「CP+2021」総括レポート後編:オンライン時代に奮起するカメラ周辺機器メーカーのトレンド

2021年2月25日から28日にかけて“カメラと写真映像のワールドプレミアショー”「CP+2021」が、コロナ禍の影響から初のオンラインで開催されました。オンラインではカメラやレンズの実機に触れることができないなど、大きな制約がある中での開催となり、メーカーがどのような工夫をしてくるかにも注目が集まったイベントです。本稿では、4日間に渡ったオンラインイベントの様子を前後半、2回に分けてレポート。後半となる今回は、交換レンズメーカーを含む、主だった周辺機器メーカーについて取り上げます。

 

カメラの周辺機器というと、交換レンズや三脚、フィルター、ストラップやカメラバッグ、照明機器といった撮影時に必要なものもありますが、デジタル化以降はパソコンや画像処理ソフト、プリンターなど、撮影後に必要な機器や用品の重要度が増しています。今回のCP+2021は、オンライン開催との親和性が高いこともあってか、パソコンなどの周辺機器メーカーによる出展が大きな割合を占めていました。

 

今回の出展社のなかでも動画配信などに力を入れていたメーカーに絞って、それぞれをチェックしていきます。

 

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【周辺機器メーカー1】ケンコー・トキナー

ケンコー・トキナーは、フィルターやフィールドスコープなどを扱う「ケンコー」、三脚などを扱う「スリック」、交換レンズなどを扱う「トキナー」といった自社ブランドのほか、関連会社によるものも含め、無数の商材を扱っています。なかでも最近は、「レンズベビー」や「SAMYANG」など、交換レンズ系商品の注目度が上昇。今回の新製品ではフィルターやフィールドスコープなども登場していますが、トキナーから昨年末に発売された、2本のFUJIFILM Xマウント用レンズなどの交換レンズが最も注目を集めていたように思います。オンラインセミナーは4日間で19本と多数実施され、多くの人気写真家らが登場。周辺機器メーカーのなかでも、ユーザーが最も目を見張った出展社の1つでしょう。

↑ケンコー・トキナーの特設ページ。ケンコー・トキナーのほか、グループ会社のスリック、ケンコープロフェショナルイメージングの製品も含め、数多くの写真関連製品が紹介されていた

 

↑オンラインセミナーは、合計16名の講師による全19コマを実施。会期中の午後、ほぼ2時間おきに実施される豪華なものだった。画像は、小河俊哉さん、萩原和幸さん、桃井一至さんによる「トキナーレンズを語る」より

 

↑FUJIFILM Xマウント用単焦点交換レンズ「トキナー atx-m 33mm F1.4X」(実売価格/5万3800円)。F1.4の明るい標準レンズで、美しいボケ描写が魅力だ。このほか、FUJIFILM Xマウント用広角レンズ「atx-m 23mm F1.4 X」(実売価格/6万500円)もラインナップされている

 

【周辺機器メーカー2】サイトロンジャパン

サイトロンジャパンは、米国サイトロン社の双眼・単眼鏡などの光学機器を扱っているメーカーです。最近は、中国LAOWA(ラオワ)社の低廉でユニークな交換レンズを扱っていて、カメラファンの注目を集めています。CP+2021では、試作品を含むLAOWAの製品紹介のほか、サイトロンの双眼鏡、スカイウォッチャーやシャープスターの天体望遠鏡などを紹介。天文関連を含めて計16コマのセミナーも実施しました。

↑サイトロンジャパンの主力商品は、特設ページを見てもわかる通り双眼鏡や天体望遠鏡、ライフルスコープといった光学製品。LAOWAの交換レンズの扱いを始め、ここ数年はCP+の常連となっている

 

↑セミナーは、写真家によるLAOWA製品紹介や活用法のほか、アマチュア天文家による、天体望遠鏡の使いこなし紹介などユニークな切り口で展開された。画像は、齋藤千歳さんの「実写チャートでみるLAOWA広角レンズの特徴を紹介」より

 

【周辺機器メーカー3】シグマ

個性的かつ高性能な交換レンズを数多く登場させ、人気を集めているシグマは、ミラーレスカメラ用の小型単焦点交換レンズ「Iシリーズ」や、同社製で世界最小のフルサイズミラーレスカメラ「SIGMA fp」などを紹介。動画コンテンツでは、会期直前にシグマ代表取締役社長・山木和人さんによる新製品プレゼンテーションが行われたほか、写真家による新製品セミナーやレンズ開発者によるトークなどを実施していたのも印象に残っています。ライブ配信でのコンテンツが多く、マニアックなものから気軽に楽しめるものまで幅広いコンテンツが揃えられていました。

↑シグマの特設ページは、シンプルでスマートな構成のページだが、動画コンテンツなどは、レンズ好きに刺さるものも用意。一方で商品企画担当者のトークなどは、レンズにこだわりを持ったシグマファンから、購入を検討中のユーザーまで楽しめる内容になっていた。

 

↑いわゆるシグマファン向けのコンテンツも少なくなかったが、「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」などの新製品を写真家が実際に使って、その魅力や使いこなしを語る「プロダクトセミナー」は、比較的エントリーユーザーに理解しやすい内容だった。作例写真も多く、製品の魅力がダイレクトに伝わってくる。画像は、鹿野貴司さんの「プロダクトセミナー 新製品SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary編」より

 

↑フルサイズミラーレスカメラ対応で小型・軽量な大口径標準ズーム「28-70mm F2.8 DG DN|Contemporary」(実売価格/9万9000円)。画面全体に高解像で歪みや収差、ゴーストなども少ない高性能レンズだ。最短撮影距離が19cm(広角端)と短く、被写体を大きく撮れるのも魅力。ソニーEマウント用、ライカLマウント用がラインナップされている

 

【周辺機器メーカー4】タムロン

タムロンは、1本で幅広い焦点距離に対応できる高倍率ズームレンズや、低廉で高性能な交換レンズのラインナップに定評のあるレンズメーカーです。CP+2021では、1月14日に発売された新製品「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」と昨年6月発売の「28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)」を中心に、同社のソニーEマウントミラーレスカメラ用レンズを紹介。2月27日と28日には、写真家の別所隆弘さん、澤村洋兵さんによるセミナーも実施されました。

↑あえてソニーEマウントのミラーレスカメラ用レンズである、「Di III」シリーズ9本に焦点を当てたタムロンの特設サイト。なかでも、最新の17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)は注目を集めていたようだ

 

↑セミナーは2名の写真家による新製品のインプレッションであったが、単純なスペック紹介ではなく、レンズの特徴を上手くとらえた作例が用意され、各レンズの魅力はもちろん、適した撮影シーンも伝わる内容になっていた。画像は、別所隆弘さんによる28-200mm F2.8-5.6 Di III RXD(A071SF)のインプレッションより

 

↑APS-Cサイズ用に設計することで、小型ながらF2.8の大口径で高画質を成功させた「17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD(Model B070)」。最短撮影距離が広角側で0.19m、望遠側で0.39mと近接撮影に強い設計になっているのも魅力だ。実売価格/9万3500円

 

【周辺機器メーカー5】エプソン

プリンターやスキャナーのメーカーとしておなじみのエプソンでは、「PHOTOS at Home」をテーマに自宅での写真の楽しみ方を提案。スペシャルプログラムとして4本の動画を公開したほか、同社製品を紹介するだけでなく使用目的に合わせたプリンターやスキャナー選びができるように工夫されていました。

↑エプソンの特設ページ。作品プリントに最適な画質で、A3ノビやA2ノビの大きさでプリントできる「プロセレクション」シリーズだけでなく、インクをタンクに補充して使うことで、プリントのコスト低減を実現した、「エコタンク」搭載モデルなども紹介

 

↑セミナーは、鉄道写真家・中井精也さんの「伝えるためのプリントテクニック」、塙真一さんの「フィルムで楽しむデジタル暗室術!」、上田晃司さんの「プリントでもっと広がる写真の世界を体験しよう!」、『IMA』エディトリアルディレクター太田睦子さんらによる「インテリアに写真を取り入れる楽しさとコツ」の4本を配信。プリントのテクニックや楽しみ方が、わかりやすく解説されていた。画像は中井精也さんのセミナーより

 

【周辺機器メーカー6】raytrek(サードウェーブ)

サードウェーブは、BTOによるパソコン販売の大手メーカー&販売店。CP+2021では、同社のクリエイター向けBTOパソコンのシリーズである「raytrek」ブランドで出展していました。写真作品や映像作品の制作におけるraytrekのメリットについての紹介のほか、同社と写真投稿SNS「東京カメラ部」とのコラボフォトコンテストの受賞者発表を本ページで行うなど、写真関連にも力を入れている様子が伝わってくる内容でした。

↑raytrekの特設ページでは、写真家の井上浩輝さん、別所隆弘さん特別監修モデルのパソコンを紹介。2月28日には、この2名の写真家と東京カメラ部メンバーらによるライブ配信も実施された

 

↑ライブ配信では、同社製PCの魅力を紹介するだけでなく、画像処理ソフトや動画編集ソフトを使っての実演も実施。作家ならではのテクニックの解説も行われ、すぐに役立つ内容の配信であった

 

【周辺機器メーカー7】ATOMOS

ATOMOSは、ミラーレスカメラのHDMI端子などに接続して使う、外部接続の動画レコーダーを製造しているメーカーです。同社製品を使うことで動画のRAW記録などが行え、撮影後に調整しやすく高品位な映像が制作できます。映像作家には定番のレコーダーということもあってか、動画配信に力が入ったコンテンツが用意されていました。多くのカメラユーザーにはあまり馴染みのないメーカーかもしれませんが、今回のコンテンツを見て、動画撮影やレコーダーに興味を持った方も少なくないのではないかと思います。

↑ATOMOSの製品は、画像にあるような小型モニター付きのレコーダーで、記録映像の確認も行える。撮影後はパソコンなどにデータを取り込んで編集するのが基本となる。今回のコンテンツは配信が中心で、写真家や映像作家によるトークや、各カメラメーカーのエンジニア対談などが組まれ、合計10本が配信された

 

↑配信の内容は動画撮影のテクニック、レコーダーやカメラの機能などについてのトークが多く、動画撮影や編集に興味のある人には、非常に有益なコンテンツだったのではないかと思う

 

まとめ

レポートの後半はカメラ周辺機器メーカーのうち、動画配信などに力を入れていたメーカーを中心に取り上げました。特徴的な傾向としては、ミラーレスカメラ用のレンズが増えたことで、レンズ設計の自由度が高まり最短撮影距離が短く、被写体に近寄って撮れる製品の増加が挙げられます。同じくミラーレスカメラの普及によって、動画関連の製品、あるいは出展社が増えたのも大きなトレンドと言えるでしょう。

 

CP+2021は、レポート全体で今回取り上げたメーカー以外を合わせると、全部で20社/ブランドによるイベントとなりました。従来のリアルイベントに比べると参加企業は少なかったものの、参加者は5万人以上であったという速報(2021年3月4日時点)が発表されており、各社の工夫によってオンラインであってもユーザーが十分楽しめるイベントになったのだと実感しています。とはいえ、やはり新製品のカメラやレンズに触れないのは寂しく、来年こそはリアルイベントを期待したいところ。もし可能であれば、今年の経験を生かして、リアルとオンラインの両立ができれば、参加者はより楽しめるものになるのではないかと思います。

 

なお、動画配信などのコンテンツの多くは、2021年3月31日までアーカイブとしてオンラインで見ることが可能です。興味のあるコンテンツがありましたら、ぜひチェックしてみてください。

 

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コスパで選ぶならコレ!! プロがオススメする「格安カメラ&レンズ」まとめ

価格が安い、安すぎてちょっと心配になってしまうくらいの格安アイテムを、プロ・専門家が徹底的にチェック! 独自機能やおすすめポイントなど、良いところも悪いところも含めて惜しみなくレビューをお伝えしていきます。今回のテーマはミラーレスカメラや一眼レフカメラ、交換レンズ、ストロボ、三脚といった格安カメラ用品です。

 

まだまだ発展途上のスマホカメラとは異なり、最近の一眼カメラはもはや安定期にあります。一世代前の旧製品でも、十分に納得できる画質と性能なのです。そんなおトクな格安モデルのなかから特にオススメの機種を紹介します。

 

【○×判定した人】

カメラマン・永山昌克さん

写真スタジオを経てフリーに。写真や動画撮影のほか、カメラ誌やWEB媒体での執筆も多数。

 

