各メーカー製品を販売する量販店でありながら、自らも「作る」立場でもあるのは、かなりアドバンテージがあるのではないでしょうか。家電量販店のプライベートブランドは複数ありますが、エディオンが手掛ける「e angle(イーアングル)」は2018年に年間売上目標200億円を掲げてスタートして以来、年々ラインナップを拡充し、2024年度は20アイテム以上を展開するまでに至るなど、今後も成長路線を見込んでいます。

業界初の商品も生み出すなど、業界で急速に存在感を高めつつある理由は何なのでしょうか。商品企画統括部長の安倍寛さん、商品開発部長の池田幸弘さんを取材し、製品づくりにおける他社との差別化ポイントを聞きました。
店頭で得る「お客様の声」がとにかく多い!
「いえ、そのような考えはありません。メーカー様とは競合ではなく、共存共栄していく関係を目指しています」。筆者からの「いずれは家電メーカーに取って代わりたい……みたいな狙いがあるのでは?」という直球質問に安倍さん、池田さんは揃って即答しました。そうですよね、いきなり勘ぐってしまってすみません。
「開発企画段階の時に、特定の品種で既存メーカーさんの商品があることはもちろん調査します。そのうえでどういった価格帯をターゲットにするのか、どういった機能をつけていくのかといった考え方を持って商品の企画をしていますし、既存メーカーさんの商品の取り扱いをやめてPB商品に置き換えるという考え方はありません。基本的には棲み分けはしっかりできていると考えています」(池田さん)

「e angle」は「お客様の”あったらいいな”を解決する商品を作る」ことを目標に掲げているプライベートブランドです。
「ご来店くださるお客様から直接うかがう、今お使いの家電へのご不満、そちらを踏まえての『こんな機能があったら便利なのに』といったニーズを製品開発に反映させたいという思いと、『より早く、スピーディーに自社でお客様の声を商品化したい』などの考えから、数年の準備期間を経て誕生しました」(安倍さん)
「くらしを、新しい角度から」というコンセプトを体現するうえで、“お客様の声”こそがブランドの核と言っても過言ではなさそうです。ユーザーの声を拾い上げるアンケートなどはさまざまな業種・業界で行われていますが、e angleの場合は意見を吸い上げるプロセスがしっかりと確立され、月間の収集量も凄まじいものがあります。
「できるだけ簡易的に入力ができるフォームを用意し、日々お客様との接点を持っている店頭スタッフに入力してもらうようにしています。月平均でおおよそ500〜1000件の声が集まります」(池田さん)
収集した声は品種ごとに分類され、特に数の多いものから開発の検討が始まります。またエディオンカード会員(483万)からヒアリングを行ったり、特定のターゲット顧客を集めた座談会なども開催し、意見を直接聞く機会も設けたりしているそうです。

「洗濯機」のトレンドを、「食洗機」に反映⁉
その熱意が形になった例として、2023年12月に発売した洗剤自動投入機能付き食器洗い乾燥機「ANG-DW-A13」を挙げました。洗濯機と食洗機という、「洗う」という共通点はあっても活躍する場所が全く違う二つの家電が「お客様の声」によって結びつき、新たな製品開発につながったケースです。

自動投入機能は、洗濯の度に洗剤を量る・入れる手間がなくなって時短になりますし、入れ過ぎも防いでくれるのがメリットです。洗剤の使用量はコースによっても変わりますが、標準コース・標準量で約8gです。1日2回使用の想定で、洗剤の自動投入量を標準にしている場合だと約3週間(約40回)、多めの設定だと約2週間(約30回)使用できるとのこと。
「洗濯機において、洗剤の自動投入機能が普及し始めつつある時期でした。それが非常に便利だ、食器洗い機にも同じ機能(洗剤の自動投入)を持たせられないかという声がありました」(池田さん)。
「家電量販店として様々なカテゴリーの家電を扱っているからこそ、お客様のご要望や、まだ気づかれていないニーズを感じ取ることができます。その気づきを商品開発に活かせるのが、私たちの強みだと考えています」(安倍さん)。

