2018年の高級時計トレンド「ネオ・クラシックウオッチ」を代表するグランドセイコーの逸品

今年の高級時計は、「ネオ・クラシック」な新作ウオッチがこれから数多く店頭に並びます。本稿ではそのなかでも特に注目の、グランドセイコーによる国産最高峰のモデルを紹介。また、今年の高級時計の傾向や2大見本市についてもあわせて解説します。

 

世界で見せつけた国産最高峰の驚異的な高精度

グランドセイコー
キャリバー9S 20周年記念限定モデル

上(18KYG)/Ref.SBGH266
302万4000

中(プラチナ)/Ref.SBGH265
594万円

下(SS)/Ref.SBGH267
70万2000

国産最高峰の機械式ムーブメント誕生20周年を記念して製作された3部作。毎時3万6000振動を誇るCal.9S85の性能を段階的に引き出し、精度別に外装素材を使い分けています。GS規格に則った平均日差-3〜+5秒精度のSSが1500本、特別調整が施された-2〜+4秒精度の18KYGが150本、-1〜+3秒精度で調整されたV.F.A.(=Very Fine Adjusted)仕様のプラチナは20本の数量限定となります。

SPEC●ムーブメント:自動巻き(Cal.9S85)●素材:プラチナケース/18KYGケース+クロコダイルストラップ、SSケース&ブレスレット●サイズ:φ39.5×D13㎜●防水性:10気圧

 

【CLASSIC POINT】

世界最高峰に至った約10年の奇跡

グランドセイコーは、世界に挑戦する最高級の腕時計として1960年に誕生。徐々に性能を高め、1969年のV.F.A.で日差±2秒を実現しました。

 

【NEO POINT】

精度を限界まで高めた現代版V.F.A.

グランドセイコーの機械式キャリバー9S系20周年を機に、1969年の伝説を新作で再現しました。日差−1〜+3秒という、驚異的な高精度を記録。

 

 

先人たちの知恵の結晶を現代技術でさらなる高みへ

腕時計の二大祭典が終わり、主要な時計ブランドの新作が出揃いました。今年の傾向は、ずばり「ネオ・クラシック」。どこかレトロチックな雰囲気を残しながら、素材や機能は最先端という新作が多いのです。

 

このトレンドでは、グランドセイコーのような精度を対象にしたものやオメガのダイバー 300Mのリニューアルなど、単なる見た目の復刻版に留まらないという特徴があります。これらは各社の歴史と現代の技術が融合しており、いずれも今年のブランドの代表作といえる出来栄えとなっています。

 

もしこれらの時計を手にする機会があれば、外装デザインだけでなく、歴史や機構にまで目を向けてみてください。きっとブランドの製品哲学が伝わってくるはずです。

 

【豆知識】

ジュネーブサロンとバーゼルワールドは世界的な時計の祭典

高級時計界には時計の本場スイスで開かれる2つの見本市があります。ひとつは1月に開催され、約30社が出展するSIHH、通称ジュネーブサロンで、もうひとつが3月に開催され、数百社が出展するバーゼルワールド。ここでの発表作がその後1年の時計店を賑わすのです。

シャイニーブロンズカラーが新鮮! 秋元康流にアレンジされたグランドセイコー

高級時計が持つ魅力の普及・啓発に努めるAJHHより新たな限定ウオッチが発表されました。手がけたのは、日本が世界に誇るグランドセイコー。500本のみで作られる特別仕様は、稀代のヒットメーカーである秋元康氏プロデュースによって、これまでに見たことのない一本に仕上がっています。

 

 

 

時計を着替えることが人生を変えるきっかけに

AJHHとは日本精機高級時計協会のことで、Association Japon de la Haute Horlogerieの略。高級時計の文化・伝統を次の世代に伝えることを目的に、2005年に設立されました。現在は全国17店舗が加盟中です(加盟店一覧→ http://www.ajhh.jp/ )。

 

