パリ五輪に代表選手8名を輩出!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」が用意する世界へ続くステージ

海外の強豪チームを招き、日本の子どもたちに世界を感じてもらうことを目的に2013年にスタートした「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」(以下、ワーチャレ)。12回目となる本大会が、8月20日から23日の4日間、千葉県のフクダ電子フィールド/フクダ電子スクエア、そしてJリーグチーム、ジェフユナイテッド千葉のホームスタジアムであるフクダ電子アリーナで行われました。今回は全国から237チームが予選に参加。本大会には過去最多となる48チームが出場し、頂点を目指しました。

 

パリ五輪サッカー代表に大会参加者8名が出場

3位決定戦、準決勝、決勝は本大会もジェフ千葉の本拠地、千葉市のフクダ電子アリーナで行われた。子どもたちにとっては、Jリーグチームの本拠地という憧れの地で、フィールドをフルに使って戦える貴重な機会だ。

 

過去の大会参加選手には、すでに欧州のトップチームで活躍する多くの選手がいます。日本のA代表でも活躍し、現在スペイン、ラ・リーガのレアル・ソシエダに所属する久保建英(たけふさ)選手は、第1回大会にスペインの強豪「FCバルセロナ」(以下バルサ)の一員として本大会でプレーし、注目を集めました。

 

また、2024年夏に開催されたパリ五輪には、日本代表で山本理仁選手、藤田譲瑠チマ選手、高井幸大選手が出場。スペイン代表では、アドリアン・ベルナベ選手、エリック・ガルシア選手、アルナウ・テナス選手、パウ・クバルシ選手が出場しました。さらに、なでしこジャパンでパリ五輪に参加した谷川萌々子選手を含めると8名がワーチャレを経て世界に羽ばたいています。

 

さらに、今大会では初の試みとして、女子サッカーを盛り上げるべく、U-13なでしこ選抜が編成されました。大会実行委員長の浜田満さんは、この取り組みについて「反響は大きかったです。男子チームと比べて女子はトップレベルのなかで試合をする機会がなかなかありませんので、彼女たちに機会を作ってあげたかった」と話します。

 

毎年、稀ではあるが女子選手の姿も。写真は2021年大会に出場した、YF NARATESOROの大田ありす選手。今回のU-13なでしこ選抜は、東京・愛知・大阪の3会場で「U-13 女子選抜セレクション」を開催。120名超のエントリーから選抜された18名により結成された。

 

チームと選手の個性が光る!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2021」をコロナ禍でも開催し続ける意味

 

大会過去最多の48チームが激突し、4チームが最高の舞台へ

大会名に“ワールドチャレンジ”とついていることからもわかる通り、第1回大会から参加のバルサをはじめ、今回も複数の海外チームが参加しました。ミャンマーの「MyanmarU-12」、インドネシアから「アシアナサッカースクール」、中国の「中国足球小将」「陝西師範大学付属小学校」、マレーシアから「セランゴールFC」の全6チームが参戦。海外チームを含めた48チームがAからLまで各4チームに分かれ、12グループによるグループリーグを行いました。準々決勝までがフクダ電子フィールド/フクダ電子スクエアで行われ、決戦の地フクダ電子アリーナには「東京ヴェルディジュニア」「バディーサッカークラブ」「柏レイソルU-12」「川崎フロンターレU-12」の関東勢が勝ち上がりました。

 

3位決定戦は2016年の第4回大会と同じ、東京ヴェルディジュニアと川崎フロンターレU-12が再び激突。

 

第1回大会から参戦の柏レイソルU-12とバディーサッカークラブは、ともに初の決勝戦進出となった。

 

これまでの11大会のうち(2020年と21年は新型コロナウイルス感染の影響で海外チームの参加なし)6度の優勝、3度3位のバルサは、ラウンド16で東京ヴェルディジュニアに0-2で敗れ、決勝ラウンド進出はなりませんでした。

 

また、今回はJリーグの下部組織3チームに加え、街クラブであるバディーサッカークラブがベスト4に進出。浜田さんは「もうJチームと街クラブの差はそれほどありません。特に小学生にとっては」と話すように、近年は街クラブの躍進が目立っています。

 

同大会でも第1回の国内参加チームは主にJリーグの下部組織でしたが、第2回大会から街クラブ枠を設け、2018年の第6回大会からは「多くの子どもたちに世界の強豪チームと対戦する機会を提供したい」と街クラブ選抜チームも結成。2019年からは「大和ハウスDREAMS」と「大和ハウスFUTUERS」の2チームで参戦し、今回も元日本代表の橋本英郎さん、内野智章さんが監督を務めました。

