スーツケースがベビーカーに早変わり!? 子連れ旅行を超ラクにする「バッグライダー」

「子どもが生まれても海外旅行へ行きたい!」

 

そう思うパパママは世の中にたくさんいるかもしれません。しかし子連れ旅行というのは、実際にはとても大変です。国際結婚した筆者には3歳になる子どもがいますが、飛行機移動は毎回苦労の連続。特に抱っこ紐が外れ、自分で歩きたがるようになってからは負担が増すばかり。どうにかならいか、といつも思います。

 

そこで最近見つけたのが「Mountain Buggy bagrider」。斬新なアイデアで子連れ旅行を楽にしてくれるアイテムなのです。旅行好きのパパママは要チェックですよ。

 

Mountain Buggy bagriderとは?

Mountain Buggy bagriderとは、スーツケースとベビーカーが合体した一台二役のアイテムです。通常スーツケースは2輪ですが、本製品はハンドルにクッションシートが取り付けられており、補助輪を出すと4輪のベビーカーに変身。子どもが自分で座れるようになる9か月ごろから、15kgになるまで(3歳ごろ)長く使えます。

 

シートの後ろ側にはメッシュポケットがついており、スマホやチケットなど細々したものを入れられます。メッシュなので見やすいうえ、すぐに取り出せるので便利。スーツケースも35Lと大容量(約 H51×W38×D25 cm)。内部に仕切りもあり、スーツケースとしての機能も十分果たしています。

機内持ち込みも可能なので、子どもを乗せたまま席まで行けます。これは意外と大事なこと。通常のベビーカーの場合、搭乗ギリギリまでは乗って行けますが、機内持ち込みができません。乗り込む前にベビーカーから荷物を下ろしてたたんでいる間に子どもは早く飛行機に乗りたくて走り出す、というヒヤリな状況を筆者は何度か経験しました。荷物と子どもを抱えて席までたどり着くのも一苦労です。

 

しかし、bagriderの場合は、このような苦労もありません。さらに、乳幼児とその保護者は優先搭乗を希望すれば、一般搭乗者よりも早く飛行機に乗ることができるので、焦ることなくゆっくり移動できるのです。

 

簡単な使い方&安心設計

bagriderは、耐久性がありながらも軽量なナイロンプラスチックで作られています。ブラックでシンプルなデザインなので、パパが使うにもいいですよね。

 

使い方も簡単。まずスーツケースのハンドル部分を伸ばしてクッションシートをつけます。次に「バッグライダーモード」と「キャビンバッグモード」を切り替えるためのダイヤルを回して補助輪をセット。この補助輪のおかげでスーツケースが4輪となり、安定したまま動かせるのです。バッグライダーモードでダイヤルがロックされるので、走行中に補助輪が閉じてしまうということもありません。

 

最後に子どもを乗せて、シートベルトを取り付けます。5点ハーネスは長さの調節も可能。しっかりと留められるので、ハーネスがずれることもなく子どもの身体にぴったりとフィットします。他のベビーカーのようなタイヤロックはありませんが、4輪で安定して置けるため、チケットや入国の手続きなどの際は、とても便利だと思います。

 

bagriderを製造販売しているのは、有名セレブからも人気の高いMountain Buggy。高品質で機能性、デザイン性も高いのが人気の秘密です。世界の安全基準を上回る独自テストも行っていますが、この会社の高級ベビーカーは2015年にドイツの国際的なプロダクトデザイン賞である「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞しています。



買う前に確認してほしいこと

bagriderには注意点もあります。容量が35Lと機内持ち込みにしてはサイズが大きいうえ、補助輪のため、スーツケースだけで重さが約5kgもあります。新幹線など陸路の場合は問題ないかもしれませんが、標準的なエコノミークラスでは持ち込みの手荷物は7kgまでと制限があるので、スーツケースの重さを差し引くと実質2kg分しか荷物を入れられません。

 

