トルコで見つかった3500年前の石板を解読! 意外な内容だった

トルコで見つかった3500年前の石板。当時の人々はどんなことを文字として石板に刻んでいたのでしょう?  解読してわかった内容は、ちょっと意外なものでした。

↑意外なメモだった(画像提供/WONDER WORLD/YouTube)

 

トルコのハタイ県で見つかったという今回の石板。厚みは最大4.2cm、重さは28g。そんな石板に刻まれていた文字を専門家が解読したのです。

 

この文章は、古代メソポタミアで使われていたというアッカド語で書かれていたそう。解読してみると、テーブル、いす、スツールといった家具が列挙されていることが判明。現代の言葉で平たく言えば、この石板は買い物リストだったのです。

 

トルコでは2023年5月に3300年前の石板が見つかっており、これには四つの都市を襲った災害について書かれていたことがわかっています。それと比べると、今回の‟買い物リスト“は、なんとも庶民的な感じがするかもしれません。

 

現在、専門家がこの買い物リストについて、誰が購入したものか、誰に贈られたものなのか、といったことを解明するべく、研究を続けているそうです。

 

【主な参考記事】

The Sun. AS OLD AS TIME Experts painstakingly decipher ancient 3,500 year-old stone tablet – only to find a VERY common message written on it. July 24 2024

米女性が「健康診断」のためにトルコへ! 当然の理由とは?

健康を増進する「医療ツーリズム」や、旅先で美容医療を受ける「美容ツーリズム」。そんなジャンルのインフルエンサーである米女性が先日、トルコを訪れたそう。その目的は、徹底的な健康診断でした。

↑トルコに行く価値はある

 

米コロラド州出身のブリン・エリスさん(29歳)は、これまでに世界各地を医療や美容目的で訪れてきたという人物。そして、そんな彼女が今回選んだ旅先はトルコでした。

 

トルコは、医療ツーリズムや美容ツーリズムで人気の地。美容整形、植毛、脂肪吸引、豊胸などを目的に、多くの人々が海外から訪れています。

 

ブリンさんが今回トルコに行ったのは、健康診断を受けるため。血液検査や視力検査、内科検診といった基本の項目から、レントゲン、子宮頸がん検査、乳がん検査、骨密度検査など、30以上の項目について徹底的にチェックしたそう。いわばオリジナルの人間ドッグと言えるでしょう。

 

企業の従業員に健康診断の受診を義務づけている日本と異なり、米国では健康診断は個人の判断で行うもの。おまけに、米国は医療費が恐ろしいほど高いことで知られています。

 

今回ブリンさんがトルコで受けた検査内容を全て米国で受けたとしたら、百万ドル(約1億6000万円※)クラスの金額がかかっていた可能性があるとのこと。庶民が支払える金額ではありません。

※1ドル=約161円で換算(2024年7月5日現在)

 

しかし、トルコでブリンさんが支払った金額はたったの810ドル(約13万円)。トルコまでの飛行機代や現地のホテル代などを考えても、格安で済ませられるのです。

 

トルコは物価が安く、それなのに医療水準は高いとのこと。そこで、米国のみならず、欧州各国などからもトルコに医療や美容目的で訪れる人がとても多いのです。また、米国のお隣、メキシコも米国人の医療ツーリズムの行き先としてメジャーなのだとか。

 

日本人の感覚では、「人間ドッグや健康診断のために、わざわざトルコに行く」なんて考えられないことかもしれません。でも、米国などの高額な医療費を知れば、納得できる選択と言えるのではないでしょうか?

 

【主な参考記事】

New York Post. I flew to Turkey for an $810 full-body health scan that would have cost ‘zillions’ in the US. July 2 2024

日本を食った中国で台頭する、意外な「家電大国」はどこ?

世界の白物家電業界を動かす中国。しかし現在、同国の市場で台頭している国があります。

↑家電製品たち、君たちはどこから中国にやってきたの?

