元手なくても低学歴でも、お金持ちになる方法は?−『1年で億り人になる』

株式投資を始めてからもうすぐ4年になる。ただ銀行口座に置いておくよりも、お金との関係性が積極的になると感じたからだ。

筆者はスイングトレード派です

でも、優良株を買ってずっと持ち続けるだけの長期保有という王道的な方法はちょっと性格的に合わない。かと言って、毎日チャートを何時間も見続けなければならないデイトレードはライフスタイルに合わない。そこで筆者が選んだのが、2~3日から数週間で売買を完結するスイングトレードという方法だ。

 

奥さんと一緒に始めたのでお互いに情報交換しながら、それなりに利益を出した時期もある。そもそもの目的が「1週間分の晩御飯のおかず代」を稼ぎ出すというレベルだったので、プレッシャーは一切なかった。入り口としては正しかったと思う。

推し感覚銘柄

筆者は、銘柄を“推し”の感覚で選ぶことにしている。大好きな腕時計を作っている会社。昔通っていたジムの経営母体となっている会社。使い勝手のいいサイトを運営している会社など、業績とか経営実績も大切なのだが、皮膚感覚でのシンパシーが重要な要素になると思う。こういう気持があると、消極的で速すぎる損切り行動を防げる。ここまでは、筆者の体験的な話。

 

ここからは、ギアがぐっと上がった世界の話になる。“億り人”という言葉をご存知の方はたくさんいらっしゃると思う。投資によって資産が1億円を超えた人たちだ。しかし、実際に億り人と会ったことがあるという人はそういないのではないか。『1年で億り人になる』(戸塚真由子・著/サンマーク出版・刊)で語られる世界と筆者の投資体験を比較するなら、メジャーリーグの常勝チームと立ち上げたばかりの草野球チームくらいの差がある。ただ、たとえレベルが草野球であっても、いや、それだからこそメジャーのマインドを学ぶことが大切なはずだ。

 

億り人のマインドセットを作る

章立てを見てみよう。

 

第1章 常識から逸脱せよ
第2章 人も時間も容赦なく見極めろ
第3章 お金集めを躊躇するな
第4章 「現物」に投資せよ
第5章 詐欺師を警戒せよ
第6章 日常をリセットせよ
第7章 誰よりもお金持ちに憧れて

 

この本のエッセンスをひと言で表現するなら、「億り人のマインドセット設定法」ということになると思う。著者の戸塚氏によれば、“資産のケタが違うお金持ち”に共通する行動は以下のようになる。

 

・彼らは絶対に、「自分が年間いくら稼いでいるか」なんて公言しません。

・彼らは絶対に、「高そうで派手な服」なんて着ていません。

・彼らは絶対に、「ゼロからコツコツ稼ぐ」なんてことはしません。

・彼らは絶対に、「ギャンブルのようなバカな投資」なんてしません。

・彼らは絶対に、「銀行にただ定期預金する」なんてことはしません。

『1年で億り人になる』より引用

 

章立てを見直していただきたい。「お金持ちの思想」「お金持ちの習慣」「お金の集め方」「お金の増やし方」「お金の守り方」「お金持ちの日常」「私が億り人になるまで」という流れになっている。

 

破壊力抜群の現物投資

実際の方法論は、すでにまえがきで触れられる。

 

本書で紹介するのは現物投資という、シンプルにしてとんでもない破壊力を持った投資法です。「ケタ違いの資産家」の近くで、私は実際に見てきました。それは決して特別なものではありませんでした。けれど、ふつうに生活していたのでは、この「現物投資」には、決して乗り越えられない壁もあります。

『1年で億り人になる』より引用

 

戸塚氏は、これまで1700人もの人たちに対して資産構築の指導を行ってきた。大多数がFIREを達成し、3000万円の借金を解決した人、資金ゼロからお金のスペシャリストになって起業した人も含まれる。戸塚氏は言う。

 

ですから皆さんも、1年以内に資産を「億」にすることは、まったく夢なんかではありません。まずは頭のなかの「常識」や「先入観」という固定観念のリミッターを外すつもりで、読み進めてみてください。

『1年で億り人になる』より引用

 

やはり、本当に大切なのはマインドセットなのだ。

 

ドラスティックで非常識な方法でケタを外そう

地上波のビジネスニュース番組のコメンテーターの話を聞いていると、投資のコツはリスク回避であるということに集約される。しかしこの本で語られるアプローチは正反対。

 

私の出会ったケタ違いの資産家たちは、たいていが一般家庭の出身で低学歴です。だから親からの資産も、華やかなコネクションも持っていませんでした。しかし彼らは「お金を持っていない時代」から投資をしています。どうしたかと言うと、「お金を借りた」のです。借金をしても大きな元本を作り、ギャンブルではない、確実に負けない投資で増やすことが大切です。

『1年で億り人になる』より引用

 

王道の投資術では大きなリスクであるはずの借金に関しては、具体的な資金調達法も語られている。興味がある方、そしてここまで読んでいただいて疑念が生まれた方も、ぜひともご自分でご確認いただきたい。

 

1年で億り人になる。それを実現するには、ドラスティックで非常識な方法論が重要なのだ。

 

コロナ禍の3年間で学んだことがある。何かをしたいと思ったら、一切躊躇せずに直ちに行動に移すことだ。投資におけるメジャーリーガーのマインドセットを知ってしまった今、タガを外したい気持ちが抑えきれなくなっている。

 

【書籍紹介】

1年で億り人になる

著:  戸塚真由子
発行:サンマーク出版

1700名が実践して、続々と「億り人」が誕生している投資法がある。それは大富豪や「ケタ違いの投資家」の間だけで伝えられてきたもので【現物投資】と呼ばれる破壊力バツグンの投資法だ。著者は、資産構築コンサルタントとしてカードローンで借金3000万円を背負った人など、さまざまな生徒を「億り人」にしてFIREを達成させてきた人物。世界中の大富豪とも交流を持ち、著者自らも、「現物投資」を始めてからわずか4か月でFIRE達成。その極意を日本で初めて公開する。お小遣い稼ぎではなく、ギャンブルでもない。本物のFIREを知りたいすべての人に、必読の書。

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「新NISA」「iDeCo」「ふるさと納税」、知っている人だけが得をする! 低金利のいま、すぐ始められる「お金をふやす・まもる」方法

「お金が貯まらない」

「物価は上昇しているのに給料は上がらず、家計が苦しい」

「住宅や教育にかかる資金が負担になっている」

「そろそろ老後の資金を考えないと……」

 

このようなお金の悩みは尽きません。特に40代前後になると、住宅購入や子どもの教育関連費などお金のかかるライフイベントが続きますし、そろそろ老後資金が心配になったりするものです。

 

しかし、そんなお金の不安とは裏腹に、実際に資産を増やす具体的な行動をとっている人は、意外なほど少ないのが現実です。なかには、毎月の家計の収支さえ把握していない人さえいます。

 

私はマネーセミナー講師として、これまで600回以上のセミナーに登壇し、3000世帯を超える個別相談を受けてきました。その中でよく聞くのが、こんな言葉です。

 

「もっと早く聞いていればよかった」

「なんでもっと早く始めなかったのだろう」

 

このように後悔する人が多いのも、“お金”ほど、効果的な貯め方・増やし方を知っている人と、知らない人とで圧倒的な差が生じるものはないからです。

 

意外と活用されていない「税金の優遇制度」

特に近年、相談を受けることが多いのが「NISA」「iDeCo(イデコ)」「ふるさと納税」の3つについてです。税金を納める人であれば、会社員、自営業者にかぎらず誰でもメリットを得られることから、私は「三大税制優遇制度」と呼んでいます。

『新NISA+iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』より

 

実際に活用していない人でも、なんとなく「お得そうだなぁ」というイメージをもっている人は少なくありませんが、そのほとんどの人がその制度の中身については理解していません。とりあえずNISAの口座は開設したけれど、そのままほったらかしになっている人も多くいるはずです。

 

すでに制度のメリットを知っている人からすれば「もったいない」状況といえますが、今からでも決して遅くはありません。かくいう私も、実は40歳で金融業界に入るまでは、お金の使い方、貯め方を知らない「スーパー浪費家」だったからです。あなたの意思次第で、お金の流れはいつでも変えることができます。

 

まずは手始めに「三大優遇制度」について、興味をもってみてはいかがでしょうか。何事も「知る」ことが第一歩となります。

 

2024年1月から「新NISA」がスタート

「NISA」については、2024年1月から新しい制度(新NISA)がスタートすることが決まり、関心をもつ人が増えています。

 

NISAの最大の魅力は、投資によって得た利益に対する税金がゼロになること。通常、利益を得たら所得税15.315%と住民税5%、合わせて20.315%を納める必要があります。この非課税の部分はそのままに、新NISAでは年間投資限度額が最大360万円に拡充されたり、非課税保有期間が無期限化されたりと、大幅に使い勝手のよい制度に生まれ変わります。

 

今は貯金として銀行に預けていても金利は雀の涙ほどしかつきませんから、住宅購入や子どもの教育費といったライフイベントのために、コツコツと積立投資を始める人が増えています。投資によって資産を増やすことを考えている人にとっては、新NISAは大きなメリットがあるといえます。

 

投資による資産運用に興味のある人は、まずNISAの口座を開設することから始めてみることをおすすめします。

 

3段階で税制優遇がある「iDeCo」

「iDeCo」は、いわゆる「確定拠出年金」のひとつです。確定拠出年金には、大きく分けて「企業型」と「個人型」がありますが、iDeCoは個人型の私的年金制度です。

 

年金制度なので、原則として積み立てたお金は60歳まで引き出せませんが、着実に老後資金を増やすことができます。

 

そして、iDeCoの見逃せないメリットが、「積立期間中」「運用期間中」「受取時」の3段階における税制優遇です。

 

なかでも、すぐにメリットを実感できるのが「積立期間中」で、積み立てた掛け金が全額所得控除の対象になり、毎年の所得税や住民税の負担が軽減されます。

 

自営業者やフリーランスの人はもちろん、会社員でも利用できる制度なので、老後資金に不安をもっている人にとって、iDeCoは検討する価値の高い制度です。

 

返礼品が楽しみ! 「ふるさと納税」

最後に「ふるさと納税」。これは、全国の自治体に寄付を行うことで、税金面のメリットを受けられる制度です。年間寄付額のうち2000円を超える部分について、所得税と住民税から控除されるんです。

 

また、寄付した代わりに自治体からもらえる「返礼品」が用意されていて、その地域の名産品である海産物や果物、肉などさまざまなものから選ぶのも、ふるさと納税の楽しみのひとつになっています。

 

税金を納めている人であれば誰でも気軽に利用できるので、新NISAやiDeCoなどの投資に抵抗を感じる人であれば、ふるさと納税から始めてもよいかもしれません。

 

大切なのは、まずは小さなことから始めてみることです。お金は放っておいても、勝手に増えることはありません。資産を確実に増やしている人は、お金や税金、投資などについて学んだ上で、自分が許容できる範囲のリスクをとりながら行動に移しています。

 

現在発売中の『新NISA+iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』(森本貴子著/ワン・パブリッシング)は、最初の一歩を踏み出すのに最適な一冊です。マンガと会話形式のスタイルをとっているので、初心者でもゼロから理解できます。

『新NISA+iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』より

 

人生の悩みや不安の多くはお金で解消できます。お金や税金のことを知ることは、きっとあなたの将来の不安を払拭する一助となってくれるはずです。まずは簡単な手続きで税制メリットを得ることから始めてみてはいかがですか?

 

【書籍紹介】

新NISA+iDeCo+ふるさと納税のはじめ方

著:森本貴子
発行:ワン・パブリッシング

先生+3人の登場人物で投資と節税の初歩を解説。登場人物は、ファイナンシャルプランナーのMORITAKA先生と、30歳独身・イマイチ、35歳既婚子持ち・イケテル、38歳独身フリーランス・のんびりの4名。それぞれの将来のライフイベントにあわせたマネープランを先生が提案・指導します。

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【プロフィール】


●森本貴子(もりもと・たかこ)

ファイナンシャルプランナー、証券外務員二種、相続診断士、終活診断士。会社員生活を経て23歳で単身渡米。PwCクーパースの役員秘書、アメリカ人弁護士秘書を経て、世界三大レースでもある米インディカー、仏ル・マン24時間優勝チームのマネジメントに従事。2008年外資系保険会社に入社。2014年から独立系FP会社であるGift Your Life株式会社に勤務。企業向けセミナーを含む600回以上のセミナーに登壇、個別相談件数3000世帯以上の実績を持つ。

ハーバード大卒芸人・パックンが教える「お金を育てる」3つの方法とは?

芸人さんには、フィナンシャル・リテラシーが高い人が多いように感じる。ひょっとしたら、お笑い脳と投資脳の間には謎のリンクが存在するのかもしれない。

 

Don’t Feel, Think!

中でも突出した存在が、ハーバード大卒でお笑い芸人、そして東京工業大学で教鞭も執っていらっしゃる「パックン」ことパトリック・ハーランさんではないだろうか。この原稿では、朝の経済ニュース番組でも顔を見ることが多い投資家としてのハーランさんの著書『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』(パトリック・ハーラン・著/朝日新聞出版・刊)を紹介したい。まず、幸福をつかむための「お金の育て方」の基本となる3つのテーマを紹介しておく。

 

1 徹底的に節約する
2 一生懸命働く
3 投資でお金を増やす

 

そしてこの3つのテーマを下支えするのが、『燃えよドラゴン』のブルース・リーの名台詞をもじった「Don’t Feel, Think!」(感じるな、考えろ)というモットーだ。

 

僕が見つけた「お金の育て方」は、何も特別なことではありません。誰だって真似できるし、誰だって悩みから解放されるはず。

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用

 

誰だって真似できる金の育て方。かなり心を惹かれませんか?

 

 

お金からの解放と将来の不安の解消

この本の着地点は、まえがきで明確に記されている。

 

「節約」から「投資」へと、経済的自由に向かう旅にぜひ出発してみてください! お金に縛られてしまう(文字どおり「金縛り」)の状態からの解放感、将来の不安の解消など、この旅の目的地では、今より余裕のある気持ちと生活が待っていると、僕は確信しています。

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用


月末が来るたびに、収支のバランスとやりくりを考えなればならないことがある。こうした時間をより創造的な行いに使うことができるなら、人生が内側からも外側からも潤っていくことは、筆者も経験則的に知っている。

 

余裕のある気持ちと生活へのロードマップ

章立てを見てみよう。

 

第1章 自由に生きるためにお金を正しく知ろう
第2章 お金を守るために節約金を鍛えよう
第3章 収入を増やすためにお金にも働いてもらう
第4章 手堅く無理なく増やすパックン式投資法

 

結局投資の本なのか。そう思う人もいるだろう。しかし、ちょっと考えてみていただきたい。今の世の中、銀行貯金という言葉は単にお金の置き場というニュアンスでしかなくなった。置いておくだけではなく、増やす方法を考えていくほうが理に適っていることは言うまでもない。お金を正しく知った上で無駄な支出の量を減らし、収入を増やす努力をして、生み出した余裕の部分を手堅い方法で増やしていく。このプロセスが「お金に縛られてしまう状態からの解放感、将来の不安の解消」へのロードマップとなる。

 

自由に生きるためにお金を足かせにしない

この本は、全4章に分けて70以上の項目が綴られている。中でもインパクトを感じたものをいくつか紹介しておきたい。

良い節約というのは、無駄な支出を減らすことです。そもそも無駄なのだから、どんどんなくしたほうがいい。

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用

 

節約というのは、何事にもケチケチしろというのではない。この言葉、至ってシンプルですぐにでも実行できそうなのだが、常に完全な形で遂行できるかと訊ねられたら、ちょっと難しい気がする。だからこそ、あえて紹介しておきたい。

 

さて、ハーランさんが投資を行って資産を増やす理由は何か。

 

行きたいところに行ける。会いたい人たちにある。やりたい仕事ができる…。そういう拘束されない、自由な人生を生きるために、お金を増やしたいと思っています。

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用

 

これは絶妙な言い方だ。お金はあればあるだけいいのだろうけれど、とにかく大切なのは、好きなことをする上でお金というファクターを足かせにしない姿勢だ。

 

お金が持つネガティブな資質から解放される

ハーランさんが日本に来て驚いたのは、ジャッキー・チェンが日本人ではなかったことと、日本人の投資に対する姿勢だった。

 

そして、その後でもっと驚いたのは、「投資はギャンブルだ」という考え方でした。みんなも、この主張を聞いたことがあると思いますが、完全に誤解です。僕は、投資が大好きです。けれども、ギャンブルは大嫌い。

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用

 

この文章を最後に紹介した理由は、われわれ日本人が抱きがちなステレオタイプ的妄信をもう一度認識しておくことが大切だと考えたからだ。ここまで紹介してきた引用文は基本的なアイデアに関するものばかりになってしまったが、「超リアルなアメリカの金融教育」「無駄な税金は納めないで」「僕がFIREを目指さない理由」「つみたてNISAとiDeCoのどっちを選ぶ?」といった現実的な項目も見逃せない。

 

この本を媒体にしてハーランさんが発するメッセージのエッセンスは、あとがきに記された次の一文に集約されている。

 

お金に悩まないで、お金に振り回されないで、ほとんどお金を気にしないで、幸せな暮らしができる。それができれば十分じゃない?

