おろし金が花瓶に?ミニブーケを最後まで楽しみきる!フラワーロスを出さない選び方と飾り方

春になると街やお店のいたるところに花があふれ、自宅でも玄関やリビングに花を飾りたくなります。ただし、自分で花を選んでコーディネートするとなると、センスに自信がない……そんなニーズから、あらかじめミニブーケに仕立てて店頭で販売されるのが、いまでは当たり前になりました。1000円前後の手ごろな価格で販売されているミニブーケは、季節の花が取り入れられ、彩りもバランスよくまとまっているので、花やカラーコーディネートに詳しくなくても手軽に取り入れられるアイテム。

 

では、このミニブーケをどう選び、家でどう飾ればいい? さらに長持ちさせるには? 「ロスフラワー」を提唱する株式会社RIN代表取締役の河島春佳さんに教えていただきました。

 

花一輪で部屋は変わる! 花と花器の選び方と飾り方をフローリストが解説

 

 

花も“サステナブル”がトレンドの時代

 

サステナブルを重視する考え方が広がり、花を扱うお店やオンラインストアでも「いまある花を、ある分だけ」売り切るスタイルがトレンド。買う側が一本ずつ選ぶのではなく、生花店が仕入れ状況によって売りたい花をアレンジし、ミニブーケにして販売するなど、サステナブルにつながる販売方法も注目されています。

 

「ほかにも、最近は売れ残った花をドライフラワーにして販売するお花屋さんを見かけるようになりました。また従来、花は生産者から農協、仲卸を通してお花屋さんで販売するのが一般的でしたが、コロナ禍で一時的に花の流通が少なくなる問題が起こったことを発端に、生産者自らがインターネットを通して販売する形態も最近目立っています」(株式会社RIN代表取締役 河島春佳さん、以下同)

 

生産者がインターネットで販売することで産地直送のフレッシュな花が届くので、消費者としてもうれしい変化です。一方、消費者側の変化については、サステナブルに意識を向ける人が増えたそう。これにより、「ロスフラワー」についての認知度も上がっているようです。

 

「ロスフラワーとは、さまざまな事情で捨てられてしまう花のことです。以前は花好きの人たちにしか知られていない言葉でしたが、コロナ禍を経た2023年に日本人1000人にアンケート調査を行ったところ、認知度は50%に上ったという調査結果もあります」

 

ロスフラワーについて語る河島さん。

 

河島さんたちは、ロスフラワーを回収し、「フラワーサイクルマルシェ」という名前で、オフラインとECサイトを通してロスフラワーを販売する取り組みをされています。

 

「茎が曲がってしまうなど生産段階で流通できない花や、仲卸で売れ残ってしまった花、イベントで1度しか使われずに捨てられてしまう花などを回収し、ロスフラワーとして販売しています。
実は身近なところでロスフラワーは手に入るんです。例えば、スーパーに売られている見切り品になってしまった花など、売れ残りの花を見かけることがあると思います。また、閉店間際のお花屋さんにもロスフラワーに近い、入荷から時間が経った廃棄間際の花があります。お花屋さんで見切り品を販売していたり、店舗の片隅でひっそりと置かれた花を見つけたりした時は、その背景を聞き、花の状態を理解した上で購入することも一つの方法ですね。お店のブランディングなどで見切り品を売りづらいお花屋さんも多いと思うので、すごく喜んでくれるはずです」

 

廃棄花“ロスフラワー”は無くせる!フラワーサイクリストが教えるドライフラワーの作り方

 

長く楽しむための、
花選びのポイントとは?

 

長く花を楽しむために、選ぶ時点からポイントはあるのでしょうか? 2段階で教えていただきました。

 

1.素直に“飾りたい”花を選ぶ

「まずは率直に、ご自身が好きな花やピンときた花、かわいいなと思った花を選んでみてください。花は本当に“癒し”だと思うので、自分が癒されるものやときめくものを選ぶことが大切です」

 

2.長持ちする種類を選ぶ

「さらに『長く楽しむ』という観点で加えるのであれば、花の種類に着目してみてください。春の花なら、カーネーションは比較的長持ちします。ドライフラワーにする場合も、カーネーションであれば花が開ききるまで楽しんで、それから吊るして乾燥させることで、美しいドライフラワーに仕上がりますよ」

 

カーネーションのほかに、長く楽しめる春の花は?

