刃は鈍角だが着眼点は鋭角だ!「キッター」の安全性と切れ味は日本文具大賞受賞も納得

【きだてたく文房具レビュー】子どもが「刃を折る」リテラシーを身につけられる安全なカッター

文房具業界における夏の話題と言えば、「日本文具大賞」だろう。2018年の機能部門グランプリは、オルファのキッズ用カッターナイフ「キッター」が受賞した。

 

日本最大の文房具アワードということで、テレビや雑誌などのメディアでも取り上げられる機会が多く、すでにあの不思議な「卵に棒が刺さってる」的なビジュアルを見た方もおられるだろう。

↑「ISOT(国際文具紙製品展)」のオルファブース。“キッズ用”を前面に押し出した、幼稚園ふうの展示になっていた

 

謳い文句には「小さな子どもでも思いのままに切ることを楽しめる安心設計のカッターナイフ」とあるが、果たしてどれほどのものなのか? 本当に小さい子どもに持たせて安心なのか? その辺りをチェックしてみたい。

↑オルファ「キッター」1296円

 

この「キッター」、日本文具大賞エントリー時点では、まさにあの卵に刺さったビジュアルのみが公開されており、どういう仕組みで安心設計なのかは見てもピンと来る要素がなかった。

 

で、ようやく手にした実物はこんな感じ。

↑卵形のベースとキッター本体。エッジのない優しいフォルムが特徴的だ

 

あの土台の“卵”はカッター部の収納ベース兼刃折り器となっており、キッター本体は細身ながら、雰囲気は従来のカッターナイフと見た目はさほど変わらない。カチカチとスライダーを押し出していくと、初めて「安全設計」と言われる最初の要素が見えてきた。

 

金属の刃の代わりに、黄色いプラスチックの薄い板が出てくるのだ。

↑スライダーで刃を出したところ。まず先端の黄色いプラカバーを折り取らないと、切れないようになっている

 

この黄色い板がキッター専用の刃なのだが、もちろん、このまま切れるわけではない。使う際は、まずこの板の先端を卵ベースの下側にある口に挿し込んで、ポキッと折ることから始めなければいけない仕組みなのだ。

 

そもそも大人でも、カッターナイフの刃を折る、という意識がなく、刃をセットしたらいつまでもそのまま切り続けるユーザーも多い。カッターナイフメーカーのオルファとしては、「刃は折るものですよ」という教育を、子どものファーストカッターとなるキッターから徹底して仕込もう、ということなのだろう。

↑卵型ベースに刃の先端を挿し込んで、山折り・谷折りと上下に動かすと先端が折り取れる。折れた部分はそのままベースの中に入る

 

良くできているな、と感じたのは、刃折り器にキッターを挿し込んだ時のこの角度。刃折り器に対して水平ではなく、ちょっとした角度がついているのだ。

 

子どものボディサイズと腕の力だと、水平のものを折り曲げようとするのは意外とやりにくい。最初からある程度の角度が付いていることで、力をかける場所=折り曲げ角の頂点を意識でき、スムーズに刃を折る動作ができるわけだ。

↑刃の露出は、ほんの数ミリといったところ

 

刃先端のカバーをポキッと折ると、ようやく金属の刃がこのようにちょっとだけ露出する。本当に、ほんのちょっと。実際に大人の使うカッターも、紙に当てて切っているのはこれぐらいの部分なので、これで充分に切ることができるのだ。

 

ほとんどがプラに包まれて金属刃の露出はわずかなので、子どもが刃を触って怪我をする、という危険は少ない。とはいえ、もちろん刃に直接触れれば、指などを切ってしまう可能性はゼロではないので、そこはやはり子どもだけで使わせず、親や監督者がきちんと見てやっていて欲しい。プラでコートされている分、深くズバッと切れ込む心配はなくて、怪我をしたとしてもせいぜい薄皮が切れて、ちょっと血が出るぐらいだろうけども。

↑オートロック機能がないので、先端を突き立てると、そのまま刃は本体にズルズルと収納される。これも安全性を考慮した仕様だ

 