『無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方』より引用

 

そうなんです。それができれば、もう十分なんです。

 

【書籍紹介】

無理なく貯めて賢く増やす パックン式お金の育て方

著者:パトリック・ハーラン
発行:朝日新聞出版

ハーバード大卒の人気お笑い芸人・パックンが金融教育の要点をわかりやすく解説。「投資で社会の一員になる」などの投資マインドから、「老後計算機」「5・3・2の法則」などのお金の基礎知識まで、ぎゅっと凝縮したマネー本の決定版!

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お金を稼ぐのに必要なのは投資技術や情報分析ではない。マインドセットだ!! 『サイコロジー・オブ・マネー』

フリーランスという立場になって30年近くが経った今でも、夜中に目が覚めた時に脳裏をよぎる恐れがある。それは、青色申告会に開業届を出した日と変わらない。

ふとした瞬間に訪れる恐れ

フリーランスという働き方には何の保証もないし、前の年と全く同じレベルの収入があるかもわからない。毎年確定申告できっちりした数字を出すことになるので、ある程度は安心できるのだが、それでも漠然とした恐れにとらわれることがある。

 

いや、夜中だけじゃない。テレビを見ている時であれシャワーを浴びている時であれ、ふとした瞬間に訪れる思いに、しばらくの間とらわれたままになってしまうこともある。決してポジティブではないので、こうしたことは極力少なくしたい。そんな筆者にピンポイントに刺さった一冊を紹介する。

 

富のマインドセット

『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル・著、児島修・訳/ダイヤモンド社・刊)には“一生お金に困らない「富」のマインドセット”というサブタイトルが付けられている。筆者はこれまで、お金に関するさまざまな本を読んできた。その数は、世間一般のアベレージを軽く超えていると思う。

 

著者ハウセル氏がサイコロジー・オブ・マネーと呼ぶものは、「何を知っているか」よりも「どう振る舞うか」が重要になる“ソフトスキル”だ。投資テクニックや金融情報分析に代表されるハードスキルに対し、ソフトスキルという言葉で表されるのはずばり“人間心理”にほかならない。この本には、その人間心理を最大限に活かしながらお金との賢い付き合い方を探っていく方法が記されている。

 

異なるレンズを通した異なる見え方

全20章から成る本書には、お金とうまく付き合って大きな財産を残した人、間違って破産した人、成功した人も失敗した人もたくさん出てくる。お金に関する成功と失敗を決定づける要因は何なのか。

 

つまり私たちは、それぞれの体験に基づいた、異なるレンズを通して世界を見ているのだ。誰もが、世界の仕組みを理解していると思っている。しかし、一人ひとりは世界のほんのわずかな部分しか経験していないのである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

童話を読んでいるような寓意性

実在する/した人たちの生き方を通して投資や貯蓄といった経済行動を解き明かしていくフォーマットは、グリム童話とかイソップ童話を読んでいるようなイメージだ。たとえば、「お金持ちがとんでもないことをしでかすとき」というサブタイトルが付けられた第3章「決して満足できない人たち」に、次のような文章がある。

 

要するに、他人と収入を比較してもきりがないということだ。比較をしている限り、誰も頂上には到達できない。これは決して勝つことができない戦いだ。唯一、勝てる方法は、最初から戦わないことである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

「そんなこと考えたこともない」と言い切れる人はいないんじゃないだろうか。自分と比較すべき対象は、昔の姿であれ今の姿であれ、そして将来の姿であれ、あくまで自分でしかない。完全に異なる存在である誰かと自分を比べること自体がナンセンスなのだ。

 

究極の自由とは

さらに紹介していこう。第7章「自由」には、給料や収入と自分の関係にまつわる次のような一文がある。

 

どんなに高い給料よりも、どんなに大きな家よりも、どんなにステータスのある仕事よりも、「好きなときに、好きな人と、好きなことができる」生活を送れることのほうが、人を幸せにするのである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

今の筆者には特に刺さる言葉だ。こういう風に生きたいからあえてフリーランスという働き方を選んだのだから、時折脳裏をよぎる妙な雑音に心を折られるなんて、そもそも間違っている。

 

目に見えないものの金融的価値

第8章「高級車に乗る人のパラドックス」からは、次の一文を紹介したい。

 

真の富とは目に見えないものだ。富とは、購入しなかった高級車であり、買わなかったダイヤモンドである。身につけていない時計、着ていない服、乗らなかったファーストクラスの座席である。富とは、目に見えるものに変換されていない金融資産のことなのだ。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

書くだけなら簡単だ。そう言う人もいるだろう。しかし、超有名ベンチャーキャピタルのパートナーであり、アメリカで最も利用者の多い投資アドバイスメディアおよび『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙でコラムニストを務め、『ニューヨークタイムズ』紙からの受賞歴がある人物が綴ると、リアリティとして完全に自分に投影することはできないものの、かなりの説得力が宿る言葉となる。

 

「何を知っているか」ではなく「どう振る舞うか」

この本の実用性の高さは、すべてのエッセンスが詰め込まれた第19章「お金の心理」に集約されている。著者ハウセル氏は語りかける。

 

私はあなたに具体的なアドバイスをするつもりはない。普遍的な真理を教えたいのだ。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

著者ハウセル氏がサイコロジー・オブ・マネー=ソフトスキルと呼ぶものは、“お金に関する普遍的な真理”という言葉にも置き換えられる。重要なのは「何を知っているか」ではなく、「どう振る舞うか」だ。これだけ冷静なトーンで語りかけられると、耳を傾けないわけにはいかない。

 

【書籍紹介】

 

サイコロジー・オブ・マネー

著者:モーガン・ハウセル
発行:ダイヤモンド社

世界が絶賛! 超話題のマネー本がついに上陸。破産した大富豪と10億円もの資産を築いた地味な清掃員。2人にあった違いとは? 資産を築けない人の特徴、そしてお金を手にし続けるために大切なマインドセットを紹介する一冊。もうこれで、一生お金に困らない!

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「知らなかった」「自分は関係ない」じゃ済まされない……これが日本のリアル『年収443万円』

読み終わって呆然としてしまった本があります。『年収443万円』(小林美希・著/講談社・刊)という新書なのですが、頑張った分だけ幸せになれる、お金持ちになれる、望みが叶う、そんな日本はもうないのだと知ってしまったからです。

 

みなさんは、日本の平均年収が443万円と聞いてどんなイメージを抱くでしょうか? 普通に暮らせて、たまの贅沢もできる年収と思えるでしょうか? それとも、月々の支払いで手元に残るお金はゼロ、貯金もできない……と思うでしょうか? 今回は、日本に暮らしているなら読んでおきたい一冊『年収443万円』をご紹介します。

日本の“普通”は、普通じゃなくなった

郊外の一軒家&マイカーを持っていて、子どもは2人、旦那さんは都心に出社……と『クレヨンしんちゃん』の野原一家のようなファミリーが、「普通の家庭」だと考える人がいるかもしれません。しかし、もうそれは「普通」ではなくなっているようなのです。

 

『年収443万円』には、平均年収前後の世帯6家族、平均年収以下の世帯5家族に取材した様子が、ルポ形式で掲載されています。例えば、神奈川県に住む48歳の会社員、年収520万円で娘さんと3人暮らしをする家庭のリアルはこんな感じ。

 

同じ年収でも独身なのか、妻や子どもがいるかで当然、変わってくると思いますが、僕のように片働きで妻子がいると年収520万円ではつらいですね。

給与が入ったらまず20万円をおろして、自分の小遣い1万5000円を財布に入れます。残りが家賃などの生活費。娘の学資保険が月2万円くらい。10万円足りないくらいなので、貯金はできません。手取り40万円ないときついです。年収が700万円あればトントンかな。

(『年収443万円』より引用)

 

思い描く日本での普通の暮らしは、年収700万円でトントン。つまり、平均年収443万円では普通の家族の暮らしはできません。もちろん住むエリアや生活費によって同じ年収でも手元に残せるお金は変わりますが、これって努力とかの問題なの? と読んでいて感じました。

 

ちなみに、この会社員は、「もし自分に病気が見つかったらいけないから、健康診断は受けていない」と話します。政府からは「人生100年時代」なんて言葉も出てきていますが、誰もが安心して暮らせる世の中って本当に作れるのだろうか? と考えてしまいました。

 

世帯年収1000万円でも、贅沢はできない

じゃあいくらあったら、満足できる暮らしができるの? 共働きで、世帯年収1000万円あれば流石に余裕でしょ! と思う人もいるかもしれません。しかし日本では、まだまだ苦しいのが現実です。

 

東京都で会社員として働く女性(44歳)は、年収260万円の事務職。旦那さんの年収が700万円ほどで、小学生の娘さんと保育児の息子さんとの4人暮らし。世帯収入は1000万円前後ありますが、それでも不安は尽きないとのこと。

 

入るお金がそのまま出ていく。夫婦で月に50万〜55万円の収入になりますが、出産を機に買った一戸建てのローンは35年も続き、月15万円が消えていきます。食費が月に10万円、雑費や子どもとの娯楽費が月7〜8万円。子どもの学費や塾代も用意しないといけないから、学資保険にも入っています。これだけで月々ほぼ赤字。ボーナスで補填します。

(『年収443万円』より引用)

 

平均年収以上でもこの暮らしが現実です。安心して子育てできる日本はどこへ行ってしまったのでしょうか?

 

私自身はDINKs(共働きの子どもを持たない夫婦)ですが、ここに至った経緯のひとつに「世帯年収を下げたくなかった」という気持ちが強くありました。子育てによって女性の年収が下がることは目に見えています。子どもが嫌いなわけではなく、今の日本で女性が子を産み、育て、自分の仕事も変わらず、年収もそのままで普通の家族を作ることは、あまりに現実とかけ離れた理想像だと感じてしまいました。

 

子どもを持たないという選択は、老後も心配だし、親にも悪いなぁ〜という気持ちもあります。けれど、それ以上に「自分たちの暮らし」が心配だったんです。今の日本で、共働きで、子育てして豊かに暮らすなんて夢で、贅沢なこと。知らなかった、こんなはずじゃなかったと思ってからでは遅いのです。

 

この状況に、絶望するしかない?

暗い話が続くと「日本は終わった」と絶望してしまいますが、この状況を多くの人が知ることが何より大切だと感じました。確かに読み終わってすぐは、呆然としてしまうのですが、時間が経てば経つほど「私にできることは何かな?」と考えたくなってくるのです。

 

『年収443万円』には、リアルな日本の現状だけでなく、著者である小林さんがさまざまなデータから日本の現状を切り抜き、どうしてこうなってしまったのか? 今後どんな未来になるのか? ということにも触れています。ちょっとメンタルがやられてしまうところもありますが、このリアルな日本を知って欲しい! 「私には関係ない」とは思わず、一人でも知れば日本は変わるかも知れない……。そんな微かな光に希望を願って、私も自分にできることを模索していきたいと思います。

 

【書籍紹介】

年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活

著者:小林美希
発行:講談社

平均年収443万円ーーこれでは“普通”に暮らすことができない国になってしまった。ジャーナリストが取材してわかった「厳しすぎる現実」。昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……「中間層」が完全崩壊した日本社会の「本当の危機」とは?

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国民健康保険が高すぎる!そろそろ「文美国保」に切り替えませんか?

会社を辞めてフリーランスになったら、「国民年金」と「国民健康保険」の加入手続きをする必要がある。どちらも市区町村の役所か、年金の場合は年金事務所でも手続き可能だ。

 

オリジナルサイトで読む

 

会社を辞めたら年金と健康保険の手続きを

年金も健康保険も、会社員時代は給料から天引きされるかたちで保険料を納付していた。そしていずれも、会社が保険料を半額負担してくれていた。そのため会社員は、保険料がフリーランスに比べて安かったり、将来もらえる年金額が多くなったりするのである。各種公的保険は、会社員に優しく、フリーランスに厳しいのが現状なのだ

 

国民年金と国民健康保険に加入したフリーランスは、自ら保険料を支払うようになると、そのことを痛感することだろう。そこで本項では、『フリーランスのお金のこと、マンガでぜんぶ教えてください!』(田口智隆・著/ワン・パブリッシング・刊)を参考に、フリーランスが少しでも年金や健康保険で得をする方法がないのかチェックしていこう。

 

国民健康保険か任意継続か?

まず、国民年金について。結論を言うと、得する方法はない。2022年の保険料は月額1万6590円で、収入や居住地にかかわらず一律である。収入が安定していない新人の頃は、この金額がもったいないかもしれないが、国民の義務として納付するしかない。

 

ただし、公的年金は65歳以上がもらえる「老齢年金」だけでなく、病気やケガで障害が残ったときに年齢に関係なくもらえる「障害年金」もある。障害年金は、うつ病などの精神疾患で働けなくなった人が受給できるケースもある。「老齢年金」という最低限の老後資金を確保するためにも、また「障害年金」というセーフティーネットの受給資格を有しておくためにも、国民年金はしっかり納付しておこう。

 

次に、国民健康保険(国保)について。国保は、前年度の所得に応じて保険料が算出される。自治体によっても金額は異なる。保険料の上限が定められており、現在は年間85万円だが、2023年度からは87万円に変わる予定だ。月額換算で上限は7万2500円だ。

 

厚生労働省によると、上限額を支払うことになるのは、単身世帯だと年収がおよそ1150万円以上の人が対象になるそう。また、国保には扶養制度がないため、家族がいれば、さらに人数分払わなければならない。所得が400万円の人なら、全国平均で月2万3518円の保険料がかかる。年金と合わせると4万円近くの出費になり、収入が安定しないフリーランスは正直苦しい。

 

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国保の金額を下げる方法はあるのだろうか? 新人フリーランスならば、「任意継続」がまずは候補だ。任意継続とは、会社員のときに加入していた健康保険を2年間継続できる制度だ。ただし任意継続は、会社が半分払っていた保険料を、全額自己負担しなければならない。つまり、会社員時代の2倍の保険料だ。その金額が国保の保険料よりも安いなら、任意継続を選ぶのが得策となる。どちらが安くなるかは、それまでの収入によって人それぞれなので、任意継続と国保の金額を、それぞれ調べて判断しよう

 

また、会社員の家族や配偶者の「扶養」に入る手も考えられる。その場合は、年収130万円未満、かつ扶養に入れてくれる人の年収の2分の1であるのが条件。フリーランスとして自立したい人には難しい条件だ。

 

しかし、まだ保険料を下げる策は残されている。

 

「文美国保」という選択肢も

「国民健康保険組合」に加入すれば、フリーランスは保険料を下げられる可能性があるのだ。国民健康保険組合とは、同じ職種や業種の人たちが集まる保険で、保険料は所得に関係なく一律だ。そのため、通常の国保に比べて保険料が安くなる可能性があるのだ。

 

一例として、さまざまなクリエーターを対象としている国民健康保険組合に、「文芸美術国民健康保険組合」がある。通称「文美国保」と呼ばれている。文美国保の保険料は、月額1万9600円(2022年度)の定額。どんなに収入がよくても、この金額は変わらない

 

文美国保に加入するには、下記のいずれかの加盟団体に加入しなければならない。さまざま条件があり、新人フリーランスが条件をクリアするのは難しい場合もある。今のうちから加盟団体の加入条件を確認しておき、その条件をクリアするのを目標としていこう。

 

国民健康保険と文美国保、安いのはどっち?

実際、国民健康保険と文美国保、どちらが安いのか計算してみた。

 

自治体や家族構成によって異なるが、所得が多ければ多いほど、文美国保のほうが保険料が安くなる可能性が高そうだ。フリーランス生活が軌道に乗って、国保の負担が大きくなってきたら、文美国保など国民健康保険組合への加入を検討してみてはどうだろうか。

 

 

【書籍紹介】

マンガでわかる フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!

著:田口智隆
発行:ワン・パブリッシング

多忙かつお金に苦手意識のあるフリーランスに向け、フリーランスのお金にまつわるあれこれをマンガでわかりやすく解説! 開業する前の準備、確定申告や税金・控除のあれこれ、フリーランスこそやっておくべき資産運用の話、お金で損をしない節約術など、本書を読めば何が必要で何が必要でないのかがすぐに理解できます。

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(文:堀田孝之)

退職金がない!フリーランスを救う「最強の制度」とは!?

