「ママチャリ」はイタリアにもある! ベンチ式って一体なに?

イタリアでも保育園や幼稚園、学校の送迎に、チャイルドシートを設置したママチャリは必需品です。ところが日本のようなチャイルドシート付きのママチャリだけでなく、ベンチや荷台が付いたタイプのママチャリも存在。日本では見かけない、イタリアの驚くべきママチャリを紹介します。

↑イタリアでよく見かけるYuba社のママチャリ。チャイルドシート部分がベンチ式に(筆者撮影)

 

イタリアにおける子どもの送迎事情

大都市ミラノは公共交通機関が発達しているうえ、クルマの渋滞がひどく、侵入禁止ゾーンも多いため、通勤や通学にクルマはあまり使われていません。特に、コロナ後の都市部では公共交通機関よりも自転車、バイク、電動キックボードで移動する人が増えました。

 

イタリアでは、10歳以下の子どもに保護者の付き添いがないと放置虐待とみなされ、禁錮刑が科せられるため、小学校でも送迎が必須。子どもの送迎には日本のようにママチャリを使う人が目立ちます。

 

日本では親の送迎が必要なのは小学校入学までのため、チャイルドシートは道路交通法で「6歳未満までは同乗可能」となっています。ところが、イタリアでは10歳(ミラノは小学校卒業の11〜12歳まで)までは送迎が必要なので、チャイルドシートは22kg(平均的に9歳くらい)までとやや緩やか。それ以降は子どもも自分の自転車に乗り、親子2台で登校することになります(送迎義務がなくなる年齢からは子ども一人で通学)。

 

イタリアには、前や後ろにチャイルドシートを設置した日本と同じ形式の電動アシスト付きママチャリもありますが、よく見かけるのは電動アシスト機能も付いた、子どもが乗るための荷台付きママチャリです。Yuba社のママチャリはガード部分がオプションとなりますが、チャイルドシートがベンチ式になっていて二人乗せられます。こういった二人乗れるベンチシートタイプは日本では見かけたことがありませんが、イタリアでは人気があり、よく使われています。

↑Yuba社の荷台つき自転車(画像提供/Yuba公式サイト)

 

また、大きくなった子どもや荷物が乗せられるYuba社の荷台つき自転車は、200kgまで積載が可能。普段使用している自転車やチャイルドシート付きママチャリに後付けができるので、かなり便利です。ただし、チャイルドシートタイプよりも横幅を取るため、道路幅の狭い都心の住宅街では小回りが利かなかったり、駐輪スペースがなかったりというマイナス面もあります。

 

荷台つき自転車がイタリアで送迎用ママチャリとして普及したのは、転倒しにくいことや、転倒しても荷台部分が横転しにくい仕組みになっているからです。乗り降りさせやすく、眠ってしまっても落ちることがないなど安全面での基準も備わっています。

 

なお、雨の日には、日本のように自転車のチャイルドシートにカバーを付けているのは見たことがありません。途中で降ってきた場合はレインコートを着ますが、はじめから雨ならば、クルマなど他の送迎方法に切り替えます。

 

その一方で問題も。街なかで最もよく見かける荷台つきママチャリ大手のBabboe社の自転車が、安全規格を満たしていないと、オランダ食品消費者製品安全局(NVWA)が指摘したのです。現在リコールの協議中で、2024年4月時点では全商品の販売が一時停止される状況となっています。この事例が他社にも適応されれば、これから荷台つきママチャリは規制の対象になる可能性があります。

↑Babboe社の荷台つき自転車(画像提供/Babboe公式サイト)

 

イタリア式ママチャリの日本国内での普及については、道路交通法やSGマーク(製品安全協会認証)などがハードルになるでしょう。ベンチ式チャイルドシートはヘッドガードがないため自転車用幼児座席のSG基準を満たせず、荷台付き自転車は「軽車両」となるため歩道の通行ができません。こういった理由もあってか、イタリアのママチャリは日本に輸出されていないようで、実際に日本で乗ることは難しそうです。

 

このように、ママチャリひとつとっても、日本とイタリアにおける違いがわかります。法律や社会、道路事情、国民性などによって、その国で最も便利で効率的と考えられる商品のデザインは変わるのですね。

 

筆者/Ciho

日本と全然違うイタリアの「ホッチキス」、ハンドルを握りしめるってどういう仕組み?

近年のイタリアでは、日本のホッチキスに注目が集まっています。ホッチキスはイタリアでは一般的に「ステープラー」と呼ばれていますが、イタリアのステープラーは形状や使い方が日本製のホッチキスとまったく違うことをご存知ですか? 両者を比べながら、イタリア市場に攻勢をかける日本式ホッチキスについて現地からレポートします。

 

頑丈だけど重くて硬いイタリア式

↑イタリアの典型的なステープラー

 

イタリアと日本のステープラーには、下記のような違いがあります。

 

日本式は、ホッチキスの綴じ口を親指と人差し指で挟み、指先の力で握りしめるハンディタイプが主流です。一方でイタリア式は、綴じ口の反対側にハンドルがついており、そこを握りしめて留める機能のプライヤー(ペンチ)タイプ。針を入れる部分に棒状のバネが付いていて、それを挿入して針を固定します。

 

実際に筆者が使ってみた感想としては、イタリア式ステープラーはメタル製で頑丈ですが、重くてハンドルが硬く感じられました。針も小さいので、力を使う割にはあまりよく留まりません。イタリアに住み始めた当初、事務手続きの際にイタリア人が手元をひねってハンドルを握り、書類を留める作業を見て、正直違和感を覚えていました。

 

使い慣れているせいかもしれませんが、自分で試してみてもやはり日本式ホッチキスのほうがずっとラクに感じられます。

 

「KAWAII」や「針なし」で攻める日本式

↑イタリア市場を攻める日本式ホッチキス

 

イタリアでは国内文房具メーカーのBALMA(バルマ)社が手掛けるブランド「ZENITH(ゼニス)」のステープラーが人気で、多くの人に使われています。ただし、近頃は日本式ホッチキスもじわじわと市場に浸透しつつあり、AmazonやMUJI(無印良品)などのネット販売や、おしゃれな文具ショップなどで購入が可能です。

 

フリクションボールペンやポスターカラーマーカーなどが持つ機能性や品質が話題となり、近年のイタリアでは日本製文房具がブランド化しています。また日本の「KAWAII(かわいい)」トレンドやファンシーなイメージから、日本式ホッチキスのデザインや色味もイタリア人の心をつかんでいるようです。

 

さらに、日本式ホッチキスのさらなる進化形として「針なしステープラー」も注目されています。綴じ部にギザギザの歯がセットされ、そこに圧力をかけることで用紙を綴じるタイプで、文房具メーカーのコクヨやプラスがネット販売しています。

 

いまでは身近な文房具になったステープラーはイタリアでは1948年、日本では1952年にそれまでの卓上型から小型化され、イタリアからは欧米へ、日本からはアジアへと普及。小型化はほぼ同時期だったものの、イタリアでは従来の仕組みと材質のまま70年以上使われ続け、日本では針なしへと進化を遂げ世界中で売られるようになりました。

 

どちらが優れているとは言えませんが、ありふれた文房具でも国によって異なるケースとなった興味深い事例ではないでしょうか?

 

執筆・撮影/Ciho

よかったねえ、たい焼き。イタリアがオシャレにしてくれました

アニメや漫画の影響を受け、欧州では数年前から日本ブームが起きています。もともと日本食レストランが多かったイタリアでは最近、若者を中心に気軽に利用できるストリートフード店に注目が集まっています。その中でも圧倒的な人気を誇るミラノのたい焼き店と、そこで販売されているユニークなたい焼きについて紹介します。

 

欧州では珍しい食べ歩き文化

 

↑ミラノで流行中のTaiyaki Denのたい焼き

 

日本では観光地はもちろん、身近な商店街などでも気軽に食べ歩きグルメを楽しめますが、イタリアをはじめ欧州では珍しい文化といえます。

 

欧州では食事は家族や友達とゆっくり楽しむものとされていて、焦って食べたり立って食べたりはもってのほか。特にイタリアでは「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」を重要視するほど、社交の場として食事が尊重されています。日本のように食事を急いで食べるという文化がないといえるでしょう。

 

ところが、最近は若者を中心に、カツサンドやメロンパン、たこ焼きなど日本の軽食を安い値段で楽しめるストリート風のお店が人気となっています。

 

その背景には、若い人たちのお財布事情も関係している模様。ミラノは著名な観光地なので日本食レストランも多くありますが、1食の価格が5000円程度と若者にとっては高め。日本のようにファーストフード店やフードコート、ファミレスといった気軽に食事できる場所もないため、ストリート風のお店が歓迎されるのです。

 

イタリア風のアレンジ

↑かくも斬新なイタリア製たい焼き

 

そんな中、SNSで注目を集め大人気なのが、2023年11月にミラノにオープンしたばかりのたい焼き店「Taiyaki Den」。もともと日本に住んでいたイタリア人が帰国して開店したようで、焼き加減や見た目は日本のたい焼きと比べても遜色ありません。店内も提灯を飾るなど日本を意識した和風のしつらえで、とてもオシャレです。

 

人気の最大の理由は、イタリア人向けにたい焼きをアレンジ・進化させた商品アイデアにあるようです。まるで鯛がジェラートを食べているかのようなインパクトがあり、イタリア人が大好物のジェラートと和風の鯛という奇抜なコラボレーションがSNS映えして話題となりました。

 

価格はスタンダードなあんこのたい焼きが3ユーロ(約490円※)、ジェラート入りが5〜7ユーロ(約820〜1200円)と、イタリアにしては若い層にもお手頃です。ジェラートは抹茶味をはじめ、バニラ味やオレオ味、塩キャラメル味なども人気で、オレオクッキーやポッキー、チョコレート、マシュマロなどをトッピングできます。

※1ユーロ=約163円で換算(2024年4月3日現在)

 

こういったストリート風グルメ店は、イタリアのほかの都市でも続々とオープンしています。価格や食べやすさはもちろんのこと、SNS映えするグルメは、イタリア人が持つ「みんなで食の楽しみを共有する」という文化に近いことが受けているのかもしれません。

 

どうしたら食事を堪能してもらえるか? 伊レストランが名案を思いついた!