着替えやおむつなど軽いものであればいいのですが、重量制限を超えないようにパッキングする必要があるうえ、航空会社によっては機内持ち込みのサイズも異なるので、持ち込めない場合もあります。なので、購入前にいつも利用する航空会社の基準を確認してから購入したほうがいいでしょう。

bagriderは海外旅行だけではなく、帰省などの移動にも活躍しそうですね。アメリカでの価格は135ドル(約1万5000円。日本でもMountain Buggyの正規販売店が税込2万1600円で販売中)。親からすれば、ベビーカーと荷物を一気にまとめられ、その分身軽に移動できます。子どもにとっては目線が高くなり、アトラクションのように楽しいでしょう。なので、試す価値は十分あります。次の長期休暇には、bagriderとともに家族で遠出してみてはいかがでしょうか?

海外の赤ちゃんはどんなバギーに乗ってる? 世界のベビーカー事情

赤ちゃんや小さな子どもが乗るベビーカー。ひと昔前まで日本では、歩行がおぼつかない子どもを乗せるための移動手段として主に使われていましたが、最近では4歳まで乗れるように設計されているものもあります。しかし、海外に目を向けると、デザインや大きさ、機能に至るまで、まったく発想が異なっている様子。今回は下記の4点をテーマにイギリス、アメリカ、チリ、中国、ドバイ(UAE)の5か国を取り上げて、各国のベビーカー事情を垣間見てみます。

1:どんなベビーカーが主流? タイヤはシングル、ダブルタイヤ?

2:ベビーカーを取り巻く周辺事情、道路や環境などにまつわる状況

3:国によって異なるベビーカー購入時のポイント

4:日本との共通点相違点

 

[イギリス]

イギリスでは10キロ以上あるトラベルシステム(ベビーカー、チャイルドシート、ベビーキャリーを一台に集約した機能)が定番です。今年、特に人気があるのはイギリス製シルバークロスの「Wayfarer」 やiCandyの「Peach」。日本でもお馴染みのバガブーやストッケなどにも根強いファンがいます。

 

トラベルシステムは、大きめのシングルタイヤ4個のもの(前輪と後輪で大きさが違うタイプも多い)が主流。まずこれを1台目として購入、1歳前後からダブルタイヤ(計8個)の小さめなB型へと移行することが一般的です。

石畳が多いイギリスでは、がっちりしたタイヤがマスト。また電車やバスなどでも、ベビーカー優先や専用置き場があるうえ、イギリス人は赤ちゃん連れに寛容なので大きなベビーカーが主流です。購買層の中心である中流階級のイギリス人はおしゃれなママが多く、デザインやメーカー名を重視。日本との共通点として、人気ブランドのベビーカーを持つことは一種のステータスであること、相違点としては、日本のような利便性や軽量さはさほど求められない点が挙げられます。

 

[アメリカ]

 

アメリカにおけるベビーカーの特徴は、クルマ生活に合わせた仕様であること、そしてライフスタイルに合わせた選択肢が豊富であることの2点です。クルマ社会のアメリカでは、ベビーカーのシートがそのままチャイルドシートになる「3 in 1」タイプが多く、寝ている赤ちゃんを起こすことなく、クルマからベビーカーへの移動が容易になっています。

 

日本に比べ道も家も広く、ベビーカーがコンパクトである必要はありません。そのため、タイヤが大きく操作性の良い重量型が主流。荷物入れのスペースも大きく、ドリンクホルダーも4つあるなど高い機能性を備えています。

さらに、運動好きのママがジョギングをしながらベビーカーを押す「ストローラーラン」も一般的で、「Baby Jogger」社などの3輪タイプが人気(写真上)。そのほか、ベビーカーを好きになるために、クルマの形にデザインされた幼児向けの「Step2」社も人気を集めており(写真下)、公園や図書館では必ず見かけるほど。旅行用に、簡易な傘くらいに折りたためる20ドル程度のベビーカーを2台目として持つ人もいます。

購入するときに重視するポイントは、ベビーカーのシートをクルマへ移動する際の設置しやすさや折りたたみやすさなど、クルマにまつわる機能性です。クルマのトランクサイズに合わせてベビーカーを購入するのはもちろん、ベビーカーが入れやすいクルマを買う人までいるほど。

