「CP+2021」総括レポート後編:オンライン時代に奮起するカメラ周辺機器メーカーのトレンド

2021年2月25日から28日にかけて“カメラと写真映像のワールドプレミアショー”「CP+2021」が、コロナ禍の影響から初のオンラインで開催されました。オンラインではカメラやレンズの実機に触れることができないなど、大きな制約がある中での開催となり、メーカーがどのような工夫をしてくるかにも注目が集まったイベントです。本稿では、4日間に渡ったオンラインイベントの様子を前後半、2回に分けてレポート。後半となる今回は、交換レンズメーカーを含む、主だった周辺機器メーカーについて取り上げます。

 

カメラの周辺機器というと、交換レンズや三脚、フィルター、ストラップやカメラバッグ、照明機器といった撮影時に必要なものもありますが、デジタル化以降はパソコンや画像処理ソフト、プリンターなど、撮影後に必要な機器や用品の重要度が増しています。今回のCP+2021は、オンライン開催との親和性が高いこともあってか、パソコンなどの周辺機器メーカーによる出展が大きな割合を占めていました。

 

今回の出展社のなかでも動画配信などに力を入れていたメーカーに絞って、それぞれをチェックしていきます。

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。

 

【周辺機器メーカー1】ケンコー・トキナー

ケンコー・トキナーは、フィルターやフィールドスコープなどを扱う「ケンコー」、三脚などを扱う「スリック」、交換レンズなどを扱う「トキナー」といった自社ブランドのほか、関連会社によるものも含め、無数の商材を扱っています。なかでも最近は、「レンズベビー」や「SAMYANG」など、交換レンズ系商品の注目度が上昇。今回の新製品ではフィルターやフィールドスコープなども登場していますが、トキナーから昨年末に発売された、2本のFUJIFILM Xマウント用レンズなどの交換レンズが最も注目を集めていたように思います。オンラインセミナーは4日間で19本と多数実施され、多くの人気写真家らが登場。周辺機器メーカーのなかでも、ユーザーが最も目を見張った出展社の1つでしょう。

↑ケンコー・トキナーの特設ページ。ケンコー・トキナーのほか、グループ会社のスリック、ケンコープロフェショナルイメージングの製品も含め、数多くの写真関連製品が紹介されていた

 

↑オンラインセミナーは、合計16名の講師による全19コマを実施。会期中の午後、ほぼ2時間おきに実施される豪華なものだった。画像は、小河俊哉さん、萩原和幸さん、桃井一至さんによる「トキナーレンズを語る」より

 

↑FUJIFILM Xマウント用単焦点交換レンズ「トキナー atx-m 33mm F1.4X」(実売価格/5万3800円)。F1.4の明るい標準レンズで、美しいボケ描写が魅力だ。このほか、FUJIFILM Xマウント用広角レンズ「atx-m 23mm F1.4 X」(実売価格/6万500円)もラインナップされている

 

【周辺機器メーカー2】サイトロンジャパン

サイトロンジャパンは、米国サイトロン社の双眼・単眼鏡などの光学機器を扱っているメーカーです。最近は、中国LAOWA(ラオワ)社の低廉でユニークな交換レンズを扱っていて、カメラファンの注目を集めています。CP+2021では、試作品を含むLAOWAの製品紹介のほか、サイトロンの双眼鏡、スカイウォッチャーやシャープスターの天体望遠鏡などを紹介。天文関連を含めて計16コマのセミナーも実施しました。

↑サイトロンジャパンの主力商品は、特設ページを見てもわかる通り双眼鏡や天体望遠鏡、ライフルスコープといった光学製品。LAOWAの交換レンズの扱いを始め、ここ数年はCP+の常連となっている

 

↑セミナーは、写真家によるLAOWA製品紹介や活用法のほか、アマチュア天文家による、天体望遠鏡の使いこなし紹介などユニークな切り口で展開された。画像は、齋藤千歳さんの「実写チャートでみるLAOWA広角レンズの特徴を紹介」より

 

【周辺機器メーカー3】シグマ

個性的かつ高性能な交換レンズを数多く登場させ、人気を集めているシグマは、ミラーレスカメラ用の小型単焦点交換レンズ「Iシリーズ」や、同社製で世界最小のフルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」などを紹介。動画コンテンツでは、会期直前にシグマ代表取締役社長・山木和人さんによる新製品プレゼンテーションが行われたほか、写真家による新製品セミナーやレンズ開発者によるトークなどを実施していたのも印象に残っています。ライブ配信でのコンテンツが多く、マニアックなものから気軽に楽しめるものまで幅広いコンテンツが揃えられていました。

↑シグマの特設ページは、シンプルでスマートな構成のページだが、動画コンテンツなどは、レンズ好きに刺さるものも用意。一方で商品企画担当者のトークなどは、レンズにこだわりを持ったシグマファンから、購入を検討中のユーザーまで楽しめる内容になっていた。

 

↑いわゆるシグマファン向けのコンテンツも少なくなかったが、「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」などの新製品を写真家が実際に使って、その魅力や使いこなしを語る「プロダクトセミナー」は、比較的エントリーユーザーに理解しやすい内容だった。作例写真も多く、製品の魅力がダイレクトに伝わってくる。画像は、鹿野貴司さんの「プロダクトセミナー 新製品SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary編」より

 

↑フルサイズミラーレスカメラ対応で小型・軽量な大口径標準ズーム「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」(実売価格/9万9000円)。画面全体に高解像で歪みや収差、ゴーストなども少ない高性能レンズだ。最短撮影距離が19cm(広角端)と短く、被写体を大きく撮れるのも魅力。ソニーEマウント用、ライカLマウント用がラインナップされている

 

【周辺機器メーカー4】タムロン

タムロンは、1本で幅広い焦点距離に対応できる高倍率ズームレンズや、低廉で高性能な交換レンズのラインナップに定評のあるレンズメーカーです。CP+2021では、1月14日に発売された新製品「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」と昨年6月発売の「28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)」を中心に、同社のソニーEマウントミラーレスカメラ用レンズを紹介。2月27日と28日には、写真家の別所隆弘さん、澤村洋兵さんによるセミナーも実施されました。

↑あえてソニーEマウントのミラーレスカメラ用レンズである、「Di III」シリーズ9本に焦点を当てたタムロンの特設サイト。なかでも、最新の17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)は注目を集めていたようだ

 

↑セミナーは2名の写真家による新製品のインプレッションであったが、単純なスペック紹介ではなく、レンズの特徴を上手くとらえた作例が用意され、各レンズの魅力はもちろん、適した撮影シーンも伝わる内容になっていた。画像は、別所隆弘さんによる28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)のインプレッションより

 

↑APS-Cサイズ用に設計することで、小型ながらF2.8の大口径で高画質を成功させた「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」。最短撮影距離が広角側で0.19m、望遠側で0.39mと近接撮影に強い設計になっているのも魅力だ。実売価格/9万3500円

 

【周辺機器メーカー5】エプソン

プリンターやスキャナーのメーカーとしておなじみのエプソンでは、「PHOTOS at Home」をテーマに自宅での写真の楽しみ方を提案。スペシャルプログラムとして4本の動画を公開したほか、同社製品を紹介するだけでなく使用目的に合わせたプリンターやスキャナー選びができるように工夫されていました。

↑エプソンの特設ページ。作品プリントに最適な画質で、A3ノビやA2ノビの大きさでプリントできる「プロセレクション」シリーズだけでなく、インクをタンクに補充して使うことで、プリントのコスト低減を実現した、「エコタンク」搭載モデルなども紹介

 

↑セミナーは、鉄道写真家・中井精也さんの「伝えるためのプリントテクニック」、塙真一さんの「フィルムで楽しむデジタル暗室術!」、上田晃司さんの「プリントでもっと広がる写真の世界を体験しよう!」、『IMA』エディトリアルディレクター太田睦子さんらによる「インテリアに写真を取り入れる楽しさとコツ」の4本を配信。プリントのテクニックや楽しみ方が、わかりやすく解説されていた。画像は中井精也さんのセミナーより

 

【周辺機器メーカー6】raytrek(サードウェーブ)

サードウェーブは、BTOによるパソコン販売の大手メーカー&販売店。CP+2021では、同社のクリエイター向けBTOパソコンのシリーズである「raytrek」ブランドで出展していました。写真作品や映像作品の制作におけるraytrekのメリットについての紹介のほか、同社と写真投稿SNS「東京カメラ部」とのコラボフォトコンテストの受賞者発表を本ページで行うなど、写真関連にも力を入れている様子が伝わってくる内容でした。

↑raytrekの特設ページでは、写真家の井上浩輝さん、別所隆弘さん特別監修モデルのパソコンを紹介。2月28日には、この2名の写真家と東京カメラ部メンバーらによるライブ配信も実施された

 

