そうめん研究家イチオシの「つゆ」はどれ? オススメ商品と薬味の組み合わせを伝授

そうめんに欠かせないのがつゆです。ここでもソーメン二郎さんオススメの商品を紹介。きのこを使ったり、魚介だしに鮎を採用したり、信州みそを用いたりと、個性的な味にも注目です。

 

【魅力を伝えてくれた人】

そうめん研究家

ソーメン二郎さん

実家が三輪そうめん製麺所。著書に「簡単!極旨!そうめんレシピ」(扶桑社)があります。

つゆを知るともっとウマい! 

パスタのように具材と一緒に炒めたり、サラダ感覚で味わったりと、いまやそうめんの食べ方は様々です。とはいえ、やはり基本はつゆでしょう。オーソドックスなつゆは、かつおだしがベースとなったタイプ。ただこれも麺と同様で、深掘りするとだしだけでもバリエーションは豊富だ。お気に入りのつゆを使い続けるのもいいですが、素材が違うだけでも味わいは千差万別。ソーメン二郎さんも様々なつゆのつけ比べを推奨します。

 

「つゆを複数用意するだけでも、そうめんはマンネリ化しません。このとき大事なのは、そうめんの器に水と氷を入れないこと。食卓でよく見かけるスタイルですが、これをすると、麺についた水分でつゆがどんどん薄まってしまいます。水気を切って器に盛るだけで、驚くほどおいしく食べられますよ」(ソーメン二郎さん)

 

ここではソーメン二郎さんのコツを取り入れながら、フードアナリストが6種のつゆをつけ比べ。つゆ選びの参考にしてみてください。

 

【つけ比べた人】

フードアナリスト

中山秀明さん

フードを中心に取材と執筆を行います。そうめんは、まずは何もつけずに食べるのがモットー。

【その1】はちみつの自然な甘みの奥にあごだしが効いた九州らしい味

【だし:焼きあご、かつお節、さば節、うるめ節、こんぶエキスなど】

【ストレートタイプ】

ヤマエ食品工業

高千穂峡 あごだしつゆ(500ml

367円

九州のだしとしてポピュラーな焼きあご(とびうおの焼き干し)をメインに、かつお節やこんぶなどでうまみを抽出。甘みは強いですが、はちみつを使い、自然由来の甘さに仕上がっています。

味の特徴(5段階評価)→【コク:4】【だしの風味:3】【キレ:3】【甘み:5】【塩味:4】

 

【中山’s Comment】九州男児のようなパワフルな味

甘めのしょうゆにだしが効いていて、男っぽいパワフルな味わいです。高千穂峡は流しそうめんの発祥地といわれますが、この濃厚なつゆならそう簡単に薄まりませんね。

 

 

【その2】しいたけとまいたけが香るきのこ三昧の残暑に合うつゆ

【だし:しいたけ、まいたけなど】【2倍希釈タイプ】

正田醤油

きのこつゆ(500ml) 432円

本醸造のしょうゆをベースに、厳選したしいたけとまいたけからじっくり抽出しただしと濃縮エキスがたっぷり。煮物や炊き込みご飯など、和風調味料としても活躍します。

味の特徴(5段階評価)→【コク:4】【だしの風味:4】【キレ:2.5】【甘み:3.5】【塩味:4.5】

 

【中山’s Comment】野性的なうまみで秋を感じるつゆ

きのこらしい野性的なうまみが特徴。塩味は強めですがだしもしっかり主張していて、どっしりとした輪郭です。秋を彷彿とさせる味わいで、夏に食べるなら残暑がオススメ。

【その3】実力派ソースメーカーの香り高いごまみそつゆ

【だし:かつお節など】【2倍希釈タイプ】

ポールスタア

かつお香るごまみそめんつゆ(455ml)

540円

無添加にこだわる東京・東村山のソースメーカーが製造。かつおのうまみを効かせただしに、練りごまとすりごま、信州みそを加えて仕上げた香り高い味です。ごまダレとしても使えます。

味の特徴(5段階評価)→【コク:5】【だしの風味:3】【キレ:1】【甘み:4】【塩味:4.5】

 

【中山’s Comment】コク・うまみ・甘みの三重奏

ごまの香ばしさが漂い、甘みが強め。しょうゆも使われていて、コクとうまみがあります。東村山の名産、強烈なコシの武蔵野うどんの強烈なコシにも合う力強い味ですね。

 

