いまロシアの若者たちの休日アクティビティとして、また誕生日会のイベントとして大人気を博しているのが「ペイントボール」。体験者に聞くと、原生林が生い茂るキャンプ場で、障害物に隠れ戦うこのスポーツは、ストレス発散に最適なのだそうです。
アメリカ発祥のこのスポーツは、世界中で1000万人以上もの人々がプレイしており、日本にもペイントボールの施設があります。肉体戦かつ頭脳戦で、五感を刺激する「ペイントボール」。今回は若者がハマるこのスポーツについて、著者が住むロシアという視点からご紹介したいと思います。
簡単な装備とルールながら本格的な遊び
元々は牧場主たちが牛を選別するためのマーキングとして、色付きボール(ペイントボール)を打っていたのが始まりで、そこから敵陣地の「フラッグ」を奪う遊びに派生したそうです。通常は、身体や装備に当たるとアウトになりフィールドから退場ですが、復活制度などもあります。
この「ペイントボール」ではよく迷彩服が貸し出されることが多く、戦闘気分を盛り上げるのはもちろん、隠れる際のカモフラージュや自分の服を汚さずにすむ利点もあります。また、ゴーグルやフェイスマスク、プロテクターなども必需品になっていて、安全のため、基本的に着用が義務付けられ貸し出されています。
最小人数で4人から始められますが、多いほど攻撃が複雑になるので楽しいでしょう。15分ほどのプレイもできますが、規模の大きさによっては、野外フィールドでは平均2~3時間、平均的な弾の消費量は200発となっています。
銃は圧縮ガスを利用した特別なもので、ペイント弾には野菜の色素などがベースの無毒性塗料が入っています。人気の遊び方は「フラッグ奪取」と「殲滅ゲーム」の2つ。前者はフィールドの中央か自分の陣地側で相手を攻撃しつつ、フラッグを取り合うゲームです。後者は残りが最後の1人になるまで戦い続けるもの。チーム数が多い場合はトーナメント制になります。
日本では「サバイバルゲーム」の方が一般的かもしれませんが、ペイントボールはサバイバルゲームの弾が「ペイント弾」に置き換えられたようなもの。サバイバルゲームでは弾が当たれば自己申告制なのに対して、ペイントボールはペイント弾が破裂して色がつくので、よりわかりやすくなっています。また、ペイントボールの弾は17ミリと大きいので、初めての人にも遊びやすくなっているのが特徴。
プレー前には、講師の安全講習を受けるのが必須となっていて、銃の扱い方やルールをみっちり教えてもらうことができます。プレイヤーはプレイが始まると、フィールド外でも「ゴーグル」と「フェイスマスク」を脱ぐことは禁止。どんな理由でも、プレイ中のフィールドでゴーグルを外すことは厳禁なのです。
ロシアにおいてはゴーグルや戦闘服・手袋・銃とペイント弾250個、そして安全講習が料金に入り、一人当たり800ルーブル(約1600円)です。ペイントボールクラブにおいては、500~2500人が一気に戦う大イベントが開催されることもあり、その人気と規模に驚かされます。
身体と頭を刺激する総合スポーツ
ロシアで人気を博している理由として、郊外に広大な土地や森がたくさんあることや、大学生の間に徴兵制で軍の訓練があることなどが考えられます。場所にも困らないうえ、軍隊の訓練によってサバイバル形式のゲームが比較的身近になり、馴染みやすいものとロシアの若者の目には映ったのではないかと思います。
このスポーツの面白さは、日本の「缶蹴り」や「鬼ごっこ」に似ているところがあり、相手の陣地に踏み込む、こっそり隠れるなど、幼い頃に感じた緊張感と高揚感があります。戦略を立てたり協力することも必要で、まさにチームプレー。さらに力技だけでは勝てず、頭も体もフルに使うということも、このスポーツの楽しさなのです。相手に命中した時の興奮、力を合わせ目標を達成した時の充実感は、何物にも代え難い「快感」に違いありません。
そして、チームプレーの大切さを学ぶためか、よく会社やスポーツチームの打ち上げや余興として使われることもあります。年齢などの垣根を超え、より良い関係を築くきっかけになるようで、運動会と似ていますよね。戦略を立て自分の役割をこなし、1つの目標に向かうところは、ビジネスなどにも通じるところがあります。
自然のなかで知力と体力を駆使し、仲間と協力し戦うこのペイントボールは、現代を生きる若者のストレス発散と運動不足解消はもちろん、仲間との良いコミュニケーションの場ともなるのではないでしょうか。