大人の美文字にも効く!「ザラザラ下敷き」の子ども用と侮れない威力とは?

当連載でも繰り返し言っていることだが、筆者は超ド級の悪筆である。少しでもマシな字が書ける筆記具を探して、取っ替え引っ替えしているうちに文房具に詳しくなり、文房具ライターになり……というぐらいだから、なかなか筋金入りの字の汚さと言っていいだろう。

 

で、いろいろと筆記具を試した上で確実に言えることは、マシな字を書きたいなら、筆記具に「なめらかな筆記感」を求めちゃダメ! ということだ。

 

字にコンプレックスがあると、どうしても字を走り書きしてしまう癖がつきがち。そこになめらかな筆記感がプラスされると、走り書きどころか、転がり回って書いたん……? と思うほどの乱れ方になってしまう。悪筆なりにゆっくり丁寧に書くのが重要で、ペン先のコントロールを意識して書けば、どんなに下手だろうと、多少はマシになるはずなのだ。たぶん。

 

美文字を書きたいなら、まずは下敷きを使おう!

つまり我々“字が汚い族”が求める文房具には、(1)書く速度を落として、(2)ペン先のコントロール性を高める、という2つの機能が備わっていると嬉しいわけだ。

 

例えば「カリカリ感強めの細字ボールペン」はこの条件を満たしてくれてオススメなのだが、それ以外のペンが使いづらくなるというのは難点だ。そこで試してみてほしいのが、レイメイ藤井「魔法のザラザラ下じき 0.3mmドット」である。

レイメイ藤井
魔法のザラザラ下じき 0.3mmドット
A4・B5サイズ 各750円(税別)

 

いわゆる学童向けのプラスチック下敷きだが、特徴的なのは、表面にびっしりとある細かな凹凸。手で触るとザラザラとした感触があり、これがネーミングの元となっている。

 

このザラザラがなににどう効くのか? というと、これによって子どもの運筆力を育てる効果がある、というのだ。

↑下敷きの表面には細かに凹凸がびっしり。これが文字を美しくする効果を生む……!?

 

運筆力とは、自分の思うようにペン先をコントロールする能力のこと。まさにドンピシャで僕らが欲しかったヤツじゃないか。

 

これを紙の下に敷くと、ボールペンでも鉛筆でも、書くとザラザラというか、ボコボコとした振動が指先にハッキリと感じられるはず。まずこの振動がすべり防止になるため、書く速度がグッと落ちる……と書くとネガティブな感じもするが、つまりは無意識の走り書きを発生させないため。道路を意図的に凸凹させた減速帯のようなもの、と思ってもらえば分かりやすいかもしれない。

↑ペン先が適度に引っかかるため、走り書きにならず落ち着いて書くことができる。これはあまり体感したことのない書き味だ

 

速度が落ちれば、字のバランスや形に意識を払う余裕も生まれる。自動的に丁寧な筆記ができるというわけだ。実際に試してみても、はっきりと「マシな字が書けた!」という自覚が持てるほど。

 

ただし、筆記線をじっくり見れば、凹凸を拾ったことでの細かな線のブレも見て取れるので、そこが気になる人には向いていないだろう。

↑各筆記具の上段(●が付いている方)が、このザラザラ下敷きを使用して書いたもの。下敷きなしと比較すると、明らかに丁寧な書き方ができている

 

また、ボコ、ボコ、という振動ごとにペン先がどれだけの距離を進むのかをなんとなくでも把握すれば、手の感触と脳内でイメージした運筆が一致させやすい、というのも大事なポイントだ。振動がペン先の動きをナビゲートしてくれるので、思い通りにコントロールしやすくなるのである。

↑ペン先から受ける振動を目安にすると、線の長さや角度も把握しやすい

 

↑ちなみに下敷き裏面はツルツル仕様なので、引っかからずスピードを上げて書きたいときは裏返して使うといい

 

冒頭でも述べたが、書きやすくするためにいちいち筆記具を選ばない、というのが、下敷きを使うメリットだ。

 

極細径のシャープペンシルやボールペンはやや書きづらく感じるかもしれないが、それ以外はだいたいどんな筆記具でも、確実に丁寧な字が書けるようになるはず。特に「ジェットストリーム」など走りすぎになりがちな低粘度油性インクが、意識してコントロールしやすくなる様子は、従来にない面白さである。

 

↑A5ノートを多用する筆者は、A4下敷きを半分にカット。これは便利!

 

そもそもは学童用として作られている製品だが、大人が使って何の問題があるわけでもない。使うだけで字がちょっとでもマシになる可能性があるのだから、むしろ使わない理由の方がないだろう。

 

筆者はノート・紙類をA5サイズに統一しているので、A4のザラザラ下じきを半分にカットして持ち歩いていることも付け加えておきたい。

 

縦横に開き透明窓で中身が一目瞭然なファイルバッグ「PAAT」はクリアホルダーを超える便利な存在だと断言したい

もはや働く場所はオフィスだけじゃない、というのはニューノーマルの基本なのだが……だからといって在宅ワークばかりでもない、というのが悩ましいのだ。例えば、週に2日は出社して残りは自宅で、というようなケースも増えており、そうなるとオフィスと自宅の環境をどう“擦り合わせる”か、など考えるべきことが増えてくる。うーん面倒くさい。

 

他にも面倒なのが、仕事用の資料など紙モノをどうするか、という点。データならサーバーに入れておけばどこからでも確認できるが、紙の書類はそういうわけにはいかない。紙モノは片っ端からスキャンして電子化、というのも意外と現実的じゃないし、そうなると、複数のワーキングスペース(オフィスや自宅)の間で書類を持ち歩くことになる。

 

であれば一度、「クリアホルダーより書類の持ち歩きに適したツールってないかな?」と考えてみるのも、ありかもしれない。

 

タテヨコ自在でガバッと開くファイルバッグ「PAAT」

クリアホルダーは書類の出し入れがしやすく便利だけど、「折れる・曲がる可能性がある」「ペラペラすぎてカバンの中で探しづらい」「中身が抜け落ちやすい」……といったネガティブな面がある。逆に言えば、そのあたりを解決できて、かつクリアホルダーライクに使える製品があれば良いのではないか?

 

その点、サンスター文具の「PAAT」(パット)はなかなかオススメできる。

サンスター文具
ファイルバッグPAAT(パット)
A5 1000円/A4 1200円(ともに税別)

 

表の全面が透明窓のため中身の視認性がいい、封筒型でA4サイズのファイルバッグ。フラップは閉じるだけで磁力によってピタッと固定されるため、まず書類の抜け落ちに関しては心配ゼロだ。

 

とは言っても、同様の商品はすでに他社からいくつか発売されているため、これだけでアピールするにはちょっと弱い。しかしもちろん、「PAAT」ならでは! と言うべきポイントがある。それがダブルフラップ機能だ。

 

↑洋封筒のように開く長辺のフラップ。マグネットは透明窓中央(四角い部分)に配置されている

 

透明窓に正対した状態だと、フラップは長方形の長辺に位置する。要するに横長の洋封筒のような感じ。

 

↑裏面にもフラップが。ここを開くと長封筒のように使える

 

しかし裏返してみると、短辺側にもフラップがついているのが見えるだろう。このフラップが上に来るよう90度回転させると、長封筒型に早変わり。つまり、縦にしても横にしても、同じようにフラップを開閉して中身が出し入れできるという、非常にユニークな構造なのだ。

 

↑横にすれば、ビジネスバッグで使いやすい

 

↑リュックなら縦に入れてピッタリ

 

例えばリュックに入れて使う際には縦長にして使う方が収まりが良いし、浅めのトートやビジネスバッグならば横長の方が出し入れスムーズ。

 

書類を持って出向く先によってカバンを変えるのはよくあることだが、いちいちファイルバッグまでカバンに合わせて変えていては、面倒極まりない。であれば、どちらにもそのまま使える方がいいのは当然という話だ。

 

さらに、タテヨコのフラップを同時に開くことで、全体を大きく一気にガバッと開くこともできる。

↑ダブルフラップを同時に開いての、ガバッと大開口。中身の出し入れが非常にしやすい

 

封筒型のファイルバッグは口から書類などを出し入れするのに少し手間取ることがあるが、大きく開いてしまえば問題なし。一度この大きな開口に馴染んでしまうと、もう他の封筒型ファイルバッグには戻りづらいほど。

 

バッグの中で見つけやすいカラーもポイント

また、今回使用しているブルーをはじめ、グリーンやホワイトなど明るめの色が揃っているのも大事なポイント。このカラーに加えて程よい厚みもあるため、ペラペラかつ透明のクリアホルダーより、カバンの中で目につきやすいのだ。

↑カバンを開けて覗けば、本体の明るいカラーでパッと見つけられる。カラーも使い勝手の点でけっこう重要なのだ

 

書類を探してカバンの中をゴソゴソ探し回るのは、周りからもあまり見栄えの良いものではない。そういう意味でも、こういった薄物は見つけやすさが重要なのである。

 

↑マチはないが、100ページの雑誌もこの通り収納できる

 

↑中にはしっかりした仕切り板も。大事な書類は透明窓から見えないよう、仕切りの奥側に収納したい

 

ファイルバッグは、仕事用ツールとしてはかなり地味なジャンルと言える。が、便利なものを導入すれば途端に快適さを感じられるはず。もちろんクリアホルダー1枚と比べたら価格はかなり違うが、それでもぜひ試してみて欲しい製品である。

 

キングファイルにベビー誕生?「キングミニ」が無性に物欲をそそる上、やけに実用的

ヒトを含む多くの生物は、頭身が低い・目が大きい・手足が短いなど、赤ちゃんによく見られる特徴(ベビースキーマ)を持つものを、本能的に「きゃわいい~!」と感じ、守ろうとする習性を持っているそうだ。

 

これは、動物行動学者のコンラート・ローレンツが唱えた説で、つまり自分より弱いものを保護して養えば子孫が生き残る率が高まる、ということ。「かわいい」の概念が本能に根ざしたものであり、種の生存戦略に関わっているというのは、なかなか面白い話である。

 

だから、例えば「かわいい小物や文房具を見つけたら、ついつい買っちゃう」というのも、実は生物の本能的なアレであって、それはまぁ仕方ないよね、という話なのだ。特にかわいい“文房具の赤ちゃん”なんかがいたら、そりゃ庇護欲をかき立てられずにおれようか。だって超きゃわいいのだから。

 

ミニサイズのキングファイル、かわいすぎ!

文房具の赤ちゃんとはなんぞや? と怪しまれる方もいるだろうが、2022年6月10日にキングジムから数量限定で発売される「キングミニ」シリーズが、それだ。

 

事務用品のザ・定番である「キングファイル」「保存ボックス」をミニチュア化したもので、これはもうどうみたって、キングジム製品の赤ちゃんなのである。きゃわいい!

↑かわいすぎるミニサイズ事務用品「キングミニ」シリーズ

 

と言っても、ただのミニチュアならここで紹介するほどのものでもない。それぞれきちんと機能を持った文房具として作られているというのが、大きなポイントなのだ。

 

まず、最も“赤ちゃん感”が高いのが「キングファイルクリップ」。板バネ状のクリップを本体に押し込むことで紙束を固定するクリップで、Lサイズはコピー用紙90枚、Mサイズは60枚まで綴じることができる。

 

親のキングファイルと比べると、目(スクエアマーク)が本体に対して大きく、ぽっちゃりとして背が低い。これは完全なベビースキーマだ。

 

キングジム
キングミニ
キングファイルクリップ 4個セッ
Mサイズ 500円Lサイズ 680円(ともに税別)

 

“親”が書類を綴じて保存するファイルなのに対して、“赤ちゃん”はスライドクリップというのも、またかわいい。書類にきゅっとだきついて綴じる様子は、いかにも頑張って親の真似をしているよう。見ているこちらも、庇護欲かき立てられまくり。

 

機能として何か新しさがあるわけではないが、機能とビジュアルのマッチングが良すぎなのである。

 

↑いかにも「精一杯がんばって紙を綴じてます!」感があって、キュンキュンする

 

「文房具総選挙」初の公式ブック登場! 付録は「キングファイル」モチーフのスタンド式ツールポーチ

ちょっと育った付箋は、いたって実用的

「キングファイルふせん」は、サイズこそ小さいものの比率はもう、ほぼ親と同じ。スライドクリップよりもお兄ちゃん(お姉ちゃん)だな、という印象である。

キングジム
キングミニ
キングファイルふせん各500円(税別)

 

↑「インデックスタイプ」(左)と、「背見出しタイプ」(右)がある

 

ちなみに中身の付箋は、書類の端に貼ってインデックスが作れる「インデックスタイプ」と、ファイル背見出しがモチーフの「背見出しタイプ」の2種類がラインナップ。いわゆるカバー台紙付きの付箋ということで、見た目の面白さは少し薄いが、実用性に関しては間違いないやつだ。

↑インデックスが色ごとに分離しているので、好きな色から使うことができる

 

↑使ったときのインパクトは薄いが、ノートや手帳のインデックスとして普通に便利

 

ちなみに「背見出しタイプ」はもちろん普通の付箋として貼ってもかわいいが、ルーズリーフバインダーなどの背に貼って、一時的なラベリングにするのも楽しそうだ。白地に例のスクエアマークがあるだけで「キングファイルっぽい」と思ってしまうあたり、やはりアイコンとしての強さと言えるだろう。

↑どんなファイルも、この背ラベルを貼ることでキングファイル化⁉

 

↑もちろん通常のふせんとしても、スクエアマークがよく目立つ

 

机上の小物収納に、意外と便利な保存ボックス

ファイルをまるっと収納しておける保存ボックスは、小型化して「ミニ保存ボックス」になっている。キングファイルほど普段から目立っている製品ではないが、見れば「あー、そういえば会社で資料箱として使ってるわ」と思い出す方も多いのではないか。

キングジム
キングミニ
ミニ保存ボックス
各360円(税別)

 

↑つまんでヒョイと持てるサイズ感のダンボール箱、というだけでものすごくかわいい

 

サイズは名刺がスッと入るぐらいで、机の上にあるちょっとした小物やお菓子類を放り込んでおくのに良さげ。そういった散らばりがちなものがまとめて片付くと、机がすっきり見えるし、なにより机に小さいダンボール箱が積まれてる、というビジュアルがグッとくるのだ。

 

ちなみに素材は0.9mm厚ながら、きちんと中に波板の入ったダンボールなので、それなりに頑丈である。

 

↑小物収納としては“いろいろ入る”サイズ感。名刺や万年筆コンバーターなんかがジャストで収まる

 

ちなみにこの「キングミニ」シリーズ、あらためてお伝えしておくが、数量限定販売だ。

 

店頭でもし見つけることがあったら、即座に庇護してあげてほしい。それが生物としての本能なので、見つけた瞬間に「きゃわいい~」なんて声が出ちゃったとしても、なんら恥ずかしいことではないし。

↑「かわいい」「実用性充分」の2点だけで、もう買っちゃっていいやつだと思う

 

 

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海の青さにも理由がある…大人も感動!「海の多彩さ」に気づくクレヨンが想像以上の奥深さだった

クレヨンの12色セットといえば、白・黄・黄緑・緑・水・青・赤・橙・うす橙・茶・灰・黒が一般的。それが色鉛筆の場合は、白色の代わりに紫色、灰色の代わりに桃色が入っていたりするのだが、それにしてもだいたいどのメーカーも同じような構成で、これらの色が“基本12色”なんて呼ばれ方をしているわけだ。

↑一般的なクレヨンといえば、こういった色構成だろう

 

美術教育界隈だと、「この12色が本当に子どもが絵を描くのに必要な基本色なのか?」みたいな議論もあるらしいんが、うーん、最低限のセットでそういう話をしてもあんまり意味はないんじゃないかしら。そもそも、混色できない画材を12色だけ使って自然を写生するなんてのが不可能なわけで。

 

ただ、だからといって「海だから水色か青色でガーッと塗っちゃえ!」が正しい、というわけでもないだろう。だって実際の海の色は複雑怪奇で、波頭の白から深海の黒まで無限のグラデーションがあったりするし。もっと言えば、黄色の海や赤い海なんてのも、地球上にはあったりするのだ。

 

“宇宙から見た海の色”を詰め合わせたクレヨン

そんな“海の色”を12色セットにしたのが、名前もそのままに「海のクレヨン」である。

 

で、この12色というのが、なんと人工衛星から見た地球上の海の色をピックアップした色。「えっ、こんな海の色ある?」と驚くような色もあるが、しかしすべて本当に、地球のどこかにある海の色なのだ。

スカパーJSAT
海のクレヨン
2200円(税別)

 

↑海の色ばかり12色! という尖りまくったカラーセット

 

このクレヨンは、CS/BS放送の「スカパー!」を展開する民間衛星通信会社スカパーJSATが、衛星画像を活用したプロジェクトのひとつとして、クラウドファンディングで立ち上げられたものだ。

 

すでにファンドは昨年中に成立しており、現在は一般販売もスタートしている。

 

↑ケースの内側には、色の元になった12枚の衛星写真が

 

↑実はパッケージの色は、素通しの穴を通して見えていた衛星写真のもの。すごくオシャレな演出だ

 

ユニークなのは、それぞれのクレヨンに“色名が書かれていない”というところ。というか、従来のクレヨンっぽく言えば、12本全部「うみ色」なんて表現になってしまうだろうし。

 

ではどうやって区分しているかというと、巻紙にある6~8桁×6~8桁の数字。実はこれが、クレヨンの色をピックアップした海の緯度/経度を表しているのだ。うーん、これは洒落ててカッコイイ。

 

↑しっとり感のあるナチュラルカラー揃いだ

 

例えば「17.31582 -87.53469」色は、カリブ海のベリーズ珊瑚礁で「グレート・ブルーホール」と呼ばれる、海にぽっかりあいた穴の色だ。珊瑚礁の一部が何らかの理由で陥没してできた穴だが、この穴の深いところには光が届かず酸素もない層がある。つまり生物が生息できないことで水が濁らず、濃い青色に見えるという仕組み。

 

クレヨンだけを見れば「へー、暗めの青だね」ぐらいで終わる話なんだけど、衛星画像を確認したら「えっ、海の中にこんな穴があるの?」という驚きがあって、さらに紐解けば、この青さにもちゃんと理由がある。「へー!」の連発で、正直、大人でもめちゃくちゃ興奮する面白さだ。

↑ブルーホールの濃いブルーは、生物が住めないことに由来する色

 

海っぽくないNo.1の赤い「46.13594 33.91955」色は、いま話題のウクライナにある、腐海と呼ばれる干潟の色である。ここは非常に浅いため、海水の循環が少ない。なので夏になると水温が上昇しやすく、藻が異常繁殖してβカロチン(ニンジンなどの赤さの素)を生成するので、海水がこんな赤い色になるらしい。へー!

 

ちなみにこの腐海に接するクリミア半島(先だってロシアに併合された、元ウクライナ領)は、ここで取れるピンク色の塩が名産品だ。

↑最大水深3.5mという激浅の腐海は、夏場の日差しで熱せられると腐敗したような匂いがするとか

 

他にも、「島の中央が水没して外縁部だけがぐるりと残ったキリバス・カントン島のエメラルドブルー」とか「鉱物が混じった水が流れ込んで化学変化を起こした台湾・陰陽海の黄色」といった、面白い海の色がいっぱい。

 

こうやって1本1本をGoogle Earthで見ていくだけでも、時間がすごい勢いで溶けていくし、QRコードから飛べる解説まで読み出すと、もうほんと止まらないのだ。

 

また、解説がまだ読めない子どもさんのためには、俳優の濱田岳さんによる音声ガイダンスがあるのも素晴らしい。

↑さすが海の色だけあって、何色か重ね塗りをするだけで、簡単に水の表現ができる

 

これは親子で「海の色ってなに色だろう?」みたいな話をしながら楽しむのもいいし、大人同士でも気の利いたプレゼントになりそう。正直なところ、お絵描き用としては色が偏りすぎてるから、画材としての実用性はほぼなさそうなんだけれども。

 

「海のクレヨン」は文房具総選挙2022で大賞受賞!
https://getnavi.jp/stationery/743952/

 

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ボールペンでメモをとって消しゴムで消せるウェアラブルメモ「wemo」にようやく登場した専用ペンは書く消す両用の万能ぶりだった!

「wemo(ウェモ)」というメモツールをご存知だろうか? コスモテックから2017年に発売された「wemo バンドタイプ」は、手首に巻き付けて装着するシリコン製のメモで、油性ボールペンで書き込むことができるというもの。さらに、消しゴムでこすって筆跡を消せるので、何度でも再利用可能。シンプルだが、とても実用性の高いツールなのだ。

↑うっかり忘れそうなタスクを書き留めておくのにも最適な「wemo バンドタイプ」

 

実際、簡易に使えるウェアラブルなメモということで、看護師をはじめとした医療従事者や主婦など、「メモは取りたいけれど、手がふさがっている」ことが多い職種の人たちには、かなり多くのファンがいるとのこと。筆者も骨折で入院していた際、担当してくれた看護師さんが着用していたのを確認している。

 

この「wemo バンドタイプ」専用のボールペンが2022年4月に発売されたのだが、これがかなりユニークかつ機能的な1本なのだ。当然ながらwemoとの相性は抜群なので、組み合わせて使うと間違いなく便利になりそう。これは試してみなければ!

 

「wemo」からバンドタイプに装着できる専用ペン登場

その専用ペンというのが、コスモテック「wemoペン」である。見た目からはボールペンの機能を読み取るのが難しいほど特殊な形状をしているが、それは「wemo バンドタイプ」とセットで使う前提で設計されているからなのだ。

コスモテック
wemoペン
350円(税別)

 

↑今から始めるなら、バンドタイプとのセットもお得だ。写真は抗菌仕様バンドとのセットで1600円(税別)

 

サイズは、Bluetoothの片耳用イヤホンマイクぐらい、という表現で通じるだろうか。要するに、指先でヒョイとつまめる程度の太さ・長さの角柱である。

 

裏面にあたる側にはクリップが付いており、これを腕に巻いた「wemo バンドタイプ」に挿し込むと、ピタッとハマるように装着できる仕組みになっている。

 

↑バンドタイプを腕に軽く叩きつけるようにするとクルッと巻きつく

 

↑装着したときの違和感はまったくない。さすがは専用ペンだ

 

そしてペンとして使用する際は、「wemo バンドタイプ」から引き抜いてクリップをノックノブのようにスライドさせると、クリック感と共に内蔵していたリフィルの先端が露出。これで書けるようになるのだ。

 

コツさえつかめば、ペンをバンドから引き抜く動作とクリップノックを連動させることもできるため、抜いてから書くまでが非常にスムーズに行える。

↑ノックノブはバンドに装着するためのクリップと兼用になっている

 

また、書き終わったペンは再びバンドに戻せば、自動でクリップが押し戻されてリフィルが収納される。

↑ペン先は、本体をバンドに装着すると自動的に収納される。シンプルだけどよくできたギミックだ

 

動きを動画で見てみよう。

 

これなら、うっかりペン先が出っぱなしで服をインクで汚してしまう、なんてトラブルは起きえないだろう。

 

ウェアラブルなガジェットは人体と衣服にダメージを与えない、というのがまず大前提なので、そこはキチンとクリアしてきたな、という感じ。

 

設計上の最優先機能がバンドに装着する際の動作なので、ペンとしての書きやすさは、まぁお察し……と思いきや、意外と指の置き場所もしっくりきて、握り心地はさほど悪くない。快適な筆記感とまでは言わないが、それなりにちゃんと書けるやん? という印象だ。

 

握りからペン先までが近すぎるため、机上のノートに書き込むなどの用途には向かないが、自分の手首(に巻いたバンド)に書くなら、むしろこれくらいがジャストなポジションと言えそう。

 

↑握ってみると、思ったよりも落ち着きの良いグリップになる

 

↑当然ながら小さな字をチマチマ書くための筆記具ではない。まさにバンドにザッと走り書きする専用という印象だ

 

wemoに油性ボールペンで書き込んだ筆跡は、消しゴムでこすれば消せる。とはいっても常に手元に消しゴムがあるとは限らないので、困ったら「wemoペン」の後端でこすってみよう。書いてさほど時間が経っていないなら、これで消すことも可能だ。

 

ただしペン軸自体にインクが付着して汚れてしまうので、あくまでも緊急時に使える裏ワザ、程度に憶えておくといいだろう。

↑これで本当に消えるの? と半信半疑だったが、きちんと消えた。とはいえ、消しゴムで消した方が確実、かつ汚れも付着しないので、安心だ

 

↑リフィルはクリップごと軸から引き抜くことで交換可能。リフィルは5本380円(税別)で発売されている

 

そもそも、メモをポケットやカバンから取り出す手間が省けるというのが、ウェアラブルなメモのメリットの一つ。であれば、相棒の筆記具もウェアラブルに済ませたいと考えるのが当然だろう。

 

だから正直なところ、「装着できる専用ペン、やっと発売されたのかよ!」と言いたいところだが……ここまで相性バッチリのものを出してくれたなら、文句もない。少なくとも今後は、必ずセットで使うべきメモとペンだと思うのだ。

 

 

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早くも2022年ベストバイ文房具認定!? キングジム「ナナメクリ」が斜め上の便利さ!

筆者は、“長い文章を読んだり文面をしっかりチェックしたりする場合、液晶画面より紙で読むほうがラク派”に属する人間だ。例えば、noteなどで面白そうな長文記事があったら基本的にはプリントアウトして読みたいし、原稿の校正もできるかぎりは紙面に手でチェックを入れたい。

 

SDGsだ、ペーパレスだと言っている昨今、あまり褒められた話ではないのかもしれないが、こればかりはどうにも代え難いのである。(“電子書籍も、漫画以外はあまり買いたくない派”でもある)

 

そこで、世の中に意外といるであろう紙の方がラク派同志の皆さんに、この場でお伝えしたいことがある。最近発売されたばかりのとある製品が、まさにプリントアウトで文章を読むのに便利すぎる! のだ。

 

大げさでなく、早くも2022年ベストバイ文房具にエントリー確実。ということで、今回はその最高なやつを紹介させてもらいたい。

 

ホチキス留め不要! 書類を読みやすくするファイル

その最高なやつというのが、キングジムから2022年2月に発売された「ナナメクリファイル」だ。ネーミングは小林製薬テイストというか、ぶっちゃけ、機能そのまんま。名前通り、ファイリングすることで紙がナナメにめくれますよ、というものである。

キングジム
ナナメクリシリーズ
ナナメクリファイル A4サイズ
380円(税別)

 

↑表紙を開いて紙を入れるとこんな感じ。カドのクリップパーツがかなり目立つ

 

ファイルと名乗ってはいるが、構造的にはファイルとクリップボードの中間、といった感じだ。表紙付きの薄い本体には、コピー用紙で20枚ほどがストックできるようになっている。

 

そして見た目に目立ち、機能の上でも最大のポイントとなるのが、左上スミにある灰色のクリップパーツだ。

 

↑使用する際には、束ねた書類のカドを左上のストッパーにスッと挿入

 

読みたい書類をストックする際は、まずこの左上のクリップパーツを跳ね上げるようにスライドさせる。すると下から透明の書類ストッパーが現れるので、ここに書類のカドを挿し込む。あとはクリップパーツを戻せば準備完了となる。

↑そこへ被せるように、クリップパーツをスライドさせる。これで書類の固定は完了だ

 

このクリップパーツが紙の端をしっかり固定してくれるので、まるで書類のカドをホチキス留めしたようにペラペラとめくっていくことができる。

↑書類がナナメにめくっていけるので、閲覧がとても快適。これは良くできている

 

しかもクリップの根元が折れ曲がるような構造なので、書類をめくるのにも邪魔にならない。めくりが非常にスムーズなのだ。

↑もちろん横にしての使用もOK

 

↑根元から自由に折れ曲がるクリップパーツのおかげで、紙がめくられた状態で浮きにくい

 

単に書類を真上にめくるだけなら、従来のクリップボードを使っても構わないかもしれない。とはいえ紙上辺を固定するクリップだと、押さえる面積が大きすぎる。紙が弾力で戻ろうとするし、それが気になって内容に集中しづらいのだ。

 

対してカドだけを固定する「ナナメクリ」なら、バサッとクリップごとナナメ上にめくることで紙の自重が1点に集中するため、まず戻ってくることはない。

 

書類を持ち歩く時は?

書類を持ち歩く時は、右下スミの書類脱落防止ポケットにカドを挿し込み、表紙を閉じる。これで移動中の書類抜け落ちもまず発生しなくなる。

↑クリップでカド留めしているだけでも問題はなさそうだが、右下ポケットに書類カドを挿し込んでおけば、より安定して携帯できるだろう

 

クリップボードとして使えるほどの厚みはないが、クリアホルダーよりははるかに剛性が高いため、カバンの中で折れ曲がるなどの心配もなし。書類持ち歩きファイルとして考えれば、充分な性能と言えるだろう。

↑携帯時はこんな感じ。強く振っても抜け落ちそうな雰囲気はない

 

本質機能だけでなく、ココもよくできている!

よく考えられているなー、と感じたのは、右下に設けられた切り欠きだ。裏からこの切り欠きに指を入れて押し出せば、ポケットから書類のカドをまとめてスパッと抜くことができる。これで、書類が“携帯モード”から“めくりモード”になるわけだ。

 

そのままナナメめくりするだけでも書類を一枚ずつポケットから抜くことはできるが、最初からまとめて抜いておいたほうが、複数枚が重なったままでめくれる確率は減らせる。

↑裏表紙の切り欠きから指を入れれば、全てのページをまとめてポケットから押し出すことができる。ささやかながら、あると嬉しい機構だ

 

もちろん、書類カドをホチキス留めすれば同じことができるのは、間違いない。が、全ての書類にいちいちホチキスを使うのは面倒だ。さらにホチキス留めした書類束をクリアホルダーに入れて持ち歩くとしたら、読む際には取り出す手間もかかる。

 

そう考えれば、カドを固定してのナナメめくり化+書類のファイリング/携帯がまとめて達成できる方が、明らかに便利だろう。これはもう、紙の方がラク派にとってはマストなアイテムと言っても過言ではないと思う。

 

ちなみに筆者は複数運用するため、すでに3冊購入済みだ。たぶんもうちょっと買い増すはず。

もうちょっと軽快に運用するなら「ナナメクリホルダー」

便利なのはなんとなく分かったけど、ファイル単位で書類運用するのはちょっと大げさすぎる……というのであれば、「ナナメクリ ¥ホルダー」はどうだろう。こちらは「ナナメクリ」ギミックを搭載したクリアホルダーである。

キングジム
ナナメクリシリーズ
ナナメクリホルダー 5枚アソートセット
300円(税別)

 

↑書類ストッパーは中で折り返しになっており、カドを挿し込むだけで固定できる

 

↑シンプルな構造ながら、ナナメめくりは可能。ただしクリップが可動ではないので、すこしめくりにくい

 

おおよその構造は「ナナメクリファイル」と同じ。表紙を開いた左上に書類カドを挟みこむストッパー、右下に脱落防止ポケットと書類押しだし用の切り欠きが備わっているため、ほぼ同じように書類をナナメにめくって閲覧することが可能だ。

↑書類携帯時は、表紙の下カドを脱落防止ポケットに挿し込むことで、表紙が勝手に開くのを防げる

 

↑表紙を閉じてしまえば、普通のクリアホルダーとほぼ変わらないルックス

 

ただし、ストッパーは折れ曲がらないので、紙送りするには少し抵抗がある。ホルダー自体の弾力で紙が少し戻ってきてしまうのだ。個人的にはそこがちょっと嬉しくないが、しかし書類数枚ぐらい(最大コピー用紙10枚まで収納可)をペラペラめくって見る程度なら、必要充分と言えるかもしれない。

 

【ギャラリー:写真で「ナナメクリ」をおさらい】

 

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ワイド判・柔らかリング・ページ数…すべてが好バランスなソフトリングノート「Sooofa(スーファ)」は買い一択だ!

先日、知人のお子さんが就職したという話から、「新社会人が持っていると便利な文房具とは?」という話に及んだ。知人はどうやら「最新のボールペンとかペンケースとか……」の話を期待していたようだが、そういうのは個人の好みで買うべきもの。筆者がまずオススメしたのは、「機能性の高い小型ノート」だ。

 

初めての環境において何が必要かといえば、それは当然、情報収集に決まっている。仕事の基本的な進め方、業界内の基礎知識、社食の利用方法、先輩社員のお子さんの名前などなど……新入社員として知っておくべき情報はたっぷりあって、そういうのは聞いたら忘れないうちに即、メモらねばならない。

 

であれば、机だけでなく立った姿勢で書く機会も多いはず。携帯性も重要だし、でもある程度のサイズ(最低限、A6以上)があったほうが見返しやすいし……。

 

つまるところ、そういう便利で書きやすいノートはまず持っておいて損はないよ、という話なのである。

 

“ソフトリング+変形ワイド判”が使いやすいノートのキーワード

その条件内でいま紹介するとしたら、コクヨの「Sooofa B6」だろう。もはやお馴染みとなった、ぷにぷに樹脂製のソフトリングでまとめられた小型ノートである。

 

ラインナップにはA5判もあるが、携帯性の点で今回はB6判をオススメしたい。

コクヨ
ソフトリングノート Sooofa(スーファ) B6変形
680円(税別)

 

サイズは正確に言うと、B6より幅広なワイド変形判。携帯性で言えば当然ながら、通常判型よりはレベルダウンするが、こと新入社員用ノートとなれば「社内の効率的な移動ルート」やら「オフィスの配置図」やら、図として書き込むこともけっこう多い。そういうケースでは、ワイド判の方が使いやすいってこともあるのだ。

 

↑細かく書き込むのに向いた4mm方眼用紙で、判型はB6より12mm幅広な182×140mm

 

ページ端にはマイクロミシン目が施してあるため、きれいに切り取ることもできる。伝言メモとして書いた内容をページごと切って人に渡す際は、リングからビリッと破り取るよりも、ミシン目でまっすぐ切れていたほうが印象が良さそうだし。

 

また、裏表紙の裏には、切り取ったページや名刺などを挟んでおける透明ポケットが付いているのも、使いやすいポイントの一つだ。

 

↑リングの根元に入ったマイクロミシンで、スパッときれいにページを切り離せる

 

↑こまごまとした紙類を挟んでおけるクリアポケットは、かなり重宝する

 

立ったまま筆記をする場合、まず360度折り返せるリングノートというのが必須要素。加えて、表紙が少し厚めのPP製+用紙枚数80枚のボリュームが効いてくる。がっつりハードな安定感とまではいかないが、片手持ちでもノート自体がクタッとならないレベルでは支えてくれるので、これで充分だろう。

 

↑右手を紙面に乗せての立ったまま筆記もこなせる安定感がある

 

普通に机で書くにしたって、手がリングに乗り上げても痛くないソフトリングなのは非常にありがたい。なにしろ一度ソフトリングに慣れてしまうと、もう普通のリングノートが使えなくなるレベルで快適なのだ。

 

また、普通のワイヤーリングよりも狭いリング径で綴じられるので、厚いノートのわりにコンパクトなのもメリットと言える。

 

↑机での筆記も、ぷにぷにのソフトリングで手が痛くない! これがとても快適だ

 

携帯性に関しては、表紙を固定できるゴムバンドが便利。カバンに放り込んでおいても、勝手に開いて用紙がグシャグシャになる心配がないわけで、これは持ち運び時の安心感に直結する部分だ。

 

さらにボールペンを引っかけておける切り欠きが表紙に施されているのも、ありがたい。

 

↑ソフトリングはペンを引っかけておけないが、表紙の切り欠きがあれば問題なし

 

小型のノートというだけなら他にも選択肢がいろいろあるが、これだけ機能盛り盛りな製品は、今のところ他にないだろう。用紙もCampus原紙を採用しているので、書きやすくて当たり前。あらゆる面で優秀な1冊なので、ひとまず「持ち歩く用のノート」に迷っているなら、試してみて欲しい。

 

 

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キングジム「ホルポ」は外出先で出たゴミを衛生的に捨てられる快適な「ゴミポーチ」

2022年も花粉に悩まされた人は多いのではないだろうか。寒い日もあり、暖かい日もあり、まだまだ「花粉が多い」日はしばらく続きそうだ。

 

となると、鼻をかんだあとのティッシュが問題となる。衛生面で考えても、鼻をかんだティッシュや使用済みマスクなどは持ち帰って自宅で廃棄、が基本なのは間違いない。だが、それ以前に、2022年1月には東京メトロの全駅でゴミ箱が撤去されるなど、都内で紙ゴミを捨てられるゴミ箱はすごい勢いで減少している。そもそも捨てられる場所がないのだ。

 

つまり現状では、各自が専用のゴミ箱を持ち歩くしかないのでは? という結論になる。

 

いま考えられるベストに近い! お手軽な“マイ・ゴミ箱”

ちょっと前であれば、コンビニのレジ袋にゴミを入れて持ち帰るという手もあったが、SDGs的な流れで難しくなっているし。ただ、ビニール袋は縛って密閉すればそのまま廃棄できて衛生的なので、方向性としては正解に近そうだ。

 

であれば、ごみ袋を上手く携帯する方向性を探るのが良いのではないか?

キングジム
ホルポ
左:スタンダードサイズ/右:二つ折りサイズ
各1680円(税別)

ということで入手してみたのが、キングジムから2月に発売されたゴミ箱ポーチ「ホルポ」。ナイロン製のポーチで、内部にごみ袋をセットすることで携帯型のゴミ箱として運用できるというものだ。

 

ポーチの開口部には板バネが入っており、左右から指で押すとパコッと開いて、指を離すとパチンと勝手に閉まる。このバネ口なら開閉の手間が少ないし、中のゴミが勝手に飛び出す心配がないのもありがたいところである。

↑ポーチの側面を押すと、パコッと開いてゴミが捨てられる

 

使う前には、まず側面のジッパーを開けて、専用のロールごみ袋をセットする。次にジッパーの逆側からバネ口を引き出してから開け、ごみ袋の端を引き出して折り返す。

 

あとはバネ口を元に戻せば、準備0Kだ。最初はごみ袋の端をバネ口から引き出すのがちょっと戸惑うかもしれないが、一度やってしまえば、なんということもないはずだ。

↑ジッパーを開けて専用のロールごみ袋を押し込む

 

↑ポーチ内部を通して、バネ口からごみ袋の端を引き出す。(写真はイメージです)

 

↑最後にごみ袋の端を折り返してバネ口ごと戻す。これで準備はOKだ

 

で、鼻をかんだティッシュなりお菓子の包みゴミなりをポイポイ捨てて、満杯になったらバネ口を開けてごみ袋を引っ張る。すると、ロールから送り出されて袋がズルズルと延びて出てくるので、ミシン目でカット。あとは袋の口を縛って、そのまま自宅のゴミ箱に放り込めば、廃棄完了だ。

※ゴミはお住まいの自治体が指定する分別に従って捨ててください。

 

↑廃棄時はごみ袋をズルッと引っ張り出して……

 

↑ピリッと切り取る。勢いよく切るとミシン目を外れて裂けるので、そこは注意!

 

↑口を縛ってしまえば、自宅までゴミを持ち帰るにも安心だ

 

↑ロールごみ袋は1本で20回分。花粉のハイシーズンだと2週間ぐらいで消費しそうな気もする

 

衛生的に問題のありそうなゴミも、こうやって小分けに密閉して捨てられるなら、気分的にも安心できるだろう。携帯性とゴミ捨ての手軽さ、そして衛生面も兼ね備えているあたりは、非常に優秀な“マイ・ゴミ箱”なのだ。

携帯ゴミ箱とポーチが一緒になれば、なお使いやすい!

ちなみに「ホルポ」は、携帯ゴミ箱だけでなく、ポーチとしての機能も持っている。これがゴミ箱との機能的な相性が良くて、非常に便利なのだ。

↑容量的には、10枚入りウェットティッシュ+αって感じ。無理に詰め込むとごみ袋側に響くので、ほどほどが良さそう

 

スタンダードサイズは、汗拭き用シートや除菌ウェットティッシュなどが収納できるサイズ感のポーチ。除菌ウェットティッシュを使って身の回りのモノを拭き上げ除菌したら、バネ口を開いてそのままポイと捨てられるのは、とても快適だ。

 

また、筆者はいま禁煙中で口寂しさを紛らわすためのガムが手放せないので、複数のフレーバーをこのポーチに収納して持ち歩いている。これも噛み終わったら包み紙にくるんでポイ。いちいち捨て場所を考える必要がないのはありがたい。

↑ティッシュケースとゴミ箱が一体化! この組み合わせ、心強すぎて最高!

 

二つ折りサイズは、ポケットティッシュがそのまま収納できる。これはつまり、全花粉症の人が必携のヤツ、ということじゃないか!? 鼻をかんだらごみをその場で捨てられるとは、機能的すぎるだろう。

 

もうこれからは、ゴミ箱を探してうろついたり、不衛生を承知でティッシュゴミをポケットに入れておいたり、なんてことはしなくていいのだ。端的に言って、最高である。

 

↑実はどちらもポーチとしては同サイズ(二つ折りサイズは折った状態をスナップで固定している)

 

ちなみに一見するとコンパクトだが、実は二つ折りを開くとスタンダードサイズと同じサイズ。なので、折った状態だと、ロールごみ袋の分も含めると思ったよりも厚みを感じてしまう。このあたりは、「大判で薄いほう」か「コンパクトで厚いほう」のどちらが携帯しやすいか、という好みも考えて選んだほうが良さそうだ。

 

 

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ビジネスパーソンのノートにこそルーズリーフが便利! キングジム「ルーズリーフイン」で持ち運び問題も解決

社会人が使うノートとして「意外とルーズリーフがいい」という話は、この連載でも以前から何度か書かせてもらっている。というのも、社会人がノートに書きとめたい情報は、スケジュールやアイデアメモ、議事録などなど多岐に渡り、しかもそれが混ぜこぜになりがちだからだ。

 

それらを後から見返しやすくまとめるのは、綴じノートでは難しい。ページ編集が可能なルーズリーフのほうが圧倒的に合理的と言えるだろう。

 

ただ、ルーズリーフ用バインダーは、基本的に分厚かったり重かったりと、カバンに入れて持ち運ぶには少し面倒がある。だから、できれば日常的には“1日な必要な量のルーズリーフ用紙だけバラで携帯して、帰宅/帰社してからバインダーに綴じ直す”というフローが楽なのだが……これはこれで、用紙を汚さずスマートに持ち運ぶのが難しい。また、書き込んだ用紙を別に保管するのも手間だ。

↑ルーズリーフ用紙を袋のままで持ち運ぶと、折れジワや汚れがつきやすい。きれいに使いたいなら、やはり用紙ストッカーは必須だ

 

しかし、用紙をバラで携帯しやすく、かつ記入済み/未記入を分類しておける用紙ストッカーがあれば、話は別だ。さらに、ペラペラとページをめくるようにして閲覧できるときたら、これはもう社会人がルーズリーフを運用する上で、ちょっと革命的じゃない? というぐらい便利なのである。

 

ペラペラめくれる閲覧機能付きのルーズリーフストッカー

その革命的に優秀なルーズリーフ用紙ストッカーというのが、キングジム「ルーズリーフイン ホルダータイプ」。一見すると、まったくなんと言うこともない地味~なファイルなのだが、実は非常にユニークな機能を持っているのだ。

キングジム
ルーズリーフイン ホルダータイプ
500円(税別)

 

↑中はホルダーポケット(左)と用紙ストッカー(右)に分かれている

 

まずルーズリーフ用紙をストックする機能だが、これは裏表紙の内側にあるポケットが担っている。このポケットはかなり厚めのマチ付きで、メーカー公称で最大60枚まで用紙を収納しておけるもの。

 

ただ、あまりギチギチに詰め込むと取り出す時に少し難儀するので、ストックは多くても50枚ほどに止めておく方が快適だと思う。むしろ軽快に持ち運びたいのであれば、10枚ほどを入れて、こまめに補充する使い方のほうがオススメだ。

↑用紙50枚ほどを収納した図。マチ幅にはまだ余裕はあるが、これくらいにしておいたほうが出し入れはしやすい

 

記入済みのリーフをストックできるポケットがポイント

ここまでは、従来にもあった用紙ストッカーとなんら変わるところのない部分。「ルーズリーフイン ホルダータイプ」がユニークなのは、表紙側に備えた4連のホルダーポケットである。

 

これは用紙や書類を挟んで保持しておくためのもので、記入済み用紙を分けてストックしておくのに役に立つ。

 

↑記入済みのルーズリーフ用紙はホルダーポケットに挟んで収納

 

↑挟んでいるだけなので、リング穴がない書類も一緒にまとめておける

 

収納は、ポケットにそのまま挟むように挿し込むだけ。クリアホルダーとほぼ同じような使い勝手と手軽さだ。ノド側には脱落防止のストッパーがあるので、ただ挟んでいるだけでもそれなりに安定する。勝手にポロポロと用紙が抜け落ちる心配はあまりなさそうだ。

 

ちなみに、容量は1ポケットあたりルーズリーフ10枚ほど。収納に関しては、案件単位で分けたり、議事録用・アイデアメモ用など用途別に分類したりするなど、自分の運用方法次第である。

 

↑写真の赤線で強調した部分が、用紙の抜け落ちを防ぐストッパーだ

 

さらにフラップでポケットを閉じることで、より確実に中身の脱落防止となるのに加えて、ポケットのページ化が果たせるようになる。

 

どういうことかというと、例えばスケジュールやToDoなど何度も確認する必要のあるものを単独で挟んでおけば、いつでもページのようにペラッとめくって閲覧することができるのだ。従来のストッカーは、記入済み用紙の情報へアクセスしにくいのが弱点のひとつ。が、このポケットを使えば、その辺りの問題はクリアできるだろう。

 

↑フラップをひっかけることで、ホルダーポケットはきっちりと閉じた状態になる

 

↑バインダーに綴じることなくペラペラとめくって閲覧できるのは、なかなか快適だ

 

もちろん書き込んだ用紙すべてを閲覧しやすくするなら、バインダーに綴じるほうが良いに決まっている。ただ、ひとまず1~2枚ぐらいをめくって見られるように綴じて、あとはざっくり保存しておけばOK! という状況であれば、このやり方のほうが間違いなく軽快だ。

 

学生ほど書き込み枚数が多ければまた話は違うが、社会人のノートとしては、これぐらい割り切った作りの方が運用しやすいのではないだろうか?

 

 

磁力を自動でオンオフ! 磁力で消しカスを集める消しゴム「マ磁ケシ」の仕組みがマジ凄い!

“リビング学習”という言葉も、すっかり定着した感がある。知らない方のために説明しておくと、リビング学習とは、子どもが自室ではなくリビングやダイニングなど、家族の共用空間で勉強する、学習スタイルのこと。

 

これによって、親の目の届くところでやるからダラダラしない、生活と勉強がシームレスになるので効率的、ノイズが多い場所で勉強をするから集中力がつく……などがメリットとして挙げられる。少し前の調査(※)でも、「小学生の約7割がリビング学習をしている」という結果が出ているほどで、今や子どもが宿題や予習をする場所は、リビングが主流と言っていいだろう。

※引用=リセマム「リビング学習する小学生は7割以上、男女で違いも…宿題調査」

↑リビング学習に便利、と話題のクツワ「磁ケシ」シリーズ

 

そんなリビング学習ブームにおいて注目されたのが、クツワの「磁ケシ」。生地に微細な鉄粉を練り込んであり、発生した消しカスを磁石で吸着させて集める機能を持つ消しゴムだ。

 

これを使うと、リビング学習中の子どもが床に消しカスを払い落とさなくなって、掃除がラクになる……というわけ。

↑スリーブ底部に内蔵したネオジム磁石で消しカスを吸着するので、お掃除も簡単だ

 

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子ども心も大人心も鷲掴み! かわいい上によく消える令和の“ファンシー消しゴム”

 

絨毯やフローリングの隙間に落ちた消しカスは、掃除機をかけてもなかなか集めづらいもの。だからといって「床に消しカスを落とすな!」と叱るよりは、「消しカスは磁石で集めてゴミ箱に捨てなさい」というほうが建設的なのだ。なにより、子どもも楽しんで消しカスを捨ててくれる。(実際、消しカスを磁力で吸着させる作業は大人でも楽しい。)

 

消しカス吸着→廃棄がさらに効率化した最新「マ磁ケシ」

その「磁ケシ」シリーズの最新版として2021年10月に発売されたのが、「マ磁ケシ」だ。製品名に関しては、以前におじさん柄の「お磁ケシ」も出していたクツワだけに、「いつかやると思ってた」というのが正直な感想。そもそも「磁ケシ」も「字消し」のダジャレだし。

 

とはいえ、消しカス集めがさらに効率的に行える新スリーブを搭載した本製品は、かなりマジな優秀さなのである。

クツワ
マ磁ケシ
500円(税別)

 

従来の「磁ケシ」は、紙スリーブの後端に強力なネオジム磁石を内蔵したものだったが、「マ磁ケシ」ではプラ製のホルダーに変更。消しゴム(これまでと同様の鉄粉練り込み生地)側とホルダー後端に、それぞれ透明のキャップが装着されているのが特徴といえる。消しゴム側のキャップは、携帯時に消しゴムが折れないようにするためのものだろう。

↑ホルダーから消しゴムが長めに出ているので、携帯中にうっかり折れる可能性はありそう。普段はカバーをしておくほうが安心かもしれない

 

↑消字性能は従来同様にかなり高く、2B鉛筆の濃い筆跡もサラッと消せる

 

鉛筆の筆跡をゴシゴシとこすって消したら、お待ちかねの消しカス吸着タイムだ。

 

ホルダー後端にネオジム磁石を内蔵しているので、後ろ側の透明キャップを外して消しカスに近づけると、スッ、スッ、と消しカスを吸い付けて集めることができる。そうして机の上の消しカスを集めきったら、そのままホルダーにキャップをはめ戻す。すると、自動的に消しカスがパラパラとキャップ内に落ちていく。要するに、キャップが消しカスを一時的に溜めておくストッカーとして機能するのだ。

 

あとは勉強が終わったあとに、キャップ内の消しカスをまとめてゴミ箱に捨てればOK。

↑消しカスは、透明キャップを外したホルダー後端で吸着。近付けるだけでヒュッとくっつくのが楽しい

 

これまでであれば、スリーブに消しカスをつけたまま「磁ケシ」をゴミ箱の上まで持っていって消しカスを落とすか、机の上にティッシュなどを広げてカスを集めておく必要があった。

 

いちいちそういった手間をかけるよりは、専用の消しカス保管庫があったほうが、当然ながらラクに決まっている。キャップ内に集めた消しカスが密閉しておけるので、うっかり再度散らばらせてしまう心配もない。

 

↑消しカスを全て吸着させたら、そのまま透明キャップを装着。すると……

 

↑自動的に磁力がオフになって、消しカスはキャップ内に落ちる。最後に溜まったカスをまとめてゴミ箱に捨てれば掃除完了

 

ホルダー側面の左右両側に白いスライダが見えるが、実はこのスライダがホルダー内のネオジム磁石のオン/オフを行うスイッチとなっている。そのため、キャップをはめるとスライダが奥に押し込まれる→磁力がオフになって消しカスから離れる→消しカスが落ちる、という仕組み。

 

さらに、このスライダがキャップ端に軽く引っかかる構造になっているため、キャップを外すとスライダも勝手に元の位置に復帰する。つまり、消しカスを吸着させるための予備動作に連動して、磁力がまたオンになるわけだ。

↑キャップの付け外しにスライダが連動しているため、磁力のオン/オフをユーザーが意識して操作する手間はない

 

動きとして説明すると「ほほう、なかなか良くできてるな」と感じられるが、実際の使用時には、そういった機構の働きを意識することは全くない。ユーザーは何も考えることなく、ただキャップをはずせば消しカスがくっついて、キャップをはめると中に消しカスが落ちる、という機能を享受できるのだから、これはとてもよく考えられたものだと思う。

 

↑消しゴムが消耗したら、替えゴム(税別150円)に交換可能

 

使ってみれば、あきらかに従来の「磁ケシ」より便利。なにより、ホルダーに詰め替えできる替え消しゴムも用意されているので、ランニングコストも安くなる。少なくとも「磁ケシ」ユーザーであれば、乗り替えマジおすすめ、というやつだろう。

 

 

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大人にふさわしいデザインでハイコスパ!「ライティブ」はビギナー万年筆の新本命だ

文房具ライターという仕事柄、「万年筆について語ってほしい」という依頼を受けることがある。特に「初心者におすすめの万年筆を教えて」という要望が多いのだが、その場合これまでは「パイロットの『カクノ』がいいですよ」と答えてきた。

↑コスパの良さで初心者に最適な万年筆「カクノ」(パイロット)

 

なにしろ、1000円+税という低価格ながら3000円級のニブ(ペン先)を搭載し、コスパは言うことなし。軸も握りやすく、字幅もEF(極細)・F(細字)・M(中字)と使いやすいところが揃っている。

 

逆にもう「スターターとしてこれ以外になに使うの?」というレベルの優秀さなので、本当に「カクノ」が発売されて以降、ずっとオススメしてきた次第。

 

そこへ昨年末、同パイロットが新たに、初心者に良さそうな万年筆の新製品を発売してきたのだが……お値段は「カクノ」の倍=2000円+税。果たして、1000円の価格差を払ってまで「カクノじゃない万年筆で始める」価値はあるのか? 今回はそこのあたりを検討してみようと思う。

 

シン・初心者用万年筆!?「ライティブ」登場

そのウワサの新しい万年筆というのが、パイロット「ライティブ」である。正直これまで、万年筆ビギナーの皆さんは1000円の「カクノ」でだいたい満足していたはずだし、ハマッた人はここを起点に5000円オーバー、1万円オーバーの万年筆へとステップアップしていたと思う。

 

そこをあえて「2000円+税って、どうでしょ?」と問いかける意味は、どこにあるのか?

パイロット
ライティブ
F(細字)・M(中字)
各2200円(税込)

 

まずポイントとなるのは、ビジュアルだろう。「カクノ」は鉛筆モチーフの太め六角軸で握りやすさを優先したデザイン。結果、雰囲気はどうしてもチャイルディッシュ寄りになる。

 

対して「ライティブ」は、メーカーリリースで「30~40代をメインターゲットに、ビジネスパーソンが初めて手にするアイテム」と謳っているぐらいで、なるほど、大人が握っていてもまったく違和感のないビジュアルと言える。

↑きちんと“万年筆感”のある書き味で、初心者の「最初の1本」としても間違いのない性能だ

 

樹脂軸ながらメタリック塗装やマット加工のものをラインナップしており、さほどチープには感じない仕上がりだ。それでいて、重量は約12.4gと非常に軽い。見た目もあって「茶碗を陶器だと思って持ち上げたら樹脂製だった」的な、うわっと驚くような軽さを感じてしまう。

 

そもそも万年筆は筆圧を必要としない筆記具なので、単純に軸重量が軽いと手が動かしやすく、書くのがラクなのだ。逆に、金属軸のずっしりした万年筆に慣れている人は、少し違和感と書きづらさを感じるかもしれない。

 

ちなみにニブは「カクノ」と同様、3000円帯の万年筆「コクーン」用のものを搭載。鉄ペンのほどよいカリカリ感はありつつも、充分に万年筆らしい書き味は味わえる。

↑「ライティブ」(左)と「カクノ」(右)のニブ。大人が使うには、カクノの笑顔マークがやはりちょっと邪魔かなー、と思っていた

 

焦点になるのはここでもビジュアルで、「カクノ」ニブに刻印されたスマイリーな顔がカワイイと取るか、子どもっぽ過ぎて恥ずかしいと取るか、ということだろう。

 

↑インクはもちろんカートリッジ・コンバーター両用式。大容量で吸い上げがラクなCON-70コンバーターも搭載可能だ

 

そしてなにより「ライティブ」最大のポイントにして、「カクノ」にないメリットが、本体キャップの性能だ。

 

キャップ内部に新仕様のインナーキャップを採用しているのだが、メーカーリリース曰く「ネジ式キャップとほぼ同等」という気密性なのである。(おそらく、プラチナ万年筆の「スリップシール機構」に似たものではないか?)

↑キャップ内部に見える半透明のものが、新しいインナーキャップ。パッチン嵌合(かんごう)なのに高い気密性がポイントだ

 

なにしろ万年筆ビギナーにもっとも多いトラブルが、筆記せずにしばらく放置したことでインクがドライアップして書けなくなる、というもの。であれば、メンテナンスの頻度を減らしてくれる高気密性構造は、初心者にとって非常にありがたい……というより、もはや必須の機能なのだ。

 

現時点ではまだインクを入れて1か月ほどなので、この新インナーキャップの性能を実感するまでには至っていないが、それでも「カクノより乾きにくいかも……」とは感じている。

 

↑カジュアルかつスタイリッシュな雰囲気。これで税込2200円なら充分に「価値あり」かも

 

これはあくまでも筆者個人の感覚だが、高気密の新インナーキャップだけでも充分に+1000円の価値はあると思う。

 

なにより、「カクノは子どもっぽ過ぎるから、もうちょいスタイリッシュかつコスパの良い万年筆が欲しい」という要望がパイロットに寄せられていたであろうことは想像に難くないし、「ライティブ」はまさにそのものズバリの回答と言えるだろう。

 

 

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インクもラメも潤沢フロー! パイロット「ジュースアップ」のカラーブラックは黒が濃い&ギラっと輝く

この連載でも、「いま、ボールペンのインク色はカラーブラックが人気ですよ」という話を何度かさせてもらっている。ここであらためて、カラーブラックとは何か……と説明しておくと、ざっくり言えば「黒のようで黒でない、でも黒に見えなくもないダークカラー」のこと。

 

ブルーブラックやグリーンブラック、レッドブラックといった暗色を、いかにも「普通の黒ボールペンですけど?」みたいな感じでシレッと日常筆記に使うのが、文房具好きの間で流行っているという次第。

 

カラーブラックばかり6色揃えたサクラクレパス「ボールサイン iD」から人気に火が付いた印象だが、それ以外にもゼブラ「サラサクリップ」のビンテージカラーや、ぺんてる「エナージェル ブラックカラーズコレクション」といった選択肢も揃っている。

 

だが、逆にここまで揃うと、どれを選べばいいのか迷ってしまうのも事実。ならばいっそ、「ギラッと光るカラーブラック」という新しい選択肢を試してみるというのはどうだろうか?

 

ダークでラメ入り!? グロッシーなカラーブラックペン

パイロットのゲルボールペン「ジュースアップ」に新たにラインアップされたのが、ラメ入りカラーブラックインクを搭載した「クラシックグロッシーカラー」シリーズだ。

 

正直、筆者も話を聞いたときは「カラーブラックにラメ? それ効果あんの?」とちょっと困惑したのだが、使ってみると想像したよりずっと美しくて、ハマッてしまったのである。

パイロット
ジュースアップ クラシックグロッシー
0.5/0.4mm
各220円(税込)

 

シリーズは全6色で、クラシックグロッシー・ブラック/レッド/ブルー/グリーン/バイオレット/ブラウンというラインナップ。クラシックグロッシー・レッドだけ少し明るいが、それ以外は他ブランドのカラーブラックと比較しても暗めの色合いで、ブラック感はかなり強い。そこに粒子の細かなラメがほどよく混ざって、光の加減や見る角度によってギラッと光る、という寸法だ。

↑遠目で見る分には単なるカラーブラックだが……

 

↑筆跡には細かなラメがきれいに散らばっている。これがほどよいツヤを生んで美しいのだ

 

実は、ボールペンとラメの組み合わせは、構造的にあまり相性がよろしくない。というのも、ペン先にはインクが通り抜けるのがやっとという細かな隙間しかないので、基本的にラメの粒子が詰まってしまいがちなのだ。

 

ところが「ジュースアップ」に採用されているシナジーチップは、インクをたっぷりと流すことができるため、0.5mm/0.4mm径という極細ボール径でも詰まらずにラメを通せる、という仕組みだ。

↑インクフロー抜群のシナジーチップからは、インクとラメがたっぷりと供給される

 

あらためてカラーブラックとラメの組み合わせだが、先にも述べた通り、これが非常に美しい。常にギラギラする感じではなく、暗い中にたまにキラリと輝くのが上品なのである。

 

個人的にはクラシックグロッシー・ブラックが、まるでガンメタリックのような雰囲気で、非常にシブい。これまでは、カラーブラックのシリーズであえてシンプルなブラックを選ぶ意味なんてないよなー、と思っていたのだが、クラシックグロッシーの中ではブラックが断然オススメだ。

↑ジュースアップのブラックインクと比較。ラメの有無だけでなく、そもそものインク色自体も輝きに合うようチューニングされているようだ

 

もちろん、他のカラーブラックもラメが入ることで深みが出るようチューニングされているわけで、もっとも定番で見飽きた感のあるブルーブラックですら、グッと斬新な雰囲気になるのだ。従来のラメペンといえば、どうしてもファンシーなお子さまアイテムという認識だったのが、これは間違いなく大人向け。むしろ、ある程度の年齢を過ぎた人が使っている方が、ハイセンスに見えるラメペンなんじゃないだろうか。

 

 

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2月22日「猫の日」に繰り出したい、猫じゃらし&じゃらされ系文房具2選

2月22日は「にゃん、にゃん、にゃん」の語呂合わせで、猫の日である。もちろんこれは日本限定の話であって、ロシアでは3月1日、ユーロ圏では2月17日、台湾は4月4日、アメリカ10月29日が猫の日として制定されているそうだ。あと、8月8日はインターナショナル・キャットデー(世界猫の日)。

 

世界全域でこうして記念日を制定してしまうぐらいだから、人類はとにかく猫が好きで好きで、もうほんとガチ好きでたまらないニャー、と言って間違いないだろう。

 

これは文房具業界を見ても分かることで、猫柄・猫モチーフの“猫文具”は、動物モチーフという区域を飛び越えて、完全にひとつの別ジャンルとして確立しているほど。そんな中でも、サンスター文具が2月22日の猫の日に向けて発売した「nyanko’s DAY」文房具シリーズがとりわけかわいかったので、ここは世界の全人類に向けて紹介しておこう! と思った次第である。

 

仕事や勉強には絶対に向かない、猫のためのボールペン

コロナ禍によって自宅時間が増えたためか、いま、ペット……特に猫を飼う人が大幅に増えているという。もちろん、気軽に飼っちゃってからの飼育放棄も増えるなど、いろいろと問題も出ているようだが……とはいえ、自宅でウツウツとしている時間にかわいい猫が加わることで、精神的な安らぎを得た人も多いと思うのだ。

 

で、そんな安らぎを在宅ワークしながらもっと感じたいよね、という欲張りな需要を満たすのが、「nyanko’s DAY」シリーズの「じゃらしペン」である。

サンスター文具
nyanko’s DAY じゃらしペン
900円(税別)

 

見た目は、耳かきの梵天(ふわふわした毛玉)っぽいのが付いただけのボールペンだが、実はその名の通り、猫をじゃらすことができる機能を搭載している。

 

というのも、後端の梵天から軸中央にかけて、弾力のあるシリコンゴムになっており、軽く振るだけでぷりぷりと動くようになっているのだ。で、この動きが猫の遊び欲をめいっぱい刺激する、というわけ。

↑ふわふわの梵天がシリコンの弾力で勢いよく揺れる。お、これは猫の好きそうな動き……!

 

↑中身は1.0mmの油性ボールペン。ペンとしてはかなりレガシーで、書きやすくはない

 

例えばこのペンでメモなんかを取ると、筆記するのに連動して、梵天がぷりぷりと動く。すると猫がつられて、ちゃい、ちゃい、とじゃれて邪魔してくるので、仕事にならず大弱り。というか、この時点ですでにかわいすぎて仕事どころじゃないのだ。(正直なところ、わざわざこのペンを使っている時点で、そもそも仕事する気はないな、と判断されても仕方ないんだけど。)

 

↑このペンで書いていると、自動的に猫が邪魔をしにくる仕組み

 

もちろん猫の中でも、大きくゆらーっとした動きが好きな猫や、硬い棒がしなるような動きが好きな猫、ちょろちょろと細かいアクションでじらされるのが好きな猫など、好みはいろいろ。だから、猫全般が確実に「じゃらしペン」に反応する、という保証はないので、念のため。

 

ちなみに我が家の猫2匹は、アグレッシブ気質なジム(オス・12歳)はぷりぷり動く梵天をヒャッハー! とハイテンションに追っかけてくれたが、ぼんやりと隅っこ暮らしを好むリリー(メス・12歳)は完全に無反応だった。

猫の手も借りたい人のための肉球付きペンケース

「じゃらしペン」は、猫を飼っている人が猫に向けて使う前提の文房具だ。対して同じ「nyanko’s DAY」シリーズの「ネコの手ペンケース」には、猫を飼っていない人でも猫と一緒に暮らす気分が味わえる(ような気がしないでもない的な感じ?)……という効果がある。

サンスター文具
nyanko’s DAY ネコの手ペンケース(茶トラ、三毛、サバトラ、白黒)
1800円(税別)

 

↑裏面にはこのとおり、立派な肉球が。ぷにっと感触が心地よい

 

要するに、猫の手形のペンケースなのだが、サイズ感がちゃんと程よく実物大。ふわふわとした毛並みの手触りも、それなりにリアルだ。もちろん手のひらにはぷにっとしたシリコン製の肉球も備えており、万全とは言えないまでも、まぁわりと猫っぽい。

↑容量は見た目よりたっぷり。筆記具なら15本以上は入って実用性も充分だ

 

なので、これをデスクに置いて作業をしている際、ふとしたときに視界に入ると「おっ、猫?」と思ってしまうのである。

 

↑在宅ワーク続きで荒んだ心を癒してくれる猫がいないなら、もうペンケースでもいいんじゃないか?

 

可能なら、いったん自分がこのペンケースを買ったことを忘れるぐらい作業に没頭すると、より効果的。もちろん、ペンケースが勝手に動いたりじゃれたり仕事の邪魔をしたりするわけではないが、ただ猫の手のようなものに対して「猫かな?」と思うだけでも、気持ちが充分に安らぐのは間違いない。猫は猫であるだけで尊いし、なんならもう猫っぽいだけでも充分に良いのだ。

 

住環境の都合などで猫が飼えないという場合は、こういったペンケースを導入するのも、ひとつの手じゃないだろうか。

 

 

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やっと汚文字を克服できる!? 専用ボールペンとメモ帳のセットで筆圧コントロールを学べる「ビモア」で美文字への第一歩!

当連載でも過去に何度か告白しているし、ボールペン記事の作例写真なんかでもご覧の通り、筆者は本当に字が汚い。これは、文房具を使いこなして紹介する仕事の上では、ある意味致命的ともいえる欠点だろう。書いたものを自分で見ても「小学生みたいな字だな」という印象で、なんともお恥ずかしい限りである。

 

さすがに「使うだけで字がきれいになる魔法の筆記具」なんて存在しない!という結論にはたどり着いている。であれば、やはりなんらかの修練は必要かもしれない。

 

そこで今回は、特殊なボールペンと専用メモを使って「1日3分×7日間で手軽に学び、自分らしい美しい文字が身に付く」(※個人差はあります)という美文字練習キットを試してみたい。いかに面倒くさがりといっても、1日3分ぐらいなら練習を続けられるんじゃないだろうか。また、特殊なボールペンというのも気にかかる。

 

筆圧コントロールを学べば美文字になる!?

その美文字練習キットというのが、ゼブラの「ビモア」。メモ帳タイプの練習帳と、美文字練習に特化したゲルインクボールペンとがセットとなった製品である。

 

このセットと合わせて用意された練習動画を見ながら筆圧コントロールを学ぶことで、短時間(1日3分×7日間)の美文字習得が可能になるらしいのだ。

 

ゼブラ
bimore(ビモア)(ビモアボールペン+ビモア練習帳)
1000円(税別)

 

従来の美文字練習帳は、だいたい1日10~20分×30日をかけて、字の形やバランスを反復練習することに主眼を置いているものが多い。対して「ビモア」は、3分×7日という破格の短時間練習なのだが、そこで学ぶのが筆圧のコントロールだ。例えば横線を1本引くにしても、ストンと真っ直ぐ棒のように書くのではなく、グッと強く筆圧をかける→中央で力を抜く→最後はまたグッとかける。

 

つまり「線に筆文字のようなメリハリが出れば、字は上手く見える」という考え方である。なるほど、これならおぼえるべきことははるかに少なく済むし、効率的かもしれない。

↑筆圧コントロールは後軸をねじってオン/オフ

 

そこで使われるのが、筆圧がコントロールできるビモアボールペンだ。筆圧練習モード(軸をねじることでオン/オフ可能)中は、ペン先を強く紙に押しつけるとペン先端の黒いパーツがわずかに飛び出し、圧を抜くとスッと軸内に戻る。この動作によって、ペン先に擬似的な“しなり”が生じて、筆圧コントロールがやりやすくなる仕組みだ。

 

↑筆圧練習モードをオンにすると、メリハリのくっきり出た線が引きやすい

 

↑筆圧を強くかけると、黒いパーツが軸先からわずかに露出し、弱めるとひっこむ。この動きが“しなり”に近い感覚となる

 

この先端から飛び出す黒パーツにはどうも既視感があるぞ? と思ったが、どうやらゼブラ製の芯が折れないシャープペンシル「デルガード」の芯ガードパーツとほぼ同じもののようだ。

 

「デルガード」とは、強い筆圧に対して芯を守るためにパーツが飛び出すのが重要。対して「ビモアペン」は、筆圧を抜いたときにペン先ごと軸に戻ることで、線の変化を産むように機能する。どちらも筆圧がポイントになってはいるが、働きはまったくの別物。これはなかなかユニークなアイデアだと思う。

↑筆圧をかけると芯を守ろうと飛び出すデルガードの先端パーツ。素材は金属と樹脂で違うが、形状はビモアペンとそっくりだ

 

ではメモ帳では何ができる?

もう一方のメモ帳タイプ練習帳は、筆圧を意識しつつなぞり書きをする、というのがメイン。7日分に分割された課題ごとにQRコードが印刷されており、スマホで読むことで、書家・美文字研究家である青山浩之氏監修の練習動画が観られるようになっている。

 

言葉で説明するだけでは分かりづらい「筆圧の加減」も、動画ならたしかに分かりやすい。筆圧のかかり具合が先端パーツの動きで可視化されているのも、大きなポイントだ。

 

ちなみに、動画は再生時間だけでも各4分間以上。途中で動画を止めて練習するタイミングもあるので、1日の練習時間はだいたい7〜8分といったところ。3分というのは、ペンを動かしている実質的な時間を指しているのだろうか。

↑ビモア練習帳では、筆圧を意識したなぞり書きで反復練習をこなす

 

↑動画では「筆圧をどれぐらいかけるか」がゲージでも表示されるので、加減がつかみやすい

 

1日の練習前には、まず筆圧オフモードで課題文字を書くのだが、それを筆圧コントロールして書いた練習後の文字と比較すると、なかなか面白い。

 

見比べてみると、たしかに「おっ、ちょっと上手くなったかも?」という気になるのだ。誰でも筆や万年筆を使う際は、自然と筆圧をコントロールしていても、ボールペンで意識したことはあまりないだろう。その分、効果が実感しやすくなっているのかもしれない。

 

↑「目に見えて上達した」とは言いにくいが、少なくともマシにはなった気がする

 

さて、実際に7日間の練習を完遂した結果が、これだ。うーん、やはり文字の形やバランスの取り方を学んだわけではないので、胸を張って「美文字になりました!」とは言いづらい。

 

筆圧にばかり意識を向けると文字のバランスまで気が回らず、また逆も同じ。やはり、たかだか7日やったぐらいでは、無意識に筆圧をコントロールできる域にまで達するのは難しい。もうちょっと練習を繰り返す必要はありそうだ。

 

とはいえ、慎重にゆっくり書くことで線の強弱が出せるようなったため、雰囲気はそこそこマシになったように思う。自画自賛で恐縮だが。筆者のような根深い悪筆にはやや効果が薄いかもしれないが、元からある程度整った字が書ける人なら、この雰囲気アップは強い武器になるだろう。

 

ちなみに、インクフローの良い水性インクのペン(パイロット「Vコーン」、OHTO「筆ボール」など)ならば、ビモアペン同様に筆圧の強弱を活かせるので、練習の後にはこれらも試してみると面白そうだ。

 

 

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接着強度や速さより大事な条件がある!? 現時点で最強の瞬間接着剤はUHU「超速乾ピペット」と認定!

