食器洗い機(食洗機)を使えば「1日20分の洗い物」がゼロ。同時に水道代を手洗いの約1/7に抑えられます。本稿では食洗機のメリット7つと据え置き型とビルトイン型の選び方を徹底的に解説します。

食洗機とは
使い終わったお皿やグラス、調理器具を、ボタン一つで洗って乾かしてくれる食洗機。高温・高圧水流と洗浄力の強い洗剤を使って自動で食器を洗って、すすぎ、乾燥までするこの家電は、いわば家事の時短・衛生担当でしょう。
そんな食洗機は、日本の家庭に時間のゆとりをもたらす鍵となりつつあります。経済産業省(※)によれば、日本の食洗機普及率はまだ約30%と、欧米の約70%に比べて低い水準にとどまっています。
しかし、販売額は2016年以降伸び続け、2021年にはコロナや増税の影響からも回復。共働き世帯の増加や、家事の時短ニーズがその背景にあります。
実際、食事の準備と片付けにかける時間は非就業者で平均78分、就業者では39分と半分以下。忙しい現代の生活において、食洗機は「時間を生み出す家電」として、これからの暮らしに欠かせない存在になりそうです。
※【出典】経済産業省. 家事の強い味方、食器洗い機. 2021年12月9日付
食洗機の仕組み

食洗機は実際にどうやって食器などを洗っているのでしょうか? 一般的には、高温のお湯→強力な水の噴射→乾燥という3つのステップで、手洗いよりも効率的に汚れを落としています。
ステップ1: 本洗い
洗剤の入ったお湯を使って洗浄スタート! 底についている「スプレーアーム」という羽根のようなパーツが回転しながら、高圧のお湯を上下左右に噴射します。
これがすごく強力で、手では届かない隙間にもお湯が入り込み、ガンコな汚れをはがしていきます。
お湯の温度は60〜70℃くらい。手で洗うには熱すぎる温度ですが、これが菌をしっかり落とすカギ。高温+高圧の水流が、まるでジェットバスのように食器を洗ってくれます。
ステップ2: すすぎ
本洗いが終わったら、洗剤を完全に落とすためのすすぎ工程に入ります。何度かお湯でしっかりすすぐことで、洗剤の残りをゼロに。これも全て自動でやってくれます。
ステップ3: 乾燥
最後は乾燥。モデルによって方法が異なりますが、以下の2パターンが主流です。
ヒーター乾燥: 高温の空気を出して一気に水分を蒸発
送風乾燥: 熱を使わず余熱で乾かす省エネタイプ
乾燥が終わったら、食器はもうピカピカ。手で拭く必要もありません。
食洗機を導入する7つのメリット

