ハンズフリーでページを固定するブックストッパー「カドノオモクリップ」の目立たずぶらさがって抑え込む斬新な仕掛けとは?

2023年の秋頃から現在まで、中高生を中心に“ブッククリップ”が流行り続けているらしい。ブッククリップとは、本を目的のページで「開いた状態」で固定できるアイテム。教科書や問題集を手で押さえなくても開いておけて勉強がしやすい、というのが人気の要因のようだ。もちろん勉強に限らず、資料を見ながらの入力作業といった社会人によくある作業にも、十分に使い道はあるはずだ。

↑手で本を押さえておくのは、作業の邪魔でストレスになりやすい動作だ

 

実際、GetNavi主催の「文房具総選挙2024」で大賞に選ばれたのも、サンスター文具のブッククリップ「ウカンムリクリップ」であった。とにかく注目度の高さは間違いのないところだろう。

 

……という話の流れからお察しの通り、今回紹介するのはブッククリップの2024年の新製品である。従来品よりもグッとコンパクトながら、しっかりとページを固定する力もあるのがポイントだ。

 

“カドのオモリ”でコンパクトにページを固定

その新製品というのが、ソニックから2024年9月に発売されたばかりの「カドノオモクリップ」。ブッククリップとしてはやや珍しい「2個1セット」のパッケージングと、手にしたときの「えっ、こんな小さいの!?」というサイズ感が特徴だ。

SONiC(ソニック)
カドノオモクリップ 2個入 おもさでページキープ!
600円(税別)

 

本のページを閉じないように手で押さえたことのある方ならお分かりだろうが、あのグッと開いておくの、意外と力が必要なのである。

 

例えば、この製品の前モデルにあたる「オモクリップ」は、ページの端に約100gのオモリ入りクリップを挟むことで、めくったページをその重量で戻らないように押さえるというもの。

↑2023年に発売された前モデル「オモクリップ」。ページ端にずっしりとしたオモリ入りクリップを挟み付けることで、ページを固定するタイプだ

 

対して新しい「カドノオモクリップ」は、“カドノ”というネーミングからも分かる通り、オモリ入りのクリップでページの四隅=カドの部分を挟み付けるようになっている。

↑新モデル「カドノオモクリップ」も、オモリでページキープするスタイル。ただし、クリップはページのカドに挟む構造になっている

 

挟むのがページのカドなのでクリップが文字にかかりにくく、またサイズがコンパクトなので目立ちにくい。ページを押さえていても見た目がスッキリするのはメリットと言えるだろう。

↑カドに小さな透明クリップを挟むだけなので、目立たず紙面に集中しやすい+文字にかかりにくいのが使いやすい

 

ただそのコンパクトさゆえに、重量も1個あたり約37gと、オモリにしてはやや軽い。それぐらいの重量でも意外とページは押さえられるものだが、本の厚さによっては、もう少し重さがないと固定できない、ということもあるだろう。

 

そういう場合は、ページを挟んだクリップに、2個セットの残りを近付けてやればOK。「カドノオモクリップ」は内部に磁石を内蔵しているので、カチャッと勝手にくっつき合う。つまり重量2倍になって、その分だけ固定する力もアップするという仕掛けである。

↑底面に磁石を内蔵しているので、重さが足りない場合は2個をくっつけられる。これでだいたいの本は開いておけるはず

 

オフィスで使う場合はメリットがもっと明快で、一般的なスチールデスクであれば、天板にクリップの磁石が勝手にくっついてくれる。これなら、前モデル「オモクリップ」よりもはるかにガッチリと固定してくれるほど。正直なところ、スチールデスクで使う前提の製品ではないか? と思うほどに使いやすい。

 

クリップにもしっかりと工夫あり!

ページを挟むためのクリップに関しては、いわゆる目玉クリップとそっくりな「オモクリップ」が開閉にコイルバネを使っているのに対して、「カドノオモクリップ」は板バネを使用したタイプとなっている。

 

これはボールペンのバインダークリップと似たようなもので、小さなクリップでも厚みのあるものが挟める仕組みだ。

↑開口は最大で約5mm。一概に何ページ分とは言えないが、それなりのページ数を挟むことはできた

 

加えてクリップの端(開口するために指で押す場所)は小さく窪んでおり、視線はページ内に向けたままでもノールックでクリップを押し開くことができる。指が滑らないので押し込みやすいし、これもシンプルながら細かな気遣いと言えるだろう。

↑透明クリップ端の小さなくぼみは、クリップを押すときの“指がかり”として分かりやすい

 

ほかにも、紙が挟める&自重があって安定している、という性質を応用して、メモスタンドに使うこともできそうだ。メモ用紙に伝言を書いて立てて置く、なんて使い方もありだと思う。

↑「重みのあるクリップ」なので、ちょっとしたメモを立てておくにも意外と使いやすかった

 

気になる点は……?

