「防災セット」から始める、待ったなしの災害対策! 防災士おすすめアイテム

元日に発生した能登半島地震を始めとして、台風、豪雨、洪水など、次々と災害が発生した2024年。いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えがもう待ったなしで必要な状況だ。

 

命と暮らしを守るために知っておきたい知識と備えておきたいアイテムを、防災収納インストラクターで防災共育管理士、防災士の松永りえさんが紹介する。

 

防災の備えに対する意識はまだまだ低い

↑有効回答数500人(女性343人/男性157人) 株式会社AlbaLink調べ

何をどれだけやれば十分と感じられるのかは人によって様々なので一概には言えないが“備えていない”と回答している人が4割もいるというのはちょっと問題かも。転ばぬ先の杖、備えはできるだけしたいものだ。

 

地震や台風、大雨も!日本は災害の危機だらけ

南海トラフ地震や首都直下型地震の発生危険度が増している。ただ、いつ起こるかわからないからこそ、普段からの備えが必要不可欠だ。最近は地球温暖化の影響によって、台風や豪雨による洪水での浸水被害も毎年起こるようになってきているのが実状である。

 

「50年に一度とも言われる大雨による被害が毎年発生している状況ですし、特に夏季はゲリラ豪雨もほぼ毎日どこかで起こっている状態。これからの日本では、私たちが自然災害に対してうまく対策して暮らしていくしかない時代と言えます」(松永さん)

 

今後、災害は増えることはあっても減ることはない現在、災害とともに生きていく覚悟が必要だ。

 

「いつ起こるかがわからないのが災害の怖さ。早めに知識を備え、モノを準備して安心を手に入れるのがベストです!」(松永さん)

 

<2024年に日本を襲った災害>

1月:能登半島地震
1月1日、16時10分に発生したM7.6(最大震度7)の内陸地殻内地震。地震発生日が元日だったこともあり、帰省や観光客など、普段はそこにいない人も多く、一時は避難所が十分に機能できない、混乱した状況に陥った。

7月・8月:日本各地で記録的豪雨
中国・東北地方はもちろん、全国的にゲリラ雷雨が増加。太平洋沿岸から日本海側にかけての広範囲の線状降水帯の発生、動きの遅い台風10号による九州〜関東の大雨など、日本各地が記録的な大雨の脅威に晒された。

8月:宮崎県日向灘でM6.1の地震発生
8月8日、日向灘で発生したM6.1(宮崎県日南市で最大震度6弱を記録)の地震。南海トラフ巨大地震との関連から、その運用以来初めての“南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)”が発表され注意喚起が促された。

備えるモノがわからなければ、防災セットから始めてみる

災害時は、命を守るのが最優先。自宅内の安全対策をして避難するための備えを。地震の際は家の中で被災することが多いので、棚は倒れないか、家電は移動しないか、落ちて割れるものはないかなど、室内をチェックして安全対策するところからスタートしよう。

 

「もし自宅が危険な状態にある場合は『防災リュック』を背負って避難します。備えるモノがわからなければ、避難時に必要なモノが揃っているセットも数多くあるので、まずはここから始めるのも良い方法。定期的に中身をチェックすることが大切です。どのルートで避難するかもシミュレーションしておいてください」(松永さん)

 

アイリスオーヤマ 防災リュック NBS1-40 1人用 40点
実売価格:1万4500円前後

↑アイリスオーヤマ 防災リュック NBS1-40 1人用 40点

 

雨天でも安心のターポリン生地+止水ファスナー採用大容量リュックの中に防災マニュアルから保存食(一日二食3日分)まで計40点をパッキング。厳選された防災アイテムが満遍なく揃っている。質量約6.2㎏。

 

LA・PITA 防災セット SHELTERプレミアム 2人用
実売価格:2万900円

↑LA・PITA 防災セット SHELTERプレミアム 2人用

 

大きさを感じさせないスッキリしたフォルムの大容量リュックに、必要十分な防災アイテムを詰め込んだコストパフォーマンスに優れたセット。アイテム毎に収納できるポーチが付属するので、リュックの中をスマートに整理できる。セット質量約8.5㎏。

 

<防災セットを備える際のポイント>

自分が必要なモノが揃っているかチェック
過去の経験を踏まえたうえで吟味厳選されたアイテムがパッキングされているが、必ず中身はチェックしよう。不足やお気に入りがあるのならカスタマイズも必要となる。

避難場所まで背負って行ける重さかシミュレーションする
一般的に男性なら15㎏、女性なら10㎏までがスムーズに背負って歩けるとされる限界。災害時は身軽さも大きな武器、詰め込めば良いわけではない。バランスには気を付けたい。

避難時に取り出しやすい場所に保管しておく
玄関近くなど、持ち出しやすい場所に置いておくのが基本。ただ災害時は玄関から出られるとは限らないので、別に避難用出口を決めておいて、そこに保管しておくのも良い。

幸いにも家は無事!「在宅避難」で気をつけること

安全が確保できるのであれば自宅で在宅避難したい、という人が増えている。2023年に積水ハウスが行った「防災に関する調査」によれば、在宅避難を希望する人の割合は84.8%にものぼる。

 

「様々な人が集まる避難所と違って、プライバシーが確保できますし、住み慣れた安心感があります。自宅の備えもそのまま使えます。在宅避難者が増えれば、避難所など本当に支援が必要な人に支援物資が届きやすくなる効果もあります」(松永さん)

 

自宅で過ごせるとしても、電気や水道、ガスといったライフラインの寸断は避けられない場合も。そのために多めの備蓄をしておくことが必須となる。

 

「飲用水や食料などは最低でも1週間以上ぶんを確保しておくことが必要。そのためには普段食べているものを多めに備えながら、食べる→買い足すを繰り返す『ローリングストック』が有効です。常に備蓄を切らさないようにすることが重要になります」(松永さん)

 

在宅避難で気を付けたいポイント

1 在宅避難ができるよう、普段から家具や家電などの安全対策を行う

在宅避難を考えるならば、まずは家屋の安全性を確かめることが基本。そのうえで自宅内の被害を最小限に抑えるよう、家具の転倒や割れ物の飛散、家電製品の移動を防ぐなど、普段から対策をしておくことが必要だ。

 

2 ライフライン(電気・ガス・水道)の代替品・備蓄は最低1週間ぶん確保

 

復旧にどれだけ時間が掛かるのかは地域や状況によって大きく差が出るので、最低一週間ぶんを目安に考えたい。ポータブル電源やソーラーパネル、カセットコンロ、水のペットボトルなど、収納スペースも確保しておきたい。

 

3 マンション高層階の人は、より多くの備蓄が必要

 

いわゆるタワマンでなくとも高層階に住んでいるならば、エレベーターが使えなくなることを想定する必要がある。物流が復旧するまでは自力で高層階まで物資を運ばなければならなくなるかもしれない。そんな事態に備えて備蓄には余裕を。

