窓だけじゃない! 冬も梅雨にも発生する「結露」の原因と家事のプロが教える徹底カビ対策

朝起きると、窓の桟(サン)が水滴でビショビショ……おなじみの「結露」です。ただの水だと放置しておくと、しだいに周囲のカーテンや壁紙にカビが発生。しまいには、健康被害に及ぶこともあります。どう対策すればいいのでしょうか?

 

そもそも結露とはなぜ起きるのか、メカニズムを知ったうえで、しっかりと対策しましょう。掃除のプロで、清掃マイスターの資格ももつ山口かなさんに教えていただきました。

 

「結露」はなぜ発生する?

結露とは、暖かく湿った空気が冷やされ、空気の中に存在している水蒸気(気体)が水(液体)に変化すること。

 

「空気中には水蒸気が含まれていますが、空気中に含まれる水蒸気の量には限度があり、それを『飽和水蒸気量』といいます。この飽和水蒸気量は気温が低くなると小さくなるため、空気中にいられなくなった水分が水滴として現れるのです。反対に、気温が高くなると空気中に存在できる水分量は増えます。身近な例を挙げれば、氷入りのお冷やのグラスには、うっすらと水滴がついていて、やがてこぼれ落ちていきますよね。この現象が結露です。
これと同じように、冬は部屋の中で暖かく湿った空気が、冷たい外気で冷やされた窓にふれることにより、窓の表面に水滴が発生するのです」(日本清掃収納協会・山口かなさん、以下同)

 

つまり、空気中に水蒸気がたくさん含まれているときに気温差が起きると、結露が発生するわけです。外気温が低い冬に室内をエアコンで温め加湿していると、とたんに窓には結露が起きます。そして結露は冬だけのものではありません。空気中の水分量が多い梅雨には、室内で冷房を使うことで、空気が滞留しやすいさまざまな場所で結露が起きてしまいます。

 

結露を放置しておくとどうなる? 結露が引き起こすトラブルとは

結露をそのままにしておくと、さまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

「まず、建物への影響がでます。水分が付着した家具、壁紙、カーテンにカビが発生すると見た目にもよくありませんし、カビをきれいに掃除することもとても大変です。さらに悪化すると、壁紙の内部にカビがぎっしりということも。また建物内部の構造を支える木材にも腐食やサビが起こり、住宅自体の耐久性や性能の低下になり、住宅の寿命を縮めてしまう恐れがあります。
建物内にカビが発生すると、それを食べるダニが繁殖していきます。カビの胞子やダニの死骸が呼吸により体内に入ることで、アレルギー性皮膚炎や喘息など、シックハウス症候群の症状が出ることも考えられますね。
カビやダニは、暖かく湿った環境で盛んに繁殖します。カビやダニを増やさないようにするためには、まず結露を発生させないよう、適正な温度と湿度を保つことが大切です。結露を放置せず、毎日の生活の中でこまめに対策していきましょう」

 

ちなみに、賃貸物件の場合でも、結露を放置した結果カビが発生し部屋内に汚損が発生した場合には、借主の責任になることもあります。このように、 “ただの水” と捉えていると多くの弊害につながるので注意が必要です。

 

では、やっかいな結露を防ぐために、どのように対策を行えばいいのでしょうか?

 

結露を予防する正しい対策

まずは、結露が発生しない環境を整えることが大切です。

 

「温度と湿度を適切に保つことが大切です。結露ができる室内と外気の温度差は、湿度の高さにより変わります。湿度が高い状態では、温度差がわずかであっても結露が発生しやすくなるのです。そのためには、なるべく室内の湿度を下げておくことが大切です。とくに結露の発生しやすい窓まわりの湿度を重点的に下げましょう。結露を発生させない環境を整えるために、以下のようなことに気をつけてください」

 

1.換気する

「もっとも大切なのが換気です。朝起きたら一番に窓を開ける。部屋がジメジメしてきたなと感じたらそのたびに換気をする。それだけでもお部屋の環境は改善されます。
部屋の作りにもよりますが、対向する場所に窓があるなら両方を開けて風の流れをつくることも効果的です。部屋に窓が少ない場合は、窓を開けると同時に台所の換気扇をつけてください。また、24時間換気システムがある場合は、つけっぱなしにしておきましょう」

