経営統合で激化! ドラッグストアのポイ活戦線でトクする極意を専門家が解説!

クレジットカード・キャッシュレス決済に関する疑問や悩みを“クレカの鉄人”岩田昭男師範が快刀乱麻に解決する連載企画。今回は、様々な商品を格安で買えてポイントも貯まるのが魅力のドラッグストアでの“ポイ活”について、岩田師範が解説します。

 

【第26回】ドラッグストアでよりおトクにポイントを貯めたい!

 

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わる業界の“ご意見番”。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】寅楠頼泰(とらくす よりやす)

ここ数年でドラッグストア通いに拍車がかかる39歳。元々仕事帰りに駅前のドラッグストアに立ち寄る機会は多かったが、物価高騰が止まらないなか、少しでも安い商品を求めてドラッグストアチェックも欠かせなくなってきた。ついてはドラッグストアでの買い物でもしっかりポイントを貯める方法を知るべく道場の門を叩いた。

 

(相談者の要望)

○ドラッグストアでよりおトクにポイントを貯める方法が知りたい

○できるだけ簡単にポイントが貯められるとうれしい

○ドラッグストアチェーンごとのおトクなポイ活の極意を教えて

 

ドラッグストアでのポイ活は「ポイント二重取り・三重取り」を積極的に狙うべし!

師範 ドラッグストアでのポイ活に興味があるというのはおぬしか。

 

寅楠 はい。最近、ドラッグストアは薬や日用品だけでなく食料品の品揃えも増えていて、物価高の昨今、わが家でもますます買い物する機会が増えました。そこで改めてドラッグストアでより多くのポイントを貯める方法を聞きたいなと。

 

師範 なるほど。確かにポイント還元に関してはドラッグストアは以前から手厚いサービスを展開。特に店舗のポイントカードとクレジットカードや電子マネーなどを使ったポイントの二重取り・三重取りは、多くのドラッグストアが対応しており、これを逃す手はない! また、店舗独自のキャンペーンやセールに加え、最近はQRコード決済と提携したキャンペーンでポイントが大幅アップする機会も多い。そうしたチャンスも絶対見逃したくないものじゃ。

 

寅楠 具体的にはどんなことに注意したらいいんでしょう?

 

師範 まずは各ドラッグストアのポイント二重取り・三重取りの仕方を確認じゃ。ドラッグストア各店舗のポイントカード提示とクレジットカードなどの決済でポイント二重取りは達成可能。最近はそれらのポイントカードはアプリ化し、決済もスマホで行えるため、スマホ1台でラクにポイント二重取りできるようになったな。さらにドラッグストアが楽天ポイントやdポイントなど共通ポイントの加盟店なら、そのポイントカード提示(これもスマホアプリで行える)でもポイントが貯まり、店舗のポイントカード提示、決済と合わせてポイント三重取りが達成できるというわけじゃ。

 

寅楠 説明を聞くと「ポイント二重取り・三重取り」と言ってもそれほど難しくはなさそうです。

 

師範 このやり方はコンビニや一部スーパーなどでも可能じゃから覚えておいて損はない。次に注意すべきはどんなクレジットカードや決済手段を利用するか。クレカなら言うまでもなく高還元率のカードを使うのが有利じゃが、最近はクレジットカードを使うよりQRコード決済を使うほうがポイントが多く貯まる場合がある。例えば、楽天ペイのチャージ払いを利用するとチャージ元を問わず還元率最大1.5%で楽天ポイントが貯まるぞ。

 

寅楠 私も楽天ペイが使える店ではマストで楽天ペイを使っています!

 

「ポイントアップデー」やアプリに届く電子クーポンも見逃すな

師範 続いてぜひ行うべきは各ドラッグストアの「ポイントアップデー」のチェック。「毎月○日」「毎週○曜日」などにポイントが大幅アップするので、その日に高額商品を買ったりまとめ買いをするのがオススメじゃ。また、各ドラッグストアのアプリ経由で送られてくる商品の割引クーポンや高ポイント還元クーポンも見逃してはならん。あとは、先ほども触れたが、PayPayや楽天ペイ、d払いなどのQRコード決済サービスはドラッグストアと提携し「最大20%」などの大型ポイント還元を行うキャンペーンを不定期で開催しとる。これらの情報はQRコード決済アプリに送られてくるほか、各店舗の店頭に「のぼり」が出ていたりするから、比較的簡単に確認できるじゃろう。

 

寅楠 確かに私のスマホにもQRコード決済のプッシュ通知が毎日送られてきますけど、面倒臭くて読まずにおいたり、通知自体オフにしているアプリも多くて。でもこれからはマメにチェックを心がけます。

 

ウエルシアはウエルシアカードを使い、10日にまとめ買い・20日にポイントで買い物が最もおトク!

師範 では、ドラッグストアごとのポイ活のポイントについても話してみようかの。まず、業界売り上げトップのウエルシア。

 

このグループにはウエルシア薬局のほかコクミンドラッグ、ハッピー・ドラッグ、ダックスなどが含まれとる。ここは販促ポイントが以前のTポイント(現Vポイント)から現在はWAON POINT中心に移行。店頭でWAON POINTカードが申し込め、税抜100円で1ポイントの提示ポイントを獲得できる。ウエルシアではこのWAON POINTカードに対応したおトクなサービスがめじろ押し。毎週月曜の「ポイント2倍デー」はカード提示でWAON POINTが2倍に、毎月15、16日の「シニアズデー」は60歳以上が対象でポイントが3倍にアップする。ちなみにこれらはすべて提示ポイントの話。支払いにクレジットカードや電子マネー、QRコード決済を用いることでそれぞれの決済ポイントも合わせて付与される。

 

寅楠 いろんな支払い方法に対応して自分が貯めているポイントをゲットできるのはうれしいけど、提示ポイントがWAON POINTというのを考えると支払いもイオンカードにするのがいいんですかね?

 

師範 その観点で最もおトクなのは、年会費無料のウエルシアカードを持つことじゃな。ウエルシアカードはイオンフィナンシャルサービスが発行するイオンカードの一種じゃが、ウエルシアグループ各店では毎月10日に「ウエルシアカード10%還元デー」を開催。この日にウエルシアカードのクレジット決済での買い物をすると、税込200円ごとに20 WAON POINTポイントが付与され、ポイントカード提示ポイントと合わせて最大11%のポイント還元となる! ちなみにウエルシアカードはスマホに登録し「イオンID」や「Apple Pay」での支払いでも使えるが、「ウエルシアカード10%還元デー」だけはスマホ決済は対象外で、スマホ決済の還元率は1%となる。

 

寅楠 なるほど。毎月10日だけはリアルカードの提示がおトクってことですね。

 

師範 また、毎月20日の「お客様感謝デー」も忘れてはならん。これは“ウエル活”という言葉を世に広めたサービスで、ポイントを貯めるのではなく貯まったポイントを使うことでおトクになるのが特徴。200ポイント以上のWAON POINTを買い物に使うと、その1.5倍分の買い物ができる(※1日最大3万ポイントが利用上限)。

 

寅楠 1000ポイントで1500円分、2000ポイントなら3000円分の買い物ができるってことですね。ウエル活実践者が20日の買い物に向けポイントを貯める気持ちがよくわかります。

 

師範 ここでもうひとつおトク情報を教えよう。ウエルシアのポイント制度は、WAON POINT中心の販促に移行したとはいえ、いまもVポイントが貯まって使える。ウエルシアメンバーに登録すると、WAON POINTカード提示の際に合わせてVポイントカードも提示することで、税抜200円につき1ポイントのVポイントも付与。つまりVポイントカード提示とWAON POINTカード提示、決済のポイント三重取りが達成できるわけじゃ。ちなみに、スマホに「ウエルシアグループアプリ」をダウンロードし、そこにWAON POINTカードとVカードを同時登録しておくと両方のカードが紐づき、買い物の支払いの際にアプリ画面にVカード、WAON POINTカードの両方のバーコードが表示される。また、「ウエルシアグループアプリ」内でのPayPay決済も可能で、PayPayユーザーならひとつのアプリでポイント三重取りまで辿り着ける。

 

寅楠 3つの手続きがひとつのアプリ上で完結するのは確かにラクだなぁ。ただし、10日だけはリアルなウエルシアカードを携帯せよ、ってわけですね。

 

ツルハは楽天ペイ、マツキヨココカラはdカードを使えばどんどんポイントが貯まる

師範 業界売り上げ2位のツルハグループはチェーン独自のポイントであるツルハポイントと楽天ポイントを二重取りできるのが特徴。それぞれのポイントカード提示のほか、「ツルハドラッグアプリ」内に両方のポイントカードを登録、バーコード提示してもポイント二重取りができる。

 

また、同アプリを入れておくとアプリ限定クーポンも受け取れるぞ。ツルハは楽天ポイント加盟店でもあることから、決済方法は楽天ペイがオススメ。チャージ払いならチャージ元を問わずに最大1.5%還元、ポイントカード提示分と合わせて最大2%の楽天ポイント還元となり、ここに0.5~1%ぷんのツルハポイントも貯まる。加えてツルハポイントカード提示で5%割引となる「お客様感謝デー」、ツルハポイントが2倍となる「ツルハポイント2倍デー」、60歳以上はシニアマーク提示で5%割引となる「シニア感謝デー」がそれぞれ月に3回ずつ開催。さらにツルハポイントカードはランク制を採用、年間税抜10万円以上使うとゴールド会員になりツルハポイント2倍、年間税抜20万円以上利用するとプラチナ会員になりポイント3倍となる。ドラッグストアでの買い物を同チェーンに集中させれば、会員ランクアップもそう難しくないじゃろ。

 

寅楠 わが家も近所にツルハグループの「くすりの福太郎」があるのでよく買い物をしていて、ゴールド会員になっています。

 

師範 マツモトキヨシは2021年にココカラファインと経営統合、現在業界売り上げ3位の位置につけている。

 

マツモトキヨシとココカラファインのポイントサービスも統合されており、どちらかのポイントカードでもう一方のポイントも貯めて使える。会員情報を統合すれば両方のポイントを合算することも可能。ポイント還元は、税抜100円ごとに1ポイントが基本。また、マツキヨココカラではdポイントカード提示でdポイントも貯まり、還元率は同じく税抜100円につき1ポイントの1%じゃ。

 

寅楠 つまり、お店のポイントカードとdポイントカードを持っていれば常時2%ポイント還元になるわけですね。

 

師範 さらに買い物の合計金額によって翌月・翌年のポイントのステージ(ランク)がアップ(年間合計金額は4月1日〜翌年3月31日までの期間)。月間利用額1万円以上、もしくは年間利用額が10万円以上で税抜100円ごとに2ポイント付与、月間2万円以上、もしくは年間20万円以上の利用で税抜100円ごとに3ポイントが付与される。ちなみに毎月1、2日は「化粧品感謝デー」で、カウンセリング化粧品のポイントが10倍になるぞ。また、マツキヨココカラはdカード特約店のため、dカードでの決済がおトク。通常の1%決済ポイント還元に加え、還元率2%の特約店ポイントがつき、合計3%還元となる。

 

寅楠 えーっと、つまり店舗のポイントカードとdポイントカードのポイント還元が計2%、dカードの決済ポイントが3%で……合計5%。ステージが高くなれば合計最大7%! 驚きのポイント還元率じゃないですか!!

 

師範 ただし、ポイントの有効期限が最短1年なのは要注意で、貯まったポイントは早めに使うのがよい。ちなみに、マツキヨココカラポイントは店舗では200ポイント以上から使用できるぞ。

 

その他のドラックストアでもまだまだ高ポイント還元のチャンスあり

寅楠 そのほかのドラッグストアについてはどうですか?

 

師範 スギ薬局はポイントカード提示で税込100円につき1ポイントを付与。2ポイント=1円で次回以降の買い物に利用できるほか、スギ薬局のポイント交換サイトで家電や雑貨、グルメなどの商品と交換することもできる。毎月第2、第4火曜日の「スギの日」にはスギ薬局アプリを通じて割引やポイント増量のクーポンが配布されるほか、不定期で特定の商品の割引・ポイント還元クーポンも届く。

 

次に、サンドラッグじゃ。サンドラッグはサンドラッグポイントと楽天ポイントのポイントカードを提示することでポイント二重取りが可能。決済時の還元率は現金の場合1%で、こちらは新規受付を終了しとるがサンドラッグクレジットポイントカードなら2.5%。楽天ポイントは税抜200円ごとに1ポイントが付与される。サンドラッグアプリを使って楽天ポイントカードを紐づければ、両方のポイント獲得もスムーズ。ちなみに現金払いとサンドラッグクレジットポイントカード使用以外の決済方法ではサンドラッグポイントは付与されないから要注意じゃ。

 

寅楠 むむむ、他のカードや電子マネー、QRコード決済ではサンドラッグのポイントはつかないのか。それはちょっと残念。

 

師範 トモズはポイントカードかアプリ提示で税抜100円ごとに1ポイントを還元。ここはdポイントとPontaポイントの加盟店で、税抜200円ごとに1ポイントどちらかのポイントを付与してもらえる。ちなみに、dポイントもPontaポイントもトモズアプリ内にバーコード表示可能。不定期で開催される「超ポイント祭り」では全品ポイント10倍になるほか、最大60倍還元になる商品もあり要チェックじゃ。

 

ポイント獲得に熱中するあまりのムダな買い物や“ポイ活疲れ”にご用心!

寅楠 それぞれのドラッグストアでどんなポイ活で最もトクできるかよくわかりました。ただ、すべての店で最大限のポイントを貯めようとすると、いろんなクレジットカードやQRコード決済のアプリを用意する必要があって、けっこう大変そうですね。

 

師範 そこは「あれもこれも」と欲張らんほうがよいな。最近はポイ活に熱中する人々が増えている反面、逆にそういう努力がイヤになる“ポイ活疲れ”も少なくない。ポイント獲得に熱中するあまり、ムダな買い物をするのも本末転倒じゃ。ポイ活で何より肝心なのは「無理しない」こと。クレジットカードは基本的には普段使いのカードで十分。あとは自分がメインで使うドラッグストアに有利なクレジットカードを1枚サブカードとして持つくらいでよかろう。ウエルシアならウエルシアカード、マツキヨココカラならdカード、といった具合じゃ。ところで、いまドラッグストア業界を騒がす一大トピックといえばウエルシアとツルハの経営統合じゃ。

 

寅楠 それ、私もちょっと気になってたんです。

 

師範 当初「2027年までに」というアナウンスじゃったが、スケジュールが前倒しされて、2025年末には統合となりそう。業界1位と2位の経営統合に他のグループは戦々恐々じゃろうな。

 

  • 価格は、特に言及のないものはすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

ポイント還元率は楽天ペイ有利! それでも「生き残るのはPayPay」と専門家が語る意外な理由

クレジットカード・キャッシュレス決済に関する疑問や悩みを“クレカの鉄人”岩田昭男師範がズバッと解決する連載企画。今回はQRコード決済の“二大巨頭”でありつつ、現在変革のときを迎えているPayPay、楽天ペイの最新事情を紹介します。

 

【第25回】PayPayと楽天ペイの最新動向が知りたい!

 

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】北平悠佐(きたひら ゆうざ)

妻と息子と暮らす35歳会社員。QRコード決済はもっぱらPayPayで、他社カードから引き落としで利用している。以前よりPayPayカード以外のクレジットカードによる決済ができなくなると聞き焦っていたが、2025年夏まではいまのまま使えるようになりひと安心。だが、今回の騒動を見るにつけ、いよいよPayPayカードを持つべきか、自分の周辺でも評判のいい楽天ペイに乗り換えるべきか悩んでいる。PayPayと楽天ペイの現況を知るべく、道場を訪れた。

 

(相談者の要望)

〇PayPayと楽天ペイの最新の状況を教えてほしい

〇それぞれ利用しやすいシーンも知りたい

〇実際どっちがおトクなのか教えてほしい

 

他社発行クレカのPayPayでの利用停止は夏まで延期! 今後の展開はいまだ不透明

師範 PayPayの現状について知りたいというのはおぬしか。

 

北平 はい。私はこれまでPayPayをずっと三井住友カードからの引き落としで使ってきたんですが、一昨年5月に「PayPayカード以外のクレカが使えなくなる」と聞いて焦りました。幸い、その措置は今年1月まで延期。さらに今夏までの再延期が決まったとニュースで見たんですが、最終的にPayPayカード以外は使えなくなるのかと心配で。

 

師範 ふむ、確かに昨年12月に出されたリリースには「他社発行カードを引き続き利用できるための新しい利用方式を検討中」「それまで、いまの利用方式を継続する」とある。

↑2024年12月に発表されたPayPayのお知らせ「2025年以降の他社クレジットカードの利用について」で、2025年夏以降に他社クレジットカードの新たな決済方法が検討されていることが告知された

 

ただ、気になるのは「VisaやMastercardとの協議次第で利用料を取る可能性がある」と書かれていること。現在、それら国際ブランドの手数料が決済システム利用料を上回っている、つまり赤字状態ということらしい。

 

北平 うーん、国際ブランドの手数料がネックというのはなかなか大変ですねえ。PayPayはいろいろな店で使えて便利なので、これまで使ってきましたが、でもさすがに利用料を取られるとなると、ちょっと考えちゃうなあ。

 

師範 じゃが、そもそもPayPayカードを使えば手数料が無料どころかポイントもつくぞ。おぬし、何でそうしないんじゃ?

 

北平 クレジットカードを何枚も持つのがどうもイヤで。PayPayカードが年会費無料なのはわかってるんですが……。

 

師範 ふむ、そういうユーザーも確かに多いな。それなら、銀行口座からのチャージという手もある。もしくは、手間はかかるがセブン銀行やローソン銀行のATMなどで現金を残高にチャージするか、他のコード決済に乗り換えるか。

 

北平 他のコード決済だと楽天ペイが私の周りでけっこう評判が良いですね。ポイントがよく貯まると聞くので。どうせ乗り換えるなら、トクできるほうがいいですから。

 

師範 楽天ペイは、以前は楽天カードからチャージする際に0.5%のポイントが付いていたが、昨年6月からそれが廃止。代わりにチャージ残高からの支払い時に付与されるポイント還元率が最大1%から最大1.5%(※1)にアップした。

↑※1:楽天キャッシュでのコード・QR払いが対象。内訳は、チャージ残高(楽天キャッシュ)での支払い時に楽天ペイから1%還元、楽天キャッシュから0.5%還元、合計で1.5%還元となる

 

このポイント付与は楽天カードからのチャージ払いに限らずすべてのチャージ払いに適用されるため、楽天カードユーザー以外には大きな朗報じゃったな。また、楽天ペイは楽天カード紐づけによる支払い、楽天銀行口座からの引き落としによる支払いでも最大1%のポイントが付く。これはPayPayの基本ポイント還元率0.5%と比べると、かなり魅力的と言える。

 

北平 PayPayは最大2%還元になりますけど、それには「PayPayカード ゴールドでの支払い」かつ「前月30回以上(200円以上の支払い)」「前月合計10万円以上」の支払いと、条件がやや厳しいですもんね。

 

師範 その代わりPayPayは「あなたのまち応援プロジェクト」など、全国の地方自治体と提携したポイント還元キャンペーンを精力的に行っとる。例えば、1月は熊本県山都町でキャンペーンが行われ、同町の指定店舗での買い物にPayPayを使うと最大20%相当のポイントを付与。ほかにも当たると最大で支払額全額が戻ってくる「PayPayスクラッチくじ」など様々なキャンペーンを展開するのがPayPayの特徴と言えるな。

 

北平 そういえば昨年12月に東京都と行った最大10%のポイント還元キャンペーンは利用が多すぎて予定の3日前に終了しましたね。

 

師範 あのキャンペーンは楽天ペイも参加していたがな。

 

独自経済圏確立に邁進するPayPay、幅広いユーザーに門戸を開放した楽天ペイ

北平 PayPayが「ユーザーにはPayPayカードを持ってほしい」という姿勢を見せているのに対して、楽天ペイが楽天カードユーザー以外にも門戸を開いているのは対照的に見えます。

 

師範 PayPayに関しては、LLINE Payのサービスが4月に終了するなど、グループ内の事業を整理し、ユーザーを囲い込もうとしているのが見て取れる。その先にあるのは強固な「PayPay経済圏」の確立で、利用できるネットショップを増やしたり、通信障害時でも使えるオフライン決済機能を追加したり、使い勝手の改善に精力的じゃ。これに対し、楽天も楽天ペイ、楽天ポイントカード、楽天Edyをアプリ統合。楽天カードアプリの主要機能も楽天ペイアプリに搭載し、今後は楽天証券や楽天銀行など「楽天経済圏」の様々なサービスがひとつのアプリ上で利用できるようになる。いわば「幅広いユーザーに門戸を開きつつ、『楽天経済圏』のより深い利用も促す」のが楽天の戦略じゃな。ちなみに楽天は楽天ブラックカード、楽天プレミアムカード、楽天ゴールドカードの会員を対象に、カード利用額の引き落としを楽天銀行に設定するとボーナス金利を最大年0.18%付与するなどの特別プログラムを提供開始。これは楽天の上級カードユーザーにとっては大きな魅力となるぞ。

 

楽天ペイは中〜小規模のチェーン店、PayPayは個人商店の加盟店が充実

北平 ところで街中でQRコード決済が使える店って、楽天ペイよりPayPayのほうが多い印象ですね。最近は楽天ペイが使える店も増えてる気がしますけど。

 

師範 単純比較はできんが最新のデータを見てみると、楽天ペイの加盟店数は2024年6月時点で920万か所(「楽天ペイ」「楽天Edy」「楽天ポイントカード」の利用可能箇所合計数)以上、PayPayは2023年3月時点で1000万か所以上(PayPayカードでの利用可能箇所も含む)。楽天ペイは加盟店に中~小規模のチェーン店を多く抱える一方、個人商店の開拓にはどうも消極的に見える。それに対し、PayPayは商店街の個人商店にも積極的に営業をかけて草の根で加盟店を増やしてきた。また、ネット通販への対応を見ても、PayPayがYahoo!ショッピングのほかAmazonで使えるのに対し、楽天ペイは楽天市場では使えるがAmazonでは使えないといった違いがあるな。

 

北平 PayPayが個人商店にも普及した理由はなんなんですか?

 

師範 一番大きかったのは決済手数料じゃ。PayPayでの売り上げに対して加盟店が払う手数料は当初無料に設定され、それでこれまでキャッシュレス決済を導入できなかった小規模経営の店もPayPayを導入することができた。現在は決済手数料が有料化され、1.60%または1.98%になっとる。これに対し、楽天ペイの決済手数料は基本的に3.24%。2021年~2022年に無料だった時期があるが、いまは有料に戻っとる。つい最近、楽天は中小事業者を対象に楽天ペイとクレジットカードの決済手数料を2.20%に引き下げるプランを提供し始めたが、それでもPayPayのほうが割安。これが、街の個人商店にもPayPayが普及した最大の理由じゃ。

 

北平 私がよく利用する店や食堂もPayPayしか使えないところがけっこうあります。なので、PayPayはやはり使い続けたい。

 

師範 クレジットカードを1枚に絞るならよく利用する店舗基準で選ぶのをオススメしたいが、そうでなければPayPayと楽天ペイの二刀流、さらに言えばPayPayカードと楽天カードの2枚持ちで使い分けるのもアリじゃろう。

 

北平 楽天ペイはこれまで使ってなかったんですが、楽天カード会員でなくてもチャージ払いなら1.5%ポイント還元を受けられるのはスゴい。師範が言われるPayPayと楽天ペイの二刀流もそれほどハードルは高くないみたいだし、チャレンジしてみたいと思います。

 

現金派に寄り添うサービスで勝ち上がってきたPayPayは今後も業界をサバイブする!