 

しかし、アメリカのベビーカーを日本で使うとなると、駅の改札を通れない、電車内で身動きが取れない、階段での持ち運びに重いなどかなり不便です。

[チリ]

南米チリではダブルタイヤのシンプルなB型ベビーカー(生後7か月ころから使えるタイプ)が一般的。そのほかにもシングルタイヤ、対面式のベビーカーなどにも人気がありますが、日本でよく見かけるベビーカーが主流です。

 

チリの首都サンティアゴではきちんと舗装されていますが、郊外や地方になると舗装されていないところもあり、ベビーカーで出かけるには辛い場所もあったりします。

チリ人がベビーカーを購入する際に最も重視するのは、「価格が手ごろであるか?」という点です。というのも、チリ人の最低月給は約4万円ほどだから。そのため、一般的には5000~1万円程度のべビーカーを購入する人が多いようです。

 

チリのベビーカーは日本のものとまったく一緒で、他国のブランドにあるようなバギータイプなどはあまり見かけません。日本との相違点をあえて言うなら、使用環境の違いと言えるかもしれません。ベビーカーに関しては寛容で、バスなどで周囲が上げ下ろしを手伝うのはごく当たり前の風景となっています。

 

[中国]

中国の街中でよく見かけるのは日本でいうA型(生後1か月から使用可)で、赤ちゃんとの距離が近くなれるハイシートタイプも人気を集め、タイヤの形態もシングルとダブルのどちらも見かけます。また、石畳の歩道が多いので振動を受けやすくなっています。そのため、タイヤが大きめなもの、重量がそこそこあるものは抗振動性が高いと認識されています。

購入ポイントとしては、まず赤ちゃんが安全で快適に乗れるかどうか。次に操作性へ重点が置かれます。中国にも安全基準はありますが、EU基準での欧州系ベビーカーはより評価が高く、好まれる理由の1つです。中国では共働き世帯が多く、祖父母やお手伝いさんにお世話をお願いすることになるので、その人たちが操作しやすいこともポイント。タイプの異なるものを2台購入し、状況に応じて使い分ける人も少なくありません。

日本との共通点は、中国で販売されているベビーカーは日本とラインナップが同じということ。ただし、中国では、日本人が重視する押しさすさや畳みやすさはそれほど重要視されていません。

[ドバイ]

ドバイは人口の8割以上が外国人。特に西洋人がストローラーを使うため、アメリカやヨーロッパのブランド(Uppa babyやStokkeやCiccoやBagabooなど)が主流で、シングルタイヤのものは多くのベビー用品店でも大きく展示されています。ローカルのアラブ人向けには、ゴールドカラーや高級車とコラボした約50万円もするストローラーも販売されている一方(写真下)、インド人やパキスタン人が多く住む「オールドドバイ」とよばれる地域では、ダブルタイヤや小型で軽量のベビーカーを見ることもあります。

1年間の最低気温が20度、夏は50度まで上がるドバイでは、外でベビーカーを押す姿はあまり見かけません。ベビーカーはショッピングモールやレストラン、カフェで見かけることが多く、特にモールやメトロも広いスペースなので、大型ベビーカーを押す人が多いです。たまに駅の改札を通れる日本製ベビーカーを見かけることもありますが、とても小さく見えます。クルマ社会なので、アメリカのように直接取り付け可能なシートも人気。

身長が高い西洋人はなるべく赤ちゃんと距離が近くなるようハイシートを重視。「Uppa bab」や「Stokke」などの使用率が高いのが特徴です。その一方、現地のアラブ人は一夫多妻制なので、子どもを4~5人連れた大家族もよく見かけ、双子用やステップのついたもの、荷物がたくさん入るものなど、利便性を重視する傾向です。ドバイは物価が高いので、ストローラーやベビー用品などは年に数回ある大きなセールでまとめ買いをします。

日本との共通点は、ポケットの多さやカップホルダーなどオプションの豊富さと利便性です。ドバイでは欧米系ブランドが多いので、サイズと身長の高さが圧倒的に違います。大きくて安定感はあるものの、折りたたんでもかなり幅をとるうえ、重さも10kg以上あるため、小柄な女性には取り扱いが困難。ただし、ドバイの人たちは妊婦や子どもに優しく、男性トイレにもベビールームが完備されるほど徹底されているので、著者は大きくても困ったことはありません。

 

では、日本は?