 

カスミソウは長持ちしてくれます。あとは、バラシャクヤクも花が開ききるまで生花として飾り、そのあとドライフラワーにすることで長く楽しめますね」

 

河島さんがパリのマルシェを訪れた時の一枚。

 

種類によって差はあるものの、大体の花は日持ちが1週間程度だそう。この1週間のサイクルを活用して、ヨーロッパでは毎週末に花を買う習慣が根付いているそうです。

 

「ヨーロッパでは、毎週末マルシェに行き、チーズとパン、肉、野菜を買うついでに花を買う文化があります。買い物リストの中に花がある、という感じですね。自宅に持ち帰ると、部屋ごとに花を飾ります。『リビングには季節感のある花を飾って、寝室には落ち着いた色の花、子ども部屋には明るい色の花を飾ろう』という具合です。ヨーロッパだけでなく、アメリカでも花を飾る家は多いですね。違いは、マルシェではなくスーパーで花を買う点でしょうか。アメリカは車社会の国なので、車で大型スーパーに行って食材といっしょに花も買う、というイメージです。アメリカを訪れた際、スーパーの入り口に比較的広いスペースで花が売られているのを見て、アメリカでも花を飾ることが日常なのだなと実感しました」

 

花を長持ちさせるためには心がけたい
日々のお手入れ

 

買った花を長く大切にするために、こまめにお世話することもロスフラワーへの取り組みの一つです。河島さんに、花を長持ちさせるポイントをうかがいました。

 

・毎日水替えをする

「毎日水を変えてあげるだけで、日持ちがとてもよくなります。これだけで全然違いますよ。あとは、水換えをする時に茎も一緒に洗ってあげてください。花を水につけていると、茎にぬめりが出てきてしまうことがありますが、これはバクテリアが付着しているからなんです。長ねぎを洗う要領で、ぬめりがなくなるまでしっかりと洗うことがポイントです。洗った後に、茎の先を1~2cm切る『切り戻し』を行うことで、再び水を吸い上げてくれます

 

・水替えの際に花瓶も洗う

花を挿す花瓶も清潔に保つことが大切だそう。

 

「花瓶にもバクテリアが付いてしまうので、水換えの時に花瓶も洗うとさらによいですね。ポイントとしては、食器用洗剤で泡立てながらゴシゴシと洗うこと。洗剤が殺菌してくれるのできれいな状態が保てるんです。一輪挿しなど口が細いものは、水筒を洗うようなブラシを使うとよいと思います」

 

・部屋の涼しい場所に置く

「花は野菜と一緒で、涼しい方が喜びます。ですが、冷蔵庫に入れるわけにはいかないので、部屋のなるべく涼しい場所に置いてあげてください。暖房の下に置いたり、暖房の風を当てたりしないように気を付けましょう。あとは、直射日光が当たらない、明るい場所に置いてみてください。光の加減で花びらが透き通って見え、花の美しさがよりわかって楽しめますよ」

 

・枯れ始めてきたらお手入れする

「たとえばバラのような花びらが層になっている花であれば、茶色くなってしまった外側の花びらを1枚取り除いてあげることで、きれいな見た目に戻ります。これを私たちは『お掃除する』と呼んでいるんです。葉っぱも茶色い部分だけハサミで切ってきれいにしてあげるといいですね。花1本1本を大切にしてあげることで、思っていた以上に美しい状態が長く続きますよ」

 

ドライフラワー作りのコツと意外なNGとは? ハンギング法で「ナチュラルドライフラワー」を作る方法

 

小さなブーケを
もっと楽しむための飾り方

ミニブーケはそのまま花瓶に飾るだけでも美しいですが、いつもと違った飾り方で楽しみたい時のアレンジ方法をうかがいました。

 

・空き瓶を活用してみる

「花の色や形に合わせて花瓶を変えるのも、花の楽しみ方の一つです。アンティークショップで販売している空き瓶は、ミニブーケの花の背丈にぴったりのものが多くておすすめです」