フリーランスは自由で魅力的な働き方だが、その一方で、組織に守られていないことから生じるデメリットもある。たとえば、それまで会社が半額負担してくれていた年金や健康保険料を、自分で全額支払わなければならないし、老後に受け取れる年金額も会社員より少ない。さらに盲点は、「退職金がない」という点だ。

 

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会社員ならば、1つ企業に勤めれば、将来1000万円〜2000万円程度の退職金を得ることができることが多い。仮に転職を繰り返したとしても、そのたびに数百万円の退職金をもらっていれば、合計すればそれ相応の金額を手にすることができるだろう。

 

一方で、フリーランスには退職金がない。20代~30代だと退職金は遠い将来のことに思えるかもしれないが、今から考えておかないと、いざ引退したとき「老後資金が足りない!」という事態に陥りかねない。

 

そこで本項では、『マンガでわかる フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!』(田口智隆・著/ワン・パブリッシング・刊)から、フリーランスに絶対オススメの「退職金の作り方」についてお伝えする。

 

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「小規模企業共済」で退職金の準備を

田口智隆さんによると、フリーランスが退職金を準備するなら、「小規模企業共済」以上の制度はないという。小規模企業共済とは、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」が提供している制度で、フリーランスや小規模企業の経営者たちが、働いている間にお金を積み立てていき、事業を辞めたときや65歳以上になったときなどに、掛金に応じて退職金(共済金)を受け取れる制度だ。

 

掛金と納付年数によって、下記の金額を受け取れることができる。

 

小規模企業共済の利回りは約1〜1.5%と決められている。今の時代、都市銀行の利回りは0.001%程度と超低金利であることを考えると、かなり優秀な利回りだ。たとえば、掛金の上限7万円を30年にわたって積み立てれば、利息だけで480万円になり、受け取れる金額は約3000万円にのぼる。

 

銀行に預けていてもお金はほとんど増えないのだから、貯金がわりに小規模企業共済を利用すると考えれば、大変利用価値の高い制度なのだ。掛金の額はいつでも自由に変更できるので、稼ぎがいい月は7万円、稼ぎが悪い月は数千円、といったように柔軟に利用すれば、継続もしやすいだろう。

 

小規模企業共済のすごいメリット

小規模企業共済のメリットは他にもある。小規模企業共済は、病気やケガで働けなくなったときやフリーランスを辞めるときにも、事業廃止届を出せば共済金を受け取ることができる。つまり、積み立てておけば、いざというときのための保険にもなるのだ。

 

さらに、掛金は「全額控除」になる特典付き。所得税を算出するための所得は、「所得=売上−経費−控除」によって決められる。つまり、掛金が全額控除になれば、所得が減り、それに伴って所得税も減ることになるのだ。

 

所得税をもとに住民税は決められるので、住民税の節税効果を見込める。たとえば、課税所得400万円の人が小規模企業共済に毎月3万円積み立てると、所得税と住民税は約11万円少なくなる。毎月7万円積み立てると、約24万円も節税になる。

 

このように、小規模企業共済は、フリーランスにとってメリットしかないと言っても過言ではないのである。まだ銀行での貯金を続けている人は、今すぐ小規模企業共済を始めよう。

 

資金に余裕があれば「iDeCo」も始めよう

小規模企業共済を利用しても、まだ資金に余裕がある人は、「iDeCo」の利用も検討していくのが望ましいと田口さんは言う。iDeCoとは、個人型確定拠出年金の略称。「自分で作る年金」だ。

 

iDeCoを利用するには、銀行や証券会社などで「iDeCo口座」を開設し、そこで投資信託などの金融商品を購入する。毎月掛金を積み立てていき、購入した金融商品の利回りによってお金を増やし、将来的にまとまった額の年金を手にすることを目指す。ただし、やっていることは「投資」なので、必ずしもお金が増えるとは限らない。また、年金なので60歳までお金を引き出すこともできない。

 

このように書くと、iDeCoに魅力が感じられないかもしれないが、投資に興味があるけれどまだ始めていないフリーランスは、iDeCoを利用しない手はない。

フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!

 

1つ目の理由は、iDeCoも小規模企業共済と同じように、掛金が全額控除になるからだ。たとえば、課税所得400万円の人が掛金の上限6万8000円(月額)を積み立てると、所得税と住民税は年間24万4800円の節税になる。2つ目の理由は、投資による運用利益が非課税になるからだ。通常の証券口座で利益が出ると、利益の20%に税金がかかる。しかし、iDeCo口座での利益は税金がかからない。

 

これらの理由で、これから投資を始めようと考えているフリーランスは、まずは「iDeCo」からスタートするのが賢い選択だといえるだろう。もちろん、新人のフリーランスが、すぐに小規模企業共済とiDeCoの両方を満額で始めるのは、資金的に厳しいだろう。

 

まずは小規模企業共済に加入して退職金を積み立てながら、所得が増えてさらに節税をしたいと思ったとき、iDeCoの利用を検討してみてはどうだろうか。あるいは、資金を分割して少額から両方を利用してみるのもありだ。

 

コツコツと貯金感覚でお金を増やす「小規模企業共済」1本でいくか、多少のギャンブル要素と夢もあるiDeCoにも参入するか、どれくらいお金を増やしたく、どんな人生を歩んでいきたいのか、自分で判断していくことが大切だろう。

 

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(文:堀田孝之)

あなたは大丈夫ですか? セカンドハラスメントで訴えられないための注意点

先日、東京都で、ハラスメント防止対策推進事業を立ち上げたとのニュースがありました。

 

令和4年4月1日より、いわゆるパワハラ防止法(正確には、労働施策総合推進法)が中小企業にも適用され、すべての事業主に対して、パワハラ、セクハラ等のハラスメントの防止措置を講じることが義務付けられました。

 

このような流れの中で、東京都は新たな事業を立ち上げたのでしょう。確かに、弊所でのハラスメントに関する相談件数や研修依頼も、今年度に入ってからは前年比1.5倍くらい増加しています。

 

ハラスメント被害の相談でおこる二次的ハラスメント

今回は、ハラスメント問題の中でも、ハラスメント被害を受けた労働者が、さらなるハラスメントを受ける「セカンドハラスメント」について説明し、窓口担当者がセカンドハラスメントと言われないための相談対応について解説します。

 

セカンドハラスメントとは、パワハラやセクハラを受けた人が、被害について相談したことによっておこる二次的なハラスメントのことです。

 

例えば、職場の相談窓口にパワハラ被害を相談したところ、担当者から、「あなたの方に問題があったのではないですか」と傷口に塩を塗る対応をされるような場合です。「私もそんなことあったけど、耐えてきたんだよ」と自らの価値観で話をされる、等も該当します。

 

会社に課されているパワハラ防止対策の中でも、相談窓口の設置は義務とされています。また、この相談窓口は、パワハラをはじめ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業・介護休業の取得に関する嫌がらせ等を含めた横断的ものがが望ましいとされています。

 

このようにハラスメント対策の中では、相談窓口は最も基本的で労働者には身近なものと位置づけられ、そうであるからこそ窓口担当者の対応や力量がハラスメント撲滅には肝となります

ハラスメントを解決するための窓口でセカンドハラスメントが起きないよう、窓口担当者の方は次の点に留意して相談対応を行いましょう。

 

<相談対応の心得>

①しっかり話を聴く

尋問の「訊く」ではありません。窓口には相談に来ています。相手の話を遮ったりせずに寄り添う姿勢で傾聴しましょう。

 

②個人的な関心事に引っ張られない

話を聴いていると、担当者の個人的な関心事に意識が引っ張られることがあります。そうなると、質問を挟んだり、意見を言い過ぎる傾向にあります。関心事は後回しにしてまずは聴く姿勢に徹します。

 

③プライバシーに最大限配慮する

被害者は、加害者からの報復への恐怖心を持っていることもあります。今後ハラスメントの事実の調査を進める際、社内でどこまで情報を共有してよいのか等、相談者のプライバシーへの最大限の配慮を行います。

 

④ジャッジしない

担当者はあくまで窓口です。その後、その行為がハラスメントかどうかは別に判断することになります。そのため、窓口担当者は「事実」を確認することに集中します。相談の冒頭に、「ここでは事実を確認させていただきます。ハラスメントかどうかの判断は私ではできません。」としっかりと相談者に伝えることも大切です。

 

⑤1回の相談時間は最長50分にする

しっかり話を聴いていると50分では終わらないかもしれません。その場合は、次回に回しましょう。相談者にとってみると、気持ちを切り替えられる、冷静になれる、という時間にもなります。また、窓口担当者も長時間話を聴くことはかなり消耗しますので、50分程度がよいと考えます。

 

ここで、担当者がジャッジしてしまい、うまくいかなかった相談事例をご紹介します。

 

ある日、ハラスメント相談窓口に男性従業員より匿名で相談の電話がありました。この従業員は、女性上司が子どもの学校の成績、共働きの妻の年収、休日の過ごし方などのプライベートについて、根ほり葉ほり聞いてくることが苦痛であるということでした。
これを受けて、窓口担当者は、女性上司に悪気はなく、業務を指示するにあたり、部下のプライベートな事情や生活状況等を考慮することを目的で聞いているのだから、パワハラにはあたらないと話したところ、相談者は怒った様子で「じゃあ、もういいです。」と告げて、電話が切られてしまいました。

厚生労働省『パワーハラスメント社内相談窓口の設置と運用のポイント(第4版)

 

この事例は、窓口担当者が、勝手に「パワハラにはあたらない」と判断してしまったことで、相談者の相談にうまく乗れませんでした。

 

「ジャッジしない」ということは、いざやってみると難しいことです。普通に聞いていると、会話のように自分の考えを言いたくなってくるからです。そのため、会社は、窓口担当者には傾聴法を学んでもらう等の教育の機会を与えることも必要となってきます。

 

 

【書籍紹介】

労務管理の基本がぜんぶわかる本

著:三谷文夫
発行:ワン・パブリッシング

働き方改革、DXへの取り組み、新型コロナによるテレワークの進行…企業労務はここ数年で大きく様変わりしています。本書では、豊富な図解と事例で企業労務に関する問題をわかりやすく解説しました。経営者、労務担当者、必携の1冊です!

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(文:三谷文夫)

社会保険の観点からパターン別に解説! 副業をする際に注意したいこと

副業をする人が増えています。リクルート社の「兼業・副業に関する動向調査データ集2021」によると、現在副業をしている人は9.4%、今後実施の意向ありの人が46.5%という結果です。回答者のうち実に半数以上の方が、副業をしていたり、前向きに考えているということです。

 

国も副業を推進する立場をとっていますので、今後ますます副業をする労働者は増えてくることが予想できます。そこで、今回は副業をする際に注意することとして、主に社会保険の観点から、パターン別に解説します。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本

 

(1)正社員+正社員

正社員として働きつつ、別の会社でも正社員として働くパターン。あまり多くない働き方だと思いますが、最近は短時間正社員という雇用形態もあり、例えば、週3日の正社員という働き方もあるため、選択肢としては考えられます。

 

このパターンで注意する点は、大企業で副業する場合の社会保険のダブル加入の可能性です。社会保険(健康保険・厚生年金)は、通常の正社員の3/4以上の所定労働時間であれば加入する必要があります。そのため、通常の正社員が週40時間の所定労働時間の場合、30時間以上働くと社会保険に強制加入となります。

 

しかし、法改正により、今年10月から101人以上の会社では、所定労働時間が週20時間以上30時間未満の方も社会保険に加入する必要があります

 

そのため、A社で週3日正社員、B社で週3日正社員という働き方であっても、両会社が101人以上の大企業であれば、社会保険へダブル加入することも可能性としてあるのです。

 

ダブル加入した場合、健康保険証は1枚しか持てないため、A社かB社かどちらかを選択しなければなりません。また、保険料はA社とB社の給料を合算した額をベースに保険料が決定されます。その保険料をA社、B社の給料額を按分した割合で各社での保険料が算出され、その額が毎月の給料から控除される仕組みとなっています。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本

 

(2)正社員+パート

このパターンは比較的多いのではないでしょうか。このパターンで注意することは、(1)と同様、社会保険のダブル加入の可能性です。

 

パートやアルバイトといった雇用形態に関わらず、条件を満たした場合、社会保険には強制加入となります。そのため、「副業がパートだから」という理由で社会保険の加入を免れることはできません。パートでの副業でも労働時間が長くなれば社会保険の加入の可能性もありますのでご注意下さい。

 

(3)正社員+個人事業

これは業務委託型と言われるパターンです。副業先においては業務委託契約(請負契約)を結び、その契約に基づいて業務提供を行うという副業形態です。働き方の程度によって、フリーランス、ギグワーカー、個人事業主などと呼ばれます。

 

(1)や(2)のように雇用契約ではないため、このパターンでは、労働基準法などの労働関係諸法令が適用されません。そのため、副業として行っている業務については労働者としての保護は受けられないことになります。例えば、労働者であれば業務上の怪我は労災保険の対象となり国から保険給付を受けられますが、副業での作業中に怪我をしても何も補償はありません。

 

少し前に、フードデリバリーの配達員の配達中での事故についてのニュースもありましたが、まさに、雇用なのか業務委託なのか、という点が問題になったわけです。このパターンで副業をする場合には、副業先との契約内容を理解した上で、副業は全て自己責任、という認識をもつことが必要です。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本

 

(4)パート+パート

複数の会社でパートとして働いている方もいるでしょう。それがこのパターンです。このパターンの方は、「配偶者の扶養のまま働きたい」というニーズが多いと思われます。そのため、各会社では所得税や社会保険の関係で、年収103万円、年収130万円等の「壁」を意識して働いているのではないでしょうか。

 

ただ、このパターンで注意することは、やはり社会保険の加入です。繰り返しになりますが、パートであっても条件を満たすと自らが社会保険に強制加入となり、配偶者の扶養から外れることになります。

 

社会保険の場合、原則、年収130万円未満であれば扶養の範囲となりますが、複数社で働きつつ年収を130万円未満に抑えていても、ある会社での所定労働時間が週30時間や20時間を超えている場合等は、前述のとおり社会保険への加入する必要があります。そのため、収入面だけでなく労働時間の観点からも、働き方を選択する必要がありますのでご注意ください。

 

以上、4つのパターンについて主に社会保険の観点から注意すべきことを解説しました。副業をする際には参考にしてください。

 

 

【書籍紹介】

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(文:三谷文夫)

新人フリーランス必読!確定申告を最速で終わらせる方法

毎年3月15日が近づいてくると、「確定申告しなきゃ!」「何も準備してない。やばい!」といったような声が、フリーランス界隈でよく聞こえてくる。

 

企業に勤めている人は、「確定申告って大変なんだな」と思うばかりで、実際それがどれくらい手間のかかる作業なのかイメージしづらいかもしれない。しかし現在、会社に勤めながら副業をしている人は10%近くに及ぶ。副業での所得が20万円を超えると確定申告をする必要があるため、サラリーマンにとっても確定申告は他人事ではないはずだ。また、働き方の多様化によって、将来フリーランスとして働くことを選ぶ人は、今後ますます増えていくことだろう。

 

そこで本項では、『マンガでわかる フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!』(田口智隆・著、ワン・パブリッシング・刊)から、新人フリーランスが知っておくべき確定申告の知識についてお伝えする。

フリーランスが知っておくべき確定申告の知識はこれだけ!

