MJブロンディがトヨタ カムリを徹底解剖! 「北米でのライバルは起亜のオプティマだ」

ベテラン自動車ライターのMJブロンディとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載です。今回は、発売されたばかりの新型カムリに試乗しました。「セダンの時代」を再来させるほどの魅力はあるのか!?

 

【登場人物】

MJブロンディ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。自動車評論家としてはもはやベテランの域で、様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどに寄稿し、独自の視点でクルマを一刀両断しまくっています。

安ド

元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。MJブロンディを慕い「殿」と呼んでいます。

 

【今月のクルマ】トヨタ カムリ

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SPEC【G“レザーパッケージ”】●全長×全幅×全高:4885×1840×1445㎜●車両重量:1600㎏●パワーユニット:2487㏄直列4気筒DOHC+モーター●最高出力:178PS(131kW)/5700rpm●最大トルク:22.5㎏-m(221Nm)/3600-5200rpm●カタログ燃費:28.4㎞/ℓ●329万4000〜419万5800円

 

「米国でのライバルは起亜のオプティマ」

安ド「殿! オッサンセダンのカムリが生まれ変わりました!」

MJ「うむ」

安ド「赤いボディカラーがいいですね!これがイメージカラーだそうですけど、オッサンもこれ乗ってハッスルしてほしいです!」

MJ「お前ももうすでにオッサンではないか」

安ド「はい!(41歳) ですから次のクルマは赤にしました!」

MJ「赤は人をハッスルさせるからな。速度取締りのパトカーもハッスルさせる」

安ド「その点は気をつけます!スタイルもいいですね!この低くてワイドなスタイリング、若々しいです!家族に媚びないイメージで。そんなに広そうに見えないけれど、実際には広い。そのあたりはさすがです!」

MJ「なにしろこれはアメリカのカローラ。大柄な国を代表するファミリーセダンであるからな」

安ド「それを変身させたトヨタはさすがですね!」

MJ「いや、遅すぎたくらいだ」

安ド「そうなんですか?」

MJ「北米でのカムリの最大のライバルは、ホンダのアコード……でもあるが、実は韓国車である」

安ド「そうなんですか!?」

MJ「新型カムリがターゲットにしたのは、ズバリ、起亜のオプティマと見た!」

安ド「まったく知りません!」

MJ「日本人はまったく知らぬであろう。俺もよく知らぬ」

安ド「ガクー!」

MJ「しかし起亜車をアメリカで見ると、明らかに日本車よりスタイリッシュでイケている。なにせデザイン総括はドイツ人。アウディのデザイナーだったペーター・シュライアーだ。いまや起亜は彼が社長を務めている」

安ド「デザイナーが社長ですか!」

MJ「それほどデザインに力を入れておるのだ。そしてこのクラスの北米向けファミリーセダンを、〝ビューティフルモンスター〟に変えたのだ」

安ド「起亜が先にですか?」

MJ「もう10年くらい前からだ。起亜の謳い文句は“タイガーノーズ”だが」

安ド「じゃ、カムリの“ビューティフルモンスター”は、その二番煎じなんですか!?」

MJ「ビューティフルモンスターという言葉は日本向けだろうが、まあそうだな」

安ド「それはショッキングです! で、走りのほうはどうでしょう?」

MJ「トヨタのハイブリッドとしてはパワフルなセッティングだな。特にパワーモードにすると、文字通りパワフルに走る。エコカーというイメージではないぞ」

安ド「ステアリングがボタンだらけで使いにくそうなのに、実際に乗ってみるとすぐ身体に馴染んで使いやすかったです。さすがトヨタ車という感じでした!」

MJ「まあ、なんだかんだいってオッサンはオッサンだがな。ちょっと若返ったオッサンだ」

安ド「ガクー!」

 

【注目パーツ01】インパネ加飾パネル

宝石をイメージした 雰囲気の良い内装

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国産高級車のインパネにはよく木目パネルが採用されていますが、この加飾パネルはなんとも不思議な風合いの紋様です。なんでも宝石のタイガーアイをイメージしたそうですが、いい雰囲気で高級感を演出しております。

 

【注目パーツ02】ヘッドランプ

刃物を想像させる鋭い形状

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最近トヨタ車で多く採用されているのが“キーンルック”。V字型のグリルとつり上がったヘッドライトの組み合わせで、知的なイメージを演出しています。ライトの形状は触るものを皆傷つけそうな鋭利な刃物のようです。

 