 

ブーケから一輪取り、アンティークの空き瓶に入れるおしゃれなアレンジ。

 

「ほかにも、自宅にあるものを使って素敵に飾ることができます。たとえば、ラベルがかわいいワインボトルやビール瓶の空き瓶を取っておき、一輪挿しにするとおしゃれに見えます。ワインボトルの場合、ミニブーケの花だと背丈が足りないかもしれませんが、背の高い花を一輪購入した際に活用すると格好よく飾れます。シックなインテリアのお部屋にも合いますよ」

 

RINで取り扱っているロスフラワーのチューリップをワインボトルに。

 

・自宅にある“意外なもの”で生けてみる

「ちょっと変わったものですと、プラスチックのおろし器も活用できます。おろし器の穴の中に一輪ずつ挿して生けてみると、面白いアレンジに仕上がります」

 

水を入れたおろし器の穴の中に一輪ずつ挿していくと……。

 

おろし器を使っているとは思えない、素敵なアレンジに!

 

「ほかにもお子さんがいらっしゃるご家庭であれば、サイズアップしてしまった小さな長靴を花瓶にしてもかわいいと思います。長靴には生花だけでなく、ドライフラワーを飾っても素敵なインテリアになります」

 

・小さくなった花をお皿に入れてみる

「切り戻しをしていくことで、花もだんだん小さくなっていくと思います。そんな時に使えるのが小さめの器です。花瓶に挿せないほど小さくなってしまっても、捨てずに小皿に浮かべたりして、最後まで楽しんでみてください」

 

小さめの器に入れ替えた花。テーブルにちょこんと置いておくだけで癒されます。

 

ボタニカルデザイナーに教わる、初心者がセンスある「ハーバリウム」を手作りする方法

 

フラワーサイクルアートで、
花を最後まで楽しみきる

 

花を最後まで楽しみ切る方法として河島さんが提唱されている「フラワーサイクルアート」についても教えていただきました。

 

「『フラワーサイクルアート』のコンセプトは、生花として楽しんだあと、ドライフラワーや押し花を作り、最後はアートにして楽しむこと。最後の最後まで花を楽しみ切るための方法です。ドライフラワーも、生花をそのまま乾燥させてドライにしてもよいですが、しばらくすると退色してしまいます。そこで、退色防止効果のある染色剤を使うのがおすすめです。
水の代わりに染色剤を花瓶に入れ、そのまま花を生けると、茎から染色剤を吸い上げて花びらが少しずつ着色されていきます。花を着色することでドライにした時の色抜けが遅くなるため、より長く楽しむことができるのです。染色剤には赤や青、黄色などさまざまな色があるので、自分好みの色のドライフラワーに仕上がります」

 

染色剤を切り花に吸わせることで、徐々に色が付いていきます。

 

小さなブーケを自宅に迎えたら大切にお手入れし、自分らしいアレンジを加えながら、花との暮らしを楽しんでみてください。

 

 

Profile


フラワーサイクリスト / 河島春佳

株式会社RIN代表取締役。生花店で短期アルバイトをしていた時、廃棄になる花の多さにショックを受けたことから、フラワーサイクリストとしての活動を始める。2019年に創業した株式会社RINでは、ロスフラワーを回収し、ECサイト及び出張販売を行う「フラワーサイクルマルシェ」で花を販売するほか、空間装飾、スクール事業などを展開。農林水産省との取り組み「花いっぱいプロジェクト」にも掲載され、生産者と消費者の架け橋にもなる。ロスフラワーを活用するとともに、ロスフラワーへの認知を広める活動を行っている。

 

※「フラワーサイクリスト」「ロスフラワー」は株式会社RINの登録商標です。

 

 

河島さんの著書『おうちでフラワーサイクルアート』(光文社)には、生花からドライフラワー、押し花まで、花を長く楽しむためのノウハウがぎっしり。ドライフラワーを作ってみたい人は、新著の『染色ドライフラワー図鑑』(X-Knowledge)を参考に。

