シャンパンからゼクトまで網羅。「スパークリングワイン」の基礎知識

自宅でワインを楽しみたい、できれば産地や銘柄にもこだわりたい、ワインを開け、注ぎ、グラスを傾ける仕草もスマートにしたい……。そう思っても、超のつく基本はなかなか、他人には聞きにくいもの。この連載では、その超基本を、ソムリエを招いて手取り足取り教えていただきます。さすがに基本は押さえている、という人にも、プロが伝授する知識には新たな発見があるでしょう。教えてくれるソムリエは、渋谷にワインレストランを構える宮地英典さんです。

 

第1回は「ワインボトルの開け方」、第2回は「ワインの注ぎ方」を、宮地さんに指南していただきました。第3回となる今回からは、ワインの種類や製法、産地などをそれぞれ取り上げ、解説していただきます。

【第1回】シールの切り方やコルクの抜き方は?今さら聞けない「ワインボトルの開け方」

【第2回】注ぐ量は? ボトルは片手で持たないとダメ? 今さら聞けない「ワインの注ぎ方」

 

第3回 スパークリングワインの製法と種類

ワインには、泡のない「スティルワイン」と発泡性の「スパークリングワイン」があります。泡があるということは想像以上に香りや味わいに大きく影響を与えるもの。気が抜けて泡の立たないビールやコーラを飲んだことがあれば、キンキンに冷えてガスがふんだんに含まれた状態とのおいしさの違いは、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。

 

さらに、スパークリングワインには産地や製法に多くのバリエーションがあります。今回は5つの製法と、5種類のワインを紹介しましょう。ただしもちろん、世界中にはこれだけではなくさまざまな個性のスパークリングワインが存在します。

 

また、「シャンパーニュ」(シャンパン)というと高級なイメージがあるかもしれませんが、産地のひとつに過ぎず、またハイブランドだけがスパークリングワインの魅力ではないのです。例えば1000円以下のスパークリングワインでも、お決まりのビールの代わりにこれで乾杯すれば、食卓にいつもと違った彩りを添えられるかもしれません。2000円~3000円前後の価格帯になれば、多種多様なスパークリングワインがありますから、ささやかなお祝いの席にぴったりでしょうし、ホームパーティーやBBQにお土産として持っていけば喜ばれるでしょう。

 

ワインショップの棚にはいろいろなスパークリングワインが並んでいて、もっともハズレが少ないのも、スパークリングワインの特徴です。そう考えると“ワインの入り口”にうってつけなのは、スパークリングワインなのかもしれません。

 

スパークリングワインの製法

  1. トラディショナル方式(瓶内二次発酵)

ワインは醸造酒で、アルコール発酵をさせて作ります。最初の発酵である“一次発酵”を終えたワインを瓶に入れ、糖分と酵母を加えて栓をします。すると瓶のなかで二度目の発酵“瓶内二次発酵”が始まり、炭酸ガスが発生します。瓶のなかに閉じ込められた炭酸ガスがワインに溶け込むことにより、きめの細かな泡を持ったワインが造り出されます。
産地によって期間の長さに違いはあるものの、瓶内でワインを澱(おり)とともに熟成させ、いわゆる“ブリオッシュのような”と表現される香ばしい風味をワインにもたせるのも、この製法の特徴です。

 

  1. シャルマ方式(タンク内二次発酵)

一次発酵を終えたワインを密閉式タンクに移し、糖分と酵母を加えて二次発酵を行う製法です。瓶内二次発酵に比べ、一度に一定量を生産することができるため、手間とコストの面で優れています。
ちなみにシャルマ方式とは、1910年にフランス人のユージン・シャルマが考案し命名されたものですが、1896年にイタリア人のフェデリコ・マルティノッティが実用化に成功していたという説もあります。こういった事柄からも、ワイン生産において今よりもフランスがリーディングカントリーだったことが伺えます。

 

  1. トランスファー方式

瓶内二次発酵で炭酸ガスを発生させたのち、一度密閉タンクにワインを移し、まとめて澱引き(澱を取り除くこと)を行う製法です。トラディショナル方式では瓶口に澱を集め、1本づつ澱引きを行いますが、トランスファー方式ではその工程をまとめて行うため、コストと手間を省略することができます。

 

  1. リュラル方式(アンセストラル方式)

一次発酵が完全に終わる前に瓶詰めし、発酵を継続したまま瓶内で炭酸ガスを発生させワインに溶け込ませます。フランスの「ペティヤン」(微発泡性ワイン)を始め、現在では小規模な生産者を中心にこの製法でスパークリングワインを造る生産者も増え、見直されている製法とも言えます。

 

  1. 炭酸ガス注入方式

スティルワインに炭酸ガスを注入して、人為的にスパークリングワインを造ります。コスト面で安価に仕上がるため、大量消費用スパークリングワインに用いられる製法です。

 

次のページでは、産地とそれぞれの呼び名や特徴、使用するブドウ品種などを、具体的におすすめの銘柄を挙げながら解説していただきます。

 

