スズキのクーペSUVから、トヨタの新型クラウンまで!プロがヒットを確信する4台

2025年に流行するモノは何か、専門家が大断言する「GetNavi NEXTトレンド」。今回取り上げるのはクルマ部門。2025年ヒット確実の4台を紹介する。

スタイリッシュなデザインに4WDの走破性も好評!

スズキ
フロンクス
254万1000円〜282万7000円

 

グローバル展開するモデルが日本向け仕様になって上陸!

SUVらしい力強さとクーペの流麗なフォルムを融合した「クーペスタイルSUV」。世界70か国で販売されているグローバルモデルだが、日本仕様には悪路や雪道の走行を想定した4WDも用意される。10月末には受注台数が1万台を突破した。

 

SPEC【2WD】●全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm ●車両重量:1070kg ●パワーユニット:1460cc直列4気筒DOHC ●最高出力:101PS/6000rpm ●最大トルク:135Nm/4400rpm ●WLTCモード燃費:19.0km/L

 

 

↑流麗なクーペスタイルに存在感のあるフロントマスクや独特のボディラインによる力強さを演出した足回りが印象的。最小回転半径は4.8mと市街地でも扱いやすいサイズだ。

 

↑コンパクトなボディながら、レイアウトの工夫やホイールベースを長くすることで後席も足元が広く、快適に過ごせる。

 

↑ブラック×ボルドーの配色となる内装は日本仕様専用。安全運転支援装備も充実しており、ヘッドアップディスプレイも備えている。

 

↑5名乗車時でも最大210Lの容量を確保するラゲッジルーム。取り外し可能なラゲッジボードを活用してアレンジもできる。

 

↑K15C型エンジンとマイルドハイブリッド、6速オートマチックを組み合わせる。力強くスムーズ、スポーティな走りを実現する。

 

【ヒット確定の根拠】コンパクトでも存在感は大! 4WDも選べる

「印象的な顔とクーペのようなフォルムによりコンパクトでも存在感が十分。装備が非常に充実していて走りもしっかりしています。それでいてお買い得な価格を実現しているのはさすがスズキです。海外にはない4WDが日本では選べます」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

<コレも注目!>待望のスイスポが間もなくデビュー?

※写真は通常のスイフト

 

スズキ
スイフトスポーツ
価格未定

 

スイフトのコンパクトで軽い車体に強力なエンジンを積んで足まわりを強化した高性能版は、歴代モデルも低価格で楽しいクルマとしてもてはやされてきた。ベース車の登場から約1年、まもなく新型が登場する見込みだ。

↑機能的にまとめられたスイフトスポーツ(現行モデル)のインパネまわり。マニュアルトランスミッションが登場するかも注目だ。

 

クラウン4タイプの“最後の砦”はついに2025年発売!?

トヨタ
クラウン(エステート)
価格未定(2025年発売予定)

 

度々の発売延期を経てワゴン(エステート)スタイルが登場!

2022年に新しいクラウンシリーズが発表されてから2年経った現在、4タイプの最後の砦として発売が待たれるエステート。後席の背もたれを倒せばフルフラットなデッキが現れ、機能的なSUVとして使えるのがウリとなっている。

 

SPEC(開発目標値) ●全長×全幅×全高:4930×1880×1620mm

 

↑後席を倒した際に若干の傾斜は生じるが、凹凸のないフルフラットな空間が出現。後席の足元空間を埋める拡張ボードも設置することが可能だ。

 

【ヒット確定の根拠】高級な内外装と使い勝手に優れるトランクが武器

「現行クラウンシリーズの第4弾は、車体後部のトランク(荷室)がポイント。使い勝手に優れる広々としたトランクは並のSUVとは一線を画します。高級感のある内外装もクラウンならでは。完成度の高いPHEVもラインアップされます」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

日本での登場が待たれる正統派AWD

※写真は北米仕様


SUBARU

フォレスター
価格未定

 

高い燃費効率を誇る「ストロングハイブリッド」採用!?

2023年のロサンゼルスモーターショーで世界初公開となり、北米で販売中の新型フォレスター。現行型よりもシャープなデザインとなり、同社のクロストレックで採用した「ストロングハイブリッド」も搭載される見込みだ。

 

SPEC【Tuoring(米国仕様】●全長×全幅×全高:4656×1828×1730mm ●車両重量:1662kg ●パワーユニット:2.5L水平対向4気筒DOHC ●最高出力:180PS/5800rpm ●最大トルク:178lb-ft/3700rpm ●WLTCモード燃費:非公表

 

↑「ストロングハイブリッド」は状況に応じて動力源であるエンジンとモーターを効率よく使い分ける新世代のハイブリッド方式だ。

 

【ヒット確定の根拠】スバルならではのこだわりに満ちた定番モデルの新型

「スバルならではの水平対向エンジン×シンメトリカルAWDや、このスクエアなフォルムがいいという大勢のファンが新型の登場を待っています。秋に発表された待望のストロングハイブリッドもラインナップに加わる見込みです」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

輸入車販売台数No.1モデルはEVも加わり盤石!


BMW

MINI COOPER E(3ドア)
463万円〜531万円

 

約10年ぶりの全面改良でBEV(電気自動車)も追加

2023年の国内輸入車販売台数No.1に輝くMINI COOPERが約10年ぶりにモデルチェンジして4代目に進化。ガソリンモデルのほかBEV(電気自動車)も登場し、より幅広いラインナップから選べる。5ドアモデルも登場した。

 

SPEC【クーパー SE(3ドア)】●全長×全幅×全高:3855×1755×1460mm ●車両重量:1640kg ●パワーユニット:モーター×1 ●最高出力:218PS/7000rpm ●最大トルク:33.7kg-m/1000〜4500rpm ●一充電走行距離:446km

 

↑SUVタイプの「MINI Countryman」も同時にモデルチェンジ。ガソリンモデルのほかクリーンディーゼル、そしてBEVも選べる。

 

【ヒット確定の根拠】10年ぶりのモデルチェンジ!よりシンプルかつモダンに

「もともと日本でも大人気のMINIですが、新型はMINIらしさを継承しながらもガラリと雰囲気が変わり、とことんシンプルになりました。しかも中身は最新の装備が満載されていて、100%BEV版がついに設定されたのもポイントです」(モータージャーナリスト・岡本幸一郎さん)

 

モータージャーナリスト:岡本幸一郎さん
26台の愛車を乗り継ぎ、軽から高級車まで幅広く網羅。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。

 

※「GetNavi」2025月2・3月合併号に掲載された記事を再編集したものです。

スズキ「ジムニー ノマド」の人気は間違いなかった。2025年プロが注目する国産車5選!

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の一人でもある、モータージャーナリストの岡本幸一郎さん。その岡本さんがいきなり受注停止のスズキ「ジムニー ノマド」をはじめ、2025年に登場するかもしれない注目すべき国産車5台を紹介します。

 

【その1】発表からわずか4日で受注停止の人気車種

スズキ

ジムニー ノマド

265万1000円(税込)〜

もともと「ジムニー」は、小さいながらも高い走破性能を持つ世界最小の本格的クロスカントリー車として、その性能を本当に必要とする職業や一部のマニアックな層から絶大に支持されていたが、販売台数としてはそれほど多くなかった。ところが、2018年にモデルチェンジした現行型は、愛嬌のあるカジュアルなルックスをはじめ、従来に比べると大幅に改善された乗り心地や周囲に見劣りすることのない先進運転支援装備の採用などが効いて、いきなり一般ユーザーをも巻き込んだ大ヒット車となり、ずっと納車の遅れが伝えられるほどの状況になった。

 

その一方で、現行ジムニーには歴代ジムニーにはなかったロングボディの5ドア版が存在し、先に海外から導入されたことが知られると、日本での販売を望む声がヒートアップした。2025年1月30日、5ドアモデル「ジムニー ノマド」が日本で発売されるや注文が殺到し、発表からわずか4日後にいきなり受注停止という異常事態になった。ただでさえ人気のジムニーに実用性に優れる5ドアがあれば人気が出るのは確実と思っていたら、こんなに早くこうなるとは予想を超えていた。1日も早く受注が再開されるよう願いたい。

 

【その2】6代目フォレスターいよいよ発売!

スバル

フォレスター

価格未定

「日常から非日常まで使えるSUV」をコンセプトに、スバルSUVの中核モデルとしてずっと安定の人気を誇ってきた「フォレスター」。人気の秘訣は、ちょうどよいサイズとクセのないキャラクターとソツのない完成度と使い勝手のよさにある。フォレスターの伝統である、ほどよくスクエアなフォルムや、独自の水平対向エンジンを軸にすべてを左右対称にレイアウトしたシンメトリカルAWD(※)による優れた走行性能に惹かれるファンも少なくない。6代目となる新型もそのあたりをしっかりと受け継いでいる。すでに海外ではモデルチェンジした新型が発売済み。

 

先だって「クロストレック」に初めて搭載され、燃費がよくて力強いことからとても評判のよい2.5リッター水平対向エンジンに、トヨタの技術を応用したスバル独自のシリーズパラレルハイブリッド方式のシステムを組み合わせたストロングハイブリッド「S:HEV」がフォレスターにも搭載されることを期待している人も少なくないはずだ。また、スバルといえば運転支援システム・アイサイトに魅力を感じる人も多い。最新の機能を身に着けたアイサイトが、より安全で快適なドライブを提供してくれるに違いない。

※:スバルによって開発された常時4輪駆動システム

 

【その3】日本車で高級なワゴンがあったら欲しい

トヨタ

クラウンエステート

価格未定

現行16代目「クラウン」は4つの個性がラインアップされるうち、2025年春時点でセダン、スポーツ、クロスオーバーと3つのバリエーションが販売中。残るひとつの「エステート」もそう遠くないうちに発売されるはずだ。エステートと呼ぶとおり、ステーションワゴンとSUVをクロスオーバーさせた新しいタイプの機能的なSUVであり、大人の雰囲気で余裕のある走りとアクティブライフを楽しめるクルマを目指しているという。

 

肝心の荷室スペースは非常に広く、リアシートを倒すとフルフラットデッキになるなど、使い勝手にもこだわっている。パワートレーンは定番の2.5リッターのハイブリッドのほかに、長距離をどっしりゆったりと走れるように味付けされたPHEVが選べる。ワゴンとして見たときに、いまや日本車のワゴンは数えるほどしかないが、輸入プレミアムブランド車は一定の支持を得ていて、日本車で高級なワゴンがあったら欲しいという人は少なくないはずだ。

 

【その4】昭和のデートカーが令和に復活!

ホンダ

プレリュード

価格未定

元祖デートカーとして知られる「プレリュード」が復活するという情報に胸躍らせている人が続出しているようだ。かつて若い頃にプレリュードに乗っていた人たちが結婚し、出産を迎え、子育て時期にはファミリーカーに乗っていた。しかし、実は2ドアクーペに乗りたいと思っていた人は大勢いるだろう。そんな子離れしたタイミングを迎えた2ドアクーペ好きたちが、車名を聞いただけでテンションが爆上がりしそうな魅力的なクーペの登場となる。

 

実車をぜひ見てほしいと感じさせるよう、スタイリッシュさには大いにこだわったという。夫婦で旅行に出かけるときに荷物を積み下ろししやすいよう、過去のモデルとは違ってハッチバックの流麗なファストバックスタイルを採用するのも特徴だ。パワートレーンにはクルマのキャラクターに合わせて専用にチューニングしたハイブリッドのe:HEVを搭載し、4WDもラインアップされる見込みで、走りにも期待できそうだ。

 

【その5】東京オートサロン2025にコンセプトカーが展示されて話題に

ダイハツ

ミライース GRスポーツ

価格未定

東京オートサロン2025にコンセプトカーが展示されて話題となった「ミライース GRスポーツ。ベーシックな軽自動車である「ミライース」に、強力なターボエンジンと5速MTを搭載するとともに、全日本ラリー選手権の参戦マシンから流用したスポーティなデザインの前後バンパーをまとい、足まわりにはBBS鍛造ホイールとブリヂストンのポテンザRE050A、コクピットにはレカロ製スポーツシートなどを装着。走りに特化したホットハッチに仕立てたというクルマである。

 

位置づけとしては、コペンに続いてGRの一員となるとともに、ダイハツがかねてから力を入れている国内ラリー等のモータースポーツ向けのベースモデルとしても市販化に期待する声は小さくない。件のコンセプトカーの反響が非常に大きいので、おそらく市販されることになりそうだが、願わくはミライースがベースなことだし、価格があまり高くならないよう期待したい。

 

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「マイルドな乗り味に癒される」クロスオーバーSUVで人気のスバル「クロストレック」を深掘り【クルマの神は細部に宿る】

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、小型のクロスオーバーSUVとして人気のスバルXV……から車名が変わった、クロストレックを取り上げる!

※こちらは「GetNavi」 2024年1月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【PROFILE】

永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】

SUBARU
CROSSTREK

SPEC【Limited・AWD】●全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm●車両重量:1620kg●パワーユニット:1995cc水平対向4気筒エンジン+モーター●最高出力:145PS(107kW)/6000rpm●最大トルク:188Nm/4000rpm●WLTCモード燃費:15.8km/l

266万2000円〜328万9000円

 

全体にマイルドで癒されるe-BOXER

安ド「殿! 今回はスバルの新型SUV、クロストレックです!」

永福「以前はXVという名前だったな」

安ド「そうです! 今回は海外での車名に合わせて、国内でもクロストレックに変更されました!」

永福「XVは個人的に好きだった」

安ド「どのあたりがですか?」

永福「インプレッサをベースに、肩肘張らないライトなSUVに仕上がっていて、サラッと自然体にカッコ良かった」

安ド「新型は、バンパーとか樹脂パーツの形がごちゃごちゃしててクセが強くて、良いんじゃないかと思います!」

永福「自然体なイメージではなくなったな。世界のデザイントレンドはシンプル方向だが、最近のスバルはそれに逆行している」

安ド「スバルらしい武装ではないですか?」

永福「ゴチャゴチャしているのが好きな人もいるから、それはそれで良いのだが」

安ド「ですよね! パワートレインは2.0lのe-BOXERのみです!」

永福「マイルドハイブリッドだな」

安ド「力強さは物足りないですが、悪路をガンガン走るような人でなければ、これで十分満足ですよね」

安ド「安ドよ。その認識は間違っておる。悪路はガンガン走ってはいけない。最低限のパワーで丁寧に走らねばクルマを傷めてしまうだろう」

安ド「言われてみれば……」

永福「お前は自分のパジェロで悪路をガンガン走るか?」

安ド「走りません! クルマが壊れないようにソーッと走ります!」

永福「だろう。SUVだろうとクロカン4WDだろうと、悪路をガンガン走るのは、ラリーなど競技のときだけ。実際には優しく走る」

安ド「つまり、力強さが物足りないこのe-BOXERは、悪路に向いているってことですか?」

永福「そのとおり。悪路ではエンジンの回転をあまり上げてはイカン。タイヤが空転して路面を削り、スタックするリスクが高まる」

安ド「目からウロコです!」

永福「実を言えば私は、スバル独自のハイブリッドシステムであるe-BOXERを、まったく評価していなかった」

安ド「ガクッ!」

永福「走りも燃費も中途半端で、箸にも棒にもかからないと思っていた」

安ド「そんな……」

永福「しかし今回、久しぶりにe-BOXERに乗って、実用車としては決して悪くないレベルに進化しているのを感じたぞ」

安ド「よかった!」

永福「低速域では小さなモーターが効果的にトルクを発揮する。元気に走ろうとするとまったく物足りないが、全体にマイルドで癒される」

安ド「実用的ですよね! ただ燃費はあまり伸びないみたいです」

永福「燃費にこだわる人は、このクルマを選ぶべきではないな」

 

【GOD PARTS 神】パワーユニット

進化を感じるスバル独自のハイブリッドシステム

先代(XV)ではガソリンエンジンとハイブリッドシステム「e-BOXER(イーボクサー)」の2種類から選べましたが、新型では進化したハイブリッドのみの設定となりました。従来は少々物足りないシステムでしたが、進化して制御もスムーズになりました。

 

【GOD PARTS 1】樹脂パーツ

クワガタか! 戦国武将か!

バンパー下部にあしらわれた黒い樹脂パーツは、左右ともフォグランプを取り囲むように大胆にデザインされています。まるでノコギリクワガタの大顎か戦国武将の髭のようで、ワイルドでとても強そうに見えます。

 

【GOD PARTS 2】SI-DRIVE

小さいけど操作はしやすい

走行モードを選ぶスイッチは、かつてセンターコンソールにダイヤル式で設置されていました。しかし、先代型(XV)あたりからステアリングに配置されるようになっています。小さいですが、慣れれば操作しやすいです。

 

【GOD PARTS 3】ステアリング

フレームを太くしてワイルドさを強化

ヘッドライトが細くなった一方で、フレームが太くなったグリルが、ワイルドなイメージを押し出しています。グリル内中央部にはカメラも設置されていて、映像をディスプレイに表示することでドライバーの死界を減らすことができます。

 

【GOD PARTS 4】ホイール

スピード感のあるデザイン

激しく回転しそうなデザインが採用されています。こちらの上級グレードはシルバーとブラックの配色でオシャレですが、下位グレードではダークメタリック単色で塗装されているそうで、そちらもカッコ良さそうです。

 

【GOD PARTS 5】カップホルダー

あえてのななめ配置

センターコンソール上に設置されるカップホルダーは、運転席用と助手席用が斜めにオフセットされる形でデザインされています。クルマのインテリアも、ちょっとした工夫で動きが出るという好例ですね。

 

【GOD PARTS 6】アイサイト

追加された広角カメラ

先進運転支援システム「アイサイト」には、広角単眼カメラが追加されています。これによって従来の約2倍の視界を確保したカメラが、見通しの悪い交差点で自転車や歩行者を捉え、より安全な運転をサポートします。

 

【GOD PARTS 7】荷室

床下を開けると見えるのは?

先代型(XV)より少しだけ容量は減りましたが、アウトドアを楽しむためのアイテムを積むには十分なスペースが用意されています。フロアボードを外すと、床下にハイブリッド用のバッテリーを見ることができます。

 

【GOD PARTS 8】ホイールアーチ

ディテールへのこだわり

SUVではオフロード車っぽさを演出する黒いホイールアーチが採用されがちですが、クロストレックのそれは、ただタイヤの周囲を囲むだけでなく、躍動的なデザインが施されています。フロントには空気の排出口までついています。

 

【GOD PARTS 9】車名

呼び方を変えて親しみやすさアップ!

「クロストレック」は海外で使用されていたネーミングで、日本では従来「XV」と呼ばれていました。クルマとしての方向性は、インプレッサのクロスオーバーSUV仕様ということで変わっていませんが、ちょっと親しみやすい雰囲気になった気がします。

 

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レヴォーグと何が違う? スバル都会派ワゴン「レヴォーグ レイバック」をクローズド試乗

スバルのスポーツワゴン「レヴォーグ」をベースに、車高と最低地上高を高めたクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック(以下レイバック)」が発表されました。このモデルはスポーツ志向が強かったレヴォーグに対し、都会志向のユーザー層をターゲットにする目的で新たなグレードとして追加されたものです。今回はそのプロトタイプの走りを、佐渡島の「大佐渡スカイライン」の一部を閉鎖したコースで体験してきました。

↑試乗コースは「大佐渡スカイライン」。アップダウンとワインディングが続くコースで力強い走りを見せた「レヴォーグ レイバック」

 

■今回紹介するクルマ

スバル/レヴォーグ レイバック

※試乗グレード:Limited EX

価格:399万3000円(税込)

 

レヴォーグのラインナップに追加された「都会派ワゴン」

車名のレイバックとは、「くつろぐ」「リラックスできる」という意味の「laid back」をベースとした造語で、「ゆとりある豊かな時間や空間を大切にする気持ち」をそのネーミングに込めたそうです。スバル車といえば大半の人がアウトドア系のクルマという印象を持っていると思いますが、レイバックはレヴォーグにラグジュアリー路線の新たな価値観を与える都会派ワゴンという位置づけで、新グレードとして新たにラインアップされました。

↑佐渡島の雄大な風景にもマッチする人気色「アステロイドグレー・パール」に身をまとったレヴォーグ レイバック Limited EX

 

それだけにデザインの印象もレヴォーグとはずいぶんと違います。前後のバンパーは丸みのあるレイバック専用とし、フロントグリル、サイドスカートなどにも専用デザインを採用することで都会的な雰囲気を持たせています。これに伴ってボディサイズは全長4770mm×全幅1820mm×全高1570mmと、レヴォーグに比べて若干サイズアップすることになりました。

 

【デザインを画像でチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

また、クロスオーバー車としての走破性を確保するために、最低地上高はベース車より55mm高い200mmとしています。これによって全高は回転式駐車場への入庫で制限が加わる1570mmとなりますが、ホイールベースは2670mmとベース車と変わりません。また、トレッド幅も少し広がっていますが、その差はわずかで普段の取り回しはレヴォーグとほとんど同じ感覚で扱えると思って差し支えないでしょう。

 

乗降性を高めたフロントシート。高い静粛性が快適性をアップ

インテリアは、センターコンソールやアームレスト、シートのサイドサポート部にスバル初となるアッシュカラーを採用したうえに、カッパーステッチを加えることでレイバックならではの落ち着いたカラーコーディネイトを実現しています。また、フロントシートは座面左右の張り出しを抑えてサポートワイヤーをなくすことで、車高が高くなって影響が出やすくなった乗降性を向上。一方で座面のクッションパッドにインサートワイヤーを加えることで適度なホールド性も確保したとのことです。

↑基本的にはレヴォーグと共通のインテリアは、アッシュカラーを採用してシルバー部にほんのりブルーを加えて都会派をイメージした

 

↑最低地上高が高くなってもスムーズな乗降を得るために、シート左右のサポート部にはワイヤーフレームに変更している

 

車内空間については、コンセプト通りの高い静粛性が大きな特徴となっています。タイヤにはオールシーズンタイヤを採用していますが、スバル専用設計として遮音材をしっかりと使って対策をしており、走行時のロードノイズはかなり押さえ込まれています。これならレイバック専用として標準装備された「Harman/Kardon」の10スピーカーサウンドシステムの能力を十分堪能できるのではないかと感じました。

↑後席は座り心地の良いゆとりのあるシートと広々とした足元スペースを確保。後席用のベンチレーションやシートヒーターなども採用

 

↑カーゴスペースはレヴォーグ GT-X EXと同等の561L(サブトランク含む)となっており、アウトバックとクロストレックの中間サイズとなる

 

11.6インチ縦型ディスプレイのインフォテイメントシステムはレヴォーグから引き継いだもので、見やすさと使いやすさを両立させているのが特徴です。

↑11.6インチ縦型ディスプレイを採用したインフォテイメントシステム。「what3words」を採用したほか、Apple CarPlayとAndroid Autoにも対応した

 

ナビゲーション機能には、簡単な3単語を使って正確な位置を調べられる「what3words」を採用。スマホにインストールされているアプリを使えるApple CarPlayとAndroid Autoにも対応したことで、普段聴いている音楽などもそのまま車内で楽しめます。また、専用アプリを用いた遠隔操作により、車外からでもエンジンの始動と空調の設定が可能となる、リモートエアコン機能を新たに用意しているのも見逃せないでしょう。

 

ワインディングでもロールを抑えながら快適な乗り心地を発揮

パワーユニットは、レヴォーグにラインナップされている2.4リッターターボの用意はなく、1.8リッター水平対向4気筒ガソリンターボエンジンのみの構成となります。試乗したクローズドコースはアップダウンのあるワインディングでしたが、それでもパワー不足を感じることは一切ありませんでした。減速した後に立ち上がるまでのラグが若干感じられましたが、通常の走りであればそれほど気になるレベルのものではありません。むしろターボによるトルクフルなパワーは頼もしさを感じます。

↑パワートレーンは水平対向4気筒DOHC 1.8Lターボエンジンで、最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生させる

 

↑アップダウンが激しい試乗コースにもかかわらず、レイバックはスムーズな走行体験ができた

 

足まわりには高い操縦安定性と快適な乗り心地を両立した専用設定のサスペンションを組み合わせています。ロールもしっかりと抑えられていて、段差のある場所を通過してもフワリとこなすあたりはレヴォーグとはひと味違った乗り心地です。ただ、レヴォーグに比べると車高が高いぶんだけステアリングフィールは若干曖昧で、その意味でシャキッとしたフィールを味わいたいならレヴォーグがオススメとなるかもしれません。

