70年代の“からまん棒”から“ほぼカニ”まで「ネーミング」トレンドの変遷を名付けのプロが解説

モノコトの情報を伝えるだけでなく、つくり手の思いが込められているのが商品名やブランド名などの「ネーミング」。店頭には思わず足を止めてしまう斬新なネーミングの商品があふれ、2020年からは日本の優れたネーミングを表彰する日本ネーミング大賞が開催されるなど、ネーミングの果たす役割に近年大きな注目が集まっています。

 

今回は、そんなネーミングにスポットを当てます。ネーミングの役割や、ユーザーに響くネーミング、そして2022年12月に発表となった第3回日本ネーミング大賞についてなど、ネーミングの第一人者であり、一般社団法人日本ネーミング協会会長の岩永嘉弘さんにお話をうかがいました。

 

モノコトの始まりにネーミングあり。「ネーミング」の果たす役割とは

モノコトに名前を付けることを「ネーミング」と言いますが、そんなネーミングが果たす役割について、考えたことはあるでしょうか? 「ネーミング無くして、何も生まれない」と話す、岩永さん。まずはその意義からうかがいました。

 

「ネーミングとは、モノコトの意味や価値、個性を消費者に伝える、コミュニケーションの核なのです。もし、ネーミングがなかったらどうなるでしょうか? たとえばただ『お茶』と言われても、どんな種類のお茶で、どんな商品かわかりませんよね。ですが、『十六茶』と言われたらどうでしょう? あのお茶だ、とネーミングを見て理解ができるわけです。さらに、そのネーミングからは『16種類の素材が入っているらしい』という、商品が持つ特性や魅力が、情報として伝わってきます。

 

つまり、ネーミングはモノやコトが育つための種。ネーミングがなければ、ロゴもつくることができないし、ブランディングもマーケティングも、広告を打つことすらできません。始めにネーミングがあるからこそ、そのモノやコトが育ち、人々に伝わっていくのです」(日本ネーミング協会会長・岩永嘉弘さん、以下同)

 

【関連記事】 ヤマト運輸がロゴ刷新! デザイナーが解説する「企業ロゴ」の真実

 

1970年代から移り変わる “心に響く” ネーミングと傾向

↑日立製作所「日立洗濯機 からまん棒」。当時の広告より。

 

時代とともに変容していく、ネーミングの役割とトレンド。その歴史を振り返ってみましょう。

 

1970年代 経済成長の時代に認知された、ネーミングの重要性

「ネーミングの重要性に世の中が気付いたのが1970年代。それまで、私たちがいま呼んでいるような『ネーミング』という概念はなく、あくまでも商品名や題名という認識でした。その理由は、今よりも商品の販売競争が緩やかだったからなのです。

 

それまでのネーミングを、洗濯機を例に見てみましょう。『琵琶湖』や『青空』など、洗濯機から連想する水や清潔感のような、イメージから名付けられることが多かったのです。ですが、その後やってくる大量生産・大量消費の時代になると、工夫しなければモノが売れなくなってきます。さらに、マスコミュニケーションもどんどん発展していく。消費者に自社商品を選んでもらうためには、より踏み込んだ対策が必要な時代になったのです」

 

そんな時代に、岩永さんのネーミングで生まれたのが日立の洗濯機「からまん棒」です。

 

「このネーミングは、洗濯機の真ん中に衣服がからまない棒を取り付けたという、商品の最大のセールスポイントをそのままネーミングしたものです。イメージではなく、具体的な特徴をネーミングで示すことで、わかりやすく他社製品との違いをアピールすることができますよね。この頃から、『名前を通してモノコトの意味・価値・個性を伝えることが大切だ』と世間が気付き始めたのです」

 

1970~80年頃 不安の多い時代に響く「会話体ネーミング」

「70年代には、2度も発生した石油ショックの影響もあって、経済も落ち込み不安の多い時代でした。そんな時代に生まれたのが、『会話体ネーミング』です。たとえば、桃屋の『ごはんですよ!』。海苔の佃煮ではありますが、あえてその特徴は言わず、『ごはんをおいしく食べることができるよ』というメッセージを、キャッチコピーではなく、ネーミングにしてしまったものです。同じように伊藤園の『おーいお茶』も、CMのセリフがきっかけではありますが、親しみを持ってほしいという思いが込められているそうです。そういった言葉の伝達と、親しみやすさを大切にするようになったのがこの時代ですね」

↑「江戸むらさき ごはんですよ!」(桃屋)、「おーいお茶」(伊藤園)※公式サイトより

 

1990年代 コミュニケーションの変化から生まれた「あたたかいネーミング」

「90年代は、バブルが崩壊してさらに世の中が暗くなった時代。温かい気持ちになるようなネーミングが多く登場していきます。たとえば、ポッカサッポロフード&ビバレッジの『じっくりコトコト煮込んだスープ』やクラシエフーズの『甘栗むいちゃいました』など。優しく語りかけるどこか心がホッとするネーミングですよね」

↑「甘栗むいちゃいました」(クラシエフーズ)。「じっくりコトコト煮込んだスープ」(ポッカサッポロフード&ビバレッジ)は、現在「じっくりコトコト」とシリーズ名を変更。※公式サイトより

 

「そうした温かいネーミングが増えた背景には、人々のコミュニケーションの変化があると思います。スーパーやコンビニ、自販機での買い物が増えると、消費者は孤独に商品を選択して購入することになりますよね。私はそれを『孤独の自販機コミュニケーション』と呼んでいます。人と人の関係性が希薄になって来ると、こういった温かいネーミングが心に響くのでしょうね。この傾向は、今のネット社会になっても続いています」

 

2000年代 略語・記号・数字を使ったネーミングが氾濫

「2000年代は、商品やサービスがあふれ、複雑になっていったこともあり、端的にわかりやすく商品やサービスを伝える略語を使ったネーミングがどんどん誕生していきます。NTTドコモの携帯プラン『パケ・ホーダイ』や、パスモの交通ICカード『PASMO』などがそれです。さらにデジタル化が加速していくと、サントリーの缶チューハイ「−196℃」など、数字や記号的なネーミングが一気に増えていきました」

↑「−196℃」(サントリーホールディングス)

 

2010年代 グローバル化と共に注目される「和製ネーミング」

「グローバル化がますます加速したこの時代には、日本語を使った和製ネーミングに注目が集まります。資生堂の『TSUBAKI』などがそれにあたりますね。グローバルマーケットに出る時、海外の人にもわかりやすいように英語の名前を付けることも多いですが、逆に日本語由来のネーミングであれば、それが日本製であるということもわかりやすい。日本製品のブランド力が高まってきたからこそ、アピールになるわけです」

↑「TSUBAKI」(資生堂)

 