 

それはトルコ。

 

トルコ? 白物家電において日本の消費者にはあまり馴染みがない国かもしれません。外務省の資料を見てみると、トルコの主要貿易品目の輸出には「機械類(11.1%)」や「電気機器・部品(5.3%)」と書かれています。日本はトルコの主要援助国なのですが、トルコの主要貿易相手国の輸出において日本はわずか0.2%で第71位。大手家電量販店でトルコブランドをあまり見かけなくても変ではない気がします。

 

トルコの代表的な白物家電メーカーの中には「ベコ(Beko)」があります。親会社は「アルチェリク(英語表記はArcelik)」で、2021年に日立製作所から家電事業を買収したことでも知られています。日本でもベコの食洗機や洗濯乾燥機は販売されていますが、ベコの製品を知らなくても、サッカーファンなら同社がスペインのFCバルセロナの公式スポンサーであることは知っているかもしれません(かつては英・プレミアリーグのクラブやFA杯のスポンサーになっていたことも)。

 

どうやってトルコのメーカーは中国で人気を伸ばすようになったのでしょうか? ベコが欧州でスポーツビジネスを展開してきたように、トルコのメーカーは海外市場の開拓に注力してきました。例えば、アルチェリクはトルコがEUに加盟した1990年代半ばに海外に進出。グローバル市場における売り上げの多くは西欧諸国(特にドイツ)が占めてきたようです。西欧で売れている理由について、英国の経済紙・The Economistはこう述べています。

 

ベコのキッチン機器や他の家電製品は、金融危機で消費者の需要が低価格な製品に移行したので、英国で最も人気がある家電ブランドの1つになった。

 

ベコの魅力の1つは価格にあるようです。以前からトルコ政府は製造業を支援してきました。国家が介入して、重要な産業を補助金で保護し、外国企業との競争は避ける。トルコの経済史にはそんな過去があります。1980年代に経済政策が変わったものの、EUに加盟した後でも政府の支援は何らかの形で続いている模様。トルコに移住する人に向けたあるサイトは同国の白物家電事情についてこう述べています。

 

品質が良いことに加えて、トルコブランドの白物家電の特徴は、政府が自国のメーカーを支援しているため、価格がかなりお手ごろであるという点です。

 

そして、トルコのメーカーは中国市場に目を向けます。中国国営英字紙のチャイナ・デイリーによれば、早い段階で一帯一路に参加したトルコから中国が輸入した白物家電の金額は、2022年に約78億円(※)に上り、特に冷蔵庫が人気を集めているとのこと。ベコは北京や上海などの都市に計946店舗を構える一方、中国のさまざまなeコマースプラットフォームでも旗艦店を運営しているようです。業界の事情通は、トルコのメーカーが中国における研究開発や中国メーカーとのコラボに大きな可能性を見出しているといいます。
※1ドル=約149円で換算(2023年10月12日現在)

 

研究開発はトルコメーカーの強み。アルチェリクはトルコ最大の産業コングロマリットの1つであるコチ財閥が所有しています。資本が潤沢なので、同社は研究開発に積極的に投資してきました。その結果、中国の白物家電市場においてトルコが中国に次いで2位に上り詰めたという見方もあります。

 

そんな自国ブランドの発展はトルコ人にとっても誇り。トルコのデイリー・サバ紙は「トルコは白物家電市場において世界有数の製造国として知られている」と自信たっぷりに述べています。この新聞社は政府に近いとされていますが、国内メーカーの凋落を嘆く日本のメディアと論調が違うことを感じてしまいます。

 

白物家電市場において日本を食った中国をトルコが食う日は、いつかやって来るのでしょうか?

 

【主な参考記事】
China Daily. Turkish home appliances gain popularity in China. September 28 2023

「肉が700%も傷んでいる!」トルコが食べ物の鮮度を手軽に調べる新型センサーを開発中

ついつい買い過ぎたり、残り物を何日も保存したりして、食べ物を腐らせてしまうのはよくあることです。

↑食品ロスを防ぐ発明になるかも

 

そうしたことを防ぐため、トルコのコチ大学の研究チームが、肉や鶏、魚などタンパク質を多く含む食べ物の鮮度をリアルタイムで監視し、そのデータをスマートフォンに送る小型センサーを開発したと発表しました。

 

科学系ニュースサイト・New Atlasによれば、この研究チームは新型センサーは安価に作ることができ、スーパーマーケットの棚や家庭で食べ物を観察し続けることができると主張しているそうです。

 