刃の安全要素でついでに言うと、刃の折れ口が斜めではなくフラットになっているので、まず突き刺すということができない。さらに、従来のカッターと違ってオートロック機構(スライダーで操作しない限り、刃が後退しない機構)が搭載されていないので、無理に力を込めて突き刺そうとすると、刃がずるずると本体内に戻ってしまうのだ。

 

小さい子どもにカッターナイフを持たせると、逆手に握って先端を床面や壁、下手すると自分の体に押し当てることがたまにある(本当にあるのだ)ので、オートロックなしはかなり安心できる。

↑わずかな刃でも、シャープに切れる。このあたりはさすがオルファ製で、子ども用とはいえ間違いない

 

肝心の切れ味であるが、さすがオルファという感じでまったく不安なし。コピー用紙や画用紙などは、スイスイと自由に切ることができる。これで刃自体の切れ味が落としてあると、逆に切る時に力をかけすぎて怪我につながることもあるだろうから、子ども用とはいえ(だからこそ)切れ味は大事な要素なのだ。

 

で、先ほど「プラでコートされている分、深く切れ込む心配はない」と書いたが、このキッターで切れる厚みはせいぜい画用紙2~3枚重ねた程度。ダンボールだと、例えばAmazonの梱包用箱の薄いものでも、下まで切り込むことはできない。逆に切れないことを利用して、ダンボール工作で折り曲げる際の切り込み用カッターとして使っても、面白いかもしれない。

↑キッター専用替刃は2本セットで518円。刃を4回折ったら交換となる

 

さて、使っているうちに切れ味が落ちてきたな、と感じたら、子どもに「刃を新しくしようか」と言ってあげよう。

 

切るために刃を出している状態から、スライダーを1クリック分だけ前進させると、ちょうど刃の折り線が出てくるようになる。従来のカッターだと、折るのに刃をどれだけ出せばいいのか感覚的につかみづらいということもあるが、その点キッターは直感的に分かりやすい。

 

あとは最初と同じように卵ベースに挿し込んでポキッ、でOK。そこからまた1クリック分だけ前進させれば、切れるようになる。

↑刃の交換に関しては、子どもがやりやすいという工夫は特にない。わずかでも露出した刃に触れることになるので、ここは大人の仕事となる

 

ちなみに、使い終わった刃を交換する手順は、従来のカッターとほぼいっしょ。本体後端のキャップを抜き、スライダーを外して刃を交換する。新品状態の刃はほぼ金属刃が見えないので危険は少ないが、古い刃の処理なども必要になるし、なにより子どもに簡単にできることでもないので、ここは見ている親がするべき作業だろう。

 

特殊な刃や非オートロックなど、確かに安全性の高いキッターだが、使ってみて感じたのは、どちらかというと“リテラシー教育性の高さ”だ。

 

随所に刃を折る習慣付けがしやすく作られているし、刃のわずかな露出も「切る時はここを使って切るんだよ」と分かりやすい。子どもの頃からこういうものを使っていれば、怪我をする心配も少なくカッターを安全に使うリテラシーが身につくのだろう。

 

今の子ども、羨ましいことである。

さて、最後にもうひとつカッターナイフを使う時に忘れてならないものがある。カッターマットだ。

↑オルファ「ふたつ折りカッターマットA3」2581円

 

子どもに自由に切らせていると、だいたい思いもよらないところまで切り進めてしまうので、床や机を保護するためにはできるだけ大判のもの……少なくともA3サイズのマットを使って欲しい。これは、カッターの刃を保護して切れ味を長持ちさせる効果もある。

↑中央から折り畳むと、コンパクトなA4サイズに変形。これなら勉強机の引き出しにも入るので、収納場所を考えずに済むのはありがたい

 

ただ、A3サイズまでなると使いやすいが、今度は収納場所に困ることもあるだろう。しかし、二ツ折カッターマットであれば、使わない時は半分のA4サイズにパタンと畳んでおけるのだ。これくらいなら、どこでも適当に収納しておけるのではないか。

↑折り線が波打っているので、普通に切っている限り、まず刃が入り込むことはない

 

面白いのは、この二つ折りにする折れ目が波打っているところだ。これにより、カッターナイフで切っているうちに刃が折れ目に入り込んでしまうことが防げるのである。

 

良くできた製品なので、こちらは子どもだけでなく大人も使ってみて欲しい。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

スッと切れるが中身は無傷! 通販ラヴァー喝采の「カッター」があったー!

