安藤なつが愛車・ハーレー・ファットボーイ愛を語る「もう見た目と名前でひと目惚れ。バイクは1台を愛したい」

バイク歴20年を誇る、メイプル超合金の安藤なつさん。愛用のハーレーダビットソン・ファットボーイとともに、登場していただきました。これまでのバイク歴を振り返りつつ、ファットボーイへの愛情たっぷりなお話をいただきました。

 

安藤なつ●あんどう・なつ…1981年1月31日生まれ。東京都出身。血液型A型。カズレーザーとともにお笑いコンビ・メイプル超合金として活躍。主な資格にヘルパー2級、普通自動車免許、自動二輪。XInstagramYouTube

 

【安藤なつさん撮り下ろし写真】

 

アニメ『AKIRA』に出てくるアメリカンバイクに憧れ

──現在はハーレーに乗っていらっしゃる安藤さんですが、まずはバイクに興味を持ったきっかけから教えてください。

 

安藤 もともとアニメの『AKIRA』がすごい好きだったんです。主人公の金田アキラの乗るバイクじゃなくて、ジョーカーっていう敵役が乗るアメリカンタイプのバイクがかっこいいと思ったんですね。観たのが小学4年生の時だったんですけど、その頃から最終目標がハーレーになりました。ジョーカーは登場の仕方もかっこいいんですよ。ハンドルから手を離して腕を組んでバイクに乗って登場するんですけど、当時の私はアクセルとかブレーキとか仕組みがわからないですから、「こうやって走れるんだ?」って思いました。実際、腕組んでは乗れないですけど。

 

──10歳の安藤さんに、アメリカンタイプのバイクがぶっ刺さったわけですか。そもそも、ご家族など身近な方でバイクに乗ってる方はいたんですか?

 

安藤 父が乗ってました。私が小さい頃は、車名は覚えてないですけどオフロードに乗っていて、会社の通勤とかに使ってました。だからバイクに親しみはありましたね。自分で乗りたいと初めて思ったのが『AKIRA』のジョーカーのバイクなんです。

 

──それで、自分で初めてバイクに乗ったのはいつでしょう。

 

安藤 16歳です。通学用に、親にホンダのライブディオを買ってもらいました。すごく馬力がありました。見た目も良くて「これがいい」って決めました。速いバイクでしたけど、ちゃんと30キロの速度制限は守って走ってましたよ。ただ、それが1年も乗らないうちに盗まれたんです。すごいショックでした。友達とめっちゃ探し回って、家の近くの公園で見つかったんですけど、直結できないような構造になっていたからぶっ壊されていてたんです。もう直せない状態でしたね、その姿もすごくショックでした。

 

ドラッグスター400にひと目惚れして購入。しかし…

──初めての自分のバイクが盗難されて破壊されたというのはつらすぎる経験です。

 

安藤 でも通学にバイクは必要なので、家にあった原付きに乗っていました。そのあと23歳ぐらいに中型免許を取りました。原付きは30キロの速度制限や二段階右折とか交通ルールがありますよね。都内に引っ越すことになって、都内でバイクに乗るなら原付きだとそのルールにすごく気を使うので、じゃあ中型免許を取っちゃおうと思って。

 

──それに中型になれば選べる車種もたくさん増えますよね。

 

安藤 ジョーカーのバイクのこともあって、ひと目惚れでヤマハのドラッグスター400を新古車で買いました。カラーリングの青と、それから車高の低さもポイントでした。足つきがいいのも良かったです。一緒に住んでいた友達とタンデムして夜中にドン・キホーテに行ったり、花見に行ったりしてました。でもこのドラッグスターで事故に遭って廃車になってしまったんです。

 

──廃車になるほどの事故だったんですか?

 

安藤 夜、タクシーが方向指示なしでUターンしてきてぶつかりました。フレームがもうだめになっちゃって廃車です。私はバイクに左半身を挟まれて、ハンドルも胸に刺さって。救急車で病院に運ばれてレントゲン撮って、お医者さんに「何本か骨折れてましたか」って聞いたら、「いや、1本も折れてない」と。そしたらお医者さんが「1本も骨が折れてないはずはない。膝の体液を抜かせて検査させてくれ」って言うから、「いや、折れてないなら検査しなくてもいいです」と(笑)。でも10日くらい入院しました。

 

──そんなにひどい事故をしたら、バイクを降りてしまう人もいます。安藤さんが乗り続けることを選んだ理由は?

 

安藤 乗り続けることを選んだ理由って特にないですね。むしろ、乗らない理由がないというか。その事故の前にも一度転倒してるんです。タクシーに幅寄せされて、ぶつかりそうになったから自分でわざと転倒しました。その時も、乗りたくないとか思わなくて、普通に乗ってました。バイクに詳しいわけではないので、いじったりとかはできないですけど、バイクに乗ること自体が好きなんですよね。

 

──安藤さんは「芸人として売れるまでバイクに乗りません」と願掛けしたことも知られています。

 

安藤 メイプル超合金を組んだのが2012年なので2014年くらいですかね、渥美 清さんが「タバコ一生止めますから仕事ください」と願掛けしたことで有名な東京・入谷の小野照埼神社に芸人仲間と一緒にお参りに行ったんです。みんなは酒とかタバコ、ギャンブルとかを辞めるとわりと重めの願掛けをしてる中、私は「売れるまでバイクに乗らない」っていうのがパッと出てきて。自分の中では、バイクに乗らないっていうのはめっちゃ重めでしたね。ただ、「一生乗らない」じゃないところが緩いんですけど。

 

──そのあと2015年には『M-1グランプリ』に出場して注目され、ブレイクしたんですからご利益があったということですね。

 

安藤 だから、もし売れてなかったら今のハーレーは持っていないと思います。願掛け中に、誓いを破ってバイクに乗ったことはないですし。

 

ついにハーレー“ファットボーイ”購入。お気に入りのポイント

──バイクに乗りたい気持ちもありながら、芸人として売れたいという気持ちが強かったからでしょうね。それで、その願いが叶って再びバイクに乗ったきっかけは?

 

安藤 特にきっかけがあったわけじゃなく、お仕事をいただけるようになって余裕をもって生活できるようになったので、勝手に判断しました。2019年くらいですね。

 

──(笑)。今のハーレーに出会って、それがきっかけになったのかなと勝手に思っていました。

 

安藤 そういうことはないですね。でも、ちょっと悩んでたんですよ。インディアンとかもいいかなと心が揺らいでいたんです。とある先輩芸人にそれを話したら、「いや、ハーレー一択でしょ」って言われて、「あ、そうだよな」と目が覚めたんです。それで探してたら、今のファットボーイに出会ったという感じです。タンクがすごいかわいくて、それもひと目惚れポイントでした。黒いタンクと青いタンクのモデルがあったんですけど、青を選んでしまうのがやっぱりドラッグスターをちょっと追いかけてるところもあるのかなと思いますね。

 

──ちなみに今のハーレーはどういうモデルですか?

 

安藤 ハーレーダビッドソンのファットボーイ114 アニバーサリーXという、世界限定900台のモデルです。アニバーサーリーモデルとかそういうことには別に興味がなくて、もう見た目と名前でひと目惚れです。

 

──安藤さんが気に入ってるポイントはどこでしょう?

 

安藤 言ったように、まずはタンクですね。それから、音質。ノーマルマフラーですけど重厚感はめっちゃあります。1868ccもありますからね。乗ってると体に伝わる振動もすごく好きです。あとは前後の太いタイヤです。特にリヤなんか、トラックか? ってくらい太さです。走るとトルクがすごいですよ。

 

──このファットボーイで、ハーレーは初乗車になるんですか?

 

安藤 実は大型二輪の免許を取る時、教習車でハーレーに乗れる自動車学校を選んだんです。「ハーレーに乗れるんだ!?」って思って、いざ入校してみたら、ハーレーにまたがるとミラーが小さくて、自分の幅のせいで後ろが見えなくて、結局ホンダのCB750で教習を受けました。

 

──(笑)。わざわざハーレーが売りの教習所に行ったのに。

 

安藤 せっかくハーレーに乗れるから遠くまで行ったんですけどね(笑)。

 

──マフラーはノーマルとのことですけど、カスタムなどは?

 

安藤 フルノーマルです。以前はCCバーを付けていたんですけど、タンデムする友達が乗り降りするときに足が引っかかるんです。私も乗り降りするときに足が引っかかっていたので外しました。だから後ろに乗る人はちょっと辛いかもしれないですね。あと、ハンドルをチョッパーにしたいなと思っていたことがあって、チョッパーにしている人のハーレーに乗らせてもらったら、すごく曲がりにくいんです。今の状態でも曲がりにくいのに、チョッパーは無理だと諦めました。今のままで気に入ってるので、今後カスタムの予定はないですね。

 

特注で60万円した革ツナギは「峰不二子に憧れて」

──バイクアイテムについても教えてください。まずはなんといっても、今着てらっしゃるそのツナギですね。

 

安藤 ロアーズオリジナルというブランドで特注しました。値段は60万円くらいでしたね、採寸からいろいろ相談して、何回も打ち合わせをして……完成まで1年くらいかかりました。ロアーズオリジナルも革のツナギを作るのは初めてだったみたいです。ツナギにしたのは峰不二子に憧れて、やっぱりツナギがかっこいいなと。

 

──60万円のオリジナルウェアなんて持っているバイク乗りはなかなかいませんよ。

 

安藤 そうなんですかね。でも、これだけですから。毎回これです。

 

──とってもお似合いですけど、真夏のこの時期は暑いでしょうね。

 

安藤 熱中症になっちゃうんです、何回なったかな。夏は毎年熱中症になるから乗らんとこうって思っているのに、それを忘れて乗って、実家とかに帰っちゃうんですよ。途中、渋滞なんかしてたらなんかもう意識が朦朧としちゃったりして……。

 

──危険ですよそれは!

 

安藤 バイクの上で目玉焼きが焼けるくらいの暑さですからね。ラジオ(ニッポン放送『ナイツ ザ・ラジオショー』水曜日)にはハーレーで行くんですけど、その帰りの西日が一番痛いです。あんな刺すような痛みは他にないですね、ほんと無理です。

 

──ヘルメットにはハーレーのロゴが入っていますね。

 

安藤 これは、納車の時にハーレーダビッドソンの方からいただきました。大事に使ってます。あとグローブはネゴシックスさんにいただきました。すっごい柔らかいんですよ。

↑納車の際から大事に使っているというヘルメット

 

↑ネゴシックスさんからもらったというグローブ

 

──あとで走行シーンの撮影をしようと思ってますけど……大丈夫ですかね。

 

安藤 マジで死ぬかもしれません……。

 

ツーリングでは遠くに行きたくない。なぜかというと…?

──このハーレーでツーリングにもよく行かれるんですか?

 

安藤 多分私は人と行くツーリングに向いていないんですよ。「前についていかなきゃ」「見失ったらいけない」っていう気持ちで走るから余裕がないんです。「あ、間に車が入っちゃった」とか。だったら自分が行きたいところに一人で行ったほうが気楽かなと。だから、夜中に高速道路に乗って実家に帰ってみたりとか、そんな感じです。

 

──バイクで走るお気に入りのシチュエーションやお気に入りの道などはありますか?

 

安藤 ラジオに行く途中に三宅坂を通るんですけど、あのあたりは好きです。最近だと、梅雨が明けたか明けてないかというころに、ふとセミの鳴き声が聞こえて「あ、梅雨が明ける」と感じたんです。そういう時はうれしいです。秋口になれば鈴虫の鳴き声が聞こえたり。そういう季節がダイレクトにわかるところがいいですね。

 

──季節の移ろいを五感で感じられるのはバイクのいいところです。遠方にツーリングには行きますか?

 

安藤 あまり遠くには行かないです。事故を起こしたくないんですよね。さっきドラッグスターの事故の話をしましたけど、もし今のハーレーで事故ったら、その時はもうバイク乗るのを終わろうかなと思います。車重もドラッグスターよりもっと重いし、同じような事故なら受けるダメージも計り知れないじゃないですか。そこが悩ましいところなんです。だからスピードも出さないし、すり抜けもしない。そこはちゃんとしたいんです。

 

──なるほど、事故のリスクを考えてというわけですね。

 

安藤 あと、ハーレーにはスマホホルダーをつけていないのでスマホが立てられないんです。地図を頭に入れなきゃいけないんですけど、首都高とかすごく嫌いなんです。短時間で行き先表示を読み取らなきゃいけないのとか無理っすね。だから上(高速)はあんまり好きじゃないというか、一本道ならいいです。中央高速道路とかは好きですよ。

 

──芸能界でバイク乗りはたくさんいますけど、安藤さんのバイク仲間というと?

 

安藤 レイザーラモンRGさんのツーリングクラブがあるんですけど、仲間の納車式にたまに参加していたくらいですね。RGさんのツーリングクラブには、チュートリアルの福田(充徳)さんとか、バッファロー吾郎の竹若(元博)さんとか芸人の方もいるし、一般の方もいますね。あとは、番組に呼んでもらったおぎやはぎの矢作 兼さん、カンニング竹山さんとか。竹山さんは確かインディアンを買ったと言ってましたけど、全然乗ってないみたいです。私は自分の気ままに好きな時に走る感じです。

 

バイクは1台を愛したい。今のハーレーを乗りつぶしたい

──芸人さんは移動でビッグスクーターに乗ってる方が多いですけど、安藤さんはそっちには行かないんですか?

 

安藤 マニュアル車が好きなんです。車もマニュアル免許ですよ。実家の車が日産パルサーだったんですけど、それがマニュアル車だったから、マニュアル免許を取っておかないと家の車に乗れなかったんです。ビッグスクーターに乗ろうと思ったことはなかったですね。便利だと思いますけど。ギアチェンジがないと、なんか暇だなって思っちゃいますね。自分は信号待ちの時に、ニュートラルにしてクラッチを切って休憩しながら待つじゃないですか。それで青信号になったらクラッチを引いてギアを1速に入れる、その1速に入れた時の「コン」って音がすごい好きなんです。それはビッグスクーターにはないですから。「うん、ギア入ったな」っていうのが、今でも毎回いいなって思ってます。

 

──その感じ、わかります。セカンドバイク的なものを持とうというのもご予定はないですか? 125とかでもギア付きはあるし。

 

安藤 セカンドバイクはないですね。近所なら原付きで行く、といった使い分けですよね。そういうのはなかったなあ。むしろ「近所ならハーレーで良くない?」っていう感じです。2台持っていても、両方をバランスよく乗れなさそうだし、だったら1台を愛したほうがいいって思います。どっちかを乗らなくなる状態は嫌なんですよね。使い分けを器用にできませんから。1台を乗りつぶしたいです。

 

──じゃあ、小さいバイクじゃなくても、もう1台はスポーツ系のバイクを持ってみようなんていうのも……。

 

安藤 思わないですね、今のところは。今のハーレーがなくなった時に考えることかなと。バイクロケの時に250のスポーツタイプに初めて乗ったんですけど、チャリンコみたいで曲がりやすくて、「そりゃあんなにバンクできるわ」と感動しましたけど、欲しいとは思わなかったです。たまに乗ってみたいなとは思いましたけど。

 

安藤なつにとって、バイクとは「あったほうがうれしいもの」

──今日のインタビューで、安藤さんがとことんバイクに乗るのが好きで、今のファットボーイが好きなんだということがわかりました。

 

安藤 バイクは風を感じるのがいいってよく言うじゃないですか。私はまさしくそれです。 家にいる時も全部窓を開けてるんすよ。こもってるのが嫌いで、風が流れてる時が一番気持ちいいと思ってます。バイクに乗るのが好きなのは、なんかそんな理由もあるのかもしれません。

 

──16歳で原付きに乗り、願掛けでバイク断ちしていた時以外はずっと乗ってるわけですからバイク歴は20年以上になりますね。完全にベテランの域に達してます。

 

安藤 バイクは身近にずっとあったので、あれば乗るし、乗りたいしみたいな存在。バイク断ちしてる時はどうだったかな。いつバイク乗れるか様子は窺ってたかもしれないです。「そろそろかな」とか「大型免許取りに行くのはいつにしよう」とか。

 

──今はバイクに関係するお仕事も増えていると思います。いかがですか?

 

安藤 うれしいですけど、詳しくないので……イジる人って、すごく細かくここが好きでこうイジってみましたとか、この部品が好きでって言えますけど、そのあたりのプレゼンが私にはなかなか……。

 

──カスタムだけがバイクの魅力ではないですし、安藤さんは何よりバイクに乗ること自体を楽しんでいらっしゃるのが最高です。では最後に、安藤さんにとってバイクとは何でしょうか?

 

安藤 えー、なんだろう。「あったほうがいいもの」ですね。「あったほうがうれしいもの」。バイクってすごく便利なわけじゃないじゃないですか。ファットボーイなんてでかいですし、本当に便利だけを求めればビッグスクーターとか、なんだったら車のほうが良いと思います。暑いなとか寒いな、クラッチ重いなとか思うんですけど、それが嫌になるわけじゃないんですよね。なんか、全部便利じゃなくて、手間がかかるほうが愛着が湧くと思うんです。

 

──じゃあもしですよ、バイクに乗れない生活になったとしたら、どう思いますか?

 

安藤 えーっ、バイクのない生活はめっちゃ寂しいと思います。バイクはずっと乗っていたいです。乗るたびに「次に事故ったらやめよう」って覚悟で乗ってますし、ずっと乗っていたいから事故りたくないと思っています。

 

──ずっと乗り続けられるように、安全に乗る。素晴らしい教訓だと思います。これからも気を付けてバイクライフを楽しんでください!

 

安藤 ありがとうございます!

 

【安藤なつさんの愛車・ハーレーダビッドソンのファットボーイ114 アニバーサリーX】

 

撮影・構成/丸山剛史 執筆/背戸馬

38歳で免許取得。ハーレーの「音」に魅了された 高橋ジョージのバイクライフはいつでも自由!

『ロード』の大ヒットで知られるバンドTHE虎舞竜のボーカリスト・高橋ジョージさんはフルチューンのカスタムハーレーを駆る大のバイク好きだ。そのこだわりのカスタムポイントや、ミュージシャンならではの“フェチ”、自由を楽しむライフスタイルについて伺った。

 

(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)

●高橋ジョージ(たかはし・じょーじ)/1958年宮城県生まれ。THE虎舞竜のコンポーザーで、現在、TV番組のコメンテーターとしても活躍中

 

【高橋ジョージさんの1990年式ソフテイルの画像はコチラ】

 

楽器を取るか、バイクを取るか

――高橋さんが最初にバイクに乗られたのは何歳ごろですか?

 

高橋ジョージ(以下、高橋)「自分のバイクを持ったのは、今のハーレーが初めてなんですよ。オートバイの免許を取ったのは38歳なんです」

 

――意外です。高橋さんやTHE虎舞竜の雰囲気から察するに、以前からお乗りだったのかと。

 

高橋「バイクはずっと好きだったんですよ。俺が14歳の時に両親が離婚して、母親の実家に預けられたんですが、そこにいた従兄弟がカワサキのトレールボスに乗ってたんです。当時(1972年ごろ)はモーターサイクルの熱がすごくて、バイクがすごくポピュラーでした。田舎は宮城県栗原市ってところなんですけど、モトクロス場があって、全国大会もやってたんですよ」

 

――バイクが好きになりそうな環境だったんですね。

 

高橋「それに昔、田舎だとバイクっていうのは、耕運機とかトラクターとかその類だったんですよね。ま、ほとんどが原付きとか、ホンダのカブやCDといった荷物を運ぶようなバイクが多かったかな。とにかくバイクは身近にありました」

 

――以前は今よりももっとバイクは実用車として重宝されていましたもんね。

 

高橋「今で言えばもう幻のようなバイク、ホンダCB750Fourとか、カワサキ750RS(Z2)が出て、高校生になるとみんなそういうバイクを買って、交換して乗っては、スズキはこうだとか、カワサキはこうだとか品評をしてたすごくいい時代でした。いい意味ではそういうことだし、悪い意味で言ったら、もうそこは暴走族が盛んになってきた時代でもありましたけど」

 

――そのころ、高橋さんは免許を取られなかったのはどうして?

 

高橋「バイクって金がかかるじゃないですか。うちの親から『楽器を取るか、バイクを取るか』って言われたんです。両方は買えないわけですよ。ベースが欲しかったから、もう断腸の思いでバイクを諦めました」

 

――運命の選択があったんですね。

 

高橋「そうです。『ビートルズを追っかけるのか、イージーライダーになりたいのか』って時に、両方取りたいですけど、経済的に無理だと。当然バイク乗ってるやつは楽器やってなかったりしたから、バイクと楽器は両立できないなと思って諦めてたんですね」

 

グローブを買ったら火がついた

――38歳でバイクの免許を取ることになったきっかけは?

 

高橋「35歳で一応ヒット曲を出して、3年間ぐらいツアーで全国を回ってたんですね。38になって一息ついていた時に、バンドのベースから『ちょっと上野にバイクを見に行きませんか』と電話があって、まぁ行くだけならいいかと車で行ったんですよ。そしたら急に、ヘルメットとグローブを買っちゃったんです。なぜか、バイクもないのに。そのまま革ジャンを買って、ブーツも買って……と同じ日にバイク以外全部揃えてしまった。最後にバイク屋さんに電話してみたら『ハーレーのエボのいいやつが2台ある』と。行ってみたらちょっと悪そうなのがあったんで、じゃあ買いますと」

 

――1日で全部揃えてしまった。

 

高橋「そう。グローブ買った流れでバイクも買ってしまった。でも、そこまで勢いがついちゃったのは、ずっとバイクへの思いが圧縮されてたからですね、10代のころから。その圧縮されたものが一気に決壊したようなことかなと思います」

 

――バイクの免許は?

 

高橋「そこから取りに行くんですよ。すぐ教習所に中免(自動二輪免許中型限定)を取りに行って、10日くらいで取れるからあらかじめ鮫洲(運転免許試験場)に予約入れておいた。当時はまだ大型二輪はなく限定解除の一発試験でしたね」

 

――勢いがすごい!

 

高橋「バイクはずっと好きだから、自分はそこにギアを入れちゃうと絶対買っちゃうし、 買うとなれば100万以上するじゃないですか。その金額だといいギターが買えるんで、どっちを取るってなると…やっぱりね」

 

――バイクと楽器のせめぎ合いがずっとあったんですね。

 

高橋「そうです」

 

――ひとつ確認なのですが、日本テレビの深夜のオーディション番組に、ハーレーを持ち込んでステージを作って『ロード』を歌われた。その番組を録画したテープを大阪有線放送に持っていって売り込んだ結果、大ヒットへとつながるきっかけになった、と聞きました。

 

高橋「そうそう」

 

――ある意味、ハーレーが『ロード』がヒットしたきっかけにもなったわけですが、その時のハーレーというのは?

 

高橋「当時は乗ってないですから。後輩とか友達はいっぱい乗ってるんで、仲間のバイクですね」

 

――そうでしたか。でも、やはり高橋さんはハーレーなんですね。先ほどう伺ったように、CBやZという国産のバイクのいい時代も見てこられた中で、ご自分が乗るオートバイにはハーレーというこだわりがあると。

 

高橋「日本のバイクの良さはよくわかってました。トレールボスに乗っていた従兄弟がそのあとCB750K4に乗っていましたけど、すっごくいいバイクだった。Z2も大好きだし、あの時代のバイクはほとんど好きかな。その後から、国産車のフォルムがあまり好きじゃなくなってね。ちょっとレーシーになっちゃって、フルフェイスで乗るバイクって、自分とはちょっと違うなと感じてました」

 

ハーレーは「音」が好き

――高橋さんのハーレー好きの原点は映画『イージー・ライダー』ですか?

 

高橋「うーん、あの映画ってバイクが出てるけど、走ってるシーンは何分かだけなんですよね。ストーリーも淡々と時が過ぎるような感じ。ただ、バッキングの音楽がかっこいいから、バイクを見るために映画を観たのに、音楽のほうに行っちゃったんですよね」

 

――たしかに、『イージー・ライダー』はサウンドトラックも大きな魅力です。

 

高橋「そう、映画の中のステッペンウルフ、ジミ・ヘンドリックスとかのロックにやられましたね。オートバイはフォルムも大事なんだけど、やっぱり音なんですよね。さっき言った国産車とハーレーの違いは音ですよ。すっごいかっこいいフォルムの国産車ってあるけど、サウンドに関してはいわゆるハーレーの3拍子というか、あの音が好きでした。人間の9割ぐらいが視覚重視で、音重視って少数派ですけど、その少ないとこにほぼウエイトかけて俺は生きてますから」

 

――ミュージシャンならではのこだわりということでしょうか。

 

高橋「ミュージシャンっていうカテゴリーを置いといて、言うのはこっ恥ずかしいけど、“音フェチ”っていうか“音マニア”なんです。例えば、人でいうと顔はどうでもいいけど声に惹かれるっていうのはありますよ」

 

――高橋さんは音フェチで音マニアですか?

 

高橋「そうそう。街でもどこでも、ハーレーのスロットルをひねったときの “ダブダブダブ!”という音の響きが好きなんですよ。だから、夏に海沿いを走るのが気持ちいいってのもよく分かるんですけど、俺は季節は冬が好きなんですよね」

 

――冬ですか、それはどうしてでしょう?

 

高橋「冬は湿気が少なくて空気が乾いてる。湿気が少ないということは音が響くんですよ。圧倒的に違いますね」

 

――ちなみに一番音がいい回転数とかってあるんですか。

 

高橋「何回転だろうって気にしないんでタコメーターは見ないんですよ。だいたい気持ちいいのは、セカンドからサードですね。4、5速はほぼ同じですよ」

 

――2速3速の回転が伸びるところが気持ちいいっていうのはよくわかります。

 

高橋「そうそう。俺はできるだけ一人で走るのが好きだから、複数でも3人ぐらいが限度ですね。それ以上だとうるさいって感じます。“爆音がいい音だ”って勘違いしてる人もいるけど、それは違う。いい音は小さくてもいい音だし、うるさい音は小さくてもうるさいんですよ」

 

――いい音は音量じゃないと。

 

高橋「いい音は気持ちいいんです。心地よさを超えたらダメなんですよ」

 

――先ほどハーレーを撮影させてもらったときに、マフラーが特徴的だなと思いました。

 

高橋「サンダンスのマフラーなんですけど、普通マフラーって右から出てるじゃないですか。俺のは左に出てて、ちょっと上につけてんるんです。音が近いんですよ」

 

――あ、なるほど。

 

高橋「アップタイプにしてもいいんだけど、今のマフラーのスタイルと音がいいですね。いずれにしてもタンデムできないですよ、熱くて(笑)」

 

ハーレーのカスタムポイント

――マフラーのお話が出たので高橋さんのハーレーのカスタムポイントを伺いたいと思います。バイクは1990年式のソフテイルです。全体にコンセプチュアルな仕上がりになってますね。カスタムはサンダンスですか?

 

高橋「そうです。これは“The Masamune”っていう、武士っぽい感じのイメージでカスタムしてもらいました。これが一番のコンセプトです。このスタイルになったのは2013年かな」

 

――サンダンスのカスタムハーレーでこういったスタイルのものもあるんですね。

 

高橋「ちょっとダサい話なんですけど、カスタムする時に、前のカミさんと2台で依頼したんです。あっちが侍みたいなコンセプトだから、俺は伊達政宗の甲冑をイメージしたんです。サンダンスのザック(以下柴崎代表)と何回も打ち合わせして、彼もアーティストだから、イメージだけ伝えてやってもらいました」

 

――ということはヘッドライトバザーの三日月型のオーナメントは?

 

高橋「伊達政宗の兜のイメージです。鋭利で危ないので、アクシデントがあったら外れるような仕様になってます」

 

――外装もさることながら、エンジンと給排気の存在感がすごいです!

 

高橋「エンジンは腰下がエボで、腰上がスーパーXRになってます。キャブはFCRですね」

 

――スーパーXRはサンダンスがリリースしているスポーツスターカスタムですね。この後方吸気のFCRツイン仕様は迫力ありますね。

 

高橋「あとは、適度な長さにアレンジしたスプリンガーフォーク。スーパーXRに近づけたかったんで、長すぎるとちょっと違うかなと。それなら倒立フォークのほうがいいのかなと思ったんだけど、あんまりそっちに攻めるのは良くないなといろいろ考えて。あまりスプリンガーっぽくないでしょ?」

 

――確かに。とにかくサンダンスらしく手を入れていない部分がないフルカスタムですね。

 

高橋「初めは、ロングフォークを付けてもらおうとサンダンスに行ったのがザックとの出会いです。あれからもう23、4年になるかな。理屈をちゃんと説明してくれたうえで『ロングにするならこれくらいじゃないと。長すぎるとねじれて危険だ』と。そんなハーレー屋に会ったことがなかったし、言ってることと結果がちゃんと合致しているから信用できますよ」

 

――プロに依頼するなら大事な点ですね。

 

高橋「サンダンスはハーレーのみだから、そこに特化してるとこが素敵だね。たとえスズキのバイクを持ってっても直せるんだけど、『それはうちではやりません』ってはっきり言うところがね、わかってるんだよね」

 

自由なライフスタイルを謳歌

高橋「そういえば最近、ハンドルだけ変えました。なんか突然、もうちょっと目の高さに来るハンドルで乗りたかったなと思って、俺が好きなのはアップだなと。ちょうどサンダンスにジャパンエイプっていう、日本人に合う、グリップ位置が上すぎないハンドルがあったんで。気に入ってますけど、バイク仲間からは“バイクの形が崩れる”ってすごい反対されましたね。まぁ別に違うなって思うなら戻せばいいんだし」

 

――そこは軽い感じで。

 

高橋「だんだん熟年になってくると、もともと何が好きだったかに戻るんですよ。原点回帰というか。簡単にいえば好きなことやる時間にしたいんだよね、残りの人生は……って、残りってだいぶあると思うけど、うまくいけば」

 

――好きなことをやる時間ですか、なるほど。これやってみたかった、ということをやり遂げたいのはわかる気がします。

 

高橋「音楽だって、俺にとっては仕事でもあるけど、最近は趣味性が強いね。だから俺ほど幸せな男はいないなと。芸能的に考えたら、『一人で寂しい人でしょう』って。いやいや、自由度100%ですよ。言うなれば、何時に起きて何時に寝るのか、誰も知ったこっちゃないし、今日はずっとこの曲のここのアレンジだけやることもできる。だから、気づいたのは、好きなことを毎日やってる俺ほど幸せな奴っていないなとよく言ってます」

 

――羨ましいとしか思わないですよ。

 

高橋「昨日もさ、30年くらい前に買ったウェスコのブーツがあったなと思い出して、見たらカチカチになってたから夜中にミンクオイルを塗って馴染ませたりしてるのが楽しいわけ。明日バイクの取材だとかウキウキしながら」

 

――ある意味すごく贅沢な時間ですね。

 

高橋「このBUCOのヘルメットは娘が使ってたんだけど、57センチ・サイズで、61ある俺からしたら小さいのね。それでインナーをペーパーがけしてサイズ調整をして“よし、入る入る”と。これはシェルが小さくていいやと。そういうの楽しいじゃないですか。こういうことに1日好き勝手使えるわけですよ」

 

――自分の好きなことに使える時間ってなかなか手に入らないですからね。

 

高橋「でしょう。俺も65だから気づいてる、もう時間ないよと。負けおしみに聞こえるかもしれないけど、俺がたとえば東京ドームをいっぱいにするアーティストだったらそれを続けなきゃいけないじゃん。うん、そしたら、バイクなんか乗ってる時間ねえよってなる。金持ちでもなんでもないけど、富豪って俺のことを言うんじゃないかって思うときがありますよ。時間が自由で、好きなバイク乗って、好きな音楽やって……と、自分で食事作って食って、好きな時間に寝て、起きてって、それ繰り返してるの最高じゃんとか思うよね」

 

――そこにバイクがあるってのはいいですね!

