あのお店のプレイリスト|渋谷GOOD LOSER vol.2「妄想カラオケfor忘年会」

“トラッド崩しのリアルクローズ”を掲げる〈Milok〉のデザイナーであり、業界人からの支持も厚いお店「GOOD LOSER(渋谷)」の代表の古口さんが、その時々の気分に応じてプレイリストを公開。

vol.2は、「妄想カラオケfor忘年会」。


古口 悠GOOD LOSER 代表/Milok デザイナー

「お店のプレイリスト企画ですが…はい。完全に個人的な妄想、いや願望によるリストです(笑)。みなさんも妄想でぜひ作ってみてください。なんとなくカラオケ欲が消化されたような、されてないような…。では聴いてください、RIP SLYMEで『気の置けない二人』」

 

1.RIP SLYME / 気の置けない二人

「RIP SLYMEファンとしては推したい曲は山ほどあるものの…。普段よく聴いているこちらをチョイス。できれば次の日が休みの忘年会できままに歌いたい、そんなグルーヴです」

 

2.松本潤, 二宮和也, 大野智 ( 嵐 ) / 夜の影

「『え、嵐ですか???』と思ったそこのあなた。聴いていただけたら、その意味がわかります。ただでさえ格好良い方々に、これやられたらもう…」

 

3.ASIAN KUNG-FU GENERATION / 無限グライダー

「青春を思い出す、最高のロック。今年の忘年会もハズせません。中盤あたりで歌ったらみんな程よく乗ってくれる(はず)」

 

4.DÉ DÉ MOUSE / Sweet gravity

「こちらも強烈なファンとして歌いたい、というか流したい。はい、歌なしです。ちょっとした休憩時にアガった気分を持続する一曲として」

 

5.Jonas Blue / Fast Car (feat. Dakota)

「EDMで、心地良い一曲。スマホでかける音楽でも常連。歌えませんが、歌いたい」

 

6.Josh Wilson / What a Mystery

「みなさんもとにかく聴いてみてください。心が躍りだす、いや歌いだしたくなる一曲です。普段は、お店に向かう道中のモチベーションを上げたい時に聴いてます」

 

7.Marshmello / Here With Me (feat.CHVRCHES)

「最近、彼らの曲がBGMでよくかかっているので避けていたのですが、このコラボ曲は最高すぎて採用せざるをえませんでした。多分知っている方も多いはず。つまり、盛り上がりそう」

 

8.サカナクション / ホーリーダンス

「とりあえずこのグルーヴを体に感じて、気持ちよく歌いたい。『klee』と悩みましたが、よりココロオドルこちらを」

 

9.Yui & ミゾベリョウ / ばらの花 × ネイティブダンサー

『あー、やられたな』となぜか悔しくなった曲。だってずるいですよね、リミックスも、ボーカルも」

 

10.けやき坂46 / 期待していない自分

「ファンとしては選曲して当然な曲ですが、名曲は続々リリースされていながらも個人的にはこの曲を上回る曲がいまだになし! 原キーで挑戦したいです」

 

11.moumoon / Cinderella

「『蛍の光』的な曲ですかね。ずっとファンですが、ライブでこれを聞いた時には素直に涙が出ました。その感動ときれいな音楽をみなさんにも」

あのお店のプレイリスト|高円寺Lampa vol.3「懐メロハウスミュージック」

“TOKYO STRONG STYLE”をテーマに、タフで男らしく都会的なアイテムをセレクトする『Lampa(高円寺)』のオーナー・遠山さんが、その時々の気分に応じてプレイリストを公開。vol.3は「懐メロハウスミュージック」。


遠山勇(Lampaオーナー)

「年末ということで少しパーティーな雰囲気の昔よく聞いていたハウスを選んでみました。今年は家で過ごす時間も多くなるかと思うのでご機嫌な気分になりたい方はぜひ聴いてみてください」

 

 

1.The Boss / The Braxtons

「KENLOU(MASTERS AT WORK)によるリミックスバージョン。原曲のDIANA ROSSもいいですが、こちらもよし!」

 

2. Gypsy Woman / Crystal Waters

「USの伝説的なプロデュースチーム『BASMENT BOYS』プロデュースでビルボードのチャートでもかなり上まで行った大人気曲。なんとも不思議なグルーブ感がクセになります」

 

3. Free / Ultra Naté

「MOODⅡSWINGプロデュースで、これもかなりヒットした曲ですね。結構前の曲ですが、今でも思わず乗ってしまいます」

 

4. The Bomb / The Bucketheads

「KENNY DOPEの別名義の曲。力強いビートにクラブミュージックならではの展開が気分をあげてくれます。最高!」

 

5. Goodtime / Jazmina

「いろんなリミックスがありますが、DJ CHOCOがやってるハウスバージョンとR&Bバージョンが好きです。荒っぽい感じが個人的にはグっときます」

 

6. Put Your Drink Down / Mr V

「恐らくMAW(MASTERS AT WORK)周りの人だと思いますが、トライバルなサウンドがカッコいい!」

 

7. Shake Dat Booty / Three Kings

「独特なビートと上モノの音、そしてラップの掛け合いが心地よいPal Joey絡みの曲。間違いなし!」

 

8.We Are Lonely / Quentin Harris

「Quentin Harrisによるリミックス。STUDIO APARTMENTは女性にも結構人気のあった人なので知ってる方も多いはず。昔どこかのメディアで『乙女ハウス』なんて言われているのを見て少し寂しい気持ちになったのを思い出します」

 

9. Like a sunshine,my memory / PUSHIM

「TOKIWAの人が、LOUIE VEGAと曲を作るなんて誰が想像したでしょうか。EOLサウンドにのるPUSHIMの歌声は何度聞いても良いですね。アナログでも所有している大好きな曲です」

 

10 . I Called U / ATFC

「疾走感のあるサウンドが最高! クラブに行く前に聴いてテンションを上げていた記憶があります」

 

11. David Morales / David Morales

「DAVID MORALESの代表曲のひとつ。大箱仕様でパーティー感満載です」

 

12. U Don’t Know Me / Armand Van Helden

「ヒップホップではAV8でお馴染みのプロデューサーによる思わず歌いたくなる懐かしい曲」

 

13. Bad Habit / ATFC

「CHAKA KHANにJENNY BURTON使いの最高に気分をあげてくれる一曲」

 

14. Givin’ It Up / incognito

「これもいつ聴いても気分がアガりますね。歌モノの中でもかなり好きな曲です。ROGER SANCHEZの仕事に間違いはない!」

 

15.Horny / Mousse T.,Hot N Juicy

「ドイツのプロデューサーによる懐かしくもアガる一曲。曲名はハニーじゃなくて、ホニーです。スラングなので意味は調べてみてください」

 

16. say that you love me / AK Akemi KaKihara

「大御所FRANCOIS KとERIC KUPPERによる歌モノ。上がりすぎず、下がりすぎず。心地よいテンションで聴ける日本語ハウス」

 

17.When Can Our Love Begin / Kimara Lovelace

「これも丁度良いテンションで聴けます。他にも『MISERY』という曲が好きです」

 

18. Love Is On The Way / Luie Vega, Elements Of Life

「LOUIE VEGAとBLAZEで悪いわけがない、といった感じでしょうか。気持ちよく乗れる曲です」

 

19. Fade / Solu Music,Kimblee

「切ないボーカルに心地よい上モノが上手くミックス。いつ聴いてもいい曲です」

 

20.I wanna Be yours / Trellini

「最後はハウスではないですが、何となく年末感のある綺麗な曲で終わりにしたいと選んでみました。こちらはリミックスバージョンですが、明るいアルバムバージョンもグッドです」

お店のプレイリスト|渋谷ANCHOR vol.2「Life Through Movie」

スケートやモーターサイクルなどを背景に、ポップでユニークなグラフィックが配されたアイテムを展開する〈ROTAR〉。その直営店として渋谷にお店を構える『ANCHOR』の太田祐介さんが、その時々の気分に合わせてプレイリストを公開。

vol.2は「Life Through Movie」。


太田祐介(ANCHOR/WEB企画)

「前回は『Life Through Skateboarding』と題して、趣味のスケートボードを通して触れてきた音楽をピックアップしましたが、それに倣い今回は映画をテーマに。内容は、劇中で何気なく流れるBGM、予告PVやバックで演奏しているバンドなど様々。それぞれ作られた背景は全く違うけれど、僕の中ではその映画にはなくてはならない音楽です。前回同様、コメントを読むのが面倒という方はスッ飛ばして音楽だけ聴いてみてください(笑)」

1. Little Richard/Long Tall Sally(『プレデター』.1987)

「ジャングルに降下する直前にヘリコプターの機内でチョッパーという登場人物がラジオで聴いていました。その荒々しいしゃがれた叫び声に、幼いながらも凄いなと感心したのを覚えています。僕が人生で初めてオールディーズというジャンルに触れた曲です」

2. Danny & Juniors/At the Hop(『アメリカン・グラフィティ』.1973)

「有名な映画ですよね。ダンスパーティーの描写でバンドが演奏していました。演奏しているバンド(フラッシュ・キャディラック&ザ・コンチネンタル・キッズ)の服装や髪型も魅力的で、曲もリズミカルで口ずさみやすい」

3.Frankie Valli/Grease(『グリース』.1978)

「当時、両親が録画したVHSが実家にあって、何の気なしに観たのがきっかけです。映画解説者の淀川長治さんの優しいナレーション、本編がアニメーションからスタートしたのが印象的でした。肝心の曲ですが、とても特徴的な甲高い歌声で魅力的なポップスです」

4. Rodorigo Amarante/Tuyo(『ナルコス』.2015~)

「こちらは映画というか、Netflixで観ている海外ドラマ「ナルコス」の主題歌です。湿っぽい声といいますか、いぶし銀な雰囲気がとても好きです」

5.Los Lobos/La Bamba(『ラ・バンバ』.1987)

「陽気な曲調が特徴的で、一度聴いたらすぐに歌えてしまうリズム感。歌詞も飲んで踊って楽しみましょう~といった具合なので、大勢で楽しめる場で聴きたいですね」

6.Barns Courtney/Glitter & Gold『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』.2016)

「楽しみにしていた映画の予告で使用されていました。フォークシンガーらしく、若干29歳。スモーキーな歌声にシビれます」

7. TM NET WORK/BEYOND THE TIME(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』.1988)

「実はここ1,2年でガンダムにドハマりしてしまいまして。宇宙空間に流れるサイコフレームからこの曲が突然流れ…気づいたら泣いてました(笑)。かなり有名ですが、僕にとってはガンダムの曲になっています」

8. The Del Vikings/Whispering Bells(『スタンド・バイ・ミー』.1986)

「ダラダラと会話するシーンに使用されていたんですが、イントロがとても良く映画に集中できませんでした(笑)。ドゥーワップというジャンルに触れた記念すべき一曲ですね」

9. Al Bowlly, Ray Noble & His Orchestra/Midnight, The Stars and you(『シャイニング』.1980)

「狂った主人公・ジャックがパーティー中のバーに登場するシーンで流れていました。ジャズのようにゆったりした曲調で穏やかな気持ちにさせてくれます。が、後の展開がとても恐怖です」

10.Phoebe Cates/Paradise(『パラダイス』.1982)

「結構古いロマンス映画です。実家のVHSに録画してありました。「一度目は勇気」、「二度目からは愛」という仮面ライダーキバが言いそうなキャッチフレーズが忘れられません(笑)。Spotifyにあったのはリマスター版。原曲はバラードのきれいなメロディーが特徴です」

11.George Thorogood & The Destroyers/Bad To The Bone(『ターミネーター2』.1991)

「ひとしきり暴れた酒場をターミネーターがバイクで立ち去る際に流れていた曲です。ロックン・ブルースな曲調でワイルドさがビシビシ伝わってきます 。この時にターミネーターが持っていたショットガンがとにかくかっこよくて、玩具屋でエアガンを購入したのはいい思い出です(笑)」

12.Natalie & Nat King Cole/Unforgettable(『ウォッチメン』.2009)

「ジャズのゆったりした音楽とヴォーカルの優しく耳を包むような声。リラックスさせてくれる曲とは裏腹に映画では暗殺者によって殺害されるシーンに使用されていました」

13.kenny loggins/footloose(『フットルース』.1984)

「保守的な田舎町に反抗する若者を描いた青春映画の主題歌。80年代を感じさせる、弾むようなウキウキした曲調です。PVにも映画のシーンが使用されていて、映画の大枠を掴めるハイライトとしても楽しめます」

14.Steppenwolf/Born To be Wild(『イージー・ライダー』.1969)

「当時乗っていたバイクをトラッカー系からアメリカンに乗り換えるほどこの映画には影響されましたね(笑)。とにかくデニス・ホッパーがカッコよすぎる。渋くて色褪せない僕の青春ど真ん中のロックン・ロールです」

15.Barry Manilow/Mandy (『ハピネス』.1998)

「ややブラックユーモアが感じられる映画の使用曲です。バラードポップスな雰囲気でとても素敵です」

16.Robert Palmer/Lokking For Clues(『バタリアン』.1987)

「昔っはB級ホラーが好きでよく観ていました。肝心の曲はテクノ(?)のよう な調子で作業用としても聴けそうですね」

17.Cornershop/Brimful of Asha(『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』.2012)

「くぐもった声で淡々と聴けるポップな音楽」

18.Louis Armstrong/What a Wonderful World(『グッドモーニング,ベトナム』.1987)

「これは超名曲ですね。誰もが一度は聴いたことがあると思います。かなりのハスキーヴォイスですが、朴訥な声の中に包み込むような感覚を覚えます」

19.Bobby Womack/Across 110th Street(『ジャッキー・ブラウン』.1997)

「僕がファンクというジャンルを初めて知ったアーティスト。ソウルフルな歌い方でとにかくカッコいい」

20.成龍/英雄故事(『ポリス・ストーリー/香港国際警察』.1985)

「洋画劇場で何度も観ていた影響ですっかり覚えてしまいました(笑)。日本語吹き替えの石丸博也さんの声を聞くと頭の中でセットで流れてしまいますね。 某動画配信サイトでは日本語の綴り付きで丁寧に編集されているのですぐ覚えられますよ」

あのお店のプレイリスト|高円寺Lampa vol.2「高円寺ラウンジルーム」

“TOKYO STRONG STYLE”をテーマに、タフで男らしく都会的なアイテムをセレクトする『Lampa(高円寺)』のオーナー・遠山さんが、その時々の気分に応じてプレイリストを公開。vol.2は「高円寺ラウンジルーム」。


Lampaオーナー / 遠山勇

「夏から秋になり気温も過ごしやすく、心地よい虫の鳴き声に変わってきました。聴く音楽も少し落ち着いたものを、ということでラウンジっぽい雰囲気のプレイリストを作ってみました。秋の夜長にぴったりですので、みなさんもぜひ楽しんでみてください」

1.DJ Cam / Gansta Shit

「フランスのDJ Camによる90年代の一曲です。綺麗なメロディーラインと、思わず首を縦に振ってしまう力強いビートがたまりません」

2. Hotel Costes / Adore

「DJ Cam同様にフランスのエレクトロニックアーティストであるI:Cubeの一曲です。こちらも綺麗なメロディーにカッコ良いビートがはまっています。Bonne musique!」

3. Takayuki Shiraishi / Birds in Paradise

「80~90年代を経て、ヒップホップを聴かなくなってから出会いました。ただし、日本のビートメイカーによるヒップホップ好きも納得の一発」

4. Yam Who? / The Star of a Story

「個人的に何となく安心感のあるレーベル『Ubiquity』による人気コンピレーションシリーズ。Yam Who?でこういう曲は珍しいかな?」

5. A Forest Mighty Black / Rebirth

「Rainer Truebyが在席しているドイツのブレイクビーツユニット。いわゆるクラブジャズの人達といった感じでしょうか。
Gute Musik!」

6.Nightmare On Wax / Nights Interlude

「Quincy Jonesの『Summer in the City』をサンプリングした『Pharcyde』も良いですが、こっちもGoodです」

7. Visoneers / The World Is Yours – Extended

「4HEROのメンバー、Marc Macによる生演奏を基本としたプロジェクトの一曲です。Nasの『The World Is Yours』を使っているあたり、Marc Macのヒップホップ愛が伝わってきますね〜」

8.omid / Ways of the World

「西海岸のビートメイカーであるOmidによる艷やかなメロディーライン。それでいて、少しザラついた感じが味わい深く、いつ聴いてもグッドです」

9. Bei Bei, Shawn Lee / Make Me strager

「Ubiquityの鬼才と言われているShawn Leeと中国の古筝奏者であるBei Beiとの曲を、次世代ビートメイカーであるFloating Pointsがリミックスした激ヤバな一発」

10 . Makoto / Introduction – Instrumental

「ドラム&ベースアーティストのLTJ Bukemによるダウンテンポを中心としたコンピレーションアルバム『Earth』からの一曲です。Makotoのつくるドラム@ベースももちろん好きですが、こういった落ち着いた雰囲気の曲調もかなり好きです」

11. Blu Mar Ten / Adrift on Deep Water

「前の曲同様に『Earth』からの一曲。Logical Progressionを彷彿させるスペイシーなサウンドは心地よし」

12. Kuniyuki Takahashi / The Guitar Song(Ambient Mix)

「何度聴いても飽きることのない、音の世界観に酔いしれる極上のチルアウト。この音に出会えて本当に良かったなと思います」

13. LTJ Bukem,DRS / Constellation

「HYBukemの包み込むような優しいサウンドを、DRSが心地よくフローする洗練された一曲。自分の中ではこれもヒップホップ」

14. Mark Farina / Alive-Instrumental

「ヒップホップ好きは親しさを感じるであろう、西海岸発のアーティストによる一曲です。西海岸のゆったり流れるがまるでそこにあるかのように感じられるダウンテンポミュージック」

15. Red Astaire / Resque Me

「独特なグルーブ感がたまりません。Freddie Cruger名義の曲も好きなものが多いです。お気に入りのアーティストですね」

16. DJ Zinc / You Follow

「ちょっと変わったグルーブ感はクセになります。この人の『Super Sharp Shooter』という曲でジャングルやドラム&ベースに一気に引き込まれました。思い入れのあるアーティストです」

17. Calm / Light Years

「どこか切なく、心の奥深くに響き渡るディープなサウンドが最高。その他FARR、Organ Languageなど、別名義で良い曲も作っているのでぜひチェックしてみてください」

18. Tek 9 / We’re Gettin Down

「4HEROの別名義、Degoの一曲。Marc Macの『Visioneers』同様、最高に雰囲気良し。4HEROのセンスは本当に好きです」

19. akiko / ムード・スウィングス

「艷やかでセクシーながらも、芯のある歌声が個人的にツボです。いつかライブもいってみたいですね」

20 . Yoshihiro Hanno / Whisper of Rain

「好きなレーベルであるProgressive Formに所属するアーティストです。温かみのあるサウンドに透明感と力強さを感じさせるボーカル。絶妙です」

お店のプレイリスト|渋谷ANCHOR vol.1「Life Through Skateboarding」

スケートやモーターサイクルなどを背景に、ポップでユニークなグラフィックが配されたアイテムを展開する〈ROTAR〉。その直営店として渋谷にお店を構える「ANCHOR」の太田祐介さんが、その時々の気分に合わせてプレイリストを公開。

vol.1は「Life Through Skateboarding」。

ANCHOR/太田 祐介

「僕の趣味である、スケートボードを通して触れてきたアーティストたちをまとめてみました。内容は、スケートのビデオに挿入されていた音楽、仲間からのおすすめ、プロが出演する番組などなど様々。スケートといえば横ノリのイメージが強いかと思いますが、音楽のジャンルは多様です。一言コメントは出会った経緯が中心ですので、読むのが面倒という方はすっ飛ばして音楽だけ聴いてみて下さい(笑)」

1. Benjy Ferree/ Leaving The Nest

「僕が大好きなスケートボーダー Stefan Janoski(NIKE のJanoskiモデルでも有名)のパートで流れていました。ポップでちょっと高めの声質がとても好きです。CDジャケットが大人になったピーターパンをイメージしたとうな絵で、曲の印象と妙に一致した記憶があります」

※Spotify上で曲が再生できません。

2. Beach Fossils/Daydream

「HABITATというスケートチームのビデオの冒頭に流れていました。ノスタルジックなメロディと、だら〜んとした肩肘張らない歌い方がツボです。メンバーもスケートボードをするらしく、親近感が湧きますね」

3.a-ha/Take on me

「ENJOIというスケートチームのビデオに使用されていました。スケートボードで滑りながら噴水の水を手で弾くあのフレッシュな映像は忘れられません。このメロディに覚えがあるという方は多いのでは? 80年代のシンセポップの代表的な曲で、キャッチーなイントロが印象的です。MVも魅力的なのでぜひ見てほしいです」

4. Rod Stewart/YoungTurks

「僕の好きなスケーター、Louie Barlettaのパートに使用されていました。ロックファンならご存知のロッド・スチュワート。1981年にリリースされましたが、当時トレンドだった打ち込みサウンドを取り入れた一曲です。シンセサイザーとアップテンポのニューウェイブ。邦題は「燃えろ青春」で、歌詞もど直球な青春賛歌」

5.Noah23/Silicate Magma Chamber

「ゴリゴリのヒップホップですが、バックに「デル・バイキングスの『Come Go With Me(映画スタンドバイミーでも有名!)』をサンプリングに取り入れていてノスタルジーな気持ちになります」

※Spotify上で曲が再生できません。

6.VAST/Untitled

「Elementのスケートビデオに挿入されており、センチメンタルなシーンに使用されていました。ギターロックに聖歌隊や民族音楽を取り入れたコーラスが入り神聖な雰囲気ですが、曲調は全体的に暗いです。ゴシック・ロックと言えばいいのでしょうか…。不気味です」

※Spotify上で曲が再生できません。

7. DJ Kool/Let me Clear My Throat – Old Reunion Rimex`96

「ようやくスケートボードらしい(?)イメージの曲でしょうか。The 45 kingの『The 900 Number』を使ったオールドスクールなコールや、DJのしゃがれ声がとても気分が上がります。クラブでもハズさないフロアキラーな音楽」

8. Hey Willpower/Hundredaire

「僕が初めて見たプロの女性スケーターのパートに挿入されていた曲でした。鼻声の様な高いボーカルの声にダンスポップの軽快なテンポがとても聴きやすいです」

9. Rocker-T/tru Ganjaman

「ユルい感じと独特なリズム感。ザ・レゲェですね。改めてMVを見ましたが、日本では色々難しそう(笑)。曲の冒頭では何やらむせるような音が…。」

10.Prefab Sprout/ The King Of Rock’n’Roll

「プロスケートボーダーだったBam・Margera(Jackassに出演していたスケートボードに乗る、ヘビが大嫌いなパーマ頭のメンバーと言えば思い出す方も多いはずです!)の悪戯番組のオープニング。これを聞くと頭の中で映像も再生されるのでニヤけてしまいます」

11.Bob Dorough/Three is a Magic Number

「映画『かいじゅうのいるところ』で有名なスパイク・ジョーンズがディレクションしたスケートビデオ『Mouse』から。ジャズシンガーのやさしい声と歌い方で穏やかな気持ちになります」

12. Little Apple Band / Moving Right Along

「スケートチームの親会社が諸事情で変わるという案内のために作成されたCMに挿入されていた曲。当時NHKで放送されていた『マペット放送局』をご存知の方も多いはず。愛くるしいマペットの歌は親しみやすくて聞き入ってしまいます(とても上手い)」

13. WASHED OUT/It All Feels Right

「Daryl Angel というスケーターのパートで使用されていました。晴れ渡った青空を背景に滑る姿が妙にマッチしていたのを思い出します。あんな風に滑りたい…」

※Spotify上で曲が再生できません。

14.The walkmen/Four Provinces

「ベテランバンドらしいですが、しゃがれ気味のソウルフルな歌がとても印象的です。既出したHABITATというスケートチームのビデオから」

15.The Trojans/Gaelic Ska

「20年ぐらい前にお前も聴いてみろよと先輩スケーターから教えてもらいました。イギリスのスカバンドで、陽気な曲調で聞きやすい。『蛍の光』もカバーしててとにかくカッコイイ」

16.Ska Cubano/Babalu

「先輩スケーターにライブに誘われたのが懐かしい。ロンドンをベースに活躍するスカバンドで、ボーカルの声とパフォーマンスがとにかくカッコよかったです。メンバーにキューバ出身の日本人もいらっしゃいましたね」

17.Lard/The Power Of Lard

「中学生ぐらいの頃にToy Machineというスケートチームのビデオに挿入されていました。ハードコアな激しい曲調が当時の僕には衝撃で、スケートボーダーはこういう曲が好きなのかと先入観を抱いた一曲です(笑)」

18.The Rolling Stones/I Am Waiting

「僕が初めてスケートボードのデッキを購入したチームビデオに挿入されていました。エモい映像と一緒に流れるこの曲を聴きながら『ついに手に入れた』と感傷に浸っていたのを思い出します」

19.The Budos Band II /Mas O Menos

「Krooked というスケートチームのDVDに挿入。アパレルでも有名なマーク・ゴンザレスも出演していて、無邪気に楽しそうに滑る映像にとてもマッチしていました。10年ぐらい前ですが、当時は最先端だった(?)3D仕様のメガネ付きDVD。付録もたくさんついていて得した気分を覚えています(笑)」

20.Pretty Girls Make Graves / Something Bigger,something Brighter

「倉庫内に集められたガラクタでスケーター達がそれぞれ思いのままに組み立て、スケートボードで遊ぶという企画で使用されていました。自由気ままに遊ぶ映像に合わせたこの曲から、なぜか青春のような甘酸っぱさを感じましたね(笑)」

あのお店のプレイリスト|渋谷GOOD LOSER vol.1「JUST FEEL, FASHION, MUSIC and GROOVE」

“トラッド崩しのリアルクローズ”を掲げる〈Milok〉のデザイナーであり、業界人からの支持も厚いお店「GOOD LOSER(渋谷)」の代表の古口さんが、その時々の気分に応じてプレイリストを公開。

 

vol.1は、「JUST FEEL, FASHION, MUSIC and GROOVE」。


古口 悠GOOD LOSER 代表/Milok デザイナー

「音楽のジャンルは本当に幅広く聴きます。今回は選んでいませんが、クラシックからアイドルまで。今回は、iPhoneのプレイリストに入っている曲の中から、勝手に1アーティスト1曲縛りで選んでみました」

 

1. PETROLZ / つばめ

「気分に合わせて聴きたい曲があるかと思いますが、自分が今どんな曲を聴く気分なのかわからない時にとりあえず聴いて欲しい曲。計算された抜け感と高い技術の中にあるグルーヴ感。最高です」

※編集部注:Spotifyに音源がなかったので適材適所でどうぞ! 最高でした。

2. Kygo & One Republic / Lose Somebody 

「リリース直後に聞いた時に鳥肌が立ちました。ワンリパブリックのライアン・テダーのプロデュース能力には毎度感銘を受けています」

3. Backstreet Boys / Poster Girl

「洋楽に手を付けた時からずっと聴いているアーティストです。アメリカはブルックリンの風景が耳で伝わってくる最高の一曲」

4. Bazzi / Fallin (feat 6LACK) 

「2019年の個人的に良かったアルバムTOP10を選ぶとしたらこの一曲。収録されている”Soul Searching”も全曲通して聴いていただきたい!」

5. THE BEATMOSS / Flippin’ Out

「2012年にあのイルマリが結成したロックバンドの一曲。同世代の方は、それだけで『あぁ格好良いんだろうな』って思ってしまうのでは?(笑)」

6. Cody Simpson / La Da Dee

「休日のスタートに持ってこい。こんな曲が聴けたら買い物もより一層楽しくなる!」

7. Do As Infinity / Timeless

「人生で最も愛したアーティストです。シーンで選曲は変わりますが、今回は自然に体が動いてしまうこの曲を」

8. Elise Trouw / Make Believe(Loop Version)

「元々はドラマーとして名をあげた彼女。時折ループマシンを使って全楽器を演奏しながら作る曲があるのですが、そのループ感が非常に心地良い。You Tubeにも何曲か上がっているので要チェック!」

9. FLOWER FLOWER / 時計

「言わずもがなYUIを筆頭に実力あるメンバーが至高の音を奏でるバンドです。アルバム内でしっかりと喜怒哀楽が表現されているので、アルバムを収録順にかけるのがおすすめ」

10. 星野源 / Down Town

「『一曲選べ』と言われまたまた選ぶのが難しいアーティストです。中でも、買い物中に聴いたら気分上々になるであろう曲を(買い物行きたい)。個人的には日本で一番J-POPを理解しているのでは?と思っています」

11. Jesse Harris & the Ferdinandos / Waiting For Something

「曲名のように『何か良い服ないかなー』という気持ちを助長してくれるようなリズムとグルーヴ。とにかく心地良い!」

12. Jesse McCartney / Better with You

「ジェシーも中学生の頃からずっと聴き続けているアーティストの一人。これは最近の曲ですが、彼が培ってきたアメリカンポップスと先端の音楽シーンとがうまく共鳴しています』

13. Justin Timberlake / Soul Mate

「前述のジャシーと同じ頃から聴き始めたアーティスト。彼の曲は自然に体が動いてしまって仕事にならない曲が多いのですが、この曲はBGMとしても馴染んでくれます」

14. melody. / Miss you

「この曲も中学生の時くらいから個人プレイリストに入っている一曲。メロディーのクリアな中にほんのり香るエロスにグッドきます…」

15. MiCHi / もっと。

「個人的には『蛍の光』と同じようなノリです。一日の疲れを癒してくれるような、明日への希望をくれるような」

16. Rooney / I’m A Terrible Person

「自分の青春バイブルである海外ドラマ『THE O.C』でも登場しています。このドラマで使われている曲はどのシーズンもハイセンス! ぜひともチェックしてみてください」

17. SOIL &”PIMP”SESSIONS / Connected (feat. Nagaoka Ryosuke)

「大人なダーティさと刻み良いテンポ感が心地良いです。このコラボは、正直、ズルい。お店のお客様でも好きな方が非常に多いです」

18. SPECIAL OTHERS / Title

「春夏秋冬問わず、一日の始まりに聴きたい一曲ですね。その日の調子を整えてくれるような、そんな印象です」

19. Taylor Swift / A Perfectly Good Heart

「リリース当初から聴いていますが、今聴いても心が洗われるような感覚になります。今のテイラーも良いけど、当時のカントリー感の強い方が好みです」

20. Tom Misch / Disco Yes(feat. Poppy Ajudha)

「タイトルの通りディスコでリズムを取りたくなるような一曲。ノリやすさとしっとり感のバランスが絶妙!」

21. Travis / Turn

「トラヴィスからは王道ではなく、あえてこの曲を。哀愁漂うメロディがとにかく美しい…」

22. Ykki Beat / Dances

「初めて彼らの曲を聴いた時には衝撃でした。『また格好良いUKバンドが出てきたな!』と思っていたら、日本人でびっくりしました(笑)」

23. 音速ライン / みずいろの街

「暖かい季節の天気の良い日にはこういう曲を流したいですね。バンドとしても完成されている曲が多い。解散が本当に残念でした」

24. 斎藤アリーナ / Tell Me Why

「言わずとしれた、あの某テレビ番組で活躍していた彼女の声は重さと透明感のバランスが絶妙。どんどん歌が上手になっているので、今後の活躍にもとても期待しています」

25. 東京スカパラダイスオーケストラ / めくれたオレンジ feat. 田島貴男

「とにかく全ての格好良いが凝縮された曲です。カラオケでこの曲を思ったように歌える日がくることを祈るばかりです(カラオケ行きたい)」

素晴らしきインドネシアンポップスの世界

国内外から上質なアイテムをセレクトする仲町台町の“洋品店”「Euphonica」のオーナー井本さんが、その時々の気分に合わせてプレイリストを公開。90~00年代の音楽体験を語ってもらった際には同氏のマニアックな一面も垣間見えましたが、はたしていま興味のある音楽は?