北平 それにしても、PayPayってQRコード決済シェアトップである一方で、他社のクレカが今後も使えるのか不確定だったりと、今後の展望が少しだけ心配なんですが。

 

師範 確かにPayPay内では他社カードへの対応はずっと問題になっとる。じゃがワシが見るに、PayPayの真骨頂は現金派ユーザーの囲い込み。その意味ではかなり上手くやっとると思うぞ。PayPayはこれまで、Yahoo! JAPANカード〜PayPayカード以外のカードに対し、ポイント二重取りなど他のQRコード決済がやっているクレジットカード優遇を一貫して行なってこなかった。PayPayはまさに現金(現金払い)に寄り添うサービスで、そこがクレカを持たない層に受けたわけじゃ。「PayPayクレジット」などはVISAやMastercardが思いもよらなかった決済方法。また、オンライン決済のみならず、スマホがオフラインの状況下でも決済できるようにする発想もクレジットカード会社にはなかったはず。「キャッシュレス化が正義」と言われる昨今じゃが、個人的にはワシは「最後はキャッシュ(現金)」だと思っとる。

 

北平 えーーッ!! キャッシュレス決済専門家の岩田師範が。マジですか!?

 

師範 というか、キャッシュレスの世の中であっても「現金との関係をどういうふうに保つか」が大事ということじゃ。その意味では世の中が変わっても、PayPayは生き残っていくと思う。一方、楽天は元々クレジットカードありき。楽天市場と楽天カードの組み合わせを武器に、一大経済圏を築いてきた。それだけに「現金に寄り添うPayPay」の躍進はショックだったはず。楽天が楽天ペイを中心に経済システムの再構築を進めているのはまさしくPayPayの影響が大きいと思うぞ。

 

北平 おお、なんだか壮大な話になってきましたね。

 

師範 楽天グループはここ数年ずっと「楽天モバイル問題」に苦慮してきたが、モバイル事業に長年注力を続けており、モバイル事業のアクティブユーザーも楽天グループサービスにさらなる流入と商業価値をもたらした。楽天カードとみずほ銀行との業務提携も発表されたし、ここから楽天の反転攻勢が始まりそう。いずれにせよ、PayPayと楽天ペイがお互いをライバル視し、切磋琢磨している間はお互い成長していくじゃろうな。逆にどちらかが決定打を出して「これで勝ったな!」となったら、その時点で成長は終わりとなるのかもしれん。

 

  • 価格は、特に言及のないものはすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

三井住友カードの「Suica潰し」にJRはどう対抗する? 2025年、知らないとソンするマネーの注目トレンド

クレジットカード・キャッシュレス決済に関する疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は2025年のキャッシュレス決済の注目トピックを取り上げ、業界の動きを岩田師範が解説します!

 

【第24回】2025年のキャッシュレス決済~ポイント還元の動向が知りたい!

 

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わる“クレカのご意見番”。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】登志野 肇(としの はじめ)

会社勤めの傍ら、日々の“ポイ活”に励む37歳独身。クレジットカード3枚のほか、QRコード決済も各種利用し、ポイントがより多く貯まる手段を日々模索している。今回は2025年の“ポイ活”に役立つクレカ業界・ポイント業界の最新事情・展望について、岩田師範に話を聞きに来た。

 

(相談者の要望)

〇2025年に注目すべきクレカ~キャッシュレス決済のトピックを教えて

〇特に共通ポイント(ポイント経済圏)の動向が知りたい

〇生活に直結しそうな業界の動向があれば、詳しく教えて!

 

PayPayは既存ユーザーの囲い込みを本格化! 楽天ペイはみずほ銀行と提携しシェア拡大を狙う!!

師範 2025年のクレジットカードやキャッシュレス決済の動向を知りたいというのはおぬしか?

 

登志野 はい。特にポイント還元については “改悪”されるサービスと、三井住友カードのように利用シーンによって高還元率になるサービスが混在していると感じます。そんな業界で、今年はどんな動きがあるのかぜひ師範の見立てをお聞きしたいと思いまして。

 

師範 確かに2024年を振り返ると、残念ながら新規クレジットカードの発行は少なく、各ポイント経済圏はどちらかというと既存のユーザーを囲い込む動きが目立ったといえる。特に傾向が目立ったのがPayPay/ソフトバンクグループ。これまでもPayPayカード以外のクレジットカードからの引き落としではPayPayポイントが付かなかったが、2025年夏以降は新たな決済方法を導入。

 

他社クレジットカードを利用する場合は、手数料が利用者負担になる可能性が出てきた。そもそも、PayPayは2023年5月に他社クレジットカードの利用を停止すると発表。じゃが、ユーザーの反発の声を受けて停止時期を2025年1月に延期していたんじゃ。2024年12月には他社クレカの利用停止自体を撤回し、2025年夏以降は改めて他社クレカの登録手続きを行うことで、引き続き利用できるようになる。また、国際ブランドとの協議次第では、手数料が発生する可能性もあり、実質的な囲い込みが加速しそうじゃ。

 

また、PayPayと統合されるLINE Payは2024年10月に送金機能が終了し、2025年4月にLINE Payアプリが終了。LINE Payカードも2023年10月末にサービスを停止しており、2025年4月末にはLINE Payの全サービスが終了する。LINE Pay残高、LINE Payライト残高からPayPay残高への移行方法は今後案内される予定とはいえ、ユーザーの混乱は必至。こうした流れのなかでPayPayを離脱する者もある程度出るはずで、こうした動きが吉と出るか凶と出るか今後の動向に注目じゃ。

 

登志野 それに対して、ほかのQRコード決済会社はどんな動きを見せているのでしょうか?

 

師範 楽天ペイはSuicaや西友と提携するなど、引き続き「楽天ポイント経済圏」の拡大に積極的。2024年12月にはみずほ銀行との提携カードである「みずほ楽天カード」を発行した。ユーザーは利用状況に応じてATM手数料や振込手数料が優遇されるほか、みずほ銀行の会員制サービス「みずほマイレージクラブ」の優待特典も今後増える予定。みずほ銀行ユーザーは検討の価値ありじゃろう。

↑2024年12月に登場したみずほ楽天カード。楽天ポイントが貯まり、ATM利用料も無料だが、引き落とし口座はみずほ銀行の口座に限られる

 

登志野 このところ三井住友カードや三菱UFJカードが高ポイント還元で話題ですが、ここにきてみずほ銀行が楽天と連携を強めたのは大きいですね。

 

師範 特にみずほ銀行にとっては、これまでポイント経済圏に足掛かりがなかったため、今回の提携は大きな一歩といえるな。一方の楽天側も3大メガバンクのひとつと提携できたのは大きい。ただし楽天には楽天銀行があるため、みずほ銀行ユーザーに利する特典を積極的に打ち出しづらいのが悩みの種。これに限らず楽天グループは楽天カード、楽天ペイ、楽天Edyなどプレーヤーが多く、グループ内での協力関係を作るのが難しくなっているのが個人的には心配じゃ。

 

大型事業者を統合して日が浅いPontaポイントが今後の台風の目に?

登志野 ほかのポイント経済圏の動きはどうですか?

 

師範 dポイントを展開するNTTドコモは2024年11月から「dカード PLATINUM」の発行を開始。年会費2万9700円でポイント還元率最大20%、レストラン優待サービスやプライオリティ・パスなど上級カードならではの特典も充実した、ドコモ/dポイントのヘビーユーザーには魅力満点の1枚じゃ。対するKDDIも、Pontaポイント還元特典を強化した新料金プラン「auマネ活プラン+」で「au経済圏」ユーザーの囲い込みを強化してきておる。そんななかで特に注目なのは「Pontaポイント」じゃろう。ほかのポイント経済圏はどこもシステムがほぼ確立しているなか、Pontaポイント経済圏は最近au、ローソン、リクルート、三菱UFJニコスといった大型事業者同士がドッキングしたばかりで、いろいろな可能性が見え始めてきている。今後このグループがうまくまとまれば、驚異的な経済圏に発展するかもしれんぞ。

 

コロナ禍で大打撃を受けていたマイルの逆襲が始まる!

師範 2025年のクレカ~キャッシュレス決済業界では、ほかにもいくつかの大きな動きがある。まず、注目は航空マイルじゃな。コロナ禍で、ある意味インバウンドより痛手を受けたのがマイレージ。飛行機が飛ばないからマイルが貯まらず、すでにマイルを貯めている人も海外旅行ができず、マイルを交換して特典航空券を獲得する意味がなくなってしまった。2023年に新型コロナが“5類”に移行。国際旅客便数も徐々に回復し、海外旅行ニーズの増加への期待も高まっとる。そんな流れを後押しできるか注目なのが、ANAが2025年に発行する2種類のカードじゃ。

↑ANAが2025年に発行予定のカード「ANA JCB CARD FIRST」(左)と、「ANA JCB CARD Precious」(右)

 

まず、1月を目処に登場する「ANA JCB CARD FIRST」は従来発行されていた18歳~29歳の社会人を対象にした「ANA JCBカード ZERO」のリニューアル版で、年会費無料ながらマイル還元率が従来の0.5%から1%に倍増。入会・継続ボーナスとして3000マイルが付与される。さらに、年間利用額が税込100万円以上の会員は5000マイルがもらえ、仮に年間100万円使ったとすると合計1万8000マイルが貯まり、東京〜札幌間の往復1人ぶんの特典航空券に交換できる計算じゃ(レギュラーシーズンの予約の場合の例。必要マイル数は搭乗クラスやシーズンにより異なる)。搭乗時のボーナスマイルが10%ぶん付くのも“若きマイラー”には見逃せんポイントじゃの。

 

登志野 それは30歳未満の旅行好きなら絶対持っておくべきカードですね。私は対象外ですが(涙)。

 

師範 ただし、このカードは5年間限定で、その後は自動的にANA JCB一般カードに切り替わる。そしてもう1枚、3月頃に登場予定の「ANA JCB CARD Precious」は、現在「ANA JCBワイドゴールドカード」の所有者で年間ショッピング利用額が税込300万円以上の人が対象の招待制カード。年会費は3万9600円で、従来のゴールドカードにはないプライオリティ・パスが付帯されるほか、年間利用が300万円以上だとマイル還元率が1.2%(300万円未満なら1%)、入会・継続ボーナスで5000マイルが付与される。搭乗時のボーナスマイルが25%ぶん付与されるのはゴールドカードと同じじゃ。

 

登志野 若者向けの「ANA JCB CARD FIRST」は5年間限定ながら、特典的には招待制の「ANA JCB CARD Precious」より上。これで年会無料はおトク過ぎです!

 

師範 それほど航空会社にとって、“未来のお客様”である若者は「宝物」なのであろう。ちなみにコロナ禍以降、マイルを電子マネーとして使う動きが出てきたのも注目すべき変化で、特にANA Payはサービス開始から1年5か月で累計会員数100万人を突破。ANAとしても「瓢箪から駒」の利用者数激増で、これにより航空系の“デジタルマネー”が一般の生活のなかで中心的役割を担う可能性も出てきた。旅行の際にもお土産の購入に使うなどいろいろな価値を生み出すことができる。今後“旅行通貨”として独り立ちする可能性もあり、ワシは密かに注目しておるところじゃ。

 

クレジットカードのタッチ決済を使った「キャッシュレス乗車」が関西を中心に本格普及

登志野 航空マイル以外にも、キャッシュレス決済業界で大きな動きがあると先ほど師範はおっしゃってましたが、それはどんな動きでしょう?

 

師範 ひとつは関西を中心に進んでおるクレジットカードを使ったキャッシュレス乗車の本格普及。三井住友カードが主導・推進する公共交通機関向けタッチ決済サービス「stera transit」が去る10月から大阪メトロ、近鉄、阪急、阪神の4つの鉄道で運用を開始した。2021年より南海電鉄で国内初の実証実験が開始して以降、全国32都道府県130の公共交通機関で採用されてきたが、今回これに548駅が加わり、タッチ決済乗車が利用可能に。2025年末までに全国でシェア7割獲得を目指しとるそうじゃ。

 

登志野 キャッシュレス乗車って具体的にはどうやるんですか?

 

師範 その名の通り、タッチ決済対応のクレジットカードやスマホを端末にタッチして改札を通ることになる。紙のチケットやSuicaなどの交通系電子ICカードがなくても交通機関が利用でき、海外からの観光客には特に便利。大阪万博開催間近ということで、関西での普及が一足先に進みそうじゃ。ちなみに現在はVisa、JCBなどが対応済みで、Mastercardも順次対応が進んでおる。

 

登志野 ポイント還元の面でのメリットはどうなんですか?

 

師範 クレジットカードのタッチ決済での交通利用は、通常のクレカ決済と同様にポイントが貯まる。例えば楽天カードなら、乗車料金100円ごとに1ポイントが付く。SuicaやPASMOなどの交通系ICカードはチャージ時にポイントが貯まるカードが限られるため、これは多くの人にとってメリットとなるな。また、先日三井住友カードが京王電鉄でのタッチ決済乗車で利用額の半額をキャッシュバックするキャンペーンを行ったが、今後もこうしたキャンペーンが行われる可能性は大きい。そもそもワシから見ると、キャッシュレス乗車の本格化は三井住友による“Suica潰し”の感があるが、Suicaのような通勤・通学に最適化したデバイスはあっても良いし、むしろあるべきだとワシは思う。クレカなら買い物のほかに、決済システムが複雑な鉄道やバスにも使えるというが、果たして本当にそこまで手が回るのか、思わぬトラブルが起こりはしないか。いくら海外の交通機関はクレカ決済が席巻しているといっても、餅は餅屋。無理するなと言いたい。

 

登志野 でも、Suicaを運営するJR東日本なんか今後苦しい戦いを強いられそうですね。

 

師範 そうじゃな。実際、JR東日本が12月にSuicaの新戦略を発表したが、その中身を見ると完全にクレジットカードのタッチ決済に対抗したものになっていた。ゆくゆくは改札にタッチするのもやめて、無線で改札をスムーズに通れるようにするらしい。

 

登志野 改札をタッチなしで通れるのは便利だし未来を感じますね。

↑JR東日本は2024年12月にSuicaの刷新を発表。タッチなしで改札を通過できる「ウォークスルー改札」などの新サービス提供を予定しているという

 

師範 また、Suicaを買い物で利用する際にも上限2万円の規制をやめ、多額の買い物ができるようにする予定。いずれにせよ、交通分野での小手先の技術競争ではなく、より乗客のことを考えたいろいろなサービスを開発してほしい。旅行もただ単に目的地に移動するのでなく、例えば「行き先を教えられずに旅行が始まる」茶目っ気のあるツアーなど、ゲーム性があって個人的に面白いと思うぞ。 

 

  • 価格は、特に言及のないものはすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

物価高騰時代に得するクレカとは? スーパーで5.5%還元の三菱UFJカードが人気沸騰!

クレジットカードやキャッシュレス決済の疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範がズバッと答える連載企画。今回は、高いポイント還元で人気を集めている三井住友カード(NL)と、ポイントの優待特典を大幅に改変し、カード業界でにわかに存在感を高めている三菱UFJカードをはじめとする「物価高に対抗できるカード」を紹介します。

 

【第23回】物価上昇が続くいま、生活防衛のために持つべきクレジットカードを教えてしてほしい!

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数

 

【今月の悩める子羊】根引 望(ねびき のぞむ)

都内で働く42歳。共働きの妻と息子の3人暮らしで、帰りが早い日には妻の代わりに夕食の買い物をすることも多い。近頃スーパーで買い物をするにつけ、物価上昇を実感。値上げぶんを少しでも取り返すクレジットカードの情報を聞きに道場を訪ねた。

 

(相談者の要望)

〇物価高に対抗できるクレジットカードが知りたい

〇特にスーパーでトクできるカードだとうれしい

〇スーパーごとにどんなカードがおトクか知りたい

 

「ポイントがおトクに貯まるクレカ」の代表格は三井住友カード(NL)

師範 物価高に対抗できるクレジットカードを探しとるのはおぬしか?

 

根引 はい。生活必需品をはじめ、モノの値上がりが止まらず。安売りセールの日にまとめ買いするなどできる抵抗はしているのですが……。

 

師範 ふむ。そういえば米の値段も夏の米不足以降、一気に上がってしまったのう。毎年秋に楽しみにしとる山梨の種なしぶどうも価格高騰でたまにしか食べられん! シャインマスカットも高値のままじゃ……。

 

根引 ……えーっと、師範のぶどう好きはよくわかりましたが、そういうわけで、クレジットカードも見直すというか、少しでもポイント還元率の高いものを持ちたい、と思った次第です。

 

師範 ここ数年で見ると、「ポイントがおトクに貯まるカード」の代表格は三井住友カード(NL)じゃろうな。通常のポイント還元率は0.5%ながら、対象のコンビニ・飲食店でスマホでのVisaのタッチ決済/Mastercardタッチ決済の支払いを行えば+6.5%還元で、合計7%の還元(カードのタッチ決済の場合、2024年12月31日までは合計5%還元、2025年1月1日からは1.5%還元)。さらに、最大+5%の家族ポイント、最大+8%のVポイントアッププログラムを組み合わせれば、最大20%の還元率になる。

↑「Vポイントアッププログラム」で還元されるポイントの内訳。さまざまな条件をクリアすることで、合計で最大20%が還元される仕組み(※)

 

根引 おお、還元率最大20%は魅力的! タッチ決済で7%還元だけでもすごいです。

 

師範 ただし、対象は「コンビニ・飲食店」。こうした高ポイント還元を獲得できるのはセブン-イレブンやローソン、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン、サイゼリヤやガストなどに限られる。

 

根引 コンビニでも買い物するし、ファストフード店も利用する人にはお得なカードだなぁ。物価高で、買い物のあとレシートを見るたびに目が飛び出てしまうので、スーパーで高ポイント還元率の恩恵が受けられるカードがあると助かるのですが。

 

※1:Oliveフレキシブルペイについてはクレジットモード(家族カード含む)での利用のみ対象 ※2:プラチナプリファード保有者は「プリファード特約店」として通常のポイントぶん1%に加えて+6%ポイント還元 ※3:一定金額(原則1万円)を超えるとタッチ決済でなく決済端末にカードを差し支払う場合がある。その場合の支払いぶんは、「スマホのタッチ決済で+6.5%還元」のポイント加算の対象とはならなず、タッチ決済とならない金額の上限は店舗により異なる場合がある ※4:iD、カードの差し込み、磁気取引は対象とならない ※5:家族ポイント最大12%還元を受けるには、取引条件がある ※6:カード種別や入会時期・Vポイントアッププログラムの取引状況などにより、還元率が最大+8%を超える場合がある ※7:ポイント還元率の合算は、複数のVポイントアッププログラムの条件を達成した場合、20%を超えることがあるが景品表示法の定めに基づき、実際にポイントアップされる還元率の上限は20%までとなる ※8:Oliveフレキシブルペイの追加した支払いモードでの利用分については、利用時の支払いモード設定しているカードのポイントサービスが適用される

 

「スーパーでトクできるカード」として三菱UFJカードが一躍注目を集めている!

師範 そこで最近話題になっとるのが三菱UFJカード。このカードは従来からセブン-イレブンやローソン、松屋などで5.5%ポイント還元する優待特典を行ってきたが、そのポイント優遇対象が今年の8月から一気に拡大。オーケーやオオゼキ、東武ストア、肉のハナマサなどのスーパーでも5.5%ポイント還元を受けられるようになったんじゃ。

↑今年8月より優待特典の対象を拡大。上記の店舗でのカード利用で5.5%の還元が受けられる

 

根引 これはうれしい! わが家はまさにオーケーがメインで買い物するスーパーのひとつです。クレジットカード払いで5.5%の還元を受けられるのはお得ですね!

 

師範 しかも同カードの1375円の年会費が8月以降の入会から永年無料になった。まあこれまでも年1回の利用で無料ではあったが、「無条件で無料」はやはり利用者にはうれしいもの。ちなみに、既存の会員についても、永年無料に改定される予定じゃ。

 

根引 なんだか三菱UFJカード、勢いに乗ってる感じですね。

 

師範 その通り。三菱UFJカードがセブン-イレブンとローソンで最大5.5%のポイント還元を始めたのは2022年の7月。その施策にはどうしても三井住友カードの「後追い」感が拭えなかった。その印象が変わったのはこの8月からで、何といってもスーパーがポイント還元の対象になったのが大きいな。

↑三井住友カード(NL)と三菱UFJカードを比較。三菱UFJカードのリニューアルで年会費がいずれも永年無料に。基本のポイント還元率は0.5%と同じだが、ポイントが貯まる単位など条件が異なるので注意

 

大手スーパーごとに、トクできるクレジットカードが必ずある!

根引 三菱UFJカードでトクできるスーパーはどちらかというと中堅というか中規模スーパーですね。もっと全国規模で展開するスーパーを利用するときにおすすめのカードも教えてほしいんですが。

 

師範 まず、イオン系列はもちろんイオンカード。毎月20日と30日の「お客さま感謝デー」は買い物代金が5%オフとなるほか、55歳以上なら毎月15日に対象のイオンカードでクレジット払いしても請求時に5%オフとなる。次に、イトーヨーカドーではセブンカード・プラスがおトク。毎月8・18・28日の「ハッピーデー」にイトーヨーカドーで同カードを使うと、ほぼすべての商品が5%オフになる。ちなみにセブンカード・プラスはこの11月にリニューアル。セブン-イレブンでセブンカード・プラスを使うと合計10%ぶんのnanacoポイントが貯まり、引き落とし口座がセブン銀行ならさらに+1%のポイント還元も受けられる。

 

根引 月に2~3回の割引でも、まとめ買いで対応すれば問題なしですね。

 

師範 ライフでの買い物で最もおトクなのは、ライフのクレジットカード「LC JCBカード」かの。カード提示で税抜200円ごとに1ポイント、クレカ決済で税抜200円ごとに1ポイント、口座引き落としで税込200円ごとに1ポイントと合計3ポイントの還元が行われ、総計ポイント還元率は約1.5%。また、ライフといえばこの10月から楽天ペイ、d払い、au PAYでの決済が可能になった。ただし楽天ペイの場合、「チャージ払いで最大1.5%ポイント還元プログラム」の対象店舗にはならないので要注意じゃ。

 

根引 楽天ペイはけっこう1.5%ポイント還元できるところが多くて重宝してるんですが、ライフが対象外なのは残念ですね。

 

師範 西友やサニーでは近年、楽天カードが最もおトクなカードとなった。両スーパーで買い物時に楽天ポイントカードを提示すると税抜200円ごとに1ポイントで0.5%、楽天カード決済で1%の計1.5%ポイントが貯まり、楽天ポイントカード提示+楽天ペイのチャージ払いなら合計最大2%のポイント還元じゃ。このように、スーパーでトクするクレジットカードについては、そもそも自分の生活圏内にないスーパーと相性の良いカードを選んでも意味がない。自分がよく使うスーパーで一番ポイント還元率の高いカードを選ぶのが最も効率的なおトクの取り方じゃ。

 

根引 そんななかで、三菱UFJカードで毎日5.5%のポイント還元を受けられるオオゼキやオーケーなどのスーパーが近くにあれば超ラッキーってことですね。

 

師範 ちなみに、三菱UFJカードは2025年の1月31日まで、対象店舗ごとの利用金額合計1000円につき最大15%をポイント還元するキャンペーンを実施中。2024年後半~2025年に最注目のカードが三菱UFJカードであることは間違いないじゃろうな。

 

三井住友カードは「Olive」が“枷”に? 広く門戸を開く三菱UFJカードに勝算あり!?