「マグカップの取っ手が折れた」とか「子どもの玩具のパーツが割れた」というようなことは、日常的にちょくちょくあること。そういう際に役立つのは接着剤だ。特に、くっつくまでの速度が速い瞬間接着剤は、そういった“ちょい補修”の強い味方と言える。いざという時に備えてストックしておくと、役立つことも多いのではないだろうか。

 

買うとなれば、ネット通販で「瞬間接着剤」を検索するか、ホームセンターの接着剤売り場に行くことになるだろう。そして、だいたいの人がそこでいったん、ちょっと固まってしまうはずだ。「“瞬着”っていっぱいあるけど、どれ買えばいいの?」問題の発生である。

↑ホームセンターの接着剤売り場は、商品点数も情報量も多すぎて「どれ買えばいいの?」ってなりがちだ

 

ざっと普通に購入できるものだけでも、お馴染み「アロンアルフア」をはじめ、「セメダイン3000」や「ロックタイト・ピンポインター」、アメリカ大手の「ゴリラスーパーグルー」などなど。そこに液状/ゼリー状という選択肢まで加わるのだから、迷うのも当然だ。100均ですら、売り場に瞬着が3~4種は並んでいるくらいなのだ。

 

瞬間接着剤は“接着力以外“の要素で選ぶ!?

接着剤を選ぶ基準として「ガッチリ接着できるか」……いわゆる接着強度の部分が第一に気になるだろう。

 

だがご安心を。いま市販されている瞬間接着剤は、だいたいどれでも問題なくガッチリとくっつく。さらに、接着できるまでの時間も誤差レベルの違いしかないときたら、なおさら「どれ買えばいいの?」となるだろう。

UHU(ウフ)
瞬間接着剤 超速乾ピペット
390円(税別)

 

そこでおすすめしたいのが、いま筆者が気に入っている瞬間接着剤、UHU「瞬間接着剤 超速乾ピペット」(以下、超速乾ピペット)である。UHUはドイツの接着剤メーカーで、世界的にもかなりのシェアを持つブランド。ただ、日本での本格展開が2019年からということもあって、まだまだ馴染みは少ないのではないだろうか。

 

↑ボトル底部に台座が付いており、立てて置いておける。ちょっとした工夫だが、これが作業時にとても使いやすいのだ

 

1.液量を調整しやすいボトルか?

ほとんどの人にとって「はじめまして」な接着剤が、どう優れているか? まずポイントになるのが、ピンポイントに接着できる優れたボトル容器である。

 

瞬間接着剤を使う時は、ボトルをぐっと押して液剤を出すのだが、このとき狙った以上に液が出過ぎることがよくある。実は、これが接着不良を起こす原因のかなり大きな部分なのだ。

 

瞬間接着剤で上手に接着するには、少ない量を広い面にできるだけ薄く広げるのがコツ。だいたい10円玉の面積に1滴ぐらいが適量とされている。逆に量が多いと、硬化までに無駄な時間がかかったり、接着強度が落ちたり、さらには白化(接着した周囲が白く曇るトラブル)の原因にもなる。

↑これくらいの接着面なら、ポトッと小さな1滴で充分だ

 

↑瞬間接着剤は空気中の水分と反応して硬化するので、乾燥する冬場は加湿器があるとよりくっつけやすくなる

 

一般的な瞬間接着剤のボトルは、出過ぎた液剤をボトルに戻すことができない。だから液がドバッと出た時点で、“接着失敗”がほぼ確定してしまう。ところが「超速乾ピペット」は、ボトル内側が弾性の強い樹脂製で、指を離すと弾力によって陰圧がかかるダイレクトストップ機構を搭載。液剤が出過ぎそう! と感じた瞬間に指を離せば、吸い戻されて流出が止まるのだ。これなら液剤の量もコントロールしやすく、接着をミスる確率も大幅に減らせるというわけ。

↑ボトルの内側はこんな状態になっている。弾力のあるボトルが出過ぎた液剤をチュッと吸い戻してくれる

 

↑出る量はわりと直感的にコントロールが可能

 

2.耐熱・耐水性は高いか?

これだけでも充分に“強い”のだが、さらにもうひとつ、高い耐熱・耐水性を持つのもポイントだ。例えば指に瞬間接着剤がついてしまったとき、40~50℃のお湯に指をつけてもみ洗いすると剥がれるぐらいで、そもそも瞬間接着剤は水と熱に弱い。(ほどんどの製品は耐熱限界が80℃)

 

対して「超速乾ピペット」は耐熱限界が120℃と、かなり高め。一度硬化してしまえば耐水性も充分なため、なんと接着したものを食器洗浄機にかけてもまったく平気なほど。食品衛生法によって、直接口に触れる食器を瞬間接着剤で補修することは許されていないが、マグカップの持ち手が折れたのを接着するぐらいなら問題なしだ。

↑折れた持ち手を補修したマグカップも、この通り食洗機で気軽に洗える

 

最近は国産の瞬間接着剤でも、液剤のコントロールができたり、耐熱・耐水性をもっていたりする製品がいくつか出ているが、さすがに「食洗機OK」を謳うほどの性能のものは見つからない。そこで、今のところはこれが最も使いやすくオススメの瞬間接着剤、ということになるわけだ。

 

 

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なめらかボールペンの金字塔「ジェットストリーム」「ジュースアップ」に登場した多色ボールペンがその名に恥じない傑作だった

振り返れば2021年は、間違いなく「ボールペン超大豊作の年だった」と言えるだろう。特に下半期は、「ユニボールワン F」(三菱鉛筆)や「サラサナノ」(ゼブラ)、「カルム」(ぺんてる)など、画期的な新製品が立て続けに登場したため、多くの文房具ファンが「さて、どれから使おうかな」と贅沢な悩みを抱えている状態にある。

 

と、冒頭からあえて“豊作”ではなく“超大豊作”と表現したのには理由がある。実は2021年下半期は、“単色”だけでなく、“多色ボールペン”まで豊作だったのだ。

 

普段は単色の影に隠れ、やや目立たないポジションにある多色ボールペンだが、とはいえ手帳やノート用に「多色じゃないと困る」という熱烈なファンも多い。つまり、単色・多色ともに最新アイテムに注目が集まっている現状は、文房具業界にとって非常にワッショイ感の高い状況なのである。

 

あの人気ゲルボールペンが待望の多色化!

そんな中でも特に筆者が注目しているのが、パイロットのゲルインクボールペン「ジュースアップ」の多色化だ。細字にも関わらず潤沢なインクフローを実現したシナジーチップによる快適な書き味で、筆者も含めファンの多いボールペンだけに、これまでにも多色化を希望する声はかなりあっただろう。

 

そして、これがまさに、みんなが待ち望んでいた通りの「ジュースアップの多色」なのである。


パイロット
左:ジュースアップ4
右:ジュースアップ3
600500円(ともに税別)ボール径0.4mm

 

まずは、ビジュアル。黒・赤・青の3色タイプと、それに緑を追加した4色タイプがラインナップするが、どちらもウッカリすれば単色ジュースアップと見間違うレベルでそっくり。クリップや口金もほぼそのままで、ノックノブ周りを見ない限りは、とっさに判断できないかもしれない。「ジュースアップ」はシャープなデザインもポイントなので、見た目をしっかり継承してくれているのは、ファンとしてありがたいところだ。

↑上から「ジュースアップ」(=単色)、「ジュースアップ3」、「ジュースアップ4」。多色ノックのデザイン的主張が薄いのは、単色と見た目を揃えるためじゃないか? と思うぐらいによく似ている

 

しかも、3色タイプは軸径も約10.7mmと、単色とほぼ同じサイズ(単色は約10.5mm)。とてもじゃないが、3本のリフィルが入っているなんて思えないスリムさである。

 

スリムということは、手帳のペンホルダーに挿しやすい、ということになる。小型サイズ手帳の細いペンホルダーにも確実に挿せる多色ペンは、それだけでも価値があるのだ。パイロットは、以前にも油性ボールペンの「スーパーグリップG多色」で単色同様のスリム軸を作っているため、そのあたりのノウハウはしっかり蓄積されているのだろう。

↑ビジュアル面での最大の違いは、多色はグリップ部が短く、半透明というところ。うっすらと中のリフィルが透けて見えるのが面白い

 

見た目はそっくり。では書き味はどうだ?

↑0.4mmという細いボール径でもインクがダクダクと出るシナジーチップ。これこそジュースアップ、という書き味だ

 

そしてなにより、書き味がびっくりするぐらいそのまんま「ジュースアップ」なのである。多色ボールペンは構造上、リフィルがわずかにナナメに出てしまうというネガティブがある。これは細字になるほど筆記時の違和感として現れやすいのだが、多色ジュースアップにはそれがかなり少ないのだ(ゼロとは言わないけれど)。

 

あくまでも筆者の体感的な印象にすぎないが、もしかしたらシナジーチップのたっぷりフローによって、ペン先の傾きに伴う書き味の低下をある程度は打ち消せているのかもしれない。

↑そもそも選択肢の少ない非カスタム系のゲル多色だが、そんな中でも選ぶ価値あり! と感じられる優秀さだ

 

見た目や書き味は単色に近く、でも3色/4色が使える。要するにメリットしかないわけで、これは間違いなく優秀な多色ボールペンと言える。これまで単色ジュースアップを使っていた人は、なんならそのまま多色に移行しちゃっても問題ない、かも!?

 

「ジェットストリーム」の多色は複合型ノックで効率アップ

最新多色としてもう一点紹介したいのが、三菱鉛筆「ジェットストリーム 3色ボールペン」だ。「ん? なんで今さらジェットストリームの多色?」と思う人もいるかもしれないが、実はこれ、従来の多色ノックシステムをリファインした、完全に新しいジェットストリームの多色なのである。

三菱鉛筆
ジェットストリーム 3色ボールペン
500円(税別) ボール径0.5mm/0.7mm

 

最大の特徴が、このノックノブ。軸後端から出ているのは単色(黒)のノックだし、側面には赤・青の多色ノックが見えている。つまり単色+多色の複合ノックという、不思議なシステムを採用しているというわけだ。

 

単色ノックは、押し込むと黒リフィルが出て、もう一度押し込むとリリース。多色ノックはスライドさせるとリフィルが出て、別のノックをスライドさせるとリリース。どちらも見た目通りの挙動である。

↑黒は後端の独立したノック、赤・青は側面のスライドノックでペン先を出す。これまでになかった珍しいシステムだ

 

ただ、それに加えてリリースの方は、単色ノックは多色ノックのスライドでもリリースできるし、もちろん多色ノックも単色ノックでリリース可能。文章で説明するとややこしいが、実際に触ってみると、直感的に使えてまったく違和感が感じられないノック機構だ。

↑ほぼ無意識でも黒が選べるので、あきらかに書き出しが速い!

 

ではなぜこのような不思議な構成になっているかというと、単純に黒が使いやすいのである。多色ノックは、使用時にいちいちノックの色を確認する必要があり、これがどうしても手間。実際、従来の多色ボールペンを使用するときは、どんなに馴染んだものでも、チラッとノックノブを見て色を確認しているはずだ。

 

ところが、黒が間違いようのない単色ノックで出せれば、最も使用頻度の高い色が完全にノールックで効率よく書き始められるというわけで、これは間違いなく快適なのだ。

 

互換性も! 容量7割アップでインク長持ち

また、この「ジェットストリーム 3色ボールペン」から、新しい多色用の黒インクリフィル「SXR-ML-05/07」――通称「長持ちリフィル」を採用している。

↑インク容量70%アップの長持ちリフィル。パッケージは環境に配慮した紙パッケージだ

 

これは従来の多色用黒リフィルのチューブ内径を肉薄化したもので、なんとインク容量が70%もアップ。つまり、それだけたっぷりと書けるようになっているということだ。

 

外径や長さは変わらないので、従来のリフィル「SXR-80」及び「SXR-203」と互換可能。これまでのジェットストリーム多色(プライムは除く)にも搭載できるのは、なかなかに嬉しい。

↑クリップは金属パーツ埋め込みで強度アップ。折れる心配が減ったのはありがたい

 

「メインは黒で、赤や青はあくまでサブ」という使い方をしているジェット多色ユーザーであれば、このノックシステムと長持ちリフィルのメリットは、相当に大きいと思う。こちらも移行して間違いない、優秀な多色ボールペンである。

 

 

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プロ仕様に物欲がうずく! 強度3.5倍のステンレス鋼製ツメでマルチツール化するタジマの最強カッターはこれだ

「文房具店では売られていない文房具」というものがあることをご存知だろうか。謎解きとかいじわるクイズのような話ではなく、単に販路の問題というか、ジャンルの問題……要するに、ホームセンターで売られている“工具寄りの文房具”というやつだ。

 

例えば、ホームセンターで売られているマスキングテープは、本来の用途である塗装マスキング用なので、カワイイ柄なんて一切なし。その代わり、粘着力やテープ自体の硬さ(カーブした面を貼るのに関係してくる)なんかは、あれこれ選び放題だ。建築用や自動車塗装用など、文房具店の棚には基本的に並んでないやつばかりである。

 

こういった“ホムセン文房具”の魅力といえば、まず挙げられるのは「プロスペックである」ということ。建築現場などハードな環境下で使われることが多いため、耐久性とか作業強度が一般的な文房具とは大きく違う。もちろん、我々素人が普通に使うには過剰なことが多いのだけど……でも、どうせなら、そういうプロツールを使ってみたい! という気持ちもあるだろう。

 

そこで今回は、“プロ向けホムセン文房具”の代表格とも言える名品、タジマのカッターナイフを紹介したい。

 

強度3.5倍のツメを持つ! プロのためのカッターナイフ

ホームセンターでカッターナイフの棚を眺めると、やはりお馴染みOLFA(オルファ)の黄色いボディ(ただしL刃ばかり)がズラリと並んでいるのが見て取れるはず。ただ、そのOLFAと同じくらいの勢いで棚を占めているのが、タジマのカッターナイフだ。文房具好きにとっては「えっ、タジマ? どこそれ」だろうけど、工具ジャンルでは超メジャーメーカーである。

タジマ
ドライバーカッター L560 オートロック 黒
940円(税別)

 

そんなタジマのカッターナイフのなかでも、その機能とタフさでファンが多いのが、「ドライバーカッター」の名前で知られる「L560」である。正直、見た目はちょっと野暮ったい雰囲気なのだが、一度ハマってしまうと抜け出せない魅力があるのだ。

 

↑基本的にはタジマの専用L刃(写真は「タジマ凄刃黒」)を使用するが、OLFAなど他メーカー製の刃もほぼ問題なく使える

 

その最大のポイントが、ホルダー先端部分。刃を収納した状態で見える先端が、少し突き出した特殊なツメ状の形をしているのが分かるだろうか? 実はこのホルダー先端のツメが、マイナスドライバーとして使える、タフ過ぎな強度を持っているのである。

 

なにしろホルダー全体が、焼き入れによって硬度を高めた1mm厚のステンレス鋼製。なんと従来のカッターナイフのボディと比較して約3.5倍の強度を持っているのだ。

↑名前の元にもなっているホルダー先端のドライバー状ツメ。こじる・押さえる・挿し込むなど、マルチに活用できる多用途ツールだ

 

これが本当にめちゃくちゃ頑丈で、成人男性が力尽くで固くなったネジを回そうが、ペンキの缶フタに差し込んでグイグイこじ開けようが、ビクともしない。一度使ってみれば、このツメが潰れたり曲がったりするイメージが湧かなくなるほどの頼りがいを感じられるはずだ。

 

普通のカッターナイフのホルダー先端でも同じようなことはできなくもないが、数回もやればグニッと曲がってしまうのは間違いないだろう。

↑充分な強度があるため、ドライバーと変わらない感覚でネジを回すことができる

 

この強靱なホルダー部を包んでいるのが、エラストマー製のボディだ。ボッテリとしていて見た目は良くないが、すべり止め効果は抜群。軍手をつけた状態で握った安定感は、おそらく国産カッターナイフのなかでも最強だと思う。軽く持つだけでも安定して、本当に握りやすい。

 

作業現場ではカッターナイフを腰ホルダーに挿して持ち歩くこともあるが、ボディ全体がすべらないため、ホルダーからの抜け落ちといったトラブルが発生しにくいのもポイントだ。

↑ボディのどこでも、軍手で握って不安を感じないグリップ力がある

 

また、このボディの後端には、予備刃2本をストックできるマガジンを備えている。底部を引き抜くとすぐに予備刃が手に入るため、現場でいちいち刃を交換しに戻る手間がかからない。これもプロツールとして人気の機能だ。

 

“ご家庭DIY”レベルでは、予備マガジンのありがたみはほとんど感じられないかも知れないが、とはいえいざという時のために刃がストックできる安心感はありがたいのではないだろうか。

↑ボディ後端の替え刃マガジン。屋外作業などでは活躍しそうだ

 

正直なところ、見た目は格好良さに欠けている。が、グリップの良さと先端ツメの便利さは他に代え難い。正直なところ、これ1本が手に取れる場所に常備してあれば、「なにかをこじ開けるのに硬いものが欲しい」「ドライバーがいるけど工具箱を出してくるのがめんどくさい」みたいな状況がサッと解決できるわけだ。現場のプロでなくても、わざわざホームセンターにまで買いに行く価値はあると思う。

 

上位モデルは「ドラ」+「フィン」でより使い勝手がアップ!

「便利なのはともかく、もうちょっと見た目にスマートなのはないのか」というのは、ごもっとも。であれば、同じくタジマの「ドラフィン L560」はいかがだろうか。

タジマ
万能ツールカッター ドラフィン L560
1400円(税別)

 

焼き入れステンレス鋼製のドライバー状ツメは先の「L560」と同じだが、予備マガジンを排してボディをスリム化。エラストマーグリップも、握った際に掌に触れる部分だけに限っているため、かなりスッキリとした印象だ。白いボディカラーと合わせて、これならもう“野暮ったボディ”とは言わせないぞ。

 

さらに、「ドラフィン」の「フィン」(「ドラ」は先端のドライバー状ツメ)こと、ボディ後端のヒレ状のツメも大きなポイント。OLFAのハイパーシリーズにも同様のツメを備えた製品があるが、こちらもダンボールの開梱やこじ開け、折り筋つけなど、用途が広いマルチツールである。

↑先端のドライバー状ツメ(左)+後端のツメ(右)。作業によって使い分けるとより便利だ

 

ドライバーとして、もしくは狭い部分に差し込んでのこじ開けは先端の「ドラ」で、力を込めて押し込んだりするなら「フィン」で、と使い分けられるのが便利なのだ。

↑後端のツメは開梱作業にも使える。先端が丸いので、中身を傷つける心配もない

 

個人的には、一般家庭に備えておくなら「ドラフィン」の方がオススメしやすい。価格は「L560」よりも定価ベースで500円ほど高くなるが、使い勝手のよいカッターが欲しいのであれば、間違いないチョイスだ。

 

 

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パーツを組み替えて最適化! お馴染みのシャーペン「Dr.グリップ」の重心と重量をカスタムできる新モデルが快適

「低重心」が、2021年下半期の文房具トレンドワードだった。これまで、文房具マニアしか気にしてこなかった“筆記具の重心バランス”が、ここまでフィーチャーされるとは。300円帯ボールペンをはじめ、重心バランスをポイントにした製品が立て続けにここまで発売されるとは。なんとも驚かされたものである。

 

2022年を占う! 2021年「文房具」業界を席巻した二大トレンドのおさらい

 

正直なところ、見た目のデザインやインク色と違って、筆記具のバランスというのは実際に手に持って書いてみないと分からない。体感的というかフィジカルな部分であるため、作り手であるメーカーや我々のような紹介記事を書く側も、その利点を伝えるのがなかなか難しいのだ。

 

……というのは、単に文房具ライターとしての愚痴であって。一人の文房具好きとしては、重心バランスが筆記具の良さを語る論点としてあらためて持ち出されたことは、素直に嬉しいのである。書き味を構成する上で、とても重要なパラメータなのだし。

 

そこで今回は、そんな重心バランスがテーマの新しいシャープペンシルを紹介したい。

 

重心のポイントと重量を自分で決められる「ドクターグリップ CL プレイバランス」

パイロット「Dr.Grip(ドクターグリップ)」は、2021年に発売から30周年を迎えた。人間工学に基づいた握りやすい太軸+疲労を軽減するシリコングリップの組み合わせで、発売当時から現在までずっと高い人気を誇るシリーズだ。

 

ここで新たに登場したのが、グリップに重心位置変更ギミックを搭載したシャープペンシルモデル「ドクターグリップ CL プレイバランス」である。

パイロット
ドクターグリップ CL プレイバランス
0.3mm/0.5mm
各770円(税込)

 

基本的には、筆記具は低重心の方が安定して書きやすい。確かに、高重心(ペン後端に重みが片寄っている)では、ペン先がふらついてコントロールしにくかったり、長時間筆記で疲労が出やすかったりというデメリットはある。

 

とはいえ、低重心でも先端だけが重すぎるようだと、これはこれでコントロール性が下がるし、疲れも出る。また、個人それぞれのペンを持つ好みの位置というのもあって、これが重心的にバランスの良いところと一致するとは限らない……こういう部分が難しいのだ。

 

「だったらもう各々が好きに調整すればいいじゃん」というのが、重心位置変更ギミックというわけ。

 

グリップの内部構造とカスタマイズの仕組みは?

↑重心位置変更ギミックの核となる金属パーツ×3とシリコンパーツ×3。これを本体に3つ組み合わせて装着する

 

「ドクターグリップ CL プレイバランス」は、グリップが二重構造になっている。まず表面にあるのがシリコン製の外グリップで、これはペン先を外して下に引っ張ると、簡単にスポッと抜ける。その際に外グリップの中に残っているのが、内グリップパーツ。購入時はシリコンパーツ×1と金属パーツ×2の構成になっているはず。

 

この計3つの内グリップパーツの順番と組み合わせを変更することで、重心位置がカスタムできる仕組みなのだ。

 

↑シャープペンシルは重心が低すぎないほうが好みの筆者は、前にシリコン×1、後ろに金属×2の構成がお気に入り

 

最初から軸に搭載されているのに加えて、パッケージ内にはシリコンパーツ×2と金属パーツ×1も同梱されている。つまり各素材とも3つずつパーツが揃っているので、これを組み合わせてみよう。

 

まず、最も重くなるのが、当然ながら金属×3の組み合わせ。金属パーツは1つあたり約2.9gでシリコンパーツが約0.4gだから、シリコン×3の組み合わせよりも全体重量が約7.5g重くなる、という計算だ。

 

↑設定次第で重心位置・全体重量ともにかなり変わる。体感的にかなりの差を感じられるので、いろいろ試してみると楽しい

 

普通にずっしりしたペンが好き、という人であれば、シンプルに金属×3で解決だろう。重心位置も60mm以下で、この状態がもっとも低重心になっている。これでは全体的に重すぎるが、重心位置は低い方がいいというのであれば、前側に金属×1か2が良さそう。重心位置は1mmほど上がるが、かなり軽く動かせるようになるはずだ。

 

パーツ交換の手順は?

↑パーツ交換は、まず口金を外すところから。下向きに作業しないとタンク内の芯が軸内に落ちるので、そこは注意だ

 

↑あとは外グリップごとスポッと抜く。中のパーツはトントンと衝撃を加えれば取れる

 

↑装着時は先にパーツを軸に通してから、外グリップ・口金の順で戻す

 

パーツ交換は、まず口金をねじって芯タンクごと引き抜く。あとは外グリップを引き抜けば、内グリップパーツもそれについて抜けるはずだ。外グリップ内に残ったパーツは、口を下に向けて何度か軽くトントンと机に落とせば、順番に落ちてくる。奥の方にあるシリコンは摩擦でなかなか取れないかもしれないが、無理せず根気よくトントンするのがコツ。

 

装着する際は順番に軸側にパーツを差し込んで、外グリップを被せればOKだ。

 

グリップの重心と重量を変えるとどんな変化があるのか

↑重心が移動すると、筆記角も変わる。まずは自分がどういう握りで、どういう角度で書くのがラクか、を考えたい

 

重心位置が変わると、握りやすい位置も変わる。であれば当然の話、筆記角度も変わってくる。低重心で低い位置を握ればより紙に対して立った状態に。高重心で高い位置を握れば寝た状態になるというわけ。つまり重心位置は「自分はどういう角度で筆記するのが快適か」を考えながら調整すると、目安が付けやすい。

 

ちなみに、一般的にシャープペンシルは50~60度で書くのが正しいとされているが、それも絶対的な正解と言うわけではない。あくまでも、自分の書きやすさを中心に考えるべきだろう。

↑上下に振ると内蔵のオモリが移動することによって芯を出す“フレフレ機構”。ノックするたびに集中力が途切れる、という人にもおすすめ

 

シャープペンシルそのものの機能としては、やはりパイロット自慢のフレフレ機構がとてもありがたい。ノックノブを押さずに軸を上下に振るだけで芯が出るため、筆記時の芯の継ぎ足しが一瞬で済み、快適。一度これに慣れてしまうと、もうフレフレ機構のないシャープペンシルを使う気になれないほどに便利なのである。

 

自分にベストな重心バランスさえ確定できれば、このフレフレ機構の快適さと相まって、長時間の筆記もかなりスムーズにできるはずだ。

 

 

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ディレクター用サインペン「フィラーレディレクション」は指示出しの全動作折込済みの隙のなさだった

ほとんどの業種において、コロナ禍で仕事の進め方が大きく変わった、というのはもはや疑いようのないところだろう。在宅ワーク・テレワークなんていうのはその最たるもので、これまでとは違うシステム下での働き方へと全体的にシフトしつつあるのは間違いない。とはいえ、流行の“DX”などということではなくて……シンプルに、“仕事用の文房具”もちょっと変わってきているよね、という話である。

 

例えば、最近は書類のファイリングツールに注目が集まっているのだが、これはオフィスではなく個人単位での書類管理の必要性が高まっている、ということだろう。

 

また、どっしり座って落ち着いて書きものをするのに最適な低重心のペン(先日紹介した300円帯ボールペンなど)の新製品が立て続けに出ているのも、実はそういう流れの中にあるのかもしれない。

 

【関連記事】2022年を占う! 2021年「文房具」業界を席巻した二大トレンドのおさらい

 

そういった中でまたひとつ、新しい仕事環境にフィットした面白い筆記具が登場したので、紹介してみたい。

 

部下に指示を出すならサインペンがいい! を体現するゼブラ「フィラーレ ディレクション」

ゼブラから発売された「フィラーレ ディレクション」は、ディレクション(=指示・指揮)の名の通り、管理職やグループリーダーなどの地位にある人が、部下に説明や指示をするのに最適! というサインペンである。

 

そういうポジションの人が使うものなので、もちろん見た目が安っぽいようでは話にならない。高級感があってどっしりした金属軸のツイスト式、という仕様だ。

ゼブラ
フィラーレ ディレクション
2200円(税込)

 

↑ボディをひねると、先端からサインペンのチップがニュッと現れる

 

そもそもこの「ツイスト式のサインペン」というのが、かなりユニーク。なにしろサインペンはボールペンよりもチップの表面積が大きいため、インクが乾燥しやすい。実際に思い返してもらえれば、皆さんがこれまで使っていたサインペンは、どれも密閉性の高いキャップ式だったはず。

 

しかしゼブラは、2019年に発売したノック式サインペン「クリッカート」で、大気中の湿気を自ら吸収して乾燥を防ぐ「モイストキープインク」という技術を開発している。ノック式ができるんだから、もちろんツイスト式サインペンだってなんの問題もなく作れちゃうのだ。

 

【関連記事】ペン先が乾かない、上書きしても滲まない!ゼブラのノック式水性マーカー「クリッカート」が全色集めたくなる優秀さ

↑ノック式の「クリッカート」(左)とは、同じモイストキープインクを搭載する兄弟のようなもの。ただし価格は20倍ほど違う

 

ところで、なぜ「説明や指示出しにサインペン」なのか? というと、これは簡単。筆記線がボールペンよりも圧倒的に太くてハッキリしているからだ。

 

例えば書類に指示書きをする場合でも、サインペンで太い文字を書いた方が伝わりやすいのは明らか。小さな文字をチマチマ書いていたら読み飛ばされるかもしれないし、なによりも長い文章は誤読の危険性もある。短いワードを大きくグイッと、が重要というわけ。もちろん、ビデオ会議でノートやスケッチブックに図を書いて見せるなどにも、太い線と大きい字の方が良いのは簡単に想像できるだろう。

↑画面内の小さなフレームでもきちんと読み取りやすいのが、サインペン字のメリット

 

トレンドに逆行⁉︎ 高重心の理由

さらに、この高級感のある金属軸にもちょっと面白い工夫がされている。握ってみると分かるが、このサインペンは重心がかなり上側に配置されているのだ。昨今の低重心筆記具ブームの中ではやや不思議な感じもするが、実はこれも意図があってのこと。

↑常識的にはかなり不自然な握り位置だが、「フィラーレ ディレクション」に限ってはこれが正解

 

試しにほどよくバランスの取れる部分を探っていくと、おそらく上写真のような持ち方になるはず。この持ち位置は先端が長くなる=移動量が大きくなるため、大きい字が書きやすいのだ。

↑この握りだと、自然と文字が大きく書けるのが面白い

 

ボールペンではNGとされる“寝かせ書き”のかたちになってしまうが、サインペンはチップが紙に触れていれば問題なくインクが出る。つまり、筆記にはなんの支障もないのである。

 

正しく重心バランスのとれる位置で持って書いてみると、安定して手に乗るためか、指先の操作に対する追随性も充分。スイスイと先端が軽く大きく動かせるので、思った以上に快適な書き味が得られた。これは本当に気持ちいい。

 

軸の先端にも隠された機能があった!

もうひとつ、軸のデザインに少し不思議な点があるのにお気づきだろうか。よく見ると、クリップや軸中のリングがシルバーなのに対して、先端だけがゴールドになっているのである。

 

実はこれにも理由がある。「フィラーレ ディレクション」を指示棒のようにして図表や文章を指し示すと、この先端のゴールドがキラッと非常に目立つのだ。

↑指示棒として使う際には、先端のゴールドパーツが視線を集める

 

しかも、前述の先端を長めに取る持ち方は、書きながら指し示す、というやり方にも最適。まったく、隅から隅までディレクションワークにフィットしたペンと言えるだろう。

 

リフィルの互換性に気づいてしまった……

↑専用の金属リフィルは交換も簡単。ところでこの形状とサイズ、どこかで見たような……?

 

モイストキープインクは、ペン先チップを収納した状態なら52週は乾燥知らず。うっかり放置してカスカスになる不愉快さを味わう機会もそうはなさそうだ。

 

また、インクが切れた場合は、専用リフィル(税込220円)と交換可能。用意されているインク色は黒と赤のみ……なんだけど、実はこのリフィル、金属軸である以外、径や長さは「クリッカート」のリフィルと同じ。つまり、互換性がある!

↑なんと「クリッカート」のリフィルと同じサイズ!

 

なんなら36色ある「クリッカート」から好きなインク色を選び放題ということで、より指示出しに目立つ色を模索してみるのも楽しいかもしれない。

 

 

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2022年を占う! 2021年「文房具」業界を席巻した二大トレンドのおさらい

2020年に引き続き、今年もやっぱりコロナで大変だったなぁ、という印象の強い2021年。では、文房具業界としては、2021年はどんな雰囲気だったかというと、世情の薄暗さに対して、実は近年まれに見る“面白い年”だったように思う。

 

コロナ禍で発売時期が遅れていた製品も徐々に出始めたし、ニューノーマルに対応した従来にないツールも数多く登場している。まだ業界全体で景気回復とまでは至らないが、それでも我々ユーザーが「わー、なんか楽しい新製品がいっぱいあるなー」と感じられるような前向きな雰囲気になっているのだ。

 

そこで今回は2021年の文房具シーンを振り返りながら、あらためて「コレ買い忘れてない?  買っておいたほうがいいよ」という2021年の傑作文房具を紹介していこう。おそらくトレンド的にはもうしばらく今の流れが続くはずなので、来年以降の予測としても読んでいただけるとありがたい。

 

1.ここ数年で最大級!? ボールペンの当たり年

2021年で一番に挙げたいのが、「ボールペンすごかったね!」という話。まず上期には、ファン待望の多機能ペン「ブレン2+S」(ゼブラ)や、ロングニードルで細字の書きやすさに特化した「モノグラフライト」(トンボ鉛筆)に注目が集まった。

↑ロングニードルチップで先端視界が広く、細かな字が書きやすい「モノグラフライト」

 

【ゼブラ「ブレン 2+S」】ボールペンかシャープか、メイン機能で選ぶべき最新個性派「多機能ペン」

【トンボ鉛筆「モノグラフライト」】なめらか筆記はもう常識! 最新ボールペンが「モノグラフライト」「イルミリー」で遂げたさらなる進化とは?

 

さらに夏には「オレンジEG」(BIC)廃番というショッキングなニュースに続いて、新定番を目指す「クリスタル オリジナル ファイン」(BIC)が発売されるなど、とにかく話題に事欠かなかった印象だ。

↑今年惜しまれつつ廃番となった「オレンジEG」(上)と、新登場の「クリスタル オリジナル ファイン」(下)

 

BIC「クリスタルオリジナルファイン」】「BICオレンジEG」廃盤! その後継ボールペン「クリスタルオリジナルファイン」はファンを納得させられる出来なのか?

 

例年であれば、これでも充分に「いろいろ出たなぁ」と言って構わないのだが、実はまだまだ。今年のボールペンに関する動きは、秋以降が本番だったと言える。

 

なにより最もインパクトがあったのが、「ユニボールワン」の軸を高機能化させた「ユニボールワン F」(三菱鉛筆)や、6色カラーブラック「ボールサイン iD」のアップグレード版「ボールサイン iD plus」(サクラクレバス)といった、上位モデルの登場だろう。

↑最適な重心バランスの「ユニボールワン F」は、 おそらく2021年で最も注目されたであろうボールペンだ

 

↑良好なフローのワンインク+スタビライザー機構で安定した握り心地を実現した軸は、相性抜群の組み合わせだ

 

これらの特徴としては、すでに人気の高い既存ボールペンのリフィルはそのまま、軸のデザインや重心バランスを見直すことで握りの安定感・書きやすさをアップさせていること。価格も従来モデルから100~200円ほど上がっているが、触ってみれば、間違いなくお値段以上の価値を感じられるクオリティである。

↑低重心化に加えて軸のマット塗装でグリップ感も向上した「ボールサイン iD plus」

 

【三菱鉛筆「ユニボールワン F」】【サクラクレパス「ボールサイン iD plus」強みは書き心地を高める低重心! 新価格帯「300円ボールペン」の真価とは?

 

実際問題として、インクやチップ周りに関しては2019~2020年の間でかなり高品質化しており、現状すぐにこれ以上のものを求めるのは難しい。そこでメーカーがたどり着いたのが、手付かずだった軸のバージョンアップなのだろう。

 

その結果として、高品質なインクと高機能な軸がかけ合わされ、ある意味「ボールペンの完成版」とも言える製品が登場した、というわけ。

 

↑ゲルインクの大定番「サラサクリップ」は、極細0.3㎜径でサラッと書ける「サラサナノ」にアップグレード

 

【ゼブラ「サラサナノ」】秘密は軸にあり!「サラサナノ」が極細ゲルインクボールペンなのにガリガリしない理由

 

ところでこのムーブメントがまだ2022年も続くとしたら、気になるのが、現時点でまだ軸のバージョンアップが終わっていないレジェンド級ボールペンの存在だろう。

 

例えば来年以降、「ジェットストリーム」や「フリクションボールノック」が同じ文脈でアップグレードされたらどうなる……? と考えるだけで、正直ワクワクが止まらないのだ。

2.ニューノーマルに慣れたユーザーの要望を製品化

2021年でもうひとつ大きな動きといえば、コロナ禍におけるニューノーマルに積極的に対応した文房具の登場だろう。

 

これまでにも「狭い作業スペースで効率的に仕事ができる」ことを主眼にした製品はあったが、在宅ワーク爆増の流れを受けて、ジャンルの枝がより太くなったという印象だ。

↑狭い机でも、自立する書類ファイル「ジリッツ」を使えば作業効率が落ちない

 

【キングジム「ジリッツ」】見やすくて省スペース! キングジムの自立するファイル「ジリッツ」の斬新な仕組みとは?

 

さらに言えば、ただただコロナ騒ぎに流されるだけだった2020年に比して、2021年はユーザーが新しい働き方を受け止めてきちんと咀嚼しはじめた、ということもあると思う。オンライン会議ひとつとっても、昨年までならただぼんやりとフレームに収まっていた同僚が、最近は妙に顔色良くくっきり写ってるな、と感じたことはないだろうか?

 

これは、「ノートPCにスタンドをセットすると画角が上がって顔写りが良くなる」、あるいは「照明にビデオライトを使うと見栄えが上がる」といったノウハウが次第に広まっていることに由来する。

↑クリップオンでカメラ写りが圧倒的に良くなる「Web会議用スクエアライト」

 

つまり、我々がオンライン会議にようやく慣れてきたことで、不満に感じるポイントも明確化してきた、ということなのだ。そしてそれによって、不満が解決できるツールの要望をメーカーが汲み取って製品化、という流れも生まれているのである。そもそも文房具メーカーの社員だって在宅ワークを1年以上みっちり経験しているわけだから、ケーススタディも万全だろう。

 

例えば「スライドボード付きノートPCスタンド <ビズラック>」(コクヨ)のように、スタンドでノートPCの画角を上げつつ、オンライン会議に参加しながらメモを取りやすい、といった“オンライン会議特化型”の機能を持っている。これは、在宅ワークの環境的な不満をまとめて取り除くことができる、とてもよく考えられた製品だと思う。

↑キーボード上がデスクに早変わりする「スライドボード付きノートPCスタンド <ビズラック>」は、狭い場所でのオンライン会議にとにかく重宝する

 

【コクヨ「スライドボード付きノートPCスタンド <ビズラック>」】在宅ワーク環境を快適化!コクヨのPC周辺アイテムでキーボード入力もメモもスムーズ

 

↑ソファや座椅子でも快適に仕事ができる「広々ひざ上デスク」も今年前半に注目を集めた

 

【ソニック「ユートリム 広々ひざ上デスク」】在宅ワークの「机がない!」問題を解決するか?「広々ひざ上デスク」の実力を検証

 

↑自宅のプアな椅子で腰を痛めたときは、「パタスタ」で机をスタンドデスク化がオススメだ

 

【カウネット「WORK FIT HOME スタンディングワーク用PCスタンド パタスタ」】いつもの机をスタンディングデスク化するカウネット「パタスタ」が座りっぱなしの腰痛を解消する!

 

今後はコロナも落ち着くことで、また現在とは違う仕事環境になることだろう。とはいっても、オンライン会議というものがなくなるとはとても思えないし、DX化の流れを考えれば在宅ワークももっと気軽なものになるに違いない。

 

であれば、来年以降もそういった新しい仕事環境に適応した文房具やツールは増えるはずだし、よりユーザーの不満を踏まえて解決力を高めた完成度になって出てくるのではないだろうか。

 

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カチカチうるさいノック音に悩まされない! 新作ボールペン「Calm(カルム)」の150円とは思えない内部機構と性能に驚愕

ボールペンに何を求めるか、というのは意外と人それぞれだ。“書き味”とか“インク色”なんていうのは実は二義的で、「先端の方で握りやすいグリップ」とか「愛用の手帳のホルダーにぴったり収まる軸のサイズ」などが選択肢として大きかったりもする。

 

そんなボールペン選びの中で、「ノック音がうるさくないやつ」という選択肢も当然にありうるだろう。例えば図書館などで勉強する機会が多い人は、自分が押したノックの「カチッ」という大きさにビクッとしたことがあるんじゃないだろうか? あの音、静かな場所だとかなり響くし。また逆に、オンライン会議中にずっとカチャカチャとノックを弄ぶ同僚にイラッとしたことだって、あるかもしれない。その場合、自分はそうあるまいとして「ノックが静かなペンがいいな」と考える人もいるだろう。

 

つまり、“音”もボールペン選びのファクターになりうるのだ。“ノック音が静かなボールペン”というのも、もっとジャンルとして広がってもいいのではないか。

 

ノック音がかすかなサイレント・ボールペン

ぺんてるから2021年12月に発売された「Calme」(カルム)は、まさに静音性にこだわったボールペンシリーズである。

 

ノックの静音性をウリにしたボールペンは、現行品だとLAMY「noto(ノト)」や三菱鉛筆「ジェットストリームプライム」などがあるが、どれも千~数千円という価格帯。いわば静音性は、高級ボールペンならではの付加価値だったわけだ。(高級筆記具に多く採用されている回転繰り出し式は、当然のことながらさらに静音性が高い)

 

対して「Calme」は単色で税込165円と、完全に普及品のお値段。これはまず嬉しいポイントだろう。

ぺんてる
Calme(カルム)単色
0.5mm/0.7mm径
各150円(税別

 

一般的なノック式ボールペンをゆっくりノックしてみると、まずノックノブを一番下まで押し込んだ時にカチッ、バネで少しノブが戻る時にカチッと、1アクションで計2回の音がするはず。

 

対して「カルム」は、まず一番下に押し込んだ時の音がほぼ無音・無衝撃。戻る時にわずかにクリック感があるが、こちらも非常に小さな音だ。ぺんてるは「従来比でノック音を66%低減」と謳っているが、体感上ではもっと静かにすら感じられる。

 

↑メーカーによると「完全に静音にするとノックした感覚がなく違和感があるので、そこの調整に苦労した」とのこと

 

一般的なボールペンのノックをものすごくざっくりと説明すると、ノックノブから伸びたノック棒で押し下げられることで回転子が回り、外カムに引っかかってロック=ペン先が出る。もう一度ノック棒を押し下げるとロックが解除される=ペン先が引っ込む、という流れ。このとき、回転子とノック棒、回転子と外カムでそれぞれ噛み合う際に鳴るのが、いわゆる“ノック音”と呼ばれるものなのだ。

 

対して「カルム」はノック棒と外カムが一体化した摺動子(しゅうどうし)と呼ばれるパーツが回転子を内包して、上下から挟む構造になっている。そのため、押し込み時にノック棒と回転子/回転子と外カムの噛み合いに衝撃が発生しにくく、つまりノック音が静かになるという仕組み。

↑カチャカチャした動作音が少ない、ユニークなノック機構

 

ノックを解除する際も、ノブに指をかけたままゆっくり戻せば、ほぼ無音。ノブから素早く指を離せば多少の衝撃音はあるが、気を遣ってノックする限り、極めて静かに書くことができるだろう。

 

改良型インクと革シボ調グリップで書き心地も良好

静音性に加えてもうひとつポイントとなっているのが、とても握りやすいグリップ。エラストマーにカメラのグリップをイメージした革シボ調の加工を施すことで、握ると指にしっとりと吸い付くような感触を与えてくれるのだ。しかもこの革シボグリップは、先端ほぼギリギリから前軸端まで続いているロング仕様なため、持ち癖に関係なく、どこを握っても気持ち良い。

↑革シボ調のロンググリップは、しっとりした手触りで握り心地が良い

 

搭載するリフィルは、低粘度油性インクの「ビクーニャ フィール」(ぺんてる)と共通となっている。ビクーニャは非常になめらかではあるが、ボテ汚れが多く、個人的にはかなり苦手なインク……と思っていたのだが、今回久しぶりに使用してみると「あれ? こんな書きやすかったっけ?」と驚いた。

↑改良型は、これまでのビクーニャインキとは明らかに書き味の違う、ゴー・ストップのしやすい適度ななめらかさ

 

搭載するリフィルは、低粘度油性インクの「ビクーニャ フィール」(ぺんてる)と共通となっている。ビクーニャは非常になめらかではあるが、ボテ汚れが多く、個人的にはかなり苦手なインク……と思っていたのだが、今回久しぶりに使用してみると「あれ? こんな書きやすかったっけ?」と驚いた。

 

ぺんてるによると、実は今回の「カルム」に合わせてビクーニャ フィールのチップを改良し、書きやすくバージョンアップしたとのこと。実際、多発していたはずのボテもほぼ発生しなくなり、適度なスルスル感で気持ち良く書けるようになったなー、という印象だ。

 

多色・多機能「カルム」も、もちろん静音性高し!

「カルム」は単色だけでなく、3色の多色タイプ、2色+シャープの多機能タイプも同時リリースとなっている。単色とは仕組みは違うが、当然ながらこちらも静音性の高さがポイントだ。

ぺんてる
カルム 多色タイプ多機能タイプ
400500円(税

 

↑ボディは単色とほとんど印象の差がないスマートさ。実際、数値上では直径で1mm以下の違いしかない

 

多色/多機能タイプは後軸内端に緩衝材が入っており、リリースされたノックノブがバネで戻る際のガチン! という突き当たりの衝撃を吸収するようになっている。こちらはトンボ鉛筆の多色ボールペン「リポーター」でも採用されていた機構で、目新しいというほどではないが、とはいえ明らかに他の多色よりも静かなのはありがたい。

↑軸後端に内蔵された緩衝材で、ノック戻りの衝撃を吸収。これで音を低減させている

 

↑こちらも書き味には満足感あり

 

リフィルは単色と同様、こちらも改良型のビクーニャ多色用リフィルになっている。穏やかにゆっくり書きもでき、勢いをつけた走り書きにも対応できる性能で、とても書きやすい。静音性だけでなく、革シボ調グリップの握りやすさ+改良型リフィルの書きやすさの好相性という点に限っても、充分に「買って良し」と言える出来ではないだろうか。

 

 

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クリアホルダーごとまとめるキングジムの力技ファイル「ホルサック」の実力は?

クリアホルダーはとても偉い。書類が折れ曲がらないように保護してくれるし、中身の出し入れが簡単なので、書類をまとめる収納/携帯ツールとしても実用的だ。人に書類を手渡す際にはパッケージとしてすら機能するし、透明だから中に何が入っているのか一目で把握できるのもいい。

 

そして、これだけ機能性に優れて多用途なのに、単価も安い。消耗品扱いなのが申し訳ないほどで、みんなもっとクリアホルダーを評価してあげて欲しいのである。

 

……と、いささか感情移入し過ぎた導入になってしまったが、仕事をする上でクリアホルダーが非常に重宝するのは間違いない。例えば、“1案件 1クリアホルダー”のように書類を整理している人が、日本中にはかなり大勢いるはず。つまり、情報をファイリングする単位としても役立っているのだ。もしクリアホルダーがなかったら、書類を探す手間だって大変なことになるだろう。

 

それだけ便利なクリアホルダーだ、活用しやすくなるツールと組み合わせれば、もっと便利になるのは当然の流れだろう。

 

クリアホルダーをファイリングすればより便利になる

“1案件ごとに書類を収納するストッカー”としてクリアホルダーを考えた場合、求められるのは「閲覧性」だと思う。抱えている案件が1つだけなら問題ないが、だいたいのビジネスマンは複数の案件を平行して動かしているはずだ。であれば、どのクリアホルダーにどの書類が入っているか、が把握しやすくなってくれた方がありがたい。そこで使ってみてほしいのが、キングジムの「ホルサック」だ。

キングジム
ホルサック 6枚収納/12枚収納
500円/660円(税別)

 

一見するとファイルのようだが、表紙を開いてもページらしきものはない。その代わりに、見慣れない尖ったパーツが6本(12枚収納モデルは12本)、ニョキニョキと中央から生えている。

 

↑クリアホルダーを綴じるキモは、この尖った謎パーツ

 

このパーツをクリアホルダーの上端に差し込み、そのまま下端をスリットに押し込むと……なんとクリアホルダー自体がホルサックに綴じてしまえるのだ。

 

差し込んだクリアホルダーは、ポケット式ファイルのページのように機能する。綴じたままで書類が出し入れできるし、ペラペラとめくって閲覧も可能だ。特に「ペラペラとページをめくれる」のが重要で、これなら、どのクリアホルダーにどの案件の書類がまとまっているか、を探すのが圧倒的にラクなのである。

 

↑クリアホルダー上端(開口部)に尖ったパーツの1本を差し込む

 

↑続いてホルダー下端をそのままスリットにグイッと押し込むと……

 

↑この通り、綴じた状態でページをめくるように閲覧できる。必要な書類探しがとてもラクだ

 

クリアホルダーを取り外すときは、綴じるときと逆手順で、下辺→上辺の順に抜けば、簡単に分離させられる。

 

外出するときは、今日のうちに回る予定のクライアント分のクリアホルダーをサクサクッと綴じて持ち出せばいいし、クリアホルダーを分離させてそのまま相手に手渡すこともできる。「ホルサック」の表紙でカバーされているため、クリアホルダー自体にはスレ汚れや折れ曲がりの心配もない。

 

↑上辺が開いている一般的な形のクリアホルダーであれば、だいたい問題なくファイリングできる。厚みがあったり複数ポケットタイプだったりしても問題なし

 

ちなみに、開いた状態で逆さにしてバサバサと強くふると、当然、中の書類やクリアホルダーが抜け落ちる可能性はある。そういう場合は「ホルサック」の表紙についているフラップを差し込んでしまえば、表紙ががっちり固定。勝手に開くこともないし、中身が飛び出す心配もない。一応、抜け落ちのリスクを減らすためにも、閲覧するとき以外はこうしてロックしておいたほうが確実だろう。

 

↑表紙は勝手に開かないように、半円のフラップを差し込んでロック

 

この製品、つまりザックリ言ってしまえば「書類をまとめてファイルしたクリアホルダーを、まとめてファイルする」という入れ子構造のツールだ。

 

言葉の上ではややこしいが、使ってみれば非常にシンプルな製品ので、どう運用したらいいのか? と迷うようなことはないだろう。机の上に書類の入ったクリアホルダーが積み上がっている人であれば、まず整理が圧倒的にしやすい。外回りが多く、クリアホルダーを何枚もカバンに入れて持ち歩いている人は、情報の出し入れ・携帯がスムーズになる。

 

クリアホルダーを日常的に使っている人なら、誰がどう使ったって仕事効率が上がることは間違いなしなのだ。

 

 

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ここまで最適化してくるとは! コクヨ「キャンパスノート」専用修正テープのこだわりぶりをチェック

さすがに「キャンパスノート」を知らない、という人はいないと思う。総合文具メーカーのコクヨから発売されている日本で最もメジャーなノートで、その年間生産数は1億冊! 間違いなく、文房具業界のレジェンドブランドのひとつだ。

 

このキャンパスブランドが、最近ちょっと面白い展開をしているように見える。例えば、2019年に発売された「キャンパス まとめがはかどるノートふせん」は、ノートの1ページにあと数行だけ書き足したい、といった際にページ端に貼って紙面を拡張できる、特殊な用途の付箋だ。キャンパスノートと同じ用紙に同じ罫線が印刷されているため、貼った際の違和感が非常に少ない、というのがポイント。要するに、キャンパスノートに使う専用ツール、と言える。

 

つまり「ユーザーがキャンパスノートを選ぶ理由」として、こういった専用ツールを作ったわけだ。もちろん、そもそもノート国内トップシェアという立ち位置があっての話ではあろうが、それにしても野心的なやり方だと思う。

 

今度は、キャンパスノートに特化した専用修正テープが登場

そして、そんなキャンパスノート専用ツールとして次に登場したのが、修正テープである。コクヨ「キャンパス ノートのための修正テープ」という名前からもはっきり分かる通り、まさにキャンパスノートのために作られたツールなのだ。

コクヨ
キャンパス
ノートのための修正テープ 5.5mm・6.5mm幅
6m220円/10m270円(ともに税別)

 

何がどうキャンパスノート専用か? というと、最大のポイントはやはり、キャンパスノートの紙色に合わせたテープ色だろう。これは貼り比べてみると一目瞭然で、一般的な修正テープはノート用紙に貼ると白すぎるのだ。そのため、修正した箇所がパキッと浮き出すように見えて、目立ってしまう。

↑「修正テープ」の部分を修正。肉眼だとなおのこと、一般的なテープの白さが目立つ

 

対して「キャンパスノートのための修正テープ」は、ほんのわずかに青みがかったグレー色のテープ。これがキャンパスノートに貼られると、なるほど、違和感はかなり少ないようだ。見る角度や光の当たり方によっては、ややテープ色が暗すぎるように見えることもあるが、それでも白浮きするよりははるかに目立ちにくい。

 

ラインナップは、テープ幅で6.5mmと5.5mmの2種(テープ長もそれぞれ6mと10mがあるので、正確には4種)を用意している。

↑ヘッドやボディのロゴ色もA罫(ピンク)用とB罫(青)用になっているので、使用時に間違えることはなさそうだ

 

修正テープを使い慣れている人であれば、このテープ幅に対しても「ん? なんか微妙に見慣れない数字だな」と感じるかもしれない。一般的な修正テープの幅は4mmや6mmといった整数であり、0.5という小数点以下の数字は存在しなかったからだ。

 

ではなぜ「キャンパスノートのための修正テープ」が6.5mm5.5mmなのかというと、それはキャンパスノートの罫線幅が7mmA罫)と6mmB罫)だからである

 

例えば6mm罫に対して5mm幅の修正テープを使うと、中央に貼っても上下に0.5mmずつの余白が出る計算になる。結果、修正しきれなかったはみ出しが発生してしまうわけだ。かといって6mm幅テープを使うと罫線まで消えてしまう可能性が高い。

↑テープ幅0.5mmの差で、修正しきれないはみ出しが発生している

 

そこで、罫線キワキワまで修正を入れられるよう、余白を可能な限り減らすための+0.5mm幅、という発想だ。ただし、罫幅から余白が少なすぎるため、美しくテープを引くためには、それなりに慎重に作業する必要はあると思う。

 

もうひとつ特徴的なのが、薄い金属板を採用した新しいテープヘッド。

↑金属板ヘッドがスパッとテープ端を切るため、修正テープが苦手な人でもカットミスが発生しにくい

 

紙面に当てて修正を入れたあとに本体を引き上げると、この金属板のフチでテープをきれいにカットする仕組みなのだ。このキレの良さはかなり優秀で、修正箇所に切り損ねてガタガタになったテープ端が残ることもなく、非常にスマート。「修正テープできれいに修正できない」というトラブルの大多数はこのカットミスに由来するはずなので、そこで失敗しにくいのはありがたい。

 

「キャンパスノート」以外でも使えるか?

この優秀なヘッドなら、キャンパスノート以外でも使いたいと思う人はいるかもしれない。

↑製品名下にテープを貼った状態。マルマンのルーズリーフ「ジウリス」はかなり色味が近いが、それ以外はやはり違和感あり

 

ただ、実際によく見てみると、ノート用紙の色って、意外と製品によって違う。そのため、キャンパス専用のこの修正テープを使うと逆により目立ってしまう、なんてこともある。例えばナカバヤシ「ロジカルノート」はやや紙面が赤っぽく、キャンパスノート用ではハッキリと浮いてしまうようだ(もちろん、罫線の合間に破線の補助線が入っている“ロジカル罫”に、そもそもマッチしてないという問題もあるが)。

 

もちろんメーカーとしては「だから、キャンパスノートに使ってくださいよ」と言ってるわけなのだが。

 

 

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マーカーとして使える蛍光タイプや布に使える耐水タイプも!最新「ドットマーカー」は描画以外にも便利

ボールペンやシャープペンシルといった、ド定番筆記具と比較するのは難しいが、それでも明らかに水性カラーペンの人気は、以前よりはるかに高まっているようだ。中高生は、女子を中心に“ノートのカラフル化”が進んでいるし、男子にだって細字カラーサインペンを日常筆記用に使っている人がそれなりにいる。

 

筆者は、公式書類でもない限りは「筆記は黒インクに限る」という固定概念に特に意味はないと考えている派なので、多彩なカラーペンを楽しむ層がもっと増えれば面白いと思う。

 

また、カラーペン自体も、色数だけでなくペン先チップやインク特性に特徴を持たせたものがここ数年でかなり増えている。

 

その中でも人気が高いのが、“ドットマーカー”タイプである垂直に円筒状や球状のチップを捺す(おす)だけできれいなドットが描けるため、手軽にノートや手帳の紙面を飾ることができるというものだ。トンボ鉛筆「プレイカラードット」や呉竹「ZIG クリーンカラードット」などが先行してすでにかなり売れているらしく、後続の製品もあれこれ出始めているようだ。

 

↑ポンポンとドットを捺していくことで、こんな絵も描けてしまう呉竹「ZIG クリーンカラードット」

 

【プレイカラードット】ビジネスマンの目からウロコ! 女子高生のカワイイ水玉ペンに意外な使い道があった

【ZIG クリーンカラードット】色味とタッチが絶妙…ボールペン代わりになるエモい「細字水性サインペン」

 

そこで今回は、そういったドットマーカータイプの製品を2点、紹介したい。かわいいもの好き男子や大人が使うのも、充分にアリだと思う。

 

蛍光&ドットが使いやすい最新マーカー「マルライナー」

まず紹介するのは、2021年8月に発売されたエポックケミカル「マルライナー」だ。従来のドットマーカーは「細字」と「ドットチップ」のツインタイプが主流だったが、こちらは単体で球状ドットチップの「マル」と細字の「ホソ」に分かれて展開している。その分、1本辺りのお値段は少しお安くなってます、ということだろう。

エポックケミカル
マルライナー マル 全24色
各140円(税別)

 

↑ただポンポンと捺してるだけでも楽しく遊べるのがドットマーカーの魅力だ

 

蛍光色の色数が多いのが特徴

何より目を惹くのが、その色数だ。ローンチで「マル」が全24色というのは、呉竹のクリーンカラードットと並んでドットマーカーではトップクラス。そもそも“多彩さ”がカラーペンの魅力である以上、色数の多さはシンプルに購入時の選択基準になり得るはず。その点で、エポックケミカル、勝負してきたな? と感じる。

↑スタンダードな蛍光から人気のマイルドなトーンまで、多彩に揃うラインナップ

 

そしてその24色の中に蛍光色が多く含まれている、というのも大きなポイントだ。というか、製品自体のスタンスが「丸いチップの蛍光マーカー」なのである。

 

黄色系・オレンジ系・青系・緑系・紫系・ピンク系にそれぞれ微妙なニュアンスのバリエーションがあるため、ありきたりな蛍光イエローは飽きたという人でも、選び甲斐がありそうだ。

 

“マーカー”としてのメリットも大きい

ただドットが描けるマーカー、というだけだと「うーん、使わないかな?」とパスする人はいるだろう。対して、ドットも描ける蛍光マーカーなら、蛍光マーカー+αの製品として欲しくなる可能性はある。

↑球状のチップを使うことで、太いライン&ドットが自在に

 

正直、ポンポンとドットを描くのは誰がやっても相当に楽しいので、蛍光マーカー目的で買ってドットマーカーにハマった、という人も出てくるんじゃないだろうか。

 

また、純粋に蛍光マーカーとして考えても、ドットチップにはメリットがある。

↑ドットだけでなく、“蛍光マーカー”としてもラインが引きやすく優秀!

 

↑紙に当てる角度を考えないと上手くラインが引けないチゼルチップ(写真上)に対して、どこから当てても問題ない球状チップ(写真下)。きれいにラインを引くのが苦手な人にはこっちが便利だ

 

マーカーペンのペン先チップといえば、先が平たくなった硬い“チゼルチップ”(たがね型)が主流だが、常に正しい角度で紙に当てないと均質な線が引きにくいという難点がある。対して球状のドットチップは、どの角度で紙に当てても同じように線が引けるのだ。力の入れ加減で線の太細が変わってしまうというデメリットはもちろんあるが、個人的にはチゼルチップよりも圧倒的に使いやすいと思う。

布用に特化したドットマーカー「ヌノデコペン ドット」もおすすめ

もうひとつ紹介したいのが、KAWAGUCHI「ヌノデコペン ドット」だ。そもそもKAWAGUCHIというのは手芸用品メーカーであり、さらに製品名からもなんとなく推察できるとおり、こちらは布にドットを捺すための手芸用ツインマーカー(ドット/細)なのである。

KAWAGUCHI
ヌノデコペン ドット 全15色
各280円(税別)

 

構造としては他のドットマーカーと同じで、柔らかいドットチップを捺すことでドットが簡単に描けるというもの。ただしインクが耐水性の強いタイプなため、布に描いて乾燥した後なら洗濯も可能となっている。もちろん、紙に使うのでも問題はない。

 

↑無地のコットントートにポンポン、でオリジナルバッグの完成。乾燥すれば洗濯もOKだ

 

基本的には、トートバッグやTシャツなどに自分でデザインしたドット柄を入れる、という使い方が楽しめそうだ。また、小さな子どもが複数いる家庭では、兄弟姉妹の靴下などに各自の色のドットを捺しておくことで、混ざってしまわないような目印にもなる。あとは保育園でのお着替え用着に、名前の横にかわいいマークなんか入れてあげると、喜んでもらえるんじゃないだろうか。

 

 

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書き味滑らかでオシャレでサステナブルなボールペン「Penon(ぺノン)」は時代が求める条件を全クリア

筆者は、基本的に文房具は“機能で選ぶ”派だ。日常的に高頻度で使うツールだから、機能が優れていた方が正しいに決まっているし、選ぶ意味があると思う。ただ、日常的によく使うからこそ、ルックスがショボいものを使う気にはならない、という“見た目で選ぶ”派の言い分も、もちろん理解できる。使うたびに「うーん、これ見た目がなぁ……」と思っていたら、テンションはダダ下がりだろう。

 

また、自分のテンションの問題に加えて、外からどう見られるかも重要だ。特に筆記具は意外と使うところを他人に見られているので、気を遣っておいて損はないのである。

 

はしゃぎすぎない、ジャストにかわいいボールペン

とはいえ、ただ「見た目の良い筆記具」と言っても、シック系やハイセンス系、ファンシー系、ファニー系といろいろ。そんな中で、かわいいけれど甘ったるくない&落ち着きすぎない品の良さで文房具ファンの間で注目を集め始めているブランドが、クラウドファンディングからスタートした「Penon」だ。達成率800%超えの人気に後押しされ、2021年9月からは一般販売がスタートしている。

Penon(ぺノン)
ネクタイペン/メガネペン
各1300円各1200円(ともに税込)

 

ベースは明るめの木軸に金属パーツをあしらったデザイン。これだけなら単に落ち着いてるペンだなーという印象だが、クリップにあしらわれた「メガネ」「ネクタイ」が、雰囲気を“ほど良くかわいい”感じにしている。

↑クリップにあしらわれた刺繍ネクタイとメガネフレームが、イイ感じに主張している

 

ペンとして使っている時に視界に入ると、「あ、メガネ(ネクタイ)だ」と気付くぐらいの目立ち度合いで、これ以上に主張が強いとやりすぎだし、逆に控えめすぎるとつまらない。このちょうどいいオシャレさのバランス取りは見事だ。

↑手に握るとこれぐらいの目立ち加減。メガネキャラをアピールしたい人の最適解とも言える

 

↑そのまま筆記に使っても面白いが、個人的にはやはり胸ポケットに挿したときが一番かわいいように思う

 

もうちょっと踏み込んでアクセントが欲しければ、「フラッグ」シリーズもあり。ペン後端からにょきっと刺繍の旗が伸びたルックスは、かなりユニークだ。旗の柄には、ハリネズミやリスといった刺繍映えするオシャかわな意匠に加えて、なぜかアゼルバイジャンやソマリアといったレアなものが揃っている国旗シリーズもラインナップしていて楽しい。

Penon
フラッグペン ショート/ロング
各1400円(税込)

 

↑ペン後端からかわいい刺繍旗がピコッと立っているのが、たまらないかわいさ

 

とはいえ、かわいいだけじゃなぁ……と思いながら使ってみると、意外や、書き味もなかなかに優秀で驚いた。ボール径0.5mmのニードルチップからたっぷりめに出るゲルインクは、サラサラ感が強く、なかなかに書いていて気持ちが良い。

 

ちなみにリリース情報には「セラミックボールを使用」とある。ニードル+ゲル+セラミックボールという組み合わせであれば、OHTO(オート)のOEMのような気はするのだけれど、確証はない。

↑正直、かわいいだけのペンだと舐めていたのだが、書き味の良さもかなりのもの。サラサラ好きにはハマる可能性大だ

 

もう一つの特徴が「サステナブルな文房具」だということ

↑リフィルは、替リフィルのパッケージに入れて郵送すればリサイクルされる仕組み

 

ところでこの「Penon」の特徴としてもうひとつ挙げられるのが、サステナビリティに対する取り組みである。

 

まず木軸は、伐採した量以上の植林が約束されている森林認証の木材を使用。リフィルも廃プラが出ないよう、無償で回収しリサイクルへ回す仕組みを作っているとのこと。もちろん、ユーザーレベルではあくまでも心がけ程度の話だが、身近な文房具からSDGsに取り組むメーカーを応援するのは、悪い話ではないだろう。

↑もちろんパッケージもエコなダンボール製。側面にフルート(ダンボールの断面)が見えているのがオシャレ

 

↑開封時は、ストッパーを外すと……

 

↑重なったジャバラがほどけて、このように開く。この構造はかなりカッコイイ!

 

ちなみにパッケージも脱プラを目指して、ダンボール製となっている。薄いダンボールをジャバラに重ねて厚みを出している構造がなかなか面白く、このままプレゼント用にしても違和感のないオシャレさなのだ。

↑パッケージ下部には、ちょっと工作マインドをくすぐるパーツが並ぶ

 

↑切り抜いて組み立てると、このとおりペンスタンドに

 

↑スタンドはまっすぐペンが立つので、やはりフラッグペンが最も似合う

 

さらによく見ると、パッケージからなにかパーツが切り抜けるようになっていた。これを切り抜いて組み立ててみる(のりか接着剤があるとラク)と、ペン1本が入るペン立てが出来上がるのだ。特に「フラッグペン」シリーズを立てるとしっくりハマる感じ。机に立てておくとなかなかキュンとくる雰囲気になるので、入手された方はぜひ組み立ててみて欲しい。

 

 

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秘密は軸にあり!「サラサナノ」が極細ゲルインクボールペンなのにガリガリしない理由

ゲルインクボールペンの0.3mm径というのは、かなり扱いが難しいと、筆者は思っている。立ち位置は、現在のゲルインクボールペン市場では最も細いボール径。この“細さ”がクセモノで、どうしてもガリガリとした引っかかりの強い筆記感になってしまうのだ。

 

つまり、ボールが小さいだけに紙の繊維などの微細な凹凸に足を取られやすかったり、先端が鋭すぎて紙の表面を掘ってしまったり、という状態である。「このガリガリした書き味がいい!」という人以外にとって快適じゃないのはもちろん、このガリガリした衝撃によってペン先が跳ねてしまい、カスレが発生しやすいのも問題と言える。

 

筆者も、ゲルインクの細径が好きでメイン筆記具にしているが、それでも0.38mm(≒0.4mmクラス)。この0.1mmの差は数字以上に大きくて、正直、自分には0.3mmは使いこなせないなー、と諦めていたのである。

 

しかし、2021年11月に発売されたゲルインク0.3mmの新製品が、試してみるとなかなかに面白い。特殊な構造で、ガリガリ感を抑える工夫がされているのだ。

 

極細0.3mmでもガリガリしないゲルインクボールペンとは?

その新製品というのが、ゼブラから発売された「サラサナノ」。名前でお分かりの通り、ゲルインクの王者こと「サラサ」シリーズに新たにラインアップされた、0.3mm径のボールペンである。

 

ゼブラ
サラサナノ0.3mm、全 32
各200円(税別)

 

ちなみに、シリーズの大看板である「サラサクリップ」にも、以前から0.3mm径は存在している。ただ、個人的な感覚では「サラサとはいえ、やっぱり0.3はガリガリするよなー」という印象のペンだった。実は「サラサナノ」のインクリフィル部分は、この従来の「サラサクリップ」0.3mmと共通なのである。

 

えっ、じゃあ結局ガリガリじゃん! と考えるのは、早計に過ぎる。不快なガリガリを抑制する工夫は、リフィルではなく軸の方にあるのだ。

 

ガリガリ抑制の仕組みとは?

↑引っかかる感じが少なく、細い線がサラッと軽く書ける筆記性能は、非常に優秀

 

「サラサナノ」のボディには、バネが2本内蔵されている。1本はノックの制御を行うための口金内部の前バネ。こちらは、ノック式ボールペンすべてに入っているお馴染みのやつだ。

 

そしてもう1本が、軸後端に収まっている振動抑制用の後バネ。「うるふわクッション」と名付けられたパーツである。この後バネが、サスペンションとなってリフィルの上下動を吸収。ガリガリした振動を抑制する、という仕組みなのだ。

 

↑ペン先がバネで上下に動くことで、紙表面の凹凸を乗り越えやすく、強い筆圧を逃がす効果も得られる(写真提供:ゼブラ)

 

↑ノックボタンの下に位置する黒いパーツが「うるふわクッション」。これがバネを内蔵したサスペンションだ

 

サスペンションとはいっても、書く際にブワブワ動くほどではなく、タッチは硬め。筆圧をグイッと強くかけると少し沈むかな? 程度なので、違和感はないだろう。

 

しかし、この“硬いサス”こと「うるふわクッション」が、思った以上に良く効く。小さな字を書くにも、これまでなら紙の繊維に引っかかってガリガリと揺れていたペン先が、かなりスムーズに動かせるのである。この書きやすさは「本当にサラサ0.3と同じリフィルなの?」と驚くほど。他社のゲルインク0.3mm径と比較しても、引っかかりの少ない書きやすさはトップクラスだと感じた。

 

ザラザラしてペン先が引っかかりやすい付箋の書き味は?

