価格は安いが書き心地はリッチだった! 高級路線の逆をいく100円台ボールペン

【きだてたく文房具レビュー】書き心地もグリップ感もリッチなボールペン

 

一昨年ぐらいからの流れなのだが、筆記具がちょっと高級化路線にいきつつあるようだ。

 

例えば、ゼブラの「サラサクリップ」が金属軸化して1000円の「サラサグランド」になったり、サクラクレパスが新しく出した大人のためのボールペン「Craft_lab 001」が5000円もしたり。

 

最近だと、お馴染みの三菱鉛筆「ジェットストリーム」に回転式の「ジェットストリームプライム回転式シングル」が出たが、これは本体3000円に加えて交換用のリフィルもパーカータイプ(海外ブランドのペンが多く適合する規格)で600円だというから、なかなかの“お高さ”である。

↑近年流行になりつつある、高級めのボールペン↑近年流行になりつつある、高級めのボールペン

 

ところが、こうして高級路線に流れた一方で、まるでバランスを取るかのように、低価格帯のボールペンにもオススメしたい良いものがいくつか登場している。特に、無意識に適当なものを買いがちな100円ちょっとのボールペンから、いまわりと目が離せないのである。

 

100円油性ボールの大ベテランがリニューアル

「スーパーグリップ」、と言えばパイロットの100円油性ボールペンとして永らく活躍した大ベテランだが、これが昨年末に「スーパーグリップG」と名を改めリニューアルされた。

↑パイロット「スーパーグリップG」ノック式(左)・キャップ式(右)各108円↑パイロット「スーパーグリップG」ノック式(左)・キャップ式(右)各108円

 

まず、大きく変わったのはインクだ。前モデルはいかにも昔ながらの油性! といったボッテリと重めのものだったのが、新しいスーパーグリップGは、いま主流のスルスルと軽い書き心地に大変身。

 

個人的な体感だが、スーパーグリップGの新インクは、同社の低粘度油性インク「アクロインク」の書き心地に近い気がする。

↑スルスルと、かなりなめらか系に寄せてきた新油性インク↑スルスルと、かなりなめらか系に寄せてきた新油性インク

 

もちろん150円でアクロインク搭載の「アクロボール」を売っている現状では、メーカーとしては、100円のスーパーグリップGにアクロインクを使うことはないだろう。だがこれでも、充分に軽くてなめらかで、書きやすいのだ。

 

以前のぼってりとしたザ・オールド油性インクにも固定ファンはいたはずで、そういう意味では「なんでもかんでも低粘度化すんなや」という意見はあるだろう。しかし、100円でこの書き心地が得られるのは、やはりスゴいことだとも思うのである。

 

↑タイヤのグリッドパターンのようなグリップ↑タイヤのグリッドパターンのようなグリップ

 

また、個人的にとても良かったのが新しいグリップ。

 

ゴム製のグリップに格子状の刻みをいれたグリッドグリップが、中指の側面に乗せるとシトッと気持ちいい吸い付き方をして、かなりのグリップ力を発揮する。多少の手汗程度では滑ることはないだろう。

↑先端までグリッドパターンでカバーしてあるので、どこを持っても安定する↑先端までグリッドパターンでカバーしてあるので、どこを持っても安定する

 

そしてなにより、このグリッドグリップがペン先ギリギリのところまでカバーしてあるのがとても良いのだ。筆者は、長時間筆記をする時などはペンのかなり先端のあたりを握ってしまうクセがあるのだが、そんな良くない手癖にも対応してくれるのはとてもありがたい。

 

ドバドバ系の液体ボールペン

100円台のオススメボールペンでもう一点挙げるとするなら、これも昨年秋に発売されたセーラー万年筆の「ICリキッドボールペン」だろう。

↑セーラー万年筆「ICリキッドボールペン」130円↑セーラー万年筆「ICリキッドボールペン」130円

 

リキッド……つまり液体ボールペンを名乗るこのペンは、従来のゲルインクよりも低粘度でサラサラとした書き味がある。というか、インクがもうめちゃくちゃドバドバと出るのだ。

 

インクがドバッと出てサラッと書ける感覚は、どちらかというと万年筆に近いほど。

↑ドバドバとインクが出て、しかもかなりの濃黒↑ドバドバとインクが出て、しかもかなりの濃黒

 

特に1.0㎜はちょっと笑えてくるぐらいのドバドバっぷり。これが本当に書いていて気持ちがいいのだ。税込み130円という価格でここまでリッチな書き味が楽しめると、スーパーグリップGと同様に、体感的なコスパはかなり高くなる。

↑指当たりが強めのフィングリップ↑指当たりが強めのフィングリップ

 

さらに、こちらもグリップに特徴がある。

 

フィン状のかなり独特なゴムグリップは、きつめに握ると指に跡がつくほど食い込む力が強く、指に乗せるだけでしっかり安定する。(形状的には好き嫌いがあるかもしれないが)グリップ径自体もすこし太めなので、握力が弱い人でもかなり握りやすいはずだ。

 

インクフロー、グリップともかなりクセの強いペンだが、ハマる人なら「数千円のペンよりこっち」と言うぐらいには価値のある130円だろう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。ブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)が3月2日発売。

 

ガンガン消費すべし! 付箋の「正しい使い方」、文房具のプロが教えます

【きだてたく文房具レビュー】惜しみなく使いまくるべきふせん2

 

「付箋はティッシュのように使え」。これは、テレビ東京の番組による「テレビチャンピオン文房具通選手権」3連覇チャンプ、“文具王”こと高畑正幸氏の言葉だ。

 

例えば、本を読んでいた時に何か関連して思いついたら、すかさず付箋にサッと書き込んでサッと貼る。もったいないから……とケチケチしていては、せっかくの浮かんだアイデアも本を読み終わったころには忘れてしまう。どちらかといえば、そっちのほうがもったいないだろう。

 

なので、付箋は常に手に届く範囲に置いておき、使う時は躊躇せずにガンガン消費する、というのが正しい使い方なのである。

 

今回は、そんなティッシュ方式で使うのに便利な付箋2種類を紹介したい。

 

デスクトップのティッシュ付箋

文具王の言葉にならって筆者がデスクに常備しているのが、3Mの「ポストイット 強粘着 ポップアップノート」。

 

75×75㎜の強粘着付箋(ポップアップ専用リフィル)が引っ張るだけで次々と、まさにティッシュのように出てくる付箋ディスペンサーである。

↑現在は、仕事中に思いついたことや、3時間以内に解決すべき急ぎの作業を書いてはPCモニターに貼って、片付いたら即捨てるという方式で使っている↑現在は、仕事中に思いついたことや、3時間以内に解決すべき急ぎの作業を書いてはPCモニターに貼って、片付いたら即捨てるという方式で使っている

 

定位置に置いておけば、電話を受けながらでも片手で付箋が取り出せるので、ほぼ卓上メモのような感覚。あまりに便利なので、自宅のPC前と作業デスク、会社のPC前の3台体制で運用中だ。

 

……なんだけど、ただちょっとしたワードをメモするだけだと、75㎜四方というサイズはちょっと大きく感じる時もあった。それがつい先日、この商品が『ポストイット 強粘着 ポップアップふせん/ノート』にリニューアル。これがまさに「待ってました!」という進化を果たしてくれたのである。

↑3M「ポストイット 強粘着 ポップアップふせん/ノート」1296円。こちらは最初から3色セットの「トリオ」↑3M「ポストイット 強粘着 ポップアップふせん/ノート」1296円。こちらは最初から3色セットの「トリオ」

 

↑2色セットの「コンビ」。もちろん付箋を入れ替えれば25㎜幅×3としても使用できる↑2色セットの「コンビ」。もちろん付箋を入れ替えれば25㎜幅×3としても使用できる

 

進化した箇所は写真でも分かる通り、従来の75×75㎜付箋だけでなく、75×25㎜、75×50㎜サイズにも対応。25㎜幅を3ライン、または50㎜幅を1ライン+25㎜幅2ラインというように、組み合わせて使えるようになったのだ。

↑左が75㎜幅のみの前モデル。右の新モデルは押し出しパーツが3ラインとなった↑左が75㎜幅のみの前モデル。右の新モデルは押し出しパーツが3ラインとなった

 

前モデルは付箋リフィルを押し出すスプリングがひとつだったのに対して、新モデルは3つ横並びに増えた。これで、最大3本の付箋を同時に押し出せるようになったということだ。

 

これなら、ちょっとしたメモは50㎜幅、書類にコメントを追記するときは25㎜幅というように、シーンによって使い分けが可能。もちろん75㎜幅もこれまで通り使える。

↑ポップアップ用の専用付箋リフィル。通常の付箋はセットしても使えない↑ポップアップ用の専用付箋リフィル。通常の付箋はセットしても使えない

 

↑使い始めは、詰め替えリフィルがセットになったお買い得な「スペシャルセット」もおすすめ。1868円↑使い始めは、詰め替えリフィルがセットになったお買い得な「スペシャルセット」もおすすめ。1868円

 

ひとつ、これは前モデルから共通の難点なのだが、このディスペンサーはあまりにも気軽にふせんが使えるため、専用の付箋リフィルの消費がやたらと早い。気がつくと付箋切れ、なんてことがしょっちゅうなのだ。購入時には、できれば詰め替え用にリフィルも揃えてまとめ買いしておくことをオススメする。

 

どこでも持ち運べるティッシュ付箋

デスクトップ用は上記のポップアップディスペンサーで良しとして、じゃあ外出先で付箋を使いたい場合はどうするべきだろうか。

 

そう考えている人はそれなりにいるようで、その解決策として使われている製品ももちろん存在する。

↑カンミ堂「クリップココフセン Mサイズ」予備リフィル1個付き 421円↑カンミ堂「クリップココフセン Mサイズ」予備リフィル1個付き 421円

 

カンミ堂の「クリップココフセン Mサイズ」は、ノートや手帳にクリップオンして持ち歩けるポップアップ型ふせんだ。

 

金属クリップに、ディスペンサーとして使える付箋ケースを貼り付けただけのシンプルなものだが、これが外出先でちょっとしたマーキング用に使うには、ちょうどいいサイズ感なのだ。

↑クリップで表紙に挟むだけなので、とにかく運用がラク↑クリップで表紙に挟むだけなので、とにかく運用がラク

 

例えば電車の中でビジネス本なんかを読んでいて、「あっ、ここメモっておきたい!」となった時にも、本の表紙にクリップココフセンをはさんでおけば話は簡単だ。その場でスパッと付箋を抜いて貼っておいて、あとで落ち着いてから再確認するだけである。

 

というか、単純にしおりの代わりとして使うだけでも充分に役に立つ。

↑外でも付箋が使える安心感というのは、意外と大きい。ユビキタスふせんである↑外でも付箋が使える安心感というのは、意外と大きい。ユビキタスふせんである

 

そもそもフィルム付箋なので、情報を書き込むといった用途にはあまり向いていない。手帳に未解決のToDoを書き込んだ時に目印として貼っておくとか、そういった目印用にザクザクと気軽に使うのがベストのように思う。

 

ところで、今回あえて通常の「クリップココフセン」(細いSサイズのもの)ではなく「クリップココフセン Mサイズ」と銘柄指定したのにはワケがある。

 

目印として使うにはSサイズで充分なのだが、Mサイズは幅広なだけでなく、フィルム素材自体が少し硬めに設定されているのだ。実際、本に貼ってカバンに放り込んでおくと、薄くて柔らかいSサイズのココフセンはクシャクシャになってしまうこともままあった。やはり、雑にザクザク使うなら、ちょっと硬めぐらいのコシがあったほうが使いやすい。

↑替えリフィルでも硬めが欲しい場合は、パッケージの「ふせん硬め」を目印に↑替えリフィルでも硬めが欲しい場合は、パッケージの「ふせん硬め」を目印に

 

使い切ってしまった場合は、クリップからケースを剥がし、クリップタイプではないノーマルの「ココフセン」(裏が貼って剥がせる粘着材タイプのもの)を貼り直せばOK。

 

ただし、硬めフィルムの使い勝手が気に入ったなら、補充の際も「ふせん硬め」とパッケージに書かれたものにすること。そこまでじゃなくていいや、という場合はノーマルのものでも充分だし、そっちのほうが少し割安だ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

“指先舐め”は嫌われる! 使えば病みつきの書類めくりがサクサク進む指サック

【きだてたく文房具レビュー】カチカチガサガサ肌になりがちな冬場にありがたい文房具

 

いろいろと意見はあろうが、筆者にとって“冬場にありがたい文房具ナンバーワン”といえば、指サックだ(逆に、冬場にイヤな文房具のトップは金属軸のボールペン。冷たいから)。

 

体質なのか、とにかく冬の手荒れがひどく、指先なんか何度も皮が剥けた挙げ句に角質化してカチカチ。キーボードを打つのも憂鬱なぐらいである。で、そんな指のタイミングを見計らったかのように、3月発売予定の著書の校正紙が出版社から束でドカッと送られてきたのだが、こんなカサカサ・カチカチの指ではページをめくるだけでひと苦労。そこでお世話になるのが指サック、というワケなのだ。

 

この連載でも、以前に指サックのオススメを取り上げたことがある(その時も当時の著書の校正紙をめくるのにヒイヒイ言ってた)のだが、今回は先日発売されたばかりの「摩擦力2倍!」をうたう新製品を試してみたいと思う。

指先ペロリはもう古い! シールからクリームまで書類送りに便利な「進化系指サック」をレビュー!

