並外れたものばかり?「禁じられた作品」を展示する美術館がバルセロナに誕生

これまで世界で生まれた芸術作品の中には、政治的な意味合いが含まれて抗議を受けた物、検問に引っかかって展示が中止された物などがあります。そんな“いわくつきの作品”ばかりを集めた美術館が、スペインのバルセロナに誕生しました。

↑マクジーザス(画像提供/Euronews Culture/YouTube)

 

美術館の名前は、「Museu de l’Art Prohibit」。日本語では「禁じられたアートの美術館」と訳します。その名の通り、収集されているのは、世界中で非難を受けたり抗議を受けたりしてタブーとなった42の作品。

 

例えば、マクドナルドのマスコットキャラクター、ドナルド・マクドナルドが十字架に架けられた『マクジーザス』。元イラク大統領のサダム・フセインにそっくりな人形をホルマリン漬けにした『サメ』。また、「あいちトリエンナーレ2019」で展示され、慰安婦を象徴することから猛反発を引き起こした『平和の少女像』も42の作品の中に含まれています。

 

このような訳ありの作品は、見る人をギョッとさせたり深く考えさせたりするものの、この美術館の存在自体にも賛否両論の声が集まっているようです。

 

この美術館を開いたのは、これらの禁止された作品200点のコレクションを所有しているというカタルーニャの実業家、タチョ・ベネト氏。「ここには(検問アートの)居場所がある」と、同氏はこれらの作品を展示する正当性を主張しています。同美術館を訪れた人の中には「驚いた。並外れたものばかりで、本当に興味深い」「通常なら見られないものを見られることは、良いことだと思う」などと、この美術館や作品について評価している人も少なくないようです。

 

その一方、例えば、写真家のアンドレス・セラーノが自らの尿で容器を満たし、その中に十字架を入れた作品は、フランスで展示された際、何者かに作品が破壊され、米国で展示された際にも大騒動を巻き起こしました。平和の少女像も日韓問題にかかわるだけあって、また物議を醸すかもしれません。

 

なんらかの騒動や抗議を引き起こしてきた作品が再び美術館の中に並ぶことで、どのような結果を招くことになるのか? この美術館に世界が注目しています。

 

【主な参考記事】

France24. ‘Extraordinary’ museum of censored art opens in Spain. October 28 2023

Hindustan Times. Spain’s museum of forbidden art opens, showcasing previously censored works. October 28 2023

「店内で見るだけで5ユーロ」観光客に困ったバルセロナの酒店が苦肉の策

観光地はもちろん、珍しい景観の場所や絵になるスポットを訪れたら、スマホで写真を撮る方はきっと多いでしょう。でもそんなフォトジェニックな場所が店の中だったら、そのお店は迷惑と感じているかもしれません……。

↑記念写真だけなら770円

 

多くの観光客が訪れるスペインのある酒店が、自撮り客予防のためにお金を徴収するという苦肉の策を講じているそうです。

 

この酒店はバルセロナにあります。歴史を感じる古い建物の一画にある店で、高給ワインがずらりと並べられ、ワインのお供になるチーズや肉類なども販売しているそうです。1898年創業の老舗店で、重厚な趣のある店内にはカウンターや家具もあり、確かにおしゃれです。

 

そんな同店では、商品を買うつもりもないのに、店内を眺めるためだけに入って来る観光客が多いのだとか。十分な広さのある店なら問題はないのかもしれませんが、そうでないお店なら、本当に「ワインやチーズをゆっくり選びたい」と思っている客に迷惑をかけてしまいます。

 

そこでこの店では、こんな風に書いた1枚の貼り紙を掲示したのです。

 

「店に入って見るだけでも、1人5ユーロかかります。ご理解のほどよろしくお願いいたします」

 

商品を購入しないのに店に入ったり自撮りする方には、5ユーロ(約770円※)を徴収することにしたのです。

※1ユーロ=約154.5円で換算(2023年7月14日現在)

 

実際、このお店が、ただの冷やかし客や写真を撮るだけの客にお金を徴収したのかは定かではありません。しかし、バルセロナは近年、あまりにも多くの観光客が訪れ、オーバーツーリズムに直面しています。バルセロナ市は観光税の引き上げといった対策を行っていますが、このように独自の対策を行う店も増えているのかもしれません。

 

店に入るだけでお金を徴収するとは、少々行き過ぎと批判も起こりそうなこの対策。現地で暮らす人、商売をする人、そして観光客がうまく共存する方法が、世界各国の観光名所で求められています。

 

【主な参考記事】

Independent. Barcelona shop introduces €5 charge for tourists who take selfies instead of buying things. July 13 2023

4月に38.8℃を記録! スペインが猛暑日の屋外労働を禁止へ

2022年のスペインは同国史上最も暑い年でした。猛暑のために多くの人が亡くなりましたが、2023年はそれをできるだけ防ぐために、スペイン政府は猛暑の日に屋外で労働することを禁止する方針を発表しました。

↑猛暑日では身の安全を優先

 

2022年の夏、ヨーロッパの国々が熱波に見舞われ、軒並み記録的な暑さの日が続きました。スペインの年間を通した1日の平均気温は、これまで13℃から14℃前後だったのに、2022年の平均は15.5℃となり、初めて15℃を上回ったのです。

 

2023年は、昨年と同様の厳しい暑さに見舞われることが懸念されています。すでに4月は史上最高気温を更新。イベリア半島では同月の平均気温が例年より4.7℃も高くなり、4月27日にはスペイン南部のコルドバ空港で38.8℃を記録。同時に、厳しい干ばつも危惧されています。

 

この暑さが市民生活に危険を及ぼすことに危機を感じたスペイン政府は、猛暑日の屋外での労働を禁止する方針を発表。昨年夏には、道路の清掃員を含め、暑さのために4744人の人が亡くなったと報道されています。

 

同国の気象庁(AEMET)が警告を出したら、屋外の作業が禁止されます。対象となるのは、農業従事者、警察、消防士、庭師、清掃員など。この方針はさらなる議論を経て正規に導入されると見られています。

 

日本でも、2022年夏は最高気温が40℃を超える地点があったほか、2023年4月には複数の地点で真夏日を観測。本格的な夏を迎える前に、真夏並みの暑さに見舞われる日も出てくる可能性があり、スペインの話も他人事とは言えないかもしれません。

 

【主な参考記事】

AP NEWS. Spain plans to ban outdoor work in extreme heat. May 11 2023
TIME. Spain and Portugal Experience Hottest April Ever Recorded. May 8 2023
SPAIN in ENGLISH. Confirmed: 2022 was Spain’s hottest year on record. January 5 2023