一世代前のモデルでも画質や操作性に不都合はない

エントリークラスのカメラは各社1〜2年ごとに新製品が登場しますが、モデルチェンジ後しばらくの間は旧製品も併売されます。この、いわゆる型落ち品が格安で、コストパフォーマンスが非常に高いです。

 

最近のモデルチェンジは、画質や操作性が大きく変わるわけではなく、新機能の追加がメインであることが多いです。その新機能が自分にとって重要でなければ、あえてひとつ前の製品を選ぶのも十分アリなのです。余った予算で交換レンズを1本追加したほうが、写真撮影の楽しみはいっそう広がります。

 

交換レンズに関しても、高価な新モデルだけが優れているわけではありません。発売が古い安価なレンズでも、描写性能に優れた製品はたくさんあります。ここで取り上げるのは、そんな掘り出し物の数々です。

 

【カメラ編】

その1

タッチ操作や4K動画に対応した薄型軽量モデル

パナソニック

LUMIX GF9

実売価格6万9800円(ダブルレンズキット)

【ミラーレス(EVF非搭載)】【1600万画素】【秒約5.8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約269g

薄型軽量ボディの入門機ながら、4Kフォトによる30コマ/秒の高速連写など、便利で実用的な機能が満載。液晶は自分撮りがしやすいチルト可動式で、タッチ操作にも対応。ボディに巻き付けられた合皮素材は、低価格を感じさせない高品位な雰囲気を生み出しています。

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式(上方向のみ)、タッチ対応 ●EVF:非搭載 ●サイズ:約W106.5×H64.6×D33.3㎜

 

【check】

画質:〇

中級機に匹敵する描写力

ローパスレスの16M Live MOSセンサーを搭載し、中級機に匹敵する描写力。フォトスタイル機能によって細かく色をカスタマイズできる点も◎。

 

操作性:○

初心者でも安心して使いこなせる

操作部はシンプルにまとまっていて使いやすいです。薄型のキットレンズ装着時のボディバランスは良好で、切れ味の鋭いシャッター音も好印象。

 

機能:○

「4Kプリ連写」が動体撮影に好適

独自の「4Kプリ連写」では、シャッターボタンを押した前後の60コマを自動的に記録できます。撮るのが難しい動物や野鳥、子どもなどの撮影に好適。

 

 

その2

ワンランク上の撮影も楽しめる高機能モデル

パナソニック

LUMIX GX7 Mark 

実売価格6万9800円(標準ズームレンズキット)

ミドルクラスの高機能ミラーレス。高さを抑えた横長ボディに、視認性に優れた電子ビューファインダーと、アングルの自由度を高めるチルト可動液晶を搭載。撮影モードはオートからマニュアルまで完備。

【ミラーレス(EVF搭載)】【1600万画素】【秒約8コマ連写】【常用最高ISO25600】【約426g】

SPEC●レンズマウント:マイクロフォーサーズ ●モニター:3.0型約104万ドット、チルト式、タッチ対応 ●EVF:約276万ドット ●サイズ:約W122×H70.6×D43.9㎜

 

【check】

画質:〇

ハイアマも満足できる解像感

撮像素子は特に高画素ではありませんが、ローパスフィルターレス仕様であり、解像感は優秀なレベル。キットレンズの写りも悪くありません。

 

操作性:×

2ダイヤルは便利だがチルト液晶が惜しい

電子ダイヤルはグリップの前後に2つあって多機能をスムーズに設定可能。ただし、チルト液晶は自分撮りや縦位置撮影に非対応なのがイマイチ。

 

機能:〇

一段上の機能が薄型ボディに凝縮

強力なボディ内手ブレ補正や4Kフォトによる高速連写、本格モノクロモードなど、一段上の機能が満載。各ボタンの機能を柔軟にカスタムできるのも便利です。

 

 

その3

シンプルな操作性が魅力の小型軽量機

ニコン

D5300

実売価格6万4900円(AF-P 18-55 VRキット)

小型軽量ボディとシンプル操作が魅力の一眼レフ。使用頻度の高い項目にダイレクトアクセスが可能なiボタンを搭載。凝った効果を素早く適用できるスペシャルエフェクトなどのビギナー向け機能も充実しています。

【一眼レフ】【2416万画素】【秒約5コマ連写】【常用最高ISO12800】【約530g】

SPEC●レンズマウント:ニコンFマウント ●モニター:3.2型約104万ドット、バリアングル式、タッチ対応 ●OVF:約95%、約0.82倍 ●サイズ:約W125×H98×D76㎜

 

【check】

画質:〇

高精細な2416万画素

低価格の旧モデルながら、最新の中級機に匹敵する2416万画素の高精細を実現。遠景の細かい部分までシャープに描写できます。

 

操作性:×

ライブビュー時のAFの遅さが残念

一眼レフとしては小型軽量なボディであり、携帯性とホールド性を両立。しかし、ライブビュー使用時のAFの遅さとタイムラグが残念です。

 

機能:〇

39点位相差検出AFが使えるのが良い

AFには、最大39点の測距点を自動/手動で選べる位相差AFを採用。ペットや子どもといった動体にも、ストレスなく軽快に合焦します。

 

【交換レンズ編】

その1

高倍率ズームレンズ】低価格と高倍率、小型軽量を兼ね備える

タムロン

18-200mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC (Model B018)

実売価格2万5650

高倍率ズームのパイオニアであるタムロンが、2015年に発売したAPS-C一眼レフ用レンズ。より倍率の高い製品と比べても、持ち運びに優れた小型軽量である点がうれしい。低価格ながら、適度な剛性感も備えています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用】【ソニーAマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:28〜310㎜ ●最短撮影距離:35㎜時0.77m、180㎜時0.49m ●フィルター径:62㎜ ●長さ:キヤノン用96.6㎜、ニコン用94.1㎜ ●質量:約400g

↑幅広い焦点距離をカバー。そのため、自由に動けない場所でも狙いに応じた厳密なフレーミングが可能です

 

【ここが〇】

手ブレ補正の効きが良好

ズームすると前玉部分が長くせり出しますが、鏡胴にガタつきはなく、安っぽさは感じません。手ブレ補正の効果も十分にあります。

 

【ここが×】

AFスピードが遅めでもたつく

AFの作動音はあまりうるさくありませんが、AFスピードは遅め。マウント部がプラスチック製である点も不満。

 

その2

【マクロレンズ】銘玉といわれる「タムキュー」の2008年モデル

タムロン

SP AF90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model272E)

実売価格2万9140円

タムロンの90㎜マクロといえば、高画質と美しいボケに定評があり、1979年発売の初代モデル以来、モデルチェンジを繰り返しながら多くのユーザーに親しまれています。これは2008年発売モデル。AFはうるさいが画質は一級品です。

【キヤノンEFマウント用】【キヤノン用】【ニコン用(AFモーター内蔵:272EN Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:90㎜ ●最短撮影距離:0.29m ●フィルター径:55㎜ ●長さ:97㎜ ●質量:約400g

↑PC上で等倍表示すると、花粉の粒がはっきりわかるくらいシャープに解像。リアルで立体感のある描写が得られました

 

【ここが〇】

切れ味の鋭い描写力が魅力

フルサイズ対応ながら四隅まで高解像を実現。一方で、絞り開放値ではピントを合わせた前後に美しいボケが生じます。

 

【ここが×】

AF駆動音が少々大きめ

超音波モーター非搭載なのでAF駆動音は少々大きめ。AFからMFに切り替える際、ピント位置が動きやすい点も×。

 

 

その3

【望遠ズームレンズ】1万円台前半で超望遠域を味わう

タムロン

AF70-300㎜ F/4-5.6 Di LD MACRO 1:2 (Model A17)

実売価格1万2240円

フルサイズに対応した小型軽量の望遠ズーム。通常の最短撮影距離は1.5mですが、マクロモードを選ぶと0.95mまでの接写もできます。手ブレ補正は非搭載。ゴースト対策として前玉にはマルチコートが施されています。

【キヤノンEFマウント用】【ニコン用(AFモーター内蔵:A17N Ⅱ)】【ソニーAマウント用】【ペンタックス用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:70〜300㎜ ●最短撮影距離:通常1.5m、マクロモード時0.95m(180-300㎜域) ●フィルター径:62㎜ ●長さ:116.5㎜ ●質量:約458g

↑描写性能は色収差がやや目立ち、最上とはいえませんが、十分に実用的。小動物をアップで撮れるのは便利です

 

【ここが〇】

軽量で携帯性に優れている

フルサイズ対応ながら、質量458gという軽さが最大のメリット。300㎜側でF5.6というスペックやマクロ機能も◎。

 

【ここが×】

手ブレ補正が非搭載

300㎜の超望遠撮影ができるが手持ちではブレやすいので、手ブレ補正非搭載は残念。AFが遅めといった弱点もあります。

 

 

その4

【単焦点レンズ】単焦点レンズの入門用に打って付け

シグマ

30mm F2.8 DN

実売価格1万6360

わずか140gの軽さを実現したミラーレス用単焦点レンズ。両面非球面レンズの採用で諸収差を補正したほか、スーパーマルチレイヤーコートによってフレアやゴーストの発生も低減しました。AFは駆動音の静かなリニアAFモーター式です。

【マイクロフォーサーズ用】【ソニーEマウント用】

SPEC●35㎜判換算焦点距離:マイクロフォーサーズ60㎜、APS-C45㎜ ●最短撮影距離:0.3m ●フィルター径:46㎜ ●長さ:40.5㎜ ●質量:約140

↑スムーズなボケは単焦点ならでは。この写真では、絞り値F2.8に設定し、被写体に近寄ることで背景をぼかします

 

【ここが〇】

小型軽量で画質も優秀

キット付属の標準ズームに比べて小型軽量で、携帯性が高いです。画質もキットレンズより上で、美しいボケが得られます。

 

【ここが×】

外装に指紋がつきやすく目立つ

開放値F2.8は、キットレンズよりは明るいものの、F1.8クラスよりは暗く、中途半端な印象。外装も指紋がつきやすいです。

 

【撮影アイテム編】

その1

薄型軽量のクリップオンストロボ

GODOX

TT350デジタルカメラフラッシュ

実売価格1万4310

各社のTTLオート撮影に対応したクリップオンストロボ。単3形乾電池2本で駆動し、200gと軽量です。マルチ発光や高速シンクロ撮影に対応するほか、発光部を上下左右に動かすことで天井や壁を使ったバウンス撮影も行えます。

【ストロボ】【キヤノン用】【ニコン用】【ソニー用】【富士フイルム用】

SPEC●ガイドナンバー:36(105㎜、ISO100) ●フラッシュ範囲:24〜105㎜(14㎜ワイドパネル付) ●電源:単3形乾電池2本 ●サイズ/質量:W62×H140×D38㎜/200g

↑背面には、各種機能の設定状態がひと目でわかる液晶パネルを装備。その下のホイールを回して発光量を調整します

 

【ここが〇】

各社のTTL発光に対応

4つのメーカー用の製品が用意され、押すだけのフルオート撮影で使用できます。高速シンクロなどの機能も充実。

 

【ここが×】

チャージに時間がかかる

単3形乾電池2本で駆動するのは携帯性では有利ですが、4本使用の他社製品に比べてチャージに時間がかかります。光量もやや弱め。

 

 

その2

憧れのカーボン三脚がわずか1万円で購入可能

アマゾンベーシック

トラベル三脚 130cm  5小型

実売価格9980

軽量で剛性感の高いカーボン素材を採用したトラベル用三脚。脚を伸ばし、中央のエレベーター部分を動かすことで、高さは30.5〜135.5cmの範囲で調整可。ボールヘッドの自由雲台やクイックプレート、キャリングケースも付属します。

SPEC●耐荷重:3.6㎏ ●全高:135.5㎝(EVあり) ●最低高:30.5㎝ ●縮長:31㎝ ●質量:1.11㎏

 

↑持ち運ぶ際は、脚の部分を反転させることで小さくまとめることが可能。出っ張りが少ないナット式ロックも便利

 

【ここが〇】

カメラバッグに収納可能

縮長が31㎝と短いので、通常のカメラバッグに入れて持ち運ぶことも可能です。また、ローアングル撮影にも対応します。

 

【ここが×】

一眼レフ用には安定感が不足

全長135.5cmはやや物足りず、脚も5段でセッティングに時間がかかります。ミラーレス用で大きな一眼レフには不向き。

 

 

 

タムロンの新型標準ズーム「28-75mm F/2.8」はソニーユーザーにとって買いか?【実写レビュー】

話題のタムロンのフルサイズEマウント用レンズ「28-75mm F/2.8 Di III RXD(Model A036)」がついに発売されましたね。このレンズは28mmから75mmの焦点距離をカバーするF2.8通しの大口径標準ズームでありながら、実売価格で10万円を切る価格帯が大きな特徴となっています。何を隠そう実は筆者もEマウントユーザーでして、このレンズには注目していました。ということで、早速レビューしてみたいと思います。

↑タムロン「28-75mm F/2.8 Di III RXD」。実売価格は9万4500円

 

Gマスターと同等のF値と焦点距離をカバー

ソニーのフルサイズEマウントの標準ズームレンズと言えば、Gマスターの名を冠した「FE 24-70mm F2.8 GM(以下、SEL2470GM)」というレンズがフラグシップに君臨しています。筆者も愛用し、その画質には大いに満足しているのですが、実売価格が25万円前後と高額なため、いくら標準ズームと言っても最初の1本としてはなかなか手を出しづらいもの。

 

そこで、SEL2470GMと同じF値とほぼ同等の焦点距離をカバーしつつ、価格は半分以下という本レンズに注目しているEマウントユーザーも多いはず。まずは製品概要を見てみましょう。

 

α7シリーズのボディと相性ヨシ!

