生活のためか、生きがいか。私たちの「働く理由」を鋭くつく『未来職安』

「未来では人間の仕事をロボットが代行するようになるため、仕事を奪われる人間が増えるだろう」という予測を時々目にする。その時には、一体どんな世界が待っているのだろう。未来の職業事情を描いた小説にはさまざまなことが予言されていた。

 

日本人の99%が働かない

未来職安』(柞刈湯葉・著/双葉社・刊)は、仕事がほとんどなくなる近未来的世界を描いたSF小説だ。仕事が得られる日本人はわずか1%で、残りの99%は時間を持て余している。全ての人には必要最低限の生活ができる生活基本金が配られる。生活基本金は全員が同じ額だというのでベーシック・インカムに近いシステムなのだろう。

 

社会では仕事をしている1%の人間は生産者と言われ、残りの99%は消費者と呼ばれる。働かなくても生きていくことはできるが贅沢はできないので、多くの人が1%の生産者になりたがる。給料が加算され、生活にかなりゆとりができるからだ。

 

未来の職安とは

現代日本の職安(ハローワーク)では多くの求人が公開されていて、求職中の人はその中から自分に合っていそうな仕事を選び、紹介してもらう。職安は公共機関だ。けれど、未来職安は、民間人が来訪者に仕事を紹介し、紹介先から手数料を受け取るので、どちらかというと派遣業者に近い印象だ。

 

出てくる職安職員は、それを仕事としているだけに、プロである。キャリアコンサルタントというか、職のソムリエというのがぴったりくる感じだ。来客者の特性やニーズを素早く掴み、最適な職業を案内することもできる。募集中の職業を頭に叩き込んでいるからこそこなせる業務なのだ。

 

仕事がない苦しみ

現代社会には、お金持ちになって早く仕事をやめたいと考える人がいる。宝くじに当たったら退職するんだと夢を語る人もいる。つまり、現代社会では労働は苦行なので、お金さえあれば働きたくないと考えている人が多いということだ。

 

しかし、未来職安には「お金はもらわなくてもいいから、社会の役に立つことがしたい」というような人までやって来る。未来社会では労働は社会とつながるためのひとつの手段なのだろう。それほどに人々は「生き甲斐」に飢えているのだ。家でごろごろしているだけの生活では罪悪感を感じてしまうのかもしれない。

 

人は、なんのために生きているのかと自問自答することができる生き物である。日々を漫然と過ごすことに耐えられず、時間を大量に奪われる職業に就きたがるのは、お役目を感じて精一杯生きたいからなのかもしれない。

 

お金より大切なこと

現代日本も、この小説に少しずつ近づいているように感じる。「働き方改革」や「プレミアムフライデー」など、仕事時間を減らすよう働きかける社会になってきたからだ。昭和のころはたくさん残業をしてたくさん稼ぐことが奨励されていたが、令和の今は、できるだけ残業せず、余った時間で自分の好きなことをするという人が増えている。

 

そして、多くの人々が「意味のある仕事をしたい」と考えるようになった。上からの命令を右から左に片づけるのではなく、自分なりに業務の目的を考え、工夫したり提案するようにもなりつつある。労働時間が減ったので疲れも蓄積せず、頭脳が冴え、アイデアが次々生まれるようになったのだとしたら、素晴らしいことだ。

 

社会の価値観は大きく変わり始めている。今までは年収が高い仕事がスゴいと考えられていたが、今では給与の額ではなく、社会貢献できて満足できる仕事をしている人のほうが羨まれるようになりつつある。もし現代人が「未来職安」を訪れたとしたら、「世の中のためになる仕事」をしたいとリクエストする人が結構な数いるのではないだろうか。

 

 

【書籍紹介】

 

未来職安

著者:柞刈湯葉
刊行:双葉社

令和よりちょっと先の未来、国民は99%の働かない<消費者>と、働く1%のエリート<生産者>に分類されている。労働の必要はないけれど、仕事を斡旋する職安の需要は健在。いろんな事情を抱えた消費者が、今日も仕事を求めて職安にやってくる。ほっこり楽しい近未来型お仕事小説!

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匂いも焼き色も食欲をそそる「こんがりグルメ」を紹介!『上沼恵美子のおしゃべりクッキング2022年2月号』

「上沼恵美子のおしゃべりクッキング2022年2月号」が発売中。今号は、匂いも焼き色も食欲をそそる「こんがりグルメ」、家呑みがさらに楽しくなる「おうちで居酒屋」など、おうちごはんをより充実させるレシピをご紹介します!

 

1月31日-2月25日放送の4週分のレシピを掲載!

■テレビテキスト

1/31→2/4放送 テーマ「豆で元気」
豆さば/あずきの中華風おこわ/ひよこ豆とスペアリブの煮込み/
鶏と大豆の煮込み/グリンピースとかにのパスタ

2/8→2/11放送 テーマ「こんがりグルメ」
※2/7は2022年北京冬季オリンピックの中継番組のため、放送はありません。
手羽のトースター焼き/こんがりチーズハンバーグ/
焼き海老の生姜風味/トマト入り焼きギョーザ

2/14→2/18放送 テーマ「簡単スピードメニュー」
やみつき鶏/鶏とサツマイモのさわやか和え/さば炒飯/
もずくにゅうめん/豚肉ときのこのビネガー風味

2/21→2/25放送 テーマ「おうちで居酒屋」
ホタテのとろろ焼き/きのこと海老のアヒージョ/鯛の中華風サラダ/
ギョニソのゼッポリーネ風/ささみと砂肝の和えもの

 

こんがり・あつあつがたまらない♪ 大好き! グラタン

グラタンが最もおいしい季節がやってきました! こんがり焦げ目がついた表面をスプーンで割ると、とろりと濃厚なソースがたっぷり。肉や魚、野菜など、好きな具材を入れて楽しめるのも魅力ですよね。定番のホワイトソースはもちろん、トマトクリームやカレー風味など、料理研究家の市瀬悦子さんが様々なバリエーションで紹介します!

 

デミグラミートボールグラタン、サーモンとほうれん草のエッググラタン、3種きのこのアンチョビーペンネグラタン 他

 

うまみがのった旬を楽しむ 冬の魚介

冬の時季ならではの魚介、たら、かき、ぶりなどを使った料理を盛りだくさんにご紹介。焼き方にこだわる「ぶりのグリーンソース」に、揚げ衣に春巻きの皮を使った「かきの変わり揚げ」など、なじみのあるいつもの料理も、辻調理師専門学校の先生方のアイデアが光るレシピで楽しみましょう!

 

ぶりのグリーンソース、たらの照り焼き、ほたての塩辛炒め 他

 

[商品概要]

上沼恵美子のおしゃべりクッキング22年2月号

著者: ABCテレビ 辻調理師専門学校
定価: 520(税込)円 (税込)【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B09PVYJYKS/
・楽天 https://books.rakuten.co.jp/rb/17015155/
・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1232415885

なぜ縄文の立体的な動物像は、弥生で平面的になったのか? 比べれば日本の原点が見えてくる~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。もしタイムマシンが完成して、好きな時代に旅行できるようになったらみなさんはどちらのツアーに行きたいですか? 「A:一泊二日縄文ツアー」「B:一泊二日弥生ツアー」。

 

縄文時代だったらイノシシ狩りをして、オリジナル土器を作るキャンプのような体験ツアー。弥生時代だったら米を収穫して、銅鐸を鳴らすお祭りを見物……。それぞれどちらも魅力的。遠い未来、世のお金持ちは宇宙旅行に飽きて時空旅行を目指すかもしれません。

縄文と弥生の比較から浮かび上がる日本の原点

 

そんな妄想はさておき、今回紹介する新書は縄文vs.弥生 先史時代を九つの視点で比較する』(設楽 博己・著/ちくま新書)。著者の設楽博己さんは、縄文・弥生時代を研究する考古学者で東京大学名誉教授。『弥生再葬墓と社会』(塙書房)、『縄文社会と弥生社会』(敬文舎)、『顔の考古学』(吉川弘文館)など著書も多数です。

 

稲作が日本にもたらした変化とは?

縄文時代と弥生時代の一番の違いは、大陸から水田稲作の技術が渡来したこと。これによって生活スタイルを含め、さまざまな面で変化が起こりました。

 

第2章では、労働としての漁「漁撈(ぎょろう)」に焦点が当てられています。稲作ばかりがクローズアップされますが、漁のやり方も縄文と弥生では異なるのですね。

 

縄文時代の漁はいわば「攻める漁撈」だとか。縄文後期に三陸海岸で発明された「燕形銛頭」は、その名の通りツバメのような形をしたカエシがついていて獲物から抜けにくくなっています。設楽さんいわく「ノーベル賞があったら受賞したに違いない」という傑作で、現在でも同じ形が引き継がれているそうです。この銛のおかげで、縄文人はサメやマグロ、クジラやトドまで仕留めていたというから驚きです。

 

一方で、弥生時代の漁は「待つ漁撈」。川から引いてきた水路に杭と横木を使って水をせき止め、すのこを置いて魚を自動的に捕獲するという作戦。水田が開発された弥生時代ならではの農業と一体になった手堅い漁のスタイルといえるでしょう。

 

本書のなかで私が一番関心を引かれたのは、第8章「立体と平面――動物表現に見る世界観」。縄文時代には粘土で立体的な動物の像が作られていましたが、弥生時代になると動物は土器や銅鐸の表面に線で描かれるようになります。

 

立体から平面へ。その理由を設楽さんは、縄文時代は森という立体的な空間から資源を得ていたのに対し、弥生時代は森を切り開き水田が広がる平板化した生活へ移行したから、と分析します。稲作の浸透によって世界の見え方も変わったという考察は新鮮に思えました。

 

死者に対する埋葬方法の変化、戦争や首長制社会が生んだ格差、土偶が伝える先史のジェンダー……。現代的な視点から縄文時代と弥生時代を比較することで、日本の“今”につながる原点が見えてきます。

 

その道の権威が、かみ砕いて研究内容を紹介してくれる一冊。専門用語が使われていてやや堅い印象もありますが、テーマ設定が具体的で図版も多く、当時の社会がイメージしやすくなっています。縄文と弥生の情報が詰まった専門書とガイドブックの中間といった雰囲気。この本でしっかり予習してからタイムトラベルに行きたいですね。

 

【書籍紹介】

縄文vs.弥生 先史時代を九つの視点で比較する

著者:設楽 博己
発行:筑摩書房

縄文から弥生へ人々の生活はどのように変化したのか。農耕、漁撈、狩猟、儀礼、祖先祭祀、格差、ジェンダー、動物表現、土器という九つの視点から比較する。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

大人気の新型ミラーレスでシアワセになる方法「CAPA 2月号」発売中

「CAPA 2月号」が発売中。これが、M型ライカの進化の答え「Leica M11」実写レビューのほか、人気アクションカムGoPro「HERO10」&DJI「Action2」の最新モデルも紹介します。
 

 

【特集】最新フルサイズミラーレス攻略術

次世代カメラの実力を知って、撮影システムを構築しよう! ニコンZ9、キヤノンEOS R3、ソニーα1といった昨年登場の各社のトップモデルは、AFや連写性能、EVFなどカメラの重要ポイントが大きく進化しています。そして昨年末に発売したミドルクラスの最新モデル、ソニーα7ⅣもAFや操作性の着実な進化が見られ、フルサイズミラーレスは今、いちばんホットなカテゴリーとなっています。

 

本特集では、各機種の気になる機能・性能・を掘り下げて、その能力を引き出す最強攻略術を考察します。

 

この冬は、おうちでじっくり感性を磨く「アナタの写真に効く、100の写真集」

名作&ロングセラー写真集には、作家の驚くべき発想や被写体への姿勢が詰まっています。写真集を見ることは、自身の感性を磨くひとつの手段!

 

そこで本特集では、あなたの写真にきっといい影響を与える、今見るべき写真集を紹介します。写真家16人の愛蔵書80冊のほか、写真編集者が推薦する最旬本、写真史家に聞いた世界の古典的名作写真集など計100冊が登場。感性を磨くヒントを求めて、いざ、写真集の世界へ。

 

今、ひそかなブーム!「角型フィルター導入大作戦」

さまざまなパターンのNDが併用でき、輝度差が大きい場面やスローシャッター表現で欠かせないアイテムとなりつつある角形フィルター。昨今はドロップイン方式の採用などで、PL使用時のケラレ問題を解決し、“出目金”と呼ばれる広角レンズに使用できるホルダーも登場しています。一大ムーブメントになりつつある角型フィルターシステムの特徴や使いこなし方、各社のおすすめ製品を紹介します。

 

このほか、新製品レポートではライカの最新M型デジタルカメラ「Leica M11」や、ニコンZの標準ズームレンズ28~75ミリF2.8、24~120ミリF4 Sなどを紹介します。また「アクションカメラを楽しもう!」や「2022年版オススメ画像編集ソフト」なども必見です。

 

[商品概要]
CAPA 2022年2月号

著者: CAPA編集部
定価: 1100円 (税込)

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レシピサイト「Nadia」より人気のレシピだけを掲載する公式ムック『Nadia magazine vol.05』発売中!

話題のレシピサイト「Nadia」より人気のレシピだけを掲載する公式ムック『Nadia magazine vol.05』が発売中。

 

『Nadia magazine』は月間2000万人が利用する大人気レシピサイトNadiaの公式ムック。最新のベストレシピや人気料理家に教わる献立など内容盛りだくさん! ムダなく食材を使い切るアイデアレシピや収納テクニックなど、今日から役立つ情報でいっぱいです。

最新版 これを作れば間違いなし! 人気レシピBEST25

最新の人気レシピBEST25を大公開! 主菜から汁もの、おやつまで幅広いレシピがそろいました。これを作ればおいしいおかず&おやつが作れること間違いなしです。

 

マネするだけで考えない! 迷わない! 献立レシピ

マネするだけでOKの献立例をたっぷり紹介! 「節約献立」「やせる献立」「2品献立」「ボリューム献立」の人気の4テーマの献立を紹介します。節約献立では1人分あたりの食費を、やせる献立では脂質量や糖質量を掲載。難しい計算いらずで、ただマネするだけで節約やダイエットがかないます。そのほか手軽にできる「2品献立」やたっぷりおなかいっぱい食べられる「ボリューム献立」も提案。Nadiaユーザーが選ぶ人気献立では、みんなが作っているリアルな献立例が分かります。

 

1~2食材で作る時短&簡単おかずも

使う食材の数を減らせば下準備がラクになって時短に。ラクにできる2食材の主菜と1食材でできる副菜の人気レシピを掲載しています。食材の組み合わせのバリエーションはたっぷり掲載しているから、今日冷蔵庫にあるもので作れるおかずが見つかるはず!

 

マンネリ知らず! 31日分のみそ汁&スープレシピ

毎日食べたいみそ汁やスープをたっぷり31日分紹介します。和風、洋風、エスニック風などさまざまな味つけ&具材のレシピを掲載。ローテーションで作れば飽きずに毎日楽しめます。

 

[商品概要]

Nadia magazine vol.05

編:Nadia magazine編集部
定価:760円(本体691円+税)

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心が疲れやすい今だからこそ読むべき!「幸せスイッチ」が入る77の言葉『あなたは、もう大丈夫。』

人から言われて一番うれしい言葉は何だろう。

 

「すごいね」「カッコイイ」「おしゃれ」「さすが」「ありがとう」——どれも言われると、思わずニヤっとしてしまううれしい言葉。この中で、私が言われて一番うれしい言葉は、「大丈夫」だ。それは私が心配性で、あがり症で、焦りがちだからだと思う。だからこそ、安心させてくれる「大丈夫」という言葉が、私の上がった心拍数を元に戻してくれる。

 

77個の「幸せスイッチ」

ふと目に入った『あなたは、もう大丈夫。』(中島輝・著/プレジデント社・刊)は、私が求めている言葉そのもの。そしてこの本の中には、「幸せスイッチ」が入る言葉がなんと77個も収められているのだ。

 

どれだけ心配性で、あがり症で、焦りがちな私でも、77もの方向から受容されて「大丈夫」と包み込まれたら、もう本当に大丈夫なような気になった。

 

実は私、この手の自己啓発本が結構好きだ。本屋さんに行けば、「自己啓発」なんてコーナーで、何十種類も平積みにされている。どの本も魅力的なタイトルで、自分に語りかけてくるようなものばかり。

 

そして読んでいる間は「そうそう!その通り」「なるほど…!」など、分かったような気になるのだが、読み終わった後はきれいさっぱり忘れてしまって、また悩みがあると新しい本を探しに本屋さんへ行ってしまう…なんてことを繰り返してしまうのは、私だけではないはず。

 

でもこの本は、よくあるこの手の本と違った。ずっと手元において時々読み返したくなる本の一冊になった。

 

なぜなら、読みやすくて心に響く優しい言葉で包み込んでくれるだけでなく、自分がどんな気持ちになった時にどう考え、具体的に何をすればいいのかまで教えてくれるからだ。

 

一例を紹介しよう。

 

あらかじめ行動を決めておく

著者の中島さんによると、「なにが起きても大丈夫」そう思える準備が、自己肯定感を高めてくれるとのこと。どれだけポジティブにいこうと心がけていても、人生何が起こるか分からない。ネガティブな感情に引きずり込まれないためにも、状況を客観視して不安感情に適切に対処することが大事なんだそう。

 

もう十年も前の会社員時代の話だが、私がチャレンジングな仕事をする時や不安になった時、仕事をテキパキこなし人望も厚い先輩が「大丈夫大丈夫~♪」とよく言ってくれていた。リズムも心地よく、その言葉を聞く度に心がふっと軽くなった。彼女は、仕事場の空気が少しでもよどみそうになるたび、よく「大丈夫大丈夫~♪」と口に出して言ってくれていた。

 

多分そこから「大丈夫」が私の大好きな言葉になったのだが、仕事のデキるその先輩が、常にポジティブではなかったのは、近くにいた私がよく知っている。おそらく彼女は、何かが起こった時に「大丈夫」と思える準備ができていたのかもしれない。そして先輩はいつも、素晴らしい結果を残していたのだ。

 

自分に合った環境を「動詞」で考えると、幸せに気づきやすくなる

毎年成人式のニュースが流れると、若者に「将来の夢は?」という質問をしているのをよく目にする。目を輝かせ、立派な「職業」を口にする若者の姿がテレビによく写るのだが、中島さんは自分に合った環境を探すとき、いつも「動詞」で考えるようにしているのだそう。

 

多くの人は、自分に合った環境を「名詞」で選びがちです。すると、単なる職業名に縛られて、自分が感じる幸せをなおざりにしたり、ネームバリューだけでやりがいを感じられない仕事を選んだりして、どんどんつらくなってしまいます。

わたしたちは「動物」です。自分が小さいころから親しみ、楽しく感じてきた「動詞」をいっぱい探し出せれば、自分の幸せにより気づきやすくなります。

『あなたは、もう大丈夫。』より引用

 

 

これには激しく膝を打った。そうだ、私達は「動」物なのだ。「何」になりたいのかではなく、「どうしたい」のか。

 

例えば、何かを創りだすことが好きな人は、事務の仕事をしていたとしてもクリエイティブな方法を見つけ出すことで、やりがいを感じられると中島さんは言う。

 

子どもに「将来何になりたい?」ではなく、「何をしている時が楽しい?」と聞くようにしていこうと思う。そうすれば、自分が楽しい「動詞」にたくさん気づいてくれるだろう。

 

そして自分自身も、何をしている時に幸せを感じられるのか、アンテナを張っていこうと強く感じた。おそらく、今自分が取り組んでいる事の中に、好きな動詞がたくさん隠れているのだと思う。

 

毎日、いろいろなニュースで溢れる世の中。テレビをつければ耳をふさぎたくなるような出来事や、コメンテーター達の着地点のない不安な声が耳に入ってくる。日常は、私達の心を簡単に不安にさせる情報が多すぎる。ちょっと心が疲れた時だけでなく、疲れてしまう前にぜひ知っておいてほしい言葉が、この本には詰まっている。

 

とある休日、本に書いてあったとおり、今日よかったことを3つ書き出してみた。

 

・朝8時まで子ども達とぐうたら寝られた。

・朝ごはんは、夫がフレンチトーストを作ってくれた。

・楽しみにしていたおいしいおやつを、家族みんなで食べた。

 

おっと!書き始めたら、快晴だったことも、レタスが特売だったことも、まだまだかけそうだ。挙げ出したらきりがない! どこか遠出をしたわけでも、外食をしたわけでもない、いたって普通の休日。しかし、普通の休日がキラキラ輝いて見え始めた。なんだ、今日もなかなか幸せな一日じゃないか!

 

この本に巡り合えたおかげで、いい夢が見られそうだ。

 

(執筆/福島絵梨子)

 

【書籍紹介】

あなたは、もう大丈夫。

著者:中島輝
発行:プレジデント社

幸せになるための答えは、あなたのなかにあるー。カリスマ心理カウンセラーが綴った、自己肯定感が湧き出る「言葉集」。

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蒸し焼き、蒸し煮、揚げもの——これ1台で何でもできる!『ストウブマスターブック』

ストウブマスターブック』(サルボ恭子・著/学研プラス・刊)は、その名のとおり、ストウブという調理器具を使うために必要なことが書かれた本です。数多くのレシピが集められており、手順に従って作れば、簡単に美味しい料理が出来上がります。ストウブは、有名シェフが協力して開発した鍋で、最初のうちはプロ用としてレストランで利用されていたのだそうです。ところが、その便利さが広く知られるようになり、今では一般の家庭でも広く使われるようになりました。

 

ストウブが我が家にやってきた

私もストウブの存在を知ってはいました。便利そうだし、おしゃれな鍋だなとも思いました。けれども、手に入れようとは思いませんでした。結婚祝いでいただいたシチュー鍋を40年近く使い続けていて、とくに仕込み鍋が欲しいとは思いませんでした。高価なストウブを買い、新しい料理に挑戦するガッツもありません。私は同じことを同じように繰り返してばかりの主婦なのです。

 

ところが……。ストウブを知ってからというもの、今や使わない日はほとんどありません。簡単に美味しい料理ができると知ったからです。まして、コロナ禍のもと、朝昼晩の三食を家で食べる生活が続いています。さすがの私も変化が欲しくなりました。何よりも、同じ料理ばかりでは体にも悪いでしょう。

 

我が家にストウブがやってきたのは、ガスコンロが壊れたことがきっかけです。酷使に酷使を重ねていたのが悪かったのか、それとも寿命がきたのかよくわかりませんが、点火しなくなってしまったのです。これは大変と、修理を依頼したものの、担当の方からは「これはちょっと直せないですね。もう部品がないんですよ」という返事でした。今まで何度も直してきたのに、とうとう駄目かとしょんぼりしていると、彼は「今、キャンペーン中で値引きできますよ。それに、ストウブがついてきます。便利ですよ」と、励ましてくれました。単純な私は元気をとりもどし、ガスレンジをまるごと取り替える決心をしました。おまけのストウブも手に入れることができるし、ラッキーだと思うことにしたのです。

 

そうは言っても、ストウブを使うのは初めてのことです。こわごわ使ってみて、心底、驚きました。私が十年一日のごとく同じ器具で同じ調理を繰り返している間、どこかで誰かが、会社の生き残りをかけ、必死の努力を続けていたのでしょう。ガスレンジは掃除がしやすいよう進化を遂げていました。高価だし、使い方もわからないしと敬遠していたストウブも、私の強い味方となりました。

 

「そんなもの、本当に必要なのか? 修理するって言ってたじゃない」と、渋い顔をしていた夫も、やがてストウブで作る料理を喜ぶようになりました。驚いたのは、「焼き芋」を気に入り、毎日リクエストするようになったことです。今までは「芋なんか大嫌い」と言っていたのに、ストウブで作った焼き芋は、毎日でも食べたいというのです。元々凝り性なので、芋の品種にもこだわり、今日は鳴門金時、明日は安納芋にしようと、自ら芋を取り寄せるまでになりました。作り方は簡単です。ストウブに洗ったサツマイモを入れ、温度を設定し、タイマーをかければ、ほっかほっかの焼き芋が出来上がります。

 

この鍋ひとつあれば、俄然、料理がうまくなる

『ストウブマスターブック』の著者・サルボ恭子は、老舗旅館の長女として生まれ、料理家の叔母に師事した後、フランスに渡りました。そして、パリの有名ホテル「ホテル・ド・クリヨン」で研修し、働いているうちにフランスの郷土料理に魅了されたといいます。

 

著者がストウブと出会ったのは、20年前。フランスで修業していたころで、以来、結婚後もずっとストウブ鍋を愛用し、家族の胃袋を満たしてきたと言います。

 

使うのは、ストウブの鍋1つだけ。これさえあれば、日々の料理にもう困りません

(『ストウブマスターブック』より抜粋)

 

料理家である著者がここまで惚れ込むストウブ。これひとつで、蒸し焼きも蒸し煮も煮込みも揚げ物、ごはんやパスタ、燻製まで出来てしまう優れ物、まさに万能鍋だと言えましょう。調理する際、気をつけることは次の3つです。

 

1 火加減に注意すること。中火・弱火・ごく弱火を使い分ける
2 蓋をあけ、中の状態をチェックする
3 焦げ付きやすい調理にはオーブンペーパーを敷く

 

焼き芋ばかり作っていた私ですが、『ストウブマスターブック』をお手本に、新しい料理にチャレンジするようになりました。今までは鍋で作っていた料理も、ストウブを使うと、より簡単に、おいしく、それもほうっておくだけで、出来あがるものが多いのにも驚きます。特に弱火の煮込みに力を発揮します。

 

無水蒸し焼きポトフ

どのレシピを紹介しようか迷いましたが、「無水蒸し焼きポトフ」を選びました。ほおっておくだけでできる優れ物の一品だと思うからです。

 

材料 (2〜3人分)

にんじん・・・・・中1本
タマネギ・・・・・2分の1
じゃがいも・・・・中2個
キャベツ・・・・・4分の1
ソーセージ・・・・2本
ローリエ・・・・・1枚
塩・・・・・小さじ2分の1ほど

 

1.にんじんは皮をむいて長さを半分に切る。玉ねぎは皮をむいて縦半分に切る。じゃがいもは皮をむき、半分に切る。キャベツは芯をつけたまま縦半分に切る。

2.ストウブに1を並べてローリエをのせ、塩をふってソーセージをのせる。蓋をして弱火にかける

3.20分ほど加熱して蓋をあけ、それぞれの野菜に竹串を刺してスッと通ったら、再び蓋をして火をとめ、10分ほどそのままおく

4.食べるとき味をみて足りないようなら塩をふる

 

実際に、作ってみると、実に簡単で、しかも美味しくできあがります。大切なのは、出来上がったあと、10分ほどそのままおくということだと思います。ポトフだけではなく、他の料理もできたらすぐにお皿に盛り付けず、余熱を利用してじっくり味をなじませ、ストウブごと食卓に運ぶのが、コツだと思います。これまでの私は、お料理はできたらすぐに食卓に直行、さめないうちにさっさと食べるようにしていました。けれども、ストウブでポトフを作ると、前菜をつまみながら、ワインを一杯飲む余裕が生まれます。

 

おうちご飯の毎日に疲れたとき、ストウブを使ってレストラン気分を味わってみるのもいいかもしれません。コロナ禍の毎日に新しい食習慣を取り入れることができます。中華料理も日本食も好きですが、新しくレパートリーに加わったストウブ料理は、我が家の食卓に「なんとなくフランス風」な毎日を運んでくれています。

 

【書籍紹介】

ストウブマスターブック

著者:サルボ恭子
発行:学研プラス

シンプルで、絶対においしくできる!! 蒸し焼き、蒸し煮、煮込み、揚げもの、ごはん&パスタ、燻製、デザートまで。人気の無水調理や毎日のおかず、おもてなし料理も! ストウブレシピの決定版!!

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あるようでなかった大人と小学生の対談本! 36人のコドモにインタビューした『しまおまほのおしえてコドモNOW!』

エッセイや対談本が好きで、ついつい読んでしまうのですが、先日見つけた『しまおまほのおしえてコドモNOW!』(しまおまほ・著/小学館・刊)は衝撃の1冊でした。2017年からWeb Domaniで連載されていた企画を書籍化したものなのですが、著者のしまおさんが36名の小学生たちにインタビューした様子がまとめられています。

 

「ヤダ! 30分が1年に感じる」「いや、あれは大親友でも準親友でもなくて“特別親友グループ”!」「地球をつくることー!」など小学生らしい!?  奇想天外な発言もたくさんありますが、読み終わると私も子どもだったのよねという懐かしい気持ちと、勝手に大人の思う子ども像に当てはめちゃいけないなと考えさせられました。今回はそんな読めば読むほど味わい深い『しまおまほのおしえてコドモNOW!』をご紹介します。

大門未知子好きな小学1年生

我が家では21時以降は「寝なさい!」「テレビ禁止!」という昭和な家庭だったため、ドラマもリアルタイムで見ることができませんでした。しかし、今では配信でなんでも好きな時間に見ることができるようになりましたよね!

 

そんな配信を駆使して大好きなドラマを見ているのが小学1年生のハナちゃん。米倉涼子さん主演のドラマ『ドクターX』を配信サイトで楽しんでいるのだとか。

 

ハナ ハナは『ドクターX』ではダイモンミチコとジョウノウチがいちばん好き。あとアキラさん。

まほ アキラさんは何する人なの?

ハナ ダイモンミチコのまねーじゃーで、例えば請求書とか渡して、「これ、メロンです」って言って、その金額がすごく高くてヒルマ院長が変な顔するんだよ(笑)。

(『しまおまほのおしえてコドモNOW!』より引用)

 

詳しい(笑)。他にも2016年に放送された「未知子 VS 最新オペマシーン」が好きだと話してくれたり、お母さんと一緒にTBSドラマ『マザー・ゲーム〜彼女たちの階段〜』『恋はつづくよどこまでも』も見ていると書かれてありました。

 

取材時は小学1年生だったハナちゃんも、1年経って小学2年生に。今でも『ドクターX』は好きで、新シリーズを心待ちにしているそう(笑)。「子どもだからドラマの面白さなんてわからないでしょ?」とそんな気持ちを抱きがちですが、小学1年生でも面白いと見ているなんて素敵な感性ですよね。ハナちゃんの将来が楽しみです!

 

小川博久先生との対談も面白い

『しまおまほのおしえてコドモNOW!』には、子どもへのインタビューのほかに、番外編として幼児教育学者の小川博久先生としまおさんの対談も掲載されています。ここでは「子育てで大切なことは?」をテーマにお話しされているのですが、子どものいない私でも、「なるほど」と唸ってしまうことがたくさん書かれてありました。

 

小川 まず、子どもの動きを束縛しないことが大切。だから、放っておくことは構わないの。けれど、関心を失わないことが重要。注視する、そして子どもの手の内を読んで、そのうえで放っておくの。

(『しまおまほのおしえてコドモNOW!』より引用)

 

小川先生曰く、親は子どもにとって憧れの対象になるのがベストなのだとか。子どもからファンになってもらえるように、程よい距離感で接するのがポイントだそう。

 

3歳になった姪っ子とは、会うとうれしくてあれこれ買ってしまったり、次々と遊んでしまったりしていましたが、次から“おばさまのファン”になってもらえるよう、ベタベタしすぎず、程よい距離感で憧れてもらえるように頑張りたいと思いました(笑)。

 

親でも先生でもない大人と子どもが話す大切さ

自分の小学生のころを振り返ってみると、周りにはたくさんの大人がいました。

 

親でも先生でもない、地域のおじちゃん・おばちゃん、習い事で会うお姉さんたち、近所のお店の店員さんなど、変に子ども扱いせず、対等に話を聞いてくれる人たちがたくさんいたなぁ〜と懐かしさと共に、感謝の気持ちが出てきました。

 

いろんな大人たちを知っていたからこそ、私もこんな大人になってしまったのだと思うのですが(笑)、本書のしまおさんのような存在が子どもにとって結構重要なのかも? と感じました。かつてはみんな子どもだったので、読めば懐かしい気持ちと共に、大人になった「今」だからこそわかることも感じられるはずです。大人が一括りにしがちな「子ども」にも、ちゃんと個性があるよという当たり前のことを感じさせてくれる1冊です。子育て中の方はもちろん、かつて子どもだった全ての大人におすすめできます!

 

 

【書籍紹介】

しまおまほのおしえてコドモNOW!

著者:しまおまほ
刊行:小学館

子ども目線でも大人目線でもない…しまお目線で巷のコドモ36人の“今”に迫ったり迫らなかったり、なうっかり新境地!ルポルタージュエッセイ。

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SNSの大定番・Twitterの使い方をイチから解説する「500円でわかるTwitter 最新版」

「500円でわかるTwitter 最新版」は、PCムックシリーズ売上No.1の「500円でわかる」シリーズに連なる一冊。本書では、日本で月間4500万人が使用するというTwitterの導入方法から使いこなし方までをわかりやすく解説します。スマホでの操作方法だけでなくPCでの使い方も詳細に説明しているほか、プライバシーを守るセキュリティ関連の各種設定まで、初心者でも理解しやすく紹介しています。

 

Twitterを使いこなせば、便利に情報収集できる!

Twitterは膨大な情報がリアルタイムで更新されていく、世界最大のソーシャルネットワーキングサービスです。本書では、アカウントの作成や初期設定といった導入から、ツイートを読み、探し、交流するための様々な方法を初心者にもわかりやすく丁寧に解説しています。

 

ツイートやリプライの仕方をわかりやすく解説

もちろん読むだけでなく、誰でも手軽に情報発信をできるのがTwitterの特徴。本書では、ツイートの投稿方法を初歩から解説しており、写真をつけたツイートやツイートへの返信(リプライ)の仕方などをしっかりマスターできます。

 

スマホでもパソコンでもTwitterを活用できる

操作方法は、どこでも自由に活用できるスマホ用Twitterアプリとじっくり腰を据えて利用可能なパソコン向けのウェブブラウザ版Twitterの両方を解説。あなたのスタイルに合わせて、より便利に使いこなせます。

 

[商品概要]

500円でわかるTwitter 最新版

著者: GetNavi編集部
定価: 550円 (税込)

【本書のご購入はコチラ】
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犬だけじゃない! 直木賞作家・馳星周が描く美しき競走馬の物語——『黄金旅程』

黄金旅程』(馳星周・著/集英社・刊)は、馳さんの直木賞受賞後第一作。自身の出身地である北海道の浦河を舞台にした、競走馬とそこに関わる人々の物語だ。タイトルの”黄金旅程”とは、馳さんが好きだったという1996年から2001年まで活躍した競走馬のステイゴールドの中国名で、引退レースとなり見事に勝利した香港ヴァーズ(G1)でつけられた名前だ。ステイゴールドは羽が生えたように速く走る馬だったが、なぜか国内レースでは2着が多く、シルバーコレクターと呼ばれていた。

 

本作は、そのステイゴールドをモデルにしたフィクションで、馬はエゴンウレアという名で登場する。エゴンウレアはバスク語のステイゴールド、黄金のようにいつまでも輝いていてくれという意味だ。

主人公の職業は装蹄師

馬の主役はエゴンウレアだが、主人公は平野敬という名の装蹄師。敬はジョッキーを目指していたものの身長が伸びすぎてしまい、その夢を諦め、装蹄師になったという設定だ。競馬の世界では花形であるジョッキーだけでなく、調教師、厩務員、生産牧場の人々、育成牧場の人々などたくさんの人々が関わっている。その中でも、装蹄師は目立たないが競走馬を支える重要な仕事を請け負っている。体重が400キロ以上もある馬の蹄を保護する蹄鉄をはかせるのが装蹄師で、その仕事の良し悪しはレースの結果をも左右するのだ。

 

また、物語では敬は装蹄師をする傍ら養老牧場も経営している。競走馬を引退した多くの馬たちの末路は悲しいものだが、一頭でも多くの馬を救いたいと敬は考えている。

 

野生の馬に人が手を加えることで生まれてきたのがサラブレッドだ。彼らは人なしでは生きられない。そして、人は競馬がなければ彼らを養えない。それが現実だ。日本だけでも、毎年、七千頭前後のサラブレッドが生まれてくる。世界規模なら数万頭だ。そのうち、天寿を全うできるのはひとにぎり。それでも競馬は続けなければならない。ならば、競馬に関わる者ひとりひとりが、ぞれぞれの責任を負えばいい。わたしは養老牧場を開くことにした。

(『黄金旅程』から引用)

 

敬が持つ養老牧場は和泉牧場といい、幼馴染の両親が持っていた小さな牧場を譲り受けたものだ。ひとり息子の和泉亮介は花形ジョッキーだったが覚醒剤所持の罪で刑務所に入っていたのだ。

 

ジョッキーたちの苦行は体重管理

物語の準主役がその和泉亮介だ。

 

一流騎手として脚光を浴び、その派手な性格とあいまって一般のマスコミも賑わすほどの人気者になった。(中略)だが、三十歳を過ぎた頃から、亮介も体重のコントロールに苦しむようになったらしい。苦行のような食事制限を続け、やがて、覚醒剤を使うようになったのだ。覚醒剤を使えば、空腹でも活力に満ちた騎乗ができたと最初に逮捕されたときの裁判で証言していた。

(『黄金旅程』から引用)

 

亮介は、出所して故郷に戻ってきた。借金取りに追われ、行くあてもない亮介は敬と一緒に暮らすこととなったのだ。落伍者となった亮介だが、出来る仕事は限られている。経験を生かせる仕事、それはやはり馬に乗ることだけなのだ。

 

エゴンウレアの渾名は”猛獣”

エゴンウレアは尾花栗毛の馬で、馬体は栗毛だが、鬣と尾の毛は透き通るように白く、西日を浴びれば白い毛は黄金色に輝くのだ。産出した栗木牧場の主は、G1制覇を夢見ている。装蹄をした敬もエゴンウレアは稀に見る素質の馬だとわかっていた。しかし、気難しい性格の馬で人の思い通りには走ってくれない。そして勝てるべきレースを2着、3着で終えてしまうのだ。育成牧場である吉村ステーブルでも、乗り役を振り落としてしまうなどエゴンウレアには手を焼いていた。

 

エゴンウレアがいなないた。激しく首を振り、立ち上がろうとする。自分の自由を制限する厩務員たちを振り払おうとしているようだった。(中略)栗木牧場にいたときも、吉村ステーブルに移ってからも、もちろん調教師の厩舎でも、エゴンウレアの渾名は猛獣である。

(『黄金旅程』から引用)

 

エゴンウレアが心を開いている人物はその時点では栗木ただひとりだった。エゴンウレアをG1馬にするためには調教をつける乗り役にも心を開く必要がある。そして亮介に白羽の矢が立った。超一流のジョッキーだった亮介が放牧中の馬に調教をつければ、エゴンウレアも変われるかもしれない、と。

 

人馬一体の美しさ

エゴンウレアは亮介をも振り落とそうと馬場をジグザグに走り、なんとか束縛から逃れようと抗い続けるが、一流の乗り役が手綱を握っているので馬の思い通りにはならない。やがて抵抗を諦めたのだ。

 

「もう一周してきます」

亮介はそう叫んで、エゴンウレアに気合をつけた。我々の目の前を、エゴンウレアが疾駆していく。黄金色の鬣と尾が風になびき、汗を掻いた栗毛の馬体が日差しを浴びて煌いている。走るサラブレッドはみな美しいが、エゴンウレアのそれは群を抜いていた。亮介の騎乗フォームもあいまって、まるでこの世のものではないようにさえ思えた。

(『黄金旅程』から引用)

 

こうして浦河の人々の夢を乗せて、エゴンウレアの快進撃がはじまる。はたして、エゴンウレアはG1で勝つことができるのか、それは読んでのお楽しみ。

 

馬のことよくわからない人でも、前半でストーリーに沿って詳しい説明が組み込まれているので、競馬界のことをよく理解できるのが本書だ。また、馳さんのテンポの良い文章で、スイスイと読め、後半はまるでレースを観ているようにドキドキしながら引き込まれていく。

 

私は馳さんの犬の小説の大ファンだが、この馬の小説も素晴らしくお気に入りの一冊になった。競馬ファンはもちろん、動物が好きな皆さんにもぜひおすすめしたい。

 

【書籍紹介】

黄金旅程

著者:馳星周
発行:集英社

装蹄師の平野敬は北海道の浦河で養老牧場を営んでいる。牧場は幼馴染の和泉亮介の両親が所有していたものだったが、騎手だった亮介が覚せい剤所持で刑務所に入ったこともあり譲り受けた。敬が注目するのは栗木牧場生産の尾花栗毛馬・エゴンウレア。以前装蹄したことがあり、その筋肉に触れた瞬間、超一流の資質を秘めた馬だと確信していた。だが気性が荒く、プライドも高い馬で調教に手を焼いていて、今まで勝ち鞍がない。その馬主と競馬場で会った際、レースで突然馬が興奮するという不自然な現象に遭遇する。また、敬は出所して無職だった亮介に、本来の力を取り戻すべくエゴンの乗り役になるよう勧める。その後、レースでの不自然な現象は厩務員の一人が犬笛を使って八百長に加担していたことが判明。敬は裏で糸を引くヤクザの尾行を始めるが気付かれ、拉致され殺されそうになるも、一命を取り留める。様々なトラブルが起こる中、エゴンが出馬するレースの日も近づき、亮介による最後の調教も終わった。エゴンに人生を託した人々の想いは、二勝馬脱却への奇跡を呼び起こせるのかーー。

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「確認させていただきます」「寄付させていただきました」“違和感敬語”はなぜ使われるのか?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。もうかなり前ですが、レストランでの出来事。「お水のほう、お持ちします」「メニューのほう、お下げします」「お会計のほう、こちらになります」……。当時はまだ「のほう」という言い方が珍しかったこともあって、「なんだかほうほうとフクロウみたいだなあ」と思った記憶があります。まあ、最近では私もつい「原稿料のほう、おいくらでしょうか」とメールで書いてしまっているのですが(笑)。言葉に対する感覚も変わるものです。

 

ついつい使ってしまう「させていただく」の謎

今回紹介する「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(椎名 美智・著/角川新書)は、90年代から使用が増加し、現在爆発的に広まっている「させていただく」を読み解く新書。著者の椎名美智さんは、歴史語用論、コミュニケーション論を研究する言語学者で法政大学教授です。

 

昨年刊行された学術書『「させていただく」の語用論』(ひつじ書房)はネットニュースでも取り上げられ大きな反響を呼びました。本書はより一般向けに、身近な例を挙げながら「させていただく」の謎に迫っていきます。

現代社会にマッチした敬語とは?

冒頭にはSMAPとV6の解散劇で発表された文言が例に挙げられています。SMAPが解散したときにマスコミに送られたファックスには「解散させていただくことになりました」とありました。そしてV6のホームページには「僕たちV6は、2021年11月1日をもちまして、解散します」と書かれています。読み比べてみると「させていただく」がさまざまなニュアンスを加えていることがわかります。

 

第1章「新しい敬語表現――街中の言語学的観察」には、さらに多くの使用例が並んでいます。美術館の「館内での飲食は禁止させていただいております」。駅の切符売り場の「発売を終了させていただきます」。お菓子の老舗店の「おかげさまで320年を迎えさせていただきました」。SNSで見かける「マスクを寄付させていただきました」。

 

私は普段それほど気にしていませんでしたが、特に相手への許可が必要ない行為にも「させていただく」を使うのは変かもしれません。誰に敬意を払っているのかもちょっと不明ですね。みなさんは「させていただく」にどのような印象を持っていますか?

 

なるほどと思ったのは、第2章「ブームの到来――「させていただく」の勢力図」の「上下関係とは別タイプの敬語」の節。長らく敬語は上下関係を表す際に使われてきました。ですが、現代社会において人間関係は平等とされています。そのような状況では従来の上下関係で使われていたものとは異なるタイプの敬語が必要になってくる、と椎名さん。

 

また、「敬意漸減の法則」も納得です。敬語に含まれている敬意は、使われるうちに少しずつすり減っていく現象が起きるのだそう。たとえば「貴様」は、江戸時代には目上の人を呼ぶ言葉でしたが、やがて同輩を呼ぶようになり、今ではののしる言葉になっている……。スーパーの売れ残りの値引きシールのようですね(笑)。こうした検証から「させていただく」が現在あらゆる場面で便利に使われている背景が見えてきます。

 

芸能人のコメントや日常的なビジネス会話も引用され、言語学に興味がない人でもカジュアルに読み進められます。「最近の言葉は乱れている!」と主張するわけではなく、700人の意識調査などのデータを踏まえ、学問として“なぜその言葉が使われているのか”に焦点がしっかり当たっていて読後の満足度も大きかったです。

 

世の中は常に動いていて、それに伴って言葉の意味や使われ方も変わっていく。言葉は社会を映す鏡です。

 

【書籍紹介】

「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

著者:椎名 美智
発行:KADOKAWA

「させていただく」は正しい敬語? 意識調査とコーパス調査で違和感の正体が明らかに。現代人は相手を敬うためでなく、自分を丁寧に見せるために使っていた。明治期、戦後、SNS時代、社会環境が変わるときには新しい敬語表現が生まれる。言語学者が身近な例でわかりやすく解説!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」中世軍事考証担当者が解き明かす、これまで語られなかった武家政権成立史!

『鎌倉草創 東国武士たちの革命戦争』は、頼朝の挙兵から幕府の創設、承久の乱で朝廷軍に勝利するまでの40年にわたる武家政権誕生の軌跡とその本質を、2022年のNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で中世軍事考証を担当する著者が考察を交えつつ論じます。

 

さまざまなギモンが氷解! “腑に落ちる”鎌倉幕府成立史

 この年の十月七日、頼朝は伊豆・相模・武蔵と房総三国の武士たちを率いて、鎌倉に入った。石橋山での敗戦から二か月を経ずして、革命軍は南関東一円を実効支配下に置いたのである。かかる驚異的な勢力回復が、なぜ可能だったのだろうか。実は、この頼朝の驚異的な回復にこそ、鎌倉幕府成立のカギが隠されている。そのカギをさぐる上でもっとも大切なポイントは、武士たち――武を生業とする戦士階級――が結集してつくった軍事政権、という幕府の本質的な属性である。
(第一章「折れた革命」より)
歴史好きの方にとっても、戦国や幕末に比べると、深くは理解できていないであろう鎌倉幕府成立期。たとえば多くの方は以下のような疑問を抱いているのではないでしょうか。

・石橋山で惨敗した頼朝は、なぜ瞬く間に勢力を回復し、再び平氏打倒の軍を結集し、平氏打倒を実現できたのか?
・義経は天才と言われるが、具体的にどこがどのように天才だったのか?
・頼朝はなぜ、朝廷を打倒しなかったのか?
・幕府の実権を握った北条氏はなぜ、お飾りの将軍を担ぎつづけたのか?
・鎌倉幕府の成立は結局いつと考えればよいのか?

 

本書では、鎌倉幕府を、「武士たちがつくった軍事政権」との事実から読み説いていくことで、その本質に迫ります。また、その過程でこうしたギモンも解消していきます。

 

著者は戦国期の軍事と城の専門家。戦国史ファンにこそ読んで頂きたい武家政権成立の物語

著者は『戦国の軍隊』『東国武将たちの戦国史』『パーツから読み説く戦国期城郭論」など、中世の軍事と城郭に関する本を多数出しており、大河ドラマでは、2016年の『真田丸』では戦国軍事考証を、そして今年の『鎌倉殿の13人』では中世軍事考証を担当しています。

 

戦国時代と鎌倉時代は、同じ中世といはいえ400年もの隔たりがあります。武士たちが甲冑を着て弓矢や刀剣で戦うのは共通していても、戦い方も軍事力の構成もまるで別物。本書では当時の戦いや戦略・戦術についても考察しており、その点からは、戦国史ファンにぜひ読んで頂きたい1冊でもあります。

 

[商品概要]
鎌倉草創 東国武士たちの革命戦争
著者: 西股総生
定価: 1760円 (税込)【本書のご購入はコチラ】
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教育費から老後の資金までお金の不安をまるっと解決!『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』

日本でも「投資文化」が浸透し始め、私の周りでも投資を始めたなんて声を聞くようになりました。けれど投資するお金がなーい!!(笑)

 

さまざまな節約術を試してみたものの、なかなかお金は貯まらない! 日々の暮らしで手一杯になっているご家庭も多いのではないでしょうか? そこで今回は、時短節約家としてテレビやSNSで話題になっているくぅちゃんの本『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』(くぅちゃん・著/KADOKAWA・刊)をご紹介。まずは何から節約したら良いの? とお困りの方におすすめの一冊です。

面倒くさがりでもOKな「時短節約」とは?

最近では、ネットやSNSを通じて節約術を知る機会も増えてきましたが、どれも映えて、ときめいている投稿が多くて……「あぁ私には面倒そうだな〜」と諦めることも多々。仕事で疲れているのに、料理を作るのにも頭を使って、しっかり家計簿を書くことに時間を取られて、睡眠時間が減ってしまっては元も子もないですよね。

 

この『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』の著者であるくぅちゃんの節約術は、どれもすぐできる「時短節約」。手間も時間もかからない、ラクラクな節約術なのです。

 

面倒くさがりだから、自分には手間と時間がかかる節約は向かない。そもそも今どきの主婦はみんな忙しい……そう考えてたどり着いたのが、自分流の「時短節約」です。これからの節約は、いかにラクして効率よく支出を減らせるかがポイント。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

くぅちゃんは、旦那さんと男児2人の4人家族。その節約術は、毎週月曜日は魚の日、木曜日は麺の日と1週間の献立を固定化していたり、朝ごはんを定番化したり、家計簿は3日に1回たった2分で終わらせるなど、どれも真似したくなるようなものばかり。

 

ページをめくるたびに「これくらいでもいいのか!」と、どこか肩の荷が下りるような感覚を覚えます。「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と忙しい節約術が面倒だな〜と感じている人には『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』がおすすめです。

 

便利そう! とあれこれ買っちゃう日用品の節約方法

本書は、食の節約、家計管理法、貯蓄、教育費に関わること、老後のお金に関することの、5つの章にわかれています。食の節約については、タレや練乳、ホットケーキミックスを自作方法や冷蔵庫収納術、1週間のまとめ買いの中身も公開されています。

 

また、日用品についても節約方法が紹介されています。一般のご家庭では「なくなりそうな日用品」を都度買いされていると思いますが、くぅちゃんは必要な日用品を場所ごとにリスト化し、そこに書かれてあるものだけを買い足す方法をしているのだとか。

 

そこで、使っている日用品をぜ〜んぶ書き出し、チェックボックスつきの一覧表を作成。なくなりそうなものをチェックするだけでいいので、前よりずっと簡単になりました。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

リスト化したことで買うべき日用品が明確になり、日用品費が8000円程度から3000円にまで減ったのだとか!

 

我が家では、「そろそろラップがなくなりそう!」となればメモして買ってきますが、たまに「あぁ〜ストックあったじゃん!」なんてことや、隣の棚にあった便利そうな台所用品もついで買いしちゃうこともあるので、リスト化しておくのはとっても便利だと感じました。

 

ちなみに、くぅちゃんのインスタにはこんな投稿が。

 

 

日用品は次から次へと新商品が出るので、「安いから」「便利だから」でついつい買ってしまいがち。手に取る前に考える、買わない選択肢もあることを忘れずにいたいですね!

 

一番の老後の備えは「健康で長く働くこと」

節約することも大切ですが、収入がなければ生活できません。メディアでは老後について不安になるような情報が飛び交っていますが、年金だけで生活しようとするから厳しいのであって、少しでも収入がある暮らしができれば、それが一番の老後の備えになるのではないでしょうか?

 

結局、なんだかんだ言っても、長く働くことが、老後のお金の不安を解消してくれるということです。

長く働き続けるには、健康でなければなりません。健康なら医療費もかからないし、介護費用の負担もありません。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

未来のことはわからないので、いつ働けなくなるかもわかりませんが、「長く働ける自分」でいることもひとつの節約術なのかも? と感じました。『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』には今からできる節約術がたくさん掲載されています。それをやるか、やらないかは自分次第! たくさんのヒントが散りばめられた一冊なので、自分でもできそうなものからまずはチャレンジしてみませんか?

 

 

【書籍紹介】

節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄

著者:くぅちゃん
刊行:KADOKAWA

元浪費ワーママが教える、多忙でもズボラでもできる、だから続く、節約&貯蓄TIPS。テレビ・雑誌で大反響の時短節約インスタグラマー。子どもの教育費、老後、全ての不安を解決!!

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不世出の作詞家の言葉には、どんなビジネス書よりも役立つノウハウが詰まっていた!——『松本隆 言葉の教室』

よく「インプットが大事」なんてことを聞く。アイデアを出したり作品を作るため、つまりアウトプットをするためには、情報を自分のなかに入れておく必要があるという意味だ。

 

僕は、この「インプットが大事」というのになんとなく違和感を覚えていた。インプットが大事なのは重々わかっているが、「インプットが大事」と言われるとうーんと思ってしまう。その違和感を長い間消えないままだった。

不純な動機で得た知識は不純な作品しか生まない

松本隆 言葉の教室』(延江浩・著/マガジンハウス・刊)を読んでいたら、同じようなことが書かれていた。松本隆といえば、はっぴいえんどのドラマー、そして日本を代表する作詞家だ。彼は、子どものころから観てきた映画や読んだ小説、体験したことが表現の根源になっているという。

 

だからといって、創作するためにインプットしようとすると、それは不自然。なにかのためになにかをするというのはとても不自然なこと。不純な動機で得た知識は不純な作品しか生みません。

(『松本隆 言葉の教室』より引用)

 

彼はわざわざ思いついたフレーズなどをメモしたりしないし、作詞のために意識的にインプットをしない。自分の身体の中に眠っている感覚や感情を使って作詞をしているという。

 

僕が感じていた違和感は、まさにこれ。仕事で必要な情報を得るために本を読んだりセミナーに出たりするインプットは必要だとは思うが、それはあくまでもアウトプット前提の行為。作詞といったアートな作業(僕は詩作もアートだと思っている)の場合、意図的にインプットをしてしまうと、アウトプットにより出来上がった作品が作為的になってしまう。僕はその辺りにすごく違和感を覚えていたのだ。

 

印象に残った松本隆の言葉

本書を読んでいると、「ああ、そうだよな」という言葉がそこかしこに散りばめられている。たとえばこのフレーズ。

 

メモしないと忘れちゃうような言葉は忘れちゃっていい。

(『松本隆 言葉の教室』より引用)

 

僕は若いころから音楽をやっていて、作詞作曲をしていたのだが(今でもやっているが)、頭に思い浮かんだフレーズをメモしたりすることはない。次の日の思い出せないような言葉やフレーズだったら、あまり意味がないのではないかと思うからだ。

 

難しいことを難しく言うのは簡単だけど、難しいことを易しく言うのは本当に難しい。

(『松本隆 言葉の教室』より引用)

 

これはもう、ライター業をやっていて常に思っていることだ。できるだけ誰にでもわかりやすい言葉で、わかりやすく伝えること。これは一番大事なことだと思っている。

 

 

書き終えたら声に出して読んでみるのはどうかな。

(『松本隆 言葉の教室』より引用)

 

これは、文章で悩んでいるライターに僕もよく言う。一度書いたものを声に出して読んでみると、リズムが悪かったり、言葉が重複しているところなどを理解しやすい。読んでみて違和感を感じやすいのだ。

 

稀代の作詞家の言葉で上質なインプットを

松本隆がとても偉大な人物だということは重々承知しているが、実際に彼の言葉を読んでいると、とても心に刺さるものが多かった。数々の名曲を作詞を手がけた彼が、どんな風に詞を生み出しているのか、その道筋を少し知ることができた。

 

彼に関する書はほかにもあるので、これから読んでいきたいと思う。おそらく、ビジネス書やハウツー本などよりもよいインプットができることだろう。

 

 

【書籍紹介】

 

松本隆 言葉の教室

著者:延江 浩
発行:マガジンハウス

稀代の作詞家が教える“ポケットいっぱいの”日本語の秘密。

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「つまらない」と嘆く前に、まずは隅々まで見渡してみる——『面白いとは何か? 面白く生きるには?』

フリーランスという形で働き始めて27年。デビュー年でいえば有吉弘行さんや竹野内豊さん、そしてGLAYさんと同期ということになる。

年初の抱負

毎年、抱負や目標を決めて文字に残すことにしている。最初のうちは翻訳本や単行本を何冊出版したいとか、連載を何本持ちたいといった具体的な内容だったのだが、キャリアを積み重ねていく過程でより広いくくりでの言葉が多くなっていった。

 

そして2022年の抱負あるいは目標は、さまざまな形でより多くの人たちに興味を持ってもらえるようになることだ。そのために、去年の自分より面白くなりたい。ただ、面白いというのはとても範囲が広い言葉で、最大公約数的な定義がしにくい。

 

生きていく上で不可欠な感覚

面白いという感覚を可視化する上で役立ってくれそうなのが『面白いとは何か? 面白く生きるには?』(森 博嗣・著/ワニブックス・刊)という本だ。300冊以上の著作がある人気作家による本書の第一義的な性格は、「面白さ」を基準にクリエイターの視界に映るさまざまな要素についての思いを綴ったものということになるだろうか。ただ、本書の対象は仕事がらみで面白さを追い求めている人たちだけではない。

 

同時に、「面白さ」を知ること、生み出すことが、すなわち「生きる」ことの価値だという観点から、「面白い人生」についても、できるだけヒントになるような知見を、後半で言及したい。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

面白いという感覚は、人が生きていくために不可欠な要素なのだ。

 

共感という機軸

章立てを見てみよう。

 

第1章「面白い」にもいろいろある

第2章「可笑しい」という「面白さ」

第3章「興味深い」という「面白さ」

第4章「面白い」について考える

第5章「生きる」ことは、「面白い」のか?

第6章「面白さ」は社会に満ちているか?

第7章「面白く」生きるにはどうすれば良いか?

第8章「面白さ」さえあれば孤独でも良い

第9章「面白さ」の条件とは

 

「面白い」という感覚の定義から始まって、それを反芻し、まず自分に反映させ、社会全体に投影し、最後にその不可欠性が語られる。筆者がイメージしていた面白さの可視化とは、まさにこういう流れなのだ。大前提に関しては、少なくとも部分的には次の文章によって説明されるはずだ。

 

人間は、いろいろいるし、また個人の中にもさまざまな価値観が混在し、非常に複雑に絡み合った反応をする。それなのに、大勢が同じものを「面白い」という現象が観察されるのは、とても不思議なことだ。この「共感」も人間の凄さの一つかもしれない。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

ネット時代の面白さの中核は共感

森氏が指摘する面白さの機軸は、共感の他にもいくつかある。「興味深い」「考えさせられる」「気づき」「役に立つ」。いずれも何らかの行動のきっかけになる感覚だ。共感をはじめとする機軸が紐づけられるから、ネット上でも「いいね」がやりとりされる。実はこの仕組み、人間のサバイバル本能にも直結しているようなのだ。

 

脳が「面白い」「面白そう」と感じなければ、それらを得ようとする行動を起こさない。それでは、生きていくうえで支障がある。生物の基本的な指向は、「生存」であるから、「面白い」は、実は生きることにリンクしている。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

面白さをカスタマイズする

面白く生きていくためにはどうしたらいいのか。森氏が示すビジョンは明快だ。

 

隅々まで探して、「面白さ」を見つける姿勢を、いつも持っていること。それが、「面白い」生き方の基本だ、と思う。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

日常生活でさまざまな制約が多くなったここ2年。「つまらない」と嘆く前に、まずは隅々まで見渡してみる。その過程で、自分なりの面白さや指向性がうっすらと見えてくるかもしれない。

 

あなたの設計図は、あなたにしか見えない。他者を巻き込まないで、自分一人で、その設計図を実現するために作業を始めよう。「面白さ」とは、そういうものだ、と僕は思う。

『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用

 

筆者の中では、おぼろげながらもすでにいくつか「面白さ」が形を取り始めています。

 

【書籍紹介】

面白いとは何か? 面白く生きるには?