 

そして準決勝では、街クラブの雄、バディーサッカークラブがバルサを破った東京ヴェルディジュニアに1-1からPK戦の末3-2で勝利。川崎フロンターレU-12と柏レイソルU-12は柏レイソルが2-0で勝利しました。ここからは3位決定戦、決勝戦の激闘を見ていきましょう。

 

バルサを下したヴェルディが山本ツインズの活躍で8大会ぶり3位入賞

決勝戦に先がけて行われた東京ヴェルディジュニアと川崎フロンターレU-12の3位決定戦。強豪バルサを破ったヴェルディは、トップ2の山本崇翔選手、山本大翔選手の双子の兄弟が得点源です。対するフロンターレは、準々決勝で大柄な選手が多い中国の中国足球小将を0点に抑えたディフェンスがどこまで通じるかが見所でした。

 

開始9分、山本大翔選手のシュートからこぼれ球を山本崇翔選手が押し込んで先制ゴール。後半30分には山本大翔選手がシュートを決め、兄弟が揃い踏み。0-2からフロンターレも再三ゴールに迫りましたがゴールを奪えず、逆にゴール前での果敢なディフェンスがレッドカードとなり、PKを山本崇翔選手が落ち着いて決めタイムアップ。8年前にも3位決定戦で対戦し2-0でヴェルディが勝利しましたが、今回フロンターレはリベンジならず、またもあと一歩で入賞を逃しました。

 

バルサ戦でも得点を決めた東京ヴェルディのエース、山本崇翔選手が先制のゴールを決めた。

 

東京ヴェルディの得点源、もう一人の「山本」、大翔選手も後半にゴールネットを揺らし兄弟揃い踏み。

 

川崎フロンターレは身体を張った守りから再三チャンスを演出したが、ゴールを奪うことはできなかった。

 

猛暑のなか、昼間の暑い時間帯は避け、試合中にはJリーグ同様に飲水タイムが設けられた。

 

バルサ、決勝で強豪アーセナルを撃破!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2018」が残したもの

 

同じ関東の強豪Jチームと切磋琢磨してきた末の勝利

決勝戦は同じ関東で切磋琢磨し合うライバルの対戦。バディーサッカークラブはJFA 全日本U-12サッカー選手権で2010年と19年の2度の優勝を誇りますが、19年に決勝で当たったのが柏レイソルU-12で、このときは3-1でバディーが制し、2度目の頂点に輝いています。

 

対するレイソルはワーチャレ初年度から参戦し、2013年の第1回、14年の第2回はともに3位入賞。10年ぶりのベスト4で初の優勝を目指します。今大会22ゴールと得点力の高いレイソルと、準決勝でヴェルディにPKで勝利するなど、接戦をものにしてきたバディーとの好カードとなりました。

 

通路での声出しで気合を入れた選手たちが、引き締まった表情で決勝の舞台に姿を現した。

 

過去2度3位入賞の柏レイソルにとっては初の決勝進出。

 

前半3分、バディーは浅利蓮生選手がゴール前に詰め、矢ヶ部敢太郎選手のミドルシュートで先制。さらに6分と8分に浅利選手のコーナーキックから田中譲選手が連続ゴールで3-0。さらに22分に関智也選手がミドルシュートで4点目。少ないチャンスから確実にゴールを奪ったバディーが4点リードで前半を終えました。

 

浅利蓮生選手のプレーから、バディーサッカークラブは幾度も好機をつかんだ。

 

開始早々、先制のゴールを決めたバディーサッカークラブの矢ヶ部敢太郎選手(中央)。

 

2連続得点を挙げた田中譲選手は、ピンクのヘアバンドとスパイクがトレードマーク。

 

バディーは後半もレイソルゴールに度々迫りますが、キーパーの佐藤惇太選手が好セーブを連発。攻守が目まぐるしく切り替わるもお互いゴールが奪えず、スコアレスで後半が終了し、バディーが大会初優勝を飾りました。

 

後半、柏レイソルの怒涛の反撃も佐藤惇太選手が好セーブでゴールを守り切った。

 

25分ハーフのゲームを戦い抜き、お互いに健闘を称え合う選手たち。

 

バディーの意味は「仲間」。その名の通りのチームワークで栄冠を手にした。

 

バディーの梅澤勇人監督は大会後、今回の優勝について「まさかここで優勝できるとは思っていませんでした。5月のワーチャレの予選を逃してチーム的にも苦しかったんですが、(8月の)プレミアリーグU-11チャンピオンシップの優勝で(ワーチャレ出場権を)勝ち取れて、その勢いでここまで来られました」。Jクラブの育成はだいたい小学2、3年からに対し、バディーは幼児教育から、サッカーに限らずいろんなスポーツを体験して年長の最後にセレクションがあるそうです。そうしたチームとしての継続的な取り組みが勝因となったのではないでしょうか。

