ピラミッドで未知の部屋を発見! 探査に使われた「ミュオグラフィ」と最新冷蔵庫の共通点

提供:東京電力エナジーパートナー株式会社

今年も「くらしのラボ」と「ムー」のコラボ企画の季節がやってきた。今回は記念すべき10回目。ピラミッドとミューオン、そしてAI冷蔵庫/高精度センサー搭載のオーブンレンジをテーマとし、家電王・中村 剛さんとオカルト王・三上丈晴による対談を実施した。

↑家電王の中村 剛さん(左)とムー編集長のオカルト王・三上丈晴(右)

 

接点がまったくなさそうなオカルトと家電という二つのジャンルだが、今回も意外な親和性があることが確認できる展開となった。パナソニック目黒ビルで行われた動画撮影の流れそのままで、まずはピラミッドに関する話からスタートした。

 

【家電王×オカルト王がピラミッドについて語る動画はコチラから】

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素粒子「ミューオン」でピラミッドの内部を可視化

――家電王はピラミッドに対してどんな思いがありますか?

 

中村 私は小さいころからピラミッドが好きで、ぜひ行ってみたいとずっと思っていました。ですから、大学4年のとき卒業旅行で友達と一緒にエジプトに行って、ピラミッドにも登って中にも入りました。私が行ったときのリアルな話をすると、中に入る前は「写真はダメですよ」と言われるのですが、近くにはひっそりとチケット売り場らしきものが……もちろん迷わずに購入! 中に入ると役人のような人たちがいてチケットを見せると、ほかの観光客の列を整理してくれて「写真、どうぞお撮りください」という感じで接してくれました。考古学的な価値があると同時に、観光資源でもあることを実感しましたね。

↑友人とともにクフ王のピラミッドに登る中村さん(人物右)

 

↑クフ王のピラミッド内部に入った中村さん(人物中央)

 

中村 ピラミッドはかつては単に王墓だといわれていましたが、いまはいろいろなことがわかってきて、本当はほかの部屋もたくさんあるのではないかとか、新しい技術でわかることが増えてきたので、本当にワクワクしています。

――2023年の3月、クフ王のピラミッドで未知の部屋が発見されました。これには動画でも話に出ていた「ミューオン」というものが活用されたんですよね。

 

三上 今回の成果を正確に言うとしたら、「発見」ではなく「確認」ですね。ミューオンを使って「未知の部屋がある」とされていた場所が表面に非常に近かったので、マイクロスコープで確認できたということです。なお、ミューオンというのは電子の仲間の素粒子で、宇宙線のように地球に降り注いでいるものです。極めて透過性が高いので、これを活用してレントゲン写真のように物体の内部を可視化できるわけです。ミューオンを使って画像化したものが「ミュオグラフィ」で、これを活用したわけですね。

 

――ミューオンが使われた理由について教えてください。

 

三上 透過性がちょうどいいからです。レントゲンだと、撮影対象が厚いとうまくいきません。電子になると軽すぎて透過しないし、だからといってニュートリノ(より透過力の高い素粒子)になると、地球全体を貫通してしまいます。その点、ミューオンは石や火山には向いていて、ピラミッドのような大きな石の内部を透過するという意味で、非常に有効だと思います。ミュオグラフィには基本的に日本人の先生が3人関わっていて、浅間山などでもマグマがどこまで上昇しているか確かめることで、噴火のタイミングなどを推測できます。とはいえ、日本の研究チームも世界的な協力の下にプロジェクトを進めているので、日本だけのテクノロジーということではありません。

中村 ミューオンを使ったテクノロジーは、ほかの遺跡にも応用できますか?

 

三上 基本的に画像処理なので、あらゆる遺跡に適用できます。ピラミッドにしても、使われているのはほとんどが石灰岩で、石ひとつ単位の特徴を知ることができます。どこで採れた石なのかとか、この部分とこの部分の石はもともとひとつだったとか、そのあたりも含めていろいろなことがわかるでしょう。漠然とした状態で調査するのではなく、目的を絞った形で応用できるということです。例えばギザの三大ピラミッドでも、それぞれ石の大きさも削り方も違います。一番精度が高いのが第一ピラミッドです。ということは、おそらく建設者も違います。

 

中村 ちなみに、ピラミッドは奴隷が理不尽に働かされて作ったというわけでないようですね。

 

三上 はい。「奴隷が建設した」という話はもう完全に否定されていて、きちんと給料が支払われたうえで働いていた人たちです。ただ、文献の記述が大ピラミッドの規模や技術の完成度に見合わないところがありますが。

 

中身を「透視」して野菜の種類も見分ける冷蔵庫

――さて、「中身が見える」という点でミュオグラフィと共通しているのが、そこにある冷蔵庫ということですね。庫内をカメラで撮影するということですが、画像からAIによってカリフラワーとブロッコリーの見分けがつくというのは本当ですか?

