途上国・新興国でビジネスに挑戦する日本企業が登壇「第7回 飛びだせJapan! 成果報告会」レポート

【掲載日】2022年4月15

2022年3月22日、経済産業省主催の「途上国ビジネスに挑戦した日本企業のリアルに迫る~第7回飛びだせJapan!成果報告会~」が、オンラインにて開催されました。「飛びだせJapan!」は、途上国や新興国の社会課題をビジネスで解決する企業を支援する補助金事業です。本事業は、経済産業省の補助事業者として、アイ・シー・ネットが実施運営を行っています。本記事では、2021年度に採択された10社のうち8社が登壇した今回の報告会の様子をレポートします。

 

「飛びだせJapan!」の概要と背景

報告会の最初に、本事業の事務局を担当するアイ・シー・ネットの下山氏から「飛びだせJapan!」の概要と背景について説明がありました。下山氏は「少子高齢化が進み、国内マーケットの縮小が懸念される日本では今後、『海外進出』がビジネスにおける大きな成長エンジンになるはずです。中でも途上国や新興国は解決すべき社会課題を多く抱えており、それらはビジネスチャンスと捉えることができます。本事業では、途上国や新興国の人々にも、事業者たちにも、長きにわたって利益をもたらすビジネスを実践する日本企業を支援したいと考えています」と述べました。

 

オンラインコミュニケーションの質を高めるAIサービスを提供「株式会社I’mbesideyou」

概要説明後は、各企業がそれぞれ成果を報告。最初に株式会社I’mbesideyouが登壇しました。同社では、オンラインコミュニケーションの質を高めるための動画解析AIサービスを提供しています。同社の神谷氏はアプリケーションについて、「ビデオツール上で一人一人の表情や音声などの情報をリアルタイムで解析し、メンタルヘルスの状態を見える化することが可能です」と説明。アプリケーションを通じて、オンライン教育の質向上やメンタルヘルスの環境改善などを目指しています。

 

同社はインドでもサービスを展開しており、今回の事業ではオンライン教育とメンタルヘルスの2領域のアプリケーションを、それぞれインド向けにローカライズしました。神谷氏は「オンライン教育で活用できるアプリケーションは、インド工科大学と協業し、学生たちのニーズを反映しながらプロトタイプの仕様を決定しました」と述べました。

オンライン教育で活用できるアプリケーションは、授業を受ける生徒の様子や出席状況など、日々の授業データが集約され表示されるようになっている

メンタルヘルスをサポートするアプリケーションでも、毎日の感情の状態や変化などを見える化できるプロトタイプを開発。神谷氏は「これからも日本とインドの役に立つサービスを提供し、広くグローバル展開していきたい」と展望を述べました。

 

ウガンダ産カカオの品質向上に取り組む「株式会社立花商店」

2社目に登壇したのは、カカオの専門商社である株式会社立花商店。世界30か国以上との取引実績を持つ同社は、今回の事業でウガンダ産カカオの品質向上に取り組みました。ウガンダのカカオに着目した理由について同社の野呂氏は、「ウガンダのカカオは品質が良いとは言い難く、国際取引価格も低いのが現状。もっと価値を向上させ、カカオ産業の底上げができないかと考えました」と話しました。

 

今回の事業では、カカオの栽培・加工・輸出などを行う日本人が経営する現地企業と協業。現地パートナーが所有する自社農園で、高品質なカカオ生産に欠かせない工程である発酵乾燥ができる施設の建設や運営、カカオ豆の加工・殺菌設備の導入などを行いました。これらを通して、ウガンダ国内で高品質なカカオをつくる際のモデルケースとなることを目指しています。

さらに現在、ウガンダ国内で新たな品種の導入にも取り組んでいる同社。「ウガンダ国内はもちろん、国外にもウガンダ産カカオをアピールしていきたいと考えています」と今後の目標も語りました。

 

独自の信用スコアリングでケニアタクシー業界の課題を解決「株式会社HAKKI AFRICA」

3社目に成果報告を行ったのは、株式会社HAKKI AFRICAです。同社では、独自のクレジットスコアリングを活用し、信用情報が不足するアフリカの事業者に対して、中古車の購入代金を融資しています。

 

今回の「飛びだせJapan!」では、ケニアのタクシードライバー向けに中古車ファイナンスの実証事業を実施。同社の小林氏は「信用情報の不足により、車を購入したくてもローンの審査がなかなか通らず、レンタカーを活用するドライバーが多いのが現状です」とケニアのタクシードライバーが抱える課題について説明しました。