スパークリングワインの種類と特徴

産地については、具体的な銘柄を挙げながら説明していきましょう。スパークリングワインをより日常で楽しんでいただくために、比較的リーズナブルなワインを選びました。

スパークリングにはいろいろな呼び名があることは、是非とも覚えておいてください。また、生産国・地方やブドウ品種からでもイメージを膨らませることができると思いますが、わからない時には購入時に定員さんに相談するのもいいでしょう。

 

「シャンパーニュ」

シャンパーニュ地方で造られなければシャンパーニュにあらず

フランス北東部シャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインを、シャンパーニュと呼びます。日本ではシャンパンとも呼びますが、これはイギリスの英語読みがシャンペンであることに由来するようです。

 

シャンパーニュは、現在では世界最高のスパークリングワインの産地でもあり、ブドウの価格の下限が世界でももっとも高価な産地でもあります(ワインの価格はブドウの価格とセミイコールと言っていいと思います)。もともとはブドウ産地としては最北(ドイツとイギリスなどは例外)に当たり、スティルワインの生産に不向きだったことが、この地域のスパークリングワインを特別なものにしました。

 

一般的には黒ブドウである、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、白ブドウであるシャルドネの3品種の果汁を使い、ワインを醸します。そして、瓶のなかで糖分と酵母を加え再び発酵させて産まれた炭酸ガスがワインと溶け込むことによって、あのグラスを立ち上る泡が造られます。つまりシャンパーニュの泡は、ブドウ果汁がワインになる過程で産まれるガスがそのまま一緒に瓶に内包され、ワインに溶け込んでいるということになります。この3品種のブレンドと瓶内二次発酵は、世界中のスパークリングワインのフォーミュラ(基本形)となっています。

 

また、シャンパーニュの立ち上る泡を「ペルル(真珠)」、液面で丸く輪状に広がる泡を「コリエ(首飾り)」とフランス語で呼びます。こういったシャンパーニュの華やかなイメージは、お祝いごとなど特別な日を楽しむのにうってつけ。気分を高揚させてくれるワインとして人気を集めています。

「Brut Tradition NV/Janisson&Fils(ブリュット・トラディションNV/ジャニソン&フィス)」
希望小売価格=6000円

【Info】
・ワイン名=ブリュット・トラディションNV
・生産者=ジャニソン&フィス
・生産国 / 地域=フランス / シャンパーニュ地方ヴェルズネイ
・ブドウ品種=ピノ・ノワール70%シャルドネ30%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=ヴァンクロス

 

「プロセッコ」

実は世界一売れている、イタリアのスパークリングワイン

イタリアで造られるスパークリングワインは「スプマンテ」(後述)と呼ばれますが、中でも水の都ヴェネツィアで愛されるのがプロセッコ。2013年にシャンパーニュを抜いて世界でもっとも売れているスパークリングワインになりました。プロセッコに85%以上使われるグレーラは、フローラルで柔らかなワインになります。

 

プロセッコは、前述のシャルマ方式と呼ばれるタンク内二次発酵で造られます。シャンパーニュが瓶ごとに再度の発酵で炭酸ガスをワインに溶け込ませていたのと同様の工程を、大容量の密閉タンクの中で行うため、シャンパーニュに比べリーズナブルな価格でワインショップの棚に並びます。またワインの甘さの指針である残糖も大半のシャンパーニュが12g /L以下であるのに対し12g/L以上のものが多く、アルコール度数も12.5%前後のシャンパーニュに対し11%前後、熟成期間の違いから酵母由来のブリオッシュのような香りも産まれません。

 

こうして甘やか、優しい飲み口で軽やかというスタイルのプロセッコは、気軽にワインに親しむ文化を持つヨーロッパを中心に大流行しています。酔うためというより、少し気分を上げたい、理屈抜きで気軽にワインを楽しめるという点で、プロセッコはとても現代的なワインと言えます。例えば「ワインに氷を入れる」なんていうと抵抗がある人もいるかもしれませんが、プロセッコはそんな堅苦しいことも考えなくていいほど包容力のあるワインなのです。

 

若い世代のお酒離れが言われて久しいですが、プロセッコスタイルのワインがより広まり、さまざまな楽しみ方がなされれば、「ワインは難しい」というイメージを覆すことができるのでは、と個人的には期待しています。

「Prosecco Extra Dry NV/SanGiovanni(プロセッコ エクストラ・ドライNV/サン・ジョバンニ)」
希望小売価格=2600円

【Info】
・ワイン名=プロセッコ・エクストラ・ドライNV
・生産者=サンジョバンニ
・生産国 / 地域=イタリア / ヴェネト州コネリアーノ
・ブドウ品種=グレラ100%
・製法=シャルマ方式(タンク内二次発酵)
・輸入元=MONACA

 

「スプマンテ」

地方ごとの多様性こそがスプマンテの魅力

イタリアを代表する高品質スプマンテとして、ロンバルディア州東部で造られる「フランチャコルタ」(北イタリアのロンバルディア州で造られるスプマンテ全般を指す)があります。シャンパーニュと同様の品種製法により、高品質スパークリングの評価を勝ち取っているワインです。