このAJHHの企画から誕生した最新の特別モデルは、直径39mmのケースに鮮やかなシャイニーブロンズの文字盤を組み合わせた一本。ムーブメントには、機械式時計とクオーツ時計の機構が融合したスプリングドライブが搭載されています。

 

グランドセイコー「秋元康氏プロデュース AJHH特別限定モデル」49万6800円/Ref.SBGA371
国産時計の最高峰がAJHHのために作り上げた、限定500本の特別仕様。秋元康氏が監修した本機には、同氏のメッセージカードと、ブラウンのカーフストラップが付属する。スプリングドライブ自動巻き。直径39mm。ステンレススチールケース&ブレス。

 

裏蓋はシースルー仕様。サファイアクリスタル内面には、グランドセイコーを象徴する獅子の紋章と限定の文言を金色でプリント。

 

本機の製作に関してAJHHがプロデュースを依頼したのは、秋元康氏でした。作詞家として「川の流れのように」をはじめとした数々のヒット曲や、テレビ、CF、アイドルなどのプロデュースも手掛ける秋元氏は、実際にセイコーの開発者と何度も打ち合わせを行ったそう。

 

これまでにない文字盤色の採用や、付属のレザーストラップ、そして日々の生活の重要な時刻となる「9時」を朱色に染めるなど、数々のユニークな試みから秋元氏の強いこだわりが感じられます。

 

 

この時計に込められた製作陣の思いは、AJHHのコンセプトでもある「人生の節目に腕時計を」。秋元氏のアレンジによって誠実なグランドセイコーの表情にユニークさが加わった一本には「時計を着替えることは、人生を変えるきっかけになること」という提案が込められています。

 

心機一転、新たなことにチャレンジしようと考えている人は、自分に寄り添いながらも、ときに奮い立たせてくれるような特別な腕時計の購入を検討してみてはいかがでしょう?

 

 

まるで宝石のようなセラミックの磨きに驚愕! GSであってGSでない、スポーツウオッチ

昨年末、ありがたくもグランドセイコーの高級モデルを長期間使用させていただいた。今回はその使用レポートとともに、”150万円を超える国産時計”がアリだと感じさせられたそのディテールに迫ってみたい。

 

 

 

人生初のGSはイメージとは全く異なるものだった。GSなのに大きくてゴツいし、ブラックセラミックはキラキラだし、なんだかギラついた時計だからである。ではそれがマイナスかというと、とんでもなく好印象。GSのデザインコードは踏襲しているから、もちろんスーツなんかにもバッチリ合ううえ、人と違ったものを身に着ける“タダモノじゃない”感が出るからだ。それは、いかなるときも煌く、磨き込まれたセラミックベゼルとケースによるところが大きいだろう。

 

なんといっても、このセラミックの煌きにやられてしまった。非常に硬く、研磨の難しいとされるセラミックをまるでステンレススチールかのように、GSクオリティのレベルにまで磨き上げているのだ。日中は上品に微笑み、夜は妖しく輝く表情の違いはなかなかお目にかかれるものでない。こうした素材にフォーカスした付加価値の付け方は、国産ブランドはあまりしてこなかったように思う。いかにも舶来ブランドの手法であり、GSが国際市場に本格的にアプローチしたのだと改めて実感した。

 

セラミックとチタンを巧みに掛け合わせたケース。ケースサイドはセラミックで覆われているような構造だ

 

 


シャツに合わせても違和感ない。個人的にはもう少し薄いと使いやすいが、スポーツシーンでの使用を考えるとこの厚み(16.2mm)はむしろ存在感があっていいのだろう

 

 

本機はチタンとセラミックを巧みに使い分けたケース構造になっており、縦52.5×46.4mmとやや大型でありながらサイズの割に軽量性にも優れている。このあたりの発想はユーザーからすると最もGSらしくない部分なんじゃないかと思う。こんなスポーティな出で立ちのGSは賛否がありそうだが、独立ブランド化したが故の挑戦的な姿勢そのものだ。

 

