減益90%超……最近元気がない日産だけど、振り返ると記憶に残る名車は実に多い!

2024年4月から9月までの日産の中間決算は、主力のアメリカ市場での販売不振などから営業利益、最終的な利益ともに90%を超える大幅な減益。日産では経営の立て直しに向けて、世界で生産能力を20%削減し、9000人の人員削減を行う方針を明らかにしました。まさに正念場を迎えている日産。

 

本稿では、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんに日産の名車について振り返ってもらいました。

 

昔の日産は名車が多かった

若い方々にはピンと来ないかもしれないが、日産はかつて日本の自動車メーカーとしてトヨタと双璧をなすほどのメーカーだった。たしか80年代初頭には、日産とトヨタはお互いシェア率が30%前後で、最接近したときには約5%しか差がなかったほどだ。

 

ところが、時がたつにつれて差が開いていき、いつしかシェアはトヨタ約48%、日産約14%(2024年3月)というようになったわけだが、販売台数やシェアでは大差がついたものの、記憶に残る名車の数なら、日産もぜんぜん負けていない。むしろ昔は日産車のほうが名車が多かったぐらいだ。

 

そこで今回は、「スカイライン」「フェアレディZ」のような長い伝統を誇る名車や、比較的新しい「エクストレイル」「エルグランド」のように現在まで続いていている車種ではなく、今ではなくなってしまったなかで、印象的だった車種をいくつか紹介したい。

 

80年代終盤から90年代は「元気な日産」

まずは初代「シーマ」。1988年に登場し、当時のバブル景気もあって「シーマ現象」なる言葉を生み出すほど売れに売れた。当時としては相当なハイパワーである255psを発揮したエンジン・VG30DETが生み出す強烈な加速により、リアを下げて離陸するかのように走り去る姿が忘れられない。最近になっても、有名女優さんが長年愛用していることがたびたび報じられているのは、それだけ印象的なクルマだったからにほかならない。

↑初代「シーマ」。トヨタ「クラウン」の3ナンバー版の対向車として発表された

 

その少しあとに出た、「S13シルビア」も大人気を博した。この類いのクルマで月販がコンスタントに1万台を超えていた時期があるのは大したものだ。美しいデザインで女性ウケもよく、デートカーとしてだけでなく、手頃な価格とサイズのパワフルなFR車であることから、兄弟車でよりスポーティなスタイリングの「180SX」とともに走り好きにも大いにもてはやされた。

↑5代目となる「S13シルビア」。ホンダ「プレリュード」の対抗馬として開発された

 

その後シルビアはS14、S15と進化するものの販売は下降線をたどり、消滅してしまったが、いまや中古車市場では新車価格をゆうに超えるものがズラリ。走り好きからずっと支持されつづけている。

 

1990年登場の初代「プリメーラ」も印象的な1台だった。日本車ばなれしたデザインとセダンなのに車内が広々したパッケージングの巧みさに加えて、何より走りが鮮烈だった。FFでここまで極めたクルマはちょっと心当たりがない。開発陣は日本では売れないだろうと思っていたそうだが、ことのほか売れて驚いたそうだ。

↑初代「プリメーラ」。欧州市場でもヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーで日本車初の2位を獲得するなど、その評価は高かった

 

「Be-1」、「パオ」、「フィガロ」というパイクカー(※)を送り出して人気を博したのもその頃。日産はそうした他社にはあまりないユニークな取り組みもやっていたのだ。それらパイクカーの中古車には、おそるべき高値のついている個体もある。

※レトロ調であったり先鋭的であったりと、スタイリングが特徴的な自動車。
↑「Be-1」。1987 年1月に限定1万 台で発売されると、高い前評判から限定数を超える受注が殺到し、購入者を抽選で決定する異例の事態となった

 

それらパイクカーのベースになった「マーチ」は、日産のエントリーモデルとしてこのクラスを支えてきたが、1992年登場の「K11マーチ」は国内と欧州でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するほど高く評価され、販売の面でも最盛期には1年間で約14万2000台が売れたほど非常に人気の高いモデルだった。次の「K12マーチ」もかわいらしいデザインで特に女性から人気を博したが、その次の「K13マーチ」はあまり評価が得られず、尻すぼみで消滅してしまったのは残念だ。

↑2代目となる「K11マーチ」。ボディ形式は3ドアと5ドアのハッチバック型、後期型にはワゴン型「マーチBOX」やオープンモデルの「マーチカブリオレ」もラインナップされていた

 

80年代終盤から90年代にかけて、「元気な日産」をアピールしていた通り、ここで紹介していない車種も含めて、日産には存在感のある印象的なクルマがいくつもあった。

 

90年代中期から勢いに陰りが現れる

90年代中期には一転して、ちょっと元気がなくなってしまったのだが、そんな中でもいくつか記憶に残る名車がある。

 

1994年に登場した「ラシーン」は、前述のパイクカーの流れをくむ商品企画が受けて、現役時代もそれなりに人気を博したが、その後に絶版車となってから、あらためてその魅力が再認識されて、現在では中古車がプチカルト的な相場となっている。

↑「ラシーン」。クロスオーバーSUVの先駆け的なモデル

 

1996年に登場した「ステージア」は、当時のワゴンブームの中で日本勢の頂点に立つことを念頭において開発されたモデルだ。目論見通り、それなりの価格帯でありながら売れ行きは好調だった。97年秋には、「スカイラインGT-R」ゆずりのエンジン・RB26DETTを搭載した、「260RS」まで登場したことには驚いたものだ。

↑「ステージア」。ワゴン人気が絶頂期を迎えたなかで、堂々としたサイズ感と高級感、優れた走行性能や使い勝手などが評価されて人気モデルとなった

 

21世紀に入ってからの日産

ここからは、現在も販売されているモデルを紹介。おそらく読者のみなさんもまだ記憶に新しいことと思うが、21世紀に入ってからの日産車でやはり際立つのは「R35GT-R」だ。すでに登場から17年が経過するが、その間ずっと絶大な存在感を発揮してきた。

↑2007年に誕生して以来、モデルイヤーごとに進化を続けた「R35GT-R」。2025年モデルは、青を基調とした専用特別内装色「ブルーヘブン」が特徴

 

2024年は、日本カー・オブ・ザ・イヤーの規定に該当するニューモデルがなく、ノミネートなしというさびしい状況となったが、それでも現行型が発売されていながら長らく滞っていた「アリア」と「フェアレディZ」の受注が正常化されたことや、「アリアNISMO」のような興味深いモデルが加わったのはうれしいニュースだ。

↑アリアのe-4ORCEに、NISMO専用の加速チューニングを施し、動力性能をさらに引き上げた「アリアNISMO」。欧州市場でも発売されている

 

一方で、近年の日産はどちらかというとよいニュースよりもよろしくないニュースのほうが多かった印象だ。2024年も、業績の低迷や大規模なリストラでせっかくの創立90周年を祝う空気が吹き飛んでしまったのが残念でならない。要因はいろいろあるには違いないが、とにかくクルマが売れないことに尽きる。

↑2024年12月23日、日産とホンダは、両社の経営統合に向けた協議・検討を開始することについて合意。共同持株会社設立による経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結した

 

「BEV(バッテリー式電気自動車)はあってもハイブリッドカーがないのがいけない」という声もあるが、本格的ハイブリッドカーがなくても北米で成功している他メーカーはある。そのうえ、そもそも日産には発電専用ガソリンエンジンとモーターを融合した「e-POWER」があり、可変圧縮比を実現したVCターボエンジンと組み合わせたことで、苦手といわれた高速燃費を大幅に改善することに成功している。

 

先進運転支援装備については、業界をリードするほど高度なことをすでにやってのけている。

 

個人的にはそれほど悪くないと思うのだが、うまくいっていないのは、商品の微妙なところや売り方に問題があるのではないかと思う。すぐに改善するのは難しいだろうが、ぜひ仕切り直して、いずれ「元気な日産」が再来するよう期待したい。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

「存在感が光る」漆黒のテントが爆売れ! 2023年「レジャー部門」ヒットセレクション

コロナによる制限が緩和して、賑わいが戻ってきた2023年はより豊かな体験ができるアウトドアアイテムが人気を呼んだ。GetNaviヒットセレクションのレジャー部門から、本記事では、キャンプ場で存在感が光る「ブラックテント」、ソロキャンプをより充実させるキャンプギアとしてプロジェクター「Nabula Capsule 3 Laser」とプロジェクタースクリーン「ポータブル LOGOS シネマスクリーン」、そしてフルモデルチェンジを果たした 日産「セレナ e-POWER」の計4アイテムを紹介しよう。

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

私たちが解説します

モータージャーナリスト 岡本幸一郎さん
軽自動車から高級車まで続々と登場する新型車のほぼすべてに試乗し、原稿の締め切りに追われる生活を送る。消費者目線の評価が身上。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

トラベルライター 澄田直子さん
国内外のガイドブックを中心に取材・編集を行うトラベルライター。最近は北から南まで日本の島を中心に活動。念願叶って初上陸した秘島、青ヶ島はやはりすごかったです!

 

本誌乗り物担当 上岡 篤
2023年は撮影絡みのキャンプしかできず残念。仮にデリカミニを所有したらどんな体験ができるのだろうと想像を膨らませて、2024年こそはキャンプに出かけようと計画中。

 

【ブラックテント】キャンプ場で目を引く漆黒のテント

2022年10月に同社公式サイトで発売を開始したところソロキャンパーを中心に人気を集め完売。2023年4月にはAmazonで販売が開始されたがこちらも売り切れ。現在のところ再販の予定は立っていないという。

売上:10/影響:8/市場開拓:8

 

キャンプ場で存在感が光る設営も簡単なワンポールテント

BlackishGear
BLACK TIPI
4万1800円
2022年10月発売

黒のキャンプギアにこだわる同ブランドが手掛けるテント。4隅をペグで固定し、メインポールを立ち上げるだけで簡単に設営可能。ブラックテントでは珍しい、ポリエステルとコットンを織り交ぜたTC材を使用する。

↑風合いが良く、高い遮光性と通気性を備えるTC素材を使用。撥水加工は施されているが、雨中での積極的な使用はNG

 

付属のパーツを活用してカスタマイズが可能

「付属のサブポールを使うことでキャノピーを持ち上げ前室スペースを作り出せるなど、カスタマイズ術が充実。自分だけの空間やスタイルを作り出せるのも人気の要因です」(上岡)

 

【ラグジュアリーソロキャンプ】ストイックなキャンプよりも優雅に楽しむソロキャンパーが増加

ソロキャンプ=身軽というのはひと昔前の話。最近目にするのが、ハイスペックなこだわりギアを揃えた、優雅なソロキャンパーの姿だ。ひとりぶんのギアだけ運べば良いので、収納性より性能にこだわるのも特徴。

売上:9/影響:9/市場開拓:9

 

ソロキャンプをより充実させるギアも続々登場

モバイルプロジェクター

アンカー・ジャパン
Nabula Capsule 3 Laser
実売価格11万9900円
2022年12月発売

50ml缶ほどのコンパクトサイズで、300ANSIルーメンの明るさとレーザー光源ならではの色合いを実現する。充電式バッテリー内蔵で、最長約2.5時間の再生が可能。

 

プロジェクタースクリーン

ロゴス
ポータブル LOGOS シネマスクリーン
7900円
2021年7月発売

屋外でも使えるプロジェクタースクリーン。同社独自のソーラーブロックコーティングを施した生地は遮光率100%を実現。上下にフレームが入っているので生地のたるみもない。

 

デザインも性能も妥協しない趣味の空間

「自由時間がたっぷりあるソロキャンプでは、好きなコンテンツを視聴するのも楽しい時間。ハイスペックな音響・映像機器を備え、優雅に楽しむ姿を多く目撃しました」(澄田さん)

 

【ミニバン】多くの人が待っていた日産自慢のe-POWER

2022年11月にフルモデルチェンジし、ガソリンモデルが先行発売。だが日産自慢のe-POWERを待っていた人は多く、受注開始から発売日までに2万台を突破した。その販売割合はセレナ全体の約半数を超える。

売上:10/影響:8/市場開拓:8

 

最上級グレードにはプロパイロット2.0も搭載

日産
セレナ e-POWER
319万8800円〜479万8200円
2023年4月発売

最新モデルでは安全運転支援技術の「プロパイロット」が全車標準装備。最上級の「e-POWER LUXION」ではミニバンでは世界初搭載となる、高速道路などでの手離し運転が可能な「プロパイロット2.0」が標準装備となる。

↑搭載されるe-POWERは1.4Lの発電用エンジンを持つ第2世代となる。トルクが太く、力強い走りが魅力だ

 

最新のe-POWERと先進の運転技術が魅力

「変幻自在の広い室内空間はもとより、進化したe-POWERが搭載され、プロパイロット2.0も選べるように。クルマ酔いを抑えるという走りの仕上がりにも注目です」(岡本さん)

「e-POWER」は やっぱりセレナの大本命! 最上級グレード「ルキシオン」試乗レビュー

今回は国産ミニバン三強の一角をなす日産・セレナを紹介。一層洗練された自慢のe-POWERに注目だ。

※こちらは「GetNavi」 2023年10.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

NISSAN SERENA

SPEC【e-POWERルキシオン】●全長×全幅×全高:4765×1715×1885㎜●車両重量:1850㎏●パワーユニット:1433㏄直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:98[163]PS/5600rpm●最大トルク:12.5[32.1]㎏-m/5600rpm●WLTCモード燃費:18.4㎞/L ●[ ]内はモーターの数値

 

“電気感”に一層の磨きがかかった!

昨年リリースされたガソリンモデルに続き、e-POWERを搭載したセレナの発売がいよいよスタートした。シリーズ式ハイブリッドとなるe-POWERは、いまや同社の顔ともいうべきシステムだが、セレナへの採用にあたっては第2世代へとアップデート。発電用ガソリンエンジンも、排気量を先代の1.2Lから1.4Lへと拡大すると同時に静粛性などを高める改良も施された。

 

e-POWER搭載モデルの最上級グレード、ルキシオンでは運転支援システムのプロパイロットが同一車線内でのハンズオフ走行を可能とする「2.0」となることもトピックのひとつ。日産車ではスカイラインで初採用されているが、ミニバンで同様の機能が搭載されたのは世界的に見てもセレナが初だとか。

 

今回の試乗車はそのルキシオン、ということでまずは2.0の効能を再確認してみたのだが、ハンズオフ走行時の自然なステアリング制御や速度管理の巧みさは相変わらず。まったく同じ条件ではないので直接比較するのは乱暴だが、以前試乗したスカイラインのそれと比較すると作動領域が拡大しているように感じられたことも印象的。元々、基本的な操作が簡単なだけに長距離走行の機会が多いユーザーは重宝しそうだ。

 

だが、それ以上に印象的だったのはe-POWERの進化ぶりだ。ルキシオンでは遮音対策が一層入念に施された効果もあってか、日常的な走行条件ではもはや発電用エンジンの存在を意識させない。もちろん、高負荷時には相応の音が車内に侵入してくるがそれも騒々しく感じる類ではない。加えて、純粋な電気モーター駆動なので滑らかな加速感やアクセル操作に対する正確な反応はピュアEVレベル。トヨタのノア/ヴォクシーやホンダのステップワゴンでも電気駆動モデル(ハイブリッド)は選べるが、e-POWERのセレナほど“電気”の存在を実感できないのが本音。長年、国産ミニバン3強として切磋琢磨している各モデルだけに実用性に関する作り込みはいずれ劣らぬもの。加えてそれぞれに独自の持ち味も存在するが、セレナでは第2世代e-POWERこそがキラーコンテンツであることは間違いない。

 

最新モデルらしいデジタル感をアピール

多彩な表示機能を持つアドバンスドドライブアシストディスプレイやコントロールディスプレイ、タッチパネルを駆使したインパネ回りは、いかにも最新モデルらしい仕立て。シフトもボタン操作になった。

 

歴代モデルの面影が残るボディは使い勝手も上々

リアゲート上部を開閉できるデュアルバックドアを先代から継承。使い勝手への配慮に怠りはない。全体の雰囲気は歴代モデルに通じるが、外観は精悍な印象も強まった。

 

クラストップの広さを実現!

室内長、幅はクラストップというだけに各席とも空間的な余裕は十分。2列目にはロングスライド機構も採用する。ルキシオンを除くe-POWER車では8人乗りも実現。

 

上々な使い勝手は歴代モデルから継承

スクエアなボディ形状だけに、荷室は3列目シート使用時でも実用的な広さ。ゴルフバッグなら9.5インチのものが4個収納できる。フロア下にも収納スペースを用意。

 

もはや存在を意識させない!

搭載される発電用の1.4L3気筒ガソリンエンジン。高い静粛性や振動の少なさも従来の1.2ℓエンジンからの進化のポイントとか。

 

走りは静けさに一層の磨きが!

ルキシオンでは、特に日常域の静粛性の高さが印象的。滑らかな加速とアクセル操作に対する正確な反応も電気駆動車ならでは。操縦性は基本的に穏やかな味付けだ。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

人気の秘密は「8人乗り」にあり。日産「セレナ」の新e-POWERモデル総合力チェック!

いまや日産の主力ミニバンとなったセレナが、6代目としてフルモデルチェンジしたのが2022年の暮れ。先代に続いてガソリン車とe-POWER車の2本立てを基本としていますが、23年4月、人気の8人乗りをe-POWER車にもラインナップ。さらに最上級の「e-POWER LUXION(ルキシオン)」を追加するなど、選択肢の幅は大きく広がりました。

 

今回の試乗ではその中から一番の売れ筋となっている「e-POWER ハイウェイスターV」を選択し、その実力に迫ってみたいと思います。

 

■今回紹介するクルマ

日産/セレナ

※試乗グレード:e-POWER ハイウェイスターV

価格:276万8700円〜479万8200円(税込)

↑2023年4月から販売を開始したセレナ「e-POWER ハイウェイスターV」。販売比率はガソリン車を上回る6割近くに達する

 

「e-POWER」車比率がアップ。秘密は8人乗りの実現にあった

日産が発表した内容によれば、新型セレナの受注台数は2023年6月26日の時点で5万4000台に達し、なかでも8人乗りのe-POWER車は全体の約6割を占めるまでになったそうです。このまま行けば「年間10万台の達成も狙えるペース」と、期待通りの売れ行きに手応えを感じている様子。では、その人気のポイントはどこにあるのでしょうか。

↑フロントグリルから伸びるブラックの2トーンカラーがサイドビューに躍動感を与えている

 

↑ e-POWER ハイウェイスターVはプラットフォームこそ先代から引き継いだが、足回りなども大幅な改良が加えられた

 

セレナといえば、2005年の3代目が登場した際に、左右分割式セカンドシートを「スマートマルチセンターシート」としたことで話題を呼びました。これは2列目を用途に応じてキャプテンシートにも、8人乗車ができるベンチシートにもなる使いやすいもの。以来、セレナならではの人気装備となってきました。

 

ところが、5代目に追加されたe-POWER車ではバッテリーを追加搭載した関係上、セカンドシートをキャプテンシートとした7人乗りに変更となってしまいました。販売店の話ではこれが影響して、泣く泣くe-POWER車をあきらめてガソリン車を選んだ人も多かったそうです。

 

そうした事情を反映して6代目ではガソリン車よりスライド量が少ないとはいえ、スマートマルチセンターシートをe-POWER車にも採用。一転、全体の6割がe-POWER車を選ぶようになったのもこの対応が功を奏したとみて間違いないでしょう。

↑セカンドシートで3人掛けを実現したことでe-Power車でも8人乗車が可能となった。シート表面は汚れにくい素材を採用

 

しかも、単に8人乗りとしただけでなく、セカンドシートにはさまざまな工夫を施しているのです。たとえば、センターのバックレストを倒せば収納庫付きのアームレストになり、必要に応じてセンター部だけを前方へ移動することも可能。さらにシートスライドは前後だけでなく左右にも動かせるので、サードシートへの移動も使い方に応じた設定ができます。

 

加えて、セカンドシートでは前席の背後に備えられた折りたたみ式テーブルが用意され、左右には充電用USB端子も装備。シートバックポケットが左右に備えられているのも何かと重宝しそうです。

↑セカンドシートの真ん中を前方にスライドさせ、シートを横に動かすことで、生まれたスペースを使ってサードシートへ乗り込むことができる

 

↑前席のシートバックには折りたたみ式テーブルやUSB端子が左右2か所に装備されている

 

たっぷりとしたシート厚で乗り心地も上々のサードシート

サードシートは広々とした印象はないものの、大人が座ってもそれほど窮屈な印象はありません。シート厚もたっぷりとしており、少し遠乗りした際に家族に座ってもらいましたが乗り心地で特に不満は感じなかったそうです。むしろサードシートにもスライドドアのスイッチやUSB Type-Cが装備されていることに便利さを感じている様子でした。

↑サードシートはクッション厚もたっぷりとしており、長時間の移動でも疲れは少ないようだ

 

↑サードシート側に装備されていたスライドドアの開閉ボタンとUSB Type-C

 

↑足を出し入れする、ハンズオフでスライドドアの開閉が可能。ただし操作に若干こつがあるのが気になった

 

惜しいと感じたのは、サードシートをたたんだときに左右に跳ね上げるタイプとなっているうえに、シート厚がたっぷりとしていることが災いして、左右の幅が狭くなってしまったことです。シートの固定方法もベルトを使う古くさい方法。ここにはもう少し工夫が欲しかったと思いました。

 

一方で荷物の出し入れでいうと、上半分だけが開閉できるデュアルバックドアは、特に狭い場所での開閉がラクで使いやすさを感じます。荷物の落下防止に役立つことも見逃せないでしょう。

↑サードシートは左右跳ね上げ式を採用。シートのクッションが厚めであることが災いして左右のスペース幅は結構狭い

 

↑バックドアは上半分だけを開閉できる「デュアルバックドア」を採用。狭い駐車スペースでも荷物の出し入れができる

 

↑最後部のフロア下には、大容量のカーゴスペースを用意。普段使わないメンテナンス用品を入れておくのにも最適だ

 

運転席に座ると視界の広さを実感でき、周囲の状況はさらに把握しやすくなっています。座ったときの収まり間も良好なうえ、センターディスプレイにぐるりと囲まれるようなインテリアもデザインと機能性を兼ね備えた使いやすさを感じさせます。一方、賛否が分かれたスイッチタイプの電動シフトは、違和感を覚えたのは最初だけ。慣れてしまえば使いやすく、むしろ操作ミスを減らすのではないかと思ったほどです。

↑運転席は視界を遮るものを減らした開放感のあるもので、これが運転のしやすさをもたらしている。高品質なインテリアも好印象

 

↑日産初となるスイッチタイプの電制シフトを採用。見た目にもスッキリとしており、慣れると使いやすく確認しやすい

 

排気量が1.4Lにアップ。スムーズな走りはまさに電動車そのもの

さて、6代目となったセレナに搭載のe-POWERは、エンジンの排気量が従来の1.2Lから1.4Lへと拡大されています。従来のe-POWER搭載車でも特に力不足を感じたことはありませんでしたが、発電効率を高めることで、もともと重いミニバンで定員乗車したときなどでも余裕ある走りにつなげているのがポイントです。

 

実際、走り出してすぐに感じるのが、先代よりも明らかに静かさと滑らかさが増していることです。アクセルへの応答性も向上して、エンジンがかかる比率もかなり少なくなったこともあり、リニアな加速はもはや電動車そのもの。それがとても気持ちいいのです。モーターによる恩恵は明らかに大きいといえます。

↑アクセルを踏み込んでもストレスなく速度を上げていく。エンジンが起動しても走行中ならほとんど気付かない

 

しかもエンジンがかかってもそのときの振動はほとんど伝わってこない見事さ。これらはエンジンを収めるケース類の剛性アップとバランスシャフトの採用など、音・振動面のリファインを徹底的に施した効果が発揮されたものです。排気量拡大にともなってエンジンもパワーアップ。発電効率向上にも寄与しており、走りの快適度は確実に向上したといえるでしょう。

↑e-POWER車は新開発となる直列3気筒DOHC 1.4リッターのe-POWER専用のHR14DDe型エンジンを搭載。最高出力は72kW(98PS)/5600rpm、最大トルクは123Nm(12.5kgfm)/5600rpmで、EM57型モーターの最高出力は120kW(163PS)、最大トルクは315Nm(32.1kgfm)

 

足回りの剛性の高さも6代目の良いポイントです。5代目の柔らかめのサスとは違い、コシのあるしっかりとしたサスペンションは、段差を乗り越えたときの収束性もよく、荒れた路面での乗り心地は同乗した家族からも好評。個人的には見事なカーブでの踏ん張りが印象的で、峠道でもミニバンとは思えない粘りを見せてくれたのが好印象でした。

↑タイヤは205/65R16 95H。スポーティなハイウェイスターVながら、乗り心地が良いのもこの扁平率が効果を発揮している可能性がある

 

ただ、高速走行時に大きめの段差で受けると、ボディ全体がやや微振動として残る傾向があります。実は6代目はモデルチェンジしたとはいえ、プラットフォームまでは刷新しておらず、そのあたりの設計の古さが災いしているのかもしれません。とはいえ、一番多く利用する一般道での違和感はほとんどなし。その意味での進化は確実に遂げているとみて間違いないでしょう。

 

実用上で使いやすい「プロパイロット」。ライン装着ドライブレコーダーも

最後にプロパイロットの使い勝手に触れておきます。最上位のルキシオンには、高速でのハンズオフ走行が可能になる「プロパイロット2.0」が装備されましたが、ハイウェイスターVには単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた、オーソドックスなACCを採用するプロパイロットが装備されます。

 

それでも先行車への追従性は極めて良好で、速度ムラもほとんど感じさせないため、追従走行でストレスを感じることはありませんでした。ただ、レーンキープはテンションが強めにかかるため、これが気になる人はいるかもしれません。

↑プロパイロットのメインスイッチはステアリング右側に装備。このスイッチを押して「SET」すれば設定完了。あとは+-で調整するだけ

 

↑プロパイロット作動時。レーンキープのテンションがやや強めだが、先行車への追従性は速度ムラも少なく安定していた

 

また、6代目では新たにドライブレコーダーがライン装着で選択できるようになりました。前後に2台のカメラが装備され、配線が一切露出しないうえに表示をインフォテイメントシステムのディスプレイ上で展開できます。これはまさにライン装着ならではのメリットです。販売店に聞くと装着率はかなり高いそうで、今後はドライブレコーダーの標準化も当たり前になっていくのかもしれません。

↑日産車としては初めて、ライン装着でドライブレコーダーを用意した(下)。映像はインフォテイメントシステムでモニターできる

SPEC【e-POWER ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm●車両重量:1810kg●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:98PS/5600rpm●エンジン最大トルク:123Nm/5600rpm●モーター最高出力:163PS●モーター最大トルク:315Nm●WLTCモード燃費:19.3km/L

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

撮影/松川 忍

約2か月で2万台受注! 日産 セレナ e-POWERのヒミツに迫る【2023年上半期売れたモノSELECTION 乗り物編】

『GetNavi』が選ぶ「2023年上半期売れたものSELECTION」。今回は「乗り物編」から、日産 セレナ e-POWERをピックアップ。事前受注開始後、2か月も経たないうちに2万台以上のオーダーがあった人気車のヒミツに迫ります!

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです

 

代々受け継がれる広い室内と高い静粛性が自慢

日産
セレナ e-POWER
319万8800円〜479万8200円

ファミリー層から高い支持を集めるセレナが2022年にフルモデルチェンジ。現行モデルにはエコとパワーを高次元で両立させたe-POWERを2023年4月にラインナップに加え、より魅力を増した。もちろん先進の運転支援機能も充実。

↑最上位グレードには、条件付きだが同一車線でのハンズオフ運転を可能にするプロパイロット2.0が装備される

 

↑特徴でもある広い室内空間はそのままに、シートをアップグレード。車体の揺れの伝達を抑えクルマ酔いを抑制

 

↑搭載されるe-POWERは1.4lの発電用エンジンを持つ第2世代のもの。トルクフルな走りも魅力だ

 

【ヒットのシンソウ】

<証言者>自動車ライター・海野大介さん
専門誌からフリーに転向しウェブを中心に活動。1級小型船舶操縦免許や国内A級ライセンスを持つ。

 

e-POWERへの期待大!約2か月で2万台受注

「事前受注開始後、約2か月も経たないうちに2万台以上のオーダーがありました。ガソリン車は昨年12月に発売されましたが、やはり日産得意のe-POWERを待っていた人が多いことの表れです」(海野さん)

売れ行き:★★★★★
革新性:★★★★
影響力:★★★★

 

誰もが快適に乗れる装備と技術が凝縮

セレナといえば扱いやすいボディサイズで広い室内がヒットの要因。そしてその“ちょうど良さ”が人気のヒミツだ。それは現行モデルにも受け継がれ、人気グレードのハイウェイスターの3ナンバーボディは1715mmと限りなく5ナンバーに近い寸法に。それでいて室内空間は広く、歴代セレナの美点は健在である。

 

「2列目のスライド量を見直して、3列目の足元スペースは先代よりも大きくなりました」(海野さん)

 

また、先代では選択できなかったe-POWER車の8人乗りも選択可能になったことも魅力だ。一方、走りの面ではe-POWERのコア部分が1.4lエンジンを採用する第2世代に進化。

 

「エンジンは振動や騒音を抑えるバランサーを装備しています。高速巡航中の静粛性も高く、不快な振動も少ないです」(海野さん)

 

ミニバン特有のふらつきも、高剛性サスペンションや揺すられにくい新開発のシート「ゼログラビティシート」の採用も相まってうまく軽減されている。また、ハンズオフ可能なプロパイロット2.0も最上級グレードに装備されたことも特筆。e-POWER車には100VのAC電源がオプション設定され、アウトドアや災害時の非常電源として家電等が使える点も好評だ。

 

【コレもCheck!】
e-POWER車の人気はSUVでも! 一時は受注が停止になるほど

日産
エクストレイル
351万100円〜532万9500円

「タフギア」というコンセプトはそのままに、e-POWER専用車として2022年に登場したエクストレイル。モーター駆動ならではの電動4輪制御技術「e-4ORCE」搭載で、高い悪路走破性も健在だ。

↑世界で初めて量産化に成功した、圧縮比を変えられるエンジン「VCターボ」。低燃費とハイパワーを実現している

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

本格派スポーツカーとして申し分ナシ! 新しいのに懐かしい「フェアレディZ」をレビュー

今回の「NEW VEHICLE REPORT」は日本を代表するリアルスポーツモデル、日産・フェアレディZの新型をピックアップ!

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

歴史を受け継いだ新旧ファン納得の1台

日産 フェアレディZ クーペ

SPEC【バージョンST(6MT)】

●全長×全幅×全高:4380×1845×1315㎜●車両重量:1590㎏●総排気量:2997㏄●パワーユニット:V型6気筒DOHC+ツインターボ●最高出力:405PS/6400rpm●最大トルク:48.4㎏-m/1600〜5600rpm●WLTCモード燃費:9.5㎞/L

 

3Lターボの魅力はパワーだけじゃない!

日本を代表するスポーツカー銘柄のひとつでもあるフェアレディZが新型へとスイッチ。ご覧の通り、その外観デザインは随所に歴代モデルを彷彿とさせる造形を採用。昭和世代には、懐かしさも感じさせる見た目に生まれ変わった。

 

そんなテイストは室内に目を向けても変わらない。もちろんインターフェイスは現代的にアップデートされているが、往年のZを知る人なら思わずニンマリとさせられる仕上がり。また、2 人乗りのスポーツカーとしては上々と言える室内の使い勝手も歴代モデルからしっかりと受け継がれている。

 

エンジンは400ps超えとなる3Lツインターボで、9速ATに加え6速МTが選べる点も特徴だが、当然ながら動力性能は本格派スポーツカーとして申し分ない。またこのエンジンは積極的に回す楽しさが見出せるのも魅力のひとつで、腕に覚えのある人へのアピールも十分。その出来栄えを思うと、生産事情の影響で受注が止まっていることが何とも恨めしい。

 

【POINT01】プリミティブな走りの楽しさを実感

コンパクトなボディとハイチューンな3ℓターボの組み合わせとあって、絶対的な動力性能は申し分ない。また、ただ速いだけではなく積極的に操る楽しさも見出せる。

 

【POINT02】新しい一方で懐かしい仕上がり

室内は最新モデルに相応しい作りだが、随所に往年のZに通じる造形も見られ古典的な風情も漂わせる。2人乗りのスポーツカーとしては使い勝手も納得の出来だ。

 

【POINT03】スペックはクラス最強レベル

エンジンは先にスカイラインにも搭載され話題を呼んだ400PS超えの3L V6ツインターボ。6速MTと9速ATが選択できる。

 

【POINT04】レイズ製の鍛造ホイールも採用

中・上位グレードには日本の代表的ホイールメーカー、レイズ製の鍛造19インチホイールが標準で装備される。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

「新型エクストレイル」は駆動方式が全車e-POWERに統一! ピュアEVに負けない滑らかな乗り心地

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は日産の新型エクストレイルをピックアップ。e-POWERを名乗るハイブリッドで、最新の電気駆動モデルらしさを存分に堪能できる。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです

 

電気駆動モデルらしさはピュアEVに匹敵!