 

よく「イタリアワインは品種が多すぎてわかりにくい」といった声を聞きますが、裏を返せばイタリアほど州によって栽培品種が異なり、地方ごとに料理と結びついたさまざまなワインが造られている国は、他にありません。なんと、イタリア全土で2000以上のブドウ品種が栽培されているのです。

 

つまり、イタリアのスパークリングワイン=スプマンテを特別にしているのは、その多様性にあるのではないかと個人的には感じています。下の写真は、トスカーナ州モンタルチーノで栽培される品種、サンジョベーゼを使ったロゼスプマンテ。サンジョベーゼはトスカーナの銘醸ワイン、キャンティやブルネッロの主要品種です。

 

同じようにさまざまな州で有名無名に関わらず、土地土地のブドウ品種でスプマンテが造られているのです。そう思うとイタリア語のスプマンテという語感には、包容力や多様性といった魅力的なイメージを感じずにはいられません。

「Spumante Rosato Brut NV/Ridolfi(スプマンテ ロザート・ブリュットNV/リドルフィ)」
希望小売価格=2500円

【Info】
・ワイン名=ロザート・ブリュットNV
・生産者=リドルフィ
・生産国 / 地域=イタリア / トスカーナ州モンタルチーノ
・ブドウ品種=サンジョベーゼ100%
・製法=シャルマ方式(タンク内二次発酵)
・輸入元=ミレニアムマーケティング

 

「カヴァ」

スペイン代表のカヴァは世界3大スパークリングワインのひとつ

カヴァとは、スペインで瓶内二次発酵で造られるスパークリングワインのこと。もともとカヴァの規定がブドウの原産地ではなく製法を定めたものだったこともあり、9割以上がカタルーニャ産ですが、その他内陸や沿岸部などそれ以外のさまざまな地域でも造られています。

 

シャンパーニュ、プロセッコに次いで消費されている世界3大スパークリングワインの一角、という言い方もできます。カヴァとシャンパーニュ(及びその他のピノ、シャルドネ系のスパークリング)との大きな違いは、最北のワイン産地シャンパーニュに比べ、スペインはより南の温暖な地域であり、栽培に適した品種が異なっていることではないでしょうか。

 

主要3品種はすべて白ブドウで、強いフレーバーがカヴァらしさを演出するチャレッロ、ニュートラルでバランスを取るマカベオ、デリケートな酸味をワインに加えるバレリャーダ。それぞれ南品種らしい果実感とアロマティックなニュアンスが特徴です。そのほかにシャルドネ、スビラ・パレンの白ブドウ、ガルナッチャ、モナストレル、トレパ、ピノ・ノワールの黒ブドウが、原産地呼称の認可品種となっています。

 

現地でも最大手となる「フレシネ」はサントリー、「コドルニュー」はメルシャンといった大手で取り扱われ、日本でもコンビニエンスストアやスーパーマーケットにも並ぶ親しみやすいワインです。なにより品質の割に価格がリーズナブル。ワインに親しむ入り口のひとつになる可能性は充分です。

「Cava Tempus Brut ReservaNV/Torre Oria(カヴァ テンプス・トレス・ブリュット・レゼルバNV/トレ・オリア)」
希望小売価格=1500円

【Info】
・ワイン名=テンプス・トレス・ブリュット・レゼルバNV
・生産者=トレ・オリア
・生産国 / 地域=スペイン / カタルーニャ州
・ブドウ品種=マカベオ90%パレリャーダ10%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=東亜商事

 

「ゼクト」

ビール好きのドイツ人はスパークリングワインの消費量も世界一

ドイツといえばビール大国というイメージがありますが、お祝いの席にはスパークリングワインが欠かせません。意外にもスパークリングワインの消費量は世界一、一人当たり年間4本以上というのは日本人の年間ワイン消費量と同程度です。

 

ゼクトとはドイツにおけるスパークリングワインの総称ですが、オーストリアやハンガリー、チェコといった近隣のエリアでも同様に呼びます。

 

近年、ドイツやオーストリアでは、シャンパーニュに倣って瓶内で酵母の澱と長期間に渡って熟成させる高級レンジのゼクトが注目されていますが、やはり消費量が多い要因は何といっても、低価格帯ながら高品質な点にあります。シャンパーニュと同様の品種を使用することもありますが、スプマンテのように地域ごとの固有品種が使われていることも魅力のひとつです。

 

日本のワインショップに並んでいるゼクトにはまだまだ限りがあると思いますが、コストパフォーマンスもよく、個性的なものも多いため、品ぞろえの良いお店では思い切ってゼクトを探してみるのもおすすめです。カヴァは日本ではリーズナブルで美味しいというイメージを獲得しましたが、個人的にはゼクトももっと認知が広がって、幅広いワインが輸入されることを願っています。

