脚光を浴びるロボット工学! パリ五輪の聖火リレーで世界が感動したシーンとは?

もしも事故で両脚が不自由になったら……。再び自分の脚で歩けることは、きっと大きな喜びになるでしょう。パリ五輪を前に先日、下半身不随のパラリンピック選手がロボットの外骨格(エクゾスケルトン)を装着して聖火リレーに参加。感動的なシーンが世界中に報じられました。

↑聖火を運ぶケビン・ピエット選手(画像提供/TF1INFO/YouTube)

 

ケビン・ピエット選手(36歳)は、車いすテニスのフランス代表です。11歳のときに事故に遭い、両脚が不自由になりました。そんな彼が、今回のパリ五輪の聖火リレーに登場したのです。

 

普段から車いすで生活するケビン選手。しかし聖火リレーでは、両脚から胴回り、さらに背中部分も支えるロボットの外骨格を装着。自らの脚を地にしっかりとつけ、聖火を手に、一歩一歩前に進んでいったのです。

 

歩幅は小さく、一歩一歩踏み出すペースもゆっくりですが、しっかりと自分自身の脚で前に歩いているケビンさん。時折、足もとを気にしながらも、笑顔で歩みを進めていく姿はとても感動的です。

 

このシーンを動画で紹介したSNSでは、「本当によかった」「こんなに幸せそうな顔は見たことがない」「素晴らしい技術が活用されている」など、テクノロジーの力を借りて自分の脚で歩いているケビンさんの姿を見て、胸を熱くしている人々の声が集まっています。

 

ケビンさんが装着していたロボットの外骨格は、フランスのワンダークラフトという企業が開発し、昨年12月に公式に発表された物。背中部分にセンサーが付いていて、装着している人が歩いたり立ったりしたいときに動きを感知して、立つ、座る、歩く、階段を上るといった動作をサポートします。

 

五輪の聖火リレーという多くの人の注目が集まる場で披露されたロボットの外骨格。自力での歩行が困難な方に、きっと明るい光を見せてくれたのではないでしょうか?

 

【主な参考記事】

Daily Mail. Watch the heartwarming moment French Paralympian, Kevin Piette, who has been paraplegic since an accident at age 11, makes history as he carries the Olympic flame through Paris while wearing a robotic exoskeleton. July 24 2024

空気からバッグができた! 果たしてその価値は…

材料の99%が空気。そんな不思議なバッグをフランス人デザイナーが制作しました。驚くべき原料と、異次元のような見た目で、早速世界で注目を集めています。

↑ほぼ空気で作られたバッグ(画像提供/The Independent/YouTube)

 

まるで宙に浮いているようにも見える、うっすらと白味がかっているこのバッグは、「Air Swipe Bag(エア・スワイプ・バッグ)」と名付けられたもの。名前の通り、材料の99%が空気でできています。

 

残りの1%にあたるのが、シリカエアロゲルと呼ばれる物質です。シリカとはケイ素のことで、人間の皮膚や爪にも存在する成分で、エアロゲルはNASAが開発した物質。宇宙のような厳しい条件でも耐えられる断熱材で、最大で12000℃の高温と、4000倍もの圧力に耐えられるのだそう。現在でも、NASAの火星探査車など宇宙開発のさまざまな場面で使われています。

 

シリカエアロゲルは、スポンジのようにナノレベルで微小の穴がたくさんあいているため、丈夫であるのに、とにかく軽量。そのため、このバッグの重さはたったの33グラム。スマホはたいてい1個で100グラム以上の重さがありますが、それよりもずっと軽いのです。

 

このバッグが一般販売されるのか、もしそうなら販売価格はいくらになるか、ということは明らかになっていません。ただ、「ほとんどが空気でできているのに、お金を払う必要がある?」なんて声も出ているようです。

 

しかし、1%の原料が特別にすごいものとわかれば、こんなユニークすぎるバッグを欲しがる人も現れるかもしれません。

 

【主な参考記事】

Daily Mail. French designer Coperni uses NASA’s silica aerogel to create a bag made of 99% AIR. March 5 2024

フランス国民をとりこにした「日本の文房具」、まさかの認知度も絶賛の嵐!

フランスにはアートの国らしい優れたデザインの文房具がたくさんあります。でも、同国で「使いやすい」と高く評価されているのは、細部への配慮がなされている日本製品。日本の文房具を専門的に取り扱うオンラインショップやセレクトショップが増えていたり、日仏のコラボ製品も登場したり、フランスでは日本製文房具への注目度が上がっています。なぜなのでしょうか? 現地からレポートします。

 

知る人ぞ知る日本の文房具

↑フランスで販売されている文房具

 

フランス在住の日本人の筆者が、日本製文房具の中でも特に優れていると感じるのは消しゴムです。フランスの消しゴムは日本製と比べて跡が残りやすく、消しゴムのカスが散らばってしまうことがしばしば。質が悪いものだと、余計に汚くなってしまうこともあります。

 

「小学生たちが困るのではないか」と思いますが、実はフランスでは小学生から万年筆やボールペンを使用するため、あまり消しゴムの需要がありません。しかしその一方で、美術専攻の学生やアート関係の仕事をしている人には消しゴムが必需品です。

 

フランスでアニメーションに特化した文房具を販売しているアダム・イーショップは、人気の消しゴムとしてトンボ鉛筆の商品を紹介。「トンボ鉛筆の日本製消しゴムはスムーズに消すことができる!」と絶賛しています。

 

しかしながら、購入する人たちがトンボ鉛筆の消しゴムは日本製だと知っているかどうかは疑問。日本のメーカーといえば、トヨタ、ソニー、ユニクロなどは有名なものの、文房具メーカーは意外と知られていません。

 

調査会社のXerfiによれば、フランスの筆記具はフランスのビック社と日本のパイロット社が独占しているとのこと。事実、フランスではパイロット社のボールペン「フリクション」が爆発的にヒットしました。

 

上述したように、何十年もの間、万年筆が学童用品の必需品だったフランスでは、1972年に学校でボールペンを使用することが認められました。しかし万年筆は廃れることなく、ボールペンとうまく共存してきたのです。それでもフリクションが台頭したことから、万年筆の売り上げは近年大きく落ち込んでいる模様。

 

とはいえ、トンボ鉛筆と同様にフリクションも日本で開発されたものだと知らないで使っている人が多く、「えっ! パイロットって日本のメーカーなの?」と驚かれます。フリクションはスーパーの棚に並ぶほど有名になったのですが……。

 

日本製の文房具といえば、フランス人は可愛い系やアニメのキャラクターなどを思い浮かべるようです。ちなみに2023年9月の新学期に小学生に人気だった通学用のカバンは、ドラゴンボールZやポケモンの柄でした。

↑フランスでも大ヒットのフリクション

 

一般的な認知はまだまだなものの、文房具が好きなフランス人は日本製の品質を高く評価しているため、近年は日本の物を専門に扱う店のパペトゥリー・マックラやラ・ジャパペトゥリーなどが登場しています。日本製の文房具は「創造性とインスピレーションを駆使してデザインされている」と絶賛され、ノートや和紙テープ、メモ帳、ペン、消しゴムなどが人気です。

 

専門店以外でも、ハンコやシールなどを販売するセレクトショップもあります。例えば、パリのプロダクトブランドであるパピエ・ティグルでは、オリジナルグッズのほか、日本の文房具ブランド・MIDORIの製品などを取り扱っています。パピエ・ティグルは東京にも店舗がありますが、創設者は日本をリスペクトしていたそう。なぜならフランス人はデザインには敏感なものの、日本のように「紙」を重視する文化がないため。紙が持つ繊細さや折り畳み方、包装の文化を賛美していたといいます。

 

その紙は、フランスをはじめヨーロッパの文房具市場で2024年の重要なキーワードになりそう。2023年10月にドイツで開催された国際見本市・インサイツXでは、今年の文房具分野に影響を与えるトレンドが紹介され、その主役は紙であることが発表されました。

 

すでにフランスでは、日本の紙製品が高く評価されています。例えば、大成紙器製作所のノート「PAD NOTE」は、パリの有名なセレクトショップの一つ、メルシーのオーナーが自ら使ってファンになり、メルシーのロゴ入りノートを作ることになりました。

 

また、同じくパリで販売されている同社のノートの表紙には、日本とフランスから2人ずつ選ばれたアーティストによるイラストが描かれています。

 

和紙、書道、折り紙など、日本の文化では紙が重要な位置を占めており、今年はフランス文房具業界とさらなるコラボレーションが生まれる可能性がありそうです。

 

執筆・撮影/Lambe

エッフェル塔でまさかの足止め、プロポーズ作戦が狂った彼氏にひらめきが舞い降りた

パリの人気観光地、エッフェル塔。そこに男がよじ登り、エレベーターが一時停止となり、観光客が展望台で立ち往生する事態になりました。でも、そんな非常事態を逆手にとり、恋人にプロポーズした男性がいます。

↑うれしい誤算

 

米国の首都・ワシントンで暮らしているアミールさんとカットさんのカップル。2人は先日、パリ旅行でエッフェル塔を訪れました。しかしちょうどそのとき、1人の男が塔をよじ登っているのが見つかったのです。

 

そのため、警察と消防が出動する事態に発展。展望台までつなぐエレベーターは一時停止となり、アミールさんとカットさんを含め、そのときに展望台にいた観光客は、地上に戻れずそこに留まらなければならなくなったのです。このときの展望台の様子を映した写真によると、多くの観光客が床に座りこみ、スマホをいじったりしながら、エレベーターが再び動き出すまで時間を持て余していることがうかがえます。

 

そんな退屈な時間を逆に利用したのがアミールさん。彼はこの日、ディナーでカットさんにプロポーズしようと計画していました。しかし「想像よりも長くここにいることになるかもしれない」と思ったそう。また、恋人のカットさんはエッフェル塔の近くでプロポーズされることをいつも願っていたのだとか。そんなこともあり、アミールさんは「今がそのときだ!」と感じ、プロポーズしたのだそうです。

 

カットさんの答えは「イエス!」。2人はエッフェル塔で愛を確かめ、これからの人生を一緒に歩むことを誓ったのです。

 

展望台で立ち往生するという予期せぬ事態がもたらした、思わぬハッピーストーリー。2人のプロポーズは、きっと忘れられないものになったことでしょう。

 

【主な参考記事】

Fox News. Stranded atop the Eiffel Tower, man proposes to his girlfriend: ‘This is the moment’. October 20 2023

エッフェル塔でまさかの足止め、プロポーズ作戦が狂った彼氏にひらめきが舞い降りた

パリの人気観光地、エッフェル塔。そこに男がよじ登り、エレベーターが一時停止となり、観光客が展望台で立ち往生する事態になりました。でも、そんな非常事態を逆手にとり、恋人にプロポーズした男性がいます。

↑うれしい誤算

 

米国の首都・ワシントンで暮らしているアミールさんとカットさんのカップル。2人は先日、パリ旅行でエッフェル塔を訪れました。しかしちょうどそのとき、1人の男が塔をよじ登っているのが見つかったのです。

 

そのため、警察と消防が出動する事態に発展。展望台までつなぐエレベーターは一時停止となり、アミールさんとカットさんを含め、そのときに展望台にいた観光客は、地上に戻れずそこに留まらなければならなくなったのです。このときの展望台の様子を映した写真によると、多くの観光客が床に座りこみ、スマホをいじったりしながら、エレベーターが再び動き出すまで時間を持て余していることがうかがえます。

 

そんな退屈な時間を逆に利用したのがアミールさん。彼はこの日、ディナーでカットさんにプロポーズしようと計画していました。しかし「想像よりも長くここにいることになるかもしれない」と思ったそう。また、恋人のカットさんはエッフェル塔の近くでプロポーズされることをいつも願っていたのだとか。そんなこともあり、アミールさんは「今がそのときだ!」と感じ、プロポーズしたのだそうです。

 

カットさんの答えは「イエス!」。2人はエッフェル塔で愛を確かめ、これからの人生を一緒に歩むことを誓ったのです。

 

展望台で立ち往生するという予期せぬ事態がもたらした、思わぬハッピーストーリー。2人のプロポーズは、きっと忘れられないものになったことでしょう。

 

【主な参考記事】

Fox News. Stranded atop the Eiffel Tower, man proposes to his girlfriend: ‘This is the moment’. October 20 2023

フランスで新お餅デザートの「モチグラス」が大人気! その衝撃的な味とは?

近年、お餅で包まれた日本のアイスクリーム「雪見だいふく」にそっくりな「モチグラス」がフランスで流行しています。見た目の可愛らしさもあり、若い世代の間で人気を集めるようになりました。でも、その味や色味などは雪見だいふくとかなり違います。フランスでどのように変化したのでしょうか?

↑色とりどりのモチグラス

 

フランスのモチグラスは日本より小さめの一口サイズのものが多く、何種類かが詰め合わせになっているアソートタイプが一般的です。まるで高級チョコレートのように、きれいな箱入りで包装されていたり、マカロンのようなカラフルな彩りでセットされていたりします。コンビニなどにはモチグラス専用の冷凍庫もあり、自分で好きな味を選んで購入することができます。

 

日本人からすると、モチグラスの味はかなり斬新で、日本発のアイスクリームというより「東南アジアの味覚」に近いと言えます。抹茶味やあずき味などの和テイストだけを打ち出すのではなく、マンゴー、ココナッツ、黒胡麻、ドラゴンフルーツ、タピオカミルクティーなど、アジアンテイストを中心にバラエティ豊かに展開していることもモチグラスの特徴です。

 

東アジアへの熱視線

このように、モチグラスは変化を遂げながらフランスに定着しつつありますが、これは画期的なことです。

 

食の多様性と創造性を高く評価しつつも伝統を重んじるフランスでは、トレンドフードといえども定番商品としては受け入れられにくい傾向があります。そのため、海外発祥のモチグラスがブームを超え、定番フードとしてフランスで受け入れられつつあることは、とても珍しいのです。

 

その背景には、現在フランスに東アジアブームが再来していることが挙げられます。1990年代から続く日本ポップカルチャー人気に続き、近年ではK- popの大流行や台湾グルメブームなど、東アジア熱が再燃しているのです。このような観点から見れば、モチグラスは日本を含む東アジアへの憧れを象徴しているとも言えるでしょう。

 

モチグラスのブームは一過性にとどまらず、新たなデザートとしてフランス社会に完全に受け入れられる可能性をも秘めています。モチグラスをめぐる今後の動向から目が離せません。

 

執筆/Mayumi Folio

DNA検査に賛否両論! 紛糾するフランスの「犬のふん」を片付けない問題

「美しい街並みに憧れて実際に訪れてみると、その汚さにうんざりする」と言われるほど路上放置されているフランスの飼い犬のふん。この問題に対してついに行政が本腰を入れ、マナー違反摘発に乗り出しました。賛否を呼ぶその対策とは?

 

公共空間の掃除は行政の仕事

↑やめろと言われても犬のふんを放置するフランス人

 

フランス人はペット好きで、都会で犬を飼っている人もかなりの数に上ります。そのため至る所に犬のふんを持ち帰るゴミ袋が設置され、場所によっては家に持ち帰らなくても済むように専用のゴミ箱まであります。さらに、公園や歩行者道路など公共の場所には、砂地でできた犬専用のトイレスペースも設置されています。

 

ところが、フランスでは近代までふん尿が道路に捨てられていたという歴史もあり、犬のふんに限らず公共空間の清掃は行政あるいは清掃業者が行うという考え方が根強く残ります。「個人が公共空間をきれいに保つ」という感覚が希薄なことが、ふん放置問題を引き起こしてきた原因の1つと言えるでしょう。

 

データで対抗も…

これまでもフランス全土では、警察官がふんを持ち帰らない人を見かけた場合や近隣住人からの通報があれば、罰金が科されていました。ところが、フランス南部のベジエ市は2023年7月から、さらに厳しい規制に着手。犬のDNA検査を飼い主に義務付ける条例が発令され、2年間限定で試験運用されることになったのです。

 

動物の権利や捨て犬問題対策のために、すでにフランスではペットのID登録を義務化していますが、ベジエ市では犬のID情報にDNAデータを紐づけるという方法を導入。かかりつけ獣医が専用キットで犬のDNAサンプルを採取して指定の研究所に送り、研究所が犬に番号を割り当てます。

 

もし飼い主がサンプル採集を拒否したりペットのIDカードを持っていなかったりした場合、38ユーロ(約6000円)の罰金が科せられます。飼い主が警察に犬のIDとDNA検査証明書の提示を求められて提示しない場合も、38ユーロの罰金。また、飼い犬のふんを放置すると、清掃料として120ユーロ(約1万9000円)の支払いを求められます。

※1ユーロ=約158円で換算(9月4日現在)

 

ベジエ市民やフランス国民の反応については、日頃からふんを放置しない人や犬を飼っていない人には賛成派が目立ちます。一方で、犬を飼っている人の中には「やり過ぎ」という反発の声も多く、賛否両論です。

 

ベジエ市長によれば、中心部だけで月に1000個以上のふんを回収しているとのことで、小さな町としてはかなりの数と言えるでしょう。マナーを守らない飼い主には罰則が必要との考え方は、どちらかと言えば推奨される雰囲気になりつつあるようですが、この実験がどんな結果を生むのか注目です。

 

執筆/Mayumi Folio

 

 

日本でも導入して! 炭酸水が無料で飲めるパリの「ラ・ペティラント」

フランスでは冷たい飲料水を無料で飲める給水機が至る所に設置されていますが、パリの街角には炭酸水が出る水飲み場もあります。炭酸水が好きな人にとってはうらやましくなる公共サービスですが、一体どんな背景があるのでしょうか?

