予約時で異例の大ヒット、イメチェンにも成功した三菱「デリカミニ」の乗り心地はどう?

https://getnavi.jp/vehicles/877011/?gallery=gallery-2_1今年の東京オートサロンで大きな注目を浴びた三菱自動車「デリカミニ」が5月25日、いよいよ発売を開始しました。昨今のアウトドアブームが後押ししたのか、5月24日時点での予約受注はすでに1万6000台超え! しかも全体の約6割が4WDモデルなのです。これはまさに、いかに多くのユーザーが三菱自動車らしいアウトドア志向の軽自動車を待ち望んでいたか、を示すものと言えるでしょう。

 

今回はそのデリカミニにいち早く試乗することができましたので、インプレッションをお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

三菱/デリカミニ

※試乗グレード:T Premium

価格:180万4000円〜223万8500円(税込)

↑三菱自動車「デリカミニ」。試乗車はターボ付き「T Premium」の4WD車

 

ワイルド感を高めた“ヤンチャかわいい”顔つきが大きな話題に

デリカミニとはどんなクルマでしょうか。一言で表せば、高い人気を獲得している三菱のミニバン「デリカ」の世界観を、軽自動車で展開したものです。“ヤンチャかわいい”顔つきが話題のデリカミニですが、実は同社の「eKクロス スペース」をベース車としたマイナーチェンジモデル。そこにデリカならではのエッセンスを取り入れたクルマとなっているわけです。

↑ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1830mm。2WDの全高は1800mm

 

特に外観は従来のイメージを大きく変更し、フロントグリルには三菱車の共通アイコンである、“ダイナミックシールド”と呼ばれる痕跡を残したフロントフェイスを採用。半円形のLEDポジションランプ付きヘッドランプを組み合わせつつ、上位車であるデリカD:5との共通性をも持たせながら可愛らしさを演出しています。

 

しかも前後のフロントバンパーとリアガーニッシュには立体的な「DELICA」ロゴを浮かび上がらせたほか、光沢のあるブラックホイールアーチ、前後バンパー下にプロテクト感のあるスキッドプレートを組み合わせることでワイルドさを演出。このように、外観をがらりと変えたことによって今までのイメージを一新させ、人気獲得に結びついたというわけです。

↑フロントグリルには「DELICA」のロゴマーク。ヘッドライトはかわいらしい形状のLEDを採用

 

↑前後アンダー部とサイドに施したデカールによってワイルド感がいっそう増した

 

↑ワイルド感を高めるのに効果的なサイドデカール(3万3440円)はディーラーオプション

 

軽自動車はいまや日本で約半分を占める大きなマーケットです。その中でもスーパーハイト系ワゴンは最大の激戦区。ここには圧倒的強さを発揮するライバルが君臨しており、残念ながら三菱自動車はこれまでその一角に入ることができていませんでした。聞くところでは「候補の一つにも入れてもらえないことが少なくなかった」というのです。そんな中での大ヒット! 商品開発でのうれしい誤算となったことは間違いないようです。

 

オフロード走行を意識した足回りを4WD車に標準装備

用意された試乗車は、シリーズ中で最上位となるターボ仕様のデリカミニ「T Premium」の4WD車です。

 

車両本体価格は223万8500円。そこにメーカーオプションとして、オレンジのオプションカラー(8万2500円)とアダプティブLEDヘッドライト(7万7000円)を装備しています。さらにディーラーオプションとして、フロアマット(2万5960円)やサイドデカール(3万3440円)、ナビドラ+ETC2.0(36万9820円)などが加わり、総合計では282万7220円。諸経費を含めると300万円を超える見積りとなりそうです。

↑ディーラーオプションのナビドラ+ETC2.0(36万9820円)のナビゲーションは、手持ちのスマホとWi-Fi接続することで音声での目的地検索が可能になる

 

そのデリカミニを前にすると、やはりデリカ風のデザインがとってもカッコイイ! 試乗車のボディカラーがオレンジだったことも一つの理由だと思いますが、4WD車は車高が高くなったうえに、タイヤを標準グレードよりも一回り大きい165/60R15にしたこともカッコ良さを際立てているように感じました。さらに4WD車に限ってはダンパーにも手が加えられ、オフロードで快適な走行ができるように改良されているのです。

↑4WD車のタイヤには標準車よりも一回り外形サイズが大きくなる165/60R15を採用

 

一方で内装は黒を基調としており、基本的には従来のeKクロス スペースを踏襲したものです。とはいえ、デリカミニとしての独自色を上手に演出できており、運転席からの視界は比較的に高めで、周囲の見通しはかなり良いと言えるでしょう。ただ、ステアリングがチルトするのみでテレスコピックはなし。そのため、若干ハンドルを抱え込むポジションになってしまいました。それでもシートの座面にコシがあり、しっかりとしていることから疲れは感じないで済みそうです。

↑水平基調のインストルメントパネルはブラックで統一。着座位置は高めで視界はとても広い

 

↑シートは合皮とファブリックの組み合わせた通気性の良い撥水シートとなっている

 

レジャーを意識した装備も豊富です。たとえば寒い季節にありがたいステアリングヒーターは新装備されたもので、しかも全周囲を対象とする優れもの。また、天井に設けられたサーキュレーターはエアコンの効きを均一化できるほか、リアサイドウィンドウのロールサンシェードや助手席シートバックの折りたたみ式テーブル、さらにはUSB端子も装備されるなど、後席でも快適に過ごせるようさまざまな工夫が施されています。さらに、リアシートは320mmもスライドでき、出掛けた先でいろいろな活用法が見出せることでしょう。

 

【内装フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

ターボパワーは必要十分! ハンドリングも穏やかで乗りやすい

↑最高出力47kW(64PS)/5600rpm、最大トルク100Nm(10.2kgfm)/2400~4000rpmを発生させる直列3気筒DOHC 0.66リッターターボ+マイルドハイブリッドを搭載

 

走り出しは4WD車らしい、落ち着いたスタートを切ります。軽快さはあまり感じませんが、高速道路での流入でもそれほどパワー不足を感じることはないと思います。ただ、これがノンターボ車だと、おそらくかなり動きは鈍くなるのではないかと推察できます。その意味で、オススメはターボ付きモデルですね。

↑デリカミニに試乗中の筆者。高めの着座位置ということで運転のしやすさが印象的だった

 

ハンドリングも穏やかでスーパーハイト系ワゴンにもかかわらず腰砕けしないフィーリングは、乗りやすくコーナリングも安心して走れるという感じです。トランスミッションはパドルシフト機能付きCVTで、走行中に簡単操作でシフトを変えられるのもメリットと言えます。

↑デリカミニは、「DELICA」のロゴマークが従来の「eKクロススペース」とは異なる雰囲気を醸し出していた

 

もう一つ注目なのは、悪路での走破性です。前述したように、4WD車にはスムーズなダンピングと路面への追従性を高めたショックアブソーバーが装備され、そのうえでタイヤサイズを一回り大きくした165/60R15を組み合わせています。これにより、2WD車に比べて砂利道など悪路での走破性を高めているとのこと。この日の試乗では、悪路走行はキャンプ場内に限られたため、その効果をはっきり体感できるまでには至りませんでしたが、継続装備されたヒルディセントコントロールも含め、改めての試乗で確かめてみたいと思います。

↑砂利道など悪路での走破性を高めているとのことだったが、キャンプ場内ではその効果を十分に体感することはできなかった

 

可愛い『デリ丸。』のCM効果もあって、三菱の軽自動車としては異例の大ヒットをもたらしたデリカミニ。ここまで人気を集めればサードパーティの新たなパーツの登場も期待できそうです。かつてのパジェロミニがそうだったように、デリカミニとして新たな盛り上がりを期待したいところですね。

 

SPEC【T Premium(4WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1830mm●車両重量:1060kg●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:64PS/5600rpm●エンジン最大トルク:100Nm/2400〜4000rpm●モーター最高出力:2.7PS/1200rpm●モーター最大トルク:40Nm/100rpm●WLTCモード燃費:17.5km/L

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撮影/松川 忍

もうすぐロータリー×PHEV版出ますが…マツダ「MX-30 EVモデル」の価値はどこにある?

昨今、世界の自動車メーカーから次々とEVが発表されている。そんななか、マツダは同社初の量産型EVとして、2021年1月に「MX-30 EVモデル」の国内販売を開始した。ハイブリッドモデルとなるMX-30が先行して登場しているが、併売する意義や販売的な成功はあるのだろうか。さらに、同クラスのSUVの多くがファミリーカーとして使われているなか、MX-30 EVモデルの使い勝手はどうか。発売から2年半経過した今、考察してみたい。

 

■今回紹介するクルマ

マツダ MX-30 EVモデル

※試乗グレード:EV・Highest Set

価格:451万~501万6000円(税込)

 

 

MX-30のEVモデルは遅れてきた本命

MX-30は現在日本で売れ筋となっているコンパクトサイズのSUVだが、ベースとなっているのは、同社のコンパクトSUV、「CX-30」である。そして、マツダにはさらに小型のエントリーモデル、「CX-3」もラインナップされている。棲み分けが難しいこの小さな領域において、マツダだけで3車種も販売している状態だ。

 

では、この3台で最も後出しとなるMX-30 EVモデルの存在意義とはなんなのかと言われれば、それはEVとして企画されたモデルであることにほかならない。2020年10月にマイルドハイブリッドモデルが先行して発売されたものの、EVであることを前提に開発された車種だけに、数か月後に発売されたEVモデルが「遅れてきた本命」というわけである。

 

観音開きのドアはファミリー向けの提案

デザインについても、CX-3やCX-30とは一風違ったテイストで仕上がっている。フロントまわりはEVらしくグリルが小さく、流行りの大型グリルの威圧顔とは違ったすました表情だ。全体的には現代的な曲線基調で、尖った部分はなくスッキリしており、上質さと同時に、親しみやすさを感じるデザインにまとめられている。

↑サイズは全長4395×全幅1795×全高1565mm。試乗モデルのカラーは特別塗装色のソウルレッドクリスタルメタリックで、ほか7色のカラーを展開しています

 

デザインではないが、「フリースタイルドア」と呼ばれる観音開き式のドアもこのクルマのポイントとなっている。フロントドアは通常通りの後ろ開きだが、リアのドアが前開き。つまり真横から見たら観音開きである。マツダで観音開きといえば、RX-8を思い出す好事家もいるに違いない。

 

この観音開き、実は構造的な“珍しさ”のほかにもメリットがある。それは、前席ドアを開けなければ後席ドアが開かないというもので、小さな子どものいる家庭では重宝される機能。ファミリー向けのクルマとして、ミニバン以外の選択肢に新たな提案というわけだ。

↑フリースタイルドアは専用設計のヒンジを採用しており、ほぼ垂直に近い角度まで開きます

 

↑ラゲージスペースは366Lの容量を確保

 

インテリアも非常に特徴的なデザインが採用されている。特に印象に残るのは、シフトノブの下部にスペースが設けられていること。これは一部輸入車などでも採用されていた構造で、見た目もスッキリするし、ドライブ中でも欲しいアイテムをすぐ手に取ることができて、足元に落ちる心配も少ない。また、センターコンソールに採用されたコルク素材も、現代的でオシャレである。

↑シフトノブとコマンダーコントロールは前方に配置。またセンターアームレストを高くしているため、肘を置きながら自然な腕の角度で操作できるようにしています

 

↑空間全体で包み込まれるような心地よさを実現したというシート

 

↑回生ブレーキの強さを変えられるパドルシフトが付いたステアリング

 

さらに、2022年10月の商品改良では、MX-30 EVモデルのバッテリーから電力を供給できるAC電源が追加装備されている。これで、アウトドアなどレジャーに出かけた先でも、電化製品を気軽に使うことができるため、アクティブなライフスタイルをサポートしてくれるに違いない。

コーナーも安心の乗り心地。航続距離の短さは日常使いであれば問題なし

もうひとつ、MX-30 EVモデルならではの美点がある。それは走りがいいことだ。EVならではのストップ&ゴーの気持ちよさはもちろん、乗り心地も優れている。しなやかなサスセッティングで道路に張り付くように走れるだけでなく、ドイツ車のようにタイヤの接地感が失われるようなことが少ないので、背の高いSUVでありながら高速道路のコーナーでも安心である。

 

一充電走行距離のカタログ値は256kmとなっているが、実質的には200kmくらいになるだろう。この距離をどう捉えるかだが、買い物や通勤など短距離移動を日常的にこなす人にとっては、不足感はないはずだ。

↑運転席寄りに搭載されたe-SKYACTIVEVユニット。モーターの最高出力は107kW(145ps)/4500~11000rpmで、最大トルクは270Nm(27.5kg-m)/0~3243rpmです

 

↑充電口には普通充電ポート(左)と急速充電ポート(右)をそろえています

 

さらに今後、プラグインハイブリッドモデルが発売される。電気モーターにプラスして、発電機を回す動力源としてのエンジンを搭載した「e-SKYACTIV R-EV(イースカイアクティブ アールイーブイ)」という名称のモデルが追加販売されるという。発売日はまだアナウンスされていないが、6月22日に広島の宇品工場で量産が開始されたことが発表されている。

 

この発電用エンジンというのが、なんとロータリーエンジンである。マツダにとってロータリーエンジンは特別なもので、コスモやRX-7に搭載されてきた象徴的な技術だ。RX-8生産中止以来、約11年ぶりのロータリーエンジンは、発電用であっても特有の高回転の快音が聞こえるのだろうか。だとすればファン垂涎のモデルでもあり、このモデルの投入でMX-30が一気にスターになる可能性も秘めている。今回紹介しているEVモデルの購入を検討していた人にとっては、悩ましい存在となるのかもしれないが……。

 

「人が乗ってないクルマ」「自分らしさを表現できるクルマ」を好む人が選ぶ

さて、このMX-30 EVモデルの最大のマイナス面を挙げるなら、価格が高いところだろう。ハイブリッドモデルと比べて、約200万円も高く設定されている。ハイブリッド車を検討している人からは、この価格を知っただけで見向きもされないかもしれない。

 

しかし、そもそもMX-30 EVモデルを選ぶ人は、人が乗ってないクルマや、自分らしさを表現できるクルマを好む人である。「EVに乗る生活」により早く移行できることからも、喜びを味わえるのではないだろうか。そこに加えて、CO2排出量を抑えることに意義を感じられるような人にはぴったりである。

 

同クラスのEVのなかでも、見事な“個性”を発揮しているMX-30 EVモデル。これからマツダマニア待望のロータリーエンジン搭載プラグインハイブリッドモデルが追加されることになる。ハイブリッドかEVか、はたまたプラグインハイブリッドか、人々がどのモデルを選ぶのか、今後はその経過を追ってみたい。

 

SPEC【EV・Highest Set】●全長×全幅×全高:4395×1795×1565mm●車両重量:1650kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:145PS(107kW)/4500-11000rpm●最大トルク:270Nm/0-3243rpm●WLTCモード一充電走行距離:256km

 

文/安藤修也、撮影/茂呂幸正

 

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PorscheのCarPlayでの車両コントロール機能が進化

カーブランドのPorsche(ポルシェ)は、Apple(アップル)の車載システム「CarPlay」における新たな車両コントロール機能を発表しました。

↑Porscheより

 

今回の新機能は、「My Porsche」アプリのアップデートにより提供されます。これにより、CarPlayをとおして車両のオーディオ、空調、快適機能、照明、エンタメ機能を操作することができるのです。

 

Porscheによれば、車両のオーナーはラジオ局の変更や車内温度のコントロール、照明の調整などを行うことができます。さらに「リラックス」「ウォームアップ」「リフレッシュ」といったウェルネスモードを、CarPlayのクイックアクション機能から起動することができます。これらの機能は、音声アシスタント「Siri」の音声コマンドからも操作可能です。

 

これらの機能は、Porsche Communication Management(PCM)に表示されるQRコードをスキャンすることで、利用を開始できます。新しいMy PorscheとCar Playの機能は、まず「Cayenne(カイエン)」から利用できるようになり、その後に他のモデルにも展開される予定です。

 

また今回のニュースとは別に、AppleはCarPlayにおけるマルチスクリーンへの対応や、車両コントロール機能などの導入を予告しています。この新しいCarPlay機能を搭載した車両は、今年後半に登場する予定です。

 

Source: Porsche via MacRumors

「テスラか、それ以外か」と思わせるほど「モデルY」のバッテリーと乗り心地は素晴らしい

日本ではあまりうまくいっていないEV(電気自動車)の普及。しかし北米の雄・テスラは、日本以外での鮮やかすぎる販売的成功をもとに、日本にトドメとなる1台を展開させてきた。人気モデルである「モデル Y」の航続距離を強化したバージョンは、日本の市場にどれだけ食い込めるだろうか?

 

■今回紹介するクルマ

テスラ モデル Y

※試乗グレード:デュアルモーターロングレンジAWD

価格:652万6000円

 

「加速は必要ないが、長い距離を走りたい」人に最適な選択肢

テスラと言えば世界一のEVメーカー。そのテスラのなかで現在一番売れているモデルが、SUVの「モデル Y」だ。

↑フロントは目立つグリルなどがない。それがかえって先進性を醸し出している

 

SUVと言っても、最低地上高が特に高いわけではなく、セダンタイプのモデル 3の全高をこんもりと上げ、そのぶん室内を広くしたモデルだと考えればいい。そもそもセダンの販売は世界的に絶不調。そんななかでモデル 3は健闘していたが、モデル Yの生産が本格化したことで、そちらに主役の座を譲ったわけだ。

 

日本で販売されるモデル Yには、従来2つのグレードがあった。ベーシックなRWD(563万円)と、デュアルモーターAWDパフォーマンス(727万円)だ。WLTCモードの航続距離は、RWDが507km、パフォーマンスが595km。パフォーマンスのウリはスーパーカー以上のバカ加速だが、一般ユーザーには性能過剰だった。

 

そこに今回、中間的存在の「デュアルモーターAWDロングレンジ」が加わった。価格は652万円とちょうど両車の中間で、航続距離は605km。パフォーマンスより価格が75万円安いので、「バカ加速は必要ないが、安心して長い距離を走りたい」というユーザーには、最適な選択となる。今回は、発売間もないこのクルマに試乗した。

↑高速に乗って長い距離を試走

 

バッテリーマネジメントが優れた、EV界のエリート

モデル Yロングレンジに限らないが、テスラのEVには、ドアに鍵穴もタッチセンサーもない。キーを登録したスマホを持つオーナーが近づくだけで、自動的にドアロックが解除される。

 

運転席に乗り込んでも、ボタンがほとんどない。電源ONのボタンすらない。これまた、キーを登録したスマホを持ったオーナーが乗り込むだけで、自動的に電源が入るのだ。ステアリング右に生えたレバーを下げるとDレンジに入り、発進が可能になる。

↑ボタン類をほとんど排除したシンプルなインテリア。中央のディスプレイは15インチと大きめ

 

この、ほとんどボタンがない操作系には、中高年は大抵ビビッてしまう。不安で不安でたまらなくなる。でも、慣れれば気にならなくなる。初めてのスマホのようなものだ。

 

ステアリング右のシフトレバーと左のウィンカー以外のあらゆる操作は、中央のディスプレイで行なうことになる。運転中のタッチ操作は結構難儀でイライラするが、声で操作することも可能だ。音声認識はスマホ並みに優秀なので、ナビの設定やエアコンの温度変更は、声で操作するのが吉。

 

いよいよ走り出そう。充電100%で電源ON、エアコンもONの状態で、ディスプレイに表示される航続距離は525kmだった。WLTCモードの605kmよりは短いが、公称の87%に当たる。通常EVの実際の航続距離がWLTCモードの7掛け程度なのに比べると、かなり長い。さすがテスラだ。

 

テスラは、バッテリーのマネジメントが非常に優れている。つまり充放電の制御が上手なので、同じバッテリー容量でも、より長い距離を走れて、バッテリーの寿命も長い。最初に表示される「525km」という数字からも、それがうかがえる。さすがEV界のエリートである。

サスペンションがしなやかで、乗り心地は快適

走り始めると、まさにEVそのもの。音もなくスムーズに加速する。驚いたのは、新車の割にサスペンションがしなやかだったことだ。ボディも猛烈にしっかりしているので、乗り心地は素晴らしい。

 

以前乗ったモデル 3は、サスペンションがハードすぎて乗り心地は最悪レベルだったが、今回のモデル Yは雲泥の差だった。もともとテスラ車は新車時のサスのあたりが固い傾向があったが、改良されたらしい。

 

市街地で気になるのは幅の広さだ。全長は4760mmなのでちょうどいいが、全幅は1925mmもあり、取り回しには多少気を遣う。

 

そのぶん室内は広い。セダンのモデル 3と比べると、全高は180mm高く、全長も65mm長いのだから当然だ。パノラミック・ガラスルーフが標準装備なので、開放感もある。ラゲージ容量は、リアシートの後ろ側で854L。これで足りない人はまずいないと思うが、リアシートの背もたれを倒すと、2041Lという巨大な空間になる。フロントのボンネット下にも117Lの容量のトランクがある。実用性は十分だ。

↑本体サイズは約全長4760×全幅1925×全高1625mm。カラーは試乗モデルのパールホワイトのほかに、オプションで4色をそろえている

 

↑コックピットはシートポジションが高く、ダッシュボードは低いため、よく見渡せるようになっている

 

駆動用モーターは、前後に1基ずつ搭載。詳細な出力は非公開だ。モデル Yパフォーマンスに比べると加速は控え目だが、それでも十分すぎるほど速い。

↑試乗モデルは、静止状態から時速100kmまで約5.0秒の加速を実現している

 

ライバルに対して優位に立つ航続距離の長さ

テスラ車の美点は、速度を上げてもあまりバッテリーを食わない(電費がいい)点にある。新東名の120km/h制限区間を120km/hでブッ飛ばしても、100km/hのときとあまり電費が変わらないのだ。空気抵抗は1.4倍に増加しているはずなのに、不思議で仕方がない。EVは速度を上げると急激にバッテリーを食うものだが、なぜかテスラはその割合が小さい。これも優れたバッテリーマネジメントの賜物だろうか? テスラは技術的な情報をほとんど公表しないので謎だが、そう考えるしかない。

 

東京から240km先の浜松SAで折り返し、富士川まで合計340km走った段階で、バッテリーにはまだ34%電力が残っていた。つまり、100%使い切れば500km走れた計算だ。残り20%まででも、約400km走れることになる。さすがロングレンジ。ここまで航続距離の長いEVは、この価格帯にはほかに存在しない。ライバルに対して、2~3割は優位に立っている。

 

富士川のテスラスーパーチャージャー(テスラ専用の急速充電スポット)の250kW器で30分間充電したところ、87%まで回復した。推定充電量は40kW。平均充電速度は80kWhだ。最大50kWがスタンダードのチャデモ(CHAdeMO)の急速充電器よりはるかに速い。しかもテスラスーパーチャージャーは、一か所のスポットに4~6器の充電器が並んでいるから、充電待ちもまずない。

↑スーパーチャージャーでは、15分間で最大275km相当の充電が可能

 

テスラスーパーチャージャーは、現在国内70余か所、300器強が整備されている。なにしろテスラ専用なので、気分は貴族。この充電速度で、この利便性。EVは「テスラか、それ以外か」で、天と地の差があると認めざるを得ない。

 

SPEC【ロングレンジ AWD】●全長×全幅×全高:4760×1925×1625mm●車両重量:1980kg●パワーユニット:デュアルモーター●最大出力:250kW●最高時速:217km/h●航続距離:605km

 

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撮影/池之平昌信

電動化されても“らしさ”は健在! アルファ・ロメオ「トナーレ」試乗レビュー

今回はアルファ・ロメオの新型コンパクトSUV「トナーレ」をピックアップ。「電気」の存在を強く意識させるニューモデルの走りをチェック!

※こちらは「GetNavi」 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです

 

走りはMHEVでも「電気感」が強い!

アルファ・ロメオ トナーレ

SPEC【ヴェローチェ】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:1468㏄直列4気筒DOHC+ターボ+電気モーター●最高出力:160[20]PS/5750[6000]rpm●最大トルク:24.5[5.6]kg-m/1700[2000]rpm●WL
TCモード燃費:16.7km/l
●[ ]内は電気モーターの数値

 

しばらくFRベースで少々大きめのジュリアとステルヴィオしかなかったアルファ・ロメオだが、久しぶりにコンパクトSUVのトナーレが登場。都市部で使いやすく身近なモデルだ。

 

電動化へ向けた第一歩でもあるがMHEV(マイルド・ハイブリッド)となり、1.5lターボ・エンジンに20PS、5.6kg-mのモーターが組み合わされている。信号などで停止するとエンジンも止まるのは当然だが、面白いのは発進からしばらくはフルハイブリッドのようにモーターだけで走ること。MHEVでここまで電気感が強いのは珍しく、燃費も良さそうだ。その一方、アクセルを強く踏み込むと元気いっぱいの走りをみせるのがアルファ・ロメオらしい。

 

ボディには剛性感があり、サスペンションは引き締まっている。おまけにステアリングギア比が超クイックなので、操舵するとグイッとノーズが反応してスポーティ。それでいて操縦安定性も高く、シャーシ性能は想像以上に高度だ。

 

デザイン性の高さが持ち味

スポーティな仕立ての外観は、いかにもアルファ・ロメオ。撮影車は導入記念モデルのエディツィオーネ・スペチアーレで、現在のラインナップはTIとヴェローチェの2種。

 

メーターはついにデジタルな画像に!

ドライバーズカーらしい仕立てのインパネでは、アルファ・ロメオ初のデジタルクラスターメーターを採用。上級グレードではシートがレザー仕様となるなど、上質感も十分。

 

SUVとしての実用性もハイレベル

荷室容量は、後席を使用する通常時でも500ℓを確保。SUVとしての使い勝手は申し分ない。電動テールゲートも標準で装備している。

 

日本仕様はハイブリッドのみ

パワーユニットは、1.5l直噴ガソリンターボエンジンと48Vモーターの組み合わせ。組み合わせるトランスミッションは7速ATとなる。

 

構成/小野泰治 文/石井昌道 撮影/郡 大二郎

注目はキレキレのデザインだけじゃない! 新型トヨタ「プリウス」試乗レビュー

ハイブリッドの選択肢が豊富ななか、その元祖であるプリウスが独自の魅力を満載して登場。今回は劇的に生まれ変わったトヨタ「プリウス」をピックアップ。

※こちらは「GetNavi」 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです

 

大胆なスタイリングに相応しい走りも楽しめる!

トヨタ
プリウス

SPEC【Z(FF)】●全長×全幅×全高:4600×1780×1430mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1986㏄直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:152[113]PS/6000rpm●最大トルク:19.2[21.0]kg-m/4400〜5200rpm●WLTCモード燃費:28.6km/l
●[ ]内は電気モーターの数値

 

見よ、この劇的に生まれ変わった姿を! 低くワイドでフロントウインドウの角度はスーパーカー並み。タイヤも19インチを履く。乗降性や後席の居住性は推して知るべしだが、こんなにスタイリッシュになるとは予想外だった。

 

それだけではない。スポーティなルックスに相応しく、走りもスポーツカー顔負けの仕上がりだ。新たに主力に位置づけられた2lハイブリッドは、従来型と同等の低燃費を達成しつつ胸のすくような加速感や俊敏なレスポンスを実現している。ハンドリングも、まさに意のまま。ドライブフィールも、これまでとは一線を画する出来映えだ。また4WDのE-Fourでは走りの一体感がより高まり、舗装路しか走らない人にも積極的に薦めたくなる。

 

さらに新型はPHEV(プラグイン・ハイブリッド)もスゴい。EV走行距離が最大105kmと大幅に向上したのも大したものだが、ハイブリッド比で約1.5倍の出力を持つ強力なモーターを搭載。6.7秒という0〜100km/h加速は、ハイブリッドより0.8秒も速く静粛性にも優れる。加えて外部給電機能も標準装備だ。

 

いまやハイブリッドの選択肢が豊富ななか、その元祖であるプリウスが独自の魅力を満載して登場したことは大いに歓迎したい。

 

PHEV仕様は一層高性能に!

19インチタイヤ装着車では87㎞だが、17インチ仕様ではEV航続距離が105㎞に。2WDのみだが電気モーターも高性能化されている。

 

サイズを考えると少し控えめ

荷室容量は、後席を使用する通常時で284〜370l(バックドアガラス下端まで)。ボディサイズに対しては若干ながら控えめだ。

 

パワーユニットは2タイプ

ハイブリッドシステムのエンジンは、KINTO専用車が1.8ℓ。その他のグレードはPHEVも含めて新開発の2lユニットを搭載する。

 

受け継いだのはボディ形状だけ?

5ドアハッチバックというボディ形状こそ先代と変わらないが、モノフォルムを強調する外観は実にスタイリッシュ。個性的な造形のライトまわりはフルLED化されている。

 

電気駆動モデルらしさを強調する作り

インパネはドライバー正面に7インチのトップマウントメーターを装備するなど、電気駆動モデルらしさを強調する仕立て。室内は前後席ともに十分な広さを確保する。

 

構成/小野泰治 文/岡本幸一郎 撮影/郡 大二郎

クルマの神は細部に宿る。【ルノー カングー編】走りは完璧な新型の問題点とは?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、キャンプやペット生活を楽しむ人たちの間で大人気のカングーを取り上げる。顔が一新された新型の評価は?

※こちらは「GetNavi」 2023年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

RENAULT
KANGOO

SPEC【クレアティフ・ディーゼル】●全長×全幅×全高:4490×1860×1810mm●車両重量:1650kg●パワーユニット:1460㏄直列4気筒ディーゼルターボ●最高出力:116PS(85kW)/3750rpm●最大トルク:270Nm/1750rpm
●WLTCモード燃費:17.3km/l

481万円〜850万円

 

走りは問題なし! 問題はボディカラーの少なさ?

安ド「殿! 今回は新しいカングーを紹介します!」

永福「問題の新型カングーだな」

安ド「えっ、問題とは?」

永福「カングーはここ日本で、フランス人もビックリの人気を誇ってきた。質素でオシャレで実用的なフランス製ミニバンとして、数多くのファンを持っている」

安ド「独特のどんぐりまなこが良かったですよね!」

永福「ところが新型は、フランスの公務員のような顔になった」

安ド「なるほど、それが問題ですか。でも今回の撮影車は、日本向けにわざわざ黒い樹脂バンパーを付けた質素なグレードで、これなら悪くないと思います!」

永福「確かに悪くない」

安ド「僕が乗っていたフィアット・ムルティプラの整形顔を思い出しました。商用車風のスチールホイールもカッコ良いです!」

永福「扁平率が60の分厚いタイヤも良いな」

安ド「乗ってみると、走りも良いのでビックリしました。カングーってこんなに操縦安定性が良かったでしたっけ?」

永福「最近のルノー車らしい、タイヤが路面に吸い付くような安定感抜群の走りだな」

安ド「今回は1.5lのディーゼルエンジン仕様でしたが、静かで実用的で良く走りますね!」

永福「燃費も良いぞ。首都高を軽く流したら、22km/lも走った」

安ド「凄いですね! 燃料は軽油ですし!」

永福「走りには文句なしだ」

安ド「じゃ問題は顔だけってことですね?」

永福「いや、まずボディカラー。黒い樹脂バンパーの質素仕様は、白か黄色しか選べない」

安ド「ええっ! たったの2色ですか!?」

永福「いくらなんでも4色くらい揃えてほしいぞ」

安ド「そのうち増えるんじゃないでしょうか?」

永福「だと良いな」

安ド「ほかにもありますか?」

永福「ある。大幅な値上げだ。先代カングーは250万円くらいから買えたのが、新型は384万円から。今回のクレアティフ・ディーゼルは419万円だ」

安ド「エエ〜ッ! 先代カングーって安かったんですね……」

永福「確かに、いま考えるとものすごく安かった。だから人気があったのだな」

安ド「でも、カングー人気は日本でも定着してますから、高くなってもファンは買うんじゃないでしょうか?」

永福「とは思うが、現在はシトロエン・ベルランゴというライバルが出現している。コンセプトもサイズも値段もほとんど同じ。そしてデザインや装備はベルランゴのほうがかなり上だ。私ならベルランゴを選ぶな」

安ド「ベルランゴのボディカラーは何色ですか?」

永福「5色だ」

安ド「カングー、ピンチですね!」

 

【GOD PARTS 神】インパネアッパーボックス

フランスの働く人たち御用達の便利機能

運転席正面に小物入れがあるのは普通ですが、カングーにはここから伸びるスマホホルダーがオプション設定されています。内部にはUSB端子もあって充電もバッチリ。さらに同じものを左右両側につけることも可能で、これは母国フランスで仕事用とプライベート用でスマホを2つ使用するユーザーが多いそうで、そこへの配慮らしいです。

 

 

【GOD PARTS 01】ダブルバックドア

 

日本では見かけないが欧州の香りを感じる

いわゆる「観音開き」です。日本のミニバンではほとんど採用されていませんが、逆にこういうところは欧州の香りが感じられて好ましいです。写真のように180度全開にできますが、途中の90度で一度止まる構造になっているので安心して開くことができます。

 

【GOD PARTS 02】ラゲッジスペース

 

広大すぎる空間を自由に使い倒せる

通常時でも775l、リアシートを前方に倒せば床はフラットになったうえ、2800lもの大容量スペースが出現します。なお、リアシートは6:4の分割可倒式になっていて、トノカバーと合わせて、空間を仕切るなどして自由に使い倒すことができます。

 

【GOD PARTS 03】チャイルドミラー

 

隠された小さなミラーで運転中でも後席が確認可能

前席頭上のオーバーヘッドコンソール中央には小さなミラーが隠されています。なぜ2つもバックミラーがあるのかというと、こちらは後席の子どもなどを見るための車内用。使わない時は裏返して格納できるので邪魔になりません。

 

【GOD PARTS 04】両側スライドドア

初代モデルから受け継ぐ使いやすいドア構造

日本のミニバンではおなじみですが、海外ではあまり多くないスライドドア。カングーはルーツが商用車であるため、初代モデルから採用されてきました。開口部が広くて乗りやすいうえ、荷物も積み込みやすくなっています。

 

【GOD PARTS 05】スチールホイール

安っぽさをウリにするハーフキャップデザイン

従来モデルではキャップレスのスチールホイールを履かせていたオーナーもいましたが、新型の「クレアティフ」グレードでは、商用車っぽいハーフキャップの16インチホイールが設定されています。チープな雰囲気が逆にイケてます。

 

【GOD PARTS 06】オーバーヘッドコンソール

頭上にモノを置くというスペース活用術

普通のクルマにはあまり付いていませんが、カングーではおなじみとなっているのが頭上の物入れ。手を伸ばせばスッとモノを取り出せるので重宝します。左右両側はつかめるようになっていて、アシストグリップとして使えます。

 

【GOD PARTS 06】ヘッドライト

 

幼かったイメージを大人っぽくするライト

初代と2代目はつぶらな瞳(ライト)だったカングーですが、新型は直線基調のキリッとしたまなざしに変更されました。顔の印象は大人っぽくなり、スポーティでワイド感があって、こちらのほうが好きという方もいるようです。

 

【GOD PARTS 07】ブラックバンパー

この感じが好き! という人の声が取り入れられた

本来、塗装のされていない黒い樹脂パーツというのは、商用車などでコストを抑えるために採用されるものです。しかし、この野暮ったさが良いというファンの声が取り入れられ、日本にも導入されることになったとか。ルノー首脳部の英断に拍手!

 

【GOD PARTS 08】パワーユニット

内燃機関モデルに乗れる喜び

新型には今回の1.5lディーゼルのほか、1.3lガソリンエンジンもラインナップされています。電動化がマストとなりつつある欧州ブランドながら、内燃機関を充実させているのはカーマニア的にはウレシイ限りです。

大きいフィアットに魅力はある?「ドブロ」、兄弟車や国産ミニバンとの違いは?

フィアットから家族や仲間との遠出にピッタリなMPV『ドブロ』が日本デビューを果たしました。両側スライドドアを備えつつ、ボディは2列シート5人乗りの「ドブロ」と、3列7人乗りの「ドブロ・マキシ」をラインアップ。これまで日本でのフィアットは「500」や「500X」、「パンダ」など、コンパクトサイズの車両を展開していましたが、ドブロの登場でファミリー層にまで裾野を広げることとなったのです。

 

本記事では、ドブロの魅力をファーストインプレッションとしてお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

フィアット/ドブロ

※試乗グレード:ドブロ・マキシ

価格:399万円〜429万円(税込)

 

ドブロはプジョー「リフター」、シトロエン「ベルランゴ」と兄弟車

フィアットのドブロは、同社が属するステランティス・グループのプジョー「リフター」、シトロエン「ベルランゴ」の兄弟車として誕生しています。それだけにボディサイズは5人乗りで全長4405×全幅1850×全高1850mm、7人乗りも全長4770×全幅1850×全高1870mmと、若干の差異はあるもののほかの2車種とほぼ同じサイズ。荷室容量も最大2693リッターと、ほぼ同じとなっていました。

 

では、このサイズはいったいどのぐらいに相当するのでしょうか。たとえばトヨタ「シエンタ」と比べると、5人乗りのドブロは145mm長く、7人乗りのドブロ・マキシになると510mm長くなります。少し大きいトヨタ「ノア」との比較では、ドブロが逆に290mm短くなり、ドブロ・マキシは75mm長いといった感じです。同じ7人乗りで比較すれば、ノア/ヴォクシーに近いサイズと考えていいと思います。

↑全長4770mmのドブロ・マキシは定員が7名。ボディカラーは、この「メディテラネオ ブルー」以外に、「ジェラート ホワイト」「マエストロ グレー」の3色を選べる

 

↑手前が7人乗りのドブロ・マキシで、奥が5人乗りのドブロ。ボディの長さが大きな違い

 

ドブロをフロントから見ると、リフターやベルランゴとはデザインで明らかにテイストが違うことがわかります。フロントグリルをキュッと細身にしたシンプルなデザインは、最近のミニバンに多いギラギラ感とは一線を画するものです。しかも、FIATのロゴマークを大きくして、存在を主張しています。これだけでもフィアットファンにはたまらない魅力となるのではないでしょうか。

↑5人乗りのドブロ。フロントの「FIAT」のロゴマークが存在感をアピール

 

↑ドブロ・マキシのホイールベースは、5人乗りドブロよりも190mm長い2975mm。タイヤは205/60R16

 

多彩なシートアレンジが高い居住性と広大なスペースを生み出す

車内もシンプルなブラックで統一されたインテリアが乗員を取り囲みます。中央を仕切るセンターコンソールには、ダイヤル式シフトやスライド式のリッド付きドリンクホルダーが配置されるのみ。メッキ類もほとんどなく、日本のミニバンに見慣れた人にとっては物足りなさを感じるかもしれません。

 

ですが、それを好まない人にとっては、そのシンプルさがかえって心地よく感じられるかもしれません。むしろ、統一されたシンプルさがあるからこそ、ステアリング中央にあしらわれた、真っ赤なFIATのエンブレムが際立つのです。これもフィアットファンには大きな魅力となるでしょう。

↑シンプルなブラックで統一されたインテリアは、日本のミニバンとは違ってメッキ類もほとんどなし

 

↑ダイヤル式シフトは慣れれば結構使いやすいものだ。パーキングブレーキが電動なのもうれしい

 

一方で収納力はリフターやベルランゴと同様、収納スペースを前席まわりに8か所配置するなど、充実しています。運転席周りは正面のメーターナセルの上にフタ付きのグローブボックスがあり、収容力はかなり大きめです。上を見上げればそこには左右一杯に広がる収納トレーを配置。左右ドアにあるドアポケットもかなり大きめで、使い勝手はよく考えられているようでした。

↑運転席の前にある巨大なグローブボックス。深さもそこそこあって容量はかなり大きめだ

 

リアシートの多彩なアレンジもドブロの魅力です。2列目は3座独立タイプで、それぞれが均等に座れるようになっており、たとえ真ん中に座ったとしても左右より窮屈だったり、居心地が悪かったりはしません。しかもシートはすべて床下に収納できてしまい、フロアがフラットになるのです。

↑3席が完全に独立しているセカンドシート。大人が十分余裕をもって座ることができる。写真は5人乗りのドブロ

 

7人乗りの場合は3列目シートが残りますが、シートそのものを取り外すことができ、それによって生まれる空間は巨大そのもの。独身世帯のちょっとした引っ越しなら十分対応できそうなレベルです。

↑7人乗りのドブロ・マキシでセカンドシートを床下へ収納した例。3列目シートの前に広大なスペースが再現できる

 

また、バックゲートはガラスハッチだけを開閉することもでき、狭い場所でも上から荷物を出し入れできます。車庫などに入れたときの荷物の出し入れに重宝することでしょう。

↑7人乗りのドブロ・マキシのカーゴスペース。脱着も可能な3列目シートを折りたたんでも、かなり広いスペースが生まれる

 

ただ、左右のスライドドア、バックドアともにパワー機構が備わっていません。どれも開け閉めには結構な力が必要で、軽自動車でもパワースライドドアが当たり前に装備されている感覚からすると、ちょっとツライかもしれません。

↑バックドアは自分で開閉。そのため、閉めるときは特に重さを感じるが、このロープが役立つ

力強いトルクが生み出すスムーズな加速。コーナーでの安定度も抜群

日本仕様のパワートレイン系は、1.5Lのターボディーゼルと8速ATの組み合わせで、最高出力130ps/3750rpm、最大トルク300Nm/1750rpmを発揮します。リフターやベルランゴと共通のもので、パフォーマンス面でも満足いくレベルにあることは容易に想像ができます。

↑パワートレイン系は1.5リッターのターボディーゼルと8速ATの組み合わせのみ

 

この日はあいにく雨天での試乗となってしまい、路面から湧き起こる“シャーッ”というノイズが室内に進入し、エンジン音すらかき消してしまうほど。そのため本来の静粛性をチェックできませんでしたが、リフターやベルランゴの経験からすると、高速域でも十分な静粛性を保っていたことは確かです。

 

走りはというと、アクセルを踏み込むと同時に力強いトルクが車体をスムーズに動かしてくれました。しかしながら、決してトルクが出しゃばることなく、自然な雰囲気で加速してくれます。速度の伸びも良好で、少なくとも試乗コースとなっていた都内の道路上で不満はまったく感じませんでした。

 

一方で、サスペンションはしっかり感を伝えるフィールで、コーナーを曲がるときも後輪が路面にちゃんと追従して雨天走行でも不安感はまったくなし。MPVながら走りも楽しめそうな印象でした。

 

最後にドブロで見逃せないのが、安全装備や先進運転支援システムです。オートハイビームや自動緊急ブレーキ、車線維持支援機能を搭載したのはもちろん、ロングドライブで重宝するアダプティブクルーズコントロールを装備。レーンチェンジの安心をサポートするブラインドスポットモニターや、便利な電動パーキングブレーキも搭載しています。実用性のみならず、ドライブの安全性と快適性を両立しているのもドブロのポイントと言えるでしょう。

↑ロングドライブで役立つアダプティブクルーズコントロールを装備。先行車に追従して速度を自動的に加減速してくれる

 

【まとめ】

ドブロは、電動スライド系機構がない点は、日本車並みの至れり尽くせりな装備になっていないのは確かです。しかし、安全装備、運転支援機能を備え、収納スペース、荷室アレンジは十分。広大なスペースを活用して、自分らしい使い方をアレンジするところに魅力があり、存在意義はそこにこそあるのです。家族や仲間と一緒に、そんな新しいイタリア車の世界観を楽しんでみてはいかがでしょうか。

↑ドブロでイタリア車らしい、自分流の楽しみ方を見つけて欲しいと話す、Stellantisジャパン 代表取締役社長 打越 晋氏

 

SPEC【フィアット/ドブロ】●全長×全幅×全高:4770×1850×1870mm●車両重量:1660㎏●パワーユニット:ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)●最高出力:130ps/3750rpm●最大トルク:300Nm/1750rpm●WLTCモード燃費:18.1km/L

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

吉田由美曰く「ランボルギーニ史上、最も楽しいランボルギーニ」ウラカン ステラート試乗記

2022年12月にドーハで発表された 、全地形対応スーパースポーツカーを謳う「ランボルギーニ ウラカン ステラート」。その国際試乗会がカリフォルニアで行われました。オフロードを走れるランボルギーニってどんなもんじゃ〜い? 試乗会に参加した吉田由美さんの試乗記をお届けします。

↑カーライフエッセイスト 吉田由美さん

 

今回は、米国カリフォルニア州パームスプリングスまではるばる、ウラカン ステラートの試乗に行ってきました!

 

そもそもウラカンは、フラッグシップモデルのアヴェンタドールと比べるとやや小ぶりなサイズ。これまでEVO、STO、テクニカなど様々なモデルが登場してきましたが、V10エンジンの最終モデルとして世に送り出したのは、未舗装路も走れるスーパーカーです。

↑V10エンジンは排気量5204cc、最大出力610PS/8000 rpm、最大トルク560 Nm/6500 rpm

 

スーパーカーというと、車高が低く、オンロードをオラオラ走るイメージだから…なんとなくミスマッチ。だけどこれが、乗った人全員が笑顔になるという、楽しい仕上がり。そう、最初に結論から述べてしまうと、試乗の感想は「ズバリ!楽しい♪」。

 

ウラカンシリーズの集大成として「どこでも走れるスーパーカーを作りたかったんだな」と。何がどう楽しかったかはこのあとお伝えしていきましょう。

 

【記事では紹介しきれなかったディテール関連のギャラリー(本記事で使用した写真のギャラリーは記事下部にもあります)】

 

試乗の舞台は、パームスプリングスから100㎞以上離れた砂漠の真ん中にあるサーキット「チャックワラバレー・レースウェイ」。サーキット自体は1周3.75㎞ほどの舗装路のコースですが、ウラカン ステラートの試乗のために半分を通常の舗装路、あとの半分は土の上を走る特別なコースを設定。なんと!同じサーキットのコース内で両方楽しめるという贅沢!

 

ウラカンの名はほかのランボルギーニのモデル同様に闘牛の名前を、ステラートはイタリア語でダートやオフロードという意味だそう。つまり、ダートを走るために生まれたクルマなのです。

 

ウラカン ステラ―トはベースのウラカンEVOと比べて最高地上高が44mm高くなり、ボディサイズは全長5mm長く、全幅を23mm広く、全高は83mm高くなりました。同時に、フロントとリアのトレッドも広くなっています。全体的にひとまわり大きくなっている印象ですが、ほかのウラカンとプロポーション上の違いはあまり感じられません。

↑スタイリングはこんな感じ。確かにいつものウラカンなら地面ひたひたですが、右のリアタイヤも見えるぐらいに最低地上高があります

 

むしろ、ボンネット先端に装備された長方形のラリー用のライトや、前後のアンダープロテクション、黒のオーバーフェンダー、きれいな風をエンジンに取り込むためのにリアフードにつけられたエアインテーク。このあたりはウラカンとは違う、オフロードの雰囲気を漂わせています。

↑ラリーライトに寄ってみました。どことなく闘牛のツノを思わせるよう。存在感たっぷりに配置されています

 

↑オーバーフェンダーもかなり分厚め。ここだけ見るとSUVのように見えますが、これはスーパーカー

 

↑リアのエアインテークは巨大。ながら一体感あるデザインでまとまっています

 

今回パワーアップされたのは、キャリパーやブレーキ系統。カーボンセラミックの大型ディスクブレーキが控えています。そして足元を守るのはブリヂストンのランフラットタイヤ「Dueler AT002」(デュラー AT002)。

 

SUV専用のブランドですが、今回、ランボルギーニとのコラボで開発されたステラ―ト専用タイヤ。乾燥路面はもちろん、ダートも泥の路面でも、浅い雪の路面もどんとこい!ブロックが大きくかなりマッスル。ちなみにサイズはフロントが235/40 R19、リアが285/40 R19。

 

ほかにウラカン ステラートならではといえば、シート。Verde Sterratoと名付けられたアルカンターラ素材が特徴的です。シートやインテリアのレザーとアルカンターラは60色から、エクステリアは350色からカスタマイズも可能。

 

内外装の注目ポイントを説明してきましたが、何より今回の目玉はドライブモードの「ストラーダ」「スポーツ」のほかに「ラリー」モードが設定されたこと。ラリーと銘打つこのドライブモード、どんなものなのか気になります。

 

気分は完全にラリードライバー

さて、お待ちかねの試乗です。砂漠のサーキット試乗はヘルメット着用。ただでさえ暑いのに…。しかし車内はエアコン完備。でも暑くて熱い。そして助手席にチーフインストラクターを乗せて、いよいよコースイン。

 

まずは「スポーツ」モードでオンロードを疾走。思ったよりタイヤのゴツゴツ感は感じられません。そしてコース途中からオフロードコースへ。ここでインストラクターから「ラリー」モードにするよう指示が出されます。

 

ラリーモードに設定し、コーナー手前でブレーキをかけて曲がると自然にリアが流れてドリフト状態になります。これがまるでスローモーション(というのは大げさですが)のように感じられるほど。ただし、車両を安心してコントロールできるので、気分はすっかりラリードライバーかはたまたドリフトドライバー。ラリーモードにすると、グリップが弱くなり、前後の駆動も配分も変わるようです。

 

華麗にドリフトが決まった半分は、電子制御のLDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)のお陰かもしれません。そして、タイヤがしっかり路面を掴んでくれるし。

 

インストラクターは横から「GO!GO!」と私を煽り、コースに慣れてくると私も徐々にスピードアップ。それにしても自分でクルマを操ってる感、とにかく最高です!個人的には「ランボルギーニ史上、最も楽しいランボルギーニ」と言っても差し支えないでしょう。

 

乾いた土の上を走った後は砂煙が立ち、疾走感抜群。(私には見えてないけど)ああ、なんでこの写真がないの!?(笑)

↑【編集部補足】提供されたプレス用画像に吉田由美さんのイメージするような画像ありました

 

サーキットでの試乗後は、公道試乗。西部劇に登場しそうな荒野をひた走る…。と思ったら、実はカーナビの設定間違いで、違う目的地を設定するというアクシデントが。途中でスタッフに間違いを知らせてもらったのですが、おかげで設定コースより多くの距離をステラートで走ることに体験ができました。

 

50㎞ぐらいの一本道の直線道路は、いくら走っても同じような景色で圧倒。思いも寄らぬ試乗機会となりましたが、乗り心地は意外にも悪くなかったのが印象的です。

 

世界中からプレスを呼んだ今回の試乗会のうち、日本人チームは最後から2番目のタームだったのですが、私たちが乗るときには1本数十万円もするウラカン ステラートのホイールはほぼ全車が傷だらけ。しかもどこもかしこも。それだけみなさん、走らせて楽しい、操って興奮する一台だったといえるでしょう。ちなみに、傷がつくのはランボルギーニも了承済み。実に太っ腹です。

↑ホイールのあちこち、ゴリゴリです

 

さてウラカン ステラート、日本でのお値段は3116万5367円(税抜)。世界限定1499台で、すでにほぼ完売だそうですが、万が一ということもあるようなので、気になる方はディーラーへご相談くださいとのこと。

 

なお、この試乗会でお会いしたシンガポール在住のランボルギーニ広報女史とのディナーによると、シンガポールではウラカン ステラート、1億円だそうです(笑)。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

作りこめば最高の相棒に! 楽しいDIY的なクルマ「スペーシア ベース」

継続するアウトドア人気を受けて、メーカーもその動きを意識したモデルを送り出している。今回はスズキ「スペーシア ベース」をプロが診断する!

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が診断します】

GetNavi乗り物担当・上岡 篤

宅ワークを軸にしつつ、取材などに飛び回る日々を送る。

 

作りこむのが楽しいクルマはアウトドアシーンでも大活躍

スズキ
スペーシア ベース
139万4800円〜166万7600円

ハイトワゴンと商用車の“ちょうど良い中間”を狙い開発されたモデル。登録としては商用車ながら乗り心地の良い足回りなど、乗用車としても十分な資質だ。標準で搭載される「マルチボード」で後席や荷室の幅広い活用が可能。

SPEC【XF・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm●車両重量:870kg●パワーユニット:658cc直列3気筒DOHC●最高出力:52PS/6500rpm●最大トルク:6.1kg-m/4000rpm●WLTCモード燃費:21.2km/l

 

頭上にも小物を収納できるスペース

↑乗用モデルのスペーシアでは後席も快適なサーキュレーターを搭載。だが同車では小物が収納できるオーバーヘッドシェルフを装備する

 

愛犬との同乗に便利な分割モードも可能

↑リアシートを愛犬などのペット居住スペースに、荷室部分を荷物積載スペースに分割可能なモードも設定。安心してドライブできる

 

同社軽モデルの豊富な収納スペースが魅力

↑写真のフロントドアポケットを含め、リアスペースの収納スペースも豊富。純正オプションパーツが豊富で、カスタマイズもしやすい

 

標準のマルチボードで後方空間が多彩に変化

↑ワークスペースに適した上段モード(上)、移動販売車などに向く中段モード(中)、フルフラットで車中泊にぴったりな下段モード(下)が設定可能。アイデア次第で車内空間の使い方が大きく広がるのが最大の魅力だ。

 

【上岡’s Check】使い方はアイデア次第!作りこめば最高の一台に

「商用車はバンタイプが多く、使い方も限られてきました。ですが同車はオンでもオフでも活躍できるマルチな存在で、大きな可能性を秘めています。作りこめば最高の相棒です」

 

作りこんでいくのが楽しいDIY的なクルマ

スペーシア ベースは商用車に与えられる4ナンバーのクルマ。だがその性格は、フロントシート回りと、リアシートから後ろの荷室で大きく異なるのが面白い。

 

フロントシートまわりは、他のスペーシアシリーズと変わらない快適さがポイント。足回りも荷物の最大積載量を200kgに抑えたことで乗用車用タイヤの装着が可能となり、ゴツゴツ感もない。

 

一方でリアシートは、スライドやリクライニングも不可能というエマージェンシー的な存在。だがその割り切りと荷室の活用のために標準搭載されるマルチボードが秀逸。ワーキングスペースになったり、フルフラットにして車中泊も可能なモードにもなる。使う人のアイデアで可能性が広がる。

 

同車は「なんとなくアウトドア向きだから」と選ぶのには不適格。であればスペーシア ギアのほうがよりアウトドア向けで快適だからだ。だが「キャンプのベース車にしたい」「移動販売車として使いたい」「動くワーキングスペースにしたい」という目的があり、自分なりに作りこんでいくクルマとして最高のモデルだ。

子育て世代の日常クルマが大変身! ダイハツ「タント ファンクロス」はアウトドアにぴったりの”軽”だ!!

継続するアウトドア人気を受けて、メーカーもその動きを意識したモデルを送り出している。今回はダイハツ「タント ファンクロス」をプロが診断する!

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が診断します】

自動車ライター・塚田勝弘さん

新車を中心に中古車やカー用品などを取材、執筆を行う。ゲットナビの元・編集部員で、乗り物担当だった。

 

家族に愛される定番モデルにアウトドア仕様を追加

ダイハツ
タント ファンクロス
168万8500円〜193万500円

2022年10月、タントの商品改良を機に追加。キャンプをはじめ、マリン&ウインタースポーツに向く撥水シート、防水加工シートバックを標準装備する。ルーフレールもファンクロスの専用装備で、荷物が多くなる趣味に対応。

SPEC【ターボ・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1785mm●車両重量:940kg●パワーユニット:658cc直列3気筒DOHCターボ●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:10.2kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:20.6km/l

 

アクセントカラーがアウトドアで映える

↑センターメーターによりワイドで開放感のあるインパネを踏襲する。オレンジの加飾を随所に配することで、遊び心ある仕上がりに

 

助手席側の大開口ミラクルオープンドア

↑ピラーレス構造の「ミラクルオープンドア」により子どもからお年寄りまでラクに乗降可能。大きな荷物の出し入れも容易に行える。 ※写真はタント カスタムのもの

 

掃除もしやすい撥水シート生地を採用

↑ファブリックシートに撥水加工を施すことで、濡れや汚れに強く、掃除しやすい利点もある。後席シート裏にも防水加工が施してある

 

ファンクロス専用のカモフラージュ柄

↑シートはタントのベージュ系、タント カスタムのブラック系とは異なり、カモフラージュ柄。アウトドアに似合う雰囲気を醸し出す

 

【塚田’s Check】タフさと使い勝手を両立した巧みな設計

「子育て層から絶大な支持を集めてきたタントのイメージを覆す、アクティブでタフな内外装がポイント。キャンプを楽しむ開発担当者ならではの利便性の高い装備も出色です」

 

軽スーパーハイトワゴンに外遊びに便利な機能を追加

ダイハツも助手席側のピラー(柱)がない「ミラクルオープンドア」を最大の特徴とするタントをベースに、ルーフレールやタフな印象の前後バンパーを備えたファンクロスを追加。内装に遊び心あふれるオレンジの加飾やカモフラージュ柄のシートを採用し、撥水加工が施された後席シートバックは、汚れた荷物も積載しやすく、手入れも容易にできる。最大の見どころは上下2段調整式ラゲッジボード。上段にするとクーラーボックスなどの大きな荷物が積みやすく、背もたれ前倒し時に段差のない平らな空間が出現する。下段にすれば荷室高が稼げるため高さのあるモノにも対応する。さらにこのボードは着脱可能で、取り外せば車外でアウトドア用品などを置けるテーブルにもなる。

 

子育て世帯の日常クルマとして人気の同車が、外装と内装を変更することで進化。アウトドアにぴったりなモデルに仕上がっている。

2023年最注目の軽自動車「三菱・デリカミニ」をプロが診断!

継続するアウトドア人気を受けて、メーカーもその動きを意識したモデルを送り出している。なかでも軽自動車では三菱・デリカミニの登場で車中泊も快適に過ごせるモデルの人気に拍車がかかりそうだ。今回はそんな人気の「デリカミニ」をプロが診断する!

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が診断します】

モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん

守備範囲の広さは業界屈指。幼い二児との楽しいカーライフを目指し小さくて便利なクルマを物色中だ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

万能ミニバンのDNAを受け継ぐ2023年最注目の軽自動車

三菱
デリカミニ
180万4000円〜223万8500円

伝統ある「デリカ」の名を冠した軽スーパーハイトワゴンが登場。軽自動車界でも異彩を放つタフでギア感のあるSUVスタイリングが目を引く。車内にもアウトドアでの使用を想定した機能的な装備が満載されている。

SPEC【T プレミアム・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1810mm●車両重量:1000kg●パワーユニット:659cc直列3気筒DOHCターボ●最高出力:64PS/5600rpm●最大トルク:10.2kg-m/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:19.2km/l

 

リアシートを最後端にすると広いスペースが出現

↑320㎜もの前後スライドが可能。アウトドアや小さな子どものいる家庭の使用を想定し、汚れにくく通気性の良い撥水シート生地を採用

 

使いやすく機能的で快適なインテリアを採用

↑ブラック基調で水平基調のインパネにライトグレーのアクセントを配する。トレイやドリンクホルダーも使いやすくレイアウトしている

 

後席は分割スライド式でたくさんの荷物を載せられる

↑後席は片側ずつスライドおよび前倒しが可能。助手席のシートバックには大小のポケットやテーブル、充電用USBポートなどを装備する

 

車内のいたるところに収納スペースを設定

↑助手席下にはシートアンダートレイを設定。何かと置き場所に困りがちな車検証もここに入れておくことができるようになっている

 

【岡本’s Check】使い勝手の良さは軽自動車として最上級

「軽自動車派ではないがこのクルマは気になる人は多いはず。まだ乗れていないので走りに関しては予想ですが、悪いはずがない。使い勝手は軽自動車としては最上級です」

 

日常生活では小回りが利きアウトドアでは本領を発揮

誕生から55年を迎える万能ミニバン「デリカ」のDNAを受け継ぐミニマムなクルマがついに現れた。

 

三菱が誇る「ダイナミックシールド」による力強い顔はインパクト満点! 大径タイヤもよく似合う。

 

コンパクトな外見からイメージするよりもずっと広い車内空間は、アウトドア好きや子育てファミリーがより便利に使えるよう細やかな配慮が行き届いている。さらには、好みにあわせて選べるオプションパーツも豊富に用意されている。

 

走りについても、すでにeKシリーズで定評のある三菱のことだから、良くできているに違いない。「デリカ」を名乗るだけあって4WD性能にも期待できそうだから、アウトドア好きで未舗装路を走る機会のある人や、降雪地帯に住む人にとっても心強いはずだ。

 

それでいて、軽自動車のサイズだから小回りが利いて、ちょっと出かけるのも億劫にならないし、先進運転支援装備も充実。高速道路を使った長距離のドライブでも疲れ知らずでより快適に運転できそうだ。

 

見るだけでも楽しめて、毎日の生活でも便利に使えて、休日のお出かけにも頼もしい。小さな車体に多くの要素を詰め込んだ実に欲張りな一台は、アウトドアはもちろん、様々なシチュエーションで楽しいカーライフを満喫させてくれること請け合いだ。

専門家が厳選! スポーティな走りを楽しめるステーションワゴン6選

セダンの利便性はそのままに、荷室スペースを拡大した2ボックスモデルがステーションワゴン。その魅力は使い勝手の良さがおもにクローズアップされがちだが、美しいデザイン、そして低い重心がもたらすスポーティな走りこそ真骨頂。今回は、自動車ライター・海野大介さんに、低重心のスタイルが生む安定した走りが魅力な6台のステーションワゴンを選んでもらった。

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が選びました】

自動車ライター・海野大介さん

ウェブを中心に活動する自動車ライター。国内A級ライセンスと1級小型船舶という、趣味性の高い資格を保持。

 

水平対向エンジンを搭載するスポーティワゴン

SUBARU
レヴォーグ
310万2000円〜414万7000円

レガシィツーリングワゴンに代わるステーションワゴンとして2014年にデビュー。現行モデルは2020年にデビューした2代目になる。低重心を生み出すSUBARU伝統の水平対向エンジンを搭載し、スポーティな走りが魅力だ。

SPEC【GT-H EX】●全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm●車両重量:1570kg●パワーユニット:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ターボ●最高出力:177PS/5200〜5600rpm●最大トルク:30.6kg-m/1600〜3600rpm●WLTCモード燃費:13.6km/l

 

↑運転支援システム「アイサイト」は全モデルに標準装備。グレードによってはより進化した「アイサイトX」を装備するモデルもある

 

↑荷室床下に290㎜の深さを持つ大型のサブトランクを装備。底面からルーフまでは最大1105㎜の高さがあり、大きな荷物も積載可能だ

 

↑主力エンジンは177PS/300Nmを発揮する1.8l直噴ターボ。低回転域から最大トルクを発揮するので扱いやすいのが特徴だ

 

【ココがスポーティな意匠】低重心のエンジンとAWDの安定した走り

なんといっても低重心を生み出す水平対向エンジンとSUBARU独自のシンメトリカルAWD。コーナー進入時もしっかりと路面を捉え続け、立ち上がりの良さも抜群だ。

 

マイルドハイブリッドが高い環境性能を実現

メルセデス・ベンツ
Cクラス ステーションワゴン
622万円〜1202万円

無駄を削ぎ落としたスポーティなデザインが魅力のモデル。現行モデルでは全グレードでマイルドハイブリッドを採用する。モーターによる高効率なエネルギー回生やブースト機能が、高度な環境性能と気持ち良い走りを実現。

SPEC【C 200 Stationwagon AVANTGARDE】●全長×全幅×全高:4755×1820×1455㎜●車両重量:1700kg●パワーユニット:1494cc直列4気筒DOHC●最高出力:204PS/5800〜6100rpm●最大トルク:30.6kg-m/1800〜4000rpm●WLTCモード燃費:14.2km/l

 

↑エンジンは1.5l直4ターボと2l直4ディーゼルターボの2つ。いずれも9速ATが組み合わされ、スムーズな加速を実現している

 

↑ディスプレイを多用したインパネ。正面は12.3インチ、コクピット中央のものは11.9インチだ。後者はドライバー側に傾けて設置される

 

【ココがスポーティな意匠】スポーツカー並みの旋回性能が楽しめる

メルセデスの特徴でもあるボディ剛性の高さは、足回りの安定感をより感じさせる。それはハンドリングの良さにもつながり、ロールの抑えられたコーナリングを楽しむことが可能だ。

 

伸びやかなルーフラインがスポーティさを強調

トヨタ
カローラ ツーリング
207万円〜304万8000円

いまや数少ないトヨタブランドのステーションワゴン。伸びやかなルーフラインがスポーティさを演出している。2021年にマイナーチェンジ。ガソリンエンジンとハイブリッドがあり、ハイブリッドのみE-Fourの4WDが設定される。

SPEC【W×B(ハイブリッド・2WD)】●全長×全幅×全高:4495×1745×1460mm●車両重量:1390kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+モーター●最高出力:98[95]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[18.9]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:27.3km/l

※[ ]内はモーターの数値

 

↑すべての電動モジュールを刷新したハイブリッドシステム。モーター出力は従来比+16%を実現した。パワーと燃費の高バランスが特徴だ

 

↑後席はワンタッチで格納可能な60:40の分割可倒式を採用。G以上のグレードにはセンターコンソール背面にUSB端子が備わる

 

【ココがスポーティな意匠】アクセル操作に忠実なパワー出力が魅力

アクセルやステアリング操作に対する反応が素直で扱いやすく、低重心パッケージのシャーシ特性と相まって気持ちの良いコーナリングが楽しめる。意外に低いドラポジも魅力。

 

クリーンディーゼルの追加で魅力が増したワゴン

アウディ
A4 アバント
508万円〜693万円

アウディを代表する人気車種、A4のワゴン版がアバントだ。A4としては5代目になり、2015年にデビュー。2020年には大幅なマイナーチェンジを受けた。ディーゼルエンジン搭載車もラインナップに追加され、魅力がいっそう高まった。

SPEC【35 TDI advanced】●全長×全幅×全高:4760×1845×1435mm●車両重量:1610kg●パワーユニット:1968cc直列4気筒DOHCターボ●最高出力:163PS/3250〜4200rpm●最大トルク:38.7kg-m/1500〜2750rpm●WLTCモード燃費:17.1km/l

 

↑デザインは同じだが、アバントの後席はセダンよりも座面から天井までの高さがある。35TFSI以外は3ゾーンのエアコンを標準装備する

 

↑ラゲッジルームは後席を使用した状況で495ℓの容量を確保。40:20:40の可倒式後席を倒せば1495ℓの大容量荷室が出現する

 

【ココがスポーティな意匠】実用域でも楽しめるエンジンとハンドリング

ディーゼル特有の厚いトルクは低回転域での加速に優れ、クルマはステアリング操作に対し正確に反応する。正確だが穏やかなレスポンスなのでリラックスして運転できる。

 

独自の車両制御技術で卓越した操縦性を誇る

マツダ
MAZDA 6 ワゴン
296万2300円〜385万8800円

2019年のマイナーチェンジ時にアテンザから世界共通名のMAZDA 6に名称変更。現行モデルは2012年にデビューした。マツダ独自の車両制御技術により、ステーションワゴンながらスポーツカー並みのハンドリングが魅力だ。

SPEC【XD Sport Appearance】●全長×全幅×全高:4805×1840×1450mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:2188cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ●最高出力:200PS/4000rpm●最大トルク:45.9㎏-m/2000rpm●WLTCモード燃費:17.8km/l

 

↑ソフトパッドを多用し高いインテリアの質感も定評があるマツダ6。8インチのセンターディスプレイはスマホとの連携も可能だ

 

↑豊かなトルクで力強い走りを実現するディーゼルエンジン。それまでの回らないディーゼルの概念を変えたパワーユニットでもある

 

【ココがスポーティな意匠】ドライバーの意図に忠実で安定した挙動が堪能できる

ホイールベースが短くても安定した直進性を持ち、ドライバーの意図に忠実でリニアなステアリングフィールを誇る。安定した挙動はロードスターに通じる爽快感が感じられる。

 

PHEVが追加されたバカンスの国のワゴン

プジョー
308SW
362万1000円〜576万6000円

コンパクトモデルの308に設定されるワゴンがSW。現行モデルは2022年に発表され308としては3代目になるモデルだ。パワー・オブ・チョイスのコンセプトに基づいてガソリン、ディーゼル、PHEVと合計3つのパワートレインを設定する。

SPEC【GT・ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4655×1850×1485mm●車両重量:1720kg●パワーユニット:1598cc直列4気筒DOHCターボ+モーター●最高出力:180[110]PS/6000rpm●最大トルク:25.4[32.6]kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:17.5km/l

●[ ]内はモーターの数値

 

↑インパネはステアリングの上下がフラットで包まれ感のあるi-Cockpitを採用。308のものはディスプレイを多用した最新進化版だ

 

↑シートの良さに定評ある308。現行モデルで採用されたシートはAGR(ドイツ脊椎健康推進協会)に認められた人間工学に基づくもの

 

【ココがスポーティな意匠】帰ってきた「ネコ足」は剛性感たっぷりで快適

一時はドイツ車的な固い足回りのセッティングだったが、柔らかく深くロールし、粘りのある走りが特徴の「ネコ足」が復活。高い剛性感が特徴だが、都市部でも快適に走行可能だ。

使い勝手の良さだけじゃない! これがスポーティステーションワゴンの矜持だ!【BMW 3シリーズ ツーリング】

セダンの利便性はそのままに、荷室スペースを拡大した2ボックスモデルがステーションワゴン。その魅力は使い勝手の良さがおもにクローズアップされがちだが、美しいデザイン、そして低い重心がもたらすスポーティな走りこそ真骨頂。そんなステーションワゴンのトレンドを専門家が紹介。今回は「BMW 3シリーズ ツーリング」をピックアップ!

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が選びました】

自動車ライター・海野大介さん

ウェブを中心に活動する自動車ライター。国内A級ライセンスと1級小型船舶という、趣味性の高い資格を保持。

 

スポーティかつ上質なBMWの主力モデル

BMW
3シリーズ ツーリング

664万円〜1104万円

SPEC【M340i xDrive ツーリング】●全長×全幅×全高:4725×1825×1450mm●車両重量:1810kg●パワーユニット:2997cc直列6気筒DOHC●最高出力:387PS/5800rpm●最大トルク:51.0kg-m/1800〜5000rpm●WLTCモード燃費:10.6km/l

BMWの主力モデルである3シリーズ。その魅力はスポーティさと上質さを兼ね備えている点だ。同ブランドの美点である正確なハンドリングはもちろん、最大1510ℓを誇るラゲッジルームは低い位置から開くので使いやすい。

 

↑ボタンやスイッチ類を最小限に抑えたインパネ。センターにはインパネに浮いて見えるフレームレスのカーブド・ディスプレイを採用する

 

↑セダン同様の快適性を持つリアシート。積載物によって多彩なシートアレンジを可能にする40:20:40の分割可倒式を採用している

 

↑ラゲッジルームは後輪の張り出しも最小限で使いやすいのが特徴。床下のサブトランクには取り外したトノカバーが収納できる設計に

 

【ココがスポーティな意匠】抜群の安定感と正確なハンドリングが身上

前後重量配分はセダンと同じ48:52。またホイールベースがセダンより少し長いぶん、高い直進安定性と安定したコーナリングは魅力だ。そこに気持ちの良いエンジンとはさすがBMW!

MAZDA2は旧来のデミオファンをも取り込むポップさと質感の高さを両立してるではないか!