2020年から現在 ネットにつなげる覚えやすさ、わかりやすさも必要に

「現在は、コロナウイルスやSNSの広がりもあって、さらに人々が直接お店で物を買わなくなりましたよね。対面コミュニケーションではないからこそ言葉が暖かくないと伝わらない、響かない。でもだからといって、商品がさらに氾濫しているから、特徴をわかりやすく言わないと選ばれません。さらに、商品の情報も多くの人がネットで仕入れるようになっています。ですので、今までのネーミングの流れを踏襲しながらも、検索につながる『一度聞いたら忘れないような覚えやすさ』、『わかりやすさ』があるかどうか。それが今の時代のネーミングに求められていると思います」

 

どうすれば消費者に響く? ネーミングの作法 3つの基本形

これまで消費者に響くネーミングがどのようにつくられてきたのでしょうか? 岩永さん流のネーミング作法を教えていただきました。

 

「まず、そのネーミングが『覚えやすいか』『呼びやすいか』『親しみやすいか』。この3つの要素は、ネーミングに必要不可欠です。私はこの3つの要素を大前提として、いろいろなテクニックを用いながらネーミングしてきました。そのテクニックを、3つの基本形でご紹介しましょう」

 

1.素ネーミング

「これは、『アップル社』やサントリーウイスキー『響』など、そのまま単語を企業名や商品名につけてしまうネーミング方法です。アップルはりんごという意味の英単語ですけど、そのままではアップル社であるとは分かりにくい。ですが、あのリンゴのロゴを見れば一発でアップル社と分かりますよね。ロゴマークの印象で打ち出すなど、工夫は必要になるネーミングだと思います」

 

2.足し算ネーミング

「『トマト銀行』や『チョコレート革命』など、2つの言葉を足し算したものですね。この作法を使う場合、2つの言葉の意味に関連性がない方が大きなパワーを生み出すのです。チョコレートという言葉と革命という言葉、あまり関係性が見いだせないですよね。その違和感があるからこそ、インパクトがあって人々が覚えやすい。俳句や詩をつくるときも、同じような法則を使うことがあるようです」

 

3.掛け算ネーミング

「例えば、『ア・ラ・カルトン』という飲食店のネーミング。これは、豚肉料理のお店なのですが、『アラカルト』という言葉と、豚の『トン』という言葉を掛け合わせてつくったネーミングです。他にも、『グッスリープ』というサプリメントがありますが、これは『ぐっすり』×『スリープ』×『おやすみなさい』という意味の掛け算です。ダブル、トリプルミーニングになっているようなネーミングということですね」

 

ネーミングの作法 応用編…言葉遊びでつくるネーミング

ネーミングづくりは、3つの基礎を応用し、様々な仕掛けを組み合わせながらつくっていく、と岩永さん。なかでも「言葉遊び」から生まれるものは多いと言います。岩永さんが手掛けたネーミングから、わかりやすいものをいくつかご紹介いただきました。

 

「日本の航空会社で『ソラシド エア(Solaseed Air)』は、私が参画したネーミングのひとつです。これは、『空』という言葉と『種(シード)』という言葉の掛け算ネーミングですが、さらに『ドレミファソラシド』という、音階の語呂合わせでもあるんです。弾むような音の響きと飛行機が上昇するイメージを、言葉遊びで表現したネーミングです」

↑株式会社ソラシドエアの企業ロゴ。2015年に「スカイネットアジア航空」から社名変更をした。

 

「あとは、『日清オイリオ』。『OilliO』と書くのですが、上から読んでも下から読んでも読める、ローマ字の回文ですね。『WOWOW』や『AXA』なども同じで、海外ではよくあるネーミングなんですよ。ロゴにした時、シンメトリーになるという効果もありますね。このように、足し算したり掛け算したり、その他の要素をいろいろと組み合わせながらネーミングをつくっているんです。そのネーミングにどのような仕掛けがあるのか考えながら見てみると、面白いですよ」

 

↑岩永さんが参画したネーミング「日清オイリオ」。オイルから始まった日清オイリオグループが、製油業の原点を大切にしながら、オイルの領域を拡げていくという意味が込められている。

 

ネーミングの重要性をもっと伝えたい。その思いから始まった「日本ネーミング大賞」

岩永さんが会長を務める一般社団法人日本ネーミング協会が、2020年から開催しているのが、日本ネーミング大賞です。

 

「ネーミングの重要性をもっと発信していかなければならないと思い、2018年に一般社団法人日本ネーミング協会を立ち上げました。では、ネーミングの役割や重要性をどう発信していくか。そう考えた時に、どういうネーミングが素晴らしかったのかを評価して、世の中に発表していくのがいいと考えたのです。私たちの想いを伝えながらも、世間の皆様にも興味を持ってもらえるきっかけになるだろうと始めたのが『日本ネーミング大賞』です」

 

第三回日本ネーミング大賞にて大賞を受賞したのが、カネテツデリカフーズ株式会社の「ほぼカニ」。大賞受賞の理由を岩永さんにうかがいました。

↑カネテツデリカフーズの「ほぼカニ」は、不漁続きのカニの代わりに鱈を用い、まさに「ほぼカニの味」を再現したカニ風かまぼこ。

 

「『ほぼカニ』は、商品の特徴を誰もがわかりやすく表現しているだけでなく、ユニークで驚きのあるネーミングで最終審査会でも好評でした。さらに、その商品自体が、時代のテーマでもある『SDGs』に即した商品であることも受賞理由のひとつです。

 

ネーミングは、マーケティングの成功に寄与するだけでなく、世の中を明るくする力があるとも考えています。人々が笑顔になれるような『ほぼカニ』という面白いネーミングの商品が、水産資源の保護という時代のテーマを反映している。その点も評価しての受賞でした。ただ『魅力的なネーミングである』ということだけでなく、ネーミングには『商品にかける企業の理念や思い』が込められている、ということに受賞作を通して気付いてもらえたらうれしいです」

 

「自分が消費者として、ユーザーとしてどういう商品サービスを選ぶのか。これは人それぞれだと思います。たとえばSDGsに関心があれば、そのテーマに即した商品に魅力を感じますよね。ネーミングもそれと同じです。自分の思いに上手に応えてくれるネーミング、それがその人にとって響くネーミング。ですので、自分の視点でネーミングを見て、『こういう風な意味が込められているんだ』と、興味を持ってもらえたらうれしいですし、面白いと思います。ぜひ『ネーミング』に、注目してみてくださいね」

 

