12月も中旬に入って街の電飾やウィンドウも一気にクリスマスムードになりましたね。アメリカでは11月末の感謝祭までは七面鳥などをあしらった飾り付けが街を彩るのですが、この日が終わるとすぐにクリスマス一色に変わります。
多くの国でクリスマスと聞いて人々が思い浮かべるのは真っ白なヒゲを生やして真っ赤な服を着たサンタクロースではないでしょうか。このサンタのイメージはコカ・コーラが1930年に広告に使ったものが一気に世界中に広まったことはよく知られています。
コカ・コーラとクリスマスという組み合わせで多くの人に知られているものは他にもあります。それが「クリスマス・キャラバン」という名前で宣伝されたコカ・コーラ・トラックです。1995年にトラックをフィーチャーしたCMが放送されると同時に、アメリカでは全国65都市を実際にトラックが訪ねてまわり、コカ・コーラを子どもたちに無料で配るというキャンペーンを行いました。ヨーロッパでもいくつかの都市で行われたようです。
こちらが1995年のCM。これを見ると一気にノスタルジックな気分にさせられますよね。
コーラ生誕地のアメリカでは、コカ・コーラの看板やコマーシャルがいたる所に存在していますが、全国を回るトラックツアーは現在では行われていません。しかし、面白いことに大西洋を越えたイギリスでは20年が経った今も続いており、年末のホリデーシーズンを告げる伝統としてすっかり定着しているのです。
↑ こちらはスイスでのキャラバンの様子(©The Coca-Cola Company)
無料配布に待ったの声
そんななか「今年もやるよ!クリスマス・キャラバン!」と全国ツアー日程を発表したところ、国の国民保険サービス長官から「コカ・コーラには砂糖が大量に入った清涼飲料を宣伝するのを辞めてほしい」「地域の子どもたちには水や砂糖の含まれないドリンクを配ってほしい」とコメントを出されます。それだけでなく政府の肥満防止対策にも関わっている団体「パブリック・ヘルス・イングランド」も肥満や虫歯の原因となることを指摘し、地方政府はコカ・コーラのトラックによるコーラの配布を許すべきかどうか検討すべきと声明を出しています。
砂糖の摂りすぎによる肥満はイギリスやアメリカで大きな問題になっています。特に子どものときから甘い清涼飲料ばかりを飲む習慣を身につけてしまうと、長期的に大きな健康リスクを抱えてしまいます。この問題は特に貧困地域に住む子どもたちに顕著であり、クリスマス・キャラバンのツアーがこういった貧困地域も訪問することに懸念を示しているのですね。せっかく啓発活動を続けてきているのに、「砂糖が大量に入った炭酸飲料が街のど真ん中で子どもたちに無料で配られるなんて許せない!」というわけです。
この問題はTwitterでも大きく話題になっており、一般ユーザーからも「トラック楽しみ! いつウチに来るかな」という声もあれば「国民保険サービスでかした!」という声、「賛成か反対かは微妙だな」と賛否両論が巻き起こっています。
↑ ドイツでのキャラバンの様子(©The Coca-Cola Company)
コカ・コーラのとった対策とは?
これに対してコカ・コーラはすぐに「配布するコーラ3種のうち2つ(ダイエットコーラとゼロシュガー)は砂糖が含まれません。また12歳未満の子どもにも配っておりません」という声明を発表しています。
アメリカで国民的なブランドとして愛されている一方、肥満の原因の代表格としてやり玉に挙げられることが多いコカ・コーラ。ダイエット、ゼロシュガーに加えて来年は植物由来の甘味料ステビアのみを甘味料として使ったコーラを発売することを発表しています。砂糖とステビアを両方使った「緑のコーラ」であるコカ・コーラ ライフはすでに発売されましたが、新製品はステビアのみで、砂糖は使われません。
砂糖の大量摂取に対する危機感はアメリカでは年々高まっており、コカ・コーラもそんな世の流れに対応しようと頑張っているわけですね。
一方でコーラの種類が増えてしまい、ブランド統一のイメージがやや薄くなってきている印象もあります。店頭で注文する時も「ダイエットコーラください」「ダイエットはありません。クラシックはありますが」「じゃあコカ・コーラ ゼロください」「それもありません。ダイエット・ペプシならありますよ」「うーん、じゃあコカ・コーラ ライフ」「何ですかそれ?」といったやり取りが毎日のように交わされています。
そんななか、コカ・コーラは去年から「ワン・ブランド」キャンペーンとして、すべてのバラエティをまとめてプロモーションするというマーケティング戦略を取っています。1つのポスターのなかにゼロもダイエットもクラシックも登場し、「これらは全部同じコカ・コーラ」というメッセージを強く訴えています。
クリスマス・キャラバンは近年その開催地を増やしており、オーストラリアやデンマークでも開始されています。「無料でコカ・コーラがもらえる」と聞くと子どもはワクワクしてしまいますよね。果たして他の国でも論争は起きるのでしょうか。