2023年の春、MAZDA2が大幅に改良された。MAZDA2といえばマツダの根底を支えるコンパクトカーだが、はたしてどのような変更がなされたのか。本稿では、かつてのデミオを懐かしみながら、その魅力について解説していきたい。

 

■今回紹介するクルマ

マツダ MAZDA2

※試乗グレード:15BD・2WD

価格:152万2900~254万1000円(税込)

 

デミオ時代から数えて10年目を迎えるロングセラーモデル

2010年代からブランドイメージの転換を図ってきたマツダ。イメージカラーをメタリックレッドとブラックで揃え、販売ディーラーもプレミアムな雰囲気へと変貌させた。MAZDA2は、新時代のマツダのエントリーモデルだが、かつての名称「デミオ」と呼んだほうが、そのサイズ感や特徴を捉えられる人は多いかもしれない。

 

デミオは1996年にデビューしたコンパクトハッチバックで、小型車にしては高めの全高や広い荷室を特徴として人気を博し、スマッシュヒットとなった。以後、マツダの基幹モデルとして4代目まで販売されてきており、走りのスポーティーさやデザインの妙で、2000年以降、戦国時代となっていた日本のコンパクトカー市場でも独自の地位を確立していた。

 

しかしその後、2019年の改良時に名称変更がなされ、新車種のMAZDA2としてリボーンすることとなる。つまり、MAZDA2は4代目デミオであり、改良が施されたデミオと言ってもいいだろう。そして、この4代目モデルが登場したのは2014年であり、そろそろ10年目を迎えんとするロングセラーモデルとなっている。

↑新MAZDA2は2023年1月に大幅改良がアナウンスされました!

 

なかなかモデルチェンジされないのは、言い換えれば「いいクルマだから」長く売れ続けているとも言える。たしかに4代目デミオは、「魂動」デザインが取り入れられ、内外装ともに質感が高く、また当時のさまざまな新技術も採用されて機能性も高かった。

 

それらに加えて、デミオの時代に3回、MAZDA2になってからは1度、改良が施されてきた。また、その間に先進安全技術の拡充なども図られている。そして2023年、今回の商品改良は、メーカー自ら「大幅」改良と呼ぶほどで、外観のデザイン変更から、新素材の採用、グレード追加など、その範囲は多岐にわたっている。

↑試乗モデルのサイズは全長4080×全幅1695×全高1525mm、重量は1090㎏。なおボディカラーは全12色を用意しています

 

まず大きなところでは、「15BD」、「XD BD」という新グレードが追加されている。これらは、「自分らしく、自由な発想で、遊び心を持って」というテーマが掲げられたMAZDA2において、自分好みに選べるカラーバリエーションの楽しさを味わえるモデル。今回試乗したのは、前者の「15BD」の方で、1.0Lのガソリンエンジンを搭載するモデルである(XD BDはディーゼルエンジン搭載モデル)。

 

外装・内装にアクセントカラーを取り入れて違いを出す

外観デザインは、MAZDA2全モデルにおいて、フロント&リアのグリルやバンパーの形状が変更されるなど、グレードごとのキャラクターを立てる形で変更。グレードによってはフロントグリルとリアバンパーにはワンポイントのカラーアクセントが採用されていて、今回の車両はイエローのワンポイントが入っている。地味になってしまいがちなホワイト系のボディカラーでも、このようなアクセントが1点入るだけで、グッとオシャレさが増して見える。

↑フロントグリルの正面から少し右にイエローのワンポイント。遠くから見ても目立ちます

 

さらにこの15BDでは、ホイールにも非常に特徴的なデザインが採用されている。内部のスチールホイールの表面を隠すキャップ仕様でありながらも、2トーンカラーでシンプルかつクールさを演出。また、オプションパーツだが、ルーフ(車体天板)部分にはカーボン調のルーフフィルムが採用されており、スポーティーさをアピールしている。なお、このルーフフィルムはマツダ独自の新技術で、塗装回数を減らすことに貢献するという時代にも即したものになっているという。

↑ボディに合わせたカラーのアクセントが入ったホイールキャップ

 

↑俯瞰して見たときに、デザインに大きな変化を与えるルーフフィルム

 

従来からセンスの良かった上質な雰囲気の内装は、今回、ボディカラーに合わせて3色の配色がなされた。試乗したスノーフレイクホワイトパールマイカのボディカラーは、「ピュアホワイト」のインテリアパネルが採用されている。ボディ同系色を配置する手法は、海外のコンパクトカーでよく見られたものではあるが、やはり雰囲気を艶やかにしてくれる巧みな手法だ。

↑インテリアパネルがかなり目立つ内装。パネルは植物由来原料の材料を採用し、従来の塗装にはない質感を実現しつつ、環境に配慮しているそうです

 

↑運転席と助手席の間には「8インチWVGAセンターディスプレイ」を配置

 

↑試乗モデルのシートは見た目シンプルですが、座り心地にはこだわっており、「人間中心」の思想のもとで開発。心地よくフィットするとのこと

デミオのポップさと新時代のマツダを象徴する質の高さを融合

 

さて、走りに関して特段変更点はアナウンスされていないものの、久々に試乗してみたところ、相変わらず上質な雰囲気である。コンパクトカーというと、どうしても低価格で低コストなため、チープな走りを想像してしまいがちだが、MAZDA2は静粛性が高く、高級感のある走りを味わえる。

↑エンジンにはSKYACTIV-G 1.5に、燃料をしっかり燃やしきる独自技術を搭載。また、圧縮比率を14に高めることで環境性能と燃費を上げています

 

↑コントロール性能も進化。ドライバーのハンドル操作に応じて、スムーズで効率的に挙動する「GVC」は、ブレーキによる姿勢安定化制御を追加しています

 

さらに、筆者がいいなと思ったのは、チルト&テレスコピック機能がしっかり備わっていることだ。クルマにあまり詳しくない人にとっては何のこっちゃという言葉だが、これはステアリングホイールの位置を調整する機能のこと。チルトはステアリングの上下位置(高さ)を、テレスコピックは同様にステアリングの前後位置を調整できる。コンパクトカーといえばチルト機能はあってもテレスコまで備えているものは少なく、このあたりまでコストをしっかりかけているのは、マツダのドライバーへの配慮が感じられる部分である。

 

初代、2代目、そして3代目あたりまで、デミオの味といえば、快活さやポップな雰囲気であったが、4代目モデルでは新時代のマツダの特徴に沿うように、質感の高さを持ち味にしていた。どちらがいいかはユーザーの好み次第であったが、今回のMAZDA2最大の改良では、両者の魅力を兼ね備えたモデルとなった。旧来のマツダファンも裏切らない、ポップさを備えながらも、質感の高いコンパクトカーへと変貌を遂げている。

↑定員乗車時で280Lの容量を確保したラゲージスペース。荷室幅が約1000mmと広いので、荷物の出し入れもしやすそうです

 

SPEC【15BD・2WD】●全長×全幅×全高:4080×1695×1525mm●車両重量:1090㎏●パワーユニット:1496cc直列4気筒エンジン●最高出力:110PS(81kW)/6000rpm●最大トルク:142Nm/3500rpm●WLTCモード燃費:20.3㎞/L

 

文/安藤修也、撮影/茂呂幸正

 

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350台もの社用車をEVに切り替える! そうぶち上げた企業が味わった苦労とは

世界的に推進されるカーボンニュートラルなどの観点から、日本政府は2035年以降、新車販売を電動車のみとする方針を示しています。そこで企業として一早く動いたのが、賃貸住宅「D-ROOM」の管理運営を手がける大和ハウスグループの大和リビング。すでに全国で70台ものEVを社用車として稼働させている同社に、これからの未来を見据えた取り組みについて聞きました。

 

2026年までに、約350台すべての社用車をEVにする

 

大和リビングは、大和ハウスが建設した全国約63万戸の賃貸住宅「D-ROOM」の管理会社。入居募集から家賃の回収・管理まで、主に物件オーナーの経営をきめ細かくサポートしています。事業所は全国に138箇所(2023年4月時点)あり、同社はそこで使用する約350台の社用車を、2026年までにすべてEVへと切り替える、と宣言。早くも、一部の営業所で切り替えが実現しています。

 

グループ内でも先陣を切って社用車のEV化に踏み切った背景について、同社・事業本部エネルギー事業推進部次長の柴田孝史さんに聞きました。

 

「大和ハウスグループでは、環境長期ビジョン『Challenge ZERO 2055』に基づき、創業100周年を迎える2055年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。その中期的な行動計画となる『エンドレスグリーンプログラム2026』を推進するなかで、各事業所が使用している電力、社用車のガソリンといったエネルギー消費をいかに削減するかという課題がありました。このうち電力は、2023年度中に大和ハウスグループの再エネ発電所由来の再生可能エネルギーによる『RE100』を達成する見込みです。

一方の社用車は、2026年度までに約350台のリース車をすべてEV化していく目標を掲げています。今回はその初年度の目標として、『RE100』達成済みの事業所から36箇所を選出し、2022年度(2023年3月)中に、70台の社用車を再エネで充電できるEVへと切り替えました」(柴田さん)

 

↑大和リビングの社用車として採用された「SAKURA」

 

約350台のうち、2割にあたる70台をEVに切り替える初年度計画が具体化したのは、2022年6月。それは今回導入された日産のBEV(バッテリー式電気自動車)「SAKURA」の発売と同時期であり、まさに急ピッチでの導入でした。

 

「まずは走り出すことを優先した結果。賃貸住宅の管理業務を行う弊社では、他のグループ会社と比べても多くの車両を使用します。我々が率先してEV導入に踏み切ることに意義があると考え、初年度目標の達成に重点を置きました」(柴田さん)

 

グリーンをキーカラーに使用したグラフィカルなラッピングが目を引く「SAKURA」。取引先や街中でも人々の関心を惹きつけているそう。

 

「各営業所で顧客対応に使用する社用車は、従来から狭い住宅地で走りやすい軽自動車を使用してきました。その使用感や利便性を損なわず、なおかつ年度内に70台という目標を達成できる車種が、日産の『SAKURA』でした」(柴田さん)

 

↑ボディには「We Build ECO」といったグループ挙げてのメッセージなどが描かれています

 

「もちろん、今後は車種の選択肢も増えていくと思います。そもそも、350台の社用車は業務に使用される車両のほんの一部に過ぎません。このほか社員が業務に使用している約1250台の自家用車についても、今後EVに切り替えていくことを見据えて、社内のマイカー手当等の制度を整えていく予定です」(柴田さん)

 

↑大和リビング株式会社 エネルギー事業推進部 次長 柴田孝史さん。大和リビングが推進する『エンドレスグリーンプログラム2026』の達成を目指し、今回の社用車EV化を主導

 

充電スタンド設置へのハードルは営業所によってさまざま

 

今回、取材班が訪れたのは、東京・足立区にある大和リビング足立営業所。敷地内の駐車場には6つの充電スタンドが備えられ、「SAKURA」が6台停まります。同営業所所長の森永友章さんによると、営業所でのEV導入においては、この充電スタンドをいかにスムーズに設置できるかが大きなポイントになったのだとか。

 

「今回選ばれた36の拠点は、大和リビングが管理している賃貸物件に我々がテナントとして入っている営業所のみになります。つまり、建物のオーナー様との信頼関係がすでにできていることが前提条件でした。特に足立営業所は1階にあり、建物前面の駐車場はすべて弊社で借りているため、オーナー様にも説明をしやすい環境が整っていたといえます」(森永さん)

 

↑大和リビング足立営業所所長の森永友章さん。足立営業所では、初年度における最多となる社用車6台をEV化。エネルギー事業推進部へのフィードバックも担っています

 

賃貸物件のオーナーから理解を得るために、具体的にどんなハードルがあるのでしょうか?

 

「主に施工の段取り的な部分ですね。EVの充電スタンドに使用する電気は、建物の中から分岐させて供給するか、それとも目の前の電線から直接引き込んで使用するかの2択なんです。やはり今後の拡張性などを考えると後者になりますが、電線を充電スタンドまで引き込むには、舗装されたアスファルトを剥がすといった工事が必要になります。また、駐車スペースのうちどの部分に導入するかは、各駐車場の状況によってオーナー様の考えもまったく違いますし、その後の運用を含めて検討していく必要があります」(柴田さん)

 

「EVが普及していない今の段階で、オーナー様が設備の劣化や今後の管理について不安を抱かれるのは当然のことだと思います。そういった現状も踏まえ、こちらで想定しうる限りのアンサーをご用意して対話に臨みました。なおかつ今回は、導入にあたっての施工費もすべて大和リビングが負担しています」(森永さん)

 

「自社負担に関しては、コストより導入までの時間を最優先したかった事情もあります。EV導入に対しては手厚い助成金も使えますが、今回はこちらが施工したいタイミングと、都の許認可が降りるタイミングを一致させることが制度上、難しかったんです。ですから、70台という初年度の目標達成を重視する一方で、肝心の充電器にかかるコストはできるだけ最小化する必要がありました」(柴田さん)

 

DIYで大幅なコスト減!? 足立営業所独自の充電スタンド

 

「日々の業務で使用する社用車ですから、駐車場への充電スタンド設置は必須でした」(柴田さん)

 

EVの充電設備にはいくつかの種類がありますが、共用に多く導入されているのが、駐車スペースに設置した充電器側に制御回路を内蔵し、大きな充電ケーブルが備え付けられている『モード3』タイプ。ところが、足立営業所の充電スタンドには充電ケーブルが見当たらず、非常にシンプルな見た目をしていました。

 

EV用充電設備の種類

モード1……コンセント型の普通充電器を用い、車載ケーブルで充電を行って電力供給を行う。普通充電器は家庭用電源を使うため、導入時のハードルが低いのがメリット。

モード2……コンセント型の普通充電器を用い、車載ケーブルで充電を行う。ケーブル間に設置されたコントロールボックスで制御を行いながら電力を供給する。

モード3……充電ケーブル付きの普通充電器から充電。充電器に制御回路を搭載し、充電制御を行う。

モード4……高圧の直流電源を用いた急速充電器で充電。短時間で充電できるのがメリットだが、導入コストは高い。

 

「一般によく用いられる『モード3』のタイプは、スタンドとコントローラーだけで数十万円。これに電線引き込み工事費をプラスすると、1営業所で数百万レベルのコストがかかってきます。そのようなタイプを導入した営業所もありますが、足立営業所が今回導入したのは『モード2』タイプの3kWの充電コンセントでした。駐車スペースに設置するスタンドにはコンセントのみがあり、取り外し可能な充電ケーブルの方に制御回路が内蔵されています。汎用品のポールに、パナソニック製のコンセントが入った既成のBOXを取り付けたいわば『DIY充電器』。『モード3』に比べるとかなり割安で設置できました」(柴田さん)

 

このDIY充電器の制作は、『D-ROOM』のインターネット設備工事を手掛けているグループ会社『D.U-NET』が手がけたのだそう。

 

「そもそも『モード3』の充電器は、たった1台の社用車のために設置するにはオーバースペックなのではないかという見方もあります。充電ケーブルが据え置きなので、かえって管理しにくい側面もあるかもしれません。一方の『モード2』なら充電ケーブルは車に置いておけますし、作りがシンプルなので、今後6kWの普通充電へのアップデートも容易だと考えています」(柴田さん)

 

運用のカギは安定した夜間充電。創意工夫から見つけたベストな形

 

コスト削減のための創意工夫が、結果的に利便性へとつながった形。一方で、肝心のEVの乗り心地や使い勝手はどうなのか、誰もが気になるところです。

 

「社用車は車両ごとに使用者を決めており、今のところ運用に問題はありません。実は、ガソリン車の軽よりも今の『SAKURA』の方が乗りやすいという声が圧倒的に多いんです。最新のクルマなので標準装備でも従来の軽自動車よりハイスペックですし、EVならではの安全装置も充実しています。弊社では公共交通機関で出勤する若い世代の社員が社用車を使用するケースが多いのですが、若い世代ほどEVの乗り味をスムーズに受け入れられているのかもしれませんね。足立営業所の場合、1日の走行距離は30km程度。航続距離はカタログで180kmとありますが、エアコンをフルで使用していると、安心して走れるのは100kmくらいかなという体感です」(森永さん)

 

↑ “日本の美を感じさせるデザイン” がコンセプトのひとつとなっているSAKURA。良い意味で社用車らしからぬ遊び心も盛り込まれています

 

導入は2023年の2月から。電力消費が多い暖房を特に多用する時期だったこともあり、バッテリーの持ちを不安視する声もあったそう。

 

「EVはとにかく充電に時間がかかります。そこで、夜間充電をどうするかは当初の大きな課題でした。夜間充電をしておかないと営業に間に合わないので許可自体は出していましたが、『モード2』の場合、充電ケーブルが取り外し可能なので簡単に抜けてしまうんですね。いたずらでケーブルそのものが盗まれたりする懸念もありました」(森永さん)

 

「街の急速充電スタンドで使えるEモビリティカードも支給していますが、急速充電とはいえ30分はかかります。業務に影響を与えないためにも、夜間の基礎充電は非常に大事。そこで、独自の鍵を設置するなど安心して夜間充電をしてもらうための対策も進めています」(柴田さん)

 

EVの草創期だからこそ、導入の形に正解はなく、さまざまな試行錯誤をすることにこそ価値がある。それが大和リビングの考え方。

 

「今回の取り組みから得た知見は、やはり大きかったです。設備にしても高機能なものをつければいいというわけではないですし、どんな形がベストかはケース・バイ・ケース。それがEVを導入していく難しさでもあり、同時に可能性でもあると思っています。今後はEVのカーシェアなども増えていくでしょうし、弊社が手がける賃貸住宅『D-ROOM』にも、そういったサービスと連携することで新たな付加価値が生まれていくはずです。いずれにしても、大和リビングはこれからもEVに対して前向きな取り組みを継続していきます」(柴田さん)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

「お高いハリアーPHEVに価値ある?」→超快適な乗り心地にV8を積んでいるかの加速で大アリ

国産ラグジュアリーSUVの先駆として1997年に国内市場に登場したトヨタ ハリアー。2020年に発売された現行型である4代目モデルは、質感やデザイン性が従来モデルからさらに高められ、販売も好調だ。その人気を維持、向上すべく、2022年10月には一部改良が施されると同時に、PHEV(プラグインハイブリッド車)が追加された。SUVとしては早くからハイブリッドモデルが投入されていたハリアーだが、シリーズ初となるPHEVモデルの完成度ははたしてどれほどのものか?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ ハリアーPHEV

価格:620万円(税込)

 

衝撃的な売れ行きのハリアー。でもお高いPHEVモデルに価値はあるの?

トヨタの高級SUVであるハリアーが猛烈に売れている。少し前まで、アルファードが月に1万台レベルで売れまくり、「狂ったように売れている」と話題になった。だが、いまはハリアーがメチャメチャ売れている。上級モデルでありながら、月平均7000台を超えているのだから、衝撃的な売れ行きと言っていい。

 

ハリアーの魅力は、高級感あふれるエレガントな内外装と、乗り心地の良さだろう。いまやどんなクルマも、加速や燃費はそこそこよくて当たり前。勝負は高級感と快適さなのである。

 

そのハリアーに、PHEVが加わった。シャシーベースが共通のRAV4には、以前からPHEVの設定があったが、ハリアーは、今回のマイナーチェンジのタイミングで追加された。

↑側面には「PLUG-IN-HYBRID」のロゴがあしらわれています

 

前述のように、ハリアーの魅力は内外装と乗り心地にあった。加えて、最安312万円(税込)からという価格も競争力抜群だ。一方、ハリアーPHEVの価格は620万円。最安グレードが2台買える値段である。それだけの価値はあるのか?

 

乗り心地のフワフワ感とトルク満点の走りで気分は大富豪である

乗って驚いた。すばらしくイイのである。内外装はハリアーのトップグレード「Zレザーパッケージ」に準ずるが、乗り心地はふんわりソフトで超絶快適!

↑シートは本革で見た目にも高級感が漂います。シートに施されたダークレッドのステッチもアクセントに

 

クルマは重量が増せば増すほど乗り心地を良くすることが可能だが、ハリアーPHEVは、バッテリー搭載によってハイブリッドに比べて約200kg増えた重量をうまく使って、すばらしい乗り心地を実現している。ほかのハリアーも快適ながら、PHEVはその一段上。思わず「えええ~っ!」と声が出るほど快適なのである。

 

しかも、加速がものすごい。エレガントな乗り心地とは裏腹に、暴力的なまでに出足がイイ。それもそのはず、2.5Lのダイナミックフォースエンジン(177ps/219Nm)と、フロント270Nm、リア121Nmのモーターを使ったシステム最高出力は、なんと306psに達する。

 

馬力もすごいが、それよりすごいのがトルクだ。乗り心地がフワフワと快適でトルク満点の走りは、かつての大排気量アメ車を彷彿とさせる。特にスポーツモードでは、アクセルレスポンスがウルトラシャープで、思わず「うおおおお!」と叫んでしまう。見晴らしのいいSUVでこの加速が炸裂すると、気分は大富豪である。

 

ハリアーには従来、2.0Lガソリンモデルと2.5Lハイブリッドモデルがあった。2.0Lガソリンは、排気量のわりに低速トルクがあり、重量級のボディをそれなりに走らせてくれるが、高速道路での加速は物足りなかった。2.5Lハイブリッドなら、全域でぐっと力強い加速を見せるが、こちらも特段速い部類ではない。

 

しかし今回追加されたハリアーPHEVは、明確に速い! V8でも積んでいるのか? と思うほど速いのである。実際、モーターのトルク特性は大排気量V8エンジンに近い。

↑2.5Lの直列4気筒DOHCエンジンを搭載。エンジンのみの最高出力は130kW(177ps)を実現しており、そこにフロントとリアのモーターが加わります

 

620万円という価格は決して安くはない。しかし従来のトップグレードだった「Z レザーパッケージE-Four」は514万円だ。プラス106万円でこの乗り心地と加速なら、高くないのではないだろうか?

外観の差別化は小さい

ハリアーPHEVの外観上の特徴は、ブラックアウトされたメッシュフロントグリルや、19インチ(タイヤサイズ:225/55R19)の大径ホイール、そしてPHEVバッヂ程度。

↑前面はメッシュフロントグリルのほかに、ワイドに広がるヘッドランプも特徴

 

今回の試乗車はボディカラーがガンメタだったため、ほかのグレードとの見分けは難しい印象だったが、ハリアーのエクステリアはもとから十分カッコいいので、差別化が小さいことに対する不満はない。内装に関しては、赤のステッチやパイピングがシートやダッシュボードまわりにアクセントとして入る。

↑外観デザインを見ると、フロントからリアに流れるようなシルエットが印象的です。なお、ボディサイズは4740×1855×1660mm

 

↑フラットなラゲージスペースは、ゴルフバッグ3個分収納できます。また、スライド式のデッキボックスを装備し、デッキボード下収納にアクセスしやすいほか、ハリアーPHEVには充電ケーブル用の収納スペースを用意

 

燃費は見劣りするが、EVモードなら近所にお出かけ可能(ただしゼイタク者に限る)

では、燃費はどうか。ハリアーハイブリッドは、WLTCモード21.6km/L(E-Four)。PHEVは車両重量が210kg重いため(1950kg)、WLTC燃費は20.5km/Lと若干落ちるが、これはPHEVのEVモード走行を無視した数値だ。

 

PHEVの駆動用バッテリーは18.1kWhの容量があり、EVでの航続可能距離は93kmある。実際にはその7掛け、つまり60km程度がEVモードの走行可能距離になり、近所のおでかけならEVモードでカバーできる。

↑充電は付属の充電ケーブルとコンセントをつなぎます。200V/16Aで充電時間は約5時間30分。ただし専用の配線工事が必要で、工事なしだと100V/6Aで充電可能。その場合は約33時間で満充電となります

 

もちろんそのためには、車庫に普通充電設備が必要。つまり、車庫付き一戸建ての住人にのみ許されたゼイタクではある。ハリアーでゼイタクを満喫したいなら、間違いなくPHEVがベストだ。

 

最後に、残念なお知らせ。ハリアーPHEVは注文の殺到と生産能力不足によって、発売前から受注停止となり、当分発注すらできそうにない。早くなんとかしてもらいたいものだ。

 

SPEC【プラグインハイブリッド E-Four・Z】●全長×全幅×全高:4740×1855×1660mm●車両重量:1950㎏●パワーユニット:2487cc直列4気筒エンジン+フロント&リアモーター●エンジン最高出力:130kW(177ps)/6000rpm●最大トルク:219Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:20.5km/L●電力使用時走行距離:93km

 

【フォトギャラリー】画像をタップすると閲覧できます。

トヨタが強い? Z世代とバブル世代で人気の車種に違いはあるのか

ジオテクノロジーズは、Z世代(18歳~27歳)、バブル世代(53歳~57歳)を対象に「今後クルマの購入を検討する際、候補となる車種は?」をテーマとしたアンケート調査を実施しました。

 

調査には、移動するだけで報酬が貯まるアプリ「トリマ」のユーザーにアンケートをとる同社のサービス「トリマリサーチ」を活用。Z世代、バブル世代の「軽自動車」「ミニバン」「SUV」ジャンル別人気車種が、今回の調査で判明しました。

 

「軽自動車」はスズキ、「ミニバン」「SUV」はトヨタの人気が高い

結果調査は以下の通りです。

 

Z世代の人気車種ランキング

 

軽自動車は、N-BOXが1位となりました。そのほかはタント・ハスラー・ジムニーといった車種が若者に人気があるようです。ミニバンは、アルファードが1位の結果になりました。注目したいのは、トヨタがTOP3を独占しているところでしょう。SUVは、ハリアーが1位。バブル世代ではランク外となったライズやラングラーもランクインし、このあたりに違いが出ています。

 

バブル世代の人気車種ランキング

 

軽自動車は、Z世代と同じくN-BOXが1位になっています。2位のタントに続き、ワゴンRが3位にランクイン。ムーブやDAYSも人気があります。ミニバンは、シエンタ・フリードなど小型ミニバンが上位に。Z世代でランク外になったオデッセイもランクインしています。また、Z世代同様、トヨタがTOP3を独占しているのもポイントでしょう。SUVは、ハリアーが1位とZ世代と同じ結果に。このほか、Z世代でランク外になったフォレスター・カローラといった歴史ある名車がランクインしています。

 

調査結果をもとにジオテクノロジーズは、Z世代の車離れが話題となる昨今、必ずしも車に興味がないとはいえない事実が見えてきたといいます。加えて、生活スタイルが変われば、あるいは経済的な状況が変われば、将来的に車を購入したい、または、こんな車に乗りたい、という車への期待がより高まるのではないかとのこと。

 

調査概要

エリア: 日本全国
対象者: トリマユーザ10代~60代
調査手法: トリマリサーチ
調査期間: 2023年1月13日~1月31日(2週間)

これぞ狙い目の1台! ピュアEVにおけるアウディの”本丸”「Q4 e-tron」をレビュー

今回の「NEW VEHICLE REPORT」はアウディのピュアEV、e-tronシリーズの最新作となる「Q4 e-tron」をピックアップ!

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

アウディらしさ満載の1台

アウディ Q4 e-tron

SPEC【Sライン】
●全長×全幅×全高:4590×1865×1615㎜●車両重量:2100㎏●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:82kWh●最高出力:204PS●最大トルク:31.6㎏-m●一充電最大航続距離(WLTCモード):594㎞

滑らかで静粛な走りはまさにアウディならでは

アウディのピュアEV、e-tronシリーズの最新作となるQ4 e-tronの発売が開始された。モデル番号の通り、そのサイズ感はSUVのQ3とQ5の中間的ボリュームで、ボディ形状は他のQシリーズにならいクーペ風のスポーツバックも選択できる。日本仕様は、全グレードがシングルモーターの2WD。Q4 e-tronはリアにモーターを搭載するので、アウディでは珍しい純粋な後輪駆動車となる。搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量は82kWhで、一充電当たりの最大航続距離は594km(WLTCモード)。最新のピュアEVらしくロングドライブも可能としている。

 

204PSを発揮する電気モーターがもたらす動力性能は、過不足のないレベル。車重が2100kgに達するとあって驚くほど速いわけではないが、低速域での力強さやアクセル操作に対するリニアな反応はピュアEVならでは。いかにも精度の高そうな滑らかなライド感と静粛性の高さはアウディのキャラクターにも合っていて、特に日常走行域の居心地はすこぶる良い。居住性はリアシートまで十分なヘッドクリアランスとレッグスペースを確保し、すべての乗員が快適に過ごすことができる。e-tronシリーズのなかでは最も身近な価格設定であることを考慮すれば、エンジン搭載の従来型Qモデルを含めても狙い目の1台となりそうだ。

 

【POINT01】荷室の使い勝手はエンジンモデルと同等

通常時でも荷室容量は520Lを確保。バッテリーは床下に搭載されるので、荷室容量はエンジンモデル比でも遜色ない広さとなる。

 

【POINT02】クーペ風ボディも選択可能

エンジンモデルのQシリーズ同様、Q4でもクーペ風のスタイリングを纏ったグレード、スポーツバックが選択可能。日本仕様が2WDモデルのみの展開なのはシリーズ共通だ。

 

【POINT03】フロント部分にそれほどのスペースはナシ

ピュアEVではフロント部分も荷室のモデルが珍しくないが、Q4 e-tronにそうしたスペースはなし。純粋なメンテナンス用となる。

 

【POINT04】アウディらしさはピュアEVでも同様

オプションでARヘッドアップディスプレイも選択できるインテリアは、アウディらしい精緻さと随所にピュアEVらしさを感じさせる仕立て。室内空間はサイズ相応の広さを誇る。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

本格派スポーツカーとして申し分ナシ! 新しいのに懐かしい「フェアレディZ」をレビュー

今回の「NEW VEHICLE REPORT」は日本を代表するリアルスポーツモデル、日産・フェアレディZの新型をピックアップ!

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

歴史を受け継いだ新旧ファン納得の1台

日産 フェアレディZ クーペ

SPEC【バージョンST(6MT)】

●全長×全幅×全高:4380×1845×1315㎜●車両重量:1590㎏●総排気量:2997㏄●パワーユニット:V型6気筒DOHC+ツインターボ●最高出力:405PS/6400rpm●最大トルク:48.4㎏-m/1600〜5600rpm●WLTCモード燃費:9.5㎞/L

 

3Lターボの魅力はパワーだけじゃない!

日本を代表するスポーツカー銘柄のひとつでもあるフェアレディZが新型へとスイッチ。ご覧の通り、その外観デザインは随所に歴代モデルを彷彿とさせる造形を採用。昭和世代には、懐かしさも感じさせる見た目に生まれ変わった。

 

そんなテイストは室内に目を向けても変わらない。もちろんインターフェイスは現代的にアップデートされているが、往年のZを知る人なら思わずニンマリとさせられる仕上がり。また、2 人乗りのスポーツカーとしては上々と言える室内の使い勝手も歴代モデルからしっかりと受け継がれている。

 

エンジンは400ps超えとなる3Lツインターボで、9速ATに加え6速МTが選べる点も特徴だが、当然ながら動力性能は本格派スポーツカーとして申し分ない。またこのエンジンは積極的に回す楽しさが見出せるのも魅力のひとつで、腕に覚えのある人へのアピールも十分。その出来栄えを思うと、生産事情の影響で受注が止まっていることが何とも恨めしい。

 

【POINT01】プリミティブな走りの楽しさを実感

コンパクトなボディとハイチューンな3ℓターボの組み合わせとあって、絶対的な動力性能は申し分ない。また、ただ速いだけではなく積極的に操る楽しさも見出せる。

 

【POINT02】新しい一方で懐かしい仕上がり

室内は最新モデルに相応しい作りだが、随所に往年のZに通じる造形も見られ古典的な風情も漂わせる。2人乗りのスポーツカーとしては使い勝手も納得の出来だ。

 

【POINT03】スペックはクラス最強レベル

エンジンは先にスカイラインにも搭載され話題を呼んだ400PS超えの3L V6ツインターボ。6速MTと9速ATが選択できる。

 

【POINT04】レイズ製の鍛造ホイールも採用

中・上位グレードには日本の代表的ホイールメーカー、レイズ製の鍛造19インチホイールが標準で装備される。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

クルマの神は細部に宿る。【LEXUS IS編】中高年カーマニアにとって、これ以上のクルマはない!?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回はレクサスのスポーツセダン「IS」に追加された新グレード、IS500をピックアップ! 永福ランプが惚れた理由は?

※こちらは「GetNavi」 2023年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

LEXUS IS

SPEC【IS500“Fスポーツパフォーマンス ファーストエディション”】
●全長×全幅×全高:4760×1840×1435㎜●車両重量:1720㎏●パワーユニット:4968㏄V型8気筒エンジン●最高出力:481PS(354kW)/7100rpm●最大トルク:535Nm/4800rpm●WLTCモード燃費:9.0㎞/L

481万円〜850万円

 

中高年カーマニアにとって、これ以上のクルマはない!?

安ド「殿! 今回は殿の強い要望にお応えして、レクサスのIS500を取り上げます!」

永福「うむ。激しいまでの要望、いや欲望であった」

安ド「いまどき5.0L V8エンジンを積んだセダンなんて、ほかにないですよね!」

永福「そもそも、大排気量マルチシリンダー自然吸気エンジンそのものが絶滅寸前だ。メルセデスやBMWなどの欧州勢は、すべてターボ化しているので、地球上に残っているのは、コルベットやカマロなどのアメリカンV8と、トヨタの5.0L V8だけと言っていい。豪快かつ繊細なエンジンフィールは、まさに世界遺産級だ!」

安ド「同感です! 首都高に乗ってアクセルをベタ踏みしたら、強烈な加速で意識が遠のきました! 排気音の音量も上がり快音が聞こえてきて、なんというか、脳内でドバーッと汁が出た感じで、超気持ち良かったです!」

永福「うむ。これほど気持ち良いのは、自然吸気だからだ」

安ド「なぜドイツ勢は、みんなターボ化したんですか?」

永福「ターボのほうがパワーアップしやすいし、エンジンも軽量化できて、燃費を多少改善できるから……ということだろう。確かにIS500の最高出力は481馬力。対するBMW M3は550馬力だ」

安ド「それほど違わないじゃないですか!」

永福「たしかにそれほど違わない。カタログ燃費だってほとんど変わらない。実は今回IS500で燃費アタックをしてみたのだが、なんと14・5㎞/Lも走ったぞ」

安ド「ええっ! 僕のパジェロの2倍じゃないですか!」

永福「普通に走ったらリッター7〜8㎞だが、可変バルブタイミング機構により低速域でもトルクがあるから、ゆっくり巡航すれば驚くほど低燃費だ。トヨタの内燃エンジン技術はスゴイな」

安ド「こんなにパワフルなのに、その気になれば低燃費でも走れるなんて、本当にスゴイですね!」

永福「コーナリングも最高だ。フロントにはデカいV8エンジンを積んでいるから、曲がりずらいかと思ったら真逆で、常に前輪に重みがかかっているから、面白いように曲がる」

安ド「コーナーでは路面に張り付くように走れますね!」

永福「アクセルを踏めば無敵、ハンドルを切っても無敵。乗り心地も驚くほど良いし、ATだから渋滞でもラクチン。中高年カーマニアにとって、これ以上のクルマはないと断言できる」

安ド「ひょっとして、買うおつもりですか?」

永福「うむ。売ってくれればな」

安ド「えっ、これもやっぱり買えないクルマなんですか!!」

永福「最初の500台は競争率12倍で抽選になった。私も次の抽選に参加したいと思っているが、果たして抽選に混ぜてもらえるかどうか……」

 

【GOD PARTS 神】5.0L V8エンジン

名車の条件を満たすラインナップ数!

IS350は3.5L V6エンジン、IS300hは2.5L直4エンジン+モーターのハイブリッド、IS300は2.0L直4ターボエンジン、そしてこのIS500には、最もパワフルな5.0L V8エンジンが搭載されています。BMW3シリーズしかり、たくさんのエンジンがラインナップされていることは名車の条件ですね。

 

【GOD PARTS 01】ボンネット

気付く人は少ない!?フード上の細かな違い

スタンダードなISとはボンネットフードの形状が異なっています。通常は八の字のラインがある部分に縦のラインを2本走らせていて、スポーティさが強調されています。外観の変更がほぼないこのグレードにとって、数少ない特別な部分です。

 

【GOD PARTS 02】アルミホイール&ブレーキ

イケイケの専用ホイールと映えるブラック塗装

今回取材のために借りた500台限定の特別仕様車「ファーストエディション」には、細くて、しかし頑丈そうな専用19インチアルミホイールが採用されています。また、ブレーキキャリパーがブラック塗装されているのはIS500だけの特徴です。

 

【GOD PARTS 03】リアスポイラー

存在感は希薄だが計算されたサイズと形状

トランクの先端にちょこんと乗せただけのような薄くて小さなスポイラーが付いています。空気力学を研究し尽くして設計されたシロモノなのでしょう。スポーツセダンとしてはこれくらいがベストサイズなのかもしれません。

 

【GOD PARTS 04】リアパフォーマンスダンパー

足まわりだけでなくボディ全体の振動を吸収

IS500では「パフォーマンスダンパー」がフロントに加えてリアにも搭載されています。前後バンパー付近の左右にまたがる形で装着され、走行中、繰り返し発生している車体の変形や振動を抑えて、上質な乗り心地と操作性を実現します!

 

【GOD PARTS 05】フロントグリル

トヨタのヒストリーを感じさせる形状

クルマの印象を決定づけるグリルは、レクサスの特徴でもある「スピンドル」形状が採用されています。スピンドルとは紡績機の糸を巻き取る軸のことで、トヨタが自動織機業から身を起こしたことに通じていて、歴史のロマンが感じられます。

 

【GOD PARTS 06】ドアミラー

ブラック塗装が左右を引き締めスポーティな印象に

本来はボディ同色のドアミラーですが、この特別仕様車「ファーストエディション」では、特別にブラック塗装が施されています。よく愛車のボンネットなどを黒く塗装する人もいますが、これによってスポーティな雰囲気が増します。

 

【GOD PARTS 06】Fスポーツパフォーマンス専用エンブレム

よく見ると色が異なる小さな部分に見つける喜び

フロントフェンダーに装着されたこのエンブレムは、IS500の「Fスポーツパフォーマンス」にのみの装備で、IS350の「Fスポーツ」のそれとはカラーが異なっています。非常に小さな差異ですが、オーナーにとっては誇って良い部分かもしれません。

 

【GOD PARTS 07】4連エキゾーストマフラー

後方から見た人に強烈な印象を与える4本出し!

ボディ後方から見ると、吹き出し口が4本もあって強烈な印象です。これだけで後方を走っているクルマはビビります(笑)。また、ISには「ロアガーニッシュ」と呼ばれるディフューザーが付いていて、車体の下を通る空気を整えます。

 

【GOD PARTS 08】スエード&木目素材

特別仕様車だけに許された特別な質感と肌ざわり

やはり特別仕様車「ファーストエディション」のみの装着となってしまいますが、インテリアにはウルトラスエードと呼ばれる、肌触りが良くて滑りにくい素材があちこちに使われています。ステアリングのアッシュ木目も良い感じです。

全社用車をEVに切り替え! 大和リビングの次世代を見据えた取り組みの実態

世界的に推進されるカーボンニュートラルなどの観点から、日本政府は2035年以降、新車販売を電動車のみとする方針を示しています。そこで企業として一早く動いたのが、賃貸住宅「D-ROOM」の管理運営を手がける大和ハウスグループの大和リビング。すでに全国で70台ものEVを社用車として稼働させている同社に、これからの未来を見据えた取り組みについて聞きました。

 

2026年までに、約350台すべての社用車をEVにする

 

大和リビングは、大和ハウスが建設した全国約63万戸の賃貸住宅「D-ROOM」の管理会社。入居募集から家賃の回収・管理まで、主に物件オーナーの経営をきめ細かくサポートしています。事業所は全国に138箇所(2023年4月時点)あり、同社はそこで使用する約350台の社用車を、2026年までにすべてEVへと切り替える、と宣言。早くも、一部の営業所で切り替えが実現しています。

 

グループ内でも先陣を切って社用車のEV化に踏み切った背景について、同社・事業本部エネルギー事業推進部次長の柴田孝史さんに聞きました。

 

「大和ハウスグループでは、環境長期ビジョン『Challenge ZERO 2055』に基づき、創業100周年を迎える2055年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。その中期的な行動計画となる『エンドレスグリーンプログラム2026』を推進するなかで、各事業所が使用している電力、社用車のガソリンといったエネルギー消費をいかに削減するかという課題がありました。このうち電力は、2023年度中に大和ハウスグループの再エネ発電所由来の再生可能エネルギーによる『RE100』を達成する見込みです。

一方の社用車は、2026年度までに約350台のリース車をすべてEV化していく目標を掲げています。今回はその初年度の目標として、『RE100』達成済みの事業所から36箇所を選出し、2022年度(2023年3月)中に、70台の社用車を再エネで充電できるEVへと切り替えました」(柴田さん)

 

↑大和リビングの社用車として採用された「SAKURA」

 

約350台のうち、2割にあたる70台をEVに切り替える初年度計画が具体化したのは、2022年6月。それは今回導入された日産のBEV(バッテリー式電気自動車)「SAKURA」の発売と同時期であり、まさに急ピッチでの導入でした。

 

「まずは走り出すことを優先した結果。賃貸住宅の管理業務を行う弊社では、他のグループ会社と比べても多くの車両を使用します。我々が率先してEV導入に踏み切ることに意義があると考え、初年度目標の達成に重点を置きました」(柴田さん)

 

グリーンをキーカラーに使用したグラフィカルなラッピングが目を引く「SAKURA」。取引先や街中でも人々の関心を惹きつけているそう。

 

「各営業所で顧客対応に使用する社用車は、従来から狭い住宅地で走りやすい軽自動車を使用してきました。その使用感や利便性を損なわず、なおかつ年度内に70台という目標を達成できる車種が、日産の『SAKURA』でした」(柴田さん)

 

↑ボディには「We Build ECO」といったグループ挙げてのメッセージなどが描かれています

 

「もちろん、今後は車種の選択肢も増えていくと思います。そもそも、350台の社用車は業務に使用される車両のほんの一部に過ぎません。このほか社員が業務に使用している約1250台の自家用車についても、今後EVに切り替えていくことを見据えて、社内のマイカー手当等の制度を整えていく予定です」(柴田さん)

 

↑大和リビング株式会社 エネルギー事業推進部 次長 柴田孝史さん。大和リビングが推進する『エンドレスグリーンプログラム2026』の達成を目指し、今回の社用車EV化を主導

 

充電スタンド設置へのハードルは営業所によってさまざま

 

今回、取材班が訪れたのは、東京・足立区にある大和リビング足立営業所。敷地内の駐車場には6つの充電スタンドが備えられ、「SAKURA」が6台停まります。同営業所所長の森永友章さんによると、営業所でのEV導入においては、この充電スタンドをいかにスムーズに設置できるかが大きなポイントになったのだとか。

 

「今回選ばれた36の拠点は、大和リビングが管理している賃貸物件に我々がテナントとして入っている営業所のみになります。つまり、建物のオーナー様との信頼関係がすでにできていることが前提条件でした。特に足立営業所は1階にあり、建物前面の駐車場はすべて弊社で借りているため、オーナー様にも説明をしやすい環境が整っていたといえます」(森永さん)

 

↑大和リビング足立営業所所長の森永友章さん。足立営業所では、初年度における最多となる社用車6台をEV化。エネルギー事業推進部へのフィードバックも担っています

 

賃貸物件のオーナーから理解を得るために、具体的にどんなハードルがあるのでしょうか?

 

「主に施工の段取り的な部分ですね。EVの充電スタンドに使用する電気は、建物の中から分岐させて供給するか、それとも目の前の電線から直接引き込んで使用するかの2択なんです。やはり今後の拡張性などを考えると後者になりますが、電線を充電スタンドまで引き込むには、舗装されたアスファルトを剥がすといった工事が必要になります。また、駐車スペースのうちどの部分に導入するかは、各駐車場の状況によってオーナー様の考えもまったく違いますし、その後の運用を含めて検討していく必要があります」(柴田さん)

 

「EVが普及していない今の段階で、オーナー様が設備の劣化や今後の管理について不安を抱かれるのは当然のことだと思います。そういった現状も踏まえ、こちらで想定しうる限りのアンサーをご用意して対話に臨みました。なおかつ今回は、導入にあたっての施工費もすべて大和リビングが負担しています」(森永さん)

 

「自社負担に関しては、コストより導入までの時間を最優先したかった事情もあります。EV導入に対しては手厚い助成金も使えますが、今回はこちらが施工したいタイミングと、都の許認可が降りるタイミングを一致させることが制度上、難しかったんです。ですから、70台という初年度の目標達成を重視する一方で、肝心の充電器にかかるコストはできるだけ最小化する必要がありました」(柴田さん)

 

DIYで大幅なコスト減!? 足立営業所独自の充電スタンド

 

「日々の業務で使用する社用車ですから、駐車場への充電スタンド設置は必須でした」(柴田さん)

 

EVの充電設備にはいくつかの種類がありますが、共用に多く導入されているのが、駐車スペースに設置した充電器側に制御回路を内蔵し、大きな充電ケーブルが備え付けられている『モード3』タイプ。ところが、足立営業所の充電スタンドには充電ケーブルが見当たらず、非常にシンプルな見た目をしていました。

 

EV用充電設備の種類

モード1……コンセント型の普通充電器を用い、車載ケーブルで充電を行って電力供給を行う。普通充電器は家庭用電源を使うため、導入時のハードルが低いのがメリット。

モード2……コンセント型の普通充電器を用い、車載ケーブルで充電を行う。ケーブル間に設置されたコントロールボックスで制御を行いながら電力を供給する。

モード3……充電ケーブル付きの普通充電器から充電。充電器に制御回路を搭載し、充電制御を行う。

モード4……高圧の直流電源を用いた急速充電器で充電。短時間で充電できるのがメリットだが、導入コストは高い。

 

「一般によく用いられる『モード3』のタイプは、スタンドとコントローラーだけで数十万円。これに電線引き込み工事費をプラスすると、1営業所で数百万レベルのコストがかかってきます。そのようなタイプを導入した営業所もありますが、足立営業所が今回導入したのは『モード2』タイプの3kWの充電コンセントでした。駐車スペースに設置するスタンドにはコンセントのみがあり、取り外し可能な充電ケーブルの方に制御回路が内蔵されています。汎用品のポールに、パナソニック製のコンセントが入った既成のBOXを取り付けたいわば『DIY充電器』。『モード3』に比べるとかなり割安で設置できました」(柴田さん)

 

このDIY充電器の制作は、『D-ROOM』のインターネット設備工事を手掛けているグループ会社『D.U-NET』が手がけたのだそう。

 

「そもそも『モード3』の充電器は、たった1台の社用車のために設置するにはオーバースペックなのではないかという見方もあります。充電ケーブルが据え置きなので、かえって管理しにくい側面もあるかもしれません。一方の『モード2』なら充電ケーブルは車に置いておけますし、作りがシンプルなので、今後6kWの普通充電へのアップデートも容易だと考えています」(柴田さん)

 

運用のカギは安定した夜間充電。創意工夫から見つけたベストな形

 

コスト削減のための創意工夫が、結果的に利便性へとつながった形。一方で、肝心のEVの乗り心地や使い勝手はどうなのか、誰もが気になるところです。

 

「社用車は車両ごとに使用者を決めており、今のところ運用に問題はありません。実は、ガソリン車の軽よりも今の『SAKURA』の方が乗りやすいという声が圧倒的に多いんです。最新のクルマなので標準装備でも従来の軽自動車よりハイスペックですし、EVならではの安全装置も充実しています。弊社では公共交通機関で出勤する若い世代の社員が社用車を使用するケースが多いのですが、若い世代ほどEVの乗り味をスムーズに受け入れられているのかもしれませんね。足立営業所の場合、1日の走行距離は30km程度。航続距離はカタログで180kmとありますが、エアコンをフルで使用していると、安心して走れるのは100kmくらいかなという体感です」(森永さん)

 

↑ “日本の美を感じさせるデザイン” がコンセプトのひとつとなっているSAKURA。良い意味で社用車らしからぬ遊び心も盛り込まれています

 

導入は2023年の2月から。電力消費が多い暖房を特に多用する時期だったこともあり、バッテリーの持ちを不安視する声もあったそう。

 

「EVはとにかく充電に時間がかかります。そこで、夜間充電をどうするかは当初の大きな課題でした。夜間充電をしておかないと営業に間に合わないので許可自体は出していましたが、『モード2』の場合、充電ケーブルが取り外し可能なので簡単に抜けてしまうんですね。いたずらでケーブルそのものが盗まれたりする懸念もありました」(森永さん)

 

「街の急速充電スタンドで使えるEモビリティカードも支給していますが、急速充電とはいえ30分はかかります。業務に影響を与えないためにも、夜間の基礎充電は非常に大事。そこで、独自の鍵を設置するなど安心して夜間充電をしてもらうための対策も進めています」(柴田さん)

 

EVの草創期だからこそ、導入の形に正解はなく、さまざまな試行錯誤をすることにこそ価値がある。それが大和リビングの考え方。

 

「今回の取り組みから得た知見は、やはり大きかったです。設備にしても高機能なものをつければいいというわけではないですし、どんな形がベストかはケース・バイ・ケース。それがEVを導入していく難しさでもあり、同時に可能性でもあると思っています。今後はEVのカーシェアなども増えていくでしょうし、弊社が手がける賃貸住宅『D-ROOM』にも、そういったサービスと連携することで新たな付加価値が生まれていくはずです。いずれにしても、大和リビングはこれからもEVに対して前向きな取り組みを継続していきます」(柴田さん)

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

「らしくないけれど…ありがたい」アルファロメオ「トナーレ」、ファンが抱える複雑な心情

イタリアの伊達なブランド、アルファロメオはいつの時代もカーマニアを唸らせてきた。その一番の魅力は美麗なスタイリングとスポーティな走行性能にあったが、ブランドの新体制における第一弾製品は、小型のSUV。近年、最も流行りのボディタイプで、アルファロメオはいったいどのような味わいを持たせることができたのか。イタリア車に精通する清水草一がレポートする。

 

■今回紹介するクルマ

アルファロメオ トナーレ

※試乗グレード:Ti

価格:524万~589万円(税込)

 

販売立て直しが必須のなかで登場した、アルファロメオのSUV

アルファロメオはイタリアの名門。エンブレムを見ただけで「なんかステキ!」と思ってしまうブランドで、私もこれまで2台購入している。

 

ただ、今世紀に入ってからは不振が続いている。アルファロメオと言えば「オシャレなデザインと痛快な走り」というイメージだが、経営戦略の迷走により、あまりオシャレでも痛快でもなくなってしまったからだ。

 

アルファロメオはもともとフィアットグループの一員。フィアットはクライスラーと合併し、近年、プジョー/シトロエンとも合併して、多国籍自動車製造会社ステランティスとなった。ステランティスグループのいちブランドとして、アルファロメオはどのような立ち位置を目指すのか、まだはっきりしていないが、とにかく販売を立て直さなければならない。

 

トナーレはセダンタイプ「ジュリエッタ」の後継モデルだが、欧州で最も売れ筋のコンパクトSUVセグメントにボディタイプを変更した。もはやSUVじゃなければ販売の拡大は見込めないのだ。痛快な走りを身上とするアルファロメオとしては、それだけで若干ハンデだが、仕上がりはどうだろう。

 

典型的なクロスオーバーSUVだが、随所に感じられるデザイン性

まずデザインを見てみよう。フォルムは典型的なクロスオーバーSUVで、いまやどこにでもありそうな形だ。アルファらしいデザインのキレが感じられない。決して悪くはないが、あまりにもフツーと言うしかない。さすがにフロントフェイスの盾形グリルだけはアルファロメオの伝統に則っており、一目でアルファロメオだと判別できるが、それを除けば、アルファロメオらしさはあまり感じられない。

↑SUVとしては一般的なデザインながら、鮮やかな青のカラーリングは目を引きます。なお、ボディカラーはTiグレードで3色(VELOCEは5色)を用意

 

ただ、細かく見れば、アルファロメオらしさはちりばめられている。3連ヘッドライト風のシグネチャーライトは、かつてのアルファロメオSZを彷彿とさせ、5つの円を組み合わせたホイールデザインも、アルファロメオ伝統の造形だ。

↑3連のU字型デイタイムランニングライト。アルファロメオの新たなシグネチャーになっているとのこと

 

↑今回試乗した「217 アルファ ホワイト」カラーモデル。ボディサイズは全長4530×全幅1835×全高1600mmです

 

しかしこういう小技だけでなく、全体のフォルムで「ひええ! オシャレすぎる!」くらい言わせないと、アルファロメオとは言えないのではないか。トナーレのデザインは、あまりにも定番すぎて、ほかのSUVに埋没してしまいそうだ。

 

1.5L 4気筒直噴ターボに48V駆動モーター、さらにBSGも搭載

パワートレインは、新開発の1.5L 4気筒直噴ターボに48V駆動のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドで、7速DCTで前輪を駆動する。トナーレは、「ステルヴィオ」に続くアルファロメオのSUV第2弾にして、初の電動化モデルなのである。

 

電動化と言っても流行りのバッテリーEVではなく、ガソリンエンジン主体のマイルドハイブリッドという点はアルファロメオらしいが、ハイブリッド王国・日本のユーザーとしては、「いまさらマイルドハイブリッドで電動化もないだろう」と感じてしまったりする。

 

試乗したのは、エントリーモデルのTi。「Ti」とは「ツーリズモ・インテルナチオナーレ」の略だ。国境を越えて走るってこと。島国の日本ではムリだけど。

 

新開発の1.5L 4気筒ターボエンジンは、エンジン単体では160PS/5750rpmと240Nm/1700rpmを発生させ、そこに20‌PS/55‌Nmを生み出すモーターが加勢する。さらに12Vのベルト駆動スターター・ジェネレーター(BSG)も搭載されている。一般的なマイルドハイブリッドシステムはBSGだけだが、トナーレの場合は20km/hぐらいまでの低速なら、電動モーターだけで走ることもできる。つまり、マイルドハイブリッドでも、ちょっと進んだヤツではある。

↑計器盤には12.3インチの大型デジタルクラスターメーターを採用

 

アルファロメオらしくないが、アクセルを踏んだときのレスポンスがステキ

1.5L4気筒エンジンのもうひとつの大きな特徴は、ターボに可変ジオメトリータービン(VGT)を採用していることだ。タービンの排気流路を変化させ、低速側のトルクとレスポンス、および高速側の出力を両立させるメカで、ガソリンターボエンジンではかなりゼイタクである。

 

低速域では、DCTが多少ガクガクするくらいで、走りはまったく平凡かつ安楽だが、首都高に乗り入れてクルマの流れに乗ると、トナーレは水を得た魚のように躍動をはじめた。

 

「どうせマイルドハイブリッドだろ」とナメていたが、ハーフスロットルでの反応が実にすばらしい。反面、アルファロメオらしいエンジンを回す快感はまったくない。レッドゾーンはなんと5500rpmという低いところから始まっていて、「こんなのアルファロメオじゃない!」という思いも沸く。

 

しかし実際の走行では、アクセルを踏めば車体は即座にググッと前に出て、実にレスポンスがいい。アクセルを全開にしても大した加速はしないが、日常的に使う領域では非常に俊敏で速く感じる。

↑低回転時からトルクが駆動し、高回転までスムーズに伸びていくため、爽快な加速を実現しているそうです

 

ハンドリングは実に素晴らしい

パワーユニットが縁の下の力持ち的なのに対して、ハンドリングは手放しでほめられる。とにかくタイヤの接地感がすばらしく高い。アルファロメオと言えば、いつテールがすっ飛ぶかわからない、頼りない操縦性が“味わい”だったが、トナーレのハンドリングは頼りがい満点。自信満々にコーナーに入ることができる。

↑コックピットは黒を基調としたデザイン。触感にもこだわり、上質な素材を採用しています。また、中央には10.25インチのタッチ対応インストルメントパネルを搭載

 

ステアリングは適度にクイックでアルファロメオらしいが、サスペンションは当たりが優しくしなやかで、首都高のジョイントを超えてもショックは最小限。カーブを曲がるのが実に気持ちイイ。ロングドライブでも疲れ知らずで走ることができそうだ。

↑優れた前後重量のバランスを利用して、トルクへの伝達とコーナーにおけるハンドリングの最適化を実現しているそうです

 

価格は524万円(Tiモデル)。美点は主にハンドリングなので、かなり割高に感じてしまう。国産SUVなら、トヨタ「ハリアーハイブリッドS」が371万8000円〜で買える……。

 

しかしトナーレは、欧州ではそれなりに売れて、アルファロメオブランドを守ってくれるだろう。アルファロメオファンとしては、それだけでありがたいという思いが沸いた。

 

SPEC【Ti】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630㎏●パワーユニット:1468cc直列4気筒ターボエンジン+モーター●エンジン最高出力:160PS/5750rpm[モーター:20PS/6000rpm]●エンジン最大トルク:240Nm/1700rpm[モーター:55Nm/200rpm]●WLTCモード燃費:16.7㎞/L

 

撮影/清水草一

質実剛健がウリだったけど大丈夫? 3代目「ルノー カングー」乗って試す

フランスのルノー「カングー」と言えば、質実剛健な造りが日本でも人気を呼び、多くのファンを生み出したクルマです。そのカングーが2020年11月に3代目としてフルモデルチェンジを果たし、それから3年を経て日本での販売をスタート。サイズアップして乗用車としての乗り心地や使い勝手を高めた新型カングーをご紹介します。

 

■今回紹介するクルマ

ルノー/カングー

※試乗グレード:インテンス(ガソリンモデル)

価格:384万円〜424万5000円(税込)

↑1.3Lガソリンターボエンジンを搭載した「インテンス」。より乗用車ライクな外観を特徴とする

 

人気の秘密は質実剛健なコンセプト。3代目で「豪華になった」のは大丈夫?

カングーは高い実用性を持つ“乗用車”として、日本でも人気を集めているフランス車。わざわざ乗用車を“”で囲ったのには理由があって、もともとカングーは商用車として登場しているクルマだったからです。

 

カングーが誕生したのは1997年のことです。商用車らしく背を高くして十分なカーゴスペースを確保しながら、直進安定性やハンドリングなどが乗用車並みに優れていると高い評価を獲得。加えて当時の商用車としては数少ないABSや4つのエアバッグを標準搭載するなど、高い安全性も確保したことで、日本だけでなく世界中で人気モデルとなりました。

 

日本で初代が発売されたのは2002年。最初はバックドアを跳ね上げ式のみとしていましたが、翌年に実施されたマイナーチェンジを機に観音開き式のダブルバックドアが選択可能となりました。以降、カングーは使い勝手の良さから一躍人気モデルとなったのです。

 

そのカングーが今回のモデルチェンジで3代目となり、より大きく豪華なクルマへと進化を遂げました。ただ、“豪華になった”と聞けば、質実剛健さがウリだったカングーにとって果たして良いことなのか? そんな心配をする声も当然出てくるでしょう。ですが、その心配は基本無用と私は感じました。むしろ、走行中の安全性や使い勝手が進化したことで、実用車としての能力が一段と高められたのではないかと思ったのです。

 

全長が210mm長くなり、スタイリングにも余裕が生まれた

今回試乗したカングーは、カラードバンパーを採用し、より乗用車らしさを追求したグレード「インテンス」です。外観は、フロントグリルが従来のカングーとは大きく違ったデザインになり、以前よりも一段とルノーっぽさを感じさせます。ボディは前モデルに比べて全長が210mm長くなり、それによりAピラーを大きく傾斜させています。室内空間を狭めることなく伸びやかさを感じるデザインです。

 

一方でキャビンから後ろ方向を見ると、サイドのグラスエリアを細めにして、相対的にルーフ部分の厚みが増しています。これは商用車として荷物の積載に配慮したものですが、ここに本来のカングーっぽさを感じ取ることができます。

↑ガラスエリアを狭めたことから商用車としての基本構造が伝わってくるが、乗用車としても十分納得がいくデザインだ

 

さらに、3代目のラインナップには、フロントとリアがブラックバンパーになっている「クレアティフ」も用意されました。ホイールをセンターキャップのみともしており、よりカングーらしい質実剛健さを求めたいユーザーには格好のグレードと言えるでしょう。

↑ブラックバンパーやホイールが特徴的なグレード「クレアティフ」

 

全長が210mm伸びたことで、実感できたのが室内空間の広さです。特に「広いなぁ」と感じるのが後席で、一人ずつ専用シートが割り当てられている3座独立タイプとなっており、身長168cmの筆者が座っても十分なゆとりを感じます。フロアもフラットであるため、ゆったりと座ることができました。

↑シートサイズもたっぷりとしたサイズで、乗用車としての質感も申し分ないレベルに仕上がっていた

 

↑リアシートは3人分を専用シートで区切ってあるうえに、足元が広いために大人3人がゆったりと座れる

 

ただ、リアスライドドアは左右ともに完全な手動式で、国産なら今どき軽自動車でも電動化を実現していることを踏まえると残念に思うかもしれません。しかし、これがカングーだと思えば許せちゃうところが不思議です。

 

運転席に座って、変わりように驚いたのがインパネのデザインです。ダッシュボードは水平基調でデザインされ、中央にはフローティングされた8インチのディスプレイを配置。その下にはクロームで縁取られた空調用ダイヤルをはじめ、シフトレバーと電動パーキングブレーキがすっきりとまとめられています。

 

【運転席まわりのフォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

商用で使うならパーキングブレーキは引き上げるタイプの機械式が良かったのではないかと思いますが、時代の流れなのでしょう。もちろん、乗用として使うならより使いやすいと感じるはずです。

 

ダッシュボード中央の「8インチ・マルチメディア EASY LINK」は、カーナビこそ装備されていませんが、スマートフォンを接続することで、iPhoneならCarPlayで、AndroidならAndroid Autoによってさまざまなアプリが使えます。なので、iPhoneならGoogle マップやYahoo!カーナビが使え、AndroidならGoogle マップがメインとなるでしょうか。

↑カーナビは搭載していないため、スマホにインストールしてあるカーナビアプリを使うことになる。写真はアップルのCarPlay

カングーならではの圧倒的な収納力と使い勝手の良さ

そして、カングーならではの真骨頂が優れた収納力です。ダッシュボードのアッパーには開閉式の収納ボックスが用意され、ここにはUSB端子2基とシガーライターソケットを装備。また、おなじみのオーバーヘッドコンソールも引き継がれ、その手前には巨大なアシストグリップが装備されました。これまで親しまれてきたチャイルドミラーはくるりと回転すると現れるようになり、これまた使いやすさを高めています。

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

一方で、後席用のオーバーヘッドコンソールはなくなり、代わりに前席背後に使い勝手が良い折り畳み式テーブルが装備されました。

↑前席シート背後には新たに折りたたみ式テーブルが備えられた。後席に座った人には重宝する装備だ

 

ラゲッジスペースは当然の広さ。その容量は5名乗車時でも先代モデル比で115Lプラスとなる775Lを実現。後席は6:4分割で折りたたむことができ、すべてをたためば先代モデル比で132Lプラスの2800Lにもなります。しかもフロアは出っ張りがほとんどないフルフラット状態。フロアの地上高も低いために、重い荷物でも楽に積み込めそうです。

 

さらに、カングーの美点でもある観音開きのダブルバックドア。左右のドアは右が小さく、左が大きく左右非対称となっており、片方ずつ開いて荷物の出し入れができるのです。ドアの開閉は90度まで開き、必要ならロックを外すことで180度のフルオープンにすることもできます。状況に応じてさまざまなスタイルでドアの開閉ができるのは、いざというときに役立つでしょう。

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

エンジンは2モデル用意。ガソリンモデルは走りが軽やかで、乗り心地も◎

最後に、新型カングーの走りを検証したいと思います。エンジンは従来の1.2リッターから1.3リッターへ排気量アップしたガソリンターボを搭載しています。インテンスではほかに1.5リッターのディーゼルターボも選択可能。トランスミッションはどちらも湿式7速となったデュアルクラッチを備えるEDC(エフィシエントデュアルクラッチ)を採用。従来の乾式6速より機能面も耐久性も大幅にアップしたということです。

↑1.3L直4・ガソリンターボエンジンは最高出力96kW(131ps)/5000rpmを発揮する

 

ガソリンである試乗車は、想像以上に軽やかに発進し、そのまま滑らかに加速。ボディが大きくなったことなど、まるで感じさせない余裕を体感できます。高速域に入っても力不足を感じることはなく、安定した走りっぷりです。これなら定員乗車してたっぷり荷物を積んでも不満は感じないでしょう。

↑試乗したのはガソリン車。軽やかに発進し、そのまま滑らかに加速していく様はスムーズそのものだった

 

なかでも感心したのが市街地での走行フィールで、加減速が滑らかであるためにギクシャクする様子などまったく見せません。コーナリング中のロールもしっかりと抑えられており、これなら同乗者にも歓迎されるでしょう。

 

乗り心地も大幅に向上しました。これまでは道路の継ぎ目などをしっかり拾っていたものですが、新型ではそれを上手にいなしてくれ、高速走行時の安定した走りとも相まって格段に乗り心地がレベルアップしたことを実感させてくれます。静粛性も十分に高く、全ガラスの厚みを増したこともあり、同乗者の音声も1割ほど聞きやすくなったということです。そのためか、運転中は生い立ちが商用車であることなどすっかり忘れてしまうほど快適に走ることができました。

↑道路の継ぎ目も上手にいなすことで乗り心地は大幅に向上した。写真は.3Lガソリンターボエンジンを搭載したインテンス

 

素晴らしい仕上がりを見せた、ACCなどの先進安全装備

また、さまざまな先進安全装備の搭載も見逃せないポイントです。

 

アダプティブクルーズコントロール(ACC)とレーンセンタリングアシストを組み合わせることで、ステアリングに手を添えているだけで高速道路のコーナーを曲がっていってくれます。渋滞で停止しても電動パーキングブレーキが停止を自動的にホールド。再発進はクルコンのスイッチを押すか、アクセルを軽く踏むだけで設定はすぐに復帰されます。この一連の使いやすさはカングー初の装備とは思えない素晴らしい仕上がりでした。

↑多彩な運転アシストによりロングドライブをしっかりサポート。ACC制御も自然で違和感を覚えることはほとんどなかった

 

↑新たに搭載されたブラインドスポットモニター。隣接する車線に車両がいるとミラーでその存在を知らせてくれる

 

今回はディーゼル車の試乗は間に合いませんでしたが、低速域の力強さはガソリン車を上回るものがあると聞いています。ディーゼルということでノイズこそ高まる可能性はありますが、長距離を走ることが多い人ならこちらの選択を考えても良いのではないでしょうか。

 

とはいえ、前述したようにガソリン車でも走りで不満は感じません。新型は今までのカングーに愛着がある人も、乗用車的な使い方をしたかった人にとっても満足度が高い選択となることを実感した次第です。

 

SPEC【ルノー カングー インテンス(ガソリン)】●全長×全幅×全高:4490×1860×1810mm●車両重量:1560㎏●パワーユニット:1333Lターボチャージャー付き筒内直接噴射 直列4気筒 DOHC16バルブ●最高出力:131PS/5000rpm●最大トルク:240Nm/1600rpm●WLTCモード燃費:15.3km/L

 

撮影/松川 忍

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

最近減ったディーゼルエンジン車は買い? プジョー「308」をちょい辛で評価

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回はプジョーのミドルサイズコンパクトカー、308を取り上げる。先代よりシャープになったデザインの評価は?

※こちらは「GetNavi」 2023年3.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】プジョー/308

SPEC(GT BlueHDi)●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1498cc直列4気筒ターボディーゼルエンジン●最高出力:130PS(96kW)/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m(300Nm)/1750rpm●WLTCモード燃費:21.6km/L

320万6000円〜515万1000円(税込)

 

走りのバランスが良いもののデザインは刺さらなかった

安ド「殿! 今回はプジョー308のディーゼルモデルを取り上げます!」

 

永福「そうか」

 

安ド「殿はプジョー508ディーゼルのオーナーですから、308もお好きなのでは?」

 

永福「いや、あまり好きではない」

 

安ド「ええっ! すごく良いクルマじゃないですか。安ド的には、歴代308で一番カッコ良いと思っております!」

 

永福「歴代308は、どれもあまりカッコ良くない。新型の308もイマイチだ」

 

安ド「でも新型は、シャープでネコ科の動物っぽい雰囲気が……」

 

永福「かなり太ったネコだな。同じプジョーでも208や508は非常にカッコ良いので、308にも期待していたのだが」

 

安ド「インテリアもシンプルでムダがありません。メーターまわりのサイバーな雰囲気に全体がマッチしていて好きです!」

 

永福「プジョー定番の楕円ステアリングは、クイックに操作できるので私も好きだ」

 

安ド「乗った感じも、バランスが良いなと思いました。すべてがマッチしていて、先代ゴルフに乗ったときのような感覚がありました」

 

永福「確かに走りのバランスは良いと思うぞ」

 

安ド「殿は、先代308のディーゼルモデルを、『最も現実的かつ理想的なディーゼル車だ!』と高く評価されてました。新型のディーゼルエンジンも、先代と同じ1.5Lですよね?」

 

永福「そう。エンジンも実用的で素晴らしいぞ」

 

安ド「ディーゼル乗用車は、ガソリンエンジンより早く、近い将来消滅すると言われていますが、いま買っても大丈夫でしょうか?」

 

永福「だからこそ、いまのうちに買っておくべきだ。ディーゼルの太いトルクと低燃費は、何ものにも代え難い。この快感を知ってしまったら病みつきだ」

 

安ド「そんなに良いですか。軽油がスタンドから消えたりする心配もないですか?」

 

永福「トラックはそう簡単にEV化できないから、むしろガソリンより長く買えるんじゃないか」

 

安ド「なるほど!」

 

永福「308が良いクルマなのは確かだが、デザインにフランス車らしい小粋さが足りないし、あまりにもボディが大きくなりすぎてしまった。全幅が1850mmもあるのはイカン」

 

安ド「殿の508のほうが、ずっとデカいじゃないですか!」

 

永福「508は、ちょいワルオヤジのためのスカしたスポーツセダンだからそれで良い。しかし308は実用ハッチバック。フランスの実用車は、もっと小粋でコンパクトであってほしい。よって個人的には、プジョー208のほうがオススメだ」

 

安ド「208にはディーゼルの設定がありません!」

 

永福「このクラスでディーゼルにこだわるなら、VWのゴルフだな」

 

【GOD PARTS 1】オートマチックセレクター

スタイリッシュで収納スペースも確保

2022年春登場の208に続き、新型308でも、指先で操作できるトグルタイプのオートマチックセレクターが採用されています。見た目のスッキリさはもとより、センターコンソールまわりの収納スペースも確保できます。

 

【GOD PARTS 2】エンブレム

ブランドの新たなアイデンティティ

従来の“2本足で立っているライオンのアウトラインをかたどった”エンブレムは、この新型308から“顔だけ”に変更されました。60年代にも横顔エンブレム時代はありましたが、こちらは平面的になり、モダンな雰囲気を感じさせます。

 

【GOD PARTS 3】エンジン

高出力から低燃費まで充実のラインナップ

撮影車のエンジンは最高出力130馬力を発揮するディーゼルターボ。ほかにも1.6L直列4気筒ターボエンジン+モーターのプラグインハイブリッド、1.2L直列3気筒ガソリンターボもラインナップされて、選べるのがうれしいです。

 

【GOD PARTS 4】マフラー

大胆アピールかと思いきや隠された排気口

リアの下部は黒くて、ボディの厚みを感じさせるデザインになっていますが、左右にシルバーで囲まれた箇所があります。コレ、マフラーかと思いきや完全なるダミーで、実物は底面から1本だけちょこっと出てました。

 

【GOD PARTS 5】リアシート

先代と比べて足元空間が拡大

先代からホイールベース(前輪と後輪との間の距離)が拡張されたことで、後席の足元のスペースも約30mmほど拡大されました。このクラスのコンパクトカーにとって、意外と使われるリアシートまわりの広さは重要ですからね。

 

【GOD PARTS 6】ホイール

足元を引き締めるサイバーなイメージ

フロントまわりのシャープな雰囲気に似合うサイバーなデザインです。ブラックとシルバーを組み合わせてスポークが細く見えるように工夫されています。また中央部にはカバーのようなものが付いていて、ナットが直接見えないように工夫されています。

 

【GOD PARTS 7】ヘッドライト

後方までまっすぐ伸び続けるプレスライン

先代と比べてボディサイズは拡大されましたが、フロントデザインは直線基調でシャープです。特に超薄型マトリクスLEDヘッドライトは特徴的ですが、ライト後端からフロントドアまで伸びたプレスラインは、実は先代から受け継いでいます。

 

【GOD PARTS 8】リアコンビネーションランプ

ライオンの爪で引っ掻かれた跡

フロントにならってリアライトも薄型です。そして斜めに入ったこのラインはライオンのかぎ爪で引っ掻かれたイメージなんだとか。ライオンのエンブレムをつけたプジョーのライオンへのこだわりが感じられるデザインですね。

 

【GOD PARTS 9】センターディスプレイ

タッチパネル式で未来感あふれる造形

インパネ中央には大型ディスプレイが鎮座していて、タッチ操作や声で呼びかけて操作できる「iコネクトアドバンスト」を採用。デジタルメーター「iコックピット」とサイバーな雰囲気で統一されています。

 

【これぞ感動の細部だ!】ステアリング

クイックな操作感が好印象

スポークが左右2か所のみというスポーティなデザインが採用されています。また、上端が平らになっているのも特徴で、ステアリングの上からメーターパネルが見える設計になっています。さらに、スタンダードなステアリングと比べて小径なので、操作感がクイックです。

 

撮影/我妻慶一

徹底比較! カーシェア大手3社のサービスにはどんな違いがある?