自動投入機能は、洗濯の度に洗剤を量る・入れる手間がなくなって時短になりますし、入れ過ぎも防いでくれるのがメリットです。
据え置きタイプで洗剤自動投入機能を搭載した製品の開発は国内初。それだけに池田さんによれば、周りからは「本当にできるの?」「無理なんじゃないか」といった反応があったようですが、実務担当者たちは「作ってやる!」と強い熱意をもって集結。同社内の食洗機担当だけでなく、洗濯機や修理部門の担当者までもがデータや知識を持ち寄って試行錯誤を重ねました。
結果、製品は約2年で完成! 社員が垣根を越えて協力し、トレンドやノウハウを製品に反映できるこのスピード感こそ、まさにプライベートブランドの強みです。
「想像以上の効果」生んだ、カラー展開
カラーバリエーションの豊富さも、「e angle」独自の強み。池田さん曰く「人口も世帯数も今後増える見込みがないなか、大手家電メーカーさんでは効率化が進み、カラーバリエーションが減っている傾向があります。逆にお客様からは『もっといろいろな色の商品があったらいいのに』という声が多くなってきています」とのこと。その声は、ブランド誕生当初に発売したレトロ冷蔵庫から、いかんなく反映されています。
「丸みを帯びた形で、取っ手をレトロ調デザインにした150リットルくらいの冷蔵庫を出したところ、非常に好評でした。その時、白黒が多い市場の中で、赤色や薄い緑色などのカラーも展開したことが想像以上に効果がありました」(安倍さん)
2024年に発売して「入荷が間に合わないほど」の人気ぶりを博したDCモーター搭載のリビング扇風機シリーズも、2025年にカラーバリエーションを増やし、3色展開で販売しています。扇風機と言えばホワイト系のイメージが一般的ですが、グレーとピンクベージュが用意されています。

色の選択肢を増やすのは簡単そう……に思えますが、そうではないようです。年代によって好意的に受け止められる色が異なること、イメージ通りの色を表現できないことなど、リサーチから製品化までのあらゆる過程で課題は山積み。それでも「リビングなどにマッチするようなカラー、デザインの扇風機」を求める声が多く寄せられるため、調査や試行錯誤を重ねて対応したのだとか。

「お客様の声に応える」だけでは、ある種“待ち”の姿勢ともいえますが、特定の層を狙った攻めの提案にも余念がありません。
「2024年に立ち上げた『カラーデザインシリーズ』は若年層をターゲットにしています。家電量販店にご来店される方が高齢化し、若年層のお客様が減ってきているという状況が根底にあり、おしゃれなデザイン家電を販売する雑貨店が増えているという背景を踏まえ、当社としても若年層の方に再度ご来店いただけるような商品を作ろうと考えました」(池田さん)
「推し活」がブームになって久しい昨今、家電そのものの色を自身の「推し」になぞらえる人もいます。このように、多様化するニーズにもカラー展開で応えています。

メーカーと競合できそうなモノ作り体制……それでも
e angleの特色は製品の企画・開発段階だけでなく、「品質テスト体制」にもあります。商品を開発する際、製造工場から送られてきた試作品を一度分解し、使われている部品の安全性、操作性、耐久性といった基本性能はもちろん、「操作ボタンの押しやすさ」や「作動音の静かさ」といった使い心地なども含め、いち早くチェックする部門が自社内にあるとのこと。「自分たちの目で品質を確かめ、自信をもってお届けする。これが私たちの大きな強みだと考えています」と安倍さんは述べています。
しっかりとしたチェックを経て製品が世に出た後は、バトンが再び店頭スタッフへ戻ってきます。商品ごとに「どのような要望からこの機能を搭載したか、それによって生活シーンがどう便利になるか」などのマニュアルを作成し、店舗へ案内・発信しているほか、商品によっては勉強会動画なども作り、来店者に伝えるべきポイントを確実に落とし込むようにしているといいます。
今後はどのような製品づくりに注力していくのでしょうか。
「今後も家電市場には成長余地があると見ています。成長の軸は従来の『機能・価格』重視から、『ライフスタイル提案型』『省エネ・サステナビリティ対応』『スマート化』へとシフトしていくと考えています。具体的には環境配慮省エネ製品、若年層・単身世帯向けのミニマル家電、スマート家電とのサービス連携に注目が集まるのではと予想しています」(池田さん)
キーワードは「若年層に共感される機能性とデザインの両立」、「省エネ対応」、そして「IoTとの親和性」。これらを踏まえた商品開発を進めていくようです。
e angleの動向を追えば、現代のライフスタイルやユーザーのニーズを捉えた家電展開がいち早く見えてきそう。何より、私たち消費者の「こんなのあったらいいのに」との何気ない声が、商品として形になる可能性があると思えばワクワクしませんか? 実現が難しそうな要望でも、ダメもとで店頭スタッフにこそっと相談したら……その一言が、次の「業界初」のきっかけになるかもしれませんね。
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