今回は筆者が普段から愛用している「α7II」に本レンズを装着。鏡胴は樹脂性素材を採用しているため、重量は550gで大口径ズームレンズとしては軽量な部類に入ります。SEL2470GMが1kg弱であることを考えると、機動力の高さを感じます。

↑ソニー α7IIに28-75mm F/2.8 Di III RXDを装着

 

↑レンズ先端側がズームリング、ボディ側がピントリング。SEL2470GMとは前後が逆となります。ロックスイッチなどは非搭載

 

↑花形のレンズフードが標準で付属

 

↑広角端である焦点距離28mmの状態

 

 

↑望遠端である焦点距離75mmの状態

 

サイズ感ですが、SEL2470GMと比較するとそのコンパクトさは一目瞭然。鏡胴だけでなくレンズ口径も大きく違うので、当然サイズ感も違ってくるのですが、普段からヘビー級とも言えるSEL2470GMを使用している筆者としては、その軽量さとコンパクトさがとても印象的です。

↑28-75mm F/2.8 Di III RXD(左)とSEL2470GM(右)。太さがまるで違います

 

↑28-75mm F/2.8 Di III RXD(左)とSEL2470GM(右)。レンズ口径も大きく異なります

 

重量が約600gのα7IIに約1kgもあるSEL2470GMを装着すると、明らかにフロントヘビーとなり、携行時や撮影時などバランスがやや悪く感じることがあります。その点、本レンズであれば重量バランスは良好。特に撮影時にカメラを構えた際のホールド感は違和感がなく、フットワークの軽い撮影ができる印象です。

↑バランス・ホールド感ヨシ!

 

一方、軽量コンパクトとはいえ、そこはF2.8通しの標準ズーム。それなりに迫力はあります。フィールドワークや三脚固定時などは、SEL2470GMにも勝るとも劣らない大口径レンズらしい存在感があり、撮影者をその気にさせる雰囲気を漂わせています。

 

広角側で4mm、望遠側で5mmの焦点距離の差はいかに?

本レンズのスペックを見たときに、SEL2470GMと比べて微妙にずれてるな? という印象でした。というのも、SEL2470GMは、24-70mmで、ニコンやキヤノンにも同じF2.8通しのレンズがラインナップされているほど、一般的な焦点距離です。ところが、本レンズは28-75mmと広角がわずかに狭く、望遠がわずかに長いという仕様。そこで、両者の画角の違いを比べてみました。

 

まずは広角側。両レンズの広角端で、同じ位置から撮影しています。

↑28-75mm F/2.8 Di III RXDの広角端28mm(上写真)とSEL2470GMの広角端24mm(下写真)

 

一見、大差ないように見えますが、注目していただきたいのは、24mmは左右にポールのようなものが画角に入っていること。28mmだと両サイドとも画角から外れてしまっています。広角4mmの差は数値以上に大きいと感じました。

 

一方の望遠側は、5mmの差があるのでもちろん画角に違いは出るのですが、広角側ほど大きな違いは感じられません。撮影スタイルにもよるとは思うのですが、70mmを使用していて「あと5mm足りない……」と枕を涙で濡らすシチュエーションはあまりないと筆者は感じました。

 

まとめると、筆者の感想としては、望遠の恩恵はあまり感じられず、逆にシーンによっては広角側が物足りなく感じることはありそうです。

彩度・ボケ感ともに合格点

やはりF2.8通しの大口径レンズといえばボケ感を試したくなりますよね。そこで、彩度やボケ感を試してみます。撮影当日は曇り気味の空模様でしたが、そのぶんしっとりとした写真が撮れました。

 

まず彩度ですが、少し明るくするために露出補正+1で撮影したところ、ビビッドな色合いに。カラフルさを強調したい被写体の場合は、これぐらい鮮明な彩度のほうが良作が生まれやすいでしょう。

↑75mm f2.8 1/1250秒 ISO400 EV+1.0

 

次にボケ感ですが、さすがF2.8と言ったところでしょうか、強調したい被写体以外を簡単にボケさせることができます。ただし、ボケが気持ちいいからといって、これみよがしに開放しまくっていると肝心なところまでボケてしまうという「大口径レンズ初心者あるある」に陥ってしまうので、ある程度の加減と慣れは必要です。

↑75mm f2.8 1/1250秒 ISO400 EV+0.33

 

暗い場所でもしっかり解像する

続いて、暗所の性能について試すべく、知人のライブにて作例を撮影させてもらいました。ライブ写真というものは「暗い」「派手なアクション」「ストロボ発光禁止」という三重苦。非常に悪条件のなかでの撮影になるので、レンズの明るさはもちろん、カメラの設定もシビアに。

 

今回は、ド派手なアクションにも追従できるシャッタースピードを軸に、ISO感度と絞りに負荷をかけて連写するというスタイルで撮影。ミスショットもありましたが、成功したショットではライブハウスの雰囲気を表現することができました。

↑59mm f2.8 1/200秒 ISO3200 EV+2.7

 

↑75mm f2.8 1/200秒 ISO3200 EV+2

 

毛1本まで解像する動物写真

最後に動物写真だけは外せません。作例をご覧いただければ一目瞭然ですが、SNSなどにアップされているスマホで撮影された写真とは一線を画す仕上がり。背景のボケもさることながら、毛や瞳の解像感が大満足の域に達しています。このあたりは、フルサイズセンサーの実力を遺憾なく引き出した絵づくりと言えるでしょう。

↑75mm f2.8 1/400秒 ISO400 EV+0.70

 

↑75mm f2.8 1/320秒 ISO400 EV+0.70

 

↑75mm f2.8 1/200秒 ISO400 EV±0

 

【まとめ】タムロン 28-75mm F/2.8 Di III RXDは買い?

さて、今回レビューした28-75mm F/2.8 Di III RXDですが、率直な感想として絵作りはSEL2470GMには及ばないものの、価格以上の性能は十分に有していると感じました。もし、話題のα7IIIを新調するなどして、フルサイズEマウントユーザーとしてデビューするのであれば、コスパや扱いやすさの面から最初の1本として特におすすめできます。

 

競合するレンズとして、カールツァイス銘の「Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS」(実売価格11万3000円)やソニーGレンズの「FE 24-105mm F4 G OSS」(実売価格16万1600円)なども候補に挙げられますが、どちらも明るさが開放F4。焦点距離に違いがあるとはいえ、コストパフォーマンスやそれらに勝るとも劣らない画質性能を考えると、本レンズを筆頭候補に挙げてもよいかもしれません。どれを選ぶにせよ、ユーザーの選択肢が広がるのは喜ばしい限りです。

 

低価格や軽量コンパクトなだけでなく、絵作りなどの扱いやすさも本レンズの優れている点。初心者から中級者まで幅広く支持されるレンズと言えるでしょう。

万能レンズの代名詞!! タムロン「高倍率ズーム」の系譜と魅力【レビューあり】

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第3回「タムロン 高倍率ズーム」

 

広角域から本格望遠域までの広い画角をカバーする“高倍率ズームレンズ”は、それ1本でいろいろな被写体や撮影状況に対応できる、最も汎用性の高い交換レンズと言えるだろう。この高倍率ズーム、いまでこそポピュラーな存在だが、出始めのころは画角変化の大きさに驚かされたものだ。「なんと、このレンズ1本で、標準ズームと望遠ズームの画角がカバーできるのか!」と。

 

そんな高倍率ズームを得意とするのが、レンズメーカーのタムロンである。それまでの高倍率系ズームといえば、多かったのが35-135mmで、あとは一部メーカーが35-200mmを発売していたくらい。ところが、1992年にタムロンが発売した高倍率ズームの焦点距離は「28-200mm」。それまでの高倍率系ズームで不満だった広角域を35mmから28mmにワイド化しつつ、望遠域も本格望遠と呼べる200mmまでカバーしたのである。

 

この「28-200mm」の登場以降、高倍率ズームは前回に紹介した90mmマクロに並ぶタムロンの“看板商品”になった。今回はフルサイズ対応モデルを中心に、タムロン高倍率ズームの進化や変遷を、現行製品のレビューを交えながらお伝えしよう。

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

小型化&高画質化を追求したフルサイズ対応の高倍率ズーム

タムロン
28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010)
実売価格5万530円

ズーム倍率10.7倍の、35mm判フルサイズデジタル一眼レフ対応の高倍率ズームレンズ。高速で静かなAFを可能にする超音波モーター「PZD(Piezo Drive)」と、高い効果で定評のある手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」を搭載。長年蓄積してきた技術を結集し、高画質化・小型軽量化を実現。従来モデル(AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO (Model A20)から外観デザインも一新。ズームリングとフォーカスリングのグリップパターンは直線を基調としたシャープなものになり、タングステンシルバーの化粧リングの採用などで、端正で高級感のある外観に仕上げられている。

●焦点距離:28-300mm ●レンズ構成:15群19枚(LDレンズ4枚、ガラスモールド非球面レンズ3枚、複合非球面レンズ1枚、XRガラス1枚、UXRガラス1枚) ●最短撮影距離:0.49m(ズーム全域) ●最大撮影倍率:約0.29倍(300mm時) ●絞り羽根:7枚(円形絞り) ●最小絞り:F22-40 ●フィルター径:67mm ●最大径×全長:74.4mm×96mm ●質量:540g ●その他:※全長と質量はニコン用の値

↑フルサイズ対応の高倍率ズームながら、コンパクトな設計。レンズ単体を手にすると、その小ささを実感する

 

作例を撮ろうと歩いていると、川沿いの植え込みに咲く、真っ赤なシャクナゲの花を見つけた。その花と周囲の様子を広角端28mmで写し込んだ状況写真(上)と、状況を撮影した場所から数歩だけ近づいて望遠端300mmの画角で一房の花を大きく切り取った写真(下)を見比べてもらいたい。本レンズなら、こうした倍率10.7倍の高倍率ズームらしい“画角と視点の切り替え”が行える。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F6.3 1/320秒 WB:太陽光 ISO400

 

高倍率ズームのパイオニア――タムロン「高倍率ズーム」の系譜

タムロンの高倍率ズームの歴史は、1992年に発売された「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical(Model 71D)」から始まる。前述のとおり、それまでのズームレンズは高倍率な製品でも35-135mmや35-200mmだったので、広角側の画角に不満が感じられた。そう、28mmと35mmでは、広角効果(画角の広さ、遠近感の強調、など)が結構違うのである。

 

この「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical(Model 71D)」は、2枚の非球面レンズを使用した最新の光学設計と、トリプルカムズームシステムの採用などで、画質を維持しながらコンパクト化を実現した。発売されたこの高倍率ズームは、最初は欧米から人気に火がついた。そして、日本でも人気が広がって、高倍率ズーム人気が一気に高まったのである。これ以降、タムロンは“高倍率ズームのパイオニア”と称されるようになる。

AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical (Model 71D) 発売:1992年

↑ズーム倍率「7.1倍」の、コンパクトな高倍率ズーム誕生

 

ただ、画期的だった初代モデルにも弱点があった。それは“最短撮影距離2.1m”という仕様である。これは200mmの望遠レンズとしてはそう不満のない値だが、標準や広角レンズとしては不満の残る値である。そのため、この高倍率ズームの専用アクセサリー(クローズアップレンズと同等の働きをする)も用意されていた。

 

ということで、その後のモデルでは“最短撮影距離の短縮”が重要な改良点になる。

 