師範 対する三井住友も現在「Olive」という金融サービスを展開中で、クレカ積立でポイントが貯まるサービスも提供。三井住友カードは日本で1、2位を争う横綱カードじゃ。じゃがワシは、三井住友の戦略に若干の不安を感じる。それはOliveという新サービスが、逆に“枷”になっているのではと思うからじゃ。

 

根引 はあ、“枷”ですか?

 

師範 三井住友の最大20%のポイント還元は、Oliveフレキシブルペイ(一般)の利用が前提。Oliveフレキシブルペイ以外のVポイント対象カードだと最大でも15.5%のポイント還元になる。ということは最大20%のポイント還元を受けるにはOliveに加入していること、つまり三井住友銀行の口座を持つ必要がある。もちろんOliveのアカウントを使い銀行やクレジットカードから保険、証券まで幅広くアクセスできるのは便利じゃが、これまでメインで使っていた口座を別の銀行に移行するのに抵抗のある者も多いはず。

 

要は、三井住友カードは、元々三井住友銀行の口座を持っている人、三井住友を応援している人をメインターゲットとしているように見えるんじゃ。その点、三菱UFJカードはクレジットカードの利用でトクしたい人に一層広く門戸を開いている。しかも今回、5.5%ポイント還元の対象店舗にスーパーが加わり、一気に利便性が上がった。現状カードとして普通に持っていてメリットがあるのは三菱UFJカードといえるじゃろう。

 

【ココは抑えたい! 三菱UFJカードの注意点】

三菱UFJカードの「5.5%ポイント還元」「最大15%ポイント還元」に関しては注意点がいくつかあります。まず、三菱UFJカードのポイントシステムは、1か月の利用額の合計1000円ごとに1ポイントの「グローバルポイント」が貯まる、というのが基本。そして、8月に加盟店が大幅に拡大した「ポイント優遇特典」では、その基本ポイントに、1000円ごとに10ポイントのスペシャルポイント(ポイントアップ加盟店特典)が付与されます。注意すべきはこのスペシャルポイントの算出方法。ここでの「利用額合計1000円」は、「同一対象店かつ同一の決算方法」ごとに集計したもので、例えばオオゼキで800円、オーケーで800円での買い物に分かれるとポイントがつかず、また同じオオゼキで買い物してもクレジットカードで800円、Apple Pay(QUICPay)での決済800円に分かれるとポイントがつきません。月ごとの集計なのでポイントがつかない可能性は少ないですが、“切り捨て”られる金額を少なくしたいなら、できるだけ買い物するスーパーと決済方法を統一したほうが良いでしょう。また、「最大15%ポイント還元」を受けるにはキャンペーン登録が必要。追加特典は、3か月ごとに集計され、各期間で対象となる利用金額の上限は2万9000円までとなります。

 

そしてもうひとつ、5.5%や最大15%の還元率ですが、これを実現するにはポイントの交換に注意が必要。三菱UFJカードのグローバルポイントは、電子ギフトや他社の様々なポイントに交換して使えますが、その交換レートが交換先ごとに違うのです。例えばAmazonギフト券は100ポイントで500円ぶんに交換可能、ビックカメラのビックポイントとベルメゾン・ポイントはグローバルポイント500ポイントを2500ポイントに交換でき、どちらも「1ポイント=5円」のレートを実現しています。一方、Pontaポイントやdポイントは「グローバルポイント200ポイント→800ポイント」で「1ポイント=4円」のレート。楽天ポイントやnanacoポイント、WAONポイントは「グローバルポイント200ポイント→600ポイント」で「1ポイント=3円」のレートとなります。

 

このように買い物や決済の仕方、ポイント交換に少し注意を払うことで、5.5%、さらには15%のポイント還元をマックスまで享受できるのです。

 

 

  • 価格は、特に言及のないものはすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

働き方改革でクレカの選び方が変わる! 副業にも使えるビジネスカード最前線

クレジットカードやキャッシュレス決済に関する疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、会社経営者や個人事業主はもちろん、近年増加する副業を持つビジネスマンも注目のビジネスカード・法人カードについて、岩田師範が解説します!

 

【第22回】副業用にオススメのビジネスカードを教えて!

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるご意見番。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】加瀬郷 阿夫里(かせごう あふり)

大手通信会社に勤める35歳プログラマー。会社が副業を認めていることもあり、3年前からアプリ開発の副業を開始。これまで一般カードをビジネスの支払い専用のカードとして使ってきたが、そろそろ副業用にビジネスカードを作りたいと考え、アドバイスをもらいに道場を訪ねた。

 

(相談者の要望)

〇副業用に最適なビジネスカードを教えてほしい。

〇ビジネスカードを選ぶ際に重視すべきポイントを知りたい。

〇ビジネスカードのトレンドや注目のカードがあれば教えて。

 

「働き方改革」でビジネスカードの注目度が急上昇!

師範 ビジネスカード(法人カード)について話を聞きに来たのはおぬしか?

 

加瀬郷 はい。趣味で続けているゲームアプリ作りが数年前から副業化できまして。ついてはそれ専用にクレジットカードも作ったほうがいいかなと思ったもので。

 

師範 ほほう。近年「働き方改革」が叫ばれるようになり、実際大手企業でも、これまで認めていなかった副業を認める会社が増えている。三井住友銀行もこの10月から副業を解禁してニュースになっとったが、おぬしもそんな時流に乗っとるわけじゃな。ところでおぬし、そもそもビジネスカードを持とうと思った理由は何じゃ?

 

加瀬郷 それはやはり、経理管理がラクになるからですかね。また、特典もいろいろ付いてると聞くので、気になってます。

 

師範 なるほど。それに加えて重要なのは、カードの利用限度額が個人カードより高めに設定されていることかの。ただ、その限度額はカードのランクによって変わるし、何よりカード会社の与信審査で限度額が決められる。カードを発行する会社によって限度額も異なるので、自分の事業活動に必要な金額をあらかじめ把握して、事業に支障をきたさない限度額に設定しておくことが重要じゃ。

 

加瀬郷 まあ、私の場合は個人でのプログラム開発なんでそんなに限度額を高めに設定する必要もないんですけど、たしかに毎月の経費がどれぐらいになるか知っておくことは重要ですね。

 

開業すぐのフリーランスもビジネスカードが持てる時代

師範 そもそも法人カードには「ビジネスカード」と「コーポレートカード」「パーチェシングカード」の3種類がある。ビジネスカードは中小企業や個人事業主向けのカードで追加カード枚数の目安は3~5枚、コーポレートカードは追加カードを20枚以上発行できる主に大企業向けの法人カードを指す。ちなみに「パーチェシングカード」は法人携帯電話料金や光熱費など法人の購買活動での支払いに特化して使うカードで、ほとんどが物理カードが発行されないカードレスタイプ。まあおぬしにはほぼ関係ないカードじゃろ。

 

加瀬郷 お話を聞く限り、私に関係があるのはビジネスカード、ということになりそうですね。

 

師範 そうじゃな。ビジネスカードに関しては、最近はフリーランスや副業を行う者も手軽に作れるよう、「登記簿・決算書の提出不要」など申し込み手続きが簡便化されたものも多い。従来、ビジネスカードは個人カードと比べて審査が厳しく、審査通過の目安はだいたい「設立年数3年以上」と言われてきたが、上記の「登記簿・決算書提出不要」なカードの登場により、開業したての個人事業主や設立直後の法人でもカードが作れるようになってきた。ただし、申込者本人が支払い遅延など、個人のクレジットヒストリーに傷がついていたり、多額のローンを抱えていたりすると審査通過は厳しいから要注意じゃ。

 

ビジネスカードを選ぶ際には利用限度額とビジネスに役立つサービスの有無に注目

加瀬郷 実際にビジネスカードを選ぶ場合、どんなところに注意したらいいんでしょう?

 

師範 先ほども言ったが、限度額は大きいほうがいい。仕事の大事な場面で限度額を超過して必要なモノが買えない、なんてことになったら目も当てられん。個人カード(一般カード)の限度額はせいぜい100万円。これに対し、ビジネスカードの限度額は200万~300万円、あるいはそれ以上のものもあり、それらのカードを選んでおけば安心感は大きい。合わせてセキュリティの高さや不正利用保険の有無もチェックしたいところじゃ。また、カードに付帯する特典・サービスにも注目。自分が使っている会計ソフトと連携できれば経理処理や確定申告の大幅な負担軽減が期待できるし、海外出張が多いなら旅行傷害保険の充実や空港ラウンジの無料利用も魅力になる。接待が必要な人にはレストランの利用優待といったサービスも有効に使えるじゃろう。

 

加瀬郷 私の場合、接待は必要なさそうですが、会計ソフトとの連携はすごく助かるはずです。

 

師範 もちろん、年会費とポイント還元率も重要。ビジネスカードのなかには年会費無料のものもある一方、年会費の高いカードは付帯サービスが充実しておる。ビジネスカードの年会費は経費として計上できるから、ビジネスに役立つサービスが多いなら年会費高めのカードを持つも良し。事業を始めたばかりなら、年会費無料カードから始めるのもアリじゃ。ポイント還元に関しても、少しでも還元率が高いほうが経費削減に役立つ。決して軽んじるわけにはいかんぞ。

 

新登場のJCB「Biz ONE」は個人事業主・フリーランスに最適な1枚

加瀬郷 では師範のオススメは?

 

師範 まずはJCBがこの秋に発行開始した「Biz ONE」かの。これは個人事業主、フリーランス向けに作られたカード。追加カードは作れんが、年会費無料でポイント還元率は1%、利用限度額は最大500万円と十分なスペックじゃ。このカードはJCBオリジナルシリーズなので、様々な優待店でさらにポイント還元率を上げることが可能。特にAmazon利用時のポイント還元率が最大2%になるのも見逃せん。なお、同カードは取引先への銀行振り込みをカード払いで代行できる「請求書カード払い」に対応。請求書の支払い期限を約40日先延ばしできるぞ。

 

加瀬郷 たしかに予定していた入金が遅れた際に支払いを先延ばしできるのは安心です。

 

師範 さらにこのカードは、マネーフォワード、freee会計、弥生など複数のクラウド会計ソフトに対応し、会計処理を自動化可能。カード入会後に「弥生会計オンライン」を2年間、「やよいの青色申告オンライン」を1年間無料で利用できるのも魅力じゃ。

 

加瀬郷 そこまでできて無料って、たしかにスゴいですね。

 

師範 ちなみに、カード払いする経費が年間100万円以上なら上位カードの「Biz ONE ゴールド」を推奨。年会費5500円(税込)が初年度無料に加え、年間利用額100万円以上で、翌年度も年会費無料になる。特典・サービス面では、「Biz ONE」の特典に加え、空港ラウンジの無料優待、医師や保健師、看護師などによる健康・医療・メンタルヘルスなどの24時間相談サービス、提携医療機関の人間ドックを優待料金で利用できるサービスを付帯。特に「人間ドックサービス」は、高額な人間ドックを受ける機会の少ない自営業者、フリーランスには魅力的じゃ。ショッピングカード保険やスマホ保険、サイバーリスク保険の付帯も見逃せん。

 

加瀬郷 それだけサービスが手厚いと、個人事業主なら年会費5500円も高くないかもです!

 

師範 ちなみに、Biz ONEもBiz ONE ゴールドも登記簿など法人の本人確認書類は提出不要。法人名義のほか、代表者個人名義の口座でも決済できる。ただし旅行傷害保険の適用がないことで、万が一の旅行保険は個人カードでカバーする必要があるな。

 

「三井住友カード ビジネスオーナーズ」はフレキシブルな補償プランと新幹線のネット予約サービスに特色あり!

師範 ほかに副業用のビジネスカードというと、三井住友カード ビジネスオーナーズ(一般)あたりが王道。年会費無料で利用限度額は最大500万円(所定の審査がある)。登記簿や決算書の提出が不要で、「請求書支払い代行サービス」(請求書カード払い)にも対応しておる。通常ポイント還元率は0.5%ながら、三井住友カードと2枚持ちするだけでAmazonでの買い物やETC利用、ANAとJALの航空券購入で決済した際のポイント還元率が1.5%になる。会計ソフトはfreee、マネーフォワードと連携可能。また、最高2000万円の海外旅行傷害保険(利用付帯)が付いているが、この保険をスマホ保険や弁護士保険など別の補償プランに切り替えもでき、すでに個人カードに旅行傷害保険が付いているなら、他のプランに切り替えたほうがおトクじゃ。さらに、同カードには東海道・山陽・九州新幹線チケットのネット予約&チケットレス乗車サービスも付帯しておる。

 

加瀬郷 新幹線のネット予約サービスは、出張など国内の移動が多い人には便利そうですね。

 

師範 同カードは追加カードを無料で18枚発行でき、中小企業の法人カードにも最適。また、このカードを年間100万円以上利用すると「三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールド」に年会費永年無料でアップデートの招待状が届く。ゴールドカードは空港ラウンジが無料で利用できるほか、最高2000万円の海外・国内旅行傷害保険も付帯(利用付帯)。年間100万円以上の利用で1万ポイントがプレゼントされる継続特典も付いとるから、招待を断る理由はないな(対象取引や算定期間など適用条件がある)。

 

加瀬郷 こちらのカードもポイント還元率ではJCB Biz ONEにやや劣るものの、特典では甲乙つけ難いですね。特にゴールドカードは1万ポイントの継続特典に惹かれます。

 

師範 ちなみにその三井住友カード ビジネスオーナーズ ゴールドは通常の申し込みも可能。これも登記簿・決算書提出不要で、起業したてでも申し込めるぞ。

 

法人カードの新トレンドは「破格の利用限度額」

師範 ところで法人カードの世界で、あるトレンドが生まれとる。それは、クラウド会計会社などが発行する「利用限度額が超高額なカード」。例えば「マネーフォワード ビジネスカード」は、後払い式とプリペイド式の2つの支払い方法が選べ、後払い式では独自の与信審査により利用限度額は最大10億円、1決済あたり最大1億円まで利用可能となっている。一方、プリペイド式なら与信審査不要で、チャージ上限額は原則5000万円、最大20億円まで増枠もできる。ポイント還元率は通常の支払いで1%、マネーフォワード関連の支払いで3%。毎月の利用額に応じて0.5%相当のボーナスポイント(「10万円で500ポイント」など)がもらえるのも魅力じゃ。専用スマホアプリ「マネーフォワードPay for Business」を使えば月次計算の負担が軽減。「マネーフォワード クラウド経理」や「マネーフォワード クラウド会計」と連携すれば、経理業務をより効率化できる。これで年会費無料、決算書の提出も不要というから驚きじゃ。

 

加瀬郷 年会費無料とは思えない特典の多彩さにめまいがしそうです!

 

師範 さらに、最近注目を集めとるのが「UPSIDERカード」。年会費無料の法人専用カードで、利用限度額10億円かつ発行枚数無制限。銀行残高や入出金情報を元に限度額を算定する独自の与信モデルを採用し、設立直後の法人でも申し込み可能じゃ。また、このカードはキャッシュバック制を採用。毎月最大1.5%が利用額から差し引かれる。利用明細データはリアルタイムに反映され、月次計算をスピード化。マネーフォワードクラウド会計/クラウド会計Plusに加え、freeeや勘定奉行、弥生など多彩な会計ソフトとも連携できるなど、経理のサポート能力も抜群。同カードは「スタートアップ企業が上場するまでの一貫サポート」を謳っており、実際に新規上場企業の20%以上、6万社以上がUPSIDERカードを利用しとる。

 

加瀬郷 ふぇ~、世の中はそんな時代になってるんですか! まあ私に関しては、会社を上場させるなんて夢のまた夢ですけど、万が一副業が本業になって起業……なんてことになったら、ぜひそういうカードのお世話になりたいですね。

 

  • 価格はすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

 

 

「ポイント経済圏」の一部になる未来も近い?コンビニATMがいま再注目のワケ

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、キャッシュレス決済が普及してきたいま、改めて注目を浴び始めているATM(現金自動預け払い機)の最新情報を岩田師範が解説します!

 

【第16回】ATMの最新事情を詳しく知りたい!

 

【解説する人】岩田 昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わる、同分野のオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】長都 泰雪(おさつ やすゆき)

妻と娘の3人で暮らす38歳会社員。近年キャッシュレスでの買い物がメインになってきたとはいえ、現金は常に2~3万円を財布に入れている。ところが普段利用している銀行のATMが突然撤去され、手数料無料での現金引き出しに手間取る事態に。そこで最近のATM事情とATMをより便利に活用する方法を教わるべく、道場の門を叩いた。

 

(相談者の要望)

〇最新のATM事情を知りたい

〇手軽に手数料無料でATMを利用する方法はないか教えてほしい

〇コンビニのATMをよりおトクかつ便利に利用する方法も知りたい

 

維持管理費が負担になり、銀行はATMを持て余し気味

師範  いつも使っていた銀行ATMがなくなって困っとるのはおぬしか。

長都  はい。自宅や会社の近くにあった私がよく使う銀行のATMが全滅しちゃって。ほかの銀行やコンビニのATMを使うと手数料がかかるんで、あまり使いたくないんです。

師範  なるほど。確かに近年、銀行ATMは減少の一途を辿っとるな。元々ATM(現金自動預け払い機)は銀行の所有物じゃったが、キャッシュレス決済の普及とともに利用頻度が減り、1台あたり月30万円とも言われる維持管理費が負担になっとる。正直どの銀行も、ATMを持て余しとる状態じゃ。

長都  キャッシュレス払いは現金引き出しの頻度が減るし余計な小銭もたまらなくて便利だと思っていましたが、銀行にとっては逆に不都合なことも起きていたんですね。

 

コンビニATMの進化が止まらない! 入出金でポイントが貯まるサービスも

師範  給料振り込みの普及による窓口の混雑と行員の業務負担軽減のために広まったATMが、ネットバンキングやキャッシュレス決済の普及でその存在意義を無くしつつあるのは感慨深いが、ともあれ銀行は、ATMを「できるだけやめたい」「お金を払ってでも下請けに出したい」と考えとるようじゃ。

そこで注目を集めとるのがコンビニATM。コンビニ的にも店内でお金が引き出されればそのまま買い物につながるということで、両者の思惑が一致。銀行ATMからコンビニATMへの移行が急激に進んでおる。コンビニATMで一番普及しているのはセブン銀行のATMで国内設置台数は約2万7000台にのぼる。

セブン銀行はコンビニATMを最初期に始めた銀行のひとつで、本体を小型化しつつICカード対応など機能を積極的にアップデート。コンビニATM普及の立役者となった。スマホがあればキャッシュカードなしで取引が可能になったのも画期的じゃったな。

↑2019年に登場したセブン銀行の新型ATM(第4世代)。昨年には画面のリニューアルを実施し、操作性が向上した

 

長都  急に現金が必要なときにスマホだけで引き出せるのは確かにすごく便利です。

師範  スマホ決済アプリや交通系電子マネーへの現金チャージにも対応。ちなみにセブン銀行ATMは海外送金に対応しており、日本で働く外国人労働者が母国の家族に送金するのにも役立っとるそうじゃ。

長都  最近ではコンビニATMで提携銀行の口座開設や住所変更の手続きなんかもできるみたいですね。

師範  また、直近ではローソン銀行が今年1月から新型ATMの導入を開始。7月から流通予定の新紙幣に対応するほか、PayPayなどスマホ決済アプリに加えて、NFCにも対応することでSuicaなどの交通系電子マネーや楽天Edyなどの電子マネーへの現金チャージが可能になる。

また、ATMで入出金をするだけでPontaポイントが貯まるサービスでは、スマホのPontaアプリの読み取りが可能になるなど、利便性が大幅にアップした。

↑今年1月に登場したローソン銀行の新型ATM機。全国のローソン店舗などに順次導入予定

 

長都  ATM利用でポイントが貯まるとは魅力的ですね。

師範  とは言っても、毎月最大10ポイントだけじゃがな。

長都  でもまあ「ちりつも」だし、あるに越したことはありません。

師範  ファミリーマートにはイートネットATMのほか、一部店舗にはゆうちょATMが設置されとるな。イートネットATMはコンビニではファミリーマートのほかデイリーヤマザキなど、さらにスーパーやドンキホーテなどにも設置。どのATMもほぼすべての金融機関のキャッシュカードに対応し、現金が引き出せないということはほぼない。

↑ファミリーマートの一部店舗に設置されているゆうちょATM

 

↑同じくファミリーマートなどに設置のイーネットATMは、4月より順次新機種の導入・入替を行っている

 

コンビニATMを手数料無料で利用する方法とは?

長都  なるほど。それだと今後はコンビニATMに頼らざるを得ないですね。でも、個人的には手数料がかかるのがイヤで……。

師範  手数料を無料にする方法もないわけではないぞ。一番手っ取り早いのはコンビニ系の銀行口座を作ること。例えば、セブン銀行ATMも同行の口座があれば7時~19時の引き出し手数料が無料で、預け入れも24時間無料じゃ。

ローソン銀行の口座なら、ローソン銀行ATMの預け入れ/引き出しは7時〜19時まで手数料無料。ファミリーマートに設置のゆうちょATMはゆうちょ銀行の口座があれば平日の8時45分~18時と土曜日の9時~14時は預け入れ/引き出し無料となる。

長都  新たに口座を作ったりそこに定期的に入金するのは面倒だけど、確かに自分がよく使うコンビニ系の銀行口座があれば、時間帯に制限はあれど、手数料を気にせず現金が引き出せますね。

師範  さらに、他の銀行口座でも場合によっては手数料無料で現金引き出しは可能じゃ。三井住友銀行のキャッシュカードは、セブン銀行ATMやローソン銀行ATMなどで毎月25・26日8時45分~18時の預け入れ/引き出し手数料が無料(25・26日が土日祝日と重なる場合、25日はその前営業日、26日はその翌営業日が対象)。

三菱UFJ銀行のキャッシュカードは毎月25日と月末の8時45分~18時の預け入れ/引き出し手数料が無料となる(25日・月末が土日祝日・12/31など銀行休業日の場合はその前営業日が対象)。

一方、みずほ銀行の「みずほマイレージクラブ」会員なら、特典ステージに応じてイーネットATMでの利用手数料や時間外手数料が月に1~3回無料に。

長都  へえ、それはチェックする価値ありますね。それに、現在は私の買い物もキャッシュレスがメイン。現金で払う額はそんなに多くないから、現金引き出しも実は月に1回でなんとかなる。大手銀行キャッシュカードでのコンビニATMの現金引き出し無料の日があるのは、案外有益なのかもしれません。

 

今後はコンビニATMが社会の「ターミナル」として不可欠な存在に!

