【2025年版】玄関の防犯カメラ・ドアホンおすすめは? 違いを比較! 設置方法から費用まで徹底解説

玄関周りの防犯対策として、ドアホンと防犯カメラはどちらも有効な手段ですが、それぞれ異なる機能と特徴を持っています。そのため、用途に合わせた機器選びが重要。本記事では、それぞれの違いと、自宅に合った製品を選ぶためのポイントを解説します。

↑玄関の防犯力をどう高める?

ドアホンと防犯カメラとは?

ドアホンや防犯カメラは、5Gといった通信環境の整備が進むなかで、家の安全を強化するためのスマートな方法として注目されています(※)。玄関の防犯を考える際には、主に以下の3つのタイプのデバイスが選択肢となります。

※【出典】総務省. 令和2年版情報通信白書

↑スマートホームの一部になる。

テレビドアホン

主に来客応対を目的としたインターホンシステムです。屋内の親機で来訪者の映像を確認し、通話が可能。近年は録画機能を搭載したモデルも増えています。

↑室内の親機で来訪者を確認。

スマートドアホン

ネットワークに接続し、来客を検知するとスマートフォンに通知を送信。外出先からの双方向通話、マイクロSDカードやクラウドストレージへの録画に対応しているのが特徴です。

玄関用防犯カメラ

玄関周辺を常時またはイベント発生時に録画することを主な目的とします。来客応対機能は限定的で、リアルタイムでの通話機能を持たないモデルもあります。

タイプ別のメリットとデメリット

各タイプの詳細なメリットとデメリットを理解することで、より適切な選択が可能になります。

テレビドアホン: 通常のドアホンと同じ使い勝手が魅力

テレビドアホンは有線接続が基本のため通信が安定しており、映像や音声の遅延が少ない傾向にあります。屋内モニターで確実に映像を確認できる安心感も。

一方で、既存の配線を利用するため設置工事が必要な場合があります。外出先からの応対機能はモデルによって対応状況が異なります。

スマートドアホン: 設置が楽な半面、使い勝手は今ひとつ

スマートドアホンのメリットはスマホと連携し、どこからでも来客対応が可能な点にあります。AIによる人物検知や荷物検知機能を備え、必要な通知を絞り込める製品も多くあります。

↑スマホでチェック。

しかしWi-Fi環境への依存度が高く、電波状況が悪い場所では安定性に欠けることがあります。多くのモデルでクラウド録画に月額費用(サブスクリプション)が発生します。

玄関用防犯カメラ: ドアホンとしては使えない

玄関用防犯カメラのメリットは視野角が広く、玄関周辺の広範囲を監視できる点にあります。夜間監視に強く、赤外線やカラーナイトビジョンで暗所でも映像を記録できます。

ただし、来客を呼び出す機能や、双方向通話機能が限定的なモデルが多く、来客応対には向かない場合があります。そのため、ドアホンとの併用が推奨されます。

どれを選ぶべき?

来客応対を重視し、確実な屋内確認が必要な場合はテレビドアホンが適しています。外出先からの応対や、置き配の監視・不審者の早期検知を重視する場合、スマートドアホンが有力な選択肢です。

玄関周辺の広範囲な監視や、詳細な映像記録を重視する場合は玄関用防犯カメラが向いています。 状況に応じてこれらを単独で導入したり、機能を補完し合う形で併用したりすることも検討できます。

ドアホン・防犯カメラの失敗しない選び方

製品選定時に確認すべき重要なポイントを8つにまとめました。

↑どう選ぶ?