↑コピー用紙やノートよりも平滑度が低い付箋の紙でも、サラサラと快適筆記

 

従来のゲル0.3mm径にとって、付箋は鬼門だったと言える。付箋は書き込み面積が少ないだけに、細い字で書き込みたい。しかし表面がザラッとしている(平滑度が低い)ため、特にペン先がガリッと引っかかる率が非常に高かったのである。

 

そこで「サラサナノ」を付箋書き込みに使ってみると……おおー、確実に書きやすい! 筆者は今まで、付箋への書き込みは油性の0.3mm径を使っていたのだが、今後は「サラサナノ」に切り替えても良さそうだ。

 

↑鼓型に削りこんだ不思議な形状の口金。メーカーリリースには「先端視界を確保しやすい」とあるが、あまりその効果は体感できなかった……

 

もうひとつ、口金の金属化も大きなポイントで、先端重量を増やして低重心化し、書きやすさを高めている。

 

これは明らかに、昨今のボールペントレンドのひとつ。先だってもこの連載で、“300円帯ボールペン”として「ユニボール ワン F」と「ボールサインiD plus」を紹介したが、つまりは従来の100~200円のボールペンを、リフィルはそのまま、軸や口金部分のアップグレードで低重心・高品質化させる……という方向性だ。

強みは書き心地を高める低重心! 新価格帯「300円ボールペン」の真価とは?
https://getnavi.jp/stationery/675698/

 

しかし、それらと同じ方向性でありつつ、それを一段安い200円帯で売ってしまうあたり、いかにも“学生の味方”であるゼブラらしい。

 

↑全32色のカラーラインナップ。人気のビンテージカラーなども揃って、ローンチの時点ですでに充実感が高い(写真提供:ゼブラ)

 

カラーラインアップも、0.3mm径としては一気に最多クラスとなる32色。これまで「サラサクリップ」0.mmが20色だったので、1.5倍以上も増えたということになる。

 

もともと、0.3mm径はインクカラーの選択肢が少なめということもあって、この32色という大ボリュームも「サラサナノ」を選ぶ理由として大きいのではないだろうか。

 

 

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強みは書き心地を高める低重心! 新価格帯「300円ボールペン」の真価とは?

日本の文房具業界とは本当に凄いところで、毎回なにか新しい動きがあるたびに「おお、そう来たか!」と驚かされている。例えばボールペンひとつ取ってみても、最近であれば低粘度油性の超極細化であったり、ゲルインクの多彩化であったりと、様々な“そう来たか”ムーブメントが生まれている。

 

そこへ今秋頃から、新たに文房具メーカーがぶつけてきた“そう来たか”が、これまで「アクロ300」(パイロット)ぐらいしかなかった、単色ボールペンの300円帯という新ジャンルである。

 

これまでの国産単色ボールペンは、だいたい100円~200円と、1000円以上という価格帯で分けられていた。端的に言えば、普通/高級、というシンプルなゾーニングだったのだが、この間にいきなり割り込んできたのが、300円帯なのだ。

 

この300円帯ボールペンが面白いのは、既存の100~200円帯ボールペンブランドを、見た目の高級感ではなく機能面でアップデートさせた、という部分だろう。

 

では、価格が300円前後になったことで、何がどう良くなったのか? 今回は、そのあたりをじっくりと確認したい。

 

300円帯になることで実現した「ユニボールワン」の完成形

まず300円帯という新ジャンルの先陣を切ったのが、2021年9月に発売された三菱鉛筆の「ユニボール ワン  F」。くっきり濃いゲルインクで、昨年大きな話題となった「ユニボール ワン」の新モデル、という立ち位置となっている。

 

搭載インクは黒のみなのに対して、ボディは「無垢」や「茜空」などくすみのある和色という演出も面白い。ボール径0.38mmが4色(消炭=Fブラック、無垢=Fグレー、花霞=Fピンク、日向夏=Fイエロー)、0.5mmが3色(霜柱=Fブルー、葉雫=Fグリーン、茜空=Fレッド)。ちなみにリフィルは従来と共通なので、インク色・ボール径ともに好みで入れ替えが可能だ。

 

三菱鉛筆
ユニボール ワン F
0.5mm径/0.38mm径
各300円(税別)

 

先ほど300円帯に対して「見た目の高級感ではなく機能面でアップデート」と述べたが、とは言え定価120円(税別)の「ユニボール ワン」と比べると、約200円アップした分のルックスの向上は充分にあるだろう。

 

ゴムグリップを廃して先軸を延長したことでなめらかな流線型ボディとなり、ペン先端までの流れがスラッと非常にシャープな雰囲気になった。ワイヤークリップやノックノブなど、目立つパーツは従来と同じなのに、パッと見の印象はずいぶんリッチに感じられる。

 

↑右が「ユニボール ワン F」。先端から口金、軸へと、一続きに流れる流線型が美しい

 

そして機能面での最大の変更が、「スタビライザー機構」と呼ばれるパーツによる低重心化だ。先端からチラリと金属の口金が覗いているが、実はこの口金パーツはグリップ中ほどまで続いており、先端からグリップにかけての重量を稼いでいる。

 

この“グリップ中ほどまでが重い”という前掛かりな重量バランスが、非常に絶妙。重心の取れた位置(スイートスポット)で握ると、不快な重さは感じず、しっとりと吸い付くような握り心地となるのだ。なるほど、これは確かにスタビライザー(安定装置)だと納得させられた。

 

↑グリップまで貫通している金属製のスタビライザーパーツ。これだけでもずっしりとした重みがある

 

↑握るスイートスポットはグリップ中~後側。先側の持ち癖がある人だと、握り位置を矯正されるような感覚があるかもしれない

 

↑「ユニボールワン」(上)との重心位置の比較。10mm以上も低重心化しているのが分かる

 

このしっとりと吸い付くようなバランスによって、ペン先が指の動きにきれいに追随。さらに先端の金属化で寸法精度が上がったことで、リフィルのカチャカチャする先ブレを抑え込む効果(ゼブラ「ブレン」ほどではないが、ブレにくい)も加わり、とにかく書き心地が良い。

 

普段はボールペンの重量バランスなんか気にしたこともない、というユーザーでも、握ればまず「ん?なんか今までと違うぞ?」と気付くレベルで、これは体験的にかなり斬新な製品だと思われる。

 

↑ただ重いのではなく、安定感の高さを感じる。正直、これは体験してみて欲しい

 

書いていて感じたのは「コスト的に『ユニボール ワン』ではできなかったこと(シャープなデザインやスタビライザーの搭載)が、価格帯のステージをひとつ上げることで可能になったんだな」ということ。

 

もしかすると、三菱鉛筆が開発時にまず想定していた「ユニボール ワン」の完成形こそが、この「ユニボール ワン F」というモデルなのかもしれない。価格は上がっているものの、むしろ「これが300円台で買えていいの?」という驚きすらある仕上がり具合である。

 

“ラインナップ全部黒”の「ボールサインiD」も300円化

サクラクレパスから2021年10月下旬に発売された「ボールサインiD plus」も、注目の300円帯ボールペンだ。こちらも、先行して発売されている「ボールサインiD」のアップデートモデルという立ち位置となっている。

サクラクレパス
ボールサインiD plus
シルバー軸(0.4mm径)/ブラック軸(0.5mm径)
各350円(税別)

 

6色のカラーブラック系ゲルインクでラインナップを揃えたことで、人気の高い「ボールサインiD」だが、後ろ重心めのバランスや、やたらとツルツルしてグリップ感の弱いボディは、筆者個人として少し残念に感じていた。

 

ところが「ボールサインiD plus」として300円帯にステージを上げたことで、このネガティブをスパッと解決してしまったのである。

 

↑「ボールサインiD plus」(右)は先端視界を確保するためか、段差をつけて先を絞った口金が特徴的。軸と口金の結合部で段差が減っており、先持ち癖の人にも使いやすくなった

 

↑「ボールサインiD」(上)との重心位置の比較。なんと15mm近くも低重心になっている

 

↑口金は単体で約4.0gと、かなりズッシリ

 

バランスについては、先端をプラから金属の口金に変更することで低重心化。やや後ろ重心気味だった「ボールサインiD」と比べると、書き味がかなり良くなったように思う。先端だけに重みがかかるため、早書きをする際には多少振り回される感覚はあるが、使っているうちに慣れるだろう。

 

実は、口金による低重心化に関しては、「ボールサインiD」のデザインを担当したUOデザインから、口金を金属化する「ステンレス製先栓」というカスタムパーツが今年6月に発売されていたのである(しかもサクラクレパス公認)。デザインした事務所に続いて、メーカーも同じ方向でアップデートしてきたということはやはり、これが本来あるべきボールサインiDの完成形だった、と考えるべきだろう。

 

↑個人的にはこれが最高にありがたい、軸のグリップ力アップ

 

さらに、これまでツルツルだったボディには、全体にマットなゴム系の塗装が施された。実のところ、改善点としてはこちらの方がとても嬉しい。

 

なにしろ「ボールサインiD」は、手汗をかくと握るのがつらいレベルでツルツルしていたため、インク色などは非常に気に入っていたものの、夏場には使えないなぁと感じていたのである。対して、新たに塗装されたボディは手触りもしっとりしており、握った指先に気持ちの良い摩擦がかかるようになった。これなら安心して握れて、長時間筆記でも指の疲労が減るはず。

 

↑価格は150円以上も上がるが、書きやすさの点でplusを選ばない理由はない! と感じるほど優秀

 

ただし、残念なことがひとつ。「6色全て黒」が話題だった同シリーズだが、「ボールサインiD plus」ではカラーラインナップを絞り、ピュアブラック(ブラック)、ナイトブラック(ブルーブラック)、フォレストブラック(グリーンブラック)の3色のみとなってしまった。価格を上げるうえで人気の高い色に絞った、ということは理解できるが、ミステリアスブラック(パープルブラック)を愛用していた筆者としては、削り落とされちゃったなー、という寂しい気持ちにもなった。

 

もちろんリフィルは従来と共通なので、入れ替えてしまえば済む話ではあるのだけど……とはいえノックノブのパーツカラーと齟齬が出てしまうのは、もったいないところである。

 

 

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2分割によって重要箇所がリンクする!「ココサス ポップアップ」で付箋の利便性は高速進化

付箋とは、本の要点が書かれたページに目印として貼ったり、書類にコメントを添付したり、という用途を持つツールだ。

 

……とは言ったものの、そもそもそれ以上の機能を与えるのは難しい。しょせんは「貼って剥がせる(再剥離性、という)のりを塗布した紙片」でしかないのだから。

 

ところが、その単なる“のり付き紙片”に新たな機能を付加したのが、2013年に発売されたビバリー「ココサス」だ。

↑発売当時、単に“貼る目印”だけじゃない機能性が話題になったビバリーの「ココサス」

 

矢印型の付箋がミシン目で2分割できるようになっており、矢印先端を書籍のページ内にある、注目すべき要点部分を指し示すように貼る。分離した矢印の根本部分はページ端に貼る。

 

書籍を閉じているときは、開くべきページを根本部分で確認。ページを開いたときは、見るべきポイントを矢印先端が教えてくれる、という仕組みである。従来の付箋にありがちな、「付箋を貼ったものの、ページのどこに要点があるか分からない」というトラブルも、この分割方式なら発生しないというわけだ。

 

便利な矢印付箋がポップアップに進化

筆者は、発売されたときからこの「ココサス」の大ファンで、今でも資料の読み込みをする際には、手元に欠かせないアイテムである(特に、蛍光マーカーでラインを引きづらい古い書籍には必須)。その「ココサス」に新製品が登場したとあっては、そりゃ注目せざるを得ないだろう。

ビバリー
ココサス ポップアップ
各520円(税別)

 

その新製品こと「ココサス ポップアップ」は、名前の通りポップアップ式ケースに収納された、“フィルム付箋タイプの「ココサス」”だ。

 

ケース中央からはみ出た付箋の端をつまんで、シュッと引くことで抜き出せて、ティッシュペーパーのように次の端が自動的に現れる。抜き出したフィルムの矢印は、従来の「ココサス」と同様に先端と根本に分割できるようミシン目が入っているので、これまた従来通りに「要点指示」と「ページ指示」に分けて使うことが可能。

↑ケースからシュッと引き抜くと、次の付箋の端が自動的に露出。何枚も続けて貼りたいときにはポップアップ式が便利だ

 

↑使用時は、ミシン目からピリッと切って……

 

↑ピンポイントに要点指示+ページマークに。一般的な付箋よりも圧倒的に分かりやすい!

 

資料の読み込みでは、付箋を何枚も立て続けに貼りたい。ところがベタベタと数多くふせんを貼ってしまうと、ページのどこに要点があったのかが分からなくなりがちだ。

 

つまり、「ココサス」の機能とポップアップ式の利点はガッチリと噛み合って、非常に相性が良いのである。実際に使ってみると、むしろなんで今までポップアップにしなかったの? というレベルで、使いやすいと感じた。

 

↑同じページ内に複数のチェックがあっても、色分けして貼れば分かりやすい。半透明フイルムなので、文字にかかっても問題なしだ

 

ポップアップケースの裏には、手帳や本に挟んで使うためのクリップが付いている。このクリップにもちょっとした工夫があり、二重になったクリップの内側で挟むとケースの上部がページ端から飛び出すように、外側で挟むと飛び出さないようになっているのだ。

↑裏面のクリップは、二重構造がポイント

 

例えば手帳に挟んで持ち歩く場合、普段は飛び出していると邪魔なので、クリップの外側を使う。いざ付箋を使うときはクリップ内側を使うと、ケース上部がインデックス代わりになって、アクセスしやすくなる。

 

もちろん、現時点で使うページに挟めばしおりとしても機能するわけで、シーンによって二重のクリップを使い分ければ、使い勝手も上がりそうだ。

↑挟む位置を変えるだけで、スッキリ収納(外側クリップ)・インデックスで分かりやすく(内側クリップ)と使い分けられる

 

現在では、文具店の店頭に数多くの“機能性付箋”が並んでいるが、「ココサス」はそのジャンルの先駆けとも言える画期的なもの。さすがに発売からすでに8年が経過して、愛用者以外にはやや影が薄くなっているのを残念に思っていたのだが……ポップアップタイプの発売をきっかけに再び注目されるようになれば、長年の愛用者としても嬉しいかぎりである。

 

 

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芯を潰した粘着テープの究極系? カードタイプになった3Mの梱包テープの使い勝手は群を抜いている!

先日、生活用具を収納する棚の整理をしていて気付いてしまったのだが、我が家、梱包テープが多すぎる。

 

まずクラフトテープと布テープとPPテープがあって、さらに手で切れるPPテープだの、両フチに粘着材がなくてめくって剥がしやすい布テープだのと、あれこれ機能を付加したタイプもあって、もはや棚に収まりきらなくなっている。荷物のやり取りが多いモノ系ライターという仕事柄、ある程度しょうがないとはいえ、困ったなー、と。

 

↑工具とかテープ類を突っ込んである自宅の棚。数えてみたら、梱包用だけで18本もあった。「空母でも梱包するつもりか」と妻に怒られた

 

だが冷静に考えると、こういった梱包テープの類にだって、非はあるんじゃないか? 実際に使うテープ部に対して、芯の間に空いたあの無駄な穴はなんだ。あの空間さえなければ、もっとすんなり収納できるだろう。

 

例えば都内で家賃15万円50平米の家として、一般的な梱包テープの穴の面積が約0.045m2なので、ざっくり計算であの空虚な穴1つあたり毎月135円がコストとして払われ続けることになる。(もちろん、棚などを使えば収納効率も違うので、そんな単純な計算はできないが。)これ、許せることだろうか!?

 

「スコッチ 透明梱包用テープ」は超薄型だから邪魔じゃない!

と、上記はさすがに言いがかりに近い話ではあるが、梱包テープが意外と場所をとって邪魔、という点に関しては同意いただけるんではないだろうか。もうちょっとスッキリ収納できてもいいのでは?

 

まさにそういう部分で最強なのが、3M(スリーエム)から発売された「Scotch(スコッチ) 透明梱包用テープ ポータブルタイプ」(以下、ポータブル梱包テープ)である。

 

3M
Scotch(スコッチ) 透明梱包用テープ ポータブルタイプ
7m
オープン価格(実勢300円前後)

 

なにがポータブルかというと、一目瞭然、あの穴がない! 2mm厚の紙板を芯として、そこに48mm幅のPPテープを巻き付けてあるというもので、とにかく薄くてスッキリ。感覚的には“カードサイズ”と言いたくなるくらいなのだ。

↑指で挟んで持てる梱包テープ、という新ジャンルだ。新品の状態で厚さは約5.5mm

 

↑50m巻のテープと比べると、サイズ差は歴然

 

並べて見ると、とにかく“収納面積の無駄にならなさ”が圧倒的。従来のPPテープ1個分のスペースがあれば、ポータブル梱包テープがどっさり積み重ねて置けるわけで、それはもうありがたいとしか言いようがない。テープ長は7m(従来品はだいたい50m巻)しかないが、そこを考えてもやはり相当な省スペースだろう。

 

なにより普通の家庭であれば、50m巻テープを使い切るのもなかなか大変。それならスリムな7m巻を備えておけば充分、という考え方もできるのではないか。

 

↑紙管のロールと比べるとややぎこちない動きになるが、使いづらいと感じるほどじゃない

 

使う時は紙板の芯を表、裏、とひっくり返すようにしてテープを伸ばしていくので、やはり紙菅芯から伸ばしていくのとは作業感が違う。とは言っても、まぁそういうものかと思って使えば、特に不具合は感じないはず。

 

テープ自体は0.06mm厚と、PPテープとしてはやや厚手という範囲。粘着もしっかりしているので、梱包だけでなく、ちょっとした補修作業にも充分に使えるだろう。

 

↑PPテープは、やはり手で切れる方が、圧倒的に面倒がない

 

さらに、テープが手でスパッと切れるというのもポイントだ。ちなみに、手で切るときは最初からグイッと力を入れて引き切るのがコツ。じわじわ力を入れると、テープが端から伸びていって切れなくなってしまう。ここは慣れが必要かもしれない。

 

とはいえ、「カッターやハサミが不要」+「ポケットに入れても邪魔にならないぐらいの薄さ」という組み合わせは、引っ越し作業などには最適ではないだろうか。

 

↑このサイズ感なら、ポケットに入れて持ち歩いても違和感なし。DIYでも役立ちそうだ

 

以前、この連載でも薄型の布テープ「アウトドアテープ」(ヤマト)を紹介したことがある。登山やキャンプの荷物にスルリと入るスリムさで、こちらも非常に優秀な製品だ。

“潰れたガムテ”がこんなに便利なんて! ヤマト「アウトドアテープ」がキャンプでも災害時も活躍する理由
https://getnavi.jp/stationery/537788/

 

すべてのテープ類が薄型になればいい、という極論を言うつもりはもちろんないが、こういった“収納に場所を取らないテープ”という選択肢がもうちょっと増えると、いろいろと便利だと思う。

 

 

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アイデアと完成度に脱帽! コクヨの2つ折りファイルとコピー用紙で作るノートが書類の持ち歩きを快適化

前回、PC関連の便利アイテムとして、コクヨ「BIZRACK(ビズラック)」シリーズの新しいワークツール2点を紹介した。ところが「BIZRACK」の新アイテムはまだあって、それも紹介しないわけにはいかないぐらいに面白いのである。

在宅ワーク環境を快適化!コクヨのPC周辺アイテムでキーボード入力もメモもスムーズ
https://getnavi.jp/stationery/659728/

 

が、その前にまず前提として述べておくべきポイントがある。それが、テレワークによって「書類を持ち運ぶ機会が増えているらしい」という話なのだ。これまではオフィスに置きっぱなしだった資料などの書類は、在宅で仕事をするならそれも持って帰らなきゃいけないし、出社する際には当然再び持って行くことになる(もちろん、持ち出せるものに限るが)。サーバーにファイルをアップロードして閲覧すればいいのでは? という話もあろうが、画面で見るよりプリントアウトした方が、取り回しがラクというケースも多いのである。

 

そこで今回は「BIZRACK」シリーズから、書類輸送に適した最新アイテムを紹介したいと思う。

 

コンパクトに書類を運べるドキュメントファイル

“書類”と一般的に呼ばれるものを大きく分けると、自分だけで見るためのものと、他人が目を通すものの2つになる。他人(社内でも社外でも)が見る用の書類であれば、そこはやはりシワなく折り目なくピシッとしているべき。だが単に自分が参照するためだけにプリントしたものなら、多少折れてようが読めるなら問題ないし、それよりは持ち運びしやすさを優先したっていいだろう。

コクヨ
2つ折りドキュメントファイル<ビズラック>
700円(税別)

 

そういう感覚で運用するなら、「2つ折りドキュメントファイル<ビズラック>」はかなり優秀だ。A4サイズの書類ホルダーを、その名の通り2つ折り(A5サイズ)にして携行できる。つまりコンパクト化されるため、単純に持ち歩きやすくなるという話である。

 

近年増えてきた感のある「書類の二つ折り収納」だが、小さなカバンにもスルッと入って助かるという人も多いのではないだろうか。実際、筆者はノートPCレスで外出する際には小さなボディバッグを多用しているので、今後はこの「2つ折りドキュメントファイル<ビズラック>」がヘビーに役立ってくれそうな気がしている。

 

↑表紙のゴム紐を外して開いた様子。A4書類を半折りの状態でストックできる

 

 

↑インデックスで仕切られた書類収納。インデックスの山が表紙と同色で見づらいので、ラベルシールか何か貼った方が使いやすいかもしれない

 

書類ホルダー部は、2山のインデックスで3つに分かれており、書類の分類収納が可能。案件ごとに分けてもいいし、至急/いつでもいい/終わったけど念のため保持、というように優先度で分けてもいいだろう。

 

同サイズの紙をざっくりと収納するツールなので、必要な書類を探す手間を考えれば、インデックスによる仕分け収納は必須と言える。

 

↑ペン類も飲み込むミニポケット。容量は大きくないが、簡易的なペンケースとしても機能しそう

 

書類ホルダー以外には、透明窓のミニポケットと名刺用のスリットがついている。特にミニポケット(厚さ8mmの物まで入る)は、付箋やラインマーカー、目薬など、書類仕事にあると助かる小物がまとめて持ち運べるのがありがたい。

 

PCを使わない書類チェックのような作業であれば、何ならこのドキュメントファイルひとつでこなせるわけで、これはなかなか気の利いた仕様だと思う。

 

↑名刺をストックしておくと、ファイル自体を紛失したときに戻ってくる確率が上がる(名前シール代わり)。特に必要なくても入れておくのがオススメだ

書類をオフィス外に持ち出すにあたって、空き時間に腰を下ろせる場所で資料を読み込んでおく……というような使い方なら、「2つ折りクリヤーブック<ビズラック>」もアリだ。

コクヨ
2つ折りクリヤーブック<ビズラック>
600円(税別)

 

こちらは10枚のクリアポケットを備えたファイルを、先のドキュメントファイルと同様に2つ折りにしたもので、パラパラとページをめくれる分、閲覧性が高い。外出先で、急に一覧や数字を参照する必要に迫られた場合などは、携帯しやすさも含めてかなり便利なのだ。

 

↑表紙を開くと、書類ホルダー兼用の中表紙が現れる

 

↑さらに中表紙を開くと、ペラペラとめくって見られるクリアポケットのページが出現。書類は側面から入れるサイドスロー式だ

 

↑中表紙はホルダー型のポケットも兼ねる。カドを差し込んで固定しておけるので、収納した書類が抜け落ちる心配もなさそうだ

 

実のところ、2つ折りのクリヤーブックはすでに他メーカーからいくつか先行製品が出ているのだが、それを踏まえても良さを感じるのが、展開時の表紙にあたるホルダー型のポケット。2辺が開くクリアホルダーのような形状のポケットなので、ひとまずざくざくと書類を入れておくのに使えるのである。

 

ポケット式はいちいち書類を収納するのが手間だが、こういうラフに使える要素が入っていてくれると、気軽に使えていいと思う。

コピー用紙と書類をまとめてノート化

書類を携行するだけに限らず、汎用性の高さで面白いのが「クリップノート<ビズラック>」だ。

コクヨ
クリップノート<ビズラック>
550円(税別)

 

背のクリップでA4サイズ程度の紙なら何でも挟みこんでおけるというもので、コピー用紙を挟めば無地のノートになるし、書類を一緒に挟んでおくことも可能だ。

 

また、ルーズリーフのように紙の抜き差し自在だが、リング穴は不要、という便利さが最大のポイントと言える。

 

↑背表紙には、回転式のクリップを2つ備える。閉じるとギュッと強めの圧がかかるので、紙の固定にも安心感がある

 

↑A4用紙を差し込んでクリップを戻せば、この通りしっかりち綴じられたノートの完成だ

 

以前にこの連載でも紹介したPageBase(ページベース)「SlideNote(スライドノート)」と同じコンセプトの後発製品だが、使い勝手の部分で違いがある。

第三のノート誕生! 入れ替え可能な“綴じ”ノート「SlideNote」は“アイデア出しは手書き”派の最適解!?
https://getnavi.jp/stationery/573803/

 

まず「SlideNote」は、背全体を挟む大きなスライドクリップが特徴だったが、この「クリップノート<ビズラック>」は樹脂製の回転クリップを2点に備えている。「SlideNote」はA4以下であればどんなサイズの紙でも綴じることができたが、こちらはクリップが上下端に分かれて配置されているため、基本的にはA4限定と言っていいと思う。

 

↑プリントアウトの書類と無地ページを混ぜ込んだ仕事ノートも、簡単に作れる

 

とはいえ背周りがコンパクトな分だけ、表紙は非常に開きやすい。表紙を360度折り返して使うこともできるほどで、これは閲覧だけでなく立ったまま筆記も可能というメリットがある。また、背が薄い=全体的にスリムということで、カバンに突っ込むときも、よりスムーズに入った。

 

↑表紙を折り返すことで、クリップボード的な使い方も可能だ

 

また、挟む紙が少なくても抜けにくい、というのも「クリップノート<ビズラック>」の重要なポイントだろう。回転クリップは紙1~2枚程度でもしっかり挟んでくれて、背を折り返しても抜ける気配はほとんど感じない。書類を挟んでの閲覧用ファイルとして使うのであっても、スポ抜けしての紛失を心配しなくて良いのは嬉しいところである。

 

 

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在宅ワーク環境を快適化!コクヨのPC周辺アイテムでキーボード入力もメモもスムーズ

とある調査によれば、コロナ禍の1年で売り上げを伸ばしたファッション関連製品の第2位が、PCケース・バッグだったという。前年比で598%だというから、これは相当なものだ。

 

ちなみに第1位は当然ながらマスク類で、80,508%。“8万%”なんて、昨対(昨年比)でそんな数字、初めて見た。と、さすがにケタが違いすぎるマスクはさておき。

 

PCケース・バッグが大幅に売れ行きを伸ばした要因として考えられるのは、やはりオフィス・自宅間でノートPCを持ち運ぶ機会が増えたということ。あとは、在宅環境でのPC周辺環境を快適にしたいという要望もあるだろう。ウェブ会議など、これまであまりなかった業務に対応しやすい製品というのも、望まれているんじゃないだろうか。

 

仕事のやり方がコロナ前とは変わっちゃったんだから、仕事道具も変えていくのは当たり前、という話なのである。

 

そこで今回は、コクヨのワークツールブランド「BIZRACK(ビズラック)」から10月に発売される、新しい機能を持ったPC周辺アイテムを2点紹介したい。それぞれ、変わってしまった仕事環境に対して「こういうのがあると便利じゃない?」という提案が含まれており、なかなか面白いのである。

 

狭い机でのウェブ会議を快適にするPCスタンド

まず紹介したいのは、「スライドボード付きノートPCスタンド <ビズラック>」。

 

“運搬”という用途が明白なPCケースと違って、PCスタンドというのはまだ認知度が低い。しかし、実は使うことで首・肩の負担を減らして作業ストレスを軽くする効果が期待できるため、できれば使った方がいいツールなのだ。

コクヨ
スライドボード付きノートPCスタンド <ビズラック>
4500円(税別)

 

収納時は13インチのノートPCとほぼ同サイズの薄い板状。このままPCと一緒にケースに入れて持ち運ぶのも問題なさそうだ。

 

そして、いざ使用するときは、表面のスタンド部を持ち上げ折り返してからノートPCを乗せると、ほどよい角度がついた状態になるという仕組み。さらに折り返し方を変えることで、角度は15度/25度の2段階に調節できる。

 

↑スタンドでノートPCに程よく角度をつけることで、作業効率はアップする

 

↑角度は2段階に調整可能。手首から肩にかけて無理のない角度を選ぶとラクだ

 

この角度がつくことで、今まで液晶を見下ろしていた視線が少し上がる。これによって、まず首の負担がかなり減るのだ。近年、スマホを見下ろし続けることによって頸椎を痛める“スマホ首”が問題になっているが、ノートPCの画面見下ろしもなかなかに問題なのである。

 

また、打健姿勢も変わって肩の位置が下がるため、肩胛骨周りの緊張が減る=肩こりもラクになるというわけだ。

 

↑スタンドなしの状態。首が前傾して、肩周りにもやや無理がある姿勢だ

 

↑スタンドで角度をつけてやると、首・肩が自然な位置に戻る。長時間の作業だと、これだけで体の負担が大きく違ってくるはず

 

↑PC内蔵カメラの高さも変わるので、スタンドを使えばWEB会議での写りもナチュラルに。ドーンと鼻の穴を晒さずに済むのはありがたいかも

 

とはいっても、ここまではあくまでも普通のPCスタンドのメリットでしかない。「スライドボード付きノートPCスタンド」が面白いのは、狭い机でウェブ会議が快適になる、とあるギミックの部分なのである。

 

そのギミックというのが、名前の通り手元から引き出せるスライドボードだ。

 

↑筆記具を使いたい場合は、スライドボードを引き出すと……

 

狭い机にPCを置いていると、ウェブ会議中にメモを取るだけの場所も取れない、なんてこともあるだろう。そういうときは、スタンド下端のタブをつまんで引くと、とフラットなボードが出てくる。これをパタンと折り返すと、ちょうどキーボードにフタをする形でボードが安定。

 

なんとこのキーボード上の板が、メモを取るための簡易的な机面として機能するのである。

 

↑キーボードが一時的に机として使えるように。ウェブ会議でのメモ取りはこれが快適

 

ボードはしっかりした硬さでたわみにくいため、上で筆記することで勝手にキータイプされてしまうようなことも、ほぼなかった。もちろん書きづらさもなし。書く場所がないからと、膝の上にノートやメモを置くより、はるかに快適だ。

 

また、画面とメモが同じ垂直軸上の近い位置で並ぶため、筆記時に際に画面から大きく視線を外さなくて済むのもありがたい。相手側から見ても、会話中にこちらが(メモを取るためとはいえ)顔を逸らしているのは、あまり感じの良くないもの。その点でも、キーボードの上で筆記できたほうが、印象の点で好ましいだろう。

 

↑文章を書く時などは、手元のグラつきがそれなりに気になる。ひとまずは「ウェブ会議用ツール」と考えて使うべきか

 

ただ、使ってみた感覚としては、スタンドとして使うには素材的な安定感がやや足りないかな、と感じることもあった。特に15度モードで使っていると、使用時に左右にグラグラと傾くことがあるのだ(25度だとだいぶ安定する)。これは、使いにくいと感じる人もいるかもしれない。

 

とはいっても、「狭い机でウェブ会議をする際のメモの取りやすさ」という視点で作られたPCスタンドは他にない。この利便性は一度味わってしまうと、なかなか離れがたい魅力があるのだ。

 

PCにくっつくガジェットポーチに、自立機能をプラス

合わせてもう一つ紹介したいのが、同じくBIZRACKシリーズの「スタンド型ノートPCオーガナイザー <ビスラック>」。これはシンプルに、マウスや電源ケーブル、イヤホンといった、ノートPCと同時に使いたいガジェットを収納するポーチだ。

コクヨ
スタンド型ノートPCオーガナイザー <ビズラック>
3200円(税別)

 

↑前面の収納量はこんな感じ。ポケットは膨らむが、厚みのあるものも収めておける

 

↑裏面のメッシュポケットは横マチがしっかりあるので、見た目以上の容量がある

 

表側の素材はネオプレンで伸縮性のあるポケットが3列4個並び、裏側は全面メッシュポケットとゴムベルト、という構成。ポケットに必要なツールを入れた状態でゴムベルトをノートPCにかけてしまえば、一体化してまとめて持ち運べるのがメリットだ。オフィス内での移動はもとより、自宅内でだって、必要なものはまとまってくれていた方がありがたいのは、道理である。

 

↑自立させる際は、裏面のマグネットスナップをパチンと留めるだけ

 

↑中身が入ったまま自立するので、ツールスタンドとしても使える

 

で、いざ作業を始める段になれば、PCから外して、ゴムベルト両端の根本にあるマグネットスナップを噛み合わせる。すると、少し傾いた四角柱型に変形して自立する。

 

携帯時は一体化、作業時は自立してコンパクトに置ける。徹底的に場所を取らない仕組みはユニークだ。

 

↑タブ裏面にはうっすら段差があるので、そこにスマホ下端が乗ると安定する

 

さらに、自立状態で下端のタブをめくってスマホを乗せると、スマホスタンドとしても機能する。自立した本体が傾いていることで、スマホ画面が見やすいようになっているのだ。

 

PCで作業しつつ業務連絡はスマホで受ける、といったやり方であれば、この使い方はかなりスマートにハマるのではないだろうか。スマホでウェブ会議に出たり、ビデオ通話をしたりするにしても、使いやすいのは間違いない。

 

 

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緑色の中紙に、75色の罫線!? このノート、キワモノと思いきや意外と使い道があった

ノートを選ぶとき、大抵の人は「判型」と「罫線」で検討するのではないだろうか。そして、それ以外のことは、まず考えないような気がする。

 

もちろん、それが間違いだという話ではない。判型と罫線のタイプを自分の用途に合わせて選ぶのであれば、それで必要充分に役には立つはずだし。(逆に、そこを考えずにノートを選ぶなとも思う)

 

実のところ、ノートを選ぶのにもうひとつ、考えてみてもいい要素というのがあるのだ。それが「色」。

 

ただし「色」といっても、表紙の色のことではない。例えば、用紙の色は白でいいのか? とか、罫線の色はグレーでいいのか? とか、そういう部分である。今回は、それらの色が違うことで何が変わってくるのかを、実際の製品を見ながら考えてみよう。

 

“緑色のノート”で筆記ストレスが軽減!?

まずは、用紙の色について。そもそも紙と言えば白、というイメージは強い。ではなぜ白なのか? と言えば、鉛筆などのカーボンブラックと対極にある色なので、書いた文字や線が最もくっきり見えるから、というのが大きな理由だろう。

 

ただ、白というのは光が乱反射して見えている色である。つまり目への入射光量が大きいわけで、端的に言えば「白=まぶしい」のである。夏の日差しを思い出してもらえば分かると思うが、まぶしすぎる光は、目の疲れに直結する。

 

それなら紙は白くなくてもいいんじゃないか、ということで提案したいのが、緑色の用紙を採用したアックスコーポレーションの「グリーンノート」だ。

アックスコーポレーション
グリーンノート(無線綴じタイプ)
ドット入り罫5mm方眼
各170円(税別

 

↑ノートは白いもの、という固定概念を打ち破る緑色の紙面。罫線は黄緑色で印刷されている

 

人間の目は、だいたい380~780nm(ナノメートル)の波長範囲の光を見ることができる。いわゆる可視光という領域だ。

 

その中でももっとも見やすいのが、波長507~555nm。色でいうと、明るい緑や黄緑色にあたる。これが人間の目にもっとも負担の少ない色というわけ。

 

長々と面倒くさい話をしたけれど、要するに「緑色は目に優しい」とだけ理解してもらえればOKだ。

 

↑目に負担が少ないため、長時間筆記でも疲労感が少なめ。勉強用には効果がありそうだ

 

「グリーンノート」は、白い用紙と比較して光の反射を14%カット、と謳っている(メーカー公称値)。この14%がどれほどの数値かは、体感で推し量るしかない。

 

しかし実際に30分ほど筆記していると、確かに目の疲労は少ない。というより、集中力が途切れず長続きするような気がする。実は正直なところ、それほどの期待はしていなかったのだが……予想していた以上に、効果があると感じられた。

 

↑グリーンノートと従来の白いノートの見え方比較

 

↑筆記具による見え方の差。肉眼だと、鉛筆はややぼんやりして見えた

 

筆跡の見え方については、上の通り。もちろん白い用紙に書いた場合ほどパッキリとするわけではないが、それでも見づらさを感じるほどではない。この高すぎず低すぎずの適度なコントラストも、目に優しいのだ。

 

ただ、鉛筆・シャープペンシルの薄い芯(~HBぐらい)だと、中高年の目にはうっすらして見えるので、逆に目が疲れるかもしれない。なので、筆記具は自分の読みやすさに合わせたものを選んだ方が良さそうだ。

 

カラフルすぎる73色の方眼ノート

紙色の次は、罫線の色について考えてみよう。5mm方眼の色は、何色がいいんだろうか?

 

基本的には、罫線といえば薄い青やグレーがお馴染みだ。うっすらして筆跡の邪魔にならず、かといって書くガイドにならないほど視認性が悪いのも困る。そういった部分でノートを選ぶ人もいるだろう。

 

しかし、それはだいたい彩度の高低だけの話で、罫線色そのもの(色相)にこだわったことって、あまりないのでは。

 

kaku souvenir
73色の風景を包んだノート
1760
紙色は白・淡クリーム・ホワイトクリームの3タイプがある。

 

kaku souvenirの「73色の風景を包んだノート」は、その名の通り73色の方眼罫を印刷した特殊なノートだ。めくっていくと、用紙1枚ごとに違うカラーで印刷された方眼が現れる。それも、蛍光色や金・銀・銅色あり、もはや無地なのでは? ってぐらい視認できない薄い色ありで、かなり驚かされる。

↑ページごとに異なる色の方眼罫が現れるのは、なかなかのインパクト

 

ちなみに色のタイプは、

1. マンセル表色系
色相・明度・彩度に基づくマンセル表色系の基本5色相(赤・黄・緑・青・紫)をベースに20色

2. 蛍光色
蛍光グリーン・オレンジ・イエロー・ピンクの4色

3. プロセスカラー
色の3原色(シアン・マゼンタ・イエロー)+黒×極薄・薄・標準の3種で12色

4. ゴールド・シルバー・ブロンズ
金・銀・銅の3色

5. 適正8色
ノート罫線として適正と思われる8色×薄濃3種で24色

6. 黒と白
黒にシアン・マゼンタ・イエローを混ぜた深みのある黒を、配合を変えて9色+黒い紙に白罫線1色

……で、合計73色という構成になっている。

 

↑色や濃淡でずいぶんと方眼に対する印象が変わる。これまで罫線に使われていない色でも、使ってみると「これアリだな」と思うものはあるかもしれない

 

蛍光色ははなから罫線向きではないのは分かるし、視認できない極薄罫線が役に立たないことだって、おそらく見るまでもないだろう。

 

そこへ予想外に、暗めの紫色やオリーブドラブの罫線、使いやすいかも! みたいな発見もちょくちょくあったりするから、油断がならない。色に関しては好みの問題も大きいが、その自分の好みを確認するためにも、使ってみると楽しいのだ。

 

また、色によって「累日の睡蓮」や「傲慢なるマジェンタ」「純真無垢な好奇心」といったリリカルな色名が付けられているのもユニーク。ちなみに蛍光オレンジの色名は「24.5561の電磁」。24.5561Kはネオンの温度定点だな、というように、色名の元ネタをいちいち探っていくのも面白い。

↑蛍光色や金銀など、あきらかに罫線向きではないものも含まれていて、それはそれで楽しい

 

先にも述べたとおり、用紙1枚ごとに罫線色が違うので、もし気に入った罫線があったとしても、それをずっと使い続けることはできない。そういう意味で、このノートに「グリーンノート」のような実用性はないと言える。あくまでもさまざまな色の罫線を試して楽しむだけの、ファンツールとして捉えるのが正解だろう。

 

しかし、できればこの73色罫線から気に入った色を1つ選んでノートが作れたらいいなー、とも思うのだ。(個人的には「深雪に恋息吹」色で1冊作りたい。)「73色の風景を包んだノート」が罫線の色見本として使えるようになれば、より楽しめるんじゃないだろうか。

 

 

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レジ前のイライラ解消! 高速で開閉できる傑作「エコバッグ」と薄いビニール袋も即開けの「めくりクリーム」

正直に言うと筆者は、スーパーやコンビニのビニール袋が有料化された以降も、「どうせ数円のことだから」と気にせず「袋ください」と言う派だった。小さなゴミをまとめるのに再利用もできるし。

 

実際、コンビニはそれでもいいと思うのだが、困るのはスーパーのセルフレジだ。有料レジ袋を買うのはともかく、アルコール除菌を重ねてカサついた指では、袋が上手く広げられないのである。指を舐めて湿らせるのは、間違いなく衛生的にアウトだし、かといって荷詰め台に設置された“指濡らし”(紙めくり)もコロナ禍の昨今、信用しづらい。

 

結局のところ、数円で買うペラペラのレジ袋よりも、しっかりした素材のエコバッグの方が開きやすいし、セルフレジなどでモタモタせずに済むだけ、スマートな気もしてきたのだ。ただ、携帯時にコンパクトになる(=持ち歩きやすい)エコバッグは、使用後にちまちまと小さく畳んで収納する手間が面倒くさい。後から畳まなきゃいかんのか……と想像するだけで、エコバッグを出すのが嫌になるほどに面倒。

 

ということで「畳まなくてもコンパクトに収納できるエコバッグ」を求めてあれこれ試してみた結果、これは! というものに行き当たった。意外にも、文房具メーカーが発売している製品なのである。

 

ギュッと絞って超コンパクトになるエコバッグ「エコロン」

これまでに試してみた携帯エコバッグは、「携帯時のサイズが大きすぎる」「袋として強度に不安がある(耐荷重量が低い)」などが、主な“これじゃないポイント”だった。

 

対して、サンスター文具のエコバッグ「ecoron」は、携帯サイズ・袋としての強度・収納のラクさの点で、なかなかに優秀なのだ。

サンスター文具
ecoron(エコロン)
スモール 1500円/レギュラー 1800円(ともに税別)

 

↑スモールサイズを手に乗せると、これぐらいのサイズ感。重量も約32gと、携行するにも負担にならない

 

今回購入したのは、コンビニ袋にちょうどいい「スモール」と、スーパーでの買い物によさそうな「レギュラー」の2点。(他に、レジかごにスッポリ入るLサイズもある。)

 

どちらも携帯時はボールのように丸まっており、スモールは子ども用のゴムボールぐらい、レギュラーは野球の硬式球に近いサイズとなっている。これなら持ち歩くのに邪魔になるという感じもしないし、少し押し潰して薄くすれば、デニムのポケットにだって入るだろう。

 

↑展開時は、口を開いて……

 

↑バサッと中身を広げるだけ

 

↑あっという間にエコバッグに変形完了だ

 

エコバッグとして使う際は、紐の口を解いて中身を引き出すだけ。さっきまでボールの外側だった部分(=カバー)はエコバッグの底面に配置されている。

 

この手のコンパクト収納エコバッグは、バッグとして使うときに携帯時のカバーをどう処理するか?がポイント。特に折り込んだりひっくり返したりする手間もなく、そのまま使うことができるのは優秀だ。

 

↑レギュラーは、2人家庭で2〜3日分の食料を収容できるぐらいの実用サイズ

 

↑スモールはコンビニの買い物にジャスト。それでも2Lペットボトル2本が入る耐荷重は安心感がある

 

耐荷重はレギュラーで約10kg、スモールで5kgとなっている。かなり薄いナイロン製だが、意外としっかり物が入るという印象だ。持ち手部分もそれなりに幅広で、重量物を入れても手に食い込まないのは、使いやすい。

 

つまり、エコバッグとしての使い勝手に不満はほぼない、ということだ。

 

↑収納時は、底面にあるカバーにバッグ本体をたくし込むように詰めていく

 

↑最後にヒモをキュッと絞れば元のボール型に。雑に片付くのが素晴らしい

 

逆にバッグから携帯状態に戻すには、底の方から上に向かってカバーにクシャクシャと詰めていって、最後にキュッと紐を絞ればOK。特に慣れも必要なく、誰でも6~7秒あれば元通りのボール状に戻せるだろう。

 

この「クシャクシャ、キュッ」で戻す手軽さは、これまであれこれ携帯エコバッグを試した中でもトップクラス。「あとで畳むの面倒だから、エコバッグ出すのやめとこう」で使うのを躊躇してしまう面倒くさがり勢(筆者含む)でも、躊躇なくレジで取り出せるはずだ。

 

ポリ袋をサッと開けるなら携帯すべき“紙めくり”「メクールポケット」

さて、エコバッグを常時携帯することで、荷詰めする際のモタモタは解消できたとしよう。ただそれでも、スーパーで肉や魚のパックを購入したときに汁がこぼれないように入れる、あの無料ポリ袋問題が残っている。ビニール袋よりもさらに薄くてツルツルで開けづらいのだが、とはいえエコバッグの中を汚さないためには使わざるを得ない、あの袋だ。

 

レジ周りで発生する作業をスマートにこなしたいなら、ポリ袋の開けづらさもスパッと解決しておくべきではないか?

プラス
メクールポケット
300円(税別)

 

実はこの問題も、文房具メーカーが解決してくれていた。いいぞ、文房具メーカー! プラスの「メクールポケット」は、いわゆる事務用の紙めくりクリームの小型&携帯化版である。

 

↑キーチェーンでバッグにぶら下げておくと携帯しやすい。本体裏のクリップでバッグの内ポケットに挟んでおいても良し

 

↑滑り止めクリームは固形石鹼ぐらいの固さ。表面を指で軽く擦れば必要量が取れる

 

↑薄くクリームがついた人差し指を、親指にこすりつけて広げる

 

薄いケースをパカッと開けると、中に滑り止めクリームが入っているので、まずはそれに人差し指を軽く押しつける。あとは親指にもそれをこすりつけるように馴染ませれば、準備はOK。これだけで、さっきまでツルツルすべっていたポリ袋が、シュッと簡単に開けられるようになるのだ。

 

↑ツルツルすべる薄いポリ袋も一発開封! 乾燥する冬場ならより効果を実感できそう

 

クリームには除菌成分である塩化ベンザルコニウムが配合されているため、新型コロナウイルスがクリーム上に残る心配もない(※厚生労働省のサイトにも効果の記載あり)。ただし、手指の除菌に使えるわけではないので、そこはご注意を。

 

規格外の大容量と閲覧性の良さを両立した無敵ペンケース「デテクールコンボ」が文句なしの便利さだった

これは“最近の傾向”といえるほど明確な話ではなく、あくまでも筆者の肌感覚でしかないのだが。最近、ペンケースには比較的容量が求められているような気がするのだ。これには、「ペンのカラーラインナップ増加」と「在宅ワーク」という、2つの要素が前提となっている。

 

まず、昨今発売されたゲルインクボールペンはやたらとカラフル化しており、筆記具メーカー各社とも、主力のゲルインクはだいたい10~50色以上のボリュームになってきている。もちろん、それ全部買う! という人はそういないだろうが、とはいえ気になる色があれば手に入れたいわけで、結果的に手持ちのペンが増えて、ペンケースも大型化するという流れだ。

 

在宅ワークに関しては、自宅に仕事専用のデスクがない場合、ワークスペースまで「文房具+PC周りの小物」をまとめて持ち運びたい、ということになる。文房具だけなら小さいペンケースでもなんとかなるかもしれないが、ノートPC用のマウスやACアダプタなどのかさばる物もまとめるとなると、やはりガジェットケースを兼ねられるサイズの方がありがたい。

 

ということで、大容量ペンケースを求める人がわりと増えているんじゃないか、と思うのだ。

 

 

容量・機能ともに文句なし! の超大型ペンケース「デテクールコンボ」

さすがにメーカーもそのあたりはとっくに汲み取っているようで、ペンケースの大型化は着々と進んでいるように見える。とはいっても、単にたっぷり入るというだけであれば、極端にいえばビニール袋だってかまわないはず。やはりそこは、ペンケースならではの機能性っていうのも欲しいだろう。

 

その点も合わせて興味深いのが、2021年10月に発売予定のレイメイ藤井「デテクールコンボ」だ。

レイメイ藤井
デテクールコンボ
4500円(税別)

※写真右は、比較用に置いた従来品「デテクールモバイル」

 

ぶっちゃけ、かなりデカい。形状的なものもあって「小ぶりのランドセル?」と思ってしまうようなサイズ感。

 

さすがにこれを“ペンケース”と言い切るのはそれなりに度胸がいるが、とはいえ機能的には間違いなくペンケースだし、そもそもが同社の自立型ペンケース「デテクール」シリーズの最大モデルという立ち位置なのである。

 

↑前面カバーをペロリとめくって、後ろに回す。カバーの端を後部下端に当てるだけで、磁石で固定される

 

↑左側がペンケースユニット、右側が小物ケースユニットに分割されている

 

使用する際は、まずダブルジッパーを引き上げて、前面カバーをめくり上げる。めくったカバーを後ろに回すと内蔵する磁石でピタッと固定される、という仕組みは、シリーズ共通だ。

 

内部はざっくり2分割。ペンケースユニットと小物ケースユニットに分かれており、それぞれ下段は「デテクール」にお馴染みの、30度に傾いて出てくるバスケットになっている。

↑バスケットに指をかけて引き出すと、中身の出し入れがしやすい30度に傾く

 

↑スタンバイ完了。これだけたっぷり入っていても、どこに何が入っているのかひと目で確認できて、使いやすい

 

バスケット自体が自分の方に向かって差し出されている状態なので、ペンなどもスッと取り出しやすく、戻すのも投げ込むようにすれば簡単だ。

 

この出し入れの快適さ・効率の良さは他に類がなく、一度「デテクール」シリーズに慣れてしまうと、なかなか他のペンケースを使う気になれないほど。

↑机に肘をついたままの体勢で、手首に負担を掛けずにスッとペンが抜き取れる。このラクさは「デテクール」シリーズならでは

 

↑小物ケースユニットのバスケットは、ノートPC用のACアダプタもそのまま入る収納力をもつ

 

もうひとつ、バスケットは中で2つに仕分けられているが、直立したままだと奥側には視線が届きにくい。

 

ところが、傾ければ全体が見渡しやすくなるため、閲覧性が高まるというのもメリットだ。視線が行き渡らなければ、単に収納したまま死蔵するペンやツールが増えるだけ。大容量ペンケースには、この“閲覧性の高さ”が絶対に必要なのである。

↑上段には、ケーブル類や小物を放り込んでおけるトレーを配置

 

↑不要なら、トレーは外してしまってもOKだ

 

小物ケースユニット上段は平トレーで、バスケットに入れると沈みそうな小物を入れておくのに最適だ。さらに、マジックテープで固定しているので、バスケットに背の高いものを入れたい場合は設置高を調整できるほか、不要なら取り外してしまっても良い。ここは自分の使い方によってカスタムできる仕様だ。

 

↑ペンケース側上段ポケットには厚みのあるものが入るので、比較的応用が利く

 

また、ペンケースユニット上段はポケットになっている。消しゴムやテープのりなど、こちらも同様に、バスケットに入れてしまうと沈んでしまう小物を収納するのにちょうどいい。

 

↑ユニット単位で分離可能。本体が大きすぎて置く場所がない、なんていう場合にも便利だ

 

カスタムといえば、もうひとつ。実は、ペンケースユニットと小物ケースユニットは、それぞれが本体から単体で分離できるようになっている。例えば自宅内で使う場合、「今日は文房具は使わないな」と思ったら、小物ケースだけ出して持ち運べば済むという話である。

 

なにしろ本体サイズが大きいだけに、テーブルが狭いなど、置き場に困るシーンもあるだろう。分離させたユニット単位で運用できるなら、助かることも多そうだ。

 

筆者は実際、どう活用しているかというと……?

↑工作ツールを入れて運用している例。小物バスケットに「ポキステーション」(カッターの刃折りケース)がすっぽり入るのは、我ながらナイス発見だった!

 

ちなみに筆者は現在のところ、「デテクールコンボ」を工作用のツールを持ち運ぶためのケースとして運用してみている。ヤスリやカッターナイフ、ドライバーなど使用頻度のある程度高いものを入れてあるため、これがなかなか活躍してくれている。閲覧性の高さで「あのツールどこに入れたっけ?」みたいなトラブルがおきにくいこともあって、普通の工具入れよりも使いやすいぐらいだ。

 

ただ、工作用ツールは文房具よりも全体的にサイズが大きいため、できれば同じ構造で二回りほど大きい「デテクールギガコンボ」が欲しくなってしまうんだけど。

 

 

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変態的ペン先をもつ2色線ペン「twiink(ツインク)」がただのキワモノではない理由

最近の現役中学高校生のノートを見せてもらうと、たいてい驚かされるのが「紙面のカラフルさ」と「色使いの上手さ」である。筆者が中高生の頃(30年以上前)にシャープペンシル+一部に赤ペンで書いていたノートとは、全くの別物。要点や図表に3~5色ぐらいは平気で使い分けているし、それだけ色を使ってもスッキリ見やすいノートが多い=きちんと色分けのメソッドを持った上で書かれているのだ。うーん、すごい!

 

もちろん、平気で他人にノートを見せられるのは、ノートに自信がある人に限られるので、全ての中高生がスゴいノートを作れるわけではないだろう。それにしても、全体的なノート筆記の技術とクオリティは、我々の世代から大きく底上げされているように感じるのである。

 

そして、その要因のひとつに、発色の向上や色数の増大といった「カラーペンの進化」も含まれているはず。ということで今回は、そんなカラーペンの進化形のひとつを紹介したい。

 

正直、我々おじさん世代からとって見ると「え、どういうこと?」と首をひねるような、しかしそれでいて「面白そう……使ってみたい!」とも思わされる、かなり変わった進化形カラーペンなのだ。

 

「ペン先がツイン」という、カラーペンの進化

その変わった進化形というのが、サンスター文具から2021年6月に発売された「twiink(ツインク)」である。一見、外見からはその特異性は分かりづらいかもしれない。

サンスター文具
2色線ペン twiink(ツインク)
各198円(税込)

 

しかし、キャップを外してみると……なんと、色の違うプラ製の極細ペンチップが2本、平行に並んでいるのだ。この「twiink」、それぞれ単色線&単色線&二重線が書き分けられる、1本3役のカラーペンなのである。

↑カラーペンとしてはかなり珍しい、並列の細字ツインチップ

 

↑並列ツインチップといってまず思い当たるのは、コクヨ「2トーンカラーマーカー mark+」(下)。「twiink」(上)と比べるとやはり雰囲気は近い

 

【関連記事】チップからチップが生えてる…!? 次世代ラインマーカーの刺客、サンスター文具「Ninipie(ニニピー)」の仕組みと使い心地をレビュー

 

実際に二重線で文字を書いてみよう。視界がブレているみたいで、ちょっと酔ったような気持ち悪さもあるが、インパクトの大きさは間違いないところだろう。人目を引くので、店頭POPなどの文字書きに使うのも良さそう。とにかく「目立つ」の一点突破ペンとして持っておくのも面白いんじゃないだろうか。

↑単色で使う場合は、チップが1つだけ紙に当たるように角度をつける。そのままくるっと軸を回せば、素早く別の色にチェンジ

 

……と、ツインチップの二重線ばかりをフォーカスすると、単なる面白ペンでしかない。だが、実は「twiink」の真価は単色にこそある、と思うのだ。

 

単色で書くには、ペンチップが1本だけ紙に当たるような角度で握るだけ。特に違和感なく、普通に細字カラーペンとして書くことができる。そして色を変えたいと思ったら、手の中で軸をひねるように180度回転させれば、もう1色のチップ単色で書けるというわけ。

↑二重線/単線×2色と、持ち替えずに3つの書き分けができるのは面白い機能だ

 

通常通りカラーペンの色を変える場合を考えると、今使ってるペンにキャップを閉めて、持ち替えて、またキャップを開けて……と、どんなにスムーズにやっても数秒はロスをする。さらにその間に集中は途切れるしで、どうしても面倒くささを感じてしまうはずだ。

 

対して「twiink」は、色替えに要するタイムが1秒以下。単色ペンはもとより、ノック式多色ボールペンよりも確実に速い。ノートをカラフルに書きたい場合、この高効率さは見逃せないだろう。

 

↑カラーは8タイプで、ライトブルー・グリーン・バイオレット・ピンク・レッド・オレンジの6色を組み合わせている

 

↑「ライトブルー×レッド」(左)のように違系統色の組み合わせはひと目で分かるが、「オレンジ×ピンク」(右)のような同系色同士は、どちらの色か見分けづらいのが問題か

 

ちなみにカラーラインナップは、2色の組み合わせが8タイプ。基本的には暖色×寒色か、暖色同士または寒色同士という組み合わせになっている。選び方としては、単色ペンとして筆記する機会の方が多いはずなので、単色で使いやすい色から選ぶのがベストだろう。ただ、二重線になったときにインパクトの大きい組み合わせというのもあるので、そちらメインで選ぶのもアリだと思う。

 

 

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開閉の仕組みと分割構造が画期的! 透明で中身を探しやすい「ペンケース」の注目作2モデルをレビュー

これまでにも、自立型やら分割収納やら、さまざまな流行があったペンケース。ここ一年ほどで特に注目が高まっているのが“透明”なタイプだ。

 

ファッション業界においても、近年はPVC(ポリ塩化ビニル)素材の透明バッグが大流行しており、その流れで透明ペンケース(クリアペンケースとも言われる)も人気に……というのが、まず一つの要因だろう。

 

もちろん、Instagramなどでノートやペンが写り込んだ画像を載せる中高生(いわゆる“勉強垢”)の間でも、透明ペンケースの人気は高い。ただ写真を撮るだけでペンケースの中身が丸ごと見えるので、視覚情報が増える。端的に言えば“映える”わけだ。

 

さらには、そういった流行の話でなくても、透明ペンケースには利点がある。先にも述べた通り中身が丸見えだから、必要なペンなどを取り出す際に見つけるのがラクなのだ。閲覧性・視認性の高さはペンケースの機能でも重要なポイントであり、つまりは透明というだけで充分に有利というわけ。

 

そこで今回は、人気の透明ペンケースの中でも特に「これいいぞ」というものを紹介したい。

 

 

透明+分割収納=おしゃれで高機能なペンケース

そんな方程式が成立するのが、キングジムが2021年6月から展開を始めた「CHEERS!(チアーズ)」。ポップなカラーと透明感をテーマにしたステーショナリーシリーズだ。

 

初見では、同社既存のルーズリーフファイル「テフレーヌ」やバッグインバッグ「フラッティ」のポップカラーバージョン、というだけかな? と思っていたのだが、あらためて確認すると、全くの新顔である透明ペンケース「チアーズ ツインペンケース」がラインナップされていた。

 

で、これが触ってみると、なかなか面白い作りになっていたのだ。

キングジム
チアーズ ツインペンケース
1250円(税別)

 

完全クリアとクリアカラーの細長い直方体2つが組み合わせられた、ソフトなボックスタイプ。ただ不思議なことに、外からでは、ファスナーやスナップといった開け口が見つからないのである。

 

ではどうやって中身を出し入れするのか? というと、クリアとカラーのボックスを継ぎ目から割るようにパカリと開くと、それぞれの開け口が露出するという仕組みだ。

↑ペンケースを開けるときは、まずそれぞれのボックスを両手でつかむ

 

↑するとパカッと割れて、カラー側のボックスが開く。接続はマグネット式なので、開閉自体は簡単だ

 

クリアのボックスはファスナー、カラーのボックスは素通しの開口という形式。つまり、クリア側の本体自体が、カラー側のフタを兼ねているというわけだ。

 

カバンの中で勝手に開いてしまう可能性を考えると、ファスナーのついたクリア側に消しゴムやシャープペンシルの芯といった小物を、カラー側に筆記具を、という分け方が安心だろう。当然ながら、分けて収納することで、中がゴチャつかず出し入れがしやすくなる、というメリットもある。

↑一般的なサイズのペンケースが2つ合体しているわけで、容量的にはかなりゆとりがある

 

見た目のおしゃれさと、こういった「今のペンケースに求められている機能性」を上手く共存させているあたりは、なかなか感心させられた。

 

ただ、カラー側の開口がさほど大きくないので、筆者のように指が太めの人には筆記具の出し入れが少しやりづらいように思う。これはおそらく、手指のゴツいおっさんは最初からターゲットじゃないよ、ということなのかもしれない。

↑閲覧性が良くても、手の大きい人には出し入れがしづらい開口。これは少々残念なポイントだ

 

それでも、透明ならではの閲覧性の高さ+分割収納の機能性は優秀。夏っぽいルックスも含めて、いま買うべきペンケースと言えるだろう。

 

さて、この透明ペンケースのメリットをほどよく取り入れたペンケースが、同社にはある。

透明バッグインバッグ「フラッティワークス」にペンケースタイプ登場

とは言っても、PVCのチープなツルツル感ってどうも子どもっぽくて持ちづらいな……と感じる人はいるだろう。透明ペンケースの優位性は理解できても、自分に似合うかどうかや好みの問題もあるので、導入にハードルが高いというのも理解できる。

 

それなら、もうちょっと落ち着いた雰囲気で使える透明ペンケースはどう? ということでオススメするのが、同じくキングジムの「フラッティワークス ペンケース」だ。

キングジム
フラッティワークス ペンケース
スタンダードサイズ
1100円(税別)

 

こちらは、以前にもこの連載で紹介したバッグインバッグ「フラッティワークス」のペンケース版に当たる。

【関連記事】カオスなカバンにはこれ一つあればいい! キングジム「フラッティワークス」は“絶妙”を体現するバッグインバッグ
https://getnavi.jp/stationery/535720/

 

全体は厚手のしっかりした帆布製で、前面のみがPVCの透明窓という構成なので、チープな印象はほとんど感じられないのではないだろうか。それでいて、大きな透明窓によって、透明ペンケースのメリットである閲覧性は充分にあるわけで、良いとこ取りと言える構成だ。

↑透明窓は前面だけだが、これでも中は充分に視認できる

 

↑マチ幅は約35mmで、中身が入っている状態なら自立も可能

 

パッと見では薄くて容量が足りないような気がするかもしれないが、底面のマチが約35mmもあるため、意外としっかり入る。ボールペンやカラーペンなら10本程度は問題なく飲み込むし、さらに奥側には定規やハサミなどが入るワイドポケットも備えている。よほどゴチャゴチャと持ち歩かない限りは、これで必要充分と言えるんじゃないだろうか。

↑ささやかながら小物の整理ができる内ポケットを備える

 

↑本体裏側にもポケットが。名刺やカード類の一時保管に使えそうだ

 

マグネットスナップ留めのフラップを開くと大きく開口するので、閲覧性の良さと合わせて、中身の取り出しやすさも問題なし。

 

透明ペンケースの閲覧性は魅力的だが、あのツルツルした感じはちょっと……という人には、これが最適解だと思う。

 

 

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「BICオレンジEG」廃盤! その後継ボールペン「クリスタルオリジナルファイン」はファンを納得させられる出来なのか?

2021年7月、文房具業界に大きな衝撃が走った。

 

こんな書き方をしているトピックほど、実際はそう“大きな衝撃”でもないものだが、この衝撃の度合いは、かなり大きかったように思う。それが、フランスの筆記具メーカー、BIC(ビック)が発表した「『オレンジEG』廃番」の報である。

↑名前は知らないまでも、一度はどこかで見たことあるだろう「BIC オレンジEG」。非常にアイコニックなボールペンだ

 

BICのオレンジと言えば、オレンジ色の軸に黒のキャップ式というお馴染みのアレ。1961年に発売されて以来、「世界中で最も販売本数の多いボールペン」とされている製品だ。

 

「オレンジEG」は、そのオレンジのボディに独自の「EG(イージーグライド)インキ」という低粘度油性インクを搭載したモデルで、2011年に発売されて以来、特に低粘度油性ファンの多い日本を中心に売られてきたもの。ただ、海外では売り上げでかなり苦戦をしていたようで、10年目の今年、廃番という結果になってしまった。

 

ちなみに、EGじゃない、1961年発売のオレンジは世界中でまだまだ販売継続中なので、誤解なきよう。

 

オレンジEGの後継、現る!

愛嬌のあるルックスに軽いタッチの「オレンジEG」にはファンも多く、冒頭で述べたように大きな衝撃を受けた人もかなりいたようだ。しかし皆さん、ご安心を。廃番の報とほぼ同時に、後継製品の発表も行われたのである。


BIC
クリスタル オリジナル ファイン0.8(ボール径0.8mm)
100円(税別)

 

その後継製品というのが、BIC「クリスタル オリジナル ファイン」(以下、クリスタルファイン)である。

 

BICが1950年に発売した世界初の使い切り透明軸ボールペン「ビック・クリスタル」と「オレンジ・ビック」をミックスしたような、透明オレンジのボディが特徴となっている。見た目にもすっきりと軽快な印象で、まさに“オレンジの後継”というにふさわしいイメージだ。

↑見た目の変化は、口プラ(リフィルを固定するペン先の蓋)の色と、ボディの透明度が違う程度。グリップ感や重心バランスなども変わらない

 

インクについてはリリース情報では公開されていないが、低粘度油性のEGインキから、従来型の油性インキに戻されているとのこと。※メーカーに確認済み

 

ただ、意外にも筆記感はけっこう軽く、スルスルに近い。あれ、低粘度じゃないBICのインクってこんなに軽かったっけ? と何度か確認してしまったほどだ。

↑レガシーな油性インクながら、書き味のなめらかさはなかなか。ダマも出ず、快適な書き心地といえる

 

書き味に加えて、0.8mmという太めのボール径にも関わらず、ダマが出にくいのもポイント。どうやら、インクフローをかなり上手く調整しているようで(理由は後述)、30分ほどの連続試筆中、一度もダマが発生せずに書き続けることができた。

 

この辺りの性能はさすが、見た目とインクはレガシーでも、機能的には最新のペン! という感じだ。

↑使い切りボールペンではあるが、先端の隙間に爪を入れて引けば、リフィルを抜き出して交換が可能。昔の文房具店には、BICのリフィル抜き用器具が備えてあったという

 

もうひとつ「クリスタルファイン」の特徴となるのが、筆記距離の長さ。なんと従来と比較して1.75倍、線距離にして3.5kmも書き続けられるとのこと。

 

正直、これまで「オレンジEG」を使っていた際にも、「あれ? もうインク切れたけど、早くない?」なんて感じたことはない。というか、分類するとしたら、むしろかなり長持ちするボールペンだったはず。そこからさらに1.75倍というのは、なかなかに驚きの数字だと言えるだろう。

 

実はこの“長距離筆記”こそが、先にも述べた「インクフローを上手く調整」したことで達成されているのだ。無駄なインクを抑制することで筆記距離が伸び、ダマの発生も抑える。これは見事な進化と言えるだろう。

 

↑リフィルも、EGとクリスタルファインは同じサイズ。むしろインクはクリスタルファインの方が少なく見える

 

↑「BICにビックリ!」とバーコードシールまで誇らしげ

 

JIS規格においては、油性ボールペンの筆記距離は300m以上、とされている。つまり、JIS規格で定められた10倍以上の筆記距離が可能というわけだ。

 

ちなみに、これは筆者のざっくり感覚なので正確な数字ではないが、だいたい線距離500mで1万5000文字ぐらい、と換算している。であれば3.5kmは、10万文字以上書けることになる。

 

それでいて価格は100円(税込110円)ということで、単純なコスパの面で言えば、日本で購入できるボールペンとしてはおそらく最強クラスということになりそうだ。

 

 

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サイズも形も気にせず貼るだけ! 磁石を活用した収納ボード「MagEasy」がデスクの整理整頓問題を解決する

卓上の整理収納というのは、本当に頭を抱える難問だ。何が難しいかって、収納対象となる小物が、サイズ・形状・重さ・硬さなどの面で統一感がなさ過ぎる。細長い筆記具があり、ジャラつくゼムクリップがあり、立てるとヘニャっとなるメモ用紙があり、まとめて束ねないと場所をとるケーブルがあり……これらバラバラのものを上手にまとめて収納せねばならないのだから、面倒なことこの上なし。

 

さらに、ペンは立てた状態から抜き出したいとか、ゼムクリップはひとつずつつまみたいといったように、それぞれに適した取り出し方を考慮して収納しないと効率が悪い、というのもまた難しい。

 

一般的にデスクオーガナイザー(卓上小物収納)のほとんどは、ペン立て+多段トレーというタイプが多い。確かに、先に述べたバラバラ過ぎる収納対象をざっくり入れておく方法としてはアリだろう。収納力も見込めるし、トレーに放り込むならある程度のサイズ差は無視できる。

 

ただし、そのままではトレーの中が整理できないし、逆にトレー内部に仕切りが多いと、サイズ差が吸収できない問題が再浮上。結果、どうすりゃいいのかと頭を抱えることになる、という次第だ。

 

ほんと、どうすりゃいいのか?