プロフィール

コピーライター・ネーミングクリエイター / 岩永嘉弘

「ネーミング」の第一人者。一般社団法人 日本ネーミング協会 会⻑。東京コピーライターズクラブ会員、ROXCOMPANY代表。代表的なネーミングに、越中褌「JAPANTS」、日立洗濯機「からまん棒」、「東急Bunkamura」、「渋谷MARKCITY」、「SOLASEED AIR」、「日清oillio」、ホンダ「FIT」、大手町「HOTORIA」、大塚製薬「UL・OS」、雑誌「STORY」、駅弁「元気甲斐」他多数。 主な著書に、「最強のネーミング」(日本実業出版社)、「ネーミング全史」(日本経済新聞出版社)、「全てはネーミング」(光文社)などがある。

 


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ヤマト運輸がロゴ刷新! デザイナーが解説する「企業ロゴ」の真実

2021年3月、ヤマト運輸がロゴマークの刷新を発表しました。同社のロゴマークが変わるのは、なんと64年ぶり。その分インパクトも強く、SNSなどでも大きな話題となりました。

 

なぜ、たった一つのロゴが、これほど世間をにぎわすのか? その要因を探るべく、「ソフマップ」のロゴデザインなどで知られる、グラフィックデザイナーの佐藤浩二さんにお話を伺いました。

 

海外では「ロゴマーク」は通じない!? 「ロゴ」の定義とは?

「ロゴ」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? おそらく「マーク」や「絵柄」などの、抽象的なデザインを頭に浮かべた人が多いのはないでしょうか。

 

「マークや絵柄もあながち間違いではないのですが、正確に言うと“文字がデザインされているもの”がロゴとなります。

ロゴの語源を辿ると、活版印刷が印刷の主流だった時代にまで遡ります。当時は金属で作られた活字を並べて、文章を印刷していました。その際、社名など頻繁に使われる文字は都度組み直すのが面倒になり、必要な文字だけをひと塊にした合成活字を作ったそうなんです。この合成活字が『文字が連なった状態(ロゴ)の活字(タイプ)』ということになります。そしてその名残で、会社の名称を表すひと塊のデザインを『ロゴタイプ』と呼ぶようになりました。

つまり、『ロゴ』とは文字が入っているもの、文字がデザインされているものを指し、文字を含まないものはロゴとは呼びません。本来は“文字主体でデザインされたもの=ロゴ・ロゴタイプ”“図形や絵柄を象徴的にデザインしたもの=マーク・シンボル”と区別されるのです。加えて、マークとロゴタイプが組み合わされたものも『ロゴ』と呼ばれます。しかし徐々に、『ロゴマーク』という呼び方が日本国内で広がり、和製英語のように一般化していきました」(佐藤浩二さん、以下同)

 

他社との差別化だけじゃない! 移り変わる企業ロゴの役割

私たちの周りには、たくさんのロゴで溢れています。ひと口にロゴと言ってもさまざまな種類がありますが、なかでも接点が多いのは「企業ロゴ」です。製品を買う時、サービスを受ける時、広告を見る時、そこには必ず企業ロゴがあります。

 

「消費者との接点が多いからこそ、企業がロゴに託す役割は非常に大きくなります。ただ、その役割は時代とともに変化しているんです」と佐藤さん。

 

ここでは、どのようにロゴの役割が変化していったのかを見ていきましょう。

 

1950年代

「『CI』とはコーポレートアイデンティティの略で、企業理念とそれをビジュアル化したシンボルやロゴ、アプリケーション開発、広告戦略など、すべてに一貫した企業イメージやメッセージを意図的に作り出す戦略です。CIの考え方はアメリカで生まれ、1956年にIBMがInternational Business Machineという社名が長くて読みにくいという理由から、略称をロゴとしてデザインし、展開の仕方もマニュアル化。管理運用によってビジネスを成功させ、注目を集めました」

 

1970~80年代

「高度経済成長期が終わり、海外進出を視野に入れる企業や、企業としての信頼と競合他社との差別化を考える企業が増えてきたこの時代。これまでは“作れば売れる”時代でしたが、機能性や利便性だけでは売れなくなっていきました。

そこで、アメリカの成功事例を参考に、日本でも大手数社がCIの考え方を取り入れ始めます。すると見事に成功をおさめ、他の企業もこぞってCIを導入するようになりました。長い日本語の社名を片仮名や英文字などに変更したり、有名なデザイナーを起用したり、斬新さとともに企業イメージの刷新をはかる企業が増えました」

 

2000年代~現在

「企業がCIを導入することが当たり前になると、見た目の差別化を試みたロゴが溢れかえり、デザインを刷新するだけでは目立たなくなってきます。単に見た目の奇抜さだけを追求した企業は、ビジネスまでも下向きになってしまいました。

すると企業は、これまでの視覚的な差別化から、社内の意識改革や理念、社会に対するメッセージ性などを重視した戦略へシフト。それらをロゴに内包できている企業は、長く生き続けていくこととなります。そして、こうした“企業の想いを伝える”というロゴの役割は、今もなお続いています」

↑CIブームの火付け役となったIBM

 

ビジネス成功の鍵は、企業ロゴによる「社員の意識統一」と「消費者の感情の統一化」

では、一体なぜロゴに企業の想いを内包することで、ビジネスの成功に繋がっていくのでしょうか?

 

「まずは、社員の意識が統一化するという側面があります。自分たちのあるべき姿や目指すべき道を、ロゴという目につきやすい形で示すことで、社員に浸透しやすくなるんです。それはやがて、社員が生み出す製品やサービスにも反映され、消費者のもとへと届いていきます。

もう一つは、消費者の感情を統一化するという側面。消費者は、製品やサービスに対して『あの製品は良かった』『あの接客は素晴らしかった』などと、さまざまな感情を抱きます。そしてその感情は、知らず知らずのうちに企業ロゴに蓄積され、やがてその企業に対する印象へと変わっていきます。前向きな感情は『このロゴがついているから、良いに違いない』という信頼感に。逆に後ろ向きな感情は『このロゴがついているから、やめておこう』という不信感に繋がるのです。

つまり、社員に統一化された企業の想いは、製品やサービスに反映され、消費者の感情となり、最後には信頼という形で企業に帰ってくるということ。だからこそ、ロゴに企業の思いを内包することで、結果的にブランドイメージの構築に繋がったり、長期ビジョンが達成しやすくなったりするのです」

 

↑佐藤さんが手掛けたソフマップの企業ロゴ。同社の製品やサービスはもちろん、街中の広告などにも使われており、多くの人の目に触れている

 

ヤマト運輸、刷新成功の秘訣は“ストーリーの共有”
実例とともに振り返る、企業ロゴの変遷

企業ロゴというと、ヤマト運輸のように“何十年も使い続けるもの”というイメージが強いかもしれません。しかし、実は数十年スパンでトレンドが変化してきているのです。ここでは企業ロゴのトレンドを、実例と共に振り返っていきましょう。

 