【きだてたく文房具レビュー】段ボールの梱包テープを安全確実にカットするカッター

我が家はとにかくやたら段ボールが届く。これは夫婦ふたりして、通販およびネットオークションに過剰依存しているのが原因であり、最近では届く段ボール箱が、週に平均して10個を下回ることはない。

 

そういうこともあって、開梱作業用の梱包オープナーで「新製品が出た」という情報には、敏感にならざるを得ない。なにせ毎日1~2個はバリバリと開けてるわけだから、ちょっとでも使いやすい道具が欲しいのだ。

 

そこで今回は、先の4月に発売されたデザインフィルのオープナー「ダンボールカッター」を1か月間使ってみての評価をしてみたいと思う。

↑デザインフィル「ダンボールカッター」928円

 

いきなり結果から言えば、評価は「とても良い」だ。

 

運用においてやや気になる点がないでもないが、それでも今後我が家における開梱作業の柱としてバリバリ働いてもらおう、と考えているぐらい性能の良いオープナーである。

↑使う際は、コインの両端を持ってパカッと開くと刃が露出する

 

まず使い方だが、コイン形のボディを中心からパックマンのように開くと、中からセラミック製の刃が現れる。

 

この開閉するときの動作がやや固い(開けづらい)のが、先に述べたやや気になる部分なのだが、これは家庭内で頻繁に使われる刃物であることから、チャイルドロック的な意味合いでこうなっているのだろう。単にヒンジの締め付けが強すぎるだけで、使ってるうちに開きやすくなるかな……とも思っていたのだが、少なくとも1か月程度の使用では、変化はなかった。やはりこういう仕様らしい。

↑刃を突き立てると、サクッと鋭く食い込む感触がある

 

で、現れた刃を段ボールの口を留めているテープ部に突き刺し、そのまままっすぐ滑らせるとテープがきれいに切れて開梱できるというもの。作業的には、これまでの梱包オープナーとさほど変わることはない。

 

では、このダンボールカッターのどの部分が「とても良い」かと言うと、まずこのセラミック製の刃がとても「ちょうどいい」のだ。

↑三角刃の底辺から頂点までの高さが、約4㎜。これが中身を傷つけず、気持ちよく開梱できるちょうどいい長さだ

 

刃が段ボールに刺さり込む深さは約4㎜。この4㎜というのがちょうどいい。

 

刃先が1~2㎜ではやや物足りない。刃が短すぎると、段ボールの綴じ口の隙間にうまく入り込まず、上滑りをおこすこともある。かといって10㎜以上も刺さるようでは、段ボールの中身を傷つけるかもしれないという怖さもぬぐえない。

 

そもそも段ボールの厚さは規格が決まっており、日常的に宅配用梱包として多用されているのが「Bフルート」と呼ばれる厚さ3㎜のもの。引っ越し用や家電などを梱包する頑丈な「Aフルート」で5㎜厚。つまり刃先が4㎜というのは、中身を傷つける心配がほぼゼロで使えて上滑りもしにくい、ちょうどいい長さというわけだ。

↑海外からの荷物にありがちなミイラ巻き。ビニールテープも頑丈なものを使っているのか、プラ製のオープナーでは手こずることもある

 

さらにこの4㎜の刃は、海外からの荷物にも使いやすい。

 

海外便は途中で箱が開く危険性を考慮してか、ビニールテープでやたらとぐるぐる巻きに梱包されていることが多い(一般的に“ミイラ巻き”などと呼ばれる)。むろんしっかり梱包してくれることはありがたいのだが、厚手のビニールテープが重なった部分には、安全性を考慮したプラスチック刃の梱包カッターでは歯が立たない、なんてこともある。

 

対してこのダンボールカッターの刃は、切れ味もちょうどよく、刃先を指でなぞって皮膚が切れるほど鋭くはないが、テープには気持ちよく刺さるので、金属製のカッターを使うほどおっかなびっくりせずに、グイグイと多重ビニールテープに切り込めるのがとても気持ちいいのだ。

↑使用時のフォルム。刃のついた方の山に人差し指を乗せると力をかけやすい

 

