精米で排出される糠がスーパーフードに!?「米ぬか」の健康効果と日本の農業にもたらす効果

玄米から白米へ、精米する際に出る「米糠(こめぬか)」。漬物用のぬか床や、たけのこのあく取りに活用するもの、というイメージがあるのではないでしょうか。実際、大半の米ぬかは肥料や家畜の餌などになりますが、実は玄米に含まれる栄養素の約8割がこのぬかに含まれていることは、案外知られていません。

 

それほど栄養価が高いなら「米ぬか」も食用にしよう、という取り組みをおこなっているのが、国内最大手の米問屋、株式会社神明(しんめい)。今回は、米ぬかや米油の商品化を手掛ける神明きっちんの取締役社長・藤尾益人さんを直撃。ぬかが持つポテンシャルと食用のメリット、さらには日本の農業と米をとりまく課題などに迫ります。

 

米は糖質の塊? 実は米ぬかは “糖質オフ” にも効果的だった

数年前からムーブメントになっている「糖質制限」。健康のためにと、白米ではなく糖質を抑えることができる玄米を食事に取り入れている、という人も多いのではないでしょうか?

 

「玄米が体に良いとされている理由は、お米の白い部分を守る皮、つまり『ぬかの層』にある」と藤尾さん。まずは、その豊富な栄養素について教えていただきました。

 

「お米はそもそも、ビタミン・ミネラル・食物繊維などをバランスよく摂取することができる食材。ひとつの食材に、これらのマルチな栄養素が入っているものはなかなかありません。

さらにお米は、数年間常温で置いておいても腐ることのない備蓄品。それはなぜかというと、お米の白い部分を守る皮・ぬかの層に、強い抗酸化作用があるからなんです。米のぬか層には、抗酸化作用をもつビタミンEの他にも、タンパク質や整腸作用がある食物繊維鉄分や葉酸などのミネラル、さらには糖質の消化を助けるビタミンB1などのビタミン類が豊富に含まれています。

つまり、『糖質オフ』ということで避けられているお米ですが、実はぬかの層には糖質を抑える作用がたっぷり含まれているのです。その部分を捨ててしまうのは、なんだかもったいないと思いませんか?」(株式会社神明きっちん 取締役社長・藤尾益人さん、以下同)

株式会社神明きっちんの取締役社長・藤尾益人さん。

 

日本のスーパーフード、米ぬかを“食べる”メリット

そんな栄養豊富な米ぬかを活用しようと、米油や化粧品など、さまざまな商品開発に取り組んでいるのが、神明きっちんです。なかでも注目なのは、ぬか自体を“食べる”というアイデア。ぬかを食べることで得られるメリットとは?

 

メリット1.豊富な栄養素で、美肌効果・腸内環境の改善に

「さきほどご説明したとおり、米ぬかには豊富な栄養素が含まれているのがなによりの魅力。抗酸化成分やビタミン類で美肌効果が期待できるのはもちろん、食物繊維が豊富なので腸内環境の改善もサポートしてくれます。必要な栄養素をサプリメントで補う人も多いかもしれませんが、日本人の食生活に身近な“お米”という自然由来のものからマルチな栄養素を摂取できるのは安心ですし、大きなメリットだと思います」

↑東京・青山にある直営店舗「おこめぶらん」では、米ぬかを使用したフードメニューを開発、提供しています。写真は、きのこの塩麴玄米粥とぬか漬け。

 

メリット2.加熱しても冷やしても、栄養価が失われにくい

「米ぬかは、熱したり冷やしたりしても栄養成分が失われにくいというのが、大きな強みです。さらに、料理に加えても味を邪魔しない。ですので、普段の食事に取り入れやすいというメリットがあります。玄米で食べても栄養成分が豊富ですが、食感がかたくて食べにくいという人もいらっしゃるかと思いますので、代わりにより手軽な米ぬかで、その栄養素を摂取してみるのもいいかもしれません」

 

メリット3.食材のアップサイクルに貢献できる

「これまで米ぬかは、廃棄されるか家畜の餌として利用されるくらいで、我々の業界でも邪魔者扱いされてきました。しかし、SDGsの意識が高まっている今、玄米の1割にあたる米ぬかを捨ててしまうのではなく、そこに付加価値を付けて有効活用していくのがいいと考えたんです。これはアップサイクル的な考え方ですよね。米ぬかを取り入れることで、食品ロス削減や世界的な食糧危機を考えるきっかけにもなると思います」

 

食用化は難しい⁉ これまで米ぬかが活用されてこなかった理由

↑神明の工場で、ぬかから米油を搾油する工程。

 

それではなぜ、こんなにも栄養満点な米ぬかが、これまで食品原料として使われてこなかったのでしょうか?

