アジア圏メーカーの勢いがすごい! 中国のBYDと韓国のヒョンデおすすめEV5選

環境に優しい乗りものとして真っ先に挙げられるのが電気自動車(EV)です。それは走行中の排出ガスがまったく出ないからです。そんな中で日本メーカーはハイブリッド車を主体として販売し、EVの販売はどちらかといえば積極的ではありませんでした。そうした中、日本国内で勢いを増しているのが中国のBYDと韓国のヒョンデです。ここでは、この両社が日本で販売しているおすすめのEVをご紹介したいと思います。

 

販売台数は世界第3位のHYUNDAI

ヒョンデは韓国の自動車メーカーで、キアを傘下に持つことで、その販売台数は日本のトヨタグループ、ドイツのフォルクスワーゲングループに次ぐ世界第3位となっています。それだけに北米や欧州に行けば、ヒョンデのマークを付けたクルマが数多く走っており、その数はもはや日本車と引けを取らないほど。それなのに日本で知名度が低いのは、2001年に一度日本市場に参入したものの、2009年に乗用車部門が撤退していることが影響しているのかもしれません。

 

そんなヒョンデが再参入を果たしたのが2022年。その際、同社は日本市場への戦略を大幅に変更しました。それは日本車が手薄となっているEVに的を絞ったことです。2022年当時、世界的にEVは追い風となっており、ヒョンデはその時流に乗るべくEVの開発を積極的に行い、その実力は欧米でも高く評価されました。

 

そうした中で、ハイブリッド車(HEV)が中心となっている日本市場には、このEVであればブランドを浸透させるチャンスがあるとの判断があったようです。その先兵として燃料電池車(FCEV)の『NEXO(ネッソ)』と共に送り込まれたのが、100%バッテリーEVの『アイオニック5』でした。その後、韓国ではガソリン車もラインナップする『コナ』をEVとして追加し、アイオニック5をマイナーチェンジしてバッテリー容量をアップ。さらにすでに予約販売を開始している小型EV『インスター』が登場する予定です(後半に解説記事)。

 

中国のEV市場ではトップシェアを獲得するBYD

一方のBYDは、中国・深圳市に本社を置くメーカーで、創業は1995年。最初はパソコンや携帯電話などに搭載するバッテリーの製造を中心としてスタートしていますが、そこで使った独自のバッテリー技術を活かし、2003年にBYD Autoを設立。ここから自動車メーカーとしてスタートしました。会社としては今年で設立30周年を迎え、自動車メーカーとしても今年で22年という若い会社です。

 

しかし、設立後はめざましい発展を遂げ、すでに中国のEV市場ではトップシェアを獲得し、日本だけでなく東南アジアや欧州など海外にも輸出することでその存在は広く知られるようになりました。日本市場にはまず2015年にEVバスなどの商用車で参入し、すでに累計350台のEVバスが走っている状況にあります。そして、2022年、満を持してEV乗用車での日本市場を果たしたのです。

 

BYDが日本市場において大きな特長としているのが、ディーラー網の充実にあります。テスラやヒョンデはEVの販売にあたり、オンラインでの販売を基本としていますが、BYDは「2025年末までにショールーム完備の店舗を100店舗以上作る」ことで、ディーラーによる対面販売を基本としたのです。2024年12月で誕生した正規ディーラーはすでに33店舗を数え、今年もその勢いは止まりそうにありません。

 

BYDが現時点でラインナップする車種は『ATTO3(アットスリー)』『DOLPHIN(ドルフィン)』『SEAL(シール)』で、今年4月には新たに『SEALION(シーライオン)7』が追加されます。また、2025年中にはEVだけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)の追加することも発表されました。

 

【その1】欧州チームが開発したEV

ヒョンデ

アイオニック 5

523万6000円(税込)〜

「アイオニック 5」は、デザインから足回りに至るまで同社の欧州チームが開発した、いわば生粋の欧州生まれのEVです。それだけに、外観は走りを意識した欧州車を彷彿させるデザインとなっています。

 

特にアイオニック 5 の個性をしっかりと表現しているのが「パラメトリックピクセル」と呼ばれる、デジタルピクセルをイメージしたユニークなデザインです。加えて、逆Z型のプレスラインを持ったサイドビューは、一度見たら忘れられない独創性を発揮しています。極端に短いオーバーハングは、バッテリーをフロアに置いたEV専用プラットフォーム(E-GMP)だからこそ実現できたもので、これがクラスを超える圧倒的に広い車内空間を実現。それだけに、運転席に座ると前後左右とも実に広々としていることを実感できます。

 

コックピットは大型で見やすい12.3インチのナビゲーション+12.3インチのフル液晶デジタルメーターを2つ並べて設置。そのデザインは素材からして高品質で、スイッチの感触も適度な重みがある心地よさを実感します。

↑音声認識機能付きの12.3インチナビゲーションシステムを搭載。ステアリング中央の4つのピクセルライトは、音声コントロールの際、運転手の声に反応して点灯します。

 

搭載されるバッテリーは、2024年11月の仕様変更で84kWhにまで容量をアップ。一充電走行距離をRWD車で703kmの実現することとなりました。このほか、ドライブモードに各種設定を任意で調整できる「MY DRIVE」の追加や、最上位グレードのラウンジにはドライブレコーダー、ARナビ、デジタルキー(スマートフォンやスマートウォッチで施錠・解錠・始動が可能)を装備して機能を充実させています。その走りは軽くアクセルを踏んだだけで素直に速度が上がっていき、アクセルを少し強めに踏み込むとBEVらしい強烈な加速が味わえ、これはガソリン車では絶対に得られない感覚です。回生ブレーキを使ったワンペダルも自然で、峠道でのドライブも楽にこなすことができました。

 

また、2024年2月、ラインナップに“EVスポーツカー”とも呼ぶべき『アイオニック5N』を追加。前後両軸にアイオニック5とは別のモーターを備え、最高出力は合計で609PS、最大トルクは740Nmを発生するなど、強烈なパフォーマンスを発揮してくれます。

 