師範  日本でもキャッシュレス決済が本格化。それにより、ATMの役割が終わりつつあるように見えるかもしれんが、実際はそうではなく、「ATMの役割が大きく変わってきた」と見るのが正しい。

例えば、Suicaなどの交通系電子マネーに現金をチャージできるのは、JRや私鉄などの駅に設置してあるチャージ機の役割を代行するもの。ネットバンキングや、スマホアプリのアカウントと口座の情報の紐付けに利用できる「ATM認証コード」の発行サービスは、キャッシュレス決済のセキュリティ向上に寄与しておる。

最近では消費者金融の返済もコンビニATMでできるし、海外送金への利用や、行政サービスとの連携にも使われるなど、コンビニATMでできることはどんどん増えておる。今後はコンビニATMがひとつの「ターミナル」となり、社会インフラの一部として不可欠な存在になっていくじゃろう。

↑コンビニ大手3社設置の銀行ATMの主な機能(例)

 

長都  でも社会的意義があるとしても企業としてメリットがないと続けていくのは難しいのでは?

師範  その点で注目なのがローソン銀行ATMじゃ。現金の入出金でPontaポイントが貯まったり、PayPayやLINE Payなどスマホ決済アプリに加えて、新型ATMでは交通系電子マネーへの現金チャージが可能になった。現金の入出金でPontaポイントが貯まることで、ATMがPonta経済圏の一部になることも十分に考えられる。

一方、セブン銀行ATMには7iDに口座を登録することで、ATMの利用時に5マイルが貯まるサービスもある(月3回まで)。ほかにも、ドコモの金融事業進出の可能性もあるなど、各社の今後の動向が大いに気になるところじゃ。

 

  • 価格などの情報はすべて本稿執筆時のものです。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

【ポイ活戦線に異常あり】Tポイント消滅でウエル活も変わる!?PayPayとの交換も終了間近

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、いよいよ間近に迫ったTポイント消滅についての疑問をピックアップ。Vポイントとの統合で激変する最新のポイ活事情について解説します!

 

【第15回】Tポイント消滅後の最新ポイ活事情を教えて!

 

【今月の悩める子羊】 蔦 保人(つた やすと)

昔からTポイントカードは保持していたが、最近の物価高でさらにポイ活に興味を持ち始めた30代のサラリーマン。Tポイントでおトクに買い物ができると最近話題の「ウエル活」を始めようと思った矢先にTポイントがなくなることを知る。今後の身の振り方を相談すべく、岩田師匠のもとを訪れた。

 

(相談者の要望)

〇TポイントとVポイントが統合すると、いままで貯めたポイントはどうなるの?

〇Tポイントの消滅でポイ活の勢力図はどう変わる?

〇話題の「ウエル活」も大きく変わるって本当?

 

旧Tポイントユーザー/Vポイントユーザー、どうなっちゃうの?

蔦   これまでコツコツ貯めてきたTポイントがなくなってしまうというのは本当ですか?

 

岩田  そういえば4月22日にTポイントがVポイントと統合されるな。

↑「Tポイント」の名称は4/21で消滅。4/22にはVポイントと統合し、新生Vポイントとして生まれ変わる

 

蔦   私のTポイントはどうなっちゃうんでしょう?

 

岩田  結論から言うと、おぬしが貯めたTポイントがなくなることはない。特に手続きをしなくても、Vポイントとしてそのまま利用できる。これまで使っていたTカードも引き続き利用できるぞ。

 

蔦   なんだ、そうだったんですね。ちょっと安心しました。ちなみに、妻はVポイントを持っているんですが、その場合はどうなるんでしょう?

 

岩田  そちらも、いままでと変わらない。しかも、「Vpassアプリ」や「Vポイントアプリ」、「三井住友銀行アプリ」を使っているなら、そのアプリで新しいVポイントカードを表示できるようになるんじゃ。

 

蔦   消滅するどころか、パワーアップするんですね。ちなみにTポイントとVポイント、両方持っていたらどうなるんでしょう?

 

岩田  両方持っている場合は「Vpassアプリ」などから、モバイルTカードを連携することでポイントを合算できる。

 

蔦   よかった。どのポイントのユーザーでも損することはないんですね。

 

会員数1.46億人の超巨大ポイント経済圏が誕生!

岩田  ただし、保有ポイントは変わらずとも、ポイント経済圏の勢力図は変わってくる。

 

蔦   どういうことでしょうか?

↑主要ポイントのユーザー数。4/22の統合により、「Vポイント」のユーザー数は最大級に拡大

 

岩田  Vポイントは三井住友によるポイントで、最近では「三井住友カードNL」などで会員数を約2000万人にまで増やしてきた。とはいえ、dポイントやPontaポイントなどと比べるとまだまだ新興ポイントじゃ。一方で、Tポイントは約1億2600万人のアクティブユーザー数(1人で複数アカウントを保持している場合も含む)を誇るポイントシステムの代名詞的存在。単純合算すると統合後のVポイントはTポイントユーザーを獲得することで、一気に主要ポイントへと駆け上がるんじゃ。

 

蔦   そういえば、Vポイントって聞き始めたのもここ何年かでした。

 

岩田  ポイント会員を通信サービスや光熱費、スマホ料金などグループ会社による複数サービスで徹底的に囲い込む「ポイント経済圏」は、これまでNTTドコモやauなどによるキャリア系、もしくは楽天などの流通系が中心じゃった。しかし、TポイントとVポイントの統合後には、Vポイントが銀行系としてこれまでにない経済圏を作る可能性もある。もし今後もVポイントを使うのであれば、いまのうちに通信費や光熱サービスなどをチェックしておいて、もしそういった経済圏が進んだらどうするのか、検討しておくのもひとつの手じゃろう。

 

“ウエル活”勢やPayPay勢は早めの対策がマスト!

岩田  TポイントとVポイントが統合することは昨年6月にすでに発表されていたが、4月の新生「Vポイント」誕生を前にして他社の対応も少しずつ明らかになってきた。特に注目すべきなのが「ウエル活」じゃ。ウエルシア薬局では従来、毎月20日に「ウエルシアお客様感謝デー」を開催。Tポイントを200ポイント以上利用することでポイントの1.5倍ぶんの買い物が可能じゃった。

 

蔦   いま話題の「ウエル活」ですよね!

 

岩田  うむ。例えば、Tポイント1000Pで1500円ぶんの買い物ができるといった具合じゃな。しかし、今月はじめにウエルシアグループはHPで、今後WAON POINT中心のサービスへ以降することを告知。新生Vポイントでの買い物に「お客様感謝デー」が適用されるのは8月20日が最後となる。9月以降はWAON POINTのみが対象となり、一部では「改悪」との声も聞こえてきとる。これまで貯めたTポイントはVポイントとなり、このVポイントはWAON POINTへ等価交換できるものの、メインでTポイントを貯めてきた人にとってはあまり旨みのない話じゃ。

↑5月以降、ウエルシアやハックドラッグでもらえるポイントがWAON POINTへ徐々に移行。毎週月曜日の「ポイント2倍デー」やボーナスポイントについては5月から、WAON POINTのみが対象となる

 

蔦   メインで貯めるポイントをいま一度検討し直す必要がありそうです。

 

岩田  ちなみに、TポイントからPayPayポイントへの交換も3/31をもって終了する。ウエル活とは関係なく、PayPayをメインで使っているなら早めに交換しておくのが得策じゃろう。また、VポイントはVポイントで、統合に際して積極的なキャンペーンを仕掛けている。史上最大レベルのポイント統合じゃ。キャンペーンなどでしっかりポイントを稼げる一方で、これまで期待していたサービスが終わってしまうことも。Tポイント関連でやりたいことがあれば、統合前にやってしまうことが肝要じゃ。

 

  • 価格などの情報はすべて本稿執筆時のものです。

構成/佐伯尚子 文/鹿野 薫 監修/岩田昭男

クレカ枠の拡大でポイントがさらに貯まるって本当!?いまさら聞けない「新NISAのキホン」

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、最近話題をかっさらっている「新NISA」の基本とクレカの活用方法について解説します。

 

【第14回】「新NISA」の基本とおトク技が知りたい

 

【今月の悩める子羊】新谷 東志(あらたに とうじ)

30代のサラリーマン。ちょこちょこと貯金はしているものの、子どもにかかるお金もばかにならず老後を思うと少し不安。「資産形成をしなければ……」と思いつつも仕事に追われ、あと一歩を踏み出せずにいる。

 

(相談者の要望)

〇新NISA、なぜこんなに話題になっているの?

〇NISAとの違いはなに?

〇クレジットカード払いでポイントが貯まるって本当?

 

そもそも新NISAとは? 

岩田  新NISAについて知りたいというのはおぬしか。

 

新谷  そうなんです。最近よく「新NISA」の名前を聞くので気になってはいるんですが、投資ってリスクがつきものじゃないですか。

 

岩田  その気持ちはよくわかる。じゃが、60〜70代になって仕事を引退したとき、ある程度の蓄えがあったほうが何かと安心ではあるな。「ほったらかし投資」という選択肢もあり、いつでもやる方に舵を切れるのが「新NISA」の魅力でもある。

 

新谷  それじゃあとりあえず、知識だけでも付けておきたいんですが正直全然知らなくて。

 

岩田  そもそもNISA(少額投資非課税制度)とは、資産運用で得られた利益に対してかかる税金が非課税になる制度のこと。NISAは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があるんじゃが、それぞれ非課税となる限度額があった。「一般NISA」なら最大600万円、「つみたてNISA」なら最大800万円じゃ。簡単に言うと、この非課税となる限度額が1800万円まで大幅に拡大されたのが「新NISA」なんじゃ。

 

新谷  かなり上がったんですね! でも、私みたいに積極的に投資しない人には関係なさそうだなぁ。

 

岩田  それだけではない。これまでは資産運用で得られた利益が非課税になる期間に制限があったが、新NISAではその制限が一切なくなったんじゃ。

 

新谷  自分が好きなタイミングで投資信託を売却できるってことですね。

 

岩田  うむ。今回の新NISAではこの変更点が一番の驚きを持って受け入れられとるようじゃな。期限を気にせず、じっくりと資産形成ができるから老後のための資産形成もやりやすくなった。

 

新谷  そうは言っても、何をどうすればいいのやら……。

 

岩田  チェックしたいのが金融庁が「つみたて投資枠対象商品届出一覧」で挙げている商品じゃ。これは国が長期投資に適していると認めた商品で、ある程度安定した投資ができると見ていい。

 

ポイントが貯まる「クレカ積立」に要注目!

新谷  ちなみに、新NISAでクレジットカードって使えるんですか?

 

岩田  投資信託においては積立投資に限ってクレカで購入することは認められている。

 

新谷  同じお金を払うならポイントが付いたほうが断然お得ですもんね。

 

岩田  ただこれには、ひとつ制限があってな。クレジットカードで買えるのは月に5万円までだったんじゃ。

 

新谷  私なんかだとそれでも十分そうですが……。

 

岩田  新NISAで配当や売却額が非課税になる「つみたて投資枠」の上限が月10万円に拡大するのに合わせて、金融庁は3月中にも、クレジットカードでの積み立て分の上限を月に10万円までに引き上げる見通し。従来、法律では「毎月10万円まで」という制限だったため、カード会社の決済サイクルにより先月支払い分の引き落としと当月の積み立てが被ってしまうことがあり証券会社は自主的に「月5万円まで」と制限をかけてきた。

 

しかし、「一回あたりの積み立ては月10万円が限度」と文言が変わることで、名実ともに月に10万円までクレジットカードで投資信託を購入できるようになるんじゃ。セゾン 投信やtsumiki証券、大和コネクト証券がすでに上限を10万円に拡大。また、その他の証券会社も法令改正を待って対応を検討するというところが多いようじゃから、3月以降の各社の動きに注目じゃ。

 

新谷  クレカで月に10万円分も使えば、ポイントも結構貯まりそうですよね。

 

岩田  うむ。いま巷で注目されているのがSBI証券と三井住友プラチナプリファードの組み合わせじゃ。この場合、ポイント還元率は5%。SBI証券は現時点では月5万円までクレカで積み立てられるから、年間にすると3万円分のポイントがゲットできる計算になる。

 

新谷  めちゃくちゃおトクじゃないですか! 人気が出るのも納得です。

 

岩田  しかし、実はこれには注意が必要。というのも、プラチナプリファードは年会費が3万3000円かかる。このカードをメインにしてその他の買い物でもたくさん使うなら良いんじゃが、単体で見れば実質はマイナスなんじゃ。逆に、還元率が0.5%と控えめに思えても年会費無料で使える三井住友カード(NL)なら年間3000円分のポイントがつく。

 

また、年会費5500円の三井住友カードゴールド(NL)はクレカ積立の還元率が1%。年間にすると500円のプラスじゃが、年間100万円の利用で年会費5500円の年会費が永年無料になるからこれが適用されれば年間6000円のプラスとなる。

 

各人のクレジットカードの使い方にもよるし、キャンペーンなどもあるから、どちらがおトクとは一概には言えん。また、もしクレカ積立の上限が10万円に拡大したとしても、今後還元率が下がらないという保証は一切ない。SNSで話題だからといって無闇に選ぶのではなく、長期的かつ現実的な数字としっかり向き合うことが大切じゃ。

 

「経済圏」による囲い込みを利用すべし! ただし…

新谷  他にも注目の証券会社ってあるんですか? ここでクレジットカードを使うといいよ、というところ。

 

岩田  ワシがいま注目しとるのは「auカブコム証券」じゃな。「auマネ活プラン」を利用すれば12か月間クレカ積立のポイント還元率が3%にアップし、その後も2%の還元が受けられる。「auマネ活プラン」とはauが最近始めた新しいスマホ料金プランのことでこれを利用すると、auに関係する様々なサービスでポイント還元率がアップするんじゃ。

 

ただし、特典を最大限利用するには条件もあって、例えば、先ほど紹介した還元率3%は、年会費のかかるau PAY ゴールドカードでの積立が条件となる。

 

新谷  うーん、ちょっと悩ましいですね。投資信託の話にスマホ料金まで絡んでくることになるとは……。

 

岩田  最近、スマホのキャリア各社をはじめ多くの企業が自社サービスの利用でおトクを得られる「経済圏」戦略を進めている。もしすでにポイント経済圏を絞っているなら証券会社を選ぶときの決め手にもなるじゃろう。ただし今後、各社のサービスがより複雑化していくことも考えられるし、1%を超えるポイント還元率が何年も安定してそのままという例は正直多くない。

 

無論、利益が得られればそれが一番なんじゃが投資にはリスクがつきものじゃから、無理のない額で自分のライフスタイルに合ったものをじっくりと吟味してほしい

 

・価格などの情報はすべて本稿執筆時のものです。

構成/佐伯尚子 文/鹿野 薫 監修/岩田昭男

2024年得する「お金」のトレンド。Vポイント、新NISAほか知らないと損する5つのキーワード

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、知っておけば必ず得する2024年のマネーのトレンドを岩田師範が大胆予想。2023年のトレンドを振り返りながら、2024年の必修キーワードを徹底解説します。

【第12回】2024年に注目すべきマネーの話題を教えてほしい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】琴司茂 徳則(ことしも とくのり)

妻と2人の息子と暮らす40代男性。受験を控えた子どもの教育費がかさむなか、ここ数年の急激な物価高騰で食費や雑費もばかにならず、将来が少し心配になってきた。2024年こそはマネーのトレンドにのってうまくやりくりができるよう、師範に話を聞きに来た。

 

相談者の要望

○2024年、チェックすべきマネーのトレンドを教えてほしい

 

琴司茂 はぁ……。

師範  どうしたんじゃ。ため息なんかついて。

琴司茂 いえ、物価も光熱費も右肩上がりで、2023年は出費の多い一年だったなと思って。2024年こそは損することがないように、注目すべきキーワードを教えてほしいんです!

師範  おう、そうか。2024年こそは、しっかり得する年にしたいのう!

 

国内最大規模のポイント経済圏誕生!「新生Vポイント」

師範  まずは大躍進を遂げた、Vポイントの話からじゃ。

琴司茂 Vポイント? CMとかでチラチラ見たりはしましたが、そんなに凄かったんですか?

師範  凄いなんてもんじゃないぞ。一気にdポイントや楽天ポイントと肩を並べるまでに急成長しとるんじゃ。

琴司茂 ええ、そこまで!? そもそもポイントと言えば、Tポイントじゃないですか。

師範  そこなんじゃよ。実はな、2024年春で、TポイントはVポイントに統合されるんじゃ。

琴司茂 あのTポイントがなくなるってことですか? 時代も変わるんですね。でも、そもそもVポイントって何なんですか?

師範  Vポイントとは、三井住友カードのポイントプログラムで獲得できるポイントのこと。元々は2001年からあったポイントじゃが、毎月のカード利用金額合計1000円ごとに1ポイントを付与していた「ワールドプレゼント」が、2020年に200円ごとに1ポイント獲得できる「Vポイント」にリニューアルしたのをきっかけに、急速にサービスを拡大させているんじゃ。特に、今回のTポイントとの統合は大事件じゃな。

琴司茂 統合ってことは、TポイントのユーザーがマルっとVポイントユーザーになるってことですか?

師範  そのとおり。単純計算で会員数は1.46億人にもなり、楽天ポイントやdポイントをも超える存在になるぞ。

↑新生「Vポイント」のロゴマーク。従来のTポイントのロゴデザインをベースにVのマークを印象的にあしらった青と黄色のVポイントが誕生する

 

また、ナンバーレスカードとして知られる「三井住友カードNL」の登場でVポイントが貯まりやすくなったり、三井住友の金融サービスをアプリでシームレスに利用できる「Olive」の登場も注目を集めている所以じゃ。Vポイントが貯まる三井住友系のサービスはどんどん拡大しておるから、いまVポイントを貯めないのはもったいない。

琴司茂 うーん、そこまでとは思いませんでした。いますぐ始めます!!

 

全国の公共交通機関で拡大中!「タッチ決済乗車」

師範  次のキーワードは「タッチ決済乗車」かな。

琴司茂 Suicaでタッチして乗車……ですよね? そんなの当たり前じゃないですか

師範  いやいや。Suicaだけじゃない。実は最近、クレジットカードをタッチして乗車できるサービスが関西圏を中心に拡大しつつあるんじゃ。

琴司茂 へえ! それはすごい。

師範  関西では南海電鉄に加え、阪神・阪急・近鉄の私鉄3社、さらに大阪メトロや大阪モノレール各社のほぼ全駅が2024年度中にタッチ決済乗車に対応を予定しとる。インバウンド対策が一番の目的じゃが、国内在住の利用者もクレジットカードのポイントが貯まったりチャージ不要で乗り降りできたりといった恩恵が受けられる。

↑リップルマークと呼ばれるタッチ決済対応マークが施されたクレジットカードや、設定済みのスマホを対応自動改札機にかざして利用

 

琴司茂 ちなみに関東はどうなんですか? 私はSuicaユーザーなので、関東の方が気になります。

師範  首都圏では2023年4月から江ノ島電鉄が全線でタッチ決済を導入したのを皮切りに、東急電鉄も田園都市線での実証実験を開始。2024年春には東急線全線への拡大を目指しとる。

京王電鉄も名乗りを上げとるし、地下鉄では東京メトロも2024年度中にクレカのタッチ決済とQRコードを使った乗車システムの実証実験を開始予定じゃ。ただ、Suicaの使用範囲であるJR東日本ではまだ積極的ではないようじゃがな。

琴司茂 うーん、面白いですけど、JR東日本でやってくれないのはちょっと残念です。

師範  実は、JR東日本も殴られっぱなしではないようじゃ。それについては次のキーワードで解説しよう。

 

楽天経済圏とのタッグで巻き返しなるか「Suica経済圏」

琴司茂 最近Suicaは他のサービスに押されて、あまり目立たない印象です。

師範  いやいや、Suicaもただ手をこまねいているわけではない。ワシは来年こそ、Suicaの逆襲が始まると思っているんじゃ。注目はSuica経済圏じゃ。

琴司茂 Suica経済圏ってなんですか? 楽天経済圏とかは聞いたことあるんですが……。

師範  これまでSuicaはコンビニや駅ナカでの利用が主で、チェーン店では使いにくい一面があった。ただ、最近Suicaは楽天ポイントとの連携を強化。2023年には、iPhoneでも楽天ペイからモバイルSuicaへのチャージが可能となり、楽天ポイントが使って貯まるようになった。

これはあくまでもワシの予想じゃが、来年以降はこれまで以上に楽天との連携を強固にして、楽天カードが利用できるチェーン店でもSuicaが利用できるようになるのでは、と期待しとる。これまで使いやすくとも利用範囲が狭かったSuicaの利用範囲がより広くなると見とるんじゃ。

↑従来、Android端末では「モバイルSuica」の発行・チャージが可能だったが、2023年6月よりiPhoneの利用者も「楽天ペイ」アプリと「モバイルSuica」を連携して直接チャージできるようになった

 

琴司茂 Suica1枚で生活ができるように……なったらうれしいですね。

 

新しいポイ活ツールとして大注目「誰でもゴールドカード」

琴司茂 そういえば、クレジットカードって最近どうなんですか?「〇〇ペイ」みたいなQRコード決済勢に押されて、ちょっと存在感がなくなっているのかなと思ったんですが……。

師範  いや、そういうわけではないようだぞ。クレジットカード業界もちゃんと盛り上がっておる。特にゴールドカードはハードルがここ数年で下がったことで、新たなポイ活のツールとして、ゴールドカードが注目を集めてきとるんじゃ。

現に、2023年11月にNTTドコモが発表した調査によると、ゴールドカード保有者の約6割が個人年収400万円未満。初めてゴールドカードを持ったきっかけの1位が「ポイントやマイルが貯まりやすいから」という結果が出た。つまり、いまやゴールドカードはステータスのためのものではなく、使い方次第でお得を享受できる新しいツールになってきたんじゃな。

琴司茂 そうなんですね。でも、ゴールドカードってサービスは充実しているけど、還元率とかは一般カードと比べて大差ないことが多いと聞いたことがあるような。私はゴールドカードを持ってもサービスを使いこなせる自信がないし……。

師範  実は、ゴールドカードの還元率も最近上がってきているんじゃ。例えば、最近注目を集めているのが、三井住友カードの「Oliveフレキシブルペイ(ゴールド)」。Google PayやApple Payに登録して特定の店舗で使えば7%還元でポイントを獲得できるというすぐれもの。

しかも「三井住友銀行」アプリに月一回ログインで+1%、同アプリ内で「Vポイントアッププログラム」を選べばさらに+1%、合計で9%還元が達成できるんじゃ。

琴司茂 そんな簡単に9%はすごい! だけど、どうせ特定の店舗っていうのがかなり少なかったりするんじゃないですか?

師範  いや、セブン-イレブンやローソン、サイゼリヤなど全国チェーンばかりじゃよ。

琴司茂 でも年会費も、お高いんですよね?