 

2.窓の近くに除湿機を置く

「結露は空気中の水分が冷たい外気で冷やされた窓に接することによりできるので、窓付近の湿度を下げることが大切です。窓際の壁に付近に除湿機を置きましょう。設置の際、除湿機の向きは自由でかまいません」

 

3.エアコンをドライ設定にする

「湿度が高いとカビが生えやすくなります。カビを防ぐためには湿度を適切にキープするドライ機能を活用しましょう。年中つけておく必要はありませんが、湿度が高くなる梅雨や結露の生じる冬場はおすすめします。ただし、ずっとつけておくと乾燥し過ぎてしまうので、じめじめしていると気になったときにつけるようにしてください」

 

4.窓の近くに水槽を置かない

「水の入っている水槽は加湿の原因になります。窓際に置くと結露を誘発するので、水槽を置く場合は外気に面した壁側ではなく、部屋の中心に近い場所に置きましょう。観葉植物も多少は加湿になりますが、植物には水のほか太陽の光や、風も必要ですから、そう気にすることもありません。気持ちの良い窓際に置いてください。お世話するときに時に窓を開け、風通しを良くしてあげましょう」

 

結露が発生しやすい場所と掃除方法

このように対策しても結露が発生してしまったら、まずは換気をする。そして水滴のうちに取り除くことが何よりも大切、というのが原則。でもこまめに掃除するのは大変です。無理なくお手入れが続けられる方法を、具体的に解説していただきましょう。

 

【準備】揃えておきたい結露対策3アイテム

「結露の掃除には、スクイジー、吸水タオル、クロスこの3つを揃えておけば十分です。最近ではいろいろな、結露掃除のアイテムが販売されていますが、『ここにはこの道具。あちらにはこの道具……』と用途を分けてしまうと複雑になり、かえって掃除が面倒になることも。すぐに行動に移せるように、アイテムは必要最低限のものだけでOKです」

 

アイテムの選び方のポイント

・スクイジー
「持ち手と先端のゴムの部分が一体化されているものよりも、先端のゴムの部分が劣化してしまうので交換可能なものを選ぶといいでしょう。最近では、持ち手の部分がボトル形状になっていて水滴が溜まる仕組みのものもあります」

 

・吸水タオル
「掃除用道具として販売されていますが、カー用品や水泳用の吸水タオルもあります。基本的にはどれを選んでもかまいませんが、吸水しやすく、絞りやすいものがおすすめです」

 

・クロス
「どんな場面にも活用しやすいクロスは吸水性が良く絞りやすいものを。最近ではさまざまなデザインのクロスがあるので、気に入った色や柄を選ぶといいでしょう」

 

・タオル
「クロスがない場合にはタオルで代用してもかまいません」

 

・吸水スポンジワイパー
「高いところも拭き取れるのであると便利なアイテムですが、必須ではありません」

 

1.窓と窓枠

「もっとも結露が発生するのが窓と窓枠。とくに発生しやすい時間帯が朝です。忙しい時間帯ではあるものの、このタイミングでのお手入れがカビやダニを繁殖させないためにも重要です」

 

【掃除方法】

(1) 窓枠の下に吸水タオルを置く

「垂れてきた水滴をキャッチするための吸水タオルを置きます」

 

(2) スクイジーを上から下に動かす

「スクイジーの傾きは中心の方を下げるように使うと、窓の端に水が落ちることなく、吸水タオルの上に落ちていきます」

 

(3) 前列の拭いたところとかぶるようにスクイジーをあてる

「次は、前に拭いたところとかぶるようにスクイジーをあて、上から下に動かします。拭いたところを重ねることで拭き残しを防ぎます」

 

(4) スクイジーを右から左に動かす

「ガラス全体を上から下にと拭き終えたら、下部を右から左に一拭きしましょう。下に溜まった水をまとめて落とすことができます」

 