 

「プロを目指す意識付けにいいのかな」と大会参加のメリットを語った梅澤勇人監督。

 

「神奈川にはフロンターレさんがいて、マリノスさんがいて、関東にはレイソルさん、ヴェルディさんもいて、本当に今まで切磋琢磨してきて、そのおかげで今があるのかなと感じます」。

 

そして、ワーチャレを通じて選手たちにどのようなことを吸収してほしいかを尋ねると、「海外からはバルサを筆頭に、アジアのチームも多く参加していて、みんなプロを目指してる。プロを意識したU-12のいろんな外国の選手たちとプレーすることにより、そこの意識付けとしていいのかなと思います」と大会参加のメリットを話してくれました。

 

五輪世代も躍動するワーチャレはこれからも続く

選手の健闘を称えるとともに、関係者やスタッフへの感謝を述べた浜田さん。

 

大会を終え、浜田さんは表彰式で決勝を戦った両チームに祝福を述べると、準優勝のレイソルにこう語りました。

 

「今回は入りがあまり良くなかった。これからのサッカー人生、小学校の残りの試合もあるし、中学校、高校と入りの良くない試合というのは、こういうことが起こる。なので、これを心に刻んでこれからのサッカー人生を強く歩んでもらえたらと思います」と、エールを贈りました。

 

3位のヴェルディに対しては「2013年、ワールドチャレンジが開幕した大会、バルサに0-5(準決勝)でヴェルディは負けているんです。それが今回2-0。守り切って勝ったわけではなく、がっぷり四つで戦い切った、それがすごく見ていて気持ち良かった」。

 

そして「今回、この4チームだけではなく、多くの日本全国のチームが非常に高いレベルで、そして海外から来たチームもレベルが高く、最後までどのチームが勝ってもおかしくない素晴らしい大会になりました。今回でワールドチャレンジは2013年から12回目ですけども、パリ五輪に合計8名の選手が出場する大会になりました。もちろん来年も、開催しようと思っています」と浜田さんは大会を締めくくりました。

 

今大会のMVPは、バディーの浅利選手が受賞しました。浜田さんに浅利選手の受賞ポイントを伺うと、「彼はスピードがあり、寄せが速い。彼を起点にボールを経由すると、状況が良くなる」と称賛。当の本人にも感想を聞きました。

 

Daiwa House MVP賞で自身の名前を告げられ仲間から讃えられる浅利蓮生選手。

 

緊張から解放された表彰式後には、喜びいっぱいの表情を見せた。

 

受賞については「いや、全然(取れると)思っていませんでした。いつも、彼(決勝2得点の田中譲選手)が取っていたので……」。スター揃いのチームで、自分にスポットが当たったことに、戸惑いながら喜びをかみしめていました。そして将来は「目標はプロサッカー選手になって世界で活躍すること。好きな選手は自分のプレースタイルとは違うのですが、三笘薫選手です」と慣れないインタビューにも健気に答えてくれました。

 

ワーチャレは、第1回大会から変わらず、大和ハウスと、賃貸住宅「D-ROOM」の管理運営を手がける大和リビングをはじめとするグループ会社の協賛で開催されている。

 

久保建英選手をはじめ、第1回大会に参加した当時12歳だった選手が、いまでは国を代表する選手に成長しています。これからも五輪で活躍する選手のなかには、ワーチャレの卒業生が続々と出てくることでしょう。初開催から13年、継続することで達成した大会は次のステージへ。参加する選手にとっては、ジュニアから次のステージに進む国内最高峰の大会として、ワーチャレがこれからも続くことを願ってやみません。

パリ五輪に代表選手8名を輩出!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」が用意する世界へ続くステージ

海外の強豪チームを招き、日本の子どもたちに世界を感じてもらうことを目的に2013年にスタートした「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」(以下、ワーチャレ)。12回目となる本大会が、8月20日から23日の4日間、千葉県のフクダ電子フィールド/フクダ電子スクエア、そしてJリーグチーム、ジェフユナイテッド千葉のホームスタジアムであるフクダ電子アリーナで行われました。今回は全国から237チームが予選に参加。本大会には過去最多となる48チームが出場し、頂点を目指しました。

 

パリ五輪サッカー代表に大会参加者8名が出場

3位決定戦、準決勝、決勝は本大会もジェフ千葉の本拠地、千葉市のフクダ電子アリーナで行われた。子どもたちにとっては、Jリーグチームの本拠地という憧れの地で、フィールドをフルに使って戦える貴重な機会だ。