「Bacharacher Riesling Sekt Brut2014/Ratzenberger(バッハラッハー・リースリング・ゼクト・ブリュット2014/ラッツェンベルガー)」
希望小売価格=3700円

【Info】
・ワイン名=バッハラッハー・リースリング・ゼクト・ブリュット2014
・生産者=ラッツェンベルガー
・生産国 / 地域=ドイツ / ミッテルライン
・ブドウ品種=リースリング100%
・製法=トラディショナル方式(瓶内二次発酵)
・輸入元=ヘレンベルガー・ホーフ

 

スパークリングワインを楽しむ際には、よく冷やしてください。温度が高いとガス圧でワインが吹きこぼれやすくなるのと、ぬるいビールや炭酸ジュース同様、温度が味わいに大きく影響を与えるのがスパークリングワインです。

 

【プロフィール】

ソムリエ / 宮地英典(みやじえいすけ)

カウンターイタリアンの名店shibuya-bedの立ち上げからシェフソムリエを務め、退職後ワイン専門の販売会社ワインコミュニケイトを設立。2019年にイタリアンレストランmiyajiaraiを開店。
https://www.facebook.com/miyajiarai/

 

おそろいのストーリーで選ぶべし! 誰かに贈るワイン選びの正解

ワインをプレゼントするなら、あなたは何をポイントに選びますか?

 

まず思いつくのは、贈る相手の「味の好み」から。赤ワインか白ワインか、スパークリングワインか? 辛口派か甘口派か? でもそれだけでは、どの銘柄を選んだらいいか、迷ってしまいます。となると、有名銘柄が無難かな? なんてブランド名に頼ってしまいたくなるものですが、それでは少々オリジナリティに欠けてしまいます。

 

また、誕生日や記念日だとしたら、その年に造られたヴィンテージワインを選ぶのも素敵ですが、毎年必ずしも良作ヴィンテージとは限らず、年数を重ねるほどに値段が上がってしまうことも。

 

ワインは農作物からつくられるもの。同じ畑のワインでも毎年の出来は気候条件に左右され、それが人の手によって醸され瓶に詰められるまでのストーリーは、多種多様です。では、そんなそれぞれに込められたストーリーに、贈るあなたの思いが重なるワインをプレゼントする、という選び方はどうでしょうか?

 

テーマに合わせたストーリーとともに、いくつかのワインをご紹介しましょう。

 

ワイナリーの歴史に思いを重ねる

贈り物ワインの定番といえばシャンパン。でも定番だからこそ、選ぶとなるとよく知られた銘柄に偏ってしまい、パーティーへ持ち込んだらほかの出席者とカブってしまった、というような経験はありませんか? ひと口に「シャンパン」と言っても、よく知られた大手有名銘柄がある一方で、ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまでを自社が一貫して行う、いわゆる造り手の顔が見える“RMシャンパン”(RM=レコルタン・マニピュラン)というカテゴリーが存在します。このRMシャンパンワイナリーは代々同族で継承しているところも多く、その長い歴史の背景には、プレゼントしたい相手のシチュエーションに合うストーリーがあるかもしれません。

 

結婚のお祝いに……

Henry de Vaugency Champagne Cuvée des Amoureux Blanc de Blancs Grand Cru (アンリ・ド・ヴォージャンシー・シャンパーニュ・キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Henry de Vaugency Champagne Cuvée des Amoureux Blanc de Blancs Grand Cru (アンリ・ド・ヴォージャンシー・シャンパーニュ・キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

アンリ・ド・ヴォージャンシーは創業1732年、現在8代目のパスカルさんが運営しています。この長い歴史を持つワイナリーには、1820年から1920年当時の結婚をテーマとした博物館が併設されており、記念のジュエリー、家具、調度品、衣装、風習や儀式にまつわる資料が多数展示されています。世にテーマ・パークやテーマ・レストランは数あれど、”テーマ・シャンパンワイナリー”は世界でここだけ。

 

看板商品である「キュヴェ・デ・ザムルー ブラン・ド・ブラン グラン・クリュ」は、その名にあるキュヴェ・デ・ザムルー=“愛し合うカップル”のためのシャンパン。ラベルもハート型で、2羽の鳩が仲睦まじく寄り添う絵柄がデザインされています。フランス国内でも、結婚式の引き出物として人気だといいます。

 

成人を迎えた息子や娘へ……

Françoise Bedel Champagne Entre Ciel et Terre(フランソワーズ・ベデル・シャンパーニュ・アントル・シエル・エ・テール) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Françoise Bedel Champagne Entre Ciel et Terre(フランソワーズ・ベデル・シャンパーニュ・アントル・シエル・エ・テール)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

月の満ち欠けや天体の動きを、ブドウの栽培やワインの醸造過程に取り入れる“ビオディナミ農法”を実践するフランソワーズ・ベデル。シャンパーニュ地方ではそのパイオニア的存在です。

 