↑炭酸水も公共サービス

 

パリに1200か所ある公共の無料飲料水機のうち13か所の給水機では、水だけでなく炭酸水を飲むことができます。容器を持参すれば自宅に持ち帰ることも可能で、フランスでは食事時など日常的に無味無糖の炭酸水を飲む習慣があるため、多くの人が利用しています。

 

「ラ・ペティラント」と呼ばれるフランス初の炭酸水給水機は2010年に設置が始まりました。炭酸水給水機が導入された1つ目の理由は、ペットボトルのごみを削減するためです。販売されている炭酸水には、緑や赤など着色されたペットボトルが使用されています。透明なものよりリサイクルコストがかかるので、回収しても焼却ごみとして廃棄せざるを得ません。無料の炭酸水給水機を設置すれば、色付きペットボトルの削減にもつながります。

 

2つ目の理由として、健康意識の向上が挙げられます。炭酸水は糖分やカロリーを含まないため、特に健康志向の人たちの間で人気があります。彼らが集まる公園やランニングスポットに設置することでニーズを満たすと同時に、市民の健康意識をより高める狙いがあります。

 

さらに、ラ・ペティラントの特徴として、水質の安全性と泡立ちの良さも挙げておかなくてはなりません。パリの地下帯水層から汲み上げる水の品質は極めて高く、品質を保証するために年間を通じて検査が行われています。炭酸水は、冷却システムで7度まで冷やした水に一気に二酸化炭素を加えることで繊細な泡が発生し、常に強い泡立ちが楽しめる仕組みです。

 

環境保護と市民の健康志向に応えるために設置が始まったラ・ペティラント。美食家で炭酸水好きなパリ市民にすっかり受け入れられていて、さらなる増設が期待されています。

 

執筆/Mayumi Folio

フランス発の不思議な恋愛スタイル!「トロウプル」は新時代の愛の形!?

新しい恋愛スタイルの「trouple(トロウプル)」が、いまフランスで話題になっています。この言葉は3人組カップルのことを指し、まさに自由な恋愛先進国フランスの価値観を象徴しているとも言われます。不倫や浮気で社会的制裁を受ける日本とは、恋愛感に大きな差異があるようですが、一体どんなものなのでしょうか?

↑幸せな新しい三角関係

 

トロウプルは「trio (3人)」と 「couple(カップル) 」を縮めた言葉に由来し、一緒に暮らす(過ごす)ことを前提とした3人組の恋愛グループを指します。

 

特に10代〜20代前半の若者の間で支持されていて、「女×女×男」「男×男×男」など、構成される性別は無関係。3人の関係が平等であり、決めたルールを守り、愛し合っていることが重要とされています。

 

このように、日本であればひんしゅくを買ってしまう「二股」「浮気」という形が、フランスの若者の間では公認の新たな恋愛スタイルとして受け入れられているのです。

 

新時代の個人主義の影響

トロウプルが生まれた背景として、3つの社会的な要因が考えられます。

 

1つ目は、個人主義社会であるフランスの恋愛観。既婚者の場合は浮気や不倫が離婚の原因となり、場合によっては裁判になるものの、日本のように集団バッシングといった社会的制裁が発生するということは考えられません。

 

2つ目の要因は、新しい考え方が広がっていること。現在フランスではフェミニズムやジェンダーフリーへの関心が非常に高まり、「男性・女性の枠組みを超えた人間としての個を尊重すべき」という価値観が、10代〜20代の若い世代を中心に支持されています。

 

3つ目の要因として、フランスで同性婚が定着したことが挙げられます。養子を迎え入れる同性カップルも増えており、「女性×男性」というカップル以外の形が既に定着しつつあります。

 

このような背景の中で生まれたトロウブル。フランスにおいても新しい概念ですが、自由度のある恋愛スタイルを模索している一部のフランス人の間では大注目されています。フランス人の全てが恋愛に奔放な気質ではないものの、「それぞれの価値観の中で自らの恋愛スタイルを貫く」という考え方は、日本よりだいぶ進んでいるようです。

 

執筆/Mayumi Folio

パリがネズミに敗北宣言! 600万匹と共生できるか?

花の都と呼ばれるパリ。そのイメージとは裏腹に、このフランスの首都は以前からネズミに悩まされてきたことをご存知でしょうか? これまでにパリはネズミを撃退しようと対策を講じてきたものの、あえなく敗れてきました。そして先日、戦略の見直しを発表。戦いを諦めたパリは、ネズミと共存する道を模索することにしたのです。

↑パリを制圧

 

パリとネズミの物語は大昔までさかのぼります。14世紀に中世ヨーロッパで腺ペスト(黒死病)が流行した際、ネズミはその原因とされました。しかし、19世紀後半に普仏戦争でパリがプロイセン王国に包囲された際、ネズミは貴重な食べ物になったそう。

 

近年では、パリにおけるネズミの数は600万匹前後で安定して推移していたとされていますが、それでもパリ市民にとっては不快でした。パリは2017年に170万ユーロ(約2億5700万円※)を投じて、対ネズミ計画を実施。この作戦では、密封されたゴミ箱をパリ中に導入したり忌避剤を広範囲にまいたりしました。しかし、この攻撃もネズミを倒すには不十分だったようです。
※1ユーロ=約151.2円で換算(2023年6月14日現在)

 

逆に、2023年春に発生したごみ収集員のストライキによってパリ中がごみだらけになり、ネズミが反撃に出たのではないかと見られています。

 

そして6月上旬、パリはネズミと平和に共存するための調査委員会を設置せざるを得なくなりました。この動きは賛否を呼んでいます。政治家の中には「パリはこれに甘んじてはならない」と落胆した声がある一方、動物愛護団体は今回の動きを前向きに評価し、「有害生物の駆除ではない方法を支持する」と声明を発表しています。

 

果たしてパリ市民はネズミとの共生社会を実現することができるのでしょうか?

 

【出典】

Politico. Paris needs to learn to live with rats, mayor concedes. June 9 2023

CNN. Can humans and rats live together? Paris is trying to find out. June 10 2023

 

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

入学式や入社式にびっくり! なぜフランス人は日本の行事に驚愕するのか?

東京大学名誉教授の養老孟司氏が、2023年に出版した『ものがわかるということ』(祥伝社)で述べているように、日本と西洋では「自分」に対する考え方が違います。明治時代まで日本人は自分をことさら意識してこなかったのに対して、西洋人は自己をはっきり意識します。理論的にそうだとすれば、実際に欧米の社会はどうなっているのでしょうか? フランスを調べてみると、学校や会社における人々の行動が日本と全然異なることがわかりました。

↑入社や入学は個人の問題だと考えるフランス人

 

桜の開花とともに始まる日本の新年度は、社会全体が新しい生活を予感させるワクワク感に包まれているような気がします。そんな日本と違って、フランスの新年度は夏の気だるさを引きずりながら9月に始まります。

 

フランス人は入学式や入社式を人生の大事な節目と考えておらず、そのため、入学式や入社式といった、みんなが一緒に参加する儀式もありません。

 

新年度が始まる夏季休暇明けの9月に普段の職場の景色と違うことと言えば、こんがり日焼けした同僚たちと休憩時間にバカンスや夏の出来事についておしゃべりするぐらいです。

 

その一方、学校でも入学式や始業式はなく、子どもたちは普段通りに登校します。加えて、成長の早い子の飛び級は昔から特別ではないことが、日本の学校との違いとして挙げられます。

 

フランスの大学生には就職活動期間というものもなく、個人的に研修し会社側がタイミングを見て採用するのが一般的。転職やキャリアアップしてからの入社も多いため、新入社員の年齢や出社時期もさまざま。そのため、年度初日に新入社員が集団で出社するのは不要という考え方です。

 

このようなフランス人の行動の背後にあるのが、集団よりも個人を優先させる「個人主義」。フランスには日本のように社会全体で節目を大切にする習慣が特になく、それよりも個人の感覚や都合のほうが大切とされています。だから、新生活に向けた社会全体の高揚感や期待感もさほど高くはありません。

 

そんなフランス人に日本の入学式や入社式について説明すると、概ね反応は二通り考えられます。一つ目は「面白い」という反応。実際、フランスには日本の文化を紹介するウェブサイトがたくさんあり、その中には入学式を説明しているものもあります。もう一つの反応は「なんて大げさなんだ!」と驚かれること。フランス人はしばしば世界最高の「ペシミスト」と呼ばれますが、個人主義の対極にある考え方には悲観的なのかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

「包む」対「破く」。日本と全然違うフランスの「贈る文化」

日本には独特の贈答文化がありますが、実はフランスにも面白い贈る文化があります。フランス人の贈り物に対する考え方や感情の表現方法について調べてみると、日本人と全く異なることがわかりました。フランスへの旅行や留学などを検討している人なら特に知っておくべき、フランス人のプレゼント習慣やコミュニケーション方法について紹介します。

 

すぐに破く!

↑大げさに開けて「メルシー」

 

近年ではだいぶ変わってきたようですが、日本では贈り物を受け取ってすぐに開封することはマナー違反とされていました。一度自宅に持ち帰り丁重に開封して、後日、いただいた品に見合った額のお返しを贈ります。そのうえ、「包む」ことにも伝統があり、パッケージも細部にわたり美しく、包装までとても丁重です。

 

しかし日本に比べて、フランスのプレゼントの包み方はかなり大雑把。さらに、驚くほど薄い包装紙でラッピングされています。

 

その理由は、「贈り物をもらったら本人の前で開封して感動とお礼を伝える」という贈り物に対するフランス式マナーがあるから。待ちきれないほどのうれしさを表現するように、とにかく勢いよく高速で開けるのが良しとされ、大きな音で包みを破きます。そして、プレゼントを見たらとことん感激し、お礼と感想をその場で相手に伝えます。

 

プレゼントが開けられたら、贈った人は「自分はどうしてそれを選んだのか?」「どんな所がその人にピッタリだと思ったのか?」などをその場で伝えます。贈る側も、相手が自分の選んだ品に感激してくれたことで、喜びを共有するのです。

 

お返しをしない理由

↑プレゼントの原則はあげたいからあげる

 

フランスでは、贈り物をもらった後にお返しをする習慣やマナーがありません。冠婚葬祭や出産祝いの贈り物でもお返しは不要で、日本とは大きく違います。

 

クリスマスや誕生日などのプレゼントを贈り合うのは、あくまでもお互いの「プレゼントを贈りたい」という気持ちが軸になります。そのため、お返しをすると「なぜ理由もないのに贈り物をもらうのだろう?」と不思議がられます。人によっては「この間の贈り物が迷惑だったのだろうか?」と気に病んだり、「借りを作りたくないのか?」と残念な気持ちになったりしてしまいます。

 

このように、フランスでプレゼントを贈るのは「自分が相手に贈りたいから贈る」ことが基本。もらったからという理由だけで義務のようにお返しをするのは、むしろマナー違反なのです。

 

プレゼントを贈られたら、すぐに開いて、その場で最大限の感謝の気持ちを相手に伝えるフランス人。日本人がフランス人からプレゼントをもらうときは、「オーバーリアクションぐらいがちょうど良い」ということを覚えておくと良いかもしれません。

 

執筆者/Mayumi Folio

ヨーロッパで急成長中の医療×IoT「e-Health」、日本も注目すべき最先端を追う

【掲載日】2022年7月19日

新型コロナウイルス感染症の世界的流行も受けて、IoT技術を医療に取り入れるグローバルな潮流が加速されました。オンラインビデオ通話などによる遠隔診療をはじめとした、IoTを通じて個々の健康を増進する「e-Health」の取り組みが、世界各地で行われています。

 

EU理事会議長国であるフランスの取り組みの一環として、2022年5月にパリで開催された展示会「SANTEXPO 2022」では、最先端の取り組みを行う企業、研究・教育機関、NGOがヨーロッパ各地、さらにはそれ以外の地域からも出展。3日間開催された同展示会の出展社数は約600社、参加者は約2万人にのぼりました。この記事では、ヘルスケア・介護×IoTの最新トレンドをアイ・シー・ネット株式会社のグジス香苗がフランス在住の強みを活かし、実際に「SANTEXPO 2022」へ参加したレポートからお届けします。

パリ15区のポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開催

 

およそ600もの企業や団体がブースを出展した

 

薬局、市庁舎でも受けられる遠隔診療キャビンの導入

展示会場でまず目を引いたのが、遠隔診療用キャビン。日本でも普及が期待されているオンライン診療ですが、欧州では薬局を中心に、市庁舎、スーパーマーケットなど、公共の場所に遠隔診療用キャビンの設置が進んでいます。

 

キャビンにはオトスコープ(耳用の内視鏡)、デマトスコープ(皮膚の拡大鏡)、聴診器、パルスオキシメーター、体温計、血圧計といった検査機器が標準装備されており、簡易な検査に対応しています。また、薬が必要な場合は、キャビン内で処方箋をプリントアウト。薬局に設置されているキャビンを利用すれば、刷り出された処方箋で、薬を購入することができるので便利です。

ウェルネス、フィットネスサービスを展開するH4D社の遠隔診療用キャビン。人間工学に基づいて作られた椅子に座り、自ら検診器を使用する

 

キャビン上部に設置された画面に映る医師から問診を受ける

 

患者の情報が詰まった電子カルテは、暗号化されたうえで、EUの一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、以下、GDPR)に基づいた高い安全性のもと、保管・管理されています。個人情報保護を目的に、2018年に適用が開始されたGDPRは、個人データを扱う機関・施設にデータ保護オフィサーの配置を義務付けるなど、高い基準が設定されているのが特徴。

遠隔診療サービスを提供するMEDADOM社の独立スタンド型診療用システム

 

保険証(緑色カード)を差し込み遠隔診療を開始。診療費は国民健康保険からMEDADOM社に払い戻される

 

遠隔診療用キャビンのリーディングカンパニーのひとつ、TESSAN社のスタッフによれば、同社製のキャビンは2018年から設置がスタートし、いまやフランス全土で450台が稼働しているとのこと。キャビンに訪れた患者に対応する医師・専門医は100人おり、患者数はなんと10万人におよびます。同社では、キャビン内の機器をさらに充実させる取り組みも行っており、眼科関連や心電図の検査機器を現在開発しているそうです。

TESSAN社の遠隔診療用キャビンの内部

 

そのビジネスモデルを見ていくと、キャビンの販売自体から得られる収益がない、という点が特徴的。というのも、これらのキャビンは5年間のリース契約で設置されており、リース終了後には契約者の所有物になるのです。一方、TESSAN社は、フランスの国民健康保険から払い戻される診察料から、管理費などの必要経費を除いた額を収益としています。

 

フランスでは、コロナ禍がはじまる以前の2018年時点で、遠隔診療に関する法整備が進んでおり、遠隔診療の医療費が国民健康保険の補償対象になっています。さらに、2020年以降のコロナ禍でその需要が爆発的に増えたことから、2022年7月31日まで遠隔診療の自己負担額が無料になる措置まで取られています。また、同国の健康保険証はデジタルスキャンに対応しており、日本とは異なるこういった土壌も、遠隔診療用キャビンの急速な普及に一役買っているといえるでしょう。

 

コロナ禍の感染対策や非接触に対する国民の意識向上の他に、このキャビンが普及した背景には、フランスの医療事情もあります。というのも、日本の街中に多く見られるような個人開業医によるクリニック数の減少と都市部に偏在していることから、医療へのアクセスが難しい「医療のデザートエリア(砂漠地帯)」と呼ばれる地域が存在します。こうした医療格差を埋める存在として、遠隔診療キャビンは大きな注目を集めているのです。

 

こうした背景は、日本でも決して、無縁ではありません。過疎化が進んでいる日本の地方では、医師不足の問題が深刻化しています。遠隔診療キャビンは、我が国における問題を解決するひとつのツールになる可能性も。また、医療レベルが低い発展途上国もこれに注目しています。アフリカ西部に位置し、フランス語を公用語とするマリでは、国家レベルのプロジェクトとして「マリ遠隔医療プロジェクト」が進行中。ヘルス分野のDX推進を進めるための省庁として、国家遠隔ヘルス・医療情報庁が設置されているほどです。

マリ「国家遠隔ヘルス・医療情報庁」の紹介パンフレット

 

パンフレットの裏面。遠隔医療をはじめ、庁内の取り組みについて解説

 

ブロックチェーン技術を活用した、患者の個人情報保護

「SANTEXPO 2022」には多くのスタートアップ企業も出展しました。そのなかでも特に目立っていたのが、ブロックチェーン技術を活用したプロダクトサービスを提供している企業。遠隔診療用キャビンの普及により、電子カルテ情報などを暗号化し安全に管理・共有するシステムの需要が高まっていることも、そんな企業を後押ししています。

 

本エクスポに出展していたうちの一社であるDr Data社は、フランスの法医学博士号を有する女性社長が起業したスタートアップ。同社の事業は、ブロックチェーンの暗号化技術を用いた保健医療データの保護や電子患者データの管理です。さらに、GDPRに基づいた、データ保護オフィサーの派遣も行っています。

 

また、救命医・麻酔科医によるスタートアップであるGALEON社は、患者や治験のデータを病院間・医療関係者間で安全に共有できる仕組みを開発しています。当然ながら、このシステムもブロックチェーン技術を活用したものです。同社の試みは、データを安全に保管するだけでなく、医療関係者がそれを共有できるようにした点がユニークですが、患者が自分のデータを管理できるようにするシステム構築が進められています。

 

そして、GALEON社の独自性は、事業内容にとどまりません。医療従事者だけでなく患者にも資する会社にするというコンセプトで運営されている同社は「分散型自立組織」という形式を採用しています。同社の組織はプロジェクトに貢献した人による投票によって運営されており、たとえば自身のデータを治験に利用することに同意した患者にも、その投票権が与えられるそう。従来の株式会社とは違う、トップダウンの性質が非常に薄い組織体系です。多くの医師・患者から高い評価を得ているGALEON社のプロジェクトは、2021年末から2022年初頭にかけて、1500万ドル相当の資金調達にも成功しています。

