芯の尖り具合から見た目までシャープなシャープナー登場!「ブラックウィング」の鉛筆削りは大人にこそふさわしい

小学生のザ・筆記具といえば、鉛筆である。昔は「HB」が標準の硬さだったのが、最近は子どもの筆圧が概して低下していることもあり「2B」が標準になっている、など、ちょっとした違いはあるけれど、それでも鉛筆が小学生の必須ツールであることに変わりはない。

 

それなのに、いささか不遇じゃないだろうか、鉛筆。

 

例えば、これを読んでくださっている読者諸氏の中で、この半年以内に鉛筆を使った覚えがある方が、いったいどれくらいいるだろう。確かに、芯は簡単に折れるし、そうなると削らなきゃいけなくてゴミも出る。ペンケースの中は汚れる。書き込みは消しゴムで消せるため、確実性がない。社会人の筆記具としては、マイナス要素だらけだ。

 

正直に言うと、筆者も堂々と鉛筆の味方をできるほど普段使いしているわけではなかったのだが。ところが、実はここしばらく、メモなどの日常筆記は、ほぼ鉛筆で書いている。なぜかというと、話は簡単。“使いたい鉛筆削り”があるからなのだ。

 

思わず削りたくなるハイクラス・シャープナー

その鉛筆削りというのは、カリフォルニアシーダープロダクツの「BLACKWING(ブラックウィング) ワンステップシャープナー」。

 

文房具好きの方なら、BLACKWINGという名前に覚えがあるかも知れない。元はアメリカのエバーハード・ファーバー社が作っていた鉛筆ブランドで、愛用者の中にはウォルト・ディズニーやジョン・スタインベック、クインシー・ジョーンズなどのレジェンドが名を連ねていることでも有名だ。

 

エバーハード・ファーバー社は、1987年に吸収合併などのゴタゴタで一度は消滅してしまったのだが、2010年にカリフォルニアシーダープロダクツ社(鉛筆用木材のサプライヤー)がBLACKWINGブランドを復刻させて、現在に至る。

 

「ワンステップシャープナー」は、そのBLACKWINGの名を冠してこのほど発売された鉛筆削り、というわけだ。

カリフォルニアシーダープロダクツ
パロミノ
BLACKWING ワンステップシャープナー
3400円(税別)

 

↑ずっしりしたボディには、ニス引きでロゴが施されている。これもまたシブくてかっこいい

 

ご覧の通り、ソリッドなボディの美しさが、第1のポイント。鉛筆をイメージしたアルミ削り出しの六角柱ボディに、ローレット加工を施した円筒部という組み合わせは高級感バリバリで、金属の質感が好きな人にはなんともグッとくるはず。

 

もちろんお値段も、たかが鉛筆削り1つで3400円+消費税というなかなかのもの。だから、基本的に店頭で見つけても、買うつもりがないならみだりに手に取らないほうがいいだろう。これを握ったときのどっしりとした手応えに、壮絶に所有欲をくすぐられて「うわー、これ欲しい!」と思わされてしまうからだ。

 

続いて第2のポイントだが、これは実際に削った鉛筆を見ると分かりやすい。

↑鉛筆を挿し込んでグリグリと回すと……

 

↑この通り、先端が弓なりに反った超シャープな形状に削り上がる

 

削り上がった芯から木肌にかけてがやたらとシャープで、さらに木肌部分がわずかに弓なりのカーブを描いているのが見て取れるだろう。これによって芯が安定して細長く削り出せる上、さらに芯先の視界も良くなるというメリットがあるのだ。

 

鉛筆で絵を描く人などは、ナイフでわざわざこういう削り方をすることもあるが、少なくとも手回しの削り器で弓なりの削りができる製品は、ほとんどないはずだ。(カール事務器の「エンゼル5 ロイヤル」など、機械式のハイクラス削り器であれば存在する)

↑従来(上)との比較。芯の細さ・長さもはっきりと違う

 

なぜこういう削り方ができるのか? というと、秘密はボディ内の刃にある。ローレット加工の固定具を外して刃を取り出してみると……ネジで固定された刃が、わずかにカーブしているのだ。

↑刃も微妙にカーブした特殊なもの。替え刃の有無は現時点では不明だが、交換はできそうだ

 

なるほど、このカーブした特殊な刃で削られるのだから、鉛筆の木肌も同様のカーブになるという仕組みである。

 

一見すると、なぁんだってギミックだが、普通に考えれば刃のカーブした部分に削る圧力が集中しそうだし、これで均等に削るのはなかなか難しいはず。製品化にあたっては、刃の微妙な角度や当たる位置など、かなり繊細に考えられているのではないだろうか。