1: 電源

電源は大きく有線タイプとバッテリータイプの2種類に分かれます。

有線式の場合、AC電源、PoE(Power over Ethernet)給電、既存のチャイム配線などを利用します。安定した電力供給がメリットですが、配線工事が必要な場合があります。

バッテリータイプは配線工事が不要で設置が容易ですが、定期的な充電または電池交換が必要です。

2: 通信方式

多くのスマートデバイスは2.4GHz帯のWi-Fiを使用。戸建ての場合、ルーターから玄関までの距離や障害物によって電波が届きにくいことがあります。必要に応じてWi-Fi中継器やメッシュWi-Fiの導入を検討する必要があります。

3: 画質/視野角

画質は最低でも1080p(フルHD)以上の解像度がおすすめ。顔やナンバープレートなどの詳細を識別しやすくなります。

視野角は玄関先の人だけでなく、足元に置かれた荷物(置き配など)も上下で捉えられる縦長の画角が実用的です。

逆光時に人物の顔が黒つぶれするのを防ぐHDR(ハイダイナミックレンジ)機能も、日当たりの良い玄関では特に有効です。

4: 人・もの検知

↑人や物を検知して録画を始める。

人感センサー搭載製品の場合、赤外線センサーを用いて人の動きを検知して通知・録画を開始してくれます。不要な通知を減らすため、AIによる人物検知機能が搭載されているモデルを選ぶと良いでしょう。

置き配された荷物を検知し通知するパッケージ(荷物)検知機能を備える製品もあります。

人通りの多い道に面している場合、自宅を訪問していない通行者を誤検知してしまう場合もあります。スマートドアホンの場合、検知エリアを設定できる製品もあります。

通知が短時間で連続しないように設定できるクールダウン機能の有無なども確認しましょう。

5: 録画

映像を録画する機能は、本体内のマイクロSDカードなどに記録するローカル記録タイプと、ネットワーク経由でクラウドサービスに録画するタイプに分かれており、どちらにも対応する製品があります。

本体内記録の場合、本体に直接保存するため月額費用はかかりませんが、本体が盗難されるとデータが失われるリスクがあります。

クラウド録画は月額料金が必要ですが、データがインターネット上に保存されるため、本体が盗難されても映像が残るのが利点。保持期間や容量はプランによって異なります。

そのほか、複数台のカメラ映像を一括で管理・保存できるNVR(ネットワークビデオレコーダー)などもあります。

データの暗号化がされているかも確認し、セキュリティ対策がなされている製品を選びましょう。

6: 防塵防水/耐久性

屋外設置の場合、IP65相当以上の防塵防水性能が必要です。夏の高温や冬の寒さにも耐えうる耐寒耐熱性も重要。夜間には赤外線によるナイトビジョン機能、またはカラー暗視機能があると詳細な映像を記録できます。

7: 機器・サービス間連携

Amazon Alexa、Googleアシスタント、Apple HomeKitなどのスマートホームプラットフォームと連携できる製品であれば、音声で映像を表示したり、通話を開始したりできます。

不審者を検知した際にセンサーライトを点灯させたり、スマートロックと連携して遠隔で解錠したりする機能も便利です。

新しいスマートホーム規格であるMatter(マター)への対応も、将来性を考慮するうえで確認しておくと良いでしょう。

8: 設置性

賃貸物件では壁への穴あけが制限されることが多いため、電池式で両面テープやドアののぞき穴を利用する取り付け金具など、非破壊で設置できるモデルを検討しましょう。

設置・工事・マナーの注意点

↑建物の条件や他人のプライバシーに気を付けながら設置しよう。

防犯機器の設置には、物件の条件や周囲への配慮も大切です。

賃貸・集合住宅の場合

共用部分の改造は基本的にNGです。設置の際は必ず管理会社や大家さんの許可を得ましょう。ドアののぞき穴を利用する専用マウントや、ドアに挟むタイプの金具など、原状回復が可能な方法で設置します。

プライバシーへの配慮

隣家や公道など、他人のプライバシーを侵害しないように設置角度を調整しましょう。マスキング機能で不要な範囲を記録しない設定や、「防犯カメラ作動中」などの掲示で、近隣住民とのトラブルを避けることができます。

電波法/技適・PSE

無線通信を行う機器は、日本国内での使用を許可する「技術基準適合証明(技適マーク)」が必要です。また、電源装置は電気用品安全法に準拠した「PSEマーク」に適合しているか確認しましょう。これらがない製品は違法となる可能性があります。