 

過去の大会参加選手には、すでに欧州のトップチームで活躍する多くの選手がいます。日本のA代表でも活躍し、現在スペイン、ラ・リーガのレアル・ソシエダに所属する久保建英(たけふさ)選手は、第1回大会にスペインの強豪「FCバルセロナ」(以下バルサ)の一員として本大会でプレーし、注目を集めました。

 

また、2024年夏に開催されたパリ五輪には、日本代表で山本理仁選手、藤田譲瑠チマ選手、高井幸大選手が出場。スペイン代表では、アドリアン・ベルナベ選手、エリック・ガルシア選手、アルナウ・テナス選手、パウ・クバルシ選手が出場しました。さらに、なでしこジャパンでパリ五輪に参加した谷川萌々子選手を含めると8名がワーチャレを経て世界に羽ばたいています。

 

さらに、今大会では初の試みとして、女子サッカーを盛り上げるべく、U-13なでしこ選抜が編成されました。大会実行委員長の浜田満さんは、この取り組みについて「反響は大きかったです。男子チームと比べて女子はトップレベルのなかで試合をする機会がなかなかありませんので、彼女たちに機会を作ってあげたかった」と話します。

 

毎年、稀ではあるが女子選手の姿も。写真は2021年大会に出場した、YF NARATESOROの大田ありす選手。今回のU-13なでしこ選抜は、東京・愛知・大阪の3会場で「U-13 女子選抜セレクション」を開催。120名超のエントリーから選抜された18名により結成された。

 

チームと選手の個性が光る!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2021」をコロナ禍でも開催し続ける意味

 

大会過去最多の48チームが激突し、4チームが最高の舞台へ

大会名に“ワールドチャレンジ”とついていることからもわかる通り、第1回大会から参加のバルサをはじめ、今回も複数の海外チームが参加しました。ミャンマーの「MyanmarU-12」、インドネシアから「アシアナサッカースクール」、中国の「中国足球小将」「陝西師範大学付属小学校」、マレーシアから「セランゴールFC」の全6チームが参戦。海外チームを含めた48チームがAからLまで各4チームに分かれ、12グループによるグループリーグを行いました。準々決勝までがフクダ電子フィールド/フクダ電子スクエアで行われ、決戦の地フクダ電子アリーナには「東京ヴェルディジュニア」「バディーサッカークラブ」「柏レイソルU-12」「川崎フロンターレU-12」の関東勢が勝ち上がりました。

 

3位決定戦は2016年の第4回大会と同じ、東京ヴェルディジュニアと川崎フロンターレU-12が再び激突。

 

第1回大会から参戦の柏レイソルU-12とバディーサッカークラブは、ともに初の決勝戦進出となった。

 

これまでの11大会のうち(2020年と21年は新型コロナウイルス感染の影響で海外チームの参加なし)6度の優勝、3度3位のバルサは、ラウンド16で東京ヴェルディジュニアに0-2で敗れ、決勝ラウンド進出はなりませんでした。

 

また、今回はJリーグの下部組織3チームに加え、街クラブであるバディーサッカークラブがベスト4に進出。浜田さんは「もうJチームと街クラブの差はそれほどありません。特に小学生にとっては」と話すように、近年は街クラブの躍進が目立っています。

 

同大会でも第1回の国内参加チームは主にJリーグの下部組織でしたが、第2回大会から街クラブ枠を設け、2018年の第6回大会からは「多くの子どもたちに世界の強豪チームと対戦する機会を提供したい」と街クラブ選抜チームも結成。2019年からは「大和ハウスDREAMS」と「大和ハウスFUTUERS」の2チームで参戦し、今回も元日本代表の橋本英郎さん、内野智章さんが監督を務めました。

 

そして準決勝では、街クラブの雄、バディーサッカークラブがバルサを破った東京ヴェルディジュニアに1-1からPK戦の末3-2で勝利。川崎フロンターレU-12と柏レイソルU-12は柏レイソルが2-0で勝利しました。ここからは3位決定戦、決勝戦の激闘を見ていきましょう。

 

バルサを下したヴェルディが山本ツインズの活躍で8大会ぶり3位入賞

決勝戦に先がけて行われた東京ヴェルディジュニアと川崎フロンターレU-12の3位決定戦。強豪バルサを破ったヴェルディは、トップ2の山本崇翔選手、山本大翔選手の双子の兄弟が得点源です。対するフロンターレは、準々決勝で大柄な選手が多い中国の中国足球小将を0点に抑えたディフェンスがどこまで通じるかが見所でした。