 

待望のvol.1は「素晴らしきインドネシアンポップスの世界」。


Euphonicaオーナー / 井本 征志

「個人的に今年一番夢中になったのがインドネシアのポピュラーミュージックでした。ふとしたきっかけでYoutubeを観ていたら、次から次へと凄い曲が見つかって。それからどハマリしてしまいました。インドネシアというと、トロピカルな印象を受けるかもしれませんが、実は非常に洗練された都会的な音楽が多いんです。そして総じて旋律が優しく美しい。一時期日本で流行ったハワイアンAORと通じるものがありますね」

1. Mondo Gascaro/ Naked

「インドネシアのポップスを語るうえでもっとも重要な人物の一人だとか。往時の映画音楽を彷彿させる、知的で豊潤な曲です」

2. Dini / Minor Song of Mine

「声、曲、すべてが至高。ここまでの才能がなぜ日本でそんなに知られてないのか、さっぱり理解できません」

3.Diskoria feat. Dian Sastrowardoyo / Serenata Jiwa Lara

「人気女優のDian Sastrowardayoを起用したDJデュオDiskoriaのキラーチューン。 旋律を抑えるのが世界的なトレンドとはいえ、やっぱりこうしたメロディアスな曲が好きですね」

4.Maliq&D’essentials / Senja Teduh Pelita

「ジャズやソウルを土台とした音作りに定評あるバンドで、さまざまなジャンルを自由自在に操ります。この曲はドリーミーで華やか、でも品はある、そんな不思議なバランスが魅力的」

5. Monita Tahalea / Memulai Kembali

「どこをとっても可愛い歌! それにしても綺麗な声の女性ヴォーカルが多いですよね、インドネシア」

6. Float / Pulang

「なんだか緩くて気持ちの好い、のんびりした休日の夕方のような曲です」

7.Ify Alyssa feat. Gerald Situmorang / Gitar

「もともとアイドルとして活動していた方のようですが、実力派です。インドネシア外でも評価の高いギタリストをフィーチャリングした、可憐な一曲」

8.Payung Teduh / Akad

「大ヒットを記録しこのバンドの名を世に知らしめた、温かみのある曲です。そしてMVが泣けます。凝ったMVが多いのもインドネシア音楽の魅力ですね」

9. Grrrl Gang / Bathroom

「インドネシアはインディギターポップも盛ん。90年代のあの甘酸っぱい感じが独自に進化を遂げて、ここに蘇りました」

10. Vira Talisa / Janji Wibawa

「フレンチテイストのインディーポップと、いわゆるシティポップの融合。アレンジに日本のLampからの影響も感じます」

11.Andien / Let It Be My Way

「どうやら映画の挿入歌らしいですね。どこか昔の香港を想起させる、ちょっと懐かしい感じの歌です」

12. Circarama / Megantara

「浮かれた感じの軽いロックンロールと思わせて、突然美しい旋律を畳みかけてくるから油断なりません。MVでなぜかメンバーの一人が『将太の寿司』Tシャツを着ています」

13. Stars and Rabbit / Man Upon the Hill

「この圧倒的な独自性。インドネシア音楽の懐の深さを感じさせます」

14. Dini feat. Leonardo Ringo / None of You Will Marry Me Through

「好きすぎるのでDini再登板。Leonardo Ringoはミュージシャンとしてのみならずラジオパーソナリティーとしても有名らしく、いい声してますよね」

15. Danilla / Terpaut Oleh Waktu

「専業歌手を自認せず、のんびりと、しかし良質な作品を生み出しているシンガーソングライター。日本の某殺人事件を題材にしたメッセージ性の強い作品なども手掛けていて、意外と硬派」

16. White Shoes & Couples Company / Senandung Maaf

「お洒落なバンド名ですねえ。曲もハイセンス。演奏が意図的なのかそうでないのか不明なくらい不安定なんですが、それもそれで味になってます」

17. The Cat Police / Take Her

「湿度の高い熱帯の夜の街角、そこにたむろする若者たち、寂寞」

18. Garhana / A Long-Short Dream

「ちょっと脱力した、洒脱な曲です。Youtubeでライブ映像も観ることができまして、こちらも実に素晴らしいので、是非ご覧ください」

19. Mocca / My Only One

「〆は渋谷系世代殺しの極上ポップソングで。インドネシアに限らず世界にファンを持つMoccaの、幸せな一曲」

肌寒い秋の日に聴きたい“バラード”縛りの名曲10選

日を追うごとに「秋」を実感させる、心地よくもひんやりとした空気が漂いつつあります。この季節になると、なんとなく「バラード曲」が聴きたくなってきてしまうのは私だけでしょうか?

 

そもそもの「バラード」とは、クラシックの世界から登場してきた曲の様式で、詩をベースにした楽曲が物語風に展開され、それは幻想的なものであったり、喜怒哀楽の激情的な感情が劇的に構成されたりと、壮大な楽曲が多いとされています。それこそ、広辞苑では「ショパンのピアノ曲など」とあり、英語表記の「バラッド」にいたっては「19世紀以降の感傷的な大衆歌謡」とあったりもします。ちなみに「バラード」はフランスの言葉です。

 

とはいえ、明快なバラードの定義はあるようでないともいわれていますので、ここではあえて深堀りはしません。現代のポップスの文脈で語られる「バラード」は、クラシック音楽の歌唱曲の様式から派生したもので、キーワードとしては、ミディアムテンポ、叙情的なメロディ、泣ける歌詞、ラブソング、などなどでしょうか。

 

もっともっと具体的な音楽的要素があるとは思いますが、人それぞれ解釈が違うと思いますし、音楽専門媒体でもないので、今回はわかりやすくそういうことにさせていただきたいと思います。ご了承ください。

 

で、今回は「秋」ということで「バラード」縛りの楽曲で、しかも大直球で「バラード」という言葉が曲名に入っているものを、日本と海外の音楽両方からセレクトした10選をお届けします。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば、有料会員でなくても試聴ができますので、幅広い音楽性を含むバラードというキーワードで、秋に浸っていただけるとうれしいです。

 

【Spotifyで聴ける】秋に聴きたくなるバラードソング10曲

01.やつらの足音のバラード/ちのはじめ
(1974年10月21日リリース)

園山俊二原作の名作ギャグアニメ「はじめ人間ギャートルズ」でエンディングテーマに起用された大名曲であり、宇宙規模のバラード作。宇宙のビッグバン〜地球という惑星の誕生〜人類(やつら)の誕生という壮大なテーマを歌い上げます。生命の始まりをキャッチーに描いた歌世界が秀逸で、作詞は原作者の園山俊二、作曲はかまやつひろし。のちにかまやつ本人がセルカバー、渋谷系界隈の人間にとっては小泉今日子によるカバー曲が思い出深い。ちなみに、ヴォーカルのちのはじめは、歌手の尾藤イサオのバックバンド、ザ・バロンでベース&ヴォーカルを担当していた若子内悦郎であります。

 

02.愛のバラード/大野雄二
(1976年3月16日リリース)

1970年代から80年代にかけて、日本映画界で一大ブームを巻き起こした角川映画の記念すべき第1作目であり大ヒット作「犬神家の一族」(1976年)。その劇中を彩った印象的な映画音楽は、時代を越えて愛され続けていますが、そのなかでもひときわ美しいメロディで有名なメインテーマをピックアップ。和楽器の琴をフィーチャーしながらも、さまざまな音楽のエッセンスを取り入れた和を逸脱した斬新なサウンドメイクは、時代を経るごとにさらに評価されていくことになります。音楽はTVアニメ「ルパン」シリーズを手掛けることになる大野雄二。本サントラ盤には未収録ですが、シャンソン歌手の金子由香利によるヴォーカル・バージョンも存在します。

 

03.バラードまでそばにいて/上田正樹
(1982年12月1日リリース)

1970年代に沸き起こった関西ブルースシーンを代表する伝説的なブルースバンド「上田正樹とサウス・トゥ・サウス」で、ルーツミュージックに根ざした関西ソウルを発信していたなにわが誇るソウルシンガー。ソロ作7枚目となる名作「AFTER MIDNIGHT」ではアーシーなイメージから一転、AORやブルー・アイド・ソウルを経由した洗練されたシティポップスへと衣替え。林哲司が作曲した不朽の名作「悲しい色やね」が大ヒットを記録しました。収録曲の「バラードまでそばにいて」も彼特有のハスキーヴォイスと、名アレンジャーの井上鑑によるメロウでアーバンなサウンドが素晴らしくマッチ、まさにバラードといった趣です。

 

04.流星とバラード/東京スカパラダイスオーケストラ
(2010年1月27日リリース)

メジャーデビュー20周年のアニバーサリーイヤー第1弾としてリリースされたヒットナンバー。2002年の大ヒットシングル「美しく燃える森」に続く、奥田民生とのコラボ作。疾走するトーキョースカのリズムに、いつになく大人の色気を振りまく奥田民生の色艶ある歌声。ダンディなバラードナンバーがあるとすれば、まさしくこれ! ちなみに、フェスのバックヤードでスカパラとユニコーンが顔を合わせる機会が多々あり、冗談半分で「そろそろまた俺が歌ってもいいんじゃない?」と言われたことがきっかけだったとの逸話があり。

 

05.哀愁とバラード/ACO
(1999年1月30日リリース)

自身の同棲時代を振り返ったという私小説的な激情のナンバーで、発売当時、音楽マニアから圧倒的な評価を得た大傑作。フォーキー、R&B、エレクトロニカといった音楽的要素をJ-POPへと見事に着地させています。「夕べ 部屋に鳴り響いたメロディは 甘い生活が残していった 切ないだけのバラード」。このとき彼女は21歳。さまざまな行間を読ませるこの言葉、恐れ入ります。プロデュースは当時、新進気鋭のトラックメーカーとして名を馳せていたKen Ogata。ザラついた印象的なギターはDragon Ashの降谷健志によるもの。以降、ACOは電気グルーヴを脱退した砂原良徳を制作に迎えて、傑作アルバム「absolute ego」を発表します。

 

06.The Ballad Of Dorothy Parker/プリンス
(1987年3月30日リリース)

プリンスらしいミッドテンポのクールなファンクナンバーで、ドロシー・パーカーなる女性ウェイトレスとの出会いと情事の秘めごとを「ドロシー・パーカーのバラード」として歌ったもの。複雑極まりない高度のサウンドプロダクションに、当時のミュージシャンたちは絶望したとのエピソードがあります。歌詞中にドロシーの好きな曲としてジョニ・ミッチェルの「ヘルプ・ミー」が登場しますが、その歌の一節をプリンスが歌う箇所がありますので、そんな彼の遊び心にも注目してみてください。2枚組の大作「Sign ‘O’ The Times(サイン・オブ・ザ・タイムズ)」に収録。

 

07.Ballade de Melody Nelson/セルジュ・ゲンスブール
(1971年3月24日リリース)

稀代の音楽家であり、映画監督であり、スキャンダラスなプレイボーイでもあったフランスが誇る今は亡き異端児、セルジュが手掛けたコンセプト・アルバム「メロディ・ネルソンの物語」。ニュー・ロック的なアプローチで、アヴァンギャルドな作風の楽曲が多いなかでも、異彩を放っているのがこの「メロディ・ネルソンのバラード」。当時のパートナーであり事実婚の関係にあったジェーン・バーキンのポエトリー・リーディング(?)がチャーミングなデュエット曲。発売当時はまったく見向きもされなかったが、早すぎた名盤として90年代に入って世界中のDJを中心に再評価されました。

 

08.Ballade de Johnny Jane/ジェーン・バーキン
(1976年10月リリース)

セルジュ・ゲンスブールが監督と音楽を担当し、ジェーン・バーキンが主演を務めたカルト映画「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」の挿入歌。劇中を彩る超絶セクシーすぎるタイトル曲があまりにも有名ですが、「ジョニー・ジェーンのバラード」も人気の高いバラード作。「ヘイ、ジョニー・ジェーン 君は覚えてる? ゲンスブールの映画『ジュテーム・モワ・ノン・プリュ』って素敵なテーマ曲を」で始まる遊び心にあふれたナンバーで、ピアノの旋律とアコースティックな調べが印象的な甘い甘い仕上がり。ときおりインサートされるスライドギターも耳に残ります。なんとなく秋になると聴き直したくなるナンバーでもあります。

 

09.Pretty Ballad/キース・ジャレット
(1969年リリース)

ジャズ・ピアニストのキース・ジャレットがキース・ジャレット・トリオ名義で発表した、1968年発表のライブアルバム「サムホエア・ビフォー」に収録。ビル・エヴァンスの影響が見え隠れする、とびきり上質な夜のムードを醸すピアノジャズ。静寂の美しさとほどよい物憂い加減がよく、これから深まっていく秋の夜長にしっとりと聴けるはず。ベースはチャーリー・ヘイデン、ドラムスはポール・モチアン、そしてピアノはもちろんキース。

 

10.Ballade pour Marion/リシャール・ガリアーノ
(2016年10月28日リリース)

ジャズ、ブラジル音楽、タンゴを始め、世界各国の様々な音楽性をクロスオーバーさせた独自の音楽性で人気の世界最高峰のアコーディオン奏者。本作は2016年に発表したアルバム「NEW JAZZ MUSETTE」に収録されているとびきりジャジーなバラード作。パリの下町で長く愛されてきた、アコーディオンをフィーチャーしたワルツタイプのミュゼットがジャズと接近。不思議と郷愁感を誘うナンバーで、何度でも聴きたくなってしまいます。

 

いかがでしたでしょうか? バラードと名のつく楽曲は、洋楽邦楽問わずにまだまだたくさん「Spotify」に存在しますので、皆さんのお気に入りのあの曲、この曲をぜひ探してみてくださいね!

「抱きしめたい!」から「セーラー服反逆同盟」まで――80年代ドラマ主題歌30選

ここ数年のファッションの世界における80年代のビッグシルエットのブームや、90年代のストリート・ファッションリバイバル、昨年のバブリーダンスの異常な熱狂や、さらにここ最近ではDA PUMPの「U.S.A」に端を発するユーロビート再評価(?)などなど、カルチャーの世界において、80年代や90年代の要素にスポットライトが再び当たる機会が増えているような気がします。

 

振り返ると、80年代や90年代はテレビの影響力がとにかく大きかった時代でした。テレビ業界がイケイケだった時代には、インパクトの強いテレビ番組が量産されていきました。そして、ブラウン菅を通してお茶の間に流れてくる数々のテレビドラマの主題歌や挿入歌が、印象的な映像とともに視聴者の心をわしづかみにしていき、数多くのドラマソングがオリコンのヒットチャートを駆け上がっていったのです。

 

気づけば、ヒット曲の多くはテレビドラマから発信されたものがほとんどを占めるようになりました。まさにテレビドラマと音楽の蜜月の時代。いつしかシングルをヒットさせるPR戦略として、次第に音楽の世界では「ドラマソングのタイアップ獲得」こそが超プライオリティ案件となっていったのです。

 

ということで、今回はカラフルな80年代という時代を彩った「懐かしのドラマソング80年代編」をお届けします。具体的には1983年から1989年までのオリコンのヒットチャートを席巻した歌謡曲、ニューミュージック、ロック、アイドル歌謡曲、そしてヒットはしていないけど記憶に残る迷曲などを発売日順にセレクトしています。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、青春プレイバックとして、もしくは温故知新的な新しい音楽として、楽しんでいただければうれしいです。

 

「懐かしのドラマソング30曲〜80年代編」

【1983年】
What a feeling~フラッシュダンス/麻倉未稀(7月21日リリース)
~TBS系『スチュワーデス物語』主題歌
愛をよろしく/鈴木康博(8月21日リリース)
~TBS系『もういちど結婚』主題歌
蒼いフォトグラフ/松田聖子(10月28日リリース)
~TBS系『青が散る』主題歌

 

【1984年】
バラッドをお前に/THE MODS(2月1日リリース)
~TBS系『中卒・東大一直線 もう高校はいらない!』主題歌
星屑のステージ/チェッカーズ(8月23日リリース)
~TBS系『うちの子にかぎって…パート2』主題歌
ひとときの別れ/南こうせつ(10月5日リリース)
~TBS系『東中学3年5組』主題歌

 

【1985年】
見えない翼/伊藤麻衣子 (2月1日リリース)
~NTV系『警候補生物語』主題歌
白い炎/斉藤由貴(5月21日リリース)
~フジテレビ系『スケバン刑事』主題歌
STAND UP/早見 優 (5月22日リリース)
~TBS系『サーティーン・ボーイ』主題歌
ガールズブラボー!/REBECCA(10月21日リリース)
~TBS系『ハーフポテトな俺たち』主題歌
Never Say Good-Bye/小比類巻かほる(10月21日リリース)
~TBS系『ポニーテールはふり向かない』主題歌
空想Kiss/C-C-B(11月27日リリース)
~TBS系『毎度おさわがせします』(第2シリーズ)主題歌

 

【1986年】
My Revolution/渡辺美里(1月22日リリース)
~TBS系『セーラー服通り』主題歌
悲しみモニュメント/南野陽子(3月21日リリース)
~フジテレビ系『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』主題歌
君は1000パーセント/1986オメガトライブ(5月1日リリース)
~日本テレビ系『新・熱中時代宣言』主題歌
黄昏のモノローグ/今井美樹(5月21日リリース )
~日本テレビ系『妻たちの初体験』主題歌
CHA CHA CHA/石井明美(8月14日リリース)
~TBS系『男女7人夏物語』主題歌
SHADOW OF LOVE/A-JARI(11月21日リリース)
~日本テレビ系『セーラー服反逆同盟』主題歌
ランニング・ショット/柴田恭兵(12月21日)
~日本テレビ系『あぶない刑事』挿入歌

 

【1987年】
One Way Generation/本田美奈子 (2月4日リリース)
~TBS系『パパはニュースキャスター』主題歌
A・r・i・e・s/柏原芳恵(5月1日リリース)
~フジテレビ系『アリエスの乙女たち』主題歌
パラダイス・ウォーカー/伊藤智恵理(6月11日リリース)
~フジテレビ系『キスより簡単』挿入歌
ごめんなさい/バービーボーイズ(12月2日リリース)
~フジテレビ系『桃色学園都市宣言!!』主題歌
KISS IN THE MOONLIGHT/UP-BEAT(7月21日リリース)
~フジテレビ系『同級生は13歳』主題歌

 

【1988年】
Sugar Baby Love/Wink(4月27日リリース)
~フジテレビ系『熱っぽいの!』主題歌
アクアマリンのままでいて/カルロス・トシキ&オメガトライブ(8月10日リリース)
~フジテレビ系『抱きしめたい!』主題歌
リバーサイドホテル/井上陽水(10月21日リリース)
~フジテレビ系『ニューヨーク恋物語 LOVE STORY IN NEW YORK』
GET CRAZY!/プリンセス・プリンセス(10月21日リリース)
~フジテレビ系『君が嘘をついた』主題歌

 

【1989年】
キ・ツ・イ/玉置浩二(1月25日リリース)
~TBS系『キツイ奴ら』主題歌
Groove A・Go・Go/杏里(5月21日リリース)
~フジテレビ系『ハートに火をつけて!』主題歌

 

なぜユーロビートは日本人の心に響くのか……いま聴きたい“和製ユーロ”の名曲10曲

昨年に80年代のユーロビート歌謡を象徴する「ダンシング・ヒーロー」が、登美丘高校ダンス部のバブリーダンスとともに再評価され、荻野目ちゃん本人も再ブレイクを果たしました。同じく「ユーロビート」を現代にアップデートさせた、DA PUMPの「U.S.A.」が数か月前からありえないほどのバズり方をしています。完全に過去のものとされていた音楽ジャンル「ユーロビート」ですが、ここ数年にジワジワと人気回復(?)。しかも80年代半ばから今にいたる日本の音楽シーンに、形を変えて脈々と影響を与え続けているようです。

↑DA PUMP「U.S.A.」(SONIC GROOVE)

 

そもそも「ユーロビート」とは、(ちょっと雑な説明になりますが)70年代後半にヨーロッパで流行したシンセサイザーとドラムマシーンを特徴としたディスコ「ミュンヘンサウンド」が、シンセベースを多用したハイテンポの「ハイエナジー」へと変貌。80年代半ばにはさらにポップなメロディを兼ね備えたダンスミュージック「ユーロビート」へと進化していきました。

 

ここで活躍したのが、イギリスでPWLレーベルを主宰していたプロデューサーチーム、「ストック・エイトキン・ウォーターマン」、通称SAWの3人です。カイリー・ミノーグやリック・アストリーなどユーロビート勢の数々の名曲を大連発し、85年以降の日本のディスコのダンスフロアを席巻しました。そのサウンドプロダクションの手法は小室哲哉を始め、日本の数多くの音楽クリエイターに多大な影響を及ぼしました。そして、その小室哲哉のマネージメントを請け負った、音楽レーベル「エイベックス・トラックス」子会社の「TKルーム」でのチーム体制のもと、90年代半ばから安室奈美恵を始めとする数々の「小室サウンド」が大爆発。「エイベックス・トラックス」は日本のダンスミュージックシーンを牽引していく存在となっていきます。

 

95年以降になると、小室哲哉は次なる「小室サウンド」を追求しつつ、ジャングルなどのUKの旬のクラブサウンドも取り入れたりと、ユーロービート路線とは距離を置いていきますが、エイベックスはレーベルの原点でもあるコンピ盤「SUPER EUROBEAT」を定期的にリリースし続けていきます。現在進行形の欧州のユーロビート楽曲をコンパイルし、ときには所属するアーティストのユーロミックス・アルバムをリリースしたりと、時代を経てもユーロビートとコネクトし続ける稀有なレーベルとなりました。それこそ、いまをときめく「U.S.A.」は、エイベックスのレーベル「SONIC GROOVE」からのリリースでもあります。

 

その一方で、つんく♂が総合プロデュースを手がけていたハロー!プロジェクト、通称ハロプロ関連の音楽でもユーロビートをモチーフにした楽曲が、数多くリリースされていたことも見逃せません。どうやら、日本の音楽シーンはユーロビートと相思相愛の関係にあるようです。

 

今回はユーロビートが日本に上陸した80年代から2010年代にかけて、日本の音楽シーンに根づく「和製ユーロビート」および「ユーロカバー」にスポットを当てて、広義にセレクトした10選です。時代が1周も2周もしたからこそ響く、温故知新的なかっこよさと面白さがあるのではないでしょうか。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば、有料会員でなくても試聴ができますので、ユーロビート特有の無駄にキャッチーで、無駄に派手なサウンドで、残りの夏を乗り切っていただけるとうれしいです。

 

「うれしはずかし、和製ユーロビートソング10曲」

01.KEEP ME HANGING’ ON〜誘惑を抱きしめて〜/松本典子
(1987年4月22日リリース)

1985年に芸能界デビューした清楚系アイドルが唯一放ったユーロビート歌謡。原曲はダイアナ・ロスが在籍していたモータウンレーベル発のガールズグループ、スプリームスが1966年に放った大ヒット曲。その後、数々のアーティストにカバーされ、1986年に女性ロックシンガーのキム・ワイルドがリリースしたハイエナジー的なマッチョなカバー曲がリバイバルヒットを記録。その状況を受けて、松本典子の制作陣が初期ユーロビートのエッセンスを取り入れた本作を発表。冒頭のギターのカッティングに引き込まれ、あとは80s特有のリズムマシーンとシンセ音がリフレイン。WINKがユーロビート歌謡路線で1988年にブレイクしたことを考えると、やや早すぎた挑戦であったのかもしれません。

 

02.涙を見せないで〜Boys Don’t Cry〜/Wink
(1989年3月16日リリース)

ユーロビート歌謡の象徴といえば、やはりWinkではないでしょうか。80年代にユーロビートの女王とも称されていたカイリー・ミノーグのヒット曲をカバーした「愛が止まらない〜Turn it into love〜」の大ヒットに続く4枚目のシングルが本作。原曲はユーゴスラビアのダンス・デュオ、ムーランルージュの「Boys Don’t Cry」。イタロ・ディスコ特有のシンセサイザー音とドラムマシーンのフロアライクな要素を極力抑えて、非常にうまく歌謡曲へと落とし込んだ仕上がりとなっています。訳詞というか意訳はWinkの楽曲を一手に引き受け、エヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」を手掛けたことでも知られる及川眠子。オリコンチャート1位を3週連続でキープしました。

 

03.今度私どこか連れていって下さいよ/森高千里
(1989年7月25日リリース)

南 沙織の代表曲を、あっと驚く和製ユーロビート仕様でカバーしたヒット曲「17歳」。その方向性を踏襲した楽曲が、アルバム「非実力派宣言」には何曲か収録されていますが、本作もそのひとつ。憧れの年上の男性に対するデートへの積極的な駆け引きを歌ったもので、ユーロビート本来のメロディのノリやすさと踊れるツボを押さえたキャッチーなナンバーに仕上がっています。間奏の泣きのギターソロもたまりません。アレンジは斉藤英夫でのちに彼女の代表作「私がオバさんになっても」「渡良瀬橋」の編曲も手がけるようになります。ちなみに、この楽曲はのちにバラエティ番組で活躍する加藤紀子のデビューシングルとして、1992年に新たなアレンジで再生されることになりました。

 

04.ブギウギ・ダンシング・シューズ/木原さとみ
(1990年8月1日リリース)