↑パナソニックの冷凍冷蔵庫 CVタイプ

 

中村 はい、その通りです。かねてから思っているのは、テクノロジーで画像を撮ることまではできますが、それだけではテクノロジーを使いっぱなしの状態。本来は「その画像データをどう使ったら暮らしに役立つか」まで落とし込まないと意味がない。たとえば、カリフラワーとブロッコリーの違いを機械に教えるには、やはりデータが重要。袋に入っている状態も含め、すべて学習させて認識させるところまで持っていきます。かつての時代の画像認識は、たとえば猫だったら「耳が尖っていて、目が丸くて、ひげがあって」というように、人間によるデータの入力が必要でした。でも、いまはコンピューターのパワーが上がったので、猫の画像を入れるとAIがその特徴要素を含めて、勝手に認識するようになっています。それがディープラーニングというものです。なので、ブロッコリーの画像をたくさん読み込ませれば、それだけ見分ける精度は上がってくるわけです。

↑野菜室の野菜の種類を瞬時に認識するパナソニックの冷凍冷蔵庫 CVタイプ(「くらしのラボ」動画より) ※お客様ご自身のアプリ上では、この画面(AIによる画像認識の状態)を見ることはできません

 

三上 AIというのは基本的に画像処理ですからね。「人間の脳のようなものだろう」と漠然と考える人が多いけれど、画像処理であることに変わりはありません。1枚の画像を格子状に分割して、その中のひとコマの色が隣のコマと比べてどうなのかということを判断し、その答え合わせをフィードバックする……というプロセスを繰り返すわけですね。

 

――レシピまで提案してくれると聞いて驚きました。

 

中村 「暮らしのなかでどう役立てるか」を考えると、そもそも冷蔵庫は食品を冷やしておいしい状態を保つための保管庫なのです。庫内にある食材を使っておいしい料理を作りたいときにアプリが作り方を教えてくれるとか、次の過程で必要となるオーブンレンジと連携するとか、近いうちには一体化するかもしれません。こういうやり方なら、フードロスも減らしていけるでしょう。冷蔵庫をテーマにした省エネは、電気代削減よりもフードロス削減のほうがよっぽど効果が大きいのです。

↑庫内を撮影するカメラを指さす家電王

 

—―データを活用したAI技術は、この先どのような方向性で活用されていくでしょうか?

 

中村 たとえば顔認識ですね。決済にしても犯罪防止にしても、顔認識を採用したほうが便利なことがたくさんあると思います。家に帰って顔で玄関のドアが開いたら便利ですし、一歩進めて、画像認識で子どもの後ろに不審者が映っているときはアラートを出して、解錠しないなど、そういう方向性での発展が考えられるでしょう。こういう技術を世の中で使っていくと、それは「管理」ではなくて「生活の質のレベルアップ」につながると思うんです。防犯カメラもそう。何かあったあとで検証するだけではなく、AIでリアルタイムで変な動きをしている人を見つけるとか、具合が悪そうな人、困っている人を見つけ出してすぐに対処することができます。大量の画像はそもそも見切れないので、適切なモノをピックアップするAIとの連携が必須です。

 

高精度センサーが「第六感」を連想させるオーブンレンジ

↑パナソニックのスチームオーブンレンジ「ビストロ NE-UBS10C」

 

――お隣のオーブンレンジ、動画ではムー的な「第六感」と関連づけて取り上げていました。こちらはどんな機能があるんでしょうか?