 

開始9分、山本大翔選手のシュートからこぼれ球を山本崇翔選手が押し込んで先制ゴール。後半30分には山本大翔選手がシュートを決め、兄弟が揃い踏み。0-2からフロンターレも再三ゴールに迫りましたがゴールを奪えず、逆にゴール前での果敢なディフェンスがレッドカードとなり、PKを山本崇翔選手が落ち着いて決めタイムアップ。8年前にも3位決定戦で対戦し2-0でヴェルディが勝利しましたが、今回フロンターレはリベンジならず、またもあと一歩で入賞を逃しました。

 

バルサ戦でも得点を決めた東京ヴェルディのエース、山本崇翔選手が先制のゴールを決めた。

 

東京ヴェルディの得点源、もう一人の「山本」、大翔選手も後半にゴールネットを揺らし兄弟揃い踏み。

 

川崎フロンターレは身体を張った守りから再三チャンスを演出したが、ゴールを奪うことはできなかった。

 

猛暑のなか、昼間の暑い時間帯は避け、試合中にはJリーグ同様に飲水タイムが設けられた。

 

バルサ、決勝で強豪アーセナルを撃破!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2018」が残したもの

 

 

同じ関東の強豪Jチームと切磋琢磨してきた末の勝利

決勝戦は同じ関東で切磋琢磨し合うライバルの対戦。バディーサッカークラブはJFA 全日本U-12サッカー選手権で2010年と19年の2度の優勝を誇りますが、19年に決勝で当たったのが柏レイソルU-12で、このときは3-1でバディーが制し、2度目の頂点に輝いています。

 

対するレイソルはワーチャレ初年度から参戦し、2013年の第1回、14年の第2回はともに3位入賞。10年ぶりのベスト4で初の優勝を目指します。今大会22ゴールと得点力の高いレイソルと、準決勝でヴェルディにPKで勝利するなど、接戦をものにしてきたバディーとの好カードとなりました。

 

通路での声出しで気合を入れた選手たちが、引き締まった表情で決勝の舞台に姿を現した。

 

過去2度3位入賞の柏レイソルにとっては初の決勝進出。

 

前半3分、バディーは浅利蓮生選手がゴール前に詰め、矢ヶ部敢太郎選手のミドルシュートで先制。さらに6分と8分に浅利選手のコーナーキックから田中譲選手が連続ゴールで3-0。さらに22分に関智也選手がミドルシュートで4点目。少ないチャンスから確実にゴールを奪ったバディーが4点リードで前半を終えました。

 

浅利蓮生選手のプレーから、バディーサッカークラブは幾度も好機をつかんだ。

 

開始早々、先制のゴールを決めたバディーサッカークラブの矢ヶ部敢太郎選手(中央)。

 

2連続得点を挙げた田中譲選手は、ピンクのヘアバンドとスパイクがトレードマーク。

 

バディーは後半もレイソルゴールに度々迫りますが、キーパーの佐藤惇太選手が好セーブを連発。攻守が目まぐるしく切り替わるもお互いゴールが奪えず、スコアレスで後半が終了し、バディーが大会初優勝を飾りました。

 

後半、柏レイソルの怒涛の反撃も佐藤惇太選手が好セーブでゴールを守り切った。

 

25分ハーフのゲームを戦い抜き、お互いに健闘を称え合う選手たち。

 

バディーの意味は「仲間」。その名の通りのチームワークで栄冠を手にした。

 

バディーの梅澤勇人監督は大会後、今回の優勝について「まさかここで優勝できるとは思っていませんでした。5月のワーチャレの予選を逃してチーム的にも苦しかったんですが、(8月の)プレミアリーグU-11チャンピオンシップの優勝で(ワーチャレ出場権を)勝ち取れて、その勢いでここまで来られました」。Jクラブの育成はだいたい小学2、3年からに対し、バディーは幼児教育から、サッカーに限らずいろんなスポーツを体験して年長の最後にセレクションがあるそうです。そうしたチームとしての継続的な取り組みが勝因となったのではないでしょうか。

 

「プロを目指す意識付けにいいのかな」と大会参加のメリットを語った梅澤勇人監督。

 

「神奈川にはフロンターレさんがいて、マリノスさんがいて、関東にはレイソルさん、ヴェルディさんもいて、本当に今まで切磋琢磨してきて、そのおかげで今があるのかなと感じます」。

 