 

仏・郵政公社がe-Healthに進出し、高齢者の見守りに注力

遠隔医療、ブロックチェーンのほかにも「SANTEXPO 2022」で目立っていた要素が、高齢者や慢性疾患患者の見守りサービスです。

 

たとえば、フランスの郵政公社La Posteは、家庭・医療・デジタル技術関連の企業買収を進めており、イノベーションの支援やヘルスケア領域へ事業範囲を拡大。高齢者の自立生活支援や見守り、医療補助機器の販売、さらには保健医療サービス提供事業者への物流・金融などのBtoBサービスまで幅広く手掛けています。

 

La Posteの強みは、郵便配達員という“インフラ”を全国に有していること。実は同社、そのインフラを活かし、下水管の詰まりなど日常生活上のトラブルが起きてしまった住宅を郵便配達員が訪ねた際に、工事業者を紹介するといった事業をすでに行っています。昨今の事例は、高齢者の見守りにその領域を広げたものと考えることができるでしょう。

早期退院した患者が体調を遠隔モニタリングできるよう、RDS社が開発した遠隔サーベイランス機器のパンフレット

 

また、早期退院した患者の体調を遠隔モニタリングできる、小型パッチタイプの遠隔サーベイランス機器を開発したRhythm Diagnostic Systems社の出展もありました。このパッチは1週間の使い切りタイプ。患者がこれを貼り付けて生活することで、退院後であってもそのバイタルサインを一定期間遠隔モニタリングできるというわけです。日本でも、病院の病床不足が問題になることはありますから、こういった機器が海を渡って来れば、医療従事者の負荷軽減に一役買いそうです。

退院患者のバイタルサインを1週間ほどモニタリング可能

 

日本でも待たれるe-Healthイノベーション

e-Healthの最先端が結集した今回の「SANTEXPO 2022」。その展示を通してとくに強く感じたのは、官民両面での「日本との違い」でした。“官”の面では、フランス政府が遠隔診療の医療費を無料にするなどの強力な政策を進めており、e-Health推進に向けた強力なリーダーシップを発揮しています。

 

また、“民”の面でも、乱立するデジタルシステムの相互補完性を各社が担保するなど、医療の改善に向けた問題解決意識が競合各社の間で共有されています。e-Health勃興期といえる今、多様な製品・サービスが乱立しており、それらひとつひとつの互換性に懸念が持たれるところですが、多くのケースにおいて杞憂というわけです。

 

一方で、勃興期ゆえの問題もあります。それは、e-Health導入による改善効果のエビデンスがまだ集まっていないということです。しかし、この記事で紹介してきたように、e-Health導入による社会問題の解決事例が集まり始めているのもまた事実。あとは、それにどれくらいの費用対効果があるのかなど、トライアンドエラーを繰り返しながら改善を続けていくフェーズに入ることでしょう。

 

一方で日本に目を移すと……高い医療レベルを誇り、平均寿命世界一の国でもある我が国ですが、e-Healthの面でいえば後れをとっているといわざるをえません。この記事で紹介したものが海を渡って日本にやってくる未来があるかもしれませんが、国内でそれらに負けないイノベーションが生まれることも大いに期待ができます。

 

グジス香苗(写真右端)●米国大学院で公衆衛生修士号(MPH)を取得後、国際NGO、国連機関に勤務。アイ・シー・ネット入社後は、2011年から足掛け10年、セネガル保健省と保健システム強化のODA事業を実施。並行して女性の起業・ビジネス支援、経済的エンパワーメント、ジェンダーに基づく暴力などに関する研修事業や調査業務に従事した経験を持つ。現在は、アイ・シー・ネット保健戦略タスクチームの技術コンサルタントとして、保健医療分野の事業運営や戦略立案を支援しながら、フランス在住の地の利を活かしてフランス・欧州での調査業務を実施している。 

セネガル中央保健省の計画局課長、市長連合の代表、州医務局の担当官、プロジェクト総括のグジスの4人でチームを組んで、保健ポストを巡回指導(スーパービジョン)に訪れた時の様子。人材・保健情報・医薬品マネジメントと保健サービス提供の現状・課題を把握し、その対応策を一緒に検討した

 

【この記事の写真】

 

読者の皆様、新興国での事業展開をお考えの皆様へ

『NEXT BUSINESS INSIGHTS』を運営するアイ・シー・ネット株式会社(学研グループ)は、150カ国以上で活動し開発途上国や新興国での支援に様々なアプローチで取り組んでいます。事業支援も、その取り組みの一環です。国際事業を検討されている皆様向けに各国のデータや、ビジネスにおける機会・要因、ニーズレポートなど豊富な資料もご用意しています。

なお、当メディアへのご意見・ご感想は、NEXT BUSINESS INSIGHTS編集部の問い合わせアドレス(nbi_info@icnet.co.jpや公式ソーシャルメディア(TwitterInstagramFacebook)にて受け付けています。『NEXT BUSINESS INSIGHTS』の記事を読んで海外事情に興味を持った方は、是非ご連絡ください。

 

執筆/畑野壮太

【8月31日まで】「地球の歩き方」がKindle Unlimitedで読み放題!コロナ禍の活用術を中の人に聞いた

いま、「地球の歩き方」がAmazonのKindle Unlimitedの読み放題となっているって知ってましたか?

 

しかも今回は、旅好き女子のためのプチぼうけん応援ガイド「aruco」、初めてその場所を旅する人や、短い滞在時間で効率的に観光したい旅人におすすめのシリーズ「Plat」、自分流に楽しむリゾートステイを応援する「ResortStyle」も含めた主要4シリーズ全176タイトルが読み放題なんです!

 

これだけ読み放題なら、ざっと眺めるだけでも旅行気分に浸れるかもしれません。でも、せっかくなら、もっと本物の旅に近い体験をしたいと思いませんか?

 

そこで、今回は「地球の歩き方」を使った、家にいながらの旅行体験「アームチェアトラベル」について、「地球の歩き方」の中に人に教えてもらいました! これを実践すれば、あなたの「旅に行きたい!」欲も満たされること間違いなし!!

 

 

■「地球の歩き方」Amazon Kindle Unlimited 詳細はこちら(Amazonページへ移動します)

配信期間:2021年7月1日(木)~2021年8月31日(火)
200万冊以上のKindle電子書籍が読み放題のサブスクで初回30日間無料、以降は月額980円(税込)。

・対象書籍:「地球の歩き方」主要4シリーズ全176タイトル電子版
「地球の歩き方ガイドブック」シリーズ:110タイトル
「地球の歩き方aruco」シリーズ:28タイトル
「地球の歩き方Plat」シリーズ:23タイトル
「地球の歩き方ResortStyle」シリーズ:15タイトル

各シリーズ詳細はこちら(「地球の歩き方」公式サイトに移動します)

 

「アームチェアトラベル」って何?

 

「アームチェアトラベル」とは、自宅にいながら自由に旅行気分を味わうこと。海外では一般的に使われている言葉のようですが、「脳内トリップ」「妄想旅行」なんて言い換えてみるとわかりやすいですね。「よし! 今日はアームチェアトラベルをやるぞ!」と決め込むよりも、海外の絶景写真集を眺めているうちに、海外ドラマを見ているうちに、旅ブログを読んでいるうちに、「あ、旅行気分を味わっていた!」という方が多いかもしれません。

 

今回は、『地球の歩き方』の旅行マーケティング部所属の倉林さんと曽我さんにアームチェアトラベル、そして旅行の楽しさについて教えていただきました。そもそもアームチェアトラベルとはどんなものなのでしょうか?

 

倉林 元気さん
旅行先では蚤の市、古着屋を必ず探す。古着、雑貨巡りが大好き。JICAの青年海外協力隊でミクロネシア連邦チューク州駐在経験もあり。

 

曽我 将良さん
バックパック旅行好き。ビーチバレーが趣味で、行った国々のビーチでオーバーヘッドキックを決めている写真を撮っているのだとか!

 

倉林さん「本を読んだり、写真集を眺めたり、現地のラジオ番組や音楽を聞いたり、ぼんやりといつか行ってみたい国の情報を検索するだけでも、立派なアームチェアトラベル。日常の中で旅気分を味わうって意外と簡単にできるので、入門編として『気になる国を調べてみる』『気になる国のガイドブックを読んでみる』から始めてみるといいかもしれませんよ」

 

曽我さん「旅行って頑張っても年に1〜2回しか行けませんが、アームチェアトラベルなら365日好きな場所へいつでも旅行ができます。旅先を検索窓に入力するだけで、普段見られないような南極の景色や過去に訪れた旅行先の今の風景が見られたり、気づきが得られるはず。旅行と同じように試行錯誤しながら、自分が一番旅行気分を味わえるアームチェアトラベルを見つけて欲しいですね」

 

また、アームチェアトラベルは大きく分けると2つの楽しみ方ができるのだとか。ひとつめは、「過去に行ったことのある国や地域でアームチェアトラベル」する方法。もうひとつは、「旅行情報を参考に行ったことのない国や地域にアームチェアトラベル」する方法。ネットや本など参考にできるものがたくさんありますが、まとまった情報として活用できるのが『地球の歩き方』! プランの立て方からおすすめの観光スポットまでたっぷりと掲載されています。

 

『地球の歩き方』の意外な読み方&活用法

 

私も「アームチェアトラベルをやろう!」 と、無計画にペラペラと旅行雑誌を読みながら、YouTubeで現地ガイドさんの動画を見たのですが、30分と楽しむことができませんでした。そんな話を倉林さんと曽我さんにしてみると、「しっかりプランを立てないと!」とお叱りが! ごめんなさい!! 一体、どんなプランを立てるのが良いのでしょうか? お二人にそれぞれ今行きたい国でプランを考えてもらいました。

 

■倉林さんのバングラデシュ旅

1.『地球の歩き方 バングラデシュ』を最初からじっくり読み込む
2. 現地到着初日と最終日以外の日の過ごし方を決める(複数個所を巡る周遊型か、拠点を決めたじっくり滞在型か)
3.『地球の歩き方』でピックアップした場所をGoogle Mapに落とし込む

「旅行の醍醐味は「五感」をフル活用できるところ。旅先で存分に楽しむためにも準備は大切。なので僕は、準備としてのアームチェアトラベルをします。『地球の歩き方』は旅の先輩。とりあえず欄外コラムやはみだし情報まで全部読みます。先輩の経験談がたっぷりと語られていますよ!」

 

■曽我さんのエジプト旅

1.地図を広げてエジプトの全体像を把握する
2.航空券を調べて、金額感を把握する
3.『地球の歩き方 エジプト』を読みながらモデルコースを参考に行く場所を決める

「新しい旅行先が見つからないなら、本屋さんに足を運ぶのがおすすめ。インターネット上だと欲しい情報以外は見過ごしがちですが、KindleUnlimitedなら好きなだけ読めるので気になる国を一気にダウンロードすれば本屋さんにいる時と同じように楽しめますよ」

 

始める前に「何」をしたいかを考えることが大切なんですね! お二人とも、旅行に行くことを想定しながらプランを立てられていたので、お話を聞いているだけでもワクワク感が伝わってきました。

 

お二人も活用していた『地球の歩き方』ですが、初めて手に取った方はどこから読んだらいいかわからない人もいるかもしれません。そんなときは、以下のポイントを抑えておくのがおすすめです。

 

■『地球の歩き方』の読み方&活用方法

・初めての旅行先であれば、冒頭のモデルプランページを参考に

・どの国でも掲載されている「旅の準備と技術」には、その国のすべてが詰まっているので必読

・掲載されている情報は、現地取材したものなので、本当に直面したスリリングな情報も……!

・一度訪れた場所でも知らなかった歴史や民族文化・風習、地形や建築解説ほか幅広く掲載されていることもあるので、旅の上級者にこそ読んでほしい

・簡単な会話集や歴史年表、関連書籍や現地の流行事情など、あえて後ろのページから読んでみると、意外な情報に気が付く場合も

・定番のガイドブック以外にも、旅の雑学『図鑑シリーズ』・72時間濃縮プラン『Plat』・女子旅プチおうえん『aruco』など個性豊かなシリーズも発行されている

 

初心者でも手軽に楽しめる「アームチェアトラベル」5選

では、初心者でも手軽に楽しめるアームチェアトラベルを5つご紹介しましょう!

 

【行きたい場所が見つからない人向け!】
・絶景写真集などから行ってみたい場所を探す(所要時間:1時間〜)

海外の絶景だけを集めた写真集や雑誌を見て気になる場所の『地球の歩き方』を読むだけでも十分楽しめます。またInstagramのハッシュタグ「#世界の絶景」「#photo_travelers」でも写真や動画が見られますよ!

 

【スマホだけでいつでもできる!】
・一人で、家族と、友達と! 過去に訪れた場所を写真で振り返る(所要時間:1〜2時間)

あなたのスマホの中に、旅先の写真いっぱい入っていませんか? それを眺めているだけでも十分なアームチェアトラベルに。ひとりでも楽しいですが、家族や友達をオンラインで繋げて、写真を披露したり「これはどこでしょう?」クイズを出し合うのもおすすめ。

↑ポキを食べて浮かれている2018年の私。ここはどこでしょう? クイズに使えそう! ちなみに正解は、Nico’s Pier 38。トロリーに乗って行ったなぁ〜♪

 

【じっくりと時間をかけたい!】
・旅の先輩である『地球の歩き方』から、先輩っぽい発言を引き出して学ぶ(所要時間:2時間〜)

旅の先輩である『地球の歩き方』は、発言も少し先輩っぽい(笑)。以下は地球の歩き方 マダガスカルで紹介されているお土産物屋さんについての記述。

 

ただし観光客にはかなり値段をふっかけてくるので、あらかじめ相場を調べておいてしっかり値切ろう。交渉次第で2分の1〜5分の1ほどになることもあるので試してみよう。

(『地球の歩き方 マダガスカル』から引用)

 

ありがとう、先輩!!(笑)他にもちょっぴりポエミーな一節があったり、読めば読むほど味わい深い文章がたくさん。行き先にもよりますが、隅から隅までじっくり読むのには2時間程度かかるので、通勤や通学、お昼休みの合間に読むのもおすすめです。

 

【1日中旅行気分を楽しみたい!】
・香り、味、耳で現地の雰囲気を再現する(所要時間:2時間〜)

旅行気分を味わうなら、嗅覚・味覚・聴覚を刺激しましょう。個人的には、蒸し暑い日に熱々のタイラーメンを作り、イヤホンでタイの音楽を聞きながら食べていたら、「あれ? ここはタイかな?」と感じることができました(タイ旅行未経験ですが)。

↑買ってきたタイ料理の素材。味覚からのアプローチも大切な要素!

 

【少しの空き時間でもできる!】
・『地球の歩き方』の表紙と同じ場所をGoogle Earthから探してみる(所要時間:10分〜)

『地球の歩き方』で使われている表紙のイラストと同じ場所をクイズのようにGoogle Earthから探し出すのも盛り上がります。先ほどご紹介した地球の歩き方 マダガスカルの表紙はバオバブの木が描かれています。

 

 

Google Earthで調べてみると……バオバブの木を発見!

 

本当にこんな形をしているのかとか、人が写っているところもあるので実際の大きさも想像でき、臨場感が増しますね!

 

私なりのアームチェアトラベルを実際にやってみた!

最後に、私が実際にやってみたアームチェアトラベルをご紹介。

 

ひとつめは、過去に2回(2018年春&2020年新春)訪れたハワイ〜! 海外旅行はホノルルしか経験していませんが、他の国には行かなくてもいいくらい大好きです! 仕事中も「イライラしないように」とよくハワイアンミュージックを聴いているのですが(笑)、振り返ってみればそれもアームチェアトラベルだったかもしれません。

 

せっかくなので、今回はいつもよりハワイ感が高まるアームチェアトラベルをしてみましょう!

 

■アームチェア・ハワイ旅

1.現地で買ってきたものを机の上に並べる
2. 現地のラジオ番組やハワイアンなBGMをかける
3.『地球の歩き方 ハワイ1オワフ島&ホノルル』を読んで、行ったことのある場所や次、行きたい場所に付箋する

 

 

「こんなことで?」と思うでしょ? これが不思議なのですが、気がつくと机の周りがハワイになります(笑)。振り返りながら『地球の歩き方』を読んでいると旅行中に通り過ぎていた場所や新たな魅力を見つけることができます。

次行くなら、朝早く起きてbikiに乗ってモンサラット通りへ行きたい! そして「カフェ・モーリーズ」でフライドライスを食べるっ

 

次に旅する先は「パリ」。地球の歩き方の編集長にコロナ前、人気だった観光地を伺ったところ、

 

・「地球の歩き方ガイドブック」シリーズ:イタリア、シンガポール、パリ、ベトナム、台北
・「地球の歩き方arucoシリーズ」:ソウル、ニューヨーク

 

と教えていただけたので、今回は地球の歩き方 パリ&近郊の街を参考に、パリの街をネット上でお散歩してみることに。というのも、アート作品をウェブ上で公開する美術館が増え、いつでもどこでもアート散策できるようになったのです。実際のパリでは、予算の関係上そんな優雅な過ごし方できそうにもないので(笑)、アームチェアトラベルでたっぷり楽しみましょう!