1970~80年代

「CIブーム真っ只中。日本でいち早くCIの考え方を取り入れた会社には『マツダ』『セキスイハイム』『イトーヨーカ堂』などが挙げられます。目立つことが最優先だったこの時代は、ビビットで奇抜な企業ロゴがトレンドでした。大文字主体で文字間が詰まっており、力強いものが多かった印象です」

↑日本でのCI導入で注目されたマツダのロゴ

 

2000年~2010年頃

「企業の思いがロゴに内包されるようになり、より消費者がメッセージを受け取りやすくなるような、情緒に訴える優しさを感じるデザインが主流となっていきました。具体的には、小文字主体でふっくら丸みを帯びており、どことなく思いやりや優しさが感じられるデザインです」

↑2004年に刷新されたサントリーのロゴ

 

2010年頃~現在

「ここ10年は、無駄をそぎ落としたシンプルなデザインが増えてきました。線が細くて頼りなさそうな印象を受けるかもしれませんが、私はこの先、企業ロゴのトレンドとして確立するデザインではないかと感じています。そして、このトレンドをおさえてブラッシュアップされた例こそ、ヤマト運輸の新ロゴマークです。従来のイメージは残しつつも、シンプルでスタイリッシュな印象へと変化しました」

↑ヤマト運輸のロゴマーク。これが従来のもの

 

↑そして、こちらが新たに採用されたもの。より洗練された、都会的な形へと変化している

 

「ただ、同社の刷新が話題となった理由は、トレンドを反映していたという点だけではありません。ロゴが変わると誰もが少なからず違和感を覚えると思うのですが、そこに対するフォローがとても丁寧だったんです。特設サイト内で経緯や変遷が細かく説明されており、刷新に対する納得感を得ることができました。

また、ロゴマークと一緒に発表されたアドバンスマークも同様です。一見『なんだこれ?』とびっくりするような見た目ですが、『新しい取り組みをする際に使用するマーク』との説明を読んで納得。『よりとんがった事業に使うから、これだけインパクトがあるマークなんだな』と理解することができました。

『新しいロゴはこれです』と一方的なメッセージで済ませるのではなく、理解度が増すようストーリーまでをも共有する。それこそが、ヤマト運輸が消費者を置いてけぼりにすることなく、刷新を成功させた大きな要因だと思います」

↑ヤマト運輸のアドバンスマーク。同社が掲げる「既成概念にとらわれず、果敢に挑戦する姿勢とビジョン」の象徴として新設された

 

美しいロゴには、“違和感”の排除が必要不可欠

グラフィックデザイナーとして、普段から企業ロゴの制作を行っている佐藤さん。実は企業ロゴには、デザイナーだからこそ気が付ける秘密があるのだとか。ここでは、そんな企業ロゴに隠された秘密について教えてもらいました。

 

「皆さんが普段、さまざまな場所で目にする企業ロゴ。均一な同じ太さに見えるロゴタイプがあったとして、実は目がそう錯覚しているだけなんです。

例えば、製品パッケージと屋外看板では、微妙に線の太さを変えている企業があります。小さなロゴを手元で見る時と、大きなロゴを遠くから見る時では、視認性(目でデザインを見た時の、認識のしやすさ)が異なるため、ただ拡大・縮小しただけではなく、微細な修正を加えることがあるんですね。

また、ほんのわずかな線の太さや配置の違いは、見た目の美しさにも大きく影響してきます。私がこの秘密に気が付いたのは、ちょうどソフマップのロゴ制作を行っていた時のこと。当時『どうしたら固すぎず、やわらかすぎず、信頼感のあるロゴが作れるのだろう』と悩んでいたんです。NECのロゴがまさにその理想形で、『なぜただの頭文字の羅列がこんなにも美しく見えるのか』と考えていました」

↑「NECのロゴは、大企業らしい堂々としたたたずまいと、人間味を感じる優しい雰囲気が共存しています。なおかつ、グローバル展開や時代の移り変わりにも対応できる普遍性も持ち合わせており、そう簡単には再現できません」

 

「研究を重ねていくうちに、NECをはじめとする美しいロゴには、徹底した錯視調整がなされていると気が付きました。錯視とは、目の錯覚によって、本来の太さや色とは異なった形に見えてしまう現象をいいます。そんな目の違和感を洗い出し、微調整を重ねることで、美しいロゴが生み出せると分かりました。

早速、そのテクニックをソフマップのロゴ制作にも応用。錯視調整を繰り返し、見た目の違和感を完全に取り除いたロゴを作りました」

↑文字のボリュームが同じに見えるよう、「ソ・マ」は「フ」よりも、幅が広くなっている

 

↑錯視調整を経て完成したロゴ

 

ロゴ=2Dの時代はもうおしまい!? 企業ロゴの未来

役割もデザインも、時代と共に変化し続ける企業ロゴ。この先の動向について、佐藤さんは「企業ロゴの新しい概念が生まれるかもしれない」といいます。

 

「デジタルサイネージなど、企業ロゴが使われるシーンが増えた今、見せ方の幅も大きく広がっていると感じます。例えば、近年注目を浴び始めているのが“ダイナミックアイデンティティ”。従来ロゴの形や色を変えて使用することはNGだったところを、ある一定の法則さえ守れば色や形を変えても良いとするロゴデザインの考え方です。こういった動的なロゴが、一般的に求められるようになる時代はそう遠くないとふんでいます。私たちデザイナーも、対応できる範囲を広げる必要があると感じますね」

 

普段何気なく見ている企業ロゴが、これまでどういった変遷をたどってきたのか? そしてこれからどう変化していくのか? 各企業の在り方と共に観察してみると、企業ロゴの見え方が少し変わってくるかもしれません。この機会に、ヤマト運輸はもちろん、各企業のロゴをじっくりと観察してみてはいかがでしょうか。

 

【プロフィール】

グラフィックデザイナー / 佐藤 浩二

宝塚造形芸術大学(現:宝塚大学)ビジュアルデザインコース卒業後、広告代理店にて約6年間デザイン・ディレクション業務を経験。2001年に独立し、後に株式会社コージィデザインとして法人化。企業のCI、VI、商品ブランドのロゴなど、ブランディングに関わるデザインを専門とする。主な実績は「ソフマップ」VI、「滋賀医科大学」VI、クボタ「KSAS」ブランドロゴ、「オリコン」VI、「オリコン顧客満足度」エンブレムロゴ、「大阪産業局」VIなど。

https://cosydesign.com/

 

丸くなるな、トガっていけ! 大人も満足させる最高の鉛筆削りはオブジェ用途も満たす

【ド腐れ文具野郎・古川 耕の文房具でモテるための100の方法】

No.076

カール事務器「アイン」
3456円(税込)