予約も乗車も返却もサクッとできるのがカーシェアの魅力。コロナ禍により通勤で利用する人も増え、ますます勢力を拡大中だ。ここでは大手3社のサービスの違いを徹底検証。利用しやすく魅力あるカーシェアを選んで、快適なドライブを楽しみたい。

※こちらは「GetNavi」 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

【私がガイドします】本誌乗り物担当 上岡 篤

ホームセンターへの買い出しなどにカーシェアをよく利用する。最近は電動キックボードのスムーズな走り&ラクさに目覚めた。

 

↑乗車時、返却時はICカードをクルマの所定位置にタッチするだけ。最近ではスマホアプリで手続きが完了するカーシェアもある

 

タイムズカーはステーションの多さが圧倒的!
選べる車種が豊富なカレコや各種ポイントを有効活用できるオリックスカーシェアにも注目!

カーシェアの魅力は、最短15分単位(長時間プランもあり)で24時間いつでも利用できる点。面倒なカウンターでの手続きも不要だ。

 

「自宅や職場など、拠点となる場所の近くにステーションがあるか確認して、使いやすいカーシェアを選ぶことが基本です」(上岡)

 

全国47都道府県にあり、圧倒的なステーション数を誇るタイムズカーや、一度は乗ってみたいと憧れるモデルもラインナップするカレコ・カーシェアリングクラブには注目。オリックスカーシェアは「楽天カーシェア」からの予約・利用(オリックスカーシェア利用)でポイントが貯まるので、Rポイント会員にとって魅力的だ。

 

「注目は給油したときに受けられる割引。タイムズカーなら、20リットル以上給油すれば自動的に30分ぶんの割引が適用されます(パック料金は除く)。燃料残量が少ないクルマを予約するワザも!!」(上岡)

 

シェアリングサービスの代表格であるカーシェア。クルマにかかる諸経費を削減できると注目だ。

 

大手3社のサービス内容比較

タイムズカー カレコ・カーシェアリングクラブ オリックスカーシェア
サービス開始年月 2009年5月 2009年1月 2002年4月
会員数 約207万7000人(2022年12月末時点) 約38万9000人(2022年12月末時点) 約37万5000人(2022年9月末時点)
展開エリア 全国47都道府県(2022年12月末時点) 東京都、神奈川県など16都道府県(2022年12月末時点) 首都圏エリアを中心に、全国30都道府県(2022年9月現在)
ステーション数 1万4358か所(2022年12月末時点) 3564か所(2022年12月末時点) 1633か所(2022年9月末時点)
車種 36車種(2023年2月1日時点) 46車種(2022年12月末時点) 26車種(2023年2月現在)
台数 3万7101台(2022年12月末時点) 6271台(2022年12月末時点) 2541台(2022年9月末時点)
変わったモデル トヨタ・bZ4X トヨタ・MIRAI レクサス・UX/NX トヨタ・MIRAI
初期費用 1650円(会員カード発行料) 0円(個人会員の場合) 1650円(ICカード発行手数料)
利用料金 月額基本料金880円(個人・家族プラン)、時間料金220円/15分〜(ベーシッククラスの車両利用の場合)※月額基本料金は利用料金に充当可能 月額基本料金980円(個人プラン)、時間料金150円/10分〜(ベーシックプランでベーシッククラスの車両利用の場合)※月額基本料金は利用料金に充当可能 月額基本料金880円(個人Aプラン)、時間料金220円/15分〜(個人Aプランでスタンダードクラスの車両利用の場合)※月額基本料金は利用料金に充当可能
オススメポイント エコドライブや給油、走行距離などによってカーシェアポイント(cp)が貯まる「TCPプログラム」を用意。貯まったポイントに応じて月額基本料金無料やミドルクラスをベーシッククラスの料金で利用できるなど、おトクなサービスが受けられる。 運転しやすいコンパクトカーから、マツダ・ロードスターやダイハツ・コペン、トヨタ・86など憧れのスポーツカーまで、豊富な車種ラインナップから選べる。国産高級ブランドの雄、レクサスが選べるのは同社のカーシェアだけだ。 全車にバックモニターを装備し、自動ブレーキ搭載車、ドライブレコーダーの搭載を順次進めている。万が一の事故の際のロードサービスも充実している。月額料金無料プランはドコモのdカーシェア、楽天カーシェアからも利用可能。

 

【タイムズカーのおトク情報】

時間料金利用時の給油&洗車で利用料金が割引になる!

時間料金での利用時に、20リットル以上の給油や洗車をして返却すると、それぞれ30分ぶんの料金が割引になる給油・洗車割引が適用される(併用すると60分の料金割引が適用)。

 

【カレコ・カーシェアリングクラブのおトク情報】

乗らない月でも安心! 月会費0円のプランもあり

個人会員向けの料金プランは、980円の月会費が利用料金に充当できるオススメのベーシックプランと、月々の費用は乗ったぶんだけの月会費無料プランの2種類から選べる。

 

【オリックスカーシェアのおトク情報】

新規入会2か月基本料金無料! スタンダードクラス2時間ぶんも無料

新規入会後2か月は月額基本料金が無料。さらにスタンダードクラス2時間ぶんが無料で利用可能だ(個人Aプランで利用の場合)。

 

商用車登録でありながら快適性や遊びが魅力! スズキ・スペーシアの派生モデル「ベース」をチェック

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、商用車登録でありながら乗用車のような快適性を誇る、スペーシアの派生モデル「ベース」を紹介!

※こちらは「GetNavi」 2023年02・03合併特大号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】スズキ/スペーシア ベース

SPEC(XF・2WD)●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm●車両重量:870kg●パワーユニット:658cc直列3気筒エンジン●最高出力:52PS(38kW)/6500rpm●最大トルク:6.1kg-m(60Nm)/4000rpm●WLTCモード燃費:21.2km/L

139万4800〜166万7600円(税込)

 

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走行性能も申し分ない“大人の秘密基地”

安ド「殿! スズキからスペーシア ベースが発売されました!」

 

永福「軽自動車のバリエーションがどんどん増えておるな」

 

安ド「ですね! これは人気の車中泊需要に応えたモデルです!」

 

永福「たしかに、サイド後方の窓がなくなっておる」

 

安ド「その部分の内側の壁に棚やコンセントが付いています!」

 

永福「さすが車中泊仕様だな」

 

安ド「僕が良いなと思ったのは、黒いホイールです。今回借りた上位グレードのアルミホイールも、下位グレードの鉄チンホイールも、どちらも真っ黒に塗ってあってシブいんです!」

 

永福「同感だ。ホイールが黒いだけでたくましく、クロウトっぽく見える」

 

安ド「スズキの方にレクチャーしてもらったんですが、ラゲッジ&リアシートのアレンジが、覚え切れないくらいたくさんあってオドロキました。それらを全部使うことはないと思いますが、自分の使いやすい形を見つけ出せるのは良いですね!」

 

永福「子どものころ、隣の空き地に基地を作って遊んだが、このクルマにはその感覚があるぞ」

 

安ド「通常の軽とは逆で、電動スライドドアが右側だけなんですが、これは、ドライバーのためのクルマだからということでした。自分だけの遊びグルマとして軽を一台所有できる趣味人には、ピッタリではないでしょうか!」

 

永福「うらやましいな」

 

安ド「スペーシア ベースは商用軽自動車なんですが、乗用軽自動車のスペーシアがベースということで、エブリィより快適性が高いそうです。僕はエブリィに乗ったことないので違いがわかりませんが、そんなに違いましたか?」

 

永福「確実に違う。エブリィやアトレーはキャブオーバータイプゆえ、前輪の真上に座る感覚だが、スペーシア ベースは通常の軽と同じなので、快適性や操縦性は大幅に上回っている。最近、スペース性に優れるキャブオーバー軽をアウトドア仕様に仕立てるのも流行っているが、走行性能は確実にスペーシア ベースが勝っている」

 

安ド「直接のライバルはホンダのN-VANだと思いますが、それと比べてはどうですか?」

 

永福「乗り心地に関しては、スペーシア ベースがだいぶリードしている。N-VANには、純粋な商用モデルもあって、貨物を満載した状態を想定し、サスペンションを固めてあるからだ。しかしスペーシア ベースは、商用車であっても実際にはアウトドア専用に開発された乗用モデル。足まわりは断然しなやかなのだ」

 

安ド「殿はダイハツのタントを所有されていますが、それと比べるとどうでしょう?」

 

永福「タントより100kg近く軽いので、ターボなしでも走りが軽快で驚いた。さすがスズキの軽は軽いな。このクルマ、大人の秘密基地として実に魅力的だぞ」

 

安ド「同感です!」

 

【GOD PARTS 1】フロントフェイス

カスタム風デザインもカラー違いで異なる趣き

通常のスペーシアではなく、スペーシア カスタム系のデザインが採用されています。ただ、「カスタム」はギラギラしていてアクが強い感じですが、この「ベース」は大部分が艶消しブラックで落ち着いた雰囲気です。

 

【GOD PARTS 2】ホイール

純正ブラック塗装で映えるカスタム質感!

クルマのホイールといえばシルバーの印象が強いですが、このスペーシア ベースのホイールは真っ黒。カスタマイズの基本とも言えるホイール塗装が最初からされているので、いきなり玄人っぽい雰囲気を醸し出せます。

 

【GOD PARTS 3】片側パワースライドドア

あえて右側を電動化した理由はドライバーのため?

軽自動車では片側のみ電動スライドドアということが多いですが、ほとんどが左側。日本は歩道が左にあるので当然といえば当然ですが、このクルマは運転席を降りてすぐ開ける右側が電動。“すべてはドライバーのために”というわけです。

 

【GOD PARTS 4】フロントシート

室内を有意義に使うため前後移動を可能に!

スペーシアやスペーシア カスタムのオーナーならすぐに気付くと思いますが、このべースではフロントシートがベンチタイプではなく、左右セパレートタイプになっています。車内を前後方向に移動できる、“秘密基地”らしいつくりです。

 

【GOD PARTS 5】リアシート

小さくて補助的で最低限使えるレベル

非常に小さなリアシートがついています。このクルマは商用車(4ナンバー貨物)なので、貨物スペース優先で設計されているため、リアシートは取って付けたような必要最低限のものになっています。かわいいですが快適性は期待できません。

 

【GOD PARTS 6】リアサイドウインドウ

埋められた窓の内側には便利な収納が!

スペーシアとの外観上の大きな違いが、リア(荷室部分)のサイドウインドウがなくなっていること。ベースではこの内側にポケットやフックが付いていて、荷室活用時には便利な棚や小物を置くスペースとして使うことができます。

 

【GOD PARTS 7】エンブレム

工事現場の足場風模様がイカしてる!

リアの「BASE(ベース)」と車名が書かれたエンブレムをよく見ると、文字周囲のシルバーの部分に、まるで工事現場の足場に使う鉄板のような滑り止めっぽい加工が施されています。まさに仕事場! 細かいところにまでこだわっていますね。

 

【GOD PARTS 8】オーバーヘッドシェルフ

高い天井を最大限生かせる収納スペース

商用バンなどで時々見かける装備ですが、スペーシア ベースにも天井に物入れスペースが設置されています。上位グレードのみの設定ですが、天井のデッドスペースを活用するという、軽自動車のなかでも車高が高いモデルに許された特権ですね。

 

【GOD PARTS 9】助手席

ただ前に倒れるだけじゃないシートの工夫

当然のごとく、助手席も道具として使えます。背もたれを前方に倒せばテーブルに(下)。キズが目立ちにくい加工が施されているのもポイントが高いです。座面を外せば、買い物カゴのように持ち運べるアンダーボックスが出現します(上)。

 

【これぞ感動の細部だ!】マルチボード

使い方に合わせて荷室スペースを変化!

クルマの最大の特徴がボード(板)というのは長い自動車史のなかでも初めてかもしれません(笑)。搭載された1枚のボードを荷室内にある様々な凹みや突起に組み合わせて設置することで、荷室がデスクスペースになったり、フラットスペースを生み出せたりします。荷室の上下・前後の分割なんてこともできて、秘密基地気分で愛車を自由に使い倒せます。

 

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撮影/我妻慶一

ピュアEV「BYD アットスリー」はコスパ高と思わせる充実の完成度!

今回の「NEW VEHICLE REPORT」は中国から上陸したBYDのアットスリーをピックアップ。ピュアEVとなるアットスリーで、最新の電気駆動モデルらしさを存分に堪能する。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです

 

新興勢力のクルマとは思えない完成度!

【EV】

BYD
アットスリー

SPEC●全長×全幅×全高:4455×1875×1615㎜●車両重量:1750㎏●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:58.56kWh●最高出力:204PS/5000〜80
00rpm●最大トルク:31.6㎏-m/0〜4620rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):485㎞

最新のピュアEVとしてソツのない仕立てが魅力

本国の中国では、9年連続で電気駆動モデルの販売がトップというBYD。日本でも昨年に上陸が発表され、本年から販売がスタートしているが、第1弾となったアットスリーはミドル級SUVのピュアEVという位置付けになる。

 

その外観はご覧のとおり、プレーンなデザインでさりげなく電気駆動モデルらしさを演出しつつもSUVとしてソツのない仕上がり。細部の質感も既存メーカーの最新モデルと比較しても遜色なく、新興メーカーのクルマにありがちな一種の危うさとは無縁だ。

 

一方、インテリアには随所に斬新な手法が取り入れられているのが興味深い。インパネ中央にあるタブレット風ディスプレイは縦横どちらでも使えるようになっているほか、ドアポケットの伸縮性コードでは音が奏でられるなど、その発想には既存メーカーにはない独自の持ち味がある。

 

ルーツがバッテリーメーカーというBYDだけに、ピュアEVとしての出来映えも最新モデルに相応しい水準だ。フロントに搭載する電気モーターは204PSと31・6㎏-mを発揮するが、動力性能は1・7t半ばの車重に対して不足のないレベル。アクセル操作に対する反応の自然な味付けとあって、特に日常域では快適なライド感が楽しめる。装備品が充実していることまで考慮に入れれば、440万円という価格はかなりコスパ高だ。

 

[Point 1]モチーフはフィットネスジム&音楽

フィットネスジム&音楽がモチーフだというインテリアは外観以上に個性的。インパネ中央のタブレット風ディスプレイはスイッチひとつで縦横どちらでも使用できる。

 

[Point 2]ミドル級SUVとして余裕の容量を確保

荷室容量は、後席を使用する通常時でも440Lを確保。ミドル級SUVとしての使い勝手は、内燃機関のモデルと比較しても遜色がない。

 

[Point 3]スポーティな風情も演出する作り

前後席の絶対的な広さは、サイズ相応で実用上の不満を感じることはない。前席はスポーティな形状を採用しているが、たっぷりとしたサイズで座り心地も良好だ。

 

[Point 4]日常域での扱いやすさが好印象

日本仕様は前輪を駆動する2WDのモノグレードとシンプル。運転支援システムは最新レベルで、価格は440万円とコスパの高さも光る。走りは日常域の扱いやすさが魅力。

 

[Point 5]動力性能は必要にして十分

BYD独自のリン酸鉄リチウムイオン電池と組み合わせる電気モーターはフロントに搭載。自然なアクセルレスポンスが印象的だ。

 

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構成・文/小野泰治 撮影/神村 聖

「新型エクストレイル」は駆動方式が全車e-POWERに統一! ピュアEVに負けない滑らかな乗り心地

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」は日産の新型エクストレイルをピックアップ。e-POWERを名乗るハイブリッドで、最新の電気駆動モデルらしさを存分に堪能できる。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです

 

電気駆動モデルらしさはピュアEVに匹敵!

【SUV】

日産
エクストレイル

SPEC【G e-4ORCE】●全長×全幅×全高:4660×1840×1720㎜●車両重量:1880㎏●総排気量:1497㏄●パワーユニット:直列3気筒DO HC+ターボ+電気モーター×2●最高出力:144[204/136]PS/4400〜5000rpm●最大トルク:25.5[33.7/19.9]㎏-m/2400〜4000rpm●WLTCモード燃費:18.4㎞/L

●[ ]内はモーターの数値

エンジンには日産独自のハイテク技術も投入!

新型エクストレイルは駆動方式が全車e-POWERに統一。リアにも電気モーターを搭載する4WD版では、駆動力だけでなく快適性や操縦性向上にも貢献する「e-4ORCE」を採用する。また、発電機の役割を担うガソリンエンジンが凝った作りになっているのも特徴だ。日産独自のVCターボは、圧縮比を8〜14・0まで可変させることで高い燃費と高出力化を両立させている。もちろん、最新SUVとしての機能も着実に進化。室内空間はサイズ相応の広さを確保しつつ、荷室はクラストップの容量を実現した。4WD仕様では、3列シートも選択できる。

 

走りは電動駆動モデルらしさが満喫できる出来映え。今回は4WDに試乗したが、日常域の力強さと滑らかな加速、そしてフラットな乗り心地が印象的だった。また、エンジンの存在を意識させない点も最新のe-POWERらしい。その意味では、充電に不安を抱きつつも電動駆動モデルに興味がある人にも狙い目と言えそうだ。

 

[Point 1]クラストップの容量を実現

荷室容量は、5人乗り仕様でクラストップの575Lを実現。先代より全幅が拡大されたことで、横方向の空間にも余裕がある。

 

[Point 2]充実の装備に加えて高級感も大幅アップ

ナッパレザーのシートが選択できるなど、室内はSUVとしての高級感も先代より向上。最新モデルらしく、プロパイロットを筆頭とする安全支援装備も充実している。

 

[Point 3]独自のVCターボを搭載

1.5Lの3気筒ガソリンエンジンには、圧縮比を可変させる独自のVCターボを採用。高出力化と低燃費を高次元で両立する。

 

[Point 4]走りはまさに電気駆動モデル

日常域での力強さや滑らかな加速は、電気駆動モデルならでは。乗り心地も重厚感すら漂わせるフラットな出来映えとあって、快適性はピュアEVにも引けを取らない。

 

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構成・文/小野泰治 撮影/宮越孝政

圧倒的人気で即受注停止となった「新型シビック タイプR」見た目は知的でエレガント。その乗り心地は?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、発売されるやいなや圧倒的な人気ですぐに受注停止となってしまった新型シビック タイプRを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】ホンダ/シビック タイプR

SPEC●全長×全幅×全高:4595×1890×1405㎜●車両重量:1430㎏●パワーユニット:1995㏄直列4気筒ガソリンターボエンジン●最高出力:330PS(243kW)/6500rpm●最大トルク:42.8㎏-m(420Nm)/2600〜4000rpm●WLTCモード燃費:12.5㎞/L

499万7300円

 

永福ランプが探る小さなパーツの大きな浪漫

安ド「殿! 今回はシビック タイプRです! 早くも何年ぶんかが売り切れて、受注停止らしいです」

 

永福「同じく売り切れのフェアレディZは、月に100台程度しか販売しないのでまだわかるが、こっちは月400台だ。なのに、あっという間に4年ぶんが売り切れてしまった」

 

安ド「やっぱり、ハイパワーなガソリン車が、そろそろ消えるからなんですかね?」

 

永福「人間、もう買えないと思うと、余計に欲しくなるのだな」

 

安ド「個人的には、MTのみの設定という点にグッと来ます。僕はMT車しか買ったことない男ですから!」

 

永福「MTのみのモデルが、2万台も売れただけで奇跡だな」

 

安ド「でも、新型シビック タイプRは、先代に比べると見た目は地味ですよね?」

 

永福「地味というより知的でエレガントと言うべきだろう。先代は後ろから見ると『ランボルギーニか?』と思うほどハデだったが、新型は羊の皮を被った狼だ。タイプRの伝統になりつつあるリアスポイラーも、真後ろから見ると薄い板1枚に見えるので、あまり目立たないしな」

 

安ド「このリアスポイラー、よく見ると複雑な形状でカッコ良いんですよね!」

 

永福「思えばリアスポイラー付きのクルマは貴重な存在になった」

 

安ド「羽根の付いたクルマに憧れた世代としては、これだけで泣きそうです!」

 

永福「リトラクタブルヘッドライトは20年前に消えたが、リアスポイラーもこれが最後かもしれないな」

 

安ド「ところで、走りはどうですか? やっぱりスゴいですか」

 

永福「もちろんスゴい。しかしあまりにも完成度が高く、公道ではスゴさがわかりにくいのが残念だ」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「シビック タイプRはFF最速のスポーツモデル。300馬力を超えるパワーを前輪だけで路面に伝えるから、先代、先々代は、アクセルを全開にするだけで多少クルマが暴れた。そのじゃじゃ馬感が好きだったが、新型はそういうじゃじゃ馬感がほとんど消えている」

 

安ド「僕には、速くて楽しいとしか感じませんでしたが……」

 

永福「ディープなマニアは、速いだけでは満足できないのだ!」

 

安ド「なぜじゃじゃ馬感がなくなってしまったんでしょう?」

 

永福「サーキットでの速さを突き詰めてシャーシ性能を上げていくと、自然とそうなるのだ」

 

安ド「自然とそうなるんですか!」

 

永福「しかしまぁ、ほとんどの人は、このクルマの本物感に触れるだけで満足するだろう」

 

安ド「ですよね! 僕は満足しました! MTですけど4ドアなので実用性もありますし、ファミリーカーとして使えます!」

 

永福「乗り心地も悪くないしな」

 

安ド「次の愛車にしたいです!」

 

永福「言うだけならタダだからな」

 

【GOD PARTS 1】シフトノブ

握りやすい形状で操作感も上々な伝統のアルミ製

トランスミッションは6速MTのみで、潔ささえ感じさせます。そしてこのアルミ製のシフトノブはタイプRの伝統にもなっていて、握りやすく、操作感も上々。ただし寒い冬の朝に乗る際はかなり冷たくなっているのでご注意を。

 

【GOD PARTS 2】ステアリング

バックスキン仕様で滑りにくく操作しやすい

最近のクルマらしく操作スイッチが配置されていますが、全体のデザインはシンプルです。握る部分は滑りにくいバックスキン素材になっています。かつてサーキットを走る人たちからは、このような素材が好まれたものです。

 

【GOD PARTS 3】+Rモード

ビンビンに過激な走りが味わえる

走りを楽しむためのドライブモードは、「COMFORT」「SPORT」などが選べますが、その前方にあるスイッチを押せば、「+Rモード」になります。これは電子制御をオフにして運転操作の応答性を過敏にしたモードで、剥き出しの走りが味わえます。

 

【GOD PARTS 4】ディスプレイ

走行情報を記録して表示、腕を磨くことにも貢献!

スポーツモデルではありますが、現代のモデルらしく、データロガーシステム「Honda LogR」が装着されています。各種走行情報を表示するほか、走行データを自動で保存、解析してスコア化。ドライバーのパフォーマンスアップを助けてくれます。

 

【GOD PARTS 5】バケットシート

伝統の赤いシートが身体をしっかりホールド

赤いバケットシートもタイプRの伝統的アイテムです。ただし、かつてのようなRECARO社製ではなく、「Honda TYPE Rシート」となっています。身体をホールドして姿勢をキープできるので、キツいコーナーでも運転しやすいです。

 

【GOD PARTS 6】エンジン

ターボの利点を加えて進化を遂げた心臓部

かつて「タイプR」のエンジンと言えば高回転型のNA(自然吸気式)でしたが、近年のシビックタイプRはターボで武装されました。しかしこのエンジンはターボらしい強烈な加速に加えて、NAのようなスムーズな回転まで味わえます。

 

【GOD PARTS 7】タイヤ&ホイール

オリジナル設計による高い強度とハイグリップ

横から見るとわかりますが、タイヤがめちゃくちゃ薄いです。これは走行性能を高めたミシュラン社による特別なハイグリップタイヤで、ホイールもリバースリム構造という、歪み低減、内側の接地圧安定を狙った専用設計になっています。

 

【GOD PARTS 8】エアコン吹出口

フェンスのような雰囲気で内装のアクセントに

普通のエアコンのフィンの手前にフェンスのような網目状のカバーが施され、風向きを変えるためのレバーが突き出ています。シンプルなインテリアにあって、このエアコンの吹出口だけはデザインが凝っていて雰囲気があります。

 

【GOD PARTS 9】ディフューザー

車体下の空気を整えて走りを安定させる黒い溝

ボディの後方下部はブラックアウトされていて、フィンがつけられています。これがいわゆる「ディフューザー」というもので、ボディ下部を通る空気を利用して走行安定性を高めます。3本出しマフラーも迫力満点です。

 

【これぞ感動の細部だ!】リアスポイラー

空力を操るレーシングマシン風エアロパーツ

リアスポイラーは当然ながら専用設計で、微妙にグネグネした不思議な形をしています。ホンダはF1に参戦していたメーカーということもあって、空気力学に沿ったこのような難解な形状を生み出すことができたわけですが、超高速域でのダウンフォース獲得の一助となるに違いありません。

 

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撮影/我妻慶一

新たな価値観の構築へ! マツダの意欲作「CX-60」は随所にプレミアム感が満載

「NEW VEHICLE REPORT」はプレミアムブランドへの飛躍を模索するマツダの意欲作「CX-60」をピックアップ。「CX-60」のチャレンジングな新機軸に注目だ。

※こちらは「GetNavi」 2023年3.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

新たな価値観の構築を目指すマツダの意欲作は新機軸が満載!

【SUV】

マツダ

CX-60

SPEC【XD ハイブリッド・エクスクルーシブ・スポーツ】●全長×全幅×全高:4740×1890×1685mm●車両重量:1910kg●総排気量:3283cc●パワーユニット:直列6気筒DOHCディーゼル+ターボ+電気モーター●最高出力:254[16.3]PS/3750rpm●最大トルク:56.1[15.6]kg-m/1500〜2400rpm●WLTCモード燃費:21.1km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

新時代のマツダを予感させる意欲的な作りが好印象!

これまで“走る歓び”を追求してきたマツダが、“プレミアム”という領域に本格的に踏み込むため、直6エンジンとそれを縦置きしたFRベースのプラットフォームを新開発。その第1弾となるCX-60は、運転するほど元気になり、ユーザーの行動範囲を広げ、家族や仲間との新しい愉しさを提供する“ドライビングエンターテインメントSUV”という位置づけだという。

 

その優雅なスタイリングは、マツダ独自の“魂動デザイン”が進化したもの。大別して4つのグレードが用意され、インテリアでは西陣織に着想を得たという“プレミアムモダン”の斬新な表現や、“エクゼクティブスポーツ”の鮮烈なタンカラーの内装が目を引く。

 

パワートレインは直6ディーゼルおよびMHEVと、直4ガソリンおよびPHEVの計4種類のエンジンに新開発のトルコンレス8速ATを組み合わせている。まず、ディーゼルは3.3Lという大きめの排気量による余裕の動力性能を確保しつつ、燃費を大幅に向上させることに成功。ディーゼルらしい力強い走りと、直列6気筒らしく調律された迫力あるサウンドを味わうことができる。

 

MHEVは小さなモーターが発進直後に上手くアシストしてくれて軽やかな出足を実現している。PHEVは、大きなモーターと十分なバッテリー容量により最長で74kmの距離をEV走行できる点がポイントだ。

 

一方、足まわりはロードスターで培ったFR駆動のノウハウを生かしつつ、独自の着眼点で数多くの新たな試みにチャレンジ。現状では煮詰めきれていない部分も見受けられるが、マツダが目指すものには大いに期待できる。

 

また車内のカメラで運転者を認識し、記憶した設定を自動的に復元する「ドライバー・パーソナライゼーション・システム」を搭載。異常を検知すると停止までを自動制御する「ドライバー異常時対応システム」など、マツダ独自の取り組みによる運転支援装備をいち早く設定している点も注目に値する。

 

そんなCX-60は、さらなる高みを目指すマツダの渾身の意欲作であることは間違いない。

 

[Point 1]新開発のFR骨格は優美な外観作りにも貢献

縦置きのエンジン回りと後輪駆動という構成を基本とする、FRプラットフォームを新規開発。その効果は、ホイールベースの長さが印象的な優美さを感じさせる、CX-60のエクステリアデザインでも実感できる。

 

[Point 2]上質感の演出にも抜かりないインパネ回り

デジタル系の装備を網羅しつつ、デザイン自体は従来のマツダ車らしいスポーティなテイストを踏襲しているインパネ回り。トリムのステッチ類など、プレミアムなモデルに相応しい上質感も演出している。

 

[Point 3]走りへのこだわりを象徴するシート回り

質感の高さが印象的なシート。前席には最適な着座位置を設定できる「自動ドライビングポジションガイド」も装備される。後席もボディサイズ相応の広さが確保されている。

 

[Point 4]ミドル級SUVに相応しい使い勝手も実現

外観のイメージこそスタイリッシュだが、荷室回りの絶対的な広さはミドルサイズのSUVらしい水準を確保している。広い開口部をはじめ、使い勝手への配慮も行き届いている。

 

[Point 5]パワートレインは4タイプと多彩

パワートレインは2.5Lガソリンがベース。加えてディーゼルとそのマイルドハイブリッド版(MHEV、写真)など、合計で4種を揃える。

 

[Point 6]プレミアム級SUVらしく足元も重武装に

プレミアム級の風情を演出するSUV、ということで足元もスポーティな選択が可能。試乗車のホイールは大型の20インチを装着していた。

 

[Point 7]ディーゼルのMHEVは速さと高燃費を両立

3.3L直列6気筒ディーゼルターボに電気モーターを組み合わせるMHEV版は、大排気量ディーゼルターボらしい力強さと低燃費を両立。足回りはスポーティな味付けだ。

 

[ラインナップ]

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文/岡本幸一郎 撮影/市 健治、篠原晃一

トヨタのマルチプレイヤー「シエンタ」が愛される理由とは?

「NEW VEHICLE REPORT」はコンパクトミニバンの人気モデル、トヨタ「シエンタ」の新型をピックアップ。日本の環境にマッチした万能性に注目だ。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年3.5月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ミニバンの機能を凝縮したマルチプレイヤーぶりが魅力!

【ミニバン】

トヨタ

シエンタ

SPEC【ハイブリッドZ (7人乗り 2WD)】●全長×全幅×全高:4260×1695×1695mm●車両重量:1370kg●総排気量:1490cc●パワーユニット:直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:91[80]PS/5500rpm●最大トルク:12.2[14.4]kg-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:28.2km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

ハイブリッドとガソリンとで走りの味付けを差別化

最大で7人が乗れる3列シートのミニバンでは、もっともコンパクトなシエンタが生まれ変わった。従来とはガラリと変わり、四角くて丸い造形となったのはご覧の通り。各部の黒い部分は見た目のアクセントとなっているだけでなく、ぶつけやすい部分のキズを目立たなくする効果もある。

 

コンパクトならではの取り回しの良さはシエンタの強み。このサイズが良いというユーザーの声に応え、車体形状はスクエアになりながらも全長と全幅に変更はなく、全高だけ20mm高くなった。

 

これによりスライドドア開口部の天地高が増して乗り降りしやすくなったほか、室内高も拡大して頭まわりの余裕が増していることが、特に2列目に乗るとよくわかる。ソファのような生地のシートの座り心地も申し分ない。

 

ボディ後部の車内空間が極めて合理的な作りとなっているのは従来通り。3列目シートは小さくて簡素なものだが、成人男性もそれほど苦もなく座れ、いざというときには助かる。もちろん不要なときは2列目床下に格納でき、荷室を広く確保することもできる。

 

その走りは、新世代プラットフォームであるTNGAを導入したことも効いて、見た目からイメージするほど重心の高そうな感覚はない。正確でしっかりとした手応えのあるステアリングフィールを実現し、走りの質も高まった。

 

ハイブリッドは出足のレスポンスが良く、力強くて乗りやすい。3気筒ながら各部に施された対策により音や振動が小さく抑えられているので、走行中も車内でストレスなく会話できる。また、ライド感はしっとりとしていて、特に新たに後輪をモーター駆動するE-Fourとなった4WDの上質感は、非降雪地に住むユーザーにも積極的に勧めたいほどだ。

 

一方のガソリン車は軽快なドライブフィールに加え、エンジンの吹け上がりをより楽しめるような味付け。キャラクターはかなり異なるが、どちらも燃費が非常に良い点は共通している。

 

トヨタの最新モデルらしくインフォテインメントや先進運転支援装備も充実。このクラスでこれ以上マルチなクルマはない。

 

[Point 1]ボディは5ナンバーサイズをキープ

「シカクマル」がデザインテーマという新型のボディは、全高こそ拡大されたが日本の5ナンバーサイズをキープ。随所に先代の面影を残しつつ、ミニバンらしい合理性を感じさせる仕立てになった。

 

[Point 2]親しみやすさと実用性がハイレベルで調和した作りに

デザイン性の高さも感じさせるドアポケットなど、随所に設けられた収納スペースは実用性の追求だけにとどまらない作り。背の高いミニバンということで、後席へ送風する天井サーキュレーターを装備できる点も日本のミニバンらしい。

 

[Point 3]細部に至る使い勝手の良さはニッポンのミニバンならでは

絶対的な広さに加え、2列目シート(スライド機構付き)の使い勝手に配慮した1列目シートバックの仕立てなど、細部に至る配慮は日本生まれのミニバンらしい。サイズを考えれば3列目も納得の広さだ。

 

[Point 4]ユーティリティの高さは外観のイメージ通り

ウッドデッキ風のフロアボードを用意する荷室は、もちろん絶対的な広さも十分。7人乗りの3列目シートは、2列目下にコンパクトに格納可能だ。5人乗りと同等の使い勝手を実現している。

 

[Point 5]2本立てとなるパワートレイン

パワートレインは1.5Lハイブリッド(写真)と1.5Lガソリンの2本立て。先に登場したヤリス クロスなどと同じ構成だ。

 

[Point 6]最新世代のTNGA採用で基本性能を底上げ

最新のTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)採用で、クルマとしての性能も全方位的に底上げ。その走りは、先代より質感が向上していることも実感できる。

 

[ラインナップ]

 

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文/岡本幸一郎 撮影/市 健治、篠原晃一

トヨタ「クラウン」が新時代に突入! 大改革を果たしつつ従来の機能の美点は継承した国際派へ

今回の「NEW VEHICLE REPORT」は「クラウン」の新機軸について特集。「クラウン」はトヨタのブランドのひとつだが、長い歴史に裏打ちされた伝統がある。その一方で歴史あるブランドを守り続けるからこそ、それ相応の変化も必要となる。トヨタ「クラウン」の新機軸に触れてみた。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年02・03合併特大号に掲載された記事を再編集したものです

 

大変革の16代目は国際派へと転身か

【SUV】

トヨタ

クラウン・クロスオーバー

SPEC【RS アドバンスト】●全長×全幅×全高:4930×1840×1540mm●車両重量:1920kg●総排気量:2393cc●パワーユニット:直列4気筒DOHC+ターボ+電気モーター×2●最高出力:272(82.9/80.2)PS/6000rpm●最大トルク:46.9(29.8/17.2)kg-m/2000〜3000rpm●WLTCモード燃費:15.7km/L

 

大変革しながらも従来の機能の美点は継承

トヨタでは最長寿の乗用車ブランドにして、保守派高級セダンの筆頭格でもあったクラウンに大変革の大ナタが振るわれた。2022年7月の発表時には4種ものボディ形態が揃えられることも明らかになったが、その先陣を切って発売されたのが今回の「クロスオーバー」。外観はネーミング通りにセダンとSUVを融合させた個性的な佇まいが印象的で、先代から受け継いだ要素は感じられない。しかし、高級セダンとしての後席の空間作りや独立した荷室、そして後輪操舵の採用で実現した取り回しの良さといった機能上の持ち味はしっかり継承されている。

 

エンジンは、ガソリンの2.5L自然吸気と同2.4Lターボの2種で、いずれも前後にモーターを搭載。駆動システムはグレードを問わずハイブリッドの4WDとなる。また、後者では6速AT採用している点も目新しい。

 

その走りは、確かにクラウンが新時代に突入したことを実感させるものだ。たとえば、従来モデルは(一部例外はあったが)良くも悪くも路面から切り離されたようなライド感が特徴だったが、新型のそれは欧州車の風味付けに変化。一方、静粛性の高さは相変わらずで2.4Lターボでは高級車らしい操舵感やダイレクトなアクセルレスポンスも楽しめる。その意味で新型クラウンは、全般的に作りが国際派になったことが最大の変化と言えるかもしれない。

 

[Point 1]機能的でカジュアルな風情も演出

ハイブリッドらしく、インパネ回りの設計は多機能ディスプレイが主体。運転支援関連の装備も、当然ながら最先端レベルだ。内装のカラーについても豊富な選択肢を用意する。

 

[Point 2]外観は個性的でボディカラーの選択肢も豊富!

近年欧州車で流行のクーペ風SUVにも通じるテイストの外観は実に個性的。ボディカラーも大胆な塗り分けの2トーンが6色、モノトーンが6色の合計12色と豊富な選択肢を用意する。

 

[Point 3]セダンの機能を継承して荷室はキャビンから独立

荷室はキャビンから独立。容量は450Lで、後席中央のアームレスト部分にトランクスルー機能を備える。長尺物の積載も可能だ。

 

[Point 4]パワートレインは全車ハイブリッド4WD

エンジンはガソリンの2.5L(写真)と2.4Lターボの2種。いずれも前後に電気モーターを組み合わせたハイブリッド4WDとなる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/ミッション/駆動方式/税込価格)

RS:2.4L+ターボ電気モーター×2/6速AT/4WD/605万円

RSアドバンスト:2.4L+ターボ電気モーター×2/6速AT/4WD/640万円

G:2.5L+ 電気モーター×2/電気式無段変速/4WD/475万円

Gレザーパッケージ:2.5L+ 電気モーター×2/電気式無段変速/4WD/540万円

Gアドバンスト:2.5L+ 電気モーター×2/電気式無段変速/4WD/510万円

Gアドバンスト・レザーパッケージ:2.5L+ 電気モーター×2/電気式無段変速/4WD/570万円

X:2.5L+ 電気モーター×2/電気式無段変速/4WD/435万円

 

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文/小野泰治 撮影/市 健治、郡 大二郎

SUVの要素を網羅する万能さ!「ジープ」の魅力を4つのPOINTで分析

今回の「NEW VEHICLE REPORT」は「ジープ」の新機軸について特集。「ジープ」はブランドそのものの長い歴史に裏打ちされた伝統があり、その一方で歴史あるブランドだからこそ守り続けるためには相応の変化も必要となる。まずはジープの新機軸に触れてみた。

 

※こちらは「GetNavi」 2023年02・03合併特大号に掲載された記事を再編集したものです

 

SUVの要素を網羅する万能さが魅力!

【SUV】

ジープ

コマンダー

SPEC【リミテッド】●全長×全幅×全高:4770×1860×1730mm●車両重量:1870kg●総排気量:1956cc●パワーユニット:直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:170PS/3750rpm●最大トルク:35.7kg-m/1750〜2500rpm●WLTCモード燃費:13.9km/L

 

3列シート+ディーゼルの魅力的な組み合わせを実現

新型コマンダーは、日本向けのジープでは初のディーゼル仕様となるミドル級SUV。そのボディは、現行ジープではコンパスとグランドチェロキーの中間という適度なサイズながら、3列シートの7人乗りを実現していることが魅力的だ。もちろん、SUVだけに3列目の広さこそミニバン級とはいかないが、大人の着座にも耐える実用性は確保。使い方次第では、ミニバンの代替としても選択肢になり得るはずだ。

 

搭載する2Lディーゼルターボの動力性能は、必要十分というところ。現状ではいくぶん音や振動が気になるものの、高効率な9速ATを組み合わせるだけに巡航時には気にならない。また、ジープらしく走破性を高める装備も充実しているので万能さはライバルと比較しても屈指のレベルだ。日本でも2000年代に導入されていた初代はある種マニア向けだったが、新型コマンダーは新たなジープユーザーを開拓する可能性に満ちた1台と言えそうだ。

 

[Point 1]ジープのモデルらしく走破性を高める装備も充実

4WDであることはもちろん、悪路での走破性を高める機能に抜かりがない点もジープらしい室内。運転支援系の装備も充実している。室内は3列目シートでも実用的な広さ。

 

[Point 2]日本仕様はモノグレード

日本仕様のグレードは「リミテッド」のみとシンプルで、車両価格は597万円。ボディカラーは写真のブラックのほかに3色を用意するが、ルーフはどの色でもブラック仕立てになる。

 

[Point 3]多彩なアレンジが可能

ラゲッジ容量は3列目シートをたたんだ状態で481L。3列目使用時でも170Lが確保されるなど、使い勝手はSUVらしく秀逸だ。

 

[Point 4]燃費性能はまさに期待通り

2Lディーゼルターボは、今回の試乗でも市街地から高速に至るまで終始2ケタ台の燃費をキープ。経済性は期待通りの出来栄えだ。

 

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文/小野泰治 撮影/市 健治、郡 大二郎

「ここまで人気を呼ぶとは……」大ヒットの予感、三菱「デリカミニ」発売前チェック

2023年1月の東京オートサロン2023で実車が初公開され、大きな注目を浴びたのが三菱の新型軽自動車「デリカミニ」です。正式発売は5月25日を予定していますが、3月上旬にはなんと7000台もの事前受注を獲得。三菱の広報担当者も「ここまで人気を呼ぶとは思っていなかった」というほど、予想以上の反響を集めているのです。

 

それほど人気を集めた新型デリカミニとはどんなモデルなのでしょうか。4月6日に明らかになった価格を含め、その詳細レポートをお届けしたいと思います。

 

■今回紹介するクルマ

三菱/デリカミニ

価格:180万4000円〜223万8500円(税込)

↑「デリカ」の世界観を軽自動車で再現した『デリカミニ』(手前)。写真はオプションの「アクティブトーンスタイル」仕様

 

オフロード4WDミニバン「デリカ」の世界観を軽自動車で実現

デリカミニを一言で言い表せば、高い人気を獲得している三菱のミニバン「デリカ」の世界観を軽自動車で展開するものとなります。

 

そもそもデリカは1960年代後半に商用車としてデビューしたのが始まりです。その後、1979年に登場した2代目「デリカ・スターワゴン」で本格的オフロード4WDシステムを搭載したミニバンとして定着。その伝統は現行の「デリカD:5」にまで引き継がれ、いまではオフロード4WDミニバンとして不動の地位を獲得しています。その“デリカ”で培ったイメージを軽自動車に再現したのが、新たに登場したデリカミニというわけです。

↑デリカミニ・G Premiumの標準仕様。ボディカラーは全12色あります。写真はアッシュグリーンメタリック×ブラックマイカ

 

東京オートサロンで初めてデリカミニの姿を見たとき、完成度の高さに思わず惹きつけられた記憶があります。デザインの表現にも限界がありそうな軽自動車というサイズながら、デリカの世界観が見事に再現されていたからです。

 

その特徴のひとつが最近の三菱車の共通アイコンである、ダイナミックシールドと呼ばれるフロントフェイスを採用していることです。半円形のLEDポジションランプ付きヘッドランプを組み合わせることで、フロント周りはデリカD:5との共通性を見事にキャッチアップ。加えて、フロントバンパーとリアガーニッシュには立体的な「DELICA」ロゴを浮かび上がらせたほか、光沢のあるブラックホイールアーチ、前後バンパー下にプロテクト感のあるスキッドプレートを組み合わせます。これらによってデリカならではの力強いミニバンを表現することに成功したのです。

↑デリカならではのSUVらしい力強さと高い質感を表現したというフロント(アクティブトーンスタイル装着車)

 

↑ドアの開口部を広げたことで乗降性や荷物の出し入れは極めてしやすくなっています(アクティブトーンスタイル装着車)

 

4WD車は専用ショックアブソーバーで足回りをチューニング

ただ、これだけだと「従来のekクロススペースとはデザインが違うだけ?」と思われてしまいそうですが、そこはしっかりとデリカミニとして新たな進化を遂げていました。

 

足回りは上位グレードに装備した165/60R15サイズの大径タイヤに加え、4WDにはデリカミニ専用チューニングを施したショックアブソーバーを装備。開発者によれば、これが路面をしっかりと捉えながら車内へ振動を伝えにくくするのに効果を発揮し、砂利道などの未舗装路での走行で高い安定性と快適性をもたらしているということです。

↑4WD車には165/60R15を組み合わせます。三菱の軽自動車ではもっとも大きい径です

 

また、室内装備としてステアリングヒーターも上位グレードに新装備されました。寒冷地でのスタートはとかく触れるものすべてが冷たいもの。そんなとき、ドライバーの手をこの機能が優しく温めてくれるのです。デリカミニらしい使われ方を想定してしっかりとここをサポートしています。

↑新たに「G Premium」「T Premium」に標準装備されたステアリングヒーター。軽自動車での装備例は数少ないです

 

一方、安全装備は基本的にekクロススペースから踏襲されました。滑りやすい路面での発進をサポートするグリップコントロールや、急な下り坂などを安心して走行できるヒルディセントコントロールを標準装備。さらに高速道路での同一車線運転支援機能として、“マイパイロット”をはじめ車線維持支援機能を搭載するなど、ロングドライブでの疲労軽減に対してもしっかりアシストしてくれるというわけです。

↑高速道路での同一車線運転支援機能として、センサーにはミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせています。中央の四角い部分にミリ波レーダーを収納(アクティブトーンスタイル装着車)

 

また、サポカーSワイドに対応する運転支援機能“三菱 e-Assist”の搭載や、メーカーオプションで光軸自動調整機構付アダプティブLEDヘッドライトも用意されていることも見逃せません。

 

グレードは「T」と「G」の2タイプ。2WD/4WDも選べる

インテリアも、アウトドアでも使いやすく機能的かつ快適な造りにしています。ダッシュボードはブラックを基調としながらも、中央にアイボリーのアクセントを加えることでワイド感を強調。シートはアウトドアでの使用や、小さな子どもがいる家庭での利用を想定して通気性を考慮したシート生地を採用し、座面や背もたれの中央部に立体的なエンボス加工を施すことで疲れにくさと座り心地の良さを両立させています。

 

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グレード体系は大きくインタークーラー付きターボエンジンの「T」と、自然吸気エンジンの「G」の2つで、それぞれに装備を充実した上級グレードの「T Premium」、「G Premium」を用意し、全グレードで2WDか4WDを選ぶことが可能となっています。

 

4月6日に明らかになった価格は以下の通りです。

【T Premium】3気筒ターボ付ハイブリッド/CVT

2WD/207万4600円  4WD/223万8500円

【T】3気筒ターボ付ハイブリッド/CVT

2WD/188万1000円  4WD/209万2200円

【G Premium】3気筒ハイブリッド/CVT

2WD/198万5500円  4WD/214万9400円

【G】3気筒ハイブリッド/CVT

2WD/180万4000円    4WD/201万5200円

 

↑ デリカミニ・G Premiumには、DOHC 12バルブ 3気筒インタークーラー付ターボチャージャー(ハイブリッド)を搭載(アクティブトーンスタイル装着車)

 

デリカらしさを際立たせるオプションパッケージも充実

デリカの一員として、デリカミニではアウトドアでの使用やカスタムでの楽しみ方もディーラーオプションパッケージとして提案しています。それが「アクティブトーンスタイル」と「ワイルドアドベンチャースタイル」です。

 

アクティブトーンスタイルは、都会での走行に似合うスタイリッシュさを強調するデザインとなっています。フロントマスクのダイナミックシールドとフロントバンパー&テールゲートガーニッシュをグロスブラックとし、フロントバンパーとテールゲートの“DELICA”エンブレムをホワイトレターに変更した「エクステリアパッケージA」はセット価格が7万5570円。“DOHC 12 VALVE”“INTERCOOLER TURBO”のサイドデカールは左右4点セットで3万3440円。ブラックのマッドフラップ(4万9940円)はデリカならではの世界観にマッチさせる格好とアイテムと言えます。※価格はいずれも取付工賃別

 

ワイルドアドベンチャースタイルは、冒険心をくすぐるカスタマイズアイテムです。フロントマスクのダイナミックシールドとフロントバンパー&テールゲートガーニッシュがシルバーとなり、フロントバンパーとテールゲートの“DELICA”エンブレムをブラックとする「エクステリアパッケージB」はセット価格が7万5570円。フロントアンダー、サイド/リアのアンダースキッドプレート風「デカールシール」を3点セットにした「デカールパッケージ」が6万75400円。さらに「タフネスパッケージ」では、三菱ファンにはたまらないレッドマッドフラップ、アルミホイールデカールなど4点をセット(7万1940円)にしました。※価格はいずれも取付工賃別

↑ディーラーオプションとして用意された「ワイルドアドベンチャースタイル」。フロントマスクやフロントガーニッシュ、テールゲートガーニッシュがシルバー塗装になります

 

↑「ワイルドアドベンチャースタイル」には、三菱ファンにはたまらないレッドマッドフラップも用意されます

 

↑「ワイルドアドベンチャースタイル」には、アウトドア好きにうれしいベースキャリアもラインアップ

 

SPEC【G /G Premium(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm[3395×1475×1830mm]●車両重量:970kg /990kg[1030kg /1050kg]●総排気量:659cc●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:52PS/6400rpm●エンジン最大トルク:60N・m/3600rpm●モーター最高出力:2.7PS/1200rpm●モーター最大トルク:40N・m/100rpm●WLTCモード燃費:20.9km/L[19.0km/L]

※[]内は4WDの数値

 

SPEC【T /T Premium(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm[3395×1475×1830mm]●車両重量:980kg /1000kg[1040kg /1060kg]●総排気量:659cc●パワーユニット:直列3気筒DOHC+交流同期電動機●エンジン最高出力:64PS/5600rpm●エンジン最大トルク:100N・m/2400〜4000rpm●モーター最高出力:2.7PS/1200rpm●モーター最大トルク:40N・m/100rpm●WLTCモード燃費:19.2km/L[17.5km/L]

※[]内は4WDの数値

 

 

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写真/松川 忍

日本企業の正念場、タイの自動車業界に忍び寄る中国勢の躍進

常夏の国でもあり“微笑みの国”としても知られるタイ。日本人にとっても人気が高く、コロナ禍前の2019年には約180万人がタイを訪れています。風光明媚な観光地が多いのと物価が割安で食べ物が美味しいというのが主な理由ですが、日本との関係でタイはもう一つの重要な側面があります。それが自動車です。

↑バンコク国際モーターショー2023のオープニングセレモニー。出展した代表者が壇上に勢揃いして盛大に開催されました

 

タイは“東南アジアのデトロイト”と呼ばれる東南アジア随一の自動車生産国で、中でも日本車は全体の9割近いシェアを獲得している“日本車王国”。それだけに日本の自動車メーカーはそろって工場をタイ国内に構え、そこを基点にASEAN各国にも輸出しています。つまり、タイは日本の自動車産業にとってもっとも重要な国のひとつとなっているのです。

 

モーターショーは160万人が訪れるビッグイベント

そんなタイの首都バンコクで「第44回バンコク国際モーターショー」が3月22日から4月2日まで開催されました。このショーは毎年3月に開催されているタイ国内最大のモーターショーで、前回2022年の開催ではコロナ禍にもかかわらず160万人が会場を訪れたというビッグイベントです。

↑会場はバンコク郊外の「インパクト アリーナ」。2022年は2週間近くの会期中に約160万人が会場を訪れました

 

このショーで見逃せないのは、ショー自体が販売目的で開催されているということです。そのため、各ブースには多くの販売員が配置され、裏に回ればそこには商談用のスペースが用意されています。各自動車メーカーはショー期間中だけの特別な低利キャンペーンなどを用意し、来場者も「どうせ買うのならこの機会に……」という気持ちで会場を訪れるのです。

↑各出展ブースの背後には商談スペースが準備され、軽食を取れるコーナーも用意されています

 

ショーの主催者によれば、会期中に販売される台数は昨年で約3万5000台にものぼり、今年はその15~20%増程度を販売したいと意気込んでいました。このあたりが、基本的に見せるだけの日本や欧米などのモーターショーとは大きく違うところなのです。

 

そして、出展メーカーの数にも注目です。まずシェアが高い日本のメーカーはトヨタやいすゞ、ホンダ、三菱、日産、マツダ、スズキ、スバル(2022年販売台数順)が出展。欧米系からはメルセデス・ベンツ、BMW、ミニ、アウディ、フォードのほか、プジョーやボルボ、アストンマーティン、ロールス・ロイス、マセラティなどそうそうたるブランドが勢揃いしています。そこに韓国のヒョンデ、キア、中国のMG、BYD、NETAが加わり、日本のモーターショーでは考えられないほどの賑わいを見せているのです。なお、ダイハツはタイ国内で販売しておらず、出展していません。

↑BMWが創立50周年を記念して開発された『XM』。V型8気筒エンジンと電気モーターの組み合わせが生み出すPHEVで、総合出力は653PSを発揮します

 

↑ヒョンデが東南アジア市場向けに開発した7人乗りミニバン『スターゲイザー』。タイでは初披露となりました

 

ここで多くの日本人が「?」と思うのがいすゞの存在かもしれません。日本では大型バスやトラックだけとなっていて、一般ユーザーには縁がないメーカーだからです。実はタイ国内でいすゞは、需要が高いピックアップトラックやSUVを手掛けていて、その売上げ規模が極めて大きいのです。それも半端じゃない数を販売していて、そのシェアはトヨタに次ぐ第2位というから驚きですよね。

↑タイ市場でいすゞのシェア拡大の立役者となっているピックアップトラック『D-MAX』。ほかにSUV『MU-X』もラインアップします

 

↑三菱がピックアップ市場での拡販を目指し、トライトンの後継モデルとして発表した『XRTコンセプト』

 

急速に勢いを増している中国勢。その中心にはBEVが

そうした中で、急速に勢いを増しているのが中国勢です。特に勢いがあるのがMGとBYD、グレート・ウォール・モーター(GWM)の3社で、いずれもタイ国内でトップシェアを持つトヨタに迫る広いスペースを使って出展していました。

 

MGは元々イギリスのスポーツカーメーカーとして知られていましたが、現在は中国の上海汽車グループの傘下にあり、東南アジアやオセアニア市場で展開して人気を集めています。一方のBYDは中国・深センでバッテリーメーカーとして創業しましたが、いまではその技術を活かした大型バスや乗用車を生産しており、タイだけでなく欧州や日本でもその存在が知られるようになっています。GWMは中国・長城汽車の英語名で、タイでは「Haval」「ORA」「TANK」の3つのブランドを展開します。

 

この3社がそろってタイ市場に向けて出展したのが電気自動車(BEV)やHEVの新型車です。実はこれまで中国市場を重視して販売体制を整えてきましたが、2023年1月1日より中国政府からの補助金が打ち切られ、それに伴って中国国内でのBEVの販売が急減。3社ともその落ち込みを補おうと海外進出を急速に広げているのです。しかもタイではBEVに対して10万バーツの補助金が支給され、それによって販売価格の実質引き下げに貢献することになりました。こうした背景が対市場への参入につながったと見ていいでしょう。

 

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一方で日本車はこの中国勢の電動化の動きにどう対応したのでしょうか。

 

BEVで目立ったのは、トヨタが8代目ハイラックスをベースとして開発したピックアップトラック『ハイラックス・レボBEVコンセプト』を出展したぐらいでした。これは2022年12月にトヨタがタイ進出60周年を記念して発表されたもので、2020年代半ばの発売を予定しています。これ以外はハイブリッド車(HEV)が中心で、トヨタはHEVとして5代目『プリウス』や『JPNタクシー』のタイ仕様を用意し、ホンダもHEVとした『CR-V』の新型を出展した程度です。電動化への動きでは明らかに中国勢に押されっぱなしという感じでした。

 

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しかも、タイ政府は“ASEANのEVハブ”を目指して、2030年までに直流タイプ(DC型)のEV急速充電器を全国で1万3000基以上、同タイプの充電器を備えたEV急速充電ステーションを約1400か所まで整備することを目標としているのです。これはBEVで市場拡大を目指す中国勢にとっては追い風になっているとの見方が出ても不思議ではありません。

 

BEV需要は補助金次第。航続距離が長いHEVへの関心も高い

ただ、ショー関係者にこのあたりを取材すると「BEVが順調に伸びていくのにはハードルが高い」と話します。というのも、タイ国内での充電インフラが不足しているのは間違いなく、「休日に郊外に出掛けて3時間の充電待ちが発生することもよく聞く話」だからです。たとえ、政府が充電設備を増やすとは言っても、それで十分と言えないのは日本の例を見ても明らかというわけです。

 

また、「BEVは近所を走行する2台目需要の領域を出ておらず、それを買えるのは戸建てを持つ富裕層のみ。来年の補助金政策が変われば、それによって需要は大きく変化する」とも話します。むしろ「バンコクなど都市部では環境に対する意識が高い人にとっては、航続距離が長いHEVの方が使いやすい」と考える人が多いというのです。

 

実際、2022年のBEV販売台数は1万5000台ほどで、2021年の2000台から急増しました。しかし、それでも総販売数の1.7%程度にとどまります。これで補助金が打ち切りとなれば、販売台数に影響をもたらすのは間違いないでしょう。とはいえ、中国勢の勢いはかつてない力強さを感じさせます。そうした状況にどこまで日本勢が対抗できるか。まさに2023年はタイにおける日本勢にとって正念場を迎えることになるのは間違いないでしょう。

↑バンコク国際モーターショー名物ともなっているコンパニオン。写真はいすゞ

 

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アウトドアカーの最適解! 先進PHEVから本格オフローダーまで間違いナシの7台をチョイス

車中泊にキャンプ、グランピングから釣りにバードウォッチングなどアウトドアの楽しみ方は十人十色。しかし目的地に行くまでの移動手段となると頼れる相棒で行きたいものだ。さあ、いまこそ“行動制限”のないクルマで出かけよう!

※こちらは「GetNavi」2023年4月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が選びました!

モータージャーナリスト
海野大介さん

自動車雑誌の編集部や船の専門誌を渡り歩く。小型船舶やA級ライセンスなど遊びの資格を所持する40代。現在はウェブへの寄稿を中心に活動中。

 

三菱独自のAWCが生む高い走行性能が魅力

三菱
アウトランダー PHEV
484万1100円〜570万5700円

三菱の新しい旗艦モデル。力強く存在感のあるエクステリアや上質で先進的なインテリアが特徴だ。三菱独自のS-AWCや前後輪でのブレーキAYCが生み出す高い旋回性能や安定性は、背の高いSUVであることを忘れてしまうほど。

SPEC【P】●全長×全幅×全高:4710×1860×1745mm●車両重量:2110kg●パワーユニット:2359cc4気筒DOHC+ターボ+2モーター●最大出力:98kW/5000rpm●最大トルク:195Nm/4300rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L

↑パワートレインは2.4ℓエンジンに前後輪に独立したモーターを持つ2モーター式。エンジンは基本的に発電用だが、走行状況に応じて駆動用にもなる

 

↑センターコンソールに設置された、大型で操作しやすいドライブモードセレクター。各モードで駆動力の配分やアクセルレスポンスなどが常に最適に制御される

 

↑フロントのセンターコンソールボックスの後ろと荷室にはAC100V、1500Wの電源が装備されている。アウトドアでも自宅と同様に“レンチン”が可能だ

 

↑ステアリングホイールに設けられたのは回生ブレーキの効きを任意に調整するパドル。スポーツ走行や下り坂など、減速エネルギーを電力に変換して充電可能だ

 

レジャーから非常時までマルチに活躍するSUV

アウトドアで大活躍する地上最低高の高いSUV。同カテゴリで世界初となるプラグインハイブリッド車になったアウトランダーは、2021年にフルモデルチェンジした。パワートレインは2・4lのガソリンエンジンに前後2つのモーターを組み合わせ、発進時から高速域まで抜群のレスポンスと加速性能を誇る。

 

非常時などにクルマを家の電源として使えるV2Hに対応しているのも魅力のひとつ。その性能はガソリン満タンならエンジンによる発電を含め、約120kWhの電力を供給できる。これは一般的な家庭の12日ぶんの使用量に相当。同車には100V対応のAC電源も装備しており、グランピングなどでも頼れる1台だ。

 

海野’s ジャッジ

PHEVの力強い走りや航続距離、非常時でも“使える”装備の数々。三菱の旗艦モデルということを考えても、これらがすべて500万円台というのは抜群のコストパフォーマンスだ。

 

高い悪路走破性能とワイルドなスタイルが人気

トヨタ
RAV4
293万8000円〜563万3000円

力強さと洗練さが融合したデザインのSUV。パワーユニットはガソリン、ハイブリッド、PHVの3種が揃う。4WDはガソリン車とそれ以外で異なるメカニズムとなる。先進安全装備はどのグレードでも充実。

SPEC【ハイブリッド Adventure】●全長×全幅×全高:4610×1865×1690mm●車両重量:1700kg●パワーユニット:2487cc4気筒DOHC●最大出力:178PS/5700rpm●最大トルク:221Nm/3600〜5200rpm●WLTCモード燃費:20.3km/l

↑アドベンチャーグレードに設定された、特別仕様車の「オフロードパッケージⅡ」。バンパーなどに艶を抑えた塗装を使用してタフさを表現している

 

↑荷室には表裏使えるデッキボードを装備。表面の起毛処理と異なる樹脂製の裏面を使えば、濡れたり汚れたりしたモノをそのまま載せても掃除がラク

 

↑2lのアドベンチャーグレードほかで採用する、ダイナミックトルクベクタリングAWD。各駆動輪のトルク制御を瞬時に行い旋回性能と燃費が向上する

 

海野’s ジャッジ

ミドルSUVクラストップレベルの容量を持つラゲッジルームや、オフロードも余裕で走れる走行性能はアウトドアユースにぴったり。PHVも加わり、高い商品力も魅力のモデルだ。

 

低重心エンジンを搭載する実力派ミドルクラスSUV

SUBARU
フォレスター
299万2000円〜363万円

全モデルにSUBARUの定番システムであるAWDシステム、アイサイト、水平対向エンジンを装備する。またモーターを組み合わせたパワートレインを持つe-BOXERも設定。グレードごとにキャラクターが分けられているのも同車の特徴と言える。

SPEC【SPORT】●全長×全幅×全高:4640×1815×1715mm●車両重量:1570kg●パワーユニット:1795㏄水平対向4気筒DOHC+ターボ●最大出力:177PS/5200〜5600rpm●最大トルク:300Nm/1600〜3600rpm●WLTCモード燃費:13.6km/l

↑脇見運転や居眠り防止に役立ち安全運転につなげるドライバーモニタリングシステム。ジェスチャーにより、好みの空調制御まで行える

 

↑本格スポーツグレードのSTIもラインナップに追加。足回りに定評のある同モデルには専用チューニングが施されたダンパーが装備される

 

海野’s ジャッジ

ひと目でそれと分かるダイナミックかつソリッドなデザイン。十分なロードクリアランスや悪路からの脱出をサポートする「X
モード」など、走りに重点を置いているのはSUBARUらしい。

 

車中泊もおまかせ! 足を伸ばして仮眠、いや爆睡できるクルマはこのモデルだ!

室内の広さや快適さがウレシイ日産自慢の新型ミニバン

日産
セレナ
276万8700円〜393万3600円

2022年にデビューした5代目モデル。同車の美点でもある室内空間の広さや利便性はそのままに、移動時の快適性を追求し、先進技術を搭載する。初代からの「BIG」「EASY」「FUN」のコンセプトはいまも受け継がれている。

SPEC【e-POWER ハイウェイスターV】●全長×全幅×全高:4765×1715×1870mm●車両重量:1810kg●パワーユニット:1433cc直列3気筒DOHC●最大出力:98PS/5600rpm●最大トルク:123Nm/5600rpm●モーター最高出力:163PS●モーター最大トルク:315Nm●WLTCモード燃費:19.3km/l

↑最上級グレードには条件つきの手放し運転が可能になる「プロパイロット2.0」が標準装備。これはミニバンとしては世界初となる

 

↑すっきりしたインパネ周り。それまでのシフトレバーは廃され、シフトセレクターはスイッチ式に。日産車としては初の装備になる

 

海野’s ジャッジ

2Lのガソリン車と1.4L e-POWERの2種がラインナップした新型セレナ。e-POWERモデルでも8人乗りが実現した。多彩なシートアレンジは健在で車中泊も余裕なのがうれしい!

 

四角い実用的なクルマならフランス車におまかせ!

シトロエン
ベルランゴ
384万5000円〜455万4000円

多くの荷物を積んで家族や友人との旅行に適したレジャーアクティビティビークルは、シトロエンが23年前に生み出したセグメント。その代表格であるベルランゴは、広くスクエアな室内が特徴だ。収納空間も豊富に用意されており便利に使える。

SPEC【SHINE BlueHDi】●全長×全幅×全高:4405×1850×1850mm●車両重量:1600kg●パワーユニット:1498cc直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最大出力:130PS/3750rpm●最大トルク:300Nm/1750rpm●WLTCモード燃費:18.1km/L

↑3列シート7人乗りの「ロング」も新たに登場。乗り心地にこだわった足回りの設計によって、シトロエンらしい走行性能を実現している

 

↑純正オプションで用意されるアグレ・ベッドキット。ベッドマットは使わないときは荷室の棚として使用可能だ。加工なしに設置できるのも魅力

 

海野’s ジャッジ

シンプルなデザインと内装でもキラリと個性が光るのがフランス車の良いところ。1.5Lのディーゼルターボは1750rpmで最大トルクを発揮し、力強い走りができるのがイイ!

 

本格オフローダー!

軍用車がルーツのクロカン4WDの代名詞

ジープ
ラングラー
870万円〜1030万円

シンプルなスタイリングで多くのファンを魅了し続ける、軍用車がルーツのクロカンの雄。現行モデルは2018年デビューの4代目だ。装備充実のサハラと最強仕様のルビコンがラインナップ。いずれも2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載する。

SPEC【Unlimited Sahara 2.0L】●全長×全幅×全高:4870×1895×1845mm●車両重量:1960kg●パワーユニット:1995cc直列4気筒DOHC+ターボ●最大出力:272PS/5250rpm●最大トルク:400Nm/3000rpm●WLTCモード燃費:10.0km/L

↑最強グレード「ルビコン」に追加されたプラグインハイブリッドモデルの4xe。2L直列4気筒ターボに2モーターを組み合わせている

 

↑リジッドサスペンションは本格オフローダーの証。左右の車輪が車軸でつながっており、片輪が浮いてしまっても反対側はしっかりと接地する

 

海野’s ジャッジ

ブランドの象徴である7スロットグリルや無骨ながらシンプルなデザインなど、唯一無二の世界観が特徴。アダプティブクルーズコントロールなどの先進装備が多く備わっているのも魅力だ。

 

ホビーベースにもなる実用的軽商用車が誕生!