 

それでもレイバックはコーナーをややキツめに通過してもしっかりとグリップしてくれ、高い安心感を与えてくれました。聞けばそれはファルケン製オールシーズンタイヤによる効果が大きいそうで、開発者によれば「走行ノイズが少ないうえに、想像以上に高いグリップ力を獲得できる」実力がレイバックでの採用につながったとのことでした。つまり、十分な回頭性を持ちながら快適な乗り心地を発揮する、まさに都会派ワゴンに求められているスペックをレイバックは実現してくれたというわけです。

↑クロストレックにも採用されたオールシーズンタイヤ「ファルケン ZIEX ZE001 A/S」を標準装着とした

 

↑大佐渡スカイラインの展望台で撮影した「レヴォーグ レイバック」の用品装着車。こちらはアウトドア系に振った装備となっていた

 

SPEC●全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm●車両重量:非公開●パワーユニット:水平対向4気筒DOHC●エンジン最高出力:177PS/5600rpm●エンジン最大トルク:300Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:非公開

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

 

撮影/松川 忍

専門家が厳選! スポーティな走りを楽しめるステーションワゴン6選

セダンの利便性はそのままに、荷室スペースを拡大した2ボックスモデルがステーションワゴン。その魅力は使い勝手の良さがおもにクローズアップされがちだが、美しいデザイン、そして低い重心がもたらすスポーティな走りこそ真骨頂。今回は、自動車ライター・海野大介さんに、低重心のスタイルが生む安定した走りが魅力な6台のステーションワゴンを選んでもらった。

※こちらは「GetNavi」 2023年6月号に掲載された記事を再編集したものです

 

【私が選びました】

自動車ライター・海野大介さん

ウェブを中心に活動する自動車ライター。国内A級ライセンスと1級小型船舶という、趣味性の高い資格を保持。

 

水平対向エンジンを搭載するスポーティワゴン

SUBARU
レヴォーグ
310万2000円〜414万7000円

レガシィツーリングワゴンに代わるステーションワゴンとして2014年にデビュー。現行モデルは2020年にデビューした2代目になる。低重心を生み出すSUBARU伝統の水平対向エンジンを搭載し、スポーティな走りが魅力だ。

SPEC【GT-H EX】●全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm●車両重量:1570kg●パワーユニット:1795cc水平対向4気筒DOHC直噴ターボ●最高出力:177PS/5200〜5600rpm●最大トルク:30.6kg-m/1600〜3600rpm●WLTCモード燃費:13.6km/l

 

↑運転支援システム「アイサイト」は全モデルに標準装備。グレードによってはより進化した「アイサイトX」を装備するモデルもある

 

↑荷室床下に290㎜の深さを持つ大型のサブトランクを装備。底面からルーフまでは最大1105㎜の高さがあり、大きな荷物も積載可能だ

 

↑主力エンジンは177PS/300Nmを発揮する1.8l直噴ターボ。低回転域から最大トルクを発揮するので扱いやすいのが特徴だ

 

【ココがスポーティな意匠】低重心のエンジンとAWDの安定した走り

なんといっても低重心を生み出す水平対向エンジンとSUBARU独自のシンメトリカルAWD。コーナー進入時もしっかりと路面を捉え続け、立ち上がりの良さも抜群だ。

 

マイルドハイブリッドが高い環境性能を実現

メルセデス・ベンツ
Cクラス ステーションワゴン
622万円〜1202万円

無駄を削ぎ落としたスポーティなデザインが魅力のモデル。現行モデルでは全グレードでマイルドハイブリッドを採用する。モーターによる高効率なエネルギー回生やブースト機能が、高度な環境性能と気持ち良い走りを実現。

SPEC【C 200 Stationwagon AVANTGARDE】●全長×全幅×全高:4755×1820×1455㎜●車両重量:1700kg●パワーユニット:1494cc直列4気筒DOHC●最高出力:204PS/5800〜6100rpm●最大トルク:30.6kg-m/1800〜4000rpm●WLTCモード燃費:14.2km/l

 

↑エンジンは1.5l直4ターボと2l直4ディーゼルターボの2つ。いずれも9速ATが組み合わされ、スムーズな加速を実現している

 

↑ディスプレイを多用したインパネ。正面は12.3インチ、コクピット中央のものは11.9インチだ。後者はドライバー側に傾けて設置される

 

【ココがスポーティな意匠】スポーツカー並みの旋回性能が楽しめる

メルセデスの特徴でもあるボディ剛性の高さは、足回りの安定感をより感じさせる。それはハンドリングの良さにもつながり、ロールの抑えられたコーナリングを楽しむことが可能だ。

 

伸びやかなルーフラインがスポーティさを強調

トヨタ
カローラ ツーリング
207万円〜304万8000円

いまや数少ないトヨタブランドのステーションワゴン。伸びやかなルーフラインがスポーティさを演出している。2021年にマイナーチェンジ。ガソリンエンジンとハイブリッドがあり、ハイブリッドのみE-Fourの4WDが設定される。

SPEC【W×B(ハイブリッド・2WD)】●全長×全幅×全高:4495×1745×1460mm●車両重量:1390kg●パワーユニット:1797cc直列4気筒DOHC+モーター●最高出力:98[95]PS/5200rpm●最大トルク:14.5[18.9]kg-m/3600rpm●WLTCモード燃費:27.3km/l

※[ ]内はモーターの数値

 

↑すべての電動モジュールを刷新したハイブリッドシステム。モーター出力は従来比+16%を実現した。パワーと燃費の高バランスが特徴だ

 

↑後席はワンタッチで格納可能な60:40の分割可倒式を採用。G以上のグレードにはセンターコンソール背面にUSB端子が備わる

 

【ココがスポーティな意匠】アクセル操作に忠実なパワー出力が魅力

アクセルやステアリング操作に対する反応が素直で扱いやすく、低重心パッケージのシャーシ特性と相まって気持ちの良いコーナリングが楽しめる。意外に低いドラポジも魅力。

 

クリーンディーゼルの追加で魅力が増したワゴン

アウディ
A4 アバント
508万円〜693万円

アウディを代表する人気車種、A4のワゴン版がアバントだ。A4としては5代目になり、2015年にデビュー。2020年には大幅なマイナーチェンジを受けた。ディーゼルエンジン搭載車もラインナップに追加され、魅力がいっそう高まった。

SPEC【35 TDI advanced】●全長×全幅×全高:4760×1845×1435mm●車両重量:1610kg●パワーユニット:1968cc直列4気筒DOHCターボ●最高出力:163PS/3250〜4200rpm●最大トルク:38.7kg-m/1500〜2750rpm●WLTCモード燃費:17.1km/l

 

↑デザインは同じだが、アバントの後席はセダンよりも座面から天井までの高さがある。35TFSI以外は3ゾーンのエアコンを標準装備する

 

↑ラゲッジルームは後席を使用した状況で495ℓの容量を確保。40:20:40の可倒式後席を倒せば1495ℓの大容量荷室が出現する

 

【ココがスポーティな意匠】実用域でも楽しめるエンジンとハンドリング

ディーゼル特有の厚いトルクは低回転域での加速に優れ、クルマはステアリング操作に対し正確に反応する。正確だが穏やかなレスポンスなのでリラックスして運転できる。

 

独自の車両制御技術で卓越した操縦性を誇る

マツダ
MAZDA 6 ワゴン
296万2300円〜385万8800円

2019年のマイナーチェンジ時にアテンザから世界共通名のMAZDA 6に名称変更。現行モデルは2012年にデビューした。マツダ独自の車両制御技術により、ステーションワゴンながらスポーツカー並みのハンドリングが魅力だ。

SPEC【XD Sport Appearance】●全長×全幅×全高:4805×1840×1450mm●車両重量:1630kg●パワーユニット:2188cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ●最高出力:200PS/4000rpm●最大トルク:45.9㎏-m/2000rpm●WLTCモード燃費:17.8km/l

 

↑ソフトパッドを多用し高いインテリアの質感も定評があるマツダ6。8インチのセンターディスプレイはスマホとの連携も可能だ

 

↑豊かなトルクで力強い走りを実現するディーゼルエンジン。それまでの回らないディーゼルの概念を変えたパワーユニットでもある

 

【ココがスポーティな意匠】ドライバーの意図に忠実で安定した挙動が堪能できる

ホイールベースが短くても安定した直進性を持ち、ドライバーの意図に忠実でリニアなステアリングフィールを誇る。安定した挙動はロードスターに通じる爽快感が感じられる。

 

PHEVが追加されたバカンスの国のワゴン

プジョー
308SW
362万1000円〜576万6000円

コンパクトモデルの308に設定されるワゴンがSW。現行モデルは2022年に発表され308としては3代目になるモデルだ。パワー・オブ・チョイスのコンセプトに基づいてガソリン、ディーゼル、PHEVと合計3つのパワートレインを設定する。

SPEC【GT・ハイブリッド】●全長×全幅×全高:4655×1850×1485mm●車両重量:1720kg●パワーユニット:1598cc直列4気筒DOHCターボ+モーター●最高出力:180[110]PS/6000rpm●最大トルク:25.4[32.6]kg-m/1750rpm●WLTCモード燃費:17.5km/l

●[ ]内はモーターの数値

 

↑インパネはステアリングの上下がフラットで包まれ感のあるi-Cockpitを採用。308のものはディスプレイを多用した最新進化版だ

 

↑シートの良さに定評ある308。現行モデルで採用されたシートはAGR(ドイツ脊椎健康推進協会)に認められた人間工学に基づくもの

 

【ココがスポーティな意匠】帰ってきた「ネコ足」は剛性感たっぷりで快適

一時はドイツ車的な固い足回りのセッティングだったが、柔らかく深くロールし、粘りのある走りが特徴の「ネコ足」が復活。高い剛性感が特徴だが、都市部でも快適に走行可能だ。

2022年、プロがもう一度乗りたいとウズウズする国産車5選!スポーツカーばかりと思いきや……

新車試乗会以外にも、さまざまなクルマに乗る機会がある自動車評論家やライター。本稿では、さまざまなクルマを見て乗ってきた自動車評論家・岡本幸一郎さんに、今年(2022年)出会ったクルマのなかから、最も「もう一度乗りたくてウズウズする」国産車5台をピックアップしてもらいました。おすすめグレード付でお届けします。

 

【その1】FFなのにアクセルを遠慮なく踏める

ホンダ

シビック タイプR

「シビック タイプR」といえば、FF量販車で世界でも1、2を争う速さを身につけたクルマだけあって、まずエンジンフィールがすばらしいのなんの。アクセルと一体化したかのような俊敏なレスポンスと、踏み込んだときの力強い加速と、トップエンドにかけての痛快な吹け上がりと、控えめな中にも野太く吠えるエキゾーストサウンドに惚れ惚れ。2リッター4気筒エンジンとして世界屈指の仕上がりだ。

 

それを引き出すシフトフィールも、シフトを操ること自体にも喜びを感じられるほどよくできている。330PSのパワーを前輪だけで受け止めるとなると、普通なら空転してしまいそうなところ、トラクション性能も十分すぎるほど確保されているおかげで、遠慮なくアクセルを踏んでいける。

 

ハンドリングはまさしくオン・ザ・レールという言葉がピッタリ。意のままに気持ちよく操ることができて、舵を切った方向にグイグイと進んでいく。さすがは「2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー」でパフォーマンス部門賞に輝いただけのことはある、最高にエキサイティングなクルマだ。

 

【その2】登場7年ですげーグレードが出た!

マツダ

ロードスター

おすすめグレード:990S

「ロードスター」は登場からまもなく7年というタイミングで、持ち前の走りの楽しさをさらに高めるための大きな動きがあった。ひとつはKPC(=キネマティック・ポスチャー・コントロール)という新技術の採用だ。これによりGが強めにかかるようなコーナリングでのロールが抑えられ、旋回姿勢が安定してドライバーとクルマの一体感がより高まった。

 

もうひとつは、軽さにこだわりある走りに特化した特別仕様車「990S」の追加だ。1トン切りを印象づけるモデル名のとおり、車両重量を990kgにとどめるとともに、軽量の鍛造ホイールの装着をはじめシャシーやエンジン、ブレーキなどが専用にセッティングされている。

 

軽量コンパクトなロードスターは、2シーターでホイールベースが短いことも効いて、もともと手の内で操れる感覚が高いが、「990S」はさらに軽やかで気持ちのよい人馬一体感を実現している。既存のロードスターでなんとなく感じられた、ステアリングとタイヤの間に何か挟まっているような感覚が払拭されて、よりダイレクト感のある走り味になっているのだ。グリップ感が高く、フラット感もあり、ロールだけでなくブレーキング時のピッチングも抑えられている。

 

こうした改良と特別仕様車の追加が効いて、売れ行きのほうも発売から時間が経過したスポーツカーではありえないような増え方をしているらしい。中でも件の「990S」の販売比率がかなり高いというのも納得だ。

 

【その3】FFベースでつまらなくなった? 全然そんなことない!

トヨタ

クラウン クロスオーバー

おすすめグレード:RS

ガラリと変わって話題騒然の新型「クラウン」は、それだけでも乗ってみたい気持ちになるのはいうまでもないが、中でも「RS」モデルは走りっぷりも予想を超えていて驚いた。

 

いかにも速そうな名前のとおりエンジンもモーターも強力なデュアルブーストハイブリッドは、272PSの2.4リッターターボエンジンと前後に約80PSのモーターを組み合わせ、システム最高出力で349PSを発揮するというだけあってけっこう速い。モーターならではのレスポンシブでシームレスな加速フィールも気持ちがよい。さらにコーナリングでは、リアモーターで積極的に後輪の左右の駆動力に差をつけるとともに、4輪操舵機構や電子制御デバイスを駆使することで、クイックな回頭性を実現しているのもポイントだ。

 

クロスオーバーの2.5リッター自然吸気エンジンにTHSを組み合わせた他グレードとは別物で、大柄でけっして軽くないクルマでありながら、加減速もハンドリングがとても俊敏に仕上がっている。そのあたり、FFベースになってつまらなくなったとは言わせたくないという開発陣の意地を感じる。スタイリッシュなルックスだけでなく、走りのほうも鮮烈な仕上がりだ。

 

【その4】最新CVTの実力、いい感じ

スバル

WRX S4

おすすめグレード:sport R EX

もとはモータースポーツ由来だった「WRX」が、時代の流れで今では高性能ロードゴーイングカーという位置づけに。本稿執筆時点では3ペダルのMTを積む「WRX STI」の販売が終了し、将来的にもラインアップされるかどうかわからない。しかし、2ペダルの「WRX S4」はしっかり進化している。

 

275PSと375Nmを発揮する2.4リッター直噴ターボのFA24型に、「スバルパフォーマンストランスミッション」と呼ぶ最新のCVTが組み合わされるのだが、これがなかなかのもの。駆動力の伝達にかかるタイムラグが払拭されているほか、従来とは比べものにならないほどダイレクト感があり、マニュアルシフト時のシフトチェンジも驚くほど素早い。エンジン回転が先に上昇して、あとから加速がついてくる感覚もほとんど気にならない。

 

さらにはリアよりに駆動力を配分するVTD-AWDも効いて、小さな舵角のままコーナーをスムーズに立ち上がっていけるのも、WRX S4ならでは。2グレードあるうち、44万円(税込)高い「STI Sport R」は、「GT-H」に対して装備が充実しているのに加えて、走りの面ではZF製の電子制御ダンパーが与えられるほか、SIドライブではなく、より細かく設定できるドライブモードセレクトが搭載されるのが大きな違いとなる。

 

【その5】サーキットのちょい乗りだけでもう惚れてます

日産

フェアレディZ

おすすめグレード:バージョンST

この往年の雄姿を思い出すスタイリングを目にしただけで、乗りたくてたまらない気持ちになる。実のところ本稿執筆時点では筆者はサーキットでちょっとだけ乗った程度なのだが、見た目の魅力はもちろん、400PSオーバーを誇るV6ターボエンジンの刺激的なパフォーマンスや、全面的に見直したという洗練されたシャシーチューニングにより、かなり走りもよさそうな雰囲気がヒシヒシと伝わってきた。だからこそ、もう一度乗りたくてうずうずしているところです……(笑)。

 

 

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スバル「クロストレック」試乗。軽快な走りを示す新ラインナップ「FFモデル」に注目!

より身近なSUVとして根強い人気を獲得していた「SUBARU XV」が、2023年以降、装いも新たに『クロストレック』として生まれ変わることになりました。その魅力はどこにあるのか。今回は発表を前に、クローズドコースで行われた先行試乗会でプロトタイプの走りをレポートします。

↑標準グレード「ツーリング」AWD(4WD)。ボディカラーは新色の「オフショアブルー・メタリック」

 

車名は「XV」から「クロストレック」へ

「クロストレック」という名前、少しスバルに詳しい人ならもしかしたら聞いたことがあるかもしれません。実はクロストレックという名前が使われるのは今回が初めてではないのです。すでにアメリカなど北米では、日本で展開していた「XV」をクロストレックとしていました。今回のフルモデルチェンジを機にXV名ではなく、グローバルでクロストレック名が使われることになったのです。

↑タイヤは17インチホイールに225/60R17。リアフォグランプは右下が点灯する

 

ラインナップは4WDに加えて、シティユースが多い人向きにFFを用意したのもポイントです。その分だけより身近な価格でクロストレックが手に入れられるのです。ただ、代わりに従来の1.6リッターモデルはラインナップから外れ、日本仕様のパワーユニットは2リッターの「eボクサー」のみとなりました。

↑リアハッチゲートに記された「CROSSTREK」と「e-BOXER」のバッジ

 

価格も全体的にアップしてるようで、販売店からの情報によれば、価格はFFのツーリングが266万2000円、同リミテッドが306万9000円。4WDのツーリングが288万2000円、同リミテッドが328万9000円とのこと。やはり身近な価格帯のグレードがなくなったのは少し残念ですね。(※すべて税込価格)

 

とはいえ、車名をクロストレックとした新型は、基本的なボディデザインをXVの流れをしっかりと受け継ぎつつも、“彫りが深い”フロントフェイスやグラマラスなフロントフェンダーなど、よりSUVっぽくなった印象です。その一方で、サイズはXV比でせいぜい1cm前後の違いしかなく、ホイールベースに至ってはまったくの同寸。この辺りはXVから乗り換えても違和感なく扱えると思っていいでしょう。

↑ボディカラーは全7色が用意された

 

クラス最高レベルの上質なインテリア

インテリアはダッシュボードのセンターに、11.6インチの大型ディスプレイを備えた新世代インフォテイメントが装備されました。すでにレヴォーグなどにも搭載され、その使い勝手には高い評価が与えられているものです。ただ、「STRALINK」によるコネクテッド機能は備えていますが、ボイスコントロールはローカルで認識するもので、スマホで使うような認識率の高さは備えていません。この辺りは早急に改善してほしいところです。

↑使い勝手のよさと居心地のよさを重視したインテリア。中央のインフォテイメントシステムは11.6インチディスプレイを採用する

 

しかし、内装の質感はこのクラスとして最高レベルの上質さを感じさせてくれました。シンプルなデザインながらマルチマテリアルの異なる素材を上手に組み合わせ、手で触れた感触もなかなか良さげです。ちなみに、内装トリムは上級グレードがシルバーステッチのファブリックで、標準グレードがシルバーステッチのトリコットとなります。メーカーオプションではパワー機構付きの本革シートも選べます。

 

エアコンの吹き出し口がディスプレイの左右に配置され、その操作系もオートエアコン使用時の温度調整やオーディオのボリュームなどが、物理スイッチで操作できるあたりも、使い勝手を重視した開発者のこだわりが感じられます。少なくともクルマは、運転中での操作はより確実な操作が求められるわけで、その意味でもこうした対応は高く評価したいですね。

 

そうした中でスバルがクロストレックで強調していたのが「動的質感」です。そのために医学的見地から開発したというシートは、骨(腰の中央、背骨の一番下に在る三角形の形をした部分)を押さえながら骨盤を支える構造を採用したものとなっています。そのため、走行中に生まれる左右の揺れに対して身体をしっかりサポートでき、それは優れた乗り心地にもつながりました。これが長距離走行でも疲れにくい環境を提供するというわけです。

↑標準グレード「ツーリング」の運転席周り。上位グレードの「リミテッド」のシートはメモリー付パワーシートとなる

 

↑「ツーリング」のリアシート。標準グレードでも中央にはアームレストも備えられる

 

また、走行中の快適性向上のためとして、ルーフパネルとブレースの間には、振動の吸収性が高く、耐震性に優れた高減衰マスチック(弾性接着剤)を採用しています。これが走行時に発生した、細かな振動を上手に丸め込む効果を発揮し、振動に対する高い収束性を発揮することとなったのです。この日は路面状態が良好なサーキットでの走行でしたので、公道でのロングドライブでその効果を早く体験してみたいですね。

 

安定感のある4WD、軽快感のあるFF

さて、いよいよ試乗です。コースは静岡県伊豆の国市にある「サイクルスポーツセンター」で、一周約5キロのコースをショートカットしての試乗となりました。この日はあいにくの雨模様でしたが、それはむしろFFと4WDの違いを感じるのに最適な場を与えられたようにも思いました。そこでまず感じたのは4WDの落ち着いた走りでした。路面がそこそこ濡れているにもかかわらず、ハイスピードでコーナーに入っても挙動は安定しており、楽にコントロールができたのです。これは剛性を高くしたステアリングフィールもポイントになるでしょう。

↑静岡県伊豆の国市にあるサイクルスポーツセンターで試乗中のスバル・クロストレックプロトタイプ

 

↑水平対向4気筒DOHC 2.0リッター直噴エンジンとモーターを組み合わせた「e-BOXER」仕様。1.6リッターエンジンはラインアップから外された

 

ではFFはどうか。実はこちらも挙動変化の少ない走りを見せてくれました。それどころか旋回中の軽快さは4WDよりも高く、トランスミッション(CVT)との相性も良好。フル加速した際もダイレクト感があり、多少ラグを感じる4WDとの違いを感じたのです。特に2.0リッターエンジンにモーターアシストを加えたことも走りにプラス効果を与えたのは間違いないでしょう。ステアリングの剛性も4WD同様に高いものがあり、操作して安心感がありました。

↑試乗中の天候はあいにくの雨模様だったが、挙動変化の少ない安定した走りが印象的だった。写真はクロストレック「リミテッド」FWD(FF)モデル

 

↑トランスミッションはチェーン式CVT「リニアトロニック」で、CVT特有のラバーフィールを最小限に抑えた

 

こうした体験を通して感じたのは、軽快な運転を楽しみたいならFFの方がオススメで、どっしりとした安定感のある走りを味わいたいなら4WDということです。特に積雪がある地域の方にとっては頼りがいのある4WDモデル一択となりそうですが、日常生活で積雪がない地域の人にとってはFFモデルをむしろ選ぶべき。そう思ったほどFFの仕上がりは良かったように思いました。

↑クロストレック「リミテッド」AWD(4WD) モデル。ドッシリとした安定感のある走りを見せた

 

最新アイサイトの進化にも注目!

最後にお伝えしておきたいのは、最新の運転支援システム「アイサイト」の搭載です。残念ながら今回の試乗で体験することはできなかったため、あくまでスペック上での話となりますが、その進化は目を見張るものがあります。新設計のステレオカメラに加えて、前側方に対するレーダーも組み合わせ、これにより認識範囲を従来型の約2倍にまで拡大。両側の周辺にいる二輪車や歩行者の識別精度も向上させているのです。

↑スバル初となる広角の単眼カメラを組み合わせた新「アイサイト」を搭載。ガラス面との隙間もなくなった

 

さらに、低速走行時に二輪車や歩行者を認識する広角単眼カメラを国内スバル車で初めて採用したことで、プリクラッシュブレーキの精度向上につながりました。スバルによれば、これはアイサイトとして最高の性能になるということです。こうしたアシストに助けられないのが一番ですが、そうした状況下に万が一陥った時の安心度は大きく違います。

 

新型クロストレックは走りだけでなく、そんな万が一の安心感をもたらしてくれる一台へと進化したと言えるでしょう。公道で試乗できる日が楽しみです。

↑SUVカテゴリーにふさわしいカーゴルーム。リアシートをたたんだ際もフラットになるので使いやすい

 

 

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スバル「BRZ」は走ることを趣味とする大人のおもちゃとして最高の一台!

