海外で働く「ベトナム人労働者」が15倍に急増! 需要が旺盛な日本企業は2400人を要請

日本で働く外国人労働者を国籍別に見た場合、最も多い国はどこでしょう? 答えはベトナムです。2023年、同国はさらに多くの人材を海外に送り出しており、その数は前年同期比の15倍。世界各国でベトナム人の労働者が増える見込みです。

↑ベトナム人労働者への需要が増す日本だが、世界各国で争奪戦になる可能性も

 

厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者の総数は172.7万人(2021年10月末時点)。国籍別に見ると、3位フィリピンの19.1万人、2位中国の39.7万人を上回っているのがベトナムの45.3万人。日本で働く外国人労働者の約26%を占めています。

 

それほど日本に多くの労働者を送り出しているベトナムですが、2023年はさらに多くの人材を海外へ派遣しています。2023年1月から3月までの第1四半期で、海外に送り出した人材は3万7923人。同国の年間計画の34.5%を占め、前年同時期と比べると15倍以上にも増えているのです。

 

ベトナム国内で日本向け人材の育成と派遣を行う機関のESUHAIの副所長によると、2023年初頭に日本企業から2400人の労働者の派遣の要請を受けたとのこと。需要が高い分野は食品や食品加工業、機械工学、製造、自動車関連業など。最近は医療業界からの要請も多いといいます。新型コロナウイルスのパンデミックが落ち着きを見せ、多くの業界で労働需要が急増していることから、人員不足に陥る日本でベトナムに白羽の矢が立ったのでしょう。

 

日本企業がベトナム人を欲しがる理由は、ベトナムが親日国であることや、儒教の国ということもあり、礼儀正しく、温厚で勤勉な人が多く、日本人と価値観が似ていることが挙げられます。多くの企業がすでにベトナム人労働者を受け入れている実績があるので、初めて外国人労働者を受け入れる企業にとっても安心感があるでしょう。

 

一方、ベトナム側にも「日本で働けば稼げる」というイメージがまだあるようです。人口が東南アジアの中でもそれなりに多く(2022年は約9946万人)、送り出し機関も他の国よりたくさん存在しているので、供給量が多いと見られます。

 

しかし、労働力不足にあえぐ国は日本だけに限りません。ベトナム労働省海外労働局によると、2023年3月の単月だけで9494人を海外に送り出し、前年同期比で8.66倍となっているそうです。送り出し先は日本のほか、台湾、韓国など。海外に労働者を派遣できるライセンスを所有する現地の約500社では、人材の研修を行って、海外からの要請に応じて適正なスキルを持った労働者を派遣しているそうです。

 

ベトナム労働省海外労働局は2023年に欧州諸国とも労働協定を結びたいと考えており、その協定が締結されれば、アジアのみならず世界各国にベトナムから労働者が派遣されることになります。

 

2023年に予定されているベトナムから海外に行く人材の数は約11万人。アフターコロナで人材不足に直面する多くの国を支えることになりそうですが、各国で優秀なベトナム人の奪い合いになることも予想されます。

 

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知っておかないと乗り遅れる! 途上国人材雇用の「最新トピック」【IC Net Report】バングラデシュ・池田悦子

開発途上国にはビジネスチャンスがたくさんある…とは言え、途上国について知られていないことはたくさんあります。そんな途上国にまつわる疑問に、海外事業開発コンサルティングを行っている、アイ・シー・ネット株式会社所属のプロたちが答える「IC Net Report」。今回ご登場いただくのは、バングラデシュや南アフリカなどで現地人材の育成事業に携わっている池田悦子さんです。

 