日本でも、最近では芸能人などのセレブたちがおしゃれな海外製を使うシーンがSNSなどで拡散されており、海外ブランドの人気が上昇中。それと同時に、ベビー用品店のオリジナルブランドも増加の一途をたどっています。

 

また、海外でも見られるように、安全性とともに、カーキャリア、ベビーキャリアなどに使える「~Way」式のベビーカーや、海外デザインを追従したスタイリッシュなものやカラーバリエーションも増えている傾向にあります。

 

狭い国土や道路、駅の改札、階段の上り下り、体型などの背景から、使用時や折りたたみ時のコンパクトさ、小回りのよさに重点が置かれているところは日本独特と言ってもよいでしょう。そして、女性一人が操作することを念頭にいれた軽量さや高い機能性を兼ね備えた設計もこの国の特徴。やはり大きさに関しては日本と海外、特に欧米系との決定的な相違点と言えますが、日本ならではの利便性や安全性などの細かい配慮も文化的な相違点かもしれません。

 

海外では振動抑制にはタイヤの大きさでカバーすることが多いですが、日本では小回りの良さをキープするため、タイヤ以外の機能、サスペンションやエアクッションなどで振動を抑える傾向も特徴的かもしれません。タイヤについてもダブルタイヤが多いですが、近年ではピジョンのRunfee(ランフィ)の登場でシングルタイヤのベビーカーも多く出回るようになりました。

海外と比較すると、残念ながら日本はベビーカーに対して寛容とは言いがたく、コンパクトなベビーカーでも電車やバスのなかでは広げたままかたたむべきかの論争が常々されている状況。背景には、日本は国土が狭いうえ、赤ちゃんが泣いたりぐずったりした際、親がすぐに抱っこして、あやすという行動や「他人に迷惑をかけない」という価値観があります。しかし、混雑時の公共の交通機関では子連れ側が自重するだけでなく、周囲の乗客も、ベビーカーを押している親に手を差し伸べるというチリやドバイの人たちの良いところを見習いたいですね。

自動車評論家に衝撃走る! 「シングルタイヤ」が日本のベビーカーに革命を起こす

モータージャーナリストの私には、2歳の長男と6か月長女がいます。長男はそろそろベビーカーを卒業し、かわってこれから長女が使う機会が増えていきますが、思えばベビーカーというのは、それなりに長い期間を毎日のように使うもの。

 

わが家は、メインで使う妻の要望で、ネットの情報を参考にしながら、とにかく軽いベビーカーを選びました。妻はこのバギーに対してあまり不満もなく、軽くてよいと感じている様子。しかし、筆者は、職業柄か、4つのタイヤが付いているものならなんでも走りを分析したくなります。わが家のベビーカーについても、走行性能についてはいろいろ思うところもありました。たしかに軽い点では重宝しているものの、走行性能については不満を覚える点も多々あります。そんな折、今回ピジョンのベビーカーを取材することができたのですが、もしこれから述べる話をもっと前に知っていたら、迷わずピジョンのベビーカーを選んだのにと少し悔しく思っています。

 

ベビーカーのタイヤってどうなっているの?