いま、市場では高級スポーツウオッチがブランド成功のカギを握り、超老舗と言われるメーカーが積極展開を仕掛けている。100万円超のスポーツウオッチカテゴリは大激選区と言って間違いなく、オーデマ ピゲのロイヤル オークやパテック フィリップのノーチラス、ロレックスのデイトナがその中心で、ジラール・ペルゴがロレアートを復活させてさらに混戦模様となっている。GSがそのフィールドに果敢に挑んだ初期の姿が本機だとすれば、わたしは絶賛を贈りたい。元来、国産時計というと機能で訴求することを作法とし、デザインなどブランド力が大きく作用する要素に弱かった。 GSはここに切り込んだのだ。

 

日中、セラミック部分は、自然光のなかで周囲の環境により黒というよりグレーなどの表情を見せる

 

 

どこか漆のような質感を思わせる艶やかなセラミックの輝きは、不思議と和の場面にもマッチする。スポーツウオッチというとビーチなど夏のシーンを連想しがちだが、広い意味で”旅”に携えたい時計ということであれば、こんな1本があってもいいと思う。光の具合や眺める角度によって真っ黒であったりグレーであったりと、色の表情を変えるこのセラミックは、アクティブではないシーンにもなじむような、繊細な美しさがある。

 

国産デザインの妙なのか、和の空間にもマッチする。隠れ家的な温泉宿などに着けていっても雰囲気を邪魔しない気がする

 

 

少しわざとらしい気もするが、お茶を注いだりもサマになる。あまりにキラキラさせすぎないよう、着け手のセンスが試される

 

ムーブメントにはGS伝統のスプリングドライブを搭載し、もちろん中身も世界に誇るセイコー品質を保っている。が、しかし、どんなシーンにもよりそうような日本人らしい特徴を備えた点をこのスポーツウオッチの最大の魅力として推薦したい。

 

裏側からは抜かりない仕上げが施された9Rスプリングドライブが見える。GSファンが唸るポイントも押さえられている

 

 

/商品詳細

グランドセイコー
ブラックセラミックス コレクション
SBGC223
167万4000円

問合せ セイコーウオッチお客様相談室 0120-061-012

https://www.grand-seiko.jp/

 

【ロングテストレポート】グランドセイコーが「最高峰」な理由は徹底した実用主義にあった

日本の機械式時計の頂点ブランドといえば、真っ先に思い浮かべるのがグランドセイコーでしょう。この「日本人のために設計された高級腕時計」が、2017年から本格的にグローバル展開されています。そんな世界の「GRAND SEIKO」が、なぜ日本時計界の最高峰と言われているのか。実態を知るべく、2か月ほど実機を試用しました。

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GRAND SEIKO開封の儀

年がら年中腕時計を見続けている筆者は、グランドセイコーを着けている人に、「堅実な人柄」「上質さへのこだわり」「派手さは好まない」「安定した収入」といった印象を持っています。その対極にある自分がグランドセイコーを身に着けてどうなるものか。迷わず行けよ、行けば分かるさ。

 

いざ、開封の儀。

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グランドセイコー「メカニカル ハイビート 36000 GMT」72万3600円/Ref.SBGJ203/自動巻きCal.9S86/約55時間パワーリザーブ/SSケース&ブレス/直径40mm、厚さ14mm、質量159g/10気圧防水グランドセイコー「メカニカル ハイビート 36000 GMT」72万3600円/Ref.SBGJ203/自動巻きCal.9S86/約55時間パワーリザーブ/SSケース&ブレス/直径40mm、厚さ14mm、質量159g/10気圧防水

 

 

外箱は、グランドセイコーのテーマカラーであるブルーに、ブランドロゴをシルバーで型押し。箱を開けると、上質な包み紙で保護された内箱が現れます。

 

さらに、その下には時計界でも特に厳しい条件が並ぶことで有名な「グランドセイコー規格検定」の合格証明書と、時計の取扱説明書が出現。グローバルブランドらしく、英語が併記されています。いよいよ内箱を開けて、ご対面。着用の前に細部をチェックしましょう。

 