「若い人が買える国産スポーツカー」というカテゴリーも今はあってないようなもので、スポーツクーペが各メーカーから雨後のタケノコのようにうじゃうじゃと発売されていた80年代を懐かしむ中年世代は多い。しかしそんな時代だからこそ輝くのが、貴重なコンパクトサイズのスポーツクーペ、スバル「BRZ」だ。初代型のみで消えることなく、昨年、見事なフルモデルチェンジを遂げた同車の魅力を探る!

 

■今回紹介するクルマ

スバル/BRZ

※試乗グレード:R・6速MT

価格:308万円~343万2000円(税込)

 

BRZの乗り味は安定性の高いセッティング

国産スポーツカーファンにとって待望のクルマとして、初代モデルが誕生したのは2012年。BRZは、スポーツカーにとって冬の時代に現れた救世主的存在だった。メーカー側の「若い人に乗って欲しい」という意図に反して価格はそれほどこなれていなかったが、それでもクルマ好きにとっては貴重な存在、通好みの一台としてもてはやされてきた。その流れを受けて、2021年夏、満を持して登場したのが2代目たる、この新型BRZである。

 

先代型同様トヨタとの共同開発モデルだが、クルマの心臓部たるエンジンはスバルの水平対向型が採用されており、メカニズム的にはスバルの存在感が大きい。トヨタ版は「GR86」で、車両のベースは同じ。バンパーの造形などデザインが異なる程度で、エンブレムを見なければ一般の人に見分けはつかないかも。乗り味についても、BRZは安定性の高いセッティング、GR86は回頭性が高いセッティングとされているが、一般人が一般道を走って判別できるほどの違いはない。

↑「R」は17インチアルミホイール(スーパーブラックハイラスター)を履く。空力性能を考えてデザインされたフロントフェンダーダクトがIt’s a cool!

 

↑エクステリアデザインにおけるトヨタGR86との違いを見つけるならばバッジが早いです! オプションで上部に装着するトランクスポイラーも用意されています

 

スポーツカーということで走りがいいのは当たり前だが、なんといってもコントローラブルなところが美点である。先代型から軽量化を進め、ボディ剛性も高めるなどして、ドライバーが意のままに操れる、クルマとしての素性の良さを向上させており、運転することの喜びをしっかり味わえる。これは運転のプロなどでなくても感じられる部分なので、試乗できる機会があればぜひ試してみてほしい。

 

ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快!

フロントにエンジンを搭載し、リアタイヤで駆動するFR方式を採用することで、ボディバランスが良く、走りはとにかく軽快だ。乗り心地も悪くないし、それどころか慣れてくると快適にさえ感じられる。高速走行中の安定性も高めで、今回は一般道と高速道路のみの試乗となったが、不快感を感じるようなシーンはほぼなかった。同クラスの従来のスポーツカーと比べると、プレミアムな雰囲気さえ感じられるほど完成度の高い足まわりである。

 

水平対向4気筒の「フラットフォー」エンジンは、先代型の2.0Lから2.4Lへボリュームアップしたことで、全領域でトルクが厚くなった。先代型では若干感じられた出足のパワー不足感が解消されている。ターボではなくなったことで出力のメリハリが減り、そのぶん低回転域から滑らかに吹け上がっていく、エンジンを回した時の気持ちよさをしっかり味わえるようになった。さらに高回転域でも加速の伸びがよく、エンジン回転の上昇に合わせてデジタルサウンドを再生するサウンドジェネレーターによる演出音も聞くことができる。

↑エンジンは全グレード共通で、排気量2.4Lの水平対向4気筒自然吸気となる

 

トランスミッションは6速ATと6速MTがラインナップされている。当代、免許証取得者の70%以上がAT限定で、新車販売の約98%がAT車だと言われているが、スポーツカーにMTがなくてはやはり寂しい。選ぶか選ばないかは別の問題として、やはりMTが希少なこの時代になっても、ラインナップされていることに価値がある。ATの仕上がりも素晴らしく、MTを選ばずとも十分走りは楽しいのだが、同車の操作フィールをさらに深く味わえるのはMTということで間違いない。

↑燃費はMTが11.8~12.0km/L、ATが11.7~11.9km/Lとなっている。(WLTCモード)

 

インテリアはスポーツカーらしく無骨で愛想のないデザインだが、包まれ感に満ちている。これをよく捉えるか悪く捉えるかはドライバー次第で、純粋に運転を楽しみたいドライバーにとっては最高に違いない。愛想のないシンプル系デザインといえば、エクステリアもそういった方向性なのだが、全体的なフォルムは塊感があって、いかにもよく走りそうな雰囲気が漂っている。

↑インストルメントパネルは、景色が見やすく、路面に対する車両の傾きも直感的に把握しやすいよう、水平基調にデザイン。デジタル表示によりグラフィカルに整理された多機能型メーターを装備しています

 

↑ブラックを基調にシートやドアトリムのレッドステッチによるアクセントで高揚感を演出

 

BRZは(GR86も同様に)カスタマイズ性もウリにしている。個性が尊重されるこの時代、買ってプレーンな状態のまま楽しむのもありだが、自分だけのカスタマイズを施して、“オレだけ仕様”にするのもまた楽しい。当然、さまざまなカスタマイズパーツが市販されているし、交換もしやすいよう設計されている。

↑トランクルームはVDA法(ドイツの自動車工業会が規定するトランクルーム内の容量測定方法のこと)で237Lの容量を確保。フロア下には工具や小物の収納に便利なサブトランクも装備しています

 

現在の国産スポーツカーはあまりにも選択肢がすくない。「GT-R」や「スープラ」は乗り出し500万円を超えてしまうし、「フェアレディZ」や「シビックタイプR」に関しては発売後にすぐ売り切れてしまった(2022年10月現在)。300万円前後で新車が買える普通車のスポーツモデルといえば、このBRZとGR86の兄弟モデルとマツダのロードスターくらいだ(あるいは軽のコペンなら200万円前後だが)。300万円と言っても若者が捻出するには大きな金額だが、同クラスとなるポルシェのスポーツクーペ「ケイマン」は乗り出し800万円である。そう思えば、クルマで走ることを趣味とする大人のおもちゃとして最高の一台ではないだろうか。

 

SPEC【R・6速MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310㎜●車両重量:1260㎏●パワーユニット:2387㏄水平対向4気筒エンジン●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:250Nm/3700rpm●WLTCモード燃費:12.0㎞/L

 

文/安藤修也 撮影/木村博道

 

 

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スバル「レヴォーグ」。これだけ速くて快適で気持ちいい実用車など、他にあるのか?

2021年11月、スバル「レヴォーグ」にハイパフォーマンスモデル“STI Sport R”が追加された。新開発の2.4L直噴ターボエンジンを搭載する同モデルは、スバルのフラッグシップスポーツ「WRX STI」と共通点があるのか? 同ブランド内での立ち位置と走行性能の真価を探る。

 

【今回紹介するクルマ】

スバル/レヴォーグ

※試乗グレード:STI Sport R

価格:310万2000円~477万4000円(税込)

 

まずはスポーツモデルWRX STIについて語ろう

スバルのスポーツモデルの頂点に君臨するのは、WRX STI(インプレッサWRX STIを含む)である。伝統の水平対向ターボエンジンに6速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、サスペンション、ブレーキ、空力など、あらゆる面で究極の走りを目指したモデルだ。内外のマニアの間では絶対的な人気を誇ってきた。

 

ところが、2021年に登場した新型WRXには、その「STI」がなく、今後も出ないらしい。世界中のスバルファンが、「なんてこった!」と頭を抱えている。WRX STIは世界的に人気があるだけに、マニアックなスポーツモデルにもかかわらず、かなり台数が出る。そのわりに燃費が非常に悪く、世界中の燃費規制に引っかかる。エンジン(EJ20型)の基本設計も古く、排ガス規制もキビシイ。これ以上の延命は不可能だったようだ。

 

その代わりと言っては何だが、以前からあったWRXのAT(正確にはCVT=無段変速)バージョンであるS4には、これまでの2.0Lターボエンジンに代わって2.4Lターボエンジンが搭載され、CVTもスポーティな新型に更新された。

 

ただ、スペックを見ると、この2.4Lターボエンジン、以前の2.0Lターボエンジンより、馬力もトルクも低い。旧S4が300馬力/400Nmだったのに対して、新型は275馬力/375Nm。常に最高の走りを目指してきたWRXが、スペックダウンするってどういうことだ? 排気量を拡大したっていうのに信じられない! 堕落だ!

 

そのように思っていたが、実際に乗ってみて仰天した。この新型S4、めちゃめちゃパワルフなのである! どう考えても旧型より速い! いや、少なくとも速く感じる! 加えて、新開発されたCVT「スバルパフォーマンストランスミッション」が物凄くイイ! 普通に流していてもCVT特有の空回り感はまったくなく、ダイレクトな加速が楽しめるが、ひとたびスポーツ+モードに入れれば、自動的に8速ステップ変速に切り替わり、他のあらゆる変速機もかなわないほど、恐ろしく素早いシフトチェンジを行う。

 

実はこのシフトチェンジ、疑似的なもので、実際にはCVTのレシオを瞬間的に切り替えているにすぎないが、乗ったイメージはまるでF1マシン! 「クワーン、クワーン、クワーン」と快音を奏でながら、ウルトラ超速シフトアップを繰り返し、切れ目のない超絶加速をブチかましてくれる(ように感じる)。エンジンスペックは旧型より落ちているのに不思議だが、とにかく新型S4は、素晴らしく気持ちいいスポーツセダンだ。MTにこだわるマニアには物足りないかもしれないが、私は気持ちよければそれでいい。新型S4、最高だぜ!

 

が、新型S4にも欠点がある。それは、中高年にはサスペンションがハードすぎることだ。サスペンションのモード切替を「コンフォート」にしておけば問題ないが、「ノーマル」や「スポーツ」はあまりにも固すぎてツライ。つまりサスペンションだけ「コンフォート」に切り替えれば済む話だが、おっさんになると、それが面倒くさくなってくる。

 

スバルパフォーマンストランスミッションの超絶レスポンス

ところが! 同じエンジン/ミッションを積む、2代目レヴォーグ「STI Sport R」は、サスペンションが断然ソフトだという。レヴォーグのノーマルモデルは、1.8Lターボの177馬力。この「STI Sport R」は、新型S4と同じ2.4Lターボを積むが、サスペンションは基本的にノーマルモデルと同じらしい。気持ちよければそれでいいおっさんには、そっちのほうがいいかもしれない……。

 

実際乗って見ると、予想通りだった。エンジン/ミッションは超絶パワフル/超絶レスポンスのままだが、サスペンションはぐっとふんわりソフトなのだ。「うおおおお、これはイイ!」

 

今やWRX S4は、スバルのスポーツモデルの頂点。サスペンションをハードに固めて、サーキットでしっかりタイムが出るようにセッティングする必要がある。公道での快適性は二の次でも仕方ない。

 

しかしレヴォーグは違う。ステーションワゴンであるレヴォーグは、あくまで公道を快適に速く走るための実用車。サスペンションをむやみに固める必要はないから、あらゆるモードで快適な乗り心地を確保しつつ、2.4Lターボのスーパーパワーと、スバルパフォーマンストランスミッションの超絶レスポンスが味わえるのだ!

↑275PS、375Nmの圧倒的なパフォーマンスを発揮する新開発の2.4L直噴ターボエンジン。さらに、2.4Lエンジンに合わせて開発したスバルパフォーマンストランスミッションを搭載

 

欠点は、燃費が悪いことである。高速道路をゆっくり流しても、10km/Lを超えるのは難しい。日常使いで7km/Lくらい。しかもガソリンはハイオク指定。お財布には決して優しくない。しかし、それがなんだと言うのだ! これだけ速くて快適で気持ちいい実用車など、他にあるだろうか? お値段477万円。高いと言えば高いが、中身を考えればむしろ安いっ! コイツに乗っていれば、BMWの「M」やメルセデスの「AMG」に挑まれても怖くないぜ。

↑張り出しが強調された前後フェンダーが特徴。足回りはZF製の電子制御ダンパーを装備し、路面の状態や車体の動きをセンシングして、リアルタイムで減衰力を可変制御する

 

↑C字型のランプの意匠や六角形の“ヘキサゴングリル”

 

↑C字型のテールランプが目を引くリア

 

↑内装色はブラックとボルドーのツートン。そして思わずデカっと言ってしまいそうな11.6インチ大面積の縦型センターディスプレイ。ここではエアコンやナビの操作、車両の細かな設定などを行える

 

↑ドライブモードセレクトの操作画面。これは「STI Sport」系のグレードに備わる。「GT」「GT-H」系のグレードには、パワートレインの制御のみを切り替えられる「SI-DRIVE」が装備される

 

↑従来モデルより足元スペースが広くなったリアシート。座面長も18mm拡大し、USB電源は2口設けられている

 

SPEC【STI Sport R】●全長×全幅×全高:4755×1795×1500㎜●車両重量:1630㎏●パワーユニット:2387㏄水平対向4気筒直噴ターボ●最高出力:275PS/5600rpm●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm●WLTCモード燃費:11.0㎞/L

 

撮影/阿部昌也

 

 

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新時代を感じさせるホイールアーチ! SUVっぽさもあるスポーツモデルSUBARU「WRX S4」を検証

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、SUBARUの象徴的なスポーツモデル「WRX S4」に装着されたホイールアーチについて語った。

※こちらは「GetNavi」 2022年7月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。

 

安ド

元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。

 

【今月のGODカー】スバル/WRX S4

SPEC【STI Sport R EX】●全長×全幅×全高:4670×1825×1465mm●車両重量:1600kg●パワーユニット:2.4L水平対向4気筒直噴ターボ●最高出力:275PS(202kW)/5600rpm●最大トルク:38.2kg-m(375Nm)/2000〜4800rpm●WLTCモード燃費:10.8km/L

400万4000円〜477万4000円(税込)

 

ドライブモードの変更で猛烈に刺激的な走りに激変!

安ド「殿! 殿はスポーツセダンがお好きですよね」

 

永福「オッサンだからな」

 

安ド「この新型WRX S4は、スポーツセダンなのにSUV風のホイールアーチがあしらわれていて、なんだか新しいです!」

 

永福「これは新しいのだろうか」

 

安ド「新しいと思います!」

 

永福「このような樹脂製のホイールアーチは、最低地上高の高い、悪路走破性に優れるクルマ用という固定観念があるのだが、このクルマは違う」

 

安ド「高くないんですか?」

 

永福「135mmしかない。BMW3シリーズより5mm低いぞ」

 

安ド「そうだったんですか! コレが付いているから、少し高いのかなと思ってました!」

 

永福「私にはナンチャッテSUVに見える」

 

安ド「個人的にはイケてると思ったんですが……。フロントからサイド、リアまで黒い樹脂パーツで囲ってあって、それがエアロパーツっぽい形状をしているので」

 

永福「SUBARUらしいと言えばらしいのだが」

 

安ド「走りはどうでしたか。ノーマルモードだとなんだかもっさりした印象でしたが……」

 

永福「このクルマは、同社得意のドライブモードセレクトが可能で、走りを5種類から選べる。コンフォートやノーマルだと落ち着いた高級セダンの趣だが、スポーツやスポーツ+にすると、これぞスポーツセダンという走りに激変する。特にスポーツ+は猛烈に刺激的だ」

 

安ド「フェラーリやランボルギーニを乗り継いでいる殿にとっても、猛烈に刺激的ですか!」

 

永福「うむ。アクセルレスポンスが凄まじくシャープになり、ちょっとアクセルを踏むだけで背中を蹴飛ばされたように加速する。しかもCVTが自動的にステップ変速になって、エンジンの回転変化を存分に楽しめるのだ」

 

安ド「そんなに刺激的だったんですか!」

 

永福「ただ、同時にサスペンションも非常にハードになって、オッサンには乗り心地がツラい」

 

安ド「それは残念ですね……」

 

永福「だが心配はいらない。そのためにインディビデュアルモードが用意されている」

 

安ド「そ、それは?」

 

永福「エンジンやサスペンションなど6項目を個別に設定して、好みの走りをアレンジできるのだ。私はスポーツ+をベースに、サスペンションだけコンフォートにしてみたが、これぞ理想のスポーツセダン! という走りになった」

 

安ド「そうだったんですね!」

 

永福「エンジンが2.4Lターボになり、低速からトルクたっぷりなのもオッサン好みだ」

 

安ド「ただ、燃費はイマイチですね。いまどきWLTCモード10.8km/Lというのは……」

 

永福「オッサンもガソリンエンジンも、余命は長くない。いまのうちに乗っておきたいクルマだぞ」

 

【GOD PARTS 1】空力テクスチャー

六角形模様で空気の流れを整える

フロントバンパーからボディサイド、リアバンパーまで、黒い樹脂パーツが車体下部を囲むように取り付けられていますが、よく見ると「ヘキサゴン(六角形)」模様になっていて、これが車体表面の空気の流れを整えてくれるそうです。

 

【GOD PARTS 2】エアインテーク

キャラを強調する空気取り入れ口

ボンネット上にはエンジンルームへ空気を取り入れるための穴が空いています。これが、鋭い目つきのヘッドライトやSUBARU特有の「ヘキサゴングリル」などと相まって、スポーティでアグレッシブなキャラクターを際立たせています。

 

【GOD PARTS 3】インフォメーションディスプレイ

大型タッチパネルで設定をまとめて操作

インパネデザインは車体を共有化する「レヴォーグ」と基本的に同形状で、11.6インチの大型センターディスプレイが採用されています。カーナビ、車両情報、エンタメ、エアコンなど各種設定を、タブレットのようにタッチして操作できます。

 

【GOD PARTS 4】トランスミッション

MTのような感覚で操作できるCVT

これまでの「スポーツリニアトロニック」から名称が変更され、「スバルパフォーマンストランスミッション」となりました。スポーツ+モードでは、CVTながらまるで8速MTのようなスポーティな変速レスポンスを味わうことができます。

 

【GOD PARTS 5】水平対向エンジン

全領域でパワフルかつ加速感が気持ち良い

先代型より排気量が0.4L拡大されて2.4Lになったことで、低い回転域から力強いトルクが発揮されます。さらにターボということで伸びやかな加速感も得られるので、幅広い回転領域でエンジンの魅力を楽しむことができます。

 

【GOD PARTS 6】トランク

日常を犠牲にしない高い実用性を確保

走りのパフォーマンスに優れたモデルながら、4ドアセダンということで日常生活での使い勝手にもしっかりこだわっています。トランクはベビーカーやゴルフバッグが入るよう、幅も奥行きもスペースがたっぷり確保されています。

 

【GOD PARTS 7】レカロシート

高品質な設計と素材で身体をサポート

撮影車両には、上位グレードにオプション設定される「RECARO(レカロ)」社製シートが搭載されていました。RECAROのシートは人間工学に基づいて開発されており、ホールド性、安全性、快適性が高い評価を受けています。表面素材にはウルトラスエードが採用されていて、肌触りも抜群でした。

 

【GOD PARTS 8】アイサイトX

さらに強力になった運転支援システム

SUBARUといえば運転支援システム「アイサイト」ですが、WRX S4の上位グレードには、新世代の「アイサイトX」が搭載されています。新型ステレオカメラは認識力を高め、衝突回避のサポート領域を拡大、運転支援を高度化しています。

 

【GOD PARTS 9】リアスポイラー

印象をガラリと変えた後方の羽の有無

歴代WRXといえば巨大なリアウイングを想像しがちですが、新型ではトランクの後端がニュイっと持ち上がっているだけ。本当にこれだけでダウンフォースが発生するのかどうかは、超高速域で走らせたドライバーのみぞ知ることです。

 

【これぞ感動の細部だ!】ホイールアーチ

SUVのような黒いフチはスポーツモデルにマッチする?

黒い樹脂製のホイールアーチはSUVっぽいアイテムですが、新型WRXはスポーツセダンでも採用されて、新時代のスポーツモデル像を演出しています。SUBARUはラリーイメージの強いブランドなので似合っているかもしれません。形状はカクカクしていて塊感みたいものも感じられます。なお、フロントの空気排出口は穴が空いていますが、リアはダミーでした。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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スバルならではの走りへのこだわりを実感!スバル「ソルテラ」試乗記

スバル初の電気自動車(BEV)スバル「ソルテラ」がいよいよ市場に登場しました。トヨタの「bZ4X」と同じe-TNGA思想をベースにしながらも、生粋のスバルファンを念頭に置いて開発されただけあって、試乗してみるとソルテラからは意外なほどbZ4Xとの違いを実感できました。走りにこだわりを見せたソルテラの試乗レポートをお届けします。

 

【今回紹介するクルマ】

スバル/ソルテラ

※試乗車:ET-SS(AWD)

価格:594万円〜682万円(税込)

 

魅惑的なスタイリッシュなデザイン

ソルテラを前にすると、エクステリアからして姉妹車であるbZ4Xとの違いを明確に示していることがわかります。ソルテラのボディサイズは全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mmで、SUVとしては低めのクーペ風の流麗なルーフラインをもっています。Aピラーやリヤウインドウはまるでスポーツカーのような傾斜があり、そのスタイリッシュなデザインにはつい惹かれてしまうほどです。

↑写真はET-HS(AWD)。ボディカラーはツートンを含め、全10色から選べる

 

ソルテラならではのデザインも随所に見ることができます。フロントマスクをスバルの基本モチーフに倣った六角形とし、ヘッドランプもデイライト部分をC字型形状として違いを強調。リアコンビランプもC字型意匠とすることでスバルならではのデザインの統一性を図っています。細かなところでは、充電ポートがあるフタを、bZ4Xが「ELECTRIC」としたのに対し、ソルテラは「EV」として違いを見せています。

↑スバルのアイデンティを示すC字型デイライト

 

↑EV用充電ポートのフタには「EV」のロゴマーク。急速充電と普通充電に対応する

 

インテリアはデザインも含め、基本的にbZ4Xと共通の部分が多くなっています。ダッシュボードは独特の風合いを伝えるファブリック製であることや、航空機のコックピットを彷彿させる12.3インチの液晶パネルによるメーターもほぼ同じデザインです。それでも、オーディオのブランドをbZ4Xが「JBL」としたのに対し、ソルテラは他のスバル車と同様に「ハーマンカードン」を採用しています。シートヒーターの作動範囲に若干変更を加えるなど、このあたりからもスバルらしいアイデンティティを感じさせます。

↑12.3インチディスプレイを備えたナビゲーション&オーディオシステム

 

↑リヤシートバックを前に倒せば広々とした空間。カーゴルームは最大441L(ET-SSは最大452L)と、SUVらしく広々としたスペースを確保している

 

↑他のスバル車と同様にオーディオブランドには「ハーマンカードン」が採用された。写真はカーゴルームに設置されたサブウーファー

 

また、ソルテラにはbZ4Xにはないパドルシフトも備えられました。さらにソルテラは最低地上高が210mmと高めとしています。これは、BEVであってもスバルらしい悪路走破性を確保することが重視されたからなのです。これは後述する雪上での試乗で実感することができました。

↑ 運転機周り。ステアリングには回生ブレーキを細かく調整できるパドルシフトが備わる

 

そして、ソルテラとbZ4Xの最も大きな違い、それは販売方法です。実はbZ4Xはトヨタが運営するサブスクリプションサービス「KINTO」でのみしか買えませんが、ソルテラは他のスバル車と同様、普通にクルマとして購入できます。残価設定ローンを組むことはもちろん、現金でスパッと支払うことも可能です。これは想定する販売台数の違いもあるでしょうが、BEVの販売で慎重を期するトヨタの姿勢がここに現れたのではないでしょうか。
 

雪道、公道で試乗した感想

ソルテラのプロトタイプに最初に試乗したのは、正式な発表を前にした2月のことでした。場所は一面の積雪で覆われた群馬サイクルスポーツセンターで、この時は除雪もままならない雪深い中での試乗会となったのです。本来なら寒さに弱いBEV向けとしてこの場所は適切ではないはずです。それにも関わらずこの悪環境が選ばれたのは、BEVであってもしっかり対応できるソルテラの走りを体験して欲しかったという思惑があったのに他なりません。