仕事のメールが来ていないか何度も確認したり、SNSやアプリの通知が鳴るたびに画面を見たり……。レストランでの食事の最中であってもスマートフォンをいじる時間は少なくないかもしれません。現代人のそんな行動に一石を投じたのが、イタリアのあるレストランです。

↑スマホを預けたら良いことがある

 

イタリア北部の都市ヴェローナに3月にオープンしたばかりの「Al Condominio」というレストラン。ここでは、店を訪れた客にワインのボトル1本の無料サービスを行っています。ただし、このサービスを受けられるのは、来店時にスマホを店側に預けた人だけ。

 

店の入口には鍵付きのボックスが用意されているので、そこに自分のスマホを置き、料理を注文するときに店員にその鍵を見せれば、無料でワインが提供されるシステムです。

 

この無料サービスを行っている理由について、同店のオーナーは「他の店とは違う店を作りたかった」と話しています。

 

「スマホを5秒に1度見る必要はないが、多くの人にとってスマホは麻薬のようなもの。そこで、スマホを脇に置くこの方法でおいしいワインを楽しめるのです」

 

客の側から見れば、スマホを預けるだけでワインが無料になるというかなりお得な特典。そのせいか、客の約9割はこの無料サービスに喜んで応じているそうです。スマホは手持ち無沙汰のときに便利なアイテムではありますが、せっかくの食事の時間ですから、スマホを遠ざければ食事や一緒にいる人との会話を存分に堪能できるのかもしれません。

 

ちなみに、この店ではスマホを預けるボックスに、食事の感想を書いたメモを置いておくと、店がその中から素晴らしい内容のものを選び、次回の食事を無料にするという太っ腹なサービスも行っています。

 

【主な参考記事】

New York Post. This restaurant gives a free bottle of wine — but you have to give up your phone. April 16 2024

単なる流行じゃない!「イタリア製おにぎり」の誕生と可能性とは?

日本食ブームが続く近年のイタリアでは、日本の味を手軽に楽しめるストリートフード風の店が人気。なかでも、日本のアニメなどによく登場する「おにぎり」は知名度が高く、多くのスーパーで購入できるようになりましたが、それと同時に少しずつ変化もしています。ミラノの日本料理店に勤務する筆者が現地からレポートします。

 

アニメや漫画で知る

↑イタリアのスーパーで販売されているおにぎり

 

多くのイタリア人は以前から『ドラゴンボール』や『ドラえもん』『鬼滅の刃』などの漫画やアニメでおにぎりを目にしており、「食べてみたい」と思っていたようです。食べ放題が爆発的に流行った寿司ブームが定着し、現在ではおにぎりがブームになりつつあります。

 

おにぎりは大手スーパーで売られるようになり、価格は1個だいたい3ユーロ(約480円※)ほど。一緒に並んでいる寿司や、一般的なサンドイッチよりもお手ごろです。具材は「カレー味ごはんのエビおにぎり」や「胚芽米のツナおにぎり」などで、和食や魚介のヘルシーなイメージが販売戦略として取り入れられています。

※1ユーロ=約160円で換算(2024年2月8日現在)

 

ただし、おにぎりは独自の変化を遂げつつあります。例えば、イタリア語では「GI」を「ジ」と発音するため、多くのイタリア人は「Onigiri」を表記通り「おにじり」と発音するものだと思っています。

 

言語的な変化に加えて、日本食を紹介するイタリア人のサイトやYouTubeの「おにぎりの作り方」のレシピ動画も、日本人からすると「おや?」と思うことだらけ。お米の炊き方では沸騰したら、ふたを取ると書かれており、その結果、水っぽい炊き上がりになったり、水の量が少なくて焦げてしまったり……。ごはんにすし酢や米酢を混ぜているケースも多く見られます。

 

具材は、イタリアでも手に入る材料で作った「ツナマヨ」や「焼いたサーモンに醤油とネギ」が主流。ツナ缶を使わず、生のマグロを細かく切ったものを炒めて醤油で調味しマヨネーズとネギを和えたものや、スモークサーモンにアボガドを巻いたものなどがあります。勘違いなのかアレンジなのか、ちょっと首をかしげたくなる具材も……。

 

このように、本来のおにぎりから少し乖離しているような面はあるものの、イタリアでおにぎりはそれだけ注目度が高いということなのでしょう。

 

寿司みたいになりそう

↑高菜炒め風にアレンジされたケールのおにぎり

 

筆者が勤務するミラノの日本食レストランでは、日本のマヨネーズを使用したツナマヨが大人気で、そのほかに現地の具材を工夫し、週に約200個のおにぎりをサイドメニューとして提供。ケールやかぶの葉(Cima di rapa)を高菜風に炒めたものを混ぜ込んだベジタリアン向けおにぎりや、牛肉のしぐれ煮など、イタリアでも手に入りやすい野菜や肉を具材にし、どれも人気で毎日売り切れるほどです。

↑イタリア語で「塩味の日本のバジル」と説明されるゆかり

 

どんな具材も包み込むだけで、ごはんとマッチするおにぎりの可能性は、無限大とも言えます。寿司が「SUSHI」として裏巻きやエビフライを巻いたタイガーロールに発展していったように、おにぎりもこれからますます現地化が進むことが予想されます。

 

イタリアには日本食レストランもたくさんありますが、価格が高いため若者などが気軽に行くことは難しいのが現状です。そのため、おにぎりやたこ焼きといった日本と同じように手軽に安価で楽しめる商品や、カジュアルなストリートフード風の店の人気はさらに高まりそうです。

 

執筆・撮影/Ciho

「たこパ」が通じるなんて! イタリアを魅了する「たこ焼き」の謎

和食好きな人が多いイタリアには日本食レストランがたくさんありますが、近年では手軽で安価なストリートフード風の店が流行しています。そのなかでも見た目の可愛らしさから大きな人気を集めているのが、たこ焼きです。イタリアで起きている空前の「たこ焼きブーム」について現地からレポートします。

↑イタリアで「たこパ」が広がっていた

 

インターネットやSNSから注目を集めるようになった、安くて気軽に食べられる日本食のストリートフードは、イタリア国内に広がっています。おにぎりやたこ焼き、たい焼き、おでんなど、さまざまな日本食が販売されており、店によっては食べることも持ち帰ることも可能です(どちらも価格は変わりません)。

 

特にたこ焼きは、これまでイタリア人が見たことがなかった「小さくてまん丸」というユニークな形がウケた模様。美食家だけあって、外食や中食として楽しむだけでなく、たこ焼き器を購入して自宅で作ったり、チョコレートを使った甘いレシピを試したりするケースが見られるようになりました。

 

街中でも買えるたこ焼き器

イタリアで売られているたこ焼きは、イタリアに住む日本人や長年日本に住んでいたイタリア人が販売を始めたケースが多いようです。そのせいか見た目や味は日本で食べるものと変わらず、6~8個入りで価格は4〜8ユーロ(約650〜1300円※)ほど。イタリアではピザも5〜12ユーロくらいなので比較的手ごろな料金といえます。

※1ユーロ=約163円で換算(2024年2月22日現在)

 

たこ焼き器は中華街だけでなく、日本や韓国といったアジア圏の食べ物を売っているオリエンタルショップで購入可能。価格は5000円〜1万円くらいですが、中国製が多く、イタリア製のものはまだありません。本場の日本製を買いたい人は、Amazonなどのネットショップを利用するようです。

 

日本食ブームが続いたためか、数年前に比べて日本の調味料や食材を扱うスーパーも増加。たこ焼きに欠かせないソースも、以前はアジアンスーパーなどでしか売っていませんでしたが、いまではイタリア人が行く一般的なスーパーでも買えるようになりました。小麦粉や卵、タコといった、たこ焼きの食材がイタリアで入手しやすいということも、自宅で作ろうという人が増えた理由の一つでしょう。

 

「たこパ」が職場や家庭に浸透

↑甘いたこ焼き風スイーツも見られるようになった

 

自宅でもたこ焼きを楽しむようになった背景には、イタリア人の国民性もあると思われます。食事を楽しむことが大好きで、家族や親戚、友人が集まり、みんなで料理を作って賑やかに食べる習慣がこの国にはあります。ただ、イタリアに限らずヨーロッパには、日本の鍋や焼き肉のように大人数で同じ皿の物を分け合う習慣がありません。

 

たこ焼き器でワイワイ言いながらたこ焼きを作り、みんなで同じプレートから自分の皿によそうことは、楽しいことを共有するのが大好きなイタリア人にとって新鮮味と特別感があるのでしょう。「たこパ(たこ焼きパーティー)」をするときは、知り合い同士でたこ焼き器の貸し借りさえ行われているようです。

 

また、イタリアでは18時〜22時頃に、お酒と一緒に夕食代わりの軽食を食べる「アペリティーボ(Aperitivo)」という習慣があり、自宅でアペリティーボをする人にとって、たこ焼きは手軽なおつまみにもなっているようです。

 

たこ焼きがイタリア人に愛される理由は、その味付けにもあるかもしれません。ソースやマヨネーズといった、一般的な和食と違う味付けは、ハッキリした濃い味を好むイタリア人の口に合っているようです。タコが入っているので魚介類に合う白ワインと一緒に食べる人も多く、ワイン好きなイタリア人にはもってこいのおつまみと言えます。

 

このように、イタリア人に広く受け入れられつつある、たこ焼き。その人気はしばらく続きそうです。

 

「脱毛」に目覚めたイタリアのアラフォー男性と反旗を翻すZ世代、勝つのは…

男女ともに美意識の高いイタリアでは、30代から40代の男性の間で脱毛をすることが常識になりつつあります。彼らは脱毛についてどのように考え、どうやって脱毛しているのでしょうか? その一方で、Z世代では脱毛に縛られない考え方も生まれており、体毛を巡る戦いがヒートアップしています。

 

ムダ毛処理に興味津々

↑これぞ完ぺきな肉体美

 

イタリアの女性は脚、腕、脇の下、VIOゾーン(デリケートゾーン)に体毛がないのが常識です。エステサロンを利用したり、家庭でカミソリやワックス、クリームを使ったりすることが一般的です。