1993年前後にブレイクを果たしたスタイリッシュなアイドルグループ「東京パフォーマンスドール」でリーダーを務めていた木原さとみのソロ・デビューシングル。ジャマイカ出身の女性シンガー、クラウディア・バリーが1979年に放った彼女最大のヒット曲を日本語でカバー。ヨーロッパで流行ったいわゆる「ミュンヘンサウンド」を通過した、オリジナルのノリノリなディスコソングをさらに大衆仕様にアレンジした隠れた名曲。土曜日の学校終わりに大人の世界へと飛び込む女子高生の高揚した気持ちを、全編打ち込みのサウンドメイクに乗せて声高らかに歌い上げています。「東京パフォーマンスドール」には篠原涼子や市井由理も在籍していました。今のアイドルシーンに受け継がれる「歌って踊れるアイドル集団」の元祖とも言えるでしょう。

 

05.Feel My Heart/Everything Little Thing
(1996年8月7日リリース)

今振り返ると少々意外な気もしますが、ELTのデビュー・シングル「Feel My Heart」は、ユーロビートのエッセンスが散りばめられた楽曲でもありました。当時、ダンスミュージックの象徴的なレーベル「エイベックス・トラックス」の新人ということで、そのブレないサウンドメイクは今聴くとなかなかに見事なものがあります。アレンジはELTのもとメンバーでリーダーを務めていた五十嵐 充。いわゆる小室サウンドからうまく脱却しながらも、なおかつ安定の小室印をイメージさせる楽曲構成は聴き応えがあります。シングル盤のカップリングには本家ユーロビート出身のデイブ・ロジャースによるユーロミックスを収録。彼は90年代後半に安室奈美恵やMAXなどのプロデュースを手掛け、和製ユーロビートを牽引したひとりでもあります。

 

06.ナンダカンダ/藤井 隆
(2000年3月8日リリース)

T.M.Revolutionのプロデュースなどでヒットを連発していた浅倉大介が手がけた藤井隆のデビュー・シングル。80年代に活躍したPWLの秘蔵っ子、ジェイソン・ドノヴァンの大ヒット曲「ブロークン・ハーツ(Too Many Broken Hearts)」へのオマージュと思しき、黄金のヒット曲の法則が見え隠れします。ベースにあるユーロビートからマニアックな要素を極力排除して、J-POPのフォーマットに寄せた人懐っこいサウンドデザイン。作詞はヒップホップユニットのEAST ENDのメンバーであったGAKU-MCによるもの。「なんだかんだ夢見たって 問題ない世の中です あんたなんだ次の番は」と、韻を踏んだリズムのある歌詞が次第にパワーソングとして機能していきます。印象的なダンスも取り入れたこの楽曲で彼はブレイクし、紅白歌合戦にも出場することになります。

 

07.SUPERGIRL/Folder5
(2000年5月10日リリース)

三浦大知や満島ひかりを輩出したキッズグループ、Folderの女子メンバーで構成されたアイドルグループのデビュー・シングル。このときの彼女たちの平均年齢は14歳でした。原曲はロンドン出身のガールズグループ、スーパーガールが1999年にリリースした「アイ・アム・ア・スーパーガール(恋するスーパーガール)」で、世界でスマッシュ・ヒットを記録。オリジナルのR&Bフレイバーを、エイベックスのお家芸とでもいうベきハイパーなユーロビートアレンジで大胆に再構築。原曲のパーティ感や高揚感をさらにアップさせてとにかくご機嫌です。日本語詞の担当はサエキけんぞうで、曲中などで煽るMCも原曲に忠実に再現している点にも注目を。以降、彼女たちは「AMAZING LOVE」「Believe」とさらにユーロビートタッチを濃くして、「Believe」ではFolder5最大のヒットを記録することになります。

 

08.C-Girl/片瀬那奈
(2004年4月21日リリース)

ユーロビート直球ではありませんが、超広義的な解釈でこちらをチョイス。女優として活躍する片瀬那奈がエイベックスに残した作品で、浅香唯が1988年に放った大ヒット曲をキラキラとしたダンスアレンジでカバー。アレンジはつんく♂の楽曲のアレンジを数多く担当していた平田祥一郎。デフォルトでもある過剰なシンセの上物を極力減らし、逆にキックを太くすることで、和製ユーロビートとは形容できない独自のサウンドを構築しています。カバーアルバム「EXTENDED」に収録。ちなみに彼女は毎年FUJI ROCK FESTIVALに通うほどのミュージックマニアでダンスミュージックへの造詣が深いことでも知られています。デビュー・アルバムの「TELEPATHY」は四つ打ちと2ステップを柱にした、当時の海外のダンスシーンの空気感を見事にリンクさせた出来栄えです。

 

09.U.S.A./DA PUMP
(2018年6月6日リリース)

1997年にデビューし、ヴォーカルのISSAを中心に幾度かのメンバー変遷を経て、今に活動を続けるボーイズグループ。彼らの3年ぶりとなる本シングルがここまでバズる日を、誰ひとりとして想像できた人はいないはず。オリジナルは1992年にリリースされたイタリアのアーティスト、ジョー・イエローの「USA」で90年代のユーロビートを代表する1曲です。マハラジャなどのディスコでヘビープレイされつつも、国内盤のCDになかなか収録されることがなかったことでも知られています。実はDA PUMPにとっては初のユーロビートのチャレンジ。原曲に忠実なサウンド構成でありつつも、シンセ音をシャープに、リズムをファットなビートに再構築。そしてサビ部分の「C’mon Baby アメリカ♪」は意訳の勝利。キャッチーな響きが瞬時に刷り込まれていきます。もちろん、みんなが踊りたくなるシュートダンスもヒットの要因であったことは間違いありません。今年一番の衝撃作とも言えるでしょう。

 

10.世界の中心〜We are the world!〜/青山テルマ
(2018年7月25日リリース)

90年代後半から2000年代初頭にかけて、渋谷のストリートを席巻したコギャルの視点で、「とりまうちらが世界の中心〜」と声高らかに歌い上げるアゲ曲。テルマ自身が最近世間で聴かなくなったパラパラ曲を復活させたいとの想いで、確信犯的に挑んだパーティ・チューン。正確にはユーロビートではなくハイパーなハイエナジー的アプローチで、女子オーバー30世代の青春プレイバックをテンション高めに描いています。歌詞も「チョベリグでIKUZE」「うちらのアイドル永遠NAMIE」「My MIKUよろぴ」と、時代感を踏襲させた歌世界もお見事。コギャルのバイブルでもあった雑誌「egg」(今年の春に復刊)のモデルら総勢50人によるパラパラダンスを収めたミュージック・クリップも当時の空気感たっぷりで必見です。アルバム「HIGHSCHOOL GAL」に収録。

 

いかがでしたでしょうか? ユーロビートを題材にした歌謡曲やJ-POP楽曲はまだまだたくさん「Spotify」に存在しますので、皆さんのお気に入りのあの曲、この曲をぜひ探してみてくださいね!

こんな暑い日は海に行きたい……というときに聴いてほしい「サーフミュージック」30曲

今年の夏はスタートからいきなり真夏のピーク状態。ちょっとクラクラする悩ましい日々が続いています。だからこそ、ヒンヤリとした音楽で涼を取るのもなかなかにオツかもしれません。夏といえば「海」ということで、今回は「サーフミュージック」にスポットを当ててみたいと思います。

 

サーフミュージックとは「サーファーの定番ミュージック」「波乗りのスピード感を表現した音楽」「スロウライフ的なサウンドトラック」などなど、定義があるようでない、いわゆる気分用語的なものとして個人的には解釈しています。しかも、サーフミュージックは時代の移り変わりとともにサウンドのあり方も変化しています。

 

例えば、60年代初頭はエレキギターの早弾きである「テケテケ」のリズムを多用したインスト楽曲が主流で、波乗りの高揚感を連想させるサウンドメイクが特徴でした。映画「パルプ・フィクション」や「TAXI」シリーズで使用されたディック・デイルの「ミザルー」はあまりにも有名ですね。

 

60年代半ばに入ると、アメリカの西海岸を中心にブームを呼んだ音楽スタイルとして、世界中でサーフミュージックの人気が浸透していきます。こちらは美しいコーラスワークがポイントで、カリフォルニア出身のビーチ・ボーイズやジャン&ディーンなどが代表格です。70年代半ば以降には洗練された西海岸関連のAORサウンドやカラパナをはじめとするハワイ産のアコースティックサウンドが、リアルなサーファーたちに愛されました。この時期からサーフミュージック=「メロウ」なるキーワードが芽生えてきたように思えます。

 

80年代前半にはファッションを真似ただけのいわゆる「丘サーファー」を中心に流行ったサーファー・ディスコが、90年代半ばにはメロコア界隈のパンキッシュな音楽も人気を得ました。そして、初のベストアルバムをリリースしたばかりのハワイ出身のサーファー、ジャック・ジョンソンはアコースティックギターを主体としたオーガニックなサウンドで人気を博し、2000年代以降の新しいサーフミュージックのひな形を作りました。これは、2000年代に入ってサーフィンを中心としたライフスタイルが、当時流行った「スローライフ」の象徴として再び盛り上がりを見せ、彼が奏でるオーガニックなサウンドがサーフミュージックの主流となっていったのです。サーファーのリアルなライフスタイルを歌っていることも付け加えておきます。

 

ということで、今回は1960年代〜2010年代にかけてのサーフミュージックのプレイリストをお届けしたいと思います。サーファーはもちろんのこと、サーファーではなくても海や波などをイメージさせる夏のBGMとして機能することを想定してみました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、波乗りに向かう際のBGMとして、もしくは海やビーチに現実逃避するBGMとして活用していただければうれしいです。

 

「海や波を感じるサーフミュージックなプレイリスト30曲」

1.Theme From The Endless Summer/The Sandals
2.Miserlou/Dick Dale
3.Wipe Out/The Surfaris
4.Let’s Go/The Ventures
5.Surf City/Jan&Dean
6.Surfer Girl/The Beach Boys
7.Mama/Country Comfort
8.Catherine/Mackey Feary Band
9.Here With You/Cecilio & Kapono
10.he Hurt/Kalapana
11.Sparkle/Greenwood
12.Words To a Song/Billy Kaui
13.A Love Of Your Own/Ned Doheny
14.Love Love Love/Tristan Prettyman
15.Give You All The Love/Mishka
16.Baby’s Got Sauce/G.Love & Special Sauce
17.Jah Work/Ben Harper
18.Good People/Jack Johnson
19.Upside Down/Jack Johnson
20.The Way It Is/Donovan Frankenreiter
21.After Sense/Sim Redmond Band
22.Tied Down/Colbie Caillat
23.Butternut/Sprout House Band(Tommy Guerrero, Jack Johnson, Money Mark, Adam Topol)
24.In My Head/Tommy Guerrero
25.Thank You For The Music-Nui!/bonobos
26.Think/Caravan
27.Am08:59/Rickie-G
28.Time Stop(Dub Mix)/Moomin
29.After The Sorrow/Natural Calamity
30.Wish You Were Here/Sparklehorse

茅ヶ崎、国道134、江ノ島……ちょっぴりナツい「湘南ソング」10選

例年より早く梅雨が明け、すでに夏の陣よろしくな熱風が激しく吹き込んでおり、夏好きとしては嬉しいやらちょっと悩ましいやら。夏といえば恒例の野外フェスがたくさん控えているのが楽しみでもありますが、それ以上にキラキラと輝く青い海や白い波が恋しくなってきてしまいます。

 

今回は、数ある海モチーフの中から、直球で「湘南」の舞台を描いた楽曲を懐メロ目線でセレクトしてみました。とりわけ、80年代は湘南=トレンディな場所というイメージがあったようで、湘南ソングは80年代に量産されていた記憶があります。茅ヶ崎、国道134、江ノ島、江ノ電などなど、いましっかりと聴き込むと、遠い夏の甘酸っぱい記憶の象徴の場所にも映ります。

 

ちょっと強引な解釈で選ばせてもらっているものもありますが、広義の湘南にまつわる題材を取り上げた楽曲10選です。ジャンルやテイストがビックリするぐらいバラバラなので、選曲の流れに苦心したあげく、新しい年代の音楽から過去にさかのぼるというズルイ形の構成を取らせていただきました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば、有料会員でなくても試聴ができますので、夏の湘南や海に思いを馳せながら、そして湘南のドライブ時に直球で活用していただければうれしいです。

※画面をタップすると試聴できます

 

【Spotifyで聴ける】湘南ソング10曲

01.茅ヶ崎メモリー/ギャランティーク和恵
(2016年7月20日リリース)

アニメソングの女王と呼ばれる堀江美都子が、ブラス・ロックバンドのスペクトラムのリーダー、新田一郎のプロデュースにより新路線を打ち出したアルバ「Ready MADONNA」(1983年発売)。本作でひときわ輝いていた湘南ソングが、数年前から和モノ系DJ諸氏の間で夜毎スピン。この隠れた名曲をGetNavi webでもお馴染み、歌謡曲のマエストロことギャランティーク和恵がグルーヴィーにカバー。寄せては返す白い波に2人の心情を重ねあわせた妙なる歌世界。しなやかなリズムセクションと弾むベース、軽やかに駆けていくキーボードの饒舌な音色。そして心が沸き立つギャランティーク和恵のヴォーカルと、すべての要素が見事に音へと昇華された傑作。まさに国道134号線(横須賀市〜大磯町間)をドライブする際のサウンドトラック。ミニアルバム「ANTHOLOGY#2」に収録。

 

02.鎌倉/土岐麻子
(2010年5月26日リリース)

80年代のシティ・ポップを現代にアップデートさせた音楽性で人気のシンガーソングライターが、2010年に発表した鎌倉ソング。「滑川 行き過ぎて サーフボードに伸びる影」と、由比ヶ浜と材木座海岸の間を抜けて海に注ぐ鎌倉市の代表的な「滑川」が描かれているので、広義の湘南ソングとしてチョイス。都会に住む主人公が、故郷である鎌倉の季節の移り変わりを想う、もしくは鎌倉の家族や懐かしいあの人を振り返る。「鎌倉はどうですか?」と。でも「私は相変わらずです」と。音の感触はシティ・ポップ夜明け前。例えば初期荒井由美やはっぴいえんどを重ねる枯れたアレンジが、「風街鎌倉編」とでもいうべきサウダージな世界観を描いている。作曲は森山直太朗、編曲は高田漣という布陣も納得。アルバム「乱反射ガール」に収録。

 

03.湘南ドリーミング/村田和人
(1990年7月25日リリース)

山下達郎に才能を見出されて、バックコーラスでツアーに参加。その後、彼のプロデュースで82年にソロデビュー。夏をテーマに湘南界隈の情景を歌った楽曲が多いことでも知られている氏が、久しぶりに夏路線へと回帰。過去と未来の湘南ドリーミングを歌い上げる。かつての湘南ドリーミングは過ぎ去った夏の日々、これからの湘南ドリーミングは新しい夏の微笑みとの出会いへの期待。永遠の少年のような爽やかな歌声にあらためて魅せられてしまう。ヴォーカリストとしての資質が高い評価を得たアルバム「空を泳ぐ日」に収録。2016年に急逝。この年の山下達郎のツアー「PERFORMANCE 2016」のラストで、村田の初期のヒットシングル「1本の音楽」を追悼弾き語りをしたことは記憶に新しい。

 

04.湘南ハートブレイク/荻野目洋子
(1989年6月7日リリース)

バブリーダンスを象徴する「ダンシング・ヒーロー」の再評価で復活した荻野目ちゃんの18枚目のシングル。本作は日本人好みの「泣き」のメロディが全編にわたって爆発した歌謡ユーロビート路線(?)の決定版。舞台は国道134であろうか。雨降る湘南を走る車中での、雲行きの怪しい2人の別れ話の駆け引き、そして失恋模様。お互いの心が離れたときのあるあるな描写がとっても秀逸です。作詞は数々の大ヒット曲を手がけた売野雅勇。この楽曲で荻野目ちゃんは東京系列主催の音楽祭「メガロポリス歌謡祭」でポップス大賞を受賞した。ちなみに湘南を舞台にした他の楽曲に「湾岸太陽族」(1987年)がある。

 

05.Route 134/杉山清貴&オメガトライブ
(1985年7月1日リリース)

80sの都市型リゾートポップスを歌わせたらこの人。80年代に人気を博したシンガーソングライターの杉山清貴がオメガトライブとともに、湘南ルートの象徴である「ルート134」=国道134号線の海岸線を駆けぬけるドライブソング。冒頭の「葉山を抜けたら」では、鎌倉を越えて飯島トンネルを抜けた材木海岸、もしくは由比ヶ浜が見えているに違いない。しばらくすると、かつて茅ヶ崎に存在した湘南のランドマーク的な存在だった「パシフィックホテル茅ヶ崎」が見えてくる。人によっていろんなイメージを想起させる湘南という場所。当時の湘南=おしゃれなイメージをふんだんに盛り込んだ湘南ソングと言えるかもしれない。作曲とアレンジはこの手のサウンドを手がけたら間違いない林哲司。アルバム「ANOTHER SUMMER」に収録。

 

06.夏をあきらめて/研ナオコ
(1982年9月5日リリース)

サザンオールスターズの5枚目のアルバム「NUDE MAN」に収録されている名曲を、当時お茶の間の人気者だった研ナオコが約1か月半後にカバー。原曲の世界観を壊さないことを意識して、歌録りが進められていったという。彼女特有のハスキーなヴォーカルが哀愁観を大爆発させており、雨に濡れる湘南の風景と二人の微妙な心情を灰色に染めあげていく。歌詞中にはパシフィックホテル茅ヶ崎が「PACIFIC HOTEL」として登場する。本作で彼女は第24回日本レコード大賞金賞を獲得し、作者の桑田佳祐は作曲賞を受賞している。ちなみに、印象的なフレーズ「熱めのお茶を飲み 意味シンなシャワーで」を、スチャダラパーが「サマージャム’95」でさりげなく引用していたりします。

 

07.渚に行こう/ブレッド&バター
(1979年6月25日リリース)

かつて1975年から1978年にかけて、茅ヶ崎に「Bread & Butter」という名のカフェがあった。湘南の先端を行くミュージシャンやサーファーたちが夜毎集い、ユーミンをも通わせた伝説のライブカフェ。そこを仕切っていたのは、地元出身の岩沢幸矢、二弓兄弟。ブレッド&バターとしてデュオ活動も行っていた彼らの復活作「Late Late Summer」に収録された珠玉の名曲。湘南に広がるとっておきの海の風景を、「君」と一緒に共有できる瞬間をローカルならではの視点で描く。麗しのボッサタッチなアレンジは当時ティン・パン・アレーとして活動していた細野晴臣と鈴木茂によるもの。

 

08.走れ!江ノ電/太川陽介
(1979年10月25日リリース)

昨年まで出演していた「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京系列)で人気再燃。アイドル時代のヒット曲「Lui-Lui」ダンスのイメージが強すぎる彼が、こんなにしっとりとした哀歌も歌っていたのです。鎌倉と藤沢を結ぶローカル線の江ノ電に乗って、かつての恋人と長谷寺、七里ヶ浜、極楽寺と、一緒に揺られた思い出をプレイバック。制作の背景として、川崎市の御幸中学校放送部が作成した映像作品「走れ!江ノ電」をもとにして、本楽曲が作られたエピソードがある。少々蛇足だが、デビュー同期には川崎麻世、渋谷哲平、新田純一、ひかる一平らがおり、太川のデビュー時のキャッチフレーズは「昇れ! 太陽くん」でした。

 

09.かもめが翔んだ日/渡辺真知子
(1978年4月21日リリース)

1977年にシングル「迷い道」でデビューし、すでにブレイクを果たしていた彼女のセカンドシングル。本作では作詞を数々の歌謡曲やアニメソングを手がけていた伊藤アキラに発注。渡辺にとって詞ありきの曲作りは初めての経験だったという。歌い始めの印象的な「ハーバーライトが 朝日にかわる そのとき一羽の かもめが翔んだ」。このドラマティックなフレーズは、いま聴いても永遠に色褪せない「言葉」の強さがある。そしてそれを支えるマイナーコードのメロディの輪郭も実に鮮やか。ピアノとストリングスがスリリングに交差し、失恋したと思しき女性が深い悲しみや迷いからサビ部分で一気に解放されていく。歌詞中に具体的な地名は出てこないが、自身の出身地である横須賀の観音崎をイメージして歌っているとインタビューで発言している。なので厳密には湘南ソングではないが、観音崎へ行くのに「湘南京急バス」(今年の3月に京浜急行バスに吸収合併)の観音崎が最寄りの停留所だったので、超強引に湘南ソングとして紹介させていただきました。

 

10.想い出の渚/加瀬邦彦&ザ・ワイルドワンズ
(1966年11月5日リリース)

60年代に一世を風靡したグループサウンズブーム。その象徴的なバンドであるザ・スパイダースと寺内たけしとブルージーンズを渡り歩いた加瀬邦彦が1966年に結成。「想い出の渚」は彼らのデビューシングルとして大ヒットを記録し、その後のグループサウンズブームの千鞭を切った。加瀬が爪弾く12弦ギターの美しい調べ、爽やかなコーラスワーク。イントロが鳴った瞬間に60年代の湘南ワールドが瞬時に浮かんでくるよう。ちなみにメンバーは湘南サウンドの元祖とも言える加山雄三と慶応大学時代の先輩・後輩つながり。とりわけ加瀬は高校時代に加山からギターを学び、音楽の道を志すほど影響を受けている。ゆえにサウンドも加山雄三のスタイルを踏襲しており、楽曲のモチーフは加山雄三の代表曲「君といつまでも」のエッセンスに、ビートルズのリズムを取り入れたとの逸話もある。

 

いかがでしたでしょうか? 湘南や海を題材にした楽曲はまだまだたくさん「Spotify」に存在しますので、皆さんのお気に入りのあの曲、この曲をぜひ探してみてくださいね。

日本には“雨”にまつわる名曲がいっぱい! 雨の日に聴きたいレインソング10選

早いもので、気づけば梅雨の真っ只中。今年の関東甲信と東海、近畿の各地方の梅雨入り宣言は6月6日(水)でした。雨降りが続くと少し憂鬱な気分にもなりますが、梅雨の時期は大好きな夏が待っていると思えばワクワクしてきますし(私だけ?)、雨降りシーズンならではの進化したレインファッションも楽しめますよね。

 

そして、この時期に控えめに咲き誇るアジサイの花。雨露に濡れたアジサイを街中で目にするたびに、見慣れた通りの風景もいつもとは違って見えますし、梅雨ならではのワビ・サビ的な季節感を実感し、それこそ夏の到来もますます心待ちになってきます。

 

今回は、シーズン的な切り口で、いわゆる「レインソング」をセレクトしてみました。雨をモチーフにしている楽曲、雨降りのシチュエーションを描いた楽曲、梅雨時期の象徴でもある「アジサイ」を扱った楽曲など、雨にまつわる題材を取り上げた楽曲を10曲選んでみました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、雨降りのときにこそ、楽しんでいただければうれしいです。

 

【雨の日に聴きたいレインソング10曲】

01.雨のステイション/ハイ・ファイ・セット
(1977年2月5日リリース)

荒井由実が1975年に発表した3枚目のオリジナルアルバム「COBALT HOUR」の収録曲を、コーラス・ユニットのハイ・ファイ・セットがカヴァー。「六月は蒼く煙って」と歌詞にあるように時期は梅雨シーズンと思われ。始発列車を待つ少女。会えるはずのない人を待ち続ける切なさ、愛おしさ。山本潤子の情感溢れる歌声で歌われると、ドラマティックな歌世界へと劇的に昇華されていくのは気のせいでしょうか。全編に漂うソフィスティケイトされたサウンドプロダクションも必聴です。ちなみに当時のJR青梅線の西立川駅がモチーフとなっているそうで、駅の発車時のメロディも「雨のステイション」が使用されていたりします。アルバム・チャート首位を13週連続で独走した「Love Collection」に収録。

 

02.あじさい/鈴木祥子
(1995年6月21日リリース)

松田聖子や小泉今日子など数々のアーティストに楽曲提供し、奥田民生や草野マサムネらもファンを公言する、まさにミュージシャンズ・ミュージシャン的な日本を代表する女性シンガーソングライター。雨降りが続くこの季節ならではの象徴的な花「紫陽花(アジサイ)」をモチーフに、「水たまりは虹色 紫陽花はむらさき 昨日のことみたいな あの街で暮らしてた日々を想うよ」と、アジサイを通して雨露を纏った街の情景と、かつてのあなたと私の姿を鮮やかに浮かび上がらせる。ローファイなサウンドメイクに踏み込んだ傑作アルバム「SNAPSHOTS」に収録。

 

03.雨降る東京/古内東子
(1998年8月19日発売)

今年でデビュー25周年を迎えた彼女。かつて「恋愛の神様」なる枕詞もあった女性シンガーソングライターによる隠れた名曲。雨降りのアイテム「傘」を効果的に使った、いわゆる相合傘のシーンを歌ったメロウな楽曲。「雨が止んでも どうか傘は閉じないで 時々触れあう腕に 夢を見させて」と、男女問わず皆さんが通ってきたであろう雨降る東京でのちょっとドキドキするシーンを描いてみせる。かつての甘酸っぱい記憶を手繰り寄せてくれる、そんな1曲かもしれません。自身初のオリコンアルバムチャート1位を獲得した7枚目のオリジナルアルバム「魔法の手」に収録。

 

04.縦書きの雨/東京スカパラダイスオーケストラ feat.中納良恵
(2012年3月21日リリース)

毎回、あっと驚くアーティストをゲストに迎えて、我々を楽しませてくれるスカパラですが、アルバム「Walkin’」リリース時のプレスリリースで、「EGO-WRAPPIN’の中納良恵が参加!」のニュースにミュージック・ラヴァーたちは狂喜したものです。しっとりとした大人のミディアム・チューンといった体で、なんとも沁み入る歌世界と芳醇な歌声は、まさに相思相愛。メンバーがずっと彼女にラブコールを送っていたのは有名な話。バリトンサックス奏者の谷中 敦による「縦書きの雨」=「口には出さない秘めたる想い」が溢れ出し、人を癒していく。雨を別のメタファーに置き換えた好例でもあります。

 

05.雨/Suchmos
(2017年3月22日発売)

数多くのバンドに愛されるペトロールズの結成12周年を祝して、昨年にリリースされたトリビュート・アルバム「WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?」で、Suchmosが人気曲の「雨」をカバー。軽やかに刻まれるキーボードの音色とYonceの気怠くもソウルフルな歌声が、原曲が持つメロウな側面を増幅させて完全に自分たちのものにしている。「逢いたい気持ちはこの雨のように 全てを濡らして色を増すように」と、雨という要素が歌詞中の2人の関係性と距離感をそれとなく伝えてくれているようだ。

 

06.雨は毛布のように/KIRINJI
(2001年6月13日発売)

兄弟時代のキリンジによる7枚目の傑作シングル。この楽曲をフェイバリットに挙げる人は非常に多し。外は土砂降り。ケンカしていた2人が雨宿りにも飽きて、雨降りの街に飛び出す。いつしかケンカ中の2人も、子どものようにずぶ濡れではしゃいで仲直り。負の感情の高ぶりを、2人の肌に降り注ぐ雨水が毛布のように優しく包み込んでいく。憂鬱な雨もいつしか「クールな調べ」に聴こえてくるメロディの雄弁さ。コーラスでさりげなく華を添えているaikoの参加も話題になりました。振付家の川口ゆいが出演したミュージックビデオで披露するコンテンポラリーダンスも必見です。アルバム「fine」に収録。

 

07.雨のフライデー/フレンズ
(2017年11月22日リリース)

メンバーはおかもとえみ(元THEラブ人間)、ひろせひろせ(nicoten)、長島涼平(元the telephones)、三浦太郎(元HOLIDAYS OF SEVENTEEN)、SEKIGUCHI LOUIE(元The Mirraz)の計5人。様々なキャリアを持つ東京のバンドマンが集結した、広義的な現代のシティポップを奏でる「神泉系バンド」。本作はキラキラとしたイントロからつかまされてしまうセンチメンタルなナンバーで、もちろん設定は雨降りのフライデーの夜。「特別な フライデー 期待した 甘い言葉だけ変わらないで」と、女性目線の甘酸っぱくもアーバン・ブルース的な側面も盛り込まれたポップチューン。ミニアルバム「プチアルバム」に収録。

 

08.あめふりヒヤデス – alternate mix-/UA
(1998年4月22日発売)