防犯面

屋外に設置する機器は、盗難や破壊のリスクを考慮することが必要。トルクスネジや専用工具が必要な固定方法、ワイヤーでの落下防止、腐食しにくい素材の選択などが有効です。

シーン別の活用方法

特定の利用シーンにおける効果的な活用方法をご紹介しましょう。

置き配監視

縦画角が広いカメラを選び、荷物検知機能で置き配状況を把握します。盗難発生時には自動で録画・通知され、証拠として活用できます。門柱やポーチ灯の配置を考慮し、死角を減らすことも重要です。

不在応対

スマートドアホンを利用し、外出先から来訪者と直接通話します。在宅を装って不審者を遠ざけたり、配達員に指示を出したりすることが可能。不審な勧誘には通話を録音・録画し、記録を残すことができます。

夜間対応・撮影

センサーライトを内蔵したカメラは、夜間の来訪者を明るく映し出すだけでなく、不審者への威嚇にもなります。既存のセンサーライトと連携させることで、多層的な防衛体制を構築できます。

子どもの出入り

スマートロックと連携させ、子どもが帰宅した際に解錠を通知する設定にすると、安全確認ができます。リモート解錠機能は便利ですが、第三者による不正使用のリスクも考慮し、慎重な運用が必要です。

各製品はどのくらいの価格で買える?

各カテゴリの製品イメージと価格帯をご紹介します。

テレビドアホン

パナソニック、アイホンなどの国内主要ドアホンメーカーのほか、宅配ボックス大手のナスタなどから販売されています。屋内親機と玄関子機がセットになっており、多くが有線接続です。本体価格の目安は1.5万~5万円。

↑パナソニック「VL-SWZ700KS
↑アイホン「WS-24A
↑ナスタ「KS-DP01U

スマートドアホン

アマゾンの「Ring」、TP-Linkの「Tapo」、SwitchBot、Aqaraなど、海外ブランドを中心に多数の製品があります。バッテリー式と有線式の両方があり、スマートフォンアプリでの通知と応対が主な機能。

本体価格の目安は1万~3万円です。クラウド録画サブスクリプションサービスは月額1000円程度~(保持期間や台数で変動)。

↑アマゾン「Ringバッテリードアベル
↑TP-Link「Tapo D210
↑SwitchBot「スマートテレビドアホン
↑Aqara「スマートビデオドアベルG4

玄関カメラ

スポットライト付きモデルや、PoE給電に対応した有線モデルなどがあります。多くはNVRやマイクロSDカードでのローカル保存に対応。本体価格目安は8000円~3万円です。

↑アマゾン「Ringスポットライトカム・プラスバッテリーモデル
↑Eufy「ソーラーウォールライトカム S120

導入までのステップ

玄関防犯機器を導入する際の具体的なステップです。

1: 現状課題の明確化

来客応対を改善したいのか、不審者の監視を強化したいのかなど、最も解決したい課題を明確にします。

2: 設置位置の確認

玄関周りのどこに設置するか、電源の有無、Wi-Fi電波の到達状況を確認します。

3: タイプ選定

課題と設置環境に合わせて、テレビドアホン、スマートドアホン、玄関カメラの中から最適なタイプを選びます。

4: 試験設置

可能であれば、仮止めなどで動作確認を行い、映像の確認や通知の安定性をチェックします。

5: 通知・録画設定

アプリや本体設定で、検知感度、通知頻度、録画時間などを最適に設定します。

6: マスキング&共有設定

プライバシー保護のため、マスキングゾーンを設定し、必要な範囲のみを記録するようにします。家族との共有設定も行います。

7: 運用ルール化

家族間で、通知への対応や録画データの確認方法などの運用ルールを定めておきましょう。

まとめ: 用途に合わせた機器選びを

↑新しい機器で玄関の防犯力を高めよう。

玄関防犯対策は、用途に合わせた機器選びが重要です。来客応対ならドアホン、外出先からの対応や置き配監視ならスマートドアホン、広範囲監視なら防犯カメラを選ぶのがおすすめ。