 

これまで脱毛は主に女性がするものでしたが、近年、ムダ毛の除去に興味を持つ男性が増えています。2023年はグーグル・イタリアで「メンズ 脱毛」というキーワードの検索が急増しました。

 

地元メディアのFocus誌によると、イタリアでレーザーによる永久脱毛をしている人の男女の割合を見てみると、10人中3人が男性とのこと。その数を欧州の他国と比べた場合、イタリアはスペインに次いで2番目に多い国となっています。また、除毛クリームメーカーのVeet Menが18歳から54歳までの男性を対象に行った調査では、回答者の約60%が脱毛の経験があると答えました。

 

そのようなイタリアでは、2023年のクリスマス商戦で家庭用光脱毛器が主力商品とされ、テレビCMや家電量販店のバナー広告でも盛んに紹介されていました。テレビの宣伝では女性を主役にしつつ男性が使うシーンも放映されていた一方、パッケージのデザインや本体とセットとなるポーチの色が男性向けという商品も販売されています。

 

イタリアのあるニュースサイトが行った調査によれば、光脱毛器に興味を持った人の40%を男性が占めているとの結果が得られたそう。男女を問わず、安価に手軽にムダ毛を処理できる家庭用光脱毛器の需要が高まっていることがわかります。

 

ヒゲは処理しない

では、イタリアの男性はどこを脱毛するのか? Veet Menの調査によると、イタリア人男性に人気の脱毛部位は脇の下、VIO、胸、腹部、背中、眉毛、脚の順になるとのこと。脱毛する理由としては「見た目の美しさの追求」と「流行」を挙げる人が多く、他方で「衛生面」と「スポーツ時の快適性」を求める人もいました。

 

イタリア人男性を日本人男性と比較すると、違いが顕著に浮かび上がります。情報サイトの駅探PICKSによれば、日本人男性に人気の脱毛部位はヒゲ、すね、VIO、太もも、全身、腹部の順となるそう。

 

日本人男性の最も脱毛したい部分がヒゲである理由として、「剃るのが面倒」「清潔感を求めて」が上位に挙げられています。もともと体毛が濃く、男性のおしゃれとしてヒゲにこだわりを持つイタリア人男性とは大きな違いが見られます。日本人男性が興味を持っている脱毛方法の一位は「医療クリニック」で、家庭用光脱毛器を欲しがるイタリア人男性とはこの点でも異なります。

 

脱毛からの解放

↑体毛を受け入れろ

 

一方、より若い世代の間では新しい考え方も生まれています。オンライン医療サイトのMio dottoreは、Z世代と呼ばれる25 歳未満の人たちの3分の1は、脱毛という常識に囚われなくなっているといいます。「体毛を処理しないことが正常 (33%)」 「体毛を処理しないのは自由と同義語 (33%) 」というアンケート結果もあり、こういった価値観から「体毛ポジティヴ運動(Body Hair Positivity Movement)」も誕生しました。この動きは、従来の社会的な規範や価値観から女性だけでなく男性をも解放する試みとしてSNSで共有され、欧米中に広がっています。

 

男性なりの美しさを追求するイタリアの30代から40代の男性の間では、「体毛がないことが美しい」という意識が広がりつつあります。その一方で、より若い世代では脱毛に囚われないことに新たな価値を見出しています。まだ保守的なルッキズムが根ざすイタリアにおいて、これからZ世代が脱毛市場にどのような影響を与えていくのかが注目されます。

 

執筆/Ciho

コロナ禍を経て親が…。イタリアの子どもたちが「習い事」をすぐに変えるわけ

イタリアでは、多くの子どもたちが学校の放課後、習い事に通っています。コロナ禍を経てイタリア人は「子どもがやってみたいことはすぐにやらせる」ようになり、この傾向は習い事にも表れていますが、そもそも同国の子どもたちは何を習っているのでしょうか? 現地からイタリアの習い事事情をレポートします。

 

人気の習い事

↑水泳の人気は日本とイタリアで共通

 

イタリアで人気が高い習い事は、日本と同様にスイミングと英会話教室で、男女とも4〜5歳から開始。特に英語教育は親の関心がとても高く、放課後に幼稚園内で行われるネイティブスピーカー教師による教室の運営を保護者が担うほどです。

 

6歳から小学校に通い出すと、習い事の選択肢がぐっと広がります。イタリアのある企業が行った調査によると、スポーツでは、女子は器械体操やバレーボール、男子は国技ともいえるサッカーをはじめ、バスケットボールやテニスが多く、男女共通では柔道、空手、ボルダリングなどを始めます。日本で一般的ではない乗馬、フェンシング、水球、シンクロナイズドスイミングなども、イタリアが世界的に強い種目なので選択肢の一つです。

 

一方、文化系の習い事を見てみると、女子はクラシックバレエやダンス、男女共通では演劇、ピアノやドラムなどの器楽となります。イタリアらしいのはチェスで、日本の将棋のように子どもたちは昇級や大会にも挑戦。このゲームは学校の授業でも学年単位で取り組んだり休み時間に対戦したりと盛んに行われています。

 

日本では学習塾に通う小学生が目立ちますが、イタリアの小学校と中学校には日本のような受験システムがないため塾は一般的ではなく、学習の遅れがある場合には家庭教師で対処します。

 

送迎問題

↑送迎問題をどう攻略するか…

 

また、日本と違い、イタリアでは誘拐が多いため、11歳未満の子どもが一人で外を出歩いたり、家に一人でいたりすることは法律で禁じられています。そのため、幼稚園生や小学校4年生までの放課後の習い事には保護者の送迎が必須。

 

幼稚園や学校外での習い事の送迎は、日によって時間の融通が利くほうの親が担当。両親とも帰宅が遅い家庭では、祖父母やキッズシッターが対応することが一般的です。

 

なかには送迎が難しくて習い事をさせられない家庭もあり、学校内での部活動がないイタリアにおいて子どもの課外活動は全員ができることではありません。

 

しかし、共働き家庭が多いミラノの場合、放課後は校舎を契約業者に開放して低料金の課外活動をしている小学校もあります。授業後、子どもたちはそのまま学校に残り、それぞれの習い事の教室や体育館に直接行くことができるので、保護者の間でとても人気です。

 

一番大事なことは…

↑思いっきりプレーしよう!

 

イタリア人はコロナ禍でロックダウン(都市封鎖)を体験したことで、「できる時にやりたいことをする」「ヴァーチャルでは味わえないリアルな体験をしたいし、子どもにも経験させてあげたい」と考えるようになり、コロナ禍前よりも頻繁に家族で珍しい場所に行ったり旅行をしたりする人が増えました。

 

例えば、長距離バス会社・FlixBusの調査によると、コロナ収束後は単なる観光ではなく体験を重視する旅行者が増加。サファリ体験など、それまでやりたいと思っていたことやユニークな楽しみを優先する傾向が目立つそうです。

 

このトレンドは子どもの習い事にも表れています。親は子どもがやってみたいことをやらせてみて、練習がキツかったり、子どもに向いていなかったり、楽しくなかったりする場合はすぐにやめて、次のやってみたいことをやらせる。こんな傾向がコロナ禍前よりも顕著になりました。

 

コロナ禍を経て、もともと「楽しいことが一番」というイタリア人の考え方に拍車がかかったといえます。

 

イタリアと日本で人気の習い事は共通している部分もありますが、親が子どもに習い事を始めさせた理由が異なるように思われます。日本人の親の間では「受験に備えさせたい」「自信をつけさせたい」「夢中になれることを見つけてほしい」など、子どもの成長や将来への期待が一般的な理由のようです。

 

一方、イタリアでは「新しいスキルや興味を開発する」に加え、「友達を作る」「アクティブで健康的」「楽しむ」といった理由が挙げられると同国のニュースメディア・PISATODAYは述べています。どちらかといえば、イタリアでは今を楽しむことやフィジカルな成長が重視されています。

 

努力し継続して成長することを大事にする日本人と、楽しいことが一番というイタリア人の国民性の違いが、習い事にも表れているといえるでしょう。

 

どうして室外機を壁の上に置くの? 日本人と発想が違うイタリア式「部屋のレイアウト」

家電や家具をどう置くか? 家の掃除や部屋の片付けをしながら考えることがあると思いますが、この問題は個人のセンスが問われているだけでなく、文化や社会の影響も受けています。滅多に地震が起きないイタリアでは、家電やキッチン用品は日本の一般的な家庭ではあまり考えられない場所に配置されます。イタリア式のレイアウトについて3つ例を取り上げて、それらの背後にある考え方を見てみましょう。

 

1: エアコンの室外機

↑外から見える分には構わない

 

一般的に、イタリアの家庭でエアコンの室外機が設置される場所は「家の外壁面の上部」。日本では、大抵の場合、室外機をベランダの床など安定した場所に設置しますが、イタリアでは壁面上部にキャッチャーを固定して室外機を載せることが多いです。

 

なぜ床に置かないのか? その理由は「隠す収納」を好むイタリア人にとって室外機は目障りであり、外壁のキャッチャーに載せれば部屋の中からは見えないから。また、ベランダのスペースをフルに使えるため、地震対策を考えずに済むイタリアでは当たり前なのです。

 

住民の美意識が高い富裕層地区などでは、外観の統一感を重視しているため、ベランダに置いてよいものが決められていますが、中間層を含む庶民的な地区で外観はあまり気にされません。中庭がある建物では、外から見えない中庭のベランダに室外機やパラボナアンテナなどが設置されています。

 

2: 洗濯機と乾燥機

↑これが美しい

 

日本では洗濯乾燥機が人気ですが、イタリアでは乾燥機能が充実した一体型洗濯機は高価であるため、洗濯機と乾燥機を別々に購入するのが一般的です。家電量販店では「修理が簡単」「どちらかが壊れたときに片方だけを買い替えれば安く済む」「一体型はヒートポンプ搭載の最上位機種でないと乾燥機能に難がある」とよくアドバイスされるほど、この2つの家電は別々に購入するのが“常識”。

 

そして、並べて設置するよりも省スペースになり見た目もすっきりするため、洗濯機と乾燥機は上下に重ねて置かれます。日本人にとってはあまり考えられない置き方ですが、イタリア人はスペースの有効活用や見た目を最優先するので、転落防止器具も設置しないなど安全面を気にする様子はほとんどありません。

 

3: 食器の水切りコーナー

↑意外と合理的?