 

高橋「大事なことはオリジナリティですね。個性ってみんなたぶん死ぬまでのテーマだと思う。そのためには俯瞰が大事で、俯瞰ができる人はオリジナリティ

 

バイクはバイク、と考える

――趣味を楽しまれてる生なん?ですけど、高橋さんにとってバイクとは?

 

高橋「哲学的に聞かれると、“バイクはバイク”だよね。“バイク・イズ・バイク”というか、ハーレーにはハーレー、カワサキにはカワサキの個性やオリジナリティがそれぞれあるんだから、『君のバイクいいじゃん』『君こそいいじゃん』と認め合おうよって。みんな好きなバイクに乗ってるんだから。“俺のバイクのほうがいいと思う”っていうような押しつけは、歯を出して“俺のインプラントのほうがいい”って言ってるのと同じじゃん(笑)。自分に合ってると思ったら、それを楽しそうに乗ってればいいんだよね」

 

――バイクはバイクとして、優劣つけるものじゃないと。その考えは大事ですね。

 

高橋「うん。あと1個言えるのはね、どんなにバーチャルリアリティが進化しても“乗る”っていう感覚は無理。VR機器で走ってる感覚の絵が流れて、風が来て、音が流れてもそれはフェイク。本当に乗らないと、本当の音は感じない。音楽って今、そういうとこに入ってるんですよ。デジタルで、シミュレーターでアンプを鳴らすとか。若い子たちはノイズの入らない、倍音のない世界を聞いてるから、20代の人が俺のスタジオに来てレコードを聞いた時に『なにこれ?』ってぶっ飛んでましたよ。普段、倍音を聞いてないんです。ハーレーも倍音がある。それが遮断されたデジタルの世界ってのは、シミュレートってすごいけど、仮装空間はあくまで仮想空間じゃんって思います」

 

――バイクは風も音も匂いも景色も全部体感できる乗り物ですからね。さすがにVRでは体験できない世界観だと思います。

 

高橋「バイクを下に見てるやつは、いくらバイクっていいよ言っても無理じゃないですか。ハーレーが嫌いっていう奴もいますよ、友達でも。嫌いなもんはしょがないよね。寿司でヒカリもん食えないのと一緒だから(笑)」

 

――バイクをインプラントや光り物で例える方は初めてです(笑)。

 

高橋「うん。バイクはバイク。それ以上でも以下でもない。乗るならばそれぞれが一番気に入ってるのに乗って、お互い認めあえばいいんですよ」

 

ハーレー一筋30年!自分流を磨き続ける三木聡のカスタム・バイクライフ

シュールな作風でカルト的な人気を誇る、映画監督・三木聡さん。小さいころから、プラモデルも設計図を無視して自分の好きなようにパーツくっつけていた、カスタム好きの三木さんにバイクへの愛とカスタムのこだわりについて伺いました。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:背戸馬)

三木 聡●みき・さとし…1961年8月9日生まれ。神奈川県出身。大学在学中から放送作家として活動し、『タモリ倶楽部』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など数多くの人気番組に携わる。1989年から2000年まではシティボーイズのライブの作・演出を務め、2005年の『イン・ザ・プール』で長編映画監督デビュー。以降、シュールな持ち味を活かして『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』(2018)、『大怪獣のあとしまつ』(2022)などの映画作品で一貫して監督と脚本を兼任。『時効警察』シリーズや『熱海の捜査官』などのテレビドラマも手掛けている。

 

【三木聡の1999年式ソフテイルカスタムの画像はコチラ】

ソフテイルカスタムのこだわりポイント

――先ほど撮影で走ってる姿を見たときV-RODかなと思いましたが、拝見したら全然違いました。こちらの車種は?

 

三木聡(以下、三木)「1999年式ソフテイルカスタムです。エボリューションエンジンの最終モデルですね」

 

――確かにソフテイルです。さっそくカスタムポイントを教えていただきたいんですが、まずは個性的なルックスのタンクから。

 

三木「このコブラタンクは、前に乗っていたファットボーイにつけていたものを移植しました。オイルタンクもですね。キャップカバーは型取りしてレザーで自作しました。金属のキャップが熱を持つので、ふとももに触れると熱いんですよ」

 

――いいアクセントになっています。マフラーもかなりいい音してます。

 

三木「BOSSのマフラーです。バンテージテープは自分で巻いたんですよ。放射熱で足が焼けそうになりますから」

 

――フロントフォークは?

 

三木「サンダンス・トラックテックです。ソフテイルのリアショックも変更してます。前後のサスペンションとパフォーマンスマシン製のブレーキで制動力をアップしてます」

 

――他にも吸気はFCR、チェーンドライブ化、前後ホイール……と内容は書ききれないほどですが、カスタムはどちらのショップで?

 

三木「サンダンスです。代表の柴崎(武彦)さんにお任せでカスタムしてもらいました」

 

――サンダンスは、ハーレー・ダビッドソンのカスタムショップの国内第一人者ですね。

 

三木「サンダンスには1991年にファットボーイを買ったときからお世話になっています。このソフテイルカスタムは、チョッパーにしてあった車体をベースに作ってもらいました。チョッパーのころの名残はフレームのカラーだけですけど、そのカラーを活かしてあるのもポイントですね」

 

――なんと前はチョッパーだったんですか。ここまでガラッと車体構成が変えられるってハーレーならではです。

 

三木「ソフテイルカスタムの前のオーナーさんも、自分のハーレーがそのまま乗られているのは嫌かなと思いますしね」

ハーレー一筋30年以上

――1991年からファットボーイに乗られていたとなると、30年以上前ですね。ずっとハーレー一筋なんですか?

 

三木「そうですね、ファットボーイから2018年にこのソフテイルカスタムに乗り換えて2台目です」

 

――ファットボーイは27年乗られてたんですか! 1台のバイクの所有歴としてはかなり長いと思います。ファットボーイはどういった経緯で乗られたんですか?

 

三木「ヤマハのビラーゴ250に乗っていて、カスタムもいろいろしてたんですけど、一緒に『タモリ倶楽部』をやっていたディレクターに『だったらハーレーにすれば?』と促されてサンダンスを紹介してもらいました。まだ、お店が高輪にあるころでしたね。そのディレクターはサンダンスでゴリゴリにカスタムしたショベルに乗ってました」

 

――それで限定解除をしたと?

 

三木「当時は府中の免許センターで一発試験のみでしたから、八王子の河原にあった練習場で練習をして試験を受けましたね。番組が暇なタイミングって1月なんですけど、極寒の中央高速をビラーゴで八王子まで通ってました(笑)。ハーレーに乗るんだという熱意があったし、当時27歳くらいだったかな、年齢的なものもあったかもしれませんね」

 

――ファットボーイはサンダンスで購入したんですか?

 

三木「そうです。僕は1991年型をたしか新古車で買ったのかな。型落ち寸前に。どうせカスタムしちゃうんだからファットボーイでもなんでもいいよね、みたいな話だったと思うんです。そのまま乗るんじゃなくてカスタム前提だったから車体はリーズナブルなやつでいいよねと」

 

――ショベルヘッドなど他のエンジンじゃなく、エボリューションが搭載された車体にしようというのは決めてたんですか?

 

三木「『ショベルはエンジン精度の問題がいろいろあって、最初に乗るならエボ(エボリューションエンジン)のほうがいいよ』って話になったと思うんですよ。『ハーレーの三拍子も出るし』と。それを断るほどこだわりもなかったし、ナックルヘッドだパンヘッドだというのもその時はまだそれほど詳しくなかったですから」

ファットボーイのカスタムポイント

――でも「最初に乗るならエボ」は的確なアドバイスな気がしますね。先ほど、コブラタンクはファットボーイからの移植だと仰ってましたが、ファットボーイもカスタムされていたんですね

 

三木「そのころはクラシカルな嗜好があったので、スプリンガーフォークを組んで、クリーム色っぽい茶色と焦げ茶色のツートンカラーでした。AMF時代の純正色のイメージで」

 

――1970年代風の渋いカラーリングですね。

 

三木「柴崎さんにおまかせでカスタムを依頼したんですけど、サンダンスにあったカスタム車をサンプルにして割りとベタなカスタムにしてほしいと伝えたんです。ところが出来上がったらぜんぜん違うものになっていた」

 

――な、なんと!

 

三木「スプリンガーを組むならこういうほうがいいよ、っていう柴崎さんのセンスが全面的に押し出された結果ですね。当初の想定とは違うけど、そのカスタムの意味が『なるほど、そういうことか』とだんだんわかってくるんですよね」

 

――乗り始めて、ハーレーのエンジンや歴史のことを知っていくことで……。

 

三木「理解できるっていう。絵画や映画とかでもそうじゃないですか。わかりやすい一般的な作品と違って、特殊な映画って最初はとっつきにくいものですからね。ポピュラリティーってそういうことですから。アルバムの1 曲目はすぐに飽きちゃうんだけど、2曲目がずーっと気にいって聞いてるみたいな」

 

――そういう深みのあるカスタムをするサンダンスに出会ったことも、長くハーレーに乗り続ける理由かもしれませんね。

 

三木「だからサンダンスは長く付き合えるショップなんだと思います。お客さんがとっつきやすいような汎用パーツをつけて仕上げるということはやってなかったですからね。カスタムしてもらったバイクをずっと見ていると、いろんな発見があるんですよ。映画もそうじゃないですか。そのうち映画以外の他の情報も入ってきて、たとえば僕の好きなデビッド・リンチやコーエン兄弟の作品って、ニューカラー派の写真家ウィリアム・エグルストンの影響が映像にあったりとか、絵画的な影響があったりとか、そういうのがあとからわかってくるというのがありますよね」

 

――それがハーレーにおいても同様だと。

 

三木「はい。乗っててそれを実感するオートバイですね。日本や、他の国のオートバイとどちらが偉いとかじゃなく、僕がそういうのに興味があるってことなんですけど、なかなか他にないんだろうなと思ったりしますよね」

乗り換えは事故がきっかけ

――監督の作品『熱海の捜査官』(2010年、テレビ朝日)で、アメリカンな雰囲気の“南熱海警察署”が登場しましたが、たしか署の前にハーレーが停められていました。あれってもしかして……。

 

三木「それ、僕のファットボーイです。撮影用にパトランプをつけて」

 

――画面越しで、ちょこっと見えただけでしたけどしっかりビンテージハーレーの風格でした。なるほど、たしかに通好みの渋いカスタムです

 

三木「警察署のセットが三浦にあったんですけど、毎朝、撮影のために乗って行ってましたよ。しかし、よく覚えてましたね。うれしいなあ」

 

――そんなに気に入ってたファットボーイを乗り換えるきっかけというのは?

 

三木「ファットボーイで走っていたときに、中央分離帯みたいなところから突然、女の人が車道を突っ切ってきて、かろうじて避けたんですがブレーキかけたら車体が流れちゃってコケたんです。鎖骨を折りましたよ」

 

――うわあ、それはつらい……。

 

三木「これを機に、50歳も過ぎたし、ファットボーイを修理しないでちゃんと制動が効くにバイク替えたら? という話になったんです。僕も『じゃあそうします』と。ファットボーイのほうは、フレームがいったとか大きな損傷はなかったので下取りに出して」

 

――それで1999年式のソフテイルカスタムを入手されたと。柴崎さんへのオーダーで、監督の要望通りのカスタム内容になっているというわけですね。

 

三木「そうですね。バイクの場合は制動がうまく行かなくて事故を起こすということがありますから、サスペンションとブレーキが重要だろうと。ファットボーイも冷静な状態で止まるのは制動面に問題はなかったけど、やっぱり緊急時ですよね。その点、トラックテックのサスは制動時にしっかり沈んで、急ブレーキかけてもリアが流れたりしにくい。今のバイクは走ることも優秀ですけど、止まることに関しても優秀だと思います。タイヤも制動力重視で選んでます」

 

――そこまでしっかり考えてカスタムされているということは、今後このソフテイルカスタムを乗り換えるということは……。

 

三木「サブのオートバイで何か買うってことはあるかもしれませんけど、今のソフテイルカスタムを乗り換えることはないでしょうね」

米軍がいる横浜が原風景

――ところで、三木監督のバイク歴を教えていただけますか。

 

三木「最初は中古で1万か2万で買った原付き、ホンダ・スカイにしばらく乗ってました。車の免許を取ったら原付き免許がくっついてくるじゃないですか」

 

――じゃあ車の免許が先なんですね。

 

三木「20代前半は旧車に乗ってたんですよ、車のほうの。ヘッドライトが縦に並んだ日産グロリア、いわゆる“タテグロ”に。それを全塗装かけるのに工場に入れたら、1年か2年かかることになった。移動する足がなくなっちゃうってことで、バイクの免許を取ったんです。仕事でいろんなテレビ局に行ってたんですけど、乗り始めたら移動するのはバイクのほうが便利だってことに気づいて。それでビラーゴ250に乗り始めました」

 

――ビラーゴ、そしてハーレーと、アメリカンスタイルのバイクがお好きなんですね。

 

三木「中学生のころかな、『イージー・ライダー』が直撃したんですよね。映画の公開は1969年で僕は小学生なので、後追いだったのかな。部屋にでっかいポスターも張ってましたし」

 

――『イージー・ライダー』に影響された少年は多かったでしょうね。

 

三木「サイドカーつきのBMWのプラモデルを買って、ランナーを炙って伸ばしてチョッパーに改造したり(笑)、友達の兄貴は、ビーチクルーザーみたいな自転車のフロントフォークを、単管パイプを加工してチョッパーみたいにしてましたよ」

 

――魔改造!

 

三木「うちの近所は坂が多いもんだから、坂を上がっていくと後ろにひっくり返っちゃって(笑)」

 

――(笑)。三木監督は横浜出身とのことですが、世代的に暴走族カルチャーは通過してるんですか?

 

三木「僕は暴走族にはいかなかったですね。暴走族全盛期の1972~3年は中学生くらいだったんですけど、信じられない台数のバイクが第二京浜を湘南に向かって走ってるのは見てましたよ」

 

――暴走族よりも、監督の場合はアメリカンカルチャーにハマっていたと。

 

三木「そうですね。米軍基地もあったし、本牧とかには米軍の居留地もあって、すごいアメ車が街を走っている時代でしたからね。土地柄なんですよね。たとえば中華街に食事に行ときは山下の居留地の間をバスで走っていくんですけど、芝生にスプリンクラーがあって犬がいるという感じでしたし」

 

――もう映画の中の世界ですよ。小さころからそういうアメリカンな景色を日常的に見てたわけですか?

 

三木「あとはまぁ僕らの世代って、アメリカのテレビドラマがすごく多かった世代なんですよね。あれは占領軍の政策で、共産主義にならないようにアメリカの文化の素晴らしさをテレビでいっぱい流してたらしいです。だから影響は少なからずあったんでしょうね」

カスタムせずにはいられない!

――ハーレー一筋とのことでしたが、ハーレー以外のバイクはお持ちじゃないんですか?

 

三木「ヤマハのYD125ですね。これは、ファットボーイからソフテイルカスタムに乗り換えるとき、カスタムに1年間くらいかかったんですけど、その間の足として乗ってました。もともとは、僕の映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』のときに、劇中で使用するサイドカーを作ろうと思って買ったんです」

 

――吉岡里帆さんと阿部サダヲさんが乗って突っ込むやつですね。

 

三木「YD125にサイドカーを取り付ける予定だったんですけど、サイドカーってバランスを取るのがすごく難しいみたいなんです。そんな相談をしてたら、ちょうどネットオークションでサイドカー付きのスズキK50が出品されて、これいいじゃんってことで購入しました」

 

――ということはYD125 を使う予定がなくなった。

 

三木「そうです。それで僕が乗ることにしたんです」

 

――当然カスタムをするわけですね(笑)

 

三木「鉄道のカンテラってあるじゃないですか。あれを買って中のライトを変えて取り付けたり、ハンドルやグリップを変えて、ウインカーとテールランプも変えて、カフェレーサーっぽい感じにしてます」

 

――鉄道のカンテラ? 個性あふれるカフェレーサースタイルですね。

 

三木「まぁクラシカルロッカーという感じですね。溶接機も買いましたよ(笑)、マフラーステーとかウインカーバーつくったりしました」

 

――カスタムが本当に好きなんですね。手を入れないと自分のものという感覚がしないって感じなんですか?

 

三木「小さいころから自転車少年だったんですけど、自転車をペンキで塗ってカスタムしたりしてましたね。プラモデルもそのまま組むのが気に入らないから、設計図とか無視して自分の好きなようにパーツくっつけるとか。このパーツはこっちについてたほうがいいだろうとか(笑)」

 

――根っからなんですね~。

 

三木「1人っ子だったから、強制されるのが気に入らなかったんだと思いますね(笑)」

「自分流」を磨く

「でも手先が器用じゃないんで、溶接にするにしろ、塗るにしろ、うまくはないんですよ。あと、人に教わるのが下手くそなんですよね。だから、教わって習得して上手くなるっていうのがない。苦手なんですよね、きっと」

 

――自分で手を動かして上手くなっていくという。

 

三木「映画とかもそうなんですけど、自分流のやり方でしかできない。映像的なことを教わったり、見たりして勉強するというよりは、とにかく無手勝流でやってるみたいなところはありますよね」

 

――仕事でもバイクでも、三木監督の“らしさ”が生まれる原点ってそこな気がします。

 

三木「オリジナルのものがあって、それを人が模していくうちにちょっとずつ解釈の仕方がずれていくことで違う形になっていく。その繰り返しですよね。自分もそういうことなのかなと。教わり方が下手だから、その分解釈がずれてオリジナルからは遠くなっていくというね」

 

――それがやがて個性となっていく、ということなんですね。

 

三木「たぶんそういうことだと思うんですよね」

 

――最後になりますが、三木監督にとってバイクとは?

 

三木「基本的には移動する楽しみ、ということですね。バイクって目の前にあるじゃないですか。それを常に見ているわけだから、自分が気にったものである必要はありますね」

 

――たしかに。何でもいいってわけではないと思います。

 

三木「なおかつ、走れないといけない。僕の場合は仕事にも使うので、たとえば撮影現場に乗っていくときに止まった、エンジンかからないというわけにはいかない。何十人もスタッフが撮影所で待っているわけですから」

 

――今のソフテイルカスタムはサンダンスの柴崎さんによって、監督のこだわりが形になったということがよくわかりました。ありがとうございました!

懐かしい? 新鮮? 世界で愛された名車を現代風にアレンジ……ホンダ「ダックス125」

Withコロナがすっかり定着し、新しいライフスタイルが生まれゆくなか、さて、2022年下半期はどうなっていく……? これから流行る「ヒット確定モノ」を、各ジャンルのプロたちに断言してもらった。今回は、9月22日に発売予定のレジャーバイク「ダックス125」を紹介。

※こちらは「GetNavi」2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【ダックス125】レトロモダンスタイルが時代にマッチ

 

モノ知りインフルエンサー

トラベルライター

中島 亮さん

旅にまつわるエトセトラについて各種メディアに寄稿。ホンダの単気筒ばかり10台ほど乗り継いできた単車好き。

 

世界で愛された名車が時を経て令和に復活(中島)

【レジャーバイク】

2022年9月発売予定

ホンダ

ダックス125

44万円

1969年にデビューして一世を風靡した、ホンダ ダックスを現代風にアレンジ。モンキー125、スーパーカブC125、CT125・ハンターカブと、立て続けにヒットを連発している原付二種レジャーバイクの真打として注目されている。タンデムOKというのもポイント。

 

↑空冷単気筒エンジンに、4速トランスミッションを組み合わせる。クラッチ操作は不要で初心者も安心

 

↑視認性に優れた液晶タイプのメーター。ヘッドライトと同じ、クロムメッキのモールでデザインの統一感を出している

 

ヒットアナリティクス

オヤジには懐かしく若者には新鮮なデザイン

維持費が安く、原付(50cc以下)のような法的制限を受けず、取り回しがラクで、パワーは必要十分。125ccの原付二種は最強のシティコミューターだ。デザイン面の評価はもちろん、再構築するにあたって最新技術を駆使。発売開始後は、納車まで数か月待ちとなるだろう。

V12エンジン音を再現! セグウェイが電動キックボード用スピーカーを発表

電動モビリティを開発するセグウェイブランドは、電動キックボードに装着してV12エンジンなどのさまざまな乗り物の音を再現するスピーカー「Ninebot Engine Speaker」を発表しました。

↑セグウェイのYouTubeから

 

日本でもヘルメットなしでの乗車の実証実験が開始されている、電動キックボード。モーターのアシストにより気軽に市街地を移動できるのが特徴の一方で、エンジン音が発生しない仕組みから、歩行者との衝突の危険性なども指摘されています。

 

Ninebot Engine Speakerは、電動キックボードのハンドル下にベルトで装着します。そしてボタン操作により、「単気筒」「2気筒」「V8」「V12」「電動モーター」といった5種類のエンジン/モーター音を再生することが可能です。

 

さらに、スピーカーからのエンジン・モーター音はハンドルのアクセル動作や発進、アイドリングといった状態にあわせて変わります。これにより、本当に単気筒や2気筒のバイク、あるいはV8やV12エンジンを搭載した自動車を運転するような、迫力のある走行音が楽しめます。

 

Ninebot Engine Speakerは2200mAhのバッテリーを搭載し、最大23時間の利用が可能。本体の充電はUSB Type-C経由でおこないます。またIP55の防塵・防水性能も備えているので、屋外での使用の際も安心です。

 

Ninebot Engine Speakerはセグウェイやナインボットの電動キックボード、GoKart、電動バイク、電動モビリティに装着可能。歩行者の安全性だけでなく、利用者に電動キックボードへと乗車する楽しみを高めるという意味でも、今後が注目されるアイテムです。

 

Image: セグウェイ

Source: The Verge

1年間の走行距離は6万キロ以上! バイクはもはや体の一部なGARUのハードボイルド・バイクライフ

冒険家・滝行家であり、モデルとしても活躍しているGARU。年間走行距離6万キロ以上、「バイクは体の一部」という彼女のハードボイルド・バイクライフについて聞いてみた。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:背戸馬)

GARU:冒険家であり滝行家。陸/空/海、どんなステージでも活躍する挑戦者。本業のモデル業に加え、船舶1級/潜水士/大型自動二輪/パラグライダー選手など複数資格を持つ、これまでの旅は世界を2周、常に何かを求めて国内外を旅を続けている。現在マットモーターサイクルズで日本中をツーリング中

 

【GARUのMASTIFF250の画像はコチラ】

 

バイクはもはや体の一部

――先ほどの撮影でバイクを見たらけっこう汚れてましたけど、どこかに走りに行かれたんですか?

 

GARU「那須から帰ってきました、今日」

 

――栃木県の那須ですか。今日?

 

GARU「はい。那須高原の別荘をお借りして、お泊り会みたいな」

 

――乗ってきていただいたMUTT MOTORCYCLES(マットモーターサイクルズ)のMASTIFF250は、いかにもタフそうなスタイルですから、冒険家のGARUちゃんに似合いますし、汚れがあるのもサマになってますが

 

GARU「ほんとですか? 実は数日前にきれいにしたんですよ。整備もしてもらって全部きれいにしたんだけど、ちょっと雪で汚れちゃって(笑)」

 

――雪? 那須高原の方はまだ雪があるんですね

 

GARU「すごかったですね。道の真ん中には積もってないですけど路肩にはけっこうあって、溶けて道に出てきてました。行ったのがロッジみたいなところだったので、雪が残る砂利道を通って……」

 

――そういうとこ、普通はスタッドレスタイヤを履いた車で行くんですよ(笑)

 

GARU「途中、ずっと『この先スタッドレス装着車以外通行止め』みたいな案内が出てました」

 

――雪があるところにも果敢にもバイクで行っちゃうと

 

GARU「そうですね。いちおう冒険家って名乗ってるので、どこでも行きます(笑)。『バイク愛がない』っていうとすごく語弊があるんですけど、私はバイクを道具としか思ってないんです。でも、道具っていうとまた語弊があるんですよね……。なんか、もう体の一部というか、一心同体!みたいな。なので、『私が頑張れるなら、お前も頑張れるだろ』というスタイルです(笑)」

 

――GARUちゃんのそういうスタイルについてきてくれるバイクじゃなきゃだめですね

 

GARU「そうですね、あの子(MASTIFF250)はついてきてくれます」

 

――そんなにハードに使って、MASTIFF250にトラブルって?

 

GARU「ないですね。あるとすればチェーンが切れちゃったことくらい」

 

――チェーンが切れちゃう? なかなかないですよ

 

GARU「そうですか?『もう無理だよ』ってバイクが言うと切れちゃうのかな」

 

――オートバイのほうから限界を知らせるシグナルが出るわけですね。MUTT MOTORCYCLES(以下、MUTT)は2019年に日本に上陸したイギリスのカスタムビルダー製のオートバイです。デザイン性が高いのは見ての通りですが、しっかり走れるんですね

 

GARU「そうです。耐久性も高いです」

 

――じゃあ、バイクで気を使うことって?

 

GARU「交通ルールを守るのと、定期的なメンテナンス以外は何も気を使わないです」

 

1年間の走行距離は6万キロ以上

――年間走行距離ってどれくらいなんですか

 

GARU「1年で6万~7万キロくらい乗りますね。去年の夏も6日間で6800キロ走りました」

 

――一体どこを走るとそんなにいくんですか

 

GARU「北海道の友達からツーリングに呼ばれて、『OK行くね!』って感じで北海道に行って、その次に九州の友達から、『阿蘇においでよ』って言われてまた『OK!』ってそのまま九州まで行って。そこでバーっと遊んで、また北海道から呼ばれて……みたいな。私、日本ってぜんぶ近所だと思ってて」

 

――うーむ(絶句)

 

GARU「半径1000キロ圏内はぜんぶ近所だと思ってますから」

 

なお、インタビューに同席してもらったマネージャー氏によると、GARUちゃんの乗るMUTTのバイクは1.5万キロから2万キロで車両を交換しているそうだが、現在のMASTIFF250で8台目。控えめにカウントしても12万キロ以上は走っているそうだ。いわく「フカシだと思うでしょ? 本当です」。

 

――そのスケール感はすごい

 

GARU「でも、走ろうと思って走ってるというよりは、行きたい場所に行ってたらそれだけ走っちゃったという感じなんです」

 

――なんでも、1回乗ると給油以外では止まらないとか

 

GARU「目的地が決まっていれば、基本、そこまでは休憩しないですね。もちろん何も用事がなければ、途中で休憩したりとか、ライダーに話しかけたりとかはします。私、目的地を決めたら、夜走るんですよ。夜11時か12時に出発して、早朝に着くように走ります。昼間はいろんな誘惑があるから……私、誘惑にすぐ負けるので」

 

――なるほど、夜は誘惑が少ないから

 

GARU「はい。サービスエリアも閉まっているところが多いし、走っている人も少ないし、話す人もいない。だから、けっこう距離を走るときはオムツはいて、給油以外では足をつかず走っちゃいます」

 

――へえ(2回目の絶句)

 

GARU「1回降りたら“終わり”なんです、絶対。どんどん寒くなっちゃうし、やれコーヒーとか、もうちょっともうちょっと……と、休憩がどんどん伸びちゃう。だからいつも時間ギリギリに出ます」

 

――バイクって移動が楽しいじゃないですか。どこかに寄ったり美味しいもの食べたり。GARUちゃんの場合は、あくまで目的まで行くための手段なんですね

 

GARU「そうです。私の足だし、ほんとに体の一部だと思ってます」

 

GARU流「バイクの選び方」

――GARUちゃんくらい移動距離が長いと、大型バイクに乗るって選択もあると思うんですが

 

GARU「リッターバイクは撮影では乗りますけど、日本で買おうとは思わない」

 

――それはなぜです?

 

GARU「バイクがかわいそう。スピードを出せないし、渋滞をトコトコ2、3速で走って……バイクがかわいそうだなって」

 

――本来の性能を使い切れないままなのはかわいそうだと

 

GARU「そう。逆に性能を使っちゃうと捕まるし、危険。かといって、私は性能を試すためだけにサーキットに行きたいとは思わない。だから撮影とか、たまにレンタルで楽しむくらいがちょうどいいかなって」

 

――考え方が合理的なんですね。でも、性能は使い切れないとしても、大きいバイクは高速移動が楽じゃないですか

 

GARU「楽ですね。でも、やっぱり私のベースは東京なので、機動性を重要視してるんです。リッターだと、もし人がいきなり飛び出してきたり、なにかあったときに止まれる自信がないし、どこかにぶつけて傷つける自信がある(笑)。250くらいなら最悪そういう事になっても、なんとかできそうな……自信はないですけど、まだリッターに比べたら事故は少ないかなと思います」

 

――リスクも考えて車種選択をしているんですね

 

GARU「あと私、“ゼロ100”なんですよ。アクセル全開かオフかしかないので、MUTTのバイクがちょうどいい。これが100%出したところでスピードも100キロちょっとしか出ないので、安心安全です。それにキャリアをつければ荷物もガッツリ乗りますし。タンデムもできるし、250なので車検はもちろんないですから」

 

――今は女性も大型免許をとってリッターバイクにのる方も多いですが、誰よりアクティブなGARUちゃんが「250がぴったり」と言うのって意外です

 

GARU「大型バイクの免許を取るのはいいんですよ、でも乗るのはね。基本は飾ってて長距離に年に2、3回だけ乗るとかだったらぜんぜんいいんですけど、日常生活で使うとかなら違うのかなって」

 

バイクとの出会い

――質問を変えまして、バイクとの出会いを教えていただけますか

 

GARU「16で免許を取って、最初に乗ったのは家にあった適当なスクーターとかですね」

 

――ご家族もバイクに?

 

GARU「お父さんも乗ってましたし、おばあちゃんも乗ってました」

 

――おばあちゃんもバイクに乗ってたって、それちょっとおしゃれですね。じゃあ生活圏内にオートバイがある生活だったと

 

GARU「富士スピードウェイが近かったんですよ。いろんなチームのピットがあったり、同級生の親御さんもレース関係者だったり、そういう環境で育ったのでバイクは普通って感じでした」

 

――免許とったり、乗ったりというのも自然な行為だったと

 

GARU「ですね。通っていた高校は、16歳になると学校に教習所の車がお迎えにきて、みんな当たり前のように取るみたいな」

 

――珍しいですね。免許を取ることについてご両親の反応はどうでした?