↑プラス「メクリッコキャッチ」S・M・L 各4個入り 194円↑プラス「メクリッコキャッチ」S・M・L 各4個入り 194円

 

これまでの指サックといえば、シリコンやニトリルゴム製が基本だったが、プラスから発売された新しい指サック「メクリッコキャッチ」は、素材に摩擦力の高いソフトエラストマーを使用。「摩擦力2倍!」というキャッチは、このソフトエラストマーに由来しているようだ。

↑摩擦力2倍!とまでは分からなかったが、確かに軽い力でも紙に食いつくのは感じられた↑摩擦力2倍!とまでは分からなかったが、確かに軽い力でも紙に食いつくのは感じられた

 

実際に使ってみると、グリップ力は確かに強い。というか、軽く紙に触れた状態で指先を横に動かすと、そのまま紙がふわっとくっついて動く感じ。触れてさえいれば、ほぼ確実にサックの面が紙を捉えてくれるので、上滑りすることはほとんどなかった。

 

なにより良くできているなー、と感じたのが、この形状だ。立体形状になっており、横から見ると指の先端まで包むようになっているのが分かる。この形のおかげで、指の腹のどこで触れてもきちんとグリップするという安心感がある。

↑指先まで包み込むような立体形状で、指先までフルに使える↑指先まで包み込むような立体形状で、指先までフルに使える

 

実際、指の先端から腹まで指先全体を使ってめくり作業ができるというのは、かなり快適だった。

 

近年の流行である指輪のようなベルト型指サックだと、どうしても指の先を使った作業ができない。また、無意識にベルトの巻かれた部分だけを使おうとするので、指の動きがいささか不自由な感じになってしまう。

↑ベルト型は気軽に使えるが、指の腹しか作業領域がない↑ベルト型は気軽に使えるが、指の腹しか作業領域がない

 

じゃあ対して、昔ながらの指全体を包むようなタイプのサック型ならいいんじゃないかと思うが、こちらは指が蒸れて気持ち悪いのが難点だ(そもそも、それを解消するためにベルト型が登場したという経緯がある)。

↑ベルト型の普及でだいぶ見なくなったサック型。とにかく蒸れるので、長時間作業すると指がシワシワにふやける↑ベルト型の普及でだいぶ見なくなったサック型。とにかく蒸れるので、長時間作業すると指がシワシワにふやける

 

また、サイズにもよるがサック型は指の第一関節にまで干渉することがあり、これがまたなかなかに使い心地が悪いのだ。

↑第一関節に干渉しないよう、フチをえぐり込んだ形状。曲げ伸ばししても不快感はゼロ↑第一関節に干渉しないよう、フチをえぐり込んだ形状。曲げ伸ばししても不快感はゼロ

 

対してメクリッコキャッチは、根元がえぐれたような形になっており、関節の動きを邪魔しない。それに加えてサックの内側にも滑り止めのリブがついているため、指を曲げ伸ばししても、サックがズレたり回転したりないようになっている。形状が特殊なだけに、ズレ・回転があると不快だろうなと思っていたのだが、さすが、その辺りはきちんと解決されていた。

 

もちろん、爪側・腹側両方に通気穴があるので、試用中の1時間装着では蒸れるという感じもほとんどなかった。

↑通気穴に加えて、爪側が大きく開口しているので、爪を伸ばしていても装着できる。まさにリング型・サック型の「いいとこ取り」だ↑通気穴に加えて、爪側が大きく開口しているので、爪を伸ばしていても装着できる。まさにリング型・サック型の「いいとこ取り」だ

 

サイズはS・M・Lの3タイプ。どれが自分に合うか分からないという場合は、パッケージ裏面におよその指の目安が印刷されているので、そこに指を置いて判断してみて欲しい。

↑パッケージ裏のサイズ確認ゲージ。指を当ててみればだいたい合うかどうか判断できる↑パッケージ裏のサイズ確認ゲージ。指を当ててみればだいたい合うかどうか判断できる

 

 

筆者の指の太さはほぼ男性平均ぐらいだが、人差し指にはMサイズ、親指でLサイズがジャストフィット、という感じだった。素材的にはかなり弾力もあるので、厳密にきっちり合わせなくても問題はない。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

マイナーな文房具の下克上! 37年目の新ガチャックが想定外の便利さだった

【きだてたく文房具レビュー】書類をスッキリしっかり綴じる日陰の文房具

 

複数ページにわたる書類の束を、バラけないようにまとめるために使う文房具。と聞いてまず想像するものってなんだろうか。

 

だいたい、まず浮かぶのはステープラー(ホチキス)だろう。枚数が少なければ、針なしタイプのステープラーを選ぶこともあるだろう。あとはクリップとか、もしかしたら、穴を空けて綴り紐で、というオールディーズな人もいるかもしれない。

 

で、ここまで来てもまだ出てこないのが、ガチャックという選択肢だ。

↑OHTO「ガチャック」。留められる枚数によって3タイプがある↑OHTO「ガチャック」。留められる枚数によって3タイプがある

 

そもそも、ガチャックという道具を知らない人も多いだろう。OHTO(オート)から発売されている連射式クリップで、なんと1981年から現在まで販売されているロングセラーである。

 

本体に“ガチャ玉”と呼ばれる金属クリップを装填し、本体先端を紙束の端に押し当ててスライドをガチャッと押し出すと、ガチャ玉が自身の弾性で紙を挟み留めるというシンプルな道具だ。

 

ステープラーと違って紙に穴も開けず、さらにガチャ玉は外せば何度でも再利用が可能。コピー用紙なら最大で60枚(大ガチャ玉)まで留められるという優れた性能を持っている。

↑コピー用紙60枚が一発で留められて、外せば穴も開かずに元通り。そして玉は何度でも再利用が可能だ↑コピー用紙60枚が一発で留められて、外せば穴も開かずに元通り。そして玉は何度でも再利用が可能だ

 

……なのに、マイナー。愛用者はいるにも関わらず、知名度はどうも低い。なぜかというと、「これ、すごく使いやすいよ!」とはどうしてもオススメしにくいポイントがいくつかあったからなのだ。

 

しかし、なんとつい先日、ガチャック発売以来の大改革とまで思えるリニューアルを果たした、新製品が発売されたのである! これなら「ガチャック、便利だよ!」と胸を張って言えると感じたので、こちらで紹介したい。

↑OHTO「3WAY ガチャック」648円↑OHTO「3WAY ガチャック」648円

 

そのリニューアルしたガチャックとは、「3WAY ガチャック」。これが従来品の不便さをしっかりクリアしてくれた、まさにオススメのガチャックなのだ。

 

3タイプのガチャ玉が全部使える!

まず、名前の3WAYとは、3種類のガチャ玉が装填できるということ。

 

従来のガチャックには、紙を20枚まで留められる小ガチャ玉、40枚用の中ガチャ玉、60枚用の大ガチャ玉があったのだが、それぞれのサイズに専用の射出器が必要だったのである。いつも20枚以下しか紙を留めない、と決まっていれば小ガチャ玉と小ガチャック本体を用意しておけばいいが、たまに30枚ぐらい留める必要が出た時には何の対応もできなかった……(これはステープラーも同様だけれど)。

↑3WAYガチャック専用の新しいガチャ玉。中玉のみ従来の中ガチャ玉と変更なし。各540円↑3WAYガチャック専用の新しいガチャ玉。中玉のみ従来の中ガチャ玉と変更なし。各540円

↑左から薄・中・厚玉。留める枚数で厚みは違うが、それ以外は幅も奥行きもほぼ同じだ↑左から薄・中・厚玉。留める枚数で厚みは違うが、それ以外は幅も奥行きもほぼ同じだ

 

 

対して3WAYガチャックは、本体と同時に発売された新しい20枚用の薄玉、40枚用の中玉、60枚用の厚玉の3種類が全部装填可能。枚数が変わったら玉を入れ換えるだけで対応できるようになったのだ。

 

なにより、この3WAYガチャックと同時に発売となった薄玉・厚玉が、中玉とサイズを揃えてくれたのが非常にありがたい。

↑左が従来の小ガチャ玉。この小ささは、想像以上に使いにくかった↑左が従来の小ガチャ玉。この小ささは、想像以上に使いにくかった

 

筆者が個人的に使用頻度の高かった20枚用の小ガチャ玉は、幅13㎜・厚さ3㎜とかなり小さい。つまむとたまにポロポロと取りこぼして、なかなか面倒だったのだ。

新しい薄玉は幅16㎜と中玉に揃えてくれたおかげで、かなり扱いがしやすくなったのである。特に指先が荒れがちな冬場は、かなりラクだ。

 

バネ式ローディングで連続使用がラク!

従来ガチャックは、中に装填したガチャ玉を押し出すのに、重力を使用していた。というと聞こえはいいかもしれないが、要するに、使う度に本体を下に向けてガチャ玉を本体先端まで落としてやる必要があったのだ。

 

これが意外と面倒で、何十部という束を連続して留めようとした時は、本体をずっと下向きにして使うか、一部留めるたびに手首をひねって下に向けて戻す、ということが必要だった。また、たまに玉が落ちてこない時は本体をゆすったり、スライダーを少し動かしたり、といったコツが必要だった。

↑バネを使った自動ローディング。ステープラーの針送りとよく似ている↑バネを使った自動ローディング。ステープラーの針送りとよく似ている

 

↑上向きで使っても常にガチャ玉が安定して送られるシステム。従来品と比べて最も使いやすくなったポイントだ↑上向きで使っても常にガチャ玉が安定して送られるシステム。従来品と比べて最も使いやすくなったポイントだ

 

3WAYガチャックは、装填した玉を後ろからバネで押し進める方式に進化したため、上向きで使っても、常に玉が先端に自動でロードされるようになった。

 

これが作業のリズムを重力ローディングに狂わされることがなくなり、ものすごく快適なのだ。常にガンガンと玉が出るので、作業効率もかなり高い。これなら、始めて使う人が「ステープラーの代わりにこれで紙を留めて」と渡されても、何の迷いもなく作業ができるはずだ。

 

装填方法は良くも悪くも

3WAYガチャックは、先の通りバネ式ローディング機構のため、玉の装填が少し面倒になった。

 

まずボディをガバッと開き、後端にある投入口から玉をすべり込ませていく。必要な分だけ入れたら、ボディを閉じると自動で玉が先端まで送られて、使用可能となるという仕組み。装填できる玉数が8個と少ないガチャックは、ステープラーよりも頻繁に装填作業が発生する。いちいちボディを開いて玉をこめて……というのはちょっと面倒だ。

↑いちいちボディをフルオープンにしないと、ガチャ玉が装填できない。バネ式ローディングの便利さとトレードオフなだけに仕方はないが……↑いちいちボディをフルオープンにしないと、ガチャ玉が装填できない。バネ式ローディングの便利さとトレードオフなだけに仕方はないが……

 

従来ガチャックはボディの後端にスリットが開いており、ここから玉を押し込んでやるだけ。装填スピードはあきらかにこちらの方が速い。ただ、押し込む時はグッと強めに押す必要があるため、慣れていないとなかなかやりにくい。また小ガチャ玉はスリットが小さいため爪で押し込むことになるのだが、女性など爪を伸ばしている人には難しいだろう。

↑ボディ後端のスリットから1発ずつ押し込んでいく従来方式。こちらの方が圧倒的にラクだし速い↑ボディ後端のスリットから1発ずつ押し込んでいく従来方式。こちらの方が圧倒的にラクだし速い

 

そういう点では、3WAYの方が全般的に手間は増えたけど、装填作業そのものはやりやすい、ということになるだろうか。後端からガンガン押し込む従来式に馴染んでいる身としては、ボディをいちいち開けるのはちょっと面倒だが、それでもバネ式ローディングのラクさを思えば仕方ないかな、という感じ。

 

あと一点、厚玉・薄玉とも、大ガチャ玉・小ガチャ玉と比較して紙を留める力がわずかに弱くなっているように感じた。もちろん薄・厚とも必要充分なグリップ力はあるので、使っている最中に紙束からスポッと抜けるようなことはないのだが、そこは少し気になったところだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

机の上がモノで溢れている……。ならばキングジムのスキマ棚でスペースをひねり出せ!