 

■アームチェア・パリ旅

1.『地球の歩き方 パリ&近郊の街』から行きたい美術館をチョイス
2.美味しいフランスパンをトーストし、部屋の中をパリっぽい匂いにする
3.映画『ミッドナイト・イン・パリ』のサントラを聴きながら、美術館のサイトをチェック

 

↑ルーブル美術館をバーチャルで見学してみました! バーチャル訪問はこちら

 

行ったことはありませんが、音楽と食べ物があると現地感が深まります。地球の歩き方 パリ&近郊の街には美術館や施設の最新情報が掲載されているので、「行くときにはパリ・ミュージアム・パスを絶対買おう!」「え、オペラ座ってふたつもあったの?」「書店めぐりとかおしゃれなんですけど!」と旅行に役立つ情報も満載でした。

 

今のうちから「行きたい場所」や「もう一度訪れたい場所」についてアームチェアトラベルしておくことが次の旅行の糧となり、自分自身を支えてくれるはずです。

 

ちなみに『地球の歩き方』の編集長にコロナ後に人気になりそうな観光地についてお話を伺ったところ、「具体的なデスティネーションというよりは、アフターコロナの旅のスタイルが変わるので、密にならないネイチャー系の観光地は全体的に人気になると思われます」と教えてくれました。ぜひ旅行先選びの参考にしてみてくださいね!

 

そして安心安全に旅行ができるようになった際には、リュックの中に『地球の歩き方』先輩を一緒に連れて、コロナ前よりもちょっぴりレベルアップした自分で旅を楽しみたいですね!

 

■「地球の歩き方」Amazon Kindle Unlimited 詳細はこちら(Amazonページへ移動します)

配信期間:2021年7月1日(木)~2021年8月31日(火)
200万冊以上のKindle電子書籍が読み放題のサブスクで初回30日間無料、以降は月額980円(税込)。

・対象書籍:「地球の歩き方」主要4シリーズ全176タイトル電子版
「地球の歩き方ガイドブック」シリーズ:110タイトル
「地球の歩き方aruco」シリーズ:28タイトル
「地球の歩き方Plat」シリーズ:23タイトル
「地球の歩き方ResortStyle」シリーズ:15タイトル

各シリーズ詳細はこちら(「地球の歩き方」公式サイトに移動します)

 

【INFORMATION】

「aruco東京シリーズ」発刊記念プロジェクト!
HISとのコラボによるオンラインツアーを開催!!

「旅好き女子のためのプチぼうけん応援ガイド」地球の歩き方arucoシリーズは女性に人気の海外エリア38タイトルを発行しています。【arucoシリーズの詳細はこちら

今回、シリーズ初の国内版『aruco東京』『aruco東京で楽しむフランス 』『aruco東京で楽しむ韓国 』『aruco東京で楽しむ台湾』の4タイトルを同時発売。発刊記念プロジェクトとして、HISとのコラボによるオンラインツアーを開催予定です。

実施期間は8月~9月。各タイトルにちなんだ「おうちで海外気分」をテーマに行う予定です。

 

フランスの「モノ作り」に地殻変動。パリ13区に出現した広大な施設「Station F」とは?

「フランス国内から次世代のGoogleを生み出し、生き残っていくために全力を尽くす」

 

2013年11月、パリで新しいスタートアップ支援策の「フレンチテック(La French Tech)」が発表されました。フランスを“デジタル共和国”にするため、政府が主導するという形で誕生したこの国家プロジェクト。テクノロジー産業の次の巨人を作るというモットーのもと、目覚しいスピードで進行しています。

最初の1年間で国内のテクノロジーエコシステムを整備すると、15年にはギアを一段アップ。ヴァルス内閣で当時の経済・産業・デジタル相だった現エマニュエル・マクロン大統領が、フランスのスタートアップを世界各国の主要テクノロジーハブとつなぐ、新しい「エコシステム」の構築を発表しました。現在もフランスはスタートアップ企業と起業支援団体間のネットワーク形成に向け、精力的に取り組んでいますが、そんななか17年6月に誕生した「Station F」はフランスのスタートアップ支援事情を語るうえで欠かせない存在です。

 

Station Fは、パリ13区にかつて存在した3万4000平方メートルもの広大な旧鉄道車庫を利用してつくられた世界最大級のインキュベーション施設。仏インターネット通信大手グループ「Iliad」の創業者で著名な投資家でもあるグザヴィエ・ニール氏が出資し、厳正な審査を通過した1000社を超えるスタートアップ企業が利用しています。

施設の創業パートナーとして支援を行う企業にはFacebookやAmazonなどアメリカのIT大企業が名を連ね、共同のワークショップスペースには3Dプリンターやレーザーカッターも完備。ここでは開発製品などの試作ができ、施設は365日24時間利用可、シャワーやロッカールームまでもが用意されているという手厚さです。

海外企業や投資家も注目

Station Fの大きな特徴のひとつは、従来のインキュベーション施設の多くが大学の研究機関との提携、共同開発を行うプラットフォームであったことに対し、国内外の起業家に広く門扉を開いているところ

 

そのため、海外起業家からの注目度も高くStation Fでは英語が共通語なので、入居者はフランス語が話せる必要はありません。アメリカやイギリス、中国、インドからの申請者も多いと言われています。

 

JETROのレポートによると、ヨーロッパのスタートアップ支援先進国では、17年1~8月期における各国のベンチャーキャピタルからの資金調達総額がイギリスでは23億ユーロ(同2978億円)、ドイツが11億ユーロ(同1424億円)であるのに対して、フランスは27億ユーロ(約3496億円)に達しています。このことからもStation Fの注目度の高さが伺えるでしょう。

 

「世の中を変えることができるのは、政治家よりも起業家だ」と、地元紙のインタビューで語ったグザヴィエ・ニール氏。このStation Fの誕生により、保守的で歴史的に新興ビジネスが冷遇されていたフランス社会に風穴を開け、国際的なイメージを一新させたいという狙いがあったのです。

 

単なるインフラストラクチャーでは終わらない

Station Fにおける事例のひとつに格安航空券を10秒以内で検索できるサイトを構築したスタートアップ企業「ユリス・トラベル」があります。

 

現在はビジネスフライトや旅行代理店、ホテルの提供など、あらゆるB2Bに対応すべく取り組んでいる同社は、Station F内の「スペースグリーンプログラム」に参加。このプログラムでは、韓国のNaverとその子会社である日本のLineが、一般消費者向け製品を専門とするヨーロッパのスタートアップ企業を対象に80席ものワークステーションを提供しています。

 

このプログラムへの参加を機に「Station Fはインフラストラクチャーの役目を超え、多くのビジネスチャンスを我々に与えてくれます」と、ユリス・トラベルの創業者はさらなるステップアップに意欲を見せています。


クラウドファンディングも盛り上がる

国内でスタートアップ企業への支援が注目されている流れを受けてか、最近はフランスのクラウドファンディングにも勢いがあります。特に若い世代による革新的なプロジェクトには、自然と資金が集まりやすい傾向にあるといってもよいかもしれません。

 

フランス発のクラウドファンディングサイト「KissKiss BankBank」で、40日間で117%の支持を集めた「Rejig」も、若き起業家によるスタートアップ企業のひとつ。充電池付きリュックサックで太陽電池パネルが埋め込まれ、容量5000 mAhのリチウム電池のバッテリーとUSB接続プラグが付き、13インチのノート型PCが入るサイズになっています(販売価格は129ユーロ、約1万7000円)。

 

旅行中にスマホの充電切れで苦労した経験から思いついたという、非常にシンプルかつ共感されやすい発想から生まれたRejigのリュックサック。2人の創業者がこの鞄作りで目指したのは、小型化した電子部品を服やアクセサリーに組み込むというウェアラブルでした。

 

さらに、この2人はリュックサックをただデジタル製品にするだけではなく、クールなデザインにすることにも注力。この点は先述したフレンチテック発展の鍵でもあります。テクノロジーに外観の美しさ、つまりファッション性を融合させることが、フランスのものづくりにおいて欠かせないテーマなのかもしれません(そうだとすれば、どうやってアップルと競争していくのかにも注目ですね)。

 

クラウドファンディングからStation Fへ

Station Fの手厚い支援はパリを拠点にすることが条件になりますが、クラウドファンディングの場合は、世界中のどこにいても支援を受けることが可能です。実際に先のRejig創始者の1人はフランス地方都市(東部ナンシー)のビジネススクールから現在は上海のビジネススクールに留学中とのこと。

 

今後はクラウドファンディングでの支援を機に事業をスタートし、波に乗ったところでサポート体制の整ったインキュベーション施設(Station F)に移行するスタートアップ企業が恐らく増えてくるでしょう。フランスのスタートアップの動向が分かるフレンチテックは東京にもあります。テクノロジーやイノベーションに興味がある方は要注目です。

仏版「HEMS」が誕生! スタートアップが盛り上げるフランスの「環境プロダクト」

今年の夏は北半球の多くの国で猛暑を記録しました。この高温は気候変動(温暖化)の影響とされていますが、二酸化炭素の排出量の削減に向けて、フランスではスタートアップが様々なグリーンプロダクツを作っています。そこで本稿では、同国のクラウドファンディングで最近大きな注目を集めたテクノロジーをご紹介。フランス人の環境に対する意識や同国のエネルギー政策などの背景にも迫ります。

 

フランス人の環境意識

2017年にパリのマーケティングリサーチ会社オピニオンウェイが行った調査によると、72%の調査対象者が「大統領候補のエネルギー公約を投票時の考慮にする」と答えました。また「エネルギー問題を考慮しない」と回答したのは27%で、そのうち「まったく考慮しない」と答えたのは全体の6%だったとのことです。

 

エネルギー問題に関心を寄せる傾向は富裕層ほど高い傾向がありますが、フランスでは庶民層でも半数以上69%の回答者が、この問題について意識をしているということもわかっています。

 

また、関連して、毎年7月に開催されるツール・ド・フランスは、フランス人たちの環境に対する意識の高さ(と誇り)が表れていることが分かりました。フランス人は、レースだけでなく、自国の景観の美しさも大いに楽しんでいるのです(詳しくは「【ツール・ド・フランス】フランス人視聴者の半分はレースではなく、違うものも見ていた」)。

 

クラウドファンディングで目標金額の661%を集めたテクノロジー

そこで、いま注目を浴びている製品があります。その名も「エコジョコ」。これはフランス版「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」ともいうべきテクノロジーです。

 

エコジョコは、家庭の電気メーターに専用機器を取り付けるだけで、何にどれだけ電力を消費しているかを分析してくれます。これだけで25%の電力カットができると言われており、今後フランス人の生活に欠かせないアイテムとなるかもしれません。クラウドファンディングでは、10日足らずで600万円を超える支援を集めました(キャンペーンは目標金額の661%を獲得して終了)。

 

エコジョコの操作は非常に簡単。まず、家庭にあるブレーカーにセンサーを設置。この設置には特別な電気工事もいらず、購入者自身で簡単に取り付けられます。

 

そしてリビングなどに機器を置いておくと、消費電力量をワット数とユーロ(電気代)でリアルタイムに表示。このデータはスマホのアプリで細かく視覚化、各家庭における消費電力の改善点など、具体的なヒントもアドバイスしてくれます。このアドバイスをもとに、エネルギー消費の仕組みを理解し、節電への行動も可能になってくるのです。

フランスCNRS(国立科学センター)の研究によると、家庭の電力消費量は25%削減することが可能であるとのこと。 しかし、そのためにはエネルギー支出をリアルタイムで観察し、それに応じた節電行動を行わなくてはなりません。

 

25%削減すると、年間で約500ユーロ相当の電気代節約につながると言われています。この節電は10年や20年という長いスパンで考えると、壁の断熱やサーモスタット、または換気扇の取り付けなど、エネルギー対策工事から得られる結果と同じ。エコジョコなら簡単に始められて、そのうえ25%の節電も可能になります。

環境・エネルギー分野でイノベーションをリード?

エコジョコ誕生の大きな背景の1つは、フランスのエネルギー政策の変化。温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量を削減するために、同国は「Energy Transition(エネルギー供給体制の移行)」に取り組んでいます。かつて同国の電力は原子力に頼っていました。しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故で原発を取り巻く環境が変わり、フランスも脱原子力にゆっくりシフト。原子力発電への依存を下げながら、風力や太陽、水力、地熱といった再生可能エネルギーの割合を増やそうと官民一体で取り組んでいます(最近では環境相が突然辞任し、温暖化政策への影響が懸念されますが)。2016年の電力の供給量割合は、原子力が72%、風力が4%と太陽光が2%ですが、フランス政府は2030年までに再生可能エネルギーの割合を30%にまで増やすことを目標に掲げています。

 

それと同時に、エネルギー業界ではデジタル革命も起きています。民間の大企業やスタートアップは、電気をよりスマートに使うことで節電するためのテクノロジーを次々に開発。政府も再生可能エネルギーに関するプロジェクトを積極的に生み出すために、クラウドファンディングを奨励したり、開発者に助成金を与えたり、R&Dに年間10億ユーロを投資したりするなどしています。このような背景のなかで、本製品も誕生したと言えるでしょう。

エコジョコ以外にも、フランスのスタートアップは様々な環境プロダクトを作っています。今年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)では、スタートアップ向けのエリアのEureka Parkでアメリカに次ぎ最も多くの企業が出展して注目を集めましたが(アメリカは280社でフランスは274社)、そのなかの一社である「Lancey Energy Storage」はスマートな電気ヒーターを開発してイノベーションアワードを受賞しています。エコジョコをはじめ、フランス製の環境プロダクトが日本だけでなく、世界に広まるかもしれません。

「350円バッグ」でお馴染みデカトロンの「350円マイクロファイバータオル」が使えるので紹介

吸水性が高くて速乾性のあるマイクロファイバー製のバスタオルは、スポーツシーンで活躍します。スポーツ製品ブランドと350円リュックでお馴染みのデカトロン社もマイクロファイバータオルを製造しており、いずれも手ごろな価格で購入できます。それらの実用性はどうなのか? 実際に購入して調べてみました。

 

薄くて驚きの吸水性、見事なまでの速乾タオル

コスパのよさと消費者ニーズに沿った着眼点で、次々とヒットを飛ばすデカトロン。ということで、このマイクロファイバー製タオルも要注目です。サイズは4種類を展開。80cm×130cmのLサイズ、他にSサイズ(42cm×55cm)、Mサイズ(65cm×90cm)、XLサイズ(110cm×175cm)があります。素材は85%がポリエステル、残りはポリアミド。

 

マイクロファイバーと聞くと、掃除用のふきんなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。そのイメージはフランスでも同様で、洗剤いらずで掃除でき、使う水も少量に抑えられる「環境にやさしいエコロジーな布」としても知られています。

 

しかし、マイクロファイバーが活躍するのは掃除に限りません。一般的に1gで10km分の長さがあり、「髪の毛の1/10」程度の細さと言われる極細マイクロファイバー繊維は、吸水性も抜群。汗、プールや海で身体を拭く際にその威力を発揮してくれます。

通常のタオルと異なり、デカトロン製のタオルは速乾性に優れているので、1回の運動でも、何度も乾いたタオルの快適さが実感できます。またスポーツ後も、湿ったタオルの臭いがバッグのなかで充満する事態を遠ざけられるのです。

 

正しい使い方をすれば肌も痛めない

従来のタオルと比べて肌触りはどうでしょうか ? 正直そこは好みの問題になってきますが、綿などの質感に慣れていると、最初は「これで本当に身体を拭くの?」と戸惑うこともあるかもしれません。

 

しかし、慣れてくるとスウェードのような独特の質感も、心地よい肌触りに感じてくるから不思議。マイクロファイバー製のタオルは吸水性が優れているものの、乾燥したスポンジみたいに硬くはならず柔らかな質感のまま。洗濯時に柔軟剤を入れないよう、ただし書きがありますが、柔軟剤なしでもなめらかな肌触りを保ってくれます。

 

このタオルを使用する際の注意点は、決してゴシゴシとこすらず軽く叩くように水分を吸収させること。髪の毛もタオルで包み込むように、押さえながら水気を取るように推奨されています。強くこすると、肌や髪を痛めてしまう可能性もあるので注意が必要です。

かさばらないので旅行やキャンプにも最適

マイクロファイバーのタオルは他のメーカーからも出ていますが、デカトロン製品の大きなポイントは薄さと軽さです。全身をすっぽりと包める大きさのLサイズ(80cm×130cm)でも、薄くてコンパクトにたためるうえ、畳んだときの大きさは約17x12cmとなるのでバッグに入れてもかさばりません。

 

さらに、他社製品のLサイズでは300g前後の重さが多いのに対し、このLサイズは189g。従来のタオルなら10リットルのリュックサック(写真)の半分以上を陣取っていた大判タオルでも、本製品なら1/4程度。しかも軽いので旅行やキャンプにも最適です。

 

本製品は日本でも取り扱いがあり、価格はSサイズが350円(本国フランスでは2ユーロ)、Mサイズが650円(4ユーロ)、Lサイズが890円(6ユーロ)、XLサイズが1490円(10ユーロ)とマイクロファイバータオルにしてはお手ごろ。さすがと言ったところでしょう。2年の製品保証も付き、その強度もお墨付き。Lサイズは、写真のようなターコイズに黄色がアクセントになった組み合わせやマリンブルーにパステルグリーンで縁取りされたバージョンなど、ほかにもカラフルな色合いのものが揃っています。

「何を食べるかではない、誰と食べるかだ」フレンチの新巨匠・松嶋啓介シェフが説く大人の食育

本場に構えるフランス料理店のオーナーシェフが、その経験を生かして料理以外のテーマで本を出版。しかもそのテーマは、現代の日本人を取り巻くさまざまな問題に解決策を提示する、発想のヒントだという———

 

そんな新鮮なアプローチを試みたのは、以前、このアットリビングに登場し、「自由に開放的に、多彩に謳歌する」という「フランス流 ロゼワインの楽しみ方」を語ってくださった松嶋啓介シェフです。新著の内容もさることながら、自身も各界のキーパーソンたちを惹きつける、魅力的な存在。このサイトでおなじみの“ブックセラピスト”元木 忍さんが、松嶋シェフが伝えたいことをさまざまな角度から紐解きます。

 

本を“咀嚼”し“消化”する

元木 忍さん(以下、元木):この本は食の本質の本でもあり、経済学的な本でもありますね。とても奥の深い話でした。誰に読んでもらいたくて書籍を発売されたのですか?