今回の事業で同社が行ったのは、信用スコアリングのローカライズ、GPSトラッキングシステムや、国内普及率が高い電子マネーに接続した会計ソフトの開発など。これらにより、ドライバーの収入や支払いの安定性評価、不正防止、返済管理の効率化などが可能になりました。小林氏は「今後も現地パートナーと協業しながら、ケニア及びアフリカへの事業展開を目指していきます」と話しました。

 

東アフリカで中古車販売プラットフォームを運営「株式会社Cordia Directions」

4社目は、株式会社Cordia Directionsが成果を報告しました。同社はケニアに子会社を持ち、オンラインの中古車社販売プラットフォームの運営などを行っています。同社の加賀野井氏は、現在のケニアの課題として、中古車検査・査定方法が確立されていないこと、高品質で安全安心な中古車購入方法が欠如していること、検査・査定できる人材が不足していることなどを指摘しました。

同社が運営する、品質検査済みの優良中古車を販売するウェブサイト

今回の事業で同社は、信頼できる検査・査定方法の確立、優良中古車のみを扱ったマーケットプレースの構築、検査士や査定士の育成などに取り組みました。さらに今後のビジネスモデルについて、「車検制度がないケニアにおいて、ビジネスをする上でいいエントリーポイントになるのが、車の売買のタイミング」と加賀野井氏。売主に対しては、集客力の強いマーケットプレースの提供や、検査・査定の実施。買主に対しては、適正価格で高品質な車を販売したり、安心できる支払サービスを提供したりするなどして、双方にアプローチしていきたいと話しました。

続いては、株式会社アルムが登壇。同社では、急性期医療から慢性期医療までを包括的にケアするITソリューションを提供しています。今回の事業ではガーナを対象に、同社が提供するソリューションの1つ「Join」を使った医療連携体制の構築とその有用性の検証を行いました。「Join」は、医療関係者用のコミュニケーションアプリで、メッセージはもちろん、細部まで確認できるCTやMRI画像などを送り合うことが可能です。同社の清瀬氏は「『Join』を活用した医療連携基盤を構築することで、ガーナが抱える医師不足や地域格差などの課題解決を目指しています」と話しました。

今回の事業は2地域で実証し、転院搬送時における専門医への事前情報共有、院内での多職種連携、地方医療の支援などを行いました。清瀬氏は「現在14施設にシステム導入が完了し、100名以上のユーザー登録を達成しています。引き続き情報収集などを続け、導入効果のさらなる明確化に努めたいと思っています」と今後の展望を述べました。

 

南アフリカでスマートロッカーやPUDOサービスを提供「アンドアフリカ株式会社」

次に成果報告を行ったのは、アンドアフリカ株式会社です。同社は南アフリカで、スマートロッカーや店舗を活用して荷物の受け渡しができるPUDOプラットフォームなどを提供しています。Eコマースの拡大などにより物流市場が伸びているアフリカですが、同社の室伏氏は「事業拡大の一方、配送への支出が大きいことなどが要因で黒字化できていない企業も多いのが現状です」と、急拡大の歪みも指摘しました。

 

この課題に対してスマートロッカーなどの包括的なラストマイルデリバリーサービスを提供している同社。今回の事業では、スマートロッカーやPUDOサービスを実施する店舗を増やし、デリバリーインフラの構築を行いました。さらに店舗に活用してもらうためのアプリケーションやその管理システムも開発しました。

アプリケーションでは、配送時のステータスを4項目に分けて表示。それぞれのシーンをクリックしてQRコードを読み取ると、ステータスが更新される仕組みになっている

さらに構築したデリバリーインフラを活用して、小売業にも進出。日本のお菓子や化粧品などを扱うオンラインマーケットプレースを開発しました。室伏氏は今後の目標として「一気通貫で物流サービスを提供していきたいと考えており、南アフリカのみならず、エジプト、ケニア、ナイジェリアなどへの展開も目指しています」と述べました。

 

タンザニアの妊産婦向けアプリケーションを開発「キャスタリア株式会社」

続いて登壇したのは、キャスタリア株式会社です。同社ではオンライン教育のプラットフォームを開発していますが、今回の「飛びだせJapan!」ではタンザニアの妊産婦向けアプリケーションを開発し、初のデジタルヘルス事業に取り組みました。

 