次に、食洗機のメリットを説明します。
1: 時短&時産になり自分の時間が増える
1回の食事あたりの食器を手洗いする時間は、一般的に平均20分程度。食洗機を使えば、この時間のほとんどが自由になります。
ただし、食洗機の種類や調理器具・食器の種類によっては手洗いする食器があるので注意しましょう。
2: 料理が楽しくなる
手洗いの場合、食事後に自分で水洗いすることを考えると、調理器具や食器をたくさん使う調理が面倒になることがあります。
しかし、食洗機があればそんな心配はいりません。食後にまとめて自動で洗えるので、気兼ねなく調理器具や食器が使えます。
3: 手荒れが軽減できる
最近は“肌にやさしい”洗剤もありますが、油汚れを落とす成分による刺激は避けられません。食洗機を使えば洗剤に触れる機会が減り、手荒れのリスクも軽減します。
実際に、食器洗いが嫌われる理由の多くが「手荒れ」。特に冬場はつらい家事ですが、食洗機がその悩みを和らげてくれます。
4: 強力な洗浄力でしつこい汚れもスッキリ
50℃以上の高温と強力な高圧水流で、手洗いでは落としにくい油汚れもしっかり洗浄(お肉の脂が溶ける温度は40~50℃)。専用洗剤には漂白成分や酵素などが含まれ、乾いた汚れにも効果を発揮します。
5: 除菌もできる
洗浄時に50℃以上、すすぎ時には80℃の高圧水流で除菌します。さらに高温乾燥で清潔さをキープ。乳幼児や高齢者のいる家庭にとって衛生面での安心感は大きな魅力です。
6: 節約+エコ
食洗機は、手洗いよりも水道代・光熱費ともにお得です。約5人分の食器40点(+小物20点)を洗う場合、使う水の量やコストは以下の通りです。
手洗い | 食洗機 | |
水の使用量 | 約75L/回 | 約10L/回 |
コスト(1回。ガス+電気代) | 約60円 | 約30〜40円 |
年間コスト | 約4万6200円 | 約2万2000〜2万9000円 |
水も光熱費も節約できるだけでなく、環境にもやさしい。「高くつきそう」というイメージは、今や昔の話です。
7: キッチンを清潔に保てる
食洗機は乾燥まで自動で行うため、水切りかごが不要になります。かごやふきんはカビが発生しやすく、お手入れも面倒ですが、使用機会が減ることでキッチン全体を衛生的に保つことができます。
また、水切りかごを置いていたスペースもスッキリ。見た目も使い勝手も向上します。
食洗機導入のデメリット
食洗機にはいくつかのデメリットもありますが、ちょっとした工夫や使い方次第で十分カバーできます。
デメリット | 解決策・工夫 |
キッチンのスペースが減る | 設置場所を工夫したり、収納の見直しで対応可能 |
初期費用が高い | ランニングコストが低く、長期的には経済的 |
作動音が気になる | 外出時や入浴中など、人がいない時間に稼働させる |
「使いにくそう」「高そう」と思われがちな食洗機ですが、実際には使い方次第で快適さが大きくアップ。日常の小さな不便よりも、得られるメリットのほうが大きい家電です。
食器洗い乾燥機の種類と選び方

食器洗い乾燥機には大きく2つの種類があります。キッチン下のキャビネットスペースに組み込む「ビルトイン型」と、シンクの上に置く「据え置き型(卓上型)」です。
ビルトイン型は大容量で調理器具まで洗える反面、工事が必要となり機器自体も高価。
対して、据え置き型は大掛かりな工事が不要で機器自体は比較的安価ですが、容量が小さく、使った食器・調理器具全てが洗えない場合があります。
それぞれもっと詳しく見てみましょう。
ビルトイン型: キッチンがすっきり
ビルトイン型の食洗機は、キッチン下のキャビネット(引き出し)を入れ替えて設置します。この中には、引き出して使う「スライドオープンタイプ」と、ドアを前に倒して開ける「フロントオープンタイプ」があります。
・スライドオープン: 省スペースでランニングコストが低い
その中でもスライドオープンタイプは、引き出しのように手前に引いて使う省スペース設計。食器を上から入れるカゴ型構造で、水道・電気代も抑えられるのが特長です。
内容・特徴 | |
開閉方式 | 引き出し式(フルオープン不要) |
食器の入れ方 | 上段: 小物 下段: 鍋や大皿 (出し入れは上下順) |
容量の種類 | ミドルタイプ(約40点) ディープタイプ(約44〜48点) |
メリット | ・省スペースで設置可能 ・少ない水量で経済的 ・既存引き出しの流用も可能 |
注意点 | ・フロントオープンより収納点数は少なめ ・出し入れにやや手間がかかる |
スペースが限られているキッチンでも導入しやすく、コストパフォーマンス重視の家庭におすすめ。キャビネットの仕様に合わせた設置も可能なので、リフォームなしでも柔軟に対応できます。
【ビルトイン型食洗機: その1】

・フロントオープン: 庫内容量が大きくたくさん食器が入る
フロントオープンタイプは、扉を前に倒して開ける方式で、上下のラックにスムーズに食器を出し入れできます。キャビネット全体を使うため、大容量で最大56点(約8人分)もの食器を一度に洗えるのが大きな魅力です。
「家族が多い」「朝食と夕食をまとめて洗いたい」「鍋やフライパンも一緒に入れたい」そんな家庭にぴったりのタイプです。
内容・特徴 | |
開閉方式 | 前扉を倒すフロントオープン式 |
容量 | ・約56点(8人分)対応 ・鍋や大型調理器具もOK |
メリット | ・出し入れしやすい ・まとめ洗いに便利 ・収納力が高い |
注意点 | ・水と電気の使用量が多め ・扉を開くための前方スペースが必要 ・下部に収納なし |
スペースに余裕があるご家庭や、洗浄効率と作業性を重視する方におすすめです。使い方によっては、1日1回の運転で済むため、結果的に手間も電気代も抑えられることがあります。
【ビルトイン型食洗機: その2】