設置場所とプライバシーにも配慮が必要です。賃貸住宅の場合には非破壊設置ができるものを選び、道路の映り込みにはマスキング機能を利用しましょう。

録画機能と通知機能を組み合わせることで、犯罪抑止効果を高め、万が一の際には証拠として活用できます。AI検知で誤検知を減らし、適切な録画方法を選びましょう。

FAQ

Q1: 賃貸物件だけど設置できる?

A: 賃貸物件の場合、建物の構造に影響を与えない「バッテリー式」や「非破壊型」の製品であれば、問題なく設置できることが多いです。例えば、既存のドアホンに被せるタイプや、粘着テープで固定するタイプなどがこれに該当します。

しかし、電源配線を伴うもの、壁に穴を開ける必要があるもの、または強力な接着剤などで構造に影響を与える可能性のある設置方法の場合は、必ず事前に管理会社や大家さんに相談し、許可を得るようにしてください。

無許可で工事を行うと、原状回復費用を請求されるなどのトラブルに発展する可能性があります。

Q2: 道路など公共の場所が映る場合はどうすればいい?

A: 防犯目的とはいえ、不特定多数の通行人が映り込む場所にカメラを設置する場合は、プライバシーへの配慮が不可欠です。

多くのスマートドアホンや防犯カメラには、特定の範囲を映像から除外する「プライバシーゾーン(マスキング)機能」が搭載されています。この機能を使用することで、道路や隣家の敷地など、映すべきではない範囲を黒塗りにして録画・配信されないように設定できます。

また、設置するカメラの角度を慎重に調整することも重要。必要最小限の範囲(例えば自宅の玄関前や庭の一部など)のみを映すように調整することで、不要なプライバシー侵害を防ぐことができます。

設置前に、どの範囲が映るのかを実際に確認し、調整を繰り返しましょう。

Q3: 誤検知が多い場合はどうすればいい?

A: 防犯カメラやスマートドアホンは、動体を検知して通知を送る機能が便利ですが、風で揺れる木々、通り過ぎるクルマ、小動物などに反応して誤検知が多発すると煩わしく感じられます。このような場合は、以下の設定を見直すことで改善できる場合があります。

・人検知を優先させる設定にする

最近の多くの機種では、「人」の動きのみを識別して通知する「人検知機能」が搭載されています。この機能を有効にすることで、不要な検知を大幅に減らせます。

・検知するゾーンを限定する

カメラの監視範囲内で、特に動きを検知したいエリア(例、玄関ポーチのみ)を設定し、それ以外のエリア(例、道路)では検知しないように設定できる機種もあります。これにより、必要な通知だけを受け取ることができます。

・感度を調整する

動体検知の感度を「高」「中」「低」などから選択できる場合、感度を低めに設定することで、些細な動きには反応しなくなります。 お使いの製品の取扱説明書を確認し、これらの機能が利用できるか調べてみてください。

Q4: ネットが不安定な場合はどうすればいい?

A: スマートドアホンやネットワークカメラはWi-Fi接続が基本となるため、Wi-Fi環境が不安定だと映像が途切れたり、通知が遅れたりすることがあります。このような場合の対策としては、以下のような方法が考えられます。

・Wi-Fi中継器を導入する

ルーターとカメラの距離が離れている場合や、それらの間に壁などの障害物がある場合に有効。Wi-Fiの電波を中継し、カメラまで安定した信号を届けます。

・メッシュWi-Fiを導入する

自宅の広範囲に安定したWi-Fi環境を構築したい場合に適しています。複数のWi-Fi機器が連携し、どこにいても最適な電波で接続できます。

・2.4GHz帯の固定利用を検討する

多くのスマートデバイスは2.4GHz帯のWi-Fiに対応しており、この周波数帯は5GHz帯に比べて壁などの障害物に強く、遠くまで電波が届きやすい特性があります。ルーターの設定で、デバイスを2.4GHz帯に固定接続するようにすると、安定性が向上する場合があります。

・ルーターの再起動

一時的な不具合の場合、ルーターの電源を入れ直すことで改善することがあります。 上記の対策を試しても改善しない場合は、ルーターの寿命や契約しているインターネット回線の問題も考えられますので、プロバイダや通信機器メーカーに相談することも検討してください。

Q5: 取り付け工事の費用はどれくらいかかりますか?

