散漫な心は部屋のせい…マインドフルな状態を作るインテリアの条件

日々、仕事に追われている人は多いでしょう。細々としたタスクが多いせいで使う時間も細切れになり、“今やるべきこと”に集中するのがむずかしくなっているのでは?

 

気持ちに余裕をもってマインドフルな時間を過ごすには、いま住んでいる部屋の環境を見直すことで解決策が見つかるかもしれません。そんなマインドフルネスの概念を取り入れた部屋作りのコツを、一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事の高原美由紀さんに教えていただきました。

 

マインドフルな状態=マインドフルネスとは?

 

瞑想などによってマインドフルネスを日常に取り入れると、心を落ち着かせたり思考をリセットできたり、集中力が高まったりという効果があるとされています。まずは、この「マインドフルネス(mindfulness)」とはなにか、“マインドフルな状態”とはどういったものか、確認しておきましょう。

 

「マインドフルな状態とは、過去や未来に向きがちな意識を手放し、『意識を今に向けている状態』のこと。過去や未来に対して抱く不安や雑念をいったん切り離して、今に意識を持ってくることが大切とされています」(一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事 高原美由紀さん、以下同)

 

もちろん、感じる“今”の気持ちがいつでもハッピーなわけではありません。

 

「その時に感じる気持ちが、たとえ“悲しみ”や“苦しみ”といったネガティブなものであっても、無理に『ポジティブな気持ちにならなければ』と思う必要はありません。ただ客観的に“今”を見つめて、『今、悲しみがあるのだな』と『自分の感情や思考』に気づいたら、また手放していく、その繰り返しがマインドフルネスなのです」

 

とはいえ、悲しさや苦しさが心にあると、早く解決したくなってしまうもの。こうした気持ちはどのように落ち着かせればいいのでしょうか?

 

「例えば今、苦しい気持ちがあったとすると、そんな気持ちを押さえつけて、何とか前向きになろうとしますが、それは逆効果。かえって苦しい気持ちが大きくなってしまうのです。
まずは、『頑張らないでありのままの自分を受け入れる』こと。そのときに、『自分の状況を俯瞰して見つめること』が大事です。そうすることで、苦しい気持ちが次第に落ち着いていき、解決策を見出すことができます」

 

自然や視覚情報にも気を配る
マインドフルな住環境の条件

ただし、マインドフルな状態になるには、落ち着ける環境を作り出すことも重要。その条件とはどういったものでしょうか?

 

1.自然に触れられる環境であること

「まず、『自然に触れられること』が大事です。窓から良い景色が見える、緑や空が見えるといった環境が理想的です。家の中に観葉植物などを置いて、自然に触れられる環境を作り出すのもおすすめです」

 

2.物が片付き視覚からインプットされる情報が少ないこと

「次に、『視覚情報を少なくする』こと。全体的にすっきり片付いている状態がのぞましいですが、それが難しければ、部屋の一部だけでも物が少ない場所を設けてみるといいでしょう。そちらの方に視線を向けて過ごすことでも、マインドフルな状態が作りやすくなります。
ただし、必要なもの以外は配置しない“ミニマル”な状態だけが良いのではなく、自分が気に入っているものだけを視界に入るようにするメリハリが大事です」

 

3.散らかりにくく動線が確保されていること

「また、片付けと関連して、『散らかりにくく、動きやすい環境を作ること』も大切です。生活空間の中にある余計なストレスを減らすことで、マインドフルネスに繋がりやすくなるのです。片付けがどうしても苦手な方は、日々の生活の中で自分がいつも通る場所に収納場所を多く作るといいでしょう」

 

ほかに、日当たりや通気の良し悪しもマインドフルネスに影響するとのこと。もし、転居を検討していたら、住環境としてネガティブな要素が少ない部屋を探してみてください。

 

部屋を広く、片付けやすく! 家具レイアウトのルールとNGを一級建築士が解説

 

部屋作りに取り入れたい、
マインドフルなインテリアの条件

マインドフルな住環境の条件を踏まえ、部屋に取り入れたいマインドフルなインテリアについても具体的に教えていただきました。

 

・アースカラーを基調とした色合い

「人肌の色に近いベージュやアースカラーを、面積が大きい部分に取り入れるといいでしょう。例えばテーブルやソファのような大きい家具や、ラグ、カーテンなど。緑や空色などの落ち着いた色合いのものならアクセント的に壁紙やカーテンに使うのもいいでしょう」

 

一方、オレンジや赤のような濃くて明るい色が好きなら?

 

「クッションやランチョンマット、テーブルクロスのような小物類で取り入れるのがおすすめです。部屋のベースの色としては、アースカラーを基調とした色にまとめておいた方が、落ち着いた気持ちで過ごせます」

「韓国インテリア」に模様替えするコツとおすすめアイテムは? 手頃な価格・サイズとやさしい色合いで初心者にぴったり

 

・副交感神経を高め体をリラックスさせる照明

「夕方から夜間の時間帯に用いる照明は、低い位置で赤みのあるランプを選びましょう。まぶしい光源が直接目に入らないよう、光を壁にあてるなどして優しい光にしてください。
夕方以降の時間帯に強い青白い光が目に入ると、交感神経が高まってリラックスしづらくなります。そのため、夜になるにつれて赤く暗い光に調光できる照明器具を選ぶといいでしょう。そうして副交感神経を高め、体がリラックスできる環境を作ってあげると、落ち着けてマインドフルネスになりやすいのです

 

また、持ち運びのできるランプがあれば、落ち着ける場所や好きな場所に持って行って、マインドフルな時間を持つことができそうです。

 

ソーラー充電も可能な、USB充電式のポータブルライト。屋内はもちろん、天気の良い日は屋外にも持ち運べるのが魅力。ふんわりとした柔らかい光が、部屋を温かく灯します。ROSENDAHL COPENHAGEN「SOFT SPOT SOLAR」1万7600円(税込)~/ACTUS

 

インテリアの基本は照明にあり!部屋を癒し空間に一変させる間接照明の取り入れ方

 