スズキ
スペーシア ベース
139万4800円〜166万7600円

軽貨物自動車として開発された、いわば“働くクルマ”。後席は自由度が高く、自分のアイデア次第で車中泊やワークスペース、趣味の空間としても使える。ラインナップされる4WD車の荷室床面地上高はFF車と同じなので、荷物の積載もしやすい。

SPEC【XF 2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm●車両重量:870kg●パワーユニット:658cc直列3気筒DOHC●最大出力:52PS/6500rpm●最大トルク:60Nm/4000rpm●WLTCモード燃費:21.2km/L

↑車内空間を自由にアレンジできるマルチボードを採用。後席を倒してボードを下段に設置すれば車中泊に使える空間に。大人でも足を伸ばして横になれる広さだ

 

↑後席を倒すと座椅子として使える工夫が楽しい。マルチボードを上段にすればデスクスペースに早変わり。乗り手のアイデア次第でちょっとしたワークスペースに

改めて「カローラ スポーツ」に乗ってみたら…ハッチバックの最新存在意義

過日、カローラ クロスの試乗記事でも紹介したが、カローラは日本のスタンダードカーとして長期に渡って販売されてきたモデル。そのカローラシリーズのなかでも、ハッチバックタイプの「カローラ スポーツ」は現行型で最初に登場した。ハッチバックならではの魅力はどこにあるのか、ピックアップして見ていこう。

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ/カローラ スポーツ

※試乗グレード:G “Z”(ガソリン・2WD)

価格:220万円~289万円(税込)

 

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日本ではブームが終わっているけども……

現行型カローラは、まずこのハッチバックの「カローラ スポーツ」が2018年にデビューしたのを皮切りに、セダンの「カローラ」とワゴンの「カローラ ツーリング」が登場。その後、2021年にSUVタイプの「カローラ クロス」が発売され、現在は4兄弟という構成になっている。

 

クルマ自体は、カローラらしくすごくまっとうに、それでいて現代的に作りました! という最新モデルだが、4種類ものボディタイプから選べるクルマは、ほかを探してもなかなかない。実はこのハッチバックはカローラファミリーに復帰したモデルであり、先代型は「オーリス」という車名で販売されていた。余談だが、現行型も海外の一部地域では当初「オーリス」という名称で販売されたが、現在では改めて「カローラ」という名称に統一されている。

 

しかし4つのボディタイプがあるとはいえ、後になって追加されたSUV以外、セダンもワゴンも、そしてハッチバックも、正直なことを言えば、日本ではすでにブームが終わっているジャンル。個人的にオーリスが好きだったこともあり、「もしまたなくなってしまったら……」と考え、「今のうちに乗らなきゃいかん」という衝動に駆られて(笑)、借りだしてみた。なお、2022年10月にマイナーチェンジを受けて、パワートレインを刷新、安全・快適装備をアップグレードしている。

↑ラゲージスペースは9.5インチゴルフバッグが2個積める、352Lの容量を備えています

 

トヨタのこだわり、演出が随所に感じられるデザイン

フロントまわりのデザインは、ひと言でいってシャープだ。セダンやワゴンも同様のテイストだが、極力キャラクターラインを減らし、面は面として強調しつつも、ヘッドライトやグリルなど顔全体の構成物が中央のエンブレムに収束されている感じ。キリッとしていて、若干怒っているような表情に見えるのは、現在のカーデザインのトレンドにのっとったもの。

↑LEDライトを横方向に配置したヘッドライト。1灯の光源でロービームとハイビームの切り替えが行えるBi-Beam(バイ-ビーム)LEDを採用しています

 

一方、リアまわりは下部分をふっくらさせつつもシャープに見せるようなキャラクターラインがたくさん入っていてにぎやかな装い。また、リアウインドウは結構前方へ傾斜していて、スポーティさが強調されている。ハッチバックモデルのリアデザインというは、そのクルマの特徴であり、他車との違いをアピールできる部分でもある。そういった意味では、トヨタなりのこだわりが見てとれる。

↑いくつものラインが入ってはいるものの、全体を見るとシンプルなデザインに仕上がっています

 

↑ヘッドライトと同様に、切れ長でシャープな光を放つリヤコンビネーションランプ

 

全体的なスタイリングは、重心が低くてワイド。わかりやすくいえば、平べったく幅広になった印象だが、これはいわゆるスポーツカーの定番プロポーションである。フロントのシャープなデザインを基調に考えれば、セダンは重心が高そうに見えるし、ワゴンでは全長が長すぎて俊敏さが感じられない(実際の運動性能はそんなことないが)。ハッチバックのスタイリングは「低くてワイド」が実にしっくりきている。これもトヨタによるスポーティさの演出である。

↑全長4375×全幅1790×全高1460mm。また試乗モデルの総重量は1655kg

 

↑G“Z”グレードはタイヤ225/40R18、18×8J(切削光輝+ダークグレーメタリック塗装/センターオーナメント付)のホイールを標準装備

 

新時代設計思想「TNGA」に裏打ちされた快適な走り

で、実際の走りはどうかというと、これがまたいい。想像していたより静かで、快適。さらに乗り心地も悪くない。クラストップレベルの上質感といっても決して言い過ぎではない。ハンドリングも素直でコーナーでは気持ちよく曲がってくれる。そもそも、全長の短いこのハッチバックは、カローラファミリーでは一番コーナリング性能が高いのだ。

 

この走りの良さというのは、トヨタの新時代設計思想「TNGA」から生まれている。TNGA(Toyota New Global Architecture)は、パワートレーンやプラットフォーム(車体)をはじめ、クルマの基本性能を飛躍的に向上させるための車体設計や取り組みをまとめたもの。トヨタによる新時代のクルマづくりにおける構造改革の名称だ。2015年の先代型プリウスに初採用されたTNGAだが、それから3年後となる後出しだけに、カローラシリーズでは、よりセッティングが熟成されたように感じられる。

↑TNGAによって優れた重量バランスと車両安定性を実現。これによって意のままに走行でき、快適さを感じられます

 

そんなカローラ スポーツに搭載されるパワーユニットは、2.0L直列4気筒ガソリンエンジンと、1.8L直列4気筒エンジンに電気モーターを加えたハイブリッドの2種類。今回試乗させてもらったのは前者のガソリンエンジンモデルであったが、2.0Lエンジンに組み合わされるCVTのフィーリングがよかった。

↑従来のCVTに発進用ギヤを追加し、発進から高速域まで力強くダイレクトな走りと低燃費を実現。ガソリンエンジンモデルの燃料消費率はWLTCモードで17.2km/Lとなっています

 

速いかどうかと言われれば、驚くほど速いということはない。しかしこれは一般道を走るにはちょうどいいくらい。もし速さにこだわるようなら、後から追加販売されたGRカローラを選ぶといい。2022年にわずか500台のみ発売されたモデルで、入手するのは難易度が高いモデルだが、ベースはカローラ スポーツで、それだけの価値がある走りの魅力を備えたクルマである。

 

総合的に考えると、オワコンどころか核家族世帯にピッタリ

居住性に関しては、セダンやワゴンと比べると、前席はほぼ変わらないが、後席は前後長が短いハッチバックはすこし分が悪い。しかし、取り回しのよさや使い勝手の良さなどを総合的に考えるなら、これが小さな子どものいる家庭にはちょうどいい。筆者がオーリスがいいなと考えたのも子どもがまだ小さいからである。ハッチバックは“オワコン”なんかじゃなかった。現代社会の中心的存在である核家族世帯にぴったりのジャンルだったのだ。

↑広い視界を確保すべく、ダッシュボードやAピラーの形状などに工夫がなされています。高精細なHDワイドディスプレイを搭載するとともに、T-Connectのオプションサービス「コネクティッドナビ」に対応

 

↑試乗車のG “Z”はスポーツシート。黒と赤の色使いがスポーティでテンションが上がります

 

SPEC【G “Z”(ガソリン・2WD)】●全長×全幅×全高:4375×1790×1460㎜●車両重量:1380㎏●パワーユニット:1986cc直列4気筒ガソリンエンジン●最高出力:170PS(125kW)/6600rpm●最大トルク:202Nm/4900rpm●WLTCモード燃費:17.2㎞/L

 

文/安藤修也、撮影/木村博道

 

 

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乗り味はロールス・ロイス「ファントム」超えだな! BMW「7シリーズ」と「i7」の試乗報告

1970年代からBMWのフラッグシップサルーンとして君臨してきた「7シリーズ」も、電気の時代を迎えたことで、シリーズとしては初のEVモデル「i7」を新たにラインナップ。最高級車としての実力は、ライバルブランドと比較してどうか? またエンジンモデルとEVモデルでどのような違いが味わえるのでしょうか?

 

■今回紹介するクルマ

BMW/7シリーズ & i7

※試乗グレード:740i Mスポーツ(7シリーズ)、xDrive60エクセレンス(i7)

価格:(7シリーズ)1460万円~1501万円、(i7)1670万円~

↑写真左から740i Mスポーツ(7シリーズ)、xDrive60エクセレンス(i7)

 

ロールス・ロイスを意識したデザインで、見た目の威厳的にすごくアリ

みなさんは、ロールス・ロイスを知ってますよね。恐らく「世界一の高級車」という認識だと思います。実はいまロールス・ロイスは、BMW傘下にあるのですね。ロールス・ロイスのラインナップの頂点に君臨するのが「ファントム」。その見た目は、「とにかく高そう」で「すごく怖そう」で、「ひたすら威厳のカタマリ」です。そしてロールス・ロイスのデザインを象徴するのが、フロントグリル。「パンテオン・グリル」と呼ばれており、円柱が並ぶローマ神殿を模しています。

 

実は私、アレは「パルテノン・グリル」だと思い込んでいました。パンテオンはローマの神殿で、パルテノンはアテネの神殿。円柱が並ぶ形状は同じですが、パンテオンのほうは、その上に三角形が乗っかってる(残ってる)。そっちがロールス・ロイスのグリルの元ネタだったわけです。知らなかった!

 

一方、BMWのグリルは「キドニー・グリル」です。キドニーとは腎臓のこと。楕円形が2個並んだ姿が腎臓に似ているので、この名が付きました。新型7シリーズでは、そのキドニー・グリルが左右合体して、まるでパンテオン・グリルみたいになりました! これ、どう見てもロールス・ロイスを意識してるだろ!

↑xDrive60エクセレンス。グリルだけでなく、全体のフォルムも、ものすごく古典的に角張ったセダン型で、ロールス・ロイスを意識したかのようです

 

BMWの最高級セダンである7シリーズは、従来、メルセデス・ベンツのSクラスに対して常にスポーティであり、デザインもその文法に則っていましたが、新型は逆張りで、ロールス・ロイスに寄せてきたわけです。ライバルのメルセデス・ベンツEQSが、スポーティな「謎の円盤」にリボーンしたのと正反対! お互いに逆張りしたことで、ポジショニングが完全に逆転しました。

 

しかしこの、ロールスみたいな7シリーズのデザイン、意外と悪くないです。これまでの7シリーズは、「しょせんSクラスにはまるでかなわない万年2位」でしたが、新型はなにしろロールス風味。見た目の威厳に関しては、EQSをはるかに凌駕しています。こういう最高級セダンに乗る方々は、たぶん最大限の威厳を求めているでしょうから、すごく「アリ」だと思います!

↑サイズは全長5390×全幅1950×全高1545mm。カラーは13色をそろえています

 

乗り心地はフワッフワ! それでいて超ダイレクトなハンドリングで新鮮

ところで新型7シリーズには、エンジンモデルとEV(電気自動車)とが併存しています。エンジンモデルは3.0L直6のガソリン/ディーゼルですが、今回はガソリンの740i Mスポーツに試乗しました。従来7シリーズと言えば、V8やV12の巨大なエンジンを積んでいましたが、ダウンサイジングの流れにより、3.0L直6に統一されております。

↑740i Mスポーツ。サイドには流れるようなラインが施され、軽やかさが感じられます

 

BMWの3.0L直6と言えば、「シルキー6」と呼ばれ、カーマニア垂涎の的ですが、7シリーズは2tを超える重量級。さすがにパワーが足りないのでは? と思ったのですが、450Nm(先代)から520Nmへと増強されたぶっといトルクが、低い回転からグイグイと車体を前に押し出します。回転も超なめらかでスバラシイ! BMW3.0L直6はここまで進化したのか!

 

「しかも乗り心地が凄い! とろけるようにフワッフワ! この感覚はまさにロールス・ロイスに近いっ!」

 

ロールス・ロイスの名前や形は知っていても、乗ったことのある方は少ないと思います。いったいどんな乗り心地なのかと言うと、「雲の上」です。雲の上のクルマだけに雲の上。そのまんまやないけ! ですが、運転していてもステアリングインフォメーション、つまりハンドルから伝わる路面情報がまったくゼロ! 本当に浮かんでるんじゃないか? って感じなのです。新型740i Mスポーツも、その感覚に近く、浮かんでいるかのような体験でした。

 

ただ、BMWだけに、ステアリング・インフォメーションはそれなりにあり、電子制御エアサスの恩恵で、ハンドルを切ってもまったく車体が傾かず、そのままズバーンとカートみたいに曲がります。フワッフワなのに超ダイレクトなハンドリングがものすごく新鮮! このクルマ、どーなってんの?

↑コックピットには、12.3インチの情報ディスプレイと14.9インチのコントロール・ディスプレイで構成されるBMW カーブド・ディスプレイを搭載

 

振動が完全にゼロ、加速はウルトラケタ外れ! もうロールス・ロイス超えだろ

ここまででもビックリですが、新型7シリーズのEV版であるi7のxDrive60エクセレンスは、さらにケタ外れでした。まずもって、パワーユニットの滑らかさが段違い。ガソリン直6でもウルトラスムーズなのに、さすが電気モーターだけあって、振動が完全にゼロ! 日産「サクラ」も振動ゼロのはずだけど、まったく感覚が違います。そんなのあるのか? いやいや、上には上がいるのですね。

↑「740i」のパワーユニットは3リッター直6ガソリンターボエンジンと48Vのマイルドハイブリッドシステムの組み合わせ

 

乗り心地もさらにフワッフワ! ガソリンモデルより車体が600kgくらい重いぶん、フワッフワさがものすごく荘重! 荘重なフワフワなんてあるのか? と思われるでしょうが、あるんですね。ビックリです。

 

加速もウルトラケタ外れ! 前後に2個搭載されたモーターは、合計745Nmのトルクを生み出し、アクセルを踏み込めば、宇宙船のように加速します。740i Mスポーツがお子様用に思えてしまうほどの、強烈な加速の差! こんなに速くてどうするの! って感じですが、「物凄いものに乗っている」感はハンパないです。もちろんコーナーでは、ロールせずにカキーンと直角に曲がります。そうか、電気自動車って、こんなにも高級車向きだったのか……。

↑xDrive60エクセレンスは静止状態から100km/hまでを4.7秒(ヨーロッパ仕様車値)で駆け抜けます

 

i7の乗り味は、ロールス・ロイス ファントムを超えたと言ってもいいでしょう。6.8L V12ターボ(BMW製ですが)でも、i7のモーターのパワーや滑らかさにはかなわない。ロールス・ロイス ファントムのお値段は、6050万円から。たったの1670万円で買えるBMWのi7は、猛烈にコスパが高いと思います! 以上報告終わり!

↑受注生産オプションの「エグゼクティブ・ラウンジシート」。そして、Amazon Fire TVを搭載した31.3インチのBMWシアター・スクリーン(オプション)は快適空間じゃ!

 

SPEC【740i Mスポーツ】●全長×全幅×全高:5390×1950×1545mm●車両重量:2395kg●パワーユニット:2997cc直列6気筒ガソリンエンジン●最高出力:381PS(280kW)/5500rpm●最大トルク:520Nm/1850-5000●WLTCモード燃費:12.8km/L

 

SPEC【xDrive60エクセレンス】●全長×全幅×全高:5390×1950×1545mm●車両重量:2965kg●パワーユニット:電気モーター●最高出力:前258+後313PS/前後8000rpm●最大トルク:前365+後380Nm /前0-5000+後0-6000rpm●WLTCモード一充電走行距離:650km

 

撮影/池之平昌信

 

 

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ヘルメット着用が努力義務化。オシャレを邪魔しないヘルメットと自転車の交通ルール

2023年4月から、道路交通法の一部改正により、すべての年齢に対して自転車乗用中のヘルメット着用が努力義務化されることになりました。普段、何気なく乗っている自転車ですが、この機会にもう一度自転車の安全ルールを見直してみましょう。併せてヘルメットの最新事情も紹介。自転車ジャーナリストの遠藤まさ子さんに解説いただきました。

 

自転車は軽車両。クルマのルールに従うのが基本

「基本的に自転車はクルマと同じように考えましょう」と、遠藤さん。道路交通法上、自転車は軽車両と位置付けられているため、基本的な交通ルールについても、自動車と自転車はほぼ同じ視点で考えるといいのだそうです。

 

「車が左側通行であるのと同じように、自転車も車道左側を走るのが基本です。たまに進行方向右側の車道を逆走している自転車を見かけますが、大変危険です。また、信号や一時停止、一方通行などの標識も自動車用に従います。ただし、 “自転車は除く“ や ”含む自転車“ などと例外が書かれている場合があるので、注意して見て、従うようにしましょう」(遠藤まさ子さん、以下同)

 

【関連記事】電動キックボードは免許・ヘルメットなしでOK?「小型電動モビリティ」の法改正によるルールと可能性

 

これもNG!? 勘違いしやすい自転車ルール

具体的に自転車の基礎ルールをみていきましょう。

 

■ 自転車は基本的に歩道NG! 常に歩行者優先で

「歩道と車道の区別があるところでは自転車は車道を通行しなければいけません。自転車通行可という標識があったり、道路での走行が著しく危険だったり特別な理由を除いては、歩道を走ってはいけないことになっています(ただし、13歳未満と70歳以上、体の不自由な方を除く)。

 

やむをえず歩道を走るときは、歩行者優先で、歩道の車道側を徐行して走ってもよいとされていますが、自転車の徐行速度はおおむね時速7~8kmが目安なので、実際かなりゆっくりのスピードです。自転車はゆっくり走るとバランスを崩しやすいため、下りて押しながら歩くのがいいでしょう。自転車を押し歩いていると歩行者扱いとなります」

 

■ 横断歩道はラインを踏んだり横切ったりしない。信号は車用に従って

「横断歩道は歩行者のためにあるものですから、自転車は歩行者を邪魔してはいけません。ラインを踏んだり横切ったりしないようにしましょう。基本的に自転車は車道の左側を走っている状態ですから、わざわざ横断歩道に近づくのではなく、そのまま交差点を直進して結構です。また一般的な交差点(スクランブル交差点以外)を右折しようとする場合は、原付と同じように二段階右折をしなければならないので注意してください」

 

■ 一時停止や一方通行など、自動車の標識に従う

「自転車は車の一種とされているため、自動車の標識にも従うのが基本です。『とまれ』の道路表示や標識、『一方通行』の標識などは、『自転車は除く』の記載がない限り従ってください。特にうっかりしがちなのは、踏切の一時停止です。踏切の手前で一度止まって、安全確認してから渡ります。信号のない交差点はすべて一時停止して安全確認をするのが基本ですから、どうしたらよいか迷ったらまず止まった方が安心ですね」

 

■ イヤホン、ヘッドホンは片耳でもNG

「ワイヤレスのイヤホンはいつもつけっぱなし、という人もいるかもしれませんが、これは明確に使用が禁止されていて、片耳でも違反です。罰金は県によって違いますが、2~5万くらいのところもあります。自動車のルールで、踏み切りの警報機やパトカーのサイレンなどがしっかり聞こえるように、車内で音楽を大音量で聴いてはいけないことになっているのと同じことです。スマートホンも同じで、手に持たず、自転車のハンドルに固定していても、注視したり乗りながら操作したりすることは認められません。少しでも運転以外のことに神経が集中してしまう状態がダメ、ということですね」

 

■ ハンドルに大荷物をかけるのは歩道ではNG

「自転車のハンドルに荷物をかけて走るのはやめましょう、とよく言いますが、それは『荷物をかけてはいけません』という法律・規則ではありません。やむを得ない理由があるときは歩道を走ってもいいとお話しましたが、歩道を通行できる自転車自体にもきまりがあり、最大幅が60cm以内と決められています。自転車はだいたいハンドルの幅で60cmぎりぎりなので、そこに大きな荷物をかけたら60cmをはみ出してしまいます。絶対に車道しか走らない場合には法律違反にならないものの、ハンドルに荷物をかけるとふらつきの原因になってしまうので、おすすめできません。

 

傘も同様です。手に持って片手運転じゃなければいいでしょ? と言う人もいますが、ほとんどの自治体で傘差し運転自体が禁じられています。さらに言えば、さっきの荷物の例と同じで、傘は広げるとだいたい90cm以上の幅になるため、60cmの規定をオーバーしてしまいます。そもそも、法律がどうこうだけでなく、傘をさして自転車に乗ると風をすごく受けて走りにくく、危ないですし、歩行者に傘がささる危険性も高いので絶対にやめた方がいいですね」

 

■ 自転車のライトやリフレクターは、前は白系、後ろは赤

「夜間や夕暮れどき、自転車のライトはたとえ照明が多く明るい道でもきちんとつけてください。これは道路交通法で決められています。もし、買った自転車にライトがついていなかったとしても、あと付けのものを購入して必ずつけなくてはいけません。

 

ライトは単に明るければいい、目立つようにカラフルにすればいい、というものではありません。前は白やクリーム色くらいのもの、後ろは赤、という指定があります。ライトは自分が道を照らすために必要だと思っている人が結構いますが、そうではなく、あくまでも “ドライバーから認識されやすいため” 、 “自分の姿を見せるため” なんです。だから自分は道が見えているから大丈夫、ではないのです。

 

車のライトも、前は白、うしろは赤になっています。これをもし前後を逆につけてしまったら、ドライバーとしては “逆走している?” とか、 “バックしてきた?” と混乱してしまいます。ライトはLED式、点滅式、いずれもOKなのですが、色が重要です。ただし、後ろのライトに関してはレフレクター(反射板)でも構いません。車がライトを照らしたときに反射したり、反射同様の光を発したりする状態が大事というわけです。ちなみにペダルに取付けられているリフレクターは黄色いや琥珀色のことが多いですが、この色味については法律ではなく、BAAという自転車の安全基準で定められている内容になります」

 

自転車に乗るときは命を守るためにヘルメットを

今回の道路交通法の改正に伴い、4月から大人も自転車に乗るときはヘルメットの着用が義務化されます。罰則のない努力義務となりますが、今回の法律改正にはどのような背景があるのでしょうか。

 

「自転車によるヘルメットをかぶっているとき、かぶっていないときとでは事故のときの致死率が約1.6倍~2.6倍変わると警察から発表されています。ヘルメットをかぶらないで走ったら、死亡する確率がほぼ2倍高くなると考えたらいいかもしれません。自転車ってそんなにスピードが出ないから大丈夫、と思うかもしれませんが、実は速度が問題ではないのです。

 

自転車の事故で亡くなった方をみると、6~7割近くの人が脳挫傷などの頭のけががもとで亡くなっています。ですから、死亡事故を防ぐならまず頭を守って、というのはバイクと同様です。最近何件かあった高齢者が自転車に乗っているときに起きてしまった事故も、決してスピードを出していたわけではありませんでした。むしろ止まったりゆっくり走ったりしていたのにバランスを崩して横倒しになってしまい、道路に頭を打ち付けて亡くなるというケースも多いのです。自転車に乗っているときは、ふだんより頭の位置が高くなりますし、バランスを崩しやすいため、もし転倒してしまったとき、大切な頭部を守るためにヘルメットが必要なのです」

 

ヘルメットを選ぶときに気を付けた方がいいことは?

それではヘルメットを選ぶときは何に気をつけたらいいのでしょうか?

 

「日本にはSG規格という安全基準があります。ただ、国内ブランド以外でこの規格の認証を受けていない商品も多いため、その際は第三者機関の安全認証や欧米の安全基準(CE)に則ったものが安心です。なお、海外製のヘルメット選びのときに注意してほしいのですが、頭囲だけでなく頭の形も重要です。欧米人は縦に長くて、アジア人は横に丸い形をしているので、頭囲だけで選んでしまうと、サイズは合っているのにきつくて入らない、ということもよくあります。ですから、できれば試着してから買うのが安心です。

 

サイズ感自体は、ダイヤル式の調整機能がついていたり中のパットが取り外しできるものもあるので、緩すぎないものを選ぶといいでしょう。あごひもは指一本分隙間を残してしっかり締めるようにしてください」

 

人気は帽子タイプや丸形のシンプルなもの。おすすめヘルメット5選

最近のヘルメットは、街でかぶる帽子のように洋服にも合うデザインのものが人気です。また、BMXやスケートボードの選手がかぶっているようなコロンとしたシンプルな形のものも人気があります。ただ、これは穴が少ないものもあるので、蒸れが気になる場合は通気口がたくさん開いているものがおすすめです。最近のトレンドも踏まえ、遠藤さんにおすすめのヘルメットを紹介していただきました。

 

・バックリボンがポイントのエレガントなシルエット

↑写真提供=オージーケーカブト

 

オージーケーカブト「シクレ
9240円(税込)

広めのツバで日差しの気になるシーズンも安心。パターンにこだわった立体感のあるデザインとバックのリボンが上品です。夜間の走行にも安心のリフレクター素材も使われています。54〜57cm(350g)

 

・アウトドアにもぴったりなカジュアルなデザイン

↑写真提供=オージーケーカブト

 

オージーケーカブト「デイズ
9240円(税込)

アウトドアタイプのデザインで、広めのツバが日差し対策にも効果的。フチに仕込んだワイヤーで型のニュアンスを好みに応じて造れます。後ろにリフレクター素材も使用しています。54〜57cm未満(325g)

 

・スポーツタイプのタウン用ヘルメット。マットな色合いが個性的

↑写真提供=オージーケーカブト

 

オージーケーカブト「キャンバス・アーバン
7040円(税込)

通勤や街中での自転車移動に最適なバイザースタイルのアーバンヘルメットです。通気性がよく、フロントパッドの機能を兼ね備えたキャンバスバイザーを装着できます。後部と左右に大きなリフレクター付き。M / L(290g)

 

・人気のクラシックモデルを受け継ぐスタイリッシュなデザインが魅力

bern(YTS STORE)「BRENTWOOD 2.0
1万5400円(税込)

後頭部までしっかりカバーするデザインで、耐衝撃性に優れ、さらに快適な使い心地を実現。インナーはゴムを用いた伸縮可能素材を採用し、フィット感も抜群です。バイザーは取り外しが可能。M~L(345~390g)

 

・ヘアスタイルを選ばない快適なヘルメット

クミカ工業「ドルフィン
4950円(税込)

後頭部にヘア用の空間があり、束ねた髪のゴムのあたりの締め付けを軽減します。通気孔は前後のみに配置し雨の降込を最小限に。額部分は取り外して水洗いできて清潔です。あご紐はワンタッチでサイズ調整可能。S-M(約430g)、M-L(約460g)

 

自転車に乗るときにヘルメットをかぶるのは、義務ではなく、自分の命を守るために必要だから。自転車ルールを守って、安全で快適に自転車を利用したいですね。

 

プロフィール

自転車の安全利用促進委員会メンバー / 遠藤まさ子

自転車業界新聞の記者や自転車専門誌の編集などを経てフリーランスへ。自転車のルールや製品情報などに精通し、自転車の安全な利用方法や楽しみ方を各種メディアで紹介している。
自転車の安全利用促進委員会 HP

 


提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」

新型「ルノー カングー」は観音だし広くなったし静かだしココロオドルぜぃ!

ルノー・ジャポンは、広大な室内空間と豊富なユーティリティ、そしてひと目でカングーとわかるデザインが特徴の「ルノー カングー」をフルモデルチェンジ。すでに全国のルノー正規販売店で販売をスタートしています。

 

新型カングーはもともと広かった室内空間がさらに広がり、2種類のパワートレーン、先進の運転・駐車支援システムを採用。「LUDOSPACE(ルドスパス)=遊びの空間」が「もっと遊べる空間」へと進化しています。

 

大きく進化したポイントを紹介!

【その1】快適で楽しい時間を過ごすためのインテリア

形状が見直されたフロントシートは一回り大きくなり、サポート性も向上しています。3座独立タイプ、6:4分割式リアシートには、大人3人がしっかりと乗車することが可能。

 

さらに新型カングーでは、静粛性が大きく向上しています。ダッシュボードには3層構造の防音材を使用し、エンジンルーム、前後サイドドアにも防音材を追加。全ての窓ガラスの厚みも増しました。この結果、可聴音声周波数が10%向上し、室内での会話が聞き取りやすくなっています。室内での会話が弾むこともカングーの特徴ですから、この点は嬉しいポイント。

 

【その2】たくさん積めて、自在に使える

新型カングーのボディサイズは、全長が4490ミリ、全幅が1860ミリ、全高が1810ミリと、前モデルに比べて全長が210ミリ長く、全幅が30ミリ大きくなりました。ホイールベースは2715ミリと前モデルに比べて15ミリ長くなりました。最小回転半径は5.3メートルです。

 

この大きくなった全長によって、荷室の床面長も通常時で1020ミリ(前モデル比+100ミリ)、後席を折りたたむと1880 ミリ(+80ミリ)と拡大。これに伴い荷室容量は通常時で775リッター(前モデル比 +115リッター)、後席を折りたたむと2800 リッター(前モデル比+132リッター)に、荷室の積載量が大きく増えました。

 

数字が並びましたが、端的に言うと、たくさん荷物を乗せられて、居住空間も広くなってもっと快適になっています。

 

【その3】直噴ガソリンターボとディーゼルエンジンの2タイプ

搭載されるエンジンは、新たに1.3リッター直噴ガソリンターボエンジンと1.5リッターディーゼルターボエンジンがラインナップされ、好みに合わせて選ぶことができます。1.3リッター直噴ガソリンターボエンジンは、1600rpmの低回転から240N・mの最大トルクを生み出し、最高出力131PS/5000rpmを発揮します。

 

一方の1.5リッターディーゼルターボエンジンは、最高出力116PS/3750rpm、最大トルク270N・m/1750rpmを発揮します。どちらのエンジンも、組み合わされるトランスミッションは高効率な電子制御7速AT(7EDC)です。

 

ドライブを安心して楽しめるよう、アダプティブクルーズコントロール、レーンセンタリングアシスト、アクティブエマージェンシーブレーキ。そして、日本導入モデルでは初となるエマージェンシーレーンキープアシスト、ブラインドスポットインターベンションなどの先進の運転・駐車支援システムが、数多く装備されま した。

 

特別仕様車で心躍る!

新型カングーの発売を記念し、ルノー カングー クレアティフの特別仕様車 ルノー カンクグー プルミエール エディションを同時に販売。ルノー カングー プルミエール エディションは、 ルノー カングー クレアティフには設定のないボディカラーのブラウン テラコッタ M、グリ ハイランド M、 ブルー ソーダライト M にペイントされた、特別なモデルです。

 

■ガソリンモデル

ルノー カングー インテンス 395万円(税込)

ルノー カングー クレアティフ 395万円(税込)

ルノー カングー ゼン(受注生産車) 384万円(税込)

ルノー カングー プルミエール エディション(特別仕様車) 400万5000円(税込)

 

■ディーゼルモデル

ルノー カングー インテンス 419万円(税込)

ルノー カングー クレアティフ 419万円(税込)

ルノー カングー プルミエール エディション(特別仕様車)  424万5000円(税込)

 

新型カングーで何と言っても嬉しいのは、観音式のバッグドアが新型にも採用になっている点。本国フランスの乗用モデルはハッチバック式になっており、商用モデルのみに搭載されており、日本だけのスペシャルな使用になっています。

 

また、黒のバンパーも本国では商用モデルのみの設定となっているので、従来モデルのカングーに惹かれていた人は引き続き購入できる内容になっています。

 

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車載器がスシローの混み具合を教えてくれる!? パイオニア「NP1」大型アプデをレポ

パイオニアは2月27日、“会話するドライビングパートナー”「NP1」の4回目となる大型アップデートを実施しました。10万件を超える施設データと連携できるスポット情報を追加し、音声での案内や専用アプリ「My NP1」上での画像案内がより充実した形で案内されるようになりました。

↑“会話するドライビングパートナー”「NP1」の車内側。音声でのアシスタントが受けられるマイクやスピーカーも備わる

 

追加スポット情報は10万件以上。スシローの混雑状況もわかる

今回のアップデートで追加された施設データは、「JTB/JTBパブリッシング」「あきんどスシロー」「アクトインディ」が提供する3つのデータです。

↑最新アップデート終了後のメインメニュー。上から3番目の列に「るるぶトピック」「スシロートピック」「いこーよトピック」が追加された

 

JTB/JTBパブリッシングで提供されるのは、旅行ガイドで知られる「るるぶDATA」の全国4万3000件以上の観光情報と詳細な施設情報とデータ連携した「観光情報レコメンドサービス」です。観光地における推奨スポットやお店、周辺情報を「NP1」の音声やスマートフォンの「My NP1」アプリの画面を通じて、あらかじめ指定したカテゴリーに合わせて知らせてくれます。

↑ドライブトピック「るるぶトピック」の設定画面。紹介して欲しいジャンルをあらかじめ選んでおくことができる

 

提供される情報には画像も含めたPOI(Point of Interest:店舗や施設など地図上に表示するポイントを指す)情報が含まれており、目的地設定のほか、履歴を振り返って次のお出かけプランを作成するのに役立てることができます。

↑ドライブトピックには画像情報も含まれ、気に入った地点は後から検索しやすいようブックマークしておくことができる

 

あきんどスシローとの連携では、自車位置周辺の店舗情報やその店舗のキャンペーン情報を提供するものです。この機能でメリットが大きいと思われるのは、店舗の混雑情報がリアルタイムで確認できること。こうした最新の情報に基づいた情報が提供されるのは、通信機能を持つNP1ならではの機能といえ、効率的なドライブ計画にプラスとなることでしょう。

↑ドライブトピック「スシロートピック」。スシロー近くを訪れると、最新のキャンペーン情報やトリビアを紹介する

 

↑「スシロートピック」でキャンペーン情報を表示した画面

 

子ども向けファミリー向けイベント情報も充実

そして、特に子どもを持つ家族に役立ちそうなのが「アクトインディ」が手掛けるファミリー向けお出かけ情報サイト「いこーよ」との連携です。このサイトでは親子で平日にお出かけできる遊び場、連休や週末のファミリー向けのイベント情報が満載されており、そこにはおむつ替え台や授乳室、ベビーカー貸し出しの情報も含まれます。自車から半径1.5km圏内で子ども向けとして人気が高い施設情報を提供され、子どもへのサプライズとして役立つ可能性大です。

↑ドライブトピック「いこーよトピック」。あらかじめ登録した「いこーよ」アカウントと連携することも可能だ

 

これらのサービスは、普段使っている生活圏から離れて走行すると、自車位置周辺にあるおすすめスポットを提供するものです。自動的にNP1より音声と「My NP1」アプリによる画像を使って提供されるのはこれまでと同様。

↑NP1では音声案内と専用アプリ「My Np1」を組み合わせたルートガイドも行われる

 

また、パイオニアとJTB/JTBパブリッシングの3社は2月27日、観光DXの取り組みの一環として、2022年より熊本県阿蘇地域において観光DXに関する実証実験を実施してきていることも発表しました。「観光情報レコメンドサービス」はその知見を活かしたものとなり、今後は観光DXに向けた取り組みを通して、「NP1」から取得するユーザー行動情報を統計化、定量分析。これにより、旅行者の観光体験価値の向上や地域の活性化につながる新たなサービスやビジネスを創出することに役立てていく計画です。

 

音声での提案方法をより使いやすくすることも検討中

こうした中、アップデートが実施される直前の2月22日、アップデートのベータ版に試乗することができました。そこで開発者から聞くことができたのは、情報の提案を5分間隔に押さえたというものです。実は、これまで情報が多いエリアでは、案内される件数が多く、あらかじめ対象をカテゴリー別に絞り込んでもそれが煩わしく感じることもありました。そこで今回のアップデートに伴い、提供間隔を5分ごととしたのです。

↑最新アップデートしたNP1でデモ走行中。スポット情報を受信すると音声での告知と、スマホの「My NP1」では施設の画像情報が表示された

 

しかし、試乗してみると情報の提供はもっと短い間隔で行われています。5分ごとに絞り込まれているんじゃないのか? そう思い、開発者に訊ねると「5分ごとの間隔をおいているのはアプリごとであり、たとえばJTBの情報の後にアクトインディのスポット情報があった場合はその限りではない」とのこと。これにより、バランス良くスポット情報の提供が行われるとのことでした。

 

また、情報の読み上げは施設名からその詳細までを一気に読み上げられるのはこれまでと同じです。個人的には「それが煩わしさを感じさせる要因となっているのではないか?」と思い、開発者に質問すると「実はそのプランも構想に入っており、それを反映できるよう検討していきたい」と回答してくれました。こうした使い勝手の部分にも通信によって更新ができていくのもNP1ならではのメリットなのです。今後に期待したいですね。

 

“会話するドライビングパートナー”「NP1」は、通信型ドライブレコーダー、スマート音声ナビ、車内Wi-Fiなど多彩な機能を一つのボディに搭載したAI搭載通信型オールインワン車載器として、2022年3月に発売されました。通信によるアップデートにより、ユーザーは購入後も継続的に使い勝手や体験価値を向上させていくことができるのがポイントで、今回のアップデートもその機能を活かしたものとなります。

↑“会話するドライビングパートナー”「NP1」の前方側。カメラを通してドライブレコーダーとしての役割も果たす

 

 

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メルセデスのEVにようやく主役が登場! 最高級EVのベンツ「EQS」に試乗した感想は。

長年、数多くの高級車を試乗レポートしてきた清水草一が、「これは謎の円盤だ!」と言うクルマ。それは、近年モデルラインナップにEV(電気自動車)を増やし続けてきた、メルセデス・ベンツの最新EV「EQS」だ。メルセデス・ベンツでは、車名のアルファベットで車格が表されており、「S」はフラッグシップモデルであることを示す。世界的ラグジュアリーメーカーによる、最高級EVの仕上がりとは?

 

■今回紹介するクルマ

メルセデス・ベンツ/EQS

※試乗グレード:EQS450+

価格:1578万円~2372万円(税込)

 

最高級EVの仕上がりは、例えるなら「謎の円盤」?

これまで試乗したメルセデスのEVは、どれもこれも、いまひとつな印象だった。ボディ骨格はガソリンエンジンモデルの流用だったし、航続距離も意外と短くて、実質300kmくらいしか走れない。ベンツの威光で効率がよくなるわけではないので、航続距離はバッテリー容量にほぼ比例する。贅沢なベンツだからこそ、贅沢装備が電気を食っているのか? などと想像していた。

 

ついでに書くと、ガソリン/ディーゼルエンジン搭載の新型Sクラスの印象もイマイチだった。これまでのSクラスのような、圧倒的な何かがなく、「先代のほうが凄かったなぁ」と感じさせた。メルセデスはすでに電動化に舵を切っている。だから内燃エンジン専用車であるSクラスの開発に手を抜いたのだろう。が、しかし肝心のEVモデルもいまひとつ揃い。「これで大丈夫なのかメルセデス!」みたいなことを密かに思っていた。

 

そんな状況で、ようやく主役が登場した。メルセデスの新しいフラッグシップ、EQSである。このクルマこそが、新しいSクラスなのだろう。いわゆるSクラスは、出たばっかりで「お古」になった。デザインを見た瞬間に、それが実感できる。EQSのフォルムは、横から見ると「謎の円盤」である。全長はしっかり5.2m以上あるが、前後の部分が極端に短く、どちらもなだらかに傾斜したどら焼き風味(どら焼きと書くと語感がアレなので、やはり謎の円盤とさせていただきます)。

↑全長5225×全幅1925×全高1520mmを誇る。ボディカラーは全10色から選べます

 

超古典的な超高級セダンの象徴・Sクラスが、謎の円盤にリボーンしたのだから、時代の変化を感じざるを得ない。謎の円盤フォルムには理由がある。EVのモーターは、内燃エンジンに比べると断然コンパクトだ。逆にバッテリーは、できるだけ車体の中央部分に薄く広く敷き詰めたい。前後の短い謎の円盤形状になるのは、機能の要請なのである。

 

ライバルであるBMW「i7」が、内燃エンジンを積む7シリーズとボディを共用し、超伝統的な四角っぽいセダンフォルムで勝負をかけているのとは対照的だ。「この対決、どっちが勝つのか?」、外野としてはそこも興味深い。

↑ルーフからなだらかに繋がるクーペのようなリアエンドは官能的なデザインとする一方、テールゲートにスポイラーを設けることによりスポーティな印象も持ち合わせています

 

話がそれた。EQSのドアを開けようとすると、ドアと一体化していたドアノブが、ドライバーを手招きするようにせり出してきた。さすが謎の円盤。ドアノブを引いて運転席に座ると、これがまた謎の円盤だ。運転席から助手席まで、3つの液晶パネルをガラスのカバーが覆っている。これまでも、左右にながーい液晶パネルは存在したが、EQSのソレは、インパネ形状の新しさと相まって、明らかにこれまでとは別の何かに見える。つまり謎の円盤のコクピットに見えるのである。

 

この「MBUXハイパースクリーン」、デジタルインテリアパッケージというオプションに含まれていて、価格は105万円。さすがSクラス! というお値段だが、これを付けないと、インパネのレイアウトは内燃エンジン車のSクラスと同じような感じになってしまう。EQSのお客様は、もれなくこのオプションを注文するに違いない。「これがついてなければ謎の円盤じゃないゼ!」なのだから。

↑MBUXハイパースクリーンは、コックピットディスプレイ(12.3インチ)、有機ELメディアディスプレイ(17.7インチ)、有機ELフロントディスプレイ(助手席・12.3インチ)で構成。3つのディスプレイを1枚のガラスで覆うことで、幅141cmにわたる広大なスクリーンとしている

 

「宙に浮かんで走ってるみたい!」

今回試乗したEQSは、後輪駆動のEQS450+だ。EQSには、4駆の高性能版「AMG EQS53 4MATIC+」も存在するが、今回はお安いほうのグレードだ。450+は、システム最高出力333PS、53 4MATIC+は658PS。ほぼ2倍もの差がある。お値段も1578万円対2372万円と、かなりの差がつけられている。

 

ちなみにEQSのバッテリーの容量は、どっちも107.8kWh。私が「意外と航続距離が短いなぁ」と感じた「EQA」は66.5kWhだから、2倍までは行かないが、だいぶ差がある。おかげでEQS450+の航続距離は、カタログ上700kmを誇っている。実用上も500kmくらいは行くだろう。

 

で、実際に走らせたイメージはどんなものかというと、これまた「謎の円盤」としか言いようがなかった。333馬力の加速は、EVとしては控え目なほうだ。日産「アリア」やヒョンデ「アイオイック5」あたりとも大差はない。しかし、アクセルを全開にする機会なんて、そうそうあるもんじゃないから無視していい。それより重要なのは、フツーに走って、どれくらい高級感があるかだ。なにしろこれは、メルセデスの最高級セダンなのだから。

↑コックピットの機能と操作は基本的にSクラスと同様。EQS 450+に標準装着されるステアリングは本革巻

 

EQS450+の乗り味は、高精度感がすさまじい。「これぞメルセデスのフラッグシップ!」と唸るしかない。新型Sクラスに手を抜いたぶん、きっちり手をかけた印象である。

世のEVの多くは、SUV風のボディ形状+バッテリーによる重量増加+重心の低さによって、自然と硬く締まったスポーティな乗り味になりがちだ。それはEQA等のメルセデス製EVも同じだった。

↑車両重量は2530kgに達します。ホイールは、21インチ10スポークデザイン

 

しかしEQSはまったく違う。全高の低いセダンフォルムの超ロングホイールベースボディに、連続可変ダンピングシステム「ADS+」を備えた標準装備のエアサスペンションによって、謎の円盤としか言いようのない、しっとり上質な乗り味が実現しているのである。いや、「しっとり上質」と書くとどこか旧世代的なので、「宙に浮かんで走ってるみたい!」と訂正させていただきます。

 

ライバルのBMW・i7は、ロールスロイスを彷彿とさせる超フンワリした超フラットライドな新テイストで勝負しているが、それとはまったく趣の違う、これまで経験したことのない謎の円盤テイストなのである。先ほどから謎の円盤を連呼しているが、「結局謎の円盤ってナニ?」と思われることでしょう。でも、乗ってみればわかります。「これは謎の円盤なんですヨ!」、さすがメルセデスの新しいフラッグシップ。

 

SPEC【EQS450+】●全長×全幅×全高:5225×1925×1520㎜●車両重量:2530㎏●パワーユニット:電気モーター●最高出力:333PS(245kW)●最大トルク:568Nm●WLTCモード一充電走行距離:700㎞

 

 

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車格と装備内容を考えてみれば、コスパも高いトヨタ「カローラ クロス」

2022年の普通車販売台数ランキングで2位となったのはトヨタ・カローラだが、その販売の中心となっているのは、ミドルサイズクロスオーバーSUVの「カローラ クロス」だ。発売から1年以上が経過した今、改めてその魅力を探ってみたい。

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ/カローラ クロス

※試乗グレード:ハイブリッドZ(2WD)

価格:199万円~319万9000円(税込)

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50年以上売られてきた超ロングセラーモデル「カローラ」

現代の若者たちは知らないかもしれないが、トヨタの「カローラ」といえば、一時期日本で最も売れていたクルマであり、日本を代表するスタンダードカー、そして50年以上売られてきた超ロングセラーモデルでもある。売れるクルマというのは、つまりそれだけの魅力を備えているとも言えるが、万人受けするつくりを「平凡でつまらない」と評する人もいた。

 

しかし、現代のカローラの印象はどうだろう。現行型は、2018年にハッチバック(カローラ スポーツ)が登場し、約1年後にセダン(カローラ)とワゴン(カローラ ツーリング)が発売されている。サイズは3ナンバー化し従来型より大きくなったものの、切れ長のヘッドライトやスマートなボディラインがモダンにまとめられた。さらに、ネット接続機能を特徴とした「コネクテッドカー」として、新世代モデルの象徴として誕生した。

 

そして、これら3つのボディタイプから約3年遅れで2021年に追加されたのが、このカローラ クロスである。なんといってもカローラとしては歴代初のSUVモデルということで注目を集めたが、SUVブームももう10年近く続いているので、どうして今まで出なかったのか不思議なくらいだった。ちなみに、前年の2020年にはタイで先行販売されているが(日本仕様とはデザインが若干異なる)、先に東南アジアの国で販売されるというのは国産車としては珍しい売り方である。

↑カローラ クロスのボディカラーは全8色。写真のプラチナホワイトパールマイカは、太陽の光に反射するたびに真珠のような輝きを見せる

 

カローラのクロスオーバーSUVモデル……つまり、「カローラ クロス」となるわけだが、当然SUVタイプならではの恩恵があり、アイポイントが高く、荷室もそれなりに大きい。他のカテゴリーのクルマと比べて最低地上高も高いため、さまざまなシーンでそれほど高低差を気にせずに走り抜けることができるのもSUVらしい魅力である。

 

顔つき(フロントフェイス)については、現行型カローラの特徴をしっかり受け継いでいる。ボディサイズは、同社のSUVとしては、「C-HR」よりすこし大きく、「RAV4」より少し小さい。2016年末に発売されて以降、若干、販売にかげりが見えてきたC-HRを補完する形で、同等のミドルサイズモデルとしてラインナップされた。

↑ヘッドランプは、Bi-Beam LEDランプと2灯のバルブランプを採用しています。フロントフォグランプはLED

 

アニメチックでチャレンジングなデザインが特徴のC-HRに対して、このカローラクロスのデザインは、非常にオーソドックスだ。現代のSUVらしく、オフロードっぽさより都会的な雰囲気で、筋肉質でたくましく躍動的なボディラインや、大きなグリルにツリ目のヘッドライトが組み合わされている。前後フェンダーの盛り上がりなどもあるが、これらは近年のSUVのトレンドであり、どこか特別奇抜なデザインがあるわけではない。正統派で、奇をてらわないよさがある。ここはいい意味で「カローラ」なのだ。

↑1.8Lハイブリッド車(2WD)は、225/50R18タイヤ&18×7Jアルミホイールを履く

 

ネガティブな要素は見当たらず、すべてが快適!

インテリアは、水平基調のデザインでバランスがよく、乗員を安心させてくれる心地よさがある。質感はそれほど高いとは言えないが、決して低くはない。なにより使い勝手がよく、使用感がいい。なお、外から見るとそれなりに大きさを感じたが、実際に車内へ乗り込んでみると、車体はそれほど大きく感じられず、運転しやすい。

↑ディスプレイオーディオはセンター上方に配置。ドアの解錠・施錠、ドアの開閉時には照明が自動的に点灯・消灯し、乗る人を優しく迎える「イルミネーテッドエントリーシステム」

 

前席はそれなりに広くて窮屈さはない。シートは立派な仕立てで身体を包み込むような形状をしている。後席はもう少し前後長があれば足もとも快適だが、同クラスのSUVでは広いほうである。リクライニング機構が付いているのは、腰が痛くなりがちな筆者のような中年世代にはありがたい(笑)。

↑本革とファブリックのコンビシート。パワーバックドアや運転席の電動シートが標準装備なのはZグレードだけです

 

↑膝まわりに十分なスペースを確保し、座り心地にこだわったリヤシート

 

↑電動のサンシェードがついたサンルーフは、ZとSグレードのみのオプション。開口部がかなり大きくデザイン性も高い

 

全幅が広めなこともあってか、走りはずっしり安定していて、重心の低さと全体のバランスの良さを感じさせるが、この走りの安心感はミドルサイズモデルにしては珍しい。今回の試乗車が18インチタイヤ装着グレードだったためか、多少路面のデコボコを拾うような感覚もあるが、うまく足まわり(サスペンション)で処理してくれて、乗員に嫌な印象は与えない。今回は高速走行も試してみたが、高速巡航時の安定感も高めで、背の高いSUVらしからぬ安定感があった。

↑ハイブリッド車の2WDはWLTCモード26.2km/Lの低燃費。E-FourでもWLTCモード24.2km/Lを実現しています。また、ガソリン車はWLTCモード14.4 km/Lとなっています

 

ラインナップされるパワーユニットは、今回試乗した1.8Lエンジンベースのハイブリッドモデルと同じく1.8Lエンジンのガソリンエンジンモデル。ハイブリッドモデルには4WDの設定もある。ガソリンエンジンモデルと比べて多少高額だが、販売の主流はやはりハイブリッドモデルとなっているようだ。

↑高出力と燃費を同時に追求するバルブマチックを採用

 

ある意味、日本の中心だった「カローラ」のど真ん中。ネガティブな要素は見当たらず、すべてが快適で扱いやすく、乗員を困らせるようなことがない。車格と装備内容を考えてみれば、コストパフォーマンスも高い。いろいろと「クセが強い!」時代だが、それが苦手な人にはぴったりのモデルだ。

↑リヤシート通常時でも、ゴルフバッグが4個入るラゲージスペース。最大荷室容量は487L

 

↑後席を倒すと、奥行き1885mm×最大幅1369mm×高さ957mmと広いスペースに。ロードバイクも積載可能です

 

SPEC【ハイブリッドZ(2WD)】●全長×全幅×全高:4490×1825×1620㎜●車両重量:1410㎏●パワーユニット:1797cc直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200rpm[モーター:フロント72PS/リヤ7.2PS]●エンジン最大トルク:142Nm/3600rpm[モーター:フロント163Nm/リヤ55Nm]●WLTCモード燃費:26.2㎞/L

 

撮影/茂呂幸正 文/安藤修也

 

 

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「日産氷上試乗会」トレース性に優れたe-4ORCEの走行性能に脱帽!

2023年1月中旬、この時期の恒例行事となった日産の氷上試乗会が開催されました。今回の目玉は、同社の新たな4WDシステム「e-4ORCE」搭載車がこの条件でどう反応するかを体験できることです。本記事ではe-Powerの「エクストレイル」と100%EVの「アリア」による、その走りをレポートします。

↑長野県蓼科にある女神湖で開催された日産自動車の氷上試乗会。日産の電動車をはじめ、「フェアレディZ」や「GT-R」など日産の名車たちが勢揃いした

 

摩擦係数が低い中を多彩な試乗コースでチャレンジ

この試乗会は、湖(長野県・女神湖)の表情に作られたコースを走行して、車両の制御や運転技術を知る場として日産が毎年開催しているものです。雪上でさえ滑りやすいのに、氷上ということで滑りやすさはそれ以上。スタッドレスタイヤを履いているものの、この環境下で日産の最新4WDシステム「e-4ORCE」がどんな制御を見せてくれたのかが氷上試乗のポイントとなります。

 

用意された試乗メニューは基本的にこれまでと同様、直線路や大小のコーナーを組み合わせた往復コースと、定常円と8の字コース、それにスラロームが体験できるようになっていました。一般道とは違い、安全が確保された上で走行できるため、仮にスピンしても、横滑りしても問題は一切なし。この普通では得られない環境下で思いっきり車両の性能を確かめることができるというわけです。

 

結論から言うと、e-4ORCEの高い走行能力には驚きを隠せなかったというのが正直な感想です。それは極端に摩擦係数が低いこの条件下でも、驚くほどの安心感で走ることができたからです。これまでドライ路面やウェット路面での走行性能の高さは体験していましたが、正直ここまでとは思っていませんでした。

 

2tを超えるヘビー級モデルが氷上を意のままに走る「アリア」

まず紹介するのが、2022年6月にデビューしたアリアのe-4ORCEモデルです。このクルマは前後に最大出力218PSものハイパワーなモーターを搭載しつつ、車重は2.2tというヘビー級モデル。従来の感覚なら、この圧倒的なパワーで攻めまくったところで車重による慣性が働いてあっという間にコントロールを失う。そんなイメージが湧いてきます。ところが走り出すとそんな印象は微塵も感じさせなかったのです。

 

発進時こそタイヤはスリップしますが、速度が上がるにつれて車両はすぐに方向をつかんでスムーズに走って行きます。滑りやすい路面ではアクセルを不用意に踏めば、タイヤが空転するばかりで思うように前へ進むことはできません。しかし、アリアは舗装路に比べれば速度の上がり方こそ緩やかですが、トラクションコントロールの制御能力が高く、アクセルを踏む量に応じて速度を上げていくことができたのです。

 

ハンドルを切った時の動きも正確で、不安を感じることはほとんどありませんでした。さすがに速度域を上げ過ぎると横滑りが始まりますが、控えめに走れば思った通りのコースを正確にトレースして見せたのです。ここまで車両の挙動が乱れず、安定した走りが得られるとは思ってもみませんでした。

 

しかも、日産お得意の「e-Pedal」という回生ブレーキを併用すればコーナーに差しかかっても無理なく減速でき、スリップの発生を最小限に抑えることができるのです。滑りやすい路面ではブレーキの踏み方に神経を使うものですが、e-Pedalを使えばそんな不安から解放されるというわけですね。

↑e-4ORCEを4WDシステムに組み込んだバッテリーEVのアリア

 

高い着座位置、フロントヘビーもなんのその、安心して氷上を走行「エクストレイル」

一方のエクストレイルはどうでしょうか。エクストレイルといえば、初代よりアウトドア系4WD車として高い走破性を発揮するクルマとして根強い人気を保ってきたモデルで、新型はその4代目モデルとして2022年7月にデビューしました。特に4代目は全車がe-POWERによるモーター駆動となり、4WDシステムとしてe-4ORCEを採用したのが大きなポイントになります。

 

アリアと比較して大きく違うのは着座位置です。エクストレイルはもともとオフローダーとして誕生しているだけに、その分だけ腰高感は否めません。加えてフロントには発電用のガソリンエンジンを備えたことにより、前後の重量バランスでもアリアよりも不利となるのは明らかです。

 

ただ、そんな心配をよそに、エクストレイルは発進から減速、さらにはコーナリングでもアリアに迫るコントローラブルな動きを発揮してくれました。発進時の安定した加速はアリアにも劣らず確実性があり、しっかりと方向を見据えて進む感じです。コーナリングでのハンドリングも速度さえ注意すれば、リアがしっかりと駆動力を伝えてくれ安心して曲がれます。高い着座位置からは想像もできない安定した走りは、やはりe-4ORCEによる制御がここにあるからこそ。そう実感させられた次第です。

↑受注の約9割がe-4ORCEを選んだというシリーズ型ハイブリッドの新型エクストレイル

 

「e-4ORCE」が発揮する緻密なまでの制御の秘密とは?

では、どうしてe-4ROCEがこのような制御を発揮してくれるのでしょうか。実は同じ電動4WDを採用する「ノート」「セレナ」ではe-4ROCEと呼びません。日産車でも4WD機構にe-4ROCEを搭載するのはアリアとエクストレイルだけなのです。

 

日産はこのe-4ROCEについて、「これまで日産が培ってきた4WD制御技術、シャシー制御技術に、電動化技術で革新した新しい駆動システム」としています。これにより、日常走行からワインディング、滑りやすい路面まで、すべての走行シーンで意のままに走れる能力を発揮することになりました。

 

そのポイントとなるのが「協調制御」です。これまで油圧ブレーキや回生ブレーキのコントロールと、4WDの制御は別々のECUが担ってきました。そのため、それぞれがセンシングして入力された事象に応じて対応することとなり、互いの連携が十分でないまま制御することとなっていたのです。

 

それに対しe-4ROCEでは、シャシー全体の制御を一つの目標に向かってECUが一括して制御することとし、互いの連携もスムーズに行われるように進化。これによって路面の状況に応じた緻密な制御が可能となり、ドライ路面から滑りやすい路面まですべての路面に対して安心して走行できるようになったというわけです。

 

以前、エクストレイルで連続するドライ路面でコーナーを走り切った際、思い通りのコースを正確にトレースしていく様に、まるで自分の運転が上達したようにも感じました。その感覚が氷上でも同じように発揮されたのには本当に驚きです。聞けば4代目エクストレイルの販売比率は9割がこのe-4ORCEとのこと。もし、この走りを体験して選んでいるとしたら、エクストレイルの購入者は見識が相当に高い!  ぜひ、e-4ORCEの素晴らしい走りを堪能していただきたいと思います。

 

他の日産車種も紹介!

↑後輪駆動のフェアレディZ。VDCをOFFで不用意に踏み込むと簡単にスピン!コントロールが一番難しく、楽しくもあったクルマだ

 

↑カーボンセラミックブレーキやカーボン製リアスポイラーなどを装着した、特別仕様車GT-R プレミアムエディション Tスペック

 

↑「オーラNISMO」は2WDのみの設定。2WDであってもボディの軽さも手伝って、切り返しはとてもスムーズ。思ったよりもラクに走行できた

 

↑「オーラ」の4WD車。強烈な回生ブレーキの効きによって氷上でもラクにコントロールできたが、滑り出す感じが結構早い

 

↑バッテリーEVの軽自動車「サクラ」。2WDながら、車重の重さにより高いグリップを発揮していた

 

↑「キックス AUTECH」の4WD。eペダルにより。e-4ORCEほどの連続的な滑らかさはないものの、アクセルに敏感に反応して加減速。安定性は高い

 

 

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ホンダ「ヴェゼル」。人気車種のデザインや装備に隠された魅力を改めて深堀り!

初代モデルが大ヒットしたホンダ「ヴェゼル」だったが、2021年に登場した新型モデルは、デザインイメージを一新。ライバルとは一線を画するシンプル&クリーンなデザインで、コンパクトSUV市場でも目立った存在となっている。本稿ではそのデザインや装備に隠された魅力を深堀りする。

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ/ヴェゼル

※試乗グレード:e:HEV PLaY

価格:227万9200円~329万8900円(税込)

 

新型ヴェゼル、他車との違いはデザインの妙にある

コンパクトSUV市場はここ数年ずっと活気に満ちている。なかでもホンダのヴェゼルは、2013年に登場した先代型がブランニューモデルであったにも関わらずヒット作となり、2014年から3年連続で新車販売クラスナンバーワンに輝いた。手頃なサイズと価格、そしてアクのないデザイン、室内の広さなどが人気を博した要因だ。

 

そんなヴェゼルが新型へフルモデルチェンジしたのは2021年だが、現在のコンパクトSUV市場にライバルは多く、トヨタの「ヤリスクロス」や「C-HR」、日産「キックス」などが存在している。では、この市場で新型ヴェゼルが打ち出した違いが何かといえば、それはデザインの妙だ。

 

切れ長のヘッドライトというのは現代SUVのトレンドでもあるが、ボディ同色グリルは新型ヴェゼルの真骨頂である。まるでグリルが存在しないように見えて、無機質な感じで無印良品っぽいというか、シンプルでクリーンなイメージだ。初めは違和感を覚える人もいるかもしれないが、見慣れてくると、品がよく、知的に見えてくる。

 

一方で、やはりクルマには目立つグリルがあってこそ、みたいなユーザーも一定数存在する。その証拠に、オプションパーツでは、ボディ色と異なるブラックのグリルが人気らしい。ないものねだりという人もいるだろうが、これはつまり、ボディ同色グリル以外の部分でもヴェゼルのデザインが優れていることの証明にほかならない。

↑e:HEV PLaY専用カラーバーオーナメント付フロントグリル

 

ボディサイドには、水平基調でまっすぐなウエストラインがフロントからリアまで伸びている。しかもこれが結構高い位置に設定されていて、車両全体の重心が高いように感じられる。しかし、スポーツカーでは重心が高く見えるとカッコ悪いが、ヴェゼルのようなSUVでは問題ない。むしろ重厚さが感じられて、乗員の安心感にもつながる。

 

さらに、サイドラインからつながるように高い位置に配置された、左右につながった形状のテールランプも特徴的だ。ランプ内はサイバーなデザインが施されていて、リアのアクセントになっている。また、その上のリアウインドウはかなり傾斜がつけられていて、クーペライクなスタイリングになっている。横から見るとクルマが前傾姿勢をとっているようにも見えるが、このアンバランスさがヴェゼルのおしゃれさを引き立てている。

↑エクステリアのデザインは、クーペライクなプロポーションを際立たせている。試乗車のボディカラーは、サンドカーキ・パール&ブラック

 

全体的に見てみると、ライバル車と比べて、端正なラインで、シンプルかつ品のある雰囲気にまとめられている。清潔感がありすぎて毒が足りないという人もいるようだが、他に似てない独自性という意味では頭ひとつ抜け出しているようにも感じる。

↑e:HEV PLaYは、18インチアルミホイール(ブラック+切削)+スチールラジアルタイヤを履く

 

室内は外観同様クリーンなイメージ

ウエストラインが高いがゆえ、室内スペースは狭そうにも見えるが、さにあらず。「フィット」譲りのセンタータンクレイアウトによって、車内には余裕が感じられる。また、リアシートは座面を跳ね上げてからシートバックを前方へ倒すことができるので、ラゲッジルームを拡張した際の床面がしっかりフラットになる。こういったところはSUVを趣味の道具として使う人にとって重要なポイントだ。

↑予約ボタンを押してクルマから離れるとテールゲートが自動で閉まる「予約クローズ」機能付き。個別の車両設定により、閉まった後に自動でキーロックさせることも可能だ

 

外から見ていると、なんだかボディが大柄に感じられる。たしかに先代モデルより全長と全幅は拡大されているものの(全高は低くなった)、しっかりコンパクトなモデルで、それはシートに座ってみると実感できる。ボディ全体の感覚は掴みやすいし、特別視界が悪いということもない。なお、インテリアデザインも、外観同様クリーンなイメージでまとめられていて好印象だ。

↑インテリアのデザインではしっかりと芯の通った「かたまり感」のあるソリッドなフォルムでSUVの力強さを表現

 

↑e:HEV PLaY専用のコンビシート(グレージュ)。シートサイドにオレンジのステッチをあしらった遊び心のあるデザイン

 

↑これはちょうどイイ! フロント左右に配置された「そよ風アウトレット」。風が体に直接当たることなく穏やかに頬をなでます

 

パワーユニットは、1.5Lガソリンエンジンと、同じく1.5Lベースのハイブリッドがラインナップされている。今回試乗したハイブリッドモデルは、アクセルを踏み込んでもそれほど加速感が鋭いわけではない。どちらかといえば穏やかで上質で、のんびり走ってちょうどいいクルマといった趣である。サスペンションはほどよい固さで乗り心地も上々。先代型と比べて静粛性は高くなっているし、心地よさという部分でしっかり進化を感じられた。

↑最高出力106PS/6000-6400rpm、最大トルク127Nm/4500-5000rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッターアトキンソンサイクル i-VTECエンジン

 

進化という部分では、先進運転支援装置の「ホンダセンシング」も最新バージョンが搭載されている。高速道路走行中に前走車との車間を自動でキープして走れるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は渋滞追従機能付きとなったことで、渋滞走行がさらに楽になった。標識認識機能で走行中の道路の制限速度を見落とすことも減り、先行車発進お知らせ機能は信号停車時に後方からクラクションを鳴らされるのを防いでくれる。

↑空力性能においては、F1マシンの設計・開発などを行なうHRD Sakuraの風洞実験施設を使い、コンパクトSUVトップクラスの空力性能を目指したという

 

売れ筋のカテゴリーであり、各メーカーから数多くラインナップされるコンパクトSUVのなかで、あえてヴェゼルを選ぶ人というのは、きっとシンプルな暮らしを好む、都会的で品のある人なんだろうなぁと思えてくるから不思議である。

 

SPEC【e:HEV PLaY】●全長×全幅×全高:4330×1790×1590㎜●車両重量:1400㎏●パワーユニット:1496cc直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:78kW/6000-6400rpm●エンジン最大トルク:127Nm/4500-5000rpm●WLTCモード燃費:24.8㎞/L

 

文/安藤修也 撮影/茂呂幸正

 

 

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米テスラ、36万台以上をリコール。自動運転システムが事故を起こす恐れから

米電気自動車メーカーのテスラは、完全自動運転システム(FSD)に事故を引き起こす恐れがあるとして、36万台以上にリコールを行うことが明らかとなりました。

↑テスラ車、36万台以上をリコール

 

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は「制限速度を超えたり、違法または予測不能なやり方で交差点を走行すると、衝突の危険性が高まる」 ことを理由として挙げています。

 

テスラの発表によると、リコール対象となるのは「完全自動運転ベータ版(FSDベータ版)ソフトウェアを搭載、または搭載待ち」の車種とのこと。具体的には2016年以降のモデルSとモデルX、2017年以降のモデル3、および2020年以降のモデルとされています。

 

NHTSAはテスラ車が高速道路で死傷者を出したり駐車中の消防車に衝突する事故が相次いだことから、2021年夏に自動運転システムの調査に乗り出していました

 

その調査は当初、予備的なものに留まっていたものの、昨年6月にエンジニアリング分析へと拡大 。それによりテスラにリコールを要求できるようになり、今回の事態に至ったしだいです。

 

米Reuters報道によると、テスラはこの問題を修正するため、ユーザーに無償でOTAアップデートをリリースする予定とのこと。今回の発表を受けて、16日(米現地時間)同社の株価は5.7%も下落しています。イーロン・マスクCEOはTwitterでも悪戦苦闘中ですが、テスラの仕事に集中できるよう、代わりの人材を急いで探す必要があるかもしれません。

 

Source:Tesla,Reuters
via:Engadget

人気の3ドア・トレノではなく“あえて”2ドア・レビンを選択!ドローン芸人「谷+1。」流、AE86の愉しみ方

1980年〜1990年代に登場した国産スポーツカーに注目が集まりつづけている中、とくに人気が高いのがAE86。『頭文字D』の影響で「AE86=スプリンター・トレノ3ドアハッチバック」とイメージする方が多いのですが、今回紹介するドローン芸人「谷+1。(タニプラスワン)」さん(以下、谷さん)の愛車はAE86なのにカローラ・レビンの2ドアクーペ。なぜ2ドアクーペを選択したかなど、愛車にまつわるお話をうかがいました。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:手束 毅

谷+1(たにぷらすわん)/1981年東京生まれ。ドローン芸人、ドローンパフォーマー

 

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『頭文字D』の影響でAE86に乗ったと思われたくなくて

──これが谷さんのAE86カローラ・レビン2ドアクーペ(以下、レビン)ですね。年式やグレードを教えてください。

 

 昭和60年(1985年)式のカローラ・レビンGTです。

 

──確か、レビンのGTは2ドアクーペにしか設定されていなかったグレードですよね。当時、人気が高かったGTVやGTアペックスとは何が違うのでしょう?

 

 リヤブレーキがディスクではなくドラムなところが大きな違いです。なぜドラムブレーキのGTを選んだかというと、僕はドリフトを楽しみたくてクルマを購入したんです。

その場合、ドラムブレーキのほうが曲がりやすいんでドリフトに向いてるんですね。サイドブレーキが効きやすいですし。

 

──なるほど。でも、ただドリフトを重視してGTや2ドアを選んだわけではないですよね。圧倒的に人気が高い3ドアハッチバックのトレノではなく、レビンの2ドアクーペを選んだ理由を教えてください。

 

 僕が免許を取ったころ、すでに『頭文字D(イニシャル・ディー)』がテレビアニメや漫画で人気になっていてAE86といえば“3ドアハッチバックのスプリンター・トレノ”をイメージする人が多かったんですよ。

僕はちょっと天邪鬼な性格なので『頭文字D』の影響でAE86に乗ったと思われたくなくて逆をいったんです(笑)。

 

──そういう経緯で最初に買ったクルマがレビン2ドアクーペだったと。

 

 元々、AE86を買ったのは当時、熱帯魚屋さんでバイトをしていたのですがそこの店長に「お前、運転が上手くなりたいのならAE86に乗ったほうがいい。FRだからクルマの基本的な動きや基礎的な整備もできるのでクルマに詳しくなれる。しかもAE86はNA(自然吸気エンジン)だからコントロールやアクセルワークが上手くなる」と言われたことが大きな理由です。

運良くそのお店にお客さんとしてきていたのが、いまでもお世話になっている『ガレージシャップル』のオーナーさんで良質なAE86を紹介していただけることになりました。いまではとんでもない値段が付いているAE86ですが、当時は65万円くらいで買った記憶があります。

 

──じゃあ、このレビンがそのクルマなのですね?

 

 いや、最初に購入したレビンと次に購入したレビンはちょっとぶつけてしまいまして(苦笑)。最初のクルマは買って10日くらいで廃車にしてしまいました…。

1台目のレビン

 

──となると、このクルマは3台目のレビンになりますよね。レビン以外のクルマを所有したことはありますか。

 

 2台目をぶつけた後に、いとこの兄さんがRX-7を売ると話を聞いたので、そこでレビンからRX-7に乗り換えた時期がありました。

 

──RX-7はどのモデルを購入したんですか。

 

 FC型(2代目・FC3S型)です。AE86を買う前はロードスターやFD型RX-7が欲しかったんですよ。スポーツカーといえばマツダ車かなとも思っていたんですけど、いろんなご縁で『ガレージシャップル』を紹介してもらい、そこからはAE86にどっぷりと浸った感じです(笑)。

 

──免許を取った18歳から20歳の2年間はそうとう濃いクルマライフだったのですね(笑)。改めてですが、レビンというかAE86に惹かれた理由をもう少し詳しく聞かせてください。

 

 『ガレージシャップル』のお客さんで2ドアのレビンに乗っていた方がいたんですけど、その人が当時、筑波サーキットで最速ラップを叩き出していたんです。

僕もどこかしら『頭文字D』の影響から3ドアハッチバックのほうが速いイメージを持ってたり、そのスタイルがカッコいいなと思っていたのですが、その人のおかげで2ドアクーペも速いしカッコいいんだと感じるようになりました。

2ドアクーペにしようと決めたのはそのことが大きく影響しています。それからレビンの2ドアクーペに惚れ込んだという流れです。

 

──それで複数台のレビンやRX-7に乗ったあと、このレビンを手に入れたわけですが、どういう経緯で購入したのでしょう。

 

 ここだけの話、RX-7もぶつけてしまって……(苦笑)。

そのころ、芸人を本格的に始める時期だったので、クルマから一旦、離れようと思ったんです。ただ、友達がこのレビンに乗っていて、売っちゃうよって言うから、30万円で譲ってもらいました。

当時、このクルマは映画『ワイルドスピード』とかが流行っていたことで、ウーハーを装備したり17インチのホイールをつけたりなど、US仕様なテイストにカスタムされていたんです。

その時お金がなかったので10万円ずつ3か月で返済して、そこからこのクルマのオーナーになりました。

 

──そこから現在に至るまで、このレビンをカスタムし続けてきたのですね。

 

 このクルマを購入してからしばらくはちゃんと乗っていたんですが、当時、僕は20代前半。ライブとか色々やっていたころだったので、芸人として売れるために頑張ろうと努力していたんです。運転することも少なくなり、このレビンを手放すことも考えていました。

 

──その当時は売る可能性もあったんですね。

 

 ひょんなことからザブングル加藤さんにお会いすることになって、レビンを所有していることや手放すことを考えていることを話したんです。

そしたら加藤さんから「いや、この世界って特技や話題を持っていたら、それだけで何か仕事に繋がる可能性がある。だから、レビンは手放さずに持っていたほうがいい」ってアドバイスをいただいたんです。

そこでレビンのナンバーを一度、切って(一時抹消)、所有し続けたんですよ。たまにエンジンをかけてはいたんですが、このレビンは燃料噴射装置をインジェクションからキャブレター(以下、キャブ)に変更していたのでよく調子が悪くなったりしてたんです。

それでも、近年、といってもここ3、4年前からちゃんとナンバーを取ってまた乗り始めました。

 

3Dプリンターでパーツを自作するマニアックなカスタム

──そんな流れで現在もレビンに乗り続けていますが、このクルマをどのようにカスタムしていったのですか? 購入時とはかなり違いますよね。

 

 はい、大きく違ってます。足回りはバネとショックを変更し、車高調ではないですがストラットに車高を調整できる「リヤ調」をつけたり、バネを前後8kg、6kgにしています。(AE)86なので、そんな裏テーマをもたせました(笑)。

足回りの他はまずシートを変えました。いまつけているのはホールド性が良くてドリフトしやすいんです。

 

──車内に張り巡らされているロールバー、あと、いまはリヤシートがありませんがそのあたりも変更したんですか。

 

 ロールバーは付いていましたし、あとインパネのオートメーターも付いてました。

リヤシートも購入時からなく、2シーターで車検を通しています。わざわざ公認を取ったので、この状態で車検を通すことができるんです。

あとは先程も話したようにインジェクションからキャブに変更しました。友達から譲り受けたときはキャブじゃなかったんで、OERの45パイのキャブをつけました。

 

──キャブに変更することでパワフルになるんですよね。その他、まだまだ変更箇所はありそうです。

 

 はい。車内のインナーボディは黒いじゃないですか。これ、もともとは白いボディカラーなんですけど、全部僕がアンダーコート取って黒く塗ったんです。

 

──それってそうとう手間と時間がかかる作業ですよね。ひとりで塗ったんですか?