【SUV】

日産
エクストレイル

SPEC【G e-4ORCE】●全長×全幅×全高:4660×1840×1720㎜●車両重量:1880㎏●総排気量:1497㏄●パワーユニット:直列3気筒DO HC+ターボ+電気モーター×2●最高出力:144[204/136]PS/4400〜5000rpm●最大トルク:25.5[33.7/19.9]㎏-m/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:18.4㎞/L

●[ ]内はモーターの数値

エンジンには日産独自のハイテク技術も投入!

新型エクストレイルは駆動方式が全車e-POWERに統一。リアにも電気モーターを搭載する4WD版では、駆動力だけでなく快適性や操縦性向上にも貢献する「e-4ORCE」を採用する。また、発電機の役割を担うガソリンエンジンが凝った作りになっているのも特徴だ。日産独自のVCターボは、圧縮比を8〜14・0まで可変させることで高い燃費と高出力化を両立させている。もちろん、最新SUVとしての機能も着実に進化。室内空間はサイズ相応の広さを確保しつつ、荷室はクラストップの容量を実現した。4WD仕様では、3列シートも選択できる。

 

走りは電動駆動モデルらしさが満喫できる出来映え。今回は4WDに試乗したが、日常域の力強さと滑らかな加速、そしてフラットな乗り心地が印象的だった。また、エンジンの存在を意識させない点も最新のe-POWERらしい。その意味では、充電に不安を抱きつつも電動駆動モデルに興味がある人にも狙い目と言えそうだ。

 

[Point 1]クラストップの容量を実現

荷室容量は、5人乗り仕様でクラストップの575Lを実現。先代より全幅が拡大されたことで、横方向の空間にも余裕がある。

 

[Point 2]充実の装備に加えて高級感も大幅アップ

ナッパレザーのシートが選択できるなど、室内はSUVとしての高級感も先代より向上。最新モデルらしく、プロパイロットを筆頭とする安全支援装備も充実している。

 

[Point 3]独自のVCターボを搭載

1.5Lの3気筒ガソリンエンジンには、圧縮比を可変させる独自のVCターボを採用。高出力化と低燃費を高次元で両立する。

 

[Point 4]走りはまさに電気駆動モデル

日常域での力強さや滑らかな加速は、電気駆動モデルならでは。乗り心地も重厚感すら漂わせるフラットな出来映えとあって、快適性はピュアEVにも引けを取らない。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

「日産氷上試乗会」トレース性に優れたe-4ORCEの走行性能に脱帽!

2023年1月中旬、この時期の恒例行事となった日産の氷上試乗会が開催されました。今回の目玉は、同社の新たな4WDシステム「e-4ORCE」搭載車がこの条件でどう反応するかを体験できることです。本記事ではe-Powerの「エクストレイル」と100%EVの「アリア」による、その走りをレポートします。

↑長野県蓼科にある女神湖で開催された日産自動車の氷上試乗会。日産の電動車をはじめ、「フェアレディZ」や「GT-R」など日産の名車たちが勢揃いした

 

摩擦係数が低い中を多彩な試乗コースでチャレンジ

この試乗会は、湖(長野県・女神湖)の表情に作られたコースを走行して、車両の制御や運転技術を知る場として日産が毎年開催しているものです。雪上でさえ滑りやすいのに、氷上ということで滑りやすさはそれ以上。スタッドレスタイヤを履いているものの、この環境下で日産の最新4WDシステム「e-4ORCE」がどんな制御を見せてくれたのかが氷上試乗のポイントとなります。

 

用意された試乗メニューは基本的にこれまでと同様、直線路や大小のコーナーを組み合わせた往復コースと、定常円と8の字コース、それにスラロームが体験できるようになっていました。一般道とは違い、安全が確保された上で走行できるため、仮にスピンしても、横滑りしても問題は一切なし。この普通では得られない環境下で思いっきり車両の性能を確かめることができるというわけです。

 

結論から言うと、e-4ORCEの高い走行能力には驚きを隠せなかったというのが正直な感想です。それは極端に摩擦係数が低いこの条件下でも、驚くほどの安心感で走ることができたからです。これまでドライ路面やウェット路面での走行性能の高さは体験していましたが、正直ここまでとは思っていませんでした。

 

2tを超えるヘビー級モデルが氷上を意のままに走る「アリア」

まず紹介するのが、2022年6月にデビューしたアリアのe-4ORCEモデルです。このクルマは前後に最大出力218PSものハイパワーなモーターを搭載しつつ、車重は2.2tというヘビー級モデル。従来の感覚なら、この圧倒的なパワーで攻めまくったところで車重による慣性が働いてあっという間にコントロールを失う。そんなイメージが湧いてきます。ところが走り出すとそんな印象は微塵も感じさせなかったのです。

 

発進時こそタイヤはスリップしますが、速度が上がるにつれて車両はすぐに方向をつかんでスムーズに走って行きます。滑りやすい路面ではアクセルを不用意に踏めば、タイヤが空転するばかりで思うように前へ進むことはできません。しかし、アリアは舗装路に比べれば速度の上がり方こそ緩やかですが、トラクションコントロールの制御能力が高く、アクセルを踏む量に応じて速度を上げていくことができたのです。

 

ハンドルを切った時の動きも正確で、不安を感じることはほとんどありませんでした。さすがに速度域を上げ過ぎると横滑りが始まりますが、控えめに走れば思った通りのコースを正確にトレースして見せたのです。ここまで車両の挙動が乱れず、安定した走りが得られるとは思ってもみませんでした。

 

しかも、日産お得意の「e-Pedal」という回生ブレーキを併用すればコーナーに差しかかっても無理なく減速でき、スリップの発生を最小限に抑えることができるのです。滑りやすい路面ではブレーキの踏み方に神経を使うものですが、e-Pedalを使えばそんな不安から解放されるというわけですね。

↑e-4ORCEを4WDシステムに組み込んだバッテリーEVのアリア

 

高い着座位置、フロントヘビーもなんのその、安心して氷上を走行「エクストレイル」

一方のエクストレイルはどうでしょうか。エクストレイルといえば、初代よりアウトドア系4WD車として高い走破性を発揮するクルマとして根強い人気を保ってきたモデルで、新型はその4代目モデルとして2022年7月にデビューしました。特に4代目は全車がe-POWERによるモーター駆動となり、4WDシステムとしてe-4ORCEを採用したのが大きなポイントになります。

 

アリアと比較して大きく違うのは着座位置です。エクストレイルはもともとオフローダーとして誕生しているだけに、その分だけ腰高感は否めません。加えてフロントには発電用のガソリンエンジンを備えたことにより、前後の重量バランスでもアリアよりも不利となるのは明らかです。

 

ただ、そんな心配をよそに、エクストレイルは発進から減速、さらにはコーナリングでもアリアに迫るコントローラブルな動きを発揮してくれました。発進時の安定した加速はアリアにも劣らず確実性があり、しっかりと方向を見据えて進む感じです。コーナリングでのハンドリングも速度さえ注意すれば、リアがしっかりと駆動力を伝えてくれ安心して曲がれます。高い着座位置からは想像もできない安定した走りは、やはりe-4ORCEによる制御がここにあるからこそ。そう実感させられた次第です。

↑受注の約9割がe-4ORCEを選んだというシリーズ型ハイブリッドの新型エクストレイル

 

「e-4ORCE」が発揮する緻密なまでの制御の秘密とは?

では、どうしてe-4ROCEがこのような制御を発揮してくれるのでしょうか。実は同じ電動4WDを採用する「ノート」「セレナ」ではe-4ROCEと呼びません。日産車でも4WD機構にe-4ROCEを搭載するのはアリアとエクストレイルだけなのです。

 

日産はこのe-4ROCEについて、「これまで日産が培ってきた4WD制御技術、シャシー制御技術に、電動化技術で革新した新しい駆動システム」としています。これにより、日常走行からワインディング、滑りやすい路面まで、すべての走行シーンで意のままに走れる能力を発揮することになりました。

 

そのポイントとなるのが「協調制御」です。これまで油圧ブレーキや回生ブレーキのコントロールと、4WDの制御は別々のECUが担ってきました。そのため、それぞれがセンシングして入力された事象に応じて対応することとなり、互いの連携が十分でないまま制御することとなっていたのです。

 

それに対しe-4ROCEでは、シャシー全体の制御を一つの目標に向かってECUが一括して制御することとし、互いの連携もスムーズに行われるように進化。これによって路面の状況に応じた緻密な制御が可能となり、ドライ路面から滑りやすい路面まですべての路面に対して安心して走行できるようになったというわけです。

 

以前、エクストレイルで連続するドライ路面でコーナーを走り切った際、思い通りのコースを正確にトレースしていく様に、まるで自分の運転が上達したようにも感じました。その感覚が氷上でも同じように発揮されたのには本当に驚きです。聞けば4代目エクストレイルの販売比率は9割がこのe-4ORCEとのこと。もし、この走りを体験して選んでいるとしたら、エクストレイルの購入者は見識が相当に高い!  ぜひ、e-4ORCEの素晴らしい走りを堪能していただきたいと思います。

 

他の日産車種も紹介!

↑後輪駆動のフェアレディZ。VDCをOFFで不用意に踏み込むと簡単にスピン!コントロールが一番難しく、楽しくもあったクルマだ

 

↑カーボンセラミックブレーキやカーボン製リアスポイラーなどを装着した、特別仕様車GT-R プレミアムエディション Tスペック

 

↑「オーラNISMO」は2WDのみの設定。2WDであってもボディの軽さも手伝って、切り返しはとてもスムーズ。思ったよりもラクに走行できた

 

↑「オーラ」の4WD車。強烈な回生ブレーキの効きによって氷上でもラクにコントロールできたが、滑り出す感じが結構早い

 

↑バッテリーEVの軽自動車「サクラ」。2WDながら、車重の重さにより高いグリップを発揮していた

 

↑「キックス AUTECH」の4WD。eペダルにより。e-4ORCEほどの連続的な滑らかさはないものの、アクセルに敏感に反応して加減速。安定性は高い

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

共通点は軽快なフットワーク! ニューバランスとコラボした「NISSAN KICKS 327 EDITION」

電気モーターによる瞬発力のある加速が魅力の「日産キックス e-POWER」。このモデルとニューバランスのコラボレーションが実現し、同ブランドのスニーカー「327」仕様のラッピングを施した世界に1台の「NISSAN KICKS 327 EDITION」が誕生しました。

 

街にもアウトドアにも映えるのが共通項

自動車メーカーとスニーカーブランドのコラボは、あまり聞き慣れませんが「車名の“KIKCS”には英語のスラングでスニーカーという意味があるので、スニーカーブランドとタイアップしたいと考えていました。ニューバランスにはアクティブなイメージがあり、フットワーク軽く毎日を楽しむという『日産キックス e-POWER』のコンセプトと合致すると思い、お声がけさせていただきました」と語るのは日産自動車のチーフマーケティングマネージャーである岡部龍太氏です。

↑NISSAN CROSSINGでのお披露目式で挨拶をする日産自動車の岡部龍太チーフマーケティングマネージャー

 

数あるニューバランス製スニーカーの中で「327」が選ばれた理由については、ニューバランスジャパンのマーケティングディレクターである鈴木 健氏がコメントしてくれました。「『327』は1970年代に販売していた3種類のランニングシューズをオマージュしていますが、その中にはオフロード向けのモデルも含まれています。『日産キックス e-POWER 4WD』はオフロードでも走れますし、街中にも映えるデザイン。そのイメージが『327』にピッタリだと考えました」。

↑ニューバランスジャパンの鈴木 健マーケティングディレクター

 

↑「327」のベースとなった1970年代のスニーカー。ロード用、レース用だけでなく、トレイル用モデルも含まれる

 

↑「320」「355」「Super Comp」の3つのモデルを元に生まれた「327」。オフロードで高いグリップを発揮するソールは、トレイルランニングモデルからインスピレーションを得たもの

 

ニューバランスの「327」は、ソールデザインこそトレイルランニングを思わせるものですが、街中に映えるデザインとされています。そんなことから、ベース車両には緻密な制御が可能な電動の4輪駆動機構を持つ4WDモデルが選ばれました。「日産キックス e-POWER 4WD」は、オフロードでも高い走破性を発揮しますが、遠出だけでなく近場の移動にも気軽に出かけたくなるモデル。両者のコラボは必然だったといえるかもしれません。

↑岡部氏(右)と鈴木氏によって「NISSAN KICKS 327 EDITION」がアンベールされた

 

「327」のディテールをできるだけ忠実に再現!

「NISSAN KICKS 327 EDITION」の特徴は、側面のダイナミックな「N」のロゴだけでなく、「327」のディテールをできるだけ忠実に再現していること。象徴的なソールやスエード生地の質感も再現されており、特にルーフ部分にはシュータンと呼ばれるシューズのアッパー部分が設置されています。

↑大胆な側面のロゴが目立つが、スエード生地の部分はカラーだけでなく質感まで再現されている。「NISSAN KICKS 327 EDITION」の製作期間は約2週間

 

↑最も目を引くのがシュータンを模したルーフ部分の造形。中央部にはNISSANのロゴがあしらわれる

 

最も力を入れた部分について問われた岡部氏は「『327』とどうやって融合させるか、全体のプロポーションと細部の質感」と回答。鈴木氏は完成車を初めて見た際の印象を「感動すらおぼえるほど」だったと答え「ペイントだけでなく、素材感が再現されているので、遠くから見るとスニーカーが走っているよう」と表現しました。

↑多様なカラーが用意される「327」だが、コラボモデルはあえてブランドを象徴するカラーであるグレーでまとめられる

 

このクルマは、2月1日までNISSAN CROSSINGで展示された後、2月4日〜5日は東京都で、2月11日〜12日は大阪府で実際に街を駆け巡る予定。2月14日〜20日はイオンモール土岐(岐阜県)、2月22日〜28日はイオンモール白山(石川県)の日産ブランドアンテナショップで展示されます。

 

その模様を撮影し、日産の公式Twitterアカウントをフォローの上で投稿すると、「日産キックス e-POWR 4WD」が当たる「CATCH THE KICKS」キャンペーンも実施されます。寒い日が続きますが、2月は「NISSAN KICKS 327 EDITION」を探して出かけてみるのもいいかもしれません。

 

「CATCH THE KICKS」キャンペーン概要

【展示日程】

・日産クロッシング(銀座)2023年1月24日〜2023年2月1日

・イオンモール土岐 日産ブランドアンテナショップ:2023年2月14日〜2023年2月20日

・イオンモール白山 日産ブランドアンテナショップ:2023年2月22日〜2023年2月28日

※展示期間は内容を予告なく変更の可能性があります。

 

【走行日程】

・(東京)2023年2月4日〜2023年2月5日 11:00〜16:00

・(大阪)2023年2月11日〜2023年2月12日 11:00〜16:00

※走行時間は変更になる可能性があります。

 

【走行ルート】

1東京エリア:銀座エリア、原宿エリア

2大阪エリア:大阪・梅田エリア、心斎橋エリア

 

【景品】

■A 賞:日産キックス e-POWER 4WD(1 名)

■B 賞:ニューバランス 327・シューチャーム2種・シューレース1種(23名)・シューズボックス

 

【応募方法】

■A賞

1:日産自動車公式 Twitter(@NissanJP)をフォロー

2:「NISSAN KICKS 327 EDITION」の写真を撮影

3:撮影した写真とハッシュタグ「#キックスを捕まえろ」を付け Twitter で投稿

■B賞

1:日産自動車公式 Twitter(@NissanJP)をフォロー

2:1月24日に日産自動車公式 Twitter から投稿されるツイートを、アカウントをフォローした上でリツイートを実施

 

【応募期間】

2023年1月24日〜2023年2月28日

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

2022年、プロがもう一度乗りたいとウズウズする国産車5選!スポーツカーばかりと思いきや……

新車試乗会以外にも、さまざまなクルマに乗る機会がある自動車評論家やライター。本稿では、さまざまなクルマを見て乗ってきた自動車評論家・岡本幸一郎さんに、今年(2022年)出会ったクルマのなかから、最も「もう一度乗りたくてウズウズする」国産車5台をピックアップしてもらいました。おすすめグレード付でお届けします。

 

【その1】FFなのにアクセルを遠慮なく踏める

ホンダ

シビック タイプR

「シビック タイプR」といえば、FF量販車で世界でも1、2を争う速さを身につけたクルマだけあって、まずエンジンフィールがすばらしいのなんの。アクセルと一体化したかのような俊敏なレスポンスと、踏み込んだときの力強い加速と、トップエンドにかけての痛快な吹け上がりと、控えめな中にも野太く吠えるエキゾーストサウンドに惚れ惚れ。2リッター4気筒エンジンとして世界屈指の仕上がりだ。

 

それを引き出すシフトフィールも、シフトを操ること自体にも喜びを感じられるほどよくできている。330PSのパワーを前輪だけで受け止めるとなると、普通なら空転してしまいそうなところ、トラクション性能も十分すぎるほど確保されているおかげで、遠慮なくアクセルを踏んでいける。

 

ハンドリングはまさしくオン・ザ・レールという言葉がピッタリ。意のままに気持ちよく操ることができて、舵を切った方向にグイグイと進んでいく。さすがは「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」でパフォーマンス部門賞に輝いただけのことはある、最高にエキサイティングなクルマだ。

 

【その2】登場7年ですげーグレードが出た!

マツダ

ロードスター

おすすめグレード:990S

「ロードスター」は登場からまもなく7年というタイミングで、持ち前の走りの楽しさをさらに高めるための大きな動きがあった。ひとつはKPC(=キネマティック・ポスチャー・コントロール)という新技術の採用だ。これによりGが強めにかかるようなコーナリングでのロールが抑えられ、旋回姿勢が安定してドライバーとクルマの一体感がより高まった。

 

もうひとつは、軽さにこだわりある走りに特化した特別仕様車「990S」の追加だ。1トン切りを印象づけるモデル名のとおり、車両重量を990kgにとどめるとともに、軽量の鍛造ホイールの装着をはじめシャシーやエンジン、ブレーキなどが専用にセッティングされている。

 

軽量コンパクトなロードスターは、2シーターでホイールベースが短いことも効いて、もともと手の内で操れる感覚が高いが、「990S」はさらに軽やかで気持ちのよい人馬一体感を実現している。既存のロードスターでなんとなく感じられた、ステアリングとタイヤの間に何か挟まっているような感覚が払拭されて、よりダイレクト感のある走り味になっているのだ。グリップ感が高く、フラット感もあり、ロールだけでなくブレーキング時のピッチングも抑えられている。

 

こうした改良と特別仕様車の追加が効いて、売れ行きのほうも発売から時間が経過したスポーツカーではありえないような増え方をしているらしい。中でも件の「990S」の販売比率がかなり高いというのも納得だ。

 

【その3】FFベースでつまらなくなった? 全然そんなことない!

トヨタ

クラウン クロスオーバー

おすすめグレード:RS

ガラリと変わって話題騒然の新型「クラウン」は、それだけでも乗ってみたい気持ちになるのはいうまでもないが、中でも「RS」モデルは走りっぷりも予想を超えていて驚いた。

 

いかにも速そうな名前のとおりエンジンもモーターも強力なデュアルブーストハイブリッドは、272PSの2.4リッターターボエンジンと前後に約80PSのモーターを組み合わせ、システム最高出力で349PSを発揮するというだけあってけっこう速い。モーターならではのレスポンシブでシームレスな加速フィールも気持ちがよい。さらにコーナリングでは、リアモーターで積極的に後輪の左右の駆動力に差をつけるとともに、4輪操舵機構や電子制御デバイスを駆使することで、クイックな回頭性を実現しているのもポイントだ。

 

クロスオーバーの2.5リッター自然吸気エンジンにTHSを組み合わせた他グレードとは別物で、大柄でけっして軽くないクルマでありながら、加減速もハンドリングがとても俊敏に仕上がっている。そのあたり、FFベースになってつまらなくなったとは言わせたくないという開発陣の意地を感じる。スタイリッシュなルックスだけでなく、走りのほうも鮮烈な仕上がりだ。

 

【その4】最新CVTの実力、いい感じ

スバル

WRX S4

おすすめグレード:sport R EX

もとはモータースポーツ由来だった「WRX」が、時代の流れで今では高性能ロードゴーイングカーという位置づけに。本稿執筆時点では3ペダルのMTを積む「WRX STI」の販売が終了し、将来的にもラインアップされるかどうかわからない。しかし、2ペダルの「WRX S4」はしっかり進化している。

 

275PSと375Nmを発揮する2.4リッター直噴ターボのFA24型に、「スバルパフォーマンストランスミッション」と呼ぶ最新のCVTが組み合わされるのだが、これがなかなかのもの。駆動力の伝達にかかるタイムラグが払拭されているほか、従来とは比べものにならないほどダイレクト感があり、マニュアルシフト時のシフトチェンジも驚くほど素早い。エンジン回転が先に上昇して、あとから加速がついてくる感覚もほとんど気にならない。

 

さらにはリアよりに駆動力を配分するVTD-AWDも効いて、小さな舵角のままコーナーをスムーズに立ち上がっていけるのも、WRX S4ならでは。2グレードあるうち、44万円(税込)高い「STI Sport R」は、「GT-H」に対して装備が充実しているのに加えて、走りの面ではZF製の電子制御ダンパーが与えられるほか、SIドライブではなく、より細かく設定できるドライブモードセレクトが搭載されるのが大きな違いとなる。

 

【その5】サーキットのちょい乗りだけでもう惚れてます

日産

フェアレディZ

おすすめグレード:バージョンST

この往年の雄姿を思い出すスタイリングを目にしただけで、乗りたくてたまらない気持ちになる。実のところ本稿執筆時点では筆者はサーキットでちょっとだけ乗った程度なのだが、見た目の魅力はもちろん、400PSオーバーを誇るV6ターボエンジンの刺激的なパフォーマンスや、全面的に見直したという洗練されたシャシーチューニングにより、かなり走りもよさそうな雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。だからこそ、もう一度乗りたくてうずうずしているところです……(笑)。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

クルマ乗りにとって永遠の憧れ! 日産「フェアレディZ」の新型を「Z32」世代が評価

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、かつて2人とも所有したことがある「フェアレディZ」の新型を紹介する。所有経験は新型の評価に影響するか?

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】日産/フェアレディZ

SPEC【バージョンST・6MT】●全長×全幅×全高:4380×1845×1315mm●車両重量:1590kg●パワーユニット:2997ccV型6気筒ツインターボエンジン●最高出力:405PS(298kW)/6400rpm●最大トルク:48.4kg-m(475Nm)/1600〜5600rpm●WLTC燃費:9.5km/L

524万1500円〜646万2500円(税込)

 

エレガントでカッコ良い外観に加えV6エンジンも最強クラス

安ド「殿! 僕は元Zオーナーとして、新型Zを見てコーフンしました!」

 

永福「私も元Zオーナーとして、新型Zに鼻血ブーだ」

 

安ド「殿はどの世代のZでしたっけ?」

 

永福「4代目のZ32だ」

 

安ド「僕もです!」

 

永福「お前のはド中古だろう。私は発売直後に新車で買ったんだ」

 

安ド「そうでしたか!」

 

永福「まだ27歳の若者だった。ただ、買った後すぐに初めてフェラーリを体験し、Zがサツマイモに思えてしまった」

 

安ド「そうだったんですね! 新型もサツマイモですか?」

 

永福「いや、これは永遠の青い鳥だ。このクルマの後ろ姿を見て、乗ってフル加速すれば、感動で涙が止まらない」

 

安ド「僕も若いころを思い出してグッと来ました! Z32派の自分としては、やはりテールライトが一番カッコ良く見えますが、フロントも悪くないんじゃないかと思います。あえて四角くしたグリルとか、初代をモチーフに現代的にしたヘッドライト形状も良いですね!」

 

永福「あのテールライト、夜に後ろから見ると震えるほどカッコ良いぞ」

 

安ド「最近のスポーツカーは怒り顔が多いですが、新型Zはちょっと眠そうな表情もいいです!」

 

永福「マヌケで可愛いな」

 

安ド「ルーフラインもエレガントです!」

 

永福「震いつきたくなるな」

 

安ド「加速もスゴいですね。高速走行中にアクセルを踏み込むと、そこからさらにグイーンと加速していくのがタマらない!」

 

永福「405馬力のV6ツインターボだからな」

 

安ド「4代目の280馬力にも感動しましたけど、新型ははるかに上回ってますね!」

 

永福「ケタ外れに良いな。このV6ツインターボは、現在地球上に存在するあらゆるエンジンのなかでも、フィーリングの良さではベスト10に入るだろう」

 

安ド「ただ、お値段はかなり高くなってしまいましたね。おいそれとは買えません」

 

永福「お前は何を言っているのだ。もう新型Zは、売り切れてしまって買えんのだ」

 

安ド「エッ!? いつ売り切れたんですか」

 

永福「発売は9月だったが、7月いっぱいで数年先のぶんまで予約殺到で、すでに受注停止だ」

 

安ド「ええ〜〜〜〜〜っ! そんなバカな! じゃあ、欲しい人はどうすれば?」

 

永福「いま、ロレックスを買うためには、お店に足しげく通って、店員に顔を覚えてもらう必要があるらしいが、日産のディーラーに毎日通って顔を覚えてもらえば、ひょっとして数年後、増産ぶんをポロッと売ってもらえたりするかもしれん」

 

安ド「そ、そんな……」

 

【GOD PARTS 1】リアコンビネーションランプ

帰ってきたオマージュデザイン

このリアランプのデザインは、4代目Z32型フェアレディZがモチーフになっているそうです。当時もカッコ良いと話題になりましたが、その後、同じようなデザインのリアランプは登場しませんでした。満を持してまたZで復活したワケです。

 

【GOD PARTS 2】ヘッドライト

名車のくぼみ形状を現代技術でリデザイン

名車と言われる初代S30型フェアレディZをモチーフとした形状になっています。初代モデルはくぼんだ形状の中に丸いヘッドライトが埋め込まれていましたが、新型ではこのくぼんだ部分の形状を元に、モダンにデザインされました。

 

【GOD PARTS 3】マフラー

見た目はスポーティだが排気音はジェントル

両側2本出しマフラーがスポーティです。しかしよく見ると、排出口の周囲に小さい穴がたくさん開いています。この穴の影響かどうかわかりませんが、排気音はとても静かで、見た目ほどスポーティではありません。

 

【GOD PARTS 4】エンブレム

郷愁を誘う筆記体はやはりあの名車から

フェアレディZファンならすぐ気づくと思いますが、新型Zのリアにある車名エンブレムは、初代Zと同じく筆記体になっています。なんだか懐かしくもあり、タイムスリップしたような不思議な感覚に陥ります。

 

【GOD PARTS 5】Sモードスイッチ

回転数を自動で合わせて気持ち良くシフト変更!

シフトノブ左奥のスイッチを押すと「シンクロレブコントロール」が作動します。これは、シフト操作をした際にクルマが自動でエンジン回転数を合わせてくれるというもので、プロが操作したような感覚を味わいながら変速できます。

 

【GOD PARTS 6】フロントグリル

空気取り入れ口はシカクデザイン

ココも初代フェアレディZをモチーフとしたデザイン。いまどきのクルマのデザインでグリルがきっちり四角い長方形という例は少ないですが、フロントまわりに違和感なくまとめられていて素晴らしい仕上げですね。

 

【GOD PARTS 7】6気筒エンジン

現代でも気持ち良さがトップクラスのユニット

初代モデルは軽量スポーツカーのイメージがありますが、実は当時から6気筒エンジンを搭載しています。新型では、現在のスカイライン最強の「400R」に搭載されるV6エンジンを採用。低回転域からトルクフルで気持ち良く加速します。

 

【GOD PARTS 8】3連メーター

中身はなんでも良し! 存在することに価値がある

初代、2代目など過去モデルで継承されてきた3連メーターが、インパネ中央上部に設置されています。ブースト計、ターボ回転計、電圧計ですが、内容はあまり関係なくて(笑)、ここにメーターが3つ付いていることに価値があります!

 

【GOD PARTS 9】ラゲッジルーム

開口部は大きいが深さはそれほどなし

Z伝統の前後に長いリアハッチが採用されています。開口部はかなり広くて大きな面積の物を積み込みやすいのですが、収納部に深さがないのであまり厚みのあるものは入れられません。スポーツカーなのでここは期待しないでください(笑)。

 

【これぞ感動の細部だ!】ルーフライン

栄光のラインは新型でも継承!

Zの歴代モデルでいつの時代も常に継承されてきたのが、この美しいルーフラインです。フロントガラスの上端からキャビンの上を通ってボディ後端までなだらかに弧を描くこのルーフは、世界のスポーツカーと比較してもとてもエレガントです。巨大なガラスを使っているために重量は結構かさむと思いますが、美を追求している「貴婦人」らしい選択だと思います。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

日産「オーラ」“小さな高級車”はダテじゃなかった。走りもインテリアもこだわりの仕上がり

日産『NOTE(ノート)』のハイグレード版として登場したのが『AURA(オーラ)』です。単に装備を豪華にしたのではありません。ボディサイズを3ナンバーにまで拡張し、モーター出力もアップするなど、試乗してみれば見た目以上のその違いを実感できるものとなっていたのです。ここではベース車であるノートと比較しながらレポートします。

 

■今回紹介するクルマ

日産/オーラ

※試乗グレード:G leather edition(4WD)

価格:265万4300円~299万6400円(税込)

↑ノートに比べてボリューム感を増している「オーラ」。フェンダー部の膨らみによって3ナンバー車となった

 

5ナンバーのノートに対して、オーラは3ナンバー

一見すると「ノートとオーラの違いはよくわからない」ほとんどの人がそう思うはずです。両車ともデザイン面で違いがそれほど大きくないからです。しかし、並べてみるとその違いはハッキリとわかりました。最も大きな違いは、ノートはボディが5ナンバー枠に収まっているのに対し、オーラはなんと3ナンバーとなっていることです。

 

で、その寸法をチェックしてみると、オーラの全幅は1735mmと、ノートの1695mmから40mm広がっていました。さらにトレッド幅もノートの1490mmから1510mmへと拡大しています。デザイン上もヘッドライトの薄型化を実施して、それに伴ってフロントグリルをバッテリーEVの「アリア」にも近いデザインとしました。また、前後フェンダーも膨らみを持たせることで、オーラは3ナンバー車らしいボリューム感のある雰囲気を生み出しているのです。

 

クルマに乗り込むとオーラはインテリアにも質感の向上が認められます。インパネの表面にはツイード調のファブリックが施され、その下には木目調パネルが加えられています。メーターディスプレイも、ノートの7インチより大型の12.3インチカラーディスプレイに変更しています。これにより、オーラでは車両の機能情報以外にナビゲーションの表示もメーター内でできるようになっています。これもノートにはない注目の装備と言えるでしょう。

↑ダッシュボードは硬質プラスチックのままだが、木目などを施すことでプレミアム感を高めている。NissanConnectナビゲーションシステムは9インチワイドディスプレイ

 

↑ダッシュボードはノートと共通であるものの、ツイード表皮と木目調パネルを与えることでプレミアムな印象を醸し出している

 

↑メーターディスプレイはノートの7インチから12.3インチへ大型化され、メーター内でナビゲーション表示も可能となっている

 

プロパイロットとBOSEサウンドで快適な高速クルージング

オーラではシートもグレードアップしています。「G leather edition」には座り心地と快適性を両立させた「本革3層構造シート」を装備。標準グレードではシートのメイン部分にインパネのファブリックに合わせた素材を用いるなど、インテリアのコーディネイトにも優れた一面を見せます。また、2022年8月の仕様変更ではリアシート中央にアームレストが標準装備され、これもノートではオプションにはない特別な装備と言えます。さらにシートはノートも含めすべて抗菌仕様にもなりました。

↑オーラの「G leather edition」を選ぶと、写真の明るい内装色の「エアリーグレー」のほか、「ブラック」を選ぶことができる

 

↑オーラのリアシート。標準グレードの「G」でもアームレストは標準装備となっている

 

それとオーラで見逃せないのはサウンドシステムとして「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」がオプションで装着できることです。ヘッドレストにスピーカーを内蔵したことに加え、ドアにはワイドレンジスピーカー、Aピラーにはツィーターを組み込んだ8スピーカー構成とし、これを専用DSP内蔵アンプにより駆動します。耳元に近いヘッドレストでメインの音が出力されるため、音像の輪郭が鮮明でクリア。しかも「PersonalSpace」と呼ばれる機能を使うことで、音場の広がり感も自由に設定できます。その日の気分に合わせたサウンドステージが楽しめるのは使ってみるとなかなかいいものです。

↑ヘッドレストにスピーカーを組み込んだ「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」。演奏者の位置がわかるほどリアルなサウンドと、車室サイズを超えるような音の広がりを実感できる

 

↑「PersonalSpace」では音場を自在に変化させられる。ライブハウスのようなタイトな感覚から、アリーナの最前列で360°包まれるようなサウンドまで自在に設定可能

 

ただ、残念なのはこのシステムはプロパイロットやNissanConnect ナビゲーションシステムなどとのセットオプションとなるため、価格は40万円超えとなってしまうことです。おそらくプロパイロット+ナビを装着する人は多いと思われるので、それを選べば必然的にBOSEのシステムも付いてくるわけですが、車両価格の15%にもなるこの設定はちょっとビビりますよね。しかしオーラは遮音ガラスを採用したこともあって、高速走行時の室内はきわめて静か。音楽を楽しみながらプロパイロットでクルージングすることをオススメします!