まず、1996年発売の「AF28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical IF Super(Model 171D)」では、200mm時80cm、135mm時52cm、という最短撮影距離を実現。そして、2000年発売の「AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD ASPHERICAL[IF] SuperⅡ-Macro(Model 371D)」では、ズーム全域49cmという最短撮影距離を実現したのである。

AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super(Model 171D) 発売:1996年

↑新開発のインテグレイテッド・フォーカス・カムにより、最短撮影距離の短縮と画質の向上を図る

 

AF 28-200mm F/3.8-5.6 LD Aspherical [IF] Super Ⅱ MACRO (Model 371D) 発売:2000年

↑ズーム全域で最短撮影距離49cmを実現。鏡筒がもっとも短くなる28mmの位置でズームリングを固定する「ズームロック機構」も採用された

 

1992年に初代の28-200mmが発売されたわけだが、それ以降は前述の“最短撮影距離の短縮”や、光学設計や機構の見直しなどが施され、高倍率ズーム28-200mmは完成度を高めていった。

 

その流れとは別に、1999年には望遠側を伸ばした「AF 28-300mm F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO(Model 185D)」も発売された。そのズーム倍率は、7.1倍から二桁に届く10.7倍になった。これ以降、タムロンの高倍率ズームは、28-200mmと28-300mmの2本立てとなる。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO (Model 185D) 発売:1999年

↑特殊低分散(Low Dispersion)ガラスに複合非球面加工を施した「LD-非球面ハイブリッドレンズ」を採用。高倍率ズームレンズの設計で問題になる様々な収差を補正

 

2005年には、普及してきたAPS-Cサイズデジタル一眼レフ用の18-200mm(画角はフルサイズの28-300mmに相当)が発売され、以降は高倍率ズームの主流はそちらに移っていく。しかし、フルサイズ対応の28-300mmも地道に進化を続けていた。2004年発売の「AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO(Model A061)」では、コーティングの見直しや、解像性能規格の底上げなどにより、デジタル一眼レフに相応しい高倍率ズームにリニューアルされた。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A061) 発売:2004年

↑この製品が発売されたのは、まだフルサイズのデジタル一眼レフが普及していないころ。だから、35mmフィルム一眼レフ用や、APS-Cデジタル一眼レフの“標準~超望遠撮影用”として使用されることが多かった

 

そして、2007年発売の「AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO(Model A20)」では、独自開発の手ブレ補正機構VC(Vibration Compensation)が搭載された。その補正効果の高さは当時、“ファインダー画面が張り付く”と表されたほど。また、小型化への取り組みも見逃せない。各鏡筒部品の役割分担を見直すことで、VC機構を搭載しながら、従来製品(A061)と比較しても、全長で約17.8mm・最大径で約5mmのサイズアップに抑えている。

AF 28-300mm F/3.5-6.3 XR Di VC LD Aspherical [IF] MACRO (Model A20) 発売:2007年

↑デジタル一眼レフカメラでは、撮像センサーの影響による内面反射が心配される。それに対処するため、レンズ面の反射を徹底的に抑えるマルチコートや、インターナル・サーフェイス・コーティング(レンズ貼り合わせ面へのコーティング)を積極的に採用

 

※一部、ここで紹介していない製品もあります

現行モデルを使い倒し! 基本性能や操作性は?

フルサイズ対応の高倍率ズームの現行モデルは、冒頭でも紹介した2014年6月発売の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」だ。光学系に採用される特殊硝材は、LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズ4枚、ガラスモールド非球面レンズ3枚、複合非球面レンズ1枚、XR(Extra Refractive Index:高屈折率)ガラス1枚。さらに、XRガラスよりも屈折率が高いUXR(Ultra-Extra Refractive Index:超高屈折率)ガラスを1枚。これらの特殊硝材を贅沢に使用することで、従来製品(Model A20)以上の小型化を実現しながら、画質劣化につながる諸収差を徹底的に補正して、高い描写性能を実現している。

↑望遠端300mmの設定で、鏡筒を伸ばし切った状態。かつての高倍率ズームはズームリングの動きにムラがあった(途中に重くなるポイントがあった)。だが、本製品も含め、最近の高倍率ズームのズームリングの動きは結構スムーズだ

 

↑ズームリングには、広角端で固定させる「ズームロックスイッチ」が装備されている。これにより、移動時の自重落下(重力や振動でレンズ鏡筒が伸びる)を防ぐことができる

 

対応マウントは、キヤノン用、ニコン用、ソニー用(Aマウント用)の3タイプ。ちなみに執筆時点で、ニコンには28-300mmの製品があるが、ソニーにはない。キヤノンの28-300mmは、画質重視の設計のためサイズが大きく高価である。それゆえに、このタムロン28-300mmの存在価値は大きいと言えるだろう。

↑シックで上品な外観デザインに一新された「タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。その外観やサイズは、各メーカー(対応マウント)の、いろいろなフルサイズ一眼レフボディにマッチする

 

↑鏡筒側面に設置された、AF/MF切替スイッチ(上)と、VCスイッチ(下)。SPシリーズのスイッチほど大きくはないが、視認性や操作性に問題はない

 

スナップ~本格望遠まで幅広い撮影がコレ1本で楽しめる!

ここからは、本レンズを使って撮った作例をもとに、その描写について語っていこう。

 

目の前にそびえる、新緑に覆われた山。その山の端にあった1本の針葉樹が目を引いたので、300mmの画角で切り取った。こういった“近づけない被写体”では、高倍率ズームの本格望遠画角が威力を発揮する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/250秒 -0.7補正 WB:太陽光 ISO200

 

蕎麦屋の店先に置かれた、味わいのある大黒様。その石像に接近して、28mmの広角域でスナップ感覚で撮影した。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F11 1/80秒 WB:オート ISO100

 

寺院の門の脇にあった小さめの銅像。高い台座の上に設置されているので、近づいての撮影はできない。そこで200mm弱の望遠画角で、銅像の上半身を切り取った。また、手前の植え込みと背後の樹木の“新緑”を大きくぼかし、画面全体を華やかに演出する。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F6.3 1/200秒 +1補正 WB:太陽光 ISO320

 

山頂に向かうケーブルカーの駅。そのホーム端の棒に、駅員の帽子が掛けてあった。その様子を、駅の入口近くから300mmの望遠端で切り取った。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) 絞り優先オート F8 1/60秒 -0.3補正 WB:太陽光 ISO1600

 

山頂に向って遠ざかるケーブルカー。300mmの望遠端近くで撮影すれば、標準ズームの望遠端(70mmや100mm前後)では得られない、遠くの被写体を大きく拡大する“引き寄せ効果”が堪能できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ タムロン 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD (Model A010) シャッター優先オート F6.3 1/500秒 WB:オート ISO1250

 

22.2倍のAPS-Cサイズ用ズームレンズも登場。それでも褪せない「28-300mm」の魅力

革新的な高倍率ズーム「AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical Model 71D」が発売されてから20余年。タムロンの高倍率ズームは、2017年発売のAPS-Cサイズデジタル一眼レフ専用「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD Model B028」において「22.2倍」という驚異的なズーム倍率を実現した。

↑昨年登場し、「22.2倍」という驚異的なズーム倍率で大きな話題となったAPS-Cサイズ用の「18-400mm F/3.5-6.3 Di Ⅱ VC HLD(Model B028)」。実売価格7万3880円

 

そんな超高倍率な製品と比べると、フルサイズ対応の「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」は、地味な存在に思えるかもしれない。だが、以前よりもフルサイズデジタル一眼レフが普及してきた現在では、このポピュラーな28-300mmは、これまで以上に存在感を増しているように思う。高感度性能やボケ効果に優れるフルサイズデジタル一眼レフの特徴を生かしながら、レンズ交換なしで広角から本格望遠の撮影が楽しめるのだから。

 

前述の、特殊硝材を贅沢に使用した光学設計。高速で静かなAFを実現する超音波モーター「PZD」や、定評のある手ブレ補正機構「VC」の搭載。絞り開放から2段絞り込んだ状態まで、ほぼ円形の絞り形状が保たれる「円形絞り」の採用。マウント部分やレンズ各所に施された「簡易防滴構造」。これらの機能や仕様も魅力的だ。

 

“高倍率ズームのパイオニア”が、これまで蓄積してきた技術やノウハウを結集させて作り上げた、この「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」。カメラボディに装着して操作、あるいは実際に撮影してみると、その完成度の高さに感心させられる。

 

カメラ界の生ける伝説!! プロが愛してやまないタムロン「90mmマクロ」の魅力とは?

吉森信哉のレンズ語り~~語り継ぎたい名作レンズたち~~ 第2回「タムロン 90mmマクロ」

 

マクロレンズは、一般のズームレンズや単焦点レンズでは不可能な高倍率撮影が可能なレンズである。そのなかでも、焦点距離が100mm前後(35mm判フルサイズ換算)の中望遠マクロレンズは、高倍率時でも被写体との距離が適度に保て、大きなボケ効果を得ることもできる。そのため、いろんな撮影ジャンルに活用できる“定番マクロ”とされているのだ。そんな中望遠マクロレンズにおいて、フィルムカメラの時代から“伝説のマクロ”と呼ばれ、多くのカメラマンに愛用されてきた製品がある。それがタムロンの「90mmマクロ」シリーズである。

 

【今回ご紹介するレンズはコレ!】

手ブレ補正やAF性能などが向上した、シリーズ最強モデル


タムロン
SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)
実売価格6万8980円

マクロレンズに求められる高解像力と同時に、滑らかで美しいボケ描写も得られる。それこそがタムロンの90mmが“伝説のマクロ”と呼ばれ続けてきた所以である。そして、その現行モデル(Model F017)では、手ブレ補正機構「VC」にシフトブレ補正機能が追加され、マクロ域での手ブレ補正性能が向上している(一般のレンズ内手ブレ補正はマクロ域ほど補正効果が低下してしまうのだ)。また、超音波モーター「USD」の制御ソフトの改善により、AF時の合焦速度や精度も向上。さらに、従来よりも高レベルの防塵防滴構造が採用され、屋外撮影時の信頼性も高まっている。

SPEC●焦点距離:90mm ●レンズ構成:11群14枚(LDレンズ1枚、XLDレンズ2枚) ●最短撮影距離:0.3m ●最大撮影倍率:1倍 ●絞り羽根:9枚(円形絞り) ●最小絞り:F32 ●フィルター径:62mm ●最大径×全長:79mm×117.1mm ●質量:610g ●その他:防塵防滴構造 ※全長と質量はキヤノン用の値

↑優れた光学性能や手ブレ補正機構「VC」だけでなく、金属製外装を採用した高品位なデザインも魅力の「タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」

 

次の写真は、赤いチューリップのシベ部分を大きくクローズアップ。肉眼では確認しにくい雌シベの細部やそこに付着した花粉までハッキリ確認できる。こういった本格的なマクロ撮影では、シフトブレ補正対応になった手ブレ補正機構「VC」が心強い。このほかの作例については、記事後半でたっぷりお届けしよう。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO800

 

伝説はこうして始まった――タムロン「90mmマクロ」の系譜

90mmマクロの初代モデルが発売されたのは、いまから40年近く前の1979年である。それまでのマクロレンズは、文献の複写などを想定した“近接撮影時の解像力を重視した光学設計”になっていた。そのため、人物撮影などに使用すると硬調な描写になりやすく、ピント位置前後のボケ描写も滑らかさに欠けていた。

 

だが、タムロンは、普通の中望遠レンズの光学系を拡張して近距離補正を行い“マクロ域でも使えるレンズにする”という独自の設計方針を採用する。これによって、中望遠としてもマクロとしても活用できる、“ボケ描写が滑らか、かつシャープで立体感のある描写”が得られる「90mmマクロ」が誕生した。そして、この革新的な中望遠マクロレンズは、人物撮影や自然撮影など幅広いジャンルのカメラマンに支持されることになる。

 

これが“伝説”の始まりである。

SP 90mm F/2.5 (Model 52B) 発売:1979年

↑記念すべき初代モデル。無限遠から39cmのマクロ域(0.5倍)まで、高コントラストで鮮鋭な画質が得られる。また、SP2倍テレコンバーターの使用で、等倍(1倍)のマクロ撮影も可能

 

その後、外観デザインや内部構造、またレンズ表面のコーディングなど、微妙な部分の改良を重ながら、この「最大撮影倍率0.5倍のMF中望遠マクロレンズ」は、多くのカメラマンに支持され続けてきた。なお、MFタイプの90mmマクロレンズは、いずれもマウント部が交換できる「アダプトール2」マウントが採用されていた。