慢性的な労働力不足に悩む日本。世界的にもその傾向は顕著で、現在、いかに途上国の優秀な人材を確保するかに注目が集まっています。日本でもJICA主導で、産業人材育成やTVET(Technical and Vocational Education and Training)支援のプロジェクトを複数の途上国で実施するといった取り組みを行っていますが、企業レベルでは、トヨタ自動車など一部のグローバル企業を除けば、他の先進国に後れを取っているのが現状です。今後、さらに激化するであろう、途上国の人材確保競争に日本(企業)が勝ち残るためには!?  南アフリカやバングラデシュはじめ、アジア・アフリカ各地のポリテクや技術教育短大、職業訓練センターなどで人材育成事業に携わっている池田さんに、グローバルにおける人材育成の最新状況を伺いました。

●池田悦子/九州大学卒業。英国のイーストアングリア大学にて開発学修士を修める。タイのNGO勤務を経て、2000年より開発コンサルタントとして、主にJICAの様々な技術協力プロジェクトの運営に関わり、2018年にアイ・シー・ネットに入社。TVET分野では、パキスタン、バングラデシュ、スーダン、南アフリカ、ナイジェリア、フィリピン、キルギスタン、ウズベキスタン、ブータン他にて現地業務に。

 

日本が取り組む人材育成で優秀な人材が続々輩出

現在、バングラデシュをはじめとするアジアやアフリカ諸国では、日本の高専(エンジニアを養成する高等専門学校)や短大に相当する学校で、日本ならではの人材育成モデルを取り入れた支援が行われています。こうして育った多くの優秀な人材の中には、日本で活躍している人も。

 

「バングラデシュを例に挙げると、クルナ工学技術大学・機械工学科を卒業後に佐賀大学大学院へ留学、工学博士を修得した、現大阪産業大学工学部教授のアシュラフル・アラム氏がいます。彼は大学院を卒業後、松江高専でも教鞭を執っていました」(池田さん)

機械学科や土木学科の教員に教えているアラム教授(右端)

 

卒業後、そのまま日本で就職した後、企業を立ち上げ、順調に事業を拡大している人材もいるそうです。

 

「日本の明石高専の情報工学学科を卒業し、電気通信大学で学んだあと、NTTドコモ社に就職しムハマド・ハディ氏は、その後、自国に戻ってメガ・コーポレーションなど2つの会社を設立。ダッカと横浜を拠点に、ITコンサルティング事業、日本語通訳・翻訳などを行っています」

東京の電気通信大学で学んでいた時のハディ氏

 

日本語-ベンガル語(バングラデシュ)通訳の仕事中のハディ氏

 

「アフリカの若者のための人材イニシアティブ、通称ABEイニシアティブで来日したケニアのエリウッド・キップロップ氏は、足利工業大学(現・足利大学)で自然エネルギーについて学んだあと、筑波大学で博士号を取得。日本に留まり大学の講師を務めながら、日本とアフリカを結ぶビジネスコンサルタントとして活躍しています」

足利工業大学で風洞実験に取り組んだキップロップ氏

 

他にも、日本の大手企業に就職したり、日本で会社を立ち上げたりと、さまざまな人材が育っているそうです。しかし、日本ではまだ外国人材が普及したとは言いづらい状況。その背景にはどういった課題があるのでしょうか? グローバルの最新トピックと合わせて解説します。

 

[TOPIC.1]人材受け入れ環境が整っていない日本の現状

ただ一方で、優秀な人材は現地や他国の企業に就職するケースが多く、来日したり、日本の企業に就職したりする人は全国的に見るとほんの一握り。それには、現地と日本、それぞれの事情があると池田さん。

 

「日本企業に就職したい、日本文化を学びたい、日本へ行きたい、など若者たちの“日本への憧れ”はまだまだ健在だと感じます。ただし、地域によって差はあるのですが、まず政府が人材の送り出しに熱心でないケースが見られます」

 

また、受け入れる日本側にも環境が整っていないなどの課題が。

 