↑シングルタイヤ(左)とダブルタイヤ

 

「Runfee」や「Bingle」をはじめ、ピジョンのベビーカーの最大のポイントは「シングルタイヤ」を採用していること。そして、シングルタイヤは「走行性」に優れていることが特徴です。ベビーカーにダブルタイヤとシングルタイヤがあることは、普段、街中で見かけてなんとなく認識していましたが、両者の間に大きな違いがあることはまったく知りませんでした。そこが、ピジョン開発本部の主任研究員である加藤義之さん(写真下)からお話を伺って思い知らされた点です。

日本製のベビーカーではダブルタイヤが多い一方、海外製品ではシングルタイヤが主流。それぞれ一長一短あります。シングルタイヤは走行性能において優れていますが、どうしても重くなりがち。対するダブルタイヤは軽くできる反面、走行性能に劣ります。

 

また、工業製品というのは生産上どうしてもある程度のバラツキが生じるものですが、しっかり走らせるためにはシングルタイヤのほうが高い精度が求められるのに対して、ダブルタイヤは「ごまかし」が利くとのこと。さらには、車体の骨格や車輪の取り付け部の剛性や角度の設計など、シングルタイヤのほうがはるかにシビアだそうなのです。このような理由でシングルタイヤのほうが作るのが難しくなっていますが、それでも、走行性能を重視する地域、特に欧州ではシングルタイヤが主流。対照的に、日本では軽さが一番に求められるうえ、色やデザインの可愛らしさでベビーカーは選ばれています。

走りのよさを追求するとは、まさしく筆者の専門分野である自動車に通じる話。最近では日本車もレベルアップして、欧州車とりわけドイツ車との差というのは、かつてよりもだいぶ小さくなったように感じていますが、欧州では走りが重視されるのに対して、日本ではそれがなおざりにされているというような話は、まさしくクルマの世界でもよく耳にしてきました。そしてベビーカーの世界でも、欧州の人は走りのよさを求める傾向が強く、それに応えるべく、これから述べるとおり走りの面で有利なシングルタイヤが一般的となっているのです。

 

「ベビーカーの使用期間は一般的に3年です。それなりに長い期間使うものになるので、軽さやデザインなどで選ぶ方も多くいらっしゃいますが、そうした表面的なものだけではなく、ちょっと視点を変えて、使いやすさを基準にして選んでいただいたほうがよいのかなと思っています。競合他社と差別化を図るのはなかなか難しいところですが、そこで私たちが着目したのがシングルタイヤです」(加藤さん)

 

開発にあたって加藤さんは最初、とにかく数多くの競合ベビーカーを試し、特に海外の製品をたくさん押して歩いたと言います。すると、シングルタイヤを採用した海外製品が概ね押しやすかったのに対して、ダブルタイヤを備えた日本製は押しにくいうえ、作りが粗いと感じるようになりました。

↑Runfee RA8

 

「ベビーカーは海外と日本では棲み分けが全然違います。日本製は剛性感に乏しく、ぐらつきがあったりして、押しにくく感じたものばかりで、単に運べればよいと考えているように見受けられたものが少なくありませんでした。それはママさんにとっても赤ちゃんにとっても好ましくない状況でしょう。しかし、海外製のものは非常に重いので、日本市場におけるニーズとかけ離れています。どうやったらこのような壁を打破できるのかと考えていました」(加藤さん)

 

ちょっとクルマに乗せて目的地まで移動するなど、ベビーカーを頻繁に畳んだり開いたりせざるをえないような場面が多々ある日本では、むろん軽いに越したことはありません。日本では軽さが重視されることにも、それなりの理由があるわけです。

 

そこで加藤さんはRunfeeを開発するにあたって、海外製と日本製の優れたところを掛け合わせると面白いものができるのではないかと考え、シングルタイヤながらも日本市場にマッチするように軽さを追求する方針を打ち出しました。

「シングルタイヤにすると走行性能が改善するのはよいけれど、普通にやると絶対に重くなるというのは当初から分かっていました。よくタイヤの数が減る分軽くなると思われがちなのですが、シングルタイヤを成立させるための構造面のことを考えると、実際にはその逆。そこでタイヤの代わりに躯体や車体の部分、赤ちゃんを乗せる部分で重量をできる限り落としました」と加藤さんは言います。

 