その仕組みは、具体的には肉や鶏肉、魚などが腐り始めると生じるバイオジェニックアミン(アミノ酸から生成される化合物の総称。ヒスタミンやチラミンなど)を検出するというもの。この方法は以前から使われてきましたが、高価で持ち運びできず、訓練を受けた人だけが扱える装置が必要でした。

 

この新型センサーは、それを安価で実現しつつ、重さは約2g。静電容量センシング(物体が電界に入った際の静電容量の変化により物体を検知する仕組み)でバイオジェニックアミンを検出し、近距離無線通信のNFCを使って測定値をスマートフォンに送るというものです。NFCに対応したスマホをセンサーに近づけると電力が供給されるため、バッテリーも不要。

 

そんなセンサーの有効性を実証するため、研究チームは包装された鶏の胸肉とリブステーキでテストしました。冷凍庫、冷蔵庫、室温という3つの条件で保存され、比較されています。

 

その結果、3日間でセンサーの静電容量が上昇し、腐敗した肉からバイオジェニックアミンが放出されていることを検知することができました。最終日には、室温で保存した肉が、冷凍庫で保存した肉よりもセンサーの反応が700%も大きかったとのこと。つまり、新型センサーが単に「肉が腐っている」だけでなく、どれだけ腐敗が進んでいるかを計測できたというわけです。

 

この新型センサーはまだ開発の初期段階で、動作もさらなる検証が必要と思われます。しかし、このまま改良を続ければ、世界中で食べ物が無駄に失われることを防いだり、食べ物の安全性を向上させることに貢献するかもしれません。

 

Source:New Altas

via:Gizmochina

国の発展に欠かせない「高度産業人材」ーートルコで期待される「これからの教育」とは?

中東地域トップクラスの産業大国・トルコ。ヨーロッパ、東欧、ロシア、中央アジア、中近東、北アフリカの中心に位置しているトルコは、その地理的利点も活かしながら、世界各国との外交や関税同盟も積極的に推進しています。

 

さらに2019年には、年間2億人のハブとなる世界有数の巨大空港が開港。今後さらなる経済成長が期待されています。その中で現在ニーズが高まっているのが「高度産業人材」です。産業の発展のために不可欠な課題解決能力や思考力を持った人材を育成していくために、今後トルコではどのような教育が必要なのでしょうか。今回はトルコで20年以上にわたって、教育省などに技術指導を行ってきた伊藤拓次郎氏に話を聞きました。過去にODA事業として実施された産業人材育成プロジェクトや、現在トルコが求めている人材について解説しつつ、「トルコにおける高度産業人材育成のこれから」を紐解きます。

 

お話を聞いた人

伊藤拓次郎氏

1996年から20年以上にわたって、トルコ保健省、教育省、家族省などでODA事業を実施。トルコ以外でもこれまで約40か国でODA事業のさまざまなプロジェクトに携わった経験を持つ。専門は、インストラクショナルシステムデザイン、教育・教材開発、トレーナー育成、国際開発におけるプロジェクトマネジメントなど。現在はアイ・シー・ネットのグローバル事業部でトルコを中心に中東STEAM教育事業の立ち上げに従事している。

 

2001年から日本も支援してきた、トルコの製造業技術者の人材育成

トルコでは1990年以降、製造業が急速に拡大しました。それによって製造業技術者の人材育成が急務となり、国の開発計画の重点課題として取り組まれてきました。日本も2001年からトルコ国民教育省をODAにより支援。2001~2006年にかけて、工場での生産性向上のために必要な「自動制御技術」を持つ人材を育成するための技術協力プロジェクト「自動制御技術教育改善計画」が実施されました。

 

自動制御技術は、工場などのロボットや製造ラインを制御することによって生産を自動化していくための技術。産業の品質向上や効率化を図るために欠かせないものです。この自動制御技術は、電気、電子、機械など、あらゆる分野の技術で構成されていて、トルコの職業高校でも2001年以前からこれら一つ一つの技術を学ぶ授業が実施されていました。しかしこれらの技術を、ITを使って複合的に制御することを学ぶカリキュラムは、ニーズはあったものの、実施には至っていませんでした。そこで日本が自国の技術を活かし、トルコの2つの職業高校に自動制御技術(Industrial Automation Technology:IAT)学科設立のための支援を行ったのです。

 

