呉の英雄「周瑜」がシングルカスクウイスキーに!「三國志8 REMAKE×三郎丸蒸留所」コラボ第3弾

若鶴酒造は、歴史シミュレーションゲーム『三國志8 REMAKE』とコラボレーションしたウイスキーを発売。リリース第3弾では、ゲームに登場する「周瑜(しゅうゆ)」のグラフィックをラベルにあしらった「シングルカスク三郎丸 周瑜 #210150」の抽選を、特設ページで3月31日に開始します。

記事のポイント

「周瑜」といえば、赤壁の戦いで曹操軍を打ち破った立役者で、頭脳明晰かつ容姿端麗な英雄として知られます。そんな周瑜をイメージした一樽を選定しているとのことです。

 

今回発売するウイスキーは、原材料がモルト、アルコール分は60%、蒸留年は2021年(ボトリング年 2024年)。「勇敢で華やかな周瑜をイメージした一樽を選定した」といいます。

抽選エントリー期間は、3月31日 12時00分~4月8日 23時59分。若鶴酒造オンラインショップ「私と、ALC.」の商品ページから申し込みできます。商品の発送は4月下旬を予定とのこと。

 

若鶴酒造
「シングルカスク三郎丸 周瑜 #210150」
容量:700ml
原材料:モルト
アルコール分:60%
希望小売価格:2万2000円(税込)

【数量限定】八海醸造初のウイスキー!主原料は米、8年熟成させた甘やかな味わい

八海醸造は、初のウイスキー製品となる「Hakkaisan シングルグレーン 魚沼8年 ライスウイスキー 2025LIMITED」を4月1日に数量限定で発売します。3月28日(金)9時から4月9日(水)9時までの期間中で抽選販売となるほか、主要都市のバーなどでも取り扱われる予定です。

記事のポイント

八海醸造は、2005年から米焼酎の製造を深沢原蒸溜所で開始し、2016年からウイスキー製造に着手したそう。長年の酒造りで培った職人の技術や、徹底した製造管理のもと8年熟成し、初のウイスキー発売が実現しました。「米を主原料とした自社製造原酒のみを使用したウイスキーは、世界でも希少な存在」とされます。

 
その名の通り、米を主原料としたライスグレーンウイスキーです。八海山の「雷電様の清水」を仕込み水に、清酒酵母を用いて製造。「伝統的なウイスキー製法を基に独自に追求して製造した原酒だけを8年ゆっくりと熟成させた」とのことで、バニラや花を思わせる甘い香りを湛えた味わいを楽しめるそう。

 

テイスティングノートは下記のとおりです。

 

色:琥珀色
香り:柑橘系につづくチョコレートやバニラを思わせる甘い香り
味わい:米由来のほのかな甘み、ドライフルーツ、ナツメグのようなスパイシー感、カラメルのほろ苦さ

 

応募窓口はこちら。今回逃してしまっても、今後7月や10月、2026年1月に抽選販売を予定しているようです。

 

八海醸造
Hakkaisan シングルグレーン 魚沼8年 ライスウイスキー 2025LIMITED
原材料:米(国産)、麦芽
内容量:700ml
アルコール分:52%
価格:1万3200円(税込)

3年熟成のシングルカスクウイスキー!シェリー樽の味わいと、桜島の表情を映す「IMADEYA CASK 桜島」

お酒のセレクトショップ「IMADEYA」を展開する「いまでや」は、御岳蒸留所のオーナーズカスクシリーズ「IMADEYA CASK 桜島」の発売を、3月12日に発表しました。樽の個性を多角的に楽しめるという、本格ウイスキーです。

 

記事のポイント

御岳蒸留所は、2019年に鹿児島県鹿児島市の標高400mに位置するモルトウイスキー蒸留所。シェリーカスク(樽)での熟成が特徴で、2023年には第一弾シングルモルトウイスキー「御岳 THE FIRST EDITION 2023」をリリースしています。今後も、桜島(御岳)を様々な角度から捉えた光景をモチーフにしたシリーズが登場するようです。

 

「IMADEYA CASK 桜島」は、IMADEYAが2021年から所有していた樽の一つで、御岳蒸留所内の熟成庫で3年間熟成させたもの。シングルカスクウイスキーは、熟成する樽によって味わいが変わると言われています。「見る角度によって表情が変わる」桜島に、その特徴をなぞらえているとのことです。

↑真ん中の文字列は、御岳蒸留所の位置情報

 

ラベルには、御岳蒸留所から望める桜島が描かれています。

 

 IMADEYA CASK 001 桜島
容量: 700ml(箱入り)
価格: 1万9800円(税込)

ウイスキーもワインも欲張る“ハシゴ酒旅”! サントリーのワイナリー&ウイスキー蒸溜所めぐり

「食欲の秋」は過ぎ去ったが、冬から春にかけて旬を迎える食材は多い。美味に加え、美景も求めて旅をするなら山梨はいかがだろう。先ごろ施設の充実度をアップさせた、サントリーのワイナリーとウイスキー蒸溜所の各見どころをお届けする。

 

日本ウイスキーのパイオニアが新たに挑むものづくりを体感

2023年はジャパニーズウイスキー100周年。「サントリー白州蒸溜所」も50周年を迎えたが、次の時代をつくる第一歩として、パイオニアの新たな挑戦は始まっている。その現場を体感できるツアーが、今秋からスタートした。

↑1923年に建築着工した山崎蒸溜所に続く拠点として、半世紀を経た1973年に竣工。この建物は1979年に完成した「ウイスキー博物館」で、シンボリックな屋根はかつて山崎蒸溜所にあった麦芽乾燥塔「キルン」を模したデザインだ

 

アクセスは、小淵沢駅から無料の送迎バスで行くのがオススメ。ここは「サントリー天然水 南アルプス白州工場」を併設し、両方見学できるのも特徴だ。なお、ともに内部へ入場するには事前予約が必要となるので覚えておこう。

 

目玉となる有料ツアーは抽選制で、ふたつのプランがある。ひとつは、仕込、発酵、蒸溜、貯蔵といった一連の工程を学んだ後にテイスティングを楽しめる「白州蒸溜所ものづくりツアー」(3000円)。もうひとつが、旧蒸溜棟や古典的な製造工程を見学しながらつくり手と交流ができ、その後は希少なウイスキーや地元食材とのペアリングも味わえる、この9月に開始した「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」(1万円/曜日限定)となっている。

↑施設内には大小様々な樽貯蔵庫があり、合計でその数は18棟にもおよぶ。ここはそのひとつで、180Lのバーボンバレルを230Lに組みなおしたホッグスヘッド樽が最も多い

 

なお、ツアー以外にも魅力は満載。新生のレストラン、世界のウイスキー文化や白州の歴史を知れる博物館、蒸溜所限定の希少な商品を買えるギフトショップなど充実している。ぜひいますぐ予約し、至福の酒旅に酔いしれよう。

↑ギフトショップでは、ロゴ入りのグラスやアパレルといったグッズのほか、ウイスキーなどのお酒も販売。運がよければ限定銘柄や、「シングルモルトウイスキー白州」も購入できる

 

ココが最新

↑現代の精麦は機械式が主流だが、ここでは非効率ながら狙った酒質を得られる古典的な「フロアモルティング」を一部導入。プレステージ版のツアーで見学できる。

 

↑9月に開業した「白州テラス」。地元食材を使った料理を、「白州 森香るハイボール」(700円)ほか様々なドリンクと楽しめる。名物は「白州フォレストピザ」(2200円)。

 

サントリー
白州蒸溜所

 

海抜約700mの高さにあり、東京ドームの約17倍という広さを誇る、世界でも稀な“森の蒸溜所”。南アルプスの麓で暮らす野鳥や草木と共生しながら育まれるウイスキーは、大自然のたくましさとやさしさを両立した味わいとなり、国際品評会で何度もアワードを受賞している。

住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
時間:9:30~16:30(最終入場16:00)
休み:年末年始、工場休業日、その他臨時休業あり ※2024年の最終営業日は12月24日。2025年1月8日より営業
交通:JR小淵沢駅より無料シャトルバス運行 ※ビジターセンターより先の建物への入場は要予約

たわわに実ったぶどうも見られる、サントリーのワイナリーツアー

日本屈指の名水の里であり、ぶどうの名産地でもあるのが山梨だ。サントリーは同県に美酒の生産拠点をふたつも構え、それぞれ見学ツアーも実施している。アクセスは東京からなら、新宿駅などから特急「あずさ」が最速。JR中央本線で山に向かえば、甲斐市ではワイナリー、北杜市ではウイスキー蒸溜所が待っている。

↑1909年に登美農園として開園。以降、南に富士山を仰ぎ、眼下には甲府盆地を望むこの地で100年以上ぶどうとワインがつくられてきた。ショップ2階の「富士見テラス」では絶景を自由に堪能できる

 

県庁所在地でもある甲府の駅前から、週末や休日は無料送迎バスが運行しているのが「サントリー登美の丘ワイナリー」だ。日本ワインに100年以上携わってきた同社は2022年、その魅力をより広めるべく“ぶどう畑を起点としたお客様接点の強化”を掲げ、新ブランド「SUNTORY FROM FARM」を発足。ワイナリーの設備やコンテンツをリニューアルし、ツアーも刷新(要予約/1000円~)した。それぞれ、ぶどう畑、熟成庫、その両方を見学できる行程で、すべてテイスティング付きなのもうれしい。

↑ワインショップにはテイスティングカウンターを併設。ぶどうの産地は山梨をはじめ長野や東北など、常時20種前後の多彩なラインナップから選んで有料試飲ができる

 

敷地は東京ドームの約32倍という広さで、多くはぶどう畑。それを約50の区画に分け、各環境に適した品種を育成しているが、なかでも注力しているのが日本固有の「甲州」だ。公式サイトをチェックしよう!

↑要予約の有料ツアーで見学できる熟成庫。夏でも16℃前後、湿度60%程度という涼やかな石造りの空間に、200以上の樽が並ぶ。別室には瓶熟成の巨大な棚も

 

ココが最新

↑ショップの目玉ワインといえば、このワイナリーなどでしか買えない限定銘柄だ。なかには9月10日に発売されたばかりの新作もあり、「登美の丘 甲州 2022」(ボトル5940円)は期間限定で有料テイスティングも可能。お土産や、旅の思い出としてもぜひ購入したい

 

サントリー
登美の丘ワイナリー

甲府駅からバスで約30分。雄大なぶどう畑の先には、甲府盆地や富士山の絶景が広がる。予約不要で自由に散策できる畑があったり、テイスティングができるショップや、軽食とワインとのマリアージュを楽しめる見晴らし抜群のテラスがあったり、エントリー層でも気軽に楽しめる充実ぶりだ。

住所:山梨県甲斐市大垈2786
時間:10:00~17:00(最終入場16:30)
休み:水曜、年末年始、その他臨時休業あり ※2024年の最終営業日は12月22日。営業再開日は公式サイトを参照のこと
交通:JR甲府駅南口より無料シャトルバス運行 ※シャトルバスは週末と祝日の運行

若鶴酒造からスモーキーさを追求したブレンデッドウイスキー新ブランド「SAB.」デビュー

若鶴酒造は、ブレンデッドウイスキーの新ブランド「SAB.(サブ)」を立ち上げ、第1弾商品として「SAB. SUNSET RED」と「SAB. NIGHT BLACK」の2種を2024年12月12日(木)に発売しました。また、来年2025年夏に「SAB. OCEAN BLUE」を数量限定品として発売予定です。

左からSAB. SUNSET RED、SAB. OCEAN BLUE、SAB. NIGHT BLACK

 

【ラインナップ】

SAB. SUNSET RED

砺波・散居村の水田に映る夕日をイメージした<赤>。スモーキーなウイスキーの入門からこだわりのユーザーまで対応する甘く、丸みのある味わい。

アルコール分:46%

容量/実売価格:700ml/3180円(税別)、200ml/1140円(税別)

 

SAB. NIGHT BLACK

夜空の星々に照らされた山の陰影をイメージした<黒>。より奥深く、複雑さを持ったスモーキーでスパイシーな味わい。

アルコール分:46%

容量/実売価格:700ml/4900円(税別)

 

SAB. OCEAN BLUE

雨晴海岸の晴れ渡る空と海をイメージした<青>。三郎丸の特徴である力強いスモークとフルーティーな魅力が際立つ三郎丸最高峰のブレンデッド。

アルコール分:46%

容量/実売価格:700ml/9000円(税別)

※2025年夏発売予定、数量限定品。商品写真は仮イメージです。今後変更の可能性があります。

 

いずれも環境に配慮した「エコグリーン瓶」を使用。再生カレットを90%以上使用することで、一般的な瓶に比べ23%の軽量化と10万本あたり約13.5トンのCO2削減に貢献します。

 

日本発のウイスキーをグローバル展開

同社の三郎丸蒸留所では、2019年にシングルモルト三郎丸シリーズ第1弾「三郎丸0 THE FOOL」を発売。日本のシングルモルトウイスキーは国内やアジア市場を中心に好評を得ているものの、ウイスキー消費量の大半はブレンデッドウイスキーが占めています。

 

そこで同社ではグローバルにたたかえるブレンデッドウイスキーを開発するため、これまでの商品ブランドを整理し、新・三郎丸ブランド戦略の新たな柱の1つとして、ブレンデッドウイスキー「SAB.」を発売するに至りました。

若鶴酒造株式会社の代表取締役社長兼CEO 稲垣 貴彦氏

 

「SAB.」シリーズは、三郎丸の大きな特徴である「スモーキーさ」を追求しながら、グローバルに浸透するネーミング、パッケージ、プライシングと、グローバルに対応するウイスキーブランドの確立を目指すとしています。

 

日本のウイスキー産業を支える樽再生事業もスタート

また、三郎丸蒸留所は、2024年11月より新事業である「Re:COOPERAGE(リク―パレッジ)」を立ち上げています。これは、ここ10年間で約10倍に増えた蒸留所数に対し、樽の価格の高騰、樽不足により、樽の供給が追いついていないという現状に対応することを目的としたもの。また、それらの樽をメンテナンスする職人の不足も課題となっています。

 

今回、同社が立ち上げる「Re:COOPERAGE」は、樽の「修理・再生・再活性化」を担う業態です。現在、独立系の樽メーカーは日本全国でも1社のみであり、本事業の立ち上げにより、日本のほぼ中央に位置する富山県で、樽の修理が可能となります。三郎丸蒸留所は、「樽再生と木桶の再生」両方を専門として担う日本初の本取り組みで、国内ウイスキー産業を支え、業界の底上げに貢献するとしています。

 

若鶴酒造
ブレンデッドウイスキー「SAB.(サブ)」
2024年12月12日発売

紀州南高梅の香りを楽しんで! ウイスキーブレンド梅酒「海知の梅」「翼知の梅」発売

シーウィングスは、ウイスキーブレンド梅酒 「海知の梅」「翼知の梅」を発表。

 

記事のポイント

人気商品 ウイスキー海知・翼知シリーズの新たなラインナップとして生まれたウイスキー梅酒。それぞれのウイスキーの樽による個性に加え、南高梅梅酒の持つ「柔らかさ」「愛らしさ」をプラス。そして「新しい余韻」をイメージし引き立てることを目的としてデザインされています。

 

「海知の梅」について
雄大な自然が織り成す、まろみある余韻の出会い

フルーティな甘みをもつ紀州南高梅をウイスキー「海知」で深く穏やかに包み込ませ、口に含んだ瞬間に広がる旨みと奥行きある余韻を楽しめるとのこと。ロックやソーダ割りなど飲み方お好みで。

 

<ミズナラ樽「海知」ウイスキーについて>

日本人になじみ深い白檀や伽羅の香味のウイスキー海知はミズナラ樽の追熟で黄桃やドライフルーツの甘く芳醇な香りが魅力。

 

「翼知の梅」について
ヒノキの木香を引き立てる、ふくよかな南高梅の甘味

洋梨やトフィーのような甘味と調和の取れたスパイシーさが際立つウイスキー「翼知」をベースに、紀州南高梅の芳醇な甘味、酸味の長所を溶け込ませ、ふくよかな果実の香りと濃厚な後味を楽しめるとのこと。ロックやソーダ割りなど飲み方でお好みで。

 

創業90周年のニッカウヰスキーから発売された高コスパすぎる贅沢ウイスキー「ニッカ フロンティア」。その魅力とは?

 「マッサン」の名で知られ、愛好家からは「日本のウイスキーの父」として愛される竹鶴政孝。彼が「日本人に本物のウイスキーを飲んでもらいたい」と情熱を捧げ創業したニッカウヰスキーが、今年90周年を迎えた。 

 

そして期せずして今年は、マッサン放送から10周年の年。そんなニッカウヰスキーフィーバーに湧く今年、4年ぶりの新商品「ニッカ フロンティア」が発売された。本記事ではその魅力をお届けする。 

 

↑商品名には、飲む人をいままでのウイスキー体験とは違う新たな境地(フロンティア)に誘いたいという思いが込められている 

 

ニッカウヰスキー
ニッカ フロンティア
500ml 2200円(税込)

 

ニッカウヰスキー創業の地、余市蒸溜所の個性を凝縮 

「ニッカ フロンティア」は、余市蒸溜所のヘビーピートモルト原酒をキーモルトに使ったプレミアムウイスキー(2000円以上のウイスキー)。キーモルトが作られている余市蒸溜所は、大正時代にウイスキーの本場・スコットランドで本格的なウイスキーづくりを学んできた竹鶴が、最初に建てた蒸溜所で、ニッカウヰスキー創業の地でもある。 

  

↑竹鶴がスコットランド留学中に記した通称「竹鶴ノート」のレプリカ。ノートは2冊あり、どちらもウイスキーづくりの工程がびっしりと細かな文字でまとめられている。かつてイギリスの首相が、ユーモアと親愛の情を込めて「頭の良い日本の青年が、1本の万年筆とノートでウイスキーづくりの秘密を盗んでいった」とスピーチしたという逸話が残っている

 

↑余市蒸溜所のシンボルでもあるキルン塔。現在は使われていないが、もともとはここで発芽した大麦をピート(泥炭・草炭)で燻しながら乾燥させ、麦芽を作っていた

 

↑蒸溜所内に建つ洋館「リタハウス(リタとは、竹鶴がスコットランド留学時に出会い、後に妻となった女性の名前)」は、創業前の1931年に建てられ、1984年までの約50年間、ニッカウヰスキーの研究所として使われていた。写真は2020年冬に筆者が撮影したもの。リタハウスや前述のキルン塔など、蒸溜所内の7つの施設が国の重要文化財に指定されてる

 

蒸溜所が建つ余市町は、北海道積丹半島の付け根にあり、スコットランドに似た寒冷な気候で、良質な水と豊かな自然を有する場所。 

 

さらに、ウイスキーにピーティーな風味(スコッチウイスキー特有の薫香)を付与するのに欠かせないピートの産地でもあり、これが、「余市のウイスキーといえばピーティー」と言われる所以である。そして「ニッカ フロンティア」では、このピートが重厚に効いたモルト原酒がキーモルトに据えられている。 

↑余市蒸溜所の見学コースに展示されているピート。ヨシやカヤといった植物が堆積してできたもので、これを使って麦芽にスモーキーな香りをつける

 

グレーンよりモルトを多く配合したブレンデッド

また、ブレンデッドウイスキーでありながら、モルト原酒が51%以上を占めているのも特徴だ。 

 

ちなみにウイスキーは、大麦のみで作られたモルトウイスキーと、とうもろこしやライ麦、小麦など、モルト(大麦)以外の穀物を主原料としたグレーンウイスキーに分けられ、このふたつの原酒を混ぜたウイスキーをブレンデッドウイスキーという。 

 

そして大半のブレンデッドウイスキーは、モルトウイスキーよりもグレーンウイスキーの配合比率のほうが高い。しかし「ニッカ フロンティア」は、その逆。モルトウイスキーの比率のほうが高いため、ブレンデッドウイスキーらしいすっきりとした飲みやすさがありながらも、モルトウイスキーの魅力であるコクもしっかりと感じられるのだ。  

 

加えて、前述した通りブレンドのキーとして使われているのが、余市蒸溜所のヘビーピート原酒のため、ピートに由来する香り高くスモーキーな味わいも楽しめる。 

↑余市蒸溜所の象徴ともいえるのが、石炭で蒸溜器を加熱し蒸溜する「石炭直火蒸溜」。昔ながらの伝統的な蒸溜法だが、温度管理が難しく熟練した職人技が必要なため、いまもこの手法を続けている蒸溜所は世界を見渡しても希少。1000℃を超える高温のポットスチルを操ることで生まれる適度な「焦げ」が、独特の香ばしさと力強さを生む

 

さらに、アルコール度数が48%と、これまでニッカウヰスキーが発売してきた商品のなかで高アルコールなのもポイントだ。アルコール度数を高めるメリットは、度数が低いと溶けきれずに失われてしまう旨味もそのまま残ること。また、ハイボールにしたときに、炭酸水に割り負けしないといった魅力もある。 

 

加えて、あえて冷却をしないノンチルフィルタードも採用。一般的にウイスキーは、瓶詰め前に冷却して濁り成分をろ過する工程を経るが、冷却せずに常温でろ過を行うことで、原酒の香味成分をたっぷりと残している。 

 

↑蒸溜所内にある「ニッカミュージアム」では、ニッカのウイスキーづくりを様々な角度から学べる。ミュージアムの奥には豊富なラインナップから好きな商品を有料で試飲できる「テイスティングバー」

 

ニッカウヰスキーでは、このノンチルフィルタード、モルトベースのブレンデッドウイスキーという特徴は、最高ランクに値するプレステージカテゴリー(5000円以上のウイスキー)の通年商品、もしくは数量限定商品でしか採用されてこなかった。しかし「ニッカ フロンティア」は、2200円(税込)と手に取りやすい通年商品にもかかわらず、これらの特徴が取り入れられている。 

 

↑「ニッカ フロンティア」のメディア向け発表会の資料より。「余市」や「竹鶴」などの5000円以上の商品はプレステージカテゴリー。今回発売された「ニッカ フロンティア」はプレミアムカテゴリーで、「スーパーニッカ」や「ニッカ セッション」などがそれにあたる。そして1000円以上の商品がスタンダードカテゴリー、1000円未満はエコノミーカテゴリーと呼ばれ、「ブラックニッカ」シリーズが、スタンダードおよびエコノミーに含まれる

 

こだわり抜かれたその味わいは? 