他社のシングルタイヤ製品は8kg台のものが多く、10kgを超える製品も多々見受けられるのに対し、Runfee RA8の重量は5.3kgと圧倒的に軽くなっています。また、Runfee RA8をダブルタイヤと比較してみても、ピジョンの「PATTAN」が4.7kgなので、両者の差は小さいといえるでしょう。シングルタイヤでこれほど軽量で押しやすいベビーカーというのは、現状では唯一ピジョンのランフィだけと加藤さんは胸を張ります。

クルマの技術をベビーカーの開発に持ち込んだ

実は、加藤さんは前職で自動車関連の開発に携わっていたという経歴の持ち主。ベビーカーの走行性の向上を図るために参考にしたのは、やはりクルマだったそうです。そこでまず、走りの要素を「直進安定性」、「段差乗り越え性」、「振動吸収性」、「転回操作性」、「転回安定性」、「静粛性」の6項目に分解し、クルマの走りを意識しつつ開発を進めました。また、シングルタイヤの優位性を確かなものとすべく、加藤さんはCAE解析(コンピューター技術を活用して製品の設計や開発をシミュレーションすること)やタイヤメーカー出身の大学教授らの力を借りたと言います。

 

構成する部品の強度や剛性、取り付けの角度などは綿密に計算されたうえで決められたもので、それぞれに意味があります。シングルタイヤとダブルタイヤでは車輪の数が違うだけでなく、部品の取り付け方や接続の構造もまったく異なり、入力の伝わり方も違ってきます。一般的なダブルタイヤの衝撃吸収構造はあまり凝ったものにはならないのに対し、スイング式のサスペンションを持つランフィでは上下だけでなく前方からの力も吸収。さらに、軽くてクッション性に優れる中空構造のタイヤが振動を巧みに吸収してくれます。

また、タイヤの外径が大きいほうが段差を乗り越える際の踏破性が高まります。外径18cmのタイヤを採用したRunfee RA8も、段差の乗り越えやすさについては、すでに多くのユーザーから高く評価されています。

走りにおけるシングルタイヤとダブルタイヤの最大の違いは、タイヤの接地点にあります。荷重のかかり方からして、ダブルタイヤの場合はパイプからくる軸とタイヤ同士の軸が離れているので、実は常に横に細かく揺れるような動き方をします。ところがシングルタイヤでは構造的に同軸上なので、タイヤの横ブレは絶対的に少ないゆえに、不快な振動が減少されます。

実際に試してみると、まさしく目からウロコ! 同じ条件の場所でシングルタイヤと押し比べてみたところ、その違いは歴然としていることがよく分かりました。シングルタイヤのほうが思った通り素直な動き方をします。これは、よくクルマの走りを表現するときに用いる“意のままのハンドリング”そのもの。狙ったとおりにラインをトレースしていけるので、これなら狭い場所を通らざるをえないような状況でも押しやすく、苦になりません。

一方、ダブルタイヤは、直進時の据わりも悪ければ方向性も定まりにくいです。その理由は4か所それぞれで両輪がバラバラに動いてしまうから。2輪ずつあるならより安定するような気がするところですが、実際にはそんなことはありません。安定感は車幅の広さで決まるものであって、タイヤの数の問題ではないのですね。

シングルタイヤが静かなことをご存知?

シングルタイヤのメリットはそれだけではありません。前述したように、振動と密接に関わってくるのが「音」。音の発生するメカニズムにはいくつかの要素がありますが、そのなかで最も大きく影響するのが振動です。

 

ダブルタイヤの場合はキャスターの軸とタイヤの軸が離れていることから、どうしても不規則な動きを常にしていることになります。実は片方のタイヤが上がってはもどり、次に別のほうが上がって下がり、片方だけ上がって下がるなどといったような動きを細かく繰り返していて、それが音になっているのです。

 

これはダブルタイヤ特有の現象で、シングルタイヤではそのような動き方はしないので、振動が圧倒的に少なく、その結果、静粛性も向上します。特に荒れた路面では音の違いが顕著。「ダブルタイヤのベビーカーを押してくると、ダブルタイヤだとすぐ分かります(笑)」と加藤さんは言います。