 

イタリアでは、ほとんどの家庭に食洗機が備えられていますが、同じようにシステムキッチンにビルトインされているのが「食器の水切りコーナー」。シンク上の棚の扉の中に洗った食器を立てかけて、そのまましまっておける作りになっています。

 

水切り棚は、(食洗機を使うほどの数ではないときに)手洗いした食器を置くほか、食洗機の中に放置しておきたくないけれど、食器棚にはしまわずにいつでもすぐに使いたい食器を置いておくなど、食洗機と併用して使われています。

 

食器の水切りコーナーを日本のようにシンクの横に置かないのは、やはりイタリアでは隠す収納が基本になっているから。食洗機やオーブン、冷蔵庫などのキッチン家電やごみ箱は全てシステムキッチンにビルトインするというほど、隠す収納を徹底したイタリアらしい構造およびレイアウトといえます。ちなみに、このコーナーにも安全ロック装置は付いていません。

 

隠すレイアウト

↑ローマにある集合住宅。エアコンの室外機は床に置かれる場合もあるが、なんとなく絵になる(撮影/mike nguyen/Unsplash)

 

イタリア人は人を家に呼ぶのが大好きで、どこの家もいつ来客があってもいいように整理整頓されています。家具や家電のレイアウトに隠す収納が取り入れられているのも、それが最大の理由。

 

一般的に日本の家は居住スペースが狭いので、隠す収納はハードルが高くなってしまうかもしれませんが、それでもイタリア人の収納やレイアウト術を取り入れることができる部分はあるかもしれません。まずは部屋を見回して、目障りなものを特定する。そして、それらをしまうための収納スペースを作る。キッチンの場合、表に出ている小さめで使用頻度が少ないハンドミキサーやパン焼き器などは目に見えない場所にしまう。リビングなら、子どもの学校グッズやおもちゃなどは、使わないときには見えない所にしまっておき、使う際に取り出す。

 

このように考えると、イタリア人の隠す収納は当たり前のことをやっているだけとも思われますが、「隠す」という視点を持てるかどうかで、部屋のレイアウトの発想が違ってくるかもしれません。

 

筆者/Ciho

イタリアに「部屋の片付け」のヒントあり! 日本と正反対の方法とは?

多くのイタリア人は、家の中の美観に並々ならぬこだわりを持っています。家に人を招待して食事をすることが大好きなので、彼らの家を初めて訪ねると必ず待っているのが、整理整頓された自宅の見学ツアー。そこでよく疑問に思うのが、どうすれば家をこれほどきれいに保つことができるのか? そこで今回は、片付けが大の苦手なイタリア在住6年の筆者が、イタリア人から学んだ「家の整理整頓術」を紹介します。

↑イタリア人の片付け術を教えてあげよう

 

家は社交の場

日本人にとって自宅はとてもプライベートな空間かもしれません。しかし、一般的にイタリア人にとって家は「社交の場」であり、友人や親族などと時間を過ごす場所という感覚に近いようです。

 

「人を招き入れる」という意識が強いことから、見せることを前提とした空間づくりを心がけているのです。初めての訪問ではリビングやキッチンだけでなく、ベッドルームやトイレなど隅から隅まで見せてくれます。

 

筆者がイタリア人と共同生活を始めて2年弱が経ちましたが、一番驚いたのがゴミ箱の少なさ。日本ではリビング、キッチン、寝室、トイレ、洗面所と各部屋に設置している家庭が一般的ですが、イタリアではそうではありません。必ずと言っていいほどイタリア人はゴミ箱をキッチン下の扉内、もしくはベランダなど外の空間にまとめて設置します。

 

便利さよりも「美しくない物は見せない」という見た目の美しさを重視するイタリア人ならではのこだわりと言えるでしょう。ある調査では、アンケートに参加した10人中6人が家を整理整頓することを重視していることが分かりましたが、外側の美しさを大事にする考えがその価値観を支えているとも言えそうです。

 

ちなみに、筆者の自宅にはリビング・寝室を含む4部屋とバスルーム(洗面所・トイレ・シャワーが一体化した空間を指す)がありますが、ゴミ箱があるのはキッチンのシンク下と、2つあるバスルームのうちの1つだけ。最初はとても不便に感じていましたが、慣れてしまえば特に気になりません。

↑生ゴミ・プラ・その他に分けてゴミ箱はシンク下に(筆者撮影)

 

「見せる収納」対「見せない収納」

日本のキッチンをYouTubeで見た複数のイタリア人が「なぜこんなに散らかっているの!?」と私に尋ねました。動画を確認したところ、筆者には整理されている普通の台所にしか見えません。

 

どうやら彼らには、調理器具や調味料がいつでも手に取れる位置に置いてあることが気になるようです。特に、醤油やソースなどが並んでいるとデザインに統一感がなく、整理整頓されていない印象を与える模様。「見せる収納」が基本である日本の家は、片付いていないように見えてしまうのです。

 

対照的に「見せない収納」を尊重するのがイタリア人。フルーツを盛りつけたカゴや、コーヒー粉を入れた美しい陶器など、インテリアの一部にもなり得るようなものだけを厳選してキッチンに置いています。

↑電子レンジを置くことさえも反対された筆者の自宅のキッチン

 

日本人の片づけといえば、「こんまり」メソッドが米国などで昨今ブームになりましたが、それでさえイタリアで話題になったことはないと思われます。家族のつながりや古い歴史を持つものを大切にするイタリア人には、「心がときめかなければ捨てよう」という考えは受け入れにくいようです。

 

では、イタリア人は「捨てられないけど保管しておきたい(大量の)物」を一体どこに収納するのか? その答えは、物置やガレージです。彼らはこれらのスペースを上手に利用しており、単身用のアパートでも、地下に小さな個別の専用スペースが用意されているケースが多く、家の中に収納しきれない物はそこで保管します。

 

自宅を美しく保つことに強いこだわりがあるイタリア人は、物を「見せない」テクニックに長けています。それは逆に、自宅のプライベート空間まで人に「見せる」ことが前提となっているからでしょう。

 

友人や知り合いを頻繁に自宅に招いて食事や会話を楽しみたいという思いがある限り、モデルルームのような家がイタリアからなくなることはなさそうです。でも、そんなイタリア人の整理整頓術や考え方には、日本の家の片付けにも使えそうなヒントがありそうですね。

 

執筆/素山えりか

イタリアの飲食店で法外な請求を受ける人が続出! まさかその理由は…

最近、イタリアの飲食店の口コミサイトで増えているのが、「ケーキのカットで料金を請求された」「ジェラートの追加のスプーンで料金を取られた」など、従来なら無料で行われるサービスなのにお金を請求されたという体験談。しかも、特定の店で起きているのではなく、複数の店で同じようなことが起きているようなのです。

↑オーバーツーリーズムに悩み続けるベネチア

 

例えば、シチリア島にあるレストランを訪れた、ある家族のケース。この家族は店でケーキ20個のカットを頼んだところ、レシートの一番最後に「20ユーロ(約3100円※)」の項目があり、ケーキの取り分けの料金を請求されたというのです。

※1ユーロ=約157円で換算(2023年9月28日現在)

 

また、別の観光客のケースでは、イタリア北部のコモ湖にある高級レストランで「サンドイッチを半分にカットするように頼んだら、2ユーロ(約310円)を取られた」という例や、ジェラート店で「シェア用のスプーンを1個追加でもらったら、1ユーロ(約150円)を加算された」なんて話も。

 

これまでの常識からいえば、無料で行われるこれらのサービス。しかも、どこかひとつの店で起きたことではなく、あちこちで同様の経験をする観光客がいるのはなぜなのでしょうか?

 

その背景にあるのは、物価の高騰と観光客の急増と考えられます。ウクライナ侵攻やパンデミックの影響で、世界各国がインフレに直面しているように、イタリアでも同じく物価の高騰が起きており、しかもイタリアは周辺の国よりも物価が約240%も高いという報道もあります。

 

そして、これに追い打ちをかけているのが、観光客の急増。イタリア観光局では2023年の夏、同国を訪れる観光客数は6800万人と予測しており、コロナ禍前より300万人以上多いのだそう。そして、実際にこの夏はイタリアの各地が観光客であふれ、ついにはオーバーツーリズム対策として、来春からベネチアで観光客を対象に入場料を徴収する取り組みを試験導入することが決定したほどです。

 

そんな事情もあり、観光客は、サービスの値段を上げたり追加料金を徴収したりする格好のターゲットになりやすいのかもしれません。しかし、地元メディアが「クレイジーレシート」と呼ぶこのような対応が今後も続くのなら、イタリアが世界中の観光客から嫌われてしまうことになるのかも……。そうなれば観光客は減るかもしれませんが、評判も落ちるかもしれません。

 

【主な参考記事】

New York Post. Italian ice cream shop charges outrageous fee — just for an extra spoon. September 25 2023

New York Post. Italian restaurant charges a whopping $22 — just to slice a birthday cake. August 14 2023

CNN. $2 to cut a sandwich in half: The outrageous rip-offs targeting tourists in Italy. August 19 2023

電気代を節約できそう! イタリア人のエアコンを使わずに「猛暑を乗り切る」シンプルな方法

残暑が厳しいのは日本だけではありません。イタリアでも35度を超える酷暑がまだ続いていますが、日本と異なりイタリアの家庭は約50%しかエアコンを所有していません。イタリア人はなぜエアコンを持たないのか? そして、どのように猛暑を乗り切っているのでしょうか?