SP 90mm F/2.5 (Model 52BB) 発売:1988年

↑ロングセラーレンズとなった初代モデル(Model 52B)の外観デザインを一新したモデル

 

しかし、カメラ市場がMFからAFに移行すると、単にフォーカス機構をAF化するだけでなく、“最大撮影倍率を等倍に引き上げる”ことも求められるようになってきた。そこで、1990年に発売された最初のAFモデル「SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E)」から6年後、最大撮影倍率を等倍(1倍)に高めた「SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E)」が発売された。この際、マクロ撮影領域の拡大と小型軽量設計を両立するため、開放F値は長年守り続けた2.5からF2.8に変更されている。

SP AF 90mm F/2.5 (Model 52E) 発売:1990年

↑AF化された最初のモデル。通常撮影側と近距離側の距離範囲が設定できるフォーカスリミッター機構を採用

 

SP AF 90mm F/2.8 MACRO[1:1] (Model 72E) 発売:1996年

↑最大撮影倍率1倍を実現したモデル。また、マクロ撮影で多用するMFの操作性を向上させるため、新開発の「フォーカスリング・クラッチ機構」を採用。幅広フォーカスリングの滑らかな作動で、快適なフォーカシングを実現

 

そして、2000年ごろからのデジタル化の流れに対応すべく、2004年に発売された「SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E)」では、デジタル対応のコーティングを採用。デジタルカメラで問題になる「面間反射」を最小限に抑えるための策である。乱反射するフィルム面の内面反射とは違い、CCDやCMOSの表面が鏡のようになっているデジタルカメラでは、レンズ側の反射防止対策が不可欠なのだ。

SP AF 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 (Model 272E) 発売:2004年

↑フィルムでもデジタルでも、変わらぬ高画質を得るため、レンズコーティングを改善した光学設計“Di”を採用。さらに、フォーカスリングのラバーパターンも、指掛かりのよい形状に変更

 

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004) 発売:2016年

↑タムロン独自開発の手ブレ補正機構「VC」を搭載。また、超音波モーター「USD」の採用により、AFによるスピーディーなピント合わせが可能。光学系も、XLDレンズ2枚やLDレンズ1枚を採用してリニューアル

 

※一部、ここで紹介していない製品もあります

最新モデルを使い倒し! まずは新デザイン採用の外観をチェック

ここからは、現行モデルである「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」をより詳細に見ていこう。

 

まず、製品名の頭に付いている「SP」とは、MFタイプの時代からタムロンの高性能レンズに与えられてきた称号である。2015年にそのSPシリーズが刷新された。光学性能の優秀さはもちろん、高品位な金属外装を採用し、マウント部の周囲にはルミナスゴールドの「ブランドリング」があしらわれた。このリングの存在は、ユーザーとタムロンの繋がりを“記念の指輪”に見立ててイメージした、新しい「SP」の象徴となる。そして、新しいデザインのスイッチ類や、見やすい文字表記などを採用し、操作性や視認性も向上させたのである。

↑現行モデル、SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)に専用の丸型フード(HF017)を装着したところ。金属外装のレンズ鏡筒とは違い、このフードはプラスチック製。だが、レンズとの外観バランスは良好だ

 

↑金属鏡筒に埋め込まれた「SP」のエンブレム。高品位な操作感や描写性能を約束する証である

 

↑従来よりも大型化された表示窓(距離表示)を採用し、視認性を向上させている

 

↑使用される条件を考慮して形状やトルクが改善されたという、各種の切替スイッチ。被写体までの距離に応じて、フォーカス(AF)の移動量を制限できるフォーカスリミッター(上のスイッチ)を活用したい

 

光学系に関しては特殊硝材XLD(eXtra Low Dispersion)レンズ2枚と、LD(Low Dispersion : 異常低分散)レンズを1枚を使用して色収差を補正するなど、先進の光学設計で諸収差を徹底的に補正し、解像性能が高くてシャープな画質を実現。そして、円形絞りの採用によって、タムロン90mmマクロの伝説を引き継ぐ良質なボケ描写を可能にしている。これらの仕様は、基本的に前モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F004)」を踏襲したものである。

 

さらに、ほぼ可視光全域で秀逸な反射防止性能を誇る「eBANDコーティング」に従来からのコーディングを用いたBBARコーティングを組み合わせ、フレア(画面全体が白っぽくかすんで写る現象)やゴースト(本来は見えないはずの光が写ったもの)を大幅に抑制してクリアでヌケのよい画像を実現している。また、最前面レンズには、撥水性・撥油性に優れ耐久性にも優れる「防汚コート」も採用。これによって、レンズ表面に付着した汚れを簡単にふき取ることができる。

 

美しいボケ味に感動!! 最新モデルを実写チェック

ここからは実際の作例を見ていきたい。

 

まずは鮮やかな柄のチューリップの花弁をクローズアップ。風で花弁が微妙に揺れていたので、カメラのAFモードを「AIサーボ」(シャッターボタンを半押ししている間、被写体にピントを合わせ続けるAFモード)に設定。超音波モーター「USD」は作動音が気にならないので、小刻みなピント調節が繰り返されても快適に撮影できる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F5.6 1/80秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

続いて、20mくらい離れた位置から、1本のサトザクラを狙う。木の前後をぼかすため、絞りは開放F2.8に設定。マクロレンズは接写で使用するレンズというイメージがあるが、本レンズであればこのように中望遠レンズとしても優秀な描写を得ることができる。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/800秒 WB:太陽光 ISO100

 

こちらは赤いストライプ模様が印象的だった黄色のチューリップ。開放絞りによって、その花の前後を大きくぼかした。とろけるようなボケ描写が美しい。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/400秒 +1補正 WB:太陽光 ISO100

 

花の時季にはまだ早いバラだが、逆光に映える若葉がみずみずしい。その背後に光の輝き(光沢のある葉の反射)があったので、その点光源を美しい形にぼかしたい。このレンズには、円形絞りが採用されている。だから、絞り開放時に画面周辺の点光源ボケが楕円に歪む口径食を避けるために1、2段絞り込んでも、絞り羽根の角が目立たない美しいボケが得られるのである(通常は絞る=F値を大きくすると、ボケの形が角張ってくる。そうならないよう、構造を工夫したのが円形絞りである)。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F4 1/100秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO125

 

赤みを帯びた夕方の光を背景に、白いリンゴの花が可憐な姿を見せてくれる。ピントを合わせた部分のシャープな描写と、自然にボケていく前後の描写が見事だ。

キヤノン EOS 6D MarkⅡ/タムロン SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017) 絞り優先オート F2.8 1/640秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO100

 

受け継がれていく“伝説のマクロ”

筆者は、MF一眼レフの時代から、タムロンの90mmマクロを使い続けてきた。最初に使ったのは、2代目の「SP 90mm F/2.5 (Model 52BB)」である。そのころから、フォーカスリングのスムーズな動きや、自然なボケ描写に感心し、マクロレンズというよりも“優秀な中望遠単焦点レンズ”として信頼を寄せていた。

 

そして時代の流れに合わせてタムロンの90mmマクロはMFレンズからAFレンズに移行し、最大撮影倍率も0.5倍から1倍に拡大。MF/AF切り換え機構もより迅速で快適なタイプに進化していった。また、近年のモデルでは、最新のレンズ硝材や優れたコーティング技術によって、シリーズ共通の特徴である“美しいボケ”を継承しながら、よりシャープでクリアな描写が得られるようになっている。

 

さらに、現行モデル「SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD (Model F017)」では、金属鏡筒や新デザインの採用で各段に高品位な製品に生まれ変わり、手ブレ補正機構「VC」もマクロ撮影域にも強くなるなど、これまで以上に魅力的な中望遠マクロレンズに仕上がっている。ちなみに、この現行モデルも所有し、常用している。

 

長年愛されるレンズには理由がある。このように、“伝説”は進化し、受け継がれてゆくのだ。

 

旅行&アウトドアに持って行きたいポータル家電6モデルをフラッシュセールより厳選!

GWも後半戦ですが、まだまだアクティブに楽しみたいもの。旅行やアウトドアで素敵な思い出を残すなら、カメラをはじめとしたポータル家電があると便利です。楽天市場では、掘り出し物の家電製品をお値打ち価格で大放出するフラッシュセールを開催します。期間は5月1日午前0時~5月7日午前9時59分までの6日間。今回は旅行&アウトドアで使いたいポータル家電を紹介します!

 

セール特設ページはコチラ

 

[その1]

登録した人物に自動でピントを合わせる「個人認証」機能が◎

キヤノン
PowerShot SX720 HS

セール価格2万5200円

キヤノンの「PowerShot SX720 HS」は、軽量で小型ながら光学40倍ズームを搭載したコンパクトデジカメ。新レンズの開発により、超望遠でも広角でもズーム全域での高画質化を実現しています。さらにズーム撮影中は「フレーミングアシスト(探索)」が被写体捕捉をサポート。カメラが人物の顔を検出すると顔が一定の大きさに保たれるよう自動でズームしてくれるので、遠くの被写体を見失うこともありません。

 

【ここがポイント】

イチ押しの機能は、登録した人物に自動でピントを合わせる「個人認証」です。よく撮影する人物の「顔」「名前」「誕生日」を事前登録しておくと、カメラがその人を見つけてピントと露出を優先的に設定。年齢や状況に合わせて撮影モードを自動で調整してくれます。

 

[その2]

外出時こそ真価を発揮するタブレット

レノボ
YOGA Tab 3-8 ZA0A0029JP

セール価格1万7880円

レノボの「YOGA Tab 3-8」は、外出時の使用に適したタブレットです。大容量バッテリーによりWebブラウジングや動画の視聴が約20時間利用可能。充電環境のない場所でもバッテリー残量を気にすることなく使用できます。さらにディスプレイサイズは持ち運びしやすい8インチで、約466gの軽量コンパクトボディーを採用。バッグの中でかさばる心配もありません。

 

【ここがポイント】

同商品は先進的なAnyPenテクノロジー対応モデル。一般的な鉛筆や金属製ボールペンなどを使ってタブレットを操作できます。導電性の有無やパネルへの接触面積からタッチを認識するため、外出時などにタブレット専用ペンを持ち運ぶ必要ナシ。ただし金属製のボールペンなどでタブレットを操作する場合は、画面が傷つかないように注意してくださいね。

 

[その3]

“超解像技術”でズームもキレイなデジタルハイビジョンビデオカメラ

パナソニック
デジタルハイビジョンビデオカメラ V360MS

セール価格2万4500円

パナソニックの「V360MS」は、“超解像技術”を搭載したビデオカメラです。超解像技術とは、被写体の特徴を見分けて解像度を向上する技術。遠くで遊んでいる子どもの表情はもちろん、季節に色づく風景なども大きくきめ細やかな映像で記録できます。

 

【ここがポイント】

同商品に搭載された「iAズーム」は90倍の高倍率ズームで撮影が可能。ズーム倍率が光学領域を超えても、ハイビジョン画質の美しさで記録できます。撮影中の映像を自動で水平にしてくれる「傾き補正」機能もうれしいポイント。

 

[その4]

新設計により軽量化に成功したズームレンズ

タムロン
18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD (Model B008TS)

セール価格2万6280円

タムロンの「B008TS」はデジタル一眼レフ用の高倍率ズームレンズ。従来のレンズから外観デザインをリニューアルし、新たに防汚コートが搭載されています。最前面のレンズには撥水性・撥油性にすぐれたフッ素化合物による防汚コートを採用。ホコリや水滴、手の脂などレンズ表面に付着した汚れをふき取りやすく、メンテナンスが容易です。

 

【ここがポイント】
“手ブレ補正機構”が搭載されている望遠レンズを持つと、ずっしりと重量を感じる人もいますが、「B008TS」は新開発の手ブレ補正機構によって軽量化を実現し、高級感ある外観デザインに仕上げられています。対応マウントはキヤノン用とニコン用。

 

[その5]

どんなシチュエーションでも快適なサウンドを届けてくれるヘッドセット

ソニー
ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット WF-1000X

セール価格2万1020円

Bluetoothに対応したケーブルレスのヘッドセット「WF-1000X」は、最高クラスのノイズキャンセリング性能を実現しています。ヘッドホンが常に周囲の騒音を分析し、3つのノイズキャンセリングモードの中からその場に適したモードを自動で選択。環境が変わって騒音が変化しても、常に最適な状態でクリアな音を楽しめます。

 

【ここがポイント】

音楽を聴きながら周囲の音も聞ける「アンビエントサウンド(外音取り込み)モード」も搭載。例えば駅や空港などのにぎやかな場所でも、音楽に浸りつつアナウンスに気づくことができます。どんなシチュエーションでも最適な音楽環境を作り出してくれるヘッドセットを、ぜひ体験してみて下さい。

 

[その6]

スリムなデザインのフィットネス用リストバンドで健康管理

Fitbit
Fitbit Alta HR FB408SBKL-CJK

セール価格1万6080円

毎日のアクティビティ、エクササイズ、そして睡眠を記録するFitbitのデバイス。「Fitbit Alta HR」はFitbit史上最もスリムなデザインで、さらに心拍計も搭載されているフィットネス用リストバンドです。一般的なスマートウォッチ同様、着信通知やテキストメッセージ、カレンダー通知などの機能にしっかり対応。またスマートフォンの専用アプリと連動させれば、健康管理機能を通してバランスの取れた生活をサポートしてくれます。

 

【ここがポイント】

搭載された心拍計で一日の心拍数を記録すれば、より正確な消費カロリーの把握が可能。また心拍数をもとに、浅い睡眠・深い睡眠・レム睡眠の時間まで記録してくれるので、睡眠の質を高めるのにも役立ちます。スリムなデザインなので、常に身につけていても邪魔にならないのがうれしいですね。

 

提供:楽天市場

【CP+2018/タムロン】小型軽量の本格派「70-210mmF4」と、Eマウント用大口径標準ズームに大注目!