ドライフラワー作りのコツと意外なNGとは? ハンギング法で「ナチュラルドライフラワー」を作る方法

インテリアにシックな彩りをもたらす「ドライフラワー」。フラワーショップや雑貨店などでも比較的簡単に手に入れられる一方で、飾っていた切り花を自分の手でドライフラワーに仕上げてみたいと思う人も多いのでは? でも実は、 “飾った後の生花から、きれいなドライフラワーを作ることはできない” のだとか。

 

では、ドライフラワーを失敗せずに美しく作るには、どのような点に注意すべきなのでしょうか? 今回は、さまざまあるドライフラワーの作り方から「ハンギング法」をピックアップ。完成までの手順やコツ、ドライフラワーにおすすめの花など、ナチュラルドライフラワー作家の吉本博美さんに教えていただきました。

 

「ナチュラルドライフラワー」とは?

 

ドライフラワーには、見栄えが良くなるよう人工的に着色や退色されたものと、自然のままに乾燥させたものがあります。後者の「ナチュラルドライフラワー」は、自然でありながら鮮やかな色彩といきいきとした表情が魅力です。

 

「市販のドライフラワーの多くに、着色や漂白などが施されています。一見鮮やかですが、自然界には存在しない色になってしまったり、茎も不自然にまっすぐに伸びてしまったりして、本来の魅力を失ってしまっていることが多く、残念ですね。ドライ=枯れている、という印象があるせいか、ナチュラルドライフラワーは色彩が乏しいと思われがちですが、実はまったくの逆。ナチュラルドライフラワーだからこそ、深みを帯びた美しい色彩を出すことができるんです」(ナチュラルドライフラワー作家 吉本博美さん、以下同)

 

↑ナチュラルドライフラワー作家の吉本博美さん

 

その美しさは飾った後の鮮度が悪くなった花では出せない、と吉本さん。きれいなドライフラワー作りには、花の鮮度も欠かせません。また、湿度以外に直射日光も、花を傷める原因になるため、適切な手順と場所を選ぶ必要があります。正しい方法で乾燥させてこそ、色鮮やかで美しいドライフラワーを楽しむことができるのです。

 

ドライフラワーの作り方はさまざま

ドライフラワーには、ほかにもグリセリン法、シリカゲル法、ドライインウォーター法などがあります。たとえば、花の形を絵のように固定させて乾燥させたいときなどにはシリカゲル法、花瓶に飾ったまま徐々に乾燥させていきたい場合はドライインウォーター法などを選ぶことも可能ですが、花の自然な形を残すためにはハンギング法が最も適しています。さらに、ナチュラルドライフラワーには、人工着色料などを一切使用していないので環境への負担も少ない、というメリットもあります。

 

【ドライフラワーの製作方法 4種】

■ ハンギング法
束ねた花を逆さにし、吊るしてドライにする方法。手軽に作れて、乾燥中もインテリアとして楽しむことができます。

 

■ ドライインウォーター法
花を少量の水に挿し、少しずつ蒸発させながら花をドライする方法。花瓶に飾りながら作ることができます。

 

■ シリカゲル法
ドライフラワー用の「シリカゲル」を使用して花をドライにする方法。シリカゲルをたっぷりと容器に敷きつめ、その上に花が重ならない様に置いたら、花の上からもシリカゲルをそっと被せて埋め、てドライフラワーになるまで置いておきます。色や形が鮮やかに残りますが、茎は切らないといけないためアクセサリーやハーバリウムなどに使うドライフラワーにおすすめ。

 

■ グリセリン法
グリセリン溶液を使用して花をドライにする方法。花を溶液のなかに「漬ける方法」と挿して「吸わせる方法」があり、特に繊細な花や葉を落ちにくくしたい場合に選ぶ方法です。

 

高温多湿と直射日光を避けて吊るす

 

ドライフラワーと切り花との大きな違いは、保存期間です。切り花は1~2週間しか楽しめませんが、正しい手順で作ったドライフラワーなら半年ほど楽しむことができます。今回はナチュラルドライフラワーの作り方の手順とコツを教えていただきましょう。

 

まず、ドライフラワーは湿度を避けることが必須。制作に適した時期は、夏を除く1月~5月・10月~12月です。自宅に湿度計があるなら、50%以下を目安にすると良いでしょう。梅雨時や夏に作りたいなら、エアコンや除湿機を活用し、高温多湿を避けることが重要です。