↑ ET-HS(AWD)。駆動用リチウムイオン電池の総電力量は71.4kWh

 

ソルテラはEV専用プラットフォームが採用されています。フロア下には71.4kWhの大容量リチウムイオンバッテリーが搭載され、そこから生み出される航続距離はFFで530km前後、AWDで460km前後となっています。そして、雪の中で試乗したのはソルテラのAWDでした。前後に80kW/168.5Nmの出力するモーターを配置し、計160kW/337Nmを発揮します。参考までにFF車は150kW/266Nmのモーターが前輪側に配置されます。

 

スペックからすると、さぞかし強力な加速フィールが体感できるかと想像しましたが、意外にも穏やかです。FF車があることから前輪駆動をメインにしているのかと思いきやそうではなく、後輪駆動をメインとした走りとなっていました。アクセルを踏むと後ろから押し出される感覚が伝わってきます。しかし、穏やかな加速ゆえに雪上でも不安感はまるでなし。むしろ、滑りやすい状況下でもコントロールしやすく安定感があり、「これぞスバルのEVなのか!」と思わせるに充分でした。

↑AWDシステムとして、前輪/後輪をそれぞれ80kWのモーターを個別に駆動する新システムを採用した

 

さらにソルテラにはbZ4Xにはないパドルシフトがあります。これはブレーキ回生の強さを変えるためのものとして搭載されましたが、特にデリケートな雪上路では、下り坂でもフットブレーキを使わずに回生を使って減速できるメリットがあります。bZ4Xにも「Sペダルドライブ」が装備されていますが、きめ細かなコントロールとなればソルテラのパドルシフトに軍配が上がると言っていいでしょう。

↑シフトスイッチは押して回すタイプ。操作スイッチの右上には回生ブレーキとして使うSペダルドライブのスイッチがある

 

次にソルテラに試乗したのはそれから4か月が経った6月。今度は一般道と高速道を含めた公道で試乗しました。

↑埼玉県長瀞から都心に向けて少し長めの試乗

 

シートに改めて座ってみると、その着座位置が若干高めであることに気付きます。これはフロアにバッテリーを搭載したことによるものですが、SUVとして考えればこのアイポイントの高さが前方視界の広さをもたらし、これが走行中の安心感も生み出してくれています。メーターはステアリング越しの奥に見通せる仕掛けで、最小限の視線移動で走行情報が得られるというもの。これはこれで近未来的ではありますが、一方で表示内容は意外にも普通で、もう少しハイテク感を伝えて欲しかったようにも思いました。

↑ET-HS(AWD)。ブルーステッチのタン本革シートが標準で備わる

 

↑リアシートにもシートヒーターが備わる。後席の足元には、足を伸ばしてくつろげるほどのスペースが広がっている

 

↑リアシートのヒートスイッチは3段階で調整が可能。スマホなどの充電はUSB-Cタイプ

 

スタート直後にステアリングを切ると軽過ぎず、程良い重さの操舵力が伝わってきました。235/50R20(ET-HS(AWD)の場合)サイズのタイヤを履き、ショックオブソーバーの減衰力を強めにセッティングしているにもかかわらず、低速走行中の道路の段差も上手に丸められており、乗り心地は十分に納得できるレベルです。また、遮音性の高さも優れ、高速道路に入るとその静けさはいっそう際立つことになりました。

 

一方で、加速はBEVにありがちな強烈な加速感はありません。しかし、一般道から高速道までどの領域でも俊敏に反応するのはまさにBEVならではの魅力です。ガソリンエンジン車と比較するのも変な話ですが、トルク感からすればあきらかに3Lを超える大排気量車に匹敵するレベルにあると思いました。重心の低さはコーナリングでも高い接地性を発揮し、しかもステアリングを切ったときの回頭性も良好。パドルシフトによるきめ細かな回生は峠道で程良い減速を発揮し、コントロールがとてもしやすいのが印象的でした。

 

もう少し電動車らしさが欲しかった

ソルテラを試乗して実感したのは、これまでのBEVと比べて走りが電動車然としていないことです。強力な加速感もなければ、回生による強い減速Gもなく、ひたすらマイルドに抑えられていたのです。これならガソリン車から乗り換えても違和感はほとんど感じないで済むでしょう。

 

ただ、モーターの制御次第でもっと電動車らしさを発揮できたはずです。開発陣の話では「ガソリン車からの乗り換えユーザーを想定すると、より自然に体感できる制御の方が適切」と考えたということでした。つまり、ソルテラは意識して電動車らしさを打ち消して開発が行われていたのです。

 

たしかにクルマとしての特性が急激に変化すれば、ユーザーは違和感を感じるかも知れません。ただ、個人的にはスバル初のBEVであるわけで、それならばもっと電動車ならではの特徴を活かしたセッティングでも良かったのではないかとも思いました。クルマとしての仕上がりが素晴らしかっただけに、その辺りは残念に思いました。今後、第二弾、第三弾と次期モデルが登場するに従い、そうした特徴がより前面に出てくるのかもしれません。今後の進化に期待したいですね。

 

SPEC【ET-HS(AWD)】●全長×全幅×全高:4690×1860×1650mm●車両重量:2030kg●モーター:フロント・リヤ交流同期電動機●最大出力:フロント・リヤ80kW/4535-12500rpm●最大トルク:フロント・リヤ169N・m/0-4535rpm●WLTCモード一充電走行距離:487km●WLTCモード交流電力量消費率:148Wh/km

 

 

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国産車らしい独自性が魅力のスバル「BRZ」、トヨタ「アクア」の新車をレポート!

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、国産らしい独自性が際立つ2モデル。SUBARU「BRZ」は、いまや世界的にも希少な後輪駆動クーペ。トヨタ「アクア」は、自慢のハイブリッドシステムに一層の磨きがかかっている。両車とも、まさにいまが旬のニューモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【No.1】自然吸気エンジンが生む操舵性の高さが秀逸!

クーペ

SUBARU

BRZ

SPEC【S(6MT)】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2387cc水平対向4気筒DOHC●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

 

新しい2.4Lエンジンは積極的に操りたくなる!

新型BRZは、先代とほぼ変わらないサイズのボディに後輪駆動(FR)レイアウトを継承。また、エンジンは自然吸気の水平対向4気筒を搭載する世界的にも希少なコンパクトクーペだ。先代と大きく違うのは、そのエンジンが2Lから2.4Lに排気量を拡大されたことだが、走らせればそれがよくわかるほど余裕を感じられる。

 

パワー、トルクともにアップしたことで扱いやすさが増しているのはもちろん、何よりもうれしいのは、積極的に回す喜びが見出せること。アクセル操作に対する自然な反応も、自然吸気エンジンならではだ。ターボなどの過給機付きが当然の現在では、このエンジンだけでも味わう価値は十分にある。

 

それを受け止めるシャーシ回りも、先代より格段に洗練度が増した。スポーティでいながら、決して乗り心地が荒くない点はオトナのクルマ好きも納得の出来映え。FR駆動、という点まで含めればまさにクルマへの感度が高い幅広い層にオススメできる。

 

[Point 1]先代のイメージを踏襲しつつ質感はアップ!

全体の佇まいは先代のイメージを継承しつつ、外観はクーペとしての質感が向上。グレードはRとSの2タイプで、ボディカラーは写真のレッドを含めて合計7色を揃える。

 

[Point 2]いまや貴重な自然吸気の2.4L

先代の2Lに代わり、新型では排気量を2.4Lに拡大した自然吸気の水平対向4気筒を採用。ターボが主流の現代にあっては、もはや貴重な存在だ。

 

[Point 3]クーペとしては実用的な広さが確保

トランク容量は237Lと、2人分程度の荷物なら十分に収容できる広さ。後席を畳めば長尺物やスポーツ走行用のタイヤなども積むことができる。

 

[Point 4]室内はスポーティなブラック基調

室内はスポーツクーペらしい、適度なタイト感を演出。後席は完全な非常用だが、前席の広さは必要にして十分。液晶ディスプレイのメーターは、走行モードに応じて表示が変わる。

 

[ラインナップ]

R:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/308万円(税込)【324万5000円(税込)】

S:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/326万7000円(税込)【343万2000円(税込)】

●【 】内は6速ATの価格

 

 

【No.2】新型はハイブリッド専用モデルらしさを実感!

ハッチバック

トヨタ

アクア

SPEC【Z(2WD)】●全長×全幅×全高:4050×1695×1485mm●車両重量:1130kg●パワーユニット:1490cc直列3気筒DOHC+電気モーター●最高出力:91[80]PS/5500rpm●最大トルク:12.2[14.4]kg-m/3800〜4800rpm●WLTCモード燃費:33.6km/L

●[ ]内は電気モーターの数値

 

ダウンサイザーを意識した充実装備と高い質感も嬉しい

プリウスの弟分だった初代の登場から約10年。トヨタ内でも多くの車種にハイブリッドが用意され、なかでもヤリスとの差別化を明確にする必要に迫られたアクアは、この新型でよりダウンサイザーに配慮したクルマになった。

 

ホイールベースと全高を拡大し、後席の居住空間をより広く確保すると同時に、ややチープだった内外装も質感が大幅に向上。その結果、新型は車格が上がった印象を受けるほど。乗り心地も快適性重視に味付けされているが専用のスウィングバルブダンパーを備えた「Z」だけは、欧州車のようなキビキビとした走りが楽しめる。装備面では、トヨタのコンパクトカー初の10.5インチ大型ディスプレイオーディオやヘッドアップディスプレイ、電子制御インパネシフトの設定も新しい。最新の予防安全パッケージはもちろん、ボタン操作で全自動駐車する「アドバンストパーク」も秀逸だ。

 

エンジンとモーターはヤリス系と共通だが、大きな電流を瞬時に出せるバイポーラ型ニッケル水素バッテリーの採用が効いて、瞬発力は段違い。加速の鈍さに閉口した初代とは別物になった。さらに、降雪地ユーザー待望の4WDがようやく設定されたのも朗報だ。

 

時代の要望を積極的に取り入れたアクアが、人気なのも頷ける。

 

[Point 1]ホイールベースは先代より50mm延長

ボディサイズは先代と変わらないが、ホイールベースは50mm拡大。外観は上質感を高めるとともに、一層伸びやかな佇まいになった。基本骨格にもトヨタ最新のTNGAを採用。

 

[Point 2]ハイブリッドはさらに高効率に!

ハイブリッドシステムには、最高レベルの熱効率を誇る1.5Lエンジンやバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載。2WDのWLTCモード燃費は33.6〜35.8km/Lと高いレベルを実現する。

 

[Point 3]荷室は必要にして十分な容量

荷室容量は205〜691L。コンパクトなハッチバックとしては、必要にして十分な容量が確保されている。2WDのフロアは、高さも変えられる仕様となり、使い勝手の良さも上々だ。

 

[Point 4]サイズはそのままに室内を拡大

ホイールベースを50mm拡大したことで、特に後席は居住空間が拡大。グレードによっては、シート表皮のデザイン性が高くなった。

 

[Point 5]室内もクラスレスといえる質感に

コンパクトカーに相応しい使い勝手を確保しつつ、室内はクラスを超える上質感も追求されている。トヨタのハイブリッド車を象徴するシフトセレクターも新意匠に変更された。

 

[ラインナップ]

B:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/198万円(税込)【217万8000円(税込)】

X:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/209万円(税込)【228万8000円(税込)】

G:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/223万円(税込)【242万8000円(税込)】

Z:1.5L+電気モーター/2WDまたは4WD/電気式無段変速/240万円(税込)【259万8000円(税込)】

●【 】内は4WD(E-Four)の価格

 

文/小野泰治、岡本幸一郎 撮影/市 健治、小林俊樹

 

 

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スバル新型「BRZ」は、自然吸気エンジンが生む操舵性の高さが秀逸!

今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、国産らしい独自性が際立つクーペ。SUBARU「BRZ」は、いまや世界的にも希少な後輪駆動クーペで、まさにいまが旬のニューモデルだ。

※こちらは「GetNavi」 2022年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

新しい2.4Lエンジンは積極的に操りたくなる!

クーペ

SUBARU

BRZ

SPEC【S(6MT)】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2387cc水平対向4気筒DOHC●最高出力:235PS/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

 

新型BRZは、先代とほぼ変わらないサイズのボディに後輪駆動(FR)レイアウトを継承。また、エンジンは自然吸気の水平対向4気筒を搭載する世界的にも希少なコンパクトクーペだ。先代と大きく違うのは、そのエンジンが2Lから2.4Lに排気量を拡大されたことだが、走らせればそれがよくわかるほど余裕を感じられる。

 

パワー、トルクともにアップしたことで扱いやすさが増しているのはもちろん、何よりもうれしいのは、積極的に回す喜びが見出せること。アクセル操作に対する自然な反応も、自然吸気エンジンならではだ。ターボなどの過給機付きが当然の現在では、このエンジンだけでも味わう価値は十分にある。

 

それを受け止めるシャーシ回りも、先代より格段に洗練度が増した。スポーティでいながら、決して乗り心地が荒くない点はオトナのクルマ好きも納得の出来映え。FR駆動、という点まで含めればまさにクルマへの感度が高い幅広い層にオススメできる。

 

[Point 1]先代のイメージを踏襲しつつ質感はアップ!

全体の佇まいは先代のイメージを継承しつつ、外観はクーペとしての質感が向上。グレードはRとSの2タイプで、ボディカラーは写真のレッドを含めて合計7色を揃える。

 

[Point 2]いまや貴重な自然吸気の2.4L

先代の2Lに代わり、新型では排気量を2.4Lに拡大した自然吸気の水平対向4気筒を採用。ターボが主流の現代にあっては、もはや貴重な存在だ。

 

[Point 3]クーペとしては実用的な広さが確保

トランク容量は237Lと、2人分程度の荷物なら十分に収容できる広さ。後席を畳めば長尺物やスポーツ走行用のタイヤなども積むことができる。

 

[Point 4]室内はスポーティなブラック基調

室内はスポーツクーペらしい、適度なタイト感を演出。後席は完全な非常用だが、前席の広さは必要にして十分。液晶ディスプレイのメーターは、走行モードに応じて表示が変わる。

 

[ラインナップ]

R:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/308万円(税込)【324万5000円(税込)】

S:2.4L/2WD/6速MTまたは6速AT/326万7000円(税込)【343万2000円(税込)】

●【 】内は6速ATの価格

 

文/小野泰治 撮影/市 健治

 

 

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いまや貴重なスポーツクーペの新型が発売! SUBARU「BRZ」は走ってみたらスゴかった

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回は、2021年夏にフルモデルチェンジして新型が発売されたFRスポーツクーペ、新型BRZの魅力を解剖する!

※こちらは「GetNavi」 2022年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】SUBARU/BRZ

SPEC【S 6MT】●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm●車両重量:1270kg●パワーユニット:2.4L水平対向エンジン●最高出力:235PS(173kW)/7000rpm●最大トルク:25.5kg-m(250Nm)/3700rpm●WLTCモード燃費:11.9km/L

308万(税込)〜343万2000円(税込)

 

抜群の乗り味を誇る最高のスポーツクーペ

安ド「殿! 新型『BRZ』は、いかがですか」

 

永福「せっかくのスポーツクーペなのに、なんと凡庸なデザインかと失望したが……」

 

安ド「失望したんですか!」

 

永福「失望したが、乗ってみたら最高にすばらしかった」

 

安ド「すばらしかったんですね!」

 

永福「とにかく走りがすばらしい。足まわりもエンジンも最高だ」

 

安ド「スポーツクーペなのに、街乗りでも全然乗り心地が悪くなくて、びっくりしました!」

 

永福「それでいて、コーナーを攻めればウルトラ安定しているし、限界も高い。文句のつけようがないぞ」

 

安ド「2.4Lになった水平対向エンジンも、トルクが太くなっていて良いですね!」

 

永福「すまさじく良いエンジンだ。スバルの水平対向エンジンのなかでも、最高傑作ではないか」

 

安ド「そこまで良いですか!」

 

永福「そこまで良い」

 

安ド「今回試乗したのは6速MTモデルでしたが、MTも扱いやすかったです。MTに慣れてない人でも、エンストしにくいのではないでしょうか!」

 

永福「全体的に、ウルトラ扱いやすいのにウルトラ仕上がりが良く、ディープなカーマニアでもウルトラ満足できる、最高のスポーツクーペだ」

 

安ド「スポーツクーペの新型って、すごく貴重になってますしね!」

 

永福「安ドはこれまでスポーツクーペに何台乗ってきた?」

 

安ド「最初の愛車は『フェアレディZ』の2+2でした。あと、『クーペフィアット』にも乗りました。その他、2シーターのオープンに2台乗りました!」

 

永福「なかなか乗っておるな。わしは……。『フェラーリ』13台と『カウンタック』2台、すべて2シーターのクーペやオープンだが、実は最初の愛車は、日産『ガゼール』という2+2のクーペだった」

 

安ド「『シルビア』の兄弟車ですね!」

 

永福「当時の若者はみんなスポーツクーペに乗りたがったから、速くもないカッコだけのスポーツクーペがたくさんあったのだ」

 

安ド「なるほど! いまのSUVみたいなものですね!」

 

永福「実は今回、BRZの後席にも乗ってみた」

 

安ド「えっ! ものすごく狭くなかったですか?」

 

永福「いや、前席を少し前に出せば、思ったより広かったぞ。あれなら男4人でもなんとかなる」

 

安ド「ホントですか!?」

 

永福「若いころは、狭いガゼールに男4〜5人乗り込んで、色々な場所に行ったものだ。今回BRZの後席に座ってみて、そんな青春時代が蘇った」

 

安ド「僕はフェアレディZの後席に、友人を乗せたことはなかったです!」

 

永福「そうなのか」

 

安ド「でも、車内でカー〇ックスしたことがあります!」

 

永福「それこそ真の青春だな」

 

【GOD PARTS 1】エアコンインターフェイス

質感を向上させたアナログ感が良い感じ

ダイヤルが3つ並び、その下に各種スイッチが横並びになるという配置は、先代型とあまり変わりませんが、比べて見ると明らかに質感が向上しています。デジタル全盛の時代にあえてアナログ式のスイッチ類で好印象です。

 

【GOD PARTS 2】アクティブサウンドコントロール

作られたサウンドでスポーティさを演出

アクセルを踏み込むと、スポーティなエンジンサウンドが正面から聞こえてきます。しかしこれ、実はエンジンの回転数に合わせてデジタルサウンドを再生しているそうです。確かに、よく聞くと若干時差を感じたりもします。

 

【GOD PARTS 3】パーキングブレーキ

昔ながらの手引き式でドリフトだって可能

近年は電動パーキングブレーキが主流になっていて、スバルも他車では採用しています。しかし、新型BRZでは古典的な手で引き上げるタイプの、いわゆる“サイドブレーキ”が採用されています。初心者がドリフトするためでしょうか。

 

【GOD PARTS 4】トランク

しっかり使える容量でクーペと侮るなかれ

2+2座席のため、主な物を置く場所は後席になりがちですが、237Lの容量を誇るトランクもしっかり用意されています。後席背もたれを前に倒せば長尺物も積載することができるので、実用性は決して低くありません。

 

【GOD PARTS 5】6速MT

少数派となったMT好きを変わらず応援

いまや国産新車のAT比率は99%超えと言われているなか、しっかり6速MTモデルが設定されていました。世界の名だたるスーパーカーでさえ2ペダルのみになっていく時代ですが、カーマニアにとってはありがたいことです。

 

【GOD PARTS 6】フロントシート

スポーツカーらしいホールド性で上質感も高い

シート形状はホールド性が高く、スポーティな走りにピッタリですが、クッションも厚みがあって座り心地も良好です。さらに、スエード地と本革を組み合わせたコンビネーション表皮が採用されていて、質感が高いです。

 

【GOD PARTS 7】エンジン

ノンターボの良さをよくわかっている!

2.0L直噴ターボだった先代型から、新型では排気量がアップされ、2.4Lのノンターボエンジンが搭載されています。水平対向式は変わりませんが、以前より低回転域から力強いトルクを感じられるようになりました。高回転域も伸びが良いです。

 

【GOD PARTS 8】リアシート

非常用や物置き場としてあるだけマシと考える

2+2シートのため一応後席は装備していますが、なかなか厄介です。フロントシートを前に出さないと足が入りませんし、大柄な人だと頭を真っ直ぐ上へ伸ばせません。とはいえ、乗れないことはないので、あるだけマシだと思いましょう。

 

【GOD PARTS 9】タイヤ

プレミアムタイヤで走りの質感を向上

タイヤは走りの質にも乗り心地にも影響する大変重要なパーツです。今回のBRZには、なんと名門ミシュランの「パイロットスポーツ4」という超優良ブランドが装着されていました。高価ですが、これだけで走りの質感が2段階ほど上がります。

 

【これぞ感動の細部だ!】TRACKモード

クルマの介入を抑制して運転者の腕を見せつける

センターコンソール上にあるボタンを長押しすることで、車両安定制御システム「VSC」の制御介入タイミングを遅らせる「TRACKモード」に変更できます。これはつまり、スポーティに走らせたときの、クルマによる自動制御の範囲を減らすことで、運転がよりドライバーの腕頼みになってくるということです。運転に自信のあるドライバーのためのボタンですね。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

話題のSUV、スバル「レガシィ アウトバック」をゲットナビとモノマガの両編集長が鴨川まで乗りに行ってわかったこと

2022年で創刊40周年を迎える、押しも押されぬモノ誌の決定版「モノ・マガジン」と、創刊23年目を迎えたピチピチの“新卒世代”「ゲットナビ」とのコラボ企画が始動!

 

月刊誌「ゲットナビ」編集長の川内一史(かわうち・かずふみ)が、編集者としての大先輩である「モノ・マガジン」前田賢紀(まえだ・たかのり)編集長と畏れ多くも一緒に、胸を借りまくりつつ取材させていただき、両メディアで異なる切り口からレポートするのが本連載であります。

↑「モノ・マガジン」前田編集長(左)と「ゲットナビ」編集長の川内が、出版社の垣根を越えて夢のタッグ!

 

まずは僭越ながら川内の自己紹介から。東京都生まれの37歳(2022年2月で38歳)で、妻と、もうすぐ3歳になる息子、そして猫と暮らしています。2012年10月にゲットナビ編集部へ加入し、2020年7月編集長に就任。ちなみにその前は月刊のアニメ専門誌に3年間、さらにその前は週刊のゴルフ誌の編集部に4年間在籍しておりました。図らずも雑誌編集ひと筋というキャリアを歩んできてしまい、このDX時代を生き抜くことができるのか、一抹の不安を感じつつGetNavi webに顔を出してきたアラフォーおじさんです。以後ご贔屓に!

 

二つの目で見ればピントが合う!

ゲットナビ×モノ・マガジンの「ヒット」スコープ
– Target 1.スバル「レガシィ アウトバック」-

さて、コラボ企画の記念すべき第1回は、SUBARUのフラッグシップともいうべきクロスオーバーSUV、レガシィ アウトバックがテーマ。12月24日に発売されたばかりのアウトバックを体験・試乗すべく、千葉県は鴨川市にある「SUBARU里山スタジオ」にお邪魔してまいりました。

※モノ・マガジン前田編集長のレポートは記事の最後にリンクがあります!

 

東京からアクアラインで海を渡り、木更津JCTから館山自動車道へ。鋸南保田ICで下道に降りて1時間ほど走ったところに「SUBARU里山スタジオ」はあります。目印の看板を発見!