(5) 窓枠の水滴も忘れずに拭き取る

「最後にクロスで窓枠の水滴を吹き取ります。結露はガラス面につきやすい印象ですが、実は窓枠のサッシにも多く付いているので注意が必要です。この部分は窓の木枠等と直に接しているため、放置してしまうと木製の枠の場合はそこから腐食してしまう恐れがあります。ぜひ忘れずに水分を拭き上げてください」

 

2.玄関ドア

「南側にリビング、北側に玄関がある間取りをよく見かけます。北側は太陽の光がが入りづらく寒いので、結露が発生しやすい場所です。とくに玄関ドアの素材が金属である場合、結露しやすいので確認してください」

 

【掃除方法】

(1) 吸水スポンジワイパーでさっと拭きあげる

「玄関扉には柄のついた吸水スポンジがあると一拭きですべて終わらせることができて時短に。柄があることにより手では届かない上や、腰をかがめないといけない下の部分を、姿勢を変えずに掃除することができる点でもおすすめです」

 

3.トイレのタンク

「意外と見落としがちなのがトイレのタンクです。トイレはほかの場所に比べ温度が低いことも原因の1つ。また雑菌などが繁殖しやすい空間でもあるため結露を放置するとカビの温床になりかねないのです」

 

【掃除方法】

(1) こまめにクロスで拭く

「トイレのタンクの素材が陶器の場合は結露になりやすいのです。確認して結露がある場合には、クロスでこまめに水滴を拭き取りましょう」

 

カビの発生する3つの要因と対策方法

それでもカビが発生してしまった場合の対処法についても教えていただきました。カビは「温度」「湿度」「ホコリ」の3大条件が揃った時に発生します。つまり、この条件が揃わない環境づくりが大切です。

 

・温度

「カビは通常0〜40℃の範囲で生育可能ですが、種類によっては0℃以下で生育したり、高温でも死滅はしないものもあります。人間が快適な20〜30℃がカビにも快適で繁殖しやすいため、温度を調節してカビ繁殖を防ぐのは難しいかもしれません」

 

・湿度

「カビは80%以上で活発に繁殖します。中には60%以下でも繁殖できるカビもいます。大切なのは、湿気のもととなる水分をこまめに拭き取ること、また通気をして湿気をため込まずお部屋の空気循環をよくすることが大切です。24時間換気システムは常時つけておき、換気システムがない場合は換気扇を常時つけておくことをおすすめします」

 

・ホコリ

「カビは、ホコリだけでなく食べ物、人のアカや髪の毛、プラスチックなども栄養にします。汚れているものはすべてがカビのエサになると肝に銘じて、日ごろからこまめに掃除するように心がけましょう」

 

では、カビを増やさないための具体策とは?

 

1.窓、カーテン、そしてカーテンレールを掃除する

「カーテンを開け閉めすると、ホコリが舞います。ホコリに水分が付着することによりカビを繁殖させてしまいます。ぜひカーテンやレースカーテンの洗濯も定期的にしていただきたいですね。カーテンの洗濯時期としては、結露が増える冬の前の秋頃がいいタイミングです。また、見えていないカーテンレールにもホコリが堆積してしまいます。ホコリが溜まってないかチェックしてください」

 

2.カーテンを買い替えの際に防カビ仕様の商品を選ぶ

「結露が発生しやすいお宅では、カーテンの買い替えを検討してみてはいかがでしょうか? 定期的なお洗濯はもちろんしていただきたいのですが、『防カビ』仕様のカーテンにするだけで、日々のお手入れはしやすくなります」

 

3.窓の出窓などに本や布を置かない

「窓付近は湿度の高い場所なので紙や布を置いておくとカビが発生する原因となります。また、物を置くことで、掃除をするたびにものをどかさないといけません。そうなると窓周辺のお掃除も行き届かなくなります。窓の周りはできるだけものを減らし、いつでも掃除しやすい状態にしておくことが理想的です」

 

壁にカビが発生してしまったら? 早めに対処したい掃除方法

壁紙表面にカビが発生すると徐々に繁殖していきます。早めに掃除をしましょう。カビの繁殖段階に応じて掃除方法を教えていただきました。

 

【STEP 1】
まずはアルコールで軽く拭く

「発生後すぐであれば消毒用のアルコールで拭き取ります」

 