「高度人材が日本で就職する場合、日本語の習得が不可欠なのもネックとなります。現地の優秀な若者は英語が話せるので、英語で仕事ができる他国へ行くケースが多いのです。また、日本企業は採用にあたって、『日本人のような外国人』(ホーレンソー、和、しつけなど)を求める傾向にあり、ハードルが大変高いのですが、彼らの持っている人脈や言語能力、国際感覚、おおらかさを日本の会社が受け入れ活用し、多様性を学ぶことも大切ではないでしょうか」(池田さん)

 

日本人の英語習熟度が低いゆえ、現地での日本語教育の普及が必要となる点や、現地政府の理解をいかに得るかなど、解決すべき課題が山積していると言います。また、受け入れる日本企業側としてもインターンシップの拡充や意識の変革などの対応が急がれます。

 

[TOPIC.2]官民学一体となった人材育成事業が誕生

このような状況下で、池田さんが注目しているのが、「宮崎-バングラデシュ・モデル」(宮崎における産学官連携高度ICT人材地域導入事業)です。これは、自治体、企業、大学、およびバングラデシュなどのステークホルダー間で互いの課題解決に向けて協力した「高度外国人 ICT 人材育成導入事業」。

 

「まず現地で日本への就職を希望する優秀なICT技術者に、日本語、 ICT スキル、ビジネスマナーなどを学んでいただき、その後、宮崎へ留学生として派遣。宮崎では、宮崎大学が日本語学習と生活支援、ICT企業がインターンや就職相談などを行い、宮崎市がその研修費用を助成するという仕組みです」(池田さん)

 

この事業により、多くのICT技術者が日本で就職できたと言います。官民学の連携によるこうした事業が、優秀な途上国人材を獲得する近道なのかもしれません。

 

「同じく国立大学では、群馬大学が外国人留学生の群馬の企業での就職を見据えた教育と訓練を行っています。地元の製造業やサービス業とも連携した取り組みが進んでいるようです」(池田さん)

 

[TOPIC.3]大手グローバル企業の人材育成戦略

一部の大手日本企業は、現地人材雇用のため、個別に職業訓練センターなどを立ち上げているケースはあるとしつつも、戦略面で他国の企業に大きく水を開けられていると指摘します。

 

「グローバルでは、大手ICT企業が現地人材を育成する段階から、自社のソリューションや機器を提供し、人材を自社へと囲い込む施策を行っています。例えばサムスンの場合、バングラデシュ、パキスタン、中央アジアなどにある多くのTVET校に『サムスンラボ』を設置し、機材の供与やその機材に特化した短期訓練が行われています。自社に必要な即戦力となる人材が、いわば自動的に雇用できる仕組み。ヒュンダイもスーダンで似たような取り組みを実施しています。こうした具体的な就職に結びついた職業訓練は、学生に希望を与え、結果的に企業イメージアップに繋がります」

バングラデシュ/ダッカ工科女子短大の「サムスンラボ」

 

さらに、HPやAcerは世界銀行などの国際機関を通して、全世界の学校にPCを無償供与。こうした取り組みもその企業のファンをつくるためには効果的ですが、日本のメーカーでは、まだほとんど見られないと池田さん。

 

日本企業に就職したい人材を増やすためのイメージ戦略と、そうした人材をいかに日本に来てもらうか、官民学が一体となってサポートする出口戦略。優秀な途上国の人材を安定して獲得するには、これらの戦略を改めて見直す必要がありそうです。

 

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日本でじわじわと増えるバングラデシュ人の採用、2022年には過去最高を記録

日本では人口減少と超高齢化を背景に、多くの業界で人材不足が起きています。そんな日本の労働市場に約20年前から労働者を派遣してきたのがバングラデシュ。同国は介護、農業、建設業などの分野で今まで以上に多くの技能実習生を日本に送り込もうと意気込んでいます。

バングラデシュの働く人々

 