・触感に意識を向けられるファブリックや家具

「現代人はとても忙しいですよね。スマートフォンのおかげで目から入る情報量も多いし、日々こなさなければならないタスクもたくさんあります。そうしたときに、触感に意識を向けられる環境があると、体から伝わる感覚を通して、今に意識を引き戻すことができるのです
例えば、カーペットやラグ、玄関マットなどをふかふかで肌触りの良いものや、麻のような自然素材にすると、触感を意識しやすくなります。床材が無垢材や畳の部屋なら、そこを歩くだけでも効果がありますよ」

「触感を意識するという意味で、テーブルや座椅子なども、自然素材のものを取り入れてみるといいでしょう。テーブルの天板は無垢材を使ったものにする、座椅子にはふかふかのクッションを置く、という形で取り入れてみてください」

 

・ゆったりとした気分で過ごせる椅子やハンモック

マインドフルな気分になれる家具を取り入れるなら、ロッキングチェアやハンモック、パーソナルチェアなどもおすすめだそう。

 

「揺れる感覚を得られる、ハンモックやロッキングチェア。ゆったり揺れて過ごすことで、いったん仕事やタスクに向けていた思考を手放すことができますし、リラックス効果につながると思います。
たとえばアルネ・ヤコブセンがデザインした『エッグチェア』のような、頭まですっぽり包み込まれるようなデザインの椅子もいいですね。余計な視覚情報が入ってこないので、落ち着いて過ごすにはぴったりです」

 

アルネ・ヤコブセンのエッグチェア。ゆったりとした広い背もたれに包み込まれ、自分だけの空間で落ち着けそう。FRITZ HANSEN「エッグチェア」116万3800円(税込)~

 

・テレワークをしている部屋には気分を切り替えられる小物

自室でテレワークをしていると、オンとオフの切り替えが難しくなりがちです。その解決には、作業スペースを別にする手段が有効だそう。

 

作業スペースと食事をするテーブルは別であることが好ましいです。このテーブルでは仕事をする、この場所では食事をするというように、場所の意味づけを行動とセットにして決めておくと、気分のリセットができますよ」

 

ただ、部屋の広さなどの都合上、どうしても仕事と食事をするスペースが一緒になってしまう場合、自分の中でリセットサインを設定するのも効果があるそう。たとえば、仕事の時はデスクランプを点けておき、仕事終わりにはランプを消して仕事道具を片付ける、食事の場合にはランチョンマットを敷くといったことが挙げられます。こうした小物を活用した取り組みなら、すぐに実践できそうです。

 

日々の暮らしのなかでも
マインドフルは実践できる

これまで、住環境やインテリアの整え方としてのマインドフルネスについて伺ってきました。高原さんは「日々の生活の中でもマインドフルネスを作り出すことができる」と言います。

 

「お皿洗いや歯磨き、お風呂に入って髪を洗うといった日常の動作も、実はマインドフルな体験につながるのです。たとえばお皿洗いは、水に触れたり指先を動かしたりして、手の触感を意識しやすい動作です。また、歯磨きであれば、歯ブラシが歯茎などに触れることでで、口の中の感覚に意識を向けやすくなります。
普段こうした日常動作に面倒くささを感じている方は、自分の感覚に意識を向ける時間と考えて、取り組んでみるとよいでしょう。思考がリセットされて脳の処理がいったんストップし、マインドフルネスにつなげることができます」

 

マインドフルな状態を意識して過ごすことで、ストレスが減り、睡眠改善や体調にもよい影響が期待できるそう。まずはマインドフルな部屋に整えることから始めましょう。

 

Profile

一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事 / 高原美由紀

有限会社カサゴラコーポレーション一級建築事務所代表取締役。空間デザイン歴30年、指導歴25年以上。累計1万件以上の間取り指導実績を持つ一級建築士。心理学・脳科学・行動科学・生態学など科学的根拠をもった空間づくりの法則を「空間デザイン心理学(R)」として体系化した。そこで過ごしているだけで自然に幸せになる「人生を応援する空間づくり」を伝えるべく、講座やセミナーなどを多数開催。世界中の人が、愛と輝きで満たされる居場所をもつことをミッションに、「幸せな人生と空間」を伝える活動している。

 

『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』青春出版

 

散漫な心は部屋のせい…マインドフルな状態を作るインテリアの条件

日々、仕事に追われている人は多いでしょう。細々としたタスクが多いせいで使う時間も細切れになり、“今やるべきこと”に集中するのがむずかしくなっているのでは?

 

気持ちに余裕をもってマインドフルな時間を過ごすには、いま住んでいる部屋の環境を見直すことで解決策が見つかるかもしれません。そんなマインドフルネスの概念を取り入れた部屋作りのコツを、一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事の高原美由紀さんに教えていただきました。

 

マインドフルな状態=マインドフルネスとは?

 

瞑想などによってマインドフルネスを日常に取り入れると、心を落ち着かせたり思考をリセットできたり、集中力が高まったりという効果があるとされています。まずは、この「マインドフルネス(mindfulness)」とはなにか、“マインドフルな状態”とはどういったものか、確認しておきましょう。

 

「マインドフルな状態とは、過去や未来に向きがちな意識を手放し、『意識を今に向けている状態』のこと。過去や未来に対して抱く不安や雑念をいったん切り離して、今に意識を持ってくることが大切とされています」(一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事 高原美由紀さん、以下同)

 

もちろん、感じる“今”の気持ちがいつでもハッピーなわけではありません。

 

「その時に感じる気持ちが、たとえ“悲しみ”や“苦しみ”といったネガティブなものであっても、無理に『ポジティブな気持ちにならなければ』と思う必要はありません。ただ客観的に“今”を見つめて、『今、悲しみがあるのだな』と『自分の感情や思考』に気づいたら、また手放していく、その繰り返しがマインドフルネスなのです」

 

とはいえ、悲しさや苦しさが心にあると、早く解決したくなってしまうもの。こうした気持ちはどのように落ち着かせればいいのでしょうか?