 

実際にどれぐらい違うのでしょうか? 詳しく測ってみると全然違います。専門の測定メーカーとのコラボレーションにより、ブロック敷きの路面で「ランフィRA8」とダブルタイヤのベビーカーを押したときのタイヤ近傍に設置したマイクラウドネスの結果はこの通り。平滑面において、実に約3分の1も走行音が静かであることがわかりました。シングルタイヤは条件が悪くなるほど優位になると加藤さんは言います。

このように静粛性にも優れることが明らかなので、「シングルタイヤは音も静かだ」ということをもっと伝えていきたいと加藤さんは強調します。

 

「ピジョンが競合他社さんと差別化できる要素として、シングルタイヤによる走りやすさという価値はあると自負しています。軽さももちろん大事だし、見た目の好みもあると思いますが、ママさんが使うことを考えると、ベビーカーを選ぶときにはもっといろいろな着眼点を持っていただいて、そのなかでもぜひ走行性能というものをもっと意識していただき、さらに音という部分にも目を向けていただけると幸いです。そうした走行性能に優れたベビーカーを選ぶと、より快適に子育てしていただけることをもっと伝えていきたいと思います」

 

日本のベビーカーにイノベーションを

そんなわけで冒頭でもお伝えしたとおり、いろいろお話をうかがって、もしもいま私がベビーカーを選ぶとしたら絶対にピジョンのランフィだと強く思ったわけです。筆者だけでなく、シングルタイヤはよいものだということが幅広く理解されると、いずれは日本でも走りのよさで選ぶことがベビーカーの常識となるかもしれません。

 

それにはまず少しでも多くのユーザーによさを実感してもらうことが大事。ピジョンではクルマの試乗会のように、「シングルタイヤ走行体験会」を全国各地で実施し、店頭の段差や疑似ロードを設定したスペースで実感してもらえる機会を設けているので、関心がある方はぜひ足を運んでみることをおすすめします。

 

走行体験会詳細はコチラ

 

テクノロジーの集合体である自動車に比べると、ベビーカーの進化というのはずっとゆっくりであることには違いありませんが、まさしくこうした取り組みからブレークスルーが始まるのではないだろうかと思います。ピジョンのシングルタイヤには、日本のベビーカーに変革をもたらすことを感じさせるだけのインパクトがありました。

 

わずか1.5cmの違いがベビーカーの衝撃を衝撃的に変える! ピジョン「Runfee RA8」をいち早く試してみた

子どもが生まれたら必要になるベビーカー。小さい子どもと出かけるときには便利ですが、ベビーカーはいつもスムーズに進むとは限りません。道の段差につまずいたり、対面式が操作しづらかったりして、止まってしまうことがよくあります。しかし、こうした悩みを解決したベビーカーがまもなく発売されます。

 

2月20日、大手ベビー用品メーカーのピジョンは、同社の人気ベビーカーの新モデル「Runfee RA8」を発表しました。何が、どう新しくなったのか? どれほど使いやすいのか? 都内で行われた発表会に育児中のGetNavi webの男性編集者が発表会に参加して、新製品を一足先に試してきました。

20180226_kubo08↑ 新製品を発表したピジョン株式会社ベビー大型商品マーケティングGマネージャーの小笠原達一郎氏

 

Runfeeとは、ピジョンが生んだ傑作の1つです。ベビーカーはいくつかのカテゴリに分けられ、同シリーズは最近人気の「A型軽量・オート4輪」の部類に入ります。A型とは生後1か月から36か月または48か月までの子どもが乗れるベビーカーのこと。Runfeeは2015年1月に発売され、画期的な「16.5cmの大径シングルタイヤ」がお母さんの間で好評となり、上記のカテゴリーのなかでも秀でた製品の1つとなりました。

 