 

「実は、米ぬかは玄米の皮をむいた瞬間から酸化がはじまるため、劣化がとても速いんです。さらに、すぐに処理をしないと菌が繁殖してしまうため使い道が限られていました。『米ぬかの栄養素が高い』ということをわかっていながらも、有効活用されてこなかった理由はそこにあるのです」

 

米ぬかをそのまま食べられるようにするには、とてもハードルが高かったと藤尾さん。酸化を抑えて食用化するための研究に、約2年もの歳月を費やしたといいます。

 

「我々が使うことにしたのは、精米直後にできた新鮮な米ぬか。その米ぬかを高温で加熱した後に、酸化の原因となる油を独自の圧搾方法である『ナチュラル・プレス製法』で絞り出すことにしました。ちなみに、その時に絞りだされた油は米油として販売しています」

↑1kgの玄米からわずか0.6%しかとれないという貴重な米油ブランド「0.6RICE BRAN OIL」。「おこめぶらん」では、計6種類の銘柄別米ぬか油を販売しています。

 

「本来、米ぬかから油分を抽出するためには、ヘキサンという薬剤を使用するのですが、そうするとぬかにも薬剤が少なからず残ってしまい、食用には適していません。ですが、弊社が行っているのは、薬品を使わない圧搾製法。薬剤完全不使用の安全な食品素材として利用することができるのです。ぬかの酸化を抑えるためにしている作業の過程で、米油も生まれる。一石二鳥ですね」

 

「食材を余すことなく使う」 そのポリシーから生まれた、米ぬか商品

そうした研究開発を経て生まれたのが「飲める米糠」。2018年に販売を開始した、米ぬかをより手軽に生活に取り入れることができるナチュラルサプリメントです。

↑東京・青山にある直営店舗「おこめぶらん」で提供している、「飲める米糠」を使用した米ぬかスムージー。木苺ベリーや玄米甘酒、スピルリナグリーン等、季節によって数種販売。1杯でレタス約1個分の食物繊維が摂取可能。

 

「『飲める米糠』は、牛乳や豆乳、アーモンドミルクに混ぜてシェイカーで振ってもらえれば美味しく米ぬかを飲むことができる商品です。好きな材料と混ぜて、スムージーを作るのもいいですね。味のついていない『ナチュラル』は、食事にプラスするのもおすすめ。お好み焼きや味噌汁に入れるなど、料理の美味しさを損なうことなく米ぬかを取り入れることができます」

↑東京・青山にある直営店舗「おこめぶらん」で提供している、「飲める米糠」を使用した米ぬかスムージー。木苺ベリーや甘酒、スピルリナ等、季節によって数種販売。1杯でレタス約1個分の食物繊維が摂取可能。

 

↑ほかにも、米ぬかを使ったさまざまなレシピを提案しています。写真は、「米ぬか抹茶ラテ」「米ぬかおむすび」「米ぬかポークジンジャー」「米ぬかアボカドトースト」「米ぬかペンネアラビアータ」。こんなに多様なメニューで楽しめるとは!