肝心の味わいだが、口を近づけるとまずは深く甘い香りが鼻腔をくすぐる。マーマレードを思わせるフルーティーさを主軸に、しっかりとしたモルトの香りと心地良いスモーキーさが重なり、なんともふくよかな香りだ。 

 

そして口に含むと、アルコール度数の高さからは考えられないほどにスムース。ピート由来のビターさのおかげで、果実のような甘さがぼけずに引き締まり、バランスの良さが感じられる。それでいて喉を通ったあとには、余韻が長く続く。これをこの価格で味わえるのは贅沢すぎるといえよう。 

 

↑ボトルの背面にはしめ縄のモチーフを彫刻。これは創業者の竹鶴が造り酒屋の生まれであることに由来する。ちなみに同様の理由から、ニッカウヰスキー蒸溜所の蒸溜器はすべて、しめ縄が結ばれている。ちなみに写真中央は余市蒸溜所、右はニッカウヰスキーが宮城県に持つもうひとつの蒸溜所・宮城峡蒸溜所の蒸溜器だ

 

「ニッカ フロンティア」のおいしさを余すことなく楽しめるフロートハイボール 

最後に、メーカーが推奨する「ニッカ フロンティア」の飲み方として「フロートハイボール」を紹介しよう。フロートハイボールとは、炭酸水のうえにウイスキーを浮かべるスタイルで、口を近づけたときにその香りを余すことなく堪能できるのが特徴。 

 

また一口目は、ロックで飲むときのようにウイスキー本来の味が楽しめ、飲み進めるうちにグラスの中で炭酸とウイスキーが混ざり合い、さらに口の中でもブレンドされるという、味わいの変化を楽しめる、何度飲んでもおいしいスタイルだ。 

 

もちろん途中で混ぜてハイボールにしてもOKだ。フロートハイボールなら飲むたびに味わいが変わり、飲み進める過程で自分の好みを探ることもできる。そして何より見た目が美しい。 

 

作り方は簡単で、グラスに氷を入れ、8分目ぐらいを目安に炭酸水を入れる。マドラーを炭酸水の液面にあて、そこに沿わせるようにして「ニッカ フロンティア」を注ぐ。そうするとウイスキーが炭酸水の上にフロートする。 

 

↑筆者が試したところ、マドラーを液面に対し垂直にするのではなく、できるだけ寝かせるようにして入れるとうまくいきやすいと感じた

 

文章で読むと難しそうに感じるかもしれないが、やってみると意外と簡単。勢いよく注ぐとウイスキーがこぼれ落ち炭酸水に混ざってしまうため、ゆっくり丁寧に注ぐようにすれば、ほとんどの人はできるだろう。 

 

お酒が弱い方だと、最初のロックを飲んでいるような味わいに驚いてはしまうかもしれないが、ある程度お酒が飲めて、それでいてウイスキーはハイボールしか飲んだことがないという方には、ぜひ一度この飲み方を試していただきたい。「ニッカ フロンティア」のおいしさを余すことなく堪能できると同時に、この一杯を通して、ウイスキーの多彩な楽しみ方を発見できるはずだ。 

 

ちなみに一般的なウイスキーは1本750ml容量なのに対し、「ニッカ フロンティア」は500mlと量が少ないのも特徴。これを少ないと感じる方もいるかも知れないが、購入してみてたとえ味の好みが合わなかったとしても困らない量ともいえる。 

 

では、リピ買いの人にとってはどうなのか?と疑問を持たれるかもしれないが、すでにこの味の虜になっている人ならば、500mlであってもこのおいしさが2200円で手に入るのは十分にお得だとわかるはず。 

 

ニッカミュージアムの様子

今年のイブは「特別なハイボール」で乾杯しない?「サントリープレミアムハイボール山崎〈華やかで濃厚な味わい〉350ml缶」12/24より数量限定新発売

サントリーは、「サントリープレミアムハイボール山崎〈華やかで濃厚な味わい〉350ml缶」を12月24日(火)より全国で数量限定新発売。

中味は、ハイボールに合う山崎モルト原酒のみを厳選して使用した、厚みのある味わいとスパニッシュオーク樽由来の華やかで濃厚な味わいが特長。しっかりと冷やせば、贅沢なひとときを楽しめます。パッケージは、「山崎」のブランドカラーをベースに山崎蒸溜所を描き、「山崎」の文字を大きく配することで本格感を表現したといいます。

 

サントリー山崎蒸溜所について

「山崎蒸溜所」は、1923年に日本初のモルト蒸溜所として建設に着手し、昨年100周年を迎えました。日本名水百選にも選ばれる「離宮の水」があり、桂川・宇治川・木津川が合流する、湿潤な環境が特長のサントリーウイスキーの“ふるさと”です。つくり手の技と情熱によって、日本人ならではの繊細なウイスキーづくりをおこない、多彩で高品質な原酒を生み出しています。

 

「サントリープレミアムハイボール山崎〈華やかで濃厚な味わい〉350ml缶」

希望小売価格(税別):600円

「山崎」ホームページ

 

ウイスキー「白州」の魅力を体感して! サントリー白州蒸溜所が体験施設と見学ツアーをリニューアル

2023年から実施しているサントリー白州蒸溜所のリニューアルが2024年9月に完了します。今回のリニューアルでは、原料にもさらにこだわり、より品質の高い“原酒のつくり込み(※1)”を目指すためのフロアモルティング(※2)と酵母培養プロセス(※3)を導入。

※1 ウイスキーの製造工程における「蒸溜」を終えたばかりのニューポット(無色透明な原酒)までの段階においても、よりいっそうの品質向上を目指すこと。原酒の骨格をつくるとともに、長期熟成に耐えられるより品質の高いニューポットづくりを実現する
※2 大麦をウイスキーの製造に必要な「麦芽」へと変化させる伝統的な製麦工程の一つの方式
※3 より安定的で品質の高いウイスキーづくりのために、酵母の培養条件を制御するプロセス

 

さらに、5月にビジターセンターからバードサンクチュアリに繋がる橋「バードブリッジ」を設置し、蒸溜所の豊かな自然の魅力をより体感できるようになりました。また、9月1日(日)より、地元食材を使用したレストラン「Hakushu Terrace(ハクシュウ テラス)」が新たにオープン。9月20日(金)には、自然と共生したものづくりのこだわりや挑戦が感じられる見学ツアー「白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ」が新設されます。

 

レストラン「Hakushu Terrace(ハクシュウ テラス)」

「白州の森と響きあうレストラン」というコンセプトのもと、山梨県産の食材をふんだんに使った石窯ピザをはじめ、「Hakushu Terrace(ハクシュウ テラス)」でしか味わえない「サントリーシングルモルトウイスキー 白州」のオリジナルカクテルも楽しめます。森を感じる開放的な空間で、地元食材と白州の森で生まれた製品が堪能できます

 

・営業時間:10:00~16:30
・定休日:年末年始・工場休業日
・オープン日:2024年9月1日(日)
・予約開始日:2024年8月28日(水)10:00~

※白州蒸溜所のホームページ内、レストラン特設サイトよりご予約が可能です

 

白州蒸溜所ものづくりツアー プレステージ

白州の自然と共生したものづくりのこだわり、「サントリーシングルモルトウイスキー 白州」ブランドの魅力を体感できるツアー。ツアー前半では、白州蒸溜所の歴史を感じる場所での映像演出やつくり手との交流、さらには、品質向上の取り組みの一つである「フロアモルティング」を案内。

 

テイスティングでは、豊かな自然に囲まれた白州蒸溜所ならではの空間で「白州森香るハイボール」や「サントリーシングルモルトウイスキー白州 12年」が提供され、ここでしかできないマリアージュ体験を楽しめます。

 

・開催日:月曜日・金曜日(年末年始・工場休業日を除く)
・開催時間:11:30~13:40
・所要時間:130分
・参加費:1万円(税込)
・初回開催日:2024年9月20日(金)

・抽選申し込み期間
2024年8月30日(金)9:30~2024年9月3日(火)16:29

※「白州ものづくりツアー プレステージ」の新設に伴い、「白州ものづくりツアー プレミアム」は終了となります
※20歳未満の方はご参加いただけません
※ツアーの開催日は変更になる場合があります

 

サントリー「白州蒸溜所

2万4800円の工場見学!? “常陸野ネストビール”の木内酒造がビール・ウイスキー・日本酒全部載せのバスツアーで提供する贅沢体験の数々

日本におけるクラフトビールの黎明期からトップレベルの人気を博し、いまやウイスキーなども手掛けるビッグネームが「常陸野ネストビール」の木内酒造。その姿勢は、“大和魂”を重視しながら、実は海外交流にも超積極的。大胆な“攻め”の社風も特徴です。

 

そのポリシーが、個性派ビールやウイスキー事業の原動力にもなっているのですが、今度は“バー付きバスツアー”というユニークな事業を開始。お酒好きにはたまらない、贅沢体験の数々をいち早く体験してきました。

↑「BAR BUS HITACHINO(バーバス常陸野)」の車内。バータイムでは、同社の様々なお酒(炭酸水もあり)を自由に楽しめる。

 

ウイスキー、ビール、日本酒のつくり方を1日でチェック

「バーバス常陸野」は朝10時に東京駅を出発し、木内酒造が誇るビール、日本酒、ウイスキーの製造拠点を中心に見学し、19時半を目安につくば駅に到着するという日帰りのツアー。

↑この日のドリンクは、「常陸野ネストビール」の「ホワイトエール」「ラガー1823」や、「日の丸ウイスキー KOME」「日の丸ジン 蔵風土」など。「BAR BUS HITACHINO」と描かれたタンブラーは、オリジナルのミニエコバッグとともに持ち帰れる。

 

車内バータイムでのふるまい酒のほか、直営店でのランチとディナーも含み、大人1名2万4800円(税込)。移動はお任せで、多ジャンルの酒について学ぶことができ、ときに里山など大自然の景観に癒され、グルメ三昧! しかもオリジナルのお土産付きと、けっして高くないツアーだといえるでしょう。

↑最初に到着したのは、ウイスキーなどをつくる八郷(やさと)蒸溜所。敷地の畑には「金子ゴールデン」(木内酒造が積極栽培している、日本原産のビール用大麦)が植えられ、6月上~中旬ごろには収穫を迎える。

 

茨城県石岡市の八郷は良質な水に恵まれ、また盆地のため昼夜の寒暖差が大きく、熟成地としても理想的。また八郷地区は日本の里山100選に選ばれるなど日本の原風景が残る地域で、蒸溜所からは東の富士と呼ばれる筑波山の凛々しい眺望を望みます。

↑売店が併設された、一般開放もしているビジターセンター。ここでは木内酒造の歴史のほか、ウイスキーの素材や製造工程を展示パネルとともに学べる。

 

【ウイスキー】この蒸溜所だけの独自仕様がもりだくさん

ウイスキーは概して、製麦→糖化→ろ過→発酵→蒸溜→熟成→ブレンド(ヴァッテド)→瓶詰といった工程でつくられますが、それぞれ順に追ってスタッフが案内。特に木内酒造ならではのポイントというと、まず仕込み用タンクの独自性が挙げられます。

↑手前が「ろ過器」で奥が「糖化槽」。ウイスキーとしては珍しく、大麦麦芽以外に小麦、米、そばなど多様な原料の使用を想定しており、その糖化温度を管理しやすくするために、分けて導入している。

 

また、「培養タンク」や「発酵タンク」も特徴的。前者は自社培養酵母を造るための設備で、菌によってはバニラやココナッツのような風味が生まれるのだとか。そして後者は、ステンレス製のほかに木製も使用し、なおかつ材質を変えることで、より多彩な原酒をつくれるようになっています。

↑左がスロベニア産とフランス産のミックスオーク材、右がフランス産のアカシア材を用いた発酵タンク。イタリアのガロベット社製だ。

 

蒸溜所のシンボルともいえる「ポットスチル」(単式蒸溜器)は、スコットランドの名門・フォーサイス社製で、ストレートヘッド(ボディとネックが直線)の形状。ラインアームはやや下向きで、濃厚で香り高い酒質を狙っていることがわかります。

↑釜から上部に伸びる部分(ここはストレートヘッド)と、折れ曲がって伸びるパイプ(ラインアーム)の角度などが酒質を決めるひとつの要素に。写真手前が「初溜釜」、奥が「再溜釜」。

 

また、こちらは連続式蒸溜機を付設したハイブリッドスチルとなっていて、蒸溜室の奥にはその連続式も設置されています。一般的に、連続式蒸溜機はグレーン原酒用の設備となりますが、八郷蒸溜所では個性的なグレーン原酒をつくるために、ポットスチルでもグレーン原酒を蒸溜。この点もかなり独特です。

↑この連続式蒸溜機はジンのほか、グレーンウイスキーも蒸溜する予定だという。

 

そして熟成樽の材質にもこだわりが随所に。ジャパニーズウイスキーは日本原産の木材を珍重しますが、同社ではその定番であるミズナラ樽はあえて使いません。一方で重宝されているのはサクラ樽。サクラの熟成樽が特別珍しいというわけではありませんが、蒸溜所がある石岡市には県内屈指の桜の名所「常陸風土記の丘」があり、その点もサクラ樽を重用する理由です。

 

 

↑樽材によって異なる風味を、原酒のボトルと材質を並べることで紹介。左端がサクラの鏡板。

 

見学のあとは、ウイスキーをテイスティングしながらのランチ。樽や熟成年月などが異なる3種の原酒を飲み比べ、個性がどう変わるのかを自らの鼻と舌で体験します。

↑左から、2種の自社酵母を使ったバーボン樽の23ヶ月熟成。ジャマイカのラム樽で熟成をかけた32ヶ月もの。国産小麦を51%使用し、ラム樽で30ヶ月熟成したグレーンウイスキー。

 

味わえる料理は、蒸溜所内に2023年に開業した「常陸野ハム BARREL SMOKE」で製造する自家製シャルキュトリ(ハムやソーセージなどの加工肉)の盛り合わせと、自家製フォカッチャです。同社では近隣の養豚農家と提携し、飼料の一部に麦芽の搾りかすなどを使用し育てた特別かつ高品質な「常陸野ポーク」を一頭丸ごと購入。そのうえで自社加工し、燻製にもウイスキー熟成で使用した樽のチップでスモークしています。

↑シャルキュトリはポルケッタ、ビアシンケン、ピスタチオ入りハムなど様々。地元ブランド「常陸秋そば」のそば粉と天然酵母による自家製フォカッチャも美味!

 

なお木内酒造では「石岡の蔵」という、国内の蒸溜所でも珍しい製麦施設をもっており、ここではスコットランドの伝統製法であるフロアモルティング(いまや現地でも希少な、ハンドメイドの製麦)も行っているとか。このツアーにその見学は含まれていませんが、いつか見てみたいものです。

 

【ビール】海外で最も有名なクラフト“フクロウビール”の総本山

次にバスが向かったのは、「常陸野ネストビール」と「常陸野ハイボール」がつくられている、那珂(なか)市の額田(ぬかだ)醸造所。ウイスキーもビールも麦のお酒ではあるものの、製造は途中から大きく異なることが見学によって深く理解できます。

↑まずは、麦の種類や副原料の説明からスタート。

 

ウイスキーは、麦汁を発酵させたもろみを蒸溜するお酒。蒸溜によって濃度の高いクリアな酒質へ磨き、長期の樽熟成で風味付けを行いますが、ビールは麦汁にホップを添加して発酵、短期熟成という手順を踏むフレッシュな(なかには長期熟成ビールもあります)醸造酒であるため、より麦汁の方向性が味わいを大きく左右します。

↑“ビールの魂”と呼ばれるホップを、乾燥させペレット状にしたもの。防腐や香り付けに必要な、ある種最も味を左右する主原料だ。

 

それはつまり、ビールはウイスキー以上に麦の品種や焙煎度合い、副原料などが重要ということ。そのため額田醸造所では、まず原料の紹介に始まり、次に設備や各工程の解説へ進みます。

↑手前から糖化用のマッシュタン(タンク)と、煮沸用のケトル。ほかに濾過用のロイタータン、凝集物の除去用のワールプール。これらを使って麦汁を移動し、発酵工程へ。

 

澄んだ麦汁は、ワールプールから発酵タンクへ移動させます。この時点では、まだお酒になっていない麦ジュースの状態。酵母を加えて発酵させることにより炭酸ガスを含んだビールとなり、その後ラガー(下面発酵ビール)の場合は約1ヶ月間低温熟成させます。

↑発酵タンクがズラリ。1本6000リットルですが、クラフトビールのマイクロブルワリーとしてはかなり巨大(醸造所の生産量は1年約3000klで、330mlボトル900万本分)。

 

ちなみに「常陸野ネストビール」は、世界におけるジャパニーズクラフトビールとしては日本屈指の知名度を誇るブランドです。それは、他社に先駆けて海外展開を進めてきたから。いまや生産量の約半分が海を渡り、輸出先は40ヶ国以上。NYのマンハッタンではフクロウマークのトラックが走る姿を見られます。

↑見学後は、もちろん試飲もあり。写真のボトルはサンプルで、この日はタップから注いだ「ヒストリー1602」という限定のエール(上面発酵)ビールをいただいた。

 

テイスティング時には、ホップ品種の違いを、ペレットを比較しながら確認できます。個性が魅力のクラフトビールは、よりホップの使い方が重要。その違いを学ぶチャンスもここでは得られます。

↑右端のビールが「ヒストリー1602」。こちらは秋田県横手市産のホップ(生のチヌークホップなどを使用)と、地元那珂市産の「金子ゴールデン」を一部使用した、フローラルな香りが特徴だ。

 

【日本酒】蔵でも貫かれるバリエ―ション豊かな酒造り

そしてバスは、木内酒造の祖業である日本酒の蔵へ。醸造酒であるため製法の概要はビールと似ていますが、麦芽でなく蒸した米で仕込むなど、素材の種類や加工法には大きな違いがあります。

↑ブルワリーの額田醸造所と同じ那珂市にある「鴻巣の蔵」。木内酒造は江戸時代の1823(文政6)年に木内儀兵衛がこの地で酒造りを始め、「菊盛」などの銘酒を生み出してきた。

 

特に日本酒の場合、味の方向性を大きく左右するのが精米歩合(米を削る度合い)であり、食用米のコシヒカリと、酒米で有名な山田錦は何が違うのか(あえてコシヒカリで醸す日本酒もあります)、そして精米歩合が酒質をどう変えるのか、など実物を見ながら学べます。

↑山田錦と、その山田錦と日本最古の原生酒米・雄町(おまち)をルーツに持つ愛山を、精米歩合別に展示。削るぶんだけ小さくなる、粒の大きさに注目したい。

 

ほかにも、日本酒とビールの違いに挙げられるのが麹(こうじ)の有無(なかには、麴を使うビールもあります)。麹とは穀物に種麹(麹菌や、もやしともいいます)を付着させた日本ならではの発酵原料のことで、日本酒ではこの麹を作る「製麹」が最も重要な工程ともいわれます。

↑製麹したあとの米麹。左が、伝統的に日本酒や醤油、味噌などに用いられる「黄麹」で、右が焼酎に頻用される「白麹」(木内酒造の「淡雫(あわしずく)」など、白麹で醸す日本酒もある)。

 

この酒蔵でも、木内酒造ならではの製法が見られます。わかりやすい点を挙げるとすれば、発泡性をもたせる日本酒の貯蔵槽にビール用のステンレスタンクを使っていること。

↑右に見える「ビアサーマルタンク」が、発泡性日本酒用の貯蔵タンク。ビールを手掛ける木内酒造ならではといえるだろう。

 

その一方、仕込み蔵には木桶で仕込まれた米焼酎なども。自由な発想から、ときに伝統的に、そして革新的な製法で、バリエ―ション豊かな酒造りを行っていることがわかります。

↑こちらは、伝統的な杉の木桶。

 

製麹を行う麹室(こうじむろ)など、いくつか立ち入りできない場所もありますが、一連の醸造工程を見学したあとは、バーとショップが併設された「ききさけ処」に移動して試飲を体験。

↑左がフルーティーな「菊姫 純米大吟醸」で、右がきめ細かい発泡が楽しめる「菊盛 純米吟醸にごり酒 春一輪」

 

「ききさけ処」では多彩な日本酒のほかに「常陸野ネストビール」や焼酎などもラインナップしており、銘柄によっては試飲も可能。一般開放しているので、今回のバスツアーでなくても足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

ディナーで社長が語ったモノづくりの流儀

見学の全行程を終えたラストには、「鴻巣の蔵」内にあるレストラン「蔵+蕎麦な嘉屋」でのディナーが待っていました。建物は、1924(大正15)年に建てられた蔵をリノベーションした空間。メニューは蕎麦のほか、使われる野菜や肉はすべて茨城県産の素材を厳選し、常陸野の美食と自慢の日本酒とのペアリングを楽しめます。

↑ツアーで提供される料理はおまかせの特別コースとなり、こちらはそのメインとなる「常陸野ポーク」のロースト。発酵玉ネギのソース、赤からし水菜、かぼちゃのピューレで味わう。

 

コースの料理は一皿ひと皿が、木内酒造の日本酒とのペアリングを考えて構成され、ラストには名物の蕎麦が登場。この蕎麦ももちろん「常陸秋そば」で、同社では「金子ゴールデン」の裏作期間を有効的に活用する意味で栽培しています。

↑「木内家秘伝のつけけんちん蕎麦」

 

「蔵+蕎麦な嘉屋」が提供するそばの割合は、外一(そば粉とつなぎの割合が10:1となる、九割そばの一種)。今回味わったメニューは、木内家に伝わるけんちん汁をつけ汁にしたもので、酒粕と味噌の風味、野菜の旨みがとけこんだコクのある味が、香り高い蕎麦にマッチします。

 

このディナーには木内酒造代表の木内敏之社長も加わり、バスツアーの狙いや今後の展望、使命感などを聞かせてくれました。

↑木内家九代目当主の敏之社長。日本のクラフトビール黎明期の1995年に「常陸野ネストビール」を立ち上げ、1996年より醸造開始。2016年にはウイスキーづくりも始めるなど、チャレンジングな同社をけん引する存在。

 

「よそが真似できないことをやるというのが、うちの理念のひとつにあり、このバスツアーもそうです。風土の景観や恵みを楽しんでいただきながら、私たちのモノづくりを知っていただきたいと思いました。

 

ただ、いろいろな冒険をしてきたなかで、私が次に注力したいのは日本酒なんです。理由は、自分自身が還暦を迎えたことで、あらためて祖業に向き合いたいと思ったから。また、蔵元の数が年々減少しているなど、市場が縮小しているから。であれば、うちならではのユニークな取り組みで業界を盛り上げたいと思ったんです。

 

ですから、このツアーでは最後に皆さんを『蔵+蕎麦な嘉屋』でお迎えし、ここではウイスキーやビールではなく日本酒を存分に味わっていただきたい。これからの木内酒造は、日本酒にもより注目ください!」(木内社長)

 

「バーバス常陸野」は運行開始を記念して5月末までは平日限定割引が適用となり、不定期で国内外のトップシェフによるプレミアムな料理を味わえるガストロノミーツアーが開催されたり、美術館でのアート鑑賞などを組み合わせた見学工程が行われたりと、特別な企画も。お酒好きはもちろん、旅好きの人も要チェックです!