精度と耐久性に優れた日本製の刃を搭載した卓上鉛筆削り。芯の露出幅が長い弓なり形状に削り上げる。大型で丸みを帯びたボディは、子どもの手にもしっかりフィット。ガタつかず安定して削ることができる。色は2色。

 

ミッドセンチュリー風の新しい鉛筆削りでスタイリッシュにモテる

久しぶりのひと目ぼれでした。鉛筆削りの名品「エンゼル 5」を世に出したカール事務器が新たに発売した鉛筆削り「アイン」。その強烈なチャームに抗えず、普段はまるで鉛筆を使わないのに、すぐさま取り寄せてしまいました。それくらい好き。

 

余計なパーツを廃した大胆なフォルムと配色はどこかレトロで人懐っこく、まるでミッドセンチュリー風家電のようにモダンであたたかみがあります。実物は意外と大ぶりで、プラスチックの材質とも相まって、手で押さえたときの安定感も充分。もちろん削り機構の性能と使い勝手は安心のカール製なので問題なし。見た目と実用性を兼ね備えた、いままでありそうでなかったユニバーサル鉛筆削りと言えるでしょう。

 

もちろん、それまでの鉛筆削りに不満なんてありませんでした。いや、そもそも鉛筆削りを買うつもりなんてなかったのです。ところが、優れた道具はニーズを後付けで呼び覚まし、それどころか既製品を相対化するような新たな視点を与えてくれます。こうした「モノ先行型」の発見が筆者は大好きです。そこにはニーズによって生み出された道具にはない、大きな「ジャンプ」があるから。その跳躍が道具のみならずユーザーをも進化させ、選択肢の自由をもたらしてくれるのです。

 

学童用鉛筆削りの最先端はコレ!

ソニック「トガリターン」
1944円(税込)

学童用の文房具メーカー・ソニックが昨年発売した鉛筆削り。ハンドルを回し続けているだけで、削り終わった鉛筆が自動で輩出される機能を備えている。

 

【プロフィール】
古川 耕
放送作家/ライター。TBSラジオ「アフター6ジャンクション」「ジェーン・スー 生活は踊る」などを担当。

 

雑誌「GetNavi」で連載中!

 

「道具としての完成度は国産時計を支え続ける技術力がゆえ」TRUMEの魅力を解き明かす––ディテール編

国産マニュファクチュールとしてセイコーエプソンが培った技術の粋を結集したTRUMEという腕時計があります。このブランドに込められた先進機能やこだわりの外装。その魅力の所存を、最新作となる「M Collection」から解き明かしていきます。今回は、細部のこだわり編です。

 

 

 

最先端技術を備えながら「時計らしさ」を表現する

 

「TRUME」に宿るのは、1976年の時計製造の歴史を持ち、多くのムーブメントや先進技術を生んだウオッチメーカーとしてのエプソンの矜持です。

 

高度、気圧、方位、現在地からあらかじめ登録した地点に戻る「ウェイポイント機能」など、身に着ける人の瞬間を計り尽くす最先端の機能などは1stモデルから継承。さらに「時計らしさ」を意識したデザインに仕上げられているのが、今回の「M Collection」といえます。

 

アクティビティを標榜するモデルならば視認性は高める必要があると、文字盤やベゼルに刻まれたアラビア数字にはオリジナルの「T2フォント」を採用。これは古くから使われてきた機械彫刻用の文字を、このモデルのためにリデザインしたものです。

 

ポリッシュの具合がケースと好相性なベゼルはセラミックにレーザー刻印で目盛りを刻み、風防には傷に強いサファイアガラスを採用。これに光の反射を抑えるASRオーティング処理も施されています。

 

 

TRUMEを楽しむための3つのポイント

TRUMEは外装やデザインにも伝統の職人技が生きています。仕上げはもちろん、数字のフォント作りにまでこだわった粋な時計なのです。

 

POINT1/ケースの経年変化を楽しめる無骨なヘアライン仕上げ

 

ケースやブレスに用いた純チタンは無骨なヘアライン仕上げが素材感を強調。キズが目立つポリッシュ仕上げと異なり、静かに蓄積した使用キズを“味”として楽しめる出来栄えで、ユーザーとともに経年変化=エイジングする楽しさを享受できます。チタンの採用でアクティビティをより活発にする軽量性も獲得しています。

 

POINT2/古き良き時計作りの技を復古! こだわりのフォント作り

モード針は特殊な形状を採用。この針は国際信号旗を想起させる色使いで、細部にわたってヨットモチーフにこだわった

 

1人の時計師が1本ずつ腕時計を作っていた古来、文字盤に記される数字はすべて職人の手書きでした。TRUMEはその精神を現代に甦らせ、インダイアルやベゼルに配される数字に自社でゼロから生み出した「T2フォント」を採用。カメラのライカにも用いられているテイストで、質実剛健ながら色気のある印象となっています。

 

POINT3/腕時計ストラップで初めてホーウイーン社製レザーを採用

左は2か月使用したもの。右の新品と比べ明らかに味が出ている

 

 

ホーウイーン社製クロムエクセルレザーは一般の革と異なる個性を持っています。キズがついてもブラシで手入れすれば消えるようになじむ一方、革は表面のみを染めているため退色し経年変化による独特の風合いを醸し出していきます。着用時の体温によって革の柔らかさも変化するので、寄り添うようにフィットする点も特徴です。

 

CHECK!/バネ棒までこだわりのチタン製

 

 

本機は、バネ棒やそれを覆うパイプまでチタンにこだわっています。ここまで手をかけるにはコストとの戦いが想像されますが、これこそ細部にわたって道具としての強度を追求した結果なのです。

 

TRUME「M Collection」(右から)25万9200円/Ref.TR-MB7003
27万円/Ref.TR-MB7004
25万9200円/Ref.TR-MB7005(ナイロンバンド付属)

 

 

ケースなどの金属パーツはすべてチタンが使われていますが、バネ棒までチタンを使うこだわりようは圧巻。あらゆる分野とディテールを磨き上げた技術力が、本機を唯一無二のものにしているのです。

 

TRUME https://www.epson.jp/products/trume/

TRUMEお客様相談室 TEL : 050-3155-8285

 

 

 

デザインコンシャスな「プレゼント家電」

毎日の生活に欠かせない家電製品。特に最近のキッチン家電やインテリア家電は、おしゃれなカラーやデザインのものが増えていて、買い替えを検討している人も多いのでは? プレゼントシーズンでもある今、その中でも大切な人や友人、家族に贈りたくなるような、デザインコンシャスな家電に注目。暮らしを豊かにする家電製品を、“うふふ家電”と名付け提案している、家電+ライフスタイルプロデューサー・神原サリーさんに、今おすすめの最新家電をご紹介いただきます。もちろんお気に入りを見つけたら、自分へのプレゼントにしてもいいですね。