内閣府によると、15歳以上の就業者と完全失業者を合わせた日本の「労働力人口」は、2014年は6587万人だったのが、2030年には5683万人、2060年には3795万人まで減少すると予測されており、経済成長にブレーキがかかると言われている中、外国人労働者の供給国として期待される国の一つがバングラデシュ。我慢強く、真面目な国民性だと言われている同国では、86の民間機関が日本への労働者派遣を許可されており、1999年から2022年までの間に日本へ働きに来た人々の数は2740人になります。バングラデシュ労働者雇用訓練局によれば、2022年には年間で過去最高となる508人が派遣されたとのこと。

 

バングラデシュ労働者雇用訓練局長は、「労働者を必要としてきた日本は、これまで中国や韓国、ベトナム、フィリピン、インドネシアなどから人材を雇ってきたが、現在はその動きを拡大している」と現状を認識しています。

 

労働者雇用訓練局では、介護、農業、ビル清掃管理、建設などの分野で、特定技能労働者を採用する試験を行い、さらに半年をかけて日本語や日本の文化に関して学ぶ訓練を国内約30か所にある技術訓練センターで実施。日本の労働市場に即してより実践的な労働者を派遣できるように、国として施策を行っているのです。

 

これに対して、海外からの技能実習生を日本に受け入れる、国内最大の監理団体の国際人材育成機構(アイム・ジャパン)は、定期的にバングラデシュを訪れ、労働者の選定を行っています。しかし、日本で働くために必要な技能を有していることはもちろん、言葉も食事も異なる慣れない海外での生活を送るためには、労働ビザをもらえれば済むだけの話ではありません。バングラデシュ側は研修や教育方法について改善する必要があると認識しており、訓練期間を1年まで延ばすことを検討しているようです。

 

日本は、バングラデシュが1971年に独立して初めて外交関係を樹立した国。それ以来、青年海外協力隊の派遣をはじめ、50年以上にわたり外交関係を築いてきた歴史があります。バングラデシュは親日家が多いと言われていますが、かつては世界で最も貧しい国の一つと言われた国が、2041年には先進国入りを目指すまでになったのは日本の支援によるところも少なくないでしょう。

 

バングラデシュ人から見れば、日本で働くと母国より高い収入を得て、家族に送金することができるという側面があります。2023年2月から9月には、介護、農業、ビル清掃管理、建設などの分野で特定技能労働者の採用試験が始まりますが、この先、日本企業の採用担当者がバングラデシュの人材を検討することが増えるかもしれません。

 

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ウズベキスタン人が日本に最適なヒューマンリソースになる3つの理由

ウズベキスタンという国をご存知でしょうか? 中央アジアに位置し、古くからシルクロードの中継地として栄えてきたエリアにあります。日本政府は海外から労働力を呼び込むプログラムの一環として、2019年にウズベキスタンと協定を結びました。日本へ労働力を送り出すためのウズベキスタンの取り組みや、ウズベキスタン人が日本の労働市場に向くと思われる理由などについて説明します。

 

150人の技能実習生が日本で働く

日本語を学習しているウズベキスタン人たち

 

ウズベキスタンは3500万人と中央アジアで最も多い人口を有する国で、約60%が若者で構成されています。ただ、働きたくても働く場所がないのが現状で、毎年約60万人が海外の労働市場に流出。現在は200万人以上の労働者がロシア、カザフスタン、韓国、トルコ、アラブ首長国連邦、アジアやヨーロッパの諸国で短期労働に従事しています。

 

日本も2019年に、技能実習と特定技能の人材を迎える協定をウズベキスタンと結びました。協定が結ばれたあと、ウズベキスタンの各州には無料で日本語や農業、介護について学習できる環境が整えられています。

 

こういった教室で1日3時間半、週に5日、合計6か月の間無料で学習し、試験に合格すれば日本語能力試験のN4(基本的な日本語を理解することができるレベル)を取得することが可能。試験の受験費用も国が負担しています。

 