ドラマ「不機嫌な果実」(TBS系列)の主題歌に起用されたシングル「悲しみジョニー」のカップリング曲で、こちらは別ミックス・ヴァージョン。ダブバンドのLITTLE TEMPO(リトルテンポ)によるプロデュース&演奏で、現在KIRINJIに在籍する田村玄一によるスティールパン(トリニダード・トバゴ共和国の打楽器)の音色が、ひんやりとした雨音を思わせるようでとにかく心地いい仕上がり。蒸し暑さをしばし冷却してくれそう。ところでヒヤデスには「雨を降らせる女」という意味があるのだとか。1997年に発表されたセカンドアルバム「アメトラ」に収録。

 

09.Another Rainy Day In New York City/Chicago
(1976年2月リリース)

ロックにブラス(ホーンセクション)を取り入れたブラス・ロックと呼ばれる音楽性で、70年代前半から80年代にかけて活躍したロックバンド。それがシカゴ。この頃には元々の売りでもあったアグレッシブなブラス・アレンジは後退し、ポップ色やバラード色が強くなっていた時期でもあった。バンドの創設メンバーでもあるロバート・ラム(Vo&Key)が幼い頃に過ごしたニューヨークの思い出を、雨の情景を通して振り返った内容で、ライトなラテンタッチのアレンジが心地いい。こちらもスティールパンの音色がアクセントになっている。ちなみにリリース時の邦題は「雨の日のニューヨーク」。あらゆる音楽要素を取り込んだ8枚目のオリジナルアルバム「シカゴX(カリブの旋風)」に収録。

 

10.Sun After The Rain/The Salsoul Orchestra
(1979年リリース)

ニューヨークの伝説的なダンスミュージック・レーベル「サルソウル」のハウスバンド(箱バン)として1974年に結成された、凄腕ミュージシャン集団「サルソウル・オーケストラ」。ヴィヴラフォン奏者であり名アレンジャーのヴィンセント・モンタナ・ジュニア率いる彼らは、フィリーソウルをディスコへと発展させ、後のハウスミュージックに多大なる影響を与えたレジェンドとも言えます。まさに雨上がりの陽だまりを描いたような、ハートウォーミングなサウンドがたまらない。時代を経たいまでも、国内外のハウスミュージックのDJが明け方にプレイするアフターアワーズの定番曲でもあります。後期のアルバム「Street Sence」に収録。

 

雨を題材にした楽曲は洋楽・邦楽問わずにまだまだ無限に存在します。それこそ、雨あがりの「虹」を扱った名曲もたくさんあったりします。皆さんのお気に入りのあの曲、この曲をSpotifyでぜひ探してみてくださいね。

祝・東名高速道路全通記念日! 夜のドライブで流したいアーバンなプレイリスト35曲

気づけば初夏真っ只なかですが、夏の匂いが近づいてくるとちょっとしたドライブもなぜか楽しくなりますよね。ところで、5月26日は「東名高速道路全通記念日」なのをご存知でしたでしょうか? ときは1969年。東名高速道路(第一東海自動車道)の大井松田IC(東京都)から御殿場IC(静岡県)間が開通し、東京から愛知県小牧市まで約346kmにおよぶ東名高速道路が全線開通しました。従来はトラックの台数の方が圧倒的に多かったそうですが、東名高速道路開通後、マイカーブームも相まって乗用車の台数が急激に増えていったそうです。

 

そんな物流や移動の導線に大きな革命を与えた大動脈「東名高速道路全通」の日に添って、今回は「ドライブ・ミュージック」のプレイリストをお届けしたいと思います。シチュエーションは夜の首都高速。真夜中を迎えつつある首都高をナイトクルーズする際のBGMにふさわしい、アーバンでメロウな楽曲を幅広くセレクトしました。70年代のフュージョンやAOR、80年代のソウル、シティ・ポップ、ゼロ年代のR&B、そして現在進行形の要注目なニューカマーまで。なんとなく「色艶」を感じる点がポイントでしょうか。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、夜のドライブをセクシーに(?)彩るお供として、活用していただければうれしいです。

 

※画面をタップすると試聴できます

 

【夜の首都高に映えるアーバンなプレイリスト35曲】

1.Fly Over The Horizon/Azymuth
2.キスカ/山下達郎
3.Midnight Pretenders/亜蘭知子
4.Something About You/Ramsey Lewis
5.Spaceship Coupe/Justin Timberlake
6.Movie/Tom Misch
7.So Far To Go feat. Common&D’angelo/J Dilla
8.Feel Like Makin’ Love/D’angelo
9.Ascension(Don’t Ever Wonder)/Maxwell
10.Thinkin Bout You/Frank Ocean
11.Summer Reminds Me/小袋成彬
12.Bad Mood/Triathalon
13.L.A.Night/阿川泰子
14.Time Goes By/サーカス
15.サマーブリーズ’86/一十三十一
16.It’s Our Own Affair/Ray Parker,Jr.
17.Rock With You – Single Version/Michael Jackson
18.My Love Is Forever/Prince
19.Lowdown – Edit/Boz Scaggs
20.Lucky Radio/Samuel Purdey
21.Fragments Of Time/Daft Punk
22.If I Saw You Again/Pages
23.Cheapest Flight/PREP
24.YUMEGIWA LAST BOY(ゆるふわギャングVersion)/ゆるふわギャング
25.SSWB/D.A.N.
26.ラビリンス/Mondo Grosso
27.Loyal Man’s Logic/WONK
28.Street Corner Symphony/Street Corner Symphony
29.The Whistle Song – Re-Directed/Frankie Knuckles
30.Beijo(Interlude)aka Brazilian Rhyme(Interlude)/Earth, Wind & Fire
31.Time And Space/Roy Ayers Ubiquity
32.頬に夜の灯/吉田美奈子
33.You Are The Way You Are – Instrumental/Marvin Gaye
34.Life Easy/Suchmos
35.Seeing You For The First Time/Jimmy Messina

これが渋谷系の源流だ! 洋楽で振り返る「バック・トゥ・渋谷系 100曲」プレイリスト

「現場感」という名の当時の夜遊び目線でセレクトした90年代(厳密には87年、89年の音源も含む)の「渋谷系プレイリスト」に続いて、今回は「洋楽編」をお届けしたいと思います。渋谷系としてくくられる音楽は得てしてJ-POPがほとんどですが、あの時代を経験した世代にとっては、実は洋楽にこそ本質があるのだと思います。

 

前回のテキストをサンプリング&エディットしますが、そもそもの「渋谷系」なる音楽性は、海外の最先端の音楽シーンと同時代的にリンクしていたムーブメントでした。80年代後半からイギリスやアメリカのクラブ界隈で流行っていた、レア・グルーヴ、グラウンド・ビート、アシッド・ジャズ、アシッド・ハウス、ニュースクール、インディー・ダンスといった、フレッシュなサウンドに触発された東京の新世代アーティストたちが、独自の解釈で自分たちの音楽をクリエイトし始めていました。それはほぼ時間差なく。気づけば、彼らが奏でる音楽はいつしか「渋谷系」と呼ばれるようになっていきました。

 

当時の渋谷系周辺のバンドやアーティストは、上記に挙げたようなDJカルチャーを経由した(90年代当時の)時代性を伴った最新の音楽的エッセンスを、自分たちのサウンドに積極的に取りこんでいきました。その一方で、作品作りのモチーフや楽曲アレンジ、もしくはサンプリング・ソースとして、60〜80年代の過去のレアな音源も好んで掘り起こしていました。例えば、映画音楽、フレンチポップ、ソウルジャズ、ソウル、ファンク、ソフトロック、ネオ・アコースティック、ボサノヴァ、ブラジリアンなど。つまり、洋楽ありきで「渋谷系」の種は徐々に育まれていったのです。こうした過去の音源と現在進行形のサウンドを同一直線上で再編纂する手法は、まさに新世代ならではの自由な発想であり、だからこそ新しい音楽が生まれていったのだと思います。

 

さらに、コアな音楽リスナーもまた、お気に入りの楽曲に引用されたフレーズやサンプリングされたリズムパターンなど、過去のオリジナル音源を探し求めて、ミュージシャンやDJと同じようにレコードをディグったりもしていました。それこそ、オリーブ少女(実は一番のヘヴィーリスナーだったと思われ)を筆頭に、オシャレ女子が普通にレコード屋さんを出入りしていた謎の時代でもありました。そして、楽曲の元ネタに想いを馳せながら音楽を聴くという、今までにはなかった独特なリスニングスタイルが確立されていきました。このように、時代、国境、ジャンルを越えた雑食性に溢れた音楽的資質こそが、渋谷系の面白さだったように思えます。ちなみにドメスティックでは山下達郎さんやはっぴいえんど周辺の音楽は、すでに別格の扱いだった記憶があります。

 

ということで、当時の渋谷系周辺のサウンドメイクの象徴として引き合いに出されることが多かった音源や、レコードショップで買い漁っていた12インチシングル音源、小西康陽さん(元ピチカート・ファイヴ)やフリッパーズ・ギターのおふたり、瀧見憲司さん(クルーエル・レコーズ主宰)、雑誌「Hot-Dog PRESS」時代の編集者・選曲家の橋本 徹さん(サバービア・スイート、フリー・ソウルの仕掛け人)らが、当時DJプレイしていた楽曲なども含めてぼんやりとセレクトしてみました。

 

流れとしては、映画音楽〜ソフトロック〜エルレーベル〜ソウルジャズ〜広義のアシッド・ジャズ〜ニュースクール〜初期R&B〜グラウンド・ビート〜UKインディーズ〜インディー・ダンス〜ネオ・アコースティック〜カーディガンズといった感じでしょうか。60年代から90年代、そして最後は80年代の音楽にちょっと戻るニュアンスです。個人的に得意な70年代のソウル、ファンク、ボサノヴァ、ブラジリアン、USAインディーズなどは曲数の兼ね合いもあり、今回はカットさせていただきました。

 

そして、〆に選んだカーディガンズですが……スウェディッシュ・ポップを牽引した彼らが1995年にリリースしたシングル「カーニヴァル」が国内でも大ヒットを記録。渋谷系終焉イヤーと勝手に解釈している1995年という節目でもあることから、ラストに彼らの楽曲をチョイスした次第です。……と、さっきから意味不明なカタカナ語が飛び交っているかと思いますが、ググると答えが出てくると思いますので、興味のある方はお時間があるときにでもチェックしてみてください。

 

最後に。元bounce編集部で音楽ライター・DJのフミヤマウチさんが「note」の連載で洋楽で渋谷系をプレイバックするという素晴らしい試みをされていますが(多分、自分のことは覚えていないかと)、後輩として同じベクトルというか心意気で、セレクトという名の青春プレイバックをさせていただきました。蛇足ですが、渋谷系の裏テーマとして、レコードは「Touch&Buy」、クラブでは「Dance, Drink or Die」でもあったことも付け加えておきます。

 

※画面をタップすると試聴できます

 

【プレイリスト収録曲】

1.Seven Golden Men/Armand Trovajoli
2.Rossana – organo version/Armand Trovajoli
3.The Red Bus/Armand Trovajoli
4.Sesso Matto/Armand Trovajoli
5.Al trani/Carlo Rustichelli
6.How Is the Weather In Paris/Alain Romans
7.Mon oncle/Frank Barcellini
8.Samba Saravah/Pierre Barouh
9.The Girl From U.N.C.L.E./Dave Grusin
10.L’americana/The Swingle Singers
11.Goodbye Columbus – Instrumental/The Association
12.Mad/Harpers Bizarre
13.The Drifter/Harpers Bizarre
14.Windy/Astrud Gilberto
15.Call Me/Chris Montez
16.Finders Keepers/Salt Water Taffy
17.Mr.Dieingly Sad/The Critters
18.I Just Want to Be Your Friend/The Millennium
19.Curtain/Marden Hill
20.You Mary You/Louis Philippe
21.The Camera Loves Me/Would-be-Goods
22.The Man Who Invented Jazz – Extended/Bobby Valentino
23.Le coeur qui jazze/France Gall
24.Duo/Martial Solal
25.La Pasionaria/Michel Legrand
26.Selim/Johnny Lytle
27.Milestone –Live/Charles Earland
28.Freedom Jazz Dance/Woody Herman
29.Rapid Fire/Black Heat
30.Bring Down The Birds – Outtake/Herbie Hancock
31.Car Chase/James Taylor Quartet
32.Jus’ Reach/Galliano
33.Prince of Peace/Galliano
34.Music – 12’’ Mix/Omar
35.Too Young to Die – 12’’Version/Jamiroquai
36.Apparently Nothin’ – Original 12’’ A Side/Young Disciples
37.Dream Come True/The Brand New Heavies
38.Keep It Coming/The Brand New Heavies
39.Nothing/Sandals
40.Something In My Eye/Corduroy
41.Nothing Can Stop Us/Saint Etienne
42.Barbarella/Fuzzbox
43.Give Me Just A Little More Time/Kylie Minogue
44.Lolita Go Home/Jane Birkin
45.Be My Baby/Vanessa Paradis
46.Your Love Has Got A Handle On My Mind/Vanessa Paradis
47.It Ain’t Over ‘Til It’s Over/Lenny Kravitz
48.Dub Be Good To Me/Beats International
49.She’s A Woman – Little Way Different 7’’/Scritti Politti
50.Step It Up/Stereo MC’ s
51.The Hip Hop Band – Interlude/Stetsasonic
52.My Definition Of A Boombastic Jazz Style/Dream Warriors
53.Peachfuzz/KMD
54.Set Adrift On Memory Bliss(Re-Recorded)/P.M.Dawn
55.Bonita Applebum/A Tribe Called Quest
56.Award Tour/A Tribe Called Quest
57.Lot’s Of Lovin’/Pete Rock & C.L.Smooth
58.A Free Soul/Gumbo
59.Tell Me Mama/Tony! Toni! Tone!
60.It’s a Shame(My Sister)/Monie Love
61.Let Me Turn You On/Biz Markie
62.Right Here-Human Nature Radio Mix/SWV
63.Hey Mr.D.J.-Original Mix-Edit/Zhane
64.Revival/Martine Girault
65.Where Are You Baby/Betty Boo
66.Good Beat/Deee-Lite
67.The Girl From IPANEMA(Gota Remix)/Lio
68.Tom’s Diner/DNA feat. Suzanne Vega
69.I’m Still Waiting/Courtney Pine feat. Carroll Thomson
70.Get It On,Pt.1/Yoyohoney
71.All Around the World/Lisa Stansfield
72.Forever Blue/Swing Out Sisters
73.Love/The Dream Academy
74.Biology/Gangway
75.Buzzing/Top
76.And Then She Smiles/The Mock Turtles
77.Sway/Ocean Colour Scene
78.There She Goes/The La’s
79.Pearl-Edit/Chapterhouse
80.Catch The Breeze/Slowdive
81.Glider/My Bloody Valentine
82.Loaded-Andy Weatherall Mix/Primal Scream
83.I’m Free/The Soup Dragons
84.Groovy Train/The Farm
85.Fools Gold/The Stone Roses
86.Caravan/Inspiral Carpets
87.He’s Gonna Step On You Again/John Kongos
88.Loose Fit/Happy Mandays
89.Weirdo/The Charlatans
90.Still Feel The Rain/Stex
91.Now Is Tomorrow/Definition Of Sound
92.Mathar – Radio Mix/Indian Vibes
93.Floatation – Single Edit;Remixed by Andrew Weatherall/The Grid
94.Trees and Flowers – Extended Mix/Strawberry Switchblade
95.Wearing Your Jumper/A Craze
96.If She Doesn’t Smile(it’ll Rain)/Fantastic Something
97.Forever/The Hit Parade
98.Streets of Your Town/The Go-Betweens
99.Palm Of My Hand/The Pale Fountains
100.Carnival/The Cardigans

祝・週刊少年ジャンプ創刊50周年記念! コンピCD未収録のアニソン名曲10選

時代を彩る数々の大ヒットマンガを生み出してきた「週刊少年ジャンプ」が、創刊されて50周年という節目を祝って、様々な仕掛けが発信されています。まず、昨年から東京・六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中の『週刊少年ジャンプ展』は、創刊から現在までの軌跡をたどった企画展で、現在第2弾「週刊少年ジャンプ展VOL.2 1990年代、発行部数653万部の衝撃」が好評開催中です(2018年6月17日まで)。

 

90年代を牽引した名作マンガにまつわる数々のコンテンツがラインナップされており、例えば、井上雅彦「SLAM DUNK」、鳥山明「DRAGON BALL」、冨樫義博「幽☆遊☆白書」などの連載作品の展示コーナーやシアターゾーン、最大発行部数を記録した653万部(1994年12月20日発売の1995年3・4合併号)に到達するまでを振り返った「Jump Tornado」などなど、青春プレイバックできること必至!

 

そして音楽方面では、誌面掲載からアニメ化された歴代名作の主題歌などをノンストップで1枚にコンパイルしたコラボCD「週刊少年ジャンプ50th Anniversity BEST ANIME MIXvol.1」と、つい先ごろには「週刊少年ジャンプ50th Anniversity BEST ANIME MIXvol.2」もリリースされ、年代とジャンルを超越したセレクトと鬼ミックスで話題を呼んでいます。

↑「週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.1」&「週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX vol.2」(エピック・レコード)

 

今回は男子なら必ず通っているであろう「週刊少年ジャンプ」からアニメ化された作品の中から、上記のオフィシャルミックスCDとかぶらないような選曲で、80年代、90年代、00年代から各3曲ずつ、10年代から1曲のアニメソング全10曲をセレクトしてみました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、あの時代に思いを馳せながら、楽しんでいただければうれしいです。

 

【Spotifyで聴ける】週刊少年ジャンプのアニソン10曲

01.渚の『・・・・・』/うしろゆびさされ組
(1986年8月27日リリース)

「ハイスクール!奇面組」原作・新沢基栄

一応高校の変わった5人組、奇面組が学園生活で繰り広げるギャグマンガ『ハイスクール!奇面組』。当時人気絶頂だったおニャン子クラブから派生した、高井麻巳子と岩井由紀子によるユニット、うしろゆびさされ組の「うしろゆびさされ組」「象さんのすきゃんてぃ」に続く3曲目のオープニングテーマ。作詞は秋元康、作曲は後藤次利で、タイトルはもとより、歌詞の「足跡が・・・・・」を「足跡が てんててんててん」と読ませる言葉遊びがお見事。遠くで鳴る後藤次利のファンキーなチョッパーベースもいい感じです。63話の「うしろゆびさされ組の卒業式ジャック」では、昭和61年度一応高校卒業式に、すでに解散を発表していたうしろゆびさされ組が実際にアニメで登場し、サプライズライブを行うという粋な仕掛けも。

 

02.RUNNING TO HORIZON/小室哲哉
(1989年10月28日リリース)

「シティハンター」原作・北条司

「キャッツ♥アイ」で大ブレイクした北条司による次作「シティハンター」は、主人公の始末屋・冴羽 獠の名セリフ「もっこり♥」とともに人気を博しました。当時エピック・ソニー(現エピック・レコード)所属の小比類巻かほる、TM NETWORK、岡村靖幸、鈴木聖美など、売れっ子アーティストがオープニングとエンディングテーマをクールごとにほぼ独占。そしていよいよ「シティハンター3」のオープニング曲を小室哲哉が担当したのが本作。80年代に全世界を席巻したダンスミュージック「ユーロビート」を牽引した、売れっ子プロデューサーチーム「ストック・エイトキン・ウォーターマン」に対する小室からの正式解答とでもいえる意欲作。彼にとってのソロ・デビューシングルで、オリコンシングルチャート首位を見事獲得した。

★アルバム「Digitalian is eating breakfast」収録

 

03.NIGHT OF SUMMERSIDE/池田政典
(1987年5月1日リリース)

「きまぐれオレンジ☆ロード」原作・まつもと泉

主人公の春日恭介を中心に、ミステリアスな美少女の鮎川まどかと、後輩の檜山ひかるとの微妙な三角関係を描いたラブコメ「きまぐれオレンジ☆ロード」。アニメ化が決定したときにはものすごい反響があったのだとか。主題歌を担当したのは、千葉真一が主宰する「JAC」から芸能界デビューし、現在では俳優として活動している池田政典。浮かび上がるのは夏の夜の匂いと男女の駆け引き。80sライト・ファンクとでもいうべきしなやかなサウンドは、思わず夜の首都高を駆けたくなる隠れた名曲。どうしたって杉山清貴を重ねてしまいますけど。「ハイウェイ・ジャンクション」「入江並ぶマストの影」「デッキ」と時代を反映したキーワードにもグッときちゃいます。作曲はNOBODY、編曲は新川博。

★アルバム「QUARTERBACK」収録

 

04.うれし涙/酒井法子
(1992年3月4日リリース)

「電影少女」原作・桂正和

失恋した弄内洋太が借りてきたレンタルビデオを再生していたら、いきなり実物の美少女、天野あい(ビデオガール)がテレビの中から飛び出してきた。思春期男子が喜ぶ設定が当時大いに受けた、桂正和原作のSFラブコメ「電影少女」。92年にOVAとして「電影少女 -VIDEO GIRL AI-」のタイトルでアニメ化。そのオープニングテーマは、昨年にデビュー30周年を迎えた酒井法子によるもの。シングル「軽い気持ちのジュリア」のカップリング曲で、ポップに弾けたサウンドに乗せて愛する人がそばにいる喜びを歌い上げる。劇中の音楽はムーンライダーズの岡田徹によるもの。今年に入って連続ドラマ「電影少女〜VIDEO GIRL AI 2018〜」(テレビ東京系)として、乃木坂46の西野七瀬主演で実写化。このときの主題歌と劇中の音楽はtofubeatsが担当していた。

★「ナチュラル・ベスト」収録

 

05. VIRGIN LAND/アン・ルイス
(1993年11月21日発売)

「ジャングルの王者ターちゃん♡」原作・徳弘正也
「新ジャングルの王者ターちゃん♡」原作・徳弘正也

いわゆる「もっこり」描写を誰よりも早く(?)定着させた、徳弘正也によるHなデビュー作「シェイプアップ乱」に続くヒット作「ジャングルの王者ターちゃん♡」。ジャングルの平和を守るターちゃんの活躍を描いたドタバタギャグマンガで、お得意の下ネタを盛り込みつつ、徐々に格闘の要素が強くなっていく展開に。本楽曲はエンディングテーマで、アン・ルイスの少しハスキーがかった歌声と叙情的なサウンドとが見事に溶け合ったロックバラード作。表情豊かなギターサウンドは、オジー・オズボーンのバンドやバッドランズなどハードロック界隈でおなじみのジェイク・E・リーが弾いている。ちなみに、ターちゃんの声は俳優の岸谷五郎が務めた。

★シングル「Virgin Land」収録

 

06.そばかす/JUDY AND MARY
(1996年2月19日リリース)

「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」原作・和月伸宏

和月伸宏原作による時代劇マンガ「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」は、90年代後期の週刊少年ジャンプを代表する作品であり、2010年代に入っても実写版の映画化や宝塚歌劇団雪組による舞台化など、時代を経ても愛され続けている稀有な作品だ。初代オープニングテーマとして書き下ろされたのが、ジュディマリの9枚目となる本シングル。ギタリストのTAKUYAによる全編ギターソロ的な勢いの大胆なギターアレンジにあらためて注目したい。120万以上の特大セールスを記録し、彼らにとって初となるオリコンシングルチャート1位を獲得した。

★シングル「そばかす」収録

 

07.バカサバイバー/ウルフルズ
(2004年11月3日発売)

「ボボボーボ・ボーボボ」原作・澤井啓夫

毛狩り隊から人類の髪の毛の自由と平和を守るために、鼻毛真拳の使い手が繰り広げるウルトラ不条理ギャグバトル漫画「ボボボーボ・ボーボボ」。子供が理解出来るの? ってな圧倒的な情報量に、アニメではさらにシュールなギャグも上乗せされ、息もつかせぬめくるめく展開に脳内トリップ。自分、アニメで初めて観たときに軽い衝撃を受けました……。濃すぎる絵力に決して負けることのないファンキーなオープニングテーマはウルフルズによるもの。彼らの真骨頂でもあるソウルフルなアゲナンバーで、コテコテの関西弁で市井の人々を元気づけるマッチョな応援歌ともいえましょう。こちらは32話と33話の間に挟まれた総集編から最終回の76話までオープニングを飾った。

★シングル「バカサバイバー」収録

 

08.サンキュー!!/HOME MADE家族
(2005年1月26日発売)

「BLEACH」原作・久保帯人

霊感の強い高校生の黒崎一護が死神としてのパワーを身につけ、人の魂を喰らう悪霊の虚(ホロウ)との戦いを描いたバトルアクション・マンガ「BLEACH」。世界累計発行部数は1億2000万部を超えており、海外でも熱烈な支持を受けている。今夏には福士蒼汰主演による実写映画としての公開も控えている。「サンキュー!!」は2MC+1DJスタイルのヒップホップ・グループ、HOME MADE家族のサードシングルで、アニメの2代目エンディングテーマとして起用された。人生で出会ったすべての人々に対する感謝を伝えたハートウォーミングなラップと、アコギがフックとなるダンサブルなサウンドとの相性が最高。ちなみに、オープニングとエンディングはソニー・ミュージックエンタテインメントのアーティストがほぼ担当し、ORANGE RANGE、UVERworldなどによる数々のヒット曲が本アニメから誕生した。

★シングル「サンキュー!!」収録

 

09.SHINE OF VOICE/dream
(2005年7月27日発売)

「いちご100%」原作・河下水希

時代を経ても人気を誇る学園恋愛マンガ「いちご100%」。映画好きな中学3年生の真中淳平が、放課後の校舎の屋上で偶然出会った謎の美少女、東城綾の「いちごパンツ」を目撃。そのコを学園イチのマドンナ・西野つかさと勘違い。真中を取り巻く様々な恋愛絵巻が描かれていく。2017年には「少年ジャンプGIGA」で続編の「いちご100% EAST SIDE STORY」が連載された。アニメは2005年に全24話オンエアされ、オープニングテーマを女性ダンス&ヴォーカルグループのdreamが担当。ポップ・ファンクをベースにメリハリのあるホーンアレンジ、絡み合うコーラスワークと、かなり凝った作りで今聴くといい感じにフィットします。キャッチーなメロディメイクは、90年代半ばから後半にかけて活躍していたロックバンド、MOON CHILDで活躍していたヴォーカリストの佐々木収によるもの。

★ミニアルバム「ナツイロ」収録

 

10. departure!/小野正利
(2011年12月21日発売)

「HUNTER×HUNTER」原作・冨樫義博

1998年にスタートし、現在でも休載をはさみながら連載されている大人気冒険活劇マンガ「HUNTER×HUNTER」。主人公の少年、ゴン=フリークスが父親を探すためにプロのハンターになり、仲間たちとの様々な冒険と闘いを描いていく。2度テレビアニメ化されており、1作目は1999年から2001年にかけてフジテレビ系で、2作目は2011年から2014年にかけて日本テレビ系にてオンエアされた。本楽曲は第2作目のオープニングを飾ったもので、担当しているのは1992 年のデビューイヤーにシングル「You’re the Only…」でミリオンセラーを叩き出したシンガーの小野正利。彼の武器でもある4オクターブのハイトーンヴォイスが縦横無尽に駆け巡るアップリフティングなナンバーは、見事にマンガの世界観を踏襲している。

★アルバム「HUNTER×HUNTER セレクト×ベスト×α」収録

 

まだまだ見知らぬアニメソングがあるので、皆さんのお気に入りのあの曲、この曲を「Spotify」でぜひ探してみてください。

新社会人に聴いてほしい! 「5月病になりそうなときにキク元気が出る10曲」プレイリスト

春は出会いと始まりの季節。進学や就職などで新しいスタートを切った人も多いでしょう。でも、慣れない環境は知らぬあいだにストレスの要因となり、それが蓄積されていくと1か月後に“5月病”を発症してしまいます。特にゴールデンウィーク明けは要注意。長い休みのあいだに気がゆるんでしまい、あるときふいにベッドから起き上がれなくなる……なんてことも。

 

そこで今回は、GetNavi web編集部がセレクトした「5月病になりそうなときにキク元気が出る歌」のプレイリストをお届けします。やる気が切れてガス欠になる前に、音楽を聴いて気持ちをリフレッシュしてみてはいかがですか?