↑ステアリングにセットアップされている「プロパイロット」の操作スイッチ

 

↑緊急時にオペレーターへ通報できる「SOSコール」はプロパイロットとのセットオプションとなる。試乗車では機能がOFFとなっていた

 

アクセルを踏んだ瞬間、パワフル感はノートを大きく超える!

ではオーラの走りはどうでしょうか。率直に言って、その走りは現行ノートでも先代とは比較にならないほど安定した走りを見せるようになりました。特に発電用エンジンの音が静かで、作動する時間も先代よりも大幅に少なくなっているので感覚的にも快適そのもの。このフィーリングはオーラにも引き継がれ、その上でフロントモーターの出力が向上しているのです。今回の試乗では4WDを選んだため、リアからのモーターアシストも加わり、アクセルを踏んだ瞬間のパワフル感はまるで違っていました。

↑発電専用の1.5L気筒エンジンを搭載し、その電力によってモーターを駆動して走るシリーズハイブリッド(e-POWER)を採用

 

↑オーラのシフトノブ。電子式のシフトレバーを全グレード標準装備した

 

操舵フィーリングも思ったコースを忠実にトレースしてくれ、e-POWERならではの「eペダル」を組み合わせることで峠道の走行もいっそう愉しさが増します。特にオーラではタイヤをノートの185/60R16から205/50R17へとサイズアップしていることもあって、コーナリングでの踏ん張りはなかなかのもの。つい峠道を選んで走ってみたくなってしまいます。

↑ノートの16インチに対し、オーラはインチアップした205/50R17を履く。これが乗り心地に影響を与えた可能性がある

 

ただ、オーラは路面からの突き上げ感は大きめに出ます。なかでも気になるのは少し荒れた一般道を入っているとき。車体にも振動が伝わってくるため、状況によっては不快に感じることさえあります。ノートの時はそれほど気になることはなかったため、おそらくサイズアップしたタイヤの影響が大きいのではないかと思いますが、一方で操安性の向上にプラスとなっているのは間違いありません。これをどう捉えるかで評価は大きく変わってくると思います。

 

「ノート+60万円」で手に入るプラスアルファの走りと質感

ではオーラとノート、どちらを選ぶのがいいのでしょうか。オーラを外から俯瞰した後でノートを見ると、前後のフェンダーに膨らみを持たせたオーラは豊かなプロポーションを感じさせます。個人的には濃いめのボディカラーを組み合わせたときのリッチな雰囲気が好みでした。ただ、オーラとノートの価格差は装備に違いがあるとは言え60万円ほどあり、そこに価値が見出せるかと言えば、人によって差は出てくるでしょう。

↑オーラ(4WD)。ボディカラーは全14色から選べる

 

↑リアドアの開く角度が大きく、乗り降りに大きくプラスとなっている

 

特にインテリアは硬質プラスチックのままで、ノートとの明らかな違いを感じ取ることはできず、せめてパワーシートぐらいは装着しても良かったのではないかと思うのです。とはいえ、ノートを上回るパワフルさが生み出す走りは楽しいし、ノート以上のグレード感は、オーラならではの大きな魅力と言えます。豊満なボディとプレミアム感、そして走りの良さを求めたいならオーラは間違いなくオススメ。自分にとって何が必要かを選択しながら、ノートと比較してみるのも良いのではないでしょうか。

 

SPEC【G leather edition(4WD)】●全長×全幅×全高:4045×1735×1525㎜●車両重量:1370㎏●パワーユニット:1.2リッター直3DOHC12バルブ+交流同期電動機●最高出力:エンジン82PS/6000rpm (モーターフロント136PS/3183-8500rpm ・リア68PS/4775-10024rpm )●最大トルク:エンジン103Nm/4800rpm(モーターフロント300Nm/0-3183rpm ・リア100Nm/0-4775rpm )●WLTCモード燃費:22.7㎞/L

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

新型「エクストレイル」試乗。“技術の日産”をいかんなく発揮した傑出の走り!

日産がシリーズハイブリッドである「e-POWER」を世に登場させて6年。4代目となる新型「エクストレイル」に搭載された新エンジンは、その集大成とも言える素晴らしい実力を発揮してくれました。運転して楽しく、外部からの給電も不要で使い勝手は抜群! それは、久しぶりに「技術の日産」の実力を見せつけられたと言っていいでしょう。

 

【今回紹介するクルマ】

日産/エクストレイル

※試乗グレード:G e-4ORCE(4WD)

価格:319万8800円~504万6800円(税込)

↑日産「エクストレイル」G e-4ORCE(4WD)※オプション装着車

 

新開発「VCターボ」エンジンをe-POWERに初採用

実は、4代目の新型エクストレイルは、北米で「ローグ」として1年以上も前にデビューを果たしていました。パワーユニットは新型エクストレイルと同じ1.5リットル直列3気筒ガソリン「VCターボ」エンジンを搭載しましたが、ローグではこれをそのまま駆動用として使っています。それに対して日本はこのエンジンをe-POWERの発電専用としました。つまり、日本でのデビューが遅れたのは、このe-POWER化に時間がかかっていたというわけです。

 

このエンジンについて少し説明すると、その仕様は新開発のKR15DDT型1.5リッター3気筒直噴ターボエンジンで、ターボ機構にVC(Variable Compression)と呼ばれる可変圧縮比機構を採用したのが最大の特徴となっています。その仕組みは、ピストンとクランクシャフト間に特殊なリンク機構を備えることで圧縮比を変化させ、出力を回転数に応じて変化させるというものです。このエンジンは日産が長年かけて開発してきた、いわば「技術の日産」が誇る自慢のユニットであり、これを新型エクストレイルでは発電専用エンジンとして搭載したのです。

 

さらに驚くのは、 4WDである「e-4ORCE(イーフォース)」に組み合わせたモーターのスペックです。フロントには最高出力204PS(150kW)と最大トルク330N・m、リアには136PS(100kW)と195N・mを発生するモーターを搭載し、これで4輪を駆動します。このスペックからして、もはやハイブリッドの領域を超えていることがわかります。それどころか、フロントモーターだけでもバッテリーEVである日産「アリア」のフロントモーターと同じレベルなのです。これを聞いただけでも、このシステムがいかにスゴイかが伝わってきますよね。

 

ボディサイズは全長4660mm×全幅1840mm×全高1720mmで、ホイールベースは2705mmとなります。ライバルと比較すると、トヨタ「ハリアー」(全長4740mm)やマツダの「CX-60」(全長4740mm)よりは小ぶりで、「RAV4」(4600-4610mm)よりは少しだけ長い。SUVとしては使い勝手の上でもバランスがとれたサイズと言えるでしょう。また、シートは前後2列5名乗車が標準で、「X」グレードにのみ3列7名乗車が用意されました。特に3列シート仕様はライバル車にはないだけに、ミニバンからの乗り換えユーザーにもおすすめできるラインナップ。

↑G e-4ORCEは、前後とも235/55R19 101サイズのタイヤを履く

 

にわかに1.5リッター3気筒ハイブリッドエンジンとは信じられず

試乗したのはその中から2列シートの最上級グレード「G」の「e-4ORCE」でした。グレードと駆動方式を含め、もっとも高価なグレードとなります。

↑SUVらしく高い視認性とインターフェースの扱いやすさが印象的だった

 

走り出してまず驚くのがその静かさと振動の少なさです。さらにアクセルを踏み込んでもその静かさとスムーズさはほとんど変わりません。メーターではエンジンがONとなっていることを伝えているので、思わず「これって1.5リッター3気筒だったよね?」と同乗者に確認してしまったほどです。

 

しかもエンジンは駆動輪と直接つながっていないはずなのに、アクセルの踏み込みに合わせてリニアに車速が上がっていき、重さが1.8t近くあるボディをアッという間に高速域まで引っ張り上げてくれたのです。その加速感は、踏み込んだアクセルに応じてエンジンがどんどんモーターにパワーを与えていっている感じ。これはまさに従来のシリーズ型ハイブリッドとは次元が違うパフォーマンスを感じます。その完成度はもはや脱帽という他はない! そう実感したほどでした。

 

ここまでのフィーリングを実現したことについて開発担当者は、「欧州のアウトバーンでも十分なパワーが出せることを目標に、VCターボとの組み合わせを練り上げました」と話していました。つまり、速度制限がない高速域でも通用する実力を持たせて完成させたのが新型エクストレイルのe-POWERだったのです。

↑カーナビで目的地を設定しているときは、メーター内やヘッドアップディスプレイにも案内が表示される

 

加えてe-4ORCEの搭載に伴ってプラットフォームは刷新されており、電子制御ステアリングも気持ちよく曲がることを念頭に置いて設定しているということです。実際、峠道を走行しても狙ったコースをたどってくれるし、その結果、まるで運転がうまくなったような感覚にとらわれました。乗り心地もフラットで、19インチのタイヤを組み合わせながら路面の凹凸にもしっかりと対応してくれていました。従来のエクストレイルでは“タフギア感”をアピールポイントとしていましたが、新型ではそこに上質感を加えたのです。まさに走りにおいては傑作の領域にあると断言して間違いないでしょう。

↑ボディカラーは2トーンカラー含め、12色から選択可能

 

インテリアは上質だが、“500万円カー”としての物足りなさも

インテリアの上質さも見事なものでした。運転席周りの手に触れる部分はすべてがソフトパッドで覆われ、デザインとしてもラグジュアリー感あふれる造りとなっています。シートサイズもSUVらしくたっぷりとしたもので、表皮に使われた新開発の人工皮革「テーラーフィット」のタッチ感もしっとりとした心地良さを感じさせてくれました。また、個人的には色味が少し濃いめに感じましたが、オプションのタンカラーのナッパレザーシートにするとプレミア感はさらに上がります。e-POWER初の1500W対応コンセント装備も見逃せません。

↑インテリアはソフトパッドが多用され、見た目にも触感的にも上質感が伝わる

 

↑シート表皮に使われた人工皮革「テーラーフィット」はしっとりとした心地良さ

 

↑日産車のEVやe-POWER車すべてを通して、初めて100VAC電源(1500W)コンセントが装備された

 

ただし、この仕様をフル装備で諸経費まで入れると500万円を楽に超えてしまいます。「エクストレイルもここまで来たか」と感慨深さとため息も出たりしますが、一方でデイライト機能が装備されず、グローブボックス内の照明や運転席側のシートバックポケットもないなど、“500万円カー”として不釣り合いな仕様も散見されるのも事実です。さらに「NissanConnect」の費用に無料期間はありません。このプランを契約することで、地図データ更新費用が3年分無料になりますが、せめて最初の1年間は無料にしてほしかったと思いました。

↑助手席グローブボックスは外から見たよりもかなりスペースが狭く、照明の装備もない

 

↑NissanConnectはSOSコールを含め、利用料として年間7920円(税込)の費用がかかる

 

とはいえ、新型エクストレイルの魅力は電動車並みの動力性能を持ちながら、充電する必要が一切ないのが最大の魅力です。「別に充電したいわけじゃない。電動車としてのトルクフルでスムーズなフィーリングに魅力を感じている」人にとって新型エクストレイルは、まさに最適な選択となることは間違いないでしょう。正直言って、最近まれに見る魅力的な走りを見せてくれ、これだけでも絶対に買いとなるクルマといって間違いないでしょう。

↑インフォテイメントシステムは12.3インチの大型ディスプレイを使用。再生中の楽曲のタイトルを表示するなど細かな演出も見事だ

 

↑後席用としてエアコンの独立操作ができ、シートヒーターやUSB端子(type-C/A)を装備

 

↑オプションの「BOSE Premium Sound Sytem 9スピーカー」とパノラミックガラスルーフはセットオプション

 

SPEC【G e-4ORCE(4WD)】●全長×全幅×全高:4660×1840×1720㎜●車両重量:1880㎏●パワーユニット:1497㏄水冷直列3気筒DOHCターボエンジン+交流同期電動機●最高出力:エンジン144PS/4400〜5000rpm[フロントモーター204PS/4501〜7422rpm・リヤモーター136PS/4897〜9504rpm]●最大トルク:エンジン250Nm/2400〜4000rpm[フロントモーター330Nm/0〜3505rpm・リヤモーター195Nm/0〜4897rpm]●WLTCモード燃費:18.4㎞/L

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

軽EVらしい高級な走り! EV時代を彩る日産「サクラ」を細かい意匠までチェック

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、軽自動車のEV(電気自動車)として華々しいデビューを飾った日産のサクラを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】日産/サクラ

SPEC【G・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:交流同期モーター●最高出力:47kW/2302〜10455rpm●最大トルク:195Nm/0〜2302rpm●一充電走行距離:180km

239万9100円〜294万300円(税込)

 

局所的にはガソリン車の利便性を超える

安ド「殿! 今回は日産の軽EV、サクラを借りてきました!」

 

永福「うむ。これまで姉妹車の三菱eK クロス EVには何度か乗ったが、サクラは初めてだ」

 

安ド「違いはありましたか?」

 

永福「なにしろ2台は姉妹車。メカはまったく同じだから、走りも同じ。違いは見た目と内装だけだ」

 

安ド「サクラのほうが一般ウケしそうなデザインですね」

 

永福「ベースはガソリン車の『デイズ』だが、見た目はしっかり未来っぽく仕上げているな。デイズよりずっと高級なクルマに見える」

 

安ド「僕が買うならeK クロス EVにしますけど」

 

永福「それはなぜだ?」

 

安ド「いやぁ、軽に乗るなら押し出しの強い、個性的な顔が良いなと思って」

 

永福「そういう考えもあるだろう。美人は3日で飽きると言うし」

 

安ド「走りはどうでしょう?」

 

永福「EVらしく、実に高級だ。EVというモノは、概して加速が良く、重心が低くてハンドリングが良く、静かで振動がなく快適なものだが、サクラもまさにその通り。サクラのような軽自動車の場合は特に、EV化によってすべてが圧倒的に高級になったように感じる」

 

安ド「まぁ確かに、『ああ、EVだな』って感じはしました」

 

永福「EVが嫌いなのか?」

 

安ド「嫌いというわけじゃないですが、欲しくないですし、興味がありません!」

 

永福「私もまだ欲しくはないが、とても興味はある。EVはいつか、ガソリン車を超える魅力を持つ日がやってくる。その日がいつなのか、興味津々だ」

 

安ド「その日は……まだ来ていませんよね?」

 

永福「全体としてはまだ来ていないが、このサクラは、たとえばガソリンスタンドが減少している過疎地などでは、ガソリン車の利便性を超えているだろう」

 

安ド「満充電で150kmくらいは走れそうですし、通勤や買い物用としては良いんじゃないかと思います。ただこれ1台だけというのはツライですし、ウチのように借家住まいだと、自宅で充電できませんから、いちいち外で充電するのが大変です!」

 

永福「そうだな。これは地方や郊外の、一戸建てに住んでいる人のセカンドカーに向いている。補助金が出るから、値段もガソリンの軽自動車と同じくらいだ」

 

安ド「現状、それがベストなEVの使い方でしょうか」

 

永福「日本ではそうだな。日産アリアやトヨタのbz4Xのような、600万円もするEVを買って、ファーストカーとして使うのはハードルが高い。しかし、200万円でご近所用のセカンドカーを買うのは、地方では当たり前のこと。サクラはその需要にハマる」

 

安ド「日本でもEVが当たり前になって、僕がEVを買う日はいつ来ますか?」

 

永福「15年後だな」

 

【GOD PARTS 1】インパネ素材

高級感が高いうえに使い勝手も良い

インパネには一部にファブリック素材が採用されていて、なんだか軽自動車クラスのクルマとは思えない高級感が味わえます。また、助手席前のこの部分は凹んだ形状になっていて、ちょっとした小物を置くことができて便利です。

 

【GOD PARTS 2】ホイールデザイン

伝統模様を織り交ぜたほかにはない独創性

日本の伝統的モチーフ「水引」を用いたデザインになっています。祝儀袋や贈答品の包み紙などに見られるアレですね。なんだかおめでたい感じで素敵ですが、同様のデザインはドアの内側やバンパー下部にも見られます。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

スポークが下側になくてスッキリスポーティ!

スポークが左右にしかない独特な形状をしています。エコカーでありながらスポーティな雰囲気が感じられて良いですね。スポークの右サイドには運転支援装備「プロパイロット」の操作ボタンが配置されています。

 

【GOD PARTS 4】充電ポート

普通用と急速用充電ポートは2つあり!

ボディ右横後方には給油口ならぬ、充電ポートが設置されています。普通充電用と急速充電用の2つがあるため、普通の軽自動車の給油口と比べてデカいです。カバーを開くとライトが点灯するようになっています。

 

【GOD PARTS 5】e-Pedal

アクセルでブレーキ!? 日産得意のワンペダル

このボタンを押すと、アクセルペダルだけで車速をコントロールできる「ワンペダル運転」ができるようになります。ノートe-POWERと比べると味付けはマイルドで、アクセルを離したときのブレーキの効きは弱めです。

 

【GOD PARTS 6】バッテリー

大きくて重い物体はフロア下に搭載

自在に高さを変えられるユニバーサルスタック構造を採用したリチウムイオンバッテリーがフロア下、つまり床下に設置されています。これによりほかのトールワゴン軽自動車と同等の室内スペースを確保しました。

 

【GOD PARTS 7】フロントグリル

未来的でクールな表情を演出!

電気自動車なので空気を取り入れるための穴の開いたグリルは不要ですが、大きめの黒いグリル風パーツを採用して、フロントデザインをクールにまとめています。ヘッドライトは薄型ながら、プロジェクタータイプの3眼式になっています。

 

【GOD PARTS 8】ルーフサイドステッカー

色鮮やかなラインがボディサイドを彩る

サイドウインドウの上辺に沿って、スタイリングを彩るラインが見えます。これは春夏秋冬をイメージした4色の「シーズンズカラー」にのみ設定される専用ステッカー。オプションで購入することも可能だそうです。

 

【GOD PARTS 9】シート

見た目も良し! 触っても座っても良し!

少々高級なソファのような質感の高い表皮素材が採用されています。肌触りも良く、前席左右シートが繋がったようなデザインもモダンな雰囲気で、ドライブ中になんだかオシャレな部屋のなかに佇んでいるような感覚が味わえます。

 

【これぞ感動の細部だ!】花びらモチーフ

車名のイメージが車内を彩る

社内公募でつけられたという車名には、「日本の電気自動車の時代を彩り、代表するクルマになってほしい」という願いが込められていて、当然、日本を象徴する花である桜に由来しています。引き出し式のドリンクホルダーやセンターコンソールの収納などには、さり気なく桜の花びらをモチーフにした刻印があって、乗る人の目を楽しませてくれます。

 

撮影/我妻慶一

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

プロが選んだ「ヒット確定モノ」はコレ! 2022年下半期NEXTトレンド予報「乗り物・レジャー」11選

Withコロナがすっかり定着し、新しいライフスタイルが生まれゆくなか、さて、2022年下半期はどうなっていく……? これから流行る「ヒット確定モノ」を、「乗り物」「レジャー」のプロたちに断言してもらった。

※こちらは「GetNavi」2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

その1【SAKURA】先進技術を搭載しつつ、日常使いも重視した注目の軽EV

 

モノ知りインフルエンサー

本誌乗り物担当

上岡 篤

クルマだけでなく鉄道や飛行機(旅客機)好き。久しぶりに運航するANAのホノルル線、A380に乗りたい!

 

セカンドカーのニーズを取り込み早くも2万台の受注を突破(上岡)

【軽EV】

2022年6月発売

日産

SAKURA

239万9100円~294万300円

日産が開発し三菱が生産する同車は先進的な内外装を備え、最新世代のEVであることを強調。180kmという航続距離は、軽ユーザーの半数以上の走行距離が1日30km以下という調査も含めて決定したという。ガソリン車からの買い替えに加えて“2台目需要”にも応える。

 

↑先進安全装備も充実。自動的に車間を維持し、ハンドル操作も支援する「プロパイロット」を「G」に標準装備する

 

↑内外装には和モダンといえる要素も採用。日本伝統の水引からインスピレーションを受けたアルミホイールの意匠もそのひとつだ

 

↑9インチのナビモニター、7インチのメーターディスプレイを水平配置することで、先進性を強調。「G」にはカッパー加飾を備える

 

ヒットアナリティクス

期待が高い軽への導入で受注数は想定以上に

EVはこれまで航続距離アップが各社の狙いだったが、SAKURAは軽自動車規格ならではの航続距離に割り切ったことがプラスに。補助金を加味すれば「EVってこんな価格で買えるの?」という割安感も大きな魅力だ。都市部だけではなく地方でも普及する要素は大!

 

その2【ダックス125】レトロモダンスタイルが時代にマッチ

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

中島 亮さん

旅にまつわるエトセトラについて各種メディアに寄稿。ホンダの単気筒ばかり10台ほど乗り継いできた単車好き。

 

世界で愛された名車が時を経て令和に復活(中島)

【レジャーバイク】

2022年9月発売予定

ホンダ

ダックス125

44万円

1969年にデビューして一世を風靡した、ホンダ ダックスを現代風にアレンジ。モンキー125、スーパーカブC125、CT125・ハンターカブと、立て続けにヒットを連発している原付二種レジャーバイクの真打として注目されている。タンデムOKというのもポイント。

 

↑空冷単気筒エンジンに、4速トランスミッションを組み合わせる。クラッチ操作は不要で初心者も安心

 

↑視認性に優れた液晶タイプのメーター。ヘッドライトと同じ、クロムメッキのモールでデザインの統一感を出している

 

ヒットアナリティクス

オヤジには懐かしく若者には新鮮なデザイン

維持費が安く、原付(50cc以下)のような法的制限を受けず、取り回しがラクで、パワーは必要十分。125ccの原付二種は最強のシティコミューターだ。デザイン面の評価はもちろん、再構築するにあたって最新技術を駆使。発売開始後は、納車まで数か月待ちとなるだろう。

 

その3【ストリーモ】“安心感”を追求した電動マイクロモビリティの新機軸

 

モノ知りインフルエンサー

本誌乗り物担当

上岡 篤

 

乗り物の大前提となる“安心感”に真正面から取り組んだ意欲作(上岡)

【電動マイクロモビリティ】

2022年6月発売(一次抽選販売受付開始)

ストリーモ

Striemo Japan Launch Edition限定モデル

26万円

独自開発した「バランスアシストシステム」の搭載により、極低速から快適な速度までいずれの速度域でも安定した走行を実現。“安心感”を追求することで乗り物としての楽しさを感じられる次世代型電動モビリティだ。

 

↑前輪1輪+後輪2輪の3輪構成も安定感を支える要因。段差や傾斜のある路面でもふらつかず、バランスを崩す不安がないのが魅力だ

 

↑重量は約20kg、W480×H1180×L1090mmで持ち運びできる折りたたみ式。約3時間30分のフル充電で30km(郊外実測値)走行できる(※スペックはプロトタイプのため製品版では変更になる可能性あり)

 

ヒットアナリティクス

ホンダ発のベンチャーで信頼度はとても高い

電動キックボードは都市部で利用する人が増えましたが、これまで“このメーカーって大丈夫?”という場合もチラホラ。ストリーモはホンダの社内起業制度「IGNITION」からスタートアップした企業の製品で、製品の信頼度は高い。3輪にしたのも安全面から見て正解。

 

その4【富士モータースポーツミュージアム】情熱に彩られたモータースポーツの歴史を辿る

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

吉原 徹さん

ライター/編集者として、国内外の旅とアウトドアを主なテーマに活動。そろそろ海外取材にも行きたい!

 

世界のラリーや耐久レースで活躍した憧れのレーシングカーが揃い踏み(吉原)

【ミュージアム】

2022年10月オープン

富士モータースポーツミュージアム

同時開業のホテルと融合した空間に、世界のメーカーが手がけた歴代のレーシングカー約40台を展示。各時代を象徴する名車を鑑賞しながら、約130年にわたるモータースポーツの歴史に触れられる。

(住)静岡県駿東郡小山町大御神645

 

↑サーキットに隣接する「富士スピードウェイホテル」も同時開業。一部の客室からはレース観戦もできる

 

↑レーシングカーのほか、技術展示も予定。3階のカフェからは富士スピードウェイの最終コーナーを見られる

 

ヒットアナリティクス

クルマ好きの聖地となる一大リゾートへと進化中!

10月7日開業予定のミュージアムやホテルは、国際サーキット場の富士スピードウェイを中核とする「富士モータースポーツフォレスト」プロジェクトの一環。来年以降もレーシングチームガレージ、レストラン等の商業施設がオープン予定で、さらに注目が集まるだろう。

 

その5【どこかにマイル】国内旅行に脚光が集まるいまこそ積極利用したい!

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

中島 亮さん

 

まだ見ぬ日本の魅力を発見するチャンスがある(中島)

【特典航空券】

2016年12月スタート

JAL

どこかにマイル

JALのマイルを国内線の特典航空券に交換するには、往復12000マイル以上が必要だが、これは半分の6000マイルでOK。行先はJALが提案する4つの候補地から決まり、旅先がわからないワクワク感も醍醐味だ。

 

(C) 日本航空

 

↑友人同士で同時に申込可能。出発・到着日時は4~6つの時間帯から選択でき、申込から3日以内に行先決定の通知がくる。HPに観光情報も掲載

 

ヒットアナリティクス

思いがけない場所へ新たな出会いに期待!!

実は、このサービスは5年以上前から実施されている。ただ、コロナ禍を経た現在、円安や燃油サーチャージの高騰などで国内旅行が見直されている現在こそ注目を集めている。まだ出会ったことのない風景や文化に触れるチャンスでもあり、利用者が増えると予想。

 

その6【星野リゾート】2022年の新規開業は10施設!

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

加藤 愛さん

旅の編集・ライター歴19年。地酒や温泉を求め全国各地を訪れる。テーマパーク取材後は万歩計チェックが毎度の楽しみ。

 

季節とともに移り変わる棚田の風景と温泉に癒やされる(加藤)

【宿泊施設】

2022年8月開業

界 由布院

1泊2食3万5000円~(1室2名利用時の1名ぶん)

星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の20施設目として、由布院温泉にオープン。“棚田暦で憩う宿”をコンセプトとし、宿の中心には棚田を一望できる「棚田テラス」を設ける。由布岳に面した開放的な露天風呂も魅力。

 

↑「蛍かご」から着想を得た照明を全室に設置。ヘッドボードやソファには大分名産の竹を取り入れている

 

こちらもCHECK!

↑11月に開業予定の「界 雲仙」。ステンドグラスを施した大浴場など意匠にもこだわる

 

ヒットアナリティクス

多様なニーズに応えるブランド展開が見事

星野リゾートは国内外に62施設を展開。「界」ブランドは今年、由布院に加えて1月にポロト、11月に雲仙と出雲が開業。同社が手がけるホテル「OMO」は4月に大阪、5月に金沢、そして7月には沖縄に「BEB」とオープンが相次ぎ、旅行需要の高まりとともに注目を集めそう。

 

その7【BEACHTOWN 日比谷公園】新しいカタチの都市型スポーツコミュニティ

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

中島 亮さん

 

自然と調和し心身が健やかになるサービスが充実(中島)

【フィットネス施設】

2022年6月オープン

BEACHTOWN 日比谷公園

プログラム利用3300円~

日比谷公園内にある建物のフロアをリノベーション。公園の緑を眺めながら取り組むヨガを中心としたスタジオプログラムを軸に、屋外でのランやウォーキング、郊外でのアウトドアプログラムなど月間150レッスン以上を提供する。

(問)050-3177-5403
(住)東京都千代田区日比谷公園1-5 緑と水の市民カレッジ2F

 

↑公園の森に囲まれたヨガスタジオ。風や鳥のさえずりなど自然を感じることができる。平日は7時~営業

 

↑スタンドアップパドルボードで水面を進むSUPなどアウトドアツアーも人気。プロガイド付きで初心者も安心

 

ヒットアナリティクス

人と自然にふれあい楽しく健康になれる

コロナ禍により人と人の関わり方が変容。テレワークなどで仕事上の人間関係が希薄になった反面、休日は同好の士で集まり過ごすことを求める人が増えている。そのニーズに、さらに「健康」「自然」という多くの人が求めるキーワードをかけ合わせことでヒットにつながりそう。

 

その8【FUJIYAMAスライダー】全長120m、高低差55mを一気に滑降! 速すぎる&怖すぎるすべり台が爆誕

 

モノ知りインフルエンサー

本誌レジャー担当

金子麻衣子

旅行ガイドブックの編集・執筆をしていたこともあり、旅行好き。子どもが大きくなったら、趣味のひとり旅を再開したい!

 

絶景の感動から絶叫の滑降へ日本最長で最恐のすべり台(金子)

【アトラクション】

2022年7月オープン

富士急ハイランド

FUJIYAMAスライダー

利用料800円~(シーズンにより異なる)

富士山を望む地上55mの展望デッキから全長120mのコースを急降下する日本最長のチューブ型スライダー(※同社調べ)。先が見えない真っ暗なスライダーを専用のスライディングマットに乗って滑降する20秒間には、絶叫コースターとは異なるスリルが。

(問)0555-23-2111
(住)山梨県富士吉田市新西原5-6-1

 

↑昨年夏に誕生した「FUJIYAMAタワー」の最上部に位置する展望デッキから真っ暗なコースを一気に滑降する

 

ヒットアナリティクス

“絶叫の殿堂”に現れた新感覚のアクティビティ

「FUJIYAMA」や「高飛車」からホラーハウス「戦慄迷宮」まで、絶叫アトラクションの多彩なバリエーションこそが富士急ハイランドの魅力。そこに「FUJIYAMAスライダー」という新感覚のすべり台が加わったことは、全国の“絶叫ファン”を呼び込むきっかけになるはず!

 

その9【東急歌舞伎町タワー】歌舞伎町の新たなランドマークとなる超高層エンタメビル

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

吉原 徹さん

 

東京カルチャーの新たな発信地として大ブレイクの予感!(吉岡)

【複合施設】

2023年1月竣工予定

東急歌舞伎町タワー

歌舞伎町の新宿ミラノ座跡地に高さ225m、噴水をモチーフとした新たなシンボルが誕生。地上48階・地下5階建ての超高層複合施設には、17~47階に開業する2つのホテルのほか、9・10階の映画館、6~8階の劇場、地下1~4階のライブホールといった施設が揃う。国内最大級となるホテル&エンタメ複合施設として注目を集めること間違いなし!

(住)東京都新宿区歌舞伎町1-29-1・3

 

↑新宿ミラノ座の名を継承する総席数900席規模の劇場「THEATER MILANO-Za」

 

↑39~47階にはラグジュアリーホテル「BELLUSTAR TOKYO」が開業。45~47階には都内を一望できるレストランもオープン

 

ヒットアナリティクス

インバウンドの再開もヒットを後押しする要因に

東急歌舞伎町タワーの開業に合わせて隣接するシネシティ広場周辺の再開発も進行しており、空港連絡バスの乗降場なども整備される予定。“アジア最大級の歓楽街”として世界的にも人気が高い歌舞伎町の新たなシンボルとして、多くの外国人旅行者が訪れることも予想される。

 

その10【横浜マリンタワー】横浜のシンボルが今秋リニューアルオープン!

 

モノ知りインフルエンサー

本誌レジャー担当

金子麻衣子

 

歴史あるシンボルタワーが現代風にアップデート(金子)

【タワー】

2022年9月リニューアルオープン

横浜マリンタワー

入場料平日1000円、土日祝1200円(展望フロア)

1961年の竣工以来、横浜のシンボルとして愛されてきた横浜マリンタワーが約3年間の大規模な改修工事を経て、この秋リニューアルオープンする。外壁をグリーンで彩った施設内には、散策途中に立ち寄りたいレストランやバー、旅のライブラリー、展望フロアなどが入る。

(住)神奈川県横浜市中区山下町14-1

 

↑全長106mを誇る横浜マリンタワー。地上約100m、30階にある展望フロアは、アートと街が映像で融合するメディアアートギャラリーに

 

ヒットアナリティクス

横浜ベイエリアに注目施設が続々開業!