↑ライブ配信では、同社製PCの魅力を紹介するだけでなく、画像処理ソフトや動画編集ソフトを使っての実演も実施。作家ならではのテクニックの解説も行われ、すぐに役立つ内容の配信であった

 

【周辺機器メーカー7】ATOMOS

ATOMOSは、ミラーレスカメラのHDMI端子などに接続して使う、外部接続の動画レコーダーを製造しているメーカーです。同社製品を使うことで動画のRAW記録などが行え、撮影後に調整しやすく高品位な映像が制作できます。映像作家には定番のレコーダーということもあってか、動画配信に力が入ったコンテンツが用意されていました。多くのカメラユーザーにはあまり馴染みのないメーカーかもしれませんが、今回のコンテンツを見て、動画撮影やレコーダーに興味を持った方も少なくないのではないかと思います。

↑ATOMOSの製品は、画像にあるような小型モニター付きのレコーダーで、記録映像の確認も行える。撮影後はパソコンなどにデータを取り込んで編集するのが基本となる。今回のコンテンツは配信が中心で、写真家や映像作家によるトークや、各カメラメーカーのエンジニア対談などが組まれ、合計10本が配信された

 

↑配信の内容は動画撮影のテクニック、レコーダーやカメラの機能などについてのトークが多く、動画撮影や編集に興味のある人には、非常に有益なコンテンツだったのではないかと思う

 

まとめ

レポートの後半はカメラ周辺機器メーカーのうち、動画配信などに力を入れていたメーカーを中心に取り上げました。特徴的な傾向としては、ミラーレスカメラ用のレンズが増えたことで、レンズ設計の自由度が高まり最短撮影距離が短く、被写体に近寄って撮れる製品の増加が挙げられます。同じくミラーレスカメラの普及によって、動画関連の製品、あるいは出展社が増えたのも大きなトレンドと言えるでしょう。

 

CP+2021は、レポート全体で今回取り上げたメーカー以外を合わせると、全部で20社/ブランドによるイベントとなりました。従来のリアルイベントに比べると参加企業は少なかったものの、参加者は5万人以上であったという速報(2021年3月4日時点)が発表されており、各社の工夫によってオンラインであってもユーザーが十分楽しめるイベントになったのだと実感しています。とはいえ、やはり新製品のカメラやレンズに触れないのは寂しく、来年こそはリアルイベントを期待したいところ。もし可能であれば、今年の経験を生かして、リアルとオンラインの両立ができれば、参加者はより楽しめるものになるのではないかと思います。

 

なお、動画配信などのコンテンツの多くは、2021年3月31日までアーカイブとしてオンラインで見ることが可能です。興味のあるコンテンツがありましたら、ぜひチェックしてみてください。

 

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コスパで選ぶならコレ!! プロがオススメする「格安カメラ&レンズ」まとめ

価格が安い、安すぎてちょっと心配になってしまうくらいの格安アイテムを、プロ・専門家が徹底的にチェック! 独自機能やおすすめポイントなど、良いところも悪いところも含めて惜しみなくレビューをお伝えしていきます。今回のテーマはミラーレスカメラや一眼レフカメラ、交換レンズ、ストロボ、三脚といった格安カメラ用品です。

 

まだまだ発展途上のスマホカメラとは異なり、最近の一眼カメラはもはや安定期にあります。一世代前の旧製品でも、十分に納得できる画質と性能なのです。そんなおトクな格安モデルのなかから特にオススメの機種を紹介します。

 

【○×判定した人】

カメラマン・永山昌克さん

写真スタジオを経てフリーに。写真や動画撮影のほか、カメラ誌やWEB媒体での執筆も多数。

 

一世代前のモデルでも画質や操作性に不都合はない

エントリークラスのカメラは各社1〜2年ごとに新製品が登場しますが、モデルチェンジ後しばらくの間は旧製品も併売されます。この、いわゆる型落ち品が格安で、コストパフォーマンスが非常に高いです。

 

最近のモデルチェンジは、画質や操作性が大きく変わるわけではなく、新機能の追加がメインであることが多いです。その新機能が自分にとって重要でなければ、あえてひとつ前の製品を選ぶのも十分アリなのです。余った予算で交換レンズを1本追加したほうが、写真撮影の楽しみはいっそう広がります。

 

交換レンズに関しても、高価な新モデルだけが優れているわけではありません。発売が古い安価なレンズでも、描写性能に優れた製品はたくさんあります。ここで取り上げるのは、そんな掘り出し物の数々です。

 

【カメラ編】

その1

タッチ操作や4K動画に対応した薄型軽量モデル

パナソニック

LUMIX GF9

実売価格6万9800円(ダブルレンズキット)

【ミラーレス(EVF非搭載)】【1600万画素】【秒約5.8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約269g

薄型軽量ボディの入門機ながら、4Kフォトによる30コマ/秒の高速連写など、便利で実用的な機能が満載。液晶は自分撮りがしやすいチルト可動式で、タッチ操作にも対応。ボディに巻き付けられた合皮素材は、低価格を感じさせない高品位な雰囲気を生み出しています。

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式(上方向のみ)、タッチ対応 ●EVF:非搭載 ●サイズ:約W106.5×H64.6×D33.3㎜

 

【check】

画質:〇

中級機に匹敵する描写力

ローパスレスの16M Live MOSセンサーを搭載し、中級機に匹敵する描写力。フォトスタイル機能によって細かく色をカスタマイズできる点も◎。

 

操作性:○

初心者でも安心して使いこなせる

操作部はシンプルにまとまっていて使いやすいです。薄型のキットレンズ装着時のボディバランスは良好で、切れ味の鋭いシャッター音も好印象。

 

機能:○

「4Kプリ連写」が動体撮影に好適

独自の「4Kプリ連写」では、シャッターボタンを押した前後の60コマを自動的に記録できます。撮るのが難しい動物や野鳥、子どもなどの撮影に好適。

 

 

その2

ワンランク上の撮影も楽しめる高機能モデル

パナソニック

LUMIX GX7 Mark 

実売価格6万9800円(標準ズームレンズキット)

ミドルクラスの高機能ミラーレス。高さを抑えた横長ボディに、視認性に優れた電子ビューファインダーと、アングルの自由度を高めるチルト可動液晶を搭載。撮影モードはオートからマニュアルまで完備。

【ミラーレス(EVF搭載)】【1600万画素】【秒約8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約426g】

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式、タッチ対応 ●EVF:約276万ドット ●サイズ:約W122×H70.6×D43.9㎜

 

【check】

画質:〇

ハイアマも満足できる解像感

撮像素子は特に高画素ではありませんが、ローパスフィルターレス仕様であり、解像感は優秀なレベル。キットレンズの写りも悪くありません。

 

操作性:×

2ダイヤルは便利だがチルト液晶が惜しい

電子ダイヤルはグリップの前後に2つあって多機能をスムーズに設定可能。ただし、チルト液晶は自分撮りや縦位置撮影に非対応なのがイマイチ。

 

機能:〇

一段上の機能が薄型ボディに凝縮

強力なボディ内手ブレ補正や4Kフォトによる高速連写、本格モノクロモードなど、一段上の機能が満載。各ボタンの機能を柔軟にカスタムできるのも便利です。

 

 

その3

シンプルな操作性が魅力の小型軽量機

ニコン

D5300

実売価格6万4900円(AF-P 18-55 VRキット)

小型軽量ボディとシンプル操作が魅力の一眼レフ。使用頻度の高い項目にダイレクトアクセスが可能なiボタンを搭載。凝った効果を素早く適用できるスペシャルエフェクトなどのビギナー向け機能も充実しています。

【一眼レフ】【2416万画素】【秒約5コマ連写】【常用最高ISO12800】【約530g】

SPEC●レンズマウント:ニコンFマウント ●モニター:3.2型約104万ドット、バリアングル式、タッチ対応 ●OVF:約95%、約0.82倍 ●サイズ:約W125×H98×D76㎜

 

【check】

画質:〇

高精細な2416万画素

低価格の旧モデルながら、最新の中級機に匹敵する2416万画素の高精細を実現。遠景の細かい部分までシャープに描写できます。

 

操作性:×

ライブビュー時のAFの遅さが残念

一眼レフとしては小型軽量なボディであり、携帯性とホールド性を両立。しかし、ライブビュー使用時のAFの遅さとタイムラグが残念です。

 

機能:〇

39点位相差検出AFが使えるのが良い

AFには、最大39点の測距点を自動/手動で選べる位相差AFを採用。ペットや子どもといった動体にも、ストレスなく軽快に合焦します。

 

【交換レンズ編】

その1

高倍率ズームレンズ】低価格と高倍率、小型軽量を兼ね備える

タムロン

18-200mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC (Model B018)