2022年現在、ウズベキスタンで取得できる特定技能の資格はまだ農業と介護の2分野だけですが、2022年6月の在留外国人統計によれば、在留資格の「技能実習(1号・2号)」と「特定技能(1号)」を持つウズベキスタン人の数は現在、日本に147人、「技術・人文知識・国際業務」を持つ人は709人。ウズベキスタン政府はこの取り組みを拡大していく方針です。

 

ウズベキスタンの日本人への印象

タシケントにあるナヴォイ劇場

 

ウズベキスタンの首都タシケントにあるナヴォイ劇場は、第二次世界大戦後に抑留された日本人兵などの強制労働によって建てられました。1966年に起きた大きな地震でもこの建物だけが無傷だったことから、ウズベキスタン人は日本人の技術力をとても尊敬しています。

 

また、タシケントには日本庭園や日本人墓地など、日本に関わる場所もいくつかあります。国内では日本のドラマや映画も放送されているため、ウズベキスタンの人たちの多くは日本の技術や風習、文化に大きな関心や興味を抱いているのです。

 

そんなウズベキスタン人が日本の労働市場に向く理由は3つ考えられます。

 

1: 日本語の習得が速い

ウズベキスタンは130以上もの民族が住んでいる多民族国家でさまざまな言語が使われていますが、公用語であるウズベク語は、日本語と文法が似ています。そのため日本語が習得しやすいようで、とても早く上達します。日本人にとっても、ウズベク語は習得しやすい言語といえるかもしれません。

 

2: 日々の生活の中で介護に従事

ウズベキスタンには昔の日本のように家族と同居するという文化があるので、常に高齢者を敬い、優しくて思いやりのある人たちが多いのです。日々の生活の中で高齢者とかかわっているため、介護も自然と身についています。

 

3: 農業に従事している人が多い

ウズベキスタンは世界第6位の綿花生産国であり、世界第2位の綿花輸出国。近年はアラル海の面積と水量が縮小するなど環境の変化により綿花栽培は縮小していますが、穀物や野菜、果物といった農業が盛んです。農業に従事している人やある程度の農業知識を持っている人が多く、日本でも農業に関する仕事に向くといえます。

ウズベキスタンの農場

 

日本とウズベキスタンが協定を結んでからまだ2年程度のため、日本で本格的な労働力となるのはこれから。特定技能分野はいまのところ農業と介護だけですが、今後は他の分野にも拡大していく可能性があります。日本でたくさんのウズベキスタン人たちが労働市場を支える日も、そう遠くないかもしれません。

 

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インドが中国を抜いてトップへ!「世界人口」がもうすぐ80億人に到達

国連経済社会局人口部の『世界人口推計2022年版』によると、2022年11月15日に世界人口は80億人に到達します。その約6割はアジアに集中する一方、サハラ以南のアフリカ諸国などでは人口が著しく増加していく模様。ヒトへの投資がますます重視されています。

人口はあっという間に80億人へ

 

世界人口はわずか100年の間に爆発的に増加してきました。初めて10億人に達したのは1804年。その後、1927年には20億人となり、それから100年も経たないうちに、その数は4倍増えることになります。

 

ただし、多くの国で出生率が低下しているなどの理由で、増加率は鈍化。2030年には約85億人、2050年には約97億人、2080年には約104億人になると見られていますが、人口はその頃にピークに達し、2100年まで104億人の数字でとどまると国連は予測。

 

大陸別に見ると、アジアの人口が際立っています。世界人口推計で人口が最も多い国は中国(14億4850万人)で、次がインド(14億660万人)。そのため、米ポータルサイト・Big Thinkの概算によれば、アジアだけで世界人口の58%を占める模様で、アフリカでさえも2割にもなりません。対照的に人口が最も少ないのはオセアニアで、わずか4400万人。これは日本の首都圏の人口(2020年に4434万人)とほぼ同じレベルにあたります。

 