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今回使うのは、24時間で1周する副時針(GMT針という)を持ったSBGJ203というモデル。ケースは鏡面の面積が広く、全体的にキラキラ光りますが、絶妙なつや消し仕上げのおかげで「これ見よがし」な印象は受けません。ブレスとバックルの作りもしっかりしています。時刻合わせのリューズの感触も心地良し。短針を1時間単位で調整できるので、日付表示や渡航先のローカルタイムの調整もスムーズです。

 

 

いよいよ装着。果たして第一印象は……

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なんか、すごく、いい。

 

初めて着けたとは思えないほど、すでに馴染んでます。ブレスレットタイプなので、手に持ったときの重量感はそこそこあったのですが、着けてみると「軽い」とさえ感じるほど装着感が良いです。なるほど、これなら普段使いできますね。

 

ところ変わって、ある晴れた午後。

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照りつける太陽の下で文字盤をよく見てみると、模様が浮き出てきました。これは、この時計の生まれ故郷である雫石高級時計工房から望める岩手山の山肌を表現したもので、その名も「岩手山パターン」。文字盤の光の乱反射を防ぎつつ、効果的に時刻表示の視認性を高めてくれます。

 

今度は、夜のドライブ。

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この時計に夜光は付いていないのですが、ちょっとした光でもキラッと針やインデックスが光るので、時間が読めなくなることはありません。むしろ、真っ暗な環境で時計が光るのがちょっといやなときって、ありますよね。映画や芝居が始まる前とか。

 

 

カジュアルな服装には合うか?

似合わないだろうとわかっていながら、リュックを背負ったカジュアルな服装にグランドセイコーを着けてみました。

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・・・似合ってませんよね。かなりカッチリしたデザインだからなのか、鏡面の輝きなのか、自分の先入観なのか、言葉にするのが難しいのですが肌で感じる違和感がスゴい。TPOって大事。超大事です。カジュアルな服装には、それに合う時計を別で用意しましょう。

 

 

2か月使い続けてみた感想

そんなこんなで色々試しながら約2か月使ってみた感想ですが、着けやすくて時間も見やすく、仕事の相棒としては間違いなく最高です。キラッとした光が周囲の目を引くようで、電車内の知らないビジネスパーソンたちの話題が急に腕時計になったりします。

20171124_hayashi_WN_16東京モーターショーでの一枚。レクサスブースでも、GSを着けていれば強気になれました

 

ちょっと知ったようなことを言うと、1/10秒で時を刻む秒針(先端が微妙にカーブしている)の緻密な動きと、その正確さにムーブメントの出来の良さが表れています。搭載ムーブメントは、グランドセイコー専用設計のCal.9S86。シースルーバックからは、プレートなどに施された手の込んだ装飾を見ることができます。

サファイアガラスがはまった裏蓋はねじ込み式で、10気圧防水仕様。繊細そうに見えますが、実際は着けたまま手を洗っても、突然の雨でも安心サファイアガラスがはまった裏蓋はねじ込み式で、10気圧防水仕様。繊細そうに見えますが、実際は着けたまま手を洗っても、突然の雨でも安心

 

本当に使える腕時計は、実用性が高くてナンボ。それは、決して機能が少ない多いということではありません。重要なのは、ストレスなく、心地良く使えること。これについて、SBGJ203は文句なしの合格点でした。さすが日本の最高峰ブランドというだけあって、多くのビジネスマンに愛されてきた理由も納得です。

遠くに見える日本の最高峰を、最高峰ブランドの時計とともに望む。今回はGMT機能を使う機会がなかったけれど、赤い針はただあるだけでデザインのアクセントになります遠くに見える日本の最高峰を、最高峰ブランドの時計とともに望む。今回はGMT機能を使う機会がなかったけれど、赤い針はただあるだけでデザインのアクセントになります

 

 

自分の手元を離れた後日談

毎日、仕事へ向かうときに「今日は何を着けようか」と悩むことが増えました。

 

 

協力=グランドセイコー https://www.grand-seiko.jp