↑東京湾アクアラインで千葉へゴー。途中、海ほたるで「幸せの鐘」を鳴らす前田編集長。2021年ももうすぐ終わりますね……

 

↑山中をひた走ったあと、うっかりすると通り過ぎてしまいそうな小さな横道へ。畦道を進むと、スバルのロゴが輝くささやかな案内板が! たしかに里山スタジオの存在を伝えてくれています

 

ここから道はどんどん狭く、険しくなり、不安が襲い掛かりますが、それに耐え切って無事到着。元々キャンプ場だったところに作っただけあって、ハンパないスケール! 「スタジオ」というより「フィールド」といった様相です。

↑山林みが深い! あれ? 前を走るのは……

 

ところで、クルマってかなり大きい買い物ですよね。当然、愛車選びは吟味に吟味を重ねて慎重になると思います。特に私は小さい子どもがいたり、妻も運転する可能性があったり、マンションの立体駐車場に収まるサイズじゃないといけなかったり、そもそも予算の上限がある程度決まっていたりと、たくさんの制限付きです。「見た目がカッコ良い」とか「走りが気持ち良い」といった魅力だけでは購入に踏み切れないのが現実。機能性や取り回しの良さ、そして価格から家族内で検討して絞りつつ、そのなかからデザインや走りが気に入ったクルマに決めるというフローを、皆さん辿っているのではないでしょうか。

 

翻って、私のなかでのSUBARU車のイメージは“男のロマンを体現したクルマ”。イマドキ男女でクルマを語るなんて怒られちゃいそうですが……。学生時代にそこそこやんちゃしていた先輩が、中古でSUBARUのフォレスターを買ってカスタムしまくっていた記憶があるからかもしれません。あとは、スノーボードで雪山へ行くときにはレンタカーでよくレガシィを借りていたものです。そんな若かりしころのおもひでから、SUBARU車は「アクティブでこだわりの強い人が選ぶクルマ」という印象が刷り込まれまくり。どのラインナップもめちゃカッコ良いけれど、自分は子どもが小さいうちは購入することはないのかなー、なんて漠然と思っていました。そう、この日までは……。

 

スバルのフラッグシップSUV、新型「レガシィ アウトバック」とご対面!

↑オフロードを駆け抜ける新型アウトバックは、絵になります!(写真はアクセサリー装備車)

 

新型アウトバックの特徴はまず、いかにもオフロードに強そうなタフさを感じさせる外観。ワイルドさを強調する大型のフロントグリルと、洗練されたしなやかなラインのボディが見事に融合しています。内外装ともにプレミアム感の高い「Limited EX」(消費税込429万円)と、ダークメタリック塗装のホイールなどでスポーティさを強調した「X-BREAK EX」(消費税込414万7000円)の2グレードで展開中です。個人的なデザインの好みは、X-BREAK EX。クルマに乗ること、運転することが特別だった若き日のエモさが蘇ってくるようです。アウトバック、イイなあ……。

↑今回見せていただいたのはX-BREAK EX。スポーティな仕様が物欲を刺激します

 

と感傷に浸りつつも、「子どものいる30~40代男性」をメイン読者とするゲットナビを代表してここに来ていることを忘れてはなりません。使い勝手はどうなのか? この日、群馬県太田市にある開発拠点から、取材のためにお越しいただいた開発チームのお三方に話をうかがいながら、新型アウトバックをじっくりチェックしてみました。

↑左から、商品企画本部のプロジェクトゼネラルマネージャー・村田誠さん、小野寺圭さん、アクセサリー企画部の横居智也さん

 

運転支援システム「アイサイトX」を標準装備!

まずは、インテリア。最初に目に入るのは、インパネの11.6インチセンターディスプレイ。大きいことは良いことで、見やすいし、タッチ操作もしやすい! バック時の車両状態表示やガイドもめちゃわかりやすくて、安心感があります。

 

さらに、新世代アイサイトに「高度運転支援システム」を搭載したSUBARU最先端の安全テクノロジーが「アイサイトX」ですが、これを全車に標準搭載。これなら普段運転慣れしていない妻や、70歳が近づいている父にもハンドルを任せられそうです。

↑まるで大型のタブレットが埋め込まれているよう。視認性&操作性が高いです

 

内装もオフロード対応!

シートは、Limited EXにオプション設定となる本革(ナッパレザー)シートと、X-BREAK EXに標準装備の撥水ポリウレタンシートを用意。高級感があるのは前者ですが、濡れた状態で乗ったり、食べこぼしをしたりといった日常のシーンを想定すると、使い勝手の良い後者も魅力的に感じます。アクセサリーとして「オールウェザーシートカバー」も用意しており、よりアクティブに使う人は要注目ですね。

↑X-BREAK EXの撥水ポリウレタンシートに、アクセサリーのオールウェザーシートカバーを設置した状態。これなら食べこぼしの多い私でも安心です!

 

そして荷室。561Lという広さだけでなく、様々な工夫で収納力を高めているのが印象的でした。大きめのSUVでもゴルフバッグを横置きできないモデルは結構あるんですが、アウトバックなら余裕。キャンプギアなどの汚れモノをラフに積んでも、アクセサリーの「カーゴトレーマット」を装着すれば水や泥がクルマに浸透しにくいなど、随所に配慮が行き届いています。

↑後席を倒せばオジサン2人が寝られる広さ。車中泊しても身体への負担は小さそうです

 

ルーフトップテントも設置可能!

そして、新型アウトバックをよりアクティブなクルマたらしめるパーツが、ルーフレール。Limited EXでは、サーフボードやカヌーなどの長物を積載しやすいクロスバータイプを、X-BREAK EXでは、積載荷重がより大きく、汎用性の高いラダータイプを採用しています。このルーフレールには、カーキャリアのトップブランドであるTHULE(スーリー)のルーフトップテントを設置できるというのが、本車のウラ目玉(?)なのです。

↑アクセサリーの後席ステップガードを取り付ければ、小柄な女性でも荷物の積載が容易に

 

このときはまだナンバープレートが付いておらず公道を走ることはできませんでしたが、施設内で少しだけ動かしてみた感じでは、たしかに悪路に強そうな印象。もちろんオンロードでも、SUBARU車ならではの爽快な走りを楽しめそうです。

↑SUBARU里山スタジオ内の悪路もなんのその。排気量は1.8Lと抑えめですが、直噴ターボ車ならではのパワフルな走りでした

 

ファミリーの選択肢としてもアリ!

ってことで、3時間オーバーの取材を終えての結論。アウトバックは見た目がカッコいいし、安全性も高いし、使い勝手も良いし、アクティブな趣味にも対応するし、本当にイイとこ取りのクルマです。家族を乗せるのがメインだけど、カッコ良さも捨てたくないというゲットナビ世代には絶対ハマるはず。400万円台という価格は決して安くはないけれど、走破性に安全装備、さらにスタイリング的にも長く乗れそうなことを考えたら、ファミリーの選択としてもアリでしょう!

↑アウトバックとともに皆で記念撮影。長時間に及ぶ取材のご対応ありがとうございました!

 

と、充実感に満たされつつ帰宅。クルマ選びにはシビアな妻に、「今日SUBARUの取材に行ってきてね……」と、おそるおそる切り出してみる。取材で聞きかじった私のアウトバック話にはそれほど興味を示さなかった妻だが(私のスキルの問題です。SUBARUの皆様にお詫び申し上げます)、クルマの写真を見てひと言、「カッコ良いね。これ、私の好きなタイプのクルマだ」。買い替え、ワンチャンあるかもよ!

 

前田編集長のレポートはこちら→https://www.monomagazine.com/35426/

 

 

写真/西川節子

ルーフやフードにアルミ素材を使用し低重心化を図ったピュアスポーツ「BRZ」。高い走行性能の秘ケツは低姿勢

「誰もが愉(たの)しめる究極のFRピュアスポーツカー」を実現したというスバル「BRZ」。トヨタの「GR 86」とベースとなる部分は共有しつつ、スバルブランドの個性を重視して走りの特性やデザインの一部を差異化しています。今、話題のスポーツカーにクローズアップ!

※こちらは「GetNavi」 2021年10月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

2代目はよりハイパワー化した水平対向エンジンを搭載

【スポーツカー】2021年7月発売

SUBARU

BRZ

308万円〜343万2000円(税込)

トヨタとスバルの共同開発によるスポーツカーの2代目が登場。心臓部にはスバルのメカニカルアイデンティティでもある水平対向エンジンを搭載する。初代モデルより400cc拡大された排気量で、伸びのある加速フィールが味わえる。

 

↑ハンドリングの楽しさを最大限生かす低重心パッケージ。アルミルーフの採用や前後左右の重量バランスを最適化し、世界トップクラスの低重心を実現。軽量化にも成功した

 

【トレンドのツボ】希少な国産ピュアスポーツは月産500台で人気沸騰必至!

いまや国産のピュアスポーツカーは希少。兄弟車となるトヨタ86も間もなく登場する予定だが、BRZは月産500台。前モデルからの乗り換えも考えると、人気沸騰は間違いない。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲ったスバル「レヴォーグ」は実際どう? 乗り味とディテールを徹底チェック!

ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をする「クルマの神は細部に宿る。」。今回取り上げるのは、発売以来大人気で、ステーションワゴンの希望の星となっているスバル・レヴォーグ。2代目はどうだ?

※こちらは「GetNavi」 2021年5月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【レビュアーPROFILE】

永福ランプ(清水草一)

日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。2018年以降、ペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更している。

 

安ド

元GetNavi編集部員で、現在ではフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいる。

 

【今月のGODカー】スバル/レヴォーグ

SPEC【STIスポーツEX】●全長×全幅×全高:4755×1795×1500㎜●車両重量:1580㎏●パワーユニット:1.8ℓ水平対向4気筒直噴ターボエンジン●最高出力:177PS(130kW)/5200〜5600rpm●最大トルク:30.6㎏-m(300Nm)/1600〜3600rpm●WLTCモード燃費:13.6㎞/ℓ

310万2000円〜409万2000円

 

ボディや足まわり、アイサイトXは素晴らしいがエンジンがダメ

永福「安ドよ。レヴォーグの評判が良いな」

 

安ド「日本カー・オブ・ザ・イヤーも獲りましたしね」

 

永福「たしかにこのクルマ、ボディと足まわりが素晴らしい」

 

安ド「つまり骨格ですね」

 

永福「特にこのSTIスポーツは、価格が高いだけに猛烈に素晴らしい。これほどしなやかに揺れを吸収するクルマに乗ったのは初めてかもしれん」

 

安ド「スバル車って、昔から乗り心地は良かったでしたっけ?」

 

永福「いや、そんなに良くはなかった。ガチガチに固い時代もあった。まあ現在でもガチガチのスポーツモデルを作っているが」

 

安ド「スバルは硬派なメーカーですもんね」

 

永福「だな」

 

安ド「僕がこのクルマで一番良いと思ったのは、このクールグレーカーキというボディカラーです」

 

永福「たしかに」

 

安ド「それで先代型よりだいぶカッコよく見えました」

 

永福「いかにもスバルらしい硬派な色だが、それでいてオシャレさんだ。スバルのセンスは垢抜けたな」

 

安ド「昔は垢抜けてなかったですよね?」

 

永福「実用以外一切考えてないようなクルマが多かった」

 

安ド「でも、殿も乗られていたSVXはカッコ良かったじゃないですか」

 

永福「あれは突然変異だ。なにしろジウジアーロデザインなのだから」

 

安ド「でも売れなかったんですよね」

 

永福「まったく売れなかった。スバル車はカッコ良すぎてはダメだな。これくらいがちょうどいい」

 

安ド「アイサイトXはどうですか?」

 

永福「これも素晴らしい。GPS測位とマップを精密に連動させているので、ACC(前車追従型クルーズコントロール)を作動させているときに進路の乱れがまったくない。もちろん安全性も高い」

 

安ド「渋滞中の高速道路では手放し運転もできますしね」

 

永福「実にラクチンだ」

 

安ド「悪いところがないですね」

 

永福「いや、ある。エンジンがダメだ」

 

安ド「ダメですか!」

 

永福「全然パワーがないし、燃費も驚くほど悪い」

 

安ド「僕も、なんだか薄味だなぁとは思いましたが」

 

永福「薄味で元気がないのに燃費が悪い。新型エンジンなのに信じられないほどダメだ」

 

安ド「そんなにダメですか!」

 

永福「普通に走っているときは良いが、アクセルを床まで踏んでもロクに加速しない。燃費はロングドライブで12㎞/ℓ程度。新型エンジンなのだから、最低15㎞/ℓは走ってほしいぞ」

 

安ド「地球温暖化ガスがたくさん出てしまうんですね?」

 

永福「このままではスバルは生き残れないぞ」

 

【GOD PARTS 1】大型ディスプレイ

タッチ式ディスプレイでデジタル感を強調

「デジタルコクピット」と呼ばれるインテリアは未来っぽい雰囲気です。特に、センターディスプレイは非常に大型で11.6インチもあり、このクルマのデジタル感を増幅しています。もうひとまわり大きければテスラといい勝負です。

 

【GOD PARTS 2】ステアリング

スイッチが多すぎてちょっとわかりにくい

様々な操作をステアリング上のスイッチでこなせます。あまりにもスイッチが多すぎてわかりにくいですが、ステアリングフィールは最高です。なお、「STIスポーツ」グレードでは、レッドステッチがスポーティ感を演出しています。

 

【GOD PARTS 3】水平対向エンジン

重厚感は失われたがレギュラーガソリンでOK

1.8ℓの4気筒水平対向ターボエンジンは、先代型より排気量がアップしましたが、最高出力の向上はわずかなのが残念です。ボクサーエンジンらしい重厚感も薄れていますが、レギュラーガソリン仕様とはうれしいかぎりです。

 

【GOD PARTS 4】2本出しマフラー

後ろ姿をスポーティに見せる2本出しマフラー

かつて2本出しマフラーといえば、高性能モデルの象徴のような仕様でした。レヴォーグはステーションワゴンでありながら単なる道具ではなく、スポーティな走りもこなせるということで、2本出しも似合います。

 

【GOD PARTS 5】ドライブモード

まるでスマホをいじるかの感覚

ステアリングの「MODE」ボタンを押すと、ディスプレイ全体にドライブモードの選択画面が表示されます。タッチパネル操作なので、スマホをいじる感覚でエンジンやサスペンションなどの制御具合を変更できます。

 

【GOD PARTS 6】STI

スポーツモデルの象徴が大人な乗り心地を実現

スバルのスポーツモデルに冠された名称が「STI」です。かつては激しい走りを連想させましたが、現在は上質な仕様になりました。このSTIグレードにはZF製電子制御ダンパーが搭載されていて、乗り心地も安定感も最高です。

 

【GOD PARTS 7】エアインテーク

ターボ車らしさをデザインで表現

ボンネット上に開けられた穴は、空気の取り入れ口です。かつてターボ車といえば、必ずボンネット上にこのような穴がありましたが、最近は穴のないターボもあります。新型レヴォーグには穴が残され、ターボ車らしくてうれしいです。

 

【GOD PARTS 8】ヘッドライト

ピストン型でシャープな印象

スタイリングは先代型より質感が高く、ラグジュアリーな雰囲気になりました。なかでもこの“コの字”型のヘッドライトはシャープで大人っぽい印象です。ちなみに、この形状はボクサーエンジンのピストンを表現しているそうです。

 

【GOD PARTS 9】ラゲッジルーム

用途を悩むほど広い床下収納スペース

これぞステーションワゴンという容量492ℓの広いラゲッジルームを備えています。当然、リアシートは前方へ倒して荷室を広げることもできます。さらに床下のボードを持ち上げれば、こんなに大きな床下収納(写真下)が! 何を収納するか悩みます。

 

【これぞ感動の細部だ!】アイサイトX

「ぶつからないクルマ」の進化は続く

いまやスバルの象徴ともいえる先進安全装備「アイサイト」は、さらに進化して、名称も「アイサイトX」へと変更されました。自動車専用道路で60㎞/h以下という条件はありますが、「渋滞時ハンズオフアシスト」機能は、自動運転への第一歩。センターディスプレイ上部にあるカメラはドライバーの居眠りまでチェックしてくれます。より操作がイージーになって「ほぼ絶対ぶつからないクルマ」への進化に期待できます。

 

安全なクルマ“四天王”の先進技術を徹底診断!

高級車から軽自動車まで多くのクルマに導入が進んでいる予防安全技術。そのなかでも交通事故ゼロを目指して、予防安全にいち早く着目して独自の技術開発を進めてきた「安全なクルマ」四天王の先進技術のスゴさを診断する。

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私たちが解説します

自動車・環境ジャーナリスト

川端由美

工学博士。エンジニアから自動車専門誌の編集部員に転身し、現在はフリーランスのジャーナリスト。テクノロジーとエコロジーを専門とする。

モータージャーナリスト

岡本幸一郎

高級輸入車から軽自動車まで幅広く網羅。各社の予防安全技術の多くを体験済み。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。

 

【No.1】SUBARU/アイサイト

追突事故発生率はわずか0.06%! 高速道路で活躍する新機能も便利(川端)

SUBARU

レヴォーグ

310万2000円〜409万2000円

高速道路でのステアリング操舵支援や渋滞時ハンズオフ運転機能、自動車線変更などを実現する「アイサイトX」をオプションで設定。大型11.6インチのセンターディスプレイや12.3インチのフル液晶メーターなどが採用されている。

 

1999年から安全ひと筋 事故ゼロを目指し続ける

アイサイトは1999年からスバルがコツコツ開発してきた技術の蓄積から生まれた機能だ。実際の事故データでも驚く数字が出ており、アイサイトVer.3搭載車の追突事故発生率は、なんと0.06%(※)。一般的な事故発生率と比べると、ひとケタ小さい値だ。

 

新型レヴォーグに搭載された新世代のアイサイトはさらに進化。事故防止のためだけでなく、渋滞時のハンズオフ運転や料金所手前での自動減速など、高速道路で日常的に使える機能が充実した。レーダーにより交差点での飛び出しにも自動ブレーキがかかるなど、その性能はさらに向上している。

※:2014〜2018年の間に国内で販売したアイサイトVer.3搭載車の人身事故件数について調査した結果。公益財団法人 交通事故総合分析センターのデータを基にSUBARUが独自算出した

 

↑ステレオカメラの視野を広げ、コーナーレーダーを搭載。デジタルマップと複合させて、目では見えにくい物体まで検知する

 

↑アイサイトXでは、デジタルマップのデータとGPS情報を活用。高速道路のカーブ手前で、自動で減速する

 

↑前側方プリクラッシュセーフティでは、死角から近づく車両を検知。警告に加えて、自動ブレーキまで支援する

 

[川端さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★★

 

【No.2】トヨタ/トヨタ セーフティセンス

高級車からコンパクトカーまで幅広く充実させるのはさすが(川端)

トヨタ

ヤリス クロス

179万8000円〜281万5000円

レーダークルーズコントロールをはじめとする高度な駐車支援システムや、もしものときにドライバーやクルマを助けるヘルプネットなど充実した装備を誇る。ハイブリッドモデルで最高30.8km/Lの燃費性能も優秀だ。

 

安全装備を幅広く展開して多くの人の安心につなげる

さすがトヨタ! と思うのは、クラウンのような高級車はもちろん、ヤリスのようなコンパクトカーまで安全装備を充実させている点。なぜなら、この種のエントリーカーの需要は、初心者や高齢者など運転技術に不安を抱くドライバーにこそ高いからだ。ヤリスなどで採用される駐車支援機能は、初心者にうれしい機能だろう。

 

交差点右折時に直進してくるクルマを検知するだけでなく、その先の横断歩道を渡る歩行者も検知してブレーキ操作支援を行うのは、優れたセンシング技術の賜物。これをコンパクトカーにも導入するのは、さすがトヨタ! である。

 

↑注目すべきは街灯のない夜の道でも自動ブレーキが作動する点。視野の悪い状況でのドライバー支援の機能も充実している

 

↑交差点を横断する歩行者を検知して、自動ブレーキをかける機能も搭載。優れたセンシング技術で実現した

 

↑駐車スペースへの誘導を行う機能を搭載。メモリ登録した区画線のない駐車スペースへも誘導してくれる

 

[川端さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★

ステアリング制御性能 ★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★

 

【No.3】ボルボ/インテリセーフ

独自の視点で予防安全を研究し先進技術を実現させる先駆者(岡本)

ボルボ

XC60

639万円〜949万円

車両や歩行者、サイクリスト、大型動物との衝突を回避、または衝突被害を軽減するための警告およびブレーキ作動を行うシティ・セーフティを搭載。全ラインナップが電動化を実現し、48Vマイルドハイブリッドとプラグ・イン・ハイブリッドモデルが揃う。

 

衝突軽減ブレーキの先駆者でいち早く歩行者などにも対応

日本では自動停止する機能が認められていなかったところ、その突破口を開いたのは日本のメーカーではなくボルボだ。完全停止可能なブレーキを日本で初めて導入したのが2009年のこと。以降、先進技術を次々に取り入れるとともに、いち早く歩行者やサイクリスト、大型動物なども検知できるようにした。最新の技術は被害軽減ブレーキの作動を自車線内に入ってきた対向車や右折時の対向車にも対応させたほか、ステアリングを制御して障害物との衝突回避や対向車線へのはみ出しからの復帰なども実現。より多くのシーンに対応できるように進化している。

 

↑様々な対象物を検知可能。交差点での右折時には対向車の動きを監視し、万一の際には被害軽減ブレーキを作動させる機能も

 

↑後方から追突の危険を検知した場合、ブレーキ力を高めて二次被害を予防する。シートベルトの巻き取りも行う

 

[岡本さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★

 

【No.4】メルセデス・ベンツ/レーダーセーフティ

事故を検証することで生まれる予防安全技術は最先端をいく(岡本)

メルセデス・ベンツ

Eクラス

769万円〜1144万円

前方約250m、側方約40m、後方約80mを検知するレーダーと、約90mの3D視を含む約500m前方をカバーするステレオカメラを搭載。衝突時の衝撃音の鼓膜への影響を低減する「PRE-SAFEサウンド」技術も採用する。

 

SクラスからAクラスまで同等の機構を惜しみなく搭載

メルセデス車が関わった事故現場に急行してあらゆる形態の事故を検証してきた知見を活かし、安全性の向上に取り組んできたメルセデス・ベンツ。その答えのひとつがレーダーセーフティだ。自然現象の影響を受けにくいミリ波レーダーなどによって、周囲のクルマや状況を認識してドライバーをサポートする安全運転支援システム。これをすべてのモデルで搭載しているのも同社ならではだ。

 

最近では他社に先駆けてARナビも採用。カメラで捉えた前方風景をナビ画面に重ねることで運転に余裕を生む技術は、やはりメルセデスの知見が成せる先進性である。

 

↑移動したい方向へウィンカーを点滅させるだけで自動で車線変更が可能。高速道路などでの運転をラクにする

 

↑衝突時のダメージを最小限に抑える「PRE-SAFE」。わずか数秒の間に乗員の命を守りやすい状態に調整する

 

↑天候や周囲の明るさに影響を受けることなく高度な検知が可能なミリ波レーダー。多目的カメラと複数のセンサーを組み合わせて安全運転支援を行う

 

[岡本さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★★

安全なクルマ“四天王”の先進技術を徹底診断!