【大陸別の人口と割合(概算)】

1位 アジア(約47億人、58%)

2位 アフリカ(約14億人、17.5%)

3位 ヨーロッパ(約7.5億人、9%)

4位 北米(約6億人、7.5%)

5位 南米(約4.4億人、5.5%)

6位 オセアニア(約4400万人、0.5%)

(出典:Big Think)

 

現在、世界人口ランキングのトップを争うのが中国とインド。これまで人口が爆発的に増えてきた前者ですが、2022年7月時点で人口は14億2589万人となり、若干の減少が見られるようになりました。日本と同様に、中国でも少子高齢化が進み、労働人口が減少していることから、これから人口がどんどん減少していくと見られています。

 

それに対して、インドは2023年に中国を抜いて世界トップになる見込み。2063年頃に16億9698万人に達すると、その後は減少していくと予測されており、結果的に2100年時点での人口は中国が約5億人、インドは約10億人になるそうです。

 

また、中国やインドと共にBRICS(近年、著しい経済成長を遂げたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国を指す)を構成するロシアは、世界で最も面積の大きい国であるものの、人口は1億4580万人と世界第9位。インドの東側にあるバングラデシュの人口(1億6700万人)よりも少ないのです。バングラデシュでは人口が増加傾向にあるのに対し、ロシアは少子化が進み、両国の差は今後さらに開くものと考えられます。

 

もっとヒトに投資を

一方、国連は、2050年までに増加が見込まれる世界人口の半数超が8か国――コンゴ、エジプト、エチオピア、インド、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、タンザニア――に集中すると見ており、その過半数をサハラ以南のアフリカ諸国が占めると予想しています。

 

とはいえ、サハラ以南アフリカの大半の国々とアジア、南米、カリブ諸国の一部では最近、出生率が減少したようで、それによって生産年齢人口(25歳から64歳の間)の割合が増加。この変化は一人当たりの経済成長を加速する機会(専門用語で「人口ボーナス」と呼ばれる)をもたらすそうですが、その利益を最大化するためには「人的資本のさらなる開発に投資すべき」と国連は説き、ヘルスケアや質の高い教育へのアクセス、雇用を促進することが必要だと述べています。

 

日本は世界一の高齢化社会であるものの、世界人口の増加はアジアに集中。サハラ以南のアフリカを含めて、両大陸の人口の動向から目が離せません。

 

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アフリカビジネスの大きなきっかけに!「ABEイニシアティブ」卒業生がこれからの日本企業に欠かせない理由とは?

アフリカにおける産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする「水先案内人」の育成を目的として、日本の大学での修士号取得と日本企業でのインターンシップの機会を提供するプログラム「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(African Business Education Initiative for Youth)」、通称:ABEイニシアティブをご存知でしょうか? 2014年から現在までで、ABEイニシアティブを通じて1286人ものアフリカ出身の留学生が来日。留学生のなかには、プログラム終了後の進路として、日本企業へ就職する人がいます。

 

本記事では、2019年より仙台を拠点とするラネックス社で活躍するセネガル出身のABEイニシアティブ卒業生、ブバカール ソウさんにABEイニシアティブでどのようなことが学んだのか、また日本企業で3年以上働いてみてどんな感想を抱いているのかを聞きました。

 

●ブバカール ソウ/セネガル出身。2012年には、JICA横浜で開催された短期研修に参加するために訪日した経験がある。日本の支援で設立されたセネガル日本職業訓練センター(Technical and Vocational Training Center Senegal-Japan)を卒業後、職業訓練・手工業省職員となり職業訓練センター・ジガンショール校にてコンピューター科学の教師をしていた。在職中にABEイニシアティブの選考を受け、宮城大学の事業構想学研究科の修士号を取得。卒業後2019年3月~10月のインターンを経て同年11月より仙台に本社のあるラネックス社に勤めている。

 

「ABEイニシアティブ」で学べることとは?