 

GARU「親は海の仕事もしていたので、『16になったら特殊小型船舶操縦士とバイクは取りなさい』と」

 

――『取りなさい』なんですね(笑)

 

GARU「あと、うちの地域ではいつ富士山が噴火してもおかしくないって言われてて、万が一のときは自転車じゃ逃げられないから、バイクででもなんでも逃げなさいみたいな」

 

――バイクは自衛手段でもあると

 

GARU「自衛手段にもなるし、あとは交通ルールを学んだりとか社会勉強にもなるから」

 

――オートバイ乗りたくても乗れなかった世代からすると羨ましい話です。そういう経験が、GARUちゃんのオートバイを足として使うっていう原点になったりしてるんですかね

 

GARU「他の子の話を聞いていると、『何々っていうバイクに乗りたくて免許をとった』っていうのが原点だけど、私は自転車と同じで、バイクは乗り物のひとつみたいな感じ。なので、何か決まった車種に乗りたいとか、バイクで何をしたいとかがあんまりなかったですね」

 

バイク便で稼ぎまくった日々

――歴代のバイクは?っていう質問も用意して来たんですけど、実家にあったのを乗ってたとか、乗りたかったバイクも特になかったと

 

GARU「そう。アメリカ留学したときはホストファミリーのショベル乗ったりとか、友達のバイクにいろいろ乗ってきたけど、何を歴代のバイクっていうのか……よく訊かれるんですけど、わからないんです(笑)」

 

――GARUちゃんとバイクの馴れ初めはちょっと変わってますしね

 

GARU「歴代のバイクとして覚えてるのは、ちょっと前にニンジャ250に乗ってました。ちょっと古いやつ。そのころバイク便の仕事をしてました」

 

――どうしてバイク便をやってたんですか

 

GARU「ずっと海外にいて日本に帰ってきたときに『バイクに乗りたいな』って思ったけど、東京ってただ停めておくだけでもコストがかかるじゃないですか。あと、仕事をしたら乗らないんだろうなって思ったんです。だから、バイク系の楽しい仕事をしようかなって思ったときに、バイク便の話を聞いたんですね。私が入ってた会社はメンテナンスも全部してくれるし、会社にバイクを置かせたりもしてくれる。めっちゃいいじゃんって、それくらいのノリです(笑)」

 

――趣味と実益を兼ねていたわけですか

 

GARU「GW前とかは、多いときで1日10万とか稼いでたんですよ」

 

――1日10万?

 

GARU「はい。長距離便っていうのがあって、栃木とか群馬とかに行って帰ってきただけで3万4万とか。どうしてもGW前に急ぎの荷物を届けたいけど宅配便は混んでて間に合わないって場合があるんですよ。速いし快適だし、都内走るのも長距離走るのも250のニンジャがちょうどよかったんです」

 

――バイク便は何年間くらいやったんですか

 

GARU「海外と行ったり来たりだったんですけど、所属はいちおう5年くらいしてました。稼いでまた海外に行ったりする、そのスタイルがすごい良くて」

 

――それはいいですね。長距離を走るのはバイク便時代から板についてるんですね

 

GARU「はい。長野にも行ってましたけど往復で500キロくらいなのでぜんぜんって感じでした。今も夏になると週3くらいで大阪に日帰りで行くので。プライベートで」

 

――うーむ(3度目の絶句)

 

MUTTとの出会い

――GARUちゃんはMUTT MOTORCYCLESのアンバサダーをされていますが、どういうきっかけで就かれたんですか

 

GARU「MUTTが日本に来るときに、雑誌の撮影で声をかけてもらったんです」

 

――そこからMUTTカフェ巡り旅がスタートするわけですね

 

GARU「そうです。MUTTカフェって北海道から九州まで30か所くらいあるんです。MUTTを買う人って、バイクよりファッションが好きだったり、周りにバイク乗りの友達が多くなかったり、走りに行くにもどこに行けばいいの?って人たちが多いんです。MUTTを購入したときやオイル交換したときにMUTTカフェのコーヒーチケットがもらえるんで、MUTTに乗ってコーヒーを飲みにカフェに行って、そこで交流したり、情報収集ができる。つながりを増やすためのカフェなんです」

 

――なるほど。全国30か所全部に行かれたとのことですけど、どれくらいでやり遂げたんですか

 

GARU「1か月くらいかな。そんなにかかってないですね。ただ、行ったあとが長いんですよ。1か所に何週間も泊まったりとか、半年くらいいたところもあったかな」

 

――どういうことです?

 

GARU「カフェに行っていろんな話してて、『今日どこのホテル泊まるの』『いや、テントなんですけどちょっと庭貸してもらえないですか』って。そこから庭先を借りてテント張ったりしてるうちに、『部屋の中に泊まりなよ』とか『うち来なよ』みたいな感じで仲良くなって、もう居座るみたいな(笑)」

 

――GARUちゃんならそういうことをやりそうなイメージはありますよ。もともと世界を旅されたときもそんな感じで?

 

GARU「そんな感じですね。風呂敷一個でふらふらしてたっていう。もともとの私の旅スタイルです。私、人生において2つ大事にしていることがあるんです。1つ目が環境をかえること。もう1つは人に会うこと。この2つをすごく重視しています」

 

――旅そのものの魅力とも重なりますね

 

GARU「同じところに留まってしまうと、考え方が凝り固まってしまったりする。人に会えば、いろんな情報がいっぱいある。ネット社会って調べればなんでも情報が出るけど、それはあくまで自分の興味のあることしか調べないじゃないですか。でも人に会ったら、自分が全然興味なかったけど、なんか面白そうなつながりができて、そこからどんどん広がるので、それが楽しいんです」

 

波照間島ツーリングの辛い思い出

――ハードな旅をされていますけど、ツーリングでの辛いエピソードなんかは?

 

GARU「日本でですか?」

 

――じゃあ日本にしましょうか

 

GARU「辛いこと……なんだろう、波照間島の話がいいかな」

 

――ぜひ教えてください

 

GARU「バイク乗りって、日本最北端の北海道の宗谷岬から最南端の鹿児島県の佐多岬まで行きたいって夢があるじゃないですか。でも、そこは本当の最南端じゃないんですよ。日本最南端は沖縄本島から500キロ先の波照間島にあるんです。日本最南端の石碑があるんですけど、私はそこにどうしても自分のバイクを持って行きたかった。でも、沖縄本島から波照間島の間はフェリーがない区間があるので、波照間島では自転車とかバイクをレンタルするしかないんです」

 

――フェリーがないのに、どうやって自分のバイクを?

 

GARU「漁船のおじさんに直談判して乗せてもらいました。固定するベルトもなかったので、ずっと海が荒れ狂う中、バイクを自分で押さえながら。MUTTは重量120キロくらいだから2人いれば持ち上げられるんですよ。で、島の中に入って1日くらいふらふらして、『明日漁が終わってから迎えに来るね』って言われてたのに海が荒れちゃって。そのまま1か月」

 

――1か月? 波照間島に?

 

GARU「はい。荒れちゃって船が出せなくて。島にある商店にも物資が入らないので、食べ物がどんどんなくなってきて、2週間くらいで完全に尽きたんです。そのあとはそのへんにいるカニを食べたり、野生のバナナ食べたり、島のおばあちゃんと仲良くなってサーターアンダギーを食べさせてもらったりとかして、町全部を巻き込んでそういう生活をしました。初めて『帰りたい』って弱音吐きましたね(笑)」

 

――だって島から出られないんですよね

 

GARU「帰りたいっていうのは、飽きたからなんですよ。旅先で生活を確立するまでが好きで、確立しちゃったら飽きちゃうんです。ここにいけばおばあちゃんがサーターアンダギーをくれる、ここにいけば野生のバナナが採れる、ここにいけばカニが食べられる……それがわかっちゃったら安定した生活になるじゃないですか。安定する生活までの過程を楽しむのが好きなので。だから飽きちゃってもう帰りたいと(笑)」

 

――じゃあ1か月、波が穏やかになるのを待っていた

 

GARU「ですね。実は自分だけ飛行機で帰ろうと思えば帰れたんです。東京から『バイクおいて帰ってくれば』ともそそのかされたんですけど、私にはバイクだけおいて帰る気はなかった。自分の体の一部なので」

 

MUTTで世界一周のプラン

――そういえば、バイクでも世界1周するなんて話も聞きました

 

GARU「そうなんですよ、本当は去年から実行したかったんですけど、新型コロナで立ち往生してる感じです。もう国土交通省にも問い合わせて、行ける国とルートをある程度確立してます。韓国から中国に渡り、南下してベトナムやカンボジアなど東南アジアを回って、という感じですね。MUTTで行こうとしているんですけど、ディーラーも東南アジアにもあるのでそこにも寄りながら」

 

――それは大冒険だ

 

GARU「イギリスにも1度寄って、イギリスでMUTTを交換して、違うバイクでもう半分回ろうかなと」

 

――日本からイギリスまでバイクで行くだけでもすごいですが、そこで「半分」ですか(笑)

 

GARU「世界1周をやるんだったら記事を書きながらとか映像を撮ったりとか、どこかに爪痕を残しながらやりたいんです」

 

――爪痕ですか。具体的には?

 

GARU「はい、その地域を変えながら回りたいって思ってます。これまで世界を2周してますけど、はがゆい気持ちになることが多かったんです。たとえば“水道がない地域に井戸を掘ろう”って番組があっても、掘った井戸はその後権力者が奪って金儲けをしている。そういうのを何度も見てきて、何もできなかったんですね。

私は、じゃあ井戸を作るにしても動画でその様子を映しながらクラウドファンディングをその場で始めて、ちゃんと人件費を払って管理できるようにして、ずっと継続的なサービスを作ったりすることをやりたいんです。私の発信力だったらメディアで流せば人も集まると思うし、その状況をリアルタイムで見せながらっていうのは面白いし、社会貢献にもなるじゃないですか。ただ世界を回るだけじゃなくて、視聴者を巻き込みながら、言いすぎかもしれないけど国を変えながら回れたらいいなって思います」

 

――壮大な計画ですね

 

GARU「普通に回ったら、赤道距離でもたかだか2万キロしかないので半年もあればいけますけど、やっぱりいろんな国にいって、みなさんと仲良くなりたいので。これを願望で終わらせたくないんですよ」

 

バイクを「自分の足」と言い切る冒険家・GARU。カスタムしたり磨いたりする寵愛のしかたとはまた違った、バイクへのこだわりや愛情をひしひしと感じることができた。3度目の世界1周はバイクで巡り、各国から刺激的なレポートをしてくれることは有言実行のGARUちゃんなら間違いないだろう。

GS1000は『先輩』って感覚。go!go!vanillasジェットセイヤが語る音楽とバイクの関係性

牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド「go!go!vanillas」。今回はドラムのジェットセイヤさんに愛車GS1000や、バイクと音楽の関係性などについて熱く語ってもらった。

(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)

 

【ジェットセイヤさんのGS1000の画像はこちら】

GS1000との出会い

――この企画では初となるスズキ車、しかも、ヨシムラが1978年の第1回鈴鹿8時間耐久レースで優勝したことで知られるスズキGS1000です。先ほどエンジンをかけてもらいましたが、音がいいですね

 

ジェットセイヤ(以下、セ)「かなり良い音してます。自分はグレッチのドラムを使ってるんですけど、その太さとちょっと似てますね。低重心な感じとか」

 

――「音」とはミュージシャンらしいポイントです。では、セイヤさんとこのGSとの出会いから伺いましょうか

 

「『マッドマックス』が大好きだし、カワサキの空冷Zが欲しいと思って専門店に見に行ったんですね。KZ1000を試乗したんですけど、ちょっとイメージと違うなと思ったんですよ」

 

――その違和感って何だったんでしょう

 

「実は、その前にGSにまたがっていたからかもしれませんね。GSのあのゴツさ、どっしり感がZにはなかった。自分でも何故だかわからないんですけど、GSは“出会っちゃった感”があった」

 

――”出会っちゃった感”ですか、なるほど

 

「昔からの知り合いでもある『君はバイクに乗るだろう』の編集長・坂下(浩康)さんと一緒にバイク探しの旅に出て、川口市のバットモーターサイクルさんでGS1000に出会ったんですけど、見たときにまず『ダース・ベイダーみたいだな』と思ったんですよね。で、タンクに大きく“GS”って描いてあって『なんだこのバイク!?』って衝撃を受けました。タンクも大きくて、Zよりも太い」

 

――購入したのは?

 

「4年くらい前です。結局、Z系もいろいろ比較検討したあと、バットさんじゃなくて絶品輪業さんにあったGSを買ったんですけど、バットの川島さんが『せっかくなら状態いいのを買ってほしい、うちじゃなくてもいいから』と言って頂いて。そんなバイク屋さんほかにないですよね」

 

――自分のお店で買わせたいと普通は思いますよ

 

「そうですよね。絶品輪業さんにあったGSは程度がすごく良かったんで、川島さんにはほんとに感謝してます。購入後すぐGSと報告に行きました」

 

GSは「カスタムしない」と決めた

――1978年ごろのモデルでしょうか、外装やエンジンもとてもきれいです。カスタムやこだわりについて教えてください

 

「納車時から、ハンドルが幅の広いタイプにしてあったのとエンジンガードがついていた以外はノーマルです。マフラーを変えようかと考えたこともあるんですけど、この2本出しがかっこいいからやめましたね」

 

――今後のカスタム予定は?

 

「しないと思います。このままの状態が一番かっこいいと思うのでキープしていきたいですね。もしカスタムしたくなったら、カスタムしている方のバイクを見て楽しみます」

 

――ちょっと意外です。セイヤさんといえば、革ジャンとかヘルメット、楽器にもペイントしたりと、何でも自分色に染めちゃうイメージです

 

「そうなんですけど、GSはイジっちゃいけない気がしてるんですよ。関係性でいうと、『先輩』って感覚なんですよね。自立しているオートバイって感じがするんで、手を入れるのは違うなと」

 

――あえてノーマル状態をキープしているセイヤさんのGSですが、お気に入りのポイントは?

 

「さっき話したとおり、まずこの上から見たときのタンクの太さですね。それとテールランプの角張った感じ。丸みと角張ったデザインのバランスがいいなと思います。タンクからテールへのライン、大きめなウインカーも、スターキャストホイールも、全部気に入ってますね」

――スタイリング以外の部分ではどうでしょう

 

「走っているときの安定感ですね。GSに乗り出してすぐのころ、ふと思い立ってどこまで行けるか走りに出たんですけど、朝出発して、あっという間に名古屋まで着きました。そのとき、GSにして良かったなって思いましたね。大きいんですけど、意外と軽やかで乗りやすいんです」

 

――これまで故障やトラブルなどは?

 

「一度だけですね。家から出発して数分後、高速乗る前にクラッチ板が割れて、クラッチスカスカになって、どうしようもなくなって、路肩に停めました。すぐお世話になってるFUNTECHさんに電話して修理してもらいました。それ以外のトラブルはないですね。もともとがいい車体だったということもあるんでしょうけど、かなり調子いいです」

 

――トラブル少ないですね、素晴らしい

 

「先輩たちから、『旧車を買うときは妥協しちゃいかんよ』『金額がちょっと高くても状態いいのを買ったほうがいい』と聞いてましたから」

 

――妥協しなかったから、いい1台に出会えたのかもしれませんね

 

「あと、基本的な整備はぜんぶFUNTECHの(北川)譲二さんにおまかせしてるんですけど、自分のバイクの調子を知ってくれているいいメカニックさんがいるって点でも安心です」

 

バイクに乗ったきっかけ

――続いてバイク歴について教えて下さい。まず、バイクに乗ろうと思ったきっかけは?

 

「親父がバイクやクルマが好きで、その仲間もみんなバイクとか音楽が好きだったのでその影響はありますね。ロックンロールを聴き始めるとバイクってリンクしていくじゃないですか。それが自分のバイクのルーツですね。16歳になったらバイクの免許取ろうと思ってましたし、小学校の卒業文集に『グレッチのドラムを叩いて、革ジャン革パンで、バンドで全国回って、バイクはZ400FXが欲しい』って書いてるんですよ(笑)」

 

――いいものが分かる小学生だったんですね(笑)。

 

「そのあたりの夢が全部叶ったんですよね、10年後ぐらいに。ずっとその生き方してたので」

 

――どうしてZ400FXだったんですか

 

「師匠でもあるし、一番好きなドラマー・中村達也さんが当時Z500FXに乗っていて、バイク雑誌の表紙に写真が出てたんです。それを見て『バイク買うならFXでしょ』と。その後、実際にFXにまたがったんですが、思ってたより車体が細くてイメージと違いましたね」

 

――小学生でBLANKEY JET CITYとか中村達也さん、FXが好きって相当早熟ですよ

 

「そうですね。実際にライブハウスも観に行ってたので、かっこよさも身に染みて感じてました。中学の時は近所の人に譲ってもらったスーパーカー自転車を改造して乗ったり、小学生の時は親父の現場で拾ったパイプを自転車に針金で取り付けてマフラーに見立てたりとかしてました(笑)」

 

――シブいエピソードには事欠きませんね(笑)。で、高校卒業後に上京されたんですよね

 

「仕事しながら千葉に住んでました。バイクの免許は、高校が厳しかったので卒業したあと、上京する1週間くらい前に取りに行ったんですけど卒検で落ちちゃって、上京後に幕張の運転免許試験場で一発試験で取りました。免許取ったあと、千葉に父親のバイクを送ってもらったんですけど、それが浅井健一さんが乗ってるXS250“サリンジャー”のレプリカ(親父制作)で。ちなみにエンジンも400に積み替えてあります」

 

――浅井さん、BJCのファンに“サリンジャー”は有名ですね。バイクを送ってくれるなんて、いいお父さんだなぁ

 

「でも、せっかくバイクを手に入れたのに、そのころは仕事が忙しすぎて休みもほぼなかったからあまり乗れませんでしたね。一緒にバンドやっていたゼファー乗りの友だちと週末に木更津あたりを走ったりとか、そんな感じでした」

 

――千葉は走りやすいのに残念でしたね

 

「むしろ今、千葉には走りに行きたいです。結局サリンジャーレプリカは18歳から、go!go!vanillasをやりはじめる22歳ごろまで乗って、地元に送り返しました。やっぱり父が作って乗っていたお下がりだったし、大事なバイクすぎて“自分のバイクではないな”って感覚がありましたね」

 

もう1台の愛車・スズキK90について

――サリンジャーレプリカを送り返したあとはどうなったんでしょう

 

「その後、バンドが忙しくなって都内に引っ越して来て、今も乗っているスズキK90をネットオークションで買いました。見つけたときは、『安いし、かっこいいし、これしかない!』って感じでした。落札価格は5万円だったかな。出品していたのはK90を数台持っている方で、一番調子いいのを譲ってくれました」

 

――K90マニアのお墨付き(笑)

 

「その時は、自分のバイクを手に入れたことがうれしかったですね。それが7年くらい前ですけど、K90は今でも毎日乗ってますね。小回りがきくし、荷台があるから機材も積める。あとかっこいいんですよ、レトロで。特に前から見たアングルが好きです」

 

――GS1000とK90とを乗りわけてるわけですね

 

「GSは用事で乗っていってその辺にちょっと停めておくってわけにはいかないですからね。スタジオ入るのに乗ってっちゃったら、いたずらや盗難が気になっちゃって集中できないですね。普段も倉庫に入れて保管してます」

――先程お邪魔してきましたが、いいガレージでしたね

 

「バイクと、楽器を入れてます。バイクは大事にしたいんで、倉庫に入れておかないと不安なんですよ。雨に濡らしたくないし、盗まれたくない」

 

――徹底してるんですね。倉庫でメンテナンスやカスタムなどもするんですか?

 

「そうですね。K90を一度バラしてフレームを塗ったことがあります。あとは、レコーディングしてます」

 

――まさにガレージロック!

 

「音が漏れちゃうんで大変です(笑)」

 

――壁に飾ってあるのは?

 

「僕がスネアのヘッドに描いた絵です。オーダーを受けてヘルメットにも描いています」

――セイヤさんは個展も開かれてますもんね。そういえばガレージにはもう1台、白いベスパも停まってましたが

 

「Vespa100ビンテージですね。K90と併用して普段乗りとして使ってます。スピードも出ないし、ブレーキもあまり効かないので遊びでって感じで」

 

――ベスパとはどういった出会いが?

 

「もとはレコーディングエンジニアさんが持ってたやつで、スタジオの軒先でずっと雨ざらしになっていたんです。新しいバイクを購入されたようだったので、その流れで自分が引き取りました。全塗装しようかなと思ったんですけど、ヤレた感じがいいのでそのままにしてます。GS1000やK90は“先輩”という感じですが、ベスパは“友だち”という感じですね」

 

ツーリングについて

――セイヤさんはどういった時にバイクに乗るんですか?

 

「K90やベスパは普段の足として乗りますし、GSはツーリングとか、遠出する時によく乗ります」

 

――ツーリングはどのあたりに?

 

「逗子に行くことが多いですね。坂下さんと一緒に」

 

――逗子にお目当てがあるんですか?

 

「“魚平商店”とか“808cafe10R”さんに行くのが定番です」

 

――魚平商店は、バイカー弁当で有名ですよね

 

「ですね。808cafe10Rさんには、自分が絵を描いたヘルメットも販売してもらってます。スパイスカレーがオススメです。いつか北海道とか行ってみたいですね。あとは四国もいいなと思うし、地元の九州も最高だし」

 

――バイクに乗っているときに、音楽的にインスパイアされたりするんですか?

 

「GS乗ってるときにできた曲って結構ありますね。思いつくんですよね、なんでかなぁ……テンション上がるからじゃないかな。単純に、バイク乗って走るだけでテンション上がってます。高速とかだと特に、『今これ、ハンドルから手を離したら死ぬな』っていう、デッドラインとともに走る“死ぬか生きるかの瀬戸際”感が、自分のなかに何か生み出すんでしょうね。GSは特にそういう感覚があります」

 

――バイクとセイヤさんの音楽性に共通点はあったりするんですかね

 

「自分の音楽性とマッチする部分はあるんじゃないかと思いますね。加速する感じとか。エンジン音がビートに聞こえてきます。グレッチのドラムとGSに感じた共通点として“太さ”がありましたけど、ホンダのバイクはPEARLのドラムのベーシックさに近いなとか、ヤマハはやっぱりヤマハのドラムの安定感を感じるし…とか。こういうこと話すやついないですよね(笑)」

 

――ドラマーらしい観点がすごくいいですよ

 

「『GS A GO!GO!』って曲を作ったんですよ。逗子にツーリングするそのまんまの歌詞なんですけど、それにエンジン音入れてふかしてます」

 

――ギターウルフの『環七フィーバー』的な

 

「そうですね。次はベスパの曲も作ろうと思ってます」

 

今後について

――GSとK90、ベスパで乗りわけも安定してる感じですが、今後欲しいバイクはありますか?

 

「いま250くらいのバイクが欲しいですね。カワサキのZ-LTDが好きなんですよ、アメリカンぽいモデル。あとZ200とかもいい。いずれにしてもバイクは増えそう。GSやK90を手放すことはないです」

 

――GSとK90へのほれ込み具合をうかがっていると、ジェットセイヤさんはスズキ党だと確信するところです。実際のところはどうですか?

 

「K90に乗ってたときも特にスズキのバイクって意識はなくて、GSを買ってからですね、スズキのバイクが持ってる“スズキらしさ”に気づいたのは。自然に魅了されてますね」

 

――具体的にどういうところが?

 

「スズキのバイクはスタイリングにどっしり感があると思うんですよ。小さいオートバイでも大きく見える。自分は『湘南爆走族』も好きなんですけど、登場するバイクで目が行くのはGS400、GT380とか、自然にスズキ車に目が行ってます。サンパチのテールランプとかね、好きなんですよ」

 

――俳優の舘ひろしさんが『西部警察』で乗っていた刀も昔からお好きだとか?

 

「そうなんですよ。考えてみたら刀もスズキですね。何かもともと惹かれるものがあったのかな。親父がZ750RS(Z2)とCB750Fに乗ってるんで、カワサキとホンダは身近にあったんですけど、GSを買うときは、そこにスズキ車が加わるという新鮮さは自分の中にあったんでしょうね。それに、ZやCBほど乗っている人も多くないので、そこもいいなと思ってます」

 

――イラストではハーレーも描かれていますけど、ハーレーは?

 

「欲しいですけど、抑えてます(笑)。乗ってみたいし、カスタムしてみたい形もあるんですけど、置き場の問題もありますから。でも、やっぱりGSに乗っている自分が一番しっくりきますね、日本男児なんで」

 

――GSはほんとに愛着を持ってるんですね

 

「ここまで深くなると思わなかったですね。最初は、こんなでかいの乗り回せるかな、でか過ぎんかなって気持ちもあったんですけど、それは自分の中で挑戦でもあった。出会いは直感でしかなかったですけど、GSにしてよかったって思います。自分、これって決めたら愛着がわくタイプなんです」

 

 

「ミュージシャンになる」という想いを一途に追いかけ実現した、かつてのロッケンロー少年。その一本気な性格はバイクとの付き合い方にも現れているようだ。若きGS乗りジェットセイヤ、かっこいいぜまったく。

 

【profile】

go!go!vanillas

牧 達弥(vo/g)、柳沢 進太郎(g)、長谷川プリティ敬祐(ba)、ジェットセイヤ(dr)の4人からなる新世代ロックンロール・バンド。さまざまなジャンルを呑み込んだオリジナリティ豊かな楽曲で聴く人を魅了し、ライヴでは強烈なグルーヴを生み出す。音楽ルーツへのリスペクトにとどまらず、常に変化・革新をし続けている。

2022年3月16日より全国11公演の「青いの。ツアー 2022」を開催。同月30日にはニューシングル「青いの。」のリリースを予定している。

【公式HPはこちら

 

<青いの。ツアー 2022>

3月16日(水) Zepp Haneda w:Saucy Dog

3月17日(木) Zepp Haneda

3月24日(木) Zepp Nagoya w:SHES

3月25日(金) Zepp Nagoya

4月9日(土) なんば Hatch

4月10日(日) なんば Hatch w:フレデリック

4月16日(土) BLUE LIVE 広島

4月17日(日) 高松 festhalle

4月22日(金) 仙台 GIGS

4月24日(日) Zepp Sapporo

5月5日(木・祝)  大分 iichikoグランシアタ

発売日が待ち遠おしい! 中型二輪免許で乗れるロイヤルエンフィールド「メテオ350」!

バイクブランドの名門「Royal Enfield(ロイヤルエンフィールド)」は10月13日、クルーザーモデル「Meteor 350(メテオ350)」を日本市場に導入すると発表しました。発売日は今のところ未定ですが、グレード構成は3グレードで、価格は59万6200円~62万2600円(税込)になります。

 

モーターサイクル専用のナビゲーション「Tripper」を初導入

ロイヤルエンフィールドは、最初のモーターサイクルを製造するメーカーとして、1901年に英国で誕生した世界最古のモーターサイクル・ブランドです。現在はインドの自動車メーカー、アイシャー・モーターズの一部門となっていますが、インドとイギリスに設計・開発を行うテクニカルセンターを構え、生産拠点は南インドに2か所。年間の生産台数は約70万台に達し、世界60か国以上に790以上の販売拠点で展開中です。日本でもPCIが輸入総代理店契約となって15店舗で販売を行っています。

↑ロイヤルエンフィールドは1901年、英国で誕生した最古参の2輪メーカー。現在は生産拠点をインドに移している

 

↑英国ブランティングソープにあるロイヤルエンフィールドのテクニカルセンター。取り扱う製品ラインアップは単気筒もしくは2気筒の250~750ccという中排気量~大排気量車が中心

 

↑アジアでは日本だけでなく韓国やタイ、オーストラリア、ニュージーランドなどで展開中

 

そのロイヤルエンフィールドが新たに日本で展開するのが、メテオ350です。このモデルのエンジンはロングストロークのSOHC単気筒エンジンの349cc。日本に導入されているロイヤルエンフィールドで唯一の中型(普通)免許で運転できるモデルとなります。

↑日本市場向けにローンチされるロイヤルエンフィールド・メテオ350。写真は海外仕様

 

↑ロイヤルエンフィールド・メテオ350のもっともベーシックな「ファイヤーボール」。写真は海外仕様

 

太い低速トルクによるスムーズな扱いやすさと電子制御式フューエルインジェクション用による安定したフィーリングを合わせ持ち、765mmという低めのシートから生まれるライディングポジションはより多くの人が気軽に乗れる「イージーさ」を実現。その一方でロイヤルエンフィールドらしい鼓動感も維持。“中型二輪免許で乗れる外国車”として魅力たっぷりの一台に仕上がっているとしています。

↑メテオ350はシートを765mmと低めに設定したことで多くの人が気軽に乗れるライディングポジションを生み出した

 

ロイヤルエンフィールドとしては初めて、モーターサイクル用のナビゲーションを搭載したのも大きな特徴です。同システムは「Royal Enfield Tripper(ロイヤルエンフィールドトリッパ―)」と名付けられ、Google マップをベースとしたナビゲーション機能を活用します。スマホにインストールしたオリジナルアプリをBluetoothで連携させることで、メーター右側にあるディスプレイ上でターンbyターンのガイドを実現しているのです。

↑メテオ350のメーターパネル。右側がナビゲーション機能を司る「Tripper」

 

↑TripperではスマホとBluetooth接続することで“ターンbyターン”のガイドが受けられる

 

ラインナップは3グレード。長距離から市街地走行まで最適な走りが楽しめる

ラインナップされた3グレード中、もっともベーシックなのが「ファイヤーボール(FIREBALL=火球)」で、燃料タンクを単色としてマフラー/フェンダー/サイドカバーをブラックで仕上げ、さらにホイールリムを車体と同色にしています。価格は59万6200円(税込)。

↑メテオ350・ファイヤーボール

 

ミドルグレードの「ステラ」は、カラーリングを統一したタンクとボディパーツ、クローム仕上げのハンドルバーとエグゾーストで身をまとい、リアには快適なバックレスト(シーシーバー)を装備しました。価格は、60万8300円(税込)。

↑メテオ350・ステラ

 

最上級の「スーパーノヴァ(SUPERNOVA=超新星)」は、ステラの装備に加えてブラックとのツートーンで統一されたタンクとボディパーツを施し、削り出しのホイールやプレミアムシート、バックレストとウインドスクリーンを装備します。価格は、62万2600円(税込)。

↑メテオ350・スーパーノヴァ<フロント>

 

↑メテオ350・スーパーノヴァ<リア>

 

メテオ350の日本導入に際し、アイシャー・モーターズのマネージング・ディレクターのシッダールタ・ラル氏は、「これまで我々は、経験豊富なライダーだけでなく、バイク初心者にも素晴らしいクルージング体験を提供できるモーターサイクルを開発しようとと考えていました。メテオ350はまさにそれを体現したモデルで、長距離のツーリングから市街地走行まで最適な走りが楽しめるモデルとなっています」とコメントしました。

 

日本の二輪市場は、コロナ禍による「三密」を避けようと公共交通機関に代わる通勤や通学の移動手段として販売が好調です。一方で趣味性の高いリベンジ需要として熟年世代による輸入車など高級モーターサイクルの販売も堅調とも伝えられています。これまでロイヤルエンフィールドは大型二輪免許でなければ乗れない大型モデルだけをラインナップしていましたが、メテオ350の投入により新たなロイヤルエンフィールドのユーザーを広げるのは間違いでしょう。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると拡大表示されます)】

「Zに乗ってると気合が入る」つるの剛士が、みんなに教えたくなるバイクの楽しさとは?

バイク王のCMでもおなじみのつるの剛士さん。当然ながらバイクへの愛も深く、現在はZ900RSのほかにもドゥカティ400SSジュニアなど6台を所有。そんなつるのさんに、Z900RSのカスタムからバイク業界の中での自分の役割など詳しく伺いました!

(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)

 

【つるのさんのZ900RSの画像はこちら】

●つるの剛士 1975年5月26日福岡県生まれ。藤沢市在住 。「ウルトラマンダイナ」のアスカ隊員役を熱演した後、2008年に“羞恥心”を結成しリーダーとして活躍。将棋・釣り・楽器、サーフィン・野菜作りなど趣味も幅広く、好きになったらとことんやらなければ気が済まない多彩な才能の持ち主。 二男三女の父親。

 

Z900RSのカスタムポイント

――つるのさんのバイクといえば、このZ900RSですね。出会ってどれくらいになりますか

 

つるの 2年弱ですね。僕はこのZ900RSが初めての大型バイクなんですよ。車とかバイクで旧車に乗ってきた経験から、部品が出てこないとか、出先で壊れるとかのトラブルに懲りちゃってまして。そのストレスで、大型バイクを嫌いになったらイヤだなと思って、初めての大型バイクは現行車にしようと。

 

――でも、やっぱり目指すのは旧車のスタイリング?