 

ポイントはまだある!
自宅周辺のリスクを知って家では安全なスペースを作る

まずは自宅周辺のハザードマップで、リスクを知ることが必要。

 

「川の氾濫での浸水や津波のリスクがある場合は避難しなければなりません。知らないと正しい対策はできません」(松永さん)

 

そのうえで、家の中の備え(片付けや安全対策、備蓄)を進めることが重要になる。

 

「特に寝ている場所に倒れたり、落ちてくるモノがあると命に関わるのでいますぐ見直して欲しいです。1995年に発生した阪神淡路大震災では、死因のほとんどが家屋の倒壊や家具の転倒による圧迫死、さらに死亡推定時刻が当日の午前6時までになっており(地震発生は午前5時46分)、ほぼ即死だったと言えます。このような事態を避けるためには、家の中に何も倒れない・落ちてこないような『安全スペース』を作っておくことが必要です」(松永さん)

 

松永さんが挙げるポイント

1 自宅や職場周辺のハザードマップは必ずチェック!
国土交通省や、各自治体が公開しているハザードマップで、自宅周辺で危険とされている地域はどこなのかを必ず確認しておきたい。またマップには避難場所も記載されているので、把握しておくことが必要だ。

2 ベッドまわりは要注意!
寝室を見渡してみて、倒れてきたら潰されそうなモノ、落ちてきたら怪我をしそうなモノは対策しておく必要がある。就寝中はどんな人でも必ず無防備になる。だからこそリスクはできる限り排除しておきたい。

3 家の中に「安全スペース」を作っておく
倒れたり落ちてきたりするものがない、窓から離れられる、地震が発生したら、ひとまずやり過ごせる、安全なスペースを家の中に持っておこう。防災備蓄品もその場所にあれば本格的な避難にも迅速に対応できる。

 

防災収納 インストラクター:松永りえさん

防災共育管理士、防災士。思考・モノ・防災の3つを整理して、暮らしの土台をつくる整理収納コンサルタントを務めている。

 

※「GetNavi」2024月11号に掲載された記事を再編集したものです

簡易トイレ、50回分あっても足りないかも……? 山善に学ぶ、本当に必要な「防災グッズ」の揃え方

2024年は、元旦の能登半島地震にはじまり、8月8日には宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生、翌9日に気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表するなど、否が応でも防災意識を高めなければならない出来事ばかりでした。また2025年1月は、阪神・淡路大震災から30年の節目でもあります。

 

そうしたなか、数多くの防災グッズを手掛ける山善が、メディア向け「タッチアンドトライ会」を12月10日に開催しました。同社は防災士の資格を持つ社員が商品開発に携わっており、新商品からロングセラーまで、さまざまな防災グッズが会場に集結。

 

特に「需要が拡大している」という簡易トイレを中心に、備えとして持っておきたい注目アイテムを紹介します。

↑命を守るために必要な「一次避難用アイテム」30個を収納する「防災バッグ30 YBG-30」(以下防災バッグ30)

 

「防災バッグ」は一家に一個じゃなく、一人一個揃えて

会の冒頭、同社の家庭機器事業部 第3商品統括部 商品企画4部長・小浜成章さんが説明に立ちました。16年から防災グッズ関連の商品開発を担当しており、18年には防災士の資格を取得。ロングセラーの「防災バッグ30」を生み出した人物です。

 

販売数170万個を突破した同社の「防災バッグ30」は、命を守るために必要な「一次避難用アイテム」30個を収納。懐中電灯、ホイッスル、ラバー手袋、EVAサンダルなどが入っています。価格は4800円(税込)。一家に一個ではなく、一人に一個揃えてほしいという思いから、できるだけ安価に設定しているとのこと。

 

バッグにあえて「余白部分」を作っているのが特徴です。季節や、使う人の年齢、性別に応じて、カイロやアイスノン、生理用品といったアイテムを追加してほしいという思いが背景にあります。

 

さらに高品質で、本格的なアイテムを備えたい人には「リュック&キャリー型防災バッグ30点セット YKB-30R」があります。価格は7980円(税込)に上がりますが、リュックとして背負えるだけでなく、キャリーとして引いて運べるうえ、簡易エアーマット・空気入れや簡易トイレといった、避難所生活に欠かせないアイテムも入っています。

↑重い給水タンクも、キャリーなら持ち運びやすい

 

↑専用の空気入れで手軽に膨らませることができる簡易エアーマット

 

同社が発売する防災アイテムのなかでも、トイレは備えにおけるキーアイテムです。実際に、同社における簡易トイレの販売実績の推移をみると、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報をきっかけに伸びており、需要の拡大が見て取れるとのこと。

 

特に、能登半島地震で断水が長期化したことで、多くの簡易トイレを備えておく必要性が浮き彫りになりました。そこで同社は12月に「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」を発売。こちらは消臭・抗菌効果のある凝固剤や、10回分を1袋にまとめる処理袋などがセットになっていて、50回分と100回分の2種類を展開しています。

 

そんなにたくさん要るの? と思うかもしれませんが、小浜さんによると「1人あたり、1日に使う量は大体5個くらいの計算」とのことなので、1人で1箱(50回分)確保したとしても10日分。4人家族で1箱(50回分)使うとなると、2日ちょっとで使い切ってしまう量なのです。

 

もしもの時に備える!緊急簡易トイレ100回分YAK-100
実勢価格:4980円(税込)

<内容>
凝固剤×100袋
汚物袋×100枚
便座カバー×4枚
処理袋×10枚

 

もしもの時に備える!緊急簡易トイレ50回分YAK-50
実勢価格:2980円(税込)

<内容>
凝固剤×50
汚物袋×50枚
便座カバー×2枚
処理袋×5枚

↑「もしもの時に備える!緊急簡易トイレ」

 

使い方は簡単。小浜さんが、青く着色された水を尿に見立てて実演しました。水が入ったカップに凝固剤を入れ、しばし待ちます。

↑小浜さんによる「緊急簡易トイレ」の使い方実演

 

体感として、1分くらい経ったかどうかという短い時間で、すっかり固まりました。カップを逆さにしてもこぼれてくる様子はありません。

↑凝固剤を入れて固まった水

 

あとは、固まった水(尿)を汚物袋に入れてしばればOK。断水時に家のトイレで使う場合は、便器の底に汚物袋が直接触れないよう同梱の「便座カバー」を敷いておくのがよいそう。

↑固まった水(尿)を入れ、口を縛った汚物袋を見せる小浜さん

 

トイレそのものの備えも重要ですが、あわせて考えたいのがトイレットペーパー。水に溶けてしまうため、湿気の多い場所での保管や水害時の使用が難しい課題がありました。

 

そこで同社は、アルミ真空パックで長期保存が可能な備蓄用トイレットペーパー「長期保存用トイレットペーパー」を考案(山善取り扱い商品、製造元は丸英製紙)。包装されているので水没しても使えて、カビも防ぎます。保存期間は、製造日から10年です。