著者:森博嗣
刊行:ワニブックス

人気作家が「面白さ」のメカニズムを考察。仕事で面白いアイディアが必要な人、人生を面白くしたいすべての人に役立つヒント。

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ネットの闇を暴くYouTuberの戦い方ーー『告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇』

ネットが発達したことで、ネット絡みの問題行為も生まれています。そして、その問題行為がどのようなものだったかをライブ配信で告発するという流れが新たに生まれています。

 

解決スピードの速さ

技術の発達によって、今までだったら隠し通せていた悪事が御用になりやすくなったと感じる人は多いでしょう。たとえば、各所の防犯カメラに映る逃走犯の姿を追跡し、居場所を特定する警察の手腕の鮮やかさには感動させられます。事件翌日にはもう犯人を逮捕できていることもあるのですから。

 

しかし、まだ事件に至っていないオンライン上のやり取りを警察が捜査することはありません。けれど、実際にはSNSなどでひどい目に遭い、泣き寝入りしているような人は大勢います。特に未成年は法的知識もあまりないため、誰に相談していいのかわからずひとりで途方に暮れるケースもあるのです。

 

オンラインで未成年を狙う影

チェコのドキュメンタリー映画『SNS-少女たちの10日間-』は、10代だとウソをつき、若作りしてSNSに登録した成人女性3人がどうなったかを記録したものでした。10日間で彼女たちにコンタクトを取ってきたのは2458人。その多くが、女性を10代だと認識したうえで淫らな交流を持ちかける男性たちだったのです。

 

この映画はチェコでヒットし、後日、新たな展開を迎えます。チェコ警察が、画像提供を依頼してきたのです。これにより、未成年に対して、してはいけないことをしていた男性たちは捜査対象となりました。つまり、映画がひとつのきっかけとなって警察が動いたのです。

 

トップライブ配信者

2021年、日本でもこれと似たことがありました。チェコの映画は過去映像を映画館で流したのですが、日本はライブ配信、つまりネットでの生放送中に問題が取り上げられたのです。それは、ある有名YouTuberの男性が、15歳の少女に淫らな画像を何度も送らせていたというものでした。

 

少女から相談を受けたのは「ライブ配信の王」と言われるコレコレさん。しばしばネット上の問題を取り上げ、それを視聴者と共に考えるというスタイルが人気を博しています。彼のライブ配信の最大同時接続者数は31.6万人(2021年9月時点)。芸能人ではない個人配信者としてはトップの数字です。

 

ライブ配信が先行する形

このYouTuberの事件はライブ配信(生放送)されましたが、記録はYouTubeにもアップされ、書籍『告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇』(コレコレ・著/宝島社・刊)にもやり取りが生々しく描かれています。

 

被害を受けた女性本人が生放送に出演して経緯を語るだけでも衝撃ですし、視聴者が自分なりの考えをコメント欄に書き込み、それが即座に番組で読み上げられ、皆でこの問題を考えているのも斬新です。結果、番組に励まされた被害女性は警察に被害届を提出し、当該YouTuberの逮捕に至りました。これも映画同様、コンテンツがきっかけとなって警察が動いた形となったのです。

 

視聴者と「対等」であること

コレコレさんの番組では、これまでもネットで起きた問題がいくつも取り上げられてきました。時に「ネット界の文春砲」と言われることもあるようですが、雑誌のスクープとは大きく違う点があります。それは、スクープすることそのものではなく、相談してきた視聴者の悩みの解決が目的なのだということ。

 

本書でコレコレさんは「リスナーと私は常に対等だ」と綴っています。だからこそ、視聴者は彼と腹を割って話ができるのでしょう。そんな本音トークが繰り広げられるなかで、配信中に次々に出てくる新情報に視聴者はクギ付けとなります。コレコレさんのところには次々に相談が寄せられているようなので、今後も新たなニュースがこのライブ配信から出てくるのではないでしょうか。

 

 

【書籍紹介】

告発 誰も晒せなかったSNSのヤバすぎる闇

著者:コレコレ
刊行:宝島社

【拡散希望】未成年淫行/闇バイト/投資詐欺/マルチ商法/頂き女子/ネットいじめ/悪徳インフルエンサー……ドン引きするような「悪事・ゴシップ」のオンパレード!!!! YouTubeチャンネル登録者数155万人超「マホト児ポ法違反」の暴露で大注目日本トップクラスの視聴率を誇るライブ配信の王・コレコレが暴く無法地帯化するSNSのコワい実態【#コレゆき】SNSで話題のひろゆき氏との対談も収載!!

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炎のある暮らしを手作りで愉しむ「火とDIY」特集!『ドゥーパ!』2022年2月号(146号)発売

日本で唯一のDIY雑誌の最新号「ドゥーパ!2022年2月号」(発行:株式会社キャンプ)が1月8日に発売!

 

第1特集は炎のある暮らしを手に入れる「火とDIY」

2022年一発目のドゥーパ!は、炎と暮らしにまつわるDIYを大特集。囲炉裏暖炉、ペチカ風の蓄熱ストーブなんて唯一無二の暖房器具から、三層式石窯、ロケストコンロ、キャンプ用クッキングストーブなど人気の野外火遊び道具、さらには薪風呂や塩釜まで。DIYerたちの渾身の火遊び道具、火遊び場を紹介しつつ、そのライフスタイルの魅力を紹介します。

 

今回の編集部実践リポートは、自然石を円形に並べて作るシンプルなファイヤーピット作り。地面を掘り込んで作るタイプの大小2パターンの焚き火が楽しめるワイルドな二重サークルを創出する。特集の最後を飾るのは、世界を旅するライター&カメラマンコンビが紹介するファイヤープレイス紀行。ヨーロッパ、中東、南米、アジア、オセアニアを巡る火話をお楽しみください。

 

 

第2特集は「超実践的セルフビルドガイド」

自分で我が家を建てる、それは決して叶わない夢じゃない! 第2特集では、DIYで挑戦するセルフビルドの魅力と役立つ情報を徹底ガイド。土地の探し方・選び方から、気になる法律知識、図面の設計・提出、選ぶべき工法、実際に建てる過程やコツ、起こりがちなトラブルなど実用情報満載でお届けします。自分の住処を自分で作る自由と感動を、この手で。

 

バラエティあふれる連載にも注目!

車中泊や旅を楽しむための軽バンカスタム、トリマー&ルーター木工、さらにはレザーソーイングやグリーンウッドワークなど、さまざまなジャンルのもの作りの魅力を個性あふれる作家とともにお届けします。その他、自給自足の田舎暮らしエッセイなど読み物も充実。こちらもぜひお楽しみください!

 

<商品概要>
ドゥーパ!2022年2月号(No.146)
著者: ドゥーパ!編集部
定価: 1,100円(税込)
発売日: 2022年1月8日
判型: A4変形

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エビがプリプリ食感で美味しいのはなぜ? エビとカニはこんなにもすごかった!~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。お正月にエビやカニを食べたという人も多いのではないでしょうか? エビは長寿の象徴ですし、エビもカニも色が赤くて縁起がいいですよね。

 

昔、飲み会で「エビかカニ、一方がこの世からなくなるとしたらどちらを残すか」という話題で盛り上がった記憶があります。カニなんて年に何十回も食べるものではないですが、ズワイガニにケガニ、カニミソだってほかのものには替えられないほど美味しい。かといってエビがなくなったらエビフライ、エビチリが消滅、八宝菜も大幅な戦力ダウン……。みなさんはどちら派ですか?

エビ・カニを多彩な切り口から丸ごと紹介

さて、そんな話はさておき、今回紹介するのはエビはすごい カニもすごい 体のしくみ、行動から食文化まで』(矢野 勲・著/中公新書)。著者の矢野勲さんは、エビ・カニについて長年研究してきた福井県立大学名誉教授。著書に『エビ・カニの種苗生産』(共著・恒星社厚生閣)、『世界のエビ類養殖』(共著・緑書房)などがあります。

 

飼育していたモクズガニにジャンケンのチョキを示して振ったところ、遊び仲間と思われたのか背伸びや逆立ちといった変わった仕草を見せてくれるようになった、という本書のエピソードには心がなごみました。

 

エビの身が美味しい理由とは?

まず、第1章の「エビ・カニとはどのような生き物なのか?」では、それぞれの分類や体の構造が解説されます。カニの脚は10本、ではエビの脚は何本でしょう? 考えたこともなかったですが、実は、エビとカニの共通点のひとつが、エサをつかむ・歩くための「胸脚」が10本あるということ。本書ではエビとカニが甲殻類ではなく「十脚目」という用語でまとめられています。ただし、エビは泳ぐための「遊泳肢」がさらに腹部に5対あるのがカニとの違い。今度じっくり観察してみようと思いました。

 

そのエビ・カニの「胸脚」は再生能力があることも知られています。敵に襲われたときに脚を自分で切り捨てる「自切」を行って逃げるのですが、その後、切断面から「再生芽」という脚のもとができて脱皮後に生えてくるそうです。この仕組みは解明されておらず、矢野さんは「再生医療発展のためにも重要」と述べています。まだエビやカニから学ぶことはたくさんあるのですね。

 

第9章は食いしん坊お待ちかねの「エビ・カニの肉質の特徴と食文化」。私はエビチリのプリプリ食感に感動することがよくありますが(笑)、どうしてエビ肉はあれほど食感がいいのか。その秘密は……外敵から逃げようとして跳ねるために腹筋がよく発達しているからだとか。

 

一方カニは逃げるときに脚を使いますが、エビほどは発達しておらず、また筋線維束が平行に並んでいるため線維感があります。エビとカニで作られる料理が異なるのは、生態や体の構造にも関係していたんですね。

 

全9章にわたってエビとカニの秘密がぎっしり詰まった一冊。ハサミを勢いよく閉じてプラズマを発生させるテッポウエビ、「月夜のカニは身が少ない」という古来の言い伝えの真相、エビ・カニが爪先立って歩く理由……。ピンポイントな題材ながら、さまざまな方向性からエビとカニの魅力が語られ、最後まで飽きずに読めます。

 

食卓では身近なのに、その生態はあまり知られていないエビ・カニ。長年観察してきた研究者からカジュアルに話が聞けるのが新書の良さです。お正月にエビとカニに舌鼓を打ったという方はぜひ読んでみて下さい。

 

【書籍紹介】

エビはすごい カニもすごい 体のしくみ、行動から食文化まで

著者:矢野勲
発行:中央公論新社

みんなが大好きなエビとカニ。しかし、その体のしくみや行動は意外に知られていない。なぜエビ・カニは茹でると赤くなるのか。エビがプリプリの理由は? カニの横歩きの秘密は? エビ・カニとシャコやヤドカリとの違いとは? さらには何百㎞も渡りをするエビ、ハサミをパチンと閉じてプラズマを発生させ獲物を倒すエビ、毒を持つイソギンチャクをはさんで身を守るカニ等、多種多彩なエビ・カニのすごい生き方を紹介する。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

今年は食費を減らしたい……家計お助けレシピが115品も掲載された『あみんのラクする!おいしい節約おかず』があれば、我が家は無敵!

今年は食パンやポテトチップス、マヨネーズなど値上げが相次いでいるなんてニュースを耳にします。原材料の高騰が影響しているとのことですが、今後他の商品にも影響は出てきそうですよね。

 

そんなご時世、節約バレしない美味しいレシピを探している方にぴったりなのが、115レシピも掲載されている『あみんのラクする!おいしい節約おかず』(あみん・著/ワン・パブリッシング・刊)。これがあれば、1200円(税別)以上の節約ができること間違いなしな1冊です。

 

「家族が気づかない節約料理」とは?

この無敵な節約おかず本の著者であるあみんさんは、3人のお子さんを育てながら働くママ。レシピサイトNadiaのアーティストとしても活躍中で、Instagramのフォロワーはもうすぐ40万人に届くほど。掲載されている写真はどれも「これが節約おかずなの?」と思ってしまう華やかでキラキラ映えたものばかりなので、たくさんの方に支持されているのも納得です。

 

あみんさんは、家事に仕事に忙しい時間の中で料理しなければいけないので、時短はマストなのだとか。そして家族の将来のためにも「節約」は不可欠。短い時間で調理して、食費は節約して、美味しい料理を作る……それって本当に両立できるの!? と思ってしまうのですが、できちゃうんですよね〜♪

 

家族が気づかない節約料理”が私のモットーで、日々失敗しながらも工夫を重ね、おいしくてボリュームがあり、食欲をそそるビジュアルを心がけています。

(『あみんのラクする!おいしい節約おかず』より引用)

 

『あみんのラクする!おいしい節約おかず』には、115品の節約おかずが掲載されているのですが、使う調味料はどの家庭にもあるような調味料で、メインの食材もスーパーでお得に購入できるものばかりなのがうれしい! どんなレシピが掲載されているのかちょこっとご紹介しましょう。

 

鶏むね肉のアレンジがエグい!

100gが50円前後でお得に買える「鶏むね肉」ですが、パサつきが気になったり、いつも同じレシピになってしまったり、いまひとつ主役になりきれていないのですが、『あみんのラクする!おいしい節約おかず』を見てびっくり! こんなに活躍してくれるのですか? というくらい幅広いレシピが掲載されていました。

 

表紙でも使われている「鶏むね肉de甘辛ごまスティックチキン」は、削ぎ切りにしてから縦半分に切る方法なので、お子さんでも食べやすくお弁当のおかずにもぴったり!

 

他にも、「レンジで簡単ピリ辛よだれ鶏」や、包丁で細かく切ってからたたいた自家製とりひき肉で作る「にらだくさんの塩だれつくね」や「鶏むね肉de揚げないチキンナゲット」など、ヘルシーでお財布にも優しいレシピが満載。鶏むね肉のマンネリ化に悩んでいる方、映えるメインディシュにしたい方、月末の食費が足りなくて困っている方におすすめですよ。

 

「厚揚げ」と「豆腐」は、主菜になる!

「厚揚げ」や「豆腐」は、安いしボリュームもあるので常備しているご家庭も多いかもしれませんが、副菜止まりでなかなかメインディッシュにすることは難しい食材ですよね。しかし、あみんさんの手にかかれば、お肉やお魚に負けない美味しいレシピに代わってしまいます。

 

最近、大豆ミートも流行っているのでなんとなくイメージはできますが、「肉の代わりは無理っしょ」と思っていた私。とりあえず「肉よりコク旨豆腐そぼろ」を作ってみました。

 

 

ごはんやめんなど、何かにかけたり混ぜ込んだり、野菜で包んでも美味。多めに作って作りおきしておくと便利です。

(『あみんのラクする!おいしい節約おかず』より引用)

 

味付けは、しょうゆ・みりん・砂糖・おろし生姜なのですが、食感は肉っぽい! そのまま食べると豆腐っぽさは残っていますが、ご飯にかけて食べると鶏そぼろご飯を食べているような錯覚に……! 常備しておくとかなり便利&ヘルシーな一品になりました。

 

また厚揚げも、唐揚げにしたり、卵でとじてカツ煮のようにしたり、お肉のように使えるのだとか。今週は冷蔵庫にある食材だけでなんとか乗り切りたい! そんな方に、「豆腐」や「厚揚げ」を使ったレシピはおすすめです。

 

『あみんのラクする!おいしい節約おかず』は、他にも豚こま切肉のおかず、魚介のおかずも掲載されているので、これさえあれば「今夜どうしよう?」と悩むことも減るはず! スーパーで安い食材をば〜っと買ってきても、レシピ本を開けば絶対作れるレシピがあるので、キッチンに1冊置いておくとめちゃ便利なレシピ本だと思いました。調理のコツや買い物のポイントなども掲載されているので、気になる方はチェックしてみてくださいね♪

 

【書籍紹介】

あみんのラクする!おいしい節約おかず

著者:あみん
刊行:ワン・パブリッシング

SNSやレシピサイトNadiaで大人気の料理家・あみんさんの待望のレシピブック発売決定! 節約おかずとは思えないボリュームたっぷりのおかずが話題のあみんさん。初のレシピブックでは、お買い得食材で作るおかずを紹介。
どのレシピも身近な食材と調味料で作れるので、冷蔵庫にあるものだけで完成します! レシピごとにおいしく作るコツや、節約のポイントも細かく掲載。今日から役立つポイントがいっぱいです。

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火を使わない! 丸めない! 揚げない! 切らない! 洗い物しない!面倒なことを全部やめたご飯づくりしよう!

火を使わない! 丸めない! 揚げない! 切らない! 洗い物しない! そんなレシピがあれば、めちゃくちゃうれしいですよね。今回ご紹介する『松山絵美のカンタンなことしかやらないレシピ』(ワン・パブリッシング・刊)の著者である松山絵美さんは、4児のママさん。

 

365日休むことなく料理を作っていく中で、このカンタンなことしかやらないレシピができあがっていったそう。「まるめないハンバーグ」「揚げない大学いも」「包まない餃子」など目から鱗のレシピが満載! ちょっと疲れたなぁ〜という日に役立つ、松山さんの「カンタンなことしかやらないレシピ」をご紹介します。

火を「使わない」で作れる、絶品ミートソース

ミートソースを作ろうとすると、トマト缶を使って玉ねぎとひき肉とじっくり煮込んで30分くらい時間がかかりますよね。私もトマト缶を使ったミートソースをよく作るのですが、ガス台の周りもトマトソースが飛び散って汚れちゃいますし、フライパンもギトギトになってしまうので、フライパンを使わずに15分でできるならお試ししてみたい……!

 

材料は、合いびき肉500gに対して、玉ねぎは大1個。調味料もケチャップやコンソメなど、ご家庭にある調味料だけでできてしまいます。温めるだけのお手軽パスタソースでもいいですが、冷蔵庫にある調味料だけで火を使わずにできるなら、お子さんと一緒に作ることもできるし、何より汚れないのがうれしいですよね。

 

ラップをしているので、電子レンジ内も汚れないですし、洗い物も耐熱ボウルだけで済むのが助かる……!

 

ちなみに、この「ミートソース」にチリパウダーを加えればタコライスにも変身しちゃいます。冷蔵庫保存なら3日OKなので、年末年始の豪勢な料理にちょっと疲れた時には、火を使わないレシピでラクしちゃいましょう。

 

油揚げを裏返して使うと「揚げない」メンチカツができる

揚げものも、ガス台が汚れる&後片付けが面倒なもの。お惣菜を買ってくればいいですが、アツアツで出来立ての揚げ物を食べたい日もありますよね。

 

そんな日には「揚げない」レシピを参考にしちゃいましょう。ここには、「豚こまから揚げ」「簡単えびマヨ」「フィッシュ&チップス」と揚げないと絶対作れないでしょ! と思うものばかりなのですが、どれも揚げずに作れます。その中でも得におすすめなのが油揚げを使った「油揚げで和風メンチカツ」。

 

このレシピ、最初は油揚げを裏返さないで作っていましたが、裏返して包んだいなりずしを食べたときに「これだ!」とひらめきました。カリカリ感が子どもたちに人気で、具の長いもをよく食べてくれるのでうれしいです。

(『松山絵美のカンタンなことしかやらないレシピ』より引用)

 

そう! 油揚げに具材を入れて焼く、揚げる……というのはよく聞くレシピですが、なんとこの和風メンチカツは、油揚げを裏返しにして使います。少ない油でもカラッと衣のような食感を楽しめるようになるのだとか。

 

具材は、豚ひき肉と長いもだけ! 味付けは味噌と醤油なので、油揚げとの相性もよくお子さんのおかずから大人のおつまみにもぴったりな逸品です。

 

ラクできるなら、どんどんしちゃおう!

『松山絵美のカンタンなことしかやらないレシピ』には、なんと100品もの「やらないレシピ」が掲載されています。1品のおかずを「やらない」に切り替えるだけでも、毎日の料理時間は削減できるはず!

 

これ1冊でどれだけの自由な時間が手に入るのか……そんなことを考えてしまいました(笑)。包丁を使わずにキッチンハサミや“ちぎる”だけで作れるレシピや、ポリ袋を活用した洗い物をしないレシピ、春雨や切り干し大根を戻さないレシピ、さらに買い物をしないでも作れるレシピまで読むだけでも勉強になるものばかりです。

 

共働きのご夫婦や食べ盛りのお子さんがいるご家庭、料理時間がなかなか取れない方まで忙しいみなさんにもおすすめ。食べずには生きていけませんので、手間をかけずに美味しいご飯が食べられる『松山絵美のカンタンなことしかやらないレシピ』をぜひ参考にしてみてくださいね!

 

【書籍紹介】

松山絵美のカンタンなことしかやらないレシピ

著者:松山絵美
刊行:ワン・パブリッシング

料理のめんどうくさいこと、全部やめました! カンタンなことしか「やらない」のに喜ばれるレシピを100品紹介
すこしの手間をちょっとずつ省いていったら、料理の準備から片付けまで簡単に! 家族もよろこぶあの味をいつもよりもっとラクに作れます! 4児の母にして、レシピサイトNadiaやInstagramに投稿されたレシピが人気の松山絵美さん。6人家族の食事を準備するために「ほぼ一日中キッチンにいる」という生活の中で生まれた、簡単&絶品レシピを紹介します。

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満載の精密図解イラストで、陸・海・空の兵器の歴史・仕組み・運用方法を徹底解説! 兵器図鑑の決定版『イラストでわかる!兵器メカニズム図鑑』

イラストでわかる!兵器メカニズム図鑑』(坂本 明・著/ワン・パブリッシング・刊)は兵器イラスト図解の第一人者である著者が、多数のイラストを駆使し、兵器の歴史、仕組み、運用方法をわかりやすく紹介するオールカラー兵器図解本。大判なので迫力満点、かつ、イラストの細部までよくわかります。本書を読めば、現代の兵器について理解できるだけでなく、軍事や国際紛争のニュースを見る目も変わります!

 

ジェット戦闘機から火砲まで、主要9兵器を網羅!

本書では主要な兵器9種、①ジェット戦闘機、②垂直離着陸戦闘機、③攻撃ヘリコプター、③弾道ミサイル、④空母の艦上機発着艦システム、⑤揚陸艦艇、⑥水上戦闘艦、⑦戦車、⑧狙撃銃、⑨近現代火砲を扱っています。また巻頭には、米軍のジェット戦闘機FA-18E/Fスーパー・ホーネット、戦艦『大和』、ティルトローター機MV-22オスプレイなどの兵器の内部構造がわかる見開き大の特大透視図解イラストを掲載した「透視図解コレクション」のパートを設けています。

 

多彩なイラストで、それぞれの歴史、仕組み、運用方法がよくわかる!

本書には、兵器図解イラストの第一人者の著者ならではの、工夫を凝らしたイラストが満載です。先述の、内部構造がわかる透視図解イラストのほか、どうやって使うのか、あるいは敵とどうやって戦うのかがわかる運用図解イラスト、パイロットなどの装備がわかる軍装イラスト、概念をわかりやすくまとめたイラストなど、多彩な表現でわかりやすさを追求しています。

 

本書を読めば、現代の主要な兵器がどうやって今の形に至ったのか、それぞれの兵器はどのような構造をしていて、実際にはどうやって使うのかなど、主要な兵器について包括的に理解できます。またそれによって、軍事や国際紛争についてのニュースを見る目が変わるでしょう。

 

[商品概要]

イラストでわかる!兵器メカニズム図鑑

著者:坂本 明
定価:990円 (税込)

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岸田奈美さんのサイン会に行ったら、愛と勇気と柿をもらって帰ってきた話。 

世の中にはたくさんの天才がいるが、令和の現代におけるエッセイ界の天才といえば岸田奈美さんだろう。彼女のプロフィールを一言であらわすのは難しいが、「noteのエッセイがきっかけで、爆発的な人気を得た方」であり、「100文字程度で書ける話を2000文字で書く作家さんである。 

 

そんな彼女のサイン会に行ってきたので、ちょっと話を聞いてほしい。 

  

超有名人が自主サイン会とかやります?

本のサイン会に参加するなんて、大学時代卒論制作の真っ最中に、一人だけふらふらと大学を抜け出してはせ参じた加藤晴彦さんの写真集サイン会以来である。 

 

しかも、今回のサイン会は岸田奈美さんの自主サイン会。読んで字のごとく「自主サイン会」だ。47都道府県での開催を目標に、岸田さん自らが交通費や会場費などを手弁当で行っているというから驚く。 

 

岸田さんの著書を持ち込めばサインしてもらえるシステムで、冊数などの制限もない。本の購入が間に合わない人は、挨拶や記念撮影だけでもぜひお越しくださいとアナウンスされている。さらに言うと、郵送で岸田さんの本を送って送料さえ負担すれば、サインをして送り返してもらえる企画まで開催されている(第一弾は2021年12月末着分までで終了)。 

 

ここまでですでにお察しの方も多いだろうが、岸田奈美さんは愛の人なのである。私個人の推測に過ぎないが、おそらく間違ってはいないだろう。なんていうか、言動すべてが採算度外視で、「愛」という原動力のみで動いている人なのだ。 

 

「傘のさし方がわからない」とかあります? 

ちなみに今回私が購入した本は、岸田さんの最新作『傘のさし方がわからない』(小学館・刊)。タイトルだけを見ると、「傘のさし方がわからないってどういうこと?」と頭の中が疑問符でいっぱいになりがちだが、とんでもなく笑えて、とんでもなく感動する1冊だ。 

 

大病を患い、現在は車いす生活を送られているお母様と、生まれつき知的障害がある弟さん。そして、岸田さん。このご家族にまつわるエピソード数々は、本当に心が温まる素敵な話ばかりなのである。 

 

私が特に気に入っている話を紹介しようと思ったが、どれも傑作すぎてひとつに絞れない。自由が丘を歩いていたら「おいしいケーキ屋を知りませんか?」と30分で6人に尋ねられた話は何度読んでも抱腹絶倒だし、深夜に乗り込んだタクシーが謎の組織に追われていた話はその数奇な運命を羨ましくなるほどだ 

 

でもやっぱり第一話に収められている「全財産で外車を買った」が、今回を代表する話なのかもしれない。亡き父の想い出の車・ボルボを、車椅子の母が運転できるように改造するまでの話なのだが、いろんな人の愛情がぎゅうぎゅうに詰まっている。 

 

会場に入って1秒でご本人と対面とかあります 

そんな愛の人・岸田さんが大阪で自主サイン会をするというのだから、行かないという選択肢はない。ちょうど打ち合わせが何も入っていない平日の午後。子どもたちが学校から帰ってくるまでの間に行けるだろう。 

 

事前にリサーチしたところ30分程度は並びそうな感じだったし、どんな場所でサインしてもらえるかわからなかったので、ろくに対話のシミュレーションもせずに向かった。場所は、大阪松屋町の商店街にある高齢者外出介助の会「からほりさろん」というサロン 

 

Googleマップを見ながら見つけた建物に恐る恐る足を踏み入れた。すると、2m先に岸田さんがいた。私とちょうどすれ違いでひとり出て行きサロンのおじいちゃんおばあちゃん以外誰もいない。さっきまで大混雑していたが、ちょうど人が途切れたところだったらしい。待ち時間で話す内容をシミュレーションするはずだったのに、秒で本人とご対面になってしまった。 

 

 キラキラしたオーラをまとった岸田さんは、サインを書きながら、これまでに GetNavi webで書評コラムを書かせてもらったこと今回も書こうと思っていること、ペンネームでサインをしてほしいこと、写真も撮らせてほしいことを笑顔でうんうんと頷きながら聞いてくれた。書評コラムが公開されたら、ホームページかどこかしらに、なにかしらの方法で連絡してほしいとも。 

サインを書いている様子を無事写真に収め、急いで帰り支度をする私に、様子を見守ってくれていたおばあちゃんが「写真、撮りましょうか?」と声をかけてくれた。じつは、一緒に写真を撮ってもらいたかったけど、次に待っている人もいるし……と諦めかけていた私にとって、神の声だった。緊張しつつ、2ショットで写真を撮ってもらった。この写真があれば、今年も仕事を頑張れそうだ。 

 

こんなにも愛に溢れた人っています?  

帰り際、岸田さんがサインをした本と一緒に、机の上に置いてあった柿をスタバの紙袋に入れて、持たせてくれた。「さっき食べたけど、めちゃめちゃ美味しいんで!」と。恐縮しながらもありがたく受け取り、名残惜しいが会場を去った。 

 

時間にしておそらく数分の出来事だったが、岸田さんからも、サロンのおじいちゃんおばあちゃんからも、次に待っていた人からも、溢れんばかりの愛を受け取った。そして、明日からも頑張ろう!という勇気をもらった。やはり、岸田さんは愛の人だった。 

 

お土産として持って行った『GetNavi』と『月刊ムー』、それから私が気に入っている「幸せを運ぶお菓子」を大層喜んでくれた岸田さん。エッセイを読んでいると、ガラスのハートの持ち主なのだと感じることが多々ある。どうか、これからもたくさんのエッセイを私たちに届けてほしい。家に帰っていただいた柿は、愛情いっぱいの格別な美味しさだった。 

 

 

【書籍紹介】

 

傘のさし方がわからない

著者:岸田奈美
発行:小学館

異例の大反響!『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』から1年。ゲラゲラ笑えて、ときにしんみり、なんだか救われてしまう爆走エッセイ!!

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幸せになりたいなら、犬を飼うといい。『犬から聞いた素敵な話』

犬から聞いた素敵な話』(山口 花・著/小学館・刊)は、2012年に出版された書籍を加筆修正して、この秋に文庫化された1冊。著者の山口さんのデビュー作で、初版は5500部だったのが、どんどん売れて30万部を超えるベストセラーとなり、今また文庫本として再登場し注目を集めている。飼い主の視点で綴った7編、犬の視点で綴った7編、計14編の短編集。一編5分程で読めるので、通勤の電車の中、昼休み、あるいは寝る前などに読めば、ちょっと涙することはあっても癒されること間違いなしだ。

犬と一緒なら、お互いが幸せになれる

本書の解説を担当しているモデルでタレントの森泉さんは、愛犬家として有名で、犬の保護活動にも取り組んでいる。森さんは人と犬とのつながりがどれほど素晴らしく、幸福に満ちたものかを伝えてくれるのが、この本だと記している。

 

本の中のどのワンちゃんにも、作者の温かなまなざしが注がれているのが手に取るようにわかります。読み進めていくと、自分が飼っている、あるいは飼っていた犬たちと重なってくるのです。書かれているのは別の子の話なのに、「ああ、わかる!」「うちの子と同じだ」「そうそう、あのときはこうだったよね」と、いろいろな思い出もよみがえってきて、感動を覚えました。(中略)犬と暮らすなら、お互いハッピーじゃないと意味がありません。そんなハッピーがこの本にはたくさん詰まっています。

(『犬から聞いた素敵な話』解説から引用)

 

14匹の愛すべきワンちゃんたち

目次を紹介しよう。

 

Chapter 1 飼い主から愛犬へ

リン うちに来てくれて、本当にありがとう。

ライダー ずっと僕たちのなかで生きている。

ハナ あるがままを受け入れること。

サンデー 私は今、ひとりじゃない。

サージャリー さあ、行こう。

マックス ゆっくり、しあわせになろうね。

空知 あきらめないで信じること。

 

Chapter 2 愛犬から飼い主へ

チョコ もっともっと、泣いていいよ。

もふもふ 助けてくれて、ありがとう。

ハル 春になったら、またお庭に花を。

チビ よかったね……山本さん。

ユウ アタシ、忘れない。

デン またいつか、きっと……。

コタロウ しあわせになってね。

 

最初から順に読んでも、気になるワンちゃんの話から選んで読んでもいい。山口さんが丹念に取材を重ねた上で書き上げられた14の話は、どれも飼い主と犬の絆がテーマになっている。

 

犬は人を幸せにする唯一無二の存在

著者の山口さんは現在、ゴールデンレトリバーと暮らしていて、人生は”犬まみれ”だという。また、犬がどれだけ素晴らしい生き物かを痛感している日々だとも。本書の前書きにはこう書かれている。

 

それぞれの飼い主と愛犬は、出会いや生き方、暮らし方も十人十色。ひとり暮らしの老人と犬、認知症の家族を支える犬、わが子ときょうだいのように育つ犬……。それぞれ家族としての”キズナ”が築かれ、そのキズナが、ときに生きる気力や一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのです。

(『犬から聞いた素敵な話』から引用)

 

14の犬物語はどれもこれも素敵なのだが、私が特に気に入った作品を、飼い主視点から1編、愛犬視点から1編を紹介してみよう。

 

認知症患者に寄り添う柴犬の話

総合病院の外科医として仕事一筋に生きてきた母親が、定年になってはじめてしたことが、犬を飼うこと。それは母親の子どものころからの夢だったと言い、迷わず柴犬を飼い始めた。サージャリーと名付け、母親は大切に大切に育てていた。ところが、仕事をやめてまだ4年しか経っていないのに、母親に認知の症状がではじめてしまった。コンロの火の消し忘れがあれば、吠えて教える、徘徊がはじまってもサージャリーは母親に付き添って行く。どんなときも危険は愛犬が報せてくれた。それでも、認知症患者を抱える家族の負担はとても大きい。

 

ゆっくり歩いてきたサージャリーが、私に向き合うように座り込んだ。私をじっと見つめたあと、私の肩に頭をのせると、「クーン、クーン」と小さく鳴いた。言葉が話せるとしたら、サージャリーは私にこう伝えてくれていたと思う。「泣かないで……」サージャリーは母の介護のために、存在してくれていると思っていた。(中略)それは間違いだった。サージャリーは、母を看る私や父のためにも存在してくれていた。

(『犬から聞いた素敵な話』から引用)

 

そう、家族の一員となった犬は、ボスと決めたひとりだけではなく、家族ひとりひとりをよーく見ていて、それぞれに寄り添ってくれるとても愛情の深い生き物なのだ。

 

鎖に繋がれ犬を助けた小さな天使の話

犬の視点で描かれた7編で、私がいちばん感動したのがこの話だ。

 

夏の暑い日も、冬の寒い日も、ずっと鎖につながれたまま暮らしてきたボク。ボクの一生はこのまま終わってしまうのかな? ━そう思って生きてきた。小さい頃は家にいたけど、ある日、ボクは外の鎖につながれて、そのまま忘れ去られた……。

(『犬から聞いた素敵な話』から引用)

 

さらに、ボクは最悪の飼い主から、たたかれたり、蹴られたりの虐待も受けていたのだ。

 

が、ある日、隣に住む女の子のちいちゃんがやってきて、遊んでくれたり、食パンをくれたり、雨水ではなく新鮮なお水を水筒に入れて持ってきてくれたりするようになった。ちいちゃんは犬を”もふもふ”と呼ぶようになり毎日会いに来た。ところが、その犬はあまりに汚なかったため、ちいちゃんのママが病気がうつるのではと心配するようになる。

 

ちいちゃん……、ママの言う通りだよ。だってボク、本当にくさいし、汚れてる。

(『犬から聞いた素敵な話』から引用)

 

この犬の気持ちはあまりに悲しい。もともとは白かった毛は、茶色くガチガチに固まってしまっていたのだから。でも、この話はハッピーエンドだ。飼育放棄していた飼い主とちいちゃんの両親が話をつけ、”もふもふ”はお隣へ、そう、ちいちゃんの家に引っ越すことになったのだ。

 

本書を読めば、今いる愛犬がますます愛おしくなるだろうし、まだ、犬を飼ったことがない人は、よーし、今年こそ犬を迎えたいと思うだろう。

 

2022年、多くの人が犬たちに癒され、また一匹でも多くの犬が幸せな家族とめぐりあえることを願ってやまない。

 

【書籍紹介】

犬から聞いた素敵な話

著者:山口花
発行:小学館

この本に収められているのは、愛犬と飼い主の間に紡がれたかけがえのない物語ー。事故で脚を失くした犬と、生まれたばかりの赤ちゃんが一緒に成長していく家族の話。亡くなったおばあさんが遺していった「忘れ形見」の犬とおじいさんとが、寄り添って過ごした6年間の出来事。ずっと一人で生きてきた女性が、被災地に取り残された犬と暮らしはじめて知ったこと…。丹念な取材で拾い集めた実際のエピソードに基づく感動のストーリー。飼い主の視点で綴られた7編と、愛犬の視点で綴られた7編の計14編を収録。犬を愛するすべての人に贈る、感涙必至の短編集。

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腸内環境は地球と繋がっている!?——『腸と森の「土」を育てる』

健康でいたいなら、とにかく「腸」を大切にしなさい。幼いころからそう言われて育ちました。

 

製薬会社に勤める父は、昭和2年生まれの猛烈サラリーマンで、お酒は飲むわ、煙草は吸うわ、体に悪いことばかりしていました。けれども、激務に耐え抜き、楽しそうに仕事をするヒトでもありました。たまに家にいると、「いいか、体の真ん中にヘソがあるだろ。その周辺が人間の基本だから、腸を大事にしなくちゃ駄目だ」と説教しました。その時はあまり真面目に聞いていませんでしたが、『腸と森の「土」を育てる』(桐村里紗・著/光文社・刊)を読み、亡き父が遺した教訓は正しかったのだと再認識しているところです。

 

腸とは何か?

著者の桐村里紗は、臨床現場に身を置き、予防医学や生活習慣病、そして、在宅医療、終末医療まで、生活者に近い立場で診察を行ってきた医師です。しかし、元々、自身が幼いころから母親が病気によって人生を支配されていた経験から、「病気になる前に予防することに価値をおいてきた」と語っています。

 

そのため、たとえ重い病でなくても体の不調を訴え、悩んでいる人達に寄り添う気持ちが強いのでしょう。病気を治すだけではなく、病気にならないようなアドバイスを重視しています。患者にとって、自分の味方となってくれる医師は貴重です。病気になると、誰もが心身共に弱り、医師にその身をあずけるからです。桐村里紗はそうした訴えに耳を傾けているうち、腸内環境を整えることこそが、心身の不調を解決する上での土台となると考えるようになりました。

著者は、健康について語るとき、人間の腸と森の関係を重視し、印象的な表現をしています。

 

人は森であり、腹に土を内包しています。多様な微生物が食物を発酵させて作り出した栄養豊富な土です。腸は、その上に根を下ろし、血管という葉脈を使って栄養を運搬し、青々とした細胞という葉を茂らせます。(中略)人を診る医師である私は、腸内環境を観察し、土中環境との相関に歓喜します。

(『腸と森の「土」を育てる』より抜粋)

 

私たちは自らの体の中に、森で言えば「土」にあたる「腸」を抱えているというのです。土が汚染され衰えると森が枯れてしまうように、腸の働きが鈍ると、てきめんに体全体の活動が低下し、挙げ句の果てに、命に関わるほど深刻な停滞につながるリスクもあります。

 

腸内細菌によって得られる7つの効果

腸内細菌が活躍し、腸内環境が改善することで様々な効果が得られます。著者は腸内細菌が生み出す有機酸に注目し、次の7つの効果を示しています。

 

1 腸内環境を整える
2 便秘の改善
3 腸のバリア機能を改善する
4 免疫機能のバランスを整える
5 肥満や糖代謝の改善
6 脳機能の維持
7 発がん物質の抑制

 

医学知識のない私でも、腸が大事というのは、身をもって実感しています。私は決して子育てが上手な母親ではありませんでしたが、息子が幼いころ、「ポンポンが痛い」という訴えは見逃しませんでした。おなかが痛いという訴えのあとには、必ずと言っていいほど、何かの病気が続くと知っていたからです。風邪をひいたり、中耳炎になったり、高熱が出たりと、ふたつはセットになっているのではないかとさえ思っていました。

 

心にも影響する腸内環境

腸の状態が悪くなると、体だけではなく心までもが病んだ状態に陥るといいます。腸の調子が悪いから心を病むのか、心を病んでしまったから腸の具合も乱れるのか、そのどちらが先かは私にはわかりません。けれども、両者の間に何らかのつながりがあることは間違いがないでしょう。

 

『腸と森の「土」を育てる』には、実に多くの場面が取り上げられ、人間を苦しめる病気に対して、私たちがどうやって対処すべきか、細かく言及しています。人は森であるという観点から、広大な森のひとつひとつにあたる部分が専門的に検証されます。それだけに、見慣れない単語がたくさん登場し、時に混乱し、難しいと感じることもあるかもしれません。けれども、そんなときは自分に必要となる部分を選び、丁寧に読むと、ああ、そうだったのかという納得が得られます。

 

たとえば、私はうつ病という病気にとりわけ興味があります。周囲にうつ病に苦しむ人が多いからです。そこで、うつ病と腸内細菌との関係について書かれた部分にとりわけ引き寄せられました。

 

2019年にベルギーで、これまでで最大規模となる1000人以上を対象に行われた、うつ病と腸内細菌との関連性についての研究結果によると、うつ病と診断された人の腸内には、恒常的にコプロコッカス属とディアリスター属の2種類の腸内細菌の数が少ないことが分かりました。

(『腸と森の「土」を育てる』より抜粋)

 

コプロコッカス属は、長寿菌としても有名な腸内細菌だそうです。うつ病と腸内細菌の間には、何らかの結びつきがあるようです。ですから、たとえとくに腹部に不調を感じていなくても、食生活を見直し、できる限り改善して腸の状態を整えることが大切なのではないでしょうか。

 

そういえば、以前、うつ病に苦しんでいる友達からよく相談をもちかけられました。彼女は病院にも通い、投薬も受けていましたが、なかなかよくならず、私に電話をかけてきて、しょっちゅうこう訴えました。「しんどくて人に会いたくないの。それで、一日中、布団をかぶって寝ているから、運動不足なのよ。便秘がひどくて、ますます憂鬱になり、死にたくなる」と。便秘が病気の原因だと特定することはできないかもしれませんが、もし、あの時心と腸の関係性を知っていたら、もう少しましなアドバイスができたかもしれません。

 

では、何をすべきか

では、腸内環境を良い状態に保つため、私たちは何を食べたらよいのでしょう。毎日、体の中に入れるものなのに、私はこれまで食事に無頓着でした。特に、息子が成長して独立し、夫が数年にわたる単身赴任を始めると、私は自分のためだけに食事の支度をするのが面倒になりました。インスタント食品だけですませた日もあります。体を壊さずにすんだのは、週末は夫が帰ってくるので、そのときはきちんとご飯を作り、平日はその残り物を食べていたからかもしれません。一方で、夫は病気になり心身のバランスも崩してしまいました。

 

ところが、このコロナ禍で、ここ2年間はステイホーム生活のもと、家庭で食事をする毎日が続いています。この際、食生活を見直し、腸内細菌を元気にしてくれる食品を取るようにしたいと決心したところです。

 

『腸と森の「土」を育てる』には、日常に取り入れやすい様々な食品の選択について書かれています。そのうちの1つが、発酵食品です。腸と自然をつなぐ発酵食品として、次の7つが挙げられています。

 

1 味噌や塩麹など発酵調味料を活用する
2 しっかり発酵した漬け物を少量ずつ
3 乳製品より代替ミルクヨーグルトの方が環境負荷が低い
4 チーズは、プロセスチーズよりナチュラルチーズを
5 (牛乳を選ぶ場合)ジャージー種やブラウンスイス種はカゼインによる懸念が少ない
6 キムチやすぐき漬けの漬け物に含まれる乳酸菌は、生きて腸までとどきやすい
7 納豆は腸内細菌を元気づける

 

これら7つを積極的に食べようと思ったものの、同時に気づきました。私はこの7つの食品が好物で、既に毎日、食べていたのです。おそらく、腸は大事だと言い続けた父の影響でしょう。これからも亡き父の教えに感謝しながら、好物である味噌汁や納豆を食べ、さらに、「人は森であり、腸に「土」を内包している」の言葉を新しい気づきの呪文として唱えていこうと思います。

 

【書籍紹介】

 

腸と森の「土」を育てる

著者:桐村里紗
発行:光文社

人にとって最も身近な自然環境は「腸内環境」であり、そこは人が根を下ろす「土」にあたる。土壌に暮らす微生物が、食べ物と共に腸内に移住したものが腸内細菌の起源であり、人は今でも「食べる」ことを通して、外的な環境と接続しているのだ。日々の食べ物が腸内の土作りの材料になり、消化や腸内細菌による発酵を通じ栄養豊かな土となる。それはまるで、森の落ち葉や動物の死骸から腐植土が作られるシステムと同じである。本書では近年明らかになっている腸内環境と心身の不調との関連について、最新情報を伝えつつ、人と地球の土を同時に改良する食べ物の選択の重要性と具体的方法を「プラネタリーヘルス」の観点から説く。近代農法や畜産が環境に与える甚大な影響と、それを解決する農業や食の未来も伝える。

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埋もれた芸術家、渡辺省亭や小村雪岱はどうして美術史から消えたのか?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。資本主義の世の中、売れた物が正義というのはよく聞く話ですよね。とはいえ、小説や映画、音楽といった芸術方面は、売れていると逆に大衆向けと思われて、作品という観点では評価されにくくなる傾向があるように思います。

 

絵画でも商業的な分野で売れっ子になったことで画壇と距離ができ、美術史的な文脈でも研究対象とならず、結果として後世に名前が残っていないという画家たちがいるそうです。

歴史に埋もれた画家からたどる日本美術

商業美術家の逆襲 もうひとつの日本美術史』(山下 裕二・著/NHK出版新書)は、美術のメインストリームでは取り上げられてこなかった「商業美術家」たちをカラーの図版とともに紹介した新書。

 

著者は美術史家で明治学院大学教授の山下 裕二さん。日本美術応援団団長として、講演、展覧会プロデュースなど多方面に活躍しています。『日本美術の底力』(NHK出版新書)、『未来の国宝・MY国宝』(小学館)など著書多数。今回の新書の切り口も新鮮なものになっています。

ドガをうならせた名手はなぜ忘れられた?

第1章は明治から大正にかけて活躍した花鳥画の名手・渡辺省亭(わたなべせいてい)。日本画家として初めて渡欧してエドガー・ドガなど印象派の画家たちと交流し、優雅な画風で彼らを驚かせたそうです。しかし、現在ではその名は忘れられています。

 

私も本書を読んで初めて知りましたが、柔らかく繊細な筆遣いで描かれた「牡丹に蝶の図」(1893)の儚い風情に魅了されました。小説の口絵として使われた「奴(やっこ)の小万」の多色摺(たしょくずり)木版画も、座敷の障子に女性の影を薄く浮かび上がらせる洗練されたデザイン。なぜここまでの人物が画壇で無視されたのか……。その事情も興味深いものがありました。

 

第3章は、大正から昭和初期の画家・小村雪岱(こむらせったい)。装幀、挿絵から舞台美術まで手がけた雪岱は、現代でいうならアートディレクター。本書の表紙にもなっている小説『おせん』の挿絵「おせん 雨」は、雨の降るなか花々のように開かれる傘とちらりとのぞく布をかぶった女……という大胆な構図。和の情緒とモダンな感覚が融合し、モノクロながら色づいて見える一枚です。小説の挿絵のほか泉鏡花選集の装幀など、そのセンスは並外れたものがあったといいます。彼が忘れられた理由は、戦争という悲しい時代によるものだったとか……。

 

本書は、渡辺省亭と小村雪岱を中心に“江戸の粋”の系譜を見る「商業美術の到達点」、浮世絵に始まる多色摺木版画の歴史を紹介する「浮世絵から新版画まで」、グラフィックデザインとマンガを軸にした流れをたどる「戦後の商業美術へ」と3つのパートに分かれ、それぞれ商業美術で活躍するも今では忘れられた芸術家たちを取り上げています。

 

“商業”とは言っても矜持を持って己の画風を築いた画家たちのエピソードはどれも印象的。71点もの図版がカラーで掲載されていて、見ているだけでも飽きません。商業と芸術の狭間で消えていってしまうには、あまりにも惜しい作品ばかりでした。

 

【書籍紹介】

商業美術家の逆襲  もうひとつの日本美術史

著者:山下 裕二
発行:NHK出版

破格の作家たちを軸に、浮世絵からマンガまでを一望する新・日本美術史! 浮世絵から新版画、そしてイラストレーション、マンガまで。商業美術こそが、日本美術の伝統を継承し、次代の表現を生み出す原動力となってきた。河鍋暁斎、小村雪岱、渡辺省亭、横尾忠則、つげ義春……。従来の日本美術史の枠をはみ出した破格の才能をオールカラーで紹介するとともに、彼らが近年注目を集める理由を明らかにする。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

哲学からジェンダー問題、名作マンガから大河の予習まで—— 歴史小説家が選ぶ2022年スタートダッシュのための5冊

毎日Twitterで読んだ本の短評をあげ続け、読書量は年間1000冊を超える、新進の歴史小説家・谷津矢車さん。2022年のお正月の今回は、スタートダッシュを切るための5冊を選んでもらいました。硬軟取り合わせた5作品の中から気になったものを、この正月休みに手に取ってみてはいかがでしょうか?

 

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いつもこの選書をお読みくださっている皆様、今年もよろしくお願いいたします。本年のご多幸とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

 

と、正月らしいことを書き連ねてみたものの、作家に盆暮れ正月はないのである。作家業は精神労働である反面、文章を紡ぐ肉体労働者であり、日々の鍛錬が欠かせない。従い、多少暇な日があっても、なんらかの書き物はしているし、もし執筆関係の業務がなかったとしたら、次回作の下準備や勉強、企画書の作成に追われることになる。かく言うわたしも、元日であってもいつも通りに目覚め、いつもとちょっと違う朝ご飯(餅入りお雑煮)を食べた後はパソコン、あるいは仕事机に向かい、ああでもないこうでもないと頭をひねっている。

 

まあ、これは娯楽産業に身を置く人間あるあるというもの。皆様におかれましては、是非とものんびり羽を伸ばしていただきつつ、箱根駅伝に熱くなっていただきたい。

 

さて、新年というと、やはり仕切り直しの雰囲気がある。皆さんも「今年の抱負は?」と誰かに聞かれたり、あるいは問い質したりしているかもしれない。人間、区切りをつけ、そこに向かって走ったほうが、案外頑張れる生き物である。

 

というわけで、新年、スタートダッシュを切るための5冊、紹介していこう。

 

男の望む物語をねじ曲げた女の物語

まず1冊目は小説から。らんたん』(柚木麻子・著/小学館・刊)である。のちに恵泉女学園を設立した女性教育者、河合道を主人公にした歴史小説作品である……と説明すると、地味そう、という感想を持つ方もいらっしゃるかもしれないがさにあらず。慶応、明治、大正、昭和の四時代に跨がり活躍した河合道の周りには、数多くの歴史上の人物が登場し、彼女の前に現われる。有名どころだけ列挙するだけでも、津田梅子、山川捨松(のちの大山巌夫人)、有島武郎、平塚らいてう、マッカーサー……。戦前日本社会の〝狭さ〟ゆえに存在する人間関係の華やかさも本書の楽しさの一つである。

 

本作には様々な要素がちりばめられている。だが、この選書においては、河合道という女性が選び取った戦いについて述べておきたい。河合道は〝女が非業の死を遂げねば絵にならぬ〟という、明治期の文豪たちの物語に怒りを表明する。そして彼女は自らの理想のために戦い続け、見事なまでに非業の死から背を向ける。そう、本作は自らの生き様でもって男の望む物語をねじ曲げた女の物語なのである。

 

男、女に限らず、人は〝こうあるべき〟という規範に縛られ生きている。もちろん、それらの規範は個人や社会を守る側面もある。しかし、その規範が自分にとって限りなく邪魔なものであったり、不都合だったときにどうしたらいいのか――。本書は、そんな事態に直面した際のヒントを与えてくれるだろう。

 

アウティングがなぜ問題なのかを説く1冊

2冊目はあいつゲイだって』(松岡宗嗣・著/柏書房・刊)である。本書はアウティングをテーマにした一般向け書籍である。

 

アウティングってなに? と呟いたあなたにこそ読んでいただきたい。

 

本書に成り代わり、意味をお話ししよう。アウティングとは、ある人物の公にしていない性自認や性的志向について、本人の了解なしに公開することを指す。と書くと、「何が問題なの?」とお思いの方もいるだろう。性的志向はともかく、性自認について、他人に明かすことって悪いことなの? と。

 

本書はアウティングがなぜ問題なのか、それによって何が起こるのかを実例を交えつつ紹介している。きっと、こうした疑問を持たれた方にも、一定の答えを出してくれることだろう。

 

わたしたちは普段、社会の中で生きている。だからこそ、社会から離れて羽を伸ばしている正月休みの今、自分の振る舞いについて考え直す時間を持つのも大事だと思うのだが、いかがだろうか。

 

能力主義の正義を解体する

さて、3冊目に行こう。実力も運のうち 能力主義は正義か?』(マイケル・サンデル ・著/早川書房・刊)である。本書は『これから正義の話をしよう』のベストセラーで知られる著者の最新作である。

 

本書は世界、ことに旧西側諸国の間では美徳とすらされる能力主義に切り込んでいる。なぜ能力主義が尊ばれるのか。それは、皆が頑張れば身につくはずである能力に高低が生まれるのは、そのまま個々人の努力の差であるという建前が存在するからである。しかし本書はその建前を次々に分解してゆく。

 

本書を読んで、怒る人も多いと思う。この著者は、自分が努力して積み上げたものを否定するのか、と。だが、それは違う。きっと、そうやって怒りを表明するあなたは、誰よりも努力してきた人なのだ。だからこそ、少し冷静に本書に示されている光景に目を向けて欲しい。努力というのは、努力が報われる場にいるからこそ積み上げることができるものなのかもしれない。そう気づいたとき、また違った世界が見えてくるかもしれない。

 

新作アニメ始動にあわせて読み返す名作コミック

さて、3冊、かなりシリアスな紹介が続いてしまったので、少しのんびりとした方向に引き戻そう。次は漫画から。るろうに剣心』(和月伸宏・著/集英社・刊)である。本作は明治11年、東京に流浪れやってきた優男が幕末の京都を震撼させた伝説の人斬りだった……、という、導入から始まる明治剣客浪漫譚である。

 

と、なぜ今この作品を? と首を傾げる方も多いかもしれない。本作、わたしは小学6年生くらいのころ読んでいた記憶があるので、おおよそ20年以上前の作品である。

 

なのだが。

 

なんと、まさかのアニメ化計画が始動したのである。

 

まさかの、とは書いたが、ここのところ、わたしたちの世代を狙い撃ちにしたようなアニメ化が次々に実現しているのを皆さんもご存知かもしれない。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズや『ダイの大冒険』完全アニメ化などがその代表作であろう。上記2作は既にかなり進行しており、原作未読の方が追いかけるのは大変かもしれない。だが、『るろうに剣心』は全28巻、連載作品としては極めて追いやすい。アニメ化発表を機に先回りして読んでおけば、アニメ版をより深く楽しむことができるだろう。

 

大河の前に読んでおくべきガイドブック

年の始まりといえば、そう、大河ドラマである。今年は三谷幸喜脚本の鎌倉時代作品『鎌倉殿の13人』だが、鎌倉時代なんて何があったか知らない! という人がほとんどであろう。そんな貴方にお勧めしたいのが最後にご紹介する北条義時と鎌倉幕府がよくわかる本』 (歴史の謎を探る会 ・編/河出書房新社) である。

 

現代は本当に素晴らしい世の中で、本職の学者の著した論文や、実際の史料まで閲覧することができる。逆に言えば情報が氾濫しすぎており、何から手に取っていいのかわからない、という事態が出来しているように思う。

 

その点本作は優れたガイドブックとして機能している1冊である。名前の通り、『鎌倉殿の13人』の主人公である北条義時と、その周囲、彼の生きた時代と事件を平易に解説した書籍となっている。本書を片手に大河ドラマを見るも良し、本書の内容を理解したのち、もう少し難しい本を手に取るも良し(参考文献も充実しているのでそこを辿るのもいいだろう)、とまさに鎌倉時代初期の入り口にもってこいである。

 

ろくに休みのない、メリハリに欠ける仕事をしておいて何だが、やはり正月になると晴れがましい気持ちにもなるものである。しかし、わたしは今年の抱負をここで書くような愚は犯さない。そんなこと書こうものなら、今年の年末、これをお読みの方に答え合わせされてしまいかねない。そうした芽は最初から摘んでおくに限る。

 

そんなわけで、わたしの抱負はとりあえず脇に置き、皆さんのご多幸とご健康を改めてお祈り申し上げる次第である。

 

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【プロフィール】

谷津矢車(やつ・やぐるま)

1986年東京都生まれ。2012年「蒲生の記」で歴史群像大賞優秀賞受賞。2013年『洛中洛外画狂伝狩野永徳』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』にて歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。最新刊は『北斗の邦へ跳べ』(角川春樹事務所)

 

自分の「天職」を知るための『シグナル』の見つけ方『SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法』

 最近は、才能探しをする人が増えています。自分の才能や天職は何だろうと考えてもうまい結論が出ず、悩んで占い師の元を訪れる人も。私たちはどのようにして自分の才能を見つけ、伸ばしていくべきなのでしょうか。 

恋愛相談をしない占い客が急増 

おひとりさまライフの増加により、占い師への依頼内容も大きな変化を迎えているそうです。今までは、ほとんどの人が恋愛の相談を持ちかけていたのに、近ごろは「恋愛運はいいです」と言われてしまうのです。恋愛運のニーズは半減し、その代わりに仕事運を望む人が急増しているのだとか。 

 

なかでも「自分の天職は何か教えてほしい」という人がかなり多いそうです。自分にしかできない自分ならではの仕事をしたい、そしてできれば才能を生かして起業したい、と考える人が増えているのです。けれど自分の才能を見つけることができず、困って占い師のもとを訪れているのだとか。 

 

シグナルという存在 

天職を知るには、占い師に頼るだけでなく、「シグナル」と上手に付き合うという方法もあるようです。シグナルとは、周囲の人が自分に対して発する評価や社会での一般概念を指します。 

 

SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法』(チョン・ジュヨン著/文響社・刊)によると、シグナルには良いシグナルと悪いシグナルがあるのだとか。悪いシグナルのことを作者は「ノイズ」と言い、ノイズに気を取られず、自分の信じる道を進むことを勧めています。 

 

シグナルが才能の開花を助ける 

本書にはノイズに惑わされずに成功した事例がたくさん出てきます。その中には、先生に褒められるという良いシグナルを得て頑張るようになった人の話もあります。天職について占い師に相談する人も、かつて誰かに褒められたことがある自分の良いところを思い出すと、大きなヒントになるのではないでしょうか。 

 

ノイズに気を取られる人は、自分の短所にばかりに目が行ってしまい、長所を見失ってしまいがちになるのかもしれません。自己啓発系の本では「自分の長所を書き出してみる」という行為を勧めるものが少なくありません。自分の良さを再確認することで精神的に安定し、メンタルも強くなり、ちょっとやそっとのノイズを浴びても動じなくなるからなのでしょう。 

 

批判に打ち勝つコツとは  

近ごろオンライン上での誹謗中傷行為が問題になっていますが、それは明らかに「ノイズ(悪いシグナル)」です。本の中にも批判に心が折れ、萎縮し、夢に向かってうまく歩めなくなった人の事例が出てきます。 

 

批判の中には建設的なものもあるので、それには耳を傾けたとしても、頭ごなしに否定したり、人を傷つけるような言葉を投げつけているものについては、気にしてはいけないそうです。新しいものに挑むときには反対意見はつきものですが、本気で夢に挑むためには余計なことを気にするヒマすらないだろうし、いちいち思考停止していたら、完成も遅れてしまいます。 

 

マドンナもシグナルに従った 

本書には歌手のマドンナの事例も載っています。彼女は「ライク・ア・ヴァージン」という曲に心底惚れ込み、周囲がいい反応を見せなくても、どうしてもこの曲を出したい、この曲は価値がある、と主張し続けました。彼女が周囲の負のシグナルにも負けず、自分がやりたいことを、彼女なりに工夫しながら貫き通したからこそあの大ヒットが生まれたのです。 

 

世の中にある大傑作や大発見と言われる成果の中には、ノイズをシャットダウンし、一心不乱に長年集中して取り組んだからこそ得られたものもあるようです。私たちは雑音から離れ、本当にやりたいことに没頭する勇気を持つ必要があるのかもしれません。 

 

【書籍紹介】

SIGNAL 10億分の1の自分の才能を見つけ出す方法

著者:チョン・ジュヨン
刊行:文響社

世界トップ1%に共通する資質の正体とは? 古今東西のあらゆる事例から、私たちが本当に集中すべき「シグナル」が見えてくる! 約10年間の難読症を克服したベストセラー作家が贈る 「周りのノイズに惑わされず、自分の才能を開花させる」ための必読書!