 

「ドレッシングやクッキーなど、数多くの米ぬかを使った商品を開発・販売しています。米ぬかをただ売るだけではなく、いろいろな形にすることで興味を持ってもらう、食べてみようかなと思ってもらえる。まずはそのきっかけになるような商品を開発していくことが大切だと思っています。食事に米ぬかを取り入れようとしても、すこし難しいなと感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、例えばドレッシングは毎日のように食卓で使うもの。そうした普段使いしているものから試してみるのが一番かもしれません」

 

負のループが止まらない? 日本人と米をとりまく課題

同社が多様な米ぬか商品の開発し、その魅力を発信し続ける理由は「まずは、若い人にお米についてもっと興味をもってほしい」という思いから。その背景には、日本と米産業をとりまくさまざまな課題がある、と藤尾さんはいいます。

 

「お米は、食料自給率が低い日本で、唯一自給率約100%を誇る作物です。そして面白いのが、お米はここ25年間価格が変わっていないということ。このような食材は、他には考えられないですよね。

にもかかわらず、米の消費は年々減少しています。1人あたりの消費量で見てみると、1960年代に年間で117kg食べていたものが、2020年で50kgに半減しているんです。米の消費が減ると、当然農家も作らなくなってしまいます。誰も買ってくれないもの作っても仕方がないですから」

「その結果問題となっているのが、担い手不足。農業全般で見ても、1975年には790万人いた農業就業者が、2015年に210万人と4分の1にまで減っています。2050年には100万人を切るのではないかともいわれており、深刻な事態に陥っているのです。

さらに、その農業従事者の3人に1人が65歳以上の高齢者。若い世代がいないというのも大きな課題です。国も、農業を絶やさないために補助金を出しているのですが、それでも専業でお米を作っている人達の平均年収は、200万円レベル。この現状では、若い人たちもやはり離れてしまいます。
お米を食べないと、お米を作る人もいなくなる。最終的には、耕作放棄地となったほったらかしの田んぼが増え、日本の美しい田園風景さえも失われてしまいます。そうした負のループに陥っているのが現状なのです」

 

若い世代の参入が、農業の活性化につながる

「日本の農業、米産業が抱える負のループを断ち切るためにも、まずはやはり若い世代に興味を持ってもらうことが重要だと思っています。若い世代が米に関わる仕事をする、若い世代が米を食べる、そして若い世代が米に関わる新しい何かを生み出す。米がただの米で終わるのではなく、形を変えた提案をしながら新しいマーケットをどんどん開拓していくことができれば、しいては農業の活性化につながっていくはずだと考えています。

私たちが開発を行っている米ぬか商品も、少し切り口を変えただけ。いままで捨てていたものの価値を見直し、スーパーフードとして活用するというアイデアから生まれたものです。それでも若い人たちに手に取ってもらうには、やはり若いスタッフたちの視点や発想が欠かせません。若い世代の意見を取り入れて、米の活用方法をもっともっと広げていく。それが我々に与えられた課題でもあると思っています」

 

同社が現在、新たに取り組んでいるのは、『そのまま食べられるぬか床』の販売。ぬか漬けは本来、野菜が持っている乳酸菌がぬか床に含まれる他の菌を食べることで発酵し、旨味が生まれるもの。野菜を取り出したら洗って食べるのが一般的ですが、同社の商品は洗わないで食べられるのです。

 

「ぬか漬けと聞くと、ハードルが高いと感じる人もいると思います。しかし、手軽に作れることができれば『やってみようかな』と興味を持ってもらえるのではないかと考えています。これからも、若い人たちにまずは一回試してみようと思ってもらえるような、お米や米ぬかの商品を提案していきたい。そこから、米ぬかの栄養素や魅力を実感してもらえたらうれしいです」

 

【プロフィール】

株式会社神明きっちん 取締役社長 / 藤尾益人

1974年生まれ、兵庫県出身。1996年神明に入社、2015年より株式会社神明精米(現・神明きっちん)代表取締役社長を務める。

 

【ショップ】

おこめぶらん 南青山本店

“ファクトリー”をコンセプトにした店舗。フードメニューとして、“ぬかごと食べられるぬか漬け“が楽しめる発酵ランチや“焙煎米ぬか茶”といったこだわりのメニューも展開。飲める米糠と圧搾米ぬか油を使ったさまざまなワークショップも開催予定。

所在地=東京都港区南青山2丁目27番地19号 エムプレイス青山1階
TEL=03-6863-1540
営業時間=11:00~19:00 ※ランチは11:30~15:00(20食限定)
定休日=毎週月曜日(祝日の場合は通常営業)

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糠の準備から発酵・本漬けまで。家庭の冷蔵庫で「ぬか床」作りに成功する方法