 

70mタイプ巻(スリムタイプ)と、200m巻(ロングタイプ)があり、70mは1人で使用した場合で1週間相当。「スリムタイプ」とある通り、防災バッグなどに追加しやすい手のひらサイズです。ロングタイプは、1人で使った場合20日分になります。

 

そのほか、頑丈な樹脂製で組み立てが簡単な折りたたみ式トイレや、手回し・乾電池・AC電源・モバイルバッテリーの4電源に対応する「手回し充電テレビ+ラジオ JYTM-RTV430」(税込1万7800円)など、災害時に持っておくと安心感が段違いのグッズが揃っていました。

↑折りたたみ式で簡単に設置・収納が可能な災害時用トイレ「サッと簡単トイレ」(24年8月発売、税込3490円)

 

小浜さんは、「防災グッズは日常的に準備しておくべきものであり、いつでも使える準備を整えておくことが大事であり、さらに自分で考えることが欠かせない」と話しました。住んでいる地域特性や、一緒に避難する家族の人数など、考慮すべき点は多岐にわたるうえ、さまざまな被害から得られた教訓をもとに情報をアップデートしていく必要があります。

 

必要なアイテムや個数は人それぞれ。命を守ることは大前提として、避難生活が長期間にわたっても大丈夫なように想定しておきたいですね。

防災バッグに何を入れる?被災したらどうなる?防災のプロが教える知っておきたい地震対策

8月8日に、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。これに伴い、南海トラフ地震の想定震源域では、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられたことから、気象庁は翌9日、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表。政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとるように、としています。

 

災害は時と場所を選ばず、突然やってきます。知識もモノも、事前に蓄えておいて損はありません。GetNavi webで過去に配信したものの中から、特に「今知っておきたい」防災関連記事を厳選してお届けします。

 

■日常生活の中で高める、防災意識と知識

・普段の生活のなかで災害発生に備えることが、防災への第一歩

災害の脅威に対してどんな情報を集め、どんな備えがあると生活水準を下げずに過ごせるのでしょう。

 

災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんによると、防災への第一歩は「普段の生活のなかで災害発生に備える」こと。家のなかでも危険箇所を改善しておき、持ち出すモノを袋にまとめてわかりやすい場所に保管する、危険回避や避難生活のための情報収集方法を知っておくなど、ポイント別に解説しています。

 

・防災士・山岸愛梨キャスターに聞いた「防災の日にやっておきたい災害対策のポイント」

防災の意識を高めるためには、具体的にどういうことをすればいいのでしょうか。ウェザーニュースキャスターで防災士の資格を持つ山岸愛梨さんに、災害時の備えについてお話を伺いました。

 

山岸さんによると、普段からできる災害対策として3つのポイントがあるそう。(1)天気予報を確認する、(2)ハザードマップを確認する、そして3つ目は……。

 

記事後半では「防災士が教える『災害に備えて用意しておきたいもの』」もご紹介しています。

 

・地震・台風・豪雨……もし被災したらどうなる? どう行動すればいい?

災害時にもし備えがなかったら、身の回りでいったいどのようなことが起こるのか? 被災した場合、どのような行動をとればいいのか?

 

防災士であり、防災教育に取り組むゲンサイデイズ代表の細谷真紀子さんに解説していただきました。地震発生時に自宅にいるか、オフィスにいるか、それとも通勤中か、自分一人か、周りにたくさんの人がいるかなど、状況によって起こること、すべきことは変わってきます。

 

また、家族やパートナーと連絡を取るために備え、二次災害で想定されるリスクについても、トラブルに巻き込まれないように知っておきたいですね。

 

■「防災グッズ」、何を入れる?どこに保管する?

・デザインも機能も優れた「防災グッズ」選びと保管方法を雑貨コーディネーターが解説

日本では、全国どこに住んでいても、災害に備えて防災グッズは準備しておく必要があります。一方で、防災グッズはいざというときにすぐ目につくよう、インテリアには“あえて馴染まない”色や形状のものが多くなっています。

 

そこで、インテリアの邪魔にならない、むしろ部屋に置いておきたくなるようなおしゃれな防災グッズを、雑貨コーディネーターとして活躍するオモムロニ。さんに教えていただきました。インテリア性を損なわずに防災グッズを身近に置く工夫や、防災グッズの保管場所とは。

(写真提供=南海工業)

 

・防災バッグに何を入れる?“防災散歩”って何? 防災アドバイザーが教える「防災バッグ」の作り方

どうしても機能性重視で考えがちな防災バッグですが、実は何より重要なのは「防災に楽しく取り組むことで、長続きさせること」なのだそう。備え・防災アドバイザーとして活動する高荷智也さんに、防災バッグの重要性や作り方などについて、あらためて教えていただきました。

 

そもそも、災害対策として準備すべき荷物には「非常用持ち出し袋」と「インフラ代替セット」の2種類あり、それぞれ用途が異なることを知っていますか?

 

この記事では、保管場所やバッグ選びのポイントを学び、防災バッグを作るところまでフォローしています。

 

・停電時に安心!防災の専門家が解説する大容量ポータブル電源の選び方とおすすめ8製品

2024年元旦に起こった令和6年能登半島地震では、停電などライフラインへの影響が長期化しました。そうしたなか、非常時でもある程度必要な電気量を個人でまかなえる「大容量ポータブル電源」に注目が集まっています。

 

“大容量”とはいえ、実際どれくらいの容量があれば安心なのか、また使い勝手を妨げずに使えるのはどのようなタイプなのか。ポータブル電源の選び方について、備え・防災アドバイザーとして活躍されている合同会社ソナエルワークス代表の高荷智也さんに教えていただきました。

 

■「食」の備えもお忘れなく

・「ローリングストック」をおさらい! 災害時に日常の安心感をもたらす非常食の備え方

災害時の「食」に焦点を当て、日頃からできる備えを、整理収納アドバイザーであり防災士の丸マイさんに、教えていただきました。

 

ローリングは「回転」、ストックは「備蓄」。つまり「ローリングストック」とは、普段から食べている加工食品や食材を少し多めに購入し、日常で備蓄品を使い、使った分だけ買い足す、この行動を循環させて常に一定量の食材を家に置いておく備蓄方法のことです。

 

では実際には、どれくらいの量を備えておくのがいいのでしょうか。具体的に何から始めればいいか、備蓄食としてあると良いものなど、記事でまとめてお伝えしています。

 

・買い置きは管理しやすく見栄えよく! 食材も防災用の備蓄品も無駄にしない収納術

値上げや、防災の観点から、食品や日用品をストックすることが多くなっています。ただ、節約や安心のために買ったものも、消費期限内に使いきらなければかえって無駄に……。

 

ストックを生かすも殺すも収納次第。管理しやすく、かつ見た目もよく、と両立させるにはどうしたらいいのか、整理収納アドバイザーの佐々木奈美さんに教えていただきました。

 

佐々木さんは、冷蔵庫や食品棚にあるストック食材は、基本的に物の量と種類を決めているといいます。また、常温の食材の収納は、「ある場所」を参考にするのがコツだとか。日常で目にする機会が多い、その場所とは。

 

GetNavi webでは、“いざというとき”にきっと役立つ防災情報をまとめた「防災特集」を連載しています。今すぐできる備えとして、情報収集から始めてみては?