 

卓上小物は磁石で貼ってしまう、という解決策

これに対する解答のひとつとして、ちょっと面白いと思ったのが、LHiDS CREATIVE(リーズクリエイティブ)の「MagEasy」。ボードを机に立てておいて、そこに磁石内蔵クリップを使って小物をバンバン貼り付けちゃおうぜ! という製品なのだ。

LHiDS CREATIVE(リーズクリエイティブ)
MagEasy 収納スタンド
4980円(税込)

 

なるほど、ボードに貼り付けるのはアリかもしれない。収納量の点ではトレーに比べかなり劣るが、サイズなどの条件を無視して整理できるのは魅力的だ。

 

例えばペグボード(有孔ボード)なんかも同じ発想と言えるが、磁石ボードは穴の位置に収納を左右されず、ボード上の好きな場所に配置できるメリットもある。さらに、着け外しもラク。

 

↑使用例としてはこんな感じ。とりあえず使用頻度の高いものを貼ってしまえば、身の回りがスッキリする

 

↑ボード裏面の足を広げるだけで自立する。思ったより底面が広く取られているので、倒れる心配はなさそうだ

「MagEasy 収納スタンド」は、205×300mmのボード(金属板をPUレザーで包んだもの)と、強力な磁石内蔵のクリップパーツがセットになったもの。このクリップパーツにもさまざまな形状があり、例えばケーブルを束ねられるタイプや、コイン型でゼムクリップなどを貼り付けておけるタイプ、メモやカードを挟んでおけるタイプ、などをラインナップする。

↑「MagEasyボード」に付属するクリップ。まずはこれだけあれば、A4ボードには充分だろう

 

ボードはA4程度なので、さほど大きくはない。使えるのはこの面積だけということなので、収納量的には、やはり物足りない感は否めない。しかしその分スッキリはするし、稼働率の高いレギュラーアイテムに絞って貼っていけば、逆に実用性は高まるはずだ。

 

また、貼ったものは常に“面出し”状態で一目瞭然なのも良い。探す手間が大きく省けるし、使ったものを戻さないとスペースが空いたままになるので、“使いっぱなし”に対する抑止力になるだろう。

 

↑スチール製のキーリングを使えば、鍵束などもピタッとくっつけて保持できる。常に見える位置にキープされていると、紛失のおそれも少ない

 

↑付箋などは、クリップに挟んだまま着け外しする

 

実際に運用してみて特に面白かったのは、磁石による着け外しのラクさである。小物を使いたいときはボードから引っ張ってペリッと外し、戻すときは空いてる場所に当ててパチッと貼るだけ。なにも気を遣う部分がないので、非常に手軽。面倒くさがりで定評ある筆者も、これなら安心して使えるのだ。

 

↑使用頻度の高いペンは、ペン立てに立てておくよりも、貼った方が使いやすい

 

↑100均のマグネットテープを貼るだけで、何でもMagEasy化が可能だ

 

磁力の強さに関しては、一番小さなコイン型のクリップパーツでも、鍵を複数本束ねたキーリングやハサミをしっかり固定できるぐらい。クリップのフチには磁石が入っていないので、そこをつまめばボードから取り外すのも問題ないし、なかなか気を遣った作りにはなっていると思う。

 

また、クリップパーツがうまく適合しなかったり、数量的に足りなかったりする場合は、小物に100均などで売っている磁石テープを貼って使うというのもアリだ。

MagEasyシステムを携帯できる手帳タイプ

ちなみに「MagEasy」には、収納スタンドの他に手帳タイプも発売されている。手帳といっても、A5サイズのカバー付きボードにクリップパーツでメモリフィルを貼っても使えるという話で、つまりは“携帯型MagEasy”と考えたほうが伝わりやすいだろう。


LHiDS CREATIVE(リーズクリエイティブ)
MagEasy 収納手帳
4980円(税込)

 

↑A5版のノートリフィルで運用する「MagEasy 収納手帳」。クリップボードとして使うのももちろんアリだ

 

名刺や付箋、イヤホンといった小物がすっきり収まるし、さらには名刺を挟んだクリップパーツを後からデスクのボードに移動させたり、といった融通が利くのも便利だ。とりあえず貼っておくだけで整理できるので、小物の持ち歩きをスッキリさせる効果は高いと思う。

 

 

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マステは収集から次のフェーズへ! スライドか噛み切りか「マスキングテープカッター」はカットする触感で選ぶべし

マスキングテープ(以下、マステ)がコレクタブルな趣味アイテムとして認知されるようになって、もうずいぶん経つ。主な楽しみ方としては「いろいろな柄を集める」派が主流だが、ここ数年はちょっと風向きが変わって、「積極的に貼って楽しむ」派も、それなりに増えてきているようだ。

 

なにしろ、貯め込むことで収納スペースを圧迫する。置いておく場所が飽和したら「そろそろマステを買うのは止めようか」となるのも当然の話。みんながそうなったら、つまりそこでマステブーム終了である。

 

ということもあって、最近は文房具メーカーがかなり積極的に、マステを消費しやすい製品を発売している。例えば、以前紹介したコクヨ「Bobbin(ボビン)」などは、そういったマステ消費促進システムの最たるものだろう。

 

そういった文房具業界内の事情はさておくとして、そもそも集めるだけでは飽きるのも早いし、やっぱり文房具は使ってこそ楽しい、というもの。そこで今回は、マステを積極的に使うための専用ツールを2点、紹介したい。

 

“スライドして切る”が快適な「クイックテープカッター」

ミドリ「クイックテープカッター」は、5月に発売された最新テープカッターである。マステ周辺のツールは、全体的にやや可愛げというかファンシー感を打ち出し気味なところ、こちらはかなりシャープというか、機械感の強いデザインだ。

ミドリ
クイックテープカッター
968円(税込)

 

まず、マステを内部にセットしたら、本体のスライダーを引く。1回引くとテープが20mmほど出るので、必要な回数だけスライダーを引いたら、あとはテープを吐口上部のカッターに当ててひねれば、スパッと切れる。

 

仕組みとしては、ニチバン「プッシュカット」に非常に近いもの。あれの押しボタン式カッターがない版だと思ってもらえれば、だいたい正解と言えるだろう。切る仕組みが簡略化されている分、作りも「クイックテープカッター」の方がコンパクトだ。

【関連記事】
使う分だけ引き金引いてワンハンドでカット! ニチバンの良作を復刻した「プッシュカット」はやっぱり快適だった

 

↑スライダーをグイッと引くと約20mm分のテープが出てくるので、これを欲しい長さが吐き出されるまで繰り返す

 

↑最後にテープをカッターに押し当てつつひねると、スパッとカット。ギザの細かな金属刃なので、切り口は比較的フラットだ

 

ポイントは、スライダーで連続して同じ長さでテープが切れるという点。壁面にポストカードや写真を貼って飾ったり、ラッピングなどの用途には、テープ長が揃っていた方が見栄えも良い。塗装用(つまり、本来のマスキング用途)に使うにも、おなじ長さのテープを手軽に量産できると効率的なのだ。

 

もちろん、スライダーを引いて露出したテープの端をつまみ、そのまま好きなだけ引き出すこともできるし、逆にスライダを途中で止めて、柄の切れ目のところでのカットも可能である。

↑テープをセットする際は、透明カバーの穴に指を入れて、ケース側の突起に指をかけつつ開く

 

↑テープ端をローラーの▲マークの位置に貼り付けてケースを閉じれば、セット完了

 

搭載できるマステは、テープ幅が12~15mm/芯内径25mm以上/外径54mm未満、となっている。ようするに、だいたい普通サイズのマステなら使える、という感じで問題ないだろう(マステコレクターなら体感的に理解できるはず)。

 

セットの仕方も、本体をカパッと開いてテープを入れて、テープ端を本体に刻まれた▲印まで伸ばしてローラーに貼るだけ。最初はちょっと戸惑うかもしれないが、1-2度やればすぐに慣れるはずだ。

↑キッチン周りでのマステ使用も想定したマグネット。あると意外と便利な機能だ

 

本体にマグネットを内蔵しているので、スチール面に貼っておけるという機能もちょっと嬉しい。食品パックの再封などにマステを使っている人もいるので、普段は冷蔵庫ドアに貼っておけると便利なのである。

サクン! とした切れ味が気持ちいい「マスキングテープカッター」

一方、2020年11月に発売され、文房具総選挙2021にもノミネートされたLIHIT LAB.「マスキングテープカッター」は、色合いやデザインともにかなりファンシー寄り。こちらはいかにもマステ用といった雰囲気のツールだ。

LIHIT LAB.(リヒトラブ)
マスキングテープカッター
363円(税込)

 

セットしたテープを引き出したら、本体をグッと握る。すると先端の大きなギザ刃がテープを噛みちぎるようにしてカット……と文章で表現すると、なかなか非ファンシーな野蛮さである。

 

しかし、実はこの“噛みちぎる”カットの手応えが「マスキングテープカッター」最大のポイントと言える。

↑一見するとワニのような、かなり豪快なギザギザのプラ刃

 

刃がプラ製ということもあって、さほど切れ味が鋭いわけではない。ところが、テープに食い込んで切れる際に手に伝わる「サクン」という感触が、とても気持ちいいのだ。

 

このサクン感を「かわいい手応え」と表現する人もいるが、なるほど、なんか納得できるかもしれない。これを味わうために、ついつい意味なく何度もテープを切ってしまうぐらい楽しいのである。

↑必要な分だけテープを手で引っ張り出したら、ステープラーのようにぐっと握って押し込む

 

↑ピンと張ったテープに尖った刃の先端が刺さって、そこから裂き開いて、最後に切れる。この一連の感触が、かわいい「サクン」だ

 

開発時には、金属製のスパッと鋭く切れる刃を搭載する案もあったはず。そこをあえて、切る手応えを強く感じられる、失礼ながらナマクラ(刃物の切れ味が鈍いさま)なプラ刃をチョイスしているわけで、その考え方はなかなかユニークだ。

 

また、切れ味がナマクラなことで、テープの切り口がギザギザと大きく乱れるのも、味わいとしてアリ。マステでデコレーションをする場合、切り口が鋭くフラットなよりも、いかにもテープっぽい風合いのギザギザな方が好まれるケースもあるのだ。

↑最近こういうのなかなか見ないなー、というくらい派手にギザギザとなった切り口

 

↑テープセットは本体下部のカバーを開いて行う。対応テープは テープ幅15mm以下/芯内径25mm以上/外径54mm未満となっている。

 

同じ長さのテープがスパッと切れるシステマチックなカッターと、サクン感が気持ちよくギザギザに切れる感覚派カッター。どちらが優れているというわけではなくて、どちらも好きに選べるのが素晴らしい。マステ消費ツールもいい感じに成熟してきたなぁ、と感じる次第である。

 

 

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最終回答は「四角が最強」!コクヨのスティック&液体のり「カクノリ」はその強さを存分に生かす隙のなさだった

基本的に、“糊(のり)”の話はどうしても地味になる。現在のデンプンのりに近いものは、すでに江戸時代に広く普及しており(米を煮て作る「姫糊(ひめのり)」と呼ばれるもの)、明治時代にそれを腐らないよう処理したのが、現在でもお馴染みの「フエキのり」や「ヤマトのり」のルーツだ。

 

この“現在でもお馴染み”という部分が問題で、どうも“進化している感が薄い”のである。つまり、地味。

 

ちなみに、現在の液体のりやスティックのりも、昭和40年代~50年頃に生まれたもの。以降、細かな性能アップは重ねてきたとしても、さほど大きく変わった感はない。ライバルのテープのりが、機構や接着性能などを次々と更新して新製品を打ち出していくのに比べると、やはり受ける印象としては、結局のところ地味なのだ。

 

ただ、そんなレガシーなのりではあるが、普段使わないわけではない。レシートや領収書を貼って管理したり、ノートに学習プリントを貼ったりと、活躍の場はまだまだ多いのである。さらに言えば、目立たないだけで、新製品だってゼロじゃない。実は、きちんと機能的に進化したものが発売されているのだ。

 

四角いのりは“のりの大進化”だった!

のり界における久々のトピックといえば、2019年に発売されたコクヨ「GLOO スティックのり」だろう。スティックのりといえば円筒形……という固定概念を覆す角柱形状。四角い紙のカドにはみ出さず塗れる機能と、角形なのにのり体の乾燥を防ぐ本体機構は、非常に画期的だった。

 

その派生系として2021年3月に発売となったのが、コクヨ「カクノリ スティック/液体」である。

コクヨ
カクノリ
スティックのり120円(税別)/液体のり130円(税別)

 

比較的シンプルで大人っぽいデザインだった「GLOO」に対して、「カクノリ」は明確に小中学生向けを打ち出してきた。デザインはもとより、ボディのグリップ部を細くすることで、子どもの手でも持ちやすいようになっているのが、見た目上の大きなポイントだ。

 

現在のスティック/液体のりユーザーの多くが、プリントをノートに貼って学習用途で使っているのはほぼ疑いないわけで、製品を彼ら向けにチューンするのは、正しいと思う。

 

角(カド)まできっちりと塗れてはみ出さない

角形スティックのりがどう優れているかに関しては、今さら長々と述べる必要もないだろう。誰だって見た瞬間に「あっ、これならカドまできっちりと塗れて、はみ出さないな」と気付くはずだ。

↑後端を回して繰り出す四角いのりは、使い勝手が従来より段違いに良い

 

↑プリントのカドをはみ出さずに済むのが、とにかく快適。のり付け箇所が分かる青色は、乾燥すると透明になる

 

実際に使ってみても、カドまで過不足なく塗れるのは非常に快適。のりのはみ出しによってノートのページ同士まで貼り付いてしまって開かなくなる、という辛い経験をしたことのある人なら、選ぶべきはこれしかない。

 

ここからがコクヨの真骨頂!

ただ、スティックのりの角柱形は、円筒形に比べて気密性を保つのが難しいため、すぐに乾燥してしまうという欠点があった。「GLOO」以前にもいくつか角柱形スティックのりは発売されているのだが、どれも乾燥問題を解決できず、駄目になっていたのである。

↑四角いのり体を円形キャップで包むことで、隙間なく密閉して乾燥を防ぐ

 

それを「キャップ周辺だけ円筒形にする」というシンプルな手段で解決したのが「GLOO」と「カクノリ」。そして同じ手法で液体のりも四角くできるのでは? というのが、「カクノリ 液体のり」だ。

↑これほど直球で「四角い!」と感じさせるスポンジヘッドは珍しい

 

もちろん液体のりジャンルにも、ハケ型ヘッドやシリコンの角型ヘッドなど、カドに塗りやすいヘッド形状の既存製品はいくつかある。ただ、それらはハケやシリコンヘッドの中央に小さなのりの吐口が開いており、そこから染み出た液体のりをヘッド表面に広げて紙に塗るという構造だったのだ(もちろん、乾燥をできる限り防ぐため)。それでは、どうしても塗りムラができるし、のり量のコントロールも難しい。

 

↑スポンジヘッドの裏側。四隅まで液体のりが染み渡る構造だ

 

↑スティックのりと同様、カドがはみ出さない快適なのり付けが可能だ

 

その点、乾燥を気にせずに済むド四角なスポンジヘッドは、圧倒的に強い。ヘッドから均等に染み出す液体のりをズバーッと塗れるので、ムラもなく、かつカドまできっちり行き渡らせられる。これは正直、これまでの液体のりの中でも断トツの使いやすさだ。

 

接着力の強さで言えば、やはりスティックよりも液体の方が上。それでここまで使いやすいのだから、個人的には、カクノリはスティックよりも液体がオススメしたい。

 

オススメしたくなるポイントがもうひとつある

↑押すだけでパコッと簡単に外れる、気持ちのいいキャップ

 

最後にもうひとつ、「カクノリ 液体のり」はキャップもいい。

 

逆さまに立てて置ける先広がり形状なのに加えて、端にあるボタンをつまむように押すだけで、パコッと簡単に外すことができるのだ。文房具マニアの方なら、ゼブラの蛍光マーカー「オプテックス EZ」と同じキャップ構造だ、と言えばピンとくるかもしれない。

 

ベタベタしたのりも手に付きにくく、簡単オープンで快適。キャップを装着する際にもクリック感があるので、保存時にキャップが閉まりきってないという状態にもなりにくい。これはとてもいいものだ。

 

 

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いつもの机をスタンディングデスク化するカウネット「パタスタ」が座りっぱなしの腰痛を解消する!

近頃はずいぶんと仕事が立て込んでしまい、スマホの歩数計で確認すると「77歩」!という日もあったほど。自宅でも、基本的にスマホはポケットに入れっぱなしなので、この歩数はおそらく、仕事机とトイレを何度か往復したのをカウントしたものだろう。

つまりずっと椅子に座りっきりで仕事をしていたわけだが、これがまぁ体に良くない。筆者はかなりの猫背なので、長時間座っているとまず腰がヤラれ、肩甲骨周りが固まり、背骨もきしむ感じ。つまり、ツライ。

↑猫背がひどいので、半日も座っているとたいてい腰から背中がバキバキ。座業の宿命と言えど、かなりの負担だ

 

お世話になっている整骨院の先生には、「1時間に1度は立ってストレッチでもしてください」と言われているが、仕事に追われていると、うっかり数時間ぐらいは平気で経ってしまう。

 

となれば次に考えるのが、いわゆる「スタンディングデスク」の導入である。板面の高い机で立ったまま仕事ができるデスクなら、座りっきりを回避できる。腰痛改善に効くという話もあるので、できれば試してみたいところ。

 

もちろん、狭い家に新たに机を一台新規導入するのは現実的じゃないし、そもそも値段がかなりお高い。では、自宅のテーブルを“スタンディングデスク化”できるツールを使えば、その辺りの問題もクリアできるかも?

 

立て、立つんだ“在宅ワーカー”!

そのスタンディングデスク化ツールというのが、オフィス通販のカウネットから発売されたばかりの「パタスタ」というPCスタンドだ。

 

これが“PCスタンド”というジャンルで語っていいのかどうか、ちょっとわからないのだが、これまでに類似製品のないアイテムなのは、間違いない。

カウネット
WORK FIT HOME スタンディングワーク用PCスタンド パタスタ
4980円(税別)

 

収納形態でのサイズは、小ぶりな座布団ぐらい(425×450mm)となかなか大きめ。とはいっても薄い板状なので、どこかに立てかけておけば、収納場所に困ると言うことはまずないだろう。

 

これをいったん広げ、折り紙を折るようにパタパタと組み立てると、立体的なスタンドに変形するという構造だ。

↑展開状態。畳まれているときは内蔵の磁石でくっついているので、勝手に広がってしまうことはない

 

↑折り目に従って折り曲げたら、スリットに差し込む

 

↑スリットから飛び出した部分のカドを折って、天板を乗せる

 

スタンド形態では、高さは260mm。これをダイニングテーブルや仕事机(だいたい高さ700~720mm)の上に置くと、トータルで高さ1m弱。つまりこれが、PCを置いて立ったまま仕事をするのに程よい高さになるというわけだ。

↑高さ約260mmのPCスタンドの完成。組み立て時間は10秒もかからない

 

ちなみにスタンドの天板面は260×450mm。13インチのノートPCを置いて横が少し余るぐらいの面積があるので、マウスや外付けテンキーなんかも置いて使うことができる。また底面積も板面と同じなので、机にA3のコピー用紙が置けるぐらいの空間が空いていれば、まず設置に問題はないだろう。

 

では、実際に使ってみよう。

立てば腰痛改善、座れば足がラク。交互なら超快適!

正直なところ、最初に見たときは強度的に不安も感じたのだが……使ってみれば、思ったよりはかなりしっかりした印象だ。折って作った柱部分がガッチリ支えてくれているので、左右にねじれるなどの挙動は全く感じられない。天板も端の方に手を乗せるとわずかにたわむが、作業に支障を感じるほどではない。少なくとも、PC作業をするのに充分な強度はあると思う。(ただし、飲み物の入ったコップを置くのはやめた方が無難だ)

↑13インチノートPC+マウス(筆者はトラックボール使用)でジャスト、という面積。個人的には、もうちょっと広いほうが嬉しい

 

↑端に手を乗せてもわずかにたわむぐらいで、作業スペースとしては安心して使えるレベル

 

さて、実際に立って仕事をしてみるとどうかというと、なるほど、これはいいものだ。

↑実際の使用風景。最初は座り体勢との違和感に少し戸惑ったが、5分もすれば慣れた

 

まず背がスッと伸びるので、椅子でバキバキ言ってた腰がかなりラク。腹部が圧迫されて呼吸が浅くなる(座業の猫背あるある)こともないので、集中しやすいというのもメリットだ。もうひとつ、食後でも立っていれば眠気に襲われにくいので、午後も効率が落ちにくいように感じた。

↑筆者(身長175cm)にはやや低いので、下に適当な台(写真下部のオレンジ色のもの)を置いて、高さを調節してみた。この構造では難しいと思うが、できれば高さ調整機能も欲しかったところだ

 

とはいえ、立ち仕事が快適なのはせいぜい30分~45分ぐらい。それ以降は足もだるくなるし、立ちっぱなしも、それはそれで腰痛の原因になり得るのだ。

 

要するに、長時間同じ姿勢でいることが“悪”なのであって、座りも立ちもほどほどが良い、ということ。逆に言えば、椅子に座ってつらくなったら立ち仕事、立ってだるくなったら座り仕事、と切り替えれば、常に快適でいられるわけだ。

 

↑スタンドのナナメ面にふせんを貼ると、うるさくない程度に視界に入るのが良かった

 

ということで特に時間を決めず、自分の体の欲求に従って立ち座りをローテーションしてみると、これがなかなかに快適。なんとなく仕事にリズムができるし、切り替えるごとにちょっとした気分転換にもなる。さらに、立ち仕事を始める前に体側を伸ばすなどの軽いストレッチを挟むこと一週間で、腰痛も確実に軽減した。うーん、これはいいな!

 

もちろん、立ち仕事が合う・合わないも、人によってあるだろう。それを確認する前にスタンディングデスク1台を導入してしまうのはギャンブルとも言える。それが、税込5千円ちょっとで試せるのであれば、合わなくてもギリギリ諦めがつきそうだ。合えばメリットは大きいので、これは試してみる価値があるのではないだろうか。

 

 

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在宅ワークの「机がない!」問題を解決するか?「広々ひざ上デスク」の実力を検証

在宅ワーク中の皆さんは今、どのような場所で作業をしているだろうか? 昨年から、いろいろな人に話を聞いているが、「専用のデスクにPCを置いて、ワークチェアに座った状態」で仕事をしているケースは、意外なほど少ない。

 

「食卓兼用のダイニングテーブルにダイニングチェアで」……なんていうのはなかでも快適な方で、「ローテーブル+床に直座り」や、「ベッドに座ってPCは膝の上」という状態もけっこう普通。

さらに問題なのが、家庭内に複数の在宅ワーカーがいる場合。夫婦ともに家仕事なんてことになれば、当然ながら必要な作業スペースは倍増である。果ては場所の取り合いで家庭内紛争なんて事態も聞くに至って、「家の中に仕事する場所がない」というのは、昨今なかなか切実な問題なのである。

 

かといって、面積の狭いところにデスクとチェアをセットで追加導入する、なんて無理筋もいいところ。それならせめて、デスクだけでもなんとかならないものだろうか?

 

「広々ひざ上デスク」ならその問題、解決できるかも?

座った状態で膝の上にPCを乗せて仕事する場合、困るのは「他に何も乗せられない」ことだ。書類を置いたり、マウスを動かしたりする場所もないわけだから、非効率も甚だしい。

 

ならば、ひとまず「デスクそのものを膝に乗せちゃう」のが、解決策としては手っ取り早いのではないだろうか?

ソニック
ユートリム 広々ひざ上デスク 裏面クッション&アームレスト付
3500円(税込)

 

まさにそういった用途で作られたのが、ソニックの「ユートリム 広々ひざ上デスク 裏面クッション&アームレスト付」(以下、広々ひざ上デスク)である。ざっくり言えば、単なる“板”なのだが、少しでも仕事が快適にできるよう工夫され作られているのだ。

 

まず重要なのが、作業ができる面積。天板サイズは約548×356mmとそこそこ広めで、13インチノートPC+A4書類を並べて置ける。これくらいの広さがあれば、マウスを動かすスペースだって充分に確保できるだろう。

↑そもそも、膝上のPC直置きは不安定なので、無意識の緊張を強いられて疲労感も強い。フラットで安定した天板があるだけで、かなりラクになる

 

↑13インチのノートPCとA4書類を並べた状態。これなら充分に仕事ができそう
↑13インチのノートPCとA4書類を並べた状態。これなら充分に仕事ができそう

 

手元側には、天板が傾いた際にPCがすべり落ちないように、ストッパーが付いている。しかも、このストッパーはクッション素材なので、アームレストも兼用しているのだ。この手の膝上デスクは他メーカーからもあれこれ発売されているが、アームレスト付きは比較的レア。作業中、加熱したPCから手首をちょっと離して休ませられるのは、地味にありがたい。

↑個人的に「加熱したPCに手首乗せっぱなし」が苦手なので、レストがあるのはとても嬉しい

 

端にあるスリットは、筆記具を置いておけるペントレー。膝上デスクは基本的に傾斜ゼロ状態で使われることがないので、ペンが転がり落ちないようにできる置き場がないと、使いにくいのだ。

 

さらに、内側に付属の滑り止めシートを貼れば、スマホやタブレット(最大13.5インチサイズまで対応)を立てるスタンドとしても機能する。スマホも膝上デスクに平置きするとすべり落ちやすいので、こういった場所に固定しておいた方が使いやすい。

↑一時的に筆記具を待避させるためのペントレー

 

↑トレー部に滑り止めシール(3枚セット)を貼れば、スマホ/タブレットスタンドに

 

本体裏面にはクッションが全面に張られているのだが、このクッションが、かたさ・厚みともになかなか“ちょうどいい”感じ。あまりフカフカしすぎていると机が不安定だし、かたすぎると長時間作業の際に膝が痛くなる。個人的には、「広々ひざ上デスク」のクッションがベストに近いバランスだと思う。

 

クッション厚は、ノートPCと自分の距離にダイレクトに影響する部分だが、これも腕が窮屈にならず動かせて、かつ目から遠すぎない。ほどよい印象だ。

↑少しかためのクッションで安定感良好。ただし通気性はさほど良くないので、夏場はやや蒸れそうな気もする

 

↑クッションが厚すぎると、収納時に邪魔になることも。これくらいが、空いた隙間にスッと置いておける限界かもしれない

 

使うコツとしては、デスク面と自分を近づけすぎないこと。先にも述べた通り、近すぎると腕が窮屈になって、肩こりの危険性が高くなるし。疲労しにくい姿勢で作業するには、とにかくデスクを抱え込まないように意識すると良いだろう。

 

また、猫背にならないよう、背もたれ付きの座椅子に深く腰掛けておくのもいい。その上で腕を縮こまらせないような距離を保てば、リラックスして作業ができるはずだ。

 

あくまでも机がない場合の次善策ではあるが、こういったツールを使うことで、場所なし在宅ワークがかなり快適になるのは間違いない。

 

 

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開梱から個人情報保護までこれ1つ!新「ローラーケシポン」は段ボールの解体にも力を発揮した

筆者は普段、生鮮食品以外の物品購入のほとんどを、通販に頼った生活をしている。仕事柄メーカーにお願いした製品レビュー用のサンプルも届くし、フリマアプリで購入したあれこれも届く。エブリデイ、荷物が届く。ここまででなくとも、昨今は誰もが、以前より宅配で荷物が届く頻度が多くなっているのではないだろうか。

 

そうなると意外と面倒なのが、届いた荷物に貼られている宛名ラベルの処理である。ラベルを剥がさないままで段ボールを資源ゴミに出すのは、個人情報漏洩につながるなどいろいろと怖い。ところがアレ、カリカリちまちまと爪でひっかいて剥がすのは面倒くさいし、思ったように剥がれてもくれないのだ。

 

であれば、我々にとって必要なのは、宛名ラベルの「ここから剥がれます」という親切めかしたウソ(だいたい剥がれない)なんかじゃない。コロコロッと簡単に個人情報を消せる、真に親切なスタンプではないだろうか。

 

コロコロッと手早く個人情報を保護できる「ローラーケシポン」に新作登場

通販を多用している経験上、あの宛名ラベルをきちんと剥がすのは労力の無駄、ということは分かっている。だから筆者は、ローラータイプの情報保護スタンプを宛名の上から捺すことにしている。ラベルは剥がして廃棄するのではなく、貼ったままで読み取れなくしてしまうのが、一番ラクなのだ。

 

で、その個人情報保護スタンプの最新アイテムとしてこの6月に発売されたのが、プラス「ローラーケシポン 箱用オープナー」だ。

プラス
ローラーケシポン 箱用オープナー
1000円(税

 

新製品を紹介する前に、「個人情報保護スタンプ」の説明をしておこう。

 

宛名ラベルや郵便物などに印刷された内容は、例えば油性マーカーなどで黒く塗り潰しても、意外と読み取れてしまう。ところが、上から特殊な文字パターンを捺印すると、あら不思議。これだけで非常に読み取りづらくなってしまうのである(頑張れば読めてしまう可能性もあるが、個人情報抜き取りに対する抑止力としては充分)。

 

この文字パターンは、メーカー各社でいろいろと工夫があるところだが、特にプラスの文字パターンは認識阻害効果が大きく、優秀だと感じる。さらに、宛名の長さに合わせてローラーを転がし捺印できるローラータイプの「ローラーケシポン」シリーズは汎用性が高く、実用的だ。

↑宛名ラベルの隠したいところに転がすだけで、もう簡単には読み取れない

 

ただ、感熱紙やコート紙ラベルに使うとインクの乾燥が遅くなるため、しばらく放置しても、こするとスレ汚れが発生したり、文字パターンが崩れて宛名が再び読めるようになったりする。これはちょっと残念なポイントだった。

 

ところが新しい「ローラーケシポン 箱用オープナー」は、新開発のインクを採用。従来苦手としていた“インクをはじきがちな紙”にも、確実に捺印できるようになっているのだ。個人からの発送でもないかぎり、最近は感熱タイプの宛名ラベルがほとんど。それにきちんと対応してくれたわけだから、これはまさに“待望していたヤツ”と言える。

↑感熱紙ラベルの場合、従来インク(右)はそもそも乗り切らずに薄いし、こするとスレが発生。一方の新インク(左)は確実に隠蔽力を発揮している

 

使う際は、キャップを30度ほど回して外し、露出したローラー面を消したい部分に乗せてコロコロと転がすだけとシンプルだ。ちなみにローラー幅は26mm。だいたいの宛名面は、1回コロコロするだけでカバーできる。

↑使う時は、底部のキャップを軽くひねって外す。簡単なのだが、キャップレスのほうが嬉しかったな……

 

気になったのは、キャップの部分だ。従来のローラーケシポンシリーズは、ボタンを押すだけでキャップが開いてローラーが出てくるノック式(戻すのもワンノック)だったので、ローラーケシポン 箱用オープナーでは、わざわざキャップを着け外しする手間が増えてしまった。

 

とはいえ、ノック式じゃなくなったのは、次の項で述べる新ツールの搭載が要因なので、一概に悪いとは言い難いのだけれど。

 

開梱と情報保護は、同時に片付くと手間がない

その新ツールというのは、名前に「箱用オープナー」とある通り、開梱用のオープナーのこと。持ち手から金属製のつまみを掴んで引き上げると、折りたたみナイフのようにオープナーが出てくるので、これを段ボールの合わせ目に入れて開梱するという仕組みだ。

↑本体上部に内蔵された金属製のオープナー。刃長は約25mmと、オープナーとしてはかなり大きめ

 

荷物が届いたら、まず宛名ラベルをコロコロッと消し、それから“段ボールノコ”のようなギザ刃のオープナーを段ボールの合わせ目に突き刺して開梱。

 

この手順で済ませてしまえば、あとでゴミを出す際にモタモタしなくても済むというわけ。その点、オープナーと情報保護スタンプのセットという組み合わせは、なかなか理にかなっている。

↑届いた荷物は、まず最初にコロコロッとして個人情報を隠す

 

↑で、サクサクと開梱。セットで行えば面倒くささは感じない

 

ただ個人的には、このオープナー部はちょっと鋭すぎるようにも感じた。段ボールノコのような刃は、割と簡単に段ボールに切り込んでしまうので、梱包テープだけを切るのは意外と難しいのだ。

 

一方で、まさにノコのように使ってダンボールの解体もできるというのは、逆にありがたいという捉え方もできる。大きめの箱をバラしてゴミに出しやすくまとめると、やっぱりラクなのだ。

↑刃の収納は、上部のロックを押し込みつつ戻す。もしネバネバした粘着が刃に残っていたら、この時点で拭いておくこと

 

あとひとつ、ギザ刃にテープの粘着成分が残りやすいというのも、やや残念だった。これはできれば、フッ素コートのような非粘着仕様にして欲しかったところである。

 

とはいえ現時点では、開梱と情報保護が同時にできるというのはかなり便利。現時点でどちらのツールも持っていないのであれば、これ1個買ってしまえば済むのだから。

 

 

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いわば「メモ用紙専用の掲示板」!リヒトラブの「メモスタンド」が在宅ワークに超便利でした

この1年で、仕事の何が変わったかといえば、「打ち合わせの大半がZoomなどのオンライン会議になった」ことだろう。もちろん業種によっても違うだろうが、少なくとも筆者(フリーランスのライター)の場合、これが最も大きな変化だ。実のところ、オンライン会議中の微妙なラグが苦手ではあるけれど、それでも先方に出向く際の少なからぬ移動時間と交通費が発生しないのは、嬉しいところ。

 

ところで、そのオンライン会議によって、日常使いの文房具構成もちょっと変わってきた。従来の顔を突き合わせての打ち合わせでは、カバンに常に入っているA5ノートで議事録的なメモを取っていたが、オンライン会議の場合、すでにPCが乗っている狭い机上では、A5ノートですら邪魔になる。

 

ということで、A7前後のいわゆるハンドメモサイズが活躍する機会が、だいぶ増えたのである。これくらいが結局、ちょうどいい。

 

で、机上でハンドメモを多用するのであれば! ということで導入した“とあるツール”が案の定、めちゃくちゃ役に立っているのだ。同じく在宅ワークでメモ帳を多用している人には響きそうな気がするので、ぜひ紹介しておきたい。

 

メモ帳の情報が常に視界に入ってくる「メモスタンド」

そのツールというのが、リヒトラブの「メモスタンド」。ざっくりと言えば「メモ用紙専用の掲示板」という感じだろうか。ここに、普段使いのメモ帳とメモした情報が集約されることになるのだ。

LIHIT LAB.(リヒトラブ)
メモスタンド
680円(税別)

 

自立するスタンドボードの上辺には、クシのような突起が何本も突き出して並んでいる。まずスタンバイ状態にするために、ボード付属の「ツイストノート メモサイズ」のリング部分を、このクシ歯にひっかける。場所はどこでもいいが、使いやすいのは左右どちらかの端だろう。ちなみに使用するメモ帳は、同社の「ツイストリング」を使用しているものが前提となる。

↑並んだクシ歯にツイストノートメモのリング(ヒンジ部分)をひっかけると……

 

↑このような感じでメモ帳を固定できる。ひっかけたまま、めくったページを裏側に回すこともできる

 

オンライン会議で、メモを取らなきゃ!となった場合、クシ歯からひょいとメモ帳を外して取り出し、メモをとる。打ち合わせが終わったら、そのメモを取ったページをめくったまま、クシ歯にかけ直す。

 

これなら、机上にメモ帳を広げたままでなくとも、情報が視界に常に入ってくるという仕組みだ。こうやってメモ帳の“住所”を確定しておくだけでも、いざなにか書き取ることになった際に、メモ帳を探してゴソゴソ周囲をかき回す必要もなくなる。

↑さらに、リングを開いてページを取り出したら……

 

↑ひっかけたメモ帳の隣にストック

 

ただ、ハンドメモは当然ながら、だいたいのノートよりも面積が狭い。書き続けていくに従って、ページがどんどん進んでいくので、後から必要な情報にアクセスしたいと思ったら、それだけページをめくって戻らなければならないことになる。後から必要になるはずのページは、取り出して保存しておくのが便利だろう。

 

では、どうするか? メモ帳のリングをパカッと開いて大事な情報のページを取り出したら、それもリング穴をクシ歯にかけておくだけでいい。リング穴を破らずにページを抜き差しできる「ツイストノート」のメリットが、ここで活きてくるのだ。

 

↑メモ帳+メモページ単体+付箋ボードの使用例。書き取った情報が1か所に集約されているのは、それだけでありがたい

 

ボード自体の横幅は「ツイストノート メモサイズ」が3面並ぶサイズなので、つまりはメモ帳本体とは別に2ページ分の情報が掲示できることになる。

 

例えば、メモ帳+今日のToDoリスト+掲示しておきたい情報、みたいな使い方でもいいし、もしくは1ページ分を余らせておき、そこを付箋貼り付けボードとして使うのもアリ。

 

何にせよ、知りたい情報が常に視界に入っている、という状態が重要なのだ。

↑本体両端はペンスタンド。浅めで安定感はそんなによくないが、あればそれなりにありがたい

 

あと、地味にありがたいのが、三角柱のボード内側がペンスタンドとして使えるという部分。メモとペンは確実にセットで使うのだから、同じ住所で同居してもらうのが最も確実なのである。

 

在宅ワーク中、気分を変えてちょっと違う部屋で仕事をしようかな? という場合でも、このボードごと持って移動すれば、必要な情報・メモ帳・ペンがまるごと付いてくるので、なかなかにラクだ。

 

自分で“改造”してスマホスタンドにも!

↑ちょっと改造してスマホスタンド兼用に。ペンスタンド内にオモリ(石ころでもなんでも)を入れておくと安定する

 

ちなみに筆者は、このボードをちょっと改造して、右端にスマホを立てかけられるようにしてある。「ツイストノート メモサイズ」とiPhone 12 Pro Maxの横幅がほぼ同じくらいなので、面の埋まり方がしっくりくるのだ。スチレンボードを切って組むだけの簡単改造なのだが、これもまた便利である。

 

 

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「替刃式カイコーンPRO」を最速本格レビュー! 人気の開梱カッターがプロ仕様になったらどう変わった?

何度も言うが、筆者は生活物資の大半を通販で購入している、通販の超ヘビーユーザーである。そんな我が家には、毎日少なくとも1個、多い日だと10個ほどの荷物が届くこともある(コロナ禍で外に出る機会が減った分、通販の利用頻度が超加速した)。

 

それだけの量の荷物をバリバリサクサクと開けるためには、やはり専用の開梱ツールが必須。

 

そんな開梱ツールの中でも人気が高いのが、オルファの「カイコーン」である。2020年には、雑誌『GetNavi』で限定ブラックカラーバージョンが付録になったこともあって、持っているという人も多いかも知れない。ダンボールだけでなく、フィルムシュリンクや厚紙封筒タイプのパックなど、様々な梱包に対応した万能性の高い製品だ。

↑万能開梱ツールとしてお馴染み、オルファの「カイコーン」

 

もちろん筆者も、このカイコーンを普段からガチ愛用しているのだが、ヘビーに使っているためか、部分的にちょっと物足りなさも感じていたのである。「カイコーンPRO的な上位モデル欲しいよー」とあちこちで訴えていたら……なんと本当に発売されちゃったのだ。「替刃式カイコーンPRO」が。

 

しかも触ってみた感じ、従来モデルで物足りないと感じていた部分が全部潰されていて、文句の付けどころが見えない。えっ、もしかしてコレ最強じゃね!?

 

もはや不満なし!?“PRO”は最強の開梱ツールかも

2021年7月5日発売予定のオルファ「替刃式カイコーンPRO」(以下、PRO)は、パッと見の印象だと「従来のカイコーンが一回り大きくなった」感じ。たしかに、カイコーンのシュモクザメっぽい特徴的なシルエットは、相変わらずである。

オルファ
替刃式カイコーンPRO
オープン価格(市場価格1000円前後・税別

 

しかし握ってみると、その違いは歴然。カイコーンが厚さ約4.5mmのペラッとした板状だったのに対して、PROは約15.2mmと、大型カッターナイフのようにゴツくて分厚いボディに。

 

これで、作業時にグッと力を入れて握りやすくなった。いかにもプロツール然としてしっかり握れるボディは、まず嬉しい進化ポイントだろう。

↑従来から3倍以上も分厚くなってゴツッと握れるPROボディ。力を入れた作業でも安定感がある

 

そもそもなぜ力を入れて握りたかったかというと、それがカイコーン最大の不満点だった“スリッター問題”につながる。

 

カイコーンは、先端の尖った部分(スリッター)をダンボールの合わせ目に貼られた梱包テープに突き刺し、引き裂くようにして開梱する仕組みだ。そしてこのスリッターが樹脂製ということで、硬めのPPテープなどに刺すには、なかなか力が必要だったというわけ。

↑スリッター(開梱刃)は、樹脂製のボディ一体型から、金属に変更

 

そこでPROでは、このスリッターを金属化。さらに先端も鋭角になったことで、フィルムテープでも布テープでも、ザクッ、ズバーッ! と気持ち良く開梱できるようになったのだ。

 

あくまで体感的な話だが、樹脂スリッターと比べると、テープに突き刺すのに必要な力が半分以下になったぐらいに感じる。これは非常にありがたい。どれぐらいありがたいかって、ぶっちゃけ、我が家(自宅内3か所)に配備されているカイコーンを、すべてPROに置き換えようと即決したぐらいのレベルだ。

↑スリッターを合わせ目に突き刺してテープを引き切る。これが思った以上にラクになっていて驚いた

 

↑あとは、側面にカッター刃を入れて残ったテープを切れば……

 

↑あっという間に開梱作業完了!

 

もうひとつ、スリッターの位置が先端から後端に移動したことで、「スリッターを刺す」から「カッターで切る」の動作の間に、いちいち握り替える必要がなくなったのも、地味に便利である。

 

物理的に作業時間が●秒短縮できました! というほどの話ではないが、軽い力で作業できる・握り替える手間がない、という気分的な部分での快適性は、確実に大幅にアップしていると思う。

 

使い切り→替え刃式で、刃も大きくバージョンアップ

冒頭でも述べたとおり、カイコーンの優れた点は、ダンボール・フィルムシュリンク・封筒パック・硬いPPバンドなど、流通しているだいたいの梱包方式に対応できる万能ぶりだ。

 

で、その万能性の根幹となっているのが、左右に張り出した金属刃である。さすがオルファの刃だけあって、切れ味は抜群。かつ、先端ガードのおかげで刃が手に触れることもないため、非常に安全だ。

↑先端ガード(刃の先にある黒い滴型のパーツ)によって、子どもが勝手に触っても傷を負う危険は少ない

 

とは言っても、テープの粘着剤が刃に付着するなどで次第に切れ味は落ちていくので、切れなくなったら本体ごと取り替える(使い切り)というシステムだった。よほどヘビーに使うのでない限りはそれなりにもつし、替えるとしても市場価格で140円ぐらいのものなのだが。でも、SDGsが騒がれる昨今、捨てずに済むならそれに越したことはないだろう。

↑スライダでロック解除して引き抜くだけで、分解できる。テープの粘着剤が付着すると一気に切れ味が落ちるので、替え刃式への変更は大歓迎だ

 

ということもあってか、PROは替え刃式に変更されている。ボディの表裏にある赤いスライダを同時に引きつつ、先端をつまんで抜けば、替え刃パーツは簡単に取り外せる。戻すときは新しい替え刃を押し込むだけ。非常に簡単だ。

 

ただ、実はプレスリリースでこれを知ったときにまず考えたのは、「替え刃にするのはいいけど、刃がガタついたらイヤだな」ということ。刃がガタつくと切りづらいし、突然抜けたりすると、安全性の面でも不安。それならいっそ、使い切りの方がマシとも言えるぐらいだ。

↑替え刃パーツだけの状態でも、刃が手に触れない安全仕様。こういうところも気が利いている

 

↑替え刃は2個入りで400円前後。よりお得な10個パックもあるとのことで、購入確定だ

 

しかし、実機を触って安心した。この替え刃、めっちゃガッチリ固定されている! 刃の先をつまんで揺らしてもほぼガタつかず、これなら作業時の切りづらさは感じないはず。

 

刃をくわえて固定するボディ先端は硬いFRP製で、安定感は抜群。そこにかなり大きなカエシのついた替え刃パーツをバチン! とはめ込んでしっかりロックするので、すっぽ抜けも心配しなくて良さそうだ。

↑刃が長くなったおかげで、これぐらいの厚みにも問題なく切り込める。ダンボールカッターとして役立つ機会も増えた感じ

 

さらには、刃周辺もいろいろとバージョンアップされている。まず、露出している刃の長さが約4mmから約7mmへと変更。これは単純に、カットが可能な幅が広くなったと言うこと。つまり、一般的なダンボールを2枚重ねてカットして分解、なんてこともできるようになったわけだ。

 

そもそも刃自体も、厚さが0.6mmから0.7mmと約17%アップ。もともと厚めのがっちりした刃ではあったが、それがさらに頑丈になったのである。

↑先端ガードの形状比較。PRO(右)の方がパーツのサイズは大きいが、先端が削り込まれていることで、より使いやすくなった

 

もうひとつ、シュモクザメの目にあたる刃のガードも、よく見ると先端の上下を削りこんだ、より鋭い形に変更されている。

 

このガードは、尖った先端を切りたい場所に差し込むことで、刃のガイド役も果たしているのだが、当然、鋭いほうが差し込みやすくて使いやすい。本当に、細部にわたって改良されているなーという印象だ。

 

こういった細かいところまでしっかり改良されているあたり、PROに対するオルファの“本気”が感じられる。実際に使いやすさも大幅にアップしているので、もし「安価なのを取り替えつつ使う」ことにこだわりを感じているのでないかぎり、買うなら断然、PROがオススメだ。

 

ほんとコレ、開梱ツールの決定版と言っても過言じゃないと思う。

 

 

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内ポケットが色分けされたメッシュポーチ「ペン&ツールポーチ」の考え抜かれた機能とは?

「もし、無人島に何か1つだけ持って行けるとしたら?」という、定番の問いかけがある。ナイフだとか火起こしツールだとか、回答からはそれぞれ個人の死生観が見える気がするのだが、ともあれ筆者はこの場合、「カバン」一択だ。

 

何しろ人間には手が2つしかないのだから、持ち歩ける道具の数も限られてしまう。もし原生の食料を見つけたって、カバンなしでは収穫できる量も限られる。人間が生きていくのに必要な荷物は多く、それをひとまとめに収納して持ち歩ける袋(=カバン)というのは、意外と偉大な発明なのだ。

 

少々大げさな前振りから始めてしまったが、荷物を収納して携行するための入れ物……カバン、リュック、ポーチ、トート、袋などは、無人島じゃなくたって重要だろう。

 

異世界転生ものラノベの主人公がだいたい「無限収納」スキルを持っているのだって、つまりはそういうものがないと話がいきなり詰んじゃうからで。そういったチートを持たない我々が、できるだけ収納力があって中身が取り出しやすい袋を探し求めてやまないのも、ある意味、生存本能に基づく事案だからしかたがないのである。

 

ということで今回紹介するのは、文房具や小物をイイ感じに整理収納できるポーチだ。(話が一気にキュッとコンパクトになったな……)

 

中身が丸見えのポーチは、それだけで価値がある!

せっかく荷物がたっぷり入る袋があったところで、必要なタイミングで使うものが素早く取り出せないようでは、意味がない。「四次元ポケットがあろうと、パニック状態のドラえもんは役に立たない」なんて、我々日本人なら誰でも知っていることだ。

 

逆に言えば、多少容量が少なくたって、使いたいものがサッと取り出せる収納は優秀なのである。

ミドリ
ペン&ツールポーチ
968円(税込)
グレー、ピンク、黄緑、水色の全4色。写真はグレー。

 

ミドリの「ペン&ツールポーチ」は、その点で優秀だ。何しろ全体がメッシュのスケスケなので、中身が丸見え。何がどこに入っているのかが即座に把握できるわけで、いちいち使いたいものを探ってゴソゴソとかき回す無駄がない。

 

これは以前この連載で紹介した、キングジム「フラッティワークス」(前面が透明窓になったポーチ)も同様で、実際に使ってみると、中身が見えるというのはかなり大きなアドバンテージだと理解できるだろう。

【関連記事】カオスなカバンにはこれ一つあればいい! キングジム「フラッティワークス」は“絶妙”を体現するバッグインバッグ

 

↑収納状態。横幅はB6ノートがちょうど収まるぐらいだ

 

↑筆者は現在、アルコールスプレーや除菌ウェットティッシュなど、衛生用品を携行するために運用中。アルコールの残量が外からでも分かるので重宝する

 

とはいえ、ただメッシュ素材のポーチというだけなら、無印良品をはじめ、すでにいくつも発売されている。何を今さら便利アピールを? と思われるかもしれないが、実はそういった既存製品と大きな差を付けるポイントがあるのだ。

 

それが、ポーチ内部に備え付けた2つの色分けポケットである。

 

2つの色分けされたポケットのメリットを徹底解説

もちろん、内ポケット付きのメッシュポーチだって珍しくはない。ポイントとなるのは、“色分けされている”という部分だ。

↑ポーチ内部にはポケットを2つ備え、異なる色(茶/濃グレー)に色分けされている。ピンク/紫など、もっと見やすく色分けされたモデルもある

 

メッシュ素材は視認性が良いが、ポケットまで同じメッシュだと、見分けが付きにくくなってしまう。例えばボールペンが入っているとして、それがポーチ本体に入っているのか、ポケットに入っているかが、とっさに見分けづらい。対して、ポケットのメッシュが本体と違う色だと、識別のラクさが全く違うのだ。

 

↑他メーカーのメッシュポーチ(左)と「ペン&ツールポーチ」(右)の比較。色分けされたことで、視認しやすさが大きく変わる

 

ポケットは、浅い小物用と、深い長モノ用の2種類。浅い方はカードサイズなので、名刺やふせん、買い物のレシートなどを入れておくのにちょうど良い。ジッパーに近いところに配置されているため、取り出しも簡単だ。

 

ポケット自体がポーチの底と接せず宙に浮いているので、視覚的にもポーチの中と混じりにくくなっている。色分け効果も加わって、見分けやすさは抜群なのだ。

↑ポケットはだいたいペン3本ぐらいが適量。

 

長モノポケットは、主に筆記具などを入れるためのペンポケットとして機能。筆記具は、ポーチにそのまま入れると底に横たわってガチャガチャし、けっこう邪魔になる。ポケットに立てて整理できたほうが、取り出しやすさの点でもありがたいのだ。

 

また、メッシュポーチにシャープペンシルのような先端が細く鋭いものを入れると、メッシュを突き破ってしまう問題がある。

↑ポケットはこれくらいポーチ底から浮いているので、突き破る心配はかなり低い。よく配慮された作りだと思う

 

しかし、この長モノポケットは、小物ポケットと同じく底と接していない(数mmだけ浮いている)ので、もしポケットの底を突き破ったとしても、ポーチの底までは届きにくくなっている。これはなかなかよく考えられている。

 

筆者は以前、他社製のメッシュポーチを使っている際、突き出したシャープペンシルの先端で指を刺して痛い思いをしたので、ここはこだわりたいところである。

↑比較してみると、他メーカーの同サイズポーチと比較して20mmほど天地が高い。これはなぜか、というと……

 

↑筆記具類をきちんと収納できるサイズに設計されているから。さすが文房具メーカーの作ったポーチと言えるだろう

 

ポーチ全体としてはほぼA5サイズ(内寸はB6判が収まるぐらい)ということで、容量はさほど大きくはない。何でもかんでも放り込んでおこう的な使い方だと、すぐに膨れあがってしまうはずだ。

 

そのため、カバンに入れると他と紛れてしまいがちな小物用バッグインバッグとするか、手帳&筆記具+α用の携帯ポーチとして使うのがいいだろう。そもそも、たっぷり入れてしまうと、中身が見えるというアドバンテージも失われてしまう。そのあたりのバランスを考えるのが、うまく使いこなすコツと言える。

 

 

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一番気持ち良いのはどれだ?コクヨ「ペルパネプ」でペンとノートのマッチングを堪能した結果

“紙と筆記具の組み合わせ”を考えるようになったら、文房具好きとしてもなかなかの上級者と言えるだろう。そして、組み合わせについては2つの面がある。“実利”と“官能”だ。

 

実利とは「この手帳にこのペンだと裏抜けするから」だとか、「あのノートは水性ペンがやたらと滲む」といった、性能的な相性のこと。要するに、単純に使いやすい組み合わせか否か、という部分である。

 

対して官能は、「ツルツルした紙に濃いめの鉛筆を走らせるのが気持ちいい」など、感覚的な相性の話だ。

 

例えば、筆者の知人には「画用紙に『Vコーン』(つゆだく系の水性ボールペン)のインクがダバーッと滲んでいく感触がエロい」と断言する者もいるほど。個人の感覚や嗜好によるものだけに、一度この官能性にハマると、抜け出し難いほどに魅力がある。実のところ、先の“画用紙にVコーン”のように、実利に反してでも気持ちよさを優先するケースだってあり得るのだ。

 

……と、話だけ聞いたところで、まだピンとこない人もいるだろう。“紙とペンが気持ちいい”ってなんの話かと。であれば、試してみるのが一番早いのではないだろうか。

 

紙と筆記具の組み合わせを堪能できるノート&ペン

その“紙と筆記具の官能性”を味わうために作られたのが、コクヨの文具シリーズ「PERPANEP(ペルパネプ)」である。

 

3種類のA5サイズノートと3種類のペンがラインナップされており、互いを組み合わせることで書き味の違いを楽しめるというから、まさに官能性を確かめるために作られた製品と言える。

コクヨ
ノートブック<PERPANEP
TSURU TSURUSARA SARAZARA ZARA
各900円(税

 

↑罫線は5種類。A5の紙面だと、4mm方眼とドット方眼がほどよいサイズ感でいい

 

まずノートは、「TSURU TSURU」「SARA SARA」「ZARA ZARA」という、まったく紙質の異なる紙が3種。

 

どのような違いかというと、まさに名前そのまま、紙の表面がツルツル、サラサラ、ザラザラとした紙質になっている。紙質が違えば、当然ながら筆記具の走り方や、書いた時の感触が全く違ってくるというわけで、いろいろと組み合わせを探して楽しむことができるのだ。

↑紙の表面を顕微鏡で拡大。こうして見ると、紙繊維の密度がまったく異なることが分かる

 

そして筆記具の方はというと、水性の極細サインペン「ファインライター」、ゲルインクの「サラサクリップ」、コスパ最強の万年筆として知られる「プレピー」の3種類。

↑筆記具は、上から「ファインライター」「サラサクリップ」「プレピー」の3種。白軸にグレーのロゴがオシャレだ

 

ファインライターPERPANEP
200円(税別)

サラサクリップPERPANEP
130円(税別)

プレピーPERPANEP
400円(税別)

 

この中で、ファインライターはコクヨのオリジナルだが、それ以外はご存知の通り、サラサクリップはゼブラ、プレピーはプラチナ万年筆の製品。特別な白軸仕様でPERPANEPブランドとして発売されている。

 

なかなかに珍しい展開の仕方ではあるが、ノートへの書き味を比べるための“基準筆記具”として納得のチョイスではあるし、なかなか面白いやり方だと思う。

 

●TSURU TSURU×ファインライター

↑ツルツルした紙の上をなめらかにペン先がすべる感覚は、うっとりする気持ちよさだ

 

TSURU TSURUはまさに高平滑度のツルツルスベスベ紙。手で触れても毛羽立つ感触はゼロだ。紙の繊維密度が非常に高く、コシも強め。よほど筆圧をかけないと、ペン先が沈み込まない。

 

これに、コクヨ推奨の組み合わせであるファインライターで書いてみると、ツルツルツルーッ! とどこまでもペン先が走るのだ。そもそもサインペンは筆圧を必要としない筆記具なので、このツルツル感を楽しむにはうってつけと言えるだろう。

 

個人的には、このスケートリンクの如きツルツル感は、コントロールしにくくて苦手なのだが、気持ちよさだけに焦点を当てれば、納得の組み合わせだ。とても気持ちいい。

 

●SARA SARA×サラサクリップ

↑かすかな摩擦感はありつつ、サラッと軽い書き味も魅力的

 

SARA SARAはそこまでピーキーな特性はないが、普通に“書きやすい紙”という印象だ。実際、コクヨのキャンパスルーズリーフ(「さらさら書ける」タイプ)と同質の紙とのことで、つまりは“間違いのないヤツ”である。

 

手触りも確かにサラッとしており、同じくサラサラした書き味でお馴染みのサラサクリップと組み合わせるのが、コクヨ推奨ということになっている。慣れ親しんだ感触なので、特段の官能性を感じることはないかもしれないが、安定感は抜群だ。

 

●ZARA ZARA×プレピー

↑ザックリとした感触が独特で、慣れるとこれはクセになりそう

 

今回の3種のノートの中で、最もユニークなのがZARA ZARA。なにせ表面を撫でるとハッキリと凹凸がわかるほどのザラザラ具合である。透かして見るとムラが視認できるほどに繊維の密度も低く、厚みがある分だけ、筆圧をかけるとペン先の沈み込みが体感できるほど。

 

とは言っても、ノートとしての使いにくさを感じるほどではないので、そのあたりのバランスはうまく取れているように思う。

 

ちなみに組み合わせとして推奨されているプレピーで書いてみると、ニブが凹凸を乗り越えるザリザリというかすかな振動が指先に伝わってきて、非常に心地よい。

 

↑特殊なフラット製本により、どこで開いても中央に段差が発生しにくく、書きやすいのも特徴だ

 

メーカー推奨の組み合わせはもちろんイイのだが、せっかくなら自分だけの組み合わせを見つけてみたいもの。次では、そんなチャレンジを敢行してみたい。

“気持ちいいノート&筆記具”探しチャレンジ

メーカー推奨の組み合わせはもちろんイイのだが、しかし、せっかくなら自分にとって書き味の官能性が高い組み合わせというのも確認してみたい。ということで、ひとまず目の前にあった筆記具を、3タイプのノートにあれこれ組み合わせて使ってみた。

 

●「TSURU TSURU」と組み合わせて最も官能性が高いペンは?

↑TSURU TSURUオススメは、ダクダク系の「Vコーンノック」。まさに官能的と言いたくなるしっとりツルツル感がたまらない!

 

すべりが良いTSURU TSURUは、やはり筆圧少なく書けてツルツル感を堪能できるものが楽しい。

 

ファインライターに加えて、インクフロー良好なダクダク系の「Vコーンノック」(パイロット)や「サラサR」(ゼブラ)は、確実にテンションの上がる書き味だ。ただし、平滑度の高い紙はインクを吸いにくいので、ダクダク系は乾くまでにかなり時間がかかる、というのは憶えておいたほうがいいだろう。

 

また、元からすべりの良さがポイントの低粘度油性インクとの組み合わせは、さすがに行き過ぎだなという感じ。

 

●「SARA SARA」と組み合わせて最も官能性が高いペンは?

↑SARA SARAは、なめらかさよりもむしろシャリ感のある書き味が似合うような気がする

 

平均的に良くできている優等生タイプのSARA SARAは、割と何でも上手く受け入れてポテンシャルを発揮させる傾向にある。なので、個人的な筆記具の好みというのがダイレクトに出るようだ。

 

筆者が最も愛用している「ユニボール シグノ RT1」(三菱鉛筆)の書き味も、細めのペン先がショリショリと走る感じがとても気持ちいい。しっかり書き比べることで、あらためて「惚れ直したな」という気分である。

 

●「ZARA ZARA」と組み合わせて最も官能性が高いペンは?

↑思わず「うわー、これ気持ちいいわ」と声が出たZARA ZARAと「モノグラフライト」のコンビ。これはしばらく使い続けてみたい

 

そして、実は今回の書き比べで最も気持ち良かったのが、まったく予想外だったZARA ZARA×「モノグラフライト」(トンボ鉛筆)の組み合わせである。

 

低粘度油性インクのなめらかさと、ザラザラした紙質がいい感じに噛み合って、好みの安定したコントロール感になるのもいいし、ニードルチップが、繊維密度の低いフカッとした表面を彫るように進む振動も気持ちいい。筆圧をかけやすいグリップも、この気持ちよさを味わうのに関与しているような気がした。

 

どれくらい良かったかというと、「しばらく手書きはZARA ZARA×モノグラフライトの組み合わせでいこう!」と決心したほど。

 

ともあれ、自分が気持ち良く書ける組み合わせを探るのはかなり楽しいので、機会があればぜひ試してみて欲しい。

 

 

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ボールペンかシャープか、メイン機能で選ぶべき最新個性派「多機能ペン」

最近、あらためて「面白いなぁ」と感じているのが、多機能ペン。いわゆる「ボールペン+シャープペンシル」の複合筆記具だ。

 

実は、自分自身では多機能ペンを使いこなした経験が非常に少ない。学生時代にシャープペンシルを使っていたときは「ボールペン邪魔だな」と思っていたし、社会に出てボールペンをメインに使うようになると「シャープペンシルいらないな」と思っていた。つまり、常にどちらかが無駄だと感じていたわけで、そりゃ使うわけがないよなあ、ってなもんだ。

 

それがなぜ唐突に心変わりしたかというと、仕事の関係である。他媒体の話で申し訳ないが、筆者は高校生向けの冊子で「勉強に役立つ文房具」を紹介する連載、というのをやらせてもらっている。その関係で、最近の高校生はかなり多機能ペンに興味を持っている、というのが分かってきた。実際、今の生徒はノートを取るのにボールペンを使うケースも多い(我々の世代はほぼ100%シャープペンシルだった)ため、多機能ペンがあると便利なのだ。

 

そこで、紙面で紹介するようにあれこれ使いこんでみた結果が、冒頭の「面白いなぁ」というわけ。実際、最新の多機能ペンはユニークな発想で作られたものもあり、面白いのだ。そこで今回は、そういった面白い多機能ペンを2点紹介したい。

 

学生に必要なものを詰め込み! シャープペンシルがメインの多機能ペン「examy」

多機能ペンを使うにあたってまず考えたいのが、ボールペンとシャープペンシル、どっちを使う機会が多いのか、ということ。当然ながら、メインで使う機能を重視したペンのほうが、満足感が高くなるからだ。

 

シャープペンシル重視の多機能ペンでいえば、サンスター文具「examy シャープ&シャープ&赤ボールペン」(以下、examy)の振り切りっぷりがとても興味深い。

サンスター文具
examy(イグザミー) シャープシャープ赤ボールペン
600円(税

 

なにが振り切っているかというと、まず多機能の構成が名前の通り「0.5mmシャープ+0.3mmシャープ+0.7mm赤ボールペン」という部分だ。

 

従来にも、シャープばかり0.3/0.5/0.7mmという多機能ペン(ぺんてる「ファンクション357」)はあったが、examyは0.7mmを赤ボールペンにしている。なぜかって、そりゃ当然、勉強する場合にはそれがいいからに決まっている。

 

↑本文や作図、赤字まで1本でできるので、ノート作りがかなり効率的になる

 

examyというのは、サンスター文具が展開している「勉強がはかどる文房具」シリーズ。つまりこの多機能ペンも、想定ユーザーは中高生が中心だ。

 

であれば、ノートを取るのにまずシャープ0.5、図表や細かい書き込みにも便利なシャープ0.3、そして丸付けや見出しに使える赤ボールペンという構成は、最適解のひとつと言えるのでは。正直、なんでこれ今までなかったの? という気すらしてしまう。

 

しかも、それが1本にまとまっていると来たら、筆箱がいつもギチギチでパンク寸前の中高生にとっては、嬉しい話だろう。ついでに言うと、消しゴムも太めで消しやすいものを備えているのがナイスだ。

↑ついでに消しゴムも大きめで、消しやすい

 

機能の切り替えは、後軸を回転させて行うツイスト式だ。

↑後軸を「赤・0.5・0.3」の順に回して切り替える。ノックも後軸全体を押し込んで行う

 

ただし、現時点でどの機能が選択されているかを表すようなインジケーターは存在しない。しかもシャープは、0.5/0.3のどちらが出ているか、見た目では判断できないので、少しまぎらわしい。

↑ここまで拡大すると0.3と0.5の見分けがつくが、肉眼では難しい

 

とはいえ、そういった機能を省いてでも定価で600円という学生向けの価格設定にした、という判断は理解できる。「そんなの使ってれば慣れるし、それよりは安い方がいいよねー」という話である。

 

ボールペンがメインならやはり“書きやすさ”重視! 注目の多機能ペン「ブレン 2+S」

対して、ボールペンがメインの多機能ペンは、従来からの主流派ということで選択肢が多い。その中でも個人的にチェックしたいのが、軸の太さ。あくまでも筆者の嗜好の話だが、昔から太軸がなんとなく苦手なのだ。

 

その点でイイなと思ったのが、ゼブラ「ブレン 2+S」である。

ゼブラ
ブレン 2S
500円(税

 

何しろ軸径が単色ブレンと変わらない11.8mmなので、多機能ペンとしてはスリムな部類に入るのだ。ブレンは3色タイプが出たときも単色と同じ軸径をキープしていたので、そのあたりはデザイナーであるnendo・佐藤オオキ氏のこだわりなのかもしれない。

↑軸径は単色の「ブレン」(写真左)と一緒。手帳のペンホルダーにも入れやすいサイズだ

 

そしてなによりありがたいのが、ブレないブレンシステム。

↑ペン先ががっちりと固定されているので、安定感は多機能ペンの中でも最高
↑口金の先にある黒い輪が、ペン先固定用パーツ。これがあることで非常に書きやすいのだ

 

多機能でもペン先がカチャカチャと振動しないのは、とても書きやすいのである。この感覚は、一度別の多機能/多色ペンを使ってからブレンに戻ると、非常によく分かるはずだ。口金の先でリフィルを固定させているので、もちろんボールペンだけでなくシャープにも、効果は発揮されている。

 

機能の切り替えはノック式で、ボールペンは左右の小ノックノブ、シャープは中央の大ノックノブを使用する。

↑ノブがかなり沈んでしまうため、一度スライドさせてからの芯出しノックがしづらい。これはちょっと改善して欲しい部分だ

 

シャープは切り替えだけでなく芯出しでもノックするので、大きなノブは使いやすそうだな、と思っていたのだが……このノブ、切り替えでスライドさせた時点で、軸に大きく沈み込んでしまう。そのため、芯出しノックがかなりしづらいのだ。さらに上面に丸みがついているため、指掛かりも悪い。

 

毎回、芯出しをするたびにノックノブに指を強く押しつける必要があるのは、ちょっとマイナス要素に感じられた。

 

 

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スマホの角度自在! サンスター文具「SMAND(スマンド)」は“ペンケース付きスマホスタンド”というべき安定感

御多分に洩れず、筆者も携帯電話をこの春から始まったオンライン契約専用の新プランへと、早々に乗り替えた。これまでは、段階制プラン+できるだけ3~5GB程度の使用量に抑えることで通信料金をケチってきたのだが、それが一気に20GBまで従来より安く使えるようになったわけで、非常に助かるのだ。おかげで、出先でちょっと時間が空いたときも「スマホで動画でも観とくか」という選択肢をとりやすくなって、まぁありがたいことである。

 

すると、今まで使ってこなかったモノがひとつ必要となってきた。動画を観る際にスマホを立てかけておける、スタンド的なツールだ。

 

スマホを横位置に構えたまま、観やすいように手で保持し続けるのはなかなかダルいので、やはりちょうどイイ感じに固定しておきたい。もちろん、コンパクトな折りたたみスタンドなんてものは、探せばいくらでもあるが……ちょうどそういった用途に良さそうな文房具が発売されていたような気がするな? アレ、使えるんじゃないだろうか。

 

スマホを立てかけるのにちょうどいいペンケース

そこで、試しに入手してみたのが、サンスター文具のペンケース「SMAND(スマンド)」だ。この名前は、おそらく「スマホスタンド」からの造語であろう。つまりは、ペンケース兼スマホスタンドとして機能するというものである。

サンスター文具
SMAND
1595円(税込)

 

形状は、シンプルに三角柱をゴロンと寝かせたもので、5面すべてに硬めの芯材が入ったセミハードタイプだ。

 

開閉はダブルファスナーで、三角注の上辺がガバッと大きく開く。そこそこ大きいので容量もたっぷりあるが、さらにこの大きな開口で中の見晴らしも良好。できれば開口状態で固定できると、なお便利だったが、これでも充分に使いやすい。

↑矢印ペン10本+消しゴム+テープのりを入れても、まだ余裕

 

ところで、肝心のスマホスタンドはどこに……? と思ったら、「SMAND」のネームタグがついたカバーパーツが、それらしい。指をかけてペラッとめくると、マグネットで本体に貼り付いていたカバーが、そのままフタが開くように展開した。感覚的には、三角のおにぎりから海苔を剥がしたみたいな雰囲気である。

↑このネームタグをつまんで引っぱると……

 

↑側面カバーがめくれて、スマホスタンド形態に変形!

 

この“海苔を途中まで剥がしたおにぎり”ことSMANDを机に置いたら、三角柱の傾斜にスマホをもたれかけさせれば、スマホスタンド形態の完成。

 

“剥がした海苔”=ベースの裏面には、ストライプ状に何本もゴムの滑り止めが走っているため、スマホを乗せてもズルズルと滑り落ちることがない。これなら、画面が見やすい角度に角度を調整することも可能だ。

↑スマホは置くだけ。これでしっかり止まって安定する

 

↑ベースの上なら、どの角度に配置してもピタッと止まる

 

↑ポイントは、ベースにびっしり配置されたゴムの滑り止め(斜線、紫の帯状部分)

 

タテ置き・ヨコ置きも自由自在だし、スマホスタンドに変形させるシークエンスが“開くだけ”と、非常にシンプル。

 

設置スペースは単機能のスマホスタンドよりも必要だが、そもそもペンケースを机に出している前提であれば、そこに新たに別のスタンドを置くよりも場所を取らないし、何よりイチイチ単機能のスタンドを持ち歩く手間もない。

 

動画視聴だけでなく、オンライン会議や授業にも万全

学生なら動画授業の視聴に便利だし、仕事で使うにも、ノートPCを広げずにスマホでサクッとオンライン会議に出席できる。

 

そう考えれば、机に出ていることの多いペンケースとスマホスタンドのマッチングは、なかなかに優れているんじゃないだろうか、と思った次第だ。現実的には、「スマホスタンドが欲しい」+「いま使っているペンケースを買い替えても構わない」という層にしかリーチしないので、ちょっと難しい製品だとは思う。しかし、使ってみるとなかなかに便利な製品なのは、間違いない。

↑1万2000mAhのモバイルバッテリーも収納可能。これなら電源を気にすることなく動画視聴が可能だ

 

最後に、蛇足かもしれないが、SMANDはガジェットポーチとして使うのもアリ、というのはお伝えしておきたい。先にも述べたように容量的には余裕があるので、モバイルバッテリーとケーブル類をまとめて収納しておくにも実用範囲だ。

 

しかも、バッテリーを収納したままでスマホに接続し、立てかけての動画視聴だって可能なのだ。(本体内のバッテリー劣化につながるので、良くない使い方ではあるけれど。)

 

 

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【レビュー】クツワ「パーソナルスポット」はPC作業中に人目を遮れる上、集中力もアップ!

ずっと自宅で仕事をしていると、気詰まり&飼い猫たちがウロウロして気が散る、という理由もあって、カフェやコワーキングスペースに移動して仕事をすることが多い。そういう環境下では、たまに隣席の人に、チラリとノートPCの画面を見られることがある。これが思いのほか、気になるのである。

 

もちろん彼らも「見てませんよ。もしくはたまたま目に入っただけですよ」と言うだろうが、それは関係ない。こちらが「見られた!」と感じた時点で、一方的に気になっちゃうんだから。もちろん、見られては困ることをやっているわけではない(この原稿も近所の喫茶店で書いている)が、それでもなんかイヤ。自意識過剰と言われようと、落ち着かないものは落ち着かないのだ。

 

それに仕事柄、商品に関する資料を画面に表示していることもあるので、情報管理にも気を遣いたい。そうやって周囲を気にしていると、どうしても集中力に欠けてしまう、ということに。自宅で集中できないからって外に出たのに、これでは本末転倒じゃないか。

 

ということで、そういった事態に対応できると謳ったPCバッグを手に入れてみたら、これが思った以上に集中できて、効果的だったのである。これは、筆者と同じタイプ(人目が気になるとパフォーマンス落ちる系)の人には、かなり刺さるんじゃないかということで、紹介しておきたい。学生時代、弁当を隠して食ってた経験のある人、ハイ集まって!

 

これはATフィールド? 領域展開? 視線から画面を守るPCバッグ「パーソナルスポット」

「ははは、自意識過剰な繊細ちゃんだな!」と笑わば笑え。気にしている人は、あなたが考えるよりもずっと多いはずだ。

 

例えば、画面をしっかり隠せる機能を持ったPCバッグがクラウドファンディングで達成率400%超えした上、一般販売もスタートしたほどの需要はあるんだから。ちなみに筆者はファンド開始早々に飛びついたので、1月にゲットしている。

クツワ
パーソナルスポット
4300円(税別)
※13インチノートPC用

 

そのPCバッグというのが、クツワの可変式PCバッグ「パーソナルスポット」である。基本的にはノートPCを収納して持ち運ぶ用のバッグだが、最大のポイントはもちろん、周囲の視線からPCの画面を守る機能。バッグを開いて展開すると、左右にフラップが大きく張り出してパーテーションとなり、外からの視界をシャットアウトしてくれるのだ。

 

↑まずはジッパーでフルオープンに。PCバッグとしては見慣れないパーツがあるな……?