【その2】未来的なスタイリングとユニークなキャラクターライン

ヒョンデ

コナ

399万3000円(税込)〜

韓国ではガソリン車も用意される『コナ』ですが、日本市場向けにはEVの第2弾として2023年9月に導入されました。ボディ形状はクロスオーバーSUVとしており、グレードは他の車種と同様、「カジュアル」「ヴォイヤージ」「ラウンジ」の3グレードを用意します。

 

そのデザインは、「アイオニック5」で採用された水平基調のピクセルを使ったラインが際立ち、その上で柔らかい曲面を組み合わせたユニークさを感じさせるものとなっています。一方で好き嫌いがハッキリ分かれるのもコナのデザインです。テールランプはがリアのホイールアーチのエンドに配置する独特のデザインで、ここに好き嫌いが分かれるのもコナらしさなのかもしれません。ボディサイズは全長4335×全幅1825×全高1590mmと十分に大きく、車内や荷室は余裕のあるスペースが確保されています。しかも、このサイズながら、その大きさをほとんど感じさせず、住宅街でも取り回しは想像以上に良い印象です。

 

低速から十分なトルクを発生するEVは走りもかなり軽快で、発進から中低速の速度域まで力強く加速していきます。走行モードは、エコ、ノーマル、スポーツ、スノーの4種類に切り替えが可能で、回生ブレーキはステアリングのパドルスイッチによって、最弱から最強まで4段階の調整ができます。“最強”に設定すれば、完全停止までワンペダルで走行することも可能です。

 

市街地走行で安心度を高めてくれたのがウインカーを操作すると、操作した側の斜め後方をメーター内に映し出す機能。要はドアミラーとカメラ&モニターの両方で確認できるもので、必要な時だけ表示されることで周囲の状況確認に貢献してくれるというわけです。また、ARナビゲーションと呼ばれる、カメラで撮影した映像に進行方向などを重ねて表示して案内するのも重宝するかもしれません。

↑開放的な水平基調のダッシュボード、12.3インチクラスターとナビゲーションディスプレイが統合した12.3インチパノラマディスプレイを採用。

 

また、2024年8月、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップ。ファミリーカーテイストが強かったコナに“走り”を強く意識したデザインのグレードが追加されました。

 

【その3】海洋生物の自由さや美しさから着想を得たデザイン

BYD

ドルフィン

363万円(税込)〜

2023年9月、BYDが日本市場向け第二弾として発売したのが、コンパクトハッチバックのEV『DOLPHIN(ドルフィン)』です。実車を前にして実感するのは、思ったよりも存在感があるということです。全長4290×全幅1770×全高1550mmで、クラスとしてはBセグメントとCセグメントの中間に位置するサイズ。これは日産「ノート」や「フィット」よりも一回り大きいサイズに相当します。

 

徹底した日本市場向けのローカライズも大きなポイントです。高さを回転式駐車場制限に合わせて1550mmとしたほか、「ATTO 3」と同様、ウインカーレバーを中国本国の左側から右側に変更し、急速充電についても日本で一般的なチャデモ方式を採用。日本では装着が義務づけられている誤発進抑制システムや、各種機能の日本語による音声認識機能までも追加しているのです。

 

グレードはスタンダードな「ドルフィン(車両価格:363万円)」と、より上級な装備を搭載した「ドルフィン・ロングレンジ(車両価格:407万円)」の2種類。その違いで最も大きいのはバッテリー容量とモーターの出力で、ロングレンジはバッテリー容量を58.56kWhとし、一充電での航続距離は476㎞。一方のスタンダードはバッテリー容量が44.9kWhとなり、一充電当たりの走行距離は400kmとなります。

↑「ドルフィン ロングレンジ」。

 

駆動方式はどちらも前輪駆動のみ。サスペンションは、フロントはどちらもストラットですが、リアはロングレンジがマルチリンクで、スタンダードはトーションビームを組み合わせます。外観上は、ロングレンジにはルーフとボンネットをブラックとした2トーンカラーを組み合わせましたが、スタンダードは単色のみの選択となります。

 

その走りは、モーター出力が小さいスタンダードでも、もたつく印象は一切なく、決して速さは感じませんが、軽くアクセルを踏むだけで交通の流れに乗れるので、運転はとてもラクに感じました。一方のロングレンジは、モーターの出力の違いもあって、その力強さは絶大。走行モードを「スポーツ」に切り替えてアクセルを踏み込むと、車重が1680kgもあるクルマとは思えない圧倒的な加速力を見せてくれます。

 

【その4】ファミリーユースで使えるSUV

BYD

ATTO 3

450万円(税込)〜

『ATTO3(アットスリー)』は2023年に、ファミリーユースで使えるSUVとして日本市場に導入されたEVです。WLTCモードで470kmの航続距離を実現しつつ、リン酸鉄バッテリーを縦長に並べた独自のブレードバッテリーで高い安全性をアピールしてきました。そのATTO 3が2024年3月にアップデートされています。

 

ボディカラーに「コスモブラック」を追加し、窓枠とクオーターピラーのガーニッシュにグロスブラックを採用。リアにあった説明っぽい「BUILD YOUR DREAMS」から「BYD」へと変更されてもいます。インテリアは大きな変更はありません。個性的なデザインのダッシュボードやドアパネルはそのまま。しかし、ダッシュボードをはじめとして、全体の質感は極めて高いものとなっています。ボタン類の表面処理や手触り感、操作時の触感に至るまでとても質感が高いのです。

 

強いて難を言えば、操作スイッチの表示や、ディスプレイ上の文字が小さくて読みにくいこと。一方で中央の巨大なディスプレイは、従来の12.8インチから15.6インチへと大幅に拡大。画面いっぱいに展開されるカーナビゲーションは、ここまで必要かとも思う反面、大画面の魅力に取り憑かれた人にとっては大きな魅力となることは間違いないでしょう。さらにアップデートにより、インフォテイメントとしての機能も進化しており、専用のアプリストアを介してウェブブラウザーや「Amazon Music」が楽しめ、さらにカラオケの導入も可能となったのです。

↑流線的なデザインが特徴の室内。15.6インチの大型ディスプレイはインパクト大!