 

「BAR BUS HITACHINO」
運行予定:木・土・祝(9:30受付)10:00発〜19:30着予定
料金:大人1名 2万4800円(税込)※運行開始記念により平日限定で大人1名2万1800円(税込)を2024年5月末まで実施
予約ページ
サービスサイト
※20歳未満は申し込み不可

キリンウイスキー“陸”はなぜ売れている?2年連続前年比190%の売上、日高屋が413店舗に導入…支持が広がる背景にあったもの

※「2年連続前年比190%の売上」は、2021年と2022年/2022年と2023年の1月~12月出荷実績を比較

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2022年から2年連続での前年比190%以上(※1)の売り上げを果たすなど今、大ヒットしている「キリンウイスキー 陸」。しかも、関東を中心に400店舗超を展開する日高屋が、この3月から413店舗で提供するハイボールに「陸」を採用したという。これら好調の背景には、いったい何が!? GetNavi webでもおなじみ、国内外のウイスキーに精通するフードアナリストの中山秀明氏が、その理由にさまざまな方向から迫った。

※1:2021年と2022年/2022年と2023年の1月~12月出荷実績を比較
↑日高屋の全国413店舗で提供するハイボールを「キリンウイスキー 陸」に切り替えた、ハイデイ日高の青野敬成(あおのひろしげ)社長にもインタビューを敢行。詳細は記事後半にて

 


※富士御殿場蒸溜所の原酒を主体に、厳選した輸入原酒を一部丁寧にブレンドしています。

キリン「キリンウイスキー 陸」
2020年5月に誕生した、キリングループの富士御殿場蒸溜所でつくられるブレンデッドウイスキー。同蒸溜所の多彩なグレーン原酒とモルト原酒を主体にブレンドした、ほのかな甘い香りと澄んだ口当たりのおいしさが楽しめる。「ノンチルフィルタード製法」を採用し、アルコール度数50%であることも特長。店頭で手に取りやすい500ml。

 

「ハイクオリティな味わいのフレンドリーなウイスキーです」(中山)

↑「キリンウイスキー 陸」。フルーティなフレーバーをじっくり楽しみたい

 

「キリンウイスキー 陸」は、スーパーやコンビニでも入手が可能。価格も手ごろながら、唯一無二の価値をもったウイスキーです。

 

なにより特筆すべき魅力が、品質の高さでしょう。製造拠点の「富士御殿場蒸溜所」では、富士の森林がつくる濃い霧と新鮮な空気に包まれたウイスキーづくりに理想的な環境のもと、約50年かけて磨かれた富士の伏流水をマザーウォーターとしてクリアな酒質が生み出されます。

 

また、「ノンチルフィルタード製法」を採用していることもオリジナリティのひとつ。これは、原酒由来の香味成分をより多く残す製法で、プレミアムなウイスキーではしばしばみられるもの。ただし、「キリンウイスキー 陸」と同クラスの価格帯ではほかにないと言っていいでしょう。

 

つまり、クオリティの高いおいしさを実現しながら、手に取りやすいフレンドリーな立ち位置にある稀有な存在が「キリンウイスキー 陸」なのです。

↑GetNaviお酒・グルメアドバイザーの中山秀明氏。フードアナリストの資格を持ち、内食・外食のトレンドに精通した食情報の専門家として取材・執筆をしている。ウイスキーに関する知識も豊富で、2023年には「富士御殿場蒸溜所」を訪れ生産現場を細部にわたって取材した

 

「いいウイスキーでつくるハイボールは格別!」(中山)

ここからは、あらためて「キリンウイスキー 陸」の味や香りを解説していきましょう。テイスティングは試飲した感想のほか、味覚構成要素を項目別に評価します。飲み方は、ロックはもちろん、食事との相性も抜群のハイボールで。

↑「キリンウイスキー 陸」を飲む際に、ぜひ試してほしいのがハイボール。「陸」1に対し、炭酸水を5の比率で割ると、アルコール度数が約8%のちょうどいいおいしさに

 

【陸の味わいレビュー】

・甘み
……ドライ□□□■□スイート
・ピートの香り
……ライトリー■□□□□へビリー
・香り(穀物系←→果実系)
……モルティ□□□■□フルーティ
・味わいのキャラクター
……端正□□□■□濃厚
・味のボリューム
……サイレント□□□■□ラウド
・香りのイメージ……黄桃、オレンジ、リンゴのようなほのかな甘い香り
・おもな熟成樽……アメリカンホワイトオーク
・おすすめの飲み方……ハイボール、ロック、ストレート、トワイスアップ
・合わせたい食事……焼き鳥、マルゲリータピザ、ガトーショコラ

 

↑原酒の味わいをよく知る中山氏が、今回はハイボールで評価した

 

グラスを傾けるだけで驚かされるのは、暖色の果実を思わせる甘くフルーティなエステル香の華やぎ。味わいはコク深く濃厚で、ボリュームも豊かです。それでいて、樽熟成の妙を感じさせるやわらかい口当たりが秀逸でエレガント。クリアな酒質は豊かな果実味を複層的に広げ、このレイヤー感は加水によっていっそう彩度が増していきます。

 

食事と一緒に楽しむなら、やはりハイボールがおすすめです。シュワッとした炭酸とともに立ち上る優雅な香味は、料理とのペアリングをより親密な関係に。いいウイスキーでつくったハイボールは格別においしいということを、強く実感させてくれます!

 

「品質が高い理由は、伏流水・匠の技・独自製法の3つ」(中山)

どのようにして、「キリンウイスキー 陸」のハイクオリティな味が生み出されているのでしょうか? その生産拠点である「富士御殿場蒸溜所」に取材で訪れた際の知見も踏まえながら、あらためておいしさの理由を紐解いていきましょう。

↑「陸」の製造拠点、キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所(静岡県御殿場市)。標高は600m強。年平均気温は13℃と冷涼であることに加え、年間を通して幾度となく霧が発生する、ウイスキー製造には最適な環境だ。※富士御殿場蒸溜所の原酒を主体に、厳選した輸入原酒を一部丁寧にブレンドしています

 

世界における日本の象徴でもある「富士」。この霊峰に降り積もる雪は、半世紀をかけて清らかな伏流水となり「富士御殿場蒸溜所」へ届きます。また、富士の山麓には雄大な森林に浄化された空気とともに、冷涼な気候と深い霧が同居。こうしたウイスキーづくりに最適な環境が、「キリンウイスキー 陸」の澄んだ味わいや甘い樽熟香を生み出します。

 

キリンのウイスキーは、匠の技術によってつくられていることも見逃せません。中心人物は、2017年に世界的なウイスキーアワード(IOW)で「マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した田中城太氏。さらに田中氏は2022年に世界的なウイスキー専門誌「ウイスキーマガジン」認定の“Hall of Fame”を受賞し、ウイスキー殿堂入りとなりました。

↑左はマスターブレンダーの田中城太氏。世界的なウイスキーアワードで「マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。次に述べるように、技術がたしかな匠たちが幾度も官能評価を行うことで、「キリンウイスキー 陸」の味わいを決定している

 

また、キリンのウイスキーづくりの技術的な特徴として挙げられるのが、単に“熟成年数が長いこと”を重視するのではなく、“原酒本来の持ち味が最もよく現れるタイミング”を重視してブレンドする考え方です。あらかじめ何年後にピークをもってくるのかを計算して仕込みを行い、官能評価も定期的に行うことで商品ごとにベストな熟成原酒を採用する……この巧みなブレンディングにより、「キリンウイスキー 陸」の好バランスな味わいが生み出されているのです。

 

そして、多くのウイスキーがアルコール度数40%台であるところ、50%と高いことも「キリンウイスキー 陸」ならではの特徴。その狙いは、熟成樽原酒本来の味わいを最大限に生かすことにあります。

 

一般的なウイスキー製造では、瓶詰め前に「冷却ろ過」という工程を行い、温度変化による白濁や澱が発生することを防ぐのですが、この白濁や澱はアルコールに溶け込んでいるウイスキーの香味成分に由来するため、できればより多く閉じ込めておきたいところ。そこで、冷却ろ過を行わず、アルコール度数を高めることで溶け込める香味成分の量を増やす「ノンチルフィルタード製法」を採用しているのが、「キリンウイスキー 陸」なのです。

↑「キリンウイスキー 陸」は冷却ろ過をしないので、香味成分が多く残る

 

↑富士御殿場蒸溜所では操業開始時から、アメリカンホワイトオークの樽を使用することにこだわっている。タンニンが少なく甘い香り、味わいの出るアメリカンホワイトオーク樽は、フルーティな香りを引き立て、富士御殿場蒸溜所が理想とするクリーン&エステリーな香味品質には欠かせない

 

「ちょい飲みの聖地、日高屋への採用が『陸』への信頼感を感じさせる」(中山)

おいしさに対する評価は食の業界でも高く、例えば有名チェーンの「日高屋」では、全国413店舗のハイボールを「キリンウイスキー 陸」に切り替えました。そこで、運営元のハイデイ日高・青野敬成社長に採用に至った経緯や味わいの感想、料理との相性などをうかがいました。

↑ハイデイ日高の青野社長。2024年4月3日にオープンした「日高屋 新橋日比谷口店」にて

 

「『日高屋』では陸ハイボールとして提供しております。導入させていただいた一番の理由は、やはりおいしさですね。また、お話をいただいた2023年は当社の50周年にあたるアニバーサリーでして、ちょうど富士御殿場蒸溜所も50周年。そして富士山の雪解け水が約50年をかけて伏流水になるというお話にも親和性を感じました」(青野社長)

 

では、その青野社長が絶賛するおいしさとは?

 

「『キリンウイスキー 陸』の魅力は、濃厚でいて澄んだ味香りと、フルーティで豊かな甘み。リッチなおいしさで、私としても『日高屋』で提供できることが非常に嬉しいです」(青野社長)

 

そのおいしさは、お客さんからも好評だとか。

 

「ハイボールを『キリンウイスキー 陸』に切り替えたこの3月以降は、ハイボールの提供が120%(※2)と、ドリンクメニューのなかで最も高い伸び率となりました。お客様からの声としては、口当たりがよく飲みやすいおいしさだという感想を特に多くいただいており、あらためて『キリンウイスキー 陸』の品質の良さを実感しています」(青野社長)

※2:2024年2月と3月の日高屋全店舗での杯数を比較
↑愛媛県出身。「らーめん日高」でのアルバイトを経て1999年にハイデイ日高へ入社。店長、スーパーバイザー、エリアマネージャーなどを経て、2022年5月に代表取締役社長に就任した

 

最後に、陸ハイボールとのペアリングにオススメのメニューを聞いてみることに。

 

「たくさんあるんですけど、一番のオススメは炒め物人気No.1でもある『ニラレバ炒め』ですね。味の決め手となっているオイスターソースのコクと甘みが、陸ハイボールと抜群に合うんですよ。ぜひ多くのお客様にお試しいただきたいです」(青野社長)

 

 

美しい水と緑にあふれる豊かな自然環境に育まれ、匠の技術でさらなるおいしさへと昇華、そして他に類をみない贅沢な製法でつくられる「キリンウイスキー 陸」。そのおいしさはウイスキー通をも驚かせ、リッチな味わいと品質の高さから、飲食店でも続々と採用されている。

 

晩酌にはもちろん、友人などと楽しむシーンや大切な人へのプレゼントにも、今選ぶべきリアルなウイスキーは「キリンウイスキー 陸」である。

 

 

写真/湯浅立志(Y2)[静物、青野社長]、GetNavi web編集部 [蒸溜所]

半身の「うな重」が1600円から! 2024年は「お手ごろうなぎチェーン」が拡大の予感!【フードNEXTトレンド】

コロナ禍を経て息を吹き返した外食トレンドからも目が離せない! 今回はフードライター中山秀明さんと「GetNavi」フード担当・鈴木翔子さんに2024年の「お手ごろうなぎチェーン」「第3のパン」「ニッカウヰスキー」について聞いてみた。

※こちらは「GetNavi」 2024年2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです

 

■フードライター中山秀明さん
食のトレンドに詳しいフードアナリスト。個人的には「お手ごろうなぎチェーン」が特に激アツだと豪語する。

 

■「GetNavi」フード担当・鈴木翔子

本誌のフードを5年以上担当。酒好きが高じ、しばしばバーでも働いており、酒トレンドに詳しい。

 

川上から川下までうなぎ上り!「お手ごろうなぎチェーン」

お手ごろ価格のうなぎチェーンと言えば「名代宇奈とと」のほぼ一強だったが、近年は新鋭が続々参入。なかでも2022年9月に横浜で創業した「鰻の成瀬」の勢いは凄まじく、2023年内で店舗数約70店を超えた。

 

うなぎビジネスは外食だけに留まらない。昨今、岡山理科大学や近畿大学が養殖に成功。23年夏には日清食品が発売した植物性うなぎ「謎うなぎ」が大ヒット。まさに、うなぎ上りで注目度が上がっている業界なのだ。

 

思わずウナる安さと味を両立した新鋭うなぎチェーンの大本命

鰻の成瀬

“うまい鰻を腹いっぱい!”がコンセプト。最も安価なうなぎメニューは、うなぎ半身ぶんを使った「うな重」を1600円(写真)から楽しめる。同社によると老舗うなぎ店の半額程度、それでいて1.5倍の量を実現している。

↑同店では、高級店で提供されているニホンウナギを使用

 

毎朝届く高級うなぎを鮮度を生かした関西風に!

うなぎ亭 智

2023年9月に東京・武蔵小山にオープンしたうな重専門店。愛知三河のうなぎ問屋から仕入れた高級うなぎをお手ごろ価格で楽しめる。毎朝届くうなぎの鮮度の高さを生かし、蒸さずに生のまま高温で一気に焼き上げる関西風に仕上げている。写真の「うな重 特上」は3080円

 

【ヒットアナリティクス】安さのカギは技術革新によるシステム化にあり

「新鋭店が圧倒的な安さとうまさを両立できる一番の理由が、調理などのシステム化。人件費を抑えると同時に、提供時間を短縮し回転率を上げ、単価を下げています。実に現代的であり、2024年はより拡大するでしょう」(中山さん)

先進技術:4 顧客ニーズ:4 市場の将来性:5 独自性:4 コスパ:5

 

麦、米の次に来るパンの新素材は豆だ!「第3のパン」

動物性原料不使用の食品ブランド「ZENB」が、スーパーフードである黄えんどう豆を使った「ZENBブレッド」を発売。グルテンフリーで食物繊維が豊富など、ヘルシーでヒットの要素は極めて高い。

ZENB JAPAN
ZENBブレッド
274円

小麦や動物性原料を使わずにふわもちなおいしさを実現

生地の主原料に黄えんどう豆を使った新しいパン。小麦のグルテンや卵、乳製品には頼らずに、ふわもち食感のおいしさを実現した。味は「くるみ&レーズン」「カカオ」「3種の雑穀」の3種をラインナップ。

 

【ヒットアナリティクス】人気のヘルシーパンの魅力だけをミックス

「食物繊維は少ないがグルテンフリーの米粉パンと、食物繊維が豊富で低糖質なグルテン入りのふすまパンの良いとこ取り。ふすまパンの代名詞、ローソンの『ブランパン』が販売数3億個超えなので、ヒットの可能性大」(鈴木)

先進技術:4 顧客ニーズ:4 市場の将来性:5 独自性:4 コスパ:3

 

ジャパニーズウイスキーはますますアツい「ニッカウヰスキー90周年」

“日本のウイスキーの父”と言われる竹鶴政孝氏が創業したニッカウヰスキーが、2024年で90周年を迎える。2023年はジャパニーズウイスキー100周年で盛り上がったが、この熱は依然冷めないだろう。

●写真は、2014年に80周年を記念して限定発売された商品

ニッカウヰスキー

ニッカの創業地や創業者の名を冠した商品が最注目株

ニッカウヰスキーは、1934年に北海道の余市で創業。その名を冠したシングルモルト「余市」や創業者の名であるウイスキー「竹鶴」など、周年記念商品が発売される可能性は高く、目が離せない。

 

【ヒットアナリティクス】記念商品は過去にもあり「マッサン」も周年

「限定商品の発売は発表されていませんが、80周年のときに記念商品が出ていたので、今回も登場するはず。しかも24年は、ジャパニーズウイスキー人気を後押しした、竹鶴氏がモデルの朝ドラ『マッサン』も放映10周年!」(中山さん)

先進技術:4 顧客ニーズ:4 市場の将来性:4 独自性:5 コスパ:2

「日本ウイスキーが確実に来る」2024年ヒットアイテム12ジャンルで大胆予想!

コロナによる様々な制限が緩和され、以前の姿に戻り始めた、いや大きく変わり始めた2023年。2024年の干支は辰年。“昇龍” のような勢いで急上昇するヒットアイテムは何か。本記事では、アニバーサリー継続で新顔も登場予定のジャパニーズウイスキーから、話題の「FF7」リメイク三部作の2作目など、12ジャンルのヒット予想を、それぞれのジャンルのプロが大胆に予想してみた!

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【ヒット予想その1】使いやすさの進化と存在感あるデザインに注目

象印マホービン マルチロースター

ヒット確率:80%

 

家電ライター 小口 覺さん

「フィッシュロースターはあれば便利かつ手放せなくなる家電。使用後に洗いやすく触媒フィルターの搭載により煙やニオイが気になりません。本製品は魚だけではなく、肉や野菜のグリル調理にも使えるマルチロースターへと進化。存在感あるデザインとともに注目されそうです」

 

【ヒット予想その2】ストリートトレンドに代わり支持されるシックな着こなし

テーラードジャケット

ヒット確率:90%

 

ファッションバイヤー・動画クリエイター MBさん

「スニーカーブームなどのストリートトレンドが鎮静化しており、徐々にシックな着こなしが支持されるようになりました。2023年AWの重衣料でもダウンやブルゾンなどではなく、ジャケットコートなどが多く見られるようになっており、2024年への確かな流れを感じさせます」

 

【ヒット予想その3】アニバーサリー継続に加え新顔も登場し人気継続!

ジャパニーズウイスキー

ヒット確率:100%

 

フードアナリスト 中山秀明さん

「2024年はニッカ創業90周年、サントリーシングルモルト山崎が40周年、同白州が30周年。そして朝ドラ『マッサン』が放送10周年とアニバーサリーが続きます。さらに八海山が米を主原料とする『ライスグレーンウイスキー』を発売予定であるなど目が離せません」

 

【ヒット予想その4】HMDの新体験デバイスは超高級機となるが……

Apple Vision Pro

ヒット確率:75%

 

モバイルライター 井上 晃さん

「Appleが発表したデバイス。 “空間コンピュータ” と称するように、既存のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)類とはひと味違った体験が提供される見込みです。約52万円という超高級機ゆえに、 “ひとり1台” のような存在にはならないでしょうが、コンピュータの新しい形として動向は見逃せません」

 

【ヒット予想その5】高い疲労回復効果が期待できる入浴剤が100均でも買える!

重炭酸入浴剤

ヒット確率:85%

 

ライター 佐々木 舞さん

「高い疲労回復効果が期待され、新しい入浴剤としてその位置を確立しつつある重炭酸入浴剤。いまはまだ高級入浴剤という認識で一般層は横目で見るだけですが、ダイソーなどの100円ショップでも入手できることが周知されたら、そこをきっかけにヒットするに違いない!」

 

【ヒット予想その6】2000品目以上が揃うイオンの冷食専門店

@FROZEN

ヒット確率:90%

 

フードツーリズムマイスター 今西絢美さん

「共働き世帯が増えたことで “冷凍食品=お弁当のおかず” というイメージが変わるいま、ディナーやスイーツのラインナップも充実しているのが強み。店舗はまだ少ないですが、2023年度内に首都圏で5店舗がオープン予定です。店舗が増えることで一気に人気が加速するはず」

 

【ヒット予想その7】YouTubeでの人気を経て多国籍ユニットがデビュー

BABY MONSTER

ヒット確率:85%

 

エンタメ系ライター えんどうまいさん

「韓国の大手事務所・YGエンターテインメントが、BLACKPINK以来約7年ぶりに輩出するガールズユニット。ついに11月27日デビューしますが、公式YouTubeチャンネルの登録者が300万人超えの大注目株です。日本人メンバーも2名在籍しているので、活躍が楽しみ!」

 

【ヒット予想その8】兄貴ぶんをキャンセルして乗り換える人多数?

トヨタ ランドクルーザー 250

ヒット確率:100%

 

モータージャーナリスト 岡本幸一郎さん

「『プラド』の名前から変更されたのを機に、より力強いオフローダーデザインに。本気のオフロードモデルらしい機能と装備も目白押しです。兄貴ぶんランドクルーザー300の納車までの長さから、300をキャンセルして250にチェンジを決めたという人が大勢いるそうです」

 

【ヒット予想その9】クレカ積立によるポイント獲得機会が増加

クレカ積立

ヒット確率:80%

 

「クレジットカードDB」編集長 大澤日出男さん

「新NISAなど拡大するマーケットを見据えて、証券会社とクレジットカード会社が提携、プロモーションを展開。クレジットカード会社は投資信託の積立金額に対するポイント付与を競い合っています。資産形成を通じてポイント獲得の機会が増加する点には注目です」

 

【ヒット予想その10】PS5を牽引する「FF7」のリメイク第2弾

FINAL FANTASY VII REBIRTH

ヒット確率:95%

 

ゲームコラムニスト 卯月 鮎さん

「『FF7』リメイク三部作の2作目。デートイベントが起こる娯楽施設ゴールドソーサーやエアリスの悲劇など、『FF7』のコアとも言える内容が詰まっています。前作は世界累計700万本の大ヒット! 本作は単体でも遊べるため、前作と並ぶセールスが期待できそうです」

 

【ヒット予想その11】観光庁も力を入れ始めた旅行の新スタイル

ガストロノミー ツーリズム

ヒット確率:80%

 

トラベルライター 澄田直子さん

「その土地の気候風土が生んだ食材を生かした料理を中心に観光を楽しむ旅のスタイル。観光庁も力を入れ始め、2023年度は13の地域の事業に補助金を出し推進しています。体験プログラムなども用意され、地域をより深く知るという旅行スタイルが人気を集めそう!」

 

【ヒット予想その12】新規募集開始後はすぐに枠が埋まるほど!

funds

ヒット確率:90%

 

経済ジャーナリスト 頼藤太希さん

「FIREブーム以降、保有しているだけで “不労所得” を得られる高配当株などの金融商品が人気。fundsは、新しく募集開始されるとすぐに枠が埋まってしまうほどかなり注目されているサービスです。手軽に運用でき、利回り2%前後の利息でコツコツと増やせるのもメリット」

八海山からHakkaisanへ! 百年企業「八海醸造」の世界戦略とは?