 

 全部ひとりで塗りました! 自宅の庭でマスキングして耐熱つや消しブラックで仕上げました。元々の白だと錆びてるのが汚らしかったので全部、錆を取って塗ったんです。

それから、オーバーフェンダーを付けました。あとバックミラーを純正に戻しています。

車内から調整できるタイプの減衰力や2層のアルミラジエーター、やっとタコ足(社外品のエキゾーストマニホールド)も入れました。

また、カスタムではないですが最近、エンジンヘッドカバーを自分で塗り直しています。

 

──そのシーンを谷さんのYouTubeチャンネル『谷+1。VIDEO』で拝見し、大変な作業だなと感心しましたが、さっき聞いたインナーボディを塗装することに比べれば大したことなかったですね(笑)。

 

 塗装する面積が違うので、全然楽でした(笑)。あと、ウォッシャータンクを自分で設計し3Dプリンターで製作したんですよ。バイク用のキャッチタンクにモーターを付けて作りました。ウォッシャー液がちゃんと出ますよ。

 

──3Dプリンターでパーツを自作するなんて、かなりマニアックなカスタムだ!(笑)

 

 3Dプリンターを使った造形けっこうやるんで(笑)。あと、インパネの横にある小物入れ、ここも3Dプリンターで作りました。小銭が落ちないよう小細工したのが特徴です。

元々、このスペースが空いていたんですね。ネットオークションでここだけ売ってないかなと探したんですけど全然売ってなくて……。わざわざ中古のインパネを買って、そこだけ取るので、ちょっと損した気分になるじゃないですか。だったら自分で作っちゃおうと思って、空きスペースにうまく入るように製作しました。

 

──このレビンは販売されてからすでに40年近く経っています。足回りなどのカスタムも重要ですが、メンテナンスやレストア的な整備も行う必要があるのではないでしょうか。

 

 このクルマはインジェクションではないので発進する時にアクセルを2〜3回踏んで燃料をキャブに送ってエンジンをかけるんですね。この燃料送りに失敗するとエンジンがかぶる(不完全燃焼)んです。

だから乗るときに気合を入れてスタートする必要があって……。めちゃめちゃアナログなクルマなんですよ(苦笑)。

そこをどうにかしたいと最近改善したのが、バッテリーから直接、セルモーターを動かすことができるハーネスを付けたんです。これを付けてからめちゃくちゃセルモーターがかかるようになったんです。

以前は1か月くらいクルマに乗らないと全然エンジンがかからなくて、クランキング(エンジンを始動)だけしてバッテリーの電力がなくなって、別のクルマをからジャンピングスタートしてエンジンをかける……みたいな状態だったんですけどハーネスを付けてから気兼ねなくレビンに乗れるようになりました。

 

──スムーズにエンジンがかかるか、かからないかはオーナーにとって大問題ですもんね。

 

 これを付けてからやっと都心にドライブへ行くことができるようになりました。前まで駐車場にレビンを停めるのが怖くて……。エンジンがなかったらどうしようかなと。

いまレビンに乗ってるとみんなが注目してくれるので、発進できないと恥ずかしいですからね(苦笑)。信号待ちでレビンを止めただけで見られちゃうんですが、そこまで注目されるクルマになったんだと感慨深いものを感じながら乗っています。

 

──思い切って純正などのインジェクションへ変更するなんて考えはないんですか?

 

 いやぁ、それはちょっと……。一度乗るとわかるんですけどキャブ車の魅力はある意味“魔力”ですよ。やっぱりキャブ独特のサウンドはいいよなって思っちゃうんですよ。

 

──走りを重視するAE86オーナーのなかには、エンジンを変えちゃう方もいますがそういう考えはないんですか。

 

 別のエンジンに載せ替えちゃうと配線からなにから全部やらなきゃいけないんで考えたことないですね。

もし、これ(4A-GE型1.6L直4エンジン)がブローしたら、同じ4A-GE を積んでいるAE92(6代目カローラ・レビン、5代目スプリンター・トレノ)後期型のエンジンを探して乗せると思います。

 

──ついでにAE92が搭載していたスーパーチャージャー付きエンジンを載せ替えるとかはどうですか。

 

 NAがいいですね。アクセルを踏んだぶんだけスピードが出る感じ好きです。

以前、乗ったRX-7はターボ車だったんですけど、ドーピングとは言いませんがターボが付いてたらそりゃあ速いよねって思っちゃって……。

やっぱりアクセルを踏んだ分だけ進んでもらったほうが楽しめるし、パワーがちょっと足りないぐらいが楽しいのかなと思うんですよ。

ターボ車はクルマによってはちょっとアクセルを踏んだだけでも、どこまで行っちゃうんだ!ってクルマがあるじゃないですか。クルマを自分のコントロール下に置けないやつ。あれよりはNAでコントロールできるレビンのようなクルマが好きですね。

 

──いろいろお話を聞いたかぎりではカスタムや整備にけっこうお金がかかっていますよね。ざっくり、どれくらいかけました?

 

 う〜ん、ちゃんと計算したことないですが、200〜300万円くらいはいってるんじゃないですかね。

 

──一見、高く感じますが長くレビンを乗っていることを考えると、それくらいになりますよね。

 

 なんやかんや20年くらい乗っていますからね。

テールパイプはトレノのものだし、スピードメーターも壊れたので購入時とは違うパーツへ交換したりと、ちょっと“ちぐはぐ”なレビンになってしまいましたけど(苦笑)。

自分なりのやり方でいじってきたのでこうなったんですが……でもカスタムした当時はそれが自分の中でカッコイイと思ってやっていたので。まあ、これはこれで、自分流に落とし込んで作ったので気に入ってはいます。

 

すべてが思うままに管理できて、手足のように行き届く

──ここまでおもにカスタムの話をしてきましたが、改めてレビンの魅力を教えてください。

 

 簡単にいうと乗ってて楽しいクルマで、すべてが思うままに管理できて、手足のように行き届く感じってことでしょうか。

1.6Lエンジンを積むライトウェイトスポーツカーってところも魅力を感じます。1tを切るめちゃめちゃ軽い車重なので、スタートできないときなどちょっと困った時、手で動かせるくらいの軽さがいいですね。

 

──逆に、このレビンに乗っていてキツイな、と思うところはありますか。エアコンレスだと夏場は辛いですよね。

 

 ああ、エアコン取ったので夏はあまり乗ってないですね。あとキャブの調整を冬場走るのにちょうどいいようにセッティングしてるので、夏場はその分、エンジンも糞づまるんですよ(苦笑)。

 

──やっぱりキャブの調整は大変なんですね。

 

 でもキャブ車なのにあんまメンテナンスしてないんです。オールシーズン何も触ったり(調整)してないんですよ。普通、キャブ車ならもっと手をかけなきゃいけないのに、それで乗れちゃってるんで不思議なクルマですよね(笑)。

 

──いままで大きなトラブルなどはありませんでしたか?

 

 それがなくて……。先程話したセルモーターがかからないくらいでしょうか。それ以外、古いクルマにありがちなオイル漏れなどはありません。

それは僕が性格的に壊れる前にすべてを交換するタイプだからかもしれません。このクルマを交換したときもすべてのブッシュ(サスペンションに取り付けられるゴムパーツ)を交換しましたし、そういう変えておいたほうがいいなと思うパーツは早めに交換していたので壊れがちなミッションやデフもトラブルが起きたことはないですね。

 

──古いクルマ乗りとして長く乗り続けるには重要なポイントなのかもしれません。

 

 車両自体が大当たりだったこともトラブルがなかった要因かもしれません。ただ、トラブルはないけどぶつけたことはあり、これまで何度か直してますけどね(苦笑)。

 

──いま、1980年代、90年代の国産スポーツが改めて注目されていて、そんなクルマに乗っているオーナーさんに話を聞くと段階的に整備やレストアを進めていく、みたいなことをよく聞きます。谷さんはそんな計画ありますか?

 

 こないだ『ガレージシャップル』のオーナーと配線系が劣化してきたねと話したんですよ。これまでは配線トラブルなかったんだけど、確認してみると銅線とかが劣化したりちぎれたりしてたんです。

エンジンスタートがうまくいかないとき原因をたどっていったら、イグニッションに関わる配線がちぎれていたことがわかりました。1本しかちゃんと繋がってなくて、そりゃあエンジンかかりづらいわ、とか。

電装系の配線がここにきて腐食しだしているので、そこを注意していきたいです。

 

 

塗装など細かい箇所を直してスタイリッシュに仕立てる

──改めてうかがいますが、レビンの2ドアクーペではなく3ドアハッチバックを選んでいたらどうなったのかと思うことないですか?

 

 う〜ん、やっぱり2ドアクーペのフォルムが好きですからね。あと同じ2ドアクーペでもリトラクタブル・ヘッドライトのトレノよりレビンのほうがフロントまわりとボンネットフードやリヤハッチまでの高さが自分の感覚的に合っていると思うんですよ。トレノを選ぶとしたら、その高さに違和感がない3ドアハッチバックでしょう。

まあトレノの3ドアハッチバックには、ないものねだりではないですが乗ってみたいですけどね(笑)。乗りたいけど、『頭文字D』の影響で乗ったんだと後ろ指さされたくないから2ドアクーペに乗ったので、そこは正直な気持ちで3ドアハッチバックに乗ったほうがよかったかなと思ったこともありました(苦笑)。

 

──その気持ちわかります(笑)。

 

 ただ、2ドアクーペに乗ったことでこうやって取材してもらえるとか、いまになると正解だったとは思います(笑)。

あと、2ドアクーペのレビンを選んだことが功を奏して「君、若いのにハッチバックではなくクーペにいくんだ!」と、AE86の先輩オーナーさん達から仲良くしていただいたことは大きかったですね。2ドアクーペに乗っていたことで人の輪が広がりました。

そう考えると、2ドアクーペを選んで大正解だったと思っています。

 

──ここまでお話を聞く限り、これからも末永くこのレビンに乗り続けそうですね。

 

 このクルマのボディカラーは当時の塗装そのままなのですが、今後、ルーフや下回りなどボディに発生してきた錆の対策をするなどのレストアをしていきたいですね。

ちなみにサンバイザーの布が剥がれたので、それはミシンを使って自分で縫いました(笑)。そんな風にちょこちょこ直していきつつ、できるだけ長く乗りたいです。古くなったオイルクーラーとタコ足は新しくして、ホイールもキレイに直したいですね。

 

──今後、さらに外観をカスタムしていきたい箇所ってありますか?

 

 これまでカスタムしてきたレビンのスタイルやデザイン性は、僕が憧れている所ジョージさんを参考にクルマがいかにキレイに見えるかをこだわったものなのです。

走行性能を高めるだけじゃなく、塗装など細かい箇所を直してスタイリッシュに仕立てるというか、まだまだこれからも色々やることはあります。

ただ、いまのレビンが気に入ってるんで、外観に新しいパーツを装着することはないかな。というか変えたくないですね。

 

──カスタムしたこのレビンに愛着があるんですね。

 

 はい。ただ、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんと、とあるロケで一緒になったとき「おまえAE86に乗ってるの!」とレビンを所有していることがきっかけで仲良くさせてもらって、YouTubeもコラボさせてもらえるようになったんです。

ロケ中に会話させてもらったとき、いろいろクルマの話ができたのですが、長年レビンに乗っていることで“にわか”じゃないことがわかってもらえたんでしょうね。

その亮さんと旧車があつまるイベントの取材をご一緒させてもらい、僕がAE86オーナーに話を聞くことができました。いまどきの女のコとか昔からずっと所有しているオーナーなどに巡り会えたんですが、その時、思っちゃったんですよね。カスタムしてない純正のAE86っていいなと(笑)。

その時、レビンをいじりすぎたなと思ってしまい…。いまになって純正ノーマルのAE86に乗りたくなっています(苦笑)。

 

フォルクスワーゲン「ゴルフ R ヴァリアント」は典型的な“羊の皮を被った狼”だった

GT-R然り、タイプRもまた然り、数多く存在する走り志向のクルマにおいて、「R」の称号は、今も特別なものである。では、長年、世界のスタンダードとされてきたフォルクスワーゲン ゴルフではどうか。「R」をどのようなモデルと位置づけ、どれほどスポーティなモデルに仕上げているのだろうか?

 

■今回紹介するクルマ

フォルクスワーゲン/ゴルフ R ヴァリアント

※試乗グレード:R

価格:652万5000円(税込)

 

まだまだ買えるぞゴルフR!

シビックタイプ「R」は、2万台もの注文が殺到して約4年分が売り切れたため、早くも受注停止になったが、ゴルフの「R」ならまだ買える! ゴルフRは、伝統あるゴルフ「GTI」を超えるパフォーマンスを持つ最強のゴルフ。究極のスポーツハッチバック&ワゴンを目指したマシンだ。

 

直列4気筒2.0Lターボエンジンは、最高出力320PS/5350-6500rpm、最大トルク420Nm/2100-5350rpmを誇っている。従来のRに比べても、10PS/20Nm強化されたわけだ。数字的にはわずかだが、この手のスポーツモデルは、進化し続けることが重要だ。

 

300馬力オーバーのパワーを受け止めるべく、ゴルフRは誕生当初から4WDの7速DSG(デュアルクラッチAT)のみの設定となっている。330馬力のシビックタイプRが、FFのMTのみなのに比べると、かなり正反対のキャラクターだ。シビックタイプRはサーキットに狙いを定めた超絶スポーツモデルだが、ゴルフRの主戦場は公道。速度無制限区間のあるアウトバーンでは、4WDの安定性が強く求められるのである。

↑フロントに搭載される2L直4ターボエンジン。トランスミッションは「DSG」と呼ばれる7段のデュアルクラッチ式ATが組み合わされる

 

前述のように、エンジンは320馬力を誇っている。初代ゴルフRは300馬力、2代目は310馬力、そしてこの3代目は320馬力と、台本があるかのように少しずつパワーアップを果たしている。かつて国産4WDスポーツの頂点を争ったランエボやインプレッサWRXが、280馬力だったことを思えば、320馬力という出力の過激さがよくわかるだろう。

 

しかし、実際のゴルフRは、それほどすごいクルマという感覚を抱かせない。ATのみなのでイージードライブであることは言うまでもないが、エンジンのフィーリングも、出力の向上とともに、逆におとなしくなっている。

 

7速DSGは極めて洗練され、もはや通常のトルコンATと区別がつかないほどスムーズだ。エンジンも低速域から使いやすく、フツーに走っているかぎり、そこらのファミリーカーに毛の生えたような程度に感じてしまう。乗り心地も、究極のスポーツモデルとは思えないほど快適だ。これは、オプションの可変ショックアブソーバーの効果だろうか? よく言えばウルトラ洗練、悪く言えばちょっと退屈という印象である。

↑ボディーカラーは、「ラピスブルーメタリック」(写真)に「ピュアホワイト」と「ディープブラックパールエフェクト」を加えた全3色のラインナップ

 

思い起こせば、2010年に登場した初代ゴルフRは、サウンドの演出が凄まじかった。ATがシフトアップするたびに「バウッ!」という中吹かし音(?)が轟いて、まるでランボルギーニを運転しているような錯覚に襲われた。VWグループは、1999年にランボルギーニを傘下に収めており、その知見が生かされたのか? と感じたものだが、2代目はサウンドがややおとなしくなり、この3代目はさらにおとなしくなっている。

 

新型ゴルフRも、ドライブモードを「レース」にすれば、アクセルを戻した時に「ボッ!」とレブシンクロを行なうし、アクセル全開で加速すれば、それなりに勇ましい音がするが、初代Rを知っている者には、物足りなく感じてしまう。

 

サウンドは、速さを体感する上で重要なポイントだ。近年欧州では、騒音規制が非常に厳しくなっており、もはやゴルフがランボルギーニのような音をさせることなど許されない。その影響でゴルフRも、ずいぶん地味になったように感じてしまうのだ。

↑ダイナミックターンインジケーター付きLEDマトリックスヘッドライト「IQ.ライト」。カメラで対向車や先行車を検知し、片側22個のLEDを個別制御する

 

「羊の皮を被った狼」たる理由

試乗したのは、ゴルフ R ヴァリアント(ステーションワゴン)。車両重量は1600kgとかなりの重量級だ。ランエボやインプレッサWRXは1300kg前後だったから、それに比べるとだいぶ重く、加速も相殺される。速いと言えば速いが、「ウルトラバカ速ッ!」ではない。そのぶんゴルフ R ヴァリアントは、広いラゲージやゆったりした室内など、高い実用性を持っている。「R」のエンブレムも非常に地味で目立たない。

↑見やすい大型10.25インチTFT液晶ディスプレイを採用。通常のメーター表示やナビゲーションマップなど、好みに応じて表示を切り替え可能

 

↑ホールド性もR専用ファブリック&マイクロフリースシート。ブルーのRロゴがステキ!

 

↑最大1642Lの大容量ラゲージスペースを持つ。荷物の形状や量に合わせて室内をフレキシブルにアレンジできる

 

ただ、前後バンパーはR専用であり、リアのディフューザーと4本のテールパイプが、タダモノではないことを示している。マニアが見れば、GTIより15mm低い車高や、19インチホイールの間から覗くブルーのブレーキキャリパーで、「うおお、Rだ!」と識別することが可能。このクルマは、典型的な「羊の皮を被った狼」である。

↑クロームの輝きと迫力あるルックスを演出する、クロームデュアルツインエキゾーストパイプ。足元は19インチのアルミホイールと245/35ZR19サイズのタイヤだ

 

↑VWロゴの下でさりげなく光るRエンブレム

 

では、新型ゴルフ R ヴァリアントが、ただの旦那仕様のスポーツモデルかと言えばさにあらず、新型Rのハイライトは、4WDシステムが、従来の4モーションから、「Rパフォーマンスベクタリング」に進化した点にある。4モーションは、前後輪のトルク配分を変えて最良の駆動力を得ていたが、新型Rは後輪に湿式多板クラッチを2個加えることで、後輪左右のトルク配分を変えることができるのだ。つまりコーナリング中は、外側タイヤの駆動力を増すことで、よりグイッと曲がらせることが可能というわけだ。

 

私はかつて、フェラーリ458イタリアを所有していた。458には「Eデフ」という名の左右駆動トルク配分システムが備わっており、恐ろしいほど曲がるクルマだった。コーナーで外に膨らむことはまずありえず、逆に曲がりすぎて内側のガードレールに激突しないように注意する必要があった。

 

では、新型ゴルフRもそんな感じかというと、まるで違う。普通に走っていたら、左右駆動トルク配分をしていることなど体感できない。458はそこらの四つ角を曲がるだけで「うひぃ! 曲がりすぎる!」という感覚だったが、ゴルフRは実に自然だ。セッティングがまるで違う。

 

それはワインディングロードでも同じ。まったく自然によく曲がるだけで、特段意識させるような挙動は起きない。サーキットで限界まで攻めれば違うと思いますが、一般ドライバーが公道で、左右トルク配分を体感するのはまず不可能。それよりも、「ゴルフRは進化を続けている!」という事実(勲章)のほうが重要なのだ。なにしろ「R」なのだから。価格は652万5000円。もちろんゴルフのラインナップ中、最高価格である。

 

SPEC【R】●全長×全幅×全高:4650×1790×1465㎜●車両重量:1600㎏●パワーユニット:1984cc直列4気筒ターボエンジン●最高出力:320PS/5350-6500rpm●最大トルク:420Nm/2100-5350rpm●WLTCモード燃費:12.2㎞/L

 

撮影/茂呂幸正

 

 

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ホンダ新しいタイプのSUV「ZR-V」試乗。高い静粛性と気持ちの良い走りは感動もの

ホンダが上級SUVとして2023年4月21日に発売を予定してるのが『ZR-V(ゼットアールブイ)』です。「CR-V」が日本市場からなくなった今、その後継車種としてホンダの上級SUVを支える重要な位置付けにあるといえます。今回はそのZR-Vの試乗レポートをお届けします。

 

■今回紹介するクルマ

ホンダ/ZR-V

※試乗グレード:e:HEV Z(4WD)

価格:294万9100円〜411万9500円(税込)

↑ボディカラーはスーパープラチナグレー・メタリック

 

都市型クロスオーバー的な雰囲気の新しいSUV

ZR-Vのコンセプトは“都会的なスタイルとセダンのような走り”。単にSUVとしてだけでなく、セダン的な使い勝手と走りを併せ持つホンダの上級SUVとして登場しました。そのZR-Vを前にすると、SUVらしいボリューム感のあるボディと流れるようなフォルムが、都市型クロスオーバー的な雰囲気に満ちあふれていることを実感します。タテ格子のバーチカル・フロントグリルは斬新で、その存在感は十分に異彩を放っていました。

 

ZR-Vのラインナップは、ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」と、ガソリンエンジンとして1.5Lターボが用意され、駆動系にはいずれも4WDと2WD(FF)を組み合わせることができます。

 

また、グレードは上級の「Z」とベースグレードの「X」がそれぞれ用意され、そのうち「Z」にはアダプティブドライビングビームやETC2.0車載器付きホンダコネクト・ナビゲーション、本革シート、12スピーカーBOSEプレミアムサウンドなどが標準で装着されます。まさにホンダの上級SUVらしい充実した装備といえるでしょう。

↑ZR-Vのラインナップには1.5Lターボエンジンを搭載したガソリン車もラインナップする。写真はXグレード

 

そんなZR-Vで試乗したのは、「e:HEV」の4WD車で、グレードも上位のZ。価格も420万円弱という結構なお値段のクルマです。価格面ではトヨタ「ハリアー」や、日産「エクストレイル」あたりともガチンコでぶつかるグレード。ただ、そうした状況でもZR-Vはこの両車に十分対抗し得る素晴らしいスペックを備えていたのです。

↑プラットフォームはシビックベースだが、足回りはCR-V譲りのパフォーマンスを発揮した

 

上級SUVらしいプレミアム感あふれるインテリア

クルマに乗り込むとインテリアはプレミアム感にあふれていました。試乗車のシートはパワー機構付きの本革製で、マットなグレー色に近い“ブラック”。その素材感は極めて高く、ダッシュボードのソフトパッドも心地よい弾力を伝えてきます。よく見るとソフトパッドは艶やかなガラスパールを散りばめたパール調表皮となっており、外装と同様、光の当たる具合で陰影ができることで、しっとりとした高級感を演出する造りとなっているのです。

↑曲線と直線を上手に交えた躍動感に溢れたデザインのインテリアは、極めて機能的でもある

 

↑後席シートはSUVらしいゆとりのあるスペースを確保している。シートは6:4可倒式を採用する

 

また、センターコンソールは中央を盛り上げるハイデッキタイプとすることで、運転席と助手席の各乗員に適度なパーソナル感を持たせており、さらにコンソール下側の凹みにはUSB端子を備えた収納スペースまで装備。もちろん、ワイヤレス充電にも対応しているので、手軽にスマホを充電することが可能です。

↑左右の席のセパレーターとしての役割も果たすコンソール。e:HEVにはボタン式シフトが採用されている

 

中でも“Z”の装備で見逃せないのが、BOSEプレミアムサウンドシステムの搭載で、車種独自の専用チューニングを施すことでクリアで臨場感あふれるサウンドをもたらしてくれます。しかも、サラウンドサウンドを体験できる「Centerpoint」システムを搭載したフルスペック仕様。限られたスペースで臨場感たっぷりのBOSEサウンドが楽しめるのは大きな魅力といっていいでしょう。

↑Zグレードには12スピーカーを備えたBOSEプレミアムサウンドシステムが標準で装備される

 

↑BOSEの「Centerpoint」は、12スピーカーを活用することで臨場感たっぷりのサラウンドが楽しめる

 

↑BOSEプレミアムサウンドシステムは、サブウーファーとセンタースピーカーを組み合わせた12スピーカーから成る。高性能スピーカーを車室内に最適配置しています

 

エンジンONがほぼわからない驚きの静粛性

ZR-Vは走りも素晴らしいものでした。ZR-Vの「e:HEV」は、2.0L・4気筒エンジンとホンダ独自の2モーターシステムを搭載したハイブリッド車となっています。これはシビックに採用されている「スポーツe:HEV」をZR-V向けに仕様変更したもので、充電用と駆動用のモーター2基を電気式CVT内に搭載。状況に応じてエンジンとモーターそれぞれの駆動を切り替えて使う独自の方式となっています。

↑ZR-Vのe:HEVに搭載された2.0L・4気筒エンジンとホンダ独自の2モーターシステムのハイブリッドシステム

 

具体的には、発進時や市街地での低速走行などではモーターのみのEVモードで走行し、加速時やある程度速度域が上がるとエンジンの動力で発電しながらハイブリッド走行します。さらに高速道路で高い速度で巡航するシーンになるとクラッチでエンジンと直結し、100%エンジンの力で走行するモードに切り替わるのです。いわば、シリーズ式ハイブリッド走行とエンジン走行のいいとこ取りをしたハイブリッドエンジンといえるでしょう。

 

この日の試乗コースは、会場となった羽田空港近くのホテルから首都高速~一般道を経由するルートです。

 

走り出して真っ先に気付いたのが高い静粛性でした。モーターで走行している時が静かなのは当然としても、エンジンがかかってもそれがほとんどわからないほど静かなのです。1.5Lエンジンを組み合わせるe:HEVを搭載した「ヴェゼル」では、アクセルを踏み込んだ際にエンジン音がハッキリと聞こえていましたが、それとは静粛性のレベルがまるで違います。高速道路の合流でもアクセルを踏み込んでもその傾向は変わらず、ロードノイズも十分抑えられていました。

↑市街地走行から都市高速に至る日常使いで優れたパフォーマンスを発揮したZR-V

 

都市高速のきつめのカーブにもしっかりと踏ん張る

足回りはしっかりと踏ん張ってコーナーを曲がっていく印象です。都市高速のきつめのコーナーを曲がった時でも車体がリニアに反応してスムーズに向きを変え、思い通りのラインを確実にトレースしていくのです。シビックを八ヶ岳で走らせた時、そのトレース能力に驚いたものですが、少なくともそれに匹敵する素晴らしさ。

 

ドライブモードは各走行シーンに応じた4つのモードから最適な設定に変えられ、e:HEV車にはパドルシフトを使って、回生ブレーキの強さを4段階で調節することができます。これを上手に使えば、峠道などで減速度を上げながら楽に走行することができるはずです。

 

一方で乗り心地は若干堅めでした。都市高速の継ぎ目などは確実に伝えてくるのです。しかし、不快さは感じないレベル。むしろ道路の状況が伝えられてくるリニア感が好ましく感じたほどです。乗り心地も良好で、後席に座った人からも不満は出ませんでした。

 

試乗を終えて実感したのは、ZR-Vはコンセプトの“都会的なスタイルとセダンのような走り”を確実に達成しているということです。特にe-HEVと組み合わせた走りは感動もののレベルで、「スムーズさ」と「静粛性」、そして「動力性能の高さ」の3本柱をしっかりと発揮していたのには驚きました。ホンダの新しい上級SUVとして、ぜひ試乗してみることをおすすめしたいです。

↑SUVらしく収納スペースも十分な容積を誇る。テールゲートはハンズフリーアクセス機能付パワーゲートが備わる

 

SPEC【e:HEV Z(4WD)】●全長×全幅×全高:4570×1840×1620㎜●車両重量:1630㎏●モーター:1993cc直列4気筒直噴エンジン+デュアルモーター●最高出力:エンジン141PS/6000rpm(モーター184PS/5000〜6000rpm)●最大トルク:エンジン182Nm/4500rpm(モーター315Nm/0〜2000rpm)●WLTCモード燃費:21.5km/L

 

写真/松川 忍

 

 

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車内がWi-Fiスポット! カロッツェリア新型「楽ナビ」は利便性が高く、ドライブも楽しくなる

パイオニアは1月19日、ベルサール秋葉原(東京都千代田区)において「2023春 カロッツェリア新製品発表会」を開催。4年ぶりのモデルチェンジとなった『楽ナビ』と、楽ナビと組み合わせ可能なドライブレコーダーやバックカメラなど、アクセサリー類を発表しました。新しい楽ナビは何が変わったのでしょうか。

↑パイオニアが開催したカロッツェリア・新「楽ナビ」の発表会

 

ドライブ時間を楽しく便利にする「docomo in Car Connect」

一番のポイントは、車載向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」を活用してネットワークへの接続が可能となったことです。

↑新「楽ナビ」の登場で、パイオニアは主要カテゴリーすべてで“オンライン化”を実現した

 

楽ナビはかつて別売の通信モジュールによるネットワーク接続を実現していました。しかし、2019年モデルでこれをWi-Fiテザリングでのみの対応に変更。これには個人的にも残念な思いが強かったのですが、今回のモデルチェンジではサイバーナビと同様、ネットワークスティック同梱モデルもラインアップし、再び自由にネットワーク接続できるようにしました。これはうれしい!

↑新たに登場した9V型フローティングモデル「AVIC-RF920-DC」。ネットワークスティック同梱モデル、3月発売予定

 

↑最上位のラージモデル「AVIC-RQ920-DC」。9V型ディスプレイを搭載したネットワークスティック同梱モデルだ。3月発売予定

 

新しい楽ナビは「車内Wi-Fiスポット」機能を搭載。NTTドコモとNTTコミュニケーションズが連携して提供する車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」に対応し、同梱もしくは別売のネットワークスティックを接続すれば、エリアを問わず安定したNTTドコモのLTE通信を定額で制限なく利用できます。車室内がWi-Fiスポットになり、通信量を気にせずスマートフォンやタブレットなどでオンラインの動画や音楽、ゲームなどを楽しめます。

 

また、新しい楽ナビとスマートフォンやストリーミングメディアプレイヤーをHDMI接続することで、映像コンテンツをカーナビ本体や後席モニターなどの大画面に表示してオンライン動画を楽しむことができます(一部機種除く)。最近は動画視聴だけでなく、音楽ソースをYouTubeなどストリーミングで楽しむドライバーも増えており、その意味で新しい楽ナビはエンタメ力が一段と高まったといえるでしょう。

 

ネットワーク接続はナビ機能でもメリットをもたらします。目的地検索をクラウドから最新情報を使って行えるほか、カロッツェリアならではの「スマートループ渋滞情報」や「ガススタ価格情報」「駐車場満空情報」にも対応可能となるのです。地図更新にも対応しており、ネットワークスティック同梱モデルが最大3年、レスモデルは最大1年無料となっています。

↑オンライン化により車内Wi-Fi化を実現したほか、オンラインによる目的地検索や地図の自動更新を可能にした

 

なお、通信については有料となりますが、使い方に応じて1日:550円、30日:1650円、365日:1万3200円から選べるのはサイバーナビと同様。ただ、サイバーナビには最初の1年無料期間がありましたが、残念ながらそれはなし。また、利用制限がないサイバーナビに対して、楽ナビでは同梱モデルでも走行中のみの利用を基本としています。

 

そのため、停止中はエンジンを起動させて走行するまでの30分、走行後は60分までに利用が制限されます。もし、車中泊などでの使用を目的にするならサイバーナビの方が使いやすいでしょうね。

 

オンライン化で目的地が簡単に探し出せる!

使い勝手の良さにこだわるのは楽ナビの伝統でもあります。新しい楽ナビでは、「カンタンインターフェース“Doメニュー”」の採用で使い勝手をさらに向上させました。これは本体中央のスタートボタンを押すことで表示されるもので、そこには再生中のAVソースのほかに「お出かけ検索(オンライン)」、「ダイレクト周辺検索」、「ショートカットキー」が表示されます。

↑AV操作からナビ機能まで、ほとんどの操作ができてしまう“Doメニュー”

 

まず「お出かけ検索」とは、いわば目的地の検索機能のこと。“検索窓”に思いついたキーワードを入力することで、簡単に行きたい場所の候補がリストアップされます。一般的にナビでの目的地検索は名称検索、住所検索、電話番号検索等々、メニューから入ってカテゴリー別に探していくのが一般的でした。新しい楽ナビでは、例えば「地名」と「名所」で観光スポット検索、「地域」と「食べ物」でお店検索ができます。また一文字入力するごとに変換候補を表示でき、よりスピーディーな文字入力が可能となり、目的地検索をスマホ並みに使いやすくしているのです。ただし、音声認識での入力には対応していません。これは次モデルの対応を期待したいですね。

↑目的地を思いついたキーワードを入力するだけで候補をリストアップする「お出かけ検索」を搭載

 

そして「ダイレクト周辺検索」では、ドライブ中に立ち寄ることが多い駐車場やガソリンスタンド、コンビニをダイレクトに探せます。ネット接続時はガソリンスタンドの最新価格情報が表示されるのもうれしいですね。また「ショートカットキー」では、よく使う機能を最大4つまで設定しておくことができます。たとえば自宅検索やよく聴く音楽ソースを設定しておくと便利でしょう。

 

2DINで9型大画面を実現するフローティングモデルが登場

新しい楽ナビは、ハード面での進化にも注目です。新たに9型フローティングモデル(AVIC-RF920-DC/-RF720)が追加され、取り付けスペースが2DINしかなくても9型大画面が楽しめるようになるのです。しかもディスプレイ部は装着時に上下と左右に3段階ずつ位置をずらせるので、車両のスイッチ類との干渉を避けられるのもうれしいポイント。

↑2DINスペースに9型大画面を実現する「フローティング型」モデルが登場。業界最多の548機種に対応できる

 

↑「楽ナビ」は全15機種を揃えたラインアップの豊富さも魅力。好みに応じた一台が選べる

 

また、画面のフルフラット化も見逃せないポイントです。取り付けた状態の美しさが際立つだけでなく、全モデルをHDパネルとしたことや視野角が広いIPSの採用とも相まって、車内のどこからでも美しく映像が楽しめるようになっているのです。しかも、操作パネルにはブラインドタッチも可能となる凹凸が用意されたことで、夜間でも簡単に操作できるようになりました。

 

ナビ機能そのものに進化にも注目です。特筆すべきは分岐する交差点のポイントがさらにわかりやすくなったことです。それは、曲がる交差点までの信号の数をカウントダウンで案内してくれる「信号機カウント交差点案内」です。

↑曲がるタイミングを確実に把握できる機能として重宝すること間違いない「信号機カウント交差点案内」

 

目的地までのルートを探索後に表示される「6ルート探索結果画面」では、1つの画面上でルート情報に加えて時間・走行距離・高速料金も表示されるようになりました。今まで以上にルート比較がしやすくなったのです。発表会場で操作した限りでは応答性も格段に向上しているようで、その意味でも使い勝手が向上したとみて間違いありません。

 

オプションのドライブレコーダー「VREC-DS810DC」にも注目です。2カメラタイプで前後同時録画が可能。連動タイプならではのナビ画面上で再生や操作にも対応し、映像はもちろんHD画質です。加えてリバースギアと連動して後方を映し出せ、画面上にはガイドラインの表示も可能としたことでバックカメラとしても利用できます。

↑新「楽ナビ」の発表会では、製品を装着したデモカーを揃えた体験コーナーも用意された

 

「WebLink」に対応したディスプレイオーディオ登場

今回の発表では、ディスプレイオーディオの新作『DMH-SF500』も発表しました。従来のディスプレイオーディオ「DMH-SF700」と「DMH-SZ700」の中間に位置する機種で、フローティングタイプ9V型ディスプレイオーディオとしています。ミラーリングによってスマホの映像を大画面で楽しめるだけでなく、新たに「WebLink」に対応したことでミラーリングで表示した画面上からでも操作できるようになりました。セカンドモデルながら、最新機種らしい新機能の搭載に注目です。

↑ディスプレイオーディオ『DMH-SF500』はフローティングタイプの9V型ディスプレイを備えた

 

↑パイオニアのWi-Fiワールドを実現するラインアップの展示もあった

 

↑パイオニア取締役 兼 常務執行役員 モビリティプロダクトカンパニー CEO 髙島直人氏(左)と、市販事業統括グループ 商品企画部 部長 田原一司氏(右)

 

 

 

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スズキ「スペーシア ベース」使い方は自在の“移動型秘密基地”

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、スズキのスペーシア ベース。軽規格の商用車だが、実用性については見どころが多いモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2023年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【軽バン】

スズキ

スペーシア ベース

SPEC【XF(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1800mm●車両重量:870kg●総排気量:658cc●パワーユニット:直列3気筒DOHC●最高出力:52PS/6500rpm●最大トルク:6.1kg-m/4000rpm●WLTCモード燃費:21.2km/L

 

大型のマルチボード採用で多彩な用途に対応できる!

最近は車中泊を楽しむ人が増えている。なかでも手軽で人気なのが軽自動車による車中泊、いわゆる“軽キャンパー”だ。特に商用車は広い荷物スペースが確保され、アレンジの自由度も高いと好評だ。

 

そんな車中泊を含めて、多用途に使いこなすためのアイデアを満載して投入されたのが、スペーシアカスタムから派生した軽商用車のスペーシア ベース。注目したいのは、荷物スペースへの設置位置を上中下段、および前後分割の4モードから選択可能な大型のマルチボードを標準装備することだ。

 

例えば、下段モードで前席をフルリクライニングすると、前後に2030mmのスペースを確保。大柄な男性でも余裕で車中泊できる。あるいは、上段モードで後席背もたれを前倒しにして座ればマルチボードがデスクにもなる。

 

走りは実用上の不満はない。ターボの設定がないので、周囲の流れに合わせる場面でアクセルを踏み込む機会が多くなるが、音の大きさを感じさせずに必要な力強さを確保。サスペンションは、最大積載量200kgに対応して硬めに設定されている。ただし乗り心地が犠牲になるほどではない。

 

ひとりで車中泊するなら、楽しむためのツールを満載することも可能。安全装備が充実しているだけに、長距離ドライブでも安心だ。

 

[Point 1]豊富な収納スペースを用意して安全装備も充実!

商用車とはいえ、最新モデルらしく安全装備は充実。インテリアはシンプルなデザインながら収納スペースが豊富に設けられるなど、使い勝手に配慮した作り。

 

[Point 2]荷室をペットのケージ代わりに使用可能

マルチボードを縦にセットすれば、荷室を前後に分割することもできる。荷室長は前側セットで、805mm、写真の後方セットでは545mmを確保。

 

[Point 3]外観は“道具感”を演出

スペーシアカスタムをベースとする外観は、ブラック塗装のトリムやリアクォーターパネルなどにより、良い意味での“道具感”を演出。ボディカラーは全5色を用意する。

 

[Point 4]移動式のワークスペースにも!

上段にセットしたマルチボードと、座椅子としても使える後席の組み合わせでワークスペースも作れる。ボードのセット位置は4パターン用意されている。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/ミッション/駆動方式/税込価格)

GF:0.66L/CVT/2WD、4WD/139万4800円(151万8000円)

XF:0.66L/CVT/2WD、4WD/154万7700円(166万7600円)

●( )内は4WDの価格

 

文/萩原秀輝 撮影/宮門秀行

 

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共通点は軽快なフットワーク! ニューバランスとコラボした「NISSAN KICKS 327 EDITION」

電気モーターによる瞬発力のある加速が魅力の「日産キックス e-POWER」。このモデルとニューバランスのコラボレーションが実現し、同ブランドのスニーカー「327」仕様のラッピングを施した世界に1台の「NISSAN KICKS 327 EDITION」が誕生しました。

 

街にもアウトドアにも映えるのが共通項

自動車メーカーとスニーカーブランドのコラボは、あまり聞き慣れませんが「車名の“KIKCS”には英語のスラングでスニーカーという意味があるので、スニーカーブランドとタイアップしたいと考えていました。ニューバランスにはアクティブなイメージがあり、フットワーク軽く毎日を楽しむという『日産キックス e-POWER』のコンセプトと合致すると思い、お声がけさせていただきました」と語るのは日産自動車のチーフマーケティングマネージャーである岡部龍太氏です。

↑NISSAN CROSSINGでのお披露目式で挨拶をする日産自動車の岡部龍太チーフマーケティングマネージャー

 

数あるニューバランス製スニーカーの中で「327」が選ばれた理由については、ニューバランスジャパンのマーケティングディレクターである鈴木 健氏がコメントしてくれました。「『327』は1970年代に販売していた3種類のランニングシューズをオマージュしていますが、その中にはオフロード向けのモデルも含まれています。『日産キックス e-POWER 4WD』はオフロードでも走れますし、街中にも映えるデザイン。そのイメージが『327』にピッタリだと考えました」。

↑ニューバランスジャパンの鈴木 健マーケティングディレクター

 

↑「327」のベースとなった1970年代のスニーカー。ロード用、レース用だけでなく、トレイル用モデルも含まれる

 

↑「320」「355」「Super Comp」の3つのモデルを元に生まれた「327」。オフロードで高いグリップを発揮するソールは、トレイルランニングモデルからインスピレーションを得たもの

 

ニューバランスの「327」は、ソールデザインこそトレイルランニングを思わせるものですが、街中に映えるデザインとされています。そんなことから、ベース車両には緻密な制御が可能な電動の4輪駆動機構を持つ4WDモデルが選ばれました。「日産キックス e-POWER 4WD」は、オフロードでも高い走破性を発揮しますが、遠出だけでなく近場の移動にも気軽に出かけたくなるモデル。両者のコラボは必然だったといえるかもしれません。

↑岡部氏(右)と鈴木氏によって「NISSAN KICKS 327 EDITION」がアンベールされた

 

「327」のディテールをできるだけ忠実に再現!

「NISSAN KICKS 327 EDITION」の特徴は、側面のダイナミックな「N」のロゴだけでなく、「327」のディテールをできるだけ忠実に再現していること。象徴的なソールやスエード生地の質感も再現されており、特にルーフ部分にはシュータンと呼ばれるシューズのアッパー部分が設置されています。

↑大胆な側面のロゴが目立つが、スエード生地の部分はカラーだけでなく質感まで再現されている。「NISSAN KICKS 327 EDITION」の製作期間は約2週間

 

↑最も目を引くのがシュータンを模したルーフ部分の造形。中央部にはNISSANのロゴがあしらわれる

 

最も力を入れた部分について問われた岡部氏は「『327』とどうやって融合させるか、全体のプロポーションと細部の質感」と回答。鈴木氏は完成車を初めて見た際の印象を「感動すらおぼえるほど」だったと答え「ペイントだけでなく、素材感が再現されているので、遠くから見るとスニーカーが走っているよう」と表現しました。

↑多様なカラーが用意される「327」だが、コラボモデルはあえてブランドを象徴するカラーであるグレーでまとめられる

 

このクルマは、2月1日までNISSAN CROSSINGで展示された後、2月4日〜5日は東京都で、2月11日〜12日は大阪府で実際に街を駆け巡る予定。2月14日〜20日はイオンモール土岐(岐阜県)、2月22日〜28日はイオンモール白山(石川県)の日産ブランドアンテナショップで展示されます。

 

その模様を撮影し、日産の公式Twitterアカウントをフォローの上で投稿すると、「日産キックス e-POWR 4WD」が当たる「CATCH THE KICKS」キャンペーンも実施されます。寒い日が続きますが、2月は「NISSAN KICKS 327 EDITION」を探して出かけてみるのもいいかもしれません。

 

「CATCH THE KICKS」キャンペーン概要

【展示日程】

・日産クロッシング(銀座)2023年1月24日〜2023年2月1日

・イオンモール土岐 日産ブランドアンテナショップ:2023年2月14日〜2023年2月20日

・イオンモール白山 日産ブランドアンテナショップ:2023年2月22日〜2023年2月28日

※展示期間は内容を予告なく変更の可能性があります。

 

【走行日程】

・(東京)2023年2月4日〜2023年2月5日 11:00〜16:00

・(大阪)2023年2月11日〜2023年2月12日 11:00〜16:00

※走行時間は変更になる可能性があります。

 

【走行ルート】

1東京エリア:銀座エリア、原宿エリア

2大阪エリア:大阪・梅田エリア、心斎橋エリア

 

【景品】

■A 賞:日産キックス e-POWER 4WD(1 名)

■B 賞:ニューバランス 327・シューチャーム2種・シューレース1種(23名)・シューズボックス

 

【応募方法】

■A賞

1:日産自動車公式 Twitter(@NissanJP)をフォロー

2:「NISSAN KICKS 327 EDITION」の写真を撮影

3:撮影した写真とハッシュタグ「#キックスを捕まえろ」を付け Twitter で投稿

■B賞

1:日産自動車公式 Twitter(@NissanJP)をフォロー

2:1月24日に日産自動車公式 Twitter から投稿されるツイートを、アカウントをフォローした上でリツイートを実施

 

【応募期間】

2023年1月24日〜2023年2月28日

 

 

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【CES2023】ソニー、メルセデス、VWの次世代カーが続々! 海外の魅力的なクルをレポート

世界最大規模のIT家電見本市として知られる「CES2023」が、1月5日~8日の日程で、米国ネバダ州ラスベガスで開催されました。

↑ラスベガス・コンベンションセンターに新たにオープンした巨大なウエストホール

 

そもそも「CES」って何なの?

CESが最初に開催されたのは1967年のこと。以来、北米での最新家電を一手に引き受けて来たこの見本市ですが、90年代頃からPC系が出展するようになり、その後は2012年には北米のカメラ見本市「PMA」と併催。その頃には自動車の電動化が急速に進み始めた自動車メーカーが相次いで出展するようになり、ショーの規模はどんどん巨大化して今に至ります。

 

会場へ出掛けて誰もが驚くのがその規模です。新たにオープンしたウエストホールは驚くほど巨大で、それを含めたラスベガス・コンベンションセンター(LVCC)の端から端まで歩けば確実に15分はかかります。しかも、CESは周辺のホテルを巻き込んで開催されており、2024年には現在工事中となっていたサウスホールが完成すれば、その規模がさらに巨大化することは間違いないでしょう。

↑56年の歴史を持つCES。1995年からはラスベガス・コンベンションセンターで年1回の開催となった

 

【その1】「ソニー・ホンダモビリティ」から生まれた新ブランド名は『AFEELA』

さて、そんなCES2023で日本メディアにとって最大の関心事となったのが「ソニー・ホンダモビリティ(SHM)」の動向です。同社は、昨年、ソニーとホンダが半分ずつ出資し合って設立した合弁会社で、その第一弾が2025年前半にも新型EVとして先行受注されることが発表されていたからです。

↑ソニー・ホンダモビリティが提供するブランド名は『AFEELA』。発表されたそのプロトタイプ第一号

 

発表当日、立ち見席が出るほどの超満員の会場で発表されたのは新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」と、そのプロトタイプ第一号モデルでした。AFEELAには「得られる体験の核心を、『感じる(feel)』に込めた」とし、シンプルなデザインのプロトタイプからは新しいEVメーカーが放つ新型車に多くの期待が込められていたようです。

↑新たにヨーク型ステアリングを採用し、ディスプレイに表現されるコンテンツが見通せるようにした

 

↑周囲にクルマ側の情報を知らせる「Media Bar」。充電状況や天気予報などを知らせることもできる

 

プロトタイプに備えられた最大の特徴は車内外に備えられた45個にも及ぶセンサーです。このセンサーによって高度な運転支援や快適なインターフェースなどを実現し、そのセンサーからの情報を処理するのがクアルコムの「Snapdragon Digital Chassis」です。これによって、かつてない魅力に富んだ高付加価値車を生み出そうというわけです。

↑ソニー・ホンダモビリティのプレスカンファレンスには、クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOが登壇した

 

SHMでは、2025年前半にまず北米で先行受注を開始し、同年末までには発売に踏み切るとしており、日本でも展開を予定。北米での最初のデリバリーは2026年春を予定しているとのことです。

 

【その2】揃い踏みしたドイツの自動車メーカー。シュワルツェネッガーも登場!

それ以外の自動車メーカーの出展も目白押しです。特に力が入っていたのがドイツ勢です。中でも注目を浴びたのはBMWでした。BMWは基調講演で『i Vision Dee』を発表し、スマホ一つで車体の色を変幻自在に変更できる世界初の機能を披露したのです。ボディカラーは32色に変化させられ、240セグメントに分割されたボディ表面のラップと組み合わせれば無限のボディカラーが表現できるということでした。

↑ボディカラーを32色に変えられる『i Vision Dee』。ボディ表面のラップは240セグメントに分割され、スマホから変幻自在に変えられる

 

講演中はハリウッドスターのアーノルド・シュワルツェネッガーが登場し、アナログ世代からデジタルネイティブ世代への橋渡し役を務めるなど、その演出にも注目が集まりました。

↑BMWの基調講演にはハリウッドスターのアーノルド・シュワルツェネッガーも登場した

 

メルセデス・ベンツが出展したのは、次世代EVコンセプト『ヴィジョンEQXX』です。その空気抵抗係数は驚きの0.17!マグネシウムなどを使用して徹底的に軽量化したシャシーは技術の集大成と言えるでしょう。また、Dolby Atmosの没入感でカーエンタテイメントが楽しめる新型EV『EQS』の展示も人気を呼んでいました。

↑メルセデス・ベンツ次世代EVコンセプト『ヴィジョンEQXX』

 

↑メルセデス・ベンツはDolby Atmosの没入感を体感できる新型EV『EQS』も人気を呼んでいた

 

フォルクスワーゲンは次世代EVプラットフォーム「MEB」を採用した、いわゆるパサートクラスの『ID.7』をカモフラージュ仕様で初公開しました。展示車両は特殊な塗装により、最上層の塗装の下に電気を通すことで発光する仕組みで、閉じられた空間で音と光を連動させた効果を演出していました。

↑VWは、MEBをベースにした新型『ID.7』のカモフラージュ仕様を公開した

 

【その3】コンセプトカーで圧倒的な存在感をアピールしたステランティス

一方、CES2023で存在感を発揮していた自動車メーカーがステランティスです。同社は2021年1月に、フランスの自動車メーカーグループPSAとイタリアとアメリカの自動車メーカーフィアット・クライスラー・オートモービルズが合併して誕生しました。

 

そのステランティスのブースで際立っていたのが、コンセプトカー『プジョー・インセプション・コンセプト』です。全長5.0mでありながら全高は1.34mに抑えられ、キャビンのほとんどはガラス張り。モーターはフロントとリアに合計2基備え、その出力は680hp(500kW)となり、静止状態から100km/hまでの加速はなんと3秒未満!まさに外観の迫力に違わないハイパフォーマンスカーと言えるでしょう。

↑ステランティスが公開したコンセプトカー『プジョー・インセプション・コンセプト』

 

↑『プジョー・インセプション・コンセプト』のルーフは全面ガラス張り。そのデザインも先鋭的だ

 

ステランティス傘下の「Ram」が出展したのがピックアップトラックタイプの『Ram 1500 Revolution BEV Concept』です。2つの電動駆動モジュールを搭載して全輪駆動で走行し、ピックアップながら新しいアーキテクチャーにより、より広々とした室内空間と長いキャビン長を実現。バッテリーは最大出力350kWの800V急速充電にも対応し、約10分間で航続距離160kmを充電できます。量産モデルは2024年に市場投入する予定です。

↑ステランティス傘下のRamが出展したピックアップトラックのEVコンセプト『ラム1500BEVコンセプト』

 

↑『ラム1500BEVコンセプト』の車内。ピックアップトラックとは思えないゆったりとした室内を実現した

 

【その4】それぞれの独自技術で個性を発揮したサプライヤーが目白押し

続いては自動車部品メーカー(サプライヤー)で見つけた注目の展示を披露したいと思います。

 

まず世界最大のサプライヤー「ボッシュ」の展示で注目したのは、同社のセンサー技術を活用した新たなモビリティソリューション『RideCare Companion』です。普及が進むライドシェアのドライバー向けに開発されたもので、常に車内の様子を映像で捉え、緊急時には付属するSOSボタンでボッシュのサービスセンターへ緊急通報できるのがポイントです。デバイスを含めて米国で年間120ドル程度のサブスクでの提供を想定しているとのことでした。

↑ボッシュが出展したのはライドシェア向けの新たなモビリティソリューション『RideCare Companion』

 

フランスのサプライヤー「ヴァレオ」が出展したのは、歩行者への利便性やEV用充電器としても活用できる『スマートポール』です。ポール下部に埋め込まれた超音波センサー(ソナー)で歩行者の位置を把握しながらトップに備えられた円形のLED照明が必要な位置を照らします。さらに、光学カメラやサーマルカメラ、レーザースキャナ「SCALA LiDAR」により、歩行者の位置に応じて信号を切り替えたり、歩行者が道路へ飛び出さないような警告を出すこともできるそうです。

↑「ヴァレオ」が出展した『スマートポール』。歩行者への利便性やEV用充電器としても活用できる

 

自動車向けシートを開発するトヨタ紡織は、MaaS社会に向けて、将来の自動運転を想定した二つの車室空間を提案しました。一つはMaaSシェアライド空間コンセプトの『MX221』で、自動運転レベル4を想定した都市部シェアモビリティです。多様な移動ニーズへの対応や、利用シーンに合わせた空間レイアウトや内装アイテムの載せ替えを可能としました。もう一つはMaaSサービス空間コンセプト「MOOX」で、自動運転レベル5の時代における、さまざまなサービスニーズに対応する車室空間コンセプトとしました。

↑トヨタ紡織のブース。右側がMaaSシェアライド空間コンセプトの『MX221』

 

↑トヨタ紡織の『MX221』では、多様な移動ニーズや利用シーンに合わせた空間レイアウトを可能とした

 

↑トヨタ紡織のMaaSサービス空間コンセプト「MOOX」。自動運転レベル5を想定したサービスを提供する

 

【その5】パナソニック、Boseが時代に合わせた音へのこだわりを提案

パナソニックが出展したのは、EV向けに開発した『EVオーディオ』システムです。ドアスピーカーの廃止などスピーカーのサイズと数を減らすことで、最大67%の省エネを実現。スピーカーの設置場所の最適化やサウンドチューニングなどにより、少ないスピーカーでも音響性能を向上させているのがポイントとなります。今までのようにオーディオを楽しみながら、バッテリー消費を少しでも抑えたいEVにとって重要なスペックとなりそうです。

↑パナソニックが出展した『EVオーディオ』システム。スピーカーのサイズと数を減らすことで最大67%の省エネを実現

 

車載オーディオのプレミアムブランド「Bose」が披露したのは、大型SUVのGMC/Yukon Denaliに搭載した『3DX Experience』です。ステレオ音源の3Dアップミックス再生を実現したもので、ハイトスピーカーの活用によって臨場感豊かな3Dサラウンド効果を発揮します。中でもドルビー・アトモスを組み合わせた3D再生では、ハイトスピーカーのあり/なしで切り替えて体験ができ、いずれも高い完成度で満足いくサウンドが楽しめました。

↑Boseが披露した『3DX Experience』を搭載したGMC/Yukon Denali

 

↑『3DX Experience』ではドルビーアトモスのモードも用意し、大型SUVの空間を活かした臨場感豊かなサラウンド効果を発揮した

 

会場内には、他にもワクワクするようなモビリティがありました。

↑予約受付中の空飛ぶクルマ「ASKA」。シリーズ式ハイブリッドエンジンで250マイル(約402.3km)を飛行できる

 

↑ジョン・ディアが公開した横幅が約36mもあるらしい象徴的な大型スプレーヤー(農薬等散布機)。雑草に対して的確に農薬を散布する

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

静かで力強く走行できるシャーシ性能が魅力のメルセデス・ベンツ「EQB」

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、メルセデス・ベンツのEQB。SUVのピュアEVで、実用性について見どころが多いモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2023年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【EV】

メルセデス・ベンツ

EQB

SPEC【EQB350 4MATIC】●全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm●車両重量:2160kg●パワーユニット:電気モーター×2●バッテリー総電力量:66.5kWh●最高出力:195[98]PS/5800〜7600[4500〜14100]rpm●最大トルク:37.7[15.3]kg-m/0〜3600[0〜4500]rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):468km

●[ ]内はリアモーターの数値

 

電動化によってシャーシの性能強化も魅力に!

Cセグメントというギリギリコンパクトなクラスながら、3列シートを実現。日本の都市部で理想的なパッケージとして大人気のSUV、GLBのEVバージョンといえるEQBだけに、メルセデスの電動車ブランドである“EQ”のなかでも一番人気のモデルだ。

 

リーズナブルな価格でFWD(前輪駆動)のEQB250は一充電走行距離が520km(WLTCモード)、ハイパフォーマンスで4WDのEQB350 4MATICは468kmと航続距離はそれぞれ十分で、プレミアムブランドの電気自動車のなかでも、多くの人が購入の第一候補としているモデルというのにも納得できる。

 

SUVらしいボクシーなスタイルも魅力だが、その背の高さによるデメリットを打ち消してしまうのが電気自動車ならでは。バッテリーを床下に敷き詰めているので、低重心で操縦安定性が高い。環境負荷が低減できるだけではなく、静かで力強く走行できるシャーシ性能でも魅力のモデルだ。

 

[Point 1]随所に専用デザインを採用

アンビエントライトやメーター回りなどが専用デザインとなるが、インパネの作りは基本的にエンジンモデルのGLBと変わらない。最新のメルセデスらしく運転支援関連の装備は充実している。

 

[Point 2]荷室の使い勝手はベース車と同等

3列シートまで使用する状態でも荷室容量は110Lを確保。後席を完全にたためば、容量は最大で1620Lにまで拡大する。SUVとしての実用性はハイレベルだ。

 

[Point 3]ベース車のイメージも踏襲

随所に専用デザインを採用しつつ、外観はベースとなったGLBのイメージを踏襲。日本仕様は、2WDの250と前後にモーターを搭載した4WDの350 4マチックの2グレードが揃う。

 

[Point 4]3列目シートは身長制限アリ

3列目は身長165cm以下という制限付きだが、コンパクト級SUVとしては満足できる広さを確保。2列目には前後スライド機構も備わる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

EQB250:電気モーター/2WD/822万円

EQB350 4MATIC:電気モーター×2/4WD/906万円

 

 

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文句なしのカッコ良さ! ボルボのEV第1弾「C40 リチャージ」の走りはどう?

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、全ラインナップEV化宣言をしたボルボのEV第1弾モデルを取り上げる! カッコは良いが、走りはどうだ?

※こちらは「GetNavi」 2023年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】ボルボ/C40 リチャージ

SPEC【プラス・シングルモーター】●全長×全幅×全高:4440×1875×1595mm●車両重量:2000kg●パワーユニット:電気モーター●総電力量:69kWh●最高出力:231PS/4919〜11000rpm●最大トルク:33.6kg-m(330Nm)/0〜4919rpm●一充電走行距離:502km(WLTCモード)

659万円〜759万円(税込)

 

素晴らしい性能だけに日本のEV充電の利便性が残念

安ド「殿! この連載にボルボが登場するのは久しぶりですね!」

 

永福「うむ」

 

安ド「久しぶりに登場のボルボは、EVの『C40 リチャージ』です!」

 

永福「EVか……」

 

安ド「そんな憂鬱そうな顔をしないでください!」

 

永福「ボルボはディーゼルエンジンの販売をすでにやめ、ガソリン車の販売も近い将来やめると、急激に電動化を進めている。しかし日本で乗ることを考えると、まだEVを買う気にはなれないのだ」

 

安ド「でも、このC40 リチャージ、素晴らしかったですよ!」

 

永福「たしかに素晴らしいな」

 

安ド「デザインは間違いなくカッコ良いですし、走りも2tという車両重量を考えると、あれだけギュンギュン走るのはスゴいです。カーブでも安定してますね!」

 

永福「付け加えると、乗り心地が絶妙だし、内装のセンスも良い」

 

安ド「今回乗ったのはFFの『シングルモーター』でしたけど、4WDの『ツインモーター』も乗ってみたいです!」

 

永福「ツインモーターの加速はこんなもんじゃないぞ」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「シングルモーターの最高出力231PSに対して、ツインモーターは408PS。停止状態から100km/hまでの加速は、私が以前乗っていたフェラーリ『458イタリア』とほぼ同じだ」

 

安ド「エエッ! そんなに速いんですか!」

 

永福「うむ。実は乗ったことはないのだが、想像はつく。スーパーEVの加速感は、どれも似たようなものだ」

 

安ド「無音でグワーンと加速するんですね!?」

 

永福「うむ。最初は感動するが、飽きてしまう。このシングルモーターで十分だろう」

 

安ド「そう思います! 値段もツインモーターより100万円安いですし」

 

永福「しかし、このクラスのEVは、日産もトヨタもヒョンデも、どれも同じに思えてしまう。ただひとつ違うのは、テスラだ」

 

安ド「えっ、殿はテスラ派ですか?」

 

永福「もちろんだ。テスラが断然優れている」

 

安ド「テスラのどこがそんなに優れているんですか?」

 

永福「独自の充電ネットワーク『テスラ スーパーチャージャー』を持っていることだ。テスラだけが、日本の要所要所で、テスラ専用の充実した超高速充電サービスを受けられる。他のEVは、順番待ちして1回30分ほど急速充電して、それで100kmちょいしか走れない。この差はあまりにも大きい」

 

安ド「そうなんですか!」

 

永福「日本のEV界では、テスラだけが貴族で、あとは庶民なのだ。ボルボだろうとジャガーだろうと、サービスエリアなどで充電の順番待ちをする必要がある。EVはクルマの性能より、充電の利便性が圧倒的に重要なのだ」

 

安ド「勉強になりました!」

 

【GOD PARTS 1】フロントグリル

穴は埋められたが下部に謎の隙間あり

XC40には立派なグリル(空気取り入れ口)がありましたが、このC40はEVなのでエンジン車のように吸気を必要とせず、フタのようなもので埋められています。が、よく見ると下にちょっと隙間があって、微妙な表情を形作っています。

 

【GOD PARTS 2】リアシート脇の小物入れ

何を入れるか悩む収納スペース

リアシートの脇には、コンパクトな小物入れが設置されています。こういった場所に小物入れがあるクルマはなかなか見ませんが、スッと手の届くところにあるので便利といえば便利。使わないといえば使いませんが。

 

【GOD PARTS 3】スターターレス

キーを挿して回すこともボタンも押すこともなし

スターターボタンもキーを挿すキーシリンダーもありません。では、どうやって走り出せばいいのかというと、ただキーを携帯しながら運転席に座るだけ。これだけで勝手にモーターが起動し、シフトを「D」レンジに入れればもう走れます。

 

【GOD PARTS 4】エンブレム

小さな文字で書かれたオシャレネーム

リアには「RECHARGE(リチャージ)」と車名が書かれたエンブレムが貼られています。意味は「充電する」ということで、ボルボのピュアEV第一弾ということを高らかに謳っています。なお、ツインモーターの4WDは、この下に「TWIN(ツイン)」と付きます。

 

【GOD PARTS 5】ボンネット下収納

フタの下のフタの下に厳重に守られたスペース

モーターをフロントの床下に積むこのクルマでは(4WDモデルはリアの床下にもモーター)、ボディ前方に収納スペースが用意されています。ボンネットを開けてみると、さらにもう1枚フタが……。なんだかマトリョーシカみたいでした。

 

【GOD PARTS 6】レザーフリーインテリア

まるで本革のような質感の新素材を採用

その名のとおり内装に革素材が使われていません。自然環境を守るというボルボの強い意思が感じられますが、なんとボルボはまるで革のようなタッチのインテリア素材を開発! 自然な肌触りで、言われるまで気付きませんでした。

 

【GOD PARTS 7】リアコンビランプ

技術の進歩が生み出した複雑にねじられた形状

まるで「S」のような、いや、「L」と「E」を組み合わせたような複雑怪奇な形状をしています。さらに、触ってみるとかなり凸凹していて、カッコ良いかどうかは別にして、昨今のクルマパーツ業界における造形技術の進歩が感じられます。

 

【GOD PARTS 8】ルーフ&テールゲートスポイラー

上でも下でも整流してさらなる効率化を実現

スポイラーというパーツはスポーツカーに装着されるものだと思われがちですが、実は空力を整えることは燃料消費量にも好影響を及ぼします。C40 リチャージは最新のEVということで、これ見よがしに、上下2段のスポイラーを付けています。

 

【GOD PARTS 9】シフトノブ

穴の空いた形状はどこからきたのか?

ボルボのインテリアといえば、以前はセンターコンソールに左右貫通した横穴が象徴的でしたが、この最新モデルではシフトノブに横穴が残されていました。ここに指を通して操作するわけではなく、ただのオシャレデザインなんでしょうね。

 

【これぞ感動の細部だ!】ワンペダルドライブ

強烈なブレーキ感覚に慣れてEV時代に備えよ

日本では日産のe-POWERでお馴染みかもしませんが、アクセルペダルだけで加速も減速も停止もできる「ワンペダルドライブ」機能がこのC40 リチャージにも搭載されています。しかし、アクセルペダルを緩めたときの回生ブレーキはかなり強烈。これをギクシャクしないように運転することがEVとの共存の第一歩と思って、修行に励みましょう。

 

撮影/池之平昌信

 

 

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パイオニアNP1の新機能「マイカーウォッチ」を体験!リアルな警告音声に感心!

パイオニアは12月22日、“会話するドライビングパートナー”として注目を集めるAI搭載通信型オールインワン車載器「NP1」のアップデートを実施し、新たに遠隔で愛車を見守る新しいセキュリティ監視機能「マイカーウォッチ」を追加しました。

 

NP1のドライブレコーダー機能を強化する「マイカーウォッチ」

NP1はサービスや機能の追加・更新を通信で行うことで、購入後も継続的にユーザーの使い勝手や体験を向上させられるのが特徴となっています。今回の大型アップデートはNP1が3月に発売されて以降、3回目となるもので、NP1がもともと搭載していたドライブレコーダー機能を強化するものとなります。

↑NP1に新たに搭載された「マイカーウォッチ」の操作画面。「警告する」をタップすると警告メッセージが流れる

 

「マイカーウォッチ」機能は、離れた場所からクルマの状況をスマートフォン(スマホ)で遠隔監視できることを最大の特徴とします。車室内や車外のカメラ映像と共に、クルマの位置情報や速度情報などがリアルタイムで確認できるようにもなるのです。その機能の活用シーンは大きく以下の3つを想定しています。

 

①駐停車中のクルマへのいたずらなどトラブル時の被害状況の遠隔確認

②盗難被害時の車両位置追跡

③大きな駐車場などでの駐車位置の確認

 

加えて、不審者を発見した際には、定型ではあるものの、メッセージを発報して警告することができるため、これが、犯罪被害を最小限にとどめられる可能性につながるというわけです。これなら、クルマに戻った時に被害に遭ったことに初めて気付く! なんてことにはならずに済みそうです。

 

スマホで車内の様子を鮮明表示。遠隔で警告も発報!

とはいえ、使ってみなければその効果はなかなかわかりにくいものです。そんな中、12月上旬、「マイカーウォッチ」機能のデモを体験する機会を得ました。場所は東京都内のとある駐車場。そこでNP1を搭載した車両に、準備した“不審者”が車両を襲うという想定です。

 

まず、“不審者”がドアを開閉し、その際に発生した振動をNP1が検知すると10秒間の録画映像をSDカードとクラウドへ自動保存する「駐車中衝撃通知機能」が作動します。すると、登録してあるスマホに異常が発生していることを通知。これを知ったユーザーがアプリから「マイカーウォッチ」機能を起動させてカメラを起動すると、そこには車内に乗り込んでいる“不審者”の様子が映像で映し出されるという流れです。

↑NP1から異常を知らせる通知が届いたら、まず「マイカーウォッチ」のアイコンを選択。次に「開始」をタップしてカメラを起動する

 

アプリを起動して映っていた映像は想像以上に鮮明で、“不審者”の表情までしっかりと読み取れるレベルです。取材したときは昼間でしたが、車内は日陰で少し暗めの状況。それでも不審者の表情までも鮮明に映し出していたのです。これはNP1に搭載された赤外線対応カメラが機能しているからで、これによってたとえ照明がない夜間であっても鮮明に撮影できるのです。

↑接続後はNP1が捉えた車内の様子が映し出される。エンジン停止時の「マイカーウォッチ」の映像は、SDカードやクラウドに保存されない。その映像を記録する場合は、スマートフォンの録画・撮影機能を使う必要がある

 

そして、ここからが「マイカーウォッチ」機能の真骨頂です。アプリ上で黄色で表示されている「警告する」アイコンをタップすると、即座に音声で車内に「カメラ作動中。異常状態を確認し、通報しました。遠隔監視を行っています」と警告。これが最大5分間にわたって繰り返されるのです(利用は1回5分で、月に計60分まで)。

↑1回あたり最大5分間利用でき、月に計60分まで12回利用できる

 

驚くのはその音声がとてもリアルだということ。一般的なドラレコが発するような、か細い甲高い音声ではありません。まるでそばから声を発しているようなリアルさなのです。NP1がもともと実装していた高品質な音声出力機能が、ここでも活かされているんですね。

 

駐車中のトラブルへの不安をNP1「マイカーウォッチ」が解決!

また、アプリ上には車両の現在地も表示されており、仮に車両が盗まれて移動したとしてもその位置はリアルタイムで把握できるようにもなっています。デモ中もこの警報を発しながら車両が移動する様子がしっかりとモニターされていました。

↑仮にNP1を装着した車両が盗難に遭って移動してしまった場合も、その走行中の位置と周囲の状況がリアルタイムで表示できる

 

本音を言えば、定型の警告以外にも、たとえばユーザーからのリアルな声で警告が出せたりするともっと良かったかな、とも思いましたが、それをすると通信契約上の問題も発生する可能性が出てきます。なぜなら、NP1で使える通信契約はデータ通信を基本としているからです。このあたりは今後の展開に期待したいと思います。

 

なお、エンジン停止中に「マイカーウォッチ」を利用するには、別売の駐車監視用電源ケーブル「NP-BD001」が必要となります。

↑不審者から愛車を守るためにもNP1の新機能「マイカーウォッチ」は大きな役割を果たす

 

パイオニアが実施した「ドライブレコーダーの利用状況に関する調査」によると、ドライバーの82.7%がドアパンチに対して不安を、72.2%が車上荒らしに対して不安を感じていることが明らかになりました。また、ドライバーの31.5%がドアパンチ、20.9%が当て逃げの被害を受けたことがあると回答しているそうです。つまり、こうした不安を少しでも和らげてくれるのにNP1の新機能「マイカーウォッチ」は打って付けというわけですね。

 

パイオニアでは今後もNP1の定期的なアップデートを予定しているそうです。これから先、NP1がどんなドライブシーンを生み出してくれるか、とても楽しみですね。

 

 

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VW「ID.4」がついに日本市場に登場!初EVでも違和感ない“普通”な乗り味を実感!