まずは「ABEイニシアティブ」がどういったプロジェクトなのか、その背景を紹介しましょう。

 

2013年6月に横浜市で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)で発表されたABEイニシアティブ。当初の計画は、2014年からの5年間で、1000人のアフリカの青年を招聘し、日本各地の大学院で専門教育と、日本企業でのインターン研修の機会を設け、日本とアフリカの架け橋となる産業人材の育成を目的としていました。そのインターンでは、日本の企業文化、勤労精神まで学んでもらおうという狙いもあります。

 

2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)で、2019年以降も継続して取り組んでいくことが表明されています。

 

2014年9月に初めてABEイニシアティブの研修員156人が8か国から来日し、2019年4月までにアフリカ54か国すべての国から1219人が来日しました。そのうち775人がプログラムを終えて帰国し、さまざまな分野で活躍しています。

 

ABEイニシアティブでは、JICAと、日本の大学がおよそ半年間かけて留学生の選考を行います。来日後は1年〜2年6か月間、大学院の修士課程で専門知識を習得し、夏季休暇や春季休暇で日本企業でのインターンが行われます。プログラム終了後は帰国する人もいれば、日本企業でインターンや就職をする人もいるといった感じです。

 

 

留学生が学ぶのは工学や農学、経済・経営、ICTなど多岐にわたります。彼らが学んだ後のインターン受入登録企業数は、2015年は217社だったのに対し、2019年には584社にまで増えました。しかし、帰国後の進路として日本企業に就職する人は前途多難となっており、全体の17%に留まっています。

 

【参考資料】

アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)「修士課程およびインターンシップ」プログラム

 

超難関の試験をクリアして来日できる狭き門

今回、お話を聞いたソウさんは、もともとはジガンショール州の職業訓練センターでコンピューター科学の教師として働いていました。2012年には、JICA横浜で開催された短期研修に参加するために訪日し、日本の魅力に気付いたといいます。

 

ABEイニシアティブ当時、東京でインターンシップをしたときの送別会でのソウさん

 

「初めて来日したとき、日本はなんてきれいで安全な国なんだろうと思いました。JICAの研修では製造プロセスについて学んだのですが、そのときは日本ならではの“ものづくり”や“カイゼン”活動を知りました。また、私自身は大学でもITの勉強をしていたので、日本はIT化が進んでいて興味が湧きました」(ソウさん)

 

ABEイニシアティブの存在を知ったのは、セネガルで日本大使館のイベントに参加した際だといいます。このとき、セネガルにおける応募者は200〜300名ほどで、最終合格者はわずか15名ほどでした。それだけ狭き門を突破した人だけが、ABEイニシアティブのプログラムで日本に来ることが許されるのです。

 

「私はセネガルの現地語と母国語であるフランス語に加え、英語を勉強していました。日本語は来日してから覚えたので、まだまだうまくありません。今は仙台のラネックスという会社でシステムエンジニアとして働いています。働き始めて3年が経つので、既に5年半日本で暮らしていることになりますが、日本は差別も少ないので他の国よりも暮らしやすいと感じています。来日当初は大学の先生に買い物をする場所を教えてもらうなど、日常生活でも分からないことだらけでしたが、2か月ほどで日本の暮らしには慣れましたね」(ソウさん)

 

国際会議で発表するソウさん

 

ソウさん自身はすっかり日本での生活にも慣れ、あまり困った経験はないと話します。しかし、ABEイニシアティブの研修を経て、日本で就職をして長く定着する人はまだまだ少ない印象だとか。大きな壁となるのは言語の問題だけでなく、日本ならではの文化やルールの違いも大きいようです。

 

「一番大切なのは、日本語を勉強することです。あと日本の文化を理解して、ルールを守ることも日本での就職を目指す人にとっては欠かせません。日本で働きたいのであれば、日本の働き方に合わせるべきだというのが私の考えです。これは難しいことではありますが、決して不可能ではありません。私は他のどの国で働くよりも、日本で働くことが最も経験値が上がることだと思っています」(ソウさん)