 

中村 かなりいろいろなことができます。いまのオーブンレンジの進化ポイントというのは、「簡単にできて、かつプロの料理人みたいにおいしい」ということ。こちらも“見る”=可視化ということにつながるのですが、カメラで認識するのではなく、赤外線を使って食材の温度を認識します。「高精細・64眼スピードセンサー」といって、内部の温度分布を見ているんですね。そこをしっかり把握することで、冷凍食材や常温の食材などいろいろなものが混ざっているとき、どうすれば適切な調理ができるか見きわめるわけです。たとえば、温度が低い部分を感知したら電磁波をそこに集中させることになりますね。さらには、温度上昇速度から分量を把握することもしています。

↑「高精細・64眼スピードセンサー」のイメージ。0.1秒の高精度で食材温度を検知します

 

三上 思わず愚痴になってしまうのですが、レンジを使う時は500Wとか600Wで説明の通りに温めても、シューマイが表面だけ変にパリパリした仕上がりになってしまうことがあります(笑)。

 

中村 そのあたり、最新機種はお任せ調理でもちゃんと調理してくれますよ。食材の焼き具合まで指定できるんです。自動調理器という分野もどんどん進化しています。すでに、食材と調味料さえ入れておけば、あとは勝手に調理してくれるという形ができつつありますね。パナソニックでいえばオートクッカーという製品があって、これもさらなる進化があると思います。

今回は、ピラミッドの内部を調べるテクノロジーとしてのミューオンから始まり、最新の中身が見える冷蔵庫、および高精度温度センサー付きのレンジに触れ、便利なだけではなくフードロス削減にもつながっていくという話になった。のべ10回の対談で立証されているオカルトと家電の親和性は、これから先どんな方向で展開していくのだろうか。今後も、楽しみで仕方がない。

撮影/鈴木謙介 取材・執筆/宇佐和通

「冷蔵庫は温めるためのヒーターを搭載している」って本当? 意外と知らない家電の仕組み

仕組みがわからなくても家電はいつだって便利だけれど、知っていれば家電を選ぶときに役立つこともあるし、「うちの家電はこうやって動いているのか!」と理屈を理解できれば単純に楽しい。東京電力エナジーパートナーが運営する動画マガジン「くらしのラボ」では、普段は聞けないような家電のイロハを映像でわかりやすく解説してくれる。前回の記事では過熱水蒸気を利用したオーブンの仕組みに関する実験をGetNaviプロデューサー・松井謙介が見学し、「水で食材を焼く」仕組みとメリットについて家電王・中村 剛さんに詳しく教えてもらった。

 

【関連記事】

パパ、「水で焼くオーブン」ってどういうこと? ――意外と説明できない家電の仕組みをマルっと解説!

↑過熱水蒸気に関する実験の様子。実際に水蒸気で紙が焦げる様は衝撃的だ。気になる詳細は前回の記事でチェック!

 

過熱水蒸気についてさまざまなことを知ることができ、大満足のGetNaviスタッフ一同。その帰り際、家電王から謎の言葉をかけられた。

 

「ところで松井さん、冷蔵庫ってヒーターを内蔵しているんですよ。ご存じですか?」

↑くらしのラボを取り仕切る、家電王・中村 剛さん。過熱水蒸気実験の撮影後に呼び止められ……

 

食材を冷やすべき冷蔵庫にヒーターを内蔵? なんとなく聞いたことがあるような気はするけれど、よくよく考えると実に不思議だ。これはぜひ家電王にしっかりと説明してもらわなければ!

 

冷やすはずなのに温めている!? 冷蔵庫がヒーターを内蔵しているワケ

冷蔵庫がヒーターを内蔵している理由について、冷蔵庫のカットモデルや模型などを使って解説してくれる家電王。なるほどなるほど、と聞いていたら最後にはなぜか藁を燃やしはじめて…?。気になる内容はぜひ次の動画でチェック!

 

松井:なるほど、冷凍室の温度を下げるための「エバポレーター(熱交換器)」が冷えすぎて凍ってしまうから、一定時間ごとにヒーターで溶かすんですね。いわゆる「霜取り運転」という機能ですが、ちゃんと仕組みを見るのは初めてです。

↑動画中にも登場した冷蔵庫のカットモデル。温度を下げるための「エバポレーター(熱交換器)」に霜がつくと冷却効率が落ちるため、定期的に霜を溶かすためにエバポレーターの下にヒーターが設置されている

 

中村:そうなんです。キンキンに冷えたエバポレーターで冷風を作るので、ここに霜がつくと冷却効率が悪くなり、最悪の場合、冷凍室が冷えなくなってしまいます。なのでタイミングよくヒーターで溶かす必要があるんですね。こちらは実際に稼動しているエバポレーターなんですが、青いエバポレーターに白い霜がつきはじめているのがわかるでしょう?