 

「例えば今、苦しい気持ちがあったとすると、そんな気持ちを押さえつけて、何とか前向きになろうとしますが、それは逆効果。かえって苦しい気持ちが大きくなってしまうのです。
まずは、『頑張らないでありのままの自分を受け入れる』こと。そのときに、『自分の状況を俯瞰して見つめること』が大事です。そうすることで、苦しい気持ちが次第に落ち着いていき、解決策を見出すことができます」

 

自然や視覚情報にも気を配る
マインドフルな住環境の条件

ただし、マインドフルな状態になるには、落ち着ける環境を作り出すことも重要。その条件とはどういったものでしょうか?

 

1.自然に触れられる環境であること

「まず、『自然に触れられること』が大事です。窓から良い景色が見える、緑や空が見えるといった環境が理想的です。家の中に観葉植物などを置いて、自然に触れられる環境を作り出すのもおすすめです」

 

2.物が片付き視覚からインプットされる情報が少ないこと

「次に、『視覚情報を少なくする』こと。全体的にすっきり片付いている状態がのぞましいですが、それが難しければ、部屋の一部だけでも物が少ない場所を設けてみるといいでしょう。そちらの方に視線を向けて過ごすことでも、マインドフルな状態が作りやすくなります。
ただし、必要なもの以外は配置しない“ミニマル”な状態だけが良いのではなく、自分が気に入っているものだけを視界に入るようにするメリハリが大事です」

 

3.散らかりにくく動線が確保されていること

「また、片付けと関連して、『散らかりにくく、動きやすい環境を作ること』も大切です。生活空間の中にある余計なストレスを減らすことで、マインドフルネスに繋がりやすくなるのです。片付けがどうしても苦手な方は、日々の生活の中で自分がいつも通る場所に収納場所を多く作るといいでしょう」

 

ほかに、日当たりや通気の良し悪しもマインドフルネスに影響するとのこと。もし、転居を検討していたら、住環境としてネガティブな要素が少ない部屋を探してみてください。

 

部屋を広く、片付けやすく! 家具レイアウトのルールとNGを一級建築士が解説

 

部屋作りに取り入れたい、
マインドフルなインテリアの条件

マインドフルな住環境の条件を踏まえ、部屋に取り入れたいマインドフルなインテリアについても具体的に教えていただきました。

 

・アースカラーを基調とした色合い

「人肌の色に近いベージュやアースカラーを、面積が大きい部分に取り入れるといいでしょう。例えばテーブルやソファのような大きい家具や、ラグ、カーテンなど。緑や空色などの落ち着いた色合いのものならアクセント的に壁紙やカーテンに使うのもいいでしょう」

 

一方、オレンジや赤のような濃くて明るい色が好きなら?

 

「クッションやランチョンマット、テーブルクロスのような小物類で取り入れるのがおすすめです。部屋のベースの色としては、アースカラーを基調とした色にまとめておいた方が、落ち着いた気持ちで過ごせます」

「韓国インテリア」に模様替えするコツとおすすめアイテムは? 手頃な価格・サイズとやさしい色合いで初心者にぴったり

 

・副交感神経を高め体をリラックスさせる照明

「夕方から夜間の時間帯に用いる照明は、低い位置で赤みのあるランプを選びましょう。まぶしい光源が直接目に入らないよう、光を壁にあてるなどして優しい光にしてください。
夕方以降の時間帯に強い青白い光が目に入ると、交感神経が高まってリラックスしづらくなります。そのため、夜になるにつれて赤く暗い光に調光できる照明器具を選ぶといいでしょう。そうして副交感神経を高め、体がリラックスできる環境を作ってあげると、落ち着けてマインドフルネスになりやすいのです

 

また、持ち運びのできるランプがあれば、落ち着ける場所や好きな場所に持って行って、マインドフルな時間を持つことができそうです。

 

ソーラー充電も可能な、USB充電式のポータブルライト。屋内はもちろん、天気の良い日は屋外にも持ち運べるのが魅力。ふんわりとした柔らかい光が、部屋を温かく灯します。ROSENDAHL COPENHAGEN「SOFT SPOT SOLAR」1万7600円(税込)~/ACTUS

 

インテリアの基本は照明にあり!部屋を癒し空間に一変させる間接照明の取り入れ方

 

・触感に意識を向けられるファブリックや家具

「現代人はとても忙しいですよね。スマートフォンのおかげで目から入る情報量も多いし、日々こなさなければならないタスクもたくさんあります。そうしたときに、触感に意識を向けられる環境があると、体から伝わる感覚を通して、今に意識を引き戻すことができるのです
例えば、カーペットやラグ、玄関マットなどをふかふかで肌触りの良いものや、麻のような自然素材にすると、触感を意識しやすくなります。床材が無垢材や畳の部屋なら、そこを歩くだけでも効果がありますよ」

「触感を意識するという意味で、テーブルや座椅子なども、自然素材のものを取り入れてみるといいでしょう。テーブルの天板は無垢材を使ったものにする、座椅子にはふかふかのクッションを置く、という形で取り入れてみてください」

 

・ゆったりとした気分で過ごせる椅子やハンモック

マインドフルな気分になれる家具を取り入れるなら、ロッキングチェアやハンモック、パーソナルチェアなどもおすすめだそう。

 

「揺れる感覚を得られる、ハンモックやロッキングチェア。ゆったり揺れて過ごすことで、いったん仕事やタスクに向けていた思考を手放すことができますし、リラックス効果につながると思います。
たとえばアルネ・ヤコブセンがデザインした『エッグチェア』のような、頭まですっぽり包み込まれるようなデザインの椅子もいいですね。余計な視覚情報が入ってこないので、落ち着いて過ごすにはぴったりです」

 

アルネ・ヤコブセンのエッグチェア。ゆったりとした広い背もたれに包み込まれ、自分だけの空間で落ち着けそう。FRITZ HANSEN「エッグチェア」116万3800円(税込)~

 

・テレワークをしている部屋には気分を切り替えられる小物

自室でテレワークをしていると、オンとオフの切り替えが難しくなりがちです。その解決には、作業スペースを別にする手段が有効だそう。

 