ぬか床(ぬかどこ・糠床)を仕込むのに適した時期は、一般的に気温が20度~25度くらいの春や夏前などと言われています。ところが、昨今は気温が上がりすぎたり、夏前に仕込むと気温が高くなる夏の間に発酵が進みすぎてしまったりして、管理がうまくできなかったりすることも。となると、気温が落ち着いてきてじっくりと発酵を待てる秋こそ、ぬか床を仕込む好機かもしれません。料理家で菌カウンセラーの清水みのりさんに、家庭におけるぬか床の仕込み方を教えていただきました。

 

ぬか床作りの準備

ぬか床作りに必要な材料は、ぬか、水、塩、そして捨て漬け野菜の4つ。好みで昆布や唐辛子を入れたり、山椒の実や柑橘の皮で味つけを変えたりすることができますが、基本はぬかと水と塩があれば、ぬか床を作ることができます

 

「ぬかは、できるだけ無農薬のものがおすすめです。“炒り糠(煎り糠・いりぬか)”ではなく“生糠(なまぬか)”を使うといいでしょう。はじめの2週間ほどは、野菜の不要な部分を使って“捨て漬け”を繰り返しますが、これはぬかの発酵を促すためにする工程です。ここで漬けたものは食べずに捨ててしまうので、野菜の皮やヘタなどを取っておいて使うと無駄が少なくてすみますよ。捨て漬けに使う野菜は、大根やにんじんなどアクの少ない種類を選びましょう」(料理家・清水みのりさん、以下同)

 

ぬか床作りの容器は深めのものがおすすめ

ぬか床には、水分や塩分がたっぷり含まれています。そのため、使う容器はそれらによるサビに強いものを選ぶ必要があります。一般的には、ホーローやプラスチックが適していると言われていて、清水さんも野田琺瑯の「糠漬け美人」というホーロー容器を使っていました。

「ぬか床を定期的にかき混ぜるので、深めの容器だとぬかがまわりにこぼれず使いやすいんです。プラスチックでも構いませんが、においがうつってしまうのこともあるので気をつけましょう」

 

Step1.ぬか床を整える

【材料(糠1 kg分)】

・ぬか:1kg
・水:900ml〜1L
・塩:110g
・赤唐辛子:1本
・昆布:20cm1枚
・捨て漬け用の野菜:100g

 

【作り方】

1. ぬかに塩をよく混ぜる

「ぬか床を作るのとは別の容器にぬかと塩を入れ、手でよく混ぜ合わせます」

 

2. 混ざり具合を見ながら水を少しずつ加え、さらに混ぜていく

「ぬかにしっかり水分が行き渡るよう、しっかりと混ぜていきます」

 

「手でぎゅっと握ったとき、むにゅっと手の間から出てくるくらいの柔らかさにします」

 

3. 容器にできあがったぬか床を入れる

「容器にぬか床を入れて平らにならしていきます」

 

4. 昆布と赤唐辛子、捨て漬けする野菜を入れる

「ぬか床の上に捨て漬け野菜を入れたら、さらにぬか床でフタをしていきます。さらにその上に捨て漬け野菜を乗せて、いわゆるミルフィーユ状に重ねていきます。こうすることで、まとめて埋めるよりも発酵をしっかり促すことができます」

 

5. 表面を平らにならす

「ぬか床が全部入れ終わったら、平らになるように表面をきれいに手のひらで押さえて整えましょう」

 

6. 容器の側面をきれいに拭き取る

「ぬか床がまだできあがっていないときは、カビが繁殖しやすくなっていますので、容器の側面についたぬかをキッチンペーパーやティッシュできれいに拭き取るようにしましょう。ぬか床が発酵した後には、必要ありません」

 

「とはいっても、普段のお手入れのときにも、側面を指でなぞりながらぬかを落として、容器を清潔に保つようにしてください」

 

Step2.ぬか床を発酵させる

1. ぬか床を涼しい場所に保管する

作ったぬか床は、まだ発酵していないため野菜を漬けることができません。ここから2週間ほど発酵させることで、おいしいぬか床に育っていくのです。

 

「夏場は発酵の進みがとても早いので、涼しくなって来た秋の方が安心して漬けられると思います。発泡スチロールや保冷バッグなどにぬか床を入れ、温度が均一に保たれるようにしてから、玄関や食料庫などの涼しい場所で保存していきます」