 

「湿気がこもりやすいバスルームなどに吊るすと、花が蒸れて傷んでしまいます。通気性を重視して窓際を選ぶ人もいると思いますが、直射日光に当たるときれいな色に仕上がらなくなってしまうため、窓際から少し離れた場所を選ぶようにしてください」

 

例えば、ドアの上部分や、上枠にハンガーで引っかける、もしくは窓際でもカーテンで遮光するのが良いでしょう。

 

「エアコンや除湿機、サーキュレーター(扇風機)を活用するのも効果的ですが、エアコンや扇風機の送風が強すぎると、生花の花弁が散ってしまったり、形が崩れてしまったりすることも。送風を花に直接当てるのではなく、吹き出し口などから少し離れたところに吊るすことをおすすめします。避けて欲しいのは、浴室乾燥機。花を乾燥している間中、ずっと浴室を使わないのであれば有効かもしれませんが、基本に浴室は常に湿気がある場所ですので花が傷んで、これも失敗の原因になってしまいます」

 

【ナチュラルドライフラワー作りのポイント】

・高温多湿を避ける(湿度50%以下が目安)
・直射日光の当たらないところに吊るす
・エアコンや扇風機の送風を直接当てない
・浴室乾燥機で花を乾燥することは避ける

 

ハンギング法の手順

道具から確認していきましょう。

 

【準備するもの】

・生花(好きな花。今回は、バラ、ユーカリグニー、レモンリーフ、ホワイトレースフラワー、エリンジウムを使用)
・花切バサミ
・ハンガー
・小型ピンチハンガー(1本ずつ吊るすとき)
・輪ゴム
・S字フック

【作り方】

1.生花の前処理を行い不要な葉やトゲを取り除く。

茎についているとげや葉を取り除いていきます。葉はハサミでも手でも、やりやすい方法でかまいません。

 

ユーカリなどの葉ものも、下の方の葉を取り除きます。厳密なルールはないので、好みのバランスで調整してください。

 

必要な長さに切っていきます。短めに切れば乾燥も早くなります。スワッグを作るなら飾るときをイメージして切っておきましょう。

 

2.同じ種類の花をまとめる

同じ種類の花を束ねていきます。このとき、まとめてたくさん束ねるのではなく、数本ずつ束ねていくことがポイントです。花同士が当たってしまうと、傷んでしまったりカビてしまったりする原因になるので、束ねる高さを調節してみてください。

 

3.輪ゴムで束ねる

茎を交差させたまま1本の茎に輪ゴムをかけて支点にし、外側から巻いていきます。

 

しっかりと、茎が抜けないように輪ゴムを巻きつけたら、最後に輪ゴムをかけていない方の茎に、輪ゴムの端を引っかけて固定します。巻き方が緩いと乾燥でしぼんだ茎が滑り落ちてしまうので、まずはしっかりと輪ゴムで束ねておくことが大切です。

 

4.ハンガーに掛けて吊るす

ハンガーの間に片方の花を入れて、そっと吊るします。

 

5.湿度と直射日光を避けられる場所に吊るす

湿気が少なく、直射日光が当たらない場所を選んで吊るします。複数の花を吊るす場合には、それぞれの花が当たらないよう間隔を開けてハンガーにセットしてください。壁に当たると茶色く変色したり、壁面に染みがついてしまったりすることも。そのため、壁面近くに吊るす場合には、なるべく壁に花が直接当たらないよう気をつけましょう。

 

一本ずつ吊るす場合は、小型ピンチハンガーに挟みます。このときも、花同士が当たらないよう、間隔を開けるようにしてください。また、麻ヒモを引っ張ってピンなどで張って、そこにS字フックを引っかける方法もあります。室内に引っかける場所が無い場合は、突っ張り棒を使って吊るす場所を作りましょう。

 

6.完成

↑完成したナチュラルドライフラワー。左から、エリンジウム、バラ、ホワイトレースフラワー(上)、レモンリーフ、ユーカリグニー(下)

 