昨年は桜木町からみなとみらいを結ぶロープウェイが開通。2022年は3月に「横濱ゲートタワー」、5月に「ウェスティンホテル横浜」が開業し、6月には「横浜みなと博物館」がリニューアルするなど、横浜ベイエリアは新規開業ラッシュ。これらの相乗効果で訪れる人が増えそうだ。

 

その11【新九頭竜橋】新幹線の横をクルマが走る!? 日本初の道路&新幹線併用橋が開通

 

モノ知りインフルエンサー

鉄道写真家

久保田 敦さん

鉄道雑誌をはじめ、旅行誌などで幅広く活躍中。鉄道の躍動感にこだわった作品に定評があり、写真展も開催する。

 

ほかに類を見ない構造で今から試運転が楽しみです(久保田)

【橋梁】

2022年10月開通予定

新九頭竜橋

福井県福井市北部の九頭竜川に開通する全長約415mの橋は、新幹線と道路が橋脚を共有する日本初の橋梁。中央に設けられた新幹線の路線の両サイドに片側2車線の県道と歩道を設け、鉄道ファンを中心に注目を集める。10月22日は開通を記念したランニングイベントを開催。

 

↑橋の中央に2024年春に延伸開業予定の北陸新幹線の線路が設けられている。橋の開通により交通量分散が見込まれ、渋滞の緩和にも期待がかかる

 

ヒットアナリティクス

これまで見たことのない新幹線の姿を楽しめるかも

防音壁が高いため乗用車から新幹線が見えるかは不明だが、バスなどの高い目線なら見える可能性も。福井駅に近い場所で停車する列車は速度が遅く、“見る”には適しているかも。近くには無料の展望台を備えた森田配水塔もあり、鑑賞スポットとして人気になりそうだ。

先進技術を搭載しつつ日常使いも重視! 日産の軽EV「SAKURA」

Withコロナがすっかり定着し、新しいライフスタイルが生まれゆくなか、さて、2022年下半期はどうなっていく……? これから流行る「ヒット確定モノ」を、各ジャンルのプロたちに断言してもらった。今回は6月に発売した日産の軽EV「SAKURA」を紹介する。

※こちらは「GetNavi」2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【SAKURA】先進技術を搭載しつつ、日常使いも重視した注目の軽EV

 

モノ知りインフルエンサー

本誌乗り物担当

上岡 篤

クルマだけでなく鉄道や飛行機(旅客機)好き。久しぶりに運航するANAのホノルル線、A380に乗りたい!

 

セカンドカーのニーズを取り込み早くも2万台の受注を突破(上岡)

【軽EV】

2022年6月発売

日産

SAKURA

239万9100円~294万300円

日産が開発し三菱が生産する同車は先進的な内外装を備え、最新世代のEVであることを強調。180kmという航続距離は、軽ユーザーの半数以上の走行距離が1日30km以下という調査も含めて決定したという。ガソリン車からの買い替えに加えて“2台目需要”にも応える。

 

↑先進安全装備も充実。自動的に車間を維持し、ハンドル操作も支援する「プロパイロット」を「G」に標準装備する

 

↑内外装には和モダンといえる要素も採用。日本伝統の水引からインスピレーションを受けたアルミホイールの意匠もそのひとつだ

 

↑9インチのナビモニター、7インチのメーターディスプレイを水平配置することで、先進性を強調。「G」にはカッパー加飾を備える

 

ヒットアナリティクス

期待が高い軽への導入で受注数は想定以上に

EVはこれまで航続距離アップが各社の狙いだったが、SAKURAは軽自動車規格ならではの航続距離に割り切ったことがプラスに。補助金を加味すれば「EVってこんな価格で買えるの?」という割安感も大きな魅力だ。都市部だけではなく地方でも普及する要素は大!

百CAR繚乱のEV市場で桜咲く!「日産サクラ」は大人が本気で欲しくなる軽EVだった

2022年で創刊40周年を迎えた、押しも押されぬモノ誌の決定版「モノ・マガジン」と、創刊23年目を迎えたピチピチの“新卒世代”「ゲットナビ」とのコラボ連載。今回は、話題の軽EV・日産のサクラに試乗してきました!

↑サクラの車内で仲良くパチリ。(右がモノ・マガジン編集長の前田賢紀さん、左が筆者・GetNavi編集長の川内一史)

過去のコラボ記事はこちら

 

二つの目で見ればピントが合う! ゲットナビ×モノ・マガジンの「ヒット」スコープ

– Target 6.日産「サクラ」–

↑日産「SAKURA(サクラ)」

 

いま、日産が元気なんです

日産自動車は、2021年度決算で3年ぶりに営業利益が黒字化(2473億円)。22年度も話題の新車を続々とリリースしており、いま元気のある自動車メーカーです。行っちゃえNISSANってことで、神奈川県横浜市にある日産自動車本社へ。筆者は初めて同社を訪問したのですが、巨大ショールームというか、もはや日産ミュージアム。夏休み真っただ中だったため、家族連れで訪れている人たちが多く見られました。

↑大人気のSUVエクストレイルは7月にフルモデルチェンジして4代目が登場。発売から約1か月で受注1万7000台と大ヒット中です(筆者撮影)

 

↑憧れのスポーツカーGT-Rの2022年モデル。1083万円~という憧れ価格ですが、とにかくカッコイイ!(筆者撮影)

 

↑広い室内が魅力で、社用車としてだけでなくキャンパーからも人気のキャラバン。21年のマイナーチェンジで「NV350」の型番はなくなりました(筆者撮影)

 

と、思わずテンションが上がってしまいましたが、今回の取材対象はコチラ! 軽EVのSAKURA(サクラ)です。6月に販売がスタートし、8月7日時点で受注台数は累計2万5000台と好調な滑り出しとなっています。

日産本社の周辺は浜風&ビル風がスゴい。頭皮ごと持っていかれるかと思いました

 

EV市場でも「技術の日産」は健在!

日産好調の“原動力”のひとつとして、EV(電気自動車)が挙げられるでしょう。同社は元々電気モーター技術に優れているメーカーで、2010年に初の量産型ピュアEVとなるリーフを発売すると、今年に入ってアリア、サクラを立て続けにリリース。国産EV市場をけん引しています。また、ガソリンを燃料にして電気モーターを駆動させる独自のパワートレイン「e-POWER」も好評。世界的にCO2排出削減が推進される現在のクルマ市場においても、「技術の日産」は健在なのです。

↑取材に協力していただいた、日産の日本マーケティング本部のサクラ担当、近藤啓子さん(右から2番目)と中島有紀さん(左から2番目)

 

試乗させてもらう前に、まずはサクラの“ガワ”をチェック。車体は同社の軽ハイトワゴンデイズをベースにしており、コンパクトながらもボリュームを感じられます。また、四季をイメージした2トーンの4色を含む全15色をラインナップし、選ぶ楽しみがあるのもうれしいところ。動力は20kWhのバッテリーで、最高出力47kW、最大トルク195Nmと余裕の走りを実現。航続距離は最大180km(WLTCモード)と安心感があります。価格は233万3100円~294万300円で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を活用した場合の実質購入価格は約178万円となります*1(すべて税込)。

↑日産の中島さんイチオシのシーズンズカラー。手前から、ホワイトパール/チタニウムグレー(冬)、ブロッサムピンク/ブラック(春)、ソルベブルー/チタニウムグレー(夏)、暁-アカツキ-サンライズカッパー/ブラック(秋)。今回は「秋」カラーに試乗させてもらいました(写真提供/日産)

 

↑軽のコンパクトなボディに、こんなにも大きいバッテリーが床下に積んであるなんて! レイアウト技術の高さも日産のウリです

 

↑充電ポートは、一般的なガソリン車の給油口と同じく右後部に。約8時間*2で満充電となる普通充電と、約40分*3で80%まで充電できる急速充電の2口を備えています。フタを開けるとライトが点灯し、夜間でも快適に充電可能

 

↑コンパクトですが背が高いので、室内は思っていた以上に余裕アリ。必要以上にオジサンがひしめき合わずに済みます

 

↑恒例(?)のWオジサンによる荷室チェック。車中泊は厳しいかもしれませんが、後席を倒せば軽く横になれそうです

 

↑インパネまわりはシンプルで表示は見やすいです。筆者はシフトレバーの操作感に少し戸惑ったものの、すぐに慣れました

 

↑インテリアは和の意匠を取り入れた落ち着いたデザイン。インテリアの随所に桜をあしらう遊び心もあります

 

筆者のEV初体験。怖いほど滑らかで静かでした

実は筆者、EV初体験。なんか……緊張する! おっかなびっくりアクセルを踏んでスタートします。予想はしていましたが、ガソリン車と比べてとにかく静か。そして、予想以上に軽い! 思ったよりもスーッと伸びていくので、最初はちょっと怖かったです。

 

発進・加減速・停車をアクセルペダルだけで行える日産の独自システム「e-Pedal Step」も初体験。これがめちゃめちゃ楽チンで、特にストップ&ゴーの多い市街地での走行と相性バツグンでした。アクセル/ブレーキの踏み間違えによる事故も起こりにくくなるはずですし、これは本当にイイですね。

 

試乗のハイライトは、おむすびを落としたらいつまでも転がっていきそうな急勾配の上り坂。アクセルを思い切り踏んでもまったく苦しそうな感じを見せず、スイスイと登れます。軽とは思えないほど余裕たっぷりの走りを楽しめました。

↑緊張のEVデビュー。もしいま事故ったらやっぱり日産出禁になるかなーとか考えながら走っていたので、横浜の美しい街並みを覚えていません

 

続いてハイウェイへ。ここでは、高速道路単一車線での運転支援技術「プロパイロット」を体験します。ハンドル右のボタンを押すと、プロパイロットモードに突入。ハンドルから手を離すことはできませんが、車線や前車の位置をリアルタイムで検知しながら、ハンドル操作を支援してくれます。これも楽チンな機能です。

↑ハンドルを握ったままでプロパイロットボタンをスイッチオン。運転状況がグラフィックで表示されるのでわかりやすいです。試しにハンドルから手を離そうとすると、激しく警告されますから、これは安心!

 

試乗のフィナーレを飾るのは、「プロパイロット パーキング」。これは、駐車時にステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジ、パーキングブレーキのすべてを自動で制御するシステムで、軽自動車としては初めての搭載となりました。駐車場に入ってからボタンを押すと、カメラで空きスペースを検知。駐車位置が決まったら、画面に表示された「駐車開始」をタップし、ボタンを押し続けるだけで、自動で駐車してくれるという、まさに未来の機能なんです。

 

空きスペースの検知は地面の白線などを参照しているとのことで、疑い深いオジサンとしてはこの精度をどこまで信用して良いのかというのが少し引っ掛かっておりますが、何にせよスゴい技術であることは間違いないですね。

↑駐車場に来たらまずボタンを押して、空きスペースをセンシング。「駐車開始」をタップすれば自動で駐車が始まります。このステアリングの躍動感を見よ!

 

まずはカーシェアリングでお試しできちゃう

当初は、EVは正直まだ買う時期じゃないかな、と思っていました。基本性能も使い勝手も、もう少し成熟したらようやく選択肢に入ってくる。そんなイメージだったんですが、実際に乗ってみたら全然そんなことなかったです。バッテリー性能や充電環境の整備についてはのびしろが大きいと思いますが、このサクラに関していえば、乗用車としてのクオリティは抜群。実質200万円以下で買えるなら、普通に欲しいです。

 

とはいえ、さすがに衝動買いできるほど金銭的な余裕も家庭内で地位もない……という私のような人に朗報! 日産が手掛ける、EV、e-POWERの車両を中心としたカーシェアリングサービス「e-シェアモビ」で、早くもサクラが導入されたとのこと。サクラを利用できるステーションはまだ限られていますが、奇跡的に筆者の近所で導入されていたので、今度行ってみることにします!

 

*1補助金には申請期限があります。申請額が予算額に達した場合は受付終了となりますのでご注意ください。
*2 バッテリー温度約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から満充電までの目安時間となります。
*3 バッテリー温度が約25℃、バッテリー残量警告灯が点灯した時点から、充電量80%までのおおよその時間。特に急速充電の場合、夏季・冬季には充電時間が長くなる場合があります。

 

モノ・マガジン前田編集長のレポートはこちら→https://www.monomagazine.com/52196/

 

 

写真/青木健格(WPP)

日産「アリア」、リーフに続く日産の本格ピュアEVは新しさも満点!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」で取り上げるのはピュアEV。リーフに続く待望の本格派となる日産「アリア」だ。早くからピュアEV市場に進出していたメーカーの最新作だけに、その完成度の高さが光る。

※こちらは「GetNavi」 2022年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

洗練されたモーター制御にはリーフのノウハウが生きる

EV

日産

アリア

SPEC【B6】●全長×全幅×全高:4595×1850×1655mm●車両重量:1920kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:66kWh●最高出力:218PS/5950〜13000rpm●最大トルク:30.6kg-m/0〜4392rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):470km

 

 

2020年7月の発表から発売されるまで2年近くかかったので、ずいぶんと待たされた感がある。だがそのデザイン、特にインテリアの仕立ての良さやタッチ式パネルの使い勝手&先進感に触れると、待った甲斐があったと実感できた。世界に先駆けて発売した量産EVの「リーフ」は、雰囲気としてはエンジン車の延長線上を抜け切らなかった。しかし10年以上の経験を経て生まれてきた日産EV第2弾の「アリア」は、テスラ的なガジェット感、新しさが感じられるモデルとなっている。

 

実際に走行すると、量販EVの経験が色濃く反映されている。電気モーターが静かで滑らかで、トルクが太いことはすべてのEVに共通するところだが、アリアのそれは洗練度が抜きん出ている。アクセルを踏み込んで加速していくときに、力強いが粗っぽくガツンとした加速を感じることはなく、常に滑らかさが伴っている。制御技術が優れている証だ。

 

その一方、乗り心地はスムーズさに欠けるきらいがある。サスペンションの動きがぎこちなく、少々フワフワしているのだ。プラットフォームは新世代でポテンシャルは高いはずなので、これが本来の実力とは信じがたい。初期モデル特有の現象だけに、今後改善されていくことを期待したい。

 

[Point 1] エクステリアはクーペSUV風

リアピラーを大きく傾斜させ、SUVとクーペのクロスオーバー的な風情を演出する外観。発表から発売まで時間を要したが、新鮮味は少しも薄れていない。

 

[Point 2] 最新トレンドにもマッチした仕立て

シンプルにしてハイテクなイメージを演出するインテリアは、最新のピュアEVに相応しい完成度。もちろん、メーターはすべてデジタル化され、スイッチ類もタッチパネルが主体となっている。

 

[Point 3] 室内は和のテイストを採用

クーペ的な外観ながら、室内は前後席ともに十分な広さを確保。日本の和のテイストを採り入れた仕立てで、ピュアEVらしい静けさも強調される。

 

[Point 4] ユーティリティもハイレベル

SUVとのクロスオーバーモデルらしく、ラゲッジスペースも実用的な広さが確保されている。細部に至る使い勝手もハイレベルだ。

 

[Point 5] より航続距離が長い仕様も

ベーシックなB6グレードは総電力量66kWhのバッテリーを搭載。より航続距離の長い91kWh仕様も間もなくリリースされる予定だ。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

B6:電気モーター/2WD/539万円

B6リミテッド:電気モーター/2WD/660万円

B9リミテッド:電気モーター/2WD/740万800円

B6 e-4ORCEリミテッド:電気モーター×2/4WD/720万600円

B9 e-4ORCEリミテッド:電気モーター×2/4WD/790万200円

 

文/石井昌道 撮影/望月浩彦

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

メーカー直系カスタムカーは完成度が抜群! 個性的な4ブランドを紹介

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 個性的な4つのブランドをここに紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

クルマにピッタリ合った完成度の高さが魅力

その昔、クルマのオプションはアルミホイールやフォグランプが大半だったころ、メーカーが直接カスタマイズしたクルマはショーモデルや競技車両がほとんどだった。レースではワークス、市販はアフターパーツと線引きされていたのだ。それが最近ではメーカー直系のチューニングパーツやコンプリートカーが購入可能になった。メーカー直系ということはメーカークオリティが保たれているということ。アフターパーツながらも品質保証がつくモノもあり、新車購入時にオーダーすれば納車時には希望のスタイルになっている。

 

メーカー直系のカスタムカーは大きなアドバンテージがある。例えばベース車両の開発段階から積極的に関われるため様々なテストデータなどを入手でき、クルマに合ったパーツが開発可能という点だ。またそのパーツは単体でもディーラーで購入可能。ベース車を知り尽くしているからこそ、バツグンの完成度を誇るカスタムカーが手に入るのだ。

↑メーカー直系カスタムのメリットは納車時には“完成”していること。オリジナルのシルエットを崩さないのも魅力だ

 

【その1】RALLIART

ラリーアート from 三菱

ラリーアートは三菱自動車のワークスチーム。同社のモータースポーツ活動を支えるブランドで、ギャラン、ランエボでのWRC、パジェロでのパリダカなどラリーやレースで大活躍した。

 

そんなモータースポーツのイメージを受け継ぎながら、自分らしい走りスタイリングを求めるユーザーにワクワク感を届けるべく、純正アクセサリーの販売を展開していくという。またモータースポーツへの参戦も再度検討するというから期待大である。

 

[History] 活動休止を経て復活したラリーアートに注目!

1984年に設立。三菱のモータースポーツ活動のブランドであり、自動車メーカーチームとして競技への参加や競技用部品の開発、ドライバーの支援などを行ってきた。2010年に活動を休止したが2021年、純正アクセサリーとして幅広いモデルへの展開で復活が発表された。

 

【イチオシモデル】復活ラリーアートのカスタマイズカーに注目!

アウトランダー RALLIART Style

パーツ価格未定

「昨年発売したアウトランダーのPグレードに、今春発売予定のラリーアート純正アクセサリーを装着した『ラリーアートスタイル』です。かつてのラリー活動からインスパイアした同ブランドを印象付ける、マッドフラップやサイドデカールで走りにかける情熱を表現。ブラックで統一されたホイールやルーフスポイラーとボディの赤いアクセントカラーで、スポーティなスタイルを提案しています!」(ラリーアート)

 

ラリーアートのコンセプトモデルが続々!

写真上はエクリプス クロス・ラリーアートスタイル。同ブランドの方程式に沿ったカラーリングやマッドフラップを装備。写真下はビジョン・ラリーアート・コンセプト。オンロードのイメージを強く出し、新しいラリーアートの可能性を表現する。

 

【その2】MODELLISTA

モデリスタ from トヨタ/レクサス

トヨタのメーカー直系カスタマイズブランド。イタリア語で“デザイナー”を意味するモデリスタの最大の特徴はそのデザイン。コンセプトは「Resonating Emotion~響感の創造~」で、感性に訴求するデザインだ。デザインをクルマと“響鳴”させて、新たな価値へと昇華させる。

 

ベース車の造形やデザインと対話して造られる同ブランドのエアロパーツは独創的なデザインが多い。また実用性重視のパーツも発売している。

 

[History] ユーザーの「もっと」に応える

“あなたの「もっと」に応えたい”をモットーにユーザーの願いを叶えるブランドとして1997年にスタート。設立当初は特別仕様のクルマ製造がメインだったが、2008年頃よりトヨタやレクサスなどのアフターパーツによるカスタムカーの製造がメインになった。

 

【イチオシモデル】躍動的で生命力のあるデザインがウリ!

ノア/ヴォクシー

パーツ価格3300円(税込)~26万4000円(税込)

「ノア、ヴォクシーともフロントフェイスに注目してください。ノーマルからガラリと印象が変化するパーツをリリースしています。またリアのイルミルーフスポイラーもオススメのパーツ。LEDライトがリアビューを先進的な雰囲気にドレスアップしているのがポイントです!」(モデリスタ)

 

↑東京オートサロン 2022で初披露されたモデリスタのノアとヴォクシー。メッキの加飾パーツがアクセントだ

 

【その3】AUTECH

オーテック from 日産

オーテックジャパンは日産グループ内の特装車メーカー。あの「西部警察」の劇中車を作っていた会社であり、生粋の技術者集団といわれる。初代社長はスカイラインの父として知られる桜井眞一郎氏だ。

 

カスタムカーブランドの「AUTECH」は同社のクラフトマンシップを継承しつつ、スポーティでありながらも高級感漂うスタイリングが特徴。ブランドアイコニックカラーは創業地である茅ヶ崎の海と空をイメージしたブルーだ。

 

[History] いまやNISMOも手がける名門

日産グループ内の特装車メーカーとして1986年に設立。当初はトラックなどの商用車中心だったが、のちに乗用車もラインナップ。いまも人気の「ハイウェイスター」は同社製が発祥。近年ではスポーツドライビング向けのNISMOシリーズの開発も行っている。

 

【イチオシモデル】高級感漂うスタイリングと細部までこだわったインテリアが自慢

ノート AUTECH CROSSOVER

253万7700円(税込)~279万6200円(税込)

「先進コンパクトであるノートをベースに、オーテックブランドのプレミアムスポーティなコンセプトとSUVの機能やスタイルを融合。内外装ともに専用品を盛り込んだオーテック仕様の、走りまでにもこだわった、すべてに上質感のあるコンパクトクロスオーバーモデルです!」(オーテック)

 

↑同社専用シートやウッド調のフィニッシャーなど上質さに定評がある。車内はクラスを超えた雰囲気を持つ

 

【その4】Modulo X

モデューロ X from ホンダ

ホンダの4輪車純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスが作り上げたコンプリートカーブランドがモデューロ X。メインのコンセプトは、ホンダ車を知り尽くしたエンジニアが匠の技で熟成させたカスタムカー。開発アドバイザーはあの“ドリキン”こと土屋圭市氏だ。特にエアロ開発では実効空力を重視し、低速度域でも効果が感じられるエアロパーツを搭載。サスやホイールも専用に仕立てたもので、あらゆる路面環境でも高い接地感が魅力だ。

 

[History] アルミホイールのブランドとしてスタート

モデューロは、ホンダアクセスのアルミホイールブランドとして1994年に誕生。1990年代後半にはエアロパーツやサスペンションなどラインナップを拡大した。2013年にはHonda純正のコンプリートカーブランド、モデューロ Xシリーズがデビューした。

 

【イチオシモデル】空力効果のある“エアロ”と専用の足まわりで意のままに走れる

FIT e:HEV Modulo X

286万6600円(税込)

「FIT e:HEV Modulo Xは土屋圭市さんと開発担当者による徹底した走り込みによって完成しました。ビギナーから腕に覚えのある方までドライビングが楽しめる1台です。また年内発売を目指して、ヴェゼル e:HEVのモデューロ Xも開発中です。お楽しみに!」(モデューロ X)

 

↑パワートレインに手を加えず、エアロパーツ、ホイール、サスペンションで走りの質を高めることが信条だ

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

「オーテック」は高級感漂うスタイリングと細部までこだわったインテリアが自慢

クルマ好きにとって愛車を自分流に仕立てることはひとつのテーマだ。アフターパーツメーカーも数多くあるけれど、それならばいっそのことメーカー直系のカスタムカーはいかが? 本稿では日産の「オーテック」を紹介する!

※こちらは「GetNavi」 2022年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

AUTECH

オーテック from 日産

オーテックジャパンは日産グループ内の特装車メーカー。あの「西部警察」の劇中車を作っていた会社であり、生粋の技術者集団といわれる。初代社長はスカイラインの父として知られる桜井眞一郎氏だ。

 

カスタムカーブランドの「AUTECH」は同社のクラフトマンシップを継承しつつ、スポーティでありながらも高級感漂うスタイリングが特徴。ブランドアイコニックカラーは創業地である茅ヶ崎の海と空をイメージしたブルーだ。

[History] いまやNISMOも手がける名門

日産グループ内の特装車メーカーとして1986年に設立。当初はトラックなどの商用車中心だったが、のちに乗用車もラインナップ。いまも人気の「ハイウェイスター」は同社製が発祥。近年ではスポーツドライビング向けのNISMOシリーズの開発も行っている。

 

【イチオシモデル】

ノート AUTECH CROSSOVER

253万7700円~279万6200円(税込)

「先進コンパクトであるノートをベースに、オーテックブランドのプレミアムスポーティなコンセプトとSUVの機能やスタイルを融合。内外装ともに専用品を盛り込んだオーテック仕様の、走りまでにもこだわった、すべてに上質感のあるコンパクトクロスオーバーモデルです!」(オーテック)

 

↑同社専用シートやウッド調のフィニッシャーなど上質さに定評がある。車内はクラスを超えた雰囲気を持つ

 

【日産氷上試乗会レポート】雪道でラクに速く走れる「ノート e-POWER 4WD」の実力とは?

長野県・女神胡で日産自動車(以下、日産)が主催するメディア向け氷上試乗会「NISSAN Intelligent Winter Drive」が開催されました。真冬のど真ん中、1月に最新の「ノート e-POWER」や「GT-R」など日産の最新技術が詰まったクルマたちに一気乗りできるこのイベント、ツルツルと滑る氷上&雪上で日産車たちがどう制御して立ち向かうか、体感して参りました。

↑前輪駆動の「ノート オーラ NISMO」。e-POWERによる減速効果は雪道で絶大な効果を発揮した

 

氷上&雪上の環境下で駆動方式やシステムの違いを体感

このイベントの目的は、次世代パワートレーンの普及を目指す日産が、駆動方式やシステムの違いによって、氷上や雪上という運転が難しい環境下でクルマの挙動や運転のしやすさがどう変化するのかを体験することにあります。雪道で“滑る”こと自体、公道走行では危険をはらむわけで、そうしたクルマの挙動を存分に体感する機会はそう簡単に得られるものではありません。今回、限定エリアコースを設定することでその体験ができる、極めてユニークで貴重な走行会として準備されたのです。

↑氷上試乗会NISSAN Intelligent Winter Driveで使用された試乗車たち

 

用意されたコースは外周路をメインとして、スラロームや円形コースがあり、それぞれに特徴のある体験が行えるようプログラムされていました。

氷上試乗会「NISSAN Intelligent Winter Drive」会場全景

 

この試乗会で一番の注目は、ノートとノートオーラに設定されたe-POWER 4WDの体験走行です。ノートもノートオーラも1.2Lエンジンで発電してモーターで車輪を駆動するシリーズ型ハイブリッド方式を採用します。そのメリットは電気モーターを駆動することで、ガソリン車よりもはるかに緻密なトルク制御が行えることにあります。その制御は1万分の1秒単位で行われ、状況に応じて最適なトルクを配分できるようになり、滑らかな走りに貢献するというわけです。

↑後輪重視の制御が的確な挙動を生み出していた「ノート オーテック クロスオーバーFOUR」

 

ノート/ノートオーラは共に前輪駆動(FF)を基本としながら、e-POWER 4WDでは後輪も電気モーターで走行していることが見逃せません。先代ノートのe-POWERでも4WDはラインナップされていましたが、新型ではこの後輪用電気モーターのパワーを大きく増強した電動パワートレーンが搭載されたのです。

 

その後輪用モーターのスペックを先代と比較すると明らかな違いがあります。先代は最高出力4.8PS、最大トルク15Nmにとどまり、それはあくまで雪道などでの発進を補助するためのシステムでしかありませんでした。それが新型では最高出力68PS、最大トルク100Nmと大幅に増強され、このパワーが速度域を選ばず、前後輪の挙動に対して緻密なコントロールを可能にしたのです。

↑後輪の電気モーターにより雪上でもパワフルな走りを発揮する「ノート e-POWER 4WD」。写真は「ノート オーテック クロスオーバーFOUR」

 

想像以上に扱いやすくスムーズに走れた「e-POWER 4WD」

ノートオーラで走ってみると、この制御がうまく働いているせいもあり、クルマの挙動に唐突感がなくとてもコントロールがしやすい。ステアリングを切って雪上で滑り出しても慌てることなく冷静に対処でき、コーナリングごとにチャレンジする方法を変えてみる余裕も生まれたほどでした。また、アクセルを強めに踏み込んでもシステムが路面状態を把握しながら瞬時に細かく制御してくれるので、十分なパワーを感じながらスムーズな発進ができたのです。

 

ノート/ノートオーラの雪上走行ではe-POWERによる回生ブレーキ(e-Pedal)も大きな効果を発揮してくれました。ブレーキをかけるのとは違い、タイヤが雪上でロックすることなくスムーズに、しかも確実に減速できたのです。雪道では減速が思うようにできず、慌ててブレーキを踏んで制御不能となることがあります。このe-Pedalを使うことでそうした状況に陥ることはほとんどなくなるのです。まさにe-POWERの制御が、特に今回のような雪上で大きな安心感を生み出してくれたと言っていいでしょう。

↑外周路で「ノート」e-POWER 4WDの巧みな挙動を体験中の筆者

 

ノート/ノート オーラのe-POWERは、FFモデルでも高い走破性、安定性を実現していました。アクセルをオフにした時のe-Pedalで得られる確実な減速は、ここでも大きな安心感を生んでくれており、これはおそらく先代の4WDよりも確実に停止できるのではないでしょうか。

 

ただ、発進では4WDとの差を実感させます。4WDモデルでは後ろから押し出すようにスムーズに、しかも力強く発進してくれましたが、FFモデルでは少し強めに踏み込んだだけで前輪が空転して前へ進むことができなかったのです。その意味でも4WDモデルは雪上で圧倒的にスムーズかつラクに、しかも速く走ることができました。その安定感には大きな差を実感した次第です。

横滑り防止装置をオフにして円形の氷上路をグルグルと回る「ノート e-POWER 4WD」

 

安定した挙動で安心感のある走りを見せた「GT-R」

続いて日産が誇るスーパースポーツカー「GT-R」に試乗してみました。このクルマ、お値段はベースグレードでも1000万円を超える知る人ぞ知るクルマですが、今回の試乗で用意されていたのは、世界最大級のカーボンセラミックブレーキを搭載した特別仕様車「GT-R プレミアムエディション Tスペック」です。こちらのお値段は1590万4900円(税込)! まさにスーパースポーツカーを氷上で体験試乗することができたのです。

 

凄まじいパワーを発揮するだけに、最初は恐る恐るアクセルを踏み込んだわけですが、実際に走り出せば想像以上にコントロールがしやすいのにビックリ! 4WDであることもあって、クルマの状況が把握しやすく、アクセルを踏み込んでも後輪でしっかりと前へ進みます。一方で、テールが滑る状態になると駆動力が前輪にも配分されて車両を安定へと向かわせてもいました。

↑凄まじいパワーを発揮する「GT-R」だったが、予想に反してコントロールがしやすかった

 

ただ、後輪駆動である「スカイライン GT」ではコントロールはかなり難しかった印象です。エンジンがハイパワーであるターボ仕様ということもあって、アクセル操作をかなり伸長に行わないとステアリング操作をしても追いつかず、アッという間に向きが変わってしまいました。駆動方式の違いが明らかに違う挙動を示すことを身を以て体感できたわけです。

↑後輪駆動らしい挙動により雪道でのコントールは難しかった「スカイライン GT」

 

この日は日産が展開する幅広い駆動方式を、雪上&氷上で体験したわけですが、改めて「e-4ORCE」と同じ思想で開発されたe-POWER 4WDの実力の高さを思い知らされました。e-4ORCEは間もなく本格的に市場投入される日産「アリア」にも搭載されます。アリアはどんな走りを見せてくれるのでしょうか。その登場がますます楽しみになってきました。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

「買って間違いなし!」と断言する2021年コンパクトSUV5選。おすすめグレード付き

近年、「クロスオーバーSUV」の人気は高く、SUVといえばクロスオーバーSUVを指す場合も多く見られます。クロスオーバーSUVとはクロスカントリー車の高い走破性と、乗用車の快適性を「融合(クロスオーバー)させる」という意味が込められています。

 

そのクロスオーバーSUVのジャンルのひとつであるのが、コンパクトSUV。ボディサイズはミドルサイズSUVよりも小さくてコンパクトカーサイズ、欧州でいうとBセグメントにあたります。日本では近年、ラインアップが拡充しており、人気ジャンルのひとつとなっています。今回は自動車評論家の岡本幸一郎さんが断言する、2021年に登場した「買って間違いなし!」のコンパクトSUVを5台紹介します。

 

【その1】このサイズの中で考えられることはすべてやりつくした

ホンダ

ヴェゼル e:HEV Z(4WD)

311万8500円(税込)

2021年4月に「ヴェゼル」の2代目モデルが発売した。このサイズの中で考えられることはすべてやりつくしたという完成度が光る1台。手ごろなサイズを初代から踏襲しながらも、これがヴェゼル!? と思うほど雰囲気はガラリと変わって、まるで車格が上がったかのよう。流麗なクーペスタイルながらも車内は広く開放的で、独自のセンタータンクレイアウトによる低くフラットなフロアのおかげで高さのある荷物もラクに積み下ろし可能。エアコンの「そよ風モード」のようなユニークなアイデアも光る。

 

初代とは別物の「e:HEV」によるスムーズな加速と低燃費も魅力。乗り心地もいたって快適で、実は4WD性能も想像以上に高い。見た目のオシャレな「PLaY」も魅力的だが、なぜか4WDの設定がなく、納期にも時間を要することから、現時点では「Z」の4WDをイチオシとしたい。

 

 

【その2】カローラの名にふさわしくあらゆる面でそつのない仕上がり

トヨタ

カローラ クロス ハイブリッド(4WD)

279万9000円(税込)〜

トヨタは2021年9月、カローラシリーズ初のSUVである「カローラクロス」を発売した。コンパクトとミドルの中間的なサイズ感だが、充実した装備内容のわりに価格はコンパクトクラス並みにリーズナブル。一連のカローラシリーズとの共通性を感じさせるスッキリした内外装デザインをはじめ、各部の広さも走りもカローラの名にふさわしくあらゆる面でそつのない仕上がりで、なんら気になるところがない。

 

SUVとしてのニーズに応えるべく居住空間も荷室も十分な広さが確保されていて、リアシートを倒すとロードバイクだって積めるほどだ。ガソリン車とハイブリッドのどちらにもよさがあるが、イチオシはハイブリッドの後輪をモーターで駆動するE-Four。非常時給電モードを備えたAC100V/1500W電源コンセントが設定されているのも魅力。

 

 

【その3】ノートの魅力をさらに昇華させる上品さも感じられる

日産

ノート AUTECH CROSSOVER FOUR(4WD)

279万6200円(税込)

バリエーションを多彩に揃える新型「ノート」。そのラインアップのひとつとして加わったのがカスタムグレードの「AUTECH」で、コンパクトSUVクラスに数ある車種の中でも異彩を放っている。AUTECHブランドの一員と位置づけているのは、カタログモデルにはない特別感を表現するため。

 

とっつきやすいコンパクトなサイズ感はそのままに、専用に仕立てられた内外装は、並み居る競合車に対してひと味違う雰囲気を感じさせる。動力源をe-POWERのみにわりきったのも特徴で、内燃エンジン車にはない瞬発力のある加速はモーター駆動ならでは。さらに、従来車とは別でリアに高出力モーターを配した現行型の4WDは、ハンドリングの仕上がりも抜群によくなっていてオススメだ。

 

 

【その4】新型は粗削りだった走りも洗練された

ダイハツ/トヨタ

ロッキー ハイブリッド(2WD)/ライズ ハイブリッド(2WD)

211万6000円〜(税込)/216万3000円〜(税込)

ダイハツの5ナンバーサイズのSUVが「ロッキー」。トヨタ「ライズ」は、ロッキーのOEM車になる。貴重な5ナンバーのSUVであり、最小回転半径が5.0mと小回りが利きながらも、クロカンテイストのたくましいフォルムと、5ナンバーサイズながら車内や荷室の十分な広さが確保されているのが強み。予想していたとおり大人気を博す。

 

発売から2年が経過。これまでエンジンが1.0Lターボのみだったが、2021年に1.2Lの自然吸気とハイブリッドが加わった。当初は全体的に粗削りだった走りも最新版はずいぶん洗練されていて、「e-SMART」と名づけられたダイハツ独自のシリーズ式ハイブリッドは、バッテリー容量もモーター性能も控えめでエンジンは頻繁にかかるものの、モータードライブならではのスムーズで静かで上質な走りを実現している。

 

 

【その5】キャプチャーを選ぶなら「インテンス テックパック」

ルノー

キャプチャー インテンス テックパック

319万円(税込)

ルノー「キャプチャー」はすでに欧州ベストセラーSUVになったほどの実力の持ち主で、あらゆる点でクラスを超えている。スタリッシュな外観は見てのとおりで、内装の質感もなかなか高い。上級車からのダウンサイザーに向けて最適なスペースを確保すべく全長とホイールベースが長く確保されているほか、リアシートが16cmも前後にスライド可能で、荷室容量はクラストップの536Lと圧倒的な広さを誇る。

 

このクラスの量販モデルとしてはかなり速い154PSで270Nmを発揮する1.3L直4ターボエンジンは、4気筒らしい上質な吹け上がりを実現。極めて俊敏なハンドリングも持ち味。20万円差で操舵支援や電動レザーシートの付く「インテンス テックパック」を選ばない手はない。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

気になる新車を一気乗り! 個性と走りが際立つ日産・フォルクスワーゲン・BMWの新車をレポート

本記事では、個性と走りが際立つモデルをピックアップ。国産勢からは日産のプレミアムコンパクトであるオーラをベースとしたオーラ ニスモ、輸入車からはフォルクスワーゲン・アルテオン シューティングブレークと、BMW・M4クーペという、ドイツの2モデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2021年11月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【No.1】その魅力はスポーティにして上質な走りにあり!