同社の鈴木氏はタンザニアの妊産婦の現状について「人口が急増しているタンザニアでは、医療提供の機会が足りておらず、妊娠出産を契機に亡くなる女性もいます」と説明。アプリは、助産師がモバイルカルテとして利用できるほか、妊産婦が自身の妊娠ステータスや健診内容を確認することも可能です。両者がアプリを活用することで、保健指導の継続や妊産婦の健診受診回数増加を目指しています。

今回の「飛びだせJapan!」では、アプリの事業化に向けた地盤づくりとして、パイロット運用を実施。ダルエスサラーム市内の総合病院で、アプリを使った妊婦健診を行い、実用化に向けた改善点などを抽出しました。鈴木氏は「3か月間で600人近くのユーザーを獲得し、現在はアプリ内のメッセージボードに集まったユーザーのコメント分析を進めています」と説明。さらに採択期間で収益化に向けた具体的なビジネスモデルの検討も進めました。鈴木氏は「今年度の事業化を目指して、法人の設立なども含めた調整を行っています」と話しました。

 

ウガンダ農村部で安全な水へのアクセス向上を「株式会社Sunda Technology Global」

最後は株式会社Sunda Technology Globalが成果を報告。同社では、ウガンダ農村部で安全な水を得るために欠かせないハンドポンプ井戸の料金回収システム「SUNDA」を開発しています。現在ウガンダ国内には、約6万基のハンドポンプ井戸が設置されており、村の住民たちによって管理されています。同社の田中氏は「村の代表者が各世帯から修理費などを毎月定額で徴収していますが、支払いの不正などが起こることも。こうしたトラブルで村の人々に不信感が生まれ、料金徴収がうまくいかなくなるケースもあります」と課題を指摘しました。この課題の解決策として同社が考案したのが、従量課金型でモバイルマネーを用いた自動料金回収システムSUNDAです。

オレンジのボックスにあるカードリーダーにIDタグをかざすと水が出る仕組み。IDタグは各世帯に配布され、モバイルマネーでチャージが可能

現在ウガンダ国内に約30台設置されているSUNDA。今後は政府と連携しながらさらなる設置台数の増加や、水道向け事業の立ち上げも検討しています。今回の事業では、SUNDAの量産モデルをつくるために現行モデルの課題抽出や、改善案の検討などを実施。故障しやすい制御部品の見直しなどを行い、「量産モデルの開発に向けて前進できました」と田中氏。さらに「今後も村の人々が自分たちで村を運営維持していけるような仕組みを考えていきたいです」と述べ、発表を終えました。

2021年度の「飛びだせJapan!」に採択された企業が、一年間の成果を発表した今回の報告会。それぞれの企業から課題や展望についても具体的に語られ、今後、取り組みはますます加速、拡大していくことが期待されます。アイ・シー・ネットのウェブサイトからは、2021年度に採択された10社すべての取り組みをまとめた、採択企業活動事例紹介冊子もダウンロードができます。そちらもぜひ併せてご一読ください。

「令和3年度 第7回飛びだせJapan! 支援実績」

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「NEXT BUSINESS INSIGHTS」を運営するアイ・シー・ネット株式会社では、開発途上国の発展支援における様々なアプローチに取り組んでいます。新興国でのビジネスを考えている企業の活動支援も、その取り組みの一環です。そんな企業の皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料を用意。具体的なステップを踏みたい場合の問い合わせ受付も行っています。「NEXT BUSINESS INSIGHTS」の記事を見て、途上国についてのビジネスを考えている方は、まずは下記の資料集を参照ください。

●アイ・シー・ネット株式会社「海外進出に役立つ資料集」

【アフリカ現地リポート】withコロナで人々の生活はこう変わった――ガーナ、ルワンダ、コンゴ民主共和国

「ウイルスの感染拡大で自分たちの生活がこれほど変わってしまうとは……」

新型コロナウイルス(COVID-19)による緊急事態宣言からの外出自粛やマスク生活などを経験して、このように思った人は多いのではないでしょうか。現在も世界各国で感染を広げ続けている新型コロナウイルスは、日本だけでなく世界中の人々の生活を一変させています。

↑手洗い指導を受けるルワンダの小学生たち

 