↑実際に稼動しているエバポレーター。白く見える部分が霜だ

 

松井:でも、ヒーターでこのエバポレーターについた霜を溶かそうとすると冷凍室内の温度まで上がってしまうんですよね。結果、今度は冷凍室内の食材に霜がついたり、味が悪くなったりする……。なかなか難しいものですね。撮影では霜取り運転中に庫内の温度が上がるのを抑え、食材に霜がつきにくくする機能を備えた冷蔵庫の話もしていましたが、霜のあるなしで実際そんなに味は違うものですか?

 

家電王:試してみましょう! こちらは左が普通の冷蔵庫で、右が霜がつかない冷蔵庫でそれぞれ3か月間冷凍保存した鰹で作った鰹のたたきです。

↑左が普通の冷蔵庫、右が霜がつきにくい冷蔵庫で3か月間冷凍保存した鰹で作った鰹のたたき。見た目ですでに身の色が違うことがわかる

 

↑この鰹のたたきは実際に撮影現場で藁焼きして作ったもの。すごい迫力だ…!

 

松井:あ、さっき藁焼きしていたものですね! 撮影を見ていてすごく食べてみたかったんですよ。うーん、それにしても見た目からして少し違いますね。霜がつきにくい冷蔵庫で冷凍保存したほうは色が新鮮そうだし、身が引き締まっている感じもする。これだけパッと出されたら、3か月も家庭用冷蔵庫で冷凍保存したようには見えないですね。

 

家電王:では味もチェックしてみましょう。

↑見た目で違いがわかってしまうので、アイマスクを着用して食べ比べに挑む松井。思いのほか似合ってしまって違和感がない

 

松井:これはすぐわかる! まず匂いが違いますね、霜がついていた鰹は口に入れると生臭い。あと、なんだかパサついている気がします。霜がつきにくい冷蔵庫で冷凍保存したほうのたたきは新鮮ですね。まったく臭みがないというわけではないけれど、ほとんど気にならない。それに身がプリッとしている。

 

家電王:そうでしょう? 冷蔵庫の違いだけでこれだけ味が変わるんです。たとえばお買い得セールの刺身を買って、冷凍室に入れて明後日食べようと思っても忘れてしまうことがありますよね。1か月後に見つけても、刺身には使えなくて捨ててしまったり。そういったことを繰り返しがちな人は、こういった長く美味しく保存できる冷蔵庫を買うことでかなりの節約になります。フードロスも防げますね。

 

松井:そう考えると地球規模で優しい冷蔵庫ですね!

 

本当は「美味しい」研究をしたわけじゃなかった?

今回の撮影で使用された“霜がつきにくい冷蔵庫”は、AQUAの「Delie シリーズ AQR-VZ43J」。カットモデルなども同社が協力したという。せっかくなので、機材の搬入やサポートにきていた技術者の方に、より詳しい仕組みについて話をうかがった。

↑AQUAの「Delie シリーズ AQR-VZ43J」。ちなみに、くらしのラボの動画では木村助手が「製品名を教えてください!」と家電王にたずねても、あの手この手でスルーされるというのが鉄板の流れになっている(Facebookのコメントなどで質問すれば普通に教えてくれるそうだ)

 

↑今回お話をうかがった、ハイアール アジア R&D株式会社 クリエーション本部 冷蔵庫先行技術グループ マネージャーの星野 仁氏

 

松井:「霜がつかない」冷蔵庫を開発した背景や機能の詳細について教えてください!

 

星野:冷蔵庫の冷凍室はエバポレーターの霜を溶かすためにヒーターを使用している、ということはおわかりいただけたと思うのですが、このとき実際にどれくらい冷凍室内の温度が変わると思いますか?

 

松井:冷凍室の温度ってだいたい-18℃くらいですよね。……うーん、3℃くらいは上がっちゃうのかな?