 

2. 2〜3日経ったら捨て漬けの野菜を交換し、天地返しする

ぬか床の中に入っていた捨て漬け用の野菜を取り出したら、奥側のぬか床を一気に持ち上げ、手前へとひっくり返します。その後、容器を180度回転させてから同様に繰り返しましょう。これを「天地返し」と言います。

 

「天地返しの際には、かき混ぜるのではなく、裏表を入れ替えるように混ぜるだけで大丈夫です。この後は、新しい捨て漬け用の野菜を埋めて周囲を掃除し、保冷バッグなどに入れて引き続き発酵させていきます。この作業は、シンクで行うとぬかが落ちても後から掃除しやすいですよ」

 

3. ぬかの味見をしておいしくなっていたらできあがり

「2週間ほど経つと、少しずつ酸味も出て来てぬかの味が変わってきます。発酵させる前にも味見をしておいて、味の変化を見るようにするとわかりやすいですよ。冬場は3週間ほどかかるかもしれませんが、いい香りになってきたら、本漬けにうつりましょう」

発酵したらいよいよ本漬け。次のページで、その方法と、ぬか漬けにしたいおすすめの食材を解説していただきます。

Step3.本漬けを行う

おいしいぬか床ができたら、いよいよ本漬けです。漬けるものはどんなものでもお好みで構いませんが、種類によって漬け上がりまでの時間が変わるので、事前に調べるなどして、食べるタイミングに気をつけるようにしましょう。

 

「きゅうりや大根など、水分の多いものは比較的早く漬かり、1〜2日ほどで食べられるようになります。にんじんは5日くらい見てください。私は毎日食べたいので、いろいろな野菜を漬けておいて、できあがった順番に取り出して、また新しいものに入れて……というふうに循環させています。こうすると毎日食べられるだけでなく、必然的に毎日ぬか床に触るようになりますから、わざわざお手入れをするという感覚ではなく毎日の習慣になっていって、とても楽にぬか床とおつきあいができるな、と思っています」

 

1. 野菜に塩をふって下準備をする

「味が均等になるので、野菜には塩を振ってから漬けるのがおすすめ。きゅうりはアクがあるので、ヘタを取って漬けましょう。にんじんは浸かりづらいので、丸ごとではなく、切ってから漬けると早く仕上がりますよ」

 

2. ぬか床に漬けたいものを埋める

「ぬか床のちょうど真ん中くらいまで掘り、お好みの野菜を入れてぬか床で閉じます」

 

3. 冷蔵庫で保存する

「発酵したあとのぬか床は、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。温度が一定に保たれているので、常温での保存に比べて格段に管理しやすくなります」

「作りはじめは、どのくらい漬かっているか感覚でわからないかもしれませんが、味見をして浅ければ戻し、漬けすぎてしまったときは細かく刻んでお茶漬けや別の材料と和えて使うなど、いろいろな食べ方をぜひ楽しんでみてください。というのも、漬かり過ぎてしまったからといって塩抜きをしてしまうと、せっかく含まれている栄養素も流れてしまうのでもったいないのです」

 

清水さん流・ぬか漬けのおすすめ食材

毎日ぬか漬けを食べているという清水さんに、おすすめの食材を教えていただきました。実際に漬けてもらったのは、きゅうりやにんじん、大根といった基本的な食材のほかに、アボカド、ビーツ、とうもろこし、エリンギ、高野豆腐、こんにゃく、パプリカ、みょうがといった、実に多彩な食材。

 

また、変わり種の食材の漬け方についても、清水さんにコツを教えていただきました。

「高野豆腐は水で戻したものを1分ほど茹でてから入れています。エリンギやアボカドなど、ひだが細かくてぬかが入り込んでしまうものや、色をきれいに仕上げたいものは、ガーゼに包んでからぬか床に入れるといいですよ。魚やお肉をぬか漬けにしたいときは、ぬか床を魚やお肉の表面に塗って漬けます」

 