↑エアコンを付けられなくても暑さを乗り切る方法はある

 

イタリアの家庭のほぼ半数がエアコンを所有していません。そこには、いくつか理由がありますが、代表的なものを3つ挙げます。

 

1: 歴史的な建物の外観を変えてはいけない

イタリアには歴史的な建物が多くあります。これら建物の外観を守る法律が定められているため、簡易にエアコン設置ができないケースが多いのです。

 

2: 電気料金の大幅な値上げ

ロシアによるウクライナ侵略後、2022年には電気料金が20%も値上り、エアコンの購入を控える動きが強まりました。

 

3: 環境への意識の高さ

エアコンの使用は環境負荷が大きいとの認識が高く、2022年の国立統計研究所の調査ではイタリア人の約70%が「エネルギーの無駄遣いに注意している」と回答しています。

 

このような理由により、イタリアの家庭の半数にはエアコンがありません。では、そんなイタリア人はエアコンなしで、どのように猛暑を乗り切っているのでしょうか?

 

この時期、イタリアでよくネット検索されるのが「エアコンなしで猛暑をしのぐ○○の方法」。よく挙げられている方法が3つあります。

 

1: 温度の低い朝晩以外は窓を締め切る

気温が高い日中は雨戸と窓を締め切り、直射日光と熱風が室内に入って温度が上がるのを防ぎます。

 

2: 氷と扇風機で快適な室内温度をつくる

室内の温度が高くなった時は、扇風機の前にボール一杯の氷をセット。涼しい風を室内に行き渡らせて室内温度を下げます。

 

3: 不使用の家庭用電気器具の電源を切る

電源が入ったコンピューターやテレビなどの家庭用電気器具は、熱を放出して室内温度を上げる要因の1つ。不使用の家庭用電気器具の電源を切ることで、室内温度の低下につなげます。

 

日本と同様に酷暑が続いても、イタリアではエアコンをつけること自体が当たり前ではありません。保健省も「暑さを乗り切るために役立つ10のヒント」を公布し、健康のためにエアコンを使用しつつも、電気エネルギーの大量消費に注意することを推奨しています。

 

熱中症予防などまずは身体への配慮が一番なのはもちろんですが、知恵を絞り、環境に配慮しながらエアコンを適切に使うことが大切です。イタリア人の暑さ対策を試してみれば、私たちも電気代を減らすことができるかもしれませんね。

「フリクションボール」がイタリアの小学生に大人気! その意外な理由とは?

書いた文字を消せるボールペンとして知られている「フリクションボール」。この便利な文房具のメインユーザーは日本では20〜30代のビジネスパーソンですが、実はイタリアでは小学生にとって不可欠な存在になっています。一体どうしてそうなったのでしょうか?

↑イタリアの小学生がフリクションボールを使う理由は?

 

便利なフリクションボールは、イタリアでもさまざまな商品が販売されています。日本では仕事で使う人が多いですが、イタリアでは当たり前のように小学生が使っているのです。

 

この現象について調べてみると、その背景にイタリアの教育方針があることが分かりました。

 

日本の学校では書き損じのないきれいなノートや答案を書くために、鉛筆やシャープペンシル、消しゴムが使われています。しかし、イタリアの学生は間違えた箇所や思考の過程がわかるよう、ノートの筆記やテストには鉛筆ではなくボールペンを使うのが一般的なのです。

 

ただし、小学生のうちは書き損じが多いため、消して書き直せるフリクションボールが重宝されます。ボールペンに慣れることができるうえ、鉛筆と同じように簡単に消すことができるので、授業で使うのには最適といえます。

 

キャップタイプの青、黒、赤と替芯は多くの文房具店で取り扱われている一方、9月から始まる新学期の前には大型スーパーなどで大々的に販売され、店内にズラリと並びます。しかし、学校では使わない青、黒、赤以外の色や少し値段が高いノックタイプはオンラインショップでの取り扱いのみで、街中で見かけることはほぼありません。

↑スーパーにズラリと陳列されている

 

価格は文房具店でだいたい5ユーロ(約790円※)と普通のボールペンの約10倍以上ですが、替芯もあって本体は長く使えます。担任の先生がフリクションボールを指定買いさせてクラス全員が使用するほど、小学生の間には浸透しています。

※1ユーロ=約158円で換算(2023年8月29日現在)

 

間違え方も含めて思考の過程を重視するイタリアの教育方針により、同国の小学生にとってなくてはならないものになったフリクションボール。間違いや考え方を消さずに残しておく機能が、子どもたちの知能の発展に役立っているようです。この発想は、私たちがボールペンを使う際にも応用できそうですね。

 

執筆/Ciho

「ジェラートにのせる生クリーム」は無料? 有料? 火花を散らすローマ対ミラノ

ジェラートの本場・イタリアでは、猛暑の癒しとなるこの食べ物に生クリームをのせる習慣があります。この食べ方は日本であまり見かけないので、驚く人もいるかもしれませんね。しかし最近、あるアニメをきっかけに、この生クリームについてSNSで論争が巻き起こっているのです。イタリア人は一体何を騒いでいるのでしょうか?

↑生クリームはのせますか?

 

イタリアに行ってジェラート屋を訪れたら、必ず耳にするのが「生クリームはのせますか?」というフレーズです。

 

日本人ならば戸惑ってしまうこのセリフ。でも周りを見れば、ジェラートの上に高々と生クリームをのせて食べているイタリア人ばかりです。実はこの生クリームが、論争のテーマとなりました。

 

イタリアの漫画家ゼロカルカーレは、ユーモアを交えつつ社会問題を取り上げる名手として評価されています。その彼の作品『Questo mondo non mi renderà cattivo世界は僕を切り裂けない』がNetflixで放映され、ある場面の背景が論争に火をつけました。そこには「生クリームは無料! われわれはミラノにいるわけじゃありませんから」と書かれていたのです。

 

実際に、ジェラート屋で生クリームをのせてもらうと分かります。

 

ローマを中心とする南部では無料、ミラノ周辺は有料なのです。イタリア人も常々不可思議に思っていたこの事象が、アニメのワンシーンによって再注目され、SNS上で論争が勃発したというわけです。

 

消費者もジェラート職人も黙っちゃいられない

↑たかが生クリーム、されど生クリーム

 

そもそもローマとミラノは、東京と大阪のように文化が異なります。その埋めがたい相違は、ジェラートにのせる生クリームにまで及びました。

 

Twitter上には「ローマ出身の伴侶はミラノに20年も住んでいるのに、いまだにミラノで生クリーム代を払うことに文句を言う」「ジェラートの上の生クリームはモノではなく気持ちだ、誰が気持ちにお金を払うか」など、ジェラート愛好者による発言がSNS上にあふれたのです。

 

ジェラート職人も黙ってはいません。ラ・レプッブリカ紙によると、「原材料にこだわるのならば物価高の昨今、生クリームが有料なのは当然」という職人がいれば、「生クリームはお客さんへのちょっとしたご愛敬なのだから無料のままがふさわしい」という職人も。論争は大いに盛り上がりました。

 

日本ではあまり馴染みがない「ジェラートと生クリーム」の組み合わせですが、イタリアではごく当たり前。味がまろやかになり、フラッペ感覚になるというのがその理由です。

 

生クリームの無料提供はローマで絶大な支持を得ていますが、物価高や質へのこだわりなどによって今後どう変わっていくのか? ローマっ子はやきもきしている、といったところでしょう。

 

「フィアット」がカラー戦略を変更! 英国に衝撃が走る

イタリアの自動車メーカー・フィアット(FIAT)が最近、カラー戦略を変更しました。それに強い反応を示したのが英国メディア。なぜかといえば、ある色がなくなってしまうからです。

↑英国は寂しがる…

 

それはグレー。英・デイリー・メール紙によれば、フィアットはこの色を使ってクルマを生産することを止めたとのこと。その理由について、同社はグレーが「イタリアの文化」を体現していないからと伝えているそうです。

 

フィアットはブランドとしてこれから「喜び・色・楽観主義」の3つの価値観を強く打ち出していきたいそうですが、デイリー・メール紙は、この戦略は英国ではうまく行かないと述べています。なぜなら、近年の英国で販売されているクルマの中でグレーは一番人気がある色だから。同紙に掲載されている、2022年の英国におけるクルマの人気色ランキングを見てみると、グレーが25.7%で1位。2位は黒(20.1%)、3位が白(16.7%)。黒と白の人気は前年と比べたら少し下がった一方、グレーは0.9%増えています。

 

果たして、フィアットの決断は吉と出るか凶と出るか。楽観主義が試されます。

 

【出典】

Daily Mail. Fiat has stopped making cars in one particular colour because it doesn’t ‘embody the Italian way of life’ – but the decision could hammer UK sales. June 26 2023

 

 

 

イタリアで「バカンスローン」が大人気! 2022年は96%も増加

「イタリア人はバカンスのために働いている」と言っても過言ではありません。だからバカンスを楽しむために、日本では聞き慣れない「バカンスローン」を組むことも一般的。コロナ禍では減少していましたが、旅行が解禁になった2022年の夏以降、このローンを組む人が急速に増えています。

↑こんなバカンスならローンを組む価値あり

 

イタリア人のバカンスは長く、最低でも2週間程度から1か月以上も休む人がいます。その分、宿泊費や食費、移動費、娯楽費などの費用がかさむため、イタリアの金融機関ではバカンス向けのローンが用意されているのです。

 

2023年のデータはないものの、2022年上半期のバカンスローンが興味深いトレンドを示しています。それによると、申し込み件数は7万件を超え、融資総金額は1億6000万ユーロ(約248億円※)に拡大。一人当たりの融資額は平均5597ユーロ(約87万円)で、ローン返済は毎月平均107ユーロ(約1万6600円)の約4年間・52回払いとなります。

※1ユーロ=約155円で換算(2023年6月19日現在)

 

また、バカンスローン申請数は2021年上半期と比べて96%増。コロナ禍の影響が縮小し、バカンスに行く人が増えたことが要因となったようです。ローン利用者の27.5%はコロナ禍により旅行を断念していた人たち。このことからもイタリア人がいかにバカンスを心待ちにしていたのかが分かります。

 

利用者の平均年齢は36歳である一方、30代以下が35%を占めるなど金銭的な余裕がない若年層が多いのが特徴。コロナ禍で結婚式やハネムーンを控えていた人たちもバカンスローンを使っており、その利用者を押し上げているとされています。

 

このように、ローンを使ってまでバカンスを楽しむイタリア人。今夏のバカンスローンの利用者はより一層増えそうです。

 

