電動化されても“らしさ”は健在! アルファ・ロメオ「トナーレ」試乗レビュー

今回はアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「トナーレ」をピックアップ。「電気」の存在を強く意識させるニューモデルの走りをチェック!

※こちらは「GetNavi」 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです

 

走りはMHEVでも「電気感」が強い!

アルファ・ロメオ トナーレ

SPEC【ヴェローチェ】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:1468㏄直列4気筒DOHC+ターボ+電気モーター●最高出力:160[20]PS/5750[6000]rpm●最大トルク:24.5[5.6]kg-m/1700[2000]rpm●WL
TCモード燃費:16.7km/l
●[ ]内は電気モーターの数値

 

しばらくFRベースで少々大きめのジュリアとステルヴィオしかなかったアルファ・ロメオだが、久しぶりにコンパクトSUVのトナーレが登場。都市部で使いやすく身近なモデルだ。

 

電動化へ向けた第一歩でもあるがMHEV(マイルド・ハイブリッド)となり、1.5lターボ・エンジンに20PS、5.6kg-mのモーターが組み合わされている。信号などで停止するとエンジンも止まるのは当然だが、面白いのは発進からしばらくはフルハイブリッドのようにモーターだけで走ること。MHEVでここまで電気感が強いのは珍しく、燃費も良さそうだ。その一方、アクセルを強く踏み込むと元気いっぱいの走りをみせるのがアルファ・ロメオらしい。

 

ボディには剛性感があり、サスペンションは引き締まっている。おまけにステアリングギア比が超クイックなので、操舵するとグイッとノーズが反応してスポーティ。それでいて操縦安定性も高く、シャーシ性能は想像以上に高度だ。

 

デザイン性の高さが持ち味

スポーティな仕立ての外観は、いかにもアルファ・ロメオ。撮影車は導入記念モデルのエディツィオーネ・スペチアーレで、現在のラインナップはTIとヴェローチェの2種。

 

メーターはついにデジタルな画像に!

ドライバーズカーらしい仕立てのインパネでは、アルファ・ロメオ初のデジタルクラスターメーターを採用。上級グレードではシートがレザー仕様となるなど、上質感も十分。

 

SUVとしての実用性もハイレベル

荷室容量は、後席を使用する通常時でも500ℓを確保。SUVとしての使い勝手は申し分ない。電動テールゲートも標準で装備している。

 

日本仕様はハイブリッドのみ

パワーユニットは、1.5l直噴ガソリンターボエンジンと48Vモーターの組み合わせ。組み合わせるトランスミッションは7速ATとなる。

 

構成/小野泰治 文/石井昌道 撮影/郡 大二郎

「らしくないけれど…ありがたい」アルファロメオ「トナーレ」、ファンが抱える複雑な心情

イタリアの伊達なブランド、アルファロメオはいつの時代もカーマニアを唸らせてきた。その一番の魅力は美麗なスタイリングとスポーティな走行性能にあったが、ブランドの新体制における第一弾製品は、小型のSUV。近年、最も流行りのボディタイプで、アルファロメオはいったいどのような味わいを持たせることができたのか。イタリア車に精通する清水草一がレポートする。

 

■今回紹介するクルマ

アルファロメオ トナーレ

※試乗グレード:Ti

価格:524万~589万円(税込)

 

販売立て直しが必須のなかで登場した、アルファロメオのSUV

アルファロメオはイタリアの名門。エンブレムを見ただけで「なんかステキ!」と思ってしまうブランドで、私もこれまで2台購入している。

 

ただ、今世紀に入ってからは不振が続いている。アルファロメオと言えば「オシャレなデザインと痛快な走り」というイメージだが、経営戦略の迷走により、あまりオシャレでも痛快でもなくなってしまったからだ。

 

アルファロメオはもともとフィアットグループの一員。フィアットはクライスラーと合併し、近年、プジョー/シトロエンとも合併して、多国籍自動車製造会社ステランティスとなった。ステランティスグループのいちブランドとして、アルファロメオはどのような立ち位置を目指すのか、まだはっきりしていないが、とにかく販売を立て直さなければならない。

 

トナーレはセダンタイプ「ジュリエッタ」の後継モデルだが、欧州で最も売れ筋のコンパクトSUVセグメントにボディタイプを変更した。もはやSUVじゃなければ販売の拡大は見込めないのだ。痛快な走りを身上とするアルファロメオとしては、それだけで若干ハンデだが、仕上がりはどうだろう。