 

日本で働く上で重要なのは「チームワーク」です。これはアフリカの企業にはなかなかない文化で、海外では個人主義な側面が多くなっています。もちろん、海外でもチームワークが求められる場面はありますが、日本のほうが求められることをソウさんは実感しているそうです。

 

「日本はチームワークを重視しながらも、1人ひとりを尊重している印象があります。また、問題が起こると“報連相”をする文化があり、これは私にとってプラスの経験になっています。イスラム教徒のため、豚肉を食べないので、同僚との飲み会の店選びのときには、異文化で生活していることを実感することもありますが(笑)、私は今の会社で働けていることにすごく満足しています」(ソウさん)

 

アフリカとの関係性を築きたい企業に有利

ソウさんはアプリやウェブシステムの開発をするのが主な仕事で、開発チームとの打ち合わせなどでは英語を話すそうです。日本語でなくて不便はないのかと気になりましたが、最近は日本語のシステムだけでなく、英語のシステムを構築してほしいという依頼も多く、ECサイトがその代表例なのだとか。

 

「私の勤め先には海外から来た人が私以外にも2人います。仙台の本社オフィスには18名のスタッフがいます。フィリピンにも支社があり、会社全体としては、アメリカ、オーストラリア、セネガルなど多様な国の出身者が働いています」(ソウさん)

 

そんなグローバルな企業で働くソウさんですが、日本だけでなくセネガルとの架け橋になるような仕事も手掛けているといいます。それは、セネガルにおける電子母子手帳アプリです。

 

「セネガルの病院では、産前・産後の検診でお母さんが長く待たされます。そこで、診察の予約、医師によるデータ入力、チャットによるオンライン診療のできる電子母子手帳アプリを開発しました。そのときに、セネガルの保健省の人に向けて私がプレゼンをしたんです。このアプリはJICAの民間連携事業を通じて1年間のトライアル期間を経て、今後リリースされる予定です」(ソウさん)

 

アストラゼネカで母子保健申請に関するスピーチをするソウさん

 

ソウさんはいずれはセネガルに帰国したいと考えており、帰国後は日本企業とアフリカをつなぐお手伝いがしたいと考えているそうです。まさにABEイニシアティブが目標に掲げる「アフリカの産業人材育成と日本企業のアフリカビジネスをサポートする水先案内人の育成」が成功していると言えるでしょう。

 

「ケニア、ルワンダなどの南アフリカには既にいろいろな日本企業が進出していますが、セネガルのある西アフリカにはまだ少ないのが現状です。その問題は言語だと思います。南アフリカは公用語が英語ですが、西アフリカの多くはフランス語。フランス語圏への進出は日本企業にとっては難しいのかもしれません。私はフランス語も得意なので、日本企業とセネガルの架け橋になれるといいなと思います」(ソウさん)

 

海外の人材を雇うことにハードルを感じる日本企業はまだまだ多いですが、現地とのコネクションがある人材を採用するのは大きなメリットになることを、今回ソウさんを取材して強く感じました。また、ABEイニシアティブというプロジェクトが言語能力の高さだけでなく、社会人としても優秀な人材を日本に多く送り込んでいるというのは心強い話題。また、JICAではABEイニシアティブだけでなく、開発途上国の人材を日本に招聘する本邦研修という事業で多くの開発途上国の人材を日本に招聘しています。本邦研修では毎年約1万人の研修員を受け入れており、研修が始まった1954年から2019年までで、38万8406人もの受け入れ実績があります。

 

ソウさんのように日本の組織文化を理解している人材は、世界中に多く存在し、それらの人材の中には日本での就職を希望する人もいます。このような人材の活用と、日本の企業で安心して働ける環境づくりがこれからの日本企業の課題になりそうです。

 

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