 

↑先の見慣れぬパーツこと大小のフラップを開いて、マジックテープで結合

 

↑変形完了。周囲からの視線をシャットアウトする防壁として、万全に機能する

 

パーテーションは画面に対して垂直ではなく、やや広がった形で展開する。おかげで画面周辺に圧迫感はなく、手を動かす邪魔にもならない。それでいて、実際に隣(約1m離れた真横)から見てみても、画面はほぼ確実にカバーされている。これならもう「覗かれているかも……」と不安に感じることはないはずだ。

 

ちなみに、パーテーションはマジックテープでがっちり固定するので、多少画面を動かしてもズレ動く心配はない。

 

↑パーソナルスポットを使用しない場合。どんな作業が行われているのか、完全に丸見えだ

 

↑パーソナルスポットを使用した場合。隣の席からも、この通り視線は通らない

 

パーテーション内側の壁面には、3面ともにポケットを備えている。

 

左側は全面がメッシュポケットで、ケーブル類やバッテリー、モバイルルーターなどを収めると良さそうなサイズ。中央は、かなり余裕のある2段ポケットなので、電源アダプタ、マウスに加えてA4書類なんかもすっぽり。

↑左側のメッシュポケット。マチはないが面積が大きいので、多少は厚みのあるものも飲み込んでくれる

 

↑中央のポケット。前面は2分割で、後面はA4書類も入るサイズ。画面を開いたままではアクセスできないので、入れるものは考える必要がある

 

ユニークなのは右側のクリアポケットで、ここにはスマホを入れておくと、そのまま操作ができるのだ。メールなどの着信もすぐに確認できるし、なんならTwitterなどSNSを表示しっぱなしでもいいかもしれない(集中はどうした)。

 

ただ個人的には、左右どちらかに書類を立てるなり貼るなりで掲示しておけるペーパースタンドがあると、よりありがたかったかもしれない。

↑右側のクリアポケットは、スマホを入れたままで操作可能。ただしiPhoneのFace IDは機能しなかった

 

また、周囲からの視線をシャットアウトすると同時に、こちらの視界もある程度ふさいでくれるのも、意外とうれしいところ。画面に視線をスポットしているうちは、視界の左右120°ほどが限定されるので、視覚ノイズがそれなりに軽減する。人目を気にしないで済むのと同じく、これも集中のしやすさに直結しているように感じられるのだ。

 

使い始めてから数か月が経つが、すでに「これなしで作業するの、ヤだなぁ」と感じるぐらいには、助けられているように思っている。

 

 

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手帳用ボールペンは“激細油性”で決まり! パイロット「アクロインキ」採用の細軸&多機能ボールペン

すでに、この連載では繰り返し言っていることだが、とにかく今は、ボールペンが多様化していて面白い。なかでも注目すべきは、「低粘度油性インク」を使った「激細ボールペン」だろう。

 

そして今、“激細油性”を選ぶとしたら、代表的なものは2点。三菱鉛筆「ジェットストリーム エッジ」か、パイロット「アクロボール」シリーズの0.3mmとなる。

 

そこで気になるのが、両社の細さに対する考え方の違いだ。

↑激細(ボール径が0.3mm以下)の油性ボールペンを代表する存在が、三菱鉛筆「ジェットストリーム エッジ」(左)と、パイロット「アクロボール 0.3mm」(右)

 

そもそも激細油性ムーブメントの先駆けとなったのが、「ジェットストリーム エッジ」。世界初となる油性0.28mmで、しかも世界最細という自負もあるのか、三菱鉛筆はエッジをかなり特別な「超細く書ける凄いペン」として定義しているように感じられる。

 

それは、単色1000円、多色2500円という高めの価格設定からも、明らかだ。(リフィルサイズは今までのジェットストリームと同じなので、150円のプラ軸に装備もできるが。)

 

対してライバルのパイロットは、0.3mmを初手から150円の軸に搭載し、「普通に売っているボールペンの、一番細いやつ」程度の“身近”に置いてきた。ブランドとしても、単に従来からあるアクロボールの0.3mm、というだけの立ち位置。完全にアットホーム路線だ。

※価格は全て税別

 

当然ながら、どちらが正しいというわけではない。両方アリ。なんだけど、発展性があるのはやはり「普通の細いやつ」の方じゃないかなー、と。

 

そこで今回は、そんなアクロインキを採用した0.3mmの新製品2点を紹介したい。どちらも普通なのだが、なかなか面白いコンセプトをもっているのだ。

 

単色なのに“多色用リフィル”を搭載した、超スリムな「アクロ500」

激細油性の使い道を挙げるとしたら、やはりまずは手帳だろう。最近は、システム手帳の小型化ムーブメントもあって、ほぼ名刺サイズの紙面にあれこれ書く、なんていうことも増えてきた。であればそりゃ、激細の方が使いやすいよね、という話。

 

そんな小さな手帳にマッチするのが、パイロット「アクロ500」である。


パイロット
アクロ500
ボール径 0.3mm/0.5mm
各500円(税別)

 

シンプルだがチープさがなく品の良いルックスで、なかなか“お高そうなペン”の香りがする。でも500円(税別)。うーん、これは単純にお得っぽいな。

 

そして何より特筆すべきは、全長128mm/最大軸径9.6mmと、かなりスリム&ショートなボディサイズ。同シリーズの「アクロ1000」「アクロ300」はややスリムながら一般的なサイズなので、500だけが完全に別物といった印象である。

 

↑M5サイズの手帳カバーとセットにすると、こんな感じ。いいマッチ感と言える

 

手の小さな女性が握っても間違いなく細いし、今のところ最小のM5(マイクロ5)サイズのシステム手帳と合わせても、ほんの少しカバーからはみ出す程度。これなら充分に適正サイズだ。M5手帳は小さすぎて、ペンを合わせて携帯するのがなかなか難しいので、非常にありがたい。

 

実はこれ、リフィルに多色用の細くて短いものを搭載することで実現したサイズ感なのだ。

↑アクロ500が搭載するのは多色の「BVRF」リフィル。そしてノックバネの中に、何やら見慣れぬパーツが……?

 

とはいっても、単色ボディに多色リフィルを挿しただけで、はいスリムなペンができました! とはいかない。ノック用バネの位置が、単色と多色で異なるのが、問題なのである。

 

単色ボディはリフィルの前(口金の中)に、多色ボディはリフィルの後ろにバネがある。そのため、単色リフィルは前方にバネを受け止めるための段差や出っ張りが必要となる。つまり、バネ受けの段差や出っ張りがない多色リフィル(構造上、多色ボディは口金にバネが内蔵できない)は、よしんばサイズが合ったとしても、単色ボディには使えないのが常識なのである。

 

じゃあアクロ500はどうやってんだよ? というと、もちろん秘密がある。

↑この真鍮パーツ(バネ受け座)が、リフィル先端を受け止める構造になっている

 

口金を外すと、バネの先に真鍮(しんちゅう)製の見たことのないパーツがあるのが分かるだろうか? この“バネ受け座”と呼ばれるパーツが、リフィルの先を受け止め、バネの力を伝える役割を果たしているのだ。

 

こんな小さなパーツひとつで、単色ボディに多色リフィルが使えるようになるわけで、これはなかなかの発明と言える。

 

↑ブレのない安定感のある細さで、漢字も潰れず読める文章が5mm角に納まる!

 

ついでの話で、副次的に「このバネ受け座がリフィルを固定することで“ペン先のブレ”を抑制する効果もあるんじゃない?」というのも、ユーザーの中で話題となっている。

 

書いてみると、確かにペン先がぐらつかずピタッと固定されて、細かい字を書くのがかなりラク。筆記時の精度が欲しい激細だけに、この効果はけっこう大きい。ただしこのブレ抑制を、メーカーは公式には謳っていない。あくまでも、使ってみた印象の話である、念のため。

 

激細と激細と激細と激細と、そして激細が書ける多機能「ドクターグリップ」

激細油性の使い道を挙げるなら、やはりまずは手帳……とはすでにさきほど語ったが、さらに、手帳へスケジュールを書き込むのに多色を使いたい、という人も多いはずだ。できれば“リスケ”対策にシャープペンシルもあるといい。

 

となれば、パイロット「ドクターグリップ4+1」がオススメだ。


パイロット
ドクターグリップ 4+1
0.3mm
1000円(税別)

 

「ドクターグリップ4+1」はもちろん以前から発売されていたのだが、なんとこのほど、アクロインキの激細0.3mm多色リフィル(アクロ500と同じもの)を搭載した、激細×4色モデルがラインナップに追加されたのである。

 

しかも+1のシャープユニットまで芯径0.3mmというのだから、どこをノックしても必ず激細。もはや“激細の要塞”とでも言うべき存在なのだ。

↑どれをノックしても激細で書けるのが凄い!

 

激細多色といえばすでに「ジェットストリーム エッジ3」があるが、多機能となるとこれが初。シャープペンシルも欲しい層には、現時点では唯一の選択肢となっている。

 

ただし、激細ボールペンは筆記対応角(ペン先が紙に当たる角度)が他よりも狭いという問題がある。この角度がだいたい50度より小さくなると、ボールが紙に当たらずインクスキップなどの筆記不良が発生しやすい。つまり、ペン先が軸に対して垂直に出てこない多色ペンは、激細化するのにハンデがあるのだ。

 

ジェットストリーム エッジ3は、特殊な繰り出し機構でこれを克服しているが、ドクターグリップ4+1の構造は残念ながら、既存モデルと変わらない。手帳を立ったまま書くなどの場合は筆記角が変わりがちなので、そこは注意しておく必要はあるかもしれない。

↑判型が小さな手帳は、やはり0.3mmぐらいの細さがないと書き込みづらい

 

とはいっても、先に述べた通り、0.3mm全通しの多機能ペンは今のところこれだけである。やや特殊な性能ではあるが、使いこなせれば唯一無二の「手帳最強ペン」になる可能性も高いと思うのだ。

 

 

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見やすくて省スペース! キングジムの自立するファイル「ジリッツ」の斬新な仕組みとは?

なんだかんだと騒がれている間に、もうコロナによる最初の緊急事態宣言から1年以上が経つ。「慣れないながらも、テレワークをなんとか1年やってきたよ」という人も多いだろう。

 

ただ、あちこちで話を聞いてみるに、「在宅できちんと仕事ができる環境を整えた」というケースは、まだあまりないようだ。例えば、机や椅子もあり合わせの物を使ってなんとか作業スペースを捻出しているだけで“快適な仕事環境”とは少々言い難い、など。

 

筆者の知人も「ベッドに座って小さい折りたたみ机で仕事してる」と話していて、それはさすがにしんどそうだなあ、と思ったものだ。

↑机が狭いと、PC、ノート、紙資料、飲み物……と大混雑が発生してしまう

 

もちろん自宅の広さは有限なので、そこへ新たに仕事用の椅子や机を持ち込むのは非現実的だ。あり物でなんとかするしかないのも分かる。

 

では作業スペースを変えようがないなら、次に考えるべきは「省スペースで仕事がしやすい文房具を使うこと」ではないだろうか。実際、ここしばらくはペンケースやガジェットバッグなどの“入れ物”は、そういった工夫のある物が次々に登場して、かなり注目されている。

 

しかし個人的には、それらよりもさらに省スペース化させたいものがある。それが、紙だ。

 

紙資料を立たせると、机は格段に広くなる!

これは、筆者の仕事と考え方に由来する部分だが、資料の類はできるだけプリントアウトして使いたい。なにしろ、使っているノートPCが13インチと画面が狭いので、PDFなどの資料を見ながら原稿を書くのが、やりづらいのである。別ウインドウに切り替えるのも、作業が中断されて面倒くさい。とはいっても、A4の紙束と13インチのノートPCを同時に広げて邪魔にならない机なんて、自宅においてはかなりハードルが高くないか?

 

横幅だけ考えても、ノートPCが300mm強+A4が210mm。600幅の折りたたみ机では、もうこれだけでいっぱいという感じで、飲み物を置く場所すら確保できない。紙資料は欲しいけれど、その面積は邪魔。それならやっぱり、立たせるしかないだろう。


キングジム
ジリッツ
10ポケット60020ポケット850円(ともに税別)
※写真は10ポケットタイプ。

 

そこで注目したのが、キングジムから2021年3月に発売されたクリアファイル「ジリッツ」である。

 

その名の通り、自立する機能を備えたクリアポケットのファイルで、これなら紙資料を参照しながらの仕事がグッと省スペースでできるんじゃないか。いや、さすがにその名前はそのまんま過ぎないか? とは思うけど。

 

立たせる仕組みが斬新!

早速立たせてみよう。立たせ方は、まず表紙を閉じたままで、背の下部にあるスタンドをスルッと引き出す。

↑立たせる際は、まず背の下部にあるスタンドをつまんで……

 

↑ナナメにスルッと引き出す

 

次に参照したいページで180度開いたら、スタンドのストッパーを内側に折り込む。以上。これで、ファイルが見開き状態で立たせておくことができるのだ。

 

↑表紙を開いた状態で、スタンドストッパーを内側に折れば完了。最初はうまく折れないが、何度かやっているうちに折り目がついて折りやすくなる

 

底面積はほぼストッパー部分だけで済むので、スペースはかなり広く空くのではないだろうか。収納するときは、表紙を閉じれば自動でストッパーが戻るので、あとはスタンドを背に滑り込ませるだけ。かなり手軽である。

 

では、いったいどういったシーンで活用できるだろうか?

書類をファイリングしたまま立てられるメリットの汎用性

↑立たせたところ。180度開いたままで固定できるので、見やすいのもありがたい

 

↑逆側から見るとこういった状態だ

 

ノートPCの後ろに立たせておけば、画面に隠れて見開きはフルに活用できないが、片ページだけなら確実に見ることができるはず。実際、これで充分かもしれない。

↑書類を立たせると、机の使える面積はグワッと広がる。快適!

 

これまで、書類を立たせたい場合は書見台(もしくは自立機能付きのクリップボード)を使っていたのだが……ファイルが自立したほうが、圧倒的にラク! 書類が1枚だけならいいけれど、複数枚の場合、書見台などはいちいち書類を差し替える必要がある。ファイルならページをペラッとめくるだけだから、その辺りの効率は段違いだ。

 

何より、書類をファイリングしたままで立たせられるのが素晴らしいと思う。書類を立てるための道具(=書見台)は、書類をセットしたり戻したりという手間があるが、自立するファイルは表紙を閉じるだけで片付けが終了する。

 

書類を整理収納するためのファイル機能はそのまま、スタンド機能がプラスされているわけで、これは終業したら素早く仕事道具を片付けたいテレワーカーにとって、大きなポイントと言える。ついでに、クリアポケットなので、飲み物をこぼしたとき紙にダメージがないのもありがたい(狭い机での仕事あるある)。

 

↑妻に「このファイル使う?」と渡すと、さっそく譜面台として活用していた

 

書類が立つとありがたいのは、狭い机でのテレワークだけに限らない。例えば楽器を演奏する人なら、楽譜を入れたファイルがそのまま譜面台になると考えれば、その便利さが理解できるんじゃないだろうか。もしくはレシピ集が自立すれば、それを見ながらの調理もやりやすそうだし、プラモを組み立てるにも、説明書を入れて立てておけば、組み立てるスペースが広く取れるし。などなど、趣味のジャンルでもかなり幅広く役立ちそうなのだ。

 

少なくとも、今の説明を読んで「お、使えるかも?」とちょっとでも思ったなら、まず買って損なしとおすすめできるアイテムである。

 

 

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ゲルインクボールペン覇者の逆襲開始! ゼブラ「サラサR」のくっきり発色&カラバリ充実を検証した

ゲルインクボールペンの主戦場は、どうやら“書き味”から“色”へとシフトしたようだ。

 

というのも、ここ1〜2年のうちに発売されたゲルインクボールペンの大多数が、インクのカラーラインナップや発色性を最も強く打ち出しているのである。

 

以前にもこの連載で「ゲルインクボールペンのインク沼化」という話をしたが、その傾向は(ざっと見渡した限りは)一時的なものではないようで、しばらくはカラーインク千紫万紅(せんしばんこう)の時代が続くんじゃないだろうか。

 

このゲルインク沼のきっかけのひとつして挙げられるのが、三菱鉛筆「ユニボールワン」だ。

 

カラーラインナップは、限定色も含めて発売から1年で35色と、すごい勢いで増えているが、なによりポイントとなるのは、その発色性。新開発の顔料インクは非常にクッキリとしており、特に黒は、現時点で最も真っ黒なゲルインクと言っても過言ではない。

 

実はこれ、油性インクの覇者「ジェットストリーム」を擁する三菱鉛筆が、今度は「ワシら、ゲルでも王座獲ったりますけん」と打ち出してきたペンではないかと推測(邪推とも言う)されていた。つまり、ゲルインクボールペンの売上で9年連続トップを誇るゼブラ「サラサ」シリーズへの刺客である。

 

実際、ゲルインクボールペンのメインユーザー層である中高生の間でも、ユニボールワン人気は徐々に高まっているように感じる。

【関連記事】
ボールペンにも“インク沼”!? 2020年のボールペントレンドを象徴する色にこだわった2選
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ゼブラが打ち出した、クッキリ発色のカウンターパンチ「サラサR」

しかし、ゼブラもやられるばかりではない。ユニボールワン・カウンターとして(と思われる)、次の一手をすかさず打ち出してきたのである。それが、2021年3月に発売された新シリーズ「サラサR」だ。


ゼブラ
サラサR
0.4mm・0.5mm
各100円(税別)

 

ローンチのカラーラインナップは、0.4mmが14色、0.5mmが黒・赤・青の3色。これまでと違って、主軸が0.5mmから0.4mmに移行しているのも、おそらく0.38mmにカラーを集中させたユニボールワンに対抗してのことではないだろうか。

 

↑「サラサR」(左)と従来の「サラサクリップ」(右)。サラサRでは、パーツの造形はそのままに全体を白で統一しており、まさに今風のデザインとなった

 

ちなみにこの14色は、中高生のノート筆記に最適という視点で選ばれているようで、初回限定として国・英・数・社・理の5教科向けにそれぞれカラーコーディネーターが配色した、科目別の5色セットも発売されている。

↑ラインナップの14色。「まずは定番色をきっちり揃えてきたな」という印象だ

 

従来のサラサクリップとの違いは、インクの濃さ

ゼブラによれば「黒で従来インクより27%濃く書ける」とのこと。やはりクッキリした発色を謳っているわけだ。

 

比較してみると、確かにパッと見た印象でも「お、濃いな」という感じ。ただ、インクフローがややダクダク気味で線が太るのも、クッキリとした濃さを演出しているのかもしれない。個人的には、インクたっぷりなこの書き味はなかなか好ましいし、ダーッと早書きする板書にはマッチしそうではある。

↑遠目に見ても字が読み取れる視認性の良さ。ただし線が太い(ほぼ0.5mmと同じ)ので、細かい字を書き込むには向いていないかもしれない

「ユニボールワン」と比べてみるとどうか?

さて、やはり気になるのは「じゃあ、ユニボールワンと比べてどうなの?」というところ。

 

ということで書き比べてみると……正直、黒さで言えば、ユニボールワンのほうが正しく「黒色」だろう。サラサRは従来のサラサシリーズと同じく「赤黒色」傾向、かつ光の反射もあるため、並べてみるとやはり浅く感じられる。

 

とはいえ、赤黒でもかなり強い色なので、視認性という点ではさほど差はないかもしれない。しっかり読み返しやすい黒なのだ。

↑純粋な黒さで言えば、やはりユニボールワンの方が「クッキリと黒」だ

 

“出色”の出来は明るめの色。速乾性も見逃せない!

ラインナップの中で気に入ったのが、ライトブルー・フレッシュグリーン・ピンクといった明るめの色。明るいのだが浅くなく、どっしりした発色なので、目に痛くない。これは確かに、カラフルなノート作りに使うと、色分けがきちんと活かされた読みやすいものに仕上がりそう。

 

逆にカラーブラック系は、少しアッサリし過ぎて物足りなかった。あくまでも筆者の好みだが、もうちょっとダーク方向に振ってくれたほうが使いやすい。

 

ところで、実際に書いていて気付いたのだが、このサラサRのインク、やたらと速乾性が高い。筆記直後に指で擦っても、かすれることがないのだ。

↑サラサシリーズでの比較。「サラサドライ」とサラサRは、インクの方向性がかなり近いように感じた。染料系で水濡れに弱いところも同様だ

 

速乾性が高く、インクがダクダク気味な書き味のサラサ……なにか覚えがあるような。そう、2016年に発売された「サラサドライ」である。もしかして? と思って、手元にあるサラサシリーズ(サラサクリップ・サラサマークオン・サラサドライ・サラサR)を並べて書き比べてみると、うーん、ドライとR、発色まで非常によく似ているような。さすがに全く同じものとは思わないが、同系統のインクを使っている可能性はありそうだ。

 

それにしても、クッキリ発色や速乾性を備えながら、価格は従来のサラサと同じ100円(税別)! というのは、なかなか面白い判断だと思う。おそらく120円(税別)のユニボールワンに対するカウンターなのだろう。特に、カラーをあれこれ揃えたい中高生にとっては、1本につき20円は軽視できない差だろう。

 

ゼブラ VS  三菱鉛筆の“ゲル抗争”が今後どうなっていくのか、まだ目が離せない。これが激化すれば、ユーザーはより進化したペンを手にできるわけで。みんなももっとガンガン煽っていこう!

 

 

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なめらか筆記はもう常識! 最新ボールペンが「モノグラフライト」「イルミリー」で遂げたさらなる進化とは?

ボールペン史を語る上で重要な出来事はいくつもあるが、その中でも特筆すべきは、2006年の「ジェットストリーム」(三菱鉛筆)発売だろう。

 

それまで、“ただ書ければそれで良し”だったボールペンに、なめらか低粘度油性インクによる“書き味の良さ”という新たな価値基準を生み出したわけで、これは間違いなく、大きなパラダイムシフトだった。

 

実際、ジェットストリームの爆発的ヒット以降に発売されたボールペンは、ほぼすべて(油性・ゲル・水性問わず)、書き味についてなんらかのアピールをすることを強いられる傾向にあったと思う。ある意味、業界全体にかけられた“書き味の呪い”とでもいうべきものだ。

 

しかし、ジェットストリーム発売から15年目を迎えた今、この呪いが徐々に解け始めているようなのだ。書き味の良くないレガシーなボールペンが駆逐され、集団の中でより注目を集めるためにはさらなるアピールが必要になった、というのもあるだろう。社会全体におけるボールペンリテラシーが上がったため、ユーザーが書き味競争に飽きてきた、というのもありそう。

 

ともあれ、2021年のボールペンは書き味が良いのが大前提だから、そこはもはやあえて語ることではない、というムードになってきているのは、間違いない。

 

パイプチップを長く伸ばした極細油性「モノグラフライト」

それなら、今のボールペンはどこをアピールするの? というと、これが面白いことに、油性インクとゲルインクでそれぞれ違う。

 

油性インクがいま進んでいるルートのひとつは、“極細化”だ。手帳筆記に向いた0.3~0.28mmという超々極細(激細)ボール径でもなめらかに書ける、というのが最近の主なトレンドで、三菱鉛筆とパイロットがここで争っている。

 

しかし、トンボ鉛筆が3月に発売した精密筆記ボールペン「モノグラフライト」は、細字傾向を追いつつも、ちょっと違う方向にハンドルを切ってきた。

トンボ鉛筆
モノグラフライト
0.3mm/0.5mm
各180円(税別)

 

その最大の特徴は「ニードルチップの長さ」である。針(ニードル)のように伸びた細いペン先は、業界最長の5.2mm。実物を握ってみると「おお、確かに長いな」と実感できるはずだ。

 

ニードルチップの利点としては、ペン先視界の広さが挙げられる。つまり、一般的な三角錐のコーンチップよりも、細いニードルチップの方が文字を書いている周辺が見やすいということ。そのニードルが長くなれば、視界を邪魔する口金からペン軸にかけての部分が上にずれるため、さらに視界は良くなるというわけだ。

↑中央が「モノグラフライト」の5.2mmロングニードルチップ。コーンチップや他のニードルチップと比較すると、1mmほど長い

 

↑絞った形状の口金とロングニードルチップ(写真右)により、文字周りの視界は従来よりも大きく広がっている

 

ボール径のラインナップは0.5mmと0.38mmなので、いま注目の激細というほどではない。が、この視界の良さは、それをフォローするに充分な性能だと感じた。

 

激細ペンで書くと当然ながら文字も小さくなるわけで、視界が悪いと、狙った位置に思ったような線を引くのは難しい。逆に、ペン先周辺がよく見えれば、細かな文字はグッと書きやすくなる。なるほど、精密筆記ボールペンとはよくいったものだ。

 

手帳に粒のような字をびっしり書くには0.38mmだとやや太いが、ノートを細かめの字で埋めるような書き方には最適だと思う。

↑0.38mmでもカリカリ感はなく、非常になめらか

 

0.4mm以下になると、全体的にややカリッとした筆記感になりがちだが、事前に想像していたよりもかなりなめらか。トンボ鉛筆独自の低粘度油性インクで、スルスルっと書くことができる。

 

これは、新開発の“スプリングレスチップ”(ボールを後ろから押すバネをなくした先端構造)と、ボール座面を真球に近付けることによって、筆記時の摩擦抵抗を従来比10%低くした結果とのこと。

 

また、インクのボテ汚れが、筆記テスト中にまったく発生しなかったことにも驚いた。実は、これまでのトンボの低粘度油性ボールペンは、ボテが出やすい傾向があり、ちょっと苦手に感じていたのだ。

ボテが出ないことで快適性はずいぶん上がるので、この進化は大歓迎である。

↑サラッとしつつ、指にしっかり食い付く新グリップ。手触りは硬めだ

 

また、個人的にいいなと感じたのが、グリップ部分だ。ディテールまで作り込まれたゴムグリップで、指への食いつきが非常に良い。それでいて、手汗をかいた状態でもしっかり握れるサラッとした感触もあり、かなりレベルが高い。

 

本来、ニードルチップは曲がりやすいため、強く握って筆圧をかけるのはNG行為。だが「モノグラフライト」の細長ニードルは切削加工で作られているため、強度は充分にあるようだ。ならば、がっちり握れるグリップでも問題はないのだろう。

ペールトーンオンリーのうっとりゲルインク「イルミリー」

さて、一方のゲルインクだが、こちらは油性にはない“発色性”を武器に、より斬新なカラー展開が主戦場となっている。ゲルインクボールペンの“インク沼化”とも呼ばれる現象だ。

 

昨年末にも、サクラクレパス「ボールサインiD」が全6色カラーブラックという、特殊すぎるラインナップで注目されていたが、対して3月発売のパイロット「イルミリー ゲルインキボールペン」は、ラインナップ12色がすべてペールトーン(高明度・低彩度の淡色)である。うーん、極端!

パイロット
イルミリー ゲルインキボールペン
全12色
各150円(税別)※期間限定販売

 

ペールトーンといえば、それこそ数十色のラインナップ中にちょっとだけ混じっている程度のカラーである。まさか、ペールトーンオンリーなシリーズが出るなんて、さすがに予想外だ。

 

ちなみに色名は「夢に見たブルーローズ(ペールトーンブルー)」や「しとやかなスミレ(ペールトーンバイオレット)」など、うっとり成分が非常に強くなっている。ただでさえすべて頭に「ペールトーン」と付くために色表記が長くなるのに、そこに加えてこのうっとり成分配合。正直、ライターという立場としては「勘弁してくれ」とも思うのだが。

↑色見本を作ってみたが、あまりに淡過ぎてきれいにスキャンできなかった!

 

そんな思いをしてまで、なぜ取り上げているかというと。「イルミリー」、すごくいい色が揃っていて……めちゃくちゃ好みなのだ。筆者の心の奥に潜む野生の乙女がキュゥゥゥゥン! と遠吠えしちゃうぐらい、好き。

 

淡い色をしっかり発色させるのは難度が高いのだが、それでも白みを含んだ美しい色合いに仕上がっている。方向性としては、1990年代にヒットしたぺんてる「Hybrid ミルキー」に近いが、より淡く、儚い色合いと言えるだろう。

↑インクの隠蔽力は強くないので、黒地での発色はいまひとつ

 

なにより色名がいい。いや、ライターとしては勘弁して欲しいけど、乙女おじさんとしては好きなのである。

 

カラーを想起させるワードとうっとり成分が濃厚に混ざりあって、ドラマチック。色名を見るだけで、なにかうっとりしたシーンを夢想するほどのパワーを感じてしまうのだ。だってほら、ペールトーンマゼンタが「真夜中のハーブティ」だぞ。しかも、実際の色もまさにイメージ通りで、ブレのない「真夜中のハーブティ」色なのも、お見事。

 

パイロットという生真面目なメーカーが、ここまでのうっとり力(うっとりりょく)を発揮するとは……申し訳ないが、予想外だった。

↑軸の印刷もほんのりと夢々しくて、うっとりする

 

実際のところ、筆記色としては淡すぎて使いづらいところもあるのだが、それはもう放っておいてかまわないと思う。

 

例えば手帳用の赤字として「ごきげんチーク(ペールトーンコーラルピンク)」を使えば、うっとりとテンションが上がりそうだし。多少は読みづらいかもだが、気にしない。さらに言えば、ただ色と雰囲気が素敵だからまとめて買っちゃう! なにに使うかは想定してないけど! という買い方でも、たぶんまったく問題ない。

 

 

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文房具ブームの火付け役「クルトガ」に「アルファゲル」の最強タッグ実現! 三菱鉛筆「ユニ アルファゲル スイッチ」に込められた逆転の発想とは?

2021年春、シャープペンシル業界に激震が走った。

 

と、そこまで大げさな事態でもないが、筆者としてはかなり驚いたのである。なにがあったのかというと、三菱鉛筆が「“クルトガモード”をオフにできるシャープペンシル」を発売したのだ。これは、本当に驚いた。えー、そんなことある!?

↑もはや伝説級に有名なシャープペンシル「クルトガ」(三菱鉛筆)

 

そもそもの話から説明しよう。「クルトガ」というのは、2008年から三菱鉛筆が発売している超絶大ヒットシャープペンシル。書くたびに、芯が9度ずつ回転することで偏減りせず、常にシャープな芯先を保つという機能「クルトガエンジン」を搭載し、均一に細い線が書けるのが特徴だ。

 

これが、メインユーザーとなる中高生の認知度100%・所有率70%以上(2013年調査)というバケモノみたいな人気で、シリーズ累計販売数も2018年末の時点で9000万本超え! おそらく一億本突破も間違いないところだろう。

 

それなのに、そこまで人気の高い機能をわざわざ“オフ”にできると謳った新製品が出るとは、つまり“メーカーによるクルトガの否定”ではないのか!? マジで!? どういうこと!?

 

……と、つまりそういうことで驚いていたわけだ。

 

クルトガモードをオフにすると、一体なにが起きるのか?

その驚きの製品というのが「ユニ アルファゲル スイッチ」(以下、スイッチ)である。

 

ちなみに「アルファゲル」というのは、グリップに衝撃吸収素材である「α GEL」を採用した、これまた三菱鉛筆の人気シリーズ。2010年には、両者を合体させた「アルファゲル クルトガエンジン搭載タイプ」も発売されている。

 

今回発売されたスイッチは、つまり「アルファゲル クルトガエンジン搭載タイプ」のクルトガオフ機能付き、という立ち位置になるのだろうか。それにしたって、製品名にクルトガと一切入っていないのには、なにか意図的なものを感じる。

三菱鉛筆
ユニ アルファゲル スイッチ 0.5mm
1000円(税別)

 

先から何度も勝手に“クルトガ機能オフ”と連呼しているが、正しくは「クルトガモード」と「HOLDモード」が切り替えられる、という表現となっている。クリップを軸後方のロゴが見える位置にセットすると、芯が回転する「クルトガモード」、ロゴを隠す位置に動かすと、芯固定の「HOLDモード」として機能する仕組みだ。

↑クリップを90度回転させてモードを切り替え。このとき、最後にカチッというまで回す必要がある

 

ここで問題となるのが、芯が尖って均一な線が書きやすいんだから、クルトガモードのままでいいんじゃない? という話。逆に言うと、HOLDモードにするメリットってなんなの? ってことだ。

 

もちろん、HOLDモードにはきちんとメリットがある。書いても芯がカチャカチャと振動せず、安定した筆記感が得られるのである。実際に筆者も、シャープペンシルをメイン使いする中高生からも、「クルトガは書くとカチャカチャいうのが気になるから使わない」と聞いたことがある。あの書き味に苦手意識を持つ層が一定数いるのは、おそらく間違いないだろう。

↑HOLDモードがあるためか、通常のクルトガよりもカチャカチャ振動する気がする

 

クルトガは、芯を紙に押しつける力を利用してギアを回転させているため、どうしても芯が戻る際にカチャカチャというブレが発生してしまう。これにロックをかけて固定するのが、HOLDモードというわけ。

 

なので、クルトガモードからHOLDモードに切り替えると、「あっ、さっきまですごいカチャカチャしてたんだ!」と気付かされる。芯の微振動が完全に抑制されているので、落ち着いた書き味となるのだ。(要するに、普通のシャープペンシルなのだが。)

↑クルトガモード中は、ペン軸中央の窓の色が芯の回転に合わせて変わり続ける

 

ところが、しばらくHOLDモードで書いていると、徐々に線が太くなってくるのが気になり出す。書き味の面でも、芯が偏減りしているのが違和感として手に感じられるはずだ。

 

もちろん、そういうときは軸を手の中で少し回転させて、自前で芯の偏減りを解消させてやればいいのだが……すっかりクルトガに慣れきった身だと、それもちょっと面倒くさいのである。結果として「あー、やっぱりクルトガって便利だな」なんて思ったり。

 

もしかして否定どころか、これによってクルトガの良さを再確認させるのが、三菱鉛筆の目論見だったりするのかもしれない。

↑比べてみると、やはり偏減りしないクルトガは文字が潰れずシャープだ

 

普段は均一な線できれいな字が書きやすいクルトガモードがいいし、板書のように集中してガーッと早書きしたい場合はHOLDモードの安定感が欲しい。つまり、その時の気分次第でクルトガエンジンをオンオフできるのは、意外とアリなんじゃないだろうか。どちらにもメリットがある以上は、切り替えができるならそれだけお得ってことだし。

↑かためアルファゲルは、握った際のグリップ力もあり、気持ち良いクッション性もありで、本当に優秀なグリップだ

 

集中してガーッと書くといえば、そういった用途に、衝撃吸収素材のグリップはとても効果的だ。

 

スイッチのグリップは、アルファゲルシリーズの中でも人気の高い「かため」を採用している。握った指への当たりはフニッと柔らかだが、ほどよい反発感もあって、筆記中のブレが少ない。個人的にも、筆記具史に残る名品だと感じるほどに大好きなグリップである。

 

長時間筆記でも指が疲れにくいため、集中力も長続きする。モードを切り替えてまで筆記感に注意を払いたい、というタイプの人が使うシャープペンシルには、ベストな装備と言えそうだ。

「UNI」の名を冠したシャープ芯

実はもうひとつ、三菱鉛筆からシャープペンシル関連の新製品が登場している。それが、13年ぶりの新芯ブランド「UNI」である。

三菱鉛筆
シャープ芯 uni
0.5mm(40本入り)、0.3mm(25本入り)
各200円(税別)
硬度にはHB、B、2Bがある。

 

三菱鉛筆のシャープ芯としてこれまでお馴染みだったのが、「ユニ ナノダイヤ」シリーズ。内部に超微粒のダイヤを練り込むことで芯強度を高めた、折れにくい芯だ。ちなみに発売はクルトガと同年の2008年。

 

以降、これまでずっと三菱の芯といえばナノダイヤ、だったわけだ。そこへ13年ぶりとなる芯の新ブランド登場。しかも三菱鉛筆のブランドネームである「uni」をそのまま名乗るのだから、これは三菱側もかなり本気だな? と感じさせる。

↑同等の力でこすり比べると、uni芯のスレ耐性の強さが分かる

 

その最大の特徴は、汚れにくさだ。今まで、シャープペンシルで書いたあとのノートが、うっすらと汚れているように感じたことはなかっただろうか? あれは紙に付着しきれなかった芯の微細な粉が、手に触れるなどして散り、紙面を汚していたのである。

 

対してuni芯は、芯に特殊な成分を配合することにより、芯の粉がしっかりと紙面に密着して飛び散りを防ぐ、とのこと。なるほど、試してみると確かに擦れたときの芯粉の広がりがまったく違う。手で触ってもスレが少なく、あきらかに汚れにくいのが見て取れるだろう。

↑タテにスライドさせると、途中から斜め後ろに動く新しい方式

 

芯ケースももちろん、これまでとは一新されている。ナノダイヤは、横スライド式のキャップを採用していたのに対し、UNI芯はケース自体をタテに大きくスライドさせて開ける方式になった。

 

横スライドキャップは、ケース自体をトントンと軽く振って少量の芯を出す構造だったが、うっかりドバッと大量の芯がこぼれ落ちる、なんてトラブルもたまにあったのだ。

↑従来(ナノダイヤ)の横スライド式開口。振り出す際に芯がドバッと出すぎることも

 

↑対してuniは、開口が大きいため、芯が1本ずつつまみやすい

 

タテスライドは開口が大きいため、そもそも振って芯を出すことがない。そのまま指で芯1本だけつまみ出せばいいので、芯ドバトラブルが起きにくいのである(寒さで指がかじかんでいると、逆に芯が取り出しにくい場合もありそうだが)。

 

芯ケースのキャップギミックは、メーカーやブランドごとに様々な方式があるので、こういう新しい構造を見るのもなかなかに面白い。

 

 

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ポータブルなペン立てが旬! 最新の“自立型ペンケース”は収納力も中身の見やすさも申し分なし!

文房具に対して、文房具好きと一般ユーザーとの間には、さまざまな“認識の違い”というものがある。文房具好きならば家に備えていて当然と感じているものが、一般的な家庭にはなかったり。そういった類いのことだ。

 

そして以前、筆者が一般ユーザーに分類される知人のお宅にお邪魔して、「え! うそ! ないの?」と驚いたのが、ペン立てである。

 

「オフィスでは、ボールペンとかマーカーとかあれこれ使うからペン立てを使ってるけど、家庭内ではそんなにペンもないし。あるだけ邪魔だわ」ということらしい。なるほど、そのご意見も確かにごもっとも。当時はそう納得したのである。

 

とはいえ、昨今のテレワークの機会増加で、自宅でも文房具を使う機会が増えた人も多いはず。仕事がノートPCだけで完結するなら問題ないが、まだまだ紙の書類や資料を手にすることはあるだろう。

 

ただ、それなら家で仕事するスペースにも、ペン立てさえあればイイ……となるわけではないのが、難しいところだ。なにしろそこは、仕事をしていない時は普通のリビングテービルだったりコタツだったりする確率が非常に高い。つまり、ペン立てを常備すると邪魔になる率も高いわけで。

 

ということならやっぱり、“持ち運びができてペン立てにもなる自立型ペンケース”が便利だと思うのである。

 

そこで今回は、最近発売されたばかりの最新自立型ペンケースを2点紹介したい。

 

絶対に倒れない! 不動のシリコンペンケース「エアピタ」

クツワ初の自立型ペンケースとなる「エアピタ」は、ツルツルしたシリコン製のボディに巨大ながま口がついて、見た目は相当にファニーだ。しかし、使ってみると意外なほどに実用的なのである。

クツワ
エアピタ
1400円(税別)

 

件の巨大がま口には金属製のフレームが入っているので、カパッと開けると、そのままスムーズに大きく開口する。

 

ボディの半分程度が開く構造なので、中に入っている筆記具などが丸見え。中身の一覧性はペンケースの使いやすさに直結するが、これはまず申し分ないレベルと言えるだろう。開口部は、下端の高さが約95mmとそれなりに低いので、ペン型ハサミなどもだいたいのものは頭が出るはずだ。

 

ただし、他の自立型ペンケースでは定番機能になっている“消しゴムやふせん類を分けて収納できるポケット”がないのは、ちょっと残念なポイントと言える。

↑容量はボールペンで最大25本ほど。ボディが大きめで中仕切りもないので、かなりたっぷりとペン類を飲み込む

 

最大に開いたがま口のフタ側は、受け皿として機能するので、ここに一時的にストックしておきたい小物などを置いておくことが可能。さらにスマホを立てかけておくこともできるので、Zoom会議やビデオ通話にも使いやすい。シリコンゴムの摩擦とがま口の口金を使えば、縦置き・横置きどちらでも大丈夫だ。

↑幅内寸は約80mmで、縦に長いMax系iPhoneでもすっぽりと収まる。ただし、置いている間は中身が取り出せなくなるが……

 

そしてもっとも特徴的なのが、なにをどうやっても倒れない、という点。

 

自立型ペンケースは、機構上どうしてもタテに細長く、接地する面積が狭い。“狭い場所にも置ける”というのが最大のメリットなので仕方ないのだが、それは同時に、倒れやすいというデメリットも含んでしまう。

 

ペンケースの中身がザラザラとこぼれてしまうと、もうそれ以降テンションはダダ下がり。しかし「エアピタ」は、トンと置くだけで自動的に底面の吸盤が机にピタッとくっついて安定し、倒れないのだ。

↑単なる薄いゴム板に見えるが、実はやたらと強力な底面の吸盤(ピンクのパーツ)だ

 

↑中が空であれば、この通り逆さまにしてもしっかりと吸着している

 

この吸盤が本当にやたらと高性能で、一度ツルツルの面に吸着したら、逆さにしたって剥がれ落ちないレベル。これなら手が当たろうが、ノートPCのカドがゴン! と当たろうが(筆者がよくやるミス)、まず倒れることはないはず。試しに無理矢理倒そうとすると、先にペンケース本体がぐにゃっと曲がってしまった。

 

他社製の自立型ペンケースにも底面吸盤を備えたものはあるが、吸着強度は圧倒的にこちらの勝ちと言える。

↑狭い場所で使うと意外と頻発する、“ノートPCが自立ペンケースにガチャーン!”事件。でも吸盤でくっついていれば安心だ

 

↑取り外すときは「PUSH」ボタンを軽く押すだけ

 

そんな強力な吸盤、剥がすときはいったいどうするの? という話なのだが、正面底に見える「PUSH」と表記されたパーツを軽く押しつつ持ち上げれば、スルッと取れる仕組みになっている。こういった取り扱いのラクさも、実用的だと感じるポイントのひとつだ。

 

あの30度傾きペンケース「デテクール」がコンパクトになった!

もう一点紹介したいのは、レイメイ藤井の「デテクールモバイル」。以前にこの連載でも紹介した「デテクールペンケース」のコンパクト版として、2021年1月に発売されたばかりだ。

 

単にサイズが小さくなっただけなので、もちろん、あの特徴的な30度傾き機構もそのまま搭載している。

レイメイ藤井
デテクールモバイル
1600円(税別)

 

ご存じない方には「あの30度傾き機構」と言われてもなんのこっちゃ!? という感じだろうから、あらためて説明しよう。

 

使用時には、まずダブルジッパーをそのまま上端まで上げ、開いたフタをめくって、背面底部にくっつける(フタ先端をマグネットで固定する)。

 

そして、中におさまった、ペンなどを収納しているケースを指で引き出す。すると、ケースが30度ほど傾いた状態に変形。つまり、立っているペンの後端をこちら側に差し出すように保持してくれる、という仕組みなのだ。

↑ケースが傾く、かなり独特なギミック

 

30度傾斜のペン立ては、中身の出し入れがスムーズなのがメリット。一般的なペン立てがペンを垂直(真上)に出し入れするのに比べると、腕の動きに無理がなく、やりやすいのである。

 

特にペンを戻す動作は、机にヒジを置いたままの姿勢でポイッと投げ込むようにできるので、非常にラクだ。

↑傾くことによって、垂直方向よりも腕の動きが少なくペンが出し入れできるのは、大きなメリット

 

コンパクト版となる「デテクールモバイル」は、元の「デテクール」と比べて、およそ90%に縮小したサイズ感となっている。セミハードケース、かつそこそこ大きかった「デテクール」は、カバンに収納しにくい、という意見がメーカーに寄せられたようで、確かに筆者も、前回のレビューでそう感じた旨を書いていた。

 

正直に言えば、「デテクールモバイル」もそんなに小さくはないのだけれど……。縮小化は容量とトレードオフになるし、さらには底面積が減ることで転倒しやすくなるというデメリットもある。そういう意味で、これくらいがちょうどいいのでは? というメーカー判断なのだろう。

↑ベースとなる「デテクール」(写真左)と比較すると、一回り小さいかな? というくらいのサイズ

 

コンパクト化で、メイン収納のケース容量は減っているが、その代わりに小物収納ポケットが増やされている。以前と同じ上部のポケットに加えて、ケース前面にもふせんやボールペンの交換リフィルが入るポケットを装備。さらに、本体の両側面と背面にも、薄物を収納するポケットが追加された。

 

側・背面のポケットは、ケースには入れづらい定規などがちょうど収納できそうだ。

↑小型化で収納が減った分をフォローできる外部ポケット

 

↑ケースに入れると底に沈んでしまう小物は、前面ポケットがありがたい

 

テレワークでどれくらいの量の筆記具を使うかは、職種によってまちまちだとは思うが、例えばボールペン1本、ラインマーカー2本、サインペン1本、シャープペンシル1本……という程度の構成であれば、大きなペンケースは単に置き場所の無駄となる。であれば、「デテクールモバイル」で充分に余裕のある運用ができるし、しかも出し入れがラクなのは便利だろう。

 

そういう意味では、「高機能なペンケース」を、自分の運用に合わせてサイズから選べるのは、ありがたいことだと思うのだ。

 

 

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どれが一番書きやすい!? 手帳に使いたい0.3mm以下の「超極細字ボールペン」7モデルを使い比べ!

ボールペンを選ぶ際の基準にはさまざまあるが、手帳へ小さな字を書き込む機会が多いのであれば、“超極細字”が書ける0.3mm以下のボール径が便利だ。

 

小さな字も潰れにくいので可読性が高いし、狭い面積に密度を高く情報が書き込めるのは、超極細字ならではと言えるだろう。なにしろ“ボール径0.3mm”といえば、筆記線の幅は0.15~0.2mm程度。0.5mm径の線幅が0.3mm台なので、ほぼ倍は違うことになる。

 

最近はシステム手帳界隈でも、名刺より一回り大きいくらいの“M5サイズ”が人気。小さな紙面に太いペンでは、とても書いていられないのだ。

↑コクヨ「ジブン手帳」も、紙面に3.5mm方眼を採用している関係で、細いペンとの相性が良い。小さな3.5mm方眼にみっちりと字を詰め込みたいなら、やはり超極細がいいだろう

 

もうひとつ、字が汚い人でも丁寧な文字を書きやすい、というメリットもある。

 

近年のボールペンは、書き味の良さを高めるために、全体的になめらか筆記優先のチューニングがされている。しかし、悪筆の人間にとってなめらか過ぎるペンは制御しにくく、ついつい雑な走り書きになりがち。

 

0.4-0.3mm以下のボール径は、細い分だけペン先が紙にカリッとひっかかりやすいが、その抵抗感がほど良いコントロール性を生むことがあるのだ(壮絶な悪筆でお馴染みの筆者は、0.38mmを愛用)。もちろん悪筆の原因はいくつもあるので、一概に「細字ならOK!」とも言えないが、字の汚さに悩んでいるなら、試してみる価値はあると思う。

 

ということで今回は、今のところ市場で最も細い「ボール径0.3mm以下」の製品を書き比べてみたい。

 

0.3mm以下の超極細ノック式ボールペンで、一番細い線が書けるのはどれだ?

今回揃えたペンは、筆者の使用頻度が高いというシンプルな理由で、ノック式に限定。ノック式、かつ0.3mm以下で、現時点で市場入手可能なものといえば、だいたいこの7本になるだろう。

【ゲルインク】

・ゼブラ「サラサクリップ 0.3」100円

・パイロット「ジュース アップ 0.3」200円

・ぺんてる「エナージェル 0.3」200円

・三菱鉛筆「シグノ RT1 0.28」150円

※写真左から。すべて税別

 

【低粘度油性インク】

・OHTO「スリムライン 0.3」500円

・パイロット「アクロボール Tシリーズ 03」150円

・三菱鉛筆「ジェットストリームエッジ 0.28」1000円

※写真左から。すべて税別

 

実のところ、従来の油性インクは粘度の高さなどが問題で、ボール径を小さくするのが技術的に難しい。そのため、細い字が書けるボールペンといえば、長らくゲルインクの独壇場だったのだ。

 

キャップ式であれば、現在ゲルの最細は「ハイテックC 0.25」(パイロット)。過去には「シグノビット0.18」(三菱鉛筆)なんていうものもあった。

 

油性では、手帳用ボールペンとして「スリムライン0.3」が以前からあったが、2019年に三菱鉛筆が低粘度油性で世界最細径となる「ジェットストリームエッジ0.28」(以下、エッジ0.28)を発売。ライバルであるパイロットも、2020年末には「アクロボール0.3」を発売し、ようやく油性でも超極細を選んで使えるという時代が到来した、という流れである。

↑0.3mm径ボールペンとしては最新鋭となる、パイロット「アクロボール Tシリーズ 03」

 

滲み・かすれはどうか?

前置きはここまでとして、まずは実際に細さを体感するため、シンプルに直線を引いてみよう。

 

ここで感じるのは、油性グループの線の細さだ。水性インクの一種であるゲルは、どうしても紙に染み込むため、その滲み分だけ線がわずかに太る傾向がある。対して油性はその滲みが少ないため、こういった差が出てしまうわけだ。

↑5mm方眼に0.3mm径ボールペンの名前と線を詰め込んでみた(右下はサンプル用の0.5mm径)。超極細字ならではのマイクロ試し書きである

 

なかでも圧倒的細さを誇るのが、スリムラインである。今回の7製品の中ではダントツに細い!

 

店頭でもあまり見かけない製品だけに、実は筆者もあまり意識して触ったことがなかったのだが、「こんなに細かったっけ!?」と驚かされた。OHTOお得意のニードルポイントはペン先周辺の見通しも良く、ついつい、どこまで小さい字が書けるか? 的なトライアルをしたくなるヤツ。ただし、けっこう頻繁にかすれが発生してしまうのは、気になった。

↑最細の線が書けるOHTO「スリムライン」。金属軸もとてもスリムで、手帳と持ち歩くには良さそうだ

 

逆に「ちょっと太いな?」と思ったのはサラサで、続いてエナージェルあたり。

 

もちろん線幅で0.1~0.2mm台というミクロな世界での話なので、比較用に併せた0.5 mm径の線と比べれば、どれでも充分に「細い!」という感じなのだが。

 

正直言えば、米粒に般若心経を書くのでもない限り、大した差じゃない。どれを使っても、方眼1マスに10文字以上書き込める性能はあるのだから。……ここまで書いておいて急にハシゴを外すな! という話だが、だってどれも問題なく細いのだ。

 

だから、それよりも気になるのは“書き味の差”なのである。

 

書きやすい超極細字は、カリカリとなめらかのバランスがポイント

そもそも0.3㎜径以下の極細字というのは、それだけでボールペンにとって非常にハードな環境だ。ボールが小さい分だけ、わずかにペン先の角度が変わるだけで書けなくなったりするし、紙の粉(繊維)が詰まるようなトラブルも、一般的な0.5mm径と比べると発生しやすい。

 

そういったハードモードで、なおかつ書きやすいものこそが、優れた超極細字だと思うのだ。

 

↑書きやすさではダントツのジュース アップ。その秘密はパイプチップとコーンチップの長所を併せ持つ特殊なシナジーチップにある

 

あくまでも筆者の体感ではあるが、飛び抜けて「書きやすい!」と感じたのが、ジュース アップだ。

 

超極細字の問題の一つに、細いパイプを通すことでインクフローが不十分になり、かすれや引っかかりが発生する、というものがある。しかし、ジュース アップのペン先(シナジーチップ)は、極細でも充分なインクフローが得られる。これはかなり大きなアドバンテージで、0.3mm径とは信じられないような快適さ。

 

ゲルの超極細字としては引っかかりも少なく、なめらかさ側に振られたチューニングは、万人受けしそうな印象だ。

↑シグノRT1(写真右)は、ここまで筆記角を寝かせてもスムーズに書ける。これは超極細ジャンルとしてはかなりレア

 

また、シグノRT1は先端のカドを削ったエッジレスチップの効能か、角度の変化にやたら強い。他社の製品では筆記不能になるほど寝かせた状態でも普通に書けてしまうのは、なかなか面白い。筆記感はややカリカリ感強めで、個人的には好きなタイプだ。

 

油性に関しては、個人的にはアクロボールの筆記角の狭さが少し気になった。ペンの“最適筆記角”と言われる60°で書いていれば、何の問題もなくなめらかなのだが、これを傾けて50°をきったあたりから、いきなりガリガリと強く引っかかり、筆記不能になる。

 

このリニア過ぎる書き味は、もしかしたら、合う人と合わない人がパッキリと別れるタイプなのかもしれない。

↑ジェットストリームエッジ0.28のリフィルは、0.5mm径などと同じシリーズ。お馴染みジェットストリームスタンダードの軸に入れて使うことも可能だ

 

対して、エッジはかなりオールマイティ。カリカリとなめらかのバランス、筆記可能角度の広さともにクオリティの高さを感じた。超極細の不快な要素(引っかかり・かすれ・トラブルの発生率)を極力減らすことに注力して作られているようなイメージだ。

 

今回準備した中で唯一の1000円超えだし、価格分の良さはあるのかな? と一瞬思ったが、冷静に考えればエッジもリフィルだけなら税込220円とお安いもの。となれば、シンプルに「お得」という結論しかないかもしれない。

 

超極細ボールペン選びの注意点

ただ実際問題として、例えば同じジェットストリームでも、0.5mm径と0.28mm径では筆記感が大きく違う。そのため、「書き慣れた0.5mmと同じペンで、細いヤツを買う」という選び方をすると、なんとなくしっくりこない感じを引きずることもありそうだ。

 

超極細ボールペンはあくまでも別物の筆記具と考えて、ゼロベースで試筆をして選ぶのが良いと思う。

 

 

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フリクションで書けるホワイトボードノート「バタフライボード noteX」は新発想のペンループで書きたい瞬間を逃さない!

以前、この連載でノート型ホワイトボードと細字ボードマーカー各種を紹介したばかりなのだが、正直なところを告白すると、個人的には苦手なのだ。ホワイトボードとボードマーカーの組み合わせが。書き消しできるのはいいし、消しカスが出にくいのもいい。くっきりして、筆跡の視認性も高い。だがあのツルツルした筆記感が、どうしても苦手。

 

そもそも悪筆とホワイトボードは、相性が最悪なのである。字が汚い人間が使うと、ペン先チップが滑りすぎてコントロールできず、自分でも後から解読できないレベルの字になってしまう。氷上をスリッパで走るが如きあのツルツル感で、どう丁寧な字を書けというのか。

 

だから、ホワイトボードにきれいな字が書かれているのを見ると、言い知れない敗北感に襲われてしまう。たまにいるよね、ものすごく整った字で会議の内容をボードに書く人。

 

だから、以前ああやってドヤ顔で紹介はしたものの、自分ではノート型ホワイトボードを使いこなすには至っていないのである。でも、使いたい。駆使できれば便利なのが頭じゃ分かっているので、ちゃんと使いこなしたいのだ。

 

ホワイトボード? それともノート? 不思議な「notesX」

……と、いつもの悪筆コンプレックスをこじらせて鬱々としていたところ、GetNavi編集部から「じゃあ、これとかどうスかね。んでレビューよろしくですー」と、一冊のノートが送られてきた。

 

それが、現在クラウドファンディングサイトのMakuakeで先行販売中の、バタフライボード「notesX」である。ああコレ、確かに興味はあったんだ。

バタフライボード
notesX
一般販売予価 7200円(税別)

 

「バタフライボード」についてまず説明しておこう。ノート型ホワイトボード「バタフライボード」から始まったメーカーだ。そして2019年には、メモタイプのホワイトボード「notes」がMakuakeでクラファン達成率9000%超という、とんでもない数字を叩き出した。

 

で、今回の「notesX」はその「notes」の発展型という立ち位置で作られたもの。期待値は当然高く、早割でも7000円近い価格ながら、ファンド開始10日間で達成率3500%超えという爆速スタート。ファンド残り20日となった現在は、達成率が5600%に上っている。

 

↑開いたところはごく普通のノートのようだが、実は綴じ方に秘密がある

 

「notes」は測量野帳(コクヨのポケットタイプのスケッチブック)に近いサイズのハードカバーメモだったが、「notesX」は少々サイズアップ。A5(より少しスリム)な大きさで、ノートとして使うにも問題ないサイズだ。

 

表紙を開くと、薄く5㎜方眼が印刷されたページが始まり、ぺらぺらとめくっていくと、6枚(12ページ)の紙……というか、薄いボードが綴じられている。

 

この表紙とページが、引っ張るとそれぞれがこの通り、ポコッと外れて分解できてしまうのだ。これが、初代「バタフライボード」から最新の「notesX」まで共通の、マグネットヒンジを使ったスナップバインディング構造である。

↑引っぱるだけで簡単にページが分離する

 

↑各ページと表紙はマグネットでくっついているので、分離・結合が自由自在

 

ページのノド側(綴じられている側)2か所に極薄のマグネットを内蔵しており、普通のノートのように違和感なくページもめくれるし、リングノートのように表紙を360度折り返して使うこともできる。

 

さらにはページを外してスチール面に貼り付けられるほか、2枚外してくっつければ、ほぼ正方形のボードとしても運用可能だ。バタフラボードシリーズ独自の、かなり面白い機能と言えるだろう。

↑360度折り返せて、邪魔なリングもない。これは快適だ

 

そしてなにより興味深いのが、「notes」「notesX」のページとして採用されている「シンセティックペーパー」だ。

 

従来のホワイトボードと違って、かなりサラッとマットな手触りがあり、テカりもかなり少ない。それでもジャンルとしてはホワイトボードになるので、当然ながら書いて消してが可能……なのだが、書くのにホワイトボードマーカーは使わない。なんと、お馴染みのフリクションボール(など、いわゆる消えるペン系)を使うように作られているのだ。

↑フリクションボール(0.5mm)が付属。思ったよりも紙に近い書き味だ

 

通常のホワイトボードでは、表面でボールペンのボールが空転し、きちんと書くことができない。しかしシンセティックペーパーは、樹脂と鉱物を原料に作られた耐水紙で、表面に無数の微細な孔がある。この微細孔がほどよい引っかかりとなって、ボールペンでも書けるマットな紙面を生んでいるのだ。

 

もちろん、コピー用紙などと比べればやや滑りはするが、それでもホワイトボード+マーカーの不安なほどのツルツルさはない。印象としては、だいぶ紙っぽい。「7割ぐらい紙かな」という感じである。なによりボールペンなので、細字マーカー以上に細い字が書けるのも嬉しいところ。これなら「notesX」を普通にノート感覚で運用することだって、充分にできるはずだ。

 

フリクションなので当然のことながら、1文字だけ消したい場合は、軸後端のラバーで擦って消すことができる。さらにある程度まとめて消したいときは、濡らしたキッチンペーパーやウェットティッシュで撫でると、きれいに拭き取ることができるのだ。

↑まとめて消したい時は、ウェットティッシュでサーッと!

 

↑指に水分が付いてなければ、擦っても大丈夫。夏場は汗で流れる可能性がありそう

 

チマチマと拭くのが面倒くさいなら、いっそ水道からページ全体にダバーッと水をかけてやってもいい。これで一気に全部洗い流せてオールクリア。うーん、なかなか気持ちいいぞ。

 

フリクションインクは乾燥しても水に弱いという性質を持っているので、こういうことも可能なのだ。

↑流水でインクがきれいに落ちるのが楽しい

 

もうひとつ面白いのが、ペンを携帯するために備わっている「バタフライループ」。単に2本のゴムベルトが交差しているだけに見えるが、これが直径9~15mmのペン軸に対応した万能ペンループとして機能するのだ。

 

手帳やノートカバーのペンループと言えば、ユルユルすぎてペンが抜けたり、多色ペンだとキツくて入らなかったりと、ちょうどよくペンが入ることがあまりない。それがバタフライループなら、だいたいのペンがクリップを使わずにピタッと固定できて、抜け落ちる心配もない。うまく装着するのには少し慣れが必要かもしれないが、それでも良くできているんじゃないだろうか。

↑交差しているゴムベルトの中央にペンを挿し込んで……

 

↑パタンと表紙を閉じればペンが固定される。太さに関係なく使えるのはナイスアイデアだ

 

ノート型ホワイトボードを超えて、もはやノート感覚

さて、ひとまず一週間ほど手元で使い続けてみたのだが、慣れるほどに「ノート型ホワイトボードを使っている」という感覚は薄れてくる。というか、もうほぼノートだわ。これはやはり、シンセティックペーパーのマットさによるところが大だろう。

 

アイデアノートとしてあれこれ雑に書き込んで、必要な部分はiPhoneの「メモ」アプリでスキャンして取り込み。あとはざっくりウェットティッシュで拭き取って(一気に洗い流すのは楽しいけど、あとで水気を拭うのが面倒になってきた)、また書いて……という運用が、なかなか快適だ。

 

さらには、リモート会議用の小型ホワイトボードとしても充分に実用的。この場合はサインペンタイプのフリクションカラーズがマッチする。

↑摩擦で消えるインクであれば問題なく使える。特に、カリカリ感があってインクも濃く出る「フリクションポイントノック04」(パイロット)との相性は最高だと思う

 

↑消す前提で運用するノートなので、保存したいものはスキャンしておくといい。iPhoneなら「メモ」アプリが手軽だ

 

価格は、たしかにノート/ノート型ホワイトボードとしてはかなり高額かもしれない。しかし個人的には、それだけの価値はあるかもなー、とも感じる。

 

クラウドファンディング終了後には、これまで通り一般発売もされるはずだが、気になるのであれば、割引の効く先行販売中に買っちゃったほうが良さそうだ。

 

 

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ペン回しの世界チャンピオンを直撃! 完全監修したペンスピナー垂涎の「Gyro pro」の出来は?

“ペン回し”と聞いて、どういうものを想像するだろうか? 誰もが中高生の頃に一度くらいはチャレンジしたことがあるだろう、ボールペンを指で弾いたりして手の中でクルッと回す、あれだ。

 

ただ、おそらく今あなたの脳内で思い描いたペン回しとは次元の違うペン回しが、いま世界で人気となっており、さらには世界大会がある……なんてことまでは、さすがに想像の域を超えていたはずだ。「次元が違うってなんだよ、しょせんはペン回しだろ?」という人には、実際どんな感じか、動画を見てもらったほうが手っ取り早いかもしれない。

 

 

これが世界レベルの、いや実は、世界チャンピオンによるペン回しである。これを見てまだ「しょせんはペン回し」と言ってしまうのは、どう考えても無理筋だろう。凄すぎる!

 

ちなみにこの世界チャンピオンというのが、日本人プロパフォーマーのKayさん。2019年に中国で開催されたWPSAL(World Pen Spinning Alliance League)において、厳しい国内予選を勝ち上がった7か国16人のペンスピナー(ペン回し競技者)たちの頂点に立った、まさにトップ・オブ・ペンスピナーなのである。

↑世界大会のステージでパフォーマンスを行うKayさん

 

そしてこのKayさんが完全監修した「ペン回し最強のボールペン」が、クラウドファンディングサイト、Makuakeにおいて現在展開中だという。ひとまずそれがどういうものなのか、Kayさん本人にお話を伺ってきた。

※取材は感染症対策のもとで行っています

 

ペンスピナーが求める回し心地最強のペンとは?

その前に、世界チャンプ監修の「ペン回し最強ボールペン」が開発されることになった、その流れを説明しておこう。

 

まず2018年、精密部品加工メーカーの湯本電機が、ペン回しに最適化されたボールペン「Gyro(ジャイロ)」を発売。しかしこれを見たKayさんが、「これではまだ甘い! もっと凄いものができるはずだ」と湯本電機側に連絡を取り、タッグを組むことに。

 

そこから2年以上の月日をかけて開発されたのが、いまクラウドファンディングで展開されている「Gyro pro」というわけだ。

↑世界チャンプが「これが、ペンスピナーにとって最強のペンです」と豪語する。もう確実に凄いやつだ

 

湯本電機
Gyro pro
Gold/Silver/ Platinum」
各1万3200円(税別・クラウドファンディング価格)

 

Kay「先代『Gyro』は、僕らペンスピナーから見るとまだ微妙な部分がいくつかあったんです。まず、長さが足りなかった。ペンスピナーは既存のペンを改造して、20センチ前後まで伸ばすことが多い。あとは重心の分布も重要で、両端が重くなっているほうが回しやすいんだけど、先代はそれも違ったんです」

 

↑2018年に発売された先代「Gyro」。筆者も当時しっかり購入していた

 

もちろん、基本的な技(くるりと指で一回転させるなど)を繰り出すにはそれでも充分だが、最初の動画にあったようなレベルの高いパフォーマンス用としては厳しかった、とのこと。

 

そこで「Gyro pro」では、企画段階からKayさんが関わることで、ペンスピナーが求めるスペックを満たす製品に仕上がったのである。

 

長さは先代の約150mmから大きく伸びて、鉛筆よりも少し長い約190mmのABS製樹脂軸に。同時にペンの筆記機構も、重心が微妙に狂いやすい繰り出し式から、双頭タイプのキャップ式に変更された。

 

さらに、キャップの両端には金属製の重りを搭載することで、回転時の遠心力をフルに活かせるようになっている。

↑先端の重り(金属パーツ)は素材によってわずかに重量が違う。この微妙な差でも、回転フィールは大きく違ってくる

 

ラインナップは重りの素材別で、ベーシックなステンレスの「Gyro pro Silver」、重量感のある真鍮(しんちゅう)の「Gyro pro Gold」、軽量なアルミの「Gyro pro Platinum」の3タイプ(アルミはカラー3色あり)。それぞれ好みの重さでモデルを選ぶ方式だ。

 

重りの重量差は、各モデル間で1個辺り1g前後(両端で2個搭載するので、全体的な重量差は約2g)だが、実際に回してみると違いははっきり感じられるという。

↑リフィルを搭載した状態のSilver(ステンレス)モデルで、重さは約20g。重量の1/3が両端に偏っているので、非常に回しやすい

 

Kayオススメはベーシックなステンレスの『Gyro pro Silver』です。全体的なバランスが抜群なので、迷ったらこれで大丈夫。ペン回し初心者の人にも、これが最も回しやすいはずです。最終的には好みの問題なんですけどね(笑)。真鍮は重さを使って回転させる大技向け、軽いアルミは小回りが効く感じになっています

↑回しやすさだけでなく、書き味にもこだわったパーカーリフィル。「金属製のリフィルは2g以上あるため、搭載時の重心バランスを取るのにも苦労しました」とKayさんは話す

 

軽い樹脂軸の両端に重りということで、正直なところ、筆記用としてはかなりアンバランス。書く握りで持つと明らかにリアヘビーで、後ろに持って行かれる感じが強い。

 

しかし、本製品はあくまでもペン回し専用に作られているので、回すためにはこれが正しいバランス。ボールペンも用途によって正解・不正解の要素が大きく違ってくるのが、なかなかに面白い。

 

ちなみにリフィルも、先代がややレガシーな油性「SC-7N」だったのを、書き味向上を求めてパーカータイプのジェットストリーム「SXR-600-07」に変更されている……のだが正直なところ、そもそもこのバランスだし、書きやすさを求めてもしようがないような気はするのだが。

↑書いてる間中、ずっと後ろに引っぱられる感覚すら覚えるリアヘビーさ。筆記機能はあくまでも“おまけ”レベルと考えた方が良さそうだ

 

Kay「あと、特にこだわったのは軸のラバー塗装でした。軸に最適なグリップ力があると、技の出しやすさが全然違ってくるんですよ。湯本電機さんと何度もしつこくサンプルのやり取りをして、ようやくこのベストな摩擦感のあるラバー加工の軸が完成しました」

↑指に吸い付くような印象のラバー軸。さすがにこだわっただけはある安定感だ

 

インタビュー時には、決定する前のサンプル(ボツバージョン)とも触り比べさせてもらったが、確かに安定感は天地ほどの差があった。なるほど、ここまで差が出るなら、監修としてもこだわりどころだというのは納得できる。

 

質感だけでなく塗装の厚みなども考慮されているようで、しっかり回ってピタッと止まる、ペンスピナーにとっては完璧なグリップになっているそうだ。

 

Kay「ペンが1回2回ぐらい回せるかな? というペン回し初心者の方にも、ラバー軸のメリットは感じられると思います。なので、基本的な技の練習用にもぜひ使ってみてもらいたい。実際、確実に回しやすく感じてもらえるはずです」

 

 

まさに筆者は「ノーマルを1回2回ぐらい回せるかな?」レベルなのだが、それでも回したときの成功率は、普通のペンと比較してもかなり違うように思えた。

 

とはいえ、さすがに世界チャンプの目の前で「わー、回せた!」とはしゃぐのも恥ずかしい(こんなレベルで!)ので、コッソリと回していたんだけど。

 

実は昨今、自宅にこもってできる趣味として、ペン回しの人気は高まっているようだ。テレワークなら、休憩中にクルクル回していても上司ににらまれることもないし。

 

また、指先を使うことで、仕事疲れした脳のリフレッシュにもなるとのこと(Kayさんが脳科学者に確認済み)。あのレベルまで到達できるかはさておき、息抜き程度に気持ちよく回せるペンを1本持っておくというのは、悪くないのかもしれない。

 

 

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スリムなのに立つ! コクヨが挑戦した「ビジネスリュック」がテレワーカーに絶賛されそうな理由

文房具レビューを連載している筆者だが、実は文房具好きであると同時にカバン好きでもある。とくにリュック系。ライターという仕事柄、取材であちこちへ移動が多いため、快適に荷物を持ち運びたいから……というのが理由だ。

 

そのため、クラウドファンディングのサイトで面白そうな機能がついたリュックを見つけると、ついつい購入してしまう。ちなみにここ最近気になっているのは、ハンモックを内蔵したトラベルリュックだ(いま購入を迷っているところ)。

 

そんなこんなで、自宅にはリュックだけでも20個近くあって、収納スペースを圧迫している。「モノを入れるモノを入れておく場所がない」というのは、冷静に考えるとなかなか無駄の多い話ではある。

 

そんなリュック好きかつ文房具好きにとって、ちょっと聞き逃せない話を耳にした。なんと、お馴染みの文房具メーカー、コクヨが「リュックを作る」というのである。

 

コクヨは、これまでにもポーチやフリーアドレス用バッグをオフィス向けに発売してきたが、リュックというのはさすがに初耳。さらに、リュック以外の製品ラインアップも加えて、2021年3月から「THIRD FIELD」という新ブランドとして全国展開するとのこと(一部店舗では2月10日より先行販売中)。うーむ、どんなものか、気になるに決まっている。

 

今回はありがたいことに、件のリュックを発売前から1か月以上に渡って試用する機会を得たので、同じく「コクヨのリュック気になる!」という方に向けてレポートしてみたい。

 

コクヨのリュック、大地に立つ!!!