実売価格2万5650

高倍率ズームのパイオニアであるタムロンが、2015年に発売したAPS-C一眼レフ用レンズ。より倍率の高い製品と比べても、持ち運びに優れた小型軽量である点がうれしい。低価格ながら、適度な剛性感も備えています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用】【ソニーAマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:28〜310㎜ ●最短撮影距離:35㎜時0.77m、180㎜時0.49m ●フィルター径:62㎜ ●長さ:キヤノン用96.6㎜、ニコン用94.1㎜ ●質量:約400g

↑幅広い焦点距離をカバー。そのため、自由に動けない場所でも狙いに応じた厳密なフレーミングが可能です

 

【ここが〇】

手ブレ補正の効きが良好

ズームすると前玉部分が長くせり出しますが、鏡胴にガタつきはなく、安っぽさは感じません。手ブレ補正の効果も十分にあります。

 

【ここが×】

AFスピードが遅めでもたつく

AFの作動音はあまりうるさくありませんが、AFスピードは遅め。マウント部がプラスチック製である点も不満。

 

その2

【マクロレンズ】銘玉といわれる「タムキュー」の2008年モデル

タムロン

SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model272E)

実売価格2万9140円

タムロンの90㎜マクロといえば、高画質と美しいボケに定評があり、1979年発売の初代モデル以来、モデルチェンジを繰り返しながら多くのユーザーに親しまれています。これは2008年発売モデル。AFはうるさいが画質は一級品です。

【キヤノンEFマウント用】【キヤノン用】【ニコン用(AFモーター内蔵:272EN Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:90㎜ ●最短撮影距離:0.29m ●フィルター径:55㎜ ●長さ:97㎜ ●質量:約400g

↑PC上で等倍表示すると、花粉の粒がはっきりわかるくらいシャープに解像。リアルで立体感のある描写が得られました

 

【ここが〇】

切れ味の鋭い描写力が魅力

フルサイズ対応ながら四隅まで高解像を実現。一方で、絞り開放値ではピントを合わせた前後に美しいボケが生じます。

 

【ここが×】

AF駆動音が少々大きめ

超音波モーター非搭載なのでAF駆動音は少々大きめ。AFからMFに切り替える際、ピント位置が動きやすい点も×。

 

 

その3

【望遠ズームレンズ】1万円台前半で超望遠域を味わう

タムロン

AF70-300㎜ F/4-5.6 Di LD MACRO 1:2 (Model A17)

実売価格1万2240円

フルサイズに対応した小型軽量の望遠ズーム。通常の最短撮影距離は1.5mですが、マクロモードを選ぶと0.95mまでの接写もできます。手ブレ補正は非搭載。ゴースト対策として前玉にはマルチコートが施されています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用(AFモーター内蔵:A17N Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:70〜300㎜ ●最短撮影距離:通常1.5m、マクロモード時0.95m(180-300㎜域) ●フィルター径:62㎜ ●長さ:116.5㎜ ●質量:約458g

↑描写性能は色収差がやや目立ち、最上とはいえませんが、十分に実用的。小動物をアップで撮れるのは便利です

 

【ここが〇】

軽量で携帯性に優れている

フルサイズ対応ながら、質量458gという軽さが最大のメリット。300㎜側でF5.6というスペックやマクロ機能も◎。

 

【ここが×】

手ブレ補正が非搭載

300㎜の超望遠撮影ができるが手持ちではブレやすいので、手ブレ補正非搭載は残念。AFが遅めといった弱点もあります。

 

 

その4

【単焦点レンズ】単焦点レンズの入門用に打って付け

シグマ

30mm F2.8 DN

実売価格1万6360

わずか140gの軽さを実現したミラーレス用単焦点レンズ。両面非球面レンズの採用で諸収差を補正したほか、スーパーマルチレイヤーコートによってフレアやゴーストの発生も低減しました。AFは駆動音の静かなリニアAFモーター式です。

【マイクロフォーサーズ用】【ソニーEマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:マイクロフォーサーズ60㎜、APS-C45㎜ ●最短撮影距離:0.3m ●フィルター径:46㎜ ●長さ:40.5㎜ ●質量:約140

↑スムーズなボケは単焦点ならでは。この写真では、絞り値F2.8に設定し、被写体に近寄ることで背景をぼかします

 

【ここが〇】

小型軽量で画質も優秀

キット付属の標準ズームに比べて小型軽量で、携帯性が高いです。画質もキットレンズより上で、美しいボケが得られます。

 

【ここが×】

外装に指紋がつきやすく目立つ

開放値F2.8は、キットレンズよりは明るいものの、F1.8クラスよりは暗く、中途半端な印象。外装も指紋がつきやすいです。

 

【撮影アイテム編】

その1

薄型軽量のクリップオンストロボ

GODOX

TT350デジタルカメラフラッシュ

実売価格1万4310

各社のTTLオート撮影に対応したクリップオンストロボ。単3形乾電池2本で駆動し、200gと軽量です。マルチ発光や高速シンクロ撮影に対応するほか、発光部を上下左右に動かすことで天井や壁を使ったバウンス撮影も行えます。

【ストロボ】【キヤノン用】【ニコン用】【ソニー用】【富士フイルム用】

SPEC●ガイドナンバー:36(105㎜、ISO100) ●フラッシュ範囲:24〜105㎜(14㎜ワイドパネル付) ●電源:単3形乾電池2本 ●サイズ/質量:W62×H140×D38㎜/200g

↑背面には、各種機能の設定状態がひと目でわかる液晶パネルを装備。その下のホイールを回して発光量を調整します

 

【ここが〇】

各社のTTL発光に対応

4つのメーカー用の製品が用意され、押すだけのフルオート撮影で使用できます。高速シンクロなどの機能も充実。

 

【ここが×】

チャージに時間がかかる

単3形乾電池2本で駆動するのは携帯性では有利ですが、4本使用の他社製品に比べてチャージに時間がかかります。光量もやや弱め。

 

 

その2

憧れのカーボン三脚がわずか1万円で購入可能

アマゾンベーシック

トラベル三脚 130cm  5小型

実売価格9980

軽量で剛性感の高いカーボン素材を採用したトラベル用三脚。脚を伸ばし、中央のエレベーター部分を動かすことで、高さは30.5〜135.5cmの範囲で調整可。ボールヘッドの自由雲台やクイックプレート、キャリングケースも付属します。

SPEC●耐荷重:3.6㎏ ●全高:135.5㎝(EVあり) ●最低高:30.5㎝ ●縮長:31㎝ ●質量:1.11㎏

 

↑持ち運ぶ際は、脚の部分を反転させることで小さくまとめることが可能。出っ張りが少ないナット式ロックも便利

 

【ここが〇】

カメラバッグに収納可能

縮長が31㎝と短いので、通常のカメラバッグに入れて持ち運ぶことも可能です。また、ローアングル撮影にも対応します。

 

【ここが×】

一眼レフ用には安定感が不足

全長135.5cmはやや物足りず、脚も5段でセッティングに時間がかかります。ミラーレス用で大きな一眼レフには不向き。

 

 

 

旅の相棒にしたい「トラベル三脚」オススメ5選!! とにかく頑丈な“一生モノ”から高コスパモデルまで

最近のデジタルカメラは、超高感度で撮影してもノイズが少なく、強力な手ブレ補正機能も搭載されたことで、日中の撮影であれば三脚の必要性は以前に比べると低くなっています。とはいえ、旅先などで見つけたきれいな夜景や夕景、友人や家族との記念撮影など、三脚があったら安心……というシーンは数多く存在します。また、低速シャッターで被写体ブレを生かすといった場合などにも三脚は必要です。

 

ただ、実際に持ち歩くことを考えると、大きく重い三脚は使用したくないというのが本音。現在でも、重量にして3㎏以上でガタツキのないような三脚があれば安心ではありますが、小型のミラーレス一眼が主流になりつつある現在、重量に関しては軽量なものでも(完ぺきではないにせよ)問題のないケースも増えていると感じます。

 

そこで今回は、比較的軽量で旅先などにも持って行きやすい「トラベル三脚」と呼ばれる各社の製品をチェック。その特徴などを踏まえ、おすすめの5つの製品について紹介したいと思います。

↑小・中型のトラベル三脚といっても、価格は1~2万円程度のものから10万円を超えるものまで様々。高価なものほど丈夫で安心して使えるという傾向はありますが、製品によって一長一短があるので、撮影スタイルやよく撮る被写体に合わせて選択しましょう

 

トラベル三脚の購入時に見るべき3つのポイント

今回、三脚をセレクトするにあたっては、持ち歩きやすさや使いやすさなどを重視して、以下の条件をクリアするものを選択しています。

①最大伸長(三脚を伸ばしたときの高さ)が150㎝以上
②耐荷重(載せられるカメラの重さ)が2.5kg以上
③重量が1.5kg以下

①については、最大伸長が150㎝あれば、カメラを取り付けたときのファインダーの高さが160㎝程度となり、多くのユーザーにとって無理のない姿勢でファインダーが使用できるためです。また、背面モニターを使用したライブビュー撮影も行いやすくなります。

 

②は一眼レフのエントリー機やミラーレス一眼に普及タイプの望遠ズームを装着した場合を想定し、その重さに耐えられるものとしています。

 

③は三脚と雲台(カメラの取り付け部)を合わせた重量。あまりに軽すぎるものは強度不足でかえって使いにくくなるので、持ち運びしやすく強度も保てると思われる重量として設定しました。結果として、軽量なカーボン製の製品が多くなっています。

 

それではオススメの製品を見ていきましょう!