【きだてたく文房具レビュー】机上にスペースを創り出す棚

 

オフィスのデスクは、だいたい幅1200㎜×奥行き700㎜というあたりが標準的。この面積で広々と仕事ができるかというと、まずそんなことはない。

 

まずPCとキーボードにマウス、モニターがあって、下手するとノートPCも1台あって、資料を並べてペン立てを置いて……となると、あとはA4の書類を広げたらデスクの表面は見えなくなる、という感じだろう。

↑筆者の会社デスク(1100×700㎜)。机の天板はほとんど見えない↑筆者の会社デスク(1100×700㎜)。机の天板はほとんど見えない

 

せめて、もうちょっと広い場所で余裕を持って仕事ができれば……と思ったとき、まず手がけるべきは新たな“土地開発”、いや“開拓”だ。1200×700㎜程度のデスクトップはもう限界なんだし、もっと手つかずの場所……天井まで広がる“タテの空間”を新たに宅地造成するべきなのだ!

 

そういう意欲に溢れたオフィス環境改善アイテムが、キングジムから発売されているので、ぜひ紹介したい。

 

液晶モニター上空を小物スペースに活用

かつてPCのモニターがブラウン管だった時代(15年くらい前)、奥行きのあるモニターの上は、クリップケースや卓上カレンダーなどの小物置きスペースとして機能していなかっただろうか。いまや、薄い液晶モニターがベーシックになってしまったせいで、ブラウン管モニター上にあった小物たちは行き場を失ってしまったのだ。

↑キングジム「ディスプレイボード」(500㎜タイプ)3780円↑キングジム「ディスプレイボード」(500㎜タイプ)3780円

 

じゃあそのスペースを復活させればいいじゃん? ということで発売されたのが「ディスプレイボード」だ。液晶モニターの上にセットするだけで、500㎜×168㎜(幅200㎜タイプもある)という広い面積の小物置きスペースが出現してしまうのだから、まさにかつて失われた土地の再発見ツールである。

↑棚板の裏面に取り付けられたアーム。アーム位置は、液晶モニター裏の凹凸に合わせて変更が可能↑棚板の裏面に取り付けられたアーム。アーム位置は、液晶モニター裏の凹凸に合わせて変更が可能

 

↑モニターの裏面にアームを突っ張るように設置すれば、棚が完成↑モニターの裏面にアームを突っ張るように設置すれば、棚が完成

 

取り付け方は簡単で、まずボード手前のフチを液晶モニターの上辺に引っかけるように載せたら、あとはアーム2本を曲げてモニター背面に突っ張るようにセットするだけ。これで、安定したフラットな棚が出来上がり。

 

アーム先端の接地部分は上下左右に動くので、iMacのように背面が湾曲しているタイプのモニターにも、安定して取り付けることが可能だ。

↑デスク上で場所を取るもの、ちょっと置いておくだけのものなど、かなり気楽にポイポイ置ける↑デスク上で場所を取るもの、ちょっと置いておくだけのものなど、かなり気楽にポイポイ置ける

 

ボード自体は幅500㎜タイプで耐荷重1kgまでなので、デスク上でかさばっていた小物あれこれを載せるぐらいなら、まず問題はなし。

 

着座状態で手を伸ばすのには少し高い位置に天板が来るので、できれば、椅子から立ち上がったときに手にするもの、もしくは単に視線を向けるだけのものを配置するのがベストだ。筆者はスマホやPC作業用のメガネ、卓上カレンダーなどを置いている。

 

さらに広大な面積を空中に生み出すには?

筆者にとってディスプレイボードは、もはやこれなしではデスクトップの土地運用が立ち行かないぐらいの存在だが、欠点がひとつある。

 

液晶モニターはデスクに1台しかないので、これ以上の増設が難しいということだ。

↑キングジム「マグトレー」5378円↑キングジム「マグトレー」5378円

 

そういう苦情がキングジムに寄せられたかどうかは不明だが、それじゃあという感じで昨年末、新たに発売されたのが、空中に増設可能な棚「マグトレー」だ。

 

吸着部に強力な磁石を内蔵し、スチール面に貼り付けられるため、パーテーションやスチールラックの側面、デスク引き出し面などにバンバンと棚が増やせるのである。

↑写真で右上に見えるフラットな部分にネオジム磁石が内蔵されている。下の縁はずり落ち防止のゴムストッパー。これで耐荷重を稼いでいる↑写真で右上に見えるフラットな部分にネオジム磁石が内蔵されている。下の縁はずり落ち防止のゴムストッパー。これで耐荷重を稼いでいる

 

天板の面積は320㎜×230㎜と、ありがたいことに書類を入れたA4クリアホルダーをそのまま平置き可能。

 

さらにネオジム磁石のパワーで、耐荷重はなんと3kg。これなら書類を入れたリング式ファイルを空中に並べて立てておく、なんて使い方もできるだろう。

↑外す時は下からヒョイと持ち上げるだけ。あっけなく簡単に取り外しできる↑外す時は下からヒョイと持ち上げるだけ。あっけなく簡単に取り外しできる

 

磁石は吸着部の上辺に集中しているので、しっかりと貼り付く一方、外すときは下から軽く持ち上げるだけで取り外せるようになっている。

 

また、漏れた磁力を利用して、クリップをまとめて貼っておけるクリップポケットも付いており、置いた資料を整理するのに外したクリップをひとまずここにくっ付けておく、なんて使い方もOKだ。

↑書類を留めていたクリップなどは、ここに一時保管できる↑書類を留めていたクリップなどは、ここに一時保管できる

 

↑オフィス入り口のドアに、呼び出し電話を載せてしまうことだってできる↑オフィス入り口のドアに、呼び出し電話を載せてしまうことだってできる

 

オフィス内であれば、ホワイトボード脇に貼ってマーカーやイレーサーを置いたり、受付近くに貼って呼び出し用の内線電話を設置したり。アイデア次第でいくらでも“土地”が簡単に生み出せるのは、とにかく便利のひと言である。

↑ディスプレイボードとマグトレーで、一気にデスクの上がスッキリ!↑ディスプレイボードとマグトレーで、一気にデスクの上がスッキリ!

 

↑あらためて、最初の写真と比較してみよう↑あらためて、最初の写真と比較してみよう

 

マグトレー、ディスプレイボードとも数千円と、少々お値段はするが、しかし都会の狭小オフィスで棚の分の面積が“無”から生み出せるのだと考えれば、ハッキリ言ってまったく高くはないはずだ(なんなら、面積あたりの地価を計算してみるといい)。

 

そういう意味では、こういった空間の有効活用系アイテムは今後もっと注目されるジャンルになるだろう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

目肩腰の疲れに効く!? やさしく真っ直ぐピシッと引ける蛍光マーカー3選

【きだてたく文房具レビュー】疲れ目にも、ヨロヨロした手にも、あわてんぼうにもぴったりの蛍光マーカー

 

この年末に、インフルエンザに感染してしまった。とはいえ、かかってしまったものはしょうがなく、仕事関係の各方面にメールで詫びを入れたら、あとはベッドに入って薬が効くのを待つだけである。

 

どちらかというと問題は熱が下がってからで、せっかくの正月休みだというのに、体内にウイルスが残った生ける生物テロ兵器状態では、出歩くわけにもいかない。熱も無く咳も治まっているが、外には出られず。とはいえ年末の忙しい時期に寝て過ごした焦燥感だけはあるので、ぼんやり休む気にもなれない。

 

こういうときこそ……ということで今年は元旦から、しばらく溜め込んでいた資料を読み込んで、目に付いたポイントを蛍光マーカーで次々とチェックする、という作業に勤しんでいた。

 

で、せっかくの機会なので、各メーカーの蛍光マーカーをとっかえひっかえしていると、「やっぱりこのマーカーはいいな」「おっ、新製品の、悪くないぞ」などといくつか光るものがあったのである。そこで今回は、新旧取り混ぜて、おすすめの蛍光マーカーをいくつか紹介したい。

 

疲れた目にも優しいソフトカラー

使っていてまず感じたのが、前日まで39℃台の熱が出ていた目には、蛍光マーカーのパキッとした発色はけっこうキツい、ということ。もちろん目立たせるための製品だからそれでもいいのだけど、とりあえずもうちょっと柔らかい色でも問題ないだろう。

 

そこでほど良かったのが、パイロットの「フリクションライト ソフトカラー」だ。

↑パイロット「フリクションライト ソフトカラー」全6色 各108円↑パイロット「フリクションライト ソフトカラー」全6色 各108円

 

お馴染み、こすって消せるフリクションシリーズの蛍光マーカーだが、このソフトカラーシリーズは名前の通り、発色がソフト。従来のシリーズと比べるとぼんやりと淡い色合いで、つまり紙の白とのコントラスト差が小さくなるので、目が疲れにくいということだ。

↑通常の蛍光色(左)とソフトカラー(右)。ひと目見ただけで淡さと柔らかさが分かる↑通常の蛍光色(左)とソフトカラー(右)。ひと目見ただけで淡さと柔らかさが分かる

 

病み上がりの目にも優しい=仕事で疲れた目にも同じく優しいわけで、長時間紙面を見ていても確かに負担が少なく感じた。特にソフトイエロー、ソフトグリーンあたりは穏やかな色調で、目がチカチカせず心地よい。

 

とはいえ色はきちんと付いているので、後から見直しても自分のチェックした部分ははっきりと見分けられるし、使いにくさを感じない。

↑こすって消せるフリクションインクは、ラインの引き間違いをしても安心↑こすって消せるフリクションインクは、ラインの引き間違いをしても安心

 

もちろん他メーカーからも同様のソフトカラーマーカーが発売されてはいるが、フリクションということで「間違ったら消せる」アドバンテージは非常に大きい。

 

どうせ後で消せるから、と思えばこそ、大胆にズバズバとラインを引いていけるのは気分的にもかなりラクなものだ。

 

窓付き&紙を選ばない万能マーカー

蛍光マーカーはチップが大きいため、自分がいま文章のどこまでラインを引いたのかが分かりにくい。そのため、ついついはみ出し・引き足らずが出てしまう。

 

そういうときに便利なのが、先端チップに透明な窓が付いた三菱鉛筆「プロパス・ウインドウ クイックドライ」だ。

↑三菱鉛筆「プロパス・ウインドウ クイックドライ」全10色 各140円↑三菱鉛筆「プロパス・ウインドウ クイックドライ」全10色 各140円

 

この透明窓からチップの下が見えるので、いま自分がどこまでラインを引いたのかがはっきりと視認できる。

 

これは非常に便利な機能で、しばらくプロパス・ウインドウを使ってから別のマーカーに切り替えると「なんでチップの向こう側が見えないんだよ!」と不条理な怒りまで感じてしまう。一度この便利さになれてしまうと、もう戻れないのである。

↑プロパス・ウインドウシリーズならでは窓付きチップは一度慣れるともう手放せない↑プロパス・ウインドウシリーズならでは窓付きチップは一度慣れるともう手放せない

 

もうひとつ便利なのが、速乾性の高いクイックドライインク。紙面のあちこちにラインを引いていると、気づかぬ間にまだ乾いていないインクの上をこすってしまい、手にインクが付着することがある。

 

クイックドライインクは、乾燥時間を従来の1/3にまで短縮できるため、そういったトラブルが少ない。

↑上が一般的な蛍光マーカー、下がクイックドライ。書いて数秒後に指でこすってみると、クイックドライインクはしっかり定着している↑上が一般的な蛍光マーカー、下がクイックドライ。書いて数秒後に指でこすってみると、クイックドライインクはしっかり定着している

 

インクがあまり染み込まないコート紙などにラインを引いても、驚くほど早く乾くので、こすってしまったときの「あっ、しまった!」という焦りを感じずに済む。写真の多い企業パンフやカタログなどはコート紙が多いので、これは非常に助かるのだ。