 

「5月病になりそうなときにキク元気が出る歌」 selected by GetNavi web編集部

1.「美しき人間の日々」サンボマスター

内容的には失恋ソングなんだけど、そんな枠では収まりきらないのよ。レッテルを貼って、決めつけて、そうじゃないといけない生き方なんて、「そんなのロックンロールじゃない×3回」って山口さん(ボーカル)も言うはず。んでもって、5月病のときには、ふさぎこんでしまって、誰かに励まされたり、元気づけられたりすること自体が苦痛かもしれない。けど、この曲は大丈夫。全開に前向きだけど、後ろ向きであることも否定していないように感じるので。だから、勇気づけられるし、後押ししてくれるし、サンボならではのスリーピースには全然聴こえない轟音が、殻を破ってくれるはず。そして、少し元気になってきたら、こちらも名曲「できっこないを やらなくちゃ」もぜひ聴いて。こちらは、松岡修造トーンも入ってる、純粋な応援ソング。チェック!(GetNavi web編集長・山田佑樹)

 

2.「8823」スピッツ

8823はスピッツが、メジャーデビュー前の攻撃的なロック性に回帰したアルバム、ハヤブサの表題曲です。先にこの曲を選んだ第一の理由をお伝えしておくと、陰鬱とした気分の時はこういうスカッとした曲を聴けば、少しは気分も晴れるんじゃねーの? という安直なものになります。サビは疾走感たっぷりだしね。気分良くなると思います。

音楽で気分を晴らしたいくらいだから、きっとあなたは深い陰鬱に苛まれてるのでしょう。すでに社会のルールに辟易としていますか? 「社畜」なんて自分を蔑んでいませんか?

僭越ながら、陰鬱の先輩として大事なことをお伝えしておきますね。その気持ち、5月病とか関係なくこれからしょっちゅうお持ちになると思いますよ。音楽を聴こうが、仕事をガムシャラに頑張ろうが、決してその気持ちからは逃れられません。

ただ、そんな陰鬱な気持ちが少しだけ軽くなる、魔法の一節が8823にはあるのです! やっと本題に戻った。

「君を自由にできるのは 宇宙でただ一人だけ」

いま、あなたを陰鬱にさせているのは、社会のルールでもなく、いやーな上司でもなく、あなた自身かもしれませんよ?  ほかの何にすがったって自分を解放してくれるのは、本当は自分だけしかいないんだって諦めてみたら、ちょっとくらいは5月の過ごし方も変わるんじゃないでしょうか。

これからはLOVEも絶望も陰鬱もいくらだってあると思うので、今日のところは気にせず8823を聴いてスカッと気持ちよく寝ましょう。よろしくお願いします。(GetNavi web編集部・玉造優也)

 

3.「故郷(ふるさと)」唱歌

日本の名曲。第3番に「志を果たして いつの日にか帰らん」とあります。仕事がしんどかったり、理想と違っていたりするかもしれませんが、それぐらいの気持ちを持って仕事に臨めば、どんどん成長すると思います。(GetNavi web編集部・久保田 遼)

 

4.「The Art of War」Sabaton

ほかの9曲はメジャーなのに、どう贔屓目にみてもこの曲、このバンド、新社会人のみなさん、いや読者のみなさんはほとんどご存じないであろうことは百も承知。「日本の歌」というテーマさえ、なぎ倒して薦めたいのはこの曲。

ガンタンクを大道具にミリタリースタイルでパフォーマンスする、スウェーデンのミリタリーメタル(ウォーメタルともいう)バンドによる、孫子の「兵法」をモチーフにした曲。間違いなく、モチベーションが高まり、ジワジワと静かな闘志が漲ります! 社会で生きていくには、がむしゃらに突進するだけじゃ敗死するよ、兵法こそが大事だよ、というアドバイスとエールを込めて。

ついでに、先日久々の来日公演があったのに会議が長引いて涙を呑んだ私より、「自分の人生は、仕事と戦って獲得するものだ!」という社会人の先輩としての訓示も合わせて捧げます。(GetNavi web編集部・和田史子)

 

5.「ぼくらが旅に出る理由」小沢健二

94年発表だからもう20年以上も前の曲か自分も歳をとったなぁ、というのはさておき、やたら長いイントロにオザケンの声がふわっとかぶさる瞬間にまず「オッ」という気持ちになり、“ぼくらの住むこの世界では太陽がいつものぼり、喜びと悲しみがときに尋ねる”というサビに至って「なにがあっても日々の営みは続いていくんだな」と納得、なんだか前向きな気分になってきます。しかも毎回。そしてストリングスとハープとホーンが醸し出すキラキラ感がやさしい心持ちを醸成してくれます。(GetNavi web編集部・尾島信一)

 

6.「LOVE PHANTOM」B’z

元気づけることよりも、ときには寄り添うような共感が人を癒すこともある。そんな思いで選びました。本作は冒頭の「いらない何も 捨ててしまおう」が自暴自棄の精神状態を、途中で挿入される女性の声(そして私はつぶされる)が、ブラック企業を彷彿とさせます。辞めるべきか続けるべきか、まさに私は愛の亡霊……。そんな、5月病患者の心情にぴたりと符合する本作、エコーを効かせて存分にシャウトすれば、これ以上ないカタルシスが得られることでしょう。というか単に歌いたい。(GetNavi web編集部・小林史於)

 

7.「ミラクル☆フライト」水樹奈々

弾むような曲調と声で、自然と心が弾んでくる曲。普段は元気の出る曲、という感じで聴いていますが、落ち込んだときに聴くとなぜか目頭が熱くなり、さっぱり前向きな気分になります。(GetNavi web編集部・小林祐太)

 

8.「歩いて帰ろう」斉藤和義

社会人になってわかったこと。仕事はつらい。仕事は苦しいことのほうが多い。仕事は簡単に投げ出せない。

社会人になりたてのころ、苦しくて心に余裕がないときは、よく外回りにかこつけてわざと目的地までの道のりを遠回りして歩いていた。缶コーヒーを飲んだり、コンビニで買ったアイスを食べたりしながら、くよくよと歩いた。「あー会社に戻ったらなんて説明しよう」「あの件、なんとか誤魔化せないかな」、そんなことを考えながら歩いていても、たいてい解決策は浮かばない。でも答えが出ないなりに、考えが整理され心の準備が出来てくることもある。

だから、新たに社会人になった人には、とにかく一人で歩いてみることをオススメしたい。仕事の合間でもいい。仕事帰りにひと駅手前で降りて歩くのもいい。何も考えずにぼんやり景色を眺めながら歩くもよし、目下の悩み事をくよくよ考えながら歩くもよし。とにかく歩く。歩きながら斉藤和義の「歩いて帰ろう」を聴く。心がフッと軽くなるので、行き詰ったときにぜひお試しください。(GetNavi web編集部・一條 徹)

 

9.「ニッポン笑顔百景」桃黒亭一門(ももいろクローバーZ)

ノリが良いので普通に聞いてて楽しいのがひとつ。と、いつも元気なももクロが歌ってるので、凹みに凹んでたり、笑うしかない状況でも、歌詞の通り、そのうち本当に笑顔になれると思える様になるのがすごいと思います。あと、「寿限無(じゅげむ)」を覚えられます。(GetNavi web編集部・我妻慶一)

 

10.「素晴らしい世界」eastern youth

吉野 寿の命を削る叫びが、身にまとわりつく陰気を振り払う。ごまかしのない愚直な歌詞が、うつむいた視線を前に向ける。惑いつつ行け。行けばわかるさ。(GetNavi web編集部・芦田隆介)

 

社会人に求められるスキルには、日々のストレスを上手に解消することも含まれます。お気に入りの音楽をうまく活用して、5月病にならないようにリフレッシュしてみて下さい。

バック・トゥ・THE 90年代! 再び注目を集める「渋谷系」にドップリ浸れる66曲

ヤングなメンズ編集担当者から「渋谷系って詳しいですか?」と聞かれたので、今回は90年代の渋谷系ムーブメントを知らない人でも楽しめる「渋谷系プレイリスト」をご紹介します。正直、わりとシーンの近くにいた人間なので、自分が青臭かった時代の個人年表を振り返るようで、「渋谷系」と称される音楽とはなんとなく距離を置いていたのですが、せっかくお声掛けをいただいたので、当時ならではの「現場感」を基準に幅広くセレクトしてみました。

 

ですので、世間一般的に「これは違うでしょ?」ってな楽曲もあるかと思います。そもそも「渋谷系」なんて気分用語なので、人によって捉え方は様々です。思うにあの時代に、いかに現場に行って遊んでいたかどうかで、「渋谷系」のニュアンスが僕のように大きく変わってくるのだと思います。それこそ、今の新世代ヒップホップ、ラップシーンのアンダーグラウンドな現場と同じってことです。

 

そもそもの「渋谷系」なる音楽性は、海外の最先端の音楽シーンと同時代的にリンクしていたムーブメントだったように思います。90年代前半、新しい音楽との出会いを求めて、夜な夜なクラブに通っていた自分。主戦場は下北沢の「ZOO」(後にSLITSに改名)、吉祥寺の「HUSTLE」、渋谷の「DJ BAR INKSTICK」「CAVE」「ROOM」といった小箱から、西麻布の「YELLOW」などの中箱まで。

 

そこでは、当時のイギリスやアメリカで局地的に流行っていた、レア・グルーヴ、アシッド・ジャズ、ニュースクール、UKインディーズといった、最先端の音楽シーンに触発された東京の新しい才能が、タイムラグなく新たな解釈で自分たちの音楽を鳴らし始めていました。

 

初めて耳にする彼らの音楽はとにかく刺激的で、海外のクラブ・ミュージックと並列させても、なんら違和感のない本家以上に凝ったサウンドメイクに驚いたものでした。気づいたら、仲良くなった知り合いがCDデビューしていたり、音楽レーベルを立ち上げたり、いつの間にか渋谷クラブクアトロでステージに立っていたりと、インディペンデントな姿勢でカジュアルにJ-POPシーンを席巻していく様は、端から見ていて痛快でした。

 

そうそう、「渋谷系」のシーン拡大に大きく貢献した、イギリス資本(当時)の大型CD・レコードショップ「HMV渋谷」(1990年オープン)の名バイヤーであった、太田 浩さんの存在も忘れてはなりません。インディーズやメジャーの垣根なく、同じ売り場に商品を同居させ、かつアーティストが影響を受けたあらゆるジャンルの過去の洋楽(ムード音楽、映画音楽、ソフトロック、フレンチ、ボサ・ノヴァ、ブラジリアンなど)や邦楽の旧譜、そして新作も関連付けて商品展開。きちんと系統立てた文科系気質にあふれた商品構成は、いま振り返ると見事なものでした。

 

こうした過去の埋もれた音源を掘り起こすという、ジャンルや年代を超えたDJ的な聴き方や音源作りも、渋谷系周辺の大きな特徴であったかもしれません。これは「サバービア・スイート」「フリー・ソウル」という渋谷発のムーブメントを仕掛けた、編集者・選曲家の橋本 徹さんによる功績も非常に大きいはずです。

 

渋谷系とは何ぞや。東京・渋谷発信の音楽ジャンルであったことは間違いないと思いますが、もっと踏み込むと、自分的には「文科系よりの優秀なヘヴィーリスナーが自作自演」、「サンプリング」と「元ネタ」、そしていい意味で身内的な「コミューン」という要素があったような気がします。クラブでプレイしていた瀧見憲司さんは「クルーエル・レコーズ」を立ち上げ、現場に来ていたカヒミ・カリィさんやブリッジを輩出し、当事者でもある小山田圭吾さん主宰のレーベル「トラットリア」から、仲間でもあるカジヒデキさんやヴィーナス・ペーターの作品が発表されたのは自然な流れでもあります。そこに現場とは無縁の大手レーベルが、次第に触手を無駄に伸ばし始めた時点で、シーンが少しずつつまらなくなってきたように思うのです。

 

ということで、今回は渋谷系黎明期であろう1990年から個人的にピークだと感じた1995年までの音源を中心に選んでみました。中には1987年の音源もあったりしますが、ピチカート・ファイヴであることと、象徴的な「A&M系サウンドのホーンアレンジ」を実践しているということでご理解を。あとは、おそらく「渋谷系」の文脈であまり語られることのない藤原ヒロシさん関連の「なごみ系」作品や、彼が手がけた初期UAさんなんかも夜遊びやHMV渋谷での展開といった「現場目線」であえて取り上げてみました。

 

ちなみに「あの曲が、あのバンドが、あの人のがないじゃん!」ってのも多々あります。前述した象徴的な当時のレーベル「クルーエル・レコーズ」や「トラットリア」関連の音源がSpotifyにほとんどアップされていないという事実。いつかアップされることを祈っています。それにしても、選んだ楽曲の多くが「ファイルレコード」のものが多いこと! あらためて素晴らしいレーベルだと再確認。

 

しつこいですが最後に。ザワケンこと小沢健二さんの楽曲がないのですが、渡辺満里奈さんに提供した「夜と日時計」なる名曲を最後にセレクトしてみました。東京スカパラダイスオーケストラのギムラさんが亡くなって、その追悼ライブが1995年6月に日比谷野外音楽堂であったのですが、そこで小沢さんがこの「夜と日時計」を愛を込めた弾き語りで歌って、皆で男泣きした記憶があります。そんな個人的にも思い出深い楽曲でラストを締めます。

 

ということで、かなり長くなりましたが、当時のクラブでの夜遊び、渋谷クラブクアトロなどのライブハウスでのライブ体験、渋谷HMVや宇田川町に乱立していたレコード屋さんでの口コミなどなど、あの時代の「現場感」を反映させた広義の「渋谷系プレイリスト」をぜひ楽しんでみてください。

※画面をタップすると曲が試聴できます

 

【プレイリスト収録曲】

Flippers Guitar
・Southbound Excursion/南へ急ごう
・Hello/いとこの来る日曜日

 

渡辺満里奈
・大好きなシャツ(1990旅行作戦)
・レイニー・カインド・オブ・ラブ
・バースデイ・ボーイ

 

スチャダラパー
・N.I.C.E. GUY(1991 NICE GUY’S REMIX)
・Little Bird Strut
・Get Up And Dance
・5th WHEEL 2 the COACH
・サマージャム’95

 

Tonepays
・苦悩の人

 

PIZZICATO FIVE
・眠そうな二人
・そして今でも
・おかしな恋人・その他の恋人
・惑星
・誘惑について

 

SILENT POETS
・Step Out
・Simply Flower’s Dub
・blessing

 

United Future Organization
・NEMURENAI insomnia
・I LOVE MY BABY my baby loves jazz
・LOUD MINORITY – radio mix
・Upa Neguinho
・UNITED FUTURE AIRLINES

 

MONDO GROSSO
・TREE,AIR,AND RAIN ON THE EARTH
・SOUFFLES H

 

COOL SPOON
・NO SMOKE
・ASSEMBLER
・ELEGANT GIRL’S THINKING

 

HIROSHI II HIROSHI
・BEAUTY & BEAST+BAGEL(DUB)
・H2O
・PULSE OF CALM(GUITAR)

 

SUBLIMINAL CALM
・かすかなしるし
・カントリー・リビング
・メルティング・グリーン

 

藤原ヒロシ
・Natural Born Dub
・Dawn

 

UA
・HOLIZON
・COLONY
・太陽を手に月は心の両手に

 

Cibo Matto
・Beef Jerky

 

Nelories
・Set Pure Ven
・HELL TOUPEE

 

カヒミ・カリィ
・En Melody

 

Flippers Guitar
・Coffeemilk Crazy
・Happy Like A Honeybee/ピクニックには早すぎる
・Goodbye, our Pastels Badges/さよならパステルズ・バッジ
・カメラ!カメラ!カメラ!(Guitar Pop Version)
・クールなスパイでぶっとばせ〜Cool Spy On A Hot Car〜(Live)
・GROOVE TUBE
・星の彼方へ – Blue Shinin’ Quick Star-

 

ORIGINAL LOVE
・DEEP FRENCH KISS
・GIANT LOVE
・WITHOUT YOU
・ミリオン・シークレッツ・オブ・ジャズ(UFOリミックス)
・SCANDAL(New Recording)
・月の裏で会いましょう
・サンシャインロマンス
・WALL FLOWER
・The Rover
・The Best Day of My Life

 

MICROPHONE PAGER
・Don’t Turn Off Your Light(INST)

 

高木 完
・恋のフォーミュラ(BRIXTON BASS MIX)

 

キミドリ
・自己嫌悪

 

スチャダラパーfeaturing小沢健二
・今夜はブギー・バック smooth rap

 

渡辺満里奈
・夜と日時計

出会いと別れの季節に聴きたい―― ギャランティーク和恵が選ぶ「男と女の別れ歌」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「別れ歌」特集です。春といえば別れの季節。卒業式で友人たちとの別れもありますし、新しい環境に変わるために住んでいた町との別れなんかもあります。しかしやっぱり歌謡曲には男女の別れ歌がほとんどです。それは季節関係なく年中あることですけど……。ということで、春を感じるかどうかはさておき、ワタシがグッとくる恋人たちの「別れ歌」を厳選してお送りいたします。泣かないでね……。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

01.また逢う日まで/尾崎紀世彦
(作詞:阿久 悠 作曲/筒美京平)

まずはベタにみなさんがよく知ってるであろうこの曲からスタート。1971年にリリースされた尾崎紀世彦さんの2枚目のシングル曲。もともとは三洋電機のエアコンのCMソングとして作られた曲がボツになってお蔵入りしていたものでしたが、阿久 悠さんの作詞によって、当時ヒットしていたズーニーブーというグループに「ひとりの悲しみ」というタイトル曲でリリースさせたもののやっぱりヒットせず。その後、歌詞のテーマを「別れ」に変えて、さらには力強いボーカルの持ち主に歌わせればヒットするだろうと、尾崎紀世彦さんに「また逢う日まで」というタイトルで歌わせたところ大ヒット、1971年のレコード大賞を獲得するまでとなりました。……という逸話は歌謡曲愛好家のなかでは有名な話。男女の別れを、「誰かが立ち去り誰かが悲しむ」という構図ではなく「ふたりで決意して別々の道を歩み出す」という前向きな別れを描いた新しさに、作詞家としての阿久 悠さんの挑戦が伺えます。

 

02.美しい別れ/いしだあゆみ
(作詞:なかにし礼 作曲:加瀬邦彦)

お次は、1974年にリリースされたいしだあゆみさんの44枚目のシングル曲。タイトル通り「美しい別れ」にするため、旅立つ男との別れまでの時間をわざと1時間残しておくという小憎い演出をする女の歌。この歌の中の2人の「別れ」というのは決して悲しい結末を迎えた恋の終わりではなく、愛し合っているけれども離れなくてはいけなくなったやむを得ない事情の上での「別れ」で、だからこそせめて悲しい気持ちでお別れするのではなく、最後まで楽しい時間を過ごしたいと願う気持ちが痛いほど伝わります。こんな粋な女でいられたらいいですよね……。

 

03.リクエスト/ジュディ・オング
(作詞・作曲:中村泰士)

続いて、1976年にリリースされたジュディ・オングさんのシングル曲。一度コロムビアでリリースしたものの、ソニーへ移籍した後1980年に改めて録音し直してシングルでリリースするほど、きっと本人もこの曲がお気に入りだったのではと思わせる、隠れた名曲です。こちらも恋の終わりの歌う別れ歌ですが、歌謡曲によくある「捨てられてさめざめ泣きすがる」みたいな女ではなく、悲しみを隠しつつ最後の夜のデートを楽しみながら、別れの瞬間にもどこか凛として気品を漂わせる、大人の女性の美しさと強さを感じます。別れのシーンをエレガントにできるかどうか、そこが上質な女であるかどうかのポイントです。

 

04.孔雀の羽根/安倍律子
(作詞:千家和也 作曲:筒美京平)

4曲目は、1974年にリリースされた安倍律子さんの14枚目のシングル曲。こちらは70年代ならではの「男に捨てられ逃避行」系失恋ソング。この頃の歌は失恋すると住んでた街から出て行くパターン多いのよねぇ……。新しく住むアパートとか新しい仕事とか探すの大変だろうなぁとか勝手に心配しちゃいます。しかしこの歌、男を「孔雀」と見立てて、「孔雀が羽根を広げるように心を変えた」という多少意味がわからないけれどどこか仰々しいキッチュな歌詞世界が素晴らしい。そこがほかの「男に捨てられ逃避行」系のどこか自虐的で貧乏くさい感じとは一線を画しています。良曲。ちなみにワタシもCD「ANTHOLOGY#4」にてカバーしておりますのでぜひ聴いてみてくださいませ。

 

05.ワン・シーン/近田春夫
(作詞:山口洋子 作曲:近田春夫)

お次は、1979年にリリースされた近田春夫さんのLP「天然の美」からの1曲。沢田研二さんの「勝手にしやがれ」はみなさんご存知だと思いますが、この「ワン・シーン」という曲、スーパースターのジュリーに対してや、「勝手にしやがれ」という大ヒット曲へのオマージュもありつつ、どこかアイロニカルに山口洋子センセーは歌詞を書かれたのでは? という個人的な見解を元に、両曲を比較しながらこの「ワン・シーン」という曲の素晴らしさをお伝えできれば思います。女の家に転がりこんで1年ほど住んでいた男が、ある日部屋に帰ってドアを開けると別の男がいて、そのまま何も言わず扉を閉めて出てゆく……というまさにワン・シーンを歌った歌なのですが、「行ったきりなら幸せになるがいい」(勝手にしやがれ)的なセリフで「世話になったな!」と気障にキメたいが、「言葉のナイフでぶった切るほど熱い仲でもなかったな……」と冷静になってみたり、「背中で聞いている」(勝手にしやがれ)ものは、ドアを閉めたあとに聞こえてくる男と女の堪え加減の笑い声だったり、「思い出かき集め鞄に詰め込む」(勝手にしやがれ)ほど長い仲でもなかったことに気付いたりして、みんなジュリーに憧れているけれど、現実は「勝手にしやがれ」みたいにはいかず結構淡白で情けないものだったりするし、この歌の男のほうがワタシはジュリーよりもアーバンを感じます。ということでワタシは断然「ワン・シーン」派です。近田春夫さん大好きすぎて文章長くなってしまいました。ゴメンナサイ。

 

06.ロマンチスト/伊東ゆかり
(作詞/松本 隆 作曲:筒美京平)

6曲目は、1977年にリリースされた伊東ゆかりさんの36枚目のシングル曲。こちらも「部屋」が出てくるのですが、この「部屋」というのは、恐らく主人公の女の部屋だとは思うのですが、歌詞の中の「カフスをはめ込む」とか「シーツをすっぽりとかぶって」などの言葉に、これはラブホテルか? という感じもします。どことなくアダルト。松本 隆さんの描くモチーフや男の仕草がいちいちキザで、別れの男女(というか一方的に男)がここまでカッコつけられたら絵にはなるのですが、実際にこんなナルシストな男に捨てられたらワタシならムキーッとなりそうです。主人公の女も、そんな終始キザに決める男(ウザい)にムキーッとなりながら、そんな男に惚れてしまった自分を責めつつ、部屋を出たあとまでキザに決めまくる(マジウザい)男に結局キュンとしてる自分にも気づいているのです。あるある〜!

 

07.春なのに/柏原芳恵
(作詞・作曲:中島みゆき)

こちらは1983年にリリースされた柏原芳恵さんの14枚目のシングル曲。春だから選んでみました「春なのに」。春は別れの季節……という今回のテーマには1番ピッタリな曲ですね。卒業式での好きな人との別れを描いたこの曲、当時のヨシヨシとしても歌の主人公と同じ年頃だとは思いますが、可愛げなおぼこい歌い方をしつつ、1番のAメロの「それだ〜けです〜か〜」という部分だけ妙に大人っぽく怨念深い声になっているのが聴きどころ。どんな時代のアイドルにも、10代にしてすでにスナックの香りが漂うオヤジ受けするアイドルっていると思うんですが、柏原芳恵さんもその1人ですよね。

 

08.花吹雪/ちあきなおみ
(作詞:吉田 旺 作曲:都倉俊一)

この曲は、1975年にリリースされたちあきなおみさんの19枚目のシングル曲。こちらも卒業をテーマにした春の別れの曲。しかしちあきなおみさんが歌う卒業ですから、そう一筋縄にはいきません。卒業したのは好きだった男の方で、そんな男子大学生と付き合っていたスナックのママ、という設定です。ヨシヨシもビックリ! 大学を卒業して、就職か何かで地元へと帰ってゆく男を見送り、そのタイミングで自分の店を閉めて故郷へ帰る決意をする歌。スナックのママと付き合っちゃう男子大学生もなかなかやるな、という感じですが、男子大学生と付き合っちゃうママもママでなかなかやるな、という感じです。一体何歳の設定なんだろう……。しかもそんなママを男子大学生はビンタとかしちゃったりして、もう何? プレイ? 桜も散ってて和風SMの匂いもしてとにかく官能小説のようなエロティシズムを感じます。

 

09.ブルースカイブルー/西城秀樹
(作詞:阿久 悠 作曲:馬飼野康二)

お次は、1978年にリリースされた西城秀樹さんの26枚目のシングル曲。こちらも一筋縄にはいかない男女の別れの歌です。いわゆる「不倫」関係にある2人で、恐らくこの男女、男はまだ血気盛んな20代前半くらい、女は30代くらいの人妻でしょうか。周りの大人からの忠告を無視してでも、その若さゆえの情熱で彼女の自分のものに奪い取ろうとしたあの日。しかし、その女とは結局終止符を打たれ、二度と逢えない関係となってしまったのです。歌詞では「遠く連れ去られ」るという表現でそれを描いているのですが、結婚相手の男が主人公と妻の関係を断ち切るために強引に遠い街へ移り住んだのか、もしくは女が何かの理由でこの世から去ってしまったのか、そこは色々と想像をさせます。これが後者だった場合、愛し合ってしまったからこそ彼女を追い詰めてしまった結果だったかもしれません。そして少しばかり大人になった今でも、目に沁みるほどの青空を見るたびに、あの若き日々の愛と悲しみと過ちが蘇ってくるという、なんとも切なく胸に突き刺さってくる歌です。ブルースカイブルーは青春の青。阿久 悠センセー、深すぎます。

 

10.いつか何処かで/平山三紀
(作詞:橋本 淳 作曲:筒美京平)

最後はこの歌でお別れです。1972年にリリースされた5枚目のシングル「希望の旅」のB面曲。アップテンポで軽快なリズムにのせて、爽やかに別れを歌います。平山ミキティもビンビンにハネまくって歌ってます。フィフス・ディメンションの「ビートでジャンプ」を明らかに下敷きにしていて、当時他にもこの曲をベースに作られた歌謡曲がいくつかあり、それをまとめてワタシは「ビートでジャンプ」歌謡と言っております。この歌も男女の別れを歌った歌ですが、もっと男らしくなって帰っておいでと女が旅立ちを送り出すという歌。橋本 淳さんの歌詞にはよく「心を開く」とか「心の扉」とか「心」というモチーフが出てきますが、この曲にも「自分を変え 心を閉ざさずに あなたにふさわしく」という強いメッセージが。こんなことを別れ際にサラリと言える、海のような懐の深い女になってみたいものでございます。

 

以上、今月のプレイリスト、3月は「別れ歌」を特集してお送りいたしました。そういうワタシも、実はひとつお別れのお知らせがあります。なんと、数か月に渡りお送りしました「歌謡プレイリスト」ですが、なんと! 今月で最終回となってしまいました。理由(わけ)は聞かないで……。その代わりといってはなんですが、4月より新しい企画が用意されております。そちらのほうをどうぞ引き続きお楽しみに!(つまりまだ別れません。)

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットの1st ALBUM「化粧室」が2018年4月25日に発売決定しました!これまでのシングルに加え、“星屑スキャットを見初めた男”リリー・フランキー作詞「新宿シャンソン」を初収録するなどバラエティに富んだ作品に仕上がっています。どうぞお聴き逃しなく!

【収録曲】

DISC1

1.Knock Me In The Middle Of The Night
2.愛のミスタッチ
3.ANIMALIZER (2018 new mix)
4.半蔵門シェリ
5.波の数だけターコイズ
6.降水確率
7.星屑スキャットのテーマ (2018 new mix)
8.マグネット・ジョーに気をつけろ (シングル・バージョン)
9.Interlude – Cosmetic
10.コスメティック・サイレン
11.REMEMBER THE NIGHT (2018 new mix)
12.HANA-MICHI
13.ご乱心 (2018 extended mix) ※Bonus Track

DISC2

1.新宿シャンソン

 

そして、2018年6月9日(土)10日(日) 丸の内「COTTON CLUB」にて星屑スキャットLIVE 2018「化粧室で逢いましょう」の開催も決定! 詳しい情報は、日本コロムビアの「星屑スキャット」公式サイトでチェック!