 

つるの 旧車のZは大好きだし、ずっと憧れてましたからね。だから、僕は『シン・ゴジラ』ならぬ『シン・Z』って呼んでるんです(笑)

 

――拝見するとかなり空冷Zの雰囲気に近づいてます。一番目立つのはこの4本出しマフラーですね

 

つるの ドレミコレクションさんの車検公認マフラーです。ショート管とどっちにしようか迷ってたんですけど、やっぱり大人は4本出しでしょう!と。

 

――ホイールも変えてらっしゃいますね

 

つるの ホイールは、昔のモーリスマグの復刻。もとは17インチなんですけど、インチアップして18インチにしてます。これだけでぜんぜん変わりますね。

 

――確かに、全体のまとまり感がぐっと旧車に近づきます

 

つるの みんな、自分のZ900RSの写真を送ってきてくれるんですけど、『何か、つるのさんのと違う。つるのさんのZみたいにならないんですけど、どうしてるんですか』って聞かれるから、『いや、タイヤ変えたほうがいいですよ』と(笑)

 

――旧車の雰囲気に近づくポイントはホイールのインチアップですか

 

つるの あと、変えたほうがいいのはリアのカウルですね。カウルごと変えて、テールランプをちょっとだけカウルから出して見せるんですよ。

 

――細かい!

 

つるの 出すか、見えないようへこませるかどっちか迷ったんですけど、『これは出しでしょう!』と思って。

 

――そういう細かい箇所の調整がされてるんですね

 

つるの Zって、ちょっとしたことでスタイリングが壊れるんですよ。パーツを少しズラしただけで。だから、すごく秀逸なデザインだってことでしょうね。

 

――市販パーツを買って取り付けただけでは、つるのさんのZのようにはならないってことですか

 

つるの タンクやサイドカバーのロゴも古いエンブレムにしてあるし、空冷Zに間違えられることもありますよ。話しかけてきたおっちゃんが間違えてて、『これ現行車なんです』って言ったら『え? あ、ほんとだ!』とかね(笑)

 

ドレミコレクションとの出会い

つるの もともと、自分でデザインしていたカスタムの完成イメージ画があって、そのまんまになったんですよ。これなんですけど(スマホでイメージ画を見せてくれる)。

 

――これは、AMAスーパーバイクに出たヨシムラZ1を彷彿とさせますね

 

つるの あと残ってるのは細かいところ、タンクとか、シートとかですね。それ以外は、もう変えるところがない。とにかく、ドレミコレクションには必要なパーツが全部あるんですよ。

 

――ドレミコレクションさんは、Zのスペシャリストとして有名ですね。じゃあ、つるのさんが考えていたスタイルに一気に近づいたのは……

 

つるの ドレミコレクションさんと出会ったからですね。パーツが全部あるから、相談して『じゃあこれにしちゃってください』って感じです。あとは担当の藤野さんの調整があるからできたんですね。

 

――ドレミコレクションの藤野さんは、YouTube『乗るのたの士』にもよく登場されていますね

 

つるの Zマニアの藤野さんに任せてます。僕の意向を全部伝えて、『なるほど。はいはい、これはこうでしょ、こうでしょ』って、ズバリそのパーツが出てくる。

 

――理想的なメカニックですね、藤野さんは

 

つるの ひとつ迷っているのはリアサス。どうしようかと思って。

 

――つまり、今付いているリアサスをカスタムするんですか

 

つるの そうじゃなくて、旧車のZと同じようにリアサスを2本に見せるダミーのサスがあるんですよ。

 

――なんと! そういうパーツがあるんですね

 

つるの そうなんですよ。確かにスタイルは近くなるけど、ダミーでしょ? って。ちなみに藤野さんのZ900RSはオーリンズを付けてるんですよ、本物の。

 

――ダミーとして、ですか?

 

つるの そう。ダミーなんだけど本物なんです(笑)

 

――どうです、リアは2本サスのほうがキマってるって思います?

 

つるの うーん、たしかにそう思います。でも、ないのはないで好きなんですよ、スッキリしてて。なんか、あのリア周りのシュッとした感じに、仮面ライダー感があって。

 

――いずれにしても、もうカスタムのゴールは近いってことですね

 

つるの 費用的にはバイク2台分かかっちゃいましけど(笑)、最初に思い描いたテーマ通りになってるし、これ以上やりすぎないでおきたいですね。

 

ずっと抱いているドゥカティへの憧れ

――Z900RS以外にも、いろんなオートバイを所有されてますよね

 

つるの スクーター、旧車、このZと、オフ車。全フィールドに行けます(笑)

 

――今、合計何台お持ちなんですか

 

つるの 何台かな……カブ110、ランブレッタV200、ドゥカティ400SSジュニア、WR250R、セロー250にZ900RS。6台ですね。

 

――ドゥカティは20年以上所有されてるんですよね

 

つるの そうです。中免を取ってホンダ・フュージョンに乗ってたんですけど、単車に乗りたいと思って買ったのがドゥカティ400SSジュニアです。僕、どうしてもドゥカティが欲しくて。

 

――なにか思い入れがあるんですか

 

つるの 僕のバンドのドラムが、ロケットカウルの古い900SSに乗ってたんですよ。それがもうカッコよくて。ガチャガチャ~って、すごいエンジン音を立てて練習スタジオに来るんですよ。しかも、途中で壊れちゃって、毎回練習に遅れてくるんです。それでもカッコよかった。

 

――1970年代後半ごろの900SSのスタイルと音はたまりませんね

 

つるの それを見て僕も、もう欲しくてしょうがない。ただ大型だし、買うにも手が出ない。でもどうしてもドゥカティが乗りたいと思って中古屋さんに見に行ったら、この400SSがすっごく安かった。たしか30万くらいだったかな。これなら手が出るぞと思って買っちゃいました。

 

――カジバ傘下時代のドゥカティのスタイルっていいですよね

 

つるの 僕、あの時代のドゥカティが好きなんですよ。スタイルも、音も。一度モンスター400と、かけもちして乗ってたんです。ところが、モンスター400にぜんぜん面白さを感じなかったんです。

 

――それはなぜでしょう

 

つるの モンスターは、なんというか“いい子”すぎちゃって。音もお上品に感じた。昔のドゥカティのあのガチャガチャガチャ!っていう感じが自分には合ってるんだなって思いましたね。クラッチは重いし、エンジンもかからないし、気にさせてくれるんですよ。

 

――そんなところがまた……

 

つるの かわいいんですよ。不器用さがね。腹が立つときもあるんですけど、かわいいんです。ほんとに難しいところですね。いい子ちゃんだからいいってわけでもない。

 

――それが旧車の魅力かもしれないですね

 

つるの どっちを取るかですよね。だから旧車と現行車の2台あるのが一番いいんです、ホントは。

 

――ということで6台になってしまった(笑)

 

つるの (笑)。あとドゥカティだと、2000年に限定で出たMH900e、あれがどうしても欲しかったんですけど、そのときは手が出なかった。実は、あれからずーっと憧れてるんです。

 

――MH900eは一度見たら忘れないほど、デザインが尖ってましたね

 

つるの そうそう。次に手に入れるのはホンダのアフリカツインとか、アドベンチャー系のバイクもいいなと思うんですけど、そういうバイクに乗ったら快適すぎて『もうこれでいいや』ってなりそうで怖いんですよね。僕の大型バイクライフもこれからなので、まだ尖っていたいなと思ってます。

 

5歳の息子がバイクレースにデビュー

――ランブレッタV200もお持ちだとのことですが

 

つるの 息子と乗るときはランブレッタですね。タンデムベルトをつけて乗るんですけど、背もたれが付いてるんで、息子が寝たときでも安心なんですよ。

 

――息子さんはバイクに乗るのがお好きなんですか

 

つるの ええ、息子は5歳なんですけど、今度バイクのレースに出るんですよ。

 

――レースに? それはすごいですね

 

つるの 電動バイク『ヨツバモト』のレースなんです。Instagramでも上げてるんですけど、本人もノリノリで。

 

――バイク乗りのDNAが遺伝してますね(笑)。それは、つるのさんの方から始めようと?

 

つるの バイク王さんでCMをやらせてもらった関係で、バイクライフを親子で楽しめるような活動をしようとうことで『パパツー』って企画をたてたんですよ。その中でいろいろ調べているときに、ヨツバモトさんと出会いました。『乗るのたの士』でキッズバイクの動画を撮ったときに、1台置いていってくれたんですよ。それに息子がハマっちゃって、もう乗り倒してます。4歳のころから乗ってますから、めちゃくちゃ速いんですよ。坂道からノンストップで走ってくるんです(笑)

 

――子どもは吸収するのも上達も早いんですよね

 

つるの バイクは全身を使うし、動体視力も自然に使ってます。あと、何より親御さんたちの心配が消えるというか、子どもたちがあれだけ楽しそうにバイクを楽しんでて、転んだとしても自分で起き上がってくる。ああいう姿を見ると、余計な心配をしなくても子どもはもう自立してるって感じると思うんですよね。

 

――たしかにそうですね。親が思う以上に適応しますね

 

つるの 子どもの成長を感じるのに、バイクは一番手っ取り早い入り口だと思うんですよ。息子には自転車より先にバイクに乗せちゃったので、5歳の誕生日に自転車を買ってあげたんですけど、息子が『自転車のほうが乗るのが難しい』って(笑)

 

――(一同笑)そんな特殊な事情、聞いたことないですよ!

 

つるの 世の中の親御さんって、どうしても『子どもがバイクに乗るのは危ない』っていう意識があるじゃないですか。でも、僕なんかは昔から子どもとカブでキャンプに行ったりしていたので、いい思い出がたくさんあるんですよ。

 

――たとえば、つるのさんの息子さんや娘さんが、オートバイに乗りたいって言ったら……

 

つるの ぜんぜんOKです。僕のドゥカティをそのまま譲ります。実際、長男には譲るつもりです。僕の奥さんが長男をご懐妊したときも、実はドゥカティに乗ってるときだったんです。だから、実質“3ケツ”してたんですよ。その子が免許取ってそのバイクに乗るって最高じゃん!って思います。でも、ひとつ言っておきたいのは『お前、これ絶対に乗りこなせないぞ。クラッチの重さ舐めんなよ』と(笑)

 

――素敵な計画です(笑)。バイクは安全策を講じれば最高に楽しい乗り物ですしね

 

つるの 僕も若いころいっぱい転んだけど、やっぱり楽しい思い出しかないですもんね。

 

ツーリング、バイク仲間について

――ツーリングにはどのあたりに行かれるんですか

 

つるの 藤沢からだと、南箱根の『バイカーズパラダイス』までがちょうどいい距離なんです。1時間くらいだし、コーヒーを飲みに行くのにぴったりですよ。

 

――このあたりだと、海も山も近くていいですよね

 

つるの あとは、海沿いの134号線を走って、平塚のあたりによく行くレストランがあるんですけど、そこまで走って休憩して帰ってきたり、小田原にすごく美味しいラーメン屋さんがあるんで、そこに行くとかですね。

 

――そういうときって、バイクはどれで?

 

つるの Z900RSです。やっぱりZはよそ行きという感じで、乗ってると気合が入るんですよ。

 

――他のオートバイよりも?

 

つるの はい。走ってるのを見かけた方が声かけてきますから。常に緊張しておかないと、発見されると『つるのさーん』って声かけられますしね。僕は、バイクは『走る名刺』だと思っているので。

 

――バイクは走る名刺、ですか。なるほど

 

つるの バイクはライダーの個性が出る、いわばモビルスーツじゃないですか。このZを見たら、みんな僕だってわかりますからね。

 

――たしかに趣味趣向や個性が、車種やカスタムに現れますね

 

つるの Zに乗ってると、みんなが声かけてくださるし、『ステッカーください!』って言われます。だから、いつもステッカー持ってないと。あ、これどうぞ(スタッフにステッカーをくれるつるのさん)。

 

――ありがとうございます(笑)。ちなみに遠方へのツーリングは?

 

つるの 伊勢神宮に行きましたね。ドレミの藤野さんと2人で、真冬に。晴れてたんですけど風が強くて寒かったですね。あまりに寒いんで、藤野さんが途中で自転車用のハンドルカバーを買ってました(笑)

 

――藤野さんもですが、バイク仲間ってどういった方がいらっしゃるんですか

 

つるの 俳優さんだと、木下ほうかさんとか。たまにこっちに来て一緒にコーヒー飲みに行ったり、僕のツーリングにも来てくれますね。

 

――木下ほうかさんはこの連載にもご登場していただいてます。そういえば、たしかつるのさんの妹さんもライダーだとか

 

つるの 妹もこの前、ヤマハのビラーゴを買ってました。僕のまわりにはライダーが多いんですよ。日本テレビのアナウンサーの滝(菜月)ちゃん、久野(静香)さんとか。バイク王さんのおかげで、バイク界のいろんな方と知り合いになりました。メディアの方から、ミュージシャン、格闘家、芸能人、アナウンサー、芸人さん、YouTuber、オンオフのライダーさん。ホットロッド系の方もいます。ほんとノージャンルで、『楽しきゃいい!』みたいな。

 

――「楽しきゃいい!」の掛け声で人を集めるのって、実際はなかなか難しいんじゃないですか

 

つるの 僕が天然だからだと思いますよ(笑)。天然で行けるし、強い“こだわり”があるわけじゃないので。もともと僕自身、仕事柄がそうじゃないですか。俳優でもないしミュージシャンでもない。そもそも肩書きがない。なんでもありなんです(笑)

 

バイク業界の「つなぎ役」に

――お仕事のフィールドに、バイクを持ってこようと思ったきっかけとかはあったんですか

 

つるの 10年くらい前かな、バイク王さんのイベントに僕のドゥカティで行って、ツーリングしたんですよね。それからのつながりで声をかけてくださって、そこからですかね。でも、特に意識はしてなくて、自然と今のようになった感じです。

 

――先程伺った『パパツー』など、バイク王さんがバイク文化を作ろうとしているのってすごいですね

 

つるの そう、だからオフロードの人たちも、レーサーの人たちも、みんなそこでつながったんですよ。去年、『乗るのたの士』でイベントをやって、ごちゃまぜでライダーをみんな集めたんですよ。オフロードで土しか走ってない人がサーキットを走ったりして、すっごい面白かったんです。

 

――参加したライダーさんたちには貴重な機会になったでしょうね

 

つるの バイクって一言で言ってもいろんなタイプのバイクがあって、オフはオフ、SS(スーパースポーツ)はSSって棲み分けがあるじゃないですか。僕は全部が楽しいから、みんな知り合いになって“つなぎ役”をしていったら、そんなことになりました。

 

――こだわりがない、つるのさんだからできる“つなぎ役”なんですかね

 

つるの 僕、昔から思ってたことがあって、バイク好きな人ってこだわりがあるのはいいんですけど、こだわりが強すぎると、世界が狭くなってしまうじゃないかなと。僕は純粋にバイクが楽しければいいし、これじゃなきゃダメだっていう、そういうのは必要ないかなって思ってたんです。こだわりがあることが、バイクの良さでもあるんですけどね。

 

――つるのさんが、棲み分けという間仕切りを取ってしまおうと

 

つるの それも別に狙ってやってるわけじゃなくて、ピュアに『バイクに乗るの楽しいよね』って言い続けたらそうなった感じです。だから……バイク業界って狭いなって思いました。

 

――というと?

 

つるの 変な話ですけど、こんな自分ですら、いろんな人をくっつけたりできるわけじゃないですか。なんで今までバイク業界の方がやってこなかったのかなって。僕でもできるのに、と思ったんですね。

 

――それが“狭さ”に感じたと

 

つるの もちろん、みんなバイクが大好きだし、“こだわりを持ってることがこだわり”なんだろうなって思います。こだわっていくなかで、自分の好きなジャンルを深掘りしてくって面白さはあるんですけどね。横につながっていくと、もっと楽しいんじゃないかなぁ。

 

マニアックな世界の面白さを世の中に伝えたい

――バイクもそうですけど、つるのさんって趣味全部で深掘りしていってないですか?

 

つるの 全部そうしたくなってくるんですよ。僕の父親が59歳で早死にしたんで、僕は“太く短く”の人生だと思ってるんですよ。だから、楽しいことを全部やって、最後はもう『つるの剛士はめっちゃ楽しかったな、だからもういいや。来世頑張ろう』って感じで死ねたらいいなと思ってます。

 

――そういう人生哲学をお持ちなんですね。だから面白そうだなと思ったことは……

 

つるの 全部やる。将棋もそうです。バーっと入り込んで、将棋の世界ってこんな感じなんだー面白いなーって。僕が天然ぶっていろんなことやると、面白がって業界のほうも乗っかって来るんですよ。将棋も、『藤沢でタイトル戦やりませんか』なんて話していたら、今年来たんですよ、遊行寺で女流のタイトル戦が。『やったー!』って。

 

――それはすごい

 

つるの もうひとつ、自分がハマったことの裾野を広げたくなってくるんですよね。マニアックな世界ってどれも面白いじゃないですか。そこにいる人たちもみんな面白い。こんなに楽しいぜっていうのを、みんなに教えたくなってくるんですよ。それが結果として仕事になってるってこともあるんですけど。

 

――でも、マニアックな世界って閉ざされているじゃないですか。そこに入っていくのって勇気いりませんか

 

つるの 『なんでお前みたいなやつが入ってくるんだよ』っていう“大気圏”みたいなものがあるんですよ、全部の世界に。そこに入っていくのが好きなんです。そこにいかにして馴染むかってのが大事ですね。馴染むと、もうこっちのものです。

 

――そういうのをつるのさんがご自身で楽しんでいらっしゃる

 

つるの はい。どの世界も全部そうですけど、ある程度の知識や技術が伴わないと認められないんです。『ちゃんとこの人、好きなんだ』って思ってもらえないと、仲間として受け入れてくれない。でも僕はそこまでのめり込んじゃうので、みんな認めてくるんですよ。

 

――カッコだけじゃなく、仲間認定されるレベルに達するくらいにハマる。そうやって趣味を広げていかれてるんですね

 

つるの そうです。どの世界も魅力があるんですよ。

 

バイクとは、「自由」そのもの

――最後になりますが、つるのさんにとってバイクとは?

 

つるの そうですね、バイクとは『自由』ですね。行きたいところに、自由気ままに、ドアトゥドアで行ってくれて、途中下車もできる。車で行きたいとは思わないけど、バイクで行きたいと思う場所はいっぱいあります。北海道とか絶対バイクのほうがいいじゃないですか。

 

――同じ場所に向かうのでも、車とバイクじゃ趣が異なりますよね

 

つるの それに、みんな自分のバイクがモビルスーツでしょ? それぞれにキャラクターがあって面白い。サービスエリアとかも、バイクがきっかけで話も弾みますしね。ほんとに、バイクは走る名刺なんです。

 

――ご趣味でもあるし、お仕事でもある。これからのバイク人生も、楽しみですね

 

つるの やっぱり子どもとあちこち行きたいんですよ。5歳の息子があれだけバイクにハマってるので、2人でキャンプに行ったりもしたい。今、ランブレッタをオフ仕様に改造しようかなと思ってるんです。ブロックタイヤとか、パーツがいっぱい出てるんですよね~。

 

――カスタム計画も尽きないですね。じゃあ次はぜひ親子ツーリングの取材をさせてくださいね

 

つるの はい、よろしくお願いします!

 

熱きカワサキマニアが語る! バイクだけにとどまらない「カワサキ愛」の人生

いま、世界的に見ても二輪・四輪ともガソリン車廃止の動きが活発化しています。それを見越して、EVや電動モビリティが続々と登場していますが、バイク業界では若者の”バイク離れ”が。ニュースで販売台数は最盛期の10分の1になっている情報を見ても分かるように、絶滅危惧種になっていると言えるでしょう。そんな状況下の中でも、バイクを愛し、趣味の全てをバイクにかける人々が数多くいます。社会の流れとは逆行している行動でもありますが、だからこそロマンを感じる方も多いのではないかと思います。

 

日本の主要バイクメーカーであるホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキの中でも、特に硬派かつコアな人気を得ているメーカーがカワサキ。先日『GetNavi web』で公開された俳優・市原隼人さんのカワサキZ1にまつわるインタビューにもある通り、バイクファンの間では特別視されることが多いメーカーです。(カワサキZ1の記事はこちら)今回は35年以上、カワサキのバイクばかり30台近く乗り継ぎ、カワサキマシンで日本国内の草レースはもちろんアメリカのレースにも参戦した経験もある筋金入りの”カワサキマニア”岩下隆二さんに、ロマン溢れる世界について語っていただきました。

↑岩下隆二さん。バイク雑誌のカワサキ特集でたびたび取り上げられる熱心なカワサキファン。現在は別業種に就いていますが、一時はバイク業界に身を置いていたことも

 

36年前の「三ない運動」の影に隠れてバイク免許を取得

--岩下さんはバイク、カワサキとどのような出会い方をしたのでしょうか。

 

岩下隆二さん(以下、岩下):今から36年も前になりますけど、16歳の終わり頃に中型の免許を取ったんです。ただ、当時は「三ない運動」と言って「バイクの免許を取らせない」「バイクに乗せない」「バイクを買わせない」ということを言われた時代でした。当時、僕も高校生だったわけですが、こっそりと免許を取りに行きました(笑)。

 

そして、同じように学校に隠れてバイクの免許を取っていた友達ができました。後に彼とは一緒にアメリカで開催されたバイク登山レースに行くことにもなるのですが、まだ仲良くなって間もない頃に「今度は奥多摩まで走りに行くけど、一緒に行かない?」と誘ってくれて、彼の後ろに乗って連れていってもらったことがありました。その奥多摩以来、36年間「やっぱりバイク最高だな」と思って、ずっとバイク漬けです(笑)。

 

――この頃から、乗っていたバイクはカワサキですか?

 

岩下:いや、僕が一番最初に買ったのは当時最新モデルだったホンダの「CBR400F」です。そこから「Z400FX」というカワサキのバイクに乗り換えて以来は、ずっとカワサキを中心に乗ってきました。一応、バイクメーカー4社を乗りましたが、やっぱりカワサキが一番ですよ。

↑30年以上、カワサキにこだわってきた岩下さんの自宅。ファンが見れば垂涎モノのTシャツをベッドに並べました。枕にはやはりカワサキのタオルが

 

↑カワサキのKマークが施されたツナギ

 

↑自宅1階はガレージ兼サロンのようにリフォームされていました

 

↑ガレージの壁にはカワサキ関連のレア広告やポスターが飾られています

 

↑自身のレースの思い出の写真などもありました

 

↑趣味のミニカーやラジコンなどもズラリ!

 

主要バイクメーカー4社の中で「完成されきっていない」ところが魅力

――カワサキのどんなところが特別なのでしょうか?

 

岩下:これは個人的な意見ですが、多分、完成され切っていない部分があると思っているんです。例えば自分なりにカスタムすると自分好みの乗り味を楽しめたりカッコ良くなったりします。

 

対して、ホンダやヤマハは新車の完成度が高く、乗り手や自分が入り込める感じがないんです。ホンダは優等生的で、ヤマハは洗練された洒落たバイクが多い印象があります。そんなメーカーとは違うカワサキに惹かれて、自分にピッタリ合った感じですね。

↑現在、岩下さんが所有されているカワサキのバイクは2台。1台はアメリカ・カワサキ製造の「KZ1000LTD」。もう1台はタイ・カワサキの「MAX100」

 

↑KZ関連の貴重なエンブレムを複数所有しています

 

深すぎるカワサキマニアの生態系とは?

――そんなカワサキマニアの中でも様々なタイプがあるそうですね。

 

岩下:僕みたいに走りを楽しむために、カスタムする人、旧車を骨董的に楽しむ人、最新モデルばかり追い掛ける人。大きくタイプは3つに分けられます。それぞれの楽しみ方があって良いと思いますが、高速道路のパーキングエリアで自分のバイクを停めておくと、たまにケチつけられることがあります(笑)。「この配線がオリジナルじゃないからダメだ」「フレームの車体番号が何桁か」とか。こういう会話でも分かるように、同じカワサキファンの間でも重んじる部分が違うんですよ。

 

――走りを楽しむという点では、速さを追求するのか、それともツーリングで純粋にバイク乗りを楽しむ。岩下さんは、どっち派ですか?

 

岩下:草レースに参戦していた頃は、参戦できる楽しさ、うれしさに加えて、速さを求めるところはありました。ただ、最近は飛ばさずに60キロくらいで十分楽しめています。バイクって運転技術が必要なのですが、年齢を重ねていくと、どんどん腕が衰えていくこともあるんですよ。だから、その技術が衰えないように、のんびりした走りを楽しむようにしています。あとは、他のバイク乗りや車に迷惑かけないよう走ることを心がけています。

↑岩下さんのレアコレクションの逸品・カワサキの水。14年ほど前にイベントで入手したものだそう

 

↑ボードにカワサキのZがプリントされた70年代のスケボー

 

↑カワサキ関連のステッカーやワッペン。川崎重工の船舶部が独立した川崎汽船の“K”LINEトラックのミニカーも

 

バイクファンがストリートで出会って、そのまま仲間になっていく

――運転中に見知らぬバイク乗りと「どっちが速いか」みたいな争いってあったりするんですか?

 

岩下:昔はそういう挑発に乗ることもありましたね(笑)。

 

昔、たまたま幹線道路で一緒になったヤマハの「XJ750」に乗っていた人と、少し競う感じになったことがありました。そしたら、ある信号待ちで止まった際に「おめぇ、うまいな。気に入った」といきなり声を掛けられて(笑)。その流れのまま知らないバイク屋に連れて行かれて、みんなで缶コーヒーを飲んだりすることもありましたね。こういうのは、バイク乗りの中では結構ある話ですよ。いま、僕のバイク仲間もだいたいそうやって出会った人たちです。

 

――今は、SNSで出会うことが多いかもしれませんが、岩下さんはストリートで出会っていたんですね。

 

岩下:カッチョ良く言うとそんな感じですね(笑)。バイク乗り仲間は道端で出会ってそのまま仲良くなることが多い印象があります。

↑30台近く乗り継いだという岩下さんのカワサキバイクの一つ「Z1000J」

 

↑草レースに参加し入賞したというKSR最終型のブルーサンダース・フルチューン

 

↑1977年リリースのレアモデル「KM90」

 

バイクが一番面白かった時代を過ごせた世代

――今はバイクも車もガソリン車廃止の方向に進んでいます。その傾向に関しては、どう感じていますか?

 

岩下:ガソリン車がなくなったらバイクは乗らなくなると思います。電動バイクに乗るくらいなら、カワサキが出した電動自転車に乗りますよ。改めて思うことは、バイク乗りとして本当に良い時代に生まれて、良い時代に死んでいくということ。

 

というのも、バイクが一番面白かったのは70年代〜80年代。90年代の始めくらいまでは良いバイクが沢山ありました。だけど、それ以降は似たり寄ったりなものばかりで、個性的なバイクが無くなってしまいました。その意味で僕らはバイクが一番面白かった時代を体験できたと改めて感じます。

 

――仮にガソリン車がどんどん下火になってもカワサキ愛は変わらないですか?

 

岩下:それは変わらないと思います。今もバイク以外で興味があるのは明石海峡大橋や、浅草のアサヒビールの金の雲。というのも、明石海峡大橋を作ったのも、浅草のアサヒビールの金の雲を作ったのも川崎重工なんです。さすがですよ、カワサキは(笑)。バイク以外でも良いものをいっぱい作ってくれているカワサキへのこだわりだけは、ずっと変わらないですよ。

↑カワサキの魅力についてたっぷり語ってくださった岩下さん

 

岩下さんが、教えてくれたカワサキの深い世界。ガソリン車の問題点が叫ばれる今ですが、カワサキを含めたバイクが様々な人々に楽しさや喜びを与えた功績は評価されるべきだと個人的に思います。未来の二輪モビリティが、どう変わっていくべきか――。バイクファンの声を取り入れながら進化してほしい。

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

撮影:中田 悟

生誕75周年を記念したベスパが2台登場! 明快にメリハリが利いた最新モデルを試乗インプレッション

イタリア・ピアッジオ社が生産するスクーター・ベスパが、今年の2021年に生誕75周年を迎えました。デザインの美しさと独特の機構で手堅い支持を得ているスクーターの歴史は前編で取り上げましたが、この後編ではベスパの最新モデルである「ベスパ・プリマベーラ」「ベスパ・GTS」の2台を試乗インプレッション。いずれも、75周年記念カラーの出荷を控えたものです。(前編のベスパの歴史を聞いた記事はこちら

 

古くからのバイクファンにとってベスパと言えば、ハンドチェンジなど、伝統的な機構をイメージしますが、最新モデルはより乗りやすく快適になっているとのこと。ピアッジオグループ・ジャパンPR 河野僚太さんにお話を聞きながら試乗していきます。

↑ピアッジオグループ・ジャパンPR 河野僚太さん。新旧のベスパの造詣、最新モデルの特徴や利点について解説をしていただきました

 

ベスパ最新モデルは大きく分けてスモールとラージの2タイプ

--1996年以降、CVTのトランスミッションの4サイクルエンジンになり現在まで続いているベスパですが、現在のラインナップのカテゴリーを教えてください。

 

河野僚太さん(以下、河野):まず、大きく分けて「スモールボディ」「ラージボディ」に大別できます。今回試乗していただくプリマベーラは、スモールボディのカテゴリーでコンパクトかつ俊敏性がある124ccのモデルです。スタイリングもどこかかわいらしく、女性でも気軽に乗っていただけるスクーターだと思います。

 

そして、同じく試乗いただく「GTS」は、ラージボディのカテゴリーで「街から街の移動に使える」という意味合いを持つグランツーリスモの278ccのモデルです。

 

――いずれも旧式のベスパに比べれば、かなりスタイリッッシュな映りですが、ベスパの伝統的なモノコックフレーム、フロントタイヤの肩持ち、エンジンとリアタイヤのユニットなどは継承されていますね。

 

河野:はい。この点こそピアッジオが考える「変わり続けるべきもの」「変えてはならないもの」のバランスを取りながら進化が行き着いたものだと思います。本当に乗りやすいので、是非試乗してみてください。

 

プリマベーラ(124cc・スモールボディ)の細部をチェック!

 

まずはスモールボディの「プリマベーラ」の細部をチェックしていきましょう。

↑シートの下を開けると、小物を入れるケースなどがあります

 

↑ケースを取ると、124ccのエンジンユニットが見えます。二輪車に多いパイプフレームではなく、ベスパ伝統のモノコックボディ自体がフレームの役割を果たしていることがここでも分かります

 

↑もちろんエンジンは、リアタイヤとユニットで駆動するもので、1946年に誕生したベスパ以降、多くのスクーターに採用されているシステムです

 

↑フロントタイヤも、ベスパ伝統の片持ちサス。タイヤ交換が容易なことが特徴です

 

↑かわいらしいコンパクトな「プリマベーラ」ですが、フロントの足回りはディスクブレーキを採用。制動面でも安心です

 

↑ハンドル周りにはアナログメーターと液晶が併設されています。シンプルで見やすくデザイン性に富んだもの。細部へのデザイン的な配慮はさすがベスパです

 

↑フロントボックスの中にはUSB電源も。バイクの電力を使ってのスマホの充電も可能です

 

低速の安定感に優れ、短距離移動に最適のプリマベーラ

ということで、早速「プリマベーラ」を試乗していきましょう。

↑低速でも安定した乗り味を感じさせてくれる「プリマベーラ」

 

スロットルをひねった際のレスポンスの良さが申し分なく、河野さんの話にもあった「俊敏性」とはまさにこのこと。エンジンの振動は極めて低い反面、トルクも十分で安定した乗り味も感じることができました。

 

前後のサスペンションが路面からの衝撃を吸収してくれるため、低速での安定感は抜群。「プリマベーラ」はストップ・アンド・ゴーを繰り返すような短距離での移動や、気軽に乗るために最適のモデルだと感じました。バイクに乗り慣れていない女性でもすぐに扱える点は、従来のベスパのコンセプト通りでもあり、なかなかの好印象です。

 

GTS(278cc・ラージボディ)の細部をチェック!

