1万台の大ヒット! 星空専用の「超低倍率双眼鏡」が爆売れの理由とは?

『GetNavi』が選ぶ「2023年上半期売れたものSELECTION」。本記事では「アウトドア編」から、星空専用双眼鏡「ピクセン SG2.1×42H」、キャンプギアケース「WILDTECH キャンプの三種の神器ケース」、ブッシュナイフ「モーラナイフ アッシュウッドコレクション」を紹介。アウトドアライターの澄田直子さんにヒットの秘密を教えてもらいました。

※こちらは「GetNavi」 2023年8月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

私が解説します

アウトドアライター 澄田直子さん
キャンプ歴17年。ブームでキャンプ場の予約がとれず、ギアを眺めてストレスを解消する日々。

 

美しい星空を求める旅が新たなブームに!!

星空を求めて旅する「ダークスカイツーリズム」が注目を集めている。人工的な光源から離れて無数に輝く星を眺めるひとときは、非日常を感じられる贅沢な時間だ。

 

「沖縄の石垣島や東京都の神津島などは星空観光に力を入れており、星空を見るツアーも開催しています。もちろん島で見る星空は美しいのですが、都会から離れたキャンプ場でもかなりきれいに見られますよ。ただ眺めるだけでも良いのですが、星座早見盤やアプリがあればより楽しめます。双眼鏡があればなお良し。星空用の双眼鏡は持ち運びも扱いも簡単。星座や天の川が目の前に広がる光景は感動モノです」(澄田さん、以下同)

 

【星座観察用双眼鏡】

星座を探すのに便利な低倍率の星空専用双眼鏡

ビクセン
SG2.1×42H
3万800円
2021年12月発売

倍率6〜10倍程度の一般的な双眼鏡に比べて、超低倍率の2.1倍、口径42mmと、開放感のある双眼鏡。視野が広いので天の川や星座を探すのにぴったりで、初心者にも扱いやすい。肉眼よりも明るく見えるので、都会の夜空でも威力を発揮する。

 

↑埼玉県所沢市に本社を置き、レンズ研磨、金属加工から組立までのすべてを埼玉県内で行う、Made in Saitama製品だ

 

【ヒットのシンソウ】

難しい知識がなくても星空観測を楽しめて好評

「星空観測に特化した双眼鏡というニッチなニーズをつかみ、シリーズ累計1万台を記録。星の細部を見るという従来型の星空観測から、星空全体を見るというスタイルを提案した画期的なアイテムです」

売れ行き:★★★★
革新性:★★★★
影響力:★★★

 

【ギアケース】

キャンプに便利な消耗品をスマートに持ち運ぶ 特化型ケース

WILDTECH
キャンプの 三種の神器ケース
3990円
2022年11月発売

ペーパータオル、ウェットティッシュ、アルミホイルといったキャンプにあると便利だけど生活感が出てしまうアイテムを、スタイリッシュに収納できるオールインワンバッグ。これにまとめて入れておけば忘れ物も防げる。

↑中には仕切りもあり、小物をすっきりと収納できる

 

【ヒットのシンソウ】

ニッチな需要と思いきや販売個数1万超えのヒット商品

「キャンプ系YouTuberのFUKUさんとアウトドアブランドWILD TECHのコラボ商品。雑多な雰囲気になりがちな小物を美しく収納することを追求する作り手の美学が1万個売れの大ヒットを導きました」

売れ行き:★★★★
革新性:★★★★
影響力:★★★

 

【これもチェック!】

WILDTECH
ギアケースL
4990円

焚き火台や刃物類、燃料、クッカー、ゴミ袋、調味料のほか、A4サイズのコンパクトテーブルがすっぽり収まるバッグ。こちらは販売累計2万個超えを実現した。

 

【アウトドアナイフ】

クラフトマンシップが息づくスウェーデン発の ブッシュナイフ

モーラナイフ
アッシュウッドコレクション
1万9800円〜
2023年4月発売

130年の歴史を持つ老舗ナイフブランド「モーラナイフ」から、ブレード鋼材やハンドルの木材にこだわったプレミアムラインが登場。料理に特化したナイフ「ロンボ」はオンラインで発売初日に完売した。(下写真右)

 

↑美しさと機能性に優れた新シリーズ。ナイフ作りに多大な影響を与えた4人の職人の名を冠した4製品が揃う

 

【ヒットのシンソウ】

コツコツとアイテムを作るブッシュクラフトがブーム

「森で拾った枝を使い、薪やスプーンなどの小物をナイフで削り出すブッシュクラフトがブームです。本品はその必需品となるナイフの傑作。使い勝手はもちろん、持っているだけでも気分がアガり人気も納得!!」

売れ行き:★★★★
革新性:★★
影響力:★★★

【凄まじい職人技】世界最古の刃物ブランド「ツヴィリング」50周年ナイフ発売、岐阜県関市の工場を見学してきた

世界で最も古い刃物ブランド「ツヴィリング(zwilling)」が、日本上陸50周年を迎えました。

 

ツヴィリングはドイツで1731年、刃物職人のヨハン・ペーター・ヘンケルス(Johann Peter Henckels)がゾーリンゲンのカトラリーギルドに「双子マーク」を登録して創業。全世界に支社を持ち、100カ国以上で包丁を中心に、ホーロー鍋の「ストウブ(staub)」をはじめとする調理器具や家電製品を取り扱っています。

 