【注目パーツ03】アクセサリーコンセント&ソケット

これもトヨタのおもてなし

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インパネ中央の付け根あたりにこっそりシガーソケットとUSB端子が設置されています。ドライバーからするとかなり使いやすい位置にふたつを並べているあたり、いかにも親切でユーザーフレンドリーな日本車らしさが感じられます。

 

【注目パーツ04】トランク

ターゲットユーザーはゴルフ好き

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セダンといえばトランク。カムリはハイブリッドカーですが、バッテリーをリアシート下に設置しているので、トランクはゴルフバッグが4個入るほど広く設計されています。ゴルフ好きなオッサンたちも満足の一台です。

 

【注目パーツ05】トヨタ・セーフティ・ センスP

最新運転支援システムを総ざらい

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ミリ波レーダーと単眼カメラを用いることで、衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報、自動切替式ハイビームなど、様々な運転支援システムを搭載しています。クルーズコントロール用スイッチも整理されていて使いやすいです。

 

【注目パーツ06】ホイール

普通に見えてもかなりデカい

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今回試乗したレザーパッケージには18インチアルミホイールが装着されています。20年前は18インチなんてスーパーカーか改造車しか履いていなかったものですが、いまやフツーのオッサンセダンも履くようになりました。

 

【注目パーツ07】ハイブリッドシステム

同クラスでトップレベルの低燃費

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2.5ℓエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、かなりの小型軽量設計。そのぶん居住スペースを広くすることに成功しています。もちろん燃費性能もミドルセダンとしてはトップクラスを誇っています。

 

【注目パーツ08】2段グリル

大胆な大型グリルは半分ダミー

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キーンルックによるスリムなアッパーグリルと、大胆過ぎるほど大きなロアグリルが対照的で、かなりインパクトがあるように見えます。しかしこのロアグリル、実は半分くらいしか穴が空いておらず半分はダミーです。

 

【注目パーツ09】おくだけ充電

挿さなくてもいい 簡単充電システム

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オプション設定で、最新装備の「おくだけ充電」を装着できます。これは、その名のとおりこのトレイのうえにスマホをおくだけで勝手に充電されるという代物ですが、ワイヤレス充電規格Qiに対応したアイテムしか使えません。

 

【これぞ感動の細部だ】Cピラー

デザインの真価はピラーにあり

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フロントの大胆なデザインに注目が集まりがちなカムリですが、このリアのCピラー(窓と窓の間の柱部分)にもデザインのポイントが潜んでいます。まず、トランクから続くラインが果敢にもCピラーの中央をぶった切るように突き通っていること。さらに、リアウインドウがピラーに合わせて湾曲しているあたりにも造形美が感じられます。

 

 

日本より日本っぽい?アメリカで日本車が愛され過ぎる理由

年に一度、仕事と三世代家族旅行を兼ねてアメリカに3週間ほど行っている。滞在先は主にロサンゼルスやラスベガス、サンフランシスコを中心とする西海岸だ。アメリカに取材旅行へ出かけるようになって二十数年経っているが、当時から日本車の多さに驚いていた。近年はさらに日本車率が高くなっているように思う。

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■ロサンゼルス郊外のとあるTARGETの駐車場でびっくり

TARGETとは大きなスーパーマーケットで生鮮食料品以外、家電から飲料、衣類、バッグ、小物、化粧品、ドラッグストアなどが中心のお店だ。いつも泊まるホテルの近くにあるので、滞在中はたびたび訪れるのだが、こちらの駐車場に停まっている車の車種を改めて確認してみてびっくり…ほとんどが日本車である。日本車以外を探す方が難しい。

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写真をご覧いただければわかる通り、日本車以外は10台中1-2台あるかないか?である。街を走っていても、視界に入る車がすべて日本車ということも珍しくない。やはり、ホンダ、トヨタ、日産が多いが、近年アメリカで爆発的な人気となっているスバルやマツダ、三菱も良く見かける。

 

そこで車好きの息子がひとこと

「日本より日本車が多いじゃん」

 

う…、ほ、ほんとだ。確かにそうだ!今までなぜこの事実に気づかなかったんだろう。とくに、港区、世田谷区、目黒区、横浜市青葉区など輸入車率が高い地域の紀伊国屋やナショナル麻布マーケット、自由が丘ガーデンなどの高級スーパーの駐車場と比べたら、圧倒的にカリフォルニアのスーパーの駐車場の方が日本車率高し!コストコの駐車場でもきっとそうだ。トランプ大統領はこの事実を知っているんだろうか?以前、トランプ氏は「日本はもっとアメリカ車を買え!」と言っていたけど、アメリカ人でさえ自国の車より日本の車を選んでいるのだ。

 

■2016年の乗用車販売台数ランキング1-5位はすべて日本車!