師範  初年度は5500円じゃが、年間100万円以上の利用で、次年度以降年会費が永年無料になるんじゃから、これは見逃せん。

琴司茂 毎月の光熱費などの支払いを集約すれば確かに、手の届かない話ではないですね。

師範  ゴールドカードのハードル低下はこのカードだけにとどまらん。例えばNTTドコモの「dカード GOLD」のようなキャリア系のゴールドカードなんかは、通信費の支払いに利用することで年会費をペイできる場合もある。これまで「ゴールドカードは年会費が高いし私には不向き」と思っていた人も、ぜひ改めて情報をチェックしてほしいものじゃ。

 

クレカ積立額が最大10万円に拡大「ほったらかし新NISA」

琴司茂 そういえば、NISAが今年から変わったと聞きましたが……。

師範  そうなんじゃ。2024年1月から新NISAが始まるんじゃな。

琴司茂 いったい何が変わるんですか? 色々と記事が出ていて、結局何が違うのかよくわからなくて。

師範  まず、変わるのが年間の投資上限額。これまではつみたてNISAが年間40万円、一般NISAが年間120万円までじゃったが、新NISAではつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円、合計360万円までが投資できるんじゃ。月の積立も、月額10万円まで拡大したぞ。

琴司茂 あれ、つみたてNISAと一般NISAの区分けはどうなったんですか?

師範  実はこれまでつみたてNISAと一般NISAは併用ができなかったが、新NISAでは併用できるようになった。

琴司茂 それは便利ですね!

師範  一番のポイントは非課税保有限度額も上がったこと。つみたてNISAが最大800万円、一般NISAが最大600万円だったのが、新NISAでは1800万円(内、成長投資枠が1200万円まで)に上がったのが大きい。

琴司茂 かなり上がりましたね。

師範  それと、非課税保有期間も変わったようじゃぞ。

琴司茂 たしか、これまではつみたてNISAが最大20年、一般NISAが最大5年でしたよね。そこそこ長いイメージでしたが……。

師範  それが、新NISAでは保有期間が無期限になった。

琴司茂 うわ、そこまで変わったんですね! それならやらないと損ですね……。

師範  マネー系の情報を逐一チェックするのは大変じゃが、半年に一回だけでもざっくりと情報を確認しておくといいじゃろう。せっかくラクに得できる話題があるのに、それをスルーしてしまうのはとてももったいない。

琴司茂 積極的に情報をキャッチして、来年こそはお得をゲットします!

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

構成/佐伯尚子 文/鹿野 薫 監修/岩田昭男

【交通系ICと何が違う?】チャージ不要で改札ピッ!「タッチ決済乗車」最新事情

クレジットカードやキャッシュレス決済にまつわる疑問や悩みに、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、公共交通機関におけるクレジットカードを使ったタッチ決済乗車の最新事情について、岩田師範が詳しく解説します。

【第11回】クレジットカードのタッチ決済乗車について教えてほしい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード~キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】浅羽野 勤(あさはや つとむ)

通勤や取引先訪問、出張で電車に乗ることが多い32歳男性。最近「クレジットカードのタッチ決済で電車に乗れるようになる」との話を聞くが、いまのところSuicaに満足しており、タッチ決済にする利便性がいまひとつわからない。そこで「タッチ決済乗車」のメリットや現況について、岩田師範に訊きに来た。

 

相談者の要望

○改札タッチ決済が現在どれくらい普及しているのか知りたい

○Suicaなど交通系ICカードとの違いについて教えてほしい

○タッチ決済乗車にはどんなメリットがあるのか知りたい

 

「タッチ決済乗車」導入が日本各地で加速中!

師範  クレジットカードの「タッチ決済乗車」について知りたいというのはおぬしか?

 

浅羽野 はい。ネットニュースなどで「Suicaなどの交通系ICカードを使わずクレジットカードをそのままタッチするだけで電車に乗れる」という報道を見て、興味が湧いたんです。

 

師範  確かにこの話題はカード業界では“旬”と言えるな。2021年4月に、南海電鉄の一部駅でVisaのタッチ決済とQRコード決済を利用した入出場の実証実験が開始。これ以降、各地で急速に改札タッチ決済の実証実験や正式導入が進んどる。

↑Visaのタッチ決済に対応した改札。Visaのタッチ決済機能を搭載したカードまたはスマホを機器にかざすことで、改札を通過でき決済も完了する

 

首都圏では今年4月から江ノ島電鉄が全線でタッチ決済を導入したのを皮切りに、この夏から東急電鉄も田園都市線での実証実験を開始。2024年春には東急線全線への拡大を目指しとる。東京メトロも2024年度中にクレカのタッチ決済とQRコードを使った乗車システムの実証実験を開始予定じゃ。

 

浅羽野 へえ~、クレジッカードだけじゃなくて、QRコードを使って乗車できるシステムもあるんですね!

 

師範  関西では上述の南海電鉄に加え、阪神・阪急・近鉄の私鉄3社、さらに大阪メトロや大阪モノレール各社のほぼ全駅が2024年度中にタッチ決済乗車に対応予定。関西はタッチ決済乗車の普及で関東を一歩リードする形になるかの。

 

浅羽野 関西でこれだけタッチ決済乗車が進んだのは、やはり大阪万博に向けての動きですかね?

 

師範  それもあるが、ワシは日本のタッチ決済乗車の旗振り役である三井住友カードのお膝元が関西、というのが大きいと思うぞ。三井住友カードは元々関西で「PiTaPa」という交通系電子マネー(ICカード)を展開。すでに20年近い実績がある。今回、関西私鉄各社が採用するのも三井住友カードなどが提供するstera transitというシステムじゃ。各社が同システムを採用したのも「PiTaPa」の実績を買って、という部分が大きいと思うぞ。

 

浅羽野 そもそも、タッチ決済乗車ってどういう仕組みなんですか? Suicaなどの交通系ICカードとはどんな違いがあるんですか?

 

師範  タッチ決済による乗車も、日本の交通系ICによる乗車も、近距離無線通信技術を使った乗車システム(改札システム)であるのは同じ。違いは、日本の交通系ICがFeliCaという通信技術を使うのに対し、タッチ決済ではNFC Type-A/Bという技術を使っている点じゃ。2つの技術を単純に比べると処理速度ではFeliCaが上。NFC Type-A/Bを活用した交通機関での決済では「処理時間最長0.5秒以内」がルールなのに対し、FeliCaは「0.2秒」と圧倒的に短い。

 

ただし、三井住友カードなどが主導するstera transitは、FeliCaのそれには及ばないものの、Type-A/B規格を採用しつつ処理時間を「0.25〜0.35秒」まで高速化しとるぞ。

 

また、交通系ICとタッチ決済のもうひとつの違いは、改札のリーダーがカードを認識するまでの距離にある。例えば、Suicaが認識される距離が最大85mmなのに対し、NFC Type-A/Bは最大40mm。つまり、Suica(交通系IC)のほうがかなり早くから利用者が改札を通るのを認識し始めることになる。

 

浅羽野 そう聞くと、わざわざFeliCaより技術で劣る規格を採用する必要はないんじゃないかとも思いますけどね。

 

師範  ところが、世界中でFeliCaを採用しとる交通機関はほぼ日本のみ。逆に言えば、世界の多くの交通機関では、Type-A/B規格が採用されておる。海外からの観光客の目線で言えば、普段使いのクレジットカードで日本の交通機関をそのまま利用できるのは大きなメリットなんじゃ。そうしたタッチ決済乗車も、特に乗降者数の多いJR新宿駅などでは、ラッシュ時に混乱を来すのではとの指摘もある。

 

じゃが、観光客が慣れない交通系ICカードへのチャージ不足などにより改札を通過できないといった事態を防ぐ効果や、実は利用客は混雑時にはそこまで早いスピードで改札を通過していない可能性もあり、この点については更なる検証が求められるじゃろう。

 

JR東日本は来年以降にチケットレスの「QR乗車」を開始

浅羽野 でも、Suicaに強力なライバルが生まれることで、JR東日本は焦ってるんじゃないですか?

 

師範  ワシもJR東日本はこれからが大変じゃと思うが、いまのところ、目立った対応策は聞こえてこんな。前述の通り、改札での処理速度の問題から、とりあえずNFC Type-A/Bを使ったタッチ決済は使わぬようじゃ。ただ、現在チケットを購入して乗車している人向けに、「えきねっと」アプリを使ったQRコードによる乗車サービスを、2024年度以降に開始予定ではある。

 

浅羽野 おお、それはどういう仕組みなんですか?

 

師範  「えきねっと」で乗車券などを購入する際に「QR乗車券」を選択し、チケット購入後にえきねっとアプリに表示されるQRコードを改札機にかざせば駅改札を通れるというものじゃ。

↑えきねっとアプリの画面イメージ。表示される乗車に必要なQRチケットを、自動改札機のリーダーにかざして通過する

 

わざわざ駅の券売機まで行かなくてもチケットを購入してそのまま乗車でき、在来線も新幹線もシームレスに利用できるということで利用者のメリットは大きい。

 

また、駅(JR東日本)側にとっても、高価な券売機や自動改札機の購入コストを減らせ、大幅なコスト減が見込める。そもそも、磁気乗車券を使った自動改札のシステムは機器製造にもメンテナンスにもコストがかかり過ぎ、各鉄道会社の悩みの種じゃった。乗車チケットのQRコード化は、こうした問題を解決する願ってもない好機となる。

 

ちなみに、JR西日本も2024年度から、スマホを使ったQRコード乗車サービスを開始予定。一方、JR九州はstera transitを使ったタッチ決済乗車を採用と、同じJRでも管轄地域によって対応が違うのが面白いところじゃ。

 

浅羽野 でも、QRコードを使った乗車って、改札の処理速度は大丈夫なんですか?

 

師範  実は、QRコードの体感の処理時間はタッチ決済と比べてかなり短い。というのも、QRコードは改札機のリーダーがコードを読み取れるまでの距離が長いため、スマホ画面をリーダー画面に近づけ始めた段階から読み取りを開始できるんじゃ。ただし、スマホ画面がリーダーに近過ぎると逆に読み取れなくなるので、利用には“コツ”が必要じゃ。

 

浅羽野 そうなると、日本ではタッチ決済乗車よりQRコード乗車のほうが普及する可能性がありそうですね?

 

師範  インバウンドがあるから、タッチ決済乗車がなくなることはないじゃろ。ただし、QRコードはアプリなしのWebブラウザだけでも利用できるし、周遊券やテーマパークなどの入場券と込みのチケットの発行も容易。

 

もっとも、タッチ決済乗車も1日に一定額以上の利用があれば、1日乗車券を買わなくてもそれと同額を超える追加請求は行われないようにできるなど、かなり柔軟な料金設定が行える。交通系ICのような定期券の発行や子ども料金の設定が難しいといった課題はあるが、しばらくは交通系ICとタッチ決済、QRコードの3つが共存する状況が続くのではないかな?

 

「タッチ決済乗車」は登録&チャージ不要でスグ使える

師範  国際ブランドのタッチ決済を活用した公共交通機関向けのソリューションであるstera transitは三井住友カードが提供するサービスで、Visa、JCB、アメックス、ダイナースクラブ、銀聯などが利用可能なほか、マスターカードも今後対応予定じゃ。

 

浅羽野 主要ブランドがそれだけ対応していると、確かに外国人観光客も安心でしょうね。タッチ決済乗車を利用するには、登録は必要なんですか?

 

師範  いや、Wi-Fiマークを横にしたようなタッチ決済対応マーク「リップルマーク」付きカードであれば、登録なしですぐに使える。

↑タッチ決済対応のカードの例。Wi-Fiマークにも似た「リップルマーク」が対応の目印だ

 

また、「後払い式」なのでオートチャージの設定をしなくてもチャージ不要で使えたり、利用運賃に対して各カードのポイント還元が受けられるなど、メリットは大。デパートなどでの買い物と交通機関の利用とで同じポイントが貯まるようになり、ポイント付与に一貫性があるのはかなり利便性が高いはずじゃ。

 

ちなみに、タッチ決済を利用した乗車システムは、Suicaなど特定の支払い方法に限定されずに手持ちのクレカで支払いができることからオープンループと呼ばれとる。交通系ICカードは、主要都市の鉄道会社以外だとSuicaなどと相互利用できず、非常に使い勝手が悪かった。そういう意味でも、オープンループのシステムは地方の鉄道にはメリットが大きいと言えるな。

 

浅羽野 そうなると、JR東日本もぜひタッチ決済を導入してほしい気がします。

 

師範  うーん、これまでSuicaという交通系ICを牽引してきて、独自性へのこだわりも強いJR東日本は、stera transitには参加せんのじゃなかろうか。実際に、JR東日本は今年、Suicaの改札システムにおいて「センターサーバー方式」を採用。これまで各駅の改札でローカル処理していた運賃計算を、クラウド処理に移行していくと発表した。

 

今回独自の“サーバー方式”採用で、従来の処理速度を維持しつつ、「東京で乗って青森で降りる」などSuicaを使った「エリアまたぎ」が“技術的に”可能になるほか、運賃の割引クーポンや、鉄道沿線の商業施設やイベントと融合したチケットなど、業態をまたがる柔軟な商品展開も可能になる。ただし、具体的なプランはまだ聞こえてこんがな。

 

浅羽野 うーん、 “魅力”という点ではちょっと弱い気がしますけどね。

 

師範  おぬしもそう思うか! クレカ~キャッシュレス業界の専門家のなかには「むしろSuicaを使ったポイント経済圏構築を考えたほうがよいのではないか?」という意見もあって、ワシもそれに同意するな。

 

とにかく、いまのままではSuicaのシェアが脅かされるのは間違いない。JR東日本も本気を出してSuica経済圏の確立に乗り出すのではないかと、ワシなどは期待して見とるんじゃが、さてどうなるじゃろ?

 

◎情報は掲載時のものです。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

【物価高騰時代の新常識】ドラッグストアでいまスグ実践できる家計防衛術とは?

クレジットカード~キャッシュレス決済のおトクさや使いやすさを巡る状況は刻々と変化しています。そんな現状に戸惑うビギナーの悩みにクレカの鉄人・岩田昭男師範がズバッと答える連載企画。今回は、物価上昇が続くなかで最近活性化し始めたドラッグストアでのポイント付与事情を解説します。

【第10回】ドラッグストアのポイント還元の最新事情を教えて!

 

【解説する人】岩田昭男

岩田昭男◎クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】三重鳥 月人(みえどり つきひと)

妻と2人の子どもと暮らす35歳会社員。近年物価が上がり、家計が圧迫されているのが悩みの種だ。生活費を抑えるため、日用品や食品を買うのにドラッグストアをよく利用。ポイントもストアポイントとQRコード決済の多重取りを心掛けている。なんとかいまよりおトクにポイントを貯める方法がないか、師範の助言を求めて道場を訪ねた。

 

相談者の要望

○ドラッグストアのポイント還元の最新事情が知りたい

○おトクなポイント多重取りのコツを教えてほしい

○食品スーパーでのポイント還元事情も知りたい

 

クレカ利用で三重取り、四重取りも可能に!

師範 ドラッグストアのポイント還元について知りたいというのはおぬしか?

 

三重鳥 はい。この頃のドラッグストアって薬や生活雑貨だけでなく食品や調味料も安くて充実して、私も妻に頼まれてよく会社帰りに買い物してます。ただ、それでも最近の物価高でドラッグストアの商品もすごく値上がりしたんで、これまで以上にポイント還元を有効に使って家計の足しにしたいと考えてるんです。

 

師範 むむ。その気持ちよくわかる! 特に、ペットフードの値上がりにはワシもほとほと困っとるところじゃ。

 

三重鳥 そもそもドラッグストアのポイント還元の現状ってどうなってるんでしょう?

 

師範 ドラッグストアはポイント還元についてはどこも積極的じゃな。大手チェーンのほとんどは独自のポイント制度を持っとるし、主要なクレジットカード、電子マネー、QRコード決済ならほぼ対応しとるから、各決済事業者のポイントも貯まる。さらに、チェーンによっては楽天ペイやid、WAONなどの特約店にもなっており、そういう店舗ではポイントの三重取りも可能じゃ。

 

例えば、マツモトキヨシではストアポイント1%が貯まるが、実は同チェーンはdカード特約店でもあるため、dカード決済で決済ポイント1%と特約店ポイント2%の計3%のdポイントが付与される。さらに、dポイントカード提示でも1%のdポイントが貯まり、実質合計5%ぶんのポイント還元となる。

 

三重鳥 そうなんです。私もそれを知ってdカードを作っちゃいました。

 

師範 また、最近巷でおトクな買い物ができると人気なのがウエルシア。「ウエル活」という言葉が話題になったように、毎月20日にTポイントかWAON POINT200ポイント以上を利用して買い物すると、ポイントの価値が1.5倍ぶんになる。

 

ウエルシアはTポイントカードとWAON POINTカードのダブル提示でダブルのポイントが貯まり、毎週月曜は最大4%ポイント還元、毎月15、16日は最大6%ポイント還元(60歳以上のシニアパスポート保有者が対象)など、高ポイント還元を受けられる機会も多い(もちろんクレジットカードや電子マネー、QRコード決済の決済ポイントも付与)。

 

さらに、ツルハドラッグやくすりの福太郎を展開するツルハグループとサンドラッグも、独自のストアポイントと楽天ポイントカード提示ポイントを両取り可能。もちろんクレジットカードや電子マネー、QRコードで支払う際の決済ポイントも付与される。例えば、楽天ペイで支払うと決済ポイント1%、楽天カードから楽天キャッシュへのチャージポイント0.5%も付与され、前述のポイントと合わせてポイント四重取りを達成できる。

 

三重鳥 ウエルシアは近所に店舗がないのでノーチェックでした。ツルハグループはうちではくすりの福太郎によく行ってますが、やはり楽天と相性が良いみたいですね。

 

師範 このようにいまのドラッグストアはポイント二重取りはおろか、三重取り、四重取りも当たり前。さらに各店舗はポイントアップデーやクーポン配布にも力を入れとる。そうしたポイントの原資はドラッグストアが出しとるわけで、それでも儲かるのがドラッグストア業界の“凄み”じゃな。

 

マツキヨ・ココカラのポイント統合で業界の勢力図に変化

師範  ……と、ドラッグストアでの基本的なポイント還元の現状を説明したが、実は最近いくつか変化が起き始めた。最も大きいのは、今年6月にマツモトキヨシとココカラファインのポイントが統合したこと。

 

新たに誕生したマツキヨココカラポイントは、マツモトキヨシやココカラファインだけでなく系列チェーンのどらっぐぱぱす、ドラッグセガミ、セイジョー、クスリのコダマなどでも同一ポイントを貯めて使える。言わば、ドラッグストア版“ポイント経済圏”のような一大勢力が生まれたということじゃ。

↑マツモトキヨシとココカラファインは2021年10月に経営統合。今年6月には従来のポイントカードを統合するかたちで、新たなポイントサービス「マツキヨココカラポイント」を展開

 

三重鳥 いろんなドラッグストアのポイントをひとつにまとめられるのは、商品を購入する側にとってもすごく便利です!

 

師範 そしてもうひとつ見逃せんのはそのマツキヨココカラポイントが新たにステージ制を採用したこと。この仕組みは例えばPayPayポイントをイメージするとわかりやすいが、その月の買物額によって翌月のポイント付与率が最大3%になる。さらにdカードでの決済でも特約店ポイントを含め3%、dポイントカードやdポイントアプリの提示で1%のポイントが貯まり、実質合計最大7%ぶんのポイント還元となるんじゃ。

↑マツキヨココカラポイントのステージ制。当月・当年度のお買物合計金額に応じて、翌月・翌年度のポイント倍率が変動する

 

三重鳥 おお、それは絶対見逃せません!

 

師範 これまでドラッグストア業界ではウエルシアのおトクさが話題になりがちじゃったが、マツモトキヨシ・ココカラファイン勢が一気に主導権を奪いにきたかたちじゃな。これに対し、ウエルシアの動きも活発化。ウエルシア全店舗でWAON POINTとの提携がスタートし、TポイントとWAON POINTの二重取りが可能になったのは今年の3月じゃが、さらに9月からは同チェーンがPayPayポイントアップ店制度を導入。

 

毎週月曜にウエルシアの店舗で「ウエルシアグループアプリ」を使ってPayPayで支払いすると、通常の決済ポイントに1%ぶんのPayPayポイントが追加で付与されるようになった。ウエルシアはPayPay経済圏に加入することで、新たな可能性を模索しているようじゃ。

↑今年9月から、ウエルシアグループアプリからPayPay決済が可能に

 

スーパー業界ではハウス電子マネーの動きに引き続き注目を

三重鳥 スーパーなどのポイント還元事情はどうなんでしょう?