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どうしたら「脱プラ」できる? 『プラスチック・フリー生活』が教えてくれる6つのアクションとは?

SDGsという言葉はここ数年で一気に広がり、私たちの生活の中にも持続可能な社会への意識が高まってきました。 

 

レジ袋じゃなくマイバックを持ち歩くようになった、コンビニでストローを貰わなくなった、ペットボトルじゃなくマイボトルを持ち歩くようになったなど、日頃から心がけていても、これ以上どうしたらいいのかな? と思ってしまうことがしばしば。そんなときに見つけたのが『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』でした。 

 

カナダ在住のシャンタル・プラモンドン さんとジェイ・シンハさん夫婦の共著を2019年に翻訳出版したもので、あまりの面白さに夢中になって一気読み! 今回は、誰もが今からできる「脱プラ」についてご紹介します。 

簡単で効果が高い6つのアクションとは? 

令和2年に環境省が発表したデータによると、日本人1人が1日あたりに出すゴミの量は918グラム。意外と多いですよね。 

 

『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』には、そんな「使い捨てプラスチック文化」が浸透した現代でも、6つのアクションをすることで、場合によっては生活の中の8割近くのプラスチックを減らせると書かれてありました。一体どんなことなのでしょうか? 

 

レジ袋 → マイバッグを持ち歩く 

ペットボトル → マイボトルを持ち歩く 

プラスチックコップ&ふた(およびプラスチックコーティングされた紙コップ) → マイカップを持ち歩く 

プラスチック製の食品容器 → マイ容器を持ち歩く 

プラスチック製のナイフ・スプーン・フォーク → 非プラスチック製のものを持ち歩く 

プラスチック製ストロー → マイストローを持ち歩く 

(『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』より引用) 

 

プラスチック製品は基本的に使い捨てのものが多いため、一度使ったものはゴミとして処分されてしまいます。すべてのプラスチック製品が悪だ! ということではなく、たった1回のためだけに使い捨てられている商品がこんなにもあるんだと知り、理解することも大切だと感じます。 

 

よ〜し、今日から脱プラ生活だ! と一気に6つをやろうとすると、コンビニやスーパーで食べ物や日用品が買えなくなりますし、本の中でも「一度には全てをやろうとするのは危険」とのことなので、まずは自分ができそうなものを選んで、取り組んでみるのがおすすめです。 

 

「プラスチック度チェック」で驚き! 

私はそんなにプラスチック使っていないよ〜なんて思っていたのですが、この本の中で紹介されている自分の家のプラスチック度チェックをして、こんなにもプラスチックに囲まれていたか! と、驚きました。 

 

チェックの方法はとっても簡単で、2週間ほどかけて家の中にあるプラスチック製品を徹底的に調べ上げるだけ。今日はリビング、明日はキッチンの棚のようにメモを片手に見つけ次第プラスチック製品を書き出します。 

 

我が家も軽い気持ちで調べてみたところ、トイレと浴室だけでも50以上のプラスチック製品が! 容器のほとんどがプラスチックで、歯ブラシやゴミ箱など、そういえばこれもプラスチックだと思うものも沢山見つけることができました。 

 

実際に調べていくことで、買い物をする際の選ぶ基準が変わるかも? と感じました。例えば、台所にある調味料のほとんどがプラ容器だったので、「醤油や油は、瓶入りのものにしようかな」とか、エコバックも布製のものにしよう、詰め替えを定番にしよう、など自分のできる範囲で行動できるはず。『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』には、身近に使われているプラスチックがどんなのものなのかも丁寧に解説されています。 

 

プラスチックゼロ生活は無理だから、できる範囲でOK 

私たちの身近には、使い捨てられているプラスチック製品がとても多い事実を知ってもらえれば……と思い、今回この本をご紹介しました。脱プラ=プラスチックゼロの生活をイメージされますが、0100ではなく、今まで100だったプラスチック使い捨ての習慣を85にするだけでも十分、少しずつで全然良いと感じます。 

 

ただし、ひとつ忘れてはならないのは、プラスチック・フリーの道のりはひとりひとり違うものになるということ。「なるほど!」と腑に落ちる瞬間は、人ぞれぞれまったく異なるタイミングでやってくる。それを無視して批判したり、議論をふっかけたりしても、助けにはならない。逆に相手は、面目を失うまいと意固地になってしまうかもしれない。 

(『プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命』より引用) 

 

まずはこの本を読んでみる、家の中のプラスチックを調べてみる、それだけでも大きな変化になるはず! できることからコツコツと脱プラ生活、楽しんでみてくださいね! 

 

【書籍紹介】

プラスチック・フリー生活

著者:シャンタル・プラモンドン (著), ジェイ・シンハ (著), 服部 雄一郎  (翻訳) 
刊行:NHK出版 

プラスチック汚染の問題は、私たちの健康にも深く関わっている。使用中に漏れ出す化学物質の影響とは? 毎日、使い続けても、本当に安全なのか? 15種類のプラスチックを、添加されている化学物質とともに徹底解説。プラスチックの日用品を8割近く減らす簡単な6つのアクションのほか、さまざまな代替品についても紹介する“プラスチック・フリー生活”スタートガイドの決定版!

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2022年。オジサンが気にすべきは「清潔感」だけである『大人男子の「超」清潔感ハック』

今年もあと少し。皆さんいかがお過ごしでしょうか? 実は筆者、このタイミングで男性美容系のYouTube動画にハマっています。

 

それなり以上の努力

60歳目前の筆者にとって、“普通の見た目”でいることはそれなり以上の努力が必要になっている。男性用美容液を顔に叩き込んで染み込ませたり、とんでもないところにとんでもない毛が生えていないかチェックしたり……。

 

これ以上あちこちが劣化していくなんて、とても受け容れられない。自分で満足できるまでシュッとなれないことは、かなり前からわかっている。ただ、ほんの少しだけでもいいから劣化を遅らせたいのだ。

 

メンズビューティーハックのキーワード

ビューティーハックに本気で取り組んでいく気持ちは固まっている。取るべき方法論は動画だけでいいのか? 理論から入るほうがものごとを受け容れやすい年齢なので、字面から浸透させることができるテキストも欲しい。

 

そこで見つけたのが『大人男子の「超」清潔感ハック』(宮永えいと・著/KADOKAWA・刊)だ。男子のビューティーハックにおいて、“清潔感”という言葉でくくられる要素はかなり多いようだ。そこに特化することを意識していけば、全体的な仕上がりもよりよくなるんじゃないだろうか。

 

見た目と心はつながっている

著者の宮永さんはフリーの美容師で、YouTuberとしても知名度が高い。メンズコスメブランドも立ち上げ、「大人男子の身だしなみ」というテーマを追究し続けている。気軽に手に取ったこの本を読んで、宮永さん特有の美意識が想像を超える深いところから生まれたことを知った。

 

小学生のころからトゥレット症候群を患っていた宮永さんは、さまざまな症状に悩まされながら思春期を過ごし、人に見られることが大嫌いになってしまった。ひとりで過ごす時間が長くなり、インターネットの掲示板を介したコミュニケーションが一番の趣味になった。お気に入りのコーデやヘアスタイルを発信してダメ出しをされたり、あるいは褒められたりする過程を通じて、今の仕事の基礎が出来上がっていった。啓示の瞬間が訪れたのは、15人ほどの規模のオフ会に参加した日だった。

 

その日は楽しすぎて不安だったことも忘れ、心なしか心も高く、風も気持ちよく感じました。それ以上に、帰宅してから驚いたのですが、なんとその日はいつもの症状が出なかったのです。嬉しくてたまりませんでした。

『大人男子の「超」清潔感ハック』より引用

 

こうして「見た目と心はつながっている」ことに気づき、長年悩まされていた病まで克服してしまう。

 

清潔感を意識する

美容師として働きながら特性を磨いていった宮永さんは独自の美容理論を確立し、「見た目を変えるとは清潔感を意識すること」という結論に至った。こうしたプロセスの一つひとつがつまびらかにされていく本書が、表面的でモノトーンなハウツー本ではないことを明確に示しておきたい。

 

揺るぎないアイデンティティに基づきながら、清潔感をテーマに「スキンケア」「メンズメイク」「ヘアスタイル」「ファッション」といった各相が語られていく。以下に、この本のコアを感じさせる一文を紹介しておく。

 

年齢を重ねるにつれて、「見ため」を気にする人が減り、それに伴って「清潔感」までも気にしない人が増えていると感じます。けれど、大人になったからこそ、「清潔感」を意識した見た目に変えることが重要です。

『大人男子の「超」清潔感ハック』より引用

 

そして迎える自己開示

章立てを見ておこう。

 

Chapter1:大人男子の身だしなみは「清潔感」で決まる

Chapter2:誰からも愛される「身だしなみチェック」

Chapter3:アラサーから始める正しい「スキンケア」

Chapter4:見ためのマイナスを補正する自然派「メンズメイク」

Chapter5:20代からの「ヘアスタイル」をアップデートする

Chapter6:清潔感が高まる「ファッション」の選び方

 

見ためと心をつなげるということについて、以下の文章を挙げておきたい。

 

僕が本書でお伝えしている「見ためをよくする」ということは、何も顔や身長、もともと持っている要素を変えることではありません。スキンケアからファッションまでテクニカルはいかようにもなります。そのために自分と向き合い、自分を知り、どれくらい実行に移せるか。やるか。やらないか。それだけで人生は大きく変わるでしょう。まず、あなたからあなたに向けて、自己開示をしてみましょう。

『大人男子の「超」清潔感ハック』より引用

 

字面を通して体に沁み込ませていく、読む美容液みたいな本なのかもしれない。YouTubeチャンネルと連動させれば、意識も腕もさらに上がっていくだろう。来年からは、マインドもボディも“超清潔”に暮らしていきたい。

 

読者のみなさま、今年もありがとうございました。よいお年をお迎えください。

 

【書籍紹介】

大人男子の「超」清潔感ハック

著者:宮永えいと
刊行:KADOKAWA

スキンケア、メンズメイク、ヘアスタイル、ファッション。カリスマ美容師&大人気YouTuberが教えるアラサー男子の「見ため」の新常識。

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あのアニメ・ドラマの家は現実に存在できるのか?『名作マンガの間取り』

アニメやドラマを見ているとき、「この主人公の家の間取り、どうなってるんだろう?」と思ったことはないだろうか。僕はよくある。基本的に空間把握が苦手(方向音痴です)なので、図面に起こしたりはしたことはないが、頭の中で「ああ、この奥に寝室あるなぁ」なんて考えたりすることはある。

 

しかし、基本的に空想の世界。全体の間取りが映し出されることもなく、全貌はわからないままのことが多い。

 

名作マンガに出てくるあの部屋の間取りを再現

そんな疑問に真っ向から立ち向かったのが『名作マンガの間取り』(景山明仁・著/SBクリエイティブ・刊)だ。著者は不動産業・建築コンサルタントのかたわら、息抜きにマンガの間取りを作図しているという。アニメ以外にもマンガやドラマ、小説などの間取りも出てくる。

 

アニメにかなり精通しているらしく、新旧のアニメに出てくる家の間取りが描かれている。外観とアニメ内に出てくるさまざまなシーンを分析し、できる限り実際に住めるように間取りを起こしているという。正直、アニメやドラマに出てくる部屋の間取りなんて、あってないようなものだし、その都度変わってるなんてこともザラ。それをちゃんと現実世界の間取りに落とし込んでいるというところに、プロの魂を感じる。

 

外観と間取りがかみ合わないジレンマ

定番のところではサザエさんの家の間取り。世田谷区の平屋。玄関を入ってすぐにカツオとワカメの部屋で、その向かいがマスオさんとサザエさん、タラちゃんの部屋。テレビのある居間と客間はつながっており、客間と波平さんフネさんの部屋がつながっている。トイレは縁側の突き当たりらしい。

 

僕の好きな『めぞん一刻』の一刻館の間取りもある。1階の部屋は二間あるなとは思っていたが、著者によると外観と間取りが一致しないそう。

 

外観と各部屋の配置がそれぞれしっかり描かれているが、しっかりしすぎているだけに、間取りを優先すると外観が成り立たず、外観を優先すると間取りが成り立たないというジレンマ。

(『名作マンガの間取り』より引用)

 

専門家ならではの悩みと言える。僕らが見たって、全然わからない。

 

その他、アニメ『日常』の東雲研究所、『けいおん!』の平沢唯の自宅、『ドカベン』の山田畳店、『ちびまる子ちゃん』のさくら友蔵邸。『ドラえもん』の野比家に至っては、新旧両方が掲載されている。『アルプスの少女ハイジ』や『うさぎドロップ』『3月のライオン』『おおかみこどもの雨と雪』などなど、かなり幅広いアニメが登場するので、ぜひ見ていただきたい。

 

『注文の多い料理店』山猫軒の間取り

変わったところでは、『吾輩は猫である』『注文の多い料理店』といった小説に出てくる間取りも再現している。アニメやマンガ、ドラマと違い、実際に映像として出てくることはないので、再現するのにはかなり根気がいったことだろう。

 

ぜひ見ていただきたいのが、『注文の多い料理店』の山猫軒。あくまでも著者の想像のようだが、とにかく部屋がどんどんつながっている感じで、間取りを見ると小説を思い出す。これから『注文の多い料理店』を読むときは、この間取りが頭に浮かんでくることだろう。

 

実際にはないものを、具現化するというのは結構難しい。それが間取りとなればなおさらだろう。空想の世界のものだから矛盾も多数あるはず。それをきちんと現実世界でも成立するようにしているのは、とてもおもしろい。こういう知的な遊びができるような人間に生まれたかったなぁ。

 

 

【書籍紹介】

名作マンガの間取り

著者:影山明仁
発行:SBクリエイティブ

『NANA』『海街diary』『時をかける少女』『宇宙兄弟』『3月のライオン』『しろくまカフェ』『美味しんぼ』『ドラえもん』『究極超人あ~る』など、全71物件!

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年齢は関係なし! やりたい時が始め時『図解 50代からのプログラミング 未開の能力を発掘♪』

人生100年時代。何かを始めるのに年齢を気にする必要がなくなりつつある時代です。プログラミングも、若い人がやるものだと逃げ腰になる人が多いのですが、最近は中高年向けに入門本もあります。どんな内容なのかチェックしてみました。

 

プログラミングで日常を便利に

筆者も50代ですが、学生時代はプログラミングが趣味でした。といっても作っていたのは日常の簡単な計算を代行する程度のもの。学園祭で販売するサンドウィッチの予約を集計したり、誕生日を入力すると同じ日に生まれた有名人は誰かを教えるという単純なものばかりでしたがとても助かったので、満足度はかなりありました。

 

プログラミングは、ヘルパーさんのような存在です。手作業でやったら少し大変だと感じる作業を代行してくれるのです。少し難しい計算や、覚えるには大量すぎるデータの処理などは人間よりもずっと早くて便利なのです。プログラミングと言うと敷居が高く感じますが、毎日を少し便利にするための、ちょっと高度な電卓や電子辞書のようなものなのです。

 

及び腰の50代

いつか時間ができたらじっくり取り組んでみたいのは、AIスピーカーのプログラミング。普段愛用しているスピーカーにさらに便利な機能を付けられたらと思っているのです。スマートフォンアプリやウェブサイトなど、今ではさまざまなことがプログラミングで作れるようになっているので、アイデア次第で活用法は無限なのです。

 

私の周囲の50代でもプログラミングに興味を持つ人は少なくありません。けれど皆、「今から始めるのは難しいよね」と、やる前からあきらめてしまうのです。やってみたら案外簡単なもんだよと説明しても「英語もムリなのにプログラム言語なんてとてもとても」と言うのです。これは少しもったいないのではないでしょうか。

 

プログラミングは料理のレシピ

図解 50代からのプログラミング 未開の能力を発掘♪』(高橋与志・著/リックテレコム・刊)は、タイトルからしてズバリ、50代の初心者にもわかるように、プログラミングをやさしく解説しているありがたい本です。

 

本書では、プログラミングを料理のレシピにたとえてイラスト入りで解説しています。美味しい料理を作るためにはいくつかの手順が必要ですが、確かにプログラミングもそうなのです。順を追って必要な計算を必要な分量でやりながら、完成を目指すのです。生活を便利にするためのレシピだと思えば、なんだか気楽に取り組めそうな気もしてきます。

 

女性にもわかりやすたとえ

さらに、データベースを料理の材料を入れておく冷蔵庫にたとえています。私たちは肉は肉、野菜は野菜と収納場所を決めていますが、プログラミングでもデータを置いておく場所は決まっています。

 

料理にたとえているので女性でも取り組みやすいし、難しい用語を極力使っていないので、読んでいても内容がすんなり頭に入ってきます。すべてのプログラミング本がこのようにやさしい解説だったら、世の中にはプログラマーが急増しているかもしれません。

 

高額収入も!?

本書には「中高年が自宅で稼げるようになるコツ」も書かれています。発明で大金持ちになれることがあるように、プログラミングでも大金を稼げることがあるのです。作ったアプリなどが人気になると、それを買い取りたいと言われるなど、場合によっては億を超えるような多額の収入になるのも、夢があって魅力的です。

 

近ごろの世の中には77歳からDJスクールに通った80代のDJや、65歳からジムに通い始めた90代のフィットネスインストラクターもいます。比べれば50代のプログラマーはまだまだ若いはず。この本を片手に、発明をするかのような気持ちでプログラミングを試してみるのもいいのではないでしょうか。

 

【書籍紹介】

 

図解 50代からのプログラミング –未開の能力を発掘♪

著者:高橋与志
発行:リックテレコム

人生100年時代に「さてこれからどうしよう」と思っている中高年の方々にこそ、プログラミングを学ぶメリットがあります。但し、定年後に「エンジニアとして独立できる」といった話ではありません。そうではなく、お一人お一人の豊富な経験、熟知している課題やニーズ、ちょっとしたビジネスのアイデア、顧客候補の“つながり”こそが宝です。そこへITやプログラミングの知識を少し足すことで、残りの人生を活き活きと過ごす契機を見つけましょう!

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「親ガチャ」「抜け感」「クラスター」……どこか“もやっとする”言葉が使われる背景は?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。原稿を書いていてよく迷うのが、「ひらがな・カタカナ・漢字問題」。たとえば「猫」と書きたいときに「ねこ」「ネコ」「猫」、どれにするか。それぞれ読むときの印象がかなり異なるので頭を悩ませます。

 

紙媒体のときは雑誌や出版社ごとにある程度表記の規定がありましたが、最近はウェブ原稿が増えて比較的こちらが書いた通りに載ることも多くなったため、気を使う場面も増えました。「かわいい」「カワイイ」「可愛い」、「りんご」「リンゴ」「林檎」……。

 

梶井基次郎の小説がもし「れもん」や「Lemon」だったら、もう別物な気がしますよね。どの表記を使うかは文脈はもちろんのこと、世の中の空気によっても変わってくると思います。

 

言葉を考察すれば社会が見える

いつもの言葉を哲学する』(古田 徹也・著/朝日新書)は、日常の“ひっかかる言葉”について深く考察する新書。著者の古田さんはルートウィヒ・ウィトゲンシュタインの哲学を主に研究する東京大学准教授。サントリー学芸賞を受賞した『言葉の魂の哲学』(講談社選書メチエ)のほか、『はじめてのウィトゲンシュタイン』(NHKブックス)、『不道徳的倫理学講義』(ちくま新書)など著書多数です。

「親ガチャ」という言葉を使う若者心理

第1章「言葉とともにある生活」で興味を引かれたのは、若者言葉「ガチャ」の節。大学の講義後に学生に書いてもらうコメントに、4~5年前から「親ガチャ」という言葉が出てくるようになったそうです。

 

「親ガチャ」はどんな両親のもとに生まれるかという運を表現した若者言葉。「すべてが運命ではない、努力すべきだ」というお説教を「ガチャ」という軽い言葉で突き放す。その比喩の裏にある思いとは……。倫理学者バーナード・ウィリアムズの言葉やマンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんのセリフが引用され、人生と運に関する思考が巡らされていきます。

 

第3章「新しい言葉の奔流のなかで」に書かれている、氾濫するカタカナ語に関する部分にも多くの気づきがありました。「メリット」と「利点」、意味は同じようでも現在はメリットのほうが使われる範囲が広くなっています。それは、もともとあった語が持つしがらみがないため、より自由に他の言葉と結びつくことができるから……。コロナ禍で「ロックダウン」や「クラスター」といったカタカナ語が導入されたのも似たような理由といえそうです。「意味が不明瞭な分、むしろ適切」という観点はなるほどと思わされました。

 

「まん延」という“ひらがな+漢字表記”が蔓延する理由、「抜け感」と哲学者の九鬼周造が説いた「いき」の共通点、「新しい生活様式」という言葉と内容の食い違い……。古田さんが家族や学生など身近な人と交流するなかで気になった言葉を取り上げ、その言葉の本質にこだわり、使われている背景を丁寧に掘り下げていく。語学のうんちくだけでなく、哲学者の言葉が引用され、社会や人間存在への深いところにまなざしが向けられているのが哲学者の本ならでは。最近の言葉に違和感を覚えたら、本書を読んで理由を探ってみるのもいいかもしれません。

 

【書籍紹介】

『いつもの言葉を哲学する』

著者:古田 徹也
発行:朝日新聞出版

哲学者のウィトゲンシュタインは「すべての哲学は『言語批判』である」 と語った。本書では、日常で使われる言葉の面白さそして危うさを、多様な観点から辿っていく。サントリー学芸賞受賞の気鋭の哲学者が説く、言葉を誠実につむぐことの意味とは。

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いつもの言葉を哲学する

 

【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

所得は倍増するし、経済は破綻しない!? 元内閣官房参与が説く「日本人を金持ちにする」秘策とは?

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(藤井 聡・著/ポプラ社・刊)。この本を手に取ったとき、なんて衝撃的で、かつ魅惑的なタイトルだろうと思いました。誰もがお金持ちになりたいと願っているものでしょう。けれども、その願いを果たすのは簡単なことではありません。まして、このコロナ禍。お金持ちどころか、果たして明日も働いていられるのかという不安を抱えている人の方が多いと思います。

 

知り合いの若者は、私のことを「三浦さんには、明るい未来を信じて生きてきたヒト特有の呑気さがある」と、なかばあきれられ、そして、うらやましいとため息をつかれます。確かに、昭和31年生まれの私は、子どものころから、昨日よりも今日、そして、今日よりも明日が良い日になると信じて暮らしてきました。日本経済は右肩上がりの成長を続けており、実際、生活は楽になっていると感じていました。ただし、バブルがはじけるまでの話ですが。

二人の著者について

『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』が出版されたのは、2021年11月15日。岸田内閣が誕生してすぐのころです。著者は藤井 聡。京都大学大学院工学研究科の教授であり、2012年〜2018年まで、安倍内閣の内閣官房参与をつとめていました。都市工学の専門家で、防災に詳しいのはもちろんのこと、経済問題にも警鐘を鳴らしてきた論客です。『こうすれば絶対よくなる!日本経済』や『令和日本・再生計画』などの著書も多く、日本のこれからに鋭い意見を遠慮なくぶつけてきました。

 

『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』には、もう一人著者がいます。フリーライターの木村博美です。彼女は自ら「何でも書きます」と宣言し、幅広い分野で活躍してきました。何でもと言っても、「興味のあるもの」に視点を定め、聞き書きという手法を駆使して、専門家の知識を吸収しながら、読者を理解に導いていきます。読者と同じレベルに自分を置き、難しい問題をわかりやすく解説してくれるのです。この本では、彼女がここ数年感じていた息苦しさの理由を日本経済のゆがみにあると気づき、専門家である藤井 聡を質問攻めにします。

 

二人の交わす丁々発止なやりとりを面白く読みながら、私も日本経済について考えるようになりました。このコロナ禍、景気が悪くなるのは仕方がないと思っていたのですが、このままでは取り返しのつかないことになってしまうとわかったからです。今までは、経済の問題は難しくて対処不能。私にできることは、せめてお金をなるべく使わないようにしながら暮らすことだと考えてきましたが、それではいつになっても問題は解決しないのだということも知りました。

 

岸田ビジョンは達成できるのか

岸田文雄総理は、総選挙の際に「岸田ビジョン」を掲げました。とりわけ経済に注意を払い、「所得倍増」計画を実行すると約束しました。適切な措置を行えば、私たちの所得はなんと2倍になるというのです。かつて、池田内閣のもと「所得倍増計画」が敢行されたことがあります。と言っても、若い方たちはピンとこないでしょう。何しろ60年も前のことですから。けれども、『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』には、当時のことがわかりやすく説明されています。

 

かつて行われた「所得倍増計画」とは、昭和35年(1960年)に池田勇人内閣が掲げた長期経済政策です。池田首相は10年間で国民所得を2倍にすると宣言し、さまざまな経済対策を行いました。そしてその結果、当初の目標である「10年」より遥かに早くたった「7年」で日本の国民一人当たりの実質国民所得は2倍の水準に達したのでした。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

所得が2倍に。考えただけでうれしくなります。けれども、それを果たしたのは昔の話で、令和の時代にそんなことが実現可能なのでしょうか。ハイパーインフレが起き、たとえ所得は2倍になっても、生活はさらに苦しくなるのではと、不安になってしまいます。それなら、現状維持の方がマシなのではないかとも思います。何ごとにも消極的で、現状維持が大好きな私は、新しい試みに弱いのです。けれども、そんなことを言っていては、現状維持すら難しくなることをこの本で学びました。

 

「えっ」と「げっ」をキーワードに

政治のことはよくわからず、経済に至っては無知に近い私です。これではいけないと思いつつも、「ま、プロにまかせておくに限る、なんとかしてくれるだろう」と、日々を過ごしてきましたが、やはり丸投げはいけません。何とか食べていかなくてはなりませんし、できれば、孫の代まで、そこそこ豊かな生活ができるような仕組みを作っておかなくてはと、願ってもいます。日本はそれができる国だったはずです。

 

これまでは、不況がなぜ長引くのかわからないまま、トンネルを抜け出すには我慢するしかない、きっといつか明るい未来が待っているのだから、今は堪え忍ぶのが大事だと信じてきました。けれども、その根拠は? と、問われると、特にないことに気づきます。このままではいけないと、私は気合いをいれて『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』をくり返し読みました。経済に無知なので手こずるに違いないと覚悟していたのですが、そうでもありませんでした。聞き手役に徹する木村博美が、わからない部分を質問してくれるからです。

 

木村が「えっ」とか「げっ」という言葉で反応している部分は、私にとっても「えっ」とか「げっ」であることにも気づきました。驚いたり、のけぞったりする部分が、一致しているのです。

 

たとえば、40ページの「えっ」について。ここで藤井先生は、「日本政府が国債を発行して資金を調達していますが、そのことによって、経済が破綻することはありません。なぜなら、国債が円建てであるかぎり、日本政府はいつもそれを用立てることができるからです」と、教えます。これに対する木村の反応は「えっ」です。

 

そして、どうしてそんな離れ業ができるのかと問います。木村だけではありません。私も「えっ」と、なりました。日本政府が借金を踏み倒すことになっては大変だと思っていたからです。けれども、お札を製造するのは他でもない日本銀行であり、それは政府の子会社だから、大丈夫だというではありませんか。

 

簡単にいえば、要するに「政府は、おカネをつくり出すことができる」ということなんです。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

「えっ」だけではありません。「げっ」や「ひぇ〜っ」もあります。こうした言葉が発せられている場所を探して、読み直すと、さらに理解が深まります。

 

私にとって、一番の「ひぇ〜っ」は、190ページでした。そこには世界各国の成長率ランキング表が示されています。それによると、日本は成長率ランキングのどん尻にいるというではありませんか。この結果について、先生はこう教えます。

 

日本は98年からデフレ・スパイラルに突入してしまい、そこから抜け出せなくなってしまった。(中略)日本だけが成長できなくなり、世界経済における国力としての経済力が激しく縮小していくと同時に、国民所得は縮小し、さらには、政府の財政も悪化し続けるという悪夢のような状況に立ち至ってしまったのです。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

こんな大変なことになっていたなんてと背筋が寒くなります。と、同時に、「ま、いいや」と思っていた自分を恥じてもいます。信じがたい事態が起きていると感じていながら、目をそむけて「誰かが何とかしてくれる」と信じていたのですから、我ながらおめでたいと思います。

 

これからは、経済について書いた本を毛嫌いすることなく読み、自分の頭で消化して、考える努力をしなくてはと思います。私たち日本人が、大金持ちではなくても、まあまあだなと思える毎日を得るために、しゃんとしなくてはと、決心したところです。

 

【書籍紹介】

 

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

著者:藤井聡
発行:ポプラ社

元内閣官房参与が説く、日本を貧困化するシステムと景気V字回復への提言。日本人を貧しくした「経済の嘘」に騙されるな。富裕層だけが知っている裏のからくりとは? コロナ禍を超えて、日本人を金持ちにする秘策を明かす! 岸田内閣の「所得倍増」はこうすれば実現する!なぜ、日本だけが取り残されたのか? 国民が金持ちにならないように政府がついてきたウソをここに暴く!

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ゴッホとゴーギャンの秘密に迫る最高のミステリー小説がここにある━『リボルバー』

ポスト印象派を代表する画家といえば、誰もがゴッホとゴーギャンをあげるだろう。ふたりの画家は一時期、南仏アルルで共同生活をしたものの、関係が悪化してしまいゴーギャンが去った後にゴッホの耳切り事件が起こったことはあまりに有名だ。ゴーギャンはやがてタヒチに向かい、彼の地で多くの絵を描いた。ゴッホはサン=レミの療養所、そしてオーヴェル=シュル=オワーズで療養しつつも絵を描いていたが、一発の銃弾がゴッホを死に至らしめた。ゴッホの死に関しては、自殺説、他殺説諸説あり、アート史上の最大の謎になっている。

 

リボルバー』(原田マハ・著/幻冬舎・刊)は、ゴッホとゴーギャンの知られざる関係に迫りつつ、誰が引き金を引いたのかにスポットを当てたミステリー小説だ。史実を基に、謎とされている部分は原田さんの創作だが、もしかしたら、それが真実かもと思わせる展開に読者はドキドキしながら引き込まれていく。また、本作は夏に舞台化もされ、大いに話題を集めた。

 

リボルバーは2000万円で落札された

1890年ゴッホを打ち抜いた拳銃は、フランスのルフォショー製のリボルバー。1960年代になってオーヴェル=シュル=オワーズの農民によって発見された。それが2019年6月19日、パリの競売会社オークション・アートによって競売にかけられ、16万ユーロ(約2000万円)で落札された。この事実は世界中のメディアが一斉に報じた。

 

原田さんはその後、『小説幻冬』で2020年からこのテーマでの連載をはじめ、そこに加筆、修正を加えて一冊にまとめたのが本作で史実に基づいたフィクションだ。

 

物語の主人公は、架空の人物で、日本女性の高遠冴。幼いころから部屋に飾られたゴッホとゴーギャンの複製画を見て育ったという設定だ。やがて冴はパリに渡り、大学で美術史の修士号を取得、19世紀フランス絵画の専門家として、パリのオークション会社に勤めることとなった。社長のギロー、鑑定士のジャン=フィリップ、そして冴の3人のオークショニアが中心となった小さな会社だ。

 

錆びついた一丁の拳銃

物語は無名の画家、サラという女性が19世紀後半の錆びついた拳銃を持ち込んできたことで幕を開ける。

 

「一八九〇年七月二十七日、オーヴェル=シュル=オワーズ村で、ファン・ゴッホの腹部を打ち抜いたピストルです」

ギローとジャン=フィリップと冴は、顔を見合わせた。どの顔にも驚きが広がっている。(中略)ゴッホが自殺したかどうかは別として、彼の命を奪ったのが銃弾であったことは間違いない。診察した医師の証言や診断書も残っているから、それは明確に証明されている。しかし、どこで、誰が、どのようにしてピストルの引き金を引いたのか。なんのために? 見た者もいなければ、なんら証拠も残っていない。証明しようがないのだ。あの赤く錆びついたリボルバーが、ゴッホの血を吸ったものだとは—。

(『リボルバー』から引用)

 

こうして、3人のオークショニストによる検証と謎解きがはじまるのだ。

 

昔のままの風景が広がるオーヴェル=シュル=オワーズ

ところで、日本の街は都会でも田舎でも時代とともに変貌するが、フランスの風景は時を経ても変わらない。パリもショーウィンドーや走る車や人々の装いを見なければ19世紀と変わらない建造物が並んでいるし、田舎に行くと、昔とまったく変わらない景色が広がっていて驚いてしまう。20年以上前になるが、私はオーヴェル=シュル=オワーズ村を訪ねたことがある。ゴッホが描いた教会、麦畑が絵画そのままにあることに感動してしまった。

 

また、ゴッホの終の棲家となったラヴー亭は食堂として、そしてミュージアムとして今なお営業中だ。ラヴー亭は当時は下宿屋を兼ねた食堂で、ゴッホはそこで人生最後の十週間を過ごし、その小さな屋根裏部屋で弟テオに看取られ息を引き取ったのだ。

 

さて、物語では冴たちが、検証の第一歩としてこのラヴー亭を訪れるところから展開していく。

 

リボルバーは二丁あった?

ラブー亭のオーナーは驚くべき話を冴たちにする。オークションにかけてほしいと持ち込まれた拳銃はなんとゴーギャンの子孫の持ち物だというのだ。農民が見つけ、一時期、ラブー亭に展示されていたリボルバーとは、別のもう一丁のリボルバーが存在するのだと……。

 

「オワーズ川沿いにポプラ並木の古径があるんですが……その古径が途切れるところに立っている木の根元を、ある人物に言われた通りに掘り起こすと、出てきたんだそうです」

「ある人物……?」ギローが復唱した。「どういう人物ですか?」

ペーターズは一瞬、目を泳がせたが、思い切ったように答えた。

「ポール・ゴーギャンの子孫——ということでした」

冴は息をのんだ。

(『リボルバー』から引用)

 

ゴッホのリボルバーではなく、ゴーギャンのリボルバーがあるというこの展開はフィクションとはいえ、ドキドキしてしまう。二人の画家の切っても切れない関係、そして本作ではタヒチ時代のゴーギャンについてが詳しく描かれている。アートの専門家、キュレーターでもある原田さんでなければ書けないストーリーだ。

 

引き金を引いたのは誰なのか?

ネタバレになってしまうので、どのようにしてゴッホの腹部に銃弾が打ち込まれたのかは書けないが、もしも、それが本当ならすごい真実だし、読んでいて私は涙が止まらなかった。

 

ひとつだけ、ここにヒントを書かせてもらうと、そのリボルバーには微量の絵の具と、ひまわりの種子の破片が付着していた、と。

 

リボルバーを持ち込んだサラという女性は何者なのか?

もうひとつのリボルバーはオークションにかけられたのか?

 

是非、本書を読んでただきたいと思う。

 

現在はコロナ禍で日仏の行き来がままならないから、せめて本の中で、パリやオーヴェル=シュル=オワーズを旅したいと思う。繰り返して何度も読みたくなる作品で、ゴッホのファン、ゴーギャンのファンには必見の一冊といえる。

 

【書籍紹介】

リボルバー

著者: 原田マハ
発行:幻冬舎

ゴッホとゴーギャン。生前顧みられることのなかった孤高の画家たちの、伝説のヴェールを剥がせ!「ゴッホの死」。アート史上最大の謎に迫る、傑作ミステリ。

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お買い得食材で「節約バレ」しないボリュームおかずができる!『あみんのラクする!おいしい節約おかず』

『あみんのラクする!おいしい節約レシピ』」に掲載されているレシピは、どれもも身近な食材と調味料で作れるので、冷蔵庫にあるものだけで完成! レシピごとにおいしく作るコツや、節約のポイントも細かく掲載。今日から役立つポイントがいっぱいです。

 

冷蔵庫にある材料で今日からできる!

鶏むね肉、豚こま切れ肉、厚揚げ、豆腐、鮭、ツナ缶……年中安く買える「お買い得食材」で作れるおかずを食材別に掲載。冷蔵庫にあるものから、今日作りたいおかずを迷わず選ぶことができます。特別な調味料や調理道具も一切必要ありません。

 

あみんの“節約 7つのルール”

1 節約していることを家族に気がつかせない

節約おかずにチャレンジしても、量が少なかったりマンネリ化しがちだったりして、なかなか続かない、ということはありませんか? 本書では、家族には「節約おかず」だとバレないくらい、ボリュームもバリエーションもたっぷりのおかずを紹介しています。

 

2 味とボリューム、食感、見栄えを大切にする

節約していても、おいしいものをたっぷり食べたいもの。しっかりした味つけにしたり、かさまし食材を使ったり、味がしみこみやすい切り方にしたり、ひと工夫するだけで節約おかずも絶品に!

 

3 特別な食材や調味料は使わず、アイデアでバリエーションを出す

いつもの食材と調味料でも味つけをマンネリ化させません! たとえば鶏むね肉で作る唐揚げバリエーション。普段の唐揚げと同じ手間でも味つけを変えるだけで家族を飽きさせません。

 

4 リーズナブルな食材を格上げする調理テクを駆使

固くなりやすい鶏むね肉、豚こま切れ肉をやわらか&ジューシーにするコツや、それだけでは主菜になりにくい厚揚げをガッツリおかずにかえるコツなど、格上げテクも満載です。

5 食材の味を生かすため、1皿の食材の数は必要最小限に

1つのおかずに使う食材を減らすとそれぞれの食材のおいしさが引き立ち、節約にも役立ちます。鶏むね肉だけ、豚こま切れ肉だけ、など1食材でできるおかずもいっぱい。

 

6 食材の種類ごとに賢くまとめ買い

節約に役立つ食材を厳選して掲載。食材ごとにバリエーションたっぷりのレシピを掲載しているので、特売のときにまとめ買いしても飽きずに食べきれます。旬の時期に安くなる野菜を使ったレシピも掲載。

 

7 下味冷凍&作りおきでフードロスを削減

忙しいときにも、使い切りにも役立つ下味冷凍&作りおき。副菜作りおき4品を40分で完成させるレシピも大公開。無駄なく、おいしく食べきって、フードロス&食費のムダを省きます。

 

大充実のコラムも必見

電子レンジでできるおかず、焼き麺、ナムルなど、手早く簡単にできるアイデアレシピをコラムで掲載。あみんさんの節約テクニックがわかるコラムも必見です。

 

 

■あみん プロフィール

料理家。育ち盛りの3人の子どもを育てる母。節約と感じさせない簡単レシピが得意。雑誌やムック、TV・ラジオなどでも活躍している。毎日レシピを更新しているInstagramのフォロワーは39万人。Nadia Artistとしても活躍している。

Nadia:https://oceans-nadia.com/user/320681

Instagram:@a_min296

ブログ:あみんのスマイルキッチン
https://ameblo.jp/a-min296/



 

■レシピサイトNadiaとは?

Nadiaはプロの料理家のおいしいレシピが集まる料理メディアです。現在、月間2,000万人の方にご利用いただいております。Nadiaにレシピを投稿するのは、独自の審査を通過したテレビ・本・雑誌・Instagramなどで活躍する約650名の料理家、料理研究家、フードコーディネーターで、通称「Nadia Artist」と呼ばれる方たち。彼らの投稿するクオリティの高いレシピは、「つくりやすくておいしいレシピばかり」と人気を集めています。
 ・レシピサイトNadia
https://oceans-nadia.com/

 



 
■Nadia Booksについて


レシピサイトNadiaにレシピを投稿しているNadia Artistによるレシピブックシリーズです。
人気の料理家たちの話題のレシピや、イチオシのレシピを紹介。日々の家庭の食卓に寄り添って、いつもより簡単に、もっとおいしく料理を作れるレシピを提案します。

 

[商品概要]

『あみんのラクする!おいしい節約おかず』

著:あみん
定価:1320円(税込)

【本書の購入はコチラ】
▼Amazon
 https://www.amazon.co.jp/dp/4651201369/
▼楽天
 https://books.rakuten.co.jp/rb/16974718/


ウェブメールの王道「Gmail」の導入から使いこなしまでをわかりやすく解説!「500円でわかるGmail 最新版」

「500円でわかるGmail 最新版」は、PCムックシリーズ売上No.1の「500円でわかる」シリーズに連なる一冊です。

 

本書では、Googleの定番メールサービスであるGmailを取り上げ、その導入から使いこなしまでをわかりやすく解説。さらに、PCだけでなく、スマホでの操作方法まで詳細に説明しているほか、Google MeetやGoogle Chatといった最新サービスとの連携方法に至るまで、初心者にも理解しやすくレクチャーしています。

 

誰でも悩まずにGmailを使いこなせる!

GmailはGoogleが提供するPC&スマホ向けのウェブメールサービスです。本書では、端末を選ばずにどこでも同じ状態でメールの送受信が行える本サービスを、アカウントの作成や初期設定といった導入から、メールの受信、送信、そして分類・整理といった使いこなしまで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説しています。

 

 

豊富な図版で、「見たまま」を真似すればOK

各パート、豊富な図版でGmailの設定&使いこなし方を解説。本書の画面をたどっていけば、誰でも迷わずにGmailでのメールの送受信をマスターできます。

 

 

パソコン版だけでなく、スマホ版もしっかり解説

ウェブブラウザから使用するパソコン版のGmailだけでなく、アプリを介して利用するスマホ版Gmailもしっかりと解説しています。本書を読めば、スマホに不慣れな人でも導入から使いこなしまでを理解できます。

 

 

[商品概要]
500円でわかるGmail 最新版
著者: GetNavi編集部
定価: 550円 (税込)

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・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1107255070

『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』キューリング恵美子さんに聞くドイツと日本の大きな違い【後編】

自分という存在は、自分の目にどのように映っているか。自分は、自分という存在をどれだけ肯定しているか。読み手にそんな疑問を投げかける『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』という本が話題になっている。

 

著者はキューリング恵美子さん。ドイツ企業の日本支社で働いているときにドイツ人男性と出会って結婚しドイツに移住、以来20年以上が経過している。かつては他人の視線ばかり気にしながら生きていたが、ドイツに渡ってから自己肯定感の基準の決定的な違いに気づいた。自分基準の自己肯定感を手に入れたきっかけは、大病を克服したことだった。久しぶりに里帰りしたキューリング恵美子さんに、日本とドイツの文化の違いについて、お話をうかがう機会を得た(全2回の2回目/前編を読む)。

●キューリング恵美子(キューリングエミコ) /埼玉県出身。大学卒業後、大手靴メーカー、旅行会社を経て、ドイツ企業の日本本社に勤務。ドイツ人との結婚を機に、30代でミュンヘン近郊に移住。長男長女を出産し異文化の中で子育てに奮闘。ドイツ在住は20年を超える。また、バレエ留学生のコーディネイトやライフアドバイザーなど、起業家としての顔も持つ。50歳で大病に見舞われたのをきっかけに、ドイツ人の自己肯定感の高い生き方を見直すようになる

 

TikTokで政治について語るドイツの若者たち

——ネットに対する姿勢に関する質問をさせてください。書き込みによって見ず知らずの人を叩いたり、罵倒したりするという感覚についてどう思いますか?

 

キューリング ドイツでは、日本ほどSNSが重視されていません。知らない人を罵倒するということもありませんね。子どもたちがグループチャットなどで、特定のクラスメイトに対するコメントを書きこむことはあります。ただ、全く知らない人を攻撃対象にするということは聞いたことがありません。陰湿な攻撃の道具としてSNSを使うということはないですね。

 

こうしたことは、日本独特なものかもしれません。自分にストレスが溜まっていて、自分が幸せではないから、知らない人を攻撃して発散しようとするのではないでしょうか。他人を批判することですっきりするということがあるのかなと思います。

 

日本では、人と違うことを言うと叩きがすごいですね。面と向かったディスカッションではなく、ネット上での陰湿な叩きとか、そういう出し方をしますね。私に関するトピックを某ニュースサイトで扱っていただいたので、コメントを見てみました。それは、ドイツの教育は私塾などの費用が高いので、親が面倒を見なければならないという主旨の批判でした。私は、なぜ親がしなければならないのかと思うのです。子どもから頼まれれば別ですが、無条件に親がしなければならないことではありません。私塾に行かせなければいけないということはないのです。こういう感覚を持っている人にこそ、私の本を読んでいただきたいのです。

 

——ドイツの人たちは、道徳観とか倫理観などをどこで学ぶのですか? 日本では道徳の授業があります。幼稚園でも、和を大切にするという方向性の教育が行われます。

 

キューリング 小さいころは、両親からいろいろな本を読んでもらいます。ドイツ人は、とにかく子どもに本を読ませます。小学校に入ったあたりから政治的な要素が学習内容に少しずつ盛り込まれて、中学2年生から高校1年生くらい、大学進学コースの子たちは高校の3年間で政治を勉強する授業があります。こうした方法でかなり深いところまで学びます。日本の同年代の学生よりも真剣に国のこととか、社会のこととかについて学んでいると思います。

 

学ぶというのは先生から教えられるのではなくて、ディスカッションを通して知識を深めていくということです。ドイツにはナチス時代のひどい歴史があります。これは絶対に忘れてはいけない、という思いが根幹にあるのです。それを基に教育も言論の自由も構築されています。特定の一人の人間だけの意見に耳を傾けることは、プロパガンダにつながるので危険です。だからこそ言論の自由を尊重しているわけです。

 

——10代の人口の投票率を比較すると、ドイツのほうが圧倒的に高い(70%:2021年9月26日のドイツ連邦議会選挙。日本は2019年参議院議員選挙で32.28%)という数字があります。こうした違いが生まれる理由は何だと思いますか?

 

キューリング 16歳の娘は、“TikTok”とか“Instagram”などのアプリを使って政治について語ることがあると言っていました。環境問題をはじめとする、さまざまな政治的トピックが上がっているようです。うちの娘も環境問題とか動物愛護とか人権問題について真剣に考えているので、よく見ています。

 

何が何でもフォロワーを増やそうというレベルではなく、政治的な意見をやり取りする道具としてSNSを使っているようです。私もこれには驚きました。あとは、高学年の子どもたちは学校でも政治経済、社会問題を取り入れたディスカッションをするので、投票率が上がるのは当然です。SNSについては、興味の方向性と度合いが違うかもしれません。

 

——日本では、高校入学をきっかけにして子どもにスマホを持たせることが多いようです。ドイツではどうでしょう?

 

キューリング もっと早いですね。幼稚園くらいからタブレットで遊んでいるので、子どもがスマホを欲しがれば、1日何時間だけ使っていいという条件付きで与えると思います。ドイツの場合は10歳とか11歳ですね。ちょうど小学4年生を終えたころです。学校によっては持ち込み禁止の場合もあります。高学年になると、検索エンジンを使いながら進める授業もあります。先ほどの話に戻りますが、みんながTikTokで政治の話をしているわけではありません。ただ、そういう使い方をする子どもが多いということです。

 

自分の人生は自分で責任を持たなければならない

——ご自身の自己肯定感についてお尋ねします。自己肯定感をドイツ基準に則って高めていくために意識して実践したことはありますか?

 

キューリング 常に意識しているのは、他人に何を言われてもブレないようにすること、自分を大事に思うことです。あとは、自分を他人と比べないことです。いちばん考えなければならないのは、自分が何のために生きていて、どういう人生を送っていきたいかです。結局、他人の気持ちや意見ばかりを聞いていると、自分というものがブレてしまうと思います。

 

ある人の意見を聞いて失敗してしまったら、「ああ、聞かなきゃよかったな」と思うでしょう。その人の責任にすることもあるかもしれません 。でも結局、自分がやったことは自分の責任なので、他人の意見を聞いて何かを決めたとしても、最終的には自分の意思で決めたことになります。自分の人生は自分で責任を持たなければなりません。やりたいこと、大切に思うことにブレが出ないようにしながら、誰よりも自分を大切にしていくことが重要だと思います。

 

本にも書きましたが、私は大病をしました。あの時、主治医のせいにしそうになりました。カルテを持っているのに、ガンになりかけているものについてなぜ知らせてくれなかったのか。そう思うのが普通じゃないですか。ところが、主治医はそれを「自業自得」と言うのです。主治医からいきなりそう言われて、ドイツの医者はなんてことを言うんだろうと思いました。

 

それで長い間色々考えたのですが、ふと思ったのは、お医者さんであっても、私の命については何も決められないということです。そういう意味では自業自得だったと納得しました。きちんと自己管理できていなかった自分が悪かったのです。受け容れるまで2年ちょっとかかりましたし、いろいろ考えました。私が死んだとしても、「先生、あなたのせいですよ」と言って責任を取ってもらうわけにはいきません。そして、「自分の体なんだから自分で守るしかないじゃない」と思いました。心も体も自分のものなのだから、誰かに任せることはできないと気付いたのです。まわりはいろいろ言うでしょうが、自分について何かを最終的に決めるのは自分しかいません。

 

——キューリングさんは、ドイツに行ってから自分というものを確立したのですか? それとも日本にいる時からそうだったのですか?

 

キューリング 私は、ドイツに行った後も他人軸で生きていました。他人の意見ばかり聞いて揺れている人間でした。常に夫に頼って、彼が何でもやってくれるからという感じで暮らしていました。

 

ただ、本に書いている通り、大病をきっかけにして自分の人生とか、生き方とかを見直すようになりました。自分というものを確立できたのはそこからです。人生最大のピンチがチャンスに変わったということです。まずは自分が、自分という存在を受け入れないといけないでしょう。自分が今ここに存在しているという事実を素晴らしいと思うべきです。自分の命を大切にすることは重要です。自分軸というものは、そこから形成されていくと思います。他人の意見を聞いてはいけないということではなくて、他人の意見も聞いて、それを自分で考えていくという姿勢が自分軸を作っていくのではないでしょうか。

 

 

ボーンアゲインという言葉がある。生まれ変わったとか、信仰を新たにしたという意味だ。ドイツに行った後も自分軸が構築しきれなかったキューリングさんは、大病を克服した後ボーンアゲインの状態になり、そこからしっかりとした自分軸を作ったのだろう。

 

日本で暮らしていても、ボーンアゲインの瞬間は必ず訪れる。問題は、それに気づくか気づかないかだ。長くするべきなのは、他人軸で生きる時間か。それとも自分軸で生きる時間か。答えはもう出ているはずだ。

 

 

【書籍紹介】

ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか

著者:キューリング恵美子
発行:小学館

「残業しない」「メイクはしない」「ビールを注ぎ合わない」「子どもの成績が悪くても責めない」-。ドイツ人にとっての“常識”は、「空気を読む」のが当たり前の日本人には違和感を覚えることも多い。しかし、「ありのままの自分」を重視し、国民の9割が「自分には長所がある」と答えるドイツ社会では、シンプルで無駄のない自分たちの生活への満足度が高く、人生を満喫している。“EUの優等生”ドイツを支える人々の最強メンタルの秘訣を明かす。

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あなたにピッタリの本が一万円分届きます!北海道の書店主が起こした革命~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。仕事柄、友だちや知り合いに「何か面白い本教えて!」と言われ、悩むことがよくあります。せっかくなので、なるべくその人が読んで良かったと思える本をオススメしたいのですが、本の好みは千差万別。

 

“イヤミス”のような後味が悪い展開が好みという人もいれば、ハッピーエンドでなければ絶対イヤという人も多いと思います。ジャンルにしてもファンタジー、SF、ミステリー、純文学……とさまざま。そう考えると、自分にピッタリの本が見つかるというのは奇跡的なことかもしれません。

1万人に本を届けた書店主

今回の新書一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』(岩田 徹・著/ポプラ新書)の著者・岩田 徹さんは、北海道砂川市の「いわた書店」の店主。お客さんのために1万円分の本を選ぶ独自サービス「一万円選書」で知られています。過去に1万人に本を届けたという岩田さん。選書にはどんな想いが込められているのか、その哲学が語られます。

 

運命的なマッチングはカルテから

高校卒業後、家業のいわた書店を継いだ岩田さん。90年代以降の出版不況によって経営難に陥った書店を立て直すため、何かできることはないかと常に模索していたといいます。

 

2章「『一万円選書』の極意」では1万円選書を始めたきっかけが語られます。高校の先輩との飲み会で、本が売れない窮状をこぼしていたところ、先輩が「これで、俺に合うおもしろそうな本を見繕って送ってほしい」と1万円を渡してくれました。「これは本屋にとって究極の問いだ」と悩んだ末、先輩の人となりを考えて本を選ぶと「おもしろかった」という言葉とともに、「俺みたいなやつが100人もいたら、本屋の経営も安定するべ」とヒントをもらえたそうです。

 

こうして2007年から「一万円選書」を始めるも反応は芳しくなく、店を畳もうかと考えていた2014年、テレビ朝日の深夜番組に取材されたのをきっかけにブレイク。今では3000人以上が待つ人気サービスになったのです。

 

では、どのように選書しているのでしょうか。そこも気になりますよね。岩田さんのやり方は、まずお客さんに「選書カルテ」を書いてもらうことから始まります。「これまで読まれた本で印象に残っている20冊を教えてください」「これまでの人生で嬉しかったこと、苦しかったことは?」「これだけはしない、と決めていることは?」。お客さんはこのカルテを書くために自分の人生と向き合います。もちろん岩田さんも、お客さんのために真剣に集中し、営業日の午後3時~5時は店を閉めて本を選ぶ……。実際に会っているわけではありませんが、人生と人生が交差して本が導き出されているのがわかります。

 

3章「僕はこうやって本を選ぶ――いわた書店珠玉のブックリスト」には、岩田さんがよく選ぶ本が紹介されています。特に、一番選書しているという本の作者は私も大好きな作家さんでした。人生の岐路・進路に悩んでいるあなたへ、孤独や焦りを抱えているあなたへ、人と比べて嘆くあなたへ……。全部で60冊ほど挙げられています。そのリストは本書を読んでのお楽しみ。ちなみに、私も「仕事に疲れている」という人がいると必ずオススメする小説があります。それはまた別の機会に。

 

選書を始めてから14年、ブレイクしてから7年。手から手へ、本を届けている実感が持てている今、本屋さんの仕事が本当に楽しいという岩田さん。人生で失敗を重ねながらも信念を持って書店の仕事を続けてきた岩田さんの言葉は誠実で、温かさを感じます。挙げられている本も小説ばかりでなく、写真集やノンフィクション、詩集などバラエティに富んでいて読書ガイドとしても良質。街の小さな本屋さんに行って店主と好きな本についておしゃべりしたくなる。そんな新書でした。

 

 

【書籍紹介】

一万円選書 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語

著者:岩田 徹
発行:ポプラ社

経営難にあった北海道砂川市の「いわた書店」が、2007年から始めた「一万円選書」。読者の心の琴線に触れる選書術で、生きづらさをも包み込んでくれるなど、多くの感動を生んでいる。いわた書店の哲学を伝えるとともに、話題の選書サービスを疑似体験できる1冊。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

オートミール米化で「40キロ痩せた」これぞうさんおすすめ! 「ハヤシ飯」が旨すぎて毎日食べたいレベルだった

2021年「売れたものランキング」によると、前年度から291%増でオートミールが1位だったそう。

 

ダイエットにいい、栄養素が豊富で低カロリー、便通にいいと“いいこと尽くし”なのは知っていますが、その見た目から「でも、美味しくないでしょ……?」と疑っていた私。グラノーラに入っているオートミールは食べたことがありましたが、無味! 鳥の餌みたい! と正直ネガティブなイメージが強く、美味しく食べられないと考えていました。

 

そんなマイナスイメージのオートミールでしたが、『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』(これぞう・著/学研プラス・刊)に掲載されているレシピを試してみてびっくり……。食べながら「これってもう、米じゃん!」と何度も叫んでいました。レシピ本を参考に3日間(しかも昼だけ)米化したオートミールをアレンジしながら食べていましたが、驚くことに体重が1.5キロ減……。マジかっっっ!!

 

ということで、今回は12月16日に発売されたばかりの『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』の著者・これぞうさんにインタビューし、私のようなオートミール初心者でも食べやすいレシピを教えていただきました。さらに、実際にオートミール米化を初体験! その模様もお届けいたします。

 

【『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』について詳しくはこちら

 

そもそも「オートミール米化」とは?

スーパーで見かけるオートミールは、コーンフレークなどと同じコーナーに並んでいるため、「牛乳などに浸して食べる」というイメージがあるかもしれません。ふやけて、べちゃっとしたオートミールって正直美味しくない!(笑)

↑一般的なオートミールのイメージってこんな感じですよね?

 

しかし、水の量を減らして電子レンジで加熱するだけで、あら不思議! 「オートミール米化」され、ぷちぷち&ほかほかのお米のような食感に。これにより、お米のようにオートミールを食べることができ、アレンジの幅も無限大。主食をオートミールに置き換えても無理なく続けられるようになるんだとか。

 

▼オートミール米化「基本の作り方」

オートミール30gに、水50mlを加えて、500Wの電子レンジで1分加熱する

 

そんなオートミール米化によって、マイナス40キロのダイエットに成功したのが、今回お話を伺うこれぞうさん。レシピ本は15万部を売上げ、Twitterのフォロワーも10万人以上。「無理なく美味しく痩せられる!」と多くダイエッターたちから支持されています。

 

【『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』について詳しくはこちら

 

2年でマイナス40キロ! オートミール米化で健康な体を手に入れたこれぞうさんにインタビュー!

ここからは、これぞうさんに「オートミール米化」について、そしてどうやってダイエットを成功させたのか、リモートでお話をお伺いしました。

 

●これぞう/1984年生まれ。オートミールを米のように調理し、主食に置き換えるオートミール米化レシピ研究家、オートミール米化ダイエットアドバイザー。自らもオートミール米化により105キロ から65キロへの減量に成功。TV番組等の出演多数。

 

——早速なのですが、これぞうさんとオートミールの出会いから教えてください!

 

「出会ったのは、今から7年ほど前ですね。僕は中学生のころから、ず〜っとダイエットし続けていた人間で……ピーク時には105キロありました。30歳ごろに糖質制限ダイエットを始めたのですが、その時に初めて『オートミール』の存在を知ったので、そこからですね」

 

——105キロもあったんですか……!?  今のこれぞうさんからは想像できません。

 

「体重が落ちてもリバウンド、また無理なダイエットで一時的に体重を落とす。リバウンド……を何度も繰り返していたんですよ」

 

——オートミールと出会ってからはリバウンドをしていないのでしょうか?