もともとビオディナミを取り入れたきっかけは、息子ヴァンサンの病気でした。現代的な薬はまったく効かず悩み続けた末、最後に出会ったホメオパシー(同毒療法)によって完治。「世界の見方が変わりました。それで、ブドウにも同じことがいえるのではないかと考えるようになり、やがてビオディナミに出会いました」と語ります。今では健康を取り戻したヴァンサンが中心となって、ワイナリーを運営しています。我が子への愛情によって生まれた味わいを、立派に成長した息子へ。

 

 

Dauby Champagne Brut Rosé(ドビ・シャンパーニュ・ブリュット・ロゼ) /輸入元:ヌーヴェル・セレクション↑Dauby Champagne Brut Rosé(ドビ・シャンパーニュ・ブリュット・ロゼ)
/輸入元:ヌーヴェル・セレクション

 

シャンパーニュ地方の中でもひときわ景観が美しく、2015年には世界遺産に登録されたアイ村に3代続くワイナリー、ドビ。現当主のフロール・ドビーさんは、2007年に母フランシーヌさんからワイナリーを引き継ぎ、銘醸産地であるアイ村では珍しい女性当主となりました。

 

家族経営で次の世代が後を継ぐフランスのワイナリーの名前には、ほとんどがワイナリー名の後に「〇〇 Père et Fils=父と息子」と記載されますが、このドビは「Dauby Mère et Filles=母と娘のワイナリー、ドビ」とラベルにも記載が。女性醸造家らしく柔らかで上品でありながら、どこか情熱的な味わいを連想させるかのように、ラベルにあしらわれているのは真っ赤なコクリコの花。コクリコのように凛とした生き方を母から娘へ、このシャンパーニュに願いを込めて。

 

ラベルストーリーに想いを重ねる

ワインの誕生にまつわるストーリーが、ラベルデザインにそのまま反映されることも少なくありません。単にデザイン性が高いだけでなく、そのデザインがあなたの思いも表現してくれるものであったなら、よりオリジナリティに溢れる贈り物になることは間違いないでしょう。

 

感謝・信頼・友情の証に……

Domaine De La Garance Cuvee Kaze Rouge(ドメーヌ・ド・ラ・ガランス キュヴェ・風・ルージュ) /輸入元:ディオニー↑Domaine De La Garance Cuvee Kaze Rouge(ドメーヌ・ド・ラ・ガランス キュヴェ・風・ルージュ)
/輸入元:ディオニー

 

南フランス・ラングドック地方産にも関わらず、ラベルは日本語の「風」という文字。2008年初夏、南フランスでは極端に風が少なく、造り手であるキノネロさんは、ブドウが病気にかかるのではと頭を痛めていました。そんな彼のもとを訪れた日本のインポーターが手土産に持参していたのが偶然にも、「風」と書道家によって書かれた掛け軸。するとなんと、待ち望んだ「風」が吹きはじめたのだそう!

 

この書の造形の美しさに感動した上、日本から「風」がやってきたことで、次の年から日本向けの限定ワインを造ることを決意します。ラベルのデザインはその書をそのまま使用し、その名も「KAZE」と名付けました。「日本への敬意を表したいという気持ちが、このワインを誕生させました」というこのワインは、造り手とインポーターの信頼関係から誕生した友好の証なのです。

 

造り手の情熱に思いを重ねる

ワインの出来は、ブドウ自体の出来に大きく影響されるもの。ところが、そのブドウを醸す造り手の性格や情熱が滲み出る、と言われているのもまた事実です。造り手の情熱を深く知るには、輸入ワインより身近な存在である日本のワイナリーのワインがおすすめ。実際に訪れて、自分の目と耳で見聞きすることで一層、プレゼントするシチュエーションに近いワインに出会う可能性も高くなるはずです。

 

結婚記念日を迎えるご夫妻へ……

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奥野田ワイナリー(山梨県)

奥野田ワイナリーは、山梨県甲州市塩山で1998年に創業。中村雅量さん、亜貴子さんご夫妻が二人三脚で営むワイナリーです。大人気の「La Floretteシリーズ」のラベルに描かれた、赤ワインのスミレ、白ワインのハナミズキ、ロゼワインのバラは、もともと趣味で絵を描くことが好きだったという亜貴子さんご本人による作品です。

 

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「ラベルを見てワインを手にとって下さる方々が、ワインを飲んだときに広がる味わいと香りと、ラベルに感じた印象とが重なるようイメージしています」とのこと。ふたりでこんなワインができたらいいね、と話し合って出来上がったのはまずバラのラベルのロゼで、2008年のことだそう。旦那様がワインを醸し、そのイメージを奥様がラベルに描く。そんな仲睦まじい夫婦の共作ワインを、大切な結婚記念日に。

 

第二の人生を歩み始める門出の祝いに……

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ルサンクワイナリー(新潟県)

角田山を望む日本海に面した場所に、5つのワイナリーが広がる新潟ワインコースト。その5番目のワイナリーとして2015年10月に誕生したのが、ルサンクワイナリーです。オーナーは、それまでは都内でITサービスの会社に勤めていたという阿部隆史さん。「ワインが好きだったということもありますが、たくさん働いた分これからは自分の好きなことをやろう、そう思ったことがきっかけでした」と阿部さん。2013年から産地を巡りながらワイナリー経営について勉強し、縁あって2014年から、新潟でワイン造りの研修に入りました。