 

師範 上で解説したドラッグストアと比べるとおトク度は見劣りするものの、スーパー関連ではハウス電子マネーの動きに要注目じゃ。これはすでに2015年に東武ストアが導入した「Tマネー」から始まっとる動きじゃが、直近でもサミットが独自の「サミット電子マネー」を6月から導入、8月末には全店舗に導入完了した。

↑サミットが今年6月に導入した電子マネー一体型ポイントカード「サミットカード」(写真左)。「サミットアプリ」(写真右)にも同様に、電子マネー機能が追加された

 

サミット電子マネーは現金チャージ式で買いすぎを防げるのが現金派には魅力。ポイント倍率アップセールの際に、他のキャッシュレス決済は現金より倍率が低いが、サミット電子マネー払いなら現金と同様の還元倍率になるのもメリットじゃ。店舗側としては決済事業者に払う手数料がかからず、売上金の回収が遅れることもない。

 

それどころかハウス電子マネーはチャージ式が一般的なため、買い物前に売り上げを確保できるのが大きな利点。客のほうも、毎日の買い物をほぼそのスーパーで賄っているなら、楽天EdyやiD、PayPayなどの“共通電子マネー”でなく、その店独自の電子マネーを持つことはまったく問題にならん。

 

三重鳥 私でもそっちのほうがトクなら、サミットの電子マネーを利用してみるかという気になります。

 

師範 さらにおぬしが気になりそうなのが「業務スーパー」が独自Payを使った電子マネー「Gyomuca」のサービスをスタートしたこと。2021年から一部店舗で導入していたが、現在着実に導入店舗が拡大している。「業務スーパー」はクレジットカードや共通電子マネーが使える店が限定的。Gyomuca導入でより多くの人が、食品を格安で購入できるうえにチャージ金額の0.5%相当のポイントがもらえるようになるわけじゃ。

 

三重鳥 「業スー」は値段が激安なだけですでに大満足なのに、さらにポイントも貯まるとなると、これまで以上に利用したくなりますね。

 

師範 うむ。いまの物価高に対抗するには、ドラッグストアにしてもスーパーにしても、安売り情報に加えてポイント付与状況を細かくチェックすることが重要だと言えるな。

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

 マツモトキヨシとココカラファインのポイント統合

マツモトキヨシとココカラファインは2021年10月に経営統合し、業界に衝撃を与えました。かつて業界トップだったマツモトキヨシは競合他社がM&Aを重ね業容を拡大したことで売上高が業界6位に落ち込んでいましたが、この統合により売上高1兆円規模に。2023年3月のグループ売上高で業界トップ3に返り咲き、ココカラファインの収益性も2022年3月期の2.9%から2023年3月期は5.1%と劇的に向上しています。

 

またココカラファインでは、2022年11月にココカラポイントとdポイントをダブルで貯めることができるように。今回のポイント統合はそれらの流れに沿ったものであり、グループ各店舗への顧客誘導効果もより高まるはずです。

 

ステージ制

ポイントプログラムにおいて、年間利用額、利用回数などに応じて会員ランクが変わり、ポイント還元率アップなどランクに応じた特典が受けられる制度のこと。航空系ではJALの「FLY ON ポイント」、ANAの「プレミアムポイント」がステージ制を導入しているほか、楽天市場やdポイント、スーパー、クレジットカードなど、ステージ制を採用しているサービスは数多くあります。

 

マツキヨココカラポイントの場合、月の合計購入額が1万円以上で翌月の、年間(4月〜翌3月)の合計購入額が10万円以上で翌年度のポイント還元率が2倍に。月間2万円以上で翌月、年間20万円以上で翌年度の還元率が3倍になります。

 

ちなみに、ドラッグストアではツルハグループもステージ制を導入。また、マツキヨココカラグループやツルハグループのステージ制は家族会員の購入額を合算でき、ランクアップしやすくなります。より多くのポイントを獲得したいなら家族会員の登録は必須です。

 

ハウス電子マネー

コンビニやスーパー、ドラッグストアなど様々な業種の加盟店で使える Suica、楽天 Edy、WAON などの共通電子マネーに対し、自社ブランドや同一グループの店舗のみで使用できる電子マネーは「ハウス電子マネー」と呼ばれます。スターバックスカードやドン・キホーテの majica などが該当するほか、食品スーパーの多くも 2015 年頃から独自のハウス電子マネーを採用。

 

多くのハウス電子マネーは既存のポイントカードから切り替えるかたちで 導入されています。使える店が限られる「ハウス電子マネー」は逆に言えば、客の囲い込みにはとても効果的。最近では磁気カードや IC カード型に加え、スマホアプリを活用したハウス電子マネーも増えています。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

楽天経済圏は本当にオワコンか?起死回生はある?業界のプロが解説

いまや日常生活に不可欠な存在になったクレジットカードやキャッシュレス決済。実際にどのカードや決済方法を選ぶかについて、悩む人も多いのが現状です。そんなユーザーの悩みにクレカの鉄人・岩田昭男師範が答える連載企画。今回は、最近いろんな意味で話題の多い楽天グループの最新動向を解説します。

【第9回】楽天経済圏の現状について教えてほしい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】音久和 究(おとくわ きわむ)

事務機器メーカーで働く実家暮らしの会社員(36歳)。お取り寄せが大好きで楽天市場をよく利用するが、最近楽天市場や楽天カードの“改悪”が続いているのを不満に感じている。そこで改悪の原因、楽天の現状と今後について、岩田師範の意見を訊きに道場を訪ねた。

 

相談者の要望

○楽天市場のサービス“改悪”について改めて教えてほしい

○楽天グループに見られる動揺の原因は何なのか知りたい

○楽天経済圏は今後どこに向かうべきか、岩田師範の意見を聞きたい

 

 “改悪”には「楽天モバイル」の不振が大きく影響

師範  楽天の最近の動向が気になるというのはおぬしか。

 

音久和 はい。楽天のセールではよく買い物していて、開催中のキャンペーンにエントリーするなどポイント還元率を上げる努力もしているんですが、このところポイントアップ率が下がってて。ちょっとモチベーションが下がり気味なんです。

 

師範  ふむ。確かにこの2~3年、楽天関連サービスの“改悪”の話題はよく耳にするな。それで、「楽天から離れたほうがいいのでは?」と考えるユーザーも少なくないようじゃ。

楽天市場HPでは、9月1日より楽天市場アプリがSPUの対象外となったことがアナウンスされている

 

音久和 なぜこの数年で“改悪”が急に進んでいるんですか?

 

師範  それは言うまでもなく、楽天モバイルの損失を埋めるためじゃろう。2020年に正式サービスを開始し、月額料金の安さで人気を集めた楽天モバイルじゃが、その安さが収益の低さに直結し、2023年度4~6月期は約800億円の赤字を計上。楽天モバイルは2024年以降に単月黒字化を実現すると言っとるが、いまだ先行きは不透明じゃ。

 

音久和 うーん。グループ企業の損失補填のためには仕方ないんでしょうが、楽天市場ユーザーとしてはサービスの改悪は残念です。

 

師範  もっとも楽天モバイルに関しては、同情すべき点もある。楽天は2018年当時、官房長官だった菅氏の肝入りでNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社による寡占状態だった携帯電話事業に参入。既存のキャリアのほぼ半額以下で使い放題という割安な料金プランで話題となった。

 

しかし菅氏は、2020年に内閣総理大臣に就任すると携帯電話料金の引き下げを政権公約に掲げる。大手キャリア3社は政権からの圧力を受け、ドコモは「ahamo」、auは「povo」、ソフトバンクは「LINEMO」という割安で利用できるオンライン専用サブブランドを新たに展開して値下げ競争が激化。2021年4月には楽天モバイルも月間のデータ通信量が1GB以下であれば月額無料となる“0円プラン”を開始したが、翌年廃止となり、ユーザー数の減少が相次いだ。

2021年4月より提供された料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」。1回線目の月額データ利用料が1GB以下であれば利用料金が0円になる料金体系で話題を呼んだが、2022年7月の新料金プラン登場により廃止となった

 

菅前首相にとっては「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」が持論だったから、楽天に参入させて競争を煽るのも、大手キャリアにプレッシャーをかけるのも当然のことじゃが、楽天にはアンラッキーだった。とはいえ、当時はドコモがdポイント経済圏を作り、PayPayはQRコード決済で攻勢をかけてきた時期。楽天には「スマホ事業に参入して自前のコード決済を普及させねば」という焦りがあったと思うな。

 

楽天カードをトップに据えた体制作りは時代遅れ?

師範  実はワシは楽天ペイとけっこう付き合いが長いんじゃが、楽天グループは人の出入りが激しく、会議も英語で行われるなど、まるで外資系企業のような雰囲気がある。一方、これはあくまでもワシの私見じゃが、広告に関してはテレビを比較的重視するなどセンスにやや古さを感じる。

 

また、楽天は何かにつけて三木谷会長が仕切っとるが、その仕切りがもう時代に合っていないのでは? と思うことも。例えばこの11月に、楽天グループは楽天カードを決済部門のトップに立てた再編を行う。これまで楽天カード、楽天ペイ、楽天ポイントは横並びの関係だったのが、決済部門に関してはひとつにまとめようとしとるわけじゃ。

今年11月の再編により、楽天カードに決済事業を集約化。楽天ペイメントが楽天カードの傘下に入る

 

振り返ってみると、世の中が「キャッシュレス化」で大騒ぎしていた2000年代後半、楽天はほかの事業者の一歩前を行っとった。2007年に喫茶店の「ルノアール」に楽天Edyの端末を導入したのは画期的じゃったな。そういう「クレカ時代のやり方」で上手くいった成功体験があるというのが1点。

 

また、競争が激化するコード決済事業に対して、楽天カードは直近12か月における年間カードショッピング取扱高が20兆円を突破するなど好調であることから、今回も楽天カードをトップに立てて財務強化を図ろうとしたんじゃろう。

 

楽天カードは、2022年8月〜2023年7月のショッピング取扱高が過去最高となる20兆円を突破。前年同期比で20%を超える成長を果たした

 

ただ、ワシはそのやり方はいくぶん時代遅れなんじゃないかと思う。クレカを中心にした展開を考える限り、Visaワールドワイドには勝てない。その世界はVisaワールドワイドが仕切っとるからの。そうでなくトップに据えるべきだったのは楽天ペイなんじゃないか、というのがワシの個人的な考えじゃ。

 

音久和 楽天ペイですか! それは大胆な意見ですね。

 

師範  いまや時代はクレカ中心からコードレス決済中心、スマホ決済中心に変わってきとる。それに合わせて楽天も楽天ペイを前面に出さねばならん。表に出して苦労させないと新しいものは出てこない。

 

一方、PayPayはすごく細かいサービスをどんどん生み出しとる。それがすべて成功したわけではないが、その発想の根底には「クレカ中心」でなく「スマホ決済」中心の考え方がある。そしていまやそちらのほうがユーザーに支持されとるわけじゃ。いずれクレカは必要なくなる時代が来る。

 

音久和 クレカがですか? それはにわかには信じられません。QRコード決済の引き落としもクレカから行うのがスムーズですし。

 

師範  実はワシもこの間までそう考えとったが、先日PayPayがPayPayカード以外のクレカを利用した決済の廃止を発表したとき、民衆が大反対して廃止が延期となった。あれは、ユーザーの消費の中心が、キャッシュレス決済がクレカ中心からスマホ中心に変わった象徴的な出来事だと思う。

 

音久和 なるほど。時代は大きく変わりつつあるわけですね。

 

師範  楽天はいま、クレカ中心のヒエラルキーのなかに入ろうとしとるが、そうではなく、もっとスマホ決済寄りのサービスを前面に打ち出したほうが良い。楽天には「SPU」という独自のスシテムがあるから、それを利用したサービスをもう一度見直すと、面白いアイデアが出てくるかもしれん。

 

交通系の取り込みが楽天復活のカギに!?

音久和 そんな楽天経済圏が起死回生を図るとすると、どこに期待すればよいでしょう?

楽天が独自に展開するエコシステム(経済圏)の例。「楽天会員」を中心とするメンバーシップを軸に、多様なサービスを利用することで楽天ポイントを獲得・利用できる

 

師範  1つの可能性として大きいのは交通系のサービス。この夏の一時期、JR山手線の電車内で「楽天ペイアプリからモバイルSuicaにチャージすると楽天ポイントが貯まる」というCMを頻繁に見た。そこでワシは「これはいよいよ始まったな」と考えた。

 

音久和 えーっと……何が始まったんですか?

 

師範  先ほどPayPayが決済/チャージ可能なクレジットカードをPayPayカードのみにしようとして大反発を喰らった話をしたが、2018年にSuicaではまったく異なる動きがあった。当時ビューカードやSuicaの利用などで貯まるポイントがJREポイントに統一され、「Suicaをビュー・カードに紐づけてSuicaのポイント(JRE POINT)を貯めて、またチャージする」という循環ができた。

 

そのためユーザーはビュー・カードを手放さなかった。ではなぜいまになって楽天が「モバイルSuicaにチャージして楽天ポイントが貯まる」と言い出したか。これは楽天がJR東日本を取りにきたとワシは考える。

 

音久和 なんと! そんなことがあり得るんですか?

 

師範  いやいや、会社を買収するわけではないぞ。ポイント経済圏内の交通系サービスとしてSuicaを位置付ける未来もありえるかもしれんということじゃ。これはユーザー的には悪くない話で、Suicaで貯まるポイントがメジャーな楽天ポイントに変わるだけで利便性は大幅にアップする。楽天としても、交通系で楽天ポイントが貯まるのは大きなアドバンテージになる。

従来、iPhoneで楽天ポイントを貯めるには毎回キャンペーンにエントリーし、楽天カードで「モバイルSuica」アプリよりチャージする必要があった。今年6月末からは「楽天ペイ」のアプリからiPhoneでも直接チャージが可能に。翌月以降に楽天ポイントが自動で進呈される

 

音久和 もしそれが本当に実現すれば、ポイント経済圏の勢力図がまた大きく動きそうですね。

 

師範  ま、これはまだあくまでも仮定の話じゃが、なぜこういう推測をしているのかというと、クレジットカードのタッチ決済で電車に乗れる未来がいよいよ現実化してきたからじゃ。これに伴い、交通系サービスのポイント経済圏組み込み、主導権争いが始まっとる。ちなみに、American Expressのタッチ決済もすでに江ノ島電鉄など全国21の交通機関で利用できるようになっとるぞ。

 

音久和 Suicaの利用や定期券購入で楽天ポイントが貯まったりしたらうれしいなあ。ちなみに、楽天モバイルの今後はどうなるんでしょう?

 

師範  楽天モバイルはどこかが狙っているという話も聞く。すでに基地局やアンテナ設置などかなりのインフラ整備をしておるから、これから参入を考える事業者にとっては悪い話ではない。楽天としても簡単に飲める話ではないだろうが、「経済圏拡大のためには通信キャリアが必要」という固定観念に捉われず、モバイル分野はどこかに預かってもらう形にしてもよいのかもしれんな。

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

 ・楽天関連サービスの“改悪”

例えば、楽天ゴールドカードを楽天市場などで利用した際に、以前は楽天カードより+2倍おトクでしたが、2021年4月から楽天カードと同じ倍率にダウン。また、楽天SPU(スーパーポイントアッププログラム)のポイントアップ条件に、楽天銀行口座からの楽天カード利用代金引き落としや「楽天の保険」保険料の楽天カード払い、楽天証券の利用が入っていますが、2022年にはそれらのポイントアップ条件が軒並み厳しくなっています。

 

ほかにも楽天ビューティ、楽天でんき、Rakuten Pashaなどでポイントアップ条件が“改悪”。さらに2023年に入ると、楽天ブックスと楽天Koboのポイント上限がそれぞれ1000ポイントまでになったほか、楽天銀行で給与受け取りがない場合のポイントアップ倍率も+1倍から+0.5倍に変更されました。

 

直近では9月1日に楽天市場アプリの+0.5倍が終了。11月からは楽天カードにおいて、1%ポイント還元の対象が「毎月のカード払いの合算額」から「毎回の支払い」に変更され、少額利用が多い人ほど「端数切り捨て」の合計額が増え、獲得ポイントが減ることになります。

 

・楽天カードを決済部門のトップに立てた再編

楽天グループは2023年8月10日、ポイント事業と決済事業を一体的に運営するため、グループの再編を行うことを発表しました。今年11月1日付で、スマホ決済事業を行う「楽天ペイメント」にポイント事業を移管。そのうえで、「楽天ペイメント」はクレジットカード事業を行う「楽天カード」の傘下に置かれます。事業を一体的に進めることで、「ポイント経済圏」の競争力強化につなげるのが狙いです。

 

・クレジットカードのタッチ決済で電車に乗れる

三井住友カードは、同社とGMOペイメントケートウェイ、ビザ・ワールドワイド・ジャパンと提携した決済プラットフォーム「stera」を活用した公共交通機関向けタッチ決済システム「stera transit」を開発。首都圏や関西圏を中心に導入が進んでいます。

 

2023年8月現在の導入事業者は北都交通、京急バス、西武バス、江ノ電、京都丹後鉄道、JR九州など29都道府県69事業者(7月末時点)。2023年度中には事業者が100社以上に増え、2025年度までには東急電鉄、南海電鉄、大阪メトロ、福岡市地下鉄が全線導入する計画です。

 

また、東京メトロも、2024年中に同システムを用いた乗車サービスの実証実験を開始するとアナウンスしました。「stera transit」は後払い方式のためチャージ不要で利用でき、料金不足の心配がないのが魅力。改札での処理速度はSuicaの「0.2秒以内」に迫る「0.25~0.35秒」を実現、ネットワーク障害に強いのも利点です。「stera transit」には2023年度中にMastercardが対応予定で、主要国際ブランドのほぼすべてのタッチ決済が利用可能となります。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

最大18%還元の三井住友「Olive」そして「Vポイント」はポイント経済圏を制す一手となりうるか

クレジットカードやキャッシュレス決済の疑問・悩みにクレカの鉄人・岩田昭男師範が答える連載企画。前回「共通ポイント」の現状について解説したのに続き、今回はなかでもいま注目の「Olive/Vポイント」を中心に「共通ポイント」「ポイント経済圏」の今後の動向について解説してゆきます。

 

【第8回】SMBCグループの新サービス「Olive」について詳しく知りたい!

【前回記事はコチラ】

【第7回】TポイントにVポイント……移り変わる「共通ポイント」の現状を知りたい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】宝院 敏樹(ほういん としき)

都内在住の独身会社員(46歳)。前回「共通ポイント」や「ポイント経済圏」の現状について話を聞いたが、その際にも話題に出かかった、いま最も精力的にサービスを展開しているSMBCグループの「Olive」について詳しく知りたいと思い、再度道場を訪ねた。

 

相談者の要望

○前回聞けなかった「Olive」について詳しく解説してほしい。

○「新Vポイント」の課題・懸案点についても知っておきたい。

○「ポイント経済圏」との付き合い方のコツが知りたい。

 

Olive」はすべてを兼ね備えたサービス!

師範 今回は、前回触れられなかった「Olive」について話をしようかの。

 

宝院 三井住友銀行の「Olive」はテレビCMでよく目にします。でもCMだけだと、どんなサービスなのかよくわからなくて。

師範 簡単に説明すると、三井住友銀行のキャッシュカードとクレジットカード、デビットカード、ポイントカードの4機能、さらに保険や証券を同一カード&アプリで一括管理できるサービスじゃ。Oliveのアカウントを開設すると上記の4機能を持つマルチナンバーレスカード「Oliveフレキシブルペイ」が発行される。各機能の切り替えはアプリで行い、支払い方法を店頭で伝えれば、カード決済にもタッチ決済にも対応。

 

もちろんスマホを使ったApple PayやGoogleウォレット払いにも対応しとる。カードにはカード番号や有効期限が印字されず、セキュリティは万全。口座番号を印字するかどうかも自分で選べる。ちなみに、カード番号や口座番号などの情報はアプリで確認することになる。

↑キャッシュカード一体型Visaカード「Olive」。クレジット、デビット、ポイント払い(プリペイド)機能(写真左)と、キャッシュカード(写真右)機能を1枚に集約した両A面デザインを採用している

 

宝院 複数の機能が1枚にまとまるとカードを何枚も持たなくていいし、セキュリティ性が高いのも安心。でも、それだけだと申し込みへの決定打にはなりませんね。

 

師範 その辺も抜かりなしで、Oliveはポイント還元も魅力的。例えば、年会費無料の一般カードの場合、基本ポイント還元率はクレジットモードのほか、デビットモードでも0.5%。ポイント払いモードでも0.25%のVポイントが付与される。さらに、スマホアプリ「Vポイント」やVisaプリペなどへのチャージでも0.25%ポイント還元される。

 

宝院 還元率はそれなりですが、デビット払いやポイント払いでもポイントが貯まるのはおトクですね!

 

師範 驚くのはまだ早い。三井住友カードがコンビニや飲食店で最大18%ポイント還元のキャンペーンを行っとるが、この特典がそのままOliveにも適用される。

 

宝院 最大18%! それならOliveに申し込む気になります!!

師範 ただし「最大18%」の還元を受けるには、三井住友カードの本会員である家族の登録など、諸条件が揃う必要がある。自分がよく使う店舗も対象なのか、また、家族が現在本会員または本会員になる予定があるかなど、事前にしっかり確認しておくことをおすすめしたい。

 

ちなみに、同カード申し込みと同時にSBI証券に口座開設し、同証券での投資信託をクレジットカードで積み立てると、積立額の0.5%のVポイントが毎月貯まる。また同グループの「保険ポータルサイト」もOliveから利用可能で、保険料に応じてVポイントも貯まるぞ。

 

宝院 すべてのポイントをVポイントに集約できれば、ポイント払いなんかも幅広い場面で利用できそうですね。

 

TポイントとVポイントの統合はメリット大だが…

宝院 確かにポイントが貯まりやすくて1枚でキャッシュカードにもクレジットカード、デビットカード、ポイントカードにもなるのは財布のカード入れがスッキリして助かります。個人的には、クレジットカードとデビットカードを使い分けることはないかなと思いますが……。

 

師範 そこはワシも感じておる。「Oliveフレキシブルペイ」は基本はクレジット機能付きで、クレジット機能なしのカードは未成年者かカード審査に落ちた人にのみ発行される。世の中にはクレジットカードを持ちたくない人も一定数おるから、個人的にはクレジット機能なしが選べるほうがベターだと思うがな。

 

宝院 来春にはTポイントとVポイントが統合され、「Oliveフレキシブルペイ」はTポイント加盟店でも使えてポイントが貯まるようになりますね。逆に、TカードもVisa加盟店で使えてポイントが貯まることになり、Tカードユーザーにはものすごい恩恵ですよ!

師範  ところがコトはそう簡単には運ばぬ。というのも、Tカードには物理カードの「Tカード」とスマホのアプリ上に発行されるデジタルカード「モバイルTカード」の2種類がある。モバイルTカード・アプリがVポイントアプリにリニューアルされる際にVisaプリペイドカードによる決済が可能になるため、来春以降にVisa加盟店で決済できるのはモバイルTカードユーザーのみ、ということになる。

 

つまり、TカードではVisa加盟店での決済ができないんじゃ。現在Tカードユーザーの約75%がいまだに物理カードを使い続けており、特にシニア層は「モバイルTカード」への移行に消極的だとワシは見とる。この問題をどう克服するかが、新Vポイントのシェア拡大の鍵を握りそうじゃ。

 

銀行系で三井住友グループだけがポイント経済圏を構築できる理由

宝院 お話を聞いてるとOliveが魅力的なのに納得です。ほかの銀行には三井住友のようなポイント経済圏を作る動きはないんですか?

 

師範 いまのところ寡聞にして聞かんな。もっともこれには理由があって、ほかの銀行や銀行系カード会社には「ポイント経済圏」に参入するノウハウがないんじゃ。ではなぜ、三井住友にはそのノウハウがあるのか。

 

秘密は三井住友銀行と三井住友カードの関係性にある。両者は“別会社”ながら人的交流が盛んなようでな。同行にしばらく勤めると三井住友カードに出向となり、そこでカードについて学び、その後また銀行に戻る。逆もまた然り。

 

だから同グループには銀行とカードの両方の業務・知識に精通した人材が多く、銀行とカード会社の連携がうまくいく。一方、ほかのグループではそうした交流はあまりないようじゃ。

 

宝院 なんと、そんな裏事情があったとは!

 

師範 さらに、三井住友カードは2012年からアメリカのシリコンバレーに駐在員事務所を置いており、アップルや現地のフィンテック企業の動きをウォッチしておる。それでナンバーレスカードやタッチ決済もいち早く取り入れることができた。その辺、グループとしての方向性にブレがないな。

 

そうそう。以前、三井住友に取材した際、なぜシリコンバレーに進出したのか聞いたことがあったな。そのとき「シリコンバレーで培ったノウハウを日本や東南アジアで生かす」と言っとった。そういう意味では、10年、20年の長期計画の上で事業を進めているとも言える。

 

宝院  現在の躍進の種はすでに10年以上前に蒔かれていたわけですか。それはすごい!

 

ポイント経済圏にこだわりすぎるのも考えもの

宝院 ポイント経済圏が我々消費者にとっておトクなのはわかるんですが、銀行や保険、電力会社まで同じ経済圏から選ばなきゃならないのは不自由ではないですか?