ハッチバック

日産

オーラ ニスモ

SPEC【オーラ ニスモ】●全長×全幅×全高:4125×1735×1505mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:電気モーター+1198cc直列3気筒DOHC●最高出力:136[82]PS/3183〜8500[6000]rpm●最大トルク:30.6[10.5]kg-m/0〜3183[4800]rpm●WLTCモード燃費:23.3km/L

●[ ]内はガソリンエンジンの数値

 

しなやかな乗り心地は国際級と言える出来映え!

先代はノートをベースとしていたが、新型はノートの上位モデルに当たるオーラに、独自のチューニングを施すニスモ仕様に。ノート時代は走りとスタイリングが好評だったので、新型でもこの2点は入念に仕上げられた。外観は空力性能向上にも貢献する本格的なエアロパーツや、オーラよりリム幅を拡げた専用ホイールなどを装備。内装も、シックな装いのオーラから一転、スポーティな仕立てとなる。

 

シリーズ特有のハイブリッドのeパワーはニスモ独自の制御となり、足回りも独自セッティングを採用。それに合わせてボディもリア回りが強化されている。

 

その走りはスポーティでありつつも上質なライド感が印象的。特に日常域ではしなやかさを感じさせる足回りの動きや、一層の磨きがかかったアクセル操作に対するレスポンスは、オーラの特別モデルに相応しい。この完成度なら、ノート ニスモのオーナーだけでなく、輸入車コンパクトオーナーをも納得させるに違いない。

 

[Point 1] 空力パーツはモータースポーツ由来

ニスモ・レーシングと共同開発されたエアロパーツは、フォーミュラEを彷彿とさせる精悍なイメージだけでなく、実際の空力性能も向上。専用ホイールは、オーラよりリムが拡大された。オーラ ニスモの車両価値はモノグレード設定で286万9900円(税込)。

 

[Point 2] レッドのアクセントでスポーティな仕立てに

内装は、レッドのアクセントとダークトーンの組み合わせでスポーティに仕上げられた。多彩な表示機能を持つデジタルディスプレイのメーターも、ニスモ独自のグラフィックに。

 

[Point 3] レカロ製シートは日常での走行にも適する

オプションとなる専用仕立てのレカロシートは、スポーツ走行時のホールド性だけでなく日常域の走行にも配慮した作りとなっている。座り心地も上々だ。

 

 

【No.2】新作ワゴンはスタイリッシュな外観で勝負!

ステーションワゴン

フォルクスワーゲン

アルテオン シューティングブレーク

SPEC【TSI 4モーション Rライン・アドバンス】●全長×全幅×全高:4870×1875×1445mm●車両重量:1720kg●パワーユニット:1984cc直列4気筒DOHC+ターボ●最高出力:272PS/5500〜6500rpm●最大トルク:35.7kg-m/2000〜5400rpm●WLTCモード燃費:11.5km/L

 

エレガントな風情は4ドアクーペを凌ぐ個性

その最大の特徴は、やはりエレガントな風情を感じさせる外観だ。ボディサイズは4ドアクーペ版のアルテオンとまったく同じだが、このシューティングブレークでは伸びやかなルーフ形状が前後の長さを一層強調している。現行のフォルクスワーゲンでは、いま一番“攻めた”デザインであることは間違いないだろう。

 

シューティングブレークの導入を機に運転支援システムや内外装の細部こそアップデートされたが、2Lガソリンターボエンジンをはじめとする基本的ハードウエアは従来通り。駆動方式は4WDのみだが、それだけに走りは全方位的にソツのない仕上がりだ。ひと味違うワゴンとしても、狙い目の1台と言うことができる。

 

[Point 1] ワゴンとしての実用性も高い!

デザイン重視とはいえ、フォルクスワーゲンらしく実用度もハイレベル。荷室容量は通常時でも565L、最大では1632Lに達する。

 

[Point 2] 前後の長さと低さを強調する外観

外観は前後の長さと車高の低さが印象的。4ドアクーペ版(ファストバック)より大きく見えるが、ボディサイズは全高に至るまでまったく同じだ。

 

[Point 3] インパネ回りはワイド感を強調

インパネ回りは、マイナーチェンジでワイド感を強調する造形に。運転支援系の装備は、最新のフォルクスワーゲン他モデルと同じく最先端レベルだ。

 

[ラインナップ]

Rライン:2.0L+ターボ/4WD/7速DCT/587万9000円(税込)

Rライン アドバンス:2.0L+ターボ/4WD/7速DCT/644万6000円(税込)

エレガンス:2.0L+ターボ/4WD/7速DCT/644万6000円(税込)

 

 

【No.3】さらに研ぎ澄まされた武闘派BMWの急先鋒!

クーペ

BMW

M4クーペ

SPEC【M4クーペ・コンペティション】 ●全長×全幅×全高:4805×1885×1395mm●車両重量:1730kg●パワーユニット:2992cc直列6気筒DOHC+ツインターボ●最高出力:510PS/6250rpm●最大トルク:66.3kg-m/2750〜5500rpm●WLTCモード燃費:10.1km/L

 

ただ速いだけではなく走りの質感も楽しめる!

スポーツ性を極めるBMW Mモデルのなかにあっても、とりわけ“戦闘力”が高いことで知られる「M4クーペ」。今年上陸した最新版では、その資質に一層の磨きがかけられた。エンジンは引き続き直列6気筒の3Lツインターボだが、先代のそれとは別モノで、トランスミッションも専用の8速ATに。当然シャシーも独自のチューニングで、数々の制御システムにはドリフト走行の診断機能まで備わる。

 

その走りは、見た目のイメージ通りにシャープな味付けながら、快適性も納得できる水準を確保。また、先代比では特にエンジンの情緒溢れる吹け上がりも印象的だ。BMWらしさを味わうという点では、これだけでも乗る価値がある、と断言したい。

 

[Point 1] 6気筒エンジンらしい質感の高さも魅力

基本構造こそSUVのX3M用などと同じエンジンだが、味付けはクーペに相応しいもの。直列6気筒らしい、吹け上がりの質感も魅力だ。

 

[Point 2] 各装備がMモデルの専用仕立てに

ディスプレイやシフトレバー回り、シートなどがMモデル専用仕立てとなる室内。スポーティなのはもちろん、ラグジュアリーでもある。

 

[Point 3] まもなく4WDも選べるように!

現在の日本向けは6速MT仕様のみのベースモデルと8速ATを組み合わせるコンペティション、およびその軽量化版となるトラックパッケージの3モデル。間もなく4WD版も登場予定となっている。

 

[ラインナップ]

M4クーペ:3.0L+ツインターボ/2WD/6速MT/1298万円(税込)

M4クーペ コンペティション:3.0L+ツインターボ/2WD/8速AT/1348万円(税込)

M4クーペ トラックパッケージ:3.0L+ツインターボ/2WD/8速AT/1460万円(税込)

 

文/小野泰治 撮影/篠原晃一、小林俊樹、郡 大二郎

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

日産「オーラ ニスモ」の魅力はスポーティにして上質な走りにあり!

日産のプレミアムコンパクトであるオーラをベースとした「オーラ ニスモ」。新世代のニスモ デザインに、次世代e-POWERのシームレスで強い加速力と、それに呼応するシャープで強烈なハンドリングをもつノートオーラニスモに試乗してみた。

※こちらは「GetNavi」 2021年11月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

しなやかな乗り心地は国際級と言える出来映え!

ハッチバック

日産

オーラ ニスモ

SPEC【オーラ ニスモ】●全長×全幅×全高:4125×1735×1505mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:電気モーター+1198cc直列3気筒DOHC●最高出力:136[82]PS/3183〜8500[6000]rpm●最大トルク:30.6[10.5]kg-m/0〜3183[4800]rpm●WLTCモード燃費:23.3km/L

●[ ]内はガソリンエンジンの数値

先代は「ノート」をベースとしていたが、新型はノートの上位モデルに当たる「オーラ」に、独自のチューニングを施すニスモ仕様。ノート時代は走りとスタイリングが好評だったので、新型でもこの2点は入念に仕上げられた。外観は空力性能向上にも貢献する本格的なエアロパーツや、オーラよりリム幅を拡げた専用ホイールなどを装備。内装も、シックな装いのオーラから一転、スポーティな仕立てとなる。

 

シリーズ特有のハイブリッドのeパワーはニスモ独自の制御となり、足回りも独自セッティングを採用。それに合わせてボディもリア回りが強化されている。

 

その走りはスポーティでありつつも上質なライド感が印象的。特に日常域ではしなやかさを感じさせる足回りの動きや、一層の磨きがかかったアクセル操作に対するレスポンスは、オーラの特別モデルに相応しい。この完成度なら、「ノート ニスモ」のオーナーだけでなく、輸入車コンパクトオーナーをも納得させるに違いない。

 

[Point 1] 空力パーツはモータースポーツ由来

ニスモ・レーシングと共同開発されたエアロパーツは、フォーミュラEを彷彿とさせる精悍なイメージだけでなく、実際の空力性能も向上。専用ホイールは、オーラよりリムが拡大された。オーラ ニスモの車両価値はモノグレード設定で286万9900円(税込)。

 

[Point 2] レッドのアクセントでスポーティな仕立てに

内装は、レッドのアクセントとダークトーンの組み合わせでスポーティに仕上げられた。多彩な表示機能を持つデジタルディスプレイのメーターも、ニスモ独自のグラフィックに。

 

[Point 3] レカロ製シートは日常での走行にも適する

オプションとなる専用仕立ての「レカロシート」は、スポーツ走行時のホールド性だけでなく日常域の走行にも配慮した作りとなっている。座り心地も上々だ。

 

 

文/小野泰治 撮影/篠原晃一

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

航続距離600km超えのEV! 日本限定車「アリア limited」の魅力

“いま”爆売れ中の日産のクロスオーバーEV「アリア リミテッド」。EVの特性を活かした静粛性を兼ね備え、室内はラウンジのような心地よい高級感溢れるデザインです。アリア リミテッドのヒットの背景を本誌編集部の乗り物担当・上岡が解説!!

※こちらの記事は「GetNavi」 2021年10月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ハンズオフ運転対応の「プロパイロット2.0」を標準装備

【EV】2021年6月予約注文開始

日産

アリア limited

660万円〜790万200円(税込)

昨年7月に発表された日産の新型EV。バッテリー容量は66kWhと91kWhの2種類があり、最大航続可能距離は610km。日本限定車limitedは、高速道路でのハンズオフ運転が可能な「プロパイロット2.0」が標準で装備される。

 

本誌クルマ担当

上岡 篤

EVの圧倒的なトルクに魅力を感じるクルマ担当。だが集合住宅住まいなので実際の導入には尻込みしてしまう。

日本限定車のみに搭載される先進運転支援技術が魅力

6月に予約注文受付が開始された日産・アリア リミテッドが人気を集めている。

 

「モデルごとの詳細な価格が判明し、購入へのきっかけになりました。EVは受けられる補助額も大きいので、価格以上の割安感が人気を後押ししています」(上岡)

 

さらに日本限定車では、通常モデルではオプションとなる「プロパイロット2.0」が標準装備されるのも魅力だ。

 

「『プロパイロット』は通常モデルで標準搭載ですが、ハンズオフ運転可能な『プロパイロット2.0』が欲しいという人が多い。これも人気の要因のひとつです」(上岡)

 

↑日本限定車limitedのみのカラーを設定。バーガンディー/ミッドナイトブラック(上)とシェルブロンド/ミッドナイトブラック(下)の2トーンカラーだ

 

↑先進運転支援技術「プロパイロット 2.0」や「プロパイロット リモート パーキング」などを標準で装備。通常モデルではオプションとなる

 

【トレンドのツボ】日産の新EVに対する期待大で10日間で約4000台を受注!

リーフ以来の日産の新EV。そのスタイルや日本文化を生かしたインテリアなどは、リーフにはない質感の高さ。航続距離の長さも評価され、10日間で約4000台を受注した。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

ホンダ・ヴェゼルと並ぶ実力派! 国内4強SUVの実力をプロがチェック!

フルモデルチェンジしたホンダ・ヴェゼルと同クラスの国内4強SUVの実力をプロがチェック。コンパクトサイズながら使い勝手を向上させた室内や走り、デザインなど、創意工夫が盛り込まれたモデルばかりだ。

※こちらは「GetNavi」 2021年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【私がチェックしました!】

モータージャーナリスト

清水草一さん

フェラーリ、ランボルギーニから軽自動車まで所有経験のある自動車ライター。常にコスパを優先して愛車をチョイスしている。

【エントリーNo.1】コレ1台あればあらゆるニーズを満たせる

トヨタ

ヤリス クロス

179万8000円〜281万5000円

2020年販売台数:15万1766台(※)

※:コンパクトカーのヤリスと合計の販売台数

●出典:一般社団法人 自動車販売協会連合会

大激戦のコンパクトSUV市場。そこにトヨタが投入したモデルがヤリス クロスだ。街なかで使い勝手の良いサイズと、エントリーモデルは180万円を切る価格設定、充実した装備が魅力だ。

SPEC【HYBRID Z・2WD】●全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm●車両重量:1190kg●パワーユニット:1490cc直列3気筒+モーター●最高出力:91PS/5500rpm●最大トルク:12.2㎏-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:27.8km/L

 

さすがは天下のトヨタ! クルマづくりにスキがない

ヤリス クロスは、良くできたSUVというよりも、弱点のない実用車だ。後席やラゲッジスペースが狭いヤリスの弱点を補いつつ、車高を少し上げ、かつスタイルを万人向けにカッコ良く仕上げたクルマと言えば分かりやすいだろう

 

パワーユニットは、1.5Lのガソリンとハイブリッドの2種類。どちらもFFと4WDが選べる。グレードも合計14種類と豊富だ。価格帯は幅広く、全体的にリーズナブル。もちろん燃費も良い。内装だけは少々チープな感じが否めないが、ほぼすべての点で満足度が高く、誰が乗っても間違いない。さすがトヨタの人気SUVである。

 

【ヤリス クロスのココがスゴイ!】

走り、安全性能、荷室容量とすべてが最高レベルです!

「ヤリスシリーズならではの軽快な走りと先進の安全装備が自慢。コンパクトSUVとしては最大級の荷室容量で、後部座席を倒すことなく大型スーツケース2個を収納可能です」(トヨタ広報PR)

 

↑インパネの基本デザインはヤリスと同様。ヤリス クロスではセンターコンソールからディスプレイにかけて縦の流れを強調する

 

↑ヤリスよりクッション性が高く、高い天井など後席の快適性は◎。4:2:4の分割可倒式を採用するグレードもあり使い勝手も良い

 

【清水’s Check】

デザイン ★★★★

パワーユニット ★★★★★

乗り心地 ★★★★

使い勝手 ★★★★

コスパ ★★★★★

 

【エントリーNo.2】デザイン命のSUVはカッコ良さで選んで良し!

マツダ

CX-30

239万2500円〜371万3600円

2020年販売台数:2万7006台

CX-30はCX-3とCX-5の中間に位置するモデル。流麗なDピラーはクーペライクなデザインで、世界一美しいSUVを目指したというデザイナーの意気込みを感じる仕上がりだ。

SPEC【XD L Package・2WD】●全長×全幅×全高:4395×1795×1540mm●車両重量:1460kg●パワーユニット:1756cc直列4気筒+ターボ●最高出力:130PS/4000rpm●最大トルク:27.5㎏-m/1600〜2600rpm●WLTCモード燃費:19.2km/L

 

そのスタイルは美しくインテリアの上質さも破格

マツダは“デザインはクルマの命”と考えて、デザインを重視したクルマづくりを進めている。そのひとつの集大成がCX-30だ。このクルマのウリは、なによりもスタイルの美しさにある。買う側もデザイン優先で選ぶべきだろう。

 

エンジンは3種類あるが、オススメはマツダ自慢のクリーンディーゼルモデル(1.8L)だ。太いトルクはSUV向きだし、ロングドライブなら燃費性能もハイブリッド並みに良い。

 

サイズはライバルたちよりひと回り大きいが、デザイン優先ゆえ、室内の広さはほぼ互角。ただし、インテリアの上質感は断トツだ。

 

【CX-30のココがスゴイ!】

人が使う際の“ちょうど良さ”を考え抜かれた上品なインテリア

「ファミリーカーとしての”ちょうど良さ”です。サイズや走りの良さは当たり前。“人が使う”を考えたインテリアは上品さを演出。また、ライブ感ある音響が移動の満足感をより高めます」(マツダ広報PR)

 

↑メッキ加飾やソフトパッドを多用した室内。前席、後席とも広く窮屈さは感じない。後席背もたれは6:4の分割可倒式を採用する

 

↑新世代エンジンのSKYACTIV-X。ガソリンエンジンながらも圧縮着火を採用。さらにモーターを組み合わせて高い環境性能を誇る

 

【清水’s Check】

デザイン ★★★★★

パワーユニット ★★★★

乗り心地 ★★★

使い勝手 ★★★

コスパ ★★★

 

【エントリーNo.3】この安さは破壊力抜群! 走りや快適性にも不満ナシ

トヨタ

ライズ

167万9000円〜228万2200円

2020年販売台数:12万6038台

2020年に単一車種としては驚きの12万台超を販売。5ナンバー枠に収まる取り回しの良いボディサイズとSUVらしいデザインが特徴で、走りも軽快だ。SUVながら1tを切る軽さも魅力。

SPEC【Z・2WD】●全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm●車両重量:980kg●パワーユニット:996cc直列3気筒+ターボ●最高出力:98PS/6000rpm●最大トルク:14.3kg-m/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:18.6km/L

 

ガソリンエンジンで十分じゃないか!

トヨタ・ライズは、小型車に強みを持つダイハツが開発・生産を担当している。サイズは4モデルのなかで最もコンパクトで、パワーユニットはガソリンエンジンのみ。すべてのニーズを適度に満たしつつ価格が非常に手ごろなので、ヤリス クロスの登場までは、SUV販売台数ナンバーワンだった。

 

3気筒の1Lターボエンジンはトルクがあり、軽量ボディを軽快に走らせる。角張ったデザインはサイズ以上の押し出し感もある。内装のチープ感は価格なりだが、4WDモデルも用意されていて死角はない。気軽に買えて不満のない、良くできたSUVだ。

 

【ライズのココがスゴイ!】

5ナンバーサイズを超える使い勝手と力強さが自慢

「5ナンバーサイズSUVながらクラストップレベルの荷室容量。ワンランク上の大径タイヤでSUVらしい力強いスタイルを叶えながら、小回りの利く優れた取り回しを実現しています」(トヨタ広報PR)

 

↑想像以上に広い後席。前後席の間隔は900mmと普通のセダンよりも余裕がある。またスクエアなボディで頭上スペースも余裕だ

 

↑荷室容量は369Lでアンダーラゲッジも装備する。デッキボードは2段階に高さを調整できて便利。4人ぶんの荷物を楽に収納できる

 

【清水’s Check】

デザイン ★★★★

パワーユニット ★★★★

乗り心地 ★★★★

使い勝手 ★★★★★

コスパ ★★★★★

 

【エントリーNo.4】進化形e-POWERで一点突破を狙う日産の刺客

日産

キックス

275万9900円〜286万9000円

2020年販売台数:1万8326台

2016年より海外で販売されているモデル。日本向けにe-POWERを搭載し、足回りを再チューニングして昨年発売が開始された。軽快な走りと、広く品の良い内装、使い勝手の良さが魅力だ。

SPEC【X】●全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm●車両重量:1350kg●パワーユニット:電気モーター+1198cc直列3気筒●最高出力:129(82)PS/4000〜8992rpm●最大トルク:26.5(10.5)㎏-m/500〜3008rpm●WLTCモード燃費:21.6km/L

●( )内は発電用エンジンの数値

 

この静かさはまるで電気自動車だ

爆発的なヒットになったノートe-POWERのパワートレインを大幅に進化させて、SUVに積んでみました——。それがキックスの成り立ちだ。

 

エンジンで発電してモーターで走るハイブリッドだが、エンジン音がとても静かになったので、純粋な電気自動車のようにも感じる。日産自慢の安全運転支援システム「プロパイロット」も標準装備だ。

 

ただ、4WDの設定はなくFFのみ。グレードは事実上ひとつだけと選択肢が狭い。価格もライバルに比べると割高だが、走りは静粛かつ軽快なので、もっと売れて良いモデルだと感じている。

 

【キックスのココがスゴイ!

レスポンスの良い加速はやみつきになること請け合い

「日産独自のe-POWERを採用。100%モーター駆動ならではの力強くレスポンスの良い加速で、これまでにない軽快でやみつきになるドライビング体験をお楽しみいただけます!」(日産広報PR)

 

↑ゴルフバッグは楽に3つも入る荷室。後席を倒すとかなり大きな荷物も積載可能。トノボードも大きく、使い勝手も良い

 

↑室内は肌触りの良いシートなどのほかに、高品質の素材を使用したインパネやドアクロスを採用。ステッチはその質感にもこだわっている

 

【清水’s Check】

デザイン ★★★

パワーユニット ★★★★★

乗り心地 ★★★★★

使い勝手 ★★★★

コスパ ★★★

進化したハイブリッドシステムを搭載した日産「キックス e-POWER」の実力は?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」を搭載した最新モデル、キックスを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】日産/キックス e-POWER

 

SPEC【X ツートーンインテリアエディション】●全長×全幅×全高:4290×1760×1610mm ● 車両重量:1350kg ●パワーユニット:電気モーター+1.2L直列3気筒エンジン ●モーター最高出力:129PS(95kW)/4000-8992rpm ●最大トルク:260Nm/500〜3008rpm ●WLTCモード燃費:21.6km/l

275万9900円〜286万9900円

 

ノートに比べるとエンジン音がグッと静かになったe-POWER

安ド「殿は日産のe-POWERをどう評価されてますか?」

 

永福「モーターがエンジンをアシストするハイブリッドとはまったく別の道を行き、まったく別の魅力を生み出した、すばらしいハイブリッドシステムだと思うぞ」

 

安ド「なるほど! 確かにこのキックス e-POWERに乗っても、まるでEVみたいで、すごく新鮮です!」

 

永福「基本的にはEV。ただしそのための電気を、ガソリンエンジンを回して生み出しているわけだからな」

 

安ド「最大の特徴は、アクセルを戻すとかなり強力な回生ブレーキがかかって、ブレーキペダルを踏まなくても止まれることですね!」

 

永福「それがウケて、ノート e-POWERは大ヒットになった」

 

安ド「わかる気がします。乗るとビックリしますから!」

 

永福「そのビックリが吉と出るか凶と出るか半信半疑だったが、吉と出てビックリだった」

 

安ド「ビックリですか!」

 

永福「一般のドライバーは、基本的に新しいことに違和感を抱くもの。アクセルを離すだけでグッと減速してしまうことに拒絶感が出るのではと思ったのだが、まったく逆だった」

 

安ド「逆でしたね!」

 

永福「トヨタのハイブリッド技術は絶対的な高みにあるが、それに対抗しうるハイブリッドを作り出した日産の技術も大したものだ」

 

安ド「やはり技術の日産ですね!」

 

永福「しかもキックス e-POWERは、ノートに比べるとエンジン音がグッと静かになったから、ますますEV感が高まった」

 

安ド「もう少しエンジンの気配を消せれば、まるでEVですね!」

 

永福「充電の要らないEVだな」

 

安ド「ただ、発売して数か月経っても、販売台数ランキングの上位に名前がないのはナゼでしょう?」

 

永福「このクルマ、タイで生産して日本まで運んでいるので、そのあたりがうまくいってないらしい」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「価格も通常のハイブリッドに比べてかなり高い。日産の販売店としては、久しぶりの新型車なのにガックリだろう」

 

安ド「もうひとつ残念なのは、あんまりカッコ良く見えないことなんです」

 

永福「同感だ」

 

安ド「やっぱりですか!」

 

永福「どこが悪いというわけではないが、全体に見た目がサエず、最新のクルマという雰囲気がない。インテリアは悪くないんだが」

 

安ド「内装は、ボディ同色のオレンジが大胆に使われていて、なかなかカッコいいですね!」

 

永福「内装はオレンジか黒の2種類だから、ボディ同色というわけではないぞ」

 

安ド「じゃボディが紫でも、内装はオレンジですか?」

 

永福「オレンジか黒だ」

 

安ド「うーん、迷いますね……」

 

永福「お前、ボディは紫を選ぶつもりなのか……?」

 

【GOD PARTS 1】ステアリングヒーター

手指を温めることは安全運転にも直結

セットオプションで「ステアリングヒーター+前席シートヒーター+寒冷地仕様」が設定されています。真冬になるとステアリングに触れるのも躊躇しがちですから、すぐ暖まる同装備は寒冷地に住んでいなくても重宝します。

 

【GOD PARTS 2】リアコンビランプ

シャープなデザインを強調するブーメラン型

リアコンビランプは、現行型フェアレディZを思わせるブーメラン型です。ブーメランに見えないかもしれませんが。ブーメランを思いきり斜めから見たらこう見えるかも……と思ってください。シャープなイメージが狙いです。

 

【GOD PARTS 3】ドライブモードセレクター

独特な運転感覚はスイッチで調節できる

ドライブモードスイッチを押すと、「ノーマル」から「S」や「ECO」に変わります。「S」はアクセルを離した時の回生ブレーキの利きが強くなり、ワンペダルドライブが楽しめます。「ECO」では加速が穏やかになります。

 

【GOD PARTS 4】SOSコール

有事の際の対策は緊急通報スイッチで

「あおり運転」対策としても期待される緊急通報システムです。スイッチは前席の天井部分に付いていて、事故発生時など緊急事態の際にオペレーターへ直接連絡できます。ちょっと押してみたくなりましたが、大人なのでやめておきました。

 

【GOD PARTS 5】シフトレバー

未来型シフトもレバーで操作しやすい

リーフやノートなど日産のEVやe-POWERモデルのシフトノブはカタツムリ型でしたが、キックスe-POWERでは通常のレバー型が採用されています。ひょっとして「扱いづらい」などのユーザーの声があったのかもしれません。

 

【GOD PARTS 6】ダッシュボード

高級感があって感触もいいオレンジ色の素材

インパネ正面に飾られたオレンジ色の素材が、車内を爽やかな雰囲気に演出。この素材、肌触りもなんだかスベスベしていて気持ちよく、どこか高級感すら漂わせています。これだけ精巧なものが作れるのであれば、高価な本革素材はいらないかもしれませんね。

 

【GOD PARTS 7】インテリジェントルームミラー

アラウンドビューをルームミラーに表示

車両を真上から見たような映像を合成する技術「アラウンドビューモニター」の画面を、デジタルルームミラー内にも映し出すことができます。細部を見るには小さいですが、ハイテク好きなら心躍るに違いありません。

 

【GOD PARTS 8】Vモーショングリル

ヘッドライトも含めて巨大なV字を演出

日産はここ10年ほどで、フロントエンブレムをVの字で挟む形状のファミリーフェイスを数多くの車種で採用してきました。キックス e-POWERでは、ヘッドライトまでデザインに含めて、巨大なVの字を描いています。

 

【GOD PARTS 9】プロパイロット

実用的で運転を快適にしてくれる技術

簡単なスイッチ操作で、先行車に追従しながら車線内をスムーズに走行できる運転支援技術です。スカイラインの「2.0」のように「ハンズオフ(手放し)」まではできませんが、熟成されていて、最新モデルならではの高い完成度を誇ります。

 

【これぞ感動の細部だ!】e-POWERシステム

圧倒的支持を得て進化した日産独自のシステム

ガソリンエンジンは動力として使わず、発電するために動かし、その電気を使ってモーターで走行する日産独自のハイブリッドシステムです。2016年にe-POWERが追加搭載されたノートは、ベース車の発売から4年が過ぎていたにも関わらず爆発的ヒットに。キックスでは、重量が重くなったぶん出力を向上させていて、静粛性も高くなり、上質な走りを味わえます。

安全なクルマは好みで選べる!「カテゴリ別」安全+αの最適モデル指南

衝突被害軽減ブレーキをはじめとして安全性能についてはお墨付きのモデルのなかから、より便利に、楽しく使えるモデルをプロがチョイス。スタイルや走り、使いやすさなど自分の好みに合ったモデルを選んで、ワンランク上の快適ドライブを満喫しよう!