知っておきたいワインの蘊蓄|ソムリエが解説する「イタリアワイン」の5産地にまつわる話

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開けて注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、基本はなかなか他人には聞きにくいもの。この連載では、そういったノウハウや、知っておくとグラスを交わす誰かと話が弾むかもしれない知識を、ソムリエを招いて教えていただきます。

 

「ワインの世界を旅する」と題し、世界各国の産地について、キーワード盛りだくさんで詳しく掘り下げていくこのシリーズ、「フランス」に続く今回は、「イタリア」。寄稿していただくのは引き続き、渋谷にワインレストランを構えるソムリエ、宮地英典さんです。

【関連記事】ワインの世界を旅する 第1回 ―フランスと5つの産地―

 

イタリアワインを旅する

紀元前にイタリアに入植したギリシャ人は、イタリアの地を“ワインの大地=エノトリーア”と呼んだといわれています。現代でも、イタリアのように国中の全土と言っていいほど、さかんにブドウ栽培が行われている国は珍しく、フランスと肩を並べるほどのワイン生産国。20州それぞれの多様な個性を表現したワインは、その文化と郷土料理と相まって、多くの人を魅了しています。

 

ですが裏を返せば、その多様性はイタリアワインを“難解で選びにくいワイン”にしていることも事実です。その原因のひとつには、現在進行形で議論されていますが、ラベル表示のわかりにくさが挙げられるでしょう。州ごとの個性とはいっても州の名前自体は記載されておらず、「DOCG」や「DOC」、そして「IGT」といった原産地呼称と合わせて消費者目線に立ったラベル表示は、これからイタリアワインがより個性を発露するためにも、課題としてとらえ解決に取り組む必要があるのではないでしょうか。

 

今回は、初心者に向けたイタリアワインの入り口として、代表的な5つの州と5つのワインをご紹介しながら、私が考えるよりわかりやすいイタリアワインの表示と、イタリアワインの選び方をお伝えすることができればと思います。

・ピエモンテ州
トスカーナ
シチリア
ヴェネト
トレンティーノ=アルト・アディジェ

 

ピエモンテ州 ~尾根に連なる美しいブドウ畑と「バローロ」~

ピエモンテの州都トリノは、2006年に冬季五輪が開催されたことでも知られるほか、サッカーチーム「ユヴェントス」のホームタウンといえば、ワインに馴染みのない方でもピンとくるかもしれませんね。

 

19世紀、イタリア王国時代には首都だったということもあり、歴史のあるバロック建築の街並みは荘厳で、往時を想像させる魅力的な都市です。当時からそのままに残る数々の老舗カフェで、原産地呼称指定されているチョコレートドリンク“ビチェリン”を楽しむのも、トリノでの素敵な時間の過ごし方です。

ホットチョコレート、エスプレッソ、生クリームの3層からなる、トリノ伝統の飲料。カフェ・アル・ビチェリンが発祥とされます

 

このピエモンテは、イタリア屈指のワインの銘醸地でもあります。トリノの南東に位置するランゲ&ロエーロ地方では尾根が複雑に絡まりあい、東西南北の斜面にはブドウ樹、平地にはヘーゼルナッツが整然と並び、世界でも類を見ないほどに美しい田園風景が望めます。そんなランゲ&ロエーロのみならず、イタリアを代表するワインのひとつが「バローロ」。バローロ村を中心にカスティリオーネ・ファレット、セッラルンガ・ダルバ、モンフォルテ・ダルバ、そしてラ・モッラの五つの村周辺の畑、バローロの丘に植えられた晩熟のネッビオーロから造られるバローロは、長い熟成を必要とする骨太で重厚な果実とタンニンを持つものから、鮮やかにも感じる芳香を早いうちから楽しめるタイプまで幅広く、ブルゴーニュと比較されるほど、バローロの丘の地質や環境は多様なワインを産み出します。「王のワインにして、ワインの王」ともいわれ、高級イタリアワインの重厚なイメージがあるかもしれませんが、下で紹介する「レヴェルディート」などラ・モッラ村周辺で造られるものは比較的軽やかでリーズナブルなものもあり、初めてバローロに親しまれる方にはおすすめです。

 

バローロの中だけでも、前述したいくつかのエリアでワインのキャラクターは違います。もちろん生産者によって畑を飛び地で所有していることもありますし、ブルゴーニュのように、より地域表示を明確にすることで“テロワール表現”というワインの最大の魅力を表現していくことができるように思います。

 

バローロを飲む機会があったならば、そのワインがどの地域で造られたものなのかを意識してみると、“王のワイン”もより身近なものになるのかもしれません。

 


Reverdito(レヴェルディート)
「Barolo2016(バローロ2016)」
5000
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

次のページで取り上げるのは、キャンティ・クラシコで知られる産地、トスカーナです。

トスカーナ ~歴史ある「キャンティ・クラシコ」は、今も進化し続ける~

フィレンツェの南、シエナの北に、「キャンティ・クラシコ」の畑は広がっています。イタリアワインにおいて“クラシコ”とは元来、銘醸畑として認められていたエリアを指しますが、とくに“キャンティ”はラッダ、ガイオーレ、カステッリーナに加えグレーヴェが、18世紀に線引きされた歴史のあるクラシコといえます。これは現在の原産地呼称のオリジナルともいえる、画期的な出来事でもありました。

 

けれどもキャンティ・クラシコとキャンティの“サブ・ゾーン”(キャンティ〇〇とエチケットに記載)、キャンティとだけ表示された広域ワインのエチケットには、どれも「Chianti」の表示が。ワイン初心者にとっては、その品質の差の割に、店頭では区別のつきにくいワインとして長く流通してきたのです。“キャンティ”という響きが銘醸ワインの響きも併せ持っていること、一時期の大量生産の広域ワインが多く流通したことも、日本の消費者にとってはハズレの多いワインのような印象を与えてしまったように思うのです。

 

2014年に、「グラン・セレツィオーネ」という単一畑のキャンティ・クラシコの最上位にあたる新しい呼称が設けられ、キャンティ・クラシコはその品質に見合った高級ワインのイメージを取り戻そうとしています。キャンティ・クラシコの地域ごとの個性、そしてその単一畑の個性が評価されていくのも、これからのことです。例えばボルドーのように、生産者の格付けのようなものが制定されたなら、格付けシャトーとAOCボルドーとの差以上に、優れた生産者と単一畑とキャンティのサブゾーン、広域キャンティがより消費者にとってわかりやすく、また素晴らしいワインを産み出すことにつながらないかと日々夢想しています。

 

長い時間が必要だとは思いますが、イタリアワインを代表する銘醸ワインとして、キャンティ・クラシコがこれからワインを親しむ方にとっても、とっておきの選択肢になることを願っています。

 

そう、フィレンツェの名物料理といえば、赤身のキアーナ牛の「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ」。ステーキに合わせるワインとしてキャンティ・クラシコを選べるようになったなら、相当なワイン愛好家といえることでしょう。

 


Rocca di Montegrossi(ロッカ・ディ・モンテグロッシ)
「Chianti Classico2017(キャンティ・クラシコ2017)」
3800
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

3つ目に紹介していただくのは、シチリアです。

シチリア ~地中海最大の島にしてイタリア最大の州~

地中海に浮かぶシチリアは、さまざまな文化の影響を受けてきた土地でもあります。ことワインに関しても、アグリジェント市のギリシャ神殿、ピアッツァ・アメリーナのローマ時代のモザイク、パレルモのムーア人の寺院などなど、地中海における宗教の歴史的な遺産を今も多く残しています。

 

ただ、イタリアワインの世界では、ほんの四半世紀前まで輸出用ワインを大量に、それこそイタリア最大規模の生産量を産出する個性のない地域でもありました。それからの10年で、シチリアワインは量から質へ、大きな転換を果たし、ブドウ畑の面積はほとんど変わらないものの、生産量は3割以上減らしました。パレルモ周辺の協同組合も土着品種への関心を高め、さまざまなルーツを持つマスカット品種もまた、成功を収めつつあります。

 

そして、安定して高品質なワインを産み出すようになった産地として、シチリア島の東にあるエトナ山が挙げられると思います。エトナ山は、オリーブやピスタチオ、さまざまな果樹が育つ豊饒な火山灰土壌が特徴で、黒ブドウは「ネレッロ・マスカレーゼ」、白ブドウは「カリカンテ」が、約800mの標高に植えられています。高品質ワインが造られるようになったのはここ最近のはずなのに、品質の安定感はイタリアワイン随一といっても大げさではないほど。徐々に価格も上がってきている銘柄もありますが、ワインショップで見かけたら、ぜひ一度お試しいただきたいとおすすめできる銘柄です。

 

写真の「エトナ・ロッソ」は、スパイスの効いた鮮やかなベリー系の果実に芯のあるストラクチャー、軽やかで、魚介にも肉料理にも幅広く合わせられるワインです。あまりにも幅の広いシチリアのワインも、西と東や南などのイメージがワイン初心者にも伝わるようになったなら、ワイン選びももっと楽になるのかもしれません。

 


Valenti(ヴァレンティ)
「Etna Rosso“Norma”2014(エトナ・ロッソ“ノルマ”2014)」
3200
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

4つ目は、中世の街並みを残すヴェローナを擁す、ヴェネトにまつわる話。

ヴェネト ~北イタリア、ヴェローナはロミオとジュリエットの舞台~

中世の街並みを残すヴェローナは、シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台であり、あのジュリエットのバルコニーがある家は観光名所のひとつとして、旧市街の一角に現在も残っています。また、毎年4月にイタリア最大の見本市「ヴィニタリー」が開催されるのも、ヴェローナ郊外。期間中は、街の商店のウインドウには贔屓(ひいき)の「ヴァルポリチェッラ」や「ソアヴェ」のボトルがディスプレイされ、ワイン好きにとってはウインドウ・ショッピングをも楽しめる街でもあります。2020年は残念ながら開催されませんでしたが、イタリア中のワインが一堂に会するビッグイベントですから、春にイタリアに行く機会があれば、ぜひスケジュールに組み込むことを検討してみてください。

 