高級車から軽自動車まで多くのクルマに導入が進んでいる予防安全技術。そのなかでも交通事故ゼロを目指して、予防安全にいち早く着目して独自の技術開発を進めてきた「安全なクルマ」四天王の先進技術のスゴさを診断する。

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私たちが解説します

自動車・環境ジャーナリスト

川端由美

工学博士。エンジニアから自動車専門誌の編集部員に転身し、現在はフリーランスのジャーナリスト。テクノロジーとエコロジーを専門とする。

モータージャーナリスト

岡本幸一郎

高級輸入車から軽自動車まで幅広く網羅。各社の予防安全技術の多くを体験済み。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務める。

 

【No.1】SUBARU/アイサイト

追突事故発生率はわずか0.06%! 高速道路で活躍する新機能も便利(川端)

SUBARU

レヴォーグ

310万2000円〜409万2000円

高速道路でのステアリング操舵支援や渋滞時ハンズオフ運転機能、自動車線変更などを実現する「アイサイトX」をオプションで設定。大型11.6インチのセンターディスプレイや12.3インチのフル液晶メーターなどが採用されている。

 

1999年から安全ひと筋 事故ゼロを目指し続ける

アイサイトは1999年からスバルがコツコツ開発してきた技術の蓄積から生まれた機能だ。実際の事故データでも驚く数字が出ており、アイサイトVer.3搭載車の追突事故発生率は、なんと0.06%(※)。一般的な事故発生率と比べると、ひとケタ小さい値だ。

 

新型レヴォーグに搭載された新世代のアイサイトはさらに進化。事故防止のためだけでなく、渋滞時のハンズオフ運転や料金所手前での自動減速など、高速道路で日常的に使える機能が充実した。レーダーにより交差点での飛び出しにも自動ブレーキがかかるなど、その性能はさらに向上している。

※:2014〜2018年の間に国内で販売したアイサイトVer.3搭載車の人身事故件数について調査した結果。公益財団法人 交通事故総合分析センターのデータを基にSUBARUが独自算出した

 

↑ステレオカメラの視野を広げ、コーナーレーダーを搭載。デジタルマップと複合させて、目では見えにくい物体まで検知する

 

↑アイサイトXでは、デジタルマップのデータとGPS情報を活用。高速道路のカーブ手前で、自動で減速する

 

↑前側方プリクラッシュセーフティでは、死角から近づく車両を検知。警告に加えて、自動ブレーキまで支援する

 

[川端さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★★

 

【No.2】トヨタ/トヨタ セーフティセンス

高級車からコンパクトカーまで幅広く充実させるのはさすが(川端)

トヨタ

ヤリス クロス

179万8000円〜281万5000円

レーダークルーズコントロールをはじめとする高度な駐車支援システムや、もしものときにドライバーやクルマを助けるヘルプネットなど充実した装備を誇る。ハイブリッドモデルで最高30.8km/Lの燃費性能も優秀だ。

 

安全装備を幅広く展開して多くの人の安心につなげる

さすがトヨタ! と思うのは、クラウンのような高級車はもちろん、ヤリスのようなコンパクトカーまで安全装備を充実させている点。なぜなら、この種のエントリーカーの需要は、初心者や高齢者など運転技術に不安を抱くドライバーにこそ高いからだ。ヤリスなどで採用される駐車支援機能は、初心者にうれしい機能だろう。

 

交差点右折時に直進してくるクルマを検知するだけでなく、その先の横断歩道を渡る歩行者も検知してブレーキ操作支援を行うのは、優れたセンシング技術の賜物。これをコンパクトカーにも導入するのは、さすがトヨタ! である。

 

↑注目すべきは街灯のない夜の道でも自動ブレーキが作動する点。視野の悪い状況でのドライバー支援の機能も充実している

 

↑交差点を横断する歩行者を検知して、自動ブレーキをかける機能も搭載。優れたセンシング技術で実現した

 

↑駐車スペースへの誘導を行う機能を搭載。メモリ登録した区画線のない駐車スペースへも誘導してくれる

 

[川端さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★

ステアリング制御性能 ★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★

 

【No.3】ボルボ/インテリセーフ

独自の視点で予防安全を研究し先進技術を実現させる先駆者(岡本)

ボルボ

XC60

639万円〜949万円

車両や歩行者、サイクリスト、大型動物との衝突を回避、または衝突被害を軽減するための警告およびブレーキ作動を行うシティ・セーフティを搭載。全ラインナップが電動化を実現し、48Vマイルドハイブリッドとプラグ・イン・ハイブリッドモデルが揃う。

 

衝突軽減ブレーキの先駆者でいち早く歩行者などにも対応

日本では自動停止する機能が認められていなかったところ、その突破口を開いたのは日本のメーカーではなくボルボだ。完全停止可能なブレーキを日本で初めて導入したのが2009年のこと。以降、先進技術を次々に取り入れるとともに、いち早く歩行者やサイクリスト、大型動物なども検知できるようにした。最新の技術は被害軽減ブレーキの作動を自車線内に入ってきた対向車や右折時の対向車にも対応させたほか、ステアリングを制御して障害物との衝突回避や対向車線へのはみ出しからの復帰なども実現。より多くのシーンに対応できるように進化している。

 

↑様々な対象物を検知可能。交差点での右折時には対向車の動きを監視し、万一の際には被害軽減ブレーキを作動させる機能も

 

↑後方から追突の危険を検知した場合、ブレーキ力を高めて二次被害を予防する。シートベルトの巻き取りも行う

 

[岡本さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★

 

【No.4】メルセデス・ベンツ/レーダーセーフティ

事故を検証することで生まれる予防安全技術は最先端をいく(岡本)

メルセデス・ベンツ

Eクラス

769万円〜1144万円

前方約250m、側方約40m、後方約80mを検知するレーダーと、約90mの3D視を含む約500m前方をカバーするステレオカメラを搭載。衝突時の衝撃音の鼓膜への影響を低減する「PRE-SAFEサウンド」技術も採用する。

 

SクラスからAクラスまで同等の機構を惜しみなく搭載

メルセデス車が関わった事故現場に急行してあらゆる形態の事故を検証してきた知見を活かし、安全性の向上に取り組んできたメルセデス・ベンツ。その答えのひとつがレーダーセーフティだ。自然現象の影響を受けにくいミリ波レーダーなどによって、周囲のクルマや状況を認識してドライバーをサポートする安全運転支援システム。これをすべてのモデルで搭載しているのも同社ならではだ。

 

最近では他社に先駆けてARナビも採用。カメラで捉えた前方風景をナビ画面に重ねることで運転に余裕を生む技術は、やはりメルセデスの知見が成せる先進性である。

 

↑移動したい方向へウィンカーを点滅させるだけで自動で車線変更が可能。高速道路などでの運転をラクにする

 

↑衝突時のダメージを最小限に抑える「PRE-SAFE」。わずか数秒の間に乗員の命を守りやすい状態に調整する

 

↑天候や周囲の明るさに影響を受けることなく高度な検知が可能なミリ波レーダー。多目的カメラと複数のセンサーを組み合わせて安全運転支援を行う

 

[岡本さんの診断結果]

ブレーキ制御性能 ★★★★★

ステアリング制御性能 ★★★★★

市街地でのアシスト性能 ★★★★

高速道路でのアシスト性能 ★★★★★

2021年はCAFE方式で生き残る、国産「ネオ・スポーツカー」に注目【3選】

エンジン車への規制が強まるなか、各社の威信を賭けたスポーツカーが生まれている。燃費規制という環境対応を見据えつつ開発されるのが、ネオ・スポーツカーだ。

※こちらは「GetNavi」 2021年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

環境に配慮した「ネオ・スポーツカー」

世界各国でエンジンを搭載したクルマへの規制が強まっている。アメリカや欧州で始まった「CAFE」という燃費規制が、日本でも2020年の燃費基準から導入されている。

 

CAFEとは自動車の燃費規制で、車種別ではなくメーカー全体で出荷台数を加味した平均燃費を算出し、規制をかける方式。ある車種では燃費基準を達成できなくても、そのほかの車種の燃費を向上させることでカバーできるというものだ。

 

燃費基準を大きく上回るEVやPHVなどを開発してCAFEの規制値をメーカー全体の出荷台数でクリアすれば良いので、規制値までの余剰分で走りやスタイルを楽しめる新たなスポーツカーが登場する。それが「ネオ・スポーツカー」である。

 

EVやハイブリッド、スタイルではSUVが全盛だが、2021年は注目モデルが続々登場する。メーカーが環境への対応を視野に入れるなかで登場する次世代のスポーツカーが与えてくれる夢に、期待せずにはいられない。

 

【その1】伝統のデザインを継承しパワフルな走りも健在

日産

フェアレディZ

価格・発売日未定

長いノーズと切り立つテールエンドは歴代フェアレディZのデザインそのもの。ヘッドライトは2代目の240ZGに用いられたドーム型レンズを再現するなど、レトロモダンなテイストだ。3.0L V6エンジンのパワーに期待したい。

↑ヘッドライトのティアドロップ形状は初代S30型を、LEDライトの2つの半円のデザインは、2代目240ZGをイメージしている

 

【ちなみに日産のエコカーの代表選手】

リーフ

332万6400円~499万8400円

初代モデルが登場してから10年を迎えた今年、累計販売台数が50万台を突破。2017年には62kWhバッテリーを搭載して航続距離を大きく伸ばしたリーフe+も登場している。

 

【その2】水平対向エンジンを継承し意のままに操れるFRマシン

スバル

BRZ

価格・発売日未定

力強い加速とフィーリングの良さを両立した、2.4L水平対向エンジンを搭載。新プラットフォームを基に生まれたボディは剛性が増し、ステアリング操作への応答性を高めている。アイサイトも初搭載となる。

↑高いホールド性とフィット感をもたらすスポーツシートを採用。疲れにくく、クルマの挙動を正確にドライバーへ伝えてくれる

 

【ちなみにスバルのエコカーの代表選手】

インプレッサ スポーツ

200万2000円~278万3000円

水平対向エンジンと電動技術を組み合わせたパワーユニット「e-BOXER」搭載モデルをグレード設定。スムーズな加速を実現している。

 

【その3】マツダの新たな歴史はこのモデルが作り出す

マツダ

RX-9

価格・発売日未定

2017年の東京モーターショーで世界初公開となったVISIONCOUPE。そのスタイルの流麗さに多くの人が魅了された。RX-9という名称が有力だが、100周年を迎えたマツダの新たな歴史を作る1台として期待したい。

↑インテリアも外観と同様にシンプルかつ流麗なデザイン。多くの人を魅了し、欧州では最も美しいコンセプトカーに選出されたほど

 

【ちなみにマツダのエコカーの代表選手】

マツダ3

222万1389円~368万8463円

ガソリンをディーゼルエンジンのように圧着点火させる「SKYACTIV-X」と、クリーンディーゼルエンジンモデルがラインナップ。環境性能に優れた1台だ。

 

【フォトギャラリー(画像をタップするとご覧いただけます)】

アクアも意外に高評価! 自動車評論家が選ぶ国産コンパクトカー10傑

前回の記事では、ノート、ヤリス、フィットをガチ採点したが、国産コンパクトカーの注目モデルはそれだけにとどまらない。本記事では、自動車評論家の清水草一さんに登場いただき、最新モデルから登場から10年近く経つモデル末期のものまで、現行車種の中から、コンパクトカー十傑をピックアップした。

※こちらは「GetNavi」 2021年2月号に掲載された記事を再編集したものです。

モータージャーナリスト

清水草一さん

編集者を経て自動車ライターに。大乗フェラーリ教開祖を名乗りつつ、道路交通ジャーナリストとしても活動。

 

【関連記事】

ノート、ヤリス、フィットーー「国内3強コンパクトカー」を厳しく採点! 一番よかったのは?

 

 

【ハッチバック編】

サイズに制限のあるコンパクトカーでも後席を倒して多くの荷物を積め、高い実用性を誇る。サイズ感もつかみやすく運転しやすい。

 

【その01】トヨタの定番小型ハッチバックは欧州で人気アリ!

トヨタ

カローラ スポーツ

216万9000円〜284万1000円

ワイド&ローのスポーティなシルエットのボディに用意されたパワーユニットは、ハイブリッドと1.2Lターボの2種。1.2LターボにはiMTと呼ばれるMTも設定。同社のコネクティッドカーとしての顔も持つ。

 

【ココがスゴイ!】バランスは抜群! 基本性能の高さに納得

カローラというと、日本ではツーリングが人気だが、欧州では断然コレ。ガソリン車にMTが用意されているのも欧州風味でイイ!(清水)

 

【その02】ホンダのEVは原点回帰のシンプルデザイン

ホンダ

Honda e

451万円〜495万円

ホンダの新型EVはタウンユースを強く意識し、1充電あたりの走行距離は最長283km。それまでのEVと違い走行距離を伸ばすよりも、短時間の充電で走れる距離を重視。その結果、わずか30分の充電で200kmを走行可能だ。

 

【ココがスゴイ!】後輪駆動ゆえの小回り性能に驚愕

航続距離は短めだが、それはシティコミューターに徹しているから。軽より小回りが利いて感動! デザインはシンプルの極致で美味だ。(清水)

 

【その03】スズキらしい個性が光る隠れた傑作!

スズキ

イグニス

 142万3400円〜203万600円

クロスオーバーSUV風のコンパクトカー。軽自動車並みの3.7mの全長は街なかで扱いやすいサイズだ。今年の仕様変更ではデュアルカメラブレーキサポートや助手席のシートヒーター、オートライトが全車標準装備となった。

 

【ココがスゴイ!】室内の広さよりも走りとデザインを優先

やんちゃな顔つきに大地を踏ん張る台形のフォルムは、いかにも走りそう。インテリアはイタリアの小型車みたいでセンス抜群だぜ!(清水)

 

【その04】クラス唯一のクリーンディーゼル搭載で我が道を行く

マツダ

マツダ 2

 145万9150円〜266万7500円

デミオから改称された同車は、パワーユニットは直噴ガソリンエンジンとディーゼルエンジンをラインナップ。特にディーゼルモデルはクラス唯一の搭載車種で、その静粛性能には定評がある。落ち着いたデザインも好評だ。

 

【ココがスゴイ!】唯一無二を掲げるマツダの真骨頂

ディーゼルエンジンを積んだコンパクトカーは、世界的に貴重になりつつある。豊かなトルクとしっかりした足周りは長距離向きだ。(清水)

 

【その05】痛快! そして便利! 国民車にもなれる万能型ホットハッチ

スズキ

スイフト スポーツ

 187万4400円〜214万1700円

エスクード用のエンジンに専用チューンを施した140PSを誇る1.4L直噴ターボを搭載。MT比率が比較的高いのも特徴のモデル。後席も使える実用性と軽快な走りは多くのユーザーが認めるところ。200万円以下からという価格設定も魅力だ。

 

【ココがスゴイ!】走りが楽しい! それでいて弱点なし

1.4L直噴ターボエンジンの加速は痛快そのもの。6速MTはもちろん、6速トルコンATでも十分楽しめる。広さや燃費にも不満ナシさ。(清水)

 

【その06】モデル末期でも魅力が褪せないハイブリッドカー

トヨタ

アクア

181万8300円〜219万8900円

2011年デビューのハイブリッド専用車。車両価格も手の届きやすいハイブリッドカーとしてロングセラーに。パワートレインは2代目プリウスをベースにし燃費面でも高評価。低重心で、シャープなハンドリングも意外な魅力だ。

 

【ココがスゴイ!】登場から10年でも売れ続けるモンスター

ものすごくフツーのクルマに見えて、実は重心が低く、曲がるのが得意。ハイブリッドバッテリーの重量配分の妙だ。いまだに魅力アリ!(清水)

 

【SUV編】

SUVは魅力的だけれども、大きなボディはちょっと……と考えるユーザーにはピッタリのコンパクトカー。その視界の良さは特筆モノだ。

 

【その07】無敵の小型オフローダーは世界中で大ヒット

スズキ

ジムニー シエラ

 179万3000円〜205万7000円

クロカンモデルらしい武骨なスタイリングやラダーフレームなど多くの“本格”装備を持つクルマ。ミッションは信頼性の高い5MTと4ATを設定する。欧州にも輸出されるモデルなので、高速走行も構えることなく巡行可能。

 

【ココがスゴイ!】無骨なデザインが走破性能とマッチ

“ミニGクラス”ともいえる武骨なデザインが、シンプルで実にカッコイイ。悪路の走破性能は世界の一級品。無敵の小ささも強力な武器だ。(清水)

 

【その08】ゴツい顔した優しいヤツ、地味だけど憎めないね

ダイハツ

ロッキー

 170万5000円〜236万7200円

ダイハツのクルマづくりの新コンセプト、DNGAに基づいたSUV。エンジンは1Lの直3ターボで98PS。組み合わされるミッションはCVTのみで、すべてのモデルに4WDが設定されている。トヨタ・ライズとは兄弟車。

 

【ココがスゴイ!】走りも居住性も満足のコンパクト

目立ったところはゼロだが、走りも乗り心地も居住性も適度に満足。SUVだと構えずに、フツーの小型車として買って間違いなし。(清水)

 

【その09】ヤリスに足りない部分をすべて満足させました

トヨタ

ヤリス クロス

 179万8000円〜281万5000円

ヤリスとメカニカルコンポーネンツを共有するSUV。コンパクトな分類に入るが全幅で1700mmを超えるので3ナンバーサイズだ。パワーユニットは1.5Lガソリンエンジンとハイブリッドの2本立てで先進安全装備も充実。

 

【ココがスゴイ!】コンパクトだけれど押し出し感は十分さ

大ヒット中のヤリスの弱点は、後席の狭さ。でもヤリス クロスならまったく問題ナシ。見た目もカッコイイし、4WDも選べるぜ。(清水)

 

【その10】オシャレな都会派ながらキラリと光るスバルイズム

スバル

SUBARU XV

220万円〜292万6000円

現行モデルは2017年登場。2020年9月に大幅な改良が加えられた。基本メカニズムはスバルの伝統、水平対向エンジンにシンメトリカルAWDを組み合わせたもの。スバルの先進安全装備アイサイトを全モデルに標準装備。

 

【ココがスゴイ!】オシャレSUVだが走りは本物

XVに乗っていると、オシャレでアクティブな遊び上手に見えるから不思議だよね。もちろんスバル車だけに、走りは地味に本物さ。(清水)

 

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新世代「アイサイト」の進化に感動! 新型レヴォーグで「プリクラッシュブレーキ」を実体験レポート

10月15日に正式デビューする新型「レヴォーグ」。その目玉は何と言っても最新版「アイサイト」搭載でしょう。すでに始まっている先行予約では、半数以上が「アイサイトX」をオプションとして装備していると伝えられており、新世代アイサイトに対するユーザーの期待値はとても高いことが窺えます。その新世代アイサイトのプリクラッシュブレーキを先行体験する機会がありました。今回はその体験レポートをお届けしたいと思います。

↑新型「レヴォーグ」GT-H(左)とSTI Sport(右)

 

【関連記事】
新世代の「アイサイトX」は何がすごいのか? 「新型レヴォーグ」で体験した安全運転支援システムの最前線

 

プリクラッシュブレーキに追加された2つの機能

スバルは2030年に死亡事故をゼロにするとの目標を立てています。そのために、まず事故につながらないための技術としてアイサイトを実装。そのアイサイトも今回で4世代目に突入しています。新世代アイサイトでは、オプションで機能を大幅に拡充する「アイサイトX」を用意したことに注目が集まっていますが、実はそのベースとなるアイサイトの進化も目を見張るものがあります。それがプリクラッシュブレーキに追加された新機能です。

↑新型「レヴォーグ」 GT-H

 

プリクラッシュブレーキといえば大半が正面にある障害物への衝突を回避・軽減する機能を指します。しかし、新世代アイサイトでは“前側方プリクラッシュブレーキ”と“前側方警戒アシスト”の搭載により、出会い頭の衝突に対するプリクラッシュブレーキを搭載したのです。この実現は2つの新たな技術によってもたらされています。

 

一つはアイサイトの視野角拡大で、二つめは左右側方の障害物を捉える77GHzミリ波レーダーの追加です。この二重のサポートで側方より迫ってくるクルマを早期に捉えて警告。さらに、衝突の可能性が高まっているのに進行を続けると自動的にブレーキを作動させます。これによって交差する車両との衝突回避/軽減を行うのです。

 

体験では新世代アイサイトを搭載した2台の新型レヴォーグを使って行われました。無線で合図を送るともう一台の新型レヴォーグが見通しの悪い交差点へ接近。自車がそろそろと交差点へと進入すると、近づいた新型レヴォーグを検知して警報音でそれを報知したのです。通常ならここで停止して事なきを得ますが、体験ではわざと進行を継続。すると今度は交差点から出る前に、強制的にブレーキがかかって衝突を回避したのです。

↑新世代「アイサイト」ではカメラの視野角拡大とミリ波レーダーを併用することで出会い頭での衝突を回避することを可能にした

 

↑左側方から車両が近づいていることを検知。まずは軽いアラーム音と共に、メーター内とカーナビ画面上(丸印)で知らせてくれる

 

↑左側方からの車両と衝突の危険があるとシステムが判断すると、激しいアラーム音と共に自動的にブレーキ制御が入る。停止後にブレーキを踏むとアラーム音は消える仕組みだ

 

このデモはこれだけにはとどまりませんでした。右折時に横断歩道を渡っている歩行者に対してもプリクラッシュブレーキを動作させたのです。交差点で右折をしようとして待っていたとき、交差するクルマが停止して行かせてくれることがあります。譲られた方としては、その感謝に応えようと急いで右折しようとしますよね。しかし、その先には同じように車が止まってくれたことで横断しようとしていた歩行者がいる可能性もあります。もし、この歩行者に気付かなければそれこそ大変な事態に陥ります。新しいアイサイトではこうしたシーンでも歩行者を認識して衝突を回避・軽減してくれるのです。

↑新世代アイサイトが歩行者を検知して自動的にブレーキ制御を作動させた時の様子。歩行者の動きも予測して認識できる

 

↑歩行者の存在をアイサイトが検知したとき、車内では警報と共に「前方注意」のアイコンをメーター内に表示してブレーキを自動的に作動させる

 

新機能“前側方プリクラッシュブレーキ”と“前側方警戒アシスト”

 

ただ、すべてのシーンで対応できるわけではありません。認識できるのはあくまでセンサーが人として認識した場合のみ。歩行者の場合は身長が1m未満の子供や腰の曲がった老人などは認識しにくいようで、もっと言えば傘を差していたりすると形状認識がどうしても難しくなってしまうそうです。システムに100%頼りっきりになるのではなく、これはあくまでドライバーのミスをサポートしてくれるシステムなのです。

 

この体験を終え、一連のシステムの開発に関わった方にお話を聞くこともできました。それによると、このプリクラッシュブレーキを実現するにあたっては従来のシステムでは対応できなかったというのです。それが従来の負圧式のブレーキブースターではなく「電動ブレーキブースター」を採用したことです。

 

シャシー設計部の佐藤 司さんは「今までのブレーキでは反応速度や制動力で限界があった。新世代アイサイトでは、交差点での出会い頭の事故や歩行者との衝突を避けることを目標としており、従来の負圧を利用したブースターでは満足できる性能が発揮できない。コストは上がるけれどもこの実現のために敢えて採用した」と、採用に至った経緯を明かしてくれました。

↑交差点でのプリクラッシュブレーキを実現するため、コストアップになっても電動ブレーキブースター(左)搭載に踏み切ったと話すシャシー設計部の佐藤 司さん

 

実はガソリン車でプリクラッシュブレーキを動作させる際は、ESC(横滑り防止装置)を使って制動力を発生させています。直線路では時間的にもわずかに余裕があって対応できますが、交差点では制動に必要な距離が短いことから素早い対応が欠かせません。しかし、負圧を発生しない電動車では電動ブレーキブースターが採用されていますが、ガソリン車などでは一部高級車で採用されるのみでした。とはいえ、センシングで認知できても事故につながらないようにしなければ意味がなくなります。新世代アイサイトではこの搭載がコストアップにつながっても、あえてこの採用を決めたというわけです。

↑運転席側ボンネット内に設置された電動ブレーキブースター。佐藤さんによれば負圧式と比べて形状が複雑で設置場所を生み出すのに苦労したそうだ

 

プリクラッシュブレーキを実際に体験

そして、最後のデモとして用意されたのが、「ぶつからないクルマ」としてアイサイトの存在を一躍知らしめたプリクラッシュブレーキの体験会です。この日は渋滞の最後尾を検知して自動停止するケースを想定して実施されました。新世代アイサイトではぶつからずに停止できる速度域を従来の50km/hから60km/hに引き上げていますが、それを実際に体験するものです。一般的に停止できるまでの制動距離は速度に2乗に比例して長くなりますから、多くのクルマがぶつからないで停止できる速度域を30km/h前後としていることを踏まえれば、この実力は相当なものであると言えます。

 

体験は新型レヴォーグが60km/hまでフル加速し、念のため、オーバーライドを防止するために指定された位置でアクセルを離してデモは進められました。同乗デモでは助手席に乗車して体験。ドライバーからは「仮想車両までノーブレーキで突っ込みますので、カバンなど手荷物はしっかり掴んでいて下さいね」と念押しされてスタートしました。

↑障害物をアイサイトが検知すると車内では、アラームと共にメーター内とカーナビ上に「前方注意」の警告が表示される

 

アッという間に速度は予定を超える65km/hにまで上昇。一瞬、これで大丈夫か? と思う気持ちをよそに目標物を見つけるとシステムは自動的に警報音を作動させ、ドライバーが対応しないでいると制動を効かせて急減速。さらに近づいたところでダメ押しともなる強力な制動力で無事に停止することができました。

↑時速60キロを超える速度でもぶつかることなく停止できた新型レヴォーグのプリクラッシュブレーキ

 

プリクラッシュブレーキの体験会

 

高速道路ではもっと速度域が高い可能性もありますが、警報を鳴動させることでドライバーに対して注意喚起ができるわけで、仮に間に合わずに最後尾の車両のぶつかってしまった場合でも速度を下げることでダメージを大きく引き下げられるのは間違いありません。

 

他にも新型レヴォーグでは、インプレッサにも採用された「歩行者保護エアバッグ」を標準で搭載しています。事故につながらない予防安全がアイサイトの役割ですが、それでも事故が避けられなかった時にそのダメージを最小限にとどめるべく徹底したこだわりをもって対応しているのです。“2030年の死亡事故ゼロ”を目指すスバルが新型レヴォーグでその目標に向けて大きな一歩を踏み出したと言えるでしょう。

↑インプレッサ、XVに続いて、新型レヴォーグにも歩行者保護用エアバッグが標準装備されている

 

↑助手席にはシートベルトの効果を高めるために座面にはエアバッグを組み込む。日本仕様では初採用となった

 
 

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新世代の「アイサイトX」は何がすごいのか? 「新型レヴォーグ」で体験した安全運転支援システムの最前線

スバルは8月20日、新型「レヴォーグ」の先行予約を開始。6年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型レヴォーグの正式な発表日は10月15日が予定されています。今回は先進安全運転支援システム(ADAS)で大幅な進化を遂げた新世代「EyeSight(アイサイト)」をプロトタイプの事前試乗会で体験して参りました。

↑新型レヴォーグの最上位グレード「STI Sport EX」

 

新型レヴォーグの進化レベルは?