そもそも「確定申告」で何を申告しているかというと、「所得税の金額」である。前年の1月1日から12月31日の間の所得を「確定」させて、所得に伴う「所得税」を申告することを、「確定申告」と呼ぶのだ。所得とは実際に入金された「売上」の金額ではない。

 

「売上」から、「経費」と「控除」を差し引いた金額が、「所得」である。

 

つまり、「所得=売上−経費−控除」で計算できる。確定申告をするにあたってフリーランスに求められることは、1年間の「売上」と「経費」と「控除」の金額を管理しておく、これだけである。

 

難しい簿記の知識などまったく必要ないし、複雑な計算をする必要もまったくない。とにかく、「売上」と「経費」と「控除」の金額だけ知っていればOKなのだ。

 

「売上」については、取引先に送った請求書と、実際に入金された額がわかる通帳(現物でもいいし電子でもいい)があればいい。「経費」については、仕事のために使ったお金の領収書やレシートを保管しておけばいい(クレジットカードの明細でもOK)。「控除」については、生命保険会社や年金機構などから送られてくる「控除証明書」を保管しておけばいい。

 

これだけアナログでやっておけば、あとは「Freee」「マネーフォワード」「やよいの青色申告」などの会計ソフトを利用しよう。

 

会計ソフトにはクラウド型とインストール型があるが、オススメはクラウド型の有料版。クラウド型の有料版は年間1万円程度の利用料金がかかるが、初心者でも使いやすいように設計されているソフトが多いのでオススメ。確定申告の書類をスマホ1台で作成できるソフトもある。それくらい今、会計ソフトは進化しているのである。

©大塚さやか『フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!』

 

会計ソフトに機械的に数字に打ち込むだけで終了

クラウド型の会計ソフトは、毎月の「売上」や「経費」、「控除」の金額を打ち込むだけで、確定申告に必要な書類を作成してくれる。簿記の知識が何もなくても問題ない。電卓をはじいて数字の計算をする必要もない。

 

フリーランスのお金の管理法として、理想は毎月その月の「売上」や「経費」を登録し、現金出納帳などの帳簿を作成しておくのがベスト。でも、それが面倒な人は、確定申告の際に1年分を一気に作成しても問題ない。

 

何度も繰り返すが、1年分の「売上」と「経費」と「控除」の金額だけわかっていれば、3月になってから確定申告書類の作成に入っても遅くないのである。

 

さらに、クラウド型の会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードと同期することも可能だ。プライベートでは使用しない、仕事用の銀行口座やクレジットカードを会計ソフトに同期しておけば、自動的に「売上」や「経費」を計上してくれる優れた機能である。

 

また、レシートや領収書をカメラで撮るだけで、金額を読み取ってくれる機能まである。これらを使いこなすには慣れが必要だが、いったん慣れてしまえば、確定申告の手間はほとんど掛からなくなる。フリーランスになったら、できるだけ早くクラウド型の会計ソフトを導入して、使い方に慣れておこう。

 

確定申告は「還付金」がお楽しみ

確定申告を初めて行うフリーランスは、「納税のために時間をとるのか……」と気乗りしないかもしれない。でも、ほとんどのフリーランスは、確定申告によって「税金を払う」のではなく、すでに払っていた税金を「還付金として受け取る」ことになる。

 

フリーランスが企業と仕事するとき、多くの場合、請求金額よりも少ない金額しか入金されない。たとえば10万円を請求したら、8万9790円が入金されることになる。これは、「源泉徴収」といって、企業はあらかじめ、フリーランスの所得税を税務署に前納しているからだ。源泉徴収の金額は、「売上額(消費税込)」の10.21%である。

©大塚さやか『フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!』

 

そのため、確定申告によって算出した所得税の金額が、源泉徴収分よりも少ない場合、差額分が「還付金」として戻ってくるシステムなのである。

 

所得税が源泉徴収分より少なくなるのは、確定申告によって「経費」や「控除」を「売上」から差し引くからだ。すると、所得は少なくなり、連動して所得税も少なくなる。その結果、源泉徴収分と差額が生まれる寸法である。つまり、確定申告をしないことは、お金で損することを意味する。

 

「納税は国民の義務だから……」とイヤイヤするのではなく、「お金を取り戻すため」と考えれば、確定申告をするのが楽しみになってくるのではないだろうか。

 

事前に「マイナンバーカード」を取得することを忘れずに

最後に、新人フリーランスが確定申告前に必ず終わらせておきたいことをお伝えする。マイナンバーカードを持っていない人は、今すぐ作ってほしい。なぜなら、マイナンバーカードを持っているかいないかで、「控除」の金額が異なるからだ。

 

確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類がある。白色申告は、以前は「帳簿が不要」だった。だが現在は青色申告と同じように帳簿が必要になったため、青色と同じ手間がかかるようになった。だから白色申告をする理由はひとつもない。

 

青色申告の中にも、「簡易簿記」と「複式簿記」が選択できる。会計ソフトを利用すれば、両者の手間の差はほとんどない。簡易簿記だと10万円の控除が受けられるが、複式簿記だと55万円もしくは65万円の控除が受けられる。だから、複式簿記を選択しない理由はない。

 

フリーランスは開業時に税務署に「青色申告承認申請書」を提出するのが望ましい。その際は迷わず「複式簿記」を選択しよう(詳しくは『マンガでわかる フリーランスのお金のことぜんぶ教えてください!』(田口智隆・著、ワン・パブリッシング)を参考にしてください)。

 

青色申告の「複式簿記」で申告しても、控除額が55万円と65万円の2パターンがある。その差は、申告方法がアナログかデジタルかによる。申告方法がアナログ(税務署に持参・配達)の場合は55万円、国税庁のシステムであるe-Taxを利用して電子申告をすれば65万円の控除が受けられるのだ。

 

たとえば、課税所得400万円の人が、青色の65万円控除で申告した場合、白色申告に比べて、税金(所得税と住民税)の合計は、およそ20万円も安くなる。ちょっとの手間で20万円も変わるのだから、青色の65万円控除で申告しない手はない。そこで必要なのが、マイナンバーカードなのだ。

 

e-Taxを利用するためには、マイナンバーカードが必須。カードの現物を持っていなければ利用できない。マイナンバーカードの発行には数ヶ月かかることがあるため、確定申告の直前に慌てて申請しても間に合わない可能性があるので、注意が必要だ。

 

フリーランスで、もしまだマイナンバーカードを所持していない人は、早めに発行することをオススメする。ここまで準備できれば、あとは会計ソフトに数字を打ち込んでいくだけだ。簡単とはいえ、初めての確定申告でわからないことも出てくるかもしれない。提出日ギリギリになって焦らないように、年が開けたら少しずつ作業を進めていこう。

 

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(文:堀田孝之)

冬のボーナスの時季が到来!~賞与の「支給日在籍要件」にご注意を──

冬の賞与(ボーナス)の時季が近づいてきました。賞与が支給される会社、支給されない会社、それぞれあると思います。帝国データバンクの「2021年冬季賞与の動向調査」では、12%の会社で「賞与がない」との結果が出ています。ちなみに、私の関与先では、賞与の支給がない会社は約4割です。

 

支給される会社に勤ていても、支給日と近接する時期に退職される場合、注意しておかないと「賞与がもらえない」という事態になることがあります。賞与に関して「支給日在籍要件」を設けている会社が多いからです。

©富永三紗子『労務管理の基本がぜんぶわかる本』

支給日に在籍していないと賞与をもらえない!?

そもそも賞与制度を設けるかは、会社の裁量にまかされています。会社は必ずしも支給する必要はないのです。ただ、賞与制度を設けるのであれば、会社は賞与について就業規則に明記する必要があります(労基法89条)。

 

あなたは、会社の就業規則を見たことがありますか? この機会にぜひ見て下さい。賞与の条項に以下のような記載があるかもしれません。

 

「賞与は、支給対象期間に勤務し、支給日に在籍している者に支給する」

 

これが、支給日在籍要件です。文字どおり、賞与支給日に在籍している者にしか賞与を支給しない、ということです。

 

賞与の支給日前に自己都合や定年で退職する労働者であれば、「退職日までの期間分は働いたのだから、少なくともその分は支給してほしい」と考えるでしょう。

 

一方で、会社としては、「これからも一緒に働いてくれる労働者に感謝と期待を込めて賞与を支給したい」という想いもあるところです。会社の想いと労働者の意識が食い違ってくる場面です。

 

このような食い違いのため、賞与の支給日在籍要件そのものについて、過去に争いになったことがありますが、判例では有効とされています(大和銀行事件(最高裁昭和57年10月7日判決)。

 

会社が賞与支給日を故意に遅らせた場合どう対処するか?

そのため、あなたの会社に支給日在籍要件があるのか無いのか、無い場合にはどのような支給方法なのかを確認しておくようにしましょう。そうしないと、期間分は当たり前にもらえると思っていた賞与がもらえない、ということもでてきます。

 

仮に、支給日在籍要件があったとしても、会社が賞与の支給日をわざと遅らせ、賞与を支給しなかった場合、労働者としてどう対応するかです。

 

例えば、賞与の本来の支給日は12月10日であるけれども、12月15日に退職することが決まっている労働者に賞与を支給することを回避するためだけの目的で、支給日を12月25日に後ろ倒しにするような場合です。

 

この場合は、賞与を支給されるという期待が労働者にはありますし、嫌がらせ目的が明白なので、堂々と会社に賞与の支給を訴えてもよいでしょう。このような目的での支給日の後ろ倒しは、争いになった場合、会社の民法上の不法行為が認定される可能性が高いからです。

 

他方、会社の業績や資金確保の都合などから支給日が延期になる場合は、これら会社の置かれている状況や会社からの説明の有無等にはよりますが、賞与の不支給あるいは支給額の減額措置などは受け入れざるを得ないと考えます。

 

賞与は、支給するかどうか、支給額をどうするか等、会社の裁量が大きく発揮される場面です。

 

とはいえ、労働者サイドからすると、賞与は生活設計の中で大きな意味を持っていることが多く、支給基準などが不明確な場合、不安を感じることもあるでしょう。 そのため、労働者としても、就業規則等で賞与の支給基準を確認しておくことは自己防衛として必要なことなのです。

 

【書籍紹介】

労務管理の基本がぜんぶわかる本

著:三谷文夫
発行:ワン・パブリッシング

働き方改革、DXへの取り組み、新型コロナによるテレワークの進行…企業労務はここ数年で大きく様変わりしています。本書では、豊富な図解と事例で企業労務に関する問題をわかりやすく解説しました。経営者、労務担当者、必携の1冊です!

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(文:三谷文夫)

2000万じゃなくて5000万! いったい老後の資金はいくら必要なのか?『コミック版 やってはいけない老後対策』

2019年6月、金融庁が驚きの発表をしました。いわゆる「老後2000万円問題」と呼ばれるもので、平均的な年金受給者は2000万円の貯蓄がないと生活が破綻してしまうというのです。そんなこと急に言われても、どうしたらいいのかわからないと、誰もが驚いたことでしょう。私も「えっ! そうなの?」と思い、たまらなく不安になりました。『やってはいけない老後対策』は、そんな私たちの「えっ!」に答えてくれる本です。

 

「老後対策」をわかりやすく教えてくれる

著者は、元国税調査官の大村大次郎。国税局に10年勤務した後、経理事務所などを経て、フリーランスのライター・作家として活躍しています。ベストセラー『あらゆる領収書は経費で落とせる』など、多くのヒット作があるので、ご存じの方も多いでしょう。

 

数ある老後対策本の中から、私が『コミック版 やってはいけない老後対策』(大村大次郎・著、西島ユタカ・シナリオ、蒼田山・マンガ/小学館・刊)を選んだのは、著者が国税に詳しいことがいちばん大きな理由ですが、コミック形式の本であることにひかれました。お金の話になると、頭痛がしてくる私としては、読まなければいけないとわかっていながら、税金の本はできれば避けて通りたい難物なのです。けれども、『コミック版 やってはいけない老後対策』は、2018年に出版された『やってはいけない老後対策』をコミック版にしたものなので、私でもなんとか完読できそうだと思ったのです。そして、実際、最後まで一気に読みました。

 

漫画に登場するのは5人。会社員の鈴木浩(59才)、パート従業員として働く妻の美津江(54才)、そして、浩の妹の斎藤明子(48才)、明子の夫の隆一(48才)です。

 

鈴木夫妻はサラリーマンと主婦であり、斎藤夫妻は二人でデザイン事務所を経営しているという設定です。そして、もう一人、鍵となる人物がいます。鈴木夫妻の娘・綾(30才)です。彼女はマネーアドバイザーをしていて、お金の問題に詳しいのです。ストーリーは二組ののんきな夫婦に対して、若い綾が鋭い意見を述べる形で進んでいきます。

 

鈴木夫妻と斎藤夫妻は、老後の生活に不安感を持っていません。まあ、なるようになるだろうと考えています。けれども、綾はそうした甘えを見逃しません。具体的な数字を容赦なく示し、両親や叔母夫妻の生活に警鐘を鳴らします。とくに、叔母夫婦に対しての意見は、手厳しいものとなっています。叔母は「大丈夫」と、言い張りますが、それに根拠などないとわかっているからです。かつては税務署に勤めていた綾の言葉は説得力があります。

 

私にとっても、綾の話は耳に痛いものでした。自分ではなんとかなるさと思ってはいますが、根拠などないのです。自分では頑張って働いているつもりですが、主婦業をしながら原稿を書いてきただけで、会社勤めをしたことがありません。そもそもエッセイストは、原稿の依頼が無くなったら終わる職業です。楽観などできないはずなのに、私は考えないようにしています。

 

ところが、夫は違います。退職して年金生活者になったばかりですが、将来を見据え、考えを巡らせています。彼は40年近く休むことなく働いてきましたから、年金を受け取ることができます。けれども、私とは違い、なんとかなるとは思っていないようです。生活から無駄を省くように工夫をこらしています。さらには、ゆとりある老後のために、準備を怠ってはならないと主張するのです。

 

最近の夫の趣味は、年金生活者の現実を描くYouTubeを見ることです。そこには、ぎりぎりの年金で生活するための知恵がつめこまれています。果たして実話なのか、確かめる術がないものの、年金生活者のひとつの現実を表していると思います。

 

現実を見据えて

『コミック版 やってはいけない老後対策』には、多くの人が目を背けがちな現実がはっきりと描かれています。

 

年金制度そのものがなくなることはあり得ませんが、現行制度がそのまま続くということは考えにくいでしょう。今の年金制度は、これから年金受給対象となるシニア世代だけでなく、年金を納めている若者も、年金だけをあてにしない生き方を真剣に考えなくてはならない時期が来ているのです。

(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

では、いったいいくらあったら、私たちはゆとりある生活ができるのでしょう。著者のシュミレーションによると、「現役時代に5000万円以上の貯蓄が必要」だそうです。もちろん、ケースバイケースだとあり、一概には言えないそうです。それでも、5000万円の貯蓄という具体的な数字にはショックを受けます。

 

もっと貯金するよう努力すべきだったと後悔しますが、こうなったら、今からでも、できることをするしかありません。まずは細々とではあっても、注文がある限り、原稿を書き続けるのが、私の未来への一歩だと考え直しているところです。あとは生活の無駄を省くようにすることでしょうか。

 

『コミック版 やってはいけない老後対策』には、厳しい現実が示されていますが、私たちが何をすべきかについても教えてくれます。

 

そのためにまずすべきことは、生活のダウンサイジングです。1日も早く、早ければ40代、遅くとも50代に入ってからは「生活の無駄」をなくしておきましょう。たったそれだけでもびっくりするような効果が上がります。

(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

それはたとえば、車を手放すことであったり、動画などのサービスを見直し、必要でないものは解約すること、さらには電気・ガスなどの契約を見なおすことだといいます。確かに、なんとなくだらだら使っているものを思い切って辞め、生活の見直しをはかるのは、とても大切なことでしょう。

 

これから考えるべきこと

さらに、引退後の住まいについても、言及しています。私たちにとって、「持ち家が得か、借家が得か」は大きな問題です。週刊誌などでも頻繁に特集されています。果たしてどちらが得か? は悩むところです。

 

持ち家の最大のメリットは、「お金がなくなっても、いつまででも住める」「何歳まで生きても住むところには困らない」ということです。

(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

さらには、高齢の単身者に大家さんは家を貸したがらないそうです。一人暮らしの高齢者は、自然死したり孤独死したりするリスクがついてくるからです。残酷な現実ではありますが、考えておかなければならないでしょう。

 

けれども、絶望しすぎないでください。『コミック版 やってはいけない老後対策』は、定年退職するときの注意やちょっとしたコツも伝授してくれます。とくに「繰り上げ受給」にするか、「繰り下げ受給」にするか、迷っている人がいたら、参考になる指摘がなされています。

 

当面、お金に不自由していないのなら、年金はなるべく遅くもらうほうがいいと、著者は言います。様々なケースが挙げられていますから、それを参考にしましょう。どれも「なるほど」と、思えることばかりですが、とくに、定年後のアルバイトは、お金が戻ってくるケースが多い」というのは知りませんでした。アルバイトは、年末調整をしていないため、税金が払いすぎになっているのです。税金の納めすぎは自分で申告しない限り、戻ってこないというのですから、ぼやぼやしてはいられません。

 

『コミック版 やってはいけない老後対策』によって、私は自分の老後について、様々な知恵を授けられました。のんきにかまえていないで、自分で考え、工夫すべきだとも知りました。方法は一つではないので、自分はどのケースに当てはまるのかよく考えてみなければなりません。けれども、ボヤボヤしていてはいけないと思うようになったのは、ひとつの大きな収穫です。

 

【書籍紹介】

コミック版 やってはいけない老後対策

著者:大村大次郎(著)西島ユタカ(シナリオ)蒼田山(マンガ)
発行:小学館

上位10%の人だけが実践している秘密のワザを伝授。これを知らないと大損します! 2022年4月施行の年金制度改正法完全網羅。老後2000万円問題にはこう備えよ。

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2000万じゃなくて5000万! いったい老後の資金はいくら必要なのか?『コミック版 やってはいけない老後対策』

2019年6月、金融庁が驚きの発表をしました。いわゆる「老後2000万円問題」と呼ばれるもので、平均的な年金受給者は2000万円の貯蓄がないと生活が破綻してしまうというのです。そんなこと急に言われても、どうしたらいいのかわからないと、誰もが驚いたことでしょう。私も「えっ! そうなの?」と思い、たまらなく不安になりました。『やってはいけない老後対策』は、そんな私たちの「えっ!」に答えてくれる本です。

 

「老後対策」をわかりやすく教えてくれる

著者は、元国税調査官の大村大次郎。国税局に10年勤務した後、経理事務所などを経て、フリーランスのライター・作家として活躍しています。ベストセラー『あらゆる領収書は経費で落とせる』など、多くのヒット作があるので、ご存じの方も多いでしょう。