あらためて、新ブランドのTHIRD FIELDについて。これはいわゆるサードプレイス(自宅でも職場でもない、第三の居場所)に近い意味合いで、新たに仕事をする空間を快適にしつらえるツールとして展開していくらしい。

 

その中でも注目したいのが、“コクヨのリュック”こと「STAND BACKPACK」である。

コクヨ
THIRD FIELD(サードフィールド)
STAND BACKPACK
13.3インチモデル 1650015.6インチモデル 19000円(ともに税別)
※写真は13.3インチモデル

 

ビジネスリュックとしては定番のややスリムなフォルムで、サイズは13.3インチと15.6インチの2展開。つまり「それぞれノートPCのサイズに合わせた荷室がありますよ」ということで、よくあるリットル容量表記よりも分かりやすく、現実的だ。

 

スリムな分だけ容量は少ないが、都市部での電車移動を考えると、むしろこれぐらいスリムじゃないと困る、というケースも充分に考えられる。13.3インチモデルで厚みの実測が100mmほどだったので、これなら電車内でも周囲への影響は最低限に抑えられそうだ。

↑背負った状態で周りに圧迫感を与えにくいスリムさ

 

上下分割コンパートメントがメインの収納

荷室は、まずサイズ表記の元ともなっているノートPCの収納がひとつ。それに加え、PC収納と同じトップファスナーからアクセスできる上部荷室と、両サイドのファスナーからアクセスする下部荷室の、上下分割コンパートメントがメインの収納となっている。

 

さらにトップポケット、背面パッド脇のサイドポケット、フロントポケットと計3か所のポケットを備えており、小物は適宜振り分けて入れておくという感じだ。

↑ジッパーでガバッと開く上部荷室には、ペンケースやACアダプタなどがすっきり収まる

 

↑上部荷室からアクセスできるPC収納。クッションは内蔵していないので、PCケースに入れるか、底にウレタンクッションを引くなどしたほうが安全かもしれない

 

↑上部荷室に近いトップポケット。内張はメッシュ素材なので、収納物が上部荷室からも透けて確認できる。メガネケースやワイヤレスイヤホンケースがここにちょうど良く収まった

 

スリムなボディに自立機能を搭載

そして最大の特徴が、自立機能。なにしろ“自立型ペンケース”を生んだコクヨだけに、スリムなリュックだって立たせてしまうのだ。

 

立たせ方は簡単で、バッグ前面の下をつまんで引っ張るだけ。マグネットで固定されていたカバーがパクッと開いて支えになることで、しっかり立つという仕組みである。戻すときは、リュックを持ち上げるだけで、勝手にマグネットがくっついて元通り。

↑普段はマグネットで固定されているスタンド用カバー。ここを開いた状態で置くと……

 

↑スリムリュックが安定して自立するのだ!

 

リュックが自立してなにかイイかというと……例えばカフェのベンチ席に立てて置けば上部荷室とPC収納からの出し入れがラクだ。

 

他にも、出先の会議室で荷物を置く場所がないときにも、立たせてしまえば邪魔になりにくい。カウンターだけのラーメン屋で荷物は床に置くしかないという状況でも、立たせておけば汚れる心配は最小限で済むだろう。

 

何も考えずにサッと置けるというだけで、かなりストレスフリーなのである。

↑カフェに床置きしたまま、サッとPCが取り出せる。このスリムではなかなかできないぞ

 

↑ワークスペースでも立たせておけば荷物の出し入れがスムーズだ

 

これまでは壁や椅子の脚に立てかけるなど、状況に合わせてなんとなく乗り切ってきたわけだが、今後はもうその場しのぎでリュックの場所を考える必要がなくなるのだ。自立しなくてもリュックとしては成立するけど、それでもあった方がなにかと嬉しいタイプの機能だろう。

 

実際に、これを1か月ほどメインバッグとして使ってみた体感としても、リュックを立たせておきたいというシーンは日常的に意外とあったんだなあ、という印象だ。

 

物申したいところも……

ただし、収納については、個人的には下部荷室へのアクセスがもうちょっと使いやすいとありがたかった。

↑収納量が一番大きい下部荷室がこれだけしか開口(左サイド)しないのは、ちょっと使いにくい。中もよく見えないので、出し入れは手探りになる

 

サイドファスナーはそれなりに大きく開く構造になってはいるものの、全体を通して最も大きい荷室へのアクセスとしては不十分。手を突っ込んでの出し入れが面倒なので、あまり使う気持ちになれないのである。そこはちょっと惜しいし、容量的にももったいない気がする。

 

対して上部荷室は、ファスナーでフルオープンになるので、アクセス良好。ノートPCと一緒に使うACアダプタやモバイルバッテリーなど、頻繁に使うものは全部こちらに放り込んでおきたい。

 

……などと文句はあるものの、メーカーとして初のリュックと考えれば、この完成度の高さはたいしたものだと思う。

↑右サイドの開口は下部荷室アクセスと兼用でドリンクホルダーにも変身する。これはちょっと面白い機構だ

 

特に「ノートPCとケーブル類、あとは飲み物と文房具一式あればどこでも仕事OK!」というタイプの人……つまり、すでにノマド的な働き方ができている人なら、このリュックはかなり使えるはず。なにより、どこでもワークなスタイルと、自立して「邪魔になりにくい・置き場所で悩まず済む」機能との相性が良すぎだ。

 

価格的にはけっしてお安い方ではないが、他にないタイプのリュックである。気になるのであれば、機会をみてぜひ試してみて欲しい。

ドキュメントバッグも「こいつ……立つぞ!」

THIRD FIELDブランドには、他にツールポーチやPCバッグなどがラインアップされている。その中でも使ってみて面白かったのが、書類ホルダーの「STAND DOCUMENT BAG」だ。

コクヨ
THIRD FIELD
STAND DOCUMENT BAG
3000円(税別)

 

サイズ的にはA4+、具体的には角2封筒がすっぽり収まってまだ余裕があるくらい。硬い表紙と裏表紙の内側には、インデックス付きの仕切りが2枚と透明ポケットが付いており、書類の分類収納ができるように作られている。この仕切りとポケットはタテヨコ両対応なので、どちらの向きに書類を入れても抜け落ちない。

 

ちなみに、閉じた状態ではマグネット内蔵フラップで挟んで固定できるので、カバンの中で勝手に開いて書類がバラ落ち、なんてトラブルもなさそうだ。

↑マグネットフラップを外して表紙を開くと、透明ポケット+黒いインデックス2山が見える。さらに表紙を閉じたままでも、封筒感覚で書類が出し入れ可能だ

 

リュックが立つし、名前にも「STAND」が入っているし、当然のように書類ホルダーだって自立するんだろ? と思ったら、案の定だ。

 

立たせ方は、表紙を開いて中央の折り線から折り曲げて戻すだけ。これで自立して置いておける書類スタンドのできあがり! マグネットフラップは、180度折り返して表紙に貼り付けると邪魔にならない。

↑よっこいしょ、と表紙を三角に折ってホルダー部の後ろに差し込む

 

↑自立して、狭いスペースでも使える書類ストッカーに変形

 

書類ホルダーが自立すると、書類をそのまま机に広げるのに対して半分ぐらいの面積で済むので、かなり省スペース。狭い机で仕事をする場合は、これは作業効率に効いてくる部分なのだ。

 

なにより「STAND DOCUMENT BAG」はサイズが大きめなので、13インチのノートPCを開いた後ろに置いても、インデックスがしっかり見えて、書類を出し入れできる。特に横幅の狭いカフェ机では、この前後配置によって、思った以上にスマートな作業環境ができあがるのだ。

 

コップの結露で平置きした書類を濡らすこともないし、なかなかに快適!

 

 

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第三のノート誕生! 入れ替え可能な“綴じ”ノート「SlideNote」は“アイデア出しは手書き”派の最適解!?

一般的に“ノート”として扱われているものには、超大きくざっくり分けて2つある。紙束を綴じた、いわゆる「ノート」と、開閉可能なリングで専用の用紙を綴じた「ルーズリーフ」だ。

 

もちろん前者のノートと言うだけでも、糊や糸で綴じたもの、リング綴じのものといろいろあるし、細かく分類していったら面倒くさいことになる。とりあえずここは、ノートとルーズリーフの2つだ、と思ってもらいたい。

↑左がノート、右がルーズリーフ

 

この2つにはそれぞれ、使う上でメリットとデメリットがある。(今さら! と言う人は、この段落は読み飛ばしてOK)

 

ノートは、軽くスリムなので携帯しやすい。また、基本的に価格が安い。一方デメリットは、ページの編集(入れ替え)ができないので、基本的に1つの系列順にしか記入しづらい(これがメリットになるケースもあるが、今回は述べない)。

 

対してルーズリーフは、ページ編集ができるのが最大のメリット。インデックスを使えば1冊で複数の系列が扱えるのも便利だし、横罫・方眼などタイプの違う用紙の混在も可能。その代わり、開閉リングを備えたバインダーは分厚くて重い。

 

あくまでも個人の考え方や好みで選ぶものなので、どっちがベストという話ではない。だが、それだけに「自分に合ったノート選び」というのは難しいのである。しかも昨年末には、“ノート”にもう一つ選択肢が加わり、さらにどれを使うべきか悩ましいことになったのだ。

 

第三のノート、誕生!
———PageBase「SlideNote」

ノートでもルーズリーフでもない、新しい第三の選択肢というのが、印刷会社を母体とした新ブランドPageBaseの「SlideNote」だ。

 

製品名で自らノートを名乗っているものの、使い方はルーズリーフっぽくページ編集が可能で、そのくせ用紙にリング穴は不要というのだから、かなり異質な存在と言える。

PageBase
SlideNote A4サイズ
2020円(税別)

 

↑表紙を開いた印象は、ほとんど綴じノートのよう。この状態では「ルーズリーフ感覚で使える」と言われてもピンとこないかもしれない

 

初手からタネを明かしてしまうと、これ、“ノートっぽく使えるファイルバインダー”なのである。

 

ただ、中に綴じリングやクリアポケットはない。表紙を開けばページが始まっているので、意識しなければ、まったく普通にノートとして使うことができる。だが、このページは自由に取り外したり、差し替えたりが可能となっているのだ。

↑ページをバインダー本体から抜いた様子。上質紙で最大30枚ほどがセットできる

 

どういうことかというと、実は背の部分に2か所、スライド式の金属クリップが埋め込まれているのだ。

 

背の部分をつまんで外向きに引っ張ると、クリップがオープン。適当に紙を差し込んだら、背を再びスライドさせて戻す。するとクリップが紙を挟んで固定する。これで元通り、ノートとして使える状態になるという仕組みだ。

 

実のところ、既存のレールファイルを使えば似たような使い方もできるのだが、背を少しスライドさせるだけで開閉できるのは、圧倒的にラク。

↑本体の背パーツをつまんで……

 

↑軽く引っぱるだけ。これでクリップ(写真内の金属部)が開放され、自由にページ編集ができるようになる

 

ノートのページとして使う用紙は、専用サイト「Paper&Print」から購入できる。先に述べた通り、発売元のPageBaseは母体が印刷会社なので、紙と罫線タイプを自由に組み合わせての注文が可能だ。

 

紙は、一般的な上質紙から、高級ノート用の「OKフールス」、手帳で人気の「トモエリバー」、銀行業務用の「バンクペーパー」など12種類。罫線は横罫や方眼から五線譜、400字詰原稿用紙を含む8種類。罫線に関しては希望を伝えてのカスタムも可能なので、まぁ好き放題という感じだ。

 

これなら、紙にうるさい文房具好きも黙るだろ、という揃えとなっている。

↑「Paper&Print」で選べる罫線は、現時点で8種類。試合の記録などに使えるスポーツフォーマットがユニークだ

 

↑筆者はお気に入りのレターペーパー「コンケラーレイド」×5mm方眼を購入してみた。ザラッとした紙質は、鉛筆で書くと気持ちがいい

 

しかし、勘のいい人ならとっくにお気づきだろう。「ん? そもそもこれ、専用用紙とか要らなくない?」

 

そう、ある意味ではそれも正解かも。紙と印刷精度にこだわらなければ、例えば上質紙に普通のプリンターで罫線を裏表印刷したヤツでも、挟んでしまえば自由に使える。どころか、無罫線でよければコピー用紙の束をそのままガチャッと入れちゃっても問題なし!

 

当然ながら、穴の空いたルーズリーフ用紙だってそのまま挟み込みOK。要するに、A4の紙ならもうなんだって挟んで持ち歩けるわけだ。

 

とはいえ、紙質や罫線を気にしたいなら、やっぱり専用紙を注文したほうが幸せになれるとは思うけど。

↑端をクリップで挟むだけの固定なので、サイズや穴の有無は関係なし。どんな紙でも、挟めばノート綴じになるワイルドさが面白い

 

さらに、ファイルバインダー要素を強めに考えれば、ノート用紙以外にも、プリントアウトした資料や小冊子も挟んでファイリングが可能だ。議事録をとったノートページの次に、もらった資料を挟む、といった使い方をすれば、一冊で仕事内容を集約した業務ノートだって簡単に作れるのである。

 

世の中的に“紙”と言えば、ほとんどがA4サイズを基準に動いている。つまりA4サイズの「SlideNote」があれば、だいたいの紙モノは自由にノートっぽく使えるということだ。

↑家電マニュアルのような小冊子だって、このとおり綴じ込めてしまう

 

ここまでの話だと「すげー、もうこれ一択じゃん!」って気分にもなるが、もちろん、実際に使ってみるといくつか良くない部分も見受けられた。

 

まず、クリップを背パーツで押さえる構造のため、表紙の開閉がかなり硬い。机に置いて180度開くだけでも、手でグイッと押さえる必要があるのだ。そのため、ノド側(ページを見開いた際の中央付近)への書き込みがかなりやりづらい。もしかしたら、筆記時は紙をバラして使って、書き終わったものを閲覧用に再クリップする、というのがラクなのかも。

 

もうひとつ、背パーツにロック機構がないので、カバンから取り出すときにうっかりスライドさせてしまい、中の紙がまとめてバサッと落ちてしまうこともあった。これはちょっと困る。

↑クリップの“くわえ”が約20mm(写真の赤い部分)とかなり大きいのも不満のひとつ。印刷物を挟むと端の文字が読めないこともある

 

……などの不満はいくつかあるが、とはいえ第三のノートとして期待するだけのポテンシャルは十分にあると思う。

 

ファイルバインダーなんだけど、クリアホルダーぐらいの手軽さで紙を持ち運べて、ノートにもなる。これは紙の運用を考える上でかなり面白い選択肢になり得るのではないだろうか。

 

 

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鉛筆削りが疾走する!? プラス「ハシレ!エンピツケズリ!」は子どもとかつての子どもに買い一択のケッサク文房具

生まれて初めて鉛筆を削ったときのことを憶えている人は、いるだろうか? タイミングとしてはおそらく、小学校入学直前の今頃。入学用品のひとつとして買い与えられた鉛筆と鉛筆削りを、親から「こう使うんだよ」と教えてもらう、というケースが多いのではないだろうか。

 

筆者もまさにそうで、当時の定番だったナショナルの電動鉛筆削り「ペンナー KP-55」を買ってもらったのである。水色ボディに尖り具合セレクターのついた、かっこいいやつだ。

↑「ナショナル KP-55」の画像検索結果。いい出物があれば欲しいな……とずっとメルカリなどを探し回っている

 

ピカピカのKP-55をうっとりと眺めていたら、父親が「よし、じゃあ鉛筆の削り方を教えてやろう」と言う。で、父親に手を添えられつつ電動削り器に新品の鉛筆を差し込むと、瞬間、ズガガガガガガ! という爆音が上がり、凄まじい振動が手に響いたのである。

 

そのあまりのけたたましさにビックリした筆者が手を離そうとしたのに、あろうことか、父親が手をがっちり抑え込んで離さない。手がビリビリ痺れるほどの振動と音、そして、どんどん飲み込まれていく鉛筆。「このままでは手まで食われる!」と怯えてギャンギャン泣きわめき暴れる筆者。なぜかゲラゲラ笑いつつも手をガッチリ離さない父親。おそらくあの頃には、全国各地で同様に繰り広げられていたであろう、軽い惨劇の現場である。

 

その後どうなったのかは、あまり憶えていない。ただ、それ以降はけっこう平気でKP-55を使って鉛筆を削っていたはずで、あの初体験が幼いきだて少年のトラウマにならなかったのは幸いだった。

 

もちろん、近年の電動鉛筆削りは昭和の製品よりもずっとマイルドになっているが、それでも、振動と音に怯える子どもはまだいるのかもしれない。

 

ハシレ! エンピツケズリ! 走れ!

そもそも、なんで鉛筆削りごときにそこまでビクビクせねばならんのか。楽しく削ることはできないのか。

 

音と振動の少ない手回しの削り器だって、ハンドルの回転半径がまだ体の小さな子どもには大きすぎて、上手く回すのは一苦労だ。もっとラクに、かつ怯えることなく楽しく鉛筆が削れたっていいはずだろう。

プラス
ハシレ!エンピツケズリ!
3000円(税別)

 

だから、プラスの新しい鉛筆削り「ハシレ!エンピツケズリ!」を一目見た瞬間に、そうそう、こういうやつだよ! と思ったのだ。

 

もしかしたら開発担当者は、同じく電動鉛筆削りでギャン泣きした経験を持つ人なのかもしれない。コンセプトカー的な未来感溢れるフォルムが超カッコイイし、さらにこれ、手に持ってコロコロと走らせるだけで鉛筆が削れてしまうというのだから、この時点で早くも最高と言わざるを得ない。

 

もちろん、つらい振動とか怖い爆音もなし。ただトップレーサー気分で車を走らせているだけで、だ。

↑大迫力の鉛筆挿入口が印象的なリアビュー

 

↑鉛筆を挿したら、レバーを左に倒してロック。鉛筆が削れるのに合わせてレバーが前に動く構造が車のシフトレバーっぽい

 

まず、後部のジェットノズルめいた穴に鉛筆を挿したら、レバーを左に倒してロック。あとは手を車体上部に添えてコロコロと走らせれば、前輪の回転に連動して車体内部の削り器が回転し、鉛筆を削り上げていくという仕組み。

 

エラストマー製のタイヤはグリップ力があり、フラットな路面でもしっかり食いついて空転にくいのも、いい感じだ。もちろん、走らせることで机や床を傷つけるようなこともなさそう。

↑前後に転がすことで、狭い机の上でもキビキビと削る走行性能は、松任谷正隆と田辺憲一(by カーグラTV)も大満足だろう

 

ここで面白いのが「1Wayギア」と名付けられた構造で、本体が前進しても後進しても、削り器はずっと同じ方向に回り続けるのである。

 

 

↑前進と後退でそれぞれ左右のギアが切り替わって、削り器を一定方向に回転させる面白い構造

 

おかげで、鉛筆を削るためにどこまでも走らせる必要はない。途中で机から飛び出しそうになってバックしている間も、きちんと仕事をしてくれるのだ。

 

 

つい延々とコロコロ走らせ続けそうになるが、内部からカチ! カチ! と音がしたら、ドライブ終了の合図。ロックを外して鉛筆を取り出せば、ピンピンに削り上がっているわけだ。

 

ロックレバーは強めのバネが入っているので、レバーを引き戻しつつ倒すという動作は、小さい子どもにはちょっと難しいかもしれない。もしかしたら、このあたりをチャイルドロックとして機能させようとしているのかもしれないのだが。

↑この通りの削り上がり。芯が折れているぐらいだと、前進後退合わせて1mほど走らせればきれいに尖る

 

削りカスを捨てるときは、ガラスルーフ(っぽい部分)の先端にあるスライダを引いて持ち上げる。するとルーフがパカッと外れるので、そのまま車体内部に溜め込まれたカスを捨てるだけ。

 

ちなみに削り刃が摩耗して交換する、もしくは芯詰まりの解消も、ルーフを外した状態で行う。この時は、削り刃近くの固定ネジに、指先をかけてユニットを引きずり出すことになるので、必ず専門のメカニック(保護者)が行うこと。日常メンテナンスはカス捨てまで、とドライバーにも伝えておこう。

↑ルーフを開くと削りカスが。あまり溜めすぎると削り器の回転を阻害しそうなので、早めに廃棄したい

 

↑刃の交換はユニットごと行う。替え刃は予備が1個入っているが、別売り(320円・税別)でも購入可能

 

良くできているなーと感じたのは、サイズ感だ。

 

全長155mmは、いわゆるミニカーの1/32スケールに近く、さらに全高のボリュームもあるため、トミカの1/60スケールに慣れている子どもにはかなり大きく感じられるはず。このデカさがいいのだ。

 

大人の手でコロコロ走らせても問題ないサイズなので、子どもの手には少し余るぐらい(幅を削っているので、持つのに問題はない)。この大きめサイズは、ただのミニカーじゃない特別な車なのだ、という気持ちの盛り上がりにつながるのではないか。

 

実際、構造的にはもう少しコンパクトにだって問題なく作れただろうから、これは運転するドライバーのテンションまで考慮したサイズだと思う。

 

もちろん、削る効率の良さとかスピードとか、そういった点で便利な削り器では絶対にない。ないんだけど、でも、必ずしも「高効率=優秀」というわけじゃないのが、文房具の面白いところだと思うのだ。

 

使う楽しさとか、削れるまでの作業を退屈に感じないという意味で言えば、「ハシレ!エンピツケズリ!」はなかなかに優秀なものなんじゃないだろうか。これ、大人だって削ってみたくなるし。

 

 

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チップからチップが生えてる…!? 次世代ラインマーカーの刺客、サンスター文具「Ninipie(ニニピー)」の仕組みと使い心地をレビュー

もしかすると今、ラインマーカーが新たなステージへ進もうとしているタイミングなのではないだろうか。ちょっと古い言い方をするなら、ラインマーカー2.0の時代が来てるっぽい、と。

 

そもそもラインマーカー(蛍光マーカー)というのは、ノートや書類の「ここを目立たせたい」という部分を、目立つカラーでマーキングするためのもの。つまり、ひとつの情報をその他大勢の中に埋没させずにピン留めする、というのが最大の機能だ。

 

これは結構すごい発明だと思うのだが……欠点もいくつかあるように思う。

 

まず、使いすぎがNG。紙面に何か所もマーキングを行うと、目立たせるはずの部分が、結果的に“その他大勢”になってしまうということ。そしてもうひとつが、マーキングした以外の部分の重要度が極端に下がってしまうこと。見る側が、マーキングされた箇所だけチェックすればいい、という感覚に陥って、他に注意を払えなくなるのである。

 

そこで、そういった欠点を克服しようと作られているのが、いわゆる“新世代”のラインマーカーである、という話だ。とにかく目立つ蛍光色を塗ってたらええねん、という時代は、そろそろ終わりに近づいているのかもしれないぞ。

 

新世代ラインマーカーは情報をコントロールするツールだ!

新世代ラインマーカーとしてまず挙げられるのが、2020年に発売されたコクヨ「マークタス」シリーズである。

 

「マークタス 2トーンカラーマーカー」は、1本のペン先が同じ色の濃/淡に分かれており、マーキングを塗り分けることができる。これにより、「すごく目立つ」と「ちょっと目立つ」を階調で仕分けることができるのだ。

 

目立つ度合いが調整できれば、マーキング部がその他大勢に埋没しにくくなるのは当然だろう。

↑新世代ラインマーカーの先駆け、コクヨ「マークタス」シリーズの「2ウェイカラーマーカー」(左)と「2トーンカラーマーカー」(右)

 

一方、同シリーズの「マークタス 2ウェイカラーマーカー」は、ラインマーカーと細字カラーペンが一体化したもの。

 

ラインによるマーキングと、それよりも目立つ濃色の文字情報(はっきりメモタイプ)、もしくはグレーで軽く目につく程度の補足情報(ひかえめメモ)を書き分けることで、マーキング部以外にも重要度をコントロールした情報を付与できるわけだ。

 

ラインマーカーの新ジャンル誕生!“色”の濃淡で書類を整理するコクヨの2Way「マークタス」
https://getnavi.jp/stationery/544894/

 

これらは非常に画期的なアイデアで、確かに優れた製品と言えるのだが……、残念ながら、こういった次世代ラインマーカーに取り組んでいるのは、現時点でコクヨだけ。他に挑戦するメーカーがなければ、もしかしたらこの流れは立ち消えしてしまうかも、と思っていたのだ。

 

しかし、出てきましたよ、第2の次世代型ラインマーカー! それが、サンスター文具から発売されたペン&マーカー「Ninipie」(ニニピー)である。

サンスター文具
Ninipie(ニニピー)
各200円(税別)

 

↑ラインマーカーのマーキング+カラーペンの文字情報で、紙面がまとめやすい

 

一見するとなんの変哲もないラインマーカーのようで、なによりユニークなのは、そのペン先チップ。

 

なんとラインマーカー用のチップとニードルタイプのカラーペンチップが並んで突き出している。しかも、ニードルがやや斜めに出ているという、恐ろしく独特なスタイルだ。

 

ラインマーカーとして使うときはマーカー用チップを下向けにして、スッと引ける。ペンとして使うなら、くるりと180°回転させればOK。斜めニードルのおかげでマーカーチップと干渉することなく、書き分けができるという仕組みである。

↑初見だと、まず間違いなくギョッとするペン&マーカーチップ

 

ラインナップは、「ライトピンク×ピンク」「ライトイエロー×イエロー」「ライトブルー×ブルー」「ライトグレー×ブラック」「ライトグリーン×ピーチピンク」「ライトバイオレット×ネイビー」の6種類。ライト○○となっている方がラインマーカー、もう片方がカラーペンのインク色を表している。

 

マーカーの方が淡いので、カラーペンで書いた上から重ねてマーキング、という使い方も可能だ。

↑ラインマーカーは、全体的に発色が淡めでアッサリとした印象。ペンを目立たせるための調整か

 

ピンク・イエロー・ブルー・グレーはマーカーとペンが同系色なのに対して、グリーンとバイオレットは別のカラーペンになっている。異なるカラーを1本に搭載した理由は不明だが、これは重ねてマーキングした際の読みやすさを考えてのことだろうか?

 

特にバイオレット用のネイビーは、そのままでも、ラインと重ねても視認性が高く、読みやすい。もちろん地の文字色(黒)とも違う色なので差別化しやすく、情報を追記するのにもオススメだ。

 

↑軸から分解してみた図。ペンとマーカー、それぞれ別の中綿からインクが供給されていることが分かる

 

つまり、方向性としては「マークタス 2ウェイカラーマーカー」と同じで、重要度をコントロールしつつ、情報付与ができるマーカーとして作られているようだ。しかも「2ウェイカラーマーカー」は、マーカーとペンで書き分けるのに持ち替えが必要だが、先述の通り「Ninipie」は180°回転させるだけ。

 

ということは、物理的な機能で言えば「マークタス 2トーンカラーマーカー」の分割チップと同様ということになる。

 

うーん、要するに「いいとこ取りしたフォロワー」ってことかもしれないが、言い方を変えれば「後発の強みでいろいろやってきた」とも言える。

 

↑Ninipieとマークタスの比較。マークタスの「細太の書き分け」「持ち替え不要で濃淡の書き分け」機能が合体すると、Ninipieになる

 

ただ、ペンで書く際にマーカーチップが視界に重なってしまうのは、いささか問題のような気がする。

 

勘の鋭い人なら、チップの写真を見た時点で気付いただろうが、その通り。マーカーのせいでペン先がどこにあるかよく見えず、かなり書きづらいのだ。強めに筆圧をかけて書いていると、ペン先チップを中心にペン軸が傾いてくるし。

↑カラーペンでの筆記を自分視点(右)で見るとこんな感じ。ペン先が見えず書きづらい!

 

本当に正直な話をすれば、現時点ではいろいろと使いづらい部分もあるマーカー、と言わざるを得ない。とはいえ、情報コントロールツールとしての機能は間違いないし、使いこなせばノートの整理などにかなり役立つ気もするのだ。なにより、ラインマーカーの最前線はこんなことになってるぞ、というのを体感して欲しい。

 

さすがに、万人に向けてオススメはしづらいけれど、文房具好きなら一度は触れておくべきアイテムでは? と思う次第だ。

 

 

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在宅ワークの腰痛はこれで解消! 好きな角度で前傾姿勢を作れるエアークッションの座り心地が最高だった

新型コロナウイルスが騒がれるようになって初の冬ということで、これまでには感じていなかった様々な“冬のつらいこと”が発生しているように思う。

 

アルコールやこまめな手洗いで手や指先がガサガサに荒れたり、密閉空間における「換気をこまめにしたい派」VS.「でも寒いじゃん派」の争いだったりと、コロナ禍の冬はとにかく大変なのである。コロナを疑われるから、軽い風邪すら引けやしない。

 

そんな中でも、自宅テレワーカーの腰痛はキツい問題だろう。そもそも、普通の家庭は仕事をする前提で設えられていない。リラックスできるソファやローテーブルはあっても、そこでがっつりPCで作業するなんて、不可能に近い。仕方なく、ダイニングテーブル&チェアで仕事をするとしても、硬くて座り心地の悪い椅子に長時間座っていたら、冷えとのコンボでヘビーな腰痛待ったなし! だ。

 

とはいっても、機能的なハイバックのオフィスチェアを自宅に導入するのはなかなかハードルが高い。であれば、あの硬くて座りづらいダイニングチェアを、少しでも改善するのが最善策ではないか?

 

そこで今回は、オフィス通販のカウネットが開発した商品を紹介したい。

 

長時間のPC作業から腰を守るなら“前傾姿勢”が重要!

そもそも、ダイニングチェアのなにが仕事に向いてないかといえば、基本的には深くゆったり腰掛ける前提の形状をしているのが良くない。数時間机に向かって作業すると、どうしても猫背になり、腰痛勃発。

 

かといって浅く腰掛けると、今度は座面が硬いのがアダとなる。小さい座面積で分散しきれなかった体圧が、尻や太股裏にかかって梨状筋がこわばる→座骨神経を圧迫→腰痛、というコースだ。

 

そう、ダイニングチェアに長時間座るのは、どうやったって腰痛につながるのである。

↑こんな環境で仕事をすると、背中は丸まってかなりの猫背に。これは腰へのダメージが大きい!

 

硬い椅子がオフィスチェアに化ける魔法のクッション

そこでまずは、クッションを敷くのが急務だ。そういった腰痛サポートクッションは、すでにあちこちのメーカーから発売されているし、導入済みという人もいるだろう。冬と言わず、年中ガチの腰痛に泣かされている筆者も、これまでいろいろな腰痛クッションを試してきたが、そんな中で興味深かったのが、カウネットの独自ブランドであるカウコレプレミアムから発売された、「ワークサポートクッション エアーイン」である。

カウコレプレミアム(カウネット)
ワークサポートクッション エアーイン 座用
7990円(税別)

 

↑これを椅子に置くだけ。背もたれに装着する「ワークサポートクッション背用」は別売りだが、これもあるとなおよし。4990円(税別)

 

フォームウレタン製のふっかりとしたクッションなので、そのまま尻の下に敷けば、かなり快適。広い座面の全体で体圧が分散されるので、これだけでも充分に腰痛対策にはなるはず。なにも敷かない状態と比べたら雲泥の差だ。

 

しかしこのクッションは、それだけでは終わらない。座面をよく見ると、フチになにか不思議なモールドがあるのがわかるだろうか?

↑座面のフチにある小さなふくらみが、エアポンプになっている

 

実はこれ、座面の角度調整用エアポンプなのである。腰を浮かせた状態でモールド部を掴み、グッグッグッと何度か押し込むと……おお、座面裏側の奥が円筒状に膨らんでいる!

 

このポンプで膨らませた部分が持ち上がることで、座面の角度が急になり、座ったときに前傾姿勢がとれるようになるのだ。この姿勢なら、椅子に深く座ったままでも猫背にならず作業ができて快適。腰もつらくないのである。

 

ついでに背もたれに追加の背用クッションを装着すれば、座り心地はまさにちゃんとしたオフィスチェア! という感じだ。

↑ポンプはだいたい12~15回プッシュで最大角まで膨らむ。掌の母指球あたりで押すとラクだ

 

↑裏側の膨らむ前と後を、サイドから見た図。ボコッと膨らんだクッションが、お尻を持ち上げて前傾姿勢を作ってくれる

 

↑クッションに角度がつくと、特に意識しなくても自然と背筋が伸びる。これは長時間座りっぱなしでの疲労感がまったく違う

 

逆に、少し前傾がきつすぎると思うなら、もちろんほどよく調整することも可能だ。ポンプの隣にある黒い調整ボタンを押せば、スーッとエアが抜けていくので、自分の体格や好み、テーブルの高さに合わせて角度を決めればOK。

 

姿勢さえピタリと決まれば、腰の心配をすることなく長時間の作業でもこなせるはずである。実際、この記事もダイニングチェア+ワークサポートクッション エアーイン(ポンプ8プッシュ)で執筆してすでに3時間ほどだが、ぜんぜんラク! これいいわー。

↑スーッとかなり早くエアが抜けるので、ボタンで角度調整するときは少しずつ様子を見ながら行ったほうがいい

 

ただ、ウレタンが柔らかいため、膨らんだエアクッションの硬さまでダイレクトに尻に伝わってしまうのは、ちょっともったいない。個人的には、これがなければ満点だったように思う。

 

とはいえ、ここまで姿勢が調整できる機能は、他の腰痛サポートクッションにはなかったわけで。在宅ワークで腰痛が悪化したという人なら、まず試してみる価値はあるだろう。クッションとしては多少高価ではあるが、何万円もする大きなオフィスチェアを買うとか、冬場ずっと整骨院通いをする手間とかを考えれば、何ほどがあろうかという感じなのだ。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
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2021年に続く、2020年「文房具」二大トレンドをきだてたくが見立てる!

2020年を何かひと言で表せと言われたら、もう「予想外」しかないだろう。誰がこんな状況を、去年の今頃に予想できただろうか?

 

実際のところ、筆者も昨年末から今年初めにかけての文房具トレンド予想では「東京オリンピックを機会としたテレワーク文房具の普及」とか、呑気な話をしていたわけで。結果として、テレワークが便利になる文房具の普及、という部分だけは当たったことになるが、いやはや、それがオリンピックが中止になるほどの世界的なコロナ禍が要因だとか、想像がつくはずもない。

【関連記事】
世相を占う!? 2020年へ続く、2019年文房具の三大トレンド
https://getnavi.jp/stationery/460500/

 

コロナは収まるのか? ワクチンは効くのか? 経済は立ち直るのか? などといった不確定要素盛り盛りの現状では、2021年にどのような文房具が流行るか? のトレンド予測なんて無理中の無理! というのが、本音だ。

 

だから今回はひとまず、結局のところ今年はどういったジャンルの文房具が人気だったのか、を振り返ってみよう。一応の可能性として、文房具業界ではこの2020年トレンドがもう少し続くような気もしているのだ。いや、断言はできないけれど……(弱気)

 

1. テレワーク文具は、より在宅ワーク仕様へ!

ひとつ確実性が高いのが、冒頭で述べた「テレワークが便利になる文房具」というジャンルがさらに普及しそう、ということ。

 

その中でも今年とくに注目されたのが、自宅でもオフィスに近い作業効率性が得られるペンケースやバッグ。通称“携帯型オフィス”とよばれるものだ。

 

↑携帯型オフィスの代表格

 

LIHIT LAB.
HINEMO スタンドポーチ Lサイズ
3950円(税別)
https://getnavi.jp/stationery/495392/

 

2020年に発売されたものは、東京オリンピック含みのテレワーク需要増を見越して作られていたはずだが、それがタイミング良く(というのも言葉が悪いが)コロナ禍にハマッたという次第である。

 

基本的には「展開すれば場所を選ばずどこでも仕事が始められる」という機能が主軸。発売当時、その「場所を選ばずどこでも」にはカフェやコワーキングスペース成分が多く含まれていたはずだが、コロナ禍によってテレワークで働ける場所は、ほぼ自宅一択となってしまった。

 

↑一見するとビジネストート風のバッグが、ジッパーで3辺フルオープンして自立

 

↑作業空間に“壁”を作ることで、周囲に「いま仕事中」をアピール。自宅テレワーカーには必須の機能かもしれない

 

自宅と、その他のオフィス外ワークスペースでなにが違うか? というと、大きいのは「子どもを含めた家族が常時いること」と「机・椅子など設備の有無」だろう。一人暮らしであればさほど関係ないが、特に子どものいる世帯で家族の問題はかなり重要だ。自分以外の人間が仕事と関係なく動くだけでも集中力が落ちるし、仕事オン/オフの切り替えも難しくなる。

 

そういう場合に有効なのが「HINEMO スタンドポーチ」(LIHIT LAB.)のように、バッグが変形してパーテーションになる製品だ。視界を制限して集中力を高め、さらに子どもにも「これが机にあるときはお父さん/お母さんは大事な仕事中だから」と説明しやすい。

 

今後もおそらく“携帯型オフィス”は、オンオフを物理的に区切る方向で進化するのではないだろうか。

 

また、自宅仕事において「自宅の狭い机や硬い椅子で、長時間働くのはしんどい!」ということは、多くの人が体感しているはず。オフィスにある仕事専用の机や座り心地の良い椅子は、実は当たり前のものじゃなかった、という話である。そこで必要になるのが、そういった環境を改善するツール類だ。

 

文房具ではないが、カウネット「ワークサポートクッション エアーイン」は、エアで前傾姿勢に調整できるクッションで、硬いリビングの椅子をオフィスの機能性チェアに変えてしまう。テレワークで腰痛を患ったという人にとっては、天恵とも言える製品である。

↑仕事向きではないダイニングチェアを、機能的なオフィスチェアに変身させる

 

カウネット
ワークサポートクッション エアーイン 座用/ワークサポートクッション 背用
8789円/5489円(ともに税込)

 

↑クッションで前傾姿勢を作ることによって背筋が伸び、腰痛予防に効果を発揮する

 

おそらくコロナが収まったあとも、一度動き出したテレワークへの流れは進むはず。であれば、自宅をオフィスに近づける動きもまた止まらないと思うのだ。

 

テレワーク・在宅ワークに最適な文房具&雑貨

【文房具総選挙2020】テレワーク&フリーアドレスに便利な文房具10選
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出勤も在宅勤務もこれひとつで乗り切る! パーテーションとバッグインバッグに変形自在な「スタンドポーチ」
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この容量がちょうどいい! マイデスクにセットできる「1日分のゴミ袋」レビュー
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アイデア出しを快適化するのはどれ!? 最新ホワイトボードマーカーとホワイトボードノートをレビュー
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ボールペンは先鋭化とインク沼化がさらに進むかも?

コロナ禍とは特に関連性がないが、今年はボールペンにちょっとした動きがあった。油性ボールペンの先鋭化と、ゲルボールペンの“インク沼”化である。

 

まず、油性ボールペンの先鋭化だが、これは2019年末に発売された世界最細0.28㎜径の油性ボールペン「ジェットストリーム エッジ」(三菱鉛筆)に端を発するムーブメントだ。

 

昨今は、ゲルボールペンも0.4㎜以下の極細字が好まれる傾向だが、インクにじみがない油性ボールペンは、同じボール径でもゲルよりはるかにシャープな線を書くことができる。もちろん、細字になるほど紙への筆記抵抗は増してカリカリと引っかかるのだが、それをなめらかな低粘度油性インクで打ち消した、というのがポイントである。

↑油性インク世界最細0.28㎜を多色化

 

三菱鉛筆
JETSTREAM EDGE 3(ジェットストリーム エッジ 3)
2500円(税別)
https://getnavi.jp/stationery/551511/

 

↑多色ペンなのにリフィルがまっすぐ出る、画期的な機構を搭載

 

2020年は、多色化した「ジェットストリーム エッジ3」(三菱鉛筆)に加え、同じく低粘度油性インクのライバルであるアクロインクを搭載した0.3㎜径の「アクロボール Tシリーズ 03」(パイロット)も登場。

 

極細字の多色でもリフィルが傾かず安定した書き味のエッジ3、本体価格が税別150円と安価なアクロ0.3と、選択肢が増えたことで、ユーザーの注目度はさらに高まるはずだ。

 

いま手帳業界では、名刺の大きさに近いコンパクトなミニ5サイズの人気が高まりつつある。小さな紙面に細かく書き込みをしたい需要に対しても、先鋭化した油性ボールペンはリーチするはずだ。

 

↑低価格で極限の細さを体感できるのが嬉しい

 

パイロット
アクロボール Tシリーズ03
150円(税別)

 

対してゲルボールペンは、インクカラーに注目が集まった。

 

例えば、1月発売の三菱鉛筆「ユニボール ワン」は、ローンチ時点で早くも全20色(0.38㎜のみ)と揃えの良いゲルボールペン。しかも特殊な顔料を配合することで、これまでにないクッキリとした発色を可能としているのが、最大のポイントだ。

 

黒インクはテカりもなく非常に黒々としており、ボールペン史上最も黒い! とすら言えるし、黄色やピンクといった淡い色でさえ筆記色としてしっかり視認できるクッキリさを持っている。

↑これまでにないクッキリ発色

 

三菱鉛筆
uni-ball one(ユニボール ワン)
0.38㎜(全20色)/0.5㎜(全10色)
各120円(税別)
https://getnavi.jp/stationery/485229/

 

↑ピンク系やブルー系など人気の高いカラーに重点を置いてきたな、というカラーラインアップ

 

11月には数量限定ながら追加で9色が発売されたし、今後もおそらく次々と色を増やしていくことは予想できる。

↑「ユニボール ワン」に登場した、朝・昼・夜にマッチした3色、という限定カラー。どれも良い色揃いなので、定番化して欲しいほど(https://getnavi.jp/stationery/557305/

 

ゲルボールペンのカラーといえば、現時点ではゼブラ「サラサクリップ」の全56色が最強。だが、「ユニボール ワン」はクッキリ発色を武器に、間違いなくゲル最強王座を狙ってくるはずだ。

 

また、いま文房具マニアを中心にじわじわとユーザーが増えているのが、一見すると黒だがよく見ると違うダークカラー、通称「カラーブラック」である。

 

既存のゲルボールペンに、次々とラインアップ入りすることからも注目度合いは伺えるが、なんと全6色カラーブラック! というピーキーな「ボールサインiD」(サクラクレパス)が登場するに至っては、もはや人気は本物だろう。

 

ニュアンスのある絶妙なカラーブラックは、ビジネスシーンでも使える大人の遊びカラーとして、より広まっていきそうな気配である。

↑ラインアップ全部がカラーブラック、という珍しさ

 

サクラクレパス
ボールサインiD
ライトグレー軸(0.4mm)/ダークグレー軸(0.5mm)
各200円(税別)
https://getnavi.jp/stationery/557305/2/

 

↑6色の黒はどれも深みがあり、大人の余裕をイメージさせる。高級金属軸に入れて使ってみたいと感じる人も多いのではないか

 

実はここ十数年、ボールペンといえば「書き味の良さ」が価値観の基準となっていた感が強い。ただ、最近の「先鋭化」や「インク沼化」は、もちろん書き味の良さは大前提にあるとしても、それ以外の新たな価値観の模索の結果にあるように思う。

 

他にない線の細さや特殊なカラーなど、そういった部分でボールペンを選ぶ、新しい時代にもう差し掛かっているのかもしれない。

 

“先鋭化”“インク沼化”したボールペン

超細字なのになめらか!「ジェットストリーム」と「ハイテックCコレト」に登場した次世代ボールペンを検証
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120円で驚きの完成度!三菱鉛筆「ユニボールワン」は新開発のくっきりインクで記憶に残る字を書ける
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ボールペンにも“インク沼”!? 2020年のボールペントレンドを象徴する色にこだわった2選
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色味は渋いが使い道は多彩!ぺんてる「プラマン」と呉竹「ドットスタンプペン」のベイクドカラーが使える!
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会議やブレストを快適化するのはどれ!? ホワイトボードマーカーと最新ホワイトボードノートを比較レビュー

Zoomなどのツールを使ったオンライン会議をしている最中、「あぁ、今、ホワイトボードがあれば」と思うことがけっこうある。というより、今までの“会議におけるホワイトボードの重要性”を軽く見過ぎていたということかもしれない。出てきた意見を列記するだけでも、会議の参加者が「どこに話を着地させればいいのか」の目安にもできるので、話がまとまるまでにかかる時間が短いように思うのだ。

 

そういうときに意外と重宝するのが、ノート型の携帯用ホワイトボード。ノートのように綴じた紙に特殊加工を施し、ホワイトボードマーカーで書き消しができる、というものである。これは、すでにいくつかのメーカーから発売されており、A4からB6、小さいもので新書版サイズまで、幅広く展開している。

 

多くは、個人でアイデアをまとめるアウトプットツールとして作られたものだが、オンライン会議にも実は重宝する。書記役の人が手元で書きとめて、必要な時にカメラに向けて見せれば、それなりに従来のホワイトボードに近い使い方ができるのだ。

 

ここで気にしたいのが、まずはホワイトボードマーカー。なにしろ、ボードがノートサイズなので、従来のマーカーのような太さでは、あっという間に紙面が埋まってしまうし、そもそも書きづらい。できれば、線幅1mm以下の極細を使いたいところ。

 

そして、もうひとつ重要なのがイレイザー(イレーザー、イレーサーとも呼ぶ)だ。手元でチマチマと書く関係上、大きなイレイザーは邪魔。持ち歩く可能性も考えれば、マーカーのキャップに小さなイレイザーがくっついたタイプがベストだろう。

 

ということで今回は、各社から発売されているイレイザー付き極細ホワイトボードマーカーをあれこれ試してみたい。

 

極細ホワイトボードマーカー3種を比較

ノート型ホワイトボードに使いやすい条件である「線幅1mm以下」「イレイザー付き」を満たすものとして適当だろう、という3本をピックアップしてみた。

※上から
欧文印刷「nu board ホワイトボードマーカー」3本1000円
パイロット「ボードマスターS 極細」150円
コクヨ「ホワイトボード用マーカー(PM-B100D)」100円(すべて税別)

 

まず確認したいのは線幅と書き味、ということで書き比べてみよう。

 

線幅は一目瞭然、公称値で線幅0.6mmの「nu board ホワイトボードマーカー」(以下「nu boardマーカー」)が細い。次に細いのが、線幅0.8mmの「ボードマスターS」で、最も太いのが線幅0.7~1mmの「PM-B100D」となった。ここはそのまま、メーカーの公称値通りの結果と言える。

 

もちろん細い方がより優秀というわけではなく、ボードのサイズや使い方でそれぞれマッチする線幅がある。ここはあくまでも参考まで。

↑線の濃さ、細さは圧倒的にnu boardマーカーが優秀。書き味はすべり過ぎず、比較的紙に書いているのに近い感覚がある

 

書き味に関しては、ペン先に細字サインペンと同様のプラチップを使っている「nu boardマーカー」が快適だ。細くカリッとした書き味で、ボードに対してツルツルすべらず安定しやすい。「ボードマスターS」と「PM-B100D」は、マーカー系の太い繊維チップなので、やはり早書きするとすべりを感じてしまうのだ。

 

ただし「nu boardマーカー」はチップが硬いため、紙製のボードに筆圧をかけて書くと表面を掘ってしまう(消しても筆跡が溝になって残る)ことがある。そこは要注意だ。

↑コクヨ「PM-B100D」はチップが柔らかいのか、文字を書くとかなり太くなる気がする

 

純粋に書くだけなら「nu boardマーカー」がいいような気もするが、イレイザーで消してみると、また印象が変わってくる。

↑イレイザーを並べてみた写真(左からnu boardマーカー、ボードマスターS、PM-B100D)。nu boardマーカーのイレイザーはかなり硬く、密度が高い。他2つはフワッとした感触で消し感もソフト

 

「nu boardマーカー」は乾燥がやたらと早く、一度乾いてしまうと筆跡の皮膜がカリッと硬くなる。そのため、イレイザーでこすって消そうとしてもなかなか消えないし、黒いカスも発生しやすいのだ。

 

「ボードマスターS」と「PM-B100D」はどちらもスルッと消えて快適。書き消しを頻繁に行うなら、やはりこれくらい軽く消えてくれないと使いづらいかもしれない。

↑nu boardマーカーはやたらとボードに固着して、軽くこすったぐらいではなかなか消えない。硬いイレイザーでこすり取る、という感覚に近い

 

とはいえ、先にも述べた通り、ホワイトボードマーカーは自分の使い方にマッチしたものを選ぶのが最重要。ノート型ホワイトボードをまさにノート的に使うなら、細かく書き込めて、こすったぐらいでは消えない「nu boardマーカー」がベストだろうし、会議用ホワイトボードとして使うなら「ボードマスターS」と「PM-B100D」の消しやすさが生きてくる。

 

ちなみに全体的なバランスで言うなら、「ボードマスターS」が、シーンをあまり選ばず使いやすそうに思った。

 

さて続いては、今回のマーカー比べで試筆用に使った、ノート型ホワイトボードも紹介しておこう。実はこれに付属したホワイトボードマーカーが“大穴”ともいえる出来だったのだ。ノートの特色と合わせてチェックしてほしい。

ノート型ホワイトボードの注目商品も要チェック!

今回のマーカー比べで試筆用に使った、ノート型ホワイトボードも合わせて紹介しておこう。学研ステイフルから、2020年11月に発売された「Write White」だ。

学研ステイフル
Write White(ライトホワイト)
B5サイズ 1200円/B6サイズ 800円(すべて税別)

 

↑一見すると普通のリングノートだが、ホワイトボードマーカーで書いて消すことができる

 

サイズがB5とB6の2種類がラインアップされているが、意外にもこれまでなかったのがB6サイズ。さすがに「書き消しが手軽なアイデアまとめノート」という用途には小さ過ぎるのだが、実はこれ、目の前にあるウェブカメラに向けて写すのに、ちょうどいい感じのサイズなのである。

 

カメラからわざわざ身体を引くといった気も遣わず、ホイと見せればそれでボード面全体がフレームに収まって、自分の顔が写る隙間もちょっと残るくらい。これがオンライン会議にはとても使いやすいのだ。

↑B6サイズをヒョイとノートPCの内蔵カメラに向けると……

 

↑フレームに丁度いい感じに収まる。文字も充分に読み取れるので、しっかり実用に足るだろう

 

B6サイズは、表紙端に滑り止めが付いているのもポイント。表紙を折り返して立てれば自立するので、卓上の常時表示ボードとしても使いやすい。

 

今日のToDoやスケジュールを書き出しておくと便利だし、電話受けの卓上メモとしても機能する。個人的には、このB6サイズが大きすぎず小さすぎずのほど良さで使いやすく、お気に入りだ。

↑山型に折り返して置けばきちんと自立。個人用の常時掲示のボードとしてもいいサイズだ

 

このホワイトボードマーカーがベストかも!?

もうひとつ見逃せないのが、付属のマーカーである。見た目からは、さきほど紹介したコクヨ「PM-B100D」のマグネット抜きバージョンかな? と思ったものの、キャップを開けてびっくり。ペン先チップが、より細いものになっているのだ。

 

これ、探してもコクヨ製品としては販売されていないようなので、おそらく「Write White」用に別注されたカスタム品だろう。書いてみると、線の細さは「nu boardホワイトボードマーカー」に近いもの(表示スペックは0.8mm)で安定した書き味があり、かつインクはコクヨ製なので消しやすくクズも少ない。

 

正直なところ、筆者の好みとしてはこれがノート型ホワイトボード用のマーカーとしてベスト! というレベル。このマーカー目当てで「Write White」を買うのすらアリという気がするし、できれば別売してほしいぐらいだ。

↑外見的には、軸の印刷とイレイザー裏のマグネットがないだけが「PM-B100D」との違い。ただしキャップを開けると、まったく別もののチップが現れる

 

↑線幅も非常にシャープで細かく書き込める。nu boardマーカーよりも黒が薄いが、そのぶんきれいに消せるのはメリット

 

他の仕様はB5、B6ともにボード4枚(8ページ)+各ボード間に透明シートと、ノート型ホワイトボードとしては一般的。ペンホルダーには先述のナイスなマーカーが付属している。

 

ホワイトボードとしての性能は先行の製品とさして変わらないが、オンライン会議に使いやすいサイズ感とマーカーは優秀。もし現時点でノート型ホワイトボードを探しているなら、候補として確実にアリだろう。

 

 

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ボールペンにも“インク沼”!? 2020年のボールペントレンドを象徴する色にこだわった2選

2006年に“低粘度油性インク”を搭載した「ジェットストリーム」(三菱鉛筆)が発売されて以来、ボールペンは「書き味で選ぶ」時代が続いていた。なにしろ、従来とはまったく次元の違うスルスル感である。その衝撃たるや黒船来港級だったし、誰もが書き味にこだわるようになったのも当然だろう。

 

しかし、翻って2020年現在、「もう書き味にこだわるのは、しばらくいいんじゃないかな……」というムードが漂っているような気も、少ししているのだ。実際、近年のボールペンで、書き味に根本的な不具合がある製品というのは見たことがないほど、全体的に進化しているわけで(好みの差はもちろんあるが)。さらには一周回って、「低粘度じゃない昔の油性のネチャッと感も、ある意味アリだよね」なんてことを言い出す人も出るほどなのだ。

 

では、今はどこでボールペンを評価するのかというと、「インク色で選ぶ」時代に突入しているように思うのだ。

 

最近の文房具業界では“インク沼”(万年筆のカラーインクを集める趣味)なんてワードが流行っているように、筆記色をあれこれ変えて遊ぶことは、充分に“ホビー”として成立している。それなら、より日常的な筆記具であるボールペンだって、色で遊んで悪いことなんかないはずだ。好きな色で書くことは、ごく当たり前に楽しいのである。

 

もちろん筆記具メーカーは、そんなことは先刻ご承知で、ここしばらくのボールペン新製品はまず一番に、インク色をアピールすることが増えている。そこで今回は、最新の「インク色がおすすめのボールペン」2種を紹介しようと思う。

 

特濃発色の「ユニボールワン」に限定色が登場

三菱鉛筆の「ユニボールワン」と言えば、新開発の顔料系ゲル「ワンインク」を搭載し、発色の良さで大人気となっているボールペンだ。

 

発売当初は、黒インクが従来のどのペンよりも、濃く黒々と美しいことで話題になったのだが、実は同時発売の他20色も素晴らしい発色なのだ。特に、読みにくいはずの黄色で書いた文字ですらはっきり読めるのには驚かされたほど。

 

その超クッキリ発色シリーズに、早くも新色(ただし数量限定生産)が、しかも9色も登場したとなれば、それは注目せざるを得ない。

三菱鉛筆
ユニボールワン 限定色
各120円(税別)

 

新色は、左から「MORNING TIME STUDY」「DAY TIME STUDY」「NIGHT TIME STUDY」のアソートパッケージ3種に3色ずつ、計9色という形で発売されている(バラ売りもある)。この秋冬シーズンのテーマカラーの中から、それぞれ朝・昼・夜の時間帯をイメージさせる3色をセレクトした構成だ。

 

これがまぁ、どれもイイ色揃ってるなあ! という感じ。ちなみに「NIGHT TIME STUDY」の3色だけがボール径0.5mmで、他は0.38mmとなっている。

↑こちらが3本アソートパッケージ。パッケージも、シンプルでおしゃれでいい

 

筆記見本(下写真)を見てもらえば分かると思うが、スカッと抜けたターコイズブルーやサンフラワーイエロー、ほんのりしたコーラルと、どれもしっかりと視認できる発色だ。これはさすがワンインク! といったところで、あらためてその実力の高さを感じている。

 

この明るさ・淡さで文字が読める色とは、実は非常に難しいのである。

↑1日の時間帯をそれぞれイメージした配色。朝のアッシュブラウンは、コーヒーのイメージ?

 

そういった性能の部分とは別で、色そのものの面白さ・新しさも非常にいい。個人的に特に興味深かったのは、ピスタチオグリーン、シトロン辺り。これらは、先ほどのスカッと抜けた色とは対照的に、かなり濁った色なのだが、想像した以上に深みがあって、しみじみといい色だなぁと感じられる。

 

なかでもシトロンは、下手すると「黄色に、間違えて黒を混ぜちゃったんじゃないの?」と思ってしまうような、どんよりとした濁りっぷり。基本的に濁り色はどうしても汚くなりがちなので、従来のボールペンカラーのラインアップには、まず入ってこないのだ。

 

つまり、そこを押してでもこの色を入れてみよう……とメーカーが判断するほど、昨今のユーザーの色感覚は熟成してきているのかもしれない。

全色をトレンドのカラーブラックで統一した「ボールサインiD」

もうひとつ紹介したいのが、サクラクレパスの「ボールサインiD」である。

カラーラインナップは6色。なんと、全色をいま流行のカラーブラック(一見すると黒に見えるような、濃いダークカラー)で揃えたという、なかなかピーキーなシリーズだ。

サクラクレパス
ボールサインiD
ライトグレー軸(0.4mm)/ダークグレー軸(0.5mm)
各200円(税別)

 

色名もすべて「○○ブラック」で統一しているこだわりようで、いわゆるダークカラー系とは一線を画す黒さである。

 

書いてみてもほぼ黒。よくよく見ると、ほんのり色が入ってるかな……? という濃さ。正直、あまりに黒すぎて、並べて見ないとどれがどの色なのか、すぐには判断できないほどだ。

 

さすがはキャッチコピーで「6色の黒 誕生」と謳うだけあって、ガチ黒。

↑写真に撮ると色味が分かりやすいが、目視だともっと黒に近く感じる。落ち着きのある渋色揃いだ

 

カラーブラックの面白さのひとつに、ビジネスシーンでの使いやすさが挙げられる。やっぱり仕事で使う書類やノートにカラフルなインクで書き込みをしていると、周囲や上司に「なに不真面目なことやってんだ」という目で見られる可能性もなくはない。

 

対してカラーブラックなら、わかる人だけがわかるという、大人の秘密の遊びとして成立するのだ。

↑ツルンとシンプルなルックスは、まさに最近のトレンド。ただし、素材的に滑りやすくグリップ感が薄いので、手汗をかく人は握りづらいかもしれない

 

外見はとてもシンプル。六角形と丸形を組み合わせたような独特の軸に、ノックノブ兼用の金属クリップと色表示パーツのみ。刻印も最小限で、他に装飾らしきものは一切ないのだから、徹底している。

 

「ユニボールワン」とも共通することだが、この極端なまでのシンプルさも、令和のボールペンデザインの流行のひとつと言えるだろう。

 

 

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付箋がラインマーカーに!? カンミ堂「フセンマーカー」が斬新かつ便利

ノートなどでポイントとなる部分を目立たせるのに、ラインマーカーはとても便利なツールだ。ただスーッとラインを引くだけで、どこが重要か一目で分かるんだから、勉強や仕事には必須とすら言える。

 

とはいっても、文句のつけようがない完璧なツールなんてものは存在しない。やっぱり不満な点だってあるのだ。

 

まず最も大きいのは、インクたっぷり出過ぎ問題だろう。ペン先チップが太いため、その分だけ大量にインクが出る。その結果、紙によっては裏抜けもあるし、ボールペンで書いたところが滲むようなことにもなる。

 

筆者のような不器用な人間にとっては、ラインをまっすぐ引くのが難しいのも困りごとのひとつ。ラインがガタついたりナナメになったりするのを避けるなら、わざわざ定規を使うという手間までかけねばならない。

 

つまるところ、紙面をきれいに保ちつつラインマーカーを使うのはけっこう難しい、ということだ。便利さだけを享受しつつ、きれいに使えるラインマーカーはないの? 無理なの?

 

それなら考え方を変えてみよう。単に文字列を目立たせたいだけなら、マーカーで書く以外に方法があるんじゃないだろうか?

 

ラインマーカーは“ペンじゃなくてもいい”という発想転換

ということで今回紹介するのは、カンミ堂の「フセンマーカー」だ。

 

カンミ堂といえば、これまでにもいろいろな機能を持った付箋を発売してきた付箋メーカーである。そこがラインマーカーを発売すると聞いて最初は驚いたものだが、あらためて確認して納得。製品名は“マーカー”と名乗っているものの、実は“ラインマーカー的な働きをするフィルム付箋”なのである。

カンミ堂
フセンマーカー
480円(税別)
テープは「COLORグリーン」「同 ピンク」「同 グレー」「PATTERN BRスクエア」「同 GYストライプ」「STUDY ブルー」の6種類がラインナップ。ケースは共通。

 

同じようにラインマーカー的に使えるフィルム付箋は、以前にも他メーカーから発売されているのだが、これは“シートタイプをミシン目でちぎって使う”というもの。持ち歩くには少しかさばるのが難点だった。

 

対して「フセンマーカー」は、コンパクトなボディにロール状の6mm幅フィルム付箋テープを内蔵しており、かなりコンパクト。日常的に使うのであれば、ペンケースに放り込んでおけるサイズ感はありがたい。

 

どうやって貼り付ける?

使用する際は、まずケースからピロッとはみ出しているテープの先端を、目立たせたい文字列の先頭に貼り付ける。あとはケースを引いて必要なところまで貼れたら、上部の「ココ」と指示された部分を指で押し込みつつ、ケースを前に倒す。すると内蔵された刃でテープがスパッと切れるという仕組みだ。

↑使用する際は、ケース底部から出ているテープの端をつまんで……

 

↑マーキングしたい文字列の先頭に貼り付ける

 

↑必要なところまで貼ったら、ケース上部をギュッと指で押しつつ少し前に傾けると、テープが切れる

 

ケース上部を押すことで「内部のテープをロックする」+「刃を押し出して切る」という2つの動作を同時に行う構造で、これはよく考えられている。

 

↑ケース上部を押すことで、「テープの固定(A)」と「カッター刃を押し出す(B)」を同時に行う。慣れないうちは、露出した刃で紙面を傷つけたりすることもあるので、要注意

 

↑切り終わったテープ端は、ケース底部に貼り付けておけばOKだ

 

実際にフィルムを貼った文字列は、下の写真の通り、ラインマーカーを引いたような雰囲気で、しっかり目立つ。

↑ピンク・グリーン・グレーの見本。テープを貼っている分だけ下の文字はややぼやけるが、視認性は充分だ

 

しかも、インクではないから紙に染みたり滲んだりは当然しないし、ラインがガタガタになることもない。つまり、ラインマーカーの不満点はこれでスッキリと解決してしまうわけだ。

 

どんな使い道がある?

粘着部は全面付箋糊なので、貼り剥がしが可能。間違えてラインを引いた部分は、剥がせば簡単にクリアできるというわけ。マーカーでラインを引きたくない本にでも、これなら使えるだろう。

 

カンミ堂のフィルム付箋の特徴として、筆記具を選ばず貼った上から書ける、というのもポイントだ。手帳の予定欄に貼った上から予定を書き込み、もしリスケされた場合は別の場所に貼り直す、という使い方もできるのだ。

 

このあたりはやはり“書けるフィルム付箋”ならではの応用ワザである。さすがにゲルインクや水性インクは乾くのに時間がかかるが、それでも比較的問題なく書けるのが面白い。

 

↑暗記用ブルーはかなり濃いめで、赤シートを乗せれば完全に目隠しできる

 

↑柄テープは手帳の飾り付けなどに良さそう。6mm幅テープは3mm方眼に適合する

 

↑文字をテープの上から書き込むことで、スケジュールの移動も可能。貼って剥がせる付箋テープならではの使い方だ

 

発売時点でのフィルムのラインナップは、ラインマーカー感覚のピンク・グリーン・グレーに、暗記用ブルー、そして柄物のスクエアとストライプの6種類。ケースは全て共通なので、リフィルロールの補充も、入れ替えて好きなフィルムを使うことも可能だ。慣れればケース開閉も簡単なので、入れ替えで戸惑うことはあまりないだろう。

 

また、柄タイプは文字列を目立たせる用というよりは、手帳の飾り付けに使う感じだろうか。この場合は、マステよりも細幅で貼れるのがポイントと言えるだろう。

 

↑詰め替え用のテープは2本入り270円(税別)。使ってみると意外と消費が激しいので、本格的に運用する場合は、詰め替え用テープは事前に購入しておくのが良さそう

 

冒頭で、「文句のつけようがない完璧なツールなんてものは存在しない」と書いたが、もちろん「フセンマーカー」にも、これはちょっと……という点がある。

 

思ったよりも、狙った場所で切りにくいのだ。おかげで文字列からフィルムがはみ出したり、足りなかったり、ということがしばしば。慣れればもうちょっと改善できそうな気がするのだが、意外と難しい。

 

もうひとつ、コストもやや気になるところ。リフィルロールは長さが5mあるが、例えば文庫本で1行まるまるに貼ると、それだけで約12cm。これだと、単純計算で41回貼ったらもう使い終わってしまうので、場合によっては本1冊でリフィル切れなんてこともあり得る。

 

リフィルは2本で270円(税別)なので、そもそも1本あたりでも普通のラインマーカーより割高感がある。それが本1冊で切れてしまうとしたら、やはり、ちょっと高いかなという気はする。

 

であれば、インク染みやまっすぐ引けない問題を解決できる能力がどれだけ必要か、というところで価格部分と足し引きして決めるべきだろう。従来のラインマーカーに不満を感じているなら、まず試してみてほしい。

 

 

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フリクション由来の特殊部材搭載! 史上初のラメまで“消せる”ボールペン「ケセラメ」の消字性能は?

ボールペンとは、基本的に文字を書くための道具である。文字を書くことで、情報を後から読める形で残したり、他人に伝達することができるわけで……あらためて考えると、びっくりするくらい便利な道具なのだ。今さら驚くことでもないのだが。

 

情報として文字を残すためだけであれば、黒や青、赤といった視認性の良い色だけで事足りる。実際、昭和時代のボールペンは黒・青・赤の3色のみ! というラインナップがごく当たり前だった。

 

それが、発色の難しい油性インクでさえ、今や8色とか作れるようになっているうえ、インク内に大きな粒子を入れることが可能なゲルインクなら、白だのパステルだのラメ入りだの、まぁ好き放題、という感じ。

 

つまり現在のボールペンは、ただ文字情報を書き残すだけでなく、色や輝きといった、さらにリッチなデータも一緒に伝えられるようになっているのだ。

 

などと、やや面倒くさい調子の書き出しで始めてみたが、実のところは「また面白いラメインクのボールペンが出たから、紹介したいんですよ」と言いたいだけなのだ。なにが面白いって、フリクションボールのラメインクなのだから。

 

史上初! 消せる“ラメインク”ボールペン

この連載をいつも読んでくださっている皆さんには、もはや説明するまでもないことだろうが、「フリクションボール」というのは、パイロットのいわゆる“消せるボールペン”のこと。

 

65℃以上の熱で透明化する特殊なインクを搭載しているので、描線をこすって摩擦熱を加えると消えたように見える、という仕組みだ。

 

そして、2020年11月に数量限定で発売されたのが、“ラメフリクションボール”こと「ケセラメ」。名前通り、摩擦熱で消せるフリクションの技術を活用したラメインク搭載ボールペンなのである。

パイロット
ケセラメ
各230円(税別・全6色)

 

書いてみると、0.7mmの筆跡はたしかにラメだ。もちろん光の当たり方によって変化はあるが、ギラギラ光るというよりは、全体的に細かく光っている印象。ラメの粒子が小さいのだろうか? 正直、昨今のラメボールペンと比べると、ややおとなしいように感じた。

 

ついでにベース色も発色がやや薄い気もするが、とはいえその淡さと細かなラメの輝きは、うまくマッチしている。

↑しっかりとラメ感があって、テンションが上がる! 拡大して見ると、細かなラメがみっしりと入っているのが分かる

 

とはいえ、実際にラメの筆跡を見ると「本当にこれが消えるのか?」と疑問に思うが、ペン軸後端のラバーで擦ってみると……おお、消えた! まさに従来のフリクションボールの消す感覚と同じで、きちんと線が見えなくなっている。

 

それにしても、インクが消えるのはもはや当たり前として、あのラメも一緒に透明化したのだろうか? なかなか不思議な感じだ。

↑消す時の感触も従来のフリクションと変わらない。ラメはいったいどこへいった?

 

そこであらためてよく観察してみると、消えたはずのラメが、ペン軸後端のラバーにくっついているのを発見した。なるほど、インクは透明化させて消し、ラメ粒子は物理的にラバーでこすり取るという方式なのだ。いわば化学+物理攻撃の二段構えである。

 

分かってみれば単純かつ豪快な解決法だが、実際に消えているのだから文句はない。ただ、紙にも多少はラメ粒子が残るし、消した後のラバーを触ると指もキラキラする。これはまぁ、しょうがないところだろうが。

↑拡大撮影したラバー。表面にキラキラとした細かなラメがこびりついている

 

↑「ケセラメ」のラバーは従来より柔らかく粘りを感じるし、消しカスも少し発生する。どうやらラメをこすり取る用に作られた、専用ラバーのようだ

 

ちなみに今回発売されたカラーは、ラメゴールド、ラメシルバー、ラメピンク、ラメバイオレット、ラメブルー、ラメグリーンの6色。

 

パッと見の印象では、ゴールド、ピンク、ブルー、グリーンといった明るめの色と、ラメの輝きが相性良さそうだ。逆にシルバーとバイオレットはベースがやや暗めな分、輝きがちょっと目立ちにくい。

↑「ケセラメ」の6色ラインナップ。個人的にはピンクとブルーのトロッとした発色が好き

 

フリクションインク自体が、隠蔽力(いんぺいりょく。下地の色を隠す発色の強さのこと)が弱めなので、ラメインクの楽しみのひとつである「黒の紙に書いてキラキラさせる」のはダメかも? と思っていたのだが、やってみると思ったよりも輝いている。

 

インク色よりもラメの輝きが優勢になるためか、雰囲気はややパール寄りに白っぽくなるが、これはこれできれいだ。

↑予想していたよりも黒地にしっかりアピールできるラメ。可読性も充分だ

 

なによりラメインクが消せるというのは、他には絶対にないユニークな能力である。これからのクリスマスシーズンなど、失敗したくないカード作りなどにバリバリ効果を発揮するはず。なにしろミスっても消せるのだ。

 

なにより売り切りの限定製品ということなので、気になるという人は見つけたら即ゲットをおすすめする。

 

 

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変態ボールペン「ジェットストリームエッジ3」が超極細芯なのになめらかな理由はペン先の“偏り”にあった!

「用途に合わせてボールペンを使い分けよう」と聞いてピン! ときた人は、“文房具リテラシー”がとても高い人だと思う。

 

もちろん、基本的にはお気に入りの書き味のペンが1本あれば充分なのだが、例えば、手帳に細かくみっちり書き込むには極細かつ、滲みにくいペンが便利だ。場合によっては多色が欲しいし、消せた方が便利かもしれない。対してハガキの宛名書きをするなら、太めでサラサラ書けるものがいいし、インクの耐水性も気になるだろう。

 

こういった用途すべてをお気に入りの1本でまかなうというのは、やっぱり難しい。だって、求められる要素がまったく異なるから。

 

といっても、その様々な用途にそれぞれ対応できるペンがある、という状況自体がごく最近の話。ひと昔前であれば、ボールペン=もったりした油性インクでボール径も0.7mmのみだったし、それですべての筆記作業をこなすのが普通だったわけで。

 

つまり、近年のボールペンの進化というのは、ざっくり言えば「環境に合わせた細分化」であり、「機能の先鋭・専用化」と言える。であれば現代において、ボールペンは用途によって使い分けたほうが便利、というのはご理解いただけるのではないか。

 

超極細字専用ボールペン「ジェットストリーム エッジ」が待望の多色化!