まずは新型レヴォーグの概要を紹介しましょう。ボディサイズは全長4755×全幅1795×全高1500mmで、現行よりも65mm長く、15mm幅広くなりました。それでいて、立体駐車場にも収まるなど国内の使用環境に十分配慮したサイズとなっています。全体にエッジが効いたデザインで身をまとい、立体的なフロントグリルからフェンダーは斬新さを伝えながら新世代レヴォーグであることを実感させてくれます。

 

ラインナップされたエンジンは新開発の水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボのみとなりました。最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生し、トランスミッションは新開発のリニアトロニックCVT、駆動方式は4WDを採用します。ラインナップは、基本グレードである「GT」「GT-H」「STI Sport」の3モデルに加え、「アイサイトX」を標準搭載した「GT EX」「GT-H EX」「STI Sport EX」の計6モデルを用意。

 

ダッシュボードはセンターに11.6インチのタテ型ディスプレイを配置し、わずかに高めにシフトしたことで包まれ感を演出。センターコンソールと両サイドのアームレストは素材を合わせ込み、シート表皮はグレードごとに違えても質感を重視した造り込みがされており、その質感は間違いなくクラス随一と断言していいでしょう。しかも、シートは単に座り心地だけにとどまらず、長時間座っていても姿勢が崩れにくくする工夫もされているとのこと。

↑11.6インチ大型ディスプレイを中心に先進的な印象が伝わってくる

 

↑内装の統一感は細部までに及び、質感か確実にレベルアップ

 

先進安全運転支援システム新世代「アイサイト」を体験

そして、ここからが今日の本題。新世代「アイサイト」についてです。本システムでは、広角化したステレオカメラに加えて、フロントバンパー左右に77GHzミリ波レーダー、電動ブレーキブースターを組み合わせたスバル初のシステム。これにより、右折時の対向車、左折時の横断歩行者、横断自転車との衝突回避を新たにサポートできるようになったのです。

↑新型レヴォーグに搭載された新世代アイサイト。スウェーデンのVeoneer社製ステレオカメラを初採用

 

↑新世代アイサイトのコントロール部。右並び中段がメインスイッチ

 

さらに、約80km/h以下では「プリクラッシュステアリングアシスト」がブレーキ制御に加えて操舵制御も行って衝突回避をサポート。前側方から車両が近づくと警報を発してブレーキ制御を行う前側方プリクラッシュブレーキ・前側方警戒アシストもスバルとして初めて搭載しました。また、「リヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」では、斜め側方から近づく車両に対して音と表示で警告しつつ、それでもなお車線変更をしようとすると、電動パワーステアリングが元の車線に押し戻す力強くアシストします。

 

新型レヴォーグではこれらの機能を全グレードに標準で装備。スバルの安全思想がしっかりと反映されたと言っていいでしょう。

 

加えて新型レヴォーグでは「アイサイトX」と呼ばれる+35万円のオプションも用意しています。準天頂衛星「みちびき」やGPSから得られる情報と3D高精度地図データを利用することで、より高度な運転支援機能が上乗せされるパッケージです。その中にはナビ機能など3つの表示モードを備えるフル液晶パネルメーターも含まれます。しかし、中でももっともインパクトある機能と言えるのが“渋滞時ハンズオフアシスト”でしょう。これは約50km/h以下の渋滞時になるとステアリングから手を離しても先行車に自動追従する機能です。

↑オプションの「アイサイトX」で装備される12.3インチのフル液晶メーター

 

使ってみればその時の快適さは格別なものでした。停止しても10分以内なら先行車に追従して発進してハンズオフ走行が再開。渋滞時だけなの? と思う人もいるでしょうが、渋滞中こそ運転のストレスはたまりやすいわけで、その低減にこの機能は大きな効果を発揮するのは間違いありません。ただ、スマートフォンを操作するなどして、視線を前方から外すとこの機能は解除されてしまいます。この機能は自動運転を実現したのではなく、あくまで運転の責任がドライバーにある自動運転レベル2のカテゴリーに入るものだからです。

↑「渋滞時ハンズオフアシスト」では、前方を見ている限り50km/h以下でハンズオフで走行できる

 

↑渋滞時ハンズオフアシスト走行時のメーター内表示。左下のアイコンでドライバーの視線を捉えていることが分かる

 

3D高精度マップには料金所や道路カーブの情報まで収録されており、衛星で測位した高精度な位置情報とリンクして、この時の制御も自動化しました。試乗会では料金所に見立てた場所を用意していましたが、ここに近づくとメーター内にその表示を出して約20km/hまで自動的に減速していきます。カーブでは同じようにカーブがあることを示すアイコンを表示した後、そのコーナーに応じて最適かつ安全な速度で走行するということです。

↑料金所として設定した場所では、メーター内にそれを表示して自動的に最適な速度に減速していく

 

アイサイトXでは、24GHzのマイクロ波レーダーを使った「アクティブレーンチェンジアシスト」も搭載されました。ドライバーがレーンチェンジをしようとウインカーを操作すると、レーダーが斜め後方の車両の存在を検知。システムが安全と判断すると自動的にレーンチェンジへと移行します。この時ドライバーはステアリングに軽く手を添えておけばOK。レーンチェンジが完了すればウインカーは自動的に停止します。このメリットは公道でぜひ試してみたいですね。

↑「アクティブレーンチェンジアシスト」はアイサイトXに装備。70km/h~120km/hの車速域で利用できる

 

↑アクティブレーンチェンジアシストの作動状況はメーター内にCGで反映される

 

見逃せないのが「ドライバー異常時対応システム」の搭載です。これはダッシュボード中央上部に備えられた赤外線カメラでドライバーの表情を捉え、一定時間、顔の向きがそれたり、ステアリングから手を離し続けたりしていると(ハンズオフ走行時を除く)音と表示で警告を発し、それでもドライバーが反応しない場合には緩やかに減速しながらハザードランプを点灯。約30km/hにまで減速するとホーンまでも断続的に鳴らして周囲に異常を知らせ、停止に至るというものです。

 

ここで注目すべきが停止する場所で、この機能では路肩に寄せることはせず、そのまま同じ車線上で停止します。理由は道路状況を把握できてないまま路肩に寄せたり、車線を跨ぐとなれば危険性はむしろ高くなってしまうからです。そのため、このモードに入ってもカーブでは減速したままで停止せず、車線を維持しながら走行を継続。先が見通せる直線路に入ってから停止する仕様としています。後続車の追突を最小限に抑えながら、ドライバーの異常を知らせる最良の対応を果たしたというわけです。

 

「ドライバー異常時対応システム」の動作状況

 

これまでADASは事故に対する機能アップを中心として続けられてきました。それが新世代アイサイトでは、“X”でドライバー自身に発生するかもしれない異常にまで対応するようになったのです。ドライバーに異常が発生すれば別の事故を誘発する可能性は高く、2030年までに死亡事故ゼロを目指しているスバルにとっては、この問題を避けて通るわけには行かなかったのでしょう。先進技術で着実に安全性を高めているスバルの動向には今後も目が離せそうにありません。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

新世代の「アイサイトX」は何がすごいのか? 「新型レヴォーグ」で体験した安全運転支援システムの最前線

スバルは8月20日、新型「レヴォーグ」の先行予約を開始。6年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型レヴォーグの正式な発表日は10月15日が予定されています。今回は先進安全運転支援システム(ADAS)で大幅な進化を遂げた新世代「EyeSight(アイサイト)」をプロトタイプの事前試乗会で体験して参りました。

↑新型レヴォーグの最上位グレード「STI Sport EX」

 

新型レヴォーグの進化レベルは?

まずは新型レヴォーグの概要を紹介しましょう。ボディサイズは全長4755×全幅1795×全高1500mmで、現行よりも65mm長く、15mm幅広くなりました。それでいて、立体駐車場にも収まるなど国内の使用環境に十分配慮したサイズとなっています。全体にエッジが効いたデザインで身をまとい、立体的なフロントグリルからフェンダーは斬新さを伝えながら新世代レヴォーグであることを実感させてくれます。

 

ラインナップされたエンジンは新開発の水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボのみとなりました。最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生し、トランスミッションは新開発のリニアトロニックCVT、駆動方式は4WDを採用します。ラインナップは、基本グレードである「GT」「GT-H」「STI Sport」の3モデルに加え、「アイサイトX」を標準搭載した「GT EX」「GT-H EX」「STI Sport EX」の計6モデルを用意。

 

ダッシュボードはセンターに11.6インチのタテ型ディスプレイを配置し、わずかに高めにシフトしたことで包まれ感を演出。センターコンソールと両サイドのアームレストは素材を合わせ込み、シート表皮はグレードごとに違えても質感を重視した造り込みがされており、その質感は間違いなくクラス随一と断言していいでしょう。しかも、シートは単に座り心地だけにとどまらず、長時間座っていても姿勢が崩れにくくする工夫もされているとのこと。

↑11.6インチ大型ディスプレイを中心に先進的な印象が伝わってくる

 

↑内装の統一感は細部までに及び、質感か確実にレベルアップ

 

先進安全運転支援システム新世代「アイサイト」を体験

そして、ここからが今日の本題。新世代「アイサイト」についてです。本システムでは、広角化したステレオカメラに加えて、フロントバンパー左右に77GHzミリ波レーダー、電動ブレーキブースターを組み合わせたスバル初のシステム。これにより、右折時の対向車、左折時の横断歩行者、横断自転車との衝突回避を新たにサポートできるようになったのです。

↑新型レヴォーグに搭載された新世代アイサイト。スウェーデンのVeoneer社製ステレオカメラを初採用

 

↑新世代アイサイトのコントロール部。右並び中段がメインスイッチ

 

さらに、約80km/h以下では「プリクラッシュステアリングアシスト」がブレーキ制御に加えて操舵制御も行って衝突回避をサポート。前側方から車両が近づくと警報を発してブレーキ制御を行う前側方プリクラッシュブレーキ・前側方警戒アシストもスバルとして初めて搭載しました。また、「リヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」では、斜め側方から近づく車両に対して音と表示で警告しつつ、それでもなお車線変更をしようとすると、電動パワーステアリングが元の車線に押し戻す力強くアシストします。

 

新型レヴォーグではこれらの機能を全グレードに標準で装備。スバルの安全思想がしっかりと反映されたと言っていいでしょう。

 

加えて新型レヴォーグでは「アイサイトX」と呼ばれる+35万円のオプションも用意しています。準天頂衛星「みちびき」やGPSから得られる情報と3D高精度地図データを利用することで、より高度な運転支援機能が上乗せされるパッケージです。その中にはナビ機能など3つの表示モードを備えるフル液晶パネルメーターも含まれます。しかし、中でももっともインパクトある機能と言えるのが“渋滞時ハンズオフアシスト”でしょう。これは約50km/h以下の渋滞時になるとステアリングから手を離しても先行車に自動追従する機能です。

↑オプションの「アイサイトX」で装備される12.3インチのフル液晶メーター

 

使ってみればその時の快適さは格別なものでした。停止しても10分以内なら先行車に追従して発進してハンズオフ走行が再開。渋滞時だけなの? と思う人もいるでしょうが、渋滞中こそ運転のストレスはたまりやすいわけで、その低減にこの機能は大きな効果を発揮するのは間違いありません。ただ、スマートフォンを操作するなどして、視線を前方から外すとこの機能は解除されてしまいます。この機能は自動運転を実現したのではなく、あくまで運転の責任がドライバーにある自動運転レベル2のカテゴリーに入るものだからです。

↑「渋滞時ハンズオフアシスト」では、前方を見ている限り50km/h以下でハンズオフで走行できる

 

↑渋滞時ハンズオフアシスト走行時のメーター内表示。左下のアイコンでドライバーの視線を捉えていることが分かる

 

3D高精度マップには料金所や道路カーブの情報まで収録されており、衛星で測位した高精度な位置情報とリンクして、この時の制御も自動化しました。試乗会では料金所に見立てた場所を用意していましたが、ここに近づくとメーター内にその表示を出して約20km/hまで自動的に減速していきます。カーブでは同じようにカーブがあることを示すアイコンを表示した後、そのコーナーに応じて最適かつ安全な速度で走行するということです。

↑料金所として設定した場所では、メーター内にそれを表示して自動的に最適な速度に減速していく

 

アイサイトXでは、24GHzのマイクロ波レーダーを使った「アクティブレーンチェンジアシスト」も搭載されました。ドライバーがレーンチェンジをしようとウインカーを操作すると、レーダーが斜め後方の車両の存在を検知。システムが安全と判断すると自動的にレーンチェンジへと移行します。この時ドライバーはステアリングに軽く手を添えておけばOK。レーンチェンジが完了すればウインカーは自動的に停止します。このメリットは公道でぜひ試してみたいですね。

↑「アクティブレーンチェンジアシスト」はアイサイトXに装備。70km/h~120km/hの車速域で利用できる

 

↑アクティブレーンチェンジアシストの作動状況はメーター内にCGで反映される

 

見逃せないのが「ドライバー異常時対応システム」の搭載です。これはダッシュボード中央上部に備えられた赤外線カメラでドライバーの表情を捉え、一定時間、顔の向きがそれたり、ステアリングから手を離し続けたりしていると(ハンズオフ走行時を除く)音と表示で警告を発し、それでもドライバーが反応しない場合には緩やかに減速しながらハザードランプを点灯。約30km/hにまで減速するとホーンまでも断続的に鳴らして周囲に異常を知らせ、停止に至るというものです。

 

ここで注目すべきが停止する場所で、この機能では路肩に寄せることはせず、そのまま同じ車線上で停止します。理由は道路状況を把握できてないまま路肩に寄せたり、車線を跨ぐとなれば危険性はむしろ高くなってしまうからです。そのため、このモードに入ってもカーブでは減速したままで停止せず、車線を維持しながら走行を継続。先が見通せる直線路に入ってから停止する仕様としています。後続車の追突を最小限に抑えながら、ドライバーの異常を知らせる最良の対応を果たしたというわけです。

 

「ドライバー異常時対応システム」の動作状況

 

これまでADASは事故に対する機能アップを中心として続けられてきました。それが新世代アイサイトでは、“X”でドライバー自身に発生するかもしれない異常にまで対応するようになったのです。ドライバーに異常が発生すれば別の事故を誘発する可能性は高く、2030年までに死亡事故ゼロを目指しているスバルにとっては、この問題を避けて通るわけには行かなかったのでしょう。先進技術で着実に安全性を高めているスバルの動向には今後も目が離せそうにありません。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

新世代の「アイサイトX」は何がすごいのか? 「新型レヴォーグ」で体験した安全運転支援システムの最前線

スバルは8月20日、新型「レヴォーグ」の先行予約を開始。6年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型レヴォーグの正式な発表日は10月15日が予定されています。今回は先進安全運転支援システム(ADAS)で大幅な進化を遂げた新世代「EyeSight(アイサイト)」をプロトタイプの事前試乗会で体験して参りました。

↑新型レヴォーグの最上位グレード「STI Sport EX」

 

新型レヴォーグの進化レベルは?

まずは新型レヴォーグの概要を紹介しましょう。ボディサイズは全長4755×全幅1795×全高1500mmで、現行よりも65mm長く、15mm幅広くなりました。それでいて、立体駐車場にも収まるなど国内の使用環境に十分配慮したサイズとなっています。全体にエッジが効いたデザインで身をまとい、立体的なフロントグリルからフェンダーは斬新さを伝えながら新世代レヴォーグであることを実感させてくれます。

 

ラインナップされたエンジンは新開発の水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボのみとなりました。最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生し、トランスミッションは新開発のリニアトロニックCVT、駆動方式は4WDを採用します。ラインナップは、基本グレードである「GT」「GT-H」「STI Sport」の3モデルに加え、「アイサイトX」を標準搭載した「GT EX」「GT-H EX」「STI Sport EX」の計6モデルを用意。

 

ダッシュボードはセンターに11.6インチのタテ型ディスプレイを配置し、わずかに高めにシフトしたことで包まれ感を演出。センターコンソールと両サイドのアームレストは素材を合わせ込み、シート表皮はグレードごとに違えても質感を重視した造り込みがされており、その質感は間違いなくクラス随一と断言していいでしょう。しかも、シートは単に座り心地だけにとどまらず、長時間座っていても姿勢が崩れにくくする工夫もされているとのこと。

↑11.6インチ大型ディスプレイを中心に先進的な印象が伝わってくる

 

↑内装の統一感は細部までに及び、質感か確実にレベルアップ

 

先進安全運転支援システム新世代「アイサイト」を体験

そして、ここからが今日の本題。新世代「アイサイト」についてです。本システムでは、広角化したステレオカメラに加えて、フロントバンパー左右に77GHzミリ波レーダー、電動ブレーキブースターを組み合わせたスバル初のシステム。これにより、右折時の対向車、左折時の横断歩行者、横断自転車との衝突回避を新たにサポートできるようになったのです。

↑新型レヴォーグに搭載された新世代アイサイト。スウェーデンのVeoneer社製ステレオカメラを初採用

 

↑新世代アイサイトのコントロール部。右並び中段がメインスイッチ

 

さらに、約80km/h以下では「プリクラッシュステアリングアシスト」がブレーキ制御に加えて操舵制御も行って衝突回避をサポート。前側方から車両が近づくと警報を発してブレーキ制御を行う前側方プリクラッシュブレーキ・前側方警戒アシストもスバルとして初めて搭載しました。また、「リヤビークルディテクション(後側方警戒支援システム)」では、斜め側方から近づく車両に対して音と表示で警告しつつ、それでもなお車線変更をしようとすると、電動パワーステアリングが元の車線に押し戻す力強くアシストします。

 

新型レヴォーグではこれらの機能を全グレードに標準で装備。スバルの安全思想がしっかりと反映されたと言っていいでしょう。

 

加えて新型レヴォーグでは「アイサイトX」と呼ばれる+35万円のオプションも用意しています。準天頂衛星「みちびき」やGPSから得られる情報と3D高精度地図データを利用することで、より高度な運転支援機能が上乗せされるパッケージです。その中にはナビ機能など3つの表示モードを備えるフル液晶パネルメーターも含まれます。しかし、中でももっともインパクトある機能と言えるのが“渋滞時ハンズオフアシスト”でしょう。これは約50km/h以下の渋滞時になるとステアリングから手を離しても先行車に自動追従する機能です。

↑オプションの「アイサイトX」で装備される12.3インチのフル液晶メーター

 

使ってみればその時の快適さは格別なものでした。停止しても10分以内なら先行車に追従して発進してハンズオフ走行が再開。渋滞時だけなの? と思う人もいるでしょうが、渋滞中こそ運転のストレスはたまりやすいわけで、その低減にこの機能は大きな効果を発揮するのは間違いありません。ただ、スマートフォンを操作するなどして、視線を前方から外すとこの機能は解除されてしまいます。この機能は自動運転を実現したのではなく、あくまで運転の責任がドライバーにある自動運転レベル2のカテゴリーに入るものだからです。

↑「渋滞時ハンズオフアシスト」では、前方を見ている限り50km/h以下でハンズオフで走行できる

 

↑渋滞時ハンズオフアシスト走行時のメーター内表示。左下のアイコンでドライバーの視線を捉えていることが分かる

 

3D高精度マップには料金所や道路カーブの情報まで収録されており、衛星で測位した高精度な位置情報とリンクして、この時の制御も自動化しました。試乗会では料金所に見立てた場所を用意していましたが、ここに近づくとメーター内にその表示を出して約20km/hまで自動的に減速していきます。カーブでは同じようにカーブがあることを示すアイコンを表示した後、そのコーナーに応じて最適かつ安全な速度で走行するということです。

↑料金所として設定した場所では、メーター内にそれを表示して自動的に最適な速度に減速していく

 

アイサイトXでは、24GHzのマイクロ波レーダーを使った「アクティブレーンチェンジアシスト」も搭載されました。ドライバーがレーンチェンジをしようとウインカーを操作すると、レーダーが斜め後方の車両の存在を検知。システムが安全と判断すると自動的にレーンチェンジへと移行します。この時ドライバーはステアリングに軽く手を添えておけばOK。レーンチェンジが完了すればウインカーは自動的に停止します。このメリットは公道でぜひ試してみたいですね。

↑「アクティブレーンチェンジアシスト」はアイサイトXに装備。70km/h~120km/hの車速域で利用できる

 

↑アクティブレーンチェンジアシストの作動状況はメーター内にCGで反映される

 

見逃せないのが「ドライバー異常時対応システム」の搭載です。これはダッシュボード中央上部に備えられた赤外線カメラでドライバーの表情を捉え、一定時間、顔の向きがそれたり、ステアリングから手を離し続けたりしていると(ハンズオフ走行時を除く)音と表示で警告を発し、それでもドライバーが反応しない場合には緩やかに減速しながらハザードランプを点灯。約30km/hにまで減速するとホーンまでも断続的に鳴らして周囲に異常を知らせ、停止に至るというものです。

 

ここで注目すべきが停止する場所で、この機能では路肩に寄せることはせず、そのまま同じ車線上で停止します。理由は道路状況を把握できてないまま路肩に寄せたり、車線を跨ぐとなれば危険性はむしろ高くなってしまうからです。そのため、このモードに入ってもカーブでは減速したままで停止せず、車線を維持しながら走行を継続。先が見通せる直線路に入ってから停止する仕様としています。後続車の追突を最小限に抑えながら、ドライバーの異常を知らせる最良の対応を果たしたというわけです。

 

「ドライバー異常時対応システム」の動作状況

 

これまでADASは事故に対する機能アップを中心として続けられてきました。それが新世代アイサイトでは、“X”でドライバー自身に発生するかもしれない異常にまで対応するようになったのです。ドライバーに異常が発生すれば別の事故を誘発する可能性は高く、2030年までに死亡事故ゼロを目指しているスバルにとっては、この問題を避けて通るわけには行かなかったのでしょう。先進技術で着実に安全性を高めているスバルの動向には今後も目が離せそうにありません。

 

 

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スバルがジュネーブで最新コンセプトカーを初披露!