【その4】四万十川の清流で育った鮎をメインのだしに使用

【だし:かつお節、鮎エキス、こんぶ、はもエキスなど】【2倍希釈タイプ】

三輪山勝製麺

こだわりの鮎だし入りめんつゆ(300ml)

648円

こだわりのそうめんメーカーとして名高い、三輪山勝製麺のつゆ。四万十川流域で獲れた天然鮎を焼いてエキスを抽出し、国産かつおから引き出しただしとはもを使っている。うまみが凝縮された逸品だ。

味の特徴(5段階評価)→【コク:3】【だしの風味:3.5】【キレ:3.5】【甘み:3】【塩味:3】

 

 

【中山’s Comment】極細の三輪そうめんに合う繊細な味

鮎だけだとたんぱくになりがちなところを、ほかの素材でカバーしている点はさすが。麺のおいしさを生かす繊細な味で、極細の三輪そうめんにぴったりでしょう。

 

 

【その5】しいたけとはちみつがまろやかな味わいを創出

【だし:しいたけ、さば節、かつお節、しいたけエキス、こんぶエキスなど】【ストレートタイプ】

ヤマエ食品工業

高千穂峡 しいたけつゆ(ストレートタイプ)(500ml

367

厳選したしいたけを使い、九州南部の霧島山系の清らかな伏流水でじっくりとうまみを抽出。豊かな山の恵みとはちみつの甘さが掛け合わさり、まろやかでふくよかな味わいです。

味の特徴(5段階評価)→【コク:4.5】【だしの風味:4】【キレ:2】【甘み:5】【塩味:4】

 

【中山’s Comment】滋味深く好バランスな甘しょっぱさ

九州は甘いしょうゆの文化圏。このつゆにもしっかりとした甘さがありますね。とはいえ、しいたけの滋味深い風味も負けておらず、濃厚ながらバランスのよい甘じょっぱさ。

 

【その6】6種の素材が織りなす上品な料亭の味

【だし:あごなど】【煮出しタイプ】

味の兵四郎 あご入兵四郎だし(9g×6袋入)

540円

日本初のあごだし入りだしパックとして生まれた名作。長崎・平子沖産の焼きあごを、味のしまる秋に収穫し、小ぶりなものを厳選。かつお節、しいたけなど全6種の素材を採用しています。

味の特徴(5段階評価)→【コク:3.5】【だしの風味:4】【キレ:3】【甘み:1】【塩味:3】

 

【中山’s Comment】味付けなしでもいける上品なだし

このパックから抽出されるだしだけで、味付け不要の絶品なつゆを作れます。しかもその味わいは柔らかくて上品。家庭でも料亭のようなおいしさを再現できます。

続いて、薬味もそうめんを盛り上げるアイテムを紹介! 幼少期からそうめんの食べ方を研究してきた、ソーメン二郎さんイチオシの組み合わせを編集部員が試してみました!

 

【試した人】

本誌フード担当 鈴木翔子

ベランダで育てるほどの青じそラバー。納豆にも麺類にも入れています。

 

【その1】納豆×トマト×めんつゆ

「つゆが納豆とトマトの良いつなぎ役。納豆のネバネバがトマトの酸味で和らぎ後味は爽やかですね。つゆはかつおだしが◎。納豆は麺に絡みやすい小粒かひき割りで」(鈴木)

 

【その2】めかぶ×ツナ缶

「ツナは缶詰のオイルごと入れると、めかぶのたれと合わさり味に奥行きが出ます。めかぶのぬるぬるしゃきしゃきの食感と、つるんとしたのどごしが心地良くさっぱり!」(鈴木)

 

【その3】めんつゆ×牛乳×トマト×青じそ

「つゆと牛乳が予想以上に合う! つゆが麺をクリーミーにコーティングしてくれます。トマトを少し崩して、つゆに溶け込ませるとコクのある冷製スープのようで美味」(鈴木)

 

【その4】果物×フルーツ缶×レモンソーダ

「フルーツポンチにそうめん!? と半信半疑で食べたら、杏仁豆腐のような味でビックリ。子どものおやつにオススメです。レモンソーダをジンジャエールに変えても合いそう」(鈴木)

 

【ソーメン二郎さんのアドバイス】

つゆに1品入れるだけで味がガラリと変わります。最近見つけたベストマッチは「中華クラゲ」。クラゲの食感と麺ののどごしが合わさった「コリッツルッ」とした食感が◎。また、コンビニでも買える「岩下の新生姜スライス」は、そのままつゆに入れられて絶品ですよ。

 