で、その機能の先鋭化した最先端のひとつとして挙げられるのが、三菱鉛筆から2019年末に発売された「ジェットストリーム エッジ」だろう。お馴染みの低粘度油性インクで0.28mmの超極細字がサラサラ書ける、まさに“すごく細い線を書くための専用ツール”である。

【関連記事】超細字なのになめらか!「ジェットストリーム」と「ハイテックCコレト」に登場した次世代ボールペンを検証
https://getnavi.jp/stationery/461727/

 

発売された当初は、その機能的なトンガリ具合に驚いたものだが、そこから1年も経たないうちに登場した多色タイプの「ジェットストリーム エッジ 3」(以下、エッジ3)に、また驚かされたのである。これ、見た目からしてすごい”変態ペン“なのだ。

三菱鉛筆
JETSTREAM EDGE 3(ジェットストリーム エッジ 3)
2500円(税別)

黒・赤・青の3色のインクを搭載する。 2020年11月25日発売。

 

↑エッジ3と、単色の「ジェットストリーム エッジ」(右)

 

見た目は、ワイヤークリップや六角の金属軸、タテ溝の入ったグリップなど、単色エッジの特徴的な要素をピンポイントに継承。ただ、単色エッジが軸後部に向かって細くなる独特な形状をしているのに対して、エッジ3は全体的に真っ直ぐ。

 

ただ、驚かされたのはそこじゃない。先端をよく見ると、芯先が出てくる穴が、コーンごと軸中心から大きくズレているのである。え、なにこれ、すっごく変だぞ!?

↑芯先が中心から大きく偏ったポイントノーズ。これが、エッジ3のもつ最大の特徴だ

 

いかにも”変態“チックな“偏心コーン”ことポイントノーズには、もちろん理由がある。これは、従来の多色ペンが誕生以来ずっと抱え続けてきた、“芯先ナナメ問題”を解決するためのカタチなのだ。

 

これまでの多色ペンは構造的に、内部のリフィルを軸中央にまっすぐ降ろすことができない。先端がコーンの内壁を沿って露出するため、わずかに芯先がナナメに傾いてしまうのである。つまり、芯が普通よりも“寝た”状態になる→ボールが正常に回転しにくい→インクがかすれるなどの症状が出やすい、というわけだ。

 

これはもちろんわずかなものなので、気にならない人にはまったく問題ない。だが、気になる人には「多色ペンはなんか気持ち悪い」と感じさせる要因にすらなり得るだろう。

↑エッジ用リフィルを、従来の多色軸に装填した図。軸の中心(赤線)に対して、露出したリフィル(青線)は4〜5度ほどナナメになっている

 

なにより、芯先がナナメになって起きるトラブルは、ボールが小さいほど発生しやすくなる。それが0.28mmの超極細ともなれば、やはり芯先はナナメにならないほうが安心。

 

そこで、ポイントノーズである。エッジ3は、軸後端のダイヤルでリフィルを選ぶ回転繰り出し方式なのだが、このダイヤルを回転させるとリフィルが軸内部で回転しつつ、ある位置で前方にグイッと押し出されるようになっている。この押し出される位置が、ちょうどポイントノーズの口に当たるのだ。

↑ポイントノーズから常にまっすぐリフィルが出る、新しい回転繰り出し方式の“スピロテック機構”

 

動きを見てみよう。

 

つまり、芯先はコーン内壁に当たることなく真っ直ぐに露出する。これで、多色ペンの“芯先ナナメ問題”は解決だ!

 

スピロテック機構は本当に快適な書き心地をもたらすのか?

ただ、正直なところ筆者は、多色ペンに対して不快な書き味を体感したことはあまりない。このスピロテック機構から、そこまでメリットを享受できるかしら? と訝しんでいた。

 

そこで、エッジ用0.28mmリフィルを従来の「ジェットストリーム」多色タイプに装填(エッジリフィルは共有可能)して試してみたのだが……あれ? ちょっと書きにくい?

 

普通に60度ほどの適正角度で握って書けばなんの問題もないが、少し寝かせ気味に持つと、途端にカスレや引っかかりを感じるようになった。確かにボールが小さいほど角度による回転不良は発生しやすくなるので、これくらいのささいなナナメでもトラブルにつながるようだ。

↑超極細字が、多色でもスムーズに書ける!

 

対して、エッジ3はとても快適。たったいま従来の多色ペンでは不良が出た角度でも、きちんとサラサラ書くことができる。なるほど、径が超極細にまでなると、わずかな差が大きく響くようだ。

 

また、ポイントノーズの特殊なフォルムも、使ってみれば違和感はほとんどなし。特に慣れるような手間もかからず快適だ。先端がニードルのように細いポイントチップは、筆記点がよく見えるし、超極細由来のカリカリ感と低粘度油性のなめらかさが上手い具合に噛み合って、とても気持ちよく書くことができる。

↑インク色選択は軸後端のダイヤルで。色表示はないので、リフィル先端の色帯を確認するしかないのは、ちょっと不便かもしれない
↑リフィル交換は、グリップ部をまっすぐ引き抜いて行う。ネジ式じゃないので最初は少し戸惑った

 

この書き味のバランスはなかなか秀逸で、ここまで極細でも、比較的紙を選ばない。特に手帳用の薄い紙でもひっかかりなく、細かい字がサラッと書けるので、多色と合わせて手帳用筆記具として重宝しそうだ。

 

単色エッジと違って軸がストレートなのも、手帳カバーのペンホルダーにすんなり入れて持ち運べるように考えてのことだろう(単色エッジは形状的に、ペンホルダーには入れづらかった)。

 

なにより、0.28mmの細い線と3mm方眼の相性は抜群なので、「ジブン手帳」ユーザーにはマストなペンとして人気が出るんじゃないだろうか。

 

 

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通販に必須の傑作オープナーが刷新!「ダンボールカッター」の地味だけどジワジワ効いてくる改善点とは

ライターなどという“自宅引きこもり系”の仕事をしていると、忙しいほど外へ出る機会が失われる。結果、なにが起きるかというと、通販のダンボールがやたらと届くのである。

 

なにしろ買い物にも出られないのだから、欲しいものは通販で手に入れるしかないし、これまで紹介している文房具も、ほぼ通販で買っているし。問題なのは、妻も自宅仕事の自営業者ということ。つまり、届く荷物が単純に2倍になるのだ。

 

そして、荷物が大量に届くことで、筆者宅は「開梱用オープナーのテストフィールド」と化している。とにかく日夜いろいろなツールで片っ端から梱包を切り開いているのだ。

 

そうやって選りすぐられたもののなかで、現時点で一線級として活躍しているのが、オルファの「カイコーン」と、デザインフィルの「ダンボールカッター」の2点。どちらも機能的かつ汎用性があり、家庭用オープナーとしてはとても優秀である。

 

2点とも、すでにこの連載で紹介したものだが、実はその「ダンボールカッター」がこの秋にリニューアルしたという。すでに相当に便利なオープナーではあるが、それがリニューアルしたとなると、どう変わったのか気になるぞ。

【2018年モデル】スッと切れるが中身は無傷! 通販ラヴァー喝采の「カッター」があったー!
https://getnavi.jp/stationery/279206/

 

新「ダンボールカッター」は前モデルの不満点をスパッと解消!

ということで早速入手したのが、デザインフィルがプロダクトブランド、ミドリから発売する「ダンボールカッター」である。リニューアルなので名称は変わらず、今後は店頭でも順次新しい方に切り替わっていくはずだ。

 

本体をカパッと開いて、中にある小さなセラミック刃で梱包テープの合わせ目を切る、という基本的な機能は変わらない(ので、使い方の詳細は前回の記事を参照して欲しい)。まあ、ちょっと大きめのコインみたいな形をしている、というパッと見の印象も一緒だ。

ミドリ(デザインフィル
ダンボールカッター
980円(税別)

 

↑刃をダンボールの合わせ目に挿し込んで切り開くと、簡単に開梱完了。ハサミやカッターより使いやすいし、安全性も高い

 

いや、よく見ると新モデル(2020年版)には「表面のシボ加工が無くなった」「外周全体に凹凸のモールド追加」という変更点はあるようだ。

 

そして実は、この2つの外見変更は、リニューアルされた最大のポイントに端的につながっているのだ。その最大のポイントというのが、ズバリ、開けやすくなった! というところ。

↑リニューアルによる外見の変更点。表面のシボの有無と、側面の凹凸だけで、見た目的にはあまり変わった感は無いが……

 

この「ダンボールカッター」は、コイン型のボディをパカッと割り開くことで、中からセラミック製の開梱刃が露出する……のだが、実は前モデル(2018年版)は、この開閉が少々固くてやりづらいことが、数少ない難点のひとつだったのだ。

 

この固さは、保安上のチャイルドロックとして機能していたようなのだが、グッと指に力を入れて開けるためには、表面のシボ加工(=滑り止め)が必須だったというわけ。

↑内蔵スプリングの弾力で、軽い力でも開くように。これは使いやすさの大幅アップポイントだ

 

対して新モデルでは、開閉機構にスプリングを内蔵。開けていくと最初は少し抵抗があるが、90度近くまで開くと、今度は弾力でスイッと自動で開くようになったのだ。ちょっと開いたぐらいでは、逆にスプリングの弾力で閉じてしまうので、これもある種のチャイルドロックになるのだろう。

 

もちろん前モデルだって、慣れれば別になんてことはなく開閉できるが、それでも軽くスイッと開ける方が、気軽に使えるに決まっている。その際は表面をつまむのではなく、外周に新造された凹凸モールドに指をかけることで、片手で開くことも可能だ。うーん、これはめっちゃラク!

↑少し慣れれば片手でもこの通り。前モデルでは考えられなかったラクさ

 

この簡単オープンだけでもリニューアルとしては充分すぎるぐらいだが、実はまだ改善ポイントはある。

 

「ダンボールカッター」はボディに磁石を内蔵しており、冷蔵庫ドアなど金属面にペタッと貼っておけるのだが、前モデルはコイン型の裏面にしか磁石が効いていなかった。そのため、貼る際はいちいち裏表を確認する必要があり、それがもうひとつ難点に思えていたのである。

 

しかし、新モデルは磁石を大型化して磁力アップ。表裏どちらでも気にせず金属面に貼ることができるようになった。それによって、貼る収納が簡単になった→使用後、元の位置に戻しやすい→紛失の確率が減らせる、ということになる。改善はささやかながら、運用上では確実に扱いやすくなったわけ。

↑裏表を確認せずにホイッと金属面に貼れるのもラク。これだけでも買い替える価値があると思う

 

もうひとつ、セラミック刃も左右対称の形状にリニューアル。もし刃が欠けるなどした場合は、カバーを外して刃を反転させることで、新しい刃として再利用が可能になった。

 

正直、この刃はかなり頑丈かつ小さいので、よほど無茶な使い方をしないかぎり欠けたり割れたりすることなんてないだろうと思っていたのだが、もしかすると実際に刃を欠けさせたユーザーからの要望があったのかもしれない。

 

ただ、万が一のときにすぐ新しい刃が手に入ると思えば損はないが(さらに替え刃も別売り化)、個人的には交換可能な構造にしたことで刃のガタツキが大きくなったのは、いささか惜しい気もする。

↑ネジの固定をひとつ外せば、このように刃が取り出せる。左右対称形なので、裏返してハメなおせば新しい刃として使えるのだ

 

ともあれ、実用性の高いツールにあったわずかな不満点が、リニューアルでスパッとまとめて解消されたのは素晴らしいことだ。デザインフィル、これはお見事!

 

我が家では、開梱する場所に合わせて3個(自室・リビング・玄関前)の「ダンボールカッター」を運用していたのだが、もうすべて新モデルに交換決定である。また、前モデルを悩んでまだ買っていなかった人に対しては、あらためて新モデルを猛プッシュしておきたい。通販を使う機会が多いなら、持っていて絶対に損はしないから。

 

 

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この新機構を待っていた! 先駆者ゼブラが「シャーボNu」で多機能ペンの不便を解消

おそらく40代以上の人にとって、“もっともメジャーな多機能ペン”(多機能ペン=多色ボールペン+シャープペンシル)といえば、ゼブラの「シャーボ」だろう。

 

我々の脳には「右へ回すとシャープペンシル、左へ回すとボールペン」のテレビCMが染み込んでしまっているのだ。「1本でシャープとボールペン、これから本当の勝負です」という、星野仙一バージョンも懐かしい。

 

1977年に発売された初代シャーボは、回転式でシャープペンシルとボールペンが切り替わるという、これまでになかった機能性と、その機能を端的に表した製品名で大人気となった。当時は、入学・卒業時の贈り物としても活用されていたので、「もらったシャーボを長らく使ってた」という人も多いのではないだろうか?(実際、先のCMも春先に集中して放映されていた)

 

ただ、今となってはもう、筆記具メーカー各社から多機能ペンは発売されているし、「シャーボ」というブランド自体もかなり影が薄くなっていることは否めない。正直、今の今までシャーボの存在そのものを忘れていたんじゃないだろうか?(地味にリニューアルしたり、けっこう頑張っていたんだけど……)

 

ところが、その忘れられかけていたシャーボの新製品が、2020年11月24日に発売される。しかも、驚きの新機構を携えて。

 

新シャーボ「Nu」はシャーボ“中興の祖”となるか!?

その新製品というのが、11月に発売となったゼブラ「シャーボNu(ニュー)」だ。

 

黒・赤の2色ボールペン(エマルジョンインク)+0.5mmシャープペンシルという、最近の多機能ペンとしてはごくベーシックな構成である。

ゼブラ
シャーボNu
1800円(税別)

 

ここまでは、まずなんの変哲もない製品としか思えないし、見た目も、後軸がやや太くなっているかな? 程度の印象。驚くべきは、シャープ芯が軸後端から入れられる独自の“トップインシャープ機構”を持っている、ということなのだ。

 

芯を軸後端から入れるって、そんなのシャープペンシルなら普通では? と思った人は、おそらく多機能ペンを使ったことがないか、使い慣れていないのだろう。多機能ペンでのトップインは、普通に考えれば不可能なのだ。

↑シャーボNuの、画期的なシャープ芯トップイン。初めて見たときに「えっ、そんなこと可能なの?」と驚いた
↑対して、こちらは従来の多機能ペン。軸を分解してシャープユニットを抜いて……と、いちいち面倒くさい。でも、これが普通だった

 

従来の2+1タイプ多機能ペンを輪切りにすると、円(軸の外装)を中心から3分割するような形で、2色のボールペンリフィルとシャープユニットが存在する。これを、ノックなり回転繰り出しなりで選んで、押し出すことによって筆記している。

 

ところが、それでは軸の中心にシャープユニットが来ないので、構造上、芯を入れる際はいちいち軸を分解→シャープユニット引き抜き→芯入れ→逆手順で復帰、という手順を踏まなければならなかったのだ。

↑多機能ペンのユニット配置比較。シャーボNuは、シャープユニットが軸の中心に固定されているからこそ、トップインが可能になる

 

ところが「シャーボNu」は、シャープユニットを中心に、ボールペンリフィルを左右に振り分けて配している。これなら問題なくトップインで芯入れができるというわけだ。

 

具体的な手順としては、軸後端のキャップを45度ひねってはずし、露出した消しゴムユニットを引き抜けば、あとは開いた穴に芯を滑り込ませるだけ。戻して後端ノックで芯が出るので、普通のシャープペンシルのように何の違和感もない。これは、多機能ペンとしてはおそろしく画期的だろう。

↑シャープペンシルは、ふくらんだ後軸全体を押し込んでノック

 

ちなみに、ゼブラが行ったアンケートによれば、多機能ペンユーザーで週に1度以上の頻度でシャープペンシルを使う人は、全体の80%以上とのこと。さらに、その80%の人が感じる、多機能ペンに対する不満の第1位が、「芯の補充が面倒」というのも、さもありなんという感じである。

 

正直なところ、筆者は「補充が面倒だから、使わなくて済むなら使わないようにしよう」とすら思っていたくらいだ。それが、「シャーボNu」の登場によって、ようやく「これなら気軽にシャープペンシルが使えるな〜」という気持ちになれたのだ。

 

↑ペン選択は回転式。使用中のユニットは、透明窓に色で表示される

 

ボールペンユニットは、ゼブラ独自の書き味の良いエマルジョンインク0.5mmを搭載。リフィル自体はお馴染みの4C規格なので、これは自分の好みで入れ替えても問題ない。

 

というか筆者は、後ろ重心の強い多機能ペンとなめらかエマルジョンインクの組み合わせに苦手意識を持っている(挙動が大きすぎて字が汚くなってしまう)ので、いち早く大好きなゲルインクリフィルに差し替え済み。これなら、より快適に書くことができそうだ。

↑シャーボNuのボールペンユニットは金属製の4Cリフィル。ただし、ゼブラのリフィルはわずかに太いので、他社製のものを入れると多少グラつくかもしれない

 

とはいっても、やはり「シャーボNu」のメインはシャープペンシルが使いやすい! というところ。多機能ペンユーザーで、特にシャープペンシルを使う機会が多い人であれば、導入すると面倒がかなり減るはずだ。少なくとも、「芯の補充が面倒」と感じたことがあるのなら、まずは試してみて欲しい。

 

 

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ラインマーカーの新ジャンル誕生!“色”の濃淡で書類を整理するコクヨの2Way「マークタス」

書類や議事録ノートの重要なポイントにラインマーカーを引いて目立たせる、というのはよくやる作業だろう。パッと目に入ってくるので非常に便利なのだが……実はちょっと困ることもあるのだ。

 

それは、ラインマーカーの色が“紙面において支配的すぎる”ということ。つまり、目立ちすぎ! ってことだ。目立たせようとしているのだからそれでいいのでは? と言われればそれも正しいが、でも、重要なポイントだけが目に入ってもしょうがないのである。

 

例えば、下の写真のような状況で、ラインを引いた部分に対して「さらに強調して伝えたい情報」と「そこまで目立たなくていいけど見ては欲しい補足」を追記したいとしよう。それぞれを黒のボールペンで書いて、果たして満足のいく結果が得られるだろうかというと、それは難しい。なにしろ、ライン引いたところだけに目が走ってしまうから。

↑パッと視界に入るのはラインを引いた部分のみで、その近くに記入した補足はほぼ埋もれてしまう

 

目立ちすぎるというのは、そういうことなのだ。ラインマーカーは道具としてとても強力だが、ホイホイ引いていると、逆に情報の伝達を阻害してしまう可能性もあるのだ。

 

とは言っても、ラインが目立つのはもう仕方ない。それなら、情報を追記しやすい工夫がなされた最新のマーカーを使ってみるのはどうだろうか?

 

“めだたせカラー+メモ用ペン”で情報はすっきり整う!

以前この連載で、特殊な2色チップで濃淡のラインを使い分けられる、コクヨ「マークタス」というマーカーを取り上げたことがある。

濃淡の組み合わせがキモ!コクヨ「マークタス」のチカチカしないマーカーは集中力まで高める!?
https://getnavi.jp/stationery/470173/

 

今回紹介するのは、その新バージョン「2ウェイカラーマーカー<マークタス>」(以下「マークタス2way」)だ。

コクヨ
2ウェイカラーマーカー<マークタス>
左:カラータイプ(めだたせカラー+はっきりメモ)5色
右:グレータイプ(めだたせカラー+ひかえめメモ)5色
各150円(税別)

 

この「マークタス2way」は、「めだたせカラー+はっきりメモ」タイプと「めだたせカラー+ひかえめメモ」タイプの2種類が、各5色ずつのラインアップ。

↑外観は、「カラータイプ」(上)はキャップが乳白色、「グレータイプ」(下)はグレー。あとは軸の4本ラインの色が異なる

 

2wayの由来は、ラインマーカー(めだたせカラー)と0.3mmの極細サインペン(はっきりメモ/ひかえめメモ)が1本になっているというところから。ラインマーカーが目立たせる用なのは理解できるが、はっきりメモ/ひかえめメモの意味するところとは? いや、実際に書いてみれば、ああ! とすぐに納得できるだろう。

↑冒頭の文章を「マークタス2way」で彩色し直したもの。上の緑色は“ひかえめメモ”、赤色は“はっきりメモ”を使用している

 

そう、はっきりメモの「カラータイプ」はラインと同系色のより強いカラー、ひかえめメモの「グレータイプ」は、ラインと同系色のグレーカラーで書けるようになっているのだ。

 

つまり、はっきりメモは、ラインよりもさらにはっきり目立たせたい“超・強調”情報に。ひかえめメモは、本文の黒字よりも薄い色で控えめに伝わる補足情報に最適、というわけ。しかも、それぞれがラインと同系色なので、メモ部分がラインを引いた部分の関連情報であるということが直感的に分かる。つまり、使うだけで自動的に情報が整理された状態になるのだ。

 

↑はっきりメモの「カラータイプ」の色見本。白い紙面にクッキリとした発色で、アピール力が強い

 

はっきりメモはまさにはっきりクッキリしたインクで、黒字の合間に記入するとかなり目立つ。普通なら薄くて見づらい黄色ですら、きちんと視認して文字が読み取れるし、上からラインを引いてもしっかり視認できる強さなのだ。

 

もちろん、同色のカラーインクボールペンを使っても同じことはできるが、そこはやはりマーカーと一体化した2way構造なのは強み。携帯も運用も、こちらのほうがラクに決まっている。

↑対してひかえめメモの「グレータイプ」はほんのりとした色で、まさにひかえめな情報伝達が可能。カラーグレーの色合いもいい

 

筆者が個人的に好きなのは、ひかえめメモ。このカラーグレーは、視認しやすいのに目立ちにくい、本当に絶妙な色なのだ。

 

意識すれば目に入るけど、あえて意識下から外すと気軽に読み飛ばせる薄さ。かつ、ラインとの連携をうっすら感じさせる程度のグレーな色味。それでいてラインを重ねてもきちんと視認できるので、「普通の補足よりは強めの補足」みたいな使い分けが可能なのも面白い。

↑「これは目立たせたい」「これは目立たなくてもいいけど記載はしたい」のように、紙面の情報を必要に応じて整理できる

 

ここ数年、ラインマーカー業界は「目立たせる度合いの変化」をいろいろ考えていたように感じる。例えば、ゼブラ「マイルドライナー」は、淡いカラーでほんのり目立たせるもの。先に紹介したコクヨ「マークタス」も、濃淡で目立ちの差をつけるという考え方だ。これらは、目立てば正義! というシンプルな立ち位置を脱却した製品と言えるだろう。

 

ただ、そうは言っても目立つ度合いが変わるだけで、結局のところラインが紙面の中で支配的という構図は変わらない。

 

対して「マークタス2way」は、ライン以外の部分にも強弱をつけることで情報を整理する、という発想で作られている。これは明らかに従来のラインマーカーにはなかった考え方だ。ポイントを目立たせるのに加えて、すっきり整理されて理解しやすい紙面を作るためのツール。これは、ラインマーカーのまったく新しいジャンルなんじゃないだろうか。

 

 

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指差しだけで瞬時に翻訳! 英語学習の魔法の杖「Yiida」第2世代はどこまで進化したのか?

筆者はときどき、海外から洋書の資料を取り寄せることがあるが、それを読みこなすのが毎回、ほんっっっっっとうに大変。英語の勉強がてら、画像翻訳は使わずやっているのだが、「あー、学生時代にもうちょっとマジメに英語やっときゃ良かった!」と心から思うばかり。なかなか進まないし、面倒くさいしで、げんなりしてしまう。

 

ウェブ上の英文はもう、翻訳サイトに突っ込んで丸ごと翻訳すればいいや、と開き直れるが、印刷物はそうもいかない。画像翻訳アプリを使うにせよ、スマホで撮影して、小さな画面上でチマチマ和訳を読むことになるので、それなりに手間がかかるのだ。

 

ところが、昨年末に強い味方をゲットしたおかげで、そんなつらい状況はかなり改善された。この連載でも以前に紹介した、スキャン式電子辞書「Yiida」である。書籍ページ内の分からない英単語を指さすと、瞬時にその単語の和訳を教えてくれるという、まさに魔法の杖かというレベルの超兵器。「この単語だけ分かったらあとは読めそうなのに!」みたいなとき、非常に助かるのだ。

【第1世代はどうだった?】
分からない単語を指差すだけ! 机上で高速翻訳する電子辞書「Yiida」をレビュー
https://getnavi.jp/stationery/446989/

 

おかげで、英文を読むのがかなりラクになり、「あー、Yiidaもう手放せないわー」と思っていたところへ、なんと早くもバージョンアップした新モデルが登場したというニュースが! おいおい、それは試さずにはいられないぞ。どうバージョンアップしたのか? 新機能が追加されているのか!?

 

翻訳する魔法の杖、待望のスタンドアローン化!

ということで手元に届いたのが、新しい「Yiida S1」。見た目は前モデルと変わらないお馴染みの“棒“スタイルだし、なにか変わったところがあるかと聞かれると、この状態では見分けが付かないというのが正直なところ。

GenHigh Tech
Yiida S1
2万1800円(税込)

 

早速使ってみるか、と本体をシャキーンとスライドさせてみると……おっ、内側に小さな液晶ディスプレイとスピーカーが追加されている!

↑前モデルでは単にフラットな面だったところに、ディスプレイを搭載。下の小さなボタンは音声のオンオフ切り替え用だ

 

前モデル(Yiida)は、本体カメラから単語を読み取り、Bluetooth接続したスマホの専用アプリで和訳表示+英語の発音をしてくれていたのだが、なんと「Yiida S1」ではスマホが不要。スタンドアローンで本体画面に和訳を表示し、発音発声もしてくれるというのだ。

 

もちろん、従来通りスマホとセットで使うことも可能なので、その辺は使うシチュエーションに合わせて自由に選べばOK(発声をイヤホンで聞きたい場合はスマホ経由でどうぞ)。

 

これは正直、予想以上の大幅バージョンアップだろう。今まで、何の不満もなくスマホ連携で使っていたのだが、確かに単体で使えた方が圧倒的にラクだ。一度スタンドアローンの「Yiida S1」を使ってしまうと、いちいちスマホのアプリを立ち上げてBluetoothでペアリングして……というのが手間に感じてしまうほど。

 

ちなみに本体内蔵の辞書は『新英和中辞典(第七版)』ということで、こちらは従来と同様。つまり、スマホなしでも、今までと同じ単語訳が得られるということだ。

↑本体上部のカメラから最大1750平方cmの面積をフォロー。大判雑誌の端っこの文字まできちんと読み取ってくれる

 

では、早速使ってみよう。あらためて本体をシャキーンとスライドさせて伸ばすと、連動して電源オン。液晶画面の立ち上がりを確認したら、読みたい英文(書籍・雑誌・書類など)の上部に立てて、これで準備は完了だ。

 

本体底部には小型の吸盤があり、スライドさせると机上に吸着するので倒れにくくなる。背が高いのでいささか不安になるが、多少の揺れでは転倒しないので安心して使えるのだ。

 

あとは、意味を知りたい単語の下に指を当てると、本体上部のカメラが瞬時(メーカー公称で約0.2秒)にその動作を感知→指示された単語を読み取り→ネイティブ音声による単語の読み上げ+単語和訳の画面表示がなされる。

 

ユーザーは単語を指さすだけ。それだけで、きちんとそれを読み取って単語の意味を教えてくれるのは、何度やっても不思議なのだが……しかし読み取り精度は非常に高く、きちんと指さす限り、意図しない読み取りミスはまず発生しない。

 

一般的な電子辞書といえば、キーボードでいちいち知りたい単語のスペルを入力するもの、と相場が決まっているが、そういったレガシーな機械とは完全に別モノであり、別次元の使いやすさだと断言できる。

↑ディスプレイは単語の和訳のみ表示。スマホでなら用例や発音記号なども確認できるので、情報量はやや減ってしまうが、単体で使える身軽さは魅力だ

 

読み取り精度の高さ・スピードは従来と変わらない印象だが、そもそも前モデルの時点で充分すぎるほどに魔法クオリティだったので、そこは何の不満もない。それよりも新たに「Yiida S1」を使ってしみじみと感じるのは、スタンドアローン運用できる、その手軽さだ。

 

本体を起動してから知りたい単語の訳を得られるまでの速度は段違いだし、なによりスマホを占有されないのがありがたい。例えば、スマホでは英会話講座の動画を流しつつ、テキストを開いて分からない単語は「Yiida S1」で確認する、という使い方だってできるわけだ。

↑こちらはスマホ画面での表示。しっかりと学習したい場合はこちらが良さそう。また、専用アプリはチェックした単語の繰り返し暗記学習にも対応する

 

画面が小さいために、和訳や用例のボリュームが多いと自動スクロールされて最初の方が流れてしまうが、少し待つとあらためて文頭まで戻って再スクロールが始まる。これはささやかながら親切な仕様だと思う。とはいえ、やっぱり画面が大きいほうがいい、という場合は、スマホ連携に切り替えてアプリ画面で単語を表示させればいいのだ。

 

価格は前モデルよりも3000円余り高くなっているが、今から購入するのであれば、やはり軽快な「Yiida S1」を選んだほうが良さそう。というか、いま英語の電子辞書を買うなら断然これ! というほどオススメできる。ホント、スゴいのだ。

 

 

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クリップとマグネットの挟み撃ち! ロール付箋「テープノクリップフセン」が必要な時にすぐ使える優れモノに進化

文房具の“持ち歩き”について考えることがある。もちろん、全部まるっとペンケースに放り込めばいいのでは? って話なのだが、そうしにくいモノもあるのだ。

 

その代表が、付箋(ふせん)だ。一般的な短冊形の付箋をそのままペンケースに入れると、気付くと中でバラバラに分離していたり、汚れてみすぼらしくなっていたり、ということも少なくない。だから、付箋専用ケースを使ったり、ペンケースの隔離されたポケットに入れたりといった工夫はしたいところなのだ。

 

さらに、ペンケースと一緒に持ち運べないケースだってある。例えば、書類を挟んだクリップボード+ペン1本と付箋、という場合。さてこれは、どうしたものだろうか?

 

このように、携行するには意外と悩ましい付箋だが、その問題にひとつの提案をしてくれている新製品があったので、今回はそれを紹介したい。

 

かっこいいロールふせんが使いやすくバージョンアップ

ヤマト「テープノクリップフセン」は、以前にもこの連載で紹介した「テープノフセン」のバージョンアップ版。

 

ベースとなった商品は、ソリッドでやたらとカッコいいロールタイプの付箋だが、そこへ新たにクリップとマグネットが付きました、というものだ。ボディと紙テープロールの質感が揃ってスッキリとしたカッコよさで、前モデルと同様にグッドデザイン賞も獲得している。

ヤマト
テープノクリップフセン
550円(税別)

 

ただ、ボディ中央のロール軸になっている部分がポコッと盛り上がっており、そこがクリップとして機能するようになっているのが、新しくなった部分。

 

クリップは内部に食い込みがあるので、ノートや手帳の表紙、クリアホルダーなど、薄いものでもそれなりに固定は可能。つまり、貼るモノと貼られるモノをセットにして携行できるということで、そこは単純に使い勝手がアップしたと言えるだろう。

↑左が新商品、右が前モデル。飛び出した部分が新たに追加されたクリップ部だ

 

↑ノートの表紙につけて携行。わりとしっかり固定できるので、多少振り動かしてもポロッと落ちそうな危うさはない

 

加えられる厚みは、メーカー公称で0.4mm~2.5mm前後とある。クリップは、バネではなく素材の弾力だけで挟む構造。クリップボードでも3mm厚以上のものがよくあるので、バキッといかないように見定めつつ、あまり無理のない範囲で使うのが良さそうだ。

 

本来は、可動式のバインダークリップのようなものの方が運用上は向いているのだが……デザインとの兼ね合いを考えれば、これがほどよい着地点なのかもしれない。

 

また、クリップとは逆サイド(裏面)側にも、新たにネオジム磁石を内蔵した。金属面ならしっかりとくっつくので、冷蔵庫やオフィスのパーテーションに貼りつけての運用にも問題なさそうだ。

↑ネオジム磁石内蔵で、冷蔵庫にもピタッ。よく使う場所に貼れるのは、それだけで便利だ

 

冷蔵庫に貼っておけば、日付を書いて貼って手作り総菜の消費期限を管理するなど、地味ながら有用な使い方もできる。携行がラクなのに加えて、置き場所に悩まなくても済むのはありがたい。

↑小さく切ってのマーカー化は、「テープノフセン」シリーズが得意とするところ

 

↑二つ折りにしてインデックスに。使い道を工夫するのが楽しいタイプのツールだ

 

付箋としては、全面のりタイプなので、少し使い方にクセがある。ただ、長さを自由に調整できる分、慣れればいろいろと幅広く使えるのが面白い。

 

例えば、小さく切ってマーカーとして貼れば、紙コップなど自分の飲み物の目印にすることもできる(書き込みも可能なので、名前を書いてもいい)。手帳と一緒に携行した場合、よく開くページの端に二つ折りにして貼れば、インデックスに早変わり。テープ自体がしっかりとした硬さなので、ページを開く手がかりとしても充分に使えるはずだ。

 

また、付箋だけに粘着力は弱いものの、ちょっとした仮留めテープの代用として使うことも可能だ。実際、“付箋”というよりも、“多用途に貼れる紙片”と捉えた方が、使い道は広がるだろう。

↑カッターはギザギザが大きめのプラスチック刃。純粋な使いやすさで言えば、もう少しフラットに切れる刃が欲しいところ

 

↑ちょっと思いついて、ポケットの端にクリップをひっかけてみた。欲しいときに素早く使えるので、アリかも!?

 

もともと汎用性の高かった「テープノフセン」だが、それが携行しやすく、設置しやすくなっているわけで、「テープノクリップテセン」へのバージョンアップは確実に“アリ”。持ち歩いていれば便利に使えるシーンがそこかしこにあるはずなので、“とりあえず買い”で1個ぐらい持っておいてもいいのだろうか。

 

 

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指サックに求めるのは実用性か“癒し”か!? 安定の「メクリッコ」と話題の「はにさっく」をレビュー

文房具には、かわいさも重要である。もちろん、仕事や勉強のための道具なのだから実用性が第一というのは当然なのだが、でもそれだけというのも違うだろう。聖書にも「人はパンのみにて生くるにあらず」とある。パンだけじゃなくて、たまには“カワイイ”とか“カッコイイ”を食べることで、心の栄養バランスもとれるというものだ。

 

とはいえ、大人が摂取できるかわいさとは、意外と難しい。ファンシージャンルはどうしたって、子ども向けにフォーカスして作られることが多いので、大人が堂々と「うーむ、かわいい!」と胸を張って言えるアイテムは、限られてしまうのである。いや、個人的にはどんなものでも、堂々と思うがまま「かわいい」と言っちゃっていいと思うのだが。

 

ということで今回は、老若男女を問わず「かわいい!」と言っちゃっていいポテンシャルを持った、かわいさ一点突破の最新文房具を紹介したい。

 

誰もが“かわいい”を感じられる「はにさっく」

万人がかわいいと思えるモノといえば、はにわ(埴輪)である。

 

はにわは古墳時代の祭祀品だと言う研究者もいるだろうが、筆者は「古代の萌えキャラフィギュア」なのではないかと思っている。祭祀品なら、あんなに愛らしい表情だったり、多彩な(=コレクティブな)形状だったりする必要はないだろう。絶対に、はにわ制作者の中にもかわいさを極めて「神職人!」なんて崇められてる奴がいたはずだ。

↑はにわが溢れる宮崎「はにわ園」にて。日本人のDNAに訴えかけるかわいさだ

 

つまり、古代より日本人の体内には“はにわ萌えDNA”が刻まれているはずなのだ。だから、“生真面目な事務用品メーカー”と思われていたライオン事務器が、唐突にはにわ型指サック「はにさっく」なんてものを作ってしまうのも、無理のない話なのかもしれない。

ライオン事務器
はにさっく
各450円(税別・大小2個セット)

 

大小のはにわが各1個セットされた3種類で、計6タイプがラインナップ。どれも埼玉県野原古墳で発掘された、有名な「埴輪 踊る人々」(東京国立博物館所蔵)がベースになっているようだ。東京国立博物館所蔵の“本物”、「埴輪 踊る人々」にはない、おどけた表情やポーズのはにわもいて、それぞれなにか名前をつけたくなるぐらいにキュート。

 

これは萌える。机上に置いてマスコットにするもよし、指人形として遊ぶもよし、という感じである。

↑裏面の滑り止めに一つだけ紛れ込んだ前方後円墳。こういうのもかわいい

 

裏面には滑り止めの細かな凹凸の加工が施されているが、これもよーく見ると……ひとつだけ前方後円墳になっているのがお分かりだろうか? こういうちょっとした“お遊び”が入っているのも、はにわファンには嬉しいポイントだろう。

 

【関連記事】
はにわの形の指サック「はにさっく」が砂漠のような指と心を包み込む!
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……と、ここまではいいのだが。冒頭で「かわいさ一点突破」と言った通り、指サック(紙めくり)としての実用性は、正直かなり低い。

↑滑り止めは充分に効くので、紙めくりとしての機能は問題ないのだが、大サイズははにわの手が少々邪魔かもしれない……

 

まず、サイズの問題。紙めくりをする際には、親指・人差し指にサックを装着するのが基本だが、「はにさっく」は大の方が成人男性の一般的な人差し指にちょうどサイズ。小だと小指ジャストぐらいなので、これは仕事には役立たない。大と小は、それぞれ内径が17mm/15mmとあるので、女性でもよほど指が細くないと、親指に大はキツいのではないだろうか。

↑大を親指に、小を人差し指に装着してみたところ。男性の指だと確実にパツパツで血が止まる。また、指を曲げるとこのように干渉してしまうのだ

 

もうひとつ、指の第一関節までカバーする形状で、かつシリコンの厚みが全体的に均一なので、指の曲げ伸ばしがすごくやりづらい……。従来の指サックは、先端だけ滑り止めを厚くして関節部分は動かしやすく、といった工夫があるのだが、こちらははにわのデザインを優先しているため、そういう設計は無理だったようだ。かわいさのために犠牲にされている部分(=実用性)は、やはり確実に感じられた。

 

“癒し”面での実用性はバツグン!

とはいえ、イラッとして指からはずしてしまえば、その“のほほん”とした表情に癒されてしまう。つまりは、いらだちと癒しのマッチポンプ装置なので、できれば癒し部門でだけ、職能を発揮してもらうのがベストだろう。

 

パッケージには「はにわたちがお仕事をお手伝い」とあるが、こちらとしては「いやいや、君たちは働かなくていいから。そこでじっとしているのがお仕事だよ」と言ってあげたいところ。かわいいだけで充分なのだ。

 

そもそもこの「はにさっく」、ライオン事務器の若手社員が中心となって立ち上げた、夢のある商品作りのための「夢工房」プロジェクトで企画された製品とのこと。(プロジェクト名のそこはかとないダサさに、やはり生真面目さを感じてしまう。)このプロジェクト、以前はスイーツモチーフのクリップやマグネットといったベタなものを作っていたが、今回は一転してはにわ。なにかふっきれたのか、夢工房。次回も期待したい。

最強指サック「メクリッコ」がリング型に進化し使い勝手アップ!

さて、じゃあ見る用の指サックははにわでいいけど、仕事用はどうしようかな、って話だろう。そこでオススメなのが、昨年12月に発売されたプラス「リング型 メクリッコキャッチ」である。

プラス
リング型 メクリッコ キャッチSML
各180円(税別・5個入り

 

立ち位置としては、以前にこの連載でも優秀な指サックとして激推しした「メクリッコキャッチ」のシリーズアイテムということになる。従来品が3Dカーブで指先までカバーする形状だったのに対し、こちらは開放感のあるリング型……なのだが、ただのリング型とは違う、ちょっと変わった形状をしているのだ。

 

【関連記事】
“指先舐め”は嫌われる! 使えば病みつきの書類めくりがサクサク進む指サック
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↑指の腹を全体的にカバーする前モデルと異なり、開放的なリング型に。装着するときは「PLUS」のマークが爪側に来る

 

装着すると、指の腹側上部が大きくえぐれたようになっているのがお分かりだろうか? これ、装着したままキーボードを打ったり、スマホを操作したりがやりやすいのである。

 

もちろん通常のリング型(指の腹を巻くタイプ)でもそれは可能だが、爪に近いちょっとしたスペースが解放されているだけなので、爪が伸びているとスマホの操作がけっこうやりづらい。対してこちらは、普段画面に触れている指の腹の先側が使えるので、かなり自然なタッチになるのだ。

↑装着したまま、特に気を遣うことなくスマホも操作できる。これはシンプルにラクだ

 

もちろん、がっつりと紙をめくるには指の腹まで使いたいので、そういう点では従来の「メクリッコキャッチ」の方が優秀と言える。

 

でも、「ちょっと書類めくりたいんだけど」程度の状況なら、外さずにすぐスマホが操作できるほうが、圧倒的に便利。そもそも摩擦力に優れた製品だけに、これぐらいの形状でも充分に実用的なのである。

↑摩擦力の高いエラストマーは、相変わらず強力。ちょいと指を引っかけるだけで紙が簡単に持ち上がるので、リング型でも充分に使えるだろう

 

開放感が高いので指も蒸れづらくて快適。「メクリッコキャッチ」、リング型になってもやっぱり、激推しできる指サックだ。

 

 

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使う分だけ引き金引いてワンハンドでカット! ニチバンの良作を復刻した「プッシュカット」はやっぱり快適だった

愛用していた文房具が、いつの間にか店頭から姿を消している。おかしいな? と思って調べると、メーカーサイトの製品リストからも消えている───そう、廃番(または製造終了)だ。

 

困ったことに、愛用しているからにはそれなりの“使っている理由”があって、つまり他に代替品となるものがないケースが非常に多い。なので、「待って待って、困るよー」とオロオロし、小売店やネットショップで在庫を探し回り、「なんで廃番にした!」と怒りに声を荒げることになる。

 

当然のことながら、メーカーだって好きで廃番にするわけではない。部材の供給が難しくなったり、そもそも単純に売れていなかったり、などと理由は様々にあるだろう。これほど次々に新製品が出ているのだから、その陰で消えていく製品も出ざるを得ないのだ。仕方ないことなのだ。ギギギ……。

 

とはいえ、ごく稀なケースではあるが、「祝! 復刻!」なんてこともないではない。それも「ユーザーの声に押されて復刻」なんてことになれば、廃番を惜しむ声(というか、怨嗟の声)を挙げた甲斐もあったというもの。今回は、まさにそういう復刻を果たしたばかりのおめでたい製品を紹介したいと思う。

 

片手で切り貼りできて快適なテープカッターが復刻

2011年、ニチバンの「ナイスタック ハンドカッター」「メンディング テープハンドカッター」という製品が販売終了となったのをご存じだろうか?

 

これらは、片手でテープが切り貼りできる携帯型テープカッターとして非常に優秀だったのだが、海外生産における部材の安定供給が難しくなったことで、最終的に市場から姿を消してしまった。で、そのハンドカッターが2020年に復刻! という形で、このほど同社から再びの新発売となったのが、「プッシュカット」である。

ニチバン
左:マスキングテープ プッシュカット
右:ナイスタック プッシュカット
各1200円(税別)

 

当時のハンドカッターは商品名の通り、メンディングテープとナイスタック(両面テープ)にそれぞれ専用で対応したものだったが、新発売のプッシュカットは、メンディングテープの代わりにマスキングテープがラインナップ入りした。

 

これは、ハンドカッター販売時のユーザーがDIY・クラフトホビー系や、プロの塗装業者に多かったことを受けてのことだそう。なるほど、特にそのあたりの層から、復刻を願う声が強かったのかもしれない。

 

販売時には、緑のボディにマスキングテープ、赤のボディにナイスタックがそれぞれ装填されているが、機構的に専用ということではなく、どちらのテープでも使用可能だ。

 

↑レバーを引くたびに約12mmずつテープが出てくる機構。動作はスムーズで、テープ詰まりなどのトラブルもなし

 

使い方は簡単。まず本体下のレバーを引くと、内蔵されたテープが約12mmずつ、にょろっと外に飛び出してくる。

 

何度かレバーを引いて必要な長さになったら、上部のボタンをギュッと押し込む。するとテープ排出口内側の刃が降りて、カットできるという仕組みだ。もちろん、レバーを引くのが面倒なときは、にょろっと飛び出たテープ先端を手でぐいっと引き出してもOK。

↑テープを切るにはボタンをギュッと押し込む。テープ断面がギザギザせずフラットに切れるので、塗装マスキングに使いやすい

 

しかも、レバーを引く回数を揃えれば、常に同じ長さのテープを取り出すことが可能となる。これなら、広い面積に複数枚の両面テープを揃えて貼る、といった作業が簡単になるはず。

 

レバー1回12mmというのもなかなか絶妙で、両面テープで“点付け”をするための、小さな正方形に近いテープ片を量産するのがとてもラクなのである。特にナイスタックのような高品質両面テープは、剥離紙が頑丈で小さく切りにくいが、それがサクサク切れる。実際にやってみると、これは非常に快適だ。

↑テープ幅は15mmなので、レバー1回でカットすれば15×12mmのテープ片が量産できる

 

ハンドカッターシリーズからの最大の変更点は、刃を降ろしてのカットがボタンプッシュに変わったところだ。

 

従来は「本体上部のスライダを後ろに引いて切る」だったので、手の動きを考えれば、よりスムーズに使えるようになっている。旧モデルで30分ほどテープを連続して切ったときなどは、親指がクタクタに疲れたもので、少なくともボタンを押し込むほうがはるかに疲労は少なそうだ。

↑旧モデル(ハンドカッター)は、上部のスライダを親指で引いて切る仕組みだった。これ、長時間繰り返しているとけっこうつらい

 

テープの装填は、透明カバーをパカッと外して持ち上げ、引き出したテープを排出口に通しながらリールにセットする。

 

このとき、テープを排出口からはみ出すぐらいの長さに伸ばしておくと、扱いやすい。はみ出した分は、リールにセットしてから巻き取ればいいのだ。また、本体内部でテープが少したるむようにしておかないと、透明カバーをハメたときに干渉してしまうので、その点は要注意である。

↑透明カバーは真上に持ち上げれば簡単に外れる

 

↑再装填時は、写真のパーツにテープが干渉しないよう注意。このパーツの下をテープが通ることで、スムーズなテープ送りができるようになっている

 

ちなみにテープの詰め替えは、マスキングテープ・両面テープともにニチバンの推奨品を使うように、と注意書きにある。これは、本体のテープ送り出し性能がテープの粘着特性に左右されるため、構造が推奨品に最適化されているからだ。

 

とはいってもニチバンのテープだから、両面テープは言うに及ばず、マスキングテープも車両塗装にまで使える高品質な製品である。あえて送り出し性能を落としてまで非推奨品を使う必要はないと思う。

 

↑カット用ボタンに加えて、本体後部にセーフティーコード用の取付穴も追加された。この辺りは工事現場などで使う道具として重要なポイント

 

実は筆者も、従来品のハンドカッターをヘビーに使っていたので、久々に使ってあらためて「やっぱりいい製品だな」と感じた次第である。同じく以前使っていたという人には待望の復刻だろうし、初見の人にも用途がハマれば間違いなく便利なはずだ。ぜひ長く愛用してやってほしい。

 

 

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“潰れたガムテ”がこんなに便利なんて! ヤマト「アウトドアテープ」がキャンプでも災害時も活躍する理由

2020年7月の豪雨水害は、本当に大変なものだった。全国1府34県で、浸水や損壊を含めた住宅被害が1万8000軒以上、甚大な人的被害も発生した。被害に遭われた方には、心よりお見舞い申し上げます。実のところ筆者も、佐賀県在住の知人から「近所で土砂崩れに巻き込まれかけた」という話を聞いて、ゾッとしたものだ。

 

こういう自然災害は、いつどこで発生するか分からない。せめて備えだけは、普段からしておくべきだろう。皆さんも、非常用持ち出し袋など防災セットの準備は万全だろうか? 10月は上陸するような強い勢力をもつ台風が頻発する時期なので、今回は、防災セットに入れておくと助かるかもしれない文房具を紹介しておきたい。

 

持ち運べるコンパクトな粘着テープが役に立つ

飲料水やライト、防災ラジオはもちろん防災セットのマストだが、意外と忘れてならないのが、粘着テープ(布ガムテープ)だ。

 

緊急時の止血や骨折時に添え木を固定したり、割れた窓をふさいだり、避難所でダンボールを組んでパーテーションを作ったり。あとは油性マジックで書き込んで伝言を貼ったり、名札代わりにしたり。とにかく応用範囲がものすごく広いのである。

 

ただ、容量が限られた持ち出し袋の中に入れておくには、ちょっとかさばる。そこでオススメなのが、ヤマトから7月に発売された「アウトドアテープ」だ。

ヤマト
アウトドアテープ(全8色)
各590円(税別)

 

なにがオススメかといえば、それは見ての通り、コンパクトな形状が、である。モノとしてはごく普通の布粘着テープだが、一般的な製品と比べるとこれほどコンパクトなのだ。

↑並べて置くと、25m巻の粘着テープが巨大に見えるほど

 

サイズは約70×50mmの平巻きで、厚みも15mmほど(実測値。公称18mm)と薄い。1~2巻くらいは無理なく防災セットの袋に詰め込んでおけるはず。重量も1つがたかだか50gほどだ。

 

従来の粘着テープも、押し潰して芯を抜いて……という手を加えればコンパクト化はできる(筆者もそうして備えていた)のだが、それでも一般的な25m巻は思ったほど平たくはなってくれない。「アウトドアテープ」は3m巻とかなり短いが、それでも緊急時に持っておけるか分からない25mよりも、確実に携帯できる3mのほうが価値があるのは間違いないだろう。

↑引き出す時はこんな感じ(これで80mm)。もちろん手でビリッとまっすぐ切れる

 

平巻きでちょっと面白いなと感じたのが、テープの取っかかりが見つけやすい、というところ。巻きの端で切ると決めておけば、次に使う際にもテープ端がすぐ見つかる。グルグルと芯を回しながら「どこから使えるのかな……」と探す手間がないのだ。

 

また、端から端まででだいたい70~80mmになるので、長さを把握しやすいのも面白い。これなら、梱包時にやたらと長くテープを出し過ぎて無駄にする、というミスも減らせるかもしれない。

↑ダンボールの梱包にももちろん活用できる。3mと短いので、あっという間に使い切ってしまうのだが……

 

もうひとつ、ありがたいのがパッケージ。ゴム系粘着剤のテープは裸のままで長期保管しておくと、側面に染み出した粘着剤に埃が付着しがちだし、そうなると粘着力も確実に低下する。

 

「アウトドアテープ」は、ジップ付きの密閉袋にパックされた状態で販売されているので、このまま保管しておけば、少なくとも埃の付着は防げるし、携帯するにしても粘着のベタベタが他のものに付いてしまう心配がない。いざという時に使えない! のが致命的な防災グッズとして、これはかなり重要なポイントと言えよう。

↑パッケージはそのまま密閉できる保存袋として使える。粘着のベタベタも気にせず携帯できるのだ

 

↑テープの上から、油性マーカーや鉛筆で書き込み可能。被災時は伝言を書いて貼っておくなどするといい

 

もちろん、防災用としてだけでなく、名前通りアウトドア……キャンプや登山用としても、携帯しておくと便利。テントやシュラフの穴をふさいだり、汚れた衣服を圧縮パッキングしたり、などなど使えるケースは多いのだ。

 

なにより、グラム単位で荷物を軽くしたい登山行において、コンパクト&軽量さは圧倒的な正義だ。

 

↑我が家の防災袋にもすでに備えてある。粘着テープはアレコレ応用が利くので、邪魔にならないなら持っていて損はないのだ

 

それ以前に、ここまでコンパクトならば、オフィスデスクの引き出しとか家庭のリビングとか、もうどこにでも置けるし、見た目にも邪魔じゃない。ただ、価格的にはいささか普段使いはしづらいので、やっぱり「いざというときにあって助かる」系のツールだとは思うのだが。

 

 

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カオスなカバンにはこれ一つあればいい! キングジム「フラッティワークス」は“絶妙”を体現するバッグインバッグ

カバンの中がカオス……という人は多いが、バッグインバッグを利用している人は意外なほど少ない。というより、そもそも“バッグインバッグ”という概念を知らない人すらいるのだ。

 

筆者も文房具ライターという仕事柄、「カバンの中が整理できなくて、必要なモノをすぐに取り出せない。なにかいい解決法はないか?」という質問をたまにもらうのだが、「バッグインバッグ使ってます?」と問い返すと、きょとんとされてしまうのだ。

 

だいたいが普段使いしているカバンというのは、あれこれ放り込めるようなサイズなのだが、だからといってそのまま野放図に放り込んでいたら、収集がつかなくなるのが当然。PCのデータを管理する場合だって、大量のファイルをそのまま一つのフォルダにしまわず、フォルダ内フォルダに分類して格納しているはず。ならば、カバンの中に小さなカバンを入れて整理収納すれば便利なのは、自明の理だろう。

 

とはいえ、バッグインバッグというのもなかなか奥深い世界で、どれがベストと言い切るのは難しい。だって、カバンの形や内寸もいろいろ、身についた使い方もいろいろ。これひとつあれば万人が快適、なんて製品があるはずはない。

 

そこで今回は、ひとまずバッグインバッグ初心者向けに、とりあえずこれを使っておけば快適! というものを紹介しよう。

 

帆布製の封筒型「フラッティワークス」はオールマイティに便利

カバンの収納で困りがちなのが、手帳やモバイルバッテリーなど、さほど厚みのないもの。多少ごちゃついたカバンの中にもスルッと入ってしまうが、取り出す時は探さないとなかなか出てこない。

 

なので、まずは厚みのないものをしっかり整理収納するのがポイント。そこで便利なのが、封筒型のシンプルなバッグインバッグなのだ。

キングジム
フラッティワークス A5ヨコ
1800円(税別)

 

↑メインのカバンの中で迷子になられると困る、というものをひとまとめに収納できる

 

キングジムから2020年6月に発売された「フラッティワークス」は、薄いケースをフラップで閉じるタイプの、まさに封筒型のベーシックなもの。もともとは、同型でPVC製の「フラッティ」シリーズが2017年に発売され人気となっていたが、今回はその上位版として帆布製の「ワークス」が仲間入り、という流れだ。

 

サイズ展開は、カードサイズ・A6・A5(タテ/ヨコ)・A4(タテ/ヨコ)の6タイプ。バッグインバッグは、あまり小さいようだとカバンの中で紛れて役に立たないので、個人的にはA5かA4がオススメである。普段使っているノートや手帳が入るものとして考えれば、サイズ選びに迷うことはまずないだろう。

↑筆者はノートや手帳などのサイズをA5で統一しているので、当然のようにA5版をチョイス。タテ/ヨコは使うカバンのタイプによって選べばOKだ。(リュックならタテが使いやすい)

 

シリーズ最大のポイントは、表面の透明ポケット。収納したものが外から見えるので、中に何が入っているかザックリ分かるし、中をゴソゴソ探るときも、光が入って明るいので探しやすい。

↑中に入れたものがほぼ素通しで見える透明ポケット。中身を取り出す際の“迷うことのなさ”は素晴らしい

 

さらには、収納したスマホを透明ポケットの上から操作できる(多少、操作性は落ちるが)というのも、けっこう便利。メールやLINEくらいなら取り出さずに対応可能で、これは使ってみるとなかなか快適である。

↑バッグに入れたままでスマホの地図が確認できたりも。移動中にスマホを出し入れするのは面倒くさいので助かる

 

ではなぜ、同じ透明ポケットを搭載しているのに上位版の「ワークス」がオススメなのか? というと、それはもう単純に収納力の問題である。

 

まずマチの厚みだが、同じA5サイズで比較すると「フラッティ」のマチ約20mmに対して「ワークス」は約35mm。厚みが15mm変われば収納力はそもそも大きく変わるし、なにより、入るモノ自体が違ってくる。例えばMacBookの電源アダプターは厚みが約28mmだが、「ワークス」ならこれぐらいすんなりと飲み込んでしまう。つまり、バッグインバッグとしての利便性に差が出るわけだ。

↑厚みのある電源アダプタも、マチにちょっと余裕を残して収納できる

 

内部は、間に内ポケット付きの仕切り板を挟んだ2室構造となっている。ごちゃっとした小物は見通しの良い前(透明ポケット)側のポケット、薄い紙モノなどは後ろ側のポケット、と使い分けると整理しやすいだろう。

 

仕切り板の内ポケットもよく考えられていて、バッグ全体の底部よりもやや浅めに作られている。収納したものが沈みすぎず、絶妙に取り出しやすいのだ。薄いバッグインバッグは指を入れてかき回すのも一苦労なので、そのあたりは非常によく考えられた仕様だと思う。

↑内ポケットはわざと浅い作り(赤の点線部分)になっている。ポケットの底まで指が届きやすいので、出し入れがラクだ。細かい気遣いだなぁ、と感心した

 

↑裏側にもポケットを供える。封筒や半折りにしたA4書類などを一時的にキープする

 

開閉はマグネットホックなので、フラップをただめくれば開いて、降ろせば閉まるというシンプルさ。いちいちボタンを閉めたりゴムをかけたりという手間がないのはありがたい。

 

バッグインバッグはカバンの中で開け閉めすることが多く、そこでなにか開閉に操作が必要なのは単純に使いづらい。かといってフタなしでは中身がこぼれ出る心配もあるし、これくらいシンプルな構造がちょうどいい。こういう点が、バッグインバッグ初心者に最適な使いやすさ・面倒のなさというわけだ。

 

↑フラップをかぶせるだけで、パチンと固定できるマグネットホック。磁力はさほど強くはないが、これで充分というレベル

 

もちろん、バッグインバッグとしてだけでなく、単体で携行できるサブバッグとしても実用的。帆布の手触りや質感もいい。どのような形で使っても役立たないシーンがない、と言えるほどなので、ぜひ使い倒してみてほしい。

 

 

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“色”の効果で文字に集中! 仕事や読書に取り入れたい「リーディングツール」2選

最近疲れがひどくなると、どうしても本が読めなくなる。疲労で集中力がガタ落ちするのか、文字を目で追えなくなってしまうのだ。だから誌面を眺めていても、ボーッと「なんか文字があるな」と感じるだけで、意味のある情報が脳に入ってこない。さらに、加齢による目のかすみがコンボで加わると、もうダメ。

 

実は先日も、新たに資料を何冊か読み込まないといけない仕事があったのだが、これが驚くほどに読み進められないのである。気が付くと惰性でページをめくっていて、ハッと慌てて戻っても、どこまで読んだかまったく記憶に残っていないのだ。

 

そうだ、こういうときに何か役に立つ文房具がどこかにあったような気がする! そこで自宅の文房具棚をゴソゴソとかき回して……ありましたよ、集中力が欠如した状態でも加齢で目がかすんでも、文字をきちんと意味を持って読み取れるようになる便利なツールが。

 

1.“色”で1行~1段落ずつ視線を集中させる

とは言っても、それほど大げさなものではない。一般的には“リーディングスリット”などと呼ばれている、色つきの樹脂板である。文房具店などで比較的見つけやすいのは、クロスボウジャパンの「魔法の定規」だろう。

クロスボウジャパン
魔法の定規 ワイド
650円(税別)

 

ポイントになるのは“視界の限定”効果である。この「魔法の定規」を誌面に載せると、ページの数行だけに色が付いた状態になる。すると、この色が付いた部分にだけ視点が集中するので、目が“上すべり”にしくく、ゆっくりと文字を追っていくことができるという仕掛け。

↑文章の上に置くと、「いまココを読んでいる」と常に確認できるため、集中が乱れにくい

 

そもそもリーディングスリットは、「ディスレクシア(dyslexia)」(理解力などに問題がないのに、文字の読み書き学習に困難がある障がい。識字障がい)の人が読書をするのに役立つ補助器具として、イギリスなどでは図書館にも置かれているツールなのだという。もちろん、筆者のように集中力が欠如して読書しにくい、なんて人にも役に立つ。

 

だいたいにおいて、文字が追えない・目が上すべりするという状態は、自分がいまページのどこを読んでいるのか見失っていることが多い。結果、読み飛ばしなどが多発してしまう。だから、常に「いまココ!」とハイライト表示されていれば、その部分に集中することができるのだ。

 

↑リーディングスリットあり/なしで比較すると、明らかに色がある方が目線が集中しやすい

 

使用時は、下線部分の1行を読んだら次へとスライドさせていく。1行ずつ動かすのが面倒であれば、数行から1段落をまとめてハイライトするタイプを使っても問題ない。なににせよ、自分の目がいま見ている場所を把握できるなら、それで充分なのだ。「魔法の定規」はガイドラインが印刷されているので、それを行に合わせて動かせば、さらに読みやすくなる。

 

また、色が付いていることで、白い紙よりも光の反射を抑えられるという効果もある。白地に黒の文字はコントラストが強いので、目が疲れやすいのだ。これもまた集中力を欠かす原因のひとつなので、そこをケアできるのはありがたい。

 

さらに色が付いていてもまだ眩しいようであれば、くるっと裏返して使うのもあり。裏面はマット加工されているので、より反射を抑えることができる。蛍光灯直下で本を読む場合は、こちらのほうが読みやすく感じた。

2. 加齢による読みづらさにはルーペが効く

次なる問題は、加齢で細かい文字が見づらい、という点。こちらはリーディングスリット機能付きの「カラーバールーペ」が便利だ。置いて使うタイプの棒形拡大鏡だが、その中央の1行分が色つきになっている、というもの。

共栄プラスチック
カラーバールーペ A5タイプ(150mm)
700円(税別)

 

全長は150mmで、四六判ハードカバーの1行がぴったり収まる。拡大倍率は2倍と控えめなので、周辺の行との違和感は少なく、かつ読んでいる行のハイライト感はしっかりと感じられる。なにより、文字が大きくなると圧倒的に目に優しく読みやすい。ぐっと気合いを入れて誌面に向かう必要がないので疲れにくいのだ。これは助かる。

↑上下の行も含めて2倍に拡大され、さらに中央部分は色つきでより強調される

 

ただし、カマボコ形のバールーペを1行ずつスライドさせていくのは、やや面倒くさい。ページをめくる際も、いちいち持ち上げてまた置いて、というのは少々手間だ。内容に集中できるようになるまでの助走用補助具として使うのが、ちょうどいいのかもしれない。

 

もうひとつ、1行だけのハイライトには“表組みが見やすい”という効果もある。

↑Excelの表を画面で見るときは拡大したりセルに色をつけたりできるが、ペーパーに出力した場合も1行ずつハイライトできるのは快適

 

似たような数字が延々と続く表を見るのは、集中していても段を飛ばしてしまうなどミスが出やすい。そういった場合も「カラーバールーペ」を使えば、1行ずつ丁寧に読んでいくことができ、ミスの危険性は間違いなく減らせるだろう。

 

老眼だの、集中力欠如だの、無縁だと感じている若い人でも、1本持っておくと便利なのではないだろうか。

 

 

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80年代のレジェンド文房具「チームデミ」が復活! 令和バージョンの進化ポイントとは?

1984年、文房具業界にひとつのレジェンドが誕生した。それがプラスの「チームデミ」だ。コンパクトなツールを、みっしりと密度高くケースに詰め込んだ文房具セットで、だいたい40代以上の人なら、名前は知らなくても、見れば「あー、あったあった」と思うんじゃないだろうか。

 

もともと、当時世界最小と謳われた超コンパクトステープラー「デミタス」が若いOLたちを中心に人気となったことで、じゃあそのデミタスを含めた文房具セットも作ったら売れそうだよね、といった流れで作られたのだが……これがまぁ「小さーい! かわいーい!」と、とんでもない大ブレイクを果たす。

↑36年前にモンスターヒットを飛ばした「チームデミ」(初代)

 

この時代は、乗用車でもホンダ「シティ」や日産「マーチ」など、小さくて密度感が高く機能的! という要素がウケていたこともあり、その流れにもピタッとはまったのだろう。

 

当時としてもそれほどお安くはない2800円という価格ながら、とにかく売れた。累計販売数650万個というから、まぁ文房具としてはバケモノである。テレビ・雑誌の懸賞品、企業ノベルティ、ゴルフコンペの景品としても大人気だったし、のちには怪しげなパチもんも大量に出回ったり……そういうエピソードも全部ひっくるめて、バブル景気前夜時代のアイコンとすら言える文房具である。

 

そして、このレジェンダリーな文房具セットが、令和のこの時代に復活したという。しかも、ただ懐かしいだけじゃない。現代の文房具トレンドをしっかり取り込んだ、最新アップデート版なのだ。

 

伝説の「チームデミ」、令和にリボーン!

どうもおじいちゃんの長話のような導入になってしまったが、しかたがない。我々昭和生まれにとっては、本当に象徴的な文房具なのだから。

 

それくらい思い入れの強い「チームデミ」だけに、生半可なリメイクでは話にならんぞ! と、これまた老人性の頑迷さを発揮してしまうのだが、さて、新しい「チームデミ」はどうだ?

(実は、2001年にも「チームデミ・ミュゼ」というリメイク版が出たが、個人的にはちょっと受け入れられなかった)


プラス
team-demi(チームデミ)
6000円(税別)
全4色展開。デザインはプロダクトデザイナーの深澤直人による。

 

↑さすが世界の深澤デザイン。余分な凹凸をそぎ落としたフラットさが目を引く

 

うん、見た目はとてもいい。チームデミのチームデミらしさとは、文房具の小ささに加えて、それぞれの形状にカットされたウレタンにピタッと収まる、あの収納の“専用感”も重要だと思う。

 

そういった意味では、これは正しくチームデミと言えるだろう。あるべき場所にあるべきものが収まっている様子は、見ているだけで心が安らぐ。ツール配置も旧チームデミをなぞるようになっており、懐かしさもひとしおだ。

↑新旧モデル比較。ケースはほぼ同寸で、ツールの配置も完全に一致

 

さらに面白いのは、収納スペースにマグネットが内蔵されており、文房具を近づけると、シュッ、カチャッ! と吸い込まれるように収まるところ。

 

まさに、先にも述べた収納の“専用感”を最大限に味わえる素晴らしい演出だし、収まるときの手応えも非常に気持ちいい。個人的にはもう初手のこれだけで「新しいチームデミ、最高!」と喜んでしまったくらいだ。

 

また、取り出す際にも工夫があって、キチッと収まった文房具の端を指で押すと反対側が浮くように、収納スペース内に段差が設けられている。この辺りはさすが、抜かりないなという感じ。

↑隙間なくピッタリ収まったツールも、端を押すとこの通り浮き上がる

 

ちなみに、収納ケースの開閉ヒンジも実はマグネットになっており、上下で分割が可能だ。使うモノが入っている側だけ持って移動して、終わったらまたくっつけてケースを閉める……といった使い方を想定しているのだろうか……ちょっと意味は分からない。

 

開けようとフタ側を持ち上げるだけでも勝手に分割してしまうので、単に開けにくいのである。ここは普通にヒンジで良かったんじゃないだろうか。

↑ヒンジにあたる部分にマグネットを内蔵し、上下で分割できるケース。普通に開け閉めしたいだけなのにうっかり分割されてしまったりして、やや面倒くさく感じた

旧「チームデミ」へのリスペクトと大胆なアップデートを両立

さて、いよいよ個々の中身についてなのだが……これがまた、入っているすべての文房具に語りたくなるポイントがあって、なかなか大変。例えばハサミだが、パッと見は旧版とほとんど同じだからといって侮ることなかれ。よく見ると刃がうっすらと弧を描いているのが分かるだろうか?