 

「はい。最初は、リゾットとかお粥とかオートミールの食べ方もワンパターンで『こりゃ飽きるな……』と、またリバウンドしてしまうところだったのですが、オートミール米化を発見してからは、面白いくらいに痩せていきました。どうアレンジしても美味しいし、和洋中さらにはスイーツまで、あれも美味しい、これも美味しい、と食べすぎてお腹いっぱい! でも痩せちゃう! って(笑)。元々、食べることが大好きだったので、お米のように飽きずに続けられました」

 

——米化されたオートミールの「味」が想像できないのですが、どんな味わいになるのでしょうか?

 

「米化と言っても、お米の味になるわけではなく、オートミール独特の香りと風味があります。食感はプチプチでほかほかで、少し甘みのある玄米や雑穀ご飯のような味わいですよ。卵かけご飯や納豆、コンビニで販売されているカップスープなんかとも相性バッチリです。何より電子レンジで1分でできてしまう手軽さも魅力です。炊飯器で炊く必要がないので、ズボラさんにもおすすめですよ」

 

——気になってきました(笑)。オートミールを初めて食べる方におすすめの種類はありますか?

 

「粒が細かくてクセの少ない、クイックオーツタイプがおすすめです。最近はブームになってきたので、本当にたくさんの種類が販売されています。スーパーでも手軽に購入できますよ」

 

——たしかにスーパーでよく見かけますね! 結構、量が多いなぁ〜という印象なのですが、食べきれますか?(笑)

 

「たくさん入っているように見えますが、だいたい1日に30〜40グラムくらいを摂取する想定で考えると、250グラム前後が一般的な販売サイズなので、10日くらいでなくなっちゃいますよ。あと、オートミールって『毎日絶対○○グラム摂取』のようなルールもないんです。朝だけでもいいし、3食オートミールでも、1日置きでも。自分が食べたいなぁと思った時に食べてもらえればと思います」

 

——なんて自由! それで痩せられるってすごいですね。

 

「初めて米化すると『これじゃ足りないよ』って思う人も多いと思うんですけど、食べてみると腹持ちがすごく良くて、20倍くらい膨れます。あとは、粒の大きいロールドオーツとクイックオーツをブレンドして、好みの硬さにするのもおすすめですね」

 

——レシピの豊富さにも驚きますが、ブレンドして好きな硬さにできるとか奥が深いですね〜

 

「12月16日に発売される『オートミールがっつりヘルシーレシピ』では、おにぎりやスープジャーを使った外出時におすすめのレシピもご紹介しています。毎日のお弁当にも取り入れやすいですし、職場に電子レンジがあれば、耐熱容器ひとつで米化できてしまうので、職場でチャチャっと作れますよ」

 

【『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』について詳しくはこちら

 

新刊『オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ』からおすすめレシピをご紹介

——ここからはこれぞうさんに、おすすめのレシピをご紹介いただきたいのですが、フォロワーさんから反響の大きかったレシピにはどんなものがあるのでしょうか?

↑もやしカルボリゾット

 

「『オートミールがっつりヘルシーレシピ』はどれもおすすめですが、フォロワーさんから反響が大きかったのは、もやしカルボリゾットですね。クリーム系の食べ物ってハイカロリーなイメージがありますが、このもやしカルボリゾットなら、カロリーは386kcalで、糖質も27.7gで抑えられます。ダイエット中にカルボナーラが食べられる喜びを感じてもらえますよ」

 

 

——美味しそう……。もうひとつイチオシレシピを教えてください。

↑ハヤシ飯

 

「今回のレシピ本でイチオシなのがハヤシ飯です。市販のデミグラスソースで簡単に作れちゃいますよ。このオートミールは、クイックオーツでも美味しいですが、炒める系のレシピで使う際にはロールドオーツもおすすめ。好みの食感を探しながら、一度試してもらいたいレシピですね」

 

↑しらすバターTKO

 

——お肉が入っているのにカロリー290kcalなんですか? 5杯くらい食べたいです(笑)。あとTKOというのも気になったのですが……。

 

「たまごかけごはん(TKG)ならぬ、たまごかけオートミール(TKO)です。普段、一番食べているのはTKOかもしれませんね。米化して、卵と好きな味付けでササっと食べたられるので、お手軽で美味しいです。あとオートミールのすごいところは、スイーツもできちゃうんですよ。グラノーラを食べている方も多いですが、ティラミスや蒸しパン、きなこ棒と幅広いアレンジができるのも魅力です」

 

——レシピの写真を見ているだけでも「これで痩せるの?」って思っちゃいますね(笑)

 

「無理なダイエットをしている方にぜひお手にとってもらいたいですね。これまで僕が色々と試してきた中で、美味しくてヘルシーなレシピを掲載しています。ダイエットや糖質制限で『食べることを我慢している』という人にもおすすめしたいです。このレシピを試していただければ、食べる楽しさはそのままに、糖質制限できるので、オートミール米化ならもう我慢しなくていいよ♪ とお伝えしたいです」

 

これぞうさんのレシピに挑戦してみた!

これぞうさんにたっぷりとオートミール米化の魅力を教えてもらったところで、私も3日間オートミール生活をしてみました。

 

まずは「オートミール米化」に初挑戦! オートミールを電子レンジでチンしたときは、ふわっと独特な香りがただよい食べられるかな? と不安になりましたが、試しに一口食べてみると、甘味とぷちぷち食感がたまりません。

 

↑オートミール米化した直後。レンズが曇るほどほかほか〜♪

 

そんな初体験にドキドキしながら、初日はコンビニのカップスープに米化したオートミールをどぼん。そのまま食べても美味しくて、「え、おいしいじゃん」と、いい意味で予想を裏切る味わいでした。

さらに、食べ進めているとゲップが。そう、食べながらお腹がいっぱいになってきているのです……! オートミールおそるべし。

 

これなら続けられる! と、そのまま「きなこ棒」にもチャレンジ! ちょっと温めすぎて硬くなってしまいましたが、小腹がすいた夕飯前に食べたからか、夕飯はほんの少しでもお腹いっぱいになってしまいました。

 

そして2日目の朝。起きて1時間以内に快便で「なんだか体が軽い!」。そんな1日の始まりを迎えます。内臓もぐるぐると動いている感じがして、体の内側から「私は元気だよ〜」と声が聞こえてきそうな状態に(笑)。

 

この日のお昼は、しらすバターTKOにチャレンジ! 米化したオートミールに、卵とオクラ(冷凍)を混ぜて、バターを加え20秒レンジで加熱。最後にしらすとしょうゆをかけて完成という3分ほどでできちゃうめちゃ簡単レシピでした。

これが普通の卵かけご飯よりうまい! ふわっふわの食感で、オートミールを食べている感覚を忘れます。卵とオートミールの甘さがベストマッチで「これで229kcal、糖質も18.9gなんて、まさにギルティフリーな食べ物!」 と大満足でした。

 

そして3日目、これぞうさんイチオシのハヤシ飯に挑戦。

 

これはもう、店の味だぁー! 市販のデミグラスソースで作りましたが、ファミレスで食べる高カロリーなハヤシライスそのもの! ちょっぴり材料が多いので「難しそうだなぁ〜」と思うかもしれませんが、作ってみると10分かかりませんでした。もう毎日食べたい! と思うくらいお手軽です。

 

ハヤシといっても煮込む必要がないからフライパンもチャチャっと片付けられるし、しめじがいいアクセントになってめちゃうま! 本当にこれは、みんなに作ってほしい! 見た目には少ないように感じますけど、これでお腹いっぱいになっちゃうんです!

 

さらに……驚きなのが体重の変化。

 

なんと、3日間で1.5キロ痩せました!!!!!! 特にウエスト周りの変化がすごかったです。ぽっこりしていない! これぞうさん、ありがとうございます(涙)。毎日快便ですし、何より体が軽い! 腸の中を大掃除してくれているようなそんな感覚になりました。

 

今は、改めて『オートミールがっつりヘルシーレシピ』を読み直し、掲載されている80以上のレシピを全て試してみようと挑戦中です(笑)。人生初めてのオートミールを購入した時には、量の多さに「食べ切れるかな?」と心配でしたが、今は食べ切れる自信しかありません。むしろもう一袋追加したい!

 

私のようにまだ試したことがない人だけでなく、すでに自宅にオートミールがある方、オートミールに食べ飽きた方、「米化レシピを詳しく知りたい」と思っている方まで、どんな人でも満足度高く楽しんでいただけると思います。

 

紹介されているレシピはお手軽でおいしいものばかりなので、自宅はもちろん職場や学校など、外出先でも作ることができます。ぜひとも毎日の生活に「オートミール米化」を取り入れてみてくださいね!

 

【書籍紹介】

オートミール米化 がっつりヘルシーレシピ

著者:これぞう
刊行:学研プラス

これぞうが贈る大人気のオートミール米化ダイエットレシピ、待望の第二弾!! 食物繊維 が豊富で腸にも良く、 血糖値 も上がりにくい オートミール を 米化 、がっつり食べても健康的にやせる魅惑の料理を考案し大ヒットした『オートミール米化ダイエットレシピ』最新刊。定番のチャーハン、おにぎり、リゾットをはじめ、マグロ丼、キンパ、シューマイ、ラップサンド、パフェ、さらにスープジャー弁当まで、「これもオートミール? 」と驚嘆するような魅惑のレシピを、前作を越える品数、ボリュームで掲載!  もう オートミール米化 を知っている人も、これから試してみたいという人も十分に楽しめる「新時代の主食」の作り方、バリエーションを、余すところなく紹介します。

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『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』キューリング恵美子さんに聞くドイツと日本の大きな違い【前編】

自分という存在は、自分の目にどのように映っているか。自分は、自分という存在をどれだけ肯定しているか。読み手にそんな疑問を投げかける『ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか』という本が話題になっている。

 

著者はキューリング恵美子さん。ドイツ企業の日本支社で働いているときにドイツ人男性と出会って結婚しドイツに移住、以来20年以上が経過している。かつては他人の視線ばかり気にしながら生きていたが、ドイツに渡ってから自己肯定感の基準の決定的な違いに気づいた。自分基準の自己肯定感を手に入れたきっかけは、大病を克服したことだった。久しぶりに里帰りしたキューリング恵美子さんに、日本とドイツの文化の違いについて、お話をうかがう機会を得た(全2回の1回目)。

●キューリング恵美子(キューリングエミコ) /埼玉県出身。大学卒業後、大手靴メーカー、旅行会社を経て、ドイツ企業の日本本社に勤務。ドイツ人との結婚を機に、30代でミュンヘン近郊に移住。長男長女を出産し異文化の中で子育てに奮闘。ドイツ在住は20年を超える。また、バレエ留学生のコーディネイトやライフアドバイザーなど、起業家としての顔も持つ。50歳で大病に見舞われたのをきっかけに、ドイツ人の自己肯定感の高い生き方を見直すようになる

 

小学4年生で人生が決まるドイツの教育システム

——久しぶりの日本、いかがですか。

 

キューリング恵美子(以下キューリング) 最初は楽しかったのですが、そろそろ疲れてきました。電車が一番疲れます。あとはお店に行くと、とても丁寧なので…。

 

——ドイツで暮らし始めたばかりのころ、ノーメイクの女性の方が多かったことに驚いたとおっしゃっていますが、そのほかに、日常生活レベルで驚いたということはありますか?

 

キューリング スーツを着てネクタイを締めて通勤している男性がいないことですね。たとえば銀行員であっても、人と対面する職種の人はそれなりの格好をしていますが、スーツにネクタイは日本ほど多くありません。

 

公務員も全然ラフで、タトゥーやピアスもしています。ビザの手続きなどで外人局に行くと、Tシャツにジーンズ、タトゥーとピアスという人に当たることがあります。そういう人に対応してもらう方が楽ですよね。ビザの申請はとても緊張する場面なので、相手がそういう感じだと、手続きをゆっくり進められる気がします。

 

——本書にもあるように、小学4年生で将来の進路が決まってしまうドイツの教育システムは、日本とかなり違いますね。たとえば職業訓練コースに進んだ子どもが、中学校くらいで勉強を頑張るようになって大学進学コースに変更したくなったとしても、それは不可能なのでしょうか? また、親は子どもの進学ついてどの程度関わるのでしょうか?

 

キューリング 遠回りにはなるでしょうが、それは可能です。ドイツの職業訓練コースというのは、日本で言えば中学卒です。15歳くらいなら、もう自分の意思があります。一般的には、親がああしなさいこうしなさいということはありません。

 

もちろん個人差があるので100%そうであるということはできませんが、基本的にはすべて子どもに任せます。ただ、4年生で人生が決まってしまうのは早いと思っている人もいて、その時期をせめて6年生くらいまでに引き上げようという話も出ています。子どもたちは、自分ではどうしようもないので、やるしかないという気持ちになるようです。

 

——大学受験コースに入るための私塾のようなものはありますか?

 

キューリング 私がドイツに行った20年ほど前には、まったくありませんでした。息子が小学校4年生くらいの時から、プライベートの塾のような施設が少しずつできてきました。それに、スペイン語・ラテン語・英語といった教科別の塾はあります。ただ、実際に通っているのは数パーセント程度だと思います。

 

最近いいなと思ったのは、学校で高学年の生徒を募集して、上の学年の生徒が下の学年の家庭教師をするというシステムです。ドイツでは幼稚園くらいの年代から年下の子を助けるという習慣があって、それが大人になっても続くので、困っている人を見かけたら手を差し伸べるのがごく普通です。私も、子どもが小さかったころはしょっちゅう手伝ってもらっていました。男性でも女性でも、ドアを押さえて後ろの人を先に通すのもごく当たり前です。日本では、そうする人は少ないですね。

 

——ドイツのお母さんが、他の子どもと自分の子どもを比べることはありますか?

 

キューリング ドイツのごく普通の家庭のお母さんは、他人がどうこうということを基準にしません。自分の子であれ他人の子であれ、子ども自身の能力なので、比べても仕方ないからです。私が知っているお母さんたちは、子どもの学業成績が悪くても、あなたが好きなように生きなさいというスタンスで、文句を言うことはないですね。

 

自分と子どもは別の存在なので、子どもを自分のもののように考えることもありません。あなたはあなた、私は私という感じです。お互いが尊重し合っているということになるでしょう。あなたも私も個人。そういう位置づけです。日本ほど他人と自分を比べたり、他人を気にしたりする習慣がないというか、そういう風には生きていません。それに、小さいころから子どもの意見を尊重します。

 

ドイツ人には「合コン」が理解できない?

——働く独身女性の典型的な1日を教えてください。

 

キューリング 朝会社に行って、時間通りきっちり仕事を終えて退社し、ビーチバレーであったりコーラスであったり、友達と一緒に趣味に充てる時間を過ごします。

 

——合コンとか女子会とか、そういうニュアンスの集まりはありませんか?

 

キューリング ない…ですね。アルコールは飲みますが、そういう時は気の合う友達同士で集まります。合コンはありませんね。ドイツで流行らせましょうか(笑)。ドイツ人は、合コンの意味が分からないと思います。出会いに関しては、インターネットでのマッチングが流行っています。

 

——合コンの主旨と仕組みを説明したら、理解してもらえるでしょうか?

 

キューリング 「あー、そうなの」で終わりでしょう。「どうしてみんなで行くの?」と尋ねられるでしょうね。「個人的な関係を作ろうとするのに、みんなでするのはなぜ?」と、 説明されてもわからないと思います。ドイツ人は、お見合いも理解できないと言います。前提として結婚があって、ただ引き合わされる意味がわからないのです。マッチングアプリだったら様子を見ながらお付き合いして、最終的は結婚につながればいいよねという感じでしょうか。

 

——日本では忘年会、アメリカではオフィスでのクリスマスパーティーなどがありますが、ドイツでもこういう種類のイベントはありますか?

 

キューリング あります。ドイツに移住して主人が初めて務めた会社では、家族全員で参加してくださいという主旨で、大きな会場を貸し切ってバンドも呼んで、盛大なクリスマスパーティーがありました。最近も、従業員だけということなら、いろいろな企業で行われていると思います。クリスマスは特に大切なので、パーティーはします。

 

決算期にもパーティーが開かれることが多いですね。「今期の業績はよかった。乾杯!」という感じです。あとはオクトーバーフェストのときに会社がテーブルを貸し切ってお客さんを呼んだり、社員が行ったりして騒ぎました。頻繁ではないですが、年に何回かはこうした機会がありますね。

 

私は日本にいたときにドイツの会社で働いていて、そこで夫と出会いました。その時も会社のクリスマスパーティーがあって、プレゼントまで出してくれたり、女性には社長から花束が贈られたりしました。これはドイツ風です。働けっていうだけじゃなく、たまには緩くみんなで楽しもうということです。メリハリですね。

 

——ちなみに、ドイツに、ミスコン的なイベントはありますか?

 

キューリング ありますね。ただ、日本ほど盛り上がりませんし、それほど大がかりなものでもありません。最近では背が高くて痩せていることがトップモデルの条件ではなくなってきています。ちょっとぽっちゃりしている“カービーモデル”や、障害があるモデルさんもチャンスを貰えるようになってきています。

 

日本には美魔女コンテストというのがありますよね。日本では細くてキレイなまま年齢を重ねていかなきゃならないんだなと思います。ドイツにいると、ぽっちゃりでも太っていても自分に合っている服を着てさっそうと歩いている人がたくさんいます。そういうほうが生き易いと思います。

 

男性にとっては、キレイな女性がたくさんいたほうがいいかもしれないので、違う意見があるかもしれませんね。いつもキレイにしておしゃれに過ごしているのもいいかもしれないけれど、自分がそうするとしたら苦しくなってしまいます。私はドイツ女性特有の、のびのびと生きている姿がいいなと思います。

 

【後編につづく】

 

【書籍紹介】

ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか

著者:キューリング恵美子
発行:小学館

「残業しない」「メイクはしない」「ビールを注ぎ合わない」「子どもの成績が悪くても責めない」-。ドイツ人にとっての“常識”は、「空気を読む」のが当たり前の日本人には違和感を覚えることも多い。しかし、「ありのままの自分」を重視し、国民の9割が「自分には長所がある」と答えるドイツ社会では、シンプルで無駄のない自分たちの生活への満足度が高く、人生を満喫している。“EUの優等生”ドイツを支える人々の最強メンタルの秘訣を明かす。

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なんだかんだでシンプルが一番おいしい! 寒い時期にぴったりな『体にいい煮込みおかず』

日に日に寒さが増してきて、あったか〜い食べ物や飲み物にひかれる今日このごろ。大きなお鍋でコトコト煮込むシチューや煮物なんて最高ですよね〜。けれど、煮込み料理は何かとワンパターンになりがち。あたたかいおかずは欲しいけれど、「先週もおでんだったなぁ〜」「またシチューか……」と飽きてしまっては残念です。

 

そこで、今回は『体にいい煮込みおかず』(齋藤菜々子・著/ワン・パブリッシング・刊)をご紹介! ささっとできるものから、じっくり煮込むものまで、60以上のレシピが掲載されています。

 

「煮込み」のメリットとは?

『体にいい煮込みおかず』では、忙しい平日でも15分以内で仕上げられる「平日ささっと煮込み」のレシピと、時間をかけてゆっくりと煮込む「休日のことこと煮込み」のレシピの2つに分けて掲載されています。

 

全てのレシピを監修しているのは、料理レシピ本大賞で「入賞」と「プロが選んだレシピ賞」のW受賞をした料理家の齋藤菜々子さん。煮込み料理の魅力を次のように語られています。

 

煮込み料理は、日々の食事で体をいたわりたいときにおすすめの調理法です。食材を水分と一緒に煮ることで、さまざまな効能の食材をたっぷりと、また栄養を余すところなくとることができます。

(『体にいい煮込みおかず』より引用)

 

スープまで余すところなく丸っといただけるのは、煮込み料理のいいところですよね。
また、おいしく煮込み料理を仕上げるポイントも『体にいい煮込みおかず』では6つ紹介されています。

 

1.鍋のサイズに注意
2.火加減は目で見て調整
3.ふたと落としぶた
4.アク取りをしっかり
5.まずはレシピ通りに
6.水溶き片栗粉は火を止めて

(『体にいい煮込みおかず』より引用)

 

4のアク取りは、結構サボりがちだったのですが(汗)、今回レシピを作ってみる際に、こまめにアクを取り除いたら、煮汁も透き通るし、味も澄んでいて、「アク取りって重要じゃん!」と驚きました。そして、もっと美味しい煮込み料理を作りたい! とアク取り網まで買っちゃいました(笑)。

 

「手羽元と長いものサムゲタン風」がお店の味なんですけど……!

掲載されているレシピの中から、今回は「手羽元と長芋のサムゲタン風」を作ってみました。

サムゲタンは丸鶏を使って、長時間かけて煮込んだスープというイメージがありますが、トータル1時間もかからずに完了。しかも使う材料は、2〜3人前でたったこれだけ。

 

鶏手羽元……8本
長いも……200g
長ねぎ……1本
(A)にんにく…1かけ/しょうがの薄切り…5枚/米…大さじ1/塩…小さじ1/2
水……600ml
酒……100ml
塩、粗びき黒こしょう……各適宜

(『体にいい煮込みおかず』より引用)

 

味付けは塩だけとシンプルですが、とってもコク深い鶏の出汁が効いていて、お店で食べる味に。外食でしか食べられないと思っていたサムゲタンがこんなに手軽にできるとは……!ちなみに、一緒に入れている長いもには「潤い補給」「アンチエイジング」の効果が期待できるため、今の時期にもぴったり。

 

長いもってすりおろしてとろろ飯にするか、細く刻んで食べるくらいしか思いつかないかもしれませんが、大ぶりに切ってスープに入れるとほっくりとサクサクが混ざった独特な食感でおいしい〜! やさしい味わいなので、夜に作っておいて残った分を翌朝に食べても最高! また手羽元はキムチと一緒に食べれば味変にもなって最後の一滴まで味わい尽くせました。

 

他にも作ってみたい煮込み料理が満載!

『体にいい煮込みおかず』は、体の不調に合わせてレシピも提案してくれます。

 

例えば、「食欲も落ちて免疫力も低下…そんな毎日が心配なときに」と紹介されているのが“豚とかぶのポン酢煮”だったり、「慢性の便秘になやんでいるなら ほくほくのじゃがいもがおすすめ」と“タットリタン風 鶏スペアリブの煮込み”が紹介されるなど、自分のお悩みからもレシピを探すことができます。

 

手間がかかると思いがちの煮込み料理ですが、はやいものだと15分程度でできてしまうレシピも。私も実際に作ってみて、煮込み料理の手軽さに驚きました。「休日のことこと煮込み」に掲載されているものも、煮込んでいる時間がかかるだけなので、リモートワーク中にもぴったり。煮込んでいる間にメールを返したり、洗濯物を畳んだり、テレビを見たり、「ながら」できるのはうれしい発見でした。忙しい年末でも、健康に気をつけながら簡単に作れるのでおすすめですよ!

 

また、一度に2〜3人分できあがるので、翌朝にもちょっと余っているのがうれしかったです(笑)。もう一度お鍋に火を入れて、前日より味が染みたおかずがまたいいんですよね〜。 煮込み料理のレパートリーを広げたい方、冬の料理のマンネリ化に悩んでいる方、手軽に美味しい煮込み料理が食べたい方、ぜひ『体にいい煮込みおかず』を読んでみてくださいね。

 

【書籍紹介】

体にいい煮込みおかず

著者:齋藤菜々子
刊行:ワン・パブリッシング

体の芯から温まりたいとき、消化がいいものが食べたいとき、エネルギー補給がしたいとき。季節やそのときどきによって変わりゆく体調に合わせて、食材により期待できる健康効果であらゆる不調を整える料理を作ることができます。身近な食材が持つ力を知って、普段の食事作りに活かせるレシピを紹介します。

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成功者の誰もがやっている「サクセス・バイブレーション」を手に入れる方法とは?

バイブレーション、あるいはバイブスという言葉がある。人やもの、そして場所に宿ったり、放たれたりしている目に見えないエネルギーという意味だ。振動とか波動という言い方もできるだろう。

 

大谷選手のマンダラチャート

LAエンゼルスの大谷翔平選手が、MVPをはじめとするMLBのタイトル11冠に輝いた。史上稀に見る偉業を紹介するくだりでよく出てくるのが、マンダラチャートだ。81マスからなる表で、中央のマスに究極の目的を書き、隣り合うマスの一つひとつに、それを実現するために必要なことを書き足していく。外へ外へと向かって同じ作業を続けていくと、中心のマスに書いた目的を達成するために日々行うべき細かなことがらが明確になる。

 

大谷選手は、高校時代からこれを実践していた。ちなみに、中心のマスに書かれていたのは“ドラ1(ドラフト1位)8球団”という言葉だ。そして27歳になったMLB4年目の今シーズン、誰も想像さえできなかった偉業を達成した。絵にも描けないサクセス・ストーリーだ。

 

それだけではない。二刀流なんていう限定的な形容には収まりきらない存在である大谷選手の素晴らしいところは、チームメイトからも敵チームからも、審判からも、そしてもちろんファンからも、関わる人たちすべてに愛されていることではないだろうか。

 

成功している人がやっていること

成功したいという気持ちは、多かれ少なかれ誰もが抱いているはずだ。まず、自分なりに成功という言葉の定義をしなければならないだろう。成功を定義して、そこへ至るための道筋を思い描き、成功している状態を少しでも長く維持するためにはどうしたらいいのか。まずは、それにふさわしいバイブスあるいはバイブレーションを宿せるよう努力することだ。

 

成功している人がやっている波動の習慣』(桑名正典・著/ワンパブリッシング・刊)は、こうしたプロセスのすべてを俯瞰していく。随所にキーワードをちりばめながら進められる流れを追いながら脳内に思い浮ぶものは、マンダラチャートに似ていると思う。もし筆者が自分のマンダラチャートを作るなら、中心のマスには本書のキラーフレーズのひとつである“代わりがいない人になる”という言葉を迷うことなく書き入れる。

 

成功の定義

章立てを見てみよう。

 

第1章:成功とは「あなたの代わりがいない人」になること
これからは「あなたの代わりがいる人」は生き残れない!

第2章:「自分にしかできない才能・スキル」を磨く
喜びを生む3つの力で、唯一無二の人になる!

第3章:多くの人にいい影響を与える「人間関係力」を高める
影響力と応援される力を身につけよう!

第4章:「最大の価値を創造する力」を持つ
創造する価値を最大化する「2つの力」を身につけよう!

第5章:さらに強い波動を手に入れ、成功し続ける秘訣
「もっと高みへ」といつも挑戦していく!

 

ご覧のとおり、どの章タイトルにもポジティブな響きに満ちた言葉が並んでいる。本書のタイトルにもなっている“波動”という言葉については、まえがきで次のように定義されている。

 

「成功するための波動」のことを、本書では「サクセス・バイブレーション」と呼んでいます。サクセス・バイブレーションを身に着けることで、

・会社や社会、多くの人から必要とされ続ける

・多くの人から愛されながら、商品やサービスが売れ続ける

・多くの人に影響力を与え、尊敬を得ることができる

という状態になっていきます。

『成功している人がやっている波動の習慣』より引用

 

これで、成功の定義はしっかりと固めることができた。

 

成功して、その状態を持続させる方法

次に大切なのは、サクセス・バイブレーションを手に入れるための方法論だ。著者の桑名氏は、以下に示す3つのことがらに取り組むことで、どんな人でも身につけることができると語る。

 

・「自分にしかできない才能・スキル」を磨く

・「多くの人にいい影響を与える人間関係力」を持つ

・「最大の価値を創造する力」を身につける

 

この3つの軸をさらに細分化して説明されていくわけだが、その階層的構造がまさにマンダラチャート的なのだ。

 

サクセス・バイブレーションを手に入れ、成功した状態を持続させるためには何をすべきか。ごく簡単な言葉を使うなら、「自分への投資」だ。

 

自分の才能がさらに開花すること、自分の腕がさらに上がること、自分のサービスをさらに多くの人に届けること、そのために積極的に自己投資をしましょう。自己投資し、他にはないレベルに成長したり、必要としている多くの人に届けることで、サクセス・バイブレーションはより強くなっていきます。

『成功している人がやっている波動の習慣』より引用

 

この本は、自分なりの成功を定義し、それを実現し、さらに可能な限り持続させていくための、それぞれのプロセスをつまびらかにしてくれる。今年—いや今までの自分を振り返り、来年からの自分に思いを馳せるためにぴったりな一冊になるだろう。

 

【書籍紹介】

成功している人がやっている波動の習慣

著者:桑名正典
発行:ワン・パブリッシング

成功者は、高くて、強い波動を発信していた!! これからは、自分だけの「才能」を発見し、「価値」を磨くことで、望む未来が手に入る!「あなたの代わりがいない人」になれば、仕事、人、情報、お金、チャンスが押し寄せる。

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YouTubeチャンネル登録者数37.2万人のスイーツチャンネル「Chez Sucre砂糖の家」のレシピが遂に書籍化!

『贈りたくなるスイーツ』は、YouTubeの大人気スイーツチャンネル「Chez Sucre砂糖の家」に投稿されているスイーツレシピを厳選して掲載した料理本。

クリスマスやバレンタイン、ホワイトデーなどに作って、大切な人に贈りたくなるような見た目が美しく、ほどよい甘さの上品なスイーツを初心者の人でも作れるように丁寧に解説しています。この本で初公開となる新作レシピも多数紹介しています。

 

特別なお菓子の”型”がなくても作れる、初心者必見のレシピ掲載

スイーツ作り初心者の最初のハードルとなるのが調理道具。特別な型やオーブンがないから作れない…、なんてこともあるのではないでしょうか。

 

本書では身近に手に入る牛乳パックを使ったお菓子の”型”の作り方から紹介。その型を使用して作るケーキはYouTubeチャンネルでも人気のレシピです。そのほかにも特別な型やオーブンを使用しないスイーツレシピを多数紹介しています。

 

 

YouTubeチャンネルで大人気のスイーツを一挙紹介!

Chapter3ではYouTubeチャンネルで再生回数が多かったり、実際に作ったという感想が多かったりと、ミルクレープやクッキー、タルトなどの反響の大きい人気のメニューをまとめました。

 

Chapter4では初心者でも作れるベイクドスイーツを紹介しています。ベイクドスイーツはハードルが高いと思う人もプロセス通りに作れば大丈夫。焼き上がり後に感動すること間違いなしのスイーツレシピばかりです!

 

[商品概要]

贈りたくなるスイーツ

著者: Chez Sucre砂糖の家
定価: 1430円 (税込)

【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4651201474/
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あらゆる体調不良を食材の力で整える「煮込み料理」が満載!−−『体にいい煮込みおかず』

『体にいい煮込みおかず』は料理レシピ本大賞2021で「入賞」「プロの選んだレシピ賞」をW受賞した料理家・齋藤菜々子さんの最新刊。忙しい平日にささっと15分以内で仕上げるレシピと、ゆっくり休日にことこと煮込むレシピを紹介。国際中医薬膳師である著者の知識から、それぞれの料理で使われている食材から期待できる健康効果をピックアップして掲載しています。

 

あらゆる体調不良を食材の力で整える煮込み料理

体の芯から温まりたいとき、消化がいいものが食べたいとき、エネルギー補給がしたいとき。季節やそのときどきによって変わりゆく体調に合わせて、食材により期待できる健康効果であらゆる不調を整える料理を作ることができます。身近な食材が持つ力を知って、普段の食事作りに活かせるレシピを紹介します。

 

 

平日ささっと煮込み&休日ことこと煮込み

part1の「平日ささっと煮込み」では、時間のない平日でも手間なく、15分以内で仕上がるレシピを紹介しています。フライパンで作ることができるから片付けがラクラクです。Part2の「休日ことこと煮込み」では、大きな塊肉や大きく切った根菜などを使ってじっくり煮込み料理を紹介します。とろとろほくほくで心も体も癒してくれるとっておきのレシピです。

 

不調は「治す」ではなく「防ぐ」という考えを

「体の不調を治すことも大事だけれど、不調にならないことが何より大事」というものが「予防医学」の考え方です。毎日の食事から小さな不調も防いでいくためにも、食材から期待できる効能を知っておくことで、普段の食事に活かすことができるのです。

 

[商品概要]

体にいい煮込みおかず

著者: 齋藤菜々子
定価: 1430円 (税込)

 

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癒しじゃないの? 江戸時代「レンタル猫」の意外な仕事——『絵で見る江戸の女子図鑑』

江戸時代の人はリサイクルを考えたり、おしゃれに気を使っていたりと、現代に近いところがあります。そして江戸時代の女性の職業にも、現代とかなり通じるものがあったようです。

 

働く江戸の女性

江戸時代の女性の仕事と聞くと、ついつい思い浮かぶのは大奥でのおつとめや吉原の花魁など、華やかな世界です。しかし、庶民の世界でも女性は大活躍していました。

 

江戸時代の絵には、行商で、魚やアメなどさまざまなものを売り歩く女性の姿が多く描かれています。また、小間物屋や茶屋などで忙しく働く女性も大勢いました。時代劇にもよくお茶屋の娘さんが出てきますよね。

 

江戸時代のレンタルペット「猫屋」

絵で見る江戸の女子図鑑』(善養寺ススム・著/廣済堂出版・刊)の「女性の生業百姿」の項目には、江戸時代の女性の仕事がたくさん紹介されています。それを見ると、当時の賑やかさが垣間見えるようで、楽しくなります。

 

なかでも驚いたのは「猫屋」。猫を売ったり貸したりする仕事があったようなのです。当時はウサギをペットとして飼うのが大流行していて、かなりの高値で売買もされていたようですが、猫を売る女性もいたのですね。

 

現代でもレンタルペットという業種がありますが、これは寂しい現代人のひとときの心の癒しのために貸し出されているもの。しかし江戸時代は、猫はネズミよけに貸し出されていたそうで、また別のニーズがあったようです。

 

江戸時代のスタイリスト「すあい」

また、依頼を受けて着物や小物を仕入れ、コーディネートをして販売する「すあい」という仕事もありました。本には「セレクトショップのようなもの」とあるので、彼女が買い付けてくる品を楽しみにしている女性たちもいたのでしょう。

 

江戸時代の女性はアクセサリーは髪飾り以外はほとんど付けなかったというので、きっと素敵な櫛やかんざしなどもあったことでしょう。買い付けは国内に限られていたのかそれとも舶来品もあったのかも気になるところです。

 

江戸時代の結婚相談所「口入れ屋」

新鮮だったのは「口入れ屋」です。口入れ屋が職業紹介業だということは知っていたのですが、なんと結婚相手も紹介してくれていたそうなのです。ハローワークと結婚相談所の兼業は、考えようによってはとても合理的です。たとえば同業の人と結婚したいというニーズにもすぐに応じることができそうです。現代日本でもこうした形態の業種があってもいいのかもしれません。

 

さらに、長屋に入居する際の保証人にもなってくれていたそうなので、人を介するよろずのことに関わっている奥深い職業だったようです。転職、結婚、転居と人生のさまざまな転機に口入れ屋が寄り添っていたことが想像できます。

 

江戸時代のプロデューサー「御次」

大奥にも興味深い役職がありました。「御次(おつぎ)」という、大奥での宴会の準備をしたり、自らも芸を披露したりする係です。さまざまな芸をすることができ、さらに周囲の心をひとつにして場を盛り上げる技術なども必要とされたので、芸人としてだけでなく、イベントプロデューサーとしての業務も担っていたようです。

 

本によるとイベントは季節ごとに行われていたようなので、どのような演出にするか毎回趣向を凝らしていたのではないでしょうか。また、芸を行う様子を見初めた大名などからお声がかかることもあったそうで、大抜擢されるチャンスのある魅力的な地位だったようです。

 

江戸時代でも女性はさまざまな工夫をしながら仕事をこなしていたであろう様子が伝わってくると、こちらも頑張ろうという気持ちにさせられます。現代は江戸時代よりはずっと職業選択の幅も広がり、自分がやりたいことに挑戦する機会もたくさんあり、江戸時代の女性たちから見たらうらやましく思われるところもあるのかもしれません。

 

【書籍紹介】

絵で見る江戸の女子図鑑

著者:善養寺ススム
発行:廣済堂出版

錦絵のリメイクを中心に、江戸時代に生きた女性たちのくらしとファッションを解説。習い事いっぱいの江戸娘。三行半だけじゃ離婚できない!女性の仕事いろいろ。江戸時代に着物や髪型はいろいろ変わった!

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成功者は、才能ではなく「成功するための波動」を身につけていた!『成功している人がやっている波動の習慣~サクセス・バイブレーションを身につけたら、人生は思いどおりになる!』

『成功している人がやっている波動の習慣』は、これからの時代にもっとも必要な「成功するための波動(サクセス・バイブレーション)」を身につける方法を解説した本です。

 

成功者は、「高くて、強い波動」を発信していた!

成功者は、いいものを引き寄せる「波動」を持っています。それは、いいものを引き寄せる波動を身につけているからです。波動には、「共鳴現象」という「同じ波を持った者同士が響き合う」という性質があります。

 

つまり、あなたがいい波動を持っていれば、あなたはそのいい波動と似たような波動である「いい現実、いい人、いい情報、いい仕事、チャンス」などと出会うようになります。

 

そして、成功者は、その波動が「高くて、強い」のです。だから、より多くの人やモノに影響を与えるため、いい出会い、いい情報、いい仕事、チャンスが集まるようになっているのです。

 

「サクセス・バイブレーション」を身につけるための3つの能力

サクセス・バイブレーションを身につけるために必要なのは、①「自分にしかできない才能・スキル」を磨く、②「多くの人にいい影響を与える人間関係力」を持つ、③「最大の価値を創造する力」を身につける、という3つの能力です。

 

①「自分にしかできない才能・スキル」は、人に「喜びを生み出す才能・スキル」のことです。②「多くの人にいい影響を与える人間関係力」は、「多くの人から信頼される力・応援される力」です。③「最大の価値を創造する力」は、いま提供できる価値を、時代が求める価値に高める能力のことです。

さらに強い波動を手に入れ、成功し続ける方法

成功は、一時的にはできても、成功し続けることは困難です。成功し続けるための秘訣は、とにかく波動を下げないこと、弱くさせないことです。常に波動を高く、強くしておくことです。

 

そのためには、自己投資、お金の使いみちをちゃんと考える、波動のいい場所で仕事をする、浄財する、お蔭さまを忘れない、など、多くの成功し続けている人たちの習慣を解説しています。

[商品概要]

成功している人がやっている波動の習慣

著者: 桑名正典
定価: 1760円 (税込)

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ロボットが人間になる日は来るか?世界的権威が語るロボット開発から見えた“人間”~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。つい20年ほど前まで、ロボットの二足歩行といえば、アシモがカクカクと歩く程度でしたが、最近は上手にバランスを取って歩くどころか、走ったり、バク宙したりするロボットも登場してきました。

 

コンピュータで作った表情も、昔はどこか不気味でしたが今はかなりナチュラル。ロボットが人間のように動き、コミュニケーションを取る時代が近づいています。そうなると人間とロボットはどこで区別するのか……。ワクワクと同時に怖さもありますね。

ロボット学の権威が語る人間の本質

今回紹介する新書ロボットと人間 人とは何か』(石黒 浩・著/岩波新書)の著者は、人間型ロボット研究の第一人者としてテレビにもしばしば出演する大阪大学教授の石黒 浩さん。『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』(講談社現代新書)、『どうすれば「人」を創れるか―アンドロイドになった私』(新潮文庫)など著書も多数です。この9月にはアバター技術によって人々の可能性を拡張するというベンチャー企業「AVITA株式会社」も立ち上げています。

 

ロボットとの対話から見えてくるもの

石黒さんは本書の冒頭で、ロボット研究のふたつの役割を挙げています。ひとつはロボットを開発して人間に役立たせるという技術的側面。もうひとつは人間のようなロボットを作ることで、人間について知るという科学的側面です。

 

このようなロボットに関する学問を、石黒さんは「ロボット工学」ではなく、ロボットから人間そのものを理解する「ロボット学」として提唱しています。確かに、ロボットを人間に近づけるということは人間を見つめることにつながりますね。

 

第1章では石黒さんの代表的な研究である遠隔操作ロボット「ジェミノイド」が取り上げられています。石黒さんそっくりの顔をしたジェミノイド(ジェミニは「双子」という意味)は、国内外の会議で石黒さんの身代わりとして講演を行います。

 

遠隔地にいる石黒さんの声と顔の動きをコンピュータが取り込み、ジェミノイドが表情まで再現する……。講演では本人よりもジェミノイドのほうが人気が高いそうで、石黒さんは「自分のアイデンティティとは何か」という問題に直面し、「人間に酷似したロボットを開発することで、それにより人間を深く理解できる」と気付いたのだとか。

 

このあと2章と3章では、人と対話しながらサービスを提供するロボットや、実在の人物をモデルにしたアンドロイドなど、石黒さんが実際に携わってきたプロジェクトについて語られています。そして中盤以降は、本書のメインとも言える、ロボット研究から見えてきた“人間とは何か”が考察されます。

 

コミュニケーションの苦手な私が「なるほど」と思ったのは、4章の「自律性」。石黒さんが開発したアンドロイド「エリカ」は、人間に近い自律的な対話を目指したロボット。

 

エリカには主に5つの内部パラメータ、「気分」「対話相手への好感度」「自己開示の度合い」「わがまま度合い」「相手との関係性」が設定されています。また、対話の際には、常に相手の表情や動作、発話パターンを認識し、対話者が好意的に反応しているかどうかも判断しているそうです。

 

そして、自分も相手も気分が高まっているとわかると、より個人的な話題を提案するように。一方で、相手が対話に熱心でないときはエリカも次第に話さなくなり、うつむいてスマホを見る……。この章を読むと、人と人との関係性や相性がどのようにして決まってくるのか、その一端がわかるような気がします。

 

ホテルや高齢者向けの対話サービスロボットのメリット、夏目漱石などの偉人アンドロイドの製作方法、脳波で操作する「第三の腕」に見る人間の可能性……。その道の第一人者でありながら、石黒さんの他の本と同様に専門用語は少なめで、ロボットに関する最先端のトピックがわかりやすい言葉で説明されています。いずれ到来するであろう人間型ロボットと人が共生する社会はどうなるのか。人間存在について、哲学書のように考えさせられる一冊です。

 

【書籍紹介】

『ロボットと人間 人とは何か』

著者:石黒浩
発行:岩波書店

ロボットを研究することは、人間を深く知ることでもある。ロボット学の世界的第一人者である著者は、長年の研究を通じて、人間にとって自律、心、存在、対話、体、進化、生命などは何かを問い続ける。ロボットと人間の未来に向けての関係性にも言及。人と関わるロボットがますます身近になる今こそ、必読の書。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

じつは化石の宝庫の沖縄で、旧石器時代のドラマとロマンに魅了される−−『島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』

今から30万年前、人間の祖先はアフリカで暮らしていたと言われています。その中の一部の人びとが故郷を離れ、移動を開始しました。その波は東アジアにまで及び、4万年前、もしくは3万年前ごろ、海を渡って沖縄の島々に到達したとのことです。学生のころにそれを知った時、いつかは沖縄に行き、遺跡を見てみようと決心しました。けれども、その後、結婚して息子が生まれると、子育てや育児に忙しく、沖縄の遺跡のことなどすっかり忘れてしまいました。人類の祖先より、目の前にいる赤ん坊の方が大切だったからです。

 

港川フィッシャー遺跡を探しあてた人

それからおよそ40年後、夫が退職記念に、沖縄の「港川フィッシャー遺跡」に行こうと言い出しました。旧石器時代を代表すると言われる遺跡を是非、見てみたいと言うのです。「港川人と言われてもねぇ、知らない人だし」と、ノリが悪い私に、夫はそこがどんなに大変なところか熱弁をふるい、録画してあったテレビ番組まで見せてくれました。こんな時、夫は旅行会社の営業マンのようです。人類学を教えていただけあって、授業するかのように情熱をこめて話します。単純な私は、次第にそんなに大切なものなら見ずになるものかという気持ちになってしまいました。

 

せっかく行くのだから、知識を仕入れておかねばと『島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』(山崎真治・著/新泉社・刊)を読みました。そして、心底驚きました。単に旅行の下調べをしようとして手に取っただけなのに、そこには驚きの内容が書かれていたのです。

 

まず、港川人を発見したのは、考古学の専門家ではなく、大山盛保(おおやま・せいほ)という一人の考古学ファンだったということに驚きました。彼は沖縄の北中城村に生まれ、15才のとき、家族とカナダに移住します。森林を切り開き、農場を経営するようになっていたのですが、日米の開戦によって、全財産を没収され、収容所での生活を余儀なくされます。そして、戦後、故郷である沖縄に帰ってきます。さぞや絶望していただろうと思いますが、彼は負けませんでした。カナダで培った英語力を生かし、通訳として活躍し、ガソリンスタンドなどを手広く経営する実業家として成功をおさめたのです。

 

ひたすらに商売に励む日々で、学問には縁のない日々を過ごしていました。ところが、1967年、55歳を目前にしたころ、大きな転機が訪れます。所有していた農園に溜め池をつくろうと買い取った石灰岩の中に、動物の化石があることに気づいたのです。興味を持った大山は、その石がどこから来たのか調べ、沖縄県具志頭村(現在の八重瀬町)で切り出された石だと突き止めます。それだけではありません。自ら発掘しようと決心するのでした。持ち前の好奇心に火がついたのでしょう。忙しい仕事の合間をぬって採石場に通い、ひたすらに発掘を続けます。そして、とうとう、のちに上部港川人とよばれる人骨の断片を発見します。

 

彼は誰かに頼まれて発掘したわけではありません。費用も自分でまかない、家族や社員の助けを借りて、ひたすらに地面を掘り続けました。何かがあるという勘が働いたのでしょうか? それとも、発掘が楽しくてたまらなくなったのでしょうか? 色々と考えを巡らせているうち、私は港川人の存在よりも、大山盛保という人物に魅了されていきました。

 

大山盛保という人物

考えてみると、考古学上、世紀の大発見を果たしたのは、専門家とは限りません。岩宿遺跡の発見者として名高い相沢忠洋も、もとは行商しながら、独学で考古学の研究を行っていました。ツタンカーメンの墓を発見したハワード・カーターも、高等教育を受けてはいませんでした。彼らは一人で学び、自分の勘に従ってスコップをふるい、偉業を成し遂げたのです。

 

感心するのは、彼は発見を自分の手柄として独占することなく、東京大学の渡邊直經(わたなべ・なおつね)教授に知らせ、組織的な発掘調査を行うようにお願いしています。さらに、2年後の1970年には、慶應義塾大学で開催された九学会連合シンポジウムで、沖縄の旧石器人骨の調査結果が発表され、討議が行われました。残念ながら、そのときは、「まだ旧石器時代のものと断定することはできない」という評価がくだされます。それでも、大山はあきらめませんでした。さらに発掘を続け、シンポジウムの2か月後、再び採石場で人骨を、それも頭の骨を発見したのです。

 

島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』には、彼が頭の骨を発見したときの様子が書かれています。とくに興味深いのは、彼の手帳が掲載されていることでした。青いインクで細かく記されたメモを読むと、彼は、1970年8月10日、午後5時まで本業である給油所協会の役員会に出席していました。忙しい毎日を送っていたことが伝わってきます。しかし、会議が終わると港川遺跡に向かい、いつものようにスコップをふるいます。そして、地下約20メートルの地点で、完全な化石頭骨と人骨を発見したのです。その後、行われた木炭の放射性炭素年代測定によって、この骨が確かに2万年前の旧石器時代のものであると証明されました。

 

その後、さらに4体分の全身骨格を含む人骨が発見され、専門家による検証の結果、遺跡のある場所にちなんで港川人とよばれるようになりました。東京大学人類学教室を主宰した鈴木尚教授も、港川人は日本列島の旧石器人を代表するものと認めます。それだけではありません。大山へ次のような賛辞を送っています。

 

鈴木は大山の発見について、オランダの人類学者デュボアによるジャワ原人の発見(一八九一年)にも匹敵する「特記すべき成果」と最大限の賛辞を送っている

(『島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』より抜粋)

 

もはや素人の考古学者ではありません。

 

港川人の謎

港川人には、いまだいくつかの謎が残っています。旧石器時代の人骨であることは実証されたのですが、発見されたのは人骨だけで、彼らが使っていたであろう旧石器が発見されていません。

 

さらに、なぜ数体分の人骨が、まとまってフィッシャー(崖の割れ目)から発見されたかについても、意見が分かれています。鈴木は人骨に残された損傷から、港川人は「食人」の犠牲となったのではないかという考えを述べています。一方で、大山は港川周辺で暮らしていた人びとが、洪水などの天変地異によって、崖の割れ目に流し込まれてしまったのではないかと考えました。

 

いずれの説が正しいかは、今後の研究を待つ他ありません。けれども、『島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』のおかげで、私は沖縄が化石の宝庫であり、港川人とよばれる人びとが暮らしていたことを知りました。もちろん、いまだ謎は残ります。沖縄に最初に住むようになった人びとが、いったいどこから来て、どうして滅んでしまったのかについても、わかっていません。けれども、たくさんの人びとが、それぞれの立場からその謎を解こうと必死になっている様子を思い浮かべると、胸がワクワクしてきます。港川人をその手で発掘した大山盛保も、その思いに支えられ、炎天下のもとでもスコップをふるったに違いありません。

 

『島に生きた旧石器人 沖縄の洞穴遺跡と人骨化石』には、他にも興味深い遺跡が取り上げられています。石垣島の白保竿根田原洞穴遺跡、そして、沖縄島南部のサキタリ洞窟遺跡です。どちらも、いずれ行ってみたいと思っています。いつかコロナの影響が収拾し、自由に旅ができるようになる日が来るまで、今から準備怠りなく過ごしたい、それが私の最近の楽しみとなりました。

 

【書籍紹介】

 

島に生きた旧石器人沖縄の洞穴遺跡と人骨化石

著者:山崎真治
発行:新泉社

アフリカを旅立ち、東アジアに拡散した現生人類は、四万~三万年前、海を渡って沖縄の島々へ到達した。石垣島の白保竿根田原(しらほさおねたばる)洞穴遺跡と沖縄島のサキタリ洞遺跡からみつかった人骨化石や貝器から沖縄人類史の謎に迫る。

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来年は自分自身に「いいね!」しよう。毎日が楽しく愛おしくなる『スケッチジャーナル』のススメ

今年も一年、アッ……という間でしたね。振り返ってみれば、年明けから緊急事態宣言が発令され、自粛続きの年でした。1年前何していたっけ? なんて思っても、忘れてしまうのが人間です。毎日なんとなく過ぎ去ってしまうから、ちょっとだけ立ち止まって振り返る時間も必要だなぁと感じた年でもありました。

 

そんな時に見つけた『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』(ハヤテノコウジ・著/株式会社G.B.・刊)には、楽しそうな事例とともに、キラキラと輝く日常が切り取られていました。今回は、絵心がなくてもOK、いつから始めてもOK、自分のために作る自分のためのスケッチジャーナルについてご紹介します。

 

スケッチジャーナルとは?

初めて「スケッチジャーナル」という言葉を聞いた人は、ぜひTwitterやInstagramなどで #スケッチジャーナル と検索してみてください。かわいいイラストが散りばめられた手帳や、写真やシールでコラージュされた画像がたくさん出てきて、見ているだけでもワクワクするはず。

 

私は全くスケッチジャーナルのことを知らないまま、本の副題にある「〜自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート〜」の言葉に惚れて購入。そして、本を開いてびっくり! 「こんな楽しい世界があったの!?」と新しい扉が開かれ、胸がドキドキしたものです。

 

「スケッチジャーナル」とは、手帳やノート等身近なツールを使って、作者の人生を記録する日誌(journal)のこと。

広く実践されている絵日記や旅日記、趣味ノートにも近いが、記録と振り返りを通じて「自己肯定感を高める」ことを目的とする点で大きく異なる。
僕が20年間の活動を通じて生み出し、提唱している独自の創作スタイルだ。

ポイントは、自分が楽しいと思えることを実践し、その記録を蓄積すること。たとえ楽しい気分になれなくても、起きた出来事をなるべくポジティブに解釈してから記録するのが特徴だ。

(『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』より引用)

 

簡単に言えば、自分のための自分雑誌を作るようなもの。自分が好きそうなネタを手帳やノートに書き込み、後で「そうそう、これが楽しかったのよ!」と振り返る楽しさもあるようです。

 

1日カレンダーの1マスを埋める「マンスリージャーナル」

「なんだか楽しそう!」と思ったら、ぜひ『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』を読んで実践していただきたいのですが、私がこれからやろう! と考えているのが、スケジュール帳のマンスリーカレンダーのマスを1日1マスずつスケッチしていく「マンスリージャーナル」です。

 

著者であるハヤテノコウジさんのInstagramには、こんな感じでマンスリージャーナルが紹介されています。

 

マンスリージャーナルを作っていなかったら、一瞬にして過去へと通りすぎてしまう出来事が、自分が描いた文字と絵によって目の前に存在する。自分の人生の明るい部分をまとめて眺めていると、とても気分がよくなるし、「自分の暮らしもなかなか素敵じゃないか」と肯定できるようになる。

(『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』より引用)

 

ちなみに絵に自信がないという方でもご安心を。

 

『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』には、著者のハヤテノコウジさんのお手本が満載。どういう視点で物事を捉えて描いたらいいか、どんな文房具やノートを使っているのかなど丁寧に解説してくれているので、初めての方でも安心して始めることができます。

 

ノート1冊を雑誌のように作り上げる「テーマ型ジャーナル」もおすすめ

いつか本を作りたいな〜と思っている人もいるかもしれません。そんな方はそんな「いつか」のために、好きなテーマでノート1冊を埋める「テーマ型ジャーナル」をお試しで始めてみるのはいかがでしょうか?

 

なるべくページ数の少ないノート1冊を準備して、自分の作りたいテーマでページ割りを作ります。それに沿って情報を集め、編集し、ノートに書き込んでいくのですが、これってもう自分の本をつくるのと同じですよね。

 

ハヤテノコウジさんは、スケッチジャーナル講座も開催されているのですが、基本編を終えた方の次なるステップとしてこの「テーマ型ジャーナル」を教えているそうです。

 

今日という1ページで完結するのではなく、ノートの始まりから終わりまで全体の流れを考えつつ前後のページの繋がりも意識する、総合的な編集技術が求められる。

(『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』より引用)

 

『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』を読んでいると、自分のための時間ってどれくらい使っていたかなぁ〜と考えさせられました。誰かのSNSに「いいね!」する時間はあるのに、自分の暮らしに自分が「いいね!」してあげられなかったら、どんどん自己肯定感は下がっていく一方だと感じました。

 

私も12月から少しずつマンスリージャーナルを練習し、1月から本格スタートしたいと思っています。来年の今頃には「2022年、楽しい時間がいっぱいだったな〜」と振り返られるよう、自分のためにスケッチジャーナル始めますっ。

 

気になった方は、『スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート』もぜひ読んでみてくださいね。自分自身を振り返るきっかけにもなるはずです!

 

【書籍紹介】

スケッチジャーナル 自分の暮らしに「いいね!」する創作ノート

著者:ハヤテノコウジ
刊行:株式会社G.B.

What’s スケッチジャーナル?手帳やノート等の身近なツールを使って、人生を記録する日誌(journal)のこと。広く実践されている絵日記や旅日記、趣味ノートにも近いが、記録と振り返りを通じて「自己肯定感を高める」ことを目的とする点で異なる。僕が20年間のアート活動を通じて生み出し、提唱してきた独自の創作スタイルだ。

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16世紀、リスボンからウィーンまで歩いて旅をしたインド象がいた——『象の旅』

象の旅』(ジョゼ・サラマーゴ・著、木下眞穂・訳/書肆侃侃房・刊)は、ノーベル賞作家のサラマーゴが最晩年に書き上げた史実に基づいた物語だ。ジョゼ・サラマーゴはポルトガルの小さな村アジニャガの貧しい農家に生まれ、学校に通ったのは小学4年までだという。さまざまな職業を経て、60歳で作家になり、80歳になった1998年ポルトガル圏の作家として初のノーベル文学賞を受賞した。

 

本書を書くきっかけになったのは、オーストリア・ザルツブルグの「象」という名のレストランの店内に並べられた木製の彫刻を目にしたからだそうだ。

 

列の端には、リスボンのべレンの塔があった。それに続いてさまざまなヨーロッパの建造物や史跡が並んでいたのだが、それは明らかに何かの旅程を示していた。そして、あれは象の旅程である、十六世紀、正確には一五五一年、ジョアン三世の治世時にその象はリスボンからウィーンまで連れてこられたのだ、と教わった。

(『象の旅』から引用)

 

サラマーゴはここに物語があるとピンときたのだと、前書きで記している。

ポルトガル国王からオーストリア大公への婚儀の祝い

物語は、ポルトガル国王のジョアン三世とその妻であるカタリナ王妃との語らいから幕を開ける。国王は4年前に従弟のオーストリア大公マクシミリアンに贈った婚儀の祝いが、彼の家柄にふさわしくなかったと考えていた。もっと高価な、その目を驚かせるような贈り物はないかと探り当てるべく話しているとき、王妃が象のソロモンが結婚のお祝いにふさわしいとひらめいたのだ。

 

その象は、インドからポルトガルにやってきて2年が経っていたが、鎖につながれているばかりで、食べて寝るだけで何の役にもたっていなかった。だったらウィーンに送ってしまい、あとはマクシミリアン大公に任せようと思いついたのだ。当時、象は誰も見たことがない動物で、皆の目を驚かせることは間違いなかった。幸い、マクシミリアン大公はそのときスペインの摂政としてバリャドリードにいた。リスボンからバリャドリードまでポルトガル軍がソロモンを連れて行けば、その後の旅はあちらに任せればいいというわけだ。

 

こうして、象のソロモンとその世話係で象遣いのインド人スブッロの波乱万丈の壮大な旅がはじまることとなったのだ。

 

旅程での出来事はサラマーゴの創作

サラマーゴは本書を書くにあたり、必要な史料を集めようとした。しかし、リスボンを出発し、スペインのバリャドリードに向かったこと、カタルーニャの港からイタリアのジェノヴァまでは船で渡ったこと、そして、ウィーンに着いてからの逸話は見つかったものの、道中の出来事に関しての史料は何も見つからなかったという。リスボンからウィーンまではおよそ3000キロ弱もある。その途方もない距離を歩いた象と通り過ぎた町々で巻き起こる事件はとてもおもしろく読めるのだが、それらはサラマーゴの創作なのだそうだ。

 

護衛をする騎馬隊、象の食料である飼葉や水樽を乗せた荷車を引く牛や人、そして象の背中に乗り3メートルの視界から景色を眺めつつ象に指示を出す象遣い、それぞれの人の行動や心情が詳細に描かれている。物語のクライマックスは、パドヴァの聖アントニオ大聖堂の前で象のソロモンが前脚を折って跪くシーン、冬のアルプスで雪崩の危険がある中を黙々と進むシーン、そしてウィーンに着いてからは母親の手を振り切って象の前に飛び出した幼い少女を長い鼻で抱きかかえるシーンだ。象がいかに賢く、従順で優しい動物であるかをサラマーゴは読者に伝えているのだ。

 

ジョゼとピラール

訳者である木下さんは、1本のドキュメンタリー映画を観たことが本書を手に取ったきっかけだったと、あとがきで記している。「ジョゼとピラール」と題されたこの映画は2006年から2009年にかけてサラマーゴとその妻であるピラールの日常に密着して撮影された作品で、公開されたのはサラマーゴの死後だ。

 

冒頭ではサラマーゴが象の旅を書こうと決意するシーンがある。人間の話ではない象の話を書くのだとはっきり言っている。80歳を過ぎているのにサラマーゴは講演会、サイン会などイベントへの参加で世界中を妻とともに駆け回る。その合間に象の話を執筆していたのだ。途中、サラマーゴは病に倒れ、『象の旅』は未完のまま終わってしまうのかと思われたが、献身的な妻の支えで復活し、物語を完成させた。本書の最初には、”私を死なせなかったピラールに”という妻に捧げる一文がある。

 

私は本書を読み終えてから、このドキュメンタリー映画をYouTubeで観た。映画の監督が自ら公開しており、日本語字幕は本書の訳者である木下さんが担当している。「jose e pilar japanese subtitles」で検索すれば、無料で見られるので、本書を読んで、さらに映画を観るとサラマーゴが伝えたかったことがよく理解できるだろう。

 

象は大勢に拍手され、見物され、そして忘れられる

映画の中でサラマーゴは、「もっと書く時間がほしい」と語っていたことが胸を打ったが、この本の主人公である象のソロモンにも、生きる時間は少なかった。長い長い旅をしてやっとウィーンに着いたものの、2年後には死んでしまったからだ。

 

ソロモンは皮を剥がれただけでなく、前脚を切られ、それは、洗ったり皮をなめしたりといった必要な処理を施されたあと、宮殿の入り口に置かれて杖や雨傘や日傘を立てるものとなった。跪いたところで、ソロモン自身にはなんのご利益もなかったのはご覧の通りだ。

(『象の旅』から引用)

 

3000キロも歩いたソロモンの脚が死後に受けた扱いに、サラマーゴは憤り、そこに文学があると確信したという。

 

象は、大勢に拍手され、見物され、あっという間に忘れられるんです。それが人生というものです。

 

本書の帯にある一文は、人の一生も象と同じように不条理なものであるという作者の思いが凝縮されているのだ。

 

動物が好きな人、歴史が好きな人、そしてサラマーゴをもっと知りたい人にすすめたい一冊だ。

 

【書籍紹介】

象の旅

著者: ジョゼ・サラマーゴ(著)木下眞穂(訳)
発行:書肆侃侃房

ノーベル賞作家サラマーゴが最晩年に遺した、史実に基づく愛と皮肉なユーモアに満ちた作品。1551年、ポルトガル国王はオーストリア大公の婚儀への祝いとして象を贈ることを決める。象遣いのスブッロは、重大な任務を受け象のソロモンの肩に乗ってリスボンを出発する。嵐の地中海を渡り、冬のアルプスを越え、行く先々で出会う人々に驚きを与えながら、彼らはウィーンまでひたすら歩く。時おり作家自身も顔をのぞかせて語られる、波乱万丈で壮大な旅。

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バターの色は何色ですか? 黄色と思ったあなたは……。食品と色の感覚史~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。子どものころ、炭酸のグレープジュースを飲んでいて驚いたことがあります。缶をよく見るとそこには無果汁の文字。「無果汁!? グレープはブドウのはずなのになんで無果汁? でも、ちゃんとブドウの味がする、不思議……」。結局、メロンパンにはメロンは入っていないし、カニパンにも蟹は入っていないし(笑)、そんなもんかなあと納得していました。

 

実はかき氷のシロップも、シロップ自体の味はほとんど一緒で、レモン、イチゴ、メロンの差は色と香料だけだとか。人間は舌以上に目や鼻で味わっているのかもしれません。

食と色の関係を歴史的にたどる

今回の視覚化する味覚 食を彩る資本主義』(久野 愛・著/岩波新書)は、そんな食べ物と見た目の関係をテーマにした一冊です。

 

著者の久野 愛さんは、20世紀アメリカ史を中心に感覚史を専門とする東京大学大学院情報学環准教授。技術や産業の発展が、どのように人々の味覚や視覚、嗅覚などの感じ方に影響を与えてきたのかという研究を行っています。英語では『Visualizing Taste: How Business Changed the Look of What You Eat』(ハーバード大学出版局、2019)という著作があります。

 

バターの「自然な色」って何色?