 

典型的なクロスオーバーSUVだが、随所に感じられるデザイン性

まずデザインを見てみよう。フォルムは典型的なクロスオーバーSUVで、いまやどこにでもありそうな形だ。アルファらしいデザインのキレが感じられない。決して悪くはないが、あまりにもフツーと言うしかない。さすがにフロントフェイスの盾形グリルだけはアルファロメオの伝統に則っており、一目でアルファロメオだと判別できるが、それを除けば、アルファロメオらしさはあまり感じられない。

↑SUVとしては一般的なデザインながら、鮮やかな青のカラーリングは目を引きます。なお、ボディカラーはTiグレードで3色(VELOCEは5色)を用意

 

ただ、細かく見れば、アルファロメオらしさはちりばめられている。3連ヘッドライト風のシグネチャーライトは、かつてのアルファロメオSZを彷彿とさせ、5つの円を組み合わせたホイールデザインも、アルファロメオ伝統の造形だ。

↑3連のU字型デイタイムランニングライト。アルファロメオの新たなシグネチャーになっているとのこと

 

↑今回試乗した「217 アルファ ホワイト」カラーモデル。ボディサイズは全長4530×全幅1835×全高1600mmです

 

しかしこういう小技だけでなく、全体のフォルムで「ひええ! オシャレすぎる!」くらい言わせないと、アルファロメオとは言えないのではないか。トナーレのデザインは、あまりにも定番すぎて、ほかのSUVに埋没してしまいそうだ。

 

1.5L 4気筒直噴ターボに48V駆動モーター、さらにBSGも搭載

パワートレインは、新開発の1.5L 4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTで前輪を駆動する。トナーレは、「ステルヴィオ」に続くアルファロメオのSUV第2弾にして、初の電動化モデルなのである。

 

電動化と言っても流行りのバッテリーEVではなく、ガソリンエンジン主体のマイルドハイブリッドという点はアルファロメオらしいが、ハイブリッド王国・日本のユーザーとしては、「いまさらマイルドハイブリッドで電動化もないだろう」と感じてしまったりする。

 

試乗したのは、エントリーモデルのTi。「Ti」とは「ツーリズモ・インテルナチオナーレ」の略だ。国境を越えて走るってこと。島国の日本ではムリだけど。

 

新開発の1.5L 4気筒ターボエンジンは、エンジン単体では160PS/5750rpmと240Nm/1700rpmを発生させ、そこに20‌PS/55‌Nmを生み出すモーターが加勢する。さらに12Vのベルト駆動スターター・ジェネレーター(BSG)も搭載されている。一般的なマイルドハイブリッドシステムはBSGだけだが、トナーレの場合は20km/hぐらいまでの低速なら、電動モーターだけで走ることもできる。つまり、マイルドハイブリッドでも、ちょっと進んだヤツではある。

↑計器盤には12.3インチの大型デジタルクラスターメーターを採用

 

アルファロメオらしくないが、アクセルを踏んだときのレスポンスがステキ

1.5L4気筒エンジンのもうひとつの大きな特徴は、ターボに可変ジオメトリータービン(VGT)を採用していることだ。タービンの排気流路を変化させ、低速側のトルクとレスポンス、および高速側の出力を両立させるメカで、ガソリンターボエンジンではかなりゼイタクである。

 

低速域では、DCTが多少ガクガクするくらいで、走りはまったく平凡かつ安楽だが、首都高に乗り入れてクルマの流れに乗ると、トナーレは水を得た魚のように躍動をはじめた。

 

「どうせマイルドハイブリッドだろ」とナメていたが、ハーフスロットルでの反応が実にすばらしい。反面、アルファロメオらしいエンジンを回す快感はまったくない。レッドゾーンはなんと5500rpmという低いところから始まっていて、「こんなのアルファロメオじゃない!」という思いも沸く。

 

しかし実際の走行では、アクセルを踏めば車体は即座にググッと前に出て、実にレスポンスがいい。アクセルを全開にしても大した加速はしないが、日常的に使う領域では非常に俊敏で速く感じる。

↑低回転時からトルクが駆動し、高回転までスムーズに伸びていくため、爽快な加速を実現しているそうです

 