「卒業」で思い浮かぶ曲と言えば……? 桜舞い散る季節に聴きたい昭和の名曲10選

桜の季節がいよいよ到来ということで、非常にベタですが、春を迎えるにあたって向き合うことになる「卒業」「旅立ち」「友達」といったキーワードで、今回は往年の歌謡曲やニューミュージックを中心にセレクトしてみました。

 

かつての仲間と久しぶりに会って、カラオケやミュージック・バー、スナックなどで流れていたら、思い出話に華が咲いて、ミドルエイジの皆さんは盛り上がるかもしれませんし、ヤングの皆さんにはフレッシュに聴こえてくることでしょう。そんな「飲み」を想定したシチュエーションも織り込み済みです。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、ご自宅でお酒でもたしなみつつ、感傷に浸りながら楽しんでいただければうれしいです。

※画面をタップすると曲が試聴できます

 

【卒業、旅立ちの時期に聴きたい様々な形の10曲】

01.卒業/斉藤由貴
(1985年2月21日リリース)

担当編集者から真っ先に挙がってきたのがこの曲。同時期に同タイトルの楽曲が複数リリースされましたけど、個人的にもこれを越えるものはないと思われます。作詞は松本 隆、作曲は筒美京平と歌謡曲好きにはたまらない黄金コンビ。もともと「卒業」なるテーマで歌うことが決まっており、卒業における情景や心象風景を細かく描写していったという。主人公の女の子による不思議なくらい俯瞰した視点が、いま聴くととっても新鮮!

 

02.制服/松田聖子
(1982年1月21日リリース)

8枚目のシングル「赤いスイートピー」のB面(カップリング)曲で、聖子ファンにとっては鉄板曲。当時、すでに聖子プロジェクトに関わっていた作詞家の松本 隆が、松任谷由実に声をかけたのは有名な話。ユーミンは呉田軽穂名義で楽曲を提供することで合意。「四月からは都会に行ってしまうあなた」を想う「ただのクラスメイト」の私。誰しもが経験する淡い恋心を最後に袖を通す「セーラー服」を通して浮かび上がらせる。サビ部分よりもBメロの強さの確信犯ぶりがお見事。

 

03.二人の旅立ち/サーカス
(1979年10月9日リリース)

中年のカラオケの定番(?)「Mr.サマータイム」でおなじみの70年代を代表する男女コーラスユニットの6枚目のシングル。おそらくは駆け落ちするために見知らぬ街へと旅立つカップル。希望にあふれた喜びを快活なサウンドと爽やかなコーラスワークに乗せてハイウェイを駆け抜けていく。こんな旅立ちがあってもいいですよね。バンジョーを使ったアーシーなエッセンスも高揚感をさりげなく煽ります。作曲はゴダイゴのタケカワユキヒデということで、同時期のあの名曲の構成も見え隠れ。

 

04.旅立ち/ばんばひろふみ
(1979年10月21日リリース)

フォーク時代のバンバンを経て、ニューミュージックの世界で「SACHIKO」を大ヒットさせたシンガーソングライターの隠れた名曲。軽やかに刻まれるオリエンタルタッチなピアノの音色。ブラジル音楽のサンバなどで使われる楽器「クイーカ」がアクセントになったライト・サンバといった趣。舞台は船の上!  どうやら本気の旅立ちのようですが、「答えなど探すこともないさ すべて変わりゆくもの」と何が起こるかわからない未来図を噛み締めているかのよう。アルバム「ひとり海へ還る」に収録。

 

05.グッド・ラック/野口五郎
(1978年9月1日リリース)

大人の男女関係からの卒業、旅立ちということでピックアップ。哀愁系のディスコ歌謡としても機能しちゃいます。別れの明け方をハンサムに切り取った山川啓介による歌詞がイチイチ格好よすぎ。大御所の名アレンジャー、高田 弘によるきらびやかなストリングスアレンジは、サルソウル・オーケストラ(フィリーソウルの流れを汲んだディスコレーベル「サルソウル」のお抱えバンド)へのオマージュと解釈。最近では坂本慎太郎によるカバー曲が話題を呼び、若い世代の間でもスマッシュヒットした。

 

06.季節のない街角で/大橋純子
(1977年4月リリース)

少々強引ですが、「ひとりぼっちの自分との卒業」という視点でセレクトしてみました。ちょっとした寂しさと希望とが交差する感情を、まどろみを感じさせるメロウなサウンドに昇華させたアーバンな傑作。サビで繰り返し歌われる「昨日のなみだ忘れて Good Bye 明日はきっとすばらしい Good Day」。仕事も恋愛も多くの大人は日々これの繰り返しですよね。大橋純子&美乃家セントラル・ステイション名義のファーストアルバム「RAINBOW」に収録。

 

07.あの頃のまま/ブレッド&バター
(1979年6月リリース)

地元の茅ヶ崎を拠点に湘南サウンドをつむぎ続けるベテラン兄弟デュオが、4年間の活動休止を経て1979年に復帰する際に、友人でもあるユーミンが呉田軽穂名義で楽曲(作詞・作曲)提供したヒット曲。70年代の終焉を描いた作品ともいわれており、ターミナルで久しぶりに会った君と「人生のひとふしまだ 卒業したくないぼくと たわいない夢なんか とっくに切り捨てたきみ」と、夢と現実を線引きする瞬間をウェットに描く。大人になる上で、あなたが手放したものって何なんですか? ちなみにユーミンは2003年に「Yuming Compositions: FACES」でセルフカヴァー。

 

08.卒業写真/ハイ・ファイ・セット
(1975年2月5日リリース)

学生時代の卒業をテーマにした楽曲は数あれど、その象徴的な歌といえばやっぱりこの歌かもしれません。彼らのデビューシングルであり、楽曲提供したユーミン本人がその数か月後にアルバム「COBALT HOUR」でセルフカヴァーすることになります。「あの人」が高校時代の憧れの人ではなく、美術学校の恩師(女性)なのは有名な話。しかも卒業してからのストーリーだったりします。でも、青春時代に憧れだった人への記憶を、この曲に重ねる人もきっと多いはず。思わずセンチになってしまうアレンジは服部克久の手によるもの。

 

09.卒業/赤い鳥
(1974年7月5日リリース)

美しいコーラスワークを持ち味に、70年代前半を中心に活動したフォークグループの赤い鳥が、アルバム「書簡集〜ラスト・アルバム」で発表した1曲。解散を前提に作られた最後のアルバムの冒頭を飾る1曲で、「垣根こえて触れ合った あの固い夢を大事に乗せて」「さよならと書いた汽車が出るよ」と、共に過ごしたバンドメンバーへのメッセージとも受け取れる歌詞が印象的。解散後はハイ・ファイ・セットと紙ふうせんに枝分かれして、お互いが新たなスタートを切ることになります。かつての仲間との記憶をたぐり寄せてくれる、そんな楽曲かもしれません。

 

10.YOU’VE GOT A FRIEND/ジェイムス・テイラー
(1971年10月22日リリース)

最後は洋楽で締めたいと思います。邦題は「君の友だち」。アメリカの女性シンガーソングライターであるキャロル・キング自身のアルバム「つづれおり」(1971年)に収録され、その後、盟友でもあるジェイムス・テイラーによるカバー曲が全米で首位を獲得。「ただ名前を呼ぶだけでいい 僕はどこにいたとしても 君に会いに駆けつけるから」と、友人がいることの誇りと素晴らしさを静かに歌い上げている。春を境に離れていく友だち、新しく出会う友だち。節目節目で出会った愛すべき、信頼すべき友だちさえいれば、人生なんとかなるもんです。

 

2000年代以降のものではなく、あえてのオールドミュージック集でお届けしてみました。まだまだ見知らぬ卒業ソングや旅立ちソングがあるので、皆さんのお気に入りを「Spotify」でぜひ探してみてください。

 

 

全83曲をセレクト! スーパーボウルの華麗なショーを振り返る「Super Bowl halftime shows 1993 – 2018」

アメリカンフットボールNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の優勝決定戦であり、国挙げての祭典「スーパーボウル」では、毎年豪華なアーティストによるハーフタイムショーが話題になります。今年は2月4日(現地時間)にアメリカ・ミネアポリスで開催され、ジャスティン・ティンバーレイクが華麗なショーを披露しました。試合は見ないけど(失礼!)恒例の「ハーフタイムショー」だけはチェックするという方も多いのでは?

 

そもそも「ハーフタイムショー」は1967年にスタートし「スーパーボウル」の第1回目からの恒例ステージ。正直、かなり地味な存在でしたが、90年代に入ってアプローチと見せ方が変わりはじめます。

 

91年にトップ・アイドルグループのニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック、92年にはラテン・ポップ・ミュージックの歌姫グロリア・エステファンを起用し、色気が出はじめます。そして93年にはキング・オブ・ポップことマイケル・ジャクソンがいよいよ出演することになったので、さあ大変。ここから「ハーフタイムショー」はメインストリームのポップミュージックにスポットを当てて、話題性にあふれた派手な要素と仕掛けを振りまき、新規の視聴者をグンと取り込んでいくことになります。

20180226-i04 (1)

 

と、前置きが長くなりましたが、今回は過去に「ハーフタイムショー」に出演したアーティストの曲縛りのセットリストを作成してみました。セレクトしたのはマイケルが出演したことでCMの広告収入が超爆発的に膨らみ、よりポピュラーな存在になった1993年の「ハーフタイムショー」から先日の2018年まで。全部紹介してしまうと膨大な量になってしまうので、一部かいつまんでセレクトしています。それでも曲数は総勢83曲!

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができます。アメリカの音楽チャートを彩った、ポップス、ロック、R&B、ソウル、ヒップホップ、カントリー、ラテンとジャンルを縦断したプレイリストを楽しんでみてください。

※画面をタップすると曲が試聴できます

【ギャランティーク和恵セレクト】歌謡曲の多様性を知る“グループ楽曲”10曲

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「グループ」特集です。

 

歌謡曲には様々な形態のグループが存在します。早くは1950年後期に登場した「ダーク・ダックス」や「デューク・エイセス」などのコーラスグループの流行に始まり、キャバレーなどで活動していたラテンやハワイアンなどのムード音楽を奏でる「マヒナスターズ」や「ロス・プリモス」、さらにはブリティッシュロックに影響を受けた「ザ・タイガース」などのグループ・サウンズ、そして「キャンディーズ」などのアイドルグループに「ツイスト」などのロックバンドなど、「グループ」をテーマに絞ってみても、歌謡曲というジャンルには多様な音楽性があることに気づきます。これから紹介するのは、そんな歌謡曲の「グループ」モノのなかでさらにカテゴリーを決めて、ワタシの個人的な趣味も交えて選んでみたいと思います。……やだ、真面目。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【2月のプレイリスト】

01.赤いドレスの女の子/ザ・スパイダース
(作詞:橋本 淳 作曲:かまやつひろし)

まずは<GS(グループ・サウンズ)>編。1968年6月に発売されたザ・スパイダースの15枚目のシングル「真珠の涙」のB面曲を選ばせていただきました。スパイダースのなかで個人的に1番好きな曲です。GSの誕生をきっかけに、歌謡曲黄金期を作り上げた職業作詞家・作曲家というものが同時に誕生したのも大きなポイント。そのポイントは、ワタシが「歌謡曲」というものを語るうえで大きな節目として捉えています。多くのGSがそんな職業作家によって手がけられているなか、スパイダースはメンバーの1人であるかまやつひろしさんが作曲している曲も多く、商業ベースに染まらない音楽性の高さを垣間見ることが出来ます。

 

02.男と女のいる舗道/内山田洋とクールファイブ
(作詞:吉田 旺 作曲:穂口雄右)

続いては<ムードコーラスグループ>編。1979年にリリースのLP「内山田洋とクールファイブ 第12集」のなかの1曲。デビュー曲「長崎は今日も雨だった」のような♪ワワワワ〜みたいなコーラスのいわゆる「ムードコーラス」スタイルも、70年代も終わりに差しかかりアーバンかつ大人のムードがクールファイブにも漂い始めます。肩に力が抜けたような優しい穂口センセーのアレンジと、男女の別れ際のキザな描写がなんともダンディーです。しかし、お互い背中を向けてそれぞれの道を歩もうとする時、女に対して「死ぬなよ」と願う別れって一体どんな別れなんでしょうか……。

 

03.ハチのムサシは死んだのさ/平田隆夫とセルスターズ
(作詞:内田良平 作曲:平田隆夫)

お次は<ヴォーカル&インストゥルメンタルグループ>編。ちょっとわかりにくいカテゴリーではありますが、この当時、「ピンキーとキラーズ」にはじまり「ペドロ&カプリシャス」なんかに見る女性ヴォーカルをフロントに置くバンドスタイルが多く出てきました。そのなかのひとつがワタシも大好きな「平田隆夫とセルスターズ」です。1972年2月にリリースされ大ヒットしたこの曲は、マイナー調でテンポ感のあるアレンジに、子供受けもするような歌詞がとてもキャッチー。しかしフロントに立てた女性2人「村部レミ」と「みみんあい」。この2人が衣装を合わせる気がなくそれぞれ好き勝手な格好をしてるところを見ると、あぁきっと仲悪いんだろうなぁ〜とか想像出来て楽しいです。

 

04.急げ!若者/フォーリーブス
(作詞:千家和也 作曲:都倉俊一)

お次は<男性アイドルグループ>編。男性アイドルグループは数いれど、ワタシが大大大好きなのは「フォーリーブス」です! 1974年7月にリリースされた24枚目のシングル曲。特にこの曲が好きで、ワタシの10年前にリリースしたアルバムでもカバーさせていただきました。ミュージカル調でドラマティックなこの曲は作曲の都倉センセーお得意の世界観。さらに「いつも神は見ている」とどこか耽美的な歌詞も、千家センセーお得意の世界です。黒の衣装を身に纏い、まさにミュージカルのように踊り歌う1974年紅白歌合戦でのステージは必見です。話は逸れますがフォーリーブスって、無駄に衣装替えするわりに、毎回誰かがうまく脱げなかったりボタンが外れなかったりしてトチるんですよね〜。

 

05.恋はミステリー/アップルズ
(作詞:松本 隆 作曲:穂口雄右)

お次は<女性アイドルグループ>編。女性アイドルグループも星の数ほどいますが、「キャンディーズ」を選ぶわけでもなく、あえて「アップルズ」という3人組をご紹介したいと思います。特にこの「恋はミステリー」という、1976年リリースのデビューシングル「ブルーエンジェル」のB面曲が大好きなのです。作編曲はキャンディーズの楽曲を多く手がけられた穂口雄右センセー。キャンディーズ同様の難易度高いコーラスワークに加え、彼女たちのハンパない歌唱力の高さが売りでしたが残念ならがヒットすることはなくアップルズとしては2枚のシングルのみのリリースとなりました。しかし! その後彼女たちは「EVE」というコーラスグループへと生まれ変わり、80年代以降の大ヒット曲の多くに彼女たちによるバックコーラスが刻まれることとなります。

 

06.ジェット・マシーン/フィンガー5
(作詞・作曲:三枝 伸)

お次は<兄弟グループ>編。半ば強引なカテゴリーですが……兄弟グループといえばやっぱり「フィンガー5」でしょう。残念ながら「サーカス」ではありません。何故ならサーカスは3人兄弟プラス従兄弟なんです。歌謡ひっかけ問題。「恋のダイヤル6400」や「個人授業」などで大ヒットを飛ばし、子供受けを狙った楽曲を数多くリリースしてきたフィンガー5ですが、1975年にアメリカへ渡りレッスンをつむために留学。その帰国後に再起を賭けてリリースされたのがこの「ジェット・マシーン」です。かなりアッパーで攻め攻めなこの曲、作詞作曲にはフィンガー5に数多くの楽曲を提供している三枝 伸センセー。ヒット曲のほとんどが都倉俊一センセーと井上忠夫センセーのため陰に隠れた印象がありますが、この方のヒップな作曲センスは抜群です。特筆すべきは、この曲から長男がマネージャーとしてメンバーから脱退し、代わりに8歳の甥っ子が加入したこと。8歳って! 血統を守るって大変です……。

 

7.賣物ブギ/ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
(作詞:島 武実 作曲:宇崎竜童)

お次は<バンド>編〜その1〜。バンドとひと口に言っても、フォーク・ニューミュージックの世界にもたくさんバンドがいるなか、ここでは「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。たくさん名曲はありますが、ワタシが選んだのは1975年にリリースのシングル曲「賣物(うりもの)ブギ」。もちろんこれは笠置シヅ子さんの「買物ブギー」を下敷きに作られたコミカルな歌ではありますが、それと比較するとよく出来ています。ぜひ両方聴いていただきたい。しかしコミックソングといってもサウンドとしてはソリッドな演奏で非常にカッコ良いです。この曲は作詞が島 武実さんで、高田みづえさんの「硝子坂」や由紀さおりさん「う・ふ・ふ」など作詞家として活動しつつ、のちに「プラスチックス」のメンバーとしても活動された方。なるほどニューウェイブだわ……と納得出来るセンスを感じさせてくれます。

 

8.はるかな旅へ/ゴダイゴ
(作詞:奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ)

お次も<バンド>編〜その2〜。皆様ご存知の「ゴダイゴ」。スーパーミュージシャンでありながらも「お茶の間」の大人から子供たちに支持を受けたグループとして、こちらも「歌謡曲」という観点で選ばせていただきました。大ヒット曲の「銀河鉄道999」に「モンキー・マジック」と最強ソング数多いなか、ワタシが選ぶのは1979年にリリースされたシングル曲「はるかな旅へ」です! 「銀河鉄道999」同様の、新しい何かが始まりそうな期待に胸を膨らませる、希望に満ち溢れた楽曲。そこはミッキー吉野センセーのアレンジの素晴らしさもあり、奔放に大きく横揺れしながら歌うタケカワユキヒデさんのフレッシュなヴォーカルの魅力もあるのでしょう。

 

9.星化粧ハレー/ハイ・ファイ・セット
(作詞:田口 俊 作曲:杉 真理)

お次は<コーラスグループ>編。元は「赤い鳥」という5人組のフォークグループだった3人が「ハイ・ファイ・セット」に、そしてもう2人は「紙ふうせん」として活動を続けています。「紙ふうせん」は引き続きフォーク路線でしたが、「ハイ・ファイ・セット」は都会的で洗練された、ファッショナブルなコーラスグループとなりました。そして今回独断と偏見で選ばせていただいたのは、1984年にリリースされたシングル曲「星化粧ハレー」。井上 鑑さんのアレンジが最高にアーバン! そして何より山本潤子さんのα波ヴォイスが優しく包み込んでくれます。途中Cメロ的に現れるメジャー調の分厚いコーラスが、この曲の切なさをより引き立てています。あと、見れたらPV見て欲しいのですが、80年代ならではのアニメーションと実写を組み合わせたドリーミーなPVは、ちょっと泣けます。

 

10.涙をこえて/ヤング101
(作詞:かぜ耕士 作曲:中村八大)

最後は<合唱>編。グループの極み……。1970年からNHKで放送された番組「STAGE 101」に出演していた若者たちで結成されたグループが「ヤング101」です。NHKの一番大きな「101」スタジオにて収録していたことからこの番組名がつけられました。その出演者のなかには「田中星児」さんや「串田アキラ」さん、「上條恒彦」さんや「太田裕美」さんなんかも在籍していました。番組内では外国曲を中心にオリジナル曲もたくさん制作され、そのなかでもこの番組の代表曲ともいえるのが、ヤング101によって歌われた「涙をこえて」です。中村八大センセーのメロディ展開の素晴らしさ、そして東海林修センセーのラグジュアリーなアレンジはいまも色褪せず、40年以上経ったいまでもその当時の熱量が楽曲と共に伝わって胸を震わせてくれます。

 

以上、今月のプレイリスト、2月は「グループ」を特集してお送りいたしました。カテゴリーを作りながらご紹介しましたが、ほかにもカテゴリー分けとして、<チビッコ>若草ジャイアンツ、<ハーフ>ゴールデン・ハーフ、<不良>横浜銀蠅、<ダンサー>ニュー・ホリデー・ガールとかいろいろ出来そうですが、かなりニッチな方向になりそうなのでやめました。そういうワタシもソロ歌手と平行して、「星屑スキャット」というグループに所属させていただいております。ジャンル分けとしては、もちろん<女装>です。かなりニッチですよね……女装グループって。ほかに思いつきません。そう考えると貴重なグループなのかも知れませんね。自分で言うなって感じですけど。

↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)

 

「星屑スキャット」も春に向けていろいろ準備中であります。来月素敵なニュースをお届け出来ればいいなと思ってますので、皆様どうぞお楽しみに!

 

試聴できる! バレンタインデーの夜にしっぽり聴きたい様々な形のラブソング10選

気づけば今年もバレンタインデー目前ですね。先日の恵方巻きのいろんな意味での白熱ぶりと比べると、だいぶ落ち着いているような気がするのは気のせいでしょうか? そもそもバレンタインデーは、アメリカでは恋人同士や夫婦間で大切な気持ちを伝えあう日。そして、海外では主に男性から女性に愛を伝える日としても知られています。

20180213-i03 (3)

 

今回はバレンタイン=愛しい人・大切な人というフォーマットを取りながら、男性目線のラブソングやバレンタインデーに映えそうな雰囲気重視の楽曲など、広義の意味でのバレンタインソングとして機能しそうな静かめの音楽をセレクトしてみました。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、夜にしっぽりと聴けるようなメロウな流れを楽しんでいただければうれしいです。

※画面をタップすると曲が試聴できます

 

【バレンタインデーに聴きたい様々な形のラブソング10選】

01.チョコレート/木村カエラ
(2011年10月12日リリース)

いわゆる告白ソング的なものではなく、意中の人へのハートフルな想いが詰まったもの。しかも僕口調の男子目線なので男性陣はハッとさせられるかも。「君の隣で僕は苦く 悩んではすぐ弱音をはく 口にすれば甘く溶ける チョコレートみたいに不思議な力」という歌世界に共感した男子は、その気持ちを伝えてみてはいかが? 6枚目のアルバム「8EIGHT8」に収録。

 

02.Faye Valentine/SaiB
(2017年8月7日リリース)

さっそく反則的なセレクトでご容赦を。1998年から1999年にかけてオンエアされていたテレビアニメ「カウボーイビパップ」のオマージュ・アルバムからの1曲。手掛けるのはモロッコ出身のビートメイカー。フェイ・ヴァレンタインとは本作のヒロイン名で、「愛しの人」ということでピックアップ。ラウンジ色の強いジャジーなチルアウト・ミュージックが劇中のセリフとともにふたりをやさしく包み込んでいく。

 

03. Valentine/ACO
(2015年12月16日リリース)

シンガーソングライターのACOが幾度もささやく「Be my Valentine(私の特別な人になってくれる?)」がなんとも官能的。生々しい息遣いが伝わってくる歌声と、それに寄り添うメランコリックなサウンドスケープとが印象的だ。デビュー20周年のタイミングでリリースされたアルバム「Valentine」に収録。

 

04.Valentine’s Day/ソランジュ
(2008年10月22日リリース)

世界の歌姫・ビヨンセの妹でもある彼女。姉への楽曲提供やデスティニーズ・チャイルドの裏方での実績を経て、ついに才能が開花。レトロな質感を感じさせつつも、現代にアップデートさせた最新型のR&Bスタイルの作りで話題を呼んだ楽曲。多くのメディアで評価されたセカンドアルバム「ソランジュ&ザ・ハドリー・ストリート・ドリームス」に収録。

 

05.Valentine’s Curse/Bane’s World
(2016年6月4日リリース)

カリフォルニアを拠点に活動するシェーン・ブランチャードによるベッドルームポップ・プロジェクト。浮遊感のあるドリームポップ的なサウンドが魅力的なのだが、タイトルの「Curse」とは童謡の捉え方で呪い、もしくは呪文の意味を含んだりもする。これって、アメリカでも男女問わず密かな想いを相手に伝える習慣が増えてきているということで、バレンタインデーの狂騒にうんざりしている人が実は多いってことかも(笑)?

 

06.ほれちゃった/CHAI
(2017年10月25日リリース)

“NEOかわいい”をテーマに、新たな女子のかわいい価値観をポストロックのサウンドにのせて声高らかに歌い上げる話題のガールズバンド。メロウでムーディな本作は、実はメンバー全員が愛してやまない餃子ラブな楽曲。とはいえ、餃子を彼氏に置き換えてみると、最高のラブソングとして機能してしまうのです。

 

07.桜super love(single mix)/サニーデイ・サービス
(2017年3月15日リリース)

厳密にはいわゆる「春ソング」になるのでしょうが、桜が咲きほこるまでには大切なあの人と一緒になりたい。スーパーメロウなこの楽曲を聴くと、なぜかそんなことを思ってしまうのです(当方既婚者)。印象的な歌詞「きみがいないことは きみがいることだなぁ」は、一緒に呼吸をするように大切な存在の人がいるからこそ。春に出会える桜のことかもしれないし、リアルに触れると体調不良で音源制作から離れたドラムスの丸山晴茂氏のことかもしれない。リスナーにとっては、あなたが今この瞬間に大切に思っている人のことかもしれない。ということで、究極のラブソングと解釈してみました。

 

08.Love is on line/キリンジ
(2006年10月25日)

堀込兄弟時代の隠れた名曲。題材はインターネットにおける恋愛で、2006年だとmixiをイメージするとわかりやすいかも。今では「出会い」のきっかけがSNS系サイトでもなんら違和感はないが、当時はまだ「え!?」なるリアクションが多かったはず。そのあたりのニュアンスを汲んだシニカルな歌詞がいい。例え、出会えなかったとしても、やり取りの間に「つながり」はあったのです。強引ですが、義理チョコも組織の中での「つながり」を確認させるアイテムということかもしれません。

 

09.Valentine/Ned Doheny
(1976年リリース)

甘い歌声とさわやかなメロディで人気を博したブルー・アイド・ソウルの代表選手。本作は70年代当時のサーファーたちに愛されたウエストコーストAORの名盤「ハード・キャンディ」の最後を飾るジャジーなナンバー。大切な人=バレンタインが去ってからはじめて知る彼女への愛しさ、信じることができなかった自責の念が歌われたもの。こうした気づきも含めてバレンタインということで。

 

10.My Valentine/ポール・マッカートニー
(2012年2月6日リリース)

現在の妻であるナンシー・シェベルに捧げたラブソングで、雨が降るバレンタインの日にポールが作曲したのは有名な話。世間を賑わせた前妻のヘザー・ミルズとの離婚訴訟を経て、2011年に結婚したふたり。「雨が降ったらどうするんだい? 彼女が言うには いつか すぐに太陽が輝くはず そして彼女は正しかった」。そう、その後の結婚生活は間違っていなかったのです。色艶のあるアコースティックギターの音色はエリック・クラプトンによるもの。

 

家族や恋人がいる方はもちろん、好きな人に思い切って告白しようとしている方は、音楽のチカラも借りて普段なかなか言えない感謝の気持ちや、「好き!」という気持ちを正直に伝えてみてはいかがでしょうか。

新しい気持ちで新年のスタートを飾ろう! あなたの挑戦を応援する10曲

1年の計は元旦にあり、ということで新しい年を迎え決意を新たにされた方も多いかと思います。仕事を筆頭に、習いごと、自分への投資、マイホーム探し、恋愛関係の進展や人間関係の整理、生活習慣の見直し、そして禁酒、禁煙などなど……。

 

今回は「新しいスタートを飾る」をテーマに、あなたの新しい一歩に弾みをつけてくれそうな楽曲をジャンルを超えて縦横無尽にセレクトしました。何か始めてみたくなるこの季節に、ぜひ聴いてみて下さい。

20180118-i02(1)

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、応援歌としてのプレイリストを楽しんでみてください。

※画面をタップすると曲が試聴できます

 

【新しいスタートを飾るにふさわしい曲10線】

01.Restart/サム・スミス
(2014年5月26日リリース)

天使の歌声とも称される歌声で、日本を含めた世界の音楽シーンを席巻したサム・スミス。本楽曲は第57回グラミー賞の年間最優秀レコード賞に輝いたアルバム「イン・ザ・ロンリー・アワー」に収録。恋人と別れて再スタートを切ったはずなのに、何度も戻ってきてしまう元パートナー。でも心はすでに新しい未来へと向かっている。過去のしがらみとの決別は恋愛だけではなく、仕事や環境にも当てはまりますよね。新しい一歩を踏み出すために、そろそろ整理をしてもいいものがあるのでは?