では、実際、アメリカではどれくらいの日本車が販売されているのだろうか?2016年の車名別販売台数ランキングを見てみよう。

 

★2016年 米国乗用車車名別販売台数ランキング

1位 トヨタ カムリ (388,618台)

2位 ホンダ シビック (366,927台)

3位 トヨタ カローラ (360,483台)

4位 ホンダ アコード (345,225台)

5位 日産 アルティマ (307,380台)

 

1~5位まで見事に日本車が並んでいる。ちなみにカムリは、15年間連続で乗用車販売台数ナンバーワンを記録している。乗用車だけではない。SUVにおいても1位はホンダCR-V、2位トヨタRAV4、3位日産ローグ、4位フォードエスケープ、5位フォード エクスプローラーと5位までのランキング中、上位3車種は日本車なのである。

 

■日本車はなぜこんなにも愛されるのか?

かつて、日本車が売れている理由といえば、「燃費がよい」「安い」「壊れない」というやや消極的なものだった。しかし、近年は少しその様相が変わってきている。積極的に日本車を選ぶユーザーが増えているのだ。

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例えば新型カムリは、米国では2017年1月に発表され、同年6月頃から生産・販売が開始された。カムリの革新的なデザインの変更は日本でも大きな衝撃を持って伝えられた。

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おじさんセダンから一気に、カッコいいスポーツセダンに変貌を遂げたカムリだが、この変貌ぶりは、米国のユーザーにとっても同様の衝撃だったようだ。

 

ロサンゼルス近郊ガーデナ市にあるトヨタディーラー「SOUTH BAY TOYOTA」でインターネット販売の責任者ジェイ・ソリアーノ氏に話を聞いてみた…。

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「今回のカムリは非常にアグレッシブなスタイルになった。エクステリアにもインテリアにもスポーティな要素がたくさんある。新顔カムリの広告が流れ始めると、多くのユーザーがデポジット(予約金)を入れ始めた。その斬新なスタイルを見て『新しいカムリを買わなくては!』という思いが沸き上がってきたという。カムリはとても人気のある車だが、これまで、そのデザインにスポーティなイメージをアピールする要素は皆無だったが、今回は違う。とくに好評なのはリアクオーター、リヤコンビランプ周りのデザインで、レクサスのような印象を与えるというのがその理由の一つだ」

 

カムリだけではない、2位のシビックもアメリカの道路でたびたび見かけたが、文句なしのカッコよさである。日本車がデザインで選ばれることはもはや特別なことではない模様。もちろんアフターサービスの良さ、パーツ供給の速さも「愛される理由」の一つだ。

 

■アメリカ人にとって日本車とはどんな存在か?

私たち日本人は、国産車と輸入車を明確に区別する。たとえ国産車と価格やサイズの面で競合するような輸入車であっても、「外車=特別な車、金持ち車」というイメージはなかなか覆られない。故障をしても、車検の費用が高くても「外車だから仕方ない」と思うだろう。「外車」は手洗い洗車代を高く設定しているガソリンスタンドも少なくない。数が少ないので(約9%)それもしょうがないのだろうけれど。

 

ではアメリカにおける日本車はどうか?日本車に乗るアメリカ人は、日本車をどう思っているのだろうか?

 

「もちろん日本車ユーザーはそれが日本由来のブランドだということは知っている。しかし、トヨタもホンダも30年以上、米国で多くの車を販売している。乗る側にも『外国車』という感覚はもはやほとんどないはず。アメリカ人の生活や自動車文化にしっかり定着し、根付いている。アメリカの一部になっている」(サウスベイ・トヨタ ジェイ・ソリアーノ氏)

 

なるほど…そこまで定着しているならば、もはや「外国車」「輸入車」という感覚はないだろう。実際、カムリなど、米国で生産されている車も多い。

 

日本車はこれからもアメリカで愛され続けるだろう。いや、アメリカならずとも、世界の多くの国々で新車はもちろん日本から輸出された中古車も30万キロ、50万キロという走行距離をモノともせず異国の地で人々の生活に欠かせないアシとなって頼られている。日本車ってやっぱり凄い。そして愛され上手だ。

 

【著者プロフィール】

自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子

 

山口県生まれ 学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。愛車は新車から19年&24万キロ超乗っているアルファスパイダー。