そして、ワーチャレを通じて選手たちにどのようなことを吸収してほしいかを尋ねると、「海外からはバルサを筆頭に、アジアのチームも多く参加していて、みんなプロを目指してる。プロを意識したU-12のいろんな外国の選手たちとプレーすることにより、そこの意識付けとしていいのかなと思います」と大会参加のメリットを話してくれました。

 

五輪世代も躍動するワーチャレはこれからも続く

選手の健闘を称えるとともに、関係者やスタッフへの感謝を述べた浜田さん。

 

大会を終え、浜田さんは表彰式で決勝を戦った両チームに祝福を述べると、準優勝のレイソルにこう語りました。

 

「今回は入りがあまり良くなかった。これからのサッカー人生、小学校の残りの試合もあるし、中学校、高校と入りの良くない試合というのは、こういうことが起こる。なので、これを心に刻んでこれからのサッカー人生を強く歩んでもらえたらと思います」と、エールを贈りました。

 

3位のヴェルディに対しては「2013年、ワールドチャレンジが開幕した大会、バルサに0-5(準決勝)でヴェルディは負けているんです。それが今回2-0。守り切って勝ったわけではなく、がっぷり四つで戦い切った、それがすごく見ていて気持ち良かった」。

 

そして「今回、この4チームだけではなく、多くの日本全国のチームが非常に高いレベルで、そして海外から来たチームもレベルが高く、最後までどのチームが勝ってもおかしくない素晴らしい大会になりました。今回でワールドチャレンジは2013年から12回目ですけども、パリ五輪に合計8名の選手が出場する大会になりました。もちろん来年も、開催しようと思っています」と浜田さんは大会を締めくくりました。

 

今大会のMVPは、バディーの浅利選手が受賞しました。浜田さんに浅利選手の受賞ポイントを伺うと、「彼はスピードがあり、寄せが速い。彼を起点にボールを経由すると、状況が良くなる」と称賛。当の本人にも感想を聞きました。

 

Daiwa House MVP賞で自身の名前を告げられ仲間から讃えられる浅利蓮生選手。

 

緊張から解放された表彰式後には、喜びいっぱいの表情を見せた。

 

受賞については「いや、全然(取れると)思っていませんでした。いつも、彼(決勝2得点の田中譲選手)が取っていたので……」。スター揃いのチームで、自分にスポットが当たったことに、戸惑いながら喜びをかみしめていました。そして将来は「目標はプロサッカー選手になって世界で活躍すること。好きな選手は自分のプレースタイルとは違うのですが、三笘薫選手です」と慣れないインタビューにも健気に答えてくれました。

 

ワーチャレは、第1回大会から変わらず、大和ハウスと、賃貸住宅「D-ROOM」の管理運営を手がける大和リビングをはじめとするグループ会社の協賛で開催されている。

 

久保建英選手をはじめ、第1回大会に参加した当時12歳だった選手が、いまでは国を代表する選手に成長しています。これからも五輪で活躍する選手のなかには、ワーチャレの卒業生が続々と出てくることでしょう。初開催から13年、継続することで達成した大会は次のステージへ。参加する選手にとっては、ジュニアから次のステージに進む国内最高峰の大会として、ワーチャレがこれからも続くことを願ってやみません。

久保建英選手も輩出!「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020」がコロナ禍でも実現した理由

「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ」といえば、目下、スペインリーグでの活躍も目覚ましく、世界のサッカーファンの注目を集める久保建英(たけふさ)選手もかつて出場経験のある大会。その2020年大会が12月27日から30日にかけて、福島県のJヴィレッジで開催されました。新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されるさなかの運営には、さまざまな困難が伴ったものの、終わってみれば、大会関係者や参加者の誰もが「開催してよかった」と感じた様子。その背景も含めて、大会最終日の模様をレポートします。

【関連記事】2017〜2019年大会の模様はこちら

 

“サッカーを止めない”ことこそが大会の責務

2013年に発足して以来2020年で8回目を迎えた今大会。他のスポーツイベントと同様に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、そのあり方は大きな転換を迫られました。

 

大会は2020年も例年同様8月に、大阪での開催を予定していましたが、5月の時点で断念。その後、12月末のJヴィレッジでの実施を目指すことになります。

 

ところが、この大会最大の特長である、スペインのFCバルセロナをはじめとする海外強豪ジュニアチームの招聘が、9月には諦めざるをえない状況に。大会名である「ワールドチャレンジ」が叶わなくなったわけですが、それでもなお“中止”としなかったのは、大会実行委員会に寄せられた「ぜひ開催してほしい」という数々の“声”が大きかったと、実行委員長の浜田満さんは振り返ります。

 