たとえば、先進諸国と比べて報道される機会が少ない途上国。なかでも9月に入って感染者数が110万人を越えたアフリカ大陸では、どんな影響や生活の変化があるのでしょうか。コロナ禍以前から日本にあまり情報が入ってきていない分、想像できない面が多くあります。そこで今回は、ガーナ共和国、ルワンダ共和国、コンゴ民主共和国の3カ国で活動を行っているJICA(独立行政法人 国際協力機構)職員や現地ナショナルスタッフを取材。果たして現地の状況は? また人々の生活にどういう変化が起こっているのでしょうか。

 

【ガーナ共和国】コロナ対策への貢献で野口記念医学研究所が一躍有名に

 

↑ガーナの首都・アクラの風景

 

ガーナ共和国は大西洋に面した西アフリカの国で、面積は本州より少しだけ大きく、人口は2900万人弱。日本では「ガーナといえばチョコレート」を思い浮かべる人も多いでしょうが、実際、今でもカカオ豆は主要産品です。また、ダイヤモンドや金などの鉱物資源も豊富なうえ、近年は沖合の油田開発が始まり、経済成長も急速に進んでいます。

 

そんなガーナで初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは3月12日。その10日後に国境を封鎖し、さらに1週間後に大きな都市だけロックダウンするという迅速な対策が実施されました。ただし、日用品の買い物はOKで、不要不急の外出は禁止という程度の制限でした。ところが、結局3週間でロックダウンは解除。感染者が減ったからではなく、人々の生活が成り立たなくなってしまうという経済的な事情と、ロックダウン中に検査や治療の態勢がある程度、各地で整ったという背景があるようです。

 

その後も感染者は増え続け、6~7月は1日の確認数が千人を越えた日も。7月頭には累計2万人を越えました。それでもロックダウンはされることはなかったのですが、6月末をピークに現在はかなり減ってきています。この理由について、JICAガーナ事務所で日本人として現地に残っている小澤真紀次長は、「新規感染者が減っている理由はよくわかっておらず、私たちも研究結果を待っているところです」と言います。

 

コロナ以前にくらべ、人々の衛生意識に着実な変化が

JICA事務所で働くガーナ人スタッフに話を聞くと、「公共バスは混雑していてソーシャルディスタンスもとりづらい状況なので、自分は極力利用しないようにしています。街中を見ると、市場では売り手のほとんどがマスクを着用していますが、定期的に手を洗ったり、消毒剤を使用したりといった他の予防策はあまりとられていません」と、それほどコロナ対策が徹底されていないと感じているようです。

↑ガーナではもっとも安価な交通機関として人気の乗合バス「トロトロ」の車内。コロナ対策としてマスクの着用と席間を空けることが義務づけられている

 

一方、別のスタッフは、「多くのガーナ人は手洗いや消毒など衛生面の重要性を以前より意識するようになりました。天然ハーブを使って免疫力を高めようとしている人もいます。マスクについても、ほとんどの人が家を出るときにマスクを持っていますが、正しく着用している人は少ないです。呼吸がしづらいという理由で、アゴにかけたり、鼻を覆っていなかったりする人も多いです」と教えてくれました。日本と違ってやはりマスクに慣れている人が少ないことが窺えます。

 

生活面に関しては、「生活は日常に戻りつつありますが、ソーシャルディスタンスのルールを守っている人は少ないです。大きなスーパーマーケットやレストランではコロナ対策のルールをしっかりと守っていますが、小規模の店では徹底しきれていないと感じます。また、ほとんどの学校はオンライン教育を行なう手段を持っていないので、子供たちが学校に行けなくてストレスを感じています」と言います。そんななか、以前から行なわれていたJICAの取り組みが意外な形でコロナ対策に役立っています。

 

「JICAでは以前から現地の中小企業の製造プロセスにおける無駄をなくすため、カイゼン活動を紹介するなど、民間に対する協力をしていました。その中に布マスクを作っている縫製会社もあり、増産していただくことになったのです」(小澤さん)

 

ガーナ国内では、マスクの着用が義務付けられて以来、さまざまな業者や個人で仕立て屋を営む女性たちがマスクの製造を始め、街中でマスクを売る人も増えました。布マスクが100円しないぐらいで買える(紙マスクとあまり変わらない価格)ので、マスクの普及も一気に進んだそうです。小澤さんも「最近は服を仕立てるのと同じ布でマスクもセットで作ってくれたりします」と、コロナ禍でも新たな楽しみを見出していると言います。

↑アフリカならではのカラフルな色使いが特徴の布マスク

 