本書は谷崎潤一郎と夏目漱石の話題から始まります。羊羹について、谷崎潤一郎は「玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光りを吸い取って夢みる如きほの明るさを啣(ふく)んでいる感じ」(『陰翳礼讃』)と記し、夏目漱石は「別段食いたくはないが、あの肌合が滑らかに、緻密に、しかも半透明に光線を受ける具合は、どう見ても一個の美術品だ」(『草枕』)と描写しています。

 

ふたりが文学者だから表現が巧みなのは確かですが、私たちもお菓子やスイーツなどは味よりも見た目を重視することが多いですよね。

 

第1部「近代視覚文化の誕生」では、食品の色が作り出されてきた背景を、主に19世紀末~20世紀のアメリカを中心にたどっています。19世紀後半に繊維産業や印刷業者向けに合成着色料が生まれると、やがて食品にも使われるようになりました。その理由は、缶詰など工場で大量生産される加工食品が増えたから。安くてムラのない標準化された食品を大量に生産する必要があり、合成着色料は不可欠な材料になったそうです。

 

食品の色に関連して個人的に面白いと思ったのが、第5章「フェイク・フード」のバターとマーガリンの対決。もともとバターは、牛が新鮮な草を食べる夏は草に含まれる色素「カロテン」のせいで黄色くなり、枯れ草や穀物を食べる冬は白っぽくなるものでした。また、カロテンがバターに風味を与えるため夏の黄色いバターのほうが美味しいとみなされていました。そこでアメリカでは、バターは1870年ごろにはすでに合成着色料で黄色くされていたとか。

 

一方、マーガリンが19世紀末に台頭してくると、バター生産者の反発が起こり、多くの州で「バターに似せた色」のマーガリンの販売・製造が禁止されました。でも、よくよく考えると当のバターはすでに人工的に着色されていたもの。バターの色とは何なのか……。思えば、私もバターと聞くとすぐに黄色くて四角い塊を思い浮かべますが、それは半ば作られたバターのイメージなんですね。

 

そのほか、第2章では食品の色と広告産業の関係性、第7章では食品コーナーを“魅せる”べく発達したスーパーマーケットの工夫、第9章ではSNSで“盛られた”食べ物写真の登場……と、食と視覚を巡る社会史のトピックが多数。

 

研究に裏打ちされたしっかりした内容で、軽い雑学本とは一線を画した深みがあります。とはいっても、私たちに直接関わる“食”がテーマなので親しみやすさも十分。売るために食べ物がどう変わってきたのかを知って、非常に考えさせられました。「美味しいものを食べるのが好き!」という人ほど読んでみてほしい一冊です。

 

【書籍紹介】

『視覚化する味覚 食を彩る資本主義』

著者:久野 愛
発行:岩波書店

現代の色彩豊かな視覚環境の下ではほとんど意識されないが、私たちが認識する「自然な(あるべき)」色の多くは、経済・政治・社会の複雑な絡み合いの中で歴史的に構築されたものである。食べ物の色に焦点を当て、資本主義の発展とともに色の持つ意味や価値がどのように変化してきたのかを、感覚史研究の実践によりひもとく。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

これが“エモい”ってやつか……好きだったあの人を思い出させる1冊『ボクたちはみんな大人になれなかった』

11月上旬から劇場とNetflixで同時公開されている映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』(主演・森山未來/監督・森 義仁)が話題になっています。同名の原作はcakesでの連載から2017年に書籍化、翌年には文庫版も出版された大ベストセラーです。

 

私は映画の予告編を見てからこの小説を読みました。なんとなくおしゃれな表紙が小っ恥ずかしく、「30代にもなって、恋愛話を読むのもねぇぇ〜。ねぇ!」と一歩引いていたのですが、予告編を見て「え、これって私の話!?」と妙にシンクロしてしまい、本屋さんへダッシュ! 毎日のように持ち歩き、少しずつ読み進め日に日にエモくなる自分と向き合っていました。今回は、恋していた全ての人に読んで欲しい1冊『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社・刊)をご紹介します。

 

 

Facebookで昔好きだった人の名前、検索しちゃうよね

この小説の舞台は、90年代の東京。岩手で小中学生だった私は、毎朝「めざましテレビ」を通じて届けられる「渋谷ではルーズソックスが流行っています!」なんてニュースに心躍り、都会への憧れを強めていたころでした。

 

書籍版の『ボクたちはみんな大人になれなかった』の始まりは、43歳になった主人公・佐藤がそんな90年代に恋していた「かおり」をFacebookで見かけ、気がついたら友達申請していたことから物語が動きはじめます。

 

人波に巻き込まれて不意に押してしまったこの状況をまだ受け入れられないでいた。言葉が見つからない。何体もの亡霊が、立ち尽くしたボクの周りをすり抜けていく。時間が止まったように“友達リクエストが送信されました”の画面を眺めていた。

(『ボクたちはみんな大人になれなかった』より引用)

 

私も、昔好きだった人をFacebookで検索、したことがあります!(笑)というか誰もがやったことあるのではないでしょうか。物心ついたころからSNSがある世代とは違い、社会人になってからFacebookを使う世代は、どこまで「友達」なのかが難しいところ。今やツールとして使うものなので、その「友達」の定義はなんとなくフォーマット化されてきましたが、最初のころは私もよくドキドキしていたものです。

 

誤って友達申請してしまった佐藤が、90年代に生きた自分を回想しながら物語は進んでいきます。

 

あぁ〜恋って、これだよなぁ……

恋愛小説や恋愛映画と聞くと、韓流ドラマやティーン向けコミックように誰もが主役で誰もがヒロインのキラキラ世界を思い浮かべるかもしれませんが、『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、そのキラキラ感とは別の輝きがある恋愛観が描かれています。

 

個人的には「うわぁ〜、これぞ日本の恋愛!」と唸ってしまったのですが(笑)、自分ごとに置き換えられるようなシチュエーションが満載で、読み進めていくうちに自分の物語にも思えてきます。

 

自分より好きな人を思い胸がいっぱいになる、仕事が忙しくて好きな人ともなかなか会えない、いつも同じ場所でデートしちゃう、離れてみてその人の存在が愛おしくなる、彼氏・彼女に言われた一言で救われるなどなど、テーマパークでのデートや高級レストランなど特別なことをした思い出より、何気ないことの方が心に深く刻まれている……。そんなことが誰にでもあるのではないでしょうか?

 

恋愛小説や恋愛ドラマでの「きゅん♪」は、憧れのシチュエーションに、羨ましいなぁ〜私もそんな恋愛してみたい〜と思いを重ねますが、『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、自分自身の「きゅん♪」とした経験を思い出させてくれます。あのころの自分と重ねてしまうので、心の底にしまってあった思い出がパカパカと開かれ、嫌でも何気ない思い出を想起させます。それが、片想いでも付き合っていても、いけない恋だったとしても……です! 思い出したくない人がいる……そんな人は要注意ですよ!(笑)

 

そして、オザケン!!

『ボクたちはみんな大人になれなかった』には90年代のカルチャーもたくさん登場します。恋愛なんて〜という人でも、読み始めれば当時の思い出が蘇るはず!

 

特に、90年代を代表するアーティスト、小沢健二(オザケン)さんを思い出さずにはいられません。文章を読んでいると脳内でオザケンのありとあらゆる楽曲が再生されるのですが、映画では絶妙なタイミングでオザケンの楽曲が流れます。

 

本にも映画にも登場する小沢健二のファーストアルバム『犬は吠えるがキャラバンは進む』はリアルタイムで聴いていなかったのに、借りてみるとなぜか懐かしい……(笑)。完全に『ボクたちはみんな大人になれなかった』の世界に私も入り込んでしまっていました。

 

ちなみに、書籍版と映画版では主軸は同じでも若干ストーリーに違いがあります。映画版でハマった人にはぜひ書籍版の世界も楽しんでもらいたいですし、書籍を読んだ方も映画を見ることでエモさを加速させてくれます。

 

今年も残り1か月。頑張って走り抜けたこれまでの歩みをちょっと止めて、過去の自分と対話してみるのはいかがでしょうか? 忘れかけていたあんな気持ちを思い出して、来年からもう一歩踏み出す勇気をもらえるはずです。

 

 

ボクたちはみんな大人になれなかった

著者:燃え殻
刊行:新潮社

それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在を SNS がつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。あいみょん、相澤いくえによるエッセイ&漫画を収録。

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なぜ日本人は他人を叩きたがるのか?−−『不寛容社会』

20代半ばからフリーになる直前の30代初めまで働いていた通信社の社長が、『イントレランス』という古ーいハリウッド映画の日本国内でのビデオ化の仕事に関わっていた。

 

『イントレランス』という映画

D・W・グリフィスという映像作家が監督・脚本を務めたこの映画のテーマは、時代を問わずに存在する人間の不寛容性だ。4つの視点を通して、時代ごとの不寛容さが浮き彫りにされていく。いつの時代にも、世の中の大多数から叩かれる人がいる。そしてもちろん、大多数の一部になって特定の誰かを叩く人たちがいる。

 

最近、SNSでなにげなく発したひと言が炎上し、謝罪を迫られる人が多い。これは一般人であっても超有名人であっても変わらない。少し前の時代ならセーフだったかもしれないもの言い方も見逃されることはない。

 

“あの女性都議”と“あの人”

目に余る攻撃的な内容の書き込みが集中し、ニュースサイトのコメント欄が閉鎖されてしまうこともある。「過激なコメントが寄せられた場合は閉鎖させていただきます」といった文言があらかじめ示されていることも珍しくない。

 

ごく最近の例を挙げるなら、あの女性元都議会議員に対する世間のフルボッコぶりがすごい。まあ、この人の場合は本人の行動が常軌を逸脱していたこと、さらにその後の辞任会見での逆ギレぶりも際立っていたので、派手にボコられたとしても大多数が納得するところだろう。

 

ただ、“あの人”がニューヨーク州の弁護士試験に落ちたことをことさらあげつらい、必要以上に攻撃的なコメントを書く人も少なくない。あの女性都議とこの人を同列で考え、まったく同じニュアンスのコメントを書く人。そういうコメントを書き手と全く同じ視点でとらえ、同調する人。絶対数は同じくらいなんじゃないだろうか。

 

方向性が怪しい倫理観

世界に類を見ない不寛容な社会——著者談——で生きる日本人を外側からの視線で考察する『不寛容社会』(谷本真由美・著/株式会社ワニブックス・刊)という本を紹介したい。著者の谷本さんは90年代半ばの留学から始まり、国連の専門機関で130か国以上の同僚と働き、現在は日本と欧州を往復して暮らしている人物だ。谷本さんは、この20年ほどで日本社会の不寛容性が高まったと感じているようだ。

 

特にここ最近では芸能人の不倫を「非倫理的」だと叩いたり、ブログやツイッターで、毎日のように有名人や一般の人の投稿が炎上しています。個人的な体感としては2011年に東日本大震災があってから、叩く数も、ねちっこさも、さらに増大したように感じています。

『不寛容社会』より引用

 

ミュージシャンと不倫関係にあった女性タレント。公費の使い方を間違えた前都知事。“多目的トイレ”が代名詞になった芸人。行為そのものは決して褒められたものではない。しかし谷本さんは、「自分自身に実害が及んでいるわけでもないのに、二義的なニュースソースで得た情報を基に、歪んだ正義感に駆られ、必要以上の叩きを、ともすればエンタテインメントに近い感覚で行っている」人々への違和感を覚えているのだろう。

 

叩くことへの同調圧力

まえがきにこんな文章がある。

 

本書では海外の事例を踏まえて、なぜ日本が「不寛容な社会」になってしまったのか。なぜ「一億層叩き状態」なのか。また、日本人が「他人叩き」をやめ、より住みやすい社会にするためには何が必要なのかを考えていきます。

『不寛容社会』より引用

 

こうした立脚点から、各論が以下のような流れで繰り広げられていく。

 

第1章 他人を叩かずにいられない日本人

第2章 「一億層叩き社会」日本の考察

第3章 お笑い!海外の「他人叩き」事情

第4章 世界に学ぶメンタリティ

第5章 新時代のただしい「正義感」

 

この本は、叩くことへの同調圧力を無意識に受け容れている人がきわめて多い日本社会とその異質性に、外からの視線を向けていく比較文化論なのだ。

 

自己重要感を高める方法としての“叩き”

「自分は日々真面目にやってツライ思いをしているのにあいつらはズルをしている。そんなことは許さない。俺が裁く人間の一人になってやる」——と多くの日本人が考えているのです。マスコミやネットを介した「疑似人民裁判」に参加することで、自分が世間の重要人物になった気がして、自己重要感を高めているわけです。

『不寛容社会』より引用

 

この文章の一字一句すべてがすべてのケースに当てはまるかどうかは別として、こういう書き方は決して嫌いではない。煽った響きの文章が多い気もするが、経験値に基づく冷静な考察に裏打ちされた結果であることをはっきり示しておく。D・W・グリフィスがこの本を読んだら、どう思うだろうか。

 

【書籍紹介】

不寛容社会

著者:谷本真由美
刊行:ワニブックス

ツイッターで話題騒然、元国連職員でイギリス在住。新時代の論客めいろまが「他人を叩く日本人」を斬る。

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頭にフレーズを思い浮かべるだけで、姿勢がよくなるなんて信じられないけど……効果ありかもしれない

僕は姿勢がよくない。どうしても猫背になってしまう。子どものころは姿勢がよかったらしいのだが、思春期のときに猫背になってしまい、それからずっと猫背だ。

 

なんとなく自分で意識して姿勢をよくしようと思うものの、疲れてしまってすぐ元に戻ってしまう。

 

そんなときに見つけたのが、『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』(大橋しん・著/飛鳥新社・刊)。著者は医療機関をたらい回しにされてきた、難治性の疾患に悩む患者を数多く回復させてきた「特命理学療法士」だ。

 

この本が、これまで見てきた猫背矯正の本とはまったく違うものだった。

フレーズを唱えるだけで姿勢がよくなる?

本書では、姿勢をよくするための努力が不要。頭の中で特定のフレーズを思い浮かべるだけで姿勢がよくなる。これはアレクサンダー・テクニークというものらしい。

 

本書には10のフレーズが登場する。たとえば、どうしても下向きになりがちな頭をまっすぐにするためのフレーズは、

 

頭の中で小舟が静かにゆれています。

(『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』より引用)

 

というもの。これを思い浮かべるだけで、姿勢がよくなるというのだ。

 

ほんとかな? と思って実際にこのフレーズを頭に思い浮かべてみると、なんとなく視線がまっすぐになって、頭が軽くなったような気がする。脳がプカプカ浮いているので、それをまっすぐにしようとしてみると、自然と頭がまっすぐになるようだ。

 

これは効果ありかもしれない。

 

歯の食いしばりを緩和するフレーズ

「口の中」というフレーズもある。僕は自然と歯を食いしばっていることがあるのだが、これを緩和できるらしい。

 

歯茎に血液が通い、舌はおもちのようにふっくらしています。

(『魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本』より引用)

 

これを頭に思い浮かべると、歯を食いしばることはなくなる。これにより、口内が健康になっていくとのこと。僕はかなり効果を感じた。

 

ほんとに頭にフレーズを思い浮かべるだけで、効果があるようだ。

 

努力しないことが一番

本書では、姿勢をよくするために努力する必要はないと説いている。意識をすると逆に身体に力が入り、筋肉が硬くなってしまうのだ。なので、身体から力を抜いて自然体にすることで、姿勢をよくしようというもの。力が抜けて姿勢がよくなると、肩こりや腰痛、膝痛、胃腸の不調なども改善されていくという。

 

また、面接前など緊張するシーンで、10のフレーズのうちいくつか組み合わせて思い浮かべることで緊張が緩和するという効果も得られるという。

 

タイトルの通り、本当に「魔法のフレーズ」のようだ。

 

僕はここに紹介した2つのフレーズをたまに思い浮かべている。実際、視線がまっすぐになって、姿勢もよくなってきたように感じるし、歯を食いしばることも減ってきたと感じている。

 

もし、姿勢が悪くて悩んでいる人、肩こりや腰痛がひどいという人は、本書を読んでフレーズを頭に思い浮かべてみるといいかもしれない。矯正器具を使ったり、ストレッチをしたりという面倒なことが必要ないので、長く続くだろう。

 

【書籍紹介】

魔法のフレーズをとなえるだけで姿勢がよくなるすごい本

著者:大橋しん
発行:飛鳥新社

運動・トレーニングなし!医者も勧めるねこ背解消法。かためないで、ふんわりさせる。頑張らないほど姿勢はよくなる!

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自分のためでなく誰かのために動いてみませんか?——『喜ばれる人になりなさい』

世の中には泣けるビジネス書といわれるものがあります。大抵の場合、それはリアルで具体的な著者の体験やインタビューに満ちていて、それが人の心を打つのです。『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司・著/あさ出版)を初めて読んだ時は、感動で胸が震えました。利益よりも大切にしている何かを持っている会社が次々と出てくるのです。生きるとは何か、働くとは何かを考えさせられる貴重な本で、シリーズで6冊目が出ています。

 

登場した会社は、業績も好調なようでした。それはその会社の温かさが人を心地よくさせ、また、こことお取引したいと多くの人が思ったからなのでしょう。実際私も本に出てきた柳月という北海道のお菓子メーカーの商品を良く取り寄せています。そこには美味しさだけでない、心に染みる何かがある気がするからです。

自己でなく社会のために

最近の世の中は、だんだんと自分や会社のためだけでなく、社会や地球のためにという大きな目標を持って活動するケースが増えてきたように感じています。環境問題が深刻になり、早急になんとかしなくてはならないという危機感もあるでしょうけれど、それよりなにより、誰かのためになるということが、人々の大きな生き甲斐になりつつあるのだと思います。

 

社会起業家になりたいという人も増えてきています。社会起業家とは、利益よりも世の中の問題を解決することを最重要視して事業を起こす人のことを言います。世界には環境問題のほかにも、貧困問題や高齢化問題など、さまざまな困難があります。それを事業化して解決を目指す人が増えてきたのは素晴らしいことです。

 

自分のためでなく誰かのために

事業を起こすのは少し敷居が高いし、いきなり社会問題に取り組むの方法もわからないけれど、個人レベルでなにかができたら、という人は『喜ばれる人になりなさい』(永松茂久・著/すばる舎・刊)を読んでみるのもいいでしょう。自分の身近な人を笑顔にすることに生涯かけて取り組んだ女性の実話だからというのもありますが、人生や仕事のテーマについて考えるきっかけになる本だからです。

 

この本に出てくるのは、著者である永松茂久さんの母親であるたつきさん。彼女は「人から喜ばれる人になる」をモットーに、ギフトショップの経営をしたり、お坊さんの資格を取ってカウンセリングを始めたりと精力的に活動されたかたです。そして、彼女のもとで育った長男である茂久さんは、大切な贈り物を彼女から得たことに気づくのです。

 

人が喜んでくれるツボを探す

彼が母親からの大切なメッセージに気づいたのは、彼女が亡くなってからでした。だからこそ、彼はこの物語を本にしたいと考えたのです。母親の生きざまも素晴らしいのですが、この本のキモの部分は、彼女の死によって著者がどのように変化していったかという後半の部分です。彼の気づきはそのまま読者の私たちの気づきにもなり、次々に胸に刺さるのです。

 

本の中にはいくつもの宝物のようなメッセージがありますが、なかでも心打たれたのは「商品は100パーセントお客様のためにある」でした。著者である茂久さんが悩んでいた時にかけられた言葉です。それをきっかけに、自分が書きたいものではなく読者が読みたいものへと軸を変換させることができた彼はベストセラー作家となり、大成功をおさめたのでした。

 

この本も売れているそうですが、それは時流に乗っているからというのもあるでしょう。自分よりも誰かのためになるように生きたいと高い目標を持ち始めた現代人は、背中を押してくれる言葉を探しています。そこに見事に「喜ばれる人になりなさい」が刺さったのだと思われます。表面的な好かれるコツではなく神髄を教えてくれるからこそ、大切にしたい一冊だと評価されているのでしょう。

 

【書籍紹介】

喜ばれる人になりなさい

著者:永松茂久
発行:すばる舎

人生で大切なことは、母から繰り返し言われた「この一言」だった──3坪のたこ焼き屋から、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店を作り、2020年のビジネス書年間ランキングでも日本一に輝いた著者が贈る、母から学んだ、人生で大切な「たった一つ」の教え。学びあり、青春あり、涙あり、感動ありの成長物語。母と子、父と子、愛情、友情、師弟、家族、仕事の真髄が凝縮された、長編ノンフィクション。今の時代だからこそ読みたい、読むだけで自己肯定感が上がり、誰かのために何かをしたくなる、優しくて懐かしくて温かい一冊です。

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小屋作りの実用的バイブル『小屋を作る本』の最新刊・2022年度版が発売中!

本気で小屋を作りたい人に向けた小屋DIY本『小屋を作る本2022』(発行:株式会社キャンプ/代表取締役社長:豊田大作)が、11月27日に発売開始!本書では、バラエティー豊かな小屋、リアルなノウハウ、小屋作りの面白さを紹介しています。

 

小屋の作り始めから完成までを詳しくリポートする「小屋作り実践」記事が5連発!

更地に基礎を作るところから、床、壁、屋根、建具などを作って小屋を完成させるところまでを実際に行い、その模様を詳細にリポートする「小屋作り実践」記事を5つ収録。5つの小屋はバラエティーに富み、多くの読者がそのうちのいずれかから自分が望む小屋作りのヒントを得られるはず。

5つの小屋の特徴は以下のとおり。
「セミ2×4工法で作る1.5坪小屋」
「軸組工法で作る東屋風の小屋」
「自然材と廃材で作るドームハウス」
「高効率基礎×キットで作るロフトつきの小屋」
「丸太の軸組で作るカーポート」

 

自然材や廃材を使った小屋、藁の小屋、土の小屋などを通じて小屋作りの自由さを表現

住宅の縮小版のように既存の規格や工法や技術に則った小屋作りも十分に面白いけれど、規格外の材料と自由なアイデアでチャレンジする小屋作りはさらにエキサイティング。

そこで、自然材や廃材を使った、設計しようのない現物合わせの小屋、藁を主材とするストローベイルハウス、土を主材とするアースバッグハウスなど、種々の小屋とその大まかな作り方を紹介し、小屋作りは自由な発想で楽しむべきであることを伝えています。

ぜひ本書で小屋作りの面白さに触れ、さまざまなノウハウを吸収してください。

 

[商品概要]
小屋を作る本2022
著者: ドゥーパ!編集部
定価: 1980円(税込)
発売日:11月27日
判型: A4変形判

【本書のご購入はコチラ】
Amazon https://amzn.to/3oVRdk7
セブンネットhttps://7net.omni7.jp/detail/1107251348

イギリスで一番人気の名前「オリビア」。その名前はどこから来てる?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。昔、理論派の科学者が、自分の子どもが生まれたときに、画数が悪いからと付けようとしていた名前をやめたという話を聞いて、人間って面白いなと思った覚えがあります。名前は一生背負うだけに、いろいろな想いがこもるもの。

 

私自身は小説の登場人物の名前が気になります。名前とイメージが合っていないと、いまいち話に入り込みにくいですよね? 小説家は名前を考えるのも一苦労だと思います。

 

さて、今回紹介するのは世界中の名前に関する雑学が詰まった新書。意外な名前の秘密がわかります。

 

 

人名の由来がわかるロングセラーの新版

カラー新版 人名の世界地図』(21世紀研究会・編/文春新書)は、2001年の発売以降、17刷の超ロングセラーになっていた新書に、新たにアジア・アフリカ・イスラム世界の人名を大幅に加筆した新版。地図や写真などの図版もカラーとなり、見やすくなりました。

本書を編集した21世紀研究会は、歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学の研究者9人が集まって設立された団体。文春新書で『地名の世界地図』『食の世界地図』など『世界地図』シリーズを展開しています。

 

今、イギリスで人気の名前は何?

私は赤ちゃんの命名ランキングがネットニュースで流れてくると、「なるほど、今こんな名前が流行ってるんだ!」とつい見てしまいます。本書の第2章には、2020年にイギリスの国家統計局が発表した命名ランキングが載っています。男児は1位オリバー、2位ジョージ、3位ノア。女児は1位オリビア、2位アメリア、3位アイラ……。

 

欧米人の命名は日本と比べると保守的だそうで、特に男児のリストを見るとそうした傾向が伺える気がします。男児1位のオリバーと女児1位のオリビアは、中世のノルマン人がイギリスにもたらした名前で、ラテン語の「オリーブ」に由来している説があるとか。

 

また、本書の第4章には、オリビアはシェイクスピアの喜劇『十二夜』から広まった名前とも書かれています。『十二夜』は双子の兄妹が入れ替わる内容で、私は子どものころから好きで何度も読み返していました。ちなみにオリビアは男装のヒロインに恋をする伯爵令嬢で、好きな人の前以外では強気な性格。甘すぎない「オリーブ」がピッタリな気がします。

 

あまり馴染みのないアラブやアフリカの人名についての解説も勉強になりました。サッカー・フランス代表の名選手だったジダンのフルネーム「ジネディーヌ・ヤズィード・ジダン」はアラビア語起源で、「ジネディーヌ(信仰する姿が美しい)」「ヤズィード(増える)」「ジダン(成育する)」と、それぞれ深い意味があるそうです。

 

場所が変わってタイでは、本名よりも女性ならプン(みつばち)ちゃん、メーオ(ネコ)ちゃん、男性ならチャーン(ゾウ)君、タオ(カメ)君などと愛称で呼ぶのが一般的。その背景には、タイ独特の精霊信仰があり、精霊(ピー)に連れ去られるの防ぐため、人間の子どもだと悟られないよう動物や昆虫の名前で呼んだのが始まりだとか。

 

そのほか、ジョニー・デップやマット・デイモンといった有名俳優や歌手、スポーツ選手の名前の由来も多く記され、パラパラしているだけでも楽しめます。

 

海外の小説を読んだり、映画を見たりするときにも役に立ちそうです(ヒッチコックのサスペンス映画『レベッカ』で、ヒロインの心に影を落とす夫の亡き妻・レベッカに「魅力で束縛する者」という意味があることを初めて知りました。深いですね……)。みなさんが好きな小説の登場人物の名前の由来も載っているかもしれません。

 

【書籍紹介】

『カラー新版 人名の世界地図』

著者:21世紀研究会
発行:文藝春秋

人名は民族固有の文化を映す鏡だ。そこに込められた意味を紐解けば、世界に生きるさまざまな人々の文化や価値観、歴史の実像が浮かび上がってくる。ロングセラーとなった旧版の人名をアップデートし、アジア、アフリカ、イスラーム世界の人名をはじめ150頁を大幅加筆。カラー新版として蘇る。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

「2022年カレンダー」と「おせちとごちそう」の付録2冊つき!『上沼恵美子のおしゃべりクッキング2021年12月号』

「上沼恵美子のおしゃべりクッキング2021年12月号」が発売中。

 

今号は、身体の中からあたたまる「ほっかほかグルメ」に、クリスマスや年末年始の食卓に役立つ「おうちでごちそう」など、家族と囲んで食べたくなる、師走に役立つレシピが満載です。

 

11月29日ー12月28日放送のレシピを掲載!

■テレビテキスト
・11/29→12/3放送 テーマ「ほっかほかグルメ」
湯葉と豆腐の生姜あん/牛肉の辛味煮込み/ベーコンと冬野菜のポトフ/
豆苗豚バラ蒸し/手羽と揚げにんにくの煮込み

・12/6→12/10放送 テーマ「冬の葉物野菜」
せりとマグロのごま風味/ねぎと鶏の田舎風スープ/ターサイと牛肉の煮込み
青野菜とイカの和えもの/白菜とえびのスパゲッティ

・12/13→12/17放送 テーマ「簡単スピードメニュー」
れんこんのカレーきんぴら/サワラときのこの蒸し煮/いかと湯葉の煮込み
豚肉のヨーグルト煮込み/鶏のねぎソース和え

・12/20→12/24放送 テーマ「おうちでごちそう」
山椒風味の焼き豚/かに爪の炒めもの/にぎわい海鮮蒸し/
麻辣フライドチキン/ガーリックステーキライス

・12/27→12/28放送 テーマ「年末年始特選メニュー」
たらの雪見汁・中華風ローストビーフ/
えびのハーブ焼き・スパイシー焼き豚

一品で味もボリュームも満足! ワン・ボウルメニュー

年末年始はあわただしくなってしまいがち。そんなときにササッとできるワン・ボウルメニューはいかがでしょうか。もちろん、家族が集まる日のごちそうとしても◎。これさえあれば満足できる一品を、辻調理師専門学校の先生方のレシピで紹介します。

 

2大別冊付録!『お花カレンダー2022』『12月31日だけで準備するおせち』

■和めるお花カレンダー2022

恒例のお花カレンダーは、毎月素敵なお花の写真と共に2022年を彩ります。ぜひ壁にかけてお使いください。旬に作りたい、おいしいレシピも合わせて掲載しているので要チェック!

 

■12月31日だけで準備するおせちと年末年始の簡単ごちそう

脇雅世先生が教えてくれる、12月31日だけで完成するおせち料理で、家族そろって正月を迎えませんか? 今回は短時間で作れる7品を紹介。タイムスケジュールもついているので、効率よく調理を進められます。時間がかかる料理は市販品を利用するなど、好みで加えてみてください。また、家族が集まる日だからこそ食べたい、ごちそうレシピも掲載。フライパンで作れるローストビーフや、ちょっとつまめるオードブルなど、意外と簡単に作れるごちそうレシピを紹介します。おせちに組み合わせるなど自由にアレンジして楽しめます。

[商品概要]

上沼恵美子のおしゃべりクッキング21年12月号

著者: ABCテレビ 辻調理師専門学校
定価: 560円 (税込)

 

【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B09L4RB7D3/
・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1230987953

横尾忠則が9人の80歳超えの芸術家たちに長寿と創作の秘密を聞く——『創造&老年』

作家の瀬戸内寂聴が亡くなったと知ったのは、11月11日の11時過ぎのことでした。その時、私はちょうど『創造&老年』(横尾忠則・著/SBクリエイティブ)という本を読んでいました。画家の横尾忠則が、彼よりも年上の芸術家9人にインタビューをして、長寿と創作の秘密を探ろうとする対談集です。どの方もその道を究めた方ばかりですが、瀬戸内寂聴が最初の対談相手で、驚くほど若々しい意見を披露していました。

 

9人の強者たち

横尾忠則がこのインタビューをしようと思い立ったのは、「画家は長生きですね」という言葉をよく耳にしたからだといいます。確かに、ピカソやミロやシャガールをはじめとして、90代まで生きた芸術家は数多くいます。それもただ、生きているだけではありません。衰えを知らないまま創作活動を続けているのですから、何か秘訣があると思うのも当然でしょう。

 

そこで、著者は老いてますます盛んな芸術家に会い、熱心に話を聞きました。インタビューは3年にわたり、その間、著者は79歳から81歳になりました。体調を崩して二度入院し、難聴がひどくなったりするなど、身体には悩みを抱えていました。けれども、質問や反応はまったく衰えを感じさせず、むしろどんどん若くなっていくように感じます。

 

肉体と精神の交流から生まれる人生観をぜひお聞きしたいと思って、このインタビューを開始することにした

(『創造&老年』より抜粋)

 

その言葉を軸に、対談は進みます。

 

お相手は次の方々。作家の瀬戸内寂聴、建築家の磯崎 新、画家の野見山暁治、写真家の細江英公、俳人の金子兜太、美術家の李禹煥、作家の佐藤愛子、映画監督で脚本家の山田洋次、作曲家でピアニストの一柳 慧の9人です。

 

演出家の蜷川幸雄とも会う約束を交わし、既に対談の日時も決まっていたのだそうです。お互いに、とても楽しみにしていたというのに、蜷川幸雄は急逝し、約束を果たすことができませんでした。未完に終わったインタビュー、読みたかったと思いますが、命とはそういうものでしょう。生まれる日も死ぬ日も知らないまま、人は生きていくしかありません。

 

瀬戸内寂聴との語り合い

9人の芸術家は驚くほど元気で、話も自由闊達、もしかしたら、永遠に死なないのではないかと思うほどです。とりわけ、瀬戸内寂聴は、自分の年齢さえ意識しておらず、「いくつだったかしら。九十三歳? 信じられない!」と、自分で自分に驚いています。結局、その6年後に亡くなったわけですが、「九十九歳? 信じられない」と、自分の死に驚きながら逝ったのではないでしょうか。

 

元気いっぱいに見える瀬戸内寂聴ですが、6年前に対談したとき、既に身体は年相応に傷んでいると告白しています。圧迫骨折、胆のうがん、体中の痛みなどに苦しんでいました。けれども、創作意欲だけは衰えませんでした。何かを書きたい、創りたいという思いが、病や痛みを駆逐していたのかもしれません。年をとっても前進し続ける秘密は、このあたりに隠されていたのではないでしょうか。

 

こだわらないこと。遊んじゃうこと。面白がること。92歳で見舞われた圧迫骨折も楽観的だから、回復出来たのかもね……。

(『創造&老年』より抜粋)

 

骨折しているのにも気がつかず、痛い痛いと言いながら、新幹線に乗り、用を片付け、さらには結婚式に出て、また次の場所へ移動しています。ぎっくり腰だと信じていたので、マッサージで治ると軽く考えていたようです。本当なら、お気の毒と言うべきところですが、思わず笑ってしまいます。

 

おまけに、その話を聞いた横尾が「そのマッサージ師というのは、あのインチキマッサージ?」と質問するのですから、もう爆笑するしかありません。彼もそのマッサージ師さんを紹介され、実際に施術してもらったものの、全然、信用できないと断言します。紹介してくれた人を前に、ここまではっきりと感想を言う、あるいは言える関係にあることがうらやましいくらいです。

 

瀬戸内寂聴は横尾忠則を「本当の芸術家」として尊敬しています。その理由は常に変わろうとしているからだといいます。グラフィック・デザイナーとして世界的に有名になったのに、それだけでは飽き足らず、突如、画家に転身した勇気をたたえているのです。

 

一方で、横尾忠則は自分について、こう述べています。

 

僕は、変わっていかないほうが不安になる。自分のスタイルというか様式を決めて、ロボットで作る今川焼きみたいに、同じものを作っていくのは嫌なんです。昨日とは違うものを描きたい。明日はまた違うものを描きたい

(『創造&老年』より抜粋)

 

今川焼き拒否論というべき発言に、なるほどねぇとうなずいてしまいます。

 

磯崎 新に霊泉を勧める

2番目に登場する磯崎 新との対談にも引き込まれました。ふたりは50年も前からのおつきあいだそうです。50年も知り合いだったら、お互いの老いを感じるはずだと思うのですが、磯崎は開口一番こう言います。「横尾さんぜんぜん変わってないんだよ」と。あり得ないと思いながらも、ふたりならあり得ると思ってしまうところに、このインタビューのすごさがあります。

 

対談した時、86歳だった磯崎ですが、元気はつらつです。そんな彼も、77歳、つまり喜寿のとき、体調が変化して、初めて自分が老人だと意識したのだそうです。老齢による身体の変化を感じつつ、創作に励むふたりですが、健康を維持するための努力はおこたりません。医師に頼ってばかりいないで、自分で色々試しています。自分の主治医は自分であるとわかっているのでしょう。

 

とりわけ、ふたりが水に興味を示しすところに注目したいと思います。横尾が磯崎に、自分が43年間も飲み続けている霊泉について話すと、磯崎は「いやぁ、今日の対談は、この水に出逢うために導かれたようだなぁ」と語り、横尾が「それだけでよかったです」と結ぶのです。世界的な画家と建築家が、水について夢中で語り合う様に思わずにっこりしてしまいました。彼らが元気なのは、水のおかげもあるでしょうが、こうして無邪気に、しかし、必死に語り合うその姿勢にあるに違いありません。

 

いつも「今」だけ考える人・野見山暁治

3番目の対談相手となったのは、画家の野見山暁治。私は彼の画も文章も好きなので、どんなエピソードが飛び出すのかドキドキしました。この時、既に94歳ですが、老画家などと呼ぶのははばかられる若々しさです。そもそも、ご自分で「年をとったという自覚がない」と言うのだから、本当に老いるのをやめてしまっているのかもしれません。

 

僕は思うんですが、人間だけが自分の年齢を知っているわけですよね。他の動物は自分の年齢なんて知らないんだから。犬は、「オレも年取ったな」なんて思わない。動くのが、かったるくなるとじっとしているだけで

(『創造&老年』より抜粋)

 

思わず脱力します。そして、次に、その通りだと心底思いました。前はくたびれると「あぁ、もうトシね」と嘆いていたのですが、最近は「今日はかったるいから、ゴロゴロしていよう」と思うようになりました。これまで、私は具合が悪いときに限って頑張る癖がありました。けれども、歯を食いしばっていては、長く働くのは難しいと気づいたのです。

 

あとに続くは珠玉の6人

あとに続く6人も人生の達人ぞろいです。もう面白くてたまりません。是非、『創造&老年』で、続く対談を楽しんでいただきたいと思います。

 

長寿が創作に力を与えている9人の生き方は、私を圧倒しました。見習いたいと言いたいところですが、「年を取るということは、逆に少年に返っていくこと」という横尾の言葉を実践できる自信はありません。けれども、こういう年の取り方もあると知っただけで、心のモヤモヤが一掃され、爽快感で満たされます。

 

『創造&老年』を読んでから、私は自分の年齢を嘆かないようにしようと思いました。毎朝、鏡を見ては、「あぁ、きたわね。ここにも白髪が。シワも増えたな」と、無意味な確認をするのを辞めたのです。代わりに、生きることを楽しんでいればそれでいいじゃないと、言えるようになったのです。それはつまらないことを気にして悩んでばかりいた私にとって、快いショックとなりました。冷たい水で顔を洗ったときのように、目がさめたのかもしれません。

 

心がよどんでどうしようもないとき、年齢による衰えを感じて落ち込んでいるとき、病を得て苦しいとき、『創造&老年』を開いてみてください。自分が年を取っていることに気づいてさえいない先輩たちからエネルギーをチャージしてもらったような気持ちになるでしょう。

 

【書籍紹介】

創造&老年

著者:横尾忠則
発行:SBクリエイティブ

絵を描くことと、生命というものが、どこかでひとつながりになっている。その感覚を確かめるために、横尾忠則が3年かけて訪ね歩いた。9人の80歳以上、現役クリエーターとの唯一無二の対話集。

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街の女の子が主役のファッションカルチャー誌『mer』が、2年半ぶりにムックで復活!

若者の情報源が雑誌からSNSなどのウェブへと移り変わっています。私も若いころに読んでいた雑誌が廃刊……なんてニュースを聞くとどこか寂しい気持ちになるのですが、こんな時代に特別復刊した雑誌があるんです!

 

それは、2007年「街の女のコが主役」をコンセプトに創刊された『mer(メル)』。三戸なつめちゃんのぱっつん前髪や、ナチュラルな可愛さで同世代の女のコからの支持も集める村濱 遥ちゃんなど個性豊かなモデルさんとカルチャーを生み出して来た雑誌としても知られています。

 

今回は、ウェブでも雑誌でも人気の『mer』の特別復刊号をご紹介します。

 

ちょっぴり大人になったmerモデルたちがまぁ〜かわいい!

背伸びしていない、等身大なモデルさんがたくさんいる『mer』は、どのファッションスナップも個性的。トレンドに流されることなく、「私が好きなもの」「私が可愛いと思うもの」を身につけて楽しんでいる様子が伝わって来ます。

 

2年半ぶりに復刊した『mer』を眺めていると、ちょっぴり大人になったモデルさんたちがみんなパワーアップしている気がする……! 今回はなんとモデル自身が誌面をプロデュースしているというから驚き。手描きのイラストが添えられたり、タイトル文字を自分でデザインしていたり、見ているだけでも元気をもらえちゃいます。

 

カレー好きとしても知られているモデルの村田倫子ちゃんのページは、ファッション誌の要素とカルチャー誌の要素が混ざっていてめちゃオシャレに仕上がっています。かわいい私服がたくさんスナップされているだけでなく、merモデルたちがハマっていることや今伝えたいことがたっぷり掲載されています。

 

新人モデルオーディションも開催中

ちなみにこの『mer』では、11月30日まで第8回merオーディションを実施中。誌面にもファイナリスト7名のスナップとプロフィールが掲載されています。

 

ファイナリスト
茜/さやべび/小山瑞樹/齊藤日菜子/吉村桃子/志帆 /星乃かえで(エントリーナンバー順)

 

投票方法は誌面にあるQRコードから投票するか、merのウェブサイトをチェック! この7名の中から新しいmerモデルが出てくると思うと、楽しみですね。とはいえ、投票するとなるとファイナリストの7名がハイレベルすぎて……選べません!(笑)

 

雑誌を読むって楽しい!

久しぶりにファッション雑誌を手に取ってみましたが、やっぱりいいですね! 私自身、雑誌はデジタルで読む機会が増えたため、紙で読むのは久しぶりだったのですが、大きな誌面に隅々まで情報がいっぱい書かれてある状態にワクワクしてしまいました。

 

雑誌を読みながら、欲しいな〜と思った服をネットで調べたり、スキンケアが気になるモデルさんのSNSを覗いてみたり、Instagramだけでは見つけられない街のかわいいファッションスナップに刺激をもらったり、「今」だから楽しめる紙の情報とウェブの情報があるのだな〜と感じました。

 

家にいる時間が増えて、オシャレ欲も減ってきている昨今でしたが、merモデルさんたちに元気をもらえたので、まずは洋服を買いに(笑)出かけてみようかな〜と思いました。読むだけでも秋冬ファッションが楽しみたくなる『mer 2022WINTER』は、もともとmer読者だった方も、これからmer読者になる方にもおすすめの一冊です。

 

【書籍紹介】

mer 2022WINTER

刊行:ワン・パブリッシング

人気merモデルが大集合! 2年半ぶりに待望の復刊! モデルのこだわりの私服コーデからメイク術まで、自分らしくキラキラ輝く秘密を徹底解説します。

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コック兵の視点でノルマンディーを描く史実と創作の狭間で生まれたミステリー長編『戦場のコックたち』

深緑野分さんの、戦地を語るその描写力は本当にすごいと思う。2年前にベルリンを旅する前に読んだ『ベルリンは晴れているか』は1945年初夏の敗戦直後の廃墟と化したベルリンを舞台にしたミステリーだが、あの街を理解するのにとても役に立った。本の中では瓦礫の山となったベルリンを主人公と共に歩き、現実では70数年経って国際都市に生まれ変わった街を歩いたが、戦争の爪あとは其処彼処に残っているのを感じた。

 

そして今日紹介する『戦場のコックたち』(深緑野分・著/東京創元社・刊)では、ノルマンディーからベルリンを目指して進んだ若き米兵たちの物語だが、まるで私もその場に居合わせたかのような気分になった。ヨーロッパ戦線を扱った小説や映画はたくさんあるが、ひとりのコック兵の視点で描いた本作は他とは異なりとても新鮮だった。

おばあちゃんのレシピ帖をお守りに戦地へ

本書の主人公・ティム(通称キッド)はアメリカ、ルイジアナ出身で、人生の楽しみは”食べること”という青年だ。実家は雑貨店を営んでいたが、一番の売れ筋は雑貨ではなく、店先のワゴンで量り売りされていたおばあちゃんお手製の惣菜たっだ。彼の祖母はイギリス生まれで、ある屋敷でキッチンメイドとして働いていて、見様見真似で料理の腕を上げた。結婚し、新天地アメリカに移り住んだあとは、惣菜作りの名人としてその腕を発揮することとなった。家には十数冊に及ぶレシピ帖があった。

 

戦争がはじまり軍の志願兵を募る告知が出たとき、ティムは17歳になったばかりだった。戦場になっていないアメリカにいれば安泰だが、志願して戦地に向かう若者はどんどん増えていった。その理由は安定した給料、金だった。ティムも志願を決めたものの家族は反対。だが、唯一背中を押してくれたのは祖母だった。

 

「行きなさい。ただし死んではならないよ。使命を全うしたら、必ず帰っておいで」それで僕の従軍は決まった。祖母のレシピ帖から一冊、お守り代わりに持ち出して、列車に乗った。

(『戦場のコックたち』から引用)

 

戦闘にも参加するコックたち

入隊したティムはすぐに戦地に送られるのではなく、配属になったジョージア州の基地で2年間訓練を受けた。

 

ある日、ティムはコック兵を増員する張り紙を見た。射撃もうまくないし、足も平均より遅く、図体ばかりでかい子どもだと仲間から笑われ”キッド”と呼ばれる始末。コックなら実力を生かせるとは思ったものの、軍隊におけるコックの評価は低く、落伍者に過ぎないと思われていたのでティムは二の足を踏んでしまう。

 

そんなとき、コックのリーダーであるエドに出会った。年は同じぐらい。色白で細身で丸メガネをかけ、軍服からは食べ物のにおいが漂う青年だった。エドも最初は仲間から馬鹿にされていたが、彼がコックになってからは、食事や糧食の過不足がなくなり、料理のリクエストが採用されるようになると陰口は消えていった。そのエドから声を掛けられたティムは祖母に手紙で相談をする。そして「料理だって闘いの重要なポイントだ」という返事を受け取り、コックになることを決めたのだ。

 

僕は覚悟を決めた。そして需品学校のあるバージニア州フォート・リーで二ヶ月間の練成訓練の後、はじめて階級章を得て、無印の二等兵から五等特技兵に昇格した。(中略)僕らの任務は、隊員に糧食を配り、食材と時間と場所に余裕があるときは調理をし、食中毒にならないように衛生指導しつつ、仲間たちの胃袋を管理すること。コックと言っても僕は中隊管理部付きだから、戦闘となれば銃を取り、普通の兵と一緒に前線で戦う。

(戦場のコックたち』から引用)

 

こうして19歳になったティムはエドをはじめ親しくなったコック仲間たちと共にノルマンディー降下作戦へと向かって行った。

 

戦場の「日常の謎」を解く

目次は以下の通り。

 

第一章 ノルマンディー降下作戦

第二章 軍隊は胃袋で行進する

第三章 ミソサザイと鷲

第四章 幽霊たち

第五章 戦いの終わり

 

それぞれの戦場で起こる奇妙な事件に、若き兵士たちが気晴らしのために謎解きをしていくというミステリー小説で、いわゆる戦争ものが苦手という女性もおもしろく読めるのが本書だ。

 

ノルマンディー降下作戦で使われたパラシュートの白い絹の生地をひっそり集めていた兵士がいたのはなぜか? 忽然と消えた600箱の粉末卵はどこへ? オランダの民家で起きた夫婦の奇妙な自殺はなぜ起こったのか? 塹壕戦の最中に聞こえる気味の悪い怪音の正体とは?

 

常に死と隣りあわせの戦場で、ティムだちはささやかな謎解きをすることを心の慰めとしていたのだ。まったく違う視点で描かれたヨーロッパ戦線が読み手にはとても新鮮だ。

 

腹が減っては戦はできぬ

連合軍にドイツそして日本が負けたのは、人海戦術と食料をはじめとする物資の圧倒的な差も一因だったのだと、この本を読んでいるとよくわかる。

 

いくら厳しい訓練を重ねた兵士だって、所詮は人間だ。腹も減るし、休息しなければ疲弊が増大、使い物にならなくなって戦闘に敗れ、結局は前線が維持できなくなる。肝心の兵士が弱っていては勝てない。

(『戦場のコックたち』から引用)

 

第二章の「軍隊は胃袋で行進する」では、兵士たちが交代で、後方の野戦基地での給養していたことが描かれている。いったん後方地区に下げられた兵士たちは、シャワーを浴び、戦闘服を洗濯に出してリフレッシュ。そして作り立てで栄養たっぷりの料理をお腹いっぱいに食べ、ベッドに横たわってゆっくりと眠る。そうして元気になったら、再び前線へ戻っいく。当時の連合軍の前線の維持は、そういう兵士のリサイクルに支えられていたのだ。

 

物語は、ティムが戦後アメリカに戻ってからのこと、さらには40数年後に戦友たちとベルリンで再会するまで続き、最後までワクワク、ドキドキしながら読み終えることができた。深緑さんは、このヨーロッパ戦線に関する膨大な資料を集めて、このストーリーを完成させたのだろう。史実と創作の狭間で生まれたミステリー長編小説、あなたも是非ご一読を。

 

 

【書籍紹介】

戦場のコックたち

著者:深緑野分
発行:東京創元社

合衆国陸軍の特技兵、19歳のティムはノルマンディー降下作戦で初陣を果たす。軍隊では軽んじられがちなコックの仕事は、戦闘に参加しながら炊事をこなすというハードなものだった。個性豊かな仲間たちと支え合いながら、ティムは戦地で見つけたささやかな謎を解き明かすことを心の慰めとするが。戦場という非日常における「日常の謎」を描き読書人の絶賛を浴びた著者の初長編。

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こんなに簡単でいいの? “試作の鬼”が考案したはやくてウマい絶品レシピが満載の『スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん』

大手企業でのレシピ開発や、メニュー提案、フードコーディネーターとしても活躍されてきた “試作の鬼”こと料理家のスギヤマヒサエさん。彼女が作り出すレシピはどれもハードルは低いのに、クオリティは高いとレシピサイトNadiaでも多くのファンから支持されています。そんな彼女が出版した『スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん』(スギヤマヒサエ・著/ワン・パブリッシング・刊)は、お店で出てくるような見た目なのに、調理時間がはやい! 手順も簡単! さらに美味しい! とレシピ難民にはありがたい三拍子揃ったレシピばかりでした。今回はそんなスギヤマさんの新刊に掲載されているレシピを実際に作って、その簡単さをお伝えしていきます!

 

「簡単でおいしい」って、本当に実現できるの?

スギヤマさんの書籍やインスタグラムを眺めていると、どれもまぁ〜美味しそうな料理ばかり! 表紙に使われている「ルーロー飯」なんて、じっくり煮込んでいるようなテリテリ具合で、お腹が空いている時に眺めたら勝手によだれが出てきそう……(笑)。しかし、このルーロー飯の調理時間はたったの15分! 豚ブロックに片栗粉をまぶすことで、調理時間を短縮しているのだとか。賢い!! これが実現できるのも、スギヤマさんが“試作の鬼”と呼ばれるほど、その料理の最適解を検証し続けてきたからなのだとか。

 

そんなこんなでレシピ開発を考えていたら、結果“簡単でおいしい”が実現。

それは“手抜き”というより“無駄を削ぎ落とした”ポジティブな見直し。

 

「唐揚げはたっぷりの油で揚げるべき」

「ルーロー飯は長時間煮込む料理」

「ゆで卵は鍋で水からゆでないと」

 

いいえ。これは単なる思い込み。

固定概念の枠を外して考えるスギヤマレシピなら、これまでの常識が変わります。

(『スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん』より引用)

 

実際にレシピを読んで、作って、固定概念が外されまくりました! 80品以上掲載されているレシピの中から、個人的にヒットだった2つのレシピをご紹介します。

 

揚げない! 丸めない! プライパンだけでできちゃう「カニクリームコロッケ」

あくまで私の感覚ですが、「コロッケをつくる」というのは「都内から成田空港へ行く」くらいハードルが高いことです。それがクリームコロッケとなれば、タネを作って冷やして固めて、揚げてって、大変……。海外旅行に行くくらいのハードルの高さになります。

 

でもたまに、ど〜〜〜しても食べたくなる時あるじゃないですか? 冷凍食品やスーパーのお惣菜でも十分においしいけれど、はふはふ言いながら食べたい! そんな願いを叶えてくれるのが、調理時間たったの20分でできてしまう「揚げない! 丸めない! 目からウロコのカニクリームコロッケ」でした。

 

作り方については『スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん』を読んでいただきたいのですが、本当に簡単なのでご紹介すると、あらかじめきつね色になるまでパン粉を炒め、別のお皿に移しておきます。

 

みじん切りにした玉ねぎを無塩バター(なければ有塩でもOK)で炒めて、そこにカニカマと薄力粉を入れて馴染ませた後、少しずつ牛乳を加えながらちょうど良いとろみになるよう火を入れて調整。塩こしょう、コンソメで味付けしたらタネの出来上がりです。

 

タネをお皿に移したら、その上に炒めたパン粉とパセリで彩りを加えて完成!

 

見た目は「え〜こんなのカニクリームコロッケじゃない」と思うかもしれませんが、口に入れてびっくり! サックサクでとろっとろのカニクリームコロッケでした。今まで成田空港へ行くくらいのハードルでしたが、このレシピを知ってからは都内で2〜3駅先に行くくらいの感覚に。我が家ではパン粉もあまりがちなので、定番メニューにも仲間入りしました。次はちょっと高級なカニカマを使ってみようかな? とまた作るのが楽しみになっています。

 

材料を切ってチンするだけの 「ナポリタンうどん」

次にご紹介する「ナポリタンうどん」は、電子レンジだけでできちゃいます。ナポリタン大好きなのですが、フライパンとお皿にケチャップがべったり付いてしまうので洗い物がちょっと面倒なんですよね。パスタだとゆで時間だけでも5分以上取られちゃうし、ちょっと目を離しただけでも鍋から噴きこぼれちゃったり。お昼に食べよ〜と思っても片付けやら準備でバタバタしてしまい、個人的には食べたいけど腰が重い献立のひとつです。

 

けれどこの「ナポリタンうどん」なら、切った材料と調味料を耐熱ボールに入れて、その上に冷凍うどんを乗せ、ラップして5分チン。その後混ぜ合わせて追加で2分チンするだけで出来上がる超簡単メニュー!

 

 

今回は写真を掲載しようと思ったので別のお皿に乗せましたが、耐熱容器のまま食べてしまえば洗い物も1つで済むし(笑)、お昼に作っても余裕! と思えたレシピでした。

 

『スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん』には、他にも揚げないヤンニョムチキン、材料3つでできるタンドリーチキン、レンチンで作るハンバーグなど「そんなに簡単でいいの?」と思うようなレシピが満載。パラパラと眺めているだけでも、今度はアレを作ってみよう、家では作ったことないけれど挑戦してみよう、今から作るぞ! と台所に立つのも楽しくなるはず。果汁を絞りやすいレモンの切り方や、スギヤマさんが愛用している調味料一覧などコラムも充実しているので、レシピ以外にも役立つ情報が満載。一家に一冊常備しておきたいレシピ本です。

 

 

【書籍紹介】

スギヤマヒサエの技あり!極旨うちごはん

著者:スギヤマヒサエ
刊行:ワン・パブリッシング

おいしさを追求したら、レシピが簡単に! おうちごはんを手軽にグレードアップできる、技ありレシピをたっぷり紹介します。どこにでも手に入る食材を使って簡単な調理だけですが、味には一切妥協なし。作ってみると「こんなに簡単なのに、こんなにおいしいの!?」と驚くレシピばかりです!

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女子高生×カメラ=ドキドキ! 異色のカメラマンガ『カメラ、はじめてもいいですか?』がおもしろい

スマホの普及により、写真を撮影するという行為が一般的になっている。ほとんどの人がスマホのカメラで満足していることだろうが、中にはさらに写真を楽しむために、本格的なカメラを使ってみたいと思っている人もいることだろう。

 

ただ、ちょっと躊躇してしまう人もいるのではないだろうか。慣れない人などは「操作が難しそう」という理由で、レンズ交換式のカメラなどは敬遠してしまうかもしれない。

 

そんな「カメラを始めたいけれど、どうしよう」というよくある(?)悩みを解決してくれそうなマンガが『カメラ、はじめてもいいですか?』(しろ・作/少年画報社・刊)だ。

 

地味巨乳女子高生がカメラに目覚める!