ハンドリングは実に素晴らしい

パワーユニットが縁の下の力持ち的なのに対して、ハンドリングは手放しでほめられる。とにかくタイヤの接地感がすばらしく高い。アルファロメオと言えば、いつテールがすっ飛ぶかわからない、頼りない操縦性が“味わい”だったが、トナーレのハンドリングは頼りがい満点。自信満々にコーナーに入ることができる。

↑コックピットは黒を基調としたデザイン。触感にもこだわり、上質な素材を採用しています。また、中央には10.25インチのタッチ対応インストルメントパネルを搭載

 

ステアリングは適度にクイックでアルファロメオらしいが、サスペンションは当たりが優しくしなやかで、首都高のジョイントを超えてもショックは最小限。カーブを曲がるのが実に気持ちイイ。ロングドライブでも疲れ知らずで走ることができそうだ。

↑優れた前後重量のバランスを利用して、トルクへの伝達とコーナーにおけるハンドリングの最適化を実現しているそうです

 

価格は524万円(Tiモデル)。美点は主にハンドリングなので、かなり割高に感じてしまう。国産SUVなら、トヨタ「ハリアーハイブリッドS」が371万8000円〜で買える……。

 

しかしトナーレは、欧州ではそれなりに売れて、アルファロメオブランドを守ってくれるだろう。アルファロメオファンとしては、それだけでありがたいという思いが沸いた。

 

SPEC【Ti】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630㎏●パワーユニット:1468cc直列4気筒ターボエンジン+モーター●エンジン最高出力:160PS/5750rpm[モーター:20PS/6000rpm]●エンジン最大トルク:240Nm/1700rpm[モーター:55Nm/200rpm]●WLTCモード燃費:16.7㎞/L

 

撮影/清水草一

アルファロメオから新たにSUVが2モデル登場か! フラッグシップSUVには550ps以上モデルも!?

アルファロメオ初のSUVとなった2016年登場の「ステルビオ」が2018年にも日本導入されるが、ここに来てさらなるSUVが2モデルも開発されているという。「ステルビオ」よりコンパクトなエントリーモデルとなる「カマル(仮称)」と、最上位に位置する「カステロ(仮称)」だ。

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「カマル」も「カステロ」もステルビオから流用されるジョウジオプラットフォームを採用するというが、「カステロ」は3列7人乗りレイアウトのフルサイズSUVになるという。

 

パワートレインは直列4気筒エンジン、及び、V型6気筒エンジンを搭載し、ベースモデルの最高出力は330ps程度となるが、ハイパフォーマンスモデル「クアドリフォリオ」は最高出力550ps以上が予想される。

 

ワールドプレミアは「カマル」が2019年、「カステロ」は2020年と見られている。

 

 

 

ニュル最速SUV、ステルヴィオ・クワドリフォリオが発売開始!

フィアット・クライスラー・オートモビルズは11月2日、アルファロメオの新型SUV「ステルヴィオ」のトップパフォーマンスバージョンである「ステルヴィオ・クワドリフォリオ」の販売を欧州で開始したと発表。イタリア本国での車両本体価格は9万5000ユーロ(約1256万円)からとなっている。

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アルファロメオ初のSUVとして誕生したステルヴィオ。ボディサイズは全長4702×全幅1955×全高1681mm。最上級モデルのクワドリフォリオは、510ps/600Nmを発揮する2.9リッターV6ツインターボと8速ATを搭載し、4WDシステムは走行状況に応じて前後駆動力配分を0:100〜50:50%に可変する「Q4」を採用。

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その加速性能は、3.8秒の0-100km/h加速と283km/hの最高速を実現。ニュルブルクリンク北コースのラップタイプは7分51秒7をマークし、市販SUVでは最速と言われている。

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官能的で筋肉質なデザインを持つエクステリアには、カーボンファイバーやレザー、アルカンターラを用いることによってスポーティでプレミアムな雰囲気を色濃く発散するインテリアを組み合わせ、アルファロメオの新世代モデルを実感させる仕上がりとなっている。

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インフォテイメントシステム「アルファ コネクト3D」は、8.8インチディスプレイを組み合わせ、Apple CarPlaやAndroid Autoに対応する。

 

2018年には日本にも上陸を果たすステルヴィオ。注目SUVの1台であることは間違いない。