A: 既存の配線を利用できる場合は1~2万円、新規配線が必要な場合は3~5万円が目安です。業者によって異なるため、複数社から見積もりを取ることをおすすめします。

Q6: 月額料金(サブスクリプション)は必須ですか?

A: スマートドアホンのクラウド録画機能を利用する場合に必要となることが多いです。必須ではありませんが、本体が盗難された場合でも映像が残るという大きなメリットがあります。SD カードへのローカル録画のみであれば月額費用は不要です。

【解説者】

安蔵 靖志

ITジャーナリスト・家電エバンジェリスト。一般財団法人家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー、スマートマスター。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。X

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スマートホームデバイス20製品以上が最大30%オフ! AqaraがAmazonブラックフライデーでセール実施

IoT・スマートホームデバイスブランドのAqara(アカラ)は、11月27日(金)0時00分~12月6日(金)23時59分まで「Amazonブラックフライデー」で対象商品が最大30%オフとなるセールを開催。注目の対象商品を紹介します。

 

記事のポイント

工事不要ドアホンなど、手軽に導入しやすいスマートデバイスも取り扱うAqaraのセールです。防犯意識が高まっている昨今、人感センサーやカメラはこの機会に試してみてもいいのではないでしょうか。

 

・スマートビデオドアベルG4

工事不要、玄関に貼り付けるだけでスマート化できるバッテリー駆動式ドアホンです。通常価格1万6980円のところ、36%オフの1万1886円で購入できます。

 

Aqara
スマートビデオドアベルG4
価格:1万6980円(税込)→1万1886円(税込)
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・人感センサーFP1E

ミリ波レーダーを搭載し、人がその場でじっとしていても存在を検知できる人感センサー。通常価格7980円のところ、20%オフの6384円で購入できます。

 

Aqara
人感センサーFP1E
価格:7980円(税込)→6384円(税込)
・アマゾン 商品ページはこちら

 

・スマートカメラE1

Homekit、Alexa、Google Homeなどに対応し、音声操作・遠隔操作・タイマー設定が可能なスマートカメラ。通常価格6480円のところ、25%オフの4860円で購入できます。

 

Aqara
スマートカメラE1
価格:6480円(税込)→4860円(税込)
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なぜ日本は“スマートホーム化”に出遅れたのか? 家電王が語る世界との違い、普及へのカギ

家電や設備をネットワークに接続して操作できるようにすることで、暮らしがより豊かになり、ホームセキュリティの向上にもつながるのがスマートホームの魅力です。スマートホームは海外や日本でどのように普及し、今後はどのように進化していくのでしょうか? 今回は、“家電王”として知られ、国内外の最新スマートホーム事情にも詳しい中村 剛氏に話を聞きました。

【お話をうかがったのはこの方!】
家電王 中村 剛さん

東京電力エナジーパートナー株式会社 勤務。2002年に『TVチャンピオン』スーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営に従事。現在は“家電王”として動画マガジン『くらしのラボ』をYouTubeとFacebookで毎週配信している他、テレビや雑誌、新聞などの様々なメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類のネコ好き!