 

 

続いて、ラージボディの「GTS」の細部をチェックしていきます。基本的な構造(エンジン、足回りなど)は「プリマベーラ」と同じなので、重複する点は割愛し、GTSならでの機構を注目していきます。

↑プリマベーラが空冷エンジンだったのに対し、GTSは水冷エンジンを採用。ラジエーターをボディに搭載し、どことなくスパルタンな印象です

 

↑メーター周りは完全にデジタル。スマートフォンと連動し、多機能を実現させるマルチ・メディア・プラットフォームを搭載しており、バイクの状態を把握できる上、Bluetoothでベアリングすれば、運転しながらナビや音楽なども利用できます

 

 

 

乗り手は選ぶが、ハマればベスパの新しい魅力を味わえる

↑キビキビとした走りを見せてくれた「GTS」

 

「GTS」は278ccのラージボディですので、先ほど試乗した「プリマベーラ」に比べれば、やや重い印象を持ちましたが、スロットルを上げると安定感を見せ、キビキビした走りを見せてくれます。サスペンションも固めで、今までのベスパでは考えられないほどスポーティな乗り心地。

 

ベスパの中では高排気量に位置するモデルでもあるため、一定以上のバイクの知識・経験があるユーザーでも十分に満足できる走りが体感できると思いました。

 

プリマベーラ・GTSとも75周年記念特別仕様車も

――「プリマベーラ」「GTS」いずれのモデルも特徴がわかりやすく、それぞれの良さがありました。

 

河野:「プリマベーラ」「GTS」いずれのモデルも、これまでのベスパのテクノロジーが全て反映されており、最新の走りを楽しむことができると思います。また、「プリマベーラ」「GTS」ともに、75周年記念の特別仕様車を用意しています。限定販売ですので是非こちらにもご注目していただきたいです。

↑プリマベーラ、GTSの75周年記念特別仕様車。主に外装面での変更ですが、興味のある方は是非チェックを

 

――すでにイタリア本国では電動ベスパも登場しているようですが、75周年以降のベスパの動向にも期待ですね。

 

河野:これからもベスパの伝統を重んじながら、時代に合わせたモデルをご提供させていただければと思っています。

↑旧式ベスパから受け継がれる、オプションの可変式キャリアは最新モデルでも健在。バインダー用に物を挟むことができます

 

↑使うのがもったいなくなりそうにも感じるオプションの皮のバッグと車体購入特典のピクニックバッグ。こういった遊び心もベスパならでは

 

気になる最新モデルの価格は、プリマベーラが59万4000円(税込)、GTSが85万8000円(税込)。国産同クラスのスクーターに比べれば少々高めですが、その分、他では味わうことができない乗り心地を体験できます。購入を視野に入れる場合は、是非販売店などで試乗し比べてみてはいかがでしょうか。

 

撮影/我妻慶一

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

今年で生誕75周年を迎えた世界一有名なスクーター・ベスパ。その知られざる歴史を辿る

イタリア・ピアッジオ社が生産するスクーター・ベスパ。1946年の初リリース以来、2021年で生誕75周年を迎えますが、これまでに世界114か国で販売、ライセンス生産をされていることから、「世界で一番有名なスクーター」として知られています。

 

映画「ローマの休日」(1953年)で、主演のオードリー・ヘプバーンがまたがり、日本では名ドラマ「探偵物語」(1979年)で、主演の松田優作が愛用。また、イギリスの1950〜1960年代のモッズカルチャーアイテムとして、その造形とカルチャーとの親和性から「オシャレなバイク」として今もなお根強い支持を得ています。そこで、ベスパ75周年を迎えた今、ピアッジオグループ・ジャパンPR 河野僚太さんにその歴史と合わせて、知られざる逸話を聞きました。

 

航空技術を反映させながら「スカートでも乗れる」斬新なモビリティだった!

--まず、イタリア・ピアッジオ社が製造・販売するスクーター、ベスパの成り立ちからお聞かせください。

 

河野僚太さん(以下、河野):そもそもピアッジオ自体は、1886年創業で船の建具などを作る会社でした。そこから発展し鉄道車両を作ったり、第一次世界大戦では飛行機も製造するようになりました。第二次世界大戦の頃になると、イタリアを代表する飛行機メーカーに飛躍しましたが、敗戦を迎えます。

 

戦後、敗戦国の工業メーカー・ピアッジオも再出発を図ることになったわけですが、今風の言葉で言えば「新しいモビリティを提案していきたい」という思いから二輪車の製造を考えました。しかし、戦後の貧しい時代です。「多くの人に乗ってもらえるような庶民的なモビリティを」という思いからベスパというスクーターにたどり着いたようです。

 

--ベスパ以前の時代には「スクーター」という乗り物はあったのでしょうか。

 

河野:あったと聞いています。もともとのスクーターの起源は、戦時中、落下傘のパラシュート部隊が敵地に降りた際に、その場で移動するための組み立て式のエンジン付きバイクだったようです。

 

そういった従来のスクーターから発想を得て開発したのがベスパですが、随所に航空技術が取り入れられています。まず、ボディはスチールモノコックボディというもので、ボディそのものがフレーム構造になっています。

 

――従来の二輪車は、パイプフレームがベースに作られ、その上にボディが乗りますが、ベスパの場合はボディ自体がフレームになっていると。

 

河野:そうです。また、フロントサスペンションが飛行機の着陸装置であるランディングギアの構造と同じで、通常の二輪車のように2本でタイヤを支えるのではなく、片側のみで支えています。なぜこのような構造にしているかと言うと、当時のイタリアは道路状況が悪く、よくパンクすることからタイヤ交換をしやすくするためだったそうです。

 

さらに、エンジンとリアタイヤをユニットにすることで、乗車する人に油などが飛んでこないように工夫しました。これが後のスクーター全般に用いられる構造の礎となったもので、革命的な開発だったと考えています。

↑1949年のイタリアでのベスパ工場。本文にもある通り、パイプを持たないフレーム構造であり、スチールボディそのものがフレームとなっています

 

↑1949年のフランスでのベスパの広告。ベスパの楽しみ方が紹介されています

 

↑1950年代には ヨーロッパだけでなくベスパは世界各国で販売またはライセンス生産を拡大。世界五大陸にはベスパが必ず走っている状態に

 

↑1966年のイタリアでのベスパ工場。発売から20年でベスパは多くの人々に浸透し、同時にモデル自体も進化していきました

 

旧式ベスパはギアチェンジを手で行う……その理由とは?

--ベスパは2000年代の大幅リニューアルまで、大半のモデルがギア式、しかも左手でギアをチェンジさせる独特の機構でした。なぜ、このような機構になったのでしょうか。

 

河野:構造上の理由もあったはずですが、やはり「女性でもギアチェンジができる」ということがあったようです。通常、ギア付きの二輪車は、足でギアチェンジをするわけですが、女性がスカートを着て、ヒールを履いていた場合にギアチェンジができません。このことから「ギアチェンジは足ではなく手でやろう」という形になったと聞いています。

↑女性でも二輪車にまたがれることを実現したベスパ

 

 

デザインの良さだけでなく、機構自体の評価が高まった時代

――ベスパの誕生が1946年。それから7年後の1953年には映画「ローマの休日」に採用されて世界中に存在が知れ渡たり、モビリティそのものの評価も高まったそうですね。

 

河野:はい。1950年代には、ライセンス生産を行っていたフランスのモデルを転じた軍用ベスパなどもありました。同じく1950年代、イタリアで6日間ぶっ通しでエンデューロ(未舗装)でのラリーを行うレースでオフロードバイクに混ざってベスパも参加し、優勝しました。

 

また、1980年にはパリ・ダカールにフランスのプライベートチームが4台のベスパで参加し、そのうち1台が完走を果たしたりと、機構面での評価を得てきました。

 

――それだけ頑丈で汎用性の高いスクーターだったとも言えそうですね。

 

河野:独特の機構ではありますが、構造がシンプルでメインテナンスをしやすいところが大きな魅力で世界中に広まっていったのだと個人的には思います。

 

――ベスパは時代を経て進化を遂げていきます。特に「庶民の足」だったところに、スピードを求めるようなモデル、あるいは小型モデルなども続々と登場します。この経緯はなんだったのですか?

 

河野:スポーツモデルが出始めたのは1960年代ですが、ベスパというモビリティが浸透したこと、そしてレースなども盛んになった影響だと思います。また、同じ1960年代には、50ccの小型モデルが誕生しましたが、これは当時のイタリアで、免許がなくても14歳から50ccバイクに乗ることができたからだと聞いています。日本で言うところの原付のカテゴリーですが、この50ccのベスパ誕生によって、販売台数が伸び、若者文化と合わせてさらに浸透していったようです。

↑歴代ベスパの中でも、今でも人気が高いGS(フランスポルト・1962年)。スポーツモデルであり、モッズたちも多く愛用したことで知られています

 

↑若年層のユーザーを意識した50ccなどのいわゆるスモールボディの広告

 

↑ベスパの浸透はアジア圏でも(写真はタイのディーラーの広告)。インド、タイ、ベトナム、台湾などでライセンス生産が行われており、各国では今なおベスパクラブなどが存在します

 

↑綺麗な流線形が特徴だったベスパですが、1977年以降、随所にシャープなデザインを用いたモデルも登場

 

ベスパの長い歴史の中で、大転換期だった1996年

――以降、世界114か国で販売またはライセンス生産されるなど、世界中にベスパが広まっていきました。その中の50年間は2サイクルエンジンを採用していましたが、1996年はオートマチックの4サイクルモデルに。ガラッと印象が変わりました。

 

河野:たしかにそれまでのベスパは、デザイントレンドを反映したリニューアルは何度か行ってきましたが、1996年は大きな転換期でした。

 

その理由は、スクーターはオートマチックが当たり前の時代になっていたことがあります。1984年にPK125オートマティカというオートマチックモデルも出していますが、この1996年にCVTのトランスミッションの4サイクルエンジンを採用して、全体的なリニューアルを行ったというわけです。ただ、当初のベスパならではの特徴であるスチールモノコックボディ、フロント片持ち、エンジンとリアタイヤのユニットなどは継承しています。

↑大変革となった1996年以降、ベスパは4サイクルのオートマチックモデルになりました

 

現在の日本市場にあるベスパは、イタリア製ではない!?

――現在、日本国内に輸入されているベスパはイタリア製のものでしょうか? 一時、日本でのベスパはイタリア製と台湾製が混在している時代もあったようですが。

 

河野:現在我々が輸入しているのは、実はベトナム製のベスパです。ファンの方によっては「イタリアじゃないとイヤだ」と言う方もいますが、実はベトナム工場のほうがシステムが新しく、また民族性なのか真面目なので、完成度はイタリアよりも上なんです。また、日本との距離もイタリアに比べれば近いため、タイムリーに輸入することができます。この点、弊社としては「メリットしかない」と考え輸入していますので、どうか安心してお買い求めいただきたいですね。

 

イタリア本国ではすでに電動ベスパも登場!?

――また、近年は四輪・二輪ともガソリン車廃止が叫ばれており、電動モビリティが注目を浴びています。今年で75周年を迎えたベスパですが、電動化の取り組みなども意識されているのでしょうか。

 

河野:実はイタリア本国では、電動ベスパがすでに発売しています。日本のカテゴリーに合わないため、現時点では日本での販売はありませんが、EV化ももちろん視野に入れて、時代ごとの基準やニーズに合わせながら進化していっています。

 

現在、日本に輸入し販売しているベスパは正直を言うと、当初の輸入台数よりも注文のほうが多く、台数が足りていない状態です。これだけの支持をいただいている理由はやはりベスパが常に「変わり続けるべきもの」「変えてはならないもの」のバランスを取りながら進化していったからだと自負しています。この姿勢は今後も変わらないと思います。

 

環境も含め、時代ごとに様々なニーズに応えながら、いつも多くの人にとっての足となれるようなモビリティであり続けてほしいと個人的には思っています。

↑現行モデルの中で乗り味が安定し、タフネスでもあるというGTS Super。もちろん当初のベスパのコンセプトである「女性でも乗れる」スクーターであることには変わりがありません

 

ベスパの生誕75周年の知られざる歴史。一見すれば「ずっと変わらない」ことが魅力のベスパのようにも見えますが、実は静かに進化し続けていたことが分かりました。

 

また、ピアッジオ・ジャパンではこの75周年を記念した2モデルを販売予定。この試乗レポートも引き続き後編で行う予定です。どうぞお楽しみに!

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

今年で生誕75周年を迎えた世界一有名なスクーター・ベスパ。その知られざる歴史を辿る

イタリア・ピアッジオ社が生産するスクーター・ベスパ。1946年の初リリース以来、2021年で生誕75周年を迎えますが、これまでに世界114か国で販売、ライセンス生産をされていることから、「世界で一番有名なスクーター」として知られています。

 

映画「ローマの休日」(1953年)で、主演のオードリー・ヘプバーンがまたがり、日本では名ドラマ「探偵物語」(1979年)で、主演の松田優作が愛用。また、イギリスの1950〜1960年代のモッズカルチャーアイテムとして、その造形とカルチャーとの親和性から「オシャレなバイク」として今もなお根強い支持を得ています。そこで、ベスパ75周年を迎えた今、ピアッジオグループ・ジャパンPR 河野僚太さんにその歴史と合わせて、知られざる逸話を聞きました。

 

航空技術を反映させながら「スカートでも乗れる」斬新なモビリティだった!

--まず、イタリア・ピアッジオ社が製造・販売するスクーター、ベスパの成り立ちからお聞かせください。

 

河野僚太さん(以下、河野):そもそもピアッジオ自体は、1886年創業で船の建具などを作る会社でした。そこから発展し鉄道車両を作ったり、第一次世界大戦では飛行機も製造するようになりました。第二次世界大戦の頃になると、イタリアを代表する飛行機メーカーに飛躍しましたが、敗戦を迎えます。

 

戦後、敗戦国の工業メーカー・ピアッジオも再出発を図ることになったわけですが、今風の言葉で言えば「新しいモビリティを提案していきたい」という思いから二輪車の製造を考えました。しかし、戦後の貧しい時代です。「多くの人に乗ってもらえるような庶民的なモビリティを」という思いからベスパというスクーターにたどり着いたようです。

 

--ベスパ以前の時代には「スクーター」という乗り物はあったのでしょうか。

 

河野:あったと聞いています。もともとのスクーターの起源は、戦時中、落下傘のパラシュート部隊が敵地に降りた際に、その場で移動するための組み立て式のエンジン付きバイクだったようです。

 

そういった従来のスクーターから発想を得て開発したのがベスパですが、随所に航空技術が取り入れられています。まず、ボディはスチールモノコックボディというもので、ボディそのものがフレーム構造になっています。

 

――従来の二輪車は、パイプフレームがベースに作られ、その上にボディが乗りますが、ベスパの場合はボディ自体がフレームになっていると。

 

河野:そうです。また、フロントサスペンションが飛行機の着陸装置であるランディングギアの構造と同じで、通常の二輪車のように2本でタイヤを支えるのではなく、片側のみで支えています。なぜこのような構造にしているかと言うと、当時のイタリアは道路状況が悪く、よくパンクすることからタイヤ交換をしやすくするためだったそうです。

 

さらに、エンジンとリアタイヤをユニットにすることで、乗車する人に油などが飛んでこないように工夫しました。これが後のスクーター全般に用いられる構造の礎となったもので、革命的な開発だったと考えています。

↑1949年のイタリアでのベスパ工場。本文にもある通り、パイプを持たないフレーム構造であり、スチールボディそのものがフレームとなっています

 

↑1949年のフランスでのベスパの広告。ベスパの楽しみ方が紹介されています

 

↑1950年代には ヨーロッパだけでなくベスパは世界各国で販売またはライセンス生産を拡大。世界五大陸にはベスパが必ず走っている状態に

 

↑1966年のイタリアでのベスパ工場。発売から20年でベスパは多くの人々に浸透し、同時にモデル自体も進化していきました

 

旧式ベスパはギアチェンジを手で行う……その理由とは?

--ベスパは2000年代の大幅リニューアルまで、大半のモデルがギア式、しかも左手でギアをチェンジさせる独特の機構でした。なぜ、このような機構になったのでしょうか。

 

河野:構造上の理由もあったはずですが、やはり「女性でもギアチェンジができる」ということがあったようです。通常、ギア付きの二輪車は、足でギアチェンジをするわけですが、女性がスカートを着て、ヒールを履いていた場合にギアチェンジができません。このことから「ギアチェンジは足ではなく手でやろう」という形になったと聞いています。

↑女性でも二輪車にまたがれることを実現したベスパ

 

 

デザインの良さだけでなく、機構自体の評価が高まった時代

――ベスパの誕生が1946年。それから7年後の1953年には映画「ローマの休日」に採用されて世界中に存在が知れ渡たり、モビリティそのものの評価も高まったそうですね。

 

河野:はい。1950年代には、ライセンス生産を行っていたフランスのモデルを転じた軍用ベスパなどもありました。同じく1950年代、イタリアで6日間ぶっ通しでエンデューロ(未舗装)でのラリーを行うレースでオフロードバイクに混ざってベスパも参加し、優勝しました。

 

また、1980年にはパリ・ダカールにフランスのプライベートチームが4台のベスパで参加し、そのうち1台が完走を果たしたりと、機構面での評価を得てきました。

 

――それだけ頑丈で汎用性の高いスクーターだったとも言えそうですね。

 

河野:独特の機構ではありますが、構造がシンプルでメインテナンスをしやすいところが大きな魅力で世界中に広まっていったのだと個人的には思います。

 

――ベスパは時代を経て進化を遂げていきます。特に「庶民の足」だったところに、スピードを求めるようなモデル、あるいは小型モデルなども続々と登場します。この経緯はなんだったのですか?

 

河野:スポーツモデルが出始めたのは1960年代ですが、ベスパというモビリティが浸透したこと、そしてレースなども盛んになった影響だと思います。また、同じ1960年代には、50ccの小型モデルが誕生しましたが、これは当時のイタリアで、免許がなくても14歳から50ccバイクに乗ることができたからだと聞いています。日本で言うところの原付のカテゴリーですが、この50ccのベスパ誕生によって、販売台数が伸び、若者文化と合わせてさらに浸透していったようです。

↑歴代ベスパの中でも、今でも人気が高いGS(フランスポルト・1962年)。スポーツモデルであり、モッズたちも多く愛用したことで知られています

 

↑若年層のユーザーを意識した50ccなどのいわゆるスモールボディの広告

 

↑ベスパの浸透はアジア圏でも(写真はタイのディーラーの広告)。インド、タイ、ベトナム、台湾などでライセンス生産が行われており、各国では今なおベスパクラブなどが存在します

 

↑綺麗な流線形が特徴だったベスパですが、1977年以降、随所にシャープなデザインを用いたモデルも登場

 

ベスパの長い歴史の中で、大転換期だった1996年

――以降、世界114か国で販売またはライセンス生産されるなど、世界中にベスパが広まっていきました。その中の50年間は2サイクルエンジンを採用していましたが、1996年はオートマチックの4サイクルモデルに。ガラッと印象が変わりました。

 

河野:たしかにそれまでのベスパは、デザイントレンドを反映したリニューアルは何度か行ってきましたが、1996年は大きな転換期でした。

 

その理由は、スクーターはオートマチックが当たり前の時代になっていたことがあります。1984年にPK125オートマティカというオートマチックモデルも出していますが、この1996年にCVTのトランスミッションの4サイクルエンジンを採用して、全体的なリニューアルを行ったというわけです。ただ、当初のベスパならではの特徴であるスチールモノコックボディ、フロント片持ち、エンジンとリアタイヤのユニットなどは継承しています。

↑大変革となった1996年以降、ベスパは4サイクルのオートマチックモデルになりました

 

現在の日本市場にあるベスパは、イタリア製ではない!?

――現在、日本国内に輸入されているベスパはイタリア製のものでしょうか? 一時、日本でのベスパはイタリア製と台湾製が混在している時代もあったようですが。

 

河野:現在我々が輸入しているのは、実はベトナム製のベスパです。ファンの方によっては「イタリアじゃないとイヤだ」と言う方もいますが、実はベトナム工場のほうがシステムが新しく、また民族性なのか真面目なので、完成度はイタリアよりも上なんです。また、日本との距離もイタリアに比べれば近いため、タイムリーに輸入することができます。この点、弊社としては「メリットしかない」と考え輸入していますので、どうか安心してお買い求めいただきたいですね。

 

イタリア本国ではすでに電動ベスパも登場!?

――また、近年は四輪・二輪ともガソリン車廃止が叫ばれており、電動モビリティが注目を浴びています。今年で75周年を迎えたベスパですが、電動化の取り組みなども意識されているのでしょうか。

 

河野:実はイタリア本国では、電動ベスパがすでに発売しています。日本のカテゴリーに合わないため、現時点では日本での販売はありませんが、EV化ももちろん視野に入れて、時代ごとの基準やニーズに合わせながら進化していっています。

 

現在、日本に輸入し販売しているベスパは正直を言うと、当初の輸入台数よりも注文のほうが多く、台数が足りていない状態です。これだけの支持をいただいている理由はやはりベスパが常に「変わり続けるべきもの」「変えてはならないもの」のバランスを取りながら進化していったからだと自負しています。この姿勢は今後も変わらないと思います。

 

環境も含め、時代ごとに様々なニーズに応えながら、いつも多くの人にとっての足となれるようなモビリティであり続けてほしいと個人的には思っています。

↑現行モデルの中で乗り味が安定し、タフネスでもあるというGTS Super。もちろん当初のベスパのコンセプトである「女性でも乗れる」スクーターであることには変わりがありません

 

ベスパの生誕75周年の知られざる歴史。一見すれば「ずっと変わらない」ことが魅力のベスパのようにも見えますが、実は静かに進化し続けていたことが分かりました。

 

また、ピアッジオ・ジャパンではこの75周年を記念した2モデルを販売予定。この試乗レポートも引き続き後編で行う予定です。どうぞお楽しみに!

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

「Zがあれば他にはもう何もいらない」 市原隼人が愛車・カワサキZ1への深すぎる想いを語り尽くす!

最新出演映画「リカ 自称28 歳の純愛モンスター」が公開中の市原隼人さん。今回は、「誰にも譲りたくない」「自分の出演作にも出したい」という愛車・カワサキZ1への愛や、ひとつひとつのカスタムへのこだわりなどを、存分に語ってもらいました。

(撮影・構成・丸山剛史/執筆:背戸馬)

 

理想通りに仕上げた、カスタムZの現在

――先ほどの撮影では、すごく気持ちよさそうに走ってましたね。

 

市原 今日はバイク日和で最高です。

 

――このオートバイに乗るのが本当に好きなんだなって、見ていて伝わってきましたよ。

 

市原 バカかもしれないですけど、『Zがあれば他にはもう何もいらない』と思えたときもありました。なんでもない場所でも、こいつがいれば夢のような、いつまでも青春のような、そんな気分になります。

 

――ベタぼれですね(笑)。まさに愛車という感じですが、さっそく詳しく教えて下さい。まずは車種から。

 

市原 カワサキZ1です。1974年式の『Z1A』になります。

 

――かなりカスタムしていらっしゃいますね、こちらも教えてもらえますか。

 

市原 タンクとカウルのペイント、ハンドル、ステップは純正をバックステップ加工、シート、サス、ワイドホイール、点火はフルトラ化、キャブはKEIHINのCR、マフラーはPAMSオリジナル製、ヘッドライトとウインカーはミラーコートして……。

 

――訊いたものの、書ききれないですね(笑)。市原さんが特にこだわったポイントは?

 

市原 ハンドルですね。幅と高さと絞りを細かく調整してます。ハンドルポストも削って、ベストポジションになるようにパムスさんでやっていただきました。

 

――パムス(PAMS)さんは、空冷Zに造詣が深い有名ショップですね。

 

市原 今は新型コロナの関係で伺うのを自粛していますが、以前は用事がないときでも行っていました。何をするわけでもなく、ベンチに座ってボケっとしに(笑)。このZと出会ったのもパムスなんです。最初はフルオリジナルのタイガーカラーで……。

 

――フルオリジナルだったんですか。ある程度仕上げてあったわけじゃなくて?

 

市原 そうなんです。フルオリジナルで購入し、時間を置いてカスタムしました。

 

――フルオリジナル状態を壊すときの勇気って要りませんか? 名車の場合は特に。

 

市原 要りますね。ずっと付き合っていた友達がいなくなるような、なにか変わってしまう感じがすごく寂しかったです。でもやっぱり、自分の色に染めたくなってしまいました。

 

――最初はどこをカスタムしたんですか?

 

市原 CRキャブです。スロットルの返り(レスポンス)が別物になりました。『こんなにも変わるのか』って驚いて、その先は一気でした。マフラー、サス、ホイール、ハンドル……セパハンも試してみましたけど、首が痛くなりました(笑)。ハンドルはやっぱり、座ってリラックスした手の位置にグリップが来る感じにちょっと絞って、今の形になりました。

 

――かなり試行錯誤されたんですね。リアサスに関していえば、定番のオーリンズじゃないところにカスタム上級者のセンスを感じます(笑)

 

市原 あの、船に乗っているような、やわらかい純正サスもすごく気持ちいいんですよ。ストレスを感じることなく、肩の力を抜いて走っていける。ナイトロンを着けて硬めにもしてみましたが、今のクアンタムに落ち着きました。これを選んだのは、カラーもあったと思うんです。本当は、Zを真っ黒にもしたかったんですね。エンジンもタンクもカウルも全部真っ黒にした、いわゆる“黒豆”に。でも、シルバーエンジンのZ1Aを買ったので、それを大事にしようと思ったんです。シルバーを活かした統一感で、今の姿になった気はしますね。

 

――メッキやバフ掛けしたシルバーパーツを多用したカスタムZって、意外と少ないなって思います。

 

市原 意外といないですよね、それがまた良いなって思っています。

 

――タンクは、もともとはタイガーカラーだったんですね。

 

市原 タンク、カウルの色をどうしようか考えながら自分で色を決め、この色でこういうパターンで、って指定しました。

 

――あのカラーも、市原さんがお決めになった?

 

市原 はい、自分で決めました。離れて見るとちょっと黒っぽいですけど、近くで見るとワインレッドのようなカラーです。大人っぽい色を相談しながら調色していただいて。

 

――細かく調整したんですか?

 

市原 しました。ちょうどあのときはロシアにいたのかな? ずっと担当の高山さんとLINEして、どんな感じですか? と。帰国して空港から、そのまま店に行ったりして(笑)

 

――まるで、ワクワクを抑えきれない少年のようですね(笑)

 

カスタムのコンセプトとポリシー

――市原さんがひとつひとつのカスタムにこだわりを持っているのが良くわかります。

 

市原 基本的には旧車のディテールを残しながら、でもどこかで現行車の様な性能が欲しいんです。

 

――そのコンセプト通りのカスタムになってると思いますよ。

 

市原 次にやりたいのは、ヘッドライトです。あと、見た目を変えずに、もう少し現行車っぽい乗り味にしたい。見た目は40年前の雰囲気で、外から見ると『渋いけど、遅いだろうな』と思われながら、実際に走ってみると……。

 

――うわー、そのカスタム思考、レベル高いですね。

 

市原 そういうカスタムが、オシャレでカッコいいなと思っています。僕は古いアメ車も好きなんですが、たとえばマッスルカーでもあまりカスタム感をギラギラさせずに、当時のままのホイールとかで渋いスタイルなんですけど、走ってみると『うわ、すごくない?』みたいなのがいい。足まわりは何を入れてるんだ、エンジンはどうしてるんだろう、配線は……とそういうところが気になるような一台にしてみたいですね。

 

――レストモッド的な概念ですね、当時の雰囲気を残したまま性能は現代的にアップデートしているという。パーツ選びについても、こういうパーツを付けたいと市原さんから?

 

市原 僕から提示して、こういうふうにしたいっていうのを高山さんと話して。『カスタムしました感』があまり出ないほうがいいと思っているので、すごく悩んだと思いますけど。

 

――じゃあ、次にヘッドライトの中をいじりたいっていうのも、LED化して明るくするわけじゃなく?

 

市原 やはり旧車は、遠くからやって来たときにまずヘッドライトがぼんやりと現れ、次に空冷の排気音がワーッて聞こえてくるのがかっこいいと思っています。ヘッドライトは新しく変えても、旧車らしくちょっと暗いような、古臭いような……たとえば森の中にぽつんとある黄ばんだ電球のような感じが欲しくて。

 

――うわぁ、難しそうだなぁ……ある意味、デチューン的でもありますよね。それは担当の方も悩むわけですよ(笑)。それも、やはり旧車らしさを残したカスタムがいいということですね。

 

市原 乗ってる感じにしても、ちょっともどかしいくらいがいいんでしょうね。何するにも少し待たなきゃいけないというか。機械的な『ガッチャン!』という音を聞いてから次の動作に行きたいみたいなのはありますね。

 

――あくまで「旧車」であるということを感じたいと。

 

市原 走っていると安定感が違うのでリヤタイヤも太くしてますけど、オリジナルの細いタイヤも旧車らしくてかっこいいんです。ブレーキに関しても、最初は『ドラムブレーキが旧車だろう』と思ってたんです。だから、リアのドラムブレーキをディスクに変えるのはすごく勇気が要りました。

 

――そこは走行性能を取ったと。

 

市原 ええ、そうしたら全く変わりましたね。すごいなって。

 

――フロントブレーキも、ロッキードのキャリパーでWディスク化、ブレーキローターもサンスター製にスワップしてりあます。

 

市原 しっかり止りますよね。ここも旧車感は残したかったのでこのパーツを選んだんです。カスタムするとZじゃなくなっちゃうから。Zらしさをあまり壊したくなかった。

 

――「Zらしさ」ですか。それはどんなことなんでしょう?

 

市原 なんて言うんでしょうか、パーツパーツが詰まってなくて、横から見たらスッカスカで抜けが良く、フロントからリアまでどこを見てても流れるようなスタイル。ずっと見ていて飽きないんですよ。あれを超えるものはないと思いますね。いろんな規制も含めてもう作られないですし。だから、Zの前から乗っているバイクもありますけど、他のバイクが乗れなくなっちゃいましたね。国産ネイキッドはZで十分だなと。他の車種が乗れなくなるほどZの魅力にやられました。

 

――じゃあこれからのバイクライフで、買い替えはない?

 

市原 ないですね。あっても『買い足し』です。買い替えはない。誰にも譲りたくないです、あのZは。

 

「Zのここに惚れた!」

――Zと出会ったのはパムスさんということですが、それまでもパムスさんには行かれてて?

 

市原 いえ、行ったことはなかったんです。ふらっと伺い、このZかっこいい! って。で、エンジンかけてもらったら、もうすぐに『買います』と。一目ぼれですね。

 

――即決(笑)。それまでも、空冷Zを欲しいなとは思っていらっしゃった?

 

市原 思っていました。何に乗ろうか迷って、いろいろ調べていたんです。ハーレーのビンテージもいいなとか、ドゥカティにしようかとか。悩んでいるうちに『長く持っていられるものが欲しい』と思うようになりました。Zだったら長く付き合えるかなと。自分が70とか、そのくらいの歳になったとしても、違和感なく乗れるような気がしたんです。

 

――憧れの空冷Zを手にしたとき、どう感じましたか?