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もう迷わない! たくさんある家電からお気に入りを見つけるコツ

素敵な家電を見つけた! と思っても、なかなか購入にまで踏み切れないことはありませんか? 口コミでの評判はどうだろうとか、他のメーカーの機種とも比べたほうがよさそうだな、とか。そうこう悩んでいるうちに、結局購入から遠ざかってしまうというのも、ありがちな話です。

 

というわけでプレゼントにおすすめの家電についてうかがう前に、サリーさんにそもそもの家電選びのコツを教えてもらいます。

 

「最近の家電は、機能面はどれもほぼ整っています。だからこそ今は『自分の感性にあったもの』を選ぶのが、一番おすすめの選び方。やはり他でどんなに高評価を得ているものでも、自分と共鳴しないものは使わなくなってしまいますからね。

 

私の場合は、見た目はもちろんですが、触り心地やボタンを押す時の感触なども重視しているポイントです。日々使うものですから、触れた時の感覚がうれしいと、使うたびに幸せな気持ちになれると感じています」(サリーさん・以下同)

 

なんとも家電選びが楽しくなるアドバイス! 特にすでにある物の買い替えではなく、プラスαで新たな機能の家電を採用する場合は、購入後の「わくわくする暮らしが想像できるものを選んで」とサリーさん。

新しい家電を手に入れることで、暮らしそのものが変わる。今、家電にはそんな可能性もあるんですね。

 

 

プレゼント選びは、贈る相手の暮らしを思い描いて選ぶこと

では、いざ贈り物としての家電を探す場合は、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

 

「プレゼント用の家電も、基本的にはご自分が“うふふ”となるものから選んでよいと思います。だってそういうものって、誰かにあげたくなりますよね。その中から、贈りたい方の暮らしのスタイルや、ご自宅のインテリアに溶け込んでいる様子を想像できる物を選ぶのがよいと思います。もしくはそういったことも含めて、“おすすめ”という形で家電を選んで贈るのも素敵ですよね!」

 

毎朝コーヒーを飲むあの人には、よくホームパーティを主催してくれるあの人には……。そういうふうに想像を巡らせていくと、プレゼント家電を選ぶのがますます楽しくなりそうです。

 

なお、どこに行けば素敵なデザインの家電に出会えるか迷っている人には、「最近は家電量販店だけではなく、百貨店やインテリアショップにも素敵なデザインの家電が置いてあるので、そういうお店にも探しにいってみては」と、アドバイスもいただきました。
 

置くだけで絵になるデザインコンシャスなリビング家電

使っていないときでさえ、部屋にあるのがうれしくなる。それがデザインコンシャスなリビング家電の条件です。そんな基準で神原さんに選んでいただいた4点をご紹介します。

 

日本の美にインスパイアされた限定カラーが登場
B&O PLAY「Beoplay A1」

 

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B&O PLAY「Beoplay A1」実売価格:2万9900円、通信方式:Bluetooth Ver.4.2、連続再生時間:最大24時間
http://kanjitsu-boplay.jp/speakers/a1.html

 

北欧のオーディオブランド、B&O PLAYのBluetoothスピーカー。男性なら手のひらにおさまるコンパクトなサイズで、重さはわずか600g。マットな質感がインテリアにさりげなく溶け込むのはもちろん、旅先にも連れて行けるという、アクティブかつ、エレガントな一品。限定カラーはバイオレットとアンバー。
「毎シーズン、世界各国の都市をテーマにした新色を発表しているのですが、今年は日本が選ばれて、2色の限定カラーが発表されています。まさにプレゼントとして選ぶのに最高のタイミング。九十九里の浜辺に暮れなずむ夕闇のあめ色を切り取ったという『アンバー』は、とても美しいですよ」

 
美しいシェープに目を奪われる
「Bottled」

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ambienTec「ボトルド BL001-02S」実売価格:3万1320円、光源:LED、最長点灯時間:LOW100時間/MID24時間/HIGH8時間/EX-HIGH4時間
http://www.ambientec.co.jp/products/bottled/

 

灯りをそのままワインボトルに閉じ込めたようなデザインの「Bottled(ボトルド)」。コードレスのLEDランプだから、部屋から部屋へ持ち運べ、置く場所にやわらかな光と、ドラマティックなムードを創り出してくれます。低発熱LEDなのでベッドやソファなどに、無造作に置いておいても大丈夫。自宅でくつろいだ時間を過ごすのがお好きな方にぜひ。
「私のおすすめはアウトドアに持って行く使い方。この美しい姿とやさしい光は、キャンプなどアウトドアで過ごす夜をより上質なものにしてくれると思います。心も癒されるし、充電の持ち時間も長いので安心です」

 
アクセサリーのような輝きを放つ
DENSO「ワインセーバー」

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DENSO「ワインセーバー」実売価格:1万800円、電源方式:単三充電式ニッケル水素電池または、アルカリ乾電池2本(別売)
https://www.denso.com/jp/ja/products-and-services/consumer-products/winesaver/

 

ボトルに残ったワインを真空保存できるワインセーバーは、ワイン好きの人なら絶対に喜んでくれそうなプレゼント。真空状態でワインの酸化を抑制し、フレッシュな香りや果実味をキープしてくれます。
「付属の栓を差し込んで本体をかぶせれば、自動で真空化がスタート。ライトが点滅した後、真空化が終わると自動で止まるので、機能性も抜群です。とにかくデザインが美しいので、贈り物としてもおすすめです」

 
ふわふわあったかで癒される
ルルド「ホットネックマッサージピロー」

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ルルド「ホットネックマッサージピロー」実売価格:8424円、ヒーター温度特性:60℃以下、タイマー:10分自動OFF、電源コード:2m
http://www.atex-net.co.jp/products/health/hxl191/hxl191.html

 

三日月型で体のどこにでもぴったりフィットする、ルルドのホットネックマッサージピローから、2017年秋冬限定、エコファー素材のグレーとピンクの2色が登場。ヒーターとマッサージ機能がついているので、寒い夜も癒されること間違いなし。
「触り心地が気持ちよく、通電していなくても癒されるクッションです。枕代わりに使うのもおすすめ。特に秋冬モデルはエコファーの素材はもちろん、しっぽ付きのデザインも魅力的。こういう遊び心も、贈り物には必要ですよね!」

 

 

食卓を彩り豊かにするデザインコンシャスなキッチン家電

デザインやカラーのバリエーションが近年特に増えているキッチン家電。台所に閉じ込めておくのがもったいなくなるような、デザインコンシャスなものもたくさんあります。その中でもサリーさんがイチ押しする3点をおすすめいただきます。

 

料理がアートに!
プリンセス「テーブルグリルストーン」

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プリンセス「テーブルグリルストーン」実売価格:2万1600円、本体サイズ:W614mm×H70mm×D222mm(台座含む)、温度調節:250℃までの無段階調整
http://princess-jp.com/product/detail?id=1268