また、使う際のフォルムも“ちょうどいい”感が高い。コイン型を開いて山がふたつ連なったような形で使うのだが、この山の丸みが指をかけるのになかなかしっくりと来るのである。

 

つまり力をかけやすいということで、先の海外から届いたミイラ巻きも切りやすい。さらに刃がセラミック製の頑丈なものということで、多少はねじり込んだりひねったりという無理な動きも、フォルムとの合わせ技で効いてくるという寸法だ。

↑磁石で貼れると収納場所に困らない。意外と重宝する機能である

 

ちなみにボディ裏面には磁石を内蔵しており、冷蔵庫や玄関ドアに貼り付けることもできる。玄関先やキッチンというのは開梱作業をしがちな場所だけに、これも地味にありがたい機能だ。

 

こういう細かく気の利いた感じも含めて「とても良い」ので、開梱ツールに迷っている通販ヘビーユーザーは、一度試してみてほしい。サクサクと効率よく段ボールが開けられるので、ほんとに快適なのだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

プラモもサクサク進む! 超音波でぬるっと切れる電動カッターがやめられない気持ち良さ

【きだてたく文房具レビュー】工作がサクサク進む超速電動カッター

GetNavi webとは関係ないメディアでの話で恐縮なのだが、半分趣味、半分仕事みたいな感じで「ビニール傘の柄に鬼瓦をつけた盗難防止傘」や「後軸にこたつがついて冬でも手が暖かいペン」のような“駄工作”をあれこれ作っている。そのようなコマゴマとした物作りをしていると、ちょっとでも作業でラクをするための工作機械が欲しくなってくるものだ。

 

特に切る・削る機械は作業効率が大きく違ってくるので、できるだけ導入したい。中年になってくると、ノコギリだの紙やすりだのでチマチマ手作業をやっているのは時間がもったいないし、なにより体力的につらい。カネで解決できることなら、カネでなんとかしたいのである。

 

……ということで、昨年の秋頃にアメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で、バッテリー式で携帯できる超音波カッターなるものを、見つけて飛びつき出資しておいたのだが、つい先日手元に届いた。

↑CUTRA「WONDERCUTTER」248ドル(米国・Kickstarterにて)

 

 

クラウドファンディング発の「WONDERCUTTER」は、コンパクトなDIY向きの超音波カッターだ。見た目はひと昔前の電動歯ブラシぐらいのサイズ感と雰囲気である(もちろん口に入れたらとんでもない大惨事だが)。

↑4万回/秒の超高速で振動するカッター刃。壮絶な切れ味を発揮するが、刃自体は普通なので鉄やガラスなど、カッターで切れないものには対応しない

 

そもそも超音波カッターとは何かというと、ざっくりいえば“超音波で刃を振動させることによって凄まじく切れるカッター”のこと。

 

例えば包丁で肉を切るとき、刃を前後にギコギコと動かしながら切るだろう。あのギコギコ前後に動かす動作をもっと細かく、1秒間に数万回繰り返す(WONDERCUTTERは4万回/秒)ものだと考えて欲しい。

↑木製の棚の角を削り取るDIY中。取り回しの良さはとても助かる

 

そしてWONDERCUTTER最大のポイントは、バッテリー内蔵で、場所を選ばずどこでも使えるということ。

 

ベース本体には腰のベルトに引っかけられるフックがついているので、そこに引っかけてしまえば、屋外だろうと電源の取り回しが面倒な空間だろうと持ち出しは自在。机の上に細かいパーツを広げてのプラモ作りなんかにも、この取り回しの良さはかなり効果を発揮してくれた。

↑日本で使う場合は変換コネクタが必須。家電量販店なら数百円で購入できる

 

充電には付属の電源アダプタを使うのだが、実はこのアダプタのプラグが日本仕様ではないSEタイプ(欧州圏の一部やアフリカ、中国で使われているもの)になっている。日本国内であれば使う前にSE→Aタイプの変換コネクタを準備しておくと良いだろう。

 

電圧は問題なく100Vに対応しているので、昇圧用のアップトランスなどは必要ない。プラグさえ日本用のAタイプになっていれば、そのままコンセントに差して充電が可能だ。