「八海山」で有名な八海醸造が今年、100周年を記念した記者会見を開催し、新商品や今後のビジョンなどを発表しました。その方針を一言でいえば、まさにグローバル戦略。内容をレポートします。

↑八海醸造株式会社の南雲二郎代表取締役(右)と、南雲真仁取締役副社長/HAKKAISAN USA代表(左)

 

記念酒は750mlで13万円2000円!

八海醸造は新潟県南魚沼市で、1922(大正11)年に創業。2023年は101年目の船出の年であり、その取り組みのシンボルとして発表されたのが、アルファベットのコーポレートロゴです。デザインを手がけたのは、日本を代表するデザイナー・原研哉氏。

↑八海醸造の三代目当主・南雲二郎代表。モニターには新コーポレートロゴが映し出された

 

原氏からは「酒は、どんな種類の酒でも何かしらの癖があり、そこに愛着や親しみを覚えるものです。そういう個性の肌触りを、文字のかたちに込めました。」といったメッセージも寄せられました。

↑日本酒の「八海山」はじめ、全商品に「Hakkaisan」のコーポレートロゴが併記されます

 

また、登壇した八海醸造の南雲代表取締役は「日本酒を含め、幅広い領域において展開することを前提として、オリジナルの書体を作成いたしました。伝統的、現代的、洋風、和風など多様な場面に適応できて、印象にも残りやすいデザイン。我々が今後展開していく新商品方針や事業に関しても、このロゴイメージで統一することによって、お客様に八海山グループというブランドを認知していただき、当社のイメージ向上を図っていきたいと考えています」とコメント。

↑会場には同社の日本酒はもちろん、ジン、クラフトビール、スイーツ、化粧品といった多彩なプロダクトも展示

 

100周年を記念した商品も発表され、そちらのスケールもケタ違いでした。名称は「八海山 百」。精米歩合25%の大吟醸酒で、価格は750mlで税込13万2000円(税込)。氷点下3℃で6年間貯蔵されているのも特徴で、全国の百貨店や酒販店で販売されています。

↑「八海山 百」。100周年を記念した限定酒となります

 

NYの蔵元と協業し、
日本酒の生産と文化発信の拠点を新設

会見で印象的だったのは、「永遠に終わらない会社を目指し、挑戦と変化に積極的に取り組んでいく」「日本酒を世界飲料に」というメッセージ。海外展開への準備はすでに整っており、2021年12月に資本業務提携した米国NYのブルックリンクラとの取り組みをさらに強化。今後の具体的な事業内容が明らかにされました。

↑青いジャケットの方が、ブルックリンクラのブライアン・ポーレンCEO。同社は2016年に設立された酒造で、モニターの写真はタップルーム(醸造所に併設されているバースペース)です

 

目玉は、新しい酒蔵のオープン。タップルーム(醸造所に併設されているバースペース)を併設し、来訪者に向けた日本酒の啓発活動を行っていくそうです。しかも具体的には「サケスタディセンター」という教育機関を設け、日本酒の背景にある文化や食、歴史を総合的に学べるようにするとともに、啓発プログラムを活用して魅力を発信していくとのこと。

↑NYに今秋開業。酒造りに関しては、八海醸造の蔵人を派遣して協業するとのことです

 

また、酒蔵を新設することでより多くの量を造れるうえ、良質かつ新たなスタイルの日本酒やチャレンジングなSAKEも生み出されるようになるとブライアン氏は語ります。南雲代表取締役は、かつての日本でビールやウイスキーがそうだったように、自国の人々が現地の米と水を使ってSAKEを造り、そこで暮らす人々が楽しく飲むという文化醸成が大切であるとの考えから、この取り組みを実現させたといいます。

↑こちらはブルックリンクラのSAKE。正式には未上陸の希少酒のため、今回特別に持ってきたとか。テイスティングの感想はのちほど

 

注目集まる八海醸造のウイスキーは来春発売!

八海醸造が手掛ける国内の新たな動きで注目なのは、ウイスキーづくりです。同社では2016年から米を主原料とするライスグレーンウイスキーの生産を魚沼の深沢原蒸溜所でスタートさせていますが、熟成を経た品質基準がついに納得のいくレベルに仕上がったとのこと。満を持して、2024年4月に発売することも発表されました。

↑同社ではグループ会社に北海道のニセコ蒸溜所があり、ここではモルトウイスキーづくりが進行中。魚沼×ニセコのブレンデッドウイスキーも、そう遠くない未来に誕生するでしょう

 

トピックスをもうひとつ。八海醸造といえば、甘酒のヒットメーカーとしても有名。代表作が「麹だけでつくったあまさけ」ですが、本商品はこの度消費者庁への届け出が受理され、麹菌で史上初の機能性表示食品となりました。これを機に、2024年3月から機能性表示食品としてパッケージを一新してリニューアル発売されます。

↑「麹菌HJ1株」という赤いアイコンが新パッケージ。その他は既存商品ですが、来春リニューアルとなります

 

クラフトビールに着想を経たNYのSAKEも試飲

会見後は別会場に移り、特別なペアリング体験へ。個性豊かな4種のお酒を、贅沢な料理に合わせました。

↑それぞれの酒質に最適なグラスで提供。日本酒だけでなく「八海山本格粕取り焼酎 宜有千萬」(写真右端)も

 

スターターは「瓶内二次発酵酒 白麹あわ 八海山」を、赤万願寺唐辛子とフルーツトマトをベースにしたガスパチョとともに。お酒のフルーティーな香りとキレを高める、スパークリングの心地よい爽快感がいいですね。それはさながらスペインの発泡ワイン、カヴァのよう。

↑あしらいのキャビア、焼きはも、加茂なすはリッチなうまみや繊細な滋味深さを演出。みょうがの清涼感もたまりません

 

米どころ・新潟の日本酒が得意とする味わいといえば、淡麗辛口だといえるでしょう。今回その魅力を特に感じたのは「大吟醸 八海山」です。まろやかで上品な甘みを感じさせつつ、総じてクリアで後口はすっきり。ペアリングのビーフコロッケのおいしさを、より際立たせつつ調和し、余韻できれいに昇華する素晴らしい食中酒だと思いました。

↑「大吟醸 八海山」に合わせた料理の正式名称は、「牛頬肉とパルマンティエのクロメスキ トリュフのクーリ」。いわゆる、ビーフコロッケのトリュフソースがけです

 

ペアリング会場では、その他のテイスティングも体験させてもらいました。ブルックリンクラのSAKEも用意されており、そのなかから定番銘柄のひとつ「NUMBER FOURTEEN」と、限定酒の「OCCIDENTAL」を試飲。どちらも実にアメリカらしさを感じる、ユニークな個性をもった味わいです。

↑「NUMBER FOURTEEN」(左)は、華やかな香味とライトな飲み口を調和させた純米吟醸。そして「OCCIDENTAL」(右)は、ビールに欠かせないハーブであるホップを使った柑橘感漂う果実味と赤い色味が印象的

 

ブルックリンクラは、クラフトビールにヒントを得た酒造りがモットーのひとつ。「OCCIDENTAL」は、そのフィロソフィーが遺憾なく発揮された銘柄だといえるでしょう。使っているホップは、昨今のクラフトビールムーブメントを語るに欠かせないビアスタイル「IPA」に頻用されるシトラホップ。このホップによって醸し出されるフルーティーなアロマが、「OCCIDENTAL」の個性を際立たせているのです。

↑ブルックリンクラのブライアン・ポーレンCEO。会見では緊張気味でしたが、テイスティング会場ではにこやかなスマイルが印象的でした

 

NYでの日本酒文化発信やウイスキーなど、酒好きにとって嬉しいニュースが満載だった本会見。ブルックリンクラの各銘柄も、そう遠くない未来に日本でも広まっていくのではないでしょうか。今後の展開から、ますます目が離せません。

 

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ジャパニーズウイスキーの殿堂入り9本を飲み比べ! 覚えておくべき銘柄とその味わいは?

2023年は、ジャパニーズウイスキーのアニバーサリーイヤー。世界五大ウイスキーのひとつにも数えられますが、近年になってその評価はいっそう高まり、国際品評会で世界一に輝くことも珍しくありません。本特集記事では全4回にわたってジャパニーズウイスキーの魅力を解説。第3回は、代表的な銘柄とその味わいをお伝えします。

 

【関連記事】
ジャパニーズウイスキーとは。世界からの評価や5大ウイスキーにおける個性、伝説の銘柄などを解説

ブームから暗黒期、そして世界を牽引する時代へ。ジャパニーズウイスキーの100年間と、支えた7人のキーパーソンたち

↑比較的入手しやすい有名銘柄から、シングルモルトウイスキーとブレンデッドウイスキーを計9本紹介

 

蒸溜所の個性が表現されたシングルモルト

単一蒸溜所のモルト(大麦麦芽)原酒だけをブレンド(ヴァッテッド)したウイスキーがシングルモルト。土地の気候風土や、そこに湧く(流れる)マザーウォーター(仕込み水)の恵みが生きた、個性的な味わいが特徴です。

 

■ つつましい美麗。ザ・ジャパニーズウイスキー「山崎」

2023年のジャパニーズウイスキー100周年とは、サントリー山崎蒸溜所の建設着手から始まります。以来、山崎蒸溜所はいわばジャパニーズウイスキーのお手本となる味を生み出してきたパイオニアといえます。そんな同蒸溜所の魅力をめいっぱい堪能できる一本が、「シングルモルトウイスキー 山崎」ブランド。

↑熟成年などで様々なラインナップがありますが、基本的に入手困難。ただし左端のノンエイジであれば、モルトバーなどで飲む機会に恵まれることも

 

味の特徴は、甘く華やかで、繊細な余韻がエレガントな飲み心地にさせてくれる奥ゆかしい上品さ。そのつつましい美しさや力強さは、日本料理や日本画に通じるものがあると思います。

 

シングルモルトウイスキー 山崎(ノンエイジ、以下同)

ドライ ■■■■□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■□□ フルーティ

ジェントル ■■■■□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:いちご、さくらんぼ

主な熟成樽:ワイン樽、ミズナラ樽

 

■ 森林の恵みを感じる清々しいフィニッシュ「白州」

山崎蒸溜所の建設着手から半世紀後の1973年、山梨県北杜市に誕生したのが白州蒸溜所です。約82万平方メートル(東京ドームの約17倍)の広さがあり、海抜は約700メートル。敷地の多くが緑に抱かれ、白州の森にはバードサンクチュアリもあるという、世界的にも稀有なこの蒸溜所で生まれるのが「シングルモルトウイスキー 白州」ブランドです。

↑白州も山崎同様のラインナップ。左端のノンエイジは、比較的入手しやすくなっています

 

白州は、味わいにも雄大な森を彷彿とさせるグリーンなニュアンスが魅力。また、ピート(泥炭)を軽く焚いたモルトを一部に使った、軽やかなスモーキーフレーバーも特徴です。個人的には、キャンプ場で焚き火を囲みながら飲むウイスキーに最適な一本だと思います。

 

シングルモルトウイスキー 白州

ドライ ■■■□□ スイート

ライトリー ■■□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■□□ フルーティ

ジェントル ■■■□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:すだち、ミント、青りんご

主な熟成樽:バーボン樽、ホッグスヘッド樽(バーボン樽を組みなおして成形するのが一般的。かつ、バーボン樽よりやや大きい)

 

■ スコッチへの憧憬が表現された重厚でスモーキーな「余市」

ジャパニーズウイスキー誕生前夜の1918年にスコットランドへウイスキー留学し、山崎蒸溜所の初代所長として設計や味づくりに携わり、その後ニッカウヰスキーを創業した竹鶴政孝氏。“日本のウイスキーの父”とも称される、氏のスコットランド愛は1934年に開設した北海道の余市蒸溜所で開花しました。

↑右がノンエイジの「シングルモルト余市」。なおニッカウヰスキーは2024年で創業90周年を迎え、左の「シングルモルト余市 アロマティックイースト」はその記念企画の一環として2022年に発売された限定品です

 

スコットランドの風土に最も近いとして選ばれた余市は、厳しくも豊かな大自然が力強い酒質を創出。なおかつ伝統的な石炭直火蒸溜を採用し、スモーキーなヘビリーピーテッドモルトで仕込んだその味は、まさにスコッチへの憧憬を日本の技とテロワールで表現した“アンサーウイスキー”となっています。

 

シングルモルト余市

ドライ ■■■□□ スイート

ライトリー ■■■□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■□□□ フルーティ

ジェントル ■■■■□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:オレンジ、オールスパイス、スモーキーなクリーム

主な熟成樽:バーボン樽、シェリー樽、新樽

 

■ 華やかな果実味が軽やかに躍動する「宮城峡」

ニッカウヰスキーが余市に次ぐ蒸溜所として、1969年に開設したのが宮城峡蒸溜所。仙台から北西に約25km離れた郊外の、2つの清流と緑豊かな渓谷がある場所に立地しています。求めたのは、余市とは異なる原酒の味わい。軽やかな香味成分を得られる蒸溜器を導入したり、間接的なスチーム加熱式の蒸溜方法を採用したりすることで、華やかでフルーティな酒質になることが宮城峡の特徴です。

↑左がノンエイジの「シングルモルト宮城峡」。右は余市同様の限定ボトルです

 

樽香をはらんだまろやかな甘やかさに導かれ、ふわりと顔を出すのがフルーティでフラワリーな心地よいフレーバー。かすかなピートが硬派な表情を演出する一方、シャープなキレは明るく爽快な余韻を演出します。

 

シングルモルト宮城峡

ドライ ■■■■□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■■□ フルーティ

ジェントル ■■■□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:りんご、洋なし、バニラ、はちみつ

主な熟成樽:バーボン樽、シェリー樽、新樽

 

■ 霊峰の雫に甘香ばしい果実味が宿った「富士」

白州蒸溜所と同年の1973年に、アメリカとスコットランドの各企業と日本のキリンビールが3社共同で開設したのが富士御殿場蒸溜所(現在はキリンビールが単独運営)。霧深い富士山麓のなか、霊峰富士の伏流水で仕込むこと、また、熟成年数の長さ以上に原酒本来の持ち味が最もよく現れるピークのタイミングを重視する「マチュレーションピーク」という哲学でつくることも特徴です。

↑「キリン シングルモルト ジャパニーズウイスキー 富士」。生産体制が整い、2023年5月から通年発売となりました

 

味わいは、甘香ばしいクリーミーなタッチと、熟成感あふれるフルーティな香味が印象的。フラワリーな余韻が上品で心地よく、葛飾北斎が富士山をモチーフに描いた代表作「富嶽三十六景」で例えるなら、“赤富士”こと「凱風快晴」のようなパッションが感じられます。

 

キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士

ドライ ■■■□□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■■□ フルーティ

ジェントル ■■■■□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:りんご、パイナップル、オレンジ、はちみつ

主な熟成樽:バーボン樽、ビール樽、ワイン樽

 

調和の芸術がブレンデッドウイスキー

ブレンデッドウイスキーとは、個性の強いモルト原酒に、クセがおだやかなグレーン原酒(※)をブレンドした、好バランスな味のウイスキーのことをいいます。無限にある組み合わせのなかから、ブレンダーが知見と技と感性を駆使して調和させる、芸術品のようなウイスキーといえるでしょう。

※:大麦麦芽のほか、とうもろこしやライ麦などの穀物を原料に、連続式蒸溜器でつくる原酒のこと。

 

■ 花鳥風月が表現された美しきハーモニー「響」

サントリーが創業90周年を迎えた1989年に、それまでのウイスキーづくりの夢の結晶として生み出したのが「響」ブランド(「サントリーウイスキー 響 17年」)です。「人と自然と響きあう。」をコンセプトとし、日本の四季や精神文化を表現した味は海外でも多くの賞賛を集め、名実ともに日本を代表するブレンデッドウイスキーといえるでしょう。

↑100万樽以上から選ばれた多彩な原酒をブレンド。「サントリーウイスキー 響 17年」(休売中)の誕生から四半世紀後の2014年にデビューした「サントリーウイスキー 響 JAPANESE HARMONY」は、比較的に入手しやすい一本です

 

たくましく華やかな香味の先に感じる、繊細な艶やかさ。クリアな甘みの奥に潜む、香木的な複雑味。静と動、柔と剛がオーケストラのように響き合い、まさに美しいハーモニーを奏でます

 

サントリーウイスキー 響 JAPANESE HARMONY

ドライ ■■■■□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■■□ フルーティ

ジェントル ■■■□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:バラ、ライチ、バニラ、オレンジ、はちみつ

キーモルトの主な熟成樽:ミズナラ樽、バーボン樽、シェリー樽

 

■ ニッカの情熱的な魂が調和したピュアモルト「竹鶴

次に紹介する「竹鶴ピュアモルト」は、ニッカが余市と宮城峡それぞれのモルト原酒のみをヴァッティングし、あえてグレーン原酒を使わずに仕上げたウイスキー。厳密にはブレンデッドウイスキーではないのですが、シングルモルトでもないのでこちらで紹介します。

↑ニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝氏の哲学をヴァッティングに反映した「竹鶴ピュアモルト」。モルトウイスキーでありながら、ブレンデッドウイスキーに匹敵するやわらかな酒質が表現されています

 

なめらかなタッチは実にスムース。口に含めば華やかな果実味と重厚なモルトの甘みが広がり、ピーティなキレのメリハリも絶妙です。かすかに華やぐ塩気を含んだスモーキーフレーバーが、どこかスコッチウイスキーのように端正な表情をみせるところも面白いです。

 

竹鶴ピュアモルト

ドライ ■■■□□ スイート

ライトリー ■■□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■□□ フルーティ

ジェントル ■■□□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:りんご、杏、バニラ、バナナ

キーモルトの主な熟成樽:シェリー樽、リメード(新旧組み替え)のオーク樽

 

■ 多彩なグレーンが紡ぎ出す静と動の邂逅「富士」

富士御殿場蒸溜所の設備的な特徴といえば、3つの国の蒸溜機を使い分け多彩なグレーン原酒をつくっていること。ライトな酒質になるマルチカラム蒸溜器(スコットランド製)、ミディアムタイプのケトル蒸溜器(カナダ製)、ヘビータイプでバーボンづくりに頻用されるダブラー蒸溜器(アメリカ製)の3種で、ブレンデッドウイスキーも同蒸溜所ならではの一本となっています。

↑中央が「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士」。単一蒸溜所のモルトウイスキーとグレーンウイスキーだけをブレンドしていることも珍しい特徴です

 

やわらかい口当たりのあとに続く、甘くフルーティで香り豊かな味わい。果実たっぷりの焼き菓子を感じさせる、ジューシーな余韻もたまりません。富士のシングルモルトが葛飾北斎の「凱風快晴」なら、こちらは“グレートウェーヴ”と称される「神奈川沖浪裏」のような動と静の調和があります。

 

キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士

ドライ ■■■□□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■■□ フルーティ

ジェントル ■■□□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:桃、杏、オレンジ、はちみつ、ビスケット

キーモルトの主な熟成樽:バーボン樽、ビール樽、ワイン樽

 

■ 秩父とミズナラの個性が芯で華やぐ「イチローズモルト」

最後は、ジャパニーズウイスキーにおけるクラフト(マイクロ)ディスティラリーの先駆け、ベンチャーウイスキーの「イチローズモルト」。多くの銘柄は入手困難ですが、通称“ホワイトラベル”と称される「イチローズモルト&グレーン ワールドブレンデッドウイスキー」は比較的購入しやすい一本となっています。

 

なお、この商品は日本以外の国の原酒も使っているので厳密にはジャパニーズウイスキーではありませんが、クラフトウイスキーの入門にも非常にオススメであるため、ここで紹介しておきます。

↑中央が、ワールドブレンデッドウイスキーの名称になる前の“ホワイトラベル”。ボトルデザインはその名の通り、白いエチケットが特徴です

 

世界五大ウイスキーを使っていながらも、芯となるのは日本・秩父のモルト。寒暖差がきわめて激しい秩父のなかでも北東部、吉田~大田エリアの小高い丘の上に蒸溜所はあり、ここで生まれる原酒はミズナラの発酵槽や樽による、オリエンタルなニュアンスがひとつの特徴です。甘くどっしりとしたコクとともに華やぐ果実味と、ほんのりスパイシーな余韻はお見事。どんな飲み方でも楽しめます。

 

イチローズモルト&グレーン ワールドブレンデッドウイスキー(ホワイトラベル)

ドライ ■■■■□ スイート

ライトリー ■□□□□ ヘビリー(ピート)

モルティ ■■■□□ フルーティ

ジェントル ■■■□□ ワイルド(ボディ)

香りのイメージ:オレンジ、洋なし、はちみつ、香木、バニラ

キーモルトの主な熟成樽:ミズナラ

 

モルトバーやウイスキーが得意な酒販店へ行こう!