 

松嶋啓介シェフ(以下、松嶋):誰に? 誰にでしょうね……うん、誰でもいいです(笑) たぶん誰が読んでも何か心にひっかかると思うから、そういう意味で“誰でもいい”です。老若男女、それぞれに“刺さる”章は用意してありますから。

 

元木:松嶋さんは元々、本はよくお読みになるんですか?

 

松嶋:読みますよ、読むぞって気分のときにガーッと読むんですけどね。面白くない本なんかは1カ月くらいかかっちゃったりもしますけど(笑) ただ、1冊を1時間くらいで読む人がいるじゃないですか、あれは絶対に無理ですね。

 

元木:気に入った本を、じっくりじっくり読むタイプなんですね?

 

松嶋:読んでるっていうか、“見ている”ことが多いと思うんです、そうやって早く読む人たちというのは。でもそれで、いったい何が頭に残ったの? って。

 

元木:私はこの本、もう二度も読みましたよ。

 

松嶋:ありがとうございます。でもこれ、三回読んでいただかないと(笑)

 

元木:そう、この中には、「本は三回読め」とも書いてありますね。

 

松嶋:はい。僕は、最初に読むときはじっくり時間をかけて読むんですけど、料理の本とかもね。それはいつも、「あそこの本にはこういうことが書いてあったよな」って、整理してるんですよ。段階的に把握して、自分の人生の中で何かが起きたときに、「ん? これっていつか読んだあの本の内容に近いな」とか、「あの本のあの部分を取り入れたら解決できるかな」って引き出しにしておくんです。

 

元木:私もよくやるんですけど、なんか覚えてますよね、こう開いてこのあたりに書いてあった、とか。地図のように文章を捉えているんですよね。

 

松嶋:そう。

 

元木:ここに「腑に落ちる」って書いてありますね。それって、読んだ時にはわからなかったけど、もう一回読んだときにやっと分かった、ということもあるということですね?

 

松嶋:よく咀嚼するから栄養素が吸収されるのであって、きちんと咀嚼しないと胃に残って消化不良になってしまう、ということです。

 

元木:でも、一度では消化しきれないこともありますよね?

 

松嶋:もちろんあります、いい本だと思っても。そういうときは、「ああ、まだ俺は経験が足りないから、時間が経ってから、いつかまた読もう」って。まあ、買ったりもらったりしても、読まないままの本もあるけれど、それって「いい本だけど、今の精神状態では楽しくないだろうな」って、見当をつけているんですよ。

「『食』から考える発想のヒント —やる気を引き出しチーム力を高める—」
1620円/実業之日本社

こちらが松嶋シェフの新著。フランスと日本で店を経営してきた中で得た、さまざまな“気づき”を基に、現代日本を取り巻く問題に対するソリューションにつながる“発想のヒント”をまとめている。

 

人の考えは移り変わるもの

元木:続いてこの本の中で気になったのが、「いまここ」っていうフレーズ。何度も出てきますね。どういう意図、意味で使っているんですか?

 

松嶋:これは、自分が例えば20歳のときに考えたことと、30歳になって考えたことというのは、同じような環境でも変わってくる、と。

 

元木:でも、“松嶋啓介”は変わらないじゃないですか、本質は。

 

松嶋:ええ。でも人って難しくてね。日本人なんかは特にその傾向が強いんですけど、よく「あなたはあの時こう言ったよね」って言うわけですよ。その人はそのイメージでずっとい続けるわけですよね。「あなたってこういう考えなんだね、こういう人なんだね」って決めつけてしまう。自分の中で納得させてバイアスかけて、人との付き合いで損している人が多いと思うんです。人の考えなんて変わるし、変わることが当たり前なのに。で、「いまここ」っていう表現というのは、今ここで自分はこう考えているけど、10年後は変わってしまうかもしれない、と。

 

元木:たしかに、ここには芸術の話も出てきますけど、ピカソも最初のころから画風がどんどん変わって行くじゃないですか、ゲルニカまで。そういう風に、人間も変わっていっていい、と思っているんですね? まあ、私自身も若い頃からはかなり変わってきましたし(笑)

 

松嶋:変わることが美しいのに、日本人は「あの人はああだ」って、固定観念をもちたがる。もったいないですよね。

 

元木:では「いまここ」というのは、今の俺は、ということ?

 

松嶋:今から振り返ったら、あのとき俺はあんなこと言ってたかもね、程度のことです(笑)

 

元木:なるほど、今の自分はこんなことを考えている、ってことですね。

 

 

“何を”食べるかより、“誰と”食べるか

元木:生き方だとか人との接し方だとか、料理に対する考え方だとか、ここにはいろいろ書かれていますけど、まずは松嶋さんの好きな食べ物から聞かせてください!

 

松嶋:食べ物ですか。何でも食べますよ、これだけが特に好き! というのはないですね。

 

元木:では好きな料理は? リピートして食べたいものとか。

 

松嶋:うーん、難しいですねえ……(しばし沈黙)……がめ煮、かな。

 

元木:がめ煮! 福岡の郷土料理ですね。なにか思い出があるんですか?

 

松嶋:昔、おばあちゃんが作ってくれて。懐かしいなあって思いながら、それを娘に作ってあげてます。僕が具合が悪くなったときに作ってもらいたいから、今から教え込んでいるんです(笑)

 

元木:今から刷り込んでいるんですね(笑) さて、いま食に関する話題になりましたから、それに関連して、食生活や食育について意見を聞かせてください。昨今、食の大事さが社会的にあらためて見直されていますが、松嶋さんはそれをどう捉えていますか? 食の職人さんですけれど!

 

松嶋:まあ、単純な話、食生活が乱れたらまず死にますよね。食べるもので人間はできていますから。ただその単純な話をみんな、ないがしろにしていますよね。自分の命を削って間違ったものを食べているよね、と。それと、食が家族を育むけれど、食事だといって実際は“エサ”を食べている人が多いよね、と。

 

元木:なるほど。私も、仕事ばっかりしていたことがあったんですよ、朝から晩まで。食事は5分くらいで済ませてしまうような生活。で少し体を壊しました。今そういう、食事を大切にしない人がいるじゃないですか。

 

松嶋:いや、そういう人の方が多いんじゃないですか? 病気になってから気づいても遅いですよ、家族が崩壊してからでは遅いですよ、と伝えたいですね。

 

元木:では食育に関しては、なにを教えていきたいですか?

 

松嶋:“食育”って、子どもに学ばせる前に大人が学ばないといけないですから。人間て、一生学び続けるから豊かになっていくものだと思いますしね。

 

元木:だからこのKEISUKE MATSUSHIMAでは、“大人の料理教室”みたいなものを開いているんですね。

 

松嶋:そうですね。

 

元木:男性にも教えていますよね。男性も、きちんと学ぼうとしていますか?

 

松嶋:男も、家でさみしい思いをしたくないですからね(笑) おいしいものを自分の手で作れるほうがいいよね、と。だから最初は包丁握れなくてもいいから、と言って来てもらうと、そのうち「愛は自分の手で作れるんですね!」って、みんなカッコいいこと言いますよ(笑)

 

元木:この本の中にも「食卓を大事にする」ことが書かれていますよね。

 

松嶋:そうです。何を食べるかより、誰と食べているかが大事なんですよ。

 

元木:「コミュニケーションこそ、最大の栄養素」、「人と楽しく食事をしたほうが、栄養はより身体へ吸収されやすくなる。それは科学的に証明されている真実」と。そのとおりだと思います。

 

 

料理におけるイノベーション

元木:続いて、食の奥深いお話をうかがいます。普段、松嶋さんの料理教室でも題材にされている「ラタトゥイユ」。本ではこのラタトゥイユを例にとった“料理のイノベーション”に関するくだりがとても面白かったです。最近のレストランで出されるラタトゥイユは、お肉とかいろいろな食材が入っていてバリエーションが豊富で驚かされますよね。でも、そもそもラタトゥイユって夏野菜を一緒くたに鍋に入れて煮込むだけのもの。それが松嶋さんのラタトゥイユは、シンプルな野菜に味付けは塩だけで、とても伝統的でありながら、野菜の切り方がちょっと変わっていて、すごくおいしいんですよね。

 

松嶋:つまり、伝統を守りながら、野菜の切り方でイノベーションを起こしているんです。

 

元木:そう、それが本当に面白いなって。

 

松嶋:未来に対して何かを伝えていくには、そのまま変えることなく伝え続けるのもいいんですけど、でもその時代の人々に親しんでもらわないと、そこで途切れてしまって次につながらないわけですよ。だから伝統をリノベーション(刷新)したりイノベーション(変革)したりすることで、時代に合ったコンテンポラリーなものにする必要があるんです。

 

元木:まったく変えずに伝えようとしたら?

 

松嶋:絶滅危惧種になる。そういうリスクがありますね。

 

元木:伝統をイノベートするのは、現代に伝統的なものを楽しむため?

 

松嶋:楽しむためでもありますけど、楽しむことを過去から学ぶためでもあると思います。

 

↑料理における「クリエーション・イノベーション・リノベーション」を説いた章。過去から現在、未来へと伝承する大事な方法論だと訴えている

 

食事とは愛情を育む場

元木:次は、“生き方”についてもこの本ではたくさん書かれていますよね。これからは“ふるいにかけられる時代”だって。私も最近、そう思うんです。日本の会社でいうと、今までは終身雇用が当たり前だったのが、最近ではそれが当たり前ではなくなってきてしまった。みんながふるいにかけられる状況というか、もっと自分の頭で考えなさいと言われているような。そういうことを松嶋さんが考えるようになったのって、いつなんですか?

 

松嶋:小学校のときからじゃないですかね。学校が嫌いで勉強が嫌いで、好きなことしかやりたくなかった。暗記するだけの勉強は嫌いで、型にはまった考え方をしていなかったから良かったのかもしれません。

 

元木:クラスには、ほかにそんな子はいなかったんじゃないですか? お兄さんも同じような?

 

松嶋:兄は、親の言うことをよく聞いて真面目にやる秀才でしたよ。でも僕は偏ってましたから(笑)

 

元木:サッカーの本田圭佑選手がイタリアに行ったとき、英語でコミュニケーションしていたらだめだと、アドバイスされたんですよね。それはなぜですか?

 

松嶋:海外で僕自身がそういう体験をしていたからです。言語が違うと、お互いに本心を話せないですから。相手の懐に入るために、相手の国の言語や習慣から身につけろ、と。

 

元木:そういった、松嶋さんなりの今の若いひとたちへのアドバイスはありませんか?

 

松嶋:そうですね……正解があるんだったら、誰もがそれをやると思うんですよ。でも、みんなと一緒で楽しいですか? って、問いたいですけどね。

 

元木:松嶋さんは、みんなと同じじゃ嫌なんですよね? でも片や、みんなと同じがいいっていう人たちもいますよね。

 

松嶋:いますね! でもそれじゃ、これから生きていけないですよ。もしどこかの国の奴隷のような国に日本がなるんだったら、そのままでいいと思いますけど……。

 

元木:じゃあ、本当はみんなと一緒がいいわけじゃなくて、松嶋さんみたいになりたいんだけどなれずにいる、っていう人は、何が足りないんでしょう?

 

松嶋:できない理由はいろいろあるかもしれないけど、その前に、できるかもしれないその可能性を探すことをしない。それではだめですね。

 

元木:自分ができることをまず探せ、と?

 

松嶋:はい。でもそういう人って、できない理由を探すのは早いんですよね……。“考えない”なんて、もったいないですよ。

 

元木:もったいない?

 

松嶋:なにも考えずに、いったい何のために生きているのか? そんな人生、何が楽しいのか? って思いますよ。

 

元木:社会貢献をすべきだ、という話もありましたよね。社会に属すだけじゃなく、社会の役に立とうということですか?

 

松嶋:そもそもの存在として、“会社の一員”なのか?“社会の一員”なのか? でも東京とか都会にいると、社会の一員だってことを忘れちゃうのかもしれませんね。

 

元木:東京にいると、どうしてそれがわからなくなってしまうんでしょう?

 

松嶋:近所付き合いがないからです。

 

元木:コミュニティーがない?

 

松嶋:SNSにはコミュニティーと呼ばれるものはありますけど、あれは違いますよね。同じ地域に住んでいる人と人とでコミュニティーを作らないと。地方にはありますよ、でも東京にはないんです。

 

元木:フランスには?

 

松嶋:ニースにはまだあるかもしれないけど、パリにはありません。それが最近、それではいけないということで、パリでは“隣人会”というのが始まったんですよ。同じ建物に住んでいる人たちが年に一回集まるという。

 

元木:じゃあ東京も、隣人会をやればいいのに。

 

松嶋:そうですね、だって隣に住んでいる人を知っているほうがハッピーでしょ。いざっていうときに助け合えるし、隣の人に街でばったり遭ったら挨拶する、それが自然ですよね。隣の人をごはんに呼んで一緒に食べたら、「音がうるさい!」なんてトラブルにはならないですよ。

 

元木:食には、そういう役割もありますね。

 

松嶋:食事は、人間関係や礼儀を学ぶところでもあるんです。礼儀作法という意味じゃなく、人間らしい礼儀というか。

 

元木:さきほどの話に少し戻りますけど、やっぱり食やお酒というのは、人をハッピーにしてくれますね。

 

松嶋:おいしいものを食べたら脳は快楽を得るし、やさしい味のご飯を食べたら腸が落ち着く、というのは実証されていますからね。

 

元木:そうでしたね。

 

松嶋:だから僕は、家族にお祝いごとがあったらごちそうを用意するし、落ち込んでいたら煮込みを作る。そうやって相手の状態に合わせて、食事を作ってあげたいですよね。それが愛だと思います。食事は愛情を育む場でもありますから。

 

元木:じゃあ最後に。愛ってなんですか?

 

松嶋:相手のことをわかってあげることですね。もらうものでも与えるものでも分かち合うものでもなくて、理解してあげること。許し、受け入れてあげることです。

 

元木:「愛」……深い! 受け入れる愛をみんながもてるようになるといいですね。いろいろなお話、ありがとうございました。

 

【プロフィール】


KEISUKE MATSUSHIMA オーナーシェフ/ 松嶋啓介さん(左)

1977年、福岡生まれ。フランス芸術文化勲章、農事功労章シュバリエ。高校卒業後、辻調理師専門学校で学びながら、酒井一之シェフ「ヴァンセーヌ」に勤務したのち、20歳で渡仏。フランス各地を巡り、郷土料理を会得した。2002年、25歳で南仏ニースに日本人初のオーナーレストラン「Kei’s passion」(現「KEISUKE MATSUSHIMA」)をオープン。外国人シェフ最年少の28歳でミシュランガイドの星を獲得した。2009年、東京・原宿にもレストランをオープン。
KEISUKE MATSUSHIMA http://keisukematsushima.tokyo/

 

ブックセラピスト/元木 忍さん(右)

ココロとカラダを整えることをコンセプトにした「brisa libreria」代表取締役。大学卒業後、学研ホールディングス、楽天ブックス、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とつねに出版に関わり、現在はブックセラピストとして活躍。「brisa libreria」は書店、エステサロン、ヘアサロンを複合した“癒し”の場所として注目されている。
brisa libreria http://brisa-plus.com/libreriaaoyama

 

撮影=泉山 美代子 取材・文=@Living編集部

 

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フレンチBBQはもう遅い! フランスでは「フレンチ鉄板焼」が台頭中

普通のBBQとは差別化し、日本でも「フレンチBBQ」という言葉ができるくらい、フランスではBBQは身近な存在。アメリカ人のように、フランス人も自宅は当然のことながら、公共のスペースでもBBQを行います。しかし、そんなフレンチBBQにも変化の兆しが――。本稿ではフランスBBQの最新事情や人気のBBQアイテム、フランス人のBBQ観をお伝えします 。

 

フレンチBBQの特徴

フランスのBBQは自宅や親・親戚宅の庭などで家族や友人たちと楽しむのが基本です。また、キャンプ場にBBQコーナーが設けられていたり、大規模な公園にBBQスペースがあったりします。

 

ただし公園などの場合は特に、衛生管理が行き届いていない状態で放置されていることも多く、地元の人たちはあまり利用しません。

 

一方で筆者が住むナント市では、毎年夏に”ナントへの旅”と題したアートの祭典が開催され、そのイベントの一環として市内の川辺に屋外BBQ場が約2か月間だけ登場します。

 

中央に複数のBBQ台が並び、周辺一体にテーブルとベンチが設置され、開始時間の夜7時を過ぎると、人々がそれぞれ焼きたい食材や飲み物を持って集まります。食材は各自で焼きますが、BBQ台で使う炭の管理は、係の人が2〜3人付いてお世話をしてくれるのです。さらにナント市による運営ですが、利用に際しての費用は一切かかりません。

 

フランス人にとってBBQというと、先述したように自宅などの庭で行うのが常でした。しかし家族の形も多様化し、集合住宅で庭がなかったり、複数の家族も集まれるほど自宅のスペースが広くなかったりする場合もあります。そのため大人数でやりたいときなどは、このような管理者がいる公共のバーベキュー場はとても便利で、アパルトマン在住時には友人たちと何度か利用しました。

 

筆者は、フランス人のBBQ好きを日頃から実感しています。というのも、春先から秋にかけ天気のよい日の夕方に住宅地を歩けば、必ずと言ってよいほどあちこちからBBQの匂いがするのです。

 

まるで「天気がよい日=BBQ日和」という公式があるかのように、週末になれば昼間から、平日でも夕方〜夜にかけて炭火をおこしています。この時期は、だれかを家に招待する際もBBQでもてなすことが多くなります。

「鉄板焼き」が人気上昇中

近年、炭焼きBBQと並んでフランスで支持を伸ばしつつあるのが、屋外用の鉄板焼きである「プランチャ」です。炭をおこす手間が省け煙も少なくて済むことや、使用後のお手入れが炭を使うBBQより、簡単であることが支持されている理由かもしれません。先日お呼ばれしたお宅でも、ホストがこのプランチャで「アンドゥイエット(フランスの代表的な腸詰料理)」などを焼いて振舞ってくれました。

 

上の写真のような卓上タイプは、80ユーロ(約1万400円)から。高いものになると1000ユーロ(約13万円)台と、様々なタイプの製品が揃っています。

 

プランチャの起源は、19世紀よりスペインにおけるキリスト教の宗教行事で大勢の人たちに料理をふるまうために使われ、その際、巡礼時にこの鉄板もフランスに持ち込まれたと伝えられています。プランチャ自体は古くから存在していたにも関わらず、なぜいま注目されているのでしょうか?