 

日本はまだ遅れているものの、スマートホームの普及は右肩上がり

スマートホームの普及状況について中村氏は、「世界で右肩上がりに伸びています」と語ります。

 

「ロボット掃除機などのスマート家電や、セキュリティ、制御などの分野の比率が高く、近年はカーボンニュートラルに向けた取り組みが進むなかでエネルギー管理も重要なセグメントになっています。日本ではまだスマートホームをスマートデバイス単体で語られることが多いと思うのですが、世界ではトータルでエネルギー管理をする方向に向かっています」(中村氏)

資料提供:Statista

 

資料提供:Statista

 

世界ではスマートホーム化が進むなかで、中村氏は「日本は少し出遅れている印象がある」とのこと。

 

「Statista(※)の調査によると、日本のロボット掃除機などのスマート家電の保有率は10%と、中国、韓国、米国に比べて低いです。エンターテインメント関連(Bluetoothスピーカー、スマートTV、ストリーミング関連など)でも先述の3か国は70%以上なのに日本は26%。また、『スマートホームデバイスは保有していない』との設問に対しても65%とずば抜けて高いため、そもそもスマートホームデバイスとは何なのかを理解していないのかもしれません。遠隔操作ができるエアコン等は製品としてはかなり増えているのですが、その機能をちゃんと使えていない場合も多々ありますね」(中村氏)

資料提供:Statista

※Statistaは100万点以上のデータを扱うビジネスインテリジェンスのポータルとして、170以上の業界、150の国と地域を対象とした、統計、業界レポート、市場予測、消費者サーベイなどを提供しています。(statista.com)各調査会社や公的機関含む22,500以上のデータソースから収集したデータに直接アクセスができ、ビジネスにおけるファクトに基づいた意思決定を支援しています。2007年にドイツで設立され、現在、世界14カ所に約1,400人の従業員を擁しています。調査に関するご相談やお問い合わせはsales.japan@statista.comまで

 

日本でスマートホームが普及しないのは「安全性や規制が強いことも理由にあるのではないか」と中村氏は語ります。

 

「たとえば2012年、パナソニックが遠隔でオンオフ制御できるエアコンを発表した後、遠隔ではオフ制御だけになったことがありました。電気用品安全法の観点から、外出先から、オンにすると火事等の原因になるのではないかと“物言い”が付いたんですね。電気用品安全法では今もこたつなどヒーターを搭載する機器の遠隔操作はダメなのですが、そういう制約が日本は諸外国よりも多いのだと思います。そういった点が、スマートホーム普及のハードルの一つかもしれないですね」(中村氏)

 

さらに、日本の文化的な背景も理由にあるのではないか、と中村氏は語ります。

 

「私は2017年に初めてラスベガスで開催されている『CES』(世界的最大級のテクノロジー見本市)に行き、そこでスマートスピーカーを体験しました。しかし、自分も含めて、日本人は音声で命令するのが恥ずかしいんですよね。欧米ではベビーシッターやお手伝いさんが家にいることも多く、音声での指示に抵抗がないのですが、そういった文化的背景が日本にはない、という違いもあると思います」(中村氏)

そこで、今後スマートホームの普及のカギを握るのはデジタルネイティブな若い世代だといいます。

 

「古くはご飯を炊く炊飯器も『主婦にラクをさせるな』なんて話もあったそうですし、私もかつて東京電力のショールーム『くらしのラボ』にいた際には、『食洗機を買いたいから夫を説得してほしい』なんて言われたことも頻繁にありました。でも時代が変わって、女性が働くのは当たり前になりましたし、みんなが結婚しなければいけない時代でもない。デジタルネイティブの若者も当たり前に増えてきました。パリ五輪で日本の若者が活躍しているように、新しい世代が『便利なものはどんどん使おうよ』という形で盛り上げてくれるのがブレイクスルーにつながる気がします」(中村氏)

 

「プロダクトアウト」ではなく、便利な「ユースケース」が重要

さらに、スマートホームが普及していくためには、「メーカーの都合で生み出された『プロダクトアウト』ではなく、便利な『ユースケース』が普及のためには重要」と中村氏は語ります。

 