そして、コロナ禍でひと際クローズアップされるようになったのが日本の国際協力です。なぜなら、1979年に日本の協力で設立された「野口記念医学研究所(以降、野口研)」が、感染のピーク時には、ガーナ国内のPCR検査の8割程度を担ってきたからです。当研究所の貢献は毎日のように報道され、「今は知らない人が1人もいないぐらい有名になっています」(小澤さん)とのこと。ガーナでは「日本といえば野口研」というイメージになった模様です。もちろん「野口」というのは、黄熱病の研究中に自らも黄熱病に感染し、1928年にガーナで亡くなった野口英世博士のことです。

↑野口記念医学研究所のBSLラボでの検査の様子。PCR検査だけでなく、これまでも多くの研究成果をあげてきた

 

この野口研に対しては、以前からJICAが資金、人材、設備などさまざまな面で協力を続けています。コロナ前から長い時間をかけて積み上げてきた協力が、この災禍の中で大きな成果をあげているというのは、同じ日本人として誇らしいことですね。

 

【教えてくれた人】

JICAガーナ事務所・小澤真紀次長

大学時代に訪れた、南西アジアにおける村落開発に興味を覚え、2002年に旧国際協力事業団(現JICA)に入構。2017年に保健担当所員としてガーナ事務所に着任し、2018年秋より事業担当次長を務める。ガーナ駐在は2006年に続いて2度目。趣味のコーラスはガーナでも継続しているが、コロナ流行で中断中。代わりにパン焼きを始めた。山梨県出身。

 

【ルワンダ共和国】コロナ禍で若者や現地スタッフが大きな力に

 

次に紹介するのは、東アフリカの内陸国、ルワンダ共和国。面積は四国の1.4倍ほどで、人口は1230万人。アフリカでもっとも人口密度が高い国と言われています。1980~90年代には紛争や虐殺もありましたが、21世紀に入って近代化が進み、近年はIT産業の発展にも力を入れているそうです。

↑ルワンダの首都・キガリの街並み

 

「資源の少ない内陸の小国なので、教育を通じて人間力を高め、それを経済発展につなげていこうと考えているようです。そこは日本とも共通しますね」。こう話を切り出したのは、JICAルワンダ事務所の丸尾信所長です。

 

ルワンダで最初に新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは3月14日で、その1週間後には強力なロックダウンが施行されました。国境はもちろん、州を越えた移動も物流以外は制限され、市内でも食料など生活必需品の買い物以外は基本的に外出禁止。もちろん外出中はマスクの着用が必須。街角には警官が立ち、ルールを守らない人を取り締まりました。ルワンダでは政府の力が強く、早い段階で強硬なコロナ対策が徹底されたのです。そうしたロックダウンが2カ月近く続き、解除された後も夜間の外出禁止や学校の休校は続いています。また感染者が多い地域やクラスターが発生した街は、その都度、部分的なロックダウンが行なわれているようです。

↑ソーシャルディスタンスを取って店頭に並ぶ人々。多くの人がマスクを着用している

 

感染予防対策に関して、行政の指導によってかなり浸透してきましたが、アフリカならではの共通した課題もあります。それは、地方では家の中まで水道管がつながっていない家庭のほうが多いこと。井戸や共同水洗まで水を汲みに行って生活用水にしているので、日本のように頻繁に手を洗う習慣はありません。そのためコロナ対策として、街中のあちこちに簡易な手洗い器が設置されるようになりました。

↑街中ではこのような簡易手洗い施設が各所に設置されるように。手の洗い方を写真入りで示したガイドが貼られ、石けんも置かれている

 

実際の生活について、JICA事務所のルワンダ人スタッフにも聞いてみました。

 

「COVID-19によって在宅勤務をする人はかなり増えました。 私も必要に応じて在宅勤務とオフィス勤務を使い分けていますが、ネットの接続が途切れることが多いため、在宅勤務はあまり効率的ではありません」

 

日本の家庭では光ファイバーなどの有線回線も普及していますが、ルワンダをはじめとするアフリカ諸国では携帯電話の電波を使った接続が主流です。そのため、回線状態が安定せずに苦労することも多いのだとか。

 

一方、「バスの駐車場、市場や公共の場所などでは、ベストを着たボランティアの若者の姿をよく見ます。彼らは、市民がマスクを適切に着用することや、公共の場所に入る前に石鹸あるいは液体消毒剤で手を洗うように促しています」と話してくれたスタッフも。

 