主人公の池田ミトは、根暗で顔もパッとしなくて胸が大きくて恥ずかしいから猫背がちの高校1年生。何の取り柄もない普通の地味女子高生だが、同じアパートに住む大学生の綿矢ミサトに誘われて、写真の撮影に目覚めていく。

 

女子高生登山マンガ『ヤマノススメ』の作者の作品だけに、ストーリー的に似ている部分はあるが、僕は『ヤマノススメ』も好きなのでとても楽しく読めた。まだ2巻までしか発売されていないが2022年1月には3巻が出るようなので楽しみだ。

 

カメラへのこだわりが濃い

このマンガ、一時期ネット上でちょっと話題になったことがある。なぜなら、作品中に出てくるカメラが結構“渋め”だからだ。

 

主人公が使うのは富士フイルムの「X-T20」。キヤノンやニコンではなく、富士フイルムというところがマニア心をくすぐる。そのほか、富士フイルムのX-T3、X100T、ペンタックス(リコー)のKP、GR III、ニコンのZ 50にZ 5、COOOLPIX A、ソニーα7c、インスタントカメラのチェキも登場。いやー、渋いラインアップだ。

 

しかも、各話の間にはメーカーやカメラ沼にはまっている人のインタビューやコラムなどもあり、かなりカメラ熱高めの内容となっている。カメラ好きなら隅々まで読んでしまうだろう。

 

もっと気楽に撮影を楽しもう

出てくるカメラのラインアップは渋めだが、カメラに関する小難しい話はそれほど出てこない。今後出てくるのかもしれないが、今のところは主人公がカメラ・写真の世界に興味を持って惹かれているという段階。カメラの選び方も

 

「しっくり来た子を使っていいから」

(『カメラ、はじめてもいいですか?』より引用)

 

という感じで、あくまでもフィーリング重視といった感じ。そのため、カメラに詳しくなくてもすんなり読める。

 

カメラを構えて写真を撮るなんて、結構ハードルが高いと思いがちだが、一度撮影してみれば思ったよりも簡単だし、楽しい。もしカメラを始めたいけれど躊躇しているのなら、『カメラ、はじめてもいいですか?』を読んでみよう。知識なんて必要ない、撮りたい気持ちと撮りたいものがあれば、カメラが楽しめるということがわかるだろう。

 

【書籍紹介】

カメラ、はじめてもいいですか?

著者:しろ
発行:少年画報社

根暗で猫背(そして巨乳な)自分が好きじゃない女子高生のミトがお隣のお姉さんに誘われたのはファインダー越しの世界!? 一眼カメラから新しい世界を見て一歩踏み出そう! 「ヤマノススメ」のしろが描くガールズホビーコミック!

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おじさんの「キモい」と「シブい」の差はどこに? 『モテと非モテの脳科学』は対人スキルがアップする実践本だった!

1962年生まれの筆者は、週刊誌なら『週刊プレイボーイ』と『平凡パンチ』、月刊誌なら『Hot-Dog Press』と『POPEYE』のHow to恋愛コーナーに彩られた10代を過ごした。

 

実践的なトライ&エラーの記録

リリカルな響きのタイトルに惹かれて『モテと非モテの脳科学・おじさんの恋心はなぜ報われないのか』(菅原道仁、山田ゴメス・著/株式会社ワニブックス・刊)という一冊を手に取ってみた。10代のころに蓄積された刷り込みは、今になってもいつでも再起動できる状態にあるようだ。

 

著者は、共に“チャラいおっさん”であるベテランライター——ちなみに同い年—―と脳神経外科医のコンビ。とあるニュースメディアで対談を行って意気投合し、一緒に合コンに参戦したり女性との飲み会を開催したりの後、毎回前向きな反省会を重ねた。本書は、こうした反省会のトピックをまとめたものだ。読者からの質問➝著者の回答➝先生の回答➝結論というフォーマットに統一された項目の数は、全部で27。まえがきにこんな文章がある。

 

本書にはおのずとながら、私と菅原先生の同世代(=40代~60代半ばあたり)の男性、いわゆる「おっさん」が抱える恋愛の悩みが多く登場し、「心や生き方までをサポートする治療」を信条とする脳神経外科医と、「永遠の思春期」をみずから標榜する老獪なベテランライターが、それら一つひとつに取り組んでいくスタイルを、メインとしている。

『モテと非モテの脳科学・おじさんの恋心はなぜ報われないのか』より引用

 

女性から寄せられた質問にも答えることでバランスがとれ、座りがいい。さらに、「モテと非モテの脳科学理論」をリアルに検証するためのフィールドワークとして行ったコリドー街でのナンパルポの躍動感で、心地よく読み切ることができる。

 

カラフルな質問

読者からの質問もカラフルだ。いくつか紹介しておきたい。

 

・「シブい」と「キモい」の差はどこにあるのか

・おじさんの定義とはなにか?

・LINEの反応がイマイチなのはなぜか

・正しい下ネタとはどういうものか

・夫とこのまま一生暮らすのかと思うと気が滅入る

 

厳選された27の質問には、自分ごとが必ず含まれている。ここでは、51歳既婚男性・自営業さんからの質問を掘り下げてみたい。

 

お二人から見てズバリ!「こいつ、おっさん臭くてモテないな」「絶対、女の子も寄ってこないだろうな……」と感じるのは、どんなタイプの中高年男性ですか?

『モテと非モテの脳科学・おじさんの恋心はなぜ報われないのか』より引用

 

お二人の回答を要約すると「話がループする」「飲みすぎ」(山田さん)、「くどい」「目線が定まらない」「見返りを求めすぎ」(菅原先生)ということになるようだ。あえてこの項目を選んだのは、筆者自身が気になったから。さっそく20代から40代の複数の知人―—もちろん女性―—に確認してみたところ、セーフだったように感じられる。鏡の中の自分を見るような感覚に陥るどきっとする質問と対峙することにこそ、この本の意味があるのだろう。

 

ナンパルポの懐かしくて新しい感覚

新橋から銀座にかけてのびるコリドー街でのナンパルポは、高校生のころ歌舞伎町噴水回りのディスコに通っていたいくつもの夜を思い出させてくれた。二人の活動中のモノクロ写真が差し込まれているけれど、画質にも画角にも10代のころ親しんでいた紙媒体の香りを感じる。

 

ファッションや最初のひと言、立ち居振る舞いや会話の進め方、スマートな締め方といった各シーンを通して、本書の内容を自然な形でおさらいできる構成になっている。[後日談]で、絵文字も含めたLINEの作法も確認できる。これは今の時代ならではのコミュニケーションの作法として外せない。

 

とてもテンポよくまとめられているパートで、凝縮されているものは濃くそして深い。何より実践的。全部で3パターンくらい紹介してほしかった。というか、この企画だけ押し切る本を読んでみたい。

 

モテ? 非モテ?シンプルな答えはご自分で

菅原先生によるあとがきに、次のような文章がある。

 

どうして自分だけがうまく行かないのだろう、なぜフラれてばっかりなのだろう、年のせいかなあ、顔のせいかなあ、お金に余裕がないせいかなあ、と自問自答をしている人たち向けにこの本を書きました。

『モテと非モテの脳科学・おじさんの恋心はなぜ報われないのか』より引用

 

直後に続くシンプルな結論の一文は、あえて紹介しない。本書を最初から読んで、あとがきに達した時に初めて実感として湧くものがあるからだ。モテ・非モテというキーワードを軸に展開していく内容でありながら、その背景に広がるのは汎用的な対人スキルに関する実践に裏打ちされたノウハウなのだ。なんか、生え際の白髪染めたくなってきた。

 

【書籍紹介】

モテと非モテの脳科学 おじさんの恋心はなぜ報われないのか

著者:山田ゴメス、菅原道仁
刊行:ワニブックス

本書はライターと脳神経外科医、ふたりのおじさんによるおじさんのためのおじさんの恋愛本である。ふたりのおじさんは、ときには合コンに繰り出し、ときには「男女の出会いあの新名所」にも乗りこみ、時にはへこみ、時には若いやつらを出し抜き意気揚々と夜の闇に消えていく。「いい年して」「大人げない」「そろそろ枯れたら」と言われようがおかまいなし、のふたりの願いはただひとつ。おじさんたちよ「もう年だから」なんて言うな! いくつになっても恋は苦しく、そして楽しい。

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結成10周年!グラビアが加速する!HKT48田中美久初ビキニ表紙!「ボム12月号」

BOMB12月号は12月1日(水)に2ndアルバムを発売するHKT48が表紙巻頭に登場!

 

博多の大エース、田中美久は待望のボム初水着!

夏の終わりの海、爽やかビキニで楽しくはしゃぐみくりん。可愛い三つ編みおさげ髪でサラダを頬張るみくりん。和テイストのビキニでくつろぐみくりん。20歳の大人っぽさでドキリとさせる黒のタンクトップ水着のみくりん。しっとりとした美しさのニットコーデみくりん。たくさんのみくりんをいっぱい詰め込みました!

 

ファンの間で“あねもね”と呼ばれる4期生の仲良しトリオ、武田智加・地頭江音々・豊永阿紀。今回がなんと3人だけでの初グラビア&初お仕事。いつもの自然体の雰囲気が可愛いカラフルビキニ、ちょっぴり大人なシックビキニ。季節はちょっと違いますがアネモネの花が満開です。

 

7月に開催されたHKT48初のリクアワで見事第1位に選ばれた5期生曲『真っ赤なアンブレラ』。5期生を代表して未来のセンター“いぶくる”こと石橋颯・竹本くるみがボムに登場。制服&タンクトップ部屋着のグラビアで、もちろん真っ赤なアンブレラを差してます。

 

大好評の48グループ初水着連載にもHKT48の田中伊桜莉が登場。きゅうり大好きキャラというちょっと変わった19歳。博多の海でのヘルシーな水着姿にくぎ付け!

 

【別冊W付録】
●別冊付録1
両面超BIGポスター
田中美久/武田智加・地頭江音々・豊永阿紀(HKT48)

 

●別冊付録2
総勢13人登場! オール水着カレンダー
安藤咲桜・石田桃香・大和田南那・奥山かずさ・北向珠夕
沢口愛華・志田音々・高崎かなみ・都丸紗也華・豊田ルナ
由良朱合・吉澤遥奈・吉田莉桜

 

【通常版裏表紙は“あねもね”の3人】

 

【TSUTAYA限定版表紙には大和田南那が!】

大和田南那は秋のしっとり水着グラビアを。22歳の大人っぽい装いがたまりません。ベロア素材のチューブトップ水着、やわらかいピンクの三角ビキニ、オレンジのニットタンクコーデ。しっとりなーにゃも最高です。

 

【TSUTAYA限定版はポスターもオリジナル】
別冊付録1
両面超BIGポスター
大和田南那/田中美久(HKT48)

※別冊付録2の水着カレンダーは通常版、TSUTAYA版ともに同じです。

 

【TSUTAYA版の裏表紙は田中美久(HKT48)が!】

 

[商品概要]

BOMB12月号

定価: 1098円 (税込)

【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://amzn.to/3wmk9VN
・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1230733237

アイドルが書いた作品だと思って読んだら、裏切られた! 松井玲奈『カモフラージュ』

国民的アイドルグループに属していた、とても可愛い女の子。正直、私の中でそのくらいの印象しかなかった。それがまさかこの一冊に出会ったことで、大げさではなく、彼女の才能にひれ伏すことになろうとは。松井玲奈。末恐ろしい人だ。

独特な表現が、胸に響く

実家の母と私は共に読書好き、しかも好む作品の傾向が似ているので、読了した本を定期的に送り合っている。先日届いた荷物の中に、その一冊は入っていた。

 

松井玲奈のデビュー短編集『カモフラージュ』(集英社・刊)。2019年4月に単行本が出され、今年5月には文庫化された作品だ。

 

松井玲奈って、SKE48にいた子よね。アイドルが書いた小説か……と手にとったときのテンションは低空飛行気味だったが、短編集で読みやすそうだし、ちょっと読んでみようかな。そうおもむろにページを開いて読み進めてみた。すると、どうしたことだろうか、鳥肌がゾワゾワと立ち始めた。

 

その理由は、ふたつ。

 

ひとつは、彼女が紡ぎ出す文体に、良い意味で期待を見事に裏切られたから。一文一文がすっと入ってくる。小難しい言葉は使われていない。むしろ、ありふれた言葉をチョイスしている。にもかかわらず、描写が独特なのだ。だから、新鮮で既視感がない。おそらく、擬音語や擬態語の表現がうまいのだと思う。なかでも、ひらがなの描写と用いるタイミングが秀逸だ。

 

「からからから、ことん」と、ビー玉が落ちる音。

ふわふわ、ぐしゃぐしゃ、ゆらり、じんじん、ぎゅうううっ、ぺしゃん。

 

彼女が描く情景が、柔らかく脳裏に広がる。

 

愛しさ、切なさ、恐ろしさ、そしてエロティシズム。万華鏡のような作品の数々

もうひとつの、鳥肌がゾワゾワと立った要因。それは、ストーリー自体にある。

 

文庫版『カモフラージュ』に収録されているのは、単行本集録作品6編に描き下ろしの1作を加えた、全7編。そのすべてが、「食」にまつわるストーリーだ。

 

たとえば、決まった夜にしか会えない彼のために、心を込めてお弁当を作るOL。たとえば、明太子スパゲッティをこのうえなく美味しそうに頬張るメイド喫茶の店員。たとえば、食べたら本音を話さずにはいられなくなる闇鍋に興じるYouTuberたち……。

 

そのほか、小学生の男の子から出会って8年目の夫婦、アラフォー独身女性まで、性別も年齢も環境もまったく違った人々が代わる代わる登場する。どのストーリーも一見すると読みやすく、共感しやすい。

 

だがしかし、すでに読んだ方ならお気づきだろう。どこかおどろおどろしい気味の悪さをも感じるのだ。まるで、ホラー小説を読んでいるかのような。同時に、エロティシズムも漂う。そして、心の奥底に小さく傷を負ったような、少しの切なさまであわせ持つ。

 

隠していた本音が暴かれたとき、あなたは……

タイトルである「カモフラージュ」とは、様子を変えて、本当の姿や心情を悟られないようにすること。他人の目をごまかすこと。誰だって、誰かを欺いて生きている。時には自分自身をも。そんな、登場人物たちが普段は隠している内側の姿を、私たち読者は、松井玲奈という作家を通じて垣間見ることができる。

 

そしてきっと、7つの物語のうちのどれかは、自分に似ている主人公を見つけるだろう。そして、隠している本音を暴かれて、ドキリとするだろう。

 

個人的に気に入っているのは、「拭っても、拭っても」。文庫書き下ろしの「オレンジの片割れ」も良い。絶望、驚き、怒り、諦め、さまざまな人間の内側の感情を描きつつも、決して希望を失わせない。松井玲奈という新鋭作家から、今後目が離せない。

 

【書籍紹介】

カモフラージュ

著者:松井玲奈
発行:集英社

心を込めて作った、二人分のお弁当。食べる場所は、いつも夜のホテルで…(「ハンドメイド」)。小学生の僕が暮らす世界では、強いストレスを感じると、口からもう一人の自分が吐き出されて…(「ジャム」)。恋愛からホラーまで、「食」にまつわる多彩な物語をおさめた鮮裂なデビュー作が待望の文庫化!単行本収録作品6編に文庫書下ろしの「オレンジの片割れ」を加えた全7編を収録。

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女性ファッション誌やInstagramでも注目される、三條場夏海が”たった5着のベーシック服”で100コーディネート着まわす『joba’s SIMPLE BASIC』

女性ファッション誌やInstagramで注目されているBEAMS SALON / JOIÉVEディレクター、三條場夏海のスタイルブック『joba’s SIMPLE BASIC』。

 

「白T」「デニム」「黒ニット」「スウェット」「シャツ&ブラウス」という誰もが取り入れやすい5着のベーシックアイテムを軸にして、大人の女性のためのシンプルで洗練されたコーディネートをそれぞれ20体ずつ100体紹介します。

 ”たった5着のベーシック服”を味方に付けて、365days ”着まわし上手”に

本書は、シンプルで洗練されたコーディネートが20-30代の女性を中心に支持されている、三條場夏海による初のスタイルブックです。オール私服・オール撮りおろしで、誰もが真似しやすく、アレンジしやすいコーディネートサンプルを100体紹介します。

 

キーアイテムとなるのは、「白T」「デニム」「黒ニット」「スウェット」「シャツ&ブラウス」。誰もが自宅のクローゼットに持っているであろうこれら5着の定番アイテムを軸にして、オールシーズン自由自在に着まわします。

 

普段のInstagram等では解き明かされない、コーディネートの秘密を余すことなく公開。シンプルだけれどほんのりと色気を感じさせる、独自のこだわりやルールは必見です。

 

【著者プロフィール】

東京生まれ、神戸育ち。2016年BEAMS入社。販売職を経験したのち、異例の早さでプレスに抜擢される。2020年には“結婚式参列”をテーマにBEAMSの商品をキュレーションする「BEAMS SALON」を立ち上げ、同時に旗艦ブランド「JOIÉVE」のディレクターに就任。きれいめとカジュアルの絶妙なミックス感に定評があり、様々な女性誌やSNSで注目を集めている。身長158cm、好きな飲み物は配色のきれいなカフェラテ。

 

【著者コメント】

私たち女性のライフスタイルやライフステージは様々。
それぞれが忙しい毎日を送っていますよね。
悩みも様々で、私のフォロワーのみなさんからは

“毎朝のコーディネートがなかなか決まらない”
“自分に何が似合うのかわからない”

こういった声が数多く寄せられています。
そこで私が提案したいのが、この5着を味方に付けること。

「白T」「デニム」「黒ニット」「スウェット」「シャツ&ブラウス」

これらのベーシックなアイテムを“軸”として考えれば
無理なく、悩まず、洗練されたコーディネートが完成するのです。

そして、あれこれと複雑なレイヤードを考えなくても大丈夫。
コーディネートはシンプルであればあるほど、
女性としての魅力が最大限に引き出されると思うからです。

毎日、自分に自信を持てる“三條場流シンプルベーシック”。

この本でアイテムの選び方・合わせ方のコツをお伝えしていきます。

 

[商品概要]

joba’s SIMPLE BASIC

著者: 三條場 夏海
定価: 1760円 (税込)

【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4651201652/
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・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1107247984

「やさいバス」に「佐渡島ワイン」、農業のポテンシャルを引き出す改革者とは?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。「出る杭は打たれる」ということわざがありますが、あまり気持ちの良いものではないですね。確かに、区画などを示すための杭が1本飛び出ていたら目立つかもしれませんが、それをみんなが叩いて揃えようとする世の中ではいずれ息が詰まってしまう……。「出る杭に合わせて伸ばす」、そんなことわざがあってもいい気がします(笑)。

 

 

「稀人ハンター」が農業の改革者を取材

今回の『農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ』(川内 イオ・著/文春新書)は、農業に挑む改革者たちをクローズアップして話題を呼んだ『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』(文春新書)の続編となる新書。

 

 

著者は広告代理店勤務を経て、2003年からフリーライターとして活躍している川内イオさん。「規格外の稀な人」を追って日本全国、世界各地を旅する「稀人ハンター」として取材、執筆、編集、企画を行っています。川内さんの著作『1キロ100万円の塩をつくる 常識を超えて「おいしい」を生み出す10人』(ポプラ新書)も以前、当コーナーで紹介しました。

 

農業の可能性は無限大!

本書のテーマは「越境」。「分野を越える」「技術で越える」「世代を越える」「国境を越える」。新しいアプローチで農業の領域を広げる10人を取材しています。

 

最初に登場する加藤百合子さんは、NASAの植物生産プロジェクトに参加した経験もある東大農学部卒の元エンジニア。結婚して静岡の産業機械メーカーで働いていた加藤さんは、第二子出産後に農業ベンチャーを起業します。決意したら思い切って一歩踏み出す加藤さんのスタイルはバイタリティにあふれていますね。

 

農産物の売買をマッチングする会員制サイトや農業情報メディアなどさまざまな事業を試み、現在成功しているのは「やさいバス」という独自流通システムの運営。これは農地、直売所、デパートなどに“バス停”を設け、“バス”と呼ばれる保冷車がルートを巡回。そこに生産者が野菜を持ち込み、購入者はバス停で野菜を受け取るという仕組み。生産者の手取りはJAを通すと30~40%のところ、やさいバスなら85%とか。4年で7県、生産者380人、購入者800社とユーザーは右肩上がりだそうです。

 

なるほど、私がよく行くスーパーには、はるばる遠くの県から運ばれてきた野菜が並んでいますが、このやさいバスがあれば、地元で採れた新鮮な野菜が味わえそうです。

 

加藤さんはやさいバスの傍ら、GPSで自動走行できる「雑草ふみふみロボット」など農業用ロボットも開発中。しかし、公道での自動走行は認められておらず、農林水産省の補助も終わって、現場では活躍できていないとか。こうした壁もなくなるといいですね。

 

もうひとり、私が気になったのは佐渡島でワイン造りを志すフランス人醸造家のジャンマルク・ブリニョさん。本場フランスで「天才醸造家」と賞されてきたジャンマルクさんは、日本人女性と結婚して来日。フランス東部のジュラ地方と気候が近い佐渡島で、ブドウ栽培に励んでいます。

 

賛同者の自宅の庭先に少しずつ醸造用のブドウを植えてもらう「1a(アール)プロジェクト」や、あえてほかの野菜とともにブドウを植える試みなど、新しい土地でのチャレンジの様子はとても楽しそう。佐渡島ワインができた暁には、ぜひ飲んでみたいですね。

 

バラ好きが高じて19歳で食用バラの生産現場に入った女性バラ農園主、講義の傍ら1本5000円のレンコンを生産する民俗学者、ベトナムで高級コショウ栽培を復活させた日本人男性……。丁寧な取材を通して、“新しい農業”に挑む人々の情熱がしっかり伝わってきます。読んでいるこちらも戦う気力が湧いてくるような一冊でした。

 

【書籍紹介】

『農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ』

著者:川内イオ
発行:文藝春秋

ネパール人仏画師、民俗学者、ロボットエンジニア…ジャンルも国も越境し、農業というフロンティアに挑む人たちがいる。彼らは、前世代が培った経験、知恵を継承し、自由な発想で、日本で、そして世界で勝負するネクストファーマーズだ。農業こそ時代を先取る未来産業だ!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

総力特集は、超能力の謎と地球生命体ガイアの意識——月刊「ムー」12月号

世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリー・マガジン月刊「ムー」12月号が発売中。

総力特集 超能力の謎と地球生命体ガイアの意識

宇宙を支配するフラクタル理論。人間の脳と地球の電離層の共振現象。一見、別々に見える現象をひとつに結びつけるもの。それがシューマン共振波である。超能力研究の過程で発見された脳波スローアルファ波はシューマン共振波と同じ周波数7.8ヘルツだった。これが意味することは、いったい何か。奇跡の謎に迫る。

特別企画 ミュオグラフィで大ピラミッドを透視する‼

古代エジプトの大ピラミッドには未知の空間が存在する可能性が高い。素粒子のひとつ、ミュー粒子を利用した透過撮影技術によって、ついに謎の空間の場所が特定されつつある。火山や原子炉の内部をもイメージングできる最新技術に迫る。

 

今月もミステリー記事満載‼

2色刷り特集 世界の超常現象ファイル2021/実用スペシャル サクセス・バイブレーション開運法/特別付録 古代エジプト 神秘のパワースポットカレンダー2022/コミュニオン体験者マーク・シムズ/アイダホに筋骨龍柱のビッグフットが出現/ドローン・カメラがネッシーの姿を捉えた‼/ミステリーサークル2021/超能力の謎を解く「幻視」の秘密/ほか

[商品概要]

月刊ムー 2021年12月号

著者: ムー編集部
定価: 930円 (税込)

 

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開戦から80年。「真珠湾奇襲」と「マレー電撃戦」の意外と知られていない実像に迫る!『歴史群像12月号』

人類の歴史は多様な戦いの歴史でもあります。毎号「戦い」に関するものを中心に、古今東西のさまざまな人物・事象をテーマとした20本以上の記事を掲載している『歴史群像』。

 

真珠湾奇襲とマレー電撃戦の実相に迫る記事3本を掲載!

2021年12月8日は太平洋戦争開戦から80年の節目に当たります。今号ではこの節目に合わせて①第一特集「作戦分析 マレー進攻作戦~最新研究が明かす日本版「電撃戦」の実相」、②「再検証 特殊潜航艇の真珠湾攻撃~未だ多くの謎を残すその最期」、③「図説 オアフ島要塞~真珠湾を守るアメリカ陸軍の砲台群」の3記事を掲載。

①では、開戦とともに開始されたイギリス領マレー半島とシンガポールへの進攻作戦の実相に迫るとともに、早くも緒戦のこの作戦で露呈し始めていた、敗戦へと繋がる日本陸軍の問題点をえぐり出して分析します。「大勝利」の陰に隠されて顧みられなかった問題点とはどのようなものだったのでしょうか。

 

②は、日本海軍による真珠湾攻撃のうち、大々的に喧伝され、かつ大戦果を挙げた空母航空隊による攻撃の一方で、あまり取り上げられることのない、2人乗り小型特殊潜航艇「甲標的」5艇による艦艇攻撃についてのカラー分析記事です。そもそもどんな作戦だったのか。そして謎の多いそれぞれの艇の最期について、現在どこまでわかっているのか。出撃する前に日本で撮られた5艇の全搭乗員10名の集合写真等、貴重写真も交えて紹介します。

 

③では、米軍がハワイ・オアフ島の一大海軍拠点である真珠湾を守るためにつくりあげた「オアフ島要塞」の歴史と構造に迫ります。

 

好評連載「日の丸の轍」の迫力の日本軍車両イラストを掲載した特製カレンダー付き!

今号には毎年恒例のオリジナル・カレンダーも付属。今年は好評連載「日の丸の轍」に登場した、上田信先生が描いた日本軍の車両7種の迫力満点の情景イラストを掲載!

 

このほか、第2特集「実録 南太平洋海戦(後編)」、第3特集「倫魁不羈 水野勝成」など多彩な記事を掲載。『歴史群像12月号』で歴史をより深く味わってみませんか。

 

[商品概要]

歴史群像12月号

定価: 1130円 (税込)

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大人だってまだ間に合う! あなたの金融リテラシーを上げる『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』

日本の株価は上がらない。欧米市場の好況の影響が及んでも、上げのスパンはきわめて短い。賃金や物価の長期にわたる横ばい状態とも無関係ではないだろう。そういう見方がある。

 

日本の株価は安すぎる?

最近、ちょっと株式相場に関わっている。とは言っても、筆者よりもはるかに真剣な姿勢で取り組んでいる奥さんから話を聞いて知識を増やしているだけなのだが。ただ、その程度でも日本の平均株価が世界と比べて低すぎるレベルにあることは容易に理解できる。

 

理由のひとつとして、日本人投資家の絶対数の少なさが挙げられる。株が売れれば株価は上がる。しかし、株を買う人の絶対数が少なければ、ある程度まで上昇したところでそれ以上伸びようがない状態になる。外国からの資金も入るが、主軸であるべき日本国内の買いのボリュームは決して大きいとはいえないようだ。

 

金融リテラシーを効率的にはぐくむ方法

大多数の日本人は株式投資に関する知識が不足していて、それが消極的な態度になって現れるのかもしれない。たとえば、アメリカでは中学校で株式投資をはじめとする金融リテラシーをはぐくむ授業が始まるので、距離感が日本とは根本的に違う。中国だって、投資はごく一般的に行われている。

 

「じゃあやってみよう」という気になったとしても、むやみに始めれば損をするに違いないと感じ、ひるんでしまう。何らかの指針は絶対に必要だ。英語の学習とは違って、投資に「やり直し」という言葉のニュアンスは当てはまらない。日本では、大人になってから投資を基本から学び、まったく新たな試みとして取り組んでいくほうが普通だからだ。効率的に学ぶにはどうするか。金融リテラシーに関するマインドをリセットして、株式投資に対してありがちなネガティブな感覚を取り除いた上で、一から教えてもらえばいい。

 

本気で取り組んでいくための第一歩

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』(山崎将志・著/日経BP・刊)は、筆者を含むビギナー投資家の教科書としてぴったりの一冊だ。帯に記されたコンセプトは、“親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと”となっている。全編が親子の対話形式で進んでいくフォーマットは新鮮でわかりやすいし、参加意識が高まる。章立てを見てみよう。

 

第1講 お金持ちの正体

第2講 どんな会社に投資するといい?

第3講 株価情報をどう見るか

第4講 父さんの保有銘柄

第5講 株式投資のための教養

第6講 父さんのしくじり—後悔と反省

第7講 いざ、実践

 

若い世代を念頭に置いて、「普通の人」がお金持ちになる唯一の道という視点で株式投資を考えていく本書では、最初から大きな金額を注ぎ込むことは想定していない。株式投資という行いのコンセプトやルールから入り、最終的に実践マニュアルにつなげていくという流れになっている。

 

印象深い言葉の数々

この本は、株式投資に興味のある中高生のみなさんと、株式投資を学ぶことで自分の中高生の子どもたちに豊かな人生を送ってもらいたいと考える親御さんに向けて書きました。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

山崎氏ご自身が息子さん二人に株式投資の基本についてした話を土台にした本書の対象は明確だ。随所にちりばめられた印象深い言葉に触れるたびに手が止まる。

 

「できないことができるようになることが大事」

「自分の予測と結果を突き合わせる経験を積み重ねていくと、どんどん見る目が養われる」

「中高生の時点からやりたいことを見つけるヒントを探すことはできる」

「本当に頭のいい人何人かで考えたことに、十分な資金が投入されると、未来は実現してしまう」

「悲観的な視点を持つと株式投資ではチャンスを逃す」

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

大人だって、まだ間に合う

著者の目線はあくまで中高生に向いている。それはコラムで「勉強することの本当の意味」とか「大学選びの基準」、「就職先はどう選ぶか」などについて書かれていることからもわかる。それと同時に、GAFAの株価が高い理由や株価チャートの見方など、大人がすぐに使えるような超実践的知識についても詳しく記されている。こうしたことがらを“普通に”身につけている大人はどのくらいいるだろうか。この本を、例えば高校2年生の夏休みあたりに読むか読まないかで、10年後のマインドセットがかなり変わってくると思う。「おわりに」に次のような文章がある。

 

株式投資はギャンブルではありません。あらゆるギャンブルには胴元がいて、プレーヤーの期待値は必ずマイナスです。しかし株式投資には企業の利益という裏付けがあります。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

当たり前だろ、と言う人がほとんどにちがいない。でも、その当たり前なことを自分ごととしてとらえていないから、日本国内の株式投資プレーヤーが増えないのだ。大人になって、かなり時間が経っていたとしても、まだ決して遅くはないと思わせてくれる一冊だ。

 

【書籍紹介】

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。

著者:山崎将志
刊行:日経BP

「普通の人」がお金持ちになる唯一の道は? 親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと。

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『愛の不時着』が史上最高の韓流ドラマである理由を多角的に読み解く——「『愛の不時着』論」

『愛の不時着』というドラマがNetflixで配信されるや、大変な人気を集め、堂々のランキング1位に輝いたことは知っていました。すぐに観たいと思いましたが、観ては駄目よと自分に言い聞かせてました。いったん見始めたら止まらないとわかっていたからです。

 

毎日、雑用に追われているのに、全部で16話もあるドラマにはまってしまったら、睡眠時間が削られるのは明らかです。そこで、設定に無理があるから辞めておこうと自分に言い聞かせました。韓国の財閥令嬢が、パラグライダーに乗っているときに突風に遭遇して、あろうことか北朝鮮領内に不時着し、そこで出会った兵士と恋に落ちるなんて、あまりにも荒唐無稽で、無理があると思うことにしたのです。

ドラマ『愛の不時着』にはまりました

それでも、1話くらいは観てみようと思ったのが運のつき……。結局、どっぷりとはまってしまい、ほぼ一気に観るという暴挙をおかしてしまいました。もちろん、寝不足となりましたが、ハラハラドキドキのドラマ展開に魅了され、先がどうなるのか知りたくて、観るのを我慢することができなかったのです。最初はあり得ないと思った設定も、人生は何が起こるかわからないのだから、こういうことも充分にあり得ると、納得するようになりました。何よりも、胸がキュンとなるシーンが満載で、主人公のジョンヒョクとセリのふたりから目が離せなくなりました。

 

作り話とわかっていながら、登場人物に感情移入しないではいられなくなる、それが『愛の不時着』の魅力です。それにしても、なぜここまでこのドラマに惹かれたのか、自分でもよくわかりませんでした。あまりに夢中になっていたので、最終回が来るのがこわかったのですが、最終回を見終わっても、「不時着ロス」にはなりませんでした。もう一度、観ればいいからです。実際、ゆっくりと味わいながら観ると、1回めは気づかなかった面白さを確認できます。たとえ結末がわかっても、くり返し観て楽しむことができる。それがこのドラマの不思議なところです。

 

『愛の不時着』論」(本橋哲也・著/ナカニシヤ出版)は、『愛の不時着』というドラマが、なぜ世界中の人びとを虜にしたのかを考察した本です。著者は本橋哲也。東京経済大学教授であり、国際演劇評論家協会日本センターの会長をつとめるカルチュラル・スタディーズの専門家です。たくさんのドラマや演劇を観てきた著者が、『愛の不時着』を史上最高の韓流ドラマであると考えていると知り、「『愛の不時着』論」を手に取りました。

 

朝鮮半島の分断体制を日常的に意識しないで済んでいる日本の私たちは、そうした彼我の距離ゆえに『愛の不時着』のようなドラマを通して、こうした不条理についてより冷静に考えることができるのではないでしょうか。なぜなら、このドラマはそのような厳しい現実を、温もりとユーモアをもって描くことによって、私たちに優しさと勇気を与えてくれるからです。

(「『愛の不時着』論」より抜粋)

 

魅力の秘密を探るために

著者は、『愛の不時着』の魅力がどこにあるのかを深く掘り下げるため、次のような構成を用いています。

 

まず、各話ごとに総括する大きなテーマを設定し、それを軸として考察を進めます。冒頭にあらすじを置くことによって、読者が物語と一緒に進んでいくよう導きます。さらに、本論とも言うべきクリティーク、つまり批評へとつながるのですが、その際、鍵となる台詞を3つ選び、その言葉をモチーフとして、いくつかの場面をみていくという手法を用います。そして、最後にコラムを設け、背景として役に立つ知識や文脈を示してくれるので、私たちは物語をより深く味わうことができるのです。

 

既にドラマを全部観ていた私ですが、なぜあれほど深く感動したのか、自分でもわからないところが数多くありました。観ることに集中するあまり、物語を分析する余裕などないからです。ところが、「『愛の不時着』論」を読み、『愛の不時着』のどこが一番、心に響いたのか、改めて考えることができました。

 

これからドラマを楽しむ方のために、ストーリーの展開や結末には触れないでおこうと思います。それでも、とりわけ私の心に残ったシーンを紹介しましょう。それは、村の女性たちに連れられて市場に出かけたヒロイン・セリが迷子になるシーンです。彼女は、最初のうち、村人を警戒し、仲よくしないようにしていたのですが、ようやく打ちとけ、一緒に市場に出かけるまでになったのです。

 

ところが、皆からはぐれてしまいます。不慣れな場所で、帰り道がわかりません。日が落ち、あたりが暗くなって市場に、ひとり取り残されたセリ。強がってはいても、心細くてたまりません。故郷の韓国にいるときから、彼女はひとりぼっちで生きていました。強がりもここまで、セリは今にも泣き出しそうになります。ところが、そこにジョンヒョクがセリを心配して、探しにやってきます。やっと手に入れた高価なアロマキャンドルを掲げて。

 

このシーンは胸キュンを通りこし、切なくて泣きそうになります。夕闇迫るなか、背の高いジョンヒョクが灯すキャンドルは、灯台のあかりのように、浮き上がって見えます。そして、道だけではなく、人生の迷子でもあったセリは、その灯火に導かれ、ジョンヒョクに歩みよるのです。

 

「『愛の不時着』論」のコラムにも、このシーンが取り上げられています。

 

暗い中、人びとが商品を求めて忙しく行きかい、喧噪の溢れる市場の中で、ロウソクに照らされて、二人のいる空間だけが明るく静謐に浮かび上がる—互いの安否を気遣うという愛情の基本が原初的な形で示される名場面だ

(『愛の不時着』論より抜粋)

 

まさにその通り。ドラマの中でも名場面中の名場面だと言えましょう。物語の前半部分は、このアロマキャンドルのシーンに向かって、まっしぐらに進んでいたと、私は信じています。

 

もちろん、現実の世界は過酷だとわかっています。とりわけ、朝鮮半島の問題は大変難しく、これからどうなるのか誰にもわかりません。わかり合いたいとどんなに願っても、思うようにことは運ばず分断化した状態のまま膠着しています。

 

それほど深刻ではないとしても、私たちの平凡な毎日でも、似たようなことは起こっています。理解し合っていると信じていた人に、突如、思ってもみなかった叱責を受けたり、知らないうちに恨みをかっていたと知らされたり、挙げ句の果てに、まるでたかられるような物言いをされたりと、情けない思いに唇を噛む人は多いことでしょう。そんなとき、私は憂鬱の底に沈んでしまいます。そして、もう誰とも会いたくない、自分をわかって欲しいと願うことにも疲れたと感じ、殻の中に閉じこもりたくなります。

 

反対に、自分も誰かを知らないうちに傷つけているのではないかと、こわくてたまらなくなったりします。もとより完璧な人間などいないのです。まして、欠点の多い私など、ひっそりと誰にも会わずに、迷惑をかけないように暮らしたい。他人のためにも、自分のためにも……。そうすれば、今よりもはるかにストレスの少ない穏やかな毎日を送ることができるでしょう。

 

けれども、それではあまりに寂しいと考え直します。もちろん、相手が私を嫌い、離れていった場合はそれを受け入れようと思います。けれども、傷つけられるのをおそれてばかりでは、他者への分断を自ら生み出すことになります。だから、私に向かってロウソクを掲げて救おうとした人には、疑うことなく手を振ってこたえたい。「『愛の不時着』論」を読んでから、そう思うようになりました。平凡な毎日を送っていても、財閥の娘でなくても、人はいつも不時着する場所を探しているものです。

 

「『愛の不時着』論」の巻末には、「朝鮮半島の歴史と文化と人びとを、より知るために—書籍・映画リスト、それに私が選んだ韓流ドラマ」として、作品リストが掲載されており、私たちを新しい韓流文化へ誘います。ますます睡眠不足になりそうではありますが、韓流ドラマへの招待状として、受け止めてみてはいかがでしょう。

 

【書籍紹介】

『愛の不時着』論

著者:本橋哲也
発行:ナカニシヤ出版

あらゆる分断を乗り越えて、「会いたい」と願い続ける人びとへーー朝鮮半島の二つの国家を舞台にした「史上最高」の韓流ドラマの魅力を、心に響く数々のセリフと、ピアノ、ロウソク、腕時計といったモチーフから浮き彫りにする。巻末には朝鮮半島の歴史と文化と人びとをより知るための書籍・映画・ドラマリストを収録。

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2000万人が愛用中の人気レシピサイトの公式ムック『Nadia magazine vol.04』が、超役立つ! 使える!

節約レシピでも話題のRINATY(りなてぃ)さんやSNSでもたびたび話題になっているむっちんさんらプロ料理家や、フードコーディネーターたちのおいしいレシピが集まるサイト「Nadia」。そんな「Nadia」が年に4回ほどムック本が発売されているのをご存知でしょうか? 今回は、サイト内で殿堂入りしたレシピやNadia Artistたちの台所事情、献立の立て方まで丸わかりの充実した内容の『Nadia magazine vol.04』(ワン・パブリッシング・刊)をご紹介します!

 

殿堂入りレシピがたっぷり掲載! もう献立に迷わない

「Nadia」に掲載されているレシピは、テレビや書籍、SNSで活躍している600名以上のプロの料理家やフードコーディネーターがすべて監修したもの。料理初心者から上級者まで楽しめるレシピサイトです。

 

そんな「Nadia」の公式ムック『Nadia magazine vol.04』では、お気に入り数が1000以上ついている「殿堂入りレシピ」がたっぷりと掲載されています。煮込みハンバーグやトロたま豚キャベツが紹介されている「殿堂入り主菜ランキング10」、ルーロー飯やチーズオムライスが紹介されている「殿堂入り主食ランキング10」、今の季節にぴったりな大学芋や小松菜を使ったレシピが紹介されている「殿堂入り副菜ランキング10」と、これだけでも見応え十分!

 

この30レシピあれば年内はこの1冊で乗り切れちゃうな、と思うほどどれを作っても簡単で美味しそうなレシピばかり! なかなか手に入りにくい食材や、難しい作り方はほとんどなく、どのご家庭にもあるような調味料やキッチン用具、さらにスーパーで特売になりやすい旬の食材を使ったものが紹介されているので、「今日はこれを作ろうかな〜」と選びやすいのもうれしいポイントでした。

 

人気アーティストたちの冷蔵庫がすごい!

『Nadia magazine』では毎回たくさんのレシピ掲載に加えて、特集記事もたっぷり。今回注目すべきなのは、「Nadia人気アーティストの冷蔵庫、拝見します!」のコーナーです。

 

栄養士の道添明子〈あーぴん〉さん、レシピ本やSNSで大人気のあやさん、「業務スーパー」愛用者でもある小春(ぽかぽかびより)さん、節約ごはんでフォロワーの支持を集めているみくぽんさん、初のレシピ本『りなてぃの一週間3500円献立』(宝島社)が34万部のベストセラーとなったRINATY(りなてぃ)さん5名の冷蔵庫が公開されています。

 

どのアーティストたちも冷蔵庫の中はスッキリ! タッパーなども活用しながら作り置きしていたり、冷凍庫に特売で買ったお肉を分けて入れたり、1週間で使い切れるものだけが入っているような印象でした。

 

また、1週間分の献立を考えてから「まとめ買い」することで余計な買い物を防ぎフードロスに貢献していたり、使い忘れがないように使いかけの野菜をひとつの容器にまとめていたり、SDGsの観点からも役立つ情報も。献立を考える時にも大切なのは「冷蔵庫に今、何が入っているかを把握すること」だと思います。私もついこの前、「そういえばレモン汁なかったよな〜」と思って買って帰ったら、冷蔵庫の中に入っていた……なんてこともあったので、食材に加えて調味料の管理方法なども参考にしながら、自宅でのフードロスを少しずつ減らしていきたいと思います!

 

献立を考えるのが楽しくなる『Nadia』をフル活用しよう!

『Nadia magazine vol.04』では他にも、これからどんどんおいしくなってくる「白菜」と「大根」を作りおきレシピも掲載されています。

旬を迎える野菜は価格も安くなるので、できることならまるごと買いたいのですが、毎回お味噌汁に入れるか、煮物にするか、さっぱりとした漬物にするか、鍋に入れるか、実は選択肢が少なく野菜室の奥でしな〜っとしがち……。結局捨てるなんてもったいないことにもなりかねません。しかし『Nadia magazine vol.04』には、16レシピも掲載されているので、まるごと買ってもおいしく使い切ることができますよ! またもっとたくさんのレシピを探したいのであれば、「Nadia」のウェブサイトから「アーティスト検索」もできるので、ムック本で気になるアーティストさんを検索してみるのがおすすめ。お気に入りのアーティストさんを見つけると毎日の料理時間も楽しくなりますよね。

 

「Nadia」は基本無料で使えるレシピサービスですが、月額450円で入会できるプレミアム会員に登録すると、アプリで献立を作れたり、ランキング検索ができたりと、さらに便利に活用できます。『Nadia magazine vol.04』と合わせてサイトも活用すると、毎日の献立作り、料理がもっと楽しくなるはずです♪

 

 

【書籍紹介】

Nadia magazine vol.04

刊行:ワン・パブリッシング

「Nadia magazine」は月間2000万人が利用する大人気レシピサイトNadiaの公式ムック。Nadiaユーザーが本当に選んでいる人気レシピや、話題の食材オートミールを使ったレシピなど、気になるレシピを厳選して掲載! SNS・料理本で話題の料理家たちのNadia magazineでしか見られないレシピもあります!

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7人の作家による7匹の猫の物語にハマる——『猫はわかっている』

もう10年以上前のことだが、私の知人は助けた猫に守られていると言っていた。大手出版社に勤める編集者の彼女は深夜、帰宅のためにタクシーに乗っていた。すると、ある道路で倒れた猫を発見、どうやら車にはねられたようだがまだ息をしていた。雑誌の動物ページ担当だった彼女は見過ごすことができず、タクシーを止め、自分の着ていたコートを脱いで負傷した猫をくるみ、動物病院に向かった。

 

しかし、獣医師は重症でもう助からないと診断、安楽死をすすめたのだそうだ。そのためには猫に名前をつけ、費用も負担しなければならない。彼女は、星のキレイな夜だったからその猫に”星ちゃん”をいう名前をつけ、注射の費用を出すことにした。「星ちゃんは私の目を見て、深呼吸してから安心したように息を引き取ったの。あの日から、どうも私は星ちゃんに守られているような感覚があるのよね」と話してくれた。心が温まるいい話だし、猫の恩返しは本当にありそうだとも思ったものだ。

 

さて、今日紹介する『猫はわかっている』(村山由佳、有栖川有栖、阿部智里、長岡弘樹、カツセマサヒコ、嶋津 輝、望月麻衣・著/文藝春秋・刊)は、猫好きにはたまらない短編小説集。文庫本の帯には「馴れない・媚びない・寝てばかり!? でもね、ちゃんとわかっているんです…」という一文があるが、猫という動物をよく表していると思う。

 

老猫、野良猫、ペルシャ猫、それぞれの愛らしい猫物語

目次を見てみよう。

 

「世界を取り戻す」村山由佳

「女か猫か」有栖川有栖

「50万の猫と7センチ」阿部智里

「双胎の爪」長岡弘樹

「名前がありすぎる」カツセマサヒコ

「猫とビデオテープ」嶋津 輝

「幸せなシモベ」望月麻衣

 

人気作家7人が贈るアンソロジーは、猫好きはますます猫を愛おしく感じるだろうし、そうでない人も、一度飼ってみようかな? と思うに違いない。

 

猫は一生に一度だけ人間の言葉を話す?

冒頭に書いた知人が猫を助けた話、実は本書の村山由佳さんの話を読んでいて、ふっと思い出したのだ。

 

「世界を取り戻す」の主人公は、妻であり、母であり、副編集長という肩書きをもつ北川九美という女性だ。動物学者だった父親が『猫に九生あり』ということわざにちなんで、どんな人生を歩んでも何度生まれ変わっても美しくあれという願いを込めて”九美”と名付けたのだ。九美はある日、取材で訪れた動物病院のドクターに自分の名前についての打ち明け話をすると、ドクターはなんと猫の生まれ変わりを信じているという。

 

「僕だって信じていますとも。科学だけじゃ説明の付かないことっていっぱいあるものでね。猫の生命力といったらほんとうに尋常じゃなくて、これまで何度びっくりさせられたことか。(中略)九回生きるどころか、ねえ、知ってますか? 猫は、一生に一度だけ、人間の言葉を喋るんです」

(『猫はわかっている』から引用)

 

インタビューの間に、病院には19歳で余命あとわずかという老猫が運び込まれたものの、預けに来た人物は消えてしまう。翌日、猫好きの九美は何日かだけかもしれないが、その老猫を家族として迎えることにした。ネタバレになってしまうので結末は書けないが、九美はかつて愛した猫と老猫を重ね合わせつつ世話をする。果たして猫は本当に人間の言葉を喋るのか? それは読んでのお楽しみ。愛猫家の村山さんらしい感動に満ちたストーリーだ。

 

野良猫は”うちの子”になれるのか?

阿部智里さんの「50万の猫と7センチ」は野良猫を増やさないために、去勢、避妊手術を施し、一世代限りの地域猫として愛そうという社会の取り組みを背景にした作品だ。飼い犬を亡くしペットロスになっていた一家は、ときどき姿を見せる地域猫に餌を与え、勝手に”二ャア”と名付けて呼んでいた。その二ャアがある日、畑で野犬に襲われ大怪我をしているの発見し、家族が動物病院に運び込む。瀕死の重傷で命の危険があったものの、ICUに1か月入院し、ニャアは助かった。が、家族が負担した治療費は、なんと50万円! その後、一家はニャアを家族として迎えようとするが、もともとは自由気ままに過ごしてきた野良猫、はたしてうまく家になじんでくれるのか? ハラハラ、ドキドキしながら、おもしろく読める作品だ。

 

期間限定でペルシャ猫と同居

望月麻衣さんの「幸せなシモベ」は、猫をあまり知らない人、猫を飼ったことがない人におすすめの小説だ。主人公のチカは「出産が終わるまでうちの子を預かってほしい」という姉の申し出をしぶしぶ引き受ける。猫を飼ったことはなく、まったく分からないが、一人暮らしで、とりあえずペット可のマンションに住んでいたことから頼まれることになったのだ。姉の愛猫はオスのペルシャで名前はミャオ。

 

彼は、私がお気に入りの一人掛けソファーに漬物石のようにどっかりと丸くなって座り、目を細めている。(中略)ミャオはキジトラ柄だった。よく見かけるこげ茶色の虎柄で短毛種の猫の毛をうんと伸ばした感じであり、セレブ感はあまりない。

(『猫はわかっている』から引用)

 

チカはこのふてぶてしい王様をかわいいとは思えず、なにより、一人掛ソファーでの読書をする至福の場をミャオに奪われイライラもする。ところが、どうせ期間限定と諦めて世話を続けるうちに、いつの間にか猫の魅力にとりつかれていくというストーリーだ。

 

この他の小説も、どれもこれも猫への愛に溢れていているのはもちろんのこと、本のタイトルにあるように猫は人間が思う以上に、何事もわかっているのかもしれないと思わせてくれる物語ばかりだ。活字を追うことで癒される一冊といえる。

 

【書籍紹介】

猫はわかっている

著者:村山由佳、有栖川有栖、阿部智里、長岡弘樹、カツセマサヒコ、嶋津 輝、望月麻衣
発行:文藝春秋

“仕事と家事・育児にフル回転の私が、余命幾ばくもない猫を引き取り…”“野良出身、今は家に堂々居座るニャアが野犬に襲われまさかの!?”“火事が起きたとき妻と息子達の明暗が分れた。猫は何を見ていたのか?”人気作家7人が猫への愛をこめて贈る、謎と企みに満ちたアンソロジー。猫は何でもわかっている。たぶん。きっと…。

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テレワーク時代の「絶対に散らからない家」の作り方「収納DIY」特集!『ドゥーパ!』2021年12月号(145号)発売

日本で唯一のDIY雑誌の最新号「ドゥーパ!2021年12月号」(発行:株式会社キャンプ/代表取締役社長:豊田大作)が本日発売!

 

・第1特集は「収納DIYの極意 2021-2022」
いよいよ2021年も年末目前! 晴れやかな気持ちで1年を終えるために今年もドゥーパ!が収納DIYをご提案。特集の目玉は、編集部の一角を居住空間に見立てて作る収納実践リポート! リビングをイメージした大型壁面収納、趣味の小物に囲まれた書斎、天井まで使った大容量の玄関キャビネットの3作品をとおし、収納作りの基本から目からウロコのプロのテクニックまで、収納DIYの極意、盛りだくさんでお届けします!

 

実践に負けず劣らず充実した作品が集まったのは収納DIY実例集。庭、駐車場、外構から、リビング、キッチン、寝室、書斎、玄関に子ども部屋まで、DIYならではのアイデア満載の作品が集結。DIYだからこそ実現できる、そのフィット感は見ているだけで気持ちいい!

 

・第2特集は「丸太DIY入門」
ウッドショックが叫ばれて久しく、いまだに供給不足や価格高騰に悩まされる材木。そんな今だからこそ注目したい資材が「丸太」。実は購入しても木材より安く、作品にワイルドさやナチュラル感を演出可能。本特集では、この自然が育んだ造形を取り入れた、自由なもの作りやシンプルなもの作りをガイド。基礎知識を皮切りに、チェンソーを駆使した実践リポート、力作のログハウス実例までを網羅。これを読めば、丸太がより身近な存在になることをお約束します。

 

・バラエティあふれる連載にも注目!
溶接を駆使したアイアンDIY、トリマー&ルーター木工、さらにはレザーソーイングやグリーンウッドワークなど、さまざまなジャンルのもの作りの魅力を個性あふれる作家とともにお届けします。その他、自給自足の田舎暮らしエッセイやDIYにまつわる法律相談など読み物も充実。こちらもお見逃しなく!

 

【書籍概要】

著者:ドゥーパ!編集部

定価:1100円(税込)

発売日:2021年11月8日

判型:A4変形

テレ東の人気100番組を分析すれば、テレ東の秘密が見えてくる!~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。東京で生まれて東京で育った私にとって、いわゆる故郷らしい故郷の思い出はないのですが、テレビ東京の思い出ならあります(笑)。

 

愛されるテレビ局「テレ東」

一昔前はテレビ東京というと「振り向けばテレビ東京」「何が起きてもアニメ優先」など、やや嘲笑を含んだ形で話題にのぼることが多かったように思います。しかし、昨年は学生の就職希望先ランキングでテレビ業界1位に躍り出たことがニュースとなり、風向きは変わってきています。

 

硬直化し衰退するテレビ業界で、柔軟な発想で勝負するテレビ東京。YouTubeがテレビの地位を脅かしていますが、テレビ東京はもともとYouTube的存在だったのかもしれません。

今回紹介する新書21世紀 テレ東番組 ベスト100』(太田省一・著/星海社新書)は、テレビ東京の革新性、柔軟性、ユルさに着目し、各1~2ページで100本の番組を紹介していく新書。ただの番組ガイドではなく、なぜそれがヒットしたのかの考察がなされています。“21世紀”というくくりで、「モヤモヤさまぁ~ず2」や「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」など比較的新しい番組が多めです。

 

著者の太田省一さんは、テレビ、お笑い、アイドルなど、メディアと社会・文化の関係をテーマに執筆活動を展開している社会学者。著書に『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)があり、今回は「テレビ史の文脈を踏まえながらも、より気楽に読んでいただけるものを目指した」とあとがきにあるように、カジュアルながらテレビに求められているものが見えてくる一冊となっています。

 

「開運!なんでも鑑定団」が人気番組になったわけ

100本の番組はバラエティ、ドラマ、お笑い、報道……とジャンルごとに分類されています。第1部「テレ東の真骨頂、『ユルさ』と『素人』」。第2部「“深夜”というフロンティアを開拓したテレ東〈ドラマ編〉」、第4部「テレ東の定番、旅と食」、第5部「テレ東はアイドルの庭」……。各部のタイトルを眺めているだけでもテレ東イズムが見えてきます。

 

本書で一番最初に取り上げられている番組が「開運!なんでも鑑定団」(1994年放映開始)。私もやっているとついつい見てしまう番組です。「うちに転がっている古いガラクタが、もしかしたらすごいお宝かもしれない……」。そんな夢を見せてくれますよね。

 

著者の太田さんは、平成に入りバブルが崩壊した直後という時代状況を人気の理由のひとつにあげています。また、素人が主役となる視聴者参加番組の側面があり、「『お宝』を通して、持ち主の人柄や人生、その品物への強い思い入れが伝わってくる」とドキュメントバラエティとしての魅力にも言及しています。

 

個人的に私が好きだった番組は、当時は愛川欽也さんが司会をしていた「出没!アド街ック天国」(1995年放映開始)。毎回ひとつの街を取り上げ、名所や名物を独自にランキングする番組です。馴染みのある街、行きたい街だと何が1位になるのか気になって見入ってしまいます。

 

著者の太田さんは、「青物横丁や椎名町と言われても、関東に住むひと以外にはピンとこないはずだ。だが、そんな街をしれっと特集してしまうのも、テレ東らしい」と、全国的に知られていない街が取り上げられることが面白さにつながっていると分析しています。

 

そのほか見開き2ページでは「ワールドビジネスサテライト」「隅田川花火大会」「ポケットモンスター」「勇者ヨシヒコと魔王の城」「ガイアの夜明け」などテレ東を代表する番組がセレクトされています。

 

巻末には「元旦&大晦日の番組年表2001-2020」と題して、当時のテレ東の番組表を掲載。「年忘れ・にっぽんの歌」に「大食い世界一決定戦」、ボクシング世界戦、ジルベスターコンサート……。年末年始もマイペースなテレビ東京なのです。

 

100番組を扱っていることもあり、ひとつひとつは少々読み足りない感もありますが、「テレ東論」を超えてテレビ論として短いながらもまとまっている印象。本書は21世紀縛りだったので、続編として80~90年代の人気番組編にも期待です。

 

【書籍紹介】

『21世紀 テレ東番組 ベスト100』

著者:太田 省一
発行:星海社

1964年、前の東京オリンピック開催の年に開局したテレビ東京、通称「テレ東」は、現在の在京キー局のなかで最後発、かつ科学教育専門局としてスタートしたことから、当初より低視聴率という苦難に陥ってしまう。ところが、平成の時代になるとお金や人手を十分に割けない分、企画のユニークさや斬新さで勝負する番組づくりが世の中から脚光を浴びるようになってくる。本書は、テレ東が発揮する〈アイデアの力〉に注目し、自身も長年にわたってテレ東に魅了されてきた社会学者が、2001年以降に放送された番組の中からベスト100を選出。「テレ東っぽさ」の秘密に迫る「テレ東番組ガイド」です。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

少女ギャング団から東海林さだおの軽妙エッセイ、そして地図帳まで—— 歴史小説家が選ぶ「東京」を深掘りする5冊

毎日Twitterで読んだ本の短評をあげ続け、読書量は年間1000冊を超える、新進の歴史小説家・谷津矢車さん。今回のテーマは「東京」。400年近く日本の首都であり続けた世界有数の都市——しかし、私たちは「東京」について 実はなにも分かっていないのかもしれません……。谷津さんが多角的に選んだ5冊を参考にして、あなたも東京を再発見してみませんか?