↑ウイスキーファンの聖地といえる酒販店「目白田中屋」。訪れれば、名物店主の栗林幸吉さんに会えるかもしれません

 

比較的入手しやすい有名銘柄を中心に紹介しましたが、身近な場所で飲むならウイスキーをメインに提供するモルトバーに行くのも有効的な方法です。また、昨今はクラフトディスティラリーも年々増加。これらはジャパニーズウイスキーを得意とする酒販店や地方の土産店などに行けば、現地の希少銘柄を入手できることもあるでしょう。次回は全4回のラスト。ジャパニーズウイスキーの飲み方について解説します。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

ジャパニーズウイスキー100年目の秋。サントリー山崎蒸溜所の改修でわかった“贅沢だけどお得な新ツアー”と“さらなる挑戦の熱意”

2023年に100周年を迎えたジャパニーズウイスキーは、サントリーの山崎蒸溜所が起点。施設改修を経て、この度新たな見学ツアーの受付を始めました。どこがリニューアルされたのかにスポットを当てながら、同蒸溜所の魅力をお伝えします。

↑大阪府のほぼ東端に位置する山崎蒸溜所。最寄りの山崎駅は京都府にあり、蒸溜所に向かう途中で府の境を越えます

 

水と緑の恵み×好アクセスという奇跡的な立地

山崎蒸溜所の特徴として、まず挙げられるのが水と緑に恵まれていること。この地は万葉の歌にも詠まれた水生野(みなせの)といわれる名水の里で、名水百選のひとつ「離宮の水」や、茶人・千利休が秀吉のために茶室「待庵」を構えたことでも知られています。

↑蒸溜所の展示パネルより。山崎は宇治、桂、木津と3つの川の合流地点にあり、ウイスキー熟成に適した霧が発生しやすいこともポイント

 

また、古くから交通の要衝であったことも、ここが蒸溜所の建設地に選ばれた理由のひとつでした。大阪と京都の二大都市から近いため、物資の運搬が便利。加えて個人的には、蒸溜所が多くの人々の目に触れるので、ウイスキーを身近に感じてもらいやすいことも狙いだったと思います。

↑こちらも展示パネル。敷地内の山崎ウイスキー館では、こうした貴重な資料をじっくり閲覧できます

 

100年前は、日本人の誰もが知らなかった本格ウイスキーと蒸溜所。舶来のお酒であるウイスキーを日本で広め、世界に通用するクオリティに高めていくには、飲んでもらえないことには始まりません。できるだけ身近な存在であることがきわめて重要だったのです。

 

それから100年経ちましたが、これほど大規模かつ自然に恵まれていながら、最寄り駅から徒歩10分程度で行ける蒸溜所はいまもないといっていいでしょう。この奇跡的なロケーションが、山崎蒸溜所最大の魅力です。

 

無料でもウイスキーの歴史をじっくり学べる

ここからは改修ポイントを紹介していきましょう。まずはエントランスです。こちらは、敷地内に自然との調和を表現した「杜(もり)」を形成する狙いで、周辺エリアの島本町や大山崎町の山林地に生育する草木などを植栽し緑地化。

↑2023年3月、改修前の取材時。写真右側部が新たなエントランスとして生まれ変わりました

 

象徴的な門はポットスチルの銅素材を再利用しており、どこか神秘性を感じられる雰囲気に。見学の際はここを通り抜け、その先に待つ山崎ウイスキー館で受付する流れとなります。

↑かつて実際に稼働していた、ポットスチル(もろみを蒸留する単式蒸溜器)を再利用して設えられた門。よく見るとロットナンバーの刻印があり、ファンにはたまらない仕様となっています

 

そして、山崎ウイスキー館もリニューアル。こちらは蒸溜所の操業当時から残る建造物であり、創業者・鳥井信治郎氏を軸とした「やってみなはれ」の挑戦者魂がストーリー的に展示されています。

↑山崎ウイスキー館。地下1階と地上1階の2フロアで、展示とボトルライブラリー、テイスティングラウンジ、ギフトショップから構成されています

 

山崎蒸溜所での多彩な原酒のつくり分けと、長期熟成に耐えうる原酒のつくり込みについての展示が充実する形にアップデートされました。

↑ウイスキーがどうやってつくられるのかも展示。エントリー層でも楽しめる内容となっています

 

加えて、館内のテイスティングラウンジも改修されました。こちらはかつて同蒸溜所で稼働していたポットスチルを再利用したバーカウンター、原酒ボトルに向き合うスタンドテーブル、窓の外に広がる「杜」を眺めるローチェアなどを設置。いっそう贅沢な空間にリニューアルされました。

↑2023年3月取材時のテイスティングラウンジを地上1階から撮影。当時はポットスチルや樽を用いたギャラリーが印象的でした

 

↑リニューアル後のテイスティングラウンジ。より開放的な空間へ生まれ変わりました

 

なお、山崎ウイスキー館など一部の蒸溜所見学は無料となりますが、山崎蒸溜所の入場自体に事前予約(先着順)が必要となるので、あらかじめ公式サイトなどから申し込みをしましょう。

 

有料ツアーは製造現場を深掘り見学できる!

もちろん、改修はウイスキーをつくるための設備にも実施されました。こちらの見学は、抽選式の有料ツアーの内容となり、そのコースは80分3000円の「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」と、120分1万円で火・木曜限定(祝日の場合非開催)の「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」の2種。

↑改修ポイントのひとつ。仕込前室には、ウイスキーの製造工程を事前に映像などで説明するスペースが新設されました

 

↑発酵工程の見学においては、入室して香りを体験できるように刷新。写真は発酵最終日(3日目)の木樽内部の様子。勢いを増す泡が吹きこぼれないよう、ファンが回転しています

 

どちらのツアーでも、仕込み、発酵、蒸溜、貯蔵と順を追って各工程の見学とテイスティングが楽しめますが、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」では、このツアーだけ製造エリアを見学できたり、より希少なウイスキーのテイスティングが楽しめたりと、特別な体験が追加されます。

↑こちらは蒸溜所のシンボル的存在である蒸溜室。写真は2023年3月の取材時

 

↑リニューアル後。室内の奥にロゴが描かれ、さらに蒸溜室入口のパネルに工程の説明が加わりました

 

プレステージでは山崎12年もテイスティングできる!!

「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」だけの特別工程のひとつが、貯蔵庫見学のあと、後熟庫に移動して見学できるサンプリング作業です。

↑貯蔵庫には原酒をつくり分けるために種類も大小も様々な樽が置かれ、中には約100年前から眠り続ける超希少なものも

 

後熟庫でのサンプリング作業は、いわば熟成原酒の品質チェック。樽のダボ栓をハンマーとノミで開け、そこから原酒をボトルへ移すまでの工程となります。開けたての原酒を拝見できる、非常に貴重な体験であるといえるでしょう。

↑サンプリング作業は蒸溜所のつくり手が実施。なお、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」では、製造工程を現場のつくり手が直接案内します(ものづくりツアーは、蒸溜所の案内スタッフが担当)

 

↑原酒は樽からサンプル用のミニボトルへ。ノージング(香りをかぐこと)も可能です

 

また、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」は山崎ウイスキー館での映像視聴から見学が始まりますが、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」では新設されたゲストルーム「The YAMAZAKI」での映像視聴からスタート。

↑「The YAMAZAKI」。蒸溜所内で稼働していたポットスチルの銅板や樽材をテーブルや椅子、バーカウンターに再利用しており、部屋の前の回廊には希少な陶器や作品などが展示されています

 

加えて「山崎蒸溜所 ものづくりツアー」のテイスティングは別のゲストルームで行われますが、「山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ」ではテイスティングもこの「The YAMAZAKI」で実施。しかも希少な「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年」のストレートや水割りが提供されます(通常のツアーではノンエイジ)。ツアー料金は1万円となりますが、決して高くはないといえるのではないでしょうか。

 

ジャパニーズウイスキーの先駆者の挑戦は終わらない

なお今回の取材では、見学ツアーでも公開していない、1968年設立のパイロットディスティラリーのお披露目もありました。パイロットディスティラリーとは品質向上研究や技術開発用の小型蒸溜施設のこと。いわばテストが繰り広げられるラボで、「やってみなはれ」精神が最も熱くたぎっている場所です。

↑パイロットディスティラリー内の蒸留室。小型のポットスチルが、2基(初溜・再溜)鎮座していました

 

ほかに、今回の取材でも見られなかった改修として、フロアモルティングの施設があります。フロアモルティングとは、水に浸し終えた大麦を発芽室の床に広げ、人力で発芽を促すスコットランド伝統の製麦工程のこと。

↑いまもフロアモルティングにこだわる代表的な蒸溜所といえば、「ラフロイグ」と「ボウモア」。どちらも山崎ウイスキー館のテイスティングラウンジで有料試飲できます

 

ただ、熟練の技術や広い設備を要するうえ重労働であるため、現代はスコットランドでも機械で行う精麦専門業者に委託する蒸溜所が主流となっています。サントリーでも、すべてをフロアモルティングの麦芽に切り替えるわけではありませんが、製麦は味を左右する要素であり、ウイスキーファンにとっては非常に興味深い試みであるといえるでしょう。

↑取材会の最後にサントリーのものづくり精神を教えてくれた、五代目チーフブレンダーの福與(ふくよ)伸二氏

 

冒頭で述べたように、2023年はジャパニーズウイスキーにとってのアニバーサリーイヤーですが、2024年は山崎蒸溜所が蒸溜を開始してから100周年を迎え、さらに「シングルモルトウイスキー 山崎」発売から40周年、「シングルモルトウイスキー白州」発売から30年周年の節目でもあり、引き続きアツい年。

 

山崎駅へは京都駅から約15分、大阪駅から約30分と実に気軽に行ける距離なので、関西旅の行程にもぜひ組み込んでみては。運が良ければギフトショップで「シングルモルトウイスキー 山崎」のミニボトルが付いたお土産のセットも購入できます。「そうだ 山崎、行こう。」と思い立ったら、まずは蒸溜所見学のご予約を!

 

【PLACE DATA】

サントリー山崎蒸溜所

住所:大阪府三島郡島本町山崎5-2-1
営業時間:9:30~16:45(最終入場16:30)
休館日:年末年始、工場休業日(臨時休業あり)
アクセス:JR「山崎駅」、阪急「大山崎駅」からそれぞれ徒歩約10分

https://www.suntory.co.jp/factory/yamazaki/

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

撮影協力/松村広行

ブームから暗黒期、そして世界を牽引する時代へ。ジャパニーズウイスキーの100年間と、支えた7人のキーパーソンたち

2023年は、ジャパニーズウイスキーのアニバーサリーイヤー。よく世界五大ウイスキーのひとつに数えられますが、近年になってその評価はいっそう高まり、国際品評会で世界一に輝くことも珍しくありません。この特集記事では全4回にわたってジャパニーズウイスキーの魅力を解説。第2回目は、奥深くドラマチックな歴史について紹介します。

【関連記事】ジャパニーズウイスキーとは。世界における立ち位置や独自の魅力などを解説

 

ウイスキー文化の浸透を夢見た偉人たちの情熱

冒頭で“アニバーサリーイヤー”と述べましたが、起点となったのは1923年10月。サントリーの創業者(当時は寿屋)である鳥井信治郎(とりいしんじろう)氏が、日本初となるモルトウイスキー蒸溜所、山崎蒸溜所の建設に着手したのが始まりです。

↑写真の人物が鳥井信治郎氏。山崎蒸溜所の展示パネルより

 

そして、山崎蒸溜所の初代所長が、のちにニッカウヰスキーの創業者となる竹鶴政孝(たけつるまさたか)氏です。竹鶴氏はさかのぼること7年前の1916年、当時の洋酒業界における大手だった摂津酒造に入社。社長の阿部喜兵衛(あべきへえ)氏と常務の岩井喜一郎(いわいきいちろう)氏の命を受け、1918年にスコットランドへ単身ウイスキー留学します。

↑写真の人物が竹鶴政孝氏。写真は宮城峡蒸溜所にて

 

ちなみに、この岩井氏はのちに本坊酒造の顧問となり、同社のウイスキーづくりに尽力。そのリスペクトはブレンデッドウイスキー「岩井 トラディション」シリーズに込められています。また、摂津酒造は1964年に焼酎業界の雄・宝酒造(現・宝ホールディングス)に吸収合併されています。

 

竹鶴氏は1920年に帰国。ウイスキーの実習報告書(通称「竹鶴ノート」)を岩井氏に提出し、摂津酒造は純国産ウイスキーの製造へ乗り出します。しかし第一次世界大戦後の恐慌によって資金調達ができず、壮大な計画は頓挫してしまいました。竹鶴氏も1922年にやむを得ず退職するのですが、その竹鶴氏を見つけ出し、採用したのが寿屋の鳥井社長だったというわけです。

 

山崎蒸溜所は着工翌年の1924年に竣工し、蒸溜も開始。そして5年後の1929年、ついに日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー」(通称「白札」。現在の「サントリーウイスキーホワイト」)が誕生します。しかしスコッチへの敬意を表現したまさに本格的なその味は、魅力的なはずのスモーキーフレーバーが「煙くさい」と、当時の日本人には受け入れられませんでした。

左端が「白札」。この受難をもとに、日本人の味覚に合った酒質で1937年に生み出されたのがいまも続く「サントリーウイスキー角瓶」(右から3番目)です。結果、悲願の大ヒット

 

一方、竹鶴氏は1934年に寿屋を退職し、スコットランドと近い風土を探し求めてたどり着いた北海道の余市に蒸溜所建設を決意。大日本果汁(のちのニッカウヰスキー)を創業し、1940年に自社初のウイスキー「ニッカウヰスキー」を発売します。

↑左から2番目のボトルが「ニッカウヰスキー」。なお、熟成を経たウイスキーを発売するまでは、りんごジュースや「ニッカ アップルワイン」(左端)などを積極的に製造販売していました

 

戦乱を乗り越え高度経済成長とともに最高潮に

ところが1941年には太平洋戦争が勃発。1945年の終戦後も本格ウイスキーは統制品となり、市場にはアルコールに様々な香料や着色剤を加えたイミテーションウイスキーが出回るようになります。

 

しかし、1950年からの朝鮮戦争特需などもあり、日本経済は徐々に回復。同時に、寿屋のマーケティング施策によって全国にトリスバーが続々開業。夏はハイボール、冬はホットと飲み方を提案するなどの甲斐あって、ウイスキーが一層親しみやすくなっていきました。

↑寿屋の宣伝部が手掛けた、トリスバー向けのPR誌「洋酒天国」。編集兼発行人は、当時社員だった開高 健氏で、「トリス」の有名なコピー“人間らしくやりたいナ”も開高氏の作品です

 

1955年には伝説の蒸溜所と名高い軽井沢蒸留所(当時の名称は大黒葡萄酒軽井沢蒸留所)が誕生。こちらは2000年いっぱいで生産停止し2011年に閉鎖しましたが、その間日本におけるクラフトウイスキーの第一人者、ベンチャーウイスキー(2004年創業。秩父蒸溜所の「イチローズモルト」で有名)の肥土伊知郎(あくといちろう)氏が実習で使用したり、一部設備は東海クラフトウイスキーの雄、ガイアフロー静岡蒸溜所が買い取ったりと、伝説は引き継がれています。

↑ベンチャーウイスキーの肥土社長。2014年、秩父蒸溜所にて。ちなみに肥土氏は秩父の造り酒屋に生まれますが、洋酒に憧れがあったためサントリーに新卒入社しています

 

余談ですが、この軽井沢蒸留所におけるキーパーソンたちは、2022年末に始動した軽井沢ウイスキー蒸留所の顧問や工場長に招へいされています。そのひとりが、軽井沢蒸留所の最後のモルトマスターであり、軽井沢ウイスキー蒸留所の顧問に就任した内堀修省(うちぼりおさみ)氏。内堀氏は、秩父蒸溜所の黎明期に肥土氏へのウイスキー技術指導も行っています。

 

話を戻すと、高度経済成長とともにウイスキーはさらに躍進していきました。1969年には竹鶴氏が仙台の郊外に宮城峡蒸溜所を開設。同年にはバーボンの輸入自由化、そして1971年にはスコッチを含む酒類の輸入自由化、翌1972年には関税が引き下げられるなどして輸入酒ブームが起こり、国内の酒造企業も続々とウイスキー事業に参入していきます

↑宮城峡蒸溜所。2024年に開設55周年を迎えます

 

山崎蒸溜所の建設着手から半世紀後の1973年には白州蒸溜所が誕生。加えて同年には、米国(当時)のJEシーグラム社とスコットランドのシーバスブラザース社、キリンビールの3社共同出資で設立したキリン・シーグラム社の蒸溜所として富士御殿場蒸溜所も開設され、現在はキリンビールが単独で所有しています。

↑現在の正式名称は、キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所

 

1976年には、前述の軽井沢蒸留所を当時運営していた三楽オーシャン(現在のメルシャン)によって、日本初のシングルモルトウイスキー「軽井沢」が発売。同銘柄はいまや“幻のウイスキー”として、歴史に名を刻んでいます。

 

失われた四半世紀。起爆剤は「ハイボール」と「朝ドラ」

1980年代に入ると、それまで上昇基調だったウイスキー市場は曲がり角を迎えます。1983年には過去最多の消費量を記録しましたが、その後は酒類の多様化が進むとともに、酎ハイ、ワイン、日本酒といったブームのあおりを受けて低迷期に突入。軽井沢蒸留所の閉鎖も、こうしたダウントレンドの影響は否めません。

↑この時代を象徴する銘柄が「サントリーウイスキーオールド」。1980年には1240万ケースに達し、世界一の出荷数量を記録しました

 

この氷河期初期の1984年に産声を上げたブランドがありました。それがジャパニーズウイスキーのシンボル的存在、山崎蒸溜所から生み出された「シングルモルトウイスキー 山崎」(当時の名称は「サントリーピュアモルトウイスキー山崎」で、12年熟成)です。

 

さらに、1989年には「シングルモルト余市」「シングルモルト宮城峡」(ともに12年熟成)が、1994年には「シングルモルトウイスキー白州」(当時の名称と熟成年数は山崎と同様)がデビュー。

 

ウイスキーの国内消費量は2008年までほぼ一貫して下がり続けますが、2003年には世界的に権威ある酒類コンペティション・ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)で、「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年」が日本で初めて金賞を獲得しました。

↑「サントリーシングルモルトウイスキー 山崎12年」。額に入った写真は2003年の授賞式のもの

 

この快挙は業界関係者、そしてジャパニーズウイスキー復活の原動力になったといっていいでしょう。以降、ジャパニーズウイスキーが世界の品評会で上位に入賞するようになっていきます。

 

また、2005年にはベンチャーウイスキーが最初の商品「イチローズモルト ヴィンテージシングルモルト1988」を発売。2年後の2007年には、国内35年ぶりとなる新規蒸溜所、秩父蒸溜所を設立します。

↑約10年前の秩父蒸溜所。2019年には、ここから約600メートル離れた場所に秩父第2蒸溜所が開設されました

 

2008年。ジャパニーズウイスキー起死回生のきっかけとなる出来事が起きます。それが、サントリー「角ハイボール」復活プロジェクトです。これにより翌2009年には右肩下がりだった消費量が上昇に転じ、日本のウイスキー市場は活気を取り戻していきました。

 

さらに、2014年にはドラマチックなジャパニーズウイスキーの誕生秘話が、竹鶴政孝氏とその妻・リタ氏の生涯をモデルにドラマ化。NHKの連続テレビ小説『マッサン』(竹鶴氏のニックネームがマッサン)が放送され、国内ウイスキーブームは一層過熱します。

↑モノクロ写真が竹鶴氏とリタ氏

 

近年はクラフトディスティラリーの躍進にも注目

ウイスキー人気復活の追い風を受けた2010年代は、クラフトディスティラリーの新設が増えていったことも特徴のひとつ。代表的なのは、前述のガイアフロー静岡蒸溜所(2016年)ほか、本坊酒造の第2拠点にあたるマルス津貫(つぬき)蒸溜所(2016年)、厚岸(あっけし)蒸溜所(2016年)、安積(あさか)蒸留所(2016年より再稼働。設立は1946年)、嘉之助(かのすけ)蒸溜所(2017年)、三郎丸蒸留所(2017年に大規模改修。製造は1952年より)などです。

↑三郎丸蒸留所で有名なのが「ZEMON(ゼモン)」。地元・富山の伝統工芸である高岡銅器の梵鐘(ぼんしょう)をヒントに開発された世界初の鋳造(ちゅうぞう)製ポットスチルで、銅と錫(すず)の2つの効果でよりまろやかな酒質を生み出します

 

2020年代は、新規蒸溜所の誕生がますます活性化。ビッグネームの例を挙げれば、前述の軽井沢ウイスキー蒸留所のほか、薩摩酒造の火の神蒸溜所などがあります。薩摩酒造は本坊酒造グループであり、焼酎メーカーとしては屈指の洋樽設備と技術を所有。その実力は、1988年の発売開始からロングセラーを続ける長期貯蔵麦焼酎の銘酒「神の河」(かんのこ)が証明しているといえるでしょう。

↑2023年2月に蒸溜を開始した、火の神蒸溜所。2024年にはショップやバーを備えた施設のオープンと一般見学を開始する計画で、ウイスキーの発売は2026年を予定しています

 

加えて、近年は「秩父ウイスキー祭」や「ウイスキーフェスティバル」などのイベントが盛んに開催されるようになったり、スコットランドで盛んな原酒交換が日本の蒸溜所同士でも意欲的に行われるようになったりと、その勢いはとどまることを知りません。

↑2021年3月に発売された、富山の三郎丸蒸留所と滋賀の長濱蒸溜所によるコラボレーションウイスキー「FAR EAST OF PEAT」。日本のクラフトディスティラリー同士では、初の商品化となりました

 

ジャパニーズウイスキーの誕生から100年を迎えた2023年。国内蒸溜所の数は80を超えるといわれ、100を超えるのもそう遠い未来ではないでしょう。次回は比較的に入手しやすい銘柄のなかから、覚えておきたいブランドとその特徴などを解説します。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

 

撮影/松村広行(GetNavi編集部)

ジャパニーズウイスキー完全復活により、幻の蒸溜所が再稼働!

ジャパニーズウイスキーの完全復活により、受難の時代に閉鎖あるいは止まっていた蒸溜所が再稼働したり、その意志を継ぐ蒸溜所が誕生したりしていることも見逃せない。

※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【2016年再稼働・安積蒸留所】

東北で地ウイスキーブームを牽引した名蒸留所が満を持しての復活

「チェリーウイスキー」で知られる笹の川酒造(旧山桜酒造)のDNAを汲む蒸溜所で、福島県郡山に所在。特異な気候から「風の蒸溜所」と呼ばれる。なお、笹の川酒造とともに80年代ウイスキーブームを牽引した羽生蒸溜所が閉鎖した際、廃棄しなければならなくなった原酒を同社が受け入れ販売したのが、最初の「イチローズモルト」である。

 

【2022年新稼働・軽井沢ウイスキー】

旧蒸溜所の職人がリユニオン世界が称賛した名酒への熱意を継承

元々の軽井沢ウイスキー蒸留所は、メルシャン(三楽オーシャン)前身の大黒葡萄酒が1955年に設立した蒸留所で、日本初のシングルモルトを生み出すなど多大な功績を残したが、2012年に閉鎖。しかし昨年、地元で370年続く「戸塚酒造」がその意志を継ぎ、軽井沢の地で新たに本蒸溜所を新設した。閉鎖時の最後の工場長が新たな蒸留所の工場長を務める。

【ジャパニーズウイスキー最新トレンド】新進気鋭のクラフト蒸溜所から名酒が続々誕生!