タムロンからは、2018年4月2日発売予定の新製品として「70-210mm F/4 Di VC USD」、開発発表の製品として「28-75mm F/2.8 Di III RXD」が登場。会場では、70-210mmのほか同社の現行製品のほとんどがタッチ&トライ可能とあって、ブースに人だかりができていた。このほか、著名写真家のステージなども数多く開催。

 

20180303_y-koba3 (2)

今回注目の新製品「70-210mm F/4 Di VC USD」は、開放絞りをF4に抑えることで小型・軽量化を狙った35mmフルサイズ対応モデル。実際同社の大口径タイプ「SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2」に比べて、600g以上軽く、長さも17mm以上短い。大口径高画質タイプレンズがズシリと重い昨今、これは注目の存在だ。価格も魅力的で、メーカー小売希望価格95,000円(税別)。

 

20180303_y-koba3 (3)

「70-210mm F/4 Di VC USD」の重さは850g(ニコン用)と軽く、手ブレ補正VC機能が搭載されているので、軽快なフットワークと取り回しのよい撮影ができる。その一方で別売の三脚座やテレコンバーターなども用意され、三脚を使用しての超望遠撮影も快適に行える本格派の仕上がりだ。

 

20180303_y-koba3 (4)

「70-210mm F/4 Di VC USD」の魅力として最大撮影倍率の高さがある。最短撮影距離は0.95mで大口径タイプ「SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2」と同様だが、最大撮影倍率は1:3.1(70-200mmは、1:6.1)で70-200mmF4クラスのレンズのなかで最も撮影倍率が高い。これには、焦点距離数値にすればわずか10mmの違いではあるが、この差が望遠撮影の強みに寄与しているという。

 

20180303_y-koba3 (5)

「28-75mm F/2.8 Di III RXD」は、ソニーEマウント用の35㎜フルサイズ対応大口径標準ズーム。ワイド側を28mmと控えめにしたことで、小型化と高画質の両立が可能になったという。とはいえ、望遠側は、75mmと一般的な70mmよりも長く、ポートレート撮影などを行うユーザーに配慮したという。このほか、ワイド側での最短距離を0.19m(望遠側は0.39m)とし、広角で寄りきった強いパースペクティブとボケを生かした撮影が可能だ。

 

20180303_y-koba3 (6)

「28-75mm F/2.8 Di III RXD」については、まだ知らされている情報は限られているが、会場には同レンズで撮影された製品ポスターが展示されている。写真はF4に絞って撮影されたポートレートだが、極めて解像力が高いようで、肌表面の細かい質感までキッチリ描写されているのが確認できる。モデルさんが気の毒!

 

20180303_y-koba3 (7)

タムロンブースではおなじみとなった「クリーニングコーナー」も設置。会場受け付けでの先着順となるが、タムロンレンズを持参すると、10分程度の時間をかけてプロの手で丁寧にクリーニングしてくれる。記者も使用中の同社製レンズをクリーニングしてもらったが、前玉や後玉のほか、マウント面などのヨゴレも丁寧に除去してもらえた。タムロンレンズを愛用しているなら、ぜひ持参してクリーニングしてもらおう!

 

〈写真・文〉河野弘道

超望遠レンズがこの軽さ&価格!? とにかく撮影が楽しくなる「タムロン 100-400mm」濃厚レビュー

風景や鳥、乗り物などの撮影で被写体を大きく撮りたい場合は、400mm以上の“超望遠レンズ”が必要になるケースが少なくない。従来、そうした超望遠レンズは、大きく重く、そして高価な大口径の(開放F値が小さな)高性能レンズが中心だった。そのため、撮影自体をあきらめてしまうユーザーも少なくなかった。

 

ところがここ数年、開放F値を欲張らずに、比較的軽量で描写性能も高めの超望遠ズームが増えてきて、気軽に超望遠撮影が楽しめるようになってきた。2017年11月に発売された、タムロンの「100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)/以下、タムロン100-400mm)」もそうした製品の1つだ。

 

このレンズはフルサイズ一眼に対応し、約4段という強力な手ブレ補正「VC」を搭載。独自の「eBANDコーティング」によりゴーストやフレアといった余計な光の像が効果的に抑えられ、レンズ表面の汚れに強い防汚コートや簡易防滴構造も採用している。軽量化などのため同社の高品質レンズ「SP」シリーズからは外れているものの、3枚のLD(異常低分散)レンズを用いるなど、画質面にも優れた1本だ。また、焦点距離を伸ばせる専用テレコンバーター(※)など、別売のアクセサリーも豊富で様々な撮影に対応できるのも魅力。今回は、このタムロン100-400mmの魅力を豊富な作例とともに紹介する。

※テレコンバーターとは、使用レンズに装着して焦点距離を伸ばすアクセサリーのこと。テレコンバーターには、レンズ先端に装着するフロントコンバーターとレンズとボディの間に装着するリアコンバーターがあるが、ここでは後者。“テレコン”と略して呼ばれることも多い

20171228_y-koba3_ic2_R↑上の写真では付属のフードと別売の三脚座を装着しているので大きく見えるが、本体は長さ199mm、最大径86.2mm(キヤノン用)で、ドリンクの500ml缶を半回りほど大きくした程度の大きさ。質量も1135g(キヤノン用)で他社の同様のレンズに比べて軽量でハンドリングしやすいのが魅力。ニコン用、キヤノン用が用意されており、参考価格は7万3010円(別売の三脚座は1万3500円)

 

※本記事の作例は、キヤノン用レンズで撮影しています。APS-Cサイズ機使用時における35mm判換算の焦点距離もキヤノン用で表記

 

ライバル製品との違いは? 基本スペックをおさらい

タムロン100-400mmを手にして最初に驚くのが、1135g(キヤノン用)という軽さだ。このレンズと同等の焦点距離をもつ製品は、下記の表にあるようにキヤノン、ソニー、シグマなどから発売されているが、キヤノンとソニーの製品は1400~1600g程度で、シグマの製品が1160g。シグマ製とは僅差だが、それでもタムロン100-400mmが25g軽い。

2011228_y-koba3_hyo_R↑スペック比較表。タムロンはキヤノン用の、シグマはシグマ用のレンズの数値となっている

 

開放F値はキヤノンとソニーがF4.5-5.6で望遠側のF値が明るい。とはいえ、わずか1/3段差で200g以上軽いのはタムロン100-400mmのメリットといえるだろう。最短撮影距離が1.5mとやや長め(キヤノンとソニーは0.98m、シグマは1.6m)なのは気になるところだが、最大撮影倍率が400mm時で約0.28倍と十分な大きさで撮れるので、不満を感じることはあまりないはずだ。加えて、実売価格が7万円台前半となっており、キヤノンやソニーの純正レンズに比べると非常にお買い得。ただし、キヤノンとソニーの製品は、キヤノンが「Lレンズ」、ソニーが「Gマスター」という高画質仕様になっており、価格帯を考えるとシグマの「100-400mm F5-6.3 DG OS HSM (Contemporary)」が、本レンズの直接的なライバル機種といえるだろう。

 

半年ほど先行して発売されたこのシグマ製品も、画質やコスパに定評のあるレンズ。それに対するタムロン100-400mmの優位点はというと、100mm時(広角端)の開放F値がわずかながら明るいほか、別売で三脚座が用意されている点が挙げられる。今回、実際にこの三脚座を使用して撮影してみたが、前後の重量バランスが適度にボディ側(後ろ側)になって操作しやすく、また、横位置と縦位置の変更が素早くできるのが便利であった。このほか、1.4倍と2倍の専用テレコンバーターが用意されている点はシグマも同様だが、2倍テレコン使用時にシグマはAF不可となるのに対し、タムロンは使用機種が限定され、かつ動作が遅めになるというしばりはあるもののライブビュー撮影にすることでAFが機能する。そのため、風景などの動かない被写体を撮る場合にはAFが使用できるぶん便利だ。

20171228_u-koba3_ss_R↑タムロン100-400mm専用の三脚座(別売)。キヤノンやソニーの製品は三脚座がセットになっているが、シグマ製には三脚座が用意されていない。レンズ自体が軽量なので三脚座なしでも問題はないが、これがあると三脚使用時のハンドリングが格段に向上する。三脚へは通常のネジで取り付けられるほか、クランプ式でしっかりと固定できる「アルカスイス互換」の雲台に対応しており、安定したフレーミングが行えるのも魅力

 

20171228_y-koba3 (3)↑1.4倍と2倍の専用テレコンバーター。別売でそれなりに費用もかかるが、さらに望遠で撮りたい場合には有効だ。100-400mm以外にも使用できるレンズがあるので、それらのレンズを持っている(あるいは今後購入する予定がある)ならオススメ。特に1.4倍は撮影上の制約も少なく、「もう少しアップで撮りたい……」というときに役立つ。参考価格はともに4万5460円

 

風景から鉄道まで、幅広いシーンで使いやすい焦点距離

100-400mmのズームレンズなのでズーム倍率は4倍と控えめだが、このくらいの焦点距離は遠くの風景を切り取る場合や鉄道などの乗り物撮影で使いやすい。また、APS-Cサイズの一眼カメラを使用すると160~640mm相当(キヤノン用の場合)となるので、野鳥撮影などでも活躍すする。次の作例は、フルサイズ機とAPS-Cサイズ機それぞれの広角端/望遠端を同じ場所から撮り比べたものだ。

20171228_y-koba3 (4)↑広角端(100mm)

 

20171228_y-koba3 (5)↑APS-Cサイズ機使用時の広角端(160mm相当)

 

20171228_y-koba3 (7)↑望遠端(400mm)

 

20171228_y-koba3 (6)↑APS-Cサイズ機使用時の望遠端(640mm相当)

 

広角端はフルサイズ機では100mmでAPS-Cサイズ機だと160mm相当。解像感が高く、建物の細かい部分までしっかりと描写されている。望遠端の400mmは、APS-Cサイズ機を使うと640mm相当。これだけ違うと、用途に応じてフルサイズ機とAPS-C機を使いわけるのも良さそうだ。400mmでの画質は、100mmに比べると柔らかめの写りだ。

 

強力な手ブレ補正で超望遠域でも手持ち撮影が可能

画質面では、余程の高画素機でなければ解像感は十分。400mmで絞り開放にして使用すると画面の四隅が多少暗く写るものの、そこまで気にはならず、F8~11程度まで絞ればそれも解消する。手ブレ補正も約4段分と強力で、超望遠域でも手持ち撮影が可能なのは大きな魅力だ。

 

実際にAPS-Cサイズ機を用いた640mm相当での撮影でも、1/60秒以上のシャッター速度を確保しつつ、しっかりと構えれば手ブレせずに撮れる印象。ただし、望遠端では画角が狭いため、1/60秒では手ブレよりも被写体ブレが気になるケースが多くなる。静物を撮るのでなければ、1/250秒程度は確保したほうがいいだろう。その意味で、日中の撮影でもISO400~1600程度を常用すれば、手持ちでも失敗なく撮影が楽しめるはずだ。ちなみに、この手ブレ補正は近接撮影時にも有効で、400mmでの最短撮影距離で撮影しても効果が高く、フレーミングも楽に行える。