 

今までにないおしゃれなデザインのホットプレートとして世界中で人気を博している、オランダの家電ブランド、プリンセスの「テーブルグリルピュア」から、日本先行モデルのストーン調デザインが登場。カラーはホワイト、グレー、ブラック。少ない油で250℃という高温調理が可能なため、素材の味を最大限に引き出してくれます。家族での団らんを大事にする友人に、もしくはホームパーティー好きな自分へのプレゼントに、どちらにするか迷ってしまいそう。
「これ自体がインテリアになるデザインで、使っていないときには果物などを飾っておいても素敵です。また食材が映えるので、焼くときの並べ方にこだわったりと、今までにない楽しみ方ができるのもうれしいですね。幅が狭く、テーブルに置いても他の食器を置くスペースがちゃんととれるのも、じつはおすすめポイントのひとつ。ただフチがないので小さなお子さんのいる方に贈るのは、避けたほうがよいかもしれません」

 
シックなネイビーカラーが珍しい!
レコルト「ホームバーベキュー」

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レコルト「ホームバーベキュー」実売価格/9720円セット内容:本体、バーベキュープレート、フラットプレート、フタ、水トレイ、ヒーターセット、フタスタンド、専用レシピブック
http://recolte-jp.com/products/home-bbq/

 

食卓でBBQが楽しめるテーブルクッキングプレートの中でも、サリーさんがおすすめするのがこのレコルト「ホームバーベキュー」。分厚いステーキも美味しく焼けるほどの火力と、高温度の設定が可能です。ヒーターが取り外せて、本体を丸洗いできるという使い勝手も魅力のひとつ。カラーはレッドとネイビーの2色。ポップなカラーが増えているキッチン家電の中で、ネイビーは男性にも贈りやすいスタイリッシュさを兼ね備えています。
「自宅でも高頻度で活躍してくれているホームバーベキュー。温度復旧が早いのでどんどん焼き上がって、焼き待ちの時間がないほどです。うれしいのは下に水を入れて使う仕組みのため、煙が出ないこと。またオプションでたこ焼きプレートや蒸しプレートなどもあるので、ちょっとずつ買い足していく楽しさも贈れるのではないでしょうか。付属でついてくる専用のレシピブックがとても素敵。こちらもぜひ見ていただきたいです!」

 
コンパクトで、贈りものにぴったり
ネスプレッソ「エッセンサミニ C30/D30」

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ネスプレッソ「エッセンサミニ C30/D30」実売価格:各1万1880円、水タンク容量:約0.6L、抽出タイプ:カプセルタイプ、ポンプ最大圧力:19気圧
https://www.nespresso.com/jp/ja/essenza-mini-coffee-machine

 

ネスプレッソ史上、最小・最軽量の、カプセル式コーヒーメーカー。ミニマルなデザインながら優れた品質は変わらないまま。40mlと110mlの2つのカップサイズを選べ、フォームミルクと合わせればカプチーノなどのメニューも楽しめます。
「『C30』はスリムな長方形で、インテリアの邪魔をしないデザイン。『D30』は丸みのある台形型でポップなカラーバリエーション。インテリアのアクセントになってくれます。どちらもすでにインテリアが整っている家にも、すっとなじむコンパクトさとデザインなので、気兼ねく贈ることができると思います」
読みながら贈りたい人が思い浮かんだり、自宅で使っている様子が想像できたりしたでしょうか?「家電は使った先に、本当の幸せがある」とはサリーさんの言葉。自分用の家電を買うときも、贈り物用に買うときも、心にとめておきたい言葉です。デザインコンシャスな家電とは、暮らしまでもデザインコンシャスにしてくれる家電のことなのかもしれませんね!

 

 

※価格は2017年12月20日時点の参考価格(税込)です。

 

 

Profile

 

家電+ライフスタイルプロデューサー / 神原サリー

新聞社勤務、フリーランスライターを経て、家電+ライフスタイルプロデューサーとして独立。「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」べく、家電分野を中心に執筆や商品企画、コンサルティング等幅広く活躍。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞等のメディアへの出演・掲載も多数。

 

 

何気ない日常を、大切な毎日に変えるウェブメディア「@Living(アットリビング)」

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Braun、そしてAppleの風化しないデザイン…両者の関係は単なるコピーではない ライフスタイル

ロンドンは、博物館・美術館が大変充実しています。テレンス・コンランが設立したロンドンのデザイン・ミュージアムはケンジントン地区に移転し、2016年にリニューアル・オープンしました。様々なカテゴリーのデザイン展示がされていますが、その中でも目を引くのが、家電~エレクトロニクス分野でのデザインに関する展示です。Braun、Sony、Appleがこのカテゴリーでのデザインにおける重要ブランドとして選ばれています。

デザイン・ミュージアム・ロンドンデザイン・ミュージアム・ロンドン

 

私自身はデザイナーではありませんが、プロダクトをリサーチしていく上で、(カテゴリーによって差はありますが)デザインは顧客にとってブランドの価値を決める重要な要因となります。デザインがブランド価値に貢献した模範となるのが、現在世界で最も高い企業価値を誇るAppleです。Appleのデザインを理解する上で、その源流とも言えるデザイン・フィロソフィーを作り上げたのは、ドイツのBraunです。例えば、こちらの動画にある50年代末から70年代までのBraunとAppleのデザイン比較を見れば、その相似性に驚きます。

 

■ディーター・ラムスが作り上げたBraunのデザイン・フィロソフィー

Braunデザインの基盤を作り上げたのが、1955年にBraun社に入社し、1961年から1995年までBraunのCDO(チーフ・デザイン・オフィサー)として500以上の製品に関わってきたディーター・ラムスです。彼は「より少なく、しかしより良く(Less But Better)」という信条をもとに、10ヶ条からなるGOOD DESIGNであるためのデザイン・フィロソフィーを提唱しました。

 

革新的である(is innovative)

製品を便利にする(makes a product useful)

美しい(is aesthetic)

製品を分かりやすくする(makes a product understandable)

慎み深い(is unobtrusive)

正直だ(is honest)

恒久的だ(is long-lasting)

首尾一貫している(is thorough down to the last detail)

環境に配慮する(is environmentally friendly)

可能な限りデザインをしない(is as little design as possible)

(Wikipediaより引用)

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デザインに絶対的正解はないと考えますが、Braun、そしてAppleの風化しないデザインを生み出した源は、ラムスの原則にあると言えるでしょう。2009年に府中博物館で「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代 ー機能主義デザイン再考」 というタイトルで、ディーター・ラムス展が開催されました。この時のインタビューで、ラムスはAppleのCDO、ジョナサン・アイブを評価しており、こう答えています。