約1週間~2週間かけて乾燥させると、ナチュラルドライフラワーが完成します。

 

「完成を見極めるときには、花首(茎の先の花を支えてる部分)を指で触ってみてください。まだぐらぐらしているようだったら乾き切っていないサインです。花の種類によって乾燥させる期間は異なりますが、一般的には約1~2週間。例えば、バラは1か月近くかかるものもあります。よく早く乾かしたいからとドライヤーを使用する人もいるようですが、花の形が崩れてしまう恐れがあるのでおすすめしません。焦らずじっくりと乾燥させてあげてください」

 

美しいドライフラワーを長く楽しむためのメンテナンスのコツ

せっかく作ったナチュラルドライフラワーだからこそ、できるだけ長く楽しみたいものです。完成したあとのメンテナンスや替え時についても教えていただきました。

 

【メンテナンスのコツ】

1.害虫対策
梅雨や夏には、ドライフラワーにも害虫が出やすくなります。あらかじめ花の中心部にノズル式の殺虫剤を塗布しておくと、繁殖を防ぐことができます。

 

2.ホコリの除去
ドライフラワーに積もったホコリは、ドライヤーの弱風で払ってあげましょう。その際、直接風を当てないように気を付けてください。

 

3.ナチュラルドライフラワーの寿命
鮮やかな色彩を保てるのは約3~6か月です。高温多湿となる梅雨や夏は、さらに脱色する時期が早まり、約1~3か月。色褪せた状態が好みであれば無理に処分する必要はありませんが、これらのタイミングを替え時の目安にするとよいでしょう。

 

南アフリカやオーストラリア原産のタフでエキゾチックな花がトレンド

基本的にはどんな花でもドライフラワーにならないことはありません。とはいえ、なかにはドライフラワーにするのに適した花とそうではないものがあるそう。

 

「花に含まれる水分量が少なく、変色しにくい種類がドライフラワー作りには向いています。例えば、バラや千日紅、アネモネなど。逆に、チューリップやカーネーションなど、茎の水分が多い種類や花弁が少なく繊細で取れやすい種類は、きれいにドライフラワーにしづらいものもあります」

 

とくに、水分が多い花は乾燥に時間がかかるために、きれいな色味が出ないことも。そうしたなか、ドライフラワーの花材として昨今人気を集めているのが、南アフリカやオーストラリア原産の花なのだとか。

 

「南アフリカ原産のリューカデンドロンやプロテア、オーストラリア原産のバンクシアやカンガルーポーなど、エキゾチックな花が人気です。水分量が少なくて丈夫な花なので、ナチュラルドライフラワーにするのにも適しているんです。最近では、 “アンティーク調” のインテリアが人気なので、これらの花を使うと落ち着いた色合いに仕上がることも人気の理由のひとつだと思います」

↑上から、南アフリカ原産のプロテア・ナナ、プロテア・カーニバル、リューカデンドロン・ネブロッサム、リューカデンドロン・ジェイドパール

 

↑同じく南アフリカ原産のセルリア。オーストラリア原産のカンガルーポー、バンクシア

 

「今回お教えしたハンギング法には、特別な道具や技術がいらないので、ポイントさえ押さえれば初心者でも自宅できれいにドライフラワーを作れます」と吉本さん。自然乾燥のものは機械などで作られたものに比べて長く持つ、というのもメリットのひとつだといいます。

 

日々の暮らしの中で気持ちを落ち着けたいときなどには、ぜひ自然に移ろいゆく花の様子を眺めながらナチュラルドライフラワー作りを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

プロフィール

ナチュラルドライフラワー作家 / 吉本博美

大手アパレルメーカーでデザイナー、プレスを務めた後、雑貨ブームや高感度なライフスタイルを牽引するDepot39に入社。2005年、東京・奥沢にて「libellule」ドライフラワーショップと教室を開始し、2015年に府中に転移して「Rint-輪と-」をオープン。現在、広島、長崎でも定期講習会を開催するほか、各地で展示会を開催。テレビや雑誌などさまざまなメディアで作品を発表する。著書に、『はじめてのナチュラルドライフラワー』(家の光協会)がある。
Instagram

 