 

その走りにもアップデートは図られています。最初のバージョンに比べて、中高速域での路面追従性が進化し、フラット感が高まったようにも感じました。中でも好印象だったのが低速~停止時のブレーキタッチで、これまでよりも効き方がリニア。操舵フィールの中央が曖昧なのは同じですが、全体としては走りの質感が明らかに向上しているのがわかります。この辺りは、クルマとしてより自然なフィールを感じられるクルマに仕上がってといえそうです。

 

【その5】狭い路地や住宅地の道でも扱いやすいスモールEV

ヒョンデ

インスター

284万9000円(税込)〜

ヒョンデが2025年春以降に日本での納車を予定している新型EVが「INSTER(インスター)」です。インスターは2024年6月に韓国・釜山モビリティショーで世界初公開されたモデルで、日本で販売されるラインナップで最も小さなモデルとなります。まだ、日本仕様の正式なスペックは確定していませんが、明らかになっているデータからご紹介したいと思います。

 

インスターが持つ最大のポイントは、全長3830mm×全幅1610mmというコンパクトなサイズながら、全高は1615mmと少し高めのSUVっぽいフォルムを備えていることにあります。実はインスターは、韓国内で軽自動車規格「軽車=キョンチャ」として販売されている「キャスパー」をベースとしています。それを、全長で230mm、ホイールベースで180mm長くし、後席と荷室を広げて実用性を高めたEVとして登場しているのです。

 

驚くのはその価格です。グレードは「カジュアル」、「ラウンジ」、「ヴォイヤージ」と3グレードあり、ベース車である「カジュアル」はなんと284万9000円! まだ、補助金額が決まっていませんが、仮に55万円が認められれば、実質223万円を下回る可能性が高いのです。しかもEVで重要なスペックとなるバッテリー容量はカジュアルで42kWhと、日本の軽EV「SAKURA」の2倍以上! 航続距離も間違いなく300kmを超えてくるでしょう。

 

充実した装備も大きなポイントです。緊急時SOSコールやセントラルドアロック、タイヤ空気圧モニターなどは全車に標準装備。上位グレードのヴォイヤージ(車両価格:335万5000円)、ラウンジ(車両価格:357万5000円)ではバッテリー容量が49.0kWhに増えるのと共に、ACCやブラインドスポットモニターなどが装備され、最上位のラウンジにはシートヒーター&ベンチレーション機能、スマホ用ワイヤレスチャージ、デジタルキーまで備えているのです。

↑大画面の10.25インチナビゲーションとベンチタイプのフロントシート。助手席フルフォールディングやリヤシートスライド機構で、使いやすい室内となっている。

 

ただ、インスターは韓国で軽自動車規格をベースにしていることもあり、定員は4名。しかし、そのサイズから日本では登録車のカテゴリーに入ってしまいます。それでも補助金を考慮すれば300万円前後で手に入れられるわけで、300kmを超える航続距離を達成できるEVは現状ありません。その意味でも日本での期待度はかなり高いEVといえるでしょう。

 

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「上り坂では速度がどこまでも伸びて…」ヒョンデのスポーツBEV「アイオニック 5 N」で箱根を走る楽しさ再発見!

韓国の自動車メーカー、ヒョンデ(現代)自動車が、日本市場において最初のバッテリーEV(BEV・バッテリーに蓄えた電気のみで走行する電気自動車)専用車として提供しているのが「IONIQ(アイオニック)5」です。このモデルは、2022年に日本の乗用車市場へ再参入(かつて2001-10年に日本で展開していた)するにあたり、その主力車種として投入されました。そして、今回の試乗レポートとしてお届けする「IONIQ 5 N」は、それをベースにスポーツモデルの頂点に立つモデルで、Nブランド初のBEVともなります。

◾今回紹介するクルマ

ヒョンデ/IONIQ 5 N

858万円(税込)〜

 

走りの楽しさを実感させるハイパフォーマンスぶりを発揮

「BEVって走るのがこんなに楽しいんだ!」これがヒョンデ・アイオニック5 Nで箱根の峠道を走った正直な感想です。もともとアイオニック5はシャープな操舵感とトルクフルな走りが魅力のBEVとして、日本だけでなく欧州でも高く評価されてきました。そのアイオニック5の走りを徹底的にチューンナップし、走りの楽しさを実感させるスポーツモデルとして誕生したのがアイオニック5 Nなのです。

↑「アイオニック5 N」はヒョンデのサブブランド「N」初の電気自動車としてデビューした。ボディカラーは10色から選べる

 

この“N”の由来は、ヒョンデの開発拠点があるソウル郊外のナムヨンと、足回りを鍛えるためにテストを繰り返したニュルブルクリンクの頭文字を取ったもの。このロゴマークをよく見ると二重に表現されていますが、それはこの二か所を表したものなのだそうです。

↑「N」の位置づけは、ベースモデルの上にその入門用として「N Line」があり、そこからモータースポーツに一歩近づいた位置にある

 

それだけに、アイオニック5 N は単にパワーの強化だけでなく様々な先進デバイスを加えることで、まさに新時代のスポーツカーと呼べるだけのパフォーマンスを発揮するモデルとして誕生しています。

↑フルLEDヘッドランプ(プロジェクションタイプ)。ヒョンデらしいパラメトリックピクセルで独自性を主張

 

↑ヘッドランプと共通の方眼型テールランプを備え、その存在感は抜群に高い

 

そのパワーユニットは前後に2基搭載され、フロントモーターの最高出力は175kW(238PS)/最大トルクが370Nmで、リアモーターは最高出力が303kW(412PS)/最大トルクが400Nmとなっています。中でも注目なのは「N Grin Boost(NGB)」と呼ばれるブースト機能で、10秒間の制限付きではあるものの、システムトータル最高出力は478kW(650PS)、最大トルクは770Nm。最高速度は260km/h、0-100km/h加速は3.4秒というスポーツカー並みの性能を発揮します。

↑ボンネットを開くとインバータをはじめ、フロントモーターが配置されているのがわかる

 