ビルトイン型のメリット・デメリット
メリット | 説明 |
キッチンがすっきり | ワークトップが広く使え、作業効率もアップ |
大容量で一度にまとめ洗い可能 | 鍋・フライパンなども一緒に洗える(ディープ・フロントオープンタイプ) |
食洗機自体が収納スペースになる | 使用後そのまま保管でき、別の収納に余裕が生まれる |
デメリット | 対策・補足 |
導入コストが高い(本体+工事費) | 後付けなら割高になるが、長期使用で元は取れる。事前に見積もり必須。 |
デザインがキッチンと合わないことがある | 後付け用のパネルでカバー可能。ただし完全一致は難しい。 |
キッチンによっては設置できない | 設置前にサイズ・配管の確認を。幅が合わないと導入不可。 |
買い替え時にも工事が必要 | 専門業者による対応が基本。対応メーカー・製品を選んでおくとスムーズ。 |
収納スペースが減る | 不要な食器の処分+食洗機内を保管スペースとして活用すれば問題なし |
導入のコツ
「設置できるか?」「見た目は?」「コストは?」という懸念はありますが、設置前の事前確認+割り切った使い方で、デメリットは十分カバーできます。
導入を機に、食器の断捨離や収納の見直しをする人も多く、結果的にキッチン全体の整理・効率化にもつながります。
据え置き型: 後付けで導入しやすい

据え置き型はキッチンのワークトップに設置するタイプで、賃貸住宅でも導入しやすいのが最大の魅力。分岐水栓に対応していれば、取り付けも自分で可能です。
1人用から4〜5人用までサイズ展開が豊富で、タンク式(工事不要)や省スペースモデルなど、住まいに合わせて選べます。価格も3万円台からあり、導入コストが比較的抑えられるのもポイント。
一方、大きな鍋やフライパンは入りづらく、一部は手洗いが必要になるケースも。また、キッチンの作業スペースをある程度占有するため、設置場所の確保が必要です。
ただし、もともと水切りカゴを使っていた位置と置き換えることで、スペース問題はある程度解消できます。サイズによってはキッチンに圧迫感を与えることもあります。
据え置き型のメリット・デメリット
メリット | デメリット |
自分で取り付け可能(対応蛇口の場合) | 容量が限られ、大きな鍋やフライパンは入らないこともある |
買い替え・入れ替えが簡単 | ワークトップの作業スペースが一部減る |
モデルが豊富で、家庭に合ったサイズを選べる | 状況によっては電気屋水道工事が必要(特にタンク式以外) |
比較的安価で導入しやすい(3〜10万円程) | キッチンに圧迫感が出ることがある |
設置前にチェック
蛇口の形状(分岐水栓対応かどうか)や設置スペースのサイズ感を確認しておくと、購入後のトラブルを防げます。
【据え置き型食洗機: その1】