「9月末の時点で、もう海外チームを呼ぶのは無理だと判断して、国内大会に方針を変えました。もちろん、中止という選択肢も含めて検討したのですが、過去に出場したチームの選手やコーチたち、みんなが『参加したい』と言ってくれたんです。2013年から毎年続けてきたおかげで、“ワーチャレ”を楽しみにしている選手がたくさんいた。そうした“声”に後押しされました」

 

同世代の海外の強豪チームと対戦することはできなくなりましたが、それでも選手たちは、“試合”を欲していたのだと言います。コロナ禍の中、数多くの大会、試合が中止となり、選手たちは対戦の場、痺れるような本番の経験を求めていました。また、ジュニア世代ではあまり行われなくなった、本格的な11人制のサッカーが経験できる貴重な大会だと語るコーチもいました。

 

浜田さんは、大会ホームページに「主催者からのメッセージ」として、以下の文章を寄せています。

 

「私たちはサッカーを止めないことこそが責務であり、将来の日本サッカーの発展に寄与できるものと信じ、“ワーチャレ”として苦渋の決断ではありましたが、国内大会としての開催を決意致しました」

2020年大会が開催されたのは、福島復興のシンボルとして整備されたナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」。5000人の観客を収容できるスタジアム、天然芝・人工芝それぞれのピッチを備えた屋外フィールドと全天候型の練習場、ほかにホテル、プールなどからなる

 

子どもたちはプレーする楽しさを全身で表していた

かくして12月27日、Jヴィレッジにおいて「U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020」大会が始まりました。出場32チームのうち、地元の「福島ユナイテッドFC U-12 」が直前で大会出場を辞退しましたが、全国各地から集った選手たちは、新型コロナ対応に細心の注意を払いながら開催地周辺に宿泊し、待望の大会に心を躍らせ、試合に臨みました。

 

大会は天候にも恵まれ、順調に規定の試合数を消化。グループリーグではセレクションによって集められた「街クラブ選抜」の2チームや、この大会のために結成されたサッカースクールの選抜チームが躍進するなど、世間の不安なムードをよそに、子供たちは試合ができる喜びを爆発させ、プレーする楽しさを全身で表していました。

 

観戦に集まった保護者やコーチは、異口同音に「何より子供たちが楽しそうで安心した」と語っていましたが、それは今回現地で取材をした記者自身が、その場に身を置いて真っ先に感じたことです。

 

たとえ海外のチームが来なくとも、大会開催の意義は大いにありました。全国レベルのチームが集う“ワーチャレ”は、サッカーに打ち込む子供たちにとって、貴重な試合が体験できる大会であり、最高の舞台です。「サッカーを止めないことが責務」と浜田さんは語りましたが、その答えが、子供たちの全力のプレーに見えた気がしました。

 

スクール選抜の2チームが大躍進!

大会4日目にして最終日となる12月30日、ベスト4へと駒を進めたのは、「鹿島アントラーズノルテジュニア」、「Wings U-12 」(以下ウイングスU-12 )、「ソルティーロ・セレクト」、そして「エコノメソッド選抜」の4チーム。このうち、後の2チームは前述のサッカースクールの選抜チームです。

 

残念ながら、この最終日だけは暗雲が垂れこめ、昼前には寒空に雨が降り出すという悪コンディションでしたが、前日までのJヴィレッジのグラウンドからスタジアムに舞台を移し、メインスタンドには観衆も集まりました。ファンファーレを伴った本格的な入場セレモニーによって勢ぞろいした選手たちは、少し寒そうにしながらも、誇らしげです。

 

準決勝の結果、3位決定戦がソルティーロ・セレクトvs.エコノメソッド選抜、決勝は鹿島アントラーズノルテジュニアvs.ウイングスU-12 の対戦に。午後1時30分、雨に加えて風も強くなる中、まず3位決定戦の試合が始まりました。

 

この試合で存分に持ち味を発揮したのが、ソルティーロ・セレクトの選手たちでした。「ソルティーロ」は、あの元日本代表・本田圭佑氏がプロデュースするサッカースクールで、全国各地のスクールから選抜された選手によって構成されたチームです。

 

しっかりパスを回してゴールにつなげようというエコノメソッド選抜に対し、前線から強くプレッシャーをかけることでボールを奪取。序盤から立て続けにゴールを奪い、試合の主導権を握りました。

 

一方、スペイン人の監督が率いるエコノメソッド選抜は、スペインで独自に開発され、世界各国で展開されているサッカーメソッドを用いたスクールの選抜チームです。前半こそパスの出どころを狙われて苦しみましたが、それでも粘り強くパスを回して展開し、後半は相手ゴールに迫りました。

 