地震・台風・豪雨……もし被災したらどうなる? どう行動すればいい?

自然災害では日本最大の被害を出した関東大震災から、100年が経ちました。その後も日本列島は大きな震災に幾度も見舞われています。また近年は地震だけでなく、夏は台風や線状降水帯による被害も大きくなっており、誰もが明日にでも “被災者” になる可能性があります。

 

災害時にもし備えがなかったら、身の回りでいったいどのようなことが起こるのか? 被災した場合、どのような行動をとればいいのか? 防災士であり、防災教育に取り組むゲンサイデイズ代表の細谷真紀子さんに解説していただきました。

 

↑関東大震災は近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震。1923年9月1日に発生し、南関東から東海地域に及ぶ地域に広範な被害を及ぼした。死者は10万5385人、全潰全焼流出家屋は29万3387戸に上る。(内閣府サイトより)

 

大地震が発生したら何が起こるのか?

大地震発生時には、どのようなことが起こるのでしょうか?

 

「首都直下地震や南海トラフ地震が想定される中、地震は予測が難しく、突然起きる災害です。地震が起きると身の回りでは『落ちる・飛ぶ・動く・倒れる・割れる』という5つの事象が起きることを想像してみましょう」(防災士・細谷真紀子さん、以下同)

 

■ 自宅で地震が起こった場合

「建物については、作られた年代や構造によっては倒壊の危険が想定されます。また、耐震・免振性能がある場合でも、室内の固定していない家具は大小・重量にかかわらず、倒れたり動いたりします。本や小物、植物やペット用品など、室内のあらゆるものが足の踏み場もないほどに散乱し、避難が困難になるかもしれません」

 

・リビング
「家族や来客で人が集まる場所でもあり、物が多くなりがちな空間です。テレビが落ちたり倒れたり、キャスター付きの家具やソファやローテーブルなどの家具は不規則に動き、背の高い家具は倒れてきます。最近では、被災時のためにとウォーターサーバーを導入する家庭も増えていますが、上部に水を設置するタイプのサーバーは、重心が上がることで、転倒する危険性が高まります。花瓶やインテリア雑貨など、小さなものは飛んできたり、割れたりするでしょう。ペンダント型の照明は大きく揺れ、割れる素材のランプシェードや電球などは、天井や壁に当たり割れて破片が飛び散ることもあります」

 

・キッチン
「調理中の熱した調理器具や油や刃物、調理家電など、さまざまな危険が存在する空間です。冷蔵庫は倒れてきますし、電子レンジやオーブンなどの家電はコンセントが差してあっても勢いよく飛んできます。調味料や小さな調理器具・包丁、食器類も調理台や棚から飛ぶように落ちたり割れたりして、破片や粉塵が飛び散る危険性があります」

 

・浴室、脱衣所
「風呂場や脱衣場は、無防備な状態でいるため、怪我をしやすい場所です。吊り戸棚などから、洗剤などの重い液体の入ったボトルが落ちてくることがあります。また、ガラスや陶器などの割れやすいものが洗面台の上にあった場合、それらが飛ぶように落ち、割れ、破片が飛び散る危険性があります」

 

・トイレ
「ドアが外開き扉の場合、出入口の外側にある物が倒れたり移動して閉じ込められる危険性があります。また、清掃用の薬品などが高所に置いてあると落ちて飛び散る危険性があるほか、タンクの蓋がずれ落ちる可能性もあります。またトイレ問題(用を足せないことや災害時のトイレの使用方法を間違えて理解し、無理やり流して逆流や施設内での漏水が起きるなどの問題)は災害発生30分後には起こり始める可能性があります」

 

・寝室
「就寝中の無防備な状態の中、棚が倒れてきたり、エアコンや照明器具が落下したり、棚にある本やアロマキャンドルなどの雑貨も飛ぶように落ち、割れたりすることがあります。夜間に過ごすことが多い場所ですので、周りが暗く状況が確認しにくいことも考えられます」

 

■ オフィスで地震が起こった場合

「オフィスの建物も、作られた年代や構造によっては倒壊の危険が想定され、耐震・免振性能がある場合でも室内の備品などが倒れたり、落ちたりする被害も。高層ビルなどでは長周期振動での立っていられない長い揺れによる被害が想定されます。一般的な事務所を想定すると、次のようなことが起こります」

 

・デスク周り
「キャスターがついているコピー機や椅子、デスク下の引き出しなどは大きく動き、デスク上にあった書類が散乱し、パソコンなども飛ぶように落ちてしまいます。天井まである背の高い棚も扉が開いてしまい、中にあるファイルや書類が飛び出し、固定されていない棚は倒れてしまいます。天井のエアコンや蛍光灯なども落ちたり、割れた破片が飛び散ることも」

 

・地下階や地下室など
「停電になれば周りが見えにくくなり避難が難しくなります。地震によって起きた津波など、水が流れ込んでくるリスクがあります」

 

・エレベーター
「揺れの感知や停電に伴い、非常停止したり、自動的に最寄り階に停まったりすることがあります。内部に閉じ込められた場合、真っ暗の中、救出には長時間かかる場合や乗っていることに気付かれないことも想定されます」

 

・エントランス
「建物の構造や会社の規模にもよりますが、多くの人が限られた場所(例えば狭い通路・出入口など)から一斉に外に出ようとする人の流れで、群衆雪崩が起こるリスクがあります。また、上階の窓ガラスや外壁・看板などが落下してくる危険性があります」

 

■ 通勤中に地震が起こった場合

「通勤途中など屋外にいる場合には、近くの建物の倒壊や外壁の落下などの危険性が。また、不特定多数の人といる場合、パニック状態になったり、自分には何も起きないだろう・みんなについていけば大丈夫などと間違った判断をしてしまったりすることも考えられます」

 

・通勤路
「周囲の建物の耐震性によっては倒壊する建物があったり、外壁や室外機・看板が落ちてきたり、窓ガラスが降り注いできたり、瓦屋根や煉瓦が剥がれ落ちたりすることも。古いブロック塀や、固定されていない自動販売機・電柱が倒れてきたり、電線が切れてぶら下がったりする危険性もあるでしょう。ひどい場合には歩道橋が落ちる、橋や高速道路に亀裂が入るなどして通行できなくなる、鉄道・バス・タクシーなどの交通機関が運行されないことも想定されます」

 

・埋め立て地や昔の海・河川跡など
「地面が液状化しやすく、マンホールなど地中の構造物は地面に突出します。ひどい場合には道路が陥没したり、建物が埋もれ、破損・倒壊したりする場合も。海底を震源とする地震の場合、沿岸部では津波が起こる危険性もあります」

 

・電車の中
「揺れを感知し、緊急停止されます。安全が確認されるまでは長時間運行が停止される可能性があります。また、耐震整備が進んでいない場所では脱線する危険性もあります」

 

大地震発生! とるべき行動は?