【STEP 2】
落ちない場合は中性の食器用洗剤を薄めて拭く

「カビが落ちない場合には、食器用洗剤を水に少し混ぜて、やさしくこすりましょう」

 

【STEP 3】
どうしても落ちない時は塩素系の漂白剤を薄めて拭く

「それでもカビが落ちないときは塩素系の漂白剤を水に100倍程度に希釈して拭き取りましょう。漂白剤は、酸素系でも良いのですが、塩素系漂白剤の方がより殺菌作用が強いためおすすめです。漂白剤を使う際には手袋をしてください。そして最後にクロスでしっかりと水分を拭き取りましょう」

【注意したいポイント】
「壁の素材によりお手入れ方法も違います。今回は一般的な、ビニルクロスのお掃除方法を説明しましたが壁紙のタイプによっては跡が残ってしまうこともあるので注意してください。また、洗剤等使用の際には、事前に目立たない場所で試してみてからおこなうようにしてください」

 

一見便利そうでも……結露対策グッズの注意点

最近では100円ショップでも結露やカビ対策のアイテムが数多く見られます。しかし山口さんはこのようなアイテムも使い方を間違えると逆に湿度の高い環境になってしまうと言います。

 

「例えば、最近流行の珪藻土でできたアイテムは、吸水するので一見さらさらに見えるのですが、実際は中に水分を吸収している状態です。定期的にベランダなどで天日干しをする必要があります。また、ガラス下部に貼り付けるタイプの吸水テープも使用期間があります。ところが、その期間や目安を超えて長くそのまま放置して使い続けているお宅も多く見受けられます。テープが窓にくっつき劣化し、糊がくっついてしまい剥がれにくくなることもありますのでご注意ください」

 

便利アイテムは、どのようなポイントに気をつけながら選べばいいのでしょうか?

 

「剥がした時に糊が付かないか? しっかりと水分を吸えているか? 効果はどのくらいの期間持続するのか? などをチェックしつつ、こまめに交換、お手入れを行ってください。結局のところ、面倒なことはやりっぱなしにしがちです。ご自身の生活スタイルにあったアイテムを選ぶようにしましょう」

 

こまめな換気と拭き取りが大切。あらかじめ掃除しやすい環境づくりを

「結露ができやすい環境であるかは、基本的に家の作りに起因してしまうことが多いのです。例えば、家の断熱性の違い、家の向き、家の気密性など。総合的な要因が重なり、結露が発生します。そして結露のある空間は、カビやダニの育つのに快適な環境であることには違いありません。家自体の性能を上げることはなかなかむずかしいですが、日々の改善方法で結露は緩和されます。

 

私がもっともお伝えしたいのは、やはり、換気をして水滴のうちに拭きとること。こまめにお掃除するのは大変と思うかもしれませんが、いつでもさっと行動できるように、窓周りに物を置かず、使いやすいお気に入りの道具を揃える。自分の中で、お掃除をするハードルを下げていける工夫をしてみましょう」

 

心地よい暮らしにするための極意は、物を減らして、お気に入りの道具で手入れをする。自分が前向きに行動するための環境をつくる___とてもシンプルで効率的な方法でした。

 

プロフィール

じぶんサイズ代表 / 山口かな

清掃マイスター認定講師、片付け収納マイスター認定講師、生前整理診断士。掃除や片付けの仕方を知らず苦手と感じていた自身の経験をいかし、依頼者の暮らしにあった最善の方法を提案している。また、親のための家事代行サービスを展開。住まいの整備にとどまらず、介護、施設の提案、葬儀、相続の提案など人生を総合的にサポートしている。
HP

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

風呂場のカビ対策で家中のカビを防げる!重曹・クエン酸・酸素系漂白剤で掃除する「バスルーム」のナチュラルクリーニング術

梅雨は、高気密高断熱が進んだ現代の家屋でも、家の中がジメジメしやすくなるシーズンです。ご存知の通り、湿気はカビの増殖を促します。その対策となる“カビ取り”といえば、一般的に塩素系漂白剤が使われることが多いのですが、強い殺菌力と除菌力がある一方で、身体への負担も気になるところ。使用頻度はなるべく抑えたいですよね。

 

「ナチュラル洗剤を使った掃除だけでも、カビの発生が防げる」と話すのは、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさん。しかも、入浴後に5分の習慣を取り入れるだけで、基本的には日々のバスルーム掃除にナチュラル洗剤すらほとんど使わなくてOKだとか。日々の掃除の負担が減らせそうですね。

 

費やす労力と洗剤量を最小限にできる、本橋さんのバスルーム掃除術を解説していただきましょう。

 

洗浄力が弱い?「ナチュラル洗剤」でもカビ汚れは落とせるの?