 

星野:実際にはヒーターの熱気が冷凍室まで届くことで10℃、製品によってはもっと温度が上がってしまうんです。

 

松井:10℃も! じゃあ-8℃くらいになるということですね。冷凍食材が完全に溶けるわけじゃないけど、冷凍というより微凍結に近い温度帯になりますね。

 

星野:霜を溶かすときに温度が上がると食材は乾燥しやすくなり、食材から水分が抜けてしまいます。そして食品から水分が出てしまうと、水分が抜けた部分に酸素が入り込んで酸化して劣化してしまう。うちで牛肉を使った実験をしたところ、旨みのもととなる「グルタミン」が、霜がつく通常の冷蔵庫だとかなり減っていました。もちろん、抜けた水分のぶんだけパサパサにもなります。食材は縮んでしまうし、食感も悪くなります。

↑AQUAによる冷凍機能の比較画像。下が霜がつきにくい冷蔵庫で冷凍保存したもの

 

松井:なるほど、当たり前ですけど食材に霜がついて良いことって全然ないんですね。このDelieではどうやって食材に霜をつきにくくしたんですか?

 

星野:そもそも霜取り運転中に冷凍室の温度が上がってしまうのは、ヒーターの熱がエバポレーターのエリアから冷凍室へと流れてしまうからです。なので、Delieでは霜取り運転中にエバポレーターのエリアを自動的にダンパーで塞ぎます。つまり、熱気がほかに漏れないようにしているのです。

 

松井:霜取り中はフタをするということですね。意外とシンプルな仕組み!

 

星野:そうなんです。説明されると「そんな当たり前のこと」と思われるかもしれないんですが、今まで思いついた人がいなかったんですよね。この仕組みをDelieでは「おいシールド冷凍」と呼んでいるんですが、なんとこれだけで温度上昇を5℃くらい抑えられます。結果は……先ほど鰹のたたきを食べ比べていただいたと思うので、おわかりいただけたかと思います。

 

松井:たしかにあの鰹は美味しかった! それにしてもすごい発明ですね。最初に思いついたときは「美味しく食材が保存できる冷凍革命だ!」って思いませんでした?

 

星野:実はこの技術、最初は美味しく食材を保存するために開発したわけではなかったんですよ。

 

松井:というと?

 

星野:我々は本当は省エネのためにこの技術を開発していたのです。冷凍室の温度が上がらなければ、そのぶん冷凍室を冷やすための余計な電気が必要なくなりますから。

ところが、実際においシールド冷凍を試してみると、もちろん省エネもできるのですが、保存した食材がビックリするほど美味しい状態で保存できました。あまりの違いに社内でも「これは省エネというより、食材が美味しく保存できるメリットのほうが大きいんじゃないか?」という話になったんです。

 

松井:そんな裏話があったとは!

 

「家電でしあわせ」になれる方法を伝えたい

松井:いやー、好奇心がかき立てられてついついメーカーさんにインタビューまでしてしまいました! 家電王、今日は本当にありがとうございます!

それにしても、今回の撮影は家電の技術について教えてくれるというものでしたが、これまでとはまた少し違った趣向ですよね。今までの「くらしのラボ」は家電の便利な使い方とか安全性能、あるいは最新家電の紹介といった内容でしたが。

 

中村:家電を購入する場合、家電量販店にいっても「どの製品が安いか」「どの製品が新しくて機能が多いか」といったことを説明されることが多いですよね。でも、私は家電で一番重要なのは基本の性能だと思っているんです。今の冷蔵庫だと、冷蔵庫内を自動で除菌・除臭するものもありますし、それは実際便利なんですが、冷蔵庫でもっとも重要なのは「食材を長く美味しく保存する」という基本的な機能だと思うんです。

今回の技術を解説するシリーズは、基本の機能の紹介をすることで、少しでも多くの人に家電の仕組みついて興味をもってもらえば、と思って始めました。

 

松井:今は家電が多機能になったぶん、家電の裏側にある技術がわかりづらいですよね。それを映像でわかりやすく解説してくれるのは魅力的です。特に、冷蔵庫やオーブンなどの「置きっぱなし」にする家電は技術の進歩がわかりにくい。今回紹介していた冷蔵庫なんかも、買い換えたら「霜がつかないと美味しい」ってわかるけど、古い冷蔵庫を使い続けている人は買い換えるまで「新しい技術があれば長く美味しい」なんてわからないですからね。

 

中村:そうなんです。知識がないことで損をしてしまう部分は絶対にある。なので、私はくらしのラボで「家電でしあわせ」になれる方法を伝えたいのです。暮らしの質があがります。あとは、単純にこういった技術は「こういう仕組みなんだ」とわかると面白いですよね。

 