 

師範 確かに、その視点は大事じゃ。その経済圏に属する銀行を使うことで、振り込み手数料が無料になったり、ATMからの引き出しが24時間無料になったりするメリットは大きいし、ポイントが貯まりやすいのも魅力じゃが、例えば、楽天経済圏で楽天ポイントを貯めたり使ったりするには当然ながら楽天トラベルを選ぶしかなく、サービスの選択肢が制限される。

 

ワシはほかの旅行サイトのほうが割安なチケットが取れるならそれを選べば良いし、様々なサービスをポイント経済圏に拘りすぎず自由に、かつバランスの取れた目で選ぶべきだと思っとる。

 

宝院 要は、何が一番トクかをフラットに見定めるってことですね。

 

師範 まあポイント経済圏は、将来的には2~3の経済圏に収斂されていくじゃろうが、個人的には20~30の経済圏があってもいいと思っとる。それだけあれば、より自分の生活スタイルに合った経済圏が選べるからな。

 

そのなかでの魅力づけとしてワシが望むのは、前回も触れたが、2重取り3重取り以上の多重取りシステムが打ち出されること。そう考えるとドラッグストアは非常に魅力的で、決済ポイントと提示ポイント、ストアポイントなどのポイント3重取りが比較的容易にできる。

 

特に、注目はウエルシア薬局で、同グループは最近ウエルシアカードの発行を始めた。このカードではWAON POINTを貯めて使えるのが魅力。グループ内の対象店舗でのクレジット払いと提示で、合計最大2.5%ぶんのWAON POINTが貯まる。

 

さらにウエルシア薬局ではTポイントも貯まるため、Tカードとウエルシアカードを提示、ウエルシアカードで決済すれば、合計最大3.5%のポイント還元が受けられることになる。

(ダブルでポイントを貯めるには、Tポイントが貯まるカードとWAON POINTが貯まるカードの両方のカードと、ウエルシアメンバー登録手続き書類の記入ならびにWAON POINTの会員登録が必要で一部対象外商品がある)

 

宝院 最大3.5%還元!? いつもながらウエルシア薬局は大盤振る舞いしますね。

 

師範 ちなみにウエルシアカードの発行元はイオンカード。というのも含め、イオン経済圏も新しいポイント経済圏として最近注目を集めとる。「お客さま感謝デー」などイオン各店舗での多彩な現金値引き/ポイントアップ特典があるのに加え、イオン以外でもWAONポイントを貯めて使える店が多数。利便性がさらに向上しとる。

 

宝院 色々お話を聞きましたが、いま一番興味があるのはOliveかな? ただ、PayPayや楽天、イオンなどほかのポイント経済圏の動きにも、今後は注目していきたいと思います。

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

 Googleウォレット

電子マネー、クレジットカードまたはデビットカード、ポイントカード、各種チケットや搭乗券、自動車用デジタルキーを保存できるデジタルウォレット。セキュリティ機能やプライバシー保護機能が組み込まれていて、Androidスマホでタッチ決済してもGoogle Payからクレジットカード番号が支払い先に提示されることはないなど、安全に利用できます。従来のGoogle Payアプリが2023年3月以降、Googleウォレットアプリに切り替わりました。

 

最大18%ポイント還元

Oliveフレキシブルペイや三井住友カードは、SMBCグループの各社サービスの利用状況により、対象のコンビニ・飲食店の利用時に最大+6%のVポイントを還元する「Vポイントアッププログラム」を採用。

 

これにより、最大18%のポイント還元が受けられます。「最大18%」の内訳は、基本ポイント還元率0.5%に加え、対象のコンビニ・飲食店でスマホのタッチ決済を利用すると+6.5%の計7%を還元。また、家族の登録で、ひとりにつき+1%、最大+5%を還元する「家族ポイント」が付与され、ここまでで合計最大12%の還元率になります。

 

さらに「Vポイントアッププログラム」では、Oliveアカウントに登録し、三井住友銀行アプリやVpassアプリに月1回以上ログインすると+1%還元、住宅ローンの契約で+1%、SBI証券の利用で最大2%還元されるなど様々なサービスを利用することで最大+6%の還元を受けられ、合計最大18%のポイント還元が可能になります。

 

イオン以外でもWAONのポイントを貯めて使える店が多数

WAONのポイントを貯めて使える店はイオンやイオンモール、まいばすけっと、ミニストップなどイオン系列の店だけではありません。ファミリーマートやローソンなどのコンビニをはじめ、ドラッグストア(くすりの福太郎やセイムスほか)、家電量販店(ビックカメラやコジマなど)、飲食店(マクドナルドや吉野家等々)といった幅広い店でポイントが貯まり、そのままもしくは電子マネーWAONに交換することで買い物に使えます。

 

ここで要注意なのは、WAONのポイントには「WAON POINT」と「電子マネーWAONポイント」の2種類があること。「WAON POINT」はイオンカードのクレジット・デビット払いやイオングループの対象店舗での電子マネーWAON払い、WAON POINT加盟店でのイオンカード提示で付与されるポイントで、貯まったポイントは1ポイント=1円で買い物に使えます(電子マネーWAONとして利用する場合はWAONステーションなどで電子マネーWAONへの交換が必要)。

 

一方、「電子マネーWAONポイント」は、WAON POINT加盟店以外で電子マネーWAONで決済した場合に付与されるポイントで、買い物に使うには必ず電子マネーWAONへの交換(チャージ)が必要です。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

業界大激震!「超巨大ポイント経済圏」の爆誕で勢力図はこう変わる

クレジットカード・キャッシュレス決済に関する疑問や悩みを、クレカの鉄人・岩田昭男師範がズバッと解決する連載企画。このところキャッシュレス決済業界をザワつかせているTポイントとVポイントの統合により大きく変わる「ポイント経済圏」の勢力図について、2回に分けて詳しく解説します。

 

【第7回】TポイントにVポイント……移り変わる「共通ポイント」の現状を知りたい!

 

【解説する人】

岩田昭男

クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】

宝院 敏樹(ほういん としき)

都内在住の独身会社員(46歳)。6月に「TポイントとVポイントが統合」とのニュースを見てビックリ。各種ポイントの現在の勢力図に疎いことに改めて気が付いた。そこで、Tポイントをはじめとする共通ポイントの“いま”の状況を知りたいと、岩田師範の元を訪ねた。

 

相談者の要望

○TポイントとVポイントの統合について詳しく知りたい。

○他の共通ポイントの状況についても改めて教えてほしい。

○ポイント経済圏の今後について、岩田師範の見立てを聞きたい。

 

日本最初の共通ポイントも近年は苦境が続いていた……

師範  共通ポイントのいまの状況を知りたいというのはおぬしか?

 

宝院  はい。TポイントがVポイントと統合すると聞いて驚きまして。TポイントといえばYahoo! JAPANカードとの相性がピカイチでしたよね。それがPayPayカードが出たのに伴い、Yahoo! JAPANカードの新規申し込みが終了。Tポイントは苦しい戦いをしているなあと思っていたので。

 

師範  お、おぬし、なかなかTポイント事情に詳しいではないか。

 

宝院  TポイントはTSUTAYAでDVDを借りてたときは一生懸命貯めてたんですけどね。でもDVD自体借りなくなってから、あまり貯めなくなったなあ。

 

師範  確かにTSUTAYAのレンタル事業の悪化もTポイントにとっては打撃じゃが、それ以外にもTポイントにとって逆風となる動きが続いとった。例えばドトールなど大手加盟店がTポイントから脱退したり、ファミリーマートがTポイントのみとの連携からマルチ方式に移行したり。さらに、ソフトバンク/PayPayのTポイント離脱は最大の打撃じゃった。

 

宝院  以前はTポイントって共通ポイントの代表みたいな感じでしたよね。

 

師範  日本の共通ポイントはTポイントから始まったと言って良い。それ以前のポイントは「ハウスカード」のポイントのようにその店でしか貯まらない/使えないもので非常に使い勝手が悪かった。それに対し、いろいろな業者が同じポイントを発行して使える、という仕組みを作ったのがTポイント。これでポイントの利便性が一気に向上した。

 

ただ、Tポイントは「1業種1社」にこだわったのがある意味失敗じゃったな。例えば、石油会社ならエネオスのみが加盟店になり、同業他社は加盟できなかった。そして、そんな“同業他社”の受け皿になったのがPontaじゃった。

 

宝院  へえ~。そんな歴史があったんですね。

 

5つのポイント経済圏の概要と歴史を解説!

師範  Pontaの話も出たことだし、ポイント経済圏についても解説しておくか。この10年来、日本では主要な4種類のポイントサービスが「共通ポイント」として普及し、そのポイントを中心とした“経済圏”が生まれていた。その4種類とは言うまでもなくソフトバンクのTポイント、ドコモのdポイント、KDDI(au)のPontaポイント、楽天の楽天ポイントじゃ。

 

ところがソフトバンクがTポイントと提携を解消したことで、PayPayポイントという独自の経済圏に取って代わられた。そこでTポイントが統合することになったのが三井住友カードのVポイント。従来の共通ポイントがどれも携帯キャリアと結びついていたのに対し、これまでにない“金融系”のポイント経済圏が新たに生まれることになる。

 

宝院  それぞれのポイントの成り立ちについても知りたいです。

 

師範  dポイントはdカードでの決済のほか、電子マネーのiDやQRコード決済のd払いでも還元される共通ポイント。2015年にドコモポイントから名称変更し、同時に共通ポイント化をスタートした。実はdポイントは三井住友カードとの関係も深く、電子マネーiDの加盟店開拓は三井住友が行った。

 

だがその後、三井住友カードは自社独自のポイント展開を志向し、ドコモと袂を分かった、とワシは見とる。以降ドコモは加盟店開拓に苦労したはずじゃが、dポイントが使える場所は着実に増え、共通ポイントとして急成長したと言えるな。

 

宝院  三井住友カードがTポイントと組む前にdポイントと組んでいたとは、キャッシュレス業界の相関図は複雑ですね。

 

師範  Pontaは2010年に三菱商事の子会社が中心となり立ち上げた共通ポイントサービスで、三菱商事と関係の深いローソンと昭和シェル石油、ゲオのポイント制度を統合することで誕生した。その後、リクルートグループが運営するリクルートポイントがPontaに統合。さらに2020年にはKDDI(au)が運営するau WALLET ポイントがPontaに統合されるなど、地味ながら着実に共通ポイントとしての裾野を広げとる。

 

宝院  確かに、いつの間にかau PAYのポイントになっていたのは驚きでした。

 

師範  これまで紹介した共通ポイントサービスと比べると、楽天(楽天ポイント)は「わが道を行く」イメージじゃな。楽天市場と楽天カードを合わせて、さらに楽天銀行や楽天証券も揃っていて、ある意味“金融系ポイント経済圏”的カラーも兼ね備えとる。現在、共通ポイントのシステムとして最も進んどるのが楽天じゃろう。楽天市場は26年の歴史があり、SPU(スーパーポイントアッププログラム)という特徴的なポイントプログラムは多くのユーザーの支持を獲得。

 

さらに2019年に「移動体通信事業者(MVNO)」として楽天モバイルのサービスを開始し、 “通信キャリア”にも手を伸ばした。今後、楽天がどう展開するか正直わからんが、もしかしたら「キャリア」と「金融」が結合したすごい経済圏になるかもしれん。

 

宝院  楽天経済圏の力はいまも強大というわけですね。

 

師範  そんなポイント経済圏の台風の目となったのがPayPayポイントじゃ。PayPayポイントは誕生してまだ1年余りで、それ以前はPayPayボーナスと言っていた。PayPayカードの前身はYahoo! JAPANカードじゃったが、PayPayにとっての問題はポイントがTポイントであったこと。そのため自前でポイントサービスを展開しにくかったとワシは見とる。

 

例えば、ソフトバンクのスマホ利用料で貯まったポイントをTSUTAYAで使われたら、ある意味損失でしかない。カードやPayPayの利用履歴など個人情報をTポイントの事業主に勝手に使われる心配もある。そこでPayPayは2021年12月に関連サービスにおけるTポイントの付与を終了すると発表。Tポイントとの縁を切り、独自のクレジットカード「PayPayカード」を発行することで、すべてのポイントサービスをPayPayポイントにまとめる大事業をやり遂げた。

 

また、その後PayPayカード ゴールドを発行し、ソフトバンクスマホ利用料の10%還元を開始。これでやっと、サービス面でドコモやauに追いついたわけじゃ。

 

宝院  確かに、QRコード決済で大成功したPayPayと相性抜群のPayPayカードは“持っておかないと!”と思わせるカードですよね。

 

師範  そんな快進撃にケチがついたのが、5月に発表されたPayPayの運用見直し。そこでPayPayカード/PayPayカード ゴールド以外のカードでの決済ができなくなるとわかり、ネットでは「PayPay改悪」と大騒ぎになった。

 

その後、他社カードの利用停止措置を2023年8月1日から2025年1月に延期すると発表され、騒ぎはいったん落ち着いたが、PayPayはこれまでのポイント還元大盤振る舞い路線から、収益の黒字化路線に明確に舵を切っており、それにユーザーが戸惑っとるのが実情じゃ。

 

宝院  私もPayPayユーザーですが、すでにPayPayカードを持っていたのであまり気にしてなかったですけどね。

 

師範  そうそう。元々おトクにポイントを貯めるならPayPayカードは必携であるし、ドコモもd払いの支払いにdカード以外を使うとdポイントの付与対象外になるなど、自社カードへの囲い込みは大きな流れとしては以前からあるんじゃ。

 

 

新Vポイント登場に加え、コロナ後の生活様式の変化でポイント経済圏にも変革の兆し

師範  さて、最後に解説するのが、SMBCグループが展開するVポイント。これは2020年6月に旧ポイントをリニューアルし運用を開始した共通ポイントで、貯めたポイントはカード代金などに充当できるほか、Vポイントアプリを使ってVisa加盟店でも利用でき利便性は非常に高い。特に主要コンビニや飲食チェーンで最大7%ポイント還元されるなど、ポイントの貯まりやすさが魅力な一方で、三井住友カードやグループ提携カードのユーザー以外での知名度はそこまで高くはなかった。

 

この問題を解決するために断行したのが、Tポイントとの統合じゃ。ほかにも同グループは新サービス「Olive」を開始するなど、新施策を相次いで打ち出している。他の銀行系の動きがほとんどないなか、「三井住友」はずっと挑戦を続けていると言えるな。

 

宝院  TポイントとVポイントが統合されたらユーザーにはどんなメリットがあるんでしょう?

 

師範  従来のTポイントユーザーにとっては、ポイントを貯めて使える店が大幅に増える。特にコンビニや飲食店での最大7%(家族登録やVポイントアッププログラム利用で最大合計18%)還元は魅力満点じゃ。また、これは双方のユーザーに言えるが、Tポイント加盟店で三井住友カードで決済すると、Tポイントカード提示ぶんと三井住友カード決済ぶんのポイント二重取りができる。

 

さらに、ポイントカード提示を忘れても後日レシートとポイントカードを提示すればポイントを後付けで獲得できるほか、送金・割り勘機能搭載のアナウンスも出とる。ただ、実際に運用開始になるのは2024年春。どのような機能や特典が実装されるかは、運用開始しないと何とも言えんな。

 

宝院  PayPayポイントや新Vポイントの登場で、ポイント経済圏にも少なからず変化が起きそうですね。

 

師範  実際にコロナ以降、それまで活発だったポイントからポイントへの移行、ポイントからマイルへの移行が活発でなくなり、各経済圏内でまとめてポイントを獲得する動きが増えてきたように思う。いまは「ポイント交換」ではなくポイントを「二重取り」「三重取り」「四重取り」して、いかに深く掘ってトクするかを考える時代になっとる。

 

さらに現在、「ポイント経済圏」のなかにはクレジットカードから電子マネー、QRコード決済、ポイントとすべての決済用の“道具”が揃っているが、最近では「あと払い」という方式も普及してきた。ワシはこれからもっと違った“道具”がどんどん出てくると思うし、そうすると既存の共通ポイントに「右へ倣え」する必要もなく、いろんな「経済圏」が勝手にどんどん出てくる未来さえ想像するぞ。

 

……というあたりで、今回はずいぶん話しすぎたようじゃ。本当はSMBCグループの新サービス「Olive」についても解説したかったが、それは次回に持ち越しとしよう。

 

宝院  そっちの話も興味津々です!

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

マルチ方式

以前の共通ポイントには「1業種1社」という暗黙のルールがあり、セブン-イレブンならnanacoポイント、ファミリーマートならTポイント、ローソンならPontaポイントしか付与もポイントでの買い物もできませんでした。ところが2015年にローソンがdポイントと業務提携。Pontaポイントとマルチで使えるようになり、暗黙のルールが崩れました。このようにコンビニでは、複数の共通ポイントが利用できる「マルチ方式(マルチポイントサービス)」の導入が進んでいます。利用者は共通ポイントの種類を気にせずコンビニで買い物でき、コンビニ側も「利用しやすい店」との認知が高まり集客力がアップ。ファミリーマートはTポイント、dポイント、楽天ポイントに対応しています。さらに近年はVポイントがセブン-イレブン、ローソンなどのコンビニ、ガストやジョナサン、ココスなどのファミレスでもポイント還元/ポイント払いが可能に。マルチ方式はコンビニ以外の業種にも広がりつつあります。

 

ポイント経済圏

同じポイントサービスと提携する複数の企業やサービスがたくさん集まったエコシステムのこと。グループ内で同じポイントが貯まり、それをどの店でもお金と同様に使えることで、利用者に大きなメリットを提供できます。例えば、コンビニで買い物をして貯まったポイントをより多く貯めたいと考える人は、飲食店で食事するときも同じポイントが貯まる店を選ぶでしょう。このように提携企業内に消費者の購入行動を囲い込むことで、経済圏内の各店舗の売り上げも増える好循環を生み出します。強力なポイント経済圏を構築するためには圏内にリアル店舗からECサイト、通信キャリア、電力・ガス会社、銀行、証券会社、保険会社など様々な業種を網羅的、かつ数多くの加盟店を擁していることが重要です。

 

「キャリア」と「金融」が結合

共通ポイントはdポイントやPonta、PayPayポイントなどの通信キャリアが主導するものと、Vポイントなど大手金融機関である三井住友銀行が深く結びついたものの大きく2種類に分けられます。通信キャリア系は、ネットでもリアルでもスマホを使って決済する機会が増加するなか、決済の「入り口」を押さえられるため様々なサービス展開を考えやすく有利。携帯電話の通信料で貯まったポイントを加盟店での買い物に利用できるのも、通信キャリアがポイント展開しているメリットです。さらに、QRコード決済ならクレジットカードのようなスキミングの心配がなく、QRコードやバーコードも毎回生成、Apple PayのようなNFC決済も生体認証が組み合わされていて、ユーザーにとっては使い勝手が良く安全性も比較的高い決済手段/ポイントサービスとなります。一方金融系は、キャッシュレス決済業者と金融機関が同系列であるため、決済業者から金融機関への手数料の支払いで優遇され、そのぶんをポイントアップキャンペーンなどに回しやすいメリットがあります。楽天グループは通信キャリアでは「楽天モバイル」を持ち、金融機関では「楽天銀行」を持っているため、両方のメリットを生かして有利なマーケット戦術を立てやすいと言えるでしょう。

 

「二重取り」「三重取り」「四重取り」

買い物時に獲得できるポイントは、支払い方法を変えたりポイントカード提示を加えたりすることで、二重・三重・四重にゲットできる場合があります。例えば、クレジットカードでの支払い時にポイントカードを提示すれば「決済+提示」でポイント二重取りが可能。また、電子マネーやQRコード決済なら、クレジットカードからウォレットにチャージして払うことで「チャージ+決済」の二重取りができます。ということは電子マネー/QRコード決済の際にポイントカードを提示すればポイント三重取りが成立。さらにドラッグストアなどの場合、店舗ポイントカードの提示でもポイントが付くので、これを利用すればポイント四重取りに到達します。以前はこうしたポイント多重取りを行うためには紙やプラスチックのカードを大量に持ち歩く必要がありましたが、いまはスマホ内に「アプリ」として入れておけるので財布がかさばる煩わしさもなく、スマートに大量のポイントをゲットできます。

 

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

電気代値上げが家計を直撃!物価高騰時代の「クレカ選び」をプロが指南

クレジットカードやキャッシュレス決済をより便利でおトクに利用したい、というビギナーの願いを叶えるべく、カードの鉄人・岩田昭男師範が切れ味鋭いアドバイスを送る連載企画。今回は、物価高が続く昨今、その値上がりぶんを少しでも取り返せる高ポイント還元率のカードを紹介します!

 

【第6回】インフレで増えた出費を少しでも多く取り返せるカードがほしい!

 

【解説する人】

岩田昭男

クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】

大極 守(だいこく まもる)

妻と高校生・中学生の2人の子どもと暮らす会社員(44歳)。ここ数年物価高が止まらず、育ち盛りの子どもを抱え、生活のやりくりに苦労している。そこでクレジットカードのポイント還元で物価高に対抗できないかと思い、道場を訪ねた。

 

食品から光熱費まで何もかも値上げ値上げで、音(ね)を上げそうです!

○ポイント還元率の高いカードを教えてほしい!

○値上がりした光熱費でたくさんポイントが貯まるとうれしい

○年会費が高くてもそれを補って余りある高ポイント還元が期待できるなら加入を検討したい

 

師範 物価高に対抗できるカードを探しとるのはお前か。

 

大極 はい。いろんなモノの値段が上がっている影響が家計にも出てきまして。日頃からけっこう節約していますが、近頃は目に見えて出費が増えています。クレジットカードなどのポイントで、少しでも家計の負担を減らせないかと……。

 

師範 ふむ。物価高に対抗するには、何はともあれポイント還元率が鍵。特に6月からは電気料金が大きく値上がりし、一層の負担になっとる。カード選びでも、電気代や通信費など固定費の支払いでトクできるかに留意すべきじゃ。

 

大極 具体的にはどんなカードがオススメですか?

 

師範 注目は、各通信キャリアが発行するゴールドカード。NTTドコモならdカード GOLDじゃな。年会費1万1000円ながら、毎月のドコモのケータイ利用料とドコモ光の利用料1000円(税抜)ごとに10%のdポイントが還元される。ここで注意すべき点はまず、10%ポイント還元の条件がdカード GOLDの「所有」であること。つまり、dカード GOLDホルダーであれば、支払いを他の還元率1%のカードで行うことで合計11%の還元になるというわけじゃ。

 

大極 おお、それはおトクな裏技ですね!