「ナチュラルクリーニング」とは、合成洗剤を使わない掃除方法です。重曹やクエン酸など、元々自然界にある素材を使うので、合成洗剤よりも洗浄力が弱いイメージがあります。梅雨時期に悩まされる、頑固なカビ汚れまで落とすことができるのでしょうか?

 

「カビは放っておくと黒カビになり、浴槽のフタや扉のパッキンにできてしまうと、ナチュラル洗剤では落ちにくくなります。しかし、カビの発生原因を理解し、普段からカビを寄せ付けないようにすれば、梅雨時期でも黒カビに悩まされることはありません。カビが発生する条件には『20℃以上の温度』『水分・湿度』『栄養分』の3つがあります。このすべてが揃えばどんどん増殖しますが、どれか一つを防げば、カビの発生は抑えられます。

ここで注目してもらいたいのは、カビの栄養源です。カビが増えるときに欠かせない栄養源は、皮脂汚れだけではなく、シャンプーやお風呂掃除の洗剤のすすぎ残しなのです。そのため、お風呂に入ったあとは浴室全体をしっかりとすすぎ、スクイージーなどで水切りをするように心がけてください。洗剤類が残っていない状態と水切りケアを心がけることで、カビの発生源を断つことができます。また、すすぎ残しを防ぐためには、必要以上に泡タイプの洗剤を使わないこともポイントです。

まずは、浴室にどんな種類の汚れがあるのかを把握し、汚れを落とすために効果的なナチュラル洗剤の使い分け方を、理解するようにしましょう」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)

 

【ポイント】
・カビが発生する条件は「20℃以上の温度」「水分・湿度」「栄養分」
・カビの栄養源は、皮脂汚れとシャンプーやお風呂掃除の洗剤のすすぎ残し
・必要以上に泡タイプの洗剤を使わず、すすぎ残しを防ぐ

 

浴室の汚れは4種類。水アカと湯アカは別物!

↑本来、洗剤不要の汚れである髪の毛。入浴後に排水溝の髪の毛を取り除く習慣をつければ、不快なヌメリゴミを軽減できます

 

「汚れをラクに落とすコツは、化学反応を応用すること」という本橋さん。バスルームの汚れの種類とその性質を理解すれば、掃除の負担をグッと減らせるそう。

 

「汚れには4種類の性質があり、酸性、アルカリ性、雑菌類、洗剤の要らない汚れに分類できます。バスルームで発生する汚れを性質別に分類すると、酸性汚れの湯アカ、アルカリ性汚れの水アカや石けんカス、雑菌汚れのカビ、洗剤不要の髪の毛や砂などがあります。酸性汚れにはアルカリ性洗剤を、アルカリ性の汚れには酸性洗剤を、カビや雑菌には除菌と漂白効果のある洗剤を使うことで、汚れをゆるめて落とせます。

一般的なバスルーム専用の泡洗剤は、湯アカの汚れが落とせるアルカリ性の洗剤で、鏡などに付着した白いウロコ状の水アカを落とすことはできません。『お風呂用洗剤で磨いても、鏡に付いた水アカが落ちない!』とうんざりした経験がある方は少なくないでしょう。汚れの性質を見極め、化学反応で汚れをゆるめる洗剤を使えば、ゴシゴシとこすらずに汚れを落とせます」

 

【ポイント】
・バスルームの汚れは4種類
・酸性の湯アカ、アルカリ性の水アカ、中性のカビや雑菌、洗剤不要の髪の毛や砂
・汚れは“化学反応”で落とす
・酸性汚れにはアルカリ性洗剤、アルカリ性の汚れには酸性洗剤、カビや雑菌には除菌と漂白効果のある洗剤を使う