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が選びました

モータージャーナリスト

岡本幸一郎

高級輸入車から軽自動車まで幅広く網羅。各社の予防安全技術の多くを体験済み。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。

【タイプ1】SUV

多くの新モデルが登場し、安全運転支援技術も最新のモノが搭載されることが多いSUV。走破性能や使いやすさで優れたモデルもあるが、総合性能で選ぶならトヨタ・RAV4だ。

 

【独創性で選ぶなら】クーペ的なシルエットとインテリアの心地良さが秀逸

マツダ

MX-30

242万円〜305万2500円

SUVでありながらクーペ的シルエットとフリースタイルドアが印象的なモデル。インテリアにはコルクやペットボトルなどサステナブルな素材を用いて心地良さを演出する。

 

↑同社のRX-8以来となる観音開きを採用したフリースタイルドア。ピラーがないぶん後席の乗降もしやすい

 

[岡本’sジャッジ]

 

【先進機能で選ぶなら】e-POWERとプロパイロットの先進性を1台で味わえる

日産

キックス e-POWER

275万9900円〜286万9900円

日産独自のハイブリッド方式であるe-POWERと、安心・快適なドライブを実現するプロパイロットという、2つの先進機能が1台で楽しめる。EV走行時の静粛性も特筆モノだ。

 

↑アクセルペダルひとつで加減速が行えるe-POWER Drive。アクセルとブレーキの踏み替え回数も減ってラク

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】3列シートを備えたモデルは人も荷物も余裕で乗せられる

メルセデス・ベンツ

GLB

512万円〜696万円

コンパクトなサイズながら、身長168cmまでの人が座れる3列目シートが便利なモデル。3列目シート使用時でも130L、シート格納時では500Lの荷室を活用して積載できる。

 

↑大人数で乗車するときに便利な3列目シート。身長168cmの人までに限られるが、あるとやはり便利だ

 

[岡本’sジャッジ]

 

【走破性能で選ぶなら】ジープ最強モデルが誇る世界最高の悪路走破性能

ジープ

ラングラー

499万円〜621万円

高い最低地上高、大径タイヤなどの見た目から想起するとおりのオフロード性能を誇るモデル。なかでも悪路走破性能を強化したアンリミテッド ルビコンは世界最強と言われる。

 

↑マニュアルで切り替えるパートタイム4×4を搭載。自動で前後輪に駆動力を分配するフルタイム4×4も採用する

 

[岡本’sジャッジ]

 

【デザインで選ぶなら】デザインは軽快ながら操縦安定性の良さが光る

 

フォルクスワーゲン

T-Cross

303万9000円〜339万9000円

若々しいデザインとカラーバリエーションが魅力のコンパクトSUV。一見軽快なモデルだが、ドイツ車ならではの高い操縦安定性もポイント。2WDのみなのが少々残念ではある。

 

↑リアシートは140mmスライドが可能。後席の広さを自在に変え、同時にカーゴスペースの拡大にも役立つ

 

[岡本’sジャッジ]

 

【総合性能で選ぶなら】悪路も難なくこなすオールラウンダーSUV

トヨタ

RAV4

274万3000円〜402万9000円

前後左右のタイヤへのトルク配分を変更する独自のダイナミックトルクベクタリングAWDを採用し、悪路走破性が高い。もちろんオンロードでの快適さもトップクラスを誇る。

 

↑路面の状況に応じて最適なトルク配分を行うダイナミックトルクベクタリングAWD。高い走破性を実現する

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ2】コンパクトカー

コンパクトカーでトップを争うトヨタ・ヤリスとホンダ・フィットがモデルチェンジし、走りや使い勝手が一層向上。走りを楽しみたいならスズキ・スイフトスポーツも選択肢のひとつだ。

 

【使いやすさで選ぶなら】広々とした室内空間は使い勝手も良好!

ホンダ

フィット

155万7600円〜253万6600円

広々とした室内空間と快適な乗り味でコンパクトカーらしからぬ心地良さを提供してくれる。後席の座面をはね上げて背の高いモノを積載できるなど、使い勝手も抜群に良い。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【走りの良さで選ぶなら】強力ターボと軽量ボディが刺激的な走りを実現

スズキ

スイフトスポーツ

187万4000円〜214万1700円

1.4Lの強力直噴ターボエンジンと970kgの軽量ボディで刺激的な走りが楽しめ、コスパも抜群に良いモデル。クルマを操るのが好きな人にはうれしい6速MTも選べるのは◎。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【燃費の良さで選ぶなら】操縦安定性に優れた驚異的低燃費モデル

トヨタ

ヤリス

139万5000円〜249万3000円

新形プラットフォームの採用で高い操縦安定性を実現。36.0km/Lというハイブリッド車の驚異的な燃費に目が行きがちだが、ガソリン車でも最高21.6km/Lと優秀な数値だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ3】ミニバン

使い勝手の良い日産・セレナや、走りの良さを楽しめるホンダ・ステップワゴンに注目。独創的な三菱・デリカD:5のクロカン走破性能は他のミニバンにはない優位点だ。

 

【走りの良さで選ぶなら】低床設計が生み出すしっかりとした走りが魅力

ホンダ

ステップワゴン

271万4800円〜409万4200円

ホンダ独自のセンタータンクレイアウトが可能にした低床設計が、低重心のしっかりとしたフットワークを生む。ハイブリッド車の強力な加速と低燃費も大きな魅力だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】シートアレンジが多彩で広い室内を自在に使える

日産

セレナ

257万6200円〜419万2100円

広い室内と、乗り方や使い方によって自由にアレンジできる3列シートが特徴。通常の約半分のスペースがあれば開閉できるハーフバックドアを設定するなど、芸が細かいのも◎。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【独創性で選ぶなら】個性的なフロントマスクと走破性能は唯一無二の存在

三菱

デリカD:5

391万3800円〜447万2600円

SUVとの融合を図った独創的なミニバン。話題となったコワモテのフロントマスクも印象的だ。走行シーンに応じてドライブモードを選択できるなど、ミニバン唯一無二の存在。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【タイプ4】軽自動車

販売台数No.1を誇るホンダ・N-BOXの牙城は揺るがないが、遊び心満点のスズキ・ハスラーとダイハツ・タフトが華々しくデビュー。安全で楽しく使える軽が充実した。

 

【快適性で選ぶなら】独特な愛らしさに快適な乗り心地がプラス

スズキ

ハスラー

128万400円〜179万800円

愛らしい独特のデザインはもちろんだが、軽自動車らしからぬ快適な乗り心地にも驚かされる。丸目のヘッドライトと大きな3連フレームを備えたインパネデザインは個性的だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【楽しさで選ぶなら】乗員スペースと荷室を分け多彩な使い方が可能

ダイハツ

タフト

135万3000円〜173万2500円

フロントシートをクルースペースとし、リアシートと荷室を荷物の積載スペースと位置付けることで、快適な室内空間を実現。開放的な天井のスカイフィールトップが魅力的だ。

 

[岡本’sジャッジ]

 

【使いやすさで選ぶなら】驚異の室内高が生む自由自在の室内空間

ホンダ

N-BOX

141万1300円〜212万9600円

センタータンクレイアウトによる低床設計で、子どもなら立ったままでも余裕で着替えられる室内高に驚き。両側スライドドアとスライドシートで、小さな子どもも乗せやすい。

 

[岡本’sジャッジ]

新しいドライブ様式は300万円台から始められる! 価格帯別イチオシEVガイド

排出ガス抑制のための規制強化が進むなか、世界の自動車メーカーはこぞって新たなEVを登場させている。ここではいま日本で購入できるEVを価格帯別に厳選して紹介。さぁ、新たなドライブ様式を始めよう!

※こちらは「GetNavi」 2020年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が紹介します

GetNavi編集部 クルマ担当

上岡 篤

EVに乗ってみて、その静かさと圧倒的な加速に驚くばかり。本気で欲しいと思うが、集合住宅住まいなので充電の方法に悩んでいる。

《300万円台》

最先端の技術や最新の素材の採用により、まだまだ“高嶺の花”と思われがちなEV。しかし新車で300万円台と比較的リーズナブルなモデルもあるのだ。もちろん実用性も問題ない。

 

【No.1】日本を代表するEVは電源としても活用できる

日産

リーフ

332万6400円〜499万8400円

2017年にモデルチェンジして2代目になったリーフ。40kWhと62kWhの2タイプのバッテリー容量が選べるが、いずれも一充電で300km以上の走行が可能。住宅に電気を供給する電源としても活用できるのが特徴だ。

SPEC【e+G】●全長×全幅×全高:4480×1790×1565mm ●車両重量:1680kg ●最高出力:218PS(160kW)/4600〜5800rpm ●最大トルク:340Nm(34.7kg-m)/500〜4000rpm ●一充電走行距離(WLTCモード):458km

 

★ここがイチオシ!

日本を代表するEVであるリーフは、プロパイロットなど安全運転支援技術も充実。電源として使えるのはいざという時に安心だ。

 

【No.2】タウンユースにぴったりなコンパクトモデル

三菱

i-MiEV

300万3000円

i-MiEVは2018年に衝突時の安全性確保のため全長が8cm拡大し、それまでの軽自動車規格から登録車規格になった。満充電時の最長航続距離は約164km。タウンユースなら気兼ねなく使えるコンパクトさもメリットだ。

SPEC【X】●全長×全幅×全高:3480×1475×1610mm ●車両重量:1100kg ●最高出力:64PS(47kW)●最大トルク:160Nm(16.3kg-m)●一充電走行距離(JC08モード):164km

 

★ここがイチオシ!

ステアリングのパドルで回生ブレーキの強弱を操作すれば、スポーティな気分も味わえる。年内で生産終了のウワサもあるので注意。

 

《400万円台》

この価格帯から欧州のプレミアムブランドのエントリーモデルが選択可能に。満充電時の走行可能距離は350kmを超え、遠距離ドライブ時の充電場所の不安から大きく解放されるのも選択基準のポイントとなる。

 

【No.1】小型SUVながら高いトルクでグイグイ走る

 

プジョー

e-2008

429万円〜468万円

プジョーのEVの歴史は1941年のVLV(航続距離は約80km)から始まる。そんなプジョーが今年の9月に小型SUVタイプのe-2008を導入。ガソリンエンジンで2.6L相当の260Nmのトルクを誇るモーターを搭載する。

SPEC【GT Line】●全長×全幅×全高:4305×1770×1550mm ●車両重量:1600kg ●最高出力:136PS(100kW)/5500rpm ●最大トルク:260Nm(26.5kg-m)/300〜3674rpm ●一充電走行距離(JC08モード):385km

 

★ここがイチオシ!

小型SUVのEVということで話題性は抜群。ボディは大きく見えるが全高を1550mmに抑えており、立体駐車場も安心して駐車できる。

 

【No.2】バッテリー容量がアップし走行距離もアップ

BMW

i3

499万円〜608万円

i3は2014年にデビューしたRRの完全EV。昨年リチウムイオンバッテリー容量が、従来より30%大きくした120Ahに変更された。バッテリーに充電するエンジンを搭載したレンジ・エクステンダーモデルも選べる。

SPEC【i3 Edition Joy+】●全長×全幅×全高:4020×1775×1550mm ●車両重量:1320kg ●最高出力:170PS/(125kW)/5200rpm ●最大トルク:250Nm(25.5kg-m)/100〜4800rpm ●一充電走行距離(WLTCモード):360km

 

★ここがイチオシ!

まずは個性的なデザインが◎。BMWの正確なハンドリングはEVでもしっかりと味わえる。希少となった観音開きのドアも魅力的だ。

 

《500万円台》

EVもこの価格帯になれば最新のインフォテイメントシステム、豪華な内装、力強いパワーユニットなどが魅力のひとつだったり、選ぶ決め手のひとつだったりする。来年発売予定のアリアに注目が集まっている。

 

【No.1】日本のデザイン意匠をふんだんに採用し急速充電性能も向上

日産

アリア

実売予想価格500万円強〜 2021年発売

アリアコンセプトのショーカーがほぼそのまま発売予定になった日産のニューフェイス。駆動方式も2WDと4WDが用意される。バッテリーは水冷式で細かな制御が可能となり、耐久性も向上。来年の発売が待ち遠しい。

SPEC【2WD 90kWhバッテリー搭載車】●全長×全幅×全高:4595×1850×1655mm ●車両重量:1900〜2200kg ●最高出力:242PS(178kW)●最大トルク:300Nm(30.6kg-m)●一充電走行距離(WLTCモード):610km(社内測定値)

 

★ここがイチオシ!

日本のDNAを表現したデザインは秀逸。急速充電への耐久性も向上し、30分の充電で375km走行可能。EVの充電としてはかなり早い。

 

【No.2】洗練されたインテリアに加え静粛性もポイント

DS オートモビル

DS3 CROSSBACK E-TENSE

534万円

PSAグループの高級車ブランド、DS オートモビルから初のEVが登場。DS3 CROSSBACKの上質感プラスEVならではの乗り心地と静粛性が味わえるのは大きな魅力だ。気になる最大航続距離も398kmと申し分ない。

SPEC【Grand Chic】●全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm ●車両重量:1280kg ●最高出力:130PS(96kW)/5500rpm ●最大トルク:230Nm(25.4kg-m)/1750rpm ●一充電走行距離(JC08モード):398km

 

★ここがイチオシ!

低重心化と独特のサスペンションで上品な乗り心地が味わえる。ガラスも通常よりも厚いものや音響ガラスを使用するこだわりも◎。

 

《900万円台》

市場が大きく変わって輸入車が安くなったと言われても、この価格帯の輸入車はやはりブランド力を持っている。老舗ブランド初のEV、世界トップシェアが放つベンチャー企業の中核的モデルと好対照だ。

 

【No.1】テスラの中核的モデルは圧倒的な加速性能が自慢

テスラ

テスラ モデルS

989万9000円〜1699万9000円

テスラが最初に日本に導入したクルマがモデルS。駆動方式は4WDを採用。走行距離が610kmのロングレンジモデルでも100km/hに到達するまでにわずか3.8秒という、世界トップレベルの加速性能が自慢だ。

SPEC【ロングレンジ】●全長×全幅×全高:4979×1964×1445mm ●車両重量:2215kg ●最高出力:475PS(350kW)●最大トルク:750Nm(76.4kg-m)●一充電走行距離(WLTPモード):610km

 

★ここがイチオシ!

テスラの代名詞的存在の自動運転支援システムやEVパッケージによる室内の広さがウリ。またリモート駐車など新しい装備は魅力だ。

 

【No.2】スポーツカーに匹敵する加速性能をもちながら走行可能距離も十分

ジャガー

I-PACE

976万円〜1183万円

ジャガー初のEVはSUVスタイルで登場。200PSを誇るモーターを前後に2つ搭載し、スポーツカー顔負けの加速性能を持つ。それだけのパワーを持ちながらも満充電で438kmの走行が可能というスペックを誇る。

SPEC【S コイルサスペンション仕様】●全長×全幅×全高:4695×1895×1565mm ●車両重量:2230kg ●最高出力:400PS(294kW)/4250〜5000rpm ●最大トルク:696Nm(70.9kg-m)/1000〜4000rpm ●一充電走行距離(WLTCモード):438km

 

★ここがイチオシ!

ジャガーの魅力である、キャットウォークと呼ばれる乗り心地とハンドリングは健在。前後重量のバランスも50:50と理想的だ。

 

《1000万円超》

この価格帯はメーカーの提案するEVのイメージリーダーでもある。高機能なデバイス、新しいプラットフォーム、贅を尽くしたインテリアなど、いずれもメーカーの威信をかけたフラッグシップモデルなのだ。

 

【No.1】800Vの電圧システムを採用し効率よく充電可能

ポルシェ

タイカン

1448万1000円〜2454万1000円

ポルシェ初となる完全EVモデル。前後にモーターを配しミドルグレードのターボで最大出力680PSを発生させる。他のEVが400Vなのに対してタイカンは800Vシステムの電圧を採用しており、より効率的に充電が可能だ。

SPEC【4S パフォーマンスバッテリー搭載車】●全長×全幅×全高:4963×1966×1379mm ●車両重量:2140kg ●最高出力:435PS(320kW)●最大トルク:640Nm(65.2kg-m)●一充電走行距離(独自基準値):333〜407km

 

★ここがイチオシ!

800Vシステム採用で、わずか22分で80%の充電量にまで到達。最大走行距離は約450km。十分に実用的なポルシェの哲学が生きている。

 

【No.2】ガルウィングドアを採用したテスラ初のSUV

テスラ

テスラ モデルX

1059万9000円〜1299万9000円

テスラ初のSUVとなるモデルX。ロングレンジモデルでの走行距離は507kmを誇る。後席ドアはガルウィングで、身長の高い人でも乗り降りがラク。もちろん最新自動運転支援システムやインフォテインメントも装備する。

SPEC【ロングレンジ】●全長×全幅×全高:5037×1999×1680mm ●車両重量:2459kg ●最高出力:422PS(311kW)●最大トルク:660Nm(67.3kg-m)●一充電走行距離(WLTPモード):507km

 

★ここがイチオシ!

上方に開く後部座席のガルウィングドアは注目度バツグン。3列シートで大人7人がゆったり乗れる余裕の室内スペースも自慢だ。

 

【No.3】メルセデス初のEVは走行状況を判断する頭脳派モデル

メルセデス・ベンツ

EQC

1080万円

メルセデスブランド初の量産EV。ベースはSUVのGLCで、後席も大人がゆったりくつろげるスペースのヘッドルームを確保している。前後にモーターを搭載する4WDだが、低負荷時はFFにもなり走行距離の延長に寄与する。

SPEC【400 4MATIC】●全長×全幅×全高:4770×1925×1625mm ●車両重量:2500kg ●最高出力:408PS(300kW)/4160rpm ●最大トルク:765Nm(78.0kg-m)/0〜3560rpm ●一充電走行距離(WLTCモード):400km

 

★ここがイチオシ!

ロードノイズが抑えられており、Sクラスを超える静粛性能は秀逸。走行距離400kmも実用的。自動運転支援システムも魅力だ。

 

【COLUMN】名車チンクエチェントがEVになって復活!

↑↓バッテリーはフロントに搭載。5.5kWhと10kWhの2種類が用意されている。走行距離は前者が約40km、後者が80kmとなる

 

チンクエチェント博物館

FIAT 500 ev

506万円〜550万円

1957年に登場し1977年までに400万台以上が販売された2代目フィアット500。このモデルをベースにEVへと仕立て上げたのが、私設自動車博物館である、名古屋のチンクエチェント博物館。後部のエンジン位置に搭載されたモーターは約18PSと、エンジンモデルと変わらない出力にこだわった。名車がEVに変貌を遂げるという、クルマの保全の一端を担うという側面もある。

SPEC【ONE BATTERY】●全長×全幅×全高:2980×1320×1320mm ●車両重量:590kg ●最高出力:17.7PS(13kW)●最大トルク:160Nm(16.3kg-m)●一充電走行距離:約40km

ノート、ヤリス、フィットーー「国内3強コンパクトカー」を厳しく採点! 一番よかったのは?

ヴィッツの名を改称したトヨタ・ヤリス、ホンダ・フィット、日産・ノートが揃ってフルモデルチェンジ。販売台数でトップを競う国内3強コンパクトカーがもたらす衝撃度を、プロが厳しい目でジャッジ。採点項目は、デザイン/走り/インテリアの上質さ/コスパ/安全性能の5項目で各20点満点で評価した。

 

※こちらは「GetNavi」 2021年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

モータージャーナリスト

岡本幸一郎さん

軽自動車から高級輸入車まで、ユーザー視点をモットーに広く深く網羅。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

【その1】日産ならではの先進技術を満載した未来感あふれる新顔

日産

ノート e-POWER

202万9500円〜218万6800円

モーターは先代ノートに比べ、トルクを10%、出力を6%向上。よりパワフルで気持ちの良い発進加速と、中高速からの追い越しでの力強い加速感を実現する。エンジンの作動頻度低減や、車体の遮音性能向上により静粛性もアップ。

SPEC【X】●全長×全幅×全高:4045×1695×1520mm●車両重量:1220kg●パワーユニット:電気モーター+1198cc直列3気筒DOHC●最高出力:116[82]PS/2900〜10341rpm●最大トルク:28.6[10.5]kg-m/0〜2900rpm●WLTCモード燃費:28.4km/L ※[ ]内は発電用エンジンの数値

 

動力源はe-POWERのみ! プロパイロット搭載も魅力

8年ぶりにモデルチェンジしたばかりのノートは、ガラリと雰囲気が変わった。フラットながら豊かな面の抑揚を持つ斬新な外観とともに、ハイテク感満載のインテリアもかつてない雰囲気。個性的な柄のシートの質感も高い。

 

動力源は、日産お得意のエンジンで発電した電気により100%モーターで走るe-POWERのみという割り切りよう。既存の簡易版ではなく、前後に2基の強力なモーターを搭載して4輪を駆動する本格電動4WDが選べるのも新しい。

 

高速道路での自動制御を行う「プロパイロット」をコンパクトカーとして初搭載。しかもカーナビと連携して急なカーブの手前であらかじめ減速する等の、日産初の機能を備える点にも注目だ!

 

日産独自のVモーションが精悍な顔つきを作り出す

↑薄型のヘッドライトから繋がる日産独自のVモーションフロントグリルが印象的。新しくなったロゴマークを市販車として初採用する

 

直線的なラインが印象的な上質感あふれるインテリア

↑1本の直線がインパネの一体感を生む。ナビゲーションとメーターは1枚の板で繋がったようなつくりで、視線の移動を少なくしている

 

360度に渡り周囲を見回す全方位運転支援システム

↑カメラとレーダーによってクルマの周囲を見回して安全運転を支援する、全方位運転支援システムを搭載。プロパイロットも備える

 

岡本’s ジャッジ
ついにこのクラスにもプロパイロットを搭載! 先進的なインテリアの質感は上々だが、斬新なスタイリングは好みが分かれるかも。e-POWERのみとなり価格が上がったのは否めず。
【衝撃度21】
・デザイン 4
・走り(予想) 4
・インテリアの上質さ 4.5
・安全性能 5
・コスパ 3.5
※各項目5点満点、計25点満点で採点(以下同)

 

【その2】改名とTNGA化で心機一転!キャラの立つデザインも光る

トヨタ

ヤリス

139万5000円〜249万3000円

コンパクトカー向け新プラットフォーム「TNGA」を採用し、軽量かつ高剛性、低重心なボディを実現。軽快なハンドリングを実現するとともに、ハイブリッド車では最高36.0㎞/Lの燃費を誇る。

SPEC【HYBRID X・2WD】●全長×全幅×全高:3940×1695×1500mm●車両重量:1050kg●パワーユニット:1490cc直列3気筒+モーター●最高出力:91[80]PS/5500rpm●最大トルク:12.2[14.4]kg-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:36.0km/L  ※[ ]内はモーターの数値

 

どの動力でも驚異の低燃費! ハイブリッドは瞬発力抜群

他の2モデルよりもコンパクトで、内外装とも個性的なデザインが光る。車内は前席重視のつくりで、ファミリー層には不向き。その意味では他の2モデルと市場で競合するものの、ガチンコのライバルではなさそう。ワンタッチで好みのポジションに戻せる運転席シートはアイデア賞モノだ。

 

高いボディ剛性は走りの良さにも寄与している。3種類から選べるパワーソースの燃費はいずれも上々で、ハイブリッドは意外なほど瞬発力にも優れる。3モデルで唯一MTの設定があるのも特徴だ。

 

ボタンを押すだけで駐車操作をアシストする

↑駐車の際ステアリング・アクセル・ブレーキ操作を自動で制御。ドライバーの負担を大きく軽減してくれる

 

ムダをそぎ落として高い操縦安定性を実現

↑コンパクトカーとして初めてTNGAを採用。低重心化することで操縦安定性が高まり、運転もしやすい

 

岡本’s ジャッジ
燃費は驚異的。思い切った内外装デザインや、トヨタのハイブリッドの先入観を打破する瞬発力ある走りにも驚いた。半面、インテリアや走り味がややチープなところが気になる。
【衝撃度18】
・デザイン 4.5
・走り 3
・インテリアの上質さ 3
・安全性能 3.5
・コスパ 4

 

【その3】「心地良さ」をテーマに開発された万能モデル

ホンダ

フィット

155万7600円〜253万6600円

視界の広さや、座りやすさ、運転しやすさといったユーザビリティを追求。特に低床設計が生む使い心地の良さは特筆モノで、多彩なシートアレンジが可能。長いモノから背の高いモノまで余裕で積載できる。異なる5つのタイプから選べるのも◎。

SPEC【e:HEV BASIC・2WD】●全長×全幅×全高:3995×1695×1515mm●車両重量:1180kg●パワーユニット:1496cc直列3気筒+モーター●最高出力:98[109]PS/5600〜6400rpm●最大トルク:13.0[25.8]kg-m/4500〜5000rpm●WLTCモード燃費:29.4km/L ※[ ]内はモーターの数値

 

低いフロアが生む広い室内が優れた使い心地を実現する

独自のセンタータンクレイアウトによる低いフロアを実現。コンパクトながら、広々とした室内空間をより有効に使えるのが特徴だ。後席の居住性には特に優れ、シートを跳ね上げて背の高い荷物を積むこともできる。

 

e:HEVのエンジンは高速クルーズ時など以外はほぼ発電機として機能し、モーターが駆動力を担う仕組み。リニアで効率にも優れている。柴犬をイメージしたという親しみやすい外観が想起させる通り、触れるほどにジワジワと心地良さを実感させるモデルだ。

 

モーター+エンジンでパワフルな走行が可能

↑発電用と走行用2つのモーターとエンジンを搭載。加速時や高速クルーズ時などパワフルな走行が可能だ

 

使い勝手の良い荷室は十分な高さを確保する

↑前席下部に燃料タンクを置くことで実現した低床設計。荷室の高さも十分で、背の高いモノも積載できる

 

岡本’s ジャッジ
プラットフォームは他モデルの流用ながら、完成度の高い快適な走り味を楽しめる。極細ピラーにより視界が極めて良好で、車内は外見から想像するよりも広々としているのも強み。
【衝撃度21.5】
・デザイン 4
・走り 4.5
・インテリアの上質さ 4
・安全性能 4.5
・コスパ 4.5

 

新施設「ニッサン パビリオン」は楽しい? 5つの「近未来」を解説

日産自動車は、10月23日まで、同社が描く未来のモビリティ社会をインタラクティブに体感できる、体験型エンターテインメント施設「ニッサン パビリオン」を期間限定で、横浜みなとみらい21地区にオープン。夏休みに子どもと行くには持ってこいの遊び場だろうと思い、乗り物担当編集部員・野田が行ってきました。

 

日産が描く近未来の暮らしを体感

ニッサン パビリオンでは、日産自動車の電動化・自動運転化など、「ニッサン インテリジェント モビリティ」が描く未来のモビリティ社会を、さまざまな体験コンテンツを通じて来場者に届けるスポット。

 

コンセプトは「人間の可能性を拡張する」で、技術のイノベーションを通じて日産が描く近未来の暮らしを、「エンターテインメント」「アート」「メディア」など各種コンテンツ、インスタレーション制作で活躍するクリエイターの視点や解釈により具現化しています。ニッサン パビリオン内の5つのコンテンツを簡単に紹介します。

↑敷地面積は約1万メートル。幅広い中庭には、リーフやアイスクリーム移動販売車のコンセプトカー(e-NV200)、GT-Rなどが並びます

 

【その1】日産 アリア展示・乗車体験

パビリオン内に入ると、まず目に入るのが7月15日に披露した、新型クロスオーバーEV「アリア」。事前予約制ですが、アリアに乗って敷地内の専用路を同乗体験をすることもできます。

↑アリアのボディサイズは全長4595mm、全幅1850mm、全高1655mm

 

↑アリアの横に透明のパネルが置かれた「ARIYA Virtual Display」。ジェスチャーで操作することで、アリアに搭載された技術を確認することができます

 

【その2】THE THEATER

「ザ シアター」は、幅32m×高さ6mの4Kプロジェクション大型スクリーンと、ソニーのハプティクス技術(触覚提示技術)による振動する床などを活用し、迫力の空間でクルマの先進技術を感じられるエンターテイメントショーです。

 

実際に日産 アリアが劇場内に入ってきて、実車と映像がリンクする「ARIYA SHOW(アリア ショー)」。100%電動フォーミュラーカーに乗って、レースさながらに世界の都市を駆け巡るバーチャルライドアクション「FOMULA E THE RIDE(フォーミュラ E ザ ライド)」。見えないものを可視化する日産の新技術I2Vを駆使し、大阪なおみ選手の200km/hのサーブを打ち返し、ラリーを繰り広げる「NAOMI BEATS(ナオミ ビーツ)」といった、3つの最新のエンタメが楽しめます。

↑アリアショーは、まるで本当に街を走り抜けているような臨場感がありました

 

↑フォーミュラ E ザ ライドは手元にあるコントローラーでコースを選択でき、床も振動したりと、大迫力のレースゲームを体感できます

 

↑ナオミ ビーツは事前予約制ですが、お客さんもゲームに参加できます。見ているだけでも、プレイヤーたちの楽しさが伝わってきました

 

【その3】THE LIFE

THE LIFEコーナーでは家族や恋人をテーマに、「プロパイロット」をはじめとした先進運転支援技術が可能にする未来を描いた2本のショートムービーを上映。そのうちの1本は、大ヒットアニメ「君の名は。」をはじめ多くの新海誠監督作品を手掛けたプロデューサー・伊藤耕一郎氏による「コネクテッド・ファミリー」。約6分半のアニメです。

↑クルマがつなぐ未来の家族物語。上映中、ストーリーの展開に合わせて、照明の色が変化します

 

【その4】THE CITY

THE CITYコーナーでは日産自動車が目指す、交通事故のない社会。そして、クルマに乗っている時も乗っていない時も、クルマと街がより便利につながる社会。その両方の実現に必要なセンシング技術や、クルマからエネルギーや情報が行き渡る様子をモチーフにしたアート空間を体験できます。ビジュアルデザインスタジオWOWがデジタルインスタレーション作品に仕上げました。

↑衝突を回避する「センシング技術」を、特殊なレーザーで擬似体験できます。人が通るとレーザーが自然と避けていきました

 

【その5】 NISSAN CHAYA CAFE

最後に紹介するのは、日産が目指すエネルギーのエコシステム「Nissan Energy(ニッサン エナジー)」を導入した「NISSAN CHAYA CAFE(ニッサン チャヤ カフェ)」。カフェ内では、運転支援技術「プロパイロット」を応用した無人給仕ロボット「プロパイロットウエイター」が料理を運んでくれます。

 

さらに、パナソニックと共同開発した、お皿のICチップに反応してカロリーなどエネルギー情報がアニメーションでテーブル天板に流れる「インタラクティブテーブル」など。食事だけでなく目でも楽しめるハイテク体験でお客さんをおもてなしします。

↑水耕栽培で育った野菜や日産ビールなど、オリジナルメニューを用意。さらに日産ロゴをあしらったオリジナルグッズも販売しています

 

↑無骨な見た目のプロパイロットウエイター。withコロナの現代社会では、非接触のありがたみもあります

 

↑食事のカロリーを電力に変換して表示してくれるインタラクティブテーブル。テーブルに置くだけでスマホを充電できるワイヤレス充電機能も備えています

 

またパビリオンでは、カフェの屋根に設置された太陽光パネルで発電した再生可能エネルギーを「リーフ」に蓄電し、そのリーフに溜めた電力をカフェの一部の電力として使用しています。

↑リーフのリユースバッテリーも活用することで、安定的な電力供給を可能にしています

 

ニッサン パビリオンは見て、感じて、ワクワクする、子どもから大人まで幅広いお客さんが楽しめる施設でした。昨年の「東京モーターショー2019」では、トヨタがモビリティメーカーだというメッセージが感じ取れました。対して日産は、この施設で先進技術からアプローチし、未来の人々の暮らしを豊かにするメーカーへと変化していくという意気込みなのでしょう。しかし、この施設が期間限定なんて勿体ないですよ日産!