作業スペースと食事をするテーブルは別であることが好ましいです。このテーブルでは仕事をする、この場所では食事をするというように、場所の意味づけを行動とセットにして決めておくと、気分のリセットができますよ」

 

ただ、部屋の広さなどの都合上、どうしても仕事と食事をするスペースが一緒になってしまう場合、自分の中でリセットサインを設定するのも効果があるそう。たとえば、仕事の時はデスクランプを点けておき、仕事終わりにはランプを消して仕事道具を片付ける、食事の場合にはランチョンマットを敷くといったことが挙げられます。こうした小物を活用した取り組みなら、すぐに実践できそうです。

 

日々の暮らしのなかでも
マインドフルは実践できる

これまで、住環境やインテリアの整え方としてのマインドフルネスについて伺ってきました。高原さんは「日々の生活の中でもマインドフルネスを作り出すことができる」と言います。

 

「お皿洗いや歯磨き、お風呂に入って髪を洗うといった日常の動作も、実はマインドフルな体験につながるのです。たとえばお皿洗いは、水に触れたり指先を動かしたりして、手の触感を意識しやすい動作です。また、歯磨きであれば、歯ブラシが歯茎などに触れることでで、口の中の感覚に意識を向けやすくなります。
普段こうした日常動作に面倒くささを感じている方は、自分の感覚に意識を向ける時間と考えて、取り組んでみるとよいでしょう。思考がリセットされて脳の処理がいったんストップし、マインドフルネスにつなげることができます」

 

マインドフルな状態を意識して過ごすことで、ストレスが減り、睡眠改善や体調にもよい影響が期待できるそう。まずはマインドフルな部屋に整えることから始めましょう。

 

Profile

一般社団法人空間デザイン心理学協会代表理事 / 高原美由紀

有限会社カサゴラコーポレーション一級建築事務所代表取締役。空間デザイン歴30年、指導歴25年以上。累計1万件以上の間取り指導実績を持つ一級建築士。心理学・脳科学・行動科学・生態学など科学的根拠をもった空間づくりの法則を「空間デザイン心理学(R)」として体系化した。そこで過ごしているだけで自然に幸せになる「人生を応援する空間づくり」を伝えるべく、講座やセミナーなどを多数開催。世界中の人が、愛と輝きで満たされる居場所をもつことをミッションに、「幸せな人生と空間」を伝える活動している。

 

『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』青春出版

 

元マリメッコデザイナーが語る、性差のなさ・自立・のびのびした雰囲気…幸福度No.1の国フィンランドに学ぶ幸せに生きる秘訣

北欧の一国、フィンランドといえば、作家トーベ・ヤンソンの代表作『ムーミン』や、「マリメッコ」でおなじみ。あるいは、“幸福度No.1の国”とのイメージが強いのではないでしょうか?

 

なぜフィンランドが私たちの目に魅力的に映るのか、なぜ幸福度が高いのか———沖縄での英語教師生活から一転、20代後半でフィンランドに渡り、現在は当地でテキスタイルデザイナーとして活躍している島塚絵里さんは、この答えとなる著書『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』を出版。フィンランドの魅力と幸せに生きるヒントをうかがいました。聞き手は、ブックセラピストの元木忍さんです。

 

『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』(パイ インターナショナル)
どうしてフィンランドは、幸福度No.1なのか? 仕事・子育て・家族との関係、そして休みや自然の楽しみ方など、無理せず自分らしく生きるフィンランド人の暮らしの中に、そのヒントがあります。フィンランドで結婚し、子育てをしながらデザイナーとして活動する著者が、日々の暮らしの中で見つけた幸せのかたちを綴った、365日のエッセイ。

『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』(パイ インターナショナル)
暗くて寒い冬が長く、楽園とはほど遠いフィンランドが、どうして幸福度ランキングで1位に輝くのか? フィンランドに移住して16年の著者が、家族や仕事を通して気がついた、ポジティブな思考や暮らしの楽しみ方、そして自然・人・仕事との付き合い方など。

 

 

13歳の少女が感じた
フィンランドのおおらかさ

元木忍さん(以下、元木):フィンランド在住でテキスタイルデザイナーをされているという島塚さんですが、移り住んでからもう16年も経つんですね。移住のきっかけは何だったのですか?

 

島塚絵里さん(以下、島塚):移住したのは27歳のときですが、きっかけは13歳のときに、母から「ホームステイに行ってみない?」ともちかけられたことです。それも、国際交流にかかわりの深い母の友人からの誘いで、当時たまたま日本人参加者に欠員が出ていたという偶然が重なっての出来事でした。

 

フィンランドでテキスタイルデザイナーとして活躍する島塚絵里さん。

 

元木:やっぱり、13歳の体験で感じたインパクトみたいなものは大きかった?

 

島塚:そうですね。当時は英語もフィンランド語もしゃべれなかったので、感じることしか出来なかったんですが、視野がぐっと広くなった気がしました。何か言われたりされたりしたわけではないですが、男女間もフラットで分け隔てない感じがしたし、のびのびした雰囲気が印象的で。それでいて、個々が自立している様子にぐっと惹きつけられた記憶があります。

 

 

“he”と“she”が存在しない
性別に関係なく生きていく国民性

元木:その“男女がフラット”という傾向については、この本を読んで印象的に感じたことのひとつです。日本とは大きく違うように感じて。実際、島塚さんが実感したエピソードはありますか?