 

バスルームの掃除に使う3種類のナチュラル洗剤

ナチュラル洗剤の種類と使い方を見ていきましょう。

 

酸性汚れの湯アカには、弱アルカリ性の重曹を使います。粉末のまま使うことで研磨剤にもなるので、濡らしたメッシュクロスなどに振りかけて、そのまま浴槽などを磨きましょう。重曹は入浴剤の成分としても使われているので、入浴中に裸の状態で使っても心配なし。はちみつボトルのような容器に入れた重曹を、入浴中に浴室に持ち込むようにすると、“ついで掃除”ができますよ。

アルカリ性の水アカや石けんカスには、酸性のクエン酸水を使います。クエン酸水は水1カップ(200ml)に対し、クエン酸小さじ1を混ぜてスプレーボトルに入れたものです。鏡や石けんカスの付着した洗面器などに、クエン酸水を吹きかけてこすればOK。こびりつき部分は、キッチンペーパーなどで包んだ上からクエン酸水をたっぷり含ませた“パック”が効果的です。10分ほどつけた後に、すすいでから水気を拭き取りましょう。

ぬめりや雑菌、カビには、酸素系漂白剤の過炭酸ナトリウムを使います。発生してから日の浅い黒カビならば、ぬるま湯で溶いた過炭酸ナトリウムをカビ汚れ部分に塗り、上からキッチンペーパーでパックして30分ほど放置すれば、除菌と漂白ができます。カビが付着したボトルや浴槽小物は、60℃くらいの湯2Lに対し、過炭酸ナトリウム小さじ1を溶かしたものにつけ置きすれば、除菌と漂白に。つけ置き後は水洗いですすぎをしましょう」

 

【ポイント】
・体から出た角質汚れによる湯アカは、粉末の重曹でこすり洗い
・石けんカスや水道水中のミネラルである水アカには、クエン酸水を拭きかける
・カビや雑菌対策は、湯に溶かした過炭酸ナトリウムで発泡落としを

 

【関連記事】「酸とアルカリが混ざると中和し、汚れがゆるむ」原理を応用。pHで掃除する、キッチンのナチュラルクリーニング術

 

バスルームのナチュラルクリーニングで押さえるべき、基本的な知識や掃除のコツを解説いただきましたが、次のページでは、本橋さんが実際に愛用している便利な掃除アイテムや、入浴後の“ついで掃除”のコツについて、教えていただきます。

 

湿った小物からも雑菌が……キレイを保つ習慣とオススメ掃除アイテム

カビの発生を防ぐにはバスルームに水気を残さないことが大事。水切り対策もカビ予防に効果的です。

 

「わが家では、基本的にシャンプー類をバスルームで保管せず、お風呂に入るときに持ち込み、出るときに持ち出し、底についた水分を拭き取って洗面台の下で保管しています。バスルームの床や棚にものを置かないようにすることで、カビの発生源を減らせる上に、掃除がしやすくなります。洗剤類にとっても、高温多湿で気温の変化が大きい場所で保管するよりも、もちがよくなります。

特に、無添加やオーガニック製など、保存料不使用のアイテムをお使いの場合は、浴室での保管を避けた方がいいでしょう。洗面器や掃除道具などは吊るして収納すれば、水切りができます。うちの娘がそうなのですが、シャンプー類を毎日持ち出すのが面倒なら、詰め替えパックに直接付けて使えるホルダーを使うのもオススメですよ。これはボトルに詰め替える必要もないので、エコの意味でも魅力的なアイテムです」

 

↑浴室のイスや洗面器も床には置かず、吊るして保管をしましょう

 

・衛生的でカビを寄せ付けない! シャンプー類の詰め替えボトルアイテム

三輝「詰め替えそのまま ミニ MS-2 ダークグレー」(税込1257円)。シャンプーやコンディショナーの詰め替え容器にそのままセットして使えるアイテム。「ワンタッチで簡単に装着でき、片手で必要量が出せます。詰め替え時にボトルを洗浄したり乾燥させたりする手間なく、衛生的に使えるので便利ですね」