「たとえば、ペットを飼っている家庭で、ペットを大事に思うなら、不在時に遠隔で見守れるカメラや自動給餌機、体重管理、エアコンのコントロールをするニーズが生まれてきます。そうすると、必要に迫られてそれらの機器を導入して活用し始めるでしょう。さらに、『高齢者を見守りたい』『手ぶらで解錠したい』など、ユーザー視点でのユースケースを提示していくことがブレイクスルーにつながると考えます」(中村氏)

↑手ぶらで開錠できるスマートロックの例。SwitchBotの「SwitchBot ロック Pro」(左)と「SwitchBot 指紋認証パッド」(右)

 

スマートホーム機器を簡単に使えるようにするためには、AIの活用も重要になります。

 

「見守りカメラで24時間撮影し続けても、すべてをチェックしきれないですよね。ですから、『AIでの画像認識』もセットで絶対に必要になります。必要な映像だけをAIで切り取ることで、初めて人間の見守りにも使えるようになるわけです。また、『カメラはプライバシーの侵害がイヤ』という人には、ミリ波レーダーやWi-Fiの揺らぎなどで見守るサービスなどもあります。先にニーズがあり、それに対してユーザー視点でのサービスが提供されていけば、スマートホーム機器はさらに普及するはず。ですが、ただ単にガジェットを提供して『後はDIYで何とかしてね』では、一部のアーリーアダプターの人しか反応してくれないでしょう。スマートホームが提供出来る価値をユーザーのベネフィット(便益)として伝えなくてはならないのです!」(中村氏)

↑MS LifeConnect「AIスマートカメラ 屋外用カメラ/屋内用カメラ」は、高度なAI検知能力により人間や動物、車などを識別。指定した対象物が写り込んだときだけを「クリップ動画」として切り出し、スマホに通知を送ることが可能です

 

↑Aqaraの「人感センサー FP2」はミリ波レーダーセンサーによって最大5人までの多人数検知に加えて転倒検知も可能

 

「スマートホームのメリットは、利便性の先にある暮らしの豊かさ。便利さだけを追求していくのでは窮屈だし疲れてしまいます。カメラで見ることも含めて、全てをデジタルで制御するといった話だと、良いことばかりではないのだと考えます。結果的にその先にある暮らしが豊かになる、楽しくなるのが重要。今で言うと『ウェルビーイング』につながる『スマートなホーム』というのが本来のあるべき姿だと思います」(中村氏)

 

本当の意味で家がスマートホームになるためには、スマートデバイスを導入するだけでなく、AIで意味付けしてサービス化していくことも重要。

 

「日本は超高齢化に突き進んでおり、見守る側の人も足りなくなるので、データにAIで意味付けすることがまさしく必須です。『こんなアラームが出たら、誰かが自宅に訪問します』といったサービスとの連携が必要になるでしょう。最終的には、家自体が人格のようなものを持ち、住人の最適で豊かな暮らしを提供していく。さらに、クルマの自動運転が普及すると、おそらく『家』のカテゴリ中にクルマも入ってくるでしょう。移動している間に勝手に進んでくれるとなると、家の部屋にいるのと変わらない状態になりますから。そういったことも含めて、その人の周りにあるものすべてを含め、スマートホームのメリットを享受するが私のイメージです」(中村氏)

 

スマートホームプラットフォームの“一元化”が進む

当初、グーグルは「Google Home」、アマゾンは「Amazon Alexa」、アップルは「HomeKit」という独自のスマートホームプラットフォームを展開してきました。各メーカーの製品がそれぞれに対応するには、手間もコストもかかるため、2022年、それらを統合する規格として、無線通信規格の標準化機関であるCSA(Connectivity Standards Alliance)が「Matter」(マター)を立ち上げました。これにより、スマートホーム規格の標準化が進められていますが、まだまだ課題があるといいますす。

 