いざ大地震が起こったとき、パニック状態になることで自らの命を危険にさらすことも考えられます。どう行動するべきでしょうか?

 

1.自分の身の安全を第一優先に確保する

「実際に何の準備もないままに大地震の揺れが起きた場合は、自分でも動きを制御することができません。大切なことは、普段から危ない場所を作らずに工夫しながら生活することです。物が落ちないように滑り止めを敷いたり、普段過ごす場所に家具が倒れてこないように家具を配置したり固定したり、ガラスが飛び散らないように飛散防止シートを貼ったりすることで、家庭内の危ない場所は激減します。また、地震のときは『頭を守る』と言われてきましたが、頭だけでなく、大切な血管や神経などが通っている首も手で覆い、守ることが大事です。日頃から落ち着いて判断できる環境を作り、落ち着ける心を備えましょう。自らの命を守れない環境・心では、大切なものを守ることはできません」

 

2.周囲の状況を情報収集する

「大きな揺れが収まったあと、次にすることは、周囲の状況確認です。津波や火災など、命の危険が迫っている場合にはすぐに避難しなければなりません。建物内で火災が発生した場合は初期消火を行うことが必要となります。建物の外に出るべきか否かも、状況によって変わってきます。近年はさまざまな地震対策や備えが施されたオフィスビルなどでは帰宅困難者対策として、帰らないことを選択し、建物の中で過ごすことが推奨されています。このため、家族やパートナーと予め避難場所を決めている場合でも、安全に落ち合う方法を再度検討することが必要となります。無理をして大勢の人が家に帰ろうと移動すると、余震時に被害に遭ったり、群衆雪崩のような二次災害を引き起こしたりすることも。人が多く向かっているからと根拠のないまま先に進むのはとても危険です。帰宅困難者に対する民間の一時滞在施設などの支援も整備されつつあります。日常から防災に対するアンテナを立て、さまざまな取り組みを知っておきましょう」

 

大雨が降ったときに起こる災害とは?

近年増え続けている、強風や大雨によって発生する “風水害” についてもうかがいました。

 

「これまでに起きた風水害では、台風や線状降水帯、前線の停滞などの大雨が要因となった河川氾濫や内水氾濫・土砂災害や、台風による高潮・暴風被害があります。ほかにも発達した積乱雲による局地的な大雨、落雷や竜巻、突風被害など、その土地の特性や気象条件によってさまざまな災害が起きています」

 

風水害の中でも「豪雨災害」と呼ばれるような大雨被害ではどのようなことが起きるのでしょうか?

 

・氾濫による被害

[河川氾濫]
「河川の近くでは河川の氾濫による浸水被害が想定されます。洪水ハザードマップが一つの浸水の目安にもなりますが、ハザードマップには雨量や流域などの条件があるということが注意点です。条件以上の雨が降った場合には、それ以上の被害が出るかもしれません。低地で水が集まりやすい場所や地下など、地形や建物の特性を知っていれば安全に避難することができます」

 

[内水氾濫]
「最近では、都市部の市街地などで排水能力が追いつかずに起こる内水氾濫があります。このため、内水氾濫ハザードマップを作成する行政も増えています。下水と雨水が合流して排水されるエリアでは、建物内の排水溝から汚水が逆流したり、マンホールから汚水が噴き出したりすることも。分流化の対策が進められていますが、室内で被害が発生する場合もあります」

 

・浸水による被害

1.浸水が浅い場合でも避難が困難となる

「氾濫で浸水が起きた場合、水の中を歩行するのはとても危険です。浸水というとお風呂のように動きのない水を想定するかもしれませんが、浸水の進行期では川と同じように流れがあることをイメージしてください。浸水が浅い場合でも、足をすくわれる危険性も。深水10cmだから安全ということは決してなく、浸水が始まっていたらすでに災害は発生している状況。避難ではなく、その場で命を守る行動が必要となります」

 

2.車で移動している場合にも危険がある

「一般的な自動車では浸水10cm程度でブレーキが効きにくくなり、交通事故などを引き起こすことがあります。また、30cm程度の浸水でエンジンが止まってしまうとも言われています。道路が冠水した状況では浸水した深さを正確に判断できずに「大丈夫だろう」という間違った判断で深みに入って動けなくなることも。特にアンダーパスなど水の溜まりやすい場所は要注意。浸水が始まっている場合は、車で進入することは絶対にしてはいけない行為です」

 

・土砂災害による被害

「土砂災害には土石流、地滑り、がけ崩れがありますが、これは山間部だけの災害ではありません。丘陵地の宅地開発では一見コンクリートで固められているため、崖と認識していない人工造成地も街の中に多くあります。これらが劣化することや、水分を多く含むことにより土砂災害のリスクが高まります」

 

・落雷やひょう、竜巻、突風による被害

「落雷により停電が発生した場合、エアコンが効かずに熱中症など体調が悪くなることも考えられます。また、ひょう、竜巻、暴風・突風によりガラスが割れてしまい、怪我をすることもあります。どちらの状況でも、外に出ることは大変危険です」

 

大雨で被害を出さないためにとるべき行動とは?

1.早めの情報収集と、避難への判断が運命の分かれ道!

「命に危険がおよぶ恐れがある大雨が想定される場合には、早期に注意情報や気象警報が発表されるため、事前にさまざまな対策を行い、避難を早めることによって最悪の事態を防ぐことが可能です。しかしながら、浸水エリアに住んでいるにもかかわらず、災害を楽観視して逃げ遅れてしまい、亡くなったケースもあります。近年ではハザードマップ以上に被害が出るような大雨も増えています。必ず早めの判断で安全に避難できるうちに、より安全な場所への避難を完了してください」

 

2.浸水してしまった場合は、速やかに命を守る最善の行動を!

「万が一、室内にいて浸水が始まった場合は避難するタイミングを逸してしまった状態です。その場で命を守るための最善の行動をとりましょう。例えば想定浸水深を超える高さの場所へ垂直避難する方法などが考えられます。浸水する水は、きれいな水が入ってくるわけではありません。汚水を含んでおり、汚泥や流されてきた物が室内に残ってしまう場合も。水が引いた後に被災した部屋に在宅避難することは困難が予想されます。疲労からくる免疫機能の低下や汚水に含まれる雑菌などが原因で感染症にかかってしまうこともあります。被災した家は汚泥を洗い落として消毒をして乾かす必要があるため、復興は長期戦になります」

 

二次災害で想定されるリスクとは?