 

数ある老後対策本の中から、私が『コミック版 やってはいけない老後対策』(大村大次郎・著、西島ユタカ・シナリオ、蒼田山・マンガ/小学館・刊)を選んだのは、著者が国税に詳しいことがいちばん大きな理由ですが、コミック形式の本であることにひかれました。お金の話になると、頭痛がしてくる私としては、読まなければいけないとわかっていながら、税金の本はできれば避けて通りたい難物なのです。けれども、『コミック版 やってはいけない老後対策』は、2018年に出版された『やってはいけない老後対策』をコミック版にしたものなので、私でもなんとか完読できそうだと思ったのです。そして、実際、最後まで一気に読みました。

 

漫画に登場するのは5人。会社員の鈴木浩(59才)、パート従業員として働く妻の美津江(54才)、そして、浩の妹の斎藤明子(48才)、明子の夫の隆一(48才)です。

 

鈴木夫妻はサラリーマンと主婦であり、斎藤夫妻は二人でデザイン事務所を経営しているという設定です。そして、もう一人、鍵となる人物がいます。鈴木夫妻の娘・綾(30才)です。彼女はマネーアドバイザーをしていて、お金の問題に詳しいのです。ストーリーは二組ののんきな夫婦に対して、若い綾が鋭い意見を述べる形で進んでいきます。

 

鈴木夫妻と斎藤夫妻は、老後の生活に不安感を持っていません。まあ、なるようになるだろうと考えています。けれども、綾はそうした甘えを見逃しません。具体的な数字を容赦なく示し、両親や叔母夫妻の生活に警鐘を鳴らします。とくに、叔母夫婦に対しての意見は、手厳しいものとなっています。叔母は「大丈夫」と、言い張りますが、それに根拠などないとわかっているからです。かつては税務署に勤めていた綾の言葉は説得力があります。

 

私にとっても、綾の話は耳に痛いものでした。自分ではなんとかなるさと思ってはいますが、根拠などないのです。自分では頑張って働いているつもりですが、主婦業をしながら原稿を書いてきただけで、会社勤めをしたことがありません。そもそもエッセイストは、原稿の依頼が無くなったら終わる職業です。楽観などできないはずなのに、私は考えないようにしています。

 

ところが、夫は違います。退職して年金生活者になったばかりですが、将来を見据え、考えを巡らせています。彼は40年近く休むことなく働いてきましたから、年金を受け取ることができます。けれども、私とは違い、なんとかなるとは思っていないようです。生活から無駄を省くように工夫をこらしています。さらには、ゆとりある老後のために、準備を怠ってはならないと主張するのです。

 

最近の夫の趣味は、年金生活者の現実を描くYouTubeを見ることです。そこには、ぎりぎりの年金で生活するための知恵がつめこまれています。果たして実話なのか、確かめる術がないものの、年金生活者のひとつの現実を表していると思います。

 

現実を見据えて

『コミック版 やってはいけない老後対策』には、多くの人が目を背けがちな現実がはっきりと描かれています。

 

年金制度そのものがなくなることはあり得ませんが、現行制度がそのまま続くということは考えにくいでしょう。今の年金制度は、これから年金受給対象となるシニア世代だけでなく、年金を納めている若者も、年金だけをあてにしない生き方を真剣に考えなくてはならない時期が来ているのです。

(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

では、いったいいくらあったら、私たちはゆとりある生活ができるのでしょう。著者のシュミレーションによると、「現役時代に5000万円以上の貯蓄が必要」だそうです。もちろん、ケースバイケースだとあり、一概には言えないそうです。それでも、5000万円の貯蓄という具体的な数字にはショックを受けます。

 

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『コミック版 やってはいけない老後対策』には、厳しい現実が示されていますが、私たちが何をすべきかについても教えてくれます。

 

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(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

それはたとえば、車を手放すことであったり、動画などのサービスを見直し、必要でないものは解約すること、さらには電気・ガスなどの契約を見なおすことだといいます。確かに、なんとなくだらだら使っているものを思い切って辞め、生活の見直しをはかるのは、とても大切なことでしょう。

 

これから考えるべきこと

さらに、引退後の住まいについても、言及しています。私たちにとって、「持ち家が得か、借家が得か」は大きな問題です。週刊誌などでも頻繁に特集されています。果たしてどちらが得か? は悩むところです。

 

持ち家の最大のメリットは、「お金がなくなっても、いつまででも住める」「何歳まで生きても住むところには困らない」ということです。

(『コミック版 やってはいけない老後対策』より抜粋)

 

さらには、高齢の単身者に大家さんは家を貸したがらないそうです。一人暮らしの高齢者は、自然死したり孤独死したりするリスクがついてくるからです。残酷な現実ではありますが、考えておかなければならないでしょう。

 

けれども、絶望しすぎないでください。『コミック版 やってはいけない老後対策』は、定年退職するときの注意やちょっとしたコツも伝授してくれます。とくに「繰り上げ受給」にするか、「繰り下げ受給」にするか、迷っている人がいたら、参考になる指摘がなされています。

 

当面、お金に不自由していないのなら、年金はなるべく遅くもらうほうがいいと、著者は言います。様々なケースが挙げられていますから、それを参考にしましょう。どれも「なるほど」と、思えることばかりですが、とくに、定年後のアルバイトは、お金が戻ってくるケースが多い」というのは知りませんでした。アルバイトは、年末調整をしていないため、税金が払いすぎになっているのです。税金の納めすぎは自分で申告しない限り、戻ってこないというのですから、ぼやぼやしてはいられません。

 

『コミック版 やってはいけない老後対策』によって、私は自分の老後について、様々な知恵を授けられました。のんきにかまえていないで、自分で考え、工夫すべきだとも知りました。方法は一つではないので、自分はどのケースに当てはまるのかよく考えてみなければなりません。けれども、ボヤボヤしていてはいけないと思うようになったのは、ひとつの大きな収穫です。

 

【書籍紹介】

コミック版 やってはいけない老後対策

著者:大村大次郎(著)西島ユタカ(シナリオ)蒼田山(マンガ)
発行:小学館

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教育費から老後の資金までお金の不安をまるっと解決!『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』

日本でも「投資文化」が浸透し始め、私の周りでも投資を始めたなんて声を聞くようになりました。けれど投資するお金がなーい!!(笑)

 

さまざまな節約術を試してみたものの、なかなかお金は貯まらない! 日々の暮らしで手一杯になっているご家庭も多いのではないでしょうか? そこで今回は、時短節約家としてテレビやSNSで話題になっているくぅちゃんの本『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』(くぅちゃん・著/KADOKAWA・刊)をご紹介。まずは何から節約したら良いの? とお困りの方におすすめの一冊です。

面倒くさがりでもOKな「時短節約」とは?

最近では、ネットやSNSを通じて節約術を知る機会も増えてきましたが、どれも映えて、ときめいている投稿が多くて……「あぁ私には面倒そうだな〜」と諦めることも多々。仕事で疲れているのに、料理を作るのにも頭を使って、しっかり家計簿を書くことに時間を取られて、睡眠時間が減ってしまっては元も子もないですよね。

 

この『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』の著者であるくぅちゃんの節約術は、どれもすぐできる「時短節約」。手間も時間もかからない、ラクラクな節約術なのです。

 

面倒くさがりだから、自分には手間と時間がかかる節約は向かない。そもそも今どきの主婦はみんな忙しい……そう考えてたどり着いたのが、自分流の「時短節約」です。これからの節約は、いかにラクして効率よく支出を減らせるかがポイント。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

くぅちゃんは、旦那さんと男児2人の4人家族。その節約術は、毎週月曜日は魚の日、木曜日は麺の日と1週間の献立を固定化していたり、朝ごはんを定番化したり、家計簿は3日に1回たった2分で終わらせるなど、どれも真似したくなるようなものばかり。

 

ページをめくるたびに「これくらいでもいいのか!」と、どこか肩の荷が下りるような感覚を覚えます。「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と忙しい節約術が面倒だな〜と感じている人には『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』がおすすめです。

 

便利そう! とあれこれ買っちゃう日用品の節約方法

本書は、食の節約、家計管理法、貯蓄、教育費に関わること、老後のお金に関することの、5つの章にわかれています。食の節約については、タレや練乳、ホットケーキミックスを自作方法や冷蔵庫収納術、1週間のまとめ買いの中身も公開されています。

 

また、日用品についても節約方法が紹介されています。一般のご家庭では「なくなりそうな日用品」を都度買いされていると思いますが、くぅちゃんは必要な日用品を場所ごとにリスト化し、そこに書かれてあるものだけを買い足す方法をしているのだとか。

 

そこで、使っている日用品をぜ〜んぶ書き出し、チェックボックスつきの一覧表を作成。なくなりそうなものをチェックするだけでいいので、前よりずっと簡単になりました。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

リスト化したことで買うべき日用品が明確になり、日用品費が8000円程度から3000円にまで減ったのだとか!

 

我が家では、「そろそろラップがなくなりそう!」となればメモして買ってきますが、たまに「あぁ〜ストックあったじゃん!」なんてことや、隣の棚にあった便利そうな台所用品もついで買いしちゃうこともあるので、リスト化しておくのはとっても便利だと感じました。

 

ちなみに、くぅちゃんのインスタにはこんな投稿が。

 

 

日用品は次から次へと新商品が出るので、「安いから」「便利だから」でついつい買ってしまいがち。手に取る前に考える、買わない選択肢もあることを忘れずにいたいですね!

 

一番の老後の備えは「健康で長く働くこと」

節約することも大切ですが、収入がなければ生活できません。メディアでは老後について不安になるような情報が飛び交っていますが、年金だけで生活しようとするから厳しいのであって、少しでも収入がある暮らしができれば、それが一番の老後の備えになるのではないでしょうか?

 

結局、なんだかんだ言っても、長く働くことが、老後のお金の不安を解消してくれるということです。

長く働き続けるには、健康でなければなりません。健康なら医療費もかからないし、介護費用の負担もありません。

(『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』より引用)

 

未来のことはわからないので、いつ働けなくなるかもわかりませんが、「長く働ける自分」でいることもひとつの節約術なのかも? と感じました。『節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄』には今からできる節約術がたくさん掲載されています。それをやるか、やらないかは自分次第! たくさんのヒントが散りばめられた一冊なので、自分でもできそうなものからまずはチャレンジしてみませんか?

 

 

【書籍紹介】

節約主婦の今すぐ真似できる1000万円貯蓄

著者:くぅちゃん
刊行:KADOKAWA

元浪費ワーママが教える、多忙でもズボラでもできる、だから続く、節約&貯蓄TIPS。テレビ・雑誌で大反響の時短節約インスタグラマー。子どもの教育費、老後、全ての不安を解決!!

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所得は倍増するし、経済は破綻しない!? 元内閣官房参与が説く「日本人を金持ちにする」秘策とは?

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(藤井 聡・著/ポプラ社・刊)。この本を手に取ったとき、なんて衝撃的で、かつ魅惑的なタイトルだろうと思いました。誰もがお金持ちになりたいと願っているものでしょう。けれども、その願いを果たすのは簡単なことではありません。まして、このコロナ禍。お金持ちどころか、果たして明日も働いていられるのかという不安を抱えている人の方が多いと思います。

 

知り合いの若者は、私のことを「三浦さんには、明るい未来を信じて生きてきたヒト特有の呑気さがある」と、なかばあきれられ、そして、うらやましいとため息をつかれます。確かに、昭和31年生まれの私は、子どものころから、昨日よりも今日、そして、今日よりも明日が良い日になると信じて暮らしてきました。日本経済は右肩上がりの成長を続けており、実際、生活は楽になっていると感じていました。ただし、バブルがはじけるまでの話ですが。

二人の著者について

『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』が出版されたのは、2021年11月15日。岸田内閣が誕生してすぐのころです。著者は藤井 聡。京都大学大学院工学研究科の教授であり、2012年〜2018年まで、安倍内閣の内閣官房参与をつとめていました。都市工学の専門家で、防災に詳しいのはもちろんのこと、経済問題にも警鐘を鳴らしてきた論客です。『こうすれば絶対よくなる!日本経済』や『令和日本・再生計画』などの著書も多く、日本のこれからに鋭い意見を遠慮なくぶつけてきました。

 

『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』には、もう一人著者がいます。フリーライターの木村博美です。彼女は自ら「何でも書きます」と宣言し、幅広い分野で活躍してきました。何でもと言っても、「興味のあるもの」に視点を定め、聞き書きという手法を駆使して、専門家の知識を吸収しながら、読者を理解に導いていきます。読者と同じレベルに自分を置き、難しい問題をわかりやすく解説してくれるのです。この本では、彼女がここ数年感じていた息苦しさの理由を日本経済のゆがみにあると気づき、専門家である藤井 聡を質問攻めにします。

 

二人の交わす丁々発止なやりとりを面白く読みながら、私も日本経済について考えるようになりました。このコロナ禍、景気が悪くなるのは仕方がないと思っていたのですが、このままでは取り返しのつかないことになってしまうとわかったからです。今までは、経済の問題は難しくて対処不能。私にできることは、せめてお金をなるべく使わないようにしながら暮らすことだと考えてきましたが、それではいつになっても問題は解決しないのだということも知りました。

 

岸田ビジョンは達成できるのか

岸田文雄総理は、総選挙の際に「岸田ビジョン」を掲げました。とりわけ経済に注意を払い、「所得倍増」計画を実行すると約束しました。適切な措置を行えば、私たちの所得はなんと2倍になるというのです。かつて、池田内閣のもと「所得倍増計画」が敢行されたことがあります。と言っても、若い方たちはピンとこないでしょう。何しろ60年も前のことですから。けれども、『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』には、当時のことがわかりやすく説明されています。

 

かつて行われた「所得倍増計画」とは、昭和35年(1960年)に池田勇人内閣が掲げた長期経済政策です。池田首相は10年間で国民所得を2倍にすると宣言し、さまざまな経済対策を行いました。そしてその結果、当初の目標である「10年」より遥かに早くたった「7年」で日本の国民一人当たりの実質国民所得は2倍の水準に達したのでした。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

所得が2倍に。考えただけでうれしくなります。けれども、それを果たしたのは昔の話で、令和の時代にそんなことが実現可能なのでしょうか。ハイパーインフレが起き、たとえ所得は2倍になっても、生活はさらに苦しくなるのではと、不安になってしまいます。それなら、現状維持の方がマシなのではないかとも思います。何ごとにも消極的で、現状維持が大好きな私は、新しい試みに弱いのです。けれども、そんなことを言っていては、現状維持すら難しくなることをこの本で学びました。

 

「えっ」と「げっ」をキーワードに

政治のことはよくわからず、経済に至っては無知に近い私です。これではいけないと思いつつも、「ま、プロにまかせておくに限る、なんとかしてくれるだろう」と、日々を過ごしてきましたが、やはり丸投げはいけません。何とか食べていかなくてはなりませんし、できれば、孫の代まで、そこそこ豊かな生活ができるような仕組みを作っておかなくてはと、願ってもいます。日本はそれができる国だったはずです。

 

これまでは、不況がなぜ長引くのかわからないまま、トンネルを抜け出すには我慢するしかない、きっといつか明るい未来が待っているのだから、今は堪え忍ぶのが大事だと信じてきました。けれども、その根拠は? と、問われると、特にないことに気づきます。このままではいけないと、私は気合いをいれて『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』をくり返し読みました。経済に無知なので手こずるに違いないと覚悟していたのですが、そうでもありませんでした。聞き手役に徹する木村博美が、わからない部分を質問してくれるからです。

 

木村が「えっ」とか「げっ」という言葉で反応している部分は、私にとっても「えっ」とか「げっ」であることにも気づきました。驚いたり、のけぞったりする部分が、一致しているのです。

 

たとえば、40ページの「えっ」について。ここで藤井先生は、「日本政府が国債を発行して資金を調達していますが、そのことによって、経済が破綻することはありません。なぜなら、国債が円建てであるかぎり、日本政府はいつもそれを用立てることができるからです」と、教えます。これに対する木村の反応は「えっ」です。

 

そして、どうしてそんな離れ業ができるのかと問います。木村だけではありません。私も「えっ」と、なりました。日本政府が借金を踏み倒すことになっては大変だと思っていたからです。けれども、お札を製造するのは他でもない日本銀行であり、それは政府の子会社だから、大丈夫だというではありませんか。

 

簡単にいえば、要するに「政府は、おカネをつくり出すことができる」ということなんです。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

「えっ」だけではありません。「げっ」や「ひぇ〜っ」もあります。こうした言葉が発せられている場所を探して、読み直すと、さらに理解が深まります。

 

私にとって、一番の「ひぇ〜っ」は、190ページでした。そこには世界各国の成長率ランキング表が示されています。それによると、日本は成長率ランキングのどん尻にいるというではありませんか。この結果について、先生はこう教えます。

 

日本は98年からデフレ・スパイラルに突入してしまい、そこから抜け出せなくなってしまった。(中略)日本だけが成長できなくなり、世界経済における国力としての経済力が激しく縮小していくと同時に、国民所得は縮小し、さらには、政府の財政も悪化し続けるという悪夢のような状況に立ち至ってしまったのです。

(『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』より抜粋)

 

こんな大変なことになっていたなんてと背筋が寒くなります。と、同時に、「ま、いいや」と思っていた自分を恥じてもいます。信じがたい事態が起きていると感じていながら、目をそむけて「誰かが何とかしてくれる」と信じていたのですから、我ながらおめでたいと思います。

 

これからは、経済について書いた本を毛嫌いすることなく読み、自分の頭で消化して、考える努力をしなくてはと思います。私たち日本人が、大金持ちではなくても、まあまあだなと思える毎日を得るために、しゃんとしなくてはと、決心したところです。

 

【書籍紹介】

 

なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか

著者:藤井聡
発行:ポプラ社

元内閣官房参与が説く、日本を貧困化するシステムと景気V字回復への提言。日本人を貧しくした「経済の嘘」に騙されるな。富裕層だけが知っている裏のからくりとは? コロナ禍を超えて、日本人を金持ちにする秘策を明かす! 岸田内閣の「所得倍増」はこうすれば実現する!なぜ、日本だけが取り残されたのか? 国民が金持ちにならないように政府がついてきたウソをここに暴く!