 

師範 注意点の2つ目は、ドコモ光料金の10%還元を受けるのにdカード GOLDとドコモ光回線の紐付けが必要なこと。具体的には2つを紐づけるペア回線の設定が必要じゃ。

 

3つ目はケータイ利用料についてじゃが、10%還元対象は基本使用料と通話・通信料、付加機能使用料、ドコモの月額課金サービスなどに限られる。通話料と合算払いしたケータイの購入代金やd払い利用額は、10%還元にはならん。

 

大極 うん、まあ常識的に考えればそうでしょうね。

 

師範 一方、電気代に関しては、ドコモでんきGreenと契約しその電気代をdカード GOLDで支払うと、電気代(基本料金と従量課金ぶん)の6%がポイント還元される。ただ、ドコモでんきは世界的なエネルギー価格高騰の影響で、現在新規申し込みを一時停止中。当面申し込み再開はなさそうじゃ。

 

大極 うわー、それは残念! まあそれでも、ケータイ料金とネット回線利用料の10%ポイント還元は魅力です。特にうちは4人家族だし、通話料をまとめて払うと恩恵が大きそう。

 

師範 おっと、残念ながら10%還元対象は本人の回線ぶんのみ。家族が10%ポイント還元を受けるには家族カードを発行する必要がある。ちなみに18歳未満の子どもは家族カードが持てないので、10%還元も受けられん。

 

大極 では、妻だけでも家族カードを発行します。

 

師範 一方、auユーザーと好相性なのがau PAY ゴールドカードで、au携帯電話、auひかりの利用料支払いについて、同カード所有で利用額1000円(税抜)につき100ポイント、決済100円につき1ポイント、合計最大11%ぶんのPontaポイントが貯まる。

 

家族が通話料で10%ポイント還元を受けるにはau PAY ゴールドカードの家族カードが必要なこと、20歳未満はゴールドカードの家族カードが作れないことなどは、先のdカード GOLDと同条件。ケータイの購入代金やau IDを使ったショッピング代金の通話料合算払いが10%ポイント還元対象にならないのも同じで、年会費も1万1000円じゃ。

 

大極 au PAY ゴールドカード1枚で11%還元なのはわずかに有利と言えるかもしれませんね。

 

師範 電気代とガス代に関しては、auでんき・都市ガス for auに契約すると、利用額100円につき1ポイントの通常還元に、利用額100円につき2ポイントのゴールドカード特典が付き、合計最大3%還元となる。なお、auでんきは一部エリアで新規申し込み一時停止となっており、ほかのエリアもいつ停止になるかわからん。

 

大極 希望者は迷わず、早めに申し込むほうが良さそうですね。

 

師範 楽天グループにも楽天プレミアムカードという上級カードがあるが、楽天カードでも十分おトク。楽天市場にはSPU(スーパーポイントアッププログラム)というポイントアッププログラムがあり、楽天のサービスをより多く使うほど、楽天市場での買い物でポイントがより多く貯まる。

 

例えば、楽天モバイルのRakuten最強プランを契約しているダイヤモンド会員ならポイントが+3倍、楽天カード所有者は楽天カード通常ぶんと特典ぶんで合計+2倍、楽天銀行の口座で楽天カードの引き落としを行い、かつ給与、ボーナス、年金を受け取ると+1倍と、ここまでで楽天市場での買い物で+6倍のポイント還元率になる。一方、年会費1万1000円の楽天プレミアムカード所有で得られるポイントアップ特典は+2倍と、高還元率を狙う者にはややおトクさに欠ける感が否めん。

 

大極 楽天プレミアムカードには楽天モバイルの通話料が10%還元されたりしないんですか?

 

師範 そういう特典はないが、楽天市場以外でも楽天証券の投信積立など複数のグループサービスでのポイント還元アップがある。その意味で、他の大手キャリアとは一線を画しとる。

 

ちなみに、ソフトバンクユーザーならオススメはPayPayカード ゴールド。年会費1万1000円で、ソフトバンクのスマホの通信料などの10%、ソフトバンク光/Airの利用料の10%、ソフトバンクでんきの利用料の3%相当のポイントが貯まる。合算払いした端末購入代金やショッピング代金が10%還元の対象外などの条件はドコモやauと同じ。ソフトバンクでんきの新規受付は一部WEBのみというエリアもあるが、現状受付停止にはなっとらん。

 

なおPayPayは、このところサービスの見直しが続いとる。要はPayPayカード/PayPayカードゴールドへの囲い込みを強化していて、すでに同カードを持っているユーザーはよりおトクにPayPayを利用できるぞ。すでに他にメインで貯めているポイントがある場合は、PayPayとの紐付けについては事前にしっかり検討するのがよかろう。

 

【今月の注目カード】

ケータイ利用料や回線/プロバイダ契約料でのポイント還元をはじめ特典満載のおすすめカード

NTTドコモ

dカード GOLD

持っているだけでドコモのケータイ/ドコモ光の利用料金の10%相当がポイント還元。ギガホ・ギガホライト・ahamoに契約する同カード会員は、ドコモでんきGreen(※1)の電気料金の6%がポイント還元されます。

 

購入から3年間最大10万円ぶんのケータイ補償も付帯。国内・ハワイの主要空港のラウンジが無料で利用できるほか、海外で最大1億円、国内で最大5000万円の旅行傷害保険が自動付帯され、航空機の欠航・遅延も補償されます。前年のカード決済による買い物累計額が100万円以上で1万1000円、200万円以上で2万2000円相当のクーポンがもらえ、さらにおトクです。

国際ブランド Visa/Mastercard
ポイント還元率 1%(dポイント)
年会費 1万1000円

※1:「ドコモでんき」は新規申し込みを一時停止中

 

au携帯電話料金のカード払いで、11%ぶんのポイントが貯まる!

auフィナンシャルサービス

au PAY ゴールドカード

同カードでの支払いで毎月のau携帯電話利用料の10%をポイント還元、通常ポイント1%と合わせて最大11%還元を受けられるカード。auでんき・都市ガスfor auの利用料を同カードで支払うと、通常ポイント1%+ゴールドカード特典2%の、合計最大3%相当のポイント還元が受けられます。

 

au PAY マーケットでの買い物では最大9%相当をポイント還元(※2)。海外旅行で最大1億円、国内旅行で最大5000万円の傷害保険が自動付帯され、国内の主要空港とハワイのダニエル・K・イノウエ国際空港ラウンジを無料で利用できます。

国際ブランド Visa/Mastercard
ポイント還元率 1%(Pontaポイント)
年会費 1万1000円

※2:支払い方法に「au PAY カード」を選択して利用すると1.5%、「au PAY ゴールドカード」の利用で2%、au PAY マーケット内店舗からのポイント1%の合計4.5%を常時還元。これに毎月1000円以上の電子書籍購入による1%還元などを加算、全条件達成で9%還元となります

 

楽天市場での買い物のほか街中の買い物でもどんどんポイントが貯まる!

楽天カード

楽天カード

楽天市場など楽天グループの各種サービス利用や普段の買い物でポイントがどんどん貯まる年会費永年無料のカード。楽天市場で同カードを使って買い物すると100円につき3ポイントが還元されます。楽天カードから楽天ペイアプリにチャージし楽天ペイ(楽天キャッシュ)で買い物すると合計1.5%相当のポイントを獲得。

 

楽天Edy機能(選択可能)と楽天ポイントカード機能も搭載しています。最大2000万円、傷害・疾病治療時最大200万円の海外旅行傷害保険(利用付帯)が付くのも魅力です。

国際ブランド Visa/Mastercard/JCB/American Express
ポイント還元率 1%(楽天ポイント)
年会費 永年無料

 

スマホ利用料・プロバイダ契約料の10%、電気料金支払いでも3%相当のPayPayポイントが貯まる!!

PayPayカード

PayPayカード ゴールド

カード決済時にソフトバンクの通信料の最大10%、ワイモバイルなら最大3%のPayPayポイントを付与(※3)。ソフトバンク光/Airの利用でも利用料の10%のPayPayポイントが付与されるほか、ソフトバンクでんきと契約すると利用料の3%相当のPayPayポイントが付与されます(※3)。通常の買い物の際は、事前に「PayPayあと払い」への登録をしておけば、カード決済でもPayPayあと払いでも、PayPayステップによる1~1.5%ぶんのPayPayポイントが付与されます。

 

さらに「PayPayカード ゴールド」ならゴールドカード特典0.5%が加算され最大2%付与に。海外最大1億円(自動付帯)、国内最大5000万円(利用付帯)の旅行保険が付き旅行の際も安心。国内・ハワイの主要空港ラウンジサービスも付帯されます。Yahoo!プレミアムの全特典も無料で使い放題です。

国際ブランド Visa/Mastercard/JCB
ポイント還元率 1.5%(PayPayポイント)
※PayPayカード ゴールドの付与率
年会費 1万1000円

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

ペア回線

dカード GOLDに登録しているドコモケータイの契約者名義とドコモ光インターネット回線の契約者名義を同一にすること。ペア回線を設定しておくと、ドコモ通信料・ドコモ光契約料の10%ポイント還元のほか、ドコモとドコモ光のセット割が利用でき、ギガホ プレミアやギガライトなら毎月最大1000円、カケホーダイやパケあえるなら毎月最大3850円の割引が受けられます。

 

すでにドコモケータイを契約していてドコモ光を新規契約する場合は、申し込み時にペア回線の対象にしたい携帯電話番号を登録すればOK。ドコモケータイもドコモ光もすでに開通していて、新たにペア回線登録する場合は、dカード GOLDデスクへの電話やドコモショップで手続きを行います。dカード GOLDの「ペア回線」に限らず、ケータイ通話料やインターネット接続サービスなどでのポイント還元特典を受けるには、各サービスの情報連携が不可欠です。

 

ダイヤモンド会員

楽天会員は「ダイヤモンド」「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「レギュラー」の5段階の会員ランク制度を設けており、ランクごとに異なる特典が提供されます。ダイヤモンド会員の条件は、過去6か月間でポイント獲得数が4000ポイント以上、ポイント獲得回数が30回以上であることと、楽天カードを持っていること。

 

ダイヤモンド会員にはランク1年キープでプレゼントが当たるほか、限定のポイントキャンペーンに参加できる豪華特典や、毎月18日に楽天市場での買い物時のポイントが合計4倍(要エントリー)になるなどの特典が与えられます。

 

サービスの見直し

PayPayはこの夏同社サービスを大幅に見直します。まず7月1日からは、PayPayステップの達成条件である支払い回数30回のカウント条件が「300円以上」から「200円以上」に“改善”される一方、PayPayステップのポイント付与が従来の「支払い金額×1.5%(小数点以下切り捨て)」から「支払い200円ごとに3ポイント還元」となり、200円に満たないぶんは切り捨てに。

 

さらに、「ソフトバンク・ワイモバイル まとめて支払い」によるPayPay残高へのチャージも、9月1日から毎月2回目以降のチャージには2.5%の手数料がかかることになりました。ユーザーが今後これにどう反応するかが注目されます。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男

電気代値上げが家計を直撃!物価高騰時代の「クレカ選び」をプロが指南

クレジットカードやキャッシュレス決済をより便利でおトクに利用したい、というビギナーの願いを叶えるべく、カードの鉄人・岩田昭男師範が切れ味鋭いアドバイスを送る連載企画。今回は、物価高が続く昨今、その値上がりぶんを少しでも取り返せる高ポイント還元率のカードを紹介します!

 

【第6回】インフレで増えた出費を少しでも多く取り返せるカードがほしい!

 

【解説する人】

岩田昭男

クレジットカード分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】

大極 守(だいこく まもる)

妻と高校生・中学生の2人の子どもと暮らす会社員(44歳)。ここ数年物価高が止まらず、育ち盛りの子どもを抱え、生活のやりくりに苦労している。そこでクレジットカードのポイント還元で物価高に対抗できないかと思い、道場を訪ねた。

 

食品から光熱費まで何もかも値上げ値上げで、音(ね)を上げそうです!

○ポイント還元率の高いカードを教えてほしい!

○値上がりした光熱費でたくさんポイントが貯まるとうれしい

○年会費が高くてもそれを補って余りある高ポイント還元が期待できるなら加入を検討したい

 

師範 物価高に対抗できるカードを探しとるのはお前か。

 

大極 はい。いろんなモノの値段が上がっている影響が家計にも出てきまして。日頃からけっこう節約していますが、近頃は目に見えて出費が増えています。クレジットカードなどのポイントで、少しでも家計の負担を減らせないかと……。

 

師範 ふむ。物価高に対抗するには、何はともあれポイント還元率が鍵。特に6月からは電気料金が大きく値上がりし、一層の負担になっとる。カード選びでも、電気代や通信費など固定費の支払いでトクできるかに留意すべきじゃ。

 

大極 具体的にはどんなカードがオススメですか?

 

師範 注目は、各通信キャリアが発行するゴールドカード。NTTドコモならdカード GOLDじゃな。年会費1万1000円ながら、毎月のドコモのケータイ利用料とドコモ光の利用料1000円(税抜)ごとに10%のdポイントが還元される。ここで注意すべき点はまず、10%ポイント還元の条件がdカード GOLDの「所有」であること。つまり、dカード GOLDホルダーであれば、支払いを他の還元率1%のカードで行うことで合計11%の還元になるというわけじゃ。

 

大極 おお、それはおトクな裏技ですね!

 

師範 注意点の2つ目は、ドコモ光料金の10%還元を受けるのにdカード GOLDとドコモ光回線の紐付けが必要なこと。具体的には2つを紐づけるペア回線の設定が必要じゃ。

 

3つ目はケータイ利用料についてじゃが、10%還元対象は基本使用料と通話・通信料、付加機能使用料、ドコモの月額課金サービスなどに限られる。通話料と合算払いしたケータイの購入代金やd払い利用額は、10%還元にはならん。

 

大極 うん、まあ常識的に考えればそうでしょうね。

 

師範 一方、電気代に関しては、ドコモでんきGreenと契約しその電気代をdカード GOLDで支払うと、電気代(基本料金と従量課金ぶん)の6%がポイント還元される。ただ、ドコモでんきは世界的なエネルギー価格高騰の影響で、現在新規申し込みを一時停止中。当面申し込み再開はなさそうじゃ。

 

大極 うわー、それは残念! まあそれでも、ケータイ料金とネット回線利用料の10%ポイント還元は魅力です。特にうちは4人家族だし、通話料をまとめて払うと恩恵が大きそう。

 

師範 おっと、残念ながら10%還元対象は本人の回線ぶんのみ。家族が10%ポイント還元を受けるには家族カードを発行する必要がある。ちなみに18歳未満の子どもは家族カードが持てないので、10%還元も受けられん。

 

大極 では、妻だけでも家族カードを発行します。

 

師範 一方、auユーザーと好相性なのがau PAY ゴールドカードで、au携帯電話、auひかりの利用料支払いについて、同カード所有で利用額1000円(税抜)につき100ポイント、決済100円につき1ポイント、合計最大11%ぶんのPontaポイントが貯まる。

 

家族が通話料で10%ポイント還元を受けるにはau PAY ゴールドカードの家族カードが必要なこと、20歳未満はゴールドカードの家族カードが作れないことなどは、先のdカード GOLDと同条件。ケータイの購入代金やau IDを使ったショッピング代金の通話料合算払いが10%ポイント還元対象にならないのも同じで、年会費も1万1000円じゃ。

 

大極 au PAY ゴールドカード1枚で11%還元なのはわずかに有利と言えるかもしれませんね。

 

師範 電気代とガス代に関しては、auでんき・都市ガス for auに契約すると、利用額100円につき1ポイントの通常還元に、利用額100円につき2ポイントのゴールドカード特典が付き、合計最大3%還元となる。なお、auでんきは一部エリアで新規申し込み一時停止となっており、ほかのエリアもいつ停止になるかわからん。

 

大極 希望者は迷わず、早めに申し込むほうが良さそうですね。

 

師範 楽天グループにも楽天プレミアムカードという上級カードがあるが、楽天カードでも十分おトク。楽天市場にはSPU(スーパーポイントアッププログラム)というポイントアッププログラムがあり、楽天のサービスをより多く使うほど、楽天市場での買い物でポイントがより多く貯まる。

 

例えば、楽天モバイルのRakuten最強プランを契約しているダイヤモンド会員ならポイントが+3倍、楽天カード所有者は楽天カード通常ぶんと特典ぶんで合計+2倍、楽天銀行の口座で楽天カードの引き落としを行い、かつ給与、ボーナス、年金を受け取ると+1倍と、ここまでで楽天市場での買い物で+6倍のポイント還元率になる。一方、年会費1万1000円の楽天プレミアムカード所有で得られるポイントアップ特典は+2倍と、高還元率を狙う者にはややおトクさに欠ける感が否めん。

 

大極 楽天プレミアムカードには楽天モバイルの通話料が10%還元されたりしないんですか?

 

師範 そういう特典はないが、楽天市場以外でも楽天証券の投信積立など複数のグループサービスでのポイント還元アップがある。その意味で、他の大手キャリアとは一線を画しとる。

 

ちなみに、ソフトバンクユーザーならオススメはPayPayカード ゴールド。年会費1万1000円で、ソフトバンクのスマホの通信料などの10%、ソフトバンク光/Airの利用料の10%、ソフトバンクでんきの利用料の3%相当のポイントが貯まる。合算払いした端末購入代金やショッピング代金が10%還元の対象外などの条件はドコモやauと同じ。ソフトバンクでんきの新規受付は一部WEBのみというエリアもあるが、現状受付停止にはなっとらん。

 

なおPayPayは、このところサービスの見直しが続いとる。要はPayPayカード/PayPayカードゴールドへの囲い込みを強化していて、すでに同カードを持っているユーザーはよりおトクにPayPayを利用できるぞ。すでに他にメインで貯めているポイントがある場合は、PayPayとの紐付けについては事前にしっかり検討するのがよかろう。

 

【今月の注目カード】

ケータイ利用料や回線/プロバイダ契約料でのポイント還元をはじめ特典満載のおすすめカード

NTTドコモ

dカード GOLD

持っているだけでドコモのケータイ/ドコモ光の利用料金の10%相当がポイント還元。ギガホ・ギガホライト・ahamoに契約する同カード会員は、ドコモでんきGreen(※1)の電気料金の6%がポイント還元されます。

 

購入から3年間最大10万円ぶんのケータイ補償も付帯。国内・ハワイの主要空港のラウンジが無料で利用できるほか、海外で最大1億円、国内で最大5000万円の旅行傷害保険が自動付帯され、航空機の欠航・遅延も補償されます。前年のカード決済による買い物累計額が100万円以上で1万1000円、200万円以上で2万2000円相当のクーポンがもらえ、さらにおトクです。

国際ブランド Visa/Mastercard
ポイント還元率 1%(dポイント)
年会費 1万1000円

※1:「ドコモでんき」は新規申し込みを一時停止中

 

au携帯電話料金のカード払いで、11%ぶんのポイントが貯まる!

auフィナンシャルサービス

au PAY ゴールドカード

同カードでの支払いで毎月のau携帯電話利用料の10%をポイント還元、通常ポイント1%と合わせて最大11%還元を受けられるカード。auでんき・都市ガスfor auの利用料を同カードで支払うと、通常ポイント1%+ゴールドカード特典2%の、合計最大3%相当のポイント還元が受けられます。

 

au PAY マーケットでの買い物では最大9%相当をポイント還元(※2)。海外旅行で最大1億円、国内旅行で最大5000万円の傷害保険が自動付帯され、国内の主要空港とハワイのダニエル・K・イノウエ国際空港ラウンジを無料で利用できます。

国際ブランド Visa/Mastercard
ポイント還元率 1%(Pontaポイント)
年会費 1万1000円

※2:支払い方法に「au PAY カード」を選択して利用すると1.5%、「au PAY ゴールドカード」の利用で2%、au PAY マーケット内店舗からのポイント1%の合計4.5%を常時還元。これに毎月1000円以上の電子書籍購入による1%還元などを加算、全条件達成で9%還元となります

 

楽天市場での買い物のほか街中の買い物でもどんどんポイントが貯まる!

楽天カード

楽天カード

楽天市場など楽天グループの各種サービス利用や普段の買い物でポイントがどんどん貯まる年会費永年無料のカード。楽天市場で同カードを使って買い物すると100円につき3ポイントが還元されます。楽天カードから楽天ペイアプリにチャージし楽天ペイ(楽天キャッシュ)で買い物すると合計1.5%相当のポイントを獲得。

 

楽天Edy機能(選択可能)と楽天ポイントカード機能も搭載しています。最大2000万円、傷害・疾病治療時最大200万円の海外旅行傷害保険(利用付帯)が付くのも魅力です。

国際ブランド Visa/Mastercard/JCB/American Express
ポイント還元率 1%(楽天ポイント)
年会費 永年無料

 

スマホ利用料・プロバイダ契約料の10%、電気料金支払いでも3%相当のPayPayポイントが貯まる!!

PayPayカード

PayPayカード ゴールド

カード決済時にソフトバンクの通信料の最大10%、ワイモバイルなら最大3%のPayPayポイントを付与(※3)。ソフトバンク光/Airの利用でも利用料の10%のPayPayポイントが付与されるほか、ソフトバンクでんきと契約すると利用料の3%相当のPayPayポイントが付与されます(※3)。通常の買い物の際は、事前に「PayPayあと払い」への登録をしておけば、カード決済でもPayPayあと払いでも、PayPayステップによる1~1.5%ぶんのPayPayポイントが付与されます。

 

さらに「PayPayカード ゴールド」ならゴールドカード特典0.5%が加算され最大2%付与に。海外最大1億円(自動付帯)、国内最大5000万円(利用付帯)の旅行保険が付き旅行の際も安心。国内・ハワイの主要空港ラウンジサービスも付帯されます。Yahoo!プレミアムの全特典も無料で使い放題です。

国際ブランド Visa/Mastercard/JCB
ポイント還元率 1.5%(PayPayポイント)
※PayPayカード ゴールドの付与率
年会費 1万1000円

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

ペア回線

dカード GOLDに登録しているドコモケータイの契約者名義とドコモ光インターネット回線の契約者名義を同一にすること。ペア回線を設定しておくと、ドコモ通信料・ドコモ光契約料の10%ポイント還元のほか、ドコモとドコモ光のセット割が利用でき、ギガホ プレミアやギガライトなら毎月最大1000円、カケホーダイやパケあえるなら毎月最大3850円の割引が受けられます。

 

すでにドコモケータイを契約していてドコモ光を新規契約する場合は、申し込み時にペア回線の対象にしたい携帯電話番号を登録すればOK。ドコモケータイもドコモ光もすでに開通していて、新たにペア回線登録する場合は、dカード GOLDデスクへの電話やドコモショップで手続きを行います。dカード GOLDの「ペア回線」に限らず、ケータイ通話料やインターネット接続サービスなどでのポイント還元特典を受けるには、各サービスの情報連携が不可欠です。

 

ダイヤモンド会員

楽天会員は「ダイヤモンド」「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「レギュラー」の5段階の会員ランク制度を設けており、ランクごとに異なる特典が提供されます。ダイヤモンド会員の条件は、過去6か月間でポイント獲得数が4000ポイント以上、ポイント獲得回数が30回以上であることと、楽天カードを持っていること。

 

ダイヤモンド会員にはランク1年キープでプレゼントが当たるほか、限定のポイントキャンペーンに参加できる豪華特典や、毎月18日に楽天市場での買い物時のポイントが合計4倍(要エントリー)になるなどの特典が与えられます。

 

サービスの見直し

PayPayはこの夏同社サービスを大幅に見直します。まず7月1日からは、PayPayステップの達成条件である支払い回数30回のカウント条件が「300円以上」から「200円以上」に“改善”される一方、PayPayステップのポイント付与が従来の「支払い金額×1.5%(小数点以下切り捨て)」から「支払い200円ごとに3ポイント還元」となり、200円に満たないぶんは切り捨てに。

 

さらに、「ソフトバンク・ワイモバイル まとめて支払い」によるPayPay残高へのチャージも、9月1日から毎月2回目以降のチャージには2.5%の手数料がかかることになりました。ユーザーが今後これにどう反応するかが注目されます。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

 

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男