 

現時点でのワイン造りは、すべて契約農家からの買い付けブドウでの生産ですが、自社畑の苗木も成長中。それが無事収穫できてワインとしてリリースされるのは少なくともあと1〜2年後とのこと。たくさんの期待と少しの不安を胸に第二の人生を歩む阿部さんのワインは、きっと同じように新たな一歩を踏み出す人に、勇気を与えるはずです。

 

起業・独立を目指す人へエールを込めて……

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東京ワイナリー(東京都)

2014年9月、東京初のワイナリーとして練馬区大泉学園にオープンした東京ワイナリー。オーナーは越後屋美和さん。現在日本各地に次々とワイナリーが誕生していますが、その多くが母体の会社を持ちながら、あるいは地域や自治体との連携を持ちながらの開業が主流。そんななかで、越後屋さんは女性ながらたったひとりで起業しました。もともとは東京産の美味しい野菜や果物、農家の存在をもっと知ってもらいたい、という思いからスタートした越後屋さんの情熱は、農産物の加工品である“ワイン造り”として表現されることになったのです。

 

醸造タンクや除梗破砕機などがコンパクトに配置された醸造所には、常に越後屋さんのSNSを使った呼びかけで駆けつけたお客様たちが、お手伝いをするボランティアとして集っています。創業はたったひとりでも、今ではその情熱に魅せられたたくさんファンや仲間の支えによって、さまざまな人々の思いのこもったワインがリリースされています。そんなワインを、女性起業家さんへのエールを込めて。

 

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ドメーヌ・テッタ(岡山県)

岡山県新見市哲多町に2016年に誕生したワイナリーで、代表は高橋竜太さん。もともと果樹王国として知られる岡山ですが、家業である建設業を営む傍ら、耕作放棄地となっていくブドウ畑を目の当たりにするなかで、日本では希少な石灰岩土壌の広がるこの地域の特性をワイン用のブドウ造りに活かせるのではと、ワイナリー起業を一念発起したといいます。

 

地域内外から有志を集め、ワイナリーの設計には世界的に活躍する地元出身のデザイナーが協力してくれるなど、地域産業の活性化に大きく貢献。創業間もない2016年秋に、岡山県内の経済・文化など各業界で活躍する若手を表彰する「オカヤマアワード2016」の大賞も受賞しました。故郷を思うたったひとりの情熱が、新たな地域産業を生む力にもなる。志高く起業する方へのお祝いワインとして。

 

さて、あなたの思いにぴったりなストーリーは見つかりましたか?

 

他にもワインやワイナリーのストーリーについて知りたい時は、ワインインポーターの商品ページや、ワイナリーの公式HPなどをチェックして。まだまだ知られていないけれど、あなたの感性に響く珠玉のストーリーに出会えるかもしれません。

 

・有限会社 ヌーヴェル・セレクション http://www.nouvellesselections.com/
・ディオニー株式会社 http://www.diony.com/
・奥野田ワイナリー(奥野田葡萄酒醸造株式会社) http://web.okunota.com/
・ルサンクワイナリー http://www.docci.com/winecoast/winemaker/05_Abe_takashi.html
・東京ワイナリー http://www.wine.tokyo.jp/
・ドメーヌ・テッタ(domaine tetta) http://tetta.jp/

 

取材・文=山田マミ

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

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難しくない「スパークリングワイン」の選び方

素敵なワインをどうやって選んだらいい? それはワイン好きにとって永遠のテーマです。

 

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自分用はもちろんですが、大切な人にプレゼントする、お呼ばれしたホームパーティーに持ち込む、そんなワインならなおさら失敗したくないもの。“私好み”や、“あの人に合いそう”など、そういった誰かにぴったりのワインこそ、“素敵なワイン”と表現して出会いを切望するものです。

 

ならば、「ワインの産地やブドウ品種の特徴を覚えればいいの?」「ラベルから情報を読み取れるようになればいい?」

 

ワインの資格を望むならまだしも、それは少々ハードルが高いように思います。そもそも“失敗しない”つまり“ワイン選びの成功”とは、おいしいと感じるかどうかを大前提として、自分の好みに合っているかどうか。詳しい知識を身につけたところで、ぴったりのワインを見つけるのは、やはり難しいものです。

 

ところが、意外なほど簡単に高確率で、自分好みのワインに出会える方法があるんです。それは、「ラベル」。

 

ほら、やっぱり? いえいえ、表のラベルではなく、“裏ラベル”をチェックすること。そこに表示された、「輸入業者」がキーワードです。

 

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顔が見えるシャンパン輸入の先駆者

現在日本には、ワインを世界各国から輸入する業者“インポーター”が数百社存在しています。その規模はさまざまで、数十人の営業マンを抱える会社から、熱意のある創業者がたったひとりで営む会社まで。フランスワインを多く輸入しているところもあれば、アメリカのワイナリーと繋がりが強いところもあり、取り扱うワインは実に多種多様です。