Rint-輪と-

所在地=東京都府中市片町3-18-1
TEL=042-310-9615
不定休
営業時間はInstagramに随時掲載
HP

 

はじめてのナチュラルドライフラワー』(家の光協会)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

花一輪で部屋は変わる! 花と花器の選び方と飾り方をフローリストが解説

家の中に花があるだけで、明るくやさしい気持ちになります。そんな憧れの “花のある暮らし” を、まずは花一輪を飾ることから始めてみましょう。 フローリストの小野木彩香さんに、初心者でもすぐに取り入れられる、花を生けるコツや楽しみ方を教えていただきました。

 

部屋に花を生けることは丁寧に暮らす第一歩

↑フローリストの小野木彩香さん。

 

「季節の花や自分の好きな花を選んでもいいですし、お気に入りの花器を飾りたい、という理由からでもかまいません。最初は簡単に、1本の花を飾ってみましょう。気負わず楽しんでみてください」と、小野木さん。

 

「花を飾ることは、心を癒すだけでなく、季節を家の中に取り込むことでもあります。花をきっかけにして四季の移り変わりを意識するようになると、自然と旬の食べ物を選んだり、季節に合わせた食器や洋服を選んだりすることにつながっていきます。暮らしに丁寧に向き合うようになります。花を生けることは自然に寄り添った丁寧な暮らしの第一歩なのです」(フローリスト・小野木彩香さん、以下同)

 

花のボリュームや形状に合わせて花器を選ぶ

花を飾るときには、ボリュームや花のつき方など、形状に合わせた花器を選ぶことが大切です。具体的に見ていきましょう。

 

・スプレー咲きの小花は、花と等しい幅の花器に生ける

↑華奢な小花も安定感のある印象に

 

「アストランティアのように、茎が枝分かれして小さな花がたくさんついている “スプレー咲き” の花は、花全体の大きさ(幅)と花器の底の幅の大きさが近いと安定感が生まれ、バランスよくまとまります」

 

・縦のラインに咲く花は、口径が細く、高さのある花器に生ける

↑上に伸びる個性的な茎のラインを活かして

 

「ルピナスのように縦のラインに咲く花は、口径が狭い花器に生けるとふらつかず、伸びやかなラインを楽しむことができます。花器の高さとのバランスは、1:1か1:2くらいが最適です」

 

・上向きに咲く大きな花は、口径が広めの花器に斜めに生ける

↑少し視線を外した佇まいも素敵

 

「バラのように上向きに咲いている大きな花は、口径が茎より広めの花器を選び、斜めに挿して飾るのがポイントです。花の顔が下に少し傾くことで、奥ゆかしさも演出することができます」

 

同じ花を生けても陶器とガラスの花器では印象が変わる

↑同じミヤコワスレをガラスの花器を陶器の花器に生けてみると、違いが明らか

 

主な花器の素材にガラスと陶器がありますが、飾ったときにどのような違いがあるのでしょうか?

 

「ガラスの花器(左)では、茎の様子までよく分かり、植物が持つ躍動感も感じることができます。陶器の花器(右)では、陶器と花の一体感がより強調された印象になります。そのほか、ガラスは夏らしい涼やかな印象をもたらし、陶器はほっこりと温かい和のイメージに。季節に合わせてガラスの花器と陶器の花器を使い分けてみるのもいいですね」

 

“いつも花を飾る場所” を決めて習慣化。広めのスペースなら一輪挿しを寄せて飾っても

左から、ナズナ、ミヤコワスレ、ラグラス、ステルンクーゲル、クレマチス

 

「棚の一角など、 “いつも花を飾る場所” を決めておくと、花を飾ることが習慣化します。少し広めのスペースがあれば、もっと変わったアレンジも楽しめます。このような場合も、まず小さな花を花器に1輪ずつ生けましょう。生ける花や花器の形がさまざまでも、自然とまとまって見えるポイントはグリーンです。花だけでなく、グリーンを生けた花器も織り交ぜることで、全体に統一感が生まれます」

 

花器から選ぶ飾り方もおすすめ。1つあると便利なボトル型花器

↑小野木さんお気に入りのボトル型花器。雑貨店で購入したものだそう

 