20171228_y-koba3 (8)↑APS-Cサイズ機を使い、望遠端の640mm相当でシラサギを手持ち撮影。感度をISO800まで上げて、1/500秒としたことで手ブレの心配なく撮影できた。しかも、手ブレ補正のおかげでファインダー内の像が安定し、フレーミングが行いやすいというメリットも

 

20171228_y-koba3 (9)↑航空自衛隊の輸送用ヘリコプターが近づいてきたタイミングを狙って400mmで撮影。思った以上にヘリが近く、アップでの撮影となったが、ISO400、シャッター速度1/320秒でどうにか写し止めることができた。質量が軽く、手持ちでレンズを振りながら撮影しても腕への負担が少ないのは大きな魅力

 

20171228_y-koba3 (10)↑フルサイズ機を使い、400mmの最短撮影距離付近で撮影。最大撮影倍率は約0.28倍で比率にすると1:3.6。本格的なマクロレンズ並みとまではいかないが、このように小さな花も十分大きく撮影できる。絞り開放での撮影だが、背景のボケも自然で美しい

 

本レンズの手ブレ補正は、多くの被写体に適していてファインダー上でも効果を確認できる「モード1」と、流し撮りを行う際に最適な「モード2」の2つのモードが用意されている。そのため、鉄道やクルマなどを流し撮りする際も安心して使用できる。また、この手ブレ補正はテレコンバーター使用時にも有効なので、800mm相当を超える超望遠での手持ち撮影の幅が広がる

20171228_y-koba3 (11)↑APS-Cサイズ機で302mm相当(189mm)で流し撮りを行った。ISO感度を100に下げて、1/60秒の低速シャッターを使って列車の動きに合わせてカメラを振りながら撮影。手ブレ補正を「モード2」にしたことで、上下方向のブレが補正されている。ファインダーでも効果が確認できるので、流し撮りが行いやすい

 

1.4倍&2倍テレコン対応で驚くほど遠くのものを大写しにできる

焦点距離を伸ばせる専用テレコンバーターに対応している点も、本レンズの魅力の1つ。テレコンバーターを使用した場合は、画質的には多少解像感が低下するものの、それでも実用上は問題ないレベル。それ以上に500mmを超える画角が得られる魅力のほうが大きい。1.4倍テレコン使用時は開放絞りがF6.3-9、2倍テレコン使用時はF9-13になるので、できるだけ感度を上げて使用するのがポイントになる。

 

テレコンの使用でどれくらい画角が変わるのか、望遠端を比較した次の作例をご覧いただこう。

20171230_y-koba1_R↑400mm(通常の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (12)↑560mm(1.4倍テレコン使用時の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (13)↑800mm(2倍テレコン使用時の望遠端)

 

20171228_y-koba3 (14)↑1280mm相当(APS-Cサイズ機+2倍テレコン使用時の望遠端)

 

APS-Cサイズ機で2倍テレコンを使用すると、800mm×1.6倍(キヤノン用の場合)で1280mm相当という驚異的な焦点距離が得られる。これを利用すれば、通常は撮ることが困難な被写体も次の作例のように大きく写すことができる。

20171228_y-koba3 (15)↑APS-Cサイズ機を用いて、1280mm相当でアオサギを撮影。わずか約2度という狭い画角(範囲)を切り取ることができ、遠くの被写体を大きく撮れるが、範囲が狭すぎてどこを撮っているのかわからなくなる場合も少なくない。そのため、カメラに照準器を付けて撮影位置を確認するようにすると、素早くフレーミングが行える

 

20171228_y-koba3 (16)↑今回の撮影ではオリンパスのドットサイト照準器「EE-1」を使用。カメラのアクセサリーシューに取り付けが可能だ。撮影の前に照準の位置を調整しておけば、高精度に被写体をフレーミングできる

 

20171228_y-koba3 (17)↑ドットサイト照準器「EE-1」の視野。ファインダー内で光る照準(ドット)を撮りたい被写体に重ねることでフレーミングできる

 

20171228_y-koba3 (18)↑羽田空港に着陸する直前の飛行機を1280mm相当で撮影。ここではファインダーを使ってMFで撮影したが、かなり離れた位置の被写体なら撮影距離を無限遠(∞)に固定して撮影できる。手前のクレーンや奥に写る船など、望遠レンズならではの強烈な圧縮効果(距離感の喪失)により、独特な写りとなった

 

20171228_y-koba3 (19)↑1280mm相当で月を撮影。月を撮る場合は天体望遠鏡にカメラを付けて撮影するケースが多いが、1000mmを超える望遠なら、このように月を大きく撮ることが可能になる

 

さらに、テレコンを付けても最短撮影距離は変わらないので、近接撮影時の倍率をアップさせたい場合でもテレコンは有効だ。特にAPS-Cサイズ機を使った場合は、本格的なマクロレンズに近い倍率が得られ、35mm判に換算すると、計算上1.4倍テレコン使用で約0.62倍相当、2倍テレコン使用で約0.89倍相当で撮影できる。次の作例も、この組み合わせで花を近接撮影してみた。

20171228_y-koba3 (20)↑640mm相当(APS-Cサイズ機使用)

 

20171228_y-koba3 (21)↑896mm相当(APS-Cサイズ機+1.4倍テレコン使用)

 

20171228_y-koba3 (22)↑1280mm相当(APS-Cサイズ機+2倍テレコン使用)

 

テレコン使用時の注意点としては、開放F値が暗くなるため、1.4倍テレコン使用時はカメラがF8でのAFに対応している必要があり(※)、また、2倍テレコン使用時はファインダー撮影時ではMF専用となり、背面モニターを使用したライブビュー撮影時のみAFが機能する点。この場合も、最近のカメラのほうがピントが合いやすいようだ。とはいえ、2倍テレコン使用時のライブビューでのAFは、かなり動作がゆっくりとしているので、動いている被写体を撮る場合はMFでのピント合わせのほうが快適だろう。

※従来の一眼レフは開放F5.6や6.3よりも暗いレンズではAFが機能しない。キヤノンではEOS 6DマークIIやEOS 80D、ニコンではD750やD7500など、比較的新しい機種では開放F8でもAFが機能するようになってきている。タムロン100-400mmに1.4倍テレコンを装着すると400mmでF9となるが、こうしたカメラならAFが可能という

 

このような撮影上の制約や価格面を考えると、本レンズのためだけに2倍テレコンを購入するのはややもったいない。このテレコンは、同社の「SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2」や「SP 70-200mm F/2.8 Di VC USD G2」にも対応しているので、これらのレンズを持っている場合や今後購入したいと考えている人におすすめだ。

 

【結論】軽量でアクセサリーも多く、様々な楽しみ方ができる

タムロン100-400mmは、フルサイズ機で手軽に超望遠撮影を楽しんでみたい人や、APS-Cサイズ機のダブルズームの望遠端に満足できない人、現時点で標準ズームしか持っておらず、望遠ズームを新たに購入したい人などにおすすめの1本。このクラスのズームとしては非常に軽量でアクセサリーも多く、様々な楽しみ方ができる。画質面での満足度も高いはずだ。

 

今回は2つあるテレコンバーターを両方とも試してみたが、どちらか一方を選ぶなら、1.4倍のものをおすすめしたい。倍率という意味では物足りなく感じるかもしれないが、使用上の制限が少なくAFスピードや画質面でも不満なく使用できる。

 

また、アクセサリーという意味では、三脚座はぜひ購入しておきたいアイテムだ。1kg強の軽めのレンズとはいえ、カメラのマウント部にかかる負荷を軽減できる点で安心感が高く、ハンドリングも格段に行いやすくなる。

 

これはもう手放せない! 唯一無二の“超望遠”高倍率ズーム「タムロン18-400mm」と行く珠玉の撮影旅 in 箱根

一眼レフカメラ用交換レンズは数多くあるが、そのなかでも7倍や10倍といった高いズーム倍率を持ち、1本持っておくとさまざまなシーンに対応できて便利なのが「高倍率ズーム」と呼ばれるカテゴリのレンズだ。こうしたズームレンズは、35mm判換算で28~450mm相当程度の製品が主流となっているが、2017年7月に登場したタムロンの「18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028/以下18-400mmと表記)」は、望遠側を大幅に拡張した28~600mm相当(キヤノン用は28.8~640mm相当)を実現。カメラ愛好家の間で瞬く間に大きな話題となった。このようにスペック的には申し分のない同レンズだが、気になるのは実際の描写や使い勝手。そこで今回は、日帰りの旅を想定して神奈川県・箱根町に赴き、その実力をチェックした。

【今回の旅の相棒】

20171129_y-koba5 (5)

タムロン
18-400mm F/3.5-6.3 Di II VC HLD(Model B028)
メーカー希望小売価格/9万円(税抜)

3段繰り出し式鏡筒の採用などで、高倍率ズームレンズとしてはほかに類を見ない超望遠400mmを実現。操作感がスムーズで広角から望遠まで一気にズーミングしても引っ掛かりがなく快適だ。マウント基部に「ルミナスゴールド」と呼ばれるリングをあしらった新デザインの採用で、外観もすっきりとした印象。屋外での撮影に配慮し、簡易防滴構造も施されている。2017年12月現在では、キヤノン用・ニコン用が用意されている。

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http://www.tamron.jp/product/lenses/b028.html

 

※本記事の作例はキヤノン用レンズを用いて撮影しています

 

広角から超望遠まで、この1本で驚異的な画角をカバー

はじめに、本レンズの概要をおさらいしておこう。焦点距離は冒頭にも記したように18~400mmで、APS-Cサイズセンサー採用の一眼レフカメラ用となっているため、画角は28.8~640mm相当(キヤノン用。以下同じ)。1本で本格的な広角撮影から超望遠撮影まで可能となっている。開放絞りはF3.5-6.3で、高倍率ズームレンズとしては標準的な仕様。大口径レンズではないので極端に大きなボケは期待できないものの、円形絞りの採用で自然なボケ描写が得られる。

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持ち歩きの際に気になる質量は、レンズ単体で約710g(キヤノン用)。エントリークラスの一眼レフカメラボディが500~600g程度なので、その場合はボディと合わせても1.5kgを切る軽さとなる。長さは約123.9mm(キヤノン用)と、ダブルズームキットなどの望遠ズームと同程度。実際にボディに装着して手に持ってみると、レンズ鏡筒をしっかりと持ってホールディングすることができ、安定して撮影できる。日帰り旅に持っていくバッグでも十分に収納できる大きさで、当然のことながら、ダブルズームキットを持っていくよりもかなり少ないスペースで済む。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑今回はミドルクラスのボディと組み合わせて使用したが、それでもボディとレンズを合わせて1.5kgを切る軽さで、片手でも無理なく持てる

 

画角変化に驚愕! レンズ交換なしでこれほど違う写真が撮れる

ここからはいよいよ実写編。高倍率ズームでまず注目したいのが画角変化だ。ズーム倍率22.2倍という驚異的な数値をもつ本レンズなら、なおさら気になるところ。そこで早速、広角端と望遠端で芦ノ湖を前景に富士山を撮影してみた。28.8mm相当となる広角端では、芦ノ湖、富士山に加えて青空を広々と写すことができた一方で、640mm相当となる望遠端では富士山の山肌の様子を大きく写すことができ、改めてその画角変化に驚いた。まさに、“超望遠”高倍率ズームレンズと呼ぶにふさわしい。

20171129_y-koba5 (1)↑広角端の18mm(28.8mm相当)で撮影。手前の木々や芦ノ湖、富士山を入れたうえで空を広々と写し込むことができた

 

20171129_y-koba5 (4)↑望遠端の400mm(640mm相当)で撮影。超望遠域らしく、富士山の山頂付近のみを大きく写し、山肌の質感を克明に再現することができた。18mm(28.8mm相当)の写真と見比べると、そのズーム倍率の凄さがわかる

 

一般的な標準ズームに比べると広角端は同等となるが、標準ズームの望遠端は長いものでも70mm(112mm相当)程度までであり、その差は歴然。ダブルズームキットの望遠端に多い300mm(480mm相当)と比べても、1回りほど被写体を大きく撮れる印象だ。

20171129_y-koba5 (2)↑一般的な標準ズームレンズ(キットレンズ)の望遠端は50mmや70mmのものが多い。この写真は70mm(112mm相当)で撮影したものだが、富士山のアップの写真としてはやや物足りない印象だ

 

20171129_y-koba5 (3)↑ダブルズームキットや一般的な望遠ズームの望遠側は200mmから300mm程度のものが多い。この写真は300mm(480mm相当)で撮影したもの。富士山を十分にアップで写せたが、400mm(640mm相当)のほうが1回りほど画角が狭く、迫力のある写真となっている

 