災害後に安全が確保されたあとにも多くのリスクが潜んでいます。

 

「備えがない場合、災害後の避難生活にも大きなリスクが想定されます。避難生活での心労や体への負担が重なり、残念ながら未だに災害が起きる度に『災害関連死』で命を失くされる方が直接死よりも多く報告されています」

 

・車中泊などによるエコノミークラス症候群
「車避難で長時間体勢を変えられずにいると、血流が悪くなります。その結果、血栓ができやすい状況となり、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こします」

 

・避難所での感染症
「多くの人が集まる避難所などでは、さまざまな感染症の拡大の恐れがあります。トイレや手洗いなど、衛生状況の悪化も原因となります」

 

・避難所での熱中症
「避難所が体育館などであった場合、エアコン設備のあるところは極めて少なく、広い空間で冷暖房も十分に機能しないことも想定され、体調不良を引き起こし、命にかかわることも」

 

・避難所での犯罪被害
「プライバシーの確保できにくい避難所ではセクハラや性犯罪、暴力などの犯罪が起きる危険性があります」

 

二次災害に巻き込まれないためにできること

二次災害に巻き込まれないためにはどうしたらいいのでしょうか?

 

「避難所でさまざまな困難が想定される原因には、避難所の運営が人任せになっているという現状も。自分たちの備えを考える上で重要なことは、命を守る視点だけではなく、安心して暮らしていける視点を備えることでもあるかもしれません。二次災害に巻き込まれないためにも、普段から、モノの備え、心の備え、コミュニティーの備えを意識することが大切です。この3つの備えが自分たちの心身の復興の支えとなります」

 

・モノの備え
「感染症を防ぐための衛生用品は必須です。特にマスクや消毒薬、女性特有の衛生管理用品は見落としがち。マスクは新型コロナが落ち着いてきたこの先も備蓄しておきましょう。市販の避難リュックや備蓄品のセットがあればよしとするのではなく、自分にとって必要なものを考えてみましょう。ほかの人には不要なものでも、自分にとって大切なものは、ご自身の暮らしのライフラインとなるかもしれません」

 

・心の備え
「生活圏の災害想定をハザードマップなどで予め知っておくことは、心の備えにつながります。また知識が行動につながり、助かる命もあります。地域の過去の災害伝承や、避難する場所を調べておくなど、地域特性を知っておくことが心の安心につながることもあるかもしれません」

 

・コミュニティーの備え
「自分ひとりですべての備えを進めるのは難しいことです。情報を入手するにあたっても、コミュニティーの力は役立ちますし、何よりも知っている人がそばにいることは、いざというときに大変心強いものです。日頃のあいさつから少しずつ関わりを持てると、日常の防犯において役立つこともあるでしょう」

 

家族やパートナーと連絡を取るために備えておきたいこと

災害が起きたとき、大切な人と連絡を取るために備えておきたいことをうかがいました。

 

「実際に被災した方たちの多くが経験されているのが、本来であれば近しい家族の安否情報や暮らすための情報が何よりも欲しい中、遠方にいる人たちからの安否確認の連絡により、携帯電話のバッテリーが消耗して困ったということ。省エネで自分の安否情報を発信し、自分自身も相手の発信を受け取る術を準備しておいてください」

 

・災害伝言ダイヤル(171)と災害伝言板(web171)を使えるようにする

「災害伝言ダイヤルは災害の発生により被災地への通信が増加した場合に開設される声や文字の伝言板です。毎月1日と15日、防災週間・正月三が日・防災とボランティア週間などに体験ができる利用日があります。災害時に初めて使うのではなく、本当に必要なときに使えるよう、連絡を取りたい相手と連絡を取り合う電話番号を共有し、発信と受信どちらも体験しておきましょう」

 

・各SNSの災害時の伝言板を活用する

「FacebookやLINEでは災害時に開設されるツールを用意しています。自分は災害時にどのSNSを使って情報を出すのか、事前に家族やパートナーと話し合っておくことが大切です。一度に複数の人に安否情報を発信できるので、通信の負担が軽減します」

 

・避難場所や落ち合う場所を決めておく

「住まいの近くの避難所など、どこで家族やパートナーと落ち合うのか、あらかじめ相談しておきましょう。地図で確認しても、たくさんの人が集まる避難所で探すことが難しいことも。実際に家から避難場所まで歩いて行って避難経路を確認するとともに、避難所内の具体的なスポットを決め、待ち合わせる時間帯に実際の場所を確認しながら行っておくとすれ違いの心配が減るでしょう」

 

地震をはじめ自然災害は、いつ、どこで、どのようなタイミングで起きてもおかしくありません。備えが命を守るということを今一度理解しましょう。まずは、災害伝言ダイヤルのかけ方を練習してみるなど、できそうなことから少しずつ防災をスタートしましょう。

 

プロフィール

防災士・ゲンサイデイズ 代表 / 細谷真紀子

東北で感じた災害・減災への視点を元に、全国での防災教育を実施。安心していのちを委ね、ゆるやかに暮らしが繋がる。災害死が0になる社会を目指し “いのちを守った先の「未来の笑顔」のためにある減災教育を作り出す” をビジョンに、日常の課題にもアプローチし、防災・減災教育の視点で社会の変革に取り組んでいる。
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東日本大震災からの復興へ。コロナ禍の中でも私たちができる3つのこと

東日本大震災の発生から、2021年で10年。未曽有の大災害から月日が経った今でも、被災地が完全に「復興した」とは言い切れない現状があります。

 

被災地は今、どうなっているのか。そして今、私たちにできることは何なのか。

 

岩手・宮城・福島を中心に、震災伝承や防災・減災活動の“連携”“企画”“育成”に取り組む、3.11メモリアルネットワークの浅利満理子さんにお話をうかがいました。

 

東日本大震災から10年が経過した、被災地のリアル

今もメディアで取り上げられることが多い、東日本大震災の被災地。現在、宮城県石巻市に住む浅利さんですが、日々生活している場所と、メディアで「被災地」と呼ばれる場所との間にギャップを感じている部分があると話します。

 

「メディアの報道ではどうしても、道路がつながったとか、新しい施設ができたとか、ハード面に関する話題が多いように感じます。もちろんその情報は正しいのですが、『工事が終わりました』とカメラを向けられているすぐそばの土地は、まだ手付かずのままになっていることもあります。

また、被災地に住む“人の声”がもっともっと届けばいいなとも感じています。誰の声が代表というわけではなく、人それぞれ持っている意見も違いますし、状況も異なるので、そうした一人一人の声をさらにすくい上げていってもらえるとうれしく思います。10年経って復興が終わった、一区切りがついたとは言い難く、いろいろな状況が混在しているというのが現状だと思います」(3.11メモリアルネットワーク・浅利満理子さん、以下同)

 