昨今のジャパニーズウイスキーを語るうえで欠かせない話題が、新設蒸溜所の台頭だ。シーンをけん引する銘柄を中心に、期待が高まるこのムーブメントを紹介しよう。

※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【私がオススメします!】

フードライター・中山秀明さん

酒好きのフードアナリスト。クラフトウイスキーの聖地・秩父で育ち、全国の蒸溜所やブレンダ—への取材経験も多い。

 

世界唯一の鋳物型蒸溜器が生み出すまろやかで洗練された味わい

1952年製造開始(※)

若鶴酒造/三郎丸蒸留所
シングルモルト
「三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTESS」

実売価格1万3750円

北陸唯一の蒸留所が、富山の伝統工芸品・高岡銅器の技術を用いて作られた世界初の鋳物製銅錫合金ポットスチル「ZEMON」で蒸溜した原酒を、初めて商品化。銅と錫の2つの効果により、まろやかで洗練された酒質を実現している。

※:2017年に大改修をし、三郎丸蒸留所としてリニューアル。2019年に、「ZEMON」を導入

 

【Nakayama’s Review】伝統のスモーキー香や果敢な冒険心にも注目

同蒸溜所のテーマ「ピートを極める」を実感できる、力強いスモーキー香も魅力。同社は他社との原酒交換にも積極的で、日本のクラフト蒸溜所同士で初のコラボ商品を発売するなど、冒険心も魅力です!

 

3基のポットステルを駆使した待望の定番シングルモルト

2017年製造開始

小正嘉之助蒸溜所
シングルモルト 嘉之助
9900円

日本三大砂丘のひとつ、鹿児島県・吹上浜沿いに設立。最大の特徴は、大中小とサイズの異なる3基のポットスチルを備えていることで、本品は同蒸溜所初の定番商品。ウイスキー本来の風味が楽しめるよう、冷却濾過は行っていない。

 

【Nakayama’s Review】名焼酎のDNAを継ぐ上品で甘くメローな味

日本初の長期樽熟成焼酎として小正醸造が生み出した「メローコヅル」のDNAは、蒸溜所のコンセプト「MELLOW LAND, MELLOW WHISKY」へ。上品で甘くまろやかな味はまさにメロー。多幸感にあふれる一本です。

 

希少な国産ピートが香るスモーキーな味わい

2016年製造開始

厚岸蒸溜所
厚岸ブレンデッドウイスキー 小満

1万3200円

ピーティーなアイラモルトへの憧れと敬意から、潮気を含む霧やピートが取れる地の利を求めて北海道・厚岸の地に誕生。本作は「二十四節気シリーズ」の第11弾となるブレンデッドウイスキーだ。

 

【Nakayama’s Review】厚岸の恵みに育まれた燻香と爽やかな甘味

季節ごとに原酒を作り分けたり、地元産の大麦やピート、ミズナラ樽を使ったり、厚岸のテロワールを生かす姿勢がユニーク。本品は、燻香に柑橘のような爽やかさに甘味が重なる奥行きのある味わいです。

 

寒暖差のある気候が生み出す力強く厚みのある味わい

2016年製造開始

本坊酒造/マルス津貫蒸留所
シングルモルト津貫 2023エディション

8800円

1985年、長野県にマルス信州蒸溜所を設立した同社が、より多彩な原酒を作るべく創業地の鹿児島県津貫に設立。一年の中で寒暖差が激しい盆地という環境が、力強い酒質を生み出す。本品では、国内の品評会で金賞を受賞。

 

【Nakayama’s Review】バーボンの樽香が導くリッチな風味がナイス

本作は、バーボンバレルを主体に様々な樽で熟成した原酒をヴァッティング。モルティな甘味と、温かくフレッシュな果実味が印象的です。樽のウッディな香りは味わいに厚みをプラスし、全体的にリッチ。

 

【これもCheck!】老舗の焼酎蔵がウイスキー製造を開始

本坊酒造のグループには熟成麦焼酎の銘酒「神の河」で有名な薩摩酒造があるが、同社は今年、枕崎に「火の神蒸溜所」を竣工。2026年内のファーストリリースを目指している。麦の名手の新酒に注目だ。

見学可能でメモリアルイヤー! 日本が誇る3つのウイスキー蒸溜所をチェック

ジャパニーズウイスキー生誕の地である山崎をはじめ、今年は日本を代表する3つの蒸溜所がメモリアルイヤー。すべて見学できるので、本稿を参考にぜひ訪れてほしい。

※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【100YEARS】サントリー山崎蒸溜所

鳥井信治郎が、ウイスキー作りの理想郷を求めて全国を踏破し、辿り着いた地が京都郊外の山崎。茶人・千利休も愛した良質な水、霧が立ちやすく熟成に適した湿潤な気候がここにある。駅から徒歩数分という好立地だ。

 

↑国際的な品評会ISCで日本初の快挙(P.35)を成し遂げたのも山崎。右の人物は、3代目マスターブレンダーの鳥井信吾氏

 

2023年秋フルリニューアル! 見学ツアーを刷新

周年を機にエントランスやラウンジなど一部を改修。11月1日からは事前予約制の見学も始まる。ツアーは内容や金額が異なる2つを抽選制で用意。なお白州も同様で、こちらはすでに刷新済みだ。

 

バニラ香と果実味が華やぐ日本を代表する名ブランド

サントリー
サントリー シングルモルトウイスキー山崎12年
サントリーウイスキー100周年記念蒸溜所ラベル

実売価格1万1000円(700ml)

ホワイトオーク樽熟成原酒由来の甘いバニラ香と熟した果実味が華やぎ、シェリー樽原酒とジャパニーズオークのミズナラ樽原酒の余韻も心地良い。繊細で上品なテイストの、日本を代表する一本。

 

【50YEARS】サントリー白州蒸溜所

日本初の蒸溜所誕生から半世紀後の1973年。山崎とは異なる個性的な酒質を求めて辿り着いた名水の地が、南アルプスの麓にある山梨の白州だった。標高約700mで冷涼な、世界でも稀な“森の蒸溜所”としても有名。

 

↑発酵槽に使うのは木桶のみ。また、山崎では使用していないスモーキーなピート麦芽を一部に使い仕込んでいる

 

爽やかな香りと果実味にスモーキーな甘味が漂う

サントリー
サントリーシングルモルトウイスキー白州12年
サントリーウイスキー100周年記念蒸溜所ラベル

実売価格1万1000円(700ml)

新緑を思わせる爽やかな香りと青りんごのような若々しい果実味に、甘くやわらかなスモーキーフレーバーが漂う。フルーティーでふっくらとしたコクがあり、フィニッシュはキレの良い味わい。

 

【50YEARS】キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所

米国(当時)のJEシーグラム社とスコットランドのシーバスブラザーズ社、キリンビールの3社共同出資で誕生したキリン・シーグラム社が、1973年に静岡に創設。3か国の技術や知見と、霊峰・富士の伏流水によるマザーウォーターを生かしたウイスキー作りが特徴だ。

 

↑グレーン原酒用の蒸溜器が3種ある、世界でも稀な蒸溜所。なかでもケトル蒸溜器(右)とダブラー蒸溜器(左)が併設されているのは希少

 

多彩なグレーンが織りなす甘く華やかで複層的な味

キリンディスティラリー
キリン シングルグレーン
ジャパニーズウイスキー 富士

6600円

グレーンの原酒のみをブレンド。優しくほんのりとした甘さ、伽羅などの香木を思わせるアロマ、ウッディでスパイシーな余韻が特徴で、ラストに伸びるマスカットのような果実味も心地良い。

 

【これも注目!】2024年はニッカウヰスキーが90周年

竹鶴政孝が創業したニッカウヰスキーは、2024年に90周年を迎える。2014年の80周年では限定の「竹鶴」が発売されたりイベントが開催されたりしていたため、来年の同社の施策にも注目だ。

↑竹鶴がスコットランドに近い気候を求めて辿り着いたのが、北海道の余市だった。現在も伝統の石炭直火蒸溜を行っている

国産ウイスキー蒸溜開始から100年目!激動と波乱の歴史を振り返る

いまや国際品評会で世界一に輝く銘柄が頻出するようになった、ジャパニーズウイスキー。2023年は、その誕生から100周年を迎えるアニバーサリーイヤーである。ドラマチックな歴史や注目の新顔などに触れながら、現在地へと誘おう。

※この記事は「GetNavi」 2023年12月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

■ジャパニーズウイスキーの定義

↑2021年に日本洋酒酒造組合が、消費者の利益を保護し、事業者間の公正な競争を確保するとともに品質の向上を目指し、ジャパニーズウイスキーの定義を制定した

 

幾多の受難を経て奇跡の復活!そして世界中から愛される酒に

まさかこんな時代が来るとは! そう断言できるほどジャパニーズウイスキーは奇跡の復活を果たし、絶好調だ。もともと、スコッチやアメリカンなどと並ぶ世界五大ウイスキーのひとつではあったが、近年はファンが急増し入手困難な銘柄も数多。こうした人気の理由は、ひとえに世界をあっと驚かせるほどのうまさにある。

 

高品質な味は、作り手の技術向上や飽くなき探求心がもたらしたものであるが、その誕生は1923年。ちょうど100年前だ。この年、現在のサントリー創業者である鳥井信治郎が、日本のウイスキー作りを志し、山崎蒸溜所の建設に着手。そしてスコットランドから帰国していた、のちのニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝を工場長に招致した。翌年11月11日の11時11分、同蒸溜所のポットスチル(単式蒸溜器)に最初の火が灯り、ジャパニーズウイスキーの夜が明けたのである。

 

↑竹鶴政孝(左)は、摂津酒造の阿部喜兵衛と岩井喜一郎のサポートにより留学したが、帰国時、戦後の経営悪化で同社のウイスキー作りは頓挫。そこで鳥井信治郎(右)が竹鶴を寿屋に招致した。ちなみに岩井は後年、本坊酒造でウイスキー製造を指導している

 

寿屋(現・サントリー)は1929年、ついに日本初の本格ウイスキーを発売。しかし“本格”な味は「煙くさい」として、あまり受け入れられなかったという。このように船出は決して順風満帆ではなかったが、日本人の繊細な味覚に合うウイスキーを追求し続けて開発したのが、いまも続く通称「角瓶」だ。続いて寿屋から独立した竹鶴も、自社初のウイスキー「ニッカウヰスキー」を発売するなど、日本のウイスキー業界は徐々に発展していく。

 

↑サントリーウイスキー白札(左)、ニッカウヰスキー(右)

 

しかし時代は戦争へ。戦後の混乱期にはアルコールに香料や色を加えただけの偽物もウイスキーとして流通。とはいえ世が平穏を取り戻すなか、ウイスキーは原酒混和率による等級制度で区分され、大衆的な銘柄を中心に浸透していく。やがて高度経済成長期にはバーが急増。ボトルキープやハイボール、水割りといった日本独自の文化が花開いたのもこのころだ。

 

1973年には白州蒸溜所と富士御殿場蒸溜所が誕生。そして1983年にウイスキーの消費量は隆盛を極めるが、酎ハイなど他の酒に人気を奪われ次第に低迷。転機となるのは2000年代に入ってから。国際品評会で上位入賞したり、クラフト蒸溜所が誕生したりと新たな潮流が芽生えるなか、ハイボールブームが到来して消費量でも復活を果たす。

 

ジャパニーズウイスキーの歴史は朝ドラ「マッサン」で広く知られるようになり、人気は不動のものに。加えて国際品評会ではすっかりトップの常連となり、ついにジャパニーズウイスキーは世界中の注目を集めるようになった。いまや新たな蒸溜所が全国に続々誕生し、そこで熟成を経たウイスキーの飲みごろをファンは待ち望んでいる。ジャパニーズウイスキーは、ますます面白くなるだろう。

 

ジャパニーズウイスキーの歴史

1853年 アメリカからペリーが来航し、日本に初めてウイスキーが持ち込まれる

1860〜1870年代 1859年の開港とともにウイスキーの輸入が始まる

1899年 鳥井信治郎が鳥井商店(以降、鳥井商店→寿屋洋酒店→寿屋→サントリーと社名を変更)を開業

1918年 竹鶴政孝が本場のウイスキー作りを学ぶため、スコットランドに留学する

↑竹鶴が留学中に書き綴ったノート。かつての英国首相が、「頭の良い日本の青年が、1本の万年筆とノートでウイスキー作りの秘密を盗んでいった」と親愛の情を込めてスピーチしたという逸話がある

 

1923年 竹鶴政孝が寿屋に入社。同社は京都郊外の山崎で蒸溜所の建設に着手し、国内での本格的なウイスキー作りが始まる

1924年 山崎蒸溜所竣工。竹鶴政孝が初代工場長に就任し、ウイスキーの製造を開始

↑山崎蒸溜所

 

1929年 寿屋が、日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー白札」を発売

1934年 竹鶴政孝がニッカウヰスキーの前身となる大日本果汁を設立し、北海道・余市に蒸溜所を作る

↑余市蒸溜所

 

1937年 寿屋が「サントリーウイスキー角瓶」を発売

1940年 大日本果汁が自社初のウイスキー、「ニッカウヰスキー」を発売

1970年代 ウイスキーの貿易が自由化し、輸入洋酒ブームが起こる。以降、国内酒造会社が続々とウイスキー事業に参入

1976年 三楽オーシャン(現・メルシャン)が、国内初のシングルモルトウイスキー、「軽井沢」を発売

1983年 ウイスキー消費量が過去最多に。しかし、ワイン、日本酒といった酎ハイブームのあおりを受け、以降低迷期に突入

2003年 サントリーの「山崎12年」が国際酒類コンテスト「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ(ISC)」で、日本で初めてウイスキー部門の金賞を受賞。以降、ジャパニーズウイスキーが世界の品評会で上位に入賞するようになる

2005年 ベンチャーウイスキーが、のちのクラフトウイスキーブームの火付け役となる「イチローズモルト」を笹の川酒造から発売。ベンチャーウイスキーは、2007年に秩父に蒸溜所を創設。

2008年 サントリーの「角ハイボール」をきっかけに、ハイボールブームが起こる

2014年 NHK連続テレビ小説で、竹鶴政孝とその妻・リタの生涯をモデルとした「マッサン」が放送される

2010年代後半 全国各地にクラフト蒸留所が続々と誕生

2021年 日本洋酒酒造組合がジャパニーズウイスキーの定義を確定させる

2023年 日本のウイスキー作りが100周年を迎える

富士御殿場蒸溜所操業50周年記念「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」を発売!

キリンビールは「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」を11月21日(火)より数量限定で発売。

「富士」は、2020年に発売され、その味わいは世界的にも高く評価されており、2022年の実績は発売から3年間で約10倍(※1)となるなど、大きく伸長しています。特に独自の起源から生まれる多彩な原酒のつくり分けと、世界一(※2)のブレンディング技術で生み出された味わいが国内外から高い評価を得ています。

 

こうした背景を受け、50周年を記念した1973年の操業当時のモルト原酒をはじめ、1970~2010年代の各世代のモルト原酒とグレーン原酒を使用した、長熟原酒由来の甘く複雑な熟成香と、未来を見据えて改良を続けてきた原酒の華やかな香りが見事に調和する美しい味わいが特長の「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」が発売されます。

 

※1 キリンビール出荷実績(金額ベース)において
※2 マスターブレンダー・田中城太がアイコンズ・オブ・ウイスキー(IOW)2017において、「マスターディスティラー/マスターブレンダ―・オブ・ザ・イヤー」を受賞。

 

「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」

蒸溜所操業開始年の1973年蒸留の原酒をはじめ、1970・1980・1990・2000・2010年代の各世代に蒸留された、えりすぐりのモルト・グレーン原酒を使用。50年のウイスキーづくりの歴史と技術を注ぎ込んだ特別なシングルブレンデッドウイスキー。

 

・メーカ:キリンビール
・商品名:キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」
・発売日:2023年11月21日(火)
・発売先: 富士御殿場蒸溜所売店および抽選販売
 ※抽選販売の詳細はキリンオンラインショップDRINX(https://drinx.kirin.co.jp/)にて後日案内予定

・価格:3万6080円(税込み) ※富士御殿場蒸溜所売店、DRINX価格
・販売予定数量: 3000本限定

ジャパニーズウイスキーとは。世界からの評価や5大ウイスキーにおける個性、伝説の銘柄などを解説

2023年に誕生から100年のアニバーサリーイヤーを迎えたジャパニーズウイスキー。よく“世界五大ウイスキー”のひとつに数えられますが、近年になってその世界的評価はいっそう高まり、国際品評会で世界一に輝くことも珍しくありません。

 

この特集記事では、全4回にわたってジャパニーズウイスキーにまつわる知っておきたい知識を解説。この第1回では、「ジャパニーズウイスキー」の定義や特徴など、基本的な要点を紹介します。

↑世界五大ウイスキーそれぞれの定義や特徴も解説

 

「ジャパニーズウイスキー」の定義制定は2021年。主な条件は?

ジャパニーズウイスキーとは読んで字の如く「日本のウイスキー」ですが、実は明確な定義があります。しかし、その制定は2021年と比較的最近。日本洋酒酒造組合により、消費者の適正な商品選択や、事業者間の公正な競争、品質の向上を目的に制定されました。主な条件を5つ挙げてみましょう。

 

1:原材料として麦芽は必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること

2:糖化、発酵、蒸溜は国内の蒸溜所で行うこと

3:原酒は700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で3年以上貯蔵すること

4:日本国内で瓶詰めすること

5:充填時のアルコール度数は40%以上であること

 

例えば、海外産の原酒をブレンドまたはボトリングしたウイスキーは、日本で樽貯蔵や瓶詰めをしてもジャパニーズウイスキーとは名乗れないのです。

 

日本のウイスキーはスコッチが手本となった

ジャパニーズウイスキーの誕生は1923年。サントリーの前身にあたる寿屋が、山崎蒸溜所の建設に着手したのが始まりです。歴史については第2回で詳しく解説しますが、製法などに関する大きな特徴はスコッチウイスキーへのリスペクトが強いこと。

↑100周年を迎えた山崎蒸溜所。ロゴの横には「SINCE 1923」の一文も書かれています

 

これは、山崎蒸溜所の設計に携わり初代所長を務めた竹鶴政孝氏(のちのニッカウヰスキー創業者で、連続テレビ小説『マッサン』のモデル)が、スコットランドの蒸溜所でウイスキーの知見や技術を学んだことが強く関係しています。

 

■ 世界のウイスキーの6割を占める王者「スコッチ」

それでは、五大ウイスキーについても、それぞれ主な特徴を解説していきましょう。まずはスコッチウイスキーから。定義としては、水とイースト菌、それにモルト(大麦麦芽)などの穀物を使い、仕込みや蒸溜をスコットランドで行うこと、そして容量700リットル以下のオーク樽に詰め、スコットランドの倉庫で3年以上熟成させることなどが挙げられます。

↑販売数量世界一(「Impact Databank 2020」より※)のスコッチウイスキーブランドが「ジョニーウォーカー」

 

全世界のウイスキー消費量の約6割がスコッチウイスキーであるともいわれる、いわばウイスキーの王者。その魅力的な味は独自の風土に起因しています。原材料の大麦が豊富に収穫でき、熟成に向いた冷涼な気候、そして燻香に欠かせないピート(泥炭)にも恵まれた湿地帯であることなど、ウイスキーづくりに理想的な環境が整っています。

↑ピート。日本の産地としては、北海道が有名です

 

原材料やブレンドの有無などによって、「シングルモルト」「シングルグレーン」「ブレンデッド(ヴァッテド)モルト」「ブレンデッド(ヴァッテド)グレーン」「ブレンデッドウイスキー」の5種に分類されることも特徴です。

 

また、「アイラ」「アイランズ」「キャンベルタウン」「スペイサイド」「ハイランド」「ローランド」と6大産地に分けられ、ピートが効いたアイラ、優雅な香りのスペイサイドなど、地域ごとに風味のキャラクターが異なることもスコッチの魅力です。

↑“アイラモルトの王者”の異名をもつ「ラフロイグ」

 

■ モルティかつクリアな味わいの「アイリッシュ」

ウイスキー発祥地説をスコットランドと二分し、かつて世界一の生産量を誇ったのがアイリッシュウイスキーです。主な定義としては、穀物類を原料とし、麦芽に含まれる酵素によって糖化させて酵母で醗酵。木製樽に詰め、アイルランドまたは北アイルランドの倉庫で3年以上熟成させることです。

↑1608年創業といわれる、アイリッシュウイスキー最古の蒸溜所のひとつがブッシュミルズ蒸溜所。その代表銘柄が「ブッシュミルズ ブラックブッシュ」

 

分類としては、「シングル(ピュア)ポットスチルウイスキー」「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」「ブレンデッドウイスキー」の4種類。

 

なかでも伝統的なアイリッシュウイスキーといえるのが「シングル(ピュア)ポットスチルウイスキー」。モルトに未発芽の大麦やその他の穀物を原料とし、単式蒸溜機(ポットスチル)で3回蒸溜(他産地では2回が一般的)させます。こちらは穀物の風味が豊かかつ、雑味が少なくなめらかでクリアな味になることも特徴です。

 

香りが甘く力強い味わいの「アメリカン」

バーボンでもおなじみのアメリカンウイスキーですが、バーボンウイスキー=アメリカンウイスキーではなく、アメリカでつくられたウイスキーの総称が、字の如くアメリカンウイスキー。

↑スーパープレミアムバーボンとして名高い「ウッドフォードリザーブ」。毎年5月に開催される、権威あるケンタッキーダービーのオフィシャルバーボンとしても有名です

 

主な定義は、穀物類を原料とすること、アルコール度数40%以上で瓶詰めすることなどがありますが、最も特徴的な定義は、内側を焦がしたオーク材の新樽で熟成させること(ただしコーンウイスキーは不要)です。新樽熟成であるため香りが甘く豊かで、味わいが力強いこともアメリカンウイスキーの特徴といえるでしょう。

 

原料などによって種類も様々。「バーボンウイスキー(コーンを51%以上使うなど)」「コーンウイスキー(コーンを80%以上使うなど)」「ライウイスキー(ライ麦を51%以上使うなど)」があり、また、バーボンウイスキーと原料や製法はほぼ一緒でも、テネシー州産かつチャコール・メローイング製法(炭濾過工程)でつくられるものはテネシーウイスキーと呼ばれます(代表的な銘柄は「ジャック ダニエル」)。

↑テネシーウイスキーといえば「ジャック ダニエル」。2023年は缶入りカクテル「ジャックダニエル&コカ・コーラ」の日本発売でも話題になりました

華やぐ香りとライトな酒質の「カナディアン」

香り高く軽やかな味わいを特徴とするのが、カナディアンウイスキー。1776年のアメリカ独立宣言後、それを嫌った一部のイギリス系農民が五大湖周辺で穀物栽培を始めたことがきっかけといわれています。

↑カナディアンウイスキーの代表格が、「C.C.」の愛称で親しまれる「カナディアンクラブ」。写真の「カナディアンクラブ 20年」は良質のオーク樽に20年以上熟成させた、ふくよかなコクが特徴

 

定義は、穀物を原料に麦芽などで糖化し、酵母などによる発酵後に蒸溜すること。そのうえで700リットル以下の木製容器で3年以上熟成させ、糖化、蒸溜、熟成はカナダで行うことなどです。

 

主な種類は3つ。ライ麦、コーン、ライ麦モルト、大麦モルトを原料にアルコール分64〜75%程度で蒸溜した「フレーバリングウイスキー」。主原料にコーンを用い連続式蒸溜機でアルコール度数95%以下で蒸溜した「ベースウイスキー」。そして、この両者を1:9〜3:7の比率でブレンドした「カナディアンブレンデッドウイスキー」です。

 

優雅でたおやかな「ジャパニーズ」

ジャパニーズウイスキーの主な定義は前述した通りですが、スコッチに学びながら独自の進化を遂げ、多彩ではっきりとした四季が生み出す日本ならでの繊細かつ華やかな香り、たおやかな深み、美しい調和を感じられることが味わいの魅力といえます。

↑“日本の四季、日本人の繊細な感性、日本の匠の技を結集したウイスキー”がコンセプトのブレンデッドウイスキー「響」

 

分類は、「モルトウイスキー」「グレーンウイスキー」、その両者をブレンドした「ブレンデッドウイスキー」の3種。また、東アジアの代表的な樹種であるミズナラの樽を他国より積極的に使うことも特徴といえるでしょう。

右端のゴールドラベルがイチローズモルトの「ミズナラウッドリザーブ」。なお、ミズナラ樽は戦中戦後に洋樽の輸入が困難になったため、山崎蒸溜所が起用したことがきっかけといわれています
↑右端のゴールドラベルがイチローズモルトの「ミズナラウッドリザーブ」。なお、ミズナラ樽は戦中戦後に洋樽の輸入が困難になったため、山崎蒸溜所が起用したことがきっかけといわれています

 

躍進の“侍スピリッツ”、その理由は?