 

蛍光マーカーが下手、という人にも安心

蛍光マーカーでラインを引くのが下手、という人は意外と多い。ヘラのような平たいチップだと、少し手元が狂っただけでガタガタとした線になってしまうのだ。

 

筆ペンタイプの蛍光マーカーならガタガタ線のリスクは減らせるが、今度は筆圧が変わると線の太い細いが変わってしまう。なんにせよ難しいのである。

 

そういう蛍光マーカー下手に優しいのが、ぺんてるから昨年末に発売されたばかりの「フィットライン」だ。

↑ぺんてる「フィットライン」全5色 各108円↑ぺんてる「フィットライン」全5色 各108円

 

↑太字チップの先端。この溝からぐにっと曲がることでクッション効果を発揮する↑太字チップの先端。この溝からぐにっと曲がることでクッション効果を発揮する

 

ツインマーカーの太字(ラインを引く方)チップに爪楊枝の後端のような溝が刻まれており、ここからぐにっと曲がるようになっている。これにより、不要な筆圧をクッションのように吸収し、安定した線が引けるのだ。

↑チップが折れ曲がって不要な筆圧を吸収するので、安定したまっすぐなラインが引きやすい↑チップが折れ曲がって不要な筆圧を吸収するので、安定したまっすぐなラインが引きやすい

 

チップの硬さ自体は従来品と変わらないので、筆圧をかけても筆ペンのように線が太ることはない。一方で、クッション効果によって手元の傾きもある程度吸収するので、線のガタツキも減らせるのである。

 

病み上がりで手元がふらつく状態でも、実際にかなり安定した線を引くことができた。これなら、だいたいどんなシーンで線を引いても、きれいな線が引きやすいはずだ。

↑特殊チップが最も実力を発揮するのが、分厚い書籍への曲面マーキング↑特殊チップが最も実力を発揮するのが、分厚い書籍への曲面マーキング

 

クッションチップのさらに大きなメリットとして、辞書など厚いページ物の曲がった紙面にもきれいに線が引きやすい。曲面を意識して、なぞるように線を引いていくことで、ページののど側のようなマーキングしにくい部分にもスパッとラインを引いていくことができるのだ。

 

不器用な人でも確実に効果が出るという意味で、かなり使いやすい蛍光マーカーと言えるだろう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

 

文房具界のポスト・ハンドスピナーはコレ!会議中にも活躍する無意味ギミック満載の暇つぶしペン

【きだてたく文房具レビュー】意味なくカチカチポチポチクルクルし続けたくなる中毒ペン

 

2017年の春頃から、日本でも子どもたちの間で爆発的に流行して、そして年末にはもう誰も欲しがっていないもの……と言えば、ハンドスピナーである。

 

そう、遠い昔のように思うかもしれないが、あれ、つい昨春から夏にかけての話なのだ。ただ単に羽根が延々と回り続けるだけの、意味なしオモチャがなぜあれほど売れたのかはさておき、アメリカではそういう意味なしオモチャをまとめて「Fidget Toy」(フィジェット=いじくりまわす)と呼ばれており、きちんとしたジャンルとして成立している。

↑いま現在、売り逃して大量在庫を抱えているであろう玩具店さん多数のハンドスピナー↑いま現在、売り逃して大量在庫を抱えているであろう玩具店さん多数のハンドスピナー

 

で、いまそのアメリカで、ハンドスピナーの次に“キテる”と言われているのが、意味のないガジェットをあれこれペン軸に搭載した「Fidget Pen」というもの。

 

例えば退屈な会議で時間を持て余しているとき、意味なくペンのノックをカチカチと押し続けていることはないだろうか。あのペンを使った暇つぶしを、もっと効率的に行おう、という趣旨である。これならハンドスピナーと違って大人も仕事中に楽しめるとあって、2018年には日本でもブレイクするかもしれないので、注目しておいて損はない。

 

無意味な気持ちよさ満載ペン

Fidget Penの中でも比較的初期に発売されたのが「Fidget Widget Pen」。6種の暇つぶしガジェットを搭載したペンである。

↑ThumbsUp「Fidget Widget Pen」9.99ドル↑ThumbsUp「Fidget Widget Pen」9.99ドル

 

まず目につくのは、軸上で一列に並んだ5個のボタンだろう。

 

これは押せるけど、何の意味もないボタン。押し込むとカチッカチッと硬めのクリック感があり、なかなか気持ちいい。

↑左は意味なしクリックボタン、右は意味なしトグルスイッチ。押して気持ちいい、というだけが存在意義だ↑左は意味なしクリックボタン、右は意味なしロッカスイッチ。押して気持ちいい、というだけが存在意義だ

 

その上には、ロッカスイッチ。これも全く何の意味もないスイッチである。パチッパチッと切り替える感触を楽しむためだけのものだ。

↑さすが感触に特化しているだけあって、どれも触っているだけでクセになる楽しさだ↑さすが感触に特化しているだけあって、どれも触っているだけでクセになる楽しさだ

 

ペン軸の裏側には、指の腹で転がすためだけのロータリースイッチとスライダースイッチ。これも言うまでもなく、感触だけの意味なしスイッチだ。

 

さらに、グリップ部はダイヤルのように回せるが、もちろんこれにも意味はない。3つが連なっており、すべて回す硬さがちょっとずつ変えてあるところは芸が細かい。

↑チープな見た目にも関わらず、ノックノブの押し込み感は重厚で、高級ペンのそれに近い↑チープな見た目にも関わらず、ノックノブの押し込み感は重厚で、高級ペンのそれに近い

 

最後に、ペン軸後端のトグルスイッチ。押し込むとペン先が出るノックノブになっており、これだけが唯一、意味のあるスイッチだ。ガッチョン! という重々しいノック感はいかにも「押し込んだ!」という満足感があっていい。

 

大人が遊べるFidget Pen

先の「Fidget Widget Pen」が初期型の“Fidget Pen”で少しオモチャ寄りのビジュアルだとしたら、最新型でかなり洗練されているのが「FIDI PEN」である。一昨年、アメリカのクラウドファンディングで出品され、無事に成立して商品化されたものだ。

↑FIDIPEN.com「FIDI PEN」24ドル↑FIDIPEN.com「FIDI PEN」24ドル

 

これも全体的に意味のないガジェット類が積載されているのだが、見た目的にはちょっとオシャレペン感もあり、より「大人が会社でこっそり持っていても怪しまれない」要素が強い。

↑各スイッチともFidget Widget Penより押し心地がまろやかで、高級感がある↑各スイッチともFidget Widget Penより押し心地がまろやかで、高級感がある

 

普通のペンと比べて違和感があるとしたら、やはり軸のロッカスイッチだろう。Fidget Widget Penよりも押し心地がソフトだが、パチッと弾むような感覚があり、ついつい何度もパチパチしてしまう。

 

軸上にはもうひとつ、クリクリと回して遊べるボールもある。小さなトラックボールのようなものだが、指でいじっても音がしないので、会議中などに手遊びするならこれがベストだろう。また、ボールを押し込むとわずかにコリッとしたクリック感があるのも楽しい。

↑感触の楽しさで、無限にビョンビョン・クルクルと指でいじり続けてしまう↑感触の楽しさで、無限にビョンビョン・クルクルと指でいじり続けてしまう

 

隠し機能的に備わっているのが、フリップ・クリップだ。クリップを持ち上げるとロックが外れ、バネの力でビョンと立ち上がるようになっている。これを指でビョンビョンと弾くとこれも感触が気持ちいい。

 

軸後端のノックノブは、押し込むと深めのストロークがあって押し心地がいいのに加えて、さらに回転するホイールもついている。ハンドスピナーのようにベアリングが入っているわけではないが、指で弾いて回転させると、わりと長く回ってくれる。これもついつい「どれぐらい回転させ続けられるか」という遊びに没頭してしまうため、中毒性が高い。

 

↑なだらかなくぼみは、サテンのようなすべすべ感。気がつくとこればかり触っている↑なだらかなくぼみは、サテンのようなすべすべ感。気がつくとこればかり触っている

 

そして、このペンで最も中毒性が高く、最も官能的なのが、ペン軸に掘られたスムースディップと呼ばれる“へこみ”である。

 

つるんとした単なるへこみなのだが、これがすべすべしていて、さすると恐ろしく気持ちがいい。特にサテンの手触りなどすべすべとしたものに弱いタイプの人であれば、軽く1時間ぐらいはずっと、すべすべとさすっていられる恐ろしいガジェットだ。ボールだホイールだとあれこれついていても、結果、一番気持ちいいのがプリミティブなへこみである、というのはちょっと面白い。

 

ちなみに、本質から外れるので言及はわずかに止めておくが、今回紹介したどちらもペン自体はごくありふれた油性ペンである(Fidget Widget Penの方が若干なめらか寄りで書きやすい)。特にアメリカのオモチャペン系によくあるタイプのもので、筆記具としてはまあ必要充分というところだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

文房具を駆使してインフルエンサー!? “インスタ映え”に効力を発揮するノートがあったとは

【きだてたく文房具レビュー】いいね!がもらえる名脇役ノート

 

今年の新語・流行語大賞は「インスタ映え」だそうで、たしかに去年から今年にかけて、どこに行ってもよく耳にしていた気はする。

 

「Instagram(インスタグラム)」と聞くと、おっさんは「若い女子のすることだろう」と避けがちかもしれないが、要するに“スマホで写真を撮ってSNSにアップする”というだけの話である。ラテアートやらふわふわなパンケーキの写真をインスタに載せるか、飲み会で出た豪華刺し盛りの写真をFacebookに投稿するか、ぐらいの話であって、やってることに大差はない。

 

今やスマホ(ガラケーでも)を持っていながら写真を撮らない人なんて、かなり少数派に属するはずで、だいたいはなんだかんだで1日1枚ぐらいは撮っているんではなかろうか。で、どうせ撮るならちょっとでも、人に見せた時に「いい写真だね」と言ってもらえるような見栄えの良い写真を撮りたい、というのが人情だろう。そんな人間の欲求にピンポイントで応えるノートというのがあるので、紹介したい。

 

つまり今回は、ノートの紙質とかそういうのは一切抜きで、撮影に便利なパーツだけの話である。

 

影を飛ばしてくっきり明るい写真を撮れるノート

↑M-PLAN「レフ板のついたリングノート」A5サイズ 540円↑M-PLAN「レフ板のついたリングノート」A5サイズ 540円

 

M-PLANから12月に発売される「レフ板のついたリングノート」は、A5サイズの5㎜方眼リングノートに、名前の通りレフ板を備えたもの。

 

写真に興味のない人にはピンとこないかも知れないが、実はこの“レフ板”というのが、写真をきれいに見栄え良く撮るのに必須といっていいほど重要なのだ。

↑ノートの後ろに銀色のレフ板が見開きで付属している↑ノートの後ろに銀色のレフ板が見開きで付属している

 

このノート、後ろ側に銀色のメタリックボードが付いており、これが簡易的ながらレフ板として機能する。

 

ノートにレフ板が付いている意味というのは、特にない。ただ、スマホでちょっとした写真を撮るためにわざわざレフ板を持ち歩くよりは、いつものノートについでにレフ板が付いている、という方がお得でうれしいというものだろう。

 

↑こちらがレフ板なしの写真(iPhone7のカメラで撮影)↑こちらがレフ板なしの写真(iPhone7のカメラで撮影)

 

↑こちらはレフ板ありの写真。トレーラー側面がくっきり明るくなっているのが分かる↑こちらはレフ板ありの写真。トレーラー側面がくっきり明るくなっているのが分かる

 

これを被写体のそば、上から見て影ができている側に置いてやることで、光を反射して明るく撮影することができる、というわけ。(この辺の理屈は、説明し始めるとキリがないので、興味のある方はレフ板・ライティングなどのワードで検索してください)

↑実際の撮影風景。照明の反対側に置いて影を消すのが基本的な使い方だ↑実際の撮影風景。照明の反対側に置いて影を消すのが基本的な使い方だ

 

レフ板を使う時は見開き状態にして立ててもいいし、ノートの裏表紙台紙がスタンドになっているので、これで支えて立ててもいい。スマホは両手で支えつつシャッターボタンを押すのが安定した撮影姿勢なので、いちいちレフ板に片手をふさがれないのはありがたい。

↑台紙はこのようにスタンドとして使用できる↑台紙はこのようにスタンドとして使用できる

 