日本には「ツヴィリング J.A. ヘンケルスジャパン」を1973年に設立。2004年に岐阜県関市にナイフ工場を設立して以降は、ツヴィリングの国内販売する全ナイフの95パーセントを同工場で製造し、海外50カ国にも販売しています。

 

同社は日本創立50周年を祝し、全技術を集結した記念モデルナイフを250本限定で販売することを発表。さらに 6月28日にはドイツから役員が来日し、関市の工場見学と、ナイフの切れ味を訴求したギネス世界記録に挑戦するイベントを開催しました。

 

五十にして天命を知る」技術集結の最高傑作

50周年記念モデルナイフとして発表されたのは「ZWILLING TENMEI(天命)」。

 

パッケージに記された「五十にして天命を知る」という言葉の通り、50年で培ってきた技術の粋と、これからの50年に届けしたい料理体験への願いが込められている、特別な1本です。

 

高級感あふれるデザインで、最大の特徴はなんと言ってもブレード。新たに誕生した「太陽」ダマスカスは、燦々と輝く日の光がボルスター部(ブレードとハンドルの結合部)までつながる圧倒的スケールで日出ずる国を表し、ツヴィリングロゴも燃えるような金色でそれに応えています。

 

また艶やかな黒のハンドルは、目を引く金色のリベット(ハンドル部にある丸い締結部品)とスペーサー(ハンドルとナイフ本体の間に挟む薄いシート)とのコントラストで歴史の深さを表現しています。

 

切れ味は、岐阜県関市の選ばれた職人による最高技術の本刃付けに加えて、ツヴィリング最新鋼材FC63を使用しており長く続きます。持ち手はストレートハンドルで、金色部分は管楽器などにも使われる真鍮製。重い素材である真鍮の採用と、古くからツヴィリングが重視してきた重量バランスへのこだわりを両立させたのは、50年をかけて培ってきた技術的ノウハウと関の職人魂です。

 

実用品としてはもちろん、芸術品としても優れています。飾って楽しめるよう、スペシャルな木箱は「太陽」ダマスカスが映える包丁スタンドにも。和を感じる桐箱は、包丁の重厚感と融和します。

 

ZWILLING TENMEI  三徳包丁 刃渡り18cm

44000円 (税込)

●材質:ブレード/FC63、ハンドル/マイカルタ
●生産国:日本
●取り扱い店舗:ツヴィリング公式オンラインショップ、ツヴィリング直営店(一覧)、その他有名百貨店

 

岐阜県関市で完結。最高のナイフができるまで

ZWILLING TENMEIをはじめ、ツヴィリングの包丁を1本1本手作りしている関本社工場を、今回特別に見学させてもらいました。

 

まずは外注工場でプレス加工された包丁の原型を、1000度以上の窯で加熱処理します。

 

1本1本吊り下げられた包丁の原型は、ゆっくりと高温の釜の中へ。周囲もかなり高温で、汗が吹き出します。

 

続けて、マイナス70度以下の窒素ガスで一気に冷凍! ここでダマスカス模様の製品は再び窯に入れられ、同模様が生成されます。

 

ここからは職人技の見せどころ。長年の経験をもとに、包丁を1本1本、ソリやネジレを目で確かめながら金槌で叩き真っすぐに修正。金槌で「カン、カン」と打ち付ける音が響き渡ります。

 

刃とともに「柄」の部分の溶接・研磨作業も進行。さまざまな種類の角ばったハンドルの原型を、滑らかな曲線を絵描くよう研磨していきます。

 

本刃付けの研削・研磨を経て洗浄後、重ねた紙を何枚切れるかという切れ味テストや曲げ強度テスト、高い場所から落下させる耐久度テストなどが行われ、クリアしたもののみが製品としてようやく世に出ていくのです。

 

ギネス世界記録に挑戦!結果は……

工場見学とともに、当日はギネス世界記録に挑戦する記念イベントも開催されました。挑戦するのは3名の料理家で、写真左からChef Ropiaさん、ネシアンの和田美穂さん、MIZUKUDASAIさんです。

 

挑戦テーマは「1分間で切ったトマトの最多数 」。

ZWILLING TENMEIをはじめとするツヴィリング最高クラスのナイフで、それぞれ1分間、トマトを8等分にひたすらカットしていきます。なお皮に刃が入りにくく、それでいて果肉が柔らかいトマトは、切れ味が最もよくわかる食材の代表とされています。

 

緊迫の空気の中、ツヴィリングの包丁でトマトを次々とカットしていく挑戦者たち。終了後、Ropiaさんは「手が震えました」と、かなり緊張していたことを明かしつつも「ナイフはさすがですね。スパッと切れました」とナイフの切れ味はバツグンで、安心感があったことを報告。

結果、これまでの基準となる10個を上回る、11個の世界新記録を打ち立てたのでした。

 

イベントに際し、同社のアンドリュー・ハンキンソン社長は「日本におけるツヴィリングの物語は、ほかに類を見ないグローバリゼーション、特別な物語を体現しています」とコメント。

世界一の切れ味と称されるツヴィリングのボブ・クレーマーナイフで、SNSで話題のペットボトルカットにチャレンジするアンドリュー社長。今回はボブ・クレーマー氏をリスペクトし特別に挑戦。

 

「日本人、そして私をはじめとするアメリカ人がドイツの会社で働き、関市で刃物を作り、20カ国以上輸出しています。日本の職人技、ドイツの技術、そして多文化なチームの組み合わせは、魅力的で感動的なグローバライゼーションストーリーになったと思いませんか。最先端の技術と昔ながらの職人技が共存する素晴らしい工場です」と笑顔をみせました。