松井:最近は家電にさまざまな技術が導入されていますが、これらの技術についてメディアが発信する重要性について再確認しました。うちの子どもは下が7歳。生まれたときからスマホがある世代で、iPhoneなんかの技術の塊を見ても「なんだかわからないけれどこういうもの」と思っている節があります。でも、親としては大きくなっても「どうしてこのオーブンは水で焼けるの?」といった疑問を自然にもてるような子どもに成長をしてほしいですね。くらしのラボを観ることでそういう感覚を養えるような気がします。

 

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撮影/我妻慶一

パパ、「水で焼くオーブン」ってどういうこと? ――意外と説明できない家電の仕組みをマルっと解説!

GetNaviプロデューサー・松井謙介。出世しても現場主義は変わらず、日々編集部員にゲキを飛ばす熱い男だ。そんな松井も家に帰れば二児の父親。子どもにいいところを見せようと、時には得意気に最新家電の知識を話すこともある。

 

「シャープのヘルシオっていうウォーターオーブンは、その名の通り水で焼いているから食材が美味しくなるんだ! すごいだろ~」

 

すると、子どもらしい直球の質問が飛んできた。

 

「ねえ、“水で焼く”ってどういうこと?」

 

・・・言われてみれば、もっともな疑問だ。いや、知識として原理的なところはわかる。しかし、子どもにわかりやすく伝えるにはどうしたらよいのか――。さんざん悩んだ末、頼った先は家電王・中村 剛さん。中村さんは自身が出演する東京電力エナジーパートナーの動画メディア「くらしのラボ」で家電に関する情報を発信しており、以前にその撮影現場にお邪魔した際には動画の迫力に大いに驚かされたものだ。動画なら、子どもにもわかりやすく伝えられるかも…?

<前回のくらしのラボ撮影現場レポートはコチラ>
https://getnavi.jp/life/444536/

 

なるほど、こうなっているのか! 仕組みが見えるってわかりやすい

「それなら、試しに実験をしてみましょうか」

 

家電王のそんな言葉に誘われ、足を運んだのは前回もお邪魔した廃工場スタジオ。一見スタジオとは思えないその佇まいに以前は躊躇したものだが、2回目ともなると余裕がある。安全に撮影するためにこの巨大スタジオが必要なことは以前の取材でもうわかっている。

↑約1年ぶりに訪れることになった廃工場スタジオ。前回はここで家電の安全性に関する動画の撮影を見学させてもらった

 

スタジオに入ると、すでに撮影は始まっているようだ。家電王の目の前にあるのは水を入れたフラスコとそれを熱するアルコールランプ。フラスコからは銅管が伸びており、逆側の先端からは水蒸気がシュウシュウと吹き出ているようだ。なんだかいかにも「実験」という印象だ。

↑昔の理科の実習授業を彷彿とさせる実験器具が並ぶ

 

どうやら、フラスコ内の水を沸騰させて水蒸気を発生させ、水蒸気の通り道である銅管をガスバーナーでさらに加熱することで「100℃以上の温度の水蒸気=過熱水蒸気」を作り出しているようだ。冒頭の「水で焼く」オーブンというのは、この過熱水蒸気を利用している。……という原理についてはわかっていたつもりだが、目の前で過熱した水蒸気によって紙が焦げていく様子を見ると驚かされる。実際の様子は次の動画をご覧いただきたい。

 

「水で焼く」の何がイイ? 過熱水蒸気はメリットだらけ

↑過熱水蒸気について話をする家電王・中村 剛さん(左)とGetNaviプロデューサー・松井謙介

 

松井:家電王、撮影お疲れ様でした! 最近はどのメーカーもオーブンレンジの上位機種には「過熱水蒸気」機能を搭載していますが、あの過熱水蒸気オーブンレンジのなかではこんな風に蒸気が加熱されていたんですね。一般家庭で実験道具をそろえるのは難しいので、こうやって動画にして配信してくれるのはありがたいです。

 

中村:ありがとうございます。ところで松井さん、過熱水蒸気で調理するメリットってわかりますか?