実際に使ってみた中で少し気になったのは、クリップの口が小さいというところ。もちろんサイズ的に仕方ないことではあるが、どうしたって快適に使うためのネックになっているように感じたのだ。

↑開口が狭い&クリップのピンチ力が強いので、開口してページを挿し込んで……という繰り返しは、頻繁に発生すると面倒くさく感じるかもしれない

 

クリップの開口が小さいと、当然ながらページを挟んだり解放したりがやりにくくなっていまう。こまめにページをめくるような使い方には、あまり向いていないかもしれない。

 

例えば問題集を解いたり、調理しつつ料理のレシピを見るなら、同じページを開きっぱなしにできるのだから、問題は無さそう。導入するのであれば、まずどう使うか、用途を考えてからが良いだろう。

 

渾身の力はもう不要。約半分の力で開く新型ダブルクリップはデザインも刺激的

【ド腐れ文具野郎・古川 耕の文房具でモテるための100の方法】

No.078

プラス「エアかる(10個入)」
324円〜
本体に設けた小さな突起で支点の位置をずらし、さらにレバーの長さを伸ばすことで同社従来品に比べて開く力を最大約50%削減。レバー先端の形状も指当たり柔らか。サイズは大・中・小。

 

半分の力で開く超便利なダブルクリップで快適にモテる

手に取ってみて、「こんなものにもまだ進化の余地があったのか!」と心底驚いてしまいました。従来の約半分の力で開くという画期的なダブルクリップ「エアかる」。極めてシンプルな構造ながら、わずかな工夫次第で(理屈については諸説あるそうですが)見た目も価格もほぼ変えずに改良できる。これはすごいと感心しつつ、しかしこれはこれでややこしい話になるぞ、という懸念も同時に感じてしまったのです。

 

どういうことか? 単純に言うと、このエアかるは見た目があまりに「ただのダブルクリップ」然としているため、何も知らない人がうっかり手に取ったとき、「壊れてるのかな?」「軽い力で開くということは挟む力も弱いのかな?」と誤解されてしまう余地が残ってしまっているんですね。もちろんこのリスクも重々承知で選んだ見た目だとは思うのですが、とても難しい判断だったとも推察します。「スペシャルなダブルクリップ」感を見た目でどう打ち出すのか、そもそもそれを前面に押し出すのが正解かどうかもわからないし。

 

広い意味での「デザイン」の役割とは何なのかを考えさせられる、個人的にもかなり刺激的な新製品でした。

 

クリップを長くして開ける力を軽減!

ソニック「らくレバークリップ」
216円〜
昨年発売されたソニックのダブルクリップ。こちらはクリップの長さを従来品より長くすることで、開ける力を軽減。また、レバーの先端形状を平たくして、指の痛みを和らげている。大・中・小の3サイズ。1箱10個入り。

 

【プロフィール】
古川
放送作家/ライター。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」「ジェーン・スー 生活は踊る」などを担当。

磁石との組み合わせがミソ。超ミニサイズの「ダブルクリップ」が意外に便利だった!

【「毎日、文房具。」が●●な人にすすめたい文房具】小さいからこそ使い勝手に小回りが利くダブルクリップ

何枚も資料を束ねる際に活躍してくれるダブルクリップ。仕事でお世話になっている人も多いのではないでしょうか? 実は、こんなに可愛いサイズもあるんです。

 

これはライオン事務器の型番「No.104」のダブルクリップ。ライオン事務器は「バインダークリップ」という商品名で販売しています。

 

500円玉と並べればわかる、プチサイズ!

 

小さいですが、もちろんきちんと指先で開閉できます。

小さくて薄いので、ゼムクリップ(ワイヤーを曲げて形作られたペーパークリップ)の代わりにも使うことができます。

 

また、アイデア次第でいろいろ使えます。例えば、磁石を使えば小さなメモを束ねた状態で壁にくっつけることもできます。

 

他にも、マスキングテープの粘着面を内側にしてタブのようにしたところをバインダークリップで挟んでおけば、このように軽い軟膏などを壁にぶら下げておくことも。

 

ただし、本来の使い方とは異なりますのでご利用は自己責任でお願いしますね。

 

こんなあなたにオススメ
・小さな雑貨や文房具が好きな人

・仕事でクリップを使うことが多い人

 

【商品情報】
ライオン事務器「バインダークリップ No.104」
162円(税込)10個入り

 

【筆者プロフィール】

毎日、文房具。

2014年9月に創刊した文房具の魅力を紹介するウェブマガジン。文房具が大好きなライターたちが、良いと感じた文房具を厳選して紹介するほか、最近では文房具売り場のプロデュースやメーカーとのコラボ企画の運営など、活躍の幅を広げている。

ダブルクリップが唯一の弱点を克服! 発明から100年で初の革新とは?