フォルクスワーゲン初となる電気自動車(BEV)がついに日本市場へ上陸しました。ドイツ本国では2020年9月にデビューしていましたが、日本導入はなかなか実現せず、「2022年内に間に合うのか?」といった声も聞かれましたが、11月22日、日本での発売が発表。そして、12月中旬、やっと「ID.4 Pro Launch Edition」に試乗する機会に恵まれました。

 

■今回紹介するクルマ

フォルクスワーゲン/ID.4

※試乗グレード:Pro

価格:514万2000円(税込)〜

↑ボディサイズは全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm。プラットフォームにはEV専用の「MEB」を使用し、広いスペースユーティリティが大きな特徴となっている

 

ラインナップは「Lite(ライト)」と「Pro(プロ)」の2グレード

日本に導入されるID.4は、「Lite(ライト)」と「Pro(プロ)」の2グレードの展開で、前者は125kW(170PS)のモーターを52kWhのリチウムイオンバッテリーで駆動し、航続距離は435km。後者のプロはその高出力版で150kWh(204PS)のモーターと77kWhのバッテリーの組み合わせ、航続距離は618km(いずれもWLTCモード)と発表されています。今回試乗できたのは後者のプロで、「ID.4 Pro Launch Edition」は日本で展開するその記念モデルとして導入されました。

↑ボンネット内には150kWh(204PS)のモーターを組み込み、77kWのバッテリーで駆動される

 

ID.4はフォルクスワーゲンの電動化専用プラットフォーム「MEB(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)」を採用するだけに、車格を見てもゴルフのような存在にも思いがち。しかし、実際は現行ゴルフよりも遙かに大きいボディを持つ「SUV」としてラインナップされたモデルとなります。ボディサイズは全長4585mm×全幅1850mm×全高1640mmで、ホイールベースは2770mm。ゴルフと比べると全長290mm長く、全幅で60mm広く、全高も165mm高い。さらにホイールベースも150mmも長いのです。

↑伝統のVW流のデザインを伝えながら、クローズドされたBEVらしいフロントグリルを採用する

 

「MEB」の採用により、広い室内スペースとカーゴルームをもたらしました。特に2770mmのホイールベースはそのまま室内スペースの拡大につながっています。室内全体が車体のサイズをそのまま反映するかのように広々としていて、運転席まわりも十分なゆとりがあり、後席に至っては足を組んで余裕があるほど。このあたりはまさにフォルクスワーゲンの空間作りの上手さが活かされていると言えるでしょう。

↑リアビューはSUVスタイルそのものを実感させるデザインだ。Proはフロント235/50 R20 8J×20インチ、リア255/45 R20 9J×20インチを履く

 

圧倒的な広さの室内とカーゴルーム。クリーンなインテリアも好印象

SUVらしくカーゴルームの容量も圧倒的な広さを持っています。数値で表すと、前後席を使った時で543L、後席を倒せば最大1575Lにまで拡大できるのです。まさにSUVとして十分な容量を確保したと言っていいと思います。

↑SUVとして使うのに十分な容量を備えたカーゴルーム。中央にはスルー機能も備えられた

 

インテリアは余計な加飾がないクリーンな印象で、それはまさにシンプルイズベストをそのまま表したような造り込みを感じます。ドライバーの正面には5.3インチのメーターディスプレイが配置され、ダッシュボード中央にはインフォテイメントシステムとして使う12インチディスプレイを用意しています。ただ、ライトは後者が10インチとなり、いずれもナビゲーションの設定はなく、コネクテッド機能も搭載されていません。手持ちのスマートフォンをつなぐことが前提となるディスプレイオーディオと思った方が良いでしょう。

↑ダッシュボードとフロントガラスの間にあるLEDストリップにより、光のアニメーションで各種情報を通知するシステム“ID.LIGHT”を新採用

 

↑Proには「シートマッサージ機能」と「パノラマガラスルーフ」が標準装備される

 

↑空間的には足をゆったり組めるほどの広さがあるが、後席使用時はヘッドレストをリフトアップする必要がある

 

ただ、メーターディスプレイはステアリングコラムに直付けされているため、チルト/テレスコピックしても視認性が大きく変わることはありません。ディスプレイ右にはドライブモードの切替スイッチがあります。最初こそステアリング陰にあって、あちこち探してしまいましたが、一度その位置を憶えてしまえば、これ一つで前進/後退、パーキングへの切替ができ、誰もが使いやすさを実感するでしょう。

↑ドライバーの正面には5.3インチのメーターディスプレイ。ステアリングコラムと一体で上下に稼働する

 

↑メーター横に備えられたドライブモードセレクター。手元で操作でき、しっかりしたクリック感が使いやすい

 

エンジン車からの乗り替えでも違和感なく運転できる!

ガソリン車と大きく違うのは、リモコンでドアを開けて運転席に座ると、その時点でシステムが自動的に起動すること。わざわざスイッチを押すこともなく、そのままドライブモードを切り替えれば走り出すことができるのです。降りる時はその逆で、降車してキーをロックすれば自動的にOFFとなります。撮影にはちょっと困りましたが、普段使いとして考えれば極めて効率の良いインターフェースと言えるでしょう。

↑LEDマトリックスヘッドライト「IQ.LIGHT」。フロントカメラで対向車や先行車を検知し、マトリックスモジュールに搭載された片側18個(両サイドで36個)のLEDを個別に点灯・消灯を制御する

 

走り出してまず感じたのは、強烈な加速というよりもフワッと車体を前へ押し出していく感じ。電動車にありがちなトルクを前面に出すような印象はまったくありません。ひたすらスムーズに、速度域が上がっていく感じです。かといってパワーがないわけじゃありません。アクセルを強めに踏み込めば、そこは電動車、あっという間に思い通りの速度域に達してくれます。カタログ値の0→100km加速が8.5秒というのも頷けますね。

↑「ID.4 Pro Launch Edition」を試乗する筆者

 

ハンドリングの追従性も高く、カーブが連続する峠道でもノーズを自在に向けることができるなど、BEVならではの重さを感じることはほとんどありませんでした。峠道を走る愉しさを実感させてくれるクルマと断言して間違いないでしょう。

 

強いて言えば、回生ブレーキの効き方もマイルドで、Bモードに切り替えてもそれほど減速Gは感じないために、下り坂ではフットブレーキに頼らざるを得ませんでした。裏返せば、ガソリン車からの乗り換えでも違和感なく“普通”に乗れる、その素晴らしさを実感させてくれるのがID.4と言えるのかもしれません。

↑2tを超えるBEVの重量を感じさせない回頭性の良さが、峠道を走る愉しさをもたらしている

 

SPEC【Pro】●全長×全幅×全高:4585×1850×1640㎜●車両重量:2140㎏●モーター:交流同期電動機●最高出力:204PS/4621〜8000rpm●最大トルク:310Nm/0〜4621rpm●一充電走行距離WLTCモード:618㎞

 

撮影/松川 忍

 

 

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BYDのミドルサイズSUV「ATTO 3」は、コスパ面で日米欧勢のEVを上回っている!

1997年に初代プリウスが発売されて以降、日本はハイブリッドカー大国となり、世界を席巻してきた。しかし、クルマの最新進化型がEV(電気自動車)となった現代では、中国がEV大国となっている。そしていよいよ、その中国メーカー製のEVが日本へ上陸を果たす。果たして世界トップクラスのEVメーカーが放つ最新EVの実力はどれほどのものか?

 

■今回紹介するクルマ

BYD/ATTO 3

※試乗グレード:─

価格:440万円〜(税込)

 

EVで最も重要な性能は航続距離

中国は世界最大の自動車市場。昨年の新車販売台数は2627万台と、アメリカの1541万台をはるかに上回った。ちなみに日本は445万台で、なんとか世界第3位を維持したが、インドに追い上げられるなど地盤沈下が激しい。

 

中国はあまりにも巨大だが、中国製乗用車のほとんどは中国国内で消費され、輸出はゼロに近かった。中国製乗用車は、ブランド力不足により、海外ではまったく競争力がない。ところが、モノがEVなら話は違う。すでに中国製の電化製品は大いに世界に進出し、品質を認められつつある。アメリカがファーウェイ(華為)製品を排除しているのは、競争力の高さの表れだ。

 

そして2023年。ついに中国製乗用車の販売が日本で開始される。第一弾はもちろんEV。世界第2位のEVメーカー、BYDの「ATTO 3(アットスリー)」だ。

↑1月31日から販売が開始するATTO 3。写真のPARKOUR REDを含め、ボディカラーは全5色から選べる

 

ATTO 3のボディサイズは、コンパクトSUVに属する。全長は日産「アリア」より140mm短いが、全幅と全高はほぼ同じ。バッテリー容量は58.56kWhで、WLTCモードの航続距離は485kmだ。アリア(B6)は66kWhで470kmだから、それよりバッテリー容量は小さいものの、航続距離ではわずかに上回っている。つまり効率がいい。

↑この複雑な曲面のデザインを実現しているのは、BYDのグループ会社である日本のTatebayashi Moldingが持つ高い金型技術とのこと

 

EVで最も重要な性能は航続距離だ。一度でもEVに乗ったことのある者なら、その切実さを理解しているだろう。夜間、自宅で普通充電し、それでどこまで走れるかで勝負は決まる。外での急速充電は、ガソリンの給油に比べると、ストレスは100倍レベル。なにしろ30分間の急速充電で走れるのは、せいぜい100km強なのだから。

 

現在、世界の多くのEVが、航続距離500km前後になっている。500kmというのはあくまでカタログ値で、実際にはその7掛け程度と考えるべきだが、ともかくカタログ値で500kmの航続距離があれば合格というのが世界の趨勢だ。ATTO 3は、EVとして標準的な航続距離を持っている。

↑インバーター、モーター、コントロールユニットがコンパクトにまとまっている。それらが一体型で低い位置に収納される

 

ATTO 3のルックスは至って「フツー」

では、その他の部分のデキはどうか。まずデザイン。EVの定番は「未来的で高級感のあるスタイリング」だが、ATTO 3のルックスはやや安っぽい。フロントグリルのメッキでEV感を出しているが、かえってオモチャっぽく見える。と言っても落第というわけではなく、「ものすごくフツー」というレベルにある。

 

インテリアも、質感はあまり高くないのだが、こっちには斬新で楽しい仕掛けがいろいろある。インパネセンターの大型ディスプレイは、ボタンひとつで縦にも横にもなる。これはちょっとした衝撃だ。ディスプレイは、通常は横、ナビとして使うなら縦が適しているが、ATTO 3はどちらにも対応できるのだ。ボタンを押してディスプレイが回転すると、それだけで「うーん、やられた!」と感じる。

↑アスレチックジムをモチーフにデザインされた内装。センターディスプレイが回転可能で縦型にも横型になる

 

もうひとつ面白いのは、ドアにギターのようなゴム製の弦が付いていることだ。これは実際にギターをイメージした装飾で、BYDの遊び心を表したもの。ステイタスにこだわらず、楽しいクルマを作ろうとしているのが感じられる。

↑弦を弾くと音を奏でるドアトリムなどユニークなデザインが随所に散りばめられた

 

ちなみにウィンカーレバーは国産車同様、ハンドルの右側に付いている。輸入車としては極めて珍しいが、日本市場に合わせてわざわざ変更したという。

 

乗り味は、EVとしては穏やかな部類に属する。加速は、一部EVのような狂気の爆発力はなく、ガソリン車と比べれば「ダッシュがいいね」くらいのレベル。サスペンションもかなりソフトでゆったりしている。日常的な走りを優先した仕上がりと言える。

↑長距離運転や高速道路の運転をサポートするナビゲーション パイロット機能、万一の衝突時の被害を回避または軽減する予測緊急ブレーキシステムなど、先進的な予防安全機能を装備

 

基本的にEVは、どれに乗っても乗り味にそれほど大きな違いはない。電気で回転するモーターは、ガソリンエンジンのような味わいの違いが出しづらく、主な違いは加速力だけになってしまう。ATTO 3もその例に漏れないが、見た目同様、走りもEVとして「ものすごくフツー」。家電の仲間と考えれば、完全に合格点だ。

 

コスパでいうと、ATTO 3は日米欧勢を上回っている

こうなると、勝負は価格で決まる。1月31日から全国22か所のディーラーで販売が始まるATTO 3の価格は、440万円と発表されている。そのコスパはどうか?

 

主なEVの車両価格1万円あたりの航続距離をランキングすると、このようになる。

1位 ヒョンデ「アイオニック5(ボヤージ)」 1.19km/万円
2位 BYD「ATTO 3」 1.10 km/万円
3位 テスラ「モデル3(スタンダード)」 0.95 km/万円
4位 VW「iD.4(プロローンチエディション)」 0.88 km/万円
5位 日産「アリア(B6)」 0.87 km/万円
6位 トヨタ「bZ4X」 0.86 km/万円
7位 日産「サクラ」 0.84km/万円
<その他>
メルセデス・ベンツ「EQA」 0.69km/万円
BMW「iX3」 0.59km/万円

 

ATTO 3は、日米欧勢を上回っているが、韓国ヒョンデの「アイオニック5」には及んでいない。日本国内では、ヒョンデにもブランド力はないが、中国BYDに比べれば知名度は抜群だし、アイオニック5のデザインは、ATTO 3に比べれば断然イケている。

 

総合的にみると、ATTO 3は、「もうちょっと安ければよかったんだけど」というところだろうか? 400万円を切る価格なら、競争力はあったはずだ。

 

たとえば中国製のタイヤは、日欧米ブランドの4分の1程度と激安で、性能も普通に使う限りあまり差はないため、最近、シェアを伸ばしている。しかしEVの価格は、おおむねバッテリー容量で決まってくる。自動車用バッテリーは超グローバル商品。中国製もそれ以外も、価格に大きな差はない。

 

BYDが自社生産する「ブレードバッテリー」は、独自の技術で作られており、耐久性が高いと言われるが、長く使ってみないと実感できないので、当初はアドバンテージになりにくい。結論としてATTO 3は、今の段階では、「面白い存在だけど、買うかどうかは別」というステップにとどまるだろう。ただ、中国製EVの実力が侮れないことはたしかだ。近い将来、世界を席巻する可能性もある。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4455×1875×1615㎜●車両重量:1750㎏●パワーユニット:電気モーター●最高出力:204PS/5000-8000rpm●最大トルク:310Nm/0-4620rpm●一充電航続距離(WLTCモード):485㎞

 

撮影/池之平昌信

 

 

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ちょっとトガった魅力も併せ持つ丸目がイイ! イマドキの軽自動車&コンパクトカー6選

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ワタシが評価しました!

自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

【その1】ルーツのデザインを生かして軽自動車のスタンダードに!

ホンダ

N-ONE

159万9400~202万2900円(税込)

軽自動車販売台数7年連続ナンバーワンのN-BOXの兄弟車で、より低重心な運転感覚が味わえるトールワゴンモデル。デザインは初代モデル同様、ホンダ車の始祖であるN360がモチーフで、2代目となる現行型もレトロな雰囲気を持っている。

SPEC(Premium Tourer・FF)●全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm●車両重量:860kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:65N・m/4800rpm●WLTC燃費:23.0km/L

 

[ココはトガっている] 丸にこだわったホイールも選べる

丸目だからといってデザインすべてが丸系ではなく、全体的には四角や台形などとの組み合わせ。ただ、ホイールにはしっかり丸系デザインが用意されている。足元にも丸を配置することで楽しさを演出。

 

↑真正面や真後ろから見ると台形になっていて、安定感を演出している。ファニーな顔と裏腹に、踏ん張り感のある力強い造形だ

 

↑レトロっぽい外観に対して、インテリアはモダンなイメージでまとめられている。心地良く使いやすい空間に仕上がった

 

↑ターボエンジンに6速MTを組み合わせたスポーツグレード「RS」もラインナップ。スポーツモデルが得意なホンダの面目躍如だ

 

子どもが描いたようなたくらみのない愚直さ

N-ONEの丸目は本物の丸目、つまり真円だ。円形のヘッドライトは、照明の基本形。半世紀ほど前に四角いヘッドライト、つまり角目が登場するまで、クルマのヘッドライトは、すべて丸目だった。

 

つまりN-ONEの丸目は、昔のヘッドライトの形そのもの。昔は丸目のクルマしかなかったけれど、現在は丸目はレアだし、真円の丸目はさらに希少。それだけで人の「目」を引き付け、ホンワカした郷愁を感じさせてくれる。

 

加えてN-ONEのデザインは、N360など、半世紀前のホンダ車のデザインをモチーフにしている。当時のクルマのデザインは、今見ると子どもが描いた絵のようで、これまたホンワカした郷愁に浸ってしまう。いや、現代の子どもたちが描くクルマの絵はたいていミニバンらしいので、これまた「昔の子どもが描いた絵」と言うべきかもしれないが……。

 

細かいことはさておき、この、たくらみのない愚直なデザインが、N-ONEをちょっと特別なクルマに見せる。断面が台形で、大地を踏ん張る感やスピード感があるのも、一種のレトロデザインなのである。

 

【その2】オープンカーの楽しみを広げてくれる個性的デザイン

ダイハツ

コペン セロ

194万3700~214万7200円(税込)

2代目となる現行型コペンの、第3のスタイルとして2015年に追加された人気モデル。“親しみやすさと躍動感の融合”をテーマにしたデザインは、丸目のみの意匠で高い評価を得ていた初代コペンを彷彿させ、根強いファンが多い。

SPEC(セロS・5速MT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm●車両重量:850kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6400rpm●最大トルク:92N・m /3200rpm●WLTC燃費:18.6km/L

 

[ココはトガっている] デザインアレンジが自由自在!

現行型コペンは内外装着脱構造を備え、樹脂外板やヘッドランプなどを交換して、別のスタイルへ変更することが可能。クルマのデザインを自由に変更して自分らしさを表現できる。

 

↑リアコンビネーションランプの形状も丸! 前から見ても後ろから見ても、親しみやすさと躍動感を感じられるルックスだ

 

↑なんといってもコペンは軽自動車唯一のオープンスポーツモデル。風を感じながら爽快にドライブを楽しむことができる!

 

↑「アクティブトップ」と呼ばれる電動開閉式トップを採用。屋根を閉めてしまえば快適な室内スペースを確保できる

 

昔のクルマのようなカタチで運転の本来の喜びに浸る

創世記のフェラーリ、たとえば166MMといったクルマを見ると、「カマボコにタイヤを4個付けて、丸い目と四角い大きな口を描いたような形」をしている。NHKのマスコットキャラクター「どーもくん」の顔をつけたイモムシ、と言ってもいい。

 

コペン セロのデザインは、それに非常に近くはないだろうか?

 

目は真円ではなく微妙に楕円だが、真正面から見るとほとんど丸。テールランプも丸。ボディは斜めのエッジを付けたカマボコ型だ。

 

そして2人乗りのオープンカー。いまでこそオープンカーはゼイタク品だが、昔はオープンカーが標準で、雨の日のために幌が用意されていた。つまりコペン セロのデザインは、70年くらい前の標準的な自動車の形、と言えなくもない。

 

すなわち、コペンは特殊なドライビングプレジャーを提供するクルマだが、本質は本来の自動車そのものということ。だからデザインも、70年くらい前の自動車に似ているのである。そしてこのクルマで走れば、70年くらい前の人が感じたのと同じ、原初的なヨロコビに浸ることができるというわけだ。スバラシイじゃないか。

 

【その3】どんな道も力強く駆け抜ける古典的4WD車の最新形

スズキ

ジムニー

155万5400~190万3000円(税込)

約20年間販売された先代型に代わり、2018年にモデルチェンジした軽クロスカントリーSUV。登場するや否や爆発的な人気で1年以上の納車待ち状態に。オフロード向きのラダーフレーム構造と、最新の安全装備を採用している。

SPEC(XG・4速AT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1725mm●車両重量:1050kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:96N・m/3500rpm●WLTC燃費:14.3km/L

 

[ココはトガっている] 縦横無尽のオフロード性能!

初代モデルから一貫して採用されているのはパートタイム式の4WD。雪道、荒地、ぬかるみ、登坂路など、様々なシーンに合わせた駆動パターンを選ぶことができて、高い悪路走破性能を発揮する。

 

↑軽自動車ではなく1.5Lエンジンを搭載するワイドボディの「ジムニーシエラ」もラインナップ。よりパワフルな走りを求める人向け

 

↑シンプルにして機能性を徹底追及したインテリアデザイン。骨太なオフロードモデルを欲するユーザーにぴったりだ

 

機能に一極集中したパワフルなデザイン

ジムニーのデザインは、余計な工夫を何もしていない。悪路の走破性の高い、いわゆるジープタイプのカタチのまま作っている。

 

ヘッドライトも当然丸い。繰り返すが、ジムニーは余計な工夫を一切排除している。つまり、80年前のジープとまったく同じなのだ。この機能オンリーのデザインパワーは、すさまじい破壊力を持って、我々の心に食い込んでくる。

 

【その4】アクティブな乗り方に耐える現代仕様のタフデザイン

スズキ

ハスラー

136万5100~181万7200円(税込)

2020年に現行型となる2代目モデルへモデルチェンジした、クロスオーバーSUVタイプの軽自動車。使い勝手のいい軽ハイトワゴンに流行りのSUV風のデザインを施し、高レベルの低燃費性能と安全性能、小回り性能を備えている。

SPEC(HYBRID Xターボ・2WD)●全長×全幅×全高:3395×1475×1680mm●車両重量:840kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:98N・m/3000rpm●●WLTC燃費:22.6km/L

 

[ココはトガっている] インテリアデザインはギア風!

従来の軽自動車では見たことがなかったような自由度の高いデザイン。インパネ正面に3つのサークルを設けるなど、どこかギアっぽさ、おもちゃっぽさを感じる作りになっている。

 

↑ポケットやトレーなどを備えたアウトドア向けのインテリア。買い物袋を提げられるフックやシート座面下の収納も搭載する

 

↑シート脇のラインなど、内装を彩るホワイト/オレンジ/ブルーといったカラーアレンジもグレードによって選ぶことができる

 

印象をガラリと変える目尻の付け足しがニクい

ジムニーは3ドアだが、ハスラーは5ドアなので実用性が高い。ジムニーはボディの角が角ばっているが、ハスラーは適度に丸みを帯びている。そして丸目の外側に目尻を付けたハスラーの顔は、ジムニーに比べるとグッとソフトで、ぬいぐるみっぽく感じられる。

 

つまり「ジムニー的な機能オンリーデザインのソフト&カジュアル版」というわけだ。

 

【その5】世界から愛されて50年超丸目の哲学を今に受け継ぐ

BMW

MINI

298万~516万円(税込)

長年にわたって販売されていたクラシック・ミニが、2001年にBMWによってリボーンさせられてからすでに3代目。独自の乗り味「ゴーカートフィーリング」はそのままに、メカは現代的にアップデートされている。

SPEC(クーパー・5ドア)●全長×全幅×全高:4025×1725×1445mm●車両重量:1260kg●パワーユニット:1498cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:100kW/4500rpm●最大トルク:22oN・m/1480〜4100rpm●WLTC燃費:15.6km/L

 

[ココはトガっている] クセの強い特別仕様車が続々登場!

ブランド力とファッション性の高さもあって、さまざまなカラーリングの特別仕様車が次々に登場している。写真は、英国のストリートアートの聖地の名を冠した「ブリックレーン」

 

↑ボディサイズは拡大されてきたものの、インパネ中央に丸い大型ディスプレイを配置したポップなデザインはいまも健在だ

 

↑伝統の3ドアハッチバックに加え、コンバーチブルやクロスオーバーSUV、ワゴン風のクラブマン、5ドアもあり

 

生まれたのはまだ丸目しかなかった時代

59年に誕生した元祖ミニは、最小のサイズで最大限の居住性を追求した偉大なる大衆車で、極限までシンプルだったから、当然ヘッドライトは丸目だった。

 

現在のミニのデザインは、あくまで元祖ミニを出発点としている。サイズは大幅に大きくなったが、フォルムはあくまで元祖を彷彿とさせる。ミニは元祖ミニっぽくなければ、ミニじゃなくなってしまうのだ。

 

【その6】ファニーフェイスでロングセラーモデルに!

フィアット

500

255万~324万円(税込)

3ドアハッチバックタイプのイタリア製コンパクトカー。かつての名車のリバイバルデザインで2007年に発表されたが、登場から約15年が経ったいまもファンから愛されており、ほぼ変わらぬデザインのまま販売され続けている。

SPEC(TWINAIR・CULT)●全長×全幅×全高:3570×1625×1515mm●車両重量:1010kg●パワーユニット:875cc直列2気筒ターボエンジン●最高出力:63kW/5500rpm(ECOスイッチON時57kW/5500rpm)●最大トルク:145N・m/1900rpm(ECOスイッチON時100N・m/2000rpm)●WLTC燃費:19.2km/L

 

[ココはトガっている] 待望のEVモデルがデビュー!

新型EV(電気自動車)として誕生した「500e」は、500のデザインを受け継いだモデルとして6月に発売された。ヘッドライトは上下に分割されて「眠そうな目」となる。価格は473万円から。

 

↑旧モデル同様、かたまり感のあるプロポーション。エンジンは1.2L直列4気筒に加え、875cc直列2気筒も設定される

 

↑室内空間にも丸をモチーフとしたデザインが散りばめられている。正面パネルのカラーパーツもキュート

 

レトロモチーフを現代に蘇らせた快作

現在のフィアット500は、ミニと同じく、半世紀以上前の大衆車がモチーフ。元祖は機能第一だったが、現在はファンカーで、実用性は二の次になっている。もちろんヘッドライトは丸目だ。

 

こうして見ると、現在の丸目カーは、すべて昔のクルマがモチーフ。丸目にすると激しく昔っぽくすることができる。目が丸いって、スゴいパワーなんですね!

 

 

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満足度は間違いない! 三菱「アウトランダーPHEV」は輸入車の高級モデルばりの威厳を放つ!!

2021年12月に発売された新型「アウトランダーPHEV」。すでに発売から1年が経過したが、多くの自動車メディアや評論家が高く評価している。先代モデルは約9年と長きにわたって販売されロングセラーモデルだったが、はたして新型はユーザーが待ち望んだ進化を果たしたのだろうか。現在の三菱自動車のフラッグシップモデルの実力に迫った。

 

■今回紹介するクルマ

三菱/アウトランダーPHEV

※試乗グレード:P

価格:462万1100円~548万5700円(税込)

 

ハイブリッドカーの進化系であるPHEVがある

カーボンニュートラルの波は日本の自動車業界にもひしひしと迫っており、クルマの電動化はもはや避けられない事態となっている。特に政府関係者に望まれているのはピュアEV(電気自動車)だが、日本でまだ流行らない理由は、価格が高いこととインフラに不安があるからだ。

 

前者に関しては、政府から補助金が出ることでガソリン車と変わらないくらいの価格になっているし、普及が進めば徐々に価格も下がってくることが予想される。しかし後者に関してはなかなか深刻な問題だ。給電スポットを探して不安になりながら運転するというのは、一度経験した人なら二度と味わいたくないものに違いない。

 

また、給電時間の問題もある。やっと見つけた充電スポットに先客がいれば、その人と自分とで合わせて1時間近く充電待ちしなくてはならないこともある。とはいえ、インフラが充実するには相当な時間がかかる。現在のガソリンスタンドのように、当たり前のように街中に給電スポットが揃うのはいつになることか。この先、EVの普及台数が増えていけば、追いかけっこのような状態になりかねない。

 

では、インフラが普及するまでEVは買えないのか、EVの走りを味わうことはできないのか、といえば、そんなことはない。ハイブリッドカーの進化系であるPHEV(プラグインハイブリッドカー)がある。PHEVとは充電できるハイブリッドカーのことで、基本的にはEVとしてモーターで走り、電気がなくなったら(充電できなかったら)、ガソリンエンジンを積んでいるから普通のハイブリッドカーとしても走れるし、走行中に充電もされる。

↑アウトランダーPHEVのグレードはP、BLACK Edition、G、Mの4種。今回は最上級グレードのPを試乗

 

2022年末の現在、日本ではトヨタの「プリウス」、「RAV4」、レクサスの「NX」、三菱には「エクリプスクロス」、そしてこのアウトランダーにPHEVの設定がある。しかし、このアウトランダー(先代型)こそが“PHEVの権化”という時代があったのは事実だ。元々はミドルサイズのクロスオーバーSUV「エアトレック」の後継車で、2013年に2代目モデルに世界初の4WD&SUVのPHEVとして先代型が誕生して以降、他メーカーのPHEVは販売が振るわなかったのだ。

↑ボディカラーはPグレード専用色を含めて全12色。スタイリングをさらに引き立ててくれるダイヤモンドカラーシリーズは美しい

 

そして2021年に満を持して3代目アウトランダー(アウトランダーPHEVとしては2代目)が誕生したわけだが、ガソリンエンジン搭載モデルもラインナップされていた先代型と違い、新型はPHEVのみとなっている。これは、PHEVのみでも販売的に失敗しない、そしてそれだけの高い完成度を実現したという三菱の自信の表れでもある。

↑255/45R20 タイヤ+20インチアルミホイール(2トーン切削光輝仕上げ)を履く。※Pの場合

 

↑インテリアにはインストルメントパネルを貫く力強い水平基調のデザインを採用。Pのシート生地はブラック×サドルタンのセミニアンレザーが標準だが、試乗車はライトグレーのレザー生地になっていた

 

乗り心地もフラットで、極めて乗用車ライク!

パワーユニットの構成は、フロントにエンジンを搭載し、フロントとリアにそれぞれモーターを備えた4WDとなっており、前後で異なるモーターで駆動を制御する「ツインモーターAWD」を採用している。従来モデルと同構成ながら、出力が向上されたこのユニットによって非常に優れた加速を実現しており、体感的にもEV(モーター)特有の鋭い加速が感じられた。なお、バッテリー容量は先代型から約50%近く拡大されており、カタログ値で87kmもモーターのみで走行することができる。

 

↑手になじむ大型のダイヤルを回すことで直感的にモードの選択が可能

 

↑左のスイッチはペダルの踏み替えを減らす「イノベーティブペダルオペレーションモード」。右にあるのは4つのモードから、バッテリー残量をコントロールできるスイッチ

 

先代モデルと比べると、もう少し硬かった足まわりがだいぶしなやかになった。乗り心地もフラットで、極めて乗用車ライクなものになっている。また、先代型は車高の高いSUVらしくコーナリングで多少の不安があったが、より安定感の高いフィーリングを感じさせるようになった。

 

ステアリングフィールに関しては従来から重くはなかったが、さらに軽くなった印象を受ける。全体的な操作感覚としては何もかもイージーに生まれ変わったといえる。ボディサイズは全長、全幅とも拡大されているが、最小回転半径は5.5mとなっており、ボディサイズを考えれば非常に小回りが効くクルマに仕上がっている。

↑フロントよりリアのモーターのほうがパワフルなのも三菱PHEVの特徴

 

新型はPHEVのみになったにも関わらず、先代型のガソリンモデルでラインナップされていた7人乗り(3列シート)仕様が設定されている。単純に考えてガソリン車よりPHEVのほうがメカニズム部分の容積が大きくなってしまうはずだが、そこは設計や技術で補った形だ。

 

3列目シート自体は、背もたれ、座面ともに重厚になっていて、立派な印象を受ける。しかし実際に座ってみると筆者のような身体の大きめな男性では高さが足りず、また足を置く部分の床面積にも不満が残る。多くのミニバンと同じように、あくまでも3列目は子ども向けと割り切るべきだろう。

↑3列目シートは子ども専用ともいうべきスペース感

 

↑荷室は、3列目まで使用すると容量は最大284リットル。3列目シートを床下格納すると、最大646リットルまで容量は拡大する

 

最後に、デザインについては、三菱ブランドのフラッグシップ(旗艦)らしく、堂々としたたたずまいに仕上がっていて素晴らしい。何にも似ていない三菱オリジナルテイストのフロントまわりは、同社のデザインアイコンである「ダイナミックシールド」が採用されており、非常に押し出し感が強く、輸入車の高級モデルばりの威厳を放っている。インテリアについてもクラス以上の高級感に満ちていて、クオリティが高い。流行りのフォーマットをなぞっている印象のないクルマながら、クルマの未来を感じたい人にとって、最高の一台になり得るだろう。

↑フロントマスクには最新世代の「ダイナミックシールド」デザインを採用。頰の部分にある四角いユニットがヘッドランプ

 

SPEC【P】●全長×全幅×全高:4710×1860×1745㎜●車両重量:2110㎏●パワーユニット:2359cc直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:98kW/5000rpm●フロントモーター最高出力:85kW/リアモーター最高出力:100kW●エンジン最大トルク:195Nm/4300rpm●フロントモーター最大トルク:255Nm/リアモーター最大トルク:195Nm●WLTCモード燃費:16.2㎞/L

 

撮影/木村博道 文/安藤修也

 

 

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フィアット「500」、ファニーフェイスでロングセラーモデルに!

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

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清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

フィアット/500

255万~324万円(税込)

3ドアハッチバックタイプのイタリア製コンパクトカー。かつての名車のリバイバルデザインで2007年に発表されたが、登場から約15年が経ったいまもファンから愛されており、ほぼ変わらぬデザインのまま販売され続けている。

SPEC(TWINAIR・CULT)●全長×全幅×全高:3570×1625×1515mm●車両重量:1010kg●パワーユニット:875cc直列2気筒ターボエンジン●最高出力:63kW/5500rpm(ECOスイッチON時57kW/5500rpm)●最大トルク:145N・m/1900rpm(ECOスイッチON時100N・m/2000rpm)●WLTC燃費:19.2km/L

 

レトロモチーフを現代に蘇らせた快作

現在のフィアット500は、ミニと同じく、半世紀以上前の大衆車がモチーフ。元祖は機能第一だったが、現在はファンカーで、実用性は二の次になっている。もちろんヘッドライトは丸目だ。

 

こうして見ると、現在の丸目カーは、すべて昔のクルマがモチーフ。丸目にすると激しく昔っぽくすることができる。目が丸いって、スゴいパワーなんですね!

 

[ココはトガっている] 待望のEVモデルがデビュー!

新型EV(電気自動車)として誕生した「500e」は、500のデザインを受け継いだモデルとして6月に発売された。ヘッドライトは上下に分割されて「眠そうな目」となる。価格は473万円から。

 

↑旧モデル同様、かたまり感のあるプロポーション。エンジンは1.2L直列4気筒に加え、875cc直列2気筒も設定される

 

↑室内空間にも丸をモチーフとしたデザインが散りばめられている。正面パネルのカラーパーツもキュート

 

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世界から愛されて50年超丸目の哲学を今に受け継ぐBMW「MINI」

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ワタシが評価しました!

自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

BMW/MINI

298万~516万円(税込)

長年にわたって販売されていたクラシック・ミニが、2001年にBMWによってリボーンさせられてからすでに3代目。独自の乗り味「ゴーカートフィーリング」はそのままに、メカは現代的にアップデートされている。

SPEC(クーパー・5ドア)●全長×全幅×全高:4025×1725×1445mm●車両重量:1260kg●パワーユニット:1498cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:100kW/4500rpmm●最大トルク:22oN・m/1480〜4100rpm●WLTC燃費:15.6km/L

 

生まれたのはまだ丸目しかなかった時代

59年に誕生した元祖ミニは、最小のサイズで最大限の居住性を追求した偉大なる大衆車で、極限までシンプルだったから、当然ヘッドライトは丸目だった。

 

現在のミニのデザインは、あくまで元祖ミニを出発点としている。サイズは大幅に大きくなったが、フォルムはあくまで元祖を彷彿とさせる。ミニは元祖ミニっぽくなければ、ミニじゃなくなってしまうのだ。

 

[ココはトガっている] クセの強い特別仕様車が続々登場!

ブランド力とファッション性の高さもあって、さまざまなカラーリングの特別仕様車が次々に登場している。写真は、英国のストリートアートの聖地の名を冠した「ブリックレーン」

 

↑ボディサイズは拡大されてきたものの、インパネ中央に丸い大型ディスプレイを配置したポップなデザインはいまも健在だ

 

↑伝統の3ドアハッチバックに加え、コンバーチブルやクロスオーバーSUV、ワゴン風のクラブマン、5ドアもあり

 

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スズキ「ハスラー」はアクティブな乗り方に耐える現代仕様のタフデザイン!

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ワタシが評価しました!

自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

スズキ/ハスラー

136万5100~181万7200円(税込)

2020年に現行型となる2代目モデルへモデルチェンジした、クロスオーバーSUVタイプの軽自動車。使い勝手のいい軽ハイトワゴンに流行りのSUV風のデザインを施し、高レベルの低燃費性能と安全性能、小回り性能を備えている。

SPEC(HYBRID Xターボ・2WD)●全長×全幅×全高:3395×1475×1680mm●車両重量:840kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:98N・m/3000rpm●WLTC燃費:22.6km/L

 

印象をガラリと変える目尻の付け足しがニクい

ジムニーは3ドアだが、ハスラーは5ドアなので実用性が高い。ジムニーはボディの角が角ばっているが、ハスラーは適度に丸みを帯びている。そして丸目の外側に目尻を付けたハスラーの顔は、ジムニーに比べるとグッとソフトで、ぬいぐるみっぽく感じられる。

 

つまり「ジムニー的な機能オンリーデザインのソフト&カジュアル版」というわけだ。

 

[ココはトガっている] インテリアデザインはギア風!

従来の軽自動車では見たことがなかったような自由度の高いデザイン。インパネ正面に3つのサークルを設けるなど、どこかギアっぽさ、おもちゃっぽさを感じる作りになっている。

 

↑ポケットやトレーなどを備えたアウトドア向けのインテリア。買い物袋を提げられるフックやシート座面下の収納も搭載する

 

↑シート脇のラインなど、内装を彩るホワイト/オレンジ/ブルーといったカラーアレンジもグレードによって選ぶことができる

 

 

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どんな道も力強く駆け抜ける古典的4WD車の最新形スズキ「ジムニー」

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

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自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

スズキ/ジムニー

155万5400~190万3000円(税込)

約20年間販売された先代型に代わり、2018年にモデルチェンジした軽クロスカントリーSUV。登場するや否や爆発的な人気で1年以上の納車待ち状態に。オフロード向きのラダーフレーム構造と、最新の安全装備を採用している。

SPEC(XG・4速AT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1725mm●車両重量:1050kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm●最大トルク:96N・m/3500rpm●WLTC燃費:14.3km/L

 

機能に一極集中したパワフルなデザイン

ジムニーのデザインは、余計な工夫を何もしていない。悪路の走破性の高い、いわゆるジープタイプのカタチのまま作っている。

 

ヘッドライトも当然丸い。繰り返すが、ジムニーは余計な工夫を一切排除している。つまり、80年前のジープとまったく同じなのだ。この機能オンリーのデザインパワーは、すさまじい破壊力を持って、我々の心に食い込んでくる。

 

[ココはトガっている] 縦横無尽のオフロード性能!

初代モデルから一貫して採用されているのはパートタイム式の4WD。雪道、荒地、ぬかるみ、登坂路など、様々なシーンに合わせた駆動パターンを選ぶことができて、高い悪路走破性能を発揮する。

 

↑軽自動車ではなく1.5Lエンジンを搭載するワイドボディの「ジムニーシエラ」もラインナップ。よりパワフルな走りを求める人向け

 

↑シンプルにして機能性を徹底追及したインテリアデザイン。骨太なオフロードモデルを欲するユーザーにぴったりだ

 

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ダイハツ「コペン セロ」はオープンカーの楽しみを広げてくれる個性的デザイン

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

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自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

ダイハツ/コペン セロ

194万3700~214万7200円(税込)

2代目となる現行型コペンの、第3のスタイルとして2015年に追加された人気モデル。“親しみやすさと躍動感の融合”をテーマにしたデザインは、丸目のみの意匠で高い評価を得ていた初代コペンを彷彿させ、根強いファンが多い。

SPEC(セロS・5速MT)●全長×全幅×全高:3395×1475×1280mm●車両重量:850kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6400rpm●最大トルク:92N・m /3200rpm●WLTC燃費:18.6km/L

 

昔のクルマのようなカタチで運転の本来の喜びに浸る

創世記のフェラーリ、たとえば166MMといったクルマを見ると、「カマボコにタイヤを4個付けて、丸い目と四角い大きな口を描いたような形」をしている。NHKのマスコットキャラクター「どーもくん」の顔をつけたイモムシ、と言ってもいい。

 

コペン セロのデザインは、それに非常に近くはないだろうか?

 

目は真円ではなく微妙に楕円だが、真正面から見るとほとんど丸。テールランプも丸。ボディは斜めのエッジを付けたカマボコ型だ。

 

そして2人乗りのオープンカー。いまでこそオープンカーはゼイタク品だが、昔はオープンカーが標準で、雨の日のために幌が用意されていた。つまりコペン セロのデザインは、70年くらい前の標準的な自動車の形、と言えなくもない。

 

すなわち、コペンは特殊なドライビングプレジャーを提供するクルマだが、本質は本来の自動車そのものということ。だからデザインも、70年くらい前の自動車に似ているのである。そしてこのクルマで走れば、70年くらい前の人が感じたのと同じ、原初的なヨロコビに浸ることができるというわけだ。スバラシイじゃないか。

 

[ココはトガっている] デザインアレンジが自由自在!

現行型コペンは内外装着脱構造を備え、樹脂外板やヘッドランプなどを交換して、別のスタイルへ変更することが可能。クルマのデザインを自由に変更して自分らしさを表現できる。

 

↑リアコンビネーションランプの形状も丸! 前から見ても後ろから見ても、親しみやすさと躍動感を感じられるルックスだ

 

↑なんといってもコペンは軽自動車唯一のオープンスポーツモデル。風を感じながら爽快にドライブを楽しむことができる!

 

↑「アクティブトップ」と呼ばれる電動開閉式トップを採用。屋根を閉めてしまえば快適な室内スペースを確保できる

 

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ソニーとホンダの自動車「AFEELA」正式発表! プロトタイプ画像はこちら

ソニー・ホンダモビリティはラスベガスで開催中の家電見本市「CES 2023」にて、新ブランドの自動車「AFEELA(アフィーラ)」のプロトタイプを発表しました。

↑ソニー・ホンダモビリティより

 

AFEELAのエクステリアには、「知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかける」ための「Media Bar」を搭載。インテリアはラウンド基調のデザインを採用し、カラーリングもシンプルなものとなっています。

 

車内外には計45個のカメラ、センサーを搭載。室内のインキャビンカメラやToFセンサーでドライバーの運転状況や走行状態をモニタリングし、不慮の交通事故を防止します。またクラウドサービスと連携して、ユーザーごとにパーソナライズされた車内環境を実現。エンターテイメント機能も充実させ、ゲーム開発会社のEpic Gamesとモビリティサービスやエンタテイメントに関する協業を始めます。さらにセンシング技術を活用した拡張現実(AR)により、直観的なナビゲーションが提供されます。

 

↑ソニー・ホンダモビリティ

 

自動運転に関しては「レベル3」も目指すとともに、市街地等のより広い運転条件下での運転支援機能となる「レベル2+」の開発を実施。最大800TOPSの演算性能を持つECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)、Qualcomm Snapdragon Digital ChassisのSoCを搭載します。

 

AFEELAはこのプロトタイプをベースに開発を進め、2025年前半に先行受注を開始。同年中に発売し、納車は2026年春に北米から開始する予定です。ソニーとホンダが本気で作った自動車、その乗り心地が実に気になります。

 

Source: ソニー・ホンダモビリティ

ホンダ「N-ONE」、ルーツのデザインを生かして軽自動車のスタンダードに!

近年、素材整形技術の進化とともに、シャープなデザインを特徴とする“ツリ目”ライトのクルマが増えてきた。一方で、古くから存在し続けているのは“丸目”ライトを持つクルマたち。ファニーな印象を与えがちな丸目ライトだが、その瞳の奥に秘めたトガった魅力を分析していこう。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ワタシが評価しました!

自動車評論家

清水草一さん

これまで50台以上のクルマを愛車としてきたベテラン評論家。専門誌でデザインに関する連載を持っていたほどクルマの見た目にはうるさい。

 

ホンダ/N-ONE

159万9400~202万2900円(税込)

軽自動車販売台数7年連続ナンバーワンの「N-BOX」の兄弟車で、より低重心な運転感覚が味わえるトールワゴンモデル。デザインは初代モデル同様、ホンダ車の始祖である「N360」がモチーフで、2代目となる現行型もレトロな雰囲気を持っている。

SPEC(Premium Tourer・FF)●全長×全幅×全高:3395×1475×1545mm●車両重量:860kg●パワーユニット:658cc直列3気筒ターボエンジン●最高出力:47kW/6000rpm

 

子どもが描いたようなたくらみのない愚直さ

N-ONEの丸目は本物の丸目、つまり真円だ。円形のヘッドライトは、照明の基本形。半世紀ほど前に四角いヘッドライト、つまり角目が登場するまで、クルマのヘッドライトは、すべて丸目だった。

 

つまりN-ONEの丸目は、昔のヘッドライトの形そのもの。昔は丸目のクルマしかなかったけれど、現在は丸目はレアだし、真円の丸目はさらに希少。それだけで人の「目」を引き付け、ホンワカした郷愁を感じさせてくれる。

 

加えてN-ONEのデザインは、N360など、半世紀前のホンダ車のデザインをモチーフにしている。当時のクルマのデザインは、今見ると子どもが描いた絵のようで、これまたホンワカした郷愁に浸ってしまう。いや、現代の子どもたちが描くクルマの絵はたいていミニバンらしいので、これまた「昔の子どもが描いた絵」と言うべきかもしれないが……。

 

細かいことはさておき、この、たくらみのない愚直なデザインが、N-ONEをちょっと特別なクルマに見せる。断面が台形で、大地を踏ん張る感やスピード感があるのも、一種のレトロデザインなのである。

 

[ココはトガっている] 丸にこだわったホイールも選べる

丸目だからといってデザインすべてが丸系ではなく、全体的には四角や台形などとの組み合わせ。ただ、ホイールにはしっかり丸系デザインが用意されている。足元にも丸を配置することで楽しさを演出。

 

↑真正面や真後ろから見ると台形になっていて、安定感を演出している。ファニーな顔と裏腹に、踏ん張り感のある力強い造形だ

 

↑レトロっぽい外観に対して、インテリアはモダンなイメージでまとめられている。心地良く使いやすい空間に仕上がった

 

↑ターボエンジンに6速MTを組み合わせたスポーツグレード「RS」もラインナップ。スポーツモデルが得意なホンダの面目躍如だ

 

 

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2022年、プロがもう一度乗りたいとウズウズする国産車5選!スポーツカーばかりと思いきや……

新車試乗会以外にも、さまざまなクルマに乗る機会がある自動車評論家やライター。本稿では、さまざまなクルマを見て乗ってきた自動車評論家・岡本幸一郎さんに、今年(2022年)出会ったクルマのなかから、最も「もう一度乗りたくてウズウズする」国産車5台をピックアップしてもらいました。おすすめグレード付でお届けします。

 

【その1】FFなのにアクセルを遠慮なく踏める

ホンダ

シビック タイプR

「シビック タイプR」といえば、FF量販車で世界でも1、2を争う速さを身につけたクルマだけあって、まずエンジンフィールがすばらしいのなんの。アクセルと一体化したかのような俊敏なレスポンスと、踏み込んだときの力強い加速と、トップエンドにかけての痛快な吹け上がりと、控えめな中にも野太く吠えるエキゾーストサウンドに惚れ惚れ。2リッター4気筒エンジンとして世界屈指の仕上がりだ。

 

それを引き出すシフトフィールも、シフトを操ること自体にも喜びを感じられるほどよくできている。330PSのパワーを前輪だけで受け止めるとなると、普通なら空転してしまいそうなところ、トラクション性能も十分すぎるほど確保されているおかげで、遠慮なくアクセルを踏んでいける。

 

ハンドリングはまさしくオン・ザ・レールという言葉がピッタリ。意のままに気持ちよく操ることができて、舵を切った方向にグイグイと進んでいく。さすがは「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」でパフォーマンス部門賞に輝いただけのことはある、最高にエキサイティングなクルマだ。

 

【その2】登場7年ですげーグレードが出た!

マツダ

ロードスター

おすすめグレード:990S

「ロードスター」は登場からまもなく7年というタイミングで、持ち前の走りの楽しさをさらに高めるための大きな動きがあった。ひとつはKPC(=キネマティック・ポスチャー・コントロール)という新技術の採用だ。これによりGが強めにかかるようなコーナリングでのロールが抑えられ、旋回姿勢が安定してドライバーとクルマの一体感がより高まった。

 

もうひとつは、軽さにこだわりある走りに特化した特別仕様車「990S」の追加だ。1トン切りを印象づけるモデル名のとおり、車両重量を990kgにとどめるとともに、軽量の鍛造ホイールの装着をはじめシャシーやエンジン、ブレーキなどが専用にセッティングされている。

 

軽量コンパクトなロードスターは、2シーターでホイールベースが短いことも効いて、もともと手の内で操れる感覚が高いが、「990S」はさらに軽やかで気持ちのよい人馬一体感を実現している。既存のロードスターでなんとなく感じられた、ステアリングとタイヤの間に何か挟まっているような感覚が払拭されて、よりダイレクト感のある走り味になっているのだ。グリップ感が高く、フラット感もあり、ロールだけでなくブレーキング時のピッチングも抑えられている。

 

こうした改良と特別仕様車の追加が効いて、売れ行きのほうも発売から時間が経過したスポーツカーではありえないような増え方をしているらしい。中でも件の「990S」の販売比率がかなり高いというのも納得だ。

 

【その3】FFベースでつまらなくなった? 全然そんなことない!

トヨタ

クラウン クロスオーバー

おすすめグレード:RS

ガラリと変わって話題騒然の新型「クラウン」は、それだけでも乗ってみたい気持ちになるのはいうまでもないが、中でも「RS」モデルは走りっぷりも予想を超えていて驚いた。

 

いかにも速そうな名前のとおりエンジンもモーターも強力なデュアルブーストハイブリッドは、272PSの2.4リッターターボエンジンと前後に約80PSのモーターを組み合わせ、システム最高出力で349PSを発揮するというだけあってけっこう速い。モーターならではのレスポンシブでシームレスな加速フィールも気持ちがよい。さらにコーナリングでは、リアモーターで積極的に後輪の左右の駆動力に差をつけるとともに、4輪操舵機構や電子制御デバイスを駆使することで、クイックな回頭性を実現しているのもポイントだ。

 

クロスオーバーの2.5リッター自然吸気エンジンにTHSを組み合わせた他グレードとは別物で、大柄でけっして軽くないクルマでありながら、加減速もハンドリングがとても俊敏に仕上がっている。そのあたり、FFベースになってつまらなくなったとは言わせたくないという開発陣の意地を感じる。スタイリッシュなルックスだけでなく、走りのほうも鮮烈な仕上がりだ。

 

【その4】最新CVTの実力、いい感じ

スバル

WRX S4

おすすめグレード:sport R EX

もとはモータースポーツ由来だった「WRX」が、時代の流れで今では高性能ロードゴーイングカーという位置づけに。本稿執筆時点では3ペダルのMTを積む「WRX STI」の販売が終了し、将来的にもラインアップされるかどうかわからない。しかし、2ペダルの「WRX S4」はしっかり進化している。

 

275PSと375Nmを発揮する2.4リッター直噴ターボのFA24型に、「スバルパフォーマンストランスミッション」と呼ぶ最新のCVTが組み合わされるのだが、これがなかなかのもの。駆動力の伝達にかかるタイムラグが払拭されているほか、従来とは比べものにならないほどダイレクト感があり、マニュアルシフト時のシフトチェンジも驚くほど素早い。エンジン回転が先に上昇して、あとから加速がついてくる感覚もほとんど気にならない。

 

さらにはリアよりに駆動力を配分するVTD-AWDも効いて、小さな舵角のままコーナーをスムーズに立ち上がっていけるのも、WRX S4ならでは。2グレードあるうち、44万円(税込)高い「STI Sport R」は、「GT-H」に対して装備が充実しているのに加えて、走りの面ではZF製の電子制御ダンパーが与えられるほか、SIドライブではなく、より細かく設定できるドライブモードセレクトが搭載されるのが大きな違いとなる。

 

【その5】サーキットのちょい乗りだけでもう惚れてます

日産

フェアレディZ

おすすめグレード:バージョンST

この往年の雄姿を思い出すスタイリングを目にしただけで、乗りたくてたまらない気持ちになる。実のところ本稿執筆時点では筆者はサーキットでちょっとだけ乗った程度なのだが、見た目の魅力はもちろん、400PSオーバーを誇るV6ターボエンジンの刺激的なパフォーマンスや、全面的に見直したという洗練されたシャシーチューニングにより、かなり走りもよさそうな雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。だからこそ、もう一度乗りたくてうずうずしているところです……(笑)。

 

 

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実用的な最新EV! スポーティなBMW 「i4」とフレッシュなテスラ「モデルY」に試乗

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」で試乗したBMWの「i4」とテスラ「モデルY」は、実用的な一充電あたりの航続距離を確保する最新EV。しかしそのキャラクターは、両ブランドならではの持ち味が表れており対象的だ。i4はBMWらしいスポーツ性を、モデルYは新種のクルマらしい新しさを体感できる。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【その1】EVでもBMWらしいスポーティさは健在!

【EV】

BMW

i4

SPEC【i4 eDrive40】●全長×全幅×全高:4785×1850×1455mm●車両重量:2080kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:83.9kWh●最高出力:340PS/8000rpm●最大トルク:43.8kg-m/0〜5000rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):604km

 

高性能版のMモデルでは血の気が引く速さも体感

BMWのEVラインナップでは、「iX3」に続いて伝統的なエンジンモデルのイメージを色濃く残しているのが「i4」。ベースは4シリーズ・グランクーペで、遠目から眺める限りでは外観の違いはほとんどない。一方、室内に目を転じるとメーター回りはi4独自のデザインとなっており、EVらしさを実感できる仕上がりだ。床下にバッテリーを搭載する構造ゆえ、乗り込むとガソリン仕様より若干フロアが高くなった印象もあるが、4ドアモデルとしての実用性は上々。前後席は十分な広さを確保しており、荷室容量もガソリン仕様と変わらない。

 

その走りは、静粛にしてスムーズというEVらしさを実感させつつ、BMWに期待されるスポーツ性も兼ね備えている。電気駆動モデルらしいダイレクトなレスポンスは、モーターがリアのみとなるeドライブ40でも満足できるもの。フロントにもモーターが追加されるM50では、血の気が引くような衝撃的な速さも堪能できる。

 

[Point 1]メーター回りは専用デザインに

インパネ回りは、メーターとセンターディスプレイを一体化させたi4独自のデザインを採用して新しさを演出。前後席は、4ドアモデルとして実用的な広さが確保されている。

 

[Point 2]外観はあくまでさりげなく

遠目から見ると、外観は4シリーズ・グランクーペと見分けがつかない仕立て。スポーティな佇まいは、伝統的なBMWらしさが実感できる。写真はeDrive40のMスポーツ。

 

[Point 3]荷室容量はグランクーペと同等

後席を使用する通常時の荷室容量は470Lと4ドアモデルとしての実用性は十分。この数値は4シリーズ・グランクーペと同じだ。

 

[Point 4]M50ではフロントにもモーターを搭載

Eドライブ40のフロント(写真)は補器類のみとなる。最高出力が500PSを超えるM50では、この下にもモーターが収められている。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

i4 eDrive40:電気モーター/2WD/750万円

i4 eDrive40 Mスポーツ:電気モーター/2WD/791万円

i4 M50:電気モーター×2/4WD/1081万円

 

 

【その2】圧倒的に新しく、走りは楽しい!

【EV】

テスラ

モデルY

SPEC【RWD】●全長×全幅×全高:4751×1921×1624mm●車両重量:1930kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:非公表●最高出力:299PS●最大トルク:35.7kg-m●一充電最大航続距離(WLTCモード):507km

 

EV本来の実力に加えガジェット的な魅力も最強

高性能ゆえに高額なイメージがあったテスラだが、「モデル3」はグッと身近になって大ブレーク。日本でも目にする機会が多くなった。さらにファンを増やしそうなのが「モデルY」だ。モデル3と基本構造を共有しながら、人気のミッドサイズSUVとなれば、引く手数多になるのも当然だろう。

 

リア駆動のスタンダードは643万8000円で、一充電走行距離が507km。4WDは833万3000円で、その走行距離は595km。後者は0〜100km/h加速が3.7秒とスーパースポーツ並みの速さを誇る。

 

試乗したのはスタンダードだったが、それでも0〜100km/hは6.9秒でちょっとしたスポーツカー並みに速く、アクセルを踏み込めばモーター特有の太いトルクでグイグイと、しかも静かにスムーズに走っていく。乗り心地は少しだけ硬めなものの、その代わりに俊敏かつ安定性の高い超ハイレベルなシャーシとなっているので、SUVの背の高さを感じさせない。ハンドリングが楽しいのも、実はモデルYならではの魅力なのだ。

 

スマホ的なユーザーインターフェイスは、ユニークかつストレスフリーで一度使い始めるともう普通のクルマに戻れなくなりそう。ガジェットとしての魅力は、他の追随を許さないほど進んでいる。

 

[Point 1]モデル3同様シンプルで新しい

インパネ回りはモデル3と同様にシンプル。基本的な操作は、タブレットのようなセンター部分のディスプレイですべて行える。独創的なインターフェイスはテスラならではだ。

 

[Point 2]SUVでもシンプル&スポーティ

外観は兄貴分のモデルXをコンパクトにしたような仕立て。ただしリアドアの開き方は標準的な横開きになる。ミドル級SUVという位置付けだが、丸みを帯びた造形はシンプルにしてスポーティだ。

 

[Point 3]ユーティリティはハイレベル

荷室容量は5名乗車時でもトップレベルの広さを実現。モデル3と同じく収納スペースはフロントにも備わり、前後トータルでの容量は実に2100Lと、使い勝手にも優れる。

 

[Point 4]前後空間もSUVらしく広々

前後シートはたっぷりとしたサイズで、座り心地は上々。リアシートにはリクライニング機能も備わっている。内装のカラーは2タイプがラインナップされる。

 

[Point 5]スマホでの遠隔操作も可能

最新のEVらしく、専用アプリを活用すればスマホから各種機能(遠隔操作での車両の前進&後退も可能)をコントロールできるのはテスラならでは。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

RWD:電気モーター/2WD/643万8000円

パフォーマンス:電気モーター×2/4WD/833万3000円

 

文/石井昌道、小野泰治 撮影/篠原晃一、郡 大二郎

 

 

クルマ乗りにとって永遠の憧れ! 日産「フェアレディZ」の新型を「Z32」世代が評価

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、かつて2人とも所有したことがある「フェアレディZ」の新型を紹介する。所有経験は新型の評価に影響するか?

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】日産/フェアレディZ

SPEC【バージョンST・6MT】●全長×全幅×全高:4380×1845×1315mm●車両重量:1590kg●パワーユニット:2997ccV型6気筒ツインターボエンジン●最高出力:405PS(298kW)/6400rpm●最大トルク:48.4kg-m(475Nm)/1600〜5600rpm●WLTC燃費:9.5km/L

524万1500円〜646万2500円(税込)

 

エレガントでカッコ良い外観に加えV6エンジンも最強クラス

安ド「殿! 僕は元Zオーナーとして、新型Zを見てコーフンしました!」

 

永福「私も元Zオーナーとして、新型Zに鼻血ブーだ」

 

安ド「殿はどの世代のZでしたっけ?」

 

永福「4代目のZ32だ」

 

安ド「僕もです!」

 

永福「お前のはド中古だろう。私は発売直後に新車で買ったんだ」

 

安ド「そうでしたか!」

 

永福「まだ27歳の若者だった。ただ、買った後すぐに初めてフェラーリを体験し、Zがサツマイモに思えてしまった」

 

安ド「そうだったんですね! 新型もサツマイモですか?」

 

永福「いや、これは永遠の青い鳥だ。このクルマの後ろ姿を見て、乗ってフル加速すれば、感動で涙が止まらない」

 

安ド「僕も若いころを思い出してグッと来ました! Z32派の自分としては、やはりテールライトが一番カッコ良く見えますが、フロントも悪くないんじゃないかと思います。あえて四角くしたグリルとか、初代をモチーフに現代的にしたヘッドライト形状も良いですね!」

 

永福「あのテールライト、夜に後ろから見ると震えるほどカッコ良いぞ」

 

安ド「最近のスポーツカーは怒り顔が多いですが、新型Zはちょっと眠そうな表情もいいです!」

 

永福「マヌケで可愛いな」

 

安ド「ルーフラインもエレガントです!」

 

永福「震いつきたくなるな」

 

安ド「加速もスゴいですね。高速走行中にアクセルを踏み込むと、そこからさらにグイーンと加速していくのがタマらない!」

 

永福「405馬力のV6ツインターボだからな」

 

安ド「4代目の280馬力にも感動しましたけど、新型ははるかに上回ってますね!」

 

永福「ケタ外れに良いな。このV6ツインターボは、現在地球上に存在するあらゆるエンジンのなかでも、フィーリングの良さではベスト10に入るだろう」

 

安ド「ただ、お値段はかなり高くなってしまいましたね。おいそれとは買えません」

 

永福「お前は何を言っているのだ。もう新型Zは、売り切れてしまって買えんのだ」

 

安ド「エッ!? いつ売り切れたんですか」

 

永福「発売は9月だったが、7月いっぱいで数年先のぶんまで予約殺到で、すでに受注停止だ」

 

安ド「ええ〜〜〜〜〜っ! そんなバカな! じゃあ、欲しい人はどうすれば?」

 

永福「いま、ロレックスを買うためには、お店に足しげく通って、店員に顔を覚えてもらう必要があるらしいが、日産のディーラーに毎日通って顔を覚えてもらえば、ひょっとして数年後、増産ぶんをポロッと売ってもらえたりするかもしれん」

 

安ド「そ、そんな……」

 

【GOD PARTS 1】リアコンビネーションランプ

帰ってきたオマージュデザイン

このリアランプのデザインは、4代目Z32型フェアレディZがモチーフになっているそうです。当時もカッコ良いと話題になりましたが、その後、同じようなデザインのリアランプは登場しませんでした。満を持してまたZで復活したワケです。

 

【GOD PARTS 2】ヘッドライト

名車のくぼみ形状を現代技術でリデザイン

名車と言われる初代S30型フェアレディZをモチーフとした形状になっています。初代モデルはくぼんだ形状の中に丸いヘッドライトが埋め込まれていましたが、新型ではこのくぼんだ部分の形状を元に、モダンにデザインされました。

 

【GOD PARTS 3】マフラー

見た目はスポーティだが排気音はジェントル

両側2本出しマフラーがスポーティです。しかしよく見ると、排出口の周囲に小さい穴がたくさん開いています。この穴の影響かどうかわかりませんが、排気音はとても静かで、見た目ほどスポーティではありません。

 

【GOD PARTS 4】エンブレム

郷愁を誘う筆記体はやはりあの名車から

フェアレディZファンならすぐ気づくと思いますが、新型Zのリアにある車名エンブレムは、初代Zと同じく筆記体になっています。なんだか懐かしくもあり、タイムスリップしたような不思議な感覚に陥ります。

 

【GOD PARTS 5】Sモードスイッチ

回転数を自動で合わせて気持ち良くシフト変更!

シフトノブ左奥のスイッチを押すと「シンクロレブコントロール」が作動します。これは、シフト操作をした際にクルマが自動でエンジン回転数を合わせてくれるというもので、プロが操作したような感覚を味わいながら変速できます。

 

【GOD PARTS 6】フロントグリル

空気取り入れ口はシカクデザイン

ココも初代フェアレディZをモチーフとしたデザイン。いまどきのクルマのデザインでグリルがきっちり四角い長方形という例は少ないですが、フロントまわりに違和感なくまとめられていて素晴らしい仕上げですね。

 

【GOD PARTS 7】6気筒エンジン

現代でも気持ち良さがトップクラスのユニット

初代モデルは軽量スポーツカーのイメージがありますが、実は当時から6気筒エンジンを搭載しています。新型では、現在のスカイライン最強の「400R」に搭載されるV6エンジンを採用。低回転域からトルクフルで気持ち良く加速します。

 

【GOD PARTS 8】3連メーター

中身はなんでも良し! 存在することに価値がある

初代、2代目など過去モデルで継承されてきた3連メーターが、インパネ中央上部に設置されています。ブースト計、ターボ回転計、電圧計ですが、内容はあまり関係なくて(笑)、ここにメーターが3つ付いていることに価値があります!

 

【GOD PARTS 9】ラゲッジルーム

開口部は大きいが深さはそれほどなし

Z伝統の前後に長いリアハッチが採用されています。開口部はかなり広くて大きな面積の物を積み込みやすいのですが、収納部に深さがないのであまり厚みのあるものは入れられません。スポーツカーなのでここは期待しないでください(笑)。

 

【これぞ感動の細部だ!】ルーフライン

栄光のラインは新型でも継承!

Zの歴代モデルでいつの時代も常に継承されてきたのが、この美しいルーフラインです。フロントガラスの上端からキャビンの上を通ってボディ後端までなだらかに弧を描くこのルーフは、世界のスポーツカーと比較してもとてもエレガントです。巨大なガラスを使っているために重量は結構かさむと思いますが、美を追求している「貴婦人」らしい選択だと思います。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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中韓EVが日本の道路を席巻する日は来るか? 世界10傑に入るアジアメーカー「ヒョンデ」「BYD」のEV車を本音レビュー

EVを武器に日本市場に再参入する韓国のヒョンデと、日本でもバスやタクシーでEVの実績がある中国のBYD。両社の自信作の出来栄えについて、試乗した自動車ITジャーナリストが本音で語る。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

KEY TREND ≪アジアンEV≫

EVへのシフトチェンジが加速するなか、日本でも国産や欧米のEVが続々と登場している。その流れに割って入るのがアジアのEVメーカー。日本の道路を席巻する存在となるのだろうか。

 

私が試乗しました!

自動車ITジャーナリスト

会田 肇さん

自動車雑誌編集者を経てフリーランスに。電動車や自動運転にも詳しい。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

ヒョンデとBYDの参入は日本車にとって大きな刺激に

世界的に「脱炭素」への流れがあるなかで、そのシンボリックな存在となっているのが電気自動車(EV)だ。ロシアのウクライナ侵攻後に発生したエネルギー問題への不安を抱えつつも、全体的なその流れはいまも大きく変わっていない。

 

そのカギを握るのが中国だ。中国はいまや世界最大の自動車大国となり、国の戦略としてその大半をEVで賄おうとしている。これをいち早く追いかけたのが欧州勢で、それが欧州でのEV化の流れを後押しした。さらにアジア勢もこれに続き、韓国・ヒョンデはデジタルテイストにアナログの感性を加えた「パラメトリックピクセル」のデザインが印象的な、「アイオニック 5」を世に送り出した。

 

BYDはアジアやオセアニアですでに実績を積んできたが、車両デザイナーに欧州人を据え、グローバルで戦えるデザインとした。つまり、ヒョンデ、BYDとも、日本人が好む“欧州っぽさ”を備えたことが参入のきっかけとなったとも言えるだろう。

 

アイオニック 5はさすがに手慣れたクルマ作りをしており、走りも内装の仕上がりも日本人にとって十分満足できるレベルにある。一方でBYDはインターフェースなどで作り慣れていない部分が感じられた。とはいえ、両ブランドのEV参入が日本車にとって新たな刺激となるのは間違いない。

 

【その1】インターフェースに難はあるがデザインや個性には満足できる

BYD

ATTO 3

価格未定 2023年1月日本発売予定

BYDの日本導入EV第一弾となるATTO 3(アットスリー)。2022年2月に中国で販売を開始して以降、シンガポールやオーストラリアでも発売。独自開発のEV専用プラットフォーム「e-Platform3.0」を採用し、広い車内空間と440Lの荷室を実現している。

 

↑熱安定性が高く長寿命のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。エネルギー密度の低さは、細長い電池セル「ブレードバッテリー」を122枚効率良く敷き詰めて対策した

 

↑インテリアはアスレチックジムをモチーフにしたもの。中音域スピーカーを内蔵したドアハンドルや、ベースの弦をイメージしたゴム製ワイヤーもユニークなデザインと言える

 

↑ダッシュボード中央には12.8インチのディスプレイを備える一方、運転席前の液晶パネルは小さめ。操作レバーも含め、アイコンや文字表示が小さくインターフェースに難がある

 

【会田の結論】ハンドリングは軽快でトルクフルな走りも秀逸! 操作系の改善が求められる

アスレチックジムの雰囲気を演出したインテリアは、ギミックに富んでいて楽しい。一方でディスプレイの情報表示は全体に小さく、操作スイッチの視認性も含め、要改善だ。ハンドリングは全体に軽めで、市街地での操作はかなりラク。EVらしいトルクフルな走りも実感できた。

 

【その2】走りもインテリアも欧州車そのもので日本人が満足できる仕上がり

ヒョンデ 

IONIQ 5

479万円〜(税込)

ヒョンデの代表車種であった「ポニー クーペ」をオマージュしたデザインが印象的。EV専用プラットフォームを生かした広い室内が特徴。ベースのIONIQ 5のほかにVoyage、Lounge、Lounge AWDと全4モデルが揃う。

 

↑電動ブラインド付きのガラスルーフは面積が大きく、光が燦々と降り注ぐほど。ただしガラスは固定式なので開くことはできない。「Lounge」以上のグレードに標準装備となる

 

↑V2Lは「Vehicle to Load」の略で、EVから外部機器へ給電できる機能のことを指す。リアリート下にもコンセントを備え、車内外合わせて最大1600Wまでの機器に対応できる

 

↑インフォテインメント系にはコネクテッドカーサービス「Bluelink」を採用。5年間無償提供され、スマホ連携だけでなく、通信によるカーナビ地図データの更新にも対応する

 

【会田の結論】乗り心地はやや硬いが圧倒的な加速と操作性で走りの充実度は高い

運転席に座るとまず気付くのがインテリアの上質さ。手触り感さえも上々だ。コラムから突き出たシフトチェンジレバーのクリック感も精緻さがある。走り出すと若干硬めの乗り心地が気になるが、圧倒的な加速感とハンドリングの正確さがそれを凌駕。満足度の高い走りを楽しめる。

 

■2021年  世界のEV販売台数ランキング

圧倒的に強いのはテスラだが、中韓メーカーが10位以内に4社も入っているのは驚き。特に中国はEVの普及に向けて政府が強力な支援策を展開していることもあり、これまでクルマ作りには無縁だったメーカーもEVに参入している。

 

■日本&欧米EVとのスペック比較

価格はいずれもEV購入補助金適用前のもの。総電力量は60kWh近辺、カタログ値ではあるが一充電最大走行距離は500km近くにまで達する。ATTO 3、IONIQ 5ともにスペック的には日本や欧州のEVと肩を並べていることがわかる。

 

 

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ミニバン2トップ買うならどっち? フルモデルチェンジした「ノア/ヴォクシー」と「ステップワゴン」をプロが“買いたい度”でジャッジ!

1月にトヨタの「ノア/ヴォクシー」、4月にはホンダの「ステップワゴン」がフルモデルチェンジし、絶好調だ。小さい子どもの父親でもあるモータージャーナリストが両車をジャッジ。どちらのモデルに心惹かれるのか?

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

KEY TREND ≪ミニバン復権≫

家族ドライブ……その象徴であるミニバンの代表的モデルが揃ってモデルチェンジし、いずれも好調だ。世界的にSUV活況のなかでミニバンが依然人気なのは、日本特有の傾向と言える。

 

私がジャッジしました!