ぬか床は、漬けないときでも2〜3日に一度天地返しをして管理する必要があります。天地返しができない場合でも1週間程度であれば大丈夫ですが、長期の旅行をするときなどはぬか床を保存バッグに入れて空気をしっかり抜き、冷凍しておきましょう。帰宅後にはそのまま容器に戻して、これまでと同じように使うことができます。

ぬか床といえば毎日のお手入れが必須、というイメージがあった人も多いのではないでしょうか。それが旅行や忙しいときには冷凍しておけるのなら、気楽に仕込めそうですね。涼しくなってきて過発酵しにくいこの時季に、ぜひぬか床作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

料理家・菌カウンセラー / 清水みのり

祖父母の自然派ライフスタイルに影響されて育つ。一般企業に就職したのち、菌の魅力に気づき、製パンの専門学校へ入学。パン職人として働き、その後2004年よりパンや発酵食の料理教室をはじめる。著書に『身体が喜ぶ発酵調味料メソッド』(方丈社)がある。

栄養素の9割は腸で吸収される! 我が家にぬか床を導入すべき理由

参ったなぁ……と、いつも困っている「参田家(まいたけ)」の面々。きょうはお母さんがなにやら困っているようです。

 

参田家の人々
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ちょっと気弱なお父さん、元気でしっかり者のお母さん、もうすぐ小学生の娘、甘えん坊の赤ちゃん、家族を見守るオスの柴犬の4人と1匹家族。年中困ったことが発生しては、宅配便で届いた便利グッズや、ご近所の専門家からの回覧板に書かれたハウツー、知り合いの著名なお客さんに頼って解決策を伝授してもらい、日々を乗り切っている。
https://maita-ke.com/about/

 

家族みんなお腹がゴロゴロして調子が悪い。 寒さのせい? それとも食生活が原因かしら!?

お正月に新年会……。年末年始の忙しいスケジュールを乗り越えてひと安心したのもつかの間、なんだかお父さんも娘もお腹の調子が悪いみたい。最初は風邪かもなんて思ったけど、これはもしかして日頃の食生活が影響しているのかしら!? 最近引っ越して来た木下あおいさんは、インナービューティープランナーとしてお仕事しているって言っていたわね。きっと胃腸に関する不調についても詳しいはず。さっそく相談しに行ってみようかしら!

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お腹の不調に効果テキメンの腸活が知りたい!