【据え置き型食洗機: その2】

【据え置き型食洗機: その3】

【据え置き型食洗機: その4】

【据え置き型食洗機: その5】

食洗機を導入する際の注意点

購入前にチェックしておきたい3つのことを挙げましょう。
1: 設置方法と費用
ビルトイン型の場合
・新築・リフォーム時の導入が一般的だが、後付けも可能
・買い替えなら工事費は1〜4万円程度
・新規後付けは5〜10万円以上かかることも(配線・給排水・キャビネット工事が必要な場合)
・事前に「設置可能かどうか」や「どのくらい費用がかかるか」の見積もりは必須
据え置き型の場合
・分岐水栓対応なら自分で設置も可能
・業者に依頼しても、新規設置で1万円以下が一般的
・コンセントの位置や蛇口の干渉、ドアの開閉スペースなど、設置環境の確認が大切
2: 食洗機NGの食器・調理器具
以下のようなアイテムは基本的に手洗い推奨です。
・フッ素加工の鍋・フライパン
・水筒(特にパッキンやふた)
・炊飯器の内釜、ミキサーの刃、鉄製品
・漆器、銀食器、クリスタル・カットグラス
・アルミ製やメッキ製の食器
・耐熱温度90℃以下のプラスチック
最近では「食洗機対応」の製品も増えているので、買い替えを検討するのもあり。
3: お手入れを怠るとニオイの原因に
ニオイ対策の基本は次の通りです。
・使用後は残菜フィルターを毎回掃除
・月1回の庫内洗浄(専用クリーナーまたはクエン酸)
・使用後はドアを開けて庫内の湿気を逃す
・カビ・水垢・洗剤残りによるニオイを防ぐため、こまめな乾燥と清掃が重要
+ワンポイント
食器を入れる前に、食べ残しや油分をペーパーでさっと拭き取っておくと、ニオイ予防や洗浄効果アップに効果的!

まとめ: 令和の時代に手洗い卒業
洗濯が手洗いから全自動洗濯機へ、さらに乾燥までするドラム式洗濯乾燥機へ、掃除はほうきから掃除機、さらにロボット掃除機へと変わっていき、人は家事から解放されて多くの自由な時間を手に入れました。
料理も電子レンジや自動調理鍋によって、手間が大きく減少しています。では、食器洗いはどうでしょう?
50年前と変わらず、手でゴシゴシ洗ってすすいでいる人がいまだに多いかもしれません。
食洗機は、面倒な水仕事から解放してくれ、手荒れも軽減し、なおかつ、家計にもやさしいと、非の打ち所がほぼない家電製品です。
食洗機によって、家族だんらんや趣味に使う時間、テレビを観たり、ゆっくりお風呂に入ったりとリラックスする時間を手に入れられます。
こういった意味で食洗機は「癒やし家電」ともいえる存在。忙しい毎日を過ごしているのなら、ぜひ食洗機の導入を検討してみてください。
食洗機に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1: 食洗機は本当に必要? 手洗いよりどれくらいラクになるの?
A: ほとんどの食器は食洗機で洗えて、手洗いするのはフライパンや鍋などの大きなもの2~3点になります。
家事にかかる時間を大幅に削減すると同時に、洗剤を扱う時間も減るので手荒れも軽減できます。このような理由で食洗機の導入はおすすめです。
Q2: 水道代や電気代は高くなる?それとも安くなる?
A: 使用水量が大幅に減り、給湯のためのガス代も約半分になり、食器洗いにかかる光熱費は年間で約半分になると言われています。
Q3:賃貸でも食洗機は設置できる?
A: 分岐水栓対応の蛇口なら、自分で設置できて原状復帰も簡単。水道工事不要のタンク式もあります。
アパート向けのスリムタイプや2~3人用の小型モデル、さらに1人用の超小型モデルもあり、設置の自由度は向上しています。
Q4: ビルトインと据え置き、どちらを選ぶべき?
A: 新築やキッチンリフォームの際にはビルトインがおすすめ。デザインが統一され、動線もよく、スッキリしたキッチンになります。
後付けなら据え置きタイプが◎。工事費が安く、修理や買い替えも手軽にできます。
Q5: 食洗機に入れてはいけない食器はある?
A: フッ素加工されたフライパンや鍋、炊飯器の内釜、水筒、鉄製品、漆器、カットグラスなどは食洗機に対応していない物が多いです。
それでも、フライパンや鍋、水筒などは食洗機対応の物が増えてきたので、食洗機購入の機会に買い替えるのもよいでしょう。
Q6: 食洗機の掃除やお手入れは面倒?
A: 食事の後に食器を軽く水で流したりペーパーなどで拭ったりすれば、それほどお手入れは大変ではありません。
毎回行うのは残菜フィルターに溜まったゴミの取り除きと軽い清掃だけ。あとは月1回程度、食洗機クリーナーを使って庫内洗浄しましょう。
【解説者】

近藤 克己
IT・家電フリーエディター/ライター。パソコン流通専門誌編集、家電流通専門誌編集長を経てフリーランスに。過去に、家電量販店の顧問も務めていた。現在、IT・家電を中心に編集・執筆を行うが、防災・防犯に関しても取材・執筆・編集を多数行っている。
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