モータージャーナリスト

岡本幸一郎さん

幼い子どものためにミニバン購入を検討中のモータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

【エントリーNo.1】持ち前の強みを生かしながらすべてをアップデート

■ノア

■ヴォクシー

トヨタ

ノア/ヴォクシー

267万円〜396万円(税込)

トヨタのミドルクラスミニバンが8年ぶりにフルモデルチェンジ。広い室内空間や、より快適・便利に使える装備や進化した安全運転支援技術が人気を集めている。発売後4か月で両車合わせて約15万台を受注するほどの爆売れモデルに。

SPEC●【ノア ハイブリッドS-Z 2WD】●全長×全幅×全高:4695×1730×1895mm●車両重量:1670kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒+モーター●最高出力:98PS(72kW)[95PS(70kW)]/5200rpm●最大トルク:14.5kg-m(142Nm)[18.9kg-m(185Nm)]/3600rpm●WLTCモード燃費:23.0km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

【エントリーNo.2】デザインが激変し、見ても乗ってもやさしいクルマに

■ステップワゴン AIR

■ステップワゴン SPADA

ホンダ

ステップワゴン

299万8600円〜384万6700円(税込)

初代ステップワゴンが登場してから26年。4月にデビューした6代目は初代へのオマージュを込め、直線を生かしたクールなデザインに変化。AIRとSPADAの2ラインが用意され、外装をはじめインテリアの装備も異なっている。

SPEC●【e:HEV AIR】●全長×全幅×全高:4800×1750×1840mm●車両重量:1810kg●総排気量:1993cc●パワーユニット:直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:145[184]PS/6200[5000〜6000]rpm●最大トルク:17.8[32.1]kg-m/3500[0〜2000]rpm●WLTCモード燃費:20.0km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

見た目だけでなく作りもしっかり確認することが重要

人気の高いMクラスミニバンを代表する2台が今年、偶然にもほぼ同時期にモデルチェンジした。さらには日産の「セレナ」も、というウワサもあるが、まずはこの2台、色々と対照的で実に興味深い。

 

デザインテイストがまったく異なるのは見ての通りで、キープコンセプトのノア/ヴォクシーに対し、ステップワゴンはガラリと変わった。コワモテが好まれる時代に一石を投じるやさしい雰囲気に、共感する声も多いようだ。

 

一方の中身は、ステップワゴンがプラットフォームやパワートレーンをキャリーオーバーして大幅に“改良”したのに対し、ノア/ヴォクシーはTNGAの採用による“全面刷新”となる。両車ではハイブリッドの仕組みもまったく異なるが、ドライバビリティや燃費に優れる点では共通している。

 

ミニバンであれば車内の作りの違いも気になるところ。同じ3列シートを有する空間でも細かな装備や使い勝手は当然異なるため、それぞれ得意とする部分をチェックしてみるべきだろう。

 

購入検討の際は、買ってからどう使いたいのかを具体的にイメージしながら選んだほうが良い。

 

【ジャッジ1】デザイン……引き分け!

見た目の印象はまったく別物で好みがはっきり分かれそう

ノアを含めトヨタ勢は従来の路線を踏襲。ヴォクシーは薄めのライトとグリルによる派手な顔となったのに対し、ステップワゴンはシンプルでクリーンなデザインに一変。新設の「AIR」はそれがより顕著だ。引き分け。

 

■ノア/ヴォクシー

↑ヴォクシーは先鋭かつ独創的なスタイルを追求。怪しく光る特徴的な薄いフロントランプによって夜でもその存在感を強調している

 

■ステップワゴン

↑売れ筋のSPADAと比べても、AIRはよりクリーンでシンプルなデザインとされている。細いメッキモールがさりげなく施されている

 

【ジャッジ2】走り……ステップワゴン勝利!

ハイブリッドのメカニズムは異なるがどちらも良くできていて感心!

ノア/ヴォクシーのプラットフォームおよびパワートレーンは従来からの全面刷新。対してステップワゴンは従来のものをベースに大改良したもので、完成度の高さで一歩リードしている印象だ。ステップワゴンの勝ち!

 

■ノア/ヴォクシー

↑独自のシリーズパラレルハイブリッドの進化した最新版を搭載。後輪をモーターで駆動する「E-Four」が設定されたのも特徴だ

 

■ステップワゴン

↑モーター走行を中心に状況に応じ様々なドライブモードを使い分け、効率の良い走りを実現。クルーズ走行時はエンジンを直結する

 

【ジャッジ3】後席の居住性……ステップワゴン勝利!

ノア/ヴォクシーも十分だがステップワゴンが上回る

ノア/ヴォクシーも十分すぎるが、従来よりもサイズアップしたステップワゴンのほうが広さ感で上回る。乗り心地の良さも加味すべきポイントだ。ステップワゴンに軍配。

 

■ノア/ヴォクシー

↑7人乗り仕様の2列目シートがスゴい。横にスライドさせることなく745mmもの超広々とした足元空間を実現したことには驚くばかり

 

■ステップワゴン

↑3列目の着座位置を高くするとともに前方のシート形状を工夫することで開放的な視界を実現。乗り物酔いさせないための配慮も◎

 

【ジャッジ4】使い勝手……引き分け!

3列目シートを使わないときのしまい方は重要なポイント

3列目シートを使わないときに左右に跳ね上げるのか床下に収納するのかで、使い勝手はまったく違う。ただし、どちらも一長一短あるので優劣はつけられず。よって引き分け!

 

■ノア/ヴォクシー

↑両車ともパワーバックドアが設定。ノア/ヴォクシーは任意の角度で保持できる機構や、ボディサイドにもスイッチがあり重宝する

 

■ステップワゴン

↑3列目シートを床下に収納できるので、使わないときでも側面がスッキリとして広く使える。シンプルな操作で簡単にアレンジできる

 

【ジャッジ5】運転支援……ノア/ヴォクシー勝利!

両社の最新の装備を搭載現状ではトヨタがややリード

共に最新の機能は非常に充実していて、不足はない。その上でノア/ヴォクシーが条件付きでハンズオフドライブを可能とした点や、リモート駐車/出庫を可能とした点で優位だ。

 

■ノア/ヴォクシー

↑運転者が前を向いて眼を開いていることをドライバーモニターカメラで確認。ハンズオフが可能かどうか、システムが判断する

 

■ステップワゴン

↑ACCが渋滞追従機能付きへと進化。さらに、低速走行時に前走車に合わせて車間距離を保ちながら車線の中央付近を維持する機能も

 

【総合判定】私が買いたいのは……ステップワゴン

デザインや3列目シートの使い勝手はさておき、僅差だがステップワゴンが優位

どちらも完成度は十分に高く、買って後悔することはない。それを大前提にどちらか一方を選ぶとなると、わずかにステップワゴンに軍配だ。動力性能や燃費は互角だが、静粛性や乗り心地などの快適性や走りの上質な仕上がりには、乗るたび感心せずにいられないからだ。

 

 

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いまこの仏車にAttention! オシャレで機能も十分なモデルをプロがピックアップ

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。ピュアスポーツとして名高いアルピーヌも紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【その1】ルノー

私が選びました!

モビリティジャーナリスト
森口将之さん
これまで所有した愛車の3分の2がフランス車。渡仏経験も多く、クルマ以外のモビリティにも詳しい。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

納得の完成度を誇る欧州ナンバー1SUV

キャプチャー

309万円〜389万円(税込)

キャプチャーは2021年に欧州で一番売れたSUV。躍動感あふれるスタイリング、上質で使いやすいインテリア、ルノーらしく自然で安定した走りが人気の理由だろう。日本の道路事情に合ったコンパクトなサイズもうれしい。

SPEC【E-TECH ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1597cc4気筒DOHC+モーター●最大出力:94PS[49PS]/5600rpm●最大トルク:15.1kg-m[20.9kg-m]/3600rpm●WLTCモード燃費:22.8km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

↑コンパクトSUVながら広いラゲッジスペースを確保。後席使用時でも536L、リアシートを倒せば最大1235Lにまで拡大する

 

↑E-TECH HYBRIDはエンジン側に4速、モーター側に2速のギアを搭載。計12通りの組み合わせでシームレスな変速を実現する

 

↑360度カメラを搭載し、真上から見下ろしたような映像をスクリーンに表示してくれる。ギアをリバースに入れると自動で起動する

 

[ココにAttention!] F1技術を注いだハイブリッドも登場

ハイブリッド仕様が最近追加。F1のノウハウを注入したE-TECH HYBRIDは、輸入車SUVナンバー1の燃費をマークしつつ、ハイブリッドらしからぬダイレクトな走りも魅力。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

トゥインゴ

225万円〜254万円(税込)

3代目でリアエンジンに変身したベーシックルノー。5ナンバーに収まるサイズ、驚きの小回り性能、独特のハンドリングなど、国産コンパクトとはひと味違った魅力がいっぱいだ。

 

↑エンジンはリアラゲッジ下に効率良く配置。リアエンジンの採用でタイヤを車両の四隅に配置でき、後席の足元空間にも余裕が生まれる

 

↑シンプルにまとめられた運転席まわり。電子制御6速ATと0.9L3気筒ターボエンジンの組み合わせで、力強い走りを実現している

 

↑インテンス MTには5速マニュアルトランスミッションを採用。1.0Lの自然吸気エンジンとの組み合わせで、小気味良く操ることが可能

 

[ココにAttention!] 往年の名車がモチーフ!

キュートなのに存在感あるスタイリングは、1970〜80年代に活躍したミッドシップのラリーカー、5ターボがモチーフ。それをベーシックカーに反映する発想がまたスゴい。

 

【その2】プジョー

私が選びました!

モータージャーナリスト
飯田裕子さん
自動車メーカー在職中に培ったレースや仕事経験を生かしつつ、カーライフの“質”や“楽しさ”を提案する。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

デザインで選びたくなるプジョープライドを体現

508SW

598万9000円〜704万3000円(税込)

プジョーのフラッグシップ508のステーションワゴン。機能的なワゴンをデザインで選びたくなるようなスタイルに磨きをかけ、上質さや快適性、ドライバビリティが高められた。3タイプのパワーチョイスには新たにPHEVが加わった。

SPEC【GT BlueHDi】●全長×全幅×全高:4790×1860×1420mm●車両重量:1670kg●パワーユニット:1997cc4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最大出力:177PS/3750rpm●最大トルク:40.7kg-m/2000rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L

 

↑伸びやかなフォルムの前後にはLEDライトを採用し、最新のプジョーらしさを上質さとともに表現。デザインで選ぶ人がいても納得

 

↑期待以上の機能美をプジョーらしく象徴するラゲッジ。スクエアでフラットなスペースは先代を上回る収納量530〜1780Lを誇る

 

[ココにAttention!] 燃費性能に優れるディーゼルは優秀

3種類のパワーソースが揃う。特に快適指数も高く燃費にも優れるディーゼルの力強く扱いやすい動力と、しなやかなドライブフィールが、美しい508SWの行動意欲をかき立てる。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

208

284万5000円〜460万2000円(税込)

コンパクトカー作りの名手プジョーが、ブランドの特徴を凝縮し、若々しくスポーティな走りやデザインを体現。独創的かつ最先端の「3D i-Cockpit」の機能性にも注目したい。

 

[ココにAttention!] EVもガソリン車も走りを楽しめる!

208をピュアEVで楽しめる時代に突入。一方、国産コンパクトと競合するピュアガソリン車のプジョーらしい走りも、優れたパッケージやデザインと並んで捨てがたい魅力だ。

 

【その3】シトロエン

私が選びました!

自動車・環境ジャーナリスト
川端由美さん
エンジニアから自動車専門誌の編集記者を経て、フリーのジャーナリストに。エコとテックを専門に追う。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

広大な空間を持つMPVながらエレガントな雰囲気はキープ

ベルランゴ

367万6000円〜404万5000円(税込)

広大な室内空間を持つクルマで家族と一緒に出かけたいけれど、所帯じみて見えるのは避けたい。いや、むしろ、エレガントに乗りこなしたい! という人にオススメ。フランス車らしいエレガントなデザインに目を奪われる。

SPEC【SHINE BlueHDi】●全長×全幅×全高:4405×1850×1850mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:1498cc4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最大出力:130PS/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:18.1km/L

 

↑収納スペースが豊富なのがベルランゴの特徴。天井部にも収納スペースが用意され、小物を効率良くまとめて置いておけるのが◎

 

↑コラボ企画で生まれた車中泊用純正アクセサリー。リアシートを倒しエクステンションバーを伸ばすと、フラットなベッドに早変わり

 

[ココにAttention!] 3列シートモデルの登場に期待したい!

小柄なボディながら、オシャレな内外装と、大人5人がくつろげる室内空間と広大な荷室を両立。全長4.4mのコンパクトさは維持しつつ、3列シート7人乗りの「XL」も年内発売予定だ。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

C3

265万8000円〜291万3000円(税込)

フランス車のなかでも、特にアヴァンギャルドで、お国柄が色濃いシトロエン。そのエスプリは、末っ子のC3でも存分に味わえる。小型車でも、細部まで妥協がない。

 

[ココにAttention!] 個性的なカラーと扱いやすさがイイ

個性的なボディカラーに、ルーフとドアミラーをツートーンでコーディネートすることもできる。全長4m未満と街なかで扱いやすいボディサイズだが、後席にも十分に大人が座れる。

 

PICK UP!

航続距離70kmでも欧州で爆売れ! 「アミ」はシトロエンのマイクロEV

シトロエンの超小型EV「アミ」。フランスでは普通免許が不要で、原付のような位置付けだ。220Vの電圧で約3時間で充電可能で、航続距離は70km。残念ながら日本未発売だが、パリの街では目立つ存在になりつつある。

 

【その4】ディーエス オートモビル

私が選びました!

モータージャーナリスト
岡本幸一郎さん
1968年生まれ。フランス車ではプジョー205GTIの所有歴がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

パリで育まれた感性が光るDSのフラッグシップSUV

DS 7 CROSSBACK E-TENSE 4×4

754万1000円(税込)

プレミアムブランドとしてシトロエンから独立したDSが初めてイチから開発したモデル。パリ生まれの優美な内外装デザインに最新のテクノロジーを融合した高級SUVで、E-TENSEはリアを強力なモーターで駆動するプラグインハイブリッド車だ。

SPEC●全長×全幅×全高:4590×1895×1635mm●車両重量:1940kg●パワーユニット:1598cc4気筒DOHC+ターボ+モーター●最大出力:200PS[110(前)112PS(後)]/6000rpm●最大トルク:30.6kg-m[32.6(前)16.9(後)kg-m]/3000rpm●WLTCモード燃費(ハイブリッド燃料消費率):14.0km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

↑エンジンを始動するとエレガントなデザインのB.R.M社製の高級アナログ時計がダッシュボード上に現れる。自動時刻修正機能も搭載

 

↑高級腕時計に用いられる高度な技法“クル・ド・パリ”を採用したセンターコンソール。多数のピラミッドが連なっているように見える

 

[ココにAttention!] 路面状態を認識し足回りを最適化

これから通過する路面の凹凸をフロントカメラで認識して足まわりのダンパーを最適に電子制御する「DSアクティブスキャンサスペンション」を搭載。乗り心地は極めて快適だ。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

DS 4 TROCADERO PureTech

398万円〜(税込)

年頭に開催された国際自動車フェスティバルでは、”世界で最も美しいクルマ”を意味する「Most Beautiful Car of the Year」を受賞。最廉価版なら400万円を切る価格にも注目。

 

[ココにAttention!] デザインも良いが走りもスポーティ!

受賞実績でも明らかなとおりデザインが素晴らしいのは言うまでもないが、走りも素晴らしい。新世代プラットフォームによる走りは快適性とスポーティさを見事に両立している。

 

【TOPIC】ピュアスポーツとして名高いフランス車が「アルピーヌ」だ

私が解説します!

モータージャーナリスト
清水草一さん
1962年東京生まれの自動車ライター。これまで50台以上の自家用車を購入している。

軽量ボディと適度なパワーで思い通りに操れるのが魅力

1960年代から70年代にかけて、リアエンジン・リアドライブレイアウトの軽量ボディでラリー界を席巻したのがアルピーヌA110。あの伝説のマシンが、40年の歳月を経て現代によみがえった。それがアルピーヌA110であり、そのパワーアップ版がA110Sだ。

 

現在のアルピーヌは、ルノーブランドのひとつ。新型アルピーヌは、エンジンを車体中央に横置きするミッドシップレイアウトに変更されている。いわゆる「スーパーカーレイアウト」だ。

 

フェラーリやランボルギーニなど、現代のスーパーカーはあまりにも大きく、パワフルになりすぎていて、性能を使い切ることが難しいが、アルピーヌは軽量コンパクトでパワーも適度。純粋に走りを楽しむことができるモデルだ。

 

最適パフォーマンスが光る“手ごろなスーパーカー”!

アルピーヌ

A110 S

897万円(税込)

1100kgしかない軽量ボディに252馬力の1.8L4気筒ターボエンジンを搭載し、2017年、アルピーヌA110の名で40年ぶりの復活を遂げた。A110Sは最高出力が300PSに増強された、よりスポーツ色が強いバージョンだ。

SPEC●全長×全幅×全高:4205×1800×1250mm●車両重量:1110kg●パワーユニット:1798cc4気筒DOHC+ターボ●最大出力:300PS/6300rpm●最大トルク:34.6kg-m/2400rpm●WLTCモード燃費:14.1km/L

 

↑3種類のドライブモードから選択可能。ステアリング右下の赤いボタンを押すと、即座にスポーツモードとなり、走りがスポーティに

 

↑アルピーヌA110は軽さが命。ボディの骨格はオールアルミ製だ。1100kgという車両重量は、コンパクトカー並みの軽さを誇る

 

↑車両底面にフタをしてフラットにすることで、空気をスムーズに流し、高速域ではダウンフォースを発生させている

 

 

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日産「オーラ」“小さな高級車”はダテじゃなかった。走りもインテリアもこだわりの仕上がり

日産『NOTE(ノート)』のハイグレード版として登場したのが『AURA(オーラ)』です。単に装備を豪華にしたのではありません。ボディサイズを3ナンバーにまで拡張し、モーター出力もアップするなど、試乗してみれば見た目以上のその違いを実感できるものとなっていたのです。ここではベース車であるノートと比較しながらレポートします。

 

■今回紹介するクルマ

日産/オーラ

※試乗グレード:G leather edition(4WD)

価格:265万4300円~299万6400円(税込)

↑ノートに比べてボリューム感を増している「オーラ」。フェンダー部の膨らみによって3ナンバー車となった

 

5ナンバーのノートに対して、オーラは3ナンバー

一見すると「ノートとオーラの違いはよくわからない」ほとんどの人がそう思うはずです。両車ともデザイン面で違いがそれほど大きくないからです。しかし、並べてみるとその違いはハッキリとわかりました。最も大きな違いは、ノートはボディが5ナンバー枠に収まっているのに対し、オーラはなんと3ナンバーとなっていることです。

 

で、その寸法をチェックしてみると、オーラの全幅は1735mmと、ノートの1695mmから40mm広がっていました。さらにトレッド幅もノートの1490mmから1510mmへと拡大しています。デザイン上もヘッドライトの薄型化を実施して、それに伴ってフロントグリルをバッテリーEVの「アリア」にも近いデザインとしました。また、前後フェンダーも膨らみを持たせることで、オーラは3ナンバー車らしいボリューム感のある雰囲気を生み出しているのです。

 

クルマに乗り込むとオーラはインテリアにも質感の向上が認められます。インパネの表面にはツイード調のファブリックが施され、その下には木目調パネルが加えられています。メーターディスプレイも、ノートの7インチより大型の12.3インチカラーディスプレイに変更しています。これにより、オーラでは車両の機能情報以外にナビゲーションの表示もメーター内でできるようになっています。これもノートにはない注目の装備と言えるでしょう。

↑ダッシュボードは硬質プラスチックのままだが、木目などを施すことでプレミアム感を高めている。NissanConnectナビゲーションシステムは9インチワイドディスプレイ

 

↑ダッシュボードはノートと共通であるものの、ツイード表皮と木目調パネルを与えることでプレミアムな印象を醸し出している

 

↑メーターディスプレイはノートの7インチから12.3インチへ大型化され、メーター内でナビゲーション表示も可能となっている

 

プロパイロットとBOSEサウンドで快適な高速クルージング

オーラではシートもグレードアップしています。「G leather edition」には座り心地と快適性を両立させた「本革3層構造シート」を装備。標準グレードではシートのメイン部分にインパネのファブリックに合わせた素材を用いるなど、インテリアのコーディネイトにも優れた一面を見せます。また、2022年8月の仕様変更ではリアシート中央にアームレストが標準装備され、これもノートではオプションにはない特別な装備と言えます。さらにシートはノートも含めすべて抗菌仕様にもなりました。

↑オーラの「G leather edition」を選ぶと、写真の明るい内装色の「エアリーグレー」のほか、「ブラック」を選ぶことができる

 

↑オーラのリアシート。標準グレードの「G」でもアームレストは標準装備となっている

 

それとオーラで見逃せないのはサウンドシステムとして「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」がオプションで装着できることです。ヘッドレストにスピーカーを内蔵したことに加え、ドアにはワイドレンジスピーカー、Aピラーにはツィーターを組み込んだ8スピーカー構成とし、これを専用DSP内蔵アンプにより駆動します。耳元に近いヘッドレストでメインの音が出力されるため、音像の輪郭が鮮明でクリア。しかも「PersonalSpace」と呼ばれる機能を使うことで、音場の広がり感も自由に設定できます。その日の気分に合わせたサウンドステージが楽しめるのは使ってみるとなかなかいいものです。

↑ヘッドレストにスピーカーを組み込んだ「BOSEパーソナルプラスサウンドシステム」。演奏者の位置がわかるほどリアルなサウンドと、車室サイズを超えるような音の広がりを実感できる

 

↑「PersonalSpace」では音場を自在に変化させられる。ライブハウスのようなタイトな感覚から、アリーナの最前列で360°包まれるようなサウンドまで自在に設定可能

 

ただ、残念なのはこのシステムはプロパイロットやNissanConnect ナビゲーションシステムなどとのセットオプションとなるため、価格は40万円超えとなってしまうことです。おそらくプロパイロット+ナビを装着する人は多いと思われるので、それを選べば必然的にBOSEのシステムも付いてくるわけですが、車両価格の15%にもなるこの設定はちょっとビビりますよね。しかしオーラは遮音ガラスを採用したこともあって、高速走行時の室内はきわめて静か。音楽を楽しみながらプロパイロットでクルージングすることをオススメします!

↑ステアリングにセットアップされている「プロパイロット」の操作スイッチ

 

↑緊急時にオペレーターへ通報できる「SOSコール」はプロパイロットとのセットオプションとなる。試乗車では機能がOFFとなっていた

 

アクセルを踏んだ瞬間、パワフル感はノートを大きく超える!

ではオーラの走りはどうでしょうか。率直に言って、その走りは現行ノートでも先代とは比較にならないほど安定した走りを見せるようになりました。特に発電用エンジンの音が静かで、作動する時間も先代よりも大幅に少なくなっているので感覚的にも快適そのもの。このフィーリングはオーラにも引き継がれ、その上でフロントモーターの出力が向上しているのです。今回の試乗では4WDを選んだため、リアからのモーターアシストも加わり、アクセルを踏んだ瞬間のパワフル感はまるで違っていました。

↑発電専用の1.5L気筒エンジンを搭載し、その電力によってモーターを駆動して走るシリーズハイブリッド(e-POWER)を採用

 

↑オーラのシフトノブ。電子式のシフトレバーを全グレード標準装備した

 

操舵フィーリングも思ったコースを忠実にトレースしてくれ、e-POWERならではの「eペダル」を組み合わせることで峠道の走行もいっそう愉しさが増します。特にオーラではタイヤをノートの185/60R16から205/50R17へとサイズアップしていることもあって、コーナリングでの踏ん張りはなかなかのもの。つい峠道を選んで走ってみたくなってしまいます。

↑ノートの16インチに対し、オーラはインチアップした205/50R17を履く。これが乗り心地に影響を与えた可能性がある

 

ただ、オーラは路面からの突き上げ感は大きめに出ます。なかでも気になるのは少し荒れた一般道を入っているとき。車体にも振動が伝わってくるため、状況によっては不快に感じることさえあります。ノートの時はそれほど気になることはなかったため、おそらくサイズアップしたタイヤの影響が大きいのではないかと思いますが、一方で操安性の向上にプラスとなっているのは間違いありません。これをどう捉えるかで評価は大きく変わってくると思います。

 

「ノート+60万円」で手に入るプラスアルファの走りと質感

ではオーラとノート、どちらを選ぶのがいいのでしょうか。オーラを外から俯瞰した後でノートを見ると、前後のフェンダーに膨らみを持たせたオーラは豊かなプロポーションを感じさせます。個人的には濃いめのボディカラーを組み合わせたときのリッチな雰囲気が好みでした。ただ、オーラとノートの価格差は装備に違いがあるとは言え60万円ほどあり、そこに価値が見出せるかと言えば、人によって差は出てくるでしょう。

↑オーラ(4WD)。ボディカラーは全14色から選べる

 

↑リアドアの開く角度が大きく、乗り降りに大きくプラスとなっている

 

特にインテリアは硬質プラスチックのままで、ノートとの明らかな違いを感じ取ることはできず、せめてパワーシートぐらいは装着しても良かったのではないかと思うのです。とはいえ、ノートを上回るパワフルさが生み出す走りは楽しいし、ノート以上のグレード感は、オーラならではの大きな魅力と言えます。豊満なボディとプレミアム感、そして走りの良さを求めたいならオーラは間違いなくオススメ。自分にとって何が必要かを選択しながら、ノートと比較してみるのも良いのではないでしょうか。

 

SPEC【G leather edition(4WD)】●全長×全幅×全高:4045×1735×1525㎜●車両重量:1370㎏●パワーユニット:1.2リッター直3DOHC12バルブ+交流同期電動機●最高出力:エンジン82PS/6000rpm (モーターフロント136PS/3183-8500rpm ・リア68PS/4775-10024rpm )●最大トルク:エンジン103Nm/4800rpm(モーターフロント300Nm/0-3183rpm ・リア100Nm/0-4775rpm )●WLTCモード燃費:22.7㎞/L

 

 

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ピュアスポーツとして名高いフランス車が「アルピーヌ」だ!【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。ピュアスポーツとして名高いアルピーヌを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

ALPINE(アルピーヌ)

私が解説します!

モータージャーナリスト
清水草一さん
1962年東京生まれの自動車ライター。これまで50台以上の自家用車を購入している。

 

軽量ボディと適度なパワーで思い通りに操れるのが魅力

1960年代から70年代にかけて、リアエンジン・リアドライブレイアウトの軽量ボディでラリー界を席巻したのがアルピーヌA110。あの伝説のマシンが、40年の歳月を経て現代によみがえった。それがアルピーヌA110であり、そのパワーアップ版がA110Sだ。

 

現在のアルピーヌは、ルノーブランドのひとつ。新型アルピーヌは、エンジンを車体中央に横置きするミッドシップレイアウトに変更されている。いわゆる「スーパーカーレイアウト」だ。

 

フェラーリやランボルギーニなど、現代のスーパーカーはあまりにも大きく、パワフルになりすぎていて、性能を使い切ることが難しいが、アルピーヌは軽量コンパクトでパワーも適度。純粋に走りを楽しむことができるモデルだ。

 

最適パフォーマンスが光る“手ごろなスーパーカー”!

アルピーヌ

A110 S

897万円(税込)

1100kgしかない軽量ボディに252馬力の1.8L4気筒ターボエンジンを搭載し、2017年、アルピーヌA110の名で40年ぶりの復活を遂げた。A110Sは最高出力が300PSに増強された、よりスポーツ色が強いバージョンだ。

SPEC●全長×全幅×全高:4205×1800×1250mm●車両重量:1110kg●パワーユニット:1798cc4気筒DOHC+ターボ●最大出力:300PS/6300rpm●最大トルク:34.6kg-m/2400rpm●WLTCモード燃費:14.1km/L

 

↑3種類のドライブモードから選択可能。ステアリング右下の赤いボタンを押すと、即座にスポーツモードとなり、走りがスポーティに

 

↑アルピーヌA110は軽さが命。ボディの骨格はオールアルミ製だ。1100kgという車両重量は、コンパクトカー並みの軽さを誇る

 

↑車両底面にフタをしてフラットにすることで、空気をスムーズに流し、高速域ではダウンフォースを発生させている

 

バリで育まれた感性が光るDSのフラッグシップSUV【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。今回はディーエス オートモビルを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

DS AUTOMOBILES(ディーエス オートモビル)

私が選びました!

モータージャーナリスト
岡本幸一郎さん
1968年生まれ。フランス車ではプジョー205GTIの所有歴がある。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

DS 7 CROSSBACK E-TENSE 4×4

754万1000円(税込)

プレミアムブランドとしてシトロエンから独立したDSが初めてイチから開発したモデル。パリ生まれの優美な内外装デザインに最新のテクノロジーを融合した高級SUVで、E-TENSEはリアを強力なモーターで駆動するプラグインハイブリッド車だ。

SPEC●全長×全幅×全高:4590×1895×1635mm●車両重量:1940kg●パワーユニット:1598cc4気筒DOHC+ターボ+モーター●最大出力:200PS[110(前)112PS(後)]/6000rpm●最大トルク:30.6kg-m[32.6(前)16.9(後)kg-m]/3000rpm●WLTCモード燃費(ハイブリッド燃料消費率):14.0km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

↑エンジンを始動するとエレガントなデザインのB.R.M社製の高級アナログ時計がダッシュボード上に現れる。自動時刻修正機能も搭載

 

↑高級腕時計に用いられる高度な技法“クル・ド・パリ”を採用したセンターコンソール。多数のピラミッドが連なっているように見える

 

[ココにAttention!] 路面状態を認識し足回りを最適化

これから通過する路面の凹凸をフロントカメラで認識して足まわりのダンパーを最適に電子制御する「DSアクティブスキャンサスペンション」を搭載。乗り心地は極めて快適だ。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

DS 4 TROCADERO PureTech

398万円〜(税込)

年頭に開催された国際自動車フェスティバルでは、”世界で最も美しいクルマ”を意味する「Most Beautiful Car of the Year」を受賞。最廉価版なら400万円を切る価格にも注目。

 

[ココにAttention!] デザインも良いが走りもスポーティ!

受賞実績でも明らかなとおりデザインが素晴らしいのは言うまでもないが、走りも素晴らしい。新世代プラットフォームによる走りは快適性とスポーティさを見事に両立している。

 

 

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「ベルランゴ」は広大な空間を持つMPVながらエレガントな雰囲気はキープ【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。今回はシトロエンを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

CITROEN(シトロエン)

私が選びました!

自動車・環境ジャーナリスト
川端由美さん
エンジニアから自動車専門誌の編集記者を経て、フリーのジャーナリストに。エコとテックを専門に追う。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

ベルランゴ

367万6000円〜404万5000円(税込)

広大な室内空間を持つクルマで家族と一緒に出かけたいけれど、所帯じみて見えるのは避けたい。いや、むしろ、エレガントに乗りこなしたい! という人にオススメ。フランス車らしいエレガントなデザインに目を奪われる。

SPEC【SHINE BlueHDi】●全長×全幅×全高:4405×1850×1850mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:1498cc4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最大出力:130PS/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:18.1km/L

 

↑収納スペースが豊富なのがベルランゴの特徴。天井部にも収納スペースが用意され、小物を効率良くまとめて置いておけるのが◎

 

↑コラボ企画で生まれた車中泊用純正アクセサリー。リアシートを倒しエクステンションバーを伸ばすと、フラットなベッドに早変わり

 

[ココにAttention!] 3列シートモデルの登場に期待したい!

小柄なボディながら、オシャレな内外装と、大人5人がくつろげる室内空間と広大な荷室を両立。全長4.4mのコンパクトさは維持しつつ、3列シート7人乗りの「XL」も年内発売予定だ。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

C3

265万8000円〜291万3000円(税込)

フランス車のなかでも、特にアヴァンギャルドで、お国柄が色濃いシトロエン。そのエスプリは、末っ子のC3でも存分に味わえる。小型車でも、細部まで妥協がない。

 

[ココにAttention!] 個性的なカラーと扱いやすさがイイ

個性的なボディカラーに、ルーフとドアミラーをツートーンでコーディネートすることもできる。全長4m未満と街なかで扱いやすいボディサイズだが、後席にも十分に大人が座れる。

 

PICK UP!

航続距離70kmでも欧州で爆売れ! 「アミ」はシトロエンのマイクロEV

シトロエンの超小型EV「アミ」。フランスでは普通免許が不要で、原付のような位置付けだ。220Vの電圧で約3時間で充電可能で、航続距離は70km。残念ながら日本未発売だが、パリの街では目立つ存在になりつつある。

 

 

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デザインで選びたくなるプジョープライドを体現「508SW」【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。今回はプジョーを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

PEUGEOT(プジョー)

私が選びました!

モータージャーナリスト
飯田裕子さん
自動車メーカー在職中に培ったレースや仕事経験を生かしつつ、カーライフの“質”や“楽しさ”を提案する。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

508SW

598万9000円〜704万3000円(税込)

プジョーのフラッグシップ508のステーションワゴン。機能的なワゴンをデザインで選びたくなるようなスタイルに磨きをかけ、上質さや快適性、ドライバビリティが高められた。3タイプのパワーチョイスには新たにPHEVが加わった。

SPEC【GT BlueHDi】●全長×全幅×全高:4790×1860×1420mm●車両重量:1670kg●パワーユニット:1997cc4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最大出力:177PS/3750rpm●最大トルク:40.7kg-m/2000rpm●WLTCモード燃費:16.2km/L

 

↑伸びやかなフォルムの前後にはLEDライトを採用し、最新のプジョーらしさを上質さとともに表現。デザインで選ぶ人がいても納得

 

↑期待以上の機能美をプジョーらしく象徴するラゲッジ。スクエアでフラットなスペースは先代を上回る収納量530〜1780Lを誇る

 

[ココにAttention!] 燃費性能に優れるディーゼルは優秀

3種類のパワーソースが揃う。特に快適指数も高く燃費にも優れるディーゼルの力強く扱いやすい動力と、しなやかなドライブフィールが、美しい508SWの行動意欲をかき立てる。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

208

284万5000円〜460万2000円(税込)

コンパクトカー作りの名手プジョーが、ブランドの特徴を凝縮し、若々しくスポーティな走りやデザインを体現。独創的かつ最先端の「3D i-Cockpit」の機能性にも注目したい。

 

[ココにAttention!] EVもガソリン車も走りを楽しめる!

208をピュアEVで楽しめる時代に突入。一方、国産コンパクトと競合するピュアガソリン車のプジョーらしい走りも、優れたパッケージやデザインと並んで捨てがたい魅力だ。

 

 

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納得の完成度を誇る欧州ナンバー1SUV、ルノー「キャプチャー」【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。今回はルノーを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

RENAULT(ルノー)

私が選びました!

モビリティジャーナリスト
森口将之さん
これまで所有した愛車の3分の2がフランス車。渡仏経験も多く、クルマ以外のモビリティにも詳しい。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

キャプチャー

309万円〜389万円(税込)

キャプチャーは2021年に欧州で一番売れたSUV。躍動感あふれるスタイリング、上質で使いやすいインテリア、ルノーらしく自然で安定した走りが人気の理由だろう。日本の道路事情に合ったコンパクトなサイズもうれしい。

SPEC【E-TECH ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1597cc4気筒DOHC+モーター●最大出力:94PS[49PS]/5600rpm●最大トルク:15.1kg-m[20.9kg-m]/3600rpm●WLTCモード燃費:22.8km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

↑コンパクトSUVながら広いラゲッジスペースを確保。後席使用時でも536L、リアシートを倒せば最大1235Lにまで拡大する

 

↑E-TECH HYBRIDはエンジン側に4速、モーター側に2速のギアを搭載。計12通りの組み合わせでシームレスな変速を実現する

 

↑360度カメラを搭載し、真上から見下ろしたような映像をスクリーンに表示してくれる。ギアをリバースに入れると自動で起動する

 

[ココにAttention!] F1技術を注いだハイブリッドも登場

ハイブリッド仕様が最近追加。F1のノウハウを注入したE-TECH HYBRIDは、輸入車SUVナンバー1の燃費をマークしつつ、ハイブリッドらしからぬダイレクトな走りも魅力。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

トゥインゴ

225万円〜254万円(税込)

3代目でリアエンジンに変身したベーシックルノー。5ナンバーに収まるサイズ、驚きの小回り性能、独特のハンドリングなど、国産コンパクトとはひと味違った魅力がいっぱいだ。

 

↑エンジンはリアラゲッジ下に効率良く配置。リアエンジンの採用でタイヤを車両の四隅に配置でき、後席の足元空間にも余裕が生まれる

 

↑シンプルにまとめられた運転席まわり。電子制御6速ATと0.9L3気筒ターボエンジンの組み合わせで、力強い走りを実現している

 

↑インテンス MTには5速マニュアルトランスミッションを採用。1.0Lの自然吸気エンジンとの組み合わせで、小気味良く操ることが可能

 

[ココにAttention!] 往年の名車がモチーフ!

キュートなのに存在感あるスタイリングは、1970〜80年代に活躍したミッドシップのラリーカー、5ターボがモチーフ。それをベーシックカーに反映する発想がまたスゴい。

 

 

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納得の完成度を誇る欧州ナンバー1SUV、ルノー「キャプチャー」【いまこの仏車にAttention!】

オシャレで機能的、燃費性能や安全運転支援技術も進化しているフランス車のなかでも、特にオススメのモデルをプロが「エレガントなフレンチ」「小粋なフレンチ」の視点でピックアップ。今回はルノーを紹介する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

RENAULT(ルノー)

私が選びました!

モビリティジャーナリスト
森口将之さん
これまで所有した愛車の3分の2がフランス車。渡仏経験も多く、クルマ以外のモビリティにも詳しい。

 

エレガントなフレンチを狙うなら!

キャプチャー

309万円〜389万円(税込)

キャプチャーは2021年に欧州で一番売れたSUV。躍動感あふれるスタイリング、上質で使いやすいインテリア、ルノーらしく自然で安定した走りが人気の理由だろう。日本の道路事情に合ったコンパクトなサイズもうれしい。

SPEC【E-TECH ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4230×1795×1590mm●車両重量:1420kg●パワーユニット:1597cc4気筒DOHC+モーター●最大出力:94PS[49PS]/5600rpm●最大トルク:15.1kg-m[20.9kg-m]/3600rpm●WLTCモード燃費:22.8km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

↑コンパクトSUVながら広いラゲッジスペースを確保。後席使用時でも536L、リアシートを倒せば最大1235Lにまで拡大する

 

↑E-TECH HYBRIDはエンジン側に4速、モーター側に2速のギアを搭載。計12通りの組み合わせでシームレスな変速を実現する

 

↑360度カメラを搭載し、真上から見下ろしたような映像をスクリーンに表示してくれる。ギアをリバースに入れると自動で起動する

 

[ココにAttention!] F1技術を注いだハイブリッドも登場

ハイブリッド仕様が最近追加。F1のノウハウを注入したE-TECH HYBRIDは、輸入車SUVナンバー1の燃費をマークしつつ、ハイブリッドらしからぬダイレクトな走りも魅力。

 

小粋なフレンチを狙うなら!

トゥインゴ

225万円〜254万円(税込)

3代目でリアエンジンに変身したベーシックルノー。5ナンバーに収まるサイズ、驚きの小回り性能、独特のハンドリングなど、国産コンパクトとはひと味違った魅力がいっぱいだ。

 

↑エンジンはリアラゲッジ下に効率良く配置。リアエンジンの採用でタイヤを車両の四隅に配置でき、後席の足元空間にも余裕が生まれる

 

↑シンプルにまとめられた運転席まわり。電子制御6速ATと0.9L3気筒ターボエンジンの組み合わせで、力強い走りを実現している

 

↑インテンス MTには5速マニュアルトランスミッションを採用。1.0Lの自然吸気エンジンとの組み合わせで、小気味良く操ることが可能

 

[ココにAttention!] 往年の名車がモチーフ!

キュートなのに存在感あるスタイリングは、1970〜80年代に活躍したミッドシップのラリーカー、5ターボがモチーフ。それをベーシックカーに反映する発想がまたスゴい。

 

 

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タクシーEV化でCO2排出を年間3万トン削減! 「GO」アプリのMoTが目指すカーボンニュートラル社会とは

タクシーアプリ「GO」などを運営するMobility Technologies(MoT)は、全国のタクシー事業者と各種パートナー企業が参加する「タクシー産業GXプロジェクト」を始動することを発表しました。

 

このプロジェクトは、タクシーのEV(電気自動車)化によって再生エネルギーの活用や二酸化炭素排出量の削減し、タクシー産業の脱炭素化を目指すもの。2025年までに全国で2500台のEVタクシーを運用し、2027年までにCO2排出量を年間3万トン削減することを目標に掲げています。

↑タクシーのEV化を進める「タクシー産業GXプロジェクト」

 

↑2500台のEVタクシー導入により、年間3万トンのCO2排出を削減することを目標としています

 

同社の代表取締役社長を務める中島 宏氏によれば、日本の産業のCO2排出量のうち、運輸産業が占める割合は約17%になるとのこと。現在、タクシー産業におけるEV車の導入率は0.1%と極めて低いものの、タクシー産業がほかに先駆けて脱炭素化を進めることで、カーボンニュートラル社会の早期実現を目指したいとしています。

↑MoTの中島 宏代表取締役社長

 

同社は全国のタクシー事業者を対象に、EV車両のリースや利用システムの提供を行うほか、同社が持つAIテクノロジーやデータを活用した包括的なサービスを提供。例えばタクシー運転手がよく休憩する場所をクラウドデータをもとに割り出して充電スタンドを設置したり、電力供給が過剰になる昼間の時間帯に電力を蓄電池に蓄え、充電に必要な電力コストを抑えたりと、EVタクシーを運用したことがない事業者でも低コストで導入することが可能となります。

 

EVタクシー車両には、パートナー企業であるトヨタや日産のEV車種を使用。トヨタ「bZ4X」や日産「リーフ」「アリア」などを用意するほか、将来的にはラインナップを拡充していきたいとのこと。

↑EVタクシーとして採用されたトヨタ「bZ4X」。クロスオーバーSUV車であるため一般的なタクシー車両のイメージよりもスタイリッシュな印象

 

↑日産は画像の「アリア」のほか、「リーフ」も採用

 

また、スマホアプリ「GO」のアップデートにより、利用したタクシーの走行距離からCO2排出削減量を算出し見える化することで、利用者にEV車種の積極的な利用を促進させる取り組みも実施予定(アップデート時期は未定。法人向けサービス「GO BUSINESS」では実装済み)。将来的にはアプリからEVタクシーを選択して配車するような機能も実装したいとしています。

↑タクシーアプリ「GO」にCO2排出削減量が表示され、利用者の環境への意識を高める試みも

 

本プロジェクトは国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティー社会の構築」採択の支援を受けており、タクシー事業車はEV車両の導入や充電設備の設置などで助成金を受けることができます。

↑関係者やパートナー企業のゲストを交えたフォトセッションの様子。中央がMoTの中島 宏代表取締役社長

 

世界的にカーボンニュートラル化が進むなか、もはや待ったなしの状況ともいえる化石燃料依存からの転換ですが、EV車の導入でCO2排出量の削減を進めるMoTの新プロジェクトは、タクシー産業だけでなく運送業やほかの産業にも影響を与えそうです。

 

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トヨタ「クラウンクロスオーバー」はスポーティなわりにフォルムが膨よかで貫禄がある!

2022年7月、トヨタが世界に向けて発表したのは、フラッグシップモデル「クラウン」の新型モデル。しかし、従来のセダンタイプだけでなく、SUVのエステート、ハッチバックのスポーツ、ワゴンのエステートと新たなボディバリエーションも同時に初公開された。そのうち、まず第一弾としてすでにデリバリーが始まっているのがクロスオーバーだ。これを早くも試乗した自動車評論家の評価とは!?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ/クラウンクロスオーバー

※試乗グレード:RS

価格:435万円~640万円(税込)

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第一印象は「まあまあカッコいいな」

新型クラウンの発表は衝撃的だった。「今度のクラウンはSUV風になるらしい」という噂だけを頭に発表を待っていたら、なんと一気に4つのボディタイプが公開され、しかもどれもが個性的でカッコよかった! 4つのボディタイプは、セダン、エステート、スポーツ、そしてクロスオーバーだが、販売のメインになるのはセダンではなく、SUV風味のクロスオーバーだ(トヨタの目論見通りなら)。

 

トヨタ・クラウンと言えば“おっさんセダン”。昔は「いつかはクラウン」などと言われたが、さすがに誕生から60年以上経てば時代も変わる。クラウンクロスオーバーの初期受注台数を見ると、市場の反応はそれほど熱狂的ではないが、先代型クラウンの売れ行きは、ピーク時(バブル期)の10分の1程度にまで落ちていた。つまりトヨタとすれば、失うものは何もない。思い切ってバクチを打つには最高の環境だったのである。

 

発表会では、クラウンの激変ぶりに度肝を抜かれ、「トヨタ、やるなぁ」と唸らされたが、実物のクラウンクロスオーバーの第一印象は、「まあまあカッコいいな」というところだった。すごくカッコいいではなく「まあまあ」な理由は、スポーティなわりにフォルムが膨よかで貫禄があり、ややおっさんっぽいからだ。もっとスリークにシュッとさせれば、「文句なくカッコいい!」となったような気もするけれど、トヨタはそうはしなかった。

↑セダンだった先代クラウンと比べてクロスオーバーは全高が85mm高くなった。ホイールベースは2850mmと後輪駆動の先代モデル(2920mm)に比べれば短くなっている

 

21インチという大径タイヤを履き、思い切りスタイリッシュに振ってはいるが、クラウンという名前から来るイメージを完全に捨てるわけにはいかなかったのだろう。クラウンとして最大限頑張ったけれど、やっぱりクラウンはクラウン、貫禄も大事! ということなのですね。

↑21インチ アルミホイール(切削光輝+ブラック塗装)&センターオーナメント※RSの場合

 

クラウンクロスオーバーは、クラウンの伝統であるFRレイアウトを捨て、エンジン横置きのFFベース4WDにリボーンしたが、それによってフロントノーズは若干短くなり、ヘッドライトは思い切り薄くなり、今どきのスタイリッシュなファストバック車に生まれ変わった。

 

ただ、テールゲートはハッチバックではなく、独立したトランクを持っている。トランク部の出っ張りはほとんどないので、開口部はやや小さく、荷物の出し入れはあまりしやすいとは言えないが、開口部の大きいハッチバックでは、セダンのような静粛性の確保は難しい。大きく生まれ変わったとは言え、クラウンのウリである静粛性や快適性を捨てるわけにもいかなかったのだ。

↑12.3インチHDDディスプレイやステアリングヒーターを装備。ディスプレイ・メーター・操作機器を水平に集約し、運転中の視線移動や動作を最小化している

 

クラウンクロスオーバー走行した印象は?

では、この「スタイリッシュでまあまあカッコいい」クラウンクロスオーバー、走った印象はどうだったのか。

 

スタンダードな2.5Lハイブリッドモデル(電気式4WD)のパワートレインは、「カムリ」などに搭載されているものと基本的には同じで、わりとフツーだった。特に速いわけではないし、特にスポーティでもなく、トヨタのハイブリッドらしく、静かに淡々と走行する。乗り心地もどことなくカムリに近く、大径タイヤの重さもあって、それほど極上というわけではない。

 

ただ、違うのはコーナリングだ。4WS(四輪操舵)システムの恩恵もあり、ハンドルを切れば切っただけキレイに曲がってくれる。「えっ、こんなに曲がるの!?」というくらいスイスイ曲がる。このコーナリングの良さが、クラウンにとってどれほどアドバンテージになるかは未知数だが、4WSによる小回り性の高さは、確実にメリットだ。

 

というわけでクラウンクロスオーバーのスタンダードグレードは、全体に可もなく不可もなく、デザインとコーナリングが目立つ、穏やかなクルマに仕上がっていた。

 

続いてスポーティクレードである「RS」だ。クラウンのために新開発された2.4Lのデュアルブーストハイブリッドモデル(電気式4WD)を試す。

↑単体で最高出力272PSを発生する2.4リッター直4直噴ターボエンジン

 

こちらは、ハイブリッドのシステム最高出力は349馬力に達する(2.5Lハイブリッドは234馬力)。アクセルを踏めば圧倒的にパワフルで、昔風に言えば大排気量のアメ車のごとく、低い回転からズドーンと加速し、そのまま高い回転域までシュオーンと突き抜ける。エンジンは2.5L同様4気筒だが、振動はしっかり抑え込まれていて、従来のV6並みの滑らかなフィーリングが味わえる。まさにスポーツセダン!

 

だけど燃費はがっくり落ちる。WLTCモード燃費は15.7km/Lとなっているが(2.5Lハイブリッドは22.4km/L)、実燃費は10km/L程度だろうか。山道を元気に走り回った時の燃費は6km/L台。トヨタのハイブリッド車としては、びっくりするほど悪い。

 

しかし、燃費を重視するならスタンダードモデルを選べばいいわけで、RSの狙いは、このスポーティな走りなのだ。RSは加速がいいだけじゃない。コーナリングも素晴らしい。これまた4WSの恩恵で、超オンザレール感覚でシュオーンと曲がってくれる。従来の古典的なクラウンと比べると、「魔法のようなコーナリング」とすら言っていい。

 

先代型クラウンは、FRレイアウトを維持しつつ、BMW3シリーズのようなスポーティな走りを目指したが、そこにはまったく届いていなかった。しかし新型クラウンクロスオーバーには、もうBMW3シリーズやメルセデスCクラスの影はない。これは、まったく別カテゴリーのスポーツセダンなのだ。その狙いは、「RS」に関しては、8割くらいは達成できているのではないだろうか。

 

SPEC【CROSSOVER RS(クロスオーバーRS)】●全長×全幅×全高:4930×1840×1540㎜●車両重量:1900㎏●パワーユニット:2393㏄直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:272PS/6000rpm●エンジン最大トルク:460Nm/2000-3000rpm●WLTCモード燃費:15.7㎞/L

 

撮影/池之平昌信

 

 

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「21世紀の傑作デザイン」という高い評価を得ているマツダ「ロードスター」を考察

世界中のスポーツカーは大型化、高級化傾向にあり、マツダ「ロードスター」のように小型軽量で手頃に買えるスポーツカーは珍しくなった。そもそもスポーツカー自体が希少なこの時代にあって、30年以上、4代に渡って販売が続いているのは、ひとえにロードスターが魅力的なクルマであることにほかならない。最新のRSグレードに乗って、そのあたりを考察してみた。

 

■今回紹介するクルマ

マツダ/ロードスター

※試乗グレード:RS・6速MT

価格:268万9500円~342万2100円(税込)

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まるでクルマと身体が一体になったような感覚が味わえる

ロードスターは、日本を代表するスポーツカーだが、トヨタ「スープラ」や「86」、あるいは日産「GT-R」や「フェアレディZ」とは決定的な違いがある。それは、ほかのスポーツカーと違って屋根を開けることができるオープンカーであるということだ。

 

一度でもオープンカーに乗ったことがある人ならわかるかもしれないが、屋根を開けて走ると周囲の風を感じられる。適度に風を浴びながら走ると、まるでクルマと身体が一体になったような感覚が味わえて、運転することの気持ちよさが、より深く感じられる。この感覚は、よく「人馬一体」などとも表現されるが、ロードスターはまさにこの「人馬一体」の権化のようなクルマである。

↑誰もが憧れるガラス製リアウインドー付ソフトトップ。屋根をオープンにすると「クー!! カッコいいっす」

 

「人馬一体」の感覚は、1989年に登場した初代モデルの頃からしっかり味わえた。そしてそこが高く評価されたこともあって、ロードスターは世界的な人気車となり、現在まで販売されるロングセラーモデルとなった。

 

もちろん、屋根が開くことだけで長く支持されてきたわけではない。ステアリングを握ってすこし走っただけで、「すばらしい」とため息がでるクルマはそう多くは存在しないが、このロードスターは、乗った後にそんな気持ちにさせてくれるクルマなのだ。きっと多くの人が、期待以上のものを得られるに違いない。

↑3本スポークのステアリングホイール。直径366mmで細身のグリップで操作もしやすい

 

ステアリングのフィーリングは若干軽めで、足まわりもソフトな味つけになっている。一見イージー過ぎてクルマ好きには物足りないかと思いきや、コーナーを攻めてみるとしっかり踏ん張るので、かなりの速度域でコーナリングが楽しめる。逆にいえば、誰でも操作しやすくて乗りやすい、ピュアなスポーツカーにしつらえられていて、“走りの楽しさ”というものを直球で味わえる。

 

エンジンは自然吸気式の1.5L、一種類のみだが、ボディが約1tと軽いため、加速感が気持ちいい。それに加えて、なんといっても重心が低いので、ノンターボの健やかな加速でもスポーティ感がたっぷり味わえる。走りの味付けとしては全体的に風情があって、ゆっくり走っていても楽しいのだが、これが屋根をあければ、2倍や3倍にも感じられるのだ。

↑直噴1.5Lガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」のみを設定

 

なんだかこれで結論のようになってしまったが、現行型ロードスターの美点は走りだけではない。英国の古き良きライトウェイトスポーツカーをモチーフにした初代モデルのデザインは、レトロな趣で現在でも高い評価を獲得している。次の2代目モデルはスポーティさを誇張してワイドになったが、現役時代はさほど評価を得られなかった。そして3代目では原点に立ち返り、初代モデルのような丸みを帯びたノスタルジックな形状になったがボディは大型化していた。

 

こういった流れを受けて、2015年に登場した4代目となる現行型では、まずなによりボディサイズが小型化された。そこに、引き締まったモダンなスポーティデザインがまとめられることになった。昨今の高級スポーツカーにありがちな“無駄”なラインが省かれており、とにかくシンプルで美しい。サイズ感にもピッタリ当てはまる。

 

フロントまわりには無駄なエッジがなく、シャープでありながらどこか彫刻的だ。サイドからリアにかけては微妙なうねりがあって、動物の肢体を想像させる有機的なデザインにまとまっている。つまり、顔は清楚でありながら、お尻はセクシーなのである。

↑ヘッドランプは自動的にロービームとハイビームを切り替える「ハイ・ビーム・コントロールシステム(HBC)」に

 

↑足元は16インチアルミホイール、大径ブレーキを標準装備

 

さらに、幌を閉じた状態で見てもスタイリッシュなのは、このクルマのバランスの良さや完成度の高さを物語っている。早くも「21世紀の傑作デザイン」という高い評価を得ているが、きっと10年経っても、20年経った後でも、高く評価されるに違いない。

↑ドライバーをクルマの中心に置き、すべてを自然な位置にレイアウトすること。徹底的にボディの無駄を削ぎ落として、全長は短く、全高は低く、ホイールベースはショートに

 

↑トランクは機内持込対応サイズのスーツケースを2個積載できる容量を確保。利便性にも配慮された

 

一旦離れても、いつかまた乗りたいクルマです

スポーツカーの延長線上にはスーパーカーがあって、それはカーマニアにとっての夢、最果ての地となっているが、スーパーカーを手に入れるにはとんでもない金額を支払う必要がある。結局は一部の富を持つ人のための嗜好品だ(中古車はのぞく)。しかしロードスターは違う。価格もサイズも、さらには使い勝手も実に合理的にまとめられている。

 

スポーツカーにとって使い勝手の良さや実用性が必要かどうかと言われれば、答えは「ノー」だ。あくまでも走ることを楽しむクルマだから、そのために実用性が犠牲になっている部分はある。だから普通の人はスポーツカーに乗らないというのもすごくわかる。しかしクルマには、家電やデジタルギアと違って、機能だけで語れない部分があるのだ。

 

走ることの楽しさというのは、実際に乗ってみればわかる。そしてそれはオーナーになってみればさらにわかる。実は筆者もかつてこのクルマ(初代モデル)に乗っていた1人だが、筆者を含め、筆者のまわりにいるオーナー経験者たちは、皆一様に「いつかまた乗りたい」というコメントを残してる。

 

かつて世界中のメーカーがこのロードスターを越えようと多くのライトウェイトオープンモデルを登場させたが、結局、ロードスターに匹敵するクルマは出現しなかった。そして、今でもほぼデビュー時のコンセプトのまま残っているのはロードスターだけである。このクルマが日本で生まれたことを誇りに思う。

 

SPEC【RS・6速MT】●全長×全幅×全高:3915×1735×1235㎜●車両重量:1020㎏●パワーユニット:1496㏄直列4気筒エンジン●最高出力:132PS/7000rpm●最大トルク:152Nm/4500rpm●WLTCモード燃費:16.8㎞/L

 

撮影/木村博道 文/安藤修也

 

 

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テスラの高級電動トラック「Semi」がやっと納車開始! ペプシに100台

電気自動車メーカーのテスラの電動トラック「Semi」の、量産車の納車が開始されました。最初の顧客は飲料メーカーのペプシで、100台の納車が予定されています。

↑テスラより

 

Semiは2017年に初披露された電動トラックで、300マイル(約480km)版が15万ドル(約2000万円)、500マイル版が18万ドル(約2400万円)で販売されます。これはディーゼル燃料のトラックよりもかなり高額ですが、電動化により20%高効率な走行が可能なことから、100万マイル(約160万キロ)の走行で最大25万ドル(約3400万円)の節約が可能だとアピールされています。

 

Semiは1MWの巨大なバッテリーパックを搭載し、最大8万ポンド(約36トン)の荷物を牽引可能。時速60マイル(約時速96km)まで20秒で到達し、0〜80%までわずか30分で充電できます。さらに強化型オートパイロットのほか、ジャックナイフ軽減システム、ブラインドスポットセンサー、車両管理用データロガーが搭載されています。

 

これまで出荷がたびたび延期されてきたものの、とうとう納車を開始したSemi。その省エネ性能がどれだけ市場から評価されるのかに注目です。

 

Source: Engadget

スバル「クロストレック」試乗。軽快な走りを示す新ラインナップ「FFモデル」に注目!

より身近なSUVとして根強い人気を獲得していた「SUBARU XV」が、2023年以降、装いも新たに『クロストレック』として生まれ変わることになりました。その魅力はどこにあるのか。今回は発表を前に、クローズドコースで行われた先行試乗会でプロトタイプの走りをレポートします。

↑標準グレード「ツーリング」AWD(4WD)。ボディカラーは新色の「オフショアブルー・メタリック」

 

車名は「XV」から「クロストレック」へ

「クロストレック」という名前、少しスバルに詳しい人ならもしかしたら聞いたことがあるかもしれません。実はクロストレックという名前が使われるのは今回が初めてではないのです。すでにアメリカなど北米では、日本で展開していた「XV」をクロストレックとしていました。今回のフルモデルチェンジを機にXV名ではなく、グローバルでクロストレック名が使われることになったのです。

↑タイヤは17インチホイールに225/60R17。リアフォグランプは右下が点灯する

 

ラインナップは4WDに加えて、シティユースが多い人向きにFFを用意したのもポイントです。その分だけより身近な価格でクロストレックが手に入れられるのです。ただ、代わりに従来の1.6リッターモデルはラインナップから外れ、日本仕様のパワーユニットは2リッターの「eボクサー」のみとなりました。

↑リアハッチゲートに記された「CROSSTREK」と「e-BOXER」のバッジ

 

価格も全体的にアップしてるようで、販売店からの情報によれば、価格はFFのツーリングが266万2000円、同リミテッドが306万9000円。4WDのツーリングが288万2000円、同リミテッドが328万9000円とのこと。やはり身近な価格帯のグレードがなくなったのは少し残念ですね。(※すべて税込価格)

 

とはいえ、車名をクロストレックとした新型は、基本的なボディデザインをXVの流れをしっかりと受け継ぎつつも、“彫りが深い”フロントフェイスやグラマラスなフロントフェンダーなど、よりSUVっぽくなった印象です。その一方で、サイズはXV比でせいぜい1cm前後の違いしかなく、ホイールベースに至ってはまったくの同寸。この辺りはXVから乗り換えても違和感なく扱えると思っていいでしょう。

↑ボディカラーは全7色が用意された

 

クラス最高レベルの上質なインテリア

インテリアはダッシュボードのセンターに、11.6インチの大型ディスプレイを備えた新世代インフォテイメントが装備されました。すでにレヴォーグなどにも搭載され、その使い勝手には高い評価が与えられているものです。ただ、「STRALINK」によるコネクテッド機能は備えていますが、ボイスコントロールはローカルで認識するもので、スマホで使うような認識率の高さは備えていません。この辺りは早急に改善してほしいところです。

↑使い勝手のよさと居心地のよさを重視したインテリア。中央のインフォテイメントシステムは11.6インチディスプレイを採用する

 

しかし、内装の質感はこのクラスとして最高レベルの上質さを感じさせてくれました。シンプルなデザインながらマルチマテリアルの異なる素材を上手に組み合わせ、手で触れた感触もなかなか良さげです。ちなみに、内装トリムは上級グレードがシルバーステッチのファブリックで、標準グレードがシルバーステッチのトリコットとなります。メーカーオプションではパワー機構付きの本革シートも選べます。

 

エアコンの吹き出し口がディスプレイの左右に配置され、その操作系もオートエアコン使用時の温度調整やオーディオのボリュームなどが、物理スイッチで操作できるあたりも、使い勝手を重視した開発者のこだわりが感じられます。少なくともクルマは、運転中での操作はより確実な操作が求められるわけで、その意味でもこうした対応は高く評価したいですね。

 

そうした中でスバルがクロストレックで強調していたのが「動的質感」です。そのために医学的見地から開発したというシートは、骨(腰の中央、背骨の一番下に在る三角形の形をした部分)を押さえながら骨盤を支える構造を採用したものとなっています。そのため、走行中に生まれる左右の揺れに対して身体をしっかりサポートでき、それは優れた乗り心地にもつながりました。これが長距離走行でも疲れにくい環境を提供するというわけです。

↑標準グレード「ツーリング」の運転席周り。上位グレードの「リミテッド」のシートはメモリー付パワーシートとなる

 

↑「ツーリング」のリアシート。標準グレードでも中央にはアームレストも備えられる

 

また、走行中の快適性向上のためとして、ルーフパネルとブレースの間には、振動の吸収性が高く、耐震性に優れた高減衰マスチック(弾性接着剤)を採用しています。これが走行時に発生した、細かな振動を上手に丸め込む効果を発揮し、振動に対する高い収束性を発揮することとなったのです。この日は路面状態が良好なサーキットでの走行でしたので、公道でのロングドライブでその効果を早く体験してみたいですね。

 

安定感のある4WD、軽快感のあるFF

さて、いよいよ試乗です。コースは静岡県伊豆の国市にある「サイクルスポーツセンター」で、一周約5キロのコースをショートカットしての試乗となりました。この日はあいにくの雨模様でしたが、それはむしろFFと4WDの違いを感じるのに最適な場を与えられたようにも思いました。そこでまず感じたのは4WDの落ち着いた走りでした。路面がそこそこ濡れているにもかかわらず、ハイスピードでコーナーに入っても挙動は安定しており、楽にコントロールができたのです。これは剛性を高くしたステアリングフィールもポイントになるでしょう。

↑静岡県伊豆の国市にあるサイクルスポーツセンターで試乗中のスバル・クロストレックプロトタイプ

 

↑水平対向4気筒DOHC 2.0リッター直噴エンジンとモーターを組み合わせた「e-BOXER」仕様。1.6リッターエンジンはラインアップから外された

 

ではFFはどうか。実はこちらも挙動変化の少ない走りを見せてくれました。それどころか旋回中の軽快さは4WDよりも高く、トランスミッション(CVT)との相性も良好。フル加速した際もダイレクト感があり、多少ラグを感じる4WDとの違いを感じたのです。特に2.0リッターエンジンにモーターアシストを加えたことも走りにプラス効果を与えたのは間違いないでしょう。ステアリングの剛性も4WD同様に高いものがあり、操作して安心感がありました。

↑試乗中の天候はあいにくの雨模様だったが、挙動変化の少ない安定した走りが印象的だった。写真はクロストレック「リミテッド」FWD(FF)モデル

 

↑トランスミッションはチェーン式CVT「リニアトロニック」で、CVT特有のラバーフィールを最小限に抑えた

 

こうした体験を通して感じたのは、軽快な運転を楽しみたいならFFの方がオススメで、どっしりとした安定感のある走りを味わいたいなら4WDということです。特に積雪がある地域の方にとっては頼りがいのある4WDモデル一択となりそうですが、日常生活で積雪がない地域の人にとってはFFモデルをむしろ選ぶべき。そう思ったほどFFの仕上がりは良かったように思いました。

↑クロストレック「リミテッド」AWD(4WD) モデル。ドッシリとした安定感のある走りを見せた

 

最新アイサイトの進化にも注目!

最後にお伝えしておきたいのは、最新の運転支援システム「アイサイト」の搭載です。残念ながら今回の試乗で体験することはできなかったため、あくまでスペック上での話となりますが、その進化は目を見張るものがあります。新設計のステレオカメラに加えて、前側方に対するレーダーも組み合わせ、これにより認識範囲を従来型の約2倍にまで拡大。両側の周辺にいる二輪車や歩行者の識別精度も向上させているのです。

↑スバル初となる広角の単眼カメラを組み合わせた新「アイサイト」を搭載。ガラス面との隙間もなくなった

 

さらに、低速走行時に二輪車や歩行者を認識する広角単眼カメラを国内スバル車で初めて採用したことで、プリクラッシュブレーキの精度向上につながりました。スバルによれば、これはアイサイトとして最高の性能になるということです。こうしたアシストに助けられないのが一番ですが、そうした状況下に万が一陥った時の安心度は大きく違います。

 

新型クロストレックは走りだけでなく、そんな万が一の安心感をもたらしてくれる一台へと進化したと言えるでしょう。公道で試乗できる日が楽しみです。

↑SUVカテゴリーにふさわしいカーゴルーム。リアシートをたたんだ際もフラットになるので使いやすい

 

 

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テスラ車の完全自動運転(FSD)、一般向け利用が可能に

電気自動車メーカーのテスラを率いるイーロン・マスク氏は、自動運転機能「FSD(Full Self Driving Beta)」を北米向けに一般提供すると明かしました。

↑Jose Gil / Shutterstock.comより

 

テスラの電気自動車には、標準機能として搭載されている運転支援機能の「オートパイロット(Autopilot)」と、より高度なFSDがあります。FSDでは都市部での自動操縦や自動駐車、スマート車両召喚、信号・停止標識の認識といった「より積極的なガイダンスと自動運転を提供するようデザインされた、さらに高度なドライビング アシスト機能」が利用可能です。

 

これまでFSDのベータ版は、安全運転の実績がある一部のドライバー向けに、1万5000ドル(約210万円)にて提供されてきました。しかし今後は、FSDのオプションを購入すれば車両のディスプレイから誰でも利用可能になったのです。

 

マスク氏は以前からテスラ車両における手放しでの完全な自動運転の実現を約束していましたが、現時点ではそのような機能は提供されていません。また米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)はテスラ車両における自動運転関連の事故について調査をすすめており、FSDの名前が示すような完全自動運転の実現は、まだまだ先となりそうです。

 

Source: Elon Musk / Twitter via Engadget

日本にようこそ! フランスを代表するMPV、新「カングー」が待望のフルモデルチェンジ

本国での発売から1年半が経過した3代目のルノー「カングー」。その日本での発売時期が迫ってきている。フランスを代表するMPVはどんな変化を遂げたのか解説する。

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

プラットフォームが一新してロングランもさらに快適!

ルノー

カングー

価格未定 近日発売予定

フルゴネットと呼ばれる小型貨客両用車の進化形としてカングーが登場したのは1997年。2代目ではボディが大型化されたが、日本では個性的かつ孤高の存在であり、輸入車としては割安だったこともあって大人気モデルになった。

SPEC【Equilibre TCe 100 BVM(欧州仕様)】●全長×全幅×全高:4486×1860×1838mm●車両重量:非公表●パワーユニット:1333cc4気筒DOHC+ターボ●最大出力:102PS(75Kw)●最大トルク:20.4kg-m(200Nm)●WLTP(新欧州複合基準)モード燃費:18.9km/L

 

3代目は直線基調となりメカニズムも進化した!

日本におけるルノーの代表モデルとして親しまれているカングーが、まもなく3代目となる新型に切り替わる。

 

やさしい丸みで描かれたボディが特徴の先代とは対照的に、新型は直線基調の機能的なフォルムとなることがわかっている。これは先代モデルの登場後、ルノー・デザインのチーフが現在のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏に代わったことが大きいだろう。同社の「ルーテシア」や「キャプチャー」などとトーン&マナーの統一を図りたいという気持ちはあったはずだ。

 

それ以上に注目したいのは、先進運転支援システムやパワーユニットがバージョンアップされること。どちらもルーテシアやキャプチャーと同じものになりそうで、ロングランはさらに快適になっているだろう。元々定評のある走りもさらに磨かれており、裏切らない1台になることは間違いない。

↑現行のカングーと比較してボディサイズは全長+206mm、全幅+30mm、全高+28mmと拡大。ホイールベースも+16mm長くなっている

 

↑後席部分は当然のごとくスライドドアを採用。開口部は最大で615mmと広く、2列目シートへの乗降性や荷物の積載性が向上している

 

↑ウッド張りのダッシュボードが目を引くフロントシートまわり。スマホとの連携機能を備えた8インチのタッチスクリーンも備える

 

↑荷室は2列目シートの使用時でも775L、収納時は最大で約3500Lまで拡大する。リアハッチゲートは観音開きから跳ね上げ式に変更された

 

【Column】3年ぶりにカングー ジャンボリーが開催!

日本じゅうのカングーファンが一堂に集う「カングー・ジャンボリー」が10月16日(日)に山梨県の「山中湖交流プラザ きらら」で開催。駐車には駐車券(1000円)が必要で、最大収容台数は2100台となる。

 

 

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オシャレさと力強さを兼ね備えた仏車をフィーチャー!! いま注目の“トレビアン”な4社の真実に迫る

いまフランス車の評価が高まっている。美しく、エッジの効いたデザインはもちろん、フランス人の合理主義が生み出す使い勝手の良さも魅力のひとつ。ハイブリッドやEVだって豊富に揃う。世界で最もトレビアンなクルマなのだ!

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

アナタの知らない仏車

世界的にも評価が高まる同国車の真実に迫る!

オシャレなイメージが先行しているフランス車は、それぞれのメーカーの魅力が語られないことも多い。意外と知られていない真実を解明すべく、フランス車が大好きで、フランス車に精通するモビリティジャーナリストが解説する。

 

私が解説します!

モビリティジャーナリスト
森口将之さん
これまで所有した愛車の3分の2がフランス車。渡仏経験も多く、クルマ以外のモビリティにも詳しい。

 

【その1】フランス車にはどんなメーカーがある?

RENAULT/ルノー

センスの良さが光る生活のパートナー

1898年にパリ近郊で創業したルノーは、第二次世界大戦後しばらく国営企業だった。いまもフランス政府が日産とともに筆頭株主。それもあって生活に根付いた実用車が中心だ。しかしデザインは洗練されていて、センスの良いデザイン雑貨を思わせる。F1に熱心なのも特徴。

 

PEUGEOT/プジョー

ライオンの強さと切れ味良い走り

プジョーは1889年にクルマ作りを始める前から金属製品を手掛けていた。エンブレムのライオンは強さや切れ味を表現すべく、そのころから使われている。本拠地はドイツ国境に近いアルザス地方。そのためかフレンチ風味は濃厚ではなく、切れ味良い走りがウリだ。

 

CITROEN/シトロエン

独創と快適へのこだわりはピカイチ

1919年にクルマ作りを始めたシトロエンは、欧州でいち早く大量生産を実現し、前輪駆動の量産車を送り出すなど、昔から革新的。ハイドロニューマチックに象徴される乗り心地へのこだわりも特徴で、個性的なデザインと併せて、フランス車の象徴と言われることが多い。

 

DS AUTOMOBILES/DS オートモビル

パリの先鋭と洗練が息づくプレミアム

最初はシトロエンのなかのプレミアムラインという位置づけだったが、人気の高まりによって2015年に独立。パリの先鋭と洗練、匠の技をクルマに織り込んだプレミアムブランドで、モータースポーツではブランド設立直後からフォーミュラEに参戦している。

 

【その2】個性あふれるデザインにインテリアも独創的

いわゆる「沈没船ジョーク」で、船長が日本人には「皆さんはもう飛び込みましたよ」と言うが、フランス人には「決して飛び込まないでください」と言えば逆に飛び込むといわれる。フランス車のデザインが個性的なのは、ここに理由がある。つまり人と違う発想を評価するのだ。でも結果としてのデザインは使いやすく心地良い。それを知ってさらに好きになっていく。

↑スタイリッシュなモデルが多いDS オートモビル。なかでもDS 4はオートモービル国際審査委員会主催の第37回フェスティバルにおいて、最も美しいクルマに選出された

 

↑DS 9はDS オートモビルのフラッグシップモデル。シートには最上級の一枚革を巧みな技法で仕上げた、ウォッチストラップデザインのナッパレザーが使われている

 

【その3】ミニバンではなく「MPV(マルチパーパスビークル)」と呼ぶ理由は?