【その1】とにかく頑丈!! 信頼度の高い“一生モノ”カーボン三脚

ジッツオ
GK1545T-82TQD
実売価格13万1770円

100年の歴史を誇るジッツオの「トラベラーシリーズ」の三脚。同社の三脚には、さらなる軽量化を目指した「マウンテニアシリーズ」もありますが、トラベラーシリーズの本製品は軽量なだけでなく、脚が180°折り畳める機構を持ち、収納時に小さくできる点が魅力です。雲台も丈夫で、可動時のトルクが調節できる「フリクションコントロール」に対応。高価ですが、並の中型や大型三脚よりもしっかりとしていてガタツキやタワミがなく、耐荷重も10㎏なのでプロ用一眼レフであっても十分耐えられるでしょう。最大伸長で使っても安心で、シーンを問わず使用できます。まさに“一生モノ”といえる、頑丈なカーボン三脚です。

●材質/カーボン ●重量/1450g ●耐荷重/10㎏ ●最大伸長/163.5㎝ ●縮長/42.5㎝ ●脚段数/4段 ●雲台/自由雲台(フリクションコントロール、パンロック、ティルトロック採用)

 

【その2】このスペックでこの価格!! 本格派ながらコスパ良し

 

バンガード
VEO2 264CB
実売価格2万9220円

バンガードは1986年創業の台湾のメーカーで、低価格ながら質の高い製品を数多く取り揃えています。本製品は耐荷重8㎏で最大伸長でもガタツキや脚のタワミが少なく、よほどの長時間露光でなければシーンを問わず安心して使えます。収納時はセンターポール(雲台の取り付け部で、ポールを上下させることで高さを調節できるパーツ)が反転できるようになっているため雲台部が出っ張らず、コンパクトに収納できるのも特徴です。雲台も「フリクションコントロール」に対応した本格派で、機能や丈夫さを考えると十分に低価格。コスパに優れたカーボン三脚といえます。

●材質/カーボン ●重量/1300g ●耐荷重/8㎏ ●最大伸長/155㎝ ●縮長/44.5㎝ ●脚段数/4段 ●雲台/自由雲台(フリクションコントロール、パンロック、ティルトロック採用)

 

【その3】イタリアの名門メーカー製アルミニウム三脚

マンフロット
befreeアドバンス アルミニウムT三脚セット
実売価格2万9640円

イタリアの名門メーカー、マンフロットの小型三脚。アルミ製ながら1.49kgと軽量で耐荷重も8kgと十分以上。よほどの長時間露光でなければ安心して使用でき、中・上級一眼レフもOK。ジッツオの製品同様、収納時は脚が180°折り畳める機構を採用していて、コンパクトに持ち運べます。雲台には、「フリクションコントロール」なども搭載されています。同社には、カーボン製の「befree カーボンファイバー三脚ボール雲台キット」もあり、こちらは重量が1.1kgとさらに軽量ですが、耐荷重が4kgで価格もやや高くなります。そのため、プラス390gの重さが気にならなければ、こちらをオススメします。

●材質/アルミ ●重量/1490g ●耐荷重/8㎏ ●最大伸長/150㎝ ●縮長/40㎝ ●脚段数/4段 ●雲台/自由雲台(フリクションコントロール、パンロック採用) ※ブラック、レッド、ブルーのカラバリ有り(写真はレッド)

 

【その4】収納時の長さはなんと27.5cm!! 他を圧倒するコンパクトさ

 

ベルボン
UT-53
実売価格2万2190円

日本の三脚専業メーカー、ベルボンの小型三脚は「ウルトラロック」と呼ばれる機構を持ち、脚のパイプを半回転させるだけで素早く伸縮・固定が行えます。本製品はアルミ三脚ながら、1.4kgと軽量で収納時は脚を180°折り畳んで収納でき、縮長(収納時の長さ)が27.5cmと他を圧倒するコンパクトさが最大の魅力です。耐荷重は2.5kgでミラーレス一眼+普及タイプの望遠レンズ程度なら十分。雲台は「フリクションコントロール」採用です。最大伸長時は多少脚にタワミが見られ、長時間露光時はできるだけ脚を縮めるのがおすすめですが、セルフタイマーでの記念撮影などは、脚を伸ばしても問題ありません。

●材質/アルミ ●重量/1400g ●耐荷重/2.5㎏ ●最大伸長/157㎝ ●縮長/27.5㎝ ●脚段数/6段 ●雲台/自由雲台(フリクションコントロール、パンロック採用)

 

【その5】軽量ながら十分な高さを確保!! LED搭載ギミックもユニーク

スリック
エアリーカーボン644LED
実売価格4万2990円

写真用品の国内最大手、ケンコー・トキナー傘下のスリック製三脚は、プロ用からコンパクト用まで、豊富なラインナップを誇ります。同社のトラベル三脚「エアリーシリーズ」は軽さにこだわったシリーズで製品で、本製品は最大伸長が1795㎜と高く、身長の高いユーザーやできるだけ高い位置から撮影したい場合に最適なモデルながら、重量は1210gと軽量です。また、センターポールの下部にLEDが組み込まれており、夜間や暗い室内で撮るときに補助照明として使用できるのも魅力。最大伸長時には、脚に多少タワミが出るので長時間露光時は、できるだけ脚を縮めて使うといいでしょう。

●材質/カーボン ●重量/1210g ●耐荷重/3㎏ ●最大伸長/179.5㎝ ●縮長/47.5㎝ ●脚段数/4段 ●雲台/自由雲台 ※センターポール端にLEDライト内蔵

 

撮影スタイルと三脚の特徴を十分に見極めて選ぶ

今回紹介した5本の三脚は、いずれも持ち運びに重点を置いたトラベル三脚ですが、あえてカテゴリ分けするとしたら、ジャンルを問わず使える製品が欲しいという場合は、ジッツオ「GK1545T-82TQD」かマンフロット「befree advance アルミニウムT三脚セット」、コスパ重視でできるだけしっかりしたものということならバンガード「VEO2 264CB」、収納時のコンパクトさならベルボン「UT-53」、軽さ+伸長の高さ重視ならスリック「エアリーカーボン644LED」といった具合になります。

 

傾向として軽さと丈夫さはトレードオフの関係にあるので、軽さも丈夫さもということになると難しくなりますが、日中の撮影や記念写真中心ということなら、それほど頑丈さは必要なく、逆に夜景など長時間露光が必要なシーンをメインに撮るのなら、頑丈さを重視する必要があります。そのため、三脚を選択する際は、そうした使い方と三脚の特徴を十分に見極めて選ぶといいでしょう。そうした見極めさえ間違わなければ、三脚の使用によって旅先で撮りたくても撮れなかったシーンなどが快適・確実に撮れるようになるはずです。

雨が心配で今日もカメラはお留守番…な人にオススメしたい雨対策アイテム3選

梅雨時期などの雨が降っている状況で、積極的に写真撮影を楽しもうという人は少数派でしょう。しかし、雨のかかったアジサイなど、雨だからこそ美しい被写体というのも多く、それらを狙ってみるのも楽しいもの。ただ、電子機器であるデジタルカメラは、水や湿気が苦手です。

 

最近は中級一眼以上のモデルを中心に防滴仕様のカメラやレンズが増え、以前ほど神経質になる必要はなくなっていますが、雨対策用品などを使って、カメラやレンズに直接水がかからないようにする注意は必要です。そこで本稿では、そうした簡易的な雨対策用品2つと、長時間の撮影にも耐える、本格的な耐水性能を持った用品1つの計3製品を紹介します。

↑カメラやレンズの雨対策用品を用いれば、簡易的なものであっても、カメラやレンズを壊すことなく雨の日の撮影が楽しめます。ビニール袋を加工するなどして自作の雨対策を行うことも可能ですが、専用に作られた製品なら撮影も行いやすく安心です

 

雨対策用品の基本的な選び方

カメラやレンズの雨対策用品は「カメラレインコート」などと呼ばれ、機材にビニールや耐水性の繊維などを用いたカバーを被せるものが多く、複数の写真用品メーカーから発売されています。なかには、市販の傘にカメラを取り付けて雨がかからないようにする用品もありますが、雨に加えて風が吹いている場合は、雨が吹き込んできたり、風で傘が煽られたりするので使用条件が限られます。そのため、基本的にはレインコートタイプのものがオススメです。

 