丸尾さんの印象では、ルワンダ国民はお互いに助け合う意識が強く、それを若い世代もしっかりと受け継いでいるようです。

 

IT立国を目指すルワンダならではのユニークな対策

ルワンダならではの特徴的な対策として、ドローンをはじめとする最先端IT技術の活用が挙げられます。たとえば、ドローンに拡声器を取りつけて市中に飛ばし、COVID-19の予防措置について住民に呼びかける活動などが行われています。また、アメリカ発の「Zipline」というスタートアップが実施する飛行機型ドローンで血液や医薬品を輸送するという事業は、コロナ禍以前から続けられています。ルワンダでの運用経験を生かして、COVID-19検体の輸送にも利用するようになった国もあるそうです。「ルワンダでドローンが積極的に利用されるのは、この国の道路事情も関わっている」のだと丸尾さん。

 

「山がちな国土のうえ、地方では道路整備が進んでおらず未舗装路が多いんです。しかも、雨が降ると坂道に水が流れてさらに凸凹になり、走行に支障をきたします。しかしドローンを使うことで、自動車だと3時間ぐらいかかっていた場所でも10分ぐらいで血液を届けられるようになったという話を聞きました」

 

他にも、1分間に何百人も非接触で検温をしたり、医療従事者の患者との接触を減らすために入院患者に食事を配膳したりするロボットが空港や病院で使われるなど、試験的にではなく実用として先端技術が生かされています。そこにも日本の技術が数多く生かされているのです。

↑空港で実際に使用されているロボット。「AKAZUBA(ルワンダのローカル言語でSunshineの意味)」と名付けられている

 

現在は、万一新型コロナウイルスに感染し、重症化した場合を懸念して、各国に駐在するJICA日本人スタッフや専門家はほとんど帰国しています。にも関わらず、ルワンダでは以前から進行中のプロジェクトが中断されている事例はひとつもないそうです。

 

「たしかに日本人の専門家が現場に行って直接指示を出せないのは大きな障害ですが、以前からプロジェクトに携わってきた現地スタッフに、日本からリモートで連絡をとりながら事業を進めてもらうというやり方が、試行錯誤しながら成果を挙げてきています。経験があって能力も高い現地スタッフが多く、彼らの活躍によって思った以上にプロジェクトが継続できています」(丸尾さん)

 

これも、日本やJICAが長年にわたって地道に支援を続けてきた成果と言えるかもしれません。

 

【教えてくれた人】

JICAルワンダ事務所・丸尾 信所長

2009~2013年にルワンダの隣国タンザニアのJICA事務所に在任中、ルワンダ・タンザニア国境の橋梁と国境施設建設案件を担当。以来ルワンダ事業に関わる。ルワンダ政府の方針に寄り沿い、周辺国との連結性強化の取り組みも支援している。赤道近くながらも、標高1000mを超える高原地帯にあるルワンダの冷涼な気候がお気に入り。2019年2月より現職。

 

【コンゴ民主共和国】「感染症の宝庫」ならではのコロナ事情とは

 

「コンゴ」という名が付く国が2つあることは、日本ではあまり知られていません。今回紹介する「コンゴ民主共和国」は1997年に「ザイール」から改称した国で(以下、コンゴと省略)、その西側に隣接するのが「コンゴ共和国」です。コンゴ民主共和国は、日本のおよそ6倍、西ヨーロッパ全体に相当する面積を持ち、人口は約8400万人。アフリカ大陸ではアルジェリアに次いで2番目に大きな国です。鉱物資源が豊富で、耕作可能面積も広大なので非常に大きな開発ポテンシャルを持っていますが、その一方で、国内紛争が長く続いていて、マラリアやエボラ出血熱などの感染症死亡者も多く、アフリカにおける最貧国のひとつとも言われています。

↑コンゴ民主共和国の首都・キンシャサは、人口1300万人以上というアフリカ最大の都市

 

今回、JICAコンゴ民主共和国事務所の柴田和直所長に同国の詳しい情報を伺ったのですが、中には日本に住む我々には想像できないような話もありました。たとえば、コンゴには26の州がありますが、国土の西端近くにある首都キンシャサから自動車だけで行ける州は3つ。全国的な道路整備が進んでおらず、その他の州に行くには、飛行機に乗るか船で川を進んでいくしかないとのこと。

 

「だから国全体を統治することが難しく、東部で続いている紛争を止めるのも困難な状況です。資源国でありながら、経済発展がなかなか進まないんです」(柴田さん)と、広大な国土を持つコンゴならではの難しさを指摘します。