この成果を受けて、国内各地の職業高校20校にIAT学科を新設し、IATトレーナーを養成するための教員研修センターも設立しました。その後も教員研修センターにトルコ独自のシステムを導入したり、民間企業の従業員を対象に実務者研修を行ったりするなど、教員研修の実施・運営体制の強化が進められました。現在はトルコ全国70校以上で自動制御技術が学べるようになり、製造業技術者の人材育成が行われています。

 

トルコ周辺国にも技術を展開「自動制御技術普及プロジェクト」

トルコ国内への普及がひと段落すると、中央アジアや中近東への技術展開を目指して、新たな取り組みが始まりました。それが2012年から3年間かけて行われた「自動制御技術普及プロジェクト」です。本プロジェクトには伊藤氏も参加していました。

 

「『自動制御技術普及プロジェクト』は、途上国間で支援や援助を行う『南南協力』と呼ばれる形の取り組みで、私たちはその支援を行うためにプロジェクトに携わりました。このプロジェクトでは、イズミールにある教員研修センターに、中央アジア・中近東の9か国(アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、トルクメニスタン、タジキスタン、パキスタン、パレスチナ、アフガニスタン)のポリテクカレッジや職業訓練校の教員たちを受け入れ、トルコのマスタートレーナーたちが産業ロボット制御の技術指導を実施。産業自動化教材を用いながら、メカニズムや使用する機材についてレクチャーしたり、プログラミングの仕方などを指導したりしました」

 

自動制御技術普及プロジェクトでパキスタン教師に技術指導をする様子

 

本プログラムでは、トルコ周辺国の自動制御技術普及をさらに推進するために、トルコに進出している日系企業と9か国のマッチングイベントも実施されました。イベントでは、日系企業がそれぞれ自社の商品を展示したり、カンファレンスを行ったりして技術を紹介。その中で、カザフスタンから「日本企業の産業自動化機材を導入したい」と相談がありました。最終的にODAの普及実証事業を通して、カザフスタンのトップ大学であるナザルバエフ大学に「産業自動化ラボ」を設立。日本の自動制御技術の教育機材を導入し、教員たちのトレーニングも行われました。

 

9か国の技術教育高官と日系企業のマッチングイベントでの集合写真

 

「人材育成と聞くとどうしても、『高校を出てすぐに働ける現場作業員を育てること』だとイメージされがちです。しかし自動制御技術普及プロジェクトは、ものごとの仕組み全体を理解したり、自分で仮説検証をしながら考えたりできるような人材、つまり『高度産業人材』の輩出を目指した取り組みでもありました。実際、企業や工場などを訪問して産業調査を実施したときには、現場から『マネジメント能力や課題解決力、知識を実際の現場で応用して使うことができるような人材が不足している』という声を直接聞くこともあり、高度産業人材のニーズが高まっていることを実感しています。トルコにとって高度産業人材の育成は、今後の重要な課題の一つになってくるのではないでしょうか」

 

高度産業人材の活躍が期待される、再生可能エネルギーの分野

今後のトルコで高度産業人材が特に求められる分野として、伊藤氏は、トルコや中近東でトレンドになっている「再生可能エネルギー分野」を例に挙げました。現在イズミールでは、風力発電の設備が多く見られ、新たなベンチャー企業もどんどん誕生しています。また、トルコはもともと自動車産業が盛んな国。長年EUへの加盟を目指しているトルコでは、ヨーロッパの市場を特に意識していることもあり、現在は電気自動車やバイブリッドカーなどの開発にも積極的です。伊藤氏は「トルコの大学では、授業の中で電気自動車をつくらせるところも出てきていますし、中学校においても風力発電のしくみを教えています」と語ります。

 

イズミール郊外の村の電力を補う風力発電の風車

 

再生可能エネルギーは世界各国が取り組みを進めている、まだ発展途上の分野。そのため、新しい発想や考える力、さらにはチームで仕事をする力が求められます。

 

「まだ答えが見つかっていないからこそ、課題を見つけたり、分析をしたり、仮説検証を繰り返したりする能力が必要。さらに複数人でアイデアを出し合って新しいものをつくるなど、チームで取り組むことも求められるはずです。個性豊かで個人プレーが得意なトルコ人にとって、『チームビルディングをして仕事をする』こと自体も大事なチャレンジだと思っています」