「お気に入りの花器から飾りたい花を選ぶ方法もおすすめです。一つ持っていると重宝するのが、口径2cm、高さ23~25cmくらいのボトル型の容器。1輪から3輪くらいの花を飾るのにぴったりで、枝ものもセンスよく飾ることができます。素材はガラスでも陶器でもOK。お気に入りの花器を持っていると花を飾る楽しみがもっと広がります」

↑左はユリ、右はライラック。バランスをとるのが難しい花も安定して生けられます

 

「茎がスッと伸び、大きな花としっかりした葉がつくボリュームのあるユリは、ボトル型花器に生けるとバランスがよく、落ち着いた印象になります(左)。また、ライラックのような枝ものも、ボトル型花器と相性抜群です(右)。枝ものは枝のしなり具合により重心がとりにくいのですが、ボトル型花器なら安定感も抜群です」

 

皿やボウルに花を飾り、テーブルまわりのおもてなしにも。

↑皿にツル性のモッコウバラを

 

↑ボウルに張った水に花を浮かべて

 

「モッコウバラのようなツル系の植物は、水を張ったトレイの縁に沿わせて生けても(上)。皿のふちに沿わせることで、自然な雰囲気にまとまります。水を浅めに張るので切り口がしっかり水につかっている状態を保てるように注意します。

 

また、飾っていた花の元気がなくなってきてしまったら、花の部分をカットしてボウルなどに浮かべて飾っても(写真下)。夏には涼を感じるおもてなしにもなります。最後まで花を楽しむ方法としてもおすすめです」

 

ブーケを飾るときは、花器の細くなった部分に束ねてあった部分がくるように

↑バラ、ニゲラの実、アゲラタム、カモミール、レモンリーフのブーケ

 

「ブーケは紐などで束ねられている場所が、ちょうど花器の細くなったあたりにくるように、茎の長さを調整するのがポイントです。飾ることきは、まず周りのセロハンや薄紙は除き、束ねてある紐なども外します。そして、水に挿す前にそれぞれの花の茎を切ることを忘れずに」

 

最後の「花を長持ちさせる3つのPoint」も参考にしてください。

↑口径のサイズを調整できる留め具がセットになった花器も、生花店や雑貨店で売られています。一つあるとさまざまなサイズのブーケに対応できて便利

 

花を長持ちさせる3つのPoint

花を長持ちさせるには花を生ける前の準備と日頃のお手入れが大切です。押さえておきたい3つのポイントを確認しましょう。

 

1.茎を切る

花を生ける前に下から1cmくらいのところで茎を斜めに切ると水の吸い上げがよくなります。毎日水を替えるときにも切るようにしましょう。

 

2.水の量は多すぎず少なすぎず

水は切り口がしっかり水につかっていることが鉄則です。数本まとめて生けるときは茎が絡み合って水から出てしまわないように注意を。茎がやわらかいガーベラやカラーなどは茎が腐りやすいので水を少なめにします。

 

3.水替えは1日1回

1日1回、新しい水に取り替えます。細菌が繁殖すると茎が腐りやすくなります。

 

「花のお手入れを楽しむことができるようになると花との暮らしがもっと楽しくなります。水やりを忘れそう、ちょっと面倒かもと思う人は、まずキッチンや洗面所など、すぐに水が取り替えられる水回りに飾るのもおすすめです」

 

気負わずに、まずは1輪から。今日から花との暮らしを始めてみませんか?

 

プロフィール

フローリスト / 小野木彩香

夫婦で営む北中植物商店の「花部門」を担当。ウエディング・店舗装飾のほか、アトリエでアレンジの販売や教室を開催。近著は『毎日、一輪。はじめて花・葉・枝を生ける人のための手引帖。』

 

北中植物商店
・所在地=東京都三鷹市大沢6-10-2
・TEL=0422-57-8728
・営業日=土曜、金曜、日曜
・営業時間=土曜13:00~17:00(予約不要)、金曜・日曜11:00~17:00(完全予約制)
HP

 

毎日、一輪。はじめて花・葉・枝を生ける人のための手引帖。』(エクスナレッジ)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」