実際には「がっつり実用」というレベルには満たない、オマケ程度の性能だ。しかし、あれば便利なレフ板がノートのオマケとしてついていると考えれば、それだけでも常備する価値はあるかも知れない。

 

知る人ぞ知る使い方、黒背景のノート

もうひとつ、オフィシャルでは「写真撮影に便利」とはひと言も謳われていないが、実は知る人ぞ知る小物撮影にちょっと便利なノート、というのも存在する。

 

マルマンの『Mnemosyne(ニーモシネ)』リングノートがそれだ。

↑マルマン「Mnemosyne(ニーモシネ)」A5リングノート(方眼/無地/7㎜罫)594円↑マルマン「Mnemosyne(ニーモシネ)」A5リングノート(方眼/無地/7㎜罫)594円

 

ニーモシネといえば、文房具好きの間では書き味の良い高品質紙を使ったノートとして有名だ。しかし、今回のような撮影用途で便利なのは、紙の方ではない。リングノートの表紙裏面が、背景の黒バックとしてなかなか有能なのだ。

↑表紙裏面は何の印刷もない、ただ黒一色のボードとして使える↑表紙裏面は何の印刷もない、ただ黒一色のボードとして使える

 

表紙板の裏面は何の装飾もない黒一色。プラ製なのでアップで撮影しても紙の繊維が目立つことはない。しかもうっすらと梨地になっているので、周りの光がペカペカと極端に反射することもない。

↑撮影時は上に被写体を置いて撮るだけ↑撮影時は上に被写体を置いて撮るだけ

 

↑黒バックは被写体がくっきりと浮かび上がるので、見せたい部分をしっかり見せられる↑黒バックは被写体がくっきりと浮かび上がるので、見せたい部分をしっかり見せられる

 

↑A5サイズは、これぐらいの小物の撮影にちょうど良いサイズ感↑A5サイズは、これぐらいの小物の撮影にちょうど良いサイズ感

 

例えば文房具など小物の写真を撮ってSNSにアップする時など、この程よい黒バックが重宝するのである。

 

机の上にダイレクトに置いて撮ると、気付かぬうちに埃や汚れが写り込んでしまったり、変な反射光でみっともない写真になってしまうこともままあること。そういう時に、サッとニーモシネの表紙裏を敷いてやるだけで、グッと締まったいい写真になったりするのである。

 

ニーモシネ、そもそもノートとしても優秀であることだし、いざという時に備えてこちらも1冊、どうだろう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

これは癖になるスルスル感! カーブもギザギザも思い通りの病みつきガラスカッターマット

【きだてたく文房具レビュー】高熱でも超音波でもかかって来い! のカッターマット

 

文房具には、「必要があるから使うモノ」と「使ってみて初めて必要性が分かるモノ」がある。

 

必要があるから使う……というのは、これを使わないと元から作業が成り立たないモノ。例えばペンがないと字は書けないし、糊を使わないと接着できない。つまり、かなり重要度が高いやつだ。対して、カッターマットなんかは、なくても紙が切れてしまう。新聞とか雑誌を下に敷けばなんとかなるし、気にせず机の上ダイレクトでカッター使っちゃう人だっている。

 

ところが、実際にマットを使うとカッター刃のもちは良くなるし、なにより切りやすい。一度使えば「あ、やっぱりマットいるんだ」と分かるのだ。

↑筆者の作業机は全面をカッターマットにしてある。なにか思いついた時に、すぐカット作業ができて便利↑筆者の作業机は全面をカッターマットにしてある。なにか思いついた時に、すぐカット作業ができて便利

 

で、もちろん筆者も、カッターマットの必要性は把握していたのだけど、このほど、実はその“さらに先”があったことを知った。使ってみたら、ガラス製カッターマットがものすごく良かったのである。

↑ゴッドハンド「ガラスカッターマット」151x227mm 1944円↑ゴッドハンド「ガラスカッターマット」151x227mm 1944円

 

今回紹介したいのは、ゴッドハンドの「ガラスカッターマット」。名前に聞き覚えがない人もいるかもしれないが、ゴッドハンドというのは文房具メーカーではない。異常に鋭くて切れ味の良いニッパーなどを作っている、模型工作用具のメーカーだ。

↑耐熱硬化ガラス製なので、ヒートカッターや超音波カッターにも使用可↑耐熱硬化ガラス製なので、ヒートカッターや超音波カッターにも使用可

 

そもそも、ガラスがカッターマットに使えるのか? と思われるかもしれないが、それが使えるのである。

 

実は、かつて印刷所でアナログ製版をしていた頃は、フィルムを切り貼りするのに巨大なガラスの作業台が使われていたのである。また、日本ではあまり普及していないが、海外のクラフト業界では、けっこう使われているとも聞く。

↑マットに刃を取られないので、フリーハンドで曲線を切るのがおそろしいほど軽快に。これはラクだ↑マットに刃を取られないので、フリーハンドで曲線を切るのがおそろしいほど軽快に。これはラクだ

 

では、普通の軟質樹脂製のカッターマットと比べてガラスの何がいいかって、まず切りやすい。カッターの刃先がガラスの上で滑るので、刃がスルスル動かせる。思った方向に刃を動かせるので、曲線カットや細かい切り抜きなんかもすごくやりやすいのだ。

 

ただし、その代わりカッターの刃が鈍るスピードはやたら速くなる。刃もちの悪さは意識して、こまめに刃を折る必要があるだろう。

↑左が軟質樹脂製マット、右がガラスマットでのギザギザ切り。左は、カドの頂点がえぐられたような穴になっている↑左が軟質樹脂製マット、右がガラスマットでのギザギザ切り。左は、カドの頂点がえぐられたような穴になっている

 

ガラスだと刃がマットの中に沈み込まないというのも、切りやすさのポイント。

 

軟質マットでギザギザと刃を動かして切ると、曲がり角の頂点に大きくえぐったような穴が開いてしまう。これ、「こういう切り方をしたら、こうなるものだ」と思って今まで気にもしていなかったのだが、実はマットに刃が沈み込んでいたからこその現象だったのだ。

 

その証拠に、ガラスカッターマットなら切り口がキレイで、穴も開いていない。

↑塗料や油性インクも、ひと拭きでキレイに。これはとてもありがたい↑塗料や油性インクも、ひと拭きでキレイに。これはとてもありがたい

 

あと、これは切りやすさには関係ないのだが、作業中に塗料や接着剤が付いても溶剤で簡単に拭き取れる、というのもガラスの大きなメリットだ。

 

油性マーカーのインクなんかも、軟質樹脂製カッターマットに付いてしまうと、もう二度と取れないものだが、これも無水エタノールとペーパータオルで拭うと、すっかりピカピカ。ペーパークラフトをする時にのり・接着剤をこぼしたり、塗料がついてしまったりするのはよくあるトラブルだが、それが簡単にリカバリーできるのはありがたい。

 

サイズ比やカッター刃のランニングコストで考えれば、かなり割高感のあるマットだが、趣味でクラフトをやっている人なら買って間違いはないと思う。性能的には、一度使うともう軟質樹脂製マットに戻れないぐらいのインパクトがある。

 

ただしかなりの人気商品のため、一度売り切れるとしばらくは品切れが続いてしまう。ネットで見つけたら即買いをオススメしておく。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

アレやったっけ……記憶力に自信をなくした世代に捧ぐ、タスク管理文房具

【きだてたく文房具レビュー】To Doを完全管理できる意外な組み合わせ文房具

 

いよいよ2017年も、残りあと1ヶ月。おおかたの人はもう、来年の手帳の準備が終わった頃合いだろう。

 

スケジュール管理の方法は百人百様で、営業仕事のために30分刻みのバーチカルでがっつりスケジューリングする人もいれば、内勤だからマンスリーだけで充分という人もいる。筆者は、残念ながら秒分に追われるほどの仕事もなく、マンスリーに日々の作業と〆切を書き込むだけで、だいたい事足りる派だ。ただ、わざわざマンスリーのブロックに書き込むほどじゃないけど忘れたらマズい、という日々の雑事はそこそこあるので、毎朝、その日1日分のToDoリストはまじめに作るように心がけている。

 

その関連で最近ちょっと面白かったのが、あるToDo管理系の文房具と、ToDoまったく関係ない文房具の組み合わせ。自分の環境では、このコンビネーションがなかなかイイ感じに効果を発揮してくれたのだ。せっかくなので、皆さんにもオススメしておきたいと思う。

 

To Do管理はスタンド式付箋で行う

まずTo Do管理系は、「スタンド式 TODOふせん」。サンスター文具から「ちょっとした不便を解決してくれるライトな事務文具」というコンセプトで発売されたLightia(ライティア)シリーズのひとつだ。

↑サンスター文具「Lightia スタンド式 TODOふせん」全6柄 各486円↑サンスター文具「Lightia スタンド式 TODOふせん」全6柄 各486円

 

商品名からだいたい見当がつくだろうが、「自立する付箋台紙に8本の付箋が並んでいて、ここに今日1日のタスクを書き込む」という、非常にシンプルなもの。台紙を立てた状態で机の目に付くところに設置して、トイレなどちょっと離席するタイミングでつねにチラッと見るように習慣づけると、作業の漏れが減らせるだろう。

↑置きっぱなしだと視線が滑りがちなので、できるだけ見るように意識したい↑置きっぱなしだと視線が滑りがちなので、できるだけ見るように意識したい

 

で、終わった時点でピッと剥がせば、残っているタスクが一目瞭然。剥がした下には空白の付箋が出てくるので、新しいTo Doはその空いた箇所に書き込む。これなら、台紙のリストは常に更新された状態になるわけだ。

 

これが意外と便利で、とにかく見えている部分が今現在のすべてのTo Doという仕組みである。作業をひとつし漏れたけど、日にちが変わっちゃったから改めて次のページに書き写す……なんて必要はない。

↑めくったところに、新しいTo Doを書き込む↑めくったところに、新しいTo Doを書き込む

 

さらに、これが付箋というのがポイントで、外出するときは、剥がしたタスクを手帳に貼って持ち出すことができるのである。

 

社内だけで作業が完結する人には不要だろうが、「基本は内勤だけどあちこち外に出ることもあるかな」というタイプの人にとっては、社内用のTo Doリストをいちいち手帳に書き写す手間がいらないのは非常にラクだ。

↑台紙から剥がした付箋は、手帳やノートに貼って持ち出しが可能↑台紙から剥がした付箋は、手帳やノートに貼って持ち出しが可能

 

何より、社内用と外出用でリストが2系統あると、書き写しのミスや二重作業などトラブルの元となる。スケジュール管理は、できるだけ1系統に統合する方がいい。

 

そういう意味でも、「スタンド式TODOふせん」はかなり実用性の高いスケジューラーと言える。

 

“付箋のゴミ箱”が終わったことリストになる

この付箋と組み合わせて便利だったのが、カミテリアの「ふせんのゴミ箱」。こちらは商品名だけではどんなものなのか、ちょっと想像しにくい。

↑カミテリア「ふせんのゴミ箱」3枚入り 全4柄セット Lサイズ 486円/Sサイズ 378円↑カミテリア「ふせんのゴミ箱」3枚入り 全4柄セット Lサイズ 486円/Sサイズ 378円

 

スリーブから覗いているつまみを引き上げると、ふたつ折りの台紙が出てくるので、ここに剥がした付箋を挟んだり貼り付けたりして収納するものだ。

 

要するに、使用済みの付箋を一時的に捨てることのできる増設ポケット、という説明が一番分かりやすいだろうか。

↑スリーブから台紙を抜くと……↑スリーブから台紙を抜くと……

↑使い終わった付箋は台紙にポイ!↑使い終わった付箋は台紙にポイ!