 

その理由の一つとして、プランチャが「食材を選ばず焼けること、適温調節をしながら食材の旨みを逃さず調理できること」が挙げられます。なかでも特に、従来の炭火焼BBQでは扱いにくいとされた魚などのシーフード類・脂身の少ない肉・野菜などの食材が美味しく焼けるため「ヘルシーBBQ」としての需要が高まっていることが注目のポイントでしょう。

 

この「食材の持つ旨みを逃さず」という点は、高熱の鉄板に水分を含んだ食材をのせることで水蒸気が生じるという「ライデンフロスト効果」の働きによるものです。これによって、鉄板の上で食材が水蒸気に包まれるために、旨みや水分が逃げにくくなるんですね。 ソーセージなど脂身の多い肉類が主流だった炭火焼BBQとは楽しみ方が違うものともいえるのかもしれません。

 

家電や調理器具販売店などで扱われているプランチャには電気式とガス式のものがあり、どちらも家庭で簡単に取り付けられる仕様になっています。

 

夏をとことん楽しむヨーロッパの流儀

その一方、従来型BBQのアイテムでもより簡単に楽しめているものが増えています。

 

下の動画で紹介しているような「BBQ用の切って洗える網」は最近よく出ているアイテムの一つ。これはBBQグリルのうえにのせて使う、目の細かい繊維状の網。グリルの大きさに合わせて網を切り、使用後に洗って再利用できるのが特徴です。

 

食材をこびりつかせず、炭の中に落とす心配もないと謳っている商品で確かに重宝しますが、実際に使用してみた感想は、案外もろいということ。使い方にもよるのでしょうが、筆者の場合は3~4回の使用で、中央に穴が開いてしまいました。こちらは10(約1300円)ユーロ前後で買うことができます。

 

フランス人にとってBBQは、家族や友人と、屋外で飲んで食べながらおしゃべりを楽しむこと。食べる内容そのものよりも「BBQをきっかけに皆で集まる」ことのほうが大事なのです。フランスに限らず、長く厳しい冬を過ごすヨーロッパの人たちにとって、屋外で食事ができること、そして、この短く限られた期間をとことん楽しむことが彼らの流儀。開放感のある屋外で太陽の光を浴び、外気に触れながら、気心知れた仲間たちと食事を楽しむことは、フランス人にとってこのうえない喜びでもあるのです。

 

消防士が公然とダンスパーティー!? パリ祭からフランス人の「消防士観」を読み説く

サッカーW杯を20年ぶりに優勝を果たしたフランス。街は最近までサッカー一色でしたが、実は別のイベントも大盛り上がりしていました。毎年7月14日は、フランス革命記念日(通称パリ祭)で祝日です。その革命記念日前夜の恒例行事となっているのが、消防士主催のダンスパーティー「バル・デ・ポンピエ」。国内の各都市村、各地域の消防署が一般開放され、朝方まで音楽とダンスで盛り上がります。日本の消防署ではあまり考えられないようなことですよね。「このイベントはどのようにして始まったのか ? フランス人にとって消防士とは一体どういう存在なのか? 本稿では、これらの疑問を読み解いていきます。

 

「バル・デ・ポンピエ」とフランスの消防士

日本で「パリ祭」として知られるフランス革命記念日の当日は、朝からパリのシャンゼリゼ通りで軍事パレードが行われ、夜はフランス各都市で花火が上がります。この革命記念日の前夜祭として知られるイベントが、フランス各都市の消防署主催で行われるダンスパーティー「バル・デ・ポンピエ(Bal des Pompiers)」。

 

基本的に「バル・デ・ポンピエ」は入場料を定めておらず、心づけを寄付するという形をとっていますが、なかには、ドリンク券が付いた有料チケットを販売しているところもあります。DJ、コンサート、消防士によるステージ上の出し物、一緒に記念撮影ができるサービスなど、内容は盛りだくさん。夜も更けたころから明け方まで宴は続きます。お祭り気分が味わえる簡単な飲食の屋台も出ますが、屋台でサービスをするのも消防士たちです。

現在、フランスには24万6800人の消防士がいます。しかし、全員の雇用形態は同じではありません。消防士は大きく3つのカテゴリに分けられます。まず、「フランス陸軍に属するパリの消防士」「海軍に属する南仏マルセイユの消防士」という軍人として従事する人たち(消防士全体の5%)。次にフランス各都市にいる職業消防士(同16%)。そして他の職業に就きながら、必要時に出動する「ボランティア消防士」(同79%)の人たち。実はこの「ボランティア消防士」の割合が全体の8割近くを占めているのです(カッコ内の数字はフランスの消防庁調べ)。

 

ただし、ボランティアと言っても無報酬ではなく、役職によって違うものの時給7.66〜11.52ユーロ(約1000円から1500円)までの報酬を得ています(2017年6月時点)。しかも、ボランティア消防士として活躍するためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。

 

必要な条件に含まれるのは、16歳から60歳までの健康な男女であること、3年間に30日間の研修を受けなければならないこと、また一月平均6回は出動準備が整えられること。仕事は火災処理に限らず、人命救助なども行います。日本だと救急隊員や自衛隊が行うようなこともフランスでは消防隊員が請け負っているのです。

 

なぜ消防署でダンスパーティーが開催されるように?

バル・デ・ポンピエはサクレクール寺院で有名なパリ18区のモンマルトル地区で1937年に始まりました。7月14日の革命記念日に行われる軍事パレードには、軍に所属する消防隊員の行進も含まれています。当時、隊員たちがこのパレードを終えて消防署へ帰ってくる際に、少数のグループが「追っかけ」として署まで付いてくることがありました。これを見た消防隊員が、一般の人にも消防署を開放する日を設けるよう上司にかけ合ったことが「バル・デ・ポンピエ」の始まりとされています(フランス国防省のサイトより)。

 

歴史家の見解には、もう一説あります。革命記念日には町のいたるところでダンスパーティーが開催されますが、消防士はこの日のダンスパーティーに参加することが禁止されていました。これは、いざというときにいつでも出動できるよう体制を整えておくため。こうした規則のなかで、消防士たちはそれぞれのパートナーを署まで招待するようになり、徐々に自分たちでパーティーを主催する流れになったとも伝えられています。

消防士は子どもたちの憧れ、市民に頼りにされる存在

事故や災害が起これば即座に駆けつけ救助にあたる消防士は、子どもたちにとって正義の味方であり、憧れの的なのです。このことは、消防士全体の8割がボランティアであるという数字を見てもお分かりいただけるでしょう。小さいころからの夢を別の職業に就きながらボランティアという形で叶えている人たちがいるということなのです。

 

また、将来消防士になることを希望している中学・高校生を対象に水曜の午後や土曜日など、授業のない日を利用して行われる「若い消防士養成コース」もあり、優秀な消防士を若いうちから育成したいという国の意図も読み取れます。

フランスの一般市民にとって、消防士はとても身近な存在です。毎年、年末になると消防士は市民の自宅を訪問しカレンダー(上の写真)を売りに来ますが、このカレンダーには値段がなく、日頃の活動に感謝の気持ちを込めた心づけを渡すことになっています。心づけは5~10ユーロ(約650〜1300円)など、キリのいい金額を渡すのが一般的。

 

このように日本とは違うイメージを持つフランスの消防士ですが、バル・デ・ポンピエは消防士をより身近に感じられるお祭りであり、一般市民にとっては感謝を込めた意味合いも含まれているのかもしれません。

【ツール・ド・フランス】フランス人視聴者の半分はレースではなく、違うものも見ていた

フランスで夏の風物詩となっている自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」。第105回目を迎える2018年は、7月7日から29日までの日程で行われました。フランス西部から出発して大西洋沿いを走り、アルプス、ピレネーの過酷な山岳ステージを経て、ゴールの「パリ・シャンゼリゼ」まで全3329kmを競い合うこの競技。フランス人にとっては夏の風物詩として欠かせないイベントですが、なぜこのレースは多くの人たちを引き付けるのでしょうか ? 今回は少し変わった視点から「ツール・ド・フランス」の魅力を紹介します。

 

世界35億人の視聴者が見守るツール・ド・フランス

今年はワールドカップの影響で、開催日が例年より一週間遅れで始まったツール・ド・フランス。全世界190か国に中継、または配信され、その視聴者総数は約35億人にものぼると言われています。

 

7月になると、街頭のカフェや空港の待合室など人の集まる場所では、連日ツール・ド・フランスの映像がごく自然に、そして当たり前のように流れています。フィガロ紙によると、 2017年大会の全21ステージの平均視聴率は38,4%、フランス国内のテレビ視聴者数はおよそ380万人。また、 ラジオ局フランス・ブルーは沿道で応援する観客数は 1200万人にものぼったと述べています。

 

また、ニュースを専門に扱う別のラジオ局「フランスアンフォ」が伝えた調査結果によると、国内で同競技を観戦するテレビ視聴者の2人に1人は年齢が60歳以上、また72%が50歳以上というデータもあります。その一方、高校生や大学生などの若い世代は、すでに夏の大型バカンスに入っているため、視聴者全体の7%に過ぎません。

そんな視聴者たちがレースを観戦する理由には微妙なニュアンスが含まれています。パリのスポーツ専門マーケティング会社「Sportlab(スポーラブ)」の調査では、ツール・ド・フランスをテレビ観戦する理由で一番多かったのは、「テレビに映るフランスの美しい景色を眺めること」でした。なかでも、過酷でドラマティックな「山岳ステージ」に最も惹かれているという結果が出ています。また、ある統計会社が2016年に公開したデータでは、50%の視聴者がツール・ド・フランスで「まるで絵葉書を眺めるかのように映し出される美しい景色と歴史的建造物を楽しんでいる」ことが判明しました。

 

選手たちが繰り広げる人間ドラマは、この競技鑑賞のメインであることには間違いありませんが、このレースを一層盛り上げるもう一つの主役は、なんといっても周囲のダイナミックな景色だったのです。後述しますが、空撮される地方色豊かな自然やのどかな田園風景、そして訪れたことがある場所などが画面に映し出されると、夏の暑さや疲れを忘れ、つい画面に見入ってしまうというフランス人が多いのでしょう。

 

独特な鑑賞スタイルとフランスでの自転車人気

ツール・ド・フランスの鑑賞スタイルには、日本の箱根駅伝と通ずるものがあります。どちらの競技も何時間も前から現地入りし、選手たちの登場を待ち、その瞬間を見届けます。ツール・ド・フランスの場合は、バカンスを兼ねてキャンピングカーで乗り付けたり、何日も前からテントを張ってキャンプを楽しんでいたりする人たちもいます。自転車とマラソン、いずれも多くの人にとって比較的身近なスポーツであり、鑑賞者が選手たちの心理に感情移入しやすい点も似ているかもしれません。

 

上述のように、ツール・ド・フランスの視聴者の大半が50代以上で若い世代の視聴者が少ないのですが、BMXやマウンテンバイクなどの自転車競技は、フランスの若者にも人気があります。Statistaによると、マウンテンバイクを含む自転車の販売台数は、この20年近く300万台前後を維持。2017年度の売り上げ総額は9億6000万ユーロ(約1248億円)にのぼります。街中の自転車専用道路も整備され、シェア自転車サービスも普及しており、フランスはサイクリストにとって優しい環境に生まれ変わりました。

自国の豊かな風土や美しさが「再認識」できるイベント

フランス人がツール・ド・フランスに魅力を感じている理由のひとつとして、景観の美しさを楽しむことを挙げましたが、フランスは景観へのこだわりやその管理体制に徹底した姿勢を貫いてます。フランスの国道をドライブしながら国境を越えると、フランス人の美観への意識が突出していることは明らか。整備された道路や緑の多さ、植え込みや花壇など、景観を維持するために本当に細かいところまで、よく手入れが行き届いているということに気付かされるのです。

 

毎回大会前には、ツール・ド・フランスの主催者もコースとなっている各市町村の道路整備に予算を割き、受け入れ態勢を整えています。1985年以来、フランス人は総合優勝から遠ざかったいますが、ひょっとしたらフランス人はレース結果ではないところに誇りを感じているのかもしれません。

350円リュックよりもコスパ高かもっ! 仏・デカトロンが作った「トレッキング用携帯食」の味をチェック!

デカトロン社製品のコスパのよさは、以前にも350円リュックでお伝えしましたが、今回ご紹介するのは「フリーズドライの携帯用インスタント食」。近年、フランスではフリーズドライ食品市場が成長を続けています。本製品はトレッキング用に開発されているので、携帯性や利便性が抜群なうえ、エネルギー補給もしっかりできるのが特徴。しかし、実際にはどんな味がするのでしょうか?

 

「メイド・イン・フランス」を謳うデカトロンのフリーズドライ食

夏のバカンスシーズン到来で、スポーツウェア・用品専門店のデカトロン店内も、レジャー用品を買い求める人々で賑わいを見せています。日本の甥や姪にプレゼントしようと、リュックサックを買いに足を運んだのですが、そのとき、ふと目に入ったのが同社のフリーズドライ食品でした。

 

デカトロンのエネルギー食品シリーズにはシリアルバーやスナックなど、ひと通りの携帯用食品が揃っています。フリーズドライ食品には、今回試食した「レンズ豆とハム(の煮込み)」のほか、「鶏肉とショートパスタのカレーソース」、「ショートパスタの挽き肉ソース」、「牛挽き肉入りじゃがいものピュレ」など、エネルギー補給に良さそうなメニューが揃っています。

 

レンズ豆とハムの煮込みを食べてみた

試食に選んだのは、インスタント食品として味の想像がつかなかった「レンズ豆とハム(の煮込み)」。5ユーロ(約650円)です。トレッキングなどの山への携帯食には炭水化物が欠かせないと以前に読んだことがあったのですが、レンズ豆(植物性タンパク質)とハム(動物性タンパク質)の組み合わせで、そのあたりをどうクリアしているのかが気になったという理由もあります。

 

上の写真は、お湯を入れて袋の中を捉えたものです。目盛り6(約280ml)まで湯を注ぎ、チャック式の袋口を閉じて5分間待ちます。お湯が入って食材が水分を含んだ途端、あの軽かった袋(130g)がずっしりと重くなりました(水分を含むと410g)。食べ応えが十分ありそうな重量です。

お湯を入れて5分経ち、袋を開けてみました。乾燥状態の時に白っぽいフレーク状のものがたくさん見えていたのですが、これはじゃがいものフレークでした。つまり、このメニューもじゃがいもを使っているので、炭水化物の補給はしっかりクリアできているわけです。

 

味付けはやや濃い目ですが、ピュレ状になったじゃがいもが程よい食感を残したレンズ豆やにんじんなど、ほかの野菜とよく馴染み、おいしくいただけました。山で歩いた後などに、これを食べたら最高だろうなと思わせる味です。

 

最近は、フランスでもカップ入りインスタント食品などを頻繁に見かけるようになりましたが、このレンズ豆とハムはフランス家庭料理の定番メニューでもあり、フリーズドライとして登場したのは新鮮でした。日ごろからこのメニューを食べ慣れているフランス人にとっては、このフリーズドライ食のレンズ豆にはまだ改善点があると感じている人もいるようですが、たいていの人はこの製品に合格点をつけています(デカトロン公式サイトレビューより)。

近年伸び続けているフランスのフリーズドライ市場

仏フィガロ紙によると、「サバイバリズム(生存主義)」が台頭している近年、防災用の食糧ストックを意識する動きが世界中で起きているとのこと。同様の動きが2012年あたりから始まっているフランスでは、フリーズドライ食品の需要が順調に伸びており、同市場は毎年200~300%にも成長していると同紙は伝えています。元々トレッキングなどのアウトドアスポーツの人気が高く、フリーズドライ食品も携帯食品として愛用されていますが、その一方で、近年販売されたフリーズドライ食のうち約40%は、保存用の非常食として購入されている一面もあるのです。

 

フランスにおいて、フリーズドライ食の平均販売価格は一食に付き、4,5~6,5ユーロ(約600~850円)と、インスタント食品として考えると決して安いとは言えません。しかし、同国のフリーズドライ食品販売サイト・リオフィリズの代表によれば、「フランスのフリーズドライ技術は、10〜25年間保存できる食品が製造可能」になり、数年分をまとめ買いする人もいるのだとか。確かに、今回のようなお湯が必要な製品とお湯が要らないシリアルバーなどをストックしておくと、いざというときに役立ってくれるかもしれません。

 

 

一見、イロモノ製品と思いきや、違った。フランスのクラウドから生まれた「石畳のスピーカー」

フランスのクラウドファンディングプラットホーム 「KissKissBankBank」において32日間で159%を超える支持を得た、コンクリート・ファミリー社の「ル・パヴェ・パリジャン(Le Pavé Parisien)」。「パヴェ」には石畳に使われる”敷石”の意味がありますが、その名の通り、まるでパリの石畳から抜け出してきたかのようなキューブ状が特徴的なコンクリートでできたスピーカーです。このスピーカーが支持を得られた理由とは? その謎を解明していきます。

 