 

市原 わかりやすいですよね。エンジンがこれ、フレームがこれ、キャブがこれって、無駄なものが一切なく、何かで隠すことなく全部剥き出しになっている。だから冬とか、エンジンに手を当てて暖をとることもできる。そういうところも好きで。

 

――無駄な装飾がない古いオートバイってそれが楽しいですよね。

 

市原 メーカーごとの個性も出やすいじゃないですか。まず旧車って音でわかります。排気音が聞こえても『あ、GSが来た』とか『あ、Zが来た。排気量はこのくらいだ』って。Zにも音でホレましたし。

 

――音はバイクの強い個性ですよね。

 

市原 空冷で、Z1の903ccという排気量があって4気筒だからこそ出るちょっと野太い音が、カッコいいなと。

 

――のろけのまくりですね(笑)。ところで、Zは何年目になりますか?

 

市原 6、7年になります。いくら乗っても不思議と全然飽きないんですよね。以前撮影で、フロリダで、キーウエストまでハーレーで走ったんです。ハーレーで走りながらも、『うわぁ、やっぱZ乗りたいな』って。

 

――へえ! ある意味カンペキなツーリングロケーションですけど……。

 

市原 同じことを、ニューヨークでも思いました。ニューヨークではビンテージハーレーに乗ってたんですが、そのときもやっぱり『Zに乗りたいな』と思いました。ハーレーがダメとかじゃなく、魅力の違いと言いますか。

 

――市原さんに合うのはやっぱりZだと。

 

市原 これは二輪を乗る方にしかわからないかもしれませんけど、乗った瞬間に違う世界に連れて行ってもらえるって、もうバイクしかないんですよね。体は剥き出しで、風を感じるし、その土地土地の香りを感じるし、タイヤが路面を捉えるのも感じる。これが、バイクによって全然感じ方が変わってきますから。

 

――他のバイクに乗ったあと自分のバイクに戻ると、わが家に帰ってきたような感覚を覚えますね。

 

市原 またがった瞬間にもう、ハンドルの位置も、タンクの形も、色も、音も、匂いも、レスポンスも、すべてがしっくりくるんですよ。

 

バイクの楽しみ方、ツーリングなど

――ここからは、バイクの楽しみ方についてお話を伺えればと思います。お仕事もお忙しいと思いますが、ツーリングには行かれますか?

 

市原 ショートツーリングは行きます。箱根の方とかに。

 

――お気に入りの場所とか、ツーリングコースは?

 

市原 自然が好きなので、森の中を一人でゆっくり走るのが好きです。箱根~芦ノ湖スカイラインとか。たまに止まって佇んでみたり。カメラを持っていくときもあります。

 

――バイクライフを楽しんでいらっしゃるわけですね。

 

市原 実は20代後半のころ、レースもやろうとしていたんですよ。面白そうだなと思って、カワサキの元ファクトリーの方と一緒に、サーキットで練習させていただいていました。ダートもやっていて、桶川のほうまで走りに行ったり。滑らせて乗るのも好きなんですよ。サーキットとは全然乗り方が違って面白いんです。ダートは滑らせて、こけてナンボというか。

 

――ずいぶん本格的にやってらっしゃったんですね。

 

市原 レーシングスーツも持ってます。サーキット用とダート用、両方とも。

 

――全然知りませんでした。これまであまり話されていませんよね。

 

市原 バイクは、やはり役者をやりながらだと、仕事との兼ね合いという面では難しいんです。もしケガしたら、皆さんに迷惑をかけてしまいますし。

 

――確かにそうですよね。レースに興味を持つくらいですし、昔からバイクに乗られていたんですか?

 

市原 僕はバイクの免許を取ったのが遅くて、20代後半で取ったんです。

 

――若いころから乗ってらしたのかと思えば……意外です。免許を取られたきっかけは?

 

市原 ずっと仕事をしていて取る時間がなかったのもあるのですが、そのころちょっと時間ができて、何をやろうかと考えたら真っ先に『バイクの免許だ』と思い立ちました。

 

――バイクには乗りたいと思っていたんですか?

 

市原 ええ、乗り物はすごく好きですから。物心ついたころから、古いバイクや古いアメ車が好きでした。チカーノが乗っているようなローライダーの、1950~60年代のシボレー・インパラをカッコいいなって。『古いものをキレイに乗る』という文化が、すごくいいなと思っていました。

 

――物心ついたときにすでに好きだったというと、お父さんの影響があったり?

 

市原 僕の父はサンディエゴに15年間住んでいたんです。そのときの父の古い写真を見るとアメ車に乗っていて、子ども心にそれがすごくカッコいいなって思えたんです。

 

――じゃあ幼少期にはもう旧車の魅力に気付いていたと。

 

市原 ええ、アメ車もバイクも好きですし、そもそも新しい物より古い乗りものが好きなので。

 

――古いものの魅力というのはどういったところでしょう?

 

市原 シンプルさです。クルマでもバイクでも構造がシンプルでわかりやすいから、そのものを感じやすい。エンジン掛けて乗ったとき、足の裏から、手から、背中から感じる振動とか、そういうのはビンテージのものしかないと思うんです。今の新しいものは、そうやってパーツを感じ取れなくなっていると思います。

 

――今のクルマやバイクはメーターにたくさん情報が出ますが、五感で感じる情報は古いものにくらべると極めて少ないですね。

 

市原 Zは乗っていると、キャブを感じるし、タイヤを感じるし、フレームを感じる。パーツひとつひとつから伝わってくる感覚がすごく好きなんですよ。

 

――確かにそこが魅力ですね。一方で、よく「古いバイクって壊れるのでは?」って不安を持っている方もいますが、その点はどうでしょう?

 

市原 まったくそんなことないです。構造がシンプルな分、壊れても直すのも簡単だし、修理も早いです。

 

――実際、Zでこれまでに出先で止まったとかそういうトラブルは?

 

市原 一回もないです。ただ燃費だけは常に気にして走っています(笑)。けっこうガソリンを食うので、遠出するときはスタンドがあったらすぐ入ることにしてますね。でもそういうところも可愛らしく楽しいんです。

 

――カスタムしてあるとはいえ、Zでツーリングすることに不安は?

 

市原 よく言われているのですが、『Zを直す店はたくさんある』と。やはりずっと長く愛されてきたバイクなので、日本全国どこかへ行く際も絶対大丈夫なんだろうなと思ってます。

 

――ちなみに今までZで一番ロングライドしたのは?

 

市原 京都です。

 

――片道500キロ以上ありますね。なぜまた京都に?

 

市原 Zで京都を走りたいという、その一心です(笑)。京都の町を走っていて、タンクに京都の古い町並みが映ったりすると『おぉ、俺のZに京都の町が映ってる!』って感動して。

 

――へえ~! なんというか、感性が普通のバイク乗りと違いますね。「Zでどこかに行きたい」じゃなく「Zをここに連れていきたい」という感覚なんですか?

 

市原 なんなんでしょうね(笑)。自分一人だけじゃ感じられない世界を感じさせてくれるのがバイクじゃないですか。だからやっぱり一緒にいたいと思うんです。Zがいたらより楽しくなるんだろうなって。

 

――それこそ、止めて眺めているだけの時間も楽しいという。

 

市原 乗らなくても、ガレージでお酒を飲みながら磨いているときもあります。Zはいろんな付き合い方ができるから、手放さないで一生乗っていると思います。

 

――いろんな付き合い方ができるっていいですね。しかしこうメッキパーツが多いと、磨きかけるのも大変そうです(笑)

 

市原 本当はもっと磨きたいんですけどね。機械とかで一気にきれいにする方もいるじゃないですか、あれはずるいなと(笑)。やっぱり手で、綿棒とか使って磨かないと。

 

――マニアック!(笑)

 

市原 最初のころは、磨きの時間を取り過ぎて寝られなくて(笑)。まとめた爪楊枝で隅々まで磨いたりして、毎日、手が真っ黒ですよ。でもそれが楽しい。

 

――フロントフォークのボトムケースとか、汚れそうなところもシルバーですから、維持が大変そうです。

 

市原 今の課題はそれです(笑)。さすがに汚いままだと、外に出られないので。磨きの時間は必ず作るようにしています。

 

――市原さんご自身でカスタムしたり、いじったりは?

 

市原 しますよ。なので、いつか自分のクルマとかバイクの倉庫が欲しいんです。そこに好きなアメ車と好きなバイクを置いて、カメラで撮った写真を飾って、バーカウンターもつくって……。

 

――それ最高じゃないですか。

 

市原 隠れ家じゃないけど、そういう場所が欲しいですね。

 

Zでかなえたい夢 未来

――市原さんはカメラもお好きですが、カメラとオートバイ、どちらも「旅の道具」という感じがしますね。

 

市原 いつかは、バイクで日本一周したいと思っています。ツーリングバッグも買って準備していたんですけど、残念ながらタイミングがなくなってしまって。だから今の夢の一つは、Zで旅をしたいんです。テントを張って、焚火して、泊まる。バイクとともに。で、写真も撮って(一瞬、遠い目)……それ、したかったですね(笑)

 

――(笑)たしかに、タイミングってありますからね。

 

市原 海外ロケに行くときは必ず、『Zを持っていけないか?』って聞いているんです。

 

――ええ!?

 

市原 チェ・ゲバラじゃないですが、Zで世界を旅をしたくて。あと、Zって、カワサキが世界に挑戦しに行ったバイクですから、僕もそのバイクで海外を走りたいと思ってるんです。

 

――いいですね! それでもう一つの番組になりそうです。

 

市原 海外は文化も価値観もぜんぜん違うじゃないですか。でも、どんな人でもZはかっこいいって感じるだろうと僕は思うんです。バイク好きじゃなくても、このカッコよさは分かってもらえるんじゃないかと。普段乗っていて、信号待ちしてるときに、『かっこいいね!』と新聞配達のおじちゃんとかに言われたり、ぜんぜん知らない人たちに『うわ、Zだ!』って叫ばれたりとか。やっぱりZには、ほかのバイクにはない魅力が詰まっていますね。そんな出会いもすごくうれしいですし。

 

――空冷Zに乗っていると、「俺も昔、Zに乗ってたんだよ」とか話しかけられることが多いですね。

 

市原 Zには出会いや縁をもらいますね、本当に。

 

――じゃあ、「海外にもっていってOK」って返事がでたら?

 

市原 持っていきます。

 

――そこまで市原さんにホレられているZは幸せですね。ほんとお仕事が忙しく乗る時間が少ないというのが残念というか……。

 

市原 だから、自分が出演する作品で出せないかと考えています。

 

――そういえば、市原さんが主演されたドラマ『明日の君がもっと好き』(2018年/テレビ朝日)を拝見しましたが、市原さん演じる主人公が駆るバイクはこのZでした。

 

市原 衣装合わせの際に、『バイクはZじゃなきゃ嫌です』と(笑)。バイクといえばZ、しかも丸タンクのあのスカっと抜けのいいあのZだと僕の中でパっと浮かんだんです。ドラマを観る方に、バイクのよさを知ってもらいたいと思って。

 

――ドラマにZを登場させたのは、そういう思いがあったんですね。

 

市原 相当ありました。僕が携わっている作品で、自分が好きな乗り物や、その良さを、お客様に感じていただけたらうれしいと思っています。

 

――あのドラマを通じて、若い皆さんに市原さんがZに乗っていることが広まったんじゃないですか?

 

市原 そうだとうれしいです。今は、家でできるゲームだったり、インターネットだったり、娯楽がすごく増えていますが、バイクって世界をバーチャルじゃなく生で感じる良さっていう、他には代えられないものがありますので、多くの若い方にバイクに乗る楽しさを味わってほしいです。

 

――そういう意味では、バイクやクルマのカッコよさを知れる映画やドラマは重要ですね。

 

市原 『マッドマックス』や『ワイルド・スピード』じゃないですけど、この映画の乗り物いいよねとか、そう感じて欲しい。そういう作品がもっと欲しいんですけどね。

 

――同感です!

 

市原 地上波ではコンプライアンスも厳しくなってきていますが、僕の拠点であるドラマや映画で、そういう文化を入れた作品をつくりたいと思っています。

 

――期待してます。では最後に、市原さんにとってバイクとは? いや、「Zとは?」と聞いたほうがいいかもしれませんね。

 

市原 バイクとは……そうですね、ある意味、自分の逃げ道でもある気がするんです。

 

――逃げ道、ですか?

 

市原 生きていくためには、やりたくなくてもやらなくてはならないことだったり、認めたくなくても認めなきゃいけなかったり、妥協もたくさんしなきゃいけないことがあります。大きな壁に躓いたり、自分に自信を失うこともたくさんあると思うんですけれど、そういうときに、自分の頭の中をリセットしてくれるものがバイクなんです。すべてをポジティブに変換してくれます。

 

――つまり、仕事もプライベートも含めて、市原隼人という人間を構成する重要なアイテムになっていると?

 

市原 なっています。だから、Zがあれば何もいらないって本当に思っています。これだけで旅に出て、自分を見つめなおしたいと感じます。

 

――そこで旅に繋がっているんですね。

 

市原 年齢を重ねていくと時間の無駄遣いが一番贅沢だってことに気づいてきたんです。一番の時間の無駄遣いとは何かを考えたら、バイクで旅をしたいというのがまず浮かぶんです。次の日のことを考えずに、気の向くままに走る。それって最高なんだろうなと。

 

――そのときはもちろん、Zで。

 

市原 Zじゃないと考えられないですね。

 

【PROFILE】

市原隼人(いちはら・はやと)

2001 年に映画 「リリイ・シュシュのすべて」で主演デビュー。2004 年には 「偶然にも最悪な少年」で日本アカデミー賞新人賞受賞。主な作品に映画 「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」「ボックス!」「無限の住人」「あいあい傘」「ヤクザと家族」「太陽は動かない」、ドラマ「ウォーターボーイズ2」「ROOKIES—ルーキーズ—」「猿ロック」「ランナウェイ~愛する君のために」「カラマーゾフの兄弟」「リバース」大河ドラマ「おんな城主 直虎」「おいしい給食」、ミュージカル「生きる」等、他多数。また、写真家として活動。映像作品に「Butterfly」(監督・主演)アーティスト「DEVIL NO ID」MV(監督)などがある。最新出演映画「リカ 自称28 歳の純愛モンスター」が6/18 より公開中。

電動アシスト自転車としても使える電動バイク「COSWHEEL SMART EV」が発売

Acalieは6月25日、3Way乗りが可能な電動バイク「COSWHEEL SMART EV」の一般販売を開始しました。価格は22万9000円(税込)です。

 

COSWHEEL SMART EVは、2021年1月~3月にかけてクラウドファンディングサービス「Makuake」で先行販売し、人気を集めたモデル。電動バイク、自転車、電動アシスト自転車の3Wayで使用できます。

 

タイヤは太めの4インチサイズのため、コントロール性と安定性を兼ね備えているほか、20インチのホイールを採用しており、小回りの効きやすさも抜群としています。また、フレームは太いものを採用。エアロ効果と剛性を高めているそうです。

 

このほか、衝撃吸収に優れた独自のサスペンションや、バッテリー電量や走行スピードを表示する液晶ディスプレイ、最長航続距離50kmのバッテリーを搭載。充電時間は約5~6時間で、走行スピードは時速最大45kmとなっています。

 

なお、公道走行も可能ですが、ナンバー登録、自賠責保険への加入、ヘルメットの着用、第一種原動機付自転車を運転することができる免許の携帯が必要なうえ、車道を走る必要があります。また、運転には十分注意しましょう。

公道を走れる日本製eスクーター「Free Mile Plus」が発売、最高時速は45km/h

プラススタイルは6月11日、公道走行が可能な日本メーカー製eスクーター「Free Mile Plus」を発売すると発表。6月15日に発売します。価格は税込みで、バッテリー10Ahモデルが17万3800円、バッテリー13Ahモデルが18万3800円です。なお、6月15日から7月10日までの間は3万4800円オフとなります。

 

Free Mile Plusは、クリエイティブジャパン製のeスクーター。原動機付自転車の保安基準に適合しており、ナンバープレートの取得・取り付け、ヘルメットの着用、走行時の免許証携帯、自賠責保険に加入することで、公道で乗ることができます。なお、クリエイティブジャパンのeスクーターの取り扱いは、他社ECとしてはプラススタイルが初めてとしています。

 

搭載されている10インチタイヤは直径25.4cm/太さ8cmで、オフロードに対応。また、最高時速は45km/hとなっています。

 

さらに、前輪・後輪にそれぞれ2つ、計4つのサスペンションを搭載しており、段差の衝撃を吸収して快適な走行をサポートするほか、ディスクブレーキの採用によりスムーズに速度を落とすことが可能です。

 

最大航続距離は13Ahモデルは40km、10Ahモデルは30kmです。このほか、サドルが付属するため、スタンディングだけでなく、座って乗車することもできます。なお、充電時間は最大6時間です。

 

本体サイズは約幅60×奥行き120×高さ120cmで、重量は約30kg。

普通免許で気軽に乗れるパーソナル三輪EV「Future mobility “GOGO!”」試乗レポート

次世代パーソナルモビリティ「Future mobility “GOGO!”」を開発・販売するFutureは3月31日、報道関係者を対象とした製品説明会および試乗会を開催しました。GOGO!はいわゆる“電動三輪ミニカー”のスタイルを持つ一人用の乗り物です。最近登場している電動バイクのほとんどが二輪である中で、三輪という新感覚の走りを体験してきました。

↑「Future mobility “GOGO!”」の発表&試乗会が開催された会場

 

原付のような二段階右折は不要で、ヘルメット着用も法律上は求められず

GOGO!を目の前にすると、デザインはどこか愛らしく、レトロな雰囲気が漂います。特にシート付近は手作り感たっぷりの仕上がり。ボディカラーにはピンクや淡いグリーンなどがラインナップされ、若い世代や女性を対象にしていることがわかります。

 

GOGO!は原付スクーターのようにも見えますが、実はその構造はまったく別のものです。車体の構造は前輪がふたつ、後輪がひとつで構成される三輪車となっており、法律上は「普通自動車のミニカー」として取り扱われる車両なのです。これによりGOGO!を運転するには普通自動車免許が必要となります。原付免許では乗れません。ここは注意してください。

↑ベースモデル「Future mobility “GOGO!”S」。ミニカーであるため、ナンバーは水色となる。全長1m×全幅0.6m×全高1m

 

一方で、普通自動車のカテゴリーとなっていることで、原付バイクのように二段階右折をする必要もなければ、ヘルメットの着用も義務付けられません。ここがGOGO!最大のポイントとも言えるでしょう。実はGOGO!はシェアリングでの利用も予定しており、その際にヘルメットが必要となれば利用のハードルはどうしても高くなってしまいます。感染症が治まらない現在の状況ではヘルメットを借りるのも躊躇してしまうでしょう。その点、このカテゴリーならヘルメットなしで乗ることができ、利用者のハードルは一気に低くなるのです。

 

ただ、法律上は義務ではないとはいえ、安全を考慮すればヘルメットの着用はすべきでしょう。自前でヘルメットを用意するなり、身を守る手立てをした上で乗車することをオススメします。

 

ラインナップは全4種類。ハイエンドモデル「F1」は最高速45km/h!

そんなコンセプトで開発されたGOGO!だけに、その使い勝手は誰でも簡単に取り扱える設計となっていました。特に注目なのが車体重量で、三輪車とは思えない22~25kgに抑えられています。この日、説明に登壇した同社の代表取締役CEO・井原慶子氏によれば、「これまでの3輪車は車体が重く、倒してしまった時は戻すのに苦労することが多かった」と言います。この重量なら女性でも簡単に起こせるというわけです。

↑「Future mobility “GOGO!”」について説明するFutureの代表取締役CEO・井原慶子氏

 

GOGO!のラインアップは、装備ごとに「S」と「カーゴ」、「デリバリー」の3種類。バッテリーはステップ下に内蔵され、「標準バッテリー」とオプションの「大容量バッテリー」の2タイプを装着することができます。公表されているスペックによれば標準バッテリーで最高速度は30km/h、フル充電での航続距離は30kmとのことでした。

↑バッテリーはステップ下に内蔵される。「標準バッテリー」(3万9800円)や「大容量バッテリー」(5万9800円)、「標準充電器」(7800円)、「急速充電器」(1万5800円)といった周辺機器がある※すべて税込み

 

↑「Future mobility “GOGO!”カーゴ」。リアに荷物が載せられるカゴが装着される

 

さらにGOGO!にはカーボン製モノコックフレームを用いて重量を18kgにしたハイエンドモデル「Future mobility F1」を用意。こちらはモーターのハイパワー化も果たしており、最高速度は45km/hにもなるということです。

 

さて、ここからがいよいよ試乗です。運転にあたっては、ステアリングバーの左側にあるメインスイッチを右にスライドさせた上で、その右にある「M」ボタンを長押しすれば準備OK。この状態でブレーキを離して右側のアクセルを回せばスタートできます。

↑「Future mobility “GOGO!”S」の操作スイッチ部。上からウインカー、メインスイッチ、ホーンスイッチ。右側の黒いスイッチはモード切り替えボタン

 

↑ステアリング中央に配置される速度やバッテリー残量などを表示するディスプレイ部

 

アクセルを回すとGOGO!は力強く前進し、クルマの流れに遅れることもなくスムーズにスタートできました。走り出しこそ若干左右に振られますが、速度が乗ってくると安定性は高まっていき、ミラーを確認しながら車線変更も余裕でできるようになりました。

↑ステアリングの左右に備えられたウインカー。昼間の走行では点灯していることは気付きにくい

 

↑リアのLED点灯部。中央はテールランプで左右がウインカーとして機能する

 

この日は神宮外苑の道路を周回して試乗しましたが、路面の段差を乗り越えてもしっかりとした剛性が伝わってきました。かといって路面からのショックもボディ全体で和らげてくれているようで、キックバックもそれほど強くなく、乗車中は想像以上に快適でした。

 

マルチリーンサスが生み出す、コーナリングの吸い付き感に感動!

特に感動したのがカーブを曲がった時の前輪の吸い付き感です。これが愛らしい姿からは想像できないアクティブな走りを生み出していたのです。実はGOGO!の前輪には、井原氏がカーレースで体験した技術をフィードバックして完成させたマルチリーンサスペンションが採用されています。これが安定したコーナリングに結びついていたのです。

↑前輪に組み合わせたマルチリーンサスペンション。このリンクによって優れたコーナリングを生み出す

 

ただ、スペックの最高速度30km/hには、全開にしてもなかなか到達できません。試乗中は信号に引っかかったこともあり、速度は25km/h強程度までしか出ませんでした。スタッフによれば「体重50kg程度の人が乗った場合のスペックなので、それより重いと最高速度は低くなる可能性がある」とのこと。私は体重が80kg近くあるのでその影響が出ていたのかもしれません。

↑リア車輪には駆動のためのインホイールモーターが組み込まれる

 

とはいえ、その走りは想像以上にしっかりとしたものです。井原氏によれば、このGOGO!を使い、驚いたことに工場がある三重県鈴鹿市から東京の六本木まで耐久テスト走行を敢行したとのこと。しかもその過程でのトラブルはゼロ! これは相当にすごいことです。レーサー上がりの井原氏ならではの企画が見事成功したというわけですね。

 

現在、GOGO!は三重県鈴鹿市の工場で月産50~100台体制で生産中。2021年4月からは、代理店契約を行った店舗でも購入可能な予定となっています。価格は「Future mobility “GOGO!”S」が26万1800円、「Future mobility “GOGO!”カーゴ」が27万2800円、「Future mobility “GOGO!”デリバリー」が28万3800円、「Future mobility F1」が47万800円。※価格はすべて税込み。

↑東京・神宮外苑の絵画館前に集結した「Future mobility “GOGO!”」のラインナップ。ブラックやミントなどカラーリングも豊富

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

世界最古のオートバイブランド「ロイヤルエンフィールド」が、都内にショールームをオープン。その詳細

創業以来、120年もの歴史を持つ最古参のバイクメーカー「Royal Enfield(ロイヤルエンフィールド)」が、今年3月に東京都杉並区に日本初のブランドショールーム「Royal Enfield Tokyo Show Room」をオープンします。このショールームでは、ロイヤルエンフィールドの各種モーターサイクル、アパレル、アクセサリー、スペアパーツ、サービスなどを展示。今後はここを拠点として日本におけるロイヤルエンフィールドの存在感を高めていく考えです。

↑創業120周年を迎えるロイヤルエンフィールドが東京都杉並区にオープンさせた日本初のブランドショールーム

 

創業は1901年。拠点をイギリスとインドに構え、世界60か国で展開中

ロイヤルエンフィールドは1901年にイギリスのレディッチ市で創業しました。オートバイ業界で100年以上にわたり挑戦を続けており、今や現存する世界最古のモーターサイクルブランドとなっています。ラインナップは中間排気量二輪車(250~750cc)を手掛け、中でも1932年に誕生した『Bullet(バレット)』は歴史上最も長く継続生産しているオートバイとして知られます。二度にわたる世界大戦を経て、その耐久性とクラシカルな英国スタイルが融合した設計思想はイギリスの自動車・オートバイ最盛期に最前線で活躍する原動力となりました。

↑1932年に生まれたロイヤルエンフィールドの原点とも言える「Bullet(バレット)500」

 

しかし、60年代に入って日本メーカーのイギリス進出によって業績は悪化。70年には倒産するという憂き目に遭っています。ただ、ロイヤルエンフィールドのブランドは思いがけない形で復活します。実は55年に同社はインドに現地工場を設立して生産拠点を移していました。これが幸いし、イギリス本社が倒産した後もインド側が独自に生産を継続し続けることができたのです。その後、インドの商用車大手であるアイシャー・モーターズ(Eicher Motors Limited)の一部門として事業を展開するに至り、一世紀を超える伝統のオートバイブランドは守られたのです。

 

現在はイギリスとインドの2か所に研究開発拠点となるテクニカルセンターを設置し、インド国内の工場からアジア、欧州、北米・南米など世界60か国に輸出しています。また、2020年にはアルゼンチンのブエノスアイレスに組立工場を開設、2021年6月にもタイの新工場で生産を開始予定です。取り扱う製品ラインアップは単気筒もしくは2気筒の250~750ccという中排気量~大排気量車が中心です。

↑イギリス/ブランティングソープとインド/チェンナイに2つの技術センターを設置した

 

↑ロイヤルエンフィールドはイギリスとインドに技術拠点を構え、世界60か国に輸出している

 

今回、日本市場で展開するラインナップは、単気筒、ツインシリンダーエンジンを搭載した400ccを超える、『Bullet 500』、『Classic 500』、『HIMALAYAN』、『INT 650』、『Continental GT 650』の5モデルです。ラインナップのすべてがレトロな雰囲気を持っていることが大きな特徴となっており、独特の排気音はまさに“奏でる”といった表現がピッタリなオートバイと言えるでしょう。

↑空冷単気筒500ccがクラシカルなフィールを醸し出す「Classic 500」の2021年モデル

 

↑2016年発表。懐かしさを感じさせるスタイルながら本格的オフロード仕様の「HIMALAYAN」

 

↑日本では2019年6月より発売となったバランサー付き270度ツイン650ccの「INT 650」

 

↑ハリスパフォーマンスがダブルクレードルフレームの設計に関与したカフェレーサー風「Continental GT 650」

 

ただ、すべて空冷式であるだけに環境負荷がやや大きいという側面もあります。1月29日に開かれたオンラインでの記者会見で同社のビノッド・ダサリCEOは、「当社は最新の技術を反映しながらもレトロなデザインにフォーカスするのが基本姿勢。しかし、経営面で採算が取れると判断した段階でEVへ参入する事もあり得ます」と将来の可能性も示唆しました。

 

とはいえ、時代の時代の流れに押されてロイヤルエンフィールドが電動化への道を歩むとしたらその存在意義は後退してしまうとの心配もあります。電動化が進む時代でも内燃機関を使う車両がゼロになることはないし、そうした中で独自の世界観を持ち続けるメーカーとしての役割をロイヤルエンフィールドには果たして欲しいとも思うわけです。

 

愛好家同士が集え、歴史あるオートバイがいつでも見られるショールームに期待

すでに日本国内においてロイヤルエンフィールドは、複数のブランドの輸入に携わっているピーシーアイを経て全国15店舗が展開中です。

↑日本国内では複数のブランドの輸入に携わるピーシーアイを経て全国15店舗が展開中

 

そのロイヤルエンフィールドが東京にショールームを持つということは、それだけ本気で日本市場で攻勢をかけていくという証しでもあるでしょう。ダサリCEOは、「東京に初となるブランドショールームをオープンできることを非常にうれしく思っています。今回、日本という美しい国に進出することに興奮しています」と挨拶した上で、「日本はライディング文化も成熟している。全方位のラインナップを提供して日本の愛好者の要望に応えていく」と日本市場にかける期待を込めました。

↑ロイヤルエンフィールド CEO、ビノッド・ダサリ氏

 

では今春オープンするショールームはどんな場所となるのでしょうか。発表によれば、ロイヤルエンフィールドの各種モーターサイクルをはじめ、関連するアパレル、アクセサリー、スペアパーツ、サービスなどが展示される特別なショールームになるということです。さらにこのショールームではアフターマーケットサポート、試乗会、コミュニティイベントなどを開催する予定で、ショールームにおいて愛好家同士が集えるユニークな場所にしていくとのことでした。

↑ロイヤルエンフィールドがオープンさせるブランドショールーム『Royal Enfield Tokyo Show Room』の内装

 

↑『Royal Enfield Tokyo Show Room』はクラシカルな雰囲気で構成されている

 

↑『Royal Enfield Tokyo Show Room』ではライディングのコーディネイトも対応できる

 

↑防護性の高いライディングギアや、日常でも使えるプロテクションギアなどのアパレル・アクセサリも展示予定

 

日本を含むアジア太平洋地域(APAC)のマーケティングを担当するビマル・サムブリー氏は、「ショールームは我々の120年の歴史を気軽に楽しんでいただける内容となっているので、思いついたらぜひ立ち寄って欲しい。私も新型コロナウイルスの状況が落ち着いたら、ショールームに足を運ぶつもりです」と話していました。本ショールームは歴史あるオートバイがいつでも見られる貴重な場となりそうですね。

↑ロイヤルエンフィールド アジア太平洋地域責任者、ビマル・サムブリー氏

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

新モデル続々登場! 価格帯別「スポーツeバイク」“買い”3選

今冬の家電市場では、例年以上に魅力的な新製品が続々と登場している。ここでは、なかでも注目を集めるジャンルを取り上げて、価格帯別にトレンドと“買い”のポイントを解説。さらに、各価格帯でプロが認めたイチオシのアイテムも紹介していく。今回取り上げるのは、スポーツeバイク。趣味性の高さと気軽に楽しめる走行性能で人気沸騰中のスポーツeバイクは、多くのメーカーから新モデルが続々と登場。楽しさと快適性、エコロジーを融合した新ジャンルの乗り物を手に入れない理由はない!

※こちらは「GetNavi」 2021年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

スポーツeバイク、“買い”のポイント

・本格的なロードバイクを手掛けるメーカーのモデルが続々と登場

・デザイン性を重視したフレーム内蔵バッテリーモデルも狙い目

・十分なバッテリー容量で遠距離ツーリングも快適に楽しめる!

 

私たちが解説します!