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大人だってまだ間に合う! あなたの金融リテラシーを上げる『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』

日本の株価は上がらない。欧米市場の好況の影響が及んでも、上げのスパンはきわめて短い。賃金や物価の長期にわたる横ばい状態とも無関係ではないだろう。そういう見方がある。

 

日本の株価は安すぎる?

最近、ちょっと株式相場に関わっている。とは言っても、筆者よりもはるかに真剣な姿勢で取り組んでいる奥さんから話を聞いて知識を増やしているだけなのだが。ただ、その程度でも日本の平均株価が世界と比べて低すぎるレベルにあることは容易に理解できる。

 

理由のひとつとして、日本人投資家の絶対数の少なさが挙げられる。株が売れれば株価は上がる。しかし、株を買う人の絶対数が少なければ、ある程度まで上昇したところでそれ以上伸びようがない状態になる。外国からの資金も入るが、主軸であるべき日本国内の買いのボリュームは決して大きいとはいえないようだ。

 

金融リテラシーを効率的にはぐくむ方法

大多数の日本人は株式投資に関する知識が不足していて、それが消極的な態度になって現れるのかもしれない。たとえば、アメリカでは中学校で株式投資をはじめとする金融リテラシーをはぐくむ授業が始まるので、距離感が日本とは根本的に違う。中国だって、投資はごく一般的に行われている。

 

「じゃあやってみよう」という気になったとしても、むやみに始めれば損をするに違いないと感じ、ひるんでしまう。何らかの指針は絶対に必要だ。英語の学習とは違って、投資に「やり直し」という言葉のニュアンスは当てはまらない。日本では、大人になってから投資を基本から学び、まったく新たな試みとして取り組んでいくほうが普通だからだ。効率的に学ぶにはどうするか。金融リテラシーに関するマインドをリセットして、株式投資に対してありがちなネガティブな感覚を取り除いた上で、一から教えてもらえばいい。

 

本気で取り組んでいくための第一歩

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』(山崎将志・著/日経BP・刊)は、筆者を含むビギナー投資家の教科書としてぴったりの一冊だ。帯に記されたコンセプトは、“親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと”となっている。全編が親子の対話形式で進んでいくフォーマットは新鮮でわかりやすいし、参加意識が高まる。章立てを見てみよう。

 

第1講 お金持ちの正体

第2講 どんな会社に投資するといい?

第3講 株価情報をどう見るか

第4講 父さんの保有銘柄

第5講 株式投資のための教養

第6講 父さんのしくじり—後悔と反省

第7講 いざ、実践

 

若い世代を念頭に置いて、「普通の人」がお金持ちになる唯一の道という視点で株式投資を考えていく本書では、最初から大きな金額を注ぎ込むことは想定していない。株式投資という行いのコンセプトやルールから入り、最終的に実践マニュアルにつなげていくという流れになっている。

 

印象深い言葉の数々

この本は、株式投資に興味のある中高生のみなさんと、株式投資を学ぶことで自分の中高生の子どもたちに豊かな人生を送ってもらいたいと考える親御さんに向けて書きました。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

山崎氏ご自身が息子さん二人に株式投資の基本についてした話を土台にした本書の対象は明確だ。随所にちりばめられた印象深い言葉に触れるたびに手が止まる。

 

「できないことができるようになることが大事」

「自分の予測と結果を突き合わせる経験を積み重ねていくと、どんどん見る目が養われる」

「中高生の時点からやりたいことを見つけるヒントを探すことはできる」

「本当に頭のいい人何人かで考えたことに、十分な資金が投入されると、未来は実現してしまう」

「悲観的な視点を持つと株式投資ではチャンスを逃す」

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

大人だって、まだ間に合う

著者の目線はあくまで中高生に向いている。それはコラムで「勉強することの本当の意味」とか「大学選びの基準」、「就職先はどう選ぶか」などについて書かれていることからもわかる。それと同時に、GAFAの株価が高い理由や株価チャートの見方など、大人がすぐに使えるような超実践的知識についても詳しく記されている。こうしたことがらを“普通に”身につけている大人はどのくらいいるだろうか。この本を、例えば高校2年生の夏休みあたりに読むか読まないかで、10年後のマインドセットがかなり変わってくると思う。「おわりに」に次のような文章がある。

 

株式投資はギャンブルではありません。あらゆるギャンブルには胴元がいて、プレーヤーの期待値は必ずマイナスです。しかし株式投資には企業の利益という裏付けがあります。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

当たり前だろ、と言う人がほとんどにちがいない。でも、その当たり前なことを自分ごととしてとらえていないから、日本国内の株式投資プレーヤーが増えないのだ。大人になって、かなり時間が経っていたとしても、まだ決して遅くはないと思わせてくれる一冊だ。

 

【書籍紹介】

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。

著者:山崎将志
刊行:日経BP

「普通の人」がお金持ちになる唯一の道は? 親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと。

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3000円の使い方で人生が決まる——あなたのお金に対する意識を変える家族小説

もし、目の前に3000円がポーンと現れたらあなたは何に使いますか? 私なら「宝くじ買っちゃう!」と思ってしまうのですが(笑)、ふと手に取った『三千円の使いかた』(原田ひ香・著/中央公論新社・刊)を読んで、考え方が変わりました。

 

たかが3000円、されど3000円。一度で使い切ればあっという間になくなってしまう金額でもしっかり計画を立てれば人生にとっても大切な3000円になるはず。今回は、お金の価値観を優しく変えてくれる『三千円の使いかた』をご紹介します。

3000円で人生が変わる?

この『三千円の使いかた』は、自己啓発本ではありません。一人暮らしを始めた美穂ちゃん、その姉で、結婚前は証券会社に勤めて貯金も600万円近くある真帆さん、とある病気にかかったことで人生を少し見つめ直し始めた母親の智子さん、そして1000万円の貯金がある祖母の琴子さんの4人、それぞれの視点でお金の価値を語る、家族小説。そのため、冒頭はこんな言葉から始まります。

 

人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。

え? 三千円? 何言っているの?

(『三千円の使いかた』より引用)

 

私も「3000円で?」と驚いたのですが、この小説を読み進めていくと確かに3000円の使い方で人生は決まるかもしれないな……と感じました。

 

例えば、仕事前に喫茶店に立ち寄って新作のクリームたっぷりなコーヒーを頼んで700円、ランチを奮発して1200円、仕事帰りにちょっと一杯飲みに出かけて1100円使えば、1日で使い切ってしまいます。

 

けれど、雑貨屋さんでお気に入りのカップ1200円と、近所の自家焙煎コーヒー店で800円の豆を買えば1000円余るし、コーヒーも10日くらいなら飲み続けられるのではないでしょうか? どちらの価値もその人次第で変わりますが、気がついたら3000円がなくなるような暮らしかたをしていませんか? 自分のお財布事情と照らし合わせながら、主人公たちのお金の使い方・貯め方を読み進められるので、個人的にはノウハウ本を読むよりもめちゃくちゃ参考になった1冊でした。

 

8×12は魔法の数字?

小説に登場する美穂ちゃんは、貯金するなんてことも真剣に考えていないし、将来のことにあまり不安も抱えていませんでした。まるで、私のよう!しかし、あることをきっかけに「真剣にお金と向き合おう」と考え直すように。3000円で開催されていた節約セミナーに参加した美穂ちゃんは、こんなことを聞きます。

 

「今日はこれだけ。これだけ覚えて。あなたの脳裏に刻みつけて欲しいの。さあ、八×十二はいくつですか?」

九十六! という声が会場から上がる。

「はい。ご名答。毎月八万ずつ、それにボーナス時に二万ずつ貯めます。そうすると、あら不思議。一年に百万円が貯まっちゃうの! そして、一年に百万ずつ貯められれば、三十代のあなたは六十歳の定年までに三千万、二十代のあなたなら四千万貯まります。さらにそれを三%複利で運用できれば税抜きで約四千九百万と約七千七百四十万になります。もう老後は心配なし!」

(『三千円の使いかた』より引用)

 

月8万円……どうやったら貯められるのだろうか? 私はこれを読んで結構真剣に悩みました(笑)。固定費から見直してみると、無駄使いの多いこと、多いこと……我ながら「なんでこんなにサブスクに入ってるんだ!」と驚きました(笑)。

 

もし家族で家計を管理しているのであれば、8万円どうやって貯めるのか考えてみると楽しいかも。最近では色々と投資や資産運用という言葉が飛び交い、そちらに気を取られそうになりますが、まずはどうやったら固定費を貯蓄に回せるか? それを考えるだけでも大きな一歩になるはずですよ。

 

老後、働くのはありか、なしか。

この『三千円の使いかた』は、それぞれ立場の異なる4人の女性が「今」何をするべきか、悩み、向き合う話が掲載されています。私は「できることなら老後も働きたいな」と考えていたので、祖母・琴子さんの話はとても参考になりました。

 

琴子さんは、習い事が好きなお嫁さんの智子さんから「おせち教室」の講師を頼まれ、お礼にと5000円をもらいます。そこから「私も働きたい」と働く意欲が湧いてきたのですが、コンビニの面接を受けるも年齢を理由に不採用になってしまいます。

 

働きたい。

そんな琴子の小さな、いや、七十代にしては壮大な夢を、どうしたら、叶えられるのだろうか。

(『三千円の使いかた』より引用)

 

老後になってから「働くところくらいあるっしょ!」なんて簡単に考えていましたが、こんなにも厳しいとは……。結果として、琴子さんは働くことができましたが、もしかしたら現実はもっと厳しいものかもしれませんよね。

 

一人暮らしの場合、家庭を持っている場合、子どもたちが自立した場合、老後の生活……など同じ立場でもお金との関わり方は千差万別だと感じました。私も「貯金なんかなくていいや〜」と思っていましたが、『三千円の使いかた』を読んで貯金したくなったし、何より家計簿もつけたくなりました。身近なことからコツコツとに敵うものはないかもしれませんね!

 

毎日を楽しく、気持ちよく過ごすためにも一度自分自身のお財布事情を見直してみるのはいかがでしょうか? 私も宝くじを買ったり、ギャンブル好きな気質があるので(笑)3000円から使い方を見つめ直してみたいと思います。

 

【書籍紹介】

三千円の使いかた

著者:原田ひ香
刊行:中央公論新社

就職して理想の一人暮らしをはじめた美帆(貯金三十万)。結婚前は証券会社勤務だった姉・真帆(貯金六百万)。習い事に熱心で向上心の高い母・智子(貯金百万弱)。そして一千万円を貯めた祖母・琴子。御厨家の女性たちは人生の節目とピンチを乗り越えるため、お金をどう貯めて、どう使うのか?

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Facebookの共同創始者が提唱する5万5000円の「保証所得」で世の中を変える方法

もしも毎月5万5000円がもらえるとしたらどうしますか。そのお金があれば今の生活をほんの少し豊かに彩ることができるはずです。そんなワクワクさせられるシステムを提唱する人がいます。実現したらどんな毎日が待っているのでしょうか。

 

日本での10万円給付

日本ではコロナ禍の2020年6月、国民に特別定額給付金10万円が給付されました。その受給率はなんと99.4%で、受給申請をしなかったのはわずか34万世帯だったそうです(総務省調べ)。日本には1億円以上の金融資産を持つ富裕層が132.7万世帯いる(野村総合研究所調べ)というので、裕福な層であっても多くが給付金を受け取っていたようです。

 

私の2人の子どもたちは給付金を貯金していましたが、私はその額とほぼ同額の大型冷蔵庫を購入しました。すると冷凍容量が倍に増えたおかげで食材の補充は週に1度で済むようになり、私の生活の質は向上したのです。

 

幸福感と消費欲

お金を給付されると、お年玉を受け取った子どものように心が明るくなり、幸福感が増すことがあります。臨時収入で気分が浮かれて何かに使いたくなる人も少なくないでしょう。消費は必要最低限にしたほうがいいという人もいますが、お金を使って楽しいことをしたり、可愛いものを買ったりすることで、人生は素敵に彩られると思うのです。

 

1%の富裕層のお金でみんなが幸せになる方法』(プレジデント社・刊)の著者であるクリス・ヒューズはFacebook共同創始者。彼は20代にして数億ドルの資産を持つ超富裕層となりました。彼は貧困問題の解決のために奔走するようになり、年間収入5万ドル以下の人に月500ドル(日本円で約5万5000円)を毎月配ることが問題解決になるのでは、と思い至りました。これを保証所得と言います。

 

500ドルは、富裕層にとってはささやかな額かもしれません。けれど中流階層や貧困層にとっては、必要最低限以外のものを購入する素晴らしいきっかけとなるのです。彼は「自分にとって一番大切なことにお金を使うことができる」ようになり「夢を追いかける尊厳と自由」が尊重されるようになるのだと説きます。

 

労働者の定義とは

もし保証所得が導入されると、アメリカでは6000万人が受給対象になります。全人口のおよそ20%ほどです。条件は年収5万ドル以下の「労働者や社会に貢献している人」。給与を得ていなくても「幼い子どもの母親と父親、高齢の親を介護する人、大学生」なども対象者なのは素晴らしいことです。

 

本書には、育児や介護や勉学という理由で「一時的に仕事から離れている労働者」も給付対象だと書かれていました。そういえば日本でも、仕事を減らしたり休んだりして、大学や大学院で学び直す人が増えています。彼らは学んで得た知識を職場に戻ってから生かすはずで、潜在的な労働者だとしたら、確かにそうなのです。

 

1%が世界を変える

クリス・ヒューズはこの保証所得の原資はアメリカの超富裕層への増税だと説きます。その数は人口の1%ほどの300万人。アメリカの富の40%を所有している1%の彼らが、少し多めに税金を納めれば数千万人の対象者が救われるのだとか。

 

この計画が実現されるかどうかはまだ決まっていません。けれど人間は夢を見ることができます。もし月々5.5万円を得られたらどんなことをしようかと楽しく思いを巡らせるだけでも、自分が本当にやりたいことが見えてくるのではないでしょうか。そしてその夢は、いつか叶えたい目標として、自分を奮い立たせてくれるはずです。

 

【書籍紹介】

1%の富裕層のお金でみんなが幸せになる方法

著者:クリス・ヒューズ
発行:プレジデント社

フェイスブックの共同創業者として、20代の若さで巨万の富を手にした若き理想家が、自らの富と経験を注ぎ込んで取り組む「最も困難な問題」の現実的な解決策が「保証所得」という考え方だ。その財源のすべては「上位1%の富裕層への増税」で賄える…。

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知っているのといないのとでは大違い! 絶対に役立つお金の新常識が満載——『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』

近ごろ私の周りでも「貯金がなかなか増えなくて」「給与アップのために転職したくてさ」「家のローンが大変で」なんて、お金にまつわる話を当たり前にするようになりました。

 

今やどこにでも情報があるんだから自分で調べればいいよね! と思いつつ……お金については知らないことがあり過ぎて、「え〜! そうだったの!?」と後悔してしまうことも度々。これ以上後悔したくない! だけど何から始めたらいいかわからない! そんな方におすすめなのが、『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』(前田晃介・著/徳間書店・刊)。全部で88問のドリルを解いていくだけで、お金についてお得な知識が身につけられる、ありがたぁ〜い一冊です。

携帯料金、60年支払い続けたらいくらになる?