 

島塚:今はフリーランスのテキスタイルデザイナーをしている私ですが、30代前半はマリメッコでテクニカルデザイナーとして働いていました。マリメッコは現社長も創立者も女性、そして社員の9割を占めるのも女性です。マリメッコに限ったことではないのですが、女性が活躍できる風土があるように思います。

 

聞き手の、ブックセラピスト・元木忍さん。

 

元木:それなら安心して産休も取れそうですし、働きやすそうな環境ですね。日本も女性が仕事と家庭を両立する時代になってきたものの、なかなか精神的に追いついてきていないように感じることもあります。

 

島塚:フィンランドでは、「結婚するから女性が仕事を辞める」とか「職場では女性より男性が活躍する」といった価値観はないように思います。サンナ・マリン前首相は就任当時は34歳で、小さな子どもを育てながら執務に当たっていました。そんなマリン首相が子どもの頃、大統領を務めたのは“ムーミンママ”の愛称で国民から親しまれたタルヤ・ハロネンでした。12年にもわたる長期就任だったため、「男の人でも大統領になれるの?」と子どもたちから疑問の声すら挙がるほどだったそうです。

 

『フィンランドで気づいた小さな幸せ365日』より。家事は夫婦で手分けして担当。性別はもはや関係なく、得意な方がするという仕組みなので、家庭によって分担は異なります。

 

元木:フィンランドは女性政治家も多いと聞きます。国全体として、男女を分け隔てなく扱う意識が根付いているのですね。

 

島塚:そういったフィンランドらしさを表す象徴的な言葉に「hän(ハン)」というのがあります。これは中性語と呼ばれるもので、英語でいうhe(彼)とshe(彼女)の意味を含む“人”を表す言葉です。

 

元木:性別に関係なく生きましょうという国民性なわけですか。現代社会で問題になっていることはフィンランドには関係ないようですね。このエピソードだけでフィンランドのファンになってしまいます。

 

 

つらいときでも自分を信じて頑張れば、きっと上手くいく!
「Sisus(シス)」の精神

元木:「hän」という言葉に男女のフラットさが垣間見えました。島塚さんが感じたフィンランドの印象として“個々の自立”というキーワードを挙げられていましたが、これにまつわるエピソードも教えてください。

 

島塚:自立を語るには「Sisus(シス)」という言葉が欠かせません。これは、フィンランドの精神を表す言葉でもあります。意味としては、日本語でいうところの“忍耐”と訳されることが多いのですが、私としては、個々が持っている“芯の強さ”とか“内に秘めた力”みたいなものに近いと思っています。いまでこそ、幸福度が高い国として知られるようになりましたが、100年ほど前まで長きにわたり、スウェーデンとロシアに支配されてきた歴史があります。シスは、そんなフィンランドだからこその生き方、考え方のように感じます。

 

移住当初は、仕事も見つからず、言葉も上達しないで焦っていた時期があったという島塚さん。振り返れば、支えてくれたのはシスだったかもしれないといいます。

 

元木:自分を信じて進めば、どんなに辛いことが起きても乗り越えていける! という考え方ですね。

 

島塚:そうなんです。自己犠牲ではなく、自分のために頑張ろう! そんな意味合いだと思います。

 

元木:自分のために、っていいですね! フィンランドで暮らしてみて、シスっぽい体験はありましたか?

 

島塚:仕事が見つからなかったときにアルバイトでやった皿洗いでしょうか。あのときは「27歳で皿洗いとは、人生振りだしかぁ。このままやっていけるのだろうか?」と自分を疑ったものです。でも、必ずうまくいくと信じて、出来ることを一つずつ増やして今があります。

 

元木:島塚さんも体験したシスの精神こそが、フィンランド人一人ひとりの自立した生き方を支えているのですね。男性も女性も、そして大人も子どもにとっても、自立は本当に大切なことだと思います。

 

 

カテゴライズや上下関係から
自分を解放しのびのび生きる

元木:これまでフィンランドの魅力として、男女間のフラットさ、個人の自立と順を追って聞いてきました。最後に、のびのびとした雰囲気について、ぜひ教えてください。

 

島塚:そういえば日本では「イクメン」や「ワーママ」などキャッチーな言葉で人をカテゴライズすることがよくあるなと感じます。一方、フィンランドでは、男女の隔たりもなければ、枠組みにはめる習慣もありません。これがのびのびとした雰囲気を作り上げる材料の一つなのだと思っています。

 

『自分らしく生きる フィンランドが教えてくれた100の大切なこと』より。狭いカテゴリーから自分を解き放てば、気持ちが楽になって、幸福度も自然と上がるのではないか、と島塚さん。

 

元木:なるほど。私は最近、ソロキャンプを楽しんでいるのですが、島塚さんがいうのびのびした雰囲気って、現地で出会うソロキャンパーさんたちとの関係性と似ているなと思いました。なかには大企業の社長や世間的に顔が知られている有名人もいますが、キャンプ場では名刺交換もしないし(笑)、立場関係なくフラットに話せるのが楽しいんです。

 

島塚:それは似ているかも知れませんね! カテゴリーから自分を解放することは、高い幸福度に繋がるように思います。

 

 

ワクワクを大切に、自分のやりたいと思ったことに正直に

元木:話は尽きませんが、2022年には絵本のイラストにもチャレンジされたそうですね。

 

島塚:うれしいことに、2021年にフィンランドで開いた個展がきっかけで、現地の絵本作家さんと知り合い、イラストを担当するチャンスに恵まれました。いつか絵本を作りたいと願っていたなかでの出来事です。新しいチャレンジなので、まだまだ学ぶことがいっぱいあるなと思いつつ、細々とでも長く続けていけたらいいですね。今後は、文章と絵の両方を担当してみたいとも考えています。

 

元木:いくつになっても自分のやりたいと思ったことに正直に、気持ちの向くままチャレンジする生き方ができるのは幸せですね。今日は、そんな生き方を支えるフィンランドの精神や考え方を学ぶことができました。ありがとうございました。

 

 

Profile

テキスタイルデザイナー・イラストレーター / 島塚絵里

フィンランド在住のテキスタイルデザイナー・イラストレーター。1児の母。津田塾大学を卒業後、沖縄で英語教員として働く。2007年フィンランドに移住し、アアルト大学でテキスタイルデザインを学び、マリメッコ社でテクニカルデザイナーとして勤務。2014年より独立し、国内外の企業にデザインを提供するほか、CMの衣装、宮古島のHotel Locusのテキスタイルデザインを担当。森のテキスタイルシリーズなど、暮らしを楽しくするオリジナルプロダクトをプロデュース。
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ブックセラピスト / 元木 忍