このパワーの源泉となる駆動用リチウムイオンバッテリーは、エネルギー密度を高めたヒョンデとしては第4世代となる最新バージョンで、その容量は84.0kWhの大容量。そのため、これだけのハイパフォーマンスを発揮しながらも、一充電走行距離は561kmを達成しているのはうれしいですね。

 

内外装共にハイパフォーマンスモデルにふさわしい装備を満載

サスペンションは、フロントがストラットで、リアはマルチリンクの足まわりにホイールGセンサーと6軸ジャイロセンサーを組み合わせた大容量の可変ダンパーを搭載。リアには電子制御式LSDも装備しています。また、ボディそのものもこのパフォーマンスに耐えられるよう、スポット溶接を42か所増やし、接着剤の使用範囲を広げて剛性を大幅にアップ。それらを受け止めるタイヤには、電動車の大トルクにも耐えられるよう専用開発したピレリ「P ZERO ELECT」の275/35ZR21を組み合わせています。

↑タイヤには電動車の大トルクにも耐えられる専用開発のピレリ「P ZERO ELECT」の275/35ZR21を組み合わせた

 

エクステリアにも「N」ならではオリジナルな仕様が施されました。空力性能を向上するためにエアカーテンとアクティブエアフラップ付きの専用バンパーを採用し、スポークからのぞく赤色のブレーキキャリパーやボディ下部のオレンジ色のストライプからは、否応なく高性能ぶりが感じられます。なお、ボディ寸法はベース車と基本的に同じですが、専用エアロパーツによって少しだけ長くなっています。

 

運転席に座ると、ダッシュボードにはN専用グラフィック付き12.3インチカラーLCDメーターをはじめ、ヒーテッド機能付き本革ステアリングホイール、メタルペダルなどインテリアにもN専用品が数多く採用されていることがわかります。シートもヘッドレスト一体型のアルカンターラ+本革仕様のN専用タイプで、サポート性が高く手触り感も上々。また、ステアリングホイールやドアトリム、アームレストなどはパフォーマンスブルーアクセントが施されるほか、Nエンブレムウェルカムライトも搭載されていました。

 

橋折りを楽しませる多彩なドライブモードと疑似エンジン音

ここからはいよいよアイオニック5 Nの走りを体験となりますが、それをより楽しむためにはステアリングホイールに用意された4つのボタンを使いこなすことがポイントとなります。なにせ、これを使いこなせばBEVを活かした多彩なドライブモードとオーバーブースト機能を設定でき、これらは任意にプリセットも可能となるのです。

↑ステアリングには、「N Grin Boost」起動ボタン(右上)、ドライブモードセレクト(左上)、Nボタン(下側左右)が備わる

 

↑ドライブモードの切り替え方法の解説図。右下の“N”ボタンを押すところから「N e-Shift」が起動する

 

具体的には駆動用モーターの反応のほか、ステアリングの重さやダンパーの硬さを調整でき、電動LSDの効き具合までも任意に設定が可能。しかもこれらを好みの状態にプリセットしておけば、ドライバーは容易に走りを楽しめるようになるというわけです。ただ、これらはじっくりとその効果を試したうえで使いこなすべきもの。正直言えば、今回の限られた時間の試乗枠ではその効果を自在に使いこなせるまではいきませんでした。

 

その中でも、誰でもすぐに使いこなせるのが「Nペダル」です。いわば“ワンペダルドライブ”ともいえるもので、N専用回生ブレーキによって最大減速力0.6Gを実現。これにより、アクセル操作だけで素早い重心移動が可能となり、ほとんどの場合でブレーキを踏むことなくコーナーへの進入ができます。まさに電動車ならではのメリットを実感できるでしょう。

 

それと、走りをさらに楽しい気分にさせてくれるのが、電子合成音で再生される“エンジン音”です。このモードではBEVにもかかわらず、あたかもエンジン車に乗っているかのような疑似音を伴って走行することができます。しかも変速機能を有効にすれば、変速ショックまでリアルに再現するので、同乗者なら間違いなくエンジン車に乗っていると勘違いしてしまうでしょう。選べるモードは3つ。この中にはジェット機のようなサウンドも含まれ、個人的には楽しく体験することができました。

 

スポーツカー並みの性能を発揮しながら乗り心地も上々!

こうしたパフォーマンスを念頭にアクセルを踏むと、2210kgという車重にもかかわらず車体は軽やかに前へと踏み出します。BEVならではのスムーズな加速はまさに淀みなくトルクが湧き出てくる感じで、どの速度域からアクセルを踏み込んでもその俊敏さには圧倒されっぱなし。特に箱根ターンパイクの最初の上り坂では強大なトルクにより速度がどこまでも伸びていってくれそうな、そんな印象を持つほどでした。

↑アイオニック 5 N。個性的なリアビューが印象的だ

 

コーナリングの入り方も実に気持ちがいい。ステアリングはクイックながら電動パワーステアリングの操舵力は一定で、どんなコーナーでも軽く滑らかにコントロールすることが可能。Nペダルによってブレーキを踏むことはほとんどないから、コーナーの通過もスムーズそのものです。ここに疑似エンジン音を加えると、峠道を走る楽しさは倍増! 箱根の峠道を走る楽しさを改めて呼び起こす思いでした。

 

こんなハイパフォーマンスなアイオニック5 Nですが、一般道を走行すれば硬めではあるものの、電子制御可変ダンパーが巧みに効果を発揮して、乗り心地はむしろベースモデルよりも良いのではないかと思えるほど。広々とした車内はルーミーで明るく、それでいて5人が乗っても480L を確保したカーゴルームは積載量も十分。561kmの航続距離とも相まって、普段使いにも十分対応できるクルマに仕上がっているといえるでしょう。

↑トランク容量は5人乗車時で480Lと十分だが、ベース車の520Lよりも狭くなっている

 

このBEVならではの走りの楽しさを満喫できるアイオニック5 Nの価格は858万円〜。ベース車よりも300万円近くアップすることになりますが、それが妥当かどうかは、まずは試乗してから判断すべきだと思います。もちろん、走りだけを捉えればベース車でも満足してしまうかもしれません。しかし、“N”の圧倒的なパフォーマンスを体感すれば後戻りできなくなるのは確実。ベース車レベルのコスパの高さをとるべきか、アイオニック5 Nの圧倒的な走りの楽しさをとるべきか……。個人的には「悩ましいモデルが登場してくれたなぁ」とマジで思った次第です。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4715×1940×1625mm●車両重量:2210kg●パワーユニット:交流同期電動機●最高出力:(フロント)175kW/4600〜1万rpm(リヤ)303kW/7400〜1万400rpm●最大トルク:(フロント)370Nm/0〜4000rpm(リヤ)400Nm/0〜7200rpm⚫一充電走行距離(WLTCモード):561km

 

撮影/宮越孝政

 

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ヒョンデの「コナ」に新ラインナップ「N Line」が追加。個性強めだけど実用性は十分だ!