「日本の家電メーカーと話をすると、共通規格である『Matter(マター)』に対してあまり積極ではないと感じます。統一するといっても、電源のオン・オフやエアコンの温度を1℃上げるといった基本機能を統一するのは簡単ですが、メーカーだけのオプション機能まではなかなか統一できません。そこで、エアコンはこうしましょう、ロボット掃除機はこういう風にしましょうと、カテゴリごとに取りまとめが進んでいるわけですが、先述のCSAでの議論に積極的に入っていかないと、蚊帳の外でプロトコルが決まってしまいます」(中村氏)

 

続いて住宅設備に目を向けてみましょう。日本では住宅設備やエアコンなどの家電を接続してエネルギー管理を行うための共通規格である「ECHONET Lite(エコーネットライト)」が普及し、「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」によって空調や給湯、エネルギー管理などが行われています。

 

「住宅設備系はECHONET Liteで接続しつつ、スマート家電はMatterで連携し、それらを統合するシステムを組んでいく。今後は、このような流れで進んでいくと思います。例えば三菱地所の『HOMETACT(ホームタクト)』の場合、ECHONET Lite系はLIXILの仕組みをベースに、スマートデバイスと組み合わせてサービスを展開中です。また、マンションのエントランスの顔認証などの仕組みは自社だけではできないので、DXYZ(ディクシーズ)と連携してスマートホーム化の実績をたくさん積み上げているところです」(中村氏)

↑HOMETACTで制御できる機器の例

 

↑HOMETACTとDXYZの顔認証プラットフォーム「FreeiD」が連携した例

 

社会課題の解決に向けて住宅設備メーカーと不動産会社などが取り組んでいる事例もあると中村氏は紹介しました。

 

「社会問題化している宅配便の人手不足対策として、インターホンと玄関錠を含めてスマート化し、フリマアプリの『メルカリ』の荷物を自宅の宅配ボックスから発送できるサービスなども始まりました。オートロックがあっても、認証された宅配業者であれば各戸の宅配ボックスのある場所まで入れるようになりました」(中村氏)

↑自宅からEC商品・レンタル商品などが発送できる「Smari(スマリ)サービス」に対応した宅配ボックスも登場

 

「さらに、家のカギがスマート化していれば、次は顔認証で入れるとか、近づいたらカギが開くというのが当たり前になっていくと思います。たとえば、スマホのGPSで自宅近くに入ったことが分かってから数分間以内にBluetooth圏内に入ると、解錠するスマートロックもある。極めて便利ですから、『便利なら使おう』という形で導入が進みます。このスマートロックのハンズフリー解錠にしても、CSAの中でMatterとは別のAliroの規格として検討が進んでいるところです。そうやってどんどん外堀が埋まっているので、日本でも、ぜひ便利な現実を存分に享受してほしいと思います」(中村氏)

↑ハンズフリーでの解錠やオートロックが可能なQrio Lock

 

まずはスマートリモコンから始めてみては

では最後に、スマートホームに興味がある人に対して、どこから始めればいいのかアドバイスをいただきました。

 

「エアコンが一番分かりやすいですね。既存のエアコンを含めると、赤外線対応の『スマートリモコン』を使うのが汎用的なスマートホームの第一歩ではないでしょうか。近年は夏の暑さがひどいので、エアコンで冷房しがなければ熱中症の危険性があります。ペットがいたり、小さい子どもや老人がいたりする家庭では室内の温度管理が特に重要ですが、スマートリモコンの機能を使えば、外出先でもエアコンのオンオフや設定温度調整が可能になりますし、一定の室温になったら冷房をオンにする設定も容易にできます。自宅にいるときでもスマートスピーカーと連携して『エアコンを消して』『エアコンの温度を1℃下げて」といった音声操作は意外と便利です。カーテンを自動で開け閉めできるデバイスもあって、快適な目覚めにつながります。まずは興味を持ったそのあたりから使ってみてください」(中村氏)

↑+Styleのスマートリモコン「マルチリモコン PS-IRC-W02」。500種類以上の赤外線リモコンデータがプリセットされているため、セットアップも簡単です

 

↑アプリ操作や音声操作、リモートボタン、照度センサーなどで自動操作ができる「SwitchBotカーテン3」