 

02.Start A Fire/ジョン・レジェンド
(2017年2月17日リリース)

グラミー賞10冠に輝くシンガーソングライター、ジョン・レジェンドが映画「ラ・ラ・ランド」にバンド「ザ・メッセンジャーズ」のリーダー、キース役として出演した際に劇中で披露したソウルフルなナンバー。必要以上にチープなシンセが飛びまくることで、セブ(ライアン・ゴズリング)が嫌っていた商業主義の音楽の象徴としている。厳密には恋の始まりを描いた歌のようだが、「火を焚きつけることができたぜ」と始まりの着火を予感させるということで。

 

03.LET’S GO/ORIGINAL LOVE
(1993年6月16日リリース)

田島貴男率いるオリジナル・ラブのバンド編成時代の名曲。70年代のジャズファンク的なサウンドアプローチで、「君のチケットをさがせ 終わりの始まりへ 共に始めよう 今 Let’s Go!」と新しいムーブメントを扇動する。徐々にヒートアップしていくファンキーなグルーヴがエキサイティング! アルバムチャート4位まで駆け上がり、認知度も大きくアップした3枚目のオリジナル・アルバム「EYES」のオープニング曲。

 

04.全力少年 produced by 奥田民生/スキマスイッチ
(2016年11月30日リリース)

敬愛する奥田民生のプロデュースで、彼らの代表曲をローファイなロックにリアレンジした民生節炸裂のナンバー。セルフプロデュースを信条としてきた彼らが、他者の手に委ねたことで楽曲本来のメロディと歌詞の強さがさらに開花した稀有な作品。歌詞の「積み上げたものぶっ壊して 身につけたもの取っ払って」を地でいく彼らの新たなチャレンジが美しく、これから何か挑戦しようとする人たちへの応援歌として機能するはず。

 

05.四月の風/エレファント・カシマシ
(1996年4月19日リリース)

エピック・ソニーからポニーキャニオンにレーベルを移籍して、第1弾となったシングル「悲しみの果て」との両A面シングルとしてリリースされた。かつての厭世感を漂わせる歌世界から一転、「明日も頑張ろう」「風が誘いにきたようだ」と、気負いのない息遣いで新生エレカシの章へと踏み込んだ。自分たちに新しい風が吹いているのかもしれない。ワクワクするようなバンドの新しい未来像は間違ってはいなかった。

 

06.チェリーブラッサム/松田聖子
(1981年1月21日リリース)

新しい幕開け、恋愛編。すでにトップアイドルの第一線を爆進していた彼女の4枚目となるシングル。いわゆる「桜ソング」ですが、冒頭の「何もかもめざめてく 新しい私」でプレイリスト入りが決定。疾走感のある黄金のサウンドメイクで、恋人への一途な愛をフレッシュに描く。この時代ならではのエレキギターの鳴きもたまりません。作曲はチューリップの財津和夫。マイナー調のサビが従来の聖子楽曲とは真逆で、それこそが最大の勝利でした。

 

07.WHEN IT STARTED TO BEGIN/ニック・ヘイワード
(1983年リリース)

80年代前半にファンカラティーナなるポップでラテンな音楽性で人気を博した、UKのポップバンド「ヘアカット100」のフロントマンでもあった彼。1枚目のソロアルバム「風のミラクル(ノース・オブ・ミラクル)」の冒頭を飾る1曲で、まさに新しい幕開けを声高らかに歌い上げた超キラキラな輝きを放つ英国産ポップス。邦題は「恋のスタート・トゥ・ビギン」で、90年代渋谷系黎明期のギターポップ系のクラブイベントでヘヴィープレイされていましたっけ。

 

08.Future Is Born feat. mabanua/RHYMESTER
(2017年9月6日リリース)

日本のヒップホップシーンを牽引し続けてきた彼らの必殺パーティチューン。踊れるディスコティックなトラックを、現代のディスコブギー的な解釈で再構築。「マイクを通したメディア ライムで書き足してくウィキペディア 近い将来世界を変えるアイディア」は、マイノリティな存在でもあったヒップホップ〜ラップが先人たちの果敢なチャレンジにより、メインストリームのジャンルにまで駆け上がっていった情景を鮮やかに浮かび上がらせる。掛け値なしに自分が好きなことや信じていることを、なにか始めようとするあなたに!

 

09.Started From The Bottom/ドレイク
(2013年10月16日リリース)

ここ数年のブラックミュージックの潮流でもあるオルタナティブR&Bの象徴的な存在である人気ラッパー&シンガーのドレイク。アメリカンドリームをつかんだ彼のフレーズ「どん底からスタートして、俺たちは今ここまできたぜ」が実に雄弁に物語っている。現在地に辿り着くまでに奮闘した成り上り絵巻は、これから下克上を狙うであろう若い世代の背中を押してくれるかも? 3枚目のアルバム「ナッシング・ワズ・ザ・セイム」に収録。

 

10.Dawn/藤原ヒロシ
(1994年11月23日リリース)

メロウをキーワードに、都市型の音楽を紡ぎ続ける彼の傑作インストルメンタル曲。柔らかな朝日がゆっくりと射していくような、神秘的なサウンドデザインに思わず引き込まれてしまう。「夜明け」というタイトルが謳うように、新しい時代の黎明、始まりの芽生え、出会いの兆しなどを静かにイメージさせる。曲の終わりが近づくころには、いつしか希望がこみ上げてくる、とかなんとか。アルバム「Nothing Much Better To Do」に収録。

 

新年に新しいことを始めたい方は、音楽のチカラを借りて第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

祝・成人の日! 20年前にデビューしたアーティストを集めた「1997年デビュー組」10選

本日は成人の日。全国各地では成人式が開かれています。成人を迎えたみなさま、あらためましておめでとうございます。早くも動画サイトなどには式の映像がアップされ、元気な新成人たちのやんちゃな姿が見られますが、それはそれ。昔の自分たちを重ねて、最後のやんちゃと思えばほほえましくも映ります。

20180108-i01(1)

 

この世に生を受けて20年ということで、同じく20周年つながりで、今回は「1997年にメジャー・デビューを果たしたアーティスト&バンド」という同期的な視点で振り返ってみたいと思います。いずれもいま聴いても決して色あせない楽曲ばかり。

 

そしてスタンスや表現方法は違えど、いまでもフロントラインに立ち続ける現役であるというのがポイントです。「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、ある意味で同期のよしみを感じる(?)プレイリストを楽しんでみてください。続けることって素晴らしい、とあらためて。

 

【1997年デビュー組、あの頃、君は若かったソング】

01.Raspberry/TRICERATOPS
(1997年7月21日リリース)

バンド初期の代表曲であり、永遠のロック少年でもある和田 唱の蒼いリビドーが大爆発した傑作デビュー・シングル。永遠にループするリフ(繰り返されるフレーズ)とダンサブルなリズム。シンプルな構成ながらも、一聴すれば耳に残るメロディの強さ。彼らが当初から目指していた「踊れるロック」を見事に具現化した最高のダンスナンバーでもある。当時、レーベルメイト(エピック・ソニー)でもあった佐野元春が絶賛していたのを記憶している。アルバム「TRICERATOPS」に収録。

 

02.強く儚い者たち/Cocco
(1997年11月21日)

沖縄出身の女性シンガー・ソングライター、Cocco(こっこ)は同年の3月21日に衝撃的すぎるシングル「カウントダウン」でデビュー。本来ならばデビュー・シングルを紹介すべきだが、本作セカンド・シングルが97年度「JALハワイ島キャンペーン」のCFソングに起用されたことで、より多くの人たちに認知されたこちらをチョイス。「人は弱いものよ」「人は強いものよ」「そして儚いもの」。どこか達観した歌詞は、その人の心の有り様で様々に解釈できるはず。セカンド・アルバム「クムイウタ」に収録。

 

03.MajiでKoiする5秒前/広末涼子
(1997年4月5日リリース)

レーベル契約を巡った大争奪戦を経て発表されたデビュー・シングル。本人出演の「NTT DoCoMo ポケベル」CMのイメージソングでもありました。この時代にはポケベルなんてものがあったのですよ! 作詞・作曲・プロデュース=竹内まりや。聴く前から間違いのない仕上がりで、往年のモータウン・サウンド(ザ・スプリームス「恋はあせらず」)のリズムパターンをモチーフにした黄金のポップス。結果、60万枚以上もの大ヒットを記録。ちなみに竹内本人は自身のアルバム「Bon Appetit!」(2001年)でセルフカヴァー。

 

04.白い雲のように/猿岩石
(1996年12月21日リリース)

芸人の有吉弘行が組んでいたお笑いコンビが大ヒットを放ったデビュー・シングル。作詞は藤井フミヤ、作曲は藤井尚之、そして秋元康のプロデュースと豪華な采配。リリース当初はめぼしいアクションはなかったが、チャートを賑わし始めたのが1997年に入ってから。オリコンチャート最高3位まで上昇してロングランヒットを記録。気づけばミリオンセラーを叩き出し、1997年を代表する楽曲にまで成長した。描かれる白い雲は縛られることの少ない若さゆえの自由の象徴、と勝手に解釈。

 

05.cream soda/SUPERCAR
(1997年9月21日リリース)

幸運にもわりと身近にデビューまでの過程を追えたのは良き思い出。飽和状態にあったギターポップ系のロックシーンに風穴を開けた恐るべき子供たち。メンバーの平均年齢は19歳、青森県在住。この瞬間にしか鳴らせない瑞々しい轟音ギターサウンドが詰まったデビュー・シングル。当時の洋楽ファンはJ-ROCKに不寛容で意識的に避ける傾向があったが、彼らを評価する洋楽リスナーが非常に多かった。メンバーであった中村弘二(Vo&G)は「Koji Nakamura」「iLL」で才能を昇華させ、紅一点のフルカワミキ(Vo&Ba)もソロで活動中。石渡淳治(G)は「いしわたり淳治」名義で作詞家&プロデューサーとして活躍中。

 

06.JOYRIDE/BOOM BOOM SATELLITES
(1997年11月1日リリース)

国内よりも世界で先に評価された彼らも1997年デビュー組。ベルギーのテクノの名門レーベル「R&Sレコーズ」よりシングル「JOYRIDE」でデビューを飾る。ヨーロッパの多くのメディアが本作で「ケミカル・ブラザーズ、プロディジー以来の衝撃」と大絶賛したのは有名な話。緻密なブレイクビーツ的なアプローチは今聴いてもフレッシュに響く。少々蛇足だが、日本が誇る伝説の名マスタリングエンジニアの田中三一氏が彼らの音質設計を大絶賛(自分、その場にいました)。それを裏付けるように、中野雅之は2015年に日本人アーティストとして初めてMastered for iTunesのマスタリング・エンジニアとして認定された。

 

07.Burnin’/ダフト・パンク
(1997年2月26日リリース)

今や名実ともに世界的なアーティストにまで上り詰めたエレクトロ・デュオ。厳密には1994年にリリースされたシングル「The New Wave」がデビュー作だが、本国フランスやヨーロッパ圏を飛び越えてアメリカでもスマッシュヒットを記録したデビュー・アルバム「Homework」が97年発表ということで、同期と解釈させていただきます。トリッキーなシンセが暴れまくる初期の代表曲で、後に興隆する「フレンチタッチ」なるムーブメントの着火ナンバーとも言える。当時、クラブでこの曲がかかりまくってちょっと辟易していたのも事実(笑)。

 

08.MMMBop/ハンソン
(1997年4月15日リリース)

オクラホマ州で結成されたハンソン3兄弟バンドによるウルトラポップなデビュー・シングル。洋楽を聴いていない人でも、テレビ番組のBGMなどで今でも使われているので、キャッチーなメロディが刷り込まれている人も多いのでは? 友情を歌ったハッピーな楽曲は全米チャートで首位を獲得し、ここ日本でも大ヒットを記録。ベックなどのオルタナ界隈のサウンドメイクを手がけていたダスト・ブラザーズがプロデュースを手掛けたことも話題に。ちなみに日本発売時のタイトルは「キラメキ☆ンー・バップ」。当時は洋楽ディレクターが頑張って邦題をひねり出していましたっけ。

 

09. I’ll Be Missing You feat. Faith Evans & 112/パフ・ダディ
(1997年6月30日リリース)

アメリカのヒップホップ界に革命を起こした音楽プロデューサーの現パフィー・ダディこと、パフ・ダディのデビュー・アルバム『No Way Out』からの超特大ヒットシングル。彼が才能を見出し、ヒップホップの東西抗争(レーベル同士の争い)の凶弾に倒れたノトーリアス・B.I.G.への追悼歌で、フィーチャリングされている歌姫のフェイス・エヴァンスはB.I.G.の奥様でもあります。ポリスの大ヒット曲「見つめていたい」のギターフレーズを大胆にサンプリングした大ネタ使いで話題を呼んだ。制作の背景を知らずとも亡き友、亡き夫への愛の歌に涙、です。

 

10.Next Lifetime/エリカ・バドゥ
(1997年2月11日リリース)

アメリカのR&Bシーンの最前線に君臨し続けるネオソウル界のカリスマ女性シンガー、エリカ・バドゥも不朽のアルバム「Baduizum」でこの年に華々しくデビュー。70年代のソウルが宿す精神性を取り入れた歌世界、アナログと最新のデジタルとが交差するジャジーなトラック、そして神秘的な歌声。彼女の登場でブラック・ミュージックの流れが大きく変わり、ここ日本でもR&Bブームの流れが本格的に表れてきたと記憶している。渋谷のR&Bの聖地「HARLEM」でこの曲がかかると女子が大喜びしていたなあと遠い目。翌年の第40回グラミー賞ではアルバムが最優秀R&Bアルバム賞を獲得している。

 

ということで、98年の早生まれの方を想定した楽曲がなくて本当に申し訳ございません……。ちなみに1月から3月までに、モーニング娘。、MISIAもデビューしているのでチェックしてみてください。

聖なる夜に聴きたい「80年代縛りのクリスマスソング」10選プレイリスト

いよいよ今日は待ちに待ったクリスマス・イヴ。街はプレゼントやクリスマスのごちそうを買い求める人で賑わっています。でも、そもそもクリスマス市場の規模が急成長したのは80年代に入ってから。それこそ12月が近くなると、テレビのトレンディドラマやCM、雑誌などでクリスマスを煽る特番や記事のオンパレードで、「クリスマスイブはカップルの日」と刷り込まれた方々も多いことでしょう。

 

とくに80年代バブル当時の田舎者必携(失礼!)のマニュアル本「ホットドッグ・プレス」のクリスマス特集を読み漁ったバブル世代の諸先輩方は、今でもクリスマスが近づくとなぜかソワソワしてしまうのではないでしょうか。

 

面白いことにクリスマスシーズンの経済効果の上昇とともに、欧米はもとより日本国内でもオリジナルのクリスマスソングが量産されていくようになります。これは大手企業やメディアによるクリスマスというブランド戦略によって導かれた新たなマーケットの誕生でもあったのです。

20171214-i02 (2)

 

ということで、前回の「ラスト・クリスマス地獄」に続いて、80年代に数え切れないほど生まれた「80年代縛りのクリスマスソング」をお届けします。「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、「あの頃のクリスマス」に浸れるプレイリストを楽しんでみてください。

 

【80年代縛りのクリスマス・ソング】

01.ウィンター・ガーデン/松田聖子
(1980年12月リリース)

セカンドアルバム「North Wind」に収録された彼女にとって初となるクリスマスソング。あなたを愛して2度目のクリスマスがもうすぐやってくる。愛情も水色から藍色へとより深く。冬を舞台にしつつも温もりを感じる柔らかいサウンドスケープがお見事。「愛の花はまだ蕾のウィンター・ガーデン」ということからも、プラトニックな関係がまだ続いているようです。初期の代表曲「青い珊瑚礁」と同じく、作詞・三浦徳子、作曲・小田裕一郎、編曲・大村雅朗の名采配が勝利を呼んだ隠れた名曲。

 

02.7月のクリスマス/ハイ・ファイ・セット
(1984年2月リリース)

シティ・ポップスの文脈で再評価も高まる日本のポップ・ヴォーカル・グループによるサマーポップなクリスマスソング。ここで歌われているのは12月25日ではなく5度目の結婚記念日を迎えた7月25日のこと。「7月25日よ なんの日かわかる? 真夏のクリスマスかい?」と山本潤子と大川茂による掛け合いが微笑ましく、洗練されたコーラスワークも聴きどころ。結婚記念日なんて忘却の彼方に……そんな方はクリスマスにかこつけて一緒に祝ってみるのはいかが? アルバム「PASADENA PARK」に収録。

 

03.CHRISTMAS TIME IN BLUE – 聖なる夜に口笛吹いて-/佐野元春
(1985年11月リリース)

昨年にデビュー35周年を迎えたレジェンドが1985年にリリースした12インチシングル。夏をイメージさせるレゲエアレンジを施したクリスマスソングは、当時の日本の音楽シーンに驚きを持って迎えられた。歌詞の一節「平和な街も 闘ってる街も メリー・メリー・クリスマス」は不透明な時代だからこそ、彼のパワーメッセージとして静かに響いてくる。UKを経由した洗練されたソウルやジャズなどのブラックミュージックに接近したアルバム「Cafe Bohemia」(86年)に収録。

 

04.夏日聖誕(MERRY X’MAS IN SUMMER)/テレサ・テン
(1987リリース)

桑田佳祐が1986年から1年間限定で活動をしていたKUWATA BANDの3枚目のシングル「MERRY X’MAS IN SUMMER」をアジアの歌姫がカヴァー。今回は日本語ヴァージョンではなく、あえて北京語ヴァージョンをセレクト。真夏のクリスマスを歌ったレゲエタッチなオリジナル曲をちょっぴりいなたくアレンジ。異国情緒漂う牧歌的なムードがたまりません。台湾出身の彼女ですが、目を閉じれば古き良き時代の香港の面影が浮かんでくるような……。

 

05.DING DONG/プリンセス・プリンセス
(1989年11月リリース)

当時のバンドやろうぜ的なJ-POP/J-ROCK界隈から生まれたクリスマスソングはバラード楽曲が主流だったが、80年代を代表するガールズバンドによる本作はとにかくアッパーな仕上がり。独り身のやるせなさを歌いつつも、パーティソングとしても機能するマジックがある。「キャロル歌う子供達でさえも 憎らしく思えて」という歌詞は、当時のクリスマス至上主義に翻弄されるヤングの心象風景を見事に捉えている。初のアルバムチャート首位を飾った4枚目のアルバム「LOVERS」に収録。

 

06.Chiristmas(Baby Please Come Home)/U2
(1987年10月リリース)

1963年に名プロデューサーのフィル・スペクターが制作したクリスマスアルバムの傑作「クリスマス・ギフト・フォー・ユー・フロム・フィル・スペクター」で、ダーレン・ラヴが歌った名曲をリズム&ブルース経由の黒いロックナンバーでご機嫌にカヴァー。世界的な大ヒットを記録した彼らのアルバム「ヨシュア・トゥリー」で顕著に見られた、アメリカのルーツミュージックへの傾倒が本作でもいかんなく発揮されている。1987年に発表されたチャリティアルバム「クリスマス・エイド」が初出。

 

07.フェアリーテール・オブ・ニューヨーク(ニューヨークの夢)/ザ・ポーグス&カースティ・マッコール
(1987年リリース)

ケルティック・パンクを代表するイギリスのバンド、ザ・ポーグスが今は亡きシンガー・ソングライターのカースティ・マッコールをフィーチャリングしたデュエットソング。成功を夢見てニューヨークに移り住んだアイルランド系の移民老夫婦のクリスマスの日の物語。厳しい現実を歌いながらもクリスマスソングとして愛され続けているのは、アイルランド移民のリアルな視点があるからこそ。アイリッシュ民謡的なサウンドも実に味わい深い。イギリスではクリスマスシーズンを彩る国民的なスタンダードナンバーでもあります。

 

08.Driving Home For Christmas/クリス・レア
(1988年リリース)

スモーキーなハスキーヴォイスと渋いギタープレイで、80年代に活躍した英国のシンガーソングライターによるハートウォーミングなクリスマスソング。別名「帰省ソング」。クリスマス休暇に遠くに住む家族のもとへと車を走らせる。帰る道すがら、みんなの顔や思い出をあれやこれやと車中で想いを巡らせる。そんな主人公のはやる気持ちが軽快なサウンドとともに描かれていて、いつしか心もホッコリ。日本では90年代に入って洋楽ファンを中心に人気が浸透していき、今でもラジオで頻繁にプレイされる定番曲。

 

09.Merry Christmas Mr. Lawrence/坂本龍一
(1983年5月リリース)

大島渚監督による映画「戦場のメリークリスマス」のエンディングで、ハラ軍曹(ビートたけし)の名セリフに寄り添う官能的なメロディがあまりにも有名な楽曲。主旋律の印象的なフレーズはグラスハープの音色をサンプリングしたもので、実験的な手法が随所に取り込まれている。本作はオリジナルヴァージョンで、アレンジを変えて何度もセルフカヴァーされているが、時代を経るたびに輝きを増す不朽の名作。教授が初めて取り組んだサウンドトラック作品であり、英国アカデミー賞の作曲賞も受賞している。

 

10.WHITE SUNDAY/レベッカ
(1986年10月リリース)

厳密にはクリスマスソングではないけれど、この時期に聴きたくなる1曲ということで。ここまでひんやりとした冬をイメージさせるサウンドメイクにはなかなかお目にかかれないかもしれない。NOKKOのメランコリックな息づかいと歌詞の「もしもこのまま冬が続くなら 2人まっ白になれるのに」に切なさマックスです。ちょっぴりダブ的なアプローチがあったり(ほんとか?)、後半にはストリングスで奏でられた「フレンズ」のあのフレーズがさりげなくインサートされる遊び心も。ぜひとも雪が降り積もった日に聴いてみてほしい。5枚目のアルバム「TIME」に収録された唯一のバラード楽曲。

 

いかがでしたでしょうか。80年代といってもバブルを象徴するようなものではなく、聴くたびに楽曲の深みを感じることができるセレクトで選んでみました。あなただけのとっておきのクリスマスソングをぜひ見つけてくださいね。

歌とともに北国へ……師走に聴きたい演歌・歌謡曲を集めたギャランティーク和恵の「歌謡プレイリスト」

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「北国」特集です。先日、ワタシが所属する星屑スキャットのお仕事で北海道は富良野に行って参りました。そう、富良野といえばワタシも大好きなドラマ「北の国から」ですよね。初めて降り立つ富良野で「北の国から」ごっこしたいなぁ〜なんて思っていたのですが、いきなり大雪で極寒という試練を与えられ、ラベンダー畑でいしだあゆみごっこみたいな甘い考えを早速打ち砕かれてしまいました。

 

ということで、テーマは寒い寒い「北国」。「北国」って言葉、いまも使う人いるのでしょうかね。ずいぶんと乱暴な言い方のようにも思える「北国」。どこを指しているのか「北国」。歌謡曲の歌詞にはたくさんの「北国」があります。ま、とりあえず「北国」に向かって出発してみましょう……。

↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

【12月のプレイリスト】

01.北国行きで/朱里エイコ
(作詞:山上路夫 作曲:鈴木邦彦)
まず北国に行くためには北国行きの汽車に乗らなくてはいけません。ということで1曲目はここではお馴染み、朱里エイコさんの1972年1月にリリースされたシングル曲からスタート。付き合っていた男と別れて黙ってひとり北国へ逃避行するお話。この曲で紅白歌合戦初出場だったのですが、北国に行く歌なのに朱里エイコさんはいつもと変わらずミニスカートで素晴らしい御御足を露わにステップを踏みながら歌うのでした。

 

02.逢いたくて北国へ/小柳ルミ子
(作詞:橋本 淳 作曲:井上忠夫)
お次は、1976年9月にリリースされた小柳ルミ子さんの20枚目のシングル曲。汽車が走っているような音にも聞こえる軽快なリズムに乗せて、ルミ子(敬称略)が遠く北国に住む愛する人への募る思いを歌い上げます。先ほどの朱里エイコさんの歌は男と別れて北国へ。一方こちらは男に逢いたくて北国へ。しかしこの男とはどういった関係なのでしょうか。遠距離? 単身赴任?

 

03.だからわたしは北国へ/チェリッシュ
(作詞:林 春生 作曲:筒美京平)
なんで北国なの? それは……ということで、お次は1972年1月にリリースされたチェリッシュの2枚目のシングル曲。チェリッシュと言えば松崎さんとえっちゃんのデュオ、というイメージがありますが、デビュー曲「なのにあなたは京都へ行くの」とこの「だからわたしは北国へ」までは5人編成でした。この「接続後+名詞+場所」シリーズとして、「だけど二人は湯布院へ」とか「そして娘は納沙布岬へ」とか色々作って欲しかったわ……。

 

04.北の宿から/都はるみ
(作詞:阿久 悠 作曲:小林亜星)
北国への旅路の途中でどこか宿に泊まりましょう。ということでお次は1975年12月にリリースされた都はるみさんのシングル曲。75年の紅白歌合戦でも歌われたこの曲は、翌年もロングヒットして76年のレコード大賞を受賞、そして紅白に2年連続この曲で出場し、しかも76年は大トリで歌うという快挙を成し遂げました。まるで手紙にしたためるような私小説的な“ですます調”の歌詞にも見られる、フォーク・ニューミュージックのブームが歌謡曲・演歌に与えた影響は大きく、70年中期あたりに感じる、どこか暗く影のある時代のムードをも映し出しているような曲だと思います。

 

05.津軽恋女/新沼謙治
(作詞:久仁京介 作曲:大倉百人)
さて、北国へ向かう旅路は津軽へと向かいます。お次は1987年4月にリリースされた新沼謙治さんの28枚目のシングル曲。東北出身でもある新沼さんの声には郷愁があり、青年の汚れない純粋な心を呼び起こすようで清々しく絶品です。津軽には7つの雪が降るらしい……と、いろんな雪の名前を並べたサビの歌詞がとってもキャッチー。でも何より歌い出しの「津軽〜の海よ〜」の導入部分でもうギュッ! と心を掴まれてしまうメロディーとコード感がスーパーキャッチー。名曲です。

 

06.津軽海峡・冬景色/石川さゆり
(作詞:阿久 悠 作曲:三木たかし)
さぁみなさん、とうとう津軽海峡を渡りますよ。お次は言わずと知れた大名曲、1977年1月にリリースされた石川さゆりさんの15枚目のシングル曲。ババババーンッというド派手なイントロが、津軽海峡の荒波と(見たことありませんが)凍えるような青森の冬の厳しさ(知りませんが)を想像させます。アレンジ、三木たかしセンセー自らやったんだって。スゴいわ。あと阿久 悠センセーが描く「北へ帰る人の群れは誰も無口で」って情景もスゴいです。フィクションのリアリティとでもいいますか……。本当だったら絶対みんな寒すぎて「あ〜寒い寒い寒い!」とかベラベラ喋ってそうじゃない? でもそうじゃないのよね、歌の世界は。

 

07.函館の女/北島三郎
(作詞:星野哲郎 作曲:島津伸男)
津軽海峡を越えて、ようやく北海道へ上陸です。はるばる来たぜ! 函館! みなさまご存知、1965年11月にリリースされた北島三郎さんの14枚目のシングル曲。先ほどまでの寒さに耐え忍ぶようなストイックな楽曲から一転、何とも陽気で開放的な歌に心が救われます。もしワタシも津軽海峡を越えて函館に向かうことがあるならば、絶対にこの歌を口ずさむでしょう。「は〜るばる〜来たぜ、鮭茶漬け〜!」っていう永谷園のCM、30代以下の方たちはもう知らないんでしょうね……。

 

08.北酒場/細川たかし
(作詞:なかにし礼 作曲:中村泰士)
テレッ! テレテレッ! イントロから調子E感じのお次の曲は、1982年3月リリースされた細川たかしさんの18枚目のシングル曲。「北酒場」と言えば札幌のすすきのあたりを想像します。旅行気分でちょっぴり浮かれちゃって、隣に居合わせた女の人に恋なんかしちゃったりなんかして。歌は世につれ……といいますが、豊かになってゆく80年代の日本人の心の余裕を映しているかのようです。この曲で細川たかしさんは初めてのレコード大賞を獲得。作詞作曲はデビュー曲「心のこり」と同じく、なかにし礼センセーと中村泰士センセー。低迷していた時期に再起を賭けて挑む細川さんへの、お二人の愛のようなものを感じずにいられません。

 

09.石狩挽歌/北原ミレイ
(作詞:なかにし礼 作曲:浜 圭介)
札幌からさらに北へ……。お次は1975年6月リリースされた北原ミレイさんの8枚目のシングル曲。こちらも「北酒場」と同じく作詞はなかにし礼センセー。なかにし礼さんは実際に幼少期を小樽で過ごした経験があり、貧困の中で兄が鰊(にしん)漁で博打のような商売に手をつけて莫大な借金を抱えてしまったという実体験から、この曲が生まれたといいます。栄枯衰退……夢を追いかけて挑む漁師たちの活気を感じる力強いアレンジと、その夢が消えてゆく様を重ねるように描かれたモチーフたち。聴いていると、入ってるはずのないソーラン節が遠くに聴こえてくるから不思議です。

 

10.稚内ブルース/原みつるとシャネル・ファイブ
(作詞・作曲:藤本卓也)
北国行きが行き着いた先は、稚内……。最後は1971年にリリースされた原みつるとシャネル・ファイブのデビュー曲でお別れです。藤本卓也センセーは、歌謡曲の作家先生の中では少しマイナーな印象がありますが、五木ひろしさんの「待っている女」や、矢吹健さんの「あなたのブルース」、内山田洋とクールファイブ「愛の旅路を」などを手がけた方で、狂気を帯びたようなアレンジや情念深い歌詞世界などが、熱量の高い歌手の方たちと非常に相性がよく、傑作を数多く残されている素晴らしい作家先生なのであります。流れ流れて最果ての街、稚内。サビの「稚内 あとがない」「稚内 先がない」「稚内 わからない」というダジャレまで……。ジャケットも“先がない”感溢れてます。北国への旅、行き着く先まで行きました。おしまい。

 

以上、今月のプレイリスト、12月は「北国」をテーマにお送りいたしました。一緒に北国へ旅をした気分を味わっていただけましたでしょうか?(結構悲惨な旅)

 

今回のプレイリストは演歌色が強いですね……。年の暮れって演歌が聴きたくなりませんか? 紅白歌合戦も大トリは演歌歌手じゃないと年を越した気分になれない世代なものですから。今年もワタシの店「夜間飛行」では紅白歌合戦を見ながら年越します。東京でひとり淋しく年を越されるご予定の方、夜間飛行であったかい鍋をご用意してお待ちしております。

 

今年も一年ご愛読いただきありがとうございました。来年もどうぞギャランティーク和恵をよろしくお願いいたします!