ミニバンという言葉はアメリカ発祥。実際、日本はもちろんフランスでも「ミニ」ではないし「バン」でもない。なのでマルチパーパスビークルという呼び名はむしろしっくりくる。背は高いものの2列シートが多いので、多用途に使えるという部分を強調しているのかもしれない。人生は楽しむものという彼らの考え方が、クルマの呼び方にも反映されている気もする。

↑プジョーのMPVであるリフター。1.5LBlueHDiディーゼルエンジンは130PS/3750rpmの高いパフォーマンスを発揮する。大容量の荷物を積載してもパワフルな走りを実現

 

↑リフターのラゲッジルームは5人乗車時で約597L。ラゲッジトレイを外してリアシートを折りたためば、最大で約2126Lに拡大する。荷室開口部は低く、荷物も載せやすい

 

【その4】使い勝手は抜群! 最新車は操作性も向上

世界で初めてハッチバックを発表し、欧州でいち早く3列シートの乗用車を送り出すなど、フランス車は昔から使い勝手へのこだわりは強かった。フランスならではの独創性から生まれた装備も多く、プジョー、シトロエン、DSに使われているスライド式ATセレクターレバーは代表例だ。加えて最近は日本車などを研究して、運転席まわりの小物入れが充実している。

↑ルノー・ルーテシアはコンパクトハッチバックながら荷室容量は391L(E-TECH HYBRIDは300L)と十分なサイズ。後席シート背面は6:4分割可倒式で長尺物の積載も可能

 

↑プジョー・208のガソリンモデルには、指先だけでシフト操作ができるトグルタイプのオートマチックセレクターを採用。よりストレスフリーなドライビングを実現している

 

【その5】長距離ドライブ時こそわかる乗り心地の良さ

フランスはバカンスの国として知られる。夏になれば家族みんなで遠くに出かけてゆったり過ごすシーンが思い浮かぶ。だからなのか、ロングランを快適に過ごすことができる乗り心地には、並々ならぬこだわりがある。いまでもシトロエンやDSでは、シートやサスペンションに独自の技術を投入。「魔法の絨毯」と言われる移動の快感を、現代に受け継いでいる。

↑シトロエンのC4。ショックアブソーバー内にセカンダリーダンパーを組み込むことで、従来のシステムでは吸収しきれなかったショックを抑制し、フラットライドを実現する

 

↑C4に備わるシトロエン独自のアドバンストコンフォートシート。表面には15mmの厚さがある特別なフォームを採用する。身体を柔らかく包み込み、ホールド性も両立している

 

【その6】燃費性能も向上してEVモデルにも積極的

フランス車は昔から小型車が多く、エンジンも小さめで経済志向だった。現在日本で販売されている量産フランス車の排気量は最大でも2Lだ。最近は電動化が進み、プジョー、シトロエン、DSでは電気自動車やプラグインハイブリッド、ルノーではフルハイブリッドが登場。経済的な車格のおかげもあって、輸入車でトップレベルの環境性能をマークしている。

↑ルノー・ルーテシアに加わったE-TECH HYBRIDは、輸入車で唯一のフルハイブリッドモデル。ハイブリッド燃料消費率は、輸入車でNo.1となる25.2km/Lを誇る

 

↑プジョーはフランス車のなかでも特にEVに積極的なメーカー。現在日本で購入できる9モデルのうち、7モデルでガソリン、ディーゼル車とともにEVをラインナップしている

 

【その7】安全運転支援技術も国産車並みのレベルに

少し前までは「安全性」がフランス車のウィークポイントだったが、いまは多くのモデルがアダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキ、360度カメラなどを標準装備。国産車と比較検討できるレベルになった。それ以前から備えていた高水準の直進安定性や乗り心地などを含めて考えれば、長距離を安全快適に乗れるクルマへアップデートされたと言えるだろう。

↑最近のプジョー車で採用されているのが「3D i-Cockpit」。ドライブ中の情報を3Dで表示する3Dデジタルヘッドアップインストルメントパネルは、表示形式のカスタマイズも可能

 

↑ルノーは日産、三菱とのアライアンスを生かした先進装備が特徴。360度カメラのほか、駐車可能なスペースを検出して自動でステアリングを操作するパーキングアシストも搭載

 

 

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「ブリザックVRX3」がSUV向けサイズを拡充。氷上での高い能力と一般路での扱いやすさを実感

ブリヂストンのスタットレスタイヤと言えば『BLIZZAK(ブリザック)』。雪国での装着率No.1という超有名ブランドです。特に2021年に発売された「VRX3」は、ブリヂストン曰く『新次元のブリザック、史上最高、史上最強のブリザック』として誕生しました。そして、今シーズンはそのラインナップにSUV専用サイズを新たに追加したのです。今回はその試乗レポートをお伝えします。

↑ブリヂストン「BLIZZAK(ブリザック)VRX3」。スケートリンクでのコーナーリングもしっかりとグリップ感があり安心して走行できた

 

街乗り中心の使い方に最適なスタッドレスタイヤ「ブリザックVRX3」

いまやSUVの人気は世界的に高まっていて、日本も例外ではありません。街には多くのSUVが走るようになり、普通のセダンと同じような使い方をする人も増えています。しかし、SUVは車高が高く車体も重いため、カーブなどではどうしてもタイヤに負荷がかかりやすくなるのも確かです。特に冬用として使うスタッドレスタイヤは、低温下でもしなやかさを保てるよう、トレッド面が気泡を含んだ柔らかい発泡ゴムで作られているため、この影響が受けやすくなります。

 

そこでSUVならではの特性に合わせたスタッドレスタイヤが必要になるわけです。

↑ダントツの氷上性能をSUVユーザーへサイズを拡大したブリザックVRX3

 

実はブリヂストンには、すでにSUV向けスタッドレスタイヤとして『DM-V3』が用意されていて、今回、BLIZZAKがSUV向けタイヤを発売することで、下は225/60R17~上は235/55R20まで12サイズがかぶることになります。もし、このサイズに該当するとしたら、どちらを選べばいいのでしょうか。

 

ブリヂストンによれば、「雪深い山岳路など、スキーをはじめとするレジャーへ出掛ける際はDM-V3をおすすめしたい」とのこと。つまり、DM-V3は積雪を噛み込みながら走破していくのが得意であって、そのためにトレッド面の溝を大きめに割いています。ただ、これによって路面への接地面積は自ずと小さくなるため、これが凍った路面はやや苦手となります。さらに乾いた路面を走れば、ロードノイズが少し大きめに出がちです。

 

そこで、普段使いとして雪深い道路を走ることはあまりなく、「積雪があまりない街乗りでも快適に走れるスタッドレスタイヤが欲しい」という声が多く聞かれるようになりました。SUV向けVRX3が登場した背景にはそんな理由があったのです。

 

発泡ゴムの改良と排水性能向上でブラックアイスバーンにも強い

ただ、これはスタッドレスタイヤとして、グリップ力を抑えたということではありません。実は街乗りでは交差点付近に多いブラックアイスバーン対策が欠かせないのです。ブラックアイスバーンとは昼間は気温が高くなって雪が溶け、夜になると気温が下がって凍結し、この上を信号待ちなどで発進/停止が繰り返することで鏡面状態となった路面を指します。ここは特にスリップしやすい危険な箇所として知られることから、街乗りで使うスタッドレスタイヤにはそんな場所でもしっかりグリップすることが求められるのです。

 

VRX3はそうした状況下に特に注力して開発されました。それだけに氷上での性能は極めて高い! そして、ドライ路面ではスタッドレスタイヤ特有のパターンノイズも抑えて快適なドライブが楽しめる! 加えて、重量の重いSUVに対してもしっかりとした剛性で足元を支える。そんなスタッドレスタイヤがSUV向けのVRX3というわけです。

 

ではVRX3はそれをどうやって実現したのでしょうか。そのポイントは、ブリヂストンが得意としてきた発泡ゴムを進化させたことにあります。前モデル「VRX2」では発泡ゴムの気泡を円形としていましたが、それをVRX3では楕円とする「フレキシブル発泡ゴム」としたのです。これによって、氷にしぶとく食らいつく能力を高めることに成功したのです。

 

その上でトレッドパターンの形状にも変更を加えました。たとえば氷上で滑る原因ともなる氷とタイヤの隙間に生まれる水を徹底して排出するために、サイプの形状を工夫して水の逆流を抑えています。さらにトレッドパターンも溝の幅を狭くすることで接地面積も拡大し、これがパターンノイズの低減にもつながりました。

 

つまり、フレキシブル発泡ゴムとトレッドパターンのデザイン変更による排水能力の向上が、氷上でのグリップ力を高めることの決め手になっているということなのです。

 

氷上でのしっかりとした手応えと一般路での扱いやすさを実感

だけど実際のところはどうなのか。今回の試乗会はそんな疑問に答えるため開催されたのです。試乗は氷上での能力を試すためにスケートリンクと、ドライ路面でのフィーリングを体験するために一般公道に分けて行われました。

↑氷上での試乗体験をするために特設で用意された東京郊外のアイススケート場

 

まずスケートリンクの特設コースで走らせると、そのグリップ力にしっかりとした手応えを感じました。さらにフルブレーキングによる制動能力も試しましたが、車重があるSUVでも不安なく停まることができたのです。ならば、旋回ではどうか。少し意地悪をして速度を上げ気味に走ってみると、前モデルVRX2よりも外側に膨らむ速度域が明らかに高かったのです。

↑ブリザックVRX3は、氷上を旋回しても優れたグリップ力を発揮した

 

VRX3がデビューした際に開かれたセダン系モデルを使った試乗会で、同じようなコースでの体験をしていますが、車重のあるSUVでも明らかな進化を見つけることができました。まさに“史上最高”“史上最強”を謳うVRX3の実力、ここにあり! そんな印象を抱いた次第です。

↑セダン系の試乗も体験。直線コースでのフルブレーキングする体験でもグリップ力の確かさを実感できた

 

次は一般公道での試乗です。走り出してすぐにわかったのが、スタッドレスタイヤにありがちな曖昧さがないということです。スタッドレスタイヤは溝を大きく取っているため、ブロックごとの剛性が一定を超えるとヨレた感じになり、これがハンドルを操舵したときに曖昧さが伝わってくることが多いのです。その感覚がVRX3ではほとんど感じさせなかったのです。

↑ドライ路面での試乗は一般道のほか、「ブリヂストン イノベーション パーク」のテストコース「B-Mobility」でも行われた

 

しかも走行中のパターンノイズはほとんど伝わってきません。乗り心地の収束性も高く、路面の継ぎ目からの振動もきれいにいなしてくれます。もちろん、クルマ側の能力にも依存してる部分も小さくないと思いますが、それでもここまでノーマルとの差を小さくできているのには正直言って驚かずにはいられませんでした。この状態なら同乗者がスタッドレスタイヤであることをまず気付かないでしょうね。

↑スタッドレスタイヤにもかかわらずVRX3は、ドライ路面でのターンノイズも最小限に抑えられていた

 

↑ブリヂストン イノベーション パーク「B-Mobility」では、路面の継ぎ目を走行する体験もできた

 

今まで、冬場になってスタッドレスタイヤに履き替えて走ると、否応なしに“スタッドレスタイヤ”を実感することが常でした。実際は走っているウチにそれも諦めにも変わっていくのですが、VRX3ならそんな諦めは不要なのです。しかもスタッドレスタイヤとしての能力も高く、アイスバーンにも圧倒的な強さを発揮します。まさにスノードライブはシーズン数回程度という都市部在住者にとって、VRX3は最適なスタッドレスタイヤとなるのではないでしょうか。

↑試乗した日は、ブリヂストン イノベーション パークの見学会が実施された。ブリヂストンのコア技術や製品を実際に見て触れることができる

 

 

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スバル「BRZ」は走ることを趣味とする大人のおもちゃとして最高の一台!

「若い人が買える国産スポーツカー」というカテゴリーも今はあってないようなもので、スポーツクーペが各メーカーから雨後のタケノコのようにうじゃうじゃと発売されていた80年代を懐かしむ中年世代は多い。しかしそんな時代だからこそ輝くのが、貴重なコンパクトサイズのスポーツクーペ、スバル「BRZ」だ。初代型のみで消えることなく、昨年、見事なフルモデルチェンジを遂げた同車の魅力を探る!

 

■今回紹介するクルマ

スバル/BRZ

※試乗グレード:R・6速MT

価格:308万円~343万2000円(税込)

 

BRZの乗り味は安定性の高いセッティング

国産スポーツカーファンにとって待望のクルマとして、初代モデルが誕生したのは2012年。BRZは、スポーツカーにとって冬の時代に現れた救世主的存在だった。メーカー側の「若い人に乗って欲しい」という意図に反して価格はそれほどこなれていなかったが、それでもクルマ好きにとっては貴重な存在、通好みの一台としてもてはやされてきた。その流れを受けて、2021年夏、満を持して登場したのが2代目たる、この新型BRZである。

 

先代型同様トヨタとの共同開発モデルだが、クルマの心臓部たるエンジンはスバルの水平対向型が採用されており、メカニズム的にはスバルの存在感が大きい。トヨタ版は「GR86」で、車両のベースは同じ。バンパーの造形などデザインが異なる程度で、エンブレムを見なければ一般の人に見分けはつかないかも。乗り味についても、BRZは安定性の高いセッティング、GR86は回頭性が高いセッティングとされているが、一般人が一般道を走って判別できるほどの違いはない。

↑「R」は17インチアルミホイール(スーパーブラックハイラスター)を履く。空力性能を考えてデザインされたフロントフェンダーダクトがIt’s a cool!

 

↑エクステリアデザインにおけるトヨタGR86との違いを見つけるならばバッジが早いです! オプションで上部に装着するトランクスポイラーも用意されています

 

スポーツカーということで走りがいいのは当たり前だが、なんといってもコントローラブルなところが美点である。先代型から軽量化を進め、ボディ剛性も高めるなどして、ドライバーが意のままに操れる、クルマとしての素性の良さを向上させており、運転することの喜びをしっかり味わえる。これは運転のプロなどでなくても感じられる部分なので、試乗できる機会があればぜひ試してみてほしい。

 

ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快!

フロントにエンジンを搭載し、リアタイヤで駆動するFR方式を採用することで、ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快だ。乗り心地も悪くないし、それどころか慣れてくると快適にさえ感じられる。高速走行中の安定性も高めで、今回は一般道と高速道路のみの試乗となったが、不快感を感じるようなシーンはほぼなかった。同クラスの従来のスポーツカーと比べると、プレミアムな雰囲気さえ感じられるほど完成度の高い足まわりである。

 

水平対向4気筒の「フラットフォー」エンジンは、先代型の2.0Lから2.4Lへボリュームアップしたことで、全領域でトルクが厚くなった。先代型では若干感じられた出足のパワー不足感が解消されている。ターボではなくなったことで出力のメリハリが減り、そのぶん低回転域から滑らかに吹け上がっていく、エンジンを回した時の気持ちよさをしっかり味わえるようになった。さらに高回転域でも加速の伸びがよく、エンジン回転の上昇に合わせてデジタルサウンドを再生するサウンドジェネレーターによる演出音も聞くことができる。

↑エンジンは全グレード共通で、排気量2.4Lの水平対向4気筒自然吸気となる

 

トランスミッションは6速ATと6速MTがラインナップされている。当代、免許証取得者の70%以上がAT限定で、新車販売の約98%がAT車だと言われているが、スポーツカーにMTがなくてはやはり寂しい。選ぶか選ばないかは別の問題として、やはりMTが希少なこの時代になっても、ラインナップされていることに価値がある。ATの仕上がりも素晴らしく、MTを選ばずとも十分走りは楽しいのだが、同車の操作フィールをさらに深く味わえるのはMTということで間違いない。

↑燃費はMTが11.8~12.0km/L、ATが11.7~11.9km/Lとなっている。(WLTCモード)

 

インテリアはスポーツカーらしく無骨で愛想のないデザインだが、包まれ感に満ちている。これをよく捉えるか悪く捉えるかはドライバー次第で、純粋に運転を楽しみたいドライバーにとっては最高に違いない。愛想のないシンプル系デザインといえば、エクステリアもそういった方向性なのだが、全体的なフォルムは塊感があって、いかにもよく走りそうな雰囲気が漂っている。

↑インストルメントパネルは、景色が見やすく、路面に対する車両の傾きも直感的に把握しやすいよう、水平基調にデザイン。デジタル表示によりグラフィカルに整理された多機能型メーターを装備しています

 

↑ブラックを基調にシートやドアトリムのレッドステッチによるアクセントで高揚感を演出

 

BRZは(GR86も同様に)カスタマイズ性もウリにしている。個性が尊重されるこの時代、買ってプレーンな状態のまま楽しむのもありだが、自分だけのカスタマイズを施して、“オレだけ仕様”にするのもまた楽しい。当然、さまざまなカスタマイズパーツが市販されているし、交換もしやすいよう設計されている。

↑トランクルームはVDA法(ドイツの自動車工業会が規定するトランクルーム内の容量測定方法のこと)で237Lの容量を確保。フロア下には工具や小物の収納に便利なサブトランクも装備しています

 

現在の国産スポーツカーはあまりにも選択肢がすくない。「GT-R」や「スープラ」は乗り出し500万円を超えてしまうし、「フェアレディZ」や「シビックタイプR」に関しては発売後にすぐ売り切れてしまった(2022年10月現在)。300万円前後で新車が買える普通車のスポーツモデルといえば、このBRZとGR86の兄弟モデルとマツダのロードスターくらいだ(あるいは軽のコペンなら200万円前後だが)。300万円と言っても若者が捻出するには大きな金額だが、同クラスとなるポルシェのスポーツクーペ「ケイマン」は乗り出し800万円である。そう思えば、クルマで走ることを趣味とする大人のおもちゃとして最高の一台ではないだろうか。

 

SPEC【R・6速MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310㎜●車両重量:1260㎏●パワーユニット:2387㏄水平対向4気筒エンジン●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:250Nm/3700rpm●WLTCモード燃費:12.0㎞/L

 

文/安藤修也 撮影/木村博道

 

 

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静かでなめらかな走りに力強さもあり! 三菱「ek クロス EV」は軽EVのトップクラスの充実ぶり

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、軽自動車のEV作りで豊富なノウハウを持つ三菱の最新作となるekクロスEV。堅実なクルマ作りで、時代を反映するモデルの出来映えに期待大!

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

モビリティ新時代の到来を予感させる

【EV】

三菱

eK クロス EV

SPEC【P】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:20kWh●最高出力:64PS/2302〜10455rpm●最大トルク:19.9kg-m/0〜2302rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):180km

 

静粛だが力強い走りはEVに対する期待値通り

三菱と日産の共同開発で生まれた軽自動車規格のピュアEVが、揃って登場した。三菱版の位置づけとしてはeKシリーズの一員となり、内外装デザインは若干の差別化のみ。エクステリアはeKクロスならではのSUVらしくたくましいデザインが、EVになっても踏襲されている。

 

その走りは、非常に静かで滑らかだ。車両重量はガソリン車に対して200kgほど重くなったが、最大トルクがほぼ倍増しているので十分に力強く、レスポンスも俊敏でダイレクト感がある。また、バッテリーを車体の中央寄りの低い位置に搭載するため、重心が低く操縦安定性にも優れる。先進運転支援装備も、軽自動車としてはトップクラスの充実ぶりだ。

 

一充電あたりの最大航続距離は180km。大型のEVと比較すれば控えめだが、週末のドライブではなく日常の足として使うなら問題はない。実際、使ってみると軽自動車とEVというのは、実はかなり相性が良いものだと思えてくる。軽自動車の使用環境まで考慮すると、今後のモビリティとして注目すべき存在と言える。また、一見すると車両価格は安くないが、補助金を活用すれば実質的負担は売れ筋の軽自動車と大差ないことも、要注目ポイントとして念を押してお伝えしておく。

 

[Point 1]随所に電気駆動モデルらしさが見られる

正面のメーターには、7インチの液晶ディスプレイを採用。バイワイヤーのシフトセレクターやタッチパネルの操作系など、随所に電気駆動モデルらしさが散りばめられる。

 

[Point 2]SUVテイストをガソリン仕様から継承

外観はSUVテイストをeKクロスから受け継ぐ仕立て。ボディカラーがモノトーン5色、2トーン5色の全10色。駆動は2WDのみで、グレードは2タイプとシンプル。

 

[Point 3]広さはトップレベル!

前後スライド機構を持つ分割可倒式の後席をアレンジすれば、サイズ以上の使い勝手を実感できる荷室。容量もトップレベルだ。

 

[Point 4]充電環境にはフル対応

充電口は1か所にまとめられる。200Vの普通充電では約8時間で満充電に、急速(30kW以上)では約40分で80%までの充電が可能。

 

[Point 5]室内空間はほぼ同等

シート地はファブリックが標準だが、明るい色合いの合皮+ファブリックのコンビも選択可能。EV版でも室内空間はガソリン仕様と比較して遜色のない広さだ。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

G:電気モーター/2WD/239万8000円

P:電気モーター/2WD/293万2600円

 

文/小野泰治、岡本幸一郎 撮影/郡 大二郎、市 健治

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トヨタ新型「シエンタ」は買って絶対に間違いのない、完全無欠のファミリーカー

2022年8月、トヨタのコンパクトミニバン「シエンタ」がフルモデルチェンジして、3代目になった。そして、なにを隠そう自動車評論家の私、清水草一は2代目シエンタの元オーナー。その元オーナーから見て、新型シエンタの進化の度合いはどうなのか? 試乗レビューした。

 

【今回紹介するクルマ】

トヨタ/シエンタ

※試乗グレード:ハイブリッド・X(7人乗り)・2WD

価格:195万円~310万8000円(税込)

 

清水的に新型のデザインはかなりストライク!

全方位的に正常進化しております! 私が先代型のシエンタを買ったのは、なによりもスタイリングが気に入ったからだった。先代シエンタは、明らかにシトロエンのデザインの影響を受けていた。シトロエンっぽいアバンギャルド感のある、かなり尖ったデザインで、当時のトヨタとしては画期的だったのである。ボディカラーも、蛍光イエローをはじめとして攻めたラインナップが揃い、しかも2トーンが主役だった。私は迷わず蛍光イエローと黒の2トーンを選びました。

 

新型のデザインはどうかというと、シトロエンというよりもフィアットやルノーっぽく、アバンギャルドというよりもポップでお洒落さんである。デザインの方向性は微妙に変わっているが、ラテン系(イタリアやフランス)の方向性はそのままで、高級感よりもセンスの良さや親しみやすさでアピールしている。個人的には、かなりストライクだ。

↑ヘッドライトは、1灯の光源でロービームとハイビームの切り換えが行えるBi-Beam(バイ ビーム)を採用

 

↑ライン状に発光するテールランプとドット柄ストップランプが印象的なリアのコンビネーションランプ。蜂の巣みたい

 

先代シエンタのルックスは、ちょっと頑張って背伸びした感がなきにしもあらずだったが、新型は、ラテン系のデザインを完全に着こなしている。ボディカラーも、カーキなど渋いアースカラーが中心で、日本の風土に馴染んでいるような気がする。

 

先代シエンタが登場してからの7年間で、トヨタのデザイン力は目を見張るほど向上し、明らかに自信を付けている。絶好調時の打者はボールが止まって見えると言うが、そういう状態ではないだろうか?

 

5ナンバー枠を守ったボディサイズや、室内のパッケージングは、先代型からあまり変わっていない。トヨタによれば、「ボディサイズを変えることなく2列目スペースを大幅に拡大。1列目~2列目席間距離が80mm、ヘッドクリアランスが25mm広くなり、ノアやヴォクシーと同等サイズのスペースを確保できました」とのことだが、先代型オーナーにも、その点はあまり実感できなかった。

↑ステアリングヒーターを装備。一方、直射日光を遮る「後席サンシェード/セラミックドット(スライドドアガラス)」(Zに標準装備)は、後席の人に快適なひとときを与えてくれる

 

シエンタは、先代型ですでに究極とも言えるパッケージングを実現しており、全長わずか4200mm台のボディの中に3列シートを飲み込ませ、しかも3列目でもギリギリ大人が座れる程度の広さを確保していた。そこからさらに大幅に改良するなど、物理的に不可能なのだ。

↑シートのアレンジ次第で収納スペースもしっかり確保できる。ベビーカーや自転車なども収納できるぞ

 

このクラスのミニバンの3列目シートは、基本的に緊急用。いざというときだけ使うもので、普段は収納し、そのぶんをラゲージスペースとして使うのが合理的だ。

↑7人乗りの場合のラゲージスペース。開口部が広くて低床のラゲージで、荷物の積み込みがラクラク! 荷室高1105mm、荷室フロア高505mm、荷室長1525mm(セカンドシートクッションからの長さ)、荷室長990mm(シートスライド最前端時)

 

シエンタの3列目シートは、先代モデルから2列目の下に「ダイブイン」させることが可能だったが、新型もそれを踏襲している。この機能は、改善の余地がないほど素晴らしい。ライバルのホンダ・フリードは、3列目シートを跳ね上げて収納するタイプなので、そのぶんラゲージの天井や左右寸法が制限される。3列目ダイブイン収納は、シエンタ伝統の美点なのである。

↑「天井サーキュレーター」(オプション)は、車内の空気を効率的に循環させ、室内を均一に快適にしてくれる

 

走りが気持ち良いし、アクセルを軽く踏み込んだ時の加速感も力強い

では、走りはどうか。試乗したのは、ハイブリッドモデル。3気筒1.5Lエンジンとモーターを組み合わせた、トヨタ伝統のTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)である。先代シエンタのハイブリッドは4気筒の1.5Lだったが、今回は3気筒。より効率が高められている。

 

ヤリスから採用されたこの3気筒ハイブリッドシステムは、実に恐るべきパワーユニットである。3気筒と言ってもフィーリングに安っぽさは微塵もなく、逆にコロコロと適度なビートを奏で、回転フィールが心地よい。4気筒時代と比べても、断然走りが気持ち良くなっているし、アクセルを軽く踏み込んだ時の加速感も力強くなった。

↑試乗車は1.5Lハイブリッドシステム。走りの良さと優れた燃費性能を両立している

 

シエンタハイブリッド(7人乗り・X)の車両重量は、1350kg(FFモデル)。同じパワーユニットを積む「ヤリスハイブリッド」に比べると約300kg重い。そのぶん加速が遅いわけだが、日常使用で遅さを感じることは皆無だ。さすがにアクセルを床まで踏み込んだ時の加速感は、「あれ、こんなもん?」とはなるが、それは車両重量を考えれば仕方ない。とにかく普通に使うかぎり、「加速が快感です!」とすら言える。

 

足まわりは、やや引き締まっていてスポーティ。低速域では、路面からの突き上げがそれなりにある。このクルマの用途を考えれば、もうちょっとソフトでもよかった気はするが、このサスペンションのしっかり感が、高速道路では安心感に変わる。ある程度速度を上げると、乗り心地の固さはまったく気にならなくなり、安定感が増していく印象だ。

↑地上から330mm「低床&フラットフロア」(Zに標準装備)を採用。高さはもちろん、段差もなくフラットでお子さんやお年寄りの方にも優しく、安心して乗り降りすることができる。最小回転半径は5.0mだ

 

新型シエンタは、トヨタの新世代ボディ骨格であるTNGAが採用されている。TNGA採用車は、どれもこれも走りの質が見違えるほどよくなっているが、シエンタも例外ではない。先代型も悪くはなかったが、新型はさらに一、二段向上している。

 

燃費は、ハイブリッドのFF(2WD)モデルで、 WLTCモード28.5km/L。ヤリスハイブリッドの36.0km/Lに比べると大幅に見劣りするが、実燃費で20km/L程度は楽勝で、ちょっとエコランに徹すれば30km/Lくらいまで伸びる。これ以上燃費が良くても、あまり意味はないかも……と言うほどの低燃費だ。

 

大人が7人乗れて、これだけ燃費がよければ、ヘタなEVよりはるかにエコ。新型シエンタは、買って絶対に間違いのない、完全無欠のファミリーカーではないだろうか。

 

SPEC【ハイブリッド・X(7人乗り)・2WD】●全長×全幅×全高:4260×1695×1695㎜●車両重量:1350㎏●パワーユニット:1490㏄直列3気筒エンジン●エンジン最高出力:91PS/5500rpm●エンジン最大トルク:120Nm/3800-4800rpm●フロントモーター最高出力:80PS●WLTCモード燃費:28.5㎞/L

 

撮影/池之平昌信

 

 

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乗って体感! プジョー新型「308」はフランス車特有の実用性はそのままで走りも高満足度

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、幅広いパワートレインを用意するプジョーの新型308。堅実なクルマ作りに定評があり、時代を反映するモデルの出来映えに期待大!

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

「定番」では物足りない欲張り派に最適

【ハッチバック】

プジョー

308

SPEC【GT ブルーHDi】●全長×全幅×全高:4420×1850×1475mm●車両重量:1420kg●総排気量:1498cc●パワーユニット:直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ●最高出力:130PS/3750rpm●最大トルク:30.6kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:21.6km/L

 

最新のプジョーらしく内外装は個性的な仕立てに

欧州のハッチバックとしては、フォルクスワーゲン・ゴルフのライバルにあたるプジョー308。新型ではガソリン、ディーゼル、PHVという3種のパワートレインを用意して、幅広いユーザーのニーズに対応している。また、最新のプジョーらしく内外装も個性的で、特に小径ステアリングをはじめとするインパネ回りはエンタテインメント性にも優れる。その一方、フランス車らしく室内や荷室の広さといった実用性に関する作りの出来映えも申し分ない。

 

今回の試乗車は1.5Lのディーゼルターボだったが、その走りも満足度は高い。動力性能は必要にして十分で日常域では扱いやすく、同時にディーゼル特有の音や振動を意識させない。また、それを受け止めるボディや足回りも堅牢でスポーティな味付け。このクラスの定番である、ゴルフとも正面から渡り合える実力を持つだけに、実用性と独自性を両立したいという欲張りなユーザーには狙い目なモデルと言えそうだ。

 

[Point 1]個性的にして先進性も十分!

小径ステアリングとデザイン性の高いインパネ回りは最新プジョーならでは。運転支援装備も充実している。前後席の空間を筆頭に実用性に富んだ作りもハイレベルだ。

 

[Point 2]外観はスタイリッシュな装い

先代と比較すると、ボディサイズは前後方向に拡大。最新のプジョーデザインに倣い、実用的なハッチバックながらエクステリアはスタイリッシュな風情も漂わせている。

 

[Point 3]使い勝手の良さはフランス車の伝統!

フランス車というと荷室が広いことでも定評があり、新型308は通常時で412Lを確保。容量的にもライバルのゴルフを凌いでいる。

 

[Point 4]パワートレインはニーズに応じて3タイプ

パワートレインは1.2Lガソリンターボと1.5Lディーゼルターボ、そして最大64kmのEV走行が可能なPHVの3タイプが用意される。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

アリュール:1.2Lガソリン+ターボ/2WD/8速AT/320万6000円

アリュール・ブルーHDi:1.5Lディーゼル+ターボ/2WD/8速AT/344万1000円

GTブルーHDi:1.5Lディーゼル+ターボ/2WD/8速AT/416万7000円

GTハイブリッド:1.6Lガソリン+ターボ+電気モーター/2WD/8速AT/515万1000円

 

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新型「エクストレイル」試乗。“技術の日産”をいかんなく発揮した傑出の走り!

日産がシリーズハイブリッドである「e-POWER」を世に登場させて6年。4代目となる新型「エクストレイル」に搭載された新エンジンは、その集大成とも言える素晴らしい実力を発揮してくれました。運転して楽しく、外部からの給電も不要で使い勝手は抜群! それは、久しぶりに「技術の日産」の実力を見せつけられたと言っていいでしょう。

 

【今回紹介するクルマ】

日産/エクストレイル

※試乗グレード:G e-4ORCE(4WD)

価格:319万8800円~504万6800円(税込)

↑日産「エクストレイル」G e-4ORCE(4WD)※オプション装着車

 

新開発「VCターボ」エンジンをe-POWERに初採用

実は、4代目の新型エクストレイルは、北米で「ローグ」として1年以上も前にデビューを果たしていました。パワーユニットは新型エクストレイルと同じ1.5リットル直列3気筒ガソリン「VCターボ」エンジンを搭載しましたが、ローグではこれをそのまま駆動用として使っています。それに対して日本はこのエンジンをe-POWERの発電専用としました。つまり、日本でのデビューが遅れたのは、このe-POWER化に時間がかかっていたというわけです。

 

このエンジンについて少し説明すると、その仕様は新開発のKR15DDT型1.5リッター3気筒直噴ターボエンジンで、ターボ機構にVC(Variable Compression)と呼ばれる可変圧縮比機構を採用したのが最大の特徴となっています。その仕組みは、ピストンとクランクシャフト間に特殊なリンク機構を備えることで圧縮比を変化させ、出力を回転数に応じて変化させるというものです。このエンジンは日産が長年かけて開発してきた、いわば「技術の日産」が誇る自慢のユニットであり、これを新型エクストレイルでは発電専用エンジンとして搭載したのです。

 

さらに驚くのは、 4WDである「e-4ORCE(イーフォース)」に組み合わせたモーターのスペックです。フロントには最高出力204PS(150kW)と最大トルク330N・m、リアには136PS(100kW)と195N・mを発生するモーターを搭載し、これで4輪を駆動します。このスペックからして、もはやハイブリッドの領域を超えていることがわかります。それどころか、フロントモーターだけでもバッテリーEVである日産「アリア」のフロントモーターと同じレベルなのです。これを聞いただけでも、このシステムがいかにスゴイかが伝わってきますよね。

 

ボディサイズは全長4660mm×全幅1840mm×全高1720mmで、ホイールベースは2705mmとなります。ライバルと比較すると、トヨタ「ハリアー」(全長4740mm)やマツダの「CX-60」(全長4740mm)よりは小ぶりで、「RAV4」(4600-4610mm)よりは少しだけ長い。SUVとしては使い勝手の上でもバランスがとれたサイズと言えるでしょう。また、シートは前後2列5名乗車が標準で、「X」グレードにのみ3列7名乗車が用意されました。特に3列シート仕様はライバル車にはないだけに、ミニバンからの乗り換えユーザーにもおすすめできるラインナップ。

↑G e-4ORCEは、前後とも235/55R19 101サイズのタイヤを履く

 

にわかに1.5リッター3気筒ハイブリッドエンジンとは信じられず

試乗したのはその中から2列シートの最上級グレード「G」の「e-4ORCE」でした。グレードと駆動方式を含め、もっとも高価なグレードとなります。

↑SUVらしく高い視認性とインターフェースの扱いやすさが印象的だった

 

走り出してまず驚くのがその静かさと振動の少なさです。さらにアクセルを踏み込んでもその静かさとスムーズさはほとんど変わりません。メーターではエンジンがONとなっていることを伝えているので、思わず「これって1.5リッター3気筒だったよね?」と同乗者に確認してしまったほどです。

 

しかもエンジンは駆動輪と直接つながっていないはずなのに、アクセルの踏み込みに合わせてリニアに車速が上がっていき、重さが1.8t近くあるボディをアッという間に高速域まで引っ張り上げてくれたのです。その加速感は、踏み込んだアクセルに応じてエンジンがどんどんモーターにパワーを与えていっている感じ。これはまさに従来のシリーズ型ハイブリッドとは次元が違うパフォーマンスを感じます。その完成度はもはや脱帽という他はない! そう実感したほどでした。

 

ここまでのフィーリングを実現したことについて開発担当者は、「欧州のアウトバーンでも十分なパワーが出せることを目標に、VCターボとの組み合わせを練り上げました」と話していました。つまり、速度制限がない高速域でも通用する実力を持たせて完成させたのが新型エクストレイルのe-POWERだったのです。

↑カーナビで目的地を設定しているときは、メーター内やヘッドアップディスプレイにも案内が表示される

 

加えてe-4ORCEの搭載に伴ってプラットフォームは刷新されており、電子制御ステアリングも気持ちよく曲がることを念頭に置いて設定しているということです。実際、峠道を走行しても狙ったコースをたどってくれるし、その結果、まるで運転がうまくなったような感覚にとらわれました。乗り心地もフラットで、19インチのタイヤを組み合わせながら路面の凹凸にもしっかりと対応してくれていました。従来のエクストレイルでは“タフギア感”をアピールポイントとしていましたが、新型ではそこに上質感を加えたのです。まさに走りにおいては傑作の領域にあると断言して間違いないでしょう。

↑ボディカラーは2トーンカラー含め、12色から選択可能

 

インテリアは上質だが、“500万円カー”としての物足りなさも

インテリアの上質さも見事なものでした。運転席周りの手に触れる部分はすべてがソフトパッドで覆われ、デザインとしてもラグジュアリー感あふれる造りとなっています。シートサイズもSUVらしくたっぷりとしたもので、表皮に使われた新開発の人工皮革「テーラーフィット」のタッチ感もしっとりとした心地良さを感じさせてくれました。また、個人的には色味が少し濃いめに感じましたが、オプションのタンカラーのナッパレザーシートにするとプレミア感はさらに上がります。e-POWER初の1500W対応コンセント装備も見逃せません。

↑インテリアはソフトパッドが多用され、見た目にも触感的にも上質感が伝わる

 

↑シート表皮に使われた人工皮革「テーラーフィット」はしっとりとした心地良さ

 

↑日産車のEVやe-POWER車すべてを通して、初めて100VAC電源(1500W)コンセントが装備された

 

ただし、この仕様をフル装備で諸経費まで入れると500万円を楽に超えてしまいます。「エクストレイルもここまで来たか」と感慨深さとため息も出たりしますが、一方でデイライト機能が装備されず、グローブボックス内の照明や運転席側のシートバックポケットもないなど、“500万円カー”として不釣り合いな仕様も散見されるのも事実です。さらに「NissanConnect」の費用に無料期間はありません。このプランを契約することで、地図データ更新費用が3年分無料になりますが、せめて最初の1年間は無料にしてほしかったと思いました。

↑助手席グローブボックスは外から見たよりもかなりスペースが狭く、照明の装備もない

 

↑NissanConnectはSOSコールを含め、利用料として年間7920円(税込)の費用がかかる

 

とはいえ、新型エクストレイルの魅力は電動車並みの動力性能を持ちながら、充電する必要が一切ないのが最大の魅力です。「別に充電したいわけじゃない。電動車としてのトルクフルでスムーズなフィーリングに魅力を感じている」人にとって新型エクストレイルは、まさに最適な選択となることは間違いないでしょう。正直言って、最近まれに見る魅力的な走りを見せてくれ、これだけでも絶対に買いとなるクルマといって間違いないでしょう。

↑インフォテイメントシステムは12.3インチの大型ディスプレイを使用。再生中の楽曲のタイトルを表示するなど細かな演出も見事だ

 

↑後席用としてエアコンの独立操作ができ、シートヒーターやUSB端子(type-C/A)を装備

 

↑オプションの「BOSE Premium Sound Sytem 9スピーカー」とパノラミックガラスルーフはセットオプション

 

SPEC【G e-4ORCE(4WD)】●全長×全幅×全高:4660×1840×1720㎜●車両重量:1880㎏●パワーユニット:1497㏄水冷直列3気筒DOHCターボエンジン+交流同期電動機●最高出力:エンジン144PS/4400〜5000rpm[フロントモーター204PS/4501〜7422rpm・リヤモーター136PS/4897〜9504rpm]●最大トルク:エンジン250Nm/2400〜4000rpm[フロントモーター330Nm/0〜3505rpm・リヤモーター195Nm/0〜4897rpm]●WLTCモード燃費:18.4㎞/L

 

 

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全国に「EV充電拠点」が大量出現するか!? パナソニックが始めるEV普及の新たな試み

日本では、電気自動車(EV)の普及率が2021年時点で1%前後。ほかの先進国と比べて、普及が遅れています。その大きなハードルのひとつとなっているのが、充電インフラの不足です。ガソリンスタンドは日本の至るところにありますが、EVの充電拠点の数は明らかに少なく、バッテリー低下時のドライバーの不安は大きいものがあります。

 

その課題を解決すべく、EVチャージャー(充電器)を開発するパナソニックが、EVチャージャーシェアリングサービス「everiwa」を発表しました。

 

全国の法人・個人が、EVの充電拠点に

everiwaは、EV充電器を保有するオーナー(ホスト)と、EVのドライバーを繋ぐEV充電器のシェアリングサービスです。100V200Vの普通充電器であればメーカーや機種を問わずeveriwaに登録可能で、サービス開始後は、全国の個人・法人が、EV充電器をeveriwaの有料充電スポットとして開放できるようになります。

 

EVのドライバーは充電時間に応じた料金を支払うことで、そのEV充電器を利用可能。充電器を設置したオーナーは、ユーザーが支払った料金からプラットフォーム利用料を除いた金額を、売上として得られるというビジネスモデルになっています。

↑everiwaに対応した充電器(写真奥)から、EVに給電する様子

 

↑everiwaのビジネスモデル

 

everiwaが想定する主な導入対象は、広い駐車スペースを持つ店舗やマンションのほか、戸建住宅のコンセントにもおよびます。つまり、自動車を駐車できるスペースさえあれば、法人のみならず個人もオーナーになることが可能なのです。EV充電器の利用料金はオーナーが自由に設定できるので、たとえば、レストランが利用料金の安いEV充電器を駐車場に設置して誘客に活用する、という利用方法もあり得ます。

 

everiwaに対応するEV充電器は、最安のもので数千円程度から購入できるため、導入コストも抑制可能。また、everiwaの利用料金の支払い・受け取りの決済はアプリ上で完結するので、利用時の手間も削減されています。

↑everiwaのアプリに表示されるマップから、利用可能な充電器の場所を知ることができる

 

みずほグループ、損保ジャパンも、everiwaの普及に協力

脱炭素化に熱心なみずほグループも、エバンジェリストとして、everiwaコミュニティに参画。決済システムのeveriwa walletを開発するほか、自社店舗の駐車場をEV充電器の設置スペースとして提供します。また、みずほグループは現時点で国内上場企業の7割との取引実績があり、各自治体とも全国規模で取引を行っています。この顧客基盤を活かし、everiwaに参画する企業を増やすための活動も行っていくということです。

 

さらに、利用者がクルマの操作を誤ってEV充電器を破損してしまうケースなどに備え、パナソニックが損保ジャパンと保険契約を締結。オーナーがEV充電器の稼働時間に対して支払うプラットフォーム利用料のなかにその保険料も入っているので、万が一、ドライバーのミスで充電器具にぶつけてしまうなどのトラブルが発生し、ドライバーの自動車保険で対応できない場合にもシェアリング保険が用意されています。

↑発表会で行われたフォトセッション。中央が、パナソニック エレクトリックワークス社の大瀧社長

 

everiwa対応の充電器を設置するオーナーの募集は、2022年11月29日からスタート。サービスの開始は2023年春を見込んでいます。EV登場当初から問題になっている充電拠点の不足。それを解決するソリューションとなれるか。everiwaの今後に注目です。

SUV志向を極めた新しいタント「ファンクロス」。走りも使い勝手の高い満足度!

今や軽自動車販売台数の約半数を占めるまでになったと言われるスーパーハイトワゴン。その元祖とも言えるダイハツ「タント」がこのほどフロントマスクを刷新するマイナーチェンジを図り、それに合わせてSUV風の新キャラクター「ファンクロス」を追加しました。今回はこの両車に試乗し、取材を通してわかった点などもご報告したいと思います。

 

【今回紹介するクルマ】

ダイハツ/タント ファンクロス

※試乗グレード:ターボ(2WD)

価格:172万1500円~193万500円(税込)

 

ダイハツ/タント

※試乗グレード:カスタムRS(2WD)

価格:138万6000円~199万1000円(税込)

↑タントをベースにアウトドア志向を極めた「ファンクロス」だが、デザインのバランスはとても良い

 

使い勝手抜群の「ミラクルオープンドア」を継続採用

ダイハツ「タント」の初代が登場したのは2003年のこと。当時は少しルーフが高いハイト系ワゴンが主流でしたが、ダイハツはここに箱形スタイルのタントを初投入しました。この時は空間の広さがポイントとなる程度でしたが、大ヒットを果たしたのが2007年に登場した2代目となってからです。そのヒットの理由は、センターピラーレスとスライドドアを組み合わせた「ミラクルオープンドア」を助手席側に採用したことでした。

 

センターピラーがなく、リアドアがスライドで後ろに下がると、そこには広大な空間が広がり、乗降性の向上はもちろん、シートのアレンジ次第でかさばるものも楽に入るというかつてない使い勝手を生み出したのです。以来、ミラクルオープンドアはタントの定番の装備となり、それは現行タントだけでなく、新キャラクター「ファンクロス」でもその魅力を引き継ぐこととなったのです。

 

では、新キャラクター「ファンクロス」はどのようなクルマなのでしょうか。

 

冒頭でも述べたように、ファンクロスはSUV風を取り入れることで「キャンプ場などでの“映え”を意識したデザイン」(ダイハツ)となっています。それを具体的に表現しているのが、ボディの四隅に施された変形六角形の樹脂ガードです。前後それぞれでこの樹脂ガードが左右を結んでそれがSUVらしい力強さを生み出しているのです。ルーフレールを装備したことで、タントよりも全高が5cm高くなっていることもポイントです。イメージカラーはサンドベージュメタリックで、他にもレイクブルーメタリックやフォレストカーキメタリックなど、自然に回帰したカラーリングが似合うデザインともなっています。

↑タント「ファンクロス」。リアエンドの処理がアウトドア志向を際立たせている。写真はサンドベージュメタリックカラー

 

SUVらしい使い方を実現するため、リアシートにこだわり

インテリアは、基本をタントと共通としたものの、各所にあしらわれたオレンジのアクセントに加え、シート表皮はカムフラージュ柄を織り込むなど、アウトドア指向のユーザーにマッチするデザインが施されています。これらは、少しクロカンチックな印象を受ける同社のタフトに近いデザインイメージと言っていいかもしれません。

↑インテリアは随所にオレンジの配色を施し、アウトドア志向を高めるデザインとなっている

 

ファンクロスで本気度を感じさせたのがリアシートです。実はこのシート、基本はベース車のタントと共通の機構を採用していますが、マイナーチェンジ前はリアシートの座面をフォールダウンして、たたむ機構を採用していました。そのため、たたんだ状態でもフロアが若干斜めに浮いた状態となっていました。それをファンクロスと新型タントでは座面は固定のまま単純に折りたたむ機構としました。そして、二段調節式となっている荷室のデッキボードと組み合わせることで、シートバックをたたんだときにフラットになるように工夫を加えたのです。ただ、この機構により、スペースの高さは5cmほど狭くなっているとのことでした。

↑カムフラージュ柄のシート。ピラーがない「ミラクルオープンドア」はアウトドア利用に大いに活用できそうだ

 

アウトドア用途に適するため、シートバックの平面は撥水加工を施した点もポイントです。荷室側からスライド調整ができる機構も新採用したことで、持ち込む荷物に応じた荷室サイズ変更にも対応できるようになりました。シートを単純に折りたためるようにしたことで、すべての操作が荷室側からできるようになったわけです。ただ、シートを前にスライドさせると隙間ができ、物が落ちやすいことには注意が必要ですね。

↑撥水加工を施したリアシートの背面。スライドドア用レバーには砂などが入り込むとやっかいかもしれない

 

一方でシートバックは垂直の状態で固定することもでき、これは箱物を積載するときに重宝するでしょう。他にもファンクロス専用装備として、後席に1か所USB端子を装備し、荷室内の照明も天井と側面に設置するなど、通常のタントにはない便利さも用意しました。

↑後席右側に装備されたUSB端子。ファンクロスだけの特別装備だ

 

↑ファンクロスの特別装備として、荷室の天井と側面には2つの照明が備えられている

 

ターボとD-CVTの組み合わせが静かでスムーズな走りを実現

試乗したのはインタークーラー付ターボエンジンにD-CVTを組み合わせた「ファンクロスターボ」(2WD)。D-CVTとは、CVTに「ベルト+ギア駆動」を組み合わせたトランスミッションで、なめらかな走りだけでなく、モード走行中のエンジン回転数を自由に変化させられるので燃費向上にもメリットがあります。ファンクロスではこのトランスミッションを標準化して、ドライバビリティ向上と経済性を両立させているのです。

↑ファンクロスターボには、インタークーラー付658ccターボエンジンを搭載。最大出力は47kW(64PS)、最大トルク100N・mを発揮する

 

走り出すと車体が軽々と前へと進みます。エンジン回転だけが先に上がって、速度が後から付いてくるようなCVTにありがちなラグはほとんど感じません。撮影のために大人3人が乗車したときも、そういった印象はなく、ひたすらスムーズに加速していく感じでした。CVT変速機は静かで、少し踏み込めば十分に力強いパワーが得られます。また、スーパーハイトワゴンは重心が高いため、本来ならカーブが苦手のはずですが、中速コーナーもしっかりとロールを抑えてくれていたのには感心しました。

↑タント「ファンクロスターボ」。D-CVTとの組み合わせによりスムーズな加速が体感できた

 

乗り心地の良さもファンクロスの特筆すべき点です。一般道の少し荒れた路面でもシートには不快な振動はほとんど伝わらず、路面にあるスリップ防止用舗装を通過したときの段差もきれいにいなしてくれます。この日は一般道だけの試乗でしたが、車内に届くロードノイズも許容範囲で、静粛性はタントと比べても十分なレベルに仕上がっていることを実感した次第です。

↑ファンクロス ターボのタイヤは、165/55R15を履く。ブランドはダンロップのエナセーブだった

 

一方でダイハツの予防安全機能「スマアシ」は、基本的にステレオカメラを使った従来からのシステムが踏襲されました。急アクセル抑制機能は搭載されていません。ただ、開発者によれば「ACC(アダプティブクルーズコントロール)の設定を、初期のタントよりもリニアに反応するタイプに変更した」ということです。従来のタントは料金所で一旦減速し、レジュームを押してからの立ち上がりがきわめて遅かった印象がありましたが、「タフトと同レベル」にまで立ち上がりを改良したと言うことでした。次回は高速道路で試してみたいと思っています。

 

新しい「タント カスタム」はより押し出し感を強めた

一方のタント。試乗車はターボエンジンを搭載した「カスタムRS」の2WDでした。フロント周りをより押し出しの強いイメージとし、ボンネットや前後バンパーのデザインに変更を加えました。アウタードアハンドルをクロームメッキ化したのも小さなことではありますが、印象深さがさらに増したのは見逃せません。インテリアはカスタム仕様にふさわしいブラックの人工皮革とブルー配色を織り込んだシートを採用しました。リアシートの機構はファンクロスと同様で、二段式デッキボードの採用も同じです。

↑フロントグリルの開口部を大型化し、より迫力を増したタント「カスタムRS」

 

乗り味はファンクロスと基本的に同じでした。アクセルを軽く踏むだけで気持ちよく速度が上がっていき、市街地の走行は実にスムーズ。路面の段差が生まれるショックも十分に吸収しており、乗用車としての満足度はとても高いと思いました。

↑ブラックの合皮とブルーのパイピングを組み合わせたカスタム専用のシート

 

SPEC【ファンクロスターボ(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1785㎜●車両重量:940㎏●パワーユニット:658㏄水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラターボ横置●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:100Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:24.3㎞/L

 

SPEC【カスタムRS(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1755㎜●車両重量:930㎏●パワーユニット:658㏄水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラターボ横置●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:100Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:21.2㎞/L

 

撮影/松川 忍

 

 

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軽EVらしい高級な走り! EV時代を彩る日産「サクラ」を細かい意匠までチェック

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、軽自動車のEV(電気自動車)として華々しいデビューを飾った日産のサクラを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2022年11月号に掲載された記事を再編集したものです

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感。クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわっている。

 

【今月のGODカー】日産/サクラ

SPEC【G・2WD】●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm●車両重量:1080kg●パワーユニット:交流同期モーター●最高出力:47kW/2302〜10455rpm●最大トルク:195Nm/0〜2302rpm●一充電走行距離:180km

239万9100円〜294万300円(税込)

 

局所的にはガソリン車の利便性を超える

安ド「殿! 今回は日産の軽EV、サクラを借りてきました!」

 

永福「うむ。これまで姉妹車の三菱eK クロス EVには何度か乗ったが、サクラは初めてだ」

 

安ド「違いはありましたか?」

 

永福「なにしろ2台は姉妹車。メカはまったく同じだから、走りも同じ。違いは見た目と内装だけだ」

 

安ド「サクラのほうが一般ウケしそうなデザインですね」

 

永福「ベースはガソリン車の『デイズ』だが、見た目はしっかり未来っぽく仕上げているな。デイズよりずっと高級なクルマに見える」

 

安ド「僕が買うならeK クロス EVにしますけど」

 

永福「それはなぜだ?」

 

安ド「いやぁ、軽に乗るなら押し出しの強い、個性的な顔が良いなと思って」

 

永福「そういう考えもあるだろう。美人は3日で飽きると言うし」

 

安ド「走りはどうでしょう?」

 

永福「EVらしく、実に高級だ。EVというモノは、概して加速が良く、重心が低くてハンドリングが良く、静かで振動がなく快適なものだが、サクラもまさにその通り。サクラのような軽自動車の場合は特に、EV化によってすべてが圧倒的に高級になったように感じる」

 

安ド「まぁ確かに、『ああ、EVだな』って感じはしました」

 

永福「EVが嫌いなのか?」

 

安ド「嫌いというわけじゃないですが、欲しくないですし、興味がありません!」

 

永福「私もまだ欲しくはないが、とても興味はある。EVはいつか、ガソリン車を超える魅力を持つ日がやってくる。その日がいつなのか、興味津々だ」

 

安ド「その日は……まだ来ていませんよね?」

 

永福「全体としてはまだ来ていないが、このサクラは、たとえばガソリンスタンドが減少している過疎地などでは、ガソリン車の利便性を超えているだろう」

 

安ド「満充電で150kmくらいは走れそうですし、通勤や買い物用としては良いんじゃないかと思います。ただこれ1台だけというのはツライですし、ウチのように借家住まいだと、自宅で充電できませんから、いちいち外で充電するのが大変です!」

 

永福「そうだな。これは地方や郊外の、一戸建てに住んでいる人のセカンドカーに向いている。補助金が出るから、値段もガソリンの軽自動車と同じくらいだ」

 

安ド「現状、それがベストなEVの使い方でしょうか」

 

永福「日本ではそうだな。日産アリアやトヨタのbz4Xのような、600万円もするEVを買って、ファーストカーとして使うのはハードルが高い。しかし、200万円でご近所用のセカンドカーを買うのは、地方では当たり前のこと。サクラはその需要にハマる」

 

安ド「日本でもEVが当たり前になって、僕がEVを買う日はいつ来ますか?」

 

永福「15年後だな」

 

【GOD PARTS 1】インパネ素材

高級感が高いうえに使い勝手も良い

インパネには一部にファブリック素材が採用されていて、なんだか軽自動車クラスのクルマとは思えない高級感が味わえます。また、助手席前のこの部分は凹んだ形状になっていて、ちょっとした小物を置くことができて便利です。

 

【GOD PARTS 2】ホイールデザイン

伝統模様を織り交ぜたほかにはない独創性

日本の伝統的モチーフ「水引」を用いたデザインになっています。祝儀袋や贈答品の包み紙などに見られるアレですね。なんだかおめでたい感じで素敵ですが、同様のデザインはドアの内側やバンパー下部にも見られます。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

スポークが下側になくてスッキリスポーティ!

スポークが左右にしかない独特な形状をしています。エコカーでありながらスポーティな雰囲気が感じられて良いですね。スポークの右サイドには運転支援装備「プロパイロット」の操作ボタンが配置されています。

 

【GOD PARTS 4】充電ポート

普通用と急速用充電ポートは2つあり!

ボディ右横後方には給油口ならぬ、充電ポートが設置されています。普通充電用と急速充電用の2つがあるため、普通の軽自動車の給油口と比べてデカいです。カバーを開くとライトが点灯するようになっています。

 

【GOD PARTS 5】e-Pedal

アクセルでブレーキ!? 日産得意のワンペダル

このボタンを押すと、アクセルペダルだけで車速をコントロールできる「ワンペダル運転」ができるようになります。ノートe-POWERと比べると味付けはマイルドで、アクセルを離したときのブレーキの効きは弱めです。

 

【GOD PARTS 6】バッテリー

大きくて重い物体はフロア下に搭載

自在に高さを変えられるユニバーサルスタック構造を採用したリチウムイオンバッテリーがフロア下、つまり床下に設置されています。これによりほかのトールワゴン軽自動車と同等の室内スペースを確保しました。

 

【GOD PARTS 7】フロントグリル

未来的でクールな表情を演出!

電気自動車なので空気を取り入れるための穴の開いたグリルは不要ですが、大きめの黒いグリル風パーツを採用して、フロントデザインをクールにまとめています。ヘッドライトは薄型ながら、プロジェクタータイプの3眼式になっています。

 

【GOD PARTS 8】ルーフサイドステッカー

色鮮やかなラインがボディサイドを彩る

サイドウインドウの上辺に沿って、スタイリングを彩るラインが見えます。これは春夏秋冬をイメージした4色の「シーズンズカラー」にのみ設定される専用ステッカー。オプションで購入することも可能だそうです。

 

【GOD PARTS 9】シート

見た目も良し! 触っても座っても良し!

少々高級なソファのような質感の高い表皮素材が採用されています。肌触りも良く、前席左右シートが繋がったようなデザインもモダンな雰囲気で、ドライブ中になんだかオシャレな部屋のなかに佇んでいるような感覚が味わえます。

 

【これぞ感動の細部だ!】花びらモチーフ

車名のイメージが車内を彩る

社内公募でつけられたという車名には、「日本の電気自動車の時代を彩り、代表するクルマになってほしい」という願いが込められていて、当然、日本を象徴する花である桜に由来しています。引き出し式のドリンクホルダーやセンターコンソールの収納などには、さり気なく桜の花びらをモチーフにした刻印があって、乗る人の目を楽しませてくれます。

 

撮影/我妻慶一

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合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」がスタート。第一弾はエンタメ重視の高付加価値車

ソニーとホンダによる合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」が10月13日、新会社設立記者会見を開催し、新会社として今後の方向性や商品計画が明らかになりました。そこでは新会社として今後の方向性や商品計画などが説明され、両社による新たなモビリティがいよいよ動き出すことになったのです。

 

すべては2020年1月に登場した『VISION-S』がきっかけ

↑ソニーがEVコンセプトとして発表しているSUVの「VISION-S02」(左)と、「VISION-S01」(右)

 

振り返れば、ソニーがEVコンセプト『VISION-S』を発表して世間を驚かせたのが、2020年1月に米国ラスベガスで開催されたCES2020でのことでした。この時は予告なしで公開されたことに加え、そのあまりに高い完成度から「ソニーがEV(電気自動車)を発売するのか?」「日本版テスラになるのか」などと、騒然としたのを思い出します。

 

その後、ソニーはコロナ禍でオンライン開催となったCES2021で、欧州を舞台にテスト走行する映像を公開。VISION-Sが単なるモックアップでないことを映像を通して訴え、“ソニー製EV”の誕生への期待はますます高まったのでした。

 

そして、2022年1月、事態は大きく動きます。ソニーはその第二弾「VISION-S02」を発表し、その席上でソニーの吉田憲一郎CEOが2022年中にもEVの販売を検討する新会社「ソニーモビリティ」を設立すると宣言したのです。

↑2022年1月に開催されたCES2022では、ソニーの吉田憲一郎CEOが2台のEVコンセプト「VISION-S」を前に、ソニーとしてEVの市場投入計画を宣言した

 

そして3月、新たな発表が再び世間を騒がせました。なんとソニーとホンダが新たな合弁会社を2022年中に設立し、電気自動車(EV)の共同開発と販売、モビリティ向けサービスの提供について共同で事業化することを発表したのです。この瞬間、それまで噂ばかりが先行していた“ソニー発のEV”がいよいよ現実味を帯びることとなったのでした。

 

2025年前半にオンラインにて受注開始。デリバリーは翌2026年から

↑新会社設立の目的について、そのコンセプトについて説明したソニー・ホンダモビリティ代表取締役 会長 兼 CEOの水野泰秀氏

 

では、10月13日の新会社設立記者会見で明らかにされたのはどんな内容でしょうか。まず明らかにされたのは今後の行動計画です。それによると、ソニー・ホンダモビリティが第一弾車両を発表するのは2025年前半で、同時にオンラインでの受注を開始します。そして2026年春に北米でデリバリーを開始し、日本国内向けには2026年後半を予定。その先には欧州での展開も視野に入れているとのことでした。

 

生産はまず北米で行い、状況次第では日本での生産もあり得るとのことです。ただ、ソニー・ホンダモビリティはいわゆる企画会社であって、生産はすべて本田技研工業に委託する形となるため、本田技研工業の生産計画に左右されるとのことでした。

 

気になるのは発売される車両の概要でしょう。会見に登壇したソニー・ホンダモビリティの代表取締役会長兼CEOの水野泰秀氏は、「ソニーが培ってきたネットワーク技術やエンターテイメント性を備えたかつてない高付加価値のクルマ」であると説明しました。個人的には、ソニーでいえば“ウォークマン”的な、ホンダで言えば“HONDA e”的な、よりカジュアルなモビリティの誕生を期待していましたが、そうではないようです。

 

むしろ、エンターテイメント性に高付加価値を求めるのであれば、それこそソニーが提案してきた『VISION-S』シリーズがそれに近い形なのかもしれません。VISION-Sにはダッシュボードの左右いっぱいにビルトインされたディスプレイ、360リアリティオーディオを組み込んだシートが組み込まれていました。それはまさに“動くAVルーム”そのものです。

 

走行中でもエンタメが楽しめる自動運転レベル3に対応

↑第一弾は「ソニーのエンターテイメント性を加えた高付加価値のモビリティになる」と説明するソニー・ホンダモビリティ代表取締役 社長 兼 COOの川西泉氏

 

一方、ホンダには世界で初めて自動運転レベル3の認証を受けた技術があります。レベル3を実現していれば、渋滞中などの一定条件内の利用にはなりますが、運転中にディスプレイを凝視しても構わなくなります。つまり、この組み合わせこそがソニー・ホンダモビリティが目指す“高付加価値なモビリティ”の一つの形と言えるのではないでしょうか。

 

ソニー・ホンダモビリティの代表取締役社長兼COOの川西泉氏は、自動運転のレベル3やレベル2+についても言及し、その実現のために「800TOPS以上(1秒当たり800兆回以上)の演算性能を発揮する高性能SoC(System on Chip)を採用する」と説明していました。このスペックから自動運転の性能を推察するのは困難ですが、少なくとも言及する以上は相応の高性能を発揮する状態でリリースされるのは間違いないでしょう。

 

会見が終わり、あとは記念写真かと思った時、ステージ上のスクリーンに浮かび上がったのは「January 4, 2023 in Las Vegas」の文字。これは年が明けた1月4日より米国ラスベガスで開催される「CES 2023」を指していることは明らかです。これまでソニーはこのCESでVISION-S関連の重要な発表を行ってきただけに、おそらくソニー・ホンダモビリティによる第一弾が披露されるのかもしれません。そんな期待を抱かせ、この日の会見は終了しました。

 

「ソニーモビリティ」としての別の展開はあるのか?

↑会見終了後、改めて握手を交わして記念写真に応じた川西COO(左)と水野CEO(右)

 

ただ、会見で明らかにされていない件が残っています。それは2022年1月にソニーの吉田CEOが発表した「ソニーモビリティ」の具体的な行動計画に対する言及は一切なかったこと。実は3月に行われたホンダとの合弁会社設立発表の際、吉田CEOは「ソニーが提供するサービスのプラットフォームをホンダ車以外の自動車メーカーにも使ってもらうこと」と発言していました。これはもしかしたら、別ブランドでの展開も視野に入れているということなのでしょうか。

 

ただ、それでもソニーが独自に展開することはないでしょう。生産を委託するにせよ、家電メーカーが自動車の販売を独自に進めることはリスクが大き過ぎるからです。あくまでエンターテイメント性を極めたプラットフォームの提供だけにとどめ、いわゆる“Sony inside”みたいな展開が インフォテイメントシステムなどを通して発展していくのではないかと考えます。

 

このあたりを担当者に尋ねてみましたが、「現状では発表できるものは何もない」とのこと。もし、ソニーのプラットフォームがホンダ車以外で展開されるのであれば、個人的にはここでこそウォークマン的なモビリティを期待したいところです。いずれにしろ、まずは来年のCES2023での展開に注目していきたいと思います。

 

 

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京セラ、夜間走行時のセンシングに大きな効果をもたらす「車載ナイトビジョンシステム」を技術発表

京セラは10月11日、世界で初めて白色光と近赤外光の光軸一致・一体化した「車載ナイトビジョンシステム」の開発をしたと発表。同日、都内で記者説明会を開き、その効果についてデモを通した説明会を実施しました。なお、この車載ナイトビジョンシステムは、10月18日~10月21日に幕張メッセ(千葉県)で開催された「CEATEC 2022」にも出展していました。

↑クルマのフロント部分を使ったデモ機。ヘッドライト内にはWhite-IR照明が埋め込まれ、フロントグリル中央(エンブレム下)に備えられたのがRGB-IRセンサ。下の照明はヘッドライトをジオラマ用に設定したもの

 

車載ナイトビジョンシステムの実装は2027年ごろを予定

車載ナイトビジョンシステムは、照射された物体をRGB-IRセンサ(可視光と近赤外光センサ)で撮影し、その画像データから独自のフュージョン認識AI技術により高精度な物体検出を可能としたものです。白色光と近赤外光の光軸を一致させたレーザーヘッドライトは世界で初めてで、京セラでは、安全性の向上や自動運転車のセンシングデバイスとしての実用化も見込んでいます。

 

この白色光と近赤外光の光軸一致・一体化した車載ナイトビジョンシステムは、京セラの米国子会社で自動車用ヘッドライトを手がける米国のKYOCERA SLD Laser,Inc.独自開発した高輝度、高効率、小型パッケージを実現するGaN(窒化ガリウム)製白色光レーザーを採用することにより実現したものです。

↑一体型ヘッドライトを採用したことで、より高精度な認識結果を獲得。車両デザインにも影響は与えなくて済むメリットもある

 

その効果としては夜間、雨、霧など視界が悪い環境下でも危険要因になる可能性のある物体を高精度に認識し、安全運転を支援できるのが最大のポイントです。また、独自の学習データ生成AI技術によって学習を効率化しており、これによりコストと性能の両立を実現しているのも見逃せません。

↑独自のフュージョン認識AI技術による高精度検出を実現。可視光画像と近赤外光画像の両方の強みを併せ持つ

 

↑近赤外光画像は「学習データ生成AI技術」によりデータ収集が不要。AI学習コストを大幅に削減できる

 

ヘッドライト内の白色光をロービーム、近赤外光をハイビームなどとし、人や物に応じて配光を変化させることができることから、眩しさを抑えながらセンシングできる特徴も持ちます。また、白色光と近赤外光の一体型によりヘッドライトの省スペース化と車のデザインに自由度を提供することも可能に。京セラでは、2025年には量産技術を確立し、2027年にも実用化していく計画です。

White-IR照明技術は、1つの発光素子に照明となる白色光に、近赤外光を生み出すダイオードも一体化した

 

↑検知した結果からどちらかを選ぶのではなく、2つの結果をフュージョンさせることでより良い結果をもたらしている

 

↑可視光画像から近赤外光の学習データ画像を自動生成する「生成AI技術」を開発

 

京セラ 研究開発本部 先進技術研究所の所長・小林正弘氏は、車載ナイトビジョンシステムの開発意図について、「弊社研究所ではさまざまな社会課題の解決に向けて、要素研究およびシステム研究を行なってきました。今回の発表は(そこから生まれた)要素研究の成果を具現化し、ADAS(先進運転支援システム)車載向けに発表したものです。運転中の危険因子をどんなシーンでも検知できるシステムを開発し、社会に提供することで、京セラは交通事故の撲滅に貢献していきたいと考えています」と述べました。

↑冒頭の挨拶に立った京セラ 研究開発本部 先進技術研究所の小林正弘所長

 

同社研究開発本部 先進技術研究所 自動走行システムラボの大島健夫氏は、「近年のADAS技術普及によって交通事故は減少傾向となっているが、夜間や霧発生の死亡事故は大幅に増えています。そうした様々な危険要因を検知するため、用途に合わせてカメラやミリ波レーダー、LiDARなどの各種センサを採用してきましたが、それぞれが対応する条件は制限されており、悪条件下での危険検知性能は十分ではありませんでした。そこで危険検知性能のさらなる高度化を図る一方で、搭載するセンサ数の削減を両立させなければなりません。こうした課題を解決するために京セラが開発したのが車載ナイトビジョンなのです」と語りました。

↑記者からの質問に答える研究開発本部 先進技術研究所 自動走行システムラボの大島健夫氏

 

夜間ドライブに大きな安心感として効果を発揮してくれそう

説明会終了後は、模型を使ったデモンストレーションが行われました。大型モックアップのヘッドライト内にはWhite-IR照明が埋め込まれ、フロントグリル中央にRGB-IRを組み合わせて車載ナイトビジョンシステムとしています。車載ナイトビジョンシステムによってセンシングされた映像はモニターを通して確認できるようになっていました。

↑デモに使われた模型とそのディスプレイ部を備えたジオラマ

 

部屋が明るい状態でも被写体をセンシングした枠がモニター上で反映されていましたが、この状態では暗い場所での効果がわかりません。そこで照明を落とすと、モニター上には車載ナイトビジョンシステムによるセンシング状態が浮かび上がりました。驚いたのはそのセンシングがかなり広い範囲まで届いていることです。一方の白色光だけの照射では、照射した光が当たった中央部以外はセンシングされないままとなっており、その差は歴然としていました。

↑車載ナイトビジョンシステムで照射した結果。近赤外光も併用するため、両サイドの暗闇に配置された駐車車両や黒いクルマ、さらには端にいる歩行者までしっかりと検知している

 

特に見分けがつきにくい黒い車両でも鮮明に捉えていたほか、左右の生け垣の奥にいる歩行者の存在も見事にセンシングしていたのには驚きました。これなら夜間走行時に歩行者を捉えるのも容易ですし、何よりも横断歩道を渡ろうとしている歩行者をセンシングしてくれることことへの期待値も上がります。これを使えば、視認性が下がる夜間の雨天時でも安心度が高まるのえはないかと感じました。

↑画面内に白色光だけの画像で危険要因を検知させた映像(左)と、近赤外光の画像も併用する車載ナイトビジョンシステムの検知映像(右)の比較。検知範囲が大きく違う

 

また、レーザーを使っていることで、人間の目に対する影響を心配する声も上がりましたが、それについて担当者は「レーザー光の出力を分散させることで、同じ場所にレーザーが集まらないような設計としています。今回のデモでは近赤外線の方を幅広く照射し、白色光を狭めて照射し、さらに反射板を併用することで人の目に直接入らないようにも工夫しています」とのことでした。

 

この車載ナイトビジョンシステムを車載で展開する場合は、基本的にセンシングした結果をインフォテイメントシステムに反映させることとなります。たとえばメーター内とか、ヘッドアップディスプレイ上に展開することも考えられるとのこと。発表された車載ナイトビジョンシステム、実装されれば夜間ドライブで大きな安心感を生んでくれそうだと思いました。

 

 

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