↑プラモのパーツ切り出しもおそろしく早い。ニッパーでチマチマ切るのが馬鹿らしくなるぐらいだ

 

使うときは、まずベース側の電源ボタンを長押し。続いてカッターを取り出し、先端に近い位置のボタンを押すとごくかすかに「プィー……」とモスキート音のような高周波ノイズが聞こえてくるので、それで準備完了だ。

 

あとはカッター側のボタンを押しっぱなしにしたまま、切りたい対象に刃を押し当てると、ぬるっ……と刃が入っていく。

 

この刃が入る感覚が、あまりに普段のカッターと違うので驚くはずだ。感覚的に言うと、少し温めたナイフでバターを切る感触、というのが一番近いように思う。少し硬めのプラ板だろうとMDF合板だろうと、刃が入ってしまえばあとはもうぬるっと切れる。段ボールなんかは刃を入れている抵抗感すら感じないので、曲線切りも自由自在である。

 

なんとカッターマットですらザックリ切れてしまうので、対象物を左手で持ちながら右手でカッターを入れていく、という感じで使うと良い。

↑カッターマットもこの通り両断できる

 

切る際のコツとしては、あまりモタモタしないこと。刃が高速振動しているので、同じ場所に刃がありつづけると、摩擦でどんどん熱が発生してしまうのだ。

 

そのため、紙であれば焦げてしまうし、プラ類も溶けて切り口がガタガタになってしまう。切る時は迷わず、切れ味に任せて素早くカットしてしまうのがポイントである。

↑プラ製のおもちゃも、10秒あれば真っ二つ。ただし振動で発生した熱で切り口が溶けてしまったので、ややガタツキがあり、よく見ると刃にも溶けたプラが付着している

 

また、熱以外にも刃の劣化が早いというデメリットがある。

 

そりゃ秒間4万回もギコギコと切っているようなものだから、普通にカッターを使っているよりは、はるかに早く刃が駄目になってしまうのだ。WONDERCUTTERにはNTカッター製のデザインナイフ用替え刃(BDC-200P)が使えるので、少しでも切れ味が落ちたなと感じたら、即座に交換していく方が良いだろう。

↑刃の交換中。替刃は文具店で手軽に購入できるので、切れ味が落ちたと感じたらケチらずすぐ交換するのがベスト

 

ちなみに刃の交換は、カッター先端の穴に1.5㎜の六角レンチを入れてイモネジを外し、刃と接合ユニットを取り出す。あとは接合ユニットに新しい刃をセットしてカッターに戻して、またイモネジを締める、という手順となる。

 

ところが、付属の六角レンチが異様に低品質で、刃を交換しようとしたらあっという間にレンチ先が削れてネジを回せなくなってしまった(2本付属していたが、2本とも駄目)。できれば、事前にちゃんとした1.5㎜六角レンチを準備しておいた方がいいと思う。

 

もうひとつ、ここはちょっとなー……というのが、カッターの作動ボタンの仕様。カッターを使い終わってベースに戻す際に、カッターを収める穴のフチにボタンがひっかかり、勝手に押され続けてしまうことがあるのだ。こうなるとベースの中で延々と振動し続けてバッテリーを消耗するし、なにより再び取り出す時などに危なくてしょうがないのである。

 

クラウドファンディングで開発された製品によくある、「ここ、ちょっと改良すればいいのに……」というやつなのだが、安全性に関わる部分だけに、ここはなんとかしておいて欲しかったと思う。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。近著にブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)がある。

これは癖になるスルスル感! カーブもギザギザも思い通りの病みつきガラスカッターマット

【きだてたく文房具レビュー】高熱でも超音波でもかかって来い! のカッターマット

 

文房具には、「必要があるから使うモノ」と「使ってみて初めて必要性が分かるモノ」がある。

 

必要があるから使う……というのは、これを使わないと元から作業が成り立たないモノ。例えばペンがないと字は書けないし、糊を使わないと接着できない。つまり、かなり重要度が高いやつだ。対して、カッターマットなんかは、なくても紙が切れてしまう。新聞とか雑誌を下に敷けばなんとかなるし、気にせず机の上ダイレクトでカッター使っちゃう人だっている。

 