GetNavi編集部 乗り物担当

上岡 篤

これまで数多くのe-bikeを紹介するにつれ、どうしても欲しくなり最近購入。坂道もスイスイで行動範囲が広がった。

自転車ライター

並木政孝さん

乗り物好きで自転車にも精通するフリーライター。週末はロードバイクやMTBで輪行するが自慢の貧脚は一向に進化せず。

 

どのモデルも性能は高レベル、デザイン重視で選ぶのも◎

環境に優しく健康にも良いパーソナル・モビリティビークルとして注目を集めているeバイク。

 

「最近は、クロスバイクのスタイルを持つスポーツモデルがトレンドの中心。各メーカーがデザインや性能を競い合い、驚くべき速さで進化しています」(並木)

 

価格帯も幅広いが、どんな点に注目して選べば良いだろうか。

 

「ドライブユニットやバッテリーの性能はすでに高いレベルにあるので、デザインを重視してみるのもポイントのひとつ。バッテリーを内蔵したモデルやダウンチューブにバッテリーを装着するモデルなど、スポーツバイクらしいデザインが増えています。そこそこ長く乗るモノですから、見た目も重視したいですね」(並木)

 

メーカーも試乗会などを積極的に開催している。足を運んで、スポーツeバイクの楽しさを肌で感じ、自分の相棒となる1台を選んでみることをオススメする。

 

【《松》クラス】予算額30万円以上

決してお手ごろな価格ではないが最新のテクノロジーを満載したモデルはガジェット好きの好奇心を満たしてくれるはず。先進の電動アシストでワンランク上の満足感を享受するべし!

 

【No.1】ダウンチューブに内蔵されたスマートなバッテリーが秀逸!

トレック

Powerfly 5

53万3500円

アメリカンブランドの雄、トレックのハイエンドe-MTB。コンパクトなボッシュ製ドライブシステムや、アルミフレームに内蔵された脱着式一体型バッテリーなど、最新のテクノロジーが満載だ。2021年モデルには待望のXSサイズを追加。

SPEC【M(29インチホイール)】●全長×全幅:1920×770mm ●適応身長:161〜175cm ●アシスト可能距離:ターボモード99km、EMTBモード124km、ツアーモード127km、エコモード175km

バッテリー容量 625Wh
最大アシスト距離 175km
変速 外装12段
重量 23.0kg

 

↑地形に合わせて変動する脚力に応じてアシスト量を制御する「EMTB」モードを搭載。急勾配や段差の乗り越えも安心だ

 

↑バッテリーの違和感をなくしたフレーム内蔵型を採用。力強さを与える太いダウンチューブを魅力に変えた秀逸デザインだ

 

<クロスレビュー!>

2.30という太めのタイヤで街乗りにも合いそうなMTB

「フロントにサスペンションを搭載した本格的なMTBですが、サイズM以上は2.30という太めのタイヤ。29インチのホイールと相まって乗り心地も良く、街乗りでも快適に乗れそうです」(上岡)

 

秘めた実力は想像を超えるお値段以上……トレック♪

「本格的なトレイルライドにも対応する実力派モデル。ダウンチューブに内蔵したバッテリーと75Nm(XSは85Nm)の最大トルクを発揮するBOSCH Performance Line CXが最大の魅力です」(並木)

 

【No.2】バッテリー切れの心配なくロングライドが楽しめる!

スペシャライズド

Turbo Vado SL 5.0

46万2000円

14.9kgという軽量さを武器に軽やかな走りを披露する人気モデル。また130kmの航続距離はロングライドを実現させ、ドリンクホルダーに収まるレンジエクステンダーを追加することで、さらに65kmの距離を伸ばすことができる。

SPEC【M】●全長×全幅×全高:1791×680×790mm ●適応身長:165〜175cm ●アシスト可能距離:エコモード約130km

バッテリー容量 320Wh
最大アシスト距離 約130km
変速 外装12段
重量 14.9kg

 

↑レンジエクステンションと呼ばれる予備バッテリーを搭載することで航続距離を伸ばすことができる。最長195kmのロングライドが可能だ

 

↑通常のMTBと同等の14.9kgという軽量さは大きな魅力。ステムに内蔵されたフロントサスペンション「Future Shock」も軽量化に貢献する

 

<クロスレビュー!>

14.9kgという軽さに驚き! 軽さが生む軽快さも魅力的

「スポーツeバイクながら約15kgという軽さに驚きで、持ち運びするのも苦になりません。何より車体の軽さがモーターのアシストを、効果的に高めてくれるので、軽快に走れます」(上岡)

 

スマホと連携させることでアシストレベルを自動調整

「スマホと連携したミッションコントロールを採用し、ルート設定に対して適切なアシストを自動調整してバッテリー残量を確保。故障時にはリモートで診断も受けられるのがスゴい!」(並木)

 

【No.3】最大ケイデンス値を向上させた最新のパワーユニットを搭載!

ジャイアント

FASTROAD E+

38万5000円

扱いやすいフラットバーハンドルを採用したロードモデル。軽量なアルミフレームに、ヤマハとの共同開発によるパワーユニット「シンクドライブ・スポーツ」をバージョンアップして搭載した。バッテリーをダウンチューブに内蔵することでスッキリとしたデザインを実現。

SPEC【M】●全長×全幅:1730×660mm ●適応身長:165〜180cm ●アシスト可能距離:スポーツモード89km、アクティブモード100km、ツアーモード137km、エコモード205km

バッテリー容量 13.8Ah
最大アシスト距離 205km
変速 外装10段
重量 19.4kg

 

↑ヤマハと共同開発したシンクドライブ・スポーツモーター。膨大なデータを検知するスピードセンサーを採用し、スムーズかつ緻密なアシストを実現

 

↑ステアリング剛性と軽量さを両立させたe-bike専用のアルミ製フロントフォークOVERDRIVE FORK。快適なライド感を支える要となる

 

<クロスレビュー!>

十分すぎるアシスト距離とキックスタンド標準装備は◎

「ECOモードで最長205km、標準的なTOURモードでも137kmという十分すぎるアシスト距離は魅力的。手軽に街なかで停めることができるキックスタンドが標準装備とはうれしい!」(上岡)

 

ハイケイデンスクライムに対応した新ユニットが魅力!

「最大出力は70Nmのままだが最大ケイデンス(※)値を110から140にバージョンアップしたパワーユニットを搭載。『弱虫ペダル』の小野田坂道クンばりのハイケイデンスクライムを楽しめます」(並木)

※:ケイデンスとは1分間あたりのペダルの回転数のことで、単位はrpm(回転数/分)。個人の漕ぎ方や道の傾斜によって理想のケイデンスは異なるので、自分がラクに漕げる回転数を見つけることが大切となる

 

【《竹》クラス】予算額20万円〜30万円

現実的な価格でありながらハイエンド機に迫る性能が大きな魅力。クロスバイクとして気軽にライドすることができ、アシストの力を借りてのサイクリングは行動範囲を大きく広げてくれる。

 

【No.1】信頼性に優れたシマノ製のドライブユニットを採用!

ミヤタサイクル

Cruise6180

29万5900円

36V/11.6Ahの大容量リチウムイオンバッテリーを採用し、エコモードで105kmのロングライドを実現。ドライブユニットには信頼性の高いシマノSTEPSのE6180を採用し、最大60Nm、250Wの高出力で快適なペダリングをサポートする。

SPEC【フレームサイズ49cm】●全長×全幅×全高:1760×645×1020mm ●適応身長:170〜190cm ●アシスト可能距離:ハイモード70km、ノーマルモード85km、エコモード105km

バッテリー容量 11.6Ah
最大アシスト距離 105km
変速 外装10段
重量 18.4kg(49サイズ)

 

↑シマノ製STEPSのミドルレンジに位置するE6180を搭載。パワフルさよりも軽量かつ軽快なライド感に貢献

 

↑シートステーに固定されたサークルロックを装備。気軽にロックできるのでちょっとした駐輪の際便利だ

 

<クロスレビュー!>

軽量なドライブユニットで漕ぎ心地の軽さを実感できる

「60Nmの高いトルクを生むドライブユニットは軽量で、漕ぎ心地の軽さを実感できます。スポーツeバイクのラクさにスピード感も欲しい人に、このスタイリッシュなモデルはオススメです」(上岡)

 

軽めのギアをクルクル回して気軽にサイクリングを楽しむ

「ケイデンスを高めにライドすることでアシストの恩恵をより強く感じられるセッティングは好感が持てます。油圧式ディスクブレーキが雨天時でも確実な制動力を発揮してくれるのも魅力的」(並木)

 

【No.2】後輪軸にモーターを内蔵した個性的なシステムが際立つ!

FUJI

MOTIVATOR

25万1900円

シティバイク然としたスマートさが魅力の一台。ボトムブラケットではなく後輪のハブ部分にアシストモーターを搭載することで、軽量かつフロントギア周辺をスッキリとデザインした。5段階でアシストモードを切り替えられる。

SPEC【M】●全長×全幅×全高:1730×560×556.3mm ●適応身長:170〜180cm ●アシスト可能距離:モード5 25km、モード3 37.5km、モード1 50km

バッテリー容量 5.0Ah
最大アシスト距離 50km
変速 外装9段
重量 16.5kg

 

<クロスレビュー!>

スポーツeバイクらしからぬスマートなデザインが魅力的

「ペダル部分ではなく後輪にモーターを搭載、そしてバッテリー内蔵型のフレームを採用。スマートなデザインはどこへ行くにも合いそう!」(上岡)

 

軽量さを武器にキビキビと走行できる注目の一台!

「Mサイズでも16.5kgという軽さを誇り、街なかでキビキビとした走りが楽しめます。ディスプレイに備えたUSBポートでスマホの充電も可能」(並木)

 

【No.3】ロードバイクの実力を備えた快速電動アシストクロス!

ヤマハ

YPJ-EC

28万6000円

ロードバイクを日常生活に合わせてフラットバーハンドル化した、人気の電動アシスト付きクロスバイク。ドライブユニットには欧州で好評を得た自社製のPW series SEを搭載し、長距離ツーリングやスポーツライドにも対応する。

SPEC【M】●全長×全幅×全高:1760×590×890〜1000mm ●適応身長:165cm以上 ●アシスト可能距離:ハイモード89km、スタンダードモード109km、エコモード148km、プラスエコモード222km

バッテリー容量 13.3Ah
最大アシスト距離 222km
変速 外装18段
重量 19.8kg(M)

 

<クロスレビュー!>

スタンダードモードでも100kmを誇るアシストは魅力

「スタンダードモードでも100kmを超えるアシストが可能で、ロングライドでも安心。充電の回数も減るので、デイリーユースにもぴったりです」(上岡)

 

電アシのパイオニアらしい高い実用性と信頼性が光る!

「ハイケイデンスに対応したアシストセッティングは秀逸。日常使いだけでなくロングライドでの使いやすさにもヤマハらしい真面目さが垣間見えます」(並木)

 

【《梅》クラス】予算額約20万円以下

20万円以下の予算はファーストeバイクとして狙い目のゾーンとなるが、その実力と信頼性はプライスレス。電動アシストモーターによる快適さは一度味わったら病み付きになるはずだ!

 

【No.1】1充電で最大130kmをアシストする実用性と快適性を持つ毎日の相棒

ブリヂストンサイクル

TB-1e

14万2780円

通勤通学用として人気急上昇中のモデル。シンプルなデザインと、最大130kmを走破する実力を誇る。アシストモーターをフロントホイールのハブに装備し、前輪を電動アシスト、後輪をマンパワーで駆動する両輪駆動仕様。

SPEC ●全長×全幅×全高:1850×575×985mm ●適応身長:151cm以上 ●アシスト可能距離:パワーモード54km、オートモード90km、エコモード130km

バッテリー容量 14.3Ah相当(※)
最大アシスト距離 130km
変速 外装7段
重量 22.3kg

※:一般的な25.2Vに合わせて算出した参考値

 

↑DUAL DRIVEと呼ばれる両輪駆動方式を採用。クルマの四輪駆動のように力強い走りを実現する

 

↑シンプルに仕上げたスマートワンタッチパネルで操作を行う。アシストモードは3モードから選べる

 

<クロスレビュー!>

独自の回生充電で伸びたアシスト距離が最大の魅力

「走行中でもバッテリーに充電できる回生充電により伸びたアシスト距離が最大の魅力。フルサイズの泥除け装備など、毎日の通勤にも使える一台。4色が揃うカラバリも魅力的です」(上岡)

 

ブリヂストンサイクルらしい個性を凝縮した実用モデル!

「両輪駆動、モーターブレーキなど独自の個性が満載。発進時にフロントが引っ張られるような独特のライド感は、上り坂や荷物積載時の漕ぎ出しの軽さにもつながります」(並木)

 

【No.2】近未来感が漂う意匠と秘められた性能に感動!

ベスピー

PSA1

20万3500円

グッドデザイン賞にも輝いた独特のフォルムが目を引くコンパクトな電動アシストモデル。軽量なアルミフレームを採用したミニベロタイプでありながらも、10.5Ahの高性能バッテリーの恩恵により最大90kmの走行が可能だ。

SPEC【M】●全長×全幅×全高:1540×595×1100mm ●適応身長:153cm以上 ●アシスト可能距離:パワーモード60km、ノーマルモード74 km、エコモード90 km

バッテリー容量 10.5Ah
最大アシスト距離 90km
変速 外装7段
重量 19.6kg

 

<クロスレビュー!>

直線的なフォルムが生むほかにない個性が魅力的

「直線的なフォルムが生む独特のスタイルが魅力ですが、そこにムダを感じさせないのもポイント。サイクルコンピューター機能も魅力的です」(上岡)

 

コンパクトなサイズは旅先での足としても活躍

「ミニベロタイプらしいコンパクトサイズが特徴。加えて車両重量は19.6kgなので、クルマに積んで旅先でのサイクリングを楽しめます」(並木)

 

【No.3】爽快感を手軽に味わえるエコなシティコミューター

パナソニック

ジェッター

16万5000円

2020年8月のモデルチェンジによりアルミ製のフレーム内部にワイヤーを通したスッキリデザインへと生まれ変わった人気モデル。ダウンチューブにバッテリーを積載することでスポーティな雰囲気を演出している。

SPEC【BE-ELHC339】●全長×全幅×全高:1855×590×975mm ●適応身長:144cm〜181cm ●アシスト可能距離:ハイモード約45km、オートモード約54km、エコモード約85km

バッテリー容量 12.0Ah
最大アシスト距離 約85km
変速 外装8段
重量 21.1kg

 

<クロスレビュー!>

新設計のバッテリー搭載でよりスポーティなスタイルに

「ダウンチューブに取り付けるバッテリーの採用でスポーティなモデルに進化。幅172mmのワイドサドルで疲れにくく、長距離もラクに走れます」(上岡)

 

何気ない日常に刺激を与えるビギナー向けのクロスバイク

「軽快な走りが日常を楽しくする電動アシストタイプのクロスバイク。外装8段のギアとアシストモーターで自転車本来の爽快感が味わえます」(並木)

 

【Topic】ビジカジにぴったりなヘルメットが増加中!

安全にスポーツeバイクに乗るならヘルメットは必須。最近では尖りすぎないデザインのヘルメットが増え、通勤でも十分使える!

 

【No.1】

ブリヂストンサイクル

クルムス

7150円

安全基準への適合を証明するSGマークを取得。ビジネススタイルにも合わせやすいスタイリッシュなデザインで、カラーは3色から選べる。

 

↑ビジネススタイルはもちろん、カジュアルファッションにもぴったりなデザインだ

 

【No.2】

モカ

クモア

1万450円〜1万1550円

ライナーの外に最高グレードの超高耐衝撃性AES樹脂を使用し、多少雑に扱っても平気な丈夫さと高い耐久性を実現。カラバリも8種類と豊富に揃っている。

 

↑ベースボールキャップ風スタイルで気軽に着用可能。カジュアルなファッションに合う

 

誕生は必然ーー電動式ハーレーダビッドソン「ライブワイヤー」を写真多めで解説

2019年に本国・アメリカで先行発売された電動ハーレーダビッドソン「ライブワイヤー(LiveWire)」。ハーレーファンはもちろん、多くのバイクファンの間では「まだか、まだか」と日本モデルの登場を心待ちにする声が多かったのですが、2020年12月ついに初お目見えとなりました。

販売がスタートするのは2021年2~3月で、輸入状況次第で前後することもあるようですが、これに先立ちライブワイヤーの実車を見てきました。これまで、高排気量・V型2気筒のガソリンモデルが基本だったハーレーダビッドソン。最新テクノロジーの投影によって誕生した電動モデル・ライブワイヤーがどんなものなのか。その全体像を紹介します。

【ハーレーダビッドソン「ライブワイヤー」を写真で先見せ(画像をタップすると拡大画像が表示されます)】

 

オートマチックモデルで、車検はない

電動の細部に入る前に、まずは外観と概要を見ていきましょう。全長は2135mm、シート高は795mm、重量255kgと、従来の高排気量バイクと大差はないものの見ての通りスポーツスターやH-Dストリートのように軽快でスポーティな走りを感じさせるモデルに仕上がっています。

 

実際に筆者もまたがってみましたが、ライディングポジションが結構前屈み。正直やや恐怖感を抱いたところもありますが、同時にストップ&ゴーが繰り返される街中ではなく、ロングライド時であればこのポジショニングによって体の負担が少なく、軽快に走れそう。デザインはハーレーダビッドソン社のベン・マッギンリーという若手デザイナーが創案しました。2021年からの販売ではオレンジヒューズ、ビビッドブラックの2カラーが展開され、いずれも希望小売価格は349万3600円(税込)となっています。

↑ライブワイヤー・オレンジヒューズ

 

↑ライブワイヤー・ビビッドブラック

 

ライブワイヤーはギアチェンジのないオートマチック車。免許区分は「大型自動二輪車免許」または 「大型自動二輪車免許(AT限定)」 です。また、電動バイクなので車検はありません。しかし、安全・快適に乗るためにはディーラーでのメンテナンスが必要になります。メーカー側では、初回1か月または800km走行のどちらかのタイミングでの初回点検に加え、定期的な点検を推奨しています。

 

スロットルを開けた瞬間、100%のトルクを実現!?

次に完全電動化の細部を見ていきましょう。まず、目を引くのが心臓部に備えられた黒く巨大な高電圧バッテリーです。

↑ボディ中央の黒い部分がライブワイヤーの巨大バッテリー。その下のシルバーの箇所にモーターが配置されています

 

このバッテリーは、これまでのハーレーダビッドソンのシンボルでもあったVツインエンジンの位置に装備されているもので容量は15.5kWh。スロットルを開けていない起動時には、回生充電され、一度の充電で最大235kmの走行が可能。さらに高速道路での連続航続距離は最大152kmとなり、東名高速で言うと、東京インターチェンジから静岡市内までを走りきることができます。

 

保証面も大丈夫。新車購入後から5年間、バッテリーには走行距離無制限の保証が付帯されるとのことで、安心して維持できそうです。

↑ライブワイヤーには2つの充電方式があります。夜間や自宅での普通充電は、ガソリンタンク代わりのトップ部のソケットに繋いで行います。約12.5時間で、0%~100%までのフル充電が可能

 

↑もう1つの充電方法は、外出先などでの急速充電。付属充電ケーブルをシート下のソケットに繋いで行います。約40分で0~80%の高速充電、約60分で0~100%の満充電が可能

 

↑急速充電は、出先のサービスエリア、パーキングエリア、道の駅などでも手軽に行うことができます

 

電動モーターモビリティの一番のワクワクポイント、同時に恐ろしいのが大トルク。内燃機関の乗り物は、いきなり最大トルクに到達することはないわけですが、このライブワイヤーはスロットルをひねった瞬間、一気に100%のトルクを発揮します。

↑スロットルをひねった瞬間にフルパワーの出力に至るライブワイヤー

 

約3秒でいきなり時速100キロに到達することもできるとのことで怖くなった筆者でしたが、安全装置的なロック機能があり、リミット設定もかけられるとのこと。ホッとしました。

 

ところで、ハーレーダビッドソンはもちろん、バイクの醍醐味の一つがエキゾーストノート……つまり排気音なのですが、ライブワイヤーは電動式なので排気ガスが出ません。こうなると、魅力が薄いのでは?と思うかもしれませんが、そこはバイクファンの心情をわかっているハーレーダビッドソン。エキゾーストノート代わりとして、モーター音があえて出るように設計しています。

 

タッチスクリーンで、7つのライドモードを選べる

↑ハンドル中央に装備されたタッチスクリーンにより、乗り味の異なるモードを操作できる仕組み

 

ライブワイヤーは完全電動であるがゆえ、ハンドル中央に装備されたタッチスクリーンによって、個体の全てを把握、操作できるのも特徴です。スピードメーター、バッテリー残量がわかるほか、本モデル特有のライドモードを選ぶことができます。

 

ライドモードには、4つのプログラムモード、3つのカスタムモードがあり、それぞれの特徴は下記になります。

1.スポーツモード
ライブワイヤーの潜在的な性能を、ダイレクトかつ正確に引き出し、 フルパワーと最速のスロットルレスポンスを可能にするモード

2.ロードモード
日常的に使用するための技術をブレンドし、ライダーにとってバランスのとれたパフォーマンスを発揮するモード

3.レインモード
抑制された加速と限定された再生を実現。より高いレベルの電子制御介入を強調するモード

4.レンジモード
スロットル入力に対してスムーズかつ的確なレスポンスを実現するためのセッティングをブレンド。高いレベルでのバッテリー回生を行い、走行距離を最大限に引き出すことができるモード

5.カスタムモード(3種類)
ライブワイヤーをオフにした状態で、タッチスクリー ンにA、B、C と表示されるカスタムモードを最大3つ作成することが可能。パワー、回生、スロットルレスポンス、トラクションコントロールのレベルを特定の範囲内で組み合わせて選択することができます

 

このように自分のライディングスタイルに合わせて、最も相応しいモードに設定すれば、より快適な運転を楽しめるのもライブワイヤーの特徴でもあります。

↑その気になれば、ポテンシャルを最大限発揮できるのも特徴。2020年9月にアメリカ・インディアナポリスで開催されたドラッグレースでは、ライブワイヤーは市販電動バイクの最速記録を樹立しました(200m=7.017秒、400m=11.156秒、時速177.6km)

 

バイク本来の機構も、細部にまでこだわりが!

↑バイク本来が持つ機構も、細部にわたってこだわり抜かれたライブワイヤー

 

ここまで主にライブワイヤーの電動システムの特徴を紹介しましたが、では肝心のバイク本来が持つ機構はどうなっているのでしょうか。まず、フレームには鋳造アルミが採用されており、バイク全体の軽量化に寄与しながら、もちろん強度を高めています。

↑ボディを支える艶消しブラックのフレームは、鋳造アルミによるもの

 

そして、乗り味と確実な制御機能を実現させるためフロントに、SHOWAによるSFF-BP(フルアジャスタブル倒立フロントフォーク)、リアにBFRC-lite(フルアジャスタブルリアショック)が採用されています。さらにフロントブレーキのキャリパーはBremboのMonoblockを採用。300mm径のデュアルローターをしっかりグリップしてくれます。

↑SHOWAのフルアジャスタブルリアショックを搭載したリア付近。もちろん好みの伸び側減衰力に調整することができます

 

↑SHOWAのフルアジャスタブル倒立フロントフォークに付随する足回り。Bremboのキャリパーを採用

 

さらにライブワイヤーのためにミシュランが特別設計したScorcher Sportタイヤが履かれており、コーナリングでのグリップも十分。あらゆるライドでスタビリティーを発揮します。

↑ミシュランによるライブワイヤーのためのタイヤ、Scorcher Sport。フロントが17インチ×120、リアが17インチ×180

 

そして、最後。忘れちゃいけない気になるフロントとリアのルックスです。まず、フロント極めてシンプルなライト周りですが、ウィンカーなどの保安部品の細部がどことなくレーシーな印象を与える一方、ミラーはこれまでのハーレーに多かった段のついたケースのものを採用。このフロントから温故知新を具現化したような印象を受けました。

 

さらにリアはナンバープレートの両サイドにウィンカーを、フェンダーを支えるフレームにストップランプを配置。極力出っぱらさせないよう、細部まで工夫が施されています。これら無駄な装飾をせず、どことなくあえて無骨さを残している点は、ハーレーダビッドソンの流儀のようにも感じた筆者でした。

↑極めてシンプルなフロント周り

 

↑これ以上はありえないことをわからせてくれるほどの、極めてシンプルなリア周り

 

賛否両論というより必然だった電動ハーレー

ここまで、電動ハーレーダビッドソン・ライブワイヤーの全体を見てきましたが、最後にハーレーダビッドソン ジャパン・プロモーションマネージャーの大堀みほさんに、ライブワイヤー開発の背景について話を聞きました。

↑ハーレーダビッドソン ジャパン・大堀みほさん。プライベートではハーレーダビッドソンの「スポーツスター」を愛用されているとのこと

 

ーー言うまでもなくバイクファンにとって、ハーレーダビッドソンは特別なメーカーです。電動バイク・ライブワイヤーの開発には賛否両論があったのではないかと思うのですが。

 

大堀みほさん(以下、大堀) それが、本国では面白い事態が起きているんですよ。ライダー歴が浅い人、バイクには造詣がなかったけど、ガジェット好きでこれを機にバイクやハーレーダビッドソンに興味を持つ人が増えているようです。従来の「ハーレーダビッドソンの空冷エンジンが好きだ」という流れはこれからも続くと思いますが、一方でハーレーの創業時から続く「変革を恐れない」というこだわりは、ライブワイヤーにも現れていると思っています。

一般的に、ハーレーダビッドソンと言うと、「アメリカンでドコドコとゆったり走る」イメージがあるかもしれませんが、実際には様々なモデルがあり、各モデルそれぞれにファンが存在しています。なので、今回のライブワイヤーは賛否両論の末というより「新しいバイクの楽しみを提供する」という意味で必然的に開発されたと思っています。

 

ーーその「変革」には時世的な影響もあったのでしょうか。日本国内の四輪では2000年代から電動自動車が浸透し始め、最近では「2030年にガソリン車の新車を廃止する」という政府の方針も発表されました。

 

大堀 社会的な流れはもちろん意識しています。排出ガスに対する取り組みは四輪が先立って行っていますが、その波は二輪メーカー各社にも来ています。いわゆるSDGsのように持続可能社会を考えていかないことには企業は生き残っていけませんので、そういった意味でライブワイヤーを開発した経緯はあります。

しかし、バイクというのは「乗ってみて面白い」「カッコ良いものに乗りたい」というものでないと淘汰されていってしまうと思うんですね。バイクをただの足として考るのであれば、スクーター、自転車など代替品は他にもあると思いますし。しかし、「ハーレーダビッドソンに乗りたい」と思ってくださるお客さまに対して、前述のような社会的なことを意識しつつ新しい価値の提供をするということで、今回のライブワイヤーの開発に至ったところがあります。ですから、見ていただいた通り機能面だけでなく、デザイン面にもすごくこだわったモデルです。

まだ発表したばかりのライブワイヤーですが、このモデルを通してバイクの新しいライディング体験を提供できるとも思っています。ぜひ機会がありましたら、店頭へのご来店や、今後実施予定の試乗会などにお越しいただき、ライブワイヤーに触れていただければ嬉しいです。

↑2021年の発売より、日本のバイク市場でのライブワイヤーの席巻が始まる予感がしました

 

電動ハーレーダビッドソン、ライブワイヤーは未来を見据えた同社の新しいバイクの提案であり、この試みがバイク市場全体にも連鎖するようにも思いました。環境、機能、ルックスとも三方ヨシのライブワイヤー。ぜひ機会があったら触れてみてください!