韓国のヒョンデが電気自動車(BEV)のコンパクトSUV「コナ」に、スポーティな装備を加えた新グレード「N Line」をラインナップしました。コナといえば、これまではファミリーカーテイストが強かった印象ですが、この装備によって“走り”を強く意識したデザインへと変貌したのです。

 

■今回紹介するクルマ

KONA N Line

506万円(税込)

 

“N”の系譜を受け継いだ新たなスポーティグレード「N Line」

N Lineと聞いて、ヒョンデ「アイオニック5」の“N”との違いが気になると思います。実はアイオニック5のNは、サーキットなどでの走行も想定したスポーツ系モデルに与えられるグレード。それに対して、 N Lineは、パフォーマンスはベース車と同等ながらNで培った空力改善技術に基づいたデザインなどを加えた、いわばNの系譜を受け継いでその雰囲気を演出したスポーティグレードとなります。

 

この N Lineは韓国でも販売されているそうですが、韓国ではコナにガソリン車もラインナップしていることが関係しているのか、ベース車の方がよく売れているとのこと。対する日本ではスポーティ仕様が好まれやすいとの分析があるそうで、その意味でコナの N Lineは期待を持って日本市場に投入されたということでした。

↑2024年8月23日に日本で発売された「ヒョンデ・コナ N Line」。“N”の系譜を受け継いだスポーティグレードとして追加された

 

N Lineのベース車となったのは、コナのトップグレードとなる「ラウンジ」です。コナはデザインからすると若干大きく見えますが、実寸は全長4385×全幅1825×全高1590mm、ホイールベース2660mmとコンパクトSUVのカテゴリーに入ります。ただ、ベース車のラウンジに N Line専用バンパーを前後に装着したことで、全長は30mm長くなりました。さらに特徴的な専用のウイングタイプリアスポイラーやアルミホイールも装備し、要所をブラックアウトすることで、ラウンジよりスポーティな印象も表現しています。

↑N Line専用デザインとしたフロントバンパーの右端にはN Lineのエンブレムを備える

 

↑ルーフエンドに採用された2分割タイプのN Line専用ウィングタイプリアスポイラー

 

↑N Line専用デザインの19インチアルミホイール。タイヤはクムホ「ECSTA PS71」でサイズは235/45R19 99V

 

インテリアでは N Line専用アルカンターラ+本革コンビシートを採用し、この前席にはラウンジと同じくヒーター&ベンチレーション機能を装備しつつ、Nならではの差し色ともいえる赤のステッチ+ストライプを追加。これはベース車との違いをもっとも感じさせる部分といえます。ほかに専用装備として前席メタルドアスカッフプレートやNロゴ付きステアリングなども加えられ、ラウンジと同様、フルスペックのADAS機能や、12.3インチAR機能付ナビ、BOSEプレミアムサウンドシステムなどを装備しているのもポイント。

↑N Lineのインテリアは専用ブラックを設定。エアコンのルーバーなどに控えめに赤のアクセントがあしらわれている

 

 

使い勝手の良いBEVとして十分なパフォーマンスを発揮

さて、気になる走りですが、コナそのものは「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマとして基本性能に長けているといえます。快適性も十分にあり、その意味でバランスに優れたBEVといえるでしょう。

 

パワートレーン系は前述したようにラウンジとスペックは同じです。定格出力50kWのモーターを使って前輪で駆動し、そこから得られる最高出力は204PS・最大トルク255N/m。決してハイスペックなものではありませんが、電動車として不満のない動力性能は獲得できています。搭載したバッテリーもラウンジと同じ容量である64.8kWhで、フル充電時の航続距離はWLTCモード541kmと十分。とはいえ、実際の走行ではエアコンの利用や道路のアップダウンによる負荷もかかるので、その7割程度の航続距離と思った方がよいかもしれません。

↑ボンネットを開くと「EV」の文字を付したカバーがあるが、この中は27リッターの小物入れとなっている

 

走り出してまず感じるのが、コナ N Lineは必要にして十分なパワーが得られているということです。電動車にありがちな、低速域からズドーン!というトルクの出方ではなく、トルク感を発揮しながらやんわりとスムーズに加速していく感じです。しかもボディはしっかりとした剛性があり、そのために安心感もあります。ガソリン車からの乗換えでも違和感なく乗れるのがBEVであるコナ共通の美点といえるでしょう。

 

フロアは若干高めとなっていますが、ルーフが高いこともあってヘッドクリアランスも十分確保されており、その分だけ視点が高いため前方の見通しは良好です。ステアリングは若干重めに感じますが、切ったときの取り回しは良好で、市街地でも全幅1825mmの幅広ボディによるハンデをほとんど感じさせずに済みました。

 

ドライブモードは「NORMAL」「ECO」「SPORT」「SNOW」から選択可能。 N Lineらしいスポーティな走りを期待するならSPORT一択です。キビキビとしたアクセルワークとなり、それでいて過敏にならないのが助かります。一方、NORMALでも十分なスムーズに走れるので、個人的には日常ではNORMALで十分ではないかと思いました。また、 N Lineにはパドルシフトも装備されており、これを上手く使えば回生を使ったワンペダルドライブも可能となります。これを峠道で使えば楽しさは倍増するでしょう。

↑ステアリングコラムに設置されたシフトレバーは、アイオニック5でも採用された方式。手元で操作できる使いやすさがある

 