 

【過去の記事はコチラ

 


わたしは生まれも育ちも東京、なんなら現在も東京に住んでいる。

 

とはいえ、わたしの生まれ育った地は東京西部。東京都ではあるけれど、文化としては〝東京〟の周辺部であったりする(どういうことかというと、東京西部は水源確保の名目で東京に編入された地域で元々は今の神奈川県に属しており、東京二十三区とはちょっと文化圏が異なるのである。そのため、わたしの生まれた地域では新宿より東に行くことを指して「東京に行く」と言い表していた。閑話休題)。

 

さらに私事を申し上げるなら、ごくごく最近まで東京二十三区で暮らしていた。とにかく便利な場所で、打ち合わせに出かけるにも、催し物に参加するのも、美術館や劇を観に行くのも散歩に行くようなノリだった。同じ東京でも、やっぱり二十三区は違うなあと住み始めのころは興奮したものである。もっとも、人が多く、空気が悪く、物価が高いのには辟易したのだが。

 

わたしにとって東京は、近くて遠い場所だ。そしてきっと永遠の憧れであると当時に、なんだか怖いところ、という印象も持ち続けることだろう。

 

今回の選書テーマは「東京」である。しばしお付き合い願いたい。

 

江戸から東京への変転に必要だった「大火」の物語

まずご紹介するのは明暦の大火 「都市改造」という神話(岩本 馨・著/吉川弘文館・刊)である。

 

皆さんも、「明暦の大火」を一度は耳にしたことがあるだろう。

 

江戸時代初期に発生した江戸の火災である。歴史に詳しくない方でも、「振袖火事」と聞けば、もしかしたらピンとくるものがあるかもしれない。

 

さて、この明暦の大火について、こんな言説がある。「明暦の大火の後、徳川幕府は江戸の都市改造を行なった」。歴史好きの方なら一度は聞いたことがあろうし、お詳しい方ほど自明のものとして受け入れている言説だろう。だが、本書は一次史料の検討と整理によって、従来言われていた明暦の大火の虚像を廃し、その実像に迫っていくのである。

 

なぜ、選書テーマが東京なのに江戸の話を? 本書は明暦の大火を巡るフォークロアが発生した理由にまで筆を伸ばしているのだが、その結果見えてきたものは、江戸時代が終わり、近代に入った東京が、「明暦の大火を受けて都市改造を行なった」江戸のイメージを欲したのではないかという指摘だった。本書は「禍転じて福をなす」明暦の大火以後の江戸の町のイメージが、近代都市東京の必要とした〝物語〟でもあったことを指摘しているのである。

 

江戸〜東京の狭間で生きる者たちを描く伝奇時代漫画

次にご紹介するのは勇気あるものより散れ(相田 裕・著/白泉社・刊)である。時は明治初期、戊辰戦争で死ぬに死ねず、死に場所を探していた春安の前に、不死者の少女シノが現われたことに端を発する伝奇時代漫画である。

 

東京は近世、近代、そして現代に至るまで、事実上の首都として君臨してきた町である。江戸時代から徳川の影としてその身を挺して戦ってきたシノの一族が、時代が変わって明治政府の盾となることも、ある意味でその象徴と言える。江戸、東京という同じ街の上で、変わるもの、変わらぬもの、変わってゆきたい者、変わりたくない者の思惑が絡み合う様は、十年前まで江戸であった東京という舞台によく映える。

 

そういったことを抜きにしても、史実の隙間をぐいと広げてそこに奇想を盛り込む伝奇時代物としての魅力を堪能できると共に、漫画だからこそできるアクションや外連を楽しむことも出来る、優れたエンタメ作品でもある。わたしとしても続きを楽しみにしているところである。

 

「大正の闇」を映し出す『少女ギャング団』たちの物語

お次にご紹介するのは、くれなゐの紐 (須賀しのぶ・著/光文社・刊) である。

 

時は大正、帝都東京に消えた姉を追い上京してきた仙太郎が、色々あって女装の上、少女ギャング団に入団する処から始まる大正ロマン×ピカレスク小説である。

 

少女ギャング団? そんなのあったの? と疑問に思われる向きもあるだろう。しかし、実在の事実なのである。大正期、都市部にあって、女性のつける仕事はそんなに多くなかった。そこからあぶれてしまった女性たちにはアウトロー、あるいは限りなくそれに近いところで口に糊するしかなかった。「暗い昭和」のイメージに引きずられ、殊更に大正モダン、大正デモクラシーが喧伝されるきらいのある大正期は、実はなかなかに闇が深いのである。本書は華やかな表の大正から背を向け、より暗い側、より弱き側の世界を描いた作品なのである。「闇」に身を置くしかない人々、「闇」から逃れんと必死でもがく人々、そして、「闇」であるがゆえに見逃されたある事実……。これら大正の風景がない交ぜとなり、ストーリーがうねりを上げてゆき……。

 

そして本書において見逃せないのは、都市というシステムに呑み込まれていく人々の姿である気がしてならない。都市が活性化するためには競争が欠かせない。現代日本という都市を支えるわたしたちもまた、競争に晒されている。ギャング団の少女たちが対峙していたものは、案外現代のわたしたちにとっっても間近にあるものなのかもしれない。

 

東京の「時層」を感じさせてくれる洒脱なエッセイ

お次はエッセイから。『さらば東京タワー』 (東海林 さだお・著/文藝春秋・刊)である。

 

言わずと知れたユーモア漫画、ユーモアエッセイの雄による著作であるが、身構えていてもついつい笑わされてしまう。東京スカイツリーがお目見えしたタイミングで東京タワー見物に向かう表題作の他、天ぷら屋さんの大将をめぐる謎(『狂宴? 天ぷらフルコース』)や、自由気ままに振る舞い、なんとなく不合理なことをしているように見える掃除機ルンバを会社の部下に見立てて上司への同情心を吐露する(ロボット掃除機ルンバを雇う)などなど、笑い所満載である。個人的には、投げ売りが常態化している缶詰に同情して同志と慰労会を行ない様々な缶詰に舌鼓を打つ話(缶詰フルコースの宴)も好きである。

 

個人的に、東海林さだお作品は異文化コミュニケーションのつもりで読んでいる。

 

それはそうだ。著者さんは1937年生まれ。わたしが1986年生まれだから約半世紀も見ている景色が違う。東海林さだお作品を読んでいると、わたしが肌で味わうことの出来なかった日本社会の姿が見える気がするのである……というのはやや大袈裟だろうか。たぶん、わたしと同世代の方は似たような感想をお持ちになることだろう。

 

本書を読むと、なくしてしまった東京の幻景が見えてくるかもしれない。

 

東京の凸凹を目で見て楽しむ地図帳

最後は、多分この選書では初であろう、地図帳からのご紹介。『東京23区凸凹地図 (高低差散策を楽しむバイブル)(昭文社 地図 編集部 (編集) 昭文社)である。

 

東京にお住まいの方なら首肯していただけるだろうが、東京二十三区はアップダウンの激しい地域である。大小様々な川が流れて数多くの谷が生まれ、その上に町を広げてきた、それが東京という町の姿なのである。

 

本書は地図を眺めていただけではわかりづらい町の高低を描き込み、さらには坂や暗渠、地形に関係するランドマークの豆知識を記載した異色の地図帳となっている。個人的には大田区丸子橋の近くにある浅間神社のキャプションに、『シンゴジラ』のタバ作戦の舞台になった旨の記載があったことに思わず噴き出してしまった。とにかく色々と細かく、ぱらぱら眺めているだけでも発見がある。東京にお住まいの方はもちろん、そうでない方も、坂の町東京の魅力を味わって頂ければ幸甚である。

 

 

東京生まれの東京育ち、つまりわたしにとって東京は故郷といっても過言ではない。いや、正確には東京西部生まれだから「過言だろ」と怒られそうではあるが……。いずれにしても、己の近くにあるものほど、その特質を捉えがたいものだ。

 

日本の全人口の十パーセントが暮らす東京。それだけに無個性に思えるかもしれないが、一皮剥いてみると、町としての個性が見えてくる。この選書を通じて東京の持つ顔にお気づき頂けたなら、選書者としてはこれ以上ない喜びである。

 

 

【過去の記事はコチラ

 

【プロフィール】

谷津矢車(やつ・やぐるま)

1986年東京都生まれ。2012年「蒲生の記」で歴史群像大賞優秀賞受賞。2013年『洛中洛外画狂伝狩野永徳』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』にて歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞。最新刊は『北斗の邦へ跳べ』(角川春樹事務所)

 

3000円の使い方で人生が決まる——あなたのお金に対する意識を変える家族小説

もし、目の前に3000円がポーンと現れたらあなたは何に使いますか? 私なら「宝くじ買っちゃう!」と思ってしまうのですが(笑)、ふと手に取った『三千円の使いかた』(原田ひ香・著/中央公論新社・刊)を読んで、考え方が変わりました。

 

たかが3000円、されど3000円。一度で使い切ればあっという間になくなってしまう金額でもしっかり計画を立てれば人生にとっても大切な3000円になるはず。今回は、お金の価値観を優しく変えてくれる『三千円の使いかた』をご紹介します。

3000円で人生が変わる?

この『三千円の使いかた』は、自己啓発本ではありません。一人暮らしを始めた美穂ちゃん、その姉で、結婚前は証券会社に勤めて貯金も600万円近くある真帆さん、とある病気にかかったことで人生を少し見つめ直し始めた母親の智子さん、そして1000万円の貯金がある祖母の琴子さんの4人、それぞれの視点でお金の価値を語る、家族小説。そのため、冒頭はこんな言葉から始まります。

 

人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。

え? 三千円? 何言っているの?

(『三千円の使いかた』より引用)

 

私も「3000円で?」と驚いたのですが、この小説を読み進めていくと確かに3000円の使い方で人生は決まるかもしれないな……と感じました。

 

例えば、仕事前に喫茶店に立ち寄って新作のクリームたっぷりなコーヒーを頼んで700円、ランチを奮発して1200円、仕事帰りにちょっと一杯飲みに出かけて1100円使えば、1日で使い切ってしまいます。

 

けれど、雑貨屋さんでお気に入りのカップ1200円と、近所の自家焙煎コーヒー店で800円の豆を買えば1000円余るし、コーヒーも10日くらいなら飲み続けられるのではないでしょうか? どちらの価値もその人次第で変わりますが、気がついたら3000円がなくなるような暮らしかたをしていませんか? 自分のお財布事情と照らし合わせながら、主人公たちのお金の使い方・貯め方を読み進められるので、個人的にはノウハウ本を読むよりもめちゃくちゃ参考になった1冊でした。

 

8×12は魔法の数字?

小説に登場する美穂ちゃんは、貯金するなんてことも真剣に考えていないし、将来のことにあまり不安も抱えていませんでした。まるで、私のよう!しかし、あることをきっかけに「真剣にお金と向き合おう」と考え直すように。3000円で開催されていた節約セミナーに参加した美穂ちゃんは、こんなことを聞きます。

 

「今日はこれだけ。これだけ覚えて。あなたの脳裏に刻みつけて欲しいの。さあ、八×十二はいくつですか?」

九十六! という声が会場から上がる。

「はい。ご名答。毎月八万ずつ、それにボーナス時に二万ずつ貯めます。そうすると、あら不思議。一年に百万円が貯まっちゃうの! そして、一年に百万ずつ貯められれば、三十代のあなたは六十歳の定年までに三千万、二十代のあなたなら四千万貯まります。さらにそれを三%複利で運用できれば税抜きで約四千九百万と約七千七百四十万になります。もう老後は心配なし!」

(『三千円の使いかた』より引用)

 

月8万円……どうやったら貯められるのだろうか? 私はこれを読んで結構真剣に悩みました(笑)。固定費から見直してみると、無駄使いの多いこと、多いこと……我ながら「なんでこんなにサブスクに入ってるんだ!」と驚きました(笑)。

 

もし家族で家計を管理しているのであれば、8万円どうやって貯めるのか考えてみると楽しいかも。最近では色々と投資や資産運用という言葉が飛び交い、そちらに気を取られそうになりますが、まずはどうやったら固定費を貯蓄に回せるか? それを考えるだけでも大きな一歩になるはずですよ。

 

老後、働くのはありか、なしか。

この『三千円の使いかた』は、それぞれ立場の異なる4人の女性が「今」何をするべきか、悩み、向き合う話が掲載されています。私は「できることなら老後も働きたいな」と考えていたので、祖母・琴子さんの話はとても参考になりました。

 

琴子さんは、習い事が好きなお嫁さんの智子さんから「おせち教室」の講師を頼まれ、お礼にと5000円をもらいます。そこから「私も働きたい」と働く意欲が湧いてきたのですが、コンビニの面接を受けるも年齢を理由に不採用になってしまいます。

 

働きたい。

そんな琴子の小さな、いや、七十代にしては壮大な夢を、どうしたら、叶えられるのだろうか。

(『三千円の使いかた』より引用)

 

老後になってから「働くところくらいあるっしょ!」なんて簡単に考えていましたが、こんなにも厳しいとは……。結果として、琴子さんは働くことができましたが、もしかしたら現実はもっと厳しいものかもしれませんよね。

 

一人暮らしの場合、家庭を持っている場合、子どもたちが自立した場合、老後の生活……など同じ立場でもお金との関わり方は千差万別だと感じました。私も「貯金なんかなくていいや〜」と思っていましたが、『三千円の使いかた』を読んで貯金したくなったし、何より家計簿もつけたくなりました。身近なことからコツコツとに敵うものはないかもしれませんね!

 

毎日を楽しく、気持ちよく過ごすためにも一度自分自身のお財布事情を見直してみるのはいかがでしょうか? 私も宝くじを買ったり、ギャンブル好きな気質があるので(笑)3000円から使い方を見つめ直してみたいと思います。

 

【書籍紹介】

三千円の使いかた

著者:原田ひ香
刊行:中央公論新社

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

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おいしさを追求したら、レシピが簡単に!『スギヤマヒサエの技あり! 極旨うちごはん』

レシピサイトNadiaで話題のレシピを多数生み出してきた、料理家スギヤマ ヒサエさん初の著書。どこでも手に入る食材を使った簡単調理なのに、おうちごはんがお店級の味になる!

 

たった大さじ3の油でできる本格揚げものや、レンチンで失敗なしの煮もの、味つけの手間すらいらない超簡単レシピなど、料理の思い込みをくつがす目からウロコのレシピを紹介します。

 

スギヤマ ヒサエさんの簡単&おいしい技

スギヤマ ヒサエさんのレシピは料理の思い込みをくつがえす驚きの簡単技がたくさん!
味には妥協せず、むしろおいしさを突き詰めたらレシピがグッと簡単になったそう。
たとえばレンチンで作るハンバーグは生焼けを防げるし、煮物はしっかり味が染みるので、調理はラクになるけれど味は絶品! そのほか、もともと味がついている市販品を活用することで、シンプルな工程でも手の込んだおいしさを生みだす技も。調味料いらずのレシピまであります。

 

おうちで作れるの!?と驚くレシピから、いつものおかずをグレードアップするレシピまで

ルーロー飯やバターチキンカレー、焼きシュウマイなど、家で簡単に作れるの!?と驚くレシピが満載。誰でもおいしく作れて、ほめられること間違いなしです。
そのほか、回鍋肉や酢豚など、いつものおうちご飯をちょっとしたコツで格上げしてくれるレシピもたくさん。野菜をシャキシャキ食感にする調理方法など「おいしい技」が満載です。
また、ひとりランチのときにも役立つワンディッシュレシピも。レモンクリームパスタ、台湾混ぜそば、家にある食材で自由にアレンジできる冷やしごま豆乳そうめんなど、簡単なのに満足感のあるワンディッシュレシピを掲載しています。

 

 献立アイデアやおつまみレシピも

ローストビーフやガーリックシュリンプ、バターチキンカレーなど、普段作らないおかずを作りたいけれど、副菜はどうすればいいの…?というお困りを解決! 頑張らないで簡単に作れる副菜&汁ものレシピで、そのままマネすれば充実の本格献立が完成します。
そのほか、家飲みのおつまみにも嬉しい、デリ風&居酒屋風副菜も。混ぜるだけでできるコンビーフのリエット風、ポリ袋ひとつでできる「無限キャベツ」、簡単配合で絶品のトマトのハニーマリネなど、手早くできるのに箸が止まらないおいしさのレシピをたっぷり紹介します。

 

びっくりするほど簡単なのに、本格派! おやつレシピも

思わずうっとりするお菓子も、失敗なしで簡単に作れます。難しい道具は一切必要なし。蒸し器なしでできる肉まんや、レンジで手早くできるNYチーズケーキ、型いらずのクッキーなど、思い立ったらすぐ作れます。

 

いま大注目の料理家スギヤマヒサエさん

料理家、フードコーディネーター、栄養士。
長年、大手企業にてレシピ開発・メニュー提案・商品開発に携わる。国内・海外問わず、外食、中食、ベンダーなど幅広いジャンルにメニュー提案を手掛け、人気メニューも生み出す。
独立後は、フードコーディネーターとして活躍する傍ら、料理教室Let‘s hisameshi!を主宰。
また、大手食品メーカーや飲食店、コンビニなど数多くのレシピ開発も担当し、幅広く活動している。

 

[商品概要]

『スギヤマヒサエの技あり! 極旨うちごはん』

著:スギヤマ ヒサエ
定価:1,430円(税込)
発売日:2021年10月28日(木)
判型:B5/128ページ
ISBN::9784651201344
電子版:あり
ワン・パブリッシングWebサイト:https://one-publishing.co.jp

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ヒトは非難する相手を見つけないと生きられないのか?——『生贄探し 暴走する脳』

親ガチャという言葉。イヤな響きだなと思いながら、生々しい無力感とか諦めが透けて見えるような気がしている。

 

“親ガチャ”という言葉の響き

親は自分では選べない。自分がどんな境遇に生まれるかは運任せだから、ガチャでしかない。人生の方向性や、できることとできないことも、生まれた時からある程度決まっている。

 

ニュアンスとして一番近いのは、被害者意識という言葉だろうか。自分の努力が作用しえないところで起きることは、自分のせいではありえない。神様だか運命だかわからないけれど、決して望まない状況に追い込まれているのは圧倒的に不公平な不可抗力のせいだ。自分は被害者でしかない。

 

ネグレクトあるいは虐待に近い扱いを受けた人たちもいるだろう。ただ、そこまでされた人たちは親ガチャというワード程度では納得できないと思うのだ。

 

生贄探しと誹謗中傷

自分の力ではどうしようもないことを理解し、受け入れていく過程には、それなりの段取りが必要だ。結果的に、すべてのネガティブなものの原因は親にあるとして納得する。これは、親を非難の対象=生贄として選ぶことにほかならないのではないだろうか。

 

きわめて近い関係にある親を生贄に選ぶのはまだましだ。しかし、よく似た感覚を自分とは関係性が薄い対象に向けてしまう人も多くいる。特にネット上で顕著化しているこうした行いには、親ガチャとは比べものにならないほどの理不尽さが際立つ。生贄にされてしまう人たちは、不特定多数の人間からネガティブな感情を向けられ、執拗に攻撃をしかけられる。

 

誰でも生贄となりえる執拗な攻撃の手段は、有名人・一般人の差を問わず向けられる誹謗中傷だ。誹謗中傷があふれかえることを理由に、大手ニュースサイトのコメント欄が閉鎖されてしまうこともある。

 

多様性に対する違和感

生贄探し 暴走する脳』(中野信子、ヤマザキマリ・著/講談社・刊)という、少し前からとても気になっていた本を読むことができた。著者のひとりである認知神経科学者の中野信子さんは、まえがきに次のような言葉を記している。

 

個体ひとりひとりの考え方を聞けば、さほど良識がないとも思えないのに、集団になるとそれだけで凶暴になる。誰のコントロールも受けつけない。問答無用で異物を排除しようと、いつも生贄を探している。まるで、生贄がいないと生き延びていけない、とでも言っているかのようです。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

まえがきでは多様性という言葉が宿す独特な違和感について語られていて、人間の生物としての仕組みや進化の過程まで盛り込んで綴られる文章はとてもわかりやすく、すぐに引き込まれる。

 

コロナ禍の中で生まれた次世代への言葉

本書は、以下のような経緯で出発した。

 

ヤマザキマリさんは、情報を広く求め、複層的に思考することのできる、温かい知性の持ち主です。彼女とLINEでやりとりする中で、これは残しておきたいね、と語らい、今回の出版につながりました。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

コロナ禍の中で生まれた本書の大テーマであり、次世代への教訓となる言葉も紹介しておこう。

 

危機的な状況が起これば、少しでもはみ出した者から、生贄に捧げられてしまうのだよと。ヒトは放っておけばそういうことをしてしまう生き物なのだと。だからこそ、知性でそれを押しとどめる必要があるのだということを。

『生贄探し 暴走する脳』より引用

 

この本を手に取る人は、今の時代を生きる当事者の一人として、こうした事実と向き合わなければならない。

 

正義なんてあやふやだ

章立てを見てみよう。

 

第1章 なぜ人は他人の目が怖いのか

第2章 対談「あなたのため」という正義~皇帝ネロとその毒親

第3章 日本人の生贄探し~どんな人が標的になるのか

第4章 対談 生の美意識の力~正義中毒から離れて自由になる

第5章 想像してみてほしい

 

この本は、正義あるいは正義感というものを俯瞰していく。正義感の歴史に関する一冊と形容できるかもしれない。強く感じたのは、正義感とか、それを基に紡ぎ出される常識という感覚のあやふやさだ。

 

魔女狩りから日本人特有の思考経路まで

魔女狩りやローマ皇帝ネロの逸話といった歴史的な切り口から、人間の脳の働きや日本人の思考回路の特性といった脳科学・心理学的要素まで幅広く盛り込みながら綴られる文章は、反芻すべき要素が多いのにとても読みやすい。そして、ごく普通の語り言葉で展開する第4章はとても良いアクセントで、共著という形態の良さが最大限に活かされていると思う。

 

ヤマザキマリさんによるあとがきに「自由や幸福の価値観は、どんな親しい関係にある人同士の中であっても共有されるわけではない」という一文がある。現時点で、2019年以前の世界が完全に元通りの形で戻って来るという確証はない。そういう状況の中で自分と他者、自分と社会という関係性を構築する一つひとつの要素を見直し、共有できるものとできないものをしっかり判別したいと思う。

 

 

【書籍紹介】

生贄探し 暴走する脳

著者:中野信子、ヤマザキマリ
刊行:講談社

幸せそうな人を見ると、モヤッとする、相手が得をすると損した気持ちになる、抜け駆けする人が痛い目に遭うのは当然、お前だけを特別扱いできない、などー日本人の思考の傾向は脳の特徴だった。豊かで多様性のある生き方のために、中野信子とヤマザキマリがアドバイス。

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地球温暖化に良いことなどない!——『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』

温暖化が進み、今後もさらに気温が上昇するおそれがあると言われているこのごろですが、酷暑をしのぐにはどのようにしたらいいのでしょうか。砂漠や熱帯などの厳しい環境で生きている動物たちに学んでみました。

暑さから逃げる動物たち

真夏に人はどうやって暑さをしのごうとするでしょうか。よくニュースで見かけるのは、炎天下に海やプールに浸かる姿です。公園で水を浴びる人の姿や、水を飲む人も映し出されることが多いようです。人は暑くなると水を求めるのかもしれません。

 

実家の犬は、夏の暑い日は、家の中のクーラーがよく効いている場所を探し、そこに寝転んで静かに過ごしていました。暑い時に無理して散歩に出かけ、高温となったアスファルトで足の裏をやけどするよりも、ずっと賢い身の守りかただったと思います。

 

身体を冷やすための行動

暑い盛りに涼しいところで昼寝をして過ごす習慣を持つ人もいます。たとえばスペインのシエスタなどがそうで、昼の時間は仕事を一斉に休み、休憩を取るというものです。1日のうち最も暑い時間に出かけずに済むので、暑さ対策にもなっているのです。

 

40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』(永島計・著/化学同人・刊)には、「もっとも重要なカラダを冷やす道具は行動である」とあります。人間は水浴びをしたり、日陰に逃げたり、昼寝をするなどという行動によって暑さから体を守っているというわけです。

 

動物たちの工夫とは

本書には「人以外の生き物の暑さ対策」について書かれている部分があります。そのなかで興味深いのは、夏眠です。冬眠する動物がいるのは知られていますが、なんと夏眠する動物がいるのだそうです。カリフォルニアの砂漠に暮らすカクタスマウスは1日数時間、モハベリスは、数週間から数か月も夏眠してしまうというのです。

 

夏に長時間眠ってしまったら脱水してしまうのではと心配になりますが、水分をほとんど必要としない状態を保つことができるのだそうです。起きたら涼しい時期になっているわけですから、夏眠はうらやましい機能です。

 

夜行性で暑さを避ける

また、普段は昼に生息しているのに、暑い時期だけ夜行性になる小動物もいるそうです。これも最も暑い時間は寝てしまうわけですから人間の昼寝に近い部分があるのかもしれません。

 

人間も、暑い夏だけ夜行性にするというのはもしかしたらいいアイデアかもしれません。日没してから出社して、日の出のころに自宅に戻れば、太陽にジリジリ照らされて体力を消耗したり、スーツが汗まみれになることもないのです。特に、外で作業をしなくてはならない仕事の人は、大助かりなのではないでしょうか。

 

サマータイムで暑さ避け

夏に始業時間などを1時間早めるサマータイムという方法があります。たとえば会社の始業時間が午前9時だった場合、それが午前8時に早まり、終業時間は16時となるものです。日本では導入されていませんが、欧米では多くの国で取り入れられています。

 

サマータイムを導入すれば、涼しい時間に出社することができますし、退社後はまだまだ暗くならないので自由に使える時間も増えるのです。最も暑い時間を避ければ、快適に過ごすことができそうです。

 

ただ、大切なのは暑さから逃げるだけではいけないということ。本にも「40℃になるのを漫然と憂うより、今できる改善の余地は多くあると考える」と書かれていました。フランスのパリでは気候変化などへの対策として、2030年までに街の50%を緑地化する計画です。今後、こうした流れは日本でもどんどん生まれてくるかもしれません。

 

 

【書籍紹介】

40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

著者:永島計
発行:化学同人

夏が暑いのは当たり前。しかし、体温以上の「命に関わる危険な暑さ」に、人体は対応していけるのだろうか。本書では、身近であるにもかかわらず、十分に理解できているとは言い難い「人間の体温調節」のしくみに焦点を当てる。体温はどのように決まっているのか、カラダを冷やすしくみ、温度の感じ方、ヒト以外の動物の暑さ対策、熱中症はなぜ発症するのか、運動と体温の関係など、さまざまな側面からその精緻なメカニズムを解き明かす。猛暑を乗り切る知恵が得られる1冊。

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江戸で起きた旅行ブーム! 旅行ガイド片手にお買い物は今と同じ!?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。みなさんが旅行するときの一番の楽しみは何ですか?  行く場所や時期によっても変わってきますが、私は温泉でしょうか。あとは、その土地の美味しい食べ物。これがあればほぼ満足です。次の日は御利益がありそうな由緒ある寺社を巡って、おみやげを買って帰る。心を満たしてくれる旅行っていいですね。

 

旅行は日常のスパイス!

思わず笑ってしまったのは、この旅行の目的が江戸時代の庶民と同じだったこと。温泉や寺社巡りが旅行の主目的で、江戸に来た女性たちは買い物も楽しんでいたとか! 人って変わらないものですね。

 

江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ』(安藤 優一郎・著/朝日新書)の著者・安藤優一郎さんは主に江戸をテーマに執筆・講演活動を行う歴史家。『大名庭園を楽しむ お江戸歴史探訪』(朝日新書)、『大名格差 江戸三百藩のリアル』(彩図社)など著書多数。今回は江戸時代の旅行ブームをわかりやすく紹介しています。

 

江戸の庶民のパックツアーとは?

泰平の世だった江戸時代は、武士も庶民も観光旅行を謳歌でき、日本史上初の旅行ブームが起きたそうです。その中心を担っていたのは寺社。第1章「庶民の旅の表と裏」では、ブームの秘密に迫ります。

 

江戸時代は寺社の信徒が集まる「講」という組織が発達し、講の代表メンバーがその寺社に参拝する団体旅行が盛んになりました。たとえば成田山新勝寺への参詣は江戸から片道一泊二日の日程。

 

成田山にとって講のメンバーは大切なお客様で、出される精進料理はかなり豪華だったとか。文政九年(1826年)の記録では、煮染め、吸物、大鉢、丼……などが振る舞われ、吸物の具は千本しめじ、白玉、貝割り菜、うど。大鉢にはブドウと梨が盛られていました。信徒の集まりといっても講の組織はゆるく、「いわばファンクラブ」だったと著者の安藤さん。きっと信仰は二の次で、旅行をしたくて入っていた庶民もいたような気がします。

 

こうした旅行を組織したのが寺社と信徒の仲介役である「御師(おし/おんし)」という神職で、今で言うところの旅行代理店のような存在。勧誘する際には海苔、鰹節などの日常品や女性にはおしろいがプレゼントされたそうで、寺社間でのツアー客獲得競争があったのを想像すると面白いですね。

 

本書で一番興味深かったのは第2章「買い物、芝居―したたかな女性の旅」。「入鉄砲に出女」という言葉があるように、“関所を越える女性はほとんどいなかった”という江戸時代のイメージが覆されました。

 

女性が関所を越えて移動する際に必要な「女手形」の発給は非常に面倒。しかも、関所では手形に記された容姿と照らし合わせ、着物を脱がせたり、髪を解かせたりして厳しい身体検査をします。そこで女性たちは「袖元金」という金銭(5~6000円くらい)を渡して、取り調べを簡単にパスしていたのだとか。

 

こうして江戸へ出てきた女性は芝居小屋や日本橋、神田明神など定番の観光コースを巡り、『江戸買物独案内』といった買い物ガイドをチェックしては呉服、錦絵、浅草海苔などをショッピングしていたそうです。感覚としては今の海外旅行に近かったかもしれないですね。

 

本書はテーマが身近で親しみやすく、江戸時代の人々の生活が色鮮やかに伝わってきます。現代の私たちが想像しやすい例えが多く使われていて、歴史本特有の堅さがないのも本書の良さ。2~300年前も旅行が日常の刺激だったことがわかり、ふと気持ちが晴れるような一冊でした。

 

 

【書籍紹介】

『江戸の旅行の裏事情 大名・将軍・庶民 それぞれのお楽しみ』

著者:安藤優一郎
発行:朝日新聞出版

日本人の旅行好きは江戸時代から始まった! 農民も町人も男も女も、こぞって観光旅行を楽しんだ。その知られざる実態と背景を詳述。土産物好きのワケ、関所通過の方法、飲食・名所巡りのお値段、武士や大名は…? 誰かに話したくなる一冊!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

ワクチン開発の立役者となった女性研究者の半生を描く『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』

コロナ禍のもと、まだまだ不自由な暮らしが続いています。それでも我慢の日々に光が見えてきました。ワクチンの接種が始まったからです。私も接種票が郵送されるや、すぐにホームドクターに連絡をし、ワクチンを打っていただきました。こんなに早く接種できるとは思っていなかったので、驚くと同時に有り難いと思いました。ワクチンのおかげか、いまだコロナを発症することもなく毎日を送っています。

 

迅速に、新型コロナワクチンが開発されたわけ

ステイホームの毎日が始まったばかりのころ、私はワクチンを接種するためには、数年待たなければならないと覚悟していました。その間、ずっと家にとじこもっているのは可能だろうかと悩んでもいました。義母が骨折し、退院したばかりで、その後の通院に付き添いが必要でしたし、仕事もあり、家の中に閉じこもってばかりはいられません。かといって、出かけるにはそれ相応の覚悟が必要です。憂鬱だなと思っていたのに、まさか1年足らずでワクチン接種が開始されるとは、信じられないほどの素早さです。

 

周囲には、あまりに早い開発を不安に思い接種を躊躇する人がたくさんいました。なにせ誰にとっても初めての経験です。不安に思うのも当然でしょう。けれども、『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』(増田ユリヤ・著/ポプラ社・刊)を読み、コロナワクチンを製作するために欠かせない技術・mRNA(メッセンジャーRNA)が40年も前から既に研究されていたことを知りました。

 

ご存じの通り、日本で使用されているワクチンは、主にファイザー社とモデルナ社の製品です。どちらもアメリカの製薬会社が製作したものですが、開発の基礎を築いたのは、一人の女性研究者だといいます。彼女の名は、カタリン・カリコ。ハンガリーに生まれ、素晴らしい先生に巡り会い、科学者になる決心をしたものの、難しい政治状況のもと様々な困難に見舞われ、故郷を離れることにします。研究に打ち込むためには、アメリカに渡るしかないと判断したのです。以後、ひたすら研究に打ち込んできました。

 

アメリカに渡ってからも、苦しい状況が続きます。周囲の理解を得られず研究費が出なかったり、信じていた人に裏切られたりと、悩みはつきません。それでも、博士はひたすらにmRNAの研究を続けました。誰にも顧みられなくても、研究をやめなかったのです。そして、この技術があったからこそ、信じられないほどの迅速さでコロナワクチンを完成させることができたのです。

 

『世界を救うmRANAワクチンの開発者カタリン・カリコ』の著者・増田ユリヤは、カリコ博士を知ったきっかけについてこう語っています。

 

私がカリコ氏を知るきっかけとなったのは、自身が出演している「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系列)で、ワクチンの解説をしたことでした。(中略)カリコ氏を扱った時間は、ほんの2〜3分でしたし、その時点では彼女の存在はあまり知られていませんでしたが、なぜか私は彼女のことが気になって仕方がなかったのです。

(『世界を救うmRANAワクチンの開発者カタリン・カリコ』より抜粋)

 

著者は自分の勘を信じて、カタリン・カリコの取材を始めました。コロナの影響があり、アメリカに取材にいくのは難しい状況でした。それでも、あきらめることなく、資料を読みこみ、カリコ博士ご本人や彼女をよく知る方々に、リモートによるインタビューを敢行しました。こうした努力が、博士の研究を理解し、彼女の劇的な人生を生き生きと描く『世界を救うmRANAワクチンの開発者カタリン・カリコ』を完成させたのでしょう。

 

ハンガリーで生まれて

カタリン・カリコ博士はハンガリーの精肉店の娘として生まれました。幼いころから、好奇心が強く、父親が豚を解体するときは、じっと様子を見ていたといいます。小学校に通うようになると、生物学に興味を持ちます。トート先生というカリスマ的な力を持つ師に巡り会い、適切な指導を受け、生物学のコンテストで優勝するなど、その才能を開花させます。さらに、『生命とストレス』という本を著者のハンス・セリエ博士自身から贈られたことが、彼女の将来に大きな影響を与えました。『生命とストレス』には、カリコ博士を導いた珠玉の言葉で満ちていました。

 

この本全体に貫かれているのが「誰かの頭で考え、誰かの目で見るのではなく、自分自身の頭と目で先入観なしに進んでいけ」ということだ。(中略)自らの目で見るという「簡単な観察」によってなされた経験であることを紹介している

(『世界を救うmRANAワクチンの開発者カタリン・カリコ』より抜粋)

 

カリコ博士は、セリエ博士はもちろん、他にもたくさんの良き師に出会い、素直に彼らの教えを吸収していきます。私はといえば、「あの人がこう言ってたから間違いないだろう」とか「この人が批判していたから辞めておこう」と、他人の意見になんとなく流されがちです。他人の意見に耳を傾けるのは大切ですが、あくまでも自分がどう思うか、どうしたいかを考え、進むべき道を決めていくべきでしょう。たとえ失敗に終わろうとも、人のせいにすることなく、自分で決めたのだからと納得し、次に進む道を進んでいけばいいのです。

 

カリコ博士はハンガリーのセゲド大学に進学し、順調にキャリアを伸ばしていきます。しかし、学問の世界にも政治的な影響は色濃くからんできます。第二次世界大戦以降、ハンガリーはソ連の影響を受け、大学も共産主義独裁政権による厳しい取り締まりを受けるようになっていたのです。1980年代に入ると、ハンガリーは深刻な経済危機に陥り、研究のための費用を捻出できなくなります。どんな困難にも耐えてきたカリコ博士ですが、研究を続けることができない環境には耐えられませんでした。

 

そこで、博士は思いきった行動に出ます。エンジニアの夫とまだ2歳の娘と共に、アメリカに移住する決心をするのです。そこで、彼女は自ら手紙を書き、研究員としてアメリカに渡りたいと訴え、ようやくアメリカのテンプル大学からのオファーを得ることができました。それでも、渡米するためにはまだ大きな問題を抱えていました。当時、個人が所持できる外貨はたった100ドルまでだったのです。アメリカで新生活を始めるには、とうてい足りません。そこで、車を売るなどして、なんとか1000ドルをかき集め、ビニール袋に入れて、お嬢さんのテディベアにしのばせ出国しました。まったくもって、肝っ玉母さんのような剛胆さではありませんか。

 

金メダリストの母として

今や世界にその名を知られるようになったカタリン・カリコ博士ですが、これまでは、mRNAの研究者としてではなく、金メダリストの母としての方が名前が通っていたといいます。ひとり娘であるスーザンがボート(エイト)の選手として活躍し、2008年の北京オリンピックと2012年のロンドンオリンピック、2回連続で金メダルを勝ち取ったからです。

 

カリコ博士は研究一筋に生きてきた人ですが、娘の快挙を喜ぶ一人の母親でもありました。

 

「mRNAの研究ではなく、オリンピアンの母としての方が有名だったわ」と、カリコ氏は笑いながら語る

(『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』より抜粋)

 

女性が仕事に打ち込むと、どうしても、子育てや家事などに悩みを抱えるものでしょう。けれども、カリコ博士の場合、夫の深い愛情と理解に支えられ、見事に家庭を守り抜いたのです。さらに、娘が背中を痛めたときは、「自分の身体の声に耳を傾けなさい。身体を壊してまでやらなくてもいいんだよ」と、声をかけたといいます。実験に邁進する研究者としての厳しい顔を持ちながら、娘の身体をただ心配する母親としての顔も持つことに、素直に感動しないではいられません。

 

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』は、人生を丹念に生きていくことの大切さを教えてくれる本となりました。

 

【書籍紹介】

 

世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ

著者:増田ユリヤ
発行:ポプラ社

新型コロナワクチン(mRNAワクチン)を開発し、世界を救った女性研究者カタリン・カリコ氏に迫る唯一の本。カリコ氏と親交のある、山中伸弥教授のインタビューも掲載! なぜ、驚異的なスピードでワクチンは生み出されたのかーー。

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知れば楽しい宇宙の話! 子ども向けだと侮るなかれ『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』が面白いっ!

2021年12月に実業家の前澤友作さんが宇宙へ行くとのことで、メディアでも宇宙旅行に注目が集まっている今日このごろ。なんとなく宇宙のことをわかっているような気になっているかも知れませんが、実は「人類は宇宙のたった5%しか知らない」とも言われているのだとか! まだ見ぬ95%の宇宙のどこかには、映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や「スターウォーズ」のようなことが起こっているかも知れませんよね。うん、夢が広がる!

 

今回は書店の子どもコーナーにあった本なのですが、立ち読みしていたら止まらなくなりついつい買ってしまった『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』(気になる宇宙・著/榎戸輝揚・監修/KADOKAWA・刊)をご紹介します。

生身で宇宙空間に出るとどうなる?

『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』は2019年に発売された小学生向けの本。漢字にはふりがながされていて、イラストも多く掲載されているので、かる〜く立ち読みしたときには、子ども向けでしょ? と侮っていましたが、読んでいるうちにハマってしまい、気がつくと本を抱えてレジに向かった私(笑)。この本をきっかけに宇宙へハマってしまいました。

 

よく映画などで、宇宙空間に生身に放り出されると凍ったりするような表現がされますが、実際にはどんな風になるかご存知ですか?

宇宙空間に出ると、私たちの身体から全ての空気が流出し始めます。身体中の穴という穴を塞いでも意味がありません。そして真空にさらされて10〜15秒で気絶します。これは肺の血液が脳に流れ出すからで、吸う空気がないため脳が空気を求めて苦しみ始めるのです。おそらくこの間に、真空に直接さらされている唾液や涙などが沸騰をはじめていることでしょう。

(『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』より引用)

 

恐ろしい……。空気がある世界で生きていてよかった(笑)。「宇宙ってどんな匂いがするのかな〜」なんて、ヘルメットを取ったら最期……死んでしまいます。宇宙旅行はとても華やかで素敵に思えますが、こうやって宇宙のことを知ると結構危険と隣り合わせですよね。しっかり訓練した人しか行けない場所というのも納得です。

 

そろそろ「地磁気逆転」が起こっちゃう!?

地球は大きな磁石で、S極(南)とN極(北)がある……というのは、理科の授業で習いましたよね。教科書に載るほど当たり前のことですが、そんな常識も地球の歴史を振り返ると、S極とN極が何度もひっくり返っていたということがあったのだとか! しかも、過去360万年の間に少なくとも11回も発生していたというから驚きです。もしかすると、私たちが生きている間にもこの「地磁気逆転」が発生してしまうかもしれませんよっ。

 

平均すると、数十万年の周期で逆転が起こっているのですが、最後に「地磁気逆転」が発生したのは、今から約80万年前です。また2013年頃からESA(欧州宇宙機関)が約6ヶ月間にわたり、地磁気の観測を行ったところ、10年間で5%というペースで弱まっていることがわかりました。

(『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』より引用)

 

もし現代でこの「地磁気逆転」が発生した場合、地球を守る磁場が弱まるため、人間を含めた地球上に住む生物たちは壊滅的な被害を受けてしまうのだとか。電気やネットワークなども使えなくなるのはもちろん、気候変動や地殻変動などさまざまな影響が起こるでしょうね。怖いけれど、ちょっと体験してみたい気持ちも……。

 

ちなみにこの「地磁気逆転」について詳しく知りたい方は、千葉県市原市にあるチバニアンを調べてみるのがおすすめです。この80万年前に起こった地磁気逆転の記録が地層から読み取れるということで千葉県市原市の地層が認められました。次の地磁気逆転がいつ起こるかは誰にもわかりませんが、何かヒントが見つかるかも知れませんよね。

 

今も宇宙空間を旅し続けている無人探査機ボイジャー

1977年に2機が打ち上げられ、40年近く宇宙を飛び続けている無人探査機のボイジャー。これまでに太陽系惑星の写真撮影の成功、さらには新しい衛星を発見するなんて偉業も達成しています。燃料がある限り、どんどん進んで欲しい! と思っちゃいますよね。そんなボイジャーですが、あるものを積んでいることをご存知でしょうか?

 

ボイジャー探査機は、「ゴールデンレコード」と呼ばれる地球外生命体へ向けたメッセージを積んでいるのです。レコードには、波や風の音、動物の鳴き声などの地球上のさまざまな音や55の言語による挨拶も収録されています。

(『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』より引用)

 

なかなかロマンがありますよね〜。ちなみにこのゴールデンレコードには、日本の尺八の音色なんかも収録されているようです。宇宙人が尺八の音色を聞いて何を思うのか気になるところです。ボイジャーの最新情報を調べてみると、宇宙空間で謎の低音を収録したなんてこともあったようなので、どの銀河まで旅を続けてくれるのか、とても楽しみですよね。

 

『読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話』には、他にもブラックホールだけじゃなくホワイトホールがあるかも? なんて話や、宇宙に行った犬の話など宇宙に関するお話が満載。宇宙の入門書としてもおすすめです!

 

 

【書籍紹介】

読むだけで人生観が変わる 「やべー」宇宙の話

著者:気になる宇宙(著)、榎戸輝揚(監)
刊行:KADOKAWA

2019年7月25日には、東京などあとかたもなくすべて吹き飛んでしまうような威力をもつ、小惑星が地球のすぐ近くを通過していたことが分かり、話題となりました。しかもその小惑星の正確な軌道がわかったのは、地球をかすめる、わずか数時間前! 人間ができることといえば、自分の住んでいるところに落ちてこないことを必死に祈るだけ、いつ地球上の大都市が吹き飛んでしまうかわからない状況にわたしたちは暮らしているのです。本書では、そうした思わず「やべー」と口走ってしまうような、ちょっとこわくて面白い宇宙の話を集めました。本書を読めば、とんでもない宇宙の中の地球で生きる、私たちのちっぽけさと奇跡を感じずにはいられないはず!

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普通の人々の心の葛藤を描いたピュリッツァー賞受賞作がおもしろい——『オリーヴ・キタリッジの生活』

オリーヴ・キタリッジの生活』(エリザベス・ストラウト・著/早川書房・刊)は、アメリカで2008年に出版され、翌2009年にはピュリッツァー賞を受賞している。英語のタイトルは「オリーブ・キタリッジ」という主人公の女性の名前のみだ。

 

舞台はアメリカ、メイン州の架空の町・クロズビー。そこは小さな港町で、町の住民は皆知り合いという設定だ。オリーヴは傍若無人な数学教師で、その言動がさまざまな波紋を呼んでしまうタイプの人間。一方、その夫であるヘンリーは誰からも好かれる良い人だ。この夫婦が最初は中年として登場し、そして老いていくまでの、町の人々をも巻き込んだ人間模様を描いたのが本作で、ドラマ化もされている。アメリカの田舎の話だが、日本の小さな町にも起こりそうな人間関係や心の葛藤が見事に表現されているのだ。

オリーヴが主役にも端役にもなる連作短編集

本書は「薬局」「上げ潮」「ピアノ弾き」「小さな破裂」「飢える」「別の道」「冬のコンサート」「チューリップ」「旅のバスケット」「瓶の中の船」「セキュリティ」「犯人」「川」の13の短編から成っている。

 

ただ、短編集とはいえ順を飛ばして読まないほうがいい。一番最初の「薬局」は、町で薬局を営むヘンリー・キタリッジと店を手伝ってくれる気立てのいいデニースという若い女性の言動と心の動きがメインで、オリーヴは端役でしかない。なのでこの時点ではどうして表題がオリーヴ・キタリッジなのかわからないのだ。次の項も、その次の項もオリーブは端役。しかし、時々、登場するオリーヴの烈しい物言いに、読者が少しずつオリーヴは毒のある人物だとわかっていく仕掛けになっているのだ。

 

田舎町では子どもの成長が常に話題となる

オリーヴという女性がくっきりとわかってくるのが「小さな破裂」で、ひとり息子クリストファーの結婚披露パーティーが舞台だ。花婿の母として着飾っているが、その描写が自虐的なのだ。

 

オリーヴは図体が大きい。そういう自意識もある。ただ、もともと大きいのではなく、大きくなったのであって、いまだに馴染みきれないところはある。たしかに昔から背は高いほうで、間の悪い思いをすることも多かったのだが、こんなに大型化したのは年をとってからだ。足首がふくらんで、肩が盛り上がって、手首から先は男の手のようになった。もちろん気になる。ならないわけではない。ひそかに悩むこともある。だが、この期に及んで、食べる楽しみを我慢しようとは思わない。

(『オリーヴ・キタリッジの生活』から引用)

 

ちなみに全編を通してオリーヴの好物として出てくるのがダンキン・ドーナツなのが、いかにもアメリカらしい。

 

さて、物語では息子のクリストファーは二回結婚をする。どちらの妻も大人しい息子とは対照的な強い女性なのでオリーヴは気に入らないのだが、無意識にも彼は自分の母親のような女性を選ぶところがおもしろい。そして愛情を注いだかわいい息子は親からどんどん離れていく。最初の妻とはカリフォルニアへ行ってしまうし、その後、離婚をしたもののオリーヴの元には戻らず、再婚すると今度はニューヨークへ引っ越してしまうのだ。

 

72歳になってはじめて大都会へ

私がいちばんおもしろく読んだのが後半の「セキュリティ」。すっかり行き来がなくなった息子が母親との距離を縮めようとニューヨークに呼び寄せるのだ。

 

旅客機がツインタワーに突っ込んだ日には、寝室にへたり込んで赤ん坊みたいに泣いてしまった。あれはアメリカのために泣いたというよりは、ニューヨークのために泣いたのだと思う。このときばかりは、まったく疎遠でしかなかった硬質の都会が、幼稚園の一学級のように崩れやすく、恐怖の中で必死になっているように見えた。(中略)だが、時の流れというもので、ふたたびニューヨークという町は——オリーヴが遠くから見るかぎりでは——やはり昔と同じように、とくに行きたくもないところだった。一人息子が最近引っ越して、二人の子どもがいる女と再婚した町だとしても、行きたくて行くのではない。

(『オリーヴ・キタリッジの生活』から引用)

 

再婚相手はクリストファーの子、つまりオリーヴにとっての初孫をお腹に宿しているので、彼としては親子の関係をなんとか修復しようと試みるのだが、うまくはいかない。ある日、家族で出かけ、皆でアイスクリームを食べたが、そのとき、オリーヴが気がつかない間にアイスがたれてブラウスにシミができた。が、それを誰も教えても拭いてもくれなかったという些細な出来事にオリーヴはショックを受ける。

 

かつて叔母さんが同じようにアイスを服にこぼすのをオリーヴはみっともないものだと見ていた。そしてその叔母さんが亡くなったときには、もう哀れな光景を見なくてもよいとほっとした記憶が蘇り、同じことがわが身に起こったことに耐えられなくいなってしまうのだ。

 

「初めからクリストファーに言ってあったのよ。あたしの賞味期限はせいぜい三日で、そのあとは魚が腐ったみたいになるんだわ」

(『オリーヴ・キタリッジの生活』から引用)

 

こうして母と息子の関係はあっけなく崩壊。さらに帰りの空港のセキュリティでは破れたパンストを隠したくて靴を脱ぐことを拒否し、「飛行機が爆発したってかまうもんですか。」などと暴言を吐いてしまい別室へ連行されるはめに……。著者のストラウトは、老いていく悲しさ、それに伴う恥がとんでもない方向に向かってしまうことを見事に描いている。

 

この他、一見、何も起こりそうにない田舎町というのどかな環境でも数々のドラマを生む。オリーヴが端役で登場する短編にも、出会いがあり別れがあり、羨望や嫉妬も渦巻き、どの話にも読み手はグイグイ引き込まれる。小さな町では住民全員が知り合いというのもいいようで、実はやっかいなものだったりするし、よそ者は好奇の目にさらされる。そんな普通の人々の人生に「起きてしまう」ことを、静かに、淡々と語っていく本書には、多くの人が共感できると思う。

 

アメリカらしい、そして、さすがピュリッツァー賞受賞作と思わせる本書、あなたも是非ご一読を。

 

【書籍紹介】

 

オリーヴ・キタリッジの生活

著者:エリザベス・ストラウト
発行:早川書房

アメリカ北東部にある小さな港町クロズビー。一見何も起こらない町の暮らしだが、人々の心にはまれに嵐も吹き荒れて、いつまでも癒えない傷痕を残していくー。住人のひとりオリーヴ・キタリッジは、繊細で、気分屋で、傍若無人。その言動が生む波紋は、ときに激しく、ときにひそやかに周囲に広がっていく。人生の苦しみや喜び、後悔や希望を静かな筆致で描き上げ、ピュリッツァー賞に輝いた連作短篇集。

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グリーンウッドワーク(生木の木工)本邦初の本格ガイド『生木で暮らしの道具を作る グリーンウッドワーク 増補改訂版』が10月26日に発売

株式会社ワン・パブリッシング(東京都台東区)は、久津輪 雅・著の「生木で暮らしの道具を作る グリーンウッドワーク 増補改訂版」(発行元:株式会社キャンプ)が、明日の10月26日に発売!

 

グリーンウッドワークの基本を完全網羅!

本書は、世界的に注目を集めているグリーンウッドワークの魅力とテクニックをたっぷり収録した、日本初の本格的ガイドブックの増補改訂版です。主な道具や材料の紹介はもちろん、木の伐り方や割り方、斧とナイフの使い方などの基礎知識から日用品の作り方をていねいに解説しています。

 

greenwood=生木、woodwork=木工、
だからグリーンウッドワーク。
他にgreen=エコロジカルな木工、という意味もある。

(手道具を使う)グリーンウッドワークなら、
鋭い刃物は気をつけて使う必要があるけれど、
機械に比べて安全だし、大きな音も出ないし、誰でもどこでも楽しめる。

近くの森に生えている木や、庭の手入れで伐った枝など、
目の前の木がそのままものづくりの素材になる。

自分が作ったスプーンやお皿で、
スープを飲んだりデザートを食べたりすると、なんだか嬉しい。

暮らしの道具は、身近な素材から自分で作る。
きっと昔はみんながそういう暮らしをしていたはずだ。

(まえがきより)

【書籍概要】

著者:久津輪 雅

定価:2750円(税込)

発売日:2021年10月26日

判型:AB版

魚は鏡のなかの自分がわかるのか? 魚への常識をひっくり返そうとする教授の奮闘~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。朝起きてボーッとした頭で鏡を見ると、「この不細工なのは誰だ?」とギョッとすることがよくありますが、まあ、大概自分なんですよね(笑)。

 

鏡に映っているものは何?

そんな話はともかく、鏡に映った姿を自分と認識できるのは、人間以外にはチンパンジーやゴリラ、イルカなどの一部の動物といわれているそうです。しかし、「実は魚も自己認識できるのではないか?」と疑問を持ったのが、今回紹介する新書『魚にも自分がわかる 動物認知研究の最先端』(幸田 正典・著/ちくま新書)の著者・幸田正典さん。魚も鏡があったら、寝起きの不細工さにショックを受けたりするのでしょうか……(笑)。

幸田さんは、大阪市立大学教授でアフリカのタンガニイカ湖やサンゴ礁に生息する魚などを中心に、魚類の認知能力を専門とする研究者。共著に『タンガニイカ湖の魚たち』(平凡社)、『魚類の繁殖行動』(東海大学出版会)があります。

 

本当はすごかった魚の脳

一般的な常識では、魚は原始的な生物で感情はなく、痛みすら感じないとされていました。しかし、第1章「魚の脳は原始的ではなかった」では意外な事実が明かされます。今世紀に入ってから動物の脳の研究が大きく転換し、魚類の段階で大脳・中脳・小脳・間脳……と脳は完成していて、哺乳類の特徴とされてきた大脳新皮質に当たる塊も魚類の大脳にあることがわかってきたのです。人間と魚の脳の構造は同じだった! というのは驚き。さすがに脳のサイズは小さいものの、魚にも高い知性が存在する可能性は十分にあると幸田さんは言います。

 

第4章以降は、幸田さんが行ってきた魚の鏡像認知実験の具体的な内容が紹介されていきます。本書の前半は、生物の脳や自己認識に関しての理系の入門書といった感覚ですが、この後半からは学会が認めようとしない新説を証明すべく奮闘する研究者のドキュメンタリーといった趣があり、一気に引き込まれます。

 

幸田さんが鏡の実験を行ったきっかけは“遊び半分”だったとか。アフリカの湖に生息する魚を飼っていた水槽に、試しに15cm四方ほどの鏡を入れてみると……。最初は激しく攻撃していた魚が、5日ほどすると鏡を意識しなくなりました。「もしかして鏡を認識しているのでは?」と考えた幸田さん。ここから本格的な実験が始まりました。

 

動物が鏡を認識しているかを調べるには、体にマークを付け、どのような行動を取るか観察します。寄生虫に敏感に反応する熱帯魚・ホンソメワケベラで実験を進めたところ、なんと体表面上に付けられた寄生虫を模したマークを鏡で見て砂底で擦り落とそうとし、しかもその後も鏡で確認したのです。

 

しかし、この研究結果に対して、世界の霊長類学者や動物心理学者から激しい批判がなされました。そのあたりの顛末は臨場感がありドラマチック。自説への信念を貫こうとする研究者の情熱と苦悩が伝わってきます。

 

私が文系だからか、自己意識とは何か、そんな哲学的な問いもふと浮かんでくる脳に刺激ある一冊。魚の認知研究はまだ始まったばかりだそうで、10年後、20年後には常識も大きく変わっているかもしれません。

 

 

【書籍紹介】

『魚にも自分がわかる 動物認知研究の最先端』

著者:幸田正典
発行:日経BP

魚が鏡を見て、体についた寄生虫をとろうとする!? 「魚の自己意識」に取り組む世界で唯一の研究室が、動物の賢さをめぐる常識をひっくり返す。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

なぜ「日記兼用お料理家計簿」は65年以上のロングセラーなのか? 家計簿アプリではできない人気の秘密を聞いてみた!

毎年「来年こそは家計簿をつけよう……」と思って、本屋さんや雑貨屋さんの家計簿コーナーをウロウロする私。最近では、レシートを撮影するだけで手軽に家計簿をつけることができるアプリも出てきていますが、スマホにダウンロードしても2週間くらいで更新ストップ……続けられません(涙)。

 

私のように「次こそ続けるぞ!」と思っている方、また「そろそろ家計簿をつけようかな?」と考えている方、65年以上のロングセラー家計簿『日記兼用お料理家計簿をご存知でしょうか? わかりやすく費目が分類され、記入しやすい日報・週報・月報の家計簿欄に、日記などその日の出来事を自由に書けるフリースペース、300以上のお料理レシピと、別冊で癒されるお花のカレンダーまでついた1冊なのですが、娘の嫁入り道具として渡したり、50年以上愛用する主婦までいる人気の家計簿なのだとか。

 

今回は、2022年度版が発売されたばかりの『日記兼用お料理家計簿』について、担当者さんに詳しくおすすめポイントなどを教えてもらいながら、ロングセラーの秘密に迫りたいと思います!

 

50年以上使う愛用者も! 長年愛されている『日記兼用 お料理家計簿』とは?

『日記兼用お料理家計簿』が発売されたのは、今から65年以上前。戦後、少しずつ人々の暮らしが豊かに変わり始め、冷蔵庫や洗濯機など日用家電が出始めたころでした。

 

当時は、婦人生活社という出版社から「お料理家計簿」という名前で出版されていましたが、2004年から学習研究社を経て、現在はワン・パブリッシングが発行しています。

 

毎年、ひと目でわかるかわいいキルトが表紙にデザインされており、表紙をめくればオールカラーで美味しそうな料理のレシピがずらり!

 

↑季節ごとのおもてなし料理が掲載されているので、ホームパーティやお祝いごとにも役立ちます。レシピは大庭英子さんが監修

 

巻頭ページだけでなく、家計簿の中にもレシピが掲載されているので、毎日の献立を考えるときの料理本としても役立ちます。旬の食材についての一言メモも便利。

 

↑掲載されている全てのレシピ数を合わせると300以上に。「豆もやしのナムル」「フライド大根」「れんこんのオイスター炒め」などひとつの食材でできる作り置きにもおすすめな副菜もたっぷり掲載されているので、無駄なお買い物もなくなりそう!

 

また、家計簿の目次前には、折り込みで「この家計簿の使い方と予算の立て方」「ボーナスの収支と使い方一覧表」が付属していますが、その文章に漂う昭和っぽさに65年のロングセラーの証を感じてしまいました。

 

月々の限られた収入を生かして、健康でゆとりのある暮らしの設計をしていくのは、家計をやりくりするあなたの腕次第。きちんと家庭を守り、毎日の生活を豊かにするために、この家計簿をぜひご利用ください。

(『日記兼用 お料理家計簿』より引用)

 

どうですか? 「家計をやりくりするあなたの腕次第」と言われるとちょっと頑張りたくなりますよね(笑)。このページだけ読むと、割烹着を着たくなってしまうような……そんな懐かしさも感じさせてくれます。

 

ちなみに、毎年行っている読者アンケートによると、回答した人の約77%が11年以上使っているとのこと!

 

また「生きている限り使い続けます」「コロナ禍で自炊が増えたので、レシピがたくさんあって助かった」「母の代から親子で使っています」「結婚してから50年以上、毎日欠かさず使い続けています」という愛あるメッセージもたくさん寄せられているそうです。素敵だー!

 

あえて「変えない」がロングセラーに

では早速、『日記兼用 お料理家計簿』の編集を担当されている広田美奈子さんにお話を伺いましょう!

 

——本日はよろしくお願いします! 65年以上愛されている『日記兼用 お料理家計簿』ですが、どんな読者さんが多いのでしょうか?

 

「毎年アンケートを実施しているのですが、その応募者の平均年齢は、69.7歳。結婚されてから使い続けていただいている方も多く、ありがたいことにほとんどがリピーターさんです。この家計簿が発売された当時は、『君に家計をあずけるよ』なんて働く旦那さんのお給料でやりくりする家庭が大半だったので、専業主婦の家事のひとつに家計簿は欠かせないツールだったのだと思います。今は共働き家庭も多くなり、個人が家計簿アプリでお金を管理することが多いかもしれませんが、毎年の家計簿を1冊にまとめられて、家計の変化が一目でわかるというのは、手書きの家計簿ならでは。1年の終わりにじっくり振り返りながら、日記に記された思い出と一緒に残せるのもメリットだと思います」

 

——なるほど! 読者さんからの感想も拝見させてもらいましたが、どれも熱のこもった、愛あるコメントが多いですよね。

 

「そうですね。毎年、家計簿を取っておいて本棚に飾っている……というご家庭もあるみたいです。私が担当になって8年ほどなのですが、10年以上前の家計簿を見たくても、手元には残っていないんです。国会図書館なども調べたのですが、昔のものは見つからなくて。私も見せてもらいたいくらいです(笑)」

 

——ロングセラーならではの悩みですね(笑)。65年以上と長きにわたって愛され続けている家計簿ですが、どこか変化させている部分はあるのでしょうか?