『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』は以下のような問題が88問掲載されているドリル形式の本。「本が苦手」「難しいことはちょっと……」とネガティブに捉えてしまうような人でも、気軽に楽しみながら読み進めることができます。

 

大手キャリアで携帯電話を契約しています。60年間使い続けると、1人あたりいくら支払うことになるでしょう。

 

1 約230万円

2 約470万円

3 約580万円

4 約720万円

(『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』より引用)

 

この正解は「約720万円」なんです!!! こうやって金額で提示されるとギョッとしてしまいますよね。ちなみにこの計算方法は、MMD研究所「2019年スマートフォンの料金に関する調査」での平均月額価格8023円をもとに計算されています。

 

一度、毎月の携帯料金に、12か月と60年間をかけて計算してみましょう。「これなら車買えるじゃん」と思う人も多いはず! 今後、よほどのことがない限り携帯電話やスマートフォンは使い続けるものだと思いますので、毎月の料金をどうやって抑えるか考えてみるのも良いかもしれませんね。

 

「ポイ活」で海外旅行も夢じゃない! 3年でどこまで行ける?

最近なにかと話題の「ポイ活」。私も、ヨドバシカメラのクレジットカードの還元率が異様に高くて、貯まったポイントでダイソンの商品を購入することができました。ポイントだけで欲しかった商品を手にできると、むちゃくちゃ得した気持ちになりますよね!

 

そんな「ポイ活」で海外旅行も夢じゃない! 本当に〜? と思ったそこのあなたに、こんなドリルをご紹介します。

 

ふだんの生活の中で、すべての支払いをクレジットカードにしました。3年後に貯まったポイントを使って、海外旅行(往復航空券)はどこまで行けるでしょう?(月の生活費25万円、還元率1%とします)

 

1 韓国(ソウル)

2 タイ(バンコク)

3 ハワイ(ホノルル)

4 フランス(パリ)

 

(『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』より引用)

 

所詮ポイントでしょ? と侮るなかれ! なんとこの正解は「フランス(パリ)」! 1年間で3万円分のポイントが貯まる計算なので、エコノミーですが、1ポイント=1マイルに移行させると3年で9万マイル。パリまでのマイルと交換できてしまうという計算です。繁忙期など時期によって必要なマイル数は変わりますが、往復の航空券がポイントで交換できたらうれしいですよね〜!

 

ちなみに、よく旅行をする! という方は、旅行会社が運用している「旅行積立」もおすすめ。本書を読むまでそんな積立があるのも知りませんでしたが、今の時期に積み立てておいて、ポイントと合算してビジネスクラス、いやファーストクラスでハワイへ……あぁ〜夢が広がりますね!(笑)

 

年金は繰り上げたのと繰り下げたの、どちらがいくら得する?

友人と話をしていても、30代半ばを過ぎればトピックスは「私たちの老後ってどうなるんだろうね」です。

 

何も気にせず、何も考えず楽しく生きていた時代を過ぎ、先行きの見えない未来を案じながら時間を過ごしている今日このごろですが、可能な限りお金の心配をせず、老後の生活を楽しみたいですよね。そこで重要となるのが「年金」。受給できる年齢が変わったり、支払われる金額が下がってしまったり、あと30年後には果たして年金生活できているのかしら……と考えてしまいます。年金について心配がある人はこのドリルを解いてみましょう。

 

年金を繰り上げ受給して60歳から受け取った場合と、65歳からスタートした場合。90歳の時点でどちらのほうが得でしょう? 65歳の年金額は180万円とします。

 

1 60歳で受け取った方が20万円の得

2 どちらもそれほど変わらない

3 65歳で受け取ると20万円の得

4 65歳で受け取ると700万円以上の得

(『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』より引用)

 

さほど変わらないだろうと思いきや、「65歳で受け取ると700万円以上の得」なんです! さらに言うと、繰り下げ(65歳より後に受給をスタートさせる)たほうがもっと増額されるのだとか。いやぁ〜70歳まで働きたくないけれど、人生100年時代を生きていく私たちにとっては70歳まで働いて、30年間しっかり年金をいただいて、100歳まで生きるというのが当たり前になるのでしょうかね。ここ数年でも年金制度についてはコロコロと変わってきているので、しっかり今後もチェックしていかねば! と思った次第です(とはいえ、自分が何歳まで生きれるか、わからないけれど……)。

 

『読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88』には、他にも「空き家になった実家にかかる費用は?」「iDeCoとNISAってどっちがいいの?」「ふるさと納税の仕組みは?」「カーシェアとレンタカーならどちらが得?」など身近なテーマからお金の正しい知識を身につけることができます。

 

学校ではなかなか教わる機会のない「お金」のことなので、お子さんやおじいちゃん・おばあちゃんと一緒に学べると良いですよね。定価1500円+税のこの本ですが、88問のドリルをしっかり解くことができれば、確実に1500円以上のお金は得できる一冊なので(笑)、迷っている方はぜひ読んでみてくださいね♪

 

 

【書籍紹介】

読むだけで1億円以上得する! お金ドリル88

著者:前田晃介
発行:徳間書店

将来に役立つ令和版、お金の新常識!

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金融の「ルール」「常識」「法則」を知り人生の利益の最大化をする−−『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』

2週間ほど前の話だ。アメリカ株式市場を舞台に『レ・ミゼラブル』の『民衆の歌』が響き渡るような出来事が起きた。

 

超有名トレーダー軍団vs名もなき個人投資家集団

「GameStop」という全米規模のチェーン店がある。アメリカでは小さな町のモールでもよく見るテレビゲームの小売店だ。2021年1月末、この会社の株価が1600パーセント上昇という爆上げを記録した。年明け直後の時点での価格18ドル84セントから1月29日には340ドルを超える驚異的なスピードの値上がり。筆者はそれほど経済通ではない。でも、株式投資を本格的に始めて1年半が過ぎた奥さんからこの出来事のスゴさをよーく説明され、驚くべき現象であることが理解できた。

 

なぜこんなことが起きたのか。株式市場での存在感を増し続けている無数の個人投資家が力を合わせ、はっきり言って冴えない銘柄の株価を意図的に上げるという行動に出たのだ。ウォール街のプロトレーダーたちを相手に喧嘩を売り、圧勝したともいえる。「Reddit」の「WallStreetBets」をはじめとするSNSの投資フォーラムでつながった名もなき個人投資家たちが結束して資金を大量に注ぎ込んだ結果、専門家も信じられないような角度で株価が急上昇するに至ったというわけだ。

 

金融リテラシーを上げたい

筆者は、株式投資という行いを10年前よりもはるかに身近に感じている。ちょっとまとまったお金があったとしよう。それを銀行に預けておくだけでは何も起こらない。当たり前の話だが、計画性もなくただおろして使うだけでは減っていくだけだ。そこで、そんなに大きな金額ではなくても参戦できる株式投資の方法を探って実践し続けている。まあ、実際の作業を担っているのは奥さんなんだけれども。

 

奥さんのおかげで少し読めるようになった株価チャート、そして毎日朝と夜に欠かさず見ている経済ニュースに加え、筆者の金融リテラシーをワンステップ引き上げるための新しいツールとなってくれそうな本を見つけた。

 

知的な人生設計とは

新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(橘 玲・著/幻冬舎・刊)には、「知的人生設計のすすめ」というサブタイトルが付けられている。2002年に出版された同タイトルのオリジナル版の内容を見直す方向性で加筆され、新版として出された。アップデートが必要な理由は、経済というものが、変化を止めることがない生体であるからにほかならない。ただし、変わらない部分もある。まずは、「はじめに」で記されているこの本の立脚点となる絶対的な原則を見ておきたい。

 

本書で繰り返し問うているのは、「経済的な視点から見て、私たちが生きているのはどういう社会なのか」ということです。それを知ることではじめて、“正しく”生きる方法がわかります。

                  『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』より引用

 

ざっくりとした構成は以下のようになっている。

 

Prologue   1995―2014

PART1 人生を最適設計する資産運用の知識

PART2 人生を最適設計するマイクロ法人の知識

PART3 人生を最適設計する働き方

Epilogue   新宿中央公園のホームレス

 

ここで強調しておきたいのは、各パートを読み始める前と読み終えた後に、「はじめに」で記されているこの本の原則についての文章に戻ることだ。このルーティーンによって理解度が高まる気がする。

 

黄金の羽根を見つけよう

タイトルに盛り込まれている“黄金の羽根”とは何か。著者はその概念を以下のように定義している。

 

制度の歪みから構造的に発生する“幸運”。手に入れた者に大きな利益をもたらす。

                  『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』より引用

 

ワールドカップサッカー日韓大会を例に、ていねいな書き口の文章で黄金の羽根についての説明が行われている。とても分かりやすいので、さまざまな仕組みに当てはめて自分なりに咀嚼し、展開していけるだろう。

 

ルール・常識・法則

70以上の項目でつまびらかにされていくのは、著者が自らの体験を通して紡ぎ出した「ルール」と「常識」そして「法則」だ。これら三つの要素が核心をなすこの本は「金融リテラシーを引き上げてくれそう」と書いたが、本書の真のテーマは人生を俯瞰して生きるスキルを高めていくことにちがいない。

 

経済が生体であることは、すでに1年間続いているコロナ禍を見ても実感できる。それに加え、これまで制度とされてきたものの大部分がリセットされる時代は確実に、そして静かに到来しつつある。著者が言う“正しく生きる方法”は、毎日重ねられていく小さな変化を見逃さず、変わらない部分を認識していくことによって育まれるのだろう。筆者に最も刺さった一文を記しておく。

 

経済的に成功するためには、経済合理的でなくてはならない。国家は神聖なものでも、崇拝や愛情の対象でもなく、人生を最適設計するための道具だ。

                  『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』より引用

 

著者が示す「ルール」と「常識」そして「法則」を意識しながら生体である経済と向かい合っていれば、ある日突然、黄金の羽根のほうから近づいてきてくれるかもしれない。

 

【書籍紹介】

 

新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方

著者:橘 玲
発行:幻冬舎

自由な人生を誰もが願う。国、会社、家族に依存せず生きるには経済的独立すなわち十分な資産が必要だ。1億円の資産保有を経済的独立とすれば欧米や日本では特別な才は要らず勤勉と倹約それに共稼ぎで目標に到達する。黄金の羽根とは制度の歪みがもたらす幸運のこと。手に入れると大きな利益を得る。誰でもできる「人生の利益の最大化」とその方法。

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お金持ちになるために切り捨てるべき人間関係を見分ける4つのテクニック ──『人生を変える、お金の使い方。』

人生を変える、お金の使い方。』(千田琢哉・著/学研プラス・刊)は、3千人以上の成功者たちによる「お金の使い方」を分析して、51項目にまとめたものです。そのうち4項目を厳選して、金銭トラブルから学べること、時間をムダにしない方法、最高の投資とは何か、ブーメラン理論を紹介します。

 

 

金銭トラブルから学べること

金銭トラブルを起こしたから絶縁するのではない。もともと絶縁すべき相手だから、必然的にその相手と金銭トラブルになったのだ。
(中略)
金銭トラブルを起こした相手とダラダラ付き合っている人たちは、例外なく悲惨な人生を歩んでいる。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

金銭トラブルが発生したら、回収するよりも「トラブル相手と縁を切る」ことを優先しましょう。貸し倒れコストよりも回収コストのほうが高くつくからです。たとえば、失踪したトラブル相手に貸した10万円を取り戻すためには、興信所に依頼したり回収できるか不安になったりして物心両面で10万円以上のコストを負担することになる、という感覚です。

 

金銭トラブルにおいては因果が逆転します。不誠実な借り手は、利子の支払いを重ねていくうちに、お金を貸してくれた人のことを憎むようになります。やがて返済不能に陥ると、貸してくれた恩人のことを守銭奴呼ばわりします。絶縁するのにふさわしい相手です。

 

 

時間をムダにしない方法

「このラインを超えたら断る」と決めておくと、無駄な時間が削減できる。
(中略)「時間は命の断片であり、その時間を一緒に共有したくない相手とは関わりたくない」

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

「不快」や「気に入らない」という感情を見逃してはいけません。好き嫌いこそが、あなたの人生を左右します。嫌いな相手には、こちらの情報をなるべく与えたくありません。悪用されたくないからです。情報を隠しながらやりとりするのでコミュニケーションに膨大な時間を要します。つまり、嫌いな相手との関係を続けることは、多くの「機会損失」を生み出します。

 

損害をもたらす相手を見分けるために、独自の基準を定めておきましょう。遅刻するときに連絡をしてこない人。ノー・サンキュー。初対面なのにタメぐちの人。グッドバイ。「キライだな」と感じるのは、あなたと価値観が離れているからです。ビジネスでも結婚でも「価値観のすり合わせ」は手間がかかります。価値観が近い人(スキな人)と付き合ったほうが時間はムダになりません。

 

生きていればトラブルや損失はつきもの。ふて腐らずに「勉強代を支払った」と納得するためには、ちょっとした考え方のコツがあります。

最高の投資とは何か

一度も損しなくて済む人生なんて、この世に存在しない。
(中略)
人生には、実際に痛い目に遭って初めて、「なるほど、こういうことだったのか!」と気づかされることも多い。それも含めてすべてが「勉強」だと思うからだ。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

小さいリスクで大きなリターンを得るための投資方法があります。それは「勉強」です。投資には失敗がつきもの。株や債券の投資信託、仮想通貨、マンション購入などで失敗すれば数百万〜数千万円の損失です。しかし、大量の本を買って読んだり学校に通ったりセミナーに参加したりすることによる失敗なんて、たかが知れています。「恐れるべき失敗」と「恐れるほどではない失敗」。うまく見分けて、上手な失敗ができるようになりましょう。

 

 

ブーメラン理論

お金に限らず「損をした」と悔しい気持ちになった経験は誰でもあるだろう。しかし、「損をした」と何かを恨んでいるだけでは、いつまで経ってもあなたの人生は好転しない。
(中略)
結局、すべての原因は、ブーメランを投げたあなた自身にあるのだ。

(『人生を変える、お金の使い方。』から引用)

 

本書『人生を変える、お金の使い方。』の著者は、お金を使うことはブーメランを投げるのと同じであると述べています。ブーメランを放り投げると、空中で旋回したあと、投げた人間のもとに戻ってきます。つまりブーメラン理論とは、お金を使えばその結果があなたに必ず影響を与えるというものです。

 

あなたは1日のあいだに何度もブーメランを投げている。その自覚はありますか? 感謝を込めてブーメランを投げれば、当然のように感謝が戻ってきます。見返りを求めずにブーメランをたくさん投げていれば、忘れたころに嬉しいブーメランとして戻ってきます。不幸を呼び寄せるようなブーメランを投げるべきではありません。

 

お金の使い方、発言、行動、すべてがブーメランであることを心がければ、きっと人生はうまくいきます。お試しください。

 

【書籍紹介】

人生を変える、お金の使い方。

著者:千田琢哉
発行:学研プラス

貯蓄よりも投資。これは現代ビジネスパーソンにとっていまや常識である。20代がやっておくべき”投資”について著者・千田琢哉は断言する。「お金は勉強と環境に投資せよ!」使えば使うほど人生が最大化する、本当のお金の使い方を大胆かつ実践的にコーチ!

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ATMでは8000円以上おろしてはいけない。――『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』

財布にお金をかける人は多い。一流ブランドの財布、あるいは、金運を招く財布を持っていれば、なんとなくお金が貯まっていくような気がするからだ。

 

しかし! 『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』(山崎俊輔・著/日経BP社・刊)を読むと、それは間違いらしい。むしろビニール製などの安い財布に少ないカードを入れておくだけのほうがお金が貯まるというのだ。

 

 

お金が貯まる人の財布は軽い!

ファイナンシャルプランナーであり、消費生活アドバイザーでもある著者の山崎俊輔さんによると、「お金が貯まらない人は、高い財布でも金運アイテムを入れてもお金の向きを揃えても、やっぱり貯まらない」とズバリ! お金を貯めたいなら、無駄遣いをしない仕組みや貯まる仕掛けをつくることが大切だそうだ。

 

「無駄遣いをあまりしない財布」を探すとしたら、それは「安い財布」だと思います。なぜなら、財布の値段は、あなたがその財布を開いて買うモノの値段に無意識に影響を与えてしまうからです。(中略)あなたがもし背伸びをして高い財布を買うと、背伸びをして高いスーツが欲しくなり、背伸びをして高級な食べ物を食べたくなります。それに伴って仕事意欲も高まり年収も上がると主張する人もいますが、財布を高いものに買い替えたら自動的に年収が上がる、という相関関係はありません。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

お金を貯めたいなら、むしろ安い財布に少ないカードを入れて、常に”軽く”しておくのがいいそうだ。基本的にはキャッシュカード2枚、クレジットカード2枚で十分とのこと。

 

 

ATMで下ろす現金は8000円がベスト!

財布に入れておく現金も1万円以下のほうがお金が残るという。現金を多く持つと、人は無意識にそれが使っていいお金の範囲と規定してしまうからだそうだ。

 

毎回1万円を下ろして買い物をする生活をやめ、8000円下ろして買い物をしたと仮定します。おそらくATMを利用する回数は増えても、使うお金の総額は少し減ることになるはずです。1万円×5回に対して、8000円×6回(4万8000円)のように、同じ期間で少し節約が実現することになります。もし、お金を下ろす回数が同じなら最大で20%もの節約になります。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

こんな小さな差こそが、お金を貯める原動力になる、と山崎さんは言う。

 

この本を読んでから、私も財布に万札を入れるのをやめ、ATMでは8000円しか出さないことに決めた。どうか少しでもお金が貯まっていきますようにと願いながら。

 

 

口座が1つだとお金が逃げていく?