 

客先に付箋付きの資料を持ち込んだ際に、その場で剥がした付箋のやり場に困ったことはないだろうか? だいたい相手に「コレ、捨てておいてください」とも言いにくいし、ひとまず筆箱の中に突っ込んでおくぐらいが解決策だろう。

 

そういう場合には、手帳やノートにこの「ふせんのゴミ箱」を貼っておき(スリーブの背面に貼り剥がし可能なシールが付いている)、ゴミになる付箋をひとまずポイポイと突っ込んでおく。あとは帰社してから、本当のゴミ箱に改めて捨て直せばOKだ。

↑手帳やノートの表紙裏あたりに貼っておくと、外で使う時に便利↑手帳やノートの表紙裏あたりに貼っておくと、外で使う時に便利

 

そしてこの「ふせんのゴミ箱」が、先ほど手帳に貼って持ち出した「TODOふせん」の捨て場に、ちょうどイイ感じなのである。

 

出先でタスクを片付けたとして、自分のやった作業内容が書かれた付箋をその場でポイ捨てするのは、プライバシー的にも仕事的にも、やはり不用心に過ぎる。何より、未解決のタスクと混ざらないよう、「ここに入っているのは確実に終わったもの」として分かる集積場が必要なのだ。

↑ゴミ箱の中がやり終わった「Doneリスト」に。記憶力に自信がなくなる世代には、驚くほどありがたい↑ゴミ箱の中がやり終わった「Doneリスト」に。記憶力に自信がなくなる世代には、驚くほどありがたい

 

あと、これは若い人には伝わりづらいかも知れないが、ある年齢を過ぎてくると、自分の記憶能力に一切の責任がもてなくなる。

 

正直なところ、「TODOふせん」にない項目が、終わったから剥がしたのか、そもそも書き忘れているのかの区別がつかないのである。かなり危なっかしい話だが、これがまた40代以降の熟年層には結構な“あるある”なのだ。

 

しかし、そういう時にも「ふせんのゴミ箱」があればひと安心。中を見れば、そこにあるのがTo Do(やること)リストではなく、Done(やったこと)リストになっているのである。

 

もちろん、台紙にも手帳にも貼ってなくて、ゴミ箱にすらなければ、それは単なるリストの書き忘れ。そこまでは文房具でフォローできないので、自分のぼんやりっぷりを呪いながら、改めてタスクを組み直そう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

授業や会議で指されたくない人へ! 悪目立ちを防ぐパイロットの縦横無尽ペンケースをレビュー

【きだてたく文房具レビュー】悪目立ちしないペンケース

 

仕事柄、友人知人からの文房具の相談に乗ることが多い。この間も、仕事関係では先輩に当たるライターの方から「なんか使いやすいペンケースってない?」という非常にザックリとした相談を受けた。

 

「なんか使いやすい」も何も、アンタが今どんなペンケースを使ってて、どこが不満なのか分からない以上は、何も言えねぇよ! という言葉は社会人として飲み込んで、「そうですね、最近は立つペンケース系がすごい流行ってますねえ」と、当たり障りのない回答をすると、あちらが「うーん……」と妙に渋い反応をする。

 

あれ? 想定外の反応に「どうしたんですか?」と聞くと、「立つペンケース、使ったことあるんだけど、会議とか打ち合わせの時に使うと変に目立ってイヤなんだよね」とのこと。

 

なるほど。考えたこともなかったが、たしかにテーブルの上に自分のペンケースだけがにょっきり立っている状態を、“悪目立ち”と受け取る人はいるのかも知れない。そして、そういうことならこちらにも解決案がないことはない。

↑パイロット「Tatemo」全9色 各1296円↑パイロット「Tatemo」全9色 各1296円

 

“立つペンケース”系は、立たせて使うことで中の筆記具を取り出しやすい、さらに狭い机でも省スペースで展開できる、という大きなメリットがあるが、今回の先輩ライター氏は、場合によっては立たせたくないこともあるという。

 

ならぱ、立たせても寝かせても便利なものがあれば良いのだろう。ということでオススメしてみたのが、パイロットの立つペンケース「Tatemo」である。

↑フタを開いて自立させた状態。これだけで充分に安定して立つ↑フタを開いて自立させた状態。これだけで充分に安定して立つ

 

使用時は、斜めに切られた前面の開口部をファスナーで開けてガバッと展開させる。するとフタと本体がマグネットで固定され、三角のくさびのような形に変形するので、これでペンスタンドのように立たせることができるようになる、というもの。

 

変形によって底面積は1.5倍ほどに増えるので、使っていてもまず安定して自立する。これならカフェのテーブルなど狭い机で作業をする時も、場所が広くスッキリ使えるというわけである。

↑立てた状態なら、狭い机でも仕事がしやすい↑立てた状態なら、狭い机でも仕事がしやすい

 

Tatemoの面白いところは、この三角のくさび型の状態で立たせるだけでなく、寝かせてペントレーのように平らに使うこともできる、というところ。といっても、さほど特殊な仕掛けがあるわけではない。単に、背面もフラットになっているから寝かせても安定している、というだけの話である。

 

しかし、実は立つペンケース系の中でこれは意外にレアな特性なのだ。基本的に立たせて使うことを前提としているので、他の製品は寝かせた状態ではペンが取り出しにくかったり、広い開口部がキープできなかったりするものが多い。

↑寝かせた状態でも中の文房具へのアクセスはスムーズ↑寝かせた状態でも中の文房具へのアクセスはスムーズ

 

対してTatemoは、寝かせたトレー形態でも開口が充分に大きく、ペンが取り出しやすくなっているのがポイントだ。また、ファスナー周りに少しフチが残るようになっているので、トレーとして寝かせた時もザラッと中からペンが出てくる心配もない。

 

縦・横どちらにしても安定するので、自分の使用環境に合わせて置けば快適に使うことができるだろう。

↑会議中に立てた状態。確かにちょっと悪目立ちするかも?↑会議中に立てた状態。確かにちょっと悪目立ちするかも?

 

↑寝かせた状態。これなら注目も受けずにやりすごせるはず↑寝かせた状態。これなら注目も受けずにやりすごせるはず

 

フタには、立つペンケース系ではすっかり定番になった面ファスナー付きポケットが付いており、消しゴムやふせんなどの小物はここに収納可能。立たせたとき底に沈まないように、という工夫である。

↑フタ側についたメッシュポケット。決して使いやすいわけではないので、あまり使わない類のものを収納する方がいい↑フタ側についたメッシュポケット。決して使いやすいわけではないので、あまり使わない類のものを収納する方がいい

 

ただ、このポケットは口が狭く、決して使いやすいわけではない。使用頻度の高い消しゴムなどはペン型のものを使うなどして、ここにはボールペンの替えリフィルのような、いざという時の備品を収納するのがベターだろう。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

書けるマステとプチなカッターが出逢ったら……ロール付箋の上位互換となるベストカップルが誕生した!

【きだてたく文房具レビュー】最強のロール付箋が完成するマスキングテープ&テープカッター

 

全面糊タイプのロール付箋は、使ってみると便利さが実感できるアイテムだ。短く切ってノートのインデックスにしたり、長く使って食べかけの菓子袋を仮留めしたりと応用が利くため、ひとつ手元に常備しておくと、なかなか使い勝手が良いのである。

 

とはいえ、その便利なロール付箋にも不満がないわけじゃない。ここはちょっとアレだなー、と感じてもいた。それが、最近立て続けに発売された新アイテムふたつを組み合わせて使うと、なんと驚き、ロール付箋の完全上位互換として機能して、やたらと使いやすくなったのだ。

 

まず紹介したいのが、今年の7月にマークスから発売された「水性ペンで書けるマスキングテープ」。これはまさに製品名のとおり、テープの上から字が書けることを眼目にしたマスキングテープだ。

↑マークス「マステ 水性ペンで書けるマスキングテープ」小巻サイズ 6色 各388円↑マークス「マステ 水性ペンで書けるマスキングテープ」小巻サイズ 6色 各388円

 

マスキングテープといえば、そもそもマスキング、つまり塗装などをするときに塗料を弾くためのもの。文字が書けてしまうのは本来の用途からするとマズいのだが、それでもまぁ、油性インクであれば字が書けないことはない(あくまでも、書けないこともない、レベルの話だが)。

 

なので、マステユーザーの中には、油性ペン+マステをロール付箋のように使う人もいなくはなかった。

↑上ふたつは字が書けるマスキングテープ。紙に書くような感覚で、くっきりと水性インクが乗る。一番下の通常のマステは、インクを弾いてしまってきれいに書けない↑上ふたつは字が書けるマスキングテープ。紙に書くような感覚で、くっきりと水性インクが乗る。一番下の通常のマステは、インクを弾いてしまってきれいに書けない

 

ところが、この字が書けるマスキングテープは、なんと通常のマスキングテープではまず弾かれてしまっていた水性ボールペンや蛍光マーカーでも、くっきり字が書けるのである。

↑水性ペンで書ける意外の使い勝手は、通常のマステとほぼ同じ↑水性ペンで書ける以外の使い勝手は、通常のマステとほぼ同じ

 

これなら、ロール付箋のように好きな長さに切って貼って、上から字を書くのも自由自在。書類にコメントを書き足したり、手帳のマンスリーにスケジュールを追記したりするのにも便利だ。

 

特に筆者は、常用のボールペンが水性のゲルインクボールペンであるため、“いつものペンが使える”というのは非常にありがたい。ただ、普通の紙ほどはインクを吸わないので、書いた後の乾燥時間はややかかる。そこは注意が必要かもしれない。

 

↑粘着力もあるので、ちょっとした仮留めもそつなくこなす↑粘着力もあるので、ちょっとした仮留めもそつなくこなす

 

さて、冒頭にも書いたロール付箋の不満ポイントだが、それは粘着力だ。ロール付箋はあくまでも付箋として作られているため、粘着力が弱い。貼っておいたものが、知らず知らずのうちにへラッと剥がれてしまうこともよくあった。

 

ところが、この字が書けるマスキングテープの粘着力は「ロール付箋以上、普通のマステよりやや弱い」という程度。手帳やノートの上から剥がす時に紙の表層を連れてくることはないが、かといって勝手に剥がれることもない。ちょうどいい、という表現がぴったりくる感じだ。これぐらいの粘着力があれば、仮留め用にもより使いやすいだろう。

 

このマステに相性バッチリ! と感じたのが、11月に発売されたばかりのコクヨ「テープカッター カルカットクリップ」である。

↑コクヨ「テープカッター カルカットクリップ」各3色 10〜15㎜幅用 388円/20〜25㎜幅用 410円↑コクヨ「テープカッター カルカットクリップ」各3色 10〜15㎜幅用 388円/20〜25㎜幅用 410円

 

カルカットと言えば、コクヨから発売されているテープカッターシリーズ。特殊な形状の「カルカット刃」を採用し、テープがスパッと軽く切れて、しかも切り口がギザギザせず真っ直ぐになるということで、2014年の発売以降ずっと人気となっている。

 

つまりこのクリップタイプのマスキングテープカッター(以下、長いのでクリップカッター)は、カルカット刃を搭載した、クリップでマステのロールを挟んで使う、超コンパクトなテープカッターなのだ。

↑軽い力でサクッと切れる↑軽い力でサクッと切れる

 

使い方は、ふっくらした形状のクリップをマステのロールに直交するよう挟むだけ。あとは切りたいところまで回しながら移動させて、テープをちょっと上に引き上げるだけでキレイに切れる。

 

感覚としては手でマステをビリッとちぎるのに近いが、手応えは軽いし、さすがカルカット刃だけあって切り口もフラットだ。

↑左が一般的なテープカッター、右がカルカット刃の切り口。ギザギザが小さく、遠目にはほぼまっすぐに見える↑左が一般的なテープカッター、右がカルカット刃の切り口。ギザギザが小さく、遠目にはほぼまっすぐに見える

 

非常にシンプルな道具に思えるが、よく見るとさまざまな工夫がなされているのが分かる。例えばクリップでマステを挟む時、挟み口の受け側(下側)が動いて大きく開き、ロールに挿し込みやすいようになっている。で、一度挟むと今度はロールが抜けにくいように受けが閉じ、さらにテープがカッター刃に水平に当たるよう固定してくれるのだ。

↑挟む前は、受け側が大きく開く↑挟む前は、受け側が大きく開く

 

↑挟むと、テープが抜けにくいように閉じて固定する↑挟むと、テープが抜けにくいように閉じて固定する

 

さらにこの可動式の受け側は、マステのロールの厚さにも対応しており、テープ巻きの長いもの(ロールが分厚い)も、使い続けて少なくなったものも、常に同じような角度でカッター刃に当たるよう調節してくれる。

 

クリップ形式のカッターなのに、テープ残量によって使い心地が変わらないこの機構は、本当に良くできていると思う。

↑ロールの厚みが変わっても、刃の当たりが変わらない構造↑ロールの厚みが変わっても、刃の当たりが変わらない構造

 

このクリップカッターと、先の字が書けるマステを組み合わせて使うと、まず切り口がフラットになるのが使いやすい。付箋代わりにメッセージを書いて貼る時、テープを手で千切ると見栄えが悪いし、切り口から浮いて剥がれやすくなってしまう。やはり切り口はできるだけキレイな方が、いろいろとありがたいのだ。

