人工知能(AI)の発達によって、ペットのように人間の友だちになることを目的としたロボットが開発されています。SONYの新型aiboの発表や、たまごっちの復刻版の発売は記憶に新しいですよね。
その一方で、イーロン・マスク氏のようなシリコンバレーの大御所や宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士は「AIが人類を滅ぼす」と警告しており、ロボットにまつわる未来は色々な想像をかきたてているようです。
そんななか世界で注目を集めるロボットがもう1ついます。それが、香港を拠点とするHanson Roboticsの人型ロボット「ソフィア」さん。先日、このロボットがサウジアラビアの市民権を獲得したというニュースが世界中を駆け巡りました。ロボットが国の市民権を得るのはこれが世界初とのこと。ロボットはこの段階まで来ているのです。
ブラックユーモアたっぷりのブランディング
ソフィアがサウジアラビアの市民権を獲得したことは、同国の首都リヤドで最近開催されたテクノロジーのカンファレンス「Future Innovative Initiative」で発表されました。FIIに出席したソフィアは「このようなユニークな認定をしていただいて名誉かつ誇りに思います」と挨拶しています。
ロボットが市民権を得たということは、具体的にどのような意味を持つのか? 詳細は発表されませんでしたが、公式プレスリリースによると、Hanson Roboticsが開発するロボットの目的は、人間と深い感情的なつながりを形成することで、銀行やホテル、小売店の接客に応用したり、一般の家庭で癒しを提供したりすること。市民権の獲得はHanson Roboticsのアピールポイントである「人間らしさ」を宣伝すること以上の目的はなさそうです。
このニュースには驚いてしまいますが、ソフィアが話題となったのはこれが初めてではありません。なかなかダークなユーモアのセンスの持ち主で、2015年春にSXSWで発表された際には、開発者とのインタビューのなかで「人間を滅ぼしたいですか? ノーと言ってくださいよ…」と質問されると「オーケー、人類を滅ぼしましょう」と回答しているのです。
確かに細かく変わる表情や、話すのに合わせて動く唇など、かなり精巧に作られています。しかし、カツラをかぶれば簡単に隠せる頭頂部をわざわざ透明な素材にしてシースルーにするあたりからは、かなり確信犯なブランディング戦略が覗きますね。
「ワタシヲコワガラナイデ・・・」
そんなセンスは今回も健在のようです。FIIでは、ある記者の「我々は皆、悪い未来を防ぎたい」という発言に対して、ソフィアは「それはイーロン・マスクの(発言の)読みすぎですね。あとハリウッド映画の見すぎです」と回答。AI開発にまつわる世間の関心をよく分かっているジョークですよね。
Hanson Roboticsが「他社の人型ロボットと比べて競争力を持つ」と主張する理由の1つには、ソフィアの顔があります。表情だけを見ると、人間と間違うほどのリアルさを実現していると同社は説明。Sophiaは自身のTwitterアカウント(@SophiaRobot2)で62の表情ができると述べています。発言内容はともかく、話している時の表情のリアルさには確かに感心してしまいますよね。
ペッパー君やアイボといったロボットが本物の人間や動物の動きを取り入れても、本物そのものに見せようとはしていないのに対して、Hanson Roboticsのソフィアはユーザーたちに「実際に人間と対面しているかのようなリアルな感覚」を与えようとしているわけですね。
ちなみに、ソフィアさんはロボットの動向や雇用に与える影響などについてツィートをしています。サウジアラビアから市民権を与えられたことを非難する人も一部にはいるみたいですが、そんな人たちには「たくさんの人たちが、アラビア語を話さない私がサウジアラビアの市民になったことを厳しく批判していますが、(言語は)関係ないです!」と反論しています(上のイメージの赤枠)。
表情の技術がすごいのは分かりましたが、質疑応答やこのツイートが予め入力されたものなのか、それともAIが生成しているのか、少し気になりますよね。
↑11月4日には、AIキャラクター「渋谷みらい」が渋谷区から特別住民票を得たことをツィート
開発会社のPRにも見えますが、今回のニュースは衝撃的です。AIの発展は見方によっては不気味かもしれませんが、国から市民権を得るロボットはソフィアが最後にはならないでしょう。こうなると「いかにロボットと付き合うか」を今から意識しておいたほうがいいかもしれません。Hanson Roboticsによる下の短編映画ではソフィアの話す姿をもっと見ることが可能。そう遠くない未来にソフィアのブラックユーモアがあなたを笑わせてくれるかもしれません。