これらの製品を選ぶ際は、使用する機材がはみ出さず確実にカバーできるか、背面モニターなどの表示部が視認できるか、ダイヤルなどの操作が素早く行えるか、といった点がポイントになります。

 

カメラレインコートには、薄手のビニールなどを用いた簡易的なものと耐水性を持つ繊維などを用いた本格的なものがありますが、本格的なものは洗濯するなどして繰り返し使用できるメリットはあるものの、かなりかさ張る製品も多く、金額的にも高価になりがちです。そのため、雨のなかで撮影する頻度がそれほど高くない場合や、撮影中に万が一雨が降ってきた場合に備える程度といった場合には、次に紹介するような簡易的な用品がオススメです。

 

【オススメ①】安さと軽さが魅力の簡易タイプ

OP/TECH(オプテック)
レインスリーブ(ノーマル)
実売価格990円(2枚入り)

透明なビニール製で軽く、持ち歩く際の収納性も抜群。透明な素材でモニターなどの表示が確認できるのはもちろん、ファインダー部分に穴があり、ファインダーの使用も可能。レンズ先端部分を紐で絞れるようになっていて、使用するレンズの径に合わせて調節できます。

 

対応レンズは、70-200㎜ F2.8クラスまで。本製品のほか、標準ズームなどに対応する「スモール」、外付けフラッシュ使用時用の「フラッシュ」、超望遠レンズ用の「メガ」も用意されています。実質的に使い切りとなりますが、低価格で、雨の日以外でも万が一に備えて持ち歩けるコンパクトさと軽さが魅力です。

↑撮影時はボディの下部から手を入れてカメラを操作できるようになっています。三脚を使用する場合は、三脚取り付け部に穴を空けて使います

 

↑材質が透明で、背面モニターやカメラ設定などの確認が容易に行えるのもポイント

 

【オススメ2】万が一のときにサッと被せてカメラを守る

ラムダ
カメラレインボー
実売価格3050円

雨が降るなかで撮るつもりはないけれど、万が一、撮影中に雨が降ってきたら困る……といったときの対策用品がコレ。ウレタン防水コートされたナイロン地でできており、突然雨が降った場合や日差しが強すぎる場合のカメラの保護用に使えます。フィールド撮影時などに地面に機材を置く際のシートなどとしても使えるので便利。

↑100gと軽量で付属のケースに入れれば小さくまとめられます

 

↑カメラをバッグに収納する際の保護ケースとしても使えるので、持ち運び時に負担となることがありません。開口部が絞れるようになっているので、臨時の小物入れとしても活用できます

じっくり撮影派には防寒性能を備えたアイテムがオススメ

簡易的な雨対策用品は、短時間の撮影には向きますが、風景撮影などで長めにじっくりと撮影したいという場合は、本格的な雨対策用品のほうが安心感が高く、カメラの操作なども行いやすいでしょう。といっても、雨の日だけのために高価な用品を購入するのはもったいないと感じる人も多いはず。

 

そこでオススメなのが、耐水性能に加えて防寒性能などを備えた製品です。これなら、雨の日だけでなく、冬の寒い時期に長時間の撮影を行うといった場合にも活用できます。

 

【オススメ3】フリース地の採用で寒冷地での撮影にも対応

ラムダ
フリースレインボー 四季
実売価格7770円

耐水性の高いナイロン地の裏面にフリース地を組み合わせた構造で、耐水性と耐寒性を備え、三脚を使用しての長時間の撮影も考慮したカメラカバー。左手側にズーム&フォーカス操作窓、右手側にシャッター操作窓(いずれもファスナー開閉式)が用意され、カメラ操作も行いやすいよう工夫されています。

 

背面にカバー付きの窓が備わり、ファインダーやモニターの確認が可能。この窓をずらすことで、撮影モードの変更なども行えます。各窓部などから、多少水が入り込む可能性はあるものの、内部のフリース地が水分を吸収するため、多量の水が入り込まない限り撮影を続行できるようになっています。

↑防寒対策としては、カメラ下部を紐で絞って熱が逃げないようになっているほか、内部にカイロを入れるポケットを用意。寒冷地では予備バッテリーが必需品ではあるものの、寒さによるバッテリー性能の低下などを抑制でき、長時間撮影にも対応しやすい仕様となっています

 

↑カメラレインボー同様に、持ち運び時には機材を保護するケースとしても使用可能

 

↑ラムダは、軽さが重視される山岳用カメラザックの専門メーカー。それだけに、本製品も220gと軽量です。収納時の大きさも本格的な雨対策用品としてはかなりコンパクト

 

慢心は危険!! 雨の日の撮影の注意点

雨の日の撮影は、いかに機材に水がかからないようにするかがポイントになりますが、カメラレインコートを使用したとしても万全とまではいえず、フードやレンズ先端、場合によってはボディも含め、多少は雨がかかってしまいます。そのため、撮影中は機材にかかった水を拭う吸水性の高いタオルや撥水性の高いレンズ保護フィルターなどを用意し、水がかかったらすぐに拭うようにしましょう。

 

加えて、撮影中はメモリーカードやバッテリーを抜かない、できるだけレンズ交換は行わないこともカメラを壊さないためのポイントです。また、撮影後は機材表面に付着した水分を確実に拭い、風通しのいい場所で機材を十分に乾かすようにすると、カメラ内部に溜まった湿気が除去でき、後々の機材のトラブルを防げます。

 

このように注意点の多い雨の日の撮影ですが、水滴や雨に濡れた花や葉、しっとりとした雰囲気など、撮り始めると普段は目に留めない雨の日ならではの美しい瞬間が数多く見つけられると思います。十分に対策を行って、ぜひ、そうした瞬間を狙ってみましょう。

もはやマニアだけのものではない!! 手持ちレンズを使い倒す「マウントアダプター」のススメ

自分が持っている交換レンズの資産を生かしながら、他社カメラへの乗り換えや追加がしたい。そんなときに役立つのが「マウントアダプター」です。マウントアダプターを使うと、どんなことができるのか。その基礎知識を確認しつつ、最近人気を集める「AF対応マウントアダプター」をチェックしていきましょう。

 

「マウントアダプター」はもはやマニアだけのものではない

一眼レフやミラーレスカメラといったレンズ交換式のカメラでは、どの「レンズマウント」を選択するかが、購入時の重要なポイントになります。レンズマウントとは、カメラのボディとレンズを接合するための機構のこと。多くのメーカーは独自の規格に沿ったレンズマウントを採用しており、異なるレンズマウント間での互換性はほとんどありません。

 

そうしたレンズマウントの不自由さを補うための用品が「マウントアダプター」です。マウントアダプターとは、ボディとレンズの間に装着し、レンズマウントの規格を変換するための中間リングのこと

↑マウントアダプターを使えば、例えばキヤノンのレンズをソニーのカメラにつけて利用できます

 

ただし、すべてのカメラで互換性を実現できるわけではありません。マウントアダプターが発売されているのはフランジバック(マウント面から撮像素子面までの距離)が短いカメラ用のものに限られます。また機能面にもいくつかの制約があり、本来のレンズと同じように使えるわけではありません。そのため、マウントアダプターの存在は知っていても、「難しい」「使いにくい」「マニアック」といった印象を持つ人も少なくないでしょう。

 

そんななか、ここ数年人気を集めているのがビギナーでも扱いやすい「AF対応のマウントアダプター」です。マウントアダプターといえば、銀塩時代のオールドレンズを楽しむためのものと考えがちですが、それだけが目的ではありません。今回取り上げるのは、AF(オートフォーカス)に対応した、比較的新しいレンズを使うためのアダプターです。純正レンズとまったく同じ、とまではいきませんが、複雑な操作や設定を必要とせず、誰でも気軽に利用できます。

↑マウントアダプターは国内外の数多くのメーカーから発売中。価格は1000円前後から数万円までまちまちで、品質は玉石混交。自分の機材と用途に合ったものを選びたいところです

「AF対応マウントアダプター」おすすめ5製品

数あるAF対応マウントアダプターのなかでも、エポックメイキング的な存在といえるのが、2016年に発売されたシグマ「MC-11」です。シグマSAマウント用の交換レンズ、またはシグマ製キヤノン用交換レンズを、ソニーEマウントのボディで使用するためのアダプターです。

↑シグマ「MC-11」。同社オンラインショップでの価格は3万5100円。写真は、キヤノン用交換レンズ対応の「EF-E」。このほか、シグマSAマウント用の交換レンズ対応の「SA-E」が用意されています

 

MC-11が画期的なのは、数多くのレンズでAFが実用的なスピードで作動し、動作の安定感も高いこと。キヤノン用の「MC-11 EF-E」の場合、公式に対応を謳っているのはシグマ製のキヤノン用レンズのみですが、実際に筆者が試した限りでは多くのキヤノン製のレンズでも、特に不都合なく使用できました(※)。

