲げ、床と平行に上げた足を上に向かって10回持ち上げて、お尻の筋肉を刺激します。左右同様に。お尻や骨盤の筋力を鍛え、足に溜まった血流や老廃物を流せる上、ヒップアップの効果もあります。

 

(2)

今度は足を伸ばしたまま、同じように10回上に持ち上げます。こちらも左右同様に。背中の筋肉も鍛えられ、上半身もポカポカしてくるはず。

 

(3)

最後に、片足をお尻の向こう側へスライドさせ、この状態から足を上へ10回持ち上げましょう。両足が終わったら、入浴の準備完了です。

 

ちなみに、エクササイズするときは「磁気を発する機能つきのウエアも深部体温を上げやすく、おすすめ」だそう。

コラントッテ「スイッチングシャツ ショートスリーブ ウィメンズ」(7800円+税)、「スイッチングパンツ ロング ウィメンズ」(8800円+税)

 

2.【入浴の準備】お湯には必ず入浴剤を投入すること

小林さんは、睡眠のためにもお肌のためにも、いわゆる“さら湯”の湯船には入らないそう。入浴剤やバスオイルなどを入れることで、水道水に含まれる塩素(カルキ)が中和され、肌が乾燥するのを防ぎます。

 

小林さんが愛用している入浴剤は2種類。ひとつはオーガニックのラベンダーを使った香りのよいタイプのもの、もうひとつは炭酸ガス入りのものでした。

 

ネオナチュラル「母袋有機農場シリーズ はだ恵りの湯」8袋入り(2000円+税)「快眠に効果的といわれるラベンダーの茎や葉、花に、米麹や岩塩を合わせたもので、このまま枕元に置いて寝てもいいほどの香り立ちです。お風呂に入れると水蒸気でお風呂全体に香りが広がり、リラックスできます。毎日使うには少々贅沢なので、週に一度のごほうびとして使っています」

 

花王「バブ 薬用メディキュア(柑橘の香り)」6錠入り(631円+税・編集部調べ)「こちらは炭酸ガスで体を温められるタイプのもの。毛細血管を広げて血流を促進するため、体が温まるスピードがとても早くなります」

 

「こういった入浴剤を使えば、短い時間の入浴でも身体を深部まで温めることができ、忙しい日の夜にもぴったり。お肌にも睡眠にもいいので、必ずバスオイルや入浴剤などを入れて入りましょう」

 

いよいよ入浴。何℃くらいのお湯に、どれくらいの時間浸かればいいでしょうか? また、入浴後のストレッチなど、入眠前までのステップを、次のページで解説していただきます。

3.【入浴】40℃の湯船に15分間浸かること

忙しい現代人だからこそ、もっとも効果的かつ時間のかからない方法で、確実に深部体温を上げる入浴の仕方が大切です。

 

「深部温度を効率よく上げるためには、水温と時間のチェックが欠かせません。もっとも効果的なのは、40℃のお湯に15分間浸かること。これで深部温度が0.5℃上げられます。水温が40℃以下になってしまうと深部が温まるまでに時間がかかってしまいますし、反対に41℃以上になってしまうと、交感神経を刺激してしまって心拍数が上がり、目が冴えてしまい逆効果です

 


佐藤計量器製作所「おふろ用湯温計 ぷかぷか」(1300円+税)「適温である40℃で入れるように、温度計できちんと測るといいでしょう。よく『給湯器の設定が40度だから測らなくていいのでは?』と聞かれるのですが、浴室や浴槽が冷えていると、お湯の温度が40℃でも実際入浴するときには40℃以下になってしまいますので、注意しましょう」

 

4.【入浴中】リラックスできるアイテムを使う

(写真の「頭皮エステ」は生産終了)

 

「入浴中は何も考えずにリラックスすることを心がけてください。仕事や気がかりなことに捉われないよう眠りに向けて心も整えていき、体の力を抜いていきましょう」

パナソニック「頭皮エステ サロンタッチタイプ EH-HE9A」(1万1491円+税・編集部調べ)「自分がリラックスできるものならなんでもかまいませんが、こちらの『頭皮エステ』というマッサージアイテムは、気持ちよくてオススメです。頭皮が硬くなり、血流が悪くなるのをマッサージすることで整えていきます。頭皮マッサージは寝つきをよくするという研究報告もありますし、お風呂の中で使えるので、温まりながら使ってみましょう」

 

マークスアンドウェブ「ハーバルオイル(ラベンダー・ホホバ)50ml」(1264円+税)「香りや照明でリラックスできる環境を作るのもいいですよね。わたしはお湯に浸かる前に髪と体を洗い、そのあと肌にマークスアンドウェブのラベンダーオイルを塗ってから入浴することもあります。香りで癒され、肌も刺激から守ることができますよ」

 

5.【入浴後】ストレッチをする

入浴後のストレッチは、呼吸を整え、ゆっくりリラックスしながら行うことがポイントです。

 