 

撮影/我妻慶一

折り畳める上に電動アシスト付き! ベネリの「mini Fold 16 popular」はコスパ最強のミニベロかも

最近、急速に市場を拡大しているのが“e-Bike”と呼ばれるスポーツバイクに電動アシストユニットを取り付けた自転車。気になっている人も多いかと思いますが、ネックとなるのはやはり価格ではないでしょうか? ママチャリタイプの電動アシスト自転車で10万円程度なのに対して、クロスバイクタイプなどのe-Bikeは20万円オーバーが当たり前の世界。一度乗ってしまうと、その虜になってしまう人が多いですが、初めて購入するにはハードルが高いのも事実です。

そんな方に注目して欲しいのがe-Bikeタイプのミニベロ。今回紹介するベネリの「mini Fold 16 popular」は11万9790円(税込)という価格ながら、折り畳みも可能で、コスパが高そう。どんな乗り味なのか、実際に乗り回して体感してみました。

 

シンプルな機構で低価格を実現

ベネリというブランド名を初めて聞くという人がほとんどかと思いますが、1911年にイタリアで創業したバイク(エンジン付きのオートバイ)メーカー。1950〜60年代にレースで活躍し、プレミアムなバイクの販売でマニアに支持されてきたブランドです。創業100周年を迎えた2011年にe-Bikeの世界に進出し、マウンテンバイク(MTB)タイプや小径タイヤのミニベロなどをリリースしてきました。

 

同社のミニベロe-Bikeとして人気が高いのが「mini Fold 16」シリーズ。その名の通り、16インチの小径タイヤを装備し、折り畳み機構も搭載したモデルです。内装3段変速を搭載した標準モデルのほか、クラシカルなデザインに仕上げられた「mini Fold 16 Classic」もラインナップ。今回紹介するmini Fold 16 popularは装備をシンプル化し、コストパフォーマンスを高めた新モデルです。

↑電動アシスト付きには見えないシンプルなルックス。写真のコズミックシルバーのほか、コズミックブルーのカラーも選べます

 

電動アシストに見えないのは、バッテリーをフレームに内蔵し、モーターは前輪のハブ(車軸)と一体となったタイプを採用しているため。また、標準モデルは3段変速を装備しているのが、このモデルでは変速なしのシングルスピードとされているのも、価格を抑えられた理由でしょう。アシスト走行が可能な距離は最長50km(アシストレベルLow)と、e-Bikeの中では長くはありませんが、シングルスピードの小径車で1日50km以上走るような使い方はしませんから、十分な距離といえると思います。

↑前輪の車軸部分にモーターを装備。16×2.25インチと小径ながら幅広なものです

 

↑バッテリーを内蔵したフレームにはライトも装備されています。シンプルながら実用的な構成

 

↑バッテリーはフレーム後部から引き抜くようにして取り外しが可能

 

↑充電は外した状態でも、フレームに搭載したままでも行えます。バッテリーの重さは約1.8kg

 

↑ハンドルはシンプルな一文字タイプ。グリップは手のひらを受け止めるエルゴノミック形状です

 

↑モードの切り替えなどの操作は左手側のスイッチで行います。表示はLEDのみ

 

折り畳み可能で走行性能も十分

変速がないとスピードが出しにくかったり、坂道を登るのが大変だったりしそうと思うかもしれませんが、実際に乗ってみると予想以上に良く走ります。タイヤが小さいと、忙しく漕がなければ速度が維持できないというイメージがある人も少なくないと思いますが、それはタイヤ径に合わせたギア比になっていない自転車の場合。前側のギアが普通の自転車より大きく、後側のギアが小さくなっていると、一漕ぎで進む距離を同程度に設定できます。mini Fold 16 popularは前52T×後12Tという小径車向きのギア比になっているので、一生懸命漕いでもスピードが出ない……なんてことはありません。

↑タイヤ径に合わせて前側のギアがかなり大きくなっているので、スピードも出しやすい

 

こうしたギア比だと、逆に漕ぎ出しはペダルが重く感じる場合もありますが、そこはアシストがカバーしてくれます。もちろん、タイヤ径の大きなロードバイクやクロスバイクのようなスピードで走れるわけではありませんが、16インチという小さなタイヤから想像するよりはるかにスピードの乗りはいい。電動アシストがあると、ギアが付いていても操作しない人が多いことから変速機構を省いたようですが、たしかにアシストがあればギアはなくても苦になる場面はありませんでした。

↑4段階に調整できるアシストモードを最強にすると、びっくりするくらいの加速が得られます。平地では1つ下のモードで十分

 

↑そこそこ角度のある登り坂も走ってみましたが、こうした場面ではアシストを最強にするとスイスイ登って行けます

 

そしてmini Fold 16 popularの良いところは、折り畳みが可能なことです。しかも、フォールディングの機構がかなり分かりやすく、もちろん工具なども必要ありません。折り畳んだ際のサイズは全長890×全幅450×全高585mmとかなりコンパクトになるので、部屋の中に入れて保管したい人にはありがたいところ。途中まで折り畳んだ状態で、転がして移動させることができるので、マンション住まいでエレベーターに積む際などに役立ちそうです。

↑折り畳む際は、フレーム後部のリングを引いてロックを解除します

 

↑そのまま後輪を前に転がすようにして折り畳みます。その際、ちょっと車体を持ち上げるとスムーズ

 

↑この状態でも自立するので、スペースがあればこのまま立てておくのもアリ

 

↑さらにハンドルを折り畳めばもっとコンパクトになります

 

↑折り畳んだ状態ではキャスターが接地するので、サドルを押して移動することが可能

 

↑サドルを抜けばこんなにコンパクトに。オプションのキャリーバッグに収納することもできます

 

↑キャリーバッグに収納すれば、電車に持ち込んで遠出する輪行も楽しめます

 

シンプルな機構で買いやすい価格を実現しながら、街乗りでの走行性能は十分。おまけに折り畳めて収納しやすく、輪行も楽しめるとなるとコストパフォーマンスの高さはかなりのものです。長距離の通勤やツーリングには向きませんが、遠出したいのであればクルマや電車に積んでいくという手が使えるので、楽しみ方の幅も広そうです。最初の1台として購入し、自分のやりたいことや楽しみ方が固まってきたらステップアップするというのもいいでしょう。そうなったとしても、手放さずに手元に置いておきたくなる利便性をmini Fold 16 popularは持っています。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

カワサキの本気だ! 4気筒モデル「Ninja ZX-25R」が新登場

2019年の東京モーターショーのカワサキブースでワールドプレミアが行われた「Ninja ZX-25R」シリーズの発売が9月10日に決定しました。そして、全てのスペックが発表となったのです。

 

なんといっても250ccのインラインフォーEG

まずは今回のメイントピックとなるエンジンスペックから見ていきましょう。

↑4気筒ならではの快音とその咆哮を放つ走りは鳥肌もの

 

これまでのツインモデルの最高出力27kW(37PS)/1万2500rpmでも十分にパワフルでしたが、4気筒モデルはさらにパワーアップしました。しかも発生回転数が1万5500rpmという高回転型で、ラムエア加圧時は34kW(46PS)に増加します。カワサキのワークスライダー=ジョナサン・レイによるプロモ映像を見ると、速さにも音にも別次元の魅力を見せつけられてしまいます。これこそが4発の圧倒的な魅力です。

↑Ninja ZXの系譜を受け継ぐスタイリング。控え目ながらエキゾーストパイプが誇らしげにのぞきます。その咆哮を早く聞きたいし聞かせたい

 

カワサキの250ccの4気筒モデルはレーサーレプリカの初代ZXR250から始まり、ネイキッドスポーツのバリオスシリーズに受け継がれ、2007年に生産が終了。同時期に各社250マルチ(多気筒)エンジンの生産も終了していました。開発費、生産コストのかかる250ccの4気筒エンジンはもう2度と出現しないのではないかと言われ続けていました。しかし、ハイパワーツイン(2気筒)モデルを有するNinjaシリーズに4気筒版の登場が噂され、それが現実となったのが2019年の東京モーターショーだったのです。

 

ツインモデルと同等のボディサイズ

さて、ツインから4気筒となってそのボディはどれだけ大きくなったのかをチェックしてみると意外にもコンパクトなことが分かります。全長×全幅×全高が1980mm×750mm×1110mmです。これまでのNinja 250(ツインモデル)と比べ、全長は-10mm、全幅+40mm、全高-15mmなのです。並列4気筒エンジンなので全幅は広がっていますが全長、全高は短く、低くおさえられています。車重はSEで184kg(スタンダードグレードは183kg)とさすがにツインと比べると重量はありますがその差は18kg。気になるシート高は785mmとなっており、こちらもツインモデルより10mm低くなっています。

↑「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」ライムグリーン×エボニー(シングルシートカバーはオプション)。価格は91万3000円(税込)

 

↑「Ninja ZX-25R SE」メタリックスパークブラック×パールフラットスターダストホワイト(シングルシートカバーはオプション)。価格は91万3000円(税込)

 

↑「Ninja ZX-25R(スタンダードモデル)」メタリックスパークブラック。価格は82万5000円(税込)

 

SEモデルにはKQS(カワサキクイックシフター)、USB電源ソケット、スモークウインドシールド(スタンダードモデルはクリア)、フレームスライダー、ホイールリムテープが標準装備となります。それでは、もう少し深く細部を見ていきましょう。

 

超精密新パワーユニット

エンジンの大まかなスペックは前に記した通りで、新開発エンジンは249ccの4気筒。ということは1気筒あたりは、わずかに62.25ccの排気量となります。1気筒でみれば原付+αのサイズのシリンダーに精密な4バルブDOHCヘッドがのっている状態。しかもそれが4つ繋がっている訳です。このエンジンの市販化を実現させるには精密な部品の品質管理、組み立て精度が特に重要となり、それらを高い次元でクリアしています。これには今まで培ってきた長年のNinja ZXシリーズの技術の蓄積が重要でした。

↑まさに時計のように精密な機械といえる新開発エンジンです

 

リニアな出力特性の超高回転ユニットは、1万rpm〜1万7000rpmでエキサイティングなフィーリングをもたらしてくれます。軽量なアルミ鍛造ピストンによって往復運動部の重量を低減し、ビッグボア、ショートストロークでより鋭いレスポンスを得て高回転域の性能アップ。また、ビッグボアは気筒毎のビッグバルブ化に貢献しています。吸気バルブは直径18.9mmの大径(実際の寸法はかなりコンパクトですが、割合として大径という意味)バルブを使用し、吸入混合気量を増大させ高回転時のハイパフォーマンスを発揮。排気バルブは直径15.9mmで、高回転時の高負荷への対応や耐熱性を高めるため、Ninja H2と同材質のものがチョイスされています。

 

こうして250ccクラスのライバルを圧倒的に凌ぐパフォーマンスを手にしました。ハイパフォーマンスなエンジン性能を効率よく確実に路面に伝えるトラクション。軽量であり高い剛性を求められ、なおかつしなやかでなくてはならないフレームなどにもカワサキの最新技術が盛り込まれています。そのいくつかをピックアップしてみましょう。

 

強靭でありながらしなやかな骨格がマシンを支える

↑レーシングマシンゆずりの新設計フレーム

 

新設計のフレームは高張力鋼製トレリスフレームです。スーパーバイク選手権に参戦しているNinja ZX-10RRレーシングマシンのシャーシ設計思想を踏襲。それによって理想的な剛性バランスとディメンションを作り上げています。

 

また、フロントサスペンションにはクラス初の倒立37mm径のSFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク・ビッグピストン)を採用。SHOWAのSFFとBPFの複合コンセプトで日常からサーキットまでの高い要求に応えます。そして、リアには高張力鋼製のロングタイプスイングアームとホリゾンタルバックリンクリアサスペンションがセット。マスの集中化と状況に応じた適切な反発、減衰力を実現しスーパースポーツのハンドリングを味わうことができます。

↑ZX-25R SEの構造レイアウト

 

ツインLEDライトを備える精悍なフロントカウル

Ninja ZRシリーズの流れを汲むクラス最高峰のアグレッシブなスタイリングのフロントカウルが装着されます。

↑ZX−25R SE/SE KRT EDITIONモデルはウインドシールドがスモークとなります

 

また、カウルの中央にはラムエアシステムのインテークがあります。ラムエアシステムは吸気効率を高め空気の流れを有効に活用することでパワーを1kW向上。カウルから吸入されたエアは、Ninja H2同様、エアボックスに向かう途中でフロントフォークの左側を迂回するダウンドラフトインテークを採用しています。このレイアウトによって冷却された高圧の空気を効率的に取り込むことが可能となり、全回転域でのエンジン性能の向上を実現しました。

↑ラムエアシステムから続くダウンドラフトインテーク

 

ハイパフォーマンスマシンを気持ちの良い音で操れる日はもう少し先、9月10日の発売を待たなくてはなりません。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

 

「天気の子」バージョンのスーパーカブが本当に出た! ピンクの車体がいい感じ!

2019年に公開された新海 誠監督の劇場版アニメーション映画『天気の子』は観客動員数1000万人、興行収入140億円を超えた2019年公開映画No.1の大ヒットとなりました。劇中で主人公の森嶋 帆高(もりしま ほだか)がピンチの時に、はつらつとしたキャラクター夏美が乗るスーパーカブが帆高を救います。池袋から代々木を目指して帆高を後ろに乗せ疾走するスリリングなシーンが痛快で印象的でした。そこに登場するスーパーカブをモチーフに『天気の子』製作委員会監修のもと、製作されたのが「スーパーカブ『天気の子』ver.」なのです。

↑「スーパーカブ110・『天気の子』ver.」の価格は、31万3500円(税込)

 

実用車の代表のスーパーカブ?

今回、『天気の子』の劇中同様のサマーピンクのボディカラーにブラウンのシートの組み合わせたスーパーカブの実車が誕生しました。実はこのスペシャルモデル、当初映画のキャンペーン用の特別展示車両として作られ、2019年9月から開始された『天気の子』展のフォトスポットに登場したのです。

↑「スーパーカブ50・『天気の子』ver.」の価格は、26万9500円(税込)

 

実はホンダのスーパーカブは1958年(昭和33年)にデビューした当初からその外観は大きくは変わっていません。それはデビュー当初から乗り手のことを考えた優れたパッケージングと高い信頼性、そして圧倒的な低燃費を実現していたから。新聞配達、出前、郵便配達など、働くバイクとして、また世界の人々の足としてバイクの代名詞となるほど世界を走り回っています。その累計生産台数は1億台というのだから驚きです。

 

実はオシャレなスーパーカブ

実用的で働きもののスーパーカブでしたが、その絶対的な信頼性、多くのバリエーションによってお洒落な乗り物としてもスーパーカブの人気が高まってきました。今回の『天気の子』 Ver.は当初あくまでもイベント用で市販の予定はないと言われていました。しかし、2020年4月より始まった本田技研工業のバイクレンタルシステム=HondaGO BIKE RENTALの原付2種クラスでレンタル専用モデルとして設定。そして、それが話題となり劇中と同じ110ccモデルと原付の50ccモデルが限定で発売されることになったのです。中身は高い実用性を誇るスーパーカブのまま、サマーピンクのボディカラーとブラウンシートを採用。この限定車にはレッグシールドの内側上部に『天気の子』Ver.専用ステッカーも配置されプレミアム感を出しています。

↑『天気の子』Ver.ステッカー

 

受注期間限定販売は?

この「スーパーカブ50・『天気の子』Ver.」が500台限定、「スーパーカブ110・『天気の子』Ver.」が1500台限定で7月23日から受注期間限定で販売されることが決まりました。映画のワンシーンのように2人乗りするなら、110ccのスーパーカブ110ですよ! 受注終了は2020年10月31日までの予定となります。

↑成約者全員に劇中で夏美が使用していたヘルメットをプレゼント

 

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。

●GetNavi web本サイトでフォトギャラリーを見る

「天気の子」バージョンのスーパーカブが本当に出た! ピンクの車体がいい感じ!

2019年に公開された新海 誠監督の劇場版アニメーション映画『天気の子』は観客動員数1000万人、興行収入140億円を超えた2019年公開映画No.1の大ヒットとなりました。劇中で主人公の森嶋 帆高(もりしま ほだか)がピンチの時に、はつらつとしたキャラクター夏美が乗るスーパーカブが帆高を救います。池袋から代々木を目指して帆高を後ろに乗せ疾走するスリリングなシーンが痛快で印象的でした。そこに登場するスーパーカブをモチーフに『天気の子』製作委員会監修のもと、製作されたのが「スーパーカブ『天気の子』ver.」なのです。

↑「スーパーカブ110・『天気の子』ver.」の価格は、31万3500円(税込)

 

実用車の代表のスーパーカブ?

今回、『天気の子』の劇中同様のサマーピンクのボディカラーにブラウンのシートの組み合わせたスーパーカブの実車が誕生しました。実はこのスペシャルモデル、当初映画のキャンペーン用の特別展示車両として作られ、2019年9月から開始された『天気の子』展のフォトスポットに登場したのです。

↑「スーパーカブ50・『天気の子』ver.」の価格は、26万9500円(税込)

 

実はホンダのスーパーカブは1958年(昭和33年)にデビューした当初からその外観は大きくは変わっていません。それはデビュー当初から乗り手のことを考えた優れたパッケージングと高い信頼性、そして圧倒的な低燃費を実現していたから。新聞配達、出前、郵便配達など、働くバイクとして、また世界の人々の足としてバイクの代名詞となるほど世界を走り回っています。その累計生産台数は1億台というのだから驚きです。

 

実はオシャレなスーパーカブ

実用的で働きもののスーパーカブでしたが、その絶対的な信頼性、多くのバリエーションによってお洒落な乗り物としてもスーパーカブの人気が高まってきました。今回の『天気の子』 Ver.は当初あくまでもイベント用で市販の予定はないと言われていました。しかし、2020年4月より始まった本田技研工業のバイクレンタルシステム=HondaGO BIKE RENTALの原付2種クラスでレンタル専用モデルとして設定。そして、それが話題となり劇中と同じ110ccモデルと原付の50ccモデルが限定で発売されることになったのです。中身は高い実用性を誇るスーパーカブのまま、サマーピンクのボディカラーとブラウンシートを採用。この限定車にはレッグシールドの内側上部に『天気の子』Ver.専用ステッカーも配置されプレミアム感を出しています。

↑『天気の子』Ver.ステッカー

 

受注期間限定販売は?

この「スーパーカブ50・『天気の子』Ver.」が500台限定、「スーパーカブ110・『天気の子』Ver.」が1500台限定で7月23日から受注期間限定で販売されることが決まりました。映画のワンシーンのように2人乗りするなら、110ccのスーパーカブ110ですよ! 受注終了は2020年10月31日までの予定となります。

↑成約者全員に劇中で夏美が使用していたヘルメットをプレゼント

 

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは表示できません。

●GetNavi web本サイトでフォトギャラリーを見る

60年代の米国向けモデルを復刻! ファン垂涎の「スーパーカブ」を解説

誰もが知っているバイク、スーパーカブ。昨年シリーズ累計生産台数1億台を突破した伝説的なシリーズです。今年はそんなスーパーカブ60年目の誕生日。そこでホンダから、ビジネスライクなイメージを覆す記念モデルが登場します。バイク好きもそうでない人も、要注目です!

 

【教えてくれた人】

フリーライター

並木政孝さん

モーター誌編集長を経てフリーに。幼いころ父親がスーパーカブに乗っていたため、特に思い入れが強いです。

 

ビジネスイメージを払拭した所有欲を満たせる一台

スーパーカブといえば、そば店の出前や郵便配達など“はたらくバイク”のイメージが強いです。しかし、1960年代の米国輸出向けモデルCA100をモチーフとしたこの60周年記念車は、ビジネスライクなイメージとはかけ離れたカジュアルでポップなデザインが特徴。目を引く個性的なカラーリングに、クロームメッキのエンブレムやパイピングシートを配することで特別感を演出し、所有欲を満たしてくれます。

 

スーパーカブならではの魅力である燃費性能や静粛性、耐久性は、本車でも高い水準で実現。デザインと使い勝手を両立するため、記念モデルでありながら、日常の足として乗り回したくなる一台です。

 

 

ホンダ

スーパーカブ5060周年アニバーサリー

24万3000

11月22日発売(受注は10月31日まで)

シリーズ誕生60周年記念モデル。1963年に米国で話題を呼んだ広告のイラストをモチーフとします。マグナレッドを主体としたボディに、ツートーン仕様のシートやブラックのリアキャリアなど、特別なカラーリングが施されました。

SPEC●全長×全幅×全高:1860×695×1040㎜●車両重量:96㎏●パワーユニット:49cc空冷4ストロークOHC単気筒●最高出力:3.7PS(2.7kW)/5500rpm●最大トルク:0.39㎏-m(3.8Nm)/5500rpm●総排気量:49cc●始動方式:セルフ式(キック式併設)●燃料タンク:容量4.3ℓ●WMTCモード:燃費69.4km/ℓ

 

↑同社が米国で展開した「ナイセスト・ピープル・キャンペーン」のポスター。老若男女(犬も!)をユーザーとして描くことで、大衆性を訴求しました

 

【ココがプロ推し!】

誰でもパーソナルに使える“快楽性”が魅力

60周年記念車のモチーフとなったCA100は、1960年代当時の米国ではびこっていた「バイク乗り=アウトロー」というネガティブなイメージを払拭したモデル。どんなユーザーでもパーソナルに乗りこなすことができる “快楽性”が魅力です。

 

↑クロームメッキエンブレムをはじめ、独自の意匠が随所に配されています。ファンならずとも購買意欲をかき立てられます

 

 

【スーパーカブの歴史をおさらい】

スーパーカブは昨年、シリーズ累計生産台数1億台突破というモーター史に残る金字塔を打ち建てました。偉大な歴史を彩った名車の数々を振り返ります。

 

【その1】1958年発売

スーパーカブ C100

発売当時価格5万5000円

初代モデル。低床バックボーン式フレームや空冷4ストロークOHVエンジンなどを備える画期的なバイクでした。

 

 

【その2】1983年発売

スーパーカブ50 スーパーカスタム

発売当時価格14万4000円

圧巻の低燃費180㎞/ℓを達成。空気抵抗をできる限り小さくするデザインで燃費性能を徹底追求しました。

 

 

【その3】1991年発売

スーパーカブ50 スタンダード

発売当時価格14万5000円

機械式フューエルメーターを採用するなど機能が充実。サイドカバーとレッグシールドを白色で統一しました。

 

 

【その4】2007年発売

スーパーカブ50 スタンダード

発売当時価格20万4750円

二重構造のチューブに、パンク防止液を封入した独自のタフアップチューブを標準装備。エンジンも大幅改良されました。

 

 

【その5】2017年発売

スーパーカブ50

23万2200円

フロントに初代を彷彿とさせるロゴを配置した現行モデル。ヘッドライトはシリーズで初めてLEDを採用しました。

バイクファンは一生に一度行って欲しい! オーストラリアのフィリップ島で繰り広げられるGPと同島の魅力

オーストラリアのビクトリア州にあるフィリップ島。メルボルンから、東へ車で2時間ほど行ったところにあり、本土とは大橋でつながっています。この島はコビトペンギンの生息地として知られると同時にモーターサイクルファンにとっては見逃せないグランプリ会場にもなっています。10月に開催が決まっている2018年のグランプリ。フィリップ島の魅力と併せて、グランプリの詳細をお伝えします。

 

コビトペンギンの生息地

(出典:Visit Victoria / Phillip Island Nature Park)

 

フィリップ島はコビトペンギンの生育地として、観光スポットの一つになっています。コビトペンギンは昼間餌を探して海に出かけるのですが、日が暮れると海から上がり海岸の砂丘に作られた巣に戻ります。群れをなして、よちよち歩く姿――「ペンギンパレード」――を見るために、たくさんの観光客がやって来るのです。

(出典:Visit Victoria / Underground viewing at the penguin parade, Phillip Island)

 

コビトペンギンが見られるのは日没後。冬場は寒いながらも日暮れが早いので、待ち時間も短いですが、夏は夜の10時近くにならないと日が暮れません。そのため、ペンギンも海から上がってこないので、見学の際は時間調整が必要。見学には一般席以外に、地下にあるコビトペンギンと同じ目線で見学できるガラス張りの特別エリアもあります。席のタイプにより、料金は$26.20~$67.50となっています。

 

モーターサイクルファンの聖地

(出典:Visit Victoria / Australian Motorcycle Grand Prix)

 

そんなフィリップ島のもう一つの魅力、それは島内に作られたモーターサイクルのサーキットで行われるレースです。ここでは国内外の大会やイベントが開かれるので、フィリップ島サーキットはモーターサイクルファンの聖地とも言われています。

 

1956年にオープンしたフィリップ島サーキットはバス海峡に面したエリアに位置しており、美しい海を背景に繰り広げられるレースは、フィリップ島ならではのエキサイティングなイベントになっています。

(出典:Visit Victoria / Australian Motorcycle Grand Prix)

 

モーターサイクルファンにとって見逃せないのが、毎年開かれるモーターサイクルのグランプリ。今年の開催日程は10/26~28日となっており、すでにチケット販売も始まっていてます(オンラインで購入可能)。チケットには1日券と3日券の2種類があり、価格は$60~$1695。日数と見学席タイプにより価格が異なります。

 

この大会ではバイクのサイズによって異なる3種類のレースが展開されます。そのなかでも、グランプリは1000cc4ストロークのマシンで競うメインのレースで、出場ライダーは24人。スペインから9人、イタリアから5人、その他イギリスやドイツなどから参加します。日本からは中上貴晶がホンダに乗って出場予定。

 

レースでは、まず練習が4回行われてから予選、そしてさらにウォームアップ後、本レースになります。グランプリの賞金は残念ながら公表されていません。ただ、グランプリより下位レベルのレース「Moto2」の賞金をみると3000ユーロ(約38万円)になっているので、グランプリの賞金はこれを超える額になっていることは確かでしょう。

その他の見どころ

コアラ保護センター

(出典:Visit Victoria / Koala Conservation Centre)

 

コアラ保護センターはフィリップ島の中央付近にあります。センター内には「ボードウォーク(木と木を結ぶ高架歩行帯)」が設置されているので、コアラの生息を高みから観察することができます。

 

エコボートツアー

(出典:Visit Victoria / Seal Rock – Phillip Island)

 

エコボートツアーはボートに乗って、フィリップ島に生息する野生のアザラシを見る90分のツアーです。

 

チャーチヒル島ヘリテッジファーム

(出典:Visit Victoria / Churchhill Island)

 

チャーチヒル島はフィリップ島と陸続きの島ですが、ここには歴史の長い農場があり、羊の毛刈り見学や馬車など、オーストラリアの農場体験を楽しむことができます。

 

このように、たくさんの見どころがあるフィリップ島。モーターサイクルファンのみならず、動物好きの人や家族連れなど、だれにでも楽しめるこの島は、一度は行ってみる価値があると思います。旅行計画のなかに、このフィリップ島も入れてみるのはいかがでしょうか。

「モンキー」の復活が待ちきれない人のための基本情報おさらい

半世紀近く愛され続け、昨年8月にその歴史に一度幕を下ろした「ホンダ モンキー」。伝説の名機が、7月12日に125ccへとパワーアップを遂げて復活します。ここでは、そんな大注目のモデルを改めて紹介します。

 

遊び心のあるデザインはそのままで125ccにパワーアップして復活!

ホンダ

モンキー 125

39万9600円〜43万2000円

遊び心のあるデザインを踏襲しつつ、パワフルかつ扱いやすい125㏄エンジンを搭載したことで利便性と快適性がアップ。バネ下重量を軽減する倒立フロントフォークやディスクブレーキを採用し、安全性も確保されています。

SPEC●全長×全幅×全高:1710×755×1030㎜●車両重量:105㎏●パワーユニット:124㏄空冷4ストロークOHC単気筒エンジン●最高出力:9.4PS/7000rpm●最大トルク:1.1㎏-m/5250rpm●カタログ燃費:67.1㎞/ℓ

 

スタイルを踏襲しながら走行性能は革新的に進化

1967年に国内向け市販モデルが登場して以来、ホンダ・モンキーはクラシカルでキュートなフォルムと高い機動力で、若者を中心にヒット。原動機付き自転車の先駆けとして、約50年にわたって愛されてきました。昨年8月にその歴史に幕を下ろし、いまだ余韻も残るなか、125㏄にパワーアップしたモンキー 125が発表されました。

 

注目は、革新的に進化した走行性能。エンジンは空冷式の4ストローク単気筒に4速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、痛快な走りを楽しめます。また、電子制御により理想的な燃焼をアシストする技術を採用し、効率の良いエンジンのパフォーマンスを実現。さらに、上位モデルのブレーキシステムには、高精度な制動を実現するABSを装備しています。

 

↑パールネビュラレッドとバナナイエローの2色展開。125ccとなりましたがレトロポップなデザインはそのままです

 

一方で、車両はやや大型化したものの、元々の魅力であるクラシカルなデザインを踏襲。ヘッドライトやフューエルタンク、サイドカバー、シートなどに見られる「モンキーらしさ」は健在で、オールドファンも納得できる仕上がりです。

 

運転には小型二輪免許が必要となりましたが、原付のように時速30㎞の速度制限や二段階右折を必要としない点は、特に都市部において大きなメリット。また、自家用車を所有する人なら「ファミリーバイク特約」を使えば、125㏄以下のバイクは格安の保険料で済むことも購入への追い風となります。

■今回のモンキーはここが進化!

その1「ヘッドライト」

クラシックスタイルでも最新のLEDを採用

独立した小型のヘッドライトケースはクラシカルなスタイルですが、LEDはロー/ハイビームの切り替えに対応する最新のものを採用。視認性を確保しています。

 

その2「タイヤ&ホイール」

快適さとキビキビとした走りを両立

“モンキーらしい”12インチの極太タイヤを、Y字スポークデザインのアルミキャストホイールにセット。快適な乗り心地でリラックスしながらも、キビキビした走りを楽しめます。

 

その3「フューエルタンク」

定番の台形デザインは容量を確保

丸みを帯びたユニークな台形デザインは、1967年のZ50Mから続く定番スタイル。ウイングマークをあしらったエンブレムが特徴です。容量は5.6ℓで、カタログ上は約376㎞走行可能となっています。

 

その4「シート」

厚さと広さを確保して座り心地は快適

125㏄となりましたが乗車定員は1名のままとしてデザインをキープ。タックロールデザインで厚みのあるクッションは座り心地が良く、座面の広さも魅力です。

 

その5「サスペンション」

最新技術の採用で快適な走りを実現

スチール製モノバックボーンフレームを基本に、倒立式のフロントフォークとツインリアショックを採用。路面への優れた追従性を実現し、様々なシーンで快適な走りを楽しめます。

 

その6「ブレーキ」

安心感のある安定した制動フィール

フロント・リアともに油圧式のディスクブレーキ。上級モデルでは、フロントのみABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を採用し、より安心感のある制動力を発揮できます。

 

その7「エンジン」

ストレスのない加速を実現する

125㏄となった空冷式4ストロークOHCエンジンは、単気筒ならではの広域に渡るトルクフルな出力特性で、ストレスのない加速を実現。痛快な走りと、経済性・環境性を両立します。

■知られザル、モンキーの進化の歴史

モンキーのルーツは、かつてホンダ系列の企業が運営していた遊園地・多摩テックの遊具にあります。60年近くにおよぶ進化の歴史をたどりました。

 

【1961年発売】子どもから人気を博した“始祖”

Z100

テーマパークの遊具として製造されたモンキーの“始祖”。5インチのタイヤをリジットフレームに搭載しています。子どもたちから絶大な人気を誇りました。

 

【1963年発売】道走行仕様は海外でヒット

CZ100

公道での走行に対応させたモデルチェンジ版。翌64年から行った海外への輸出販売が好評だったことから、国内向け仕様の開発が始まりました。

 

【1967年発売】国内向け初の市販モデル

Z50M

国内の公道向けとして登場した初代市販モデル。初めて「モンキー」と名付けられました。5インチタイヤにリジッドサスという構成で、エンジンは50㏄です。

 

【1969年発売】車体が大型化しパワーアップ

Z50A

ハンドルの折りたたみ機構を継続しつつ、車体を大型化。タイヤサイズも8インチに拡大され、エンジン最高出力は2.6PSへとパワーアップしました。

 

【1970年発売】フロントフォークが脱着可能に

Z50Z

Z50Aがベースのマイナーチェンジモデル。フロントフォークが脱着式となり、リアブレーキが右ペダルへと変更されました。マフラーはアップタイプに。

 

【1978年発売】約30年に渡るロングセラーに

Z50J-I

ティアドロップ型5ℓ燃料タンクを搭載。発売以降、約30年に渡ってロングセラーモデルとして活躍します。同時期に兄弟モデルのゴリラが登場しました。

 

【2009年発売】排出ガス規制に対応した最後の小猿

JBH-AB27

07年に施行された排出ガス規制に適合させるため、約30年ぶりにフルモデルチェンジを果たした最後の“小猿”。17年夏に惜しまれつつ生産終了しました。

電動スクーターのシェアリングがわずか1週間で利用中止!「Lime」に一体何が起こった?

2018年5月、オアフ島ホノルルで電動スクーターのシェアリングサービスが始まりました。ホノルルでは約1年前に自転車シェアリングサービスが始まり、利用者が着実に増加しており、電動スクーターも自転車と同じように人々の間に定着するかと思われました。しかし、サービス開始から1週間たらずで、ホノルル市長が電動スクーターの利用者に罰金または拘留の罰則を課すことを発表したのです。

 

アメリカで拡大中のドックレスシェアリング「Lime」

今回、ホノルルで電動スクーターのシェアリングサービスを開始したのは、アメリカ生まれの「Lime(ライム)」。Limeは自転車と電動スクーターのシェアリングサービスを行っており、「ドックレス」であることが特徴。一般的な自転車シェアリングは、街中に自転車ステーションが設けられていて、利用者はそこで自転車を貸りたり返却したりします。

 

しかしLimeの場合は、借りるときのロックの解除も、返却時のロックも、専用アプリで行えるため、自転車ステーション(英語ではDock)がないのです。利用したいときは、アプリを使って自分の近くで空いている自転車がどこにあるかチェックして、乗り終わったら自分の好きな場所に駐車するだけというシステムです。

2017年に設立されたばかりの同社ですが、ロサンゼルス、シアトル、ワシントンDC、マイアミなど30以上の都市に進出。さらに大学のキャンパス内でも次々と採用され、アメリカのなかで一気に拡大しています。

 

サービス開始後すぐに利用中止へ

Limeがハワイで導入したのは、自転車ではなく電動スクーター。しかし、このサービスは、始まってからたった1週間ほどで「利用中止」に。その理由は、電動スクーターはモペッド(原付自動車)とみなされ、歩道に駐車することが法律で禁止されているからというものでした。

 

そのため、ホノルル市はすでに街中で利用されている約200台の電動スクーターのうち、100台あまりを没収。同社に対して、電動スクーターを歩道に停めた場合、所有者であるLimeであろうと、一般利用者であろうと、最大1000ドルの罰金または30日間拘留の罰則を課す考えであることを通達したのです。これを受けて、同社は電動スクーターのサービスを中止することを発表しました。

ホノルルのシェアリングサービスは今後どうなる?

ホノルルでは、ちょうど1年前に自転車シェアリングサービス「Biki(ビキ)」が始まったところ。30分3.50ドルの利用料金で、順調に利用者が増え、自転車ステーションの増設が計画されています。一方、Limeの電動スクーターの利用料金は、ロックを解除するのに1ドルで、1分あたり15セントが加算される仕組み。Bikiより安く、コンパクトな大きさで気軽に乗れるLimeの電動スクーターは、Bikiと同程度に利用者が拡大する可能性は十分あると言えるでしょう。

 

歩道などに停められているLimeの電動スクーターや自転車については、ホノルル以外の都市でも問題となっている場所があるようです。今回の中止は「一時的なもの」と発表したLimeは、市と協力しながらこの電動スクーターにそった規則の制定に期待しているようです。規制緩和とロビー活動が同社の今後の大きな課題と言えるかもしれません。