※あくまで筆者の実感に基づくもので、キヤノン製のレンズ使用時の動作を保証するものではありません。MC-11 EF-Eの場合、公式に対応を謳っているのはシグマ製のキヤノン用レンズです

 

さらに、対応機種の追加や機能向上を目的としたファームアップが頻繁に行われることや、製品クオリティがしっかりしていて個体差が少ないこともメリットといえます。私自身、MC-11はふだんの仕事用からプライベート用まで幅広く有効活用しています。キヤノンのカメラとソニーEマウントのカメラの両方を持っている人にとっては必需品といえるかもしれません。

 

純正レンズ装着時に比べた場合のデメリットとしては、アダプターのぶんだけサイズと重量が増えること、ゾーンフォーカスなど一部のフォーカスエリアモードが使えないことなどが挙げられます。また、APS-C専用のキヤノン「EF-Sレンズ」は、MC-11に物理的に装着できない点にも注意が必要です。

 

同じくAF対応のマウントアダプターとして、Commlite(コムライト)の製品にも注目です。Commliteは中国・深センの写真用品メーカーで、数多くのマウントアダプターを手がけています。

↑Commlite「CM-EF-NEX」。キヤノンEFレンズをソニーEマウントのボディに装着できるAF対応マウントアダプター。実売価格は8370円

 

Commlite「CM-EF-NEX」は、シグマMC-11に比べると動作可能なレンズの数はやや少なめで、AFの安定感でも及びません。しかし、より求めやすい価格や、EFレンズに加えて一部のEF-Sレンズが使えることがメリットです。

 

同社の新製品として、より高速なAF駆動に対応した上位モデル「CM-EF-E HS」も今春登場しました。こちらは側面のボタンによって、位相差AFとコントラストAFの切り替えができる点がユニークです。

↑Commlite「CM-EF-E HS」。同じくキヤノンEFレンズをソニーEマウントのボディに装着できるAF対応マウントアダプター。より高速なAFが特長です。実売価格は1万9800円

 

さらに同社からは、ニコンFマウントレンズをソニーEマウントボディに装着できる「CM-ENF-E1 PRO」や、キヤノンEFレンズをマイクロフォーサーズのボディに装着できる「CM-AEF-MFT」も発売されています。

↑Commlite「CM-ENF-E1 PRO」。ニコンFマウントレンズをソニーEマウントボディに装着できるAF対応マウントアダプター。実売価格は4万2832円

 

↑Commlite「CM-AEF-MFT」。キヤノンEFレンズをマイクロ・フォーサーズのボディに装着できるAF対応マウントアダプター。実売価格は1万9979円

 

↑CM-AEF-MFTを利用して、キヤノン「EF35mm F2 IS USM」をオリンパス「E-M1 Mark II」に装着。この組み合わせでは、70mm相当の中望遠レンズとして活用できます

 

これらのAF対応マウントアダプターは、いずれも電子接点を通じてAFやAEなどの情報伝達を行っており、画像へのExif情報記録にも対応しています。絞り値や焦点距離などが記録されるので、あとからの画像管理などに役立つでしょう。

 

Eマウントボディ用のアダプターが多い理由は?

ここで紹介した2社以外にも、AF対応のマウントアダプターはさまざまなメーカーから発売されていますが、その多くはソニーEマウントのボディに装着するための製品です。

 

Eマウント用が多い理由は、Eマウントのフランジバック(マウント面から撮像素子面までの距離)が18mmと短く、ほかのレンズを付けやすいためです。マウントアダプターを実現するためには、ボディ側のマウントのフランジバックが、レンズ側のマウントのフランジバックよりも短くなければなりません。加えて、ボディ側のマウント径が、レンズ側のマウント径よりも大きいという条件もあります。これらの点で、フランジバックが短く、マウント径が比較的大きいソニーEマウントは有利なのです。

↑上は、キヤノンEFレンズをキヤノンのボディ(EOS 6D Mark II)に装着した状態。下は、同じキヤノンEFレンズをアダプター経由でソニーのボディ(α7 III)に装着した状態。マウントアダプターは、短いフランジバックのカメラに装着することで、レンズ本来のフランジバックを保つ役割を担っています

 

またソニーが、サードパーティのメーカーに対してEマウントの仕様を開示していることも理由のひとつといえます。仕様が開示されていないほかのレンズマウントの場合、レンズとボディの間で行われる情報伝達のプロトコルなどをサードパーティのメーカーが解析する必要があります。

 

以下は、AF対応マウントアダプターが発売されている主な組み合わせをまとめたものです。自分が使いたいマウント用のものが発売されているかチェックしてみてください。

↑AF対応マウントアダプターが発売されている主な組み合わせ

 

AF対応マウントアダプターは、ボディとレンズの組み合わせの幅を広げてくれる便利なアイテムです。いわゆる「マウント縛り」から解放され、より自由な撮影が可能になります。異なる複数のメーカーのカメラを所有している人や、別メーカーのマウントに乗り換えを目論んでいる人にもおすすめです。

 

“ブレ”を生かしたカッコいい写真が撮れる!! 「NDフィルター」の効果と使い方【いまさら聞けない】

写真を撮るときの失敗で最も多いのが「ブレ」による失敗です。その原因は、光の量が不足していて(つまり暗くて)、被写体や手ブレを止めるだけのシャッター速度にならなかったから……というのがいちばん多いケース。つまり、シャッター速度を速くできれば、ブレによる失敗のほとんどは解消できることになります。その具体的な解決法は、ISO感度(※1)を高くして、絞り(※2)の数値を小さく設定することです。

※1:撮像センサーの、光に対する敏感さの度合い。この数値が高いほど少ない光でも敏感に反応するようになりますが、そのぶんノイズも増えやすくなります
※2:レンズ内を通る光の量を調整するもので、通常、F+数字でその度合いが表されます。この数字が小さいほど、レンズを通る光の量が増え、シャッター速度が速くなります

 

で・す・が、今回は“あえてシャッター速度を遅くして被写体をぶらしてみよう!”というお話。うまくブレを使うと、ちょっと上級者のような写真が撮れますよ! 本稿ではそうした低速シャッターを生かした写真の撮り方や、便利アイテム「NDフィルター」について解説していきます。

 

「NDフィルター」っていったい何? どういうときに使うの?

シャッター速度を遅くするには、ISO感度をできるだけ低くして、絞りの数値をできるだけ大きくするということになります。ただ、明るい晴天時の日中などは光が強いため、ISO感度を下げて絞りを絞ってもシャッター速度がそれほど遅くならないケースも少なくありません。そうしたときに役立つのが、今回紹介する「NDフィルター」です。

↑NDフィルターは黒っぽい光学フィルターで、被写体の色を変化させずに光の量だけを減らすことができます。効果の度合いにより、数種類の濃さの製品が用意されています(写真はND8のフィルター)

 

NDフィルターはNeutral Density Filter(中立の濃度のフィルター)の略で、見た目にはただの黒っぽいフィルターですが、被写体の色に影響を与えずに光の量だけを減らすことができます。使い方は一般的なレンズの保護フィルターなどと同様に、レンズ先端にねじ込んで使用します。

 

NDフィルターは濃度により種類があり、製品のパッケージやフィルター枠に「ND8」や「ND16」といった数値が記されています。この数値は、入ってくる光を何分の1にするかを示しており、例えばND8であれば光を1/8にする効果があり、これをシャッター速度にすると3段分(※3)遅くすることができます。例えば、NDフィルターなしで1/15秒となる場合、ND8を使用すれば1/2秒で撮れるといった具合です。

※3:シャッター速度1段分とは、シャッターを用いて撮像センサーに光を当てる時間を2倍(あるいは1/2倍)にすること、あるいはその数値。例えば、1/30秒から1段明るくすると1/15秒、逆に暗くすると1/60秒となります。ちなみに2段だと4倍、3段だと8倍の露光時間が必要
↑ほとんどのNDフィルターには、上の写真のようにフィルターの枠にND8やND16といった数値が記されていて、光の量を何分の1にできるかがわかるようになっている

 

↑左がND8で右がND32。ND32のほうが濃度が濃くなっていることがわかります。ND8がシャッター速度にしておよそ3段分、ND32がシャッター速度にしておよそ5段分の効果があります

 

このように、NDフィルターは光の量を制限してくれるので、“シャッター速度を遅くしたいのに明るすぎてできない!!”という場面で活躍します。あるいは、より遅いシャッター速度を使用できるようになるので、その表現を強調できるという効果もあります。

 

シャッター速度を遅くすると、どんな写真が撮れる?