ヴェネト州の代表的なワイン畑は、ヴェローナの北側、東のソアヴェから西のガルダ湖へ40kmほどに伸びるヴェローナ丘陵に広がっています。白ワインの代表的な産地に「ソアヴェ」、赤ワインの代表的な産地に「ヴァルポリチェッラ」があり、それぞれ辛口の軽やかなものから干しブドウから造る甘口の「レチョート」と、幅広いワインが造られています。

 

ヴェネトは、イタリアのなかでもとくに生産量の多い地域であるため、比較的安価なワインが多いエリアでもあり、やはりこの地域でも“クラシコ”表示を基準に選んだほうが良質なワインに巡り会う可能性は高まります。「ヴァルポリチェッラ・クラシコ」は、チェリーのようなチャーミングな風味にほのかなアーモンドの皮の苦みが特徴で、コストパフォーマンスに優れたワインが多くあります。また、ヴァルポリチェッラの高級レンジには、乾燥させて糖度を高めたブドウから造る甘口の「レチョート」と、辛口で苦みと甘みを併せ持った「アマローネ」があり、アマローネを圧搾した後の果皮の上でワインを発酵させる「ヴァルポリチェッラ・リパッソ」(またはスペリオーレ)も、ヴァルポリチェッラ寄りの価格帯ですので気に入った生産者のワインに出会ったら、それぞれのワインをお試しいただくのもおすすめです。

 


Begali Lorenzo(ベガーリ・ロレンツォ)
「Valpolicella Classico2016(ヴァルポリチェッラ・クラシコ2016)」
2500
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

最後は、この産地をすでに知っていたら通な「トレンティーノ=アルト・アディジェ」を紹介していただきます。

トレンティーノ=アルト・アディジェ ~イタリア最北のワイン産地ではドイツ語が話される~

トレンティーノ=アルト・アディジェ州は、南のトレンティーノと北のアルト・アディジェに大別され、イタリア20州の中でも特徴的なのは、フランス品種やドイツ品種が多く栽培されていることでしょう。南のトレンティーノでは、シャルドネの高品質なスパークリングワインやイタリアでも最高のボルドー・ブレンド、地場品種では「テロルデゴ」など、魅力的なワインが造られています。

 

そして今回は北側、イタリア最北のワイン産地、アルト・アディジェのワインを紹介しようと思うのですが、その魅力はなんといってもイタリアでもっともワインが選びやすい点。大半のワインがDOCアルト・アディジェに区分され、表示は基本的に品種名と生産者、加わってもせいぜい畑の名前と、イタリアワインらしからぬわかりやすいエチケットになっています。

 

赤ワイン用品種はカベルネやメルロー、ピノ・ノワールのほか、固有品種である「ラグレイン」や「ヴェルナッチュ」、白ワイン用品種はシャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった国際品種に加え、リースリングやシルヴァーナー、ゲヴュルツトラミネール、この地域では主役になりつつあるピノ・グリージョやピノ・ビアンコと多士済々(たしせいせい)といった趣です。

 

とくに色調が濃く、力強さもあるピノ・グリージョと、華やかでフローラル、みずみずしさとキリリとしたミネラル感を併せ持ったピノ・ビアンコは、どちらも本家ブルゴーニュやアルザスのワインと比べてもまったく見劣りせず、同時にアルト・アディジェらしさともいえるオリジナリティある魅力的なワインが数多く産み出されています。イタリア語よりもドイツ語が主流で、街の看板にはドイツ語とイタリア語が併記されており、チロル文化の色濃く残る街並みはワイン同様、イタリアらしからぬ魅力的な地方アルト・アディジェ、イタリアワインに馴染みのない方でも手に取りやすいイタリアワインです。いえ、南チロルワインと呼んだほうがいいのかもしれません。

 


Nals Margreid(ナルス・マルグライド)
「Pinot Bianco”Silmian”2017(ピノ・ビアンコ“シルミアン”2017)」
4000
輸入元=ミレニアムマーケティング

 

※ワインの価格はすべて希望小売価格です

 

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後にワイン専門の販売会社、ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランenoteca miyajiを開店。
https://enoteca.wine-communicate.com/
https://www.facebook.com/enotecamiyaji/

 

イタリアの「No.1ポテトチップ」が決定! 1位は日本でも見たことあるやつ!

スナック菓子の代表ポテトチップ。素敵なラテンの習慣、アペリティーヴォ(食前酒)にもポテトチップは欠かせません。今回は、ガンベロロッソ(※)が選んだベストポテトチップをご紹介!ナンバーワンは、なんと日本でもお馴染みのあのブランドでした!

※イタリアのミシュランと称されるイタリアのレストラン格付け本ガンベロロッソで知られる老舗グルメ専門出版社。

 

昨今のイタリアの食のキーワードは、「オーガニック」と「グルテンフリー」。ポテトチップ界にもなんと“塩なし”が登場!「根菜」「ベジタブル」などなど気になるバリエーションは百花繚乱ですが、今回のセレクト基準は、クラシックスタイルのポテトチップ(塩なし以外は、すべて塩味)。約40種類から、かのガンベロロッソが選んだポテトチップをテイスティングコメントとともに紹介します。日本で見つかるものもあるかも?

 

【いきなり第1位】

レイズ/ クラシック

イタリア人グルメも認めちゃう、あのレイズがベスト1でした。やはり最強ですね。世界で最も売れているポテトチップらしいですが、イタリアには2014年に上陸。イタリア全土で売られています。

 

ガンベロロッソの評価は、「コーン油で揚げて、塩をひと振り。ひとつひとつが小さめのチップスは、信頼感が湧く生き生きとした黄金色。素材や揚油の品質を感じさせる香りや味わい、うまみも完璧で、松の実やドライフルーツを思い出す。薄く、心地よい歯ごたえ。サクサクと耳からも満足感が得られる」そうです(笑)。アメリカ原産の商品とは、塩加減等微妙に異なるのかもしれませんが、お試ししてみては?

 

そのほか、選ばれた9品がこちらです。

 

 

【コストパフォーマンス部門1位】


コナード/クラシック Conad Classiche

全国展開するイタリアの大手スーパーマーケットのオリジナル。製造元はパタ(アミーカ・チップス傘下)で、「白を基調にしたパッケージが食欲をそそる。大き目で、色は古典的な明るい金色。やや油っぽさは残るが、素材の良さを感じさせる香り。しっかりとした固さで歯ごたえ、バランスの良いうまみ、クリアな油感、口に残る満足感は高い」とのコメント。

 

以下、順不同に。

 

↑左からアミーカ・チップス、サン・カルロ。右端は最近流行りの「ノーソルト」

 

 

アミーカ・チップス/かつての味! (Come una volta!)

モラッティ家がオーナーのエルドラーダ社のブランド「アミーカ・チップス」シリーズのひとつ。昔の食生活は健康的だったとイメージする層を狙う「あるある系」の懐古主義的商品名の人気商品です。コメントは「やや小さめで、重層的な黄金色。少々ベタつき、ほとんど抜けた香りに、やや濁った油臭。ただし味わいは繊細で、新鮮なポテトのでんぷん質を感じさせる。塩味は濃厚で、歯ごたえも充分。香りとは裏腹に、きちんとした油を使っていることがわかる」とのこと。

 

 

サン・カルロ/1936 アンティークレシピ (1936 antica ricetta)

創業者フランチェスコ・ヴィタローニが、1936 年、ミラノ中心部のサン・カルロ教会の近くに開店したロスティチェリア(総菜店)をオープン。その店の人気スペシャリテが、薄くスライスしたフライドポテトだったことから発展し、今ではイタリアを代表するスナックの大手に。「アミーカ・チップス」と合わせて、50%以上のシェアを誇っています。

 

「薄いスライスをヒマワリ油で揚げて海塩をまぶした、いかにもポテトチップ然とした風味。黄金色の中サイズで、たまにチップス同士がくっついた状態のものもあり、手作りっぽさを醸している。ポテトと悪くはない油の香り。十分な塩味と歯ごたえで、口に入れた時に最高のパフォーマンスを発する」。

 

 

パタタス ナナ/ナチュラルフライドポテト

イタリアで企画考案され、スペインで2016年に実現したプレミアムなポテトチップ。アンダルシアの小さな村セニガリアの“ナナ・ピッコロ・ビストロ”のオーナーシェフ、ミケーレ・ジレッビが中心になり、専用工房で製造されています。

 

コメントは、「スペインのシエラネヴァダ山脈起源のドゥルカル川の水で育てたアグリア種のジャガイモ、純粋なヒマワリ油、カディスの海塩。均一なブロンド色、大きく、しっかりしたボディは気品のある美しさ。油とジャガイモの素材の香り。塩の量も充分。ミケーレの提案は、黒胡椒と新鮮なレモンかライムをかけるか、カンタブリア産の酢漬けのアンチョビと合わせて」。

 

パイ/マックススライス(Maxi fette)

1959年創業のパイは、イタリアのポテトチップスの代名詞。「環境に配慮した農園で作られるジャガイモをパーム油でフライし、ヨウ素添加塩で味付け。香りはデリケート。風味は中庸で、ジャガイモ感も余り感じられないが、油も攻撃的でなく欠陥は感じられない。後味にやや苦み」。

 

 

レ・コンタディーネ / 手作りスタイル(Stile fatte a mano)

イタリアの人気スナックシリーズの“クリック・クロック”や“プフ”と同じ、ローマのICAフーズのポテトチップブランド。「エクストラ・バージン・オリーブオイル100%で揚げた中サイズ。やや油っぽさがあり、うっすら緑がかっていたりもする。油の香りを正確には感じないが、うまみも大げさではなく、ジャガイモの香ばしい風味が残る」。

 

 

ティレル/ノーソルト

イタリアに2014年に上陸したイギリスのこだわりチップスブランド、ティレル。日本でも見かけるようになってきていますね。塩なしフレーバーは、“キュウリのサンドイッチにぴったり”とのこと。「淡いアンティークな金色、ややベタつくが、ちょうど良い厚さで充分な歯ごたえが魅力のひとつ。素材の良さと香り」。

 

ヴィヴィウェルネス/ザ・シンプル(La semplice) 

イタリアの大手ディスカウントチェーンTuodiの健康ダイエットラインブランド。「ヨウ素添加塩とヒマワリ油を使用。古典的な薄い黄金色。明瞭な香りはないが、うま味は十分あり、ガラスのような歯ごたえや若いジャガイモの風味が心地よい。でんぷん質はわずかに感じる程度。同社の一般商品より30%カロリーオフ」。

 

エッセルンガ/クラシック風味

イタリア中北部を中心に展開する大手スーパーのオリジナル商品。製造元はアミーカ・チップス。「大きめで薄く、均一なゴールドトーン。オイルの質は高くはないが受け入れられる範囲。旨味は濃厚で喉が乾く。歯ごたえは軽く心地よい。でんぷん質にやや飽きがくる」。

 

カロリー、塩分、添加物。手に取るのを躊躇してしまうポテトチップですが〜、味を知るにはやはりテイスティングも必要ですよね(笑)! いつものポテトチップも、ガンベロロッソ流に……テイスティングしてみては?