文/中山秀明、鈴木翔子(本誌) 撮影/佐坂和也

「手延べそうめん」ブームで食べるべき職人の逸品7選。おいしい茹で方講座も。

そうめんでいま味わうべきは断然、手延べ式。そこには数百年にわたり受け継がれてきた伝統が詰まっています。そして、何はともあれうまい! ここではソーメン二郎さんが全国から厳選した至高の傑作を紹介。そうめんにこんなにも個性があったのかと驚くはずこと間違いなしです。

 

【解説する人】

そうめん研究家

ソーメン二郎さん

実家が三輪そうめん製麺所。著書に「簡単!極旨!そうめんレシピ」(扶桑社)があります。

手延べ式をたくさん食べてそうめん職人を応援しよう!

昨今のそうめんトレンドをけん引しているのですが、各地方で職人が作っている手延べ式です。量産型の機械式に比べてコシが強く、総じておいしいのはもちろん、風土や製法の違いで個性が生まれ、奥深いストーリーが隠されていることも人気の理由であります。

 

しかし注目される一方で、危機的状況も。手延べそうめんは高い技術を要する仕事。その職人の多くは高齢化を迎えているにもかかわらず、後継者が不足しているのです。そうめんは夏の風物詩として夏季に消費が偏り、ならしてみたときに、市場としてはかんばしくない職種。働き手が集まりにくいのです。後進がいなければ、数十年後にはなくなりかねない絶滅危惧種ともいえるでしょう。約1200年の歴史を持ち、皇室からも愛されてきた由緒正しい日本最古の麺。日本の食文化を知るうえでも欠かせないこの麺を、夏はもちろん一年中食べていただきたいです。

 

 

【その1】太くてもちもちした食感の少量生産で希少な特産品

【徳島県】【乾麺】【ゆで時間約6分】

白滝製麺所

半田手延べ麺

2050円(3束×5袋)〜

現在30軒ほどの製麺所でしか作られておらず、店頭にあまり出回らない希少種、半田そうめんのひとつ。半田地方で作られ、伸びにくくコシの強い太めの麺が特徴です。四国の霊峰・剣山のふもとの自然の中で作られています。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

洋風調理にも映える太いそうめん

モチモチとしたクセになる食感。ソースや具材が絡みやすく、パスタのような調理法も合います。有名な秘密結社を文字った「フリーソーメン」という団体を主宰し、そうめんを無料配布する活動を行っているのもポイントですね。

 

 

【その2】優美な色と上品な味で贈答用にもオススメ

 

【愛媛県】【乾麺】【ゆで時間約2分】

五色そうめん森川

手延べ五色そうめん

色束別(50g×5束)

497

艶やかな色彩が美しく、贈答用に喜ばれることうけあい。抹茶や梅肉を練り込む手延べそうめんは特に作るのが難しいといわれ、職人技が光る逸品でもります。見た目だけではなく味も上品で、しっかりとしたコシも堪能できます。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

かわいい麺で食べ比べに挑戦

パッケージだけ見てもかわいらしいですよね。外国人のお土産ウケもいいそうです。そば、卵、梅、プレーン、抹茶の5種類が入っていて、食べ比べも楽しいですよ。その際は、薬味を使わずに塩やつゆのみで味わうのがオススメです。

 

 

【その3】小麦のうまみを味わえる光沢感が美しいノンオイル麺

【奈良県】【半生麺】【ゆで時間約4分】

三輪山勝製麵
生そうめん(半生)( 180g/約2人前)
540円

乾麺の水分率は約10%ですが、半生麺は20%で小麦のうまみが豊か。さらに吉野葛を使用した独自のノンオイル製法で、独特な強いコシとのど越しのよさを実現しています。ゆで上がりは光沢感のある仕上がりで、みずみずしい。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

香りとうまみの豊かさが随一

原材料の油は酸化するので、麺に余計な香りがついてしまうのですが、これはノンオイル。だから素材本来の風味が味わえるんですね。しかも半生なので、小麦のうまみもダイレクトに感じられます。ある意味究極のそうめんといえるでしょう!