↑刃角が常に30度をキープして切れ味を確保する、ベルヌーイカーブ刃

 

これは、同社の「フィットカットカーブ」でお馴染みの、刃先までよく切れる“ベルヌーイカーブ刃”になっているのだ。つまり、新しい技術でしっかりアップデートされているわけで、こいつは単なる懐かしセットじゃないぞ、というプラスの意気込みがハッキリと感じられる。

 

メンディングテープカッターは、刃の下を指で押し込むとテープ端がピョコっと浮き上がるようになっている。新たにテープを切るときにカッター部に触れなくていいのは安全だし、なによりテープ端が浮くアクションが、地味にかわいい。

↑テープ端が浮き出す構造は、1986年に発売された後継機「チームデミ・プラクティス」に搭載されていたものと同じタイプ。手軽だが、けっこう効果的なアイデアだ

 

もうひとつの貼りモノである液体のりは、紙がシワになりにくいタイプ。ノズルもピンポイントに出せる細口ノズルなので、資料のちょい貼りや紙工作にも使いやすいだろう。また、フタには収納用のマグネットが入っているので、散らばったゼムクリップを拾い集めたりするのにも活用できる。

↑液体のりは細口ノズル。封かんなど事務作業にはあまり向かないが、細部に塗れるので個人的には嫌いじゃない

 

カッターナイフは、プラスが「オランテ」で開発したのと同タイプの、折らないカッター刃を採用。L刃と同じ厚み(0.5mm厚)の頑丈な刃なので、コンパクトなボディでも意外とブレずに安定したカットができるのがポイントだ。

 

また、刃は全面フッ素コートされているので、テープなどの粘着がベタつきにくい&錆びにくくて長持ちするのもありがたい。さらには、刃を1クリックだけ出した状態で、ボディ底部の傾斜を紙面に当てながら切ると1枚切りとして使える、という小ワザも初代から継承している。

↑切れ味が長持ちする“折らない刃”。刃厚があるため長めに出してもブレにくい

 

↑底面の傾斜を活用した1枚切り。カッターマットのない場所などでは重宝しそうだ

 

せっかくカッターが入っているんだから、ということなのか、10cm定規もアップデート。メモリの逆側にスチール板が入って、カッティング定規としても使えるようになった。むしろカッターとセットの定規がカッティング仕様になってないのはそもそも嬉しくないので、これが正解だと思う。

 

このスチールはもうひとつ、マグネットでケースに吸着させるための役割もあって、さらには収納時には定規自体が下部の小物入れスペースのフタを兼ねる構造になっている。これはなかなか上手いなー。

↑カッティング仕様の定規は、メモリには数字が入っておらず、中央の5cmだけマーキングされている。とてもシンプルなデザインだ

 

↑定規の下は小物スペースに。磁力に満ちた空間なので、ステープラー針やゼムクリップなど、金属製の小物は出し入れしづらいかもしれない

 

メジャーは1.2mの長さを測れるタイプ。旧版が1mタイプだったので、少し延長されたことになる。1mを測る際、ちょっと余裕があったほうが使いやすいので、これもありがたい。

 

引き出してみると、スルスルスル……と伸びる感触がとてもスムーズなのだが、これは内部に巻き付けドラムを搭載しているから。コンパクトな金属メジャーは、ただ単にメジャーを巻いて終端をケースに固定しているだけのものも多いが、それだと出し入れするたびにキシキシとした摩擦が発生しがち。やはり、スルスルと伸ばせるドラム式のほうが快適なのである。

↑均等な力でスルスル引き出せるドラム式メジャー。さすが100均などの安物とはモノが違う

 

旧版と、もっともフォルムが変わっているのが、ステープラーだろう。チームデミが生まれるきっかけでもある「デミタス」に対して、新型はやや大きく、全体的なデザインに揃ったフラットな外見になった。

 

おかげで、「デミタス」がかなり無理をして10号針を1連(50本)入れていたのが、スマートに収まるようになっている。綴じ能力は新旧ともコピー用紙10枚と変わらず、まぁこのサイズとしては充分に実用レベルではないだろうか。

↑旧版のデミタスは、ボディが小さすぎて後端から針がはみ出していたが、こちらは1連が無理なく収まるようになった

 

最後に、旧ケースでは「TEAM DEMI」というプレートが入っていた部分に、新たに携帯電話のSIMピンが追加された。これが文房具か、というと微妙だが……SIMを抜く以外にも、たまに時計のリセットとかメディアの強制イジェクトでこういう頑丈で細いピンが欲しくなるシーンもあるので、手元に揃っていると助かるのだ。

 

製品名プレート兼用で機能のあるものを入れときました、というサービス精神なのだろうか。これはこれで、ちょっと嬉しい。

↑SIMのイジェクトや小さなリセットボタン押しに使える、うれしいニューフェース

 

全体を眺めて感じたのは、まず旧「チームデミ」へのリスペクトが感じられるということ。ケース内の密度感ある配置や製品のシルエットなど、変える必要のない部分はきちんと踏襲しているのが、その証拠である。

 

それでも、新たにアップデートすべき部分は大胆に変更されており、これは「文房具型のマスコットではなく、ちゃんとした実用品なんです」という、メーカーとしての主張とも言える。

 

昭和への郷愁だけで買うのももちろんアリなのだが、でもこれは間違いなく、令和に作られた最新の実用文房具なのだ。

 

もちろん、フルサイズの文房具の方が使いやすいのは分かるのだが、それでも、ただかわいいとか懐かしいで終わらないぜ? というプラスの本気は感じ取ってあげてほしい。コロナ禍の続く昨今、オフィスでも文房具は共有せずに「自分専用を携帯する」のは、重要なことと言えるかもしれないし。

 

 

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「ISOT(国際文具・紙製品展)2020」で気を吐いた注目文房具たち

毎年夏にビッグサイトで開催されている国際文具・紙製品展、通称“ISOT”は、国内で最も注目度の高い文房具の展示会である。第31回となる今年は、コロナ禍のために開催自体危ぶまれたのだが、延期を経て、なんとかこの9月2日~4日という会期で無事に開催される運びとなった。

 

ただ、やはり出展メーカー数は大幅減。さらに海外ブースもゼロということで、例年と比べてもかなりコンパクトなイベントになってしまったのは、仕方のないところだろう。

↑会場ゲートの様子。検温や消毒など、感染予防にはかなり注意を払っている印象。もちろん、会場内はマスク着用必須だ

 

それでも、他の展示会が軒並みリモート開催となっていたところに、ようやくのリアル展示会である。筆者としても、テンション高めでいろいろと注目の新製品を見つけてきたので、ご覧いただきたい。

 

1. 紙を自由に綴じられる新型ノート

まず興味を惹かれたのが、印刷会社の研恒社が新たに立ち上げたノートブランド 「PageBase(ページベース)」の「Slide Note」である。

 

“リングレスなルーズリーフ”を謳うこのノートは、金属クリップを用いたスライド式で、リング穴のない紙も、自由自在に挟んでノート化できるのが最大のポイントだ。

↑PageBase「Slide Note」(2020年12月発売予定)。サイズはA4・B5・A5の3タイプが準備されていた

 

ノートのノド側(綴じられている側)にあるプラスチック製のフレームを、グイッと引いてスライドさせることによって、2個の金属クリップが開放。これで紙の抜き差しが自由に行えるようになり、フレームを戻せば、綴じた状態となる。

 

仕組みは、書類などを挟んでまとめる金具スライドクリップとほぼ同様のものだが、それをノートとしてまとめるために使う発想は新しい。(金属クリップを使わないレールファイルなどは、これに近い使い方も可能だ)

↑用紙の追加や編集をしたいときは、左端のフレームをつまんでジャキッと引けばOK。リングなどよりもずっと手軽だ

 

ノート用紙は、専用のオリジナル用紙オーダーシステム「Paper&Print」を通して、紙や罫線などを自在にカスタマイズできる、というのも面白い。方眼や横罫の罫幅なども選択可能なので、既存の製品にはなかったようなオリジナルノートも構成可能だ。

 

さらに、プリントアウトされた資料や他から切り離したメモなども、ノートと一体に綴じることができるので、ファイル兼用ノートとしてかなり運用幅の広い使い方ができそうだ。ちょっとページが足りない……なんて時は、手近なコピー用紙を挟んでしまえばそれで済む。

↑専用用紙は、様々な幅の横罫や方眼が自由に選択できるのも特徴の一つ

 

ただ、現状で出展されていたプロトタイプ(発売は年末の予定)を触ってみた感触としては、現状では綴じ枚数が少ないときのクリップ力不足や、スライドパーツが硬すぎてややページが開きにくいなどの課題は感じた。

 

それがいずれ解決されるようであれば、もしかしたら新しいノートのジャンルとしてちょっと面白い広まり方をするかもしれない。個人的には期待大の製品である。

 

2. バスで自分の絵を飾ればアーティスト気分?

もうひとつ紙モノで面白かったのは、店舗の紙什器やディスプレイのメーカー、太陽マークの「Fravas」。Frame(額)+Canvas(キャンバス)でFravasというネーミングである。

↑太陽マーク「Fravas」(販売サイトは現在準備中)。サイズは仕上がりB5とB6がラインナップ

 

ベースとなる部分に絵を描いて、あとは箱状になるように組み立てれば、キャンバス風のアートボードが完成するというもの。

 

例えば、子どもが画用紙に描いた絵を部屋に貼って飾ろうか、なんてシーンは家庭でもよくあることだろう。そういう場合、だいたいは画用紙をそのまま画びょうやテープで壁面に貼るだけになりがちだが、それだとあまり見栄えがしない。とはいえ、額装までするのは大げさだし……。

↑組み上げると厚みのあるキャンバス風に。これだけで飾る際の見栄えが大きく違ってくる

 

ところが、描いた絵がキャンバスのような厚みのあるボードになるだけで、不思議とアートっぽさが大幅アップ。見た目もグッと立派になるのである。これは子どもに限らず、大人もテンション上がること間違いなしである。

 

組み立ては切り取り線から切り出して、折った部分を付属の両面テープで固定するだけとかなり簡単だ。ハサミやカッター、のりなどのツール類は一切不要。飾る場合も、裏面に壁掛け用の穴があるので、画びょうや壁面フックにひっかけるだけでいいし、スタンドを組んで装着すれば立てて飾るのもOK。至れり尽くせりだ。

↑壁面にかける場合は穴にひっかけて、立てるならスタンドを装着する

 

紙自体はかなり厚手でしっかりとしているので、クレヨンでも貼り絵でも画材を選ばず、どうとでも使えそう。ただ、ザラッとした“目”の感じられる紙質は、水彩や色鉛筆画だと風合いが出て相性が良さそうだ。なにより、平面で展開図状態の紙に描いてから組むので、最初から厚みのあるカンバスよりも描きやすいのがいい。

 

仕組みは非常にシンプルだが、手軽にアーティスト気分を味わうにはなかなか面白い画材だと思う。

 

3. パキッと折って寝かせるとツールスタンドになるペンケース

主にバッグなどのOEMを手がける高波クリエイトが、自社ブランドとして発売しているオフィスツールブランド offistaの新製品として紹介していたのが、「Paccy(パッチー) スタンドペンケース」だ。

↑高波クリエイト「Paccy スタンドペンケース」

 

なんとなく牛乳パックを思わせる四角柱のセミハードタイプペンケースで、基本的にはジッパーを開けてから真後ろに折るようにフタを倒せば、自立型のペンスタンドとして使うことができるというもの。

 

それだけだと「あー、なんかそういうの、もういっぱい出てるよねー」くらいの印象なのだが、これが面白いのは、寝かせて使うことも想定されているというところ。

↑フタをパキッと折り曲げた状態。背面にマグネットを内蔵しているので、くっつけるだけで固定が完了

 

そして、開けたフタ側を下になるようにして横倒しにすると、ほどよく角度がついたツールスタンド風に早変わり。

↑寝かせれば、中身が取り出しやすい角度のついたツールスタンドになる

 

この角度+横倒し状態のおかげで中の閲覧性も高まるし、試しに触ってみた感じでは、筆記具の出し入れが立てた時よりもスムーズだ。自立型ペンケースの難所である消しゴムなどの小物は、フタ裏のメッシュポケットに収納するように作られている。

 

↑巾着袋みたいな自立型ペンケース「Me:kuruto」

 

ちなみに、同メーカーの製品としては、昨年のISOTで展示されていた「Me:kuruto(メクルト)」も、個人的にちょっとお気に入り。もし店頭で見かけることがあれば、これも手に取ってみて欲しい。

 

こちらは、本体を上からクルッとめくり降ろすと自立するスタンドペンケースなのだが、巾着袋のようにヒモで口を絞って閉める機構が、かなりユニーク。和小物っぽいシルエットで、かわいいのだ。

 

4. 描いて消せるシリコンメモがさらにシリーズ拡大

コスモテックの書いて消せるシリコン製メモ「wemo」は、腕に巻くバンドタイプや、 ノートPCなどに貼れるパッドタイプなど、すでに様々なシリーズが出ているが、今回はさらに新展開。

 

「さほど重要でないメモはサッと消しちゃおうぜ」という方向性を押し進めた「wemo Stock & Flow」シリーズと、情報をタグ付けする「wemo TAG」シリーズの2つ(どちらも非シリコン)が新たに紹介されていた。

↑一時的な情報の書き込みを前提にした「wemo Stock & Flow」シリーズ(2020年12月発売予定)

 

「wemo Stock & Flow」は、ベースにPP合成紙……おなじみユポ紙などと同じ、ポリプロピレン製の樹脂ペーパーを使い、フリクションボールなどで書き込んだものを、消しゴムでこすったり水拭きしたりして消せるような仕様となっている。

 

なぜフリクション推奨かというと、おそらく紙面への浸透性の問題だろう。実際、熱で消すのではなくインクそのものを表面から拭き取っていたし。最終的にはゲルボールペン全般に対応できるようにしたいんだけど……という話も、現地で耳にした。

↑手帳の表紙裏などに貼ってフリーメモとして使うシールタイプ(方眼の部分)。消しゴムやウェットティッシュでこすれば、書き込みがきれいに消せる

 

このシリーズで面白かったのは、シールタイプ。こちらは手帳やノートの表紙裏に貼って、何度も書き消しできるメモスペースとして使えるというもの。聞き取った電話番号やメールアドレスを一時的にメモるなど、再利用する確率の低い情報はここに書いて、いらなくなったらすぐ消して、というのが主な活用になるだろう。

 

このシールタイプ自体も貼り剥がしができるので、手帳を乗り替える際にはこれも一緒に連れて行くことができる。

↑モノに情報をタグづけするのに向いた「wemo TAG」シリーズ。(2021年3月発売予定)

 

↑油性マーカーの書き込みも消しゴムでサッと消せるので、何度でも再利用可能

 

「wemo TAG」は、ポリカーボネート製のハードタグ。油性マーカーなどで書き込み、再利用するときは消しゴムで消せるシリーズだ。

 

貼れるプレートはファイルボックスに貼って分類整理などに。フックで引っかけられるタグは、観葉植物の名前を書いて鉢にぶら下げたり、スナックでボトルキープするのに使ったりするのもありだろう。

 

ほんのちょっとした情報を掲示するのに最適といった感じで、用途の幅はかなり広そうである。

 

 

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ラベリングでタスク管理だと!? キングジムの新テプラ「MARK」が暮らしを助けるガジェット化

ちょっと前まではオフィスにしかなかったツールが、最近じわじわと家庭に進出しつつあるのをご存知だろうか? 本棚にあるファイルにラベルシールを貼るための、あの“ラベルライター”がいま、ホームユースとしてかなりの人気アイテムとなっているのだ。

 

なかでも、ラベルライターの代名詞ともなっている「テプラ」(キングジム)は、女性をターゲットにした「ガーリーテプラ」シリーズや、ローコストな感熱ラベルの「テプラLite」シリーズなど、かなり早くから家庭へ入り込むのを狙っていた感が高い。

 

実は家庭内には、ラベルを貼ると便利な場所というのが意外と多い。キッチンのスパイスラック然り。押し入れの衣服収納然り。趣味のコレクション整理にもマストだし、子どもの持ち物に貼る大量のお名前シールだって、テプラがあれば手間がグッと減らせる。

 

要するに、ラベルライターがあれば生活のクオリティ爆上げ、が期待できるのだ。

 

そこで「じゃあウチでも導入してみるか」となった場合だが、まず検討してみてほしいのが、2020年10月に発売されるテプラ最新機種である。

 

「MARK」は“ご家庭テプラ”のベストチョイス!

10月1日発売のテプラPRO「SR-MK1 MARK」(以下、MARK)は、Bluetooth接続のみのコンパクト&シンプルなテプラである。

 

従来にもBluetoothでスマホと接続可能なテプラ「SR5500P」があったが、この「MARK」はUSB接続なども省いた、PROシリーズ初のスマホ専用機ということになる。

キングジム
ラベルプリンター「テプラ」PRO
SR-MK1「MARK」
1万5000円(税別)

 

デザインは「ボールサインノック」や「オピニ使い分けボールペン」など文房具も数多く手がけているプロダクトデザイナー、柴田文江氏によるもの。

 

オフィス用のルックスではないのはもちろん、従来の「ガーリーテプラ」シリーズのファニー過ぎる“女性だけを狙いました感”もない。いかにも家庭にあるべき、生活用ツールという佇まいである。これなら、リビングやキッチンなど、自宅のどこにあっても違和感はなさそうだ。

↑電池は本体底部に。別売りのACアダプタでも給電は可能だ

 

駆動は基本的に単3形乾電池6本。先にも述べた通り、接続はBluetoothのみなので、完全ワイヤレスでどこでも場所を選ばず使うことができる仕様だ。

 

この辺りの手軽さは、同じく“ご家庭用テプラ”として人気の「テプラLite LR30」でも体感したが、ラベルを作ろう! と考えてから実際に貼り終わるまでのスピード感に直結しているように思う。家庭用は絶対に完全ワイヤレスがラクだ。

キングジムの“スマホ「テプラ」”と専用テープをレビュー!アプリでサクサク操作でき片付けがはかどる
https://getnavi.jp/stationery/443239/

 

ただ、「テプラLite LR30」と大きく違うのが、「MARK」はテプラPROシリーズであるということ。つまり、感熱シールではなく、すでに膨大なラインナップがある既存のPROテープカートリッジを使うことができるわけ。

↑対応カートリッジはテープ幅4mm~24mm。リボンやアイロン転写など、特殊な物にももちろん対応している

 

また、Liteの感熱シールはコストが安くて導入しやすいが、印字が約1年ほどしかもたないというのが大きなデメリット。長く掲示しておきたいラベルには、やはりPROテープを使うのが正解だ。

↑ひと目見て分かる通り、キーボードもなにもない。ラベル作成から印刷設定まで、すべてを専用アプリで行う

 

「MARK」でもうひとつ気になるのは、熱転写用のサーマルヘッドだ。写真やイラストなどを美しくプリントするために、シリーズ最上位機種と同等の高解像度360dpiヘッドを搭載しているのである。これまでのラベルのイラストといえば、ドットが目立つ荒いもの……というイメージが強かったが、それらとは確実に一線を画すクオリティでの出力が可能となっている。

 

画像は、アプリ側からjpg、pngが出力できるので、例えば家族やペットの写真、店舗のロゴマークなど、いろいろなものをラベルにインサートして使えるのだ。

 

それ以外の性能(印字速度やカット機能)は同価格帯の普及機とほぼ変わらないので、逆に「よくぞ高精細ヘッドを搭載してくれた」という感じではある。

↑特別に同じデータを360dpiと180dpiのサーマルヘッドで出力したもの。当たり前だけど、その差は歴然

 

ただ、欠点……というほどでもないのかもしれないが、Bluetooth接続で少し疑問に思う部分はあった。スマホ本体側の設定でBluetoothのペアリングを行ったあと、さらにアプリ側からも印刷前に接続ボタンを押す必要があるのだ。

 

なぜそんな手間が必要なのかはよく分からないが、とにかく毎回これは面倒だ。キングジム製品は無線をつかむのがイマイチ下手……というのはもはや負の伝統とも言えるのだが、もしかしたらそのあたりを確実に解消するための仕様かもしれない。実際、このダブル接続の成果なのか、今のところラベル作成中に接続が勝手に切れたりといったトラブルは体験していない(従来機はたまにあって、イライラしたのだ)。

 

画期的なインターフェース「Hello」アプリ

これまで、テプラをスマホから印字する場合は「TEPRA LINK」というアプリを使用していたが、「MARK」ではインターフェースとして専用アプリ「Hello」(Android/iOS)のみを使用する。その結果、ラベル作成の流れがこれまでとまったく違ったものになっている。

 

正直に言うと、むしろ本体よりもこの「Hello」が、今回の新テプラ最大のキモと言っていいだろう。

↑「Hello」と「TEPRA LINK」の画面。これが同じ製品シリーズのインターフェースとは、信じられない

 

「Hello」を起動してまず現れるのは、「TEPRA LINK」のような文字入力画面ではなく、キッチン/リビング/お名前付け/洗面・バス……といった、シーンごとに分けてズラズラっと並べたInstagram風のオシャレな写真。これはラベルテンプレートのカタログ画面で、写真は「このラベルを貼るとこんな感じになるよ」というイメージ画像なのである。

 

つまり、写真を見て「あー、調味料入れにはこのラベルを使えばおしゃれになるのか」と想像できるし、気になったものを選んで印字すれば、そのまま実際に自分の暮らしに取り入れられるというわけだ。

 

テプラを買ったはいいけど、どう使ったらいいか分からないとか、期待していたほどおしゃれにラベルが作れない……なんてがっかりしたり宝の持ち腐れとなってしまうのを、これなら解消できるはず。

↑ローンチ時点でのテンプレート数は200種以上。さらに今後も増えていくという

 

写真を選択すると、テンプレートの拡大画像とおすすめの用途、おすすめのテープ幅が表示される。ここで作成ボタンを押すと、いよいよ文字入力へと進むのだが、その前にもうひとつ、作成モードの選択がある。

 

モードは「クイック作成」「一括作成」「こだわり作成」の3つ(テンプレートによっては選べないものもある)。クイック作成はラベルのメイン文字だけを書き換えるもので、非常に簡単。初心者はまずこれだけで充分に使えるだろう。

↑一括作成モードは、同じテンプレートのラベルをまとめて出力可能。今までになかった機能だが、これは便利!

 

「一括作成」は、例えば調味料ラベルであれば、同じフレームで中の表記だけ砂糖・塩・小麦粉などと書き換えたものを、一括してプリントアウトできるモード。見た目の揃ったラベルがまとめて作れるので、これはすごくありがたい。

 

最後の「こだわり作成」は従来テプラの入力に近く、テンプレート内のフレームやフォント、文字サイズなども自由に加工できるようになっている。

↑次々と出力されるラベル。印字速度は、最近の上位機種で慣れた身としては「ちょっとのんびりしてるな」と感じる程度

 

各モードで文字を入力したら、あとは印字ボタンを押すだけ。「MARK」から出力→オートカットされて、ラベルの出来上がりだ。

 

一応、テンプレートにはそれぞれおすすめのテープ幅があるのだが、印字時には現在本体内にセットされているテープ幅を検知して、サイズが違った場合は「そのまま出力するか」を確認してくれる。そのままでOKした場合は、セットされたテープ幅に合わせて拡大・縮小も自動で行ってくれる親切設計である。コレ、意外と重要な機能だ。

↑調味料ラックがオシャレかつ分かりやすくなって嬉しい(たまに小麦粉と片栗粉を間違えてたから)

注目すべき新機能「タイムラベル」とは?

もうひとつ、「Hello」の重要な新機能が「タイムラベル」機能。これは、出力したラベルに日時や曜日を紐付けし、設定したタイミングでスマホにアラーム表示を出すことができるというものだ。(現状、試用中のベータ版では曜日設定は不可だが、ローンチまでには対応するという)

↑ラベルに日時を紐づけておけば、手作り総菜の消費期限が通知で届く

 

例えば、ゴミ箱に貼る「可燃ごみ」ラベルに「毎週火曜・金曜」、「びん・缶・ペットボトル」ラベルに「毎週水曜」を設定することで、それぞれの曜日になるとアプリから通知が来て教えてくれるという仕組み。これなら、ラベル自体に「可燃ゴミ=毎週火・金」のように余分な情報を入れなくても済むので、見栄えがゴチャつかずスッキリだ。

 

SNSでもよく話題になる「テプラのラベルをベタベタ貼るとダサい」問題を解決するひとつのアイデアとして、これはなかなか面白い。情報を周知するのには向かないが、備忘ラベルとして役立つだろう。

 

結論。「MARK」+「Hello」はテプラの歴史を変えるかも!

さて、実際に使ってみた感想としては、とにかくアプリ「Hello」の斬新さが際立っている。「MARK」がスマホ専用ということで、インターフェースはこのアプリのみ。つまり「Hello」の使い勝手がそのまま「MARK」の評価につながるわけで、当然ながらキングジム側もかなり練り込んできたな、という印象は受けた。

 

なによりラベルは多彩なテンプレートから作る前提なので、いきなり文字の編集に入れる「TEPRA LINK」とは挙動も発想も全くの別物だ。その点では、以前からテプラを使っているユーザーには受け入れづらい部分も多いかもしれない。筆者も最初に触れたときはかなりギョッとしたし。

↑「Hello」は、作成画面をピンチアウトで拡大できるので、小さなラベルのデザインも操作しやすい。これも「TEPRA LINK」ではできなかったので、ささいながら助かる

 

逆に、本機から初めてテプラを使う人にとっては、カタログ形式で作りたいラベルを選べるのはとても簡単だし、親切な設計だと思う。

 

というか、アプリ上でおしゃれな写真を見ながら「このラベル作ってみたい!」「これも貼ると便利かも!」など考えるのが、とても楽しいのである。テプラを作るのにワクワクするって、そんな体験、今までにしたことがない。

 

テプラをホームユースで広めるためには、これは間違いなく大正解なやり方だろう。もしかしたら、「Hello」の登場は、長いテプラの歴史の中でもかなり重要なターニングポイントになるんじゃないだろうか。

 

そんな「Hello」が提唱するテープの楽しみを受けて出力できる能力を持つのが「MARK」というわけで、この組み合わせはかなりすごいぞ。家庭でラベリングをやってみたい、興味があるというなら、間違いなく導入すべき逸品だ。なにより、発売から30年を超えるロングセラーシリーズの歴史が変わる瞬間に立ち会うチャンスなんて、そうそうあるものでもないだろう。

 

 

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立つペンケースの新種に死角なし! レイメイ藤井「デテクールペンケース」の斜めに出てくーるケースが自宅ノマドを救う!

先日、仕事関係の知人(テレワーク中)とビデオ会議をしていたときの話。彼が、15分おきぐらいの頻度で「すいません、ちょっと場所変えます」と言っては、ノートPCを抱えてちょっと歩いて別のところに落ち着く、という行動を繰り返すのである。背後はずっとバーチャル背景なので、何が起きているのかこちらからでは分かりづらいのだが、後ろから聞こえてくる声や物音でなんとなく見当はついた。家の中で子どもが動き回るのに合わせて、居場所を転々と追われているようだ。

 

詳しく聞くと、自宅内のかろうじて仕事道具が広げられる場所3拠点をぐるぐるとローテーションしているとのこと。そのたびにPCや資料、文房具を抱えて動かねばならず、それがなかなかのストレスだとも……。

 

うーん、そりゃキツそうだ。我が家は子どもがいないので、場所の取り合いと言えば猫2匹と椅子の占有権を争うぐらいが関の山。もちろんこちらが勝つことはないので、結局は猫に居場所を追われてスゴスゴと仕事できるスペースを探して移動するんだけど。

 

子どもにせよ猫にせよ、場所争いに勝てないのは確定事項。ならば次にすべきは、自宅内移動をスムーズにする方策を探ることだろう。となれば、最新の機能性ペンケースが役に立ちそうなので、紹介しておきたい。

 

移動式文房具スタンドとしてはかどるペンケース

レイメイ藤井から2020年9月に発売となった「デテクールペンケース」(以下、デテクール)は、自宅内の狭い場所をウロウロ移動する“家ノマド”(なんて悲しい響きだろう……)に最適なペンケースである。

レイメイ藤井
デテクールペンケース
1700円(税別)

 

形状としては、もはやペンケースの形としてひとつ基本形ともなりつつある、自立するスタンドタイプ。立たせたままで使えるので、まずは狭い場所でも使いやすいという点がメリットだ。

 

使う際にはダブルファスナーを下端から上端までグイーッと一気に引き上げる。

↑ハンドルをつまんで引き上げると、2つのファスナーが開く

 

すると開口部の細長いフタがペローンと浮くので、それを持ち上げて裏面にペタリ。フタ先端とケース裏は磁石でくっつくようになっているので、これで邪魔にならないように固定ができるわけだ。

↑開いたフタは、裏側の下端に内蔵磁石でペタッと固定

 

↑収納部を手前に引き出すと、このとおりペンスタンドに変形

 

あとは、ケース内部に前後に2分割された収納部があるので、それを前に引き出すように倒すと……約30度に傾いたペンスタンドが出来上がる。こちら側に文房具の端部を差し出すような形になっているので、従来のペン立てよりも文房具の出し入れはスムーズなのである。

 

収納量としては、普通のペンであれば前後合わせて20本程度。見た目のサイズからすると少し少なめな気もするが、まず不満はないだろう。さらに上側にポケットも備えており、ここには消しゴムや付箋などの小物を収めておける。ちょっとしたスペースだが、こういう部分もあると便利なのだ。

 

↑手前にせり出しているだけでも、出し入れのしやすさは大幅にアップ。視認性も良好で、使いたいものにスッと手が届く

 

↑上部のポケットは消しゴム1個プラスアルファ程度のサイズ。ないよりはだいぶマシだが、できれば小物収納はもう少し欲しかった

 

似たような形状では、据置型の「ツールスタンド」(カール事務器)があるが、あれも同様に、収納が傾いているのが使いやすいのである。具体的には、机に肘を突いた姿勢でも中身が取り出せるし、さらに戻すときもナナメにポイッと投げ込めるのがラク。ツールスタンドは筆者もデスクに置いて愛用しているが、そのラクさをペンケースでも体感できるようになったのは、かなり嬉しい。

↑デスクで愛用中のツールスタンド(右)。このナナメせり出しタイプは個人的にかなり好みだ

 

家の中で移動しなきゃならない場合は、出してあった文房具をポイポイと投げ込んで、ファスナーを閉める。そうしたらあとは上部のタブを指にひっかけてサッと移動、という流れだ。もちろん他の自立型ペンケースでも同様のことはできるが、展開時の使いやすさで言えば、かなり優秀だと言えるだろう。

 

↑家の中での持ち運びに地味に便利だったタブ。こういう細かい気遣いが施されていると嬉しい

 

収納がナナメになることで倒れやすくなっていないか? と思ったのだが、使ってみるとこれはまったくの杞憂。ケース全体、および収納部に硬い芯が入っているため、かなりガッチリとした安定感がある。そのため、収納をナナメにしても倒れそうな気配はまるでなかった。わざと倒そうとしない限り、普通に使う分にはまず転倒の心配は不要だ。

↑多少は前重心っぽくなるけど、安定性にはなんの問題もなし

 

気になったのは、そのサイズ。高さ195×幅95×厚み65mmとかなり大きめなので、カバンに入れて持ち運ぶにはちょっと躊躇する。さらに全体が硬くて変形しないのも、携帯には不向きだ(もちろん常時携帯しても問題はないけど)。

 

つまりこれは、「家の中やオフィス内で移動運用しやすい文房具スタンド」として使うのが正解なんだと思う。まさに、子どもや猫に居場所を追われる家ノマドの推奨装備なのである。

 

移動の手間を避けようがないのであれば、せめて腰を下ろした時間だけでも快適に作業ができたほうがありがたい。ということで、同じ悲しみを背負った大人は、試してみてほしい。使いやすさはホント、間違いないから。

 

 

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芯の尖り具合から見た目までシャープなシャープナー登場!「ブラックウィング」の鉛筆削りは大人にこそふさわしい

小学生のザ・筆記具といえば、鉛筆である。昔は「HB」が標準の硬さだったのが、最近は子どもの筆圧が概して低下していることもあり「2B」が標準になっている、など、ちょっとした違いはあるけれど、それでも鉛筆が小学生の必須ツールであることに変わりはない。

 

それなのに、いささか不遇じゃないだろうか、鉛筆。

 

例えば、これを読んでくださっている読者諸氏の中で、この半年以内に鉛筆を使った覚えがある方が、いったいどれくらいいるだろう。確かに、芯は簡単に折れるし、そうなると削らなきゃいけなくてゴミも出る。ペンケースの中は汚れる。書き込みは消しゴムで消せるため、確実性がない。社会人の筆記具としては、マイナス要素だらけだ。

 

正直に言うと、筆者も堂々と鉛筆の味方をできるほど普段使いしているわけではなかったのだが。ところが、実はここしばらく、メモなどの日常筆記は、ほぼ鉛筆で書いている。なぜかというと、話は簡単。“使いたい鉛筆削り”があるからなのだ。

 

思わず削りたくなるハイクラス・シャープナー

その鉛筆削りというのは、カリフォルニアシーダープロダクツの「BLACKWING(ブラックウィング) ワンステップシャープナー」。

 

文房具好きの方なら、BLACKWINGという名前に覚えがあるかも知れない。元はアメリカのエバーハード・ファーバー社が作っていた鉛筆ブランドで、愛用者の中にはウォルト・ディズニーやジョン・スタインベック、クインシー・ジョーンズなどのレジェンドが名を連ねていることでも有名だ。

 

エバーハード・ファーバー社は、1987年に吸収合併などのゴタゴタで一度は消滅してしまったのだが、2010年にカリフォルニアシーダープロダクツ社(鉛筆用木材のサプライヤー)がBLACKWINGブランドを復刻させて、現在に至る。

 

「ワンステップシャープナー」は、そのBLACKWINGの名を冠してこのほど発売された鉛筆削り、というわけだ。

カリフォルニアシーダープロダクツ
パロミノ
BLACKWING ワンステップシャープナー
3400円(税別)

 

↑ずっしりしたボディには、ニス引きでロゴが施されている。これもまたシブくてかっこいい

 

ご覧の通り、ソリッドなボディの美しさが、第1のポイント。鉛筆をイメージしたアルミ削り出しの六角柱ボディに、ローレット加工を施した円筒部という組み合わせは高級感バリバリで、金属の質感が好きな人にはなんともグッとくるはず。

 

もちろんお値段も、たかが鉛筆削り1つで3400円+消費税というなかなかのもの。だから、基本的に店頭で見つけても、買うつもりがないならみだりに手に取らないほうがいいだろう。これを握ったときのどっしりとした手応えに、壮絶に所有欲をくすぐられて「うわー、これ欲しい!」と思わされてしまうからだ。

 

続いて第2のポイントだが、これは実際に削った鉛筆を見ると分かりやすい。

↑鉛筆を挿し込んでグリグリと回すと……

 

↑この通り、先端が弓なりに反った超シャープな形状に削り上がる

 

削り上がった芯から木肌にかけてがやたらとシャープで、さらに木肌部分がわずかに弓なりのカーブを描いているのが見て取れるだろう。これによって芯が安定して細長く削り出せる上、さらに芯先の視界も良くなるというメリットがあるのだ。

 

鉛筆で絵を描く人などは、ナイフでわざわざこういう削り方をすることもあるが、少なくとも手回しの削り器で弓なりの削りができる製品は、ほとんどないはずだ。(カール事務器の「エンゼル5 ロイヤル」など、機械式のハイクラス削り器であれば存在する)

↑従来(上)との比較。芯の細さ・長さもはっきりと違う

 

なぜこういう削り方ができるのか? というと、秘密はボディ内の刃にある。ローレット加工の固定具を外して刃を取り出してみると……ネジで固定された刃が、わずかにカーブしているのだ。

↑刃も微妙にカーブした特殊なもの。替え刃の有無は現時点では不明だが、交換はできそうだ

 

なるほど、このカーブした特殊な刃で削られるのだから、鉛筆の木肌も同様のカーブになるという仕組みである。

 

一見すると、なぁんだってギミックだが、普通に考えれば刃のカーブした部分に削る圧力が集中しそうだし、これで均等に削るのはなかなか難しいはず。製品化にあたっては、刃の微妙な角度や当たる位置など、かなり繊細に考えられているのではないだろうか。

 

ただし、そういった部分でなにか負担があるのか、それとも単に刃の鋭さの問題なのか、削り上がりはやや木肌が荒れているようにも感じられる。このあたりの仕上がりに関しては、裏を返せば、国産の鉛筆削りが完成度高すぎ! ということでもあるのだが。

↑中心からズレた位置にある挿し込み口

 

ちょっと気になったのは、鉛筆の挿し込み口が、中央からかなり偏心して配置されていること。

 

これはおそらく刃の真上に空間を空けて、削りカスをスムーズにボディ内に排出し、溜め込めるようになっているのだと思われる。カーブ刃は普通よりも削りカスが詰まりやすいように感じたので、それを少しでも軽減させるように、配慮されているのかもしれない。

↑削りカスをスムーズに排出するためのスペースを稼ぐための工夫だろうか

 

ともあれ、それ自体の質感の高さに加えて、削り上がりの面白さまであるのだから、「使ってみたい!」となるのも当然だろう。

 

決して「コスパに優れている」とも「機能的に超優秀」とも言えないが、それでも、文房具好きならばチェックしておくべき製品だと思う。なにより、「この鉛筆削りを使ってみたいから、久しぶりに鉛筆でなにか書いてみるか」というのも悪くないんじゃないかな、と。いや、格好良さにクラッと来てつい買っちゃった自分を弁護するわけではないんだが。

 

 

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ミニサイズなのに「最強モデル」出た! 社会人も常備すべきコクヨのテープのり「ドットライナープチプラス」

「テープのり」のメジャーなブランドといえば、やはりコクヨの「ドットライナー」、トンボ鉛筆の「ピット」、プラスの「ノリノ」の3ブランドだろう。大雑把に個人的な印象を言えば、ラインナップが多彩なドットライナー、粘着力のピット、安定性のノリノ、という感じ。

 

テープのり選びで迷ったときは、さしあたってこの3大ブランドのどれかを買っておけば安心……とはいえ、各社とも特徴のある製品を出しているため、意外にも選ぶのが難しいジャンルである。

↑テープのりの3大ブランドといえば、これ。左からトンボ鉛筆の「ピット」、コクヨの「ドットライナー」、プラスの「ノリノ」

 

実際のところ、「テープのり、どれを買ったらいいのか問題」を抱えている人はかなり多いのではないだろうか? 「自分の使い方に合ったものを」なんて言われたとしても、よく分からないし……。

 

だが、ただひとつ、ペンケースに入れてテープのりを持ち運びたいという需要に対してなら、今のところ明確な解答があると思う。ドットライナーシリーズの小さいものを買えばいいのだ。

 

ペンケースに入れて持ち歩くなら「プチモア」が答えだ

コクヨの「ドットライナープチプラス」は、ほぼ“消しゴム並み”というシリーズ最小のコンパクトさで、粘着力やのり切れが良く、テープ長も10mあって、さらにヘッドを密閉するスライド式キャップつき。つまり、携帯用としてはほぼ文句なしの優等生だ。

 

事実、日常的にテープのりを持ち歩く中学生~大学生の間での人気は非常に高い。そして筆者も、普段からペンケースに入れる用はこれ、と決めている。そこへ、そのプチプラスの最新バージョンとしてこのほど登場したのが、「ドットライナープチモア」である。

コクヨ
ドットライナープチモア
210円(税別)/テープ10m

 

↑消しゴムとほぼ同サイズで、ペンケースの負担になりにくいコンパクトさ

 

早速、どこが最強なのか、詳しく見ていこう。

使い進むほどに実感する引きの軽さ

プチプラスと新しいプチモア、並べて見てもどう変わったのかよく分からない。だが、実際にテープを引き比べると「あれあれあれ?」と驚いた。プチモア、やたらとテープが軽くスルスルスルスルーッと引けるのだ。

 

メーカーのコクヨによれば、内部ギア周りの設計を見直し、走行荷重(ヘッドを転がした際の抵抗)を大幅に軽減した、とのこと。誰が試しても確実に実感できるレベルで軽くなっているのは、なかなか凄い。

↑スルスル……と軽く引けるのがはっきり体感できる。テープカートリッジの使い終わり頃になると、従来との差はさらに大きくなる

 

テープのりは構造上、テープが減って使い終わりに近づくほど走行荷重が増えるのだが、プチモアはその増え幅も控えめ。試しに両方を10m使い切るまで引いてみたが、なるほど、こりゃ確かに別物だわーというレベルで、プチモアが軽い! 擬音にすると、ギリギリギリVSスルスルスル、という感じなのだ。

 

ケースの中を透かしてみると、なるほど、プチプラスにはなかった厚みのあるギアが、巻き取りリール(使い終わったテープが巻き取られる方)に見て取れた。おそらくこれが設計変更の一部なのだろう。ただ、その分だけ本体ケースがかすかに膨らみ、さらにテープ幅も7mm→6mmに変更されている。

↑新発売のプチモア(上)と、従来のプチプラス(下)。プチモアのほうがキャップがやや大きいことを除けば、パッと見には違いが分からないのだが……
↑真横から見ると、内部構造の変更のためか、プチプラスの方が約1mmほど厚いのが分かる

 

とはいえ、そこを変更するだけの価値はあるとメーカー側も判断したのだろう。テープ幅の減少も、極めて短い長さだと粘着力に差も出てしまうが、プリントをノートに貼るなど長く引いて使うならば、ほとんど問題にならないはず。

 

地味に助かるキャップの「スライドロック機構」

個人的にもうひとつ、諸手を挙げて「コクヨよくやった!」といいたい改良点がある。それが、ヘッドキャップの変更だ。

 

プチプラス・プチモアともにフルカバータイプのスライド式キャップが付いているのだが、プチモアには新たにスライドロック機構が追加されたのである。

↑プチプラスのスライドキャップは、指を乗せたまま作業をするとズルズルと下ってきて、ヘッドに当たる。新しいスライドロックはヘビーユーザーほど嬉しいはずだ

 

↑スライダー後端を上から押すと、ロック解除。片手でスムーズに操作できて、かつ意図せずには解除できないというのが優秀

 

前のプチプラスは、スライダー部に親指を乗せて引いていると、力が入った瞬間にスルッとスライダーが動いて、キャップがヘッドに当たってしまうことがあった。これは、優等生であるプチプラス唯一の欠点とすら言える問題で、これまでにも何度かイライラした覚えがある。

 

ところがロック機構があれば、スライダー後端に上から力を加えない限り、ビクともしない。これは圧倒的に便利!

 

このスライドロック追加だけでも、プチモアに買い替える価値は十分にあると思う。というか、ペンケースで持ち歩くテープのりの完全解とすら言えるかもしれない。

 

↑ちなみにラインナップには、かわいい柄入り(ハート/スター/フラワー)テープバージョンも。ただしテープ長は10m→8mと少なめ

 

最後に、「ドットライナー」シリーズからプチモアと同時にリリースされた、もうひとつ注目のテープのりを紹介したい。

13mロングテープでもコンパクトな携帯テープのり

もうひとつ、プチモアと同時にリリースされたのが「ドットライナースモール」。ボディサイズはプチ系よりは一回り大きいが、それでも十分コンパクト。ペンケース用としても問題ないサイズと言えるだろう。

コクヨ
ドットライナースモール
250円(税別)/テープ13m

 

このスモールの売りは、搭載テープが13mとかなり長くなっている点。使い切りテープのりのテープといえば、だいたいコンパクトなもので8m~10m。感覚的には、10mあればたっぷり使えるなと思えるぐらいだ。13mともなれば、気分的にも余裕で使えるはず。さらに価格も250円(税別)となれば、コスパ的にも相当ありがたい。

↑こちらもスライドロック付き。引きも軽く快適だ

 

加えて、プチモアと同様の走行荷重低減ギアとスライドロックキャップまで搭載。ペンケースに多少余裕があるなら、スモールを選ぶというのも選択肢としてありだと思う。

 

 

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アナログで書き取りデジタルで管理! 語学学習を“一本化”したスマートペン「NUBO Rosetta」

個人的な嗜好というか弱点というか、とにかく“スマートペン”“デジタルペン”と呼ばれる物に弱い。ネットなどでそう銘打たれた製品を見つけると、確実に「ほほう」と目が吸い寄せられるし、持っていない物であればほぼ自動的に買ってしまう。もともとデジタルガジェットが大好きで、文房具も大好きなわけだから、好物+好物ということは、つまりスマートペンとはカツカレーとかチーズインハンバーグみたいな感じだな、と思ってもらえばいいだろう。

 

そもそも、スマホに次いで常時携帯性が高く、かつ手元に握る機会の多い筆記具に機能をプラスして便利にしよう、という発想はとても正しいのだ。正しいなら、買っても損はしないはず(!?)。というわけで今回は、クラウドファンディングサイトで見つけて、また自動的(衝動的)に買ってしまったスマートペンを紹介しようと思う。

 

語学学習はデジタルペンにおまかせ!

「NUBO Rosetta」は、クラウドファンディングサイトMakuakeで発売された、語学学習に特化した韓国発のスマートペンだ。(※現在、Makuakeでのプロジェクトは終了しています)

Tesollo inc.
NUBO Rosetta
6395円(予価・税別)

 

軸には小さな表示ディスプレイ(スペック表によると有機EL)を搭載し、それ以外はスイッチ類なども見えない。スマートペンとしてはかなりシンプルな構成と言える。また、外国語は、英語のほか、スペイン語・フランス語・ドイツ語・韓国語に対応、また常用漢字も収録している。

 

ペンに表示された単語をペンで書き取って暗記

キャップを外して握ると自動で電源オンとなり、ディスプレイに「NUBO」の表示が出る。これで準備は完了。

 

あとは人差し指で先端側から後ろに向けてフリックすると、単語がディスプレイに流れて表示される。これを書き取ることで、単語帳を見るだけよりも確実に記憶へ定着させよう、という学習メソッドだ。

↑先端側(Aの辺り)から後ろ側(Bの辺り)に向けてフリックすると、英単語が表示される。Aの辺りを2回タップ、ペン自体を振る操作でも同様に操作できるが、その場合は少し精度が悪いように感じた
↑ディスプレイに次々と英単語と発音記号が表示されるので、それをこのペンですかさず書き取って、記憶に定着させる仕組み

 

初期設定では1分に1ワードが表示されるので、これを次々に覚えていこう(設定は後述のアプリで変更可能)。

 

内蔵する英単語は、英語初級(899語)・中級1(600語)・中級2(550語)・上級1(700語)・上級2(665語)・ビジネス英語(452語)の計3866語。さらに、アプリから自分で単語を入力したり、csvで単語帳データをまとめてインストールしたりすることも可能となっている。

 

もし単語が分からなければ、もう一度先端から後ろへフリック。すると和訳が表示される。逆に、もうこれは知っている・覚えたという単語ならば、後ろ側から先端に向けてフリックすると、「erase a word」と表示されて単語帳データから消去される。消去されなかった単語は「まだ覚えていない」という判断がされ、表示頻度がアップするという仕組みだ。

↑単語が表示されているうちに、再フリックで和訳を表示する

 

↑「もう覚えた」という単語は逆方向フリックで消去すると、もう表示されなくなる

 

これらの操作が、全てペンから手を離すことなく指先だけでできる、というのは、なかなか面白いギミックだ。

 

ところで、面白いのはさておき、この時点で感じたのは「単語が流れるスピードが少し早いんじゃないか」ということ。筆者がそもそも英語が苦手だから、ということもあるだろうが、単語がスーッとディスプレイに流れていくのについていけず、慌てるケースがわりとあったのだ。覚えてない単語は頻度を上げて表示されるので問題ないのかもしれないが、そこはちょっと気になるなと感じた。できれば、プレイバックないしは直前の単語を再表示する機能は欲しかったと思う。

 

↑充電はマイクロUSBをペン軸後端に接続。満充電までは50分で、約15時間の連続使用が可能
↑ペンリフィルは一般的なD1規格なので、自分の好みの書き味のものに差し替えられる

 

タイマー式勉強法を取り入れられるタイマー機能付き

また、単語表示以外にもうひとつ、基本的なツールとしてタイマー機能がある。先端から後ろへ素早く2回フリックすると、タイマーが起動。分数を設定したら軸の先端側をタップでカウントダウンがスタートし、終了すると振動で知らせてくれる仕組みだ。

 

勉強する時間を区切って集中するには、有効だろう。アラーム音がなく振動だけで知らせるのも、図書館など静かな場所で使うにはもってこいだ。

 

ただ、フリックの感度がちょっと微妙なこともあって、単語表示のために1回フリックしたのに表示されず、再フリックしたらタイマーが起動した、なんてことも。これでは逆に集中力が途切れてしまうので、できればタイマー起動アクションをややこしくないよう変えるなどの改善があると嬉しい。

 

アプリを使って学習の進捗を管理

専用アプリ「NUBO」をスマホにインストールすれば、ペンとはBluetooth接続で単語データを共有できるため、移動中などペンを使えない環境下では、アプリでまだ覚えていない単語を再チェックすることも可能。

↑アプリと連携する事で、単語データや学習時間の可視化など、できることがグッと増える

 

また、トータルの学習時間をグラフで表示したり、単語帳のセッティング(英単語以外に、前述のとおりフランス語・ドイツ語・韓国語・スペイン語・日本語漢字が設定可能)、メモ帳、D-DAY(学習を始めた日など区切りとなる日)設定などもできるようになっている。

 

↑NUBOペン側で憶えられなかった単語はアプリで再確認。電車での移動中などにも勉強が進められる

 

ただ、アプリの機能で気になったのは、メモ機能だ。アラーム付きで、入力した内容を設定した時間にペン側に表示することができる、とサイトの説明にあって、それは便利そうだなと思ったのだが……現状では何を入力しても、アラームが鳴ると同時に「メモを確認してください」と出るだけ。あれ? ToDo管理にも使えそうだと感じていた機能だけに、この不備はちょっともったいない。

↑製品サイトによれば、メモに入力した内容が表示できる、となっていたが……。このあたりはバージョンアップで解決されることを期待したい

 

スマートペンというジャンル自体、まだまだこれからのものなので、機能的に微妙な点がちょこちょこ見受けられるというのも、現時点では“スマートペンあるある”なのかもしれない。正直、今回のNUBO Rosettaも、これまでお読みいただければ分かるとおり、パーフェクトな製品とは言い難い。

 

しかし、アナログに手書きすることによる記憶定着と、デジタルな学習管理の相性の良さは確かにあると思う。つまり、メソッドとしては間違っていないのだ。おそらく、今後も改良され続けていけば、「勉強するならスマートペンがベスト」なんて未来もあるはずだ。そんな未来を感じたくて、人柱上等な新し物好き、スマートペン好きの同志諸君には、ひっそりとオススメしておきたい。

 

 

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フリマアプリで売れた後の面倒な梱包に“手で圧着するだけ”のスコッチ「梱包ロール」

“モノ系のライター”という仕事をしていると、メーカーや出版社等メディアと、日常的にいろいろと小物をやりとりすることがある。ちょっと前なら「あ、じゃあ明日そっちの方へ行く用事があるので、ついでに持っていきますね」というような気軽さで持参したりもしていたのだが、昨今ではそれがなかなか難しくなってしまった。そのため、いちいち小物を梱包して発送して……という作業が、日常的にかなり増えている。

 

クッション材入りの封筒に入るようなら、手間はそんなにかからないのだが、ちょっと厚みのあるやつだとそれも難しい。そうなると、適度なサイズの空きダンボールや宅配用のマチ付き袋を探して、梱包用のプチプチを切って巻いて、テープで封をして……という作業が発生。うーんコレ、正直かなり面倒くさい。

 

また、コロナ禍の昨今、自宅にいると不要品が目につく→フリマアプリやネットオークションに出品、という流れによって、取引件数はかなり増えているらしい。出品して売れてしまえば、そこでもやっぱり面倒な梱包しての発送作業はすることになるわけで。

 

そこで今回は、そういった面倒がかなり減らせる最新の梱包材を紹介したい。なんと、これ一つで梱包用のパッケージと緩衝材と封かんを兼ねて、サイズも自由自在、パッキングもラクラク、という超優れモノ! マジでこれいいわー、という代物だ。

 

包んで圧着、即発送! やたらと手軽な梱包シート「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」

ということで使ってみたのが、3Mから発売されたばかりの「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」だ。通販大国にしてフリマアプリの利用も盛んなアメリカで、昨年発売され、すでにかなりの人気となっている商品である。

3M
スコッチ フレックス&シール 梱包ロール(380mm×3m)
オープン価格(実勢価格:税別1680円)

 

なんとなくキャンプ用のシートやヨガマットのようなルックスだが、先にも述べた通り、これひとつあればダンボールもプチプチも梱包テープも不要! というオールインワンの梱包材なのだ。

 

手で圧着するだけ! 梱包の仕方を見てみよう

使い方は簡単で、まずシートを引き出して、送りたいモノを裏面(灰色面)に置く。このとき、シートの長さはモノの幅の2倍ちょっと出しておくといい。

 

あとは適当なスペースをとってカットして、シートを折り返すようにして包んで、余ったフチ全周をギュッと手で押さえつける。

↑裏側の灰色面に送りたいモノを置いて……

 

↑包んだ端を手で圧着させたら、梱包完了

 

ハイ、これだけで梱包作業は完了! あとは送り状を貼るなり、宛先をシート表面に直接書き込むなりして発送すればOKだ。

 

今までの梱包作業におけるあれやこれやと比較したら、ほぼ一瞬であり、実質ノータイムと感じるほどの簡単さ。

↑複数の小物もまとめて包んで……

 

↑隙間を潰すように圧着梱包。これなら輸送中に中身がぶつかり合う心配もなさそうだ

 

驚きのスピードは、シートの構造にあった!

実はこのシート、①表側の青い面 ②中面の気泡層 ③裏側の灰色面、の3層構造になっている。

 

まずポイントとなるのは、③のモノを置いた灰色の面。この全体が接着面になっているのだが、くっつくのは「灰色面同士が、ギュッと圧着された場合」のみ。中身には貼り付かず、ベタベタもしない。しかも、一度圧着したらまず剥がれることはないため、輸送中に中身が飛び出すなんて心配もほぼないだろう。

 

とはいえ、接着強度を担保するにはある程度の面積が必要なので、あまりシートギリギリになるサイズのモノを送るのには向いていないかもしれない。

↑押し付けるだけで圧着されて、簡単には剥がれない。なかなか不思議な素材だ

 

↑3層構造を横から見た図。気泡層は厚くないが、頑丈なシートでサンドされているため、それなりの耐久性はありそうだ

 

さらに②の中面の気泡層によって、輸送中の衝撃から中身をガード。これによってプチプチ不要というわけだ。

 

ただし、気泡層はさほど厚みがあるわけではないので、割れ物や精密部品を包むだけで送るのはNG。基本的には、ゲームソフトやDVDを何本かまとめて包むとか、書籍、布製品といった用途がマッチするだろう。厚すぎてクッション封筒には入れづらいパッケージ箱入りの小物なんかにも便利だ。

↑クッション封筒には入れづらい角柱型の箱も、簡単に包むことができる

 

表面(青い面)は、手で破るのはほぼ不可能なぐらい頑丈で、さらに耐水性もある。多少の雨濡れなんかはまったく問題にならない。さらに、筆記具での書き込みもできるので、送り状のない定形外郵便なんかも、送り先を表面に直書きで大丈夫。この場合、視認性を考えて油性マーカーなどを使うと良さそうだ。

↑宛名は表面に直接書き込める。これくらいのサイズなら、定形外郵便で発送可能だ

 

ということで、筆者もすでにあれこれ送るのに使っており、早くも2ロール目を使っている最中だ。梱包作業がラクなのに加えて、発送コストを減らすのにも役立っているように思う。

 

なにしろ、梱包がほぼ現物サイズぴったりで済むのだから、無駄がない。本来なら宅配便の60サイズ(縦横高さの合計が60cm以内)で済むところが、たまたま大きめのダンボールしかなくて80サイズになっちゃった、なんてトラブルが起きえないのだから当然だろう。

 

単純なコストで考えれば、100均のクッション封筒と比較すれば割高かもしれない。だが、封筒に入らないサイズのモノも包んで送れる安心感、梱包作業の時間短縮、ダンボールやプチプチのロールをストックしておくスペースの経費などを含めて考えれば、使って損なし、と判断したい。

 

もちろん破損などの危険性も考えて使い分ける必要はあるだろうが、今後は、送れるモノは全部フレックス&シールで送っちゃおう、と目論んでいる次第である。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
https://getnavi.jp/tag/kidate-review/

フリマアプリで売れた後の面倒な梱包に“手で圧着するだけ”のスコッチ「梱包ロール」

“モノ系のライター”という仕事をしていると、メーカーや出版社等メディアと、日常的にいろいろと小物をやりとりすることがある。ちょっと前なら「あ、じゃあ明日そっちの方へ行く用事があるので、ついでに持っていきますね」というような気軽さで持参したりもしていたのだが、昨今ではそれがなかなか難しくなってしまった。そのため、いちいち小物を梱包して発送して……という作業が、日常的にかなり増えている。

 

クッション材入りの封筒に入るようなら、手間はそんなにかからないのだが、ちょっと厚みのあるやつだとそれも難しい。そうなると、適度なサイズの空きダンボールや宅配用のマチ付き袋を探して、梱包用のプチプチを切って巻いて、テープで封をして……という作業が発生。うーんコレ、正直かなり面倒くさい。

 

また、コロナ禍の昨今、自宅にいると不要品が目につく→フリマアプリやネットオークションに出品、という流れによって、取引件数はかなり増えているらしい。出品して売れてしまえば、そこでもやっぱり面倒な梱包しての発送作業はすることになるわけで。

 

そこで今回は、そういった面倒がかなり減らせる最新の梱包材を紹介したい。なんと、これ一つで梱包用のパッケージと緩衝材と封かんを兼ねて、サイズも自由自在、パッキングもラクラク、という超優れモノ! マジでこれいいわー、という代物だ。

 

包んで圧着、即発送! やたらと手軽な梱包シート「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」

ということで使ってみたのが、3Mから発売されたばかりの「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」だ。通販大国にしてフリマアプリの利用も盛んなアメリカで、昨年発売され、すでにかなりの人気となっている商品である。

3M
スコッチ フレックス&シール 梱包ロール(380mm×3m)
オープン価格(実勢価格:税別1680円)

 

なんとなくキャンプ用のシートやヨガマットのようなルックスだが、先にも述べた通り、これひとつあればダンボールもプチプチも梱包テープも不要! というオールインワンの梱包材なのだ。

 

手で圧着するだけ! 梱包の仕方を見てみよう

使い方は簡単で、まずシートを引き出して、送りたいモノを裏面(灰色面)に置く。このとき、シートの長さはモノの幅の2倍ちょっと出しておくといい。

 

あとは適当なスペースをとってカットして、シートを折り返すようにして包んで、余ったフチ全周をギュッと手で押さえつける。

↑裏側の灰色面に送りたいモノを置いて……

 

↑包んだ端を手で圧着させたら、梱包完了

 

ハイ、これだけで梱包作業は完了! あとは送り状を貼るなり、宛先をシート表面に直接書き込むなりして発送すればOKだ。

 

今までの梱包作業におけるあれやこれやと比較したら、ほぼ一瞬であり、実質ノータイムと感じるほどの簡単さ。

↑複数の小物もまとめて包んで……

 

↑隙間を潰すように圧着梱包。これなら輸送中に中身がぶつかり合う心配もなさそうだ

 

驚きのスピードは、シートの構造にあった!

実はこのシート、①表側の青い面 ②中面の気泡層 ③裏側の灰色面、の3層構造になっている。

 

まずポイントとなるのは、③のモノを置いた灰色の面。この全体が接着面になっているのだが、くっつくのは「灰色面同士が、ギュッと圧着された場合」のみ。中身には貼り付かず、ベタベタもしない。しかも、一度圧着したらまず剥がれることはないため、輸送中に中身が飛び出すなんて心配もほぼないだろう。

 

とはいえ、接着強度を担保するにはある程度の面積が必要なので、あまりシートギリギリになるサイズのモノを送るのには向いていないかもしれない。

↑押し付けるだけで圧着されて、簡単には剥がれない。なかなか不思議な素材だ

 

↑3層構造を横から見た図。気泡層は厚くないが、頑丈なシートでサンドされているため、それなりの耐久性はありそうだ

 

さらに②の中面の気泡層によって、輸送中の衝撃から中身をガード。これによってプチプチ不要というわけだ。

 

ただし、気泡層はさほど厚みがあるわけではないので、割れ物や精密部品を包むだけで送るのはNG。基本的には、ゲームソフトやDVDを何本かまとめて包むとか、書籍、布製品といった用途がマッチするだろう。厚すぎてクッション封筒には入れづらいパッケージ箱入りの小物なんかにも便利だ。

↑クッション封筒には入れづらい角柱型の箱も、簡単に包むことができる

 

表面(青い面)は、手で破るのはほぼ不可能なぐらい頑丈で、さらに耐水性もある。多少の雨濡れなんかはまったく問題にならない。さらに、筆記具での書き込みもできるので、送り状のない定形外郵便なんかも、送り先を表面に直書きで大丈夫。この場合、視認性を考えて油性マーカーなどを使うと良さそうだ。

↑宛名は表面に直接書き込める。これくらいのサイズなら、定形外郵便で発送可能だ

 

ということで、筆者もすでにあれこれ送るのに使っており、早くも2ロール目を使っている最中だ。梱包作業がラクなのに加えて、発送コストを減らすのにも役立っているように思う。

 

なにしろ、梱包がほぼ現物サイズぴったりで済むのだから、無駄がない。本来なら宅配便の60サイズ(縦横高さの合計が60cm以内)で済むところが、たまたま大きめのダンボールしかなくて80サイズになっちゃった、なんてトラブルが起きえないのだから当然だろう。

 

単純なコストで考えれば、100均のクッション封筒と比較すれば割高かもしれない。だが、封筒に入らないサイズのモノも包んで送れる安心感、梱包作業の時間短縮、ダンボールやプチプチのロールをストックしておくスペースの経費などを含めて考えれば、使って損なし、と判断したい。

 

もちろん破損などの危険性も考えて使い分ける必要はあるだろうが、今後は、送れるモノは全部フレックス&シールで送っちゃおう、と目論んでいる次第である。

 

 

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フリマアプリで売れた後の面倒な梱包に“手で圧着するだけ”のスコッチ「梱包ロール」

“モノ系のライター”という仕事をしていると、メーカーや出版社等メディアと、日常的にいろいろと小物をやりとりすることがある。ちょっと前なら「あ、じゃあ明日そっちの方へ行く用事があるので、ついでに持っていきますね」というような気軽さで持参したりもしていたのだが、昨今ではそれがなかなか難しくなってしまった。そのため、いちいち小物を梱包して発送して……という作業が、日常的にかなり増えている。

 

クッション材入りの封筒に入るようなら、手間はそんなにかからないのだが、ちょっと厚みのあるやつだとそれも難しい。そうなると、適度なサイズの空きダンボールや宅配用のマチ付き袋を探して、梱包用のプチプチを切って巻いて、テープで封をして……という作業が発生。うーんコレ、正直かなり面倒くさい。

 

また、コロナ禍の昨今、自宅にいると不要品が目につく→フリマアプリやネットオークションに出品、という流れによって、取引件数はかなり増えているらしい。出品して売れてしまえば、そこでもやっぱり面倒な梱包しての発送作業はすることになるわけで。

 

そこで今回は、そういった面倒がかなり減らせる最新の梱包材を紹介したい。なんと、これ一つで梱包用のパッケージと緩衝材と封かんを兼ねて、サイズも自由自在、パッキングもラクラク、という超優れモノ! マジでこれいいわー、という代物だ。

 

包んで圧着、即発送! やたらと手軽な梱包シート「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」

ということで使ってみたのが、3Mから発売されたばかりの「スコッチ フレックス&シール 梱包ロール」だ。通販大国にしてフリマアプリの利用も盛んなアメリカで、昨年発売され、すでにかなりの人気となっている商品である。

3M
スコッチ フレックス&シール 梱包ロール(380mm×3m)
オープン価格(実勢価格:税別1680円)

 

なんとなくキャンプ用のシートやヨガマットのようなルックスだが、先にも述べた通り、これひとつあればダンボールもプチプチも梱包テープも不要! というオールインワンの梱包材なのだ。

 

手で圧着するだけ! 梱包の仕方を見てみよう

使い方は簡単で、まずシートを引き出して、送りたいモノを裏面(灰色面)に置く。このとき、シートの長さはモノの幅の2倍ちょっと出しておくといい。

 

あとは適当なスペースをとってカットして、シートを折り返すようにして包んで、余ったフチ全周をギュッと手で押さえつける。

↑裏側の灰色面に送りたいモノを置いて……

 

↑包んだ端を手で圧着させたら、梱包完了

 

ハイ、これだけで梱包作業は完了! あとは送り状を貼るなり、宛先をシート表面に直接書き込むなりして発送すればOKだ。

 

今までの梱包作業におけるあれやこれやと比較したら、ほぼ一瞬であり、実質ノータイムと感じるほどの簡単さ。

↑複数の小物もまとめて包んで……

 

↑隙間を潰すように圧着梱包。これなら輸送中に中身がぶつかり合う心配もなさそうだ

 

驚きのスピードは、シートの構造にあった!

実はこのシート、①表側の青い面 ②中面の気泡層 ③裏側の灰色面、の3層構造になっている。

 

まずポイントとなるのは、③のモノを置いた灰色の面。この全体が接着面になっているのだが、くっつくのは「灰色面同士が、ギュッと圧着された場合」のみ。中身には貼り付かず、ベタベタもしない。しかも、一度圧着したらまず剥がれることはないため、輸送中に中身が飛び出すなんて心配もほぼないだろう。

 

とはいえ、接着強度を担保するにはある程度の面積が必要なので、あまりシートギリギリになるサイズのモノを送るのには向いていないかもしれない。

↑押し付けるだけで圧着されて、簡単には剥がれない。なかなか不思議な素材だ

 

↑3層構造を横から見た図。気泡層は厚くないが、頑丈なシートでサンドされているため、それなりの耐久性はありそうだ

 

さらに②の中面の気泡層によって、輸送中の衝撃から中身をガード。これによってプチプチ不要というわけだ。

 

ただし、気泡層はさほど厚みがあるわけではないので、割れ物や精密部品を包むだけで送るのはNG。基本的には、ゲームソフトやDVDを何本かまとめて包むとか、書籍、布製品といった用途がマッチするだろう。厚すぎてクッション封筒には入れづらいパッケージ箱入りの小物なんかにも便利だ。

↑クッション封筒には入れづらい角柱型の箱も、簡単に包むことができる

 

表面(青い面)は、手で破るのはほぼ不可能なぐらい頑丈で、さらに耐水性もある。多少の雨濡れなんかはまったく問題にならない。さらに、筆記具での書き込みもできるので、送り状のない定形外郵便なんかも、送り先を表面に直書きで大丈夫。この場合、視認性を考えて油性マーカーなどを使うと良さそうだ。

↑宛名は表面に直接書き込める。これくらいのサイズなら、定形外郵便で発送可能だ

 

ということで、筆者もすでにあれこれ送るのに使っており、早くも2ロール目を使っている最中だ。梱包作業がラクなのに加えて、発送コストを減らすのにも役立っているように思う。

 

なにしろ、梱包がほぼ現物サイズぴったりで済むのだから、無駄がない。本来なら宅配便の60サイズ(縦横高さの合計が60cm以内)で済むところが、たまたま大きめのダンボールしかなくて80サイズになっちゃった、なんてトラブルが起きえないのだから当然だろう。

 

単純なコストで考えれば、100均のクッション封筒と比較すれば割高かもしれない。だが、封筒に入らないサイズのモノも包んで送れる安心感、梱包作業の時間短縮、ダンボールやプチプチのロールをストックしておくスペースの経費などを含めて考えれば、使って損なし、と判断したい。

 

もちろん破損などの危険性も考えて使い分ける必要はあるだろうが、今後は、送れるモノは全部フレックス&シールで送っちゃおう、と目論んでいる次第である。

 

 

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水性ボールペンにようやく脚光!? 油性やゲルにない書き味がパイロット「Vコーンノック」

ボールペンのインクは、ざっくりと「油性」「水性」「ゲル」の3つに分類される、ということはご存知だろうか?(実は、厳密にはゲルも水性インクに含まれるのだが、ここではあえて別に分類しておく。)

 

ただ現状では、なめらかな低粘度油性インクを擁する「油性」派と、若年層に人気でサラサラとした書き味の「ゲル」派に人気が二分されているのが実情。「水性」は人気がない……というか、一般的には認知している人の方が少ないのではないかというほど落ち込んでいるのである。

 

もちろん、それには理由がある。まず、液体状の水性インクは乾燥に弱いため、キャップ式にならざるをえないというのは大きい。日本人はノック式が大好きなので、キャップ式というだけで避けられてしまうのだ。また、インクがだくだくと出るため、紙によっては染みてにじんだり裏抜けしたり、というのも避けられがちな要因のひとつだろう。

 

しかし、だ。水性ボールペン、そういうことで嫌っちゃうにはもったいないように思うのだ。まず、インク粘度が低いため、筆記中のかすれがほぼゼロなのは魅力だ。ペン先が紙に触れている限り、インクは紙に出続けるため、走り書きなどをする場合は最強の確実性を発揮する。

 

だくだくとインクが出るというのも、欠点になる反面、筆圧をかけなくともサラサラと書ける、気持ちの良い書き味につながっていると言える。この書き味の特殊性は、もはや官能的ともいえるほどで、実のところ、水性ボールペンしか愛せないという熱烈な水性信者も存在するほどだ。

 

そこで今回は、うっとりする書き心地を持つ水性ボールペンの新作を紹介しようと思う。

 

名筆「Vコーン」の流れを汲むノック式水性ボールペン「Vコーンノック」

水性ボールペンのなかでも、特に最高傑作と名高いのが、パイロット「Vコーン」。液体インクがダイレクトに封入された直液式で、たっぷり過ぎるインクフローは、水性ボールペンの魅力を堪能するのにベストな1本と言える。

 

とはいえ、構造的にキャップ式なのはいかんともしがたく、今や知る人ぞ知るボールペン、的な地位に甘んじているのは残念だ。

 

そこで、その現状を覆すべく発売されたのが、なんとノック式構造に生まれ変わった最新作「Vコーンノック」である。

パイロット
Vコーンノック
(0.5・0.7㎜ 黒・青・赤)
各150円(税別)

 

Vコーンの名を冠するからには、当然のようにリフィルは直液式。たっぷりと充填された濃く鮮やかなインクが、ペン先から嬉しいほどにだくだくと紙へと供給される。どれほど早書きしようが、かすれやスキップが起きることが想像できないつゆだくっぷりだ。

 

もちろん、紙によっては当たり前ににじむし、描線もボール径からすれば太くなる。だが、そんなのは水面をすべるが如きサラサラサラァァァァ……という爽快な書き味の前には、「だからなに?」って感じ。にじむのが嫌なら、油性でもゲルでも使ってればいいじゃん、という話なのだ。

↑サラサラとしたインクがたっぷりと紙に染み込んで書ける感じは、ゲルや油性にはない気持ちよさだ
↑サラサラとしたインクがたっぷりと紙に染み込んで書ける感じは、ゲルや油性にはない気持ちよさだ

 

この書き味がワンノックで味わえるというのが、Vコーンノックの最大のポイント。内蔵したバネでボールを押し上げることで、先端にフタをして非筆記時の乾燥を防ぐ構造で、ノック式でもドライアップしない水性ボールペンを実現しているのだ。

 

ちなみに、見た目が同社の「フリクションボールノック」によく似ているため、筆者は最初、うっかりクリップ部を押しそうになってしまった。ノックノブは軸後端にあるので、お間違いなく。

↑こちらが元となった、キャップ式のVコーン。約30年前に発売されて以降、いまだに固定ファンが離れない魅力を持つ水性ボールペンだ
↑こちらが元となった、キャップ式のVコーン。約30年前に発売されて以降、いまだに固定ファンが離れない魅力を持つ水性ボールペンだ

 

インクも、Vコーンとは異なる、ノック式専用に開発されたものとなっている。

 

実はVコーンは、水性染料インクながら、一度乾くと強固な耐水性を持っていた。だが、Vコーンノックは「うーん、水性染料だからこんなもんだよね」レベルで水濡れに弱い。Vコーンの耐水性は大きなポイントだっただけに、そこはちょっと残念なところだ。

↑Vコーンとノックの筆跡に水を垂らした比較。おなじ水性染料インクながら、確実に別ものということは分かる
↑Vコーンとノックの筆跡に水を垂らした比較。おなじ水性染料インクながら、確実に別ものということは分かる

 

……と、ここまで読んで「ノック式のVコーンでインクに耐水性がないペンって、今までになかった?」と気づいた人がいただろうか? いたとしたら、かなりの水性マニアだろう。

 

そう、あったのだ。最初の方で水性ボールペンの最新作なんて書いたけど、実はこのVコーンノック、2008年に発売されたノック式水性ボールペン「VボールRT」のリニューアル版なのである。

↑2008年に発売されていた“ノック式Vコーン”こと、「VボールRT」(写真左)。リフィルは新しいVコーンノックと共通だ
↑2008年に発売されていた“ノック式Vコーン”こと、「VボールRT」(写真左)。リフィルは新しいVコーンノックと共通だ

 

分解してみると、上の写真のようにリフィルも「LVKRF-10」となっており、VボールRTと同型。つまり、見た目と名前を変えただけ、ということになる。

 

VボールRTは、日本初のノック式水性ボールペンとして発売されたのだが、折悪いことにその頃のボールペン業界は、「ジェットストリーム」と「フリクションボール」が大ブームとなっていたのだ。

 

結局のところ、低粘度油性インクと消せるゲルインクの快進撃に巻き込まれるかたちで、VボールRTは認知されないまま存在感を薄くしていった……という感じだろうか。なんともタイミングの悪いことである。

 

ひるがえって2020年。いまや、低粘度油性インクもフリクションインクもすっかり一般化し、それに合わせてユーザーの筆記具リテラシーも大きく上がった。水性ボールペンを改めて再評価する下地もできてきたように思う。そこでパイロットも「今こそVボールRT(改めVコーンノック)にもう一度チャンスを!」と判断をしたのではないか。

 

12年前に発売されたものとはいえ、油性やゲルに慣れきった手には、かなり斬新な書き味が体験できるはずだ。速乾性や耐水性ではかなわないが、水性ならではの早書きへの追随性といったメリットもある。

 

とくに「今まで水性ボールペンって使ったことないわ」という人には、新たな選択肢として試してみてもらいたい。だくだくとインクが染みるあの感じにハマる可能性、それなりにありそうだぞ。

 

↑サラサラとしたインクがたっぷりと紙に染み込んで書ける感じは、ゲルや油性にはない気持ちよさだ ↑こちらが元となった、キャップ式のVコーン。約30年前に発売されて以降、いまだに固定ファンが離れない魅力を持つ水性ボールペンだ ↑Vコーンとノックの筆跡に水を垂らした比較。おなじ水性染料インクながら、確実に別ものということは分かる ↑2008年に発売されていた“ノック式Vコーン”こと、「VボールRT」(写真左)。リフィルは新しいVコーンノックと共通だ

 

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