「せっかく温まった体が冷えてしまわないよう、ガウンやニットなどを羽織って行いましょう。冬にしたいオススメのストレッチは、腰椎の血流をよくするポーズ。座りすぎて硬くなった腰は滑らかに動かず、腰痛を引き起こしたり身体全体を硬直させてしまいます」

 

(1)

まずはあぐらをかいて座り、背筋を伸ばしたところから、口から息を吐きながら背中をゆっくり丸めていきます。肩を下ろして、手でお腹を守るようなポーズをし、ひとつひとつの背骨を意識してゆっくり丸い背中を作りましょう。

 

(2)

背中がぎゅっと丸くなったら、そこから今度はゆっくり姿勢を戻し、鼻から息を吸いながら背筋を伸ばします。骨盤からひとつひとつの背骨を動かすようなイメージで背中を反り、丸めた背中をじっくり伸ばしましょう。この動作を呼吸を繰り返しながら、ゆっくり5回行います。

 

(3)

続いてはうつ伏せになり、お腹に力を入れたまま片方の足だけ直角に折って上半身を起こします。足の付け根を刺激することで、股関節が柔らかくなり、腰痛の予防に効果的です。この姿勢のまま10秒キープし、足を変えて10秒行います。

 

(4)

今度は足を体の前に置いて折り曲げます。

 

(5)

足はその状態にまま、今度は前屈して自分の体の重みをかけて股関節やお尻のストレッチをします。このとき、頭頂部に握りこぶしを置いて頭も刺激しましょう。疲れや凝りを緩和させ、寝付きがよくなります。

 

6.【就寝前】眠る直前に頭皮のマッサージをする

身体が冷えないうちにベッドに入ったら、眠る前にもう一度、頭皮のマッサージをしましょう。手のひらでこめかみや耳の上のあたりを押し、頭を柔らかくします。

 

「マスクをつけていることが多くなったので、耳元にマスクの重みが常にかかるようになりました。普段より余計に耳やこめかみのあたりが疲れていますから、よくマッサージしましょう」

 

 

寒くてなかなか寝付けないという悩みを解消し、ぐっすりと眠るために、以上の6ステップを実践してみてください。

 

【関連記事】バスタイムが充実! 東急ハンズで今売れているお風呂グッズ5選

 

【プロフィール】

眠りとお風呂の専門家 / 小林麻利子

睡眠改善インストラクタ―。公益社団法人日本アロマ環境協会認定アロマテラピーインストラクター。「美は自律神経を整えることから」を掲げ、生活習慣改善サロンFluraを開業。最新のデータ、研究をもとに、睡眠や入浴、運動など日々のルーティンを見直すことで美人をつくる『うっとり美容』を指導。生活に合った無理のない実践的な指導が人気を呼び、2000名以上の女性の悩みを解決し、講演活動やウェブ連載のほか、テレビ・雑誌でも活動中。『あきらめていた「体質」が極上の体に変わる』(ダイヤモンド社)、『美人をつくる熟睡スイッチ」(G.B.)が好評発売中。最新刊は『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン)。

 


小林麻利子『入浴の質が睡眠を決める』(カンゼン刊)

 

肉より味噌! 女医に教わる夏バテ・冷えバテの原因と解消法

最近、なんだか体がだるいし、食欲もない……。夏バテしている気がするけれど、冷房の効いた室内で過ごす時間が多いし、原因がわからないんだよなぁ……。そういえば、近所に引っ越してきた石原さんは、テレビにも出演しているお医者さんだっけ! 石原さんに聞けば、夏バテの原因も解消法も、分かりやすく教えてもらえそう。さっそく我が家にお招きして、相談しよう!

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお父さんが、なにやら困っているようです。

参田家の人々とは……
maitake_family
ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。
https://maita-ke.com/about/

 

夏バテの症状や原因、解消法も教えて!

comment-father
お父さん「最近、なんだか体調が良くないんです。だるさを感じるし、食欲もわかなくて。これってもしかして、夏バテでしょうか?」

 


石原さん「その症状、夏バテの可能性が大いにありますね。全身のだるさや疲労感、食欲不振は、夏バテの代表的な症状です。なかなか寝付けず、寝不足になることも少なくありません」

 

comment-father
お父さん「確かに最近、寝付きも悪い気がする……。そもそも夏バテって、何が原因で起こるんですか? 夏の暑さによって、体が悲鳴を上げている状態とか……?」

 


石原さん「現代人の夏バテは、外気の暑さと冷房の効いた屋内の気温差による、自律神経の乱れが原因のことが多いんです。夏バテというより、もはや“冷えバテ”と言ってもいいくらい! 冷房が効いた室内で冷たい飲み物ばかり飲み、体は冷え冷え。それが一歩、外に出れば、汗が噴き出すほどの暑さです。この気温差に体温調節がうまくできなくなり、自律神経が乱れてしまうんですよ」