風雨が強まる中、両チームの選手たちは元気よくピッチを走り回り、プレーを楽しみました。いつもは一緒にプレーさえしていない、いわば急ごしらえの両チームが、並みいる強豪クラブチームを押しのけての3位・4位となったのですから、大躍進であることは間違いありません。両チームの選手にとって、この4日間の経験は本当に得難いものになったことでしょう。

4位を獲得した「エコノメソッド選抜」。最終日こそゴールを奪えなかったものの、ここまでの戦績は立派。選手たちは貴重な経験を積むことができた

 

見事3位を獲得したソルティーロ・セレクト。各地のスクールから集合した選りすぐりの選手たちは、急造チームながらしっかりと結果を残した

 

鹿島アントラーズノルテジュニアが初優勝!

そして決勝は、14時50分キックオフで始まりました。鹿島アントラーズノルテジュニアは、その名のとおりJリーグクラブの下部組織。千葉県からやって来たウイングスU-12も、関東地方では強豪として知られ、決勝トーナメント準々決勝で、大阪の名門・ガンバ大阪ジュニアを下しての決勝進出です。

 

試合は前半、風上に立つアントラーズノルテジュニアがやや優勢に試合を進め、21分、コーナーキックから、斉藤健吾選手が見事なヘディングシュートを決めて先制します。そして後半開始早々には、またも斉藤選手がコーナーキックからの流れから右足で押し込み、アントラーズノルテジュニアが追加点を奪います。

 

しかしウイングスU-12 も、その直後、やはりコーナーキックから相手のオウンゴールを呼び込み、反撃開始。サイドからドリブルをしかけるなどして、なんとか相手の守備網を崩そうと試みます。

大会MVPに選出された鹿島アントラーズノルテジュニアの正木選手(15番)。実はMVPを狙っていたとのことで、その意欲が積極的なプレーを生んだ

 

ここに立ちはだかったのが、後に大会MVPにも選ばれたアントラーズの正木裕翔選手でした。前半から中盤を縦横無尽に走り回り、攻守両面で貢献していましたが、実はオウンゴールを決めてしまった張本人。ミスを取り返すべく猛然とゴールを狙いに行くと、後半10分、ドリブルから相手を1人かわした後、見事な左足でのシュートを決めました。

 

この正木選手をはじめ、アントラーズノルテジュニアの選手たちは出足が速く、競り合いになると相手を弾き飛ばすほどの強さがあり、まさにアントラーズ直系のDNAを感じさせます。ウイングスU-12もチャレンジを繰り返しますが、アントラーズノルテジュニアがこれをことごとく跳ね返して、スコア3-1で試合終了。アントラーズノルテジュニアが、ワーチャレ初優勝をものにしました。

準々決勝でガンバ大阪ジュニアを破るなど、今大会でたしかな実績を残したウイングスU-12 が2位。千葉・習志野地域の強豪が大会の歴史にその名を刻んだ

 

大会を通じて圧倒的な力を見せつけ、栄冠を掴んだ鹿島アントラーズノルテジュニア。日本チームの優勝は大会史上2チーム目だが、単独クラブチームとしては史上初

 

大会を“続ける”ことの意義を実感

最後はみぞれのような雨が降る寒空の下、表彰式が行われ、4日間に及ぶ大会は幕を下ろしました。そして、今大会の意義をあらためて考えた時、前述の浜田さんが語った次の言葉が思い出されます。

 

「普段の大会でも、子どもたちはみんな、悔しがったり喜んだりしていますが、今回はその度合いが強い気がします。これまで試合の機会が少なかったこともあるでしょうが、なによりそのように感情を爆発させる機会そのものがなかったんじゃないかと感じました」

「参加してくれた子どもたちが、心底楽しそうにサッカーをしている姿は、例年以上に、本当に開催してよかったと心から思いました」との大会実行委員長の浜田満さんの言葉には、実感がこもっていた

 

“ワーチャレ”は、サッカーに打ち込む子どもたちにとって、貴重な試合が体験できる大会です。たとえ海外のチームと試合ができなくとも、子供たちは全力でプレーし、閉じ込めていたストレスを無意識に解き放ちました。最終日は無得点に終わってしまったエコノメソッド選抜の選手たちも、最後は笑顔で「楽しかった!」と言いつつ会場を後にしました。

 

その後の感染拡大状況を考えると、2020年もワーチャレをなんとか無事に開催できたことは、奇跡的だったかもしれません。同時に、こうした大会を続けることの大変さと同時に、意義や尊さをあらためて痛感します。

 

願わくば、2021年大会は再び世界中の子供たちのサッカーと笑顔が見られるよう期待したいと思います。