フラット感が増して乗り心地が向上。カーナビは未来感満載

コナ N Lineでは乗り心地の良さも向上したようです。シャシーも含め、基本的なスペックはベース車と変更はないとのことでしたが、過去に試乗したラウンジに比べてもフラット感が増している印象なのです。多少、路面のたわみが連続するとサスペンションがバタつく面もありましたが、路面からの突き上げ感もマイルドになっていて快適に乗ることができました。特に高速域では静粛性も高く、振動も少ない印象で、長時間のドライブでも疲れは少ないのではないでしょうか。

 

一方で、走行時には仮想のエンジン音を出すことができる「エレクトリック・アクティブサウンドデザイン(e-ASD)」も装備されていました。エンジンに郷愁を感じる人向けの装備とは思いますが、個人的にはインバータの音を聴きながらBEVならではのフィールを楽しんだ方が良いと思います。まぁ、これも好み次第ですね。

 

ナビゲーションは、スピードメーターからヨコイチに並んだインフォテイメントシステムに含まれています。ポイントはルート案内中に画面上に表示されるAR機能。カメラで撮影した映像に進行方向を流れる矢印によって重ねて表示するものです。かなりギミックな装備となりますが、未来感を感じさせる装備としては楽しいでしょう。

↑コナ・ラウンジに装備されているAR機能付きカーナビ。カメラで撮影した映像に進行方向が重ねて表示されている。(撮影:会田 肇)

 

その中で私が便利さを感じたのは、ルート案内時に一旦停止すると目的地までのルート全体を一時的に表示してくれる機能で、地図上で目的地までの進み具合が確認できます。また、スケールの異なった地図を2画面で同時表示できるのも良いと感じました。さらに、OTAによって地図データは常に最新版へと自動更新してくれるので、スマホのように常に最新の地図データが使えるのもうれしいですね。

 

コナは、そのデザインこそ個性が強めではありますが、クルマとして実用性の高さはクラスの中でも秀でているのは間違いありません。BEVとしての造り込みの巧さに、ヒョンデの実績が十分に発揮されています。BEVというと、どこか特別感をもってラインナップされる印象がありますが、 N Lineも含め、日本でもコナのような自然体のクルマがもっと登場して欲しいところです。

 

SPEC●全長×全幅×全高:4385×1825×1590mm●車両重量:1790kg●パワーユニット:交流同期電動機●最高出力:150kW/5800〜9000rpm●最大トルク:255Nm/0〜5600rpm⚫一充電走行距離(WLTCモード):541km

 

撮影/茂呂幸正

 

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中韓EVが日本の道路を席巻する日は来るか? 世界10傑に入るアジアメーカー「ヒョンデ」「BYD」のEV車を本音レビュー

EVを武器に日本市場に再参入する韓国のヒョンデと、日本でもバスやタクシーでEVの実績がある中国のBYD。両社の自信作の出来栄えについて、試乗した自動車ITジャーナリストが本音で語る。

※こちらは「GetNavi」 2022年12月号に掲載された記事を再編集したものです

 

KEY TREND ≪アジアンEV≫

EVへのシフトチェンジが加速するなか、日本でも国産や欧米のEVが続々と登場している。その流れに割って入るのがアジアのEVメーカー。日本の道路を席巻する存在となるのだろうか。

 

私が試乗しました!

自動車ITジャーナリスト

会田 肇さん

自動車雑誌編集者を経てフリーランスに。電動車や自動運転にも詳しい。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

ヒョンデとBYDの参入は日本車にとって大きな刺激に

世界的に「脱炭素」への流れがあるなかで、そのシンボリックな存在となっているのが電気自動車(EV)だ。ロシアのウクライナ侵攻後に発生したエネルギー問題への不安を抱えつつも、全体的なその流れはいまも大きく変わっていない。

 

そのカギを握るのが中国だ。中国はいまや世界最大の自動車大国となり、国の戦略としてその大半をEVで賄おうとしている。これをいち早く追いかけたのが欧州勢で、それが欧州でのEV化の流れを後押しした。さらにアジア勢もこれに続き、韓国・ヒョンデはデジタルテイストにアナログの感性を加えた「パラメトリックピクセル」のデザインが印象的な、「アイオニック 5」を世に送り出した。

 

BYDはアジアやオセアニアですでに実績を積んできたが、車両デザイナーに欧州人を据え、グローバルで戦えるデザインとした。つまり、ヒョンデ、BYDとも、日本人が好む“欧州っぽさ”を備えたことが参入のきっかけとなったとも言えるだろう。

 

アイオニック 5はさすがに手慣れたクルマ作りをしており、走りも内装の仕上がりも日本人にとって十分満足できるレベルにある。一方でBYDはインターフェースなどで作り慣れていない部分が感じられた。とはいえ、両ブランドのEV参入が日本車にとって新たな刺激となるのは間違いない。

 

【その1】インターフェースに難はあるがデザインや個性には満足できる

BYD

ATTO 3

価格未定 2023年1月日本発売予定

BYDの日本導入EV第一弾となるATTO 3(アットスリー)。2022年2月に中国で販売を開始して以降、シンガポールやオーストラリアでも発売。独自開発のEV専用プラットフォーム「e-Platform3.0」を採用し、広い車内空間と440Lの荷室を実現している。

 

↑熱安定性が高く長寿命のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。エネルギー密度の低さは、細長い電池セル「ブレードバッテリー」を122枚効率良く敷き詰めて対策した

 

↑インテリアはアスレチックジムをモチーフにしたもの。中音域スピーカーを内蔵したドアハンドルや、ベースの弦をイメージしたゴム製ワイヤーもユニークなデザインと言える

 

↑ダッシュボード中央には12.8インチのディスプレイを備える一方、運転席前の液晶パネルは小さめ。操作レバーも含め、アイコンや文字表示が小さくインターフェースに難がある

 

【会田の結論】ハンドリングは軽快でトルクフルな走りも秀逸! 操作系の改善が求められる

アスレチックジムの雰囲気を演出したインテリアは、ギミックに富んでいて楽しい。一方でディスプレイの情報表示は全体に小さく、操作スイッチの視認性も含め、要改善だ。ハンドリングは全体に軽めで、市街地での操作はかなりラク。EVらしいトルクフルな走りも実感できた。