新Runfeeは、自らの強みに磨きをかけています。基本的にRA8は前モデル(RA7)の機能を搭載していますが、いくつかの部分が強化されています。そのなかで最も重要なのは、シングルタイヤの大きさ。対面時の前輪のタイヤが16.5cmから18cmになりました。これによって、Runfeeはミドルレンジにも関わらず、タイヤ径で同社や競合他社のハイエンドモデル(finoやコンビのUmbretta)と肩を並べました。

20180226_kubo12↑ 左側のタイヤが対面時の前輪

 

この背景には、赤ちゃんの親が心配する2つの問題があります。1つは、ベビーカーは対面走行時に押しづらくなること。ピジョンが今年1月に20~30代のお母さん349人を対象に行った調査によると、98%が対面式でベビーカーを使っている(または使っていた)ことが分かったものの、そのうちの61.3%が対面走行にストレスを感じていたのです。主な原因は、左右に曲がりづらいことや段差を乗り越えにくいこと(筆者も対面式は扱いづらいと感じているので使っておりません)。さらに、70%以上のお母さんが、段差のつまずきが赤ちゃんに与える衝撃を心配していることも判明しました。

 

Runfee RA8は、シングルタイヤを工夫することで、これらの問題を解決しました。本製品は、上下だけでなく前方からの力を吸収する「スイング式サスペンション」と、軽量でクッション性も高い「中空構造」を採用。この2つは前モデルにも使われていますが、新モデルはこれらに加えてタイヤをより大きくしたため、コレまで以上に快適かつ安全な対面走行を実現しました。

 

ピジョンが行った検証実験によると、Runfee RA8は、従来品(タイヤ径13.8cm)と比べて2.5cmの段差をはるかに乗り越えやすく、赤ちゃんの頭部への衝撃も50%低いことが分かりました。この実験を指導した東京工業大学工学院システム制御系の宮崎祐介准教授は、「大きな径のタイヤは段差乗り越え性と赤ちゃんにかかる揺れの観点から有利なのです」と述べています。

 

筆者は発表会の会場でRunfee RA8を実際に使ってみました。本製品はでこぼこの道でも確かに押しやすく、従来品との違いは明らかです(下の動画をご覧ください)。

 

コーナリングも滑らかです。その理由の1つは、対面時でも背面時でも前輪が自由に動く「オート4輪切替機能」が備わっているから。また、Runfeeはシングルタイヤなので、ダブルタイヤよりも小回りが利きます。

 

軽いことも注目すべき点です。Runfee RA8の重さは、前モデルから0.1kg減って、シリーズ最軽量の5.3kg。女性でも片手で持ち上げられます。軽量さを重視するお母さんのなかには、Runfeeが他社の競合製品(アップリカのラクーナAD〔5.2kg〕やコンビのスゴカル〔5kg〕)と比べて(若干)重いことを気にされている方もいますが、もはやその差はわずか。また、軽くなっても耐久性が損なわれているわけではなく、車輪やベルト、フロントガードなどの強度の検査が含まれるSG基準(A型)をクリアしています。(寿命については、対象年齢としている36か月までとのこと)

 

新モデルは、主にママのことを考えながら設計されましたが、パパのことが無視されているわけではありません。タイヤ辺りのフレームは八の字に開いていて、シングルタイヤということもあってタイヤとタイヤの間隔が広くなっているので、男性の足もあたりにくくなっています。

20180226_kubo10

また、色も男性に配慮されています。RA8のカラーは全4色あり、そのうちのミニマルネイビーとシュシュグレー(写真下)はお父さんが使うことも考えられているとピジョンの方は話してくれました。

20180226_kubo09

走行性能や安全性を高めたRunfee RA8。ママの不安を軽くし、パパにも使いやすい1台となっています。初めてのベビーカーを探している方や、ベビーカーの買い替えを検討されている方は要チェックです。

 

Runfee RA8

発売日:2018年3月2日

価格:5万7240円(価格)

サイズ:

(折畳時)w516 x D380 x H1028mm

(展開時)w516 x D830 x H1015mm(背面位)

w525 x D945 x H1015mm(対面位)

タイヤ径:対面時前輪18.0cm、対面時後輪16.5cm

リクライニング確度:100~175度