10cm角で1.3kg。小型ながらもハイスペックなスピーカー

ル・パヴェ・パリジャン(以下パヴェ・パリジャン)は、10cm角の大きさで、重量1.3kgの片手で持てるサイズのコンパクトスピーカー。小さいけど、その実力はなかなかのものです。

 

10cm角という大きさにもかかわらず、バランスの取れたパワフルで正確なサウンドを実現。これにはエンクロージャー(スピーカー周りの枠)として使われている、新世代の素材と呼ばれる「超高機能繊維コンクリート(以下UHPC)」に秘密があるようです。

 

UHPCは密で抵抗に強い素材で、オーディオスピーカーの素材には最適と言われています。エンクロージャーの材質が重ければ重いほど、また変形を最小限に抑えられることでインパルス応答に直接反映されるようになり、元の信号に近い音を返すことが可能になるのです。

音響以外の機能面も優れています。パヴェ・パリジャンは、スマートフォンとのペアリングが簡単にできるBluetoothや、エネルギー管理システム(EMS)を備えたリチウムイオンバッテリー(LiPo)を搭載。このバッテリーで6時間から8時間の再生ができるのです。

 

また、超高性能デジタルアンプ(20 WワットでRMS出力のD級アンプ)を搭載した同スピーカーは、スマホなどの充電器に搭載されているマイクロUSBの充電ケーブルを使用しています。このおかげで、世界中あらゆるところで充電可能。出入力用のミニジャックでステレオ機器と接続もできます。

 

スピーカーが劣化した場合は、エンクロージャーの枠から外して内側の部品を交換できます。修理サービスだけではなく拡張性もあり、外のコンクリート枠は残したまま、中のスピーカーをバージョンアップさせるなどのカスタマイズも可能となっています。

4兄弟によるスタートアップ企業「コンクリート・ファミリー」

パヴェ・パリジャンという製品名は、パリによくある石畳の敷石から着想を得たもの。日常的に目にするものにもっと注目してほしいとの思いから、パリ発のスタートアップ企業「コンクリート・ファミリー」創立者の4兄弟によって名付けられました。

 

「コンクリート・ファミリー」の「コンクリート」には、2つの意味があります。まずひとつは「素材」としてのコンクリート。もうひとつは、フランス人音響技師ピエール・シェフェールが提案した電子音楽のジャンルである「ミュージック・コンクレート(具体的な音楽)」へのオマージュでもあるのです。

 

ミュージック・コンクレートは、「音楽は音と時間の編成である」ことを考察した運動。通常の音楽が抽象的な構想を基に具体的な作品へと昇華することに対し、ミュージック・コンクレートは、日常的に聞いている音を抽象的な表現へと導くことを試みたもの。ミュージック・コンクレートの理念は、コンクリート・ファミリー社が持つ価値感のひとつでもあると言います。

ベルギーのモンスにある王立音楽アカデミーで電子音響学を研究しながら、コンクリートを使ったスピーカーに関する設計開発のアイデアを温めていたという創立者4兄弟の長兄であるピエール=アクセル。実の弟であり「コンクリート製カヌー」の研究をしていたエンジニアのスタニスラスとともに、実家の庭で製品開発を始めたのが同社創立のきっかけです。

 

最初の注文仕事はスイスの演劇カンパニーに依頼された、野外劇場に12個のオーディオスピーカーを設置するというもの。このスピーカーが機能的にも美観的にも屋外の劇場にマッチし、プロや専門家たちの厳しい要求へ見事に応えた形となりました。

 

クラウドファンディングを成功させた実績

クラウドファンディングでは、パヴェ・パリジャンの支援者先着100名に、希望販売価格350ユーロの40%オフ、つまり210ユーロで同製品を提供していました。260ユーロ以上の支援者には、ストリート・アーティストのペイントによるカスタマイズを頼むことができます。

 

支援は10ユーロから可能で、すべての支援者名は「コンクリート・ファミリー」社内の壁に名前が刻まれます。2018年4月に始まったクラウドファンディングでは先述した実績への評価も得られ、複数の企業から大口の寄付も集まり、約1か月間で目標金額の3万ユーロに達成。同年11月からの一般販売開始を目指しています。

 

音響学の世界において、コンクリートという素材は、ダイナミックなサウンドを正確に復元するのに適した材料として認識されています。1980年代には、重量が30kg以上もあるコンクリート製のスピーカーがすでに「LEEDH」というフランスのメーカーから開発されていました。同メーカーのファンでもあったコンクリート・ファミリー社の4兄弟は、コンクリートの特質を活かしながらもミニマルで軽量、高性能なスピーカーを仕立て上げたのです。

 

看板にほぼ偽りなし! フランス人のハートを捉えた万能家電「オートクック」を使ってみた

フランスに住む筆者が10数年来使用してきた超旧式の炊飯器が壊れてしまい、代わりになるものが欲しいと思っていた矢先、店頭で見かけたのがボッシュの「オートクック」でした。日本でも話題になっている自動調理鍋のヨーロッパ版といったところでしょうか。本稿では実際にオートクックを使ってみた感想をレポートします。

ボッシュのオートクックには16の調理法があり、調理プログラムが計48種類搭載されています。消費電力数が900ワット、大きさは横幅が30.5cm、奥行き38.5cm、高さは30.5cmで容量は5Lとなっています。 キャンペーン期間中の購入で、価格は78ユーロ(約1万円)でした。

 

同製品を購入すると、もれなく100種類を超えるレシピが掲載された冊子が付いてきます。料理に合わせたプログラムの選び方と使い方が明記されているので、折に触れて読むことになりそう。タイマー調理機能では、12時間前からの予約が可能です。

ほかの自動調理鍋と同様、オートクックはプログラムに調理をお任せできます。ただし、日本製品のように、機械が材料を混ぜてくれるような便利機能は付いていません。そのため、煮込む前に下ごしらえなどの作業が必要なレシピは、機械の蓋を開けたまま自分で行う必要があります。

 

「3D加熱システム」で素材本来の味と食感を引き出す

この点において、オートクックという製品名に反して、全自動調理とは言い切れない同製品。しかし、搭載されている「3D加熱システム」を使うと、従来の調理法では得られなかった食感や味わいを楽しむことができます。 ちなみに3D加熱システムというのは一定の温度でゆっくりと均等に火を通していく方法。このプログラムによって食材の水分を逃さずに、素材を最大限に活かした調理をすることが可能になります。

 

例えば、同機種で七面鳥や鶏の胸肉を使ったカレー煮込みや炒り鶏(筑前煮)を作りましたが、肉がパサパサにならず、ふっくらとした仕上がりに。根菜を含む野菜も蒸し焼きされた状態でホクホクと食感がよく、素材本来の味がしっかり味わえました。

さらに、レシピ本に載っていた、コンデンスミルクとレモンで作る「スペイン風ケーキ」(上の写真)も試してみました。こちらも3D加熱システムによって立体的に火が通り、食感がフワフワで、まるでカステラのよう。フランスにはあまりないタイプの新感覚ケーキに焼き上がり、家族や友人たちにも好評でした。使用後の手入れも簡単で、内窯や内蓋は食洗機に入れて洗うこともできます。

日本人には驚きのフランス式「炊飯方法」

ところで、同製品を炊飯目的で購入するという考えはフランス人にはありません。フランス人にとって、米はパスタと同じく「鍋で炊く(というより茹でる)もの」だからです。塩を加えた大量の水で米を茹で、火が通ったらお湯を捨て、まるで蕎麦かうどんを茹でるかのように、茹で上がった米を水で洗いぬめりを取る人までいるくらいです。

 

かくいう筆者も渡仏後5~6年くらいまでは、鍋でご飯を炊いていた時期があり、そのころは炊飯器を持つ必要性を感じていませんでした。しかし炊飯器があると、ガス台や調理コンロをふさがずに済むメリットがあり、バカンス先にさえ炊飯器を持参するほど米食の多い我が家にとっては、なくてはならない存在になりました。

オートクックには「米とシリアル」兼用のプログラムがあるので、炊飯器としての機能もしっかり果たしてくれます。付属の米料理のプログラムには「リゾット」があり、パエリアなどの炊き込みご飯もこのプログラムで作るように表示されます。

 

よい買い物をしたと満足している点が多いオートクックですが、欠点を挙げるとすれば持ち運びには、少し大き過ぎる点です。いままでのように炊飯器が必要だからと、バカンス先へ持参するのはちょっと難しいかなと考えてしまいます。

 

一台で何役も兼ねた万能家電

フランス人は基本的に調理家電が好きな人たちで、一時期は「自家製ヨーグルト製造機」が流行ったこともありました。オートクックは一台でヨーグルトも料理できる万能家電。キッチンが何台もの家電に支配されることなく、なるべく台所を汚したくない性分の国民性にもマッチしているのです。

 

下ごしらえさえ済ませれば、ほったらかしで煮込み作業が完了できるので、煮込み系の多いフランス家庭料理にとってオートクックは非常に重宝します。煮込む間の時間を有効活用でき、火の安全に気を遣う必要もありません。また、煮込み時間も鍋に比べて通常のおよそ60%くらいまで短縮できるので、時短料理としても最適なアイテムです。

 

ケーキ作りや炊飯器、ヨーグルト製造機も兼ねた「電気式圧力鍋」ともいえるオートクック。次は話題の真空調理にも挑戦してみたいです。

 

フランス都市部で飼育者増加中! でもなぜ「ニワトリ」なのか!?

わずかなスペースで飼えて、世話も比較的簡単――。昨年起きたEU内の輸入鶏卵の汚染騒ぎや、その過酷な飼育環境が度々クローズアップされ、自宅の庭やアパルトマンの共有スペースでニワトリ(雌鳥)の飼育を希望する人が増えています。事実、筆者も自宅で2羽ニワトリを飼っています。では、自宅でニワトリを飼育する利点は、どのようなものなのでしょうか? エコ面、政策面、安全面から紹介していきます。

 

「平飼い飼育」で鶏のストレス軽減

フランスに住む筆者は、近年この国で「平飼い飼育(平たい地面などで放し飼いにすること)」されているニワトリの卵や、オーガニック鶏卵を求める人が増加していることを庶民レベルで感じています。EUでは2012年以来、「バタリーケージ(動けない狭いケージ内で飼育されたニワトリ)」が禁止されていますが、規模が小さいところや繁殖農家などには適用されず、鶏卵の年間生産量がEUトップのフランスでは、「バタリーケージ卵」が生産数の半数以上を占めているのが現状です。

 

そのフランスでも、ついに2022年までに店頭に並ぶすべての鶏卵を「ケージフリー」の平飼いや放し飼いの卵にするとマクロン現大統領が発表したことを英タイムズ紙が伝えています。諸外国などの風潮や消費者ニーズを見れば、この流れはある意味当然のことなのかもしれません。

フランス国立卵プロモーション委員会によると、フランス国民の年間消費量は一人当たり平均220個。一人当たりの年間消費量が世界第3位の日本(329個)には及びませんが、世界全体の平均卵消費量は145個なので、多い部類であると言えます。具体的に見ると、84%の国民が少なくとも週に1回は食べると回答。「ほぼ毎日食べる」と回答した44%のうち6%は毎日食べる一方、38%が週に2~4回食べると回答しています。

平飼いや放し飼いのニワトリは、太陽の光を浴びながら地面をつつき、砂浴びをし、止まり木に上り休みます。産卵も、薄暗く静かな隠れた場所で行うのが本来の行動。鶏卵農家でこの環境を作るのは難しいことかもしれませんが、ニワトリ自身のストレスが軽減されることは筆者の経験から確かだと言えます。私は自宅で2羽飼っていますが、ニワトリたちが夕暮れどきにのんびり過ごす、のどかで牧歌的な雰囲気は、何とも穏やかな気持ちにしてくれます。

また、人間の食べ残しを餌にすることで、食品廃棄を減量できるというエコロジカルな面も注目すべき点。現地メディアの報道によれば、1羽につき、年間150~160kgの廃棄減量が期待できるそうです。こうした観点から購入に助成金を出す自治体まで登場し、この発表を受けて、ニワトリ飼育はますます注目を浴びる形となりました。

ほのぼのとした光景と教育的な利点

より安全な卵を求める消費者の動きは、2017年のオランダから輸入された「鶏卵汚染スキャンダル」が追い風にもなっています。食肉を始めとした相次ぐ食品スキャンダルに国民はウンザリ。また、昨今の健康ブームと相まり、「ベジタリアンメニュー」への関心も高まっていることから、良質なたんぱく源として高品質な卵を求める人も増えているのです。自宅におけるニワトリの飼育は必然的な流れであったのかもしれません。

 

また、ニワトリの飼育や卵の収穫などは子どもにも参加しやすく、食育や情操教育にもつながるでしょう。大人にとっても、ニワトリと日々接することは、都市に住みながら田園にいるかのような雰囲気が楽しめ、ほのぼのとリラックスした時間を過ごせるという利点もあると筆者は思います。

【フランス人の必須品】ドイツ版ドンキ「リドル」の「2600円電気グリル」レビュー

フランスで人気のドイツのスーパーマーケット「リドル」。そのオリジナルブランド「シルバークレスト」の電気グリル器は人気家電で、毎年マイナーチェンジをしながら、長期にわたって売れ続けています。先日発売されたモデルは、鉄板を交換するだけでクロックムッシュー(ハムやチーズを挟んだフランス定番のホットサンド)やワッフルが焼けるというもの。シンプルな操作で1台3役をこなす万能調理家電ですが、価格は19,99ユーロ(約2600円)と格安。今回は、実際に使用してみた感想をレポートします。

 

カフェメニューが自宅で簡単に作れる!

フランスのカフェの定番メニューでもあるクロックムッシューは、基本的にパンとチーズ、ハムがあれば簡単に作れるので、家庭でもよく食べられているホットサンドです(写真上)。フランス人が好きなこれらの食材を鉄板のうえに置き、挟むだけで調理が済むので、このグリル器は一般的なフランス人家庭に必ず一台はある、と言っても過言ではないほど人気なのです。

 

クロックムッシューはテイクアウトや学校給食にも出る一方、夜を軽めに済ませるときなどにサラダと一緒に食べる家庭も多いのです。フランス人は朝食で塩気のあるものをあまり摂りませんが、操作が手軽なので、晩ごはんだけでなく、朝食の際にも活躍しそうです。

その一方、ワッフルは、クレープのようにジャムやチョコスプレッドといった好みのトッピングをのせて楽しめるので、来客時やホームパーティーのおもてなしにもピッタリです。でき立てのワッフルをみんなで囲み、好きなトッピングをのせながら、ワイワイと盛り上がる。日本の手巻き寿司感覚のように、賑やかな食卓になることは間違いありません。

グリル機能も注目すべき点です。肉や魚、野菜を焼けば、こんがりと焼き目が付くうえ、余分な脂も落としてくれるので、ヘルシーで美味しい仕上がりに。グリル用鉄板のサイズは、フランスで人気の「イタリアンホットサンド」や、生ハム、モッツァレラチーズ、そしてトマトを挟んだ「パニーニ」作りにも適しており、工夫次第で幅広い用途に使えそうです。

この鉄板は付け外しも簡単。サイズもコンパクトなので、お手入れもラクにできます。台所が狭くても置き場所を選ばず、場所を取らないで済むところも、日常使いの家電としてはポイントが高いのではないでしょうか。

 

シンプルな操作性、コンパクトなデザイン、そしてリーズナブルな価格

このように、鉄板を取り替えるだけで1台3役をこなせるパフォーマンス性の高さや、食材を入れて挟むだけというシンプルな操作性、手入れしやすいコンパクトなサイズが、この電気グリル器の魅力です。

クロックムッシューやワッフルが焼ける調理機器には、15ユーロから100ユーロを超えるものまで幅広い種類があります。そのなかでもシルバークレストの製品は機能と価格のバランスと、手入れや置き場所を選ばないコンパクトさが抜群。多くの消費者から支持されているのも納得です。

破格値で3年保証付きも! DIY大国のフランスでドイツ発の「リドル」が重宝される理由

フランスが言わずと知れたDIY(フランス語でブリコラージュ)大国であることをご存知でしょうか? 古い家やアパルトマンが多く、休日には自ら工具を操り、家の修繕に勤しむ男性の姿は珍しくありません。そんなこの国で人気のドイツ系ディスカウントスーパー「リドル」には「パークサイド」というオリジナルの工具ブランドがあり、ホームセンターで販売されている価格の3分の1程度で道具を揃えられます。DIY初心者はもちろん、上級者からも重宝されているリドルの工具。その秘密は安さだけではないようです。一体どのような理由が隠されているのでしょうか?

 

破格な値段で3年保証付き! 「パークサイド」と「パワーフィクス」

リドルの「パークサイド」ではDIY用の電動工具がひと通り揃います。電動ドリルやサンダー、グラインダー、タッカーなどを含むハンディタイプの道具から、大型のエアコンプレッサーや備品、卓上式の電動丸ノコまで、家の内外装に必要なあらゆる道具を網羅しているのが特徴。

日本と同様に、フランスでもプロに愛用される電動工具メーカーといえば、ドイツの「ボッシュ」と日本が誇る「マキタ」が挙げられますが、いずれも価格はパークサイド製品の2倍以上。プロ並みの使用頻度でもなく、プロ並みの使用頻度やパワーを必要としないなら、パークサイドの電動工具で十分と考える人も多いようです。

 

 

このように言うと、パークサイドは「DIY初心者の低価格ブランドで、性能は二の次なのだろう」という印象を持たれるかもしれません。しかし、実際にはそんなことはなく、DIY上級者からも注目されているブランドなのです。その理由は、やはりその価格の安さ。上級者の場合は、すでに機材をある程度持ってることが多く、パークサイド製品はその「予備」として購入するケースがあるようです。

さらに、DIY上級者がリドルへ行くほかの理由として、電動工具などに取り付ける消耗備品が破格で売られていることが挙げられます。

 

手動ドライバーやネジ各種、消耗備品などは「パワーフィクス」という別のオリジナルブランドで展開されていて、その種類も実に豊富。例えば、ベルトサンダー用のペーパーが6枚セットで1,99ユーロ(265円)、4,0×30mmのビスが600本入って2,99ユーロ(398円)など、他店の約3分の1の価格となっており、かなりお得です。

 

また、電動工具のパークサイド製品には安心の3年保証が付いています。安いだけでなく、品質もしっかり保証されているというわけですね。

あの有名なドイツの電動工具メーカーのセカンドブランド?