 

松井:うーん、たとえば今回撮影に使っているシャープの「ヘルシオ」シリーズは、水の力で余計な塩分や油分を落としてくれるから健康的だといわれていますよね。あと、たしか過熱水蒸気が冷やされて水に戻ろうとする力を利用するので、普通の熱風式オーブンよりも効率的に食材を加熱できるとか。

 

中村:さすがですね。そう、過熱水蒸気調理は蒸気が食材に触れて冷えることで水に戻るという「凝縮熱」を利用するんです。同じ温度の熱風式オーブンと比べると約8倍のエネルギー量があると言われているんですよ。

 

松井:8倍は凄いな!

 

中村:あと、先ほど「いろいろなメーカーから過熱水蒸気オーブンレンジが出ている」という話がありましたが、今回撮影で使ったシャープのウォーターオーブン「ヘルシオ」シリーズはちょっと特殊なんです。実は、他メーカーの過熱水蒸気調理は過熱水蒸気とともにヒーターや電子レンジも併用して加熱するのですが、シャープは「過熱水蒸気だけ(※)」での調理ができるんですよ。

※レトルトの温めなど、一部機能では過熱水蒸気ではなく水蒸気を利用

↑今回の実験で使用されたのは、ヘルシオシリーズのなかでも2020年6月に発売されたばかりのハイグレードモデル「AX-XA10」

 

松井:へえ~、これだけ特殊なんですね。でも、なんで水蒸気だけで調理する必要があるんですかね? 感覚的には、ほかのメーカーみたいに加熱方式を複数併用したほうが早く調理できそうなのに。

 

中村:水蒸気だけで調理することで大きなメリットはふたつあるんです。ひとつは複数の食材を同時に加熱調理できること。過熱水蒸気というのは温度の低いほうに多くの熱を与えるという特性があるんですね。なので「冷凍しておいた食材と、冷蔵や常温の食材」など、温度の異なる食材も一度に調理できるんです。

また、庫内の密閉性が高いので、過熱水蒸気で満たすことで酸素を追い出して食材の酸化を抑えることもできます。

 

松井:普通に考えたら火の通りが早い食材が焦げたりしそうなもんですけどね。

 

中村:先ほど撮影で調理した食材があるので試食してみますか? 撮影では上下2段で常温の生野菜と調理済みのコロッケを過熱水蒸気で調理しました。普通のオーブンで調理すると、ニンジンが中まで柔らかくなるころにはコロッケが焦げてしまいますよね。

↑過熱水蒸気で調理した野菜や揚げ物を試食!

 

松井:うわ! ニンジンが中までホクホクで甘い! なのにコロッケは焦げてないし衣がサックサク! 撮影中にこんな美味しいもの食べていたんですか!

 

中村:水蒸気だけで調理するもうひとつのメリットは、なんといっても食材を選ばないことですね。たとえば、レトルトパウチのカレーはパウチごと温められますし、その横で市販のパックご飯も同時に温められる。さらに生卵を入れてゆで卵を作ることまでできます。これは他の加熱方式では絶対できないことですよね。

 

松井:食材を入れてボタンを押せば、あとは待つだけで調理できるということですね。子どもがいるうちみたいな家庭では大助かりだな。

 

スタジオに煙が!? 家電の実験はまだまだ続く!

松井:今回は過熱水蒸気の仕組みだけではなく、過熱水蒸気調理のメリットまで詳しく教えてもらい、かなり得した気分です。早速家に帰ったら子どもに教えないと。

それにしても、やっぱり動画の力は凄いですね! 自分も理屈は知っていたのですが、実験映像を観て仕組みを知ることで「知る」だけじゃなく「知識を自分のものにする」ことができた気がします。文章を扱う人間としては少し悔しいですが、やっぱり映像のインパクトは認めざるを得ません。

 

中村:多くの人にわかりやすく伝えたいので、そういってもらえると嬉しいですね。

 

松井:なんといっても映像なので子どもでもわかりやすい。うちの子はもう大きいですが、難しい言葉がわからない年齢でもこれなら理解できるんじゃないかな。あと、家ではできない実験を見るのは大人でも単純にワクワクしますね。

 

中村:「家電の勉強」だと感じさせずに楽しみながら見られる映像の工夫をしているので、そう感じてもらえたならよかったです。ところで松井さん、実はこのあともうひとつ実験をするんですが、せっかくだからそちらも見て行かれませんか?

 

松井:え! まだ実験があるんですか??

 

続く!

 

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<次回予告>

↑次回の撮影の様子をチラ見せ。ものすごい煙だが、いったい何をしているのだろうか…?

 

撮影/我妻慶一