 

また、カッターとして非常にコンパクトなのも、相性を高めるポイントのひとつ。文字が書けるマステは応用の幅が広いアイテムだけに、できれば筆箱に放り込んで常備しておきたい。であれば、カッターも筆箱に入って邪魔にならないサイズであるべきだろう。大容量の筆箱ならクリップカッターを挟んだままでも入るし、それが無理ならバラで入れておいてもいい。

 

このふたつを組み合わせて持ち歩くことで、何かの時に助かることもきっとあるはずだ。使い勝手の良さは保証する。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

書類100枚をスッポリ! クリアファイルをまとめて放り込めるクリアファイル「フリップファイル」をレビュー

【きだてたく文房具レビュー】クリアファイルを飲み込むクリアファイル

 

いま、来年2月に出る予定の超面白い文房具本(ご期待ください!)を執筆している最中なのだが、現時点でかなり時間が無く、なかなかのギリギリ進行。そのため、ちょっとした空き時間を見つけては原稿チェックをせねばならず、チェック用の原稿プリントアウト100枚ほどを、常にカバンに放り込んで持ち歩いている。

 

これが重いのはまぁ仕方ないとして、A4の紙束100枚というのがやたらと持ち運びにくい。

 

最初は適当な角2封筒にドサッと放り込んでいたのだが、厚みがあるためにきちんと納まりきらず紙の端が飛び出していたり、あとは何度もカバンから出し入れしているうちに封筒のカドが擦れてボロボロになってきたりと、あまり具合がよろしくなかったのだ。

↑運用3日にしてもうボロボロの角2封筒↑運用3日にしてもうボロボロの角2封筒

 

こういうの、どうしたらいいんだろう? と考えていたら、フと、先日の文房具関連展示会で新製品として紹介されていたクリアファイルを思い出した。アレ、使えるんじゃないだろうか。

 

↑セキセイ「Actif V フリップファイル」タテ型・ヨコ型 全6色 各216円↑セキセイ「Actif V フリップファイル」タテ型・ヨコ型 全6色 各216円

 

ということで思い出したアレというのが、セキセイの「ActifV フリップファイル」。一見したところ、特に代わり映えのしない普通のクリアファイルなのだが、まず容量が違う。コピー用紙でなんと100枚を飲み込んでしまうのだ。100枚! それ、まさにいまピッタリ欲しいやつである。

↑コピー用紙100枚を収納した状態。まだ入るな、という実感↑コピー用紙100枚を収納した状態。まだ入るな、という実感

 

マチの厚さが最大で16㎜とかなりの幅広になっているため、実際にコピー用紙100枚(厚さ約9㎜)を入れても、キツキツにならない。指を差し込む余裕もあるので、書類を取り出すのもかなりラクだ。「100枚収納可」とあるのは、それなりに安全マージンを取った数字のように思える(実際130枚ぐらいは安定して入った)。

 

また、普通のクリアファイルごと収納ができるので、たとえば会議資料を人数分それぞれクリアファイルに入れて、それをさらに収納する……という使い方も可能だ。

↑開く時は書き込みラベル兼用のタブをつまんで……↑開く時は書き込みラベル兼用のタブをつまんで……

↑ガバッと後ろに反らすだけで、大きく開く↑ガバッと後ろに反らすだけで、大きく開く

 

今回の使い方で言うと、頻繁に中の書類を取り出すという条件があるのだが、これまたフリップファイルは充分に条件を満たしていた。

 

収納した紙が勝手に飛び出さないようにフラップ状のフタがついているのだが、製品名の通り、フラップのタブをめくる(flip)するように反らすだけでフタがガバッと大きく開き、書類にアクセスすることができるのだ。このフタが非常に良くできていて、閉まった状態だと振ろうが逆さにしようが勝手に開くことはないが、手でめくれば何の力もいらずにスルッと開く。片手でも簡単にできるので、これが非常に使いやすい。

↑タテ型は短辺方向が大きく開く↑タテ型は短辺方向が大きく開く

 

フタが短辺側についているタテ型とヨコ型があるが、これは自分の使っているカバンの形状で使い分けるといい。このフラップ状のフタのおかげで、ファイル自体はカバンの中に入れたまま、書類の出し入れができるからだ。

 

つまりリュックならタテ型がいいし、トートやビジネスバッグならヨコ型が便利、ということ。

↑本体がかなり頑丈なので、カバンの中に入れたままでも書類の出し入れはラクだ↑本体がかなり頑丈なので、カバンの中に入れたままでも書類の出し入れはラクだ

 

今回の筆者の使い方は、「最初からたっぷり紙を入れて持ち運ぶ」用途だったが、例えば、展示会などでカバンの中に空っぽのフリップファイルを入れておき、ブースで資料やカタログをもらう度に、その場でどんどん放り込んでしまうのだ(展示会の資料はクリアファイルに入っていることも多いが、もちろんそれもそのまま入る)。

 

本体がしっかりした厚めの素材でできているので、多少手荒に扱っても、中身が折れ曲がるようなことはない。また、マチが厚いこともあって、ファイルボックスに入れてもへにゃっと崩れることなく自立してくれる。プロジェクトごとに資料を分類して整理する際にもかなり使えるだろう。

↑ファイルボックスに放り込んでおけば自立するので、扱いやすい↑ファイルボックスに放り込んでおけば自立するので、扱いやすい

 

大量の書類持ち歩き・資料の分類整理などほぼ万能に使える気がするので、このフリップファイル、ちょっとまとめ買いしてみたいと思う。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

なんて常識破りな! コクヨのボールペン「エラベルノ」は軸もインクも字幅も好き勝手に選べるの

【きだてたく文房具レビュー】ボディもリフィルも好き勝手に選べるボールペン

 

文具店の店頭でボールペンを買う時、初めて見るペンならひとまず手にとって試し書きをする、ということはあるだろう。で、その時に「あー、ちょっとなー、こうじゃないんだよー」と感じたことはないだろうか?

 

例えば「惜しいなー。もうちょっと軸が太かったらバッチリなんだよな」とか。逆に「あと少し軸が細い方が手に合うんだけど……」ということもあるだろう。もしくは、軸はバッチリ握りやすいのに書き味がちょっとハマらない、という場合もあるはずだ。

 

筆記具の好みは人それぞれ。このような、文房具好きなら誰もが一度は感じたことがあるだろう、ボールペンの「ちょっと違う」問題に対してコクヨが出したのは、「じゃあ、軸とリフィル(芯)を好きなように選んで組み合わせたらいいじゃん?」という、ごもっともにして大胆なアンサーである。

↑コクヨ「エラベルノ」軸(左から太・標準・細)各108円/リフィル(油性・ゲル)各108円↑コクヨ「エラベルノ」軸(左から太・標準・細)各108円/リフィル(油性・ゲル)各108円

 

コクヨ「エラベルノ」は、まず軸をグリップ径3タイプ(太・標準・細)×2色(スモーク・クリア)からチョイス。次にインク2種(シルキー油性・エアリーゲル)×リフィルのボール径2タイプ(0.5㎜・0.7㎜)×インク色3/4色(油/黒・赤・青、ゲル/黒・赤・青・ブルーブラック)を選んで軸にセットし、最終的に自分好みの1本を購入できる、店頭カスタム式のボールペンだ。

↑エラベルノの店頭ディスプレイ。軸別・インク別にきちんと試筆サンプルが用意されている↑エラベルノの店頭ディスプレイ。軸別・インク別にきちんと試筆サンプルが用意されている

 

例えば、筆圧が弱めの人なら、グリップは「太」の方がしっかり力をかけられるので持ちやすい(色は自由に)。でインクは、筆圧をかけなくても濃いめの線が書ける「エアリーゲル」の「0.7㎜」に……という感じで組み合わせていく。

 

店頭には各組み合わせの試筆用ペンが揃えられているので、ここで自分の好みをあれこれ検討すればOKだ。

↑リフィルの入れ替えは、通常のボールペンと同じ手順↑リフィルの入れ替えは、通常のボールペンと同じ手順

 

エラベルノの面白いところは、この軸とリフィルの組み合わせ次第で、まったく違った性格のペンが生まれてしまうところだろう。これまでも、多色ペンなどで自分好みのリフィルを入れてカスタムすることはあったが、ここまで極端な変わりようは感じたことがない。

 

太さは細グリップの最も細い部分で直径約10.7㎜。対して太グリップの最も太い部分が直径約13.2㎜。この差、たかだか2.5㎜と侮るなかれ。実際に書き比べてみると、ペン先端への力のかかり具合がまったく違うのだ。

↑ふっくらとグリップ中央が膨らんだ太グリップと、中央がすぼんだ細グリップ。握り心地や力の入り加減がまったく違う↑ふっくらとグリップ中央が膨らんだ太グリップと、中央がすぼんだ細グリップ。握り心地や力の入り加減がまったく違う

 

同じリフィルを使っていても、太いグリップで力を乗せて書くのと細いグリップでコントロールして書くのでは、書き味が驚くほどに変わってくる。もちろんどちらが良いかは個人の好みだが、その好みの差が自分でハッキリ認識できるぐらいのレベルで別物になるのが面白い。

↑グリップの削がれた平面に指を乗せるだけで、驚くほどホールドが安定する↑グリップの削がれた平面に指を乗せるだけで、驚くほどホールドが安定する

 

3種とも共通なのは、一部を削ぎ落としたような“Dグリップ”を採用していること。その削ぎ落とした面に人差し指を乗せることで、すべすべなグリップの割に、しっかりとしたホールド感が得られるようになっている。

 

手汗をかくため、滑りやすいグリップに日頃は憎しみすら感じている筆者だが、このグリップはかなり好感が持てた。

 

さらに差が出るのが、リフィルのタイプ。

 

「エアリーゲル」は、確かに“エアリー”と言えるほどタッチが軽いサラサラのゲルインクだが、それより特徴的なのが、インクの発色の良さ。黒は本当に驚くほどがっつりと黒々しており、書いた字が読みやすい。

↑インクたっぷりで黒々とした筆跡のエアリーゲル↑インクたっぷりで黒々とした筆跡のエアリーゲル

 

ボール径で言うと、0.5㎜は軽さを感じつつもコントロール性が良く、字が下手な人でも丁寧に書きやすい。0.7㎜になると軽さの印象が強くなるが、それ以上にズバッと黒くて太い線が書けるのがとても楽しい。

 

「シルキー油性」は、完全にぬるぬるに振り切った低粘度油性インク。体感としては、低粘度油性の代表である三菱鉛筆の「ジェットストリーム」よりも、さらにぬるぬるとした印象だ。

↑低粘度油性インクの中でも、トップクラスの滑らかさを感じるシルキー油性↑低粘度油性インクの中でも、トップクラスの滑らかさを感じるシルキー油性

 

0.5㎜だと、この滑りを使ってスパッとシャープな線が気持ち良く書ける感じ。ただ0.7㎜になると、もうなめらかすぎてペン先がどこに行くのか分からないほど。なめらか系が好きな低粘度油性ファンでも評価が分かれそうなレベルである。

↑軸の中ほどに空いた穴から、リフィルの種類が確認できる。「G/05」ならゲルの0.5㎜ということ↑軸の中ほどに空いた穴から、リフィルの種類が確認できる。「G/05」ならゲルの0.5㎜ということ

 

筆者の個人的な好みでいうと、丁寧に書きたい時は「細グリップにエアリーゲルの0.5㎜」、議事録や取材メモを取るなど速度優先は「太か標準グリップに0.7のエアリーゲル」というチョイスだろうか。

 

自分の作業に最適なペンを見つけ出す楽しみを味わうためにも、できれば店頭で納得いくまで試し書きをして、ベストな組み合わせを見つけて欲しい。というか、できれば軸を太さ別で3本と、リフィル全種(油性・ゲルと、0.5㎜・0.7㎜の組み合わせ)でまとめ買いして、自宅でじっくり書き比べて遊ぶのが一番楽しいと思う。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

ビジネスマンの目からウロコ! 女子高生のカワイイ水玉ペンに意外な使い道があった

【きだてたく文房具レビュー】ビジネスマンも使える3in1カラーペン

 

女子中高生という生き物は、色ペン(水性カラーペン)がやたらと好きだ。

 

もしも機会があれば、彼女たちのペンケースを見せてもらうといいが、かなりの確率で色ペンが、少なくとも3色……場合によっては12色とか、ギッチリと入っているのである。そんなに使って何をするのかと言うと、基本はノート。今どきの女子の勉強ノートは、異様にカラフルでポップに彩られているのが普通なのだ。