 

そんなコンゴのもうひとつの特徴は、新型コロナウイルス以前から感染症が非常に多いことです。エボラ出血熱の発祥地でもあり、これまで10回にわたるエボラの封じ込めを行ってきました。感染症関連の死因でもっとも多いのはマラリアで、今年もすでに8千人以上(※見込み値)が亡くなっています。その他にもコレラ、黄熱病、麻疹(はしか)などでも死者が出ており、中には、日本では予防接種をすれば問題ないとされる、はしかで亡くなる子どもも。

 

コンゴで新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されたのは3月10日で、2日後には国の対応組織が作られました。そして3月21日に国境が封鎖され、飛行機は国際線も国内線も運行停止に。3月26日には、首都キンシャサの中心部、政治・経済の中枢となっているゴンベ地区がロックダウンされ、他の国と同様のさまざまな制限が設けられました。こうした迅速な対応ができたのは、国として感染症の恐さもよくわかっていて、なおかつ専門家も多いからと言えます。一方で、「首都でこれだけ厳しい対策がしかれ、大きな影響が出ているのは、私の知るかぎりは初めて」(柴田さん)という言葉から、新型コロナウイルスの脅威の大きさが窺えます。

↑コロナ禍以前のキンシャサの市場。今は混雑もかなり緩和されているが、ソーシャルディスタンスを確保するのは難しいそうだ

 

JICA事務所のコンゴ人スタッフも「移動の制限が生活をとても困難にしています。それが商品不足の不安を引き起こして買いだめにもつながり、物価が高騰して国民の生活を非常に苦しくしています」と厳しい現状を伝えてくれました。

 

現在はロックダウンを解除しているコンゴ。小規模な小売店をはじめ、その日その日の収入で生活している人が多いため、外出禁止にすると食べ物を得る糧を失ってしまう人が多く、外国人や富裕層が多いゴンベ地区以外は制限を緩めて経済活動を継続せざるをえないという事情があるからです。他の感染症に比べて死亡率が低く、感染しても無症状で終わることが多い新型コロナウイルスで、これほどの経済的苦難を強いられるのは納得がいかないなどの理由から、コロナの存在自体を否定するフェイクニュースが出たりすることもあるようです。

 

日本の貢献が光る、コンゴでのコロナ対策

そんなコンゴでも、コロナ禍で日本の存在感が大きくなっています。ガーナでの野口記念医学研究所と同様の役割を持つ「国立生物医学研究所(INRB)」は日本が継続的に協力している機関で、コンゴではPCR検査の9割以上をINRBがまかなっています。また、日本が設立した看護師、助産師、歯科技工士などの人材を育成する学校「INPESS」は、国のコロナ対策委員会の本部や会議室として使用されています。

↑日本が建設したINRBの新施設

 

コンゴ医学界の要人との絆もより強固になっています。70年代にエボラウイルスを発見したチームの一員で、2019年に第3回野口英世アフリカ賞を受賞したジャン=ジャック・ムエンベ・タムフム博士は、INRBの所長を務め、JICAとの関係も深い人物。国民の信頼も厚く、現在はコロナ対策の専門家委員会の委員長も務めていて、日々国民の感染対策への意識を啓発しています。

↑ムエンベ博士(中央)と柴田所長(左)。右の女性は、JICAを通じて北海道大学へ留学した経験があるINRBスタッフ

 

「私たちが一緒に働いているコンゴの人たちは本当に真面目で、この国を良くしたいと毎日頑張っています。陽気で楽しい人たちでもあります。今回はお伝えできなかったですが、とても豊かで魅力的な文化や自然もあります」と柴田さん。最後にコンゴへの思いを熱く語ってくれました。

 

コンゴに限らず、アフリカの人たちはとても芯が強く、苦しい生活の中でも明るさを失っていないと、小澤さんも丸尾さんも柴田さんも口を揃えています。コロナ禍にあっても決して折れない心。それは日本の我々にとっても大きな希望となるように感じました。

 

【教えてくれた人】

JICAコンゴ民主共和国事務所・柴田和直所長

1994年よりJICA勤務。2018年3月より2度目のコンゴ駐在。過去2か国で4回のエボラ流行対策支援に関わり、コロナ対策支援も現地で奮闘中。趣味は旅行、音楽鑑賞・演奏などで、コロナ流行前は、コンゴ音楽のライブやキンシャサの観光名所巡りを楽しんでいた。

Facebook: facebook.com/jicardc

Twitter:twitter.com/jicardc

YouTube:youtube.com/channel/UCSEj0HR2W0x8yDjkEFHT6dg

 

【関連リンク】

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毎週たくさんの新商品が並ぶコンビニ。しかし、数が多すぎて全てを試してみることはなかなか難しい。そこでこの記事では、「加工食品」新商品の中からTwitterで反響が多かった商品をランキング形式にして紹介! 注目の商品を食らいつくそう!