 

「毎年、巻頭のお料理ページはテーマを変えて掲載しています。監修いただく料理家の先生も変えているので、トレンドや読者さんのニーズに合わせたものにしています。あと、最終ページにあるお金についてのコラムも、その年のトレンドに合わせた内容を掲載していますよ」

 

——家計簿の中身やフォーマットは変更しているのでしょうか?

 

「実は、一切変えていません。私が担当になって、以前の担当者さんから最初に言われたのが『中身を変えないこと』だったので」

 

——秘伝のレシピみたいじゃないですか!

 

「そうなんです(笑)。家計簿って毎日のように触れるものなので、読者さんにとっては書き慣れているフォーマットが一番いいんです。30年以上愛用いただいている方もたくさんいらっしゃるので、項目の掲載順番や費目の内容、全体のレイアウトなどは、私が引き継ぐ前からずっと同じもので変わっていません」

 

——すごい……! あえて変えていないんですね。

 

「読者アンケートに、不要なところはありますか? という質問項目を設けたのですが、『ありません』『今のままでいいです』という意見がほとんどで。変わらないからこそ、使い続けてもらえているのだと考えています」

 

——これだけ長く使われているイコール使いやすいということなんでしょうね。今までほとんど家計簿を続けられなかった私ですが、来年こそ! この家計簿で頑張れそうな気がしてきました。

 

「ありがとうございます。でもそんなに力まないでください(笑)。家計簿は、最初から完璧に埋めよう! 家計簿つけよう! と意気込まないことも大切です。たくさん費目わけされていますが、全部を埋めなくても大丈夫なんです。私は、買い物をしたらレシート・領収書ポケットに一旦入れておいて、時間があるときにまとめて書いちゃいます。品目も分けずに、支出合計と日記だけ書くときもありますし」

 

↑巻頭に付いている「レシート・領収書ポケット」もロングセラーの秘密のひとつ

 

——力みすぎか。確かに毎回「山に登るぞ!」くらいの気合いで始めて、疲れて離脱している気がします……。

 

「最初は、一週間の支出合計をまとめてみて『あれ? なんか今週出費多くない?』とか、月報をまとめて『先月より5000円食費浮いた! ラッキー』くらいにつけてもらっていいんです。大切なのは、書くこと。アプリなどは登録も楽なので、無意識で作業できちゃいますが、手書きの家計簿って自分の手で書いていくので、いろんなことに意識が向くようになります。そこでたくさんの気付きを得ることもできるので、まずは書いてみる、そこから始めましょう。無理に高い目標を掲げず、まずは書いてみる。書く習慣が身に付いたら自分なりのアレンジをしながら家計簿を活用していく、そんな使い方ができると良いと思います」

 

——なるほど! 最後に、実はあまり知られていない『日記兼用 お料理家計簿』のおすすめポイントを教えてもらえますか?

 

「そうですね(ページをめくりながら……)。日毎のページの真ん中、ちょうど見開きの部分に、お手紙などで使える季節の挨拶文が掲載されているんです」

 

——面白い〜! これ、まったく気がつきませんでした!!

 

「例えば、7月の2週目は『花火大会のお誘い』、10月の1週目は『パートの斡旋依頼』、母の日や父の日の挨拶文まで、意外と使える文章かと。あとは、毎日の日記をかけるフリースペースにも豆知識が掲載されていますし、カレンダーや月間ページにあるお花も毎年カメラマンさんが撮影した写真を使っています。このお花を楽しみにしてくれている読者さんもいらっしゃるので、こちらも変えたくないエリアですね(笑)。家計簿・料理のレシピ・日記機能がメインですが、それを支える魅力的なコンテンツもたくさんあるので、毎日ページを開くのが楽しいと思ってもらえればうれしいですね」

 

——隅々まで見ていくと本当に面白いコンテンツがいっぱいですね。今日はありがとうございました! 1年後、ちゃんと使えたかご報告させてください(笑)

 

「書く」ことにこだわった家計簿が他にも!

『日記兼用 お料理家計簿』は、2021年12月18日(土)から使えるようになっており、さらに自由日付欄もあるので、お給料日を始まりにして使いたいという人にも対応が可能。

 

私も、来る12月18日に向けて、まずはなんでもないノートにレシートを書き写す練習を始めました。ただ書き写しているだけですが、「食費ってこんなにかかっていたんだ……」とか「つい余計な買い物しちゃうな〜」と自分を客観的に見ることができ、アプリを使っていた時よりもお金を意識できるようになった「気」がしています(笑)。はやく『日記兼用 お料理家計簿』を使いたい……別な意味で力みすぎている気がしますが、眺めているだけでも来年が楽しみになる、そんな家計簿だと感じました。

 

またワン・パブリッシングからは『日記兼用 お料理家計簿』のほかに、『おトクで使いやすい! おはよう!家計簿2022』(328円・税込)『いちばん使いやすい家計ノート2022』(300円・税込)『らくらく家計ノート2022』(387円・税込)と、用途に合わせた家計簿も発売中。

「まずは書いてみる」から始めて、気がついたら10年30年と使い続けられて、その思い出とともに家計の歴史も残していけるのは、アナログの家計簿ならではですよね。自分の家の歴史を刻むような気持ちで、来年から『日記兼用 お料理家計簿』を始めてみませんか?

 

 

『日記兼用 お料理家計簿』

編著:ワン・パブリッシング
定価:990円(税込)

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35歳、独身男性のちょっとおかしな日常生活。ハライチ岩井勇気のエッセイ第二弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』

つ、つ、つ、ついに出た! お笑いコンビ、ハライチの岩井勇気さんエッセイ第二弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』(岩井勇気・著/新潮社・刊)が、発売されました。

 

2019年に初のエッセイ本『僕の人生には事件が起きない』(紹介記事はコチラ)が出版され、あっという間に10万部を突破。すっかり先生になった岩井さんですが、出版社や周りの人たちの反応が変わっても、まったくブレず、むしろ強度が増しています。私も購入してすぐに読み始め、電車を乗り過ごすくらい夢中になっていました。新刊では23編のエッセイに加えて、初の小説作品も掲載されています。どの話もニヤニヤできる面白さ! 前作を読んだ方も、読んでいない方も、ハライチ岩井さんを知っている人も、知らない人にも読んで欲しい一冊です。

今作も描かれているのは「日常」

前作に引き続き、今作でも描かれているのは岩井さんの日常生活。ネットで自転車を購入する話や、トイレを詰まらせてしまった話、友達の結婚式を忘れてしまった話、初めてのヨガ教室に行く話など23のエッセイが綴られています。

 

個人的に一番好きなのは、渋谷でおじいちゃんおばあちゃんに混ざって映画『男はつらいよ おかえり 寅さん』を観た話。仕事の合間にできた3時間、仕方ないから映画でも観るか……と映画情報を調べ始めた岩井さん。ちょうどいい時間にやっているのは全く知らない寅さんだけだった、というところからエッセイは始まります。

 

『男はつらいよ』は言わずと知れた名作だが、世代的な問題で1作品も観たことがない。しかもそれが50周年記念作品の『おかえり 寅さん』だというのだからついていけるのかが不安だ。「いってらっしゃい」の時に居なかったのに「おかえり」の時に突然居ては、帰ってきた寅さんも「こいつは誰だ?」という話になるだろう。例えるなら、先輩の同窓会に参加するような訳のわからない行動である。

(『どうやら僕の日常生活はまちがっている』より引用)

 

そんな先輩の同窓会に参加した岩井さんですが、映画の寅さんにどんどん引き込まれていきます。『男はつらいよ』シリーズが大好きな私は、この過程を読んでいるだけでも「そうそう、その感じ!」と感情が昂ってしまったのですが、ラストの一文には、す〜っと一筋の涙が……。エッセイを読んで笑うことは多々ありますが、思わず泣いたのは初めてでした。勝手に、寅さんと岩井さんを重ね「私にとっての寅さんは、岩井さんだ!」なんて思いながら、エッセイを読み終えたのでした。

 

お母さんとのやりとりも最高

毎週木曜日、TBSラジオで放送されているハライチのラジオ番組『ハライチのターン!』でも語られることの多い、岩井さんのお母さんも『どうやら僕の日常生活はまちがっている』に登場します。

 

「珪藻土マットをめぐる母との攻防」では、自主回収をしている珪藻土のマットを今すぐに交換したい岩井さんのお母さんと、新しいマットを買ってから交換したい岩井さんとの攻防が、コントのような展開で繰り広げられていきます。お母さんから何度もかかってくる催促の電話を無視していると「卑怯者」とだけメールが届いたり、サッとやれば2〜3分で終わることを頑固として譲らない岩井さんとのやりとりが笑えて、自分の母親のことまで思い出させてくれるようなお話にまとまっています。

 

個人的には『どうやら僕の日常生活はまちがっている』の助演女優賞は、岩井さんのお母さん(笑)。30歳まで実家暮らしをしていて、暇さえあれば「実家に帰りたい」と語っていたこともある岩井さんらしいエピソードが満載です。エッセイにあるお母さんとのエピソードをまとめて、Netflixのオリジナルドラマとして制作して、世界中から称賛されたらいいのに……なんて、勝手な妄想をしている今日このごろです。

 

今後も、新潮社さんからエッセイを出し続けて欲しい

エッセイも最高ですが、岩井さんの本職はお笑い芸人、作家ではありません。しかし、こうして本が売れていくと、出版社もなんとか次回作をお願いします! と姿勢が変わってくるわけで……。それに対しても岩井さんは、「はじめに」でこんなことを話しています。

 

というか出版社。「2冊目に向けた連載は〜」なんて言ってきてるけど、お前ら1冊目の初版6000冊しか刷ってなかったよな? 甘く見積もっていたくせに、如実に手のひらを返してきやがる。

(『どうやら僕の日常生活はまちがっている』より引用)

 

本の中で本音を言えるのがすごい(笑)。しかし、それが岩井さんなのだ!

 

ちなみに頑張って売りたい新潮社さんは、読者ファンを巻き込んだ『“帯”総選挙』を開催。こちらも盛り上がって、第3弾のエッセイ本が出版されることを願っています。新潮社さん、ファイトですっ!

 

そんな岩井さんですが、今年はハライチとしてM-1に出場します。エッセイストとしての岩井さん、漫画の原作を手がける岩井さん、さらに俳優としての岩井さんと、ここ数年で活躍の幅をどんどんと広げていますが、根底にあるのは「お笑い芸人」。M-1の2回戦も通過し、10月末にはコントライブを開催。今後のハライチからも目が離せません!!

 

【書籍紹介】

どうやら僕の日常生活はまちがっている

著者:岩井勇気
刊行:新潮社

あの不敵な笑みを浮かべながら、ハライチ岩井が平凡な毎日に一撃を食らわせる。初小説も収録!読めば世界が変わる、最新エッセイ集。小説『僕の人生には事件が起きない』も収録。

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なぜ、独り言で英会話が上達するのか?——『朝から夜までひとりごと英会話』

ネタ見せのチャンスはまったくないんだけど、お風呂でモノマネを練習している。今完成度を高めているのは、ユニークな流れで知られる夢グループCMの完コピだ。

 

モノマネとシャドーイング

完全に無駄な行いだと思い込んでいたのだが、実はそうとも言い切れないみたいなのだ。つい最近、大手英会話学校で講師をしているバイリンガルの友人と英語の上達法について話をした。彼女が言うには、モノマネに徹することが一番早いらしい。これをシャドーイングという。

 

シャドーイングとは、聞こえてきた音のあとを追ってすぐにそれを言うという勉強法だ。プロの通訳を養成する学校でも取り入れられているメソッドで、発音の向上だけではなく、リスニングの力も上がる。それに、イントネーションやリズムが英語寄りになり、英語圏で暮らしている人たちにとって聞こえやすくなる。耳から入ってきた音に、自分が発する音を重ねていくというイメージだ。これを続けていくうちに、英語が聞きやすく、言葉として出やすい状態が生まれるという。

 

ならば筆者には、シャドーイングに最適な姿勢が整っていることになるじゃないか。

 

キレのいいフレーズを発信したい

シャドーイングに使ったフレーズをごく普通の音量で、独り言で発してみるのも効果があるらしい。実際に口に出して言うことが大切だ。脳と口の周りの筋肉が連動して、とっさのひとことが出やすい状態になる。

 

シャドーイングから派生する独り言学習法としてお勧めしたい本がある。独り言フレーズにおいては最高のネタ本といえるだろう。『朝から夜までひとりごと英会話~留学なしで圧倒的に伸びる!』(SAKURA English school著・刊)は、日常生活に欠かせない言い回しをシーン別にまとめた一冊だ。

 

英語の勉強法にもさまざまあるが、文法や読解力向上が主流派である中、独り言という方法を媒体としたこの本のメソッドは珍しい。例文はどれも短く、独り言として次々とキレよく繰り出せる期待大。

 

TOEICスコアと“会話力”

オンライン英会話の講師をしている本書の著者サクラさんの出発点は、以下のような感じだった。

 

留学経験は2回で、最初の留学先はサンフランシスコでした。2年ほど、国内のカルチャーセンターでグループレッスンを続けて、その時のTOEICスコアは750点。日本にいれば、「英語できるんだね」と言われそうなスコアではありました。でも実際サンフランシスコについてみると、全く話せないのです!

『朝から夜まで英語ひとりごと』から引用

 

2020年度のTOEIC Listening & Reading Testの日本の平均スコアは531点となっているので、700点以上なら「英語ができる」レベルと考えていいだろう。TOEICは英語コミュニケーション能力を評価するものなので、スコアと「できる度」の体感は正比例するはずだ。なのに、サクラさんは全く話せないことを自覚した。留学している理由さえ怪しく感じている自分を正しい方向にもっていくために考え出したのが、独り言を英語でつぶやくことだった。

 

独り言学習のメリット

サクラさんが挙げる英語で独り言のメリットはいくつかある。

 

*英語に慣れることができる

*苦手な発音が理解できる

*文法を自分のものにできる

 

大事なことがふたつある。文法を気にしないことと、文章が短いことを気にせずにどんどん言ってみることだ。ごく単純に仕組みを説明するなら、こういうことになる。

 

「thank you(サンキュー)」を頭の中で英語にしてから話しているわけではないですよね?「thank you(サンキュー)」はもうしっかりと定着しているから、すぐに口から飛び出すのです。それが「独り言」トレーニングの狙いです。

『朝から夜まで英語ひとりごと』から引用

 

極端な言い方に聞こえるけど、これは当たっている。筆者の友人は「日本人は、“比較的長め”の文章をよどみなく発することに意識が行き過ぎていると思う」と言っていた。TOEICのスコアと会話力の乖離の原因は、このあたりにあるのかもしれない。

 

=さあ、今日から始めましょう=

*It’ s hard to get my engine started again after holidays

休み明けはエンジンがかからないよ

*The line at the convenience store is so long at lunchtime.

昼時のコンビニはすごい行列だ

*A good first impression is everything.

とにかく第一印象が大切

『朝から夜まで英語ひとりごと』から引用

 

どれをとっても、英語・日本語の差なく、ごく普通の日常会話に出てくるフレーズだ。こういうごく当たり前の表現を数多くストックしていくことで、「thank you」と同じレベルで使いこなせるようになるのだろう。ちなみに、例文の音声データはYouTubeとPodcast、そしてSpotifyからも落とせる。

 

いつでもどこでもできる独り言学習メソッド。もちろん、お風呂の中でもできますよ。

 

【書籍紹介】

朝から夜までひとりごと英会話~留学なしで圧倒的に伸びる!

著者:SAKURA English school
刊行:SAKURA English school

身近ですぐに使えるものばかり! 実践編の126フレーズを、音声で発音を聞いてから、口から出てくるまで練習しましょう!

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甲子園も夢じゃない!? 週1回3時間しか練習できない超進学校・開成高校野球部は「下手なまま勝つ」!

弱小高校野球部が舞台となっている野球マンガ・アニメというのは結構ある。『キャプテン』『MAJOR』『おおきく振りかぶって』『ROOKIES』……、その他いろいろあるだろう。

 

実際の高校野球でも、部員が9人ギリギリだったり、部員が足りず他の体育系部活から助っ人を呼んで試合をしたりといった野球部もある。夏の地区予選などを見ていると、強豪校と対戦があったりして、大差でコールド負けなんてこともよくある。

練習は週に1回3時間でもベスト16

毎年東大に多数の合格者を出す、超進学校の開成高校にも硬式野球部がある。同校のホームページを見てみると、2021年度は部員数23人、活動日は放課後は木曜と土曜(隔週)、他の曜日は自主練習、朝練は水曜。はっきり言って、全然練習が足りていない。

 

そんな開成高校野球部だが、全国高等学校野球選手権東東京大会(いわゆる夏の甲子園の地区予選)で、2005年には5回戦進出(ベスト16)、2007年と2012年には4回戦進出を果たしている。

 

そんな開成高校野球部を追いかけたのが『「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー』(高橋秀実・著/新潮社・刊)だ。

 

本書の前書きには平成24(2012)年9月という記述がある。4回戦に進出した年だ。その前書きにはこのように記されている。

 

本書は、超進学校として知られる開成高等学校の硬式野球部が甲子園大会に出場するまでの道のりを記録しようとしたものです。

いまだ出場には至っておりませんが、早ければ来年にも出場を果たす可能性もなきにしもあらずという期待を込めて、ここに途中経過として出版する次第です。

(『「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー』より引用)

 

2021年現在、まだ開成高校は甲子園出場は果たしていないが、当時はそう期待できるだけの勢いがあったということなのだろう。少数精鋭で頭脳プレーで勝ち進んでいったのだろうか。

 

秘策は「ドサクサに紛れて勝つ」

実情はまったく違う。とにかく野球部員全員が野球が下手。本書でもはっきり「下手なのである」という記述があるほどだ。そもそも練習は週に1回3時間。専用グラウンドはなく、特に中学の強豪選手をスカウトしてきているわけでもない。他の高校と比べても、明らかに選手の技量は下なのである。

 

そんな野球部を率いているのが東京大学野球部出身の青木監督。この野球をやるのに全然適していない環境で、勝つ野球をするために取った作戦が「打撃特化」だ。

 

投手は、試合を壊さない程度にストライクが入ればいい。守備はダブルプレーは要らない。確実にひとつずつアウトを取る。とにかく守備面に関しては必要最低限だけをやり、あとは打撃特化。打順は1番から打てそうな選手を並べて、早い段階で大量得点を狙うという作戦なのだ。

 

いったん勢いがつけば誰も止められません。勢いにまかせて大量点を取るイニングをつくる。激しいパンチを喰らわせてドサクサに紛れて勝っちゃうんです。

(『「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー』より引用)

 

これを「ハイリスク・ハイリターンのギャンブル」と監督は言う。このギャンブル、結構成果を上げており、2005年の5回戦進出時には、勝利した4回のうち3回がコールド勝ち。ドサクサ野球は、結構効果があるようだ。

 

勢いに任せて短期集中大量得点で勝つ

本書では、選手たちのインタビューも多数掲載されている。ただ、いわゆる高校球児的な感じではない。野球が嫌いなわけではないし、勝ちたいという気持ちもあるようなのだが、熱さみたいなものは感じられない。筆者との対話も禅問答のようになっている。

 

選手は自分たちが野球が下手なこともわかっているし、何が悪いのかもわかっている。課題点はわかっているのだが、それを克服するための練習時間が与えられていない。

 

だから考える。ただ、考え方が理屈っぽい。根性論は一切ない。結果を出すためにどうしたらいいのか、各自が考え行動する。ただし、結果が出ない。

 

ではなぜ勝てるのか。これはもう、野球というスポーツの特異性だろう。野球は必ずしも身体能力が優れていなくてもできるスポーツ。だって、3割打てば好打者という世界。7割8割は失敗してもいい。だったら、力や技だけではなく、「なんだかわからないけど勢いでいく」ということも通用する。9回の攻撃のうち、1回だけ事故のようにバカスカ打って勝つ。そのために、打者たちは常にフルスイング。これにより相手に威圧感を与え、たまたまバットにボールが当たることが続けば勝てる。

 

実際、それを開成高校野球部は証明しているわけだ。ただし、甲子園には届かないが。

 

下手なまま甲子園を勝ち抜く開成高校が見たい

青木監督は、「野球には教育的意義はない」と言い切る。教育というのはムダなことはしない。しかし野球はやってもやらなくても人生にそれほど影響はないムダなものなのだが、学校教育は「野球は役立つもの」にしたい。だから、野球に教育的視点を持ち込むのだろう。

 

野球を通して礼儀や相手を思う気持ちなんてものも手に入るのかもしれないが、結局は勝負の世界。開成高校野球部は、野球から何かを学ばせる気持ちはない。だから、勝ちにこだわる。勝つために、守備は捨て打撃を重視し、一か八かの勝負を毎回行っているのだ。

 

最近の高校野球は、高校の知名度アップやマスメディアの利益のために行われているような気がしないでもない。真剣に野球をやっている球児たちには何の罪もないのだが、周りの大人たちに利用されているように見える。

 

開成高校野球部はそんな大人の世界とは無縁で、純粋に勝ちにこだわっている。金で選手を集めてくるような方法ではなく、自分たちの持っているものを最大限活かして、「勝負」そのものを楽しんでいるのではないだろうか。

 

下手だから上手くなるために努力するのではなく、下手なまま勝つための方法を探る。ある意味、これは超進学校の開成高校ならではの考え方なのかもしれない。球児たちが現役でいられる期間は2年ちょっとしかない。その短い間に急激に強くなることは不可能だろう。だったら、今のままで勝つ確率を高める戦いをする。

 

超進学校の野球部というと、データを駆使した頭脳的な野球をするというイメージだが、開成高校はちょっと違う。なんだか甲子園で一か八かの勝負をする開成高校を見てみたくなってきた。

 

【書籍紹介】

「弱くても勝てます」―開成高校野球部のセオリー

著者:高橋秀実
発行:新潮社

甲子園も夢じゃない!? 平成17年夏、東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が、東東京予選ベスト16に勝ち進んだ。グラウンドでの練習は週1日、エラーでも空振りでもかまわない、勝負にこだわりドサクサに紛れて勝つ…。監督の独創的なセオリーと、下手を自覚しながら生真面目に野球に取り組む選手たちの日々。思わず爆笑、読んで納得の傑作ノンフィクション!

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(※著者「高橋秀実」の「高」は正式にははしごだか)

制作過程までを商品にする「プロセスエコノミー」の3つのメリットとは?

モノが溢れている現代。似たようなモノが増え、モノ単体だけでは人々の購入意欲を刺激しづらくなっています。そんななか、モノができるまでのプロセスを消費者に公開する「プロセスエコノミー」という方法が注目されています。

今まではアウトプットエコノミー

プロセスエコノミーとはどんなものなのでしょうか。『プロセスエコノミー  あなたの物語が価値になる』(尾原和啓・著/幻冬舎・刊)では、今までの商品のことを「アウトプットエコノミー」と仮称し、「プロセスエコノミー」と比較しています。

 

「アウトプットエコノミー」とは、できた商品そのものを販売するという方法です。音楽なら曲を、小説なら本を、というように完成した品物が店に並びます。これが今までの買い物スタイルでした。しかし、現代ではモノが多すぎて埋もれてしまい、このスタイルが通用しづらくなってしまったのです。

 

プロセスエコノミーとは何か

では、「プロセスエコノミー」とはなんでしょう。それは、その商品が完成するまでの過程に価値を見出し、お金を支払うことを言います。まだ形になっていないものにお金を払うなんてと、不思議に思う人も多いかもしれません。けれど、実際に現代の日本ではそうした動きが加速しているようです。

 

わかりやすいのは、クラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、何かを始めるための費用を人々から集めることができる方法です。たとえば曲や小説を作るために、機材や取材費が必要である場合、その費用をファンや支援者に呼びかけて調達するというものです。

 

過程にお金を払う理由

クラウドファンディングサイトでは「これから商品を作りたいので、製作費を支援してほしい」という呼びかけが大量にされています。私も何度か応援したことがあります。たとえば「本屋さんを作りたい」というプランや、「離婚のプロセスをカードゲームにしてわかりやすく伝えたい」というプランに、お金を払ったことがあります。

 

クラウドファンディングには、何かしらの返礼があります。個人的には、ふるさと納税をすると返礼品がもらえるのと似ている気がしています。返礼としてもらえるものとしては、たとえば本屋さんがオープンした時に特製メッセージをいただけたり、離婚のカードゲームができた時は実際にその商品が届いたりとプランによってさまざまです。

 

特製メッセージをもらうためだけに、私は本屋さん企画にお金を払ったのでしょうか。決してそれだけではありません。私は元々本が大好きで、ぜひその場所に本屋さんがあってほしいと前から思っていたので、オープンすれば私の願いも叶うのでぜひ実現してほしかったのです。実際、オープン後にいそいそと店を訪れ、「この場所ができてうれしい」と心底そう思いました。完成までのワクワク感まで楽しめて、とても素敵な企画だったと今でも思っています。

 

プロセスエコノミーのメリット

本書には、プロセスエコノミーとして制作過程を公開することのメリットが3つ挙げられていました。ひとつめは、先ほどのクラウドファンディングのように、完成する前から資金を調達できるありがたさ。そしてふたつめは、クリエイターの寂しさの解消になるということ。確かに作業をひとりで続けるよりは、応援してくれて待っていてくれる人がいるほうが、頑張る気持ちになるというものです。

 

そして3つめは、長期的なファンが増えるということ。実際、私は本屋さんがオープンしてから喜んで何度も足を運びました。オープン前のプロセスも知っているからこそお店に親しみを感じ、そこで本を買うことを喜びにすら感じていました。

 

プロセスエコノミーでは、消費者は、その店やモノだけでなく、その裏にある背景や過程までもを深く味わうことができるのがいいところです。どうせお金を使うのなら共感できるモノや大好きな世界観にお金を使い、自分が満足するものが出来上がる過程を楽しみたい、そんな風に考える人は、今後も増えそうです。

 

【書籍紹介】

プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる

著者:尾原和啓
発行:幻冬舎

あなただけの物語を、走りながらさらけ出そう! 絵本で稼ぐのではなく、絵本を作っている過程をオンラインサロンで売る。CDで稼ぐのではなく、CDデビューまでの道のりをライブ配信で売る。人はプロセスに惹きつけられる。なにかを作り出すすべての人にとって、プロセスエコノミーは武器となる。

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カップ酒にブームの兆し!? きき酒世界一のソムリエが推す家飲み日本酒~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。和食に合うお酒といえばやっぱり日本酒ですよね。お刺身や魚料理をさらに美味しくしてくれる立役者。これからの季節、お鍋やおでんにもピッタリです。

 

気軽に日本酒の世界へ!

現在日本酒の銘柄はなんと1万種類ともいわれています。どれを飲んだらいいのか迷ってしまうというなら、その道のプロに聞くのが一番。

 

今回紹介する日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』(北原 康行・著/日経プレミアシリーズ)は、日本酒ガイド本では取り上げられることの少ないカップ酒や「アル添酒」にも着目しているのが特徴。身近なところから奥深い日本酒の世界へと分け入っていきましょう。

著者の北原康行さんは、ホテル「コンラッド東京」のソムリエでシニアアウトレットマネージャー。日本酒への造詣も深く、2014年には「世界きき酒師コンクール」で世界一に輝いています。著書には『日本酒テイスティング』(2016年/日経プレミアシリーズ)があり、本書はその続編に当たります。

 

カップ酒で日本酒テイスティング

ラベルを見て、エリア(東日本か西日本か)とタイプ(吟醸系か非吟醸系か)の情報から日本酒を選ぶという、初心者にもわかりやすい方法を提唱している北原さん。気候的に東日本は「エレガント」、西日本は「パワフル」な酒質というザックリした分類が可能だそうです。

 

2章と3章では、ここ5年で種類が増えて入手しやすくなったカップ酒が主役です。カップ酒というと安かろう悪かろう……なイメージがありますが、最近では日本酒党も納得する通好みの銘酒が続々とカップ酒になっているとか。300円台で手軽に味比べができるならこんないい話はありません。

 

具体的に取り上げられているカップ酒は全13種類。同じエリアの吟醸系と非吟醸系を飲み比べるという形式で進んでいきます。たとえば、山形県の「上喜元 純米吟醸」と岩手県の「南部美人 特別純米」のカップ酒を飲み比べ。

 

「上喜元」は食べごろを迎えたバナナのような香りがして、繊細な風味。山形県の名産である桃やさくらんぼなど、水分量が多いフルーツとの相性もピッタリとのこと!

 

一方「南部美人」は、最初にヨーグルトっぽい香りがあり、口に含むと乳酸の酸味と旨味、お米の甘味が広がる純米酒。チーカマやカキのバターソテーがおつまみとして提案されています。酒蔵がある地元の名産品との相性が書かれているのも参考になります。

 

カップ酒以外に、軽視されがちな醸造アルコールを添加した日本酒、いわゆる「アル添酒」にも光が当てられています。ワインでいうとシェリーやポートワインなどもアル添酒。そのメリットは品質が安定し、劣化しにくいぶん、造り手のイメージがストレートに伝わることだとか。

 

アル添酒では福岡県の非吟醸系「庭のうぐいす おうから」が気になりました。玄米のような香りで麦を思わせる香ばしい印象もあり、パワフルながらすっきり。初心者でも楽しめる辛口に仕上がっているそうです。博多の一口餃子が合わせる料理として挙げられていて、ビールではなく日本酒と餃子のハーモニーをぜひ体験したくなりました。

 

そのほか、今注目の伝統的な製法で作る「生酛・山廃」、近年台頭してきたスパークリング日本酒などから全29銘柄を掲載。難しい分類や理屈にはページを割かず、カジュアルで親しみやすいのが本書の良さ。「獺祭」のスパークリング酒と五目チャーハン、「飛良泉」の山廃とタルトタタンなど、提案されている料理も意外性のあるものが多く、日本酒のポテンシャルを感じました。テイスティングの表現も直感的で、実際に自分でも試してみたくなる“そそられる”日本酒ガイドです。

 

【書籍紹介】

『日本酒テイスティング カップ酒の逆襲編』

著者:北原康行
発行:日経BP

カップ酒、スパークリング、生酛・山廃、アル添酒、熟成酒…どんな日本酒も、ラベルにある「たった2つの情報」で風味がざっくり想像できる。きき酒世界一に輝いたソムリエが29種をテイスティングしつつ、味の傾向を見極めるヒントから飲み方、料理との合わせ方まで紹介します。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

削ればハマる!魅惑の木工機械=木工旋盤のための本格ガイド『木工旋盤の教科書』が10月15日に発売

株式会社ワン・パブリッシング(東京都台東区)は、和田賢治・著の「木工旋盤の教科書」(発行元:株式会社キャンプ)が、明日の10月15日に発売!

 

◆削るだけで器や日用品が作れる木工旋盤のためのガイドブック

木工旋盤はこれまでハイアマチュア向けのものと思われていましたが、体験できる教室やシェア工房が増え、近年、自分で使うものは自分で作りたいというDIY好きを中心に人気が高まっています。刃物をあてるだけで軽快にスルスルと木を削ることができ、そのリズミカルな心地よさは一度体験するだけでハマってしまうほど。本書はそんな木工旋盤、待望のガイドブックです。

 

 

著者は岐阜県岐阜市でシェア工房「ツバキラボ」を主宰する和田賢治氏。木工の世界に飛び込み、木工旋盤と出会い、惚れ込み、いつしか指導する側になっていた、そんな著者の経験をもとに、道具のそろえ方、削り方の基本、刃物の研ぎ方はもちろんのこと塗装までをていねいに解説しています。

 

 

作例はパン皿、コップ、丸い重箱などひとそろえ作りたくなる器と日用品、12アイテムを収録。経験者はもちろん初心者も楽しみながら作れます。

 

 

【書籍概要】

著者:和田賢治

定価:3300円(税込)

発売日:2021年10月15日

判型:AB版

自分の居場所がないと感じている人が『大家さんと僕』を今こそ読むべき理由

大家さんと僕』(矢部太郎・著/新潮社・刊)は、『小説新潮』誌上で連載されていた漫画です。連載終了後、単行本として出版されました。著者は矢部太郎。お笑いコンビ、カラテカのボケを担当する芸人です。彼は『大家さんと僕』の後、『大家さんと僕 これから』や『ぼくのお父さん』などの話題作を次々と発表しましたので、ご存じの方も多いでしょう。

 

二世帯住宅の間借り人

数年前、『大家さんと僕』を読み、なんて面白いのだろうと思いました。そのときは、ただ笑っていただけだったのですが、今年になって、何度も読み返したくなりました。コロナ禍のなか、ステイホームを続けているせいでしょうか。心に沁みてきて、読まずにはいられなかったのです。

 

著者は、出演したテレビ番組が原因で、住んでいたマンションを引っ越すことになります。急いで住むところを探すため、不動産屋さんに行くと、一つの物件を紹介してくれました。それは、新宿区のはずれにある木造2階建ての一軒家でした。一階に大家さんが住んでいます。最近では珍しいかもしれませんが、二世帯住宅になっていて、お風呂やトイレも別々です。出入りは外にある階段を利用する完全な別居形式で、アパートの部屋と同じです。

 

ただし、不動産屋さんは、一つ頼み事があると言いました。何だろうと思ったら、それは、「大家さん、かなりのご高齢なので、何かあったらよろしくお願いします」とのことでした。「そう言われても」と戸惑いながらも、部屋を借りた著者は、早速、大家さんに挨拶に行きます。彼女はとても小柄で、そして、上品な方でした。間借り人となった著者に向かい、「ごきげんよう」と、挨拶してくれます。それは著者が初めて出会った「ごきんようと挨拶する方」でした。

 

86歳の大家さんと39歳の僕の生活はこうして始まります。同じ屋根の下に親切な大家さんがいる、これだけなら、ほんわかとした幸福な毎日に思えます。けれども、年があまりにも離れていますし、住んでいる世界も違う二人です。最初のうちは驚きの連続でした。大家さんはとても親切で、雨が降ると洗濯物が濡れますよと知らせてくれます。夜、帰宅すると、「おかえりなさい」と電話があります。時には、外出中に雨が降ってきたからと、洗濯物を取り込み部屋の中にたたんでおいたりします。それまで気ままな一人暮らしを楽しんでいただけに、それはちょっと窮屈な好意だったかもしれません。おまけに、大家さんの行動は矢部にとっては驚きの連続で、異次元の世界と向かい合うような毎日となりました。

 

終戦が基準?

はじめは、いちいちびっくりしていた矢部でしたが、次第に、大家さんに惹かれていきます。老いても、きちんとした生活を崩さないその生活ぶりを見事だと感じます。加えて、上品な物腰の裏に、とてつもない孤独や老いていくことへの恐怖があることも知りました。彼女は甥ごさんたちに支えられながら静かに暮らしていましたが、同時にやがて来る死への不安と戦っていたのです。それは矢部が今まで気づかずにいたことばかりで、新鮮な驚きとなりました。

 

おまけに、大家さんの話は芸人の矢部を驚愕させるほど面白いのです。たとえば、好きな人の話になると、大家さんは「マッカーサー元帥なんか素敵だったわ」などとおっしゃいます。すべての基本が第二次世界大戦なのです。私は実家の母を思い出しました。母の憧れの人も「マッカサー元帥」で、口癖は「戦争がなければね」でした。母は既に亡くなりましたが、生きていたら大家さんのように「終戦を基準とする人生」を今も貫いていたような気がしてなりません。

 

矢部は芸人としての本能ゆえか、大家さんを笑わせようと努力します。自分が仕事で馬鹿にされたことも隠さず、何とか笑ってもらおうとします。ところが、すべてがすべってしまい、失敗ばかりです。大家さんの笑いのツボがどこにあるのか、さっぱりわからないのです。そんな矢部の気持ちも知らず、大家さんはテレビのバラエティ番組で、矢部がプロレスラーに放り投げられたりするのを見てひどく心を痛め、「ひどい人よね」と憤慨し、「元気出して」とお米をプレゼントしてくれます。二人のこうしたやりとりは、バラエティより面白く、笑いを取るとはどういうことか考えこんでしまうほどです。わき上がってくるような不思議なおかしさ、それが『大家さんと僕』の一番の魅力です。

 

大家さんと僕、その絶妙な距離感

『大家さんと僕』は全編を通じて面白いのですが、私が一番、笑ったのは、大家さんの家に灯りが灯らなかったときのエピソードです。いつもは明るい家が真っ暗で、夕刊も郵便受けにささったまま……。心配で眠れないまま朝を迎えた矢部は、不動産屋さんに連絡します。中で倒れていたらどうしようと思ったのです。どうしても確認しなくてはと、いざ、突入となったとき、背後から大家さんの声が響きます。「ごきげんよう。どうされました?」と。何でも友達が上京して、楽しくて話がはずみ、そのままホテルに泊まってしまったというのです。矢部にとって「それは僕が知る限り最高齢の朝帰りでした」となります。思わず、アハハハと笑ってしまうでしょう?

 

そうかと思うと、胸がじーんとして言葉も出ないときもあります。矢部の出演する舞台を大家さんが観に来てくれたときのことです。矢部はまたもうまくいかなかったのですが、大家さんは、「若いころに観た『マクベス』を思い起こしました」という感想を残して帰っていきます。一緒に舞台に出ていた芸人たちは、矢部と同様、『マクベス』を観たことはなかったのにもかかわらず、なんだか誇らしい気持ちになったというのです。大家さんならではの感想だったのではないでしょうか。

 

笑ったり、涙ぐみそうになったりと、『大家さんと僕』は私の感情を揺らし続けました。そして、どこかでほっとしている自分を発見するのです。老いや死や、うまくいかない仕事などすべてを受け入れて生きていかなくてはと思ったりもしました。コロナ禍のもと、何度も読み返していると、ステイホームを幸福な毎日にしなければと思うようになります。ステイホームを「家にいなければいけない縛り」と考えずに、「家での生活を楽しむためのチャンス」と考えたいと思います。

 

大家さんは芸人に向いていないのではと悩む矢部に、自信を与え、居場所を作ってくれました。矢部は矢部で、大家さんの庭掃除を手伝ったり、ご飯を一緒に食べたりしながら、本来は家主である大家さんに、快適な居場所を作り、寂しさを払拭させる元気を与えたのではないでしょうか。

 

ステイホームで家にいても、自分の居場所がないと感じる人も多いでしょう。そんなとき『大家さんと僕』を読むことによって、孤独を癒やし、自分の居場所を作ることができるような気がします。大家さんと矢部太郎は、性別も職業も生き方もまったく異なります。もちろん、血のつながりもありません。そんな二人でもお互いを思いやり、適度な距離を保つことによって、快適な居場所を確保していたのです。コロナ禍による不自由な状態がいつまで続くのか、私にはわかりません。けれども、『大家さんと僕』を読んだことで、私も自分の居場所を確保し、新しい幸福を創り出したいと改めて思うようになりました。

 

【書籍紹介】

大家さんと僕

著者:矢部太郎
発行:新潮社

一風変わった大家さんとの“二人暮らし”の日々は、ほっこり度100%! 1階には大家のおばあさん、2階にはトホホな芸人の僕。挨拶は「ごきげんよう」、好きなタイプはマッカーサー元帥(渋い!)、牛丼もハンバーガーも食べたことがなく、僕を俳優と勘違いしている……。一緒に旅行するほど仲良くなった大家さんとの“二人暮らし”がずっと続けばいい、そう思っていたーー。泣き笑い、奇跡の実話漫画。

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結成11周年のNMB48が表紙巻頭に登場! 新たなグラビア物語!「 BOMB11月号」

安部若菜・上西怜・梅山恋和・小嶋花梨・加藤夕夏・川上千尋・李始燕……NMB48の“今”は「ボム11月号」にある!

 

【本書のご購入はコチラ】
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表紙を飾るのは、安部若菜・上西怜の迫力水着グラビア!

 

BOMB11月号は11月3日(水・祝)に大阪城ホールで11周年記念ライブを開催するNMB48が表紙巻頭に登場! 1期生が全員卒業し、第二章へと突入するタイミング。ナンバ伝統のグラビア系譜を継ぐ新世代、安部若菜・上西怜の2人は、爆発的セクシーグラビアで勝負。ヌーディーなチューブトップ水着ではバスタブでちゃぷちゃぷ。美しいボディラインにも注目です。水色と紫のレーシーなビキニでは挑発的な視線も。思い切り元気な赤とオレンジの水着では健康的な2人の笑顔に癒されます。グラビア新世代、新境地への挑戦です。

 

第二章に突入したNMB48のエースやキャプテンとして、活躍が期待されている梅山恋和と小嶋花梨。同じ5期生ながら今回がグラビア初共演。ボム定番のタンクトップ短パンコーデも、とってもヘルシー。2人の爽やかな笑顔から、新しい大阪の物語は加速する!

 

3期生、4期生の加藤夕夏と川上千尋も水着グラビアを! 可憐なコットン素材のレースビキニ、大人の雰囲気いっぱいのブラックのチューブトップ水着。そしていい女感いっぱいの彼シャツと2人の魅力が満載。

 

韓国からやって来た7.5期生、李始燕(イ・シヨン)も大阪城で念願の初グラビア! 元気な制服姿はもちろん、しっとりとした上下ホワイトのレースのキャミと短パンも! たこ焼き食べてます!

 

綴じ込み付録

NMB48 大判光沢フォトメッセージカード
安部若菜・上西怜・梅山恋和・小嶋花梨・加藤夕夏・川上千尋

 

別冊付録

両面超BIGポスター
安部若菜・上西怜

 

TSUTAYA限定版も!

TSUTAYA限定版表紙:梅山恋和・小嶋花梨(NMB48)

 

TSUTAYA限定版はポスターもオリジナル

●別冊付録
両面超BIGポスター
梅山恋和・小嶋花梨/安部若菜・上西怜

[商品概要]

ボム11月号

著者:ボム編集部
定価:1098円 (税込)
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・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1229885919

総力特集は、異星人と秘密結社の「シン・人類史」! 月刊「ムー」11月号

世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリー・マガジン、月刊「ムー」11月号が発売中。

 

 

 総力特集 異星人と秘密結社の「シン・人類史」

はるか遠い神話と伝説の時代、人類が築き上げようとし、崩壊したバベルの塔は今、再び形を変えて甦ろうとしている。これは人類史において必然なことだった。その理由とは何か。創造神が地球に降臨した時代より、人類を監視する秘密結社へと連綿と受け継がれた意志。そこに秘められた真であり、新である「シン・人類史」を読み解く!!

 

 

特別企画 最新理論 アメリカ海軍とUFOの知られざる秘密戦争

アメリカ海軍とUFOの関わりは70年以上に及ぶ。今年6月、アメリカ国防総省が発表した3本のUFO映像が物語るように、未知との遭遇においては、監視、調査、追跡が行われてきた。だが、その裏で、ミサイルを発射するという戦闘状態になっていたケースも少なくない!!  知られざるアメリカ海軍の対UFO戦争を暴露する!!

 

[商品概要]

月刊ムー 2021年11月号

著者:ムー編集部
定価:950円 (税込)

【本書のご購入はコチラ】
・Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B09GRLCLK8/
・セブンネット https://7net.omni7.jp/detail/1229889377

どんどん試したくなる! お店でもお家でも楽しめる『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』

日本人のイタリア、サイゼリヤ!ファミレスとしての魅力も残しつつ、本格イタリアンとも称されるなど、ここ数年「サイゼリヤやばい!」と美味しさを再認識する人が急増していますよね。『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』(味変レシピ編集部・編/扶桑社・刊)には、そんな美味しいサイゼリヤをさらに美味しく楽しめるアレンジレシピが54品掲載されています。この本はサイゼリヤ全面協力のもとレシピが監修されています。オフィシャルブックといっても良いくらいサイゼファンにはたまらない一冊ですよ!

 

コロナ禍でダメージを受けている飲食店も多いですが、私も料理はもちろん、壁画風なアートや他の飲食店ではあまり聞かない独特なBGMも大好きなので、サイゼリヤを応援したい気持ちと共にこちらの本をご紹介したいと思います。

 

行ったら絶対頼んじゃう! 「小エビのサラダ」アレンジ

そのまま食べても美味しいサイゼリヤのメニューですが、調味料エリアにあるものをちょい足しするだけで、さらに美味しく変身してくれます。人気の「小エビのサラダ」(350円・税込)のアレンジをご紹介しましょう。

 

【作り方】

1.小エビのサラダは通常のサイゼリヤドレッシングありで注文する。

2.ホットソースを少量かけ、絡めながら食べる。

(『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』より引用)

 

いつもそのままで食べていたので「ホットソース」を使ったことがなかったのですが、これが……うまいうまいっ! 途中で味変させたい時にもぴったりでした。

 

ちなみに、サイゼリヤではちょい足しした「ホットソース」(税込・500円)や小エビのサラダに使われているオレンジ色のサイゼリヤドレッシング(税込・500円)も購入できます。もちろん買ってしまった私……(笑)。これでいつでも「おうちdeサイゼ」ができちゃいますな♪

 

『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』にはもうひとつ「セロリのピクルス」と合わせたレシピも紹介されているのですが、今季のメニューからは消えていました……。いつまでもあると思うな、セロリのピクルス! 切実に復活を願います!!

 

ドリンクバーでもMake Your Favorite!

「おか〜さーん! ジュース、混ぜちゃった〜」とはしゃぐ子どもをよく見ますが(笑)、美味しく作れる大人なアレンジドリンクも紹介されています。お肉料理も美味しいサイゼリヤでさっぱりとした食中ドリンクを楽しみたいなら「ティアモグレープ」がおすすめです。

グラスに氷を入れ、トニックウォーター、炭酸水、山ぶどうを1:1:1で注ぎ、ポーションレモンを1個加えて。レモンの酸味とトニックウォーターの苦味で、ノンアルコールドリンクでありながら赤ワインのように料理に寄り添ってくれます。

(『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』より引用)

 

ドリンクバー(単品 300円・税込)なので、自分好みの割合に変更できるのもいいですよね♪ 私はレモン2個入れて少し酸っぱい感じにしてみました。いつもコーヒーかパックのお茶ばかり飲んでいるので、トニックウォーターも初めて飲んだのですが、そのままでもさっぱりとしていて美味しかった! 自分だけのオリジナルドリンク楽しんじゃいましょう♪

 

美味しすぎて衝撃がエグい! ティラミス&エスプレッソ

デザートも安くて美味しいサイゼリヤ。イチオシなのが、ティラミス! 300円とは思えないクオリティで、本格的な味わいで目を閉じればそこはイタ〜リア!! まだ食べたことがない人はぜひ、そのまま召し上がってみてください。

 

そんなティラミスですが、アフォガードにするとめちゃくちゃ美味しいんです〜!!

 

マスカルポーネチーズの香りを生かした本格的な味わいのティラミスクラシコ。エスプレッソをお供にして食べるのはもちろん、ティラミスの上からかけるのもオススメ。よりほろ苦さを楽しむことができ、さっぱりとした味わいになります。

(『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』より引用)

 

エスプレッソの量はお好みですが、ドリンクバーのカップに注がれた3分の1くらいの量がちょうど良いです(全部かけるとびしゃびしゃになるので注意!)。個人的にはそのままよりもアフォガードにしたほうが好みなので、今後はドリンクバーを頼んだら、セットでティラミスも頼もうと心に誓いました。

 

他にも、アレンジパスタやランチでついてくるスープのちょい足し、お家でも楽しめるアレンジピザまで情報が満載! またサイゼリヤ側もメニューがリニューアルされているのにも注目しておきましょう。季節限定スープの「たまねぎのズッパ」(税込・300円)は、最高です。ランチにディナーに、テイクアウトで! コロナ禍で楽しめる幅が増えたサイゼリヤを『サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん』でもっと楽しんじゃいましょう。

 

【書籍紹介】

サイゼリヤで神アレンジ!激ウマかけ算ごはん

著者:味変レシピ編集部(編)
刊行:扶桑社

本書では、サイゼリヤ全面協力のもと、グランドメニューからテイクアウトまで2つ以上のメニューを組み合わせた新感覚のサイゼリヤレシピ54品を収録! 例えば、アーリオ・オーリオと熟成ミラノサラミをかけ合わせ、オリーブオイルと粉チーズを足せば、「とろける極上サラミのアーリオ・オーリオ」というアレンジメニューに大変身。

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1話5分で読了できる最高のエンタメがここにある!——『余命3000文字』

余命3000文字』(村崎羯諦・著/小学館・刊)。題名に惹かれてこの本を手にし、ページを開いたら、すごくおもしかった! すき間時間の5~6分で読めてしまう短編が26篇収録されているが、どの話も冗談かと思うような設定と展開にまず驚く。が、しかし、そこに感動があり、笑ったり、泣いたりでき、そして本当に大切なことを教えてくれる、とても不思議な1冊なのだ。

 

著者の村崎さんは、小説投稿サイト「小説家になろう」にて短編小説の投稿を中心に活動し、同サイトでは人気ナンバーワンだという。サイトに掲載された作品に加え、書き下ろしも加えた本書は20万部を超える大ヒットとなっている。

きっちり3000文字の小説

「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」 医師からある日、文字数で余命を宣告された男の残りの人生を描いた、表題にもなっている短編「余命3000文字」の原稿は、本当に3000文字きっかりで書かれているそうだ。これには著者も編集者も苦労したに違いない。読者はスラスラと読んでしまうだけで文字数を数えたりはしないだろうが、3000文字ピッタリに収めることにこだわった著者は本当にスゴイ! と思う。

 

さて、物語に話を戻そう。できる限り同じ毎日を過ごし、当たり障りのない人生を送れば3000文字もしないうちに寿命を迎えると医師からの助言に従い、男は仕事の往復以外は人との交流も最低限にし、家にこもる毎日を過ごしていた。

 

一年が経ち、二年が経ち、五年が経った。(中略)今日はちょうど俺の三十五歳の誕生日。次に俺は現時点の文字数を確認する。ここまでで約900文字。このままのペースでいけば、十分天寿を全うできるだけの文字数だった。

(『余命3000文字』から引用)

 

ところが近所で火災が発生、男は人助けに走るべきか否かで悩む。ネタバレになってしまうのでこの先は書けないが、人生の意味、あるいは本当の幸せとはなにかを考えさせられる、とてもいいストーリーだった。

 

興味津々のタイトル続々

ここで本書の目次(26のタイトル)を紹介しておこう。著者の発想の豊かさは見事で、繰り返し読みたくなる話ばかりなのだ。

 

余命3000文字

彼氏がサバ缶になった

心の洗濯屋さん

焼き殺せよ、恋心

私は漢字が書けない

笑う橋

世界がそれを望んでいる

食べログ1.8のラーメン屋

終末のそれから

それはミミズクのせいだよ

骸骨倶楽部

おはよう、ジョン・レノン

向日葵が聴こえる

パンクシュタット・スウィートオリオン・ハニーハニー

幼馴染証明書

精神年齢10歳児

出産拒否

不倫と花火

流れ星のお仕事

死人のお世話

何だかんだ銀座

大誤算

彼氏スイッチ

顔に書いてある

←の先

 

童話を読んでいる気分になる2篇

26篇の中で印象に残るものは読み手の好みでさまざまだと思うが、私は童話のようなふたつの物語がとても気に入った。

 

ひとつめは「心の洗濯屋さん」。ムーニ国という王国に住むパニチャという小さな女の子が主人公で、パパとママは心の洗濯屋さんをしてつつましく暮らしていた。悲しみで汚れたお客さんの心をいい香りがする手作りの石けんを使って洗ってあげると、心は生まれたてのようにきれいなり、お客の表情は晴れやかになり、皆元気になって帰っていくのだ。

 

ところがある日、偉い役人が竹かごに入れられた汚れてもいない心をいくつか持って現れ、高い報酬と引き換えに腐った卵のような臭いがする石けんでその心を洗ってほしいと頼まれたことからパニチャ一家の生活は激変することなる。役人が持ってくる仕事で大金持ちになるのだが、毎日を楽しく過ごすことができなくなってしまうという洗脳をテーマにした物語だ。

 

もうひとつは「流れ星のお仕事」。お父さんが毎晩、大気圏に飛び込んで、流れ星になってみんなの願いを叶えるという仕事に就いている女の子の心情を綴ったもの。お父さんの肌は仕事のせいで真っ黒に焦げていて、他の人とは見た目が違うため、それをからかう子どもたちがいる。少女は心ない言葉に傷つくが、それでも父親を誇りに思い、夜空を見上げながら感謝をするというショートストーリーには、ホッと心が温まる。

 

奇想天外な発想に驚く物語

「出産拒否」と「大誤算」もとんでもなくおもしろかった。

 

「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」 定期健診で産婦人科医院を訪れた私に、担当医の柳先生が顔をほころばせながらそう言った。

(『余命3000文字』から引用)

 

妊娠6年? 驚きの数字ではじまる「出産拒否」は母体で健康に育つ男の子の話だ。話せる胎児は「僕はまだ生まれたくない」ときっぱり。その理由は生まれ出る世界がそれほど素晴らしくないとわかっているからだ、と。ところが、ある日、すでにこの世に生まれ出ている同い年のカワイイ女の子に病院の待合室で話しかけられ、それに対する母親の考えを聞いて胎児はまさかの選択をするという話だ。

 

「大誤算」は「余命3000文字」とは対照的で、寿命がどんどん延びたら人生はどうなるのか? をテーマにした作品だ。

 

私の夫の柳田孝雄は来月で八十五歳になる。(中略)しかし、人間はいつか老いて死ぬ。(中略)その日が来るまで、私は不平不満を一切漏らさず献身的な妻を演じ、気が向いたときに柳田のお相手をする。それだけでいい。そうしていればいずれ、私のもとに自由と柳田家の莫大な富が転がり込んでくる。

(『余命3000文字』から引用)

 

ところが、人生はままならない。物語は日記形式で進むが、夫はまず100歳の誕生日を迎え、やがて長寿でギネス世界記録を更新。その後も生き続け、なんと柳田は200歳も超えてしまう。妻の目論見は外れたものの、彼女も100歳、120歳と年を重ねていく。生きる意味を考えさせられるいい話だった。

 

この他の物語も、アイディアに溢れていて、どれも読み応え十分。文庫本なのでポケットに入れておけば、通勤の電車の中、あるいは昼休みにもさっと取り出し1篇ずつ読める。すき間時間を充実させてくれる1冊となるだろう。

 

【書籍紹介】

余命3000文字

著者:村崎羯諦
発行:小学館

「大変申し上げにくいのですが、あなたの余命はあと3000文字きっかりです」ある日、医者から文字数で余命を宣告された男に待ち受ける数奇な運命とはー?(「余命3000文字」)。「妊娠六年目にもなると色々と生活が大変でしょう」母のお腹の中で引きこもり、ちっとも産まれてこようとしない胎児が選んだまさかの選択とはー?(「出産拒否」)。「小説家になろう」発、年間純文学「文芸」ランキング第一位獲得作品の書籍化。朝読、通勤、就寝前、すき間読書を彩る作品集。泣き、笑い、そしてやってくるどんでん返し。書き下ろしを含む二十六編を収録!

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イルカ研究に捧げた人生。実験の相棒・イルカのナックが示した感動の行動とは?~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。みなさんの心に最初にイルカの存在が強く刻まれたのはいつですか? 水族館のイルカショー、アニメ『海のトリトン』、クリスチャン・ラッセンの絵画……という人もいるかもしれません。Excelのヘルプとして表示されるイルカが消えなくてイライラしたのが思い出、なんてケースもあったりして(笑)。

 

 

あなたのイルカのイメージは?

私のイルカとの出会いは、『2001年宇宙の旅』のアーサー・C・クラークによるジュヴナイルSF『イルカの島』。学校の図書室でふと手に取って読んだ本で、漂流する主人公の少年を助けるイルカたちの頭の良さと愛らしさに心を奪われました。

今回の新書イルカと心は通じるか 海獣学者の孤軍奮闘記』(村山 司・著/新潮新書)は、イルカを長年研究している海獣学者によるイルカ本。イルカと人間の絆が見えてきます。

 

著者の村山 司さんは東海大学海洋学部教授で、専門はイルカの視覚能力や認知機能の研究。高校生のときに『イルカの日』というアメリカの映画を何気なくテレビで見て衝撃を受け、「イルカと話したい」という夢を抱いて研究者を志したそうです。しかし、当時はイルカの研究に今以上に理解がなく、変わり者扱いされながら独学で30年以上この道を歩んできました。そんな村山さんの夢が、実現間近になってきているのです。

 

イルカの賢さの秘密に迫る

まず1章では、脳の仕組みや「エコーロケーション」などのイルカの生態に迫ります。知らなかったことも多く、イルカの知能の高さには驚くばかり。イルカはそもそも脳が大きく、神経細胞の数も約100~200億個と、ヒトの約140億個と比べても引けを取りません。

 

脳が大きくなった理由は、超音波を発して跳ね返ってきた音で物の大きさ、形、材質、距離などを認識する能力「エコーロケーション」を獲得したから。これによって行動が多様になり、大脳が発達していった……とされています。イルカは人間が示す複雑な文章をも理解し、群れを作り、同盟を結んだり、乳母役を引き受けるイルカがいたりと、社会性も人間並みだとか。

 

イルカと心がつながった瞬間

本書の後半では、著者の村山さんの具体的な研究内容が紹介されていきます。実は村山さんは極度に船に弱く、遊覧船の映像を見るだけでも船酔いしてしまう体質……。そこで、水族館のイルカに対して行動実験をするという手法を長年続けています。

 

たとえばイルカに三角形と円形のパネルを見せ、三角形を識別して選んでもらうといったもの。しかも「カニッツァの三角形」というあるはずのない三角形が見える錯視図像も、人間と同様にイルカも錯覚して三角形と認識するそうです。イルカと人間が把握している世界は近いのかもしれません。

 

現在はイルカにことばを教える研究にも取り組んでおり、30年以上のパートナーである鴨川シーワールドのシロイルカ・ナックは物を示す記号を覚え、さらに鳴き音でその物を表すことができるようになったとか。そしてとうとうナックは村山さんの名前を……!

 

イルカの生態が詳しく分かるのはもちろんですが、30年以上イルカを追いかけてきた研究者のイルカ愛や、誰も手がけていなかった分野を究めることの苦労と喜びも明かされていて、村山さんにも親近感が湧きました。

 

イルカをテーマにした生物本を超えて、研究者と研究対象の絆が見えてくるドキュメンタリーともいえる本書。イルカのお茶目さも伝わってきて、胸が温かくなります。

 

【書籍紹介】

イルカと心は通じるか―海獣学者の孤軍奮闘記―

著者:村山司
発行:新潮社

イルカと話したい。しかし、著者には大きな弱点があった。大小かまわず船がダメ、泡を吹き、気絶したことも。これでは大海のイルカは追えない。ならば、「陸」のイルカの知能に迫ろう。水族館に通い続ける日々が始まった。ことばを教えるには、音か視覚か? シャチが実験に飽きた? そしてついに、シロイルカが「私」の名を呼んだ!? ――孤軍奮闘の三十余年、変わり者扱いされながらたどりついた「夢のはじまり」を一挙公開。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。