【ホントは怖いSNS】友だちには言えないけど、聞いてほしい。SNSで悩み相談する10代のホンネ 人間関係

LINEやTwitterなどを使った「いじめ相談」が広がっています。背景には何があるのでしょうか。今回はSNSでのいじめ相談の意義、現状、課題について、考えていきましょう。

■相談は深夜・休日も対応すべき

文部科学省は2017年度補正予算案に、SNSを使ったいじめ相談事業の導入費として、2億円を盛り込みました。全国から参加自治体を募り、すでに事業をはじめています。SNS相談を請け負う団体は「特定非営利活動法人BONDプロジェクト」「特定非営利活動法人自殺対策支援センターライフリンク」など、18年3月26日時点で13に上ります。

 

10代のコミュニケーションツールは主にLINEとTwitter。相談機関の多くは、LINEやTwitterの公式アカウントを用意し、対応にあたっています。

 

受付時間はどうなっているのでしょうか。導入前に実施された有識者会議では、「児童・生徒が相談しやすい平日の17時から22時頃、児童・生徒の気持ちが落ち込みやすい長期休暇明け前や日曜日に相談を受け付けることが考えられる」とまとめられていました。ただ実際、毎日24時まで相談を受け付けている団体もあり、10代のSNS利用実態に合わせて、受付体制を整えているようです。

 

10代がSNSを長く利用する時間帯は放課後から深夜まで。土日祝日は平日より長くなる傾向にあります。長期休暇中に問題が起きることも多く、休日含め、深夜まで対応するのが望ましいと考えられます。

 

■緊張して電話を掛けられない子どもたち

前述のとおり、10代のコミュニケーション手段はSNSが中心になっています。メールはほとんど使わないため、アドレスもろくろく覚えていません。通話も、LINEの無料通話機能で済ませています。そのため、電話を使ったことがない子が多く、「緊張して知らない人に掛けられない」と言います。

 

ところが、いじめ相談を受け付ける手段はこれまで電話かメールに限られていました。どちらも10代がほとんど使わないツールで、聞くところによると、相談件数も年々減り続けていたようです。これでやっと、実態に即した受け入れ態勢が整ってきたというわけです。

 

LINEアカウントをビジネス用で作った企業の多くが、「これまでより問い合わせが増えた」と回答しています。LINEは送る側の心理的抵抗がとても低く、電話やメールに比べて気軽に連絡しやすい。SNSで相談を受け付けるのは実に理にかなっているのです。

 

■「本垢」「裏垢」「趣味垢」「闇垢」

文部科学省はもともと、18年度からの事業開始を予定していました。しかし、座間市の9遺体事件でSNSが悪用されたことから、開始のタイミングを早めました。デジタルアーツの「未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査」(2018年3月)によると、裏アカウントの所有率は子ども全体の39.6%、女子高生だと80.4%が「ある」と答えています。理由のトップは「誰にも知られたくない感情が言えるから」(35.9%)でした。つまり、リアルの友人には言えない本心をSNSでこっそりつぶやく子が少なくないのです。

 

今の10代は周囲に気を遣い、クラスの友だちに公開する「本垢(アカウント)」、仲がよい友だちだけに公開する「裏垢」、趣味の情報をやり取りする「趣味垢」、誰ともつながらずネガティブなことを投稿する「闇垢」を使い分けています。この調査の「裏アカウント」とは、ここでいう「闇垢」です。

 

友だちに言えない悩みを誰かに聞いてほしい、相談に乗ってほしいという10代の心理につけ込んだ悪い大人が、SNSで子どもに接触しています。見知らぬ人ではなく、きちんとしたところに相談してもらおう――。そういう目的で用意されたのが、相談機関のSNSアカウントというわけです。

 

とても意義深いものですが、開始間もないので、各アカウントの友だち数はまだ数百あまり。今後、このような相談機関の存在と使い方の情報を、必要としている子たちに届けることが何よりも大切です。

 

【著者プロフィール】

高橋暁子

元小学校教員。Webの編集者などを経て独立、現職。
書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)など著作多数。SNSやスマホの安心安全利用等をテーマとして、テレビ、雑誌、新聞、ラジオ等のメディア出演経験も多い。