 

【その2】走りもインテリアも欧州車そのもので日本人が満足できる仕上がり

ヒョンデ 

IONIQ 5

479万円〜(税込)

ヒョンデの代表車種であった「ポニー クーペ」をオマージュしたデザインが印象的。EV専用プラットフォームを生かした広い室内が特徴。ベースのIONIQ 5のほかにVoyage、Lounge、Lounge AWDと全4モデルが揃う。

 

↑電動ブラインド付きのガラスルーフは面積が大きく、光が燦々と降り注ぐほど。ただしガラスは固定式なので開くことはできない。「Lounge」以上のグレードに標準装備となる

 

↑V2Lは「Vehicle to Load」の略で、EVから外部機器へ給電できる機能のことを指す。リアリート下にもコンセントを備え、車内外合わせて最大1600Wまでの機器に対応できる

 

↑インフォテインメント系にはコネクテッドカーサービス「Bluelink」を採用。5年間無償提供され、スマホ連携だけでなく、通信によるカーナビ地図データの更新にも対応する

 

【会田の結論】乗り心地はやや硬いが圧倒的な加速と操作性で走りの充実度は高い

運転席に座るとまず気付くのがインテリアの上質さ。手触り感さえも上々だ。コラムから突き出たシフトチェンジレバーのクリック感も精緻さがある。走り出すと若干硬めの乗り心地が気になるが、圧倒的な加速感とハンドリングの正確さがそれを凌駕。満足度の高い走りを楽しめる。

 

■2021年  世界のEV販売台数ランキング

圧倒的に強いのはテスラだが、中韓メーカーが10位以内に4社も入っているのは驚き。特に中国はEVの普及に向けて政府が強力な支援策を展開していることもあり、これまでクルマ作りには無縁だったメーカーもEVに参入している。

 

■日本&欧米EVとのスペック比較

価格はいずれもEV購入補助金適用前のもの。総電力量は60kWh近辺、カタログ値ではあるが一充電最大走行距離は500km近くにまで達する。ATTO 3、IONIQ 5ともにスペック的には日本や欧州のEVと肩を並べていることがわかる。

 

 

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ピュアEVとミニバンそれぞれの魅力を実感できる! ヒョンデ「アイオニック5」とホンダの新型ステップワゴンに試乗

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、「ヒュンダイ」改め「ヒョンデ」のピュアEVとなるアイオニック5と、いよいよ発売が開始されたホンダの新型ステップワゴン。続々と登場する本格EVと、日本の主軸ファミリーカーでもあるミニバンの最新作だ。その実力やいかに?

※こちらは「GetNavi」 2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【その1】ピュアEVの魅力がダイレクトに実感できる!

EV

ヒョンデ

アイオニック5

SPEC【ラウンジ】●全長×全幅×全高:4635×1890×1645mm●車両重量:1990kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:72.6kWh●最高出力:217PS/4400〜9000rpm●最大トルク:35.7kg-m/0〜4200rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):618km

 

見た目でも中身でも「電気」の魅力をアピール

乗用車市場では12年ぶりの復活となるヒョンデが日本向けに用意したモデルは、このアイオニック5とFCV(燃料電池車)のネッソ。いずれも環境性能が高いモデルで、販売もオンラインのみという導入手法に注目が集まっている。主力は当然ながら前者だ。

 

その内外装は、SUV風の仕立てが主流となるEVのなかでも実に個性的。大柄なハッチバック的な外観は電動モデルらしさがダイレクトに表現され、内装もクルマというより最新家電のような風情だ。その一方、室内の広さを筆頭とする使い勝手も申し分ない。

 

今回は2WDに試乗したが、走りでも最新のEVらしさが実感できる。アクセル操作に対する鋭いレスポンスや日常域での力強さ、静粛性の高さは電気モーターならではの魅力で、それを受け止めるシャーシもフラットな乗り心地を筆頭として良好。最大で600kmオーバーの航続距離まで考慮すれば、有力な最新EVの選択肢のひとつであることは間違いない。

 

[Point 1]室内と荷室は広々

大柄のボディとあって前後席の空間は余裕たっぷり。前席にはオットマンも備わる。荷室容量はリアだけで527Lを確保し、フロントにも57Lの荷室を用意する。

 

[Point 2]テーマは「パラメトリックピクセル」

ハッチバックのボディ形態ながら、まるでコンセプトカーのような大胆なデザインで独自性を強調。2WDの電気モーターはリアに搭載し、駆動方式はRRとなる。

 

[Point 3]プレーンでワイド感を強調する作り

インパネ回りはシンプルなデザインで、家電的な親しみやすさも感じさせる。シフト操作はステアリングコラムに付けられたダイヤルで行う。

 

[Point 4]電源供給機能も充実

後席下の中央には、AC100Vコンセントを装備。給電機能はこれだけではなく、普通充電のソケットにアダプターを装着すれば外でも電気製品が使用できる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

アイオニック5: 電気モーター/2WD/479万円

アイオニック5 ボヤージュ:電気モーター/2WD/519万円

アイオニック5 ラウンジ:電気モーター/2WD/549万円

アイオニック5 ラウンジAWD: 電気モーター×2/4WD/589万円

 

 

【その2】その持ち味はミニバンの本質を突いた作り

ミニバン

ホンダ

ステップワゴン

SPEC【エア(e:HEV)】●全長×全幅×全高:4800×1750×1840mm●車両重量:1810kg●総排気量:1993cc●パワーユニット:直列4気筒DOHC+電気モーター●最高出力:145[184]PS/6200[5000〜6000]rpm●最大トルク:17.8[32.1]kg-m/3500[0〜2000]rpm●WLTCモード燃費:20.0km/L

●[ ]内はモーターの数値

 

2、3列目シートの快適性が大幅に進化!