では、シャッター速度を遅くするとどんな写真が撮れるのでしょうか? 代表的なのが渓流や滝、噴水といった「流れる水」の写真です。例えば噴水は、高速シャッターで撮ると水が玉のようになって写り、シャッター速度が遅くなるとそれがぶれるために水が動いているように写ります。さらに低速のシャッター速度(概ね1/15秒以下)になると、白い糸が流れに沿ってあるかのような写りになります。実際の作例で見ていきましょう。

上の写真はシャッター速度を1/8000秒にして水の動きを止め、下の写真はシャッター速度を8秒にして水を大きくぶらしています。このように、特に水はシャッター速度の違いにより写りが変化し、同じ構図でも写真の印象が劇的に変わります。表現の意図に沿ったシャッター速度を選ぶようにしましょう。

 

続いて、NDフィルターの有無や濃度による違いを見比べて見ましょう。

いちばん上の写真は、ISO感度を下げて絞りの数値をできるだけ大きくして撮影。シャッターを1/4秒まで遅くすることができましたが、水の動きが中途半端に止まって写っています。2番目の写真は、同一条件でND8フィルターを使用。シャッター速度は約2秒。かなり水がぶれて、水か流れている様子がわかります。3番目は、ND32を使用。約8秒の露光で水の流れがなだらかに写り、糸が流れているかのような写りになっています。

 

このほか、街や雲などを撮る場合も面白い効果が得られます。街を撮ると、歩いている人やクルマが大きくぶれて、それらの動きが感じられ、その一方で街にある建物などの様子が際立って見えます。雲は動きが遅いので、長時間の露光が必要になりますが、空の雲が増えたかのような写真に仕上がります。

 

ちなみに、日中以外の夕景や夜景では、走るクルマの光跡を撮るといったことが可能です。この場合は、よほど低速で撮影するのでない限りNDフィルターは必要なく、ISO感度と絞りを調節して低速シャッターで撮ることができます。

↑夜の街並みなど、暗い条件ではNDフィルターは必要なく、ISO感度と絞りの調節だけで低速シャッターで撮影できます。上の写真では、感度をISO64に設定して絞りをF14まで絞り、30秒の長時間露光を行いました。それにより、道路を走るクルマのテールライトなどが光跡として写っています

 

同じブレでも大違い!! 失敗写真とカッコイイ写真の差

ブレを使った写真を撮る際に気をつけたいのが、シャッター速度が遅くなったことによる「手ブレ」。“ブレを生かす”といっても、手ブレによって写真全体がぶれてしまっては単なる失敗写真のようになってしまいます。基本的には三脚を使い、動いているものだけをぶらすようにするとよいでしょう。

120㎜相当の望遠でND32フィルターを使用して1/3秒で撮影。上の写真は手持ちで撮ったため、手ブレで水だけでなく岩もぶれてしまいました。三脚を使った下の写真は、水だけがぶれて糸のような流れに写っています。最近のカメラは、手ブレ補正が強化され、手持ちで撮れるシーンも増えましたが、1/15秒以下の低速シャッター撮影や、望遠レンズ使用時などは三脚を使ったほうが安心です。

【発売前レビュー】ほとんど真っ暗な「ND1000」って何に使うの?

通常のNDフィルターは、前にも記したようにND8~ND64程度までの濃さの異なる製品が用意されているのですが、3月に行われた「CP+2018」でマルミ光機が発表した「EXUS NDフィルター」(2018年夏頃発売予定)は、ND4~64までの製品のほかに「ND500」「ND1000」という製品を用意。ほとんど真っ暗なND1000ですが、いったいどんな場面に有効で、どんな仕上がりになるのでしょうか? 発売前の製品をお借りすることができたので、早速使ってみました。

↑ND1000フィルター。非常に高濃度で、フィルターの向こう側がわずかに見える程度です。そのため、光学式のファインダーではフィルターを装着したままでは構図の確認などが難しく、撮影時にレンズに着けて使用することになります

 

まずND1000の使用感ですが、とにかく濃度が濃く、一眼レフの光学ファインダーでは、視野を確認するのが難しくなります。そのためEVF搭載のミラーレスカメラか、ライブビューでの撮影がおすすめ。するとカメラの側で明るさを調整(ゲインアップ)してくれるので、AFを含めてほぼ問題なく撮影できます。どうしても光学ファインダーで撮るという場合は、フィルターなしで構図合わせやピント合わせを行い、撮影直前にフィルターを装着して撮るとよいでしょう。

 

今回はオリンパスのミラーレスカメラ「OM-D E-M1 MarkⅡ」にこのフィルターを使用して撮影しました。すると、自動露出ではやや暗めに写るケースはありましたが、その場合も露出補正やマニュアル露出を使用することで、問題なく撮影できました。

↑EVFや背面モニターでのライブビュー撮影では、ゲインアップして露出を合わせた状態での表示となるため、十分に明るい被写体であれば、問題なく視野を確認することができます。ただし、今回使用した限りでは、露出は多少暗めに仕上がる傾向がありました

 

このフィルターを使うと、日中でも15秒や60秒といった長時間露光が可能になります。具体的には、効果がシャッター速度にして約10段分なので、1/60秒の露光がフィルターの使用で15秒の長時間露光になるといった具合です。この長時間露光によって、水の流れは極めてなだらかな写りになりますし、大きく波打つ海は、凪の海のように写せます。

いちばん上の写真は、プログラムオートで撮影したもの。ISO感度設定もオートにしているため、感度が上がりシャッター速度は1/160秒で川が波打つ様子が確認できます。2番目の写真は、ISO感度を下げて絞りを絞って、シャッター速度を1/6秒にして撮影。波打つ水面がぶれているのがわかります。3番目は、ND1000フィルターを使用して、シャッター速度を60秒にして撮影。水面は波が無数にぶれ、かなり滑らかな状態で写っています。

 

↑上の比較写真と同じ場所で夕方に撮影。ND1000を使って60秒の露出にすることで、水面をなだらかにでき、夕方の静かな雰囲気を演出できました

 

ND1000を使った長時間露光なら、水の流れだけでなく、こんな使い方も可能。街を歩く人がかなり消えて、街並みそのものが際立ってきます。

上の写真は、NDフィルターなしでシャッター速度1/15秒で撮影しています。街行く人々が数多く写っています。下の写真はND1000を使用してシャッター速度は60秒。立ち止まっている人以外はほとんど消えてしまい、クルマもテールライトの光跡のみとなっています。このように、低速シャッター使えば、街を行き交う人が急にいなくなってしまったような不思議な描写も可能です。

 

NDフィルターの選び方と注意点

このように低速シャッターにより、変化に富んだ写真が撮れるNDフィルターですが、購入の際には少し注意点があります。

 

まず、使用するレンズに合ったフィルター径の製品を選ぶことは、ほかのフィルター類と同様。次に滝の撮影など水辺のシーンで使うことの多いフィルターなので、撥水コーティングや防汚コーティングが施され、水滴や汚れが素早く拭えるもにしておくと安心です。

 

このほか、フィルター枠などの光の乱反射を抑えたデジタルカメラ対応の製品だと、逆光などのシーンでもコントラストの低下が抑えられます。今回使用した、マルミ光機の「EXUSシリーズ」の製品などは、こうした条件をクリアしていておすすめです。

 

NDフィルターで表現の幅がグッと広がる!

低速シャッターでの撮影は、手ブレやカメラブレに気を付けて撮れば、肉眼では見ることのできないユニークなシーンを撮れるのが魅力。その際、NDフィルターがあれば、より長時間の露光が可能になって効果を強調できます。

 

また、一眼カメラで動画を撮影する際に滑らかな映りにするには、シャッター速度を概ね1/100秒以下に設定する必要があるのですが、そうした場合にもNDフィルターは活躍します。

 

そのほか、大口径レンズを絞り解放にして撮影する場合にシャッター速度を最高速(1/4000秒や1/8000秒)にしても、露出オーバーになってしまうケースが少なくありません。そうしたシーンも、NDフィルターが活躍します。

↑F1.4やF1.8といった大口径レンズを絞り解放(もっともF値が小さい状態)で使用する場合は、カメラのシャッター速度の上限を超えて、露出オーバーになってしまうことも少なくありません。そうしたときにNDフィルターを使用することで最適な明るさにすることが可能です

 

さすがにND1000のフィルターを常時持っておく必要はないと思いますが、ユニークな表現をしたい場合にはおすすめ。普段使いとしては、ND8~64のものを2種類程度持っておくと、低速シャッターによる写りの変化が手軽に試せて、写真撮影をより楽しいものにすることができます。

風景撮影の必需品!! カメラ初心者にもわかる「PLフィルター」の効果&選び方

カメラや写真の「フィルター」というと、カメラを買ったときにセットで売られることの多い「保護フィルター」やカメラに搭載されている「デジタルフィルター」機能を思い浮かべる人も多いと思います。このうち、保護フィルターはレンズの先端に物理的に取り付けて使用する、いわば“アナログフィルター”で、レンズなどと同様に光学ガラスなどで作られた「光学フィルター」です。

 

フィルムカメラの時代には、数多くの効果が得られる光学フィルターが用意されていました。しかし、デジタルカメラの時代になって、前出のデジタルフィルターや画像加工で同様の効果が得られるものが増え、保護フィルター以外は注目されにくくなってしまいました。