 

で、そんな彼女たちが最近ガチで注目しているのが、トンボから発売された新製品の水性極細サインペン「プレイカラードット」である。しかもこれ、おっさんが仕事で使うにも意外と悪くない、ある特殊な機能を備えているという。

↑トンボ鉛筆「プレイカラードット」全12色 各172円↑トンボ鉛筆「プレイカラードット」全12色 各172円

 

実は以前にもこの連載で、トンボの水性極細カラーサインペン「プレイカラーK」を「女子向けだけど、おっさんにもメイン筆記具としてオススメ」として取り上げたことがある。

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先端径が0.3㎜とボールペン並みの極細で、サインペンなのに書き味がキシキシせずなめらかで、にじみ・裏うつりもない。その上、色数が豊富。プレイカラーシリーズは日常使用の筆記具として、そもそもかなり優秀なのだ。

 

で、そのシリーズ最新版こそが、あらためて今回紹介したい「プレイカラードット」。前バージョンの「プレイカラーK」は0.3㎜+0.8㎜のツインタイプだったが、「プレイカラードット」は0.3㎜+ドットスタンプマーカーのツイン、というこれまであまりなかった組み合わせになっている。

↑なめらかに書ける0.3㎜の極細チップ+5㎜のドットスタンプチップ↑なめらかに書ける0.3㎜の極細チップ+5㎜のドットスタンプチップ

 

クリップのついた方のキャップを外すと、丸棒をすっぱり切り落とした断面のような、円筒形のチップ(直径5㎜)が現れる。この円筒チップを垂直に紙に押しつけると、丸いドットのスタンプが捺せる…という仕組みだ。ドットをたっぷり捺してかわいい手作りカードを作るのもいいし、ノートの見出しマークに使うのもいい。

↑円筒形のチップ。 捺すときに、フチ全体に荷重をかけるようにくるんと回してやるのが、上手く捺すコツ↑円筒形のチップ。 捺すときに、フチ全体に荷重をかけるようにくるんと回してやるのが、上手く捺すコツ

 

↑てん、てん、とドットを捺すだけでかなり楽しい↑てん、てん、とドットを捺すだけでかなり楽しい

 

ただし、スタンプ時に思った以上にインクがドバッと出るため、紙によってはインクの水溜まりができる場合も。水性インクのボールペンや万年筆の筆跡の上に捺すとにじみの原因になることもあるので、そこだけ注意だ。

 

目からウロコ! ビジネスマン向けの使用例3

実用方向でオススメなのが、手帳ユース。

↑ブロックマンスリーに情報を圧縮して書き込める↑ブロックマンスリーに情報を圧縮して書き込める

 

ブロックマンスリーに、例えば「定例会議は青」「課のミーティングは赤」のように決めて捺せば、予定がさっと把握しやすい。直径5㎜のドットは大きすぎず小さすぎずで、はっきりと目に入ってくる。さらに「ジムに行く日はオレンジ」「近所のスーパーのポイントデーは緑」のようなプライベートの用件をしれっとビジネス手帳に紛れ込ませることも可能だ。

 

ただし、あまり色を多用すると「これなんの予定だっけ?」となるので、多くても3~4色ぐらいにとどめておくのがポイント。

 

また、ToDoリストのチェック代わりにドットスタンプを捺すのもいい。単にペンで跳ねチェックを入れるよりも、スタンプを捺した方がカラフルで見栄えがするし、逆に未チェックの項目がより目立つようになる。

↑はっきりと“やりました”感が出るので、タスクのうっかり抜けも減らせるかも↑はっきりと“やりました”感が出るので、タスクのうっかり抜けも減らせるかも

 

もうひとつ、この丸スタンプチップは、普通のラインマーカーのように線を引くのにも使える。

↑柔らかいドットチップは紙にフィットして線が引きやすい↑柔らかいドットチップは紙にフィットして線が引きやすい

 

チップが柔らかいので、硬めのラインマーカーで均一な線を引くのが苦手、という人にはむしろ使いやすいかもしれない。丸スタンプのインクは0.3㎜芯よりも薄い色になっているので、下の文字も問題なく読み取れるはずだ。

 

ただ、先ほども記した通り、ペンや紙によっては字がにじんでしまう危険性もある。予め大丈夫か確認しておく方が安全だろう。

 

「0.3㎜のカラーペン+スケジュールスタンプ+ラインマーカー」の3 in 1だと思えば、使用頻度はそこそこ高いし、使い勝手も良好。「色ペン使う年でもないしなー……」などと引かずに、おっさんでも筆箱に何色か放り込んでおいて損はないと思う。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。

インクが出ない! そんなプレゼンやミーティングでの“ちょい恥”をなくすホワイトボードマーカー3種をレビュー

【きだてたく文房具レビュー】カスれ対策に効くホワイトボードマーカー

 

例えば、初めて訪ねた会社でブレスト的な会議をすることになったとしよう。

 

挙がった内容を、片っ端からホワイトボードにマーカーで書いていこうとするのだが、すっごいカスれてまともに書けない。先方の会社の人が「あっ」みたいな表情になったので、こちらも慌てて「大丈夫ですよー」と笑いながら次々に別のマーカーを取って書く……が、なんとすべて書けない。先方の人が「あっ、あっ」みたいな顔をしている。

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困ったことに、ほとんどのビジネスマンは自社内のホワイトボードマーカーに対しては寛容だ。多少インクがカスれた程度なら、「まぁ、なんとか書けるし」ぐらいで済ませてしまう。しかしそれだと、今のように社外の人間が混じっての作業時に恥ずかしいことになる。

 

身内(のマーカー)に対して甘いのは、この際しょうがない。しかし、せめてカスれ対策が施された優秀なホワイトボードマーカーを導入しておいた方が、何かあった時に困らなくていいと思うのだ。

 

カスれ対策その1……ノック式マーカーにする

まず、インクかすれの要因として大きいのが、キャップの閉め忘れだ。

 

会議の最中にいちいちキャップを開け閉めするのは面倒だし、そもそも忘れがち。結局、会議が終わってからもうっかりキャップを閉め忘れて放置されたマーカーは、次に使うまでに先端がカスカスに乾いてしまう。

↑ぺんてる「ノック式ハンディ ホワイトボードマーカー」丸芯中字 赤・青・黒 各183円↑ぺんてる「ノック式ハンディ ホワイトボードマーカー」丸芯中字 赤・青・黒 各183円

 

そんなキャップの閉め忘れ対策として有効なのが、ノック式マーカー。ぺんてる「ノック式ハンディ ホワイトボードマーカー」は、以前この連載でも紹介したノック式油性マーカー ハンディのホワイトボードマーカー版だ。

↑ノック式は、片手でペン先チップの出し入れができる簡便さが大きなメリット↑ノック式は、片手でペン先チップの出し入れができる簡便さが大きなメリット

 

軸後端のノックボタンを押すと、ペン先チップがシャッターを開けてジャキッ! と現れ、もう一度押すとスルッと軸内に収納される。少しボタンは重いが、感覚としては普通のノック式ボールペンと同じである。

↑少し柔らかめで、なめらかな筆記感↑少し柔らかめで、なめらかな筆記感

 

キャップを閉め忘れる理由のひとつに、いちいち両手を使わないと閉められないから面倒くさい、というのがある。しかしノック式なら片手で操作できるので、閉め忘れにくい。さらにうれしいのが、キャップの開閉をするときにうっかりインクが手に付いてしまう、お馴染みの汚れダメージがゼロにできること。あの不快な手の汚れがなくなるだけでも、充分に使う価値はあるだろう。

 

カスれ対策その2……そもそも乾かないマーカーを使う

ノック式ですら閉め忘れてしまう、というぐらい無精でぼんやりした人間が社内にいる可能性も、もしかしたらあるかもしれない。

 

その場合、とれる対策はひとつ。そもそも先端が乾かないマーカーを使うしかない。

↑シヤチハタ「潤芯ホワイトボードマーカー」丸芯 赤・青・緑・黒 各162円↑シヤチハタ「潤芯ホワイトボードマーカー」丸芯 赤・青・緑・黒 各162円

 

シヤチハタ「潤芯ホワイトボードマーカー」は、なんとキャップを72時間(3日間)閉めなくても大丈夫! という、極度の乾きに強いマーカーだ。その秘密は特殊インクにある。

↑キャップ開け放しで24時間放置したペン先チップ。分かりにくいが、薄い皮膜が張っている状態↑キャップ開け放しで24時間放置したペン先チップ。分かりにくいが、薄い皮膜が張っている状態

 

潤芯のキャップを閉めずに放置すると、乾いたインクがペン先チップの表面に薄い皮膜を作る。この皮膜が、それ以上のインクの蒸発を防ぐという仕組み。次に使用するときは、何も考えずにそのまま書けば皮膜が破れて、その下からフレッシュなインクによる黒々とした筆記が可能となるわけだ。

↑特殊インクの性質か、乾燥するとグレーに近い色合いになる。視認性はあまり良くない↑特殊インクの性質か、乾燥するとグレーに近い色合いになる。視認性はあまり良くない

 

3日もあれば、無精でぼんやりした人がキャップを閉め忘れたとしても、次の人が気づいてくれるはず……。

 

カスれ対策その3……直液式マーカー+プッシュリフレッシュを取り入れる

一般的なマーカーペンで、ペン先チップにインクを供給する方式として多用されているのが、軸内に綿を詰めてそこにインクを染みこませた“中綿式”という方法。

 

安価で作りやすく気圧の変化に安定、というメリットがあるのだが、どうしてもインク容量が綿の分だけ少なくなってしまう。つまり、インク切れが早い。

↑ぺんてる「ノックル ボードにフィット ホワイトボードマーカー」中〜太字 赤・青・黒 各216円↑ぺんてる「ノックル ボードにフィット ホワイトボードマーカー」中〜太字 赤・青・黒 各216円

 

それなら軸にインクを直接ドボドボと入れちゃえば、たっぷり使えるじゃん? というのが“直液式”のマーカー。現在、複数の製品が発売されているが、オススメなのは、ぺんてる「ノックル ボードにフィット ホワイトボードマーカー」だ。

↑開封時はチップにインクが浸透していないので、ボタンプッシュで中綿にインクを押し出す必要がある↑開封時はチップにインクが浸透していないので、ボタンプッシュで中綿にインクを押し出す必要がある

 

ノックルは、正確には“半直液式”と言うべきもので、ペン先チップから軸先端にかけてちょっとだけ中綿が入っていて、その後ろのタンク内にインクがちゃぷちゃぷと入っている。

 

この先端中綿にインクを染みこませるためには、軸後端のボタンにキャップをはめて、グッグッと数回プッシュ。すると、タンクから押し出されたインクが中綿に浸透して、書けるようになるのである(開封時はインクが染みてないので、使う前にまずプッシュが必要)。

↑未使用品のラベルを剥いた状態。インクと中綿が分かれているのが見える↑未使用品のラベルを剥いた状態。インクと中綿が分かれているのが見える

 

もちろん、書いているうちに中綿のインクは切れてカスれてくるが、そんな時はボタンをまた数回プッシュすれば、インクは再充填されて復活。またしっかりと書けるようになる。

 

インク量は軸の側面窓から確認できるので、中綿式マーカーによくある「本当にインク切れなのか分からないので、捨てにくい」ということもない。

↑根本がジャバラ状になったペン先チップ。曲がるストローのように、自由に折れ曲がる↑根本がジャバラ状になったペン先チップ。曲がるストローのように、自由に折れ曲がる

 

実はこの半直液式のノックル、もう20年以上も前から売れ続けているロングセラーなのだが、「ボードにフィット ホワイトボードマーカー」は一昨年に登場した新バージョン。

 

「ボードにフィット」の名の通り、柔らかなナイロン製チップの根元にジャバラ状のスリットが刻まれており、筆圧をかけるとまるで筆ペンのようにしなって、ボードに密着してくれるのだ。

↑チップをしならせることで、筆ペンのような筆記感を味わえる。ボードにフィットするので非常に書きやすい↑チップをしならせることで、筆ペンのような筆記感を味わえる。ボードにフィットするので非常に書きやすい

 

筆者はマーカー類のチップの硬さが苦手で、いつも書きにくさを感じていたのだが、これはかなり快適。ペン先の角度など気にせずグイグイと書いていける。また、筆圧の強弱によって中字~太字を書き分けられるので、ボードの大小に関わらずこれ1本で済む、というのもなかなか便利だ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。