6代目ステップワゴンは、先代から全長と全幅を拡大。これまで「5ナンバー級」と呼ばれてきたミドルサイズの国産ミニバンのなかでは大柄になったが、その効果は室内に入ると誰でも実感できる。キャプテンシート版の2列目は、実に780mmというロングスライド機構を搭載。ライバル車を凌ぐ広さを実現している。

 

また、使わない際は簡単操作で床下に収まる3列目も、居住性の高さは現実のサイズ以上。新型では先代より遮音性が高められたこともあって、居心地の良さは予想以上だ。さらに付け加えると、2、3列目は着座位置を前席より高めて、クルマ酔いしにくい良好な視界を実現。つまり、すべての座席で快適性を高めるべく入念なアップデートが施されているわけだ。

 

パワーユニットは、1.5Lのガソリンターボと、2Lガソリン+2モーターによるハイブリッドという2本立て。前者で4WDが選べることも含め、構成そのものは先代と変わらないが、当然中身は進化している。1.5Lターボでは必要にして十分な速さと自然なレスポンスを、ハイブリッドでは電気駆動らしい静粛性を実感できる。また、操縦性も背の高いミニバンらしからぬ水準なので、走りも相応に楽しみたいというお父さんにも積極的にオススメできる。

 

[Point 1]キーワードは“視界の良さ”

運転支援系の装備が充実したフロントシートまわりは、こちらも視界の良さを追求。2人掛けとなる2列目のキャプテンシートは前後だけでなく左右にもスライド。スパーダではオットマンも装備する(2列目は3人掛けのベンチシートも選択可能)。

 

[Point 2]グレードは3タイプとシンプル

グレードは先代からの続投となるスパーダ(写真)と、それをベースとして高級感を演出するプレミアムライン。そして内外装をシンプルに仕立てたエアの3タイプが用意される。

 

[Point 3]見た目同様に走りもナチュラル

1.5Lターボは、CVTミッション特有の悪癖を抑え込みつつ必要十分な動力性能を実現。ハイブリッドは、電気駆動モデルらしい静粛性の高さが魅力だ。

 

[Point 4]荷室の使い勝手は依然ライバルを上回る

片手でも行える簡単操作で床下に格納できる3列目の「マジックシート」は先代から踏襲。3列目使用時は、左写真のようにシート後方に実用的な空間が出現する。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/ミッション/税込価格)

エア:1.5L+ターボ、2.0L+電気モーター/2WD、4WD(※)/CVT、電気式無段変速/299万8600円(324万600円)[338万2500円]

スパーダ:1.5L+ターボ、2.0L+電気モーター/2WD、4WD(※)/CVT、電気式無段変速/325万7100円(347万7100円)[364万1000円]

スパーダプレミアムライン:1.5L+ターボ、2.0L+電気モーター/2WD、4WD(※)/CVT、電気式無段変速/346万2800円(365万3100円)[384万6700円]

※:e-HEVは2WDのみ ●( )内は4WD、[ ]内はe-HEVの価格

 

文/小野泰治 撮影/神村 聖、宮門秀行

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ピュアEVの魅力がダイレクトに実感! ヒョンデ「アイオニック5」

気になる新車を一気乗り! 今回の「NEW VEHICLE REPORT」でピックアップするのは、「ヒュンダイ」改め「ヒョンデ」のピュアEVとなるアイオニック5。続々と登場する本格EVの最新作だ。その実力やいかに?

※こちらは「GetNavi」 2022年9月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

ピュアEVの魅力がダイレクトに実感できる!

EV

ヒョンデ

アイオニック5

SPEC【ラウンジ】●全長×全幅×全高:4635×1890×1645mm●車両重量:1990kg●パワーユニット:電気モーター●バッテリー総電力量:72.6kWh●最高出力:217PS/4400〜9000rpm●最大トルク:35.7kg-m/0〜4200rpm●一充電最大航続距離(WLTCモード):618km

 

見た目でも中身でも「電気」の魅力をアピール

乗用車市場では12年ぶりの復活となるヒョンデが日本向けに用意したモデルは、このアイオニック5とFCV(燃料電池車)のネッソ。いずれも環境性能が高いモデルで、販売もオンラインのみという導入手法に注目が集まっている。主力は当然ながら前者だ。

 

その内外装は、SUV風の仕立てが主流となるEVのなかでも実に個性的。大柄なハッチバック的な外観は電動モデルらしさがダイレクトに表現され、内装もクルマというより最新家電のような風情だ。その一方、室内の広さを筆頭とする使い勝手も申し分ない。

 

今回は2WDに試乗したが、走りでも最新のEVらしさが実感できる。アクセル操作に対する鋭いレスポンスや日常域での力強さ、静粛性の高さは電気モーターならではの魅力で、それを受け止めるシャーシもフラットな乗り心地を筆頭として良好。最大で600kmオーバーの航続距離まで考慮すれば、有力な最新EVの選択肢のひとつであることは間違いない。

 

[Point 1]室内と荷室は広々

大柄のボディとあって前後席の空間は余裕たっぷり。前席にはオットマンも備わる。荷室容量はリアだけで527Lを確保し、フロントにも57Lの荷室を用意する。

 

[Point 2]テーマは「パラメトリックピクセル」

ハッチバックのボディ形態ながら、まるでコンセプトカーのような大胆なデザインで独自性を強調。2WDの電気モーターはリアに搭載し、駆動方式はRRとなる。

 

[Point 3]プレーンでワイド感を強調する作り

インパネ回りはシンプルなデザインで、家電的な親しみやすさも感じさせる。シフト操作はステアリングコラムに付けられたダイヤルで行う。

 

[Point 4]電源供給機能も充実

後席下の中央には、AC100Vコンセントを装備。給電機能はこれだけではなく、普通充電のソケットにアダプターを装着すれば外でも電気製品が使用できる。

 

[ラインナップ](グレード:パワーユニット/駆動方式/税込価格)

アイオニック5: 電気モーター/2WD/479万円

アイオニック5 ボヤージュ:電気モーター/2WD/519万円

アイオニック5 ラウンジ:電気モーター/2WD/549万円

アイオニック5 ラウンジAWD: 電気モーター×2/4WD/589万円

 

文/小野泰治 撮影/神村 聖、宮門秀行

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