 

私たちが日本で口にする大多数のワインは、このそれぞれのインポーターのバイヤー、もしくは小規模なところでは社員全員がその味わいに納得をした上で輸入が決定されたもの。つまり一度は必ず、インポーターというフィルターを通したものなのです。

 

ということは、自分の好みに近い特徴を持つフィルター、つまり“インポーター名”を知ることが、自分好みのワインを選ぶ上でもっとも簡単な手がかり。さらに、輸入ワインの裏ラベルには必ず、輸入業者を記載する義務があります。ブドウ品種や地名など、ワインによって書かれている情報がバラバラの表ラベルとは違い、「輸入業者」は必ず私たち消費者が知ることのできる情報なのです。

 

新しい年を迎えるこの時期、テーブルに登場する回数の多いワインといえば、やはりスパークリングワインでしょう。今回は、スパークリングワインの王道であるシャンパンを日本へ輸入し続けて12年、さらにシャンパンのなかでも「RMシャンパン」というカテゴリーにほぼ特化し、その魅力を伝えるインポーター「ヌーヴェル・セレクション」をたずね、創業者であり代表取締役社長の上田巨樹さんにお話を聞きました。

 

東京・池袋に本社を構えるインポーター、ヌーヴェル・セレクションの代表取締役社長・上田巨樹さん東京・池袋に本社を構えるインポーター、ヌーヴェル・セレクションの代表取締役社長・上田巨樹さん

 

 

約1000軒の造り手を訪問して見えたもの

「RMシャンパン」をご存知ですか? RMとは、フランス語の「Recoltant Manipulant」の略で、これは、よく知られたブランド名を持つ大手メーカーのシャンパンとは、対照的な存在。大手シャンパンブランドのスタンダードクラスのほとんどが、大量のブドウを“買い付けて”造られるのに対し、RMシャンパンは、ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまでを自社が一貫して行っています。いわば“造り手の顔が見える”シャンパンのことなのです。日本では、“RMシャンパン”という単語こそまだ浸透していないものの、現在日本へ輸入されているRMシャンパンはすでに700軒を越えているそうです。

 

東京・池袋に本社を構えるヌーヴェル・セレクションは、12年前の創業当時から高品質なRMシャンパンを日本へ輸入しています。

 

「当時はRMシャンパンの黎明期で、日本にはまだ60軒程度の造り手のものしか輸入されていなかったと思います。私は創業直前まで、ブルゴーニュ地方に前職のバイヤーとして4年間駐在していて、そこからシャンパーニュ地方は近いのでよく足を運んでいました。“シャンパン”とひと口に言っても、RMのものはそれぞれの造り手、畑、地形などによって個性が千差万別。さらにRMでも、良質なものとそうでないものがありましたし、本当に素晴らしいものをぜひ日本に紹介したいと思ったんです」(上田さん・以下同)

 

創業者であり、現在もバイヤーとして現地にたびたび足を運ぶという上田さん。なんと創業からこれまでに訪問したRMシャンパンの造り手は、1000軒を越えるそう。そんな上田さんが厳選したRMシャンパンは、ちょっと目を引く素敵なラベルや、ボトルの形状に特徴があるものが多く、そのあたりのバイヤーとしてのこだわりを聞いてみました。

 

「ワイン全般にいえることですが、シャンパンも教科書どおりには造れません。年によって天候も変化するし、醸造の段階でもちょっとしたタイミングには人のセンスが不可欠ですよね。そのセンスが、最終的な味わいにかなり影響すると思っているんです。同じく、ラベル選びも造り手のセンス。無限の選択肢の中から、その色を選びそのデザインを選ぶわけです。私の個人的な経験からですが、味わいに納得できるシャンパンは、そのラベルや見た目のクオリティーも高いものが多いように感じています」

 

ワインを“ジャケ買い”することは、一見素人の選び方のようにみえて、実は1000軒訪問した経験をもつプロのバイヤーでも実践している大事なポイントだったようです。

 

上田さんが約1000軒を訪ね歩いた末に見つけた、珠玉のRMシャンパン。(左から「J-Mセレック・ソレサンス・ブリュット」「スゴンデ・シモン・ブリュット・グラン・クリュ・キュヴェN 」「ルグレ&フィス・エキリブル」上田さんが約1000軒を訪ね歩いた末に見つけた、珠玉のRMシャンパン。(左から「J-Mセレック・ソレサンス・ブリュット」「スゴンデ・シモン・ブリュット・グラン・クリュ・キュヴェN 」「ルグレ&フィス・エキリブル」

 

 