 

とはいえ、デジタルカメラでも光学フィルターを使用しないと同様の効果が得られないものもあります。その代表格といえるのが「PLフィルター」で、これからの季節、海や山など風景を色鮮やかに撮るのに必須のフィルターです。ここでは、PLフィルターの使い方や効果、適したシーンなどについて、カメラ初心者にもわかりやすく解説します。

↑PLフィルターは、数ある光学フィルターの中でも高価な部類に入り、写真の72㎜径の製品の実売価格で1万2210円程度。しかしながら、写真の仕上がりが劇的に変化するため、風景写真家を中心にプロ・アマ問わず高い人気を誇ります

 

イチからわかる「PLフィルター」の仕組みと使い方

PLフィルターは、Polarized Light Filterの略で「偏光フィルター」とも呼ばれ、光による被写体のテカリや空中で乱反射した光をカットし、被写体本来の色を引き出したり、被写体のコントラストをアップさせたりする効果を持つフィルターです。

 

使い方は、フィルターをレンズの先端に取り付ける点は保護フィルターなどと同様ですが、フィルターの枠が2重になっており、枠を回転させることで効果の強弱が変化する仕組みになっています。そのため撮影時には、手で枠を回転させながら、その効果をファインダーや背面モニターで確認し、最適な効果が得られる位置で枠を止めて撮影します。

↑フィルター枠が二重になっており、使用時は上の写真のように前枠を指で回転させ、ファインダーやモニターで効果を見ながら、最適な位置にセットして撮影します

 

PLフィルターの構造は、ガラスとガラスの間に「偏向膜」と呼ばれる特殊な膜を挟み込んだものとなっています。偏光膜は極細かい“すだれ”状となっていて、一定方向の光(偏光)のみを透過させます。これにより、被写体から反射してくる余計な光(偏光)をカットしたり、反射光を強調したりできるようになっています。

 

あり・なし画像比較で丸わかり! PLフィルターが役立つシーン

どういったシーンでPLフィルターが有効かというと、例えば木の葉に光が反射して白っぽく写ってしまうのを本来の葉の色に写したり、空気中の水蒸気やチリに光が反射して白っぽく写ってしまう青空を濃い青色に写す場合に有効です。そのため、風景写真の愛好家の間で多用される傾向にあります。

 

では、具体的な活用シーンを見ていきましょう。まずは、次の2枚の写真を見比べてみてください。


PLフィルターを使用せずに撮影した上の写真は葉にテカリが出ているのに対し、PLフィルターを使用した下の写真はテカリが除去され、葉の本来の色で写っています。ただし、テカリを除去すると立体感は弱くなりがちなので、ケースバイケースで使い分けましょう。

 

次の2枚も同様に、1枚目がPLフィルターなし、2枚目がPLフィルターありで撮影したものです。

PLフィルター不使用の上の写真では、空気中の水蒸気や細かいチリなどに光が乱反射して、空が白っぽく写っています。また、木の葉も多少沈んで見えます。一方、PLフィルターを使用した下の写真では、空の色が濃くなり、木の葉のテカリも除去されて葉が浮き上がって見えるのがわかります。結果、画面全体のコントラストが上がって、色鮮やかな写真に仕上がっています。

 

このほか、湖や池などの水面の光の反射を取り除いて水中の様子を鮮明に写したり、ガラスに反射した光を取り除いてガラスの奥にある被写体を鮮明に写したり、といったことが可能です。

 

次の写真は池に浮かぶスイレンの花を撮影して比較したものです。

PLフィルターなしの上の写真では、水面や葉に光が反射して白っぽくなり、花の印象が弱く感じられます。一方、PLフィルターを使用した下の写真では、水面や葉に反射した光が除去され、花や葉が引き立って見えるます。

 

PLフィルターというと風景撮影に使用するイメージが強いかもしれませんが、次の写真のようにショーウィンドウなどのガラスの反射を取り除きたい場合にも有効です。

PLフィルターなしの上の写真では、ガラスの反射によりガラスの奥にある被写体がくすんで見えますが、PLフィルターを使った下の写真では、被写体を鮮明に写すことができました。

便利だが万能ではない――PLフィルター使用時の注意点

このように風景などを撮る際に非常に効力を発揮するPLフィルターですが、デメリットもあります。それは、一定方向の光以外をカットするため、光の総量が少なくなり、撮像素子に届く光が一般に2~3段程度暗くなってしまう点です。そのため、保護フィルターのように常用するには向かないフィルターといえます。

 

また、一定方向の光のみを透過させるため、角度の異なる光が複数存在する場合には、必ずしも効果が得られません。特に広角レンズで広い範囲を写すような場合には、PLの効果にムラが出てしまうことがあります。そのため撮影時には、効果を試してみて思いどおりの効果が得られない場合には、使用しないほうが良い結果が得られるといったケースもあります。

 

同じようで全然違う!! 失敗しないPLフィルターの選び方

一見、どれも同じように見えるPLフィルターですが、購入する際はいくつかの注意点があります。

 

①使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶ

まず1つは、当然ながら使用するレンズのフィルター径に合ったものを選ぶこと。特にレンズの径よりも小さなものは、物理的に取り付けることができません。

 

ただ、フィルターとしては高価な部類に入るものなので、複数のレンズで共用したいというケースもあると思います。そうした場合は、いちばん径の大きなレンズに合ったものを選んでおけば、「ステップアップリング」というフィルター径を変換するリングを併用することで使用することが可能です。この場合も、広角レンズにステップアップリングを使用すると、画面の四隅がけられて暗く写る場合があるので、注意が必要です。

↑ステップアップリングは、レンズとフィルターの間に取り付けることで、レンズのフィルター径よりも大きな径のフィルターを取り付けることができます。様々な組み合わせの製品が用意されているので、使用するレンズとフィルターの径に合ったものを購入しましょう

 

②「サーキュラーPL」を選ぶべし

次の注意点としては、必ず「サーキュラーPL」と呼ばれるタイプのものを用意すること。PLフィルターには、通常のPLフィルターとサーキュラーPL(円偏光)フィルターの2種類があり、通常のPLフィルターを使用すると構造上AFなどが正確に機能しない場合があります。そのため、購入の際はサーキュラーPLと記されているか確認するようにしましょう。

↑サーキュラーPLかどうかは、多くの場合、製品のパッケージやフィルター枠に記載されています。「CIRCULAR P.L」「C-PL」などと記載されている場合もあります

 

③広角レンズで使うなら「薄枠タイプ」がベター

こちらは必須ではありませんが、特に広角レンズで使用するフィルターは、できるだけ「薄枠タイプ」と呼ばれるものを使用すること。これは、前に記したステップアップリング使用時と同様の理由で、フィルター枠の太いものを使用すると画面の四隅がけられてしまう(暗く写る)場合があるためです。ちなみに、この薄枠タイプのフィルターは、多少強度の面で弱い製品もありますが、標準や望遠レンズに使用しても問題はありません。

 

④防汚コート・撥水コート仕様ならお手入れ簡単!

最後も必須とはいえないものの、フィルター表面が防汚コートや撥水コートされたものを選ぶことです。特にPLフィルターはフィルターの枠を手で回転させて使用するため、フィルター表面をうっかり指で触ってしまうことも少なくありません。また風景撮影では、土ぼこりが舞っていたり、雨に降られたりするケースもあります。

 

そうしたとき、防汚コートや撥水コートがされていると、レンズクリーニングクロスなどでフィルター表面を軽く拭うだけで撮影を続行することができ、フィルターも傷みにくいため長い間使用することができます。

↑防汚コートや撥水コートされた製品は、汚れや水を弾く性質があり、これらの除去も簡単。油汚れにも強いので、万が一フィルター面に触って指紋などが着いてしまっても安心です

 

以上のような注意点を高いレベルで実現している製品は多くはなく、マルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」など、フィルターメーカー各社の看板商品になっています。決して安価ではありませんが、寿命も長い製品なので購入して損することはないでしょう。何より、撮影中の安心感が抜群に高いのが魅力です。

↑マルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」。同社の最上位グレードの製品で、防汚コートや撥水コートの採用はもちろん、静電気が発生しにくく、光の透過率が高くてファインダーの視野が明るいなど、数多くの利点を備えた使いやすい製品です

 

PLフィルターを使ってワンランク上の写真を撮ろう!

フィルターの構造などを考えてしまうと、少しとっつきにくい印象もあるPLフィルターですが、その使い方は簡単で、フィルター枠を回転させるだけで景色が劇的に変化していく様子はちょっと感動的ですらあります。

 

特に春から秋にかけては、風景が刻一刻と変化して写真を撮るのが楽しい季節。そうした風景をより鮮やかに印象的な写真に残すには、PLフィルターは必須アイテムです。ぜひ、今年はPLフィルターを使用して、ワンランク上の写真を狙ってみましょう。