 

ただし、そういった部分でなにか負担があるのか、それとも単に刃の鋭さの問題なのか、削り上がりはやや木肌が荒れているようにも感じられる。このあたりの仕上がりに関しては、裏を返せば、国産の鉛筆削りが完成度高すぎ! ということでもあるのだが。

↑中心からズレた位置にある挿し込み口

 

ちょっと気になったのは、鉛筆の挿し込み口が、中央からかなり偏心して配置されていること。

 

これはおそらく刃の真上に空間を空けて、削りカスをスムーズにボディ内に排出し、溜め込めるようになっているのだと思われる。カーブ刃は普通よりも削りカスが詰まりやすいように感じたので、それを少しでも軽減させるように、配慮されているのかもしれない。

↑削りカスをスムーズに排出するためのスペースを稼ぐための工夫だろうか

 

ともあれ、それ自体の質感の高さに加えて、削り上がりの面白さまであるのだから、「使ってみたい!」となるのも当然だろう。

 

決して「コスパに優れている」とも「機能的に超優秀」とも言えないが、それでも、文房具好きならばチェックしておくべき製品だと思う。なにより、「この鉛筆削りを使ってみたいから、久しぶりに鉛筆でなにか書いてみるか」というのも悪くないんじゃないかな、と。いや、格好良さにクラッと来てつい買っちゃった自分を弁護するわけではないんだが。

 

 

「きだてたく文房具レビュー」 バックナンバー
https://getnavi.jp/tag/kidate-review/

 

木の香りに絶妙な重量バランス…世界のクリエイターを魅了する鉛筆「ブラックウィング」が愛おしい

【ド腐れ文具野郎 古川 耕 の文房具でモテるための100の方法】

番外編

文房具への造詣が深い放送作家の古川耕氏が、「文房具でモテるための100の方法」と銘打って文房具への愛を語る連載が、とうとう100回に達した。『GetNavi』は創刊から20年を超える雑誌だが、その半分近く、およそ8年半に渡って掲載された、長寿連載であった。うれしいことに次の連載はすでに予定されているが、今回は好評にお応えし「番外編」として、アンコール回をお届けしたい。


パロミノ
ブラックウィング
3840円(税別)
世界最高の芯と木材を用い、クラフトマンシップを持つ職人によって作られた鉛筆。いつの時代も親しまれるマットブラックの木軸、本品のシンボルともいえる金色の金具と黒の消しゴム、そして柔らかな書き味が世界中のクリエイターを魅了する。1箱12本入り。芯の硬度は「SOFT」。

 

由緒ある海外製鉛筆で心豊かにモテる

緊急事態宣言明けで久しぶりに訪れた大手雑貨店の文房具コーナーで、パロミノのブラックウィングが大きく陳列されているのに目が留まりました。以前からセレクトショップでよく見かけてはいたものの、なぜかこれまで食指が伸びなかったその鉛筆をふと手に取ってみると、しっくりと馴染んでとても心地良い。その日は手ぶらで帰ったものの、いつまでも指先に残る感触が忘れられず、後日この連載のために取り寄せました。

 

紙箱を開けると木の香りがふわっと漂い、専用のシャープナーで尖らせて書き始めると、思わず小さく声が出ました。どうやらブラックウィングの特徴である、尾尻の平らな消しゴムと金属パーツが絶妙な重心バランスを生み出しているようです。紙の上で芯が削られていく感覚がほど良く感じられ、安い鉛筆によくある、上滑りする感じがまったくありません。このちょうど良い「鉛筆らしさ」が、しかし以前は確かに苦手だったのです。

 

どれだけ鋭く尖らせても、瞬く間に線が丸くぼやけ、一瞬前とはまったく違う線となってしまう。書いていて、これほど「時間」を感じさせる筆記具はほかにありません。それがなぜかいま、愛しく感じられるようになったのは、コロナのせいでしょうか。いまはただ、その懐かしい書き味を楽しんでいます。来月から、この連載も心機一転。「手書き」について考えていきます。

パロミノ
ブラックウィング ワンステップ シャープナー
3400円(税別)
絶妙に歪曲したラインで芯を長く削り、折れにくい完璧な先端を作り出せる鉛筆削り。キャニスターには3回分の削りクズを溜められる。

 

「ド腐れ文具野郎 古川 耕 の文房具でモテるための100の方法」バックナンバー
https://getnavi.jp/author/koh-furukawa/