 

【インフォメーション】

ギャランティーク和恵さん、ミッツ・マングローブさん、メイリー・ムーさんによるコーラスユニット・星屑スキャットのNEW SINGLE「ANIMALIZER」が発売中! 各音楽配信サイトでもダウンロードできます。ぜひチェックしてみて下さい!

KCBR-0002_jacket

「ANIMALIZER」(Kuchibiru RECORDSより発売中/iTunes Storeほかで配信中)

1.ANIMALIZER(作詞:MITZ MANGROVE 作・編曲:中塚 武)
2.新宿トランスファー(作詞:山川啓介 作曲:有澤孝紀 編曲:中塚 武)

「ラスト・クリスマス」ってこんなにカバーされてるの!? 超名曲が10倍楽しめる“ラスクリ地獄”プレイリスト

独り身のさみしん坊にとって、ちょっぴり切ない季節が巡ってまいりました。そう、「クリスマス・イブ」です。クリスマスを必要以上に煽る世間の狂騒から逃げたい人もきっと多いことでしょう。クリスチャンでもないのに……なんて言葉は、恋人がいたら決して出てこないはず。

20171214-i02 (2)

 

そして毎年決まって街なかに大量投下されるのがクリスマスソングの洪水。とりわけ、ワム!が1984年にリリースした名曲「ラスト・クリスマス」は定番中の定番です。ジョージ・マイケルとアンドリュー・リッジリーからなるポップ・デュオが、アイドル的なパブリックイメージから大きく脱却した節目の作品とも言えるかもしれません。

 

しかし、昨年のクリスマスの日にジョージ・マイケル急逝の訃報が全世界を駆け巡り、ちょっぴり悲しい思いを引きずった「昨年のクリスマス」を振り返った「ラスト・クリスマス」が、さらに悲しみを増長させてしまうことに……。

 

時代を超えて今に至るまで、「ラスト・クリスマス」はさまざまなアーティストたちによってカバーされ続けてきました。それは、この楽曲が持つ普遍的なメロディの強さが際立っている証でもあります。ということで、不朽の名作「ラスト・クリスマス」縛りの「ラスト・クリスマス地獄」をお届けします。

 

こんな野暮なタイトルは、本来ジョージ・マイケルやワム!ファンにとって失礼極まりないチョイスかもしれませんが、追悼の意味も込めてあえて使わせていただきます。「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、ぜひ聴いてみて下さい。

 

【ラスト・クリスマス地獄10曲】

01.Last Christmas/グウェン・ステファニー
(2017年10月リリース)

アメリカのスカパンク系バンド「ノーダウト」のヴォーカリストで女優としても活躍するグウェン嬢が、今秋にリリースした自身初のクリスマス・アルバム「ユー・メイク・イット・フィール・ライク・クリスマス」で聴かせる秀逸のカヴァー。華麗なストリングスを多用した60年代的なサウンドアレンジの意匠を取り込み、ゴージャスな雰囲気たっぷりに膨らませた渾身の出来栄え。原曲のメロディの素晴らしさとサウンドアレンジの方向性とが見事にマッチした相思相愛バージョン。

 

02.Last Christmas/マリオ・ビオンディ
(2014年10月リリース)

“ミスター・イタリアン・ヴァイブ”こと、イタリアの国民的ソウルシンガーによるジャジィでダンサブルなカヴァー曲。伊達男らしくセクシーでスモーキーなヴォーカルが、洗練されたジャズアレンジで軽快にスイング! スイング! ここまで大きな別アレンジが施されてもますます輝いて聴こえるのは、メロディ本来の強さがあるからこそ。ジェントルなムード漂うクリスマスを演出したい方に。クリスマス・アルバム「マリオ・クリスマス」のオープニングを飾る1曲。

 

03.Last Christmas/カーリー・レイ・ジェプセン
(2015年11月リリース)

キャッチーなシングル「アイ・リアリー・ライク・ユー」で日本でも大人気の歌姫、カーリーが2015年に発表したカヴァーシングル。注目は印象的なあのイントロはどこへ? の大胆なサウンドプロダクション。トランペットの艶のある音色とフィンガースナップとでイントロを独自にリメイク。全体を通してオリジナル楽曲に対するオマージュ的な解釈で構成されており、歌詞も女性目線で少しだけアレンジ。数あるカヴァー楽曲のなかでもとりわけ「個性」が一番いい形で発揮された1曲かもしれない。

 

04.Last Christmas/JUJU
(2007年12月リリース)

歌謡曲やJ-POPのカヴァー・アルバム「Request」シリーズで数々のカヴァー曲を披露しているJUJU。本作では、チャッ、チャッ、というレゲエ調のギターストロークが特徴のサウンドで小粋に味つけ。艶のある憂いを帯びた伸びやかな歌声と、優しいホーンセクションの音色が聴く者を至福な気分にさせてくれる。クリスマスの雪化粧の情景をレゲエのリズムで歌ったシングル「Wish for snow/奇跡を望むなら…Xmas story」に収録。

 

05.Last Christmas/ジョン・ホルト
(1986年リリース)

“キング・オブ・レゲエ”とも称され、本場ジャマイカで60年代から80年代にかけて、レゲエとスカの架け橋的な存在の「ロックステディ」なるジャンルを牽引し続けてきたレジェンドによる意外なカヴァー曲。カラオケのようなチープ感極まりないシンセ音とヴィブラートのかかった独特な歌い回しで、ラヴァーズロック仕立てにアレンジ。常夏の国からのクリスマスへの甘い回答といった趣かも。そんな彼も今ではもう旅立ってしまった。「レゲエ・クリスマス・ヒッツ・アルバム」に収録。

 

06.Last Christmas/キャロル・キング
(2011年11月リリース)

アメリカが誇る稀有な女性シンガー・ソングライターの登場です。彼女らしい都会的なエッセンスと躍動するピアノとリズム、まさにカヴァーという名の新しい命が吹き込まれたことを実感させる仕上がり。彼女の手にかかると、どのような楽曲であっても自分色に染め上げてしまう、そんな匠の技を感じてしまう。キャリア初のクリスマス・アルバム「ア・クリスマス・キャロル」の国内盤にボーナストラックとして収録。Spotifyで初めて聴いたという声が多し。

 

07.Last Christmas/グリー・キャスト
(2010年11月リリース)

2015年に終了したアメリカの人気テレビ番組「glee」ファンにとっては思い出深い1曲。ちょっとした浮気でフィン(コリー・モンティス)に振られたレイチェル(リア・ミシェル)。彼女はフィンに未練タラタラ。劇中では二人が別々にクリスマスツリーを買いに来た場所で、この曲をデュエットしつつも、フィンの心の傷は癒えることもなく雪解けにならず。そんなドラマ上の話の流れと歌詞とがうまくリンクした内容で、glee鉄板の美しく折り重なるコーラスワークとハーモニーが聴きどころ。

 

08.Last Christmas – E-girls version-/E-girls
(2017年12月リリース)

今月にリリースされたばかりのニューシングル「北風と太陽」収録楽曲。音楽プロデューサーの松尾潔による意訳が光るE-girlsバージョン。とくにEXILEバージョンでもその威力を発揮した「今はまだ 思い出になんてできないの」の名フレーズは歌世界の本質を捉えている。クリスマスシーズンだからこそ、昨年の恋がよりいっそう愛おしく思えてしまう。そんな感傷的なムードにあえて飛び込んでしまうのもいいかも? EXILEバージョンと聴き比べてみるのもおすすめです。

 

09.Last Christmas/松田聖子
(1991年11月リリース)

アーティスト性を出そうと凝ったアレンジや譜割りを崩す手法が “カヴァー曲あるある“だが、本作はドラムの輪郭を少しだけ際立たせながらも、原曲にかなり忠実に仕上げたカヴァーを披露。飾らない音作りがとても味わい深く、時折インサートされるチャペル風の鐘の音がクリスマス気分を煽る。ちなみに前年にアルバム『Seiko』で全米デビューを果たした彼女。それゆえか、英語の発音もなかなかのものです。全編にわたってクリスマス楽曲を取り挙げた企画盤「Christmas Tree」に収録。

 

10.Last Christmas/ワム!
(1984年12月リリース)

やはり大トリはオリジナル楽曲でキマりです。イントロで優しく奏でられるシンセサイザー音と甘いフェイクで掴みはOK。80sらしからぬシンプルなサウンドメイクだからこそ、時代を経ても幅広い世代に愛され続けているのかもしれません。ちなみに本人たちが出演するミュージック・ビデオを見れば、どういった視点の歌かは一目瞭然。関係ないけど、未練タラタラの男を演じるジョージ・マイケルの元カノを見る上目遣いと、乙女のような可愛い走り方に注目を。

 

いままで普通に聴いていた「ラスト・クリスマス」、そして今年から耳にする「ラスト・クリスマス」とでは、楽曲が持つ意味合いも人によっては変わってくるのかもしれません。「ラスト・クリスマス」のカヴァー曲はほかにもまだまだたくさんあるので、あなたのお気に入りを見つけてくださいね。

“Tokyo”の魅力を再確認できる10曲を集めた「東京っていい街だな」プレイリスト

早くも師走に突入したこの時期は、不思議と「東京」という街の風情をいつになく感じてしまいます。年末年始に故郷へ帰省する地方出身者である自分、そして仲間たち。正月三が日を過ぎて帰京。東京生まれ東京育ちの地元っ子は、エアポケットのように閑静になった東京という街で正月を迎えます。

 

年始の東京の青く澄みわたった空を見上げると、「東京っていい街だなあ」と……あらためて、東京の良さを噛み締める人も多いのではないでしょうか。そんな東京の魅力や東京生活への憧れ、東京におけるさまざまな情景を描いた「東京」を歌った楽曲は、ご当地ソングも含めると膨大な数に及びます。

20171204-i04(2)

 

今回は東京が持つきらびやかな側面と、郷愁にかられる側面とが歌われた楽曲をセレクトしてみました。サウンドアレンジが「東京っぽい(?)」というのもポイントかもしれません。「Spotify」アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、東京を感じるプレイリストを楽しんでみてください。

 

【東京っていい街だなあ10曲】

01.クリスタル・シティー/大橋純子&美乃家セントラル・ステイション
(1978年1月リリース)

実力派ソウルシンガーによる1977年に発表されたアルバム「クリスタル・シティー」のオープニングを飾るきらびやかな楽曲。麗しのストリングスとホーンセクションとが華麗に交差し、まさにクリスタルな輝きを放つアーバンなシティ・ポップス。それは夜の摩天楼・新宿西口にそびえ立つきらめきの高層ビル群を思い起こさせる。厳密には東京を歌っていないかもしれないが、ジャケットは当時の新宿住友ビルディングで撮影されているということでひとつご容赦を。

 

02.東京/五輪真弓
(1977年11月リリース)

名曲「恋人よ」における彼女のイメージを覆すような、瑞々しくもちょっとセンチメンタルな気分にもなるナンバー。アルバム・レコーディングでアメリカやフランスに頻繁に渡航していた彼女。久しぶりに自身が生まれた街「東京」に戻り、距離があったからこそ気づく東京の魅力を声高らかに歌い上げる。ラリー・カールトンやパトリース・ラッシェンを始めとした凄腕フュージョン人脈が参加したLA制作。6枚目となるアルバム「蒼空-TODAY-」に収録。

 

03.東京は夜の七時/野宮真貴
(2015年11月リリース)

ピチカート・ファイヴの永遠の名曲を野宮真貴自らがセルフカバー。オリジナル楽曲が持つきらびやかな都会のサウンドトラックといった趣から一転、4ビートで刻まれるクールなジャズタッチのアレンジを施すことで、東京のエレガントな世界観もグンとアップ。これから東京の夜の街に繰り出せば、ワクワクするような瞬間に出会えそうな予感。とはいえ、本来は会えなかったふたりを描いたちょっと悲しい歌でもあるのだけど。

 

04.代官山エレジー/藤井 隆
(2002年2月リリース)

松本 隆ならではの歌世界と、キリンジの堀込高樹による情感あふれる切ない旋律とが見事に溶けあった名作。舞台は今の時期と重なる冬の季節の代官山。甘酸っぱい失恋模様を藤井 隆がビターな味わいで歌い上げる。今では様変わりしてしまった代官山だが、代官山の象徴的なあの通り、あのカフェ。目をつむってこの曲を聴けば、2002年前後の代官山の景色が浮かびあがってくる。これこそが松本 隆が描いた「風街」というマジックかもしれない。

 

05.東京ららばい/中原理恵
(1978年3月リリース)

女優やバラエティタレントとして名を馳せていく以前の彼女のデビューシングル。前年に世界的にヒットしていたディスコソング、サンタ・エスメラルダの「悲しき願い」をモチーフに、ヒットメイカー筒美京平がラテンタッチに解釈したナンバー。午前3時のトーキョーベイ付近のバーでのひととき、明け方6時の山手通りでのまどろみ。都会の華やかさと孤独な側面とを松本 隆が綴る。当時、東京のご当地ソングがないことを意識して書いたとの逸話も。

 

06.東京迷子/思い出野郎Aチーム
(2015年8月リリース)

この夏に新作「夜のすべて」をリリースした話題のソウルファンクバンド。ファーストアルバム「WEEKEND SOUL BAND」に収録のインストナンバー「東京迷子」は、タイトルを踏襲した物憂げなサウンドが印象的で、リフレインする「東京迷子〜♪」というフレーズが、大都会に生きる誰しもがふとした瞬間に感じるロスト感を煽っているようだ。そんなちょっと無骨なソウルミュージックが、この東京砂漠には時折リアルに響いてくる。

 

07.TOKYO SNIPER/流線型
(2006年10月リリース)

音楽プロデューサーのクニモンド瀧口によるプロジェクト。70年代のユーミン、達郎、CTIにAORまでのエッセンスを柱に、現在進行形の視点で再構築したゼロ年代のシティ・ミュージック集。アルバムの表題曲は夜の首都高をクルーズしたくなるアーバンでしなやかなドライブミュージック。後半のハーモニカソロとフェンダーローズの饒舌な音色が、流れる車窓の景色とリンクしていくようだ。ちょっとアンニュイなヴォーカルは一十三十一(江口ニカ)とsaigenji。

 

08.東京っていい街だな/左とん平
(1973年リリース)

和モノ系DJ諸氏の間で愛され続けている、ある意味アフターアワーズに映える隠れた名作。事実、90年代半ばのクラブ界隈、特に小箱で明け方によくかかっていたのを記憶している。東京の澄んだ青い空を彷彿とさせるジャジーかつムーディーなサウンドメイクは、アレンジャーの深町純の手によるもの。そこに俳優の左とん平による東京でのちょっとお間抜けな別れ話を寸劇で、よく言えばトーキング・ブルースが被さる洒落た構成。いろいろあるけど、東京っていい街だよなあ。

 

09.東京/くるり
(1998年10月リリース)

このシングルを携えてメジャーデビューした彼らの衝撃は今でも忘れない。上京したばかりのストレンジャー(岸田 繁)が感じた慣れない東京という居場所、そして地元の「君」を思う愛しさ、寂しさ。バンドがメジャー契約を交わし、東京でチャレンジをしていく彼らの決意と心象風景を重ねてしまう。後半に向かって爆発していく叙情的なバンドアンサンブルは感動的。90年代半ば以降から「日本語ロック」の新たな可能性を追求する流れが再燃したが、その最高傑作とも言える。

 

10.ユリイカ/サカナクション
(2014年 1月リリース)

バンドの司令塔でもある山口一郎は北海道の小樽市出身。東京に居ながらにして思う地方出身者としての東京観が切り取られている。自分が生まれ育った街のことを想い、東京に住むことで生き急いでしまうリアルさを噛み締める。日本人ならではの郷愁感を浮かび上がらせる歌詞が、ダンスミュージックの四つ打ちのリズムの中を泳いでいく画期的な「歌」でもある。決して無機質にならずに、血を通わせた温もりのあるサウンドデザインは唯一無二。

 

東京に住む人もそうでない人も、「東京」をテーマにしたプレイリストを聴いてみて下さい!

LINE MUSICで聴ける! ギャランティーク和恵が選ぶ“秋の気分にひたれる歌謡曲”プレイリスト

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。毎月その季節に合わせた歌謡曲を10曲選び抜き、みなさんにご紹介する「マンスリー歌謡プレイリスト」。今月は「秋」をテーマに選んでみました。秋の歌はどこかセンチメンタルでセピア色をしたような歌が多いですね。選曲してるあいだそんな歌ばっかりを聴いていたもんだから、心が枯葉のようにカッサカサになってしまいました。だ……だれか水分補給してぇ〜。

20170331-i04 (1)↑ギャランティーク和恵さん(撮影:下村しのぶ)

 

せっかく選んだ曲なので、ぜひみなさまに聴いて頂きたく、今回は音楽聴き放題サービスの「LINE MUSIC」でプレイリストを作りました。アプリをダウンロードすれば有料会員でなくても試聴ができますので、ぜひLINE MUSICでワタシのプレイリストを楽しんでみてくださいね。

20171108-i09(4)

※PCから試聴可能(Chromeブラウザでは動作しない場合があります。その場合はほかのブラウザでお試し下さい)
※スマホ・タブレットで試聴する場合は「LINE MUSIC」アプリ(無料/アプリ内課金)が必要となります

 

【11月のプレイリスト】

01.心のこり/細川たかし
(作詞:なかにし礼 作曲:中村泰士)
トップバッターは爽やかなこの曲から。1975年4月にリリースされた細川たかしさんのデビュー曲。三連のリズムにサックスが咽び泣くイントロに、旅の出発を後押しするような晴れ晴れとした爽やかさを感じさせます。少し肌寒くなってくる冷たい秋風が、背筋を伸ばし襟を正すような気持ちにさせるこの季節がとても大好きです。「私バカよね〜おバカさんよね〜」という出だしの歌詞が印象的で、むしろ「私バカよね」というタイトルになりそうだったところを、さすがにデビュー曲でそれはないよ……ということで「心のこり」になったという冗談のような話も。

 

02.メランコリー/梓みちよ
(作詞:喜多條 忠 作曲:吉田拓郎)
お次はオシャンティー姉さんこと、梓みちよさんの1976年9月リリースのシングル曲。乃木坂という街は赤坂と六本木と青山に挟まれた、少し静かで隠れ家的なイメージのある街。そんなオシャレな乃木坂あたりではイイ女って言われてんだけどさ……と自分で言うアズアズの気位の高さが素敵。そんな気位が邪魔をして、秋だというのに恋も出来ないしフラっと旅にさえも行けない。可愛げのある女になんかなれない自分自身を諦めてしまう感じが、もう痛いほど分かるわアニキ! ……あ、姉さん! 吉田拓郎さんに「わざと下手に歌ってください」と指示され、レコーディングで実際に下手に歌ったところ「OKです!」と言われ、「フォークってつまんないわね!」と言い放ったというアズアズらしい逸話が好き。

 

03.色づく街/南 沙織
(作詞:有馬三恵子 作曲:筒美京平)
お次はこの曲、1973年8月にリリースした南 沙織さんのシングル曲。健康的で奔放なイメージの10代の頃のシンシアにとっては少しアダルトな雰囲気の歌。色づく街、というのは恐らく街路樹なんかの木々の葉が色を変えてゆくという意味なのだろうと思うのですが、そういう秋の景色と失恋というのはどう考えても相性がいいものですね。そして夕暮れの風景というものしかり。しかしシンシア、そんな色づく街のなかでまだ青い落ち葉を拾い、なんと、噛みます。意味わかりません。どういう心境なのでしょうか。「まだ青いクセになに落ちてんのよ! バカッ!」という意味でしょうか……。有馬三恵子センセー、教えてください。

 

04.枯葉の街/由紀さおり
(作詞:山上路夫 作曲:いずみたく)
お次はそんな枯葉舞い散る歌。1969年10月にリリースされた由紀さおりさんのシングル曲。口笛から始まるイントロからしてもう木枯らしがピューピュー吹いているような景色が目に浮かびます。渋谷 毅センセーの優しさ満ち溢れるアレンジが本当に素晴らしい。西洋の映画音楽かな?と思ってしまうような、日本ではないどこか違う国の街角が思い浮かび、その街路の石畳に枯葉が舞い散るなかをトレンチコートを着た女が歩いている……そう思わせるのは、やはり由紀さおりさんのクラシカルでエレガントな歌声が故でしょう。もちろん、新宿西口大ガードの交差点なんかで人混みに押されながら副都心エリアへトボトボと歩くにも良いBGMになります。寒い季節と副都心は相性がよろしいかと。

 

05.恋人よ/五輪真弓
(作詞・作曲:五輪真弓)
誰もが知ってる秋の歌。1980年8月にリリースの五輪真弓さんの大ヒット曲。ピアノの重々しいダーンッダッダーンというイントロからもう絶望感溢るるスタート、そして出だしの歌詞の「枯葉散る夕暮れ」で一気にセピア色の景色が広がり、もう秋気分満載です。そして何といっても五輪さんの歌唱力でしょう。一度生で拝聴させていただいた時の感動は忘れられません。この大ヒット曲が生み出される前、彼女はフランスの歌手「アダモ」に見出されて単身でフランスへ渡り修行、そのあいだシャンソンに傾倒していたらしく、帰国後にこのような曲が生まれたという逸話もあり。五輪だけに(……)。ちなみに2番で「マラソン人(びと)が行き過ぎる」という歌詞に「マラソン人って何だよ!」といつも突っ込んでしまいます。五輪さんゴメンナサイ。

 

06.ワインレッドの心/安全地帯
(作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二)
ロマンティーク歌謡の代表曲。1983年11月にリリースされた安全地帯による大名曲です。秋……? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ワインレッドって聞くと秋を感じませんか? しかもこのセンチメンタルな曲調はどうしたって秋に聴きたくなります。井上陽水さんと玉置浩二さんの黄金コンビが作り出す耽美的な歌世界。怪しい色気を放つ言葉の魔法にかけられて恋に落ちてしまうような、罪の香りさえする井上陽水さんの歌詞と、それを狂おしく情熱的に歌い上げる玉置浩二さんのヴォーカルが心を震わせます。現在の玉置浩二さんもますます色っぽく、それこそイケナイ恋に落ちてしまいたくなるようなダンディズムは健在です。

 

07.ワインカラーのときめき/新井 満
(作詞:阿久 悠 作曲:森田公一)
お次はワイン繋がりでこの曲。1977年にリリースされた新井 満さんのシングル曲。カネボウ化粧品の77年秋のキャンペーンソングとして作られ、新井 満さんはそのとき広告代理店に勤めていた社員だったとのこと。カネボウ化粧品と資生堂が毎年キャンペーンソングで競い合っていた時代、前年に資生堂の秋のキャンペーンソング「揺れるまなざし」を歌っていた小椋 佳さんが銀行員だったこともあり、そういう風潮などもあって新井 満さんの抜擢だったのでしょうか。ちなみに新井 満さんは「千の風になって」の訳詞をされた方。非常に多彩な方だとお見受けいたします。中年男性が若い女の子に恋をした時の諦めと葛藤を描いていて、ワタシもそんな歳になってきて妙に沁みてくる歌です。ちなみにLINE MUSICでのプレイリストでは新沼謙治さんバージョンでお送りいたします。こちらも素敵よ。

 

08.秋桜/山口百恵
(作詞・作曲:さだまさし)
1977年10月にリリースされた山口百恵さんのシングル曲。1970年代はフォーク・ニューミュージック系のミュージシャンを歌謡曲の作家に起用することが多かった。1974年に吉田拓郎さんが森 進一さんへ、そして1975年には小椋佳さんが布施 明さんに書いた曲が連続でレコード大賞を獲得するなか、山口百恵さんが恐らく1977年にレコード大賞を狙っての意欲作だったと思われます。しかしそこにはジュリーが立ちはだかり、金賞にノミネートされたものの獲得とはならず。歌謡曲黄金期の激しい戦いに惜しくも破れたものの、大賞に選ばれても遜色ない大名曲です。まるでこの先の結婚を意識したような、嫁ぐ日の前日に育ててくれた母への感謝の思いを歌った歌です。「この頃涙もろくなった母が」という歌詞、気づくとワタシの年齢は百恵というよりはむしろこの母の方に近くなっていることに驚愕……。LINE MUSICでは曲を書いたさだまさしさんバージョンでお楽しみ下さい。

 

09.思秋期/岩崎宏美
(作詞:阿久 悠 作曲:三木たかし)
同世代のアイドルからもう1曲。1977年9月にリリースされた岩崎宏美さんのシングル曲。前曲の「秋桜」と同じ時期にリリースされており、この曲も1977年のレコード大賞で金賞にノミネートされたものの惜しくもレコード大賞に届かず。こちらは青春を駆け抜けた10代の最後の時を迎えた時に、振り返るとそこには失った出会いや傷ついた思い出の数々があり、そしてそんな「青春」たちにさよならを告げる歌。「思秋期」は、「思春期」という言葉から作られた阿久悠さんの造語だと思われますが、恋を覚える「春」から無邪気に戯れる「夏」、そして失恋を覚える「秋」という季節の移ろいにその心情を重ね、青春を振り返る時を「思秋期」と表現した阿久 悠さんの素晴らしさ。そして溢れんばかりの情感で歌い上げる岩崎宏美さんの歌の素晴らしさをぜひ堪能してください。

 

10.燃える秋/ハイ・ファイ・セット
(作詞:五木寛之 作曲:武満 徹)
そして最後はこの曲。1978年11月にリリースされたハイ・ファイ・セットのシングル曲。映画「燃える秋」の主題歌として制作されたもの。作詞にその映画の原作者でもある五木寛之さん、そして作曲には武満 徹さん! 歌謡曲としては珍しいクレジットです。しかしAメロが……あれ、出だしが何となく4曲目に選んだ由紀さおりさんの「枯葉」に似ているわ……。枯葉のイメージにはこういったメロが浮かんでくるのかもしれません。そしてサビでは一気に景色が変わり、美しく紅葉した大自然が広がります。ヴォーカルの山本潤子さんの透き通る声とそれを包み込む美しいハーモニーが、澄み切った冷たい秋の空気に響いているようなスケールの大きな曲です。実はワタシも去年のこの時期にリリースした「ANTHOLOGY#3」でこの曲をカバーさせていただきました。この壮大さを表現出来ているかは分かりませんが……LINE MUSICでもお聴き頂けますので、ぜひチェックしてみて下さいね。

 

20171108-i09(5)↑LINE MUSICではギャランティーク和恵さんの作品も配信中

 

以上、今月のプレイリスト、11月は秋をテーマにお送りいたしました。もう暦では立冬を過ぎ、秋も終わりを迎えようとしております。そんな残り少ない秋の日に思いっきりセンチメンタルな気分に浸るのもまた風流。どうぞLINE MUSICでこのプレイリストをイヤホンで聴きながら街のなかをひとり、失恋気分で歩いてみてはいかがでしょうか? でも、気持ちが入りすぎて、つい人混みのなかで「恋人よぉぉぉ〜〜!」と涙ながしながら口パクとか、しないようにね。そういうのはおウチでやりましょう。