コロナ禍でも歩みを止めない、震災の伝承活動

ここ一年はコロナ禍で、復興に関するさまざまな取り組みがこれまで通りに進められなくなっています。浅利さんが所属する「3.11メモリアルネットワーク」では、3.11の伝承活動を行う人々をサポートしていますが、その活動でも同様に、コロナによる影響を大きく受けていると言います。

 

「伝承活動に関して言えば、これまでは実際に現地を訪れてもらってご案内をしたりしていたのですが、今はそれがなかなか難しい状況です。しかし、オンライン上で語り部の活動やガイドをするなど、新しい形で活動をしている団体も出てきています。

また、被災地から離れたところに住んでいる人など、これまでなかなか来られなかった人が『オンラインなら』と参加してくださったり、学校と現地を繋いでオンラインで交流をしたりする機会もあったりして、思いがけず活動の幅が広がっている実感もあります。新しいアプローチに挑戦できた期間になったと、前向きに考えています」

 

これからの課題は、一人一人に防災意識を根付かせること

復興のための活動も、震災の被害を後世に伝えていく活動も、この10年間で確実に歩みを進めてきました。しかし、今でもまだ課題として残っているものや、今後さらに力を入れて取り組まなければならないことも出てきています。

 

「数年前に福島沖で地震があって津波警報が発令されたとき、全員がすぐに避難したわけではありませんでした。東日本大震災を経験したからといって、では次の災害でみんな、すぐに逃げるのかというと、けっしてそういうわけではないんです。そのときは『高い津波がくる』という警報ではなかったためかもしれませんが、『念のために避難しておこう』という意識を一人一人に浸透させていくというのが、今後の課題だと感じています。

そして当然ですが、10年経って東日本大震災を知らない子たちも増えてきました。震災のことを後世に伝えていく活動は、これからさらに大切になっていくと思います」

 

10年経った今、私たちにできることを考えよう

被災地の現状を踏まえ、私たちに今できることは何なのでしょうか?

「何かしたい」と思っていても、何から始めたらいいのかわからないと感じている人も多いのではないでしょうか。そこで浅利さんに「私たちにできること」に関するヒントを教えていただきました。

 

【関連記事】被災地支援の最新形「リモートボランティア」とは?

 

1. プラットフォームを利用し、寄付や買い物をする

まず1つは、寄付をしたり、モノを購入したりして応援をすること。「オンラインで気軽に応援できるプラットフォームも多数存在しているので、一度覗いてみてはいかがでしょうか?」と浅利さんは話します。

 

・クラウドファンディングで活動のサポートを

例えば『READYFOR』は、初心者にもおすすめのクラウドファンディングサイト。プロジェクトを、#東日本大震災、#被災地などハッシュタグで検索できたり、地域ごとに探したりすることができます。それぞれのプロジェクト内容も詳しく説明されているので、自分が「応援したい」と思えるところが見つかるはずです。

READYFOR https://readyfor.jp/

 

・検索するだけで支援につながる

「そのほかもっとライトに始められる支援として、Yahoo! JAPANでは、2014年から毎年3月11日に『3.11』と検索すると10円寄付されるという取り組みを行っています。今年の特設サイトでも、『寄付』『知る』『買う』などとサイト内でカテゴライズされていて、情報がとてもわかりやすくまとめられています。小さなことから始める仕組みとして、とても素晴らしいと思っています」

 

今年はYahoo! JAPANだけでなく、LINEからの寄付も可能。3月11日にLINEアプリの上部にある検索窓に「3.11」と入力して検索すると、10円寄付することができます。

Yahoo! JAPAN 3.11特設サイト https://fukko.yahoo.co.jp/

 

今年もYahoo! JAPANの3.11特設サイトでは、「東日本大震災から10年 のりこえるチカラ」と題し、さまざまな情報を発信しています。例えば、寄付先がわかりやすく一覧で掲載され、「どこに寄付をするか」をじっくり検討することができたり、モノを買って応援する場合も、食べ物はもちろん、伝統工芸品や防災グッズなど、幅広いラインナップの中から選んだりすることが可能です。そして被災地で生活している人たちの「今」がわかるインタビュー記事も数多く掲載されており、このサイトだけでさまざまな形の「応援」をすることができます。

 

2. 被災地と、継続した関わりを持つ

2つ目は、被災地と継続して関わっていくということです。今はコロナの影響もあって移動することがなかなか難しいですが、「実際に来てみてわかることもたくさんあると思うので、来られるようになったら、ぜひ一度被災地を訪れてみてほしい」と浅利さんは力を込めます。

 

「東日本大震災の被災地は広範囲なので、共感できる取り組みをしているひとつの地域を訪れるのもいいと思いますし、“お遍路”のようにさまざまな土地を巡ってみるのもいいのではないでしょうか。

また、植樹のボランティアなどを通して、被災地とつながりを持つことも、“できること”のひとつではないでしょうか。植えた木の様子を定期的に見に来ることは、被災地を訪れるきっかけにもなりますし、自分が植えた木とその土地のことをときどき思い出して気にかけてもらえるのも、とてもうれしいことだなと思います」

 

・桜の木を植えて、被災地とのつながりを持つ

「植樹事業を行っている団体の一つに「桜ライン311」があります。この団体では、東日本大震災の津波最大到達地点、約170キロメートルのラインに10メートル間隔で桜を植樹し、「桜のライン」をつくることをめざしています。現在も、春と秋の年2回、植樹会を行っており、目標の17000本達成に向けて活動が続いています」

 

今は現地に行く事が難しいですが、寄付という形で“桜の育て親”になることは可能です。

桜ライン311 https://www.sakura-line311.org/planting

 

【関連記事】私にもできる、寄付やボランティアの仕組みがある!知っておきたい慈善活動の仕組み

 

3.被災地のことを知り、自身の防災への意識を高める

3つ目は、被災地のことをあらためて「知る」ことで、災害への意識を高めたり、防災に取り組んだりするということです。

 

「毎年3.11に関連したさまざまな行事が行われています。今年はオンラインでの配信を行っているところも多いので、これまでハードルが高いと思っていた人も、『オンラインなら』と少しでも覗いてもらえたらうれしいですね」

 

・復興に取り組んできた行政の特設サイトで「知る」

「また、行政でも10年目を迎えるにあたって、特設サイトがつくられています。例えば宮城県のサイトでは、『伝えあう授業』、『あの時×今を伝えあう』と題したオンラインの動画や、災害時に役立つ知識や心構えに関するクイズなど、さまざまなコンテンツが用意されています。3.11を経験した人々の『今』も、知ることができます。

これからも、いつどこで大きな災害が起こるかわかりません。そのため『10年目』以降も災害について継続的に考えていくために、行政だけでなく、民間企業や報道機関などでも、さまざまな取り組みが進められています。東日本大震災に限らず『災害のときこういうことがあったんだ』と知ることは、自分が実際に災害に遭ったときに、行動するための第一歩になると思います。『支援』という形だけではなくて、『誰もが被災者になりうる』ということを念頭に置いておいて、折に触れて災害について考えてほしいなと思います」