ところが、実際にマットを使うとカッター刃のもちは良くなるし、なにより切りやすい。一度使えば「あ、やっぱりマットいるんだ」と分かるのだ。

↑筆者の作業机は全面をカッターマットにしてある。なにか思いついた時に、すぐカット作業ができて便利↑筆者の作業机は全面をカッターマットにしてある。なにか思いついた時に、すぐカット作業ができて便利

 

で、もちろん筆者も、カッターマットの必要性は把握していたのだけど、このほど、実はその“さらに先”があったことを知った。使ってみたら、ガラス製カッターマットがものすごく良かったのである。

↑ゴッドハンド「ガラスカッターマット」151x227mm 1944円↑ゴッドハンド「ガラスカッターマット」151x227mm 1944円

 

今回紹介したいのは、ゴッドハンドの「ガラスカッターマット」。名前に聞き覚えがない人もいるかもしれないが、ゴッドハンドというのは文房具メーカーではない。異常に鋭くて切れ味の良いニッパーなどを作っている、模型工作用具のメーカーだ。

↑耐熱硬化ガラス製なので、ヒートカッターや超音波カッターにも使用可↑耐熱硬化ガラス製なので、ヒートカッターや超音波カッターにも使用可

 

そもそも、ガラスがカッターマットに使えるのか? と思われるかもしれないが、それが使えるのである。

 

実は、かつて印刷所でアナログ製版をしていた頃は、フィルムを切り貼りするのに巨大なガラスの作業台が使われていたのである。また、日本ではあまり普及していないが、海外のクラフト業界では、けっこう使われているとも聞く。

↑マットに刃を取られないので、フリーハンドで曲線を切るのがおそろしいほど軽快に。これはラクだ↑マットに刃を取られないので、フリーハンドで曲線を切るのがおそろしいほど軽快に。これはラクだ

 

では、普通の軟質樹脂製のカッターマットと比べてガラスの何がいいかって、まず切りやすい。カッターの刃先がガラスの上で滑るので、刃がスルスル動かせる。思った方向に刃を動かせるので、曲線カットや細かい切り抜きなんかもすごくやりやすいのだ。

 

ただし、その代わりカッターの刃が鈍るスピードはやたら速くなる。刃もちの悪さは意識して、こまめに刃を折る必要があるだろう。

↑左が軟質樹脂製マット、右がガラスマットでのギザギザ切り。左は、カドの頂点がえぐられたような穴になっている↑左が軟質樹脂製マット、右がガラスマットでのギザギザ切り。左は、カドの頂点がえぐられたような穴になっている

 

ガラスだと刃がマットの中に沈み込まないというのも、切りやすさのポイント。

 

軟質マットでギザギザと刃を動かして切ると、曲がり角の頂点に大きくえぐったような穴が開いてしまう。これ、「こういう切り方をしたら、こうなるものだ」と思って今まで気にもしていなかったのだが、実はマットに刃が沈み込んでいたからこその現象だったのだ。

 

その証拠に、ガラスカッターマットなら切り口がキレイで、穴も開いていない。

↑塗料や油性インクも、ひと拭きでキレイに。これはとてもありがたい↑塗料や油性インクも、ひと拭きでキレイに。これはとてもありがたい

 

あと、これは切りやすさには関係ないのだが、作業中に塗料や接着剤が付いても溶剤で簡単に拭き取れる、というのもガラスの大きなメリットだ。

 

油性マーカーのインクなんかも、軟質樹脂製カッターマットに付いてしまうと、もう二度と取れないものだが、これも無水エタノールとペーパータオルで拭うと、すっかりピカピカ。ペーパークラフトをする時にのり・接着剤をこぼしたり、塗料がついてしまったりするのはよくあるトラブルだが、それが簡単にリカバリーできるのはありがたい。

 

サイズ比やカッター刃のランニングコストで考えれば、かなり割高感のあるマットだが、趣味でクラフトをやっている人なら買って間違いはないと思う。性能的には、一度使うともう軟質樹脂製マットに戻れないぐらいのインパクトがある。

 

ただしかなりの人気商品のため、一度売り切れるとしばらくは品切れが続いてしまう。ネットで見つけたら即買いをオススメしておく。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。