スペインのスパークリングワイン“カバ”も、創業当時から輸入。シャンパンと同じ製法で造られることから、同じく“顔の見える”こだわりのカバを厳選している。シャンパンより気軽に楽しめる価格帯も魅力。(「ウ・メス・ウ・ファン・トレス・ブリュット」)スペインのスパークリングワイン“カバ”も、創業当時から輸入。シャンパンと同じ製法で造られることから、同じく“顔の見える”こだわりのカバを厳選している。シャンパンより気軽に楽しめる価格帯も魅力。(「ウ・メス・ウ・ファン・トレス・ブリュット」)

 

 

最近輸入をスタートした、イタリアのスパークリングワイン“プロセッコ”。こちらもRMシャンパンのインポーターがセレクトする、という視点を大切にしている。(「プラ・デル・レ・プロセッコ・ミレジマート・ブリュット」)最近輸入をスタートした、イタリアのスパークリングワイン“プロセッコ”。こちらもRMシャンパンのインポーターがセレクトする、という視点を大切にしている。(「プラ・デル・レ・プロセッコ・ミレジマート・ブリュット」)

 

 

絶対的なこだわり、それは「畑」を見ること

「ラベルやワイナリー全体の雰囲気で大体のセンスは分かりますが、もちろんそのあとに真剣にテイスティングします。でももっとも大切なことは、畑を見ることなんです」

 

RMシャンパンの最大の特徴は、ブドウ畑を造り手自らが管理しているということ。農薬や化学肥料などに極力頼らず、しっかりと人の手で手入れされた畑はほどよく雑草が生え、土がふかふか。土の中の微生物も活性化していると言います。大手メーカーに毎年大量に買い付けられるブドウ、その広大な畑のすべてがこのように手入れをされることは、物理的にも不可能です。RMシャンパンの最大の魅力は、毎年丁寧に育てられたブドウでその土地の個性が味わいに表現されるということなのです。

 

「ただ、すべてのRMの造り手がそのように手入れしているとは限りません。RMシャンパンだからすべて良質、ではない。だからこそ、畑を見るのです」

 

そこで肝心なことを聞いてみました。採用に至る味わいのポイントとは?

 

「味わいに気品があるもの、奥行きと深みがあるものですね。そして何より”個性“のあるもの。すべて品質が高くても、似ている味ばかりならそんなに種類はいらない。せっかくこれだけ選べる時代になったので、違いが楽しめるということを大切にしています」

 

ヌーヴェル・セレクションのRMシャンパンは、飲めばその畑の風景が目に浮かび、現地の空気感の違いを感じる。そんな風に楽しみたいと思わされます。

 

 

造り手とインポーターは“仲間”という意識

「上田さんが12年前に最初のRMシャンパンを輸入する際、どんなポイントが決め手だったのですか? まずは日本市場に受け入れられやすい味わい、とか?」そんな質問に、第一線で活躍するインポーターならではの熱い思いが返ってきました。

 

「市場ウケ、とかじゃないですね。実は、単純に仲良しだったところから(笑)。もちろん品質が伴うことは言うまでもありませんが。今では約40軒の造り手と取引がありますが、彼らは”取引先“ではなく、”仲間“です。ときどき彼らが来日して1週間程度日本全国を一緒にプロモーションして回るのですが、無事に終わったあとは、うちのスタッフもみんなで抱き合って泣いちゃったりするほどなんですよ(笑)。」

 

ヌーヴェル・セレクションは現在、スタッフ10名。毎年何人かの社員が上田さんの現地訪問に同行し、造り手と交流を持つことに心がけているそう。上田さんだけでなく、スタッフの皆さん全員が造り手の熱意を肌で感じています。

 

「誠実に、真面目に働いている造り手と仕事したいですよね。シャンパンは華やかな飲み物ですが、決して彼らは自分たちが主役だと思っていない。どういうお料理に合わせて欲しいとかそういった視点よりもむしろ、幸せを感じる場面に花を添える、そういう瞬間を演出するものとして飲んで欲しい。真面目な造り手は、みなそう思っています。」

 

シャンパンをはじめワインはまだまだ格式の高いお酒というイメージがあります。でもどういう料理と、どういう形状のグラスで……、そういったマナーの類からはちょっと解放されて、もっと気軽に、ただ幸せを感じながら楽しむだけでもいいのではないでしょうか。「造り手さん本人もそれを望んでいる」ということを、上田さんのおかげで私たち消費者は知ることができたのですから。

 

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インポーターが得た信頼のおかげで“素敵なワイン”を選べる

現在ヌーヴェル・セレクションは、シャンパンのみならずスペインのスパークリングワイン ”カバ“、イタリアの”プロセッコ“も同じ視点で輸入をしています。その他、ブルゴーニュワインも得意とし、最近ではオーストリアワインの種類も豊富です。

 

上田さんの買い付けるワインの中には、現地でも入手困難と言われるものが少なくありません。「ヌーヴェル・セレクションだから、日本での販売を任せる」。そう思っている造り手も多いことでしょう。上田さんの熱意と人柄なくしては、実は私たち日本の消費者は口に運ぶことすらできないワインがたくさんある。インポーターとは、そういう存在なのです。

 

取材・文=山田マミ 撮影=田口陽介

 

 

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