ジャパニーズウイスキーの歴史は五大ウイスキーのなかで最も浅いものの、近年、世界的な評価はきわめて高く、注目の的となっています。その最大の理由は、やはりおいしさ。実直に品質向上への飽くなき探求を続けていった結果、味のクオリティが高まっていったといえるでしょう。

 

自国におけるウイスキー文化の醸成とともに、飲み手の嗜好性も高くなったこと、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)が大きな起点と言われる食のグローバル化など、ジャパニーズウイスキーがおいしく進化した背景にはいくつかの事象がありますが、エポックメイキングな出来事のひとつは国産シングルモルトの誕生です。

↑1824年に英国政府公認蒸溜所の第1号となり、“はじまりのシングルモルト”として知られる「グレンリベット」。また、1963年に初めて世界に向けてシングルモルトを発売したブランドは「グレンフィディック」(創業は1887年)です

 

日本初のシングルモルトは、いまはなき軽井沢蒸留所(当時は三楽オーシャン<現・メルシャン>が運営)が1976年に発売した「軽井沢」。その後1983年のピークを境に日本のウイスキー消費量はダウントレンドになっていきますが、この受難の時代に生まれたのが1984年デビューの「サントリーシングルモルト山崎」(当時の名称は「サントリーピュアモルトウイスキー山崎」で、12年熟成)です。

↑「サントリーピュアモルトウイスキー山崎」が発売された当時の広告。“なにも足さない。なにも引かない。”がキャッチコピーでした

 

その後1989年には「シングルモルト余市」と「シングルモルト宮城峡」(ともに12年熟成)が、1994年には「サントリーシングルモルト白州」(当時の名称と熟成年数は山崎と同様)が誕生します。

 

加えて、1990年代後半から世界的にシングルモルトブームが到来。その根幹をたどると、1988年に当時の英国洋酒最大手、ユナイテッド・ディスティラリーズ社がシングルモルトコレクション「クラシック・モルトシリーズ」を発売したことがきっかけといわれています。

 

これによって、ブレンデッドウイスキーより希少なシングルモルトに注目が集まるとともにファンが増加。加えて2000年代以降にはインド、中国、台湾といった新興国が豊かになり始め、飲み手も急増していきます。こうして世界的に盛り上がるなか、日本のシングルモルトも着実にクオリティを高め、2003年にはISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ。世界でも権威ある酒類国際品評会)で「サントリーウイスキー山崎 12年」が日本で初めてウイスキー部門の金賞に。

↑山崎蒸溜所にある、山崎ウイスキー館にて

 

以降、ジャパニーズウイスキーは国際品評会の常連となり、2004年には「響 30年」が日本で初めてISCの最高賞にあたるトロフィーに輝いています(「響 30年」は2023年のISCでもトロフィーを受賞)。

 

具体的な論評例も紹介しましょう。ウイスキー評論の第一人者であるマイケル・ジャクソン氏はジャパニーズウイスキーの躍進をカリフォルニアワインに例え、「フランスにならったカリフォルニアワインのレベルは、本家を凌ぐレベルに達した。ジャパニーズウイスキーもしかりで、手本にしたスコッチを超えるほどの銘柄が生まれている」と賛辞を送っています。

 

先人から後進へと挑戦の大和魂を継承し、ともに成長

近年のムーブメントとしては、クラフトディスティラリーの躍進も見逃せません。そのパイオニアが2004年に創業し、蒸溜所を2007年に開設したベンチャーウイスキー(秩父蒸溜所。イチローズモルトで有名)です。同社が2005年に発売した「キング オブ ダイヤモンズ」は、創業間もない2007年に英国「ウイスキーマガジン」主宰のジャパニーズモルト特集で最高得点を獲得。以来、瞬く間に国際品評会の常連に。あらためて、ジャパニーズウイスキーの高い実力を世界に証明しました。

↑激レアなイチローズモルトのなかでも希少価値が高い、通称カードシリーズ。秩父蒸溜所にて

 

興味深いのは、ベンチャーウイスキーはときに先達に支えられながら成長し、その恩を返すかのように後進のサポートに積極的であること。こうした横のつながりも新興クラフトディスティラリーの励みとなり、高い志をもった蒸溜所が全国に続々誕生しています。

ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎代表が公式に技術指導を行った蒸溜所が、北海道東部の厚岸(あっけし)蒸溜所。地元の風土を生かしつつ、アイラモルトのような酒質を目指した味は国内外で高い評価を得ています
↑ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎代表が公式に技術指導を行った蒸溜所が、北海道東部の厚岸(あっけし)蒸溜所。地元の風土を生かしつつ、アイラモルトのような酒質を目指した味は国内外で高い評価を得ています

 

クラフトディスティラリー間の親交が深まるなか、日本でも積極的に行われるようになった取り組みのひとつが、蒸溜所同士の原酒交換です。スコッチでは伝統的だった文化ですが、コラボレーションはウイスキーファンにとってもうれしい話題といえるでしょう。また「ウイスキーフェスティバル」をはじめ、近年はイベントも盛んに行われるようになりました。

↑日本のクラフトディスティラリー同士で、初のコラボレーション商品を発売したのが富山の三郎丸蒸留所と、滋賀の長濱蒸溜所(写真。代表銘柄は「AMAHAGAN」)

 

ほかにも、原材料に米を用いたライスウイスキー(ライスグレーンウイスキー)が存在感を示したり、鋳造製ポットスチルを発明する蒸溜所(上記、三郎丸蒸留所)が現れたり、つくり手の増加は個性の多様化や日本独自の進化も促し、ますますジャパニーズウイスキーは面白くなっています。

 

次回は100年前の誕生から最新ムーブメントまで、ドラマチックで奥深い歴史を紹介します。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

右端のゴールドラベルがイチローズモルトの「ミズナラウッドリザーブ」。なお、ミズナラ樽は戦中戦後に洋樽の輸入が困難になったため、山崎蒸溜所が起用したことがきっかけといわれています 激レアなイチローズモルトのなかでも希少価値が高い、通称カードシリーズ。秩父蒸溜所にて ベンチャーウイスキーの肥土伊知郎代表が公式に技術指導を行った蒸溜所が、北海道東部の厚岸(あっけし)蒸溜所。地元の風土を生かしつつ、アイラモルトのような酒質を目指した味は国内外で高い評価を得ています

ジャパニーズウイスキー「白州」蒸溜所が50周年。現地取材でわかった見学ツアーの醍醐味と“森の蒸溜所”と呼ばれる理由

2023年はジャパニーズウイスキーが100周年を迎えて盛り上がっています。着工から100周年を迎えるサントリーの山崎蒸溜所と双璧をなす白州蒸溜所も、実は50>周年のアニバーサリー。施設のリニューアルが行われるとともに新たな見学ツアーの受付が始まりました。その概要や見どころを現地で取材してきたのでレポートしましょう。

↑山梨県北杜市にある白州蒸溜所。約82万平方メートル(東京ドームの約17倍)の広さがあり、その多くが森に囲まれています。写真は蒸溜棟のエントランス

 

白州は世界的にも稀有な蒸溜所

白州蒸溜所最大の特徴が、そのロケーション。海抜約700メートルの高さにあり、雄大な森に囲まれた立地は世界的にも珍しく、なおかつ敷地面積も実に広大。また、隣に「サントリー天然水 南アルプス白州工場」が設えられている(しかも無料で見学可能/事前予約制)という環境はきわめて希少といえるでしょう。

↑今秋新設された、ウイスキーと天然水、両工場のエントランスにあたるビジターセンターより。奥に見える山々は八ヶ岳です。なお「Sanctuary」(=聖域)とあるように、白州の森にはバードサンクチュアリがあることでも有名

 

「白州」とは、この蒸溜所のモルト原酒だけでつくられるシングルモルトウイスキーのこと。そもそもシングルモルトは、ブレンデッドウイスキー(モルトウイスキー原酒とグレーンウイスキー原酒をブレンドする)に比べて個性的な味が特徴で、その個性はいわば、“土地の個性”です。本記事のラストでテイスティングの模様をレポートしますが、この雄大な森をイメージさせる味わいこそ「白州」独自の個性であるといえます

↑ビジターセンターで存在感を発揮するのが、このジオラマ。手前が現在地とバードサンクチュアリ、中央部が蒸溜棟など、上部が樽の貯蔵庫や天然水の工場と、蒸溜所の全体像がわかるようになっています

 

なお、この先にあるのが見学エリアにあたる蒸溜所や天然水工場ですが、入場するには事前予約が必要となります。ただ、このビジターセンターまでは予約不要。旅行途中などにふらっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

↑ビジターセンターにはグッズなども充実。ウイスキーはありませんが、Tシャツ、グラス、おつまみなどが販売されています

 

ツアーは有料ながら金額以上の価値がある!

ここからは有料見学ツアーを紹介していきましょう。内容には希少な白州のテイスティングやオリジナルグラスの贈呈も含まれており、プライス以上の価値があることは間違いありません。ツアーは所要時間約90分で3000円(税込)の「白州蒸溜所 ものづくりツアー」と、約130分で5000円の「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」を用意。ともにガイドが案内し、質問にも答えてくれます。

↑熟成中、樽からウイスキーが揮散して量が減っていく「天使の分け前(Angel’s share)」を解説するコーナー

 

「白州蒸溜所 ものづくりツアー」は、仕込槽、発酵槽、単式蒸溜器(ポットスチル)、樽の貯蔵庫など、製造の順を追って見学し、新設された「セントラルハウス」内のテイスティングルーム「バー 白州」で「サントリーシングルモルトウイスキー白州」と「白州森香るハイボール」のほか、希少なモルトウイスキー原酒も試飲できるという内容。

↑「セントラルハウス」には、より充実したギフトショップが併設。こちらには、「白州×スノーピーク」のチタンマグや、「響×バカラ」のロックグラスなどが販売されています

 

↑ギフトショップ。運がよければ「シングルモルトウイスキー白州」も購入できます

 
一方「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」は、通常のツアーに加え、貯蔵庫内でのテイスティングや、これまで公開していなかったグレーンウイスキーの施設見学、樽詰め作業の見学などがプラス。また、テイスティングでは「白州12年」が試飲でき、グラスに加えグラスホルダーも持ち帰れます
 

五感で満喫できる見学ツアーの醍醐味

では、見学ツアーの一部を紹介しましょう。冒頭で触れた蒸溜棟に入ると、ウイスキーの原料を展示したコーナーが出迎えてくれます。その先には製造工程をプロジェクションマッピングとともに解説するコーナーとなり、ここだけでもつくり方の概要を学べます。

↑原料の展示では、麦芽は通常のタイプと、スモーキーな風味になるピーテッド麦芽が。そして、その燻香を生み出すピートも展示。このピートで麦芽を焚くと、ピーテッド麦芽になるのです

 

↑プロジェクションマッピングで解説される、仕込、発酵、蒸溜、貯蔵、ブレンドという流れ。その後、検査やボトリング、ラベリングなどを経て出荷されます

 

この発酵における白州蒸溜所の独自性は、すべて木桶を使っていること。木桶はステンレス槽に比べて洗浄や管理が大変ですが、保湿性の高い木を使うことで微生物がより活性化し、土地の個性が酒質にいっそう生かされるというメリットがあります。

↑ズラリと並ぶ木桶の発酵槽。この手前には麦芽と仕込水で麦汁をつくる巨大なマッシュタン(仕込槽。仕込釜や糖化槽とも)があります。室内には麦汁の甘い香りがぷんぷん漂います

 

↑木桶のなかで発酵される麦汁(もろみ)。発酵によりガスが泡立ってふくらむので、泡の勢いが強くなる発酵最終日(3日目)にはファンが回転して泡を打ち消します

 

■蒸留

お次は、蒸溜所のシンボルともいえる蒸溜室へ。ここにドーンと並ぶ巨大な釜がポットスチルと呼ばれる単式蒸溜器で、このなかにもろみを入れて蒸溜を行います。多彩な原酒をつくり分ける狙いがあるため、様々な形のポットスチルを使用することも特徴。

↑ポットスチルは銅製で、8基が対になった計16基が並んでいます。左の初溜釜でアルコール度数を20%程度まで上げ、さらに右の再溜釜で約70%まで濃度を高めていきます

 

■貯蔵(熟成)

そして、これまた見学のハイライトといえる、樽の貯蔵庫へ。見学できるのは巨大なラック式ですが、施設内には木製のラックで組み上げるダンネージ式という伝統的なウェアハウスもあります。

↑貯蔵庫。樽は大きさや材質も様々で、それらの違いがわかるように展示しているコーナーもあります

 

↑こちらは樽のリペアを紹介するコーナー。天面と底になる丸い部分が鏡板で、側面を形成する部分は側板(がわいた)、タガは帯鉄(おびてつ)といいます

 

ツアー参加しなくても場内見学を予約すれば博物館見学や有料試飲はOK

なお、有料ツアーに参加しなくても、前述の「セントラルハウス」やその横にある「ウイスキー博物館」は場内見学を予約(先着順)すれば無料で入館可能。また「セントラルハウス」内にはテイスティングラウンジがあり、ここでは「白州」ブランドをはじめ希少なウイスキーのテイスティングや、「サントリーシングルモルトウイスキー白州」と合わせたフードペアリングなどを楽しめます。

↑テイスティングラウンジは券売機で注文し、セルフサービスで気軽に楽しめます

 

↑ラウンジ内のカウンター。バックには緑生い茂る白州の森が広がります

 

「ウイスキー博物館」も学べる要素が満載。白州の歴史を映像や展示で知れるほか、日本初の本格ウイスキー「サントリーウイスキー(白札)」や、デビュー当時の「角瓶」「サントリーオールド」といった銘酒のボトルがズラリ。また、かつて稼働していたポットスチルやウイスキー樽なども展示されています。

↑「ウイスキー博物館」はサントリーの創業80周年を記念し、1979年に建設。シンボリックな屋根の形は、かつて山崎蒸溜所にあった麦芽乾燥塔「キルン」を模したものです

 

↑「白州」ブランドは、1994年に誕生。2024年で30周年を迎えます

 

バースプレイスで嗜む白州は森の妖精がくれた宝物

最後にあらためて、白州はどんな味わいなのかをテイスティングレビューとともにお伝えしましょう。まずは独自のレシピが存在する「白州 森香るハイボール」から。

↑「白州 森香るハイボール」

 

こちらは、仕上げに軽く叩いたミントの葉を入れることがポイントです。ほのかな甘みや酸味が浮かび上がり、やさしい燻香が調和します。まさにこの森を彩る若葉のような、心地いいフレッシュ感がたまりません。

 

そしてもう一杯は、今回の取材会で特別に提供された25年もの。これは香りからして堂々とした重厚感があり、赤身がかった琥珀色も円熟の極み! 干し柿やドライフルーツを思わせる果実味に、ダークチョコやバタースコッチのような深い甘みも印象的です。

↑「シングルモルトウイスキー白州25年」

 

濃密な甘さをフルーティーなニュアンスがエレガントに昇華。余韻にはスモーキーフレーバーをまとった果実味が長く続き、ひときわ贅沢な気分に。

 

世界的なシングルモルトブーム、ジャパニーズウイスキーブームによって「サントリーシングルモルトウイスキー白州」も人気ですが、それが、お膝元である白州蒸溜所の見学を予約すれば飲むことができます。アクセスはJR「小淵沢駅」から無料のシャトルバスも運行されているので、まずは公式サイトをチェックしてみてください。

↑博物館のすぐ近くには、2024年夏にオープンを控えるレストラン「フォレストテラス」が建設中

 

【PLACE DATA】

サントリー白州蒸溜所

住所:山梨県北杜市白州町鳥原2913-1
営業時間:9:30~16:30(最終入場16:00)
休館日:年末年始、工場
休業日(臨時休業あり)
アクセス:JR「小淵沢駅」から無料シャトルバスで約20分(運行していない時期、日程もあります)

https://www.suntory.co.jp/factory/hakushu/

撮影協力/松村広行

非公開部まで潜入! 操業50周年の「富士御殿場蒸溜所」でキリンのウイスキーづくりの真髄を見た

2023年4月に「キリンはウイスキーも凄いって知ってる?」という記事で、操業50周年を迎える富士御殿場蒸溜所について触れましたが、先日、現地取材を敢行。同蒸溜所では要予約の有料見学ツアーも開催されていますが、この記事ではそれ以上の内部情報や、ウイスキーづくりにまつわる裏話などもお届けします。

 

【関連記事】
キリンはウイスキーも凄いって知ってる? 50周年でいよいよ始まる攻めすぎ戦略が明らかに!

 

↑最寄りのJR御殿場駅。今年6月10日には、富士御殿場蒸溜所が寄贈したポットスチル(単式蒸留器)が設置されました。ここから無料シャトルバスも運行されているので、ぜひご利用を

 

富士御殿場蒸溜所の独自性とは? 見学ツアーで体験できること

富士御殿場蒸溜所は操業50周年の長い歴史を持っていますが、注目すべきポイントはその設備にあります。モルト原酒(大麦麦芽が原料)をつくるポットスチルはもちろん、グレーン原酒(原料は大麦麦芽に限らない)をつくる蒸留器も備えています。しかも、富士御殿場蒸溜所にはそのグレーン用蒸留器が3種も設置されており、これはきわめて珍しいことです(基本的には、あっても1種)。

↑一般的な連続式蒸留器(の一部)。「マルチカラム」と呼ばれるタイプで、軽やかな味わいのグレーン原酒を生み出します。他の2種は後述

 

ポットスチルとグレーン用蒸留器の併設だけでも珍しいのですが、さらに、仕込みから熟成、瓶詰めまでも一貫して実施するというのは世界的にも稀。こうした設備で、霊峰・富士の伏流水によるマザーウォーターからつくりだされるのが「富士」ブランドをはじめとする同社のウイスキーで、この味わいが国際的な高評価を受けているのです。

↑エントランスからシアタ―までの通路には様々なコンペで授賞したウイスキーが。例えば「キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士」は、2022年11月にNYの洋酒コンペ(NYISC)でJapan Whiskey of the Yearを受賞しています

 

見学ツアーで体験できること

通常の見学ツアーでは、シアターの動画で概要を学び、ポットスチルを直接見学(グレーン用蒸留器は映像で見られます)。移動途中では、ウイスキーの原料となる麦芽やピート(後述)なども見られます。その後、多彩な原酒をつくり出すため2021年に新採用した木桶の発酵槽を見学し、パッケージングを行うラインへ。

↑ピート(泥炭)。こちらを焚いて麦芽を乾燥させることでスモーキーフレーバーが生まれますが、焚いた麦芽を使うかどうかは国や蒸溜所の考え方、銘柄などによって様々です

 

↑木桶の発酵槽は自生の乳酸菌が働くため、ステンレスタンクを使用して酵母のみで発酵させる製法とは異なった味わいになるのが特徴

 

最後は「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」と「キリンウイスキー 陸」をテイスティング。限定ウイスキーや、オリジナルグッズを多数そろえるディスティラリーショップを経て、見学ツアーは終了という流れです。五感をフルに使って体験できる、充実した内容だといえるでしょう。

↑ディスティラリーショップ。こちらはツアーに参加していなくても自由に出入りでき、テイスティングコーナーでは蒸溜所限定販売ウイスキーなどを有料で試飲できます

 

普段は非公開の蒸溜所内部へ!