 

「アップルのデザインは私のデザインのコピーなどではなく、私の過去の仕事に敬意を表してくれていると思っている」

「ドイツの巨匠 ディーター・ラムスに学ぶ、真のデザイン」より

 

■Braunの歴史を紐解く博物館「BraunSammlung」

ここでBraun社の歴史を紐解いてみましょう。

 

Braunは、1921年にマックス・ブラウンによってフランクフルトの近くクロンベルクに設立されました。現在は電動シェーバーが代表的な製品となりますが、ラジオの部品から始まり、ラジオ本体、そして50年代にはオーディオ分野へと発展して行きました。ラジオが出発点という意味ではSonyに近いです。

 

また、50年代には現在のBraun事業の核となる電動シェーバーの生産販売が始まりました。1967年に、剃刀で知られるGillette社が出資を始め、1984年にはGillette社の完全子会社となりました。Gillette社としては、髭剃り市場がウェットシェービング(剃刀)、ドライシェービング(電動シェーバー)のどちらに行っても成長できる両面構えの戦略です。2005年にはP&G社がGillette社を買収したことで、Braun社はP&Gの子会社となり、現在に至っています。また、シェーバー関連以外の製品に関しては、De’Longhi社などが販売しています。

 

私はP&Gにいた時代に、仕事でクロンベルクのBraun社を訪れたことがあります。Braun社には「BraunSammlung(Braun Collection)」と呼ばれるBraunの歴代の商品展示がされたBraun博物館があります。90年以上の歴史を振り返る約300点の展示がされています。もともとBraunのデザインに憧れていた私としては、特にラムス時代のBraunデザインは見る価値がありました。フランクフルトまで来られた方には是非、この博物館まで足を延ばすことをお勧めします。

 

BraunSammlung(火~日:11時~17時)

 

■電動シェーバーのシェア争い

電動シェーバーの金額シェアは、日本ではPanasonicがトップで、Braun、Philipsと続きますが、世界市場では、Philipsが1位、Braunは2位となります。BraunとPanasonicは往復式(Foil)、Philipsは回転式(Rotary)の電気シェーバーを主力とし、往復式ではBraunは世界トップとなります。2016年に京都芸術劇場で行われた日独デザインシンポジウム「デザイン、何処にか行き給う―ディーター・ラムス、日本のデザイナーや学生と語る」で、ラムス氏の講演を聴く機会がありました。彼の発言から、現在のBraunは彼が作り上げたデザイン・フィロソフィーが十分活かしきれていないとの思いが読み取れました。

 

電動シェーバーとしてBraunは性能的には評価が高いブランドですが、ディーター・ラムスのデザイン・フィロソフィーを重要な資産として活用していく事で、Braunのブランド価値はさらに上がる可能性があると私見ながら考えます。個人的には、ウェットシェーバー(剃刀)派なので、Braunデザインのパワー剃刀ホルダーなんてあれば、是非欲しいです。

 

【著者プロフィール】

プロダクト・リサーチャー・四方宏明

1959年京都生まれ。神戸大学卒業後、1981年にP&Gに入社。以降、SK-II、パンパースなど、様々な消費財の商品開発に33年間携わる。2014年より、conconcomコンサルタント、WATER DESIGN顧問として、商品、サービス、教育にわたる幅広い業種において開発コンサルティングに従事する。パラレルキャリアとして、2001年よりAll Aboutにてテクノポップ・ガイドとしてライター活動を始め、2016年には、音楽発掘家として世界に類書がない旧共産圏の電子音楽・テクノポップ・ニューウェイヴを網羅する『共産テクノ ソ連編』を出版。モットーは「“なんとなく当たり前”を疑ってみる」。

四方宏明の“音楽世界旅行”:http://music.sherpablog.jp/

とんでもない快挙だ! 世界的なデザインコンペで新潟の地酒が1位を獲得

新潟県の麒麟山酒造(東蒲原郡阿賀町)による日本酒が、世界的なパッケージデザインコンペティション「ペントアワード 2017」において、飲料部門・最高位のプラチナ賞を受賞しました。「ペントアワード」は2007年1月の創設された、世界で最も権威があるとされるパッケージデザインのコンペティションです。

 

毎年、世界中から応募作品が寄せられ、著名なデザイナーや大手企業のパッケージデザインディレクターからなる12名の国際審査員によって審査されます。 審査は55種類以上のカテゴリーで行われ、そのなかから飲料、食品、ボディ、ラグジュアリー、その他の主要5部門それぞれにプラチナ、金、銀、銅の各賞を授与。さらに全体の最優秀作品としてダイヤモンド賞1点が選ばれます。

 

シンプルなデザインが評価され飲料部門の1位を獲得

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今回受賞したのは、麒麟山酒造が製造する長期熟成吟醸原酒「紅葉 金(もみじ きん)」。パッケージデザインでは、シリーズが持つ味と背景を直感的に伝えるため、木々が色づくように旨みが増すイメージを表現。ふだん日本酒を飲まない層にもアピールすべく、紅葉を一枚配しただけのシンプルなデザインとしたところ、「ペントアワード」の国際審査員にも高く評価されました。デザインを担当したのは新潟市のデザイン事務所・フレームの代表取締役、石川竜太氏。

 

受賞した「紅葉 金」は、歴代の杜氏が3代にわたって守り続けた熟成酒で、2016年11月に1000本限定で特別販売されたもの。その酒質は、二十年以上の長い熟成を経て淡い琥珀色となり、蜜のような芳醇さとまろやかな酸味を併せ持つ、奥深い味わいだといいます。ぜひ味わってみたいところですが、本品は特別蔵出し商品のため2017年は販売しないとのこと。販売する際は、そのつどアナウンスするといいます。

20171110-s2 (3)↑ペンドアワードのプラチナ賞を受賞した「紅葉 金」

 

なお、麒麟山酒造は、使用する9割以上の米を地元・阿賀町産の米でまかない、酒の劣化を防ぐために述床面積2000㎡の貯蔵棟を建設するなど、先進的な取り組みで注目を集めている蔵。新潟の淡麗辛口(※)の魅力を広く伝えことにも注力しており、受賞はその活動の一部が実を結んだ形です。今後、より注目を集めるのは間違いなく、全国の蔵元の良いモデルケースになるという意味でも、日本酒界全体への好影響が期待できそうです。

※淡麗辛口…甘味と酸味が少なく、さっぱりしている日本酒の味を表す言葉

20170919-s3-1-1↑麒麟山のレギュラー酒のラインナップ。こちらも受賞酒と同じく石川氏によるデザイン

 

麒麟山酒造では常浪川の伏流水を仕込み水として使用し↑麒麟山酒造がその伏流水を仕込み水として使用する常浪川の風景