住所:220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい6-2-1
オープン期間:2020年8月1日〜10月23日
営業時間:平日11:00~19:00、土日祝10:00〜19:00
料金:無料
休館日:不定期

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

日産「セレナ e-POWER」が売れる本質って?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、今年の上半期に最も売れたミニバン・日産セレナの人気を牽引するe-POWERモデルの本質を分析してみました。

 

【登場人物】

永福ランプこと清水草一

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年になってペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更。本連載をまとめた「清水草一の超偏愛クルマ語り」も発売中。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。

 

 

【今回のクルマ】日産 セレナ e-POWER

SPEC【ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4770×1740×1865㎜●車両重量:1760㎏●パワーユニット:モーター+1198㏄直列3気筒DOHCエンジン●エンジン最高出力:84PS(62kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:10.5㎏-m(103Nm)/3200〜5200rpm●JC08モード燃費:26.2㎞/ℓ●243万5400円〜382万1040円

 

ブレーキをほとんど踏まずに走れて楽しいと、一般ユーザーにも人気

安ド「殿! 日産のe-POWERシリーズ、売れてるみたいですね」

永福「うむ。ガソリンエンジンで発電してモーターで走る、シリーズハイブリッドというシステムだが、大変よく売れている」

安ド「トヨタのハイブリッドとは構造が違うんですね!」

永福「トヨタのハイブリッドは、エンジンとモーターの動力を合体して走るが、日産のe-POWERは、エンジンは発電することに徹し、モーターのみで走るわけだ」

安ド「それと売れ行きとは関係あるんでしょうか」

永福「あるらしい」

安ド「それはどんなワケで?」

永福「日産のe-POWERはモーターだけで走るので、回生ブレーキの効きをうんと強くできる。ガソリン車でいうエンジンブレーキだ。アクセルを離すだけでかなりブレーキがかかり、ブレーキペダルを踏む必要があまりない」

安ド「ワンペダルドライブというヤツですね!」

永福「ブレーキをほとんど踏まずに走れて楽しいと、一般ユーザーにもウケているようだ」

安ド「“ひと踏みぼれ”というヤツですね!」

永福「知っておるではないか」

安ド「知ってました! でも、モーター駆動でも走っていて違和感がないので、普通の人は言わなきゃモーターで走っているとわからないんじゃないですか?」

永福「回生ブレーキが強くかかるECOモードでは違いは歴然だが、ノーマルモードでは、音の静かなミニバンだなぁくらいの、自然な感じだ」

安ド「ECOモードとノーマルモード、どっちがいいんでしょう」

永福「一般道ではECOモード、高速道路ではノーマルモードがいい。高速道路でECOモードだと、アクセル操作に敏感に反応しすぎて、疲れてしまうのだ」

安ド「僕も高速道路ではノーマルで走りました!」

永福「ただし、高速道路で『プロパイロット』を使う場合は、ECOモードでOKだ」

安ド「『プロパイロット』というのは、日産の自動運転技術ですね!」

永福「自動運転とまではとても言えず、アダプティブ・クルーズ・コントロール+α程度だな。しかし、クルマまかせで前車に追従して走るときは、エンジンブレーキが強力にかかったほうが、速度をコントロールしやすいのだ」

安ド「なるほど!」

永福「総合的に見ると、セレナe-POWERは、ミニバンのなかではなかなか良いな」

安ド「僕もそう思いました! ライバル車と比べて走りに安定感があって、乗り心地も良かったです」

永福「しかし、ミニバンというヤツは決して安くない」

安ド「おいくらでしたっけ?」

永福「試乗車は、車両本体が約340万円。オプションは約80万円」

安ド「400万円オーバーですね! 実燃費は16㎞/ℓ以上でしたが」

永福「うーむ、焼け石に水だな」

 

 

【注目パーツ01】リアサイドスポイラー

低燃費に貢献するルーフ後端形状

ルーフの後端には両端がウネウネしたスポイラー(羽根)が付けられています。小さなウネウネですが、スポイラーは空力性能を向上させるためのアイテムですから、これも燃費性能の向上に少しは貢献しているのかもしれません。

 

 

【注目パーツ02】フロントブルーグリル

エコなイメージのブルーライン

フロント面積のうち大きな割合を占めるグリルには、ブルーのアクセントラインが施されています。内装にも各所にブルーのアクセントが採用されていて、これがエコなイメージと先進性を高める役割を果たしています。

 

 

【注目パーツ03】ハーフバックドア

上部だけ開けられるから便利

ミニバンのバックドアは巨大なので、開ける際に後方に気を使う必要があります。しかしセレナは上部だけ開けることが可能なので、全面を開けるのに比べてスペースを気にせずOK。軽いので力も小さくて済みます。

 

 

【注目パーツ04】15インチエアロアルミホイール

専用デザインで先進性アピール

不思議な紋様をあしらわれたホイールは、e-POWER専用装備。シルバーの面と黒の面を織り交ぜつつ、風切り線をつけることで、先進性とスピード感を感じさせるデザインに仕上がっています。知ってる人が見ればe-POWERだとすぐわかるはず。

 

 

【注目パーツ05】セカンドキャプテンシート

リラックスできる快適仕様

e-POWER専用装備として、2列目にはロングスライドが可能でアームレストもついたキャプテンシートが採用されています。セレナは室内スペースでもミニバントップクラスですが、このシートなら、さらにリラックスして乗れます。

 

 

【注目パーツ06】ヘッドレスト

ミニバン後席の閉塞感を打破

これは3列目シートからの眺めですが、気になるのは1、2列目シートのすべてのヘッドレストに穴が開いていること。その理由は、少しでも乗員に開放感を感じさせるためだとか。もちろん座面も高めに設定されています。

 

 

【注目パーツ07】スマートアップサードシート

できるだけ窓を隠さない設計

ミニバンの3列目シートは前倒し式や床下収納など様々なアレンジ方法がありますが、セレナは側面跳ね上げ式を採用しています。ただし、跳ね上げてもサイドのガラスをほとんど隠さない設計で、運転時の視界を妨げません。

 

 

【注目パーツ08】キャップレス給油口

手を汚さずに給油できる

フタを開けると中にはキャップのない給油口があります。これは日産としては初採用なんだとか。セルフガソリンスタンドが全盛の昨今ですし、給油時に手を汚したくないというドライバーからは、好評に違いありません。

 

 

【注目パーツ09】プロパイロット

“条件付き”自動運転システム

プロパイロットは、高速道路の同一車線内において、アクセルやブレーキ、ステアリングをクルマが自動操作してくれるシステム。セットすればアクセルやブレーキはほぼ自動ですが、ステアリングはあくまで補助です。

 

 

【これぞ感動の細部だ】e-POWER

ワンペダルのみの操作で加速から減速まで自在に走れる

エンジンで発電した電力を用いてモーターで駆動するのがe-POWERシステムです。モーターならではの強い制動力を持つ回生ブレーキの特徴を利用して、アクセルペダルの踏み戻しだけで、加速も減速もできてしまいます。一昨年にノートで初採用されましたが、ミニバンでもその魅力は健在。トルク感のあるEVらしい走りを味わえます。

 

 

撮影/池之平昌信

【1分でわかる】日産 セレナ e-POWERってどんなクルマ?

注目モデルをコンパクトに紹介するこのコーナー。今回は独自の電動パワートレインを積んだ人気ミニバン、日産 セレナ e-POWERを紹介します。

 

最長で約2.7㎞ながらフルEVとしても走行可能

SPEC【ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4770×1740×1865㎜●車両重量:1760㎏●パワーユニット:1198㏄直列4気筒DOHC●最高出力:84PS/6000rpm●最大トルク:10.5㎏-m/3200〜5200rpm●モーター出力:136PS●モータートルク:32.6㎏-m●カタログ燃費:26.2㎞/ℓ

 

大人気ミニバンに「e-POWER」を搭載!

トヨタのノア&ヴォクシーや、ホンダのステップワゴンなどと熾烈なミニバンシェア争いを繰り広げるセレナに、日産独自の電動パワートレイン「e-POWER」仕様が追加されました。これは発電専用のガソリンエンジンに駆動/充電用電気モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせたシリーズ式ハイブリッドで、ノートでも導入済み。セレナでも、電気モーターならではのスムーズな加速と静粛性の高さが実感できます。

 

また、最長で約2.7㎞とはいえ「マナーモード」を選択すれば完全なEV走行も可能。持ち前のユーティリティの高さはそのままに、“未来のクルマ”感覚が楽しめます。ライバルに対する大きなアドバンテージとなりそう。

 

【注目ポイント01】専用装備を配置して先進性もアピール 

室内の作りは、基本的に従来からのセレナと変わらない。しかし、電子制御のシフトセレクターやモニターの表示を変更して独自性をアピールしています。

 

【注目ポイント02】外観もさりげなくオリジナル仕立てに

サイドスポイラーやLEDのコンビランプ、ブルーのアクセントが入るフロントグリルなどがe-POWERの専用装備。グレードは5タイプを用意しています。

【中年名車図鑑】スポーティ性は上々だがファッション性はちょっと…若干地味だった“白い稲妻”

小型スペシャルティカー市場におけるユーザー志向の多様化がより顕著になった1980年代の中盤、日産自動車は4代目となるシルビアを発売する。目指したのは“スポーティ性”と“ファッション性”が高次元で両立した次世代の本格的スペシャルティだった。今回は“白い稲妻”のキャッチを冠して登場したS12型シルビア(1983~1988年)の話題で一席。

【Vol.63 4代目・日産シルビア】

厳しい排出ガス規制と2度の石油危機を克服し、クルマの高性能化に力を入れるようになった1980年代初頭の日本の自動車業界。その最中で日産自動車は、小型スペシャルティカーのシルビア(と兄弟車のガゼール)の全面改良を鋭意、推し進めていた。

 

80年代中盤に向けたスペシャルティカーを企画するに当たり、開発陣は市場のユーザー志向を入念に調査する。そして、「スペシャルティカーを欲するユーザーは流行に敏感で、ライフスタイルもますます多様化している。新型は、そんなユーザー層にアピールできるスペシャルティカーに仕立てなければならない」という結論に達した。これを踏まえて開発陣は、“スポーティ性”のさらなる追求と“ファッション性”に磨きをかけることを目標に掲げる。具体的には、高性能エンジンや先進の足回りを組み込んだハイメカニズムによる“俊敏でスポーティな走り”と機能美を徹底追求した“精悍で斬新なスタイルとインテリア”を高度に調和させるという方針を打ち出した。

 

■ボディラインとともに装備でもスペシャルティ感を演出

2ドアクーペと3ドアハッチバックの2ボディを用意。どちらも走りの性能を重視したディメンションを採用した

 

スペシャルティカーの最大の特徴となるスタイルに関しては、強いウエッジと低いノーズライン、大胆に傾斜したフロントウィンドウ、さらにハイデッキによるシャープなシルエットでスポーティ感を演出する。ボディタイプは2ドアクーペと3ドアハッチバックを設定。2ボディともにフルリトラクタブルヘッドランプの採用と車体全般のフラッシュサーフェス化を実施し、空気抵抗係数はクラストップレベル(ハッチバックでCd値0.34)を実現した。一方、ボディサイズは全長と全幅を従来のS110型系より短縮したうえで、ホイールベースを25mm、トレッドを前35~45mm/後20~60mmほど拡大し、走りの性能を引き上げるディメンションに仕立てた。

 

キャビンスペースについては、上質感を創出したインパネやエキサイティングなイメージを醸し出すメータークラスター(メーターはデジタル表示とアナログ表示の2種類を設定)、ストレートアームを使いやすい高さに設定したステアリング配置、高弾性ウレタンを内蔵したシートなどでスペシャルティ性を強調する。また、上級グレードの前席には8つの部位を自由に調整できるマルチアジャスタブルタイプのバケットシートを装着した。

 

開発陣は内外装の装備面についてもこだわる。先進アイテムとしてはマイコン制御のオートエアコンやダイバシティFM受信システムを組み込んだオーディオ、再生効果を高めたスピーカーシステム、国産車初採用のキーレスエントリーシステム、目的地の方向を指示するドライブガイドシステムなどを装備。さらに、世界初採用となるリアパーセルボード共用タイプのパワーウーハーやワイパー付フルリトラクタブルヘッドランプクリーナー、国産車初のチルトアップ&スライド機能付き電動ガラスサンルーフを設定した。

 

パワートレインについては、旗艦エンジンのFJ20E型1990cc直列4気筒DOHC16V(150ps)と同エンジンのターボチャージャー付き(FJ20E-T型。190ps)を筆頭に、従来のZ型系ユニットに代わる小型・軽量・低燃費のCA18型系1809cc直列4気筒OHCエンジンの3機種(CA18S型100ps、CA18E型115ps、CA18E-T型135ps)を設定する。また、FJ20E型系エンジン搭載車にはギア径200mmのファイナルドライブとリミテッドスリップデフを、CA18E-T型エンジン搭載車には5速MTのほかにOD付き4速ロックアップオートマチックトランスミッションを採用した。

 

走行面の機構では新たにラック・アンド・ピニオン式ステアリングを装備したほか、リアサスペンションに新開発のセミトレーリングアーム式独立懸架(FJ20E型系/CA18E-T型エンジン搭載車。それ以外は4リンク式)を組み込む。さらに、FJ20E型系エンジン搭載車には偏平率60%の195/60R15 86Hのラジアルタイヤを標準装着(CA18E-T型エンジン搭載車にはオプション)した。

 

■キャッチフレーズは“白い稲妻”

スペシャルティカーとして装備にもこだわった。マイコン制御オートエアコン、キーレスエントリーなど先進アイテムを採用した

 

第4世代となるシルビアは、S12の型式と“白い稲妻”のキャッチフレーズを冠して1983年8月に発売される。車種展開はクーペとハッチバックを合わせて計22タイプのワイドバリエーションを誇った。

 

市場に放たれたS12型シルビアのなかで、ユーザーから最も注目を集めたのはFJ20E型系エンジンを搭載するRS-X系グレードだった。カムシャフトの駆動に2ステージのローラーチェーンを採用した赤ヘッドの4バルブエンジンは、1.2トンクラスのボディを力強く加速させる。とくにターボ付きのFJ20E-T型を積むRS-Xのパフォーマンスは強烈で、4000rpm付近を境にしたパワーの急激な盛り上がりや荒い鼓動などが、走り好きを大いに惹きつけた。一方、コーナリングの楽しさや走りのバランス性を重視するユーザーには、新開発のCA18E-T型エンジンを搭載したターボR-X系グレードが支持される。FJ20E型系エンジンよりも前輪荷重が軽く、しかも前軸後方に収まるレイアウトが、コーナリング性能を高める要因だった。

 

ファッション性を重視したマイナーチェンジ

スポーティ性とファッション性を高次元で融合させた本格的小型スペシャルティカーのS12型シルビア。しかし、ユーザーが興味を示したのはスポーティ性がメインで、スペシャルティカーならではの特徴であるファッション性に関しては、2代目ホンダ・プレリュードなどと比較されてあまり高い評価が得られなかった。さらに1985年8月に最大のライバルである4代目トヨタ“流面形”セリカが登場して以降は、ルックスの地味さが目立つようになった。

 

この状況を打破しようと、日産は1986年2月にシルビアのマイナーチェンジを実施する。キャッチフレーズは“きもちまでスペシャルティ”。内外装の細部はより洗練されたイメージに変更され、ボディ長やボディ幅も拡大される。エンジンは高コストのFJ20E型系を廃止すると同時に、CA18DE-T型のツインカムターボ仕様(145ps)をラインアップに加えた。またCA18DE-T型エンジン搭載車には、パワーエコノミー自動切替式の電子制御OD付き4速ロックアップオートマチックの新トランスミッションを設定する。ちなみにこの時、兄弟車のガゼールは車種整理のためにカタログから外された。シルビアにおけるファッション性の追求は、さらに続く。1987年2月にはクーペの「ツインカムターボ フルホワイトRS-X」をリリース。同年7月になると、やはりクーペの「R-Xホワイトセレクト」と「ターボ フルホワイトR-X」を発売した。

 

日本市場での人気ボディカラーの“白”戦略は一部ユーザーには受けたものの、シルビア全体の販売台数の底上げにはつながらなかった。そして1988年5月には、シルビアの全面改良が行われる。5代目となるS13型シルビアは、4代目での反省を生かし、ファッション性を最大限に重視するモデルに仕立てられたのである。

 

■2世代に渡って製作されたシルビアのスーパーシルエットフォーミュラ

最後にトピックをひとつ。シルビアはS110型とS12型の2世代に渡って、当時のモータースポーツの人気カテゴリーであるスーパーシルエットフォーミュラ(FIAのグループ5)の素材車として活用された。1981~1983年には日産のレース部隊が手がけたエアロパーツを纏うS110型風シルビア・ターボ(1981年仕様は市販車の大幅改造版。1982年以降の仕様はパイプフレームシャシーで、異例のサイドラジエター方式)が、星野一義選手のドライブによって大活躍。1981年と1982年開催の富士300キロスピードレースや1983年開催の富士グラン250kmレースなどで優勝する。広告展開でも“烈火の炎”というキャッチコピーとともに、S110型系シルビアと黄色い稲妻ストライプのスーパーシルエットフォーミュラ・シルビア・ターボ、そして“日本一速い男”星野選手が共演した。

 

スーパーシルエットフォーミュラ・シルビア・ターボは、1983年後半になるとS12型風のボディシェルに変更し、9月開催の富士インター200マイルでは2位に、10月開催のスーパーカップレースではSSクラス優勝を果たす。ちなみに、現在日産自動車が保管するゼッケン23のスーパーシルエットフォーミュラ・シルビア・ターボは、このS12型風のボディシェルで演出した1台である。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

日産、イオンモール座間にインフォメーションセンターを開設

日産は3月16日に開業した「イオンモール座間」に「NISSAN ZAMA INFORMATION CENTER(ニッサン・ザマ・インフォメーションセンター)を開設した。この新しいイオンモールの所在地は、かつて日産の座間工場があった場所。座間工場は1964年に竣工、1995年に閉鎖するまでの約30年間で当時の主要モデルである「サニー」や「ダットサン」など、累計で1000万台以上の車両を送り出した日産を代表する生産拠点だった。そして、工場の閉鎖以降も新型車の試作や電気自動車の主要部品の開発を担うなど、現在も重要なグローバルの生産技術の拠点となっている。

今回開設するインフォメーションセンターでは、座間工場が生産を担っていた名車から、現在日産が推進する「ニッサンインテリジェントモビリティ」を象徴する最新モデルまで、さまざまなクルマの展示を行なう。また、座間事業所の紹介コーナーでは座間工場時代に生産したクルマのミニカー展示や、現在のグローバル生産技術拠点の要としての取り組みを紹介する。今後は、子供と一緒にモノづくりの楽しさを学べる体験学習教室なども開催予定。さらに、隣接する神奈川日産・カレスト座間店と連携したカーライフの提案や試乗体験なども実施していくという。

 

■概要

名称:イオンモール座間「NISSAN ZAMA INFORMATION CENTER」

住所:神奈川県座間市広野台2-10-4 イオンモール座間1F

営業時間:10:00~21:00(年中無休)

【中年名車図鑑】失敗作と評される「セブンス」だが、R32よりも売れたことはあまり知られていない…

日産自動車は1985年8月にスカイラインの全面改良を実施して7代目に切り替える。デビュー当初のボディタイプは4ドアセダンと4ドアハードトップの2種類で、いずれも“高級感”を全身で主張。9カ月ほどが経過した1986年5月にはスポーツモデルとなる2ドアスポーツクーペGTSシリーズを市場に放った――。今回は“都市工学”というキャッチを冠してスポーティとラグジュアリーを共存させた7thスカイラインで一席。

【Vol.58 7代目 日産スカイライン】

イメージキャラクターにポール・ニューマンを起用し、またS20型以来の4バルブDOHCエンジン(FJ20)を復活させてスポーツイメージを全面に押し出した6代目のR30スカイライン。しかし、販売成績の面で見ると5代目のC210 “ジャパン”ほどの台数は獲得できなかった。市場調査によると、最大の敗因は高級感とファッショナブル性の欠如。ライバルであるトヨタのマークⅡシリーズに比べて、ミドルクラスらしい車格と優雅さが希薄だったという結論が導き出されたのである。この結果に対して開発陣は、次期型スカイラインが目指すキャラクターを「ソフィスティケートされた高級スポーティサルーン=ソフトマシーン」に定義。同時に、先進技術の導入も精力的に推し進めた。

 

■高級スポーティサルーンに変身した7代目

当時はハイソカー・ブーム真っ只中。4ドアハードトップが人気を集めた

 

車両デザインに関しては、従来のR30型系のシャープなボディラインを踏襲しつつ、各部の質感を大幅に高める。ボディ形状は従来の4ドアセダンのほかに、スカイライン初の4ドアハードトップを新設定。また、全長や全幅も伸ばし、室内空間の拡大とともに見た目の高級感の創出を図った。フロントがマクファーソンストラット式、リアがセミトレーリングアーム式という足回りは基本的に従来モデルと同形式だが、ボディの大型化や高級サルーンへの路線変更により、セッティングを大幅に見直す。さらに、新機構としてHICAS(High Capacity Actively Controlled Suspension)と呼ぶ電子制御4輪操舵システムを設定した。リアのセミトレーリングアームが取り付けられたクロスメンバーの左右支点(ラバーマウント部)に小型の油圧アクチュエータを設け、電子制御により後輪を同位相に微小角度変位させるこの新システムは、30km/h以上で車速および車両横Gに応じて後輪を最大0.5度までアクティブにステアさせることによりスタビリティを向上させる仕組みで、とくに高速コーナリングでのセーフティマージン向上に大きく貢献する機構だった。

 

搭載エンジンは、従来のL型系に代わる新世代6気筒ユニットのRB型系をメインに採用する。新設計の4バルブDOHCヘッドを備えたRB20DE型1998cc直列6気筒DOHC24V(165ps)とそのターボ版のRB20DET型(210ps)を筆頭に、RB20ET型1998cc直列6気筒OHCターボ(170ps)、RB20E型1998cc直列6気筒OHC(130ps)、CA18S型1809cc直列4気筒OHC(100ps)、そしてディーゼルユニットのRD28型2825cc直列6気筒OHC(100ps)という計6機種を設定した。また、RB20DE型系には世界初採用となる電子制御可変吸気コントロールシステム(NICS)やハイテンションコードを省いて常に安定した2次電圧を供給するダイレクトイグニッションシステム(NDIS)などの新機構を組み込んだ。

 

■4ドアハードトップと4ドアセダンの2本立てで販売をスタート

4ドアハードトップの室内空間。高級サルーンのコンセプトに則り、インテリアの高級化とともに、居住スペースの拡充がはかられた

 

高級路線へとシフトした7代目スカイラインは、R31の型式を付けて1985年8月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“都市工学です。7th Skyline”。ボディタイプはイメージリーダーとなる4ドアハードトップと4ドアセダンのみの設定で、歴代スカイラインのスポーツモデルの象徴である2ドアモデルはラインアップから外れた。

 

高級スポーティサルーン、当時の表現でいうと“ハイソカー”にキャラクターを一新した7代目スカイラインは、市場での評価が大きく分かれた。販売成績の面では、とくにハイソカー・ブームに乗った4ドアハードトップ車が好成績を獲得。一方、昔からのスカイライン・ファンには不評で、往年のキャッチフレーズをもじって“牙を抜かれた狼”などと揶揄された。しかし、このような評判になることは日産スタッフもある程度は予想していた。そして、スカイライン伝統の“走り”を極めたスポーツモデルの2ドアハードトップの開発を、鋭意進めたのである。

 

■待望の2ドアスポーツクーペの追加

1986年5月「2ドアスポーツクーペGTS」シリーズが追加された。特徴的な3次曲面エアロカーブドガラスやラップラウンドリアウィンドウなどを組み込んだ“スーパーエアロフォルム”を採用

 

市場デビューから5カ月ほどか経過した1986年1月には5ドアワゴンが登場。そして、4カ月後の1986年5月、7thスカイラインに待望のスポーツモデルとなる「2ドアスポーツクーペGTS」シリーズが追加された。商品テーマは「時代にジャストフィットするテイストを備えたうえで、快適にスポーツ走行を体感できる高性能GTスポーツ」。キャッチフレーズには“そのとき、精悍”と謳った。搭載エンジンは3機種。タービンローターにファインセラミックを、ローター軸のオイルシールに滑りのよいシーリングタイプを採用したRB20DET型1998cc直列6気筒DOHC24Vインタークーラーターボユニット(ネット値180ps)を筆頭に、自然吸気のRB20DE型1998cc直列6気筒DOHC24Vユニット(グロス値165ps)とRB20E型1998cc直列6気筒OHCユニット(グロス値130ps)を設定する。シャシーには専用チューニングを施し、ツインカム系にはHICASを標準で装備。また、確実な制動性能を発揮する4WASをオプションで用意した。

 

エクステリアについては、しなやかなラインと滑らかな面で構成するウエッジシェイプを基調に、特徴的な3次曲面エアロカーブドガラスやラップラウンドリアウィンドウなどを組み込んだ“スーパーエアロフォルム”を採用する。また、車速70km/h以上で突出、50km/h以下になると格納するフロントの“GTオートスポイラー”をセットして走行時の空力特性を引き上げた。

 

1987年8月には内外装の一部変更やエンジンの改良(RB20DETは190psに出力アップ)などをメニューとするマイナーチェンジを実施。それと同時期、2ドアスポーツクーペ「GTS-R」と称するグループA参戦用のホモロゲーションモデルを限定800台でリリースした。肝心のパワーユニットには、RB20DET型をベースに大型のギャレットエアリサーチ社製T04E型ハイフローターボチャージャーや表面積をベース比で約5.5倍に拡大した空冷式インタークーラー、専用セッティングの電子制御燃料噴射装置(ECCS)、排気効率を高めたステンレス材等長エグゾーストマニホールド、ベース比で約10%軽量化したフライホイールなどを組み込んだ専用のRB20DETR型エンジンを搭載する。最高出力はネット値で210psを絞り出した。内外装に関しては、専用ボディカラーのブルーブラック、固定式のフロントスポイラー、プロジェクターヘッドランプ、FRP製大型リアスポイラー、ストラットタワーバー、イタルボランテ製3本スポーク本革巻きステアリング、モノフォルムバケットシ-トなどを採用した。ちなみにレースの舞台でのGTS-Rは、熟成が進んだ1989年シーズンの全日本ツーリングカー選手権(JTC)で長谷見昌弘選手がドライバーズタイトルを獲得している。

1987年、800台限定の「GTS-R」をリリース。専用ボディカラーのブルーブラック、固定式のフロントスポイラー、プロジェクターヘッドランプ、FRP製大型リアスポイラーなどを装備

 

1988年8月になると、関連会社のオーテックジャパンが手がけた2ドアスポーツクーペ「GTSオーテックバージョン」が発売される。限定200台の販売となる特別仕様車は、RB20DET型ユニットのターボチャージャーをギャレットエアリサーチ社製T25/T3のハイブリッドタービンに変更するなどして、ネット値210psの最高出力と俊敏なレスポンスを実現。足回りをグレードアップするとともに、内外装にも専用パーツを豊富に盛り込み、“走りを楽しむ大人のスポーツクーペ”に仕立てていた。

 

市場の志向に合わせて高級路線へと舵を切ったことにより、賛否両論を巻き起こした7代目スカイラインは、1989年5月になると全面改良が行われ、スポーツ路線に回帰した8代目のR32に移行する。スカイライン史で見ると、概して失敗作と評されるR31。しかし、トータルでの販売台数は30万9716台に達し、先代のR30の40万6432台にはかなわなかったものの、後継のR32の29万6087台を上回る数字を残した。また、ウエッジがきいた直線基調の精悍なスタイリングは後に再評価され、とくに2ドアスポーツクーペGTSが中古車市場で高い人気を獲得する。櫻井眞一郎氏が開発の基本を手がけ、同氏が大病を患ってリタイアした後は伊藤修令氏が仕上げを担当するという、旧プリンス自動車工業の名エンジニア2人が開発主担に就いた7thスカイラインは、現役を退いてから改めてファンの称賛を受けたのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

日産とDeNAが無人運転車での実証実験を開始!

一般モニターは公式サイトで募集した約300組

日産とDeNAは2月23日、無人運転車両を活用した共同開発中の新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を2018年3月5日(月)より神奈川県横浜市のみなとみらい地区周辺で開始すると発表した。なお、本実証実験には公式サイトで募集した一般モニター約300組が参加する予定となっている。

20180302_suzuki_01

この実験では、自動運転技術を搭載した実験車両が一般モニターを乗せ、日産グローバル本社から横浜ワールドポーターズまでの合計約4.5Kmのコースを往復運行する。そして、実験を通じて「Easy Ride」のサービス仕様の評価・確認を行ない、誰もがどこからでも好きな場所へと自由に移動できる新しい交通サービスの実現を目指す。

Nissan_DeNA_04

また、モニター参加者には目的地の設定や配車などの基本的なサービスに加え、移動だけにとどまらない新しい乗車体験を提供する。たとえば、目的地は専用のモバイルアプリで直接指定する以外に、参加者が「やりたいこと」をテキストや音声で入力。おすすめの候補地を表示させて、その中から目的地を選択することができる。

Nissan_DeNA_07-1024x384

さらに、乗車中に走行ルート周辺のおすすめスポットやイベント情報などが車載タブレット端末に表示されるほか(約500件)、店舗などで使えるお得なクーポンも40件程度用意されるという。

Nissan_DeNA_05

なお、日産とDeNAは参加者に安心して乗車してもらうため走行中の車両の位置や状態をリアルタイムで把握できる遠隔管制センターを新たに設置。両社の先進技術を融合させたシステムによる遠隔管制のテストも行なう。

20180302_suzuki_01 (35)

乗車後に実施する一般モニター向けアンケートでは、乗降時や乗車中の体験についての評価や周辺店舗と連動したサービスの利用状況、実用化した場合の想定利用価格などの情報を収集。それを基にして、さらなるサービス開発や今後の実証実験に活用する予定としている。

20180302_suzuki_01 (27)

なお、両社は2020年代早期に本格的なサービス提供を目指し、街の魅力に触れる機会を増やすことで地域経済の活性化にも貢献していくとしている。

 

この実証実験は、横浜市が2017年4⽉に⽴ち上げた「IoTオープンイノベーション・パートナーズ」の取り組みのひとつとして、また、「自動運転ロボット利活用サービス」として、神奈川県の「さがみロボット産業特区」における重点プロジェクトにも位置づけられている。

【中年名車図鑑】日本車で初めて「250km/hクラブ」に名を連ねた“刺激的な”Zカー

クルマのハイテク化が急速に進んだ1980年代初頭の日本の自動車市場。日産自動車は最新の技術を駆使しながら、同社のスポーツカーの代表格であるフェアレディZの全面改良に邁進する。開発ターゲットに据えたのは、欧州の高性能スポーツカーだった――。今回は「較べることの無意味さを教えてあげよう」という刺激的なキャッチを掲げて登場した3代目フェアレディZ(1983~1989年)で一席。

20180216_suzuki_1 (5)

【Vol.55 3代目 日産フェアレディZ】

2度のオイルショックと厳しい排出ガス規制を乗り越えた日産自動車は、1980年代に入るとクルマのハイテク化を一気に推し進めるようになる。とくに同社のフラッグシップスポーツカーであり、重要な輸出モデルでもあるフェアレディZ、通称Zカーの開発に関しては、先進の技術を目一杯に盛り込む方針を打ち出した。

 

■ターゲットは欧州製スポーツカー

20180209_suzuki_123代目となるZ31型は欧州の高性能スポーツカーをベンチマーク。ロングノーズ&ファストデッキのデザインを踏襲したうえで、エアロダイナミクスを徹底追求した

 

3代目を企画するに当たり、開発陣は欧州の高性能スポーツカーをベンチマークに据える。具体的には、ボディやシャシー、パワートレイン、さらに仕様・装備といった項目で、欧州製スポーツを凌駕する性能を目指した。

 

ボディに関してはロングノーズ&ファストデッキの伝統的な車両デザインを踏襲したうえで、エアロダイナミクスの向上を徹底追求する。世界初のパラレルライジングヘッドライトの装備、バンパーおよびエアダムスカート一体のフロントフェイシアの採用、ボディ全般のフラッシュサーフェス化、後端のダックテール化などを実施し、結果としてCd値(空気抵抗係数)は0.31と、当時の日本車の最高数値を達成した。一方でシャシーについてはS130型系の前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの形式を基本的に踏襲しながら、全面的な設計変更がなされる。最大の注目は世界初の機構となる3ウェイアジャスタブルショックアブソーバーの装着で、これを組み込んだ仕様を“スーパーキャパシティサスペンション”と称した。同時に制動性能も強化し、大容量の8インチタンデムブレーキブースターをセットする前ベンチレーテッドディスク/後ディスクを採用した。

 

パワートレインはフェアレディZとしては初めてV型レイアウトの6気筒エンジンを搭載し、さらに先進のターボチャージャー機構を組み合わせる。絞り出す最高出力は3L仕様で230ps。Cd値と同様、当時の日本車の最高数値を実現した。ちなみにターボチャージャー付きV6ユニットの量産化は、当時の日本車では初の試みだった。

 

装備面ではメーター脇に配したクラスタースイッチや雨滴感知式オートワイパー、世界初のマイコン制御上下独立自動調整オートエアコン、高級オーディオといった新機構が訴求点で、新世代スポーツカーにふさわしい快適性と先進イメージを打ち出す。室内空間自体も広がり、さらにASCD(自動速度制御装置)などの採用で安全性も向上させた。

 

■刺激的なキャッチコピーを謳って登場

20180209_suzuki_11雨滴感知式オートワイパー、世界初のマイコン制御上下独立自動調整オートエアコン、高級オーディオなど豪華装備をおごる

 

第3世代となるフェアレディZは、Z31の型式をつけて1983年9月に市場デビューを果たす。ボディタイプは先代のS130型系と同様に2シーター(ホイールベース2320mm)と2by2(同2520mm)を用意。搭載エンジンはVG30ET型2960cc・V型6気筒OHCターボ(230ps)とVG20ET型1998cc・V型6気筒OHCターボ(170ps)を設定した。

 

新しいフェアレディZの性能に関して、日産は相当に自信を持っていたのだろう。キャッチコピーには「較べることの無意味さを教えてあげよう」という刺激的な表現を掲げる。事実、VG30ET型エンジンの230ps/34.0kg・mのスペックは最大のライバルであるトヨタ・セリカXXの5M-GEU型2759cc直列6気筒DOHCエンジンの170ps/24.0kg・mを圧倒し、実際の最高速や加速性能も群を抜いていた。さらに欧州仕様ではポルシェ911などの最高速に迫り、自動車マスコミはこぞって「日本車で初めて“250km/hクラブ”へ仲間入り」と称賛した。

 

■マイナーチェンジで米国NDIのデザイン提案を採用

20180209_suzuki_10Z31にも人気のTバールーフ仕様が追加された。先代のS130型の標準ルーフと同じ剛性を確保したとアナウンス

 

大きな注目を集めてデビューしたZ31型系フェアレディZは、その新鮮味を失わないよう矢継ぎ早に新グレードを追加していく。1984年8月には先代で好評だったTバールーフ仕様をZ31型系にも設定。当時のプレスリリースでは、「新しいTバールーフは、S130型系の標準ルーフと同等の剛性を確保した」と豪語する。1985年10月には「走りがおとなしい」と言われた2Lモデルの評判を高めるために、RB20DET型1998cc直列6気筒DOHC24Vセラミックターボエンジン(ネット値180ps)を積む200ZRグレードを追加した。

 

1986年10月になると、Z31型系は大がかりなマイナーチェンジを受ける。最大のトピックはエクステリアの変更で、日産の米国デザインセンターであるNDI(日産デザインインターナショナル)が手がけた丸みを帯びたスタイリングは、“エアログラマラスフォルム”と称した。さらに、VG30DE型2960cc・V型6気筒DOHC24Vエンジン(ネット値190ps)を搭載する300ZRグレードを設定。同時にリアのディスクブレーキをベンチレーテッド化し、制動性能をより向上させた。

 

最大のマーケットである北米市場を意識しながら進化を続けたZ31型系フェアレディZは、1989年7月になるとフルモデルチェンジを実施して4代目のZ32型系へと移行する。その4代目は、Z31型系に輪をかけて高性能を謳うモデルに進化するのであった。

 

■グループCカーでも使われたフェアレディZのネーミング

当時のフェアレディZに関するトピックをもうひとつ。Z31型系の3代目フェアレディZが発表された1983年、サーキットの舞台でもフェアレディZの名を冠したモデルがデビューする。カテゴリーはグループC。日産自動車の支援を受け、セントラル20レーシングが造り上げた国産初の本格的なCカーは、「フェアレディZC」を名乗った。シャシーはル・マン設計のLM03Cで、エンジンは日産製LZ20Bターボを搭載する。ヘッドライトやリアランプのデザインには、市販モデルのZ31のイメージを取り入れた。1985年シーズンに入ると、フェアレディZCはローラT810シャシーにVG30ツインターボエンジンへと刷新。戦闘力をいっそう引き上げていた。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

ウィンタースポーツの新提案? フェアレディZの雪上仕様が登場!