 

子どもたち、そして教員たちへの教育も不可欠

高度産業人材の育成には、小中学生の頃から「自分で考える力」を養っていくことが大切。そのために重要な役割を果たすのが、STEAM教育です。「自分たちで課題を見つけて解決しながら、付加価値をつけることができるよう、プロジェクトワークや課題解決型学習を取り入れていく必要があります」と伊藤氏。さらに「子どもたちの教育だけでなく、教員たちの教育も大切」だと語ります。

 

「私が感じるのは、トルコの教育にはとても進んでいるところがある一方で、極端に遅れている面もあるということ。例えば私が以前プロジェクトで携わっていた高校は、EUや日本の民間企業の支援によって、立派なラボを持っていました。このように学びの環境は整っているのですが、まだまだ課題もあります。

 

その一つが『評価』に対する認識。トルコの現在の教育の特徴として、ほとんどの高校教員たちが、卒業後の生徒たちの進路を全く知らないということが挙げられます。卒業後のことではなく『卒業すること』がゴールだと考えられていて、授業の質や評価よりも『卒業できるようテストで点数を取らせること』に終始しがち。そのため教員たちの『授業を良くしよう』『授業後の評価をきちんと行おう』という意識が低いように感じます。また、暗記暗唱型の授業が多いことも課題。教員たちが一方的に講義をして、子どもたちがその内容を覚えるというような授業スタイルがまだ多いのが現状です。現在、トルコでも科学実験の教材やプログラミングが学べる教材などが出回ってはいるのですが、教員たちからは、教材の使い方や子どもたちへの教え方がわからないと言われることも。子どもたちの教育と同時に、教員たちへの研修なども同時並行で行っていく必要があると感じています。

 

教育に限らず、トルコではEUなどから最新の技術や新しい情報が数多く入ってきます。しかしトルコの人々には、まだそれらを扱うだけの能力が伴っていないという側面もあるのです。そのため、トルコにすでにあるリソースをつないだり、情報を整理したり、使い方を教えることも、この国にとっての助けになると私は考えています」

 

現在進行中のSTEAM教育事業 授業のデモンストレーションもスタート

現在、トルコSTEAM教育事業の立ち上げに向けて準備を行っている伊藤氏。その事業の内容と今後の展望について聞きました。

 

「小学校から大学までを縦軸で考え、STEAM教育を土台にしながら高度産業人材を育成していこうというのが今回の事業。政府や行政も巻き込みながら、民間のビジネスとして展開できればと考えています。その中で構想しているアイデアの一つが、STEAMに関するプラットフォームづくりです。これは、ユーザーがプラットフォームにアクセスすることで、STEAM関連の教育サービスが受けられたり、コミュニティに参加できたり、資金・資格を取得できたりするようなもの。さらに企業とも提携して、教材の販売を行ったり、インターンシップやジョブマッチングのようなサービスを提供したりすることも想定しています。日本の企業は、トルコを含めて中央アジアや中近東に進出するのが難しい現状があり、日本企業にとって、このプラットフォームがトルコ進出のための一つの突破口になればとも考えています。

 

現在は、現地での事業立ち上げに関わる情報を集めたり、パートナー候補企業との協議をしたりして、着々と準備を進めています。最近ではトルコの学校で、私たちが日本で展開しているSTEAM教育の講座『科学実験教室』『もののしくみ研究室』を紹介したり、デモンストレーションを行ったりもしました。小学生の子どもたちに対して科学実験教室を実施し、空気砲や静電気の実験をしたときには、みんな興味津々。楽しみながら学ぶ様子を見て、手ごたえを感じています。同時に教員たちには、この講座をトルコの学校のカリキュラムにどう落とし込むか、どう評価するか、などを考える研修も実施しました。今後も実現に向けて歩みを進めていきます」

 

21年10月に行われた「科学実験教室」デモンストレーションの様子

 

「トルコのような新興国では、どうしても経済が優先され、教育は後回しにされてしまいます。しかし幼少期からSTEAM教育などを行って自分で考える力を養うことで、広く活躍できる高度産業人材が育ち、結果的には経済の成長や国の発展にもつながるのではないでしょうか」と伊藤氏。トルコの教育分野に、今後ますます注目が集まりそうです。