宮城県特設サイト https://tsutaeau.pref.miyagi.jp/

 

・防災アプリで「学び、備える」

気軽に防災に取り組めるスマートフォンのコンテンツもあり、「『これならできそう』と思えるものから始めてみてほしい」と浅利さんは言います。例えば、「東京都防災アプリ」は、「あそぶ」「まなぶ」「つかう」がコンセプトの、東京都公式の防災アプリです。「防災ブック」や防災に関するクイズで学べるなど、都民でなくても災害時に役立つ知識を得ることができます。

東京都防災アプリ https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1005744/index.html

 

・自分の防災力を「理解する」

「ヤフー防災模試」は、スマートフォンから簡単に受験することができ、地震や水害などさまざまな災害に関する問題にチャレンジできます。過去に出題された問題も掲載されているので、自分の“防災力”をチェックしてみるのもおすすめです。

ヤフー防災模試 https://bousai.yahoo.co.jp/exam/

 

 

東日本大震災から10年が経っても、復興が完了したわけでも、ましてや後世に残していくための活動が終わったわけでもありません。でもむしろ、これまで震災についてあまり考えてこなかったという人や、何かしたいけど行動を起こせていなかったという人にとっての「10年目」は、一歩踏み出すタイミングになるのではないでしょうか。

 

オンラインで気軽にできる支援をしてみたり、防災についてあらためて考えてみたり……ぜひ、できることから行動していきましょう。

 

【プロフィール】

3.11メモリアルネットワーク / 浅利満理子

東日本大震災の経験を伝承する個人・団体・拠点施設をつなぎ、支えるためのネットワークとして、2017年に設立。フォーラムなどの行事や、震災について学ぶための講座なども開催し、「災害で命が失われない社会の実現」「被災者や被災地域の苦難を軽減し、再生に向かうことのできる社会の実現」を目指して活動を行っている。

3.11メモリアルネットワーク https://311mn.org/

また、3.11メモリアルネットワークが主宰する震災フォーラムが3/21(日)に開催。今年はオンラインからも参加できます。
https://311mn.org/info15

 

ATCスタジオK @atcstudiok

うちの家でも一時猫が「行方不明」に!家具の隙間に隠れ潜んでいましたが、何かの拍子に外に飛び出すこともあり得ることだと思います。猫飼いさんたち、いかなる場合も落ち着いてあきらめずに頑張りませう!#猫 #地震 twitter.com/nekokeizai/sta…

備えあれば憂いなし、だけど……。地震予知はできる? できない?

日本は地震大国だ。近年では2011年3月11日の東日本大震災が記憶に新しい。それより前にも、阪神淡路大震災や関東大震災といった大規模な地震があり、日本の歴史が大きく変わった。

 

49391585 - natural disaster scene of earthquake illustration

 

なぜ「地震予報」がないのか?

過去に数多くの大地震に見舞われている日本だが、我々が地震に対してできることはとても少ない。せいぜい非常時に備えて物資を揃えておくことくらいだろう。

 

そこでふと思った。なぜ、これだけ地震の多い日本で、地震予知の技術が確立されていないのだろうかと。

 

これだけの地震発生データがあるのだし、それなりに研究もされてきていることだろう。科学も進んでいるはずだし、「●月●日●●で震度3の地震が発生します」といった予想、いわゆる「地震予報」をするくらいできそうなものだ。

 

地震を予知した事例はゼロ

しかし、実際には地震の予知というのは不可能に近いようだ。

 

確率と統計がよくわかる本』(矢沢サイエンスオフィス・編著/学研プラス・刊)は、社会と密接した存在の「確率」と「統計」についての読み物集。身近な現象を取り上げて、そこに確率と統計がどう関わっているのかについてわかりやすく解説している。

 

確率・統計が役に立つという話だけではなく、人をだます道具としても使われているという話も多い。

 

本書に「地震発生確率が“無意味”なわけ」という項目がある。ちょうど地震について考えていたので、興味深く読んだ。

 

実際に、これまで地震を科学的に予知したという事例はゼロということ。日本でも地震予知を国が行っている(現在は地震予測という表現になっている)が、「30年以内に震度6以上の地震が起こる確率は50%」といったような、正直何の役にも立たない情報しか得られない。

 

なぜ地震予知はできないのか。その理由のひとつが、地震のメカニズムが完全にパターン化されていることだ。大地震の原因は「プレートテクトニクス」とされている。地球上にあるプレートの位置が動き押し合った結果、断層がずれて大地震となる。

 

この原理自体は知られているものだが、これがいつどこで起こるのかがわからないのだ。

 

いたるところに存在する断層のなかのどの断層に加わっている圧力がいつ限界を超えるかは、どれほど地中に穴を掘って調べてもわかりようがない。

(『確率と統計がよくわかる本』より引用)

それでも、地震の研究者は先ほど述べたように、何十年先の間に大地震が何%の確率で起こるというような見解を出す。1%でも地震が来ると言っておけば、予想は当たったことになるからだ。

 

 

アメリカUGSGの見解は「地震予知は不可能」

アメリカの「USGS」(アメリカ地質調査所)は、1960年代に地震予知が可能かどうかの研究を行った。その際、地中3600mの穴を掘り、そこに汚染水を流し込むなど、人為的に地震を起こす実験を数多く行い、予知できるかどうかの可能性を探ったようだ。

 

これにより、地震発生のメカニズムのヒントにはなったが、実際に予知できるかどうかについては「不可能」と判断。それ以降、アメリカでは地震予知研究は行われていないということだ。

 

地震は、ランダムかつ複雑な要素で起こるもの。これを日時と場所をピンポイントで予知するのは、原理的に不可能なことのようだ。

 

 

地震の長期予想は何の意味もない

現在、日本には「地震調査研究推進本部」というものが設置されている。そこでいろいろな確率が公表されている。「今後30年以内に震度6以上の揺れに見舞われる確率」というような図があるが、「30年以内」というのがどうもよくわからない。

 

2003年に発表されたものだが、明日地震が起きるのか、来年なのか、2030年なのかがわからなければ、無意味だと思うのだ。せめて1週間や1ヶ月単位で予測してもらわなければ、実用的なデータとは言えないだろう。地震はいつ起きるのかわからない。そう思うしかない。我々にできるのは、いざというときのために備えておくことくらい。

 

天災は忘れたころにやってくる。

 

この言葉を肝に銘じておくのが、一番だろう。

 

 

【著書紹介】
GKNB_BKB0000405916254_75_COVERl

確率と統計がよくわかる本

著者:矢沢サイエンスオフィス(編・著)
出版社:学研プラス

現代人の必須科目! 知らない人は、損をする! 現代社会を支配する「だます確率」と「だまされる統計」。ビジネスにも人生にも役立つ「確率と統計」の理論とカラクリを、金融やギャンブル、有名な数式、ノーベル賞理論など、さまざまな実例から詳細解説。

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