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普段の生活に戻ったはずなのに、家族の胃腸の調子が優れないんです。ゴロゴロした感じがずっと続いているようだし、私はお肌の調子もあまりよくない気がして。木下さんのキレイの秘密……いや、家族の体調を改善できるアドバイスをぜひ聞きたいわ。
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年末年始の食生活で胃腸に負担がかかってしまったのかもしれませんね。お薬などで改善する方法もありますが、今後のためにも食生活で腸を整える方法を実践してみてはいかがでしょうか。実は、栄養素の消化吸収機能の9割が腸にあるんですよ。なので腸を健康な状態に保つことはとても重要なんです。
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それで最近「腸活」というのが話題になっているのね。でも腸の調子を良くするって言ってもあまりピンと来ないわ……。具体的にどうしたらいいのかしら?
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腸内環境の改善に欠かせないのは、善玉菌と乳酸菌を増やすこと。そして、善玉菌のエサとなる食物繊維を意識して摂ることです。味噌、醤油、塩麹、酢などの発酵調味料を使った料理は効果的ですね。それから基本的なことですが、よく噛んで食べることです。胃腸に負担がかからないし、消化吸収力も高まります。
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確かに、うちの家族はよく噛まずに食べていることが多いかも。食事のときにしっかり噛むことを意識させないといけないわね! 食物繊維はサツマイモ、ゴボウなどが料理にも使いやすいし、子どもも好きでよく食べてくれるわ。でも、お腹の調子がいいという実感はあまり湧かないけれど……。
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オリゴ糖を多く含む豆腐やタマネギは腸にとても良い食材なのですが、参田さんのご家族のようにいつもお腹がゴロゴロしているときは過剰に摂取するとお腹がゆるくなるので、バランスを見てとりましょう。それから食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があって、イモ類や根菜など不溶性に偏ってしまうと腸の動きが鈍くなってしまうんです。一方の水溶性食物繊維は海藻類、オクラやナメコなどネバネバ系の食材、リンゴなどの果物に多く含まれています。あとは旬の野菜ですね。不溶性食物繊維を含む食材を食べるときは、一緒に水分を摂るように意識するといいですね。
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オリゴ糖の摂り過ぎでお腹がゆるくなるのは知っていたけど、豆腐や玉ねぎに含まれているのは意外! 便秘の時にイモ類を食べてもあまり効果はないのね……。乳酸菌はどうやったらたくさん摂れるのかしら? ヨーグルトくらいしか思いつかないわ(泣)。
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いつもの食事で手軽に乳酸菌を摂りたいなら、ぬか漬けがオススメです。実は私、「国産熟成ぬか床でおいしいぬか漬づくり」という簡単ぬか漬けセットをプロデュースしたんです。天然酵母が、一般的なぬか床の約240倍も含まれていて、野菜の栄養価を増大させる効果もあるのが特徴。わざわざぬか漬け用に野菜を買わなくても、少し余った野菜の切れ端を入れるだけでいいのでお手軽です。量も朝食の1品にぴったりですよ。
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ぬか漬けって面倒なイメージがあったけど、それなら簡単だし続けられそうね! 食卓にもう1品欲しいときにぬか漬けがあると心強いわ〜。ほかに木下さんはどんなインナービューティー法を実践しているのかしら?
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食事は自炊を心掛けていますね。もちろん外食の日もありますが、その後の食事は体のメンテナンスになるような食事を摂ります。食べた分、ケアをしてあげる感じですね。具体的には、デトックス力を高めるためにわかめやひじきなどの海藻、青菜を摂るようにしています。昆布や干ししいたけでとった出汁に野菜を入れて、野菜の出汁が出たら肉や魚を加えて食べるお手軽鍋料理もおすすめです。
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水出しの昆布出汁も食物繊維を摂るという点では、すごくいいことだったのね。その出汁で毎日お味噌汁を食べれば完璧だし。あと、もうひとつ質問があるの! 木下さんが今ハマっている食材はあるかしら?
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ビタミンCとフィトケミカルが豊富なブロッコリーと、肌に良い緑の野菜、青菜ですね。ニラ、小松菜、ほうれん草などをお鍋にするとたっぷり食べられるのでおすすめですよ。どんなに体に良くてもおいしくなくては続かないので、おいしく食べることを大切にしています。それから体を冷やさないことですね。
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体に負担を掛けない食生活が大切ということね。よし、木下さんに聞いたことを実践して、家族みんなのお腹の調子が良くなるように頑張ってみるわ!

 

簡単でおいしいぬか漬けの作り方

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①専用ジッパー袋に付属の混合ぬかを入れ、水250mlを加える。

②袋の外から両手でしっかり揉んで、混合ぬかがしっとりするまで混ぜる。

③付属の天然酵母を加えて、味噌ぐらいの硬さになるまで揉み込む。

④野菜にぬかが密着するように揉み、袋の空気を抜いて冷蔵庫でお好みの時間漬ければできあがり!

 

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乳酸菌&食物繊維をおいしく摂る

楽しんで食べること、旬の食材を選ぶことが胃腸の健康&美しさにつながるのね。水に浸けておくだけの昆布出汁は手抜きかも、なんて思っていたけど腸活には非常に効果的なことがわかってうれしい限りだわ! 野菜と昆布だけで出汁をとるお鍋もさっそく作ってみようっと。今年は家族のために、インナービューティーについてもっと勉強してみようかしら。

 

教えてくれたのは……

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インナービューティープランナー/管理栄養士・木下あおいさん
女性の内側からの美を追求し、腸に優しい健康食を提案。食を整え心の安定を築く、インナービューティーダイエットを提唱しており、運営するダイエットサロンは予約が取れないほどの人気。著書に『人生を変えるレシピ』(宝島社)など。
https://ameblo.jp/aoi-kinoshita/

 

【商品情報】
DIDYCO「【木下あおい監修】お手軽インナービューティー天然酵母入りぬか床セット~国産熟成ぬか床(1袋)~」
1750円

 

日々の「参った!」というお悩みを5分で解決!「参田家(まいたけ)のおうち手帖」

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