スバルは、ジュネーブ・ショーにおいて、「スバルVIZIVツアラーコンセプト」をワールドプレミアした。

 

 

 

スバルは2013年の「スバルVIZIVコンセプト」を皮切りに、安心で愉しいクルマづくりの将来ビジョンを、毎回異なるテーマのもとコンセプトカーの形で具現化している。今回は水平対向エンジンを核としたシンメトリカルAWDと、これまでスバルが培ってきた走り・使い勝手・安全の価値を融合させ、クルマで出かける愉しさが存分に味わえる、ツアラーとしての新たな価値を「スバルVIZIVツアラーコンセプト」で表現している。

 

 

また、今後の自動運転普及期を見据え、進化型アイサイトと各種デバイスを組み合わせた高度運転支援技術を搭載。長距離ドライビングにおけるドライバーの疲労を軽減し、アクティブライフを安心して愉しむことのできる、スバルらしさの詰まったクルマに仕上げている。

 

 

デザインは、スバルが受け継いできた、高い実用性と走りを両立したワゴンモデルを念頭に置き、現在のスバルに共通するデザインフィロソフィ“DYNAMICxSOLID”に基づき、ツアラーらしさを表現。

 

 

また、ヘキサゴングリルから始まる前傾姿勢の硬質なボディに、内側から強い圧力で張り出した躍動感あふれる4つのフェンダーを組み合わせ、走りの愉しさを強調しつつ、安心感を表現した。

 

 

一方、リアには大きなカーゴスペースを設け、道具としての高い実用性も兼ね備えるなど、複数の異なる価値をクロスオーバーさせたツアラースタイルとなっている。

 

 

そして、スバルが2020年頃に実現を見込む、「高度運転支援技術」を水平対向エンジンやシンメトリカルAWDがもたらすパフォーマンスと融合し、スバルならではの安心で愉しいツアラー像を表現している。性能を一層向上させた次世代アイサイト、レーダー、高精度GPS・地図等の採用により、「自動車事故ゼロ」の実現を追求する。

 

 

 

スバルVIZIVツアラーコンセプトの主な仕様

ボディサイズ(全長/全幅/全高):4,775/1,930/1,435mm
ホイールベース:2,730mm
タイヤサイズ:245/40 R20
乗車定員:4名

 

 

【中年名車図鑑】バンではなく“ワゴン”。RVブームを追い風に大ヒットしたスバルの救世主

2017年4月より社名を富士重工業株式会社から変更する株式会社SUBARU。今でこそ利益率が上がり、プレミアムブランドとしての道を歩んでいる同社だが、バブル景気真っ盛りの1980年代終盤は好調なライバルメーカーを傍目に深刻な業績不振に陥っていた。その状況を打開したのが、4WDワゴン・ブームを創出した新型車のレガシィだった。今回はスバル・ブランドの中興の祖、初代レガシィ(1989~1993年)で一席。

バブル期の業績不振を払拭すべく誕生したレガシィ。ワールドワイドの展開を前提に開発された

 

【Vol.7 初代スバル・レガシィ】

バブル景気が最高潮に達していた1980年代終盤の日本の自動車業界。ほとんどの自動車メーカーが大幅増益を記録するなか、富士重工業だけは業績が振るわなかった。高コストの生産体質やヒット作の欠如、そして北米市場への出遅れ……要因は色々とあげられた。打開策として首脳陣は、世界的に量販が見込める2リットルクラスの新型車を開発する方針を打ち出す。そして開発陣には、「造るのは世界に通用する国際戦略車。白紙状態から、すべて自由に設計せよ」という命題が与えられた。この“すべて”とはエンジンや駆動方式といったハード面も含まれており、すなわち伝統の水平対向エンジンや4WDを採用しなくてもいいという意味を持っていた。

 

■起死回生の新型車に“あえて”の水平対向4WD

すべてを自由に――。開発コード“44B”と名づけられたこのプランに対し、開発陣はあえて伝統の水平対向エンジンと4WDを使う決断を下す。完成度が高く、しかも他社とは違う世界戦略車に仕上げるためには、未知の機能やハードを追うのは得策ではない。開発でも生産技術でも多くのノウハウを持ち、しかも他社とは異なる個性を有する水平対向エンジンと4WDを受け継ぐのが最良の方法、と判断したわけだ。もちろん、既存の機構をちょっと手直ししただけで採用するわけではない。新型車には世界をリードする完全新設計の水平対向エンジンと4WD機構を搭載する旨を決定した。

サッシュレスの4ドアセダン。6ライトウィンドウが特徴的だった

 

1989年1月、富士重工業の新しい中核車が満を持してデビューする。車名は“伝承、遺産”の意味を込めて「レガシィ」と名づけられた。ボディタイプはサッシュレスの4ドアセダンと5ドアワゴン=ツーリングワゴンをラインアップ。2ボディともに基本フォルムをくさび形で仕立て、同時にセダンには6ライトウィンドウを、ワゴンには2段式ルーフを採用して個性を主張する。また、ブリスタータイプのフェンダーやブラックアウト化したピラー処理などで見た目のスポーティ感を盛り上げた。内包するインテリアに関しては、“安全・快適にクルマを操る歓び”の創出をテーマに造形を手がける。具体的には、ドライバーを囲むようにアレンジしたメーターおよびセンター部や空気流路の通気抵抗を低減させたベンチレーションシステム、触感がよくサポート性にも優れたシートなどを採用した。

 

注目の水平対向4気筒エンジンはEJ18型1820cc・OHC(110ps)、EJ20型1994cc・DOHC(150ps)、EJ20-T型1994cc・DOHCターボ(220ps)の3機種で、いずれも16バルブヘッドや各気筒独立点火コイル、センタープラグ配置などを導入する。駆動方式はツーリングワゴンが4WDのみで、セダンは4WDと2WD(FF)を用意。また4WD機構は5速MTがビスカスLSD付きのセンターデフ式、4速ATが電子制御多板クラッチを備えたトルクスプリット式をセットした。シャシーに関しては、フロントサスペンションにL型ロワアームのストラット、リアにパラレルリンクのストラットを採用する。また、加減速時の姿勢変化を抑える目的でアンチダイブおよびアンチリフトジオメトリーを取り入れた。最強グレードに据えられたのはEJ20-T型エンジンを搭載するセダンの「RS」で、キャッチフレーズは“ハンドリングセダン”を呼称。専用チューニングの足回りに4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、シックなデザインながら確実に効果を発揮するエアロパーツ群、MOMO製本革巻きステアリング、フロントスポーツシートなどを身にまとったRSは、大人の走り好きを中心に熱い支持を集めた。

 

■ブルース・ウィリスのCMで大ヒットした“ツーリング・ブルース”

富士重工業の新しい中核車は、RVブームの後押しもあって、とくにツーリングワゴンの人気が徐々に高まり始める。そして、1989年10月にターボチャージャーの変更などを実施して扱いやすさを増したEJ20-T型エンジン(200ps)を積むGTグレードが設定されると、その人気は爆発的なものとなった。

“MOMOステ”、スポーツシートをおごるRSはレガシィのイメージリーダーとして人気を博す

 

この勢いを維持しようと、富士重工業はレガシィのバリエーションを積極的に拡大していく。1991年6月のマイナーチェンジでは内外装の意匠変更を図るとともに、上級グレードの「ブライトン」を設定。1992年6月のマイナーチェンジでは、レガシィ初の3ナンバー車であるツーリングワゴン「ブライトン220」を追加する。また、モータースポーツ向けのモデルとして、1989年10月に「RS typeR」を、同年12月にSTIがエンジンチューニングを手がけた「RS typeRA」を発売した。

 

一方、初代レガシィの販売台数を伸ばすうえで大きな役割を果たしたのが、米国の俳優で、当時『ダイ・ハード』シリーズの主演などで高い人気を獲得していたブルース・ウィリスをイメージキャラクターに起用した広告戦略だった。ウィリスがレガシィの広告に登場したのは1991年6月のマイナーチェンジモデルから。テレビCMではケニー・ランキンの『ア・ハウス・オブ・ゴールド』(1992年6月以降はリッチー・サンボラの『ジ・アンサー』)のBGMとともにレガシィを楽しむ姿が、新聞・雑誌広告では“ツーリング・ブルース”というキャッチコピーを背景に渋くきめるカットが、クルマ好きのみならず映画ファンなどからも大注目を浴びた。ブルース・ウィリスを使った広告戦略は1993年まで続き、そのうちの1992年には毎日広告デザイン賞を授賞している。

 

レガシィのデビューを契機に、富士重工業の業績は急速に回復していく。1990年3月期決算では営業損益で200億円以上の赤字だったものが、1991年以降は大幅な黒字を計上した。この数字は、バブル景気の崩壊で苦しむ日本メーカーたちの羨望を集めた。もちろんレガシィ、とくにツーリングワゴンの大ヒットをライバルメーカーが黙って見過ごすはずがない。競合する新しいワゴンが、相次いで市場に投入される。しかし、レガシィの牙城は崩せなかった。レオーネから続くステーションワゴン造りのノウハウが商用車のバンの域を超えられないライバル車を凌駕し、さらに低重心で独特のフィーリングが味わえる水平対向エンジンや卓越した路面追従性を示す先進の4WD機構がクルマ好きのハートをがっちりと掴んでいたからだ。

レオーネから培ったステーションワゴン造りのノウハウを余すことなく注ぎ込んだ

 

首脳陣の英断と開発陣のこだわり、さらにRVブームの追い風にも乗った初代レガシィは、結果的に富士重工業の業績回復を担う牽引車となった。その意味で初代レガシィは、車名の通りに6連星の大いなる遺産=レガシィとなったのである。

 

【中年名車図鑑】

Vol.1 6代目 日産ブルーバード

Vol.2 初代ダイハツ・シャレード・デ・トマソ

Vol.3 4代目トヨタ・セリカ

Vol.4 初代トヨタ・ソアラ

Vol.5 2代目ホンダ・プレリュード

Vol.6 5代目マツダ・ファミリア

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

「よし、弱ペダ民はスバルに乗ろう」 スバルとアニメ「弱虫ペダル」のコラボCMが話題に!!

2月19日、自動車メーカー・スバルとアニメ「弱虫ペダル」のコラボCMが公開され、「スバルさんありがとうー!」「スバルと弱ペダ… 尊い…」とSNSなどで話題になっている。

出典画像:「SUBARU」公式サイトより出典画像:「SUBARU」公式サイトより

 

スバルと「弱虫ペダル」のコラボCMが話題に!

YouTubeに公開された「スバル TVアニメ『弱虫ペダル GLORY LINE』コラボレーションCM」は、15秒ほどの動画。主人公の小野田坂道と仲間が自転車で走行している横を、スバルのスポーツツアラー「レヴォーグ」に乗った寒咲幹らが並走して仲間と共に完走を果たすというもの。


自転車と車の回転する車輪や「レヴォーグ」の車体に反射する坂道の姿、走行音など細部までリアルに制作された今回のCM。車の作画もリアルでありながらアニメっぽい仕上がりになっており、最後には「SUBARUはサイクルロードレースを応援しています」との文字が躍る。

 

このCMが公開されると「SUBARUの新CM良いな~」「よし、弱ペダ民はスバルに乗ろう」といった好評の声が。また、このCMでスバルがサイクルロードレースをサポートしていることを知ったという人も多く、「スバルと自転車とは関係が深かったんだな」「“スバルと自転車は無関係ではない”というのを知ってもらうためのコラボでもあるのか!」といった声も上がっている。

 

自動車会社は異業種コラボを連発中!

近年、アニメと自動車会社のコラボが続いており、2012年にはアニメ「輪廻のラグランジェ」に日産が、OVA「わんおふ-oneoff-」にはホンダが、アニメプロジェクト「PES(Peace Eco Smile)」にはトヨタが関わっていた。

 

さらに異業種コラボは多岐に渡り、2015年にはトヨタの「レクサス」と高級百貨店「バーニーズニューヨーク」がコラボして、ジャケットやニット、シャツ、パンツなどのアパレルを販売している。

 

また、ブルガリはスポーツカーメーカー「マセラティ」とのパートナーシップを2012年から展開中。昨年は「オクト レトロ マセラティ グランスポーツ」「オクト レトロ マセラティ グランルッソ」という、スポーティーでありながらエレガントな時計2種類を発表している。ちなみに「オクト レトロ マセラティ グランスポーツ」は税抜きで144万円、「オクト レトロ マセラティ グランルッソ」は税抜き344万円で、車が一台買えてしまうようなお値段に。

 

様々なコラボを展開する自動車会社だが、次はどのような手で話題を作っていくのか注目だ。

スバル自慢のアイサイトが「科学技術と経済の会会長賞」を受賞

スバルは、一般社団法人科学技術と経済の会(JATES)が主催する「第6回技術経営・イノベーション賞」において同社の運転支援システム、「アイサイト」に対する取り組みが評価され、「科学技術と経済の会会長賞」を受賞したと発表した。なお、表彰式は、2月13日13時30分よりホテル・グランドパレスで行なわれている。

 

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この「技術経営・イノベーション賞」は、日本においてイノベーションを興し、経済成長や産業競争力の強化につなげるための表彰制度。日本発の優れた新規事業を発掘し、そのプロセスを他の技術者・経営者へ紹介。国内でのイノベーションを促進させるために、わが国初の本格的なイノベーション表彰として2012年に創設されている。

 

アイサイトは、世界で初めてステレオカメラのみで、自動車だけでなく歩行者、二輪車までも対象としたプリクラッシュブレーキや、全車速追従機能付クルーズコントロール等を実現したシステム。

 

アイサイトはこれまでも、国土交通省とNASVAが実施する予防安全性能アセスメントにおいて、最高評価であるJNCAP「予防安全性能評価ASV++」に選定されるなど、第三者機関から高い評価を獲得している。

 

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■第6回技術経営・イノベーション賞 「科学技術と経済の会会長賞」

(事業名)運転支援システム”アイサイト”
(受賞者)株式会社スバル
代表取締役社長:吉永 泰之
上級プロジェクトゼネラルマネージャー :樋渡 穣

 

(選考理由)

”アイサイト”は、四半世紀以上の研究開発から生まれた、運転の愉しさと安全性とを両立させるイノベーションである。非常に高い精度を持つステレオカメラ認識技術を、自動車製造ラインに流すための困難克服や、300万キロメートルを超える走行実験、試験、ビッグデータの活用で実現したこのシステムは、多くの類似方式の中で、精度やコスト面で優位にあると考えられ、また究極の安全性に向け進化し続けている点が高く評価された。

 

 

干支は関係なさそうですが、北米スバルの人気CMが復活

スバル・オブ・アメリカはこのほど、新型SUV「スバル・アセント」の発表を記念したテレビスポットCM動画をYouTubeのスバル公式チャンネルで公開した。

 

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このCMのタイトルは「Dog Tested.」、つまり「犬のテスト済み」で、人気の高いペットに焦点をあてたもの。CM動画のバリエーションは「CAR WASH」や「DROP OFF」、「DRIVING LESSON」、「DRIVE WAY」と4パターンを設定され、ぞれぞれ30秒で展開。テーマごとに、犬のファミリー、バークレイズ家が織りなすショートストーリーが楽しめる。

 

愛犬家はもちろんのこと、犬がスバル車をドライブするという、なんともユニークなこれらの動画、気になる方は一度チェックしてみてはいかがだろう。

 

 

 

【体験動画】ゲレンデを疾走する「タクシー」が本当に楽しすぎ! 上りも下りも迫力満点!!

いまやスキー場での恒例イベントとなりつつある「SUBARUゲレンデタクシー」。5シーズン目を迎える今年は、全4回の開催を予定している。1月20日~21日には安比高原スキー場へと場所を移し、その模様を報道関係者に公開した。今回はその模様を、迫力満点の試乗動画とともにお届けしよう。

20180126_y-koba5_1 (5)↑ゲレンデタクシーが開催されると乗車を希望する人がひっきりなしに訪れているという

 

上りだけでなく下りも!? 遊園地のアトラクションのごとき大迫力

「SUBARUゲレンデタクシー」とは、スキー場のゲレンデでスバルのSUV(XV/フォレスター/アウトバック)をリフト代わりにタクシーとして利用できるというもの。2013年~14年シーズンに菅平高原スキー場でスタートし、以降毎シーズン、場所を変えて開催してきた。利用者は、受付付近のゲレンデタクシー車両と一緒に撮影した写真を「#ゲレンデタクシー」のハッシュタグと一緒にSNSでシェアし、その画面をスタッフに見せれば誰でも無料で乗車できる。

20180126_y-koba5_1 (1)↑こちらがゲレンデタクシーの車体。「タクシー」であることを示す行灯をルーフの上に載せている

 

車両にはTAXI行灯がルーフに取り付けられ、“タクシー”であることを強調。ミシュランのスタッドレスタイヤ「X-ICE XI3」を装着し、スキー道具を載せられるようスーリー(THULE)のキャリアも装備する。ゲレンデタクシーとして専用デカールシールを身にまとってはいるものの、車両そのものは市販されているものそのままだという。

 

体験乗車した安比でのコースは全長約800mの直線路。途中、クルマにとってはキツイ斜面もあるが、スバルの4WDシステムである「シンメトリカルAWD」によって、スキーヤーを乗せて一気に駆け上がる。セントラルクワッド(954m)のリフトの隣にあり、所要時間は50秒ほど。リフトで移動するよりもはるかに速い。しかも、リフト代わりに使う上りだけでなく、現在は下りでも乗車できるのがまた面白い。そのため、ゲレンデタクシーに乗ることを目的に訪れる人も相当数いるようだ。

20180126_y-koba5_1 (4)↑コースはセントラルクワッド(954m)のリフトの隣にある800mほどの直線路

 

20180126_y-koba5_1 (3)↑ドライバーはラリーを経験したテクニシャンばかり

 

実際に乗ってみれば本当に楽しいの一言。スタートした直後こそ通常の圧雪路の雰囲気だが、急勾配に差し掛かると、ラリー経験もあるドライバーが滑りながらも車両を巧みにコントロールしてフルパワーで駆け上がる。路面の凹凸に激しく乗員も揺らされるが、その巧みなハンドルさばきに反応するクルマの動きを体感しているうちにアッという間に上まで到達。まるで遊園地でアトラクションに乗っているかのよう。詳しくは次の動画をご覧いただきたい。

そして下り。今度は上ってくるゲレンデタクシーを優先して走るため、待機時間も含めて時間をかけて下りていく。ただ、直線路をそのまま真っ直ぐ下ると速度が出すぎてしまうため、ここではスキーのボーゲンのようにジグザグに走行。しかし、その際も速度は40km/hを超え、ドライバーがカウンターを当てながらゲレンデを下りていく。ドライバーによれば「XVは絶対パワーこそ大きくはないけれど、足回りとボディとのバランスがすごく良くて下りであってもコントロールがしやすい。これはXVのSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)が成させる技でもある」と説明してくれた。こちらも動画をご覧いただこう。

上り下り合わせても5分足らずの短い時間ではあるが、自分ではなかなか体験できない走りとあって何度でも乗りたくなる。試乗した日は青空も広がり、山の頂を遠くに臨みながらゲレンデをスバルのSUVで走る醍醐味はまさに“未体験ゾーン”だった。

20180126_y-koba5_1 (2)↑一定の間隔をあけて、スバルのSUVがゲレンデを疾走する

 

なお、今シーズンは、北海道 サッポロテイネスキー場でスタートし、1月20日~21日の安比高原スキー場までが終了。次は2月3日~4日の栂池高原スキー場と、2月17日~18日の苗場スキー場での開催が予定されている。

 

 

スバル・インプレッサ/XVがユーロNCAPの「ベスト・イン・クラス」に選出!

欧州の自動車安全テストを実施しているユーロNCAPはこのほど、2017年に実施した新型車で最高評価の5つ星を獲得したモデルのなかから、カテゴリー別に「ベスト・イン・クラス」を選出。スモールファミリーカー部門では、スバルの新型インプレッサおよびXVが獲得したことを発表した。

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ユーロNCAPの安全性試験で最高評価となる5つ星を獲得するには、「成人乗員保護性能」で80%以上、「子供乗員保護性能」で75%以上、「歩行者保護性能」で60%以上、「安全補助装置」で50%以上という4項目のパセンテージをすべてクリアしなければならない。

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スバル・インプレッサの評価は、「成人乗員保護性能」で94%、「子供乗員保護性能」で89%、「歩行者保護性能」で82%、「安全補助装置」で68%を獲得。一方、スバルXVは「成人乗員保護性能」で94%、「子供乗員保護性能」で89%、「歩行者保護性能」で84%、「安全補助装置」で68%を獲得し、いずれも見事に5つ星を獲得している。

 

ちなみに、そのほかのカテゴリーのベスト・イン・クラスは、ラージ・オフロード部門でボルボの新型XC60、エグゼクティブ部門ではフォルクスワーゲンのアルテオン、スモールオフロード部門ではフォルクスワーゲンのT-ロック(日本未導入)、スーパーミニ部門ではフォルクスワーゲンの新型ポロ(日本未導入)、スモールMPV部門ではオペル/ヴォグゾールのクロスランドXが選出された。

 

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ちなみに、ボルボの新型XC60は、2017年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにおいて大賞を獲得するなど、安全性能以外の面でも高い評価を受けた。

 

各メーカーが先進安全技術に積極的な姿勢を見せるなか、スバルのインプレッサやXV、そしてボルボのXC60は、クラストップレベルの安全性能が備わっていることが証明されたのである。

 

 

 

スバル・インプレッサ/XVがユーロNCAPでファイブスターに

スバルはこのほど、新型インプレッサおよびXVが、欧州の安全性能評価基準である「ユーロNCAP」において、最高評価となるファイブスター(5つ星)を獲得したことを発表した。

 

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ユーロNCAPの安全性試験でファイブスターを獲得するには、「成人乗員保護性能」で80%以上、「子供乗員保護性能」で75%以上、「歩行者保護性能」で60%以上、「安全補助装置」で50%以上という4項目のパーセンテージをすべてクリアしなければならない。

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新型インプレッサのテストモデルは2.0i-Sアイサイトだったのだが、「成人乗員保護性能」で94%、「子供乗員保護性能」で89%、「歩行者保護性能」で82%、「安全補助装置」で68%という評価を得て、4項目すべての条件をクリア。

 

一方、新型XVのテストモデルも2.0i-Sアイサイトで、「成人乗員保護性能」で94%、「子供乗員保護性能」で89%、「歩行者保護性能」で84%、「安全補助装置」で68%という評価で全4項目をクリアした。

 

2016年評価以来、歩行者への衝突回避または衝突被害軽減性能を評価する自動緊急ブレーキ試験が追加され、スバル独自の運転支援システム「アイサイト」を標準装備したインプレッサとXVはいずれも高い評価を獲得した。

 

スバル車のユーロNCAPでの最高評価の獲得は2009年のレガシィ、2011年のXV、2012年のフォレスター、2014年のアウトバック、2016年のレヴォーグに続き、6回目となった。

 

 

 

【東京モータショー2017】スバルの新世代スポーツセダン「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を世界初公開!

世界初公開された「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」は、次世代スポーツセダンのデザインスタディモデル。低く構えたクーペルックのフォルムが目を惹くだけでなく、進化型アイサイトやレーダー、高精度GPSなどによる高度運転支援技術も示している。

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VIZIV PERFORMANCE CONCEPT

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SUBARUの走りを示す意匠は、「DYNAMIC×SOLID」というデザイン哲学に基づくもので、バンパーやフェンダー、ルーフなどの随所にカーボン素材を使用。次世代型アイサイトをはじめ、レーダーや高精細地図などにより究極の安全として事故ゼロを目指す技術の搭載も示している。

 

プレスカンファレンスで吉永泰之社長は、アイサイトの開発において地球何周分もしてきたことから生まれたという「安心・安全」、そして「走る愉しさ」を強調。SUBARU車オーナーは、その魅力をとことん使い倒す方が多いそうで、キャンプなどのアウトドアやスキーなどのアクティビティなどで愛用されているという。さらに、アメリカでは、98%の人が10年以上同じSUBARU車を乗り続けているという例を提示。こうしたファンの声に応えるべく「安心・安全」、「走る愉しさ」をさらに磨く姿勢を示していた。

 

IMPREZA FUTURE SPORT CONCEPT

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「STI」とは違う世界観を目指したという「SUBARU IMPREZA FUTURE SPORT CONCEPT」。最新のスポーツギアをまとったオシャレなランナーのイメージが反映されているという。なお、市販限定車の「WRX STI S208」と同じデザイナーが外観のデザインを担当している。

 

そのほかのコンセプトカーでは、インプレッサスポーツをベースに、STIとは違ったスポーティテイストを表現し、都会的な雰囲気も漂う「IMPREZA FUTURE SPORT CONCEPT」、XVに専用オフロードタイヤやホイールアーチにタフな印象をもたらすクラッディングが施された「XV FUN ADVENTURE CONCEPT」を披露している。

 

XV FUN ADVENTURE CONCEPT

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都会にも映えるスタイリッシュなフォルムと、高い悪路走破性を備えたXVをさらに強調したコンセプトカー。冒険心や遊び心を表現するため、ルーフにテントを積載した。内装はデニム調のファブリックシートによりラギッド感を演出している。

 

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