珍しいどんでん返し! 「Uber」のピーク料金規制を巡りホノルル市長が土壇場で待った!

世界のさまざまな都市と同じように、ハワイでもUberのほか、アメリカ発のLyftなどの配車サービスの利用者が急激に増えています。しかし、このたびハワイで問題として上がったのが、利用者が増加する時間帯に乗車料金も上がる「ピーク料金」のシステムについて。ホノルル市議会で、このピーク料金に上限を設けようとする法案が可決されました。しかし……

 

UberやLyftのピーク料金とその問題

一般の人がドライバーとして登録をしておき、利用者は専用アプリを使って、近くを走行する登録車をつかまえて乗車することができるというのがUberやLyftの配車サービス。従来のタクシー料金よりも割安で利用できるとあって、世界中の都市で利用が拡大しています(日本は違いますが)。

 

ただ気をつけておきたいのが、タクシーの料金とは違って、UberもLyftも乗車料金が高くなる時間帯があること。Uberは「ピーク料金」、Lyftは「プライムタイム」と呼び、ラッシュアワーのように、利用者が増える時間帯やドライバーが少ない時間帯など、需要が多いときに乗車料金も上昇するというもの。この料金の引き上げ率は数パーセントの場合もあれば、2倍、3倍と上昇することもあります。

 

年末やハロウィンなどのイベントが行われた日は、乗車希望の人は多いのにドライバーの数が極端に少なくなり、「数百ドル(数万円)を請求された」という不満の声がSNS上などであがることも少なくありません。この料金制度には上限が設定されていないため、結果として、タクシーよりも割安で利用できる配車サービスなのに、タクシー料金よりも高額を請求されることになったというケースがあるようなのです。

 

ホノルル市議会でピーク料金に上限設定を求める法案が可決

6月、ホノルル市議会で論じられたのが、UberやLyftの配車サービスの料金に上限を定める法案を作るというもの。ハワイではUberの料金は、タクシー料金のおおよそ40%と言われています。しかし、Uberのピーク料金が適用されたため、「タクシーで$44の区間を、Uberに$221請求された」というケースも過去にあるそう。そんなUberなどの配車サービスの料金高騰を防ぐことが、この法案制定の目的です。

 

一方、Uberはこの法案に反発。乗車料金を上げることで、需要があるエリアにドライバーを向かわせて、利用者の待ち時間を短くできると主張。さらにドライバーへのインセンティブとなり、ドライバーのモチベーションを高められるとしています。

しかし、ホノルル市長は自由競争を重視

この法案は議会を通過して、あとは市長の署名を待つのみとなっていました。アメリカで初めて、配車サービスに上限が設定される法案が制定すると思われたものの、ホノルル市長が出した結論は法案の承認ではなかったのです。その主な理由は、交通サービス各社の競争力を高めていきたいから。

 

その代わり、従来のタクシーで用いられていた、走行距離に応じた料金システムと、乗車前に支払料金が確認できるシステムのどちらかを、利用者が選択できるという立案を提案。タクシー会社への規制についても緩和することが検討されています。

交通渋滞がひどく、公共の交通機関はバスしかないオアフ島ホノルルでは、交通手段の選択肢が増えることは、観光で訪れた旅行客だけでなく地元民にとっても歓迎するべきことと捉えられているでしょう。議会の承認を得た法案に、現市長が異論を唱えることは比較的珍しいケースと言えるかもしれません。タクシーも配車サービスも競争力を高め、利用者にとってさらに便利なサービスを提供してもらえるよう、新しい仕組み作りに今後も期待していきたいところです。それはきっと日本にも遅かれ早かれ影響を与えるでしょう。

「相乗りタクシー」から「ソニーの配車アプリ」まで… 激化するタクシー改革は成功するのか?

去年の秋にトヨタ自動車が新型タクシー専用車、JPNTAXI(ジャパンタクシー)を発表したことはこのコラムでも紹介したが、その後もタクシー業界ではニュースが相次いでいる。今年に入ってからも4つの大きな動きがあった。

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まずは1月24日から3月11日(日)まで行われる予定の、配車アプリを活用してタクシーを相乗りで割安に利用できるサービス「相乗りタクシー」の実証実験だ。本来は22日スタートだったが雪のため2日遅れで始まった。

 

2つのグループが提供する配車アプリ上で乗車地と降車地を設定し、同方向に向かう利用者同士をマッチングするというもので、運賃は各利用者が単独で乗った場合の推計走行距離に応じた割り勘となる。東京23区および武蔵野市、三鷹市を走る大和自動車交通グループ 4社と日本交通グループ11社の約950台が協力している。

 