広角~超望遠を生かした多彩な描写が可能

次に芦ノ湖の湖畔に出て遊覧船を撮影。広角・望遠の両方をうまく生かすことで、同じ場所・被写体でありながら異なる印象の写真に仕上げることができた。

20171129_y-koba6 (1)↑まずは18mm(28.8mm相当)で桟橋に停泊する2艘の遊覧船を撮影。適度に遠近感が強調され、船が堂々と見える。また、青空を広く入れたことでさわやかさの感じられる写真になった

 

続いて、出港後かなり遠くまで行った船を400mm(640mm相当)で撮影。どっしり大きく写すことができ、その引き寄せ効果を改めて実感した。

20171129_y-koba6 (2)↑望遠端である400mm(640mm相当)を使って、遊覧船が画面に収まる距離で撮影。肉眼でははっきり確認することはできなかったが、超望遠で引き寄せることで遊覧船の奥を通過しようとしている小型ボートを発見。画面に収まりのいい位置にボートが来るのを待って撮影した

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA↑撮影位置から見ると、遊覧船までの距離はかなり離れている。このレンズを使えば、これだけ離れていても船を大きく捉えることができる

 

その後、火山活動を続ける大涌谷に移動し、立ち込める白煙の様子を撮影。50mm(80mm相当)付近で白煙全体を、400mm(640mm相当)で白煙の噴出している部分のアップを狙った。こうした中望遠から超望遠での撮影を行う場合、ダブルズームキットではレンズ交換が必要になるケースが多いが、この18-400mmならレンズ交換なく素早く撮影できる。取材時、大涌谷は火山活動の影響でハイキングコースや自然研究路に立ち入ることができず、白煙に近寄って撮ることはできなかった。それでもこのレンズがあれば、その様子を迫力満点に撮ることができるのだ。

20171129_y-koba6 (3)↑中望遠となる50mm(80mm相当)域を使って、白煙が立ち上る様子を撮影。これだけでもその荒々しさが伝わってくる

 

20171129_y-koba5 (8)↑400mm(640mm相当)で白煙が噴出している部分を拡大。中望遠のものに比べると、その勢いが感じられより迫力のある写真になった。こうした画角の違いによる写りの変化を1本で素早く楽しめるのも、本レンズの魅力だ

 

また、大涌谷にはロープウエイが通っており、このロープウェイ越しに山やさらに遠くの街並みを望むことができる。そこで、400mm(640mm相当)を使ってロープウェイのゴンドラと山、遠くの街並みを1枚に収めてみた。200mmや300mmでも同じような構図で撮ることはできるものの、400mmでの圧縮効果は圧倒的で、F11まで絞り込んで撮影することで街並みの様子を大きく写すことができた。

20171129_y-koba5 (9)↑手前のゴンドラから奥の街並みまでは相当な距離があったが、400mm(640mm相当)の圧縮効果を使うことで遠近感が消失し、ゴンドラの眼下に街が広がっているかのような写りとなった。逆に、広角で撮影すれば遠近感を強調した描写が可能

 

マクロレンズ的な使い方やボケを生かした撮影も楽しい

このレンズは、22.2倍というズーム倍率もさることながら、最短撮影距離が45cmと短く、マクロレンズ並みに被写体に近寄って撮れるという点も魅力。加えて、400mmでは約0.34倍の最大撮影倍率で撮れるほか、広角端の18mmでも被写体に近寄って背景を広く入れた写真を撮ることができる。今回の撮影行では、広角で仙石原のススキを背景を生かしながら撮影したり、紅葉の葉1枚を400mmで大きく写したりすることができた。いずれも絞りをできるだけ開けて背景のボケもチェックしてみたが、広角・望遠ともに十分なボケ描写を得ることができた。開放F値が控えめでも、近接撮影ならボケ量が大きくなって被写体を引き立てることができるのだ。

20171129_y-koba5 (10)↑18mm(28.8mm相当)を使用して最短撮影距離付近でススキを撮影。広角域で被写体に近寄ることで、このように手前の被写体を大きく写しつつ、背景を広く写し込むことが可能。絞りを開放付近に設定すれば、適度に背景をぼかすこともできる

 

20171129_y-koba5 (11)↑400mm(640mm相当)を使用し、最短撮影距離付近で紅葉した葉をアップで撮影。背景が大きくぼけ、葉の形を印象的に表現することができた。紅葉を撮るときは、逆光で葉が光に透ける様子を撮ると色鮮やかな印象に撮れる

 

近接撮影という意味では、旅の楽しみの1つである料理や旅先で見つけた小物などを撮る場合にも、このレンズは実力を発揮する。その場合は、焦点距離を30~50mm程度にして被写体に近寄って撮れば適度な距離から被写体を撮ることができ、写りも自然な写真に仕上がる。今回は昼食のハッシュドビーフを写してみたが、50mm(80mm相当)で被写体に近寄って撮ることで、柔らかく煮込まれた牛肉の様子をアップで切り取ることができた。

20171129_y-koba5 (12)↑手持ちでハッシュドビーフを撮影。ズームを標準から中望遠域(35~50mm程度)に設定すると、遠近感による誇張が少なく、見た目に近い印象で撮影できる。また、そうすることで被写体から適度な距離を保っての撮影が可能。ここでは50mm(80mm相当)で撮影した

 

手ブレ補正機構「VC」がブレのない撮影をサポート

夕方には箱根ガラスの森美術館に立ち寄り、屋内に展示されたヴェネチアン・グラスや屋外のライトアップされた(クリスタル)ガラスのオブジェなどを撮影。屋内展示では、フラッシュの使用が禁止のため室内灯での撮影となったが、カメラの高感度を使い、高い評価を得ているタムロンの手ブレ補正機構「VC」を有効にすることによって、アップでもブレなく撮ることができた。

20171129_y-koba5 (13)↑屋内に展示されたヴェネチアン・グラスのフタに施された模様をアップで撮影。準マクロ域でも手ブレ補正が機能し、手持ちでもブレなく撮れた

 

屋外のライトアップされたガラスのオブジェは、主に広角側で撮影。ここでも手ブレ補正機構「VC」を使うことで、三脚を使うことなく撮影を楽しめた。手ブレ補正は日中での望遠撮影で有効なほか、こうした薄暗くなりがちな屋内撮影や夕景・夜景撮影など多くのシーンで有効で、三脚を携行しにくい旅先での撮影の幅を大きく広げてくれる。

20171129_y-koba6 (5)↑広角端の18mmを使って、手前と奥にある木の遠近感を生かしながら幻想的な輝きを撮影。手ブレ補正は搭載されているが、夕景や夜景を撮る場合は、広角側を使うとぶれにくくて安心だ

 

このほかにも、紅葉を撮影して解像感などをチェックしたり、鉄道を撮影して動きモノを追尾する際のAFの作動をチェックしたりしたが、いずれも高倍率ズームレンズとしては良好な結果が得られ、満足できる写真を撮ることができた。画質面では、3枚のLD(異常低分散)レンズやガラスモールド非球面レンズ、複合非球面レンズの採用で収差を抑えつつ十分な解像感を保っており、AFは、タムロン独自の「HLD (High/Low torque-modulated Drive)」が採用され、高倍率ズームレンズとしては高速かつ静かなAFが可能。被写体の追尾もスムーズで、不用意にピンボケになるようなこともなかった。

20171204_y-koba1_01_R↑箱根湯元に向かう特急列車を撮影。AFをコンティニュアスに設定して高速連写モードを使用したが、モーターに独自の「HLD」が採用されたことでAFのレスポンスも良く、快適に撮影できた。精度も高く、今回連写したすべてのカットでピントが合っていた

 

【結論】汎用性が高く、エントリーユーザーからベテランユーザーまでおすすめできる1本

今回はタムロン18-400mmの旅撮影での実力をチェックしたわけだが、実際に1日撮影してみてわかったのは、このレンズの守備範囲が非常に広いということ。広角や超望遠での撮影はもちろん、近接撮影まで楽しめ、室内や夕景・夜景の撮影にも強いのだ。これだけの汎用性があれば、旅撮影に限らず、ほとんどの撮影場面で不自由することはないだろう。

 

ベテランユーザーのなかには、「高倍率ズームはF値が暗い」と敬遠する人もいるかもしれないが、最近のカメラは高感度性能がアップしており、ISO400や800といった少し高めの感度に設定しておけば失敗なく撮影が楽しめるはずだ。超広角やより大きく質の高いボケ描写、あるいは画面の隅々までの高画質を求めるなら、それぞれ専用のレンズが必要になるとは思う。とはいえ、1本でこれほど幅広い被写体に対応でき、手軽かつ必要十分以上の描写力が得られるレンズは、いまのところこのタムロン18-400mm以外に存在しないのではないだろうか。そういった点を踏まえると、エントリーユーザーが最初に買う1本としてはもちろん、機動性を重視したいベテランユーザーまで幅広い人におすすめできる優秀な1本と言える。何かと荷物が増えがちな年末年始の旅行でも、本レンズの守備範囲の広さと機動力が大活躍するはずだ。

 

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【スポット紹介】

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箱根ガラスの森美術館

緑豊かな箱根仙石原にある、日本初のヴェネチアン・グラス専門の美術館。作例に挙げたクリスタル・ガラスのツリーは12月25日まで展示される。

高画質・追従性・機動性を追求した超望遠ズームレンズ「タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD」発売

タムロンのフルサイズデジタル一眼レフカメラに対応する超望遠ズームレンズ「タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(Model A035)」の発売日が2017年11月16日(木)、価格は90,000円(税別)に決定した。

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高速制御システム「デュアルMPU(マイクロプロセッサ)システム」の採用による優れたAF追従性と、3枚のLD(Low Dispersion=異常低分散)レンズやeBAND(Extended Bandwidth&Angular-Dependency)コーティングがもたらす高画質、手持ちで超望遠撮影が楽しめるクラス最軽量1115g(ニコン用)の機動性を備えている。

 

2017年9月の開発発表時は、2017年内発売予定となっていた。開発発表時に数値が明らかになっていなかった手ブレ補正効果は、4段分*となる。

 

* キヤノン用は「EOS-5D Mark III」使用時、ニコン用は「D810」使用時。

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別売りの三脚座「Model A035TM」も同時発売。価格は15,000円(税別)。

 

■先進の光学設計

LD(Low Dispersion=異常低分散)レンズ3枚を使用し、超望遠で問題となる軸上色収差をはじめ、各種収差を効果的に補正。高い反射防止性能を発揮する独自の「eBAND(Extended Bandwidth&Angular-Dependency)コーティング」により、クリアでヌケの良い画質を実現している。

 

■優れた機動性

高速制御システム「デュアルMPU(マイクロプロセッサ)システム」の採用により、優れたAF追従性能と4段分の手ブレ補正効果を実現。レンズ鏡筒部材の一部にマグネシウムを使用することで、クラス最軽量*の1115gを達成し、機動性を追求している。

 

* 35mm判フルサイズ対応のデジタル一眼レフカメラ用100-400mm F4.5-6.3レンズにおいて。2017年9月15日現在、タムロン調べ。

 

■その他の機能

最短撮影距離1.5m、最大撮影倍率1:3.6のクローズアップ撮影が可能。レンズ内部に水滴が浸入するのを防ぐ簡易防滴構造、汚れを素早く拭き取れる防汚コートを採用し、屋外での撮影をサポートする。更なる望遠効果が得られるテレコンバーター、各種機能をカスタマイズできる「TAP-in Console(タップインコンソール)」にも対応する。

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別売りの三脚座「Model A035TM」は、アルカスイス互換のクイックシューに対応。

 

■主な仕様

●モデル名 Model A035 ●マウント キヤノン用、ニコン用 ●焦点距離 100~400mm ●レンズ構成 11群17枚 ●画角(対角) 24°24’〜6°12’(35mm判フルサイズ一眼レフカメラ使用時)/ 15°54’〜4°01’(APS-Cサイズ相当デジタル一眼レフカメラ使用時) ●絞り羽根枚数 9枚(円形絞り) ●開放絞り F4.5〜6.3 ●最小絞り F32〜45 ●最短撮影距離 1.5m ●最大撮影倍率 1:3.6 ●手ブレ補正効果 4段(CIPA 規格準拠)※キヤノン用「EOS-5D Mark III」使用時、ニコン用「D810」使用時。 ●フィルター径 φ67mm ●サイズ(最大径×長さ) φ86.2×199mm(キヤノン用)/ 86.2×196.5mm(ニコン用) ●質量 1135g(キヤノン用)/ 1115g(ニコン用) ●付属品 丸型フード HA035、フロントキャップ CF67II