北米日産はこのほど、日産370Z(日本名:日産フェアレディZ)をベースにしたワンオフモデルのスノーモービル、「370Zki(370スキー)」を発表。2月10日から19日まで開催するシカゴモーターショーで初披露する。

20180209_suzuki_7

この370Zkiはスキー場のゲレンデを走行するスノーモービルとして開発されたもので、ベースはオープンモデルのロードスター。332ps/366Nmを発揮する3.7リッターV6エンジンと7速ATのパワートレインは市販車のままだが、4つのタイヤに代えて、フロントには長さ142cm、幅30cmのスキー板を、リヤには長さ122cm、幅38cm、高さ76cmのクローラーが装着されている。

20180209_suzuki_6

これらを装着するためにリアのホイールアーチが拡大されたほか、ブレーキラインやエキゾーストシステムなどがカスタマイズされている。また、エクステリアはボディラッピングが施され、ヘッドライトユニットはスキーのゴーグルに見立ててイエローにペイントされているのが面白い。

【中年名車図鑑】職人の技を忍ばせた、ツウ好みの“商用パイクカー”

1987年に登場した日産のBe-1は、ハイテク技術に重きが置かれた当時の日本の自動車市場にあって、一大“パイクカー”ブームを巻き起こす。確かな手応えをつかんだ日産自動車は、その後継作に乗用車だけではなく、商用モデルのパイクカーも企画した。今回は“新感覚マルチパーパスカー”として開発され、PAO(パオ)と同時期にデビューした「S-Cargo(エスカルゴ)」の話題で一席。

20180202_suzuki_11

【Vol.52 日産S-Cargo(エスカルゴ)】

1987年1月に限定1万台で発売され、日本の自動車マーケットにパイクカー(大量生産を前提としない“とんがった=pike”クルマの意)ブームを巻き起こした日産自動車のBe-1。高性能一辺倒でクルマを企画していた当時の開発傾向に一石を投じ、その後も継続される“レトロ調”好きの需要を掘り起こした同車のキャラクターを重視した開発陣は、すぐさま次期型パイクカーの開発を決定する。しかもBe-1のような乗用車モデルだけではなく、商用車カテゴリーにも拡大展開する方策を打ち出した。

 

ちなみに、当時の日産スタッフによると「商用車のパイクカー化はBe-1の開発時にはすでに企画として持ち上がっていた」という。第1弾が成功したら、商用車のパイクカーも造ろう――そうした考えが、開発現場にはあったのである。

 

■“新感覚マルチパーパスカー”の開発

フランス語でかたつむりを意味するescargotと貨物を表すcargoを掛け合わせたネーミング。ボンネットなどは職人の手叩きで仕上げられたフランス語でかたつむりを意味するescargotと貨物を表すcargoを掛け合わせたネーミング。ボンネットなどは職人の手叩きで仕上げられた

 

商用モデルのパイクカーを企画するにあたり、日産のスタッフは「ファッショナブルでユニークな新感覚のマルチパーパスカー」を創出するという開発テーマを掲げる。具体的には、ブティックやフラワーショップなどの店先に停めて絵になるお洒落なクルマ、街を行く人々の視線を集めて人気者となるクルマ――に仕上げることを念頭に置いた。

 

商用パイクカーを造るうえで、開発陣が最も力を入れたのは内外装の演出だった。前マクファーソンストラット/後トレーリングアームのシャシーやFF方式のE15S型1487cc直列4気筒OHCエンジン(73ps)+3速ATなどの基本コンポーネントは同社のパルサー・バンやADバンから流用。その上に被せるボディは、丸目2灯式のユニークなヘッドランプになだらかな孤を描くボンネット、同じく孤でアレンジしたルーフ、広告ボードとして自由に使えるようにデザインしたフラットなリアサイドパネル(市販時は丸型リアクォーターウィンドウ仕様も用意)などで構成する。また、パイクカーの象徴的アイテムともいえるキャンバストップ(電動・手動併用式)も装備した。内装については、テーブルタイプのダッシュボードにセンター配置の大型スピードメーター、インパネ中央付近にレイアウトしたATシフトレバーなど、専用デザインのパーツを満載する。シートはメイン素材に平織の生地を用いたセパレート式のベンチタイプで、助手席にはウォークイン機構を内蔵。サイドウィンドウは開閉部の全開を実現するために2分割式でアレンジした。

 

20180202_suzuki_8

 センター配置の大型メーター、インパネ中央のシフトなど独創的なデザインが目を引く。室内空間は開放的
センター配置の大型メーター、インパネ中央のシフトなど独創的なデザインが目を引く。室内空間は開放的

 

商用車版のパイクカーはその性格上、実用性も最大限に考慮された。荷室高は1230mmを確保し、そのうえでフラットな床面や可倒式のリアシート、ルーフ近くから床面まで開く上ヒンジ式の大型リアゲートなどを設ける。耐久性も重視し、前後バンパーやフロントフェンダー、ヘッドランプフィニッシャー、リアフィレットプロテクターには錆びにくくて軽量な高剛性PP(ポリプロビレン)材を採用した。

 

■姿かたちがそのまま車名に――

リアサイドパネルは広告として使えるようにフラットな造形リアサイドパネルは広告として使えるようにフラットな造形

 

商用モデルのパイクカーは、1987年に開催された第27回東京モーターショーで参考出品車として初披露される。車名は「S-Cargo(エスカルゴ)」。フランス語でかたつむりを意味し、スタイリングも似ているescargotと貨物を表すcargoを掛け合わせたネーミングを冠していた。

 

市販版のエスカルゴはPAO(パオ)と同時期の1989年1月に発表され、2年間限定の形で受注生産される。型式はR-G20。量産ラインを担当したのは関連会社の日産車体で、ボンネットなどの一部パーツは職人の手叩きで仕上げられた。ボディサイズは全長3480×全幅1595×全高1835~1860mm/ホイールベース2260mmで、最小回転半径は4.7m。最大積載量は300kgを確保する。標準ボディ色はホワイト/グレー/ベージュ/オリーブの4タイプを設定し、オプションとしてレッド/イエロー/ブルー/ブラックも選択できた。

 

エスカルゴの車両価格は122.0~133.0万円と同クラスの商用車より高めの設定だったが、販売は好調に推移する。走りの面でも予想以上の好評を博し、とくに乗り心地のよさ(4輪独立懸架サスペンションに155R13-6PRLTサイズのミシュラン製商用車用タイヤを装着)がユーザーから高く評価された。一方、ユニークなスタイリングで脚光を浴びたエスカルゴは国内外での様々なイベント会場でも披露される。1989年7月には英国のロンドン美術館にてS-Cargoを展示。また、アーティストの池田満寿夫氏が外装ペイントを手がけたアートカーモデルも製作される。日産自動車のお膝元である神奈川県では、横浜スタジアムのリリーフカーとして特別仕様のエスカルゴが造られ、2000年のシーズンまで活躍した。

 

結果的にエスカルゴは予定通りの2年間、1990年12月まで生産され、累計台数は1万650台あまりにのぼる。また生産中止後もコアな人気を保ち続け、21世紀に入ってもレストアやドレスアップが施されたユーズドカーが市場に並ぶこととなった。ちなみに、知己の板金職人によるとエスカルゴをレストアする際は「意外な発見がある」という。最も印象的なのは緩やかな弧を描くボンネットで、ひとつひとつ手叩きで仕上げられていたため、個体によってプロでしかわからない微妙な違いがあるそうだ。一般的にはスタイリングのユニークさばかりが強調されるエスカルゴだが、一皮むけば職人さんの技術が存分に発揮された通好みの逸品なのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

【中年名車図鑑】“Be-1の反省”を踏まえた販売戦略で成功。3万台超を売り上げたパイクカー第2弾

1987年にリリースしたBe-1によって“パイクカー”ブームを創出した日産自動車は、その勢いに乗って第2弾の開発を決定する。1987年の東京モーターショーで参考出品車を披露し、1989年に市場デビューさせた新パイクカーは、「PAO(パオ)」の車名を名乗った。今回はモンゴルの遊牧民の家に由来するユニークなネーミングを冠した第2世代のパイクカーで一席。

20180119_suzuki13

【Vol.51 日産PAO(パオ)】

1987年1月に限定1万台で市販されたパイクカー(大量生産を前提としない“とんがった=pike”クルマの意)のBe-1は、当時の日本の自動車市場に大きな混乱をもたらした。受注は2カ月もかからずに終了。予約にもれた人は中古車、または予約を譲ってくれるユーザーを探し求め、これに業者が絡み、結果的にBe-1にはプレミアがつく。販売価格は東京標準で129.3~144.8万円としていたが、市場での取引額は200万円以上がザラだった。

 

「大手メーカーたるものが自動車マーケットの混乱を作り出した」などと自動車マスコミからは苦言を呈されたが、ハイテク一辺倒でクルマを開発していた当時の傾向に日産が一石を投じ、ユーザーの支持を大いに獲得したことは確かである。クルマの魅力は先進技術やスペックだけではない。ファッショナブルで個性的な内外装を持つことも重要だ――そう確信した日産は、パイクカー第2弾の開発を決定する。そして販売時には、市場での混乱を避ける戦略を練った。

 

■パイクカー第2弾はレトロデザインをさらに進化させた

20180119_suzuki12

ボディ同色の鉄板を効果的に用いたインパネ、アイボリー色のステアリングやスイッチ類がレトロムードを盛り上げる。シートは麻感覚の平織りクロスが用いられたボディ同色の鉄板を効果的に用いたインパネ、アイボリー色のステアリングやスイッチ類がレトロムードを盛り上げる。シートは麻感覚の平織りクロスが用いられた

 

待望のパイクカー第2弾は、1987年10月に開催された第27回東京モーターショーにおいて参考出品の形で披露される。車名はモンゴルの遊牧民の家に由来する「PAO(パオ)」を名乗った。

 

パオの基本シャシーは、Be-1と同じくK10型マーチをベースとする。エクステリアパーツに関しては成形の自由度やコスト面を考慮して、外板の一部に樹脂パネルを使った。フロントフェンダーには射出成形の熱可塑性樹脂パネルを採用し、ボンネットにはガラス繊維を含んだSMC(シートモールディングコンパウンド)成形の熱硬化性樹脂パネルを導入する。さらに、耐食が激しいドアやリアゲートなどには両面処理の鋼板を使用した。防錆対策も重視され、パネル面にはフッ素樹脂塗装材、ボディの中空部分には入念な防錆シーラントを施す。ボディサイズは全長3740×全幅1570×全高1475mm、ホイールベース2300mmとコンパクトにまとめた。各部のアレンジにも工夫を凝らし、メッシュ状の大型フロントグリルや鉄パイプ製バンパー、上下2分割式のリアサイドウィンドウ、縦配列3連式の丸型リアコンビネーションランプ、電動開閉の小粋なキャンバストップ、金属製パイプのファッションレールなど専用パーツを豊富に盛り込む。ボディカラーはEarthy Colorと呼ぶ淡い色合いのアクアグレー/オリーブグレー/アイボリー/テラコッタをラインアップした。

遊び心にあふれたキャンバストップは電動式遊び心にあふれたキャンバストップは電動式

 

インテリアに関してはボディ同色の鉄板インパネや象牙をイメージしたスイッチ類、アイボリー色のステアリングなどが特徴で、Be-1よりもいっそうレトロ感を強める。座席には麻感覚の平織りシートクロスを採用。取り外しが可能な専用デザインのオーディオユニットなども話題を呼んだ。

 

■第1弾の混乱の反省から“期間”を限定

ボディカラーは4色、写真は「テラコッタ」。発売から30年経った今でも色あせないこのデザインは、賞味期限の短い日本のプロダクトとしては驚異的。中古市場では未だに高値で取引されているボディカラーは4色、写真は「テラコッタ」。発売から30年経った今でも色あせないこのデザインは、賞味期限の短い日本のプロダクトとしては驚異的。中古市場では未だに高値で取引されている

 

パオはショーデビューから1年3カ月ほどが経過した1989年1月に市販を開始する。型式はPK10。搭載エンジンはMA10S型987cc直列4気筒OHCユニット(52ps/7.6kg・m)で、トランスミッションには5速MTと3速ATを設定する。当初の生産はBe-1に続いて高田工業が担当し、後に愛知機械工業が引き継いだ。

 

パオはBe-1と同じく限定車の形ではあったが、限定したのは台数ではなく、受注期間であった。台数を絞って市場の混乱を招いたBe-1での反省を踏まえたのである。また、日産は販売方法そのものにも力を入れる。当時ベイエリアと呼ばれた東京都中央区の勝どき橋付近に専用スペシャルショップを開設し、パイクカーの情報発信基地として積極的に活用した。ここにはレストランやバーといったおしゃれな飲食スペースも併設。さらにキャラクターグッズも多数用意し、パオのロゴ入りマグカップやクッション、Tシャツ、文房具などを販売した。

 

最終的にパオは、約3カ月のあいだに5万台超(5万1657台)の大量受注を記録する。このなかにはプレミア価格での販売を当て込んだ業者の予約も入っており、販売台数が予想以上に多いと知るとキャンセルする人が続出した。とはいえ3万台以上を売る大ヒット作となったことは事実で、結果的に日産自動車のパイクカー戦略はまたしても成功裡に終わったのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

日産「リーフ」の技術を移植した「軽EV」が2019に登場する!?

順調に行けば2019年にも発売されるという、日産初の軽・電気自動車の情報が入ってきた。開発は日産主導のもと行われ、傘下の三菱へOEM供給されることになるという。

20180119_suzuki1

予想CGによれば外観は三菱「i-MiEV」を彷彿とさせる卵型のシルエットで、フロントにはVモーションの流れを持つワイドグリル、ヘッドライトはEVらしさを感じさせるブルーのLEDやホワイトの透過パネルを装着している。立体感を表現するラインが特徴的なサイドは高級感と上質さをアピールし、中央のアンダー部分を削ったデザインはフロント、リアともにタイヤハウスに迫力を増すのに貢献しており、これまでの軽自動車では見られない斬新なデザインになりそうだ。

 

ボディサイズは全長3440mm、全高1600mm程度と予想されており、最高出力は75ps、航続距離は200kmを新型リーフ搭載のEV技術を移植し、目指すという。

欧州での新型日産リーフの受注がハイペース!

日産ヨーロッパは12月21日、新型リーフの欧州市場における受注が2017年10月の発表から約2カ月で1万台に達していることを発表した。

Leaf-Europe_02

 

プロパイロットやe-ペダルに関心高まる

欧州市場では2010年から先代型を発売。競合メーカーがまだEVに対して懐疑的であり、ガソリンやディーゼルエンジン車の改良を重視していた頃だ。先代型は欧州市場において、累計でおよそ8万3000台を販売した。この8万3000人のリーフ・オーナーの声もフィードバックされ新型にスイッチしたリーフは、欧州で高い関心を寄せることとなったのである。

 

Leaf-Europe_01

 

新型リーフのカスタマーは、同一車線自動運転技術である「プロパイロット」や、ドライバーが最大で90%もブレーキペダルの使用を減らすことができる「e-ペダル」を中心とした革新的技術に高い関心を寄せているという。

 

 

日産ヨーロッパのEVディレクター、Gareth Dunsmoreは、新型リーフの好調な受注を受けて、次のようにコメントしている。
「新型リーフによって、日産が電気自動車のリーダーシップを発揮していることを実感しています。新型リーフは、新世代の電気自動車というだけでなく、欧州における日産インテリジェントモビリティのアイコンなのです」。

 

多くの自動車メーカーが電動化技術採用に積極的な姿勢を見せているなか、EVの先駆け的存在である日産リーフは、魅力を大きく高めた新型によって、日本だけでなく欧州でもそのプレゼンスを高めている。

 

なお、欧州仕様の新型リーフは英国にあるサンダーランド工場にて、12月から生産がスタート。カスタマーへは2018年2月からデリバリーがはじまる。動画では、サンダーランド工場で新型リーフが生産される模様が確認できる。

 

(文/細田靖)

【中年名車図鑑】ユーズドカーになって認められた“あぶデカ・レパード”の実力

“高級スペシャルティ”の先駆車として1980年にデビューした日産レパード。しかし市場での人気や注目度の面では後発のトヨタ・ソアラに凌駕され、販売成績は伸び悩み続けた。忸怩たる状況を打破しようと、日産の開発スタッフはレパードの全面改良を鋭意、推し進める――。今回は「かぎりなく自由だ。かぎりなく豊かだ」のキャッチコピーを冠して1986年に登場した2代目レパードで一席。

20180112_suzuki5

【Vol.48 2代目 日産レパード】

国産初の高級スペシャルティカーとして、1980年9月にデビューしたF30型の初代レパード。しかし、5カ月ほど後に市場に放たれた初代トヨタ・ソアラに市場の注目が集まり、結果的に初代レパードの影は薄くなってしまった。日本の自動車ユーザーの上級志向は1980年代後半に向けてますます高まり、高級スペシャルティカー市場もさらに活気づくはず――そう判断した日産の開発陣は、高級スペシャルティカー分野での覇権を目指して次期型レパードの企画を意欲的に推し進める。時代はバブル景気の助走期。開発資金や人員も豊富に投入された。

 

■高級スペシャルティカー分野でのシェア拡大を目指して――

1986年にデビューした2代目レパード。同じく86年に放送されたドラマ『あぶない刑事』の劇中車として知名度を上げた1986年にデビューした2代目レパード。同じく86年に放送されたドラマ『あぶない刑事』の劇中車として知名度を上げた

 

次期型を企画するに当たり、開発スタッフは「大人のライフスタイルをハイセンスに演出するプレステージ・スペシャルティカー」を創出するという基本テーマを掲げる。エクステリアに関してはCd値(空気抵抗係数)0.32の優れた空力特性を実現したうえで、ダイナミックで優雅なプロポーションやプレステージ性を強調した8連式マルチヘッドランプ、個性的で洒落たイメージの大型リアコンビネーションランプなどを採用する。ボディタイプはソアラと同様に2ドアクーペ(従来モデルは4ドアハードトップも用意)の1本に絞った。一方でインテリアについては、フロント部からドアトリム、リアシートに至るまでのラインを連続させ、乗員を包み込むようなラウンド形状の室内スペースを演出する。また、シートやトリム地にツイード調の上質な素材を多用し、高級スペシャルティらしい落ちつきと高品質感が漂う空間に仕立てた。さらに、助手席専用の“パートナーコンフォートシート”や全面一体カラー液晶表示の“グラフィカルデジタルメーター”、各種機能を組み込んだ“光通信ステアリング”、専用カードの携帯でドアのロック&アンロックおよびトランク解錠ができる“カードエントリーシステム”といった新技術を積極的に盛り込んだ。

 

搭載エンジンは気筒別燃料制御システムやNVCS(日産バルブタイミングコントロールシステム)を採用した新開発のVG30DE型2960cc・V型6気筒DOHC24V(185ps)を筆頭に、VG20ET型1998cc・V型6気筒OHCジェットターボ(155ps)、VG20E型1998cc・V型6気筒OHC(115ps)という計3機種のPLASMAユニットを設定する。組み合わせるトランスミッションはVG30DE型とVG20ET型が4速ATのみで、VG20E型は5速MTと4速ATを用意。ATは全車ともにパワー・エコノミー自動切り換え式スーパートルコンを組み込んだ。足回りはジオメトリーの最適化やロール剛性の強化などを図った改良版の前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの4輪独立懸架で、最上級仕様には電子制御でダンパーの減衰力をソフト/ミディアム/ハードの3段階に自動的に切り換える“スーパーソニックサスペンション”を採用する。また同仕様では、ラック&ピニオン式のステアリング機構に車速感応油圧反力式パワーステを、4輪ベンチレーテッドディスクブレーキに4WAS(4輪アンチスキッド)を組み合わせた。

 

■キャッチコピーは「かぎりなく自由だ。かぎりなく豊かだ」

20180112_suzuki7

シートやトリム地にツイード調の上質素材をあしらった高級感あふれるインテリア。全面一体カラー液晶表示、光通信ステアリングなど、新技術を惜しげもなく投入したシートやトリム地にツイード調の上質素材をあしらった高級感あふれるインテリア。全面一体カラー液晶表示、光通信ステアリングなど、新技術を惜しげもなく投入した

 

最大のライバルであるトヨタ・ソアラが2代目に移行してから1カ月ほどが経過した1986年2月、F31の型式を付けた第2世代のレパードが満を持して市場デビューを果たす。キャッチコピーは新プレステージ・スペシャルティカーの特徴を表す「かぎりなく自由だ。かぎりなく豊かだ」。グレード展開はVG30DE型エンジンを搭載する最上級仕様のアルティマ(英語で究極を意味する“ultimate”からとった造語)、VG20ET型エンジンを積むXS系、VG20E型エンジンを採用するXJ系で構成した。また、従来型で用意していたチェリー店系列向けのレパードTR-Xは廃止し、レパードの1モデルに統一された。

 

新しいレパードは、“世界初”または“わが国初”の技術の採用をカタログや広告などで声高に謳っていた。世界初は気筒別燃料制御システムやパートナーコンフォートシート、日本初はNVCSやNICS(日産インダクションコントロールシステム)/ツインスロットルチャンバーなど。ほかにもスーパーソニックサスペンションや車速感応油圧反力式パワーステ、4WAS、高品位4コート塗装、デュラスチール(新防錆処理鋼板)といった新機構をユーザーにアピールした。

1988年にマイナーチェンジを実施。バンパー形状、インテリアの刷新を行った1988年にマイナーチェンジを実施。バンパー形状、インテリアの刷新を行った

 

高級スペシャルティカー・カテゴリーでのシェア拡大を目指して、意気揚々とデビューしたF31型系レパード。しかし、2954cc直列6気筒DOHC24Vターボエンジン(7M-GTEU型)仕様をイメージリーダーとする2代目ソアラの牙城は崩せず、さらに本来は格下であるはずの2代目ホンダ・プレリュードにも人気や販売成績の面で大きく遅れをとった。この状況を打開しようと、開発陣はレパードの改良を相次いで実施する。1987年6月にはモケット地シートやAVシステムなどの快適アイテムを備えた“グランドセレクション”を追加。1988年8月には「若いというだけでは、手に負えないクルマがある」というキャッチを冠したマイナーチェンジを敢行し、内外装に新鮮味を与える。同時にVG30DET型2960cc・V型6気筒DOHC24Vターボ(255ps)やVG20DET型1998cc・V型6気筒DOHC24Vターボ(210ps)といった新エンジンの設定も行った。

 

■中古車市場で再評価されたF31レパード

20180112_suzuki10

後期型のキャッチコピーは「若いというだけでは、手に負えないクルマがある」。インテリアはより成熟した大人の雰囲気に進化した後期型のキャッチコピーは「若いというだけでは、手に負えないクルマがある」。インテリアはより成熟した大人の雰囲気に進化した

 

内外装のリファインやエンジンのラインアップ強化でソアラの追撃体制を整えた2代目レパード。しかし、時すでに遅く、販売成績はソアラの後塵を拝し続ける。そのうちにユーザーの興味は大型4ドアハードトップの“ハイソカー”やRV(レクリエーショナルビークル)に移り、高級スペシャルティ市場そのものが衰退してしまった。結果的にF31型系レパードは思うような売り上げを記録できないまま、1992年半ばに販売が中止される。実質的な後継を担ったのは、2ドアクーペではなく、4ドアセダンのボディを纏った高級パーソナルカーのJY32型系レパードJ.フェリーだった。

 

販売成績の面では失敗に終わった第2世代のレパード。しかし、1990年代末に入ると、意外なところで注目を集めるようになる。いわゆる中古車市場だ。VIPカー・ブームの最中、ソアラなどに比べて割安だった2代目レパードは、ユーザーから想定外の人気を博す。価格以外にも、TVドラマの『あぶない刑事』で使用された、過剰品質とまでいわれた高品位4コート塗装やデュラスチールによってボディがいい状態に保たれていた、ハイパワーエンジンのFR車が少なくなっていた、個性的な2ドアクーペのデザインがドレスアップでよく栄えた、といった特徴も人気を集めた要因だった。

 

1980年代後半における日産自動車の技術の推移を結集して造られたF31型系の2代目レパードは、皮肉にもユーズドカーになってから真の実力がユーザーに認められたのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

【中年名車図鑑】今はなき「プリンス自工」が手掛けた国産初の御料車

日本屈指の高い技術力を持ち、数々の名車を生み出してきたプリンス自動車工業。その究極形といえるモデルが、国産初の御料車として採用されたプリンス・ロイヤルだろう。しかし、このモデルが宮内庁に納入されるまでには、さまざまなドラマがあった――。今回は昭和から平成にかけて40年あまりも活躍した国産御料車第1号の話で一席。

20171208_suzuki7

【Vol.44 プリンス・ロイヤル】

高度経済成長の最中、右肩上がりの発展を遂げていた1960年代初頭の日本の自動車産業。自動車メーカーの開発・生産技術も急速に進化し、完成度を高めた純国産の新型車が相次いで市場に放たれていた。

 

■国産御料車の開発に向けて――

そんな状況下、ときの宮内庁はひとつのプランを画策する。「皇室用の御料車を国産車にしたい」。それまでの御料車は、メルセデス・ベンツ770やキャデラック・75リムジンなど、欧米製リムジンを使用していた。1950年代までの国産車はまだまだ信頼性が低く、まして要人を乗せるリムジンの開発などは無理難題であった。しかし、1960年代に入って日本の自動車技術は飛躍的に向上し、大型リムジンの開発も夢ではなくなってきていた。天皇は日本の象徴、よって天皇がお乗りになる御料車も日本国内で造ったものにするべきだ――。この計画に政府も同意。さっそく宮内庁は自動車工業会へ御料車の開発を諮問した。

 

■プリンス自動車工業の技術を結集

ディメンションは全長6155×全幅2100×全高1770mm。パレードなどの長時間低速走行に対処するため、冷却系統にも万全を期していた。ドアは電磁ロック式、ガラスは最新鋭の防弾タイプを採用ディメンションは全長6155×全幅2100×全高1770mm。パレードなどの長時間低速走行に対処するため、冷却系統にも万全を期していた。ドアは電磁ロック式、ガラスは最新鋭の防弾タイプを採用

 

国産御料車の開発に対し、ひとつのメーカーが名乗りをあげる。日本の数ある自動車会社の中でも高い開発能力と生産技術を誇っていたプリンス自動車工業だ。実はプリンス自工は、以前から宮内庁との接点があった。当時の皇太子(今上天皇)に向けて同社のセダンやスカイライン、グランドグロリアなどを納入していたのだ。しかもグランドグロリアには、皇太子がご愛用するための特別な改造、通称“カスタムビルト”が施されていた。最大の特徴はホイールベースの延長で、後席の足元スペースを拡大しながらルーフを少しだけ高くしている。これは皇太子とご成婚された美智子妃が、お好きな帽子を被ったまま乗車してもルーフやリアガラスに頭がつかえずに済むという配慮から実施された改造だった。きめ細かく完成度が高いクルマ造り――宮内庁の側も、プリンス自工に対して大きな信頼を寄せていた。

 

プリンス自工は早速、専属チームを組織して御料車の開発に取り掛かる。さらに、メーカー系列の枠を超えた協力体制も取りつけた。基本骨格はセパレートフレームで構成し、補強メンバーを入れるなどして高い剛性と耐久性を確保。ホイールベースは3880mmにまでストレッチした。懸架機構はフロントがダブルウィッシュボーン式で、リアがリーフリジット式。ブレーキは前後ともドラムだが、ツインマスターシリンダー+ツインサーボの2重制動を採用した。エンジンは新開発の6373cc・V型8気筒OHVを搭載し、トランスミッションには信頼性の高いGMの3速ATを組み合わせる。最高速度は8名乗車で160km/hに達した。

 

エクステリアにも御料車ならではの入念な工夫が凝らされる。使用材料には一品ずつ電磁探傷検査のマグナフラックスを実施。フレームには亜鉛メッキを施し、バッテリーも100AHを2基搭載した。万が一のために燃料ポンプの予備も積み込まれる。ドアは電磁ロック式で、ガラスには最新鋭の防弾タイプを採用。パレードなどの長時間低速走行に対処するため、冷却系統にも万全を期す。ボディサイズは全長6155×全幅2100×全高1770mmで、車重は3200kgとなった。一方でインテリアについては、前席に3名、後席に3名、補助席に2名が乗車できる8名乗りのシートレイアウトを構築する。シート地は前席がレザー、貴賓席となる後席には最高級のウールが張られた。後席足元にはオットマンも装着する。室内の温度管理にも入念な配慮がなされ、サイドガラスは乾燥空気を封じ込めた二重式を採用。リア専用の空調も導入された。

 

■正式発表時にはニッサンのブランド名が――

エンジンは6373cc・V型8気筒OHVを搭載、トランスミッションにはGMの3速ATを組み合わせる。最高速度は8名乗車で160km/hエンジンは6373cc・V型8気筒OHVを搭載、トランスミッションにはGMの3速ATを組み合わせる。最高速度は8名乗車で160km/h

 

プリンス自工が威信をかけて製作した国産初の御料車は、1965年にまずボディスタイルと車名の「プリンス・ロイヤル」が発表される。そして翌66年10月には完成モデルのS390P-1型が披露された。ただし、完成車は当初発表の車名とは違っていた。頭にニッサンが入り、「ニッサン・プリンス・ロイヤル」と命名されていたのである。

 

プリンス自工は高コストの開発体制や施設の整備増強などが災いして、経営状態が年々悪化していた。このままでは1965年4月に実施予定の乗用車の輸入自由化(実際は1965年10月に実施)に対処できない……。そこで1965年5月、日産自動車がプリンス自工を吸収合併する形での契約が成立し、1966年8月から新体制に移行する。プリンス・ロイヤルは、そのわずか2カ月後に発表されたため、ニッサンのブランド名が冠せられていたのだ。この状況に対し、マスコミ界からは「日産は天皇御料車の威信を得るために経営不振のプリンスを吸収合併した」とする声もあがった。

 

■ニッサン・プリンス・ロイヤルの老朽化

前席に3名、後席に3名、補助席に2名が乗車できる8名乗りのシートレイアウト。貴賓席となる後席には最高級のウールが張られ、足元にはオットマンも装着する。サイドガラスは乾燥空気を封じ込めた二重式、リア専用の空調も導入された前席に3名、後席に3名、補助席に2名が乗車できる8名乗りのシートレイアウト。貴賓席となる後席には最高級のウールが張られ、足元にはオットマンも装着する。サイドガラスは乾燥空気を封じ込めた二重式、リア専用の空調も導入された

 

ニッサン・プリンス・ロイヤルは1966年を皮切りに7台が製作され、宮内庁や外務省(国賓送迎用)に納入される。天皇の御料車としては1967年から使われ始めた。

 

宮内庁管理部“車馬課”の自動車班が管理し、定期的に整備を受けながら、昭和と平成の2世代をまたいで皇室に愛用され続けたニッサン・プリンス・ロイヤル。しかし、納入から37年ほどが経過した2004年の2月から3月にかけて、御料車に関する内容がマスコミ界で話題となる。宮内庁に対して、日産自動車がニッサン・プリンス・ロイヤルの行事での使用中止を要請したというのだ。入念な整備を施し続けた同車も経年劣化には勝てず、一部では補修不能な部分も出始める。また、専用部品のストックも底をつきかけ、調達も困難な状況になっていた。もし、重要な行事で故障するようなことがあったら、大変な事態になる――そんな心配をした日産は、ついに同車の使用中止を申し出たのである。

 

後を担うリムジンタイプの御料車は、21世紀に入ってから更新が計画されていた。順当にいけば後継車も日産製になるはずだったが、残念ながら当時の日産には御料車を製造する最適のベース車両がなかった。さらにルノーと合併して経営の再建を図っていたため、新御料車の開発に当てる予算も十分にとれない。結果的に日産は、御料車の納入を辞退する。代わって手を挙げたのが、日本最大の自動車メーカーであり、セダンタイプの御料車(センチュリー)を納入した経験を持つトヨタ自動車だった。リムジンタイプのトヨタ製御料車は、通称センチュリー・ロイヤルの名で2006年7月より宮内庁に納入される。そして、現役を退いたニッサン・プリンス・ロイヤルは、宮内庁内で保存管理されることとなったのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。