続いて2月8日、日本交通グループでタクシー配車アプリ「全国タクシー」を2011年から提供し、前述の実証実験でもアプリを開発したJapanTaxi(トヨタのタクシー車両とは無関係)が、トヨタとの間でタクシー事業者向けサービスの共同開発などを検討する基本合意書を締結。トヨタがJapanTaxiに約75億円の出資をすることで合意した。ちなみにJapanTaxiの資本金は、この時点で3.1億円だった。つまりトヨタの出資比率は同社の約96%を占めるまでになった。

 

さらに昨年11月に中国の配車アプリ会社、滴滴出行(ディディチューシン) とアプリを使ったタクシー配車サービスの導入の連携に向け協議中と発表した第一交通産業は、メディアで報道されているウーバー(Uber)との提携について19日、協議や検討を行っていることは事実と否定はしなかった。

 

第一交通産業はもちろんウーバーや滴滴出行のような、一般ドライバーが自家用車を使ってのライドシェアを認めたわけではなく、あくまで自社のタクシーの配車をこのアプリで行うという内容で協議を進めているという。

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そして20日、あのソニーがタクシー配車アプリ開発に参入すると発表した。子会社のソニーペイメントサービスと東京23区および武蔵野・三鷹市のタクシー会社6社が、配車サービスアプリなどを開発・運営する新会社を今年春に設立することを目指しているという。

 

一連のタクシー改革は、業界団体である全国ハイヤー・タクシー連合会のライドシェア問題対策特別委員会がまとめ、2016年11月に了承された11項目の取り組み案に基づくものだろう。

 

その内容とは、

①初乗り距離短縮運賃

②相乗り運賃

③事前確定運賃

④ダイナミックプライシング(変動料金制)

⑤定額運賃

⑥相互評価制度

⑦ユニバーサルデザインタクシー

⑧タクシー全面広告

⑨第2種免許緩和

⑩訪日外国人等の富裕層の需要に対するサービス

⑪乗合タクシー

というものだ。

 

この11項目のうち、①から⑥まではウーバーなどで実用化されている。同社のシステムを使わず自前で構築しようとするところに、ライドシェアを危険な白タクとみなし敵視してきた業界心理が伝わってくる。

 

しかもウーバーの場合、単一のアプリで相乗りか単独乗車かを選べるが、日本交通は別々のアプリを使う。筆者は運賃が割安なら相乗りを選んでもいいと考える。鉄道もバスも相乗りなのだし。それだけに2種類のアプリを起動させて比較しなければならないのは不便に感じる。しかも一部の改革は東京地区限定だ。日々の移動に苦労しているのはむしろ地方の人々なのに、手を差し伸べようという動きはあまり見られない。

 

それにこの11項目の了承後に目立つようになった、中国などからの外国人観光客を運ぶワンボックスタイプの白タクについては、タクシー業界はウーバーのときほど声を挙げていないのが不思議だ。この新種の白タク、利用者は本国でアプリなどを使って配車会社に手配し、その会社が日本の運転手に連絡するという遠隔操作で輸送を行なっているようだ。でもそれを理由に反対の声をトーンダウンするのは腑に落ちない。こちらについて明確な主張をしないのは公平性を欠くと言わざるを得ない。

 

【著者プロフィール】

モビリティジャーナリスト・森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担当。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事、日本自動車ジャーナリスト協会・日仏メディア交流協会・日本福祉のまちづくり学会会員。著書に『パリ流環境社会への挑戦(鹿島出版会)』『富山から拡がる交通革命(交通新聞社)』『これでいいのか東京の交通(モビリシティ)』など。

タクシーの相乗りを都内で実証実験中

観光地などではよく目にするタクシーの相乗りが、東京都内でも可能となる実証実験が始まっている。国土交通省が音頭を取り、大手タクシー会社の日本交通グループと大和自動車交通グループが参加してスタートしたもので、今年1月22日から3月11日までの期間限定で東京23区および武蔵野市、三鷹市でサービスが始まっている。
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スマートフォンの配車アプリ(相乗り専用アプリ)を使い、出発時刻と目的地方向が同じ複数の顧客をマッチングさせるもので、大和はiPhoneとAndroido、日本交通はiPhoneのみで利用が可能。概算運賃もその場で分かるようになっており、駅など同じ地点からの相乗りはもちろん、ルートの多くが重複していれば異なる地点からの相乗りも可能で、それぞれ距離に応じたワリカン料金を確認のうえ、目的地まで乗ることができる。ちなみに支払いはクレジットカードのみとなる。

 

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大和が649台、日本交通が300台を参加させているのでかなりの確率で利用できるはずで、1万円を超える距離を一人で移動したいときなどは使えそうだ。利用イメージなどは各社のホームページで公開されているので確認できるが、大幅なルート変更や大きな荷物の持ち込みなどは制限され、時間に遅れた場合も運賃は100%請求されるので注意したい。やや手続きは複雑かもしれないが、お得感は強い相乗りタクシー。2カ月足らずでどこまで認知度が高まるのか。実証実験結果のアナウンスに期待しよう