「回転寿司」ならぬ「回転ピザ」が誕生! イタリアのピッツェリア業界に新旋風を巻き起こす「GIRO PIZZA」

イタリアといえば、やはりピッツァ! 本場のピッツァは使われている素材が新鮮で、注文を受けてから薪を使った窯で焼いてくれるのでシンプルでも味が生きています。そしてイタリアのピッツェリアでは老若男女構わず、直径30~40cmはあるピッツァをナイフとフォークを使いながら、自分が頼んだものを一人で丸ごとたいらげているのが普通で、1枚のピッツァをみんなでシェアするというのはあまり見たことがありません。しかし、イタリアでは最近ちょっとした変化が起きつつあるようです。

 

「GIRO PIZZA 」は直訳すると「回転ピッツァ」

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通常のように、客がメニューを見て注文するスタイルではなく、ウエイトレスが焼きたてのピッツァを片手に、そのピッツァ名を叫びながらテーブルを回って来ます。食べたい場合は、手を上げて1ピースから食べることができ、種類も豊富なので一度に色々な種類のピッツァを味わうことができます。しかも料金は一律10ユーロで食べ放題なので、お客様は色々なメニューに挑戦できます。

 

ラインナップは驚くほど豊富です。ベーシックなマルゲリータはもちろん、高級食材でもある水牛のモッツァレラチーズを使った贅沢なものもあれば、ペペロンチーノや辛いサラミがびっしり詰まった真っ赤な激辛ピッツァ、マシュマロやチョコレート、フルーツ、生クリームなどがのった甘いデザートピッツァもあります。

 

また、玉ねぎと蜂蜜、ジャムとアーティチョーク、フィノッキオ(フェンネルの根の部分)と生ハムとレモンといった、味の想像もつかないような取り合わせのピッツァや、子どもたちに人気の高い、ゆで玉子とフライドポテトとソーセージといった欲張りな組み合わせもあります。さらに、イタリアには各地方のご当地チーズというものがあり、チーズだけでも種類がたくさんあるので、5種類のチーズピッツァなど、とても味わい深くイタリアらしいものもあります。

 

こういう色々なメニューが予告もなく現れるので、レストラン全体がまるで大試食会のようです。「次は何が出てくるのかな」とワクワクしながら待つのも楽しいですし、「えっ!?」と思うメニューでも、食べてみると意外と美味しく病みつきになってしまうものもあるので、臆せず試してみる価値は十分あります。

 

しかも、食べ放題ということで食べ盛りの若者や働く人たちのランチとしても人気があります。その一方、レストランから醸し出される楽しい雰囲気がイベントを盛り上げるちょっとしたアクセントにもなるので、誕生日会や打ち上げ、年末年始のパーティーシーズンには持ってこいです。ピッツァだけでなく、パーティーを盛り上げてくれる花火風ロウソクがついたケーキも予約可能。

 

さらに、専用スタッフが常駐している大型遊具が備えられたキッズコーナーも併設してあり、ファミリーにはうれしい限りです。小さな子どもは食事の途中で飽きたり、ぐずり始めたりするので、親はゆっくり食事を楽しめないことが多いのですが、このキッズコーナーがあれば、大人たちも安心してゆっくりと食事を楽しむことができます。このようなサービスを提供することで家族連れやグループの来客数を増やし、着々と売り上げを伸ばしています。

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客をあっと言わせるようなバリエーション豊富なメニューや、生地を空中で伸ばすデモンストレーションなど、このレストランでは作り手が楽しみながら仕事をしている様子がよく分かります。お客様と働き手が賑やかな空間をともにし、それが売り上げになる。これこそレストラン活性化の1つの好事例と言えるでしょう。

 

このGIRO PIZZAでは平日のランチ以外は飲み物代が別料金になりますが、メニューは一律10ユーロで食べ放題です。普通のイタリアのピッツェリアでは、1枚の価格が平均6~10ユーロくらいであることを考えると、ここはかなりのお得感があります。それに、ピッツァの種類は常時20~30種類あり、新しいメニューも次々と増えているので、常に客の好奇心を引きつけてやみません。ハロウィーンやカーニバルのときは、客も店側も仮装をしたり、色々なサプライズを準備したりするなど、季節ごとに異なるエンターテイメント要素もあるので、「とにかく楽しい」「またみんなで行きたい」という気持ちにさせられます。

 

以前は、お客様がお店に滞在する平均時間は45分といったところでしたが、このGIRO PIZZAメニューにしてから、それが2時間30分に増え、ピッツァ以外の注文が入るようになったり、団体客が圧倒的に増えたりしたそうです。大人も子どもも大満足できるピッツェリアの登場で、イタリアの停滞気味のレストラン業界の風向きが変わり始めています。

「回転寿司」ならぬ「回転ピザ」が誕生! イタリアのピッツェリア業界に新旋風を巻き起こす「GIRO PIZZA」

イタリアといえば、やはりピッツァ! 本場のピッツァは使われている素材が新鮮で、注文を受けてから薪を使った窯で焼いてくれるのでシンプルでも味が生きています。そしてイタリアのピッツェリアでは老若男女構わず、直径30~40cmはあるピッツァをナイフとフォークを使いながら、自分が頼んだものを一人で丸ごとたいらげているのが普通で、1枚のピッツァをみんなでシェアするというのはあまり見たことがありません。しかし、イタリアでは最近ちょっとした変化が起きつつあるようです。

 

「GIRO PIZZA 」は直訳すると「回転ピッツァ」

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通常のように、客がメニューを見て注文するスタイルではなく、ウエイトレスが焼きたてのピッツァを片手に、そのピッツァ名を叫びながらテーブルを回って来ます。食べたい場合は、手を上げて1ピースから食べることができ、種類も豊富なので一度に色々な種類のピッツァを味わうことができます。しかも料金は一律10ユーロで食べ放題なので、お客様は色々なメニューに挑戦できます。

 

ラインナップは驚くほど豊富です。ベーシックなマルゲリータはもちろん、高級食材でもある水牛のモッツァレラチーズを使った贅沢なものもあれば、ペペロンチーノや辛いサラミがびっしり詰まった真っ赤な激辛ピッツァ、マシュマロやチョコレート、フルーツ、生クリームなどがのった甘いデザートピッツァもあります。

 

また、玉ねぎと蜂蜜、ジャムとアーティチョーク、フィノッキオ(フェンネルの根の部分)と生ハムとレモンといった、味の想像もつかないような取り合わせのピッツァや、子どもたちに人気の高い、ゆで玉子とフライドポテトとソーセージといった欲張りな組み合わせもあります。さらに、イタリアには各地方のご当地チーズというものがあり、チーズだけでも種類がたくさんあるので、5種類のチーズピッツァなど、とても味わい深くイタリアらしいものもあります。

 

こういう色々なメニューが予告もなく現れるので、レストラン全体がまるで大試食会のようです。「次は何が出てくるのかな」とワクワクしながら待つのも楽しいですし、「えっ!?」と思うメニューでも、食べてみると意外と美味しく病みつきになってしまうものもあるので、臆せず試してみる価値は十分あります。

 

しかも、食べ放題ということで食べ盛りの若者や働く人たちのランチとしても人気があります。その一方、レストランから醸し出される楽しい雰囲気がイベントを盛り上げるちょっとしたアクセントにもなるので、誕生日会や打ち上げ、年末年始のパーティーシーズンには持ってこいです。ピッツァだけでなく、パーティーを盛り上げてくれる花火風ロウソクがついたケーキも予約可能。

 

さらに、専用スタッフが常駐している大型遊具が備えられたキッズコーナーも併設してあり、ファミリーにはうれしい限りです。小さな子どもは食事の途中で飽きたり、ぐずり始めたりするので、親はゆっくり食事を楽しめないことが多いのですが、このキッズコーナーがあれば、大人たちも安心してゆっくりと食事を楽しむことができます。このようなサービスを提供することで家族連れやグループの来客数を増やし、着々と売り上げを伸ばしています。

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客をあっと言わせるようなバリエーション豊富なメニューや、生地を空中で伸ばすデモンストレーションなど、このレストランでは作り手が楽しみながら仕事をしている様子がよく分かります。お客様と働き手が賑やかな空間をともにし、それが売り上げになる。これこそレストラン活性化の1つの好事例と言えるでしょう。

 

このGIRO PIZZAでは平日のランチ以外は飲み物代が別料金になりますが、メニューは一律10ユーロで食べ放題です。普通のイタリアのピッツェリアでは、1枚の価格が平均6~10ユーロくらいであることを考えると、ここはかなりのお得感があります。それに、ピッツァの種類は常時20~30種類あり、新しいメニューも次々と増えているので、常に客の好奇心を引きつけてやみません。ハロウィーンやカーニバルのときは、客も店側も仮装をしたり、色々なサプライズを準備したりするなど、季節ごとに異なるエンターテイメント要素もあるので、「とにかく楽しい」「またみんなで行きたい」という気持ちにさせられます。

 

以前は、お客様がお店に滞在する平均時間は45分といったところでしたが、このGIRO PIZZAメニューにしてから、それが2時間30分に増え、ピッツァ以外の注文が入るようになったり、団体客が圧倒的に増えたりしたそうです。大人も子どもも大満足できるピッツェリアの登場で、イタリアの停滞気味のレストラン業界の風向きが変わり始めています。