【きだてたく文房具レビュー】小さなポッチ2つで100年ぶりの革命を起こしたダブルクリップ

黒い板バネとワイヤーで作られた、お馴染みのダブルクリップ。あれ、実はここ数年で売り上げが伸びてきているそうなのだ。いったいどういうことかというと……

「会社がフリーアドレス制を導入」
→「書類保管スペースが減る」
→「書類をデータで共有するようになる」
→「手元で書類を見る用に一時的な出力が増える」
→「ひとまずプリントアウトをまとめておく用にダブルクリップが必要」

……という流れによるものらしい。

↑「ダブルクリップ」という名称にピンとこなくても、見たことはあるはず。これです

 

ペーパーレスを進めた結果、一時的なプリントアウトが増えるというのも逆説的な話だが、ともかくオフィス通販のジャンルでは、ダブルクリップが確実に売り上げ増となっているとのこと(オフィス通販会社調べ)。

 

このダブルクリップ、1910年にアメリカのルイス・エドウィン・バルツレー氏が発明したもの。ワイヤーレバーを使ってテコの力で板バネの口を開く構造は、100年以上前の発明段階から変わっていない。実際に出された特許の書類と比べても、見た目は現在の市販品とほぼ一緒だ。

 

2~100枚を超える紙を簡単に束ねられて、不要になればすぐ外せて元通り。100年以上の長きにわたって進化する必要がなかったぐらいに、優れた製品なのである(材質は多少進化している)。

↑米国特許商標庁に登録されているダブルクリップ(Paper-binding clip)の画像より

 

とはいえ、欠点が存在しなかったわけでもない。自分でダブルクリップを使っているところ思い出してみればすぐ「ははーん、アレだな」と分かると思う。とにかく固いのである。

 

100枚以上の紙をがっちり束ねる必要上、板バネの弾力はどうしても強くなってしまう。その弾力を細いレバーでグイッと広げるのだから、テコの力を使っているとはいえ、なかなかの腕力が必要になってくるのだ。弾力が強い大サイズともなると、女性やお年寄りにとっては使うのもイヤだなと感じるレベルだろう。

 

でももう大丈夫。もう安心。このほど、100年ぶりの大改革がダブルクリップに起きたのだ。

 

↑プラス「エアかる」左から大(45円)・中(35円)・小(30円)

 

プラス「エアかる」は、なんと開くときに必要な力を従来比で最大50%減した、すいすい開けるダブルクリップなのである。

↑左がエアかる、右が従来品。たいした違いは無いように思えるけれど……?

 

開く力が50%、とか言われると、さも複雑で大がかりな構造で実現したように感じるかもしれない。が、ルックスはこの通り従来のダブルクリップ……つまり100年前とあんまり変わったようには見えないだろう。

 

変化したのは、レバーがちょっと長くなったのと、板バネの側面にぽっつりと突起が出ているところぐらい。そしてこのほんのちょっとした変化が、かかる力50%減を実現しているのだ。

↑突起のおかげで支点が作用点側に移動。これでテコの力が倍増している

 

従来のダブルクリップは、レバーの指で押さえる部分が力点で、開く口のところが作用点。そして板バネのカドの部分がテコの支点になっている。

 

エアかるは、まずこの支点の場所を作用点側に近づけた。板バネの側面から出ているぽっつりした突起が、それだ。作用点から力点の距離が一緒であれば、支点が作用点に近い方がテコの力は強くなるのである。さらにレバーも長くなったことで、力点自体も支点から遠くなったことになる。これまたテコの力アップである。

 

板バネの強さは変わらないので、テコで開くのがラクになっただけ。束ねる力は従来と一緒だ。

↑はかりに固定して、開けるのに必要な力を実測。確かに50%に近い数字が出ている

 

という理屈は分かったのだが、これが開けてみると本気でびっくりするぐらい軽い。特に従来品と開け比べると、その効果はハッキリと体感できるはずだ。今までのダブルクリップが「グググイッ…!」だとしたら、エアかるは「ふわっ」と開く。

 

陶器そっくりのプラ製茶碗を陶器だと思い込んだまま持ち上げると、想定外の軽さに力が余って上に持ち上げすぎた、なんて経験はないだろうか。まさにそれがダブルクリップでも起きるのである。正直、一度でもエアかるを体感してしまうと、もう従来の大クリップなんか使いたくないなー、と感じるほどに差を感じてしまった。

↑固すぎるのがイヤで、ダブルクリップをしばらく使ってなかった……という人も多いのでは。ならば今すぐ、エアかるに変えるべき!

 

ちなみにエアかるの効果は、最大120枚留めの大クリップで開く力が50%減。90枚の中クリップが40%減で、50枚の小クリップが30%減となっている。

 

さすがに大クリップの「実際比べてみたら軽くなってて驚く度」はすごいが、中クリップでもはっきり軽さは実感できる。より日常的に使いがちな中クリップあたりからエアかるに変えていくと、ダブルクリップが進化した恩恵を強く感じると思うので、おすすめだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。ブング・ジャムのメンバーとして参画した『この10年でいちばん重要な文房具はこれだ決定会議』(スモール出版)が発売されたばかり。