ついにイオンも参入で拡大が止まらない!アウトレットが流行しつづける理由とは?

イオンは2017年10月、アウトレット事業に本格参入すると発表しました。一号店となる「THE OUTLETS HIROSHIMA(ジ・アウトレット ヒロシマ)」(広島市)は、2018年春の開業を目指しています。従来のアウトレットやショッピングセンター(SC)と大きく異なるのは、単なる消費の場ではない点。シネコンや屋内スケートリンク、ボウリング場を併設し、文化発信ゾーンも展開するなど、モノ消費からコト消費へ大きく舵を切ってきたのがうかがえます。

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■分かりますか? アウトレットとショッピングモールの違い

日用品や食料品を扱うスーパーが主軸のSCは、あくまで日常の消費行動の場です。その点、既存のイオンモールと棲みわけられる、とイオン関係者は語ります。一方、アウトレット来訪者の多くは「非日常」を求めています。そうした点からも新施設は、地域の賑わい創出に一役買うことになるでしょう。

 

ちなみに中国地方には、すでに三井アウトレットパーク倉敷(岡山)がチボリ公園跡地で営業していますし、広島マリーナホップもあります。しかし、国際観光都市・広島ならではの、広島平和記念資料館や世界遺産・安芸の宮島といった名所もあり、インバウンド客が多く訪れる場所柄。今後の需要が見込めます。さらに、“アウトレットの空白地帯”といわれる四国も商圏に含まれるため、恵まれた立地です。

 

そもそも皆さんは、“アウトレット”の語意をご存知でしょうか。「出口」「はけ口」を意味するこの新業態は、1980年代後半、アメリカで確立しました。主要都市の一等地に立地する百貨店や直営店、旗艦店で売れ残った品の受け皿として急成長。原型は、フランスやイタリアの高級ブランドメーカーが製造工場近くでB級品などを社販(ファミリーセール)するファクトリーアウトレットで、それらストア(店)の商業集積したモール形式のアウトレットが欧米で広がりをみせたのです。都市部から車で1時間半程度の郊外に立地するのが特長で、最盛期には全米各地に300か所以上存在しました。やがて淘汰され、1996年をピークに減少に転じました。

 

■アウトレットがウケた2つの理由

日本にアウトレットが本格流入したのは、1995年、三井アウトレットパーク大阪鶴見と軽井沢・プリンスショッピングプラザが開業して以降です。2000年に御殿場プレミアム・アウトレットが開業すると、一気にブレイク。一般にアウトレットはデフレ局面で成長するとされますが、まさに「失われた20年」で急成長を遂げたのです。現在、日本全国に約40か所のアウトレットが存在しています。

 

アウトレットの立地は、主要幹線道路や鉄道の要衝、国際空港に近い場所、有名観光地やそのルート上が好ましいとされています。アメリカ・ニューヨークやホノルルの郊外には、巨大なアウトレットが未だ淘汰されず生き残っています。外国人旅行者が気軽に利用している点も見逃せません。今なぜ、アウトレットが流行っているのでしょう。理由は2つあります。

 

1つは、ライフスタイルの変化です。宿泊を伴った国内旅行の需要が伸び悩む一方、郊外のアウトレットへ足をのばし、小旅行気分でショッピングやグルメを楽しむ日帰り客が増えています。モノに満ち足りた現代の暮らしの中、そこでしかできないコト。たとえば、体験や交流、特別なサービスに、人々は支出を惜しまない傾向にあります。また、アウトレットのビジネスモデルは、商業施設運営という不動産賃貸業。魅力あるショップをリーシングすると付加価値が生まれ、集客につながる仕組みです。

 

もう1つは、インバウンド消費です。訪日外国人客は2016年に、2403万人を数えました。ですが日本政府は、2020年に4000万人、2030年には6000万人という高い目標を掲げています。日本国内のアウトレットは多言語化を推し進め、老舗の三井アウトレットパークはすでに海外展開を始めています。アジアを中心とした外国人旅行者の旺盛な買い物欲を満たす場所、それがアウトレットなのです。

 

【著者プロフィール】

千葉千枝子

淑徳大学 経営学部 観光経営学科教授。中央大学卒業後、富士銀行、シテイバンク勤務を経てJTBに就職。1996年有限会社千葉千枝子事務所を設立、運輸・観光全般に関する執筆・講演、TV・ラジオ出演などジャーナリスト活動に従事する。神奈川県など自治体の観光審議委員のほか、NPO法人交流・暮らしネット理事長、中央大学の兼任講師も務める。主な著書に「観光ビジネスの新潮流」や「JTB旅をみがく現場力」など。