 

 

【その4】小豆島名産のオリーブを生地に練りこんで熟成

【香川県】【乾麺】【ゆで時間約2分】

銀四郎麺業

銀四郎めん(オリーブ素麺)(5束)

648円

実の中心部分を贅沢に使用した小麦粉の生地に、小豆島産100%のオリーブ果実をふんだんに練り込み、じっくりと熟成させた手延べそうめん。強いコシとモチモチした食感はそのままに、オリーブの風味が豊かに香ります。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

爽やかな色で炒めると見栄えUP

爽やかな色味で、清涼感があります。パスタやソーメンチャンプルーのように調理するのもオススメですね。炒める場合は固ゆでのアルデンテにして、オリーブオイルを多めにかけるとくっつきにくく食べやすいですよ。

【その5】島原の素材をこだわりの製法で紡ぎ出す洗練された味わい

【長崎県】【乾麺】【ゆで時間約2分】

手のべ陣川

手のべ素麺(小袋入)1900円(250g×8袋入り)〜

地元の長崎・島原の素材にこだわっています。小麦粉は乾麺のためにブレンドされたオリジナルを使い、直射日光で乾燥させるなど、伝統的な手法と匠の技術で精製。豊かなコシがあり、のど越しも良く洗練された味わいです。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

レジェンドが作るワンランク上の味

「黄綬褒章」や、全国で初めて手延べそうめんで「現代の名工」を受賞したそうめん界のレジェンド・陣川利男氏の逸品。味も香りもワンランク上で、最初に食べるときは薬味を使わず、シンプルに塩やつゆでご賞味ください。

 

 【その6】黒ごまが粒ごと練り込まれた個性的すぎる見た目と味わい

【香川県】【乾麺】【ゆで時間約4分】

銀四郎麺業

銀四郎めん(粒ごと黒ごま麺)

3240円(160g×6袋)〜

小麦の中心部を贅沢に採用した上質な素材をベースに、まろやかな伯方の塩、生搾りのごま油などで作られた小豆島のそうめん。セサミンやミネラルを含んだ黒ごまが、粒のまま生地に練り込まれていてプチプチとした食感です。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎さんの解説】

サラダそうめんにピッタリの食感

麺に黒ごまの粒が入っている、ビジュアルからして独特な珍しいそうめんです。香ばしい風味と、黒ごまのプチプチとした食感はこの商品だけの味わい。僕はよく野菜やドレッシングとともに、サラダ感覚で食べています。

【その7】

小麦の甘さと風味を堪能できる手間暇かけた贅沢な麺

【奈良県】【乾麺】【ゆで時間約2分】

三輪山勝製麵
一筋縄麦縄そうめん(5束入)600円
グルテンの少ない粉を使い、小麦本来の甘さとうまみを引き出したそうめん。低温でじっくり熟成させながら、手間暇かけて延ばした麺には、柔らかなコシがあります。油の代わりに吉野葛を使い、ツルッとしたのど越しが楽しめます。

 

 

【ソーメン二郎さんの解説】

ゆで上がりの美しい滑らかな逸品

油を使わず吉野葛を使った、雪のように白く艶感の豊かなそうめんです。葛の光沢は滑らかな食感にも反映されていますが、それ以上に盛り付けたときの美しさはうっとりするほど。まずはシンプルに味わってみてほしいですね。

 

ゆでるとこんな感じ

【ソーメン二郎直伝!】おいしいゆで方講座

ソーメン二郎さんによると、そうめんのコシを引き出すにはコツがあるという。そのひとつが、なんと梅干し! そうめんのおいしいゆで方を伝授します。

 

その1

大きめの鍋に、麺の10倍の量の湯を沸かして梅干しを投入。これは味付けのためではない。梅干しに含まれる酸の作用で、麺に一層コシが生まれるのです。

 

その2

沸騰したら、麺をほぐしてパラパラとさばくように鍋に入れます。なお、かき混ぜすぎは風味を損なうので禁物。投入時にほぐすためだけで十分です。

 

その3

湯の中で麺をほぐしたら、あとはそのまま対流させればOK。差し水は温度が急激に下がり麺の表面が傷つくためNGです。ふきこぼれは火加減で調節します。

 

その4

商品のゆで時間通りに調理したらザルに上げ、冷水でもみ洗いをして水気をよく切ります。氷水に漬けると麺に水のカルキ臭がつくので、漬けるなら短時間で。

 

 

麺の違いがよりわかる!

オススメの食べ方

オリーブオイル+塩

そうめんには麺つゆというのがセオリーですが、麺本来の味を楽しむなら、よりシンプルな塩がいい。また、上質なオリーブオイルでくっつきを防ぎ食感を堪能しましょう。

 

【参考にしたのはこちらの本!】

「簡単!極旨!そうめんレシピ」(扶桑社)

ソーメン二郎(著)

 

文/中山秀明、鈴木翔子(本誌) 撮影/佐坂和也