銀行口座が1つだと、少額の引き落とし履歴がたくさん残る。現金もずるずると下ろし、いつの間にかお金が消えていったいう状況に陥りやすいそうだ。

 

給料などが振り込まれる口座がメインバンクなら、それとは別にサブバンクを開設し、日常生活で使うお金、貯めるお金を分けて管理することを山崎さんはすすめている。

 

1カ月の食費や日用品にかかる費用が見えてきたら、メインバンクから月に1度、1カ月分の日常生活費をサブバンクに移します。そこから1カ月かけて生活費を引き出していくことにします。サブバンクは給料振込み日までにぴったり使い切っていい口座ということになります。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

こうして無駄遣いを防ぐわけだ。ちなみにサブバンクはATM手数料無料のネット専業銀行を選択するのが好ましいとのことだ。

 

 

証券口座でお金を増やす

証券口座はお金を増やすための選択肢としてこれからの時代には欠かせない存在になるという。証券口座は入れたお金は下ろさないと決め、定期的に資金を入金し、運用益を加えて残高を増やしていく口座として利用するのだ。

 

証券口座は銀行口座とリンクさせます。証券会社は特定の銀行口座番号を指定し、そこに入金されると個人の証券口座の残高に反映されます。複数の銀行口座を指示してくることがあるので、メインバンクと同じ銀行口座に入金すれば、同一行内振込ということになり、振り込み手数料が安くなりますし、同一行内手数料無料になる優遇が利用できるなら、無料で振り込みができます。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

証券会社については実店舗もある証券会社を用いるか、ネット専業証券を選ぶか悩むところだが、証券口座はいくつ開設してもいいので、複数を作って、後でどこで取引するか考えてもいいそうだ。

 

 

「100円」で投資家になろう!

最低でも100万円くらいの資金がなければ投資などできない、と思い込んではいないだろうか? が、これは誤りで、現在の投資の最低購入金額はなんと「100円」にまで下がっているそうだ。

 

ネット証券会社であるSBI証券や楽天証券は、投資信託の積み立て投資について最低購入金額が100円でスタートできる選択肢を用意しています。ちょっと前までは毎月数千円くらいを必要としたのですが、さらに一ケタ下げてきたのです。毎日カフェラテ1杯分(400円。毎月1万2000円)を40年間積み立てて運用し続けたとすると、複利効果により、年利3%なら1126万円までお金は増えるのです。

(『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』から引用)

 

ちなみに普通の人が普通の投資をしている限り、投資に失敗して借金を抱え込むことはないので安心していいそうだ。

 

投資をはじめると毎日のように株価をチェックしたり、夢中になりがちだが、山崎さんによると仕事やプライベートに悪影響を及ぼす投資はダメとのこと。株価を毎日見る必要もなく、むしろ10年間ほったらかしでOKだそうだ。

 

本書にはビジネスマンが投資デビューするための詳しい解説があるので、お金を増やしたい人は必見! さらに、この本には、上手な節約法、効率のいい稼ぎ方、老後マネーとなる退職金や年金の話まであり、これを読まなければ損をしそうだ。

 

【書籍紹介】

 

読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方

著者:山崎 俊輔
発行:日経BP社

知らないと生涯で2億円損する!? 口座は1つだとお金が逃げる! お金が貯まる人の財布は軽い? 「ほったらかし」投資で1000万!・・・ 何歳からでも間に合う! 日々のちょっとした心がけから将来設計まで知れば絶対得する&人生が豊かになるお金の新常識をやさしく解説。

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あなたと私の「1時間」は価値が違う!?「時間主義経済」という新たな潮流――『新しい時代のお金の教科書』

来週、私はとある20代の男性と食事に行くことになった。彼が食事に行くお金がないというから、食事代は私が払う。私は彼に「お金はいらない。あなたの時間がもらえればそれでいいから」と言ったのだけど、実はこれ、これからの時代の価値の概念らしい。

 

 

「時間主義経済」という流れ

新しい時代のお金の教科書』(山口揚平・著/筑摩書房・刊)によると、今後、お金ではなく時間が価値をなす社会に変化していくという。人々は今までモノを求めてきたけれど、今後はモノ(物品)よりもコト(経験)を求めるようになるという。これは多くの人にとって戸惑う現象のようだ。今までは大きくて立派な家、高級外車など、ステイタスは目で見てわかったし、それらはお金があれば手に入っていた。なのに、今後はその人が何をしてきたのか、何ができるのかというコトのほうに価値があると言われても、混乱してしまうだろう。

 

けれど私にはよくわかる。というか、私はどうやら一歩先に本にある「時間主義経済」なるものに足を踏み入れていたようなのだ。もともと私たちは時給で収入を計算することがある。たとえば、東京労働局が定める東京都の最低時給は958円だ。けれど、この本が説く「時間主義経済」とはそういう均質なものではない。「その人でなければできないこと」「その人によるオリジナルな価値」を時間単位で考えるというものなのだ。

 

 

時給より高額な専門時給

最低賃金を上回る職種というものは前からいくつもある。例えば弁護士に相談する場合は30分で5000円というのが相場だった(最近は初回無料で相談できるところも増えているけれど)。時給にしたら1万円とかなりの高時給だ。カウンセリングも人気がある先生だと1時間1万円以上の料金がかかることも多い。専門知識がある人の時給は跳ね上がる。今後はマッチングサイトの普及で、高時給を得る個人は増えると私は予測している。

 

たとえば私は取材も兼ねてレンタル彼氏を利用することがあるけれど、新人だと時給は2000円程度で、人気があると5000円以上にもなる。また、マッチングサイトで家事代行の依頼を検討しているけれど、そこは新人は1500円程度で、人気の人は1時間3000円近くかかる。調理師などの資格を持っている人や、経験を積んでいる人は料金が高いようだ。1時間に高いお金を払うほど、より満足できる結果が期待できるのだろう。

 

 

さまざまな形の時間の価値

これからはお金よりも時間が重視されるということは、私は理解できる。すでに私は食事をするときに、食事代よりも誰と食事するかのほうを重視しているからだ。貨幣経済的に考えれば「おごってもらえる誰かと食事をして食事代を浮かせる」ほうがオトクだけれど、時間主義経済的に考えれば「ぜひお話してみたい人と食事ができ、時間を共有できるのなら、食事代は自分が出しても構わない」のである。

 

今まで少なくない女性から「男に貢いでまで食事したいなんてミジメだとは思わないの? 女はおごってもらってナンボでしょ? おごってもらえる女になりなさいよ」などと叱られてきたけれど、そろそろ彼女たちの考え方こそが前時代的なのだと言われる日が来るのかもしれない。

 

 

時間の積み重ねの大切さ

本では、積み重ねた時間が価値を高めるということも書かれていた。たとえば裕福な家庭の子どもを正しく育てるためには、お金ではなく時間がかかる、といったように。確かに富裕層のお子さんが行儀の良さを身につけるためにはかなりの時間が必要だ。そうして得た身のこなしは一生の財産となる。

 

このように、一朝一夕では得られないこと、お金では買えない「時間の積み重ねによる成果」に価値が見出される時代になっていくのだろう。だとすると、私がもう何年もさまざまな若い男性と食事を続けていることも、ひとつの時間の積み重ねだ。私は物書きなので、この経験がいつか素敵な物語に熟されれば、それで大満足である。

 

 

【書籍紹介】

新しい時代のお金の教科書

著者:山口揚平
発行:筑摩書房

お金はこれからどうなるのか? お金の歴史とその仕組み、そして変化、未来まで、スッキリ解説します! ▲お金の起源は、物々交換ではなく動かせない石だった?/▲通貨の価値は信用×汎用というシンプルな方程式で測れる/▲国家、技術、経済、社会の変化が、お金を変化させる/▲新しい時代、お金についての10の習慣を意識する。

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【朝の1冊】王子様より大富豪?『世界名作劇場』に見るいまどき女子の人生のゴールとは?

高校3年生の私の娘は『シンデレラ』のストーリーが好きだ。継母らにいじめられたシンデレラは、魔女の助けで舞踏会に行き、王子様と運命的出会いをして結ばれる。結果、継母らよりもお金持ちになった。この「自分を虐げた人よりも上のランクに行った」状態に快感を覚えるのだという。

 

お金持ちこそがゴールの象徴!?

同様の理由で娘は、昭和の少女漫画が好きだ。原ちえこさんの『フォスティーヌ』ではロマの娘が実はウィーン大公の娘だったというお金持ちフラグが立っていたし、いがらしゆみこさんが描いた『キャンディ・キャンディ』では孤児の女の子が大金持ちの養女となる。ヒロインのフォスティーヌもキャンディも、今まで意地悪をしてきた人よりも上位クラスの身分となる。娘から言わせると「大勝利」なのだそうだ。

 

娘に言わせると、王子様はいらないという。ただ、お金や身分は必要なのだそうだ。普通の女の子なら「いつか王子様が私を迎えに来てくれる」と夢見るものではないのだろうか。少なくとも私が娘の歳の頃はそんな妄想に浸っていたものだ。しかし現代っ子の娘は「いつか王子様は浮気するかもしれないけれど、身分やお金は裏切らない」と断言するのだった。

 

 

世界名作劇場に見るお金持ちゴール

そんな娘は懐かしの『アニメ世界名作劇場』も好みだ。『「フランダースの犬」「小公女セーラ」ほか アニメ「世界名作劇場」から語り継ぎたい名作 全7話』(アニメ別冊編集部・編/学研プラス・刊)をめくると、確かに娘が特に好きな『小公女』と『ペリーヌ物語』には、「いつかはお金持ち」設定がある。

 

個人的には世界名作劇場は、いろいろつらいことがあっても真っ直ぐに生きる子ども、という設定で統一されていると思う。『フランダースの犬』のネロは気の毒な最期を迎えたけれど、正しく生きることの大切さを視聴者に教えてくれた。『アルプスの少女ハイジ』も大好きな場所(アルプス)で大好きな人(おじいさん)と暮らすことがどれほど幸せなことかということを示してくれた。しかし娘は、あくまでもお金持ちになるラストにこだわるのだ。

 

 

セーラとペリーヌのお金持ち度

『小公女』のセーラは、もともと大金持ちのお嬢さんだったけれど、父親が破産した末に死亡してしまい、小間使いの身分に落ちぶれてしまう。しかし、遺産のダイヤモンドが見つかり、セーラは大金持ちに返り咲き、かつてこき使った人々のことを冷たくあしらうのだった。

 

『ペリーヌ物語』のペリーヌは、両親を失った女の子が大金持ちのおじいさんのところに向かうという物語だ。けれど、おじいさんは息子と駆け落ちした女(ペリーヌの母親)をいまだに激しく憎んでいるため、ペリーヌは自分が孫娘だと言えない。とはいえ最終的には身分がバレ、めでたくおじいさんに孫娘だと認めてもらえた、娘に言わせれば「おじいさんが死んだ時の遺産相続人」となったのだった。

 

 

なぜ王子様よりもお金持ちなのか

これらのお金持ちシンデレラストーリーには、共通点がある。彼女らの住まいがかなりみすぼらしいのだ。シンデレラは屋根裏で寝泊まりしていたし、キャンディとセーラは馬小屋で寝泊まりしなくてはならなかったし、ペリーヌは誰も使っていない小屋に住み着いた。フォスティーヌは放浪暮らしなので、定住場所すらない。眠ることが大好きな娘は、彼女らがお金持ちになり、ふかふかのベッドで休むようになった時に、強い満足感を得たようだ。

 

結局、お金持ちになると、衣食住という人間の生活の基本は保証される。保証されるどころか、素敵なドレスを着て、ご馳走を食べ、ふかふかのベッドで寝るという最上級の暮らしにグレードアップする。おそらく娘の関心は生活の安定にあるのだろう。まずは暮らし、男はその次の関心事なのだ。そういえば、現代の未婚女性の恋人がいない率が半数近くにも上がっているというけれど、もしかしたら彼女達も不安定な社会での生活における心配が先に立ち、恋愛が二の次になっているのかもしれない。

 

 

【書籍紹介】

「フランダースの犬」「小公女セーラ」ほか アニメ「世界名作劇場」から語り継ぎたい名作 全7話

著者:アニメ別冊編集部(編)
発行:学研プラス

フジテレビの「世界名作劇場」シリーズから語り継ぎたい名作を厳選した読み聞かせ絵本。『フランダースの犬』『少公女セーラ』『ペリーヌ物語』『ピーターパンの冒険』『ポルフィの長い旅』ほか計7作品を1冊に収録した低年齢児童向けの読み物。

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アメックスカードが4月からサイン廃止!?セキュリティ面は大丈夫なのか

クレジットカード会社のAmerican Express(アメリカン・エキスプレス)は2017年11月11日、クレジットカード決済時のサイン記入を18年4月に全世界で廃止すると発表しました。発表をうけ、他のカードブランドが追随する姿勢を見せています。ここで改めて、クレジットカードサインの歴史を学び直してみましょう。

 

フランスはどのようにカード不正をなくしたか

American Expressによると、サイン廃止の主な理由は、不正防止技術の向上でサインの必要性が低くなったこと。海外だと、表面に四角い金属チップを埋め込んだ「接触ICカード」がクレジットカードの主流になりつつあります。これなら、決済時に入力するのは本人のみ知りうるPIN(暗証番号)だけなので、不正使用が少なくなります。

 

たとえば、1990年代初頭のフランスではカード不正が多発していましたが、接触ICカードの普及で実店舗での不正は少なくなりました。接触ICカード決済がスタンダードとなり、なおかつPINで本人認証が行われれば、不正はさらに減るでしょう。また、フランスやイギリス、カナダ、オーストラリアといった国々ではSuicaやnanaco、WAON、楽天Edyのような、端末にかざすだけで決済できる「非接触ICカード」も広がっています。取引額は少ないものの、端末にカードをかざすだけ(PINレス)でスピーディーに支払い可能です。

 

翻って日本を見ると、会計時にサインが求められる「磁気カード」がまだまだ使われています。磁気カードの場合、本人認証をするには利用者のサインとカード裏面の署名を目視で見比べるしかありません。店員がそれを判断するのはなかなか難しいという課題もあります。

 

そんな日本でも、2020年に向けて磁気カードから接触ICカードへのシフトが進んでいます。“クレジットカードの100%ICカード化”も、遠くない未来に実現しそうです。

 

American Expressとサインの歴史

次に、サインの歴史を振り返ってみましょう。1891年、American Expressがトラベラーズチェック(旅行小切手) を旅行者に発行し、サインによる本人認証を開始。これがサインの嚆矢となりました。トラベラーズチェック発行時、旅行者は2か所あるサイン欄のうち1か所にサインし、振り出す際、もう1か所にサインします。小切手を受け取るお店等は2つのサインを照合して本人認証。これが1960年代になり、サインパネルに記入されたサインと、売上票に記入されたサインを照合するクレジットカードのシステムに受け継がれました。

 

1970年代に磁気ストライプのないカードから磁気ストライプのあるカードに移行し、2000年代から本格的にICカード決済が浸透していきました。日本はオーストラリアやカナダ、欧州よりICカードの浸透が遅れていますが、今後は日本でも間違いなくICカード決済が主流となるでしょう。

 

それでもサインは残る?

今回のリリースについてAmerican Expressに聞いたところ、サイン廃止は「あくまでもオプション」とのこと。犯罪者は換金しやすい商品を狙うため、高級ブランド品や家電といった高額商品を取引する際は加盟店のニーズに応じて(磁気カードの利用者についても)利用者にサインを求めるそうです。

 

日本でも、スピーディーにレジ処理しなければならない加盟店はサインレスを喜び、不正取引に悩まされている加盟店は引き続きサインを重視するかもしれません。

 

国内だと、スーパーマーケットやファストファッションチェーン、コンビニエンスストア、カフェの一部店舗はすでにサインレスを採用しています。今回の発表を受け、そのような業態はサインレスをさらに進めるでしょう。一方、家電量販店や高級ブランドショップ、百貨店はセキュリティ対策で当面サイン記入を残すと思われます。

 

【著者プロフィール】

クレジットカード評論家 池谷貴

コピーライター、編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元に入社。ディレクターとして雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わっている。雑誌編集については、電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括した。
2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト運営などのサービスを手掛ける株式会社TIプランニングを設立。現在は、ポータルサイトとして「payment navi(ペイメントナビ)」を運営している。 また、書籍として、「NFCビジネス完全ガイド」や「O2Oビジネスガイド」、「パーフェクト・カードセキュリティガイド」「ポイントカードマーケティング市場要覧」などを発行するとともに、執筆や講演も幅広く行っている。