あれもこれも必要になってくる DIY道具を揃えるにあたり、ほかのホームセンターで購入したら倍の価格はするであろう工具や備品が、格安で買えることはパークサイドの最大の強みです。「安かろう、悪かろう」では困りますが、上述のように、パークサイドの製品は3年間の保証付き。電動工具も消耗品の一部として捉え、使い倒すヘビーユーザーにとっては惜しくない価格に設定されているのではないでしょうか。

 

また、パークサイドは、ドイツ発のメーカーであることも有利に働いているかもしれません。ドイツといえば、高品質なDIY工具として世界的に評価が高い「ボッシュ」を生み出した国。なので、パークサイドも大丈夫だろうという論理で信頼されやすいところも大きいようです。双方の公式発表はないものの、実は「パークサイドはボッシュのセカンドブランド」という説も一部の人々の間でささやかれているんです。

確かに色の配色や形など、ボッシュにソックリで見間違えるほど。これだけ酷似していてボッシュから訴えられないのは、不思議といえば不思議な話ですよね。パークサイドがDIYメーカーとして確立できている裏には、名高きボッシュの「ブランド力」が少なからずや影響を与えていることも確かでしょう。

【フランス流働き方改革】「水曜休み」「週4日制」がもたらす効能とは?

日本で、今年の「春分の日」は水曜日だったことから、「週5日連続労働はキツイ」、「週休3日にしてほしい」と感じる人が多かったという記事を読み、フランスにおける水曜日について改めて考えました。

 

フランスの幼稚園及び義務教育機関は水曜休み、または水曜午後休みにしており、それに伴って、どちらかの親(大抵は母親)が正社員でも週4日制で水曜休みにしている場合があります。水曜を休みにすることで得られるメリットとは何か? その真相について迫ります。

 

フランスの水曜日は他の平日とちょっと違う

フランスでは、水曜日に公立の幼稚園や小・中学校が半日授業、私立においては1日休校になるため、週4日または4日半制になっています。元々はキリスト教学校修士会(別名ラ・サール会)が木曜を休みに定め、代わりに土曜に授業を行っていたところを(現在は土曜日に授業を行う学校は少数)、1972年に当時の教育大臣が水曜にずらして公立の学校にも適用させたという歴史があります。

 

以降半世紀近くにわたり、学校の水曜休み、または水曜半日休みが定着しました。特に子どもが小さいうちは子どもの休みに合わせ、水曜出勤をしない週4日勤務の社員が一定数いるフランス。全社員が出勤しない水曜には、重要な会議が組み込まれることもなく、社内には若干の余裕が生まれて、個々の仕事に集中できます。

 

このちょっとした余裕がとても重要。ゴールに向けひたすら前進するだけではなく、一歩下がって自分の仕事内容や作業ペースを見直す。そして呼吸を整え、週の後半に向けて新たな気持ちで取り組む。著者は20年間フランスで暮らしてきましたが、このような制度を非常に良いと考えるフランス人をたくさん見てきました。

そして、フルタイム社員にとっての効果は、水曜は早めに帰宅しやすい空気感が生まれることではないでしょうか。水曜の午後に習い事を入れている子どもは多く、普段よりも早く仕事を終えた父親が送迎する姿も珍しくありません。毎週は無理でも、ときに父親が家庭の用事に参加することで、夫婦仲も円満になります。また、普段過ごす子どもの様子を父親が把握できる、家族にとっても大切な時間となります。

「水曜は半日休み」を反映してか、フランスでは映画の公開初日、夏と冬のバーゲンセールの初日なども水曜に設定されています。娯楽やショッピングを楽しむ時間を週末にまとめず、分散させることで消費者が足を運べる選択肢を増やせる、という業者側の狙いがひとつ。また、消費者側にとっても仕事から離れ、気兼ねなく買い物や映画館へ足を運ぶきっかけとなる。そのような社会的風潮がこの国にはすでに存在し、人々の意識にも浸透していると筆者は感じています。

水曜日に休んで生産力をアップ!

週の半ばにワンブレイク挟んだり、社内がフル回転になっていないことで気持ちにメリハリがつき、自分の仕事を見直す、作業ペースを整える、などの余裕が持てる点は大きいと言えるでしょう。そして切り替えができたところで後半に向け、気合を入れ直し、仕事に邁進できるのです。OECD(経済協力開発機構)の最新調査によれば、2015年のフランスの生産性はG7(主要7か国)おいて第2位の高さ(日本は最下位)。水曜日休みと生産性は相関関係があるのかもしれません。

↑G7の生産性ランキング(出典:OECD)

 

また、家族と過ごしたり、娯楽を楽しんだりする時間を週末に集中させず、わずかでも平日に設けることで、仕事からプライベートへの切り替えのタイミングや、バランスが取りやすくなるという考え方もあります。最初はリズムが狂うと感じるかもしれませんが、一度このサイクルに慣れてしまえば、週末は家族サービスで自分の時間が持てないうえにゆっくり休めず、週が明けても疲れが溜まったままで仕事に集中できないなどの悩みからも解放されるかもしれません。筆者は実体験からデメリットはほぼないと感じています。

フランスの若者がこぞって飲む大人気のお酒! 「キューバニスト・モヒート」とは?

いまも昔もフランスの若者が飲み会の席で飲むのは、実は意外にもワインよりビール。なかでもビアカクテルは根強い人気を誇ります。そのフランスのビアカクテル市場で長らく王者として君臨していたのが、テキーラ入りビアカクテル「デスペラード」。 しかし最近になって、この絶対的な王者との世代交代が始まったと噂されているのが、2017年春に登場した「キューバニスト・モヒート」です。キューバニスト・モヒートとは何なのか、なぜ人気となったのか−−。その秘密に迫ります。

 

インパクトが大きいパッケージ

↑「キューバニスト・モヒート」33cl×3本入り 4.59ユーロ

 

パーティーの席でコーラやペリエは盛り上がりません。そして、フランス人にとって普通のビールを飲むより、ずっとおしゃれで特別感を持つのがビアカクテルなのです。

 

そのビアカクテル市場で長らく独走状態だったテキーラ入りの「デスペラード」(蘭ハイネケン社)とウォッカの入った「スコール」(仏クローネンブルグ社)が、つい最近までよく飲まれているビアカクテルの2大ブランドでした。ここにベルギー資本のビール醸造会社「AB InBev社」が手掛ける「キューバニスト」ブランドが参戦したのが約5年前。キューバニスト・モヒートの発売をきっかけに、ブランド全体が王者デスペラードに迫る勢いで着実にシェアを伸ばしてきたのです。キューバニスト・モヒートを手掛けるAB InBev社によると、2016年にはフランスでの売り上げが47%上昇。

 

キューバニスト・モヒートの特徴の1つはアルコール度数。せっかくのパーティーに強いお酒で酔いつぶれてしまってはもったいない。そんなときにピッタリなのがこの「キューバニスト・モヒート」です。アルコール度数は5.9%。通常のモヒートが20%前後なので、その3分の1以下に抑えられています。だから、このお酒は手軽に、ほどよく酔いたいときにちょうどよいアルコール飲料なのですね。また、他のビアカクテル同様、瓶の中に直接ライムを入れて飲むと、よりカクテル気分も味わえます。

そして、なんと言っても「キューバニスト・モヒート」のインパクトあるパッケージが目を引きます。フランスでは近年ラテンアメリカ文化のブームが続いており、このラベルは南米伝統の祭り「死者の日」を彷彿とさせるもの。「mnBevフランス」のディレクターによれば、パッケージや瓶に描かれている「骸骨マスク」は、キューバの伝統的な祭りにインスパイアされたものだそうです。キューバニストのコンセプトに「祭り」という概念を取り入れたく、南米の祭りを象徴する「骸骨」をモチーフにしたとのこと。

AB InBev社は、フランスのビール好きに人気な「レフ(Leffe)」や、日本でも定評ある「ヒューガルデン(Hoegaarden)」を携える企業。ビールの香りを楽しみ、味わうのが好きなフランス人の嗜好や購買動向を知り尽くしている会社でもあります。

モヒート人気に着目し、パーティー好きな若者をターゲットにしたことが功を奏する

キューバニスト・モヒートが、ビアカクテル市場でシェアを伸ばすことができたのはなぜでしょうか? まず、米調査会社ニールセン社によると、同ブランドが設立された2013年時点において「モヒート」はフランス人がバーで注文するカクテルの1位でした。もともとモヒートの人気は高かったのですね。

でも、それだけでは不十分なので、キューバニスト・モヒートはフランスやイギリスの若い人々をターゲットにしたプロモーションを展開。これが功を奏したのです。キューバニストのプロモーションの場は、主にパーティー会場です。学生主催の大規模な「ソワレ」のオフィシャルスポンサーや、毎回テーマや場所など趣向を凝らし、DJを呼んで盛り上げる「ハウス・オブ・マスク」パーティーの主催なども手掛けています。パリでは若者に人気の米テレビドラマ「ストレンジャー・シングス」を模した内装による、シークレット・パーティーへインフルエンサーを招待するなど、若い世代へのブランド浸透に力を入れてきたことが、今日の結果に繋がったと見てよいでしょう。キューバニスト・モヒートは満を持しての登場だったのです。

【10年保証で350円!】丈夫で超長持ちする「デカトロン」の小型リュックのスゴさ

2016年に日本に進出した、フランス生まれのスポーツブランド「デカトロン」。フランス全土に点在する各種スポーツ用品やウェアを揃える同社の大型ショップは、1976年の創立以来、そのリーズナブルな価格と品質の良さで、何世代にもわたりフランス人の生活に定着しているブランドです。今回はそのなかでも特におすすめしたい、日本でも購入可能な自社ブランド製小型リュック「Quechua(ケシュア)ハイキングバックパック Arpenaz 10L」の恐るべきコスパの高さについて、先代モデルより使用している経験を基に紹介します。

 

「ケシュア ハイキングバックパック Arpenaz 10L」のスゴさ


「ケシュア」シリーズはデカトロン自社製オリジナルウェアやバッグなど、小物を揃える同社の看板的存在です。スポーツ用に開発された素材や仕様で、街なかでも使用できるスマートさも併せ持ち、通勤や通学、週末の外出などの日常使いをしているケースが多いのも特徴。

 

筆者は「ケシュア ハイキングバックパックArpenaz 10L」を先代モデルも合わせ10年以上使い続けてきました。小ぶりサイズなので最初は子どもの幼稚園バッグとして購入したのですが、思った以上に容量が大きかったので自分用にもう1つ購入。一眼レフカメラや本などが入り、少々重くなってもリュックに負担がかかることもなく、安心して使うことができます。

先代モデル(写真右)と現モデル(写真左)を比べてみると、以前は奥行きのあるコロッとしたどこか愛らしい形態だったことに対し、現モデルは縦に伸びてスリムになっています。ただし容量は変わっておらず、より大人寄りのデザインになったというところでしょうか。実際、男性が使用している姿もよく見かけます。

容量は、スポーツタオル、スポーツ用のTシャツやショートパンツ、もしくはパーカーなど薄手の上着、水のボトル、財布と携帯電話がすべてリュックに収まる大きさです。写真は外ポケットに水のボトル(500ml)を入れていますが、外ポケットにもマチが付いていてかなり広くなっています。会社帰りなどのジム通いにも適したサイズと言えるでしょう。

税込350円(日本価格。ヨーロッパは一律2,99ユーロ)という驚きの値段でありながら、その丈夫さもユーザーからのお墨付きです。「持続性ある開発」をモットーにしているデカトロンの商品は安心の10年保証付き。万が一、リュックが壊れたり破れたりした場合には、交換や修繕をしてくれます。「デカトロン・フランス」サイト上の同製品レビューで、4つ星5つ星をつけた購入者数が918人に対し、1つまたは2つ星をつけた購入者が17人(2018年2月末現在)という結果から見ても、ユーザーがこのリュックにどれだけ満足しているかがお分かりいただけるでしょう。

 

さらに他モデルよりもカラーバリエーションが豊富(全7色)で、購入者に選ぶ楽しみを与えてくれるのが同製品の隠れたポイントでもあります。安いので用途別に数点揃えたり、家族で色違いを持ったりしてもよいかもしれません。「安かろう、悪かろう」という固定概念を根底から覆してくれる、優れもののリュックです。

 

スポーツ仕様の耐久性と日常使いに適したサイズ、スマートで街中でも違和感なし!

スポーツ仕様の耐久性を持ちながら、日常使いにも適したサイズとデザインを併せ持つのが、このリュックの強みでもあります。先代モデルよりも向上した点は、形状の変化による体へのフィット感とスタイリッシュ性がアップしたこと。底のマチが狭くなってスリムになった分縦に長くなり、なかのものが散乱しにくくなって取り出しやすくなっている点も挙げられます。

 

「フレデリカ、生まれてきてくれてありがとう!」人気キャラクターの出身地・フランス流の生活で人生を豊かに!

世間で注目を集めている商品が一目でわかるAmazon「人気度ランキング」。さまざまなカテゴリの注目商品がわかる同ランキングだが、商品数の多さゆえに動向を追いかけられていない人も少なくないだろう。そこで本稿では、そんなAmazon「人気度ランキング」の中から注目の1カテゴリを厳選。今回は「本」のランキング(集計日:2月15日、昼)を紹介していこう。

 

●1位『でんぱ組.incスクールカレンダー』(四方あゆみ・著/小学館・刊/2300円)

●2位『文豪たちの友情(立東舎)』(石井千湖・著/鈴木次郎、ミキワカコ・イラスト/リットーミュージック・刊/1620円)

●3位『LPGA公式 女子プロゴルフ選手名鑑2018:ぴあムック』(ぴあ・刊/1500円)

●4位『ASIAN POPS MAGAZINE 132号』(メディアパル・刊/504円)

●5位『美しいフィレンツェとトスカーナの小さな街へ(旅のヒントBOOK)』(奥村千穂・著/イカロス出版・刊/1728円)

●6位『ザクロとたい』(もりもとりえ・著/ぴあ・刊/1080円)

 

2月14日に盛り上がるのは恋する乙女だけではなかった!?

●7位『フランス流しまつで温かい暮らし フランス人は3皿でもてなす(講談社の実用BOOK)』(ペレ信子・著/講談社・刊/1512円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

人生を気楽に送るためのヒントが詰められた1冊がランクイン。フランス人と結婚した著者は、夫の家族やフランスの友達から良いところを取り入れようと模索を続けているという。同書には、著者がフランス人の知人から吸収した「家族の絆が深まるコツ」や「お金をかけずに生活が豊かになる工夫」などためになる情報が満載。

 

フランスといえば、フランス出身の設定を持つキャラクターがネット上で話題に。大人気ゲーム「アイドルマスター」シリーズの登場人物・宮本フレデリカが2月14日に誕生日を迎えたようで、Twitter上では「#宮本フレデリカ生誕祭2018」というハッシュタグがつけられたツイートが続出している。

 

ファンたちは「フレちゃんお誕生日おめでとう!」「これからも応援していきます! Happy Birthday!」「フレデリカ、生まれてきてくれてありがとう!」というお祝いのメッセージとともにフレデリカのグッズや自作のイラストをアップ。なかにはバースデーケーキを用意した猛者もいて、大盛り上がりとなった。

 

●8位『心を操る寄生生物:感情から文化・社会まで』(キャスリン・マコーリフ・著/西田美緒子・翻訳/インターシフト・刊/2484円)

●9位『大国政治の悲劇 完全版』(ジョン・J・ミアシャイマー・著/奥山真司・翻訳/五月書房新社・刊/5400円)

 

サッカー選手のメモに刺激を受けたファン続出!

●10位『食(おいしい)は愛(うれしい)――添加物なし、厳選素材、徹底的に品質にこだわるスーパーがある』(岡田晴彦・著/ダイヤモンド社・刊/1620円)

出典画像:Amazonより出典画像:Amazonより

 

添加物など身体に悪影響な成分を排して、子どもに安心して食べさせられる食品を追求した同書が人気急上昇。食の観点から健康を見直すことができるので、購入者からは「日々の食事で食品添加物を取り込んでいる人類にとって、考えさせられる1冊でした」「販売されているハム・ソーセージ・おにぎりの添加物の多さに驚き!」といった声が上がっている。

 

またガイナーレ鳥取に所属するサッカー選手・松本翔のツイートに刺激を受け、食生活の改善を考え始めたファンもいるよう。松本は「若手、独身選手へ向けて。栄養士が届かない部分など、主観的考えですがぜひ読んでもらえたら」という呟きに、ビッシリとメモが書かれたノートの写真を添付。

 

ノートには「外食は特に味付けが濃かったり塩分も多いので、知らず知らずに水や甘いものを欲したり、調味料やドレッシング、ソース類が必須な食事になってしまいます」「僕も自炊未経験の一人暮らしスタートでした」「食事は一日一日の積み重ねなので、どこかで必ず自分に返ってくるときがあります」といったアドバイスが。ネット上には反響の声が相次ぎ、中には「松本選手のツイートを見て、管理栄養士としてアスリートを支援したいと思うようになりました!」と決意するファンも見られた。

 

日々の暮らしや食事を改善するための本に注目が集まった今回のランキング。果たして次回は、どんなジャンルの本が登場するのだろうか。