 

comment-father
お父さん「“自律神経の乱れ”だなんて、なんだか怖いフレーズですね……。体の中では、いったい何が起こっているんですか?」

 


石原さん「自律神経とは、自分の意思とは無関係に働き、体のあらゆる器官を司る神経の総称です。この自律神経、興奮状態のときに優位に働く交感神経と、リラックス状態のときに優位に働く副交感神経の2つがあり、置かれた状況に応じて、どちらかが活発に働きます。それがあまりに激しい気温差により、2つのバランスが乱れてしまうんですね。お話ししたように、自律神経は、体のあらゆる器官を司っています。この自律神経が乱れてしまうため、内臓の不調からだるさや食欲不振といった症状が現れるんですよ」

 

comment-father
お父さん「冷房の効いた屋内と、とっても暑い屋外の気温差に、体がパニックを起こしてしまっているということですね! とは言っても、冷房なしに真夏を過ごすのは難しいですよ……。この夏バテ、どうしたら治るのでしょうか?」

 


石原さん「もちろん、冷房は使ってください! この暑さです、冷房なしでは熱中症になりかねません。冷房を適切に使いながら、体を冷やさない工夫が大切です。まず、暑いからといってシャワーだけで済まさず、バスタイムには、しっかり湯船に浸かるようにしましょう。湯船は38度程度のぬるま湯に設定し、ゆっくり浸かることが大切です。すると体が温まるのと同時に、乱れていた自律神経もリラックスできるんですよ」

 

comment-father
お父さん「確かに最近、シャワーで済ませることが多かった気がする。きちんと湯船で温まり、心も体もリラックスすることが大事なんですね! 」

 


石原さん「自律神経の乱れを解消するには、良質な睡眠をとることも大切です。冷房なしでは眠れない熱帯夜には、タイマーを設定しないのも、ひとつの手。冷房が自動停止した後、暑さから目を覚ましてしまっては、体の疲れが取れません。そのため、長袖長ズボンのパジャマを着用し、きちんとお布団を掛け、冷房をつけたまま寝る! 体のことを思えば、私は、この方法をオススメします」

 

comment-father
お父さん「タイマーを設定して眠りについたものの、途中で起きて、また冷房を付ける……。それも思い当たります(苦笑)。今夜からは温かい格好をして、冷房をつけたまま寝るようにしてみます!」

 


石原さん「ぜひ、試してみてください。さらに夏バテのときは、胃腸も疲弊しています。『夏バテにはスタミナ! お肉を食べなきゃ!』と思う方もいますが、肉類はエネルギーの源であるタンパク質が豊富な一方、消化の悪い食品でもあるので、夏バテのときには控えましょう。反対にオススメなのは、お味噌ですね!」

 

comment-father
お父さん「お味噌なら、我が家にもあります! でも最近、暑さを理由に、お味噌汁なしで食事を済ませていたかも……」

 


石原さん「お味噌汁は面倒だとしても、野菜のディップとしてお味噌を添えるくらいなら、簡単ですよ。お味噌は発酵食品ですから、消化を助ける酵素が豊富。さらに疲労回復に効果のあるアミノ酸も多く含まれ、たくさん汗をかいた後に取りたい、塩分も摂取できます。そして、薬味を上手に使うこともポイント。薬味として使いやすい大根も、ショウガも梅干しも、消化を助けてくれる食品です! このように食事、睡眠、バスタイムに、こういったポイントをおさえておけば、夏バテが癒えるだけでなく、夏バテしにくい体が作れますよ」

 

comment-father
お父さん「なるほど! ディップや薬味として添えるくらいなら、僕でもできそうです! 石原さんに教えてもらったことを毎日の生活に取り入れ、夏バテが解消した後も、日常的に続けるようにします。今日はありがとうございました。まだまだ暑い日が続くけれど、お互い、元気に過ごしましょう!」

 

【まとめ】

現代人の夏バテは、むしろ“冷えバテ”!

夏バテの原因が、単に暑さではなく、屋外の暑さと冷房の効いた室内の温度差にあると知り、目からウロコ! 特に「現代人の夏バテは、もはや“冷えバテ”」という言葉は、肝に銘じなきゃいけないなぁ。石原さんに教えてもらった、湯船にゆっくり浸かること、良質な睡眠を取ること、消化を助ける食材を取り入れることを心掛けて、この夏を元気に乗り越えよう!

 

教えてくれたのは……

イシハラクリニック副院長/ヒポクラティック・サナトリウム副施設長・石原新菜さん

漢方医学、自然療法、食事療法をベースに、種々の病気の治療にあたり、プライベートでは二児の母。クリニックでの診察のほか、分かりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、講演・テレビ・ラジオ・執筆活動と幅広く活躍。13万部を超えるベストセラーとなった『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム)をはじめとした著書も多数。
https://www.ninaishihara.com/

 

日々の「参った!」というお悩みを5分で解決!「参田家(まいたけ)のおうち手帖」

matitake300x97_01