 

バスルームの掃除に使う5つの道具

本橋さんがバスルームの掃除で使う、主な道具は5種類。

 

「毎日使うのは、スクイージーとメッシュクロスのみです。入浴中に壁や棚などに汚れを見つけたときは、重曹とブラシで磨きます。ブラシはタイルの目地やドアのサッシなどの細かい部分でもこすりやすい、細めのタイプがオススメ。キッチンペーパーはパック掃除に、排水溝の奥まで掃除ができるパイプクリーニングブラシは、排水溝の流れが悪くなってきたときに使っています」

 

入浴後5分の“ついで掃除”で無駄なくラクしてピカピカに!

本橋さんのお宅では、最後にお風呂に入った人がバスルームの掃除を済ませるのがルールです。バスルームの掃除といっても、慣れてしまえば、わずか5分だとか!

 

「まず、バスタブの湯を抜きながら、シャワーで壁の上から順に洗剤類が残っていないようにバスルーム全体を洗い流します。その後、スクイージーで上から順に水切りをしていきます。棚や床もすべて水切りをしておくことで浴室の乾燥が進みやすくなるし、カビの栄養源を取り除くことができます。そうこうしているうちにバスタブの湯がなくなるので、メッシュクロスなどで全体を磨き、シャワーの水で洗い流します。これで終了です。

ここまでしておけば、重曹を使ったバスルームの掃除を毎日する必要はありません。入浴後、朝までお湯を張っておき、洗濯に使っている方もいると思いますが、できれば浴槽の湯は夜のうちに抜くようにしてください。人が入った後の湯は30℃以下に下がると雑菌が繁殖してしまいます。防災の意味で、入浴後の湯を残しておくのも避けましょう。雑菌が繁殖した湯を残しておくことで、震災時に排水トラブルになるケースも増えています。水道の水が止まっているときは、下水も流せない状況が続くので、トイレなどでも使えないことが多いのです。カビや雑菌の抑制を抑える意味でも、バスタブの湯はなるべく早めに抜くようにしましょう」

 

カビを撃退するために使いたいアイテム

ナチュラル洗剤では落とし切れない黒カビが発生してしまったときには、チューブタイプの塩素系漂白剤がオススメという本橋さん。

 

頑固にこびりついてしまった黒カビは、残念ながらナチュラル洗剤では落ちません。そのような場合には、塩素系漂白剤のチューブタイプを使いましょう。チューブタイプならば、汚れの上にピンポイントで塗ることができ、液だれや塩素を吸い込むリスクが減り、最小限の量で効果的に汚れを落とすことができます。

カビは胞子の状態で空気中にも浮いている可能性が高いので、バスルームがしっかり乾いた状態のときに、カビの発生しやすいパッキン部分などにアルコールスプレーをして、対策しておくのもオススメです。バスルームにカビがあると、そのカビの胞子が洗面所へ行き、そこから廊下やリビングへと流れていってしまいます。逆に、バスルームのカビ発生を抑えられれば、カビ胞子が広がることもなくなり、家中のカビが抑えられるのです

 

↑梅雨時期は特に、カビの生えやすい場所に乾いた状態でアルコール除菌スプレーをしておくといいでしょう

 

この時期のカビ発生は避けられないと思いがちですが、カビの発生に関わる3条件を揃わないようにすれば解決できることがわかりました。入浴後の“ついで掃除”を取り入れて負担を減らしカビを寄せ付けずに梅雨を乗り切りましょう。

 

【プロフィール】

ナチュラルクリーニング講師 / 本橋ひろえ

北里大学衛生学部化学科(現・理学部化学科)卒業。化学系の企業に就職し、化学事業部で水処理、化学薬品、合成洗剤などの業務を担当。結婚退職後、専業主婦として家事を経験し、子どもがアトピー体質であったこともあり、ナチュラル洗剤を活用するように。その後、ナチュラルクリーニング講師としての活動を始動。全国各地での講座開催や、著書などで、ナチュラルクリーニングの方法を広める活動に力を注いでいる。
Blog=https://ameblo.jp/naturalcleaning/