ここからは改めて、今回取材した内容について紹介していきましょう。まずはその雄大なロケーションから。特別に蒸留塔の5階展望台に案内いただき、ここが確かに富士山麓にある蒸溜所であることを確認。この日は猛暑でしたが、年平均気温は13℃と穏やかであることに加え、年間通して幾度となく霧が発生する、ウイスキー製造には最適な環境となっています。

↑夏は雲が多く、富士山の全景を観ることはなかなか難しいとか。ちなみに、蒸溜所が位置するのは標高600m強

 

一般見学者が入れる事務棟の屋上は634mで、東京スカイツリーと同じ高さです

 

モルト原酒は、前述したようにポットスチルによって生み出されます。ポットスチルとは一般的に初留用と再留用の2基を1セットで導入するもので、富士御殿場蒸溜所では計3セット6基が稼働。それぞれ大きさや形状が異なり、大きいタイプの1セットは操業開始時から稼働していたものを、老朽更新のため2023年に交換したものです。それもあって、稼働してまだ1か月程度のピカピカなポットスチルも目にすることができました。

↑右が新顔のポットスチルで、左はそれに先立ちに導入した小型のポットスチル。どちらも銅製かつ、メイドインジャパンです

 

次はいよいよ、“うまみ3兄弟”と呼称するほど多彩なグレーン原酒をつくりわけられる、世にも珍しい蒸留器が3基設置されているグレーン蒸留室へ。そのうちのひとつマルチカラム蒸留器(前述)は、蒸留室の2階から5階までを縦貫して設置されており、巨大すぎて近くからでは根元の一部しか視界に入りません。

↑グレーン蒸留室2階。マルチカラム蒸留器の根本の部分などが見えます

 

そして蒸留室1階にあるのが、特に珍しい2基。ミディアムタイプのグレーン原酒を生み出す「ケトル蒸留器」と、ヘビータイプのグレーン原酒を生み出す「ダブラー蒸留器」です。前者はカナディアンウイスキーの製造で、後者は主にアメリカのバーボン製造で使われる蒸留器です。

↑グレーン蒸留室1階。右がケトル蒸留器で、左がダブラー蒸留器

 

↑どちらにも「検定年月日 48.11.5」と書かれたパネルが。この48は昭和48年=1973年のことであり、つまり50年前ということです

 

樽熟成に関する設備もじっくり取材

ウイスキーに欠かせない樽熟成。この日はその一連の設備も見せてもらいました。まずは樽詰めの工程から。ここでは原酒の入った樽に栓をし、離れにある熟成庫に運ぶためトラックに乗せていきます。

↑樽の材質はほとんどがアメリカンホワイトオーク。満タンになった樽は1丁約250kgにもなるので、運ぶ際には慎重さが求められます

 

↑最終的な閉栓(樽の開口部に栓を木槌で打ち込んで密閉する作業)は高度な技術がいるため、職人が手作業で行っています

 

熟成を終えた樽は老朽化が激しくない限り再利用されますが、メンテナンスが欠かせません。そこで重要なのが、組み直しなどのリペア。ここでも専門の職人が目を光らせ、手作業で樽を再生させていました。

↑釘などを一切使わず、木とタガのみで密閉させる樽は熟練の技術がないと組めません

 

樽詰めとリペアスペースの先にあったのは、熟成された原酒を樽から出すダンプトローフというセクション。ここで栓を開けて原酒をダンプトローフ(原酒回収槽)に受け、タンクへ。空になった樽は点検と、必要に応じてリペアを行い再び新たな原酒を迎え入れるのです。

↑ダンプトローフにて。右下の方は、富士御殿場蒸溜所 洋酒生産部の長藤健太部長代理。

 

↑上の写真で長藤さんの腕の下に見えていた黒く細かな木片は、樽の内側から剥がれ落ちた炭(樽の内側を焦がすことで、バニラなどの甘香ばしいフレーバーが生まれる)です

 

さて、蒸溜所の取材レポートと聞いてイメージするものといえば、ポットスチルと熟成庫でしょう。もちろん熟成庫も見させてもらいました。しかも、新旧大小3か所も。まずは70年代に建てたという、同蒸溜所で最古のNo.4熟成庫へ。ここでは数万の樽を保管し、熟成を進めているとのこと。

↑No.4熟成庫。さすが外観からも年季が入っていることがうかがえます

 

↑No.4熟成庫は圧巻のスケール! なお、ここに眠る最古の樽は70年代後半モノとのこと

 

次に見せてもらったのは、2021年に建て直して新しく生まれ変わった、自動ラック式のNo.3熟成庫(No.1と2は現存せず)。ここでも数万の樽を熟成させることができます。

↑No.3熟成庫はより巨大。コンピューターを駆使して管理されているのも特徴です

 

もちろん、古典的なダンネージ式(木のレールを介して樽を段積みする方式)の熟成庫もあります。それが最後に入ったNo.7熟成庫。ダンネージ式は高層ラック式ほど多くの樽を保管することはできませんが、形や大きさの異なる樽を保管することができるため、試験的にいろいろな樽を扱えるなどのメリットがあります。

↑こちらがダンネージ式。No.7熟成庫は比較的新しく、貯蔵スペースにもまだ余裕があるとのことでした

 

↑熟成庫の奥には、かつて使っていた試験蒸留用の小さなポットスチルも

 

ここではなんと、運よく原酒の試飲体験も。味わったのは、2013年に樽詰めしたグレーン。加水していない、アルコール度数53%の原酒でしたがカドは一切なく、味わいはスムースで伸びやか。

↑普通は出回らない、ここだけの希少なシングルグレーン。ありがたや~

 

スコッチウイスキーの世界では、グレーン原酒はモルトの個性をやわらげ飲みやすいブレンデッドウイスキーをつくる引き立て役に思われがち(スコッチにおいては、モルトを“ラウドスピリッツ”、グレーンを“サイレントスピリッツ”と表現することも)ですが、この味はもはや主役の存在感。富士御殿場蒸溜所の底力に圧倒されました。

↑異なるライトタイプの樽出しグレーンも嗜む程度にテイスティング。こちらはさらに強いアルコール度数63%でしたが、甘い余韻が長くて心地よく、実にラウドな味わいでした

 

なお、樽熟成に関しては「マチュレーションピーク」という哲学で行っていることも、富士御殿場蒸溜所ならではです。これは、単に“熟成年数が長いこと”を重視するのではなく、“原酒本来の持ち味が最もよく現れるピークのタイミング”を重視してブレンドする考え方。あらかじめ何年後にピークをもってくるのかを計算して仕込みを行い、官能評価も定期的に行っています。

 

50年前の原酒を使った限定ウイスキーの味

蒸溜所内の各現場を取材した最後は、再び事務棟へ。待っていたのは、実際に商品化されている様々なウイスキーのテイスティング体験でした。

↑計5種のウイスキーを飲み比べ

 

まずは、デイリーウイスキーに最適な「キリンウイスキー 陸」。ほのかな甘い香りと澄んだ口当たりが特徴であるほか、同価格帯のグレードでは珍しいノンチルフィルタード製法(冷却ろ過をしないので原酒本来の味が凝縮)を採用し、アルコール度数は50%という個性派です。

↑ストレートやロックはもちろん、ハイボールにも。「キリンウイスキー 陸」1に対し炭酸水5がオススメです

 

次は「キリン シングルグレーンジャパニーズウイスキー 富士」。前述したグレーン原酒のみをヴァッティング(同種類のウイスキー原酒を混ぜ合わせること)した一本で、優しくほんのりとした甘さ、伽羅(きゃら)などの香木を思わせるアロマ、ウッディでスパイシーな余韻が特徴です。

↑「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」は、ラストに伸びるマスカットのような果実味が印象的でした

 

続いて、「キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士」、「キリン シングルブレンデッドジャパニーズウイスキー 富士」と試飲。前者はりんごや洋なしのような果実味とモルティな香ばしさ、後者はアプリコットやはちみつを思わせる甘やかなフレーバーとバニラのニュアンスを強く感じました。

↑「キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士」は、今年5月に発売となった、待望の通年シングルモルト。とろりとした口当たりや、甘く複雑で熟成感あふれる香味が魅力です

 

最後は、数量限定で瞬く間に完売した「キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」を特別にテイスティング。こちらは操業開始の1973年ものをはじめ、1970年代から2010年代まで各時代の原酒をヴァッティングした希少酒です。味わいは、熟したパイナップル、キャラメル、チョコレートといった多彩でコク深い果実味や甘みが、ほのかなピート香と調和した複雑かつ優美なハーモニー。

↑「キリン シングルモルトジャパニーズウイスキー 富士 50th Anniversary Edition」は5月23日にディスティラリーショップとキリン公式ECサイト(DRINX)で発売されましたがすぐに完売(DRINXでは抽選販売)。蒸溜所ではディスティラリーショップで同商品を購入しようと、当日早朝から300人ほど行列ができたとか

 

キリンディスティラリー社長が語る、これまでとこれから

テイスティング後は、キリンディスティラリーの押田明成社長も登壇。50周年を迎えた思いや、展望についても語ってくれました。

↑押田明成代表取締役社長。富士御殿場蒸溜所の工場長も兼任しています

 

「日本のウイスキー市場は1983年のピークから徐々に冬の時代を迎え、1990年代から2000年代後期のハイボールブームになるまでほぼ右肩下がりが続きました。私の入社はその最中の1994年。ウイスキーをつくりたくて猛勉強して入社したのですが、当初はずっと清涼飲料や酎ハイをメインにつくっていました。『もう、胸を張ってウイスキーをつくることはないんだな』とも思いましたね。

 

ところが、いまでは風向きが変わり、日本のウイスキーは国内外で高い人気を集めるほど復活を遂げています。私もウイスキーづくりにまい進できるようになりました。私たちの強みは、仕込みから熟成、ボトリングまで“オール富士”であること。世界に誇る富士の大自然と、マスターブレンダーの田中城太をはじめとする一流のクラフトマンが揃っています。ぜひ世界中の方々に知っていただくとともに、クリーンでエステリーな味を堪能いただけたらと思います」(押田社長)

↑いずれもエステリーな味わいをもつ、富士御殿場蒸溜所でつくられる商品の数々。エステリーとは、果実や花を連想させる、華やかで甘い香味のこと

 

富士御殿場蒸溜所が目指すウイスキーは「クリーン&エステリー」と表現されます。それは、世界のウイスキーづくりの技術と日本人の感性をかけ合わせ、スコッチでもバーボンでもない、日本人の嗜好や食文化に合う味わい。ここに来れば、よりその魅力を五感で体験できるでしょう。

 

【施設概要】

キリンディスティラリー 富士御殿場蒸溜所

住所:静岡県御殿場市柴怒田970
休館日:月曜(祝日の場合は営業、次の平日が休館)、設備点検日、年末年始
アクセス:JR御殿場駅から無料シャトルバスで約20分

サントリー山崎蒸溜所リニューアルオープン!2種の新見学ツアーも展開

11月1日(水)から、リニューアルされたサントリー山崎蒸溜所が一般公開されます。

山崎蒸溜所は、1923年に日本初の本格的なモルトウイスキー蒸溜所として建設に着手しました。京都の南西、天王山の麓、四季の移ろい豊かな自然に抱かれ、万葉の歌にも詠まれるほどの名水の里に立地し、桂川・宇治川・木津川が合流する地形によるウイスキーの熟成に適した湿潤な環境で、さまざまな発酵槽・蒸溜釜・熟成樽を使い分けながら、日本のウイスキーならではの多彩な原酒を生み出し続けています。

 

今回のリニューアルでは、山崎蒸溜所ならではの魅力をよりいっそう体感できる新たな施設展示や見学ツアーを展開します。

※山崎蒸溜所の一角にある品質研究・技術開発用の小型蒸溜施設

 

施設のリニューアルについて

■エントランス

100周年を迎える新たな山崎蒸溜所の装いとして、エントランス部分をはじめとした敷地内に自然との調和を表現した“杜”を形成するため、周辺エリアの島本町や大山崎町の山林地に生育する草木などを植栽し緑地化。蒸溜釜の銅素材を再利用した門をくぐり抜け、山崎の“杜”ならではのどこか神秘性も感じられる空気感を味わいながら、見学ツアーや場内見学の新たな受付となる山崎ウイスキー館へのアプローチを楽しめます。

 

■山崎ウイスキー館

《館内展示》

山崎蒸溜所の敷地内に操業当時より残る建造物である山崎ウイスキー館。その歴史ある建物ならではの内観として、創業者・鳥井信治郎から続くサントリーウイスキーのものづくりの継承と革新の訴求をより強化し、山崎蒸溜所での多彩な原酒のつくり分けと、長期熟成に耐えうる原酒のつくり込みについての展示を充実させました。

 

《テイスティングラウンジ》

山崎蒸溜所でつくられた多彩な原酒ボトルに囲まれる空間で、サントリーシングルモルトウイスキー「山崎」ブランドをはじめとしたサントリーウイスキーの各ブランドや、この場所でしか味わえない原酒を堪能できる特別なテイスティングラウンジをリニューアルオープン。山崎蒸溜所で稼働していたポットスチルを再利用したバーカウンター、原酒ボトルに向き合うスタンドテーブル、窓の外に広がる“杜”を眺めるローチェアなどを設置し、ウイスキーに慣れ親しんだ方から初めて飲む方までより多くのお客様に、この山崎蒸溜所でしかできない日本のウイスキーを嗜む贅沢な空間を提供します。

 

山崎蒸溜所ツアーの刷新について

■山崎蒸溜所 ものづくりツアー

所要時間:80分
参加費:3000円(税込)

<主な内容>
「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」が生まれるものづくり現場を見て、その場所でしか感じられない香りや温度を五感で体感。テイスティングでは「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」や希少な「モルトウイスキー原酒」、「山崎ハイボール」が楽しめる。ツアー後には、「山崎オリジナルテイスティンググラス」を持ち帰ることも。

 

■山崎蒸溜所 ものづくりツアー プレステージ

・所要時間:120分
・参加費:1万円(税込)

<主な内容>

プレステージツアーでしか立ち寄れない製造エリアや実際のつくり手の作業の様子の見学などを通して、山崎蒸溜所ならではのものづくりへのこだわりをじっくりと案内。テイスティングでは「山崎12年」や希少な「モルトウイスキー原酒」などが楽しめる。

 

※20歳未満の方はご参加いただけません

ジャパニーズウイスキーの限定品や新商品を飲み逃すな! ヒット確定のウイスキーアニバーサリーについて解説

今年はジャパニーズウイスキーのメモリアルイヤー。サントリーが山崎に日本初のモルトウイスキー蒸溜所を建設着手してから100周年を迎え、白州蒸溜所も50周年。また、キリンの富士御殿場蒸溜所も操業50周年で、例年以上に業界が盛り上がっています。本記事では、フードアナリスト・中山秀明さんにジャパニーズウイスキーの人気やウイスキーアニバーサリーについて解説してもらいます。

※こちらは「GetNavi」 2023年9月号に掲載された記事を再編集したものです

 

中山秀明
フードのトレンドに詳しいライター。食関連のガジェットでは、2023年内に市販化が予定されている「エレキソルト」に注目している。

 

【ヒットアナリティクス】

ジャパニーズウイスキーは近年人気が過熱!

サントリーは、記念の特別ラベルでシングルモルトを発売。そして6月発売の白州のハイボール缶に続き、8月には山崎の缶が限定販売されますが、こちらも注目です。キリンも5月に記念のウイスキーを発売し、2万円以上の価格で抽選販売でしたが、すぐに受付終了する人気ぶりでした。

そもそもジャパニーズウイスキーは世界的に大人気。昨今のウイスキーブームは朝ドラ『マッサン』の影響も大きかったのですが、実はその主人公・竹鶴政孝氏が創業したニッカウヰスキーも来年90周年。この熱はしばらく冷めないでしょう。

先進技術:1
顧客ニーズ:5
市場の将来性:5
独自性:4
コスパ:5

 

 

サントリー
シングルモルトウイスキー 山崎
サントリーウイスキー100周年記念蒸溜所ラベル
4950円

山崎の伝統であるミズナラ樽貯蔵モルトに、イチゴのような香りのワイン樽貯蔵モルトなど多彩な原酒をブレンド。華やかな香りと、甘く滑らかな味わいが魅力だ。ラベルには天王山を含む山崎蒸溜所の全景が描かれている。

↑大阪府三島郡島本町にある山崎蒸溜所は秋にリニューアルオープン予定。サントリーは今年の事業方針として、蒸溜所の魅力訴求も掲げている

 

キリンビール
キリン シングルモルト
ジャパニーズウイスキー 富士
6600円

富士御殿場蒸溜所のモルト原酒のみをブレンドし、果実味あふれる芳醇な味わいと、クレームブリュレやハチミツのような甘い香りが特徴。口あたりはとろりと柔らかく、複雑な甘さと熟成感のある香味が心地良く続く。

↑1973年に操業を開始した富士御殿場蒸溜所。モルトウイスキー、グレーンウイスキーの製造技術や設備を備え、そこにキリン独自の蒸溜技術などを融合させている

 

【コレも注目!】
山崎モルト原酒のみを使った特別なハイボール缶も登場!

サントリー
サントリープレミアムハイボール〈山崎〉
660円 8月8日発売(数量限定)

サントリーウイスキー100周年を記念し、ハイボールに合う山崎モルト原酒のみをブレンドした特別なハイボール缶。厚みのある味わいと、ミズナラ樽貯蔵モルトがもたらす深い余韻を楽しめる。

ジャパニーズウイスキーがお好きでしょ? 誕生100周年に知っておきたい注目の6銘柄

寿司やラーメンなど、世界に誇れるジャパニーズフードはいくつもあるが、日本産ウイスキーも世界中で大人気。しかも、2023年はますますアツい! その理由とは……? いま注目すべき“ジャパニーズウイスキー”6点とともに解説する。

※この記事は「GetNavi」 2023年3.5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

解説してくれるのは……

フードアナリスト/中山秀明さん
ウイスキーの聖地・埼玉県秩父育ちの酒好きライター。「山崎蒸溜所は2017年にGetNavi webでレポートしているので、ぜひご一読を」

 

1.優美で上品な香り華やぐ国産シングルモルトの傑作

サントリー
シングルモルトウイスキー 山崎
4950円

「山崎」ブランドは1984年に誕生。優美な香りのミズナラ樽貯蔵モルトに、上品さが華やぐワイン樽貯蔵モルトなど、多彩な原酒がブレンドされたリッチな味が魅力だ。

 

《オススメペアリング》
ほんのり甘くコク深いチーズの味噌漬けが合う

甘やかでどっしりとした山崎には、コク深く濃厚な味付けの料理がマッチ。和のニュアンスをプラスした、チーズの味噌漬けなどは特に合う。パンやクラッカーにのせてもよし。

 

山崎蒸溜所から始まった日本のウイスキーが100周年

世界五大ウイスキーのひとつに数えられるジャパニーズウイスキーは近年、海外での評価も高く人気の的。作り手の志も高く、昨今は新生の蒸溜所も数多く誕生している。そのルーツといえるのがサントリー 山崎蒸溜所だ。

 

そもそも国内ウイスキー人気のきっかけのひとつが2014〜15年放送のドラマ「マッサン」であり、物語は日本におけるウイスキー誕生秘話。劇中には山崎蒸溜所のシーンも登場した。その着工は1923年であり、100周年を迎えるとともに、それはジャパニーズウイスキーの誕生100周年を意味するのだ。

 

山崎をはじめジャパニーズウイスキーは入手困難となっているが、モルトを得意とするバーに行けば高確率で飲める。また、山崎蒸溜所は予約することで見学も可能。こちらはオンラインでも「山崎蒸溜所ウイスキーライブ」を開催しており、なんと「シングルモルトウイスキー 山崎」の180mℓボトル付きで3300円とお得。無料の「山崎蒸溜所360°フリーツアー」も必見だ。

 

↑大阪府三島郡島本町にある、サントリー 山崎蒸溜所。かつて千 利休が茶室を設けた名水の地だ

 

【関連記事】
よく聞くサントリー「山崎蒸溜所」って実際はどんなところ?

 

2.希少な国産ピートを使ったスモーキーな味わいが魅力

THE AKKESHI
厚岸シングルモルト ジャパニーズウイスキー清明
1万9800円

潮気を含む霧やピート(泥炭)が取れる地の利を生かした、アイラモルトを思わせるスモーキーな味が特徴。本作は「二十四節気シリーズ」の第7弾で、甘やかさと柑橘感が魅力だ。

 

《オススメペアリング》
名産の牡蠣を使った燻製がドンピシャ!

厚岸の名産といえば牡蠣。その燻製が、スモーキーなウイスキーとドンピシャにマッチする。

 

3.3基のポットスチルによるメロウなウイスキーを創造

小正嘉之助蒸溜所
シングルモルト嘉之助
9900円

鹿児島県の西岸、吹上浜沿いにある。3基のポットスチル(蒸留器)を備えていることが大きな特徴で、コンセプト「Mellow Land, Mellow Whisky」の通り、メローな味わいが真骨頂だ。

 

《オススメペアリング》
脂の甘みが豊かな豚のジャーキーで一献

鹿児島は豚の飼育頭数が日本一。風味の甘やかな嘉之助は、ポークジャーキーと相性抜群だ。

 

4.世界唯一の鋳造製蒸留器が生み出すまろやかな味わい

若鶴酒造
三郎丸Ⅱ THE HIGH PRIESTESS
1万3750円

富山・高岡銅器の技術から生まれた、世界初の鋳造製ポットスチル「ZEMON」原酒を使用したウイスキー。銅と錫の2つの効果により、まろやかで洗練された酒質を実現している。

 

《オススメペアリング》
富山が誇る冬の至宝ほたるいかの干物を

蒸留所がある富山の冬の味覚といえば、ほたるいか。その旨みが凝縮した丸干しを合わせたい。

 

5.希少な蒸溜器を2基使い個性を生かし調和させる

静岡蒸溜所
シングルモルト静岡ユナイテッドS 初版
9845円

軽井沢蒸留所から受け継いだ間接加熱式と、世界唯一の薪直火式、2基の蒸溜機を駆使。その2つの原酒をブレンドしたのが本作で、個性が立ちながらもスムースでまろやかだ。

 

《オススメペアリング》
静岡を代表する銘菓安倍川もちを合わせて

静岡蒸溜所のすぐそばに安倍川の支流が流れる。香ばしく甘い、安倍川もちをぜひ合わせたい。

 

6.筑波山麓の田園で生まれた原酒を調合し華やかな味に

木内酒造
日の丸ウイスキー2023セレブレーション
5500円

常陸野ネストビールで有名な木内酒造が、筑波山東麓の石岡市八郷地区で蒸溜した原酒のみをボトリング。バーボン樽、シェリー樽、赤ワイン樽で熟成された、華やかな味わいだ。

 

《オススメペアリング》
鶏レバーペーストが合う! つくば鶏ならなお良し

同社が運営するバーで人気のフ—ドが、つくば鶏のレバームース。こちらでクイッといきたい。

 

※価格は2023年1月24日時点の希望小売価格。10%消費税込み。数量限定で売り切れになっている場合があります。