学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブに在籍し、常に本と向き合ってきたが、2011年3月11日の東日本大震災を契機に「ココロとカラダを整えることが今の自分がやりたいことだ」と一念発起。退社してLIBRERIA(リブレリア)代表となり、企業コンサルティングやブックセラピストとしてのほか、食やマインドに関するアドバイスなども届けている。本の選書は主に、ココロに訊く本や知の基盤になる本がモットー。

 

北欧スタイルに学ぶ夜も快適な秋冬仕様のインテリア…間接照明と家具の配置がポイント

夏の気配が少しずつ薄れ、秋の訪れを感じる季節になりました。これからだんだんと日が短く、寒くなっていくにつれ、自然と家の中で過ごす時間が増えていくでしょう。在宅時間を快適に、前向きな気持ちで過ごすためにも、インテリアにこだわって心地よい空間をつくりたいもの。そこでお手本にしたいのが、インテリアに手をかけることで日照時間の短い冬を乗り切ってきた「北欧」のスタイルです。

 

インテリアに北欧スタイルを上手に取り入れるコツを、インテリアコーディネーターの住吉さやかさんに教えていただきました。

 

人によってイメージが違う? 実は幅広い「北欧スタイル」のイメージ

↑インテリアコーディネーターの住吉さやかさん。鮮やかなグリーンとナチュラルモダンの家具類が見事に調和したご自宅にお邪魔し、秋冬の夜長を心地よく過ごすためのインテリアのコツを伺いました

 

そもそも「北欧スタイル」とはどういうものなのでしょうか? 住吉さんは「北欧のどういったブランドやデザインに興味を持つかで、イメージするものが大きく異なります」といいます。

 

「私が10年ほど前にインテリアコーディネーターの仕事を始めたときから、北欧スタイルはすでに日本国内でも人気でした。近頃では通販やインテリアショップなどで、北欧スタイルのインテリアを手軽に手に入れることができるようになりましたね。

 

しかし、北欧スタイルといっても思い浮かべるものは人それぞれ。マリメッコのように色鮮やかなパターンを思い浮かべる一方で、Yチェアに代表される北欧家具ブランドのようなシンプルなインテリアをイメージする方もいるかもしれません。最近ではグレイッシュなニュートラルカラーに和の要素を取り入れた『ジャパンディ』と呼ばれるスタイルも北欧スタイルの一部として人気です」(インテリアコーディネーター・住吉さやかさん、以下同)

 

【関連記事】実例で理解する「ジャパンディ」スタイルと初心者が取り入れるためのインテリアアイテム5

 

デザインや素材にも注目! 北欧スタイルの共通テーマを押さえよう

このように、幅広いイメージを持つ北欧スタイルですが、その中でも共通するテーマがあるのだそう。

 

「ベースとなるのは『ロングライフデザイン』ではないでしょうか。機能的で、飽きがこない美しいデザインで、普段の生活に馴染んで長く使えるモノを好むという考え方は、どのような北欧スタイルのインテリアでも、共通していると言えます。こうした考え方は、日本人の暮らしやモノの価値観にも似ているので、北欧スタイルが日本で人気なのではないかなと思っています」

 

北欧スタイルのテーマを踏まえた、北欧スタイルと呼べるインテリアの特徴も教えてくださいました。

 

・形

「形の特徴としては、直線的でシンプルなものや、自然と調和するデザインであることが多いですね。華美な装飾や、驚きのあるデザインというよりも、それらを引き算していって残ったシンプルな形に美しさが宿っています」

↑ルイスポールセンのペンダントライト「PH5」は、自然界に存在する螺旋を数学的に表した「対数螺旋」をデザインに取り入れている。クラシックホワイトの優雅なシェードと、室内を柔らかく照らす光が特徴的

 

・柄

「水彩画や写実的なグラフィックではなく、抽象的でデフォルメされたパターンや、幾何学的な模様が北欧スタイルの代表的な柄になります。特に自然や植物をモチーフとした柄が好まれています」

 

・素材

「素材は木材やウールといった、自然素材が多いです。自然素材は、肌触りがよいことはもちろん、時を重ねて素材の味わいの変化を楽しめるところも魅力のひとつです。経年変化を楽しめる素材とロングライグデザインは相性バツグンです」

 

・色

「北欧は日照時間が短く、少しでも気分を明るくするため、部屋の中に明るくて柔らかい色味のものを取り入れて楽しんでいます。お部屋全体はシンプルなカラーにしておき、その中にブルー・グレーやダスティピンク、くすみオレンジなどをプラスするのがおすすめです」

 

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北欧スタイルを取り入れた部屋作り成功のコツ 3

北欧スタイルに共通するテーマやデザインを知れば知るほど、ぜひ実践的にインテリアに取り入れてみたいと思うもの。しかし、実際に自分の部屋でコーディネートしてみると、なんとなく思っていたイメージと異なってしまう……ということもしばしば起こります。そこで、夜時間を心地よく過ごすためのお部屋作りのコツや、上手な北欧スタイルの取り入れ方をお聞きしました。

 

1.部屋作りのメインは「照明」

「北欧スタイルをお部屋に上手に取り入れ、心地よい夜の時間を過ごしたいなら、何といっても照明選びにこだわりたいところです。光源が目に入らない形状のシェードで、柔らかい光で室内を照らせるような照明を選ぶと、心地よく過ごせます」

 

「北欧では、一部屋に複数のライトを設置する『一室多灯』の考え方がスタンダードです。賃貸のワンルームなどでは天井の照明コンセントが1つしかなく、シーリングライトがメイン照明になっていることが多いと思います。その場合、メインの照明を少し暗くして、食卓にテーブルライトを置いたり、部屋の角にフロアライトを設置すると、ワンルームでもおしゃれな一室多灯を実現できますよ」

↑USBで充電できるテーブルライト。持ち運びが可能なので、人が集まる食卓にテーブルライトを置き、その部分だけ明るく照らすという使い方も

 

「お部屋が広く、照明コンセントが2カ所設けられている場合は、ダイニングスペースにペンダントライトを設置するとぐっと雰囲気が良くなります。ペンダントライトを上手に設置するコツは、ダイニングテーブルの真下に、天板から60cm~70cmの高さまで下げること。椅子に座ったとき、電球の光が直接目に入らない位置まで下げて設置するのがおすすめです」