 

【第3位】

カルビー ポテトチップス サラダチキン味/ローソン(173円)

出典画像:ローソン公式サイトより。出典画像:ローソン公式サイトより。

 

カルビーのポテトチップスから新味「サラダチキン」味が登場し、ローソンから限定発売された。同商品はローソンセレクトシリーズ「サラダチキン(プレーン)」のジューシーなチキンの旨味をポテトチップスのフレーバーとして再現した1品。

 

糖質が低くヘルシーな「サラダチキン(プレーン)」は、ダイエット食品として人気が高くファンも多い。今回、同商品の発売を受けてネット上では「カルビーとローソンが不思議なことをやってる!」「確かにダイエット食品だけど味もすごく良いからね。斬新さはあると思うよ」「美味しかった! 美味しかったんだけどなんか不思議な感覚に陥る(笑)」「カルビーの気持ちは分かる! サラダチキンはみんなダイエット目的で食べてると思うけど味もウマいんだよ!」などの声が上がっていた。

【ツイート数】
火曜:25、水曜:17、木曜:19、金曜:36、土曜:34、日曜:17/計:148(1日平均:24.6ツイート)

 

【第2位】

森永 小枝プレミアム純米大吟醸/ファミリーマート(298円)

出典画像:ファミリーマート公式サイトより。出典画像:ファミリーマート公式サイトより。

 

日本酒入りのちょっと贅沢な森永の「小枝」がファミリーマートから新発売され、注目を集めている。「純米大吟醸」の日本酒をビターチョコレートで包んでおり、含まれているアルコール分は2.3%。

 

「純米大吟醸」と呼ばれる日本酒は、米と米麹だけを使って作られる。また「大吟醸」は50%以上米を削り、一番良い部分しか使わないのでかなり贅沢で価格も高い。

 

そんな贅沢な仕様の同商品に、購入者からは「これはスゴい! 一応チョコなのに甘さが日本酒の甘さ!」「のどがあったかくなるくらいお酒を感じる。こんな最高なお菓子初めてだわ」「めちゃくちゃ美味しい。これは買い占めとく必要がありそう」「普通に日本酒好きの人も楽しめると思うよ」と大好評。

【ツイート数】
火曜:58、水曜:32、木曜:23、金曜:17、土曜:16、日曜:12/計:158(1日平均:26.3ツイート)

 

【第1位】

ガーナミルクチョコレートドリンク/ローソン(168円)

出典画像:ローソン公式サイトより。出典画像:ローソン公式サイトより。

 

ローソンから期間限定で発売された「ガーナミルクチョコレートドリンク」が1位に輝いた。ロッテの定番商品「ガーナミルクチョコレート」を使用したドリンクで、とろける味わいが特徴。

 

ネット上では「チョコのドリンクって結構水で薄めたような味がして嫌いなんだけど、これは純粋なチョコ味で素晴らしい」「売り切れの店が多くなってきてる! かなり人気商品っぽいな」「めちゃくちゃチョコ! これはマジで止まらなくなる」「コンビニに置いてある分全部買ってきた」「真っ赤なパッケージが素敵だからバレンタインはこれあげる」といった声が続出した。

 

ちなみに数量限定で、パッケージに描かれているハートが違うものもあるらしい。ローソンで同商品を見かけた際はチェックしてみよう。

【ツイート数】
火曜:60、水曜:31、木曜:49、金曜:84、土曜:40、日曜:26/計:290(1日平均:48.3ツイート)

 

バレンタインに向けた商品が数多く発売されている。この機会にしか味わえないチョコレート商品を味わってみては?

 

※ランキングの対象となるのは、2018年1月第5週に発売された「セブン-イレブン(関東)」「ファミリーマート」「ローソン」の新商品です。本稿では、商品名のつぶやかれた回数を集計(期間:1月30日~2月4日)し、独自にランキングを作成しています。