 

さらに、夜の時間を雰囲気良く演出するためには、照明の形状だけでなく、照明に取り付ける電球にもこだわりたいところ。住吉さんがおすすめするのは、スマホアプリやリモコンなどで操作が可能なスマートライトです。

 

「スマートライトは、光源の色や明るさを操作できて、シーンに応じた設定にすることでお部屋の雰囲気を簡単に変えることができます。朝は昼白色の爽やかな光で過ごし、夜は落ち着いた雰囲気のなかでリラックスできるように電球色に切り替えるなど、シチュエーションによって手軽にコントロールできるところがメリットですね

 

2.自然素材にこだわった家具選びと、ゆとりある配置にも気を配って

「北欧スタイルの家具といえば、木製のシンプルなデザインが特徴です。寒い場所で育つ木は色味が薄いので、明るい色味の木製家具を選ぶと良いでしょう。家具によって色味が多少異なっていても大丈夫です」

↑広島県の家具メーカー・マルニ木工のダイニングチェアである『HIROSHIMA』。美しい木目となめらかな木材の触り心地が魅力で、シンプルなデザインが北欧スタイルにも合う

 

「家具の配置については、快適なお部屋を作るために、程よい余白を設けることを意識してみましょう。例えばダイニングテーブルなら、ダイニングスペースの中央に設置することで、空間にゆとりをもった配置になります。

 

お部屋が狭いと、ダイニングテーブルを壁に寄せて置きたくなりますが、それだと通路が広くなるだけで、行き来しづらかったり、座る場所が窮屈すぎたりするケースもあります。壁からの距離を椅子の後ろは壁から70cm 以上、それ以外は50cm~60cm程度確保できるなら、壁から離してスペースの中心に置いてみてください。回遊動線が生まれ、室内の移動がスムーズになり、見た目にもほどよいゆったり感がでます」

 

「一人暮らしで空間に限りがある場合、いろいろな家具を置こうとせず、必要なものを厳選しましょう。勉強や仕事はダイニングテーブルで行う、ソファは置かずにベッドでくつろぐといったように、家具を兼用することで、ゆとりある空間を作れます。

 

また、一人暮らしでもこだわりの家具を手に入れたいなら、ダイニングチェアがおすすめです。引越でお部屋の大きさが変わっても使えなくなる心配がなく、例えば新しいダイニングセットを買ったらこれまでのチェアは書斎で使うなど、ライフスタイルが変わっても長く使えます。椅子を探すときには、実際に座って座り心地を確かめることがとても重要です。ぜひ、お気に入りの一脚を見つけてくださいね」

 

3.クッションカバーやファブリックパネルで上手に北欧スタイルを取り込む

「大きな家具や照明を買い替えるのは難しいですが、クッションカバーやファブリックパネルなら、手軽にお部屋の雰囲気を変えられます。北欧スタイルのインテリアには、幾何学模様やパターン化された柄が合いますよ。秋冬なら、暖色系の色を選んだり、もこもこした手触りのものを選ぶと、見た目にも手触りも温かく秋の夜長を楽しめます

↑住吉さんがご自宅に飾っているのは、お気に入りのアーティストのビビッドなアート。アートやファブリックパネルを飾るときは、目線の高さで設置するのがちょうどよい

 

シンプルな機能美が魅力の北欧スタイルを上手くコーディネートできれば、夜のおうち時間を心地よく過ごせて、QOLも高まりそう。クッションカバーやファブリックパネルなどでも手軽にイメージチェンジができるので、実践できそうなところから取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

インテリアコーディネーター / 住吉さやか

Class S interior design代表。大手ハウスメーカーにて新築戸建てのインテリア提案を3年間で100件担当、展示場のコーディネーションなどを経験した後、2018年7月に独立。現在は個人向けのインテリアコーディネーターとして、リビング・ダイニングや寝室などのトータルコーディネートを提案している他、アートライフに関するセミナー講師活動も行っている。

SDGsの観点からも注目!「ジャパンディ」スタイルと初心者が取り入れるためのインテリアアイテム5

インテリアの世界で、昨今「ジャパンディ」というスタイルが人気。日本発ではない、ジャパニーズスタイルを取り入れた世界観は、SDGsの観点からも注目されているといいます。実際、どんなスタイルのこと? “和モダン”とはどう違う? インテリアトータルプロデューサーのMAKOさんに教えていただきました。

 

海外から見た “和” が新鮮!「ジャパンディ」とは?

ここ数年、おしゃれなインテリアスタイルとして人気が高まっているジャパンディ。

 

「ジャパンディ(Japandi)」とは、JapaneseとScandinavianをミックスしたインテリアスタイルを表す造語。日本と北欧のインテリアスタイルを融合させもので、海外で話題となり、日本には数年前に逆輸入の形で入ってきました。和モダンとは異なり、 “海外から見た日本らしいテイスト” を取り入れたスタイル、というのが特徴です。

 

「ジャパンディには、明確な定義づけがあるわけではありませんが、北欧要素が8割、日本要素が2割くらいのバランスというイメージです。そして、この2割の日本要素については、照明や窓周り、ポイントとなるような大物の家具ではない部分に和風のアイテムを取り入れる、そんなインテリアスタイルです」(インテリアトータルプロデューサー・MAKOさん、以下同)

 

具体的にどのような特徴があるのでしょうか?

 

「主な特徴としては、部屋の内装は白やグレーなどのニュアンスカラー。家具はアースカラーや自然素材のものでスタイリッシュなタイプ。室内のものは最小限にまとめる。ラタンのような自然素材や植物を入れる。カーテンやスクリーンで和テイストを表現。フロアスタンドやペンダントライトを多めに入れて、部屋の雰囲気を作るローテーブルや低めの家具を取り入れ、部屋の余白を多めに作る、などが挙げられます」

いつ頃から流行り始めたのでしょうか?

 

海外で流行し始めたのは2020年くらいからだと思います。インテリアの雰囲気も大きく変えることなく、家具もなるべく買い替えず長く使い続けられる、というSDGsの考え方にマッチしたインテリアといえます。職人の手によるこだわりの家具を取り入れ、色味を控えめにしてすっきりとさせ、そして飽きのこない洗練された雰囲気を作っていく上で、日本っぽさがしっくりきたのだと思います。ジャパンディスタイルという世界観が北欧を中心に広まっていくなかで、日本にも逆輸入の形で広まってきたように感じます」

 

「ジャパンディ」のポイント

・部屋の内装材は白やグレーのニュアンスカラー
・家具はアースカラーや自然素材のものでスタイリッシュに
・室内は物を最小限にする
・ラタンなどの自然素材、植物を取り入れる
・カーテンで和柄やスクリーンを演出
・フロアスタンドやペンダントライトを多めに入れる
・家具はロータイプを選び、部屋の余白を多めにする

 

“和” を取り入れるさじ加減がポイント! ジャパンディスタイルのインテリア実例

では、実際のインテリアを見せていただきながら、ジャパンディスタイルのポイントをチェックしていきましょう。

「上の写真は、ジャパンディを少し意識したインテリアの実例です。まず、窓際のロールスクリーンや白ベースのリネンのカーテンは、北欧発の和アイテムで、和紙を連想させます。テレビの横にあるフロアライトも、麻の混じった折笠シェードが和テイストと言えます。ほかには、少し大きめの観葉植物ですね。鉢を黒一色にすることで洗練された雰囲気を演出しており、どこか “侘び寂び(わびさび)” の雰囲気も出ていると思います。

全体的に色味は抑え、余計なものが目立たないすっきりした空間にしています。ソファの脚が細いことで、いっそうすっきりとした雰囲気になります」

 

窓際のロールスクリーンは、北欧製。

 

「素材がペーパーヤーンという紙からできていて、ジャパンディが流行する前から、北欧らしいデザインとして浸透しています。布製だとややしなってしまうものですが、これはパリッとした張りが特徴。この直線感が空間をシャープにして、和の雰囲気を演出してくれます。
床に敷くラグなどを和テイストのものや畳を思わせる素材にすると、部屋の雰囲気が和モダンに偏りがちに。ジャパンディは、あくまで和要素を2割以内に留めたいので、窓際や壁、照明などで取り入れる方がそれらしくまとまります」

こちらは、寝室の例です。

 

「色味は白と黒をベースに、空間に余計なものを置かないすっきりとした状態がジャパンディスタイル。ベッドフレームの木目や花器、ペンダントライトがジャパンテイストになっています。ベッドの脚が細いことでスタイリッシュさを演出。床がオフホワイトの木目で、北欧らしい雰囲気にまとまっています。また、壁紙をアースカラーにすることで、部屋全体はやさしい雰囲気になりつつも落ち着いたトーンで飽きのこない空間になっています」

 

ジャパンディを取り入れるならここから! おすすめのアイテムは?

大々的に模様替えをするのではなく、無理なく気軽にジャパンディスタイルを楽しみたい。そんなときにまず取り入れたい5アイテムをピックアップしていただきました。

 

1.ペンダントライト

レ・クリント「ペンダントライト <ラメラシリーズ>」9万1300円(税込)〜

「紙を規則的に折り上げて手作りで作り出したシェードで、美しいフォルムとやさしい光が特徴のデンマークのブランド。居心地のいい空間を表すデンマーク語の『ヒュッゲ(Hygge)』を象徴するフロアライトです」

 

2.観葉植物

アンドプランツ「ドラセナ・コンシンネ M」 1万2850円(税込)

「観葉植物の種類はお好みのものを選べば大丈夫です。葉の形状や高さは変えつつも、グリーンの色味は揃えて複数置きをすると、こなれた雰囲気に仕上がります」

 

3.ペーパーヤーン(紙糸)のロールスクリーン

ウッドノーツ「ロールスクリーン 1800×2000」2万4530円(税込)(販売店=REZONANCE)

「ウッドノーツはフィンランドのテキスタイルカンパニーで、フィンランド産のパルプを原料にしたペーパーヤーンを開発し、ロールスクリーンやラグなどの製品化をしています。シンプルで美しいフォルムはジャパンディスタイルでもかなり人気の高いアイテムです」

 

4.チェア

フライミー「ノル アトム チェア」2万4200円(税込)

「深みのあるアッシュ材の背もたれにスチール脚をミニマルなバランスで組み合わせたチェア。北欧スタイルのモダンなチェアの象徴的なデザインです。造形的なカーブの美しさと繊細さ、座り心地の良さを追求した職人によるチェアを取り入れるとジャパンディスタイルらしい雰囲気になります」

 

5.剥がせる壁紙

NLXL「MRV-20」(販売店=壁紙屋本舗)3万5200円(税込) / 1ロール

こちらはラタンデザインの剥がせる壁紙。「壁全体ではなく、一部をジャパンディスタイルにすれば、部屋の雰囲気が簡単に変えられます。わたしはインテリアをアレンジするときに、この壁紙のアクセントクロスを導入するのが好きですね。ラタンタイプ以外にもテラコッタ色などもジャパンデイスタイルに合います」

 

洗練された美しさと居心地のよさ、飽きのこないインテリアが楽しめるジャパンディ。最近は北欧ブランドのECサイトから購入しても数週間もあれば届くので、個人輸入でジャパンディスタイルの家具やアイテムを買い付ける方も増えているそう。居心地がよくおしゃれなジャパンディスタイルを、 “本家” である日本でも、積極的に取り入れたいですね。

 

【プロフィール】

インテリアトータルプロデューサー / MAKO

Laugh style代表。モデルハウスやサロン、オフィス、ホテル、個人宅のインテリアコーディネート・スタイリングをベースに、近年では法人企業とコラボレーションして商品や店舗のプロデュースを行う。日テレ『ヒルナンデス』、TBS『Nスタ』、フジテレビ『めざましテレビ』他、ラジオ・雑誌・WEB等数多くのメディアに出演。また、大手住宅